ほむら「私の魂、百分の一」 (26)







まどか「…」

ほむら「…まどか…まどか…!」

まどか「…えへへ、ほむら、ちゃん…ごめんね…」

ほむら「…何て、馬鹿なことを…」

QB「…本当に愚かとしか言い様がないね、願いを叶えれば魔女になる運命は避けられないとしても、この街を救うことが出来たかもしれないのに」

まどか「…結局、私が壊しちゃうんでしょ…?」

QB「…まぁ、そうなるかもね」

QB「それでも賢いとは言えないね、生身の姿で暁美ほむらをかばうなんて」

まどか「…」

QB「虫の息、かい」

QB「全く、人間は本当に度し難い」

ほむら「…黙りなさい…!」

QB「やれやれ、僕らにとってもこれは大損だ、彼女が契約さえしてくれれば僕らはノルマを達成できたのに」

ほむら「…まどか…まどか…!まどか…!!」

まどか「…ねぇ」

まどか「…ほむらちゃん…」


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まどか「私…きっと今から凄く酷いことをお願いする…」

ほむら「…?」

まどか「…私を、ちゃんと殺してね」

ほむら「…まどか…?何を…」

まどか「…QB…」

ほむら「…ねぇ…!何を、何を言ってるの!?」

QB「そう言うことか、それなら確かに魔女は生まれない、暁美ほむらの目的を達成する事も出来るかもしれない」

ほむら「…ねぇ!まどか!止めてよ!…これは、私の願いなの!あなたが…そんなこと…!」

QB「さぁ、君は何を願うんだい?」

ほむら「黙れ!!黙りなさい!やめて!まどか!!!」

まどか「…」

まどか「…生きて、ほむらちゃん」

まどか「生きて…出来るなら…私を…助けてね」

ほむら「まどかぁぁぁぁーーーー!!!!」





ほむら「…」

ほむら(…何度も見た…天井…)

ほむら(…そっか…私は、戻ってきたのね)

ほむら(…記憶が曖昧ね…確か…)

『やぁ、ようやく起きたかい、暁美ほむら』

ほむら「…っ!」

ほむら「インキュベーター…!」

ほむら(…余りにも接触が早い…!こいつ…!)

『記憶は確かかい?これが君の時間遡行か、興味深いね』

ほむら「…は?」

ほむら(…時間遡行…?)

ほむら「…姿を現しなさい…!何でお前が…知っているの!?」

『やれやれ、どうやら確かでは無いようだ』

ほむら「何を…!」

『鹿目まどかの願いは、君の目的の障害を取り除くこと』

ほむら「…!」

『やれやれ、願うなら具体的に願って欲しかったね、お陰で僕はこんな所につなぎ止められた』

ほむら「…お前は…まさか…!」

『そうだね、君の言葉で言うなら、前の僕かな』

ほむら「…!」

ほむら「前の…お前…」

『まぁ、この僕にとって望まない結果は彼女の願いの副産物にしか過ぎないよ』

ほむら「…」

『無制限に障害を取り除くことは出来ないよ、だからこそ監視の意味も含めて僕がここに居る、君の中にね』

ほむら「…どういうこと?まどかの願いは、どういう形で叶ったの?」

『…』

『君は世界を何度も繰り返して、それでもまどかを救えなかった』

『それは、君の実力不足というよりも環境が良くなかった、と彼女は考えたんだろうね』

『巴マミ、佐倉杏子、美樹さやか、その他の要素、全てが君の味方をしなかった』

『したことももちろんあったんだろうけれど、しないことの方が多かった』

『だから、これは願いの小分けとも呼べるね』

ほむら「小分け…?」

『例えば、例えばの話だけれど、道を歩くときに運悪くその道路が通行止めになった』

『そんな時、君は魔法少女の契約を使って、通行止めを解除するかい?』

ほむら「するわけが無いでしょ、回り道するわ」

『そうだね、そう言うことだ』

『目的の阻害にはなるけれど、鹿目まどかを救うためには二の次だ』

『その二の次に回したことが後々になって君に疑惑や孤立と言った形で現れた』

ほむら「相変わらずイライラする話し方ね…!はっきり言いなさいよ…!」

『…つまり、大それた願いは叶えられないけれど、君の為になるような小さな願いを何度も叶えられる、そう言うことさ』

ほむら「…!」

ほむら「…そんなことが…!」

『疑うかい?』

ほむら「…だとしたら、今度こそ…!まどかを救うことが…!」

『…そうだね、出来るかもしれない』

『後、僕はもう既にインキュベーターとしての役目を終えてしまった、彼女の願いによって総体から個体に引き剥がされたからね』

『だから、君が後から知って逆上しないように伝えるけど』

ほむら「…?」

『何度も、と言ったけれど正確には制限がある』

ほむら「…」

『君の魂、百分の一、それが願いを叶えるための最低限の対価だ』

ほむら「対価…」

『最低限、だよ、大きな願いを叶えるならそれに応じて対価も大きくなってくる』

『だから、何度もじゃなくて、九九回、が正しいかな』

ほむら「…」

『死んでも良いなら、魔女になっても良いなら最大100回まで叶えられるよ』

ほむら「…まどかが、そう願ったってこと…?」

『まさか、彼女はきっと君の魂を犠牲にしてまで自分が救われることを望んでは居ないよ、そもそも彼女の願いは随分と曖昧なものだったからね』

『だから、それは可能な限り実現したのさ』

ほむら「…」

『正直かなり大変だったんだよ、それにまさか僕まで繰り返すとは思わなかったし』

ほむら「…それじゃあ、あなたは私の味方になるってこと?」

『さぁ、だけど願いの結果だからね、君のサポートはするよ』

ほむら「…」

『嫌かい?』

ほむら「…」

ほむら「…ええ、反吐が出るわね」

『まぁいいや、これが全てだよ』

『他に聞きたいことはあるかい?』

ほむら「…」

ほむら「…まどかが願ったと言うことは、彼女は魔法少女になったんでしょう?」

ほむら「…私は、どうしたの?…彼女を…殺したの?」

『…やれやれ、本当に君達は不思議だね、君とはもう関わりの無い世界のことなんてどうでも良いじゃ無いか』

『…殺してないよ、彼女は自分の力でソウルジェムを壊したんだ』

ほむら「そんなことが、出来るの?」

『さぁね、僕も良くは覚えては居ないけれど、ソウルジェムは魂を物理的な形にしたものだ』

『一定の力をかければ壊れる、それは当たり前のことだろう』

ほむら「…」

ほむら「…今度こそ…」

ほむら「…私は、まどかを救う…」

『そうかい』

ほむら「…邪魔だけは、しないで頂戴」








和子「はーい、それじゃ皆さん、転校生を紹介します」

和子「暁美さーん、いらっしゃい」

ほむら「…」

ほむら「…暁美ほむらです」

「…」

『ほむら、僕は昨日君が目的を達成できないのは環境の部分が大きいと言ったけれど訂正するよ』

『その自己紹介は少し適当すぎないかい?』

ほむら「…」

ほむら『うるさいわね…だとしたら早速なんとかしてみなさいよ』

『良いのかい?』

ほむら「…」

『願いとしてはそうだね、君の第一印象を良くする、魂百分の五必要だよ』

ほむら『…良いわ』

『承知したよ、これで君の魂の残りは百分の九五だ』

パチッ

ほむら(…さて、どう変わるかしら)

「…う」

ほむら(…う?)

「うおおおおおーーーー!!!すっげぇ美人きたぁぁぁぁーーー!!!」

「髪の毛すっごく綺麗!足もすらっとしてて素敵!」

ほむら「」

ほむら「なななななな…」

「ねぇねぇ暁美さんはどこの学校行っていたの!?そこに行けばそんなに髪の毛綺麗になるの!?」

「暁美さん俺と付き合って下さい!」

ほむら「ちょ…!」

ほむら「…この…!先生…!」

和子「暁美さん、よく見たら美人ね、私もう男の人じゃ無くても良いのよねぇ」

ほむら「…ひっ…!」

ほむら『きゅ、QB…!これじゃあ逆に身動きが取り辛いわよ!』

『そうかい?あの二人を見てごらんよ』

ほむら『…!』




さやか「おおー、すっごい人気だねぇ転校生」

まどか「…」

さやか「まぁあんだけ美人なら当然か、ね、まどか」

まどか「…」

さやか「…まどか?」

まどか「…可愛い」ボソッ

さやか「…おーい」

まどか「…へっ!?何々?さやかちゃん!」

さやか「…うおー…マジか…」




『少なくとも悪い印象じゃ無いだろう?』

ほむら『そ、そうかしら…?心なしかまどかが睨んでる気がするけれど…』

ほむら「…はぁ…やっと解放された…」

『昼休みまで質問攻めだったね』

ほむら「そうね、まどかに忠告する暇も無かったわ」

『ふぅん、しかし、へぇ』

ほむら「…何よ?」

『君も疲れた表情をするんだね、意外だよ』

ほむら「人を何だと思っているの?私だって…疲れるわよ」

ほむら「…でも、これならやりやすい」

『だけど、過信しすぎるのも良くないよ』

ほむら「…え?」

『第一印象を良くすると言ったけれど、あれは長続きしない』

『あくまで「第一」印象だからね、個人差もある、そこから継続して良い印象を持たせたいなら、やっぱり君の努力が必要不可欠だ』

ほむら「…そう」

『がっかりしたかい?』

ほむら「…いいえ、確かにあなたの言うとおりだわ」

『…?』

ほむら「いくらはじめの出会いが良いものであっても…溝が出来ることも、あるものね」

『それは、鹿目まどかのことを言っているのかい?だとしたら当たり前じゃ無いか、彼女は君のことを知らないんだ…』

ほむら「うるさい」

ガラガラ

ほむら「…っ!?」

『うるさい?それは心外だね、他人との関係を広げるために興味も無い話題を振る君達の方がよっぽど…』

ほむら『黙りなさい!』

さやか「…あれ?人気の転校生じゃん?なんで屋上に居るの?」

まどか「…ひゃあぁ…!」

さやか「おおい、何で私の後ろに隠れるんだよ、まどか」

ほむら「…あなた、達…」

さやか「ん?何か話し声が聞こえてたけど一人なの?」

ほむら「は、話し声?そんなの聞こえないわ」

さやか「んー?私の聞き違いか?」

ほむら「…」

さやか「いつまで隠れてんのさー、まどか」

まどか「…えと、その…」

ほむら「…ごめんなさいね、何だか分からないけれど怖がらせちゃったみたい」

ほむら(肝心のまどかの印象が悪い気がするわ)

ほむら「私はもう出ていくわ」

さやか「え?」

ほむら「…え?」

さやか「食べるんでしょ?昼食」

ほむら「え、えぇ」

さやか「だったら一緒に食べようよ、えーと、ほむらだっけ?あんたのこと知りたいし」

ほむら「…でも、その…」

さやか「クールな見た目と反して意外と人見知りな感じ?いーじゃんいーじゃん、ね?まどか」

まどか「…うん…もちろん…!」

ほむら「…」

ほむら「…じゃあ、お願いするわ」

さやか「へー、心臓病ねー」

ほむら「もう直ったわ…今はなんともない」

さやか「おおー、良かった良かった」

まどか「ほ、ほんとに大丈夫なの?…無理しちゃ駄目だよ」

ほむら「…?む、無理なんてしてないわよ?」

まどか「そっか、そっか…」

さやか(やばいなこれ、どこに行くんだまどか)

ほむら「…」

ほむら(あぁ、こんな時も、あったわね)

ほむら(何だかんだ言って、心地が良い、いつまでだってここに居たい)

『暁美ほむら、君はさっき鹿目まどかに忠告をするとか言っていなかったかい?』

『だとすれば印象の良い今のうちに言った方が良いと思うんだけど』

ほむら『相変わらず空気の読めない奴ね』

ほむら「…」

ほむら「…ねぇ、二人とも」

さやか「ん?」

まどか「…?」

ほむら「貴方達には、自分の命を犠牲にしてまで、叶えたいことがある?」

さやか「…なんだそりゃ…哲学?」

ほむら「…あるのなら、いえ、無くても…そんな甘い話には乗らない方が良い」

さやか「甘くも無いでしょ、自分の命が犠牲なら」

ほむら「…」

ほむら「ふふ、そうね…」

ほむら「…だから、きちんと考えて、その願いは本当に貴方達の命に見合うものなのか」

さやか「…」

まどか「…」

まどか「ほむらちゃんは…そう言うの、あるの?」

ほむら「…!」

まどか「それくらい、大切な人が、居るの?」

さやか(なー、何で人限定なんだよー、まどかー)

ほむら「…ふふ、そうね」

ほむら「…居るわ、自分を犠牲にしてでも、助けたい人が」

まどか「…そう、なんだ」

ほむら「…」






ほむら「取り敢えずは成功かしら…」

『そうかな、割と引いてたと思うけれど』

ほむら「黙りなさい…っと…」

『魔女の反応だね』

ほむら「分かるの?」

『姿形を持たないとしても僕らはインキュベーターだよ』

ほむら「…」

『魂だけの存在だから、君達と似たようなものかな』

ほむら「一緒にしないで…行くわよ」

『そうだね』





魔女「アアアアアアアアア!!!」

ほむら「…居た…」

『これは前に戦ったことのある魔女かい?』

ほむら「…さぁ、どうかしらね…」

ほむら「…!」

『どうしたんだい?』

ほむら「…分かるでしょう?…他にも魔翌力を感じる…」

『…本当だ…これは…』





「へー、でかい魔女だな」

「そうね、早く倒してしまわないと」

「グリーフシードが横取りされちまうかもしれねーもんな」

「…町の人達を守るため、でしょ」

「…へいへい」




杏子「…んじゃ、とっとと倒しちまうか」

マミ「ええ、行くわよ」

ほむら(…巴マミ…!佐倉杏子…!)

『なるほど、これが君の願いの結果か』

『実に興味深いね、前の世界で彼女たちの死を観測した僕から見れば尚更だ』

ほむら「…」

『君は、ずっとこんな思いをしていたのかい?』

ほむら『ええ、そうよ』

ほむら『何度もチャンスがあると錯覚してしまうでしょう?いつかきっと救えると思ってしまうでしょう?』

ほむら『…』

ほむら『…いつか、願いが叶うと思ってしまうでしょう?』

『…』


ドォォォォン!!


ほむら「…!」

杏子「…ふぃー、一段落だな」

マミ「…ねぇ」

杏子「ああ、出て来いよ、そこの奴」

ほむら「…」

『魔法少女の縄張り争い、か』

『全く、こうしてみると無益に見えて仕方が無いね』

ほむら「…気が付いていたのね」

杏子「…」

マミ「…」

杏子「気が付く?気が付いて欲しくなけりゃ変身しなきゃ良いんだよ」

杏子「何のつもりだ?」

ほむら「…私は生身の体にも魔法を使ってる、変身しなくても魔翌力を察知されるわ」

杏子「…そうか、だったらお前が今変身した姿で居るってことは…」

杏子「単なる宣戦布告ってことで良いんだな?」

ほむら「…」

『いやに喧嘩っ早いね、それに巴マミと行動を共にしている』

『前の世界とはかなり勝手が違うようだ、これも承知の上なのかい?』

ほむら『…少し静かにして』

ほむら「…いいえ」

ほむら「ただ、長年魔法少女をやっていれば、用心するに越したことは無いでしょう?」

ほむら「…宣戦布告ではなく、警戒と言って欲しいわね」

杏子「…」

マミ「…もう、いきなり喧嘩を売らないで、佐倉さん」

マミ「あなた、見ない顔だけれど、見滝原に住んでいるの?」

ほむら「…」

ほむら(さて、何て答えるのが正解かしら)

ほむら(…)

ほむら『…QB』

『おや、もう使うのかい?』

ほむら『あの時みたいな事には…出来ないんでしょうね』

『察しが良いね、無警戒の彼らならいざ知らず、魔法少女の君に対して問答無用で好意を持つことなんて無い』

『まぁそれでも出来ないことは無いけれど、百分の七十位貰うよ』

ほむら『割に合わないわね』

『そうかもね』

ほむら『…なら、彼女達がきちんと私の話に耳を傾けてくれるようにして頂戴』

『…うん、その願いなら精々百分の七と言ったところかな、ほとんど佐倉杏子のせいだけれど』

ほむら『…お願い』

『了解したよ、これで君の魂は残り百分の八十八だ』

パチッ

ほむら「…」バシュッ

杏子「…!」

マミ「…変身を、解いた?」

ほむら「…争う気は無い、少しだけ私の話を聞いて頂戴」

ほむら「まず、貴方達の縄張りを荒らしてしまってごめんなさい」

マミ「…」

ほむら「私はこっちに超してきたばかりでまだ右も左も分からなかったのよ」

ほむら「決して敵意は無いわ」

杏子「…本当か?」

ほむら「本当よ」

杏子「…だとさ、どーするよ、マミ」

マミ「…え?どうするって?」

杏子「だからさ、こいつをどうする?」

マミ「…どうするもこうするも、敵意が無いのならどうも出来ないじゃない」

杏子「…」

マミ「まだ名前を聞いていないわね、私は巴マミ、こっちは佐倉杏子さん」

ほむら「…」

ほむら「…暁美…ほむらよ」

マミ「ふふ、素敵な名前ね、よろしく暁美さん」

杏子「ちっ…」

ほむら『…本当、凄いわね、これ』

『彼女達がきちんと君の話に耳を傾けてくれた結果だよ』

ほむら『そうだとしても、少し信用されすぎじゃないかしら』

『そうかな?彼女たちも今の君と同じように考えを巡らせているかもしれないよ』

『今この状況での最善は、上辺だけでも悪くない関係を持つことだろう?』

ほむら『なるほどね…』

ほむら「よろしく、お願いするわ」

マミ「…ええ」

杏子「…」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年08月17日 (水) 13:17:35   ID: qf6ebZVJ

面白いやんけ
続きはよはよ

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