勇者「26代目の魔王が現われた」(59)

国王「改めて話そう。先代勇者が25代目魔王を倒し30年」

国王「新たなる魔王、26代目魔王が現われた」

国王「そして神々の力が発現した、選ばれし者である君は勇者として、討伐にあたってもらいたい」

国王「同行者三名は我々の方で選定しておる。その者らと共に魔王城がある西へ向かってもらいたい」

国王「魔王城は瘴気に包まれており、神々の力である退魔の力がなくては幾ばくともちはしまい」

国王「とは言え、神々の力があって尚、瘴気が重く圧し掛かるだろう」

国王「魔王城の近くまで進んだら、周囲にある四つの祠を巡るといい」

国王「そこで祈りを捧げれば祝福を受けられるだろう」

国王「祠は魔王城の東……ここから見て、最も近い位置と言えるだろう。そこから一周回るとよい」

国王「何か質問はあるだろうか?」

勇者「魔王討伐は勇者を含めて四人、というのは周知の事実ですが、理由をお聞かせ頂いてもよろしいでしょうか?」

国王「神々の力が他者にも影響を与えるが、それが三人が限度なのだよ」

勇者「少数精鋭を取らざるを得ない訳だったんですね」

国王「うむ……すまないな」

勇者「いえ、陛下が謝罪される事ではございません」

勇者「必ずや使命を果たして参ります」

国王「うむ、任せたぞ」

……
勇者(これから命を預けあう仲間か……確かこのあたりに……)

勇者「あそこか……」

戦士魔法使い僧侶「……」

勇者「君達が陛下が仰っていた同行者、だね?」

戦士「おう、あんたが勇者様か」

魔法使い「ちょっと言葉使いっ」

戦士「これからお互い命を預ける間柄なんだ。辺に畏まっても疲れるだけだろ」

勇者「その通りだ。皆、自然体でいてくれればいい」

勇者「神々に選ばれただけで、俺自身は何も凄い事はないしね」

僧侶「そ、そう言われましても」

戦士「改めて俺は戦士だ。見ての通り接近戦なら任せとけ!」

魔法使い「あたしは魔法使い。この国の宮廷魔法使いをやっているわ。攻撃魔法がメインよ」

僧侶「私は城下町の教会にいました僧侶です。回復魔法でしたらお任せ下さい」

勇者「俺は勇者だ。一応程度には剣が使える。まあ、戦士には稽古つけてもらわないとだな」

戦士「おうよ」

勇者「三人とも、詳細については聞いているだろうか?」

魔法使い「勇者様に同行して魔王を倒す、というぐらいしか」

勇者「そうか……まあ自分もそう詳しく知っている訳じゃないけども」

……
魔法「祠……」

僧侶「聞いた事がありませんね……」

勇者「まあ、魔王城の近くの事だ。一般的に知られていなくても不思議じゃないさ」

戦士「だろうなー」

勇者「明日は準備、出発は明後日でいいだろうか?」

戦士「うん? そこら辺は用意されているって聞いていたんだが」

勇者「えっそうなのか?」

魔法「あたし達に案内を頼んでいたし、話がなかったのかも知れないわね」

僧侶「こちらが用意されているものです」

勇者「本当に一通り揃っているんだな……」

戦士「壊れたり消耗したもんは適当に買い直せってさ」

勇者「まあ、当然っちゃ当然か」

魔法「じゃあ出発は明日かしら?」

勇者「皆がよければそうしようと思うが、どうだろうか?」

僧侶「私は構いませんよ」

戦士「俺も構わないぜ」

魔法「あたしもよ」

勇者「よし、明朝7時に出発しよう」

……翌日
勇者「たああ!」ザンッ

魔物A「ギィッ!」ズシャァッ

戦士「やるじゃねえか!」ヒヒン

魔物B「ギャッ!」ズンッ

魔物C「ギギ!」ザンッ

魔法「あら……なんだか、あたし達の活躍なさそうね」

僧侶「勇者様も戦士さんも凄いですっ」

勇者「いや、俺なんてまだまだだよ」

戦士「そうかー? いい線してんじゃね?」

魔法「それにしても、本当に勇者様の力は凄いわね」

勇者「俺じゃなくて神々の力だけどね」

戦士「斬った断面がぼこぼこ泡だってやがる。これ、魔物に少しの傷も相当なダメージになるんじゃね?」

僧侶「相当と言いますか……これどういう状態なんでしょうね」

魔法「これ、魔王が相手でも同様の効果なのでしょうか?」

勇者「流石にこのままの威力って事はないだろうけども、十分に有利な状況にはなるだろうな」

戦士「強敵相手だと、俺がひきつけて勇者に攻撃してもらった方がいいかもな」

……野営中
魔法「それにしても、本当に四人なのね」

勇者「もしかしたら魔王城の手前まで、同行してくれる兵士の部隊とかあるかもしれないけど」

勇者「結局は魔王城に近づける人数には制約があるからね」

魔法「あーそうじゃないんですよ。ほら、四つ贄みたいじゃないですか」

勇者「あー」

戦士「あん? 四つ贄?」

僧侶「戦士さんはご存知ないんですか?」

戦士「んな訳あるか。っていうか四つ贄知らん奴探し出すとか無理なぐらいじゃねえの?」

勇者「凶悪な魔物が現われ、人々は脅威に晒された」

勇者「人々は命を住む地を奪われ続けていく中、もはや存続するのも危ぶまれた時」

勇者「30年に一度、四人の生贄を捧げればお前達の住処を襲わない、と魔物は言ってきた」

勇者「人々に選択肢はなく、それを呑む他なかった。結果、一時の安息を得る事ができたが」

勇者「旅をする者は幾人も襲われる事となった」

勇者「それからしばらく後、神々に選ばれし者が現われた。彼は仲間と共に生贄になると申し出たのだ」

勇者「一人は神々に選ばれし者、一人は剣が達者な者、一人は魔法が達者な者、一人は癒す事が達者な者……」

勇者「彼らは勇猛果敢にも魔物に立ち向かうも、その命を代償に魔物を打ち倒したのだった……だな」

勇者「明言はされていないが、これは初代勇者ではないか、と言われているな」

戦士「でも相手は魔王じゃねえんだよなぁ」

魔法「伝承のようなものとは言え、事実魔王も討伐されてから30年後に新たな魔王が誕生するし」

魔法「魔物に置き換えたものと考えるほうが辻褄は合うわね」

勇者「俺もそう思うよ」

僧侶「でもそうしますと、この四つ贄と神々の力が三人まで、計四人で魔王と戦わなくてはならないというのは」

僧侶「少し薄気味が悪いものがありますよね」

勇者「逆じゃないかな?」

僧侶「え?」

勇者「四人で戦うしかないって言う所を生贄として置き換えているんじゃないかな」

勇者「そんなに長らくこの"魔物"とやらに暴れられた歴史も、その後の生贄を差し出し続けた歴史も」

勇者「俺の知る限りは存在しないよ」

魔法「あたしもそう思うわ。数年の猛攻とそれを討伐した初代勇者を元にしたものでしょうね」

戦士「んーそうすっと、一番初めの四つ贄伝説は違う内容だったのか?」

僧侶「??」

魔法「僧侶……戦士に頭の回転で負けてるわよ」

僧侶「えぇ!?」

戦士「おい、なんだその驚き」

勇者「当初の内容は分からないが、初代勇者がモチーフで討伐後すぐに作られた話なら」

勇者「30年に一度の生贄はないだろうから、だいぶ違う内容だったんだろう。そもそも四つ贄伝説じゃないし」

僧侶「……? ああ!」

魔法「ま、想像に過ぎないけどもね」

勇者「だな」

戦士「しっかし、そう考えると面白いものがあるな」

勇者「ただ、こういう伝承とかって何かしらの事実を基にしているものだから」

勇者「自分達がした憶測と違った場合、一体何が起こったのか……と思うとぞっとしないわけだけどな」

戦士「……この勇者と思しき人間の仲間っていう三人の能力はどう考えてんだ?」

勇者「まあ、不気味に思うかもしれないが」

勇者「四人で戦うバランスで考えたら黄金比みたいなもんじゃないか?」

魔法「もしも、勇者が戦いに長けた人物だったら剣の使い手が弓だったり」

勇者「後衛が増えたりの差はあるだろうけども、これに被ってる歴代って珍しくないと思うぞ」

戦士「そんなもんかねー」

勇者(むしろ一番薄気味が悪いのは、魔物の急な提案だ。あまりにも魔物にメリットがない)

勇者(もしもこれが現実を元にしたものなら、これは一体どういう事だ)

勇者(魔物の上に別の存在がいる?)

勇者(その存在は何だ? どうなったんだ? 毎度思うがこれは一体何を意味しているんだろうか……)

戦士「どうしたんだ? 険しい顔をして」

勇者「……」

勇者「いや、ちょっと考え事だ。気にするな」

……町
勇者「今日明日は休んで明後日出発しよう」

戦士「そりゃ城下町から距離があったとは言え、いきなり丸一日休みをいれていいのかよ」

魔法「あたしはありがたーい」

僧侶「う……お、同じく」

勇者「明日は戦士、剣の稽古をつけてくれ」

戦士「ああ、そーいう」

勇者「正直言って、魔王に斬り付けられなかったら意味がないからな」

……翌日
魔法「あたし達は適当に買い物とかしているわね」

僧侶「ですです」

勇者「じゃあ物資の補充はお願い」

戦士「任せたぜー」

勇者「よし、やるか」

戦士「おう」

戦士「一先ず、勇者は全力でかかってくれよ」

勇者「ああ、分かった」ジリ

勇者「くっそぅ……一本どころか」

戦士「経験の差を舐めんなよ」

戦士「つっても、やっぱ筋はいいな」

戦士「あんまり人に教えるのは苦手なんだが、ちょっとやる気出てきたぜ」

勇者「あ、ちょっとなのか」

戦士「そんだけ苦手って意味だからな?」

……
魔法「……」

僧侶「……」

勇者「あー疲れた……」ボロボロ

戦士「だなー」ボロボロ

魔法「バカがいる……それも二人」

僧侶「か、回復魔法をかけますね」

勇者「初、回復魔法だな」

戦士「それが稽古の所為ってのも申し訳ねえな」

魔法「それで特訓の成果はありそうなの?」

勇者「かなりいい加減な剣術だった事を思い知らされた、かな」

戦士「知識としての話だけどな。振るう分には悪くないんだから、あんまし気にすんなよ」

僧侶「でも程々にして下さいよ?」

勇者「俺の努力次第なんだよなぁ……」

戦士「いやだから……まあいいや。勇者の納得がいくようにやればいいだろ」

……二ヵ月後
勇者「たあああ!」ザンッ

戦士「せやああ!」ヒンッ

魔法「まだまだあたし達は暇ね」

僧侶「ですねぇ」

勇者「とは言え流石に……」

戦士「だいぶ、固い敵が多くなってきたな」

勇者「甲殻を持った敵なんかは、魔法使いに任せようかな」

魔法「あら、いよいよ出番ね」

僧侶「出番……私……」

戦士「もうすぐ、俺らも血を流す事もあっからそんな顔すんなよ」

僧侶「分かってはいるのですが……それはそれで嫌なんです」

勇者「それにしても、各地の魔物による被害については、殆ど関わらずに来てしまっているけども」

勇者「本当にこれでいいのだろうか……」

戦士「そういうのは軍が積極的に動いているし、いいんじゃねえの?」

魔法「魔王討伐の人数制限上仕方がない事だし、それを踏まえた上での役割分担っていったところじゃないかしら?」

僧侶「でも、今まで聞いた話を解決していたら、未だに四つ目の町ぐらいしか進んでいなかったかもしれませんね」

勇者「そうなんだよなー……」

戦士「お前って何ていうか抱え込むタイプだな。もっと気楽にしてりゃいいのに」

勇者「……とは言え、神々に選ばれた身。生半可な事はできないだろ」

戦士「つっても、元々戦うスキルが十分にある訳でもねえし、仕方がなくね?」

魔法「それも何だかって話よね。神々はどういう基準で選定しているのやら」

僧侶「歴代勇者の方々も、ある国の騎士などのように、分かりやすい功績のある方じゃないですもんね」

勇者「それも分かっているんだけどさ……」

戦士「割り切れないってか?」

勇者「分かってはいる。魔王を倒す事だけを考えておけって」

魔法「じゃあこう考えてはどう? 魔王を早く倒せばその分、全世界で起きている魔物の被害がなくなる」

僧侶「なるほど……確かにそうですね」

勇者「……」

勇者「その考え方は、した事がなかったな……ありがとう、少し肩の荷が下りた気がする」

戦士「そもそもその下りた荷は、お前の思い込みだからな……?」

魔法「そう言えば、こないだの大きい町で面白い本を見つけたのよ」

戦士「あからさまな話題逸らしだな」

僧侶「戦士さん……」

勇者「お前……まあ俺が原因だし、何も言えないな。で、どういった本なんだ?」

魔法「魔神伝説っていう話よ」

戦士「別に伝承自体はそう珍しいもんじゃなくね?」

魔法「ただそれだけならね」

魔法「魔神伝説は、現われた凶悪な魔神を神々に選ばれし者が封印するっていう内容なのよ」

勇者「神々に選ばれた……」

戦士「初代勇者を示唆してるってか?」

魔法「どうかしら……もしかしたら昔から、発生した敵に対して神々が選んだ人間に力を与え、解決させていたのかも」

勇者「あるいはこれもまた四つ贄伝説の一部かもしれないな」

僧侶「どういう事ですか?」

勇者「四つ贄伝説の一部の真実がこの魔神伝説なのかもしれないって事さ」

勇者「まあ、神話なんかだと別の神を同一視する場合もあるし、どうだかは分からないけども」

戦士「へえ、そんな例があんのか」

魔法「割とあるわよ」

僧侶「ですね」

戦士「……いや待て、僧侶的にいいのかよ? 色々と」

僧侶「私のところは縛り付けるような事をしませんからね。他宗も神話も一つの考えという捉え方ですよ」

勇者「寛容なんだよなぁうちの国の教会って」

勇者「……」

戦士「どうしたんだ?」

勇者「いや、こう……敵がいてそれを誰かが討つって話はあるけども」

勇者「その詳細、どういう敵なのか。その誰かはどういった者なのかって話は」

勇者「あまり見かけないものだなって思ってさ」

魔法「そういえばそうね」

僧侶「何でなんでしょうね?」

戦士「はっ! これはきっと何者かの陰謀! きっとこの伝承の裏にはっ」

勇魔僧「……」スタスタ

戦士「ちょ、ノリ悪っ!」

勇者「今時そんなものないだろ……」

魔法「戦士ってちょっと……」

僧侶「ええと、創作物が好きなのですか?」

戦士「僧侶のフォローが一番痛い!」

戦士「ちと冗談言ったつもりなんだがなー」

勇者(……だが、言われてみると作為的なものが感じられなくもないが)

勇者(考えすぎか)

戦士「うん? そういや、先代勇者とかの話ですら全く聞かないんだが、どうなってんだ?」

勇者「何も聞かされていないが、意図的に情報を止めているんだろうな」

戦士「なんでまた……」

勇者「これまた推測だが、恐らく神々の力を失うのだろう」

勇者「だが、先代勇者という名は重たい。こうして新たな魔王が現われたら」

勇者「状況はどうあれ人々は先代にも戦って欲しいと願うだろう」

魔法「ああ……簡単に想像できてしまうのが何とも」

戦士「退魔の力もない、身体能力も衰えている……確かに、ひっそり暮らさせた方がいいわな」

勇者「歴代勇者のその後が語られないのは、そうした理由なんじゃないかと思っている」

勇者「それが分かっているから歴代勇者自身も姿をを隠しているんだろう」

戦士「かん口令ってやつだっけか?」

魔法「厳密でなくても意味が違うわよ……」

戦士「あ、あれ?」

僧侶「そうしますと、勇者様もこの旅が終わったら隠居されるのですか?」

勇者「この歳で隠居かー。まあ、俺は元々城下町暮らしだったし、どっか遠くの田舎行きは避けられないだろうな」

勇者「国から補助はあるんだろうし、のんびり余生が送れると思えばいいのかなぁ……」

戦士「結婚もしてねえのにか……」

魔法「まあ……一世一代どころか一族単位の大仕事だしいいんじゃないの?」

……更に数ヵ月後 魔王城東
勇者「ここが……祠か」

戦士「なんだこの紋様……あれ、これって」

勇者「ああ、俺達の国の紋章だ」

僧侶「どういう事でしょうか?」

魔法「一説によると、この紋章はある神の紋章でもあるって話よ」

魔法「もしかしたら、瘴気を払う力の神様なのかもしれないわね」

戦士「納得しかけたが、バチあたりじゃねえのこれ」

勇者「……た、確かに」

僧侶「そう言えば、国の紋章は元々違うものだったらしいですよ」

勇者「え? そうなのか?」

僧侶「ええと、そういう話らしいってだけなんですが」

僧侶「教会にある昔の書物ですと、時折違う紋章が登場しますね」

魔法「その書物、教会に置いていていいのかしら……価値とか色々」

勇者「なんか、バレたら相当まずそうな代物だな」

戦士「てか、あえて神様の紋章にするってそっちのが相当じゃねえの?」

勇者「ああ、その話が本当なら余程の事があったんだろう……聞いた事がないが」

魔法「……」

僧侶「どうされました?」

魔法「祈りを捧げろと言われたのよね?」

勇者「陛下にはな」

魔法「あんまり、というか何も変化がないのだけれども」

僧侶「正直に言いますと、私も全く。祝福を受けるというのは、ある種の言い方の問題なのでしょうか?」

勇者「かもしれないが……その、俺は何と言うか、何かを感じたというか……」

戦士「お、マジか? 俺はさっぱりなんだが」

勇者「これが気のせいであろうとなかろうと、この祠がますます分からない存在になる訳だが……」

戦士「とりあえず、次の祠にいってみねーか? 計四箇所で今勇者だけが感じ取ったんなら」

戦士「一人一つの祠かもしれねーし」

魔法「確かに……偶然と考えるほうが能天気ね」

……魔王城 南
勇者「こっちは剣か……」

魔法「で、どうなの?」

戦士「んー? これが祝福なのか? って感じかな」

戦士「なんつーか、一瞬だけ背筋を指で這わされるような感覚がして」

戦士「少し、手先に痺れがくるような」

僧侶「なんだか、聞く分には呪いの類のような……」

魔法「毒をもって毒を制すって事なのかしら? まあ、それなら祝福、なんていい方もするかもしれないわね」

戦士「勇者も同じ感覚だったんだろ?」

勇者「ああ……だが、これでこの感覚は本来の物であって、心配する必要がない事が分かってよかった」

勇者「……」

戦士「どうした? いかないのか?」

勇者「王家の紋章に剣の紋章……戦士たちの選抜は祠に関係した人物なのか」

魔法「そうじゃないと退魔の力増強が意味なくなるじゃない」

勇者「妙だな」

僧侶「え?」

魔法「そうね……」

戦士「んまあそうだよな」

僧侶「」

勇者「あー……ええとだな、出発した頃に四つ贄伝説の話したの覚えてる?」

僧侶「は、はい……」

勇者「今の俺達の構成と、伝説の構成が同じだけど、今までの歴代の中では珍しくないだろう事と」

勇者「場合によっては後衛が多いかもしれないって言っただろう?」

僧侶「ですね……あ」

勇者「そこらへんの記録はないから確かな事は言えないが」

勇者「この祠がどういった力を持つ者か、を限定しているとしたら随分と使い勝手の悪い話だって事さ」

戦士「そりゃまあ、勇者と三つの祠に適した人間揃えりゃいいだけっつっても、他の人間割り当てた方が良い事もあんだろ」

魔法「って事よ」

僧侶「な、なるほど」

勇者「一先ずは次に進んでみるか……」

戦士「ま、今更考えても仕方がねえしな」

魔法「他の理由もあるかもしれないしね」

勇者(だがそれでも……今のところは俺と戦士だけ)

勇者(この祠に仕掛けられたものが作動するのは、限定された人間だけ……)

勇者(一体どういう事だ……?)

僧侶「勇者様、眉間に皺がよってますよ」グニグニ

勇者「うーん……考えすぎなのかなぁ俺」

……魔王城 西
勇者「なんだこのマーク……?」

戦士「見た事あるようなないような。むしろ文字か?」

魔法「……古代ルーン文字ね。魔法や魔術を意味しているわ」

僧侶「紋章とかですらなくなりましたね」

勇者「王家、剣、魔法、か……」

戦士「なんかいよいよって感じだな」

魔法「……」ブルッ

魔法「えー……この感じを無表情で受け止めていたの?」

勇者「なんか凄い顔された」

戦士「別に平気だろ」

魔法「えー……」

勇者「滅茶苦茶引かれてる……」

戦士「なるほど、魔法使いは感じやすいと」

魔法「燃すわよ……」

僧侶「魔法使いさん、目が笑ってませんっ!」

勇者「笑うとか以前に本気だな、これ」

……魔王城 北
勇者「十字……教会か?」

僧侶「いえ、教会ですと十字の周り枠と言いますか、もう少し形があるんです」

戦士「ただの十字ってどんな意味なんだ?」

魔法「一般的には病院とかの意味合いよね。ここまでの流れで考えたら……」

戦士「あん?」

勇者「ああ……そうだな。癒す事が達者な者、だな」

戦士「あ、そういう事か」

僧侶「四つ贄伝説が揃いましたね……いひいいい!」

勇戦魔「!?」ビクッ

僧侶「ひ、い……な、何なんですか今の!? どうやっても祝福に程遠いですよ!」ブルル

魔法「あーそれね……」

勇者「びっくりした……」

戦士「ああ、いきなりだったもんな」

戦士「しかしあそこまで反応するとは……」

戦士(やばい、ちょっとアレな時を想像したら勃ってきそう)ヒソ

勇者「……」ジリジリ

戦士「え? おーい?」

魔法「……」ギラリ

戦士「おおぉぉ……」

勇者「……」

魔法「勇者……」

戦士「つってもここで立ち止まる訳にはいかねえだろ?」ブスブス

勇者「そうなんだが、というかお前随分と焦げたな……」

魔法「魔王倒した後覚えてなさい」ギロリ

戦士「うお、マジかよ……」

勇者「いやまあ、妥当な対応だろ」

僧侶「? あのー一体何が」

……
勇者(果たして本当に魔王城に行っていいものだろうか)ザッザッ

勇者(今ならまだ引き返す事も……だがそうしたらどうする?)

勇者(魔王は? 人々は? 世界は……)

勇者(……)

勇者(初めから、選択肢などなかったな)フゥ

戦士「お、見えてきたな」

魔法「鬱蒼とした森ねぇ……」

僧侶「お陰で祠からはよく見えませんでしたもんね」

……ギィィ ズズゥゥン
勇者「……扉が閉まったか」

戦士「開かねえな、これ」ググ

僧侶「わざわざ入ってきた敵を逃がす訳がないですものね」

魔法「どうするの?」

勇者「……やけに静かだ」

勇者「外はあれだけ魔物がいたのに……どういう事だ」

戦士「中に入れない、が目的だったとか?」

魔法「だとしてもちょっと強気な配置よね」

勇者「ここの部屋は安全そうだな」

勇者「俺が見張りをするから休んでいてくれ」

戦士「途中で俺も変わるぞ。お互い、魔力使わないってのは回復が楽でいいな」

勇者「まあな」

魔法「それじゃあ」

僧侶「お言葉に甘えさせて頂きます」

勇者「戦士も先に休んでいてくれ」

戦士「おう、そうさせてもらうぞ」

……魔王の間の扉
勇者「ここが……この先に魔王がいるのか?」

戦士「城内はホント無人かっつーぐらい静かだったな」

魔法「これで魔王もいなければいいのに……」

僧侶「正直、そうですよね……」

勇者「はは……魅力的な話だが、その場合幻覚を疑うよ」

戦士「だなぁ」

勇者「よし、開けるぞ」グッ

……魔王の間
魔王「……来たか」

魔王「永い、夢を見ていた」

魔王「何もかも捨ててずっとこの夢の中にいたかったものだが」

魔王「来てしまっては仕方がないな……」

魔王「来るがいい、勇者よ」

魔王「自らの宿命に向き合うがいい」

勇者「何を……訳の分からない事を!」ダッ

勇者「C陣形!」ザッ

剣士「了解!」

魔術師「――――」ブツブツブツ

白魔道士「了解です!」

魔王「遅い!」シッ

勇者「ぐ!」ガギィィン

勇者「なんて重い……!」ズザァァ

剣士「たあああ!」ヒンッ

魔王「……っ」ズシャァァ

剣士「……え」

白魔道士「えぇ!?」

剣士「何故、無防備で……」ドッ

剣士「あ、れ……」ドクドクドク

魔王「……」ヒュンッ

剣士「」ドザァ

白魔道士「剣士!」

勇者「うおおお!」ブォンッ

魔王「……」ギッ

勇者「なっ」ィィィンッ

勇者(受け、流され)

魔王「はぁっ!」

魔術師「あ……」ザンッ

白魔道士「まじゅ……」スンッ

白魔道士「つ、し……」ブシュァッ

魔王「はぁ……はぁ……」ボダダダ

魔王「く……」ドザァ

勇者「み、皆……くそ!」ギロッ

魔王「討ちたければ、討つがいい。どの道、ここから出られん、がな」

勇者「なに……」

魔王「生贄を、逃がす訳がない、だろう……」

勇者「……ならば、貴様も連れて行く!」グッ

魔王「無駄だ……生贄を、逃がす訳が、ないだろ……」

勇者「な、なに……?」スゥッ

魔王「ぐ」ドザッ

勇者「どういう、意味だ」

魔王「……時間はある、勝手に考えて、答え合わせを、するんだな……」

勇者「お前は……一体何なんだ?」

魔王「……全ては」

魔王「全ては、決まっていた事、予定調和……」

魔王「もしかしたら、伝承は……我々に知らせる為の……」

勇者「なんだ……一体何なんだ。訳が分からないっ!」

魔王「初めの……魔神の……」ゴボッゴボッ

勇者「魔神……? 魔神伝説の事か?」

魔王「それを、継続、させるだけの……」

勇者「何を継続させているんだ? お、おい」ガッ

魔王「……」スゥ

魔王「」

勇者「……息絶えた、のか」

魔王「」

剣士「」

魔術師「」

白魔道士「」

勇者「……何で、こんな……」


かくして、27代目魔王が討ち取られた。
そして、30年後にはまた……。


  勇者「26代目の魔王が現われた」 終

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