ダージリン「イギリス人は恋愛と戦争では手段を選ばない」キリッ みほ「交際経験は?」 (65)

聖グロリアーナ女学院

沙織「おじゃましまーす」

オレンジペコ「みなさん、ようこそ。お越しいただき、ありがとうございます」

みほ「いえ。こちらこそ、招待してくれてありがとうございます」

オレンジペコ「いえいえ。ご足労していただいたので、お礼をいうのはこちらです」

ダージリン「謝辞の応酬はそれぐらいにしたらどうかしら。折角の紅茶も冷めてしまうわ」

オレンジペコ「そうですね。すみません」

アッサム「お好きな席に座ってください」

華「失礼します」

麻子「ケーキは?」

ローズヒップ「すぐにご用意いたしますですわ」

ルクリリ「私が持ってこよう」

優花里「まさか私たちがダージリン殿のお茶会に誘われるとは……。至極光栄です!」

ダージリン「ふふっ。他校の人を招いてお茶会など、聖グロリアーナの歴史においてはみほさんたちが初めてだから、光栄に感じてしまっても無理はないわね」

オレンジペコ(プラウダの皆さんとはいつもお茶会してるのに……?)

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ローズヒップ「ダージリン様! 先週はカチューシャ様をごしょう――」

アッサム「ローズヒップ」

ローズヒップ「はい?」

アッサム「噤みなさい。ダージリン様の矜持のために」

ローズヒップ「わ、わかりましたわ……」

みほ(ダージリンさんとカチューシャさんは仲がいいもんね)

杏「西住ちゃんだけじゃなく、私たちも呼ばれるとはねぇ」

桃「感謝する」

オレンジペコ「できるなら大人数でしたかったので。ただ、皆さんの都合もあるでしょうから中々誘いにくかったのですが……」

柚子「そんなことありません。いつでも誘ってくださいね」

オレンジペコ「はいっ」

桃「本来であれば大洗に貴方達を招くの筋だというのに」

アッサム「いえいえ。わたくしたちも一度はこうしてみたかったので、お気になさらず」

麻子「まだテーブルと座席が余っているが、他にも呼んでいるのか」

ダージリン「ええ。今回のお茶会にはとあるテーマが設けられているの。そのテーマに適した人物を召喚しているわ」

みほ「テーマですか?」

沙織「ふっふっふっふ」

華「沙織さん? 持病ですか?」

沙織「違うわよ!! 今回のお茶会のテーマは、私がダージリンさん、いや、ダージリン先輩に持ちかけたの!!」

桃「武部が?」

ダージリン「各々の日常を報告し合うだけでも良かった。けど、武部さんからこの話を頂いたときに、まさにこれだと思いましたの」

ダージリン「これだけの淑女が集う場は滅多にありませんもの」

杏「テーマってなんだろうねぇ」

みほ「沙織さんが持ち込んだってことは……」

優花里「戦車の話ではないですね」

麻子「紅茶の話でもイギリスの歴史でもないだろうな」

華「歴史のことならカバさんチームの皆さんがいなければ不自然ですし」

柚子「なら……」

沙織「今日のお茶会のテーマは……!!」

ダージリン「ずばり、恋愛よ」キリッ

みほ「あぁ……」

優花里「ですよね……武部殿なら……」

華「恋愛ですか」

オレンジペコ「え、えぇぇ!? そうなのですか!?」

ダージリン「そうよ? 知らなかったの?」

オレンジペコ「そんなこと一言も言ってくれなかったじゃないですか!?」

ダージリン「ええ。だって、言うつもりは微塵もなかったもの」

オレンジペコ「何故ですか!?」

ダージリン「言ったら、つまらないでしょう?」

オレンジペコ「うぅ……」

ローズヒップ「恋愛がテーマとはどういうことですの」

沙織「勿論、みんなの恋愛観とかぁ、将来の結婚式はどういう風にしたいとかぁ、理想の家庭とかぁ、そういうのを語り合って、自分を高めるのっ。ね、いいでしょ? 女子っぽくて」

麻子「沙織がモテない理由がよくわかるな」

華「殿方にすぐ結婚を臭わせるような女性は嫌われると聞いたことがあります」

みほ「沙織さんはとっても優しいのに……」

沙織「さぁさぁ、みんな! 今日はいーっぱい語り合おー!!」

杏「んじゃぁ、河嶋から」

桃「はい!? 何がですか!?」

杏「河嶋が思い描く理想の恋愛ってどんなの?」

桃「急に言われても困ります……」

沙織「なんでもいいんですよぉ! どんな風に告白されて、どんな感じでデートして、どんな感じでプロポーズされたいとか!」

ダージリン「ふふっ。いいわね。お願いしますわ、河嶋さん」ズズッ

柚子「桃ちゃん、がんばって」

桃「せ、せめて二番目ぐらいに……」

杏「いいからいいから」

桃「うっ……。ええとだな……わたしは……その……」

麻子「そもそも付き合ったことはあるのか?」

桃「あ、あるわけないだろ!! まだ高校生だぞ!!」

杏「(まだって言ったね)」

みほ「(河嶋さんの中では高校生は『まだ』なんですよ、多分)」

柚子「というか、桃ちゃんって男子と話したことあった?」

桃「それぐらいある!!!」

アッサム「どういった会話を?」

桃「授業で分からなかったところを教えてもらったときとかだ」

柚子「えー? それって確か、ノート借りただけだった気が……」

杏「それっていつの時?」

柚子「あれは小学校のときでした」

沙織「なんだ……小学生……」

ダージリン「参考にはなりませんわね」

桃「うるさいぞ!! 男と話したのにはかわりないだろう!!」

ダージリン「それで?」

桃「な……?」

ダージリン「そんな河嶋さんはどのような男性に、どのような告白をされてみたいのかしら」

桃「そ、れは……だな……」

柚子(桃ちゃん、耳まで赤くなってきてる……)

桃「私は、きちんと自立した者でなければならないと考えている。どんなに凝った告白をされたとしても、自立できていなければ問題外だ」

沙織「現実的ってことですね」

桃「安定した収入と安定した休日を持つ者でなくては、幸せな家庭は築けないだろうからな」

杏「なるほどねぇー」

ダージリン「……」

アッサム「ダージリン様、どうかされましたか」

ダージリン「河嶋さん。そうした相手以外からは告白を受けないと」

桃「そうだ」

ダージリン「つまり、学生の内は恋愛なんてしないと」

桃「する必要もない」

ダージリン「収入がなくては幸せな家庭を築けない……。それは結婚……ですわね……」

オレンジペコ「あ……」

ローズヒップ「なんですの?」

みほ「河嶋さん。告白されたら、結婚するんですか?」

桃「西住、お前はしないのか?」

優花里「おぉぉ……」

華「古風な人です」

麻子「五十鈴さんは違うのか」

華「わたくしは、少し事情が違いますので」

麻子「事情……?」

杏「河嶋ぁ、付き合ったりしないの?」

桃「結婚を前提にしたお付き合いでなければ、時間の無駄です」

柚子「桃ちゃん……」

沙織「重い……重過ぎるよ……」

麻子「お前が言うのか」

ダージリン「まぁまぁ、人生観や恋愛観は人それぞれ。批判は筋違いというものよ」

アッサム「そ、そうですね」

オレンジペコ「河嶋様のような考え方だと、確かに軽い気持ちでは恋愛なんてできませんね」

桃「つまらない男にだけは騙されない自信がある」

杏(河嶋に近寄る奴を誰かが徹底的に調査しなきゃいけないみたいだな)

ダージリン「一つ、気になったのですが」

桃「なんだ?」

ダージリン「凝った告白というのは、どのようなものかしら」

桃「ああ。そうだな、例えばいきなり高い場所、高層ホテルの最上階とかそういったところに呼び出される」

沙織「スウィートルームってやつですね!!」

優花里「そんな場所に呼ばれた時点で何を言われるか想像できそうですね」

みほ「優花里さんっ」

桃「窓の外を見てほしいと言われ、私が見に行くと、男が指を鳴らす。すると、窓の外に見える建物の灯りが全て消えるんだ」

オレンジペコ「え……」

ローズヒップ「ロマンチックですわ!!」

麻子「どこの魔術師だ」

桃「私が困惑していると、男がもう一度指を鳴らす。次の瞬間、建物の灯りでメッセージが作られているんだ」

桃「アイ、ラブ、ユー、と」

ダージリン「……」ブフッ

アッサム「ダージリン様、抑えてください」

優花里「現実にそこまで大掛かりな仕掛けてで告白してくれる男性がいるんでしょうか」

華「いるとするなら、絶対に添い遂げなくてはいけませんね」

柚子「それだけ好きってことだもんね」

ダージリン「ほんの少し、紅茶が零れてしまいましたわ」フキフキ

ローズヒップ「ダージリン様!! お鼻からお紅茶が出ていますわ!!」

ダージリン「知らなかったの? わたくしは鼻からお紅茶が出る女なの」

ローズヒップ「な……!?」

オレンジペコ「早く拭きとってください!!」

桃「もういいか?」

みほ「あ、ありがとうございます」

桃「全く……」

杏「河嶋」

桃「はい、なんでしょうか」

杏「いいねぇ。私もそういう男と付き合ってみたい」

桃「流石、会長。私の理想に共感してくださるとは」

ダージリン「意外ですわね。角谷さんにメルヘンな嗜好があったとは」

桃「誰がメルヘンだ!!」

杏「そう? 女の子なら、誰もが夢見るよ」

桃「次はそちらの番だ」

ダージリン「そうね。では、オレンジペコ」

オレンジペコ「はい?」

ダージリン「貴方にとって、理想の告白、理想の男性、理想の結婚を語りなさい」

オレンジペコ「えぇぇぇ!?」

ダージリン「ふふっ。どんな菓子よりも紅茶に合う、甘いものを期待するわ」ズズッ

オレンジペコ「そ、そんなぁ……恥ずかしい……」

桃「私も恥ずかしかったんだ」

オレンジペコ「そうかもしれませんけど……」

ダージリン「さぁ、遠慮せずに語りなさい」

アッサム(頑張りなさい……オレンジペコ……)

オレンジペコ「そうですね……お付き合いさせていただくのであれば……男性は……優しければ……いいかな……って……」

沙織「甘い!! 甘いよ!! ペコちゃん!!」

オレンジペコ「え!? えぇ!?」

ダージリン「優しければいいですって? オレンジペコ、貴方は何を言っているのかしら」

オレンジペコ「は、はい? すみません」

沙織「優しいだけじゃ、ダメなんだって」

ダージリン「そう。時には叱ってくれる相手でなければ。こちらの要求を愚直に受け取るだけの男など、つまらないだけよ」

オレンジペコ「そ、そ、そうなのですか」

沙織「うんうん。それはただの都合の良い男なんだって」

ダージリン「貴女がその男を利用し、貢がせるのなら話は別だけれどね」

オレンジペコ「そ、そんなことしません!!」

ダージリン「でしょう? だったら、考えを改めることね」

沙織「本当の優しさってね、なんでも言うことを聞いてくるってだけじゃないと思う」

ダージリン「気をつけなさい」

オレンジペコ「は、はい」

みほ(沙織さんとダージリンさん……気が合うのかな……こういう話だと……)

アッサム「理想の告白はどういったものかしら」

オレンジペコ「それは、お付き合いするときですか?」

桃「無論、結婚を前提に――」

柚子「桃ちゃんは黙ってて」

杏「ふつーに付き合うときでいいんじゃない?」

オレンジペコ「えっと、だったら、気持ちさえ伝わるのなら告白の形式は気にしません。直接言ってくれても、お手紙でも、電話やメールでも」

沙織「ペコちゃん!!!」

オレンジペコ「は、はい!?」

ダージリン「失望しましたわ」

オレンジペコ「な、なにがでしょうか?」

沙織「河嶋さんほど凝りに凝った演出はしなくてもいいけど、告白されるときにそんな電話とかダメだって」

ダージリン「ええ。そのような男、ロクなものではないわよ」

オレンジペコ「けど、勇気を振り絞って告白してくれることには変わりがありませんし……」

ダージリン「そこで相手の気持ちの大きさを測るのよ。本当に自分のことを必要としているのなら、電話などと言う簡易的なもので済まそうとは思わないわ」

みほ(二人とも、電話やメールでの告白はありえないんだ)

沙織「少なくとも、ちゃんと目をみて告白してくれる男の子じゃないと」

ダージリン「そうね。最低条件よ」

オレンジペコ「そうですか……?」

杏「批判は筋違いじゃなかったっけ」

ダージリン「批判ではないわ。これは指摘よ」

桃「モノはいいようだな」

麻子「オレンジペコさんは誰かと付き合ったことはあるのか」

オレンジペコ「ええと……」

ダージリン「あるわけないでしょう」ズズッ

オレンジペコ「いえ、その……」

アッサム「あるの?」

オレンジペコ「小学生のときに……クラスの男の子と……」

ダージリン「……」ポロッ

ガシャーン!!!!!

みほ「ダ、ダージリンさん!?」

優花里「箒と塵取りを!!」

ルクリリ「了解!!」

沙織「あ、あるんだ……」

オレンジペコ「けど、4年生のときなので……とくに何をしたというのもないのですが……」

ダージリン「そうね。それを恋愛経歴に載せるのは、詐称行為と言ってもいいわ」

アッサム「そこまでですか」

沙織「そ、そうそう!! 小学生のときのことはノーカウントで!!」

ダージリン「せめて、中学のときでなければね。お話にならないわ。ま、そんな人はここにいないでしょうけど」ズズッ

ローズヒップ「わたくし!! 中学のとき、恋人がいましたわ!!」

ダージリン「……!?」ブフッ!!!

みほ「あぁ!? ダージリンさん!! 大丈夫ですか!?」

優花里「拭くものもお願いします!!!」

ダージリン「ごほっ……ごほっ……!? ろ、ろーすひっぷ……あ、貴方は何をいって……」

ローズヒップ「半年間だけでしたけど、恋人はいましたわ」

ダージリン「な……ぁ……!? そ、それはあれでしょう、戦車とか……そういうものでしょう……? ふふ……」

ローズヒップ「いいえ。ちゃんとした、オスですわよ」

沙織「お、おすって……!?」

ダージリン「男性をオス呼ばわり……!! なんてレベルの高い交際をしていますの……!!」

杏「レベル高いってことになるの?」

柚子「わかりません……」

ローズヒップ「あの子はわたくしのことが大好きだったみたいで、ホント毎日キスを迫られていましたわ」

沙織「きゃー!? ホントにぃ!?」

ダージリン「ふ、不潔よ!! ローズヒップ!!」

アッサム「ダージリン様、落ち着いてください」

ローズヒップ「白昼堂々と迫られて拒否できなかったのですわ。わたくしもそれなりに愛していましたから」

桃「そ、そんなことをよく言えるな……」

沙織「そのあとは!?」

ローズヒップ「顔中を舐められるのことは日常茶飯事。酷いときはわたくしに抱きついて、腰を振る始末」

ダージリン「あ……あぁぁ……」

みほ「わかる。私も、よく飼い犬にされてたなぁ」

沙織「飼い犬!?」

ダージリン「みほさん……!! 飼い犬呼ばわり……!?」

みほ「あれ? 犬の話じゃないの?」

ローズヒップ「犬の話ですわ。名前はラトゥナプラ」

ルクリリ「本当の犬か」

華「犬が恋人だったのですか」

ローズヒップ「はいっ。彼はわたくしのことをとっても愛していたので、それを受け入れましたの」

ローズヒップ「相手の愛情を受けとった以上、恋人と呼んでもいいはずですわ」

麻子「恋人じゃなくて、恋犬か」

華「半年間だけというのは……」

ローズヒップ「それが突然……」

麻子「事故……か……」

ローズヒップ「飼い主さんが引っ越しをしてしまいましたの。あのときは寂しかったですわ」

優花里「ご自身のペットではなかったのですね」

ローズヒップ「ええ。ですから、恋人だったですわ」

ダージリン「紛らわしいわよ、ローズヒップ。犬なら犬とそう言いなさい」

ローズヒップ「わたくし的には恋人だったので……」

沙織「今はそーゆーのを聞きたいんじゃないのぉ」

ダージリン「そうよ。こうして淑女が一堂に会しているのだから、口にすることは一つだけ」

沙織「コイバナよー!」

ダージリン「こんな格言を知ってる? 愛する者たちに誰が掟を課することができよう。愛はそれ自体はるかに偉大な掟なのだ」

オレンジペコ「今、その格言は必要なのでしょうか?」

杏「うーん……。かわしまぁ」

桃「はっ」

ダージリン「では、次は大洗の人に語っていただこうかしら」

麻子「じゃあ、私が」

沙織「まこぉ!?」

麻子「何を驚く」

沙織「れ、恋愛とか興味あったの?」

麻子「私も女だ。興味がないと言えば嘘になるし、時には妄想するときもある」

優花里「意外といったら失礼になりますが、冷泉殿がそういったことで物思いにふける姿が想像できませんね」

華「どのような妄想をするのですか」

麻子「そうだな……。よくするのは、こんな夫が居てくれたら助かるのにという妄想だ」

柚子「どんな人がいいの?」

麻子「まず、昼まで寝ていても怒らない。これは絶対条件だ。で、起きると優しく「おはよう」と言ってくれる人が良い」

麻子「夜更かししていても早く寝ろとか言わない人だと最高だ」

沙織「なによ、それぇ」

みほ「あはは……」

優花里「つまりは甘やかしてくれる人が良いということですね」

アッサム「ダージリン様が言っていた優しいだけのダメな男性に該当しそうね」

沙織「それって麻子が家事とかぜーんぶする前提?」

麻子「いや。私が働く」

沙織「はぁ……」

優花里「おぉー! 戦場主夫ってやつですね!!」

沙織「夜の仕事でもするつもりなの?」

>>20
優花里「おぉー! 戦場主夫ってやつですね!!」

優花里「おぉー! 専業主夫ってやつですね!!」

麻子「在宅ワークをする。今の時代、会社に出勤するメリットはない」

沙織「天才はいうことが違うわね……」

ダージリン「ずっと愛した人と一緒にいたい、という表れかしら?」

オレンジペコ「冷泉様って、すごく乙女チックなのですね」

沙織「麻子は乙女チックかなぁ」

麻子「……」

華「わたくしは、違うと思います」

みほ「華さん!?」

優花里「そんな酷いですよ、五十鈴殿ぉ」

華「好きな人と一緒にいたい。出勤をするのが面倒。そう言った理由だけでしょうか」

麻子「……」

ローズヒップ「どういうことですの?」

華「何か別の理由もある気がするのです」

麻子「別にない。気のせいだ」

華「麻子さん。本当は家に居たいのではないでしょうか。家族と一秒でも長く」

沙織「……!」

麻子「そんな考えはない」

華「……」

麻子「ない」

華「そうですか。申し訳ありません」

ダージリン「(失礼ですが、冷泉さんのご家族は……)」

柚子「(冷泉さんが小さいときに事故があったみたいで……)」

ダージリン「(まぁ……。そうでしたの……。気の毒ですわね)」

柚子「(五十鈴さんは冷泉さんの底にある気持ちを読み取ったのかもしれません)」

ダージリン「……冷泉さん」

麻子「なんだ」

ダージリン「貴方の恋愛観、いえ、人生観がよくわかる回答だったわ。ありがとう」

麻子「ダージリンさんの役に立ったとは思えないが」

ダージリン「いいえ、大変参考になりましたわ。少なくとも、貴方を知ることができた。これはわたくしの人生において、有意義なことになるでしょう」ズズッ

麻子「それなら、少しは嬉しいな」

沙織「麻子……。ごめん、気づいてあげれなくて」

麻子「何故、沙織が落ち込む。これが私のモテ道だ」

みほ(麻子さんにだって将来設計はある。私はどうなんだろう……)

ダージリン「それにしても、ここまで恋愛経験のある方は皆無ですわね。18、17の乙女が集まっているのに……。情けない」

みほ「え? それじゃあ、ダージリンさんは――」

ダージリン「次は、角谷さん」

杏「ん? 私か」

ダージリン「実は言うと、貴方の恋愛観にはとても興味がありますのよ」

杏「なんで?」

ダージリン「掴みどころのない貴方がどのような恋愛を欲しているのか。気になるわ」

杏「そんなに? みんなもそうなの?」

優花里「ええと、そうですね。会長が特定の男性と一緒にいるというのが想像できないというか」

桃「しなくてもいい!!」

杏「まぁ、私も18歳の女だからねぇ。部屋で一人、自分で――」

桃「会長!!! 会長はそんなことしないはずです!!!」

華「何をされるのでしょうか」

沙織「し、しらない」

麻子「自分で……なんだ?」

優花里「なんでしょうね」

みほ「わ、わからないね……」

オレンジペコ「ダージリン様、角谷様が言いかけたこと分かりますか?」

ダージリン「こんな格言を知ってる? 男の性欲は自然に目覚め、女の性欲は目覚まされるまで眠っている」

ダージリン「つまり、角谷さんは既に大人の女ということよ」

オレンジペコ「はぁ……」

アッサム「……」

ローズヒップ「どういう意味かさっぱりですわ!!」

杏「具体的にいうとだなぁ」

桃「言わないでください!!! 会長には清楚で可憐というイメージが!!!」

柚子「ないと思うよ」

杏「まぁ、私のプライベートはいいか。理想の男性だったね。まず、私をお姫様抱っこできるぐらいの腕力は欲しいな」

優花里「へぇ……。そのような願望を」

杏「まぁ、大概の男はみーんな、私のことを軽く抱いてくれたけどね」

桃「会長!」

みほ「どういう意味ですか?」

杏「ん? そのままの意味だけど?」

沙織「も、もも、もしかして……?」

ダージリン「角谷さん、これまでに何人かの男性とお付き合いをされたことが?」

杏「うんっ。というか、二人か三人ぐらいいても不思議じゃないっしょ。高校三年生なんだから」

ダージリン「そ、そ、そうね。18歳だもの。と、とと、当然だわ」ズズッ

沙織「そ、そ、そりゃ、そうだー! 会長は間違ってないと思います!! はい!!」

杏「ダージリンはモテそうだし、とっかえひっかえじゃないの?」

ダージリン「え……」

オレンジペコ「そ、そうなのですか!?」

ダージリン「ふふ。当たり前でしょ。それどころか、略奪だってしたことがあるわ」

アッサム「……」

ローズヒップ「流石ですわ!! ダージリン様は戦車道の経験だけでなく、恋愛の経験も豊富なんですわねー!!!」

優花里「略奪というのはご友人の想い人を……?」

ダージリン「そうよ。けれど、好きになってしまったのだから仕方がないでしょう?」

ダージリン「こんな格言を知ってる? イギリス人は恋愛と戦争では手段を選ばない」キリッ

優花里「おぉぉ!!」

ダージリン「親友のお相手だろうと、相手に妻がいようと。策を弄し、奪い取るのがわたくしの戦車道」

優花里「ダージリン殿にとっては恋愛と戦車道に通ずるところがあるのですね」

ダージリン「そういうことよ」

杏「他にはいないの? 付き合ったことがある人ぉ、きょしゅー」

華「お付き合い、というのは違うかもしれませんが」

沙織「えぇぇぇ!? 華!?」

華「わたくしには婚約者がいます」

ダージリン「こ……」

沙織「こんやくしゃぁぁ!?」

みほ「それってもしかして、五十鈴家の……?」

華「はい。あら? みほさんにお話ししたこと、ありましたっけ?」

みほ「あ、私にもいるんだ。親が決めた婚約者」

沙織「えぇぇぇぇぇ!? みぽりんにもぉ!?」

ダージリン「そんな……!!」

華「華道と戦車道といえど、同じ歴史ある流派の家に生まれた身。そうしたお相手がいても不思議ではありませんわ」

みほ「まだちゃんとお話ししたことはないんだけど」

麻子「五十鈴さんは一人娘だからまだ分からなくもないが、西住さんは次女だろう。長女のまほさんにもいるのか」

みほ「ええと、その家の長男さんは私かお姉ちゃんのどちらかを選ぶことになってて……」

優花里「それで西住殿が選ばれたと……」

みほ「そうみたい。けど、私はもう西住流からは離れちゃったし……どうなるんだろう……」

沙織「みぽりんにもいたなんて……しかも、絶対にお金持ちでイケメンじゃない……!!」

ダージリン「みほさんとまほさんを選べる資格を持つ男がこの世にいるとは……」

オレンジペコ「私たちには分からない世界ですね」

アッサム「格式ある家系に生まれるのも悩みが多いということね」

ローズヒップ「わたくしも許嫁がほしいですわ」

華「ですが、わたくしは自由な恋愛をしてみたいです」

ダージリン「どのような?」

華「街を歩いていて、声をかけられて、一緒にお茶を嗜み、そのまま朝日を見ながらお茶を飲んだりなんてどうでしょう? アクティブな私です」

沙織「一泊してるし!! お持ち帰りされちゃってるから!!」

華「それぐらい恋愛にもアクティブでいたいんです」

沙織「アクティブすぎるってばぁ!!」

みほ「私は図書館で高いところの本を取ろうとして取れなくて、背伸びをしていたら横からすっと取ってくれる男の人がいいかなぁ」

優花里「どこかで見たことがある感じですね」

アッサム「みほさんが言っているのは理想の出会い方、ですね」

ローズヒップ「わたくしは朝、遅刻しそうになっているときに街かどで殿方とぶつかるのがいいですわ! こちらはクルセイダーで向こうはマチルダⅡなら尚良いですわね!! 運命的ですわ!!」

柚子「戦車でぶつかるんだ」

アッサム「む……。ダージリン様。お見えになったようです」

ダージリン「分かったわ。――お待ちなさい。好き勝手に話さないように。それに今回のお茶会では、ご意見番ともいえる方が到着したようよ」

みほ「ご意見番……?」

ダージリン「皆さんもご存知の方々よ」ズズッ

ノンナ「 Добрый день」

優花里「ノンナ殿!」

沙織「おっほぉ! 確かにノンナさんは高校戦車道選手の中でもトップクラスの美人だもんね! モテるよね!」

オレンジペコ「ご意見番役としては適任と言える人選ですね」

ダージリン「違うわよ」

オレンジペコ「はい?」

ノンナ「私はただの付き添いです」

みほ「え……でも……」

ダージリン「ノンナに恋愛の経験があると思うのかしら?」

華「少なくとも沙織さんよりはあると思えますが」

麻子「そうだな」

ノンナ「いえ、それは買いかぶりすぎです。生まれてから今まで、特定の男性とお付き合いなどしたことがありません」

アッサム「では、ご意見番とは一体……」

ノンナ「プラウダ高校が誇る、恋愛マスターこと……」

カチューシャ「揃ってるわね。さぁ、聞かせてもらいましょうか。貴方たちのあさーい夢物語をね」

みほ「カチューシャさん!?」

沙織「えぇぇぇ!?」

カチューシャ「なによ、そのリアクション!! 文句でもあるわけ!?」

優花里「ええと……」

華「とても予想外でした……」

麻子「カチューシャさん。大変失礼だが、恋愛したことがあるのか」

カチューシャ「何言ってるのよ。この魅惑のカチューシャを世の男連中が放っておくわけないでしょ」

桃「その男たちは特殊な趣味をしているんじゃないのか」

柚子「警察に通報したほうがいいのかな……」

杏「まぁまぁ。それを言ったら、私を抱いた男たちもみーんな逮捕されちゃうからなぁ」

桃「会長はまだ背の低い女の子で済まされますが、カチューシャは……」

ダージリン「確かに、カチューシャの風貌からは想像もできないでしょうけど、カチューシャはね、とてもモテるのよ。特に年上から」

カチューシャ「ふふん。そうよ。あんたたちはただカチューシャよりも背が高いだけで、人生の経験は私のほうが大きいんだから」

みほ「年上の男性とお付き合いをしたことがあるんですか?」

カチューシャ「まぁね。ミホーシャはあるの? ないわよね」

みほ「ありませんけど……」

カチューシャ「ま、ミホーシャだけじゃなく、年上の男と付き合ったのはカチューシャだけでしょうけど。あーっはっはっはっは」

優花里「ノンナ殿、本当なのですか?」

ノンナ「ええ。嘘ではありませんよ」

カチューシャ「信用してないって顔ね。いいわ。なら、とっておきの話を披露してあげる」

沙織「年上の相手と付き合ってたときの話ですか?」

カチューシャ「興味あるでしょ」

沙織「はい! 興味あります!」

桃「柚子、話に出てくる男を特定するぞ」

柚子「うん」

杏「警察沙汰にはしないでよぉ」

カチューシャ「あれは私が高校一年生のときだったわ。寄港した町で買い物にでかけたのよ」

カチューシャ「そのときに声をかけられたわ。暇なら一緒に遊びに行かない?ってね」

沙織「ナンパだ!! ナンパだよね!!」

みほ「ナ、ナンパだね」

カチューシャ「まぁ、そんな男は貢がせるだけ貢がせて、そくポイしちゃったけど」

華「捨てたということですか?」

カチューシャ「私はね、そんなに安っぽい女じゃないのよ」

みほ「その人とは付き合っていないんですか」

カチューシャ「その日、一日はデートしてあげたわ。まぁ、5時までだけど」

華「朝のですか?」

カチューシャ「夕方のに決まってるでしょ。学園艦に戻らなきゃいけなかったし」

ローズヒップ「相手の男性は引き留めなかったんですの?」

カチューシャ「さぁ? 私は過去の男のことなんてすぐに忘れちゃうから」

沙織「なんか大人の女って感じぃ……」

ダージリン「流石、カチューシャね。わたくしと肩を並べるだけのことはあるわ」

カチューシャ「そういえばダージリン、最近見つけたっていうカッコいい男とはどうなってるの?」

ダージリン「え……」

オレンジペコ「そんな人がいたんですか!?」

カチューシャ「先月、私が今の話をしたとき、わたくしも声をかけられましたわーなんて言ってたのよ」

ダージリン「あ、ああ。あの人ね。顔はよかったのだけれど、それだけだったわ」

カチューシャ「そう。ダージリンも悪女ね。あのときの話を聞く限りでは、かなり男は本気だったでしょうに」

ダージリン「ま、大半の男はそういうものよ」

沙織「凄い会話してる……。これが強豪校の貫禄ってやつなんだね……」

みほ「そうなのかな」

麻子「カチューシャさんの口ぶりから察するに、数多の男性と付き合ってきたみたいだな」

カチューシャ「ま、声をかけられる回数は多いわね」

麻子「一か月以上、交際したことはないのか?」

カチューシャ「交際……?」

麻子「一日限りの相手ではなく、きちんと恋人と言える人はいなかったのか」

カチューシャ「恋人……」

優花里「そこは大事ですね。一日だけデートらしきことを実行しただけでは、今回の議題である恋愛とは少し違うものになってしまいますし」

みほ「多くの人と一日デートをしたのなら、一人ぐらいはいたんじゃないかな」

沙織「どーなんですか!?」

カチューシャ「うぅ……それは……。ほ、ほら、私は悪女中の悪女だし、一人の男に縛られたくはないのよね」

オレンジペコ「カチューシャ様がそのようなお人だったなんて……」

ローズヒップ「女は見かけによりませんわね」

アッサム「そうですわね」

ダージリン「ふふ。流石はカチューシャだわ。わたくしが宿敵と認めただけのことはあるわね」ズズッ

カチューシャ「ダージリンみたいにところかまわずふったりはしないだけマシでしょ」

麻子「……」

優花里「ノンナ殿はカチューシャ殿の行動について、咎めたりはしないのですか」

ノンナ「カチューシャも立派な女性ですから。プライベートに口を出すことはしませんよ」

杏「手は出してたりしてぇ」

ノンナ「……なんのことでしょう?」

杏「いや、カチューシャの話で疑問なのは、多くの男に声をかけられても夕方の五時には帰れているって点だからね」

ノンナ「紳士ばかりがカチューシャに群がっていただけでしょう」

杏「学園艦が寄港した際、生徒及び住民は下船できる。そのかわり出航時間は守らなきゃ学園艦に置いて行かれる」

ノンナ「カチューシャは出航時間を厳守していた。それだけのことです」

杏「だけど、学園艦へ戻る方法はいくらでもある。連絡船やヘリだってプラウダにはある。大洗だって連絡船ぐらいはあるからなぁ」

麻子「私たちもおばあのお見舞いに行ったときに、連絡船を利用して帰ったからな」

ノンナ「だからなんですか」

杏「土日ならカチューシャが5時に帰る必要性はないし、そもそも男が本気だったならそんな中途半端な時間に帰したりもしないと思うけどな」

ノンナ「……」

杏「カチューシャはお菓子とかにつられてホイホイついていきそうなイメージも――」

ノンナ「それ以上、口を動かすと命の保障はできませんよ。角谷さん?」

杏「おぉ……」

ノンナ「憶測だけで語ると、身を滅ぼします。覚えていてください」

杏「うん」

桃「会長!! よろしいのですか!?」

柚子「あの、なんだかもっと問い詰めたほうがいいような気も……」

杏「言ったろ? 警察沙汰はダメだってな」

ノンナ「お互いのためです。ふふ……」

カチューシャ「男なんて、ホーントバカばっかりよね。ちょっと笑顔を見せるだけで騙されるんだから。男は全員、シベリアの雪山を登ればいいのよ、少しはマシになるわ」

ダージリン「そうね。手のひらで転がすなんて、目隠ししながら鼻をつまんで紅茶の種類を当てるより簡単だわ」ズズッ

カチューシャ「ともかく! カチューシャは戦車道でも恋愛でも百戦錬磨なの! わかった!? 分からない奴は粛清してやる!!」

優花里「は、はい!! 了解しました!!」

カチューシャ「それで? 誰から話してくれるわけ?」

ダージリン「まずは河嶋さんのお話から査定してもらったらどうかしら」

桃「私か……!?」

カチューシャ「どんなことを話したの?」

杏「理想のプロポーズだね」

カチューシャ「へぇ。恋愛を語るときには必ず出るわね、その手の話は。で、どんなプロポーズがお望みなの?」

ダージリン「ここで紅茶を口に含まないようにしないと」

アッサム「またお鼻からお紅茶が逆流しますからね」

桃「もう一度言わなきゃいけないのか……」

柚子「ええと、高層ホテルの最上階に呼ばれて、男性が指を鳴らすと、窓から見える建物の灯りが全部消えて、もう一度指を鳴らしたとき、灯りでアイラブユーの文字が描かれているっていうのです」

ダージリン「……」プルプル

アッサム「ダージリン様、お肩が震えていますよ」

カチューシャ「……」

ダージリン「カチューシャ、どう思うの? わたくしとしては、そんな壮大な告白をする殿方なんて白馬の王子様以上の存在だと――」

カチューシャ「名前、なんだっけ」

桃「河嶋桃だ」

カチューシャ「モモーシャね」

桃「河嶋と呼んでくれ」

カチューシャ「あんた、センスないわね」

桃「な……に……!?」

杏「あーあ、いわれちゃった」

柚子「仕方ないですよね……」

みほ「何もそこまで言うことわ……」

カチューシャ「そこはあいらぶゆーじゃなくて、あいにーじゅーでしょ」

桃「む……」

ダージリン「カチューシャ……」

オレンジペコ「まさか……カチューシャ様は……!!」

優花里「どこに違いがあるのでしょうか?」

>>49
みほ「何もそこまで言うことわ……」

みほ「何もそこまで言うことはないんじゃ……」

カチューシャ「全然違うわ。まず、あいらぶゆーなんて安っぽいじゃないの」

華「安っぽいですか……」

麻子「告白の方法はかなりの金がかかっているがな」

カチューシャ「あいにーじゅーのほうが気持ちが籠ってるでしょ」

桃「言われてみれば……」

カチューシャ「でしょ?」

桃「百戦錬磨と自称することだけはあるな……」

カチューシャ「ふふ。告白の方法自体はいいけどね。やっぱり言葉っていうのは大事なのよ」

カチューシャ「愛してるだけなら誰だって言えるわ。だからこそ、伝わらないこともある」

カチューシャ「でも、ほんの少しだけ言葉を変えると心の奥まで染み込んでいくの。雪山の雪解け水のようにね」

カチューシャ「仮に、その方法で告白されたとして、あいらぶゆーって描く男がいればそれは……」

桃「それは……」

カチューシャ「モモーシャの体目当てなのは間違いないわ!!!」

桃「か、かか、からだ……めあて……だと……!?」

みほ(河嶋さん、スタイルいいもんね……)

優花里「そこまでしてくれる男子こそ本当に愛してくれているような気もしますが」

カチューシャ「甘いわよ!! 男は基本的に狼なの! 隙さえあれば野ウサギを食べようとしている狼!!」

カチューシャ「そうでしょ、ノンナ」

ノンナ「はい」

桃「悪い男にだけは騙されない自信はあったが、今ので不安になってきたな」

カチューシャ「食べられる前でよかったじゃない」

杏「そういうカチューシャはどんな相手にどんな告白をされてみたいの?」

カチューシャ「私? よく聞いてくれたわね。まず、相手は私を6時間ぐらいは余裕で肩車できなきゃダメ」

みほ「そうなんですか」

華「できる人、いるんでしょうか?」

麻子「いくら小柄でも6時間は辛いな」

カチューシャ「ノンナなら余裕よ? ね?」

ノンナ「はい」

カチューシャ「あと私には絶対服従よ。私が雪は黒いと言えば黒と言うぐらいにね」

ノンナ「でなければ、カチューシャと付き合うなど許されるわけがありません」

カチューシャ「それからお菓子を一日何回食べても怒らない人がいいわね」

ノンナ「虫歯になりますよ」

カチューシャ「なら、歯磨きをしてくれる人も追加ね」

みほ「歯磨きまで……」

沙織「なんか女王様って感じですね」

カチューシャ「私と付き合うならそれぐらいのことはやってもらわなきゃね。釣り合わないわ」

華「歯磨きをしてもらうのは、割と怖いような気もしますが」

麻子「……カチューシャさん、初デートはどこに行きたい?」

カチューシャ「遊園地に決まってるでしょ」

麻子「そのあとは?」

カチューシャ「そのあとって?」

麻子「遊園地でデートしたあとだ」

カチューシャ「夕方には帰るけど?」

麻子「……ん?」

カチューシャ「え?」

優花里「あの、カチューシャ殿の恋愛観って、武部殿やダージリン殿のそれとは違うのではないでしょうか?」

みほ「私もそう思う……」

華「そもそも夕方に帰るのがカチューシャさんの中では常識ということでしょうか」

沙織「あのぉ、むしろデートって夜がメインのような……」

カチューシャ「夜になにするの? 遊園地はナイトショーもあるけど、朝から行くなら夕方には飽きちゃってるでしょ」

沙織「いや、ディナーとかは」

カチューシャ「夜ご飯は家に帰ってから食べるけど」

ダージリン「恋人とは食べないの?」

カチューシャ「そんなに一緒に居なきゃダメなの?」

みほ「まぁ、恋人だったら……」

カチューシャ「むぅ……。そういうものなのね。なら、夜ご飯は付き合ってあげてもいいわ。勿論、男のおごりで」

杏「そのあとはぁ?」

カチューシャ「帰るでしょ。ご飯食べたら7時よ?」

ノンナ「2時間後には就寝ですからね」

杏「つまり、一緒におとま――」

ノンナ「口は災いの元、といいます」

杏「みたいだね。もう言うのはやめとく」

ノンナ「賢明です」

カチューシャ「なによ、なにするのよ」

みほ「ええと、その……」

優花里「朝まで戦車について語りあったりとか」

カチューシャ「戦車は好きだけど、朝までは多分起きてられないわね」

沙織「ダージリンさん、カチューシャさんの話って参考になるんですか?」

ダージリン「ならないでしょうね」

沙織「やっぱり……」

ダージリン「年上の男性と遊んだという話をよく聞いていた所為で、勘違いしていたみたいね」

ダージリン「――カチューシャ。貴方はどうやら恋愛なんてしてきていないようね。恋愛マスターという自称は今すぐ取り消しなさい」

カチューシャ「何を言ってるの、ダージリン。虜にした男の数で、私の右に出る者はいないって貴方も認めてくれたじゃない」

ダージリン「悪女として相手の恋心を弄ぶのなら、それも一つの恋愛でしょう。けれど、カチューシャは違う」

ダージリン「カチューシャはただ相手と心行くまで遊んでいるだけ。それも夕方の五時まで。到底恋愛とは言えない、児戯そのものよ」ズズッ

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