【艦これ】提督「余りにもギスギスした我が鎮守府」【コンマ・安価あり】 (66)


 鎮守府【ちんじゅ-ふ】
 

1 奈良・平安時代、陸奥・出羽の蝦夷鎮圧のために置かれた軍政官庁。
   初め多賀城に置かれ、のちに胆沢城、さらに平泉に移った。

2 旧日本海軍で、所管海軍区の警備・防御に関することをつかさどり、
   所属部隊を監督した機関。横須賀・呉・佐世保・舞鶴の各軍港に置かれた。



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 ブラック。色彩に置ける黒を意味する英語である。
綴りはBlackで白の対極。無彩色で光が可視領域の全帯域に感知できぬ事。
闇などと同一視される事も多々ある。

 高級志向の嗜好品や調度品、装飾品など黒は高貴なイメージも持ち
黒帯、ブラックカード等と上等なクラスに宛がわれる事もある色であるが、
同時に容疑者の事を黒と表現したり、敗北を黒星と表すなど、
闇に引っ張られたマイナスのイメージも同時に付きまとう。

 今回俺が引き合いに出したブラックは、どちらかと言えばその毛色が強い。
不正や非合法な事柄、そういった環境が蔓延する職場。
ブラック鎮守府と世間で言われるもの。それが今回の話の舞台であり、
同時に俺が身を置く現実でもある。

 ……少しだけ補足、と言うか弁明をさせてもらえるならば
ブラックの前の元、という感じを一つ付け加えさせてもらいたい。
俺は彼女達を消しゴムのようにガシガシ摩耗させながら運営されていた
この鎮守府に後任として配属された一軍人で。
現時点では環境は十二分に改善されていると自負している。

 けれど、人の心と言うのはそう易々と当事者でない第三者の
一朝一夕の介入でどうこうできるほど生ぬるく浅い物ではなく
未だ所属艦娘の険悪な雰囲気、状況は目も当てられないものがある。

 荒んでいるというか、もはや壊れている。
傷は研磨すれば消える。割れても接着することはまぁ、可能だろう。
けれど、消しカスから消しゴムを再現するのは不可能だ。
小学生の頃木工用ボンドかなにかを混ぜて練り消しのような物を作ったりもしたが、
それも結局元に戻ったわけではない。似た別のなにかを無理矢理構築しただけだ。

 結論を言おう。俺にこの鎮守府を立て直す事はできるが、
彼女達の精神性を元に叩きあげる事は不可能だし、
事実最後の日まで不可能なままだった。

 俺にできる事はただ一つ。
彼女達の流儀に従いながら、せめて消しカスが風に吹かれてなくならぬ様にすることだけだった。
どうしようもない、堆く積もった塵の話だ。


―――

 朝。目が覚める度に今日も無事朝を迎えられた事に安堵する。
着任して直後はまともに睡眠など取る事などできなかった。
ようやく居なくなった諸悪の根源、と思った矢先に二人目が来たとあって
幾度となく殺されかけた。今でも、なくなったわけではないが
少なくとも寝込みを襲われることはなくなった。
極々僅かではあるが俺の事を理解し信頼してくれる艦娘が出来て、
彼女達が俺を守ってくれているのが大きい理由だろう。

 ぎぃ。と大凡80kgの物体が幾度となくぶつかり
傷んでしまった衣装箪笥が軋むような音を立てる。
戸の横についていた縦長の姿見はとおの昔に割れてしまった。
まるで痛みを訴えるようで聞くに堪えないが、修理しても間も無く
元の木阿弥になると思うと修繕にだす気も萎えるという物だ。

 ちらと壁に掛かった時計――これも幾度も落ちて
表面の硝子にひびが入ってしまっている――を見れば
五時僅か手前。さっと軍服の袖に腕を通し私室をでる。



直下 最初に出会う艦娘 コンマ 好感度 秒の一の位が偶数 +好感度 奇数 -好感度 


鬼怒 好感度 +6

 一応自衛の為。鎮守府本館にある執務室横の
私室ではなく離れにある砂利の多いエリアに新しく私室を拵えたはいいが
故に少々執務室までは移動に時間がかかる。
着替え終わるや否や部屋を出て玉砂利を踏み鳴らしながら向かう途中
古風と言うか、一周回って斬新と言うか、タイヤをロープで腰に結び
それを引っ張りながらジョギングしている艦娘を発見した。

「ん……おはようございます提督!」

 特訓。訓練。修行。エトセトラエトセトラ。
兎角そういった言葉がこの上なく好きな軽巡長良型の五番艦鬼怒だった。
彼女はこちらに気づくと足を止めて大きな声でそういった。
体育会系なのか少し寝起きの早朝に聞くにはしんどい大声。
だが、敵意や害意。果ては殺意を向けられるよりは大声をぶつけられる方が
百倍マシだ。

「おはよう、トレーニング中だろう。続けていいぞ」

 キッチリとした敬礼を崩さぬ彼女に俺は軽く腕をあげながら
そう返すと鬼怒は少し強張った表情で「はいっ」と返事をして
またタイヤをずるずると引きずり走って行った。

 ……別に好かれなくても構わないが、せめて皆が皆
この程度にまで対応が緩和されてくれれば。
そう思わぬ日はないが、同時にそれが叶わない願いであることも重々承知している。
それでも、とりあえず今日の始まりは悪くはなさそうだ。


 タイヤの擦れた跡と僅かに浮かぶ土煙。
ぶっといタイヤを重さを感じさせない速度で引っ張って走る鬼怒の後ろ姿。
それをしばし眺めてから時間が差し迫っていることを思い出しやっとこ
鎮守府の中に入る。あちこちに皹の入ったリノリウムの乾いた床の上を
コツコツと音を立てて歩く。

 その音がまるで俺がいまここに居ると発信しているようで
余り好ましくないのだが四の五の言っている場合ではない。
嫌われているのは構わない、憎まれたり恐れられたりするのも
まぁこの際構わない。けれどだからこそ仕事に関してはキチンとしないといけない。
このささくれだった職場で俺が今日も生きてこうして提督としていられるのは
最低限やるべきことをキチンとやっているからなのだから。


システム変更

直下 艦娘  コンマ マイナス好感度 ゾロ目・10の倍数のみ+好感度でその下のコンマをプラス


 叢雲 -79

―――

 十年位前。学校の教室に掛かっていたものと程近い
プラスチック製の板に執務室と書かれた部屋。
錆びたドアノブを握り扉を開けると同時。

「っ!」

 分厚い扉の向こうの景色。見慣れた執務室。
その中に立っていた小柄な少女が蒼銀の長髪を靡かせながら
こちらに向かってきた。
風を切る甲高い音を鋭く引き連れながら飛んでくる蹴りを咄嗟に後方に上体を逸らして避ける。

「……ちっ」

 空振った勢いそのままに空中で一回転して
スカートを豪華に翻しながら眼前に着地したのは駆逐艦吹雪型の五番艦。
前提督の初期艦だった叢雲だった。

 彼女はあからさまに舌打ちを打って再度跳びかからんと
腰を落として拳を構える。……ふぅ、鬼怒と会って少し良い流れと思ったのだが。
早朝と言って差し支えない時間帯からいきなりこれとは流石にしんどいな。

「なんの様だ叢雲。随分早いお目覚めだな、もう少し寝てて構わんぞ」

 言いながら吶喊を警戒しこちらも構えとまではいかないまでも
叢雲の挙動に目を光らせる。遠距離からの射撃には回避逃亡以外の方法はないが
こうして白兵戦ならやりようがある。

「くたばりなさい!」

 俺の言葉には返事をせず、ただただ自分の意思だけを乗せた台詞を大声で発しながら
更に腰と頭を下げてこちらに駆けてくる。
その速度は流石の特型駆逐艦。初速の速さ、床を抉る程の脚力は驚嘆の一言だが。


「――悪いが」

 しかしリーチの差がありすぎる。
ましてその体勢では足での攻撃はありえない。
小柄な少女の腕の長さと大の男の脚ではそのリーチは倍近くある。

「がっ!?」

 軽く突き出した靴の裏に叢雲の顔面がぶつかる。
蹴り出すまでもない、直線的な動きとその加速はカウンターを狙いやすい。
ましてどれだけ膂力があろうと、生まれつき深海棲艦という化け物とやりあう為のノウハウを
身に付けた人知を超えし存在であろうと。所詮は素人だ。
日々トレーニングをしようとそれは遠距離で砲弾をぶつけ合う海上戦の訓練。

「舐めるなクソガキ。こっちは十年二十年。白兵戦のみに特化した訓練を
 血反吐を吐くまで毎日十時間もこなしてたんだ。CQCの基礎も知らねぇ馬鹿にやられるかよ」

 肉体の構成が違い、筋肉密度が高く特別な装備が使えようと。
こと素手の殴り合いで艦娘が軍人に勝てる道理がない。

「人間舐めんな!」

 鼻を抑える叢雲の小さな手の隙間から紅い血が垂れる。
後ろに数歩後ずさりながらもこちらを睨みつける彼女を怒鳴りつければ、
彼女は抑えた手の下で小さく何かを呟く。と同時、
音もなく光る粒子が彼女の周囲に集まり艤装の形を模り始める。

「――!」

 ため息を一つ。結局は、いつだってこうなる。
完全に艤装が展開される前に叢雲の前髪を掴み床に叩きつけ
強制的に意識を落とす。集まり始めた光は四散していく。

「……はぁ」

 だらりと全身から力が抜けた叢雲を見下ろして嘆息をつく。
ぐいとうつ伏せに転がる彼女の首を掴み廊下の壁にもたらせて置く。
時期に気が付いて帰るだろう、あるいはまた襲い掛かってくるか。
兎に角、ようやっと執務室に入れそうだ。


 バンと勢いよく部屋の中に入って扉を閉める。

「はぁ……」

 数分の内にため息を一体何度ついたことか。

「御しがたい」

 いつもの事ではある、艦種が変われど
相手が代われど、日々一度や二度ではない数先程のようなやり取りが起こる。
それを仕方ないと諦めるのは難しく、けれど改善させる方法は思いつかない。
力でねじ伏せるのは容易く、けれど彼女達の心を更に荒ませる要因となる。

「軍属にあれど軍籍に非ず、兵器であって兵士に非ず。
 軍艦であって軍人に非ず、故に軍規に縛られず軍法に裁かれない」

 それが艦娘という存在だ。
だからこそ一般的な鎮守府に置いても艦娘と提督は上司と部下ではなく
管理下に置いてはいても対等で、大戦期を経験していながらも
口調、態度において多少以上の問題があれど物としての性能が十全であれば
処分の対象にはならない。無論所有者に害をなせば話は別であり。
不良品はスクラップになるのが自然の流れだが。
俺は現状これらの事態を上層部に報告をしていない。

 前任の提督がどのような事をしたのかは書類上では見たものの。
実際彼女達が日々どんな鬱屈とした感情を抱え生活をしてきたのかまでは
想像の域をでない。

 なんにせよ彼女達が前任の提督と過ごした大よそ三年で
人間に対する大きな憎しみが育ったことだけは事実だ。

 三年。我々人間にとっては長いようで短い期間だが、
艦娘である彼女達にとっては生まれてから今日までの全てだ。
前提督の管理下にあるこの鎮守府の工廠で生まれた彼女達にとっては
しっかりとした自我を、意識を持って生まれたその日からずっと
腐りきった過酷な環境下で生きてきたのだ。

 俺は自衛のためにも、他の人間に危害を与えようと思わせないためにも
力を振るう事はあれど、それを糾弾し彼女達を廃材にすることはできない。
甘いのか、愚かなのか。少なくとも優しくはないであろう判断が俺のギリギリの所だった。


―――

 棚を漁り資料を取り出し机の上の書類を纏め
引き出しから万年筆と書類を取り出し始業の準備を始める。
少々イレギュラー――と言ってももはやとっくにレギュラーというか
日課と言うかになりつるあるが――があったとはいえだからと言って
やらなくてはならない仕事がなくなったりはしない。
キチンと日々最低限以上の任務はこなさなくてはならない。

 いくら俺が報告をしなくとも、既に問題がありの烙印を押されて
睨まれているこの鎮守府。成績が悪化すれば監査が入る事は免れない。
そうなれば流れるようにここに居る大半の艦娘が処分されるであろうことは
想像に難くない。せめて、せめて人を恨み、憎しみ
転生してからの一生全てを負の感情で埋め尽くしたままに
彼女達が死ぬのは防ぎたい。

「……朝飯食いに行くか」

 火急と呼べるものはなし。
代わり映えのしない出撃任務、建造・開発・特定の艦種を轟沈せよ。
一通り目を通して本日のデスクワークの配分を立て終え立ち上がる。
あまり気乗りはしないが、艦娘同様提督である俺も
鎮守府の敷地外にでるには色々と手続きが必要だし
そのうえ一般には鎮守府の場所が非公開になっていて
立地も直近の市街地に行くにも車で一時間程かかる為食事を取るには食堂に行く他ない。

直下 艦娘 コンマ マイナス好感度 ゾロ目・10の倍数のみ+好感度でその下のコンマをプラス

参考で好感度の数値ごとの目安くらいは欲しいかも、-90と-10じゃ大分違うだろうし
後この+する時のコンマ判定って(-安価のコンマ)+(その下のコンマ)ってこと?

>>19

プラス好感度で直下にさらにプラスその下って感じ
どちらかというと好意を抱いてる子は依存とかそっち系になりがちかなと思って高めになりやすい設定にしました

目安として

-01~-20(コンマ11と10,20は除く)
不信感 話しかければ一応答えるものの仕事以外で向こうから話しかけてくることはない

-21~-40(コンマ22,33と30,40は除く)
嫌悪感 話しかけても無視される 人伝に指示を伝えれば一応やったりやらなかったり

-41~-60(コンマ44,55と50,60は除く)
悪意 敵愾心 基本的に意思疎通はできないと見てよし キャラによっては引きこもってたり
          精神的にかなり荒んでるレベル

-61~-80 (コンマ66,77と70,80は除く)
攻撃的悪意 害意 積極的に攻撃を仕掛けて来る 喧嘩をしたり艦娘同士でも上手く行ってない事もある

-81~100(コンマ77,88と90,100は除く)
殺意 艤装を使ってガンガン殺そうとするレベル この世の全てを恨んでいる

プラス好感度は ゾロ目と10の倍数のみとしてそのレスの直下のコンマを足すので
           最低値は10+01の11とする(鬼怒は例外的に06)
06~20
 前提督と今の提督は別の人間であると割り切って考えてる
 やることはやるけど決して仲がいいわけではない

20~40
 多少は好意的に見ているが、プライベートで付き合いがあるわけではない
 あくまで職場の関係

40~60
 好感触 人として好ましく思い 多少の期待をしている
 ここからパートナーとして連れていればマイナス値が高い艦娘を抑えたりしてくれる

60~80
 恋愛感情に軽い依存が混ざった状態
 遭遇したら積極的に行動を共にしてくれるレベル

80~100
 提督と敵対する艦娘と敵対するレベル
 ここ以上を連れているとマイナスが高い戦艦・正規空母と連続で遭遇しても死なない可能性がぐんと上がる

100以上
 重度の依存 攻撃的意思を持つ艦娘に対し艤装を使っての防衛をすることを躊躇わない


 マイナス値はこれで決定 プラス値はこれだと高い数値がでにくいかも知れないので
 場合によっては直下だけじゃなくその下も含めて計3つのレスのコンマで判定するようにするかも 


 好感度の増減について

 現時点では各艦娘の好感度決めがウェイトを占めてるので増減しません
 高好感度の艦娘が一定数でたら今度は鎮守府全体の立て直しに入ります

 提督の死亡、大事件発生からの憲兵介入
 または全体の艦娘環境指数が一定を超えたら終了としますが

 冒頭での提督の語りにあったようにハッピーエンドの難易度はとても高いです

 前任提督の時の艦娘環境指数を -100として
 現時点では -80とします

 ・精神的に荒んだ艦娘からの好感度が上昇する
 ・負好感度の艦娘が居なくなる
 ・超高好感度の艦娘の好感度を一般レベルまで下げる
  等で環境指数は上がります
 
 大事件発生について
 超高好感度の艦娘をパートナーにしてる時に超負好感度の艦娘と遭遇した場合
 コンマによって戦闘に入ります。その結果によってどちらかの艦娘が死亡、
 あるいは鎮守府に大きな損害が起きた場合大事件発生とし
 憲兵・大本営の介入が入り終了となります

 好感度の増減させかたについて
 嫌いな人間になにされても嫌だし 好きな人間になにされても好意的に受け取るので
 極めて好感度が高い、もしくは低いと好感度操作は難易度があがります


 提督の死亡について
 マイナス値の極めて高い高戦闘力艦とパートナーなしで遭遇した場合
 コンマ判定に入り、結果によって提督も負傷します
 連続で遭遇。もしくは複数と遭遇すればするほど死亡率はあがり
 提督が死亡した場合強制終了とします

 尚、今回は試験的な意味も大きいのでリトライはなしで行きます

いつも見たいなほのぼのバカ話書いとけばいいのに変にシリアスぶったの書こうとするからダメなんだよ
あとスレ放置してエタったやつについてはなんかないの?

>>28
深海棲艦の奴?

あれはまた書くよ、ちょっとなにも浮かばないから書けてないけどな!

>>18

霰 -58

―――

 シンと静まり返った食堂。
勿論人っ子一人居ないと言う訳じゃない、
むしろこの時間帯朝食をとる艦娘が所狭しと存在している。
にも関わらず普通ならあるであろう談笑の声は一つもない。
奥から聞こえる調理の音と、食器の擦れ合う音だけが僅かに耳朶を叩くだけだ。

「邪魔」

 100人を超える人数が寝起きする鎮守府だ。
通路も人が二人すれ違う事ができないような作りな訳がない。
どころか弩級戦艦が艤装を装備したままでもすれ違える程に余裕があるように
設計されている。だから例え俺が入口に立っていたとしても横を通り過ぎる事が
できないと言う事はありえないのだが。そんなことはお構いなし。
上記の台詞を発しながら自らわざとらしく俺の腕にぶつかり、
さらには足の甲を踏んでいったのは。

「霰か」

 訂正。踏んでいったのではなく、今尚踏んでいる。
俺が名前を呼んだと同時に動きを止めた結果踏んだまま、という訳じゃない。
単に嫌がらせなのだろう、思い切り重心を左足にかけて来ている。
まぁ今はいてる靴は爪先に鉄板が入っているのでダメージと言えるものはないに等しいのだが。


「……」

 しばらく無言で俺の靴を踏み荒らして、
霰はこちらに一瞥もくれずにまた歩き始める。
見れば靴にくっきりと足跡が残ってしまっている。

「おい」

 なにもなかったかのように進むその小さな背中に声をかける。

「足を踏んでいたぞ、気を付けろ」

 ちらり、とここでやっとこちらに顔を向ける霰。
その目にはなんの色の浮かんでいない、
黒炭で幾度もぐりぐりと塗りつぶした様な光のない瞳。

「居たんだ」

 あれだけ執拗に足を踏んでおいてその台詞は流石に白々しすぎるだろう。
……まぁいい。この程度なら俺が我慢すればいいだけの事だ。
精神的に少々不快なだけで実害はない、放っておこう。

「次は気を付けてくれ」

 それだけ言って俺はその場を離れた。


直下 艦娘 コンマ マイナス好感度 ゾロ目・10の倍数のみ+好感度でその下のコンマをプラス

確率的には1/5でプラスが出るなんだ
というか出てくれないと先に進まない
場合によっては強制プラス好感度で安価取るかも


古鷹 -58

―――

 バイキング、と言うのは中らずと雖も遠からず。と言ったところか。
ここでは決まった定食、という形ではなく。並べられた色々なおかずを
自分で取捨選択していく形を採用している。
例えその内容があまり代わり映えしなくても完全に決まった形より
少しでも『自分で選ぶ』という要素を混ぜることで不満がでにくくなるだろうという考えだ。

 と、同時に特定の個人にのみ毒を盛る。という事を封じるための処置でもある。

「飯は大盛りで、味噌汁はいらない」
「はーい」

 まぁそうは言ってもここの切り盛りを一人でこなしているのは
基本的に鎮守府の運営、命令系統とは離れた間宮。
前任に対して思う所はあれど、というスタンスらしく余り心配はしていないけれど。

 揚げ出し豆腐やほっけが乗った盆に受け取った白飯を乗せて振り返る。
空いてる席はちらほらあれど、ここで食事をとるのは俺としても
艦娘連中としてもありがたくないだろうといつもこのまま執務室に戻ることになるのだが。

 カラン、カラン。

 軽い音が響き、なにかが足元に転がってくる。
まさに一歩踏み出したタイミングで転がってきたそれは
俺が足を置こうとした場所で動きを止め、踏まないように咄嗟にずらした結果
少々バランスを崩して。

「あっ……あぁっ……!」

 傾いたお盆。揚げ出し豆腐が少々やんちゃな動きで琥珀色のタレを飛ばし
白い軍服に足跡を二、三残していったと同時。
絶望の色濃い声が小さく届く。

「……古鷹か」

 見れば、声以上に絶望的な表情で古鷹が佇んでいる。
俺の足元と、服についた染みと、顔の間を視線が幾度も往復する。

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