ゴーストリックの残暑【遊戯王OCG】 (41)

カチッ… カチッ…


アルカード「…………」ペラッ


ゴーン… ゴーン…


アルカード「……む。もうこんな時間か」

アルカード「久しぶりに読書に興じてみたがなかなかよいものだ」

アルカード「時が変われば読む本も変わる。これでもう十年は退屈せずに済みそうだな」

アルカード「今夜の月は普段より美しいな。風も静かで虫の音も大人しい」

アルカード「どうやら今日は静かに眠らせてもらえ……」



ドタドタドタ……



ランタン「アルカードさーん! 起きてますー?」

魔女「もう大変! 大変なのよこれが!」




アルカード「……ないようだな」

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アルカード「お前たち、もう夜だ。騒ぐのはその辺にしたらどうだ?」

ランタン「何を言ってるんですか! 僕たちオバケにとって夜は活動時間!」

魔女「今日も噂を聞きつけてやってきた人間たちを驚かせてやるわ!」

アルカード「そうは言うがな……」

アルカード「ここ数日の間、ここを訪れる人間の数は減って行く一方だ」

アルカード「というか、今月の後半は誰一人来ていないじゃないか」

魔女「オバケのシーズン終わっちゃったからねー」

ランタン「夏はもう終わりですね……(チェスの駒をゴミ箱へ送りながら)」

アルカード「ともかく、人間の来ない日に騒いでも仕方あるまい。今日はもう休んで明日に……」

ランタン「そうじゃなくて! いや人間来ないのも問題ですけど!」

魔女「休めないから騒いでるの! あんまり休む気もないけど」

アルカード「何……?」

アルカード「それは一体どういうことだ」

魔女「もうこれが大変なのよ。私たちの手には負えなくて」

ランタン「やはりここは領主であるアルカードさんになんとかしてもらいたく……」

アルカード「私にか……? 聞こう」



魔女「暑い」

ランタン「以上です」



アルカード「……頭が痛いな」

ランタン「だってだって! おかしいじゃないですか! もう夏も終わりなのにまだこんなに暑い!」

魔女「しかもこの屋敷には冷房がない! これは由々しき問題よ!」

アルカード「気候の問題は太陽にでも言ってくれ。冷房は……雪女がいるだろう」

魔女「雪女ならみんなで冷房代わりに使ってたら体熱が上昇して力尽きちゃった」

ランタン「当人曰く『鉄板アイスホッケーのパックの気持ちが分かった』って。ちなみに今はシュタインたちに看てもらってます」

アルカード「何をやっとるんだお前たちは……」

ランタン「というわけで代わりの涼む方法を探してるわけです」

アルカード「残念だが冷房を設置するほどの金はない。我々も所詮はオバケだからな」

魔女「じゃあワーウルフに買ってきてもらう? 街でお金稼いでるって言ってたし」

アルカード「やめておけ。あいつにも人間社会の生活があるんだ」

ランタン「ならどうすればいいんですか~」

アルカード「……たしか昔、私の友人がゴミ捨て場で奇妙なものを拾ってきていたな」

魔女「奇妙なもの?」

アルカード「彼曰く和製の冷房器具だとか言っていたが……」

ランタン「冷房!」

魔女「どこに! どこにあるの!?」

アルカード「ろくに使わず屋敷のどこかにしまいこんだ記憶しかないな。探せば見つかるはずだと思うが」

魔女「早速みんなを集めて探しましょ!」

魔女「それで、その冷房の特徴は?」

アルカード「《エア・サーキュレーター》のような見た目だったな。キョンシー、雪女。和製の器具ならお前たちの方が詳しいだろう」

キョンシー「それ、多分、扇風機ー」

雪女「…………」コクン

ランタン「なるほど……。よーし、早いとこ探して涼むとしよう!」

スペクター「こんな暑い夜に屋敷内を飛び回るとか勘弁して欲しいッス……」

魔女「私たちでも運べるのかしら? ま、困った時はシュタインに任せるからね!」

シュタイン「オウ……。オデ、ガンバル……」

キョンシー「探しに、行くー」

雪女「…………」




数分後



ランタン「オーライ、オーライ」

スペクター「こっちこっちッスー」

シュタイン「ココデ……イイカ……?」

魔女「いやー、無事見付かってよかった!」

キョンシー「これで、涼しい、生活ー」

雪女「…………」

スペクター「で、これどうやって使うんスか?」

アルカード「電源コードを刺してスイッチを入れれば動くはずだ」

ランタン「ちょっと埃かぶってるのが不安だけど……」

魔女「年代物だしそこは目をつぶりましょ。じゃあシュタインお願い!」

シュタイン「スイッチ……オン」





ポヒョ☆





「………………」

魔女「あれ? 動かないじゃない」

アルカード「やはり使うには古すぎたか?」

スペクター「そりゃないッスよ~!」

キョンシー「どうにか、できないー?」

シュタイン「モット……ツヨク……オシテミル……」

シュタイン「フン!」



ベキッ



ランタン「あっ」

スペクター「ありゃりゃ……。完全に壊れてるッス……」

魔女「強く押し過ぎよ! もっと加減しなさい!」

シュタイン「ス、スマナイ……。カゲンハ、ニガテダナ……」

雪女「…………」

キョンシー「振り出し、戻ったー……」

魔女「アルカードさんのその友人に頼んで、直してもらうことはできないの?」

アルカード「彼はそこまで機械に精通しているわけでもないしな……」

アルカード「それに、どこにいるかも分からんしな」

ランタン「友人なのに知らないんですか?」

アルカード「寝相が悪いやつだからな。昔から転がってはどこかへ行ってしまった」

アルカード「ああ、だがこの前手紙を貰ったぞ。元気にはしているみたいだ」

魔女「なになに……。『寝ていたらいつの間にか見知らぬ所に来ていました。仕方ないので眠りにつくとします。 追記.ホルアクティが届くまで起こさないでください』だって」

ランタン「よほど寝るのが好きなんだね……」

スペクター「ていうか最後の自殺宣言みたいなもんじゃないスか」

シュタイン「ネテルアイダニ……カッテニイドウスルナンテ……」

雪女「…………」

キョンシー「移動、移動……」

キョンシー「思いついた。ミュージアム、移動、するー」

ランタン「ミュージアム?」

キョンシー「ミュージアム、フロスト、いる。つまり、涼しい」

魔女「なるほどね! そうと決まれば進路をミュージアムにとって全速前進よ!」

スペクター「おいらは待機してるッス。こうも暑いと外に出るのも億劫で……」

雪女「…………」

シュタイン「ウゴゴ……。オデモ、ココデマッテル……」

アルカード「だそうだ。お前たち、くれぐれも向こうに迷惑はかけるなよ」

ランタン「はーい」




ミュージアム



魔女「あ、暑い……」

キョンシー「早く、入るー……」

ランタン「おジャマしまーす」

魔女「あら、夜でもしっかり空調はきいてるのね」

ランタン「ようやく涼しくなれたよー」



『何奴だ。博物館を荒らしまわる不届き者め!』



魔女「おっと、この声は」

デュラハン『我が剣の錆にしてくれようぞ……ぬ、汝らか』

ランタン「ごめんごめん急に来ちゃって」

キョンシー「ハウス、暑い。だから、ここ来たー」

デュラハン『すまぬ、ここはよく賊が来るものでな。もっとも、来るたびに討ち伏してはいるのだが』

ランタン「オバケにやられたなんて言われても誰も信用しないもんねー」

デュラハン『フン、だが我がいる限り展示物に手を出させはせん』

魔女「ふふっ、頼もしいじゃない」


フロスト「あれ? 誰かと思ったらハウスのみんなだ!」

マミー「ランタン、魔女、キョンシー……。マミー、会えて嬉しい!」

スケルトン「こいつはまた珍しい顔ぶれじゃのう」

マリー「随分騒がしいと思ったら。あなた方でしたの」

猫娘「ニャニャ。何もないけどゆっくりして行ってほしいニャー」


ランタン「や、みんな。涼ませてもらってるよ」

キョンシー「夏でも、涼しい、羨ましいー」

フロスト「まあ、ボクのせいでもあるんだけどね。継続的に寒いところにいないと溶けちゃって」

スケルトン「夏場は快適じゃが冬場は文字通り骨身にこたえるわい」

マミー「マミーは暑いのも寒いのも気にしない!」

魔女「でもこんだけ快適だとこっちに移住するのも考えちゃうかも……」

マリー「それは困りますわね。こちらは今のメンバーだけでも手に負えないというのに」

猫娘「でもマリーが一番手に負えニャいのは……」

マリー「もちろんこの、鏡台が、勝手に、動いて、どっかに行くことですわああああぁぁぁぁ……」ドタドタ

キョンシー「行っちゃったー」

スケルトン「カカカッ! 災難じゃのう」

猫娘「ニャニャ、他のハウスのみんなは元気にしてるかニャ?」

魔女「もう相変わらず。シュタインは力加減間違えて家具壊すし、雪女は大人しいし、スペクターは人間が来なくて驚かし甲斐がないって愚痴ばかり」

ランタン「アルカードさんもイタズラするよりも棺で眠ってる方がいいって」

スケルトン「アルカードと言えば昔はあちこちを旅しては色んなオバケと会っていたらしいな」

魔女「ああ、雪女も雪山へ連れてもらったって言ってたわね」

スケルトン「当時はオバケの中でもそれなりに力を持っていたらしいが奴さんでも敵わないほどの相手もいたそうな。お前さんたちは何か聞いとらんか?」

キョンシー「その辺、あまり、語ってくれないー」

ランタン「そういえば僕たちアルカードさんの交友関係なんてさっき見せてもらった手紙程度しか知らないね」

魔女「何百年も生きてるらしいし本人も覚えてないんじゃない? あ、でも時折思い出したように『天使が憎い』だの言ってたかも」

フロスト「何か複雑な過去でもあるのかな……」

デュラハン『いつかきっとアルカード自らが話してくれるだろう。個人の事情に首をつっこむのは野暮だぞ』

マミー「んー? 首を突っ込むってデュラハン、首持ってない!」

魔女「いや、そういう意味じゃないから」

魔女「でも、私たちがここに移住したらハウスのみんなが大変かも」

ランタン「確かに。やっぱり7体そろってこそハウスのメンバーだね!」

キョンシー「そう考えると、残してきたみんな、ちょっと、不安ー。戻る?」

マミー「せっかく来たのにもう帰る? マミー、寂しい……」

スケルトン「そうじゃ! それならワシらが向こうに行くのはどうじゃ?」

猫娘「ニャ? でも明日にも展示が……」

スケルトン「そんなもん帰ってきてから考えればええじゃろ。『ドローしてから考える』って言葉もあるしな!」

マリー「はぁはぁ……。何ですの、今度は私たちがハウスに行く流れなのですか?」

フロスト「あ、マリー」

マリー「わ、わたくしは遠慮しておきすわ。あそこまで歩くのはどうにも面倒で……って、またこいつは勝手に! あ~れ~……」ドタドタ

マミー「マミー、まだ遊べる? とってもうれしいー!」ガシャン

魔女「こら! 博物館の展示物壊してんじゃなーい!」

マミー「あう……。か、帰ってきたら直すよー!」

キョンシー「逃げちゃったー」

デュラハン『何やらひと悶着あったようだが、我々も行こうではないか。汝らよ、また歩くのも辛かろう。我が愛馬に乗っていくがよい』

魔女「いいの? じゃあ遠慮なく!」

キョンシー「助かるー」

ランタン「え~! 二人とも先行っちゃうの!?」

フロスト「ランタンはボクたちと一緒に行こうよ」

猫娘「ニャニャ。ゆっくり行く方がいい事もあるニャ」





デュラハン『最高に高めた我のフィールで最強の力を手に入れてやる!』ドドドドド

魔女「きゃあああああああああ!!」

キョンシー「は、や、いぃぃぃ……」

デュラハン『もっと速く疾走れー!!』ドドドドド



ハウス



デュラハン『着いたぞ』

魔女「し、死ぬかと思った……」

キョンシー「気分はまるで走るジェットコースター……」

アルカード「何の騒ぎと思ったら随分懐かしい顔がいるな」

デュラハン『久しいな、アルカードよ。お前もたまにはこちらに来ればよいものを』

アルカード「私は静かに寝ていたいからな。それに、彼らを見守るので精いっぱいなのだよ」

スペクター「おっ、ミュージアムの連中じゃないッスか。ちょっと暑いけどゆっくりしてくッス」

雪女「…………」

シュタイン「ウゴ……。ヒサシブリダナ……」

マミー「マミーたち、遊びに来たよ!」

マリー「わ、わたくし、もうライフポイントが0ですわ……」

猫娘「ニャ。やっぱりこんなオチだニャ」

フロスト「デュラハンさん飛ばしすぎですよー」

スケルトン「カッカッカッ。ワシが乗ったら体がバラバラになっちまうわい!」

ランタン「乗っていかなくて良かったー……」

スケルトン「そうじゃ、ここに来る途中にいいアイデアを思い付いてな」

雪女「…………?」

スケルトン「この屋敷にある回転扉は今まで人力じゃったろ。それを自動で動かしてみたらどうなるって話じゃ」

ランタン「その前に誰かがいれば急に消えちゃうって事だね」

スペクター「おおっ! こいつは新たなイタズラの予感がするッス!」

スケルトン「さっそく取り掛かるとするかの! シュタイン、マミー、お主らも手伝わんかい」

シュタイン「マカセロ……」

マミー「新しい遊び? マミー、協力するよ!」

猫娘「大丈夫かニャ~……?」

魔女「あまりいい予感がしないわね」




数分後



スケルトン「カカカッ! 完璧じゃわい!」

スケルトン「こうやって扉の前に立つとな……」クルッ

スペクター「誰も動かしてないのに消えたッス!」

スケルトン「んで戻ってくる」クルッ

キョンシー「す、ごい」

シュタイン「ウゴオオ……ミゴト……」

スケルトン「カーッカッカッ! そうじゃろうそうじゃろう!」クルッ

マリー「で、これどうやって止めますの?」

スケルトン「…………………」クルクル






スケルトン「しまったーっ! 考えるのを忘れとったーっ!!」グルグル

ランタン「これ段々早くなってない?」

フロスト「やっぱり行き当たりばったりの計画じゃ駄目だね」

スケルトン「ま~わ~る~ん~で~す~!!」グルグル

スペクター「いてっ。骨まで飛んできたッス」

猫娘「骨は拾っといてやるニャ~……」

マミー「スケルトン、楽しそう!」

雪女「…………」

魔女「ま、まあその内止まるでしょ、きっと……」

マミー「マミー、久しぶりにみんなと遊べて嬉しい。今度は街のみんなとも遊びたいな!」

スペクター「そんなら今から街にでも出かけるッス。夜はまだまだ長いッスよ」

フロスト「今から行くのかい? 街のみんな起きてるかな……」

ランタン「こういうのはノリだよノリ。久しぶりにみんな揃うんだからパーッとやらないと!」

魔女「というわけで今から街に行きましょ!」

アルカード「随分と急な話だ。まあ、行く分に咎めはしないがな」

猫娘「何言ってるニャ。当然アルカードさんも行くのニャ」

アルカード「私もか? 確かに、こうも皆で揃う機会はなかなかないが……いや、ならば」

デュラハン『保護者として付いて行ったらどうだ。それとも、何か行けない理由でもあるのか?』

アルカード「……少し、別に行く所があってな。デュラハン、お前も付いてこい」

デュラハン『何? 我はそんな話は聞いていないぞ』

アルカード「私だけでは人手が足りんのだ。かと言って彼らを使うわけにもいかんのでね」

デュラハン『何を考えているかは知らんが……いいだろう』

アルカード「そういうわけだ。お前たち、後は好きにしろ」

魔女「えー、アルカードさん来ないの」

キョンシー「嫌な、ノリ……」

アルカード「すぐに戻って来る、心配はするな。では行くぞ」

シュタイン「オデタチモ、マチムカウ……」








人形「…………」

ワーウルフ「へへへ……。人形ぁ、お前本当にカワイイなぁ」

ワーウルフ「こいつでお前を世界の人気者にしてやるよ……」





魔女「アンタは何やってんのよ!」ポカッ

ワーウルフ「いでっ! 誰かと思ったら魔女、オメーかよ……」

魔女「人形も人形よ! 黙って撮られてちゃ相手の思うままよ!」

ワーウルフ「ええい誤解だ! 人型、オメーからも言ってくれよ」

人形「魔女さん、人形はワーウルフさんのお手伝いをしていたのです」

ワーウルフ「ほら、俺って昼は人間に化けながら仕事して暮らしてるだろ? その仕事のプレゼンで写真が必要になってな。人形に頼んでモデルになってもらったってワケよ」

魔女「へー、意外と真面目に仕事してるんだ」

ワーウルフ「意外とは余計だ。ま、金を稼がねえとろくに道楽もできねえからな。その分、質は保証されてるがね」

人形「人形の家の女の子とも仲良くしてくれてるのです。たまに面白い話を聞かせてくれるのです」

魔女「セキュリティ呼ばれないの?」

ワーウルフ「お前俺を何だと思ってるんだよ……」

ワーウルフ「つーか魔女、オメー何でこんなとこにいんだよ。ハウスにいたんじゃねえのか」

魔女「みんなで街まで遊びに来たの。アンタたち二人を探してたのよ」

ランタン「おーい、見つかったー?」

猫娘「サキュバスは見つかったニャー。相変わらずぐっすりだけどニャ……」

サキュバス「Zzz……」

スペクター「おっ、ワーウルフに人形! これで全員揃ったッスね!」

マリー「約一名半壊状態ですけどね……」

スケルトン「」

雪女「…………」

ワーウルフ「スケルトン!? オメーどうしたその格好!?」

人形「み、見事にバラバラです……」

マミー「スケルトン、遊んでたらこうなっちゃった!」

フロスト「本人は遊んでるつもりはなかったけどね……」

サキュバス「んー……? なんか、騒がしい……」

フロスト「あ、サキュバス起きた?」

スペクター「これからみんなでパレードを始めるッス。せっかくだから一緒に騒ぐッス!」

人形「それはとっても面白そうなのです!」

ワーウルフ「パレードだぁ……? 具体的になにすんだ?」

キョンシー「盛大に、はしゃぐー」

マリー「それくらいしか考えてませんけど」

サキュバス「…………?」

サキュバス「良い子はもう寝る時間……おやすみなさーい……」

シュタイン「マタ……ネタ……」

雪女「…………」

人形「サキュバスさんは昼間はイタズラで大忙しですからね。無理もないのです」

ワーウルフ「とにかく、何も考えず騒げばいいんだな? へへ、仕事のストレスを発散するいい機会だぜ」

魔女「ワーウルフも満タンなエネルギーが行き場をなくして困ってるのね」

ランタン「よーし、パレードだ! 騒げ騒げー!!」

猫娘「ニャニャ、あまり羽目をはずさないようにするニャー?」

シュタイン「ジャア、シズカニ……サワグ……?」

雪女「…………」

マリー「それ、騒げていませんわ」

マミー「何する? 何する? マミー、遊ぶ準備はできてるよ!」

駄天使「じゃあまず花火でも打ち上げる?」

ワーウルフ「そりゃ派手すぎだろ。つか花火なんてすぐに用意できるわけ……」





ワーウルフ「って、お前誰だよ!?」

駄天使「あっははー。ばれちゃった?」

駄天使「どーもどーも! 伝説のスーパーウルトラグレート以下省略の駄天使ちゃんでーっす☆」

マリー「……本当に誰です?」

ワーウルフ「知らん、そんなことは俺の管轄外だ」

スケルトン「天使……もしやアルカードの言っておった……」

フロスト「ス、スケルトン生きてたの!?」

スペクター「つか、元々死んでるッス」

人形「伝説って?」

ランタン「ああ!」





アルカード「そいつは私が連れてきた。古くからの知り合いみたいなものだ」

駄天使「知り合いだなんてそんなー。マブダチみたいなもんじゃない!」

アルカード「一言で言うなら相手にすると非常に疲れるやつだ」

駄天使「オバケ的には『憑かれる』って言った方が良いんじゃなーい?」

アルカード「……とにかく、私たちは各地を回って知り合いを集めてきた。パレードを行うなら、人数は多い方がいいだろう?」

キョンシー「知り、合い?」

アルカード「そうだ。例えば……」



グール「Hey! マイネームイズ『グール』! ヨロシク!」

グール「寝相の悪さで各地を転々としてたらアルカードに声かけられてネ! Paradeってのが面白そうだし参加しようって思ったワケ!」

魔女「寝相の悪さ? ……もしかして手紙を送った友人って」

グール「Yes! イッツ『僕だ』!」

スペクター「手紙と全然喋り方が違うッス!」

グール「海外生活が長かったからネ! でも手紙くらいはマジメに書くのサ! HAHAHAHA!」

ワーウルフ「んで、もう一匹は……」

イエティ「麗しの雪女さんにまた会えるだなんて、オラはなんて幸せ者だぁ~」

アルカード「彼はイエティ。昔雪山で出会った男だ」

イエティ「アルカードさんは独り寂しく雪山で過ごしていたオラに手を差し伸べてくれただ。そん時に一緒にいた雪女さんにウサギの人形をもらっただよ」

イエティ「その優しさにオラの冷え切った心がハートバーニング!」

ワーウルフ「お、おう……。雪男のくせに随分熱いヤローだぜ」

魔女「もっとも、肝心の雪女は心が裏側守備表示だけどね」

マリー「見向きすらされないとは……哀れなオバケですこと」



アルカード「さあ、パレードの始まりだ! 今宵は心行くまで騒ぎつくせ!」

サキュバス「んー……? あれれ、なんか増えてるー……」

デュラハン『この騒ぎの中、今まで寝ていたのか』

雪女「…………」

サキュバス「でもまーいっかー……。おやすみんぐ……」

シュタイン「ウゴゴ……キニシナイノカ……」

人形「サキュバスさんの眠りは深いのです。まさに勲章物なのです」

アルカード「私も棺の中で2週間は眠りたいものだ」

グール「ミーもゆっくり眠れる環境が欲しいネ! ストレージの中? ノーサンキュー!」

猫娘「風船もあるニャ。パレードにはぴったりだニャ」

フロスト「おっと。体が軽いと持っただけで飛んでっちゃうよ」

駄天使「強いオバケは空だって飛べるのよ!」

駄天使「というわけでマリーに持たせてみました」

マリー「何でわたくしが!?」

ランタン「おーすごい。あっという間に僕らと同じ高さだ!」

マリー「この鏡台はまた勝手に……。このままでは宇宙の彼方まで飛んでいってしまいますわ」

スペクター「だったら風船を放せばいいじゃないッスか」

マリー「そんなことしたら地面に落ちて意識が飛んでしまいます」

猫娘「鏡だからそれよりもっと酷いことになりそうだニャ~……」

マミー「イタズラ、何する? 何でもいいよ!」

キョンシー「落書き、とかー?」

イエティ「だったらオラは雪女さんの似顔絵を描くだよ!」

スケルトン「ならワシも一つ描くとするかの。ところで、ワシの顎の骨を知らんか? さっきからどうも違和感がな……」

魔女「さてはワーウルフ、アンタでしょ」

ワーウルフ「な、なんのことかな? 俺は別に骨なんざかじっちゃいないぜ」

魔女「その頭に乗ってるのは何よ!」

ワーウルフ「うぐ。う、美味そうだったからつい……」

スケルトン「替えがきかんのじゃぞ! まったく勘弁しとくれよ……」

ワーウルフ「へいへい。しゃーねー、俺も暇だし何かテキトーに描きますかね」

魔女「ワーウルフは本日よりネオギャラクシーアイズ担当となりました」

ワーウルフ「イヤァァァァァァァァアアアア!!」

ワイワイ……


                        ガヤガヤ……




アルカード「そろそろ夜明けの時間だな……」

アルカード「お前たち! 長らく続いたパレードも終わりの時を迎える。人間たちに見つかる前にここから離れ、各自の持ち場へと戻れ!」

ランタン「もう終わりの時間かー。ま、楽しかったからいいか!」

マミー「マミー、楽しい時間過ごせた。また一緒に遊ぼう!」

ワーウルフ「俺も仕事があるしな。オメーらも元気でやれよ!」

グール「ヘイ、アルカード! ミーは宿なしネ、今日はハウスの墓地で眠らせて欲しいヨ!」

イエティ「オ、オラもここから一人で帰るには時間がかかるだ……。一晩でいいから泊めてほしいだよ」

アルカード「構わんが……グール、お前は明日にはどうせいなくなっているのだろう?」

グール「その時はまた手紙を出すからネ!」

イエティ「恩に着るだよ~!」

魔女「話もまとまったし、私たちも帰りましょ!」

デュラハン『我らも戻るぞ。さぁ我が愛馬に乗りたい奴はいるか!』

猫娘「あ、歩いて帰らせてもらいますニャ……」

フロスト「ボクも……」

人形「サキュバスさーん、戻りますよー。もう朝ですから自分で起きて動いて下さいです~!」

サキュバス「Zzz……」




ハウス



アルカード「ようやく静かになったな……」

アルカード「あのように騒いだのは幾年ぶりだろうな」

駄天使「あの子たちががここに来る前のあなたならこんなことはなかったんじゃない?」

アルカード「……なぜお前までここにいる」

駄天使「この駄天使ちゃんも宿なしなの! か弱い乙女を放っておくのは紳士の名折れでしょ?」

アルカード「か弱い? 私より強いくせに何を馬鹿なことを」

駄天使「はてさて何のことやら。それよりどうなのよ」

アルカード「……まぁ、そうだろうな。かつての私ならば考えもしなかった」

駄天使「あー! この本最近発売されたやつじゃん!」

アルカード「話を聞け」

駄天使「あなたオバケだし無一文でしょ? どこで手に入れたのこんなもの」

アルカード「その本は人間が特典だけ取って捨てていたのを拾っただけだ」

駄天使「へー、昔はこんな内容の本なんてなかったのに。時代の流れ? ていうかあなたもこんな本を読むようになったなんてね」

アルカード「時が変われば本の内容も、それを読む自分も変わるというわけだ」

駄天使「まったく、誰のおかげかしらねー」

アルカード「少なくともお前ではないな。フッ、彼らには感謝せねば」

駄天使「随分と信頼してんのね」

アルカード「当然だ。彼らと過ごした時間は私にとってもかけがえのないもの」

アルカード「だからこそ、これからもこの屋敷で静かに彼らを見守って……」



ドタドタドタ……



ランタン「アルカードさーん! 大変、大変ですー!」

魔女「よく考えたら屋敷内が暑いことまったく解決してなかったの! やっぱり冷房つけましょう!」





駄天使「『静かに』って部分は叶いそうにもないわね」

アルカード「……まったくだ」

イエティ「屋敷もいいもんだ~。雪山以外のところに来るのも新鮮だ~」

イエティ「雪女さんはどこにいっただ~? もう一度お礼を言っておきたいだ~」

イエティ「モフ? あそこにいるのは……雪女さん!」



シュタイン「ウゴゴ……オデ、キョウモシッパイ……」

シュタイン「アスコソハ……ガンバレルトイイナア……」

雪女「…………」

雪女「…………」フーッ

シュタイン「ウゴ? セナカガ、ツメタイ……」

シュタイン「オデ、ツカレテル? キョウハ、ヤスム……」

雪女「…………」

雪女「…………」フーッ



イエティ「ガーン……! 雪女さんはシュタインの方が好みだか!?」

イエティ「ブレイク(休憩)中に起きた(ハート)ブレイク……」

イエティ「寒い……。やっぱオラには雪山の方が似合ってるだ……」

イエティ「トホホ……」



終わり

久々に遊戯王のSS書けた
ほんとは《ゴーストリック・ナイト》のネタも入れたかったけど助長気味だったのでカットしました


何かカード名書いてくれたら次はそれでスレ立てる……と思う
いつになるかわからないけど

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