乃々「もりくぼはサプライズが苦手です」 (18)

輝子「……」

乃々「……」

まゆ「おはようございま――あら」

輝子「ん……あ、まゆさん……おはよう」

乃々「あ、おはようございます……」

まゆ「うふ、おはようございます」

まゆ「珍しいですね、二人とも机の下にいないなんて」

輝子「たまにはそんなときもある……フヒ」

乃々「別に年中机の下にいるわけではないですし……」

乃々「……いえ、割合的には一番多いかもしれませんが」

まゆ「うふふ、わかってますよ♪」

まゆ「……二人はテレビを見てたんですか?」

輝子「ああ……なんとなく」

まゆ「なんとなく……」

輝子「見たいテレビがあったわけでもないが、なんとなく見ようかって話になって……フヒ」

乃々「……そしたらこの番組がやってたんです」

まゆ「……ドッキリ番組ですか?」

乃々「はい……今日の夜にやるやつの宣伝番組ですけど……」

まゆ「ああ、なるほど……」

まゆ「……せっかくならまゆも見ようかな?」

乃々「あ、どうぞ……」

輝子「フヒ……なら、乃々さん、ちょっとつめないと……」

乃々「このソファはそんなに狭くないんですけど……」

輝子「ジョークジョーク……」

乃々「……」


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まゆ「うふふ……それじゃ、お邪魔します♪」

乃々「あ……お邪魔されます」

輝子「これでアンダーザデスクじゃなくてオンザソファになったな」

まゆ「うふ、ユニット名が変わりますねぇ……」

乃々「えぇ……嫌なんですけど……アンダーザデスクのままの方がいいんですけど……」

乃々「オンザソファとか目立ちそうでむーりぃ……」

輝子「確かに……日当たりも良さそうだしな……」

輝子「キノコ的にはつらいやつもいる……フヒ」

まゆ「うふふ……ならアンダーザデスクのままですね♪」

輝子「だな」

乃々「……ふふ」

まゆ「ところで、二人はドッキリされたことってありますか?」

乃々「いえ……」

輝子「まだないな……」

まゆ「あら、そうなんですか?」

輝子「も、もしかしてまゆさんはあるのか……?」

まゆ「まゆは毎日ドッキリしてますよ」

乃々「ま、毎日……!?」

まゆ「はい♪」

まゆ「プロデューサーさんを見るたびにドッキリ……って」

輝子「それは違うと思う」

乃々「それはドッキリというかドキドキなんですけど……」

まゆ「じゃあ……エレベーターのドアが開いたらプロデューサーさんが目の前にいてドッキリ……とか?」

輝子「た、確かにそれはある意味ドッキリだな……いや、ビックリか……?」

乃々「どっちにしろちょっと意味が違うんですけど……」

まゆ「そうでしたか……うーん……じゃあ……」

乃々「……あの、ドッキリの説明した方がいいですか……?」

まゆ「うふ、冗談です。ちゃんとわかってますよ♪」

乃々「……」

輝子「きょ、今日のまゆさんはお茶目だな……?」

乃々「何かいいことでもあったんですか……?」

まゆ「いいこと……があったわけじゃないですけど……」

まゆ「いいことを思いついたんです♪」

乃々「……?」

輝子「……?」

輝子「ま、まあいいや」

輝子「えっと……結局まゆさんはドッキリをされたことあるのか……?」

まゆ「ありませんねぇ」

乃々「あ、そうなんですか……」

輝子「ということは、アンダーザデスクは誰もドッキリの経験がないんだな」

まゆ「そうですね」

まゆ「それこそ、この番組を見て勉強しなきゃかも……ふふ」

乃々「あう……確かにそうかもしれませんね」

乃々「もりくぼたちもいずれドッキリされるかもしれませんし……」

輝子「そうだな……」

輝子「机の下の床が急に開いて滑り台になってたりとかな」

乃々「えぇ……」

まゆ「もしかしたら、まゆたちがする側になるかもしれませんけどね」

輝子「あ、そうか……」

輝子「う、うまくポーカーフェイスできるかな……?」

乃々「……」

乃々「……でも」

乃々「もりくぼ、ドッキリ……とか、サプライズとか……そういう驚くの苦手なので……」

乃々「正直、あまりやりたくはないです……」

輝子「そうなのか……?」

乃々「はい……」

乃々「急に驚くことされたら、もりくぼ……心がプチってつぶれちゃいます」

乃々「もりくぼの心はプチトマトよりやわらかく小さいので……」

まゆ「プチトマトよりですか……」

乃々「なんならイクラより小さくてもいいです」

輝子「どんどん小さくなってるな……」

乃々「ともかく、もりくぼは心がか弱いのです……よわくぼです……」

乃々「驚かされたら死んじゃうくらいよわくぼです……」

乃々「何がくるかわかってないと、心の準備ができてないので死んじゃうよわくぼです……」

乃々「それに……」

乃々「……」

輝子「……それに?」

乃々「……いや、なんでもないです」

まゆ「……」

まゆ「……あの、乃々ちゃん」

乃々「あ、はい、なんですか?」

まゆ「さっき、まゆいいこと思いついたって言ったじゃないですか」

まゆ「あれって……乃々ちゃんの誕生日パーティをサプライズで開くことだったんです」

乃々「!」

輝子「そ、そうだったのか……?」

まゆ「はい……まだ何も決めてませんけど、後で輝子ちゃんにもお話するつもりでした」

輝子「そうか……」

まゆ「……今日の朝、乃々ちゃんの誕生日もうすぐだから何しようかな……って考えてたんです」

まゆ「それで、じゃあパーティ開いたら喜んでくれるんじゃないかな……って思ったんです」

まゆ「……でも、乃々ちゃんはサプライズって苦手なんですよね」

乃々「あ、はい……」

まゆ「じゃ、この案は無しですね」

乃々「……あの、ご、ごめんなさい」

まゆ「いえ……乃々ちゃんが謝ることはありません」

まゆ「乃々ちゃんの誕生日だから、乃々ちゃんに一番喜んでほしいんです」

まゆ「嫌なことなんてない……最高の一日にしてあげたい……」

輝子「……」

乃々「……」

まゆ「そういう意味では今のうちに知れてよかったかもしれません……乃々ちゃんに嫌な思いをさせずにすんで」

乃々「……」

乃々「……で、でも、あの……気持ちは……本当、うれしいので……あの……はい」

まゆ「うふふ、そういっていただけるとうれしいです」

まゆ「……さて……じゃあ、サプライズもできなくなったことですし」

まゆ「輝子ちゃん、乃々ちゃん」

輝子「ん?」

乃々「……なんですか?」

まゆ「乃々ちゃんの誕生日パーティの内容、一緒に考えましょう?」

乃々「……へ?」

乃々「も、もりくぼもですか……!?」

まゆ「はい♪」

まゆ「乃々ちゃんが喜ぶ、一番のパーティを作りましょう」

乃々「え、えぇ……?」

輝子「……自分が作ったら、驚くこともないから……心がつぶされることもない」

輝子「なるほど……」

乃々「えぇ……キノコさんも乗り気なんですか……?」

輝子「私も大切な仲間のボノノさんは祝いたいからな……フヒ」

輝子「それに、ボノノさんに喜んでもらいたい気持ちは私も同じだ……」

乃々「……」

まゆ「駄目ですかぁ……?」

乃々「いや……あの……」

まゆ「……もしかして、パーティも苦手……とか?」

乃々「……あ……えっと……」

乃々「……あの、大勢の人が集まるのは苦手です……」

乃々「でも……少人数……お二人だけなら……なんとか……」

まゆ「!」

乃々「あ……でも、本当大人数はむーりぃ……なので……お二人だけと……パーティ……なら、なんとか……」

まゆ「そうですか……よかった……♪」

乃々「あう……」

輝子「じゃあ、次は内容を決めてくか」

まゆ「そうですね」

乃々「え……つ、続けるんですか……?」

まゆ「好きな飲み物はなんですか?」

乃々「え……お、オレンジジュース……?」

まゆ「なるほど……じゃあ、飲み物はそれで……」

輝子「ケーキの味は何がいい……?」

乃々「あ……えっと……チョコの……とか」

輝子「チョコケーキか……お店とかは?」

乃々「いえ、別にそこまでは……」

輝子「了解だ……フヒ」

まゆ「何かほか食べたいものとかありますか?」

乃々「食べたいもの……えぇ……」

乃々「……いえ、別に……なんでも……」

輝子「い、一番困る答えだな」

乃々「え、えぇ……じゃあ……えっと……」

まゆ「出なかったら無理に出そうとしなくてもいいですよぉ」

まゆ「うーん……何にしようかなぁ……」

まゆ「とりあえずサラダは用意して……あ、嫌いな野菜とかありますかぁ?」

乃々「あ、いえ、特には……」

まゆ「そうですか……ふふ、いい子ですね」ナデナデ

乃々「あう……」

輝子「あ、それから――」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


輝子「――このくらいか?」

まゆ「そうですね」

まゆ「ふふ、乃々ちゃんの誕生日パーティの内容決まりました♪」

乃々「……うぅ……もりくぼの中身が全部さらけ出されました……」

乃々「だいぶ恥ずかしいんですけど……」

乃々「正直、サプライズされてた方がよかったかもしれません……うぅ」

乃々「でも、サプライズされてたらされてたで……」

乃々「うぅ……どっちにしろむーりぃ……」

まゆ「……や、やりすぎだったでしょうか……?」

輝子「でも……これで、ボノノさんがとても楽しめるパーティになったと思う」

乃々「あう……それはそうなんですけど……」

乃々「そういう意味では……あの、ありがとう……ございます」

まゆ「……よかった、ふふ」

まゆ「さて……当日は……乃々ちゃんはお仕事でしたっけ?」

乃々「あ、はい……」

まゆ「じゃあ……このくらいの時間からで大丈夫でしょうか?」

乃々「……だ、大丈夫です……たぶん」

まゆ「ふふ、じゃあこの時間に準備しておきますねぇ」

輝子「場所は……まゆさんの部屋か……?」

まゆ「そうですねぇ……人の入らない、3人だけの場所ってなると……」

乃々「わかりました……じゃあ、あの、終わったら……向かいます」

まゆ「ふふ、じゃあ待ってますねぇ」

輝子「美味しいご飯を作って待ってる……フヒ」

輝子「……作るのはまゆさんだが」

まゆ「乃々ちゃんも手伝ってくださいねぇ」

輝子「フヒ……!?」

乃々「……」

乃々「……」

乃々「……ふふ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


乃々(……そして、誕生日当日です)

乃々(お仕事を終えたもりくぼは、まゆさんの部屋まで向かっています)

乃々(『お仕事終わりましたけど』と連絡をしたら『お疲れ様。ゆっくりでいいですよ、待ってますから』と帰ってきました)

乃々(でも……もりくぼは少し駆け足で向かっています)

乃々(もりくぼのためのパーティの準備がされているあの部屋へ向かって)

乃々(……だって、楽しみですから)

乃々(……)

乃々(……もりくぼはサプライズが苦手です)

乃々(何の準備もされてない状態で驚かされると心の弱いよわくぼはプチっと潰れて死んでしまいます)

乃々(それに……)

乃々(……)

乃々(……サプライズには、隠し事がつきものです)

乃々(当人に知られないように、当人以外の間だけで話が進みます)

乃々(……もりくぼはそれが怖いです)

乃々(だって、当人は自分がのけ者にされたように感じるからです)

乃々(独りであるように感じるからです)

乃々(誰もそばにいないように感じるからです)

乃々(……そして、周りは独りのもりくぼの話をしています)

乃々(もりくぼに近寄らず、もりくぼを観察しています)

乃々(私の知らないところで私の話がされています)

乃々(それが怖い)

乃々(だから、もりくぼはサプライズが苦手です)

乃々(……そんなもりくぼをまゆさんもキノコさんも助けてくれました)

乃々(もりくぼが嫌にならないように……って)

乃々(もりくぼが一番楽しめるように……って)

乃々(そんなもりくぼを叱責するわけでもなく)

乃々(そんなもりくぼに落胆するわけでもなく)

乃々(ただ、もりくぼを喜ばせようとしてくれました)

乃々(……自分で言うのもおかしいのですが、正直甘やかしすぎだと思います)

乃々(至れり尽くせりです)

乃々(いえ、もりくぼとしてはうれしいんですが……)

乃々(……でも)

乃々(でも、ちょっとだけ――)

乃々(――そんなことを考えているうちに女子寮に着きました)

乃々(まゆさんの部屋までもう少しです)

乃々(……)

乃々(……もりくぼは、今日までお二人にたくさん助けられてきました)

乃々(対して、もりくぼは同じくらいお二人を助けたでしょうか?)

乃々(……)

乃々(今日、もりくぼは一つ大人になりました)

乃々(昨日までの私とステータスが変わっています)

乃々(……だけど、実感はわきません)

乃々(実感はわきませんけど……)

乃々(……でも)

乃々(もりくぼは、一つ大人になったんです)

乃々(……)

乃々(……)

乃々(……)

乃々(つきました。まゆさんの部屋です)

乃々「……」

乃々「……」ガチャ

輝子「あ……ボノノさん」

まゆ「速かったですねぇ……まだ準備がちょっと終わって――」

乃々「――あっ……あ……あの……あのっ、まゆさん……キノコさん……いえ、輝子さん……!」

輝子「!」

まゆ「!」

乃々「えっと……その……あの……いっ、い、いつも、ありがとうございます……っ!」

乃々「あの……もりくぼ……きっと、本当に駄目な人間だと思います」

乃々「今日だって……お二人に助けてもらって……」

乃々「だから、もりくぼはこんなにも辛くなくて……」

乃々「でも、あの……もりくぼ、お二人を助けたことなんてぜんぜん……なくって……」

乃々「甘えてばっかりで……助けてもらってばっかりで……」

乃々「だからっ……あの……えっと……その……」

乃々「きょ、今日……もりくぼ、大人になりました……一つだけ」

乃々「だから、あの……ちょ、ちょうどいい機会……っていうのも変ですけど……えっと……」

乃々「いっ……いつも、ありがとうございます……!」

乃々「でっ……こっ……これから、これからは……っ!」

乃々「もりくぼも……もりくぼも、お二人を助けられるように……がんばりたいです……!」

乃々「がんばりたい……ですけど……まだ何の案も浮かんでませんけど……」

乃々「でも……ずっと、甘やかされるだけなのも……もりくぼ……心が……」

乃々「心が少しだけ……苦しいので」

乃々「だから……あの……がんばりたい……です」

乃々「……えっと」

乃々「それで……あの……」

乃々「……」

乃々「……」

乃々「……い、以上……です……」

輝子「……」

まゆ「……」

乃々「……」

乃々「……あ」

乃々「……あうぅ、す、すす、すいません……あの、す、すごい、変なことっ……あ、あう……」

まゆ「乃々ちゃん」

乃々「ひゃうっ! あ、あの、ま、まゆさん、もりくぼ、もりくぼ、つい、口、勝手に動いて……えっと……だから、あの」

まゆ「お誕生日おめでとう」ダキッ

乃々「!」

まゆ「……まゆは、乃々ちゃんにたくさん助けられてますよ」

乃々「えっ……い、いやそんなことないはずですけど……」

まゆ「ううん……そんなことない……きっと乃々ちゃんが気づいてないだけ」

まゆ「まゆは乃々ちゃんが一緒にお話してくれるだけでも嬉しくて、楽しくて、助けられてるの」

乃々「……」

まゆ「……でも、乃々ちゃんが言ってくれたこと……とってもうれしかった」

まゆ「ありがとう、乃々ちゃん」

乃々「あう……」

輝子「ボノノさん……いや、乃々さん、お誕生日おめでとう」ダキッ

乃々「しょ、輝子さんも……!」

輝子「私も、たくさん助けられてる……」

輝子「ぼっちの私とトモダチになってくれて……それだけで、たくさん」

乃々「そ、そんなこといったら、もりくぼだって……」

輝子「フヒ……じゃあ、私たちも助け合いできてるな」

乃々「!」

輝子「だから、乃々さん、ありがとう」

乃々「あうぅ……」

輝子「もちろん、まゆさんにも感謝してるぞ……」

まゆ「うふふ、まゆだって。いつもありがとう、輝子ちゃん」

輝子「……私もありがとう、まゆさん」

輝子「フヒ……助け合いが3つ出来上がったな……」

まゆ「それぞれがそれぞれを助けてるんですねぇ」

乃々「……そうなのかもしれません」

乃々「……でも、もりくぼ、もっとがんばります……がんばりたいです」

まゆ「あら、じゃあまゆも今まで以上にがんばらなくちゃ」

輝子「なら私も負けてられない……フヒ」

まゆ「うふふ……これからもよろしくお願いしますねぇ」ギュッ

輝子「ふふ、よろしく」ギュッ

乃々「よっ、よろしくお願いします……」ギュッ

まゆ「……」

乃々「……」

輝子「……夏場にこれは暑いな」

まゆ「そうですね……ふふ」

乃々「……ふふ」



おしまい

少しだけ遅れました、ごめんなさい。ボノノさんおめでとう。
声もついて、CDデビューも決まったボノノさんの今後の活躍を応援しています。

実際メルヘンブックとかでちょくちょくドッキリまがいのことはやられてますが、まあ、ドッキリ企画ってわけじゃないので

誤字脱字、コレジャナイ感じなどはすいません。読んでくださった方ありがとうございました。

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