小日向美穂「Shabon love」 (13)

美穂ちゃんと美嘉ちゃんの曲、「Shabon song」を聞きながら書きました。
少しPとの恋愛要素があるので苦手な方はお気をつけください。

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「大丈夫だよね…うん」
もう何回鏡を見ただろう。少しでも可愛く見てもらいたい…なんて。
「わわっ、もうこんな時間!」
慌ててバッグを手に取って寮を出る。何とかバスに間に合って一息ついた。スマートフォンをつけるとメッセージの通知が1件。美嘉ちゃんからだ。
『美穂ちゃん、楽しんでくるんだよ!』
背中をトンと押された気持ちになる。たくさん相談に乗ってくれた友達に『うん、ありがとう!』と一言返信した。
バスが待ち合わせの駅に着いた。今、私の心臓をつついたらパチンと割れてしまいそうだ。見慣れない服装に身を包んだあの人が待っているのが見えた。駆け足になりそうな気持ちを抑えながら距離を縮める。
「あの…」
目深に被った帽子を少し持ち上げて声をかけた。
「お、お待たせしましたっ」
「おはよう、美穂」
名前を呼ばれてまた私のハートは膨らんだ。

数日前のこと。私は美嘉ちゃんとご飯を食べていた。美嘉ちゃんとは『Shabon song』を一緒に歌ったのをきっかけに仲良くなった。仲良くなる前は見た目で怖い人なのかな…とか思ってたこともあったけど全然そんなことはなくて。むしろレッスンで戸惑ってる私にアドバイスしてくれたり、ファッションのこととか教えてくれたり…とっても優しい女の子だった。そんな美嘉ちゃんとファミレスで食事をしながら私は思い切ってある相談をしようとしていた。
「あの…美嘉ちゃん」
「ん?どうしたの?」
やっぱりやめようかな…ううん、でもっ…!そんな風に悩んでいると美嘉ちゃんがにっこり笑って、
「もしかしてプロデューサーのこと?」
「そうなの…私プロデューサーさんのことが好…えぇっ!?何でわかったの!?」
ズバリ考えていたことを当てられてしまった…。美嘉ちゃんはもしかしてサイキックパワーを…?
「カンだよ、カン★美穂ちゃんいつか話してくれるかなーって思ってたんだ」
「え?」
「だって美穂ちゃん、プロデューサーと話す時雰囲気違うって言うかさー、もしかしたら、って思ってたんだよね★」
そ、そんな…努めて表に出ないように振る舞っていたのに…。
「うぅ…恥ずかしい…」
「まあ、プロデューサーが気づいてるかどうかわからないけどね。結構アタシたちのことよく見てくれてるから気づいてるかも」
「ほ、ほんとに!?」
一瞬心臓が飛び跳ねたけど、気付いてほしいのか気付いてほしくないのか自分でもよくわからなかった。
「…でもやっぱり、アイドル、だもんね…」
「…まあ、ね」
そう、普通の関係であれば気付いてほしいに決まっているのだ。でもそれがよくわからなくなってしまっている原因はアイドル。私の憧れた職業、私の今の職業。

「プロデューサーとアイドルっていう関係じゃなかったら…って思ってる?」
「そんなことはないよ」
間髪入れずにそう言ったら美嘉ちゃんはポカンとした顔をしていた。
「ど、どうしたの?」
「いやあまりに即答だったからびっくりしちゃって…」
「えへへ、この質問の答えは自分の中ではっきりしてたから。プロデューサーさんと会えたのがアイドルのおかげっていうのもあるし、アイドルが憧れだったっていうのもあるけど…」
これはずっと私を支えてきてくれた気持ち。
「プロデューサーさんのことを好きになった私は、美嘉ちゃんやみんなと出会って成長したアイドルの私なの。だからそれを大事にしたいんだっ」
美嘉ちゃんははにかみながら「へへっ、そっか」と言ってくれた。
「だから私はプロデューサーさんと一緒にお仕事できるだけでいいんだ」
恥ずかしくなって水を一杯飲み干した。コップを置くと美嘉ちゃんがにこっと笑って、
「でーも!もうちょっと欲張りになってもいいんじゃないかなー」
と言った。欲張りって言っても…何だろう?一緒のお仕事増やしてもらうとかかな?
「デートくらいしてもいいんじゃん?」
「で、デート!?」
プロデューサーさんとデート…想像しただけで顔が真っ赤になった。
「今度美穂ちゃん私服のお仕事あるでしょ?それ一緒に買いに行きなよ!」
「ええっ!?あ、あるけど…」
最初の予定だと誰かアイドルの友達と行こうと思っていた。言われてみればチャンスかも。
「アタシは美穂ちゃんのこと、応援してるよ★」
「う、うん…えへへ、ありがとう」
美嘉ちゃんに背中を押されて、私はプロデューサーさんを買い物に誘うことに決めた。

「あ、あの、プロデューサーさんっ」
「どうした、美穂?」
き、緊張する…で、でもお仕事のためだから…そう言い聞かせて勇気を出す。
「今週末、プロデューサーさんもオフですよね?」
「ああ、そうだけど」
「そ、その何か予定とかありますか?」
「うーん、今のところないな」
「ほ、ほんとですか?じゃ、じゃあ…」
「じゃあ?」
がんばれ、私!
「あ、あの良かったらお買い物に付き合って欲しいんです!」
「いいぞー」
「や、やっぱりお休みはゆっくりしたいですよね。す、すみません!…ってあれ?」
「休みの日家でゴロゴロしてても意外に疲れ取れないんだよな、俺。それに美穂と出かけることもそんなになかったしな」
「わ…や、あ、ありがとうございます!」
「はは、お礼なんていいって」
そんなわけで私はプロデューサーさんをデ…買い物に誘うことができた。その日からは作戦会議の日々。美嘉ちゃんに私に合うメイクを教えてもらったり、響子ちゃんにお弁当の作り方を習ったり、卯月ちゃんに恋愛成就のお守りをもらったり。準備は万端…たぶん。

「これか…これとかいいんじゃないか?テレビ映えもしそうだし」
「へっ!?そ、そうですね」
真剣に服を選んでくれてるプロデューサーさんばかり見て、当の本人である私は全然服を見てなかった…。プロデューサーさんの選んでくれた服は何だか着る前から自分に似合う気がしちゃう。
「ちょっと試着してみますねっ」
「おう、外で待ってるな」
試着室に入ってふーっと息をついた。隣で歩いているだけで嬉しくてニコニコしてしまう。さっきもプロデューサーさんに『楽しそうだな』って言われたし…。で、でも楽しそうって思われる事は悪くないよね…うん。
「あ、着替えなきゃ」
着ている服を脱いでいると外からプロデューサーと女の人の話し声が聞こえた。
「彼女さん、かわいいですね」
「えっ!?」
カ、カップルと間違えられてる~!
「は、はい、かわいいです」
か、かわ、かわいい…。プロデューサーさんはよく言ってくれるけど、何度も言われても嬉しい…。
「今日はプレゼントか何かですか?」
「いえ、仕事用の服を…」
「仕事用?」
「あ、いや、違います、えっと…」
プロデューサーさんがピンチだ!急いで着替えてカーテンを開けた。
「あ、あの!どうですか!?似合いますか?」
「……」
あ、あれ?店員さんもプロデューサーさんもポカンとした顔をしている。
「あ、美穂…その、言い難いんだが…前後ろ、逆だな」
「え」

「うぅ…恥ずかしい…」
「あはは、顔が真っ赤になった美穂も可愛かったなー」
「もうっ、からかわないでください!」
「ごめんごめん」
顔から火が出るほど恥ずかしかったけど、何だかこれもいい思い出になるような気がした。
「でもこの服、似合ってたよ」
プロデューサーさんが持っている袋を指して言った。
「ロケが楽しみだな」
「…はい。えへへ…」
他愛のない話をしながら、私店員さんの言葉を思い出していた。
『彼女さんかわいいですね』
彼女…そういう風に見えるのかな?見えたら私は嬉しいのかな?ちょっと考えたけど『嬉しくないことはない』という曖昧な結論に落ち着いた。
「そろそろお昼だな。どこか食べに行くか。何食べたい?」
そっか…もうそんな時間なんだ。プロデューサーさんと一緒にいると時間があっという間に過ぎてしまう。そして私はこのお昼の時を待っていた。
「あっ、あのっ!」
「ん?」
「お、お弁当作ってきたんですけど…」
「なっ…!?」
プロデューサーさんはびっくりして固まってしまった。
「むぅ…そんなに意外ですか?」
「いや、違う違う!嬉しかったんだよ。ありがとな、美穂」
思わず頭を撫でそうになって手を引っ込めるプロデューサーさん。2人で顔を見合わせて苦笑いした。…撫でてくれても良かったのにな。

近くの公園に出て手頃なベンチに座った。ピンク色のお弁当箱を出すとそれだけで『おおっ!』と言うプロデューサーさんが面白かった。蓋を開けて配置が崩れてないことにほっとする。
「おおー、オムライスか。うまくできるもんだなぁ」
「響子ちゃんに手伝ってもらったんです」
響子ちゃんには『私が手伝ったことは言わないこと!美穂ちゃんが1人で作ったことにするんだよ?』って言われたけど…えへへ。やっぱり大事なことだから。
「そっか、響子先生は厳しかったか?」
「そんなことないですよ。優しく教えてもらいました!今度プロデューサーさんも一緒に教えてもらいませんか?」
「え?あー…ふふふ、美穂、俺が意外と料理できること知らないな?」
「え?そうなんですか?」
「ああ。大学の時一人暮らししてたからな。お世辞にもうまいとは言えないが、ある程度はできるぞ」
そうだったんだ…。プロデューサーさんの新しい一面を知ることができて嬉しかった。
「まあもちろん響子の料理の腕にはかなわないけどな。…なあ美穂、そろそろ食べていいか?」
プロデューサーさんが待ち切れないように言った。
「はいっ。ぜひ…」
「うまそうだよ、ほんとに。じゃあいただきます」
「め、めしあがれ」
オムライスが口に運ばれるのを固唾を飲んで見守る。
「うん、うまいっ!うまいぞ、美穂!」
「そ、そんなっ。大げさですよ~」
そう言いつつ口元が緩むのを止められなかった。その後もプロデューサーさんはたくさん褒めてくれて幸せだった。
「早起きして作ってくれたんだよな…うんうん」
「プロデューサーさんが喜んでくれて、嬉しいです…」
「美穂も食べな。うまいぞ~」
まるで自分が作ったかのように勧めてくるプロデューサーさんに思わず笑ってしまう。
「えへへ……はむっ。…うん、おいしい」

「プロデューサーさん寝ちゃってる…」
お弁当を食べた後、静かにのんびりしていると寝息が聞こえた。お仕事で疲れてたのにお買い…で、デートに付き合ってもらって申し訳なかったかな…。でもきっとそのことで謝ったら、プロデューサーさんは美穂に元気をもらったよ、とか、俺も楽しかったって言ってくれるんだよね。私の好きな人はそういう人なんだ。
夏の心地よい風がすーっと髪をなでる。私の手とプロデューサーさんの手の距離は残り数センチ。触れようと思えばいつでも触れられるけれど、触れたらこの幸せな空間が壊れてしまいそうで私はそっと手を引っ込めた。まだダメ…だよね。
「おねえちゃんこれあげる」
「え?」
声がした方を振り向くと小さな女の子がシャボン玉セットを私に差し出していた。
「もらっていいの?」
「うん、おねえちゃんかなしそうだったから」
「あ…うん、ありがとう」
私が受け取ると女の子は走っていってしまった。手元のシャボン玉セットを見る。久しぶりだからうまく膨らませられるかな…?
「ふーっ」
シャボン玉は夏の風に乗ってきれいな形を保ったまま空高く舞い上がった。

「ん…わっ、あっ、すまん美穂、寝てしまった…!」
「ふふっ、いいんです。プロデューサーさんがそれだけリラックスしてくれたってことですから」
「ありがとう…でもほんとにすまん…」
「謝らなくて…もう…あ。…プロデューサーさんっ」
「な、なんだ?」
「今度プロデューサーさんのお料理食べさせてください。それでおあいこです」
「わかった!約束だ」
「えへへっ、楽しみにしてますね」
またプロデューサーさんと2人きりで会える。それだけで私の心はあのシャボン玉みたいになるんですっ。

頼むから改行してくれ
読む気失せるから

以上になります。
曲名は「shabon song」でしたね…すみません。
とてもかわいくて爽やかで良い曲なのでみなさんぜひ聞いてください。
恋する美穂ちゃんはとても可愛いと思います。
読んでいただいてありがとうございました。

>>11
すみません、以後気をつけます。
ご指摘ありがとうございます。

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