モバP「球磨焼酎?」小日向美穂「はい」 (60)


モバマスSSです。
プロデューサーはP表記。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1472388994


P「しかし、どうして実家から美穂のところへ焼酎が送られてきたんだ?」

美穂「以前、熊本のお話をプロデューサーさんにしたじゃないですか」

P「ああ、確かにあったな。熊本城とか天草の話だよな?あとは、球磨焼酎の話とか」

美穂「はい。そんな話をしたって実家の母に伝えたら、それじゃあ美味しいお酒をプレゼントしようっていうことで、こうして送られてきて…」

美穂「それにプロデューサーさん、お酒好きでしたよね?」

P「ああ、好きだよ」

P「しかし、ありがたい話だけど、美穂のお母さんたちに申し訳ないことをしてしまったな」

美穂「いえいえ、世話焼きな母ですから」クスッ


美穂「よ、良ければですけど…今日、わ、私の部屋でお飲みになりませんか?」

P「…へっ?美穂の部屋で?」

美穂「一升瓶を数本送って来てて、私だと運べなくて…」

美穂「それに、えっと、その…美味しい飲み方とかもあるので、それも教えたりできたらなと思って…」

P「そういうことか…ん?美味しい飲み方?」

美穂「はいっ、おじいちゃんが人吉の出身なので、いつも米焼酎ばかり飲んでるんです」

美穂「そのおかげで、小さい頃からおじいちゃんや父から仕込まれてましたから♪」

P「ああ、なるほど」

美穂「それに、私の部屋でしたらそのお酒に合うようなおつまみもありますし」

P「ほう…ほう?」

美穂「なので、今夜時間があるのでしたら、どうかなと思ったのですけど…」

P「…うん、今日は夕方からは時間も空いてるから、お言葉に甘えるよ」

美穂「本当ですか!? よかったあ、ありがとうございます!」パアァ

美穂「……よしっ!」グッ


・・・・・・・・・・

夜 美穂の部屋


P「お、おじゃましまーす」

美穂「どうぞ、そちらのテーブルでくつろいでいてください」

P「ああ、ありがとう」

P「あんまり女子寮の部屋に入ることってないから、なんだか落ち着かないな」

美穂「そうなんですか?たまにプロデューサーさん、夜見かけたりしますけど?」

P「あれは酔いつぶれたダメな大人たちを運ぶために仕方なく入ってるだけだよ」アハハ

美穂「あんまりそういうこと言ってると、隣の部屋の人にバレちゃいますよ?この部屋壁が薄いので」

P「えっ、ちょっ…」キョロキョロ

美穂「…なんて、ウソです♪」クスッ

P「焦ったあ…美穂がそんな冗談言うとか珍しいな」

美穂「えへへ、そうですか?」


P「ん?この段ボールの中に入ってるのが、そう?」

美穂「そうです。プロデューサーさん、開けてみてください」

P「分かった。んっ…本当に一升瓶が二本入ってる。よっと…」ガサゴソ ゴトン

P「えっと…『武者返し』と、もう一本は…」

美穂「それは『豊永蔵(とよながくら)』って言います。両方とも、球磨の米焼酎ですね」

美穂「ちなみにですけど、球磨地方のお水を使って、球磨地方で仕込んだ米焼酎を球磨焼酎って定義しているんですよ」

P「へえ、そうなんだ。美穂は物知りだなあ」

美穂「えへへ…」テレテレ


美穂「あとは...これですね」ガサゴソ コトッ

P「これは?」

美穂「『ガラ』って言って、球磨の人たちが焼酎を飲むときに使う酒器です。この中に焼酎を入れて、燗付けするんです」

P「鹿児島の焼酎にも似たようなのがあるよな」

美穂「そうですね。それと、これです」コトッ

P「これは小っちゃいけど…駒?」

美穂「これは、ソラギュウっていう盃ですね。私も小さい頃、駒みたいに回してお母さんから怒られたりしました」クスッ

美穂「こうした小さい盃で焼酎を飲むのが球磨の特徴です」

P「へえ、これも盃なのか。底が尖ってるから、ちゃんと置けないけど…」

美穂「それがポイントなんですよ?」

P「?」

美穂「!…と、とりあえず、今から準備しますね!」

P「あ、ああ。お願いするよ」


※「ガラ」(手前にあるのが、「チョク」と呼ばれる猪口)
http://imgur.com/0NE1pWO

※「ソラギュウ」
http://imgur.com/ibQGI11


美穂「えっと…じゃあ、まずは豊永蔵の方からでいいですか?」

P「ああ。俺じゃあ分かんないから、美穂に任せるよ」

美穂「えへへ、ありがとうございますっ」

P(美穂に任せるっていうのもおかしな話だけど)

美穂「お酒を入れて…と」コポコポ

美穂「後は、電熱器をセットして…」ピッ

P「電熱器?」

美穂「はい。コンロで直火に当てるのはちょっと危険なので…本当は囲炉裏でじっくり温めるのが一番美味しく仕上がります」

P「電子レンジで温めるのはだめなの?」

美穂「…はい?」

P「!?」ゾクッ


美穂「プロデューサーさんは何を言ってるんですか?」ゴゴゴ

P「あ、いや、その…」

美穂「そんなことしたら、せっかくの米焼酎の風味が飛んじゃうじゃないですか」ゴゴゴゴ

美穂「地元の人たちが、丹精込めて作った焼酎なんですよ?それをレンジなんてものに入れてしまうなんて、冒涜もいいところです」ゴゴゴゴゴ

P「え、えっと…すみません」

美穂「いくら信頼してるプロデューサーさんでも、言っていいことと悪いことがありますよ!」

P「は、はい、気を付けます…」

美穂「もう…同じ言の葉が再び紡がれるときは、火の国の神が棲む灼熱の業火に焼かれんぞ…」ブツブツ

P(何かものすごい物騒な熊本弁が聞こえたんだが…)


美穂「…よし、こんな感じかな」ピーッ

美穂「プロデューサーさん、できましたよー」

P「少しずつお酒のいい匂いがしてたから、つい待ち遠しかったよ」

美穂「えへへ…それじゃあ、早速お注ぎしますね」

P「美穂に、ましてや現役のアイドルにお酌してもらうなんて何だか悪いなあ」

美穂「いえいえ、好きで私がおもてなしさせてもらってますから♪」

美穂「よっと…」トクトク

P「おっとと」

寿福酒造場の武者返しと豊永酒造の豊永蔵とはいい球磨焼酎をチョイスしてきたな
両方とも常圧じゃん


P「そういえば、これって水で割ってるの?」

美穂「いえ、割ってないですよ?」

P「ってことはストレート?」

美穂「はい。水で割って薄めたものを出すっていうのは、恥だからやめておけとよくおじいちゃんから言われたので…」

P「いわゆる、おもてなしの心ってやつなのかな」

美穂「見栄っ張りなのかもしれないですけどね」クスッ

美穂「それにお水で割るよりも、そのままの方がお酒本来の美味しさもしっかり分かりますから」

確か底に穴が開いてるんだよな


P「でも、ストレートの焼酎を燗付けしたのって飲んだことないなあ…アルコール高いからむせたりしそうだけど」

美穂「大丈夫ですよ。見て分かるとおり、お猪口自体が小さいので、アルコールのキツさもそこまでないと思いますから」

P「確かにそうだな。…って何でそんな具体的なことまで美穂は知ってるんだ?」

美穂「……」プイッ

P「なぜ目をそらす」


美穂「と、とにかく、冷めないうちに飲んでください!」

P「あ、ああ。それじゃあいただきます」

P「…」グイッ

美穂「……」

P「うん、美味しいな」

美穂「本当ですか!」パアァ

P「ああ。確かに、アルコールのキツさがあんまりしない」

P「それよりむしろフルーティーで…米焼酎ってこんなに香りが良いんだな?びっくりしたよ」

美穂「こうして燗にすると、香りも味もよく分かるんですよね」

P(どうしてそんなに分かっているのかは聞かないようにしよう、うん)


美穂「ほらプロデューサーさん、どんどんどうぞ」トクトク

P「おっと、ありがとう」

P「んっ…うん、うまい」

P「しかしこの盃、底が尖ってるからお酒を注がれると置けなくなるな」

美穂「実はそれがその盃の一番の特徴なんです」

美穂「話によると、『そら』ってお酒を注がれたら『ギュウ』っとお酒を飲まないといけないから、ソラギュウっていう名前が付いたらしいですよ?」

P「へえ、面白い話だな」

美穂「ということでプロデューサーさん、そらっ♪」トクトク

P「おっ、それじゃあ…」ギュウ


P「飲みやすくて美味しいから、ついお酒が進んでしまうよ」アハハ

美穂「そうですよね、美味しいお酒ってついそれだけでも飲んでしまって…あれ?」

美穂「ああっ!わ、忘れてました!」ガタッ

P「美穂、どうした?」

美穂「ち、ちょっと待ってください!」タタタ

美穂「…すみません、せっかくこっちも用意してたのに…どうぞ、おつまみです」コトッ

P「これは…辛子れんこんだよな?あとこのビンのは?」

美穂「瓶に入っているのは、『うるか』です」

P「うるかってあの鮎の?」

美穂「はいっ、球磨川では鮎も獲れますから♪」


P「辛子れんこんにうるかかあ…いかにもお酒に合いそう!って感じだな」アハハ

美穂「私もこの二つは大好きです♪米じょうちゅ…」

P「ん?」

美穂「米…ご、ご飯と合わせても美味しいですからね!」

美穂「この2つさえあれば、ご飯何杯もいけちゃいますよ!あ、あははー!」

P「そうだなー、両方ともご飯にピッタリだもんなー」


P「じゃあ、辛子れんこんから…」アムッ

P「うんっ、美味い!…けど辛っ!めちゃくちゃツンと来るなこれ!」

美穂「だ、大丈夫ですか?と、とりあえず…」トクトク

P「あ、ありがとう…」グイッ

美穂「一口でそんなに食べちゃうと、だれでもそうなってしまいますよ?少しずつかじった方がそこまで辛くないと思います」

P「そうだな、気を付けるよ…」


P「そういえば、美穂のおじいさん人吉に住んでるって言ってたよな?」

美穂「はい。実家の熊本市内からだと少し遠いので、たまにしか遊びに行けなかったですけど…」

美穂「でも、のどかでとても良いところですよ?温泉もありますし、自然も沢山で…」

美穂「それに、SLが熊本から出ていて、それがとても人気なんです」

P「へえ、魅力的なところなんだろうなあ」

美穂「はいっ。プロデューサーさんも、ぜひ訪ねてみてください」

美穂「そうだ、もしよければ私がご案内します!」

P「それは心強いよ。うん、機会があったら美穂に案内してもらおうかな」アハハ

美穂「えへへ…」


美穂「…あら?」ピチョン

P「おっ、お酒が空いちゃったな」

美穂「どうしますか?もう一本の方も飲んでみますか?」

P「ああ。味の違いも楽しんでみたいし、そうしようかな」

美穂「分かりました。それじゃあ用意しますね」

・・・


・・・

美穂「…よしっ」ピーッ

美穂「はいっ、どうぞ」コトッ

P「ありがとう。えっと、この酒はなんだったっけ…?」

美穂「『武者返し』です」

美穂「確かこの酒蔵の近くに神社があって、そこが、えっと…夏目友人帳っていうアニメの舞台になったらしいです」

P「ああ、名前は何か聞いたことあるなそのアニメ」

美穂「私の友達も聖地巡礼だ!って言って、その神社に行ってましたね」


美穂「ではプロデューサーさん、どうぞ」トクトク

P「うん」グイッ

P「…これも美味しい。さっきの豊永蔵とはまた違う味だな」

美穂「米焼酎って一くくりにされてますけど、実際はかなり味も複雑なんですよ?」

P「確かに。こっちは少し味がしっかりしてて、飲みごたえがある感じがするな」


美穂「このうるかもどうぞ食べてください」

P「おお、そうだった」アムッ

美穂「どうですか?もしかしたら苦手な味かもしれないですけど…」

P「うんっ、苦っ…ああ、でも美味しい。この味クセになりそう」

美穂「クセがあるから好みが分かれてしまいますけど、好きな人は本当に好きですよね」

P「あー、焼酎と飲むと本当に合うなあ」ゴクッ

P「これはお酒がドンドン進みそうだよ」アハハ

美穂「そうですよね。うるか特有の風味を焼酎がスッっと流してくれて、でもそん後両方の余韻が広がって…」

美穂「……」ゴクリ

P「喉を鳴らさない」ペチ

美穂「あう」


美穂「プロデューサーさん、どんどん飲んじゃいましょう」トクトク

美穂「お酒はまだたくさん残ってますし♪」

P「おいおい、流石に焼酎2升もなんて飲めないからな?」アハハ

P「でも美味しいから、ついつい飲み進んでしまうな」ゴクッ

美穂「……」

_________
______
___


___
______
_________

P「…うう、かなり飲んだな」

美穂「プロデューサーさん、大丈夫ですか?」

P「ああ。だいじょうぶだー…うおっと」グラッ

美穂「わわっ、プロデューサーさん!」

美穂「しばらく安静にしてた方がいいですよ!ちょっとここで横になっててください!」

P「ああ、そうする、よ…」

P「…zzz」

美穂「……」




美穂「……」








美穂「」ニヤリ




美穂「プロデューサーさん、ようやく寝ましたね…」

美穂「この時を…この時を待ってましたよ」

美穂「熱燗や焼酎のお湯割りもそうだけど、温かいお酒を飲んだら酔いがかなり回っちゃうよね」

美穂「それが焼酎のストレートとか、強い度数のお酒ならなおさらで…」

美穂「プラス、あのソラギュウのおかげでお酒注いだらどんどん飲んじゃうから…」

美穂「お母さんから教えてもらったこの必勝法、効果てきめんだなあ」

美穂「お母さんもこの方法でお父さんと既成事実を...」


美穂「えへへ、ぐっすりですねプロデューサーさん」

P「zzz」

美穂「あれだけ飲んだら、しばらくは起きないだろうし…」

美穂「…」ゴクリ

美穂「女は度胸、女は度胸、女は度胸…」ブツブツ

美穂「…よしっ」

美穂「よいしょ、っと…」ギシッ

美穂「隣に来たけど、プロデューサーさん起きてないよね…?」

P「zzz」

美穂「それじゃあ…」

美穂「……」





美穂「え、えいっ!」ギュッ





美穂「え、えへへ…抱きついちゃった、プロデューサーさんに…」

P「zzz」

美穂「流石に既成事実は…」

美穂「き、既成事実は…あうう///」ボフン

美穂「でも、プロデューサーさんお酒も飲んでるからかなあ…ポカポカしてて暖かくて…」

美穂「お酒の匂いも落ち着くかも…」

美穂「それにいつものプロデューサーさんの匂いもするし…」

美穂「プロデューサーくんを抱きしめて寝るよりずっとここちよく、て……」

美穂「…zzz」スゥスゥ

P「zzz」

美穂「えへへ…」ギュウ


・・・・・・・・・






その後、再び同じ手でプロデューサーを酔い潰し、美穂が既成事実を見事に達成するのは5年後くらいのお話。



おわり



美穂って絶対お酒強そうだよね。
ちなみにですが、今作中で美穂がお酒にやたら詳しいのは、おじいちゃんの受け売りと、郷土愛ゆえに地元のことをよく知ろうと沢山調べたためです。お酒は20歳になってからというのを忠実に守ってるいい子です。
でも、美穂って絶対お酒強そうだよね。
お酒は20歳になってから。

あなたのりっちゃんSS好き

>>18
そこをわかってくださる方がいるとは...!常圧はクセが出たりして手間がかかるから少なくなってるんですよねー。
ただ、味のバリエーションに富んでて飲んでも面白いのは常圧の焼酎ですよね。

>>20
そういうタイプの盃もありますね。飲まないと置けない盃を「可盃(べくはい)」と呼ぶそうですよ。

>>53
ありがとうございます!

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom