[このすば!]この素晴らしいパーティーに10年後の彼らを! (128)

時の魔術師、と呼ばれていた大魔道士のチート持ち日本人がその昔いたらしい。
らしい、というのもエリスに最近聞いた話なので、俺も詳しいことは分からない。

で、その魔道士は10年後の自分と現在の自分を5分間入れ替える神器を持っていたんだとか。

どっかの守護者がそんなん持ってたな。
というのが初めに聞いた時の感想だ。

用途はイマイチだが、クリスからお願いされ、今回はその神器を回収することになった。


「帰ったぞ」

「おじゃましまーす」

ドアの開けられる音と共にダクネスがクリスを連れて帰ってきた。

「おかえり。いらさいクリス、で、お疲れさん。それが……10年砲?」

挨拶もほどほどに、俺はダクネスが手にしている円筒状のものを眺めながら聞く。
うん……どうみてもバズーカ砲なそれをダクネスが自慢げに見せびらかす。

「フフッ、あぁ、間違いないだろう。まさかダスティネス家に偽物を差し出してくるとは思えんしな」

既に貴族の手に渡っていた10年砲の回収には、また仮面を被る必要があるかと思ったが……

クリスの提案で、今回はダクネスに手伝って貰い、その神器を回収した。
頼られたのがよほど嬉しかったのか、普段は貴族の権力を行使する事を好まないダクネスだが、二つ返事で回収に行ってくれた。
なかなか可愛いところがあるじゃないか。

まぁ仮面を被る機会が無くなったのは残念な気もするけど……


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1471353895

「へぇ、ちょっと見せて」

「じょ、助手君!危ないから使ってはダメだよ!君は日本語が読めるから使えちゃうだろうけど……」

……そんな寸止めみたいなことを言われたらとても使ってみたくなる。
ダクネスから受け取った10年砲の側面にはご丁寧に使い方が書いてあった。

「どれどれ。……もう怒っちゃったもんね!といいながら引き金を引く……なめてんのか」

「いや!だから止めてよ!効果は分かっているけど安全かどうかは分からないから!」

「いやいやクリス、そもそも弾が無いと撃てないんじゃないか?だってこれどうみてもバズーカだし」

「弾?いや、魔道具なら魔翌力で使える物なんじゃないのか?」

「いや、いやいや。そんなにポコスカ撃てたら……いやそんなもんか?」

「いやいやいやいや!うるさいですよ!何回いや、って言うんですか!?」

3人揃って声のした方を見たら、めぐみんが足を組んで椅子に座っていた。
あとちょっとで見え……

「ない。いたのかめぐみん」

「気付かなかったぞ」

「あっ、めぐめん、お邪魔してるね」

またも3人揃っての反応にちょっとバツの悪そうな顔をするめぐみん。
本来そういう目にあうのはダクネスのポジションだからな。
確かにちょっとくるものなのかもしれない。

「ちょっと前に帰ってきたんですよ。でもみんな気づかないから様子を見てたんです」

お、いま足を組み替えたな。
黒いのがちょっと見えたからもういいかな。
めぐみんのふとももから目を離して再び手元の10年砲をいじりだす。
みればみるほどバズーカ。やっぱり撃ちたい。

「カズマ?いまどこを見てました?」

何故かドヤ顔のめぐみんが手元をワキワキ、口元をムニムニさせながらきいてきた。
結構、素質あるなコイツ。
なんの素質なのかはご想像におまかせしたい。

「めぐめんのふともも。俺達会ってから結構立つけど、お前のロリ枠はゆるがないな」

「こ、この男恥ずかしげもなく言いましたね!というより今ものすごいバカにしませんでした!?」

「なぁ、めぐみん。今ワザと見せてなかったか?」

「あ、あの……」

その声は後方、めぐみんの影からヌッと姿を表したのは……

「ゆ、ゆんゆん!いたのか!いらっしゃい!」

「お、おう!よくきたなゆんゆん!ゆっくりしていってくれ!」

「あれ?ゆんゆん、いくら知り合いとはいえ勝手に人の家に入るのはどうかと思いますよ?」

「アンタが連れて来たんでしょ!」

「あ、ははは……賑やかになってきたね。さぁ、そろそろ返して」

ゆんゆんとめぐみんが掴み合いを始めたのを見てクリスが俺の手元の10年砲をとりかえそうと手を伸ばしてきた。
俺はその手をヒラっとかわすと、めぐみんに発破をかける。

「なぁ!めぐみん!お前のその胸!10年後どうなってるか気にならないか!?」

ビクゥ!っとめぐみんの体が震えた。
釣れたみたいだ。
ゆんゆんを片手間にしながらこちらをジッと睨みつけてくる。

「あなたって人は……カズマは……気になりますか?」

なんで俺?とは思ったけど今回はとりあえず頷いとく。

俺はどうしても撃ってみたい。
どうなって10年後の姿になるのかすごい気になる。
つかお風呂中とかだったらどうなるんだろ!?
やばい。想像がとまらない。

「ちょ、ちょっと!だから危ないからダメだってば!」

クリスはいまだにとりあげようとしてくる。
バインドなど、スキルを使われたらあっさりとられてしまうだろう。
俺はめぐみんに照準を合わせると……

「いくぞー」

「どうぞ!覚悟を決めましょう!それが私とカズマの今後に関わるというなら!」

「お、おい。なんだか話が飛躍してないか?」

ちょっと何言ってるか分からないけど俺は引き金をしぼりつつ……

「こ、これ私巻き込まれたりしないよね?」


「もう怒っちゃったもんねー!」

引き金を引いた!

続きは10年後!
嘘です。
このすばss増えろ

エリス「貴方……どうして、若くなって……る」

俺と初めて顔を合わせたエリスが凄まじい形相をしている。
そ、そんな顔もするんですね……!

カズマ「10年砲ってあったじゃないですか?それでポーンと……た、多分ですけど」

しどろもどろに解説する俺をチラチラみて何かを考え出すエリス。
うん。その悩ましい顔は素敵です。

エリス「な、なるほど。若いカズマさんですね。確かにそんな事もあったような。懐かしい……」

人差し指をあごにあて、片腕を胸の下に巻く「考える人」のポーズをとるエリスは、何か合点のいった顔をすると、早口にまくしたててきた。

エリス「過去から来た貴方に未来の事を教えるのはあまり良い事ではありません。しかしこれだけはもうお察ししているでしょうし、もはや決定事項なので伝えておきます。いいですか?カズマさん。私エリスは10年後の貴方の妻!嫁です!貴方の嫁は私です!!」

カズマ「あっ、はい。」

そのエリスの迫力に気圧されおもわず返事してしまった。
エリス様ってこんな人だったっけ?
俺の目に映る10年後のエリスは10年前とたいして変わらない容姿だ。

にしても、まさかエリス様ルートでエリスと結婚とは俺ってば凄いな。
神と結婚した訳か……神に仕える男。最高にかっこいい。

そしたら、必然的に俺は、めぐみんルートやらダクネスルートやらは蹴ったわけか。

……すまないな、お前ら俺に気があったんだろが、俺はエリス様と幸せにいきるぜ!

あっ、すいません、台本形式から名前抜くの忘れてました。
書いてる時は誰の発言かごっちゃにならないように名前をつけてるんです……
今思ったんですけどどっちのほうが読みやすいですかね?
今日分は名前を「」の前に入れてみます。

「ちょっと!何勝手なこと言ってんのよ!ウチのカズマさんを返しなさいな!」

それは、俺が蘇生された時みたいに、突然部屋に響いてきた。
よく聞く、駄女神の声だ……!
さすが、空気の読めない事には定評のある駄女神様だ。
エリス様ルートの確った俺の幻想をぶち破るなんて……修正してやるぅ!

カズマ「うるせぇーぞ駄女神!テメェその空気の読めない所は未来でも据え置き何だな!」

思わず怒鳴ると、後ろでエリスがわなわなと震えだし何かを言いたそうにしてきた

エリス「いえっ、あの、その、えと、あのですね!」

アクア「あぁー!!カズマったら10年も私より若いのに随分生意気ね!」

カズマ「お前ババァだろ。10年どころじゃねぇーだろ」

アクア「ババァじゃないわよ!この麗しい見た目で分かるでしょ!ピチピチよ!」

容姿の全く変わらないエリスを見るに、やはりアクアの容姿も対して変わってないのだろうか。
そうだとしたら、それって結構不気味というか……
つか麗しい見た目(笑)はこちらからだと確認できないんだが。

エリス「その……えと……」

後ろで尚もゴニョってるエリスは俺とアクアの仲裁をしたいのだろうか?
だがそんな必要は無い。
俺は嫁を守る……未来の夫の過去の姿!

カズマ「大丈夫ですよ、エリス様。」

ドヤ顔でエリスに向き直ると、その顔は真っ赤に染まっていた。
アクアに茶化されたのかそんなに頭にきたのだろうか。
ならば言ってやらねば。俺はアクアに再び口撃を始めようと……!

アクア「そもそもカズマさんは結婚してませんー!ほら謝って!この気高きアクア様に生意気な態度をとり楯突いた事を謝って!」

なん……だと……

「めぐみんは、自分の欲望を抑えた方がいいわよ」

「ごめんなさい、カズマ。その童貞は過去の私のものでしたね」

「ホントに反省してるの……?」

お姉さんに折檻されて、部屋から出てきためぐみんは、形だけの謝罪をする。

……俺はピンチを救ってくれたお姉さんに礼を言う。

「えっと、ありがとうございます。これから尊敬している人物は?って聞かれたら紅魔族のお姉さんだって答えます。」

「や、やめてください。それは何かの新しいイジメ……?というより同じようなやりとりを昔にもしたような……」

このお姉さんは誰なんだろう。
さっき下から見上げた時はピキーン!っていうNTのSEが頭に響いたけど、今改めて見ると、ん?誰?
俺の知り合いではあるのだろうけど……というかんじ。

流石に誰ですか?と聞くのはどうかと思ったのでめぐみんをチラッと見る。
この人はーっと説明してくれるかと思ったが、舌で唇をペロッと艶めかしく舐める仕草を見せつけてくるだけだった。
背筋がゾクッとした。
そんなサービス求めてねーよ!

「10年前のカズマくんかぁ、懐かしいな」

お姉さんが俺を見て呟く。
めぐみんもそれに続いて

「この未熟でチョロそうなのがそそりますよね。生意気なので調教してめぐみん様とか呼ばせたいです」

オイ。

「アンタいい加減にしなさいよ」

冷めきった声でのツッコミ!
お姉さんは右手を手刀のようにしてめぐみんに向ける。

「ふえぇ!助けてください!カズマ!この女が私をいじめようとしてきます!ぐへへ」

「うわぁ!お前は来んな!こっち来んな!」

めぐみんがセリフとは裏腹に明らかな下心でこちらににじり寄ってきた。
セクハラしようとする俺と同じ顔をしてる。
危機を感じたのでお姉さんを盾にする。
女の人を盾にするってどうなんだろう?
あっ、でも俺ダクネスとか盾にしてたなぁ……
なんというか……この気持ちは……罪悪感?

「ハァ、そんなに目の敵にしなくてもいいじゃないですか……久しぶりですね、あるえ?」

キッとお姉さんに睨まれてつまらなそうにため息を吐いためぐみんが、お姉さんをしっかりと見据えて言った。

「ええっ!?めぐみん!?」

あるえ?
あぁ!そういや痛いラノベ作家志望みたいな子が紅魔の里にいたなぁ!
街が……燃えてる……の子だ!
あの一件以来こっそりと俺とめぐみんの官能小説みたいなのを俺宛の郵便として送ってくる娘だ!
丁寧に差出人と宛先の欄を「古き友人からよき友へ」とか誤魔化してるやつ!
古き友人からよき友へってなんか日本語おかしくね?
気づけば手紙友達で、小説と一緒に次はいつ里に来る?みんなとまた来てね!みたいな普通の手紙も書いていた。

送られてくる度に採点しては、手紙を返していた。

80点、ヤンデレは得意ではないが、ヤンとデレの割合が2:8くらいで読みやすかった。
病みすぎて無いけど、自分を抑えられなくなって他の女の子とイチャイチャしていた俺を、部屋に呼びつけてからの逆レの下りは最高だった。
嫌がる俺を黙らせるためにわざわざ策をねっていたところがーー

とかなんとか。
夢の材料によく利用させてもらっている。
先程似たような似てないようなシチュで喰われかけた気が……それは置いといて。

このお姉さんがあるえだから、俺のことをカズマくんと呼ぶわけか。
紅魔族の知り合いは……あるえも含めて何人かは今でも連絡をとっている。
あれ?違和感。何か足りない気がする。
1番大切な子が抜けてる気が……

「わたし!私だよ!というかめぐみん、さっき私の名前を呼んだじゃない!ひどいよ!」

お姉さんがあるえと呼ばれて猛抗議する。

「え?先程もあるえと呼びましたが?それよりも、よくカズマと手紙のやりとりをしていましたよね?私知ってるんですからね?なんですかあのハレンチな文章は!!ねぇ?カズマ!?」

!?

なんでコイツ知ってんだ!?
いつから気づいて……もしかしてさっきのヤツも手紙の内容をマネしてるのか?

「あ、あるえの手紙の内容って……!」

お姉さんが自分を呼称して真っ赤な顔で言う。
気分的には、封印していた「漆黒のノート」を何者かに見つけられた中二男子のそれと多分同じだと思う。
いや、それよりレベルが高いかも……

「私とカズマがくんずほぐr」

「ぬわーっ!やめろ!俺は知らないぞ!そそそ、そんな話は知らん!なぁ、あるえ!?」

俺も恥ずかしくなって思わず叫んだ。
俺に名前を呼ばれた彼女は、ビクッと震えると……この世の終わりでも見てきたかのような表情で固まってしまった。

俺の出したつもりの助け舟は、まごうことの無い特注の泥製だっというわけだ。(Ch〇na製より粗悪)

こちらに背を向け、お姉さんが俯きながら少しうわずったこえで言う。

「そうやって、また意地悪するんですか……?」

「え?意地悪って……何が?」

また?とは。ちょっと様子が変だ。
10年の間であるえの手紙の内容をバラすようなことをしたのだろうか?
それはありえないとおもうけど……

そもそも俺は10年前の人間だからあまり多くのことを会話の前提にしないで欲しい。
めぐみんは何故だかニヤニヤしてるし……

お姉さんはガバッとこちらに振り返ると、うつむいたまま、ドカドカと力強い足取りで俺に向かってくる。
思わずあとずさりしてしまうが、俺を退がらせまいとめぐみんが背中を押した。

「え?ちょっ」

お姉さんが目の前に。すっごく近いんですけど。
お姉さんは両手で俺の肩を勢いよく掴むと俯いていた顔をあげた。

「ええ!?そんな泣くほ……ど……?」

んん?
俺は初めて気づいた。
そこには忘れちゃいけない人がいた?

「本当に分かりませんか?カズマくん!」

「き、君の名は!」

「……」

「あるえ……」

お姉さんの目元の雫が頬を伝う。
伝った分を補充するかのように涙が溢れてきて……

「……じゃないな。うん。」

よくみたら違うわ。
そもそもあるえとは片手で足りるくらいしか会ったことないや!テヘッ!
ちょっと話に齟齬があったと理解した俺は真剣に目の前の美女がだれなのかを……

「……ぐすっ……」

「……」

「あっ、ゆんゆんか!」

「忘れられたかと……ぅぅ……」

「ブフォッwwwwwwヒーッ!www」

「!?」

めぐみんが吹き出した。
ブフォッってお前。女の笑い方じゃないだろそれ。
いやーよく見たらゆんゆんだわこのお姉さん。
回答にいたるまでたっぷり5分はかかったがまぁ仕方ない。
こんなに美人になるとは……年下だっていうこともあったからあまり意識したこと無かったけど……うほぉ!その目尻に涙を溜めながらほんのりと頬を赤く染めている……その表情!いやはや。

私カズマ、思わずまえかがみです。
おっとこいつは違う。名前が似てるけど中の人が違うな。

「私だと分かるまで随分時間がかかったじゃないですかカズマくん……1度は子供を作ろうねと言い合った仲なのに!」

「それこそ、あるえの小説を間に受けた、ゆんゆんの言い出した事だったじゃねーか!俺は構わないよ!?めぐみんよりは良い」

さっきの出来事ありきの、割と本音の入った一言だった。

「!?」

「フフッ」

今度はお姉さん改めゆんゆんがささやかに嘲笑した。
この幕下で彼女達になんの戦いがあったのかは知らないが、めぐみんが床に手をつけて小声で「くっ……!」とか呟いてるからゆんゆんの勝ちらしい。



伏せるめぐみんの耳元にしゃがんでゆんゆんが何か耳打ちする。
未だに顔は火照って赤いままだった。

「あの時の事は1度にカウントされてないんだけど、ね?」

「え!?ななな!なんと!?」

「フフッ!フフフ!私の勝ちよめぐみん!」

「勝ち負けなんてどうでもいいのです!今のは!?今のはどういうことですか!?わ、私の男をー」

「さぁ?どういうことかしらね?」

おぉ……
何の話をしていたのかさっぱり聞こえなかったが、ゆんゆんにすがって抗議するめぐみんというのは非常に珍しい光景に見える。

「おーい!帰ったぞー!なんだ?誰もいないのか?」

「ううん、いるわよダクネス。きっとさっきあったゆんゆんも合わせて二階で楽しく遊んでいるに違いないわ!混ざってくる!」

「まて!あっ……この荷物を持って行って欲しかった……」

どうやら買い物組が帰ってきたらしい。

お待たせして申し訳ないです!
待っていた人がいたかどうかはともかく、 書きダメ分投下でした。
あと2、3回の更新、プラスアルファーくらいで終わる予定です。
もうしばらくお付き合いいただけると幸いです!では!寝ます!

「ゆんゆんは結婚してんの?」

アクアとダクネスとめぐみんは3人揃って夕食を用意していた。
手持ち沙汰になった俺とゆんゆんは、暖炉の前で談笑していた。
ゆんゆん曰く10年後も暖炉の前は、アクアと取り合いをしているらしい。
アクアさんがちょっと羨ましいです。と言っていたが、あんなののどこがいいんだろう?
因みにオレをカズマくんと呼ぶようになったのは、俺がそうしてくれと頼んだからだとか。

それから話は恋愛方面へ。
ミツルギはハーレム要員の2人では無く、地方の村娘と結婚したとか、ギルドの看板娘、ルナが結婚できないのをこじらせてギルドのクエストボードに誰か結婚してくれとパーティー募集のノリで貼った紙がボロボロになったけど音沙汰ないらしいとか、ゆんゆんの知り合いの不良冒険者が……同性…と…結婚したとか。

最後のは聞き流したが、話の流れから俺が疑問を持つのは当然だろう?
だが、俺の質問に笑顔を引き攣らせたゆんゆんは、逆に……と前置きした上で

「カズマくんは結婚する気あるんですか?」

俺が知っているゆんゆんのおどおどした感じではなく、突き刺すような……射止めるように聞いてきた。

その発言は……というよりこの話題は間違いなく地雷だった。
台所から立て続けにバリィン!と皿の割れる音が。
続いて熱っ!とかぎゃあ!とか悲鳴が。

バリィン!の連鎖と悲鳴の次にドタドタと足音、そして3人がやってきた。

「それは気になりますね」

「あぁ、私もぜひ聞きたい」

「私も気になるわ!」

矢継ぎ早にきいてくる。
そして揃って真顔だった。
結婚する気とか……そりゃあしたい、のかな?
けどこの異様な雰囲気は一体……?

気づけば4人は俺を取り囲むようにして立っていた。
ゴロ寝しながらゆんゆんとダベっていた訳だが、おもわず飛び跳ね、正座になる。

じょ、冗談は言えない空気!

「あ、あるよ?誰もが持ってるだろ。家庭を築きたいっていうの」

未来の俺は知らないけど、と付け足した。
アカン、言った直後から言ってしまったことを後悔するこの感じは一体……?

「うむ。ならば私と手っ取り早く結婚して貴族になろう。もう籍だけ偽装してるのが限界なのだ」

ダクネスがそんな事を真顔で……

「はぁっ!?」

とびっくらこいたのは俺。
お前結婚してなかったのかよ……!貴族だろ!
てっきり王子のジャティス(?)だのアルダープの息子だのと結婚しているものかと!

「何を言っているのですダクネス。カズマは割と終盤まで私ルートだったじゃないですか。魔王を屠った後からカズマが放浪としだして、何だかフワフワの関係になりましたけど、正規ルートは私です。私とカズマが結婚するべきなのです!」

と早口で言い切ったのはめぐみん。
え?今魔王とか言ったか?
10年後には魔王倒してんの?うそォ!?

「え?魔王ってー」

「プークスクス!何言ってるの二人共!ここは1番麗しい元女神、アクア様と結婚するに決まっているじゃない!私、カズマさんとか皆と一緒にいるために、わざわざ女神を辞めたんですからね!責任とってよねカズマ!」

俺の発言を上書きしたのはアクア。
水色の衣を纏っていないのは本当の意味で元なんたらになったからと言うのか!
お前……そこまでしてキャラを捨てなくても!

ってそうじゃない!
え?ダクネスとめぐみんはそこはかとなく俺のことを好きだと匂わしているのは10年前からだけど、アクアにもその気が!?
もうわかんねぇよ!どうなってんだ!?

「ちょっと待ってくれ!一体どうなってr」

「私も!わ、私は……!私だって!カズマくんと……1回……夜を……ゴニョゴニョ……」

やはり俺の発言はかき消された。
場がピシィッ!と凍ったのを確かに感じた。いてつく波動マジぱない。

……ゆんゆんの発言もかなりパない。

1回!?1回って何!?
え?マジで?マジで言ってんの??
ゆ、ゆんゆんとはたまげた……
いや意外というか!

「そ、それならば私だって……何回か……」

「…………私も……何回か…………」

「私も…………」

口々にとんでもないことを言い出す!
俺ヤバイじゃん!何股だよ!

これは……本当に刺されるんじゃ……

「そ、それでもカズマはまだ誰とも結婚しているわけじゃ無いですからね!結婚後は認めませんがそれまでの行いは追求しません!ここは寛大な私と!」

「言われてみればそうだが……まぁお咎め無しなのか?でも付き合ったわけでは……ぶつぶつ……」

「1回!?1回だけなのは私だけ!?」

「私は別にカズマを独り占めしたいとか思わないから、結婚した後でもかまわないわよ!」

「何を!?」

最後のアクアにはツッこまざる(?)を得なかった。
そもそも、10年前の俺に求婚しても……

「あの、今の俺に言っても……過去に帰ると記憶は無くなるし……」

「「「!!!」」」

全員初めて気づいた!みたいな顔をした。
ゆんゆんはともかく、お前ら3人はエリスのくだり知ってるだろ。
同じことをするんじゃない!

「仕方ありません。ならば、若かりしカズマは誰が好きなのですか?」

「は?」

「ここであなたが好きだといった人が、帰ってきたカズマと結婚する事にしましょう」

めぐみんの発言の後に、4人でガヤガヤと会議をはじめる。
とんでもない事を提案したなぁオイ。

でも、誰が好きって……
めぐみんとはいい感じだし、ダクネスともいい感じだし……いい感じ……?
俺は2人が好きなのか?
でもめぐみんには好きって言ったしなぁ……
だが、ひとつ確定していることはある。

「アクアは好きじゃないな。うん。」

コイツだけにはそういった感情を持ち合わせたことがない。

「ぐぬぬぬぬぬ……」

犬歯を剥き出しにするアクアが、めぐみんとダクネスにどうどう、と宥められる。
すると、ゆんゆんが俺の前に来て

「わ、私は……!?」

おどおどした感じで聞いてきた。
うん。このコミュ症っぽい反応が1番しっくりくる。
さっきのはなんだったんだろう。

「ゆんゆんはー……わかんないや。嫌いじゃないよ」

素直に思ったことを口にする。
それを聞いたゆんゆんの反応は、犬歯を剥き出しにするくらいわかりやすい、背を向けて体育座りだったけど。

「ならば、私か?めぐみんか?どっちと結婚したいんだ!?」

「そう言われてもなぁ」

見た目ならかなりレベルが高い2人だが、その実態を知ってる俺から見るとどうしてもコイツらと結婚ってのは踏み切れない感じがある。
いや、見た目なら間違いなく俺とは釣り合わないレベルを持っているよ?(大事なことなので2回言いました)

これは素直にそう思う。(3回目の念押し)
何人もと関係を持ってる未来の俺はともかく、今のピュアな俺は……!

うーん。と考え込んでいると、なんだか外野が騒がしくなってきた。

「お、おいカズマの体が透けてきてるぞ……」

「これはそろそろ元の時代に帰るということでしょうね」

「大事な事が聞けてないんだが!」

「今吐かせるんですよ!オラ!とっとと吐いてラクになっちゃいましょう!」

慌てる2人が透けかけの体をがくがくゆさぶる!

「この子捕まえてれば帰れないんじゃないかしら!」

「あ!ちょっ!アクアさんそこはかとなくずるい!」

アクアが後ろから羽交い締めっぽく抱きしめてくる。
お、おぅ……コイツも女だったんだな!

「言わなきゃいけない使命感!あててんのよ!……あれ?何か失礼な事を思われている気がするんですケド」

「あ!わたしも!」

未だに俺の体をゆする2人を押しのけて、ゆんゆんが前方から迫ってくる。
が、

「でしゃばらないでくださいゆんゆん!あなたのターンは終わっているのです!」

「そうだな!私なんて対して喋ってないんだ!ここはゆずるべきではないだろうか!なぁめぐみん!」

「させない!やらせはしない!」

俺をほっぽりだしてみんなでバトルロワイヤル的な争奪戦が始まった。

「はぁぁぁッ!」

「あぁん!今のは良かった!良かったぞ!!もっと来い!」

「この間にカズマくんを捕まえ……」

「させないわよ地味っ子!」

「じ、じみ!?」

4人が勝手に盛り上がっていくなかで俺がポツリ。

「う~ん。やっぱおしとやかな感じがいいよな。正統ヒロイン的な」

4人が同時にこちらに振り向く!
合わせて8つの眼光が重なる!

「つまり……」

「「「だれ?」なんだ?」ですか?」なのかしら?」

そして声も重なった。

俺はふと自分の右手に目を落とす。
輪郭がボヤけて光を纏っている。

なんとなく察する。
もうお別れだ。

最後に宣言しておこう!
……俺が結婚したいのは、そう!

「~~~~……~!」

「え!?聞こえないぞ!!」

「ああ!透けてます!もうほとんど透けてますよ!」

「ダメです!触れません!!」

「え、ちょっ、あ、さようならぁぁーーー!」

ちゃんと聞こえただろうか?
口をパクパクしている彼女達の声はもう聞こえない。

慌てふためいた彼女達は、最後には揃って、笑顔で手を振っていた。
俺も、苦笑を浮かべながら手を振った。
そして、視界が暗くなり、誰かと何かをやり取りして、意識が落ちた。

長いこと時間がかかってしまい申し訳ないです!
あと1回の更新で恐らく完結です!
その後はHTMLの依頼をした後、短編を載せられれば載せたいかなぁと。
いろんな展開を考えたんですけど、しっくりくるのに何回か書き直しました……
しかも結局完成させたのが結果をぼかすという……

……それでは次回をおまちください!なるべく早く頑張ります!寝る!

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年11月06日 (日) 12:03:46   ID: VsiEWvaW

続きがきになる......

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom