モバP「アイドルと夏祭り」 (100)


ナターリア編




ナターリア「オオ!夏祭りって人いっぱいなんだナ!」

モバP「花火大会が有名だしそれが目的って人が多いんじゃないか?」

ナターリア「そうだったのカ!ナターリア、花火楽しみだヨー♪」

モバP「ここの花火は期待してていいぞ。前に見たときはかなり派手だったから」

ナターリア「ウン!花火始まるまで一緒に見てまわろうネ、プロデューサー!」タタタッ

モバP「あんまり走って迷子になるなよー」

ナターリア「分かってるヨー♪」

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ナターリア「ア、バナナだ!チョコ……バナナ?美味しそうだナー♪」

モバP「あれ?食べたこと無いのか。ナターリアはきっと好きだと思うぞ」

ナターリア「本当カ!おじさん、チョコバナナ一つくださいナ!」


ナターリア「ウーン!美味しいネ!事務所でも食べてみたいヨー」

モバP「もしかしたら作れるかもな。かなことかに聞いてみようか」

ナターリア「そうする!楽しみだナー♪」

ナターリア「今度はアッチ行こうヨ!」


ナターリア「プロデューサー!あれ、ナンダ?」

モバP「ん?綿あめだよ。食べてみるか?」

ナターリア「何で出来てるんダ?買ってくるヨ♪」


ナターリア「フワフワしてるナ!甘くてすぐ溶けちゃうヨ!」

モバP「あー、俺の分も買ってくれば良かったな」

ナターリア「プロデューサーも食べたかったのカ?」

ナターリア「ナターリアの分けるナ!はい、アーン♪」


モバP「人増えてきたしそろそろ移動しようか」

ナターリア「ウン……あ、太鼓の音!北海道で叩いたの楽しかったヨ♪」

モバP「踊りも始まってるのか。いよいよお祭りって雰囲気だな」

ナターリア「ちょっとやってみたいナ……」ウズウズ

モバP「いやいや。流石に目立っちゃうからあそこに飛びいりは……って!」

ナターリア「ナターリアも一緒に踊るヨ!!」

モバP「遅かったか……」


ナターリア「ミンナ!アリガトー♪お祭り楽しんで欲しいナー!」

モバP「お疲れ様。ただ、ゲリラライブみたいなのは勘弁してくれって」

ナターリア「ゴメンネ、プロデューサー。ナターリアのテンション上がっちゃったヨ」

モバP「もう有名人なんだから次からは気をつけてな?」

ナターリア「分かったヨ!気をつけるネ!」


モバP「ナターリア、そろそろ花火始まるからちょっとついてきて」

ナターリア「ウン。ドコカ行くのカ?」

モバP「ん、花火を見るのに静かでいい場所があるんだよ。少し離れてるけどな」

ナターリア「そうなのカ!プロデューサーよく知ってるナー」

モバP「何回か来てるからな」

ナターリア「ムゥ、他の女の子とデートカ?」

モバP「いや、スカウト目的だったよ」

ナターリア「……ゴメンネ。代わりにナターリアが一緒にデートするからナ♪」


ヒュー ドン!ドォン!

ナターリア「オオー、花火本当にキレイだネ」

モバP「だよなー。来て良かったな」

ナターリア「そうだナ!あ、えーっと……タマミー?」

モバP「たまやー、かぎやーか?」

ナターリア「それダ!花火の掛け声だよナ?」

モバP「よく知ってるな。誰かに教えて貰ったのか?」

ナターリア「ウン!セイラが教えてくれたヨ!」

ナターリア「ターマヤー!」


モバP「今ので終わりだったのか。それじゃあ帰ろうか、ナターリア」

モバP「……ナターリア?」

ナターリア「ウン?わかったヨ……」

モバP「眠いのか?おぶっていくから寝てもいいぞ」

ナターリア「……チョットだけ、ネ……」クゥ…スゥ…

モバP「やっぱりはしゃいでたから疲れてたのかな。よい、しょっと」

ナターリア「……マタ来ようネ……プロデューサー……」


ナターリア編 おわり

という感じの進行で、書き溜めがあるので今晩中に投下していこうと思います。


肇編




ちひろ「うーん」

肇「どうしたんですか?」

ちひろ「さっき事務所で綺麗な蝶々が飛んでいたんですけど」

肇「蝶々……ですか?」

ちひろ「うん。黄色の身体に綺麗な青色の羽根でね」

肇「ずいぶんと珍しい色合いをしていますね」

ちひろ「文香ちゃんなら種類が分かるかしら……」

肇「ええ、きっと」

ちひろ「ところで肇ちゃんはPさんと?」

肇「はい。お祭りに出かけていきます」

ちひろ「気をつけて下さいね」

肇「はい!行ってきます」


夜・神社

肇「お待たせして申し訳ありません」

モバP「いや……」

肇「どうしましたか?」

モバP「まさか浴衣を着て来るとは思わなくて」

肇「母が実家から送ってくれたんです」

モバP「綺麗な青だな。似合ってるよ」

肇「ありがとうございます」

モバP「着付けは一人でできたのか?」

肇「ええ、昔から作務衣や着物は着慣れていましたから」

モバP「そういえばそうだったな」

肇「その代わりにオシャレな格好というのがなかなかできないでいますが」

モバP「それはゆっくり勉強すればいいさ」

肇「そう……ですね!」


肇「やっぱりお祭りは賑やかで良いですね」

モバP「肇は地元の祭りとかは行ってたのか?」

肇「そうですね。小さい頃はよく家族に連れられて来ていました」

モバP「あのおじいさんも?」

肇「意外でしたか?」

モバP「あんまりそういうイメージが無かったから」

肇「私が小さい頃、おばあちゃんがいつも笑いながら言ってましたよ」

肇『おじいさんは浴衣の事は褒めてくれるけど私の事は褒めてくれなかったって』

モバP「あ、ちょっとなんか想像できちゃうかも」

肇「頑固なんですから。困ったおじいちゃんです」


肇「あれ?」

モバP「ん?どうした?」

肇(夜なのに蝶々が……)

肇(ちひろさんが言っていたのと同じ……深い青の羽根)

肇「Pさん見てください! あんなところに……」

肇「あれ……?Pさん?」


肇(Pさんどころか……さっきまで賑やかだった声がなにも聞こえない)



「……」




肇「……え?」


モバP(まずいな……はぐれてしまった)

モバP「いくら肇がしっかりしてるからって……おや?」




肇「うん、大丈夫だって」

「……」

肇「……ありがとう。約束するから」


モバP「肇っ!」

肇「Pさん!?あの、すみません勝手にはぐれてしまって」

モバP「まぁ、無事に合流できたから良いんだけど、一体誰と話してたんだ?」

肇「はい……ってあれ?」

モバP「どうした?」

肇「ええと……」

モバP「……?」

肇「信じてもらえるかどうか分かりませんけど」


モバP「おばあちゃん? 肇のおばあちゃんって確か」

肇「今はもう亡くなっています」

モバP「だよな……」

肇「実はこの浴衣も、そのおばあちゃんの形見なんです」

モバP「そうだったのか……それでおばあちゃんとはどんな話を?」

肇「信じてくれるんですか?」

モバP「まぁ、な。肇は嘘をつかないって知ってるし」

肇「ありがとうございます……その、浴衣が似合うって褒めてくれました」

肇「どこにいても見守っているよ。とも」

モバP「もう行っちゃたのか?」

肇「ええ、きっとおじいちゃんに会いに行ったと思います」

モバP「……そうか」


肇「あ、花火」

モバP「え? もうそんな時間?」

肇「はい……あの、プロデューサーさん、一つお願いがあるのですけど」

モバP「なんだ?」

肇「手を繋いでくれませんか? ……あっ、今度はちゃんとはぐれないように、ですから……ね」

モバP「……ああ」ギュッ

肇「ふふっ……あったかい」


モバP「……綺麗だな」

肇「え?」

モバP「あ、いや。花火がね」

肇「……そうでしたか」

モバP「……いや、あの。肇も、その……」

肇「ふふっ、ありがとうございます。ちゃんと伝わっていますよ」


肇「ただいま戻りました」

ちひろ「……おかえりなさい」

モバP「どうしたんですか?顔真っ青じゃないですか」

ちひろ「さっきの蝶の事を文香ちゃんに聞いたらね」

ちひろ「蝶は故人の魂が形を変えて会いにきたものって……」

モバP「……なるほど」

ちひろ「つまりお化けじゃないですか!怖いじゃないですか!」

肇「ちひろさん。私は信じますよ?その話」

ちひろ「は、肇ちゃんまで……」

モバP(本気で怯えてるよ……)

モバP「ちひろさんの事はそっとしておいてあげよう」

肇「え?あ、はい」


モバP「やっぱり寂しいか?」

肇「いえ、故郷のことも家族のことも、いつもこの胸にありますから」

モバP「……そうか、変な質問をしてすまなかった」

肇「いえ、プロデューサーさん!私、叶えたいことがもう一つ増えてしまいました」

モバP「叶えたいこと?」

肇「はい。歌を……私の歌声をもっともっと遠くに響かせていきたいです。おばあちゃんにも届くように」

モバP「……肇」

肇「はい」

モバP「そうだな。一緒に頑張ろう」

肇「……はい!」



「……来たのか」

「まぁ、一杯でも……とはいってもそっちは砂糖水だが」

「そうか、あの浴衣を肇が」

「……きっと綺麗だろう」

「いや、あの時は言えなかったが……確かに花火が綺麗とごまかしてはいたが」


「……すまない」

「肇と約束をしてしまったから、まだそちらへは行けないな」

「ああ、ナスの牛は用意してある。羽根休みでもしていてくれ」

「……」

「手土産という程のものでは無いが」

「……次にちゃんと会えたら。今まで言えなかった分。言葉にして伝えるさ」

「だから、先に向こうで待っていておくれ」


肇編 おわり

忍編




モバP「忍、レッスンお疲れ」

忍「ありがとう、Pさん」

モバP「どうだ、調子のほうは」

忍「まあまあ、かな。ちょっと動きにキレがない、とか言われちゃったけど」

モバP「そうなのか」

忍「最近、ちょっと伸び悩み中かも。夏バテかな」


モバP「うーん……あ、そうだ」

忍「?」

モバP「今日これから、近くでお祭りがあるんだ。折角だし、ちょっと行ってみないか?」

忍「お祭りかあ……そっか、そういう時期だよね」

モバP「ああ、そりゃ忍は知らないか。まだこっちに来てそんなに経ってないもんな」

忍「お祭り……いいよ、行こうか。気分転換にもなると思うし」

モバP「よし。それじゃ行く準備するから、ちょっと待っててくれ」


忍「わあ……屋台がいっぱいだね」

モバP「いいよなー、こういう騒がしい感じ」

忍「とりあえず、ちょっと腹ごしらえしたいかな」

モバP「そうだな……お、焼きそばがあるぞ」

忍「いいね。アタシも食べたい」

モバP「おし。お兄さん、2つくださーい」


「あいよー、800円でーす」

モバP「はい、千円」

「はいよ。おつり、200円ね」

忍「あ、お金……」

モバP「いいよいいよ、払っとく」

忍「そんな、悪いよ」

モバP「気にすんなって。こういう時くらい、大人の威厳を見せとかないとな」

忍「……それじゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな。ご馳走さまです」

モバP「おう。はい、焼きそば」

忍「ありがとう。それじゃ、向こうで座って食べよっか」


モバP「さて、腹ごしらえもしたところで、いろいろ見て回るか」

忍「そうだね……あっ、射的があるよ、Pさん」

モバP「射的かあ。折角だし、勝負でもするか。どっちが良いの取れるか」

忍「よーし。負けないよー」


モバP「ギリギリまで的に近づけて……うりゃ!」パコン

「大当たりー。はい、どうぞ」

モバP「っしゃ!駄菓子ゲット!」

忍「駄菓子程度じゃまだまだ甘いね、Pさん」

モバP「なんだと?」

忍「アタシはあのぬいぐるみを狙うよ」

モバP「おっ、大きく出たな。そこそこ大きさあるぞ?」

忍「まあ見ててよ」


忍「よーく狙って……えい!」ヒューン

モバP「……外れたけど」

忍「……い、今のは練習!練習だから!」

モバP「全部で3発しかないけど……」

忍「まだ2発あるし!」



モバP「で、結局ダメだったな」

忍「こ、こんなはずじゃ……もう1回!もう1回やらせて!」

モバP「えっ、まだやるのか」

忍「やるよ!あれ取るまでやるから!」

モバP「おいおい、勘弁してくれよ……」


忍「なんとか取れてよかったよ」

モバP「5回コンティニューしたけどな」

忍「うーん、もうちょっとすぐ取れる予定だったんだけど……」

モバP「忍あれだな、クレーンゲームとかガチャガチャとか熱中するタイプだろ」

忍「あーうん、お菓子のおまけとか集めるの凝っちゃうタイプなんだ」

モバP「あー、それっぽいな」

忍「……さて、それじゃ改めて、いろいろ見て回ろっか」

モバP「そうだな」


モバP「いやー、結構満喫したな」

忍「一通り見てまわったかな。楽しかったね……あ」

モバP「?……おっ、りんご飴か」

忍「……」

モバP「食べたいのか?」

忍「あ、えっと」


モバP「すいませーん、1つください」

「あいよー」

モバP「はい、お金。……ほら忍、食べな」

忍「あ、ありがとう……」

モバP「それじゃ、それ食べながらゆっくり帰るか」

忍「……」


モバP「りんご飴……そういえば、忍の実家は青森だっけ」

忍「うん。地元でも毎年お祭りがあってさ」

モバP「ほう」

忍「町のお祭りで、もっと小規模だったけど、ここみたいに屋台も出ててね」

モバP「へえ……」

忍「こうしてりんご飴も売っててさ。初めて見たとき、赤くてキラキラしてて、宝石みたいだなって……」

モバP「……」

忍「すっごい欲しがって……一緒にいた、お母さんにねだって……買って、もらったなって……」

モバP「……忍?」



忍「……りんご飴、見てたら、思い出すなあって……青森にいた時の、いろいろ……」ポタッ

モバP「……」

忍「っ……ごめんっ、なさい……楽しい、お祭りなのに……こんな……」ポタッ、ポタッ

モバP「……」


グイッ ガシッ


忍「……うぅ……Pさぁん」

モバP「そうだよな、寂しいよな。独りで、遠くまで来ちゃったもんな」

忍「……うん……グスッ」


モバP「……アイドル、頑張ろうな。頑張って、売れっ子になって……」

忍「……うん……」

モバP「……いつか、地元でライブしよう。胸を張って、アイドルになりましたって、言えるようになろう」

忍「……ぅん……うん……グスッ」

モバP「だから今は……思いっきり泣いていい。全部吐き出して……また明日から頑張ろう」

忍「Pさん……うぅ……うわあぁぁぁぁぁん」



モバP「……」

モバP(独りで、か……)




モバP「忍、レッスンお疲れ」

忍「ありがとう、Pさん」

モバP「どうだ、調子のほうは」

忍「うん、いい感じ。いい意味で吹っ切れてるって、トレーナーさんも褒めてくれたし」

モバP「そうか。この調子でがんばろうな」

忍「うん」





モバP「……そうだ。今一つ話が来ててな」

忍「?」

モバP「別のプロデューサーから、ユニットを組む相手を探してるって言われてるんだ」

忍「ユニット……」

モバP「相手は、綾瀬穂乃香っていう子なんだが……」


忍編 おわり

風呂入ってきます

夏美編




夏美「おまたせ♪浴衣、どうかしら?」

モバP「似合ってる」

夏美「んー、もう少し具体的に」

夏美「女の子がせっかく気合入れておめかししてるんだから、もっと情熱的な言葉をかけてほしいなあ」

モバP「キスしたい」

夏美「情熱が過ぎる!?」

モバP「注文が多いな」

夏美「Pさんがふざけるからでしょ?具体的に褒めると照れちゃうからって、そんなごまかし方しなくてもいいのに」

モバP「………」

夏美「……あれ? まさか図星だった?」

モバP「………」

モバP「金魚すくいでもしにいくか」

夏美「なるほど~。そっかー、私の浴衣姿がそんなに魅力的だったのね~♪」

夏美「かわいいやつめ♪ このこのっ♪」

モバP「キャラ変わってないか?」

夏美「だってうれしいから」

モバP「そうか」


夏美「いろんなお店があるわね。私、祭りのこういうごった煮感、好きよ」

モバP「俺も、こういう喧騒は嫌いじゃない」

夏美「相変わらずキザな言い方するわね。もっとはっちゃけちゃっていいのよ?」

モバP「もともとこういう性分だから難しいな」

夏美「すみませーん!そこのぴにゃこら太のお面ください!」

モバP「……聞いてないな」

夏美「そいやっ!」

モバP「うおっ……なぜ緑のブサイクのお面を俺に被せるんだ」

夏美「あははっ!かわいい♪こうしたら、少しはテンション上げてくれるかなって」

モバP「俺がこいつを付けるなら、君もつけないと不公平だ」

夏美「あら、お揃いがお望み? きゃーっ♪ Pさんったら大胆ね!」

モバP「すみません。このうえきちゃんのお面ひとつください」

夏美「お揃いじゃないっ!?」


夏美「んーっ♪さっきのりんご飴もおいしかったけど、このわたあめも甘くていいわね!」

夏美「次は何を食べようかしら」

モバP「太るぞ」

夏美「ふふっ、この私が無策で食べ歩きすると思う?ちゃーんとこの日のために、ここ一週間はスイーツ厳禁で生活してきたの」

モバP「さすがストイックアイドル」

夏美「どうもありがとう♪お礼にたこ焼きあげるわ」

夏美「はい、あーん♪」

モバP「………」

夏美「ほら、口開けて」

モバP「……あーん」パクッ

夏美「うふふ♪ よくできました♪」


夏美「小さい頃。盆踊りとかでさ、カラオケ大会あったりするじゃない?私、そこで思いきり歌うのが好きだったの」

夏美「みんなに歌を聴いてもらう……自分を表現できている気がして、すごく楽しかったんだと思う」

モバP「その頃から目立ちたがりだったんだな」

夏美「まあね」


夏美「……考えてみれば。今はカラオケ大会より、ずっと大きなステージで歌ってるのよね」

夏美「それって、すごく素敵よね」

モバP「夏美にとって、アイドルは天職だったのかもしれないな」

夏美「うん。きっとそう」

夏美「でも。CAをやっていた時間も、絶対無駄じゃなかったって言えるわ」

夏美「いろんなことを頑張って、経験して、今の私がいる」

夏美「これまでを無駄にしないためにも……私、まだまだ走り続けるわ」

モバP「……ああ。頑張ろう」


夏美「そろそろ、花火が上がる時間ね」

モバP「落ち着いた場所に来られてよかったな」

夏美「さっき、ファンの人達に囲まれたときはどうなることかと思ったわね」

モバP「結果、人気のないところまで逃げてきたわけだが……静かに花火を眺めるにはちょうどいいか」

夏美「そうね……ふふっ」

モバP「やけにうれしそうだな」

夏美「うん。なんだか……ファンに囲まれたっていう事実がうれしくて」

夏美「初めの頃は全然だったのに、いつの間にかアイドルらしくなれていたのかもって思えたから」

モバP「夏美は一人前のアイドルだ。俺が保証する」

夏美「……ありがとう」


モバP「花火、上がり始めたな」

夏美「そうね。綺麗……」

モバP「ああ」

夏美「あなたと二人で、ここに来られてよかったわ」

モバP「そうか」

夏美「………」

夏美「そっちは? 何か言うこと、ない?」

モバP「浴衣。淡い色合いがよくあってる。ポニーテールにしているのもいい」

夏美「それ、今言うんだ」

モバP「照れ屋だからな、俺は」

夏美「ついに開き直ったわね」

夏美「じゃあ、一個だけ。これだけ、ちゃんと答えて」

モバP「内容によるが……聞こう」


夏美「これからも、私と一緒にどこまでも飛んで行ってくれる?」

モバP「………」

モバP「もちろんだ。俺も君も、まだまだ飛び足りないだろうからな」

モバP「アイドル相馬夏美の魅力を、どこまでも観客に見せつけていこう」

夏美「……うんっ!」

夏美「そういうことははっきり言ってくれるの、すごく頼もしいわ」




夏美「……好きよ」

モバP「そうか。俺も好きだ」

夏美「………」

夏美「え?今なんて」

モバP「何も言ってないぞ。花火の音と聞き間違えたんじゃないか」

夏美「そんなわけないでしょ!ほら、もう一回!もう一回言って!」

モバP「同じことは二度言わない主義だ」

夏美「やっぱり言ってるんじゃないの!ねえねえ、私のこと、なんだって?」

モバP「だから、もう言わないって――」


夏美編 おわり


ありす編




モバP「お疲れさま」

ありす「すいません、撮影押したのに待っててもらって……」

モバP「カメラマンが張り切っちゃったんだろ?ありすが可愛いから困るなまったく」

ありす「別にそういうわけでは……」

モバP「事務所に用事あるか?ないなら直接寮まで送るけど?」

ありす「いえ、特には……あっ」チラッ

モバP「あー、そう言えばこの神社お祭りだったな。」

ありす「そうなんですか……」

モバP「……ありす?」

ありす「……え?あ、はい!早く帰って宿題をしないといけませんし!帰りましょう!」

モバP「……」


モバP「ありす、宿題は急ぎか?」

ありす「え?」

モバP「お祭り行きたいんだけど、おっさん一人で行くと寂しいから一緒に来てほしいなあ、と」

ありす「えっ……?」

モバP「あ、もちろん無理にとは」

ありす「し、仕方ないですね。いつもお世話になっているPさんのお願いですし……聞いてあげても、いいです」ソワソワ


ありす「すごい人混みですね……」

モバP「こんなに大きなお祭りだったかなあ」

ありす「これじゃ……はぐれそうです……」チラッ

モバP「そうだな……」

ありす「はぐれたらなかなか見つからなさそうですね?」チラッチラッ

モバP「だなあ。この人混みじゃなぁ」

ありす「………」ソワソワ

モバP「……俺が迷子になると困るし手を握っててくれるか?」

ありす「本当に手がかかる人なんですから……!」ぎゅっ


モバP「お、金魚すくいか」

ありす「好きなんですか?」

モバP「子供の頃は金魚界のメシアと呼ばれたくらいだぞ」

ありす「よく分かりませんけど……得意なんですか?」

モバP「それなりに。ありすは?」

ありす「しようとも思わないです」

モバP「え?」

ありす「物理的にあんな薄い紙で金魚がすくえるはずがありません。ましてや濡らして強度をさらに弱くするなんて。そんな非合理的なものにお金はかけないだけです」

モバP「……苦手なんだな?」

ありす「ち、違います!すくえるような仕組みじゃないと言っているだけで」

モバP「なるほどなるほど」


モバP「おっちゃん!一人分!」

「あいよ!」

ありす「まあ見ててあげます」

モバP「違う違う、ありすがやんの」

ありす「え?」

モバP「はい持って持って」

ありす「は、はあ……?」


モバP「ポイは45°の角度で水に入れる」

ありす「はい」スッ

モバP「水の中ではポイを水面に平行にして狙った金魚の下まで動かす。」

ありす「平行に……」スーッ

モバP「すくい上げる時にまた45°に戻して金魚をすくう」

ありす「はいっ……!」スカッ

ありす「ああっ!」

モバP「破れてなけりゃ何回でもやれるから頑張んな」

ありす「はい……!」


ありす「やっぱり動きの遅いのを狙って……」

モバP「水面近くの金魚を狙うといいかもな」

ありす「なるほど……」

モバP「水面近くの方が水圧が低いから紙へのダメージが小さいんだよ」

ありす「確かに……やってみます」

モバP(テキトーに言っただけなのに……素直だなあ)


ありす「…………」ジーッ

ありす「……!今です!」パシャッ

モバP「おっ」

ありす「やりました……!できましたよPさん……!」

モバP「さすがありす、コツ掴むと早いな」ナデナデ

ありす「こ、子供扱いしないでください」

ありす「~♪」

モバP「ご機嫌だな」

ありす「!べ、別にそんなことないです」

モバP「そうか?」

ありす「い、いつも通りです」

ヒュー…ドンッ

ありす「あっ……」

モバP「今年は花火大会と日にちが重なったとか言ってたなあ。」

ありす「そうなんですか……」

ドンッ

ありす「……きれいですね」

モバP「だなぁ」


ありす「……あの、Pさん」

モバP「ん?」

ありす「来年も、来ていいですか」

モバP「そんなに楽しかったか?」

ありす「ち、違います。来年は出目金をすくうのを見せてあげるだけです」

モバP「……そうか。楽しみにしてるぞ」

ありす「……ぜ、絶対ですよ?」

モバP「はいはい」ナデナデ


ありす「連れてきてくれるなら……撫でるのも許してあげます……」

モバP「そうか。じゃあ来年も来ないとな」

ありす「はい、楽しみにしてます」

モバP「……やっぱり楽しかったんだな?」

ありす「あ……ち、違います、出目金、楽しみにしててください」

モバP「うん、楽しみにしてるよ」ナデナデ


ありす編 おわり

すみません、残りは明日に回します。

美穂編




美穂「えっと、確かこの辺り……いた!プロデューサーさん、お待たせしました!」

モバP「こんばんは、美穂」

美穂「紗枝ちゃんに浴衣の着付け手伝って貰ったんです。似合ってますか?」

モバP「ええ。よく似合ってます。ところで、お祭りの同伴者が私でよかったんですか?」

美穂「はい、プロデューサーさんなら安心できますし……。それより、早く行きましょう!この後花火もあるんですから」

モバP「そうですね。まずはぐるっと一周しながら見ていきましょう」

美穂「はい!」


美穂「それにしても、やっぱり人がいっぱいいますね」

モバP「そこそこ大きなお祭りですからね。あ、たこ焼き食べますか?」

美穂「はい、美味しそうですね」

モバP「じゃあ、たこ焼き二つお願いします」


美穂「はふっ、もぐもぐ、んっ。うう、熱かったです~」

モバP「大丈夫ですか?お茶どうぞ」

美穂「あ、ありがとうございます」

モバP「舌、火傷してませんか?」

美穂「ぷはっ、大丈夫です。プロデューサーさんもたこ焼きどうぞ」

モバP「頂きます……結構熱いですけど、美味しいですね。食べ終わったらまた回りますか」

美穂「そうですね。私も食べよっ。うん、美味しい!」

モバP「ふふ、美味しそうに食べますね」

美穂「そ、そうですか?えへへ」


モバP「それじゃあ、次はどうします?」

美穂「うーん、あっ!あそこのくじ引き、おっきなくまのぬいぐるみがありますよ!」

モバP「当たりは10番台ですか……一回だけですよ?」

美穂「はい。じゃあ、これで……ぷ、プロデューサーさん!これ!」

モバP「おお!9ですか」

美穂「夢じゃ、ないですよね……?」

モバP「頬つねってみますか?」

美穂「もう、プロデューサーさんのほっぺをつねっちゃいますよ?」

モバP「冗談ですよ」

美穂「ふふっ、くまさん可愛いですっ」

モバP「良かったですね」

美穂「はい。そういえばそろそろ花火ですね」

モバP「じゃあ適当に食べ物買ってしまいましょうか」

美穂「そうですね。あそこに焼き鳥の屋台がありますよ」

モバP「いいですね、20本くらいまとめて買いますか」


美穂「ちょっと買いすぎましたね」

モバP「余ったら私が食べきるので問題ありませんよ」

美穂「もう、食べすぎは良くないですよ!」

モバP「あはは、そろそろ打ち上がりますよ。はい、焼き鳥どうぞ」

美穂「むう、また誤魔化して……。あ、見てください!上がりましたよ!」

モバP「ホントだ。綺麗ですね」

美穂「熊本でもすごく大きな花火大会があって、このお祭りにも負けないくらい沢山の人で賑わってたんですよ!」

モバP「へえ、もしかしたら蘭子と菜帆とそこで出会ってたかもしれませんね」

美穂「そうですね。けど、アイドルになってなかったらこの花火は見られなかったかもしれません」

美穂「勿論、蘭子ちゃんや菜帆ちゃんとも、お祭りですれ違うだけだったかもしれません」

美穂「プロデューサーさんが私を見つけてくれたから、こうしてアイドルにしてくれたから、皆とも出会えたし……何より、花火みたいなキラキラしたステージに立てました」

美穂「だから、ありがとうございます。私をアイドルにしてくれて」

美穂「まだまだ未熟な私ですけど、これからも、よろしくお願いします。プロデューサーさん」

モバP「はい、こちらこそ。ふふ、私ももっと頑張らなきゃいけませんね」


モバP「それはそれとして、今は花火を楽しみましょう。アメリカンドッグどうぞ」

美穂「あ、はい」

モバP「お祭りのこの雰囲気ってやっぱり良いですね」

美穂「私も、この雰囲気好きです。お祭りの賑やかな感じも好きですけど、ここみたいな少しお祭りの会場から離れた静かさも、とっても好きです」

美穂「何だか、ロマンチックな感じがしませんか?」

モバP「そうですね、とてもロマンチックだと思います」

美穂「……また、来たいですね。一緒に」

モバP「今度は、皆でここに来ても良いですね。まだまだ屋台も沢山ありましたし、二人じゃ食べきれません」

美穂「……はぁ。プロデューサーさん、本当に食べるのが好きですね」

モバP「ええ、それはもう」

美穂「プロデューサーさんらしいですね、ふふっ」
 
モバP「そろそろ、花火も終わりですね」

美穂「そうですね、何だか名残惜しいです」

モバP「そうですね」




美穂「……あのっ!」

モバP「どうしました?」

美穂「一つ、約束してくれませんか?」

モバP「ええ、構いませんよ」

美穂「プロデューサーさんは、私がアイドルを辞めるまで、ずっと私のプロデューサーでいてくれますか?」

モバP「勿論です」

美穂「じゃあ、もしも私が皆を幸せにできる、誰もが認めるトップアイドルになったら、その時は」




美穂「もう一度、二人でこの花火を見に来ませんか?」


美穂編 おわり

歌鈴編



歌鈴「Pさん!」

モバP「おお、歌鈴。……巫女服?」

歌鈴「はい!折角帰ってきたんだから着ていけってお父さんとお母さんが!」

モバP「そっか……やっぱり似合ってるな」

歌鈴「そ、そうですか?」

モバP「ああ、勿論。元々巫女なんだ、似合わないはずがない」

歌鈴「え、えへへ……」

モバP「よし、じゃあ行こうか」

歌鈴「…………あ、あのっ!て、ててて、手を……!」

モバP「えっ、それは流石に……」

歌鈴「そ、そう、ですね……行きましょうか……ってわっひゃああぁ!?」ステーン

モバP「…………と思ったけど繋ぐか。その調子で転ばれたら困るし」スッ

歌鈴「え、えへへ……か、神様今日くらいは見逃して……」ボソッ

モバP「え、今なんて?」

歌鈴「や、いやぁ!なんでもありません!い、行きましょう!」ギュッ

モバP「……?」


モバP「……にしても、人が多いなぁ」

歌鈴「そうなんです。お正月以外で私のうちの神社が混む数少ない日の一つですね」

モバP「そういえば、ごめんな。毎年ステージで踊ってたんだろ?今年は俺なんかに付き合ってもらっちゃって」

歌鈴「い、いえっ!そんなことないですよぉ!わざわざお願いしてPさんについてきてもらったのも私ですし!」

モバP「いや、有給もたまってたしいいリフレッシュになってるよ」

歌鈴「そ、それに……」

モバP「ん?」

歌鈴「Pさんと回れて私…………あわわっ、な、なんでもありません!」

モバP「……?」

歌鈴「き、きっと!今年踊ったらきっと人が沢山来ちゃって大変ですよ」

モバP「ああ、それはあるかもしれないな」

歌鈴「今年は、たくさんテレビに出させていただけましたから!えへへ……」

モバP「……よし、いつかこっちでもライブ出来るように考えておくよ」

歌鈴「ほ、本当ですか?」

モバP「おう。その時は思い切り歌って踊ってくれ」

歌鈴「あ、ありがとうございまふっ!……あ、あぅぅ」

モバP「はは……お、花火か」


歌鈴「ほわぁ……懐かしいなぁ……」

モバP「神社からでもはっきり見えるんだな」

歌鈴「はい。偶然なんですけど木とかに重ならなくって。毎年ここから花火は眺めていました」

モバP「なるほど」

歌鈴「うわぁ、綺麗だなぁ……」

モバP「……!」

歌鈴「あ、あのっ、Pさんもしよかったら来年も一緒に……あれ、私の顔に何かついてます?」

モバP「い、いやっ!なんでもない!なんでもないぞ!ほ、ほら!お金あげるからちょっと何か買ってきてくれ!歌鈴の好きなものでいいから!」

歌鈴「……?わ、わかりました。ちょっと待っててくださいね」


モバP「……まさか歌鈴にときめく日がこようとは」

モバP「しかし、あの横顔の威力は……」

モバP「……あいつも成長した、ということにしよう。そうしよう……」



「あ、あれれ…こ、ここどこ!?Pさん!Pさーん!」



モバP「…………」



「どこだったっけ……ひゃ、ひゃわあああああ!いったた……」



モバP「…………いや、でもあの横顔は前にはない表情だったし……嘘だ……俺がチョロくなったなどとそんなはずは……」ブツブツ



「Pさ~ん!Pしゃんどこですか!あっ、噛んじゃった……。こ、こほん!Pさ~ん!」


歌鈴編 おわり


早苗編




モバP「……あれ、今って八時だよな……?」

モバP「俺の時計が間違えてることはないだろうし」

モバP「あの人に限って遅刻することも考えにくいし……」


からん、からん


早苗「ごめんごめん、P君」

モバP「ああ、早苗さん……って」

早苗「着付けるのに手間取っちゃってね」

モバP「浴衣、着てきたんですか」

早苗「そりゃあ、お祭りだもの」


早苗「あたし、プライベートではあんまし行ったことがないからわからないんだけど」

モバP「なんですか?」

早苗「こんな時間までお祭りってやってるものなの?」

モバP「大体どこも十時くらいまでやってますよ」

早苗「へえ、そうなの」

モバP「たしか、あそこの角を曲がったら入口のはずです」


早苗「……思ってたより、人がいないのねえ」

モバP「そうですかね?」

早苗「あたしが警察としてパトロールしてたお祭りはもっとこう、人がごった返してたような」

モバP「時間も時間ですし、そもそもこのお祭りは毎年そんなに混まないですよ」

早苗「あら、P君は前にも来たことがあるの?」

モバP「ええ、雰囲気が好きなんです。和やかで、落ち着けて」

モバP「それに、混み過ぎだと一般の人が早苗さんに気付いちゃうだろうし、それもそれで大変でしょう」

早苗「ふうん」

モバP「じゃあ、とりあえず何か食べますか?」

早苗「そうね、もうお腹空いちゃって」

モバP「あんまり混んでない割に、うまい出店は結構あるんです」

早苗「回りながら見よっか!」


早苗「って言いながら、屋台のもの結構買っちゃったわね」

モバP「これぞお祭りの醍醐味じゃないですか。あそこのベンチで座って食べましょう」

早苗「そうね、焼きそば、たこ焼き、フランクフルトに焼き鳥……それとビール!きんきんに冷やしたやつ!」

モバP「あんまり食べ過ぎも駄目ですよ?」

早苗「はーい!ほらP君、たこ焼き半分こしよっ」

モバP「おっ、いいところに目をつけますね。ここのたこ焼きは絶品なんです」

早苗「それじゃ、まあ、とにかく」

モバP「乾杯、今日もお疲れさまです」


モバP「どうです?たこ焼きの具合は」

早苗「…………P君」

モバP「はい」

早苗「今まで食べてきた中で、一番かも……」

モバP「そうでしょう、そうでしょう!」

早苗「ひょっとして、この焼きそばも、焼き鳥も……?」

モバP「味と量は、俺が保障します」

早苗「~~~!!」


モバP「今日くらいは食べ過ぎても、いいことにしましょうか」

モバP「俺も腹減った……いただきます」


早苗「……っはあ。美味しかったあ、」

モバP「結局たこ焼き二回もおかわりしましたね」

早苗「決めた。来年も絶対行こ」


モバP「そういえば、なんでお祭りだったんですか?」

早苗「へ?何が?」

モバP「これって早苗さん主演のドラマの、クランクアップ記念の御褒美じゃないですか」

モバP「何がいいかって聞いたら、お祭りに行ってみたいってあなたが言うから、ここに来たんですが」

モバP「そもそもどうしてお祭りなんですか?」


早苗「あー、そういうことね」

早苗「あたしね、お祭りなんて子供のころに行ったっきり、今まで一回も来てなかったの」

モバP「そうだったんですか」

早苗「お祭り自体、あんまし興味がなかったのよ」


早苗「でもね、大人になって、警察に入って、仕事でお祭りに行って、」

早苗「そしたらね。なんか違って見えたの」


早苗「通り過ぎる人がみんな笑顔で、熱気が凄くて、幸せそうでね」

早苗「ああ、なんだか楽しそうだなあって。見てるこっちまで嬉しくなるくらい。初めて羨ましく思えたの」

早苗「だから、一度P君と行ってみたくて」


 
モバP「ちなみに今日は、どうでしたか?」

早苗「もう、最っ高よ!……ただ、ね」

モバP「ただ、なんですか?」





早苗「せっかく浴衣着てきたのに、誰かさんがなんにも言ってくれないから、そこが惜しいかな?」




モバP「……だって、照れくさいじゃないですか」

早苗「ちゃあんと、下駄まで履いてきたんだけどな」

モバP「う……似合ってますよ、凄く。流石は俺が見込んだアイドルなだけあります」

早苗「そりゃあ、敏腕プロデューサーに見込まれただけあるもの」

早苗「でも、褒め言葉だけじゃ足りないかも」

モバP「ええ?何がお望みですか?」





早苗「……また来年も、連れてってくれる?」


早苗編 おわり

文香編




文香「……お待たせして……しまいましたでしょうか……?」

モバP「いや、今来たところだぞ」

文香「ふふっ……ありがとう、ございます」

モバP「何がだ?一度はこのやりとりをしてみたかった、とかかな?」

文香「実は、5分ほど前から……私もここに……」

モバP「……着いてたなら声掛けてくれよ」

文香「実は……少し、恥ずかしくて……」

モバP「恥ずかしい……?あぁ、浴衣だからかな」


モバP「可愛いと思うよ。浴衣の柄とかは詳しくないけど、凄く似合ってる」

文香「……ズルい人です……そんな言葉が、サラッと言えるだなんて……」

モバP「プロデューサーだからな、このくらいは言えないと」

文香「その割には……少し、顔が紅いですよ?」

モバP「……祭りの熱気って事にしてくれると嬉しいかな」

文香「……ふふふっ……さて、行きましょうか」

モバP「おう、折角だしのんびり周るか」


文香「あ……その……」

モバP「どうした?……あぁ。手、繋ごうか」

文香「……ありがとう、ございます。それと……」

文香「あまり……私以外には、先程のような言葉を……」

モバP「……普段だったら馬鹿にされるかもしれないしな、滅多に言わないよ」

文香「……ふふ、プロデューサーさん…誤魔化すの、苦手なのですね」

モバP「……ほら、行くぞ。逸れないようにな」


モバP「お、射的だ。やってくか?」

文香「私は、余り得意では……」

モバP「なに、こう言うとこは雰囲気を楽しむもんだよ。獲れなくて当然だと思って遊んでこう」

モバP「すみませーん、二人分で」

文香「随分と、強引ですね……」

モバP「あれ、そんなに苦手だったか?」

文香「……いえ……むしろ、心地よいです……引っ張って頂けるのは……」

モバP「……ほら、やるぞ。隣の青年が恨めしそうにこっちみてるし」


モバP「……案外、倒れないもんだなアレ」

文香「ですが、的屋の方にオマケを頂けましたし……」

モバP「線香花火か、後でやってくかな」

文香「あら……あれは……」

モバP「りんご飴だな。ピンボールの点数で貰える本数が増えるんだよ」

文香「……」

モバP「やってくか、2本くらい貰えると嬉しいんだけど」

モバP「さて、俺は運が悪いし文香にお願いしようかな」

文香「え……そ、それでは……」

ばちんっ


文香「……あのピンボール……」

モバP「縁日の的屋だからな。入りそうです入らないもんなんだよ」

文香「その……すみません」

モバP「謝る事はないって、俺だったら0本だったかもしれないし」

モバP「それに、気前のいいおじちゃんが1本オマケしてくれたから丁度2本だ」

モバP「美人と歩いてると良い事があるな」

文香「……ズルいです」

モバP「大人ってのはズルいもんなんだよ、多分」


文香「あ、カキ氷ですね」

モバP「9月に入ってるとは言えまだ少し暑いしな、二つ買ってくか」

文香「……でしたら、私はイチゴ味を」

モバP「あいよ。すみませーん、イチゴ一つとブルーハワイ一つで」

文香「……氷が削られる音……心地よいですね」

モバP「夏の風物詩だな。昔から青が好きで毎度ブルーハワイばっか食べてたよ」

モバP「未だにブルーハワイが何の味なのか分かってないけどな」


モバP「んー!頭が痛い」

文香「これもまた、夏の風物詩ですね……んっ、頭が」

モバP「カキ氷食べるのも久しぶりだなぁ。昔は夏になると良く食べてたけど」

文香「……でしたら……こ、交換……しませんか?」

モバP「……はい、どうぞ」

文香「……プロデューサーさん?」

モバP「グイグイくるな……はい、あーん」

文香「んっ……美味しいです……では、私からも。はい」

モバP「……うん、イチゴも美味い」


文香「……顔、赤いですよ?」

モバP「カキ氷のシロップが顔に飛んだせいだなきっと多分」

文香「ブルーハワイは青いのに、ですか?」

モバP「……」

文香「……ふふっ、先程の仕返しです」

モバP「まいったな……今日はよく振り回されてる気がするよ」

文香「あ……花火、始まりましたね……」

モバP「まぁ、花火の音をBGMに的屋を周るのも楽しいしいいかな」


文香「……あっと言う間、でしたね……」

モバP「でも綺麗だったな。文香と来れて良かったよ」

文香「……線香花火……していきませんか?」

モバP「んじゃ、ここら辺から離れようか。流石に人通りのど真ん中では出来ないし」

モバP「……っと、この辺でいいかな。一本貰っていいか?」

文香「どうぞ……あ。でしたら、先に落とした方が……」

モバP「長かった方の言う事を一つ聞く、かな?」

文香「……ええ、では」

モバP「よし、やるか」


パチパチ、パチパチ

モバP「綺麗だな、俺は大きい花火も好きだけどこっちも好きだよ」

文香「……私も、です。儚いけれど……精一杯輝いて……」

モバP「美人が線香花火は絵になるな。写真に残しときたい気分だ」

文香「……ズルいですよ、動揺させようだなんて……それに」

文香・モバP「それならまた……」

モバP「……あっ、落ちた……」

文香「……ふふっ。私の勝ち、です……」

モバP「あー……どうせなら俺から言いたかったんだけどな」

文香「……おそらく、答えあわせになってしまうかもしれませんね」


文香「……では、私から……一つ、お願いです」

モバP「おう、どんとこい」

文香「その……また……」

文香「……来年も、ここで一緒に……線香花火、したいです」

モバP「……詩的だな。俺が言うよりよっぽど良かった」

文香「もう……そうやって、誤魔化さないで下さい……」

モバP「……わかってるよ。じゃあ、これから1年よろしくな」

文香「……はい……!よろしく、お願いします」


文香編 おわり

これで終わりです。
読んでいただいてありがとうございました。

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