カチューシャ「後輩にノンナの意外な一面を話したら身長を縮められそうになったわ」 (14)

カチューシャ「‥‥で、これをこっちで同じ様にしてみると、こうなるわけ。わかった?」

アリーナ「はー‥‥ええと、したらこうで、こうなっで‥‥うう‥‥」

カチューシャ「もう‥‥いい!? あなたは文章を難しく考えすぎなの! 例えばそうね‥‥小学生レベルの問題出すわよ? 時速5キロで歩くAさんが3時間、時速6キロで歩くBさんが2時間、それぞれ歩きました。さて、多く歩けたのはどっち?」

アリーナ「カチューシャ様、そんなもんいぐら私でも‥‥15キロ歩ける、Aさんの方がいっぱい歩ぐに決まってんべ?」

カチューシャ「‥‥じゃあ次。時速30キロで走るCV33と、時速40キロで走るKV2。両方とも2時間走ったら、たくさん距離を稼いでるのはどっち?」

アリーナ「それも簡単‥‥いや、待つべ。CVは軽い分、多少悪路ですっ転んでも復旧は容易、KVは重いし、機動性の無さが弱点の1つで、何より1回転ぶだけで引っ張り起こすまでに時間が‥‥わがったべ! いっぱい走れるのはCVの方だあ!」

カチューシャ「なんでよ! あのね! テストで機動性がどうとか倒れた時の復旧作業についてがどうだとか考える必要は無いの! わかる!?」

アリーナ「んでも‥‥」

カチューシャ「1店舗で梨200個も買えないだろ、とか考えなくていいし、時速200キロで歩くおじいちゃんと時速40キロのレーシングカーだったらおじいちゃんの方が速いの! 書かれてる数字だけ把握すればいいのよ! いい!?」

アリーナ「うう‥‥んだけどもカチューシャ様‥‥」

カチューシャ「何よ」

アリーナ「命中率90%のノンナ副隊長と、命中率90%の大洗副隊長では、本当に当たる確率は同じなんだべが‥‥」

カチューシャ「そ、それは‥‥テストでそう書かれてるなら同じ‥‥なんだけど‥‥」

ノンナ「同じですよ」

カチューシャ「ノンナ!」

ノンナ「2人が頑張っているので、コーヒーとお菓子を用意しました。さて、同志アリーナ」

アリーナ「は、はいぃ!」

ノンナ「あなたが私を高く評価してくれてるのは嬉しいです。しかし、現実としてそういうデータが与えられているのならば、それは受け止めなければなりません。まあ、学校のテストでそこまで妙な問題は出ないでしょうが」

アリーナ「うう、でも‥‥」

ノンナ「では、こういうのはどうでしょう。テストの解答を書く時、心の中でだけこっそりと(数字の上では)と書き加えるというのは」

アリーナ「えっ」

ノンナ「与えられたデータに基づけば答えはこうなるけど、私は違う可能性があるのを知っている、と。表面上だけでなく、実態を踏まえて考えようとするのは、素晴らしい能力だと思います。が、それをそのまま伝えるだけでは、周りとの温度差を生む事にもなり兼ねません。あなたも来年からは後輩を持つ身です。時と場合で、自分の意思を出し入れする練習にもなるのでは?」

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アリーナ「あ‥‥そ、それなら頑張れそうな気がするだ! あ、あの!」

ノンナ「はい?」

アリーナ「カチューシャ様もノンナ副隊長も、私なんかのために付き合ってもらって、もさげねぇです‥‥」

ノンナ「気にする必要はありませんよ。戦車道と学業の両立、その厳しさは我々も身をもって知っています。それに、後輩に頼られるのは先輩の義務であり醍醐味‥‥でしたよね? カチューシャ」

カチューシャ「ちょ、ちょっと! 余計な事言わないで! カチューシャは別に戦車道以外で頼られて嬉しいなんて思ってないんだから!」

ノンナ「そうですか。では、定期テストの勉強、頑張ってくださいね。長引くようなら、お昼でも用意しますよ」

カチューシャ「もう! いいから早く出て行きなさいよーっ!」

ノンナ「なんだか私、友達が家に来た子の母親みたいになってませんか? これでも普通に学生なんですが」

カチューシャ「いいから!」

ノンナ「では」

カチューシャ「まったく‥‥ま、致命的な部分は解決できたみたいだし、これで数学はなんとかなるでしょ。後は‥‥英語はとにかく覚えるしかないし、歴史もそんな感じだし‥‥どうしようかしら。ま、せっかく持ってきてくれたし、一服しましょうか」

アリーナ「は、はい! いただきます!」

カチューシャ「しっかし、お茶請け渋いわねえ。いや、美味しいんだけどね。ブルボン製品。どうしてもおばあちゃんの家感が出るわよね」

アリーナ「んですね。バームロールとか、200本くらい食べれそうなくらい美味しいんですけどね」

カチューシャ「いや、流石にそんなにいらないけど」

アリーナ「はあ‥‥」

カチューシャ「溜め息なんてどうしたのよ。まさか、家族がブルボンに勤めてるとかそういう。だったら謝るし200本くらい食べるけど」

アリーナ「あ、いや、そういうわげじゃねえです。ノンナ副隊長、かっごええなぁと思って。もちろん、カチューシャ様は別格と言うか、殿堂入りという事で別としてですけんども」

カチューシャ「あー、まあねえ。下級生の子には特に人気よね」

アリーナ「いつも冷静で‥‥取り乱してるとこなんて、見た時ねえですもの。カチューシャ様はあります?」

カチューシャ「私もノンナがアタフタしてるところ、見た事ないわねえ。‥‥あ、ちょっと待って。前に一回だけ‥‥」

アリーナ「あるんですか!?」

カチューシャ「あるけど‥‥あなた、口は固い?」

アリーナ「2月の屋根に積もった雪より固いです! 底の部分の」

カチューシャ「そりゃ固いわ。死人が出るレベルで。じゃあ特別に教えてあげるけど‥‥絶対内緒よ? 言ったら、粛清どころの騒ぎじゃなくなるんだからね」

アリーナ「いいんですか!」

カチューシャ「あれはたしか、今年の正月明け‥‥そう、今と同じように、ニーナに泣き付かれてね。休み明けのテスト対策が全然出来てないーって。で、私とノンナも宿題まだ終わってなかったし、集まってやる事になったわけ」





カチューシャ「これまでの傾向で言うと、戦国時代についてはそんなに出ないわね。せいぜい、大名を何人か、名前と顔を線で繋げ、とかのレベルだと思うわ。メインになるのは、江戸から明治にかけての年表を穴埋めする形ね。ここだけで、60点くらいの配分がある筈よ」

ニーナ「ふむふむ‥‥江戸、明治、年表‥‥っと」

カチューシャ「問題は理科ね‥‥私、生物取ってたから教えようがないのよ」

ニーナ「うう、そうですかぁ‥‥」

カチューシャ「あ、でもたしかノンナが化学だったわね。ちょっとノン‥‥あれ?」

ニーナ「ノンナ副隊長、おやすみしてますねえ」

カチューシャ「ノンナ。ノンナったら。‥‥カチューシャより先に寝るなんて、いいご身分じゃない」

ニーナ「んでも、副隊長の寝顔、初めてみました。気ん持ちよさそうに寝ちゃってまあ」

カチューシャ「最強のカチューシャ達でも苦戦を強いられるものが、世の中に2つだけあるわ」

ニーナ「なんです?」

カチューシャ「コタツの魔力とシュトゥーカ」

ニーナ「ああ‥‥」

カチューシャ「とはいえ、このまま本格的に寝られて風邪でもひかれちゃ面倒ね。ノンナ。ほら、ノンナ。起きなさいよ」

ノンナ「ん‥‥んぅ‥‥」

カチューシャ「寝ぼけてる‥‥写メ撮っときましょ。‥‥よし。ノンナ。ノンナったら。寝るならちゃんと布団で寝なさい」

ノンナ「あ‥‥待って‥‥お母さん、待って‥‥」

カチューシャ「えっ?」

ノンナ「私も食べる‥‥」

カチューシャ「っふ‥‥な、何を?」

ノンナ「お餅‥‥お餅食べて寝る‥‥」

ニーナ「んっふ‥‥!」

カチューシャ「しっ!‥‥ど、どうやって食べるの?」

ノンナ「ノリ。ノリ巻かさったやつ‥‥あ、待って。納豆も食べたい‥‥2つずつ食べる‥‥」

カチューシャ「くふっ‥‥ふ、太るわよ?」

ノンナ「‥‥じゃあ3つ。あ、あ、でも納豆に砂糖入れるからやっぱり2つ‥‥いや、やっぱお母さんと半分こっこして、2つ半食べる。いいで‥‥しょ‥‥」ムクッ

カチューシャ「おはようノンナちゃん。よく眠れまちたかー?」ニッコォー

ノンナ「」

ニーナ「カ、カチューシャ様。そったら言い方したら、可哀想だべ」

カチューシャ「え、何が? あ、そうそう、勉強して疲れたし、夜食でも食べましょうか。お餅あるけど、どうやって食べる? ノンナちゃーん」

ノンナ「‥‥我が家では、ボルシチとドラニキ以外食卓に出ませんので」

ニーナ「いや、それはそれでおかしいですけんども」

カチューシャ「あら、そう? ま、こんな時間にお餅食べたら太っちゃうものねえ。気になるわよね。納豆に砂糖入れたいからって、お餅減らそうとするくらいだし」

ノンナ「」

カチューシャ「あっははは! いやぁ、いいもの見れたわ! あーおかしい!」

ノンナ「‥‥同志カチューシャ、同志ニーナ‥‥」

カチューシャ「何?」

ニーナ「あ、あの! 私は何も! 忘れろってなら、すんぐにでも忘れられます!」

ノンナ「ケーキバイキング‥‥」

ニーナ「へ?」

ノンナ「ケーキバイキング‥‥行きませんか。明日にでも。宿題でお疲れでしょうし。ご馳走しますよ」

カチューシャ「あらぁ? どういう風の吹き回し?」

ノンナ「いえ‥‥ただ、私が食べたくなって。その代わりと言ってはなんですが、今日の事は内密に‥‥」

ニーナ「あ、あのそんな! そったら事しなくども、言いふらしたりしませんから!」

ノンナ「いいんですよ。善意での約束より、思惑ありきでの対等な契約の方が重いですから。‥‥付き合ってくれますね?」

ニーナ「ひっ! お、お供しますだ!」

ノンナ「懸命な判断です。それでは、明日の朝。カチューシャも、いいですね? では、私はこれで」

カチューシャ「ま、仕方ないわねぇ。付き合ってあげるわ。‥‥あ、そうだ、ノンナ」

ノンナ「‥‥なんです?」

カチューシャ「優しいお母さんに、今度カチューシャともお餅半分っこで食べようって言っといてね。ピロシキー」

ノンナ「」チーン




カチューシャ「‥‥っていう事があってね。いやもう、あんなノンナ、高校3年の間に見られるなんて奇跡よ奇跡」

アリーナ「ノンナ副隊長も、そっだら一面あるんですねぇ」

カチューシャ「ま、ノンナも人の子だったって事ね。大方、お正月の里帰りに、甘えまくってたんでしょ」

アリーナ「あっ。んだどもカチューシャ様。結局、ケーキ食べに行ったんだべ?」

カチューシャ「行った行った。なかなかだったわよ」

アリーナ「それなのにこうやって話しちゃっちゃあ、まずいんでねか?」

カチューシャ「だーいじょうぶよ。ノンナはさっき出てったばっかだし、戻ってこないでしょ。バレなきゃいいのよ」

アリーナ「だけんども‥‥」

カチューシャ「平気だってば。もしノンナに聞かれたとしても、ちゃんと正直に言ってあげるわ。「同志アリーナは何も悪くないわ! 悪いのは、全てこのカチューシャよ!」ってね」

アリーナ「あ、カ、カチューシャ様‥‥」

カチューシャ「なぁに? 偉大なるカチューシャのカリスマ性を再認識したかしら?」

アリーナ「そでなくて‥‥後ろ」

ノンナ「そうですか。全ての責はカチューシャにあるんですね。なるほど」

カチューシャ「」

アリーナ「あ、あ、あ‥‥」

ノンナ「さて、カチューシャは一先ず置いておくとして‥‥同志アリーナ」

アリーナ「あああああの! わだ、私、何も知らねえです! なーんにも聞いちゃいなかったです! 納豆に砂糖入れるとかどんな味覚してんだべこの人だとか思っちゃいねえです!」

ノンナ「何を言い出すかと思えば。納豆に砂糖と醤油を入れて掻き回すと、いい感じに甘じょっぱくて、お餅と絡んで絶妙な塩梅に‥‥いえ、そんな事はどうでもいいです。そろそろお昼ですね」

アリーナ「はえ? あ、そ、そうですね」

ノンナ「トリトンにでも行きませんか。たまには後輩と昼食もいいかと。ご馳走しますよ」

アリーナ「お、お寿司ですか!? そんな、とんでもねです!」

ノンナ「同志アリーナ。あなたは賢い子です。私の言いたい事はわかりますね?」

アリーナ「よ、ようがす! お供します!」

ノンナ「それでいいんです。では後ほど。ああ、カチューシャ」

カチューシャ「な、何? いや、別に悪気があったとかそういうアレではないのよ? ただちょっと、まあ、その場の空気というか」

ノンナ「もういいんですよ。けど、ケーキバイキング2200円とドリンク代330円は返してくださいね。今すぐ」

カチューシャ「わ、わかったわよ。全然もういいって思ってないじゃない。しかも割と細かい額まで請求して‥‥ほら」

ノンナ「たしかに。それでは私はこれで‥‥ああ、もうひとつ。カチューシャ」

カチューシャ「何?」

ノンナ「しばらく、次の3つの言葉には気をつけてくださいね。日本海、竜巻、原爆」

カチューシャ「はあ? 何それ、暗号?」

ノンナ「では、同志アリーナ。待っていますよ。ああ、途中で私の部屋に寄ってください。お母さ‥‥母の漬けたイクラが届きました。少し分けてあげましょう」

アリーナ「あ、あい! お言葉に甘えで!‥‥行っちゃいましたね」

カチューシャ「はあ‥‥あー、ビックリした。でも、なんだか思ったよりは怒ってないわね」

アリーナ「そうですね。ところで、さっきの何なんでしょうかね」

カチューシャ「気になるわね。ちょっと調べてみましょうか。ええとたしか、日本海‥‥竜巻‥‥原爆、っと」

アリーナ「なんぞ出ました?」

カチューシャ「‥‥アリーナ」

アリーナ「はい?」

カチューシャ「ノンナの奴、完全にカチューシャの首折るつもりなんだけど」

アリーナ「はい!?」

カチューシャ「これ」

アリーナ「どれです?‥‥うわあ、これ、カチューシャ様、もっと縮むんでねが?」

カチューシャ「もっとは余計よ! じゃなくて‥‥ノンナ! ノンナー! 今度、栗の甘露煮が入った茶碗蒸しあげるから、許してえ!」


 後日、実家から送ってもらった、大量のカツゲンと、やきそば弁当。そしてお婆ちゃんお手製の三升漬けを進呈して、なんとかカチューシャの身長は現状を維持できましたとさ。




                                                                              おわり。

常日頃、ロシア領北海道州だとか、北海道行く時ってパスポートいるんでしょ?とか言うくせに、なぜプラウダは青森なのか。
なんだよメイプル高校て。
読んでくれた人いたらありがとうございました。

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