モバP「天才と苺と夏祭り」 (18)



暑い、俺はそう呟いた。

暑い暑い、思えば思うほど暑くなる気がする。

暑い暑い暑い、しかし思考をとめることはできない。

暑い暑い暑い暑い、俺は俺に言いかけせる。もう少しだ。もう少しで目的地だ。

暑い暑い暑い暑い暑い……



モバP「涼しい~!」

ありす「なんですか騒がしい」

晶葉「帰ってくるなりうるさいぞ」

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モバP「お前らのための外回りだぞ。感謝せい」

ありす「はぁ、ありがとうございます」

晶葉「はぁ、さすが私の助手だ」

モバP「お前ら感謝の気持ちが伝わらないぞ。せっかくここにアイスがあるというのに」

ありす「Pさん、いつも私たちのためにお疲れ様です」

晶葉「さすが私の助手だ!」

モバP「変わり身早いな。それと晶葉はアイスなしな」

晶葉「なっ!」

ありす「Pさん、さすがに可愛そうですよ。パピコの蓋部分ぐらいはあげましょう」

晶葉「ありすはどちらの味方なんだ」

ありす「アイスの味方です。そういえばアイスはなにを買ってきたんですか?」

モバP「いつもどおりパピコとチョコモナカジャンボとスーパーカップ練乳イチゴ味だ」

ありす「Pさん、いつもながらわかっていますね」



モバP「じゃあ分け方は俺がチョコモナカジャンボとパピコ一本、ありすがスーパーカップとパピコ一本、晶葉はパピコ蓋な」

晶葉「あ~あ、いいのか?せっかくPのために作ってあげたロボがあるのだぞ」

モバP「そういってこの前作った扇風機ロボは室温が高すぎて熱暴走するというなんとも不甲斐ないオチを迎えたじゃないか」

晶葉「ふっふっふ、侮るなかれ!これは扇風機ロボ二号だ!机の上に置くとピンポイントで効果的な場所に涼しい風を送るぞ」

モバP「いや晶葉さん、どう見てもそれ机よりでかいじゃないですか」

晶葉「なっ!そんな欠点があったとは」

ありす「はいはいはい、漫才はそのぐらいにしてください。アイスが溶けますよ」

モバP「もう先に食べているじゃないか」

ありす「だって長いんですもん」


モバP「それにしても暑いな」

ありす「晶葉さん」

晶葉「おうよ!」ベチーン

モバP「いたっ!急になにするのよ?」

晶葉「なんでおねえっぽくなるのだ」

ありす「いえ、晶葉さんと暑いって言葉を禁句にしようって話をしまして」

晶葉「それで言ったときようのお仕置きロボを作ったのだ」

モバP「先に説明しろよ!」

晶葉「暑いって言葉は禁句な」

モバP「おせーよ」

ありす「そういえばアイス三つなんですね」

モバP「ちっひがいないからね」

ありす「また勝手なあだ名つけて怒られますよ」

モバP「その叱ってくれるちひろさんはもう……」

晶葉「ぐすっ……」


誰も言葉を発することはなくなった。

セミの鳴き声が静かになった事務所によく響く。

ちひろさんのいつも座っていた机は空いていた。

あの笑顔が俺を迎えてくれない。それだけのことなのに俺はひどく違和感を覚えた。

ああ、俺のなかでちひろさんはそこまで大きな存在だったんだな。

いつだって失って初めて気がつくんだ。


ありす「いやなにいなくなったみたいな空気出しているんですか。ちひろさんは今夏休みじゃないですか」

モバP「晶葉が乗ってくれてPちゃんびっくり」

晶葉「乗ったほうがいいかなと」

ありす「そんなんだから漫才って言われるんですよ」

モバP「ツッコミ役のありすがいるから成り立つんだぞ」

ありす「ちひろさん……はやく帰ってきてください」


モバP「そういえばさ、帰る途中に見かけたんだが近所で花火大会やるみたいだぞ」

ありす「そうですか」

晶葉「ここから花火見えるといいな」

ありす「それじゃあ、私はソファでゲームしてます」

晶葉「私はちひろの机で作業再開するかな」

モバP「ちっひの机汚すなよ。あの人ぶちぎれるから……ってそうじゃないだろ」

晶葉「おー見事なノリツッコミだ」

モバP「お前らはガキなんだからもっと祭りとか喜べよ!」

ありす「子どもが全員お祭りを喜ぶなんて思ったら勘違いですよ」

晶葉「大体お祭りなんて暑いしぼったくりだしいいことないだろ」

ありす「あっ」

モバP「よし!」ベチーン

晶葉「痛いっ!」

モバP「それがいいんだよ。俺がガキのころは祭りがあるなんて知ったら急いで自転車転がしてたぞ」

ありす「非生産的ですね」



モバP「よし、俺がおごってやろう」

晶葉「いくら使うか」

ありす「搾り取りましょう」

モバP「さてはお前らちひろの手先だな」

晶葉「失礼な。私たちがちひろさんの手先ならアイスにダッツを要求してるぞ」

ありす「晶葉さんも失礼ですよ」

モバP「いや、あの人は歯磨き粉味のアイスを要求するぞ」

ありす「チョコミントですね」

モバP「それはそうと、お前ら一人ずつに1000円おごってやろう」

晶葉「少ししょぼくないか?」

モバP「バカ野郎。祭りってのは少し制限があったほうが楽しいんだよ」

ありす「そうやって若い世代に無理難題を押し付ける大人が完成するのですね」

モバP「ありすちゃんはいつからそんなにスレた子になっちゃったのかな」

ありす「橘です」

モバP「晶葉ちゃん、ありすちゃんが冷たい」

晶葉「池袋です」


モバP「他の事務所の同年代アイドルたちはここまでスレてないって言ってたぞ」

晶葉「よそはよそ、うちはうち」

ありす「逆になんでそんなにお祭りに行きたいんですか?」

モバP「そりゃ、いい年いった大人が一人で祭りに行ってたらまずいだろ」

晶葉「息子を出汁にしておもちゃを買う親のようだな」

モバP「いやね、この歳になると人の目とか気にしちゃって」

ありす「わかりましたよ。なんかかわいそうになってきましたから一緒に行きますよ」

モバP「お前かわいそうとか思っていても口に出したらいけないんだぞ」

晶葉「そうだもんな、かわいそうだもんな」

モバP「まあいい、行くぞ!」


________________

モバP「思っていたより人が多いな。迷子になるなよ」

ありす「大丈夫ですよ。それよりもあれです!あれなんですか!始めてみました!」

モバP「いちご飴か?お前やっぱりいちごなんだな」

ありす「1個200円なのでとりあえず5個買いましょう!」

モバP「おいおい、1個にしときなさい。それにじゃんけんに勝てばもう1個もらえるみたいだぞ」

ありす「晶葉さん、じゃんけんに絶対勝てるロボとかありませんか?」

晶葉「あることにはあるが、今は持ってないぞ」

モバP「そんな本気にならなくても……」

ありす「やるからには本気で行きますよ!」



1分後

モバP「お、2個持ってるじゃないか。にしては微妙な顔しているな」

ありす「じゃんけんには負けたんですけど店員のお姉さんが私のことを知っていたみたいでサービスしてくれました」

モバP「よかったじゃないか」

ありす「いえ、私は実力で勝ち取りたかったんです」

晶葉「私のロボに頼ろうとしてなかったか?」

ありす「全力を尽くして勝つのはいいんです。負けたけど情けみたいな展開が嫌なんです」

モバP「じゃあ返してくれば?」

ありす「それはもっと嫌です」

晶葉「めんどうな子だな」

モバP「お前が言うか」


晶葉「それよりも私はあまりこういうところに来た事がないのだがなにを買っていいかわからない」

モバP「そうかそうか、ならまずはだな。じゃがバターだな。一斗缶に入ってるバターを見ると祭りに来たなって感じがするんだ」

晶葉「ほうほう」

モバP「そしていか焼き。げそだけのほうが安くて歯ごたえも良くて俺は好きだな」

晶葉「なるほど」

モバP「デザートにチョコバナナもかかせないな」

晶葉「わかったぞ」

モバP「そして最後にビンラムネ。これで大体1000円くらいじゃないか?」

晶葉「さすがP、詳しいな」

モバP「俺がガキのころからの定番の周り方だったからな」

ありす「遊ぶことに関してだけは詳しいですよね」

モバP「だけは余計だ」

晶葉「そんなことより早く周るぞ!」

ありす「花火もそろそろ始まるみたいですよ」

モバP「よし、食べ物だけ買ってベストポジション探すぞ」


ありす「いい場所ありましたね」

モバP「近すぎると少し首痛いからあんまり人が寄らないんだよ」

晶葉「まあ少し我慢すればいいだろう」

ヒュー……ドーン

モバP「おおーやっぱりいつ聞いても心臓がびりびりする感じ、たまんねえな」

晶葉「お、思っていたより音が大きいんだな」ビクビク

ありす「花火も予想より大きいですね」ビクビク

モバP「おいおい、最初っからそんな感じだと後半気を失うぞ」

ありす「気を失うってなんですか?花火がこちらにとんできたりするんですか?」

晶葉「急いで迎撃装置を作らなくては」

モバP「さすがにそこまで物騒じゃないから安心しろ」

ありす「そこまでってことは火の粉ぐらい落ちてきますか?」

晶葉「急いで防御スクリーンを作らなくては」

モバP「落ち着け、大丈夫だ。そういえば昔は花火玉の燃えカスとか落ちてくるの見かけたけど今は見なくなったな」

ありす「燃えカスが落ちてくるとか辺り一体火の海になるじゃないですか」

モバP「もう燃え尽きてんだよ。よく落ちてくるのをつかめるか試したな」


ヒュー……ドォーン

晶葉「これは大きいぞ!」

ありす「すごいですね!」

モバP「やっぱり花火は近くで見るに限るだろ?」

ありす「で、でも涼しい室内も捨てがたいですよ」

モバP「まだ言うかこの頭でっかち」

ありす「頭でっかち?!」

晶葉「はは、ありす。言われているな」

モバP「笑っているけどお前も大概だからな?」

晶葉「……私たちが頭でっかちなのではない。Pの頭がからっぽなだけだ」

ありす「そうですね」

モバP「それでもいいからさ。そろそろ終わるぞ!」


____________

晶葉「最後すごかったな!」

ありす「あれ知ってました!スターマインって言うんですよ!」

モバP「ありすはものしりだなー」

晶葉「むっ、それなら私は花火の色を作る金属の炎色反応を言えるぞ!」

モバP「晶葉もものしりだなー」

ありす「むむっ、それなら私はたまやとかぎやの語源を言えますよ!」

モバP「ありすはなんでも知ってるなー」

晶葉「むむむっ、なら私は火薬の作り方を知っているぞ」

モバP「実際に作ったら犯罪だからなー、気をつけろよ」

ありす「むむむむっ」

晶葉「むむむむむっ」

モバP「にらみ合うのもいいが喧嘩はするなよ。車内で暴れられても困る」




ありす「PさんPさん」

モバP「なんだいありすちゃん」

ありす「花火大会ってまだありますか?」

モバP「また行きたいのかい?」

ありす「まあ……悪くなかったかなと」

モバP「ありすちゃんは最後まで素直じゃないねえ」

晶葉「私も行きたいぞ」

モバP「晶葉ちゃんは素直だねえ」

ありす「今度はもっと大きな花火大会がいいです!」

晶葉「大きな花火が見たいぞ!」

モバP「それじゃ今度はちひろさんも誘って行きますか」

以上で短いけど終わりです。

晶葉とありすは夏こそ外に連れまわしたいです。

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