魔王「よく来た、剣を持たない勇者よ」 少女「…」 (109)

「号外だ!号外だ!」

「早くしないと全部なくなっちまうぞ!」


「このラジオをお聞きになっている皆さんへ…」

「悲しいお知らせです…」


「ねえねえ、あの話聞いた?」

「聞いた…。嫌でも耳に入ってくるよ」


「勇者が、死にました」

少女「…」

少女「…はぁ…」

「ラジオを聞いている国民の皆様へ。繰り返します」

「勇者が、死にました」


少女「…」スッ

「勇者が」

ブツッ

少女「……」

少女「勇者が死んだ…」

王「…」

大臣「…王」

王「…なんとかならんのか…」

大臣「…今、魔王城付近に兵を派遣しております」

王「それで魔王が倒せるのか」

大臣「…」

王「あの…勇者ですら倒せなかった魔王が、…兵ごときに敗れるのか」

大臣「王…」

王「…まだだ、まだ…。死んだとは決まってはいない。そうだ、きっと」

王「…神の加護を受けた者が、そう簡単に死ぬなど…」

大臣「…」

王「そうだろうが、大臣…」

大臣「…王…」

兵「失礼します!」

大臣「何だ!」

兵「ま、魔王城の領域にいた生存者をたった今、国に…」

王「連れてこい!」

兵「はっ!しかし、…その、容態が…」

王「いいから、連れて来い!!!」

兵「は、…はっ!」

兵「…連れてまいりました」

王「…」

大臣「…これは…」

戦士「…」

王「…もう、…死んでいるのではないか」

兵士「…かろうじて息があります。他の2人は、もう…」

王「…」スッ

戦士「…ひゅー、…ひゅー…」

王「…戦士よ」

戦士「…」ピク

王「分かるか、私だ」

戦士「あ、…お、…う…?」

王「ああ。よくぞここまで頑張った。褒めて使わそう」

戦士「あ、…ごほっ…あり、…」

王「何も言うな。…戦士よ、勇者は…」

戦士「ゆ、…しゃ」

王「…死んだのか」

戦士「…」

戦士「……」コクン

王「…そうか」

戦士「申し訳…、…あ…」

王「良いのだ。…良いのだ」

戦士「…も、…誰、…も」

王「…」

戦士「…ごほっ、がっ…」

大臣「戦士…!」

王「…医務室へ連れていけ…」

兵「…いえ、…しかし」

王「…」

戦士「…がっ…」

王「…」

戦士「…」

王「僧侶を…。呼んでやってくれ…。他の勇者の仲間と共に、葬式をあげねば」

大臣「…はっ」

王「…」

戦士「…」

王「すまなかった…」

「あ、…あれ。見て」

「お城に黒い幕が…」

「やっぱり、…駄目だったのね」

少女「…」

ガラガラ

少女「…」

ガチャ

大臣「…」ガタ

少女「こんにちは」

大臣「ああ、…こんにちは」

少女「…亡くなったんですか」

大臣「…駄目だった」

少女「そうですか…」

大臣「…すまない」

少女「大臣さんは悪くないです」

大臣「…」

少女「…私、馬車に乗ればいいんですか」

大臣「ああ。…そうしてくれ」

少女「はい」

大臣「…」

バタン

王「…」

バタン

大臣「王」

王「ああ…」

少女「…こんにちは」

王「こんにちは、少女。…よく来てくれた」

少女「…兄は?」

王「すまない、…死体は、…」

少女「…そうですか」

王「…こっちへおいで」

少女「はい」

王「…君に謝罪をしたい」

少女「必要ありません、王様。…仕方の無いことです」

王「…」

少女「それより、皆に会いたいです」

王「しかし…」

少女「会いたいんです」

王「…分かった。おい、案内してやってくれ」

兵「はっ」

兵「…大丈夫かい、少女ちゃん」

少女「…大丈夫ではないかもしれない。…けど、心配しなくてもいいよ」

兵「…ああ。…その、皆はもう霊安室にいる」

少女「そう…」

兵「こっちだ」

少女「…」

ガチャ

少女「…」

兵「もう葬式のために準備はしてある。…けど、あまり見ない方が…」

少女「大丈夫よ。それに、最後の挨拶をしなきゃ」

兵「あ…」

少女「…めくってもいい?この布」

兵「…ああ」

少女「…」スッ

戦士「…」

少女「…戦士のおじちゃんだ。…」

兵「彼は、最後まで…」

少女「…」

兵「1人で瀕死の状態だった。魔王の城から国まで帰って知らせようと、不自由な体で…」

少女「おじちゃんらしいな」スッ

少女「おやすみ、おじちゃん。ありがとう」チュ

兵「…」

少女「…こっちは」スル

魔法使い「…」

少女「…魔法使いの、…お姉ちゃん」

兵「…ああ」

少女「…顔が綺麗なままで良かったな。美人さんだもんね」ナデ

兵「…」

少女「おやすみ、お姉ちゃん。ありがとう」チュ

少女「こっちは、…」

兵「少女。…待て、そっちはあまり見ない方がいい…」

少女「…大丈夫」スル

兵「…」

少女「…」

少女「…頭は、…持ってこれなかったの?」

兵「…すまない…」

少女「…可哀想に。…ありがとう、ごめんね。…賢者のお兄ちゃん…」チュ

兵「…っ」

少女「…お葬式、するの?」

兵「ああ。午後から…」

少女「そっか。じゃあ、…喪服準備しなくちゃね」

兵「…」

少女「ねえ」

兵「ああ…」

少女「お兄ちゃんは、…どうなってたの」

兵「…勇者は…」

少女「…」

兵「…どこにも、いなかった」

少女「…」

兵「恐らく、一番最初に亡くなったのだと思う…。戦士が、そう話してくれた」

少女「…そう」

少女「…」

兵「大丈夫か」

少女「うん…」

兵「少し休んだほうがいい。顔色が悪い」

少女「平気よ。それに、休んでる場合じゃない」

少女「王様のところに戻らなくちゃ」

兵「あ、…ああ」

少女「…」

ギイイ

バタン

「…無残なものだな、あれだけ強かった人たちが…」

「しかも、勇者もだなんて」

「…信じられない、私たちは一体どうすれば」

少女「…」

兵「…聞くな」

少女「…うん」

王「…戻ったか」

少女「はい」

王「…そうか」

少女「皆、よく頑張ってくれたと思います。…彼らは、人類の宝です」

王「ああ、…そうだな。本当に…」

少女「…」

王「…」

少女「…お葬式まで、…時間があるようなので…。お話をしたほうが、いいですね」

王「…しかし、お前も少しは休んだほうが」

少女「私なら平気です。…、それより、国のほうが大事ですから」

王「…分かった。では、今すぐ参謀を呼んでこよう。会議室にいなさい」

少女「はい」

王「…」

兵「…じゃあ、行こうか」ポン

少女「うん」

少女「…」

兵「何か飲むか?」

少女「家で食事はとったから、大丈夫」

兵「…そうか」

少女「…」

兵「…」

少女「ねえ、魔王を見た?」

兵「…いいや」

少女「そう。…魔王城の中は?」

兵「俺は、後列にいた。…けど、離れて見るだけでも寒気がしたよ」

少女「そう…」

兵「…お前のお兄さんは勇敢だった」

少女「そうね。お兄ちゃんはすごいよ。仲間の人たちだってそう」

兵「…ああ」

少女「…あなたも、泣いた方がいいよ。だって親友がいなくなったんだから」

兵「な、…何を言うんだ。…泣けないよ、君の前でなんて」

少女「強いんだね」

兵「…そうじゃない。強いのは、俺じゃなくて…」

ガチャ

王「参謀がそろった。会議を始めよう」

兵「は、…はっ!」

少女「…」

王「少女、こちらへ。私の隣に座りなさい」

少女「はい」

王「…では、諸君。会議を始める」

「「はっ!!」」

王「…知ってのとおり、我が国唯一の希望だった勇者一行が今日、破れた」

大臣「…」

王「仲間の遺体は軍によって回収された。午後に葬儀を行う。皆出席するように」

「「はっ!!」」

王「…」

王「しかし、…我らに嘆いている暇はない。国のため、人類のため、策を練らねばならぬ」

王「状況を報告しろ」

兵隊長「はっ!…我が軍は今朝方、勇者の持つ剣の反応が途絶えたことを占い師から聞き、魔王城へ行きました」

兵隊長「道中、重体の戦士を救出。後方部隊により王宮へ搬送させました」

兵隊長「そして前方部隊は魔王城へ。扉の前に横たわっていた勇者の仲間2人を救出しました」

王「…中に入ったのか」

兵隊長「いいえ。扉は封印されていました」

王「…勇者の遺体も、遺品も何も無いのか」

兵隊長「…申し訳ございません」

王「…剣も、…砕かれたか、あるいは…」

大臣「…魔王め…」

王「…報告のとおりだ。一行は壊滅。そして神の剣を持った勇者も死に、剣はなくなった」

少女「…」

「…剣が無くなった、…」

「剣さえ…」

王「…」

大臣「なんとか回収はできんのか!」

兵隊長「…申し訳ございません。我々の力では…」

大臣「く、…」

王「静まれ、皆の者」

王「…本題に入ろう。勇者が亡くなった今、神の剣を扱える者はもはや1人しかいない」

少女「…」

王「…少女だ」

大臣「…」

兵「…」

少女「…」ペコ

王「…もはや、あの家の血筋を引く者は彼女しかおらん」

少女「…」

「少女…」

「しかし、…」

王「静まれと言っている。…魔王を倒せるのは、神の剣のみ。そしてその操者はもはや彼女しかいない」

王「…」

少女「…」

「では、彼女を新しい勇者にするということですか」

王「…そう、…それしか方法はない」

ザワ…

少女「…」

王「しかし剣もない状況では何もできまい」

大臣「そうだ。まずは剣の回収からだ」

王「なんとかして城に潜り込み、剣を…」

少女「…」

少女「…あの」

王「…少女。何だ」

少女「あの、少し私の話を聞いてもらっても…いいですか」

大臣「…」

王「…静かにしろ、皆の者。…彼女が話す」

少女「…」スッ

少女「…」スゥ

少女「…まずは、ここにお集まりの皆さんに感謝を」

少女「これまで兄や兄の仲間を支えてくださったこと、そしてその死を嘆いてくださったことに感謝を」

少女「…そして、謝罪を申し上げます。私の身内の力不足で、このような事態となりました」

「…」

少女「…」

少女「兄は、強い人でした」

少女「当然彼の仲間も、強い人たちばかりでした」

少女「私は、…彼らが負けるなんて、思ってもみなかった」

少女「…でも、負けてしまった」

少女「…」

王「…」

少女「正直に、…言います」

少女「私に、魔王は殺せないでしょう」


シン…

「剣ならここにあるぜ!(ギンギン)」

少女「神の剣を握っていたとしても、きっと殺せません」

王「少女…」

少女「確かに私に剣を持つ資格はあります。握ることもできます」

少女「…」

少女「けれど、私じゃ、…魔王には勝てない…」

少女「きっと兄より早く殺されておしまいです。だから、…私が戦うのは無意味です」

「…しかし」

少女「怖じ気づいている、…と思われるかもしれません」

少女「逆です。私は今すぐにでも魔王と戦いたい。力があるなら、今すぐにでも」

少女「でも…」

少女「私は、…女で、…体も弱く、…戦うことはできません…」

少女「…ごめんなさい」

王「…」

王「…聞いたか、皆の者」

王「誰も彼女を責めてはならん。憎しみなら、魔王に向けろ」

王「今すぐ討伐隊を結成するのだ。世界中から、剣を使う資格のある男を捜せ」

少女「…」

少女「待ってください」

王「…どうした」

少女「その必要はありません」

王「何を言っている」

少女「…たしかにさっき言ったとおり、私は戦いなどできません」

少女「けれど、…魔王を殺すことはできます」

ザワッ…

「どういうことだ」

「何か秘策があるのか?」

兵「…少女ちゃん…?」

少女「…聞いてください!」

王「静まれ!!」

少女「…私を、明日の朝」

少女「…魔王城へ連れて行ってください」

王「!!」

大臣「な、…!!」

兵「な、何を言って…」

少女「…」

王「正気か、それで一体何をするというのだ」

少女「…魔王を殺します」

王「ならん。できぬ。…不可能だ、そんなことは」

少女「いいえ。殺します」

勝手に終わらすなw
ちょっと落ちるで

オッサン「ん?お嬢ちゃん勇者か?よしよし、その剣ならオジサンが使いこなしたるから変わりにオジサンの剣をニギニギしてくれや」

王「滅多なことを言うな。…もっとお前にはやってほしいことがあるのだ」

「そうだ。魔王のことはとりあえず討伐隊を結成して…」

「とにかく勇者家系の血を絶やさないことが先決なのでは…」

少女「…」

王「ああ…。少女、お前の気持ちは分かるが、落ち着いて…」

少女「…魔王は国にせめて来ますよ」

王「…」

少女「勇者ですら防げなかった化け物が、どうやってただの人間に防げるというの」

少女「私が次の勇者となる子どもを孕んだって、きっとすぐ嗅ぎつけて殺される」

少女「…」

少女「落ち着くのは皆さんのほうだわ」

王「…少女。では、お前はどうやって魔王を殺すのだ?」

少女「…」

少女「考えは、あります」

少女「けれど、言えません」

王「…」

大臣「少女。…言えないとは」

少女「言えません」

王「では、賛成することはできない」

少女「…」ギュ

「そうだ。各国の協力を要請して」

「他の種族を頼るのはどうだ。エルフは…」

少女「…」

少女「…」スッ

バン!!!!

王「!」

大臣「少女!」

少女「…」

少女「私が」

少女「私が魔王を殺します」

王「少…」

少女「私が最後の勇者の生き残りなんです!国を守るために私が行動しなくてどうするんですか!!」

王「しかし、今お前を失うのは」

少女「分かっています。…だから、必ず決着をつけると誓います」

王「…少女、何の策があるのだ」

少女「…信じてください。私を、信じてください」

少女「私の中に流れている血を、意思を信じてください。お願いします。もう誰も、」

少女「…」

少女「誰も殺させたくないんです…」

王「…」

大臣「…」

王「…皆はどう思う」

ザワザワ…

王「…」

大臣「まとまりませんな…」

王「…少女よ」

少女「はい」

王「策は言えぬのだな?」

少女「はい」

王「言ったら、どうなるのだ」

少女「失敗します。…恐らく」

少女「誰にも話さず、私だけで必ず成功させてみせます」

王「それは、…お前の身を滅ぼすものなのか?」

少女「言えません」

王「…」

少女「…言えません」

王「……そうか」

少女「ごめんなさい」

王「……」

ザワザワ ザワザワ

王「…静まれ」

王「少女よ」

少女「はい」

王「世界を救ってくれるか?」

少女「…必ず」

王「…彼女を、…明日、魔王の城に送ろう」

兵「…!」

大臣「しょ、…正気ですか王!!」

王「ああ。聞いただろう、皆の者。彼女は世界の最後の希望だ。彼女の信念に従おう」

兵「お、お言葉ですがっ…!」

王「ならん。会議は終わる。皆の者は、葬儀の準備をしろ」

大臣「…」

王「何をしている、行け!!!」

「「はっ!!」」

王「…」

少女「…ごめんなさい」

王「何を謝る」

少女「我が儘言って」

王「…お前、行くのか」

少女「はい」

王「…そうか…」

少女「…」

「世界に平和をもたらすべく戦った、高潔な魂に祈りを」

「勇敢なる神の子よ、安らかに眠れ」

少女「…」

……


王「…それで、どうしようと言うのだ」

少女「一旦家に帰って準備をします」

王「準備」

少女「はい。それが終わったら、家の物は全て処分してください」

王「…何故だ」

少女「…そうしてください」

王「…分かった。そうしよう」

少女「それから、…明日の早朝、城にうかがいます。馬で魔王城まで運んでください」

王「護衛は?」

少女「少数でいいです。今は国の兵力を固めてください」

王「…それで、城に行った後お前はどうするのだ」

少女「…」

少女「全てが終わるまでは、国と連絡をとるつもりはありません」

少女「連絡をとろうともしないでください。とにかく国を守ることに専念してください」

王「…」

少女「信じてください」

王「…分からぬ。…私は、…これでいいのか?」

少女「…」

王「魔王が現れてからというもの、様々な策を練ってきたつもりだ」

王「あらゆる物を試し、挑戦した」

王「…しかし、何もできなかった」

王「勇者と仲間さえも…失った」

王「無能な王だ。全てを勇者に頼りっぱなしにし、今度は非力なお前でさえ」

少女「王様」

王「…」

少女「…兄が死んだ今、勇者は私です」

王「…」

少女「勇者が国や民を守るのは当然のことです」

王「しかし」

少女「いいんです、これで」

王「…」

少女「王様のほうがためらってはいけません。私に戦って死ねと命令するくらいでなきゃ」

王「何を言っているのだ、お前は」

少女「…」クスッ

王「本当に、…昔から変わらん。お前に…何故、こんな…」

少女「…」

王「すまない…。無能な王で、すまない…」

少女「…」

少女「誰かが来たら泣き止まないと駄目ですよ、王様」

王「分かっている、…分かっている」

ガラガラ

大臣「…では」

少女「はい。ありがとうございました」

大臣「明日の朝迎えに来る。…ゆっくり休め」

少女「そうします」

大臣「…」

大臣「なあ、少女よ」

少女「はい」

大臣「誰にも口外しない。…お前のやろうとしていることを、教えてくれないか」

少女「…」

大臣「お願いだ。このままお前が帰ってこなかったら、王は…」

少女「…言えません」

大臣「…」

少女「ごめんなさい」

大臣「いや、いい。…お前の決意は分かった。おやすみ少女」

少女「おやすみなさい」

大臣「…」

少女「…」

少女「よし」

少女「…ただいま」ガチャ


バタン

=翌朝

少女「おはようございます、王様」

王「…おはよう」

少女「準備はできていますか?すぐにでも出発しましょう」

王「…待て。少し話をする時間をくれ」

少女「…」

王「少女よ、お前はこの国に戻ってくるのか?」

少女「…分かりません」

王「…」

少女「これを」チャリ

王「…何だ」

少女「剣の装飾を少し削って作ったお守りです。兄が出征前にくれました」

王「勇者が…」

少女「今、勇者の末裔である私の命がある証拠として光っています」

王「ああ、そうだな…」

少女「これを持っていてください。くれぐれもなくさないで」

王「どうしろと言うのだ」

少女「…」

少女「時期がくれば、手紙で伝えます」

王「返信は」

少女「しないでください。それと…」

少女「もし、万が一私が目的を達成できないで死んだ場合」

少女「…そのときは、お守りが黒ずんでいくはずです。勇者の血が絶えたということになりますから」

王「…」

少女「そうならないよう、全力を尽くします」

王「いいか、くれぐれも傷つけるなよ。厳重に警護しろ」

兵「はっ!」

王「…」

大臣「…」

少女「じゃあ、行ってきます」

王「…少女よ」

少女「はい」

王「幸運を祈る」

少女「…ありがとうございます」ニコ

王「…」

少女「行こう」

兵「ああ」


王「…行ったか」

大臣「…この後は、どうするのです」

王「できる限りのことはしよう。少女の連絡を待ちながら」

王「…もし、彼女が生きて国に帰ってきたら…」

王「…わしはもう、彼女のために一生を使い切ると誓う」

大臣「…王」

王「…生きて帰れ、少女」

兵「…」

少女「いないね、魔物」

兵「ああ、おかしいな」

少女「きっと城に集まってるんだ。…今の国と一緒だ」

兵「やはり奴ら、攻めてくる気か」

少女「うん、きっと」

兵「…くそ」

少女「でも、止めてみせる」

兵「…」

少女「魔王は私が倒す」

兵「少女、俺は…」

少女「…」

少女「はあ、もうどうして男ってこんな奴ばっかなの」

兵「へ、え?」

少女「王様といい大臣といい、皆してめそめそしてばっかり。…私はもう覚悟を決めたのに」

兵「あ、…おう…」

少女「だから少しは明るく見送ってほしいわ。最後かもしれないんだから」

兵「…少女」

少女「…一発芸して」

兵「へ?」

少女「笑わせて」

兵「いきなり何を」

少女「早く」

兵「…」

兵「…お前、どうしてそうなんだ」

少女「ん?」

兵「勇者もそうだったよ。笑って見送れって」

少女「…」

兵「できるわけないだろ、友達が死ぬかもしれないってのに」

少女「…」

兵「…そのうえ、お前まで」

少女「…」

兵「くそ、…俺は…。何もできないのかよ、…」

少女「やって」

兵「…っ」

兵「魔王の前で舞おう!!!!!!」

少女「…」

兵「…」

少女「…ぷっ」

兵「…そんなに面白かったか、今の…?」

少女「ううん。顔が面白かった。涙と鼻水でぐちゃぐちゃ」

兵「う、…うるさい」

少女「ありがとう。あなたは一番の友達だよ。ばいばい」ギュ

兵「あ、…少女…」

少女「じゃあね」

兵「待っ…」

少女「…」

ザワ

少女(これが、…魔王城)

少女(大きい。すごく)

少女(…お兄ちゃんは、ここに来たのか)

少女(…怖く、なかったのかな)

少女(…)ギュ

少女(お守り、半分に割ってごめんね)

少女(半分は王様にあげちゃった。許してね、お兄ちゃん)

少女(…見てて)

少女(きっと、殺すから)

少女(どんな手を使っても、…)

少女「…」スッ

少女「…開け」

ギィ

少女「…」

ィイイ…

少女「…行ってきます」

コツ

落ちる

……


「お前を倒しに来た」

「覚悟しろ、神の剣の力を思い知れ」

「援護するわ、勇者!」

「気をつけてください、全体魔法を使ってきます!」

「雑魚どもは俺に任せて、お前は魔王を…」

「ああ!頑張れ!あと一押」



ザシュッ

「…王」

「…さま」

「魔…さま」


側近「魔王様」

魔王「…ん」

側近「お休み中申し訳ございません。ご報告が…」

魔王「…重大な用か」

側近「はい。かなり」

魔王「申せ」

側近「城に、侵入者が」

魔王「…門は封じている。どこから入った」

側近「恐らく、その門かと」

魔王「ほう」

側近「もう捕らえております。…人間の小娘です」

魔王「ただの小娘なわけがあるまい。城の門を突破した人間だぞ」

側近「はっ…」

魔王「…」

側近「殺しましょうか」

魔王「いい。見てみよう」

側近「はっ。では、玉座の間にお越しください」

魔王「分かった」

側近「失礼します」

バタン

魔王「…」

「俺が死んでも、…勇者の血は消えない。いつか、 必ず」

魔王「はったりでは無かったようだな、勇者よ」

魔王「…」

側近「ご苦労様です」

魔王「ああ」

側近「おい、人間を連れてこい」

魔物「はっ!」

魔王「…」

ガチャ

少女「…」

魔物「おら、とっとと歩け!」グイ

少女「引っ張らないで。ちゃんと歩いてるじゃない」

魔王「…」

少女「…」チラ

魔王「…」

少女(魔王…)

少女(あいつが、…)

少女「…」ギュッ

魔物「こいつです、魔王様」

魔王「ああ。下がって良い」

魔物「はっ!」

少女「…っ」ドサ

魔王「顔を上げろ。よく見えない」

少女「…」

魔王「上げろ。死にたいのか」

少女「…っ」

魔王「…」

少女「…」

魔王「側近よ」

側近「はっ」

魔王「誰かに似ているな?」

側近「はあ…。私には、分かりかねます。人間の顔などどれも同じに見えますので」

魔王「あいつだ」

少女「勇者」

魔王「…発言を許可した覚えはないが?」

少女「…」

魔王「よく似ている。目などそっくりだ」

側近「では、この娘が…」

魔王「ふむ…」

魔王「まさか、余を倒しに来たとでも言うのか?それなら歓迎せねばならんな」

魔王「…よく来た、剣を持たない勇者よ」

少女「…」

魔王「余がお前の宿敵だ」

少女「…こんにちは」

魔王「ほう」

魔王「礼儀正しいな。前来た勇者は挨拶も無しに斬りかかってきたが」

少女「…」

魔王「それで?」ギシ

少女「…」

魔王「何をしに来た、新しい勇者よ。余に何か用件でもあるのか」

少女「…」

魔王「戦いたいなら相手をしよう」

側近「魔王様」

魔王「下がれ」

側近「…」

少女「…喋ってもいいの?」

魔王「許可しよう」

少女「…私があなたと戦えるような人間に見える?」

魔王「見えんな」

少女「そう。さっきの魔物にだって一撃で動けなくされた」

魔王「それは可哀想にな」

少女「…あなたと戦うなんてできない」

魔王「じゃあ、何をしにここに来た」

少女「…」

少女(…お兄ちゃん、…見てて)

魔王「何か言え」

少女「…あなたの、顔を見に」

側近「な、…」

魔王「余の顔を見に?」

少女「うん、そう」

魔王「…ほう。それで、どうだ」

少女「どうって?」

魔王「宿敵の顔を見た感想は」

少女「…」

少女「普通ね」

魔王「…ほう」

少女「なんかもっと大きくて禍々しいかんじかと思った。人間に似ているし」

側近「…魔王様、この娘は」

魔王「下がってろと言っただろう。言うことを聞いてくれ」

側近「ですが…」

魔王「そうか。普通か」

少女「うん。普通」

魔王「…満足か?」

少女「そうね、ちょっとがっかりしたけど。目的は達成できたかな」

魔王「…」ジッ

少女「…」

魔王「本当に余の顔を見るためにここに来たのか」

少女「そう」

魔王「だとしたら愚かだ。死ぬ時が早まった」

少女「…死ぬ時?」

魔王「ああ。余が勇者の血をそのまま放っておくと思うか」

少女「…」

魔王「実に愚かしいな」

少女「私を殺すの?」

魔王「そうする他あるまい。お前らはしぶとく繁殖しては余の首を狙う」

少女「…」

魔王「さて、もう良いか。新しい勇者」

少女「…」

魔王「じっとしていれば一瞬で済む」

少女「…ま、」

魔王「ん?」

少女「待って」

魔王「…」

少女「…」

魔王「何だ」

少女「…捨てられたの」

魔王「…」スッ

少女「ここに置いて」

側近「何を…」

魔王「そういうことか」

魔王「人間らは、命を果たせなかった勇者一族を罰したということか」

側近「…はあ」

少女「お兄ちゃんが死んだ日、…城の人たちが来て」

少女「勇者が死んだから、最後の血を引くお前が魔王をどうにかしてこいって」

側近「…ふん、何て馬鹿な…」

少女「無理だって言ったけど、聞き入れてもらえなかった。気づいたら、こんな所に捨てられてた」

魔王「…」

少女「…お兄ちゃんのことも、貶してた」

魔王「そうか」

少女「…だから、ここに置いて。人間の世界にはもういられない」

魔王「…」

側近「魔王様、構わず殺すべきです」

側近「生かしておいても利益は無いでしょう」

魔王「ふむ、…」

少女「…」

魔王「お前、体が弱いようだな」

少女「…うん」

魔王「内臓に病を抱えているのではないか?」

少女「心臓が悪いの」

魔王「…兄に全て吸い取られたのだ。哀れなものだな」

少女「…」

側近「魔王様」

魔王「利益は無いと言ったな」ギシ

側近「はあ」

魔王「あるではないか」

側近「何がです」

魔王「勇者の剣…あれは厄介だ。余には触れることができん」

側近「ああ、…確かに」

魔王「お前」

少女「なに?」

魔王「ここに来たということは、人間を裏切ったということだ」

少女「先に裏切ったのはあっち」

魔王「…はは、そうだな。その通りだ」

側近「…」

魔王「少しだけ命を伸ばしてやろう」

少女「本当?」

魔王「ああ。だが、言うことを聞いて貰う」

側近「よろしいのですか?」

魔王「良い。いつでも殺せる」

魔王「お前、…名は」

少女「少女」

魔王「ふむ。…少女よ、お前も勇者の血を引く女だ。剣に触れることはできるな」

少女「うん、できる」

魔王「では来い。手伝って貰おう」

少女「はーい」

魔王「側近、連れてこい」

側近「は、はい」

少女「…」ニコッ

側近「…」

少女「こんにちは、よろしく」

側近「気安く話かけるな。…人間め」

少女「…」

側近「着いてこい。いいか、少しでも変な動きをしたら首が飛ぶからな」

少女「それは怖い」

魔王「何をしている、早く連れてこい」

側近「ただいま!」

コツ コツ

「…なんだあれは」

「女だ。人間の」

「…おい、あの雰囲気。まさか、勇者の…」

魔王「…邪魔だ、通せ」

「は、はい…」

少女「広いんだね、お城って」

側近「…軽口を叩くな」

少女「感想言っただけじゃん」ムス

魔王「…」カチ

少女「ねえ、あれは何?」

側近「はあ。…封印の扉だ。魔王様以外開けられん」

少女「へえー」

側近「お前、少しは黙らんか。…全く、どういう神経をしているんだ」

魔王「来い」

側近「はっ!ほら、歩け」

少女「はーい」

魔王「…これだ」

側近「う、…相変わらず気味の悪い光だ」

少女「お兄ちゃんの剣だ」

魔王「そうだ。兄が死んでもこの剣だけは死ななかった」

少女「…私がいるからだよ。私が死んだら、ただの灰になるの」

魔王「ほう、そうか」

少女「…私を殺すの?」

魔王「それもいいが、もっと良い案がある」スッ

魔王「結界の中に入れ。剣を持って出てこい」

少女「分かった」

側近「魔王様、奴に剣を持たせていいのですか?」

魔王「…」

少女「…」

少女「…」スッ

少女「…」クル

魔王「…」

少女「…持ったよ」

魔王「そのまま、出てこい」

側近「危険です、魔王様」

魔王「危険?…」

側近「何故勇者の血を流す女に剣を…」

魔王「…」

少女「…」カツ

魔王「…」

少女「…」カツ

側近「お下がりを」

魔王「少し黙れ」

側近「魔…」

少女「…」チャキ

魔王「…」

少女「…」

少女「…」クスッ

魔王「何を笑う」

少女「重いなあ、って思って。全然支えられない。ほら」ガラン

魔王「…」

少女「はい、出したよ。どうするのこれ」

魔王「…ははは」

魔王「何故斬りかかってこない」

少女「え?」

魔王「今、好機だったろう。余を殺す絶好の」

少女「…」

少女「無理だよ。絶対無理」

魔王「…」

側近「な、…」

魔王「まあよい。剣を立てろ」

少女「えー、重いのに」

魔王「早くやれ」

少女「はい。こう?」

魔王「ああ。…」スッ

少女「何するの?」

魔王「剣の力を抜く」

少女「…」

魔王「協力しろ。剣にこめられた力を放て。それを余が吸い取って浄化する」

少女「危なくない?」

魔王「ゆっくりとやれ」

少女「一気にやったら、危ない?」

魔王「ああ」

少女「…そう」

側近「魔王様、何を」

魔王「…」

少女「…」ギュ

少女「…」ギュ

少女(…お兄ちゃん、頑張ったんだね。力がこんなにたまってる)

少女(これ、一気に全部出せば勝てたのかな)

少女(…)

魔王「…」

少女「…」ザワ

少女(…そっか、…駄目なんだ)ギュ

少女「いい?」

魔王「ああ、やれ」

側近「魔王様!」

魔王「黙って見ていろ」

側近「ああ、…そんな…」

少女「…」スゥ

キラッ

魔王「!」バッ

少女「…」

魔王「……」グググ

少女「…」

魔王「……」グググ

側近「ああ…」

少女「…っ、はぁ」

魔王「…終わりか」

少女「ううん。私の力じゃこれくらいを出すのが限界なの。もう無理」

魔王「…軟弱な」

側近「よ、…良かった。寿命が縮まりましたよ!」

少女「ねえ、お兄ちゃんはもっとすごかったの?」

魔王「ああ。比べものにならなかった」

少女「…そっか。やっぱりね」

魔王「もう出せないのか」

少女「…今日はもう無理かも。時間がかかるの」

魔王「…非力なことだな。分かっただろう、奴に余は倒せない。何があってもな」

側近「はい。そのようですね」

少女「…」

魔王「まだ力は多く残っている。全て出し切るまでお前を使う」

少女「本当?じゃあ、ここに置いて」

魔王「許可しよう」

少女「やったー!ありがとう、えっと…」

少女「…魔王様?」

魔王「…」クス

魔王「何て女だ。…勇者の一族のくせに」

少女「えへへ」

魔王「部屋を用意してやれ。魔物たちには手を出すなと伝えろ」

側近「は、はっ」

少女「お部屋までもらえるの?うれしいな」

側近「黙ってついて来い…」

少女「…」タタタ

側近「全く…魔王様は一体何を考えているのか」

少女「ねえ」ツン

側近「ひっ!?」

少女「この翼って、くすぐったかったりするの?」サワサワ

側近「触るな!」バッ

少女「すごい、コウモリみたいで格好良いね」

側近「…っ、何なんだお前は…」

少女「ツメにも触ってみて良い?」

側近「やめろ、近寄るんじゃ無い」

少女「いいじゃん少しだけ」

側近「やめろ!!!骨を折られたいのか!」

少女「それは嫌だけど、触るくらい…」

側近「ふざけ…」

「おい、側近が…」

「襲われてるんじゃないのか?」

「まさか、はは…」

側近「…っ」

側近「いいから来いって言ってるだろうが!」グイ

少女「いたたた」

ズザッ

少女「いったいなあ。もう少し優しくしてよ」

側近「黙れ、小娘が…」

少女「ここが私の部屋?」

側近「ああ、そうだ」

少女「なんだ、牢屋みたいなところに入れられるかと思った」

側近「そっちのほうが良いなら変えてやる」

少女「いいわけないでしょ。うわー、広い」クルクル

側近「…はぁ…」

少女「魔王様って優しいのね。もっと怖い人かと思った」

側近「何を言う。…魔王様がここまでするのは、優しさからくるものではない」

少女「分かってる。けど、うれしいのには変わりないもん」

側近「…」ハァ

側近「もういい。いいか、おとなしくしておけ。部屋から出るな。寝ろ」

少女「…えー」

側近「私の仕事を増やすな。…噛みちぎられたくなかったらな」

少女「分かった。噛みちぎられたくは無いからそうする」

側近「結構だ」

バタン!

少女「…」

少女「…」フゥ

少女「…」カツカツ

少女「…」シャッ

少女(あ、国が見える)

少女(…)

少女(皆今頃どうしてるかな)

少女(兵、泣いてなきゃいいけど。泣き虫だからなあ、あの人)

少女(王様も…心細くないかな。大丈夫かな)

少女「…」チャリ

少女「…お兄ちゃん、皆を守ってね」ギュ

少女「…私のこともよろしく」

少女「…」

少女「…」ゴシゴシ

少女「…」ゴシ

少女「…」

「ほら、あれ」

「ちょっと押さないでよ」

「押してないよ!そっちこそもっと離れてよ」

「はああ?離れたらよく見えないじゃないあんた馬鹿?」

「何だと!」

ガチャ

「!うわ!」

「きゃ!」

ドサドサ

少女「…」

魔女「…いったー…」

悪魔「ってぇ…」

少女「…」

魔女「!ほら!あんたが騒ぐから見つかっちゃったじゃない!」

悪魔「俺!?いやお前が」

少女「あなたたち、誰?」

魔女「ああごめんねぇ。いや城に新入りが入ったって聞いたものだから、ちょっと偵察に」

少女「…」

魔女「こんにちは人間のお嬢さん。私は魔女。こっちは、悪魔っていうの」

悪魔「おう、どうも」

少女「…」

魔女(ほら、やっぱり怖がってる)

悪魔(しかたねえだろこんな見た目じゃ…)

少女「よろしく!」ニコッ

魔女「え」

悪魔「お…」

少女「ずっと1人で退屈してたんだ!私は少女。よろしくね」

魔女「え、ええ…。よろしく」

悪魔「よろしく…」

少女「側近っていう人にここに閉じ込められちゃったんだ。すごく暇なの」

魔女「ああ、あの陰険古株に…。それは可哀想にねえ」

悪魔「いや閉じ込めておいたほうがいいだろ。こいつ、勇者の…」

少女「お兄ちゃんのこと知ってるの?」

魔女「え?まあ、そうね」

少女「戦った?」

悪魔「馬鹿、戦ってねえからここまで生きてるんだろ」

魔女「…」ベシ

悪魔「ってえ!」

少女「なんだ。…そっか」

魔女「あなたが勇者の妹だっていう噂、本当みたいね」

少女「うん。気を悪くした?」

魔女「…あなたこそ悪くするほうなんじゃないの?」

悪魔「そうだぜ。聞けば単身ここに来て置いてくれって頼み込んだらしいし」

少女「…」

魔女「人間に生け贄にされたんだって魔王様はおっしゃってたわね」

少女「生け贄、…。まあ似たようなものかも」

悪魔「どういうことだ」

少女「何の装備もなくここに置いて行かれたの。兄の代わりに魔王を倒せって」

悪魔「なんじゃそりゃあ。傑作」

魔女「えっぐいことするわねえ、人間」

悪魔「いや俺らが言えた義理じゃねえだろ」

少女「で、魔王様に頼んだらここにいてもいいって」

悪魔「ふうん、じゃあお前、勇者の妹のくせに魔王の傘下に入ったってわけだ」

少女「うん!」

魔女「あらー…。本気なの」

少女「…そうだね、本気」

悪魔「へー…」

このパートいる?

>>84
いらない?

じゃあ81からの下りカットで(´・ω・`)

「いいか、少女」

「俺は必ず帰ってくる」

「お前を1人にはしない」

「俺が魔王を倒して、またこの家に戻ってくるときには」

「今度こそお前と一緒に静かに暮らそう」

「え?結婚?そんな先のこと言うなよお前…野暮だな」

「とにかく、お前はここで待ってろ」

「…あ、そうだ。このお守りをやるよ」

「神の剣から装飾をちょこっと削って作ったやつだ」

「これが光ってる限り、俺は生きてる」

「ん?死んだとき…?」

「そのときは、一瞬熱くなって光を失って。…それから、また光り出す」

「そう。お前の命が今度は光を与えるんだ」

「まあそんな顔すんなよ。絶対そうはならないからさ」

「ああ。生きて帰るさ」

「お前も、病気に負けずがんばれよ」

「…じゃあ、行ってくる。また会おう、少女」


少女「…ん、」

少女「…」ゴロン

少女「…」ゴシ

ドンドン!!

少女「!」ビクッ

「おい、起きてるか?」

少女「は、はい!」

そんな画太郎先生じゃないんだから…
http://i.imgur.com/iWjh62R.jpg

>>89
やっぱ画太郎先生って神だわ

少女「誰ですかー」

「誰でもいいだろ、さっさと出てこい」

少女「…」モゾ

ガチャ

側近「…」

少女「あ、こん…ばんは?」

側近「食事だ」

少女「あ、もうそんな時間ですか」

側近「無駄口はいいからさっさと着いてこい」

少女「ちょっと髪を整えても良い?寝てぐしゃぐしゃになったから」

側近「…歩きながらやれ!」

少女「はいはい」

側近「ったく…」

少女「呼びに来てくれてありがとう」

側近「…」

側近「命令だから礼を言われる筋合いはない」

少女「ふふ」

側近「座れ」

少女「はーい」ストン

側近「手を後ろに回せ」

少女「え?」

側近「いいから」

少女「こう?」

ガシャン

少女「…」

少女「ん?」

側近「よし。おい、持ってこい」

少女「ちょっと側近さん」

側近「何だ」

少女「この手錠は」

側近「ああ、ナイフやフォークで妙なことされたくないからな」

少女「でも食べれないんだけど」

側近「…」

少女「…」

側近「皿に直接口付けて食えばいいだろ」

少女「ええ!?」

少女「それはあんまりじゃない?」

側近「黙れ」

少女「え、外してよー。絶対おかしいよこんなの」

側近「黙れ!」

ガラガラ

魔物「うーっす」

側近「ああ、エサはそこに置け」

魔物「了解」

少女「エサって…ひどいなぁ」

側近「もらえるだけでも有り難いと思え」

少女「…」ギシ

少女「うわ、美味しそう。パンとスープとチキン?」

側近「ああ。なるべく早く食えよ、私も暇じゃないんだ」

少女「だからこうやってたら食べられないんだってば」

側近「では食べなければいいんじゃないか?」

少女「ちょっと、いじめだよこれ」

側近「うるさ」

魔王「何を騒いでいる」

側近「!!」

少女「こんばんは魔王様。側近が意地悪してくるんです」

魔王「意地悪?」

側近「いえ、…その」

魔王「…」ジャラ

魔王「なんだこれは」

側近「手錠です、魔王様」

魔王「…」

バキン

少女「わ、…ありがとうございます」

側近「魔王様。これは安全面を考慮してのことでして」

魔王「お前は何を怯えているのだ?手錠なぞかけなくても良いだろう」

側近「怯え…お言葉ですが、私は」

魔王「仮にも余の右腕たる魔物が、こんな…弱い娘にひるむとは」

少女「そうですよ。食事のナイフなんかで魔物と戦えるほど強くないもん」

魔王「だそうだ」

側近「…」

少女「食べてもいい?」

魔王「勝手にしろ」

少女「いただきまーす」

魔王「…少しは威厳を保て。安心しろ、余には分かる。こいつには力など無い」

少女「…」

側近「はっ…」

魔王「…」

少女「ん、美味しい。すごく美味しいです」

魔王「そうか」

少女「側近さんも食べません?お仕事ばっかりで疲れているでしょ」

側近「…」グギギ

魔王「…」

魔王「ふっ」

側近「魔王様、何故こんな娘…」

魔王「これはこれで役に立つ。物は使いようだ。弱らせるなよ」

側近「…かしこまりました」

魔王「任せたぞ」コツ

少女「…」

バタン

側近「…」

側近「貴様のせいでおしかりを受けた。どうしてくれる」グッ

少女「私のせいじゃない。絶対私のせいじゃない」

側近「もういい。さっさと部屋に戻ってさっさと風呂に入ってさっさと寝ろ」グイ

少女「え、ちょっと」

側近「もう十分食べたはずだ」ズルズル

少女「痛いってばもっと優しくしてよ」

側近「うるさい!!」


ガチャ

側近「いいか、夜に城内をうろついたら命の保証はないからな」

少女「はいはい」

側近「…あと呼んだらさっさと起きろ、愚図め」

少女「起きたじゃん」

側近「口答えするな」

少女「…はーい」

側近「ふん」

バタン

少女「…はぁ」

少女「…んーーー」

少女「…よし、お風呂入って寝よう」

ドンドン!

「おい、起き…」

少女「もう起きてるー」

「…じゃあさっさと支度して出てこい」

少女「はーい」ガチャ

側近「…もう済ませているのか。気味の悪い…」

少女「準備がいいって言ってよ」

側近「…服のサイズは合っているようだな」

少女「あ、やっぱりこれ置いておいてくれたの?」

側近「命令だからな」

少女「すっごく可愛い。魔王様にもお礼を言わなきゃ」

側近「いいか、お前は極力話しかけるな。質問にだけ答えてればいいんだ」

少女「そんなの、つまらないわ。もっとお話したいもん」

側近「は…。お前は何を…」

少女「で、どこに行くの」

側近「…。こっちだ。魔王様がお待ちだ」

「ほら、やっぱり勇者の」

「へええ。…結構上玉じゃねえか、はは」

少女「…」クル

少女「ごきげんよう、皆さん」ニコ

「…」

側近「何してる!さっさと来い!」

少女「はーい」パタパタ

「…可愛いな」

「ああ、可愛い」

魔王「…」

側近「お早うございます、魔王様」

少女「おはようございます」ペコ

側近「昨晩は奴隷の管理を怠り非常に」

魔王「眠れたか」

少女「え?…はい、眠れました」

魔王「…神経が太いな」クスクス

少女「そうですか?」クス

側近「…」

魔王「さて、お前には今日も色々とやってもらうことがある」

少女「はい、なんなりと」

魔王「命が惜しければ手を抜かず働け。いいな」

少女「はい」

側近「…」

魔王「側近、奴に朝食を与えろ。…昨日のようにはするなよ」

少女「だってさ」

側近「ぐ、…かしこまりました」

魔王「食べ終わったら来い」

少女「はーい。あ、魔王様」

魔王「何だ」

少女「お洋服、ありがとうございます」

魔王「…」

魔王「魔王の捕虜が小汚い格好をしていても困るのでな。汚すなよ」

少女「分かりました」

今日はここまでにするわ

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