忍者「忍法で更衣室を覗く」(18)

忍者「ウホッ」

忍者「とはいえ最近の高校はセキュリティーがちゃんとしているしな」

キョロキョロ

校長「ムッ?」

忍者「!」

校長「君は見かけない顔だな…そもそも今は授業中の筈だが?」

忍者(くっ、まさか校長が校内を歩いているとはな)

校長「君、答えたまえ。何者かね」

忍者「俺は…」

シュパッ

忍者「忍者だ」

校長「忍者…なるほど、ならその姿も納得できる」

忍者「にん」

校長「だがここは高校。忍者がいていい場所なんかじゃあ無いんだがね」

忍者「ならば校長、忍者がいていい場所は…どこだ?この現代社会に、忍者がいていい場所は…どこだ?」

校長「ぬっ、それは…」

忍者「答えられぬ、か。仮にも学校の長が…恥さらしもいいとこであるな」

校長「ぬっ、言わせておけば!」

忍者「ふん、感情をコントロールできない教師はゴミだと教えてやろう!」

ヒュッ ヒュッ

校長(!)

校長(しゅ、手裏剣!)

校長(この軌道…私の目と喉を狙っている…しかし今から避ける余裕は無い…!)

校長(ならば別の部位で受け止めるしか…ぬっ、左腕はくれてやるか!)

スッ

忍者「!」

ザクッ ザクッ

校長「ぐぬぅぅぅ!」

忍者「なっ、左腕を捨てたか!?」

ズキッ

校長(この痛み…骨に食らいつきよったか)

忍者「左腕を捨て命を拾ったか…瞬時にそんな判断ができるのが校長か…ふん、やりおる」

校長「昔、少々命を粗末にしている時期があってな…そのおかげでいくらばかりかの戦の心得がある」

忍者「ただの校長ではない、という訳か…」

校長「さて、改めて訊こうか。君は何者だ。この高校に何の用だね」

忍者「ふん、忍者だと言っている。通りすがりの、な」

校長「ふむ。ではその通りすがりの忍者がなぜ高校に侵入している」

忍者「それは…」

校長「それは?」

忍者「…それは」

校長「それは?」

忍者「…フフ、教えてしんぜよう、その体に!」

ヌギィ

忍者「忍者の裸体は初めて見るかね?」

校長「…」

ゴクリ

忍者「あらゆる忍法を会得する為、血の滲む修行をしてきた…その結果がこの鋼の肉体だ!」

ギンッギラギン

忍者「腹筋、背筋…太もも、ふくらはぎ…喉仏さえも鋼!」

カチーン

忍者「この肉体…そうさ、持て余しているのさ、俺は!」

校長「持て余して…いる…?」

忍者「だってそうだろう…この肉体を忍法だけに使うのは勿体ない…ならば、だ」

忍者「使うしかあるまい?」

ニジリ

校長「つ、使う…?」

忍者「もはや知らぬ存ぜぬは通じぬ…なぁ、校長?」

ニジリ

校長「ち、近寄るな…近寄るなぁぁぁ!」

忍者「フフ…なつかない子猫を撫でるような気分だ…まるでな」

ニジリ

校長「あ…う、あ…」

忍者「抵抗してもいいんだぜ…抵抗しろよ…なぁ…しろよ」

ニジリ

忍者「しろよぉぉぉ!」

ポロ

ポロポロ

校長「…」

校長「君は…泣いている、のか…?」

忍者「俺が…涙を…?」

校長「そうか…いくら強靱な肉の鎧をまとっても、心は年相応なのだ…よく見たら君は…うちの生徒と同じくらいの年齢じゃないか…まだ少年…心は繊細なのだ…」

忍者「な、何を…」

校長「心が体を追い越すことはありえない…安心したよ、君は…ただの少年だ。ニュータイプでも新しい人類でも…異星からの侵略者でもない。心の歪んだだけのただの少年だ!」

忍者「校長の言う事かぁー!」

忍者「俺は忍者だ…忍者でたくさんだっ!」

シャキィン

校長「刀だって!?どこからそんな物を!」

忍者「しかも脳波コントロールできる!」

フワフワ

校長「念動力…まさか君は!」

忍者「そうさ…この国がやっている悪行の落とし子が、俺なんだよ!」

校長「君は…君は!」

忍者「俺は…俺には忍術さえあれば十分だった…なのにこの国は…日本という国は…俺に無理矢理…こんな能力を植え付けやがったのさ!」

校長「念動力…サイキッカー計画、か…」

忍者「本当に狂ってやがる…国が主導であんな事をやるなんて…そしてそれを受け入れる国民もだ…!」

校長「だがサイキッカーの存在によりわが国は救われた…なんやかんやで景気が回復し、他国との国交も正常化した」

忍者「確かに…確かに日本は再び先進国として返り咲く事が出来た…だがその裏に、何万人もの犠牲があったことを知る者は少ない」

校長「この国は情報操作が得意だからな…聞こえの良い部分しか報道しなかったのだ…」

忍者「俺もその犠牲者の一人だ…だから!」

校長「だから?」

忍者「更衣室を覗くくらい…許されるだろう…?」

校長「そ、それは…」

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