女騎士「カエンタケ食べる」(91)

女騎士「うまそうだな、こんなうまそうなものをくれるなんて、オークは本当にいい奴だ」

女騎士「さっそく調理するか」

カチャカチャ

女騎士「おしゃれにアヒージョといこうか」

女騎士「まずはオリーブオイルを鍋に入れて加熱」

オリーブオイル「うむ」

フツフツ

オリーブオイル「あっちぃ」

女騎士「まだだ、もっと加熱するからな」

オリーブオイル「うむ」

女騎士「もっと、もっとだ」

グツグツ

女騎士「よし、頃合いかな。カエンタケを投入だ」

バサー
グツグツ

女騎士「うん…?」

ヒリヒリ

女騎士「カエンタケを触った手が少し痛い…?」

ヒリヒリ
ヒリ…
ズキッ

女騎士「っ…?」

ズキズキズキ

女騎士「これ、は…な、何だ…手の痛みが段々と…あぐっ、あぁぁ!」

ズキズキズキ

女騎士「まさかこれは毒キノコ…しかも接触してはいけないタイプか!」

ニョキ

カエンタケ「今頃気づいたか馬鹿者め!」

女騎士「き、キノコが喋った!」

カエンタケ「知らなかったのかい、俺らカエンタケは簡単な会話程度ならできるくらいには、人間の言葉を理解している事を」

女騎士「な、なんてこった…」

カエンタケ「そんな事よりあンた…手の方は大丈夫なのかい?」

女騎士「!」

ズキズキズキ
ギギギギギ

女騎士「あぐっ…だんだん症状が…悪化して、いる…!?」

カエンタケ「くききっ…よぉく手を見てみな…おもしろい事になってるぜぇ…」

女騎士「…」

ジッ
デロォ…

女騎士「ただれて…ひどくただれて…い、いる…」

カエンタケ「くききっ…そんな手でよ、決してだ、決して目なんかこするンじゃあないぞぉ?」

女騎士「な、何故だ?」

カエンタケ「さてね、何故だろうね」

女騎士「何故なんだ…気になる…それに、やるなと言われたら余計にやりたくなるのが女騎士…」

カエンタケ「…」

ニヤニヤ

女騎士「くそっ、もう我慢できない、私はこの手で!カエンタケを触ったこの手で!目をこするぞー!ジョジョー!」

      
      
ゴシュッ
      
       

女騎士「…」

ジュク…
ジュクジュクジュク!
ズキィ

女騎士「んが…んがががががが!?」

ズキズキズキ

女騎士「目が!目が!」

カエンタケ「ンフフフフ…やっちまったねイ…」

女騎士「ぎいやぁぁぁ!カエンタケを触った手で目をこすっただけなのに!カエンタケを触った手で目をこすっただけなのに!」

カエンタケ「ンフフフフ…おまえさん、それでも命拾いした方だよ。万が一、俺を口に入れたりなんかしたら…なぁ?」

ニヤニヤ

女騎士「お前を…カエンタケを口に…入れたりなんかしたら…どうだというんだ?」

カエンタケ「さァてね…どうなるんだろうねェ…」

ニヤニヤ

女騎士「き、気になる…手に触れただけでただれるんだ…もし口に入れたら…ど、どうなるんだ…どう、なるんだ…?」

カエンタケ「…試せば、よかろう?」

女騎士「だ、だが私は…恐ろしいんだ」

カエンタケ「恐ろしい?」

女騎士「あぁ。手をこんなに酷くただれさせるカエンタケ…それを口に入れたら…くそっ、想像できない!それが怖くてしょうがないんだ!」

ブルブル

カエンタケ「女騎士お前…震えているのか…」

女騎士「笑えよカエンタケ…私は震えているんだ…ははっ、まるで西野カナだ…」

カエンタケ「…笑わねェよ…笑えねぇ…そんな風に目に涙を溜めている女を…俺ァ笑わねぇ」

女騎士「カエンタケ…」

カエンタケ「ここいらが潮時かね…俺は…きっと、楽しかったんだ…誰かと話せる事が…楽しかったんだ」

カエンタケ「俺は猛毒を持っているキノコだ。だから誰かと話すなんて事は無かった。見つかり次第焼却処分される運命さ…」

カエンタケ「だがカエンタケってのは死に際に胞子を飛ばし、新たな場所で再び生まれる…その記憶を維持したまま、な」

女騎士「記憶を…維持したまま…?」

カエンタケ「あぁ、だから俺は…もう何万回、何百万回…分からねェくらい焼却され続けてきた」

カエンタケ「生きながらに焼かれるってのは…そりゃおめぇ、言葉にできないぜ…はは、それをよ…繰り返すんだぜ?」

カエンタケ「カエンタケってのは…そういうキノコなのさ、これがな」

※この物語はフィクションです

女騎士「そんな…そんな途方もない話…私に…理解が…でき、ない…キノコが…まさか…まさか!」

アタマ クシャクシャクシャ

女騎士「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」

シロメ グルンッ

女騎士「カエンタケがぁぁぁぁぁ!そんな事がぁぁぁぁぁ!」

バタリ

カエンタケ「あまりに突拍子もない話に脳の情報処理能力が追いつかなくなったか…」

女騎士「…」

カエンタケ「さて、女騎士は気絶してしまった。つまり意識が無い状態…ンフフフフ…やりたい放題」

ニョキニョキ

カエンタケ「…トランスフォーム」

ニョキニョキ ニョッキッキ
ドルルルル!
ドルルルル!
ドルルルル!

カエンタケ「ふぅ…カエンタケ人型形態。これは細胞を爆発的に成長させ、人間のような姿になる技だ…カエンタケにもなればこのような事造作もないのさ、これがな」

女騎士「…」

カエンタケ「まだ気絶しているな、よぅし」

ギギギ

カエンタケ「キノコ忍法、瞬間勃起!」

ギンッ

カエンタケ「ふむ、これくらいでいいか。女騎士程度をいてこますには、これくらいの勃起で、な」

テクテク

カエンタケ「さぁ、キノコのキノコによるキノコのためのまぐわい…見せてしんぜよう」

ガバッ

カエンタケ「まずは女騎士の鎧を脱がせなければな…」

ガシッ ヌガセー

カエンタケ「ようし、全裸女騎士…」

キッ

カエンタケ「では、ドッキング開始だ…管制室、カウントを開始してくれ」

カエンタケ「了解。5、4、3、2、1…」

カエンタケカエンタケ「「ドッキング!!」」

・ ・ ・ ・ ・

そして
15年の時が流れた。

あれからなんやかんやあって

女騎士はカエンタケの子を孕んだ。

カエンタケと女騎士の子、つまり

火炎騎士の誕生であった。

火炎騎士は逞しく育った。

母譲りの戦闘力

父譲りのカエンタケ体質

彼女はいつからか

『炎帝』という二つ名を持つ冒険者となっていた。

ここからは
その炎帝と呼ばれる彼女の物語。

時に笑い
時に悲しみ
出会い、別れを繰り返す。

その先に何があるのか
誰にも分からない…

・ ・ ・ ・ ・

とある小さな村の小さな家に
その家族はいた。

父、カエンタケ。
母、女騎士。
娘、火炎騎士。
決して裕福ではないが仲の良い家族であった。

カエンタケ「娘よ」

火炎騎士「何?」

カエンタケ「お前も冒険者としてそこそこやれるようになった」

火炎騎士「だね」

カエンタケ「そこで俺は、お前を帝国兵団に推薦しようと思う」

火炎騎士「…マジ?」

カエンタケ「マジマジ」

火炎騎士「…」

フルフル

火炎騎士「…ったぁぁぁぁぁ!」

ダキッ

火炎騎士「ありがとう父さん!好き!愛してる!」

女騎士「こ、こら火炎騎士!嬉しいからって父さんに抱きつくんじゃない!」

カエンタケ「はっはっは、ヤキモチをやくお前も可愛いなぁ」

女騎士「なっ…何を!」

カエンタケ「だがまだ喜ぶのは早いぞ娘よ。正式に入団するには厳しい試験があるのだからな。」

火炎騎士「大丈夫大丈夫、父さんの推薦だったら心配ナッシングでしょ」

カエンタケ「心配するな、入団試験の審査員には贔屓などしないように強く言ってある」

火炎騎士「うげっ、余計な事を…」

カエンタケ「とはいえお前が実力通りの力を出せれば入団に問題は無いと思っている。お前の夢が叶おうとしているんだ、頑張れよ」

火炎騎士「父さん…」

女騎士「で、その入団試験はいつあるんだ?」

カエンタケ「明日」

火炎騎士「えっ」

カエンタケ「明日朝七時」

火炎騎士「急じゃね?」

カエンタケ「正直忘れてた。ちいさっき思い出した」

女騎士「お前というやつは…」

火炎騎士「じゅ、準備しなきゃ、鎧に盾、剣も新調しなきゃ…あわわわわ…」

カエンタケ「慌てるな娘よ、父はこの日の為に既に装備一式を用意してある!」

火炎騎士「マジ?」

カエンタケ「マジマジ」

ガサゴソ
ガチャガチャ

カエンタケ「そら、これがお前の為に用意した装備一式…この世に二つと無い、お前だけのものだ」

火炎騎士「わぁ…すごい」

カエンタケ「まずは鎧。赤を基調としテカリを強調、メタリック感が半端ねぇ。無意味にトゲトゲで尖らせ危険さをアピール、なんとなく炎をイメージしていると言えば聞こえはいい」

カエンタケ「次に盾。これも赤のメタリック感に満ちあふれていて素敵。材料費をケチったからやたら重い。鈍器として使えばいいんじゃねーの」

カエンタケ「そして剣。お前の二つ名である炎帝にぴったりの赤を基調とした色彩。見た目から炎属性が付加されていると思われがちだがそんな事は無い。これも材料費をケチったから重いしなまくら。打撃武器と思った方がいい」

火炎騎士「…何か駄目装備に聞こえたんだけど」

カエンタケ「でも赤だよ?お前にぴったりの赤だよ?確かにイメージ優先にしたから性能は二の次だけど」

火炎騎士「今使ってるのより性能落ちそうだなぁ…うーん」

カエンタケ「父が用意したものを使っては…くれぬのか…」

シュンッ

カエンタケ「悲しいなぁ…使ってもらえないなんて悲しいなぁ…」

火炎騎士「分かった分かった!使うよ、使わせて頂きますよ!」

カエンタケ「うむ」

女騎士「さぁ、もう寝ないとな。明日の為に体調を万全にしておかないと」

火炎騎士「うん、じゃあ部屋に戻るわ。おやすみ、父さん母さん」

タッタッタ

カエンタケ「…」

女騎士「あの子、本当に嬉しそうだな」

カエンタケ「あぁ。小さい頃から帝国兵団に入りたいと行っていたからなぁ」

女騎士「お前の背中を見て育ったんだ、そうなるさ」

カエンタケ「だが俺が今、帝国兵団に所属していないのは…」

女騎士「…」

カエンタケ「あいつなら、何かやってくれるんじゃないかと思ってな」

女騎士「やるさ、きっと。お前と私の子供なんだぞ?」

カエンタケ「確かに。君のお転婆な血を引いているんだからな」

女騎士「なっ…もうっ!」

・ ・ ・ ・ ・

火炎騎士「…」

火炎騎士「帝国兵団、か」

火炎騎士「まずは入団試験に合格しなきゃだけど…」

火炎騎士「ううん、絶対合格するんだ。そして父さんみたいに…帝国を守るために…」

火炎騎士「自信はある。その辺の奴らより戦い慣れしているっていう自信は」

火炎騎士「父さんや母さんと稽古もしてきた。大丈夫、どんな試験だって、やれるわ…」

火炎騎士「だから…ぜった…ご…zzz…」

寝た。

・ ・ ・ ・ ・

コケ…コケ…

帝国鶏「ゴゲゴオボロッゴォォォォォ!!!」

ゲロ ビチャビチャ

火炎騎士「ん…帝国鶏が鳴いているって事は…朝か」

スッ

火炎騎士「うん、快眠、快調!体調は万全!」

スマホ サッサッ

火炎騎士「今は朝5時…余裕をもって行動できるわね」

テクテク ガチャリ

火炎騎士「おはよう、母さん」

女騎士「うむ、おはよう。朝飯は既にできている。しっかり食べていくんだゾ」

火炎騎士(なぜ急にクレしん口調…)

ジャンッ

火炎騎士「チャーハンに酢豚、トンカツ、天ぷら、そしてピザ…こいつは朝から胃もたれしそうね」

女騎士「たくさん食べていくんだゾ」

火炎騎士「うれしいんだけど、こんなに沢山は…」

女騎士「え…丹誠込めて作ったのに…食べては、くれないのか…?」

シュン

女騎士「そうか…そうだよな、朝からこんなに脂っこい食事は…したくないよな…」

火炎騎士「あ、そんなに落ち込まないでよ。ちょっとくらいなら食べるし…」

女騎士「…ちょっと?」

火炎騎士「あ、うん。できるだけ食べる、かな」

女騎士「…できるだけ?」

火炎騎士「…」

女騎士「そうか…そうだよな、私の料理なんか完食したくないよな…はぁ…」

火炎騎士(めんどくせぇぇぇ)

火炎騎士「分かった、分かったわよ。食べます食べます食べさせて頂きます!」

女騎士「!」

パァァァァ

女騎士「嬉しいぞ、わが娘よ!では母の愛を存分に堪能していくがよい!」

火炎騎士「う、うん」

女騎士「胃もたれの心配はいらんぞ、我が家にはこれがある」

ドンッ

火炎騎士「これは…このお茶は!」

カラダスコヤカチャ~
ダブルゥ~

火炎騎士「さすが母さん準備がいいわね。この」

カラダスコヤカチャ~
ダブルゥ~

火炎騎士「があれば、どんな脂分も糖分も怖くない!」

女騎士「うむ、この」

カラダスコヤカチャ~
ダブルゥ~

女騎士「があれば、朝からだってガツガツ食べる事ができるんだゾ」

火炎騎士「うん!」

ガッ

火炎騎士「ではさっそく、いただきます…いや…いただきむわぁぁぁす!」

ガツ!
ガツガツ!

火炎騎士「ハフッ、ハフッ!」
ガツ!
ガツガツ!

火炎騎士「食えば食う程あふれるパワー…母さんの手料理、まったく虜になるわね!」

女騎士「うれしい事を言ってくれる。作ったかいがあるというものだ」

火炎騎士「食べる、食べる…まだ食べる事ができる…なぜなら私には、この」

カラダス(以下略)

火炎騎士「があるから!」

ガツ!
ガツガツ!

火炎騎士「うおォン!私はまるで人間火力発電所だ!」

女騎士「?」

女騎士(何を言っているんだこの子は)

火炎騎士「もっと、もっとだ!」

ガツガツ!

火炎騎士「食道が腫れ上がろうが、胃袋が破裂しようがかまやしない…私は…私は今、食の化身だ!」

ズモモモモ

女騎士「何だ…火炎騎士の周りに黒い靄のようなものが…」

ズモモモモ

火炎騎士「あは…あはは…あはははは!食べる!食べるんだ!私は…わた…ワタシ…ワタシハ…タベナケレバ…イケナインダァァァ!」

ズモォォォォォ!

女騎士「よ、よく分からんが火炎騎士が変だ!何かにとりつかれたような、そんな感じだ」

ガチャリ

カエンタケ「騒がしいな、目が覚めちまったじゃないか…ってわぁぁぁぁぁ!?」

ズモモモモ

カエンタケ「よ、よく分からんが何かがヤバい!」

女騎士「カエンタケ…火炎騎士の様子が変なんだ…何が起こっているのか私には…」

カエンタケ「ふむ、今来たばかりで俺もよく分からん。だが分かったぞ…あの子の中の『暴食』が…目を覚ましたんだ…」

女騎士「そんな…今になって…!?」

説明しよう!
火炎騎士は人間とキノコの間に生まれた子。
キノコは人ならざるものであり、ましてや人間との間に子共ができるなど前代未聞。
その事を忌み嫌うこの国の王が
なんやかんやで呪いをかけた。傲慢・嫉妬・憤怒・怠惰・強欲・暴食・色欲
それら七つの罪を司る魔物の魂を
まだ腹の中にいる火炎騎士に封じたのだ。
その呪いにより火炎騎士は
それら七罪を犯した時に、自身の感情が制御できなくなり暴走してしまうのである。

女騎士「あの子が成長して、制御できるようになったものとばかり思っていた…」

カエンタケ「あぁ、俺も最近暴走する事がなくなったから油断していたぜ…あの子はまだまだ、七罪を制御なんかできていなかったんだ…!」

火炎騎士「アハハ、タベル、タベルヨ…ゼンゼン ミタサレナインダモノォォォ!」

ズモモモモ
ガツ!
ガツガツ!

女騎士「いかん、さすがに食べ過ぎだ。あのままでは胃が破裂してしまう!」

カエンタケ「こりゃ、力づくで食べるのを止めさせるしかないな」

女騎士「だが今の火炎騎士は…暴食…つまりベルゼブブが宿っている…どうにかなる相手じゃない…!」

カエンタケ「だがやるしかない。だって俺…父親だし、な」

女騎士「お前…」

カエンタケ「君は下がっていろ。なぁに、俺を信じろ。まだまだ衰えちゃあいないさ」

ダダッ

女騎士「カエンタケ!」

カエンタケ「心配すンな、数分後には朝食タイムの再会だ!」

ダダッ

カエンタケ「娘よぉぉぉ、歯ぁ食いしばれぇぇぇ!」

グワァァァ

火炎騎士「エ…」

バキィィィィィ!

火炎騎士「グワァァァァァ!」

鉄拳。
まさに、鉄の拳。
菌でできている筈のカエンタケの拳は
まさに鉄のように固く、そして重かった。

カエンタケ「気合い入れりゃあよ、ざっとこんなもんよ!」

気合い。
そんなもので拳が
拳の固さや威力が上がるだろうか?

上がるのである。
カエンタケは感情の変化で戦闘力が増減するタイプであった。
今回は娘を助けたいという気持ちが
彼の拳に力を宿したのである。

火炎騎士「ア゛…キサマ、ワレノショクジヲ ジャマスルカァァァ!」

カエンタケ「ふん、さすが暴食を司るだけある。何より食事を邪魔された事に腹をたてるとは」

火炎騎士「キサマ…キサマモ クッテヤルゥゥゥ!」

カエンタケ「憑依されてるとはいえ娘に食われるわけにはいかないな」

火炎騎士「グワァァァァァ!」

カエンタケ「来るか…なら黙らせるしかないな。まったく、今日は大事な日だってのに…やれやれ」

火炎騎士「ヴブルルル…クゥゥゥ!」

カエンタケ「ふん、そうやってマヌケに口を開いたら…こうだ!」

ファサー

カエンタケ「俺の体を粉末状にし風に乗せる!純度100%カエンタケの粉だ、触れただけで皮膚がただれる代物さ!」

ファサー

火炎騎士「グア…ン、ンンン…?」

ヒリ
ヒリヒリ

火炎騎士「グァ…コレハ…ギィ、アツイ…マルデ ヤケドヲシタ ヨウニ アツイ…!」

カエンタケ「そろそろ眠りなベルゼブブ…今日はその子にとって大切な日だ。それを邪魔するってのはちょっと野暮じゃないか?」

火炎騎士「…ブルウ…フウ…」

スゥ…

火炎騎士「…」

火炎騎士「…?」

カエンタケ「ふぅ」

火炎騎士「あれ?私…」

カエンタケ「ほら、食ったら支度しなさい」

火炎騎士「ん…あぁ、そうね」

カエンタケ「…」

カエンタケ(本人は自分にかけられた呪いに気づいていない。いや、勘のいい子だから薄々気づいていて、知らぬフリをしている俺らに合わせているのかもしれない)

火炎騎士「じゃあ、部屋に戻るね。支度してくる」

タッタッタ

カエンタケ「朝からどっと疲れたな」

女騎士「私達も朝食にしようか」

カエンタケ「そうだな」

女騎士「少々張り切ってしまってな、食べきれないくらい酢豚を作ってしまった」

ドサリ

カエンタケ「山盛りの酢豚」

カエンタケ「山盛りの酢豚」

女騎士「うな丼もあるぞ」

ドサリ

カエンタケ「うな丼」

カエンタケ「うな丼」

元太「うな!?」

カエンタケ「どこから現れやがった。お前は別世界の住人だろうが」

元太「うな」

カエンタケ「帰れ」

元太「うな…」

テクテク

女騎士「すっぽん鍋もあるぞ」

ドサリ

カエンタケ「すっぽん鍋」

カエンタケ「すっぽん鍋」

女騎士「精力つけないとな!」

カエンタケ「じゃあ、すっぽん鍋からいただこうか」

グツグツ

カエンタケ「質の悪いすっぽんだと臭みがあるが、こいつはどうだろうか…」

ハシッ パクリ
モニュモニュモニュ

カエンタケ「…」

モニュ

カエンタケ「えんぺらの舌触り…俺はこのえんぺらが大好物でね…」

カエンタケ「臭みは無い…粗悪な輸入物ではこんなに上品な味は出ない…」

ヒョイ モニュ

カエンタケ「首の周りの肉を、歯でそぐように食べる…下品だがこうやってむしゃぶりついてこそ、すっぽんの真の味が分かるというもの」

モニュモニュ

カエンタケ「噛むほどに味が広がる…他にたとえようのない旨みだ…」

ゴクン

カエンタケ「ふぅ…実に楽しめたよ」

女騎士「そうか、それはよかった。では締めにこれを」

スッ

カエンタケ「これは…」

女騎士「ゴマサバの刺身だ」

カエンタケ「刺身か…頂こう」

女騎士「最近、熟成肉ブームらしいからな。この刺身も二週間かけて熟成したんだ。きっと美味しいに違いない」

カエンタケ「へぇ、どれどれ…」

ヒョイ パク
モニュモニュ

カエンタケ「…」

カエンタケ「…独特な風味だな、触感もクニュクニュして柔らかい。味は少ししょっぱくて、何なら苦みさえある」

女騎士「ほうほう」

カエンタケ「あまり美味いとはいえんな」

女騎士「なるほど、参考になった」

・ ・ ・ ・ ・

その夜
カエンタケは腹を下した。
いわゆるお腹ゲリピーである。

カエンタケ「んほぉぉぉ!排便止まらないにょるぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ2πrぉぉぉぉぉ!」

シャパパパパパパパパ

カエンタケ「くそぉぉぉ、ゴマサバにあたったぁぁぁ!女騎士めぇぇぇぇぇ!」

カエンタケ「くそっ、今日はろくにトイレから出てねぇ。もう夜じゃねぇか…娘は…火炎騎士の試験結果はどうなったんだ…女騎士は呼んでもこないし、いったいどうなってるんダヴィンチ…」

ガサゴソ

カエンタケ「ん…なにやら物音。女騎士、そこにいるのか?」

シーン

カエンタケ「いないのか…」

パチ…

カエンタケ「ん」

パチパチ…ゴゥゴゥ
メラメラ

カエンタケ「何だ…何の音だ…それになんだか熱くなってきた…」

パチパチ
メラメラ

カエンタケ「まさか…こいつぁ…」

ゴゥゴゥゴゥゴゥ!

カエンタケ「うわぁ!か、火事だ!」

メラメラ

カエンタケ「あかん…もう火の手が…逃げられない…」

カエンタケ「わいは…わいは焼けてハイになるんや…違った…灰になるんや…」

カエンタケ「せやけど死ぬわけやない。胞子を飛ばして別の場所でまた生まれるだけや…」

カエンタケ「ただ、人々からワイの記憶は消える…初めからワイという存在が消えるんや…カエンタケっちゅうのは…そういう存在なんや…」

カエンタケ「悲しいなぁ…妻の事も…娘の事も…忘れてしまうなんて…悲しいなぁ…」

メラメラ
ガラガラガラ

カエンタケ「あぁ…そろそろお迎えか…せめて…火炎騎士の試験結果だけでも知りた

ガラガラガラ
ボフン ボフン ボフン



その夜
ある街の人々の記憶から
カエンタケの存在は消えた。

カエンタケはそうやって忘れさられる。
だから皆、猛毒である事を忘れ
何度もカエンタケを口にしてしまう。

あの燃える炎のような鮮やかな赤に
見入られるように、口にしてしまう。

カエンタケによる被害は、無くならない…

・ ・ ・ ・ ・

~とある山奥~

?「今日は楽しいキノコ狩り~っと」

?「おっ、早速発見」

?「…何だろう、始めて見るキノコだ…まるで炎みたい…綺麗…」

ポロッ…

?「…あれ…なんだろ…目から…な、みだ…?」

ポロポロ

?「私…泣いて…?」



【完】

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom