【ヤマノススメ】あおい「山の日……あれ?」 (26)

山の日遅刻SSです。
あおひな要素あり。

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8月14日 AM10:10

あおいの部屋

あおい「ん……すぅ……」ゴロン

アオイー オカアサンデカケルカラネー!

あおい「んっ……ふうっ……!?」ノビー

あおい「あれ……朝かぁ……」

あおい「ふわあ~~……あぁ……」

あおい「ねむっ」

あおい「…………」ゴソゴソ

あおい「…………」スマホスイスイ

あおい(10時かぁ……二度寝……は、やめとこう)

あおい「ん~……」ゴロンゴロン

あおい「おきたくなーい……」

あおい(でも起きよう……あと10分ぐらいしたら……)グテー

あおい(あと、10分……)

あおい(あー、布団、やわら、か……)

あおい「…………」

あおい「……すー」

AM11:20

あおい(結局二度寝しちゃった……ふわぁ)ノソノソ

あおい(いつまで寝てても怒られない、夏休みって良いなぁ)

あおい「…………」グー

あおい「おなかへった」

あおい「お母さんなんか作ってってくれてないかなー」

あおい「おいしいおっなべー」パカッ

あおい「……ない」からっ

あおい(こうなると①カップ麺②コーンフレーク③何も食べないのどれかになる……)ウーン

あおい(空腹で満足感も捨てがたいものの、それ以上に寝起きの体が爽やかさを求めている……!)

冷蔵庫「ガチャッ」

あおい(よってコーンフレーク! ヘルシーでオシャレ!)

あおい「牛乳牛乳~っと」

あおい「スプーンと、器と……あとテレビと」ポチ

テレビ「……今日のお天気です」

あおい「よし完璧」

あおい「いただきまーす」モソモソ

テレビ「埼玉県飯能市では、今年最高気温となる……」

あおい「うっわあっつ……外出るなんてバカみたい……」

あおい「クーラーの効いた部屋で食後にアイス、これが最高だよ」

あおい(……言っとくけどわたしは、決してダラクしていない)

あおい(例えばこのコーンフレークにも、砂糖と牛乳に加えていちごジャムを落とすという一工夫を加えている)

あおい(毎日の小さな楽しみを最大限に引き出して、一日一日を大切に生きているのだ)

あおい(夏休みに入ってバイト以外で外に出ていないのも、同じ)

あおい(別にやることがないからとか、話し相手がいないからとかそういうことじゃない)

あおい(ただわたしが群れるのが好きじゃないだけで、関わると相手のテンションまで下げてしまうから、あえて……)

スマホ「ライン!」

あおい「!」ドダダダダ

あおい「」バシッ

スマホ「アカウントセキュリティのお知らせ」

あおい「……はぁ」

あおい「……パスドラでもしようかな」

スマホ「ピロン!」

あおい「あっ! こ、今度こそひなたからっ!? いっ、いきなりすぎるわよっ!」


あおい「え、えとっ……『おっすあおい、おひさー』」

あおい「……何の用だろ?」ワクワク

あおい(って、こんだけでテンション上がりすぎでしょわたし……)ズーン

あおい「えっと……ひ、さ、し、ぶりだね、終業式……以来かな……っと」

あおい「ふぅ……」

スマホ「ピロン!」

あおい「うわあっ!? 返信早っ!」ビクッ

あおい「『だね』……そんだけ?」

あおい「また来た! 『ちゃんと生きてる?』……」

あおい「何よコレー! 生きてるわよ! っと」

あおい「だいたい死んでたら送れないでしょ……全く」

あおい「『すごい暑いから、無理とかしてないよね?』」

あおい「…………」

あおい「し、て、な、い、わ、よ……っと」

あおい「大体ひなたもわたしが基本インドア派なこと知ってるでしょ……」

あおい「『じゃあ山の日とか、何してたの?』って……えっ!?」

あおい「あれ、今日って……14日!? い、いつの間にこんな時間経ってたのよ!?」

あおい「山の日……すっかり忘れてた……」

ファミレス

PM12:20

ひなた「あ、あおい……そんな落ち込まなくても……」

あおい「…………」ズーン

ひなた「あ、あのさ? わたしだって実は当日友達に言われるまですっかり忘れてたんだよ~!」アハハ

あおい(友達……!)ズーン

ひなた「なんでそこで更に落ち込むの!? わたしと同レベルだっだからってイヤミ!? ねぇ!?」

あおい(繰り返す毎日、ネットサーフィンと読み古した漫画の日々が、どんどんわたしから曜日感覚を奪っていった)

あおい(山の日を忘れてたことより、過ぎてたことにすら気づけなかったのがショックすぎる……)ズーン

ひなた「あ、あおい~? ねえってば~」

あおい(やたらハイテンションなクラスラインに既読をつける度に心の中の何かが死んでいったけど、スマホから手を離すことだけは出来なかった)

あおい(だって、ひなたから、もしかしたら……)ジッ

ひなた「ん? どした? あたしの顔になんかついてる?」

あおい「……結局今日まで一度も来なかったけどねっ!」バンッ

ひなた「おわっ!? 何だよ急にっ!」ビクッ

あおい「何よ……一応、来た時の為に計画だけはあれこれ考えてたのに……」ブツブツ

ひなた「え? ごめん、何? 何の話?」

あおい「山の日! ライン!」バンバン

ひなた「え? 今年はここなちゃんもかえでさんも勉強で忙しいからまた今度、って話になったじゃん」

あおい「いやっ……そう、だけど……」

あおい「ひなたなら……わたしと二人でも行きたい、とか言うかなー、って思って……」ボソボソ

ひなた「お、おう……」

ひなた「一応、どんなの考えてたの?」

あおい「え? 聞きたい? 聞きたい?」ソワソワ

あおい「えーっと、ちょっと待ってね?」ノートトリダシ

ひなた「えっ」

あおい「『山の日企画・サイコロ登山の旅~』」

あおい「『1・お出かけ気分で、天覧山~』」

ひなた(なんか聞いたことある)

あおい「『2・ちょっと電車で、三毳山~』」

あおい「『3・恐怖の深夜バス、は」

ひなた「あー、もういいもういい! 大体わかった、うん。ありがとう」

あおい「え、もういいの?」

あおい「他にもあるよ? 登山ショップ巡りとか、語呂合わせツアーとか……」

ひなた「え、いや……あー、うん、また、こんど、ね。こんど聞く」

あおい「まだあと四つくらい考えてあったんだけどな……」

ひなた(重いよ! 何その企画目録!?)

ひなた「……てゆーかさ、そんなに行きたいなら連絡くれれば良かったのにー」

あおい「……はぁ?」ピクッ

ひなた「あたしだって用事があった訳じゃないんだからさー、事前に言ってくれれば……」

あおい「別にー? わたし行きたいとか一言も言ってないけど?」

あおい「ただひなたが行きたいってなったらどーせ無計画で言い出すだろうからって、片手間に一応考えてあげただけだしー?」

あおい「まぁもし誘われたら、行ってあげてもいいかなくらいの……」フン

ひなた(うっわー、素直じゃないなぁ)

ひなた「まったくー、そんなんだから友達ができないんだぞ~?」ケラケラ

あおい「…………」ピシッ

ひなた「……あっ」

あおい「……いら、ないし……ともだちとか……必要ないし……生きてけるし……お腹ふくれないし……」ブツブツ

ひなた(やべぇ)

ひなた「あーっ! あおいー! あのパフェおいしそー! でけー!」ボーヨミ

あおい「……パフェ?」

ひなた「ほ、ほら! あそこのカップルが食べてるの! 山の日フェアの巨大マウンテンパフェだって! うちらも二人で食べよう!」

あおい「山……パフェ……」ゴクリ

あおい「山の日……」グスッ

ひなた「店員さーん! 注文お願いしまーす!」ピンポンピンポン

店員「ご注文は何になさいますか?」

ひなた「えーと、この『ダブルチョコマウンテンパフェ』ひとつ!」

店員「こちらカップルメニューとなりますがよろしいですか?」

ひなた「!?」

ひなた(カップル……!? いや、でも折角だしあおいに山の日の思い出をひとつでも……!)

ひなた「はい! わたしたち恋人同士なんで!」

あおい「」ブフッ

店員「えっ!?」

店員「あっ……はい! かしこまりました」

店員「えー……ご注文以上でよろしいでしょうか?」

ひなた「はい!」

店員「し、失礼いたします……」

ひなた「…………」カァァ

あおい「ちょっ! ひなたー! なに言ってんのよぉ~!?」カァァ

ひなた「しっ、仕方ないじゃん! あおいも食べたいっしょ! パフェ!」

あおい「それとこれとは話が別ぅ~!」

ギャイギャイ

店員(……家族とか友達同士でも問題ないなんて、今更教えられない……)

ひなた「んー……」スクッ

あおい「……え、なになに」

ひなた「よっと」ボフッ

あおい「ちょっ、何で隣に来るのよ!?」

ひなた「いや、こっちのが恋人っぽいかなー、って……」

あおい「でも、四人掛けの片側に二人は不自然じゃない?」

ひなた「や、やっぱ戻ったほうがいいかな……」スクッ

あおい「ん」ガシッ

ひなた「あおい?」

あおい「ダメ……とは言ってない」

ひなた「……へへっ」

あおい(あぁ、わたしらしくない)

あおい(わたしらしくないなぁ、こんな、甘えちゃって)

あおい「本当、調子狂っちゃうよ、ひなたといると」

ひなた「……あおい、顔真っ赤」

あおい「ひなたこそ」

ひなた「…………」

あおい「…………」

店員「お待たせしましたー」ドスン

あおひな「!」びくっ

店員「ごゆっくりどうぞー」

ひなた「…………」

あおい「…………」

ひなた「食べよっか」

あおい「……そだね」

ひなた「間近で見るとでかいなー、思ったより」

あおい「この山の角度は、まさに富士山級ね」

ひなた「いや、これはもう山というより所々崖だよ……滑落しちゃう」

あおい「……あれ」キョロキョロ

ひなた「ん? どうかした? あおい」

あおい「スプーン刺さっててオシャレだなーって思ったら……一本しか見つからないんだけど……」

ひなた「ホントだ、お店の人忘れちゃったのかな」

あおい「呼び出してもう一本貰おうか?」

ひなた「いや……忘れてたのはわたしたちの方みたいだ……」

あおい「?」

ハイドーゾ アーン オイシイ? オイシイヨー

あおい「えっ、えっ」

ひなた「これはつまり……『カップルさんならスプーン一本で充分ですよね?』っていう隠れたメッセージ……!」

あおい(ていうかそれじゃ間接……っ!)

ひなた「はい、あーん」

あおい「ひなたっ!?」

ひなた「い、一応恋人同士ってことになってんだからさ、こんくらいしなきゃ、その……マズイって!」

あおい(確かに……嘘ついてたってバレたら、最悪出禁って事も……?)

あおい(そ、そうよ、仕方ない、これは仕方ない、不可抗力なのよ)

ひなた「は、早く食べてよ……これやるの、ケッコー恥ずかしいんだから……」

あおい「わかったわよ……あむ」

ひなた「どう? おいしい?」

あおい「ん……おいしい」カー

ひなた「じゃ、次あおいの番ね」

あおい「がってん……はい、あーん」

ひなた「あむ」

ひなた「あまーい!」テーレッテレー

あおい(ひなたはあんま間接……とか気にしないのかな)

あおい(あんなにあっさり食べて……でも次わたしが食べるときは完全に……!)モンモン

ひなた「はいあおい、口開けてー」

あおい「あわわっ」

あおい(もうどうにでもなれっ!)パクッ

ひなた「あはは必死ぃー、そんなにお腹空いてたのかー」

あおい(ちがうわよ! 鈍感!)モグモグ

ひなた「……んー、しかし隣の席で食べさせあいっこってなんかやりづらいね」モグモグ

あおい「向かいの席のままの方が良かったわね」モグモグ

ひなた(ま、戻るつもりはないけど)

あおい(結構腕も疲れるわねこれ……つりそう……)

あおい「あっ」ベチャ

ひなた「きゃっ!?」

あおい「ご、ごめん、手が震えて……」

ひなた「いや、ほっぺにかすっただけだから大丈夫」

あおい「うわ、クリーム付いちゃってる」

ひなた「うわやっぱり? どのへん付いてる?」

あおい「ほっぺんとこと、あとあごの近くにも少し……」

ひなた「ん!」

あおい「何よ、ほっぺ突き出して」

ひなた「取ってよ、あおいがくっ付けたんだから」

あおい「……えっ?」

あおい「ななっ、何考えてるのよっ!? 無理に決まってるでしょ! バカじゃないの!?」かぁ

ひなた「へ?」

あおい「人の目があるのに、クリーム舐めとるなんて出来るわけないじゃない!」カー

ひなた「……なめ?」

ひなた「いや、このナプキンで、って……」

あおい「……はい?」

あおい「」

ひなた「……へぇ~~~」フキフキ

ひなた「何考えてるのかな~、あおいは」ニヤニヤ

あおい「あ……あぁぁ……」

ひなた「ていうか何? 二人っきりの時なら……いいわけ?」ボソ

あおい「…………」

ひなた「えっ」

あおい「……うっさい! 早く食べろー!」グイ

ひなた「むぐー」

ひなた「ふぁふぉいふぁいひふぁむほぉむふむ」

あおい「あー聞こえない聞こえない! 何言ってるかわかんなーいー!」ブンブン

ひなた「ふふふ」

あおい「……何よ、いたずらっぽい顔して」

あおい「また変なこと言ったらこのトリュフチョコ突っ込むわよ」ムー

ひなた「いや、やっぱさ」

ひなた「あおいといる時が、一番楽しいなって思ったの!」

あおい「なっ」

あおい(それはわたしも同じ、いや、多分ひなた以上にそう思っていて)

あおい(ひなたと違ってわたしは素直に言えない、なのに気づいて欲しいと心のどこかで欲張っている)

あおい「わ、わた……しも……」ボソッ

ひなた「ん? あおい?」

あおい「……こういう山の日も、悪くないなーって思ったのよ」

ひなた「そりゃ良かった」

あおい(……わたしにとっては、本当はどうでもいいのかもしれない)

あおい(山の日とか、登山とか……もちろん、好きではあるけど)

あおい(それは横に、ひなたが居るから……ひなたと、過ごしていられるから……)

ひなた「なにそれ重っ」

あおい「」

あおい(声に出てた)

ひなた「あおい……わたし以外に友達いないのかよ……」

あおい「……悪い?」

ひなた「……まぁ、悪いかとかは置いといて」アッチニ

ひなた「隠すなよな、そーゆーの」

ひなた(悩んだ挙句気ぃ使って連絡しなかったわたしがバカみたいじゃないか)

ひなた「もっとわかりやすくなれよ」

あおい「ひなたぐらい?」

ひなた「そうそうわたしくらい……って誰がだ」ペチ

あおい「あてっ」

ひなた「とにかく、連絡したいときは連絡してきて。いい?」

ひなた「わたしもいつだってあおいと話してたいから。遠慮なんてしなくていいんだよ?」

あおい「ひなたぁ……」

あおい「そ、そうねっ、気が向いたらねっ」テレッ

ひなた「はいはい」

あおい「ほ、ほら、残りのパフェ食べちゃいましょ。まだだいぶあるわよ」

ひなた「そ、そうだね! あーん」

あおい「あーん」

ひなた「んー、やっぱあおいに食べさせてもらうと、おいしい、ような……」テレテレ

ここな「あ! やっぱり! あおいさんひなたさー……」

ここな「……あっ」

あおひな「」


ここな「……ごめんなさい! お邪魔しちゃったみたいで!」

ここな「ふ、二人きりでどうぞごゆっくり!」

ひなた「誤解だよ! 何だか知らないけどたぶん誤解してるからそれ!」アセアセ

あおい「ちっ、違うからね! 普通に遊んでるだけだから! それだけだから!」アセアセ

ここな(これはどう見ても……)ジトー

ひなた「ね、席空いてるから一緒に食べよう? そうしよう?」

あおい「パフェ食べきれなさそうだから、ね? ね?」

ここな「パフェ……!」ゴクリ

ひなた(いけそうだぞあおい)ヒソヒソ

あおい(あと一押しね)ヒソヒソ

ここな「で、でも奢ってもらうなんて、そんな……」チラチラ

あおい(めっちゃパフェ見てる……)

ひなた「じゃあじゃあ! 誕生日のお祝いもかねてってことで! お願い、一緒に食べよ?」

ここな「じゃ、じゃあお言葉に甘えて……」ススス

ひなた「ハッピーバースデーここなちゃん!」

あおい「遅くなっちゃったけどここなちゃん、おめでとう」

ここな「ありがとうございます……! いただきますね」

ここな「あれ、スプーン一本しかないんですか?」

ひなた「そーそー、そのせいであーんしてやるハメに……」

あおい「二本用意してくれればいいのにね? まったくもー」

ここな(普通に変わりばんこに使えばいいのでは……?)

ここな「ごちそうさまでした!」ペロリ

あおい(早っ)

ひなた「あおいー、割り勘ね」

ここな「あの、やっぱり私も少し……」

あおい「いいのいいの! 元々わたしたちが頼んだものだったんだし」

あおい(なんとかあの場を誤魔化せて、ここなちゃんの誕生日も祝えて、一石二鳥よ)

あおい(にしても、何でわたしがコイツなんかと……)モンモン

ひなた「?」

―――

店員「お会計1150円になります」

あおい「150……はい、ちょうど……」

店員「あ、それと今週はキャンペーンメニューをご注文いただいたカップルの方に、ステッカーをプレゼントしております」スッ

あおひな「」

ここな「カップル、や……やっぱり……そういう」ゴクリ

あおひな「ご、誤解だからっ!」

おわり

てーきゅうもいいですけど、ヤマノススメもそろそろ……。

読んでいただいた方、ありがとうございます。

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