海賊「どっちが上か」山賊「決着つけようぜ!」 (20)

海賊「……ん、おめえは」

山賊「よう、久しぶりだな」

海賊「そういやおめえ、今は山賊団の首領やってんだってな」

山賊「てめえこそ、海賊船の船長やってるらしいじゃねえか」

海賊「……」

山賊「……」

海賊「どうやら、お互い同じこと考えてるみてえだな」

山賊「ああ」

海賊「ちょうどいい機会だ……海賊と山賊、どっちが上か」

山賊「決着つけようぜ!」

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海賊「海賊は海を根城、山賊は山を根城にする悪党だが……」

海賊「海と山、どっちが縄張りとして優れてるかっていうとやっぱ海だよな」

山賊「ハァ? なんでだよ?」

海賊「だってよ、海は広いんだぜ? 大きいんだぜ?」

海賊「水平線の彼方まで、ぜぇ~んぶオレのもんなんだ」

海賊「ちょっと地面が盛り上がっただけの、ちっぽけな山なんかとは比べ物にならねえ」

山賊「ふん、笑わせやがる」

海賊「なんだと?」

山賊「たしかに海は広いってのは認めてやるよ」

山賊「だが、てめえらはその広い海を自由自在に行き来できるわけじゃねえ」

山賊「狭苦しい船を操縦して、えっちらおっちら移動しなきゃならねえ」

山賊「それでいっちょまえに縄張り? これが笑わずにいられるかってんだ」

山賊「一方、山はどうだ?」

山賊「自分が根城にした山は、丸ごとオレのもんだ」

山賊「もちろん、移動に船なんか使う必要はねえ! これこそ本当の縄張りってもんだ!」

海賊「このヤロウ……」

山賊「しかも、のんきに舟遊びするてめえらとちがって、山の方が絶対キツイしな!」

山賊「険しい斜面を上り下りするあの過酷さ、海賊みてえなお気楽稼業とはわけがちがう!」

海賊「おいおい、聞き捨てならねえな」

海賊「海賊ってのは常に命懸けなんだぜ?」

海賊「海ってのは気まぐれでよ。デカイ嵐が来ることも珍しくねえ」

海賊「常に風や波に対して、気を配ってなきゃならねえ……一瞬も油断は許されねえ」

海賊「いや……たとえ油断してなくても沈没することだってありえる」

海賊「海はおめえらみたいなバカどもが、やっていける場所じゃねえのさ」

山賊「おいおい、山をなめてもらっちゃ困る!」

山賊「土砂崩れやがけ崩れは日常茶飯事、乾期にゃ自然発火による山火事だって起こる」

山賊「冬は大雪が降り、そうなりゃ雪崩だって警戒しなきゃならねえ!」

山賊「山は海なんかよりよっぽどスリリングな場所なのさ!」

海賊「スリリングだぁ?」

海賊「だったらおめえ、一度巨大イカやサメに襲われてみろや!」

海賊「ほれ、このキズ見ろ! 海に落ちて、サメに噛まれた時のキズだ!」

海賊「手下どもの助けが遅かったら、おっ死んでたぜ!」

山賊「そっちこそ! でけえイノシシやクマの恐ろしさ知らねえだろ!」

山賊「この胸のキズはクマに引っかかれた時のもんだ!」バッ

山賊「あの時の恐怖……今でも脳裏にこびりついてやがるぜ!」

海賊「ま……だが、海賊の醍醐味はなんといっても獲物を狩る時だ!」

海賊「海底に眠ってる財宝を見つけた時や、商人の船を襲う時のあのワクワク感!」

海賊「たまんねーぜ! やめらんねーぜ! クセになるぜ!」

海賊「クソ狭い山ん中じゃ、なかなかこんな気分は味わえねーだろうがなァ!」

期待

山賊「ふん、オレたちだって商人を襲う時ぐらいあるし」

山賊「時には山に埋まってる財宝を見つける時だってあんだよ!」

山賊「山のふもとの町や村を襲撃するなんてこともやってるしな!」

海賊「ケッ、オレらだって港町を襲撃するくらいやってらぁ!」

海賊「それに……海といえば、やっぱり海の幸!」

海賊「新鮮な魚や貝をいつだって食べられるぜ!」

海賊「んで、そいつらを肴にラム酒を浴びるように飲むのが最高の贅沢ってやつさ!」

山賊「山の幸だって負けちゃいねえ!」

山賊「動物の新鮮な肉を味わえるし、それと一緒に山菜を食うのが最高だ!」

山賊「でけえ火ィ焚いてよ、みんなで宴すんのがなによりの楽しみだぜ!」

海賊「ぐぬぬ……」

山賊「ぐぬぬ……」

海賊「分かり切ってたことだが、どうやらどっちも一歩も引く気がねえようだ」

海賊「こうなったら、とことんまでやり合うしかねえようだな!」

山賊「おう!」

海賊「だったら海へ来いや! 海で決着つけようぜ!」

山賊「ハァ? なにいってやがる! てめえが山に来いや!」

海賊「海へ来い!」

山賊「山へ来い!」

海賊「海!」

山賊「山!」

アクア団とマグマ団思い出した

男「……まあまあ、お二人とも。こんなところで怒鳴り合っては、目立ってしまいますよ」

海賊「あぁん?」

山賊「誰だてめえは!?」

男「戦うにせよ、話し合うにせよ、あなたたちにとって一番相応しい場所がありますよ」

男「そこは海を見渡すことができますし、山も近くにあります」

山賊「へえ~、そりゃいいな」

海賊「行ってみるか!」

男「ではご案内いたしましょう」

男「こちらです。お入り下さい」

海賊「お、なかなかシンプルでいい部屋だな。小さな窓からたしかに海も山も見える」

山賊「ところでよ、メシはあるのか?」

男「はい、三食出ますよ」

山賊「よっしゃ! ここで思う存分山賊と海賊どっちが上か、議論しようぜ!」

海賊「おう!」

男「では、ごゆっくり……」ギィィィ…



ガチャン……

……

……

記者「いやー、今回はお手柄でしたね!」

記者「あの凶悪な海賊団と山賊団の長を一度に牢獄に捕えてしまうとは!」

男「この地域の治安を守る兵士として、当然のことをしたまでです」

男「彼らがいなくなった海賊団と山賊団はいわば烏合の衆、すぐに片付けられるでしょう」

記者「ところで、捕えられた二人はどうしていますか?」

男「あの二人はどちらが賊として上か、今もずっと議論を繰り広げていますが――」

男「私にいわせりゃ、どっちも等しく善良な市民に害をなす悪党に過ぎません」

男「いずれにせよ、このような成果をあげることができ、大変“満足”しております」







おわり

いいオチだ
おつ

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