出浦昌相「火影?」ナルト「ここは忍の里だってばよ!」(7)

煙幕けぶる中、我が殿、真田安房守昌幸が嫡男、源三郎と相対し、それが故に僅か遁走の足を緩める。その一瞬の間隙を突く形で、源三郎の義父である本多忠勝に背後をとられた。背が熱い。と、同時に、熱を帯びる背に体温が集中し、奪われて、反面、その他の部位から熱量が失せていく。熱い。寒い。機能の低下。悟る。本多忠勝に背後から斬られようだ。悟る。これは致命傷である。

家康の首は取れなんだか。

儂としたことが。

悔いる。

しかし、今、命が尽きようとしている最中にありながら、どこか清々しい想いもあった。源三郎。家康の暗殺を目論み潜んでいた儂の気配にいち早く気付くとは、流石は我が殿が嫡男。立派になったものよ。見事である。

悔いる気持ちはある。秀吉が倒れたことで、これから世は乱れに乱れるだろう。然るに、そうなったときこそ、殿の傍におらずして、なんの出浦昌相か。これからというときに。我が身の不甲斐なさに顔をしかめる。だが、源三郎を恨む気持ちはない。寧ろ誇らしい。安心もする。この身が露と消えたとて、我が殿が老いさらばえたとて、この生真面目そうは若殿がおれば、真田は安泰であると信ずるに足る。その証左を、命と引き換えに得た気がした。

それではな。安心して逝くとするか。

真田を頼んだぞ。源三郎。源次郎。佐助。

儂の意識は、そこで途切れた。

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