淑やかな女王 (145)

オリキャラで
女同士で
調教とか色々やりたいと思います

ある女子校の放課後の校舎
その中を一人の女教師が屋上に向かい歩いていた
彼女の名は千堂 望
新卒でこの女子校に赴任してずいぶん経ち、今では中堅教員として頼りにされていた

望(今日も居るのかしら……?)

期待と不安を抱えながら望は屋上に続く扉を開ける

望(あっ……やっぱり居た……)

扉を開けた望の目にセーラー服を着た少女の姿が映る
その少女はゆっくり振り向くと望に優しく笑いかけた
少女の名は高村 芙蓉
名が示す通り花のように美しい少女だった

望は芙蓉に恋をしていた
一年前の入学式で芙蓉を見た望は一目で恋に落ちる
どこか作り物めいた美しさと容易に近づけない様な雰囲気
望は自分より一回り年下の少女に心を奪われていた
芙蓉は笑顔のまま望に話かける

芙蓉「……今日も来たんですね?」

望「高村さん……」

芙蓉「毎日毎日……先生は暇なんですか?」

望「あのね、ここは立ち入り禁止じゃないけどなるべく入らない方がいいのよ?」

芙蓉は入学直後から放課後は屋上で過ごしていた
その事を知った望はなるべく屋上を訪れ芙蓉と会うようにしている

芙蓉「……なぜ?」

望「なぜって……危ないからよ」

芙蓉「ふふっ……」

少しだけ笑いながら芙蓉が歩き出す
芙蓉はグラウンドとは反対側、裏門のある方へ歩くとフェンスに手をかけた

芙蓉「危ないって……何が危ないんですか?」

望「ここは屋上だから……一応フェンスはあるけれど……」

芙蓉「なるほど……つまりこういう事ですね?」

そう言うと芙蓉は一気にフェンスをよじ登り瞬く間に屋上の縁に降り立った

望「高村さん!?」

望は慌ててフェンスに駆け寄る

芙蓉「……」

望「何をしているの!?早く戻りなさい!!」

声を荒げ激しく狼狽える望とは対照的に、芙蓉はフェンスを背にして静かに語りかける

芙蓉「先生……空を飛びたいと思った事はありますか?」

望「無いわ、そんな事より……」

芙蓉「私はあります……こんな風にね……」

屋上の縁から芙蓉が右足を踏み出す

望「っ!?」

反射的に望は目を閉じたがすぐに芙蓉の声が聞こえてきた

芙蓉「ふふふっ……どうしたの?」

恐る恐る望が目を開ける
そこには後ろ手にフェンスを掴み笑っている芙蓉の姿があった

フェンス越しに手を重ね望が懇願する

望「お願い高村さん…戻ってきて……」

芙蓉「……」

芙蓉は望を見つめると真剣な表情で告げた

芙蓉「先生……フェンスの向こうからでは私は止められません」

望「高村さん……」

芙蓉「私を止めたいなら……こっち側に来なさい」

そう言って芙蓉は屋上の端に向かい歩き出す

望「高村さん!!」

芙蓉が数歩進むとフェンスが揺れる
見ると望がヒールを脱ぎ捨て服装が乱れるのも構わずフェンスをよじ登っていた

芙蓉「……」

その姿が見た芙蓉の目が細くなり唇の端がつり上がる
芙蓉は美しさを保ったまま残酷な笑みを浮かべていた

フェンスを乗り越えた望が屋上の縁に立つ
芙蓉は笑みを浮かべたまま望を見ていた

望「た…高村さん……」

芙蓉「……なぁに?」

望「お願いだから…こっちに来て……」

芙蓉「ふふふっ……」

望を見つめながら芙蓉が一歩後退する

望「危ないっ!!」

芙蓉「どうしたの?私はココよ♪」

望「高村さん動かないで!!」

楽しそうに笑いながら芙蓉は後ろ向きに歩く
そして、あと数歩で屋上の端に着くという位置で足を止めた

芙蓉「私はココに居るわ……そこからでは届かないわよ?」

望と芙蓉の距離は3メートルほど
手を伸ばしても届く距離ではなかった

望「分かったわ…私がそこに行くから……だから動かないで……」

芙蓉「……」

望が片手でフェンスを掴む
そして震える脚をごまかしながら一歩踏み出した

望が芙蓉との距離を少しずつ詰める
しかし残り1メートルほどになると芙蓉が一歩後退した

望「ダメ!!動かないで!!」

芙蓉「早くしてください……退屈になってきました」

望「分かったから……だから…そこに居て……」

芙蓉「……」

望がさらに距離を詰める
すると芙蓉が一歩退がり、ついに屋上の端に足がかかった

望「高村さん……」

芙蓉「……退屈だと言っているの」

望「私は……どうしたらいいの……?」

芙蓉「フェンスから手を離して」

望「……分かったわ……」

フェンスから手を離した途端、望は激しい恐怖に襲われる

望(怖い……もしも落ちたら……)

望の中で嫌な想像が膨らむ
しかし恋した相手を助ける為に、望は恐怖を押さえつけ無理やり足を進めた

芙蓉は自分に近づいてくる望を観察していた
脚を震わせ、目には涙が浮かんでいる
それでも懸命に足を進め手を伸ばす
芙蓉は珍しい生き物を見るような目で望を見ていた

望「高村さん…こっちに来て……」

真っ直ぐに手を伸ばし、望は芙蓉を呼ぶ
2人はお互いに手を伸ばせば触れ合う距離にいた

芙蓉「先生……死にたいと思った事はありますか?」

望「バカな事を言わないで……お願いだから……」

芙蓉「……私はありません」

望「私も無いわ…だから……こっちに……」

芙蓉「ただ……いつ死んでもいいと思っています」

望「ダメ!!」

芙蓉「……」

望「そんな事を言ってはダメ……私は…高村さんに生きていて欲しい……」

芙蓉「ふふふっ…………ずいぶんと残酷な人ね……」

芙蓉は悲しそうな笑みを見せながら望の目の前まで移動した

望は片腕で芙蓉を抱きしめ空いた手でフェンスを掴む
安堵からか望の体は震えを大きくし、それは芙蓉にも伝わっていた

芙蓉「……捕まっちゃいましたね?」

望「高村さん……」

芙蓉「分かりました、戻りましょう」

そう言うと望の手から逃れるようにフェンスを登り始める
望は釈然としない気持ちを抱えながら芙蓉の後に続いた

望(……)

望(一体…何を考えているの……)

自らの命を危険にさらし、そして何事もなかったかのように振る舞う少女
芙蓉の行動は望の理解の範疇を超えていた

屋上に戻った2人は少しの間見つめ合う

芙蓉「……」

望「……高村さん…どうして……」

理由は聞こうとした望の言葉を遮るように芙蓉が口を開く

芙蓉「先生」

望「……なに?」

芙蓉「明日と明後日……学校は休みですが何か予定はありますか?」

望「いえ…特には……」

芙蓉「だったら今夜……私の家に来ませんか?」

望「えっ……」

戸惑う望に近づくと芙蓉は望の腰に両腕を回す
身長差があるため芙蓉は望を見上げる形になり、その上目遣いの表情に望の胸は高鳴った

芙蓉「前から先生に興味があったんですけど……ますます気になっちゃいました」

望「気になるって……」

芙蓉「……ダメですか?」

望「……分かったわ」

了承の言葉を聞いた芙蓉が華やかな笑みを見せる

芙蓉「うふふっ……よかった♪」

望「……」

芙蓉「名簿を見れば住所は分かりますよね?」

望「ええ…たぶん大丈夫よ……」

芙蓉「では、一応連絡先を交換しておきましょう」

望「そ…そうね……」

芙蓉「……それではお待ちしてます……さようなら」

軽く頭を下げると芙蓉は屋上を後にする
1人残された望は期待と不安でしばらく立ち尽くしていた

数時間後、仕事を終えた望は芙蓉の家の前に立っていた

望(……)

望(……お金持ちとは聞いていたけど……)

目の前にそびえ立つ豪邸を見た望は呆然としていた
周りの家とはまるで違う、異彩を放つ外観に言葉を失う

望(それに……確かご家族とは離れて暮らして……)

その時不意に望の携帯が鳴った

望(……高村さんからだわ)

望『はい、千堂です』

芙蓉『……何してるんですか?』

望『あっ…その……』

芙蓉『そんな所でウロウロしてると通報されちゃいますよ?』

望『……ごめんなさい』

芙蓉『門は開けておきました、早く入ってください』

望『ええ…分かったわ……』

望「……」

電話が切れると望は門に手をかけ、そっと押し開いた

門をくぐった望は再度目を見開き驚く

望(凄い…庭まであるんだ……)

今までは高い塀に遮られ見えなかったが、芙蓉の家には広い庭がありその奥には何かが建っていた

望(あれは…何かしら……?)

目を凝らして建物を見つめる望
しかし周囲は暗くはっきりとは分からなかった

望(何だろう……)

建物をよく見ようと望が庭に足を向けた瞬間、背後から声がかかった

「こらっ、何してるの」

望「っ!?」

振り返った望の前には笑顔の芙蓉が居た

芙蓉「先生……寄り道はいけませんよ?」

望「ご…ごめんなさい……」

芙蓉「玄関はこっちです、ついてきてください」

望「……はい」

望は少し気まずさを感じながらも芙蓉の背中を追って歩き始めた

リビングに通された望はソファーに座り室内を見回す
壁には絵画や彫刻が飾られていて外観に相応しい豪華な印象を受ける

望(……)

望(凄いわね……私の部屋とは大違いだわ……)

望がそんな事を考えているとキッチンから芙蓉が戻ってきた

芙蓉「お待たせしました」

望の前に紅茶が置かれる
それは見るからに高級そうで望は思わず緊張していた

芙蓉「……どうしたんですか?」

望「……いただきます」

芙蓉「はい♪」

望(……美味しい…の…かしら?)

芙蓉「……いかがですか?」

望「ええ……美味しいわ……」

芙蓉「ふふふっ……」

望「……高村さん」

芙蓉「先生、お腹空いてますか?」

望「空いてるけど…そんな事より……」

芙蓉「もうすぐ食事が出来上がります……少し待っていてください」

そう言って芙蓉はキッチンに向かう
望はなぜ自分が招かれたのか聞けずにただ座っている事しかできなかった

芙蓉に勧められるまま食事を摂った望は再びソファーに座っていた
望の正面には芙蓉が座り目を閉じている

望「……あの」

芙蓉「はい」

望「何で私を家に呼んだの?」

芙蓉「……もう忘れたの?」

望「えっ……?」

芙蓉「興味があると言ったはずよ?」

望「……」

芙蓉の言葉に望は戸惑う

望(だったら…何で黙ってるのかしら?)

望は芙蓉の行動に意味があるようには思えなかった
そんな中、目を閉じたまま芙蓉が口を開く

芙蓉「……私も質問していいですか?」

望「……ええ、いいわよ」

芙蓉「なぜ私に構うの?」

望「それは……私が教師だから……」

芙蓉「いいえ、それは違います」

望「違うって…何が……」

芙蓉は目を開くと立ち上がり望を見下ろす

芙蓉「お前は嘘を言っているわ」

望「私は嘘なんて……」

芙蓉「黙りなさい」

反論を許さない芙蓉に気圧された望はおとなしく口をつぐむしかなかった

芙蓉「ただ教師だからと言う理由では、あんな危険な真似はしません」

望「私は高村さんを……」

芙蓉「黙れと言ったでしょう?」

望「……」

芙蓉「なぜあんな事をしたのか……なぜ私の家に来たのか……」

芙蓉「勧めるままに食事をして……黙れと言えば黙る……」

芙蓉「教師だから?……笑わせないでください」

望「……」

芙蓉「お前は私が欲しいのでしょう?」

望「そ…そんな……」

芙蓉「伊達に女子校に通ってないわ、お前は私に媚びているのよ」

望「高…村…さん……?」

芙蓉「今まで私に告白してきた人と同じね……言う事を聞いて好かれようとしているわ」

望「……」

芙蓉は望の隣に座ると優しく手を重ねる

芙蓉「素直になって……私をどう思っているの?」

望「す…………好き……です……」

芙蓉「……ふふふっ……」

望の答えを聞いた芙蓉は屋上で見せたあの残酷な笑みを浮かべていた

芙蓉「そうですか……」

望「……」

芙蓉「いいですよ……お付き合いしましょう」

望「えっ……」

芙蓉「ただし、普通のお付き合いじゃないです」

望「あの…それは……」

芙蓉「私のペットになってください」

望「ペット……?」

芙蓉「はい、前に飼ってたのは居なくなってしまったので」

望「……どういう事なの?」

芙蓉「質問には後で答えます」

望「でも……」

芙蓉「……」

業を煮やした芙蓉は望の髪を掴む
そして無理やり上を向かせると唇を奪った

望「んぅっ!?」

芙蓉の舌が望の唇を割り開き口内に侵入する
舌を絡め吸い上げるその動きはまだ快楽と呼べるものではなかった
ただ望にとっては初めての経験であり、思考能力を鈍らせるには十分すぎる効果があった

望は無意識で芙蓉の背中に手を回す
まるで縋り付くように芙蓉に抱きつき服を掴んでいた

望「んっ……」

芙蓉は望の口内を舌で蹂躙するとゆっくり唇を離していく
その離れていく唇を望は名残惜しそうに見ていた

芙蓉「ふふっ……どうでしたか?」

望「……」

好きな相手と唇を重ねた事で望は夢心地になっていた
芙蓉の言葉も現実感がなく、どこか遠くの方から聞こえてくるようだった

芙蓉「なかなか上手でしょ?」

望「……」

芙蓉「……聞いてますか?」

芙蓉が望の肩を掴んで軽く揺する
すると望は正気を取り戻し芙蓉を見上げた

望「あ…あの……今のは……」

芙蓉「どうですか?ペットになりますか?」

望「……」

芙蓉「……ペットになるなら…もっとイイコトしてあげますよ……?」

望は芙蓉に呑まれていた
まるで芙蓉に操られるように
飼われる事を最初から期待していたかのような気持ちになっていた

望「……な…り…ます……」

芙蓉「聞こえません」

望「なります……私を…ペットにしてください……」

芙蓉「ふふふっ……いいですよ、ペットにしてあげます」

望「ありがとうございます……」

望は自分が教師である事忘れ目の前の少女に服従した
ソファーから下りると芙蓉の足元に正座する
そしてそれが当たり前かのように深々と頭を下げた

芙蓉「いい心掛けですね、上出来です」

望「はい、ありがとうございます」

芙蓉「では、先ほどの質問に答えましょう」

そう言って芙蓉はテーブルに伏せられた写真立てを手にする

芙蓉「これを見て」

望「はい……」

差し出された写真には小さな女の子が2人とその両親らしき人物が写っていた

芙蓉「それは今から12年前……私が5歳の時の写真です」

望「……」

芙蓉「そして……一緒に写っているのが6歳上の姉……」

芙蓉「……前に飼っていた私のペットです」

望「えっ……」

驚いて顔を上げた望が見たものは、今にも泣き出しそうな芙蓉の悲しい笑みだった

芙蓉は望を見つめ静かに話し始める

芙蓉「私は…姉の事を誰よりも羨み……誰よりも愛していました……」

望「……」

芙蓉「先生……あなたの名前は望よね?」

望「はい……」

芙蓉「姉も同じ名前……字も読み方も同じ『のぞみ』よ……」

芙蓉「文字通り…両親に望まれて産まれた待望の子供……きっとお前も同じなんでしょうね?」

望「……」

芙蓉は望の前にしゃがむと優しく微笑む

芙蓉「先生…私の名前を知ってますか?」

望「……高村…芙蓉さん……」

芙蓉「そう……私は芙蓉……両親に望まれなかった子……」

芙蓉「……その名の通り不要な子供なんですよ」

望「……」

望は何も言う事ができなかった
姉は望まれ自分は望まれなかったと言う少女に対し、望はかける言葉を見つけられなかった

書き溜め終わり
2~3週間に1回くらいで投下できればいいなと思います

立ち上がった芙蓉が皮肉な笑みを見せる

芙蓉「ウチはいわゆる成金ってヤツなんですよ」

芙蓉「祖父が一代で財産を築いたらしくてね……」

芙蓉「……父親はそれをさらに増やす事しか頭にありませんでした」

望「……」

芙蓉「そして……跡取りである姉が産まれました」

芙蓉「きっと6歳になるまで分からなかったんでしょうね……姉が跡取りに相応しいと言う事が……」

芙蓉「私の事は予備のつもりで仕込んだんでしょうが……結果的に不要になったってわけです」

望「そんな……」

芙蓉「……私は親に抱かれた事がありません」

芙蓉「私を抱き締めてくれたのは姉だけ……」

芙蓉「私を愛してくれたのは姉だけなの……」

芙蓉「…………だから……だから私は姉をペットにしたんです」

望「……」

芙蓉「まぁ……色々あって居なくなってしまいましたがね」

望「……何があったんですか?」

芙蓉「……気が向いたら教えてあげますよ」

それで話は終わりだと言わんばかりに芙蓉は背を向ける
望はそれ以上は何も聞けずに、ただ芙蓉の寂しそうな背中を見つめていた

しばらくの間はそのまま沈黙の時間が流れた

望(高村さん……)

望は混乱していた
姉を愛していると言った事
姉をペットにしたと言った事
その両方とも望には理解できない事だった

芙蓉「先生」

望「……はい」

芙蓉「今夜は泊まってください」

望「えっ……」

芙蓉「もう時間も遅いですし……私のペットなのでしょう?」

望「……そうです」

芙蓉「なら、飼い主の言う事は聞かないとね?」

望「分かりました……」

芙蓉「まずは一緒にお風呂に入りましょう」

望「い…一緒に……ですか?」

芙蓉「ええ、飼い主がペットを洗ってあげるのは当たり前よ?」

望「…………はい」

羞恥心はあった
しかし自分からペットになると宣言した望はその言葉に従うしかなかった

芙蓉の家は浴室も大きな造りをしていた
浴室そのものも大きかったが脱衣場も大きく、望には悪い冗談のように思えていた

望「……」

芙蓉「……どうしたの?」

望「いえ…お風呂も大きいなと思って……」

芙蓉「ふふふっ……悪趣味でしょ?」

望「そ…そんな事は……」

芙蓉「でも……私にはいい思い出のある場所なの……」

望「……」

芙蓉「さぁ、早く脱ぎなさい」

望「……分かりました」

芙蓉に言われるまま望は服を脱ぎ始める
羞恥に指を震わせながら服を脱ぎ、芙蓉の目に下着姿を晒す

芙蓉「……服を着てても分かったけど……やっぱり大きいのね?」

芙蓉は笑顔を浮かべながら望の豊満な胸を見る

望(うぅっ…恥ずかしい……)

子供の頃から発育が良かった望は好奇の目で見られる事が多く、自分の胸をコンプレックスに感じていた

芙蓉「下着も脱いで」

望「……」

芙蓉「……私に脱がせて欲しいの?」

望「いえ…自分で脱ぎます……」

芙蓉「ふふっ……ずいぶんと可愛いのね?」

望は腕を背中に回しホックを外す
そして器用に腕で胸を隠しながらブラジャーを取り去った

芙蓉「貸して」

笑顔の芙蓉が手を差し出す
嫌な予感はしていたが、望は素直にブラジャーを渡した

芙蓉「あら…予想以上ね……」

ブラジャーのタグを確認した芙蓉が少し驚いた声をあげる

芙蓉「F90か……姉より大きいわね……」

望「あの……」

芙蓉「……何してるの?早くパンツも脱ぎなさい」

望「…………はい」

意を決した望は胸を隠す事をやめ下着に手をかける
望は全身に芙蓉の視線を感じる事に微かな喜びを覚え始めていた

望がショーツを脱ぐ間、芙蓉は薄笑いを浮かべていた
その笑みが望の被虐心を刺激する

望(あぁ……見られちゃう……)

望(……私……見られちゃうんだ……)

熱に浮かされた様な状態の望がゆっくりとショーツを脱ぐ
すると不意に芙蓉が口を開いた

芙蓉「広げて見せて」

望「えっ……」

芙蓉「パンツを広げて、クロッチを私に見せなさい」

望「はい……」

正常な判断力を失いつつある望は芙蓉の言葉に従う
頬を赤く染めながら自らの手でショーツを広げ芙蓉に見せる

芙蓉「……先生」

望「はい……」

芙蓉「ちゃんと洗濯してますか?」

そう言ってクロッチをなぞり愛液を指に取った芙蓉が笑う

望「し…してます……」

芙蓉「じゃあコレは何ですか?」

指の間で糸を引く愛液を見せつけながら芙蓉は望を問い詰めた

芙蓉「コレは何かと聞いているの」

望「あ…愛液です……」

芙蓉「愛液?……愛液って何ですか?」

望「そ…それは……」

芙蓉「生徒が質問してるのよ?……教師なら答えなさい」

望「……性的に…興奮すると……ち…膣壁から分泌される物です……」

芙蓉「なるほど……つまり、お前は性的に興奮しているのね?」

望「……」

芙蓉「なぜ?……私は何もしていないわよね?」

望「み…見られた……から……」

芙蓉「見られた?」

望「……裸を…見られたからです……」

芙蓉「もしかして……先生は露出狂ですか?」

望「違います……私…そんな事は……」

芙蓉「ふふふっ……」

望の答えを聞くたびに芙蓉は喜びを増していく
今や望は完全に支配下に置かれ、芙蓉に逆らうと言う意思は無くなっていた

芙蓉「さぁ、そろそろ入りましょうか?」

そう言うと芙蓉は躊躇い無く服を脱ぎ始める
まるで望がそこに存在していないかのように手早く服と下着を脱ぎ去った

望(うわぁ……綺麗な体……)

自分の体にコンプレックスのある望は芙蓉の体に思わず見惚れる
芙蓉の裸体は均整が取れていて先ほど見た彫刻の様な美しさを感じさせた

芙蓉「ふふっ……何をしているの?」

望「あっ…ごめんなさい……」

芙蓉「……おいで」

浴室の入り口に立った芙蓉が望に手を差し出す
望は何も言わずにその手を取り笑顔を見せた

芙蓉「……最後まで笑っていられると良いわね?」

望「えっ……」

望と手を繋いだ芙蓉が怪しく微笑む
その言葉に言い知れぬ不安を感じながらも望は浴室に入っていった

今日は終わり

芙蓉「まずは私が洗ってあげるわ♪」

望を椅子に座らせた芙蓉がボディーソープを手に取る
そして望の後ろに回ると背中から優しく洗い始めた

望「んっ……」

芙蓉「あらあら、敏感なのね?」

望「ご…ごめんなさい……」

背中を洗っていた芙蓉の手が望のお腹に回る
しばらくお腹を撫で回すとその手は胸へと移っていった

望「あっ…ダメ……」

芙蓉の両手が円を描くように乳房を撫でる
その動きは望の性感を高め、次第に声に甘いものが混ざり始めていた

望「んっ…ぁ……くぅっ……」

芙蓉「こんなに大きいのに感度もいいのね?」

望「お願い……そんな事…言わないで……」

芙蓉「こっちも敏感かしら?」

望「あぁっ!?」

芙蓉の指が乳首を強めに摘まむ
急に与えられた強烈な刺激に望は歓喜の悲鳴を上げていた

上半身を洗い終えた芙蓉は望を立たせ正面から抱く
そのまま尻に手を伸ばすと、また撫で回すように動かし始めた

望「んぅっ……」

芙蓉「お前はお尻も大きいわね……胸とお尻が大きいなんて姉と同じだわ……」

望「あっ…あぁっ……」

蒸気の立ち込める浴室内
そこで性感が高められた望の頭は霞がかかったようにぼやけていた

芙蓉「それじゃ、こっちもキレイにしましょうね?」

望「ぁ……」

芙蓉の指が望の性器に触れる
望は抵抗する事なく芙蓉の肩を掴み体を震わせた

望「ダメ……お姉様……」

芙蓉「お姉様……?」

望の言葉に芙蓉は眉をひそめる
しかし望はそれに気付かずただ喘いでいた

望「んっ……おね……さ…ま……」

芙蓉「そう……お前はそうなのね……」

望「あぁ……ダ…メ……」

芙蓉「いいわ……お姉様の私がイカせてあげる……」

薄笑いを浮かべた芙蓉が指の動きを早める
次の瞬間、望は声を出す事もできずに絶頂を迎えた

体についた泡を洗い流した2人は浴槽に入る
望が芙蓉を後ろから抱え、芙蓉は望に背中を預けていた

芙蓉「……ねぇ?」

望「はい」

芙蓉「さっきの……お姉様って何なの?」

望「それは……」

芙蓉「……」

望「私は…子供の頃から男子が苦手で……」

芙蓉「どうして?」

望「その……胸の事で…からかわれて……」

芙蓉「……それで?」

望「中学生の時の……初恋の人なんです……」

芙蓉「……」

望「私が一年生の時の三年生で……」

芙蓉「もういいわ」

望「えっ……」

芙蓉「……付き合ってたの?」

望「いえ……私の片思いです……勝手に心の中で呼んでただけで……」

芙蓉「ふふっ……そっか……」

芙蓉は笑顔で振り返ると望と唇を合わせる

望「んっ!?」

芙蓉「……たった今から私がお前のお姉様よ」

真面目な表情でそう宣言する芙蓉
望には逆らう理由は何一つ無かった

お風呂から出た2人はリビングに居た
芙蓉はバスローブを着ていたが望は裸のまま
ソファーの上で芙蓉は仰向けになり、膝枕をさせながら望の胸を弄んでいた

芙蓉「……」

望「んっ……」

乳房を撫で回し乳首を指で弾く
一度は落ち着いた望の体がその動きで再び疼き始める

望「あっ…ぅ……あぁっ!?」

急に乳房に激しい痛みを望は感じる
自分の乳房に目をやると芙蓉が爪を立てていた

望(んっ……痛っ……)

芙蓉「……」

芙蓉は表情を変える事なく乳房に爪を立てる
そして芙蓉は指を動かし望の胸に赤い線を描く

望「いっ…た……」

芙蓉「ふふふっ……痛いの?」

望「……はい…痛いです……」

芙蓉「すぐに…快感に変わるわ……」

望「くっ…うぅっ……」

その時、不意に芙蓉が体を起こし望を見る

望「お姉…様……?」

芙蓉「……」

戸惑う望に顔を寄せ、芙蓉は唇を重ねた

望「んっ……はぁ……んんっ!!」

芙蓉は望に口づけしながら乳房に爪を立てる
望の両胸には幾筋もの赤い線が刻まれ血が滲む

望「んんっ……ぅ……」

唇から伝わる快楽と胸に与えられる痛み
望は混乱し痛みと快楽の区別ができなくなりつつあった

芙蓉「ふふふっ……」

望から唇を離した芙蓉が笑う
その笑顔は混乱している望には恐怖を感じさせるほど美しかった

望「あぁっ…お姉様……」

芙蓉「……気持ちいいの?」

望「はい……あっ!!」

芙蓉は望の乳首を摘まみ強く押し潰す

望「っ……くぅっ……」

芙蓉「ねぇ……気持ちいいの……?」

望「は…はい……気持ちいいです……」

芙蓉「そう……」

望の答えを聞いた芙蓉の顔から表情が消える
そして興味を失ったような無表情で望に話かけた

芙蓉「……もう寝ましょう」

望「はい……」

芙蓉「ついてきなさい」

望「……分かりました」

芙蓉に先導され、望は寝室ある二階へと向かった

二階には長い廊下を挟むようにたくさんの部屋が並んでいた
芙蓉はその内の一室の扉を開け望を促す

芙蓉「……どうぞ」

望「し…失礼します……」

室内は望が借りている部屋よりも大きく、1人で暮らすなら十分な広さを持っていた

芙蓉「部屋はたくさんあるけれど…普段から使う部屋以外は掃除してないの」

芙蓉「……だから今日は同じ部屋で寝ましょうね♪」

先ほどまでの無表情が嘘のような笑顔を芙蓉は見せる
望はその変化に言い表す事のできない何かを感じていた

望(何だろう……この感じ……)

望(怖いけど……でも…近くに居なきゃいけないような……)

望がそんな事を考えていると床に毛布が投げられた

芙蓉「その毛布をあげるわ、床は絨毯が敷いてあるから痛く無いはずよ」

望「……」

芙蓉「それじゃ、おやすみなさい」

望「はい……おやすみなさい……」

芙蓉がベッドに入るのを見届けた望は体に毛布を巻き床に踞った

今日は終わり

翌朝、望は芙蓉より早く目を覚ました

望(んっ……ここは……?)

望(……そうだ…昨日は……)

辺りを見回した望は自分の置かれた状況を思い出す
そして体に毛布を巻いたまま立ち上がり芙蓉の様子を窺う

芙蓉「……」

望(まだ寝てる……かな……)

芙蓉は掛け布団の下で壁に背中をつけ脚を抱えているように見える
その姿は望に胎児を連想させていた

望(どうしよう……起こした方がいいのかしら……)

ベッドの上の芙蓉を眺めながら望は逡巡する

望(でも……可愛い寝顔ね……)

芙蓉の寝顔を見た望は自然と微笑む
まるで赤ん坊のような寝顔を見せる芙蓉
望はそれが自分を辱しめ胸に傷をつけた相手とは思えずにいた

しばらく望が見つめていると芙蓉が目を覚ます
芙蓉は望が自分を見ている事に気づくと手を伸ばし微笑んだ

芙蓉「……おいで」

望「……はい」

芙蓉の言葉に従い望はベッドに上がった
そして芙蓉に寄り添うように横になる

芙蓉「あぁ……温かいわね……」

望「……」

芙蓉は望の体を抱くと甘えるように胸に頬を寄せる
昨夜の傷に痛みを感じながらも望は芙蓉にされるがままになっていた

芙蓉「……そろそろ起きないと」

いきなりそう言うと芙蓉は望を無視するかのようにベッドから下りる
その態度に望は昨日も感じた不安を覚えていた

望(……なんだろう……不安定っていうか……)

望(まるで小さな子供のような……)

芙蓉の見せる一貫性の無い態度
それは単なる気まぐれとも言えず、望に大きな違和感のようなものを与えていた

芙蓉の作った朝食を食べ終えた頃から望は落ち着かない様子を見せ始めていた
俯きながら両手で股間を押さえ体を小刻みに動かす

芙蓉「ふふふっ……どうしたの?」

望「あ…あの……お姉様……」

芙蓉「なぁに?」

望「その……お手洗いを……」

芙蓉「あら……トイレに行きたいの?」

望「……はい」

芙蓉「分かったわ」

リビングの庭に面した窓を開けた芙蓉が望に笑いかける

芙蓉「どうぞ」

望「えっ……」

芙蓉「分からないの?……お前のトイレは庭よ?」

望「そんな……」

芙蓉「大丈夫よ、ウチの庭は外から見えないようになっているから」

望「でも……私……」

芙蓉「……できないの?」

望「……外でなんて…できません……」

芙蓉「あらあら……お前は私に逆らうつもりなの?」

芙蓉はそう言うと薄笑いを浮かべながら望の髪を掴んだ

髪を掴まれた望は怯えた表情で芙蓉を見つめる

芙蓉「もう一度聞くわ……お前は私に逆らうのね?」

望「ち…違います……私はお姉様に逆らったりなんか……」

芙蓉「なら庭でしなさい」

望「お姉様……」

芙蓉に髪を掴まれたままの望が泣き出しそうな顔になる
その顔を見た芙蓉は柔らかな笑顔になると望と唇を合わせた

望「んっ……んんっ……」

芙蓉「はぁっ……んっ……」

芙蓉は昨晩よりも激しく望を求めた
望の体をきつく抱き締め痛みを感じるほどに唇を押し付けていた

芙蓉「……うふふっ♪」

芙蓉は唇を離した後も望を楽しそうに抱き締め続ける

望「……」

芙蓉「あぁ……可愛いわね……」

望「あの…お姉様……?」

芙蓉「さぁ……私についてきなさい」

抱き締めていた腕を離した芙蓉は笑顔で望にそう告げた

望は芙蓉に連れられ二階の一室に向かう

望(どこに行くんだろう……)

ある部屋の前に立った芙蓉は振り返り口を開いた

芙蓉「ココよ」

望「えっ……」

芙蓉「ココがお前専用のトイレよ」

柔らかな笑みの芙蓉が望に話しかける

望「専用……」

芙蓉「どうしたの?……入りなさい」

望は専用という言葉に不安を覚える
まだ1日も経っていないが、望は芙蓉が自分を辱しめる事に喜びを見いだす事に気がついていた

望「……」

芙蓉「……イヤなら庭でする?」

望「いえ……使わせて貰います……」

中には自分を辱しめる為の何かがある
それは分かっていたが外よりはマシと望は考えた

望(……誰かに見られるよりは……)

意を決した望は扉に手をかけると静かに開いた

開かれた扉から中を見た望は言葉を失う
室内は望の想像したトイレとは全く違っていた

望(なに……コレ……?)

望には床から一段高くなった場所に穴が空いているのが見える
よく見ると穴の周辺はすり鉢のように中心に向かい傾斜がついていた

望「お姉様……コレは……」

芙蓉「見れば分かるでしょ……その穴に向かってするのよ」

望「あの……み…見えてしまうのでは……」

芙蓉「そうね、私は見せろと言っているのよ?」

望「……」

立ち竦む望に近づくと芙蓉は優しく微笑む
そして右手を望の下腹部に当て囁いた

芙蓉「ねぇ……私はあまり気長な方ではないわ……」

芙蓉「待たされるのは好きじゃないの……」

芙蓉は話ながら下腹部に当てた手に力を込める

望「あっ!!」

芙蓉「……その年でお漏らしはイヤでしょう?」

望「わ…分かりました……使わせていただきます……」

芙蓉「そう……それでいいのよ……」

望は芙蓉が立っている方を向いて穴を跨ぎ、ゆっくりと腰を下ろしていった

望は尿意を感じていたものの緊張からかなかなか出す事が出来ずにいた

望(……どうしよう……早くしないと……)

焦れば焦るほど緊張は高まりただ時間だけが過ぎていく
しびれを切らした芙蓉は望に近づき下腹部を強く押した

望「あぁっ!?」

芙蓉「まったく……トイレも満足にできないなんて困った子ね?」

望「お…お姉様……あ…あっ……」

芙蓉の手により望は強制的に放尿させられた
室内には女として聞かれたくない音が響き望を苛む

望(イヤ……お姉様に聞かれてる……)

羞恥に頬を赤く染め望は俯く
しかし芙蓉は望の髪を掴み上を向かせた

芙蓉「ふふふっ……」

望「お姉様…見ないでください……」

芙蓉「いい匂いね?……どこからかしら?」

望「あぁっ……そんな……」

望の羞恥に塗れた顔を見た芙蓉は次に少し距離を取り全体を眺める
やがて室内から音が消え芙蓉が静かに口を開いた

芙蓉「……終わった?」

望「はい……」

芙蓉は望の耳元に口を寄せ何かを呟く
その言葉を聞いた望の顔が驚愕で強張る

望「そんな事言えません……」

芙蓉「……イヤならいいのよ?そのままで居なさい」

望「…………」

しばらく黙った後、望は体を震わせながら芙蓉を見上げた

望「お姉様……」

芙蓉「なぁに?」

望「の……望は大人なのに…一人でおトイレできないんです……」

望「だから……望の…お……お尻を……拭いてください……」

芙蓉「あらあら、自分でお尻拭けないの?」

望「お姉様……お願いします……」

芙蓉「うふふっ、仕方ない子ね♪」

芙蓉はトイレットペーパーを手に取ると望に笑いかけた

望「んっ……」

芙蓉は望の性器についた滴を優しく拭き取る
しかし次第に芙蓉の指は望の性感を高めるような動きに変わっていった

望「あっ…お姉様……」

芙蓉「ふふっ……なぁに?」

望「ダメです……そこは汚いです……」

いつの間にか芙蓉はペーパー越しではなく素手で直接触っていた
膣口をなぞるように刺激し、陰核を摘みながら捻る
その刺激に望の性器からはとめどなく愛液が溢れていた

芙蓉「……拭いても拭いてもキリがないわね?」

望「ごめ…なさ……い……」

自分よりも遥かに年下の少女に排泄の世話をされた事
そして性器をいいように弄ばれる事は望に今までに無い屈辱を与えていた

芙蓉「本当に困った子だわ……」

望「あぁ…ごめんなさい……」

望は自分の中に屈辱と同時に快楽がある事を感じる
やがて快楽は屈辱を呑み込み、望は芙蓉から与えられる刺激を求めるようになっていた

今日は終わり

その後、しばらくして昼食を食べ終えた望に芙蓉が話かける

芙蓉「……ねぇ」

望「はい、何ですか?」

芙蓉「お前は一人暮らししてるの?」

望「ええ、一人暮らしです」

芙蓉「そう……」

望「……」

芙蓉「……車の運転できる?」

望「一応できますけど……」

芙蓉「……」

芙蓉は無言でテーブルの上に置かれた車のキーを望に投げる

望「あの……お姉様……?」

芙蓉「ガレージに車があるわ」

望「……」

芙蓉「それをお前にあげる……必要最低限の荷物を持ってきなさい」

望「えっ……」

芙蓉「分からないの?……お前は今日からウチで暮らすのよ」

望「私が……ココで……?」

芙蓉「だってお前は私のペットでしょう?」

そう言ってにこやかに笑う芙蓉
望はその笑顔を見ると何も言えなくなってしまった

芙蓉「とりあえず一週間分くらいの着替えと……」

芙蓉「後は仕事に必要な物……それから貴重品を持ってきなさい」

望「……はい」

芙蓉「残りは業者に頼んで運んでもらえばいいわ」

望「あの……」

芙蓉「なぁに?」

望「大家さんへの連絡などは……」

芙蓉「必要ないわ」

望「えっ……」

芙蓉「一年先まで家賃は払っておいてあげる、大家には何も言わなくていいわ」

望「でも……」

芙蓉「バカね……教師と生徒が同じ住所じゃ問題になるでしょ?」

望「あっ…そうですね……」

芙蓉「分かったなら早く荷物を取りに行きなさい」

望「はい、分かりました」

芙蓉と望はしばらくの間見つめ合う

望「……」

芙蓉「……」

望「あの……」

芙蓉「何をぐずぐずしているの?」

望「……何か着るものが欲しいのですが……」

芙蓉「……どうして?」

望「は……裸で外に出るのは……」

芙蓉「仕方ないわね……」

そう言うと芙蓉は戸棚から救急箱を取り出す
そして救急箱の中から包帯を出すと適当な長さで切り、二本の紐を作った

望「お姉様……?」

芙蓉は無言で近づくと望の胸に包帯を巻く

望(まさか……)

次にもう一本を肩から股間を通し縦に巻き付けた

芙蓉「はい、できたわよ♪」

望「……」

包帯が巻かれた体は全裸よりも望の羞恥心を煽った
乳首は透け股間には食い込んでいる
薄い包帯では体を隠しきれず、余計に卑猥な印象を与えていた

望「お姉様……」

芙蓉「これで裸じゃなくなったわね?」

望「……」

芙蓉「それでは行ってきなさい」

望「……せめて上着を……」

芙蓉「なぜ?」

望「……この格好では行けません……」

芙蓉「……私に逆らうのね?」

望の言葉を聞いた芙蓉の目が細められる
その表情は望に恐怖を与えるには十分だった

望「あ…あの……」

芙蓉「ねぇ……望……?」

望「はい……」

芙蓉「私は出来る出来ないは聞いてないの……」

芙蓉「……やれと言ってるのよ?」

望「わ……分かり…ました……」

芙蓉「ふふふっ…いい子ね……」

望「それでは…行ってきます……」

望は目に涙を浮かべ体を震わせながら歩き出す
しかしドアを開ける直前で芙蓉が声をかけた

芙蓉「待ちなさい」

望「……はい」

望が振り返ると芙蓉はテーブルの下から紙袋を取り出す

芙蓉「冗談よ、これに着替えなさい」

望「これは……」

芙蓉「姉の着ていた服よ」

紙袋の中には清楚さを感じさせる白いワンピースが入っていた
芙蓉は望の体から包帯を取ると笑いかける

芙蓉「お前と姉は大体同じ体型よ」

芙蓉「……もしかしたら胸はキツイかもしれないけどね」

望「……」

芙蓉「さぁ……着てみせて……」

言われるままに望はワンピースに袖を通す
芙蓉は姉の洋服を着た望を懐かしそうな目で見ていた

望「ど…どうでしょうか……」

芙蓉「……」

不安気な表情の望を芙蓉が無言で抱きしめる

望「お姉様……」

芙蓉「……似合っているわ」

望「……」

芙蓉「……」

望は何も言わず自分を抱きしめる芙蓉を抱きしめ返す
一瞬だけ体を強張らせた芙蓉だったが、すぐに両腕に力を入れ一層強く望を抱きしめた

望(やっぱり……寂しいのかしら……)

その時、不意に芙蓉が体を離した

芙蓉「……もういいわ、早く行きなさい」

望「……分かりました」

望は車をキーを手にすると名残惜しそうに部屋を出ていった

今日は終わり

自宅に帰った望は荷物を纏めながらこれからの事を考えていた

望(本当にいいのかしら……)

教え子と同じ家で暮らす
その事に望は躊躇いと不安を感じていた

望(やっぱり問題よね……でも……)

望(……どうしても放っておけない)

好きな相手の近くにいられる事は嬉しい
しかし、望はそれ以上に義務感に似た気持ちを持っていた

望(あの子を……1人にはできない……)

望(……)

決意を新たにした望は手早く荷物を纏めると芙蓉の元へと戻っていった

車を運転していた望の携帯にメールが届く
停車して内容を確認すると荷物を持って二階に来るように書かれていた

望(分かりました……っと)

返信を終えた望は芙蓉の家へと車を急がせた
家に着いた望は荷物を持ち二階へ上がる

望(お姉様は……)

望が芙蓉の姿を探していると開け放たれた扉が目に映る

望(あそこかな……?)

中を覗き込むと芙蓉の姿が見える
芙蓉は窓辺に立ち外の景色を眺めていた

望(……)

悲し気な瞳で外を見つめる芙蓉
望はその美しさにしばらくの間見惚れる事しかできなかった

望が見惚れていると不意に芙蓉が振り返った

芙蓉「……何か言ったらどうなの?」

望「あ……ただいま戻りました」

芙蓉「お帰りなさい」

望に近づきながら芙蓉は微笑む

芙蓉「この部屋をお前にあげる……自由に使っていいわ」

望「ありがとうございます……」

芙蓉「他に何か必要な物があれば私に言いなさい」

望「はい、分かりました」

芙蓉「それでは夕食まで好きにしてていいわ」

芙蓉「ただし、この部屋から出ちゃダメよ?」

望「えっ……」

芙蓉「勝手に歩き回られたら迷惑なの」

望「……分かりました」

芙蓉「じゃあね♪」

望に軽く手を振ると芙蓉は部屋を後にした

望が荷物の整理を始めて数分後、部屋の扉が叩かれた

望「はい」

芙蓉「入るわよ」

扉を開けて芙蓉が室内に入ってくる
芙蓉は黒いワンピースの上にエプロンをつけていた

望(うわぁ……可愛い……)

大人びた印象を与える芙蓉には似つかわしくないデザインのエプロン
しかし、そのアンバランスさが望には可愛らしく思えていた

芙蓉「何よ、ニヤニヤしちゃって……どうしたの?」

望「あっ……ごめんなさい……凄く可愛らしかったので……」

望がエプロンを見ていた事に気づくと芙蓉は少しだけ笑う

芙蓉「ふふっ……このエプロンは姉が作ってくれたのよ」

望「お姉さんが……」

芙蓉「デザインは子供っぽいけれど……ずっと使ってるから愛着があるのよ」

望「そう…なんですか……」

姉の事を話す芙蓉は優しい表情を見せる
ただ、その優しい表情は望の心に小さな傷をつけていた

芙蓉「そんな事より聞きたい事があるの」

望「聞きたい事ですか?」

芙蓉「お前の好きな食べ物は何かしら?」

望「特に好き嫌いはありませんが……」

芙蓉「何か一つくらいはあるでしょ?」

望「……鶏肉……は好きです」

その答えに芙蓉は呆れたような顔を見せる

芙蓉「……普通は料理名を答えるでしょうに……」

望「あっ……すみません……」

芙蓉「まぁいいわ、鶏肉で何か作りましょう」

望「あの……」

芙蓉「なぁに?」

望「お姉様は料理がお得意なんですか?」

芙蓉「そうね、料理は私の趣味よ」

望「趣味……」

芙蓉「絵を描いたりピアノを弾くのも好きだけど……」

芙蓉「……やっぱり料理が一番好きね」

望「お姉様はピアノも弾けるんですか!?」

芙蓉「まぁ……それなりにはね」

望「お…お嬢様……ですね?」

芙蓉「バカね……何を言ってるのよ……」

芙蓉は少しだけ笑いながら部屋を出ていった

今日は終わり

誤字訂正
>>55
車をキーを手にすると

車のキーを手にすると

荷物の整理が終わった望はこれからの暮らしの事を考えていた

望(とりあえず……学校にバレないようにしないと……)

望(明日は休みだけど明後日からは注意しないとね……)

望(……)

望はぼんやりとそんな事を考えていたが次第に芙蓉の事に思いを馳せていた

望(何でこんなにも気になるんだろう……)

望(……好きなのは確かなんだけど……)

望(それ以上に……放っておけない……)

屋上で見たどこか張りつめているような危うさ
そして自分に対する甘えと厳しさ
望はそれらの事に恐怖に近い不安を感じていた
しかし、同時にそれこそが望が芙蓉の傍にとどまる理由になっていた

その後、しばらくすると芙蓉が望を呼びに来た

芙蓉「望、夕食ができたわよ」

望「はい、分かりました」

芙蓉に連れられダイニングに向かった望はテーブルに並べられた料理を見て言葉を失う

望(……何これ……高級レストランみたい……)

テーブルの上には様々な料理が並んでいた
そのどれもが綺麗に盛り付けられ辺りには食欲をそそる匂いが漂っている

望「これ……全部作ったんですか?」

芙蓉「料理が趣味と言ったはずよ?」

望「……趣味のレベルとは思えません……」

芙蓉「……まぁ、10年近くやってればね」

望「10年前から……?」

芙蓉「とりあえず座りなさい」

望「はい……」

望が椅子に座ると芙蓉は少し笑いながら話しかける

芙蓉「今夜はお祝いよ♪」

望の前に置かれたグラスにワインが注がれる

芙蓉「お酒は飲める?」

望「はい…それなりには……」

芙蓉「それは良かったわ、これは結構高いワインなのよ?」

次に芙蓉は自分のグラスにもワインを注ぐ

望「お……お姉様……」

芙蓉「なぁに?」

望「未成年の飲酒は……」

芙蓉「ふふっ、野暮な事言わないでよ」

望「ですが……」

芙蓉は微笑みながら望に問う

芙蓉「……お前は大人で教師よね?」

望「……はい」

芙蓉「だからそんな事を言うと思うのだけれど……」

望「……」

芙蓉「……お前は私のペットでもあるわね?」

望「……そうです」

芙蓉「なら、主人に指図するような真似は控えなさい」

望「……申し訳ありませんでした……」

項垂れた望の顎を芙蓉が指で持ち上げる

望(あっ……)

芙蓉「そんな顔では食事が不味くなるわ……笑ってちょうだい」

そう言って芙蓉が華やかな笑みを見せる

望「……はい、分かりました」

望も同じように笑みを見せ、2人は少しの間笑顔で見つめあった

食事が終わった後、芙蓉と望はワインを飲みながら話をしていた
しかし普段からお酒を飲まない望はすぐに酔い始め、会話よりも芙蓉に見惚れる時間が長くなっていた

望(お姉様って本当に美人だな……)

望(……まるで童話の世界のお姫様みたいだわ……)

望がそんな事を考えていると芙蓉が笑いながら声をかける

芙蓉「ふふっ……私はそんなに面白い顔してるかしら?」

望「あっ…すみません……つい見惚れちゃって……」

芙蓉「あら、お前だって綺麗な顔してるわよ?」

望「そんな……私なんか……」

芙蓉はワイングラスを片手に立ち上がると望に近づく
そして望の頬を撫でながら微笑んだ

芙蓉「本当よ、お前も……姉も……本当に綺麗だわ……」

望「お姉様……?」

芙蓉「私と違って綺麗な子……羨ましいわ……」

望「……」

望は自分を見つめる芙蓉の瞳に僅かな恐怖を感じていた

芙蓉は望の頬に手を当てたまま何も言わずに見つめ続ける

望「……」

芙蓉「……」

望「……お姉様」

芙蓉「……なぁに?」

望「お…お姉様も……綺麗です……」

芙蓉「……綺麗……?……私が……?」

芙蓉は目を細め望に問いかける

望「……はい」

その瞬間、芙蓉の手の中でワイングラスが軽い音を立て割れる

望「お姉様!?」

芙蓉「お前は何も分かっていないのね……」

手のひらから血を流しながら芙蓉は望の首を掴む

望「うっ……」

芙蓉「……この世に私より醜い生き物は存在しないわ……」

首を掴んだ芙蓉の手に力が込められる

望「お…お姉……様……」

芙蓉「私はこの世で一番醜悪で……最も無様な生き物よ……?」

そう言うと芙蓉は静かに唇を重ねた

数秒ほど口づけすると芙蓉は望から唇を離した
するとそれを待っていたかのように望が声を上げる

望「お姉様、すぐに手当てをしないと……」

芙蓉「手当て?……私を治す?」

芙蓉はさらに力を入れ望の首を絞める

望「くっ…ぅ……」

芙蓉「私は生まれつき壊れているの……だから誰にも治せないわ……」

望「ダメ…です……」

芙蓉「お前……さっきからうるさいわ……」

今まで空いていた手を使い、芙蓉は両手で望の首を絞める
望の顔は赤くなり始め瞳には涙が浮かぶ
しかし望は芙蓉から目を逸らさずに訴えた

望「痕が……のこっ…て……」

芙蓉「…………好きにしなさい」

そう言うと芙蓉は望の首から手を離すとリビングのソファーに座り目を閉じる
望は呼吸も整わぬまま戸棚から救急箱を取り出すと芙蓉の元へ向かった

目を閉じて座っている芙蓉の手を取り望は声をかける

望「少し……痛いかもしれません」

芙蓉「……好きにしろと言ったはずよ」

望「……申し訳ありません……」

望は慣れた手つきで傷口の処置を始める
いつの間にか芙蓉は目を開き望の事を見ていた

芙蓉「……手際がいいわね?」

望「……学生の頃はバスケ部のマネージャーだったんです」

芙蓉「もしかして……好きだった先輩がバスケ部に居たの?」

望「……はい」

芙蓉「そう……まるで少女漫画ね……」

望「お姉様、終わりました」

芙蓉「……」

包帯の巻かれた手を見た芙蓉が呟く

芙蓉「……なんだか大怪我したみたいね?」

望「あまり動かさない方がいいかと……」

芙蓉「……ねぇ」

望「はい、何でしょうか?」

芙蓉「膝枕して欲しいわ」

望「分かりました」

望は少し笑いながら芙蓉の隣に座る
そしてゆっくり芙蓉の頭を膝に乗せた

芙蓉は望に膝枕されながら自分の手を眺めていた

望「……」

芙蓉「……白って苦手な色だわ」

望「苦手……ですか?」

芙蓉「ええ……見ていると息が詰まりそうになるの……」

望「……」

芙蓉「……姉は好きな色だったけどね」

望の着ている白いワンピースを撫でながら芙蓉がそう呟く

望「……お姉様の好きな色は何ですか?」

芙蓉「うふふっ……私は黒が好きよ?」

望(……そう言えば今も黒い服だわ……)

芙蓉「黒は私の醜さを隠してくれるもの……だから好きな色なの」

望「お姉様……」

芙蓉「それに……忌み子にはお似合いの色でしょう?」

望「お姉様、ご自分の事をそんな風に……」

自嘲の笑みを見せる芙蓉を望がたしなめようとする
しかし、それを遮るように芙蓉が立ち上がり言葉を続けた

芙蓉「もう寝ましょう、首を拭いてきなさい」

望「……はい」

望は芙蓉の血がついた首を少し撫でると洗面所に向かった

二階に上がった望は自分に与えられた部屋の前で立ち止まる

望「……お姉様」

芙蓉「なぁに?」

望「あの……お姉様の部屋で寝てはいけませんか?」

芙蓉「……どうして?」

望「それは……」

望は今の芙蓉を一人にしたくなかった
自分を忌み子や醜いと呼んだ芙蓉が傷ついているのではないかと考えていた

望「……一人で寝るのは寂しいです」

芙蓉「ふふっ、おかしな子ね?……お前は一人暮らしをしてたのでしょう?」

望「でも……」

芙蓉「いいわ、いらっしゃい……」

自室の扉を開けた芙蓉が笑顔で振り返る
望はその笑顔にほんの少しだけ安堵していた

部屋に入った芙蓉は洋服を脱いでベッドに上がると望を呼んだ

芙蓉「こっちに来なさい」

望「……いいのですか?」

芙蓉「……何が?」

望「昨日は床に寝ろと……」

芙蓉「ふふっ……一人寝が寂しいと言ったのはお前よ?」

望「……では…失礼します……」

望も洋服を脱ぐと芙蓉の隣で体を横にする
すると芙蓉が少し甘えるような表情を見せた

芙蓉「……今度は腕枕して欲しいわ」

望「はい、分かりました」

望が腕を伸ばすとそこに芙蓉が頭を乗せる

芙蓉「……やっぱり……抱かれながら寝るのはいいモノね……」

望「そうなのですか?」

芙蓉「ええ、そうなのよ……」

望「……」

芙蓉「……おやすみ」

望「はい、おやすみなさい……」

目を閉じた芙蓉を少し眺め、望もゆっくりと目を閉じた

今日は終わり

翌朝、望は息苦しさを感じて目を覚ます
見ると芙蓉が自分を強く抱き締めて眠っていた

望「……」

芙蓉の愛らしい姿を見た望は笑みをこぼす
そして無意識に芙蓉を抱き締め返していた

芙蓉「んっ……」

芙蓉は一瞬だけ体を強張らせるとゆっくり目を開けた

望「……おはようございます」

芙蓉「……懐かしい夢を見たわ」

望「どんな夢ですか?」

芙蓉「お前に抱かれて寝たからかしら……姉の夢を見たの……」

望「お姉さんの……」

芙蓉「ええ、私に飼われていた頃の姉の夢よ……」

望「……」

芙蓉の瞳には微かに涙の跡があり、それが望の胸を締め付けた

芙蓉「望、今は何時かしら?」

望「えっと……もう少しで11時です」

芙蓉「……ずいぶんと寝てしまったわね……」

望「……」

芙蓉「お腹空いてる?」

望「いえ、まだ空いていません」

芙蓉「そう……なら13時くらいにブランチにしましょう」

そう言うと芙蓉はベッドを下りる

芙蓉「……私は少しやる事があるから、お前は自由にしてなさい」

望「あの……お姉様?」

芙蓉「なぁに?」

望「パソコンを使ってもいいでしょうか?」

芙蓉「持ってきたの?」

望「はい」

芙蓉「……それを使ってもいいし……後で姉が使っていたモノをあげるわ」

望「ありがとうございます」

芙蓉「それじゃ、また後でね♪」

望(あっ……)

望に向かってウィンクすると芙蓉は自室を後にした

数十分後、望は与えられた部屋で調べ物をしていた

望(芙蓉……花言葉……っと……)

この家に来てからずっと気になっていた事
芙蓉の花言葉を調べていた

望(繊細な美……妖艶……)

望(お姉様にピッタリね……)

望(淑やかな恋人……)

望(恋人……ではないわね……)

望(私はペットなんだから……ご主人様……?)

望(……何か違う気が……)

望(……淑やかな……女王……)

望(そうね、恋人よりは合ってるかもしれないわね……)

そんな事を考えていると部屋の扉が叩かれた

望「はい」

望が返事をすると扉の向こうから芙蓉が声をかける

芙蓉「私の部屋にいらっしゃい」

望「分かりました……」

パソコンを閉じた望は少し緊張しながら芙蓉の部屋へ向かった

望が部屋に入ると芙蓉はベッドに座っていた
部屋の中央にはローテーブルが置かれ、その上には二枚の紙とペンと朱肉が乗っている
芙蓉は望にローテーブルの前に座るよう手で促すと口を開いた

芙蓉「お前……何か持病はある?」

望「ありません」

芙蓉「今までに大きな病気にかかった事は?」

望「それもありません」

芙蓉「常用している薬は?」

望「ありません」

芙蓉「そう……それなら安心ね……」

ベッドから下りた芙蓉は望と向かい合わせに座ると紙を裏返した

芙蓉「よく読んで納得できたらサインしなさい」

望は紙を手に取るとそこに書かれた文字を目で追う

望(ペット……誓約書……)

手にした紙には大きくペット誓約書と印字され、その下にはいくつかの細かな内容が書かれていた

望(一、全ての人権を放棄し主様の為に生きる雌犬になります……)

望(一、主様の命令には絶対服従します)

望(一、万が一拒否した場合にはいかなる仕置きも喜んでお受けします)

望(一、食事や睡眠、排泄や呼吸など全ての権利を主様に譲渡します)

望は紙に書かれた文言を読み進めていく
しばらくすると望の頭は霞がかかったようになり、まともに読む事ができなくなっていた

望(私……人じゃなくなるんだ……)

望(お姉様に飼われる犬に……雌犬に……)

望はぼんやりと芙蓉を見つめる

芙蓉「まぁ……色々と書いてあるけれど……」

芙蓉「大切なのは二つだけ……」

芙蓉「お前は人間じゃなくなる事と……私に逆らってはいけないという事」

望「は……い……」

芙蓉「分かったならサインしなさい」

望「わ…分かり……ました……」

望は震える手でペンを持つと二枚の紙にサインした

望がサインしたのを見届けた芙蓉から新たな命令が下された

芙蓉「サインの次は判子を押しなさい」

望「あ……取りに行っても良いでしょうか?」

芙蓉「その必要はないわ」

望「えっ……」

芙蓉「その朱肉をお前の大事な所に塗りなさい」

望「まさか…お姉様……」

芙蓉「そうよ、ソコを紙に押しなさい」

望「……」

芙蓉は楽しそうに笑いながら目を細める
その表情は望から拒否する意思を奪っていた

望「……分かりました」

望は立ち上がると朱肉を手に取り脚を開く

芙蓉「まだよ」

望「お姉様……?」

ベッドサイドからビデオカメラを取り出した芙蓉が微笑む

芙蓉「ちゃんと記録に残さないとね♪」

望「……はい……分かりました……」

望は芙蓉がセッティングしたビデオカメラの前に正座する
次にレンズを真っ直ぐ見ながら先ほどの誓約書を読み上げた

芙蓉「……それでは押印しなさい」

望「……はい」

立ち上がった望は手を震わせながら朱肉を取り、自らの性器に押し当てる
性器全体に朱肉がつくとそこに誓約書を当て押印とした

芙蓉「……」

芙蓉は無言で立ち上がると望に近づく

望「……」

芙蓉「……コレをつけたら完了よ」

後ろ手に隠し持っていた首輪を見せ芙蓉が笑う

望(首輪……あぁ……私は……)

芙蓉「この首輪は家にいる間は外しちゃダメよ……」

芙蓉「……お前は私のペットなのだから……」

望「はい……」

人ではなくなった証をつけられた望は陶酔する
芙蓉の言葉はまるで魔法のように望を虜にし、正常な判断力を奪っていった

芙蓉は再度ベッドに座ると望に向けて脚を伸ばした

芙蓉「……舐めなさい」

望がふらふらとした足取りで歩き出す
そして芙蓉の前に跪くと足に舌を這わせた

望「んぅ…ぴちゃ……んっ……」

その様子を満足そうに見ると芙蓉は口を開く

芙蓉「そのままで聞きなさい」

望「んんっ……」

芙蓉の足を舐めながら望は頷く

芙蓉「この誓約書は一通は私が保管するわ」

芙蓉「もう一通はお前が常に携帯しておきなさい……」

芙蓉「……そして私が見せろと言ったらいつでもどこでも見せなさい」

望「……」

芙蓉の足の指を咥えた望が小さく頷いた

芙蓉「いい子ね……それではお風呂に行きましょう」

望の口から足を引き抜いた芙蓉が立ち上がる
名残惜しそうな顔つきの望は四つん這いで芙蓉に寄り添った

今日は終わり

脱衣場に着いた芙蓉は望を立たせると自分の洋服を脱がせるように指示した
望は洋服を脱がし終えると芙蓉に尋ねる

望「お姉様、包帯はどうしますか?」

芙蓉「外して」

望「はい」

差し出された手を取ると望は手早く包帯を外した

芙蓉「……」

芙蓉は何も言わずガーゼを剥がすと手のひらを望に向けた

望「……」

望もまた何も言わずに手のひらの傷を舐め始める

望「……ちゅっ…んっ……」

芙蓉「……本当にそっくりね……」

望「えっ……」

芙蓉「何でもないわ……早く入りましょう」

そう言って芙蓉が背中を向け浴室に入る

望(もしかして……また……お姉さんの事を……)

望はやや暗い気持ちで芙蓉の後に続いた

芙蓉がシャワーの温度を確かめている時、望にある考えが浮かんだ

望(そうだわ……お姉様は怪我をしているのだから……)

望「あの……お姉様?」

芙蓉「なぁに?」

望「……お姉様は怪我をしていますから……」

芙蓉「……」

望「その……私が洗って差し上げようかと……」

望の言葉が終わると芙蓉は優しく微笑んだ

芙蓉「それはいい考えね♪」

望(良かった……喜んでもらえたわ……)

自分の提案を受け入れてもらえた事に望は喜びを感じる
しかし芙蓉は薄笑いを浮かべて、壁に立て掛けてあるマットを浴室の床に敷いた

望「……お姉様……これは……?」

芙蓉「せっかくだからお前の体で洗ってもらおうと思ってね……」

望(私の…体で……)

芙蓉「簡単に言うとソープごっこね♪」

そう言うと芙蓉はマットに横たわり望に笑いかけた

望は全身にボディーソープをつけるとうつ伏せになった芙蓉に体を重ねる

望「……重たくないですか?」

芙蓉「大丈夫よ」

望「それでは……洗います……」

自分の体を擦り付けるようにして望は芙蓉の体を洗う
そして次第に泡が立ち始めると望に変化が表れた

望(どうしよう……気持ちいい……)

ボディーソープの滑りと肌が擦られる感覚
望は初めての快感に大いに戸惑う

望「あっ……」

芙蓉「……ふふふっ」

思わず漏れた望の喘ぎ声を芙蓉が笑う

望「……申し訳ありません……」

芙蓉「別にいいのよ……今度は前を洗ってちょうだい」

芙蓉が望の下で体を半回転させる

望「んっ!!」

その刺激も今の望には耐え難い快楽になっていた

仰向けになった芙蓉を洗い始める望
しかしその動きはぎこちなく、芙蓉は思わず声をかけた

芙蓉「……どうしたの?」

望「いや……その……」

芙蓉が仰向けになることで顔を見られてしまう
それは望にとっては恥ずかしい事だった

芙蓉「ちゃんと言いなさい」

望「……顔を……見られてしまうので……」

芙蓉「……ふふっ」

望の言葉を聞いた芙蓉が少しだけ笑う

芙蓉「お前のイキ顔なら何度も見ているわよ?」

望「お姉様……」

芙蓉「ほら……早くしなさい……」

芙蓉の左手が望の股間に伸びる

望「あっ……」

芙蓉「早く洗ってくれないと風邪をひいてしまうわ……」

望「わ…分かりました……」

望は恥ずかしさを堪えながら体を動かし始めた

芙蓉の体を洗うために望は動くがすぐに止まる
伸ばされた芙蓉の指先が性器に触れ、その刺激で動けなくなっていた

望「うっ…あっ……」

芙蓉「うふふっ……どうしたの?」

望「お姉様……手を……あっ!!」

望は手をどかすようにお願いしようとするが、それより早く芙蓉の指が動いた

芙蓉「……早くしてちょうだい」

望「あっ…あぁっ……」

芙蓉「私ね……両利きなの……」

芙蓉「だから……右でも左でも同じように動かせるのよ♪」

その言葉を裏付けるように芙蓉の指先は巧みに動く
望はその快感に耐えきれず絶頂を迎えた

望「んっ……イク……あっ…イキます……」

望「あっ…あっ……んんっ!!」

体を芙蓉に預けるようにして望は倒れこむ
芙蓉は笑顔でその様子を見守っていた

今日は終わり

倒れこんだ望の下から抜け出した芙蓉はシャワーを手にする
そして自分と望の体についた泡を洗い流していたが、芙蓉は懐かしい思いにとらわれていた

望「うっ…あっ……」

芙蓉「……」

望の股間から流れるピンク色の泡
それは芙蓉にかつての姉の姿を思い出させる

芙蓉「……望」

望「は…い……」

芙蓉「ココにはいい思い出があると言ったのを覚えている?」

望「はい……そう仰っていました……」

芙蓉「そのいい思い出って言うのはね……」

芙蓉「……姉がココで私に処女を捧げたのよ」

望「えっ……」

芙蓉「私が11歳で……姉は今の私と同じ年だったわ……」

望「……」

芙蓉「姉は私に初めてを捧げたい……そう言っていたの」

望(そんな……血の繋がった姉妹で……)

今までの芙蓉の話で薄々感づいていたが、あまりの衝撃の強さに望は言葉を失っていた

芙蓉「本来であれば結婚するまで守るべきなんでしょうが……」

芙蓉「姉は婿を取る立場だからね……それが原因でどうにかなる事はないわ」

芙蓉「……だから私に捧げたんでしょうね」

望「……」

芙蓉「……」

望は芙蓉の姉に嫉妬に近い感情を抱いていた
それはこの家に来て姉の話を聞くたびに感じていたが、望の中ではっきりとした形になる

望「私も……私も捧げます……」

芙蓉「……」

望「お姉様……私を抱いて下さい」

芙蓉「お前なら……そう言うと思っていたわ……」

望の決意を聞いた芙蓉は少しだけ笑う

芙蓉「ちょっと待ってなさい……」

浴室に望を残し芙蓉は脱衣場に向かった

数分後、脱衣場から戻ってきた芙蓉の姿に望は目を見張る
芙蓉はぺニスバンドを装着し、その股間からは成人男性より一回りほど大きな疑似ぺニスがそそり立っていた

望(ウソ……あんなに大きいのを入れるの……?)

男性経験の無い望は疑似ぺニスの大きさに恐怖を覚える

芙蓉「ふふっ……怖いの?」

望「……大丈夫です」

芙蓉「そう……それなら始めましょう……」

望「はい……お願いします……」

マットの上で仰向けになった望に芙蓉がのし掛かる
望は体を震わせながらも芙蓉を受け入れる覚悟を決めた

芙蓉は望の脚を割り開くとその中心で膝立ちになる

望「っ……」

そして恐怖に身を震わせる望を見て柔らかな笑みを浮かべた

芙蓉「大丈夫よ、最初は痛いけど……」

芙蓉「お前みたいなマゾ豚はすぐに気持ちよくなるわ……」

そう言うと芙蓉は疑似ぺニスを望の膣口にあてがう

望「ヒッ……」

芙蓉「力を抜いて……そうしないと余計に痛いわよ?」

望「わ……分かりました……」

芙蓉に言われたように望は力を抜こうとする
しかし本能的な恐怖は抑えきれず、どうしても体が強張ってしまう

芙蓉「……仕方ない子ね……」

望「……申し訳ありません……」

芙蓉「……もう少し可愛がってあげるわ」

望「えっ……んぅっ!?」

望の上に重なるようにした芙蓉はおもむろに唇を合わせる
さらに舌が差し込まれ、望は口内も蹂躙され始めた

口づけをしながら芙蓉は望の胸に手を伸ばす
そして乳房を強く掴み、乳首を押し潰すようにつまみ上げる

望「んんっ!!」

口内に感じる舌の動きと胸に与えられる痛み
その両方が望の性感を高めた

望(うっ……痛い…けど……)

望(……気持ちいい……)

芙蓉と過ごした僅かな時間で望の心と体は変化しつつあった
痛みを感じる事が快楽になり始め、より強い痛みを求めるようになっていた

芙蓉「ふふっ……」

唇を離した芙蓉が怪しく笑う

望「お……お姉様……」

芙蓉「なぁに?」

望「もっと……して下さい……」

芙蓉「何をして欲しいの?」

望「あぁ……お姉様……酷いです……」

芙蓉「望……ちゃんと言わなきゃ分からないわよ?」

望「もっと……もっと痛くして下さい……」

芙蓉「……分かったわ」

芙蓉は望の頬を少し撫でると膝立ちの体勢に戻った

芙蓉の股間から伸びた疑似ぺニスが望の膣口にあたる
その疑似ぺニスは膣口をゆっくりと撫で上げ微かな水音を立てた

望「いや……」

性器に触れる異物の感触と水音
それは望にかつてない羞恥心を感じさせた

望(どうしよう……恥ずかしい……)

咄嗟に目を閉じ顔を背ける望
芙蓉は望の腰に手をあてると静かに口を開いた

芙蓉「……望」

望「……はい」

芙蓉「私を見なさい」

望「お姉様……?」

薄く目を開けた望が芙蓉を見る

芙蓉「お前を抱くのはこの私よ」

望「……」

芙蓉「お前は私が好きなのでしょう?」

芙蓉「……好きな相手に抱かれるのだから当たり前の反応よ?」

望「お姉…様……」

芙蓉「恥ずかしがってはダメ……代わりに気持ちよくなりなさい」

望「はい……分かりました……」

少し潤んだ瞳で望は芙蓉を見る
芙蓉はそんな望に優しい笑顔で応えた

芙蓉「挿れるわよ……」

望「……お願いします」

芙蓉は疑似ぺニスを掴むと望の膣口に押しあてる

望「うっ……」

芙蓉「手を伸ばして」

望「はい……」

望が伸ばした手を芙蓉が優しく受け止める

望「あっ……」

芙蓉「気休め程度だけどね……」

望「ありがとうございます……」

片手だけでも芙蓉と繋がっている
その事実は望にとって何よりも心強かった

芙蓉「んっ……」

望「あっ!!」

疑似ぺニスが望の膣口を押し広げ膣内に侵入を始める
望は体が引き裂かれるような痛みを必死で堪えようとしていた

望「いっ……つ……」

芙蓉「……半分くらい入ったわよ」

望「ぅ……」

返事をする事もできずに、望は芙蓉を手を握りながら涙を流していた

芙蓉はさらに腰を進め疑似ぺニスを望の膣内に差し込む

望「あぁっ!?」

望が感じていたのは鋭い痛みと恐怖
そしてわずかな幸せだった

望(くぅっ…こんなに痛いなんて……)

望(でも……お姉様と一つに……)

破瓜の痛みは想像を遥かに越えていた
しかし望は芙蓉と確かに繋がっている事を感じる

芙蓉「……全部入ったわよ」

望「……嬉しいです」

芙蓉「私もよ……」

望「お姉様を……受け入れる事ができました……」

その言葉に芙蓉は目を見開いて驚く

芙蓉「信じられないわ……」

望「お姉様……?」

芙蓉「……お前も……私を……」

望「……」

芙蓉のただならぬ様子に望は言葉を失う

芙蓉「いいわ……私もお前を愛してあげる……」

疑似ぺニスを一旦引き抜いた芙蓉は間を置かずに再度望に突き立てた

芙蓉が突き入れた疑似ぺニスが望に激しい痛みを与える

望「ぁ……」

芙蓉「……」

その強すぎる痛みを必死に堪える望をよそに芙蓉はひたすらに腰を動かす
望は快楽を感じる事も無く、ただ乱暴に犯され続けていた

望(お姉…様……)

しばらくの間芙蓉は休まずに動いていたが、不意に動きが止まった

芙蓉「……残念だわ」

望「……どうしたのですか?」

芙蓉「お前をイカせる前に私が疲れてしまったの……」

そう言って芙蓉は疑似ぺニスを膣内から抜いた

望「うっ……」

芙蓉「…………ごめんね」

望「お姉様……」

芙蓉「……今日はもう終わりよ……今度は優しく抱いてあげるわ……」

望「はい……」

芙蓉は少しだけ笑い、労るように望の体をシャワーで洗い流した

その後、望は鎮痛剤を与えられ今は芙蓉のベッドで横になっていた
芙蓉は望の手を握り悲しそうな顔を見せる

芙蓉「……ごめんなさい」

望「お姉様……?」

芙蓉「初めてはもっと優しい方が良かったわよね……」

望「……いいえ、私はお姉様に捧げる事ができただけで幸せです」

芙蓉「望……」

望「だから……気にしないで下さい」

悲しげな表情に芙蓉に対し望は穏やかな笑みを見せる
それを見て一瞬だけ何かを言いかけた芙蓉だったが、すぐに望と同じような笑顔になった

芙蓉「ふふっ……分かったわ」

望「はい、お願いします」

芙蓉「……今日はそのまま休んでいなさい」

芙蓉「食事は持ってきてあげるから、あまり動かないでね」

望「……よろしいのですか?」

芙蓉「これも飼い主の勤めよ♪」

望の頬を一撫でした芙蓉はそう言って部屋を出ていった

その日の夜、芙蓉と望は昨晩と同じように寝ていた
芙蓉は望に腕枕されながら目を閉じ、望はそんな芙蓉を見守るように見つめている

望(お姉様……)

望(私はお姉様の為に何ができるのでしょうか……)

芙蓉と姉の関係
それは望には想像もつかないような結びつきだった

望(……)

もしかしたら自分は姉の代用品かもしれない
芙蓉が姉との思い出をなぞる為の道具かもしれない
しかし望はそれでも良いと思っていた

望(ほんの少しでもお姉様が癒されるなら……私は……)

望がそんな事を考えていた時だった
眠ったと思っていた芙蓉が口を開く

芙蓉「……望」

望「は……はい」

芙蓉「学校では気をつけてね?」

望「……はい」

芙蓉「私はお前を先生と呼ぶから、お前は私をお姉様と呼ばないようにしなさい」

望「大丈夫です……分かっています……」

芙蓉「……本当に分かっているの?」

望「はい、分かっています」

芙蓉「本当に分かっているのね?」

望「……はい」

芙蓉「そう……じゃあもう寝なさい」

望「……おやすみなさい」

芙蓉「はい、おやすみ」

望「……」

望は芙蓉の意図を図りきれないまま目を閉じた

翌朝、望は目覚まし時計の音で目を覚ます

望(んっ……朝か……)

望「お姉…様……?」

望は芙蓉を起こそうとしたがベッドにその姿は無かった

望(お姉様……もう起きたのかしら?)

望(……とりあえずリビングに行ってみよう……)

芙蓉の姿が見えない事に驚きつつ、体に毛布を巻きつけた望はリビングに向かって歩き出した

望がリビングに着くと芙蓉はテーブルに朝食を並べていた
そして望が見ている事に気がつくとにこやかに微笑みかける

芙蓉「おはよう」

望「あっ……おはようございます」

芙蓉「お前は朝食を食べるのかしら?」

望「はい、時間がある時は食べるようにしています」

芙蓉「なら良かったわ、一応作っておいたから食べなさい」

望「ありがとうございます」

笑顔のまま望に近寄った芙蓉が毛布をゆっくりと外す
朝日が射し込むリビングで望は芙蓉に肌を晒す
それは恥ずかしくもあったが、どこか幸せな気持ちを望に感じさせた

芙蓉「……綺麗な体ね」

芙蓉は望の胸、ちょうど心臓の辺りに唇をつける

望「お姉様……」

芙蓉「……早く服を着なさい……裸で学校に行きたくはないでしょう?」

望「わ……分かりました」

毛布を抱えた望は足早に自室へ向かう
その後ろ姿を芙蓉は満足そうに見ていた

朝食を食べ終えた望の前に何かの包みが差し出される

望「お姉様、これは何ですか?」

芙蓉「お弁当よ」

望「……私のですか?」

芙蓉「いつもは食堂で昼食をとっているのでしょう?」

望「はい」

芙蓉「今日からお昼は図書準備室に来なさい」

望「確かあそこは鍵が掛かって……」

芙蓉「私が持ってるわ」

望「お姉様が……?」

芙蓉「私は学校にそれなりの金額を寄付しているのよ」

芙蓉「……だから滅多に使われない部屋を自由にできる権利くらいは持ってるの」

望「……」

芙蓉の家が裕福な事は分かっていたが、その事実は望にとって俄には信じられない内容だった

戸惑う望に対し芙蓉が戸棚から一冊の通帳を取り差し出す

望「……」

芙蓉「それは私が普段から使っている通帳よ、見てみなさい」

望が通帳を開くとそこには見た事もないような金額が印字されていた

望「お姉様……」

芙蓉「それより多いのが後二冊あるわ」

望「……」

芙蓉「……手切れ金よ」

望「手切れ金……?」

芙蓉「そう……一生困らないだけのお金とこの家をやるから二度と娘には近寄るなって事ね」

望「お姉様……一体何を……」

芙蓉「詳しい話は帰ってからにしましょう」

望「……」

そう言うと芙蓉は自室に戻って行く
一人残された望は芙蓉の言葉の意味を考えていた

その日の午前中、望は少し緊張していたが芙蓉はいつもと変わらない様子だった
今までと同じように教師と生徒として接し、まるで今朝までの事が夢ではないのかと望に思わせる

望(……もっと色々な事をされると思っていたけれど……)

望(さすがに学校では何もしないみたいね……)

望は安心と落胆が混ざった気持ちで図書準備室の前に立つ

望(……ノックした方がいいのかしら?)

そんな事を考えていると図書準備室の扉が開く
そして中から芙蓉が姿を現した

芙蓉「……何をしているの?」

望「あ…その……ノックをした方がいいのかと思って……」

芙蓉「ふふっ……バカね、早く入りなさい」

望「……分かりました」

芙蓉に促され望は図書準備室の中へと脚を進めた

今日は終わり

図書準備室の中はカーテンが引かれやや暗い印象を望に与える
また窓際には大きなテーブルがあり、そこには向かい合うように椅子が置かれていた

芙蓉「座って」

望は芙蓉と向かい合って座るとテーブルに昼食を用意する
そして望が箸を手に取ると芙蓉が指先でテーブルを軽く叩いた

望「お姉様……?」

芙蓉「……いつまで服を着ているの?」

望「えっ……」

芙蓉「この部屋には誰も来ないの……つまり私の部屋も同然と言う事よ?」

望「……」

望は黙って立ち上がると洋服と下着を脱ぎさった

全裸になった望は芙蓉と向かい合わせで昼食を食べ始める
しかし、元々少食の芙蓉は食べるよりも望を見ている時間の方が長かった

望「あの……お姉様……」

芙蓉「なぁに?」

望「そんなに見られると……少し食べづらいです……」

芙蓉「ふふっ、それもそうね……ごめんなさい」

望「いえ……」

自分のお弁当を食べながら芙蓉が呟く

芙蓉「……やっぱり人の為に料理をするのはいいものね?」

望「……」

芙蓉「特に、お前みたいに美味しそうに食べてくれたら嬉しいわ♪」

望「す…すみません……」

芙蓉「どうして謝るの?」

望「……もう少し上品に食べた方がよかったかと……」

芙蓉「……あははっ♪」

珍しく芙蓉が声を上げて笑う
望は芙蓉らしからぬその笑い方に戸惑いを隠せなかった

望「お姉様?」

芙蓉「ふふふっ……裸で上品もなにもないでしょ?」

望「あっ……」

芙蓉「さぁ、早く食べてしまいなさい」

望「……はい」

芙蓉の珍しい姿が見られた事に嬉しさを感じながら望は食事を再開した

昼食を食べ終えた時点で昼休みは残り20分ほどだった
芙蓉は望を机に寝かせるとその体に指を這わせる

望「んっ……あっ……」

芙蓉「……」

まるでピアノのように、望は芙蓉の指が触れる度に声を上げていた

芙蓉「……いい声だわ」

望「お姉…様……」

しばらくの間は夢見心地で体を撫で回されていた望
しかし芙蓉の指が性器に伸びると鈍い痛みを感じた

望「痛っ……」

芙蓉「……そうね、まだ痛いわよね……」

望「あっ……大丈夫です…それほど痛くは……」

芙蓉「ふふっ……もうすぐ昼休みも終わりよ?」

望「……」

芙蓉「……今日は屋上には行かないから真っ直ぐ帰って来なさい」

望「……分かりました」

芙蓉「鍵は置いていくからちゃんと施錠しておいてね」

望「はい」

芙蓉「じゃあ…………また後でね……」

望「……はい」

部屋を出ていく芙蓉の寂しそうな背中
望は芙蓉が自分に求めているモノを掴みきれずにいた

仕事を終えた望は今から帰宅する事を芙蓉にメールで伝える
これは芙蓉から必ずするように言われていた事だった

望(えっと……今から…帰ります……っと……)

望「……」

しばらく待っていると芙蓉からの返事が届く
そこには一言だけ、分かったと書かれていた

望(……お姉様らしい返事ね……)

望は少しだけ笑うと車で帰路を急いだ

望はガレージに車を停めると玄関に向かう
そして出掛けに渡された合鍵を取り出すと扉を開けた

望「ただいま戻りました……」

芙蓉「お帰りなさい」

望が扉を開けるとそこには芙蓉が立っていた
芙蓉に出迎えてもらえた事で望は自然と笑顔になる

芙蓉「……どうして笑っているの?」

望「……帰りを出迎えてもらうのは久しぶりなので……」

望の笑顔に芙蓉も笑顔で応える

芙蓉「ふふっ……そう言えば私も出迎えるのは久しぶりだったわ……」

望「あの……」

芙蓉「なぁに?」

望「……もう一度…いいですか?」

芙蓉「ええ、いいわよ」

望「……ただいま戻りました」

芙蓉「はい、お帰りなさい」

望と芙蓉は少しの間だけ笑顔で見つめあっていた

その後、入浴と夕食を済ませた2人はリビングで向かい合わせに座っていた
望の前にはウィスキーの注がれたグラスが置かれ、芙蓉もまた同じグラスを手に目を閉じていた

望「お姉様……」

芙蓉「少しだけ付き合って……素面で話せる内容じゃないの……」

今朝の話を詳しく聞きたい
望がそう言うと芙蓉はお酒を用意し、ソファーに座り目を閉じた
そして長い沈黙の時間が流れる

望「……」

芙蓉「……」

望が舐めるようにウィスキーを飲んでいると、芙蓉がグラスを一気に呷り目を開いた

芙蓉「……私がこの家に1人で住んでいる理由はね……」

望「……」

芙蓉「…………姉を殺しかけたからなの」

望「えっ……」

芙蓉の口から語られた内容に望は衝撃を受ける
驚きに言葉を失う望に芙蓉は悲しそうな微笑みを見せていた

今日は終わり

二杯目のウィスキーを注ぎながら芙蓉は話を続ける

芙蓉「あれは姉を飼い始めてから……姉が私に処女を捧げてから一年くらい経った頃だったわ……」

芙蓉「……私は小学校を…姉は高校を卒業する時期でした……」

芙蓉「今と違ってできる事は限られていたけれど、お前のように従順なペットだったわ……」

望「……」

どこか遠い目で語り続ける芙蓉
望は自分が触れられたくない記憶に無遠慮に踏み込んでしまったのではないかと考えていた

望「お姉様、話したくないのであれば……」

芙蓉「黙って聞きなさい……」

望「……はい」

望の言葉を遮った芙蓉は二杯目のウィスキーを飲み干した

芙蓉「……姉は私の言うことを何でも聞いたわ」

芙蓉「服を脱げと言えば脱ぎ、股を開けと言えば開く……そんな人だったの……」

望「……」

芙蓉「……」

三杯目のウィスキーを注ごうとした芙蓉の手を望が押さえる

望「お姉様……これ以上は……」

芙蓉「大丈夫よ、これで最後にするから」

望「……分かりました」

望が押さえていた手を離すと芙蓉は少し笑う

芙蓉「……心配してくれているのね…………嬉しいわ……」

望「お姉様……」

芙蓉「……」

グラスに注がれたウィスキーを少し飲み、一息ついてから芙蓉は話を続けた

芙蓉「私は姉に色々な事をしたわ……」

芙蓉「お前にしたように首輪をつけたり……恥ずかしい言葉を言わせたり……」

芙蓉「裸で外を歩かせたりした事もあったわね……」

望「……」

芙蓉「短い間だけれど……とても楽しい時間だったわ……」

芙蓉「…………ある夜の事です」

芙蓉「その時もいつものように姉を何度もイカせて……」

芙蓉「……私は姉の上で目を閉じていたの」

望(……お姉様……)

幸せの記憶を懐かしむように話す芙蓉
その姿に望の胸は締め付けられる

芙蓉「しばらくすると姉が頭を撫でてくれた……」

芙蓉「……私はそれが嬉しくて何回も姉にキスしたわ」

芙蓉「間違いなく…………私は幸せだった」

そう言うと芙蓉は最後のグラスを空け立ち上がった

少しふらつきながら芙蓉が望に近づく
そして望をソファーに押し倒すと馬乗りになった

望「お姉様……?」

芙蓉「……嬉しくて……嬉しくて……」

望の首に芙蓉の手がかかる

望「うっ……」

芙蓉「何故だか私は……こうやって姉の首を絞めていたわ……」

芙蓉「苦しかったでしょうね……子供とは言え……こうして体重をかけていたのだから……」

望「くっ…ぅ……」

芙蓉が両腕に体重をかけ望の首を絞める
しかし、すぐに離すと立ち上がり元の位置に座った

芙蓉「どれくらい絞めていたかは覚えてないけど……気づいた時には姉は息をしていなかった」

芙蓉「その事に驚いた私は救急車を呼んだの……」

芙蓉「そうして私達の関係が両親にバレてしまったと言うわけよ……」

望「……」

芙蓉はウィスキーに手を伸ばすが途中でその動きが止まる

芙蓉「望……水を持ってきてちょうだい」

望「……はい」

望は何度か芙蓉の方を振り返りながらキッチンへと向かった

望はグラスと水差しを手に芙蓉の元へ戻る
グラスに水が注がれると芙蓉は一気に飲み干し口を開く

芙蓉「……この家には地下室があるの」

芙蓉「姉を殺しかけた私は……その地下室に閉じ込められた……」

芙蓉「最初はそのまま殺されると思ってたけど……一週間ほどすると出してもらえたわ」

芙蓉「そして……家の中は何も変わらないまま……」

芙蓉「姉と両親だけがいなかった……」

望「……」

芙蓉「……私を地下室から出したのは父の秘書でした」

芙蓉「その人は私に封筒を渡すと何も言わずに去っていったわ……」

芙蓉「封筒の中には通帳と手紙……」

芙蓉「手紙には姉が無事だった事と……二度と姉に関わるなと書かれていた……」

芙蓉「……金と家はやる、だから姉を探すな……ってね」

望「お姉様……」

あまりにも悲しい芙蓉の過去
望は自分の不用意さを悔やむとともに、過去を打ち明けてもらえた嬉しさを感じていた

芙蓉「両親はきっと私が怖かったんでしょうね……」

望「お姉様が……怖い……?」

芙蓉「普通は私の方を追い出すでしょう……だけどいなくなったのは姉と両親……」

芙蓉「追い出しても……私が戻ってきて姉と接触する事を恐れたんじゃないかしらね……」

芙蓉はそう言ったきり目を閉じて黙りこむ
言葉が見つからない望は芙蓉をそっと抱きしめた

芙蓉「お前……私を憐れんでいるの?」

望「いいえ、違います」

芙蓉「……では何だと言うの?」

望「私はお姉様を愛しています」

芙蓉「…………そう」

望「……はい、愛しています」

芙蓉「……分かったわ……」

望に抱きしめられたまま、芙蓉は深い眠りに落ちていった

望は眠ってしまった芙蓉を優しく抱き上げる
学生時代はマネージャーとは言え運動部に所属していた望は普通の女性よりは腕力に自信があった
しかしそれを差し引いても芙蓉は驚くほど軽く、望は言い知れぬ不安に襲われる

芙蓉「……」

望(お姉様……こんなに軽いなんて……)

芙蓉を抱えた望は慎重に階段を上がる
そして芙蓉の部屋に入ると起こさぬよう静かにベッドに乗せた

望(……)

元々作り物めいた美しさを持つ芙蓉
体重の軽さを実感した望には今の芙蓉は人形のように思えた

望(お姉様……)

眠る芙蓉の手を取り望は頬を寄せる

望(……)

芙蓉の過去を知った望は一層その想いを募らせていった

今日は終わり

翌朝、望が目を覚ますと隣にはまだ芙蓉の姿があった
望は少し笑うと芙蓉の肩に手をかける

望「お姉様……朝ですよ」

芙蓉「うっ……」

望が触れた肩を軽く揺すると芙蓉は苦しそうな表情を見せた

望「お姉様?」

芙蓉「望……」

望「はい、なんでしょうか?」

芙蓉「頭が痛いわ……」

望「……もしかして…二日酔いですか?」

芙蓉「……情けないわね」

望「お姉様……学校は……」

芙蓉「……今日は休むわ」

望「それなら私も……」

芙蓉「ダメよ」

望「でも……」

芙蓉「私とお前が同じ日に休むのはダメなのよ……」

望「お姉様……」

芙蓉「キッチンは自由に使っていいわ……悪いけど食事は自分で用意して……」

望「……分かりました」

芙蓉「私はもう少し寝るわ……」

望「……」

芙蓉が目を閉じると望は後ろ髪を引かれる思いで部屋を後にした

その日の望は家に帰るまで上の空だった
授業にも集中できず、気がつけば芙蓉の事ばかり考えていた
そして学校が終わると仕事を持ち帰り、いつもより急いで帰宅する

望(……お姉様……大丈夫かしら……)

家に着くと望は真っ先に芙蓉の部屋へ向かう
静かに扉を開けると芙蓉はベッドの上で本を読んでいた

望「お姉様……」

芙蓉「……連絡が無かったわね?」

望「あっ……」

芙蓉「帰る前には連絡する約束でしょう?」

読んでいた本を閉じると芙蓉がベッドから下りる
望は笑みを見せながら近づいてくる芙蓉をじっと見つめていた

芙蓉「一体どうしたの?」

望「申し訳ありません……心配だったもので……」

芙蓉「……何が心配だったの?」

望「お姉様が……です……」

芙蓉「ふふっ……やっぱりね……」

芙蓉は微笑みながら望の頬に手を当てた

芙蓉「望……ちゃんと授業に集中できたの?」

望「そ…それは……」

芙蓉「……望」

望「はい……」

芙蓉「気をつけて頂戴……」

望「……」

芙蓉「お前と私は学校では教師と生徒なの……」

芙蓉「誰かに不審に思われたら大問題になるかも知れないわ……」

望「……申し訳ありません」

芙蓉「ふふっ……」

望「……お姉様?」

芙蓉「心配してくれた事は嬉しく思うわ♪」

そう言うと芙蓉は望と唇を重ねた

望「んっ!?」

芙蓉「うふふっ……」

望「お姉様……」

芙蓉「お前は可愛いわね?」

望「……」

芙蓉「さぁ、食事にしましょう」

望「……はい」

一足先にリビングへ向かう芙蓉を望は温かな気持ちで見ていた

その日の夜も望は芙蓉と一緒にベッドに入っていた
芙蓉は望に腕枕をせがみ、望は芙蓉を抱きしめるように包み込む

望「……」

芙蓉「……」

2人の間に言葉は無かった
しかし望は芙蓉が甘えたがっている事を理解していた

望(お姉様……)

芙蓉「……望」

望「……はい」

芙蓉「背中を……撫でて頂戴……」

望「……分かりました」

小さく笑いながら望は芙蓉の背中を撫でる
しばらくの間そうしていると、芙蓉の寝息が聞こえ始めた

望「……」

望(お姉さんも……望さんもこんな気持ちだったのかしら……)

類い稀なる美貌と危うさを持つ少女
その少女に甘えられる事は望に大きな幸せと小さな優越感を与えていた

芙蓉を抱きしめながら望もいつしか眠りに落ちる
そして明け方近くに感じた胸の奇妙な感覚で目を覚ました

望「んっ……」

ゆっくりと目を開けると自分の胸に吸い付く芙蓉が見えた

望(お姉様……?)

一瞬だけ望は驚く
しかし、そこに性的な何かを感じる事は無かった

望(……ふふっ)

まるで赤子がそうするように望の胸に吸い付く芙蓉
その姿は望の庇護欲を強く刺激した

望(お姉様……赤ちゃんみたい……)

望(……可愛いな……)

その時、望は自分が芙蓉の傍を離れたくなかった理由に気づく

望(……そうか……だから私は……)

芙蓉の傍に居たかった理由
それは一言で言えば母性だった

望(……お姉様……私はここにいます……)

望は無意識の内に芙蓉をきつく抱きしめていた

望が強く抱きしめると芙蓉が僅かに身動ぎした

望「お姉…様……?」

起こしてしまったかと思った望は芙蓉に声をかける
しかし芙蓉は身動ぎしたもののまだ目覚めてはいなかった

望(良かった……)

腕の力を少し緩めた望は芙蓉を見つめる
芙蓉は望の胸から唇を離すと乳房に頬を擦り寄せた

望(うふふっ……お姉様は甘えん坊なんですね?)

芙蓉から感じる素直な甘え
それは望に今までにない幸せを与えた
しかし次の瞬間、望は心臓を冷たい手で掴まれたような気持ちになった

芙蓉「……ぇ…ちゃん……」

望「……」

芙蓉「おねぇ…ちゃん……」

望(……やっぱり……そうなんですね……)

芙蓉が無意識で求めるのは自分ではなく姉
その事実は望に耐え難い悲しみを与えた

気がつくと望は涙を流していた
単に芙蓉に求められていない事だけでなく、そこには様々な感情が渦巻いていた

望(お姉様……どうしてお姉様だけが……)

両親に愛されなかった少女
姉だけを頼り、姉だけに愛された少女
そして愛する姉を殺めかけた少女
望はあまりにも悲しすぎるその境遇に涙を流す

望(一体……この子が何をしたと言うの……)

親によって歪められ、これほど強く求める相手と引き離された芙蓉
それは十代の少女が受けるには重すぎる罰だと望には感じられた

涙が止まらない望は次第に嗚咽を漏らし始める
するとその声に気づいた芙蓉が目を覚ます

芙蓉「……望……?」

望「お姉…様……」

芙蓉は望の頬に手を当て優しく微笑む

芙蓉「どうしたの?怖い夢でも見たの?」

望「……」

泣きながら望は小さく首を横に振る

芙蓉「では……寝ている間に何か酷い事を言ってしまったかしら?」

望「……違い…ます……」

望「お姉様は……悪く…ないんです……」

芙蓉「…………望……お前は泣き顔も可愛いけれど……」

芙蓉「……笑顔が一番似合うわよ?」

望「……はい」

芙蓉を安心させる為に望は無理やり笑顔を作る
それはぎこちない笑顔だったが、とても優しい顔だった

今日は終わり

それからおよそ1ヶ月
学校では教師と生徒として、家では主従として2人は過ごした
芙蓉は何度も望を抱き、それは望に喜びと悲しみを同時に感じさせる
そんなある日、望は芙蓉に連れられ地下室の前に立っていた

芙蓉「ここが地下室……私が閉じ込められていた場所よ……」

望(こんなところに一週間も……)

地下室周辺は薄暗く、空気も冷たかった
望が最初にイメージしたのは墓地
そこは大人である望にも長居はしたくない雰囲気を感じさせた

芙蓉「もっとも……内部はかなり違うけどね」

望「……」

重々しい扉が軋んだ音を立てて開かれる
その様子は望の恐怖心を掻き立てていた

地下室の中は望の想像とは大きく違っていた
室内には様々な拘束具や望には使い方の分からない道具が置かれている

望「お姉様……」

芙蓉「……中学二年の時に作り替えたの」

望「……」

芙蓉「元々は倉庫として使われていたんだけどね……せっかくだから私の好きなようにさせてもらったわ」

望に背中を向けたまま芙蓉は歩き出す
そして部屋の中心近くの三角木馬に手を当て振り返る

芙蓉「中学生の時は……クラスメイト、先輩、後輩……私に告白してきた子はたくさんいました」

芙蓉「……でも…皆ダメだった……」

芙蓉「この部屋を見た途端に逃げる子、私が与えた痛みに耐えられない子……」

芙蓉「…………そんな子ばかりだったの……」

望「お姉…様……大丈夫…ですか……?」

望に問いかけに芙蓉は小さく頷く

芙蓉「……平気よ……話を続けましょう」

望「……はい」

過去の話は芙蓉自身を追い詰めてしまう
それは理解できていたが望は止める事ができなかった
まるで身を削るような芙蓉の独白は望から言葉を奪っていた

芙蓉は独り言のように話続ける

芙蓉「私は告白してきた子を手当たり次第に連れ込んだわ」

芙蓉「……穴を埋める為にね」

望(……穴……?…もしかしてお姉さんの事かしら……)

芙蓉「誰かが私を愛してくれるかもしれない……そう思っていたけどダメね……」

望「……お姉様」

芙蓉「……なに?」

望「その……穴と言うのは……」

芙蓉「心の穴よ……姉に捨てられた私にできた心の穴……」

望(やっぱり……)

芙蓉の言葉は望の心を締め付ける
絶望、失望、諦め、そんな感情を望は受け取っていた

意を決した望は芙蓉に話かける

望「……お姉様」

芙蓉「……」

望「お姉様は捨てられてなどいないはずです」

その言葉を聞いた芙蓉の目が細められる

芙蓉「……ずいぶん面白い事を言うのね?」

望「……」

芙蓉「では聞きましょう……なぜ姉はここに居ないの?」

望「それは……」

芙蓉「両親に逆らえなかった……そんな事は分かっているの……」

芙蓉「生まれた時からそうやって育てられたのだから……」

芙蓉「親に反抗する事は……姉には不可能なの……」

望「お姉様……」

芙蓉は俯きながら囁くように言葉を紡ぐ
心配した望が触れようとした瞬間、芙蓉は顔を上げ険しい表情を見せた

芙蓉「……それでも私は!!」

望「っ!?」

芙蓉「それでも私は…………傍に居て……欲しかったの……」

初めて見せた芙蓉の悲痛な叫び
それは望の心にも深く突き刺さっていた

力なく項垂れた芙蓉は磔台を指差す
言葉こそ無かったものの芙蓉が何をしたいのか望には分かっていた

望「……」

無言で磔台に立つ望を芙蓉が拘束する
腕はそれぞれ上部の鎖に繋がれ両脚はまとめて下部の鎖に繋がれた
その姿はまさに磔刑に処される罪人のようだった

芙蓉「…………今日は最初からこうするつもりだったけど……」

望「……」

芙蓉「ごめんね……手加減できそうにないわ……」

そう言うと芙蓉は壁にかけられたバラ鞭を手にする

芙蓉「それでは……始めましょう……」

望「はい……」

芙蓉は望の返事を聞くと手にした鞭を大きく振りかぶった

今日は終わり

地下室の中には鞭が肌を打つ音と望の悲鳴だけが響いていた
いつもと違い愛情の欠片も感じられない芙蓉の仕打ち
望にできるのはただ体を強ばらせ芙蓉が止まるのを待つ事だけだった

望「あっ!!……くぅっ!!……」

芙蓉「……」

望の全身に数えきれないほどの赤い筋が刻まれる
やがていくつかの痕から血が滲み始めるとようやく芙蓉は動きを止めた

望(お……終わっ…た……?)

芙蓉は望の拘束を解くと優しく抱きかかえる
全身に感じる痛みで体を動かせない望は芙蓉に体を預けていた

芙蓉「……望」

望「は…い……」

芙蓉「もう少しだけ頑張って……」

そう言うと芙蓉は望を支えながら室内のベッドに向かう
そして慎重に望を寝かせるとベッドサイドの引き出しから小さな容器を取り出した

ベッドに横たわった望の体を芙蓉が指でなぞる
その様子は、まるでそうすれば痕が消えると思っているかのようだった

芙蓉「……」

望「……うっ!!」

出血している傷口を触られた望が思わず声を上げる

芙蓉「……ごめんなさい」

望「いえ……大丈夫です……」

芙蓉「違うの……そうじゃ…ないの……」

望「えっ……」

芙蓉「……薬を塗るから動かないでね……」

望「分かりました……」

芙蓉は容器を開けると中の薬を傷口に塗り始める

望(違うって……何が違うのかしら……)

謎めいた芙蓉の言葉
黙って薬を塗り続ける芙蓉からその答えを聞く事はまだできなかった

望の体に薬を塗り始めてから数分後
無言だった芙蓉が呟くように話だした

芙蓉「……お前を初めて抱いた時の事を覚えてる?」

望「はい……忘れられません……」

芙蓉「あの時お前は言ったわね……私を受け入れる事ができたと……」

望「……覚えています」

芙蓉「……どうしてお前は姉と同じ事を言ってしまうの……?」

望「えっ……」

芙蓉「姉も同じ事を言ったの……私を受け入れる事ができた……とても幸せだと……」

望「……」

芙蓉「なぜ…姉と同じなの……」

望「お姉様……」

芙蓉「私は姉を愛していた……お前が姉と同じなら…………私は……」

望は自分の体に触れている芙蓉の指が震えている事に気づく
そしてその震えが恐怖による物だと直感的に悟った

望は痛みを堪えながら体を起こす

望「っ……お姉様……」

芙蓉「望……?」

望「大丈夫です……私はここに居ます……」

不安そうに見上げる芙蓉を望が抱き締める

望「私はお姉様の傍に居ます……私は…私は居なくなったりしません」

芙蓉「……バカね……せっかく薬を塗ったのに……」

望「あっ……申し訳ありません」

体を離そうとした望を芙蓉が抱き締め返す

望「お…お姉様……?」

芙蓉「もっと……」

望「……」

芙蓉「もっと強く抱いて……」

望「……はい」

望はさっきよりも強く芙蓉を抱き締める

芙蓉「もっとよ……苦しいくらいに抱いて頂戴……」

望「……このくらいですか?」

芙蓉「ええ……温かいわね……」

芙蓉の震えはいつの間にか止まり、今は穏やかな笑顔を見せていた

しばらく2人は抱き締めあっていたが、やがて芙蓉の方から体を離した

芙蓉「……薬を塗り直しましょう」

望「すみません……せっかく塗ってもらったのに……」

芙蓉「そんなに気にしなくていいわよ」

再び望を寝かせた芙蓉が薬を塗り直す

望(お姉様の指って冷たくて気持ちいいな……)

熱を持った体に薬と芙蓉の指の冷たさは心地よく、望は自然と笑顔になっていた

芙蓉「……何で笑っているの?」

望「すみません……お姉様の指が気持ちよくて……」

芙蓉「そう……ならもっと気持ちよくしてあげるわ」

望「えっ……」

薬を塗り終えた芙蓉はベッドサイドの引き出しからバイブレーターを取り出す

芙蓉「これで可愛がってあげましょう……」

望「……」

芙蓉「明日も休みなんだから……一晩中鳴かせてあげる……」

望「……お願いします」

芙蓉の宣言通り、その夜は望の喘ぎ声が止むことはなかった

今日は終わり

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