仁奈「うぅ……フラフラするですよ……」 (29)

【モバマスSS】です


――――プロダクション、事務室

ちひろ「あら、仁奈ちゃんどうしたの。大丈夫?」

仁奈「あ、ちひろおねーさん……な、なんでもねーですよ、心配しないでくだせー……」フラフラ

ちひろ「そういう訳にもいきません。少しおデコを触らせてくださいね」ピタッ

仁奈「つめたっ……」

ちひろ「ちょっと我慢してね……ふむ、かなり熱い……仁奈ちゃん、身体の具合悪いでしょう?」

仁奈「べ、べつにそんなことねーです。ほんとになんにも……」

ちひろ「嘘を言っても私にはわかりますよ。見たところ、身体が熱くて、頭も痛くて、吐きそうなくらい気持ち悪いんでしょう?」

仁奈「な、なんでわかるでごぜーますか……! ちひろおねーさんはエスパーでやがります……?」フラフラ

ちひろ「まさか。このプロダクションにいるエスパーはユッコちゃんくらいですし、私はあくまでアシスタントですよ。それより」ゴソゴソ

ちひろ「とりあえずこの体温計で熱を測って下さい」

仁奈「……分かったですよ」クイッ

ちひろ「あと、具合が悪くなったのはいつからかも教えて? もう少し詳しく身体の状態を知りたいの」

仁奈「……最初にちょっときもちわるいって思ったのは……昨日の夜からで……」

ちひろ「昨日の夜ね、それから?」


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※市原仁奈
http://i.imgur.com/eCbjAni.jpg

※千川ちひろ
http://i.imgur.com/TjheXoP.jpg


仁奈「朝になって、少し身体が動かしづらくなってたでごぜーます……でもレッスンがあるから休めねーっと思って……」

ちひろ「無理しちゃった?」

仁奈「みんなと身体を動かせば元気になると思ったですよ……けど、結局……」フラフラ

ピピピッ

ちひろ「熱が測れたみたいね、ちょっと見せて下さい」スッ

ちひろ「……37.8℃……やっぱり体温が高い……仁奈ちゃん、今日はもうお休みにしましょう」

仁奈「え、で、でもまだこのあと千枝ちゃん達とのレッスンがあるでごぜーます……」

ちひろ「こんな状態でレッスンをしたらそれこそみんなに迷惑ですよ?」

仁奈「そ、それはダメでごぜーます……みんなにめいわくはかけたくねーですよっ……」フラフラ

ちひろ「だったらちゃんと休みましょう。ひとまずそこのソファーに座っていて下さい、私は――」

ガチャ

楓「ただ今戻りました……あら?」

美優「おはようございます……って仁奈ちゃんどうしたの……!?」

仁奈「あ、楓おねーさん……美優おねーさん……」グッタリ

美優「ち、ちひろさん……! 仁奈ちゃんが……!」

※高垣楓
http://i.imgur.com/KUBP9qO.jpg

※三船美優
http://i.imgur.com/eBuXLSz.jpg


ちひろ「ええ、見ての通り体調を崩してしまったようでして。今から私のほうで仁奈ちゃんのお母さんに連絡を取ってみます」ピポッ

仁奈「ち、ちひろおねーさん……そ、それはやめてくだせー……! ママには、めいわく、かけたく……」グッタリ

美優「なにを言ってるの仁奈ちゃん……!? そんなこと仁奈ちゃんが考える必要なんてないの……!」

楓「そうよ仁奈ちゃん。辛い時はちゃんと辛いって言わないと。お水飲む?」

仁奈「のみてーです……できればジュース……」

楓「それじゃあスポーツドリンクを入れてくるから、ちょっと待っててね」

美優「私は……」

楓「美優さんは仁奈ちゃんの側にいてあげて下さい。具合が悪い時は、声をかけてあげるのも大事らしいですよ?」

美優「そ、そうよね……仁奈ちゃん、してほしいことがあったらちゃんと言ってね」

仁奈「……仁奈は……」グッタリ

プルルルルル

『おかけになった電話は、現在電波の届かないところか――』

ちひろ「……だめですね、仁奈ちゃんのお母さんに連絡がつきません」

仁奈「ママ、すげー忙しいでごぜーますから……きっと電話にでれねーんですよ……しょーがねーです……」

美優「だったら仁奈ちゃんのお父さんに連絡を……!」


ちひろ「仁奈ちゃんのお父さんは海外にいらっしゃいますから、連絡しても恐らくこちらに来ることは不可能かと」

美優「そんな……」

楓「はい仁奈ちゃん、スポーツドリンクを入れてきましたよ」

仁奈「ありがとーごぜーます楓おねーさん……ごくごくっ、ごくっ……ぷはっ……! おいしーですよ」フゥ

楓「良かった。それで、話が聞こえてきましたけど、ちひろさんはこの後どうするつもりですか?」

ちひろ「このままなにもしない訳にもいきませんし、プロデューサーさんに連絡した後、私が仁奈ちゃんを病院に――」

プルルルルルッ!

ちひろ「ちょっと失礼します――はい、こちら……って、プロデューサーさんじゃないですか、どうし……はい?」カリカリ

ちひろ「今度のライブに関してスポンサーから追加の企画依頼が来た……? それで、計画変更の必要があると……」カリカリ

ちひろ「……それはまた急な話ですね、今から変更するとなるとかなり無茶なスケジュールになりますよ?」カリカリ

ちひろ「先方はそれでも……そうですか、分かりました。なんとかしてみますから、プロデューサーさんもよろしくお願いします」ガチャ

美優「……ちひろさん?」

ちひろ「はぁ……どうしましょう。今から至急片付けないといけない案件が出来まして……でも仁奈ちゃんが……」

仁奈「仁奈なら、大丈夫でごぜーます……心配しないでくだせー……ほら、こうやってピョンピョンって」ピョン グラッ

仁奈「あわわ……うぅ……」


美優「無理はダメよ仁奈ちゃん、具合が悪いのは本当なんだから」

仁奈「でも、このままじゃちひろおねーさんにまでめいわくかけちゃうですよ……」

ちひろ「仁奈ちゃんのことなら迷惑なんて思いませんよ。しかし、どうしたら……」

楓「だったら、私と美優さんで仁奈ちゃんを病院に連れて行きましょうか?」

ちひろ「いいんですか?」

楓「幸い次のお仕事までまだ時間がありますし、美優さんとも合流出来ましたから」

美優「仁奈ちゃんの具合が悪いなら、私達で出来ることはしておきたいんです」

仁奈「……ごめんなさい……」

美優「謝らないでいいの。私達は元気な仁奈ちゃんのほうが好きだから、ね?」ナデナデ

仁奈「……(コクン)」

ちひろ「……分かりました。お二人共アイドルなのに申し訳ありません。どうか仁奈ちゃんを病院へお願いします」

楓「ええ、分かりました。じゃあ仁奈ちゃんは私が抱っこしておきますから、美優さんは車の運転をしてください」

美優「いいですよ。それで、病院に連れて行ったあとはどうしたら……」

ちひろ「ここに戻ってきてもらってもいいですか? 診察が終わる頃までには私も全て片付けて準備を終わらせておきますので」

楓・美優「「準備?」」

ちひろ「こちらの話です。ともかくお二人共、仁奈ちゃんを頼みましたよ」


――――4時間後、プロダクション、事務室

美優「戻りま――え?」

楓「……部屋の片隅にベッドスペースが出来てますね」

仁奈「……すげー……」

ちひろ「三人共おかえりなさい。それで、仁奈ちゃんの診察結果はどうでしたか?」

美優「ストレスによる体調不良だそうです……仁奈ちゃん、ここのところイベントに立て続けに参加してましたから多分それが……」

ちひろ「なるほど……今度小さい子達の仕事配分を見直しておきます。さて楓さん、そろそろ用意したベッドに仁奈ちゃんを」

楓「あ、ここで休ませてあげるんですね。てっきり寮に連れて行くのかと……」

ちひろ「暫定処置ですよ。長く体調不良が続くようでしたらそれも考えますが、とりあえずは私がここで看病をします」

美優「ちひろさんが……看病……!?」

ちひろ「はい、なにか?」

美優「い、いえ……ただちょっと意外かな、と」

ちひろ「……仁奈ちゃんのお母さんに連絡がついたらその時点で迎えに来てもらえるようにするには、これが一番なんですよ」トントン

ちひろ「まぁ、あの後10回ほど電話をかけてみましたが結局出られませんでしたし、迎えに来られる確率は低そうですが」

仁奈「……やっぱり……」


楓「……ともかく仁奈ちゃん、ほら、せっかくだからちひろさんの用意してくれたベッドで休みましょう」ボフッ

仁奈「……フカフカだー……」

ちひろ「楓さん、仁奈ちゃんをずっと抱き抱えていましたが大丈夫でしたか?」

楓「へっちゃらです、これでもちょっとは鍛えてるんですよ?」

ちひろ「そうでしたね。それで、病院でもらったお薬などはありますか?」

美優「あ、これですね。全部食後に飲むタイプで、朝、昼、夜の三回ずつで5日分を貰いました」スッ

ちひろ「はい、ではこちらはお預かりしておきます。それで、もうすぐ19時ですのでお二人にはそろそろ次のお仕事が……」

楓「その次のお仕事ですけど……サボっちゃだめですか?」

ちひろ「だめです。仁奈ちゃんが心配なのはわかりますけど、お仕事はきっちりしてもらいますよ」

美優「楓さんとの共演でテレビ収録なのは嬉しいですが……でもやっぱり仁奈ちゃんが……」

ちひろ「私が看てますから大丈夫ですって。それにあんまり心配しちゃうと仁奈ちゃんも困っちゃいますよ?」

仁奈「……そうでごぜーます……仁奈のせいで、楓おねーさんや美優おねーさんにめいわくかけるのイヤでごぜーます……」

楓「……そう言われちゃうと仕方ないですね……ちひろさん、あとはよろしくお願いします」

美優「お仕事が終わったらまた様子を見にきます……」

ちひろ「ええ、そうして下さい」


美優「じゃあね仁奈ちゃん。無理しちゃだめよ、ちゃんと水分をとって、お薬も飲んで、しっかりお休みしてね」ナデナデ

楓「元気になるの、楽しみにしてますよ」ナデナデ

仁奈「……♪」

美優「それでは、行ってきます」

楓「また後で」ヒラヒラ

バタンッ

仁奈「……行っちゃったでごぜーます……楓おねーさんも、美優おねーさんも……」

ちひろ「寂しい?」

仁奈「……少し、だけでごぜーます……ちひろおねーさんが、いてくれやがりますから……」

ちひろ「ふふっ、そうですか。さて、ともかく体調を治すためにはお薬を飲みませんと。仁奈ちゃん、食欲はありますか?」

仁奈「……いまは、あんまり食べたくねーです……」

ちひろ「ふむ。りんごやパイナップルなどのフルーツなどの用意もありますが、そういったのは?」

仁奈「それくらいなら、食べれそーです……」

ちひろ「分かりました。ではすぐに用意しますね」パチンッ

ドサッ


仁奈「わっ……果物、いっぱいでてきたでごぜーます……」

ちひろ「……食欲がなさそうですし、ここはりんごはすりおろして……」シュリシュリ

ちひろ「パイナップルやオレンジは食べやすい大きさにカット……」シュパパパ

仁奈「おおーっ……」

ちひろ「皮付きのフルーツはすべて剥いて……これらを盛り付ける、と」

仁奈「すげー……きれーですよ……」キラキラ

ちひろ「気に入ってくれてよかった。それで仁奈ちゃん、まずはなにが食べたいですか?」

仁奈「り、りんご……りんご食べてーです」

ちひろ「りんごですね。それじゃあ……はい、あーん」

仁奈「あーん……ぱくっ」モグモグ

ちひろ「おいしいですか?」

仁奈「……(コクコク)」

ちひろ「それはよかった、食べれるだけ食べてくださいね。その後でお薬を飲みましょう」

仁奈「……粉薬は苦手でごぜーます……」モグモグ

ちひろ「ちゃんとオブラートも用意してますから、安心して下さい」ニコッ

仁奈「わーい……♪」


――――数十分後

仁奈「……ふぅ……」

ちひろ「お薬も飲まれましたし、あとは休むだけですね。氷枕の具合はどうですか?」

仁奈「ひんやりしてて気持ちいーですよ……」ウトウト

ちひろ「良かった。では私はこの部屋にいますから、なにかあれば呼んで――」

仁奈「あ、ち、ちひろおねーさん……」

ちひろ「はい、なんでしょう」

仁奈「あ、あの……仁奈、仁奈は……」ウトウト

ちひろ「……」

仁奈「……こういう時、眠ると……仁奈、いつもこわい夢を見ちゃうですよ……だから、だから……」ウトウト

ちひろ「……ふふっ、分かりました。仁奈ちゃんがこわい夢を見ないように、手を握っていてあげます」

仁奈「……ありがとー……ですよ……」ギュゥ

ちひろ「構いませんよ。これでよく眠れそうですか、仁奈ちゃん?」ギュッ

仁奈「……こうしてちひろおねーさんが……側にいてくれるから……安心だーっ……」ギュゥ

仁奈「えへへ…………スゥ……スゥ……――」


――――???

仁奈「スゥ……スゥ……」

「……め……姫」ユサユサ

仁奈「んん……?」

「仁奈姫!!」

仁奈「わひゃあ!?」

「良かった、お目覚めになられましたか……」

仁奈「な、なんでごぜーますか一体……あれー? 美優、おねーさん……?」キョトン

「お、おねーさん!? そ、そんな、恐れ多い……私などが姫の……」

仁奈「……? 美優おねーさん、どうして比奈おねーさんのマンガに出てくる人みてーな服着てるですか?」

「なっ! お、お忘れですか仁奈姫! 私はあなたに使える騎士ミユです!」

仁奈「……へ?」キョトン

「やめなさい騎士ミユ。姫は先程まで休まれていたのですよ」

ミユ「しかし賢者カエデ……!」

カエデ「それに今はそのようなことで言い争っている時ではないでしょう」


ミユ「そ、そうでした……」

仁奈「……楓、おねーさんまで……どうしてそんな変な格好してやがりますか……?」

カエデ「へ、変な格好……コホン、それはひとまず置いておきましょう。まずは姫に謝らなければいけません」

仁奈「謝る……? なにをでごぜーますか?」

カエデ「姫の治めるこの森の王国に攻めてきた悪い神々、それを追い払うことがとうとう出来なかったのです……!」

仁奈「……え、仁奈、お姫様なんでごぜーますか!?」

ミユ「なにをおっしゃいますか姫! あなたはこの森の王国の姫であり、民のアイドルではありませんか!」

仁奈(ど、どういうことでごぜーますか? いきなりわけのわからねーことを美優おねーさん達が言い始めたですよ!?)キョロキョロ

仁奈(そもそもここ、よく見たら事務所じゃねーです!? まるでお城の部屋みてーでごぜーます! どうなってやがりますか!?)

カエデ「姫、ショックを受けるのも仕方ありません。ですが、これは事実なのです……」

仁奈「仁奈がお姫様ってことがでごぜーますか……?」

カエデ「いえ、それもありますが、王国が悪い神に攻められていることがです」

ワーワーギャー! ワー! カキンカキン! ドパァン! ドパァン!

仁奈「よく聞いたらすげーこえー音が聞こえるですよっ!」

ミユ「ええ、あれは姫をお守りしようと皆が戦っている音です。しかし、いつまで保つか……」


カエデ「今はまだ3体の神を相手に紙一重の差で戦えていますが、それも時間の問題です。ですので姫!」

仁奈「な、なんでごぜーます……?」

カエデ「どうか、この城からお逃げ下さい! 姫1人さえ生き残れば、この王国はきっとやりなおせます!」

仁奈「……1人で……?」

ミユ「姫のベッドの下には隠し通路があって、そこから外へと逃げることが出来ます。たとえ奴らがここに来ても私が守ります」シャリン

ミユ「この剣に誓って奴らを姫には近づけさせません! ですのでどうか、姫、すぐにここからお逃げ下さい!」

仁奈「な、なにがなんだかわかんねーですけど……いやでごぜーます!」

カエデ「そのようなことを言わずにどうか!」

仁奈「ひ、1人で逃げるなんていやでごぜーます! 楓おねーさんや美優おねーさんも一緒じゃねーと仁奈はいやです!」グスッ

ミユ「姫……」

仁奈「姫とか、まるで夢みてーな話しねーでくだせー! こわいのが来るのなら、一緒に逃げるですよ!」

カエデ「……ああ、姫、私達はその言葉だけで十分です。ありがとうございます、それだけで私達は」

ミユ「覚悟は決まりました。例えなにが来たとしても、姫のところには行かせません! だからお早く!」バシッ

ゴゴゴゴッ

仁奈「べ、ベッドが動いて階段が現れたですよ……!? うぅ、だめでごぜーます! やっぱり1人なんて――」


ドゴォン!!

仁奈「ひっ!?」

――部屋の扉が破壊され、ついに三体の神がその姿を現した。

ミユ「ついにここまで来たか……! 悪い炎の神々よ!」

炎の神A「ついにみつけたぞぉ、そこにいるちっせーのがこの国の姫だなぁ!?」

炎の神B「外にいるのはあらかた焼きつくしてきたぜぇ、あとはてめーらを焼いちまえばこの国は我らのものってなぁー!」

炎の神C「我らがいるだけですでに熱いだろう……? 泣いて謝れば許してやらんこともないぞぉ?」

メラメラ パチパチッ

仁奈「……うぅ……そういえばさっきからずっと熱いでごぜーます……熱い……いやだ……」

ミユ「姫、お気を確かに! くっ、こうなればここで貴方達を斬ります!」シャラッ!

炎の神B「やれるのかよぉー? ヘヘヘッヘヘッ!」

ミユ「ここは私が時間を稼ぎます! カエデは姫を!」

カエデ「ミユ!? しかしそれでは!」

ミユ「姫が1人がいやだと言われているのです! ならば賢者カエデ、貴女がそばにいてあげてください!」

仁奈「だ、だめでごぜーます、美優おねーさんも一緒に……!」


炎の神C「いかせるかよぉー!」ヒュパァ

ミユ「炎の鞭か……! くっ!」ザシュッ

炎の神A「おお、やるのぉー。ならばコレはどうだぁ~!」ヒュン

カエデ「炎の剣!? ミユ!!」

ミユ「私の事はいいから、早く!!」ザシュッ

カエデ「くっ……ミユ……! ごめんなさい! ……姫、無礼申し訳ありません、ですが貴女をここから」

炎の神B「それは無理だなぁー!」ドヒュン

仁奈「楓おねーさん! あぶねーっ!!」

カエデ「はっ!? シール――」

炎の神B「おせえぇー!!」ドフゥウウウ

――瞬間移動した炎の神の攻撃がカエデに直撃し、その全身が炎に包まれる!

カエデ「きゃああああ!?」

仁奈「か、楓おねーさんが! 火に、火に! ああ!?」

ミユ「カエデ!? うそ、そんな――」

炎の神A「よそ見はいけねぇなぁー!」ヒュン


ミユ「しま――あああっ!?」

――ミユもまた炎の神の攻撃によって燃え上がり、手にしていた剣は熱によって溶けていく。

仁奈「あ、あぁ……熱い……燃えちゃう……やだ……」

炎の神C「これで残るはてめぇーだけだぁー! 熱いだろぉー? あぁー?」

仁奈「いやだ……1人になっちゃうのはいやでごぜーます……熱くて……誰か……」

炎の神B「呆気なかったなぁーおい!」

炎の神A「あぁー、これでこの国も我らのものだぁー!」ヒュン

仁奈「誰か助けてくだせー!!」

キィイイイイン!

――炎の剣が振り払われる直前、仁奈の叫びに応えるように、黒いなにかが彼女の前に降り立った!

ヒュボ……

炎の神A「あぁ……なんだぁ……我の剣が……消えて……」

――それだけではない。その存在から撒き散らされた黒い羽がミユとカエデに触れて、彼女たちに纏わりついていた炎を消滅させる!

ミユ「ああ――あれ?」

カエデ「熱く……ない?」


炎の神B「なんだぁー! どうなってやがる!」

仁奈「……」ブルブル

「……私を呼んだのは貴女ですか?」

仁奈「え……?」オズオズ

仁奈「……つば、さ……?」

――見上げた仁奈の目に写ったのは、まるですべてを飲み込むかのような大きな黒い翼。そして、それを持つ誰か。

「……助けてくれと呼びませんでしたか?」

仁奈「……よ、呼んだでごぜーます……」

「認めるというのであれば、それは、契約することになりますが……いいのですね?」

仁奈(あれ、この感じ、どこかで……どこで……でも、今は……!)

カエデ「まさか……いけません姫! そいつは、恐らく伝説の――」

仁奈「どうでもいいでごぜーます! お願いするです! みんなを、助けてくだせー!!」

「かしこまりました」

――黒い翼を持つ存在は仁奈の言葉に頷くと、炎の神達に視線を向けて口元に侮蔑の笑みを浮かべた。

「というわけですので、貴方達には消えてもらうことになりました。構いませんね?」


炎の神A「あぁー!? 突然出てきてなんだてめぇーは!」

炎の神B「我々は神だぞ! 1回や2回攻撃を防いだ程度でいい気になるなよぉー!」

炎の神C「お前も熱くしてやろぉかー!」

「……力は先程見させてもらいましたが、この程度の力で神を僭称するとは……それに、攻撃を防いだ、などと。ふふっ」

ゴゴゴゴゴッ

――笑いながら目の前に真っ黒な球体を創りだすと、それに手を添えながら黒い翼を持つ存在は言った。

「攻撃というのは、こういうことを言うんですよ」

ドパァ!!

炎の神A「な」

炎の神B「え」

炎の神C「は?」

キュオォオオオオオ!!

――その瞬間を炎の神達はただ見ることしか出来ず、その直後、炎の神達は跡形もなく消滅した。


「さて、契約通り貴女を助けましたよ? この対価を頂くとしましょうか」クルリ

仁奈「……え……ちひろ、おねーさん……?」

――黒い翼を持つ存在が振り向いた時、そこには見慣れた顔の人物が立っており、仁奈は不思議そうな表情で相手を見る。

仁奈「どういうことでごぜーます……? ちひろ、おねーさんが、いまの……あ、あと翼が生えてて……あれー?」

「……貴女、私を誰かと勘違いしていませんか? 今みたいな恐ろしいことをする人が、貴女の知り合いにいるんですか?」

仁奈「お、恐ろしくなんかねーですよ! だって、ちひろおねーさんは仁奈達を守ってくれたでごぜーます! それに……」

「……それに?」

仁奈「すげーかっこよかったですよ!」キラキラ

「……まったく、変わった子ですね……私と契約したというのに、そんなに明るく振る舞って……」

仁奈「だ、だめでごぜーますか……?」

「いいえ……しょうがないですね。貴女からもらう対価は決めました」スッ

仁奈「ちひろ……おねーさん……?」

「早く、元気に――」


――――明朝、プロダクション、事務室

チュンチュン

仁奈「……!」

ガバッ

仁奈「…………あれー?」クビカシゲ

仁奈(な、なんだかすげー夢を見てた気がするですよ……でも、なんだったっけ……? 思いだせねーです?)ギュッ

仁奈「ん……あっ、ちひろおねーさん、ずっと手を握ってくれやがってたんですか……」ギュッ

ちひろ「……」ギュッ

仁奈「……えへへ……それにしても、目を閉じてるってことは寝てるですかね……ちひろおねーさん……」ジーッ

ちひろ「……起きてますよ?」ニコッ

仁奈「うひゃあ!? び、びっくりさせねーでくだせー!?」

ちひろ「ご、ごめんなさい。でも、目を閉じていたのは寝てたわけじゃないからね?」

仁奈「ほんとーでごぜーますかー?」

ちひろ「コホンッ! それよりも、仁奈ちゃん、体調の方はどうなの?」

仁奈「……あっ! そういえばもう全然熱くねーですし、気持ち悪くもねーです! すげーっ! 治ったーっ!」ピョンピョン

ちひろ「ダメダメ、まずは熱をちゃんと測ってからですよ。治ったって判断をするには早すぎます」ゴソゴソ


仁奈「でもきっとこれは、ちひろおねーさんがそばにいてくれたおかげでごぜーます!」

ちひろ「……私はなにもしてませんよ。それよりほら、仁奈ちゃん、体温計を腋に挟んで……そうそう」

仁奈「なにもしてねーことねーです! 分かったですよ、きっとあのすげー夢はちひろおねーさんがいてくれたから見たですよ!」

ちひろ「すごい夢ですか……どんなのを見たんですか?」

仁奈「そ、それがよく覚えてねーですよ……でも、すげー夢だったってことは分かるです!」

ピピピッ

ちひろ「仁奈ちゃんがそこまで言うなら本当にすごい夢だったんでしょう――36.6℃、平熱になっています」

仁奈「やったー!」ピョンピョン

ちひろ「もう仁奈ちゃんったら。でも、やっぱりそうやって元気でいてくれるほうがいいですね……」

仁奈「ふふふ、もう仁奈は元気でごぜーますよ! だから」グゥゥゥ

仁奈「……あ……///」

ちひろ「……ふふっ。お腹空いてますよね、それじゃあご飯にしましょうか、そのあとで、お風呂に入ってさっぱりしましょう」

仁奈「はーい♪」

――それから、結局仁奈が夢の内容を思い出すことはなく、しかしこの体調を崩した日から、
仁奈はちひろにさらに甘えるようになるのであった。

〈終〉

シンデレラガールズ劇場759話の仁奈ちゃんのママ候補にちひろさんが! ちひろさんがいた! アーッ!! 嬉しい!!
定期的にステマしていた、ちひろさんと仁奈ちゃんの組み合わせ、もっと流行ってくれないかなぁ、流行ってほしいなぁ
読んでくださった方ありがとうございました

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