グラーフ・ツェッペリン「雨のウェンズデイ」 (6)

雨がシトシトと降っている水曜日、グラーフ・ツェッペリンは愛車のアウトウニオンに乗り込んだ。

エンジンを掛けると2ストローク3気筒がバラバラと唸りをあげた。ビスマルクは「こんなやかましいポンコツ、よく乗っているわね。」と半ば呆れて言っているが、ツェッペリンにとっては、初任給で購入した思い入れの車なので、手放さずに大切に乗っている。

鎮守府のアスファルトにオイルをぶちまけながら、ツェッペリンは大通りへと車を走らせた。

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その日は、グラーフ・ツェッペリンの休暇の日であった。

いつもは同じ日に休みのビスマルクと酒を飲んで過ごすのだが、肝心のビスマルクが出張で仙台へ行ってしまったので、今回は一人でお出かけをすることにしたのだった。

日本の首都東京へと車を走らせながら、ツェッペリンはメルクリンの鉄道模型とテディベアでも買って行こう。と考えていた。

グラーフ・ツェッペリンにはコレクター的な趣味に物を捨てられない症候群という、非常に厄介な体質であった。すでに彼女の部屋は、腕時計と手を付けていない模型と、購入してから一度も開いていない本でいっぱいであった。一度その部屋を見たものは、まさかあのグラーフ・ツェッペリンの部屋だとはわからないであろう。

それでもツェッペリンは、物を購入したときのあのわくわくした感じと達成感がとてもすきなので、やめられなかった。

やがて、アウトウニオンをコインパーキングに停めて、メルクリンの店でTEEのジーゼルカーを購入した。前から欲しかったものだからかもしれないが、その時のグラーフ・ツェッペリンの満足げな表情は、いつもの威厳あふれる彼女ではなく、クリスマスの朝の少女のような表情であった。

信号待ちで停車したとき、ツェッペリンはふと視線を右に向けると、「KEY COFFEE」の看板が見えた。そういえば朝からなにも食べてなかったことに気がついた彼女はパーキングに車を入れた。

カレーライスとコーヒーを注文した。いつもの真っ白な軍服なら食べるのに少々気を使わなければいけないが、今日は黒めの服を着てきたので、その心配はなかった。

古ぼけた、だが落ち着きのある店内に、ツェッペリンは、昔よく朝食を食べに通っていたドイツのカフェーを思い出した。

日本に来たばかりの頃は、ホームシックになって毎晩布団の中で泣いていたが、最近はそういうこともなくなったし、それに故郷の国にいたのが大分昔のように感じてきてるのだった。

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