絶対反論(マジレス)こと詠矢空希(ヨメヤ ソラキ)は落ちていた。 (1000)

これは、ニュース速報vipに投下された【御坂「……?(誰よアイツ……見ない顔ね……)」】というスレタイで投下されたSSの続きです。
前作はこちらに↓
(注釈)
・禁書のSSです
・オリキャラメインです。勝手に設定した能力者が出ます。
・原作は読んでません。細かい設定はよくわかりません。
・アニメは全話見ました。
・キャラが崩壊してるかも知れませんがご容赦を

では、早速初めさせて頂きます。

絶対反論(マジレス)こと詠矢空希(ヨメヤ ソラキ)は落ちていた。

それは比喩的表現ではなく、ただ真っ当な「落下」である。

地面まで数秒。その落差を計測する余裕などなかったが、それが殺意を持った高さであることは容易に想像できた。

「……つまんねえ人生だったなー……」

彼の命脈は既に尽きていた…かに見えた。

時間は数秒ほど遡る

打止「おかいものっ!おかいものっ!とミサカはミサカはうれしさのあまりお出かけの目的を連呼してみたり!」

一方「ったく、っせーな…。食料の買出しに行くだけだろーが…」

打止「でも一緒にお出かけはそれだけで楽しいんだよ?なんてミサカはミサカは素直に同意を求めてみたり!」

一方「ケッ…ナニ言ってやがんだ…。いいから静かにしやがれ!」

ショッピングモールに向かう橋の上を歩く少女と、それを追う学園第一位能力者の青年。青白い首筋をもたげて、なんとなく空を見る。

一方「しっかし…腹立つぐれえいい天気だな…あ?」

青年の視界、つまりは上空に何かが写った。そしてそれはすぐに人の形をしていることに気づく。

だが、形より圧倒的に重要なことは、それが自然落下してくるということだ。前を小走りに進む少女の頭上に。狙い済ましたように。

一方「ちょ…なんだアレは!!…あぶねえっっ!!!」

青年は走る。だが杖が必要な足は付いていかず、上半身だけが先行する。半ば飛び掛るような状態で、なんとか少女の頭上に手をかざすことが出来た瞬間、落下物が彼の腕に触れた。

一方「っつ!!…!」

彼の能力「ベクトル変換」が発動する。落下物は水平に弾き飛ばされ、橋の欄干を通り越し、水柱を上げながら水面に叩きつけられた。

打止「ひゃあっ!!とミサカはミサカは驚きを隠せないでいたり・・・」

一方「なンだ……?」

詠矢「(あれ、俺まだ意識あるな)」

詠矢「(なんかものすごい衝撃を感じたんだが)」

詠矢「(感じたってことは生きてるんだよな?)」

詠矢「(そうだ、確か水に落ちたんだ)」

詠矢「(えーっと、つまり今水中にいるわけで)」

詠矢「(…取り合えず浮上しないと死ぬ!)」

詠矢「ぶわっ!」

詠矢「あぶねえ、せっかく命拾いしたのにまた死ぬとこだった!」

一方「なンだテメェは!!自殺ならヨソでヤレやァ!!!!」

詠矢「えー、なんと言うか。事故なんですよ」

一方「ンだぁ?…事故だと?」

詠矢「事情を説明すと簡単なようなややこしいような…」

詠矢「とにかく、助かったよ。あんたも何かの能力者なのかな?」

詠矢「確か俺は橋の上に落下するはずだった」

詠矢「だが気づいたら川に落ちてた」

詠矢「突風が吹いたとかそんなチャチなレベルじゃなく、俺の体は弾き飛ばされてる」

詠矢「なら、やっぱり何かの能力によって助けられたと考えるべきだよな」

詠矢「というわけで、ありがとう。助かったよ」

一方「……なンかゴチャゴチャ回りくどい奴だな」

打止「…(ジー)」

一方「どしたぁ?」

打止「…(オカイモノ)」

一方「アア、そうだったな…」

詠矢「あー、なんか用があるなら行ってくれ。後は自力でなんとかするから」

一方「言われ無くてもそうすらァ…。じゃあな飛び降り野郎…おら、行くぞガキ…(スタスタ)」

打止「…(ペコリ)…(スタスタ)」

詠矢「行っちまったか…」

詠矢「ていうかあの顔どっかで見たことあるような…」

詠矢「…まあいいか、そのうち思い出すだろう」

詠矢「さあて、これからどうするかな」

詠矢「取り合えず位置検索か(ポチポチ)」

詠矢「あ…」

詠矢「完全水没、だよな…。携帯が…電源も入らねえ…」

詠矢「水没じゃ保障対象外だよなあ…。か…金が…」

詠矢「しょうがねえ、適当に地図見ながら歩くか」

詠矢「取り合えず置いてきた荷物を回収しねえとな」

詠矢「さっきのソバ屋どこかな」

詠矢「フロ屋も探さねえとな…(トボトボ)」

詠矢「あ、そうだ、俺は連行される所だったんだよな」

詠矢「嫌疑がかけられてるんなら、ちゃんと出頭しとかないとな…」

詠矢「これ以上ジャッジメントと事を構えるつもりもないし」

詠矢「とはいえ、何処に行ったもんだか…」

詠矢「その辺の人に聞いてわかるかな?」

詠矢「…不審者扱いされるのがオチか」

詠矢「あのツインテールの娘、名前ぐらい聞いとけばよかったな」

詠矢「さあて、どうするかな…」

嘆いたって始まらない。取り合えず俺は歩きながら考えることにした。

都市の案内板を頼りに、どうにか元の場所に戻った俺は荷物を回収することに成功した。

フロでも入りたかったがあいにく銭湯は見つからず、ネットカフェのコインシャワーで体を流すと、
万が一にと持ってきた私服に着替える。
水に落ちたときの打ち身で体のあちこちが軋む。まったく落ち着ける状況ではなかったが、考える
時間だけは十分に確保出来た。

俺は思考に結論を出し、一番近くにある図書館へ向かった。

もしかして本物?

第七学区 図書館)
白井「探しましたわよ…詠矢さん」

詠矢「お、いいタイミングだねえ。ちょうど一冊読み終わったとこだ」

白井「まるで見つかるのを待ってたかのような口ぶりですわね」

詠矢「そう、その通り。自分で出頭しようと思ったんだけど…」

詠矢「何処に行ったらいいかも分からなくてね」

詠矢「今日最初に会ったときも」

詠矢「俺をピンポイントで見つけてたろ?」

詠矢「だから、そちらさんには何らかの位置検索の方法があると考えた」

白井「変な所には頭が回りますわね…」

白井「確かに、監視カメラの記録であなたの姿を追跡しましたわ」

詠矢「やっぱそうか。ならここで待ってて正解だったな」

詠矢「図書館の中なら監視体制はバッチリだろうし」

詠矢「ついでにいろいろと情報を仕入れられるしな」

白井「ま、ご無事で何より…」

白井「そのご様子ですと、特に危険な場所に転移したわけでもなさそうですわね」

詠矢「それがそうでもなくてさ。気づいたら空中だっんだよ」

詠矢「これがまた結構な高さでさ。マジで死ぬかと思ったぜ」

白井「え…?ではそこからどうやって…」

詠矢「いや、なんか能力者の人が偶然通りかかってさ」

詠矢「多分念動系か何かだと思うんだけど」

詠矢「弾き飛ばして川に落としてくれたんだわ」

白井「たまたま?能力者に助けられたと…?」

詠矢「たまたま。運が良かったってことになるのかな」

詠矢「まあ、どっちかっていうと悪運になるんだろけどね」

白井「そうでしたの…。でも、わたくしもその悪運に感謝しないといけませんわね」

白井「危うく殺人犯になるところでしたわ」

詠矢「まー、基本俺が余計なこと言ったからだからな…以後自重するよ」

白井「そうしていただけると助かります」

白井「では、早速ご同行いただきましょうか?」

詠矢「はいはい、じゃあ読んだ本は元の位置に…」

詠矢「お待たせ。んじゃ行きましょうか」

白井「はい。では向こうの出口から行きますわ」

詠矢「あ、あれ…?」

白井「なんですの?」

詠矢「テレポートで移動しねえの?」

白井「…ここからでは距離がありすぎます。徒歩で向かいますの」

詠矢「なるほど距離、か。ってーことは転移にも射程があるってことだ…」

白井「…(ジロッ)」

詠矢「あ…いやいやいや、もう余計なこと言わないって…!(アセ)」

白井「…参りますわよ…」

詠矢「うーい…(なんかやりずれーな…)」

(ジャッジメント177支部)
白井「こちらですわ…(ガチャ)」

詠矢「まいどどーも」

御坂「あ…!」

詠矢「あ……」

御坂「アンタ……さっきはよくもやってくれたわね!!(バチッ)」

詠矢「や、やめろって…!だから怒らせたのは謝るからさ…」

御坂「…謝ってすむ問題かしら?…(ビリバチッ)」

白井「お、お姉さま。支部で電撃はちょっと…」

初春「や、やめてください!パソコンが!!」

詠矢「……」

詠矢「……わかった…確かにそうだ。謝ってすむ問題じゃないかもな」

詠矢「俺も腹は括った。御坂サンの気の済むようにしてくれ」

御坂「…え?」

詠矢「まあ、正直俺も、副作用まで誘発出来るとは思わなかった」

詠矢「だが、御坂サンを危険な状態にしたことは事実だ」

詠矢「だから、煮るなり焼くなり、好きにしてくれ」

御坂「…アンタ、いきなり居直るなんてどうゆうつもりよ!」

白井「そんな勝手な言い分が通ると思ってらっしゃいますの!?」

詠矢「どうもこうもねえさ。俺はただ謝りたいだけだ」

詠矢「それでも許されねえってんなら」

詠矢「そっちの気の済むようにしてもらうのが一番いい」

詠矢「俺は一切の抵抗はしない。もちろん『論証』もだ」

御坂「…」

詠矢「…さあ。いいぜ」

御坂「…」

初春「…(ハラハラ)」

白井「…あ、あの…まさか、お姉さま?」

御坂「…」

白井「お姉さま!!」

御坂「…(ガシッ)」

詠矢「(腕を…?)」

御坂「…!(バチッ!!)」

詠矢「ぎゃうぁ(ビクンッ)!!!…ッつつ…」

白井「…!」

初春「…!」

御坂「フン…いいわ、このくらいで許してあげる」

詠矢「このくらいって十分痛いんですけど…(ビクビク)」

御坂「気絶しない程度に抑えといたわよ。アンタには聞きたいことがあるし」

詠矢「それは…ご配慮の程痛み入ります…(ビク)」

詠矢「まあ、これで済ましてもらえるなら安いもんだわな」

詠矢「でもなあ御坂サン」

御坂「……何よ」

詠矢「窃盗はよくねえよな?刑法的に」

御坂「…」

詠矢「一応反省しといたほうがいいんじゃねの?」

白井「窃盗?…なんの話ですの?」

御坂「え?…あ…えっと…」

白井「お姉さま…まさかまた…」

詠矢「また…って…常習犯だったのか?」

御坂「…え…って……、た、たまたま小銭が無くて、ちょっと面倒になったから……つい…」

白井「……」

詠矢「……」

御坂「…悪かったわよ…、もう二度とやらない…」

白井「本当ですの?」

御坂「本当だってば…」

白井「そうおっしゃるなら大目に見ますけど…、常盤台のエースともあろうお方が…浅ましい真似は謹んで下さいまし!」

御坂「だから、やらないって言ってるじゃない!もう…」

詠矢「えーっと…、まあ、ジャッジメントの人が大目に見るってんだから、俺がこれ以上何も言うことはねえな」

詠矢「じゃあ、この話は終わりってことで…」

白井「そうですわね…では、本題に移りましょうか」

白井「改めて自己紹介ですわ。わたくしはジャッジメントの白井黒子と申します。詠矢さん、あなたにいくつかお聞きしたいことがあります」

詠矢「なんなりと…。答えられることは答えるぜ」

白井「では、まずあなたの能力について…」

詠矢「名前は絶対反論(マジレス)…。能力者に対して、論証を立てることによってその能力を変質させる…」

詠矢「さっき説明した通りだね」

白井「もう少し詳しくお願いします」

詠矢「っても…。俺にもよくわかってない部分も多いんだけどな」

詠矢「お二人さんと手合わせしたことで、かなり理解出来た」

御坂「…ていうと?」

詠矢「論証が完全じゃなくても、変質は発生する」

詠矢「ハッタリでも何でも構わない。相手が俺の言うことをある程度認めた時点で、能力が発動するみたいだな」

御坂「でも私の場合、電撃が撃てないって認めた訳じゃないわよ?」

詠矢「まあ、その辺は度合いの問題でさ」

詠矢「完全に認めなくても、対象の心の中『あれ、そうだっけ?』ってレベルのわずかな引っかかりでも作れれば」

詠矢「変質は一定の効果を生む」

白井「…確かに、わたくしもあなたの言葉を聞いてから転移の精度が落ちましたわ」

詠矢「どっかで俺の言葉が引っかかって、能力の精度が落ちたんだろう」

白井「…厄介な能力ですわね…。やはり、パーソナルリアリティに干渉する力…」

詠矢「いや、それはどうかな?」

詠矢「さっき図書館で一通りのことは調べたんだけど」

詠矢「能力者ってのは、パーソナルリアリティ…『自分だけの現実』を観測して」

詠矢「物理的には起こり得ない超常現象を引き起こす…だっけか?」

白井「そうですわ。学園の能力者は全て個別の現実を持っています」

白井「その現実は能力者によって千差万別…」

詠矢「俺はついさっきまでそんなことは知りもしなかった」

詠矢「そんな状態で、いきなり干渉する力を得るってのもねえ…」

詠矢「ただ言葉による暗示によって、能力を出させないようにしてるのかもしれないし」

詠矢「解釈としてはどうとでも取れるわな」

御坂「何よあんた。人の能力についてはどうのこうの文句付けるくせに」

御坂「自分の能力は全然適当じゃない」

詠矢「いいんだよ、俺は適当で」

詠矢「同じ能力を持った奴が表れない限り、俺の能力が『論証』される事は無いわけだからな」

白井「なんて自分勝手な…」

詠矢「パーソナルリアリティなんてそもそも自分勝手なもんだ」

詠矢「自分の思いだけで、物理法則だって簡単に捻じ曲げちまうんだからな」

御坂「そういっちゃえばそうだけどさ…なんか釈然としないわね…」

詠矢「ま、能力についてはこれぐらいだな。俺だって知らないことは話せない」

詠矢「他に何か質問あるかい?」

白井「一通り能力に関しては理解できましたわ。ではお言葉に甘えて、もう一つ…」

詠矢「どうぞ」

白井「学園都市に来られた目的は?」

詠矢「まず第一に、自分の能力をちゃんと確かめる為」

詠矢「さっき説明した通り、俺の能力は能力者がいないと確かめようが無いんでね」

詠矢「んで次に、この能力で出来る事を探すため」

詠矢「以上二点です」

白井「意外と真っ当な理由ですわね…」

詠矢「そんなもんだよ。別に野心とか野望とかねえし…」

御坂「その割には、いきなり突っかかって来たわね…」

詠矢「いや、だからアレはゴメンって。『マジレス』を試すには、能力者と戦うしかなかったもんで…」

詠矢「その辺は白井サンも改めて謝るよ」

白井「その話はもうよろしいですわ。こちらも少し強引過ぎましたし…」

御坂「でもさあ、あんたどうやって自分の能力に気づいたの?」

御坂「能力者に会わないと解りようが無いじゃない」

詠矢「あ、それ説明してなかったな。なかなか鋭いね御坂サン」

詠矢「実は俺、能力者に会ったのは御坂さんが初めてじゃないんだ」

詠矢「俺の近所に、学園都市で能力開発してた奴がいてね」

白井「まあ、どちら様ですの?」

詠矢「白井サンも知らないような低レベル能力者らしいんだけどね」

詠矢「で、そいつが帰省で家に帰って来た時に、なんかつまんないことで言い合いになってさ」

詠矢「話の流れで、相手の能力を変質させちまったんだよ…」

御坂「それで自分の能力に気づいたわけね」

詠矢「そうなんだ。変質はすぐに収まったんだけど、もしかしたらって思ってね」

詠矢「で、ここに来た目的、につながる訳ですよ」

白井「一応、話の筋は通ってますわね」

詠矢「信じるか信じないかはそちらさんの自由だけどね。嘘は言ってねえよ」

詠矢「さて、尋問は以上かな?終わりなら…帰らせてもらっていいかい?」

白井「そうですわね…事情聴取はこれぐらいですわね…」

白井「初春、調書の方はよろしいですの?」

初春「はい、バッチリです…(カタカタ)」

詠矢「へえ、そっちの娘、初春サンっていうのか」

詠矢「俺は詠矢空希ってもんだ。よろしくなー」

初春「あ、はい…どもです…(ペコリ)」

白井「では、今日はこれでお引取り頂いて結構です。但し!」

白井「次に出頭をお願いすることがあったら、素直に従うように」

詠矢「へいへい」

詠矢「じゃ、部屋に荷物が届くころなんで」

詠矢「そろそろ帰らせてもらうわ。んじゃ…あっと、白井サン」

白井「なんですの?」

詠矢「俺にも一つだけ聞きたいことがあるんだけどさ、いいかな?」

白井「答えられることなら答えますわ」

詠矢「白井サンの能力。射程はどれくらいなんだい?」

白井「…お答えするのは少し躊躇しますわね」

詠矢「俺のことを信用出来ないのも無理は無いと思うが…」

詠矢「どうしても確認したいことがあってね。頼むよ」

白井「ま、よろしいですわ。わたくしの空間移動の射程は最大81.5m…」

詠矢「当然、直線距離だよな…。なるほど…81.5mか…」

白井「なんですの?」

詠矢「いや、まだアレだな…。話すにはまだ立証が足りないかな…」

白井「…」

詠矢「んじゃ、皆さんまたなー」

御坂「またって…もう会いたくないんだけど…」

詠矢「まあ、そう言いなさんな。縁があればまた会うさ」

詠矢「そんじゃまた」

佐天「(ガチャ)やっほー、こんにちわー。遊びに来たよー!」

詠矢「…」

御坂「…」

白井「…」

初春「…」

佐天「…」

佐天「(え…何この空気…)」

初春「…あ…佐天さん…こんにちわ…」

佐天「うん…こんちわ…初春」

詠矢「…んじゃ、入れ違いで失礼するわ」

佐天「えっと…あなた…は…?」

詠矢「容疑者だよ…(ニヤリ)」

佐天「…へ?」

詠矢「…」

佐天「…?(行っちゃった)」

佐天「初春、今の人は?」

初春「ちょっと、事情を聞いていた人…ですね。なんか特殊な能力者みたいで…」

佐天「へえ…能力者…なんだ」

初春「レベルは0みたいなんですけど」

佐天「…ふーん…」

白井「……」

白井「本当レベル0なのかどうかは、本格的な検査を待つ必要がありますけど…」

御坂「どうしたの黒子?さっきからなんか考えてるけど・・・」

白井「あの方がわたくしに聞いたこと、少し気がかりですわね」

御坂「黒子の能力の射程の話?」

白井「ええ、なぜあの情報が必要だったのか…。何も裏が無ければよろしいのですが」

御坂「さあ…何考えてるわかんないヤツだし。確かに気にはなるわね」

白井「…本当に、何も無ければいいのですが…」

(学生寮 自室)
詠矢「ふう、荷解きはこんなもんかな」

詠矢「やっぱ荷物は少なめにして正解だな」

詠矢「しかし学生寮って言うから、もっとみすぼらしい部屋を覚悟してたんだが」

詠矢「なかなかどうして、立派なモンじゃねえの」

詠矢「ベットもでかいしな…よっと(ゴロン)」

詠矢「(しかし、初日からいろいろあったなあ…)」

詠矢「(流石にちょっと疲れたかな…)」

詠矢「(考えることも増えたしな)」

詠矢「……」

詠矢「(白井サンの転移の射程は81.5m…)」

詠矢「(俺が飛ばされた橋の上は、それよりはるかに離れた場所だった)」

詠矢「(このことが何を意味するのか…)」

詠矢「(俺が、絶対反論の定義を)」

詠矢「(能力の『変質』だとあえて言った理由)」

詠矢「(ある一点の可能性を考えて、だったが・・・)」

詠矢「(まだ立証する根拠が足りないな)」

詠矢「(だが、もしかすると、もしかするかも知れんねえ…)」

詠矢「(まあ、いいや。また今度考えよう)」

詠矢「(ねむ…)」

詠矢「……」

以上となります。
続きはかなり先になると思います。
それではまた。

>>8
前作を書いた当人です。

——詠矢空希のその後——

落下後、運良く木がクッションとなり生存した彼が帰宅先の学生寮でインデックスと出会い事件に巻き込まれていく(通称:外伝)ストーリーと
御坂との邂逅直後、世界がループしていることに気付き定められた運命から離脱し一方通行や妹達と関わっていく(通称:二期)ストーリーがある。
前者は2011/09/24にSS速報で、後者は2011/10/15にVIPで放送が行われた。

どちらも本家の>>1が執筆しているものではないが根強いファンは多く、
設定や展開を練り直した再構成や続編である3期、完全版である映画版などを希望する声も聞かれる。

外伝と二期では彼の能力や性格に若干の相違はみられるものの、基本的には大元となった詠矢空希と大差はない。

持ち前の実力は遺憾なく発揮され、外伝では謎の力に目覚めステイルと神裂を圧倒し、二期では論証により一方通行の能力を打ち破るなどの活躍をみせる。
今後の展開に多くの期待が寄せられているのは言うまでもないだろう。


(外伝)
詠矢空希「論証開始…これよりお前の世界を否定する」

(二期)
詠矢「……?(この記憶……どこかで……)」
詠矢「……?(この記憶……どこかで……)」 - SSまとめ速報
(http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1318671210/)

>>52
そのテンプレ古いぞ
今はこっち↓


——詠矢空希のその後——

落下後、運良く木がクッションとなり生存した彼が帰宅先の学生寮でインデックスと出会い事件に巻き込まれていく(通称:外伝)ストーリーと
御坂との邂逅直後、世界がループしていることに気付き定められた運命から離脱し一方通行や妹達と関わっていく(通称:二期)ストーリーがある。
前者は2011/09/24にSS速報で、後者は2011/10/15にVIPで放送が行われた。
どちらも本家の>>1が執筆しているものではないが根強いファンは多く、
設定や展開を練り直した再構成や続編である3期、完全版である映画版などを希望する声も聞かれる。
外伝と二期では彼の能力や性格に若干の相違はみられるものの、基本的には大元となった詠矢空希と大差はない。

持ち前の実力は遺憾なく発揮され、外伝では謎の力に目覚めステイルと神裂を圧倒し、二期では論証により一方通行の能力を打ち破るなどの活躍をみせる。
今後の展開に多くの期待が寄せられているのは言うまでもないだろう。

さらに2011/12/30にVIPで放送されたプロローグ版では彼(彼女?)がまどか☆マギカの世界にて魔法少女であったことが判明。
能力はそのままだが性別は女性となっており、さらに名前は詠矢希空(ヨメヤ ミソラ)、外見は藍色のショートカットで眼鏡をかけた赤目の少女となっていた。
学年は中学二年生であったがQBのデータベース上に記録があったことから彼(彼女?)も正式な契約を経て魔法少女になったものと思われる。
ふとした誤解から暁美ほむら、巴マミと敵対するもお菓子の魔女シャルロッテの孵化により戦闘は一時中断、
巴マミと共闘し彼女を窮地を救ったもののシャルロッテに頭部を食いちぎられ死亡した。
しかしながら謎の世界にて謎の人物により導かれ蘇生。行き着いた先はとあるシリーズの世界であり、同時に性別転換を果たし本編へと繋がっていく。

(外伝)
詠矢空希「論証開始…これよりお前の世界を否定する」

(二期)
詠矢「……?(この記憶……どこかで……)」
詠矢「……?(この記憶……どこかで……)」 - SSまとめ速報
(http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1318671210/)

(プロローグ版)
ほむら「(誰よアイツ・・・前の世界でいたかしら・・・)

ついでに昨日有志の安価スレで詠矢のライバル作られたから貼っておくわ


安価で詠矢空希のライバル作ってSS作者釣ろうぜ

名前 龍崎 透
性別 男
特徴 お母さんが一人にだけお茶を出さない
    空希と同じ能力
    スタイリッシュな言動
空希をライバル視する(される)理由 
きのこの里、たけのこの山と言ったことをバカにされた
性格 とにかくかっこつけ
趣味・特技 ナージャの物まね
決め台詞 huhuhu
一人称 we
空希への呼び名 貴様
空希からの呼び名 そこのカス
空希との戦績 精神(妄想)の中でしか戦ったことが無い
空希に実のところどう思われているか クレイジー
髪型 リーゼント
意外な一面 資格マニア
持っている資格 司法書士 楽器リペア
家族 犬一匹
犬種 ダルメシアン
犬の名前 詠矢犬希
犬希の年齢 5歳
空希との出会い 街角でぶつかった
最終的に透は空希をどうしたい 飼い犬と交尾させたい

こんばんわ
遅くなりましたが続きを投下します。

詠矢「……」

詠矢「ん…」

詠矢「あれ…?寝ちまったのか?」

詠矢「うわ、もうこんな時間じゃねえか…」

詠矢「今日中に携帯を変え行くつもりだったのに」

詠矢「まあ、いいか。明日にすれば…」

詠矢「しかし…腹減ったな…」

詠矢「時間も時間だし当然か」

詠矢「今からなんか作るのも面倒だな…」

詠矢「コンビニでも行くか…」

店員「ありがとうございましたー」
詠矢「やっぱコンビニ来ると高く付くなあ」
詠矢「安いスーパー探して、ちゃんと自炊しねえとな」
詠矢「あー腹減った…先に唐翌揚げ食っちまうか(ムグ)」
詠矢「(モグモグ)…」
詠矢「(モグ)…あれ?」
詠矢「寮はどっちだっけか?」

詠矢「えーっと…」

詠矢「うわ…完全に迷っちまったな…」

詠矢「携帯無いといろいろ面倒だなー」

??「ハァ…ハァ…くそっ!!」

詠矢「…?なんか人の声が…?誰かいるのか?」

??「うわっ!…(ドサッ)」

詠矢「?(路地から人か…)。おい、アンタ大丈夫か!?」

??「来るな!!巻き込まれるぞ!!」

詠矢「巻き込むって何の話だよ…ってなんだ、あちこち怪我してるし」

詠矢「これは…火傷か?…まあとりあえず病院行こう。肩貸すぜ…よいしょっと」

??「マズイ追いつかれたか!?。とにかく逃げないと!」

詠矢「へ?なんかヤバイの?…あれ…なんか…熱い?」

??「伏せろ!!」

詠矢「…!!!」

路地の奥から、空間を嘗め尽くすように赤い波が近づいてくる。それは猛烈な熱を伴った炎だ。

詠矢「…!お、おい。なんだありゃ!」

??「くそっ!!(キュイーン!!)」

詠矢「なっ!炎が…消えた!?」

??「……」

詠矢「…こりゃあんたの言うとおり、逃げるのが正解かね」

詠矢「とりあえず…そうだな、あっちのビルの影にでも隠れよう」

詠矢「上手くいけばやり過ごせるかも知れねえ」

??「いや、あいつらの狙いは俺なんだ。通りすがりの人を巻き込むわけにはいかない」

詠矢「…面白いじゃねえの。そんな台詞、リアルで聞けるとは思わなかったぜ」

詠矢「というわけで、ちょいと関わらせてもらうぜ?」

??「え?って…あんた、何考えてんだって…おい!!」

詠矢「はいそうと決まったらとっとと走る!!」

詠矢「…ふう…少し落ち着いたか…」

詠矢「ここは路地からも死角になってる。そうそうは見つからないだろう」

??「…あんた…どうゆうつもりだ…」

詠矢「面白そうだから関わらせてくれって、さっき言わなかったか?」

??「面白くなんかねえよ!これは冗談で踏み込んでいい世界じゃない」

??「相手はこっちの命なんかなんとも思ってないんだ」

詠矢「生きるか死ぬかってんなら、アンタも同じだろ?それを解った上で、俺だけを逃がそうとした」

??「……」

詠矢「そんな人を、見捨てて逃げたくはねえな」

??「…あんた…」

詠矢「そういうこった。ま、数が多い方が生存確率も上がるぜ」

詠矢「とりあえず、情報を整理しようか」

詠矢「まずは自己紹介からだな。俺は詠矢、詠矢空希ってもんだ…よろしくな」

??「…俺は上条…当麻…だ。よろしく」

詠矢「上条サンねえ…了解」

詠矢「で、順番に行こう。まずはさっきの炎だが…」

詠矢「火炎放射器って訳でも…なさそうだな…」

上条「ああ、そうだ。あれはそんなもんじゃない」

詠矢「じゃあ、やっぱ発火系の能力者かな?」

上条「いや、それも違うんだ。あれは『魔術』だ」

詠矢「…『魔術』!?…って要するに『魔法』のことなのか?」

詠矢「そんなもん実在するのかよ」

上条「ああ、実在する。科学とはまったく概念の違う力だ」

詠矢「はー…またいきなりな話だな。流石の俺も思考が止まるわ…」

詠矢「まあいい。今そこに突っ込むのは時間の無駄だ。丸呑みにするとしよう」

上条「俺も魔術に関してはあんまり詳しい訳じゃ無いんだ。そうしてくれると助かる」

詠矢「お互い、話が早くていいな。それともう一つ、気になることがな…」

上条「言いたいことは大体わかる。やっぱ説明しといたほうがいいか…」

詠矢「じゃあ、あの消えた炎、やっぱりあんたの『力』なのか?」

上条「俺はレベル0の無能力者だ。ただ…」

上条「この右手には、あらゆる異能を打ち消す力が宿ってるんだ」

詠矢「打ち消すって…能力者の能力もか?」

上条「そうだ。『あらゆる異能』ってのは、魔術も能力も含んでる」

上条「この右手で触れさえすれば、全て打ち消すことが出来ちまうんだ」

詠矢「はー、そりゃまた…。なんとも問答無用な能力だな」

詠矢「ま、おかげで命拾いしたわけなんだが…」

詠矢「(右手がどうやって異能の力を見分けてるのか)」

詠矢「(触れる、とは言っても、厳密な効果範囲は何処から何処までなのか)」

詠矢「(なんとも『論証』しがいのありそうな能力だねえ…)」

上条「じゃあ、俺も聞いていいか、えっと…」

詠矢「俺のことは詠矢でいい」

上条「そっか。じゃあ詠矢、お前こそ何者なんだ?」

上条「この状況で、まるで緊張感もねえ。それどころか楽しんでるように見える」

上条「まだわかってねえんじゃないのか?相手は本気なんだぞ…」

詠矢「こんなことは初体験でね。まだ臨場感が足りないのは事実。だが、状況は理解してるつもりだ」

詠矢「それとな、俺にとって知識と経験はそのまま力になる」

詠矢「誰だって、成長を実感してるときは楽しいもんだろ?」

上条「…どういうことだ…全然わかんねえよ」

詠矢「そらそうか。俺の能力説明してねえもんな」

詠矢「俺も能力者だ。が、上条サンと同じレベル0。能力の名は絶対反論(マジレス)」

詠矢「能力に対して論証を…」

詠矢の言葉をさえぎるように、空中に次々と火の玉が浮かぶ。その数は、あっと言う間に目で追える限界を超えた。

上条「くそっ!もう見つかったか!」

詠矢「なんだ、これ…これが敵の攻撃か?」

上条「そうだ、コイツがヤバイんだ…逃げるぞ!!」

詠矢「いかにも襲ってきそうだしねえ…おうさ!」

火の玉は躊躇無く彼らに襲い掛かり、次々と炸裂する。

詠矢「うおっ!!爆発とかシャレになってねえぞ!」

上条「だからヤベエつったろ!!」

詠矢「(今のところ逃げ回ってれば何とかなるが、この手数、いずれ追い詰められるな)」

詠矢「なあ上条サン、敵の数は何人かわかるか?」

上条「多分、四〜五人、そのうち一人がこの魔術を使ってる魔術師だ」

詠矢「よし、大した数じゃねえな。ならこっちから攻めに出よう」

上条「そりゃ俺だってそうしたいけど…。逃げるので精一杯だろ!!」

詠矢「確かにまあ…うおっ!!(ドドドドドッ)」

上条「詠矢!俺の後ろに!!」

詠矢「たのむ!!」

上条「こなくそっ!!(キュイーン)大丈夫か!」

詠矢「…いや、助かったぜ。ありがとさん」

詠矢「しかし…このままじゃジリ貧だ。どうしたもんか…」

上条「なんか手があるのか?詠矢」

詠矢「…上条サン。敵の人数が解ってるってことは、一旦相手と接触したんだよな?」

上条「ああ、攻撃が始まってからしばらくして、何人かに囲まれたんだ」

上条「その中の一人が、炎の魔術を撃ってきて…」

詠矢「なるほど…つまり。奴らには接触する必要があったってことか…」

詠矢「さっきからのこの火球の攻撃、散発的過ぎると思ってたんだ」

上条「この攻撃は奴らの決め手にはならないってことか」

上条「実際、逃げ回ってればなんとかなるわけだからな」

詠矢「そう、その通り。これは敵を追い詰める手段に過ぎない」

詠矢「逆に言えば、こっちが消耗する前に、やっぱり打って出る必要があるな」

詠矢「…」

上条「なんだよ、急に黙って」

詠矢「…上条サン、酷いこと言っていいか?」

上条「なんだ…?」

詠矢「囮になってくれ」

上条「…はい?」

(空き地)
路地を抜けた奥にある少し開けた場所。鉄骨が組み上がっただけの建設中のビルと、その資材が並べられている。
その中央に一人立つ青年、上条当麻である。

上条「…さあて」

上条「さあ、魔術師、もう弾切れか!?。俺はここにいるぞ!!」

??「……」

影からにじみ出るように現れる5体の人影。それは、ちょうど星形になるように上条の周囲を取り囲む。

魔術師「ついに観念したか。上条当麻」

上条「あきらめてなんかいねえよ。ちょっと追いかけっこに飽きただけだ!」

魔術師「逃げるのをやめたのなら同じこと…。生きて帰れると思うなよ」

上条「やっぱりそうか…」

魔術師「…ん?」

上条「俺を殺したいのなら、さっきの魔術でやればいい」

上条「わざわざ姿を見せたってのは、そうする理由があるからだ」

魔術師「ハッ、何を言うかと思えばその程度の事か。それがわかったとろで何になる」

魔術師「どの道お前の命が尽きることには変わりはないわ!」

上条「どうかな…お前に俺が倒せるか?」

上条「その炎じゃじゃあステイルの足元にも及ばないぜ!」

魔術師「あのイギリスの魔術師か…。結構、私が劣るというのなら…逃げおおせてみることだな!」

魔術師「……」

魔術師が詠唱を始めると、周囲の兵らしき者が、懐から得物を取り出す。

兵A「…(シャキン)」

兵B「…(シャキン)」

兵C「…(シャキン)」

兵D「…(シャキン)」

上条「(なんだ、武器が変形して伸びた?3mぐらいないか?どうするつもりだ…)」

魔術師「[ピーーー]っ!!」

上条「うわっ!!」

魔術師の両手から放たれる一条の炎。それは扇状に広がり、あっという間に上条を包み込む。

上条「…!!(キュイーン)…」

上条「(くそっ!。この炎!!。確かに威力はステイル程じゃないが…」

上条「(効果範囲が広すぎる…。右手じゃ消しきれねえ!!)」

兵A「…(ザッ)」

兵B「…(ザッ)」

兵C「…(ザッ)」

兵D「…(ザッ)」

上条「(距離を…詰めてきやがる…。ダメだ、身動き取れねえ!!)」

詠矢「(ザッザッザッザッ)うりゃあ!!中段蹴りぃ!!」

兵B「…なっ!!」

何処からとも無く走ってきた詠矢の蹴りが、振り返ろうとした兵の脇腹に見事に命中した。

兵B「…ぐあっ!!…ゲフッ…(ガクッ)」

詠矢「よし、一人無力化…」

魔術師「なんだと!!伏兵か!」

上条「(…魔術が弱まった…集中が途切れたか?今なら抜けられる!)」

上条「…っ!!(ゴロゴロ)」

魔術師「しまっ…た!!」

詠矢「上条サン、大丈夫か!」

上条「ああ、おかげさんでなんとか…」

上条「あと、解ったぜ、奴らの狙いが…」

詠矢「狙い…ってーと?」

上条「魔術の攻撃は、俺を押さえ込むための手段でしかない」

上条「火球や炎で動きを封じて、あの長い武器で範囲外から攻撃するつもりだ」

詠矢「なるほど…魔術では上条サンを倒せないと初めから解ってたんだな…」

詠矢「あの武器…ハルバードってヤツかな…。しかしセコイ作戦だなあ」

魔術師「……」

詠矢「そこまで解れば話は早い。要するにだ」

詠矢「周りのザコを倒せば、その作戦は成立しなくなる!」

詠矢「上条サン、あの偉そうなヤツは後回しだ。あと一人引き受けるから、残りは頼むぜ!(ザッ)」

上条「勝手にノルマ決めるなよ!まったく…(ザッ)」

上条「さあて…悪いが、しばらく眠っててもらうぜ」

兵D「…(ガシャン)」

上条「…(武器を放した…まさか!)」

兵D「…!(ヒュッ)」

上条「とっ…とととっ!!(ザザッ)」

兵D「なにっ!!避けた、だと!?」

上条「懐から短刀か…あっぶねえ。もうちょっと気づくのが遅かったらヤバかったな」

兵D「貴様、いったい…!」

上条「黙ってろ!(ドカッ)」

兵D「…!!(ゴロゴロゴロ)…(ガクッ)」

詠矢「(うわ、吹っ飛んだよ。すげえパンチ力だな…)」

詠矢「さあて、こっちも負けてられねえな」

魔術師「やらせんぞ…」

魔術師「やらそんぞーーーーー!!!(ゴオッ)」

上条「うわっ!!!」

詠矢「また炎か!。上条サン!!」

上条「…!!!(キュイーン)…」

詠矢「(ダメだ、炎の効果範囲が広すぎて消しきれてねえ)」

詠矢「(あれが有る限り、まだ相手の有利は覆らない…)」

詠矢「(イチかバチか、やってみるか…)」

詠矢「おい、そこの魔法使い!!」

魔術師「…私は魔術師だ!」

詠矢「この際どっちでもいい!」

詠矢「魔術だか何だか知らないが、炎を起こしてることには変わりないな」

詠矢「それだけ膨大な火を起こすには、それ相応の可燃物が必要だ」

詠矢「しかもこれだけの範囲に広がるということは」

詠矢「可燃物は気体か液体のはず」

詠矢「見たところ、あんたはボンベもタンクも持ってるようには見えない」

詠矢「そんな大量の可燃物、どっから調達してるだ?」

魔術師「…ハハッ…」

魔術師「ハーッハハハハ!!愚か者め!!」

詠矢「…なんだ?」

魔術師「これは魔術!可燃物など必要ないわ!!」

魔術師「独自の原理によって生み出される力だ。科学側の前提など関係あるものか!!」

詠矢「な…なんだと!そんなインチキがあるか!」

詠矢「可燃物が必要ねえなんて…じゃあその炎は『燃焼』じゃ無いってのか!」

魔術師「同じ事を何度も言わせるな!。これは純粋な『魔術』の炎だ!」

詠矢「(くそっ!。やっぱりダメか。魔術を論証するには情報が少なすぎる)」

詠矢「(最初の計画通りザコを倒して…)」

魔術師「おっと…お前にも動かれては困るのでな…(スッ)」

詠矢「…!!炎と火球を同時に!」

詠矢「うわっ!!(ドカドカドカッ)」

上条「詠矢ー!!」

詠矢「(ぐっ…やべえ…逃げ回るのにも限界が…)」

詠矢「(諦めるな、諦めるなよ…何か手があるはずだ…)」

魔術師「さあて、仕上げといこうか…」

魔術師「上条当麻…。貴様の首と右腕、貰い受ける」

兵A「…(ジャキン)」

兵C「…(ジャキン)」

詠矢「上条サン!!」

魔術師「…死して我がローマ正教の礎となれ!!」

詠矢「…」

詠矢「…あ?」

詠矢「…お前今なんて言った?」

魔術師「なんだと…?」

詠矢「ローマ正教っていやあ、十字教の一派だよな?」

詠矢「あんたら宗教関係者なのか?」

詠矢「っていうか、風体からして僧侶だよな?」

魔術師「…?」

詠矢「僧侶がなんで炎なんか撃ってるんだよ」

詠矢「僧侶が使えるのは回復と補助、あと風系の攻撃呪文だけだろうが」

詠矢「世間の常識ひっくり返してんじゃねえよ…」

魔術師「お前は何を言ってるんだ」

詠矢「それに…神ってのは慈愛と許しの象徴だよな?特に一神教はそうだ」

詠矢「その神の使徒である聖職者が、人を傷つけることしか出来ない攻撃魔法を」

詠矢「平気で使ってるんじゃねえよ」

魔術師「な…なんだと…。これは、その教えを守るために」

魔術師「神が我々に与えて下さった力だ!!」

詠矢「じゃあ何か?おまえんとこの教義には」

詠矢「『目的のためには手段は選ぶな』とか」

詠矢「『邪魔なヤツは抹殺してかまわない』とか」

詠矢「書いてあるってのか?」

詠矢「だとしたらその宗教ってのは」

詠矢「どんでもねえ邪教だなあ!!」

魔術師「な、何を言う!ローマ正教の教義は…!!?」

魔術師「(…なんだ、魔術が…安定しない!!。炎が…消え…る…!)

詠矢「…!?(ちょっとまて、今のはキレてぶちまけただけだぞ)」

詠矢「(これでも効果あるのかよ!?)」

上条「炎が…?弱く…」

詠矢「上条サン!なんだかよくわからんが今だ!」

上条「わかった!!…(ザッ)」

魔術師「あ…慌てるな。詠唱の再構築を…」

上条「遅え!!」

魔術師「…く…そっ…炎よ!(ゴオ)」

上条「この程度…かき消せる!(キュイーン)…弾けろっ!(ドカッ)」

魔術師「ぐふぁぁぁっ!!!(ゴロゴロゴロ)……(ガクッ)」

上条「はあっ…はあっ…」

詠矢「…やったな…上条サン」

詠矢「さあて…残りはあんたらか?」

兵A「…(ガシャン)…(ササッ)」

兵C「…(ガシャン)…(ササッ)」

上条「逃げたか…」

詠矢「正直、助かるな…これ以上はキツイわ…」

上条「休んでるヒマねえぞ。結構な騒ぎになっちまった」

上条「すぐにアンチスキルが来る」

詠矢「なるほど…こっちも退散したほうがよさそうだな」

上条「詠矢、お前も寮生か?」

詠矢「ああ。そうだそうだ、ちょうど迷ってたところなんだわ」

上条「よし、じゃあとりあえず寮まで戻ろう。話はそれからだ」

詠矢「うい、賛成。案内してくんなー」

以上となります。

すいません、禁止ワードに気づ来ませんでした。
当該箇所は「燃えろっ!!」にしておいて下さい。

それではまた。

以前も申し上げましたが、前作を書いた本人であることには間違いありません。
残念ながら立証する方法はありませんが。

こんにちわ。
かなり間が開いてしまいましたが、続きを投下します。

それではよろしくお願いします。

(とある高校)
詠矢「さーて、やっと昼休みか…」

詠矢「いろいろあったけど、どうにか転校初日にまでこぎつけたなあ…」

詠矢「正直生きてるのが不思議なぐらいイベント連発だったけどな」

詠矢「ま、今日のところは最初の挨拶もつつがなく済ませたし、順調な方かな」

詠矢「とりあえずメシだな。やっぱり学食行くのが定番か」

詠矢「えーっと…どこだっけか」

詠矢「なんか俺、昨日からやたらと迷ってないか?」

詠矢「…あれ?あの見覚えのある髪形は…?」

上条「…お、っと…詠矢じゃねえか!」

詠矢「あ、上条サン。ちわす。でもなんでここに?」

上条「そりゃ、同じ寮に住んでるんだから、高校も同じだろう」

詠矢「…そういえばそうか…当たり前だよな」

詠矢「なんせこっちに来たばっかりでねえ…いろいろと勝手がわからなくて」

上条「来たばっかり?…って、お前もしかして転校生なのか?」

詠矢「そうだぜ?ああ、それも説明してなかったか」

詠矢「俺は学園の外から来た。ちょうど上条サンと会った日にね」

詠矢「んで、今日は登校初日ってわけさ」

上条「そうなんか…どうりで見たこと無い顔だと思ってたんだよ」

詠矢「まあ、そういうわけで学校の方でもよろしくな。上条サン」

詠矢「で…、そちらのワイルドなお兄さんは?」

上条「へ?…ああ、そうか初対面だよな」

上条「コイツは土御門、俺のクラスのヤツでさ…」

土御門「始めましてだにゃー」

土御門「俺は土御門元春。カミやんのマブダチだぜい」

詠矢「おう、俺は詠矢…詠矢空希ってもんだ。よろしくなー」

土御門「カミやんから聞いたぜい。なんかすごい能力者らしいにゃ」

詠矢「すごいのかどうか俺にもまだわからないけどね…」

土御門「俺は絶対反論(マジレス)だっけか?。聞いたことのない能力だねえ」

土御門「しかも、学園に来たばかりってことは」

土御門「能力開発を受けて無い『原石』ときたもんだ」

詠矢「…」

土御門「自覚があるかどうかわからんが、あんたはすさまじいレアキャラなんだぜい?」

詠矢「情報としては知ってるが…自覚はねえかな…」

土御門「というわけで、そんなレアキャラの詠矢さん、改めてよろしくにゃ」

土御門「カミやんの新しい友達だっていうから、ぜひお近づきにと思ってねい」

詠矢「…友達?…俺がか?」

上条「ああ、そうだよ。まさか違うとか言うつもりじゃねえだろうな?」

詠矢「んー、まあ、それは願っても無いが…」

詠矢「っていうより、大歓迎だな。こちらこそよろしくな、土御門サン(スッ)」

土御門「ああ、(ガシッ)。えーっと、上条がカミやんだから、詠矢はヨメやんでいいかにゃー?」

詠矢「ヨメやん?…ははっ、いいなそれ」

詠矢「なかなか面白いじゃねえの。好きに呼んでくんな」

土御門「じゃあヨメやんだぜい」

詠矢「……」

土御門「どしたね、ヨメやん?」

詠矢「土御門サン、なんか部活やってる?」

土御門「いや、なんもやってないぜい?」

詠矢「じゃあ、学校外で、子供のころからなんかやってるとか?」

土御門「それも無いにゃー…何でそんなこと聞くんだ?」

詠矢「俺もガキの頃からそこそこたしなんでるでわかるんだが…」

詠矢「土御門サン、かなりいい体してるよなあ…」

詠矢「しかも、単純に鍛えただけじゃそんな体にはならない」

土御門「…」

詠矢「格闘技でもやってるんじゃないかなって思ったんだけどね…」

詠矢「変なこと聞いて悪かったな」

土御門「…いやいや、別にかまわんぜい」

上条「お前ら…その辺でいいか?」

上条「早くしないと昼休み終わっちまうぞ」

詠矢「ああ、そうだったな」

詠矢「んじゃ食堂行こうぜ、上条サン。案内よろしく」

上条「よっしゃ、任せとけ!。おい、行くぞ土御門」

土御門「…わかったぜい」

とある高校 食堂)
詠矢「ふう、食った食った…」

上条「なんだよ詠矢、言うほど食ってなかったじゃないか」

詠矢「いやいや、まだ色々と物入りでねえ…」

詠矢「いきなり携帯も変える羽目になっちまったし」

詠矢「いろいろと節約しないとな」

上条「そりゃまあ、引っ越してきたばっかりで大変だろうけどさ」

上条「メシをガマンするのは辛くねえか?」

詠矢「これでも、金額と満足度を最大効率で考えて食ったつもりだぜ」

上条「…いちいち言い回しが解りにくいぞ、お前」

詠矢「それはそうとして、上条サン」

上条「ん、なんだ?」

詠矢「放課後にでもさあ、学校とか町とか案内してくんねえかな?」

詠矢「昨日から迷ってばっかりでさ、いろいろ教えてくれると助かるんだけどなあ…」

上条「それが今日は無理なんだよ。放課後バイトでさ…」

詠矢「なに、バイトですと?」

詠矢「もし空きがあれば、ぜひ俺にも紹介して頂きたいんですが!!」

上条「な、なんだよいきなり。普通のコンビニだぞ?」

詠矢「先ほど申しましたとおり、こっちの財政状態は非常に逼迫しているのです」

詠矢「早いことバイト見つけないとヤバイんだよ」

詠矢「コンビニぐらいがちょうどいいと思ってたとこだし、上条サンと同じ職場だと安心だ」

詠矢「頼むぜ上条サン!」

土御門「ほれほれ、『友達』の頼みだぜカミやん。なんとかしてやんなよ」

上条「あ…ああ、確か今募集してたと思うから…」

上条「店長に話してみるよ…」

詠矢「恩に着るぜ上条サン!じゃあ早速放課後に行くか」

上条「わかったわかった…じゃあ校門で待ち合わせな?」

詠矢「よし、決まりだ。じゃあ、また後でな」

詠矢「土御門サンもまたなー」

土御門「ああ、またにゃー」

詠矢「…(さてと)」

詠矢「(上条サンといると色々繋がってくるねえ)」

詠矢「(しかし…土御門って人、ありゃだだモンじゃねえな…)」

詠矢「(能力への知識、あの体つきと独特の雰囲気)」

詠矢「(修羅場くぐってるタイプって感じだね)」

詠矢「(…あの対応でよかったのかね)」

詠矢「(まあ、隙の無い奴だと思わせといたほうがいいだろうし)」

詠矢「(あんなもんかね…)」

詠矢「おっと予鈴だ…教室戻んねえと…」

(とあるコンビニ)
上条「ありがとうございましたー」

上条「ふう、一段楽したかな…」

詠矢「こっちも品出し終わったぜ」」

上条「おう、お疲れさん」

詠矢「いやあ、感謝するぜ上条サン。いいバイト紹介してくれて」

上条「そうか?普通のコンビニのだろ?」

詠矢「しらばっくれてんじゃねえよ…。ほら、店長がまた集めてくれてるぜ」

上条「ここの店長は廃棄品に甘いからな。少々持って帰っても大丈夫さ」

上条「時給は普通なんだけど、これが助かるんだよなあ」

詠矢「食費が抑えられるってのはありがたいやね」

上条「全部持ってくなよ。廃棄もそれなりに出さないと怒られるらしいから…」

上条「んじゃ、俺は倉庫の片付け行ってくる。レジ頼むぜ」

詠矢「うい。頑張ってなー」

詠矢「…」

詠矢「こっちに来しばらく経ったけど…」

詠矢「なんだかんだで結構知り合いも結構出来たし」

詠矢「バイトも学校も順調だし言うこと無いねえ」

詠矢「青春を謳歌してるってヤツかな!!」

詠矢「…」

詠矢「なんだろうこの一抹の空しさは…」

詠矢「まあいいや、雑誌の整頓でもしとくか…」

??「…」

詠矢「(お、お客さんだ)いらっしゃいませー」

御坂「え!」

詠矢「お、御坂サンじゃねえの。お久しぶりー」

御坂「なんでアンタがここにいるのよ!!」

詠矢「そりゃバイトしてるからに決まってるだろ」

詠矢「ほれ、バッチリ制服も着てるぜ」

御坂「…なんでたまたま寄ったコンビニで…」

御坂「よりにもよってアンタなんかに出会わないといけないのよ!」

御坂「なんの冗談よこれは!」

詠矢「ほら、また会うって言ってただろ?」

詠矢「なんかの縁なんだよ。こういうのもな…」

御坂「そんな縁、チェーンソーかなんかでブチ切ってやりたいわね…」

詠矢「まあまあ、そういうなよ。せっかくだからなんか買っていきな」

御坂「いいわよ、もう。どうせ立ち読みに来ただけだし、ここじゃなくたって…」

上条「詠矢、片付け終わったぜ」

御坂「え…!!」

上条「げ…ビリビリ…」

御坂「あんたねえ、いい加減にその呼び方やめなさいよ!!」

上条「ええ、はいはい、そうでしたね。御坂様」

上条「で、常盤台のお嬢様がこんな場末のコンビニに何の御用ですか?」

御坂「そりゃお客に決まってるでしょ!もっと丁重に対応しなさいよ!」

詠矢「さっき立ち読みに来ただけだって…」

御坂「…(ジロッ)」

詠矢「…なんでもございませんお客様」

詠矢「しかし、お二人が顔見知りだったとは…」

詠矢「上条サンの顔の広さには改めて驚愕だねえ」

上条「知り合いっつーかなんつうか…まあ、いろいろありまして…」

御坂「何よその嫌そうな顔は…」

上条「いえいえ、決してそのようなことは…」

上条「っていうか、詠矢こそ御坂と知り合いなのか?」

詠矢「ああ、まあね…。こっちも少々ありまして…」

御坂「…まあ…ちょっとね」

御坂「じゃなくて!話そらさないでよ!」

御坂「アタシと知り合いなのがそんなに嫌なわけ?」

上条「いえ、決してそのようなことは…」

御坂「じゃあなんでそんな引きつりまくった顔なのよ!(バチッ)」

上条「いや、…そうでなくてですね…ここで電撃を打たれるとですね…店の商品が…」

詠矢「…」

詠矢「仲いいな…あんたら…」

上条「へっ?」

御坂「へっ?」

詠矢「もしかして付き合っちゃってるとか?」

御坂「…!!」

御坂「な…、何言ってんのよ!バッカじゃないの!?なんでアタシがこんなヤツと付き合わないといけないのよ!!」

上条「違うぞ詠矢、それは激しく違う…。ていうかこの状況をみてなぜその結論に達するんだ…」

詠矢「…うわー…」

詠矢「ダメだよそれ、御坂サン」

御坂「…?」

詠矢「しゃべり始めのどもり、そしてその後の強すぎる否定。これはほぼ確定なのですよ御坂サン」

御坂「…アンタ何言ってんの?」

詠矢「そう、そしてこれ以上突っ込まないほうがいいのもまた道理」

詠矢「というわけでタワゴトだと思って聞き流してくんな」

御坂「…相変わらずわけわかんないヤツね…」

上条「詠矢が壮大な誤解をしてるようなのは気のせいでしょうか…」

詠矢「いや、もういいよ。この情報はいつか実を結ぶときが来るかもしれない」

詠矢「そのときまで俺の胸にしまっとくよ」

御坂「なんか、明らかにバカにされた気分ね…」

御坂「…フン…(スタスタ)」

上条「帰るのか?買い物はいいのかよ」

御坂「コンビになんて何処でもあるでしょ。わざわざこんな気分の悪いとこで買いたくないわ!」

御坂「…」

詠矢「帰っちまったか…」

上条「どうにか商品は無事だったな…」

上条「ふう…」

詠矢「どした、ため息なんぞついて」

上条「なんでこう、俺の周りのヤツはこんなのばっかりなんだ…」

上条「おかげで、上条さんの毎日はお祭りサバイバルな状態なんすよ!」

上条「俺だって普通に学生生活をエンジョイとかしたいわけでね…」

詠矢「エンジョイってーと?」

上条「そりゃやっぱり恋とか勉学とかを普通にたしなんででだな…」

詠矢「…」

上条「んで、彼女でもつくってさあ、こう…」

詠矢「……いやいや」

詠矢「彼女なら結構な勢いで作れそうなんだが…」

上条「それがさあ…どうにも出会いが無くてなあ…」

詠矢「…」

詠矢「……」

詠矢「上条サン、割と本気で殴っていいか?」

上条「…なんでせうかその物騒な申し出は」

(とある街角 夕刻)
詠矢「今日も良く働いたなあ…」

詠矢「さーて、晩飯は確保してるけど、ちょうどいい時間だし」

詠矢「スーパー寄って見切り品でも漁るかねえ」

詠矢「…♪」

詠矢「…お」

詠矢「(女の子が…絡まれてるのか?)」

詠矢「(この最先端の詰まった学園都市で、昭和の風景だねえ)」

詠矢「(しかしまあ、ちと路地の奥とはいえ、こんな往来で…アホじゃねえか?)」

詠矢「(ま、イベントが発生してるんなら積極的に攻めますか)」

不良A「君ぃ、なかなかかわいいねえ…」

不良B「綺麗な髪してるねえ…(サワ)」

??「…!!(髪触られたっ!!)」

不良C「俺たちとどっか遊びに行かない?」

??「いえ…あの…これから用事が…」

不良A「そんなこと言わないでさあ…」

??「あー、はははは…(マズイなあ…)」

??「…(見逃してくれそうに無いなあ…どうしよう)」

詠矢「はいそこの典型的なDQNさんたち!!」

不良A・B・C「あ?」

詠矢「なにしてんのかなあ?」

不良A「ナンダてめえわぁ!!」

佐天「あ…」

詠矢「…あれ?」

佐天「容疑者…さん?」

詠矢「あれま…あの時会った娘か…。こりゃ偶然」

不良A「シカトしてんじゃねえ!!」

詠矢「あ、ゴメンゴメン…」

詠矢「つーか俺の質問に答えるのが先だろ、なにやってかって聞いてんだよ」

不良B「なんかテメエに関係あるよかよ!」

詠矢「…あー、もういい。お前らには『質問』の意味から説明してやらないといけねえな」

詠矢「答える気が無いならこっちで判断させてもらう」

詠矢「見たところ、『強引なナンパ』だな」

詠矢「彼女のおびえた表情を見れば理解できる」

佐天「…」

詠矢「面倒なんでお前らの反論を聞く前に確証を取っておく」

詠矢「そこの人、今行われてる同行への誘いは、本人の意思を無視した脅迫や強要をを伴うものかな?」

佐天「…!は、はい!!(コクコク)」

詠矢「はい脅迫が成立です。犯罪だね」

不良C「…ナメてんじゃねえぞてめえ…」

詠矢「ナメてるよ、悪いけど。お前らは所詮その程度の存在だ」

不良C「痛い目見ないとわからねえらしいな…(チャキ)」

詠矢「ナイフ…ねえ…(ジロッ)。まったく…」

詠矢「お前らは単に暴力に禁忌が無いだけのゴロツキだ。それを強いと勘違いしている」

詠矢「そうゆうのは俺が一番嫌いなタイプだ」

詠矢「…手加減しねえから覚悟しとけ…」

不良C「余裕かましてんじゃねえ!!。そのナメたツラに風穴開けてやる!(ダッ)」

詠矢「武器に任せた突進…そんなもん」

不良C「なにっ!!」

詠矢はナイフをかわすと即座に腕を取り、相手の内側に体を滑り込ませる。

詠矢「一本…」

不良C「…!!」

詠矢「…背負いっと!!(ドサッツ)」

不良C「ぐはっ!」

詠矢「はい、追い討ち!(ドカッツ)」

起き上がる間を与えず、詠矢は踵で相手の鳩尾を思い切り踏み抜いた。

不良C「が、がはっ!がっ!!…!!」

詠矢「まあ、たいがいの人間はこれで悶絶してしばらく動けなくなる」

不良B「てっ、てめえ!!」

詠矢「なーにいまさら驚いてんだよ。勝算もなしにケンカ売るかよ…」

詠矢「被害者の人、今のうちに逃げな!!」

佐天「え?…えっと…(ソロ)…!(ダッ)」

不良B「あっ!!この…」

不良A「…」

不良A「おめえ、俺を完全に怒らせたな…」

不良B「おい、逃げちまったぞ!」

不良A「女のことはもうどうでもいい!!」

不良A「上玉だったんで少々惜しいがな…」

不良A「とりあえず、コイツをぶちのさねえと気が済まねえ」

不良A「後悔させてやるよ!!!!!」

男の怒気が膨れ上がると、突然何の前触れも無く近くにあったブロック塀が粉砕された。

詠矢「…!?」

詠矢「能力者…か…」

不良A「どうだ!謝ってももお遅いぜえ!!」

不良A「俺の能力はレベル3の念動豪腕(インビジムル・アーム)だ!」

詠矢「なるほど…ご大層な名前だが、様子するに念動力(サイコキネシス)の一種だな…」

詠矢「またご丁寧にレベルと名前まで公表とは…」

詠矢「おめでたいヤツだな。ま、バカな自己顕示欲のせいで色々助かるが」

不良A「ケッ、言ってろ!!」

不良A「俺の『腕』で、テメエの体グチャグチャに引き裂いてやるぜ!!」

突然、先ほど壊したブロックの一つが宙に持ち上がる。それは何かに投げられたように詠矢に向かって飛来する。

詠矢「(ガッ)っと!!あぶねえ…」

不良A「頭を掠っただけか…運のいい野郎だ…」

詠矢「(さて、どうしたもんか…)」

詠矢「(単純な能力の論証は意外と難しい…)」

詠矢「(ただ、ヤツが言った名前にヒントがある)」

詠矢「(要するに、両腕とは別の見えない『腕』を想定し、それを使うことによって物体を動かす力)」

詠矢「(そんなところだろうな…)」

詠矢「(では、『論証』に移りますか…)」

詠矢「おいお前!!」

不良A「なんだ!」

詠矢「そんなガレキいくら投げても当たらんぜ」

詠矢「それはお前さんご自慢の『腕』で投げてるんだよな?」

詠矢「人間が何かを投げる場合、必ず予備動作が必要だ」

詠矢「振りかぶる、腕を引く。そうやって初めて前に物を飛ばすことが出来る」

詠矢「そんな派手に『腕』動かしてたら…」

詠矢「お前が飛ばす瓦礫の軌道は丸見えだぜ!!」

不良A「な、なんだとこの野郎!!(ブン)」

詠矢「よっと…(ヒョイ)」

不良A「このっ!(ブン)このっ!!(ブン)、野郎ちょこまかと逃げやがって!!」

詠矢「だから当たらねえってんだろ…」

詠矢「それにお前…さっきは引き裂くとか言っときながら…」

詠矢「瓦礫投げてるだけじゃねえか」

詠矢「なぜその『腕』で俺を直接攻撃しない?」

不良A「…」

詠矢「お前の能力…思ったより射程が無いな…?」

不良A「…っ!!て…」

詠矢「図星か…」

詠矢「自分の能力に射程が無いのがわかってるなら」

詠矢「さっさと俺に近づいて首でも絞めれば」

詠矢「勝負は既に付いていたかもな」

詠矢「悪いが、お前みたいな考えの無いバカに」

詠矢「俺の絶対反論(マジレス)は絶対に負けない!」

不良A「こ…こんのぉおおおお!!」

不良A「そんなもん、お前だって同じだろうがぁ!」

不良A「近づてこないと、俺は永遠に倒せないぜえ!!(ブン)」

詠矢「(それは確かに言う通りだな)」

詠矢「(ブロックを軽々と投げる腕力で殴られたら、流石にひとたまりも無いだろう)」

詠矢「(だが奴の能力の詳細が分かった以上、切り口はいくらでもある)」

詠矢「(…そろそろ仕上げと行きますか)」

不良A「おるぁ!離れていても攻撃が届く分、おれの方が有利だなあ!!(ブン)…(ブン)」

詠矢「そいつはどうかな?さっきから一発も当たってねえみたいだが?(ヒョイ)」

詠矢「もう少し数を増やして、おれを追い詰めた方がよくねえか?」

詠矢「それとも、出せる腕の数にも限度があるのかな?」

不良A「はっ!なんでそんなことてめえに教えてやる必要がある!」

詠矢「教えてくれないのか…そいつは困ったな」

不良A「だぁが、お望みとあればあ!!」

不良A「ほらほら!増えるぜ!どんどん増えるぜ!(ブン)…(ブン)…(ブン)!!」

不良A「壁をブチ壊せば瓦礫はいくらでも作れる。弾切れ期待しても無駄だぜえ!!」

詠矢「ちょ…っと…増えすぎ…だろ…うおっ!!(ドカッ)」

よけきれなかった瓦礫の一つが、詠矢の肩口に命中した。

詠矢「ぐっ…」

不良A「はあい、一発命中…。動きが止まったところで、トドメと行きましょうかあ!!」

男が再度念を込めると、今までとは比べ物にならない数の瓦礫が宙に浮かぶ。

不良A「どおだ…これがお前をミンチにするんだぜ…」

不良A「俺の全力攻撃、食らいやがれ!!」

詠矢「…」

詠矢「…言ったな?(ニヤリ)」

不良A「なに?」

詠矢「お前今『全力』って言ったよな?」

詠矢「全力、ってのは最大限の力ってこと…つまり、上限が設定された言葉だ」

詠矢「つまり、今の状態がお前が出せる『腕』の上限ってことだ…」

不良A「…なに言ってやがる…だからどうした?時間稼ぎのつもりか!!」

詠矢「簡単なことだ。両腕に荷物を持ってる時は…(ザッ)」

詠矢「もう腕は使えないよな?」

不良A「なっ!!…(一瞬で、懐に!!)」

詠矢「今お前は両腕バンザイ状態だ・・・」

詠矢「守りに回す手は…どこにもない…」

不良A「て、てめっ!!(なんでだ!ヤツの動きを)」

詠矢「…ふうっ!!」

不良A「(止められない!!)」

詠矢「どっせい!ボディアッパー!!」

低い位置から捻りだすように放たれた詠矢の拳は、斜め下方向から相手の鳩尾に深々と突き刺さった。

不良A「ごっ…がっはぁあ!!!…ぁ」

詠矢「勝負アリ…だが、コイツはオマケだ…」

崩れ落ちてくる男の顔面に、詠矢渾身の上段正拳が炸裂する。

詠矢「よいしょお!!(ゴキャッツ)」

不良A「がっ…!!!(ガクッ)…(ドシャッ)」

不良B「ウソだろ…あいつが…負けた?」

詠矢「まあ、こんなもんだろ…。それより、逃げねえのか?」

不良B「へっ?…な…!?(瓦礫が…!?)」

詠矢「『持ち主』が気を失えば手に持ったものは落ちてくる。当たり前だわな」

不良B「ちょ、ちょとま…うわ…ギャァァァァアア!!(ドカドカドカドカッ)」

詠矢「巻き込まれたか…ま、微塵も同情する余地はねえな」

詠矢「さあって…とっとと退散しないとマズイんだっけか」

詠矢「忘れずに晩飯を回収してと…」

佐天「…あ…あの、待って下さい!!」

詠矢「あれ?さっきの娘じゃないか…逃げたんじゃなかったのか?」

佐天「そう思ったんですけど…、ほら、逃げちゃうと」

佐天「すぐにお礼言えないじゃないですか」

詠矢「…」

詠矢「そいつはまた見上げた心がけだが…」

詠矢「俺が負けたらどうするつもりだったんだい?礼も何も無いだろう」

佐天「そんときは…ほら…まあ…全力で逃げます!」

詠矢「うわ、それはそれで地味にひでえな…」

佐天「でも、大丈夫だと思ってました」

佐天「聞きましたよ?あの御坂さんや白井さんに…勝っちゃった…とか?」

詠矢「…まあ、そうなるのかねえ…負けなかっただけで勝ったつもりはねえけど」

佐天「そうなんですか?…あ、そうだ。お礼言ってなかった…」

佐天「助けて頂いてありがとうございます!!」

詠矢「あー、はいはい、どういたしまして」

佐天「あ…えと…」

詠矢「…」

佐天「…」

詠矢「……」

佐天「……」

詠矢「(あれ?言葉が出ねえな…こういう時どうするんだっけ?)」

詠矢「…えーっと…このパターンは…」

佐天「…?」

詠矢「じゃあ、さ…寮まで送ってこうか?ほら、一人だとマズイっしょ。いろいろ…」

佐天「…あ、はい。よろしくお願いします…」

以上となります。
次回はもっと早く上げられるようにします。

それではまた。

すいません、ミスが発覚しました。
>142の11行目、土御門の台詞の「俺は」は不要です。

申し訳ありませんでした

おはようございます。
何とか書きあがりました。
投下します。

(窓のないビル)
理事長「わざわざ君のほうから来るとは珍しい」

理事長「なんの用だね?」

土御門「ちょっと確かめたいことがあってな」

土御門「単刀直入に言おう。ヤツの能力…どう見る?」

理事長「新たに発見された原石のことかね?」

理事長「…君こそ、既に対象に接触したようだね」

土御門「ああ、ちょっと前になるがな」

土御門「まさかカミやんに先を越されてるとは思わなかったが…」

土御門「話によれば、魔術にも効果を発揮したらしいぜ?」

理事長「こちらでも情報は掴んでいるさ」

理事長「既に、レベル5である御坂美琴の能力を抑えた実績も有る」

土御門「へえ…あのレールガンをねえ…」

土御門「そこまで知ってて放置してるってのは…何か考えでもあるのか?」

理事長「いや…わからんさ」

土御門「なに?」

理事長「私とて、全てを知っているわけではない。全てを予想できるわけでもない」

理事長「特に彼の能力は未知数で不確定だ。どんな可能性を持っているかもわからない」

理事長「今の段階で、下手に介入するわけにもいかないのでね…」

土御門「だからといって、このままってわけにもいかんだろ?」

理事長「それはわかっている」

理事長「今まで通り監視を続ける。必要とあればこちらからも動く」

土御門「開発部の方で不穏な動きも出ている」

土御門「手遅れにならなきゃいいがな…」

とある街角)
佐天「…」

詠矢「…(さて)」

佐天「…」

詠矢「…(歩いてはいるが)」

佐天「…」

詠矢「…(話すことねえなあ)」

佐天「…」

詠矢「…(空気が重い)」

佐天「…」

詠矢「…(どうしたもんか)」

佐天「…あの」

詠矢「…はいっ!?(ビクッ)」

佐天「そこ左です…」

詠矢「あ、はいはい…」

詠矢「…」

佐天「…」

佐天「…えっと…」

詠矢「ん?次はどっちに曲がるのかな?」

佐天「じゃなくてですね…」

佐天「自己紹介、してなかったですね…」

詠矢「ああ、俺もそうか…」

詠矢「俺は詠矢、詠矢空希ってもんだ、よろしくなー」

佐天「佐天、涙子です…。よろしくです!」

詠矢「お、元気な声出たねえ」

佐天「あはは・・・、実はですねえ」

佐天「詠矢さんって怖い人なんじゃないかって思ってたんですよ」

詠矢「俺が?」

佐天「白井さんと御坂さんの話を聞く限りでは…そんな感じで」

詠矢「…どんな風に伝わってるのかすごく気になるんですが」

佐天「でも、意外と話しやすい人なんですねえ」

詠矢「ああ…そいつはどうも…ありがとう」

佐天「で…能力者…なんですよね?」

詠矢「そうだね…」

佐天「レベルは0だけど、すごい能力だって…」

詠矢「あのさあ?」

佐天「は、はいっ!」

詠矢「喉渇いてないかな?」

佐天「え…?」

詠矢「ちょいと軽く運動したんでね。ちょうど自販機もある。何がいい?」

佐天「い、いえいえ!私が買います!」

詠矢「いや、でもさすがに女の子に買わせるのもねえ…」

佐天「いーえ、せめてこれぐらいは奢らせて下さい!!」

詠矢「んー、じゃあお願いしちゃうかな…。あ、俺は普通のコーヒーでいいよ」

佐天「はい!じゃあ(チャリン)…えっと(ゴトン)…これで…」

詠矢「うい、どうもー(プシッ)」

佐天「私も何か…(チャリン)…(ゴトン)」

詠矢「じゃあ、話の続きだね」

詠矢「俺は能力者ではあるが、正真正銘レベル0だよ」

詠矢「こないだ、正式な測定ってやつを受けたんだけど」

詠矢「やっぱり数値は検出されなかったよ」

佐天「でも、実際に効果はあるんですよね…」

詠矢「うん。効果は間違いなく有るね」

詠矢「ただ、効果と測定される数値との間にどんな関係が有るのかは」

詠矢「俺にはわからんしね…」

詠矢「レベルってのは目安みたいなもんだし、俺にとっちゃ結構どうでもいいんだよ」

佐天「…」

佐天「…私もね、レベル0なんですよ」

佐天「学園に来て…能力開発とか、自分なりに頑張ってるつもりなんですけど…」

佐天「全然数値が上がらなくて…」

詠矢「…」

詠矢「大変なんだねえ…」

詠矢「俺は、気が付いたら能力を持ってたからなあ…」

詠矢「なんの努力もしてないし…なんか悪いな。能天気で」

佐天「いえいえ、そんなつもりで言ったんじゃ…(アセ)」

佐天「ただ、私と同じレベル0で」

佐天「確かな力を持ってるって、どんな人なのかなあって…」

佐天「ちょっと興味があって…」

詠矢「…」

詠矢「…うーん…」

詠矢「ちょっと質問いいかな?」

佐天「はい、なんですか?」

詠矢「能力開発ってやったこと無いんだけど…」

詠矢「具体的に何やるのかな?」

佐天「投薬とか、電気刺激とか…。あと普通に勉強もします」

佐天「能力に対して知識を深めることも必要らしくて…」

佐天「でもやっぱり、パーソナルリアリティの獲得には、イメージトレーニングが重要ですね」

詠矢「なるほどねえ…それは解るな」

詠矢「やっぱり能力って、感情や精神から強い影響を受けるみたいだしね」

詠矢「イメージは重要だわな」

佐天「そうなんですよ。私はあんまりその辺が得意じゃなくて…」

詠矢「んー…そうだなあ…」

佐天「…?」

詠矢「佐天サン。レベル0とはいえさ、能力の種類とか起こせる事象とかは解ってるのかな?」

佐天「はい、それは…」

佐天「実は私、前にある事件に関わって…」

佐天「一時的に能力が上がったことがあったんです」

詠矢「へえ…そんときに、有る程度確認できたってことか」

佐天「はい…。風を起こす能力なんですけど…、でも力の形を見たのはそれっきりなんですよね」

詠矢「へえ…風ねえ…」

詠矢「じゃあ、俺の天敵になるぞ」

佐天「へ?…そうなんですか?」

詠矢「ああ、俺の能力は、相手の耳に声が届かないと効果がないんだ」

詠矢「風を生む能力ってのは定義が難しいが、恐らく空気か気圧を操作する能力だろう」

詠矢「どっちにしろ、そんな能力者にとって音を遮断することなんて簡単だろうし」

詠矢「声が届かなきゃどうしようもない、俺としちゃお手上げになるね」

佐天「あー、確かにそうなりますねえ」

詠矢「『風』ってよりは『空気の操作』って考える方が効果が広がるな」

詠矢「空気の位置を動かして密度を下げれば気圧も操作出来る」

詠矢「気圧の低下による水の沸点の低下、気化熱による凍結とかコンボも可能だし」

詠矢「単純に顔の周りに真空を作って相手を窒息させたりも出来るな」

詠矢「違う速さの風を作って、任意に揚力を生み出すとかどうだろうか」

佐天「ナルホド…少し考えれば出来ることは色々広がりますねえ」

詠矢「イメージさえ出来れば、意外とやれることは多いと思うんだよね」

詠矢「そうやって、得た能力で何しようとか考えると楽しいだろ?」

詠矢「無邪気にそういうこと考えるのも、トレーニングになったりするんじゃねえのかなあ」

佐天「うーん…そうですねえ…風が操れたら…」

佐天「空とか飛んでみたいですね…気持いいだろうなあ」

詠矢「いいねえいいねえ。そんな感じ」

佐天「あと、風って言えばやっぱり初春の…あ…」

詠矢「…なんだ?」

佐天「いえ、ナンデモアリマセン…」

佐天「ああ、でも、実際に風を操るって、どんなふうにやるんでしょうね?」

佐天「具体的なイメージが湧かなくて…」

詠矢「どうなんだろうねえ…」

詠矢「自然の風は気圧差から生まれるものだけど…、イメージしにくいわな」

詠矢「そしたらさあ…こう、空気をつかんでぶん回す感じでどうよ?」

佐天「つかんで…回す…ですか…むむ…」

佐天「目を閉じた方が集中しやすいですよね…ん…」

佐天「(つかんで…回す…、引っ張ったり投げたりもアリかな…)」

佐天「…」

詠矢「…(さあて…、どうかな)」

詠矢「…ん…?(何の音だ?)」

詠矢「…(風音?)」

突如、不自然な風が吹く。それは少女を中心に渦を巻き、集束し、やがて霧散していく。

佐天「…?(ヒュゴゴゴ)…(ヒュ-)」

詠矢「…(消えた…か。だが、今のは確かに!)」

佐天「…あれ…なんか風が…?」

佐天「え!?、まさかそんな急に…?」

佐天「気のせい、ですよね…やっぱり…はは・・・」

詠矢「来たぜ、佐天サン…」

佐天「何がですか?」

詠矢「君のおかげでようやく立証が出来た。ありがとう」

佐天「・・・?あの、話が見えないんですけど…」

詠矢「俺も、自分能力を模索してる最中なのさ。その答えの一つが今出たんだ」

佐天「…は、はあ…出来ればもう少しわかりやすくお願いします…」

詠矢「絶対反論(マジレス)には別の使い方があるんだ…つまり…」

白井「お取り込み中失礼します」

詠矢「…あ…?」

詠矢「…こいつは白井さん、お久しぶり…」

白井「お久しぶりですわね…」

佐天「あ、白井さんじゃないですか。どうしたんですか?」

白井「先ほど、事件がありまして…その対応ですわ」

白井「状況からして、ただの能力者同士の喧嘩だったのですが…」

詠矢「あ…もしかして…」

白井「倒れていた男に供述を取ってみると」

白井「能力の制御がどうのとか、ゴチャゴチャうるさい奴がいたとか…証言が取れまして」

白井「まさかと思って周囲を捜索していたのですが…」

詠矢「…大当たりだねえ…」

白井「そのようですわね」

白井「まさか、佐天さんまで関わっていようとは、思いもよりませんでしたが…」

佐天「あの、もしかして詠矢さんが疑われてるんですか?」

佐天「だったら違います!詠矢さんは私を…助けてくれたんです!」

白井「それはわかっていますわ佐天さん」

白井「あの不良共は、このあたりでは有名な札付きでしたし」

白井「佐天さんがからまれていたことも」

白井「先に手を出したのが向こうであることも、目撃者の証言からも明白です」

詠矢「そこまではっきりしてるんなら、俺に何の用だい?」

詠矢「もしかして用があるのは佐天サンの方とか?」

白井「いいえ、ご用件は詠矢さんにです」

白井「容疑が無いとはいえ、加害側からは証言を取っておく必要があります」

白井「それとは別に、詠矢さんに確かめたいことがありますので…」

白井「支部まで出頭願えますこと?」

詠矢「俺に…ねえ…。どうするかねえ…」

白井「悩む必要はございませんわ」

白井「わたくしが申し渡した約束、もうお忘れですか?」

詠矢「…ああ…次に出頭を…だな」

白井「思い出していただければそれで結構ですわ」

白井「では、まいりましょうか?」

詠矢「うい、素直に了解だ。んじゃ、ここでお別れだ佐天サン」

詠矢「送っていけなくてゴメンな?」

佐天「いえ、そんなことは…」

詠矢「じゃ、縁があればまたな…」

佐天「はい…えっと、いろいろとありがとうございます!」

詠矢「うーい。こっちこそありがとう」

詠矢「んじゃ行きますか。白井サン」

白井「では参りましょう…今回も『徒歩』ですわよ?」

(ジャッジメント177支部)
白井「では、調書はこれぐらいでいいでしょう」

詠矢「結構簡単に済んだねえ…」

白井「ええ、状況は既に把握しておりますので」

白井「では、ここからが本題です」

白井「初春、これ以後の記録は必要ありません。手を止めて下さい」

初春「あ、そうなんですか?じゃあ…わかりました」

詠矢「なんだい、またあらたまって…」

白井「あなた相手に、回りくどい話は無駄でしょう」

白井「詠矢さん、わたくしに隠してることはございませんか?」

詠矢「…質問の意味がよくわからんが…?」

白井「では、わかるように、わたくしが気づいた事をお教えしましょう」

詠矢「…気づいた?」

白井「転移の暴発の後、川に落ちたとおっしゃいましたね?」

白井「最初にお会いした路地裏から、わたくしの能力の射程、81.5m…」

白井「その範囲を、地図上で調べてみましたの」

白井「…もうお分かりですか?」

詠矢「ああ…何が言いたいかはわかった…」

詠矢「範囲内には、川なんか無かったってことか」

白井「ええ、その通りですわ」

白井「あなたは、わたくしの能力の限界を超えて転移したことになります」

白井「限界値というものは、能力開発の過程で、綿密な計測のものとで確定します」

白井「いくら暴発したとはいえ、何かの間違いや勢いで超えてしまうものではありません」

白井「ですので…必然的に、原因はあなたの能力ということになります」

詠矢「…さすが白井サン…鋭いね…。全部正解だよ」

白井「わたくしの転移限界を知ろうと拘ったのも、そのせいですね」

詠矢「ああ…そいつも正解だな…」

詠矢「能力を実感してから、ずっと考えていたことなんだけどね」

詠矢「俺は能力の定義を『抑制』とは言わず、あえて『変質』と言った…」

詠矢「自分で自分の可能性を潰しちまわないようにな」

白井「ではやはり、絶対反論(マジレス)は、能力の増幅も可能だと…」

詠矢「間違いなく可能だな…。具体的なやり方もなんとなくわかった」

詠矢「否定して思い込ませれば抑制出来るんだから」

詠矢「新しい可能性を指摘し、それを肯定して思い込ませれば増幅が可能だろう」

白井「…また、とてつもなく厄介な能力になりましたわね」

詠矢「そうかい?能力の増幅なんて、使い勝手いいしさ」

詠矢「能力開発に苦労してる人もいるみたいだし、すげえ需要あると思うんだけどねえ」

白井「詠矢さん、あなたはこの学園都市の実情をご存知無さ過ぎます」

白井「絶対能力進化(レベル6シフト)…というのをご存知ですか?」

詠矢「レベル6?…能力のレベルって5までじゃなかったか?」

白井「その存在しないレベル6を作り出すための実験…」

白井「この学園都市の最終目的の一つでもあります」

詠矢「なんか、聞いただけでヤバそうな話だな…」

白井「いまだに、この実験に絡んで暗躍している者がいるという話です」

白井「実際に、私が関わった事件もあります」

詠矢「そういう連中からしてみれば、俺の能力は…魅力的だろうな」

白井「恐らく…そう映るでしょうね」

白井「そのことを解っていただいた上で、あなたにお願いがありますの」

詠矢「忠告ならわかるが…お願いかい?」

白井「ええ…、もしあなたに実験を望む者たちから接触があっても、一切関わらないで頂きたいのです」

詠矢「…なぜ白井サンがそんなことを願うんだい?」

詠矢「理由を聞かせてくれる助かるね」

白井「レベル6シフト実験…それで、とても悲しい思いをした人がいますの」

白井「そのかたに、もう一度同じ思いをして欲しくない…」

白井「それがわたくしの願いです」

詠矢「なるほど…一途だな…いいねえ、そういうの」

詠矢「まあ俺も、ハナから面倒ごとは願い下げだし」

詠矢「白井サンに頼まれるまでもなく、そんな話が来てもこっちからお断りだね」

白井「ならよろしいのですが…ご理解頂いて感謝します」

詠矢「いやなに、別に俺は何もしてない」

詠矢「色々と教えてもらってこっちが礼を言いたいぐらいさ」

詠矢「…さて、話は終わりかな?」

白井「ええ、お話したいことは以上ですわ」

白井「お帰り頂いて結構です」

詠矢「うい…。じゃああっさり帰るぜ」

詠矢「またなー」

初春「…ほんとにあっさり帰っちゃいましたね」

初春「じゃあ、私も帰ります」

白井「お疲れさま…。あら初春、パソコンの電源が入ったままですわよ?」

初春「あ、いいんですよ。実験に参加中なんで…」

白井「実験?」

初春「ええ、ネットワーク上の余剰演算力の活用実験だそうで…」

初春「ネットワーク上に存在するパソコンやゲーム機の余った処理能力を利用して」

初春「どこまで高い演算能力が確保出来るかって実験です」

白井「…ちょっと胡散臭いですわね…。チェーンメールの類ではありませんの?」

初春「いえ、私も最初はそう思ったんですけど…」

初春「学園の開発部から正式な通達みたいで…」

初春「ツリーダイヤグラムには遠く及ばないみたいですけど」

初春「また天気予報が当たるようになればいいなって…」

白井「そうでしたの…なら仕方ありませんわね…」

初春「じゃあ、お先に失礼します」

初春「あ、ちょっと気になったんですけど、あの詠矢って人…」

初春「あれで、ホントに理解してくれたんでしょうか?」

白井「恐らくは大丈夫かと…、考えのない人物では無いと思いますので…」

白井「それに…」

初春「…?」

白井「あの方は、わたくしを傷つけようとはしなかった。やろうと思えば出来たにも関わらず…」

白井「その点では、最低限の信頼を置いてもよろしいかと思います」

初春「…へえ…」

白井「なんですの?」

初春「いえいえ、なんでも…」

(とあるコンビニ)
詠矢「ありがとうございましたー」

詠矢「ふう、そろそろ上がりかな?」

詠矢「最後に揚げ物でも用意しとくか…よっと」

詠矢「…(お、誰か来た)…いらっしゃいませー」

佐天「こんにちわー!!」

詠矢「お、佐天サンじゃねえの。しばらくぶり…」

佐天「しばらくって、一週間も経ってないですよお」

佐天「ここでバイトしてるって聞いて、ちょっと寄ってみました!」

詠矢「おうおう、そうかい。まあなんか買っていってくんな」

佐天「いえいえ買い物じゃなくてですね、ちょっとお伝えしたいことが」

詠矢「ん?なんだい?」

佐天「こないだ、また能力の検査をやったんですけど…」

佐天「レベルは相変わらず0のままなんですけど…数値はかなり上がったんですよ!」

詠矢「…へえ…そうなんだ…そいつはよかった…」

佐天「…あれ?あんまり喜んでくれないんですね…」

佐天「きっと、詠矢さんのアドバイスのおかげだと思うんですけど…」

詠矢「なあ佐天サン、ちょっとお願いなんだけどさ?」

佐天「…なんですか?」

詠矢「こないだ、俺が能力についてどうこう言った事さ、誰にも言わないで欲しいんだよ」

佐天「えっ?…どうしてですか?」

詠矢「なんかさ…同じ様に能力が上がるんじゃないかって人が来るとさ」

詠矢「面倒だろ?いろいろと…」

佐天「…面倒…なんですか…」

詠矢「こないだのも単なる偶然だと思うし…変に期待されても迷惑だから」

佐天「…詠矢さん…そんな言い方って…」

詠矢「…ま、とりあえずそういうことでお願いしとくよ」

佐天「……はい」

上条「うわっと!…わりい、遅れた!」

詠矢「おお、上条サン待ちくたびれたぜ。早いこと準備してくれ」

佐天「…」

上条「アレ…なんでせうかこの空気は?」

詠矢「つーわけで佐天サン、俺今日は上がりだから…またどっかでな」

佐天「あっ…あの!!」

詠矢「んじゃ、奥で着替えるか…」

佐天「…」

上条「…???」

佐天「…帰ります」

上条「……」

上条「…俺も着替えるか…」

(とある街角 夕刻)
詠矢「さあってと…いつもの通り見切り品漁りコースか…」

詠矢「…」

詠矢「(しかし、さっきは驚いたな。いきなり佐天サンが来るとは)」

詠矢「(まあ、ああ言っておけば、俺のことを誰かに話したりもしないだろ)」

詠矢「(もうちょっと言葉を選べばよかったかもしれんが…)」

詠矢「(色々とヤバイみたいだし、なるべく話が広がらないようにしとかないとね)」

詠矢「(…いろいろと心は痛むけど…まあしょうがない)」

詠矢「(放置すると、彼女自身を巻き込む可能性も出てくるしな)」

詠矢「…ふう…」

詠矢「…なんか飯作るのも面倒だな…」

詠矢「どっかで牛丼でも食って…」

詠矢「…!?(シュン)」


詠矢「うおっ!!(ドガシャッ)」

詠矢「いてて…?なんだ…ここは?」

詠矢「カウンター…テーブル…椅子…。喫茶店かどっかか」

詠矢「この時間に照明も付いてねえ…定休日か潰れた店舗ってとこだな…」

詠矢「いや、問題はそんなことじゃない」

詠矢「なんでいきなりこんな所にいるかって事だ…」

??「あーら、いらっしゃい」

??「っても、店員でもなんでもないんだけど」

詠矢「…こいつは…ずいぶんと刺激的なお姉さんだねえ…」

??「それは誉めてもらってるのかしら?」

??「面倒だろうから、名前は名乗っておくわ」

??「私は結標ってもんさ。アンタを連れて来いってお達しでね」

詠矢「…ついに来たか…。まあ、来て欲しくは無かったけどな」

結標「悪いけど一緒に来てもらうよ」

詠矢「答えは一つ。既に決まっている」

詠矢「とりあえず、今の段階では『やだね』だ」

以上となります。

それではまた。

こんばんわ。
かなり難航しましたが、なんとか書きあがりました。
投下します。

(とある施設)
冥土帰し「やあアクセラレーター。わざわざすまないね」

一方「ったく…なンだってんだ急に呼び出しなんてよ…」

冥土帰し「開発部からちょっと実験の依頼でね」

一方「実験ン?」

冥土帰し「ああ、君にとっても悪い話ではないようだ」

冥土帰し「悪いが、頼まれてやってくれないかね」

一方「そいつは、実験の中身を聞いてからだ」

一方「俺は俺の判断で決める」

冥土帰し「まあ、君ならそう言うだろうね…」

研究者「では、説明は私からしましょう」

一方「なンだテメエは?」

研究者「私は開発部の者です」

研究者「今回の実験は開発部が主導しておりまして」

研究者「私はその責任者となります」

一方「へえ…そうか…。で、その責任者様が俺に何の用だ?」

研究者「あなたに、新たな演算環境をご用意しました」

一方「演算環境、だと?」

研究者「ええ、ネットワーク上の余剰処理能力を利用した」

研究者「擬似的な並列演算装置の実験ですよ」

研究者「この学園都市には、膨大な数のパソコンや処理装置が存在します」

研究者「それらをネットワーク上でつなぎ合わせれば」

研究者「ミサカネットワークにも引けを取らない演算能力を得ることができます」

一方「おいおい、引けを取らないってことは」

一方「大して変わらねえって事じゃねえか…」

一方「そいつを使うことで、俺に何のメリットがあるってンだ?」

研究者「この都市には、ネットワークの死角がほぼ存在しません」

研究所「地下であろうと移動中であろうと、安定した演算環境が確保できます」

研究者「そしてもう一つ、これを…」

一方「ンだ?その懐かしのデザインのヘッドフォンは…」

一方「お偉い研究者さんってのは、アンティーク趣味でもあんのか?」

研究者「いえ、これは端末です。あなたのチョーカーに付いているものと、ほぼ同じ機能を持ちます」

研究者「思考波とのやり取りを必要としないため、高い汎用性を持つ装置です」

研究者「バッテリーも、既存のリチウム電池を使うことが出来ました。交換も容易です」

一方「なるほどねえ…。それなりに魅力的な謳い文句だが…」

一方「世の中、美味い話ってのはなかなかねえもんだ…。テメエらをどうやって信用しろってんだ?」

研究者「そうですね、確かに信用は置けないかもしれません」

研究者「ただ、これも我々なりに考えた結果です」

研究者「あなたとミサカネットワークを切り離すことが出来れば」

研究者「彼女たちに害が及ぶ可能性が下がるはずです」

研究者「あなたとしても、より行動に自由が生まれるのではないでしょうか?」

一方「…」

一方「…この実験が上手くいけば…、あのクソガキのお守りもお役ゴメンってワケか?」

一方「面白いじゃねえか…。試してみるのも悪くねえ」

一方「おい、さっさとそいつをよこせ…」

研究者「どうぞ…。ヘッドフォンのように頭に被って頂ければ結構です」

研究者「装着した後、ケーブルをそこの端子につなぎなおして下さい」

一方「ここか?」

研究者「ええ、それでいいです」

一方「最後に確認しとくが…」

研究者「なんでしょう?」

一方「下手な真似したら…、テメエら全員、天国にも地獄にも行けねえように」

一方「塵一つ残さず消し潰してやるからな…覚えとけよ」

研究者「…もちろん…わかっていますよ…」

研究者「では、回線を開きます」

職員A「…(カタカタ)」

職員B「…(カタカタ)」

一方「…ん…がっ!!(キィン)」

冥土帰し「どうした…アクセラレーター」

研究者「学園第一位の能力者も、意外と甘いようで…」

冥土帰し「なんだって?」

研究者「今、彼の演算は我々の手にある」

研究者「そこから、思考に介入することは容易なのですよ」

冥土帰し「まさか…そのためにこの実験を!?」

冥土帰し「おい、アクセラレター!アクセラレター!!」

一方「…」

研究者「申し訳ありません。彼の信頼を得るために、あなたの名を利用させて頂きました」

研究者「お引取り願いたいところなのですが…」

職員C「…(ジャキ)」

職員D「…(ジャキ)」

冥土帰し「…銃か…またずいぶんと準備がいいものだね」

研究者「口外されてもいささか困るもので。しばらく我々と行動をともにして頂きます」

冥土帰し「…これは、学園都市への明確な反逆行為だ…」

冥土帰し「こうまでして、君たちが望むものとは何かね?」

研究者「ご説明の必要も無いかと思いますが…?」

研究者「神の道へ至る扉の鍵が、集まりつつあるのですよ」

研究者「それがいかに不確定であったとしても…」

研究者「可能性は一つずつ潰していく…それが科学者というものでしょう?」

(とある喫茶店)
結標「『やだね』って…要するに拒否するわけね?」

詠矢「ああ、理由も告げずにただ来いって」

詠矢「そんなもん素直についていくと思うか?」

結標「知らないわよ、理由なんて…」

結標「悪いけど、私だって細かい事情は聞かされてないのよ」

詠矢「話にならんな…。もっかい戻ってだな、その指示したって奴に…」

結標「…(シュン)」

詠矢「(ドスッ)ぐあっ!!…(な、なんだこれ…フォークが肩に…)」

結標「こっちだってガキの使いじゃ無いのよねえ」

結標「面倒なんで、大人しく付いてきてくれない?」

詠矢「(…これ抜かねえと)んっ…んぎぎぎぎっ!!(ザスッ)…痛ってーな」

詠矢「転移能力者…か。いきなり仕掛けるとは容赦ねえなあ…」

詠矢「しかし…いーのかね?」

結標「なによ…」

詠矢「どんな人間でも考えてからそれを実行するまでブランクがある」

詠矢「それがどんなに短い時間でも、その瞬間に俺の体の位置が移動する可能性はあるわな?」

詠矢「肩口を狙ったなら心臓や肺、頚動脈も近い。脳もそう遠くないな…」

詠矢「転移能力者が座標を指定して物体を送り込んでるのは知ってるぜ」

詠矢「何かの間違いで俺が[ピーーー]ば、アンタの仕事は果たせなくなる」

詠矢「いや、それよりも…」

結標「…?」

詠矢「アンタに人殺しになる覚悟があるのかい?」

結標「…!!(しまった、コイツの話はを聞いては…!!)」

結標「…貴方の話は聞かないわ!!(シュン)」

詠矢「…(今だ!)…(ザッツ)…」

詠矢は後ろに飛びのく。直後、足があった位置に転移してきたフォークが、そのまま床に落下する。

結標「なっ…!! どうして…!?」

詠矢「肩にあててビビらした後は、足を狙って動きを止める…」

詠矢「狙う場所は一番面積の広い大腿部…読めるぜ?」

結標「やるじゃないの…じゃあコイツはどう?!(シュン)」

結標が懐中電灯を一振りすると、周囲の椅子やテーブルが次々と詠矢の上空に送り込まれる。

詠矢「うおっ!!(ドカッ)…っと(ドカッ)…!!(ドカドカッ)」

詠矢「…くっ…(何とか避けれたか…)」

詠矢「(さて、どっかに隠れて視界から…)うおっ!!(キイン)…(タスタスタス)」

結標「避けきれたと思った?甘いわねえ!!(シュン)」

詠矢「そりゃ…ここじゃフォークは、売るほどあるもんなあ…」

詠矢「っと!!…とり合えず、視界から…消えないとねえ!!」

足元を狙い、床に刺さるフォークを避けつつ、詠矢はカウンターの裏へと体を滑り込ませた。

結標「…ちっ!」

詠矢「(視界外への転移は、さっきの論証でやりにくくなっているはず)」

詠矢「(正確な位置を確認出来ない状況では、俺を殺してしまう可能性が格段に上がるからな)」

詠矢「(ここに隠れてればしばらくは安全だが…、さてこっからどうするか…)」

結標「出てきなさい!どれだけ逃げても隠れても、私の座標転移(ムーブポイント)からは逃れられないわ!」

詠矢「なるほど…。接触を必要としない転移か…厄介だな…」

詠矢「だが、自由すぎる能力ってのも逆に難しい…」

詠矢「形のはっきりしてるものは、転移の指定もやりやすいだろうが…」

詠矢「気体や液体、もしくは飛散した粉末なんかはどうかな?」

結標「…聞かないって言ってるでしょう!!(シュン)」

先ほどと同じように、椅子やテーブルをカウンター裏の上空に転移させる。

詠矢「…がっ!(ドカドカッ)…(ドシャ)」

詠矢「…」

結標「…(仕留めた?)…」

結標「…ねえ…」

結標「返事しなさいよ…潰れちゃった?…」

結標「大人しくするなら、助けてあげなくもないわよ?」

詠矢「…」

結標「…」

詠矢「…運動し、飛散していく物質の全てを指定し、転移させることは難しい。いや出来ないだろうな…」

結標「…なっ!!」

詠矢「つまりは、こういうことだ!!(バッ)」

カウンターを乗り越え、詠矢は姿を現す。その手には…。

結標「(消火器!!)」

詠矢「うりゃ!!(バシュゥゥゥウ)」

結標「ひっ!…(シュン)」

詠矢「ムリだって。全部消しきれるわけねえだろ!!(バシュゥゥゥウ)」

結標「…っ!きゃあぁぁぁあ!!(バシュゥゥ)」

詠矢「(よしっ!ここで集中が途切れる、一気に距離を詰めて!)…どっせい!(上段回し蹴り!)」

結標「んっ!!」

詠矢「(ズルッ)あっ…!!(軸足が!)…(くそっ!浅い!)」

結標「がっ!!…痛ったい…わね!!(シュン)」

詠矢「(消えた!!)…(どこだ!)」

結標「…(シュン)」

詠矢「…(後ろか!!)」

結標「…ふっ!!(ブン)」

突然、背後に現れた結標は、手に持った懐中電灯で詠矢の頭部を一閃する。

詠矢「…がふっ!!(ゴッ)…」

結標「…女の…顔…蹴り飛ばすなんて…いい根性してるわね…ウッ(ゴホッ)」

詠矢「そりゃ、お互いさまでしょうが…」

詠矢「しかし、自己転移って手があったんだな…。すっかり忘れてたぜ」

詠矢「…ん?それじゃあ…なんで消火器を向けられたときに逃げなかったんだ?」

結標「…(ゴホゴホッ)」

詠矢「自己転移は使えない、もしくは使いたくない理由でもあるのかな?」

詠矢「そういやあ…ずいぶんと具合悪そうだな…」

結標「っさいわねぇぇええ!!」

結標「あんた本気でムカツクわ!!!ぶっ壊してあげるわよ!!(シュンシュン)」

詠矢「よ、あぶねえっての!!(ドカドカッツ)…(キイン)…(タスタスタス)」

詠矢「(無茶苦茶しやがるなあ)…(だが雑な攻撃は逃げ回ってればなんとか…)よっと」

結標「(また…カウンターの裏に)…もおいいわ、上にはあんたの死体を持って行くことにする…」

結標「…!(ブン)」

詠矢「うおっ!!」

一呼吸置いた後、結標大きく腕を振るうと、大量の机と椅子が上空に現れる。

それらは轟音とともに落下し、カウンターとその周囲を完全にを押しつぶした。

結標「…どう?今度こそ本当に潰れた?」

結標「…」

結標「…ああ、無理もないわね。死んじゃったら返事できないもの…」

結標「そうね、死体は確認しておかないと…(シュン)」

山となっている机や椅子を転移で排除すると、結標は押しつぶされたカウンターの裏を覗き込む。

結標「…(居ない?)…どこへ…?…あっ!」

彼女の目に写ったのは、カウンターの奥にづづく厨房、さらにその先にある外側に開け放たれた勝手口だった。

結標「まさか…逃げた…!?って…どこへ…?」

結標「まだそう遠くへは行ってないはず…追えば十分…」

逃走経路を確認しようと、彼女は勝手口まで進む…が、直後。

詠矢「うりゃ!!(ドカッ)」

裏に隠れていた詠矢は、絶妙のタイミングと渾身の力を持って扉を蹴り飛ばした。

結標「がっ!!(バンッ)」

全く予期していない攻撃に、結標の左半身は扉に強く打ちつけられた。

結標「…っつ…くぁ!!」

詠矢「よっ…と」

結標「…な…(組み付かれた!)…(首を…!)」

詠矢「逃げようったって無駄だぜ。今絞めてるのは頸動脈」

詠矢「脳貧血の進行する状態で、演算なんぞ出来るわけねえよなあ!!」

結標「……!!」

結標「……!」

結標「………(カクッ)」

詠矢「悪いな…。そのまま逃げようかと思ったんだが」

詠矢「転移能力者相手に、足で逃げ切れる自信が無かったもんでね…」

詠矢「しばらくオヤスミしといてくれ」

詠矢「(寝かせて…気道確保…)っと…」

詠矢「んじゃ…な。『またな』無しだ」

(とある路地、夜半)
詠矢「まったく…ひでえ目に合ったなあ…」

詠矢「病院行きたいんだが…、この傷、どう説明すりゃいいんだ?」

詠矢「間違いなく事件性が疑われるよなあ…」

詠矢「このナリじゃ、人目に付くとマズイ…。どっかでしばらく休んでジャッジメントに駆け込みかな…」

詠矢「白井サン…アドレス聞いときゃよかったなあ…」

??「…(スッ)」

??「…(スッ)」

詠矢「…?(何だ?囲まれてないか?)」

詠矢「(なんか道の前後を塞がれたんだが)」

詠矢「(ヤバイ雰囲気しかしねえな)」

詠矢「えーっと、もしかして俺になんか用ですかね?」

職員A「唐突で申し訳ありません。我々は学園都市技術開発部のものです」

職員B「少しご協力をお願いしたいのです」

詠矢「えー…って、まさかの連チャンのお誘いですか?」

詠矢「カンベンしてくださいって…」

職員A「いかがでしょう?ご同行願えますか?」

詠矢「…少なくとも、理由ぐらいは教えてもらえるんですかね?」

職員B「ある実験に参加していただきたいのですよ」

詠矢「あーもう…予備情報どおりの話で泣けてくるねえ…」

詠矢「悪いけど、ちょいと約束がありまして…。丁重にお断りさせて頂きます」

職員A「そうですか…。ですが、こちらとしてもそれで引き下がるわけにもいきませんので…(ジャキ)」

職員B「…(ジャキ)」

詠矢「…(銃!?)…(おいおい、シャレになってねえぞ…)」

職員A「どうですか?お気持ちは変わりませんか?」

詠矢「…(って、選択する余地ねえだろ、この状況は)」

職員B「我々としては、貴方の『能力』がどうしても必要なのですよ」

詠矢「……」

詠矢「俺の能力を知ってて銃口を向けるとはいい度胸だな…」

職員A「?」

職員B「?」

詠矢「俺の能力は絶賛進化中なんだよ。さっきの戦闘でまた一段と強くなった…」

詠矢「いまや絶対反論(マジレス)は、能力者意外にも高い効果を発揮する…」

詠矢「俺の一言で、誰にでも強い暗示を与えるんだ…。あんたら、その立ち位置じゃあ…」

詠矢「俺が逃げたら同士討ちだぜ?」

職員A「なっ…!」

職員B「なに?」

詠矢「なーんてね…」

詠矢「(と、ひるんだスキに逃げる!!)」

職員A「しまっ…た!!」

職員B「くそっ、追え!逃がすな!!(ダッ)」

詠矢「(とり合えずまいた、かな?)」

詠矢「(しかしなんなんだあいつらは、街中で銃なんぞ持ち出して)」

詠矢「(まだ諦めたとは思えないな…)」

詠矢「(コイツは逃げ切れないかもな)」

詠矢「(よし)…(今のうちに)…(ポチポチ)…(うっしゃ)」

職員C「いたぞ、こっちだ!」

詠矢「(おいおい、新手かよ…俺一人にどんだけ用意してんだよ!)」

詠矢「くそっ!(ダッ)」

職員A「…(ザッ)」

職員B「…(ザッ)」

詠矢「(マズい…追い込まれてるな…。数で来られるとどうしょうも…)」

詠矢「(いや、諦めるな…どっかに活路が…)」

??「…(キュイーン)」

詠矢「うわっ!!(何だ?地面が急に…隆起した!)」

詠矢「(ドサッ)…(ゴロゴロゴロ)…っつ…何だ急に…」

研究者「てこずらせてくれるね」

研究者「絶対反論(マジレス)の詠矢空希君…」

詠矢「…流石に…ここまでか…な?」

研究者「先に言っておくが、私は能力を持たない一介の研究者だ」

研究者「論証しようとしても無駄だよ」

研究者「それにだね…」

職員A「…(ジャキ)」

職員B「…(ジャキ)」

職員C「…(ジャキ)」

詠矢「(これは、手でも上げといたほうがよさそうだな)…(スッ)」

研究者「いくら君でも、炸薬によって弾丸が発射される原理を否定することは出来まい」

詠矢「…おっしゃる通りで…。なんの物理法則にも抵触してねえもんな…」

詠矢「で…実験の、お手伝いでしたっけか?」

研究者「ああ、彼の論証をお願いしたい」

詠矢「…彼?」

研究者「そうだ、学園第一位の能力者…。神への道にもっとも近い人物だ」

研究者「さあ、こちらへ…」

一方「…」

詠矢「ま…まさか」

詠矢「あんたは…あの時の!!」

以上となります。
次回で完結となる予定です。

また禁止ワードを踏んでしまいました。申し訳ありませn。

それではまた。


結標の口調とか戦闘パートとかすっかりうまくなったなぁ
でもアクセラレーターじゃなくてアクセラレータやで

>>243
それは気づきませんでした。次回から訂正しておきます。

おはようございます。
だいぶ時間が空いてしまいました。申し訳ありません。
書きあがった分を投下します。

(操車場跡地)
詠矢「(さて、まずは状況を理解しよう)」

詠矢「(俺は小物臭い研究者風の男に拉致された)」

詠矢「(目的はレベル6シフト実験で間違いないだろう)」

詠矢「(肩の傷は応急処置を受けた。腹減ったといったらカロリーメイトくれたな)」

詠矢「(だが全快とは言いがたい。全力で活動することは無理だろう)」

詠矢「(で、今現在の場所ですよ)」

詠矢「(見るところだだっ広い、古戦場ですかって雰囲気の廃墟だね)」

詠矢「(構造物や残骸を見るに、鉄道関係の施設跡かな…)」

詠矢「(そこに、命の恩人さんと二人っきりってワケだ)」

研究者『では、ルールを説明しよう』

詠矢「うわっ!どっから音出てるんだ?」

研究者『君の正面に対峙しているのは、学園第一位の能力者、一方通行(アクセラレータ)だ』

研究者『彼の頭部に装着している端末に、マイクとスピーカーが搭載されている』

研究者『彼に向かって話せば、我々と通常に会話することが出来る』

詠矢「(端末?…ああ、なんかいかにも『悪の組織の洗脳装置』って感じだね)」

詠矢「ナルホド…要するに普通に話しかけろってことですな…」

詠矢「でも、なんて呼べばいいのかね?面識はあるんだけどロクに話したことなくてな」

詠矢「アクセラレターだから、略してアクセラサンとか?」

詠矢「…なんかマツダの車みてえだな」

詠矢「まあいいや、適当に第一位サンとでも呼んどこう」

研究者『…説明の続きいいかね?』

詠矢「…根本的に納得いってませんが…、お聞きしましょうか…」

研究者『我々の最終目的はレベル6を創造することにある』

研究者『君の力で、アクセラレータの能力を増幅し』

研究者『その高みに彼を導いて欲しい』

詠矢「…おいおい、俺の能力知ってるのか?」

詠矢「適当にツッコミを入れて、他人の能力を変質させるだけだぞ?」

詠矢「そんな大それた事、出来るわけねえだろ?」

研究者『我々は、学園の能力者に関して全て把握している』

研究者『君の能力にも早くから注目し、調査させてもらっている』

研究者『実際に、君に関わって数値が上昇した人物からの証言も取れている』

詠矢「なっ…、どっからその話を!!」

研究者『数値計測を担当した係員からだ。あまり明確な情報ではなかったが…』

研究者『我々が君の能力に対して立てた推論を裏付けるには、十分な証拠だったよ』

詠矢「(そうか…、佐天サン、俺と合う前に話しちまってたか…)」

詠矢「(てーことは…、ヤバイないろいろと)」

詠矢「…」

研究者『沈黙の肯定…と言ったところかな?』

詠矢「よく調べてますねえ…。まあ、実例が有る分、否定は出来ないっすね」

詠矢「だが、実例が有るってだけで、なんの裏付けもない能力です」

詠矢「そんなもんに、研究者サンの人生賭けてもいいんですかね?」

研究者『構わんさ…。我々とて既に後には引けない』

研究者『たかが私の存在一つ、賭けてもいい実験だと思っている』

詠矢「…狂信者ですねえ…」

研究者『科学、というものにはね、魂を売る価値はあるのだよ』

詠矢「(…ダメだ、説得は聞きそうにねえな)」

詠矢「じゃあ…ついでに聞きますが、俺に拒否する権利は無いっすかね?」

研究者『拒否するのは構わないが、気持ちが変わるまで痛い思いをすることになる』

詠矢「そいつはカンベンだな…」

研究者『なら素直に従ってくれたまえ』

研究者『あまり強情を張るようだと…我々としては』

研究者『君に動いてもらえるよう、他に手を考えなければならない』

研究者『聡明な君なら、これ以上は説明しなくともわかるだろう?』

詠矢「…なるほどね」

詠矢「わかりました…やりゃあいいんでしょ?」

詠矢「どうなるかわかりませんけど、やるだけやってみますよ」

詠矢「ただ、最初にしっかり抗わせてもらいますよ」

詠矢「思いつく限りやってみないと、後で論証に実が入りませんので…」

研究者『好きにしたまえ…』

研究者『ただ、逃げるのは不可能だぞ』

研究者『この封鎖地区は隔壁で取り囲まれている。普通の人間が乗り越えら得る高さではない』

研究者『範囲内には、監視カメラが数箇所配置してある』

研究者『君は常に監視下であることを忘れないでもらいたい』

詠矢「へいへい…よく理解できました…」

詠矢「んじゃ…早速!!(ダッ)」

突然、弾かれたように走り出すと、詠矢は一気に相手との距離を詰める。

詠矢「(恐らく、この端末が元凶…コイツを取れば!!)」

一方「…(スッ)…(キィン)」

詠矢「…うわっ!!(ブワッ)…!!!(ゴロゴロゴロ)…くっそ…(思いっきり吹っ飛ばされた)」

詠矢「なんの…もっかい!!…(ダッ)」

一方「…(キィン)」

詠矢「がはっ!!(なんだ、いきなり腹に衝撃が!!)…ぐがあっ!!(ゴボッ)」

研究者『空気のベクトルを操作して衝撃波を作り出した』

研究者『見事に命中したようだね』

詠矢「…な、なんだよ…静止してるものも操作出来るのか…」

詠矢「そんなもんベクトル変換って呼ぶんですかね?」

研究者『運動量も含めてベクトルなのだよ…』

詠矢「(何だよそれ…。そんなモン単なる念動じゃねえか)」

詠矢「(いや、ベクトルって言葉使ってるってことは)」

詠矢「(下手すると電磁波や光も含まれる…。念動よりはるかに範囲が広い)」

詠矢「要するに、全てのエネルギーを方向や量も含めて操作出来る能力って…ことか…(ゴホッ)」

詠矢「流石第一位…壮大な能力だねえ…」

研究者『理解は出来たかね?なら、実験に移ってもらおうかな』

研究者『彼の能力は、今のところ接触が条件となっている』

研究者『その制限を外す方向で論証してみてくれ』

詠矢「…さあて」

詠矢「(第一位サンは明らかに自由意志を奪われた状態だ)」

詠矢「(つまり、この実験はそもそも望んでないってことだ)」

詠矢「(命の恩人に、仇を返すわけにもいかねえんだが…、今の状態では打つ手がねえ)」

詠矢「(どうする?ここは考えどこだぞ…)」

詠矢「…」

詠矢「…うし…やってやろうじゃねえか!」

研究者『ようやくやる気になってくれたかね』

詠矢「俺の能力でどこまでのことが出来るのか…その上限を試すまたとない機会だからな…」

詠矢「神の道ってのを、開いてみるとしますか!」

詠矢「ただし、論証の手順はこっちで決めさせてもらうぜ?」

研究者『ああ、それは構わないよ』

研究者『今のアクセラレータは、他人の言葉を受け入れやすい状態になっている』

研究者『どのような論理でも、君の能力は最大限に発揮されるだろう』

研究者『さあ、共に、神が生まれる瞬間に立ち会おうじゃないか…』

詠矢「了解…じゃあ早速いきますか」

詠矢「…さあて、第一位サン」

詠矢「あんたの能力は接触が前提らしいが」

詠矢「既にそんな制限は無いも同然じゃねえか?」

詠矢「さっき、俺を捕まえるとき、地面を隆起させてたよな?」

詠矢「そんとき、地面に直接手を触れているようには見えなかった」

詠矢「しっかり靴を履いて地面に立っていたわけだ。だが、それが接触って言えるのか?」

一方「…」

詠矢「その状態ってのは、単にあんたが『接触した』と自覚していたに過ぎない」

詠矢「そうなると、前提なんて限りなく曖昧なもんだ」

詠矢「第一位さんが認識する限り、その範囲は無限に広がっていく」

一方「…(ピク)」

詠矢「おお…反応あるねえ…」

詠矢「第一位サンもなんかノって来たんじゃねえの?」

詠矢「俺もだんだん楽しくなってきたなあ…」

詠矢「んじゃ続けるぜ?」

詠矢「そもそも、大気や地面を動かせるってんなら」

詠矢「そいつら全ては、連続してるといっても過言じゃない」

詠矢「大気が途切れているのは一部の密閉された空間だけだ」

詠矢「地面は、完全に水の上にある浮島意外、全て地表として繋がっている」

詠矢「水だって同じさぁ。水道の蛇口だって、浄水場から河川、さらに海まで繋がっているぜぇ!」

詠矢「この地上すべて!、すなわちこの世界すべて!、あんたの影響が及ばない場所は殆どねえ!!」

一方「…(ゴゴゴゴゴゴ)」

詠矢「全てのエネルギーを統べる能力。まさに神の力と呼べるんじゃねえかなぁ!!」

(とある施設)
職員A「…被験者の数値、上昇を続けています」

研究者「よし、いいぞいいぞ…このまま順調に行けば…」

冥土帰し「愚かな…、こんなことをしていったい何になるというのだね?」

研究者「わかりませんよ。わからないからこそやるんです」

研究者「レベル6は、全くの未知の領域です。その向こう側を見るための実験なのですよ!」

冥土帰し「(駄目だ…彼らはただレベル6を創造することだけに取り付かれている…)」

冥土帰し「(アクセラレータ、すまない。これは私の不手際だ…)」

冥土帰し「(彼らの真意を見抜くことが出来なかった…)」

冥土帰し「(今はただ…あの詠矢という人物に賭けるしかないのか…)」

職員B「実験場の大気と地面から強い振動が検知されています」

研究者「そうか…。アクセラレタータの力が、周囲の環境に影響を与え始めた証拠だ…」

研究者「引き続き計測を続けろ!」

職員B「はい!」

詠矢『じゃあさあ?』

職員が作業に取り掛かろうとした直後、モニター越しに詠矢の声が響く。

詠矢『次の段階に行くかい?』

詠矢『第一位サンの能力が、実際にどれくらいの範囲に影響を与えられるか…試してみねえ?』

研究者「…?」

詠矢『とりあえず、そうだなあ…。この地面の下の大陸プレートでも、盛大に引っぺがしてもらいましょうか…』

研究者「…なんだと?」

詠矢『震度も計測できないような壮絶な地震が起こるなあ…、流石に日本も滅亡かな?』

研究者「…回線を開け…」

研究者「おい、いったいどうゆうつもりだ!」

研究者「そのまま安定して能力の上昇を導くんだ。余計なことは言うな!」

詠矢『…神が行う、最も壮大で厳粛な行為ってのは、何だと思います?』

研究者「…?」

詠矢『破壊と…創造ですよ…』

研究者「…なに?」

詠矢『だからあ…神の力を得た証拠に、世界を滅ぼしてもらおうってことですよ!』

詠矢『今の第一位サンなら、地震も、津波も、台風も思いのままだ』

詠矢『あ、面倒だったら自転を急停止させてもいいかな』

詠矢『世界中が、一斉に同じ方向に吹っ飛ぶなあ…』

詠矢『どうせ地球自体に干渉できるだろうから、重力とか止めてみるとかね』

詠矢『どうなるか想像もつかないけどねぇ…へへっ』

研究者「な…なんだと!気でも狂ったか!」

詠矢『そりゃまあ…お蔭さんでねぇ…。こんなバカ壮大な論証…正気じゃやってられませんよぉ!!』

研究者「そんなことをすれば、お前も無事では済まないぞ!」

詠矢『あ?なんですか?いまさらビビリましたかぁ?』

詠矢『研究者さんが魂売ってるって言うもんで…俺も命ぐらい賭けてみようかと思いましてねぇ』

詠矢『まあ…実際に賭けるのは全人類の命になっちゃいますけどねえ…』

職員A「被験者の数値、さらに増大しています!」

職員B「振動も更に増大!。地面に亀裂と剥離が発生しています!」

研究者「…?(ゴゴゴゴゴ)…ここまで…振動が…」

研究者「まさか…本気で…」

詠矢『さあ、第一位サン、イメージを広げるんだ!全てを認識するんだ!』

詠矢『もはや世界のすべてはあんたのものだ!!』

詠矢『いいねえ!最高に楽しいねえ!!』

研究者「(おかしい…調査によれば彼はもっと思慮深い人間のはずだ…)」

研究者「(こんな、全てを滅ぼすような行動をとるはずが無い…。まるで何かに酔っているようだ)」

研究者「(まさか…自分の能力に呑まれて…?)」

詠矢『大地と大気が震えてるねえ…』

詠矢『絶対反論(マジレス)と一方通行(アクセラレータ)が共振し合ってるのかねぇ!』

研究者「…(ゴゴゴゴゴゴ)…!」

職員A「…数値は今だ上昇を続けています!…あの…」

研究者「なんだ?」

職員A「このままでは…下手をすると…」

研究者「判断は私がする…黙っていろ…」

職員A「はい…」

研究者「…!(ゴゴゴゴゴゴゴ)…(ガガガガガガガ)」

職員A「…!」

職員B「…!」

研究者「…」

研究者「……くっ!」

研究者「…外部からの音波を遮断するよう、被験者に指示しろ」

研究者「それで、絶対反論(マジレス)の効果を防げる」

職員A「しかし、それでは我々の指示が被験者に…」

研究者「端末のスピーカーから直接伝えられる。遮断するのはあくまで外部の声だ」

職員A「わかりました!(カタカタ)」

研究者「その後、彼を徹底的に痛めつけて黙らせろ。殺しても構わん」

冥土帰し「殺す…?なぜそこまでする必要がある!!」

研究者「うるさい!さっきの論証を見ていただろう!」

研究者「今もうちに始末しておかないと…我々の身が危ういのだよ!!」

(操車場跡)
詠矢「さあ、頑張ってくれよ、第一位サン!!」

一方「…」

詠矢「(なんだ…反応が薄いな…)…あれ?(周囲の振動が止んだ?)」

一方「…(ガッ)…(キュイン)」

アクセラレータが地面を踏みつけると、その体は一気に加速し、詠矢に向かって突進する。

詠矢「なっ!!(ドカッ)」

大雑把に放たれたアクセラレータの拳が、詠矢の胴体に命中する。

詠矢「…!!ぐおっ!!(ゴロゴロゴロ)…(ドシャッ)」

詠矢「くっ…!!あぁ(いってえ…んでもって速ええ…)」

詠矢「よいしょっと…。ひでえな、第一位サン。いきなり殴ることねえだろ!」

一方「…」

詠矢「(聞いてない…、いや効いてないって言うべきか?)」

詠矢「(音を遮断したな…)」

詠矢「(あのオッサン、小心者ぽかったからなあ)」

詠矢「(派手にビビらせてやればどっかで引くと思ったんだが)」

詠矢「(意外と早く折れたな)」

詠矢「(その上、俺を攻撃してきたってことは)」

詠矢「(実験は半ば諦めたって感じかね)」

詠矢「(さあて、もうひと頑張りだ)」

詠矢「こっからは…俺の全力を持って…逃げる!!(ダッ)」

詠矢「つーか俺ここんとこ逃げてばっかりだなあ!(ダダッ)」

一方「…(スッ)」

アクセラレータが静かに地面に手を置く。すると無数の岩塊が切り出され、それはそのまま詠矢に向かって飛翔する。

詠矢「うおぉおっ!(ドカドカドカッ)」

詠矢「なあんか、避けるのだけは得意になっちまってねえ!!」

詠矢「この程度ならなんとか…よっと!(ドカドカッ)」

一方「…(キュイン)」

詠矢「うおっ!!(一瞬で、目の前に!)」

再び無造作に振るわれた拳が、詠矢の頭部に命中する。

詠矢「がっ!!(ドカッ)…い…ぎ…(ガクッ)」

詠矢「(あの細い腕で、なんて威力だ…)」

詠矢「(しかもあんな適当なパンチが…反応も出来ないスピードで…)」

詠矢「…そうだよな…、ベクトル変換なら、身体能力も何もかも思いのままだな」

詠矢「能力ってのは…、人が普通に積み上げる努力を、軽く追い越しちまうんだなあ…」

詠矢「なんか…心が折れそうになるねえ」

詠矢「ま、俺は諦めねえ…けどな!(ダッ)」

一方「…(スッ)…(キュイーン)」

詠矢「意外とワンパターンだな!ギリギリだが…避けれるぜえ!(ドカドカドカッ)」

一方「…」

詠矢「いよっと!(ドカッ)…まだまだっ!!(ドカドカッ)

一方「…」

一方「……(キュイーン)」

詠矢「なっ!!地面が!!(ズサッ)…(ゴロゴロ)…っきしょ…」

一方「…(シュン)」

転倒した詠矢の傍に、アクセラレータがその能力で一気に距離を詰める。

詠矢「しまっ…!!がはあっ!!(ゴッ)…(バキッ)」

勢いに任せた相手の拳が、詠矢の腹部に突き刺さる。

詠矢「(うおっ!!どっか折れたっ!!)」

骨折の場所を確かめる暇も無く、アクセラレータの攻撃が次々に繰り出される。

詠矢「がっ!」

詠矢「いぎっ!」

詠矢「…っ!!!」

ほぼ全身をくまなく殴打され、最後に止めとばかりに、振りかぶった拳が詠矢の顔面に命中する。

メガネが吹き飛び、破片が皮膚を切り裂く。

詠矢「…が…あっ…(ドサッ)」

詠矢「(あー…ヤベえ…痛み感じなくなってきた…)」

詠矢「(えっと…全身打撲、骨折は恐らく肋骨…、ついでに顔面から出血…)」

詠矢「(視界は…なんとか確保…眼球は無事、かな?)」

詠矢「よっ…と(ゴロン)。仰向けになるのが精一杯か…」

詠矢「…流石に死ぬのかね?」

一方「…」

詠矢「どうせ聞こえてねえんだろうけど…」

詠矢「俺は命乞いをするつもりはねし、あんたらの言うことを聞くつもりもない」

詠矢「可能性は消えてないから…な…」

一方「…」

詠矢「…?」

詠矢「お…」

詠矢「ハッ…ハハッ…」

詠矢「来たぜ…可能性が!!」

(とある施設)
研究者「…なんだ…何を笑っている」

モニター越しに写る詠矢の顔には、不適な笑みが浮かんでいた。

研究者「なぜこの状況で笑える…?」

職員B「……あ…?」

職員B「…3番カメラに…人影が…」

研究者「何?…なんだと?」

研究者「ここには誰も入って来れないはずだぞ!」

職員B「で、ですか確かに写っています!」

研究者「どこだ…ええい、拡大しろ!!」

職員B「はい!」

研究者「…あれは…まさか…まさか!!」

研究者「上条…当麻!!」

以上となります。
予想とは違って終わりませんでした。まだ少し続きます。

それではまた。

こんばんわ。
遅くなりましたが書き上がりました。投下します。

(操車場跡)
上条が、空間から突如現れた。すぐ隣には白井黒子がいる。
詠矢の正確な居場所が分からなかったせいか、二人が現れたのは少し離れた場所だった。

上条「詠矢!!大丈夫か!!」

白井「詠矢さん!ご無事ですか!?」

詠矢「タイミングバッチリだな…お二人サン」

詠矢「いい感じでピンチだ…」

一方「…」

上条「なっ…アクセラレータ!お前何やって…!!」

一方「…(スッ)…(キュイーン)」

上条「うおっ!!(風が!!)」

白井「くっ…!(ヒュゴゴゴゴ)」

詠矢「第一位サンは操られてるんだ…、頭に被ってる装置を外して…くれ」

詠矢「上条サン、あんたなら『触れる』はずだ…」

上条「わかった!!っても…風が…(キュイーン)…(くそっ、近づけねえ!!)」

白井「…接近できれば、よろしいのですね?」

上条「…ん?どうするんだ?」

白井「あなたを傍まで飛ばします。あとは何とかしてくださいまし!」

上条「お、おう!って…ちょっとま…」

白井「…(ガシッ)…(シュン)」

上条「(シュン)おわっ…ととと…(ザッ)」

一方「…!」

アクセラレータは拳を振り上げる。それは明らかに上条の頭部を狙っていた。

上条「こんのぉ!!、目ぇさませ!!(ガッ)」

一瞬の隙を見逃さず、カウンター気味に伸ばされた上条の右手が、アクセラレータの頭に届く。

一方「…!!」

上条「こいつだな?…こんなもんっ!!(キュイーン)…(ガシッ)!!」

上条の右手が、頭部の端末を引き剥がし、同時に接続されていたケーブルを引き抜いた。

一方「…が、あぁぁああっ!!」

一方「…(ガクッ)…(ドサッ)」

詠矢「…よし…これでたぶん…大丈夫だ…」

上条「詠矢!これでいいのか?」

詠矢「ああ、流石上条サン…よくやってくれた…」

上条「っていうかお前、ひでえ怪我じゃねえか!」

詠矢「ああ…まあ、そうなんだよなあ…もうあんまり感じねえんだが…」

上条「おい、それってマズイんじゃねえのか?しっかりしろ!」

詠矢「あー、骨折してるんで動かさないでくれ…。救急車呼んでくれると助かるんだけど…」

上条「ああ、わかった!」

白井「(シュン)…詠矢さん…。また随分な有様ですわね…」

詠矢「まー、なんとか…生きているよ…」

研究者『(ジーッ)…(ガガッ)…なぜだ!!』

投げ捨てられた端末から、研究者の声が響く。

研究者『なぜだ、なぜここにいる!。幻想殺し(イマジンブレイカー)の上条当麻!!』

白井「わたくしがお連れしました…」

研究者『お前は…ジャッジメントの白井黒子だな?』

研究者『確かに、お前の能力ならここに入ってくることも容易だが…』

詠矢「へー、お二人さんとも結構有名…なんだねえ…」

研究者『そんなことはどうでもいい!!なぜこの場所に来たかと聞いてるんだ!』

詠矢「いやいや、別に難しいことじゃねえさ…」

詠矢「俺が呼んだんだよ、助けてくれってな…」

研究者『なに?いったいいつの間に…』

詠矢「あんたらに捕まる前さ。上条サンにメール打っといたんだよ」

詠矢「『なんかヤバイ事に巻き込まれてる。助けてくれ』」

詠矢「『ジャッジメントの白井黒子って人が協力してくれるはずだ』ってね」

詠矢「御坂サン絡みで、もしかすると知り合いなんじゃねえかと思ってな…まあバクチだったけどさ…」

研究者『…たったそれだけの情報で…ここまでたどり着いたというのか?』

白井「ジャッジメントの捜査能力を舐めないで頂きたいですわ…」

白井「既にこういう事態は想定済みでしたし」

白井「こちらには別ルートの情報もありましてね…(ピピピピピ)あら…お姉さまですわ」

御坂『ああ、黒子?近くまで来てるんだけど…そっちはどう?』

白井「ええ、予想通り、実験場はここでしたわ…」

御坂『そう、じゃあ私もそっちに行くわ…』

白井「では、今からお迎えに…」

御坂『いーわよ…、入り口ぐらい自分で…作るから!』

御坂「(キイン)…(ビシュゥゥゥン)…!!!」

御坂の放ったレールガンは、操車場跡地を取り囲む隔壁を易々と貫通し、人がゆうに通れる穴を穿った。

詠矢「お?…まさか御坂サン?派手な登場だねえ…」

研究者『御坂美琴まで!!…なぜだ!!』

詠矢「そういえばそうだな…。何で御坂サンが?」

御坂「別にアンタを助けに来たわけじゃないわよ…」

御坂「いきなりアイツから、黒子の連絡先を教えてくれって言われたときは…」

御坂「何のことかと思ったけど…ね…」

打止「アクセラレータ!!とミサカはミサカは急いで駆け寄ってみたり!(タタッ)」

御坂「この子が私のところに来たから…すぐに理解できたわ…」

御坂「アクセラレータが居なくなったって…。ネットワークにも繋がっていないってね…」

研究者『…』

上条「…詠矢からの連絡」

御坂「この子からの捜索願い…」

白井「そしてネットワーク上の余剰演算実験とレベル6シフト…」

白井「これらの情報をつなぎ合わせれば、この場所を特定するのは難しくはありませんでしたわ…」

研究者『き…貴様ら!』

詠矢「…なんだか一部…わからんとこもあるが…、どっちにしろ…俺の悪運も相当なもんだな…」

詠矢「あの短時間で、これだけのメンバーが集まるんだからなあ…」

上条「それは違うぜ」

上条「お前が最後まで諦めずに手を打ったから…。俺に助けを求めてくれたから…」

上条「俺たちはここに辿り着くことが出来たんだ。運なんて簡単なもんじゃねえよ!」

詠矢「…」

詠矢「…ははっ…そうかもな…お褒め頂いて光栄だねぇ…」

白井「…さて」

白井「既に決着は着きました。どこのどなたか存じ上げませんが…」

白井「素直に投降することをお勧めしますわ」

白井「既にアンチスキルにも通報してあります」

白井「あなた方の居場所を突き止めるのも、時間の問題でしょう」

研究者『…』

御坂「そうねえ…」

御坂「一番ヤバイ奴が、復活したみたいだし…」

一方「ん…あ…」

打止「あ、まだ起きちゃダメだってミサカはミサカ心配してみたり!」

一方「…(ザッ)」

おぼつかない足取りで進むと、アクセレータはさっきまで自分の頭にあった端末を拾い上げる。

一方「テメェら…約束…覚えてンだろうなあ…。あぁ!?」

研究者『…!』

研究者『い、いいのか…こっちには人質が…』

一方「…あ?…なんだ?あの医者のことか?」

一方「面白いねえ…爆笑もんだぜ…」

一方「この俺に、人質なんて…通用すると思ってンのか?」

研究者『…なっ!!』

一方「お約束通り…全員残らずブチ殺しにいってやっから…首洗って待ってろやぁあ!!!」

一方「…!!(キイン)」

アクセラレータは怒りのままに地面を踏みつけると、その体は宙を舞い、何処かへと飛び去っていく。

上条「おい!お前[ピーーー]って…ダメだろそんなの!!(ダッ)」

上条「あっ…白井!後のことは頼む!(ダダッ)」

打止「まってよー、アクセラレータ!、とミサカはミサカは届かない思いを叫んでみたり!(タタッ)」

御坂「…あら…みんなまとめて行っちゃったわね…」

御坂「じゃ、私も帰ろうかな…」

白井「あら、お姉さまもですの?」

御坂「まあね…。あの子の依頼は果たせたわけだし、私がここに居る理由はもう無いもの…」

御坂「じゃあ黒子、先に寮に帰るけど…」

御坂「あんたはそこのケガ人の世話があるから、遅くなるでしょう?」

御坂「寮監には私から説明しとくわ」

白井「…お気遣い感謝しますわ。お姉さま…」

御坂「じゃ…ね」

詠矢「…」

白井「…」

詠矢「…」

白井「……」

白井「詠矢さん?大丈夫ですの?」

詠矢「ん…ああ…まあ…なんとか…」

詠矢「あ…そうだ白井サン…」

白井「何ですの?」

詠矢「約束守れなくて…ゴメンな?」

白井「…え?」

詠矢「流石に、全く関わるな…ってのは無理だったが…」

詠矢「レベル6…実験は…何とか…阻止したぜ…」

白井「…詠矢さん…あなたまさか…」

白井「そのために…こんな…!」

詠矢「まあ…約束…だし…ねえ」

詠矢「…」

詠矢「…あ…」

白井「…?」

詠矢「…ねむ……」

詠矢「…」

詠矢「…(ガクッ)」

白井「詠矢さん?」

白井「…詠矢さん!?」

白井「詠矢さん!!詠矢さん!!」

(とある病院)
詠矢「…ん」

詠矢「…ん?」

詠矢「…(見上げれば…見知らぬ天井…)」

詠矢「あ…っと…どこだ?。まあ…病院か…。定番通りベットの上…だね」

冥土帰し「やあ、目が覚めたかね?」

詠矢「あ、ども…。えっと…」

黄泉帰り「僕は医者だよ。君の治療を担当させてもらった」

詠矢「そうなんですか…そいつはありがとうございます…」

詠矢「お、あれ…?痛みとかないですね…。骨折なんてすぐ直るわけないのに…」

冥土帰し「僕の全力を持って治療させてもらったよ。体のほうはもう問題ないはずだ」

冥土帰し「頭を強く打ってるから、念のためしばらく入院してもらうがね…」

詠矢「はー、流石学園都市のお医者さんだ…すごいっすねえ…」

黄泉帰り「いや、君もなかなかのものだよ」

詠矢「俺が…っすか?」

冥土帰し「僕はね、あの研究者に軟禁されていたんだ」

冥土帰し「モニター越しに、君の事は見ていよ」

詠矢「あー、そうなんですか…ちょっと恥ずかしいっですね」

冥土帰し「論証…というのか…かなり特殊な能力のようだが…また無茶をしたものだね」

詠矢「まあ、無茶でもないんですけどね。あの論証じゃあ、大事には至らないだろうと思ってましたので…」

冥土帰し「ほう、何か確信があったのかね?」

詠矢「そりゃまあ、俺だって死にたくないですから…」

詠矢「論証の前提が『認識できる』って事にしといたんで」

詠矢「そんな広い範囲に影響は出ないと思ってました」

詠矢「一個人が認識できる範囲なんてたかが知れてますから。全世界を巻き込むようなことは恐らく出来ないだろうって」

冥土帰し「…なるほど…、論旨の中に、既に限定条件が含まれていたわけだ」

詠矢「そういうことです。まあ、相手を引かせるのが目的でしたから」

詠矢「世界をー、とか、人類がー、とか、派手に吹きましたけどねえ…」

冥土帰し「…すべて計算ずくだったということかね…」

冥土帰し「やはりなかなかのものだよ…君は」

冥土帰し「…そうだ、君の渡すものがあってね…受け取ってくれたまえ…」

詠矢「え?って…メガネと…スマホ?」

冥土帰し「あのジャッジメントの女の子が回収してくれていたみたいだね」

詠矢「ありがとうございます!いやー、これは最後にメール打った後、その辺に投げ捨てたんで…」

詠矢「まさか戻ってくるとは思いませんでした…って…あれ?これ新品じゃないですか?」

冥土帰し「ああ、こちらで用意して、データを移し変えておいたよ」

冥土帰し「今回の件は僕の不手際があってね…出来る限りのことはさせてもらうよ」

詠矢「えーっと、まあ…よく解りませけど遠慮なく…ありがとうございます」

冥土帰し「気にすることはないよ…おっと(プルルルル)内線だ…」

冥土帰し「(ガチャ)はい、僕だ…何かね?…ほう…」

冥土帰し「詠矢君、君に面会のようだ…通してもいいかね?」

詠矢「え、俺にですか?…はい…いいですよ」

冥土帰し「わかった…では、案内してくるよ…」

詠矢「(面会って…誰だろ?…もしかして…)」

土御門「やあヨメやん、大変だったにゃあ」

詠矢「…」

詠矢「…ここはコケていいとこですか?」

土御門「…?」

詠矢「だってこの展開だったら、来るのは女の子でしょうが!!」

土御門「…ヨメやん、現実はそう甘くないんだぜい」

土御門「で、どうだい体の方は?」

詠矢「信じられない速度で回復したよ。そちらのお医者さんのおかげでね」

土御門「なら良かった…。実は、ヨメやんに話があってな」

土御門「来てもらいたいとこがあるんだが…」

詠矢「…なんだよ…またあらたまって…。体の方は大丈夫そうなんだけど…(チラッ)」

冥土帰し「しばらく安静にしておいた方が、といいたいところだが…」

冥土帰し「短時間出歩く分には問題ないよ」

詠矢「あ、許可が出ちゃいましたか…じゃあどうしますかねえ…」

土御門「ちょっと合ってもらいたい人がいるんだけどにゃあ…」

土御門「あ、そうそう、待望の女の子も来てるぜい」

詠矢「…女の子?」

結標「…」

詠矢「あ…えっと…その節はどうも…」

詠矢「結び目サン…だっけ?」

結標「結標よ!!まったく…」

結標「あなた、小難しいこと言う割には、あんまり頭良くないんじゃないの?」

土御門「まあまあ、その辺にしとけ結標」

詠矢「お二人さん…お知り合いってことか…」

土御門「結標は仕事の同僚なんだぜい」

詠矢「仕事…ねえ…まあ、色々ツッコミたい所はあるが…丸呑みしとくわ…」

結標「だいたいねえ、あなたが素直についてくれば」

結標「こんな面倒なことにはならなかったのよ?」

詠矢「……はい?」

土御門「その辺もまとめて説明するにゃあ。どうだい、来てくれないか?」

詠矢「そこまで引っ張られたら行かんわけにいかんでしょ…」

土御門「よし、じゃあ決まりだ。早速行こうぜヨメやん」

(窓の無いビル)
理事長「よく来たね、詠矢空希君…」

理事長「私は学園都市の統括理事長、アレイスター・クロウリーだ」

詠矢「…あー…ども…」

詠矢「…(浮いてる…しかも逆さに)…」

詠矢「あの、大丈夫ですか?頭に血上ったりしません?」

理事長「君に心配してもらう必要はないよ」

理事長「それとも、私まで論証して見せようという魂胆かね?」

詠矢「いえいえいえいえいえ、滅相もございません…」

詠矢「(やろうと思えば突っ込みどころ満載なんだけどねえ…。やめといたほうがいいだろうな)」

詠矢「えーっと…土御門サン。まだ用件を聞いてないんだけどさ…」

土御門「そうだったな…。統括理事長がヨメやんに話があるそうだ」

詠矢「…なるほど。えー、では、拝聴させて頂きます」

理事長「うむ…。君の能力について、一つ忠告があってね」

理事長「論証によって対象の能力を変質させる…極めて特殊な能力だ」

理事長「未知の領域を多く残した能力ともいえる反面…」

理事長「その効果は不確定で、そして不安定だ…。『増幅』については…特にね」

詠矢「…不確定なのは自覚ありましたけど…不安定…ですか…」

理事長「そうだ、むやみに増幅の能力を使えば、どんな影響や反動が出るかも解らない」

理事長「暴走する可能性もある」

詠矢「…」

理事長「そういった、多くの危険をはらむ増幅の論証は、自重してもらいたのだ」

詠矢「…えーっと…まあ」

詠矢「なんというか、意外と普通に忠告なんですね…」

詠矢「ま、理事長サンからの直々のお願いなら、聞かないわけにもいかないでしょうし…」

詠矢「俺もいろいろとヤバイと思ってたところですので…。素直に承ります」

理事長「理解が早くて助かるな…」

理事長「この学園都市には、既に中止されているレベル6シフト実験を企てるものがまだいる」

理事長「私と君が接触したことを知れば、彼らも手を出しづらくなるだろう」

理事長「今回のような件に巻き込まれることは、恐らくもうないだろう…」

詠矢「あ…もしかして…。結標サンが迎えに来た理由って…」

土御門「技術部に不審な動きがあったことは掴んでいた」

土御門「先回りして、ヨメやんを保護しようと回収に行った…らしい」

詠矢「らしいって…土御門サンは知らなかったのかい?」

土御門「結標が直接組織から指示を受けていたらしくてな…。俺は聞いていなかった」

詠矢「じゃあ、さっき言ってた、素直に来てればってのは…」

理事長「君といち早く接触する為に、組織を通じて彼女に動いてもらった」

詠矢「先に接触してれば…、あの研究者も手を引いていたかも…ですか?」

理事長「それでも彼らが実験を強行した可能性も捨てきれないが…」

理事長「中止する可能性も高かっただろうね」

詠矢「…」

詠矢「…いやいやいやいや」

詠矢「なんか俺が悪いみたいな空気ですけど。そりゃ違うんじゃないですか?」

詠矢「そりゃ、案内役の人にちゃんと事情を話とかないと…」

詠矢「俺だって素直に着いてけないっすよ」

詠矢「ただでさえレベル6実験の話を聞いてて、こっちは警戒してるんですから」

理事長「…」

土御門「ははっ…アレイスター。今回ばかりは、お前の秘密主義が裏目に出たようだな」

土御門「ヨメやんの言ってることはもっともだぜ?」

理事長「…そのようだな」

詠矢「…まあ…済んだことですので別にいいですけどね」

詠矢「こっちは、恩人に恩を返せたかなと思ってるんで、結果オーライですし」

理事長「そういってくれると助かる…」

理事長「私からの話は以上だ。君が納得してくれればそれでいい…」

詠矢「はい、まあ…納得はしました」

詠矢「ただ、こっちからも一つお願いが」

理事長「なんだね?」

詠矢「俺の『増幅』の力なんですが…」

詠矢「どうしょうもなくヤバくて、それを使わざるを得ない状況になったとき」

詠矢「俺の判断で使わせてもらっていいですか?」

理事長「…それはどんな状況かね?」

詠矢「まあ…かっこつけるわけじゃないですけど…」

詠矢「自分の命とか、この学園都市とか、俺の周りの人たちとか」

詠矢「守りたいものを守らなきゃいけないとき…ですかね?」

理事長「…いいだろう…その時点での判断は君に任せるよ」

理事長「ただ…この学園で私の目が届かない場所はない。そのことを忘れないようにね」

詠矢「わかりました…、ありがとうございます…」

土御門「ヨメやん…言ったねえ…」

詠矢「いや、蒸し返えさんでくれ…かなり恥ずかしいんだから…」

土御門「話は終わったようだな。アレイスター」

理事長「ああ。引き上げてもらって構わないよ」

詠矢「んじゃ、失礼しまっす…」

(とある街角)
結標「…(シュン)」

詠矢「っとと…」

土御門「…よ」

詠矢「ふう…さて、どうするかね」

土御門「解散かにゃあ?」

結標「仕事も終わりだし…いいんじゃないの?それで」

詠矢「んーそうさな」

詠矢「まあ病院もそう遠くねえみたいだし。歩いて戻るか」

詠矢「んじゃ…二人ともまたなー」

詠矢「…(テクテク)」

詠矢「…(ふーむ)」

詠矢「…(ようやく考えがまとまり出したな)」

詠矢「(恐らく…理事長サン最初から俺と接触する気は無かったんだろう)」

詠矢「(俺を連れて来るつもりなら、面識のある土御門サンを使いに出すほうが確実だ)」

詠矢「(わざわざ結標サンを使うのは無理がある…)」

詠矢「(となると、あえて実験をを止める気はなかった…ってことになるな)」

詠矢「(俺の能力では、レベル6が生み出せないことを見越した上でね…)」

詠矢「(実験が失敗に終われば、次に同じ事を考える奴は居なくなる)」

詠矢「(抑止としては、より効果が高いから…ってとこだろうな)」

詠矢「(まあ、いまさら確認も出来んし、口外する意味もねえから)」

詠矢「(この考えは俺の頭の中にしまっとくか…)」

土御門「…ヨメやん…考え事かにゃあ?」

詠矢「うをわっ!!びっくりしたぁ!」

詠矢「あれ、土御門サン、解散じゃなかったっけ?」

土御門「そりゃ、まだ治療中のヨメやんが心配になってねえ」

詠矢「あー、そりゃどうも…」

土御門「それより…随分と考え込んでいたみたいだけど?」

詠矢「いやいや…まあ、色々とあったんで、整理をね…」

土御門「整理…ねえ…」

詠矢「そうそう…」

土御門「それだけか?」

詠矢「…まあ」

詠矢「…あんまり突っ込まんでくれい」

土御門「…」

土御門「…ははっ」

土御門「そうだな、そうしとくか」

詠矢「…すまんね」

土御門「なあヨメやん」

詠矢「お、おう!なんでい」

土御門「病院まで送ってくぜい」

詠矢「…いやー、実は場所がよくわからなくてねえ」

詠矢「助かるぜ土御門サン」

(とある中学校)
佐天「…はあ」

下校時間はとうに過ぎた夕暮れ。佐天涙子は、下駄箱で靴を履き替えながら小さくため息をつく。

佐天「(詠矢さん…あれから会えてないなあ…)」

佐天「(あのコンビニに行っていないし…どうしちゃったんだろ)」

佐天「(会って何するってわけでもないけど…)」

佐天「(あのままっていうのもなあ…)」

佐天「…はあ…」

初春「…どうしたんですか佐天さん」

佐天「あ…、初春」

初春「なんだか最近元気ないですねえ」

佐天「えー、っと…そうでもない…よ?」

初春「そうなんですか?ここんとこ支部にも来ないですし…」

佐天「確かに行ってないなあ…。支部…?」

佐天「(そうだ、ジャッジメントなら…何か知ってるかも)」

佐天「初春。あの…さあ。詠矢さんって人、知ってる?」

初春「詠矢さんですか?はい、知ってますよ」

初春「何度かお会いしましたね。お話したことは殆どないですけど…」

佐天「やっぱりそうなんだ…。えーっと…さあ…」

佐天「今何してるのか…知らないかなあ…って…」

初春「詠矢さんですか?…確か…入院されてたみたいですよ?」

佐天「へっ、入院?どして!?」

初春「事件に巻き込まれて…大怪我されたとか…」

佐天「大怪我!?って…だっ…大丈夫なの!!」

初春「えっと、詳しいことは機密事項なんで話せないですけど…」

初春「確かもう退院されたとかで…大丈夫だと思いますよ?」

佐天「…あ…そうなんだ…。よかった…」

初春「っていうか佐天さん…、お知り合いだったんですか?」

佐天「あ…ああ、うん…ちょっとね…へへ…」

初春「…あ、佐天さん、もしかしたら…もしかして…(ニヤニヤ)」

佐天「なによその顔は…」

佐天「なんとなく言いたいことわわかるけど」

佐天「そういうのじゃありませんから!」

初春「えー、ほんとですかぁ?…」

初春「でもどっちにしろ、もう普通に学校行かれてるんじゃないですか?」

佐天「そうか…退院してるんだもんね…(またコンビニ行けば会えるかな)」

初春「あ…(ジリリリリ)予鈴鳴りましたね、ほんとに帰らないと…」

佐天「あ、ほんとだ。じゃ、とりあえず帰ろっか」

あわてて校庭に出る二人。小走りで校門に向かう。

詠矢「お、ちわす」

校門を抜けた瞬間、二人は突然声をかけられる。

佐天「あっ!…詠矢…さん?」

初春「…どもです…」

振り向くと、壁に背を預けた詠矢がそこに立っていた。

詠矢「いやどうも。ストーカーみたいな真似して悪いね」

詠矢「ちょいと佐天サンに話したいことがあってねえ」

詠矢「白井サンから学校の場所を聞いといたんだ」

初春「…えーっと…私は支部に寄らないといけないので」

初春「お先に失礼しますねー(ソソクサ)」

佐天「ちょっと!!初春!」

詠矢「…お邪魔だったかな?」

佐天「え?いえ…そんなことは…」

佐天「実は…私も会いたいなーって、思ってたとこなので…」

詠矢「へえ、そいつなうれしいねえ…」

詠矢「んじゃ、ここじゃなんだし、場所変えようか」

佐天「はい、わかりました…」

とある公園)
詠矢「ここならいいかな」

詠矢「んじゃ、あんまり時間取らせるのもアレなんで、手短に」

詠矢「さて…どっから話したもんかな…」

佐天「…」

詠矢「こないださ、佐天サンを突き放すような言い方しちゃったけど」

詠矢「ちょいと俺の方に事情があってさ」

詠矢「あんまり人と関わっちゃいけない状況でね…。佐天サンにも距離を置いてもらう必要があったんだ」

詠矢「細かいことを説明する訳にもいかなくてね、あんな言い方しちまった」

佐天「…詠矢さんの能力の事…ですか?」

詠矢「まあそうなんだけど…。詳細を話すと佐天サンに必要の無い情報を与えちゃうからねえ」

詠矢「知らないほうがいいよ」

詠矢「まあ、いずれにせよ…」

詠矢「佐天サンが俺に、一定の信頼を寄せてくれていたとしたら」

詠矢「俺のあの言葉はそれを裏切るものだったろう…、佐天サンを傷つけてしまったかもしれない」

詠矢「それは謝りたいんだ…」

詠矢「ゴメンな?」

佐天「…」

詠矢「まあ、何も気にしてないっていうんなら…」

詠矢「自意識過剰のキモイ奴、ぐらいで思ってくれていいからさ…」

佐天「…」

佐天「あの…」

佐天「わたし…難しいことはよくわからないですけど…」

佐天「詠矢さんは、わたしのことを気にかけてくれたんですよね?」

詠矢「…へ?」

詠矢「…いや…そういうことじゃない…けど…?」

佐天「初春に聞きました、何か事件に巻き込まれてたって」

佐天「それで、大怪我したって…」

詠矢「…」

佐天「もしかして私が巻き込まれるんじゃないかって…そう思って…」

詠矢「…」

詠矢「えーっと…ええとね?」

詠矢「その…断じてそうゆう事ではない…と思うんだが…?」

佐天「…ふふっ…いいですよ、じゃあ…」

佐天「私がそう思うのは自由でしょ?」

詠矢「…まあ、それはそうだけど…」

佐天「いいんですよ、それだけで…私は…」

佐天「嬉しいんです!」

詠矢「…そうなんか…、まあ、それが一番佐天サンにとって」

詠矢「一番納得できるんだったら、それでも…」

佐天「もう…また難しいこと言って…」

佐天「いいんです!こういうのは」

佐天「理屈抜き、なんですよ!」

詠矢「…」

詠矢「……」

詠矢「ははっ…そうか、『理屈抜き』か…そいつは…」



詠矢「論証出来ねえな…」

以上です。
これでこの話は完結となります。

長い間ありがとうございました。

引き締まった終わり方だったなー 乙
面白い

上条当麻にテレポートは効かないよね?

>>324
え?
完結?
え?

なぜテレポートした

え?終わり?

>>326
>>330
右手に触っていなければテレポート可能かと思っていました。

>>327
>>331
この話はここで終わりです。

>>325
>>328
>>329
ありがとうとうございます。

誰か続きよろしく

>>332
続編を誰かが書く許可はよ

>>334
続きの構想はあるのでそのうち書くと思います。
ただ、別に続編を書いて頂ける方がいるなら大歓迎です。

こんにちわ。
続きが書きあがりましたので投下します。
以下より
・タイトル
・注釈
・本編
の順で投下します。

それでは、始めさせて頂きます。

木山「(詠矢君?…見ない顔だな…)」

・禁書のSSです
・オリキャラメインです。勝手に設定した能力者が出ます。
・今回は勝手に設定した敵キャラが出ます。
・原作は読んでません。細かい設定はよくわかりません。
・アニメは全話見ました。
・キャラが崩壊してるかも知れませんがご容赦を

(とある大学 研究室)

木山「…ふう」

木山春生は、ノートパソコンのキーボードを叩いていた指を止める。

木山「今日はこんなところか…」

木山「最近は根をつめすぎているからな…。たまには早く上がるとしよう…」

彼女が荷物をまとめ始めようとしたとき、扉を軽くノックする音が響いた。

木山「はい…どうぞ…」

??「失礼します…(ガチャ)」

木山「ん?…君は…?」

詠矢「高等部1年…詠矢空希、ってもんです。はじめまして木山先生」

木山「(詠矢君?…見ない顔だな…)」

木山「もともと人の顔を覚えるのは得意でないのだが…」

木山「君の顔には全く見覚えがない。正真正銘の初対面のようだな」

詠矢「そうですね…。お会いするのは今日が初めてです」

詠矢「実は先ほどの模擬講義、受講させて頂きまして…」

木山「模擬…ああ、確か今日はオープンキャンパスだったな…」

詠矢「はい…、以前、図書館で学園に関する資料を閲覧しているときに…」

詠矢「先生の論文を読ませて頂きまして…」

木山「ほう…私の論文をね…。まだ高校生だというのに大したものだな…」

詠矢「いえいえ、『読んだ』っていうだけで、内容は殆ど理解できなかったんですけど…」

詠矢「ただ、先生の専攻している分野に、とても興味がありまして…」

詠矢「今回の講義に参加させて頂きました」

木山「私の専攻?大脳生理学にかね…?」

詠矢「あ、それもなんですけど…やっぱり…」

木山「…なるほど…何のことかはおおよそわかった…」

詠矢「えー、まあ…AIM拡散力場についてなんですが…」

木山「やはりそうか…アレに興味を持つ者は多いからな…」

木山「どんな風に理解してるかは知らないが」

木山「能力者が無自覚に放出している微弱な力場…」

木山「AIM拡散力場とは、それ以上でもそれ以下でもないぞ?」

詠矢「ええ、わかってますよ…『基本』はそうですよね?」

詠矢「能力者が多数存在ずるこの学園都市では…」

詠矢「その微弱な力場が積層し、強大な力を生む可能性もあると…」

詠矢「先生の論文にはそうも書かれていました」

木山「…まったく…、君のような手合いは多くてね…」

木山「あれの事を、膨大で無尽蔵なエネルギー源と誤解しているようだが…」

木山「…力の積層には、能力者間で精巧なネットワークを築く必要がある」

木山「強大な力を持つ可能性があると言うだけで…」

木山「そう簡単なものではないぞ?」

詠矢「…いえ」

詠矢「実際に…それが実行されたことが有る以上…」

詠矢「『可能性』だけでは済まされないのではないでしょうか?」

木山「…なに?」

木山「……何を知っている…」

詠矢「幻想御手(レベルアッパー)事件…。都市伝説としては結構有名な話ですよね?」

木山「質問しているのは私の方だ…。君のブラフを含んだ台詞は気に入らないな」

木山「知っていることを話したまえ」

詠矢「…」

詠矢「これは失礼しました…」

詠矢「ちょいと、友人に恵まれていまして」

詠矢「都市伝説を裏付けるぐらいの情報は、結構入ってくるんですよね…」

詠矢「当の事件の顛末に関しては、一通り聞いています」

詠矢「誰が何のために起こしたのか…ってことも含めてです」

木山「ほう…そこまで知っているのか」

木山「で…その首謀者である私に、何の用だね?」

木山「そろそろ本題に入ってもらえると助かるが…」

詠矢「…わかりました…では早速」

詠矢「木山先生に、ご意見を伺いたいことがあります」

詠矢「通常では制御することが難しいAIM拡散力場ですが…」

詠矢「能力とは別の手段で干渉し、制御することは可能でしょうか?」

木山「別の方法?」

木山「能力によって生み出された力に…他のどんな方法で干渉しようというのかね?」

詠矢「…魔術ですよ」

木山「…魔術…?」

詠矢「…先日、偶然にもその力に遭遇しました」

詠矢「科学とは全く原理の違う力です」

詠矢「あらゆる物理法則を無視して、現象だけを引き起こすことが出来るようです」

詠矢「そんな力が、AIM拡散力場に干渉するこが出来たとしたら」

詠矢「脅威ではないでしょうか?」

木山「…また、唐突な話の展開だな」

木山「あいにく魔術には専門外なのでわからないがね…」

木山「まず、魔術の存在を認めろというのが、私には無理な話だ」

木山「ただ…話によれは、能力と魔術は相容れない力だと言われている」

木山「普通に考えれば、それが『可能だ』という結論には至らないはずだ」

詠矢「やはりそうですか…」

詠矢「ですが…一つだけ…希薄ですが根拠があります」

木山「…聞かせてくれるかね?」

詠矢「…能力と魔術…、双方に対抗出来る『能力』があるとすれば…どうでしょう?」

詠矢「それも、二つも…です」

木山「…」

詠矢「双方が全く異質な力であれば…そのような能力は存在しないのでは?…と思いまして」

木山「…」

木山「あくまで噂のレベルだが…」

木山「魔術と能力、その双方を打ち消す能力があるという話は…聞いたことがあるな」

木山「それが実在するということかね?」

詠矢「ええ…その存在をこの目で確認しました…」

詠矢「その能力が、二つうちの一つで…」

詠矢「もう一つは…『論証によって相手の能力を変質する力』…」

詠矢「俺…、じゃなくて…」

詠矢「私が持っている能力です」

木山「君が…か」

詠矢「はい…。残念ながら、今ここでご披露することはできないですけどね」

詠矢「この二つの能力は、能力にも魔術にも効果を発揮します」

木山「…それは興味深いな」

詠矢「いかがでしょう…私の知っている情報と、考えたことはこれで全てです」

詠矢「いきなり全てを信じてくださいというのは無理でしょうけど」

詠矢「今言ったことが全て真実であると仮定した場合の」

詠矢「先生のご意見をお伺いしたいです…」

木山「…ふむ」

木山「前提が仮定だらけでは、科学的な論考は不可能だ」

木山「ただ、論考ではなく、あくまで私の私的な感想であれば…答えられるが」

木山「それでもいいかね?」

詠矢「ええ、もちろんです」

木山「…いいだろう」

木山「科学と魔術、双方に対抗する能力が存在するというだけでは」

木山「お互いの相違性を否定することは難しいだろう」

木山「だが、定義に穴を開ける一つの可能性であることは…事実だ」

木山「AIM拡散力場に対する、魔術による干渉…」

木山「通常ならありえないその行為だが…、君が得た情報を加味すれば…」

木山「わずかではあるが…可能性は生まれるかも知れないな…」

詠矢「…ありがとうございます」

詠矢「これは、私がたた妄想したことでして…ぜひ専門家の意見をお聞きしたかったのですよ」

木山「変わった男だな…君は」

木山「妄想の裏づけを取ってどうしようというのだ?」

詠矢「…もし、この干渉が実際に起こせるなら。結構問題だと思うんですよね」

詠矢「魔術側と学園都市は対立関係にあるようですし…」

詠矢「AIM拡散力場は、格好の攻撃対象になるでしょう」

詠矢「出来る可能性があるなら、事前に対策を考えておく必要があると…思いましてね」

木山「対策?…何か手があるというのかね?」

詠矢「いえいえ、それはこれから考えるんですけど…」

詠矢「とにかく、貴重なご意見、ありがとうございました」

木山「では…、私からも質問していいかな?」

詠矢「あ…はい。いいですよ?」

木山「私は、色々なことに関わり、巻き込まれるうち、一種の人間不信になっているのかもしれんが…」

木山「君のような人間を見ると、どうしても他意を感じてしまうのだ」

木山「詠矢君…君の意図は何だね?」

詠矢「…」

詠矢「私は…ですね。ここに来てまだ日が浅いんですけど…」

詠矢「気に入っちゃいましてね、この学園都市が」

詠矢「友達も沢山出来ましたし、結構…守りたいんですよ。ここを」

詠矢「そのために…微力ながら何か出来ないかなって思いまして」

詠矢「それだけですよ…ええ、マジでそんだけ…です」

木山「…うむ」

木山「…真実だと仮定して聞いておくよ」

詠矢「ありがとうございます」

詠矢「それでは…そろそろ失礼します」

木山「ああ…」

詠矢「…」

木山「…」

詠矢「…あっ…」

木山「どうしたね?」

詠矢「先生…あと一つだけ…質問いいですか?」

(とあるコンビニ)

詠矢「(ウィーン)よっと…上条サンお待たせー」

詠矢「交代時間だぜっと…お?」

御坂「ちょっと、アンタおつり間違えてるじゃないの!」

上条「え?っと…あれ?」

上条「あ、これは申し訳ありませんお客様…」

御坂「なにやってんのよ!その程度のこと出来ないわけ!?」

上条「…まことに申し訳ありませんでした…こちらになります…」

御坂「…何よ…その不満そうな顔は…」

上条「いえいえ…何も…」

御坂「…(ジロッ)」

上条「…(ムスッ)」

御坂「…」

上条「…」

御坂「…アンタが間違えたのが悪いんでしょうか!!」

上条「ちょっと間違えただけだろ!大騒ぎすんなよ!!」

詠矢「(あー、相変わらずやってるなあ…)」

詠矢「(っていうか、御坂サンも別の店行けばいいのに)」

詠矢「(わざわざケンカするために来るかなあ)」

詠矢「(まあ、そりゃまあアレなんだろうけどさ…)」

詠矢「(…そろそろ何とかしなきゃいかんかな?)」

詠矢「おーい!!上条サン!!」

上条「お、詠矢か!。そろそろ時間だよな?」

御坂「あ…アンタ…詠矢…」

詠矢「やあ御坂サン。最近良く会うねえ…」

詠矢「御贔屓にして頂いてどうもー」

上条「ん?…御坂、お前そんなしょっちゅう来てるのか?」

御坂「えっ!?って…その…帰り道だし…」

詠矢「そうなんかな?でもさあ…」

詠矢「俺が店番してるとすぐ帰っちまうよねえ…」

御坂「…っ!!」

上条「御坂…お前…」

詠矢「上条サンのシフト表でもお渡ししときましょうかね?」

御坂「いっ…いらないわよそんなもの!!」

詠矢「さいですかー」

御坂「…帰る!!」

御坂「…(ウィーン)」

詠矢「…なんだかねえ…」

上条「…あいつ…」

詠矢「どした、上条サン」

上条「俺が居るからこの店に来てるんだ…」

詠矢「お?…おう、そうみたいだな」

上条「わざわざ、俺に嫌がらせするために…」

上条「意外と根に持つタイプなんだな…」

詠矢「…」

詠矢「……」

詠矢「期待を裏切らないスペックだな…上条サン」

上条「…え?何の話だそりゃ…」

土御門「(ウィーン)どした…御坂が耳まで真っ赤にして出てきたけど…」

土御門「なんかあったのかにゃあ?」

詠矢「お、土御門サンおひさしーって…」

詠矢「って、まあ、いろいろと…ねえ?」

上条「いや、土御門、俺にもよくわからんのだか…」

土御門「…(チラッ)」

詠矢「…(コクコク)」

土御門「…やっぱりカミやんが原因かにゃあ…」

上条「な、なんだよ!何で俺が悪いんだよ!」

土御門「まあまあ、そんな話するために来たんじゃないんだぜい」

土御門「カミやん、ちょっと話があるんだが…時間いいかい?」

上条「ああ…もうバイトは終わりだから…いいぜ?」

詠矢「ん、そっか…じゃあとっとと支度するから行ってきなー」

土御門「…そうだ…な、ヨメやんにも聞いといてもらったほうがいいかな…」

詠矢「ん?俺もか?…土御門サンの話ってことは…いろいろヤバそうだねえ」

土御門「まあ、無理にとは言わんがねえ…」

詠矢「なに言ってんだよ、そんな面白そうな話、聞かねえ手はねえっての」

詠矢「是非にって言いたいとこだが…俺はこれからバイトでねえ…」

土御門「いいぜ、じゃあ夜に俺の部屋に集合だ…」

土御門「妹のお茶でもご馳走するぜい」

詠矢「おお、噂の属性数え役満の妹さんか…そりゃぜひお会いしたいな」

上条「って、いいのか詠矢。また自分から巻き込まれるようなこと…」

詠矢「巻き込まれる時は、知ってようがいまいが同じさ」

詠矢「どうせなら、知識得ておいたほうがいいさね」

上条「相変わらずだな…お前は…」

客「あのー…」

詠矢「あ、失礼しました!!」

上条「んじゃ、一旦解散だ…また夜にな」

(土御門の部屋 夜半)

舞夏「はーい、お茶だぞー」

土御門「すまんな。舞夏」

上条「お、ありがとな」

詠矢「ありがとさんっす。妹サン」

舞夏「なになに、お気になさらずー」

舞夏「でわ、ごゆっくりとですよー」

詠矢「ありゃーまあ、かわいい妹サンだねえ…」

土御門「褒めてくれるのはうれしいがねえ」

土御門「命が惜しかったら、それ以上の感情は持つなよ」

詠矢「…目が笑ってないんですけど…」

上条「言うことを聞いといたほうがいいぞ詠矢…」

上条「土御門は本気だ…」

詠矢「…えっと、あ、そうそう、話ってなんだ?土御門サン?」

土御門「…まあいい、本題に移ろうか…」

土御門「実はな…魔術側に不穏な動きがあってな」

土御門「ある術者が、一月ほど前から行方不明になっている…」

上条「行方不明…?」

土御門「ああ、そいつがどうやら、学園都市に向かったらしい…」

詠矢「魔術側っても、範囲が広いな…」

詠矢「また十字教絡みかい?」

土御門「いや…今回は別勢力だ…。俺の古巣からの情報でな…」

土御門「相手の名は『真々田 創(ママダ ツクル)』フリーの陰陽師だ…」

土御門「腕はかなり立つらしいんだが…どこの組織にも所属していないらしくてな」

土御門「詳細の情報はわかっていないんだ…」

上条「こっちに向かった理由とか目的とか、わかってないのか?」

土御門「ああ。そいつもわかってない…。そもそも、学園都市に来てるってのが、確定情報じゃないしな」

土御門「何も無ければそれでいいんだが…」

土御門「とりあえず、警戒はしといた方と思ってね」

詠矢「なるほどねえ…。ってまあ、警戒とか言っても」

詠矢「なんともしようがねえわけだが…」

上条「知らないよりはマシだって言ってたのはお前だろ?」

詠矢「あ、そうだったよな…失礼しました」

上条「話はわかった、土御門。俺のほうでも気をつけとく」

上条「何かあったら、お前に報告すればいいんだな?」

土御門「術者がカミやんに接触する可能性も高い」

土御門「よろしく頼むぜい」

土御門「ヨメやんもよろしくだぜい」

詠矢「ん、わかった…」

詠矢「俺みたいな新参者をアテにしてくれて嬉しいねえ」

詠矢「出来る限りのことはさせてもらうぜ」

土御門「よし、話は以上だ…時間とらせて悪いにゃあ…」

詠矢「いやいや、こんな美味いお茶を頂けるなら(ズズッ)」

詠矢「いつでも呼んでくだせえ」

上条「うん…ほんとに美味いよなこれ…(ズズッ)」

土御門「おお、そうか…さすが舞夏だな」

土御門「お代わり持ってこさせるぜい」

土御門「おーい、舞夏ー!」

舞夏「はい、なんでしょうかー」

詠矢「(しかし、このタイミングで魔術側の話か…)」

詠矢「(まさかとは思うが…まさか…ねえ)」

短いですが、以上となります。

それではまた。

真々田 創は他のスレにも登場できるような不思議なスペックなのかね
それとも使い捨て程度か

こんばんわ。
書きあがりましたので続きを投下します。

(ジャッジメント177支部)

詠矢「…」

白井「…なんですの」

白井「なんであなたがここにいるんですの!!」

詠矢「ん?いや、ちょっと遊びに来たんだけどさ…」

白井「ここは遊びに来るようなところではございません!!」

詠矢「えー、だって御坂サンだって遊びに来てるんじゃねえの」

御坂「えっ…?」

白井「いやそれは…その…」

白井「お姉さまは特別です!!」

詠矢「じゃあいいじゃん、俺も特別で」

白井「あなたとお姉さまが同じ扱いになるとでも?」

詠矢「そういう差別は良くないなあ…」

詠矢「それにさ、最初にここに来たときに、佐天サンが」

詠矢「思いっきり『遊びに来た』って言ってなかったけ?」

詠矢「ってことは、別に関係者以外立入り禁止でもないわけっしょ?」

白井「…」

白井「余計なこと覚えてますわね…」

詠矢「俺はつまんないことは覚えてるんだよ」

詠矢「まあいいじゃん。ここに来ると色々情報が手に入ってねえ」

詠矢「俺としてはかなりありがたいわけですよ」

詠矢「ま、ちょっと大目に見てくれない?」

詠矢「なんかあったときには、バッチリ協力させてもらうしさ」

白井「…」

白井「仕方ありません…確かに、前例が無いことではありませんし…」

初春「(…すごい…白井さんが折れた…)」

詠矢「やーどうもありがとさん」

詠矢「今度来るときはお菓子でも持ってくるよ」

白井「…ご自由に…」

詠矢「んじゃ、自由にするぜー」

詠矢「あ、そうそう、初春…サンだっけ?」

初春「あ、はい…なんですか?」

詠矢「パソコン、得意なんだってねえ…」

初春「ええ…まあ…そこそこ、使えますけど…何か?」

詠矢「いやねえ…ネットでいろいろと検索してるんだけどさあ…」

詠矢「イマイチ必要な情報が集まらなくてねえ…」

詠矢「なんか検索のコツとかあるのかなって」

初春「コツ…ですか?えっと、普通の検索サイト使っても、得られる情報はたいしたことないので…」

初春「巡回系のツールを使ってですね…(カタカタ)」

初春「あ、集めたい情報って、何かあります?」

詠矢「そうだなあ…例えば…」

詠矢「『魔術』とかかな…?」

初春「え?魔術…ですか?…まあ…調べられなくは…ないですけど…?」

白井「ちょっと詠矢さん…」

白井「来てもいいとは申し上げましたが…」

白井「職務を妨害していいとは言いませんでしたわよ?」

詠矢「…コイツは失礼…」

詠矢「そうだよなあ…ジャッジメントさんは忙しいよなあ」

詠矢「(やっぱ簡単に情報は手に入らんか…)」

詠矢「(ま、ここで手に入るような話なら、土御門サンのほうでも掴んでるだろ)」

詠矢「(俺はもう少し気長に構えるかね…)」

白井「初春、あなたも簡単に乗せられるんじゃありませんことよ?」

初春「え…はい、です…」

白井「まったく…(ピピピピピ)あら…携帯が…(ピッ)はい」

白井「あら…そちらはいかがですの?…ええ…はい…」

白井「わかりました…すぐに向かいますわ!」

白井「(ピッ)固法先輩からですわ。先ほど現場に向かった事件…」

白井「面倒なことになったみたいですわ。応援に行って参ります」

白井「初春…、バックアップよろしくですわ!」

初春「はい!!」

白井「お姉さま!しばしお待ちを。すぐ戻って参りますので」

御坂「あ、うん…気をつけて…ね?」

白井「それでは失礼…(シュン)」

詠矢「はー、ほんと忙しいんだねえ…」

御坂「アンタはヒマそうね?」

詠矢「まあ、そりゃな…」

詠矢「バイトが無ければ、特になんかあるって訳でもないんでね」

詠矢「んで、御坂サンもなんで残ってるのかな?」

御坂「黒子待ちよ…」

御坂「なんでも、新しいジェラートの店が出来たんで…」

御坂「一緒に行こうって誘われたの」

詠矢「へえ…今更だけど…普通だねえ…」

御坂「普通じゃいけない?」

詠矢「いやいや、普通が一番っしょ。やっぱ」

御坂「…」

詠矢「(…現在部屋には3人…。ただし一人は職務中)」

詠矢「(事実上二人っきりか…これは…チャンスじゃね?)」

詠矢「…」

詠矢「そういやあさあ…今更だけど」

詠矢「御坂サンってかわいいよなあ…」

御坂「…何よいきなり…」

詠矢「まあ、かわいいっていうよりキレイ系なのかな?」

御坂「なんか…アンタに言われると褒められてるような気がしないわね…」

詠矢「褒めてんじゃないよ。これは客観的事実だ」

御坂「(なんか引っかかるわね…何考えてるんだか…)」

詠矢「外見もいいし、頭もいいって聞くし、常盤台のお嬢様だろ?」

詠矢「オマケにレベル5の第三位だ」

詠矢「御坂サンて相当スペック高いよな?」

御坂「どうだかわからないけど…。もしそうだとして」

御坂「それがどうかしたの?」

詠矢「いやいや、だったらさあ…」

詠矢「彼氏とかいるのかなあって…」

御坂「…いないわよ。そんなの…」

詠矢「おお、そうなんか」

詠矢「やっぱりアレかね、スペック高すぎて男どもが寄り付かないのかねえ…?」

詠矢「でもさあ…こう、普通の女の子としてはさ…」

詠矢「気になる人、とかいるんじゃない?」

御坂「えっ?…いっ、いないわよ…そんなの…」

詠矢「(ここだけ律儀にどもるんだな…)」

詠矢「そんなもんかねえ…」

詠矢「やっぱ御坂サンレベルになると、望みも高いのかな?」

御坂「別にそういうわけじゃないけど…」

御坂「だいたい、なんでアンタにそんな話しなきゃいけないのよ!!」

詠矢「そりゃまあそうだねえ…」

詠矢「じゃあさあ、ちょっとテストしてみねえ?」

御坂「テスト?」

詠矢「そうそう、御坂サンがどれぐらい恋愛志向が強いかっていう」

詠矢「心理テストみたいないもんかな?」

御坂「また胡散臭い話ね…」

詠矢「相変わらず信用ねえなあ…」

御坂「アンタが言うと特に信憑性が無いわ」

詠矢「御坂サーン…俺の能力を忘れたわけじゃねえよな?」

御坂「え?でもアンタの能力って、能力にしか効果がないんでしょ?」

詠矢「うん、それはそうなんだけどね…」

詠矢「要するに相手の思考を揺さぶるのが基本だからさ」

詠矢「一種の心理学なんですよ」

詠矢「これでも、結構勉強してるんだぜ?」

御坂「へえ…」

御坂「(…まあ、あながちウソでもなさそうね…)」

詠矢「御坂サンにはさあ…最初に能力を試させてもらった恩もあるし」

詠矢「もしなんかお悩みがあるなら、役に立てればと思ってねえ…」

詠矢「どうかな?」

御坂「…」

御坂「ま、いいわよ…」

御坂「黒子が帰ってくるまではヒマだし…」

詠矢「おうおう、乗ってくれるか」

詠矢「んじゃ早速、目を閉じてくれるかい?」

詠矢「その方が集中出来るからな」

御坂「ん…」

詠矢「んじゃ行くぜ…」

詠矢「じゃあまず、御坂サンの…気になる人がいるなら」

詠矢「その人をイメージしてくれ」

詠矢「最初が肝心なんでね、ここは素直に浮かんだ人を設定してくれよ?」

御坂「…」

詠矢「出来たかな?」

御坂「…(コク)」

詠矢「よし、じゃあ後は」

詠矢「俺の言うとおり状況を想像してくれればいいから」

御坂「…」

詠矢「いま、御坂サンとその人の関係は」

詠矢「普通に話せるレベルの友人だが…、それ以上踏み出せてない」

詠矢「お互いに、特別な認識は持っていない関係だ」

御坂「…」

詠矢「そんな感じで、ある意味安定してたんだが…」

詠矢「突然、相手に恋人が出来てしまった」

御坂「…!」

詠矢「…(お、反応アリか?)」

詠矢「それはもう非の打ち所が無いカップルで」

詠矢「周囲からも祝福され、二人は幸せそうだ」

詠矢「自分には入り込む余地も無い…」

御坂「…」

詠矢「自分はただ、二人の関係が進展していくのを」

詠矢「指をくわえて見ているしかない…」

詠矢「そんなあるとき、街中でその二人にばったり出くわす」

御坂「…(ビクッ)」

詠矢「だが、二人はこちらに気づいていない」

詠矢「無視しているわけではなく」

詠矢「単純にお互いの会話が楽しくて、御坂サンのことが意識に入ってこない」

御坂「……」

詠矢「正面から、二人は近づいてくる」

詠矢「自分との距離が縮まっていく」

詠矢「二人は目の前を通り過ぎ、やがてすれ違う」

詠矢「それでも二人は自分に気づかない」

御坂「…」

詠矢「二人は、そのままゆっくりと、しかし確実に遠ざかっていく」

詠矢「距離が、開く。遠くへ…」

御坂「…っ!!」

御坂「……」

御坂「……(ジワッ)」

詠矢「(うおっ!泣いた!?)」

詠矢「あー!はい、はい!終わり!!しゅーりょー!!」

御坂「……(グスッ)」

詠矢「(あーびっくりした。まさか泣くとは思わんかった)」

詠矢「御坂サン…アレだね。かなり恋愛志向が強いねえ…」

詠矢「普段はそう興味も無いけど、一旦思うと一途なタイプかな?」

御坂「…そうなの?」

詠矢「そうでなきゃあ、あの程度の想像でそこまでの反応は出ないわなあ」

御坂「…う…」

詠矢「なのでまあ、もし気になるお相手がいるんならさ」

詠矢「もっと素直に自分の思いを告げたほうがいいと思うんだよねえ」

御坂「…でも」

御坂「…素直って…言われても…」

詠矢「そうなんだよな。素直になれって、実際には結構難しいんだよなあ」

詠矢「じゃあ具体的なアドバイスでもしてみようかな?」

御坂「…」

詠矢「コミニケーションの基本は会話だからね」

詠矢「とりあえず話し方が重要だねえ」

詠矢「まず相手と会話するときに」

詠矢「自分の口から出る言葉を、一度飲み込むんだよ」

詠矢「それがどんな言葉でもだ」

御坂「…(コク)」

詠矢「で、その飲んだ言葉をもう一度反芻して」

詠矢「本当に自分が相手に対して何を要求しているのか、どうして欲しいのか」

詠矢「それをゆっくり考えてから言葉にするんだ」

詠矢「そうすれば、比較的誤解なく自分の意思が相手に伝わると思うんだよね」

御坂「…うん…」

御坂「…よく…わかんないけど」

詠矢「まあ、大丈夫だよ…、御坂サンなら出来るって」

詠矢「さあて、あんまり長居すると白井サンに怒られるし」

詠矢「そろそろおいとましますかねえ…」

詠矢「えーっと、あそうだ、今日はバイトだっけかな?(ポチポチ)」

詠矢「あ、明日か…今日は上条サンのシフトだったな…」

詠矢「今日は…夜まで一人だなあ…」

御坂「…」

詠矢「まあいいや、俺はその辺ぶらついて帰るかな…」

詠矢「んじゃ御坂サンも初春サンもまたなー」

御坂「…」

初春「…あ、はい、さよなら…です」

御坂「…」

初春「…」

白井「(シュン)…お待たせしました、お姉さま!」

白井「事件の方は、片付けてまいりましたわよ!…?」

御坂「…」

白井「どうなさいました、お姉さま?」

御坂「…ゴメン黒子…今日は帰る…わ」

御坂「また今度埋め合わせするから…ね?」

御坂「じゃ…」

白井「あ、お姉さま!!」

白井「なんですの…、急いで片付けてきたというのに…」

白井「つれないですわねえ…」

初春「…」

白井「どうしました初春?何かありましたの?」

初春「いえ…ただ…」

白井「…なんですの?」

初春「見事なリーディングを見ました…」

白井「…は?リーディング?」

(とある公園)

詠矢「じゅうーいち、じゅうーに…」

街をぶらついていた詠矢は、とある公園にある高鉄棒を見つけ、懸垂をしていた。

詠矢「じゅうーきゅう、にーじゅう…」

詠矢「…ん…く…、にーじゅいち…にじゅに…」

詠矢「よっと…ふう…」

限界を感じた詠矢は、手を離して鉄棒から飛び降りる。

詠矢「まあ、こんなもんか…あんまりやりすぎるのもアレだしな」

詠矢「お、腹筋ベンチもあるな…ついでにやってくか…」

ベンチに体を横たえ、膝を立てると黙々と腹筋を始める。

詠矢「…」

詠矢「…んっと…」

詠矢「よっ…」

佐天「…詠矢…さん?」

詠矢「ん…お?…おろ…佐天サン?」

頭を上下したまま見上げた詠矢の視線に、見知った顔が写っていた。

詠矢「こいつは…奇遇…だねえ…っと…」

佐天「わあ…もしかしてトレーニングですか?」

詠矢「ん…まあ…ね…それなりに…やっとか…ないと…よっ…ねえ…」

詠矢「あ、ゴメンゴメン…もうちょっとで…ワンセット…終わるから…」

詠矢「よいしょっと!…ふう…お待たせ…」

佐天「あ、いえいえ、お邪魔じゃなかったですか?」

詠矢「ん、いや、適当にやってただけだから大丈夫」

詠矢「改めまして、こんちわ…。おひさしだねえ…」

佐天「あ、はい…確かにしばらくお会いしてなかったですねえ」

詠矢「ん…、で、佐天サンなんでここに?散歩かな?」

佐天「えーっと…、ふふっ、実は私もトレーニングなんですよ?」

詠矢「へえ…佐天サンがかい?」

佐天「詠矢さんみたいな体のじゃないんですけどね…」

佐天「能力のイメージトレーニングですよ」

詠矢「…能力の…ねえ…なんでまたこんな所で?」

佐天「…ここは、私が能力の形を見た場所なんです…」

佐天「ここに来れば、そのころのイメージを思い出せるかねって…」

佐天「効果があるかどうか、わからないんですけどね」

詠矢「(レベルアッパー事件か…、思い出したくないこともあるだろうに…)」

詠矢「(何とか能力へのきっかけを作ろうと、一生懸命なんだな…)」

詠矢「へえ…頑張ってるんだねえ…」

佐天「はい、それはももう、頑張ってますよ!」

佐天「…詠矢さんがきっかけを作ってくれたおかげです…よ?」

詠矢「…そいつは…どうも」

詠矢「んじゃ、俺のほうこそ佐天サンの邪魔しちゃいけないんで…」

詠矢「とっとと帰りますかねえ」

佐天「えー、そんなこと言わないで下さいよ!」

佐天「せっかくお会いしたんですから、ちょっとお話していきません?」

詠矢「…」

詠矢「…ああ、そっか…そりゃ、喜んで」

佐天「じゃあ…どこかベンチでも…あれ?」

佐天「誰…だろう…あの人…」

詠矢「ん?」

佐天の声につられ、詠矢が移した目線に人影が写った。

それは、長い金髪を髪留めでまとめ、透き通るような白い肌を持った少女だった。

佐天「あ、あれ…もしかして…『ソフィア』ですかね?」

詠矢「…『ソフィア』…って…ああ、あの…『神拳』の?」

佐天「あ、詠矢さんもご存知でしたか?」

詠矢「そりゃああの有名な格ゲーのキャラだからね…」

詠矢「まあ確かに、服装から風貌までそっくりだな…」

佐天「そうですよねえ…コスプレ?…にしてはちょっと…」」

詠矢「…似すぎてるな…ていうか殆どそのまんまじゃねえか…」

佐天「ほんと…ですね…」

詠矢「(何だこの猛烈な違和感は…。周囲の風景から完全に浮いてる)」

詠矢「(現実感がまるで無い…これは、まるで…)」

佐天「…ゲームの世界から抜け出してきたみたいな…」

詠矢「…だな」

詠矢「ちょっと確かめてくるか…」

佐天「確かめるって…何を…あ、詠矢さん!?」

おもむろに立ち上がると、詠矢はそのまま少女の傍まで移動する。

詠矢「やあ、こんちわ。ソフィアサンって呼べばいいのかな」

少女「…(コク)」

詠矢「なるほど、お話は出来るみたいだねえ…」

詠矢「(なら、ちょいと試してみるか…)」

詠矢「…ソフィアサン…、お美しいねえ…」

詠矢「しかし…俺には綺麗過ぎるように見えるな」

詠矢「メイクや服装、髪形をいくら変えても」

詠矢「人間が本来持っている顔の配置、ボディバランスを変えるには限界がある」

詠矢「あんたが持っている美しさは、完全にそれを逸脱してるんだよねえ…」

詠矢「恐らく、整形したってその姿をかなえるのは不可能だろう」

詠矢「じゃあ、その『美』はどこから生み出されてるんだろうねえ…」

少女「…」

詠矢「現実的には無理なら…異能の力ならどうかな?」

詠矢「あんたのその姿は、何か特別な力によって生み出されてるんじゃないのかい?」

少女「…」

詠矢「(さあ…どうだ?)」

少女「…」

少女「…ふふっ(ニコリ)」

少女は穏やかな笑みを浮かべると、滑るような足取りで何処かヘと走り去る。

詠矢「ちょ…っと待ってくれよ!!」

慌てて後を追う詠矢。だが、その距離を詰めることは出来ない。

詠矢「くそっ!!速いっての!」

何とか離されまいと走る詠矢。だが、直後。

詠矢「なっ!」

詠矢は驚愕の光景に思わず声を上げた。

少女の姿が、空間に溶けるように消えていく。

詠矢「…!!」

思考が止まり、躊躇している間に少女の姿は完全に消失した。

詠矢「(幻覚?…いや、幻術ってヤツか?)」

詠矢「(どうなってるんだ…判断のしようがねえ)」

佐天「はあっ…はあ…詠矢さん!」

同じく、追いかけてきた佐天が、息を切らせながら近づいてきた。

佐天「ねえ詠矢さん!!見ました今の!」

佐天「消えちゃいましたよね!!」

詠矢「ああ、消えたな…見事に」

佐天「これはすごいですよお!ついに見ちゃいました!!」

詠矢「…何の話だい?」

佐天「最近、特に話題になってる都市伝説があるんですよ!」

佐天「『神拳』のソフィアが、何かの能力の影響で実体化してるって!」

佐天「複数の能力者が干渉しあって偶然姿が作り上げられてるとか」

佐天「いろんな噂があるんですよ!!」

詠矢「…ああ、ネットで確かそんな話を見たな…」

佐天「でしょでしょ?何人も目撃者の証言が上がってるんですよ!!」

佐天「きゃー!!私も目撃者になっちゃいました!!」

詠矢「…目撃者…ねえ…」

詠矢「(なんか…派手にヤバそうな雰囲気だな…)」

詠矢「(何が起こってるんだかサッパリだ)」

詠矢「(…後で土御門サンに報告しとくか…)」

詠矢「…」

佐天「…?詠矢…さん?」

詠矢「佐天サン…帰ろう…送ってくぜ…」

佐天「へ?…え…ええ…」

以上となります。
それではまた。

うおお更新乙
なんだか分からないけど詠矢さんって上条さんよりも好感持てるんだよなー

>>371
使っていただけるかどうかはわかりませんが、それなりに設定の詰まったキャラではあります。

>>397
ありがとうございます。そう言って頂けるととても嬉しいです。

こんばんわ。
遅くなりましたが書き上がりましたので投下します。

(とあるネットカフェ)

??「ふうむ}

??「だいぶ広がってきてるねえ…(カタカタ)」

??「お、またスレが立ってる」

??「ここは煽っとかないとね!(カタカタ)」

??「さあて、だいぶ時間もかけたし」

??「そろそろ環境も整ってきたと言えるね」

??「式に任せるのも限界かもねぇ…」

??「僕自身が動く時期かな?」

??「…うーん」

??「まあここは慎重に」

??「用意してきた最後の一枚を放ってからにしましょうか…(チャキ)」

店員「(コンコン)お待たせしましたー、オムライスです」

??「あーどうも。ありがとう…」

店員「はい、こちらになります…では…」

??「ふむ…最近は(ムグ)…ネカフェの料理も質が上がったねえ…(ムグ)」

??「さあ、偉大な芸術の完成までもう少しだ…」

??「頑張らないとねえ…(カタカタ)(ムグ)」

(とあるコンビニ)

上条「…」

御坂「…」

上条「(なんかさっきからすげえ見られてるんですけど…)」

御坂「(ううぅ…勢いで来ちゃったけどどうしよう…)」

上条「…」

御坂「…」

上条「(俺、またなんかやらかしたか?気に入らないことでもしたっけか…)」

御坂「(な、なんか話す事ないかな…えーっと…えっと…)」

上条「…」

御坂「…」

上条「…なあ、御坂」

御坂「えっ…何?」

上条「俺、またなんかやったか?」

御坂「…へ?」

上条「なんか、言いにくそうにしてるからさ…」

上条「俺がまたなんかやらかして…珍しく文句言うのを遠慮してるのかなって…」

御坂「…ち、違うわよ!なんでアンタはいつもそうやって…」

御坂「(あっ…飲み込むんだっけ…ん…)」

上条「…どした?御坂…」

御坂「(で…考える…えと…)」

御坂「(…そうだ…アイツの話聞いてる時に、急に会いたくなって…それで…)」

上条「…?」

御坂「違うの…文句とかそんなんじゃなくて…」

御坂「なんか…急にアンタに会いたくなって…さ…」

上条「…」

上条「…俺に?」

上条「(あれ?なんかいつもと反応が違うな…)」

上条「(こういう場合はどう返せばいいんだろうか…)」

上条「…えーっと…会いたいって…そりゃまたなんでだよ…」

御坂「なんでって…理由なんかない…わよ…」

上条「…ねえって…よくわかんねえな…」

御坂「会いに来ちゃ…いけない?」

上条「…」

上条「まあ…別に、嫌ってわけじゃねえけど…」

御坂「…ならいいじゃない」

上条「まあな…」

御坂「…」

上条「…」

御坂「(か、会話が続かない!どうしよう…)」

上条「(なんだろう…こう、色々と裏を感じてしまうのは被害妄想だろうか…)」

御坂「…」

上条「…」

御坂「あ、あのさあ!!」

上条「(ビクッ)お、おう。なんだ?」

御坂「なんか…この近くで、ジェラートのお店が出来たらしいんだけど…」

御坂「食べに行かない?」

上条「…」

上条「あー、あの、御坂センセイ?」

上条「もう終わったと思ってたのですが…」

上条「罰ゲームってまだ続行中でしたっけ?」

御坂「…へ?」

御坂「……あんたねえ…、罰ゲームって私と…あっ…」

御坂「…」

御坂「…んっ(ゴクン)」

上条「(何やってんだこいつは…)」

御坂「…」

御坂「わ、私は…ただ…」

御坂「アンタと行きたい…のよ…」

御坂「ダメ?(ジト)」

上条「…」

上条「(あれ?…)」

上条「(なんか可愛くないか?…コイツ…)」

上条「…まあ…いいぜ…。別に…断る理由もねえし…」

御坂「…ありがと…」

上条「ただ…俺まだバイトだからさ…」

御坂「それは…わかってる…。今日は…夕方までなんでしょ?あとどれくらい?」

上条「えーっと…、あと一時間ちょい…ってとこかな?」

御坂「じゃあ…、待たせてもらって…いい?」

上条「ああ…まあ…いいぜ。そっちに喫茶コーナーに…座ってればいいかと…」

御坂「うん…。あ、っと…この『からあげサン』ってやつもらえる?」

上条「…ん?これか?…えっと…210円になります…」

御坂「じゃあはい…(チャラ)…さすがに何か買わないとマズイでしょ?」

上条「…まいどありー」

店の隅にあるカウンター席に腰掛けると、御坂は唐翌揚げを口に運びながら携帯を開く。

御坂「(えーっと…どこだっけかな…うろ覚えだから店の位置を確認しとかないと…)」

御坂「…(ポチポチ)」

御坂「…(パク)」

御坂「あ…結構おいしい…(モグ)」

上条「…」

上条「…(おかしい…何かがおかしい)」

上条「…(なぜこんなに平穏な展開なのでしょうか…。後で反動が怖い…)」

上条「(あれ?そういやあ…御坂は何で俺のシフトを知ってたんだ?)」

上条「…?」

上条「…」

上条「…(まあ、いいか…。深く考えるのはやめよう)」

上条「(そんなに悪い気もしねーし…な…)」

(とある街角)

詠矢「…うん…そうなんだ…消えちまってさ…」

詠矢「俺じゃ調べようがないんでさ…土御門サンに報告しとかないとってね…」

佐天「…」

詠矢「うん…うん…」

詠矢「そっか…じゃあよろしく…」

詠矢「なんかわかったら教えてくれ…んじゃ…(ピッ)」

詠矢「…」

佐天「…お電話終わりました?」

詠矢「(俺の問いかけに反応したってことは…対象には有る程度の意思があったってことだ)」

佐天「でも驚きましたねえ…」

詠矢「(だが、相手が絶対反論に反応したようには見えなかった)」

佐天「ウソみたいに消えちゃいましたよねえ!」

詠矢「(ふうむ…)」

佐天「都市伝説って本物見るの初めてなんですよ!!」

詠矢「(そもそも能力が通用する相手じゃなかったのか…)」

佐天「あ、そうそう、都市伝説って言えば…」

詠矢「(相手の自我が弱くて『聞く耳』を持っていなかったのか)」

佐天「…で…そこで初春がですね…」

詠矢「(俺にもうちょっと魔術関係の知識があればなあ…)」

佐天「…で、…なっちゃったんですよ!!」

詠矢「(相手は陰陽師だっけか…じゃあアレは式神ってヤツなのかね…)」

佐天「…はは…」

詠矢「(絶対反論が通じないなら…対策を考えとかないとなあ)」

佐天「…」

佐天「…詠矢さん!!」

詠矢「えっ!!…あ、はい?なんだい?」

佐天「私の話、聞いてました!?」

詠矢「あっ、いやゴメン、聞いてなかった…」

佐天「…」

佐天「…そういう時は普通」

詠矢「あわてて取り繕うものじゃなないでしょうか?」

詠矢「いや…、すぐにバレる嘘はつかないことにしてるんで…」

佐天「…」

佐天「…詠矢さん」

詠矢「はい?」

佐天「私と話しても面白くないですか?」

詠矢「いや…そんなことは決してない…ですけど…?」

詠矢「ちょっと考え事…でね」

佐天「また難しいことですか?」

詠矢「そうだ…なあ…。確かに…難しいこと…だねえ」

佐天「…そうですか…」

佐天「それはそれは、私のどーでもいい話なんかより」

佐天「よっぽ大切そうですもんね!」

詠矢「(あ、こりゃマズイな…)」

詠矢「ゴメンゴメン、怒らせたなら謝るからさ…」

佐天「むー」

佐天「じゃあですねえ…一つお願い聞いてもらえます?」

詠矢「そりゃあもう…許容できる範囲なら…」

佐天「…えーっとですね、こないだから白井さんたちと話してたんですけど」

佐天「おいしいジェラートのお店が出来たらしくてですね…」

佐天「この近くのはずなんですよ」

佐天「一緒に行ってもらえませんか?」

詠矢「…」

詠矢「いやいや、そんな何のペナルティにもならない内容なら」

詠矢「喜んでお供しますぜ」

佐天「ありがとうございます!ふふっ…」

佐天「えと、確かこっちです!(タタッ)」

詠矢「(しかしいーのかね、結構ヤバイ雰囲気なんだが…)」

詠矢「(まあいいか、ちょっとぐらい大丈夫だろ)」

詠矢「(女の子からのお誘いなんて、俺の一生で何度も無いだろうしねえ…)」

佐天「詠矢さーん!!」

詠矢「ほいほい、ついてきますよ」

(とある店)

佐天「あ、ありました、こっちです…あっ!!」

店を見つけた直後、佐天の目にはオープンテラスに腰掛ける男女の姿が飛び込んできた。

佐天「あれは…御坂さん!!」

佐天「男の人と一緒だ!!」

詠矢「お…(早速行動に移したか…意外と早かったねえ)」

佐天「もしかして、デ、デートですか!?」

詠矢「はいはい、とりあえず隠れよう…」

佐天「え?って詠矢さ…(ムギュ)」

詠矢は腰を落とすと同時に、佐天の頭を掴んで植え込みの下に押し込んだ。

詠矢「ほほう…結構いい感じじゃねえの…」

佐天「わー…楽しそうに話してますねえ」

佐天「あれって、彼氏さん!!…ですかね?」

詠矢「いや…『まだ』違うな…」

佐天「えっ!まだ…ってことは!十分脈ありってことですか!!きゃー!!」

詠矢「まあ、そう興奮しなさんな…」

詠矢「アイツは上条サンって言ってな、俺のバイト仲間で友達さ」

佐天「え、じゃあ、お知り合いなんですか…」

詠矢「まあね…。今後の展開がどうなるかは…上条サンにかかってるんだけどねえ…」

佐天「でも、もう十分いい雰囲気ですけど…」

上条「へえ…、そんなことあったんだ。そりゃ面白れえなあ…」

御坂「でしょー?ねー、ふふっ…」

上条「…」

御坂「…」

上条「なあ…」

御坂「…ん?」

上条「御坂とこうやってゆっくり話すのって、初めてじゃねえか?」

御坂「え?そうだっけ?」

上条「もしもし?御坂さん?」

上条「いつも『勝負だー』とか言ってドタバタを仕掛けてくるのはどちらさんでしたっけ?」

御坂「…あー…あはは…、忘れてよ昔の話は…」

上条「昔ってそんな前の話じゃねえだろ?」

御坂「だってさあ…あの時は…」

御坂「私の力がアンタの右手に全く通じないのが…どうしても納得行かなくて…」

上条「俺の右手…か…なんなんだろうな…これは」

御坂「あ…」

上条「ん?」

御坂「溶けてるわよ…」

上条「お、わっ…と!」

上条が左手に持ったコーンから、溶けたジェラートがあふれ出していた。

上条「うわっ、もったいねえ!!」

御坂「そんな、手に付いた分まで舐めないでも…」

上条「いやいや、これを地面に落とすなんて」

上条「上条さんそんなもったいないこと出来ませんよ!!」

御坂「んー、まあ確かに美味しいけどさあ…(パク)」

上条「でもまあ…こうしてるとさあ…御坂も結構『普通』なんだな…」

御坂「何よ…普通じゃいけない?」

上条「いえいえ、上条さん的には全然オッケーですよ?」

御坂「じゃあいいじゃない。普通が一番でしょ?」

上条「…」

御坂「…」

上条「でもまあ!さすが常盤台のお嬢様だよなあ!!」

上条「美味しい店をご存知でらっしゃる!!(パク)」

御坂「え?…ああ、ここは人から聞いたお店なんだけど…ね…」

御坂「(そういえば、黒子には悪いことしちゃったわね…)」

御坂「(あとでちゃんと謝っとかないと…)…(パク)」

白井「おねえさま!!」

御坂「……あ」

白井「こんなところで何を!!」

佐天「あ…白井さんだ…」

詠矢「うわ…さすが転移能力者…伏線も無しに現れるなあ…」

佐天「どうしましょう…なんかもめてますけど…」

詠矢「まあ、状況的にそうなるわな…」

詠矢「(御坂サン…、白井サンと約束してたって言ってたもんなあ)」

詠矢「(今上条サンといるってことは、それをすっぽかしたって事だもんなあ)」

詠矢「(そりゃ揉めるわなあ…)」

詠矢「さて…どうしたもんかね…」

佐天「…なんか白井さん暴れだしましたけど…」

詠矢「あー、やっちゃってるねえ…」

詠矢「御坂サンもなだめるのに苦労してるなあ…」

佐天「と、止めに行ったほうがいいでしょうか!?」

詠矢「佐天サンはともかく、俺が行くとややこしくなるだけだからやめとこう…」

詠矢「お、でた!転移ドロップキック!!」

詠矢「アレ避けられないんだよなあ…」

佐天「…なんか、体験したことあるような口ぶりですね」

詠矢「まあ…いろいろあってね…」

佐天「いろいろ…ですか…」

詠矢「まあとりあえず…状況を見守ろう」

佐天「どんどん被害が広がってますね…大丈夫でしょうか…」

詠矢「…だなあ…、あっ!!」

佐天「あっ!!」

詠矢「これはまずいパターンだ」

佐天「女の人かばおうとして…倒れこんじゃいました!!」

詠矢「そして起き上がろうとするときに胸を触る!!」

佐天「あ…すごい、その通りになった…」

詠矢「…さすがハイスペックのフラグ体質…」

詠矢「しかもラッキースケベ付きだ…。うらやましいねえ…」

佐天「え…うらやましいんですか…?」

詠矢「そりゃ、まあ…オトコノコ的には、そうでしょ…」

佐天「やっぱり詠矢さんでもそうなんですか…」

詠矢「まあ…ね。お、そろそろオチが付きそうだな」

佐天「オチ?ですか?…あ…」

佐天「御坂さんが…」

詠矢「こっから見てもわかるぐらい帯電してるねえ…」

詠矢「ってことは…」


御坂「…!!」

御坂「ナニやってんのよ…あんたわぁぁぁあああ!!!(ビリバチッ)」

上条「結局こうなんのかよ不幸だあぁぁぁあああ!!」

詠矢「…」

佐天「…」

詠矢「とりあえず、退散したほうがよさそうだな…」

佐天「…そ…そうですね…帰りましょっか…」

詠矢「じゃあ、ジェラートはまた今度だな…」

詠矢「約束どおり送ってくぜ」

佐天「はい、ありがとうございます…」」

詠矢「(ありゃまたフォローがいるな…)」

詠矢「(ったく…しょーがねえなもう…)」

佐天「あ、詠矢さんそこ右です…」

詠矢「うい、こっちだな…」

(学生寮、詠矢の自室)

詠矢「でー…」

詠矢「なんか今日は妙に疲れたなー…」

詠矢は疲れのままに、をベットに体を投げる。

詠矢「んー、飯作るのもメンドクサイなー…(ピピピピ)お…」

詠矢「土御門サンからか…よっと(ピ)もしもし?」

土御門『おう、ヨメやんかい?俺だ、土御門だ』

土御門『連絡もらった場所を早速調べてみたんだが』

土御門『わずかだが、魔術を使用した痕跡があったぜい』

詠矢「そうか…、やっぱり魔術側の仕業だったか…」

土御門『これは俺のカンだが…恐らく使われたのは式神だな…』

詠矢「へえ…、あの陰陽師が作るってヤツかな?」

土御門『ああ…、実に精巧に仕組まれた術だ』

土御門『普通、式神を撃った後には呪術的な痕跡…特に式札が残るもんだが』

土御門『この場所にはその痕跡が無い』

詠矢「ああ、確かに、消えた後には何も残ってなかったな…」

土御門『ここまで完全に痕跡を消すとは…相手はかなり使い手だな…』

詠矢「なるほどねえ…、やっかいな相手だってことか…」

詠矢「ただ、ゲームのキャラを実体化して、何をしようとしてるんだろうな?」

土御門『それは俺にもわからないにゃあ…』

詠矢「そっか…相手の目的がわからんと、動きようもないな…」

土御門『それでな、ヨメやん、俺はしばらく学園を離れて』

土御門『真々田のことを調べようと思う』

土御門『顔も素姓もわからない今のままじゃ、対策の立てようも無いからにゃあ…』

詠矢「そっか…正直いなくなられるのは心細いけどなあ…」

詠矢「逆に、調べられるのは土御門サンしかいねえもんな」

詠矢「こっちは、俺と上条サンでなんとかしのぐよ…」

土御門『よろしくたのむぜい…』

詠矢「あっと、そうだ土御門サン」

詠矢「この話、ジャッジメントに協力を仰いでもいいかね?」

土御門『そうだなあ…あまり公にしたくないことではあるが…』

土御門『大事になった場合、協力してもらう必要があるだろうな』

土御門『判断はそっちに任せるぜい』

詠矢「わかった…、この話は上条サンに伝えとくわ」

詠矢「そっちも気をつけてなー」

土御門『了解だぜい』

詠矢「(ピ)…ふう…また考えること増えたなー」

詠矢「…脳にカロリーを吸い取られてる気分だねえ…」

詠矢「まあいいや…今日は適当に食って寝よう…」

詠矢「なんか、潤いが欲しいねえ…」

詠矢「まあ、望むべくもないか…」

詠矢「ふう…」

詠矢「おやすみー…」

以上となります。
今回はかなり苦労しましたが、書いてて楽しかったです。

それではまた。

こんにちわ。
遅くなりましたが書きあがりました。
投下します。

(とあるコンビニ)

詠矢「つーわけで、今話したのがこれまでに起こったことだ」

上条「…なるほど…状況はわかったけど…」

上条「よくわかんねえ話だな?」

詠矢「そうなんだよなあ…せめて魔術系の知識があれば」

詠矢「もう少し相手の意図を読めるかもしれねえんだがねえ…」

上条「そっか、その辺は俺も似たようなもんだしなあ」

上条「せめてインデックスがいてくれりゃあなあ…」

詠矢「ほう、知らないキーワードが出ましたね」

詠矢「しかも、いてくれればってことは、そのインデックスってのは人の名前かな?」

上条「ん?ああ、こないだまでうちに居候してたシスターなんだけど…」

上条「魔術に関しては、知らないことがないぐらい詳しくてさ」

詠矢「シスターって…、ここに来てまた女の影かい…」

詠矢「しかも同居してたってのは聞き捨てならないなあ」

上条「女っても、子供だぜ?保護者みたいなもんだろ?」

詠矢「…上条サン守備範囲広いなー」

上条「なんでそっち方向の話になるんだよ!!」

詠矢「そりゃ自然とそうなるだろ…まあいいや…」

詠矢「どっちにしろ、その魔術に詳しい人ってのは今いないわけか」

上条「ああ、今は故郷のイギリスに帰っちまってるんだ」

詠矢「協力は望めないってことだな…まあしょうがねえか…」

上条「いまんとこは、何も起こらないことを祈るだけだな」

詠矢「まあ、そうなっちまうな…」

上条「ふぅ…」

詠矢「どした?上条サン。元気ねえな?」

上条「まー、いつものこととはいえ…いろいろ疲れる事があるんですよ…」

詠矢「疲れる…ねえ…」

詠矢「なんか悩みでもあるのか?俺でよかったら相談に乗るぜ?」

上条「…はは、こればっかりはなあ」

上条「人に相談してどうなるもんでもないしなあ…」

上条「ただ上条さんは静かに暮らしたい…それだけなんですよ」

詠矢「…(うむ、気にはなってるようだねえ…。さて、どこを切り口にするか…)」

詠矢「…そういやあさあ上条サン」

上条「なんでせうか?」

詠矢「昨日、ジェラートを召し上がってるトコを拝見したんですが…」

上条「でっ!!…(ドガッシャーン)」

詠矢「おお、盛大にコケたねえ…大丈夫か?」

上条「あ、あのー、詠矢さん?…どの段階からご覧になってたんでしょうか…?」

詠矢「白井サンが現れるチョイ前ぐらいかな…」

上条「なんだよ…見てたんなら助けてくれてもいいだろ…」

詠矢「スマンがねえ…俺には伏線があったんで、多分出ると余計ややこしくなった」

上条「なんだよそれ…薄情なヤツだな」

詠矢「まあその話じゃなくてえだな、問題なのは…」

詠矢「同伴してた御坂サンと、結構楽しくお話したって事ですよ」

詠矢「そこんとこどうなんですか?」

上条「どうとか聞かれてもなあ…。」

上条「なんか急に誘われたからさ…まあ…その…流れで…」

詠矢「楽しかったことは否定しないわけだねえ…」

上条「まあ…確かに…いつもとは雰囲気違ったかもな…普通に話せたし」

詠矢「へー、交際を派手に否定してた割には…いい感じじゃねえの?」

上条「だからあ!交際って、アイツをそんな風に見たことねえし!」

詠矢「じゃあ、見るようにすればいいっしょ。御坂サンに特別不満でもあるわけかい?」

上条「いや、そういうわけじゃねえけど…んー。流石の上条さんも中学生を相手に…」

詠矢「中学生っても2。つしか違わねえんだろ?なんか問題あるか?」

上条「…んー…」

詠矢「(やっぱ、地味に否定する要素を取り除いてやるのが一番か…)」

詠矢「(しかし…メンドクサイなあ…こっちの心が折れそうになるわ)」

詠矢「ま、決めるのは上条サンだけどね…。少しは相手の気持ちも考えてみたらどうだい?」

上条「…」

詠矢「(ウィーン)お、いらしゃいま…せ?」

御坂「…」

上条「…!!」

詠矢「…ち、ちわす…」

御坂「…ちょっと…あんた」

詠矢「え?俺?」

御坂「ちょっと来て!!…(グイ)」

詠矢「わっ!!っと…なになに!?」

(とあるコンビニ、駐車場)

御坂「…」

詠矢「…」

御坂「…」

詠矢「御坂サン、いきなり引っ張り出してダンマリはねえわなあ…」

詠矢「俺に何の用だい?」

御坂「えっ?…えっとね…あの」

御坂「…私…あの…また…」

詠矢「またやらかしちまったのかな?」

御坂「…(コク)」

詠矢「んで、けしかけた俺に相談に来たと?そんなとこかな?」

御坂「……(コク)」

詠矢「アテにしてくれるのは光栄だけどねえ…」

詠矢「一つだけ確認しておきたいことがある」

御坂「…なに?」

詠矢「相手は上条サンでいいんだよな?」

御坂「……!!!」

詠矢「そこを確認しとかないと話が始められない」

御坂「…あ…あんた…知って…(カア)」

詠矢「知るも何もバレバレだってーの」

詠矢「それに、偶然とは恐ろしいモンでね」

詠矢「昨日の件は目撃させてもらいました」

御坂「…えっ!!」

詠矢「いままでは毎度ああゆう顛末だったんだろう」

詠矢「恐らく、あのまま流れて二人に進展は無かった…そんな感じかな」

御坂「…うん…いつも…うやむやになって…」

詠矢「うむ…今度こそそんな展開にはさせたくないなあ…」

詠矢「ちと考える…後で策を送るので…メアド教えてくれんかね?」

御坂「わかった…じゃあ赤外線で…」

詠矢「うい、じゃあまた後でな」

(とあるコンビニ)

詠矢「(ウィーン)よっと、いやゴメンゴメン」

上条「…(ジロ)」

詠矢「…なんだよ、怖いな上条サン」

上条「御坂と何してたんだ?」

詠矢「ん?いや、相談ごととかね。いろいろ…」

上条「相談?御坂がお前にか?」

詠矢「おう、そうだよ?意外かな?」

上条「そりゃ…まあ…な」

詠矢「…気になるかい?(ニヤリ)」

上条「いや、別にそういうわけじゃ…」

詠矢「(よしよし、こっちはこっちで進行してるねえ…)」

詠矢「…よし…」

上条「どした?」

詠矢「上条サンさあ、ちとお願いなんだけどね…」

(常盤台中学学生寮。御坂の自室)

御坂「…ただいま…」

白井「おかえりなさいましお姉さま…」

白井「…また遅いですわね…。どちらへ行かれてたましたの?」

白井「はっ!!、まさか…また…」

白井「あの殿方と逢引を!!!」

御坂「えっ!、違うわよ…ちょっと…寄り道してた…だけよ」

御坂「(昨日の今日で、まともに会えるわけ無いじゃない…)」

白井「ほんとですの?…ならいいんですが…」

白井「昨日の件は驚きましたわ。どうそそのかされたのか存じませんが…」

白井「わたくしとの約束を袖にした上に、まさかあの類人猿と…」

御坂「だからあ!それは何度も謝ってるじゃない…」

白井「やはり、より注意すべきは詠矢さんですわね…」

白井「なにやら吹き込んでいたと初春が証言していますし…(ブツブツ)」

御坂「ちょっと黒子!聞いてるの!?」

御坂「…もう…。(ブブブブ)あ…メールだ…(ポチ)」

御坂「…あ(アイツからだ…なになに…作戦?…)」

御坂「…!!(え!?なに言ってんのよ!そんなことしたらまた大騒ぎに…)…(ポチポチ)」

御坂「…(返信っと)」

白井「…?」

御坂「…(ブブブブ)…(あっ…早いわね)…(ポチ)」

御坂「…」

御坂「……」

白井「お姉さま?どうかなさいまして?」

御坂「…(ふう)」

御坂「…(アイツの作戦に乗るのは気に食わないけど)」

御坂「(今は仕方ない…か…)」

白井「お姉さま?」

御坂「…ねえ黒子」

御坂「今度の週末、確か駅前のショッピングモールでセールがあるでしょ?」

御坂「一緒に行かない?」

白井「あら、お姉さまからのお誘いはうれしいですけど…」

白井「セールと言っても服のでしょう?わたくしたち常盤台の学生は」

白井「お洋服を買いに行ったところで、着る機会がございませんわ…」

御坂「…(う、そう来たか…)」

御坂「…あ、でもインナーとか小物とか、結構欲しいものがあってさあ…」

白井「…!!」

白井「インナー!!インナーとおっしゃいましたですかお姉さま!!」

白井「そう、つまり下着、ラン…ジュぇリーのことですわね!」

御坂「え?あ?…まあ、そうかな?…」

白井「むふふ…そのお買い物にご同行させて頂けると!!」

白井「この白井黒子!たとえ槍が降ろうが酸性雨が降ろうが、かならず同行させて頂きますわ!!」

白井「(これは千載一遇のチャンスですわ!!)」

白井「(ここはさりげないアドバイスで、お姉さまを内側からわたくし色に染め上げて!!)」

白井「…(ムフフフ)」

御坂「黒子…よだれよだれ…」

御坂「じゃあ、また細かい時間は連絡するから…よろしくね?」

御坂「…(こんなので本当に大丈夫かな…)」

御坂「(いろんな意味で…週末が怖い…)」

(とあるショッピングモール 週末)

白井「…」

御坂「…」

上条「…」

詠矢「…」

詠矢「やあやあ」

詠矢「偶然だねえ、お二人さん…」

白井「…どどどどど…どー言うことですの!!!」

白井「なんでこの方々がいるんですの!!」

白井「しかも類人猿と詐欺師!最悪の組み合わせですわ!!」

上条「(類人猿って…)」

詠矢「詐欺師はひでえな…白井サン」

詠矢「まあ、いいんじゃねえの?せっかくのセールなんだし」

詠矢「四人で回った方が楽しいぜ?」

白井「誰があなたたちなんかと!!」

白井「今日はお姉さまと水入らずでスウィートな時間を過ごすんですの!!」

白井「邪魔されたくありませんわ!!」

詠矢「でもほらさあ、服とか、異性からの見た目とか重要だったりしねえ?」

白井「そんなもの必要ありませんわ!!」

上条「…(なんか張り合ってるなあ)」

御坂「…(ジッ)」

上条「…ん?ああ、御坂…なんかゴメンな?」

上条「今日は白井と二人の予定だったんだろ?」

御坂「…いいの」

御坂「私が頼んだの」

上条「…はい?」

御坂「それより…こないだ…ね?」

上条「お、おう…」

御坂「…ごめんなさい」

上条「えーっと…何の話でせうか…」

御坂「こないだ…またキレちゃって…あんたは悪くないのに…」

上条「ん?ああ、あの時のことか…」

上条「なになに、気にすんなよ。いつものことじゃねえか…」

御坂「でも…いつもこういうことがウヤムヤになるから…」

御坂「今日はちゃんと謝っとかないとって…」

上条「…」

上条「…ん、そ、そうだな…。なかなかいい心がけじゃ…ないか?」

御坂「…ありがと」

上条「…ん」

御坂「…」

白井「コゥラァアア!!!そこお!!お姉さまとなにをお話に!!」

詠矢「はいジャッジメントの白井黒子さん!!」

白井「…!!?」

詠矢「週末のショッピングモールはセールの最終日」

詠矢「人でごった返しております」

詠矢「ここで能力者が暴れたらどうなるか?お分かりですよね?」

白井「…」

詠矢「取り締まるほうが自ら容疑者になるおつもりで?」

白井「…」

白井「…相変わらず」

白井「…口の減らない…」

詠矢「まあまあ…ここは穏便に…ご一緒しません?」

白井「…フン」

白井「…ま、付いてくると言うならご自由に!!」

白井「お姉さま、参りましょう!!」

御坂「ちょっと…黒子!!」

詠矢「んじゃ、俺たちも行くか、上条サン」

上条「なあ、詠矢…。俺はお前の買い物に付いて来たんだよな?」

詠矢「いや、それはこの状況を作り出すための口実だ」

上条「…また随分とあっさりお認めになる…」

詠矢「ま、いろいろあってね…」

詠矢「悪いようにはしねえぜ、上条サン…」

(とあるショッピングモール内)

詠矢「…」

上条「…」

御坂「…」

白井「…」

白井「…どこまでついてくるんですの!!」

詠矢「そりゃまあ、ご自由にと許可も頂いたんで…」

詠矢「ついていけるだけ…」

白井「まったく…」

白井「(まあいいですわ、下着売り場には近づけませんでしょう)」

白井「(そこでまいてやりますわ!!)」

詠矢「…(さて…と)」

詠矢「…(チラッ)」

御坂「…!!」

御坂「…(コク)」

詠矢「ところで白井サン」

白井「なんですの?」

詠矢「神拳のソフィアの都市伝説って知ってるかい?」

白井「また藪から某に…」

白井「それがなんの関係がありますの?」

詠矢「俺が聞いてるのは知ってるのか知らないのかってことだ」

詠矢「質問に質問で答えないでもらえるかい?」

白井「…」

白井「初春から、聞いたことありますが…それが?」

詠矢「こないだ目撃してね…実体化したゲームキャラを…」

白井「…まさか…そのようなことが?」

詠矢「見たのは俺一人じゃねえから間違いないさ」

詠矢「それもどうやら…魔術側の人間が絡んでるみたいなんだよねえ…」

白井「…魔術側…?といいますと…この学園に敵対する勢力…」

詠矢「そうなんだよねえ…」

詠矢「今のところまだ実害は起こってないが…」

詠矢「ちとヤバイと思うんだよねえ…」

白井「詠矢さん…どこからそんな情報を?」

詠矢「ん、いや、情報源は詳しくは話せないが…」

詠矢「こないだの事件でいろいろコネが出来てねえ」

詠矢「きっちり信頼できる筋からの話だよ」

白井「…そうですの…。もしそれが本当なら…問題ですわね」

詠矢「ああ…なんでさ、ジャッジメントの方でも警戒しといて欲しいんだよね」

白井「ええ、そういう話ならこちらでも…」

白井「あっ!(キョロキョロ)」

白井「お姉さまは!?」

詠矢「お、どか行っちゃいましたねえ…」

白井「…謀りましたわね…詠矢さん…」

詠矢「ん?俺はただ白井サンと立ち話してただけでさ…」

白井「あなたの言い訳などどうでもいです!」

白井「お姉さま!!(ダッ)」

詠矢「追ってどうするんだい?」

白井「…知れたことを」

白井「あの類人猿の魔の手から、お姉さまをお守りするのです!!」

詠矢「魔の手ってのはずいぶんだな…」

詠矢「…御坂サンの決意を、白井サンは無にするつもりなのかい?」

白井「なんですって?」

詠矢「御坂サンは上条サンに会うためにここにきた」

詠矢「俺はその状況を作っただけに過ぎない」

詠矢「まあ、白井サンに来てもらったのは俺の考えだけどね…」

白井「やはりあなたが黒幕でしたのね…」

白井「お姉さまをそそのかして…一体なにが目的ですの!!」

詠矢「俺は御坂サンの意思に沿ってるだけでさ」

詠矢「ちょいと背中を押してやってるだけでね…」

白井「そんなはずはありませんわ!!」

白井「お姉さまが、どうしてあんな…」

詠矢「白井サン…実はうすうす気づいてるんじゃないか?」

詠矢「御坂サンの気持ちにさ…だからそんなに必死なんだろ?」

白井「…そっ…そんなことは!!」

詠矢「だいたい、白井サンの敬愛する御坂サンって人は」

詠矢「簡単に誰かにそそのかされる人なのかい?」

詠矢「それも俺みたいな『詐欺師』にさ…」

白井「…そっ…それは…」

詠矢「一応確認のために言っとくが」

詠矢「俺の絶対反論(マジレス)は、能力にしか効果が無い」

詠矢「わかってるよな?」

白井「…」

詠矢「俺が能力を使って御坂サンの意思を捻じ曲げてるわけじゃない」

詠矢「すべては彼女の意思…。なら、尊重すべきだと思うけどね…」

白井「…」

詠矢「俺の言いたいこと、伝えたいことは以上かな…」

詠矢「白井サンに聞いて欲しくて、今日は来てもらった」

詠矢「騙すような真似して悪かったね…」

白井「…」

詠矢「…んじゃ、俺はお先に失礼するわ…」

白井「…え?…」

白井「帰るのですか…」

詠矢「ん?ま、俺はここにいない方がいいからね」

詠矢「俺は今不可抗力ではぐれたことになっている」

詠矢「下手に上条サンたちに見つかると、せっかくの二人の時間に水を差しちまうからなあ…」

白井「…よろしいのですか?」

白井「わたくしがまた…お二人の邪魔をしにいくかも知れませんわよ?」

詠矢「そんときゃそんとき。またフォローの方法を考える」

詠矢「それに、俺がここで白井サンを監視したところで同じことさ」

詠矢「転移能力者を物理的に止めることなんて不可能だしな」

詠矢「それとも…」

白井「…?」

詠矢「これから、俺と遊んでくれるっていうなら、喜んで残るぜ?」

白井「…」

白井「…誰があなたなんかと…」

詠矢「まあ、そうだろうね…」

詠矢「んじゃ、帰ると言ったらとっとと帰るぜー」

詠矢「またなー」

白井「…」

白井「……」

白井「…お姉さま…」

白井「わたくしは…」

とあるショッピングモール 別階)

上条「あ、あれ?白井と詠矢、どこいったんだ?」

御坂「多分別の階…だと思う」

上条「なんだよ…はぐれちまったのか…じゃあ連絡とって…」

御坂「いいの!そうしてもらったの!」

上条「…って…?」

御坂「…あんたと…その、もう一度二人に、なりたくて…」

御坂「でも、こないだのことがあって…さ、誘いにくくてさ…」

御坂「アイツにたのんで…その…作戦…考えてもらったの……」

上条「…アイツって、詠矢か」

御坂「…(コク)」

上条「御坂…お前…」

御坂「…(カア)」

上条「…は、ははっ…なんだよ、そんなに気にしなくても!」

上条「さっきも言ったけどさ、あの程度の騒動、上条さんにとっては日常茶飯事ですよ」

上条「だから…普通に誘ってくれればいいぜ?」

御坂「…うん、ありがと…」

御坂「…ふう」

上条「どした?」

御坂「素直って楽ね…」

上条「???」

御坂「変な理由考えなくていいし、自分に言い訳しなくていいし…」

上条「…なにをおっしゃっているのでしょうか…御坂様…」

御坂「へ?え…な、なんでもないわよ!!」

御坂「さ、買い物行くわよ!!」

御坂「ゲコ太パジャマの新作が出ているのよ」

御坂「これだけは絶対おさえとかないと!!」

上条「…はー、さいですか…」

上条が御坂の後を追おうとした刹那

始まろうとしていた二人の時間を引き裂く怒号が、突然響いた。

御坂「…えっ!」

上条「…なっ!」

御坂「なに…今の…悲鳴?」

上条「…まさか!!」

悲鳴は、ショッピングモールの中央を貫く吹き抜けの階下から発せられた。

上条は身を乗り出し覗き込む。

上条「…あれは…!!」

上条「スマン御坂!ちょっと待っててくれ!」

御坂「ちょっと、待ってよ!!」

上条はそのまま手すりを飛び越え、吹き抜けに身を投じる。

上条「…っと…」

一つ下のフロアに着地した上条は、ちょうど問題の対象に対峙する形となった。

上条「…てめえは…」

上条「詠矢から聞いてた通りだ…ほんとにそっくりなんだな…」

そこに立っているのは、長い金髪を髪留めでまとめ、透き通るような白い肌を持った少女。

上条「神拳のソフィア…か!」

以上となります。
それではまた。

おはようございます。
たくさんのレスありがとうございます。
とてもうれしいです。

では、書きあがった分を投下します。

(とある街角)

件のショッピングモールから少し離れた街角。

淡々と歩く詠矢の姿があった、

詠矢「(…ふう)」

詠矢「(最大の障害である白井サンは一応押さえといたし)」

詠矢「(とりあえず一仕事済んだ感じかな)」

詠矢「(まあ、うまくいってくれりゃそれでいいが…)」

詠矢「(しかし…上条サン、ここまでやってもどうにもならなかったら)」

詠矢「(本気の上段正拳だぜ…覚悟しとけよ)」

詠矢「…んー」

詠矢「…なんか寂しいねえ…」

詠矢「俺にもなんか浮いた話落ちてねえかなあ…」

詠矢「ま、あるわけねえか…ははっ」

詠矢「適当にぶらついて帰るか…お?」

詠矢「ゲーセン…か」

詠矢「神拳対戦台、絶賛稼働中…」

詠矢「まあ、なんかのヒントにでもなるかな?」

詠矢「安直かもしれんけど、ちょっとよってみるか…」

詠矢「…お?ナンだ…?」

ゲームセンターに向かった詠矢の視界に、一人の人物が写った。

その人物は、大型のUFOキャッチャーを食い入るように覗き込んでいた。

??「…むむ…」

詠矢「(なにしてんだ…この人は…)」

??「甘い…造形が甘い…」

??「特に顔!フィギュアの命だというのに!!」

??「ラインの悪さを瞳の塗装でごまかそうとしている!!」

??「しかもその塗装の出来も悪いときた!!」

??「こんな出来で監修の名を付けられてはたまらないなあ」

??「製作側に苦情を出しておかないと!!」

詠矢「(監修?…??)」

その言葉に反応した詠矢は、近くにはられているポスターに目線を移してみた。

詠矢「(完全新作、ソフィアフィギュア)」

詠矢「(原型師、『御形屋 創一』監修バージョン…?ってなんて読むんだこれ…)」

??「なあ、君もそう思わないか!!」

詠矢「へっ!?(うわびっくりしたっ!)」

詠矢「…あ、はあ…よくわかんないですけど」

詠矢「エレメカの景品なんてそんなモンじゃないっすか?」

??「そうだ、もっともな指摘だ。あらゆる商品にはコストがかかる、それはわかる…」

??「だが、それを差し引いても!!このフィギュアには愛が感じられない!!」

??「わかるかね!!愛だよ愛!!」

詠矢「は…はあ…(わかんねーよ)」

詠矢「えっと…もしかして…この人…ですか?」

詠矢は先ほど見たポスターを指差す。

??「ああ、そうなんだよ!僕は原型師の御形屋 創一(ミカタヤ ソウイチ)って言うんだ!よくわかったねえ!!」

御形屋「黙っていても、滲み出る才能は隠せないのかもねえ(ウンウン)」

詠矢「え?…はは…そうみたいですねえ…(独り言聞いてただけなんだけど…)」

詠矢「(これは、あまり関わらない方がよさそうで…)」

詠矢「んじゃ…失礼しまっす…」

会話を断ち切って店の奥へと進む詠矢。

御形屋「髪のまとまり方が…(ブツブツ)」

当の人物は、再びケースの中のフィギュアを覗き込んでいた。

(とあるショッピングモール 吹き抜け)

対象と数メートルの距離を置いて対峙する上条当麻。

上条「…」

相手を睨み付けつつ、周囲に注意を払う。

男「ん…ぐぐ…」

傍らには買い物客らしい男が鼻血を出して倒れていた。

男「な、なんだこの女!いきなり殴りやがった!」

この人物が、先ほどの悲鳴の主であることは用意に想像出来た。

上条「あんた、いいから逃げろ!ヤベえぞ!」

叫ぶ上条を、ソフィアは目を細めて眺め、静かに向き合う。

ソフィア「あなたが…私と…戦うのですか?」

上条「…戦いたくはねえが…」

上条「アンタかこれ以上暴れるなら…止めなきゃな」

ソフィア「…私の意志は私だけのもの」

ソフィア「立ちはだかるというのなら…私は戦う!」

上条「(あれ?…どっかで聞いたような台詞だな…)」

対峙した女性は、体をほぼ水平に、左手を突き出し、右手を鳩尾の近くに構える。

上条「…やるって言うんなら…相手になるぜ(スッ)」

呼応するように右手を突き出す上条。

ソフィア「はっ!」

突如バックステップ。直後、左手を水平に振り下ろす。

ソフィア「シルバーエッジ!!」

掛け声と共に、左手の軌道がそのまま三日月状の飛来物となり、上条に襲い掛かった。

上条「なっ…!!…んだっ!?…んっ!!(キュイーン)」

咄嗟に右腕でかばう上条。狙い通りなのか、その飛来物は空中で掻き消える。

上条「(右手が…通じた…?ってことは…異能の…力か…)」

客「うわぁぁぁああ!!何だ今のは!?能力者か!!」

遠巻きに状況を見ていた観衆が、ソフィアが出した『飛び道具』に恐怖したのか、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

周囲は、軽いパニックに陥っていた。

上条「…くっ!!(マズイな…逃げてくれるのはいいが…長引けば騒ぎが大きく…)」

ソフィア「はっ!」

焦る上条を尻目に、今度は一気に距離を詰めてくる。

と同時に、中段の回し蹴りを一閃。

上条「…っ!!(ガシッ)」

腰を落とし、たたんだ腕で相手の足を受け止めると、ガードの下がった顔面へ右の正拳を放つ。

上条「(コイツで…!!なんとかっ…!!)」

ソフィア「…!!(キュイーン)」

上条の拳か相手の顔へ到達すると、その姿は一瞬で掻き消える。

そして直後、何かが落下したような軽い金属音が床から響いた。

上条「…なんだ…これ…?」

床に落ちていたのは、千円札を一回り小さくしたような金属の板。

拾い上げて見ると、なにやら得体の知れない文字が表面に刻みつけられていた。

上条「これは…魔術の道具か…なんかか…?」

上条「…ダメだ、まるでわかんねえ…土御門に見てもらわねえと…」

御坂「…ちょっと…アンタ…」

突然賭けられた声に反応して上条が目線を向けると、そこには顔を上気させた御坂美琴が立っていた。

上条「御坂…」

御坂「アンタは…アンタはどうして一人で行っちゃうのよ!!」

上条「んなこと言っても…俺が行かないとヤバくて…」

御坂「違うわよ!!聞いてるのはそんなことじゃない!」

御坂「どうせまたなんか事件に巻き込まれれてるんでしょ?そんなのはすぐわかるわよ!」

御坂「どうして、どうしてアンタは誰も頼らずに一人で行っちゃうのよ!!」

御坂「そうやって突っ走って、後ろで心配してる人の気持ち考えたことあるの!?」

上条「…」

上条「…いや、こんなことにお前を関わらせるわけにはいかねえだろ!!」

御坂「…笑わせないでよ…アンタ、私が誰だか知ってるの?」

御坂「学園第三位の能力者…超電磁砲(レールガン)の御坂美琴よ?」

御坂「私より頼りになる人間が、ほかに居ると思う?」

上条「…」

御坂「アンタにとって、わたしは何?ただの知り合いの中学生?」

御坂「わたしはそれじゃ嫌。ただ守られてる女の子じゃなくて」

御坂「アンタと全てを分ち合えるような…」

御坂「そんな…特別な…存在に…なりたい…の…」

御坂「だから…私も…巻き込んで…よ…」

御坂は顔を伏せた。今の自分の顔は、とても見せられるものではなかった。

上条「御坂…」

上条の脳裏に、詠矢から受けた忠告が、順に思い出される。

上条「…」

何かを決意したように拳を握ると、上条は御坂の傍に歩み寄る。

上条「…御坂…お前がそんな風に思ってたなんて…考えてもなかった…」

上条「これからは…ちゃんとお前を頼る…それと…さ」

上条「特別の…ってのは、まだよくわかんねえけど…」

上条「お前のこと…もっとちゃんと…見る…からさ…」

上条「だから…顔を上げてくれよ…」

上条は静かに手を御坂の肩に置く。触れた瞬間、御坂の体がびくりと反応する。

御坂「…」

御坂「…わ…わかればいいのよ!!わかれば!」

上がった御坂の顔には、照れと怒りと安堵が混ぜ合わさった形容しがたい表情が浮かんでいた。

上条「…何だよその顔は…」

御坂「う、うるさっ!!アンタが見せろって言ったんでしょうがあ!!」

御坂は照れ隠しに拳で上条の腹筋を突く。

上条「あいて、…いや、つい…な?ゴメン、悪かったって…」

御坂「で…まずは今の状況を説明してもらいましょうか?」

上条「ああ、わかった。でもちょっと待ってくれ、詠矢に連絡しねえと…」

御坂「なに、アイツも絡んでるの?」

上条「ああ、なんかあったらお互いに連絡することになってるんだ」

上条「よ…(ピ)」


白井「(お姉さま…)」

騒ぎを聞きつけ、白井もまたこの場所に駆けつけていた。

二人の姿を見つけると、反射的に柱の影に隠れてしまったが、そのやり取りは一部始終見てしまった。

白井「(やはり…お姉さまの決意は本物…)」

白井「(お姉さま、黒子は…どうすれば…)」

(とあるゲームセンター)

詠矢「(えーっと…どの台だっけかな)」

詠矢「(お、あったあった…向かい合わせの対戦台か…)」

詠矢「(誰かやってるねえ…、ちょうど使ってるのはソフィアか…)」

詠矢「(乱入してみるか…、えっと…コマンド覚えてるのは…コイツだっけかな…)」

詠矢は百円玉を台に投じると、使ったことの有るキャラクターを選択する。

詠矢「さあて…」

詠矢「…(カタカタ)」

詠矢「…っと!(カタッ)」

詠矢「……」

あっという間に詠矢のキャラは追い込まれていく。

詠矢「…!!」

詠矢「(…負けた…。ダメだ全く勝負にならねえなあ)」

詠矢「(いくら久しぶりとはいえ、完敗しちまったなあ…)」

詠矢「(どんなヤツだろ…)」

席を離れると、詠矢は台の反対側を覗き込む。

詠矢「…あ!」

詠矢「初春サンじゃねえの!」

初春「あれ?詠矢さんじゃないですか」

詠矢「へー、ゲームとかするんだ…」

初春「ええ、まあそんなにやり込んではいないですけど」

詠矢「やり込んでないのかい?結構強いと思ったけどなあ…」

初春「いえいえ、私なんかぜんぜん、ですよ」

詠矢「そんなもんかねえ…。上には上が…あ、乱入だね…」

初春「あれ、そうみたいですね…」

詠矢「向こうもソフィアか…どれ、お手並み拝見といくかね…」

対戦が始まる。相手のソフィアは詠矢よりはるかに善戦し、初春とほぼ互角の戦いを演じるが、やがて追い込まれる。

詠矢「お、頑張るねえ…」

初春「でも、これで、終わりです!(カタカタッ)」

着地に合わせたコマンド技を避けきれず、相手のソフィアは最後の体力を削り取られ地に伏した。

初春「…ふう…」

詠矢「お、勝った勝った…すげえな初春サン」

初春「ありがとうございます!。でも相手の人も結構強かったですよ?」

詠矢「へえ…俺にはもうなにがどうなってるのかサッパリだったわ」

??「いや素晴らしい!!」

筐体の反対側から回り込んできた人物が、二人の会話に割って入った。

御形屋「やあやあ、そっちの君はさっきも合ったねえ」

御形屋「それよりも君、先ほどのソフィアの使い手かね?」

初春「ええ…まあ…そうですけど…」

御形屋「素晴らしい!ただ勝ちを意識しただけの戦いではなく」

御形屋「キャラの特徴や性能を生かして、その能力を最大限に生かそうとしている!」

初春「え?えぇ…まあ、丁寧に動かすようにしてますけど…そんな大げさな…」

御形屋「いや、謙遜するのはやめたまえ!!」

御形屋「あの動き、扱いにはキャラクターへの大きな愛を感じるねえ!!」

御形屋「僕もそうありたいものだ!」

初春「…は、はぁ…(それほど好きなキャラじゃないんだけどな…)」

御形屋「いや、実はねえ…僕は……んっ!?…」

会話の途中で、何故か男は眉をひそめる…。

御形屋「…(停止…し…た?…)」

御形屋「…(ふむ…問題だねえ…)」

初春「あの…どうか…しましたか?」

御形屋「うん、いやいや、なんでもないんだ!」

御形屋「このままソフィアへの愛を語り合いたいところなんだが」

御形屋「あいにく用事が出来てね…またどこかで合おう」

御形屋「それじゃね!」

初春「…」

詠矢「…」

初春「行っちゃいましたね…」

詠矢「…なんか突っ込む気も失せるな…」

初春「誰なんでしょうか…?もしかしてお知り合いですか?」

詠矢「いや、俺もさっき合ったばっかりだ…。なんか原型師さんらしいぜ?」

初春「原型師さんっていうと…フィギュアとかのですよね?…へえ…」

詠矢「…フィギュア…?…ふむ…」

詠矢「(そういやあ、ソフィアにご執心だったな…ただの偶然か?…それとも…)」

詠矢「…お…(ブブブブ)お、電話だ…っと」

電波状態を気にしてか、詠矢は慌てて店を出ると、自分のスマートフォンを取り出す。

詠矢「あれ?…上条サン?…おいおい、まさかな…」

詠矢「…(ピ)、はいもしもし?」

詠矢「おう、俺だよ。って、上条サン俺に電話してる場合かって…」

詠矢「え?…なに…うん…うん…」

詠矢「そっちに出たのか!?…うん…」

詠矢「そうか…ついに実害が出たか…」

詠矢「マズイな…よし…どっかに集まって作戦会議だ」

詠矢「…わかった…また連絡する(ピ)」

初春「…どうしました?詠矢さん…」

詠矢「…ん?あれ?神拳はもういいのかい?」

初春「慌てて出て行かれたので、気になって…あ、もうラスボス倒しちゃいましたから、終わりです」

詠矢「あ、そうなんか…ならいいが…」

詠矢「んー…ちとマズイ事になっててな…」

初春「…?」

詠矢「ジャッジメントに協力してもらったほうがいいな…」

詠矢「初春サン、白井サンと連絡取れるかい?」

初春「白井さんですか?…ええ、もちろん取れますけど…」

詠矢「もう大筋は話してるんだ。支部を使わせてもらうと有難い」

詠矢「作戦会議なら、あの場所は最適だからね…」

(ジャッジメント177支部)

詠矢「まあ…以上が事件の概要…かな」

詠矢「わかってないことが多すぎるが…事実だけをつなぎ合わせるとこんな感じだ」

白井「お話は良くわかりました…ですが…」

御坂「よくわかんない話よね…」

詠矢「ああ、その通りだ」

詠矢「今のところ、全体像を掴むための肝心な情報が埋まってない状態だ」

上条「ただ、実際にケガ人が出ちまった」

詠矢「だな…正直、実害が出てないんで俺も甘く見ていた…」

詠矢「上手い事上条サンと遭遇してくれたからよかったものの…」

御坂「もっと被害が広がっていた可能性もあるわね…」

白井「捨て置けない状況であることは確かなようですわね」

詠矢「問題は、こっから動きようがないってことだ…」

詠矢「なんかきっかけになる情報でもあればいいんだが…」

上条「あ、そうだ…現場でこんなもん拾ったんだが…」

詠矢「なんだこりゃ…?金属の板か…?」

上条「例のソフィアが消えたあとに、コイツが残ってたんだ」

詠矢「…今回は痕跡を残したか…。ちょいと失礼(ヒョイ)」

詠矢「うーん…見たってわかるわけねえよな…どうするか…」

詠矢「よし、わからねえならわかる人に聞くまでだ…(ピ)」

上条「どうするんだ?」

詠矢「土御門サンに連絡する。写真をメールして見てもらうわ…(ポチポチ)」

白井「土御門さん…?どちらの方ですの?」

上条「あーいや、俺のクラスの奴でさ。こういうことにすげえ詳しんだよ…」

御坂「詳しいって…ちょっと引っかかるけど…」

御坂「いいわ、今のところ、その人を頼るしか方法はないわけよね?」

上条「そうなっちまうな…。この手の話は俺たちじゃまるでわかんねえし…」

詠矢「よし…メール送ったぜ…後は返事待ちだな」

初春「詠矢さん、検索終わりましたよ(カタカタ)」

詠矢「お、初春さんありがと。んーっと…どれどれ…?」

白井「なんですの…初春。情報収集ですの?」

初春「ええ、人の情報なんですけど…」

詠矢と白井は、ほぼ同時にパソコンの画面を覗き込む。

白井「…御形屋 創一、フィギュアの原型師…?どちら様ですの?」

詠矢「俺と初春サンがさっき偶然会った人なんだけどさ…」

詠矢「今回の事件に符合するキーワードが多い人でさ」

詠矢「ちょいと気になったんで、調べてもらってたんだよ…」

初春「えっと、その世界ではかなり有名な人みたいですね…」

初春「高度で神がかり的な造形は評価が高いみたいで…」

詠矢「ふうむ…まあ、タイアップに名前が使われるぐらいだから」

詠矢「かなりな高名なんだねえ…」

初春「今のところ、ありきたりの情報しかヒットしないですね……(カタカタ)」

詠矢「んー、やっぱり単なる偶然かなあ…」

白井「フィギュア…つまりは人形と式神…確かに関連性を感じなくもないですが…」

詠矢「流石に考えすぎかねえ…(ブブ)お、電話?…土御門サンだ」

詠矢「(ピ)はい、もしもし」

土御門『おうヨメやん、こっちの仕事は終わったぜ』

土御門『今はそっちに戻っている途中だ。夜までには着けると思うぜい』

詠矢「そうか、そいつはご苦労さん…。で、メール見てもらったかい?」

土御門『ああ、見させてもらったぜい』

土御門『コイツは、かなり特殊な式札だな…』

詠矢「式札…?」

土御門『表面の文字でわかる。恐らく、式神の活動が終わったあと』

土御門『式札ごと消滅するように組まれている…。証拠隠滅の為だにゃあ』

詠矢「じゃあ、上条サンが触ってこの札が残ったってことは…」

土御門『式神の活動が強制的に停止させられたせいで、消滅は免れたんだろうな』

詠矢「なるほど…、陰陽師の技術が使われたってことは、これで確定したわけだな」

土御門『そうなるな…。じゃあ、今度はこっちから報告だぜい』

土御門『真々田の素性が割れた。奴は陰陽師だが本職は傀儡師だ』

詠矢「傀儡…って、要するに人形のことか…」

土御門『ああ、もともと古い陰陽師の家系だったんだが…』

土御門『途中で傀儡の世界にのめり込んで、家を出たらしい』

詠矢「違う世界に行ったってことか…?」

土御門『いや、傀儡と陰陽は根っこは同じものでな…』

土御門『呪力を組み込んで作り上げた人形に、式を書き込んで人と変わらぬ姿を作る…』

土御門『それが傀儡師の技術なんだぜい』

詠矢「そうか…うーん…傀儡…人形…フィギュア…?」

土御門『それともう一つ、重要な情報が手に入った』

土御門『真々田の面も割れたんだ。そっちに写真を送るぜい』

詠矢「おお!それはありがてえな。早速頼む…じゃあ、一旦切るぜ」

土御門『わかった…(ピ)』

上条「どうだ?」

詠矢「相手の顔がわかったってさ…。写真が来るぜ」

御坂「顔がわかれば…相手の動きは掴みやすくなるわね…」

詠矢「え?ってどういうことだい?」

白井「ここで、監視カメラのログと顔写真とを照合出来ます」

白井「最初に詠矢さんを見つけたときに使った方法ですわ」

詠矢「あー、そうか、確かそうだったねえ…」

詠矢「(ブブ)お、メール来た!…どれどれ…(ピ)…あっ!!」

詠矢「初春サン、ほら、この顔!!」

初春「あっ!!間違いないですね…さっきの…」

詠矢「ああ…間違いねえ、そっくりだ」

詠矢「原型師、御形屋創一が…真々田だ!」

(とある駅)

一人の男が、とある駅にある大型コインロッカーの前に立っていた。

上着のポケットに裸で入っていた百円玉を取り出すと、順に投じていく。

丸みを帯びた輪郭の中に、やさしめの表情がはまっている。体躯からあまり力強さは感じられないが、その目は異様な光

を放っていた、

その姿は写真の男、御形屋創一こと、真々田創である。

真々田「さあ…機は熟した」

真々田「きっと君は、僕の最高傑作になるだろう」

開いたコインロッカーの中から、大型のリュックに入れられた荷物を取り出す。

真々田「では行こうか…」

真々田「これから僕は、新たなる創造主となる…」

以上となります。
それではまた。

    \ /
   (_O|・|O)
   /ィ从从', }  早く一方通行と戦えよ
   | |(|゚ ヮ゚ノ,''

   ノノゞミl†iゝlつ∞∞∞∧_∧
  //(从ト。 从     //( ^o^ )ヽ <わかる
     し',ノ      /ノ ( uu ) ヽ)

                               ____ ,-、__
                              /::::::::::::::::::::::::/:::::::::::::::::`ヽ
                             /:::::/:::::::::::::::::::L::::::::::::::::::::::::ヽ
                           ,-::::::::::::::::::::::::::,::::::::::::::::::::::::\:::::::\

                             /:/:::::::::::::/::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::):::::::::::\
                           (::::(::::::::::::::/::::::/::::::::::::(::::::::::::::::r´:::::::ヽ:::::::i
                   |        ヽ::ト::::::::::(:::::::(ー--、:::::、:::::::::::::):::::::::::::)::::::)    『      と
                  ノL_     /:::(::::::::::::)\::ヽ   V `ヽ:::::(:::::::::::::(:::::/    や     り

                ー‐ヽr´      /::::::イ  ̄`ヽ ):::) ,-´ ̄ ̄ ヽ:::::ヽ::::::::ヽ:(    だ     あ
   /`ヽ              |         (:::::::::::, r‐ェ,_ ___ __,ェェt‐、(:::):::::):::::::::)::)   ね     え
   i  i              |         ヽ:::::::| `、廷リ | ̄ ̄| 廷リ | ヽ:::::(::::::::(:::/    』     ず
.   !  .ヽ                    ∠::::::  ̄ ̄ ̄/    ̄ ̄ ̄  /::::/:::::::::ノ    だ     今
   ヽ  ヽ、                     (:::::i    ヽ        i::::/::::::(´           の
    \  \                   i:::::ヽ    ___,.     ,イ::(:::::(`            段
  ,--/ ̄ヽ   ヽ                  `ヽ!ヽ、  ー-─´  / |::ノ:::::(_            階
.,-!   i      ヽ                      _/ \___  /  | |ノ`             で
i i  i  V 7    `、                ___|///////////|/     |/‐-、__            は
| |  \ /      \             ,-´////////////////;|     !//////-、
\`ヽ- `´ ___  `ヽ__      ////////////////////|、    |//////<_

   ̄ ̄`T´     !`ヽ__ノ     /////////////////////;| \   |ヽ/////////ヽ
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おはようございます。
遅くなりましたが、書きあがった分を投下します。

(ジャッジメント177支部)

初春「ダメです…見つかりません…」

初春「駅の監視カメラで確認されたのが最後です」

白井「この都市で監視カメラに写らずに移動することなど不可能でしょうに…」

白井「いったいどこに隠れてるのやら…」

御坂「もし、相手が姿を隠しながら移動する手段を持っているとしたら…お手上げね」

白井「確かに…そうなればこちらに打つ手はありません」

白井「ですが、事を起こす前には流石に姿を現すでしょう…」

白井「初春、引き続き監視をお願いしますわ」

初春「わかりました!(カタカタ)」

上条「あれ?そういえば詠矢はどこ行ったんだ?」

御坂「さっきコンビニ行くとかいって出て行ったけど…?」

白井「こんなときに?コンビニ…ですの?」

詠矢「うい、ただいまー」

御坂「何よその荷物…?」

詠矢「飯だよ飯、ほれ、適当に取りなー(ドサドサ)」

詠矢は買って来たおにぎりやサンドイッチを机の上に広げる。

詠矢「今のうちに腹になんかいれとかないと後で動けなくなるぜ(モグ)」

白井「相変わらず、変なところで気が回りますわね…」

詠矢「ん?いや、単に俺が腹減っただけなんだけどね(モグ)」

詠矢「遠慮しねえで食えって。女の子は甘いモンの方がいいかな?」

詠矢は手元にあったバームクーヘンを白井に差し出す。

白井「せっかくですので、頂きますわ…」

詠矢「ほい、初春サンも、サンドイッチでいいかい?」

初春「あ、はい、ありがとうございます…」

詠矢「で、んーっと…まだ相手は見つかってない雰囲気だねえ…」

初春「そうなんですよ。画像ログをリアルタイムで調べてるんですけど…(カタカタ)」

詠矢「まー、それは見つかるまで探し続けるしかねえわな…」

御坂「せめて相手の目的がわかれば、先回りできるかもしれないんだけど…」

詠矢「目的、だよなあ…」

詠矢「うーん…」

詠矢「…」

上条「どうした詠矢、なんかわかったのか?」

詠矢「ん?あ、いやあ、わかったんじゃねえんだけどね」

詠矢「一つだけ確かなことがある…」

白井「なんですの?」

詠矢「みんなさあ、ソフィアの都市伝説って知ってたかい?」

初春「はい、今一番の話題ですから…」

白井「初春からそのように聞きましたわ」

御坂「佐天さんから何回か聞いたわね…」

上条「クラスの奴が話してるのは聞いたな…」

詠矢「俺もネットで見た…。要するにだ」

詠矢「この都市伝説がかなりの勢いで広がってるってのは、確かだよな?」

白井「…まさか…?」

詠矢「なんで真々田があんな式神を学園都市に撒いたのか…」

御坂「都市伝説を…広めるため?」

詠矢「だとしたら、その企みは見事に成功したことになるな」

上条「…でも…そんな噂広げたところで、いったいどうなるっていうんだ?」

詠矢「ちょっと前に、俺なりに考えていたことがあってな…」

詠矢「その考えがこの流れに符合するんだよ…」

詠矢「御坂サン…都市伝説って言葉から…連想する事件てあるんじゃないかな?」

御坂「連想って…?…あっ…!」

詠矢「気づいたかな?」

詠矢「幻想御手(レベルアッパー)事件…あれも発端は都市伝説だった…」

白井「詠矢さん…わかっていることがあるなら、もう少し具体的にお願いします」

詠矢「あ、スマン。回りくどいのは悪い癖だな…」

詠矢「端的に言うと、相手の目的にはAIM拡散力場が絡んでると思う」

御坂「AIM…」

初春「拡散…力場…?」

詠矢「でなければ、時間をかけて都市伝説を広める理由がねえ」

御坂「確かに…あの事件もAIM拡散力場が関係していたけど…」

御坂「今度の相手は魔術師でしょ?」

詠矢「そう、問題はそこさ。魔術があの力に干渉できるのか…」

詠矢「それが、出来ないとも言い切れないんだよねえ」

上条「どういうことなんだ…詠矢」

詠矢「残念だけど、決定的な部分は俺にもわからない」

詠矢「ただ、今広がった都市伝説のお陰で、この学園の恐らくは何千・何万っていう能力者が」

詠矢「ソフィアの実体化を見聞きしたり、考えたりしてる可能性がある」

詠矢「もしその意識を一点に集めることが出来たとしたなら…」

詠矢「結構マズイと思うんだよね」

御坂「…」

上条「…」

白井「…」

初春「…」

上条「魔術師だけに…こっちの常識は通用しない」

上条「何をしてくるか読めねえ…ってことか」

詠矢「そういうことだな」

初春「…!!」

初春「見つかりました!!」

白井「どこですの!?」

初春「郊外の公園近くです!。ここからだと、少し距離がありますね…」

詠矢「まあ、とり合えず行ってみるしかねえわな」

白井「早速向かいましょう!わたくしなら比較的早く現場までたどり着けます!!」

詠矢「んじゃ、俺も行こう。連れて行ってくれるかい?」

白井「ええ、詠矢さん一人ならなんとか…」

詠矢「よろしくたのむぜ…」

詠矢「御坂サンと上条サンも後から頼む。急ぎでな」

上条「わかった。すぐに追っかける」

御坂「タクシーでも捕まえればそんなに時間はかからないと思うわ」

御坂「…黒子のことお願いね?」

詠矢「…俺に?かい?」

御坂「アンタなら、少なくとも護衛にはなるでしょ?」

詠矢「…へえ…そいつはどうも…。ナイトってガラでもねえがな…」

白井「(お姉さま…)」

白井「初春はここでバックアップをおねがいしますわ」

初春「わかりました!気をつけて…」

白井「では、参りますわよ!」

詠矢「おう、行くか!」

白井は詠矢の腕を掴むと、二人の姿はその場から掻き消えた。

(とある街角)

数十回の転移の後、二人は目的地近くに到着した。

白井「…(シュン)」

詠矢「…っと…連続転移ご苦労さん…」

白井「いえ…。位置からするとこの辺りのようですわね」

詠矢「そっか…んじゃ、ここからは歩いて探すか…」

白井「…」

白井「…詠矢さん」

詠矢「ん?なにかな?」

白井「お姉さまについて、おっしゃられていたこと…」

白井「私なりに考えてみました」

詠矢「へえ…。じゃあ、何か答えは出たかい?」

白井「…あなたのおっしゃっていたように、お姉さまの気持ちは本物でした…」

白井「口惜しいですが…でも、お姉さまには幸せになっていただきたいです」

白井「ですので、わたくしは…あの方、上条当麻がお姉さまにふさわしい殿方かどうか」

白井「見極めさせて頂きます!」

詠矢「なるほど…、まあ…いいんじゃねえか?」

詠矢「その方が白井サンらしくてさ…」

白井「あら…わたくしが口を挟むことには反対されないのですね?」

詠矢「そりゃまあ、納得してもらうことに越したことはないからね」

詠矢「御坂サンだって可愛い後輩には祝福してもらった方がいいっしょ?」

白井「詠矢さん…」

詠矢「ま、上条サンならお眼鏡にかなうと思うけどねえ…」

詠矢「んじゃ、行きますか。相手の正確な場所は探す必要があるしね」

白井「そうですわね…急がないといけませんわ」

2人が目的の公園に向かうと、探すまでも無く相手の姿はそこにあった。

詠矢「こいつは…」

白井「魔方陣…というのでしょうか…」

公園の広場には星型の陣が組まれており、はその中央には真々田本人と、人の形をした何かが立っていた。

真々田「ギャラリーがようやく到着かな?」

白井「残念ですが、だた見物に来ただけではありませんわ」

詠矢「基本的に、あんたを止めに来たと思ってもらって間違いない」

白井「傀儡師、真々田創(ママダ ツクル)ご本人で、間違いございませんですか?」

真々田「ああ、間違いない。僕が真々田だよ…」

詠矢「とりあえず、今何されてるかから…お聞きしたいんですがね…」

真々田「そうか…聞きたいかね?。では教えてあげよう!」

真々田は大げさに両腕を広げてみせる。

真々田「今行われているのは大いなる創造だよ!!」

白井「創造…?」

詠矢「…もう少しわかりやすくお願い出来ませんかねえ…」

真々田「ははっ…そうだね、凡人には理解できないだろうね…」

真々田「僕のことを調べたなら知っていると思うが…」

真々田「僕の今の本職は原型師だ。だが、それと同時にコレクターでもある」

真々田「特にソフィア関係のアイテムに関しては、世界一と自負してもいいだろう」

真々田「フィギュアはもとより、あらゆるグッズ…果ては筐体のインストカードに至るまで!!」

白井「…あの…」

白井「できれば手短に…」

詠矢「…白井サン(グイ)…(聞いとこう、上条さんたちが来るまでの時間稼ぎになる)」

白井「…(そ、そうですわね…)」

真々田「だが、それにもすぐ限界が来た。彼女の全ては僕の手元に集まってしまった」

真々田「それに、僕の技術と能力を使えば…」

真々田「極限まで精巧なフィギュアも、自立行動し、会話すら交わすことのでる存在も…」

真々田「どんなソフィアだって作り出す事が出来る…」

真々田「それはまさに…手に入るが故の空しさ…」

真々田「だから、だからね…僕は…」

真々田「誰にも造れないソフィアが欲しくなったのさ…」

詠矢「…造れない?」

白井「どういうことですの!?」

真々田「…今この学園都市には、ソフィアの実体化を意識している人間が数多く居る」

真々田「そしてのその多くは能力者だ。その強い能力者の意識を」

真々田は突然魔方陣の中央を力強く指差す。そこには、既に姿を成そうとしている人形の姿があった。

真々田「集約し、整合してこの傀儡の内部に具現化させれば…」

真々田「それは誰にも、僕にさえ作れないソフィアとなる!!」

白井「……」

詠矢「……え?」

白井「…あの?…もしや…」

詠矢「…おいおい…あんた…」

詠矢「等身大フィギュアを作るために、わざわざこの学園都市を利用したっていうのか!?」

真々田「ここには、複数の意識を集約しやすい環境がある」

真々田「AIM…拡散力場…だったね」

白井「そのために学園中に噂を流して…」

詠矢「じゃああんた、ただの愉快犯なのか?そんなモン目的なんか読めるわけねえだろ!!」

真々田「失礼な!僕は正しい意味での確信犯だ!!」

真々田「僕のソフィアに対する思いは、もはや信仰と言っても過言ではない!!」

白井「…」

詠矢「…」

思わず顔を見合わせる白井と詠矢

上条「ここか!…詠矢!」

御坂「黒子!大丈夫!?」

詠矢「お、上条サン」

白井「お姉さま!」

上条「真々田って奴は…アイツか?」

御坂「なるほど…アレが敵ってワケね?(バチッ)」

詠矢「それが…なあ…」

白井「なんとも申し上げにくい状況でして…」

白井と詠矢は、今見聞きした情報を説明する。

御坂「何よそれ…人形を作るためだけにこんな騒ぎを起こしたっていうの!?」

上条「でもなんか…疑いづらい状況だな…」

真々田「ふふ…もうすぐ会えるね、新しいソフィア…」

ただ人形を見つめて悦に入る真々田は、愉悦に浸った笑みを浮かべている。

上条「なんか…アレだな…」

詠矢「邪念は満載なんだが、逆に悪意は感じないんだよなあ…」

御坂「でも…あんなものほっといていいわけないでしょ!?」

詠矢「まあそうなんだが…うーん…」

詠矢「…」

白井「詠矢さん、何か考えが?」

詠矢「ん…いや、ちょいと確かめたいことがあってね…」

詠矢「ちょっと聞いてみるわ…」

白井「では(ガシッ)」

白井はおもむろに詠矢の腕を掴む。

詠矢「え?なに?どしたの?」

白井「いえ、もし何か相手に動きがあった場合」

白井「すぐに転移で退避できるように準備しておきます」

詠矢「…」

詠矢「…ああ、そりゃどうも…助かるぜ…」

詠矢「んじゃ早速…」

詠矢「なあ、真々田サン!!忙しいとこ悪いんだけど!!」

詠矢「ちょいと聞きたいことがあるんですがー!」

真々田「ん?何かね?」

詠矢「そちらさんの目的はわかった。ただ、ちょいとわかんないことがありまして」

真々田「ああ、今の僕はとても気分がいい。なんでも答えてあげるよ!」

詠矢「そりゃどうもです…んで」

詠矢「学園内のAIM拡散力場を利用してオリジナルのソフィアを作り上げるってのはわかったんですけど」

詠矢「それだと、出来上がったソフィアを外に連れ出せなくなる」

詠矢「真々田サンはここに移住して、ずっと一緒に暮らすつもりなんですかね?」

真々田「なるほど、なかなかいい質問だね」

真々田「君の言うとおり、今の状態のままだと、彼女を連れ出すことは不可能だ」

真々田「だが、今彼女に注ぎ込まれている情報を一旦固定化して、AIM拡散力場と切り離せば」

真々田「ソフィアの究極体は完成するのさ」

詠矢「へー、そんなことが可能なんですか?」

真々田「残存思念…いわゆる怨念の具現化は、昔から陰陽のお家芸さ」

真々田「情報を定着される方法も確立されている。そう難しい話じゃないさ」

詠矢「…なるほど…。じゃあ、そうしてもらいましょうか」

白井「ちょっと詠矢さん、見逃すっていうんですの?」

詠矢「いや、見逃すわけじゃないよ。真々田サンをどう扱うかは」

詠矢「ジャッジメントやアンチスキルで決めてもらえばいい」

詠矢「ただ、あのソフィアを早いことAIM拡散力場から切り離しとかないと」

詠矢「マズイと思うんだよね…」

白井「…何か問題でも?」

御坂「…多分、あるわね…」

詠矢「…御坂サン…なんか心当たりでも?」

御坂「あの事件の時も…能力の集合体が暴走して」

御坂「巨大な怪物に変化したわ」

御坂「もし、あの人形に意識だけじゃなくて、能力者の力まで流れ込んでいるとしたら…」

上条「同じような暴走が起こる可能性がある…ってことか」

上条「それって…めちゃめちゃヤベエじゃねえかよ!」

詠矢「まあ、そういうこった」

詠矢「今のところは静観しといたほうがいいと思う」

白井「確かに理屈はわかりますが…本当に大丈夫なんでしょうか…」

詠矢「俺も、何が本当に正しいのかはわからん」

詠矢「下手に刺激するよりは安全かなって思ってるぐらいでね…」

白井「…」

白井「…仕方ありませんわね…ではしばらく監視を…」

真々田「ようし!!来たぞ!!」

突然の叫び声に全員が振り向く。そこには人形を見つめる真々田がいる。

その人形の表面に、徐々に像が浮かんでいく。

まるで、ポリゴンにテクスチャが貼られていくように。

真々田「これで十分な情報は集まった!完成…いや、誕生だ!!」

表面の像が全身を覆いつくすと、人形は静かに目を開く。

瞳は静かに、そして鋭く虚空を捕らえる。

その姿はまさに、戦いに赴くソフィアそのものだった。

真々田「ほほう、集積されたイメージというのはこうなるのか…。少しやさしめな造形だねえ…」

上条「おい、あんた!」

真々田「んー、なんだい?」

上条「出来上がったんなら、『切り離し』ってヤツを早いこと頼むぜ!」

真々田「ああ、そうだね、急ぐとしようか…」

上条に促された真々田は、人差し指を一本立て、空中に術を組み始める。

真々田「さあ、これれで君は、僕だけのソフィアとなる…」

額から胸の辺りまで、既に術は空中に組み上げられていく。

それを待つかのように視線を下げ、うつむくソフィア。

その唇が、突然、そして静かに開いた。

ソフィア「僕…だけ…の?」

真々田「ん?何か言ったかい?」

ソフィア「私の意志は、私…だけ…の…もの…」

真々田「…?」

ソフィア「立ちはだかるというなら…」

真々田「え…?」

ソフィア「すべての敵は、排除する!」

真々田「な…なんだって!?ソフィアはそんなこと言わない!!」

その言葉が終わるや否や、ソフィアの掌が真々田の体を突き飛ばした。

真々田「うわっ!!」

詠矢「…お、おい、何だ?」

吹き飛ばされる真々田の傍に、詠矢が駆け寄る。

詠矢「大丈夫っすか?いったい何が…って…」

真々田「違う!あんなのはソフィアじゃない!!」

詠矢が見上げた先には、強大な、怒気にも似た気を放つソフィアの姿だった。

ソフィア「戦いなさい!!…シルバーエッジ!!」

詠矢「うお!!いきなりっ!!」

上条「あぶねえっ!!(キュイーン)」

真々田を逃がそうと身動きが取れない詠矢の前に、上条が立ちふさがった。

詠矢「すまねえ!上条サン!」

上条「…大丈夫か!詠矢!!」

上条「しかし…かなりヤバイ雰囲気だな…」

詠矢「ああ…そのようだな…どうなってんだがわからんが…」

真々田「ああ…何故だ…」

上条「暴走って、ヤツなのかもな…。だが、相手が異能の力なら…。こいつで!!」

相手の体勢が整う前に上条は突進する。躊躇無く振るわれた右拳が、ソフィアの腹部に命中する。

ソフィア「ぐっ…!!」

上条「…あ…れ?」

詠矢「…なっ!!何の反応も無い!!なんでだ!!」

詠矢「上条サンの右手なら、何らかの反応があるはずだ!!」

真々田「…彼の…右手がどうかしたのかい?」

詠矢「え?…って…ああ」

詠矢「上条サンの右手には、あらゆる異能を打ち消す力が秘められてるんだ」

詠矢「術式で造られた存在に触れて、何も起こらないっていうのが…」

真々田「へえ…都市伝説であった『神の右手』か…実在したとはねえ…」

真々田「でも無駄だよ…」

上条「…どういうことだよ!」

真々田「彼女には術返し…ディスペルの対策が施してある」

真々田「素体は造形用の紙粘土で造ったんだけど…」

真々田「活動に要する術式は全て内部に書き込まれている」

真々田「直接触れることは不可能さ…」

真々田は自嘲気味に笑う。

詠矢「おいおい…また余計なことを…」

白井「皆さん!離れてください!!」

上条「…!」

詠矢「…!」

御坂「暴走…ねえ…。式神だかなんだか知らないけど…(バチッ)」

御坂「所詮は人形なんでしょ?…だったら…(ビリバチッ)」

御坂「だったら…これで…塵にしてあげるわ!!!(ビシュゥゥゥン)」

右手によって弾かれたコインがローレンツ力で加速する。一条の閃光が一瞬で対象に到達する。

ソフィア「んっ…!!(ガッガッガッ)」

両腕をクロスして顔の前に構え、防御体制をとる。

どこからか硬いものがぶつかる様な音が数回発せられると、閃光はソフィアの体をすり抜けていった。

御坂「えっ!?なに今の!?」

白井「…まるで…効いていない…?」

真々田「…ははっ…なるほどね…」

真々田「今のは『ガード』だね…」

詠矢「…勝手に納得しないでもらえますか?」

真々田「そうだね…君たちには説明しておこうか?」

真々田「どうやら僕は、この学園の能力者の力を甘く見ていたようだ」

真々田「この強大な力は、ソフィアの性格や容姿だけではなく、その『意味』も具現化してしまったようだ」

白井「…意味?」

真々田「今や彼女は、実在する格闘ゲームのキャラクターなのさ!」

真々田「だからあらゆる攻撃は『ガード』すればダメージを受けない!」

詠矢「…え?じゃあ御坂サンのレールガンも!?」

真々田「恐らく、あの攻撃はコマンド技扱いだろうから、多少削られはしただろうけどね…」

真々田「致命傷になることはないさ!!」

詠矢「…なんだ…そりゃ…」

真々田「でもねソフィア…僕が君に求めたのはそんな力じゃないんだ…」

真々田はよろよろと立ち上がる。

真々田「それに…なぜだ?君は誰彼構わず攻撃する子じゃなかったはず…」

上条「おい…アンタ、あぶねえって…!!」

真々田「術の調整が足りなかったかな?…さあ…もう一度僕の…」

ソフィアの正面に対峙し、憂いを帯びた目線を向ける真々田。

ソフィア「…」

真々田「?」

静かに真々田を見据えるソフィア。そして、直後。

ソフィア「サークルステップ!!」

技名と共に回転しながら接近すると、その手刀を真々田の脇腹に命中させる。

真々田「ぐがっ!!…が…(ドサッ)」

詠矢「ちょっ…おい!!」

あっけなく崩れ落ちる真々田

ソフィアはその姿を一瞥すると、残った人間に順番に視線を移す。

ソフィア「…私と…戦うのですか?」

御坂「…」

白井「…」

上条「…」

詠矢「…」

詠矢「…一旦…引こう。対策を考え…」

ソフィア「私は、戦う!!」

直前に攻撃を受けた御坂に対し、ソフィアは襲い掛かった。

地面を蹴り、一気に距離を詰める。

御坂「えっ!?」

上条「御坂!!」

突然の相手の行動に反応できず、上条はその姿を追うことしか出来ない。

白井「お姉さま!」

御坂とソフィアの間に割って入ったのは、すぐ傍にいた白井だった。

ソフィア「…く…!」

白井「…!!」

体当たりで突進を止める白井。

白井「…(わたくしの、能力なら…あるいは…!!)」

ソフィア「…!!」

ソフィアの姿が何処かえと掻き消えた。

詠矢「…白井サン、ナイス判断だ!」

白井「出来る限り遠くの上空へ飛ばしました…ですが…」

上条「落っこちたぐらいで壊れてくれればいいがな…」

御坂「恐らく…無理でしょうね…」

詠矢「それでも、考える時間は出来たぜ…」

詠矢「ちと作戦を考える、仕切りなおしだ」

(とある公園 ベンチ)

上条「さて…どうしたもんかな…」

御坂「相手は、AIM拡散力場から直接力を得てる…一筋縄じゃいかないわね」

白井「ですが…何か手を打たないと…」

上条「無差別に人を襲う可能性もあるしな…ほっとけねえ」

上条「ただ、あの真々田ってヤツも言ってたけど、何であのソフィアは好戦的なんだ?」

上条「俺もあんまり詳しい訳じゃないけど、確かそんなキャラじゃなかったはず…」

御坂「…あれじゃない?噂って、尾ひれが付くものでしょう?」

御坂「あのソフィアが、複数の人間の意識の集合体だとしたら」

御坂「必ずしも正しい姿にはならないんじゃないかな…」

詠矢「鋭いね…そのセンで間違いないかな…(ポチポチ)」

白井「何を見てますの?」

詠矢「ソフィアに対するネットの書き込みを再チェックしてるんだ」

詠矢「ここじゃ、突然人に襲い掛かったり、既に誰か殺したって話も出てる」

詠矢「こういう歪曲した噂が、あのソフィアを作り上げたんだろう…」

上条「じゃあやっぱり早くなんとかしねえと…」

詠矢「だな…」

詠矢「…」

白井「詠矢さん…なにかお考えがありますの?」

詠矢「え?わかる?」

白井「あなたが黙って考え込んでいるときは、既に何か考えがあるときです…」

詠矢「…読まれてるねえ…まあいいや」

詠矢「んじゃ、相談だ。皆さん…」

詠矢「面倒だけどマイルドな方法と、段取りはいらないけどヤバイ方法とあるが」

詠矢「どっちにする?」

御坂「…あんたがヤバイって言うんだから…相当ヤバイ方法なんじゃないの?」

詠矢「まあ…ヤバイ方は…かなりヤバイね…」

上条「だったら…まだマシな方がいいだろ…」

白井「わたくしもそちらの方法でよろしいですわ」

御坂「いいわ、私もそれで」

詠矢「うし、わかった…とり合えず連絡からだ(ポチポチ)」

詠矢「…あ、もしもし、土御門サンかい?」

詠矢「二つほどお願いがあるんだが…ちと面倒だぜ?」

以上となります。
それではまた。

こんばんわ。
当初の予定とは違うのですが、書きあがった分を投下します。

(とある公園)

詠矢「さあて、段取りは理解出来たかい?」

御坂「ええ」

上条「了解だ」

白井「わかりましたわ」

詠矢「うい、皆さんいい返事だ」

詠矢「あとは…土御門サンの方の進行具合だが…」

詠矢「上手く時間は稼げて、あれから小一時間ってとこか」

詠矢「まだ準備には少々かかるようだな」

白井「それはこちらで確認します」

詠矢「ああ、そだな…初春サンとの連携頼むぜ」

白井「わたくしと初春の付き合いの長さをご存知無いようで…」

白井「コンビネーションは磐石ですの」

詠矢「そいつは頼もしいねえ…」

御坂「あとは…相手がいつ動き出すか…だけど…」

白井「そうですわね…(ピピピ)あら、噂をすれば…ですわ」

白井「(ピ)もしもし?初春ですの?」

初春『はい!目標が動き出しました!最初に確認された場所から、あまり離れてはいません…』

白井「様子はどうですの?」

初春『監視カメラからの映像でははっきりしたことは解りませんけど…』

初春『多少の損傷は見て取れますが…。ゆっくりと移動しています』

初春『正確な位置をそちらに送ります!』

白井「よろしくですわ(ピ)」

白井「…(ピ)…早速データが来ましたわ…」

詠矢「ちょいと失礼するぜ…お、近くだねえ…」

詠矢「んじゃ、先鋒の俺が会いに行ってきますか!」

詠矢は腕を回し、屈伸し、体をほぐす。

上条「詠矢、ほんとに一人で大丈夫なのか?」

上条「やっぱり俺も一緒に行った方がいいんじゃねえのか?」

詠矢「いや、今回の俺の役回りは、時間稼ぎにしかならないだろう」

詠矢「なら、本命のほうに人を回したほうがいい」

上条「でもよ…」

リアルタイム遭遇きた
応援しています

御坂「いいんじゃないの?そもそも本人が考えた作戦なんだし…」

御坂「それぞれが、決められた役割をしっかり果たせばいいだけよ」

詠矢「いいねえ、流石御坂サンだ。よくわかってらっしゃる」

御坂「あんたも無茶しないようにね?」

詠矢「…」

詠矢「…あれま…御坂サンが俺の心配してくれるなんてねえ…」

御坂「…もう…いいじゃないの別に!こんなときに茶化さないでよ!」

詠矢「いやゴメンゴメン。あんまり意外だったもんでさ…」

詠矢「んじゃあ、せいぜい時間を稼いでくるとしますか!」

上条「詠矢、しつこいようだけど…気をつけてな…」

詠矢「おうさ、わかってるって!」

>>569
ありがとうございます。

詠矢「…それと…白井サン」

白井「なんですの?」

詠矢「今回のキーパーソンはあんただ。よろしく頼むぜ?」

白井「…また面倒な役を押し付けられましたわね…」

白井「ですが…引き受けた以上、きっちりやり遂げさせて頂きます」

詠矢「うい、んじゃあ…準備が済んだら連絡よろしく!」

詠矢「…よしっと!」

とんとんと2〜3回跳躍すると、詠矢は駆け出していった。

(とある街角)

ソフィアは、静かに歩みを進めていた。

周囲に視線を配りながら進むその姿は、警戒しているようにも、ただ目的を持たずさ迷っているようにも見えた。

その視線の中に、一人の人物が写った。

詠矢「よう、ソフィアサン。また会ったな…」

ソフィア「あなたは…」

詠矢「自己紹介でもしとくかな?俺は詠矢…詠矢空希ってもんだ。よろしくなー!」

ソフィア「よめや…そら…き?…」

ソフィア「私と…戦うの…ですか?」

詠矢「…(有る程度受け答えが出来るようになってるな)」

詠矢「(なら、ダメモトで試してみるか…)」

詠矢「いや、できる限り戦いたくはないんだけどね」

詠矢「そもそも…ソフィアサン、あんた自分の存在をどう考えてる?」

詠矢「あんたはよく言うよな?『自分の意思は自分だけのもの』って」

詠矢「でも、その自分の意思なんてどこに存在するんだい?」

詠矢「その体は真々田サンが造った紙粘土の人形、その姿は能力者の意思の集合体…」

詠矢「そんな存在が『自分』なんて名乗れるのかい?」

ソフィア「…」

ソフィアは額に手を当て、軽くうなだれる…。

詠矢「そもそも、あんたが戦う意思を持ってるのも、単なるゲーム上の設定に過ぎない」

詠矢「なら、大人しくモニターの向こう側でやってくれないかねえ…」

詠矢「こっちは現実の世界だ。日々格闘技に明け暮れてる人なんて殆どいねえ」

詠矢「誰彼構わず戦いを吹っかけられると迷惑なんでね」

詠矢「ソフィアサンが自分の意思を主張するなら…」

詠矢「こっちの世界の意思も尊重してもらいたいもんだねえ…」

ソフィア「…」

ソフィア「…私は……」

ソフィア「私は…!!戦う!!」

ソフィア「シルバーエッジ!!」

詠矢「うおっ!!」

突然遅いかかる飛来物を詠矢は横っ飛びで回避する。

詠矢「(くそっ!ダメだ、居直られた…)」

詠矢「(存在の矛盾を指摘すれば、少しは揺さぶれるかと思ったんだが…)」

詠矢「(相手には格闘ゲームのキャラっていう薄っぺらい自我しかねえ)」

詠矢「(自己矛盾を引き出すまでには至らなかったか…)」

詠矢「(んじゃ、当初の予定通り行きますか)」

詠矢「ソフィアサン、余計なこと言って悪かったな!」

詠矢「ただ、あんたの戦う意思はバッチリ感じたぜ!」

詠矢「一つお手合わせ願えないかい?」

ソフィア「…わたし…と?」

詠矢「ああ。俺も結構たしなんでるんでねえ…」

詠矢「言ってみりゃあ…制服着て戦う高校生格闘家だ」

詠矢「キャラのスペックとしては十分じゃないかい?」

拳を突き出し、詠矢は空手に近い適当な構えを取る。

ソフィア「…私は…逃げない…」

ソフィア「お相手します…」

静かに構えを取ってソフィアも呼応する。

詠矢「よっしゃあ…行くぜ!!」

一気に地を蹴り距離を詰める詠矢。

詠矢「どっせい!上段正拳!!」

走る勢いに乗せ、大きく振りかぶった拳を相手の顔面に振るう。

詠矢「(俺の声で技名を叫べば、相手は必殺技と認識するはず!)」

ソフィア「…!!」

ソフィアは手を交差させてガードする。

詠矢「(削れたかな?お次はっ!!)」

無理やり腰を落とし、詠矢は蹴りで相手の足元を狙う。

ソフィア「あっ…!!」

足を刈られたソフィアは見事に転倒する。

詠矢「ガードを揺さぶるのは基本っしょ?」

自慢げに語りながら詠矢は更に接近する。

詠矢「起き攻めも基本だよなあ!」

倒れてるソフィアの胴体に足を飛ばそうとした刹那。

ソフィア「ライジングソード!!」

詠矢「あっ!!」

詠矢の放った蹴りは相手の体をすり抜ける。

ありえない体勢から立ち上がったソフィアは、地面から沸き上がる光の柱に包まれながら詠矢の顎に向かって蹴りを放つ。

詠矢「ぐっ!!(ガッ)」

相手の駆け上がるようなつま先が、顎をガードした詠矢の腕に突き刺さる。

詠矢「…(くそっ…いってえ…。折れるかと思ったぜ…)」

詠矢「(こちとらガードすればダメージゼロってわけにゃいかねえんだよ!)」

詠矢「(しかし、さっきのはなんだ?蹴りが効かなかった…あ)」

詠矢「(もしかして、対空技の一瞬無敵か?…そんなとこまで律儀に再現すんなよ…)」

ソフィア「はっ!」

怯んだ隙を見逃さず、ソフィアはまた距離を詰める。

詠矢「よっ…と!」

しなるように繰り出された上段蹴りを詠矢は腕でガードする。

詠矢「ど…ぉっせい!!(ドカッ)」

詠矢は体をひねり、無理やり体勢をつくってソフィアの顔面に右の拳を打ち込む。

ソフィア「ひっ!!」

正拳が命中したソフィアは流石に怯む。

詠矢「ここで一気に詰め…ん…」

追撃を決めようとした詠矢だったが、ガードを続けていた左手が痛みで動かない。

詠矢「ぐ…が…このっ!」

体勢が整わないまま苦し紛れに中段蹴りを放つ。

ソフィア「…はっ!!」

詠矢「んぐっ…!!」

見切られた蹴りはガードされ、反撃として肩口に相手の拳が命中する。

詠矢「って!!っと…と(一旦距離を離して…)」

詠矢「(相打ち狙いならなんとかなるが…)」

詠矢「(それだとこっちの体が持ちそうに無いな…)」

詠矢「(なんか突破口はねえかな…このままだとジリ貧で…)」

ソフィア「やっ!!」

疲れというものを知らない相手は動きをやめない。今度は側頭部に裏拳が飛んでくる。

詠矢「いや、ちょっと…まっ…!」

上体を倒して詠矢はこれを避ける。そして…。

詠矢「(あ…そうだ。あれなら…)」

ダッキング状態で相手に接近。そのまま相手の襟首を掴む。

詠矢「よいしょっと!!」

ソフィア「…!!」

詠矢は相手を掴み上げて投げる。引き手もつり手も決まらない極めて適当な投げ技だが、なぜか相手は綺麗に倒れた。

詠矢「(投げ技なら…どんなに適当な組みでも決まるはず!)」

ソフィア「…」

無言で立ち上がるソフィアに接近し、今度は腕に手をかける。

詠矢「(よし、このまま投げまくって…)」

ソフィア「はっ!!」

腕を掴んだ詠矢の手が思い切り弾かれる。

詠矢「なにっ!!」

詠矢「(あ…投げ抜け!!)」

ソフィア「サークルステップ!!」

ソフィアの手刀ががら空きになった詠矢の脇腹に襲い掛かる。

詠矢「…くそっ!!」

脇腹への攻撃は致命傷となる。そう判断した詠矢は体をひねり、相手の手刀を腹筋で受ける。

詠矢「がっ!!…はあっ!!」

なんとか腹筋を絞めて攻撃を受けたが、内臓に衝撃が走る。思わず詠矢は膝を着く。

詠矢「ん…ぐっ…(くっそ…厳しいな…いろいろと)」

詠矢「(だが、活路は見えたぜ…)」

詠矢「さて、続き行きますかあ!!」

ソフィア「はっ!!」

距離を詰める詠矢を、ソフィアは上段の抜き手で迎え撃つ。

詠矢「よっと!!」

相手の指先をくぐりぬけ、相手の腕を取ると、すばやく体を反転させる。」

詠矢「どっせい!!一本背負い!!」

ソフィア「…!!」

詠矢「(コマンド技なら、投げ抜けは出来ない!!)」

詠矢の狙い通り、相手の体は大きく宙を舞い、地面に叩きつけられた。

詠矢「(よしっ!コマンドの投げ技は比較的ダメージがでかいはず)」

詠矢「(これで何回か押せば…)」

ソフィア「きゃあぁぁああ!!」

地面に倒れたソフィアの体は、悲鳴と共に軽くバウンドし、そのまま動かなくなった。

詠矢「…あれ?倒した?…」

詠矢「そんなダメージ与えてないはずだぞ?」

詠矢「…もしかして…転移で落下したときのダメージが残ってたのか?」

詠矢「いや、こいつは白井サンに感謝だな。ちと休憩すっか…」

詠矢はぺたんと地面に腰を下ろす。

ソフィア「…」

ソフィア「…私は…戦う」

何事も無かったかのようにソフィアは立ち上がる。

その姿にダメージが残っているようには見えない。

詠矢「あー…やっぱそうなるよな…2ラウンド目か…」

詠矢「(エネルギー源はAIM拡散力場…、要するにクレジットなしのフリープレイ状態か…)」

詠矢「よいしょっと!(ガバッ)」

勢いよく立ち上がると、詠矢は痛む腕をおして構えを取る。

詠矢「(しょうがねえ、倒すことは考えず、できる限り粘る方向で行くか…)」

詠矢「さあ!まだまだ!!」

ソフィア「はっ!」

またもソフィアは距離を詰めつつ、勢いのまま中段の前蹴りを放つ。

詠矢「いい加減慣れたぜ!」

詠矢はこれをガードせず腕で捌く。

ソフィア「はあぁぁぁあっ!」

一瞬その動きが停止したかと思うと、ソフィアに向かって光が集中する。

詠矢「…あ…(このエフェクトは、ゲージ技か!)」

ソフィア「エターナルステップ!!」

技名が終わるや否や、人体としてはありえない動きで次々と攻撃が繰り出される。

詠矢「…うおっ!(こんなもん捌ききれるか!!)」

両腕で上体のガードを固める詠矢だが、すぐに限界が訪れる。

詠矢「…ぐ…がっ…!(腕が…持たねえ!)」

相手の攻撃におされる形で後ずさる詠矢。

詠矢「…や…べっ…ぐ…、なっ!?」

後方を確認する余裕も無かった詠矢は、足元の段差に気づかず後ろ向き転倒する。

ソフィア「はっ!!」

ほぼ同時に、ソフィアの乱舞技のトドメの攻撃が、先ほどまで詠矢が立っている場所で炸裂した。

詠矢「…(うおっ…助かった…転倒してなかったら今頃)」

詠矢「…ん?(ブブブ)」

ズボンの後ろ側のポケットに入れておいたスマホが振動する。

詠矢「…(よし!準備が済んだか…)」

詠矢「…(丁度いい、このまま終わらせてもらうか…)」

詠矢「うわぁぁああ…!」

いささか棒読みな断末魔を詠矢は叫ぶ。

ソフィア「…」

ソフィア「私の…勝ち…ですね…」

詠矢「…」

詠矢「俺は…ここまでだが…」

詠矢「その道を進んだところに…」

詠矢「俺よりずっと強いやつがあんたを待ってるぜ…」

詠矢「…」

力なく倒れる詠矢。ソフィアはその姿を静かに見つめると。

ソフィア「…」

きびすを返し、無言のまま示した道に沿って歩き出した。

詠矢「…」

詠矢「…行った…かな?」

こそこそと周囲を確認し、ソフィアの姿が見えないことを確認すると、詠矢は上体を起こす。

詠矢「さて…連絡…(ポチ)」

詠矢「ああ、上条サンかい?そっちに行ったぜ」

詠矢「ん?いや、俺は大丈夫だ。これから休ませてもらうさ」

詠矢「戦ってみて相手の特徴はわかった、先に説明しとくぜ…」

詠矢は一通りの説明を終えると、通話を切り、ふうと小さく息を吐く。

詠矢「…俺の仕事はここまでか…」

詠矢「さあて…皆さん頑張ってくれよ…」

短いですが、以上となります。
それではまた。

こんばんわ。
早速ですが、書きあがった分を投下します。

(とある空き地)

上条「詠矢は大丈夫みたいだ…相手はこっちに向かってるってさ」

御坂「そう…じゃあいよいよね…」

御坂「黒子!そっちはどう!」

二人と少し離れた位置にいる白井は、携帯とハンズフリーのイヤホンを接続し、耳にセットする。

白井「こちらはよろしいですわ!」

白井「初春もよろしいですの?」

初春『はい、いつでも!』

電話の向こうの初春が答える。

上条「よし…じゃあ、詠矢が稼いでくれた時間を無駄にしないよう」

上条「頑張んねえとな!!」

御坂「そうね…、ここでしくじったら、後でアイツに何言われるかわかんないもの…」

上条「…」

上条「…なあ、御坂」

御坂「なに?」

上条「なんか…またウヤムヤになっちまたな…」

御坂「へ?…あ…ああ…」

御坂「…い…いいわよ。今は事件を解決するほうが先だし…」

御坂「それに…」

上条「…?」

御坂「あんたが、『ちゃんと見る』って言ってくれたんだから」

御坂「…ちゃんと待ってる…」

御坂は顔を伏せたままつぶやく。

上条「…なんか…悪い…な…」

御坂「いいわよ別に…」

御坂「でも、絶対諦めないからね…」

上条の胸に何かが疼く。

上条「ま…まあ…」

上条「そんなに、待たせねえと…思うけど…な…」

御坂「へ?…そ、それって…どういう…」

上条「来たぞ!」

御坂「…!!」

二人の視界に、まっすぐに向かってくるソフィアの姿が映った。

上条「よし、もっかい確認するぞ。俺たちは白井の護衛だ」

御坂「集中する時間を稼いで、タイミングを合わせて黒子の近くに敵を誘導する…」

上条「だったな…」

御坂「黒子は今回かなり難しい転移をすることになるわ…」

御坂「しっかり集中できるようにしてあげないと…」

御坂の言葉を遮るように、既に臨戦態勢に入っているソフィアは、先に攻撃を仕掛けてきた。

ソフィア「シルバーエッジ!!」

上条「きたっ!御坂、後ろに!」

御坂「…わかった!」

上条「…!!(キュイーン)」

上条「よし…消せるな…」

上条「御坂、とり合えず俺が前に出る。お前は白井の傍についててやってくれ!!」

御坂「…とりあえずそれしかないようね…。援護するわ!」

御坂「ん…っ!!(ビリバチッ)…はあっ!!」

お返しとばかりに、御坂はソフィアに向かって雷槍を放つ。

ソフィア「んっ…!!」

ソフィアはこれをガードする。一瞬足が止まる。

上条「よしっ…いくぜぇええ!!」

動きの止まった瞬間を見逃さず、走りこんだままの勢を右拳に乗せる。

ソフィア「…!!(ガッツ)」

ガードの上から拳をたたきつけた為、ダメージは無い。が、更に相手を足止めすることが出来た。

御坂「(無茶しないでよね…)」

ソフィアと攻防を繰り広げる上条を、御坂は少し不安そうに見つめる。

白井「…」

目を閉じて集中を続ける白井。御坂はその姿をちらりと見る。

御坂「…黒子、どう?準備できたら言ってね?」

白井「あと少し…の筈ですわ…」

目を閉じたままの白井は静かに答える。

初春『到達まであと一分です!』

タイミングよく初春の声が白井の耳に届く。

白井「お姉さま…あと一分ですわ…ご準備を…」

御坂「わかった…もう時間がないわね…」

御坂「あと一分よ!!がんばって!!」

少し離れて、前面で戦う上条に御坂は叫ぶ。

上条「わかった!…っても…」

ソフィア「はあっ!」

上条「ぐっ…!!」

上条は相手を制しながら、一定の距離を保ちつつ戦っていた。

最も厄介な『飛び道具』は右手で消せる。逆に接近しすぎると対処しづらい攻撃が来る。

彼なりに考えた作戦である。

上条「(もう時間がねえ!なんとかしてコイツの動きを止めないと…)」

ソフィア「はっ!」

一瞬の隙に、ソフィアは地を蹴り宙を舞う。

上条「し…まった!!」

その身は上条の頭上を軽く通り越していった。

ほぼ助走も無く、普通の人間ではありえない跳躍力だが、格闘ゲームのキャラとしては一般的な性能だ。

上条「御坂!!」

御坂「えっ!」

ソフィア「シルバーエッジ!!」

まだ距離がある御坂に向けて、地面に着地する前にソフィアは技を放つ。

不意を突かれた上条は、振り返るのが精一杯で反応が出来ない。

御坂「なっ…こ…んのおぉお!(バチッ)」

御坂は咄嗟に雷槍を放ち、飛来物を相[ピーーー]る。

御坂「攻撃は、打ち消せるみたいね…えっ!?」

ソフィアが一気に距離を詰めていた。無防備な御坂の胴体に、相手の前蹴りが見舞われる。

回避できないタイミングではなかった。だが、自分がよければ後ろにいる白井に害が及ぶ。

御坂「くっ…!!」

覚悟を決めた御坂の腹部に、ソフィアの踵が突き刺さる。

ソフィア「はっ!!(ゴッ)」

御坂「がっ…んぐっ!」

嗚咽を上げながら御坂の体はくの字に折れ曲がる。

白井「お姉さま!」

御坂「黒子…あんたは集中して…これぐらい…なんてこと…(ゴホッ)」

上条「…!!!」

上条「てんめぇぇええ!!ナニやってんだぁぁあああ!!」

上条の感情が一気に吹き上がる。怒りのまま、力任せに振るわれた拳が、背後からソフィアに襲い掛かる。

上条「うおぉぉぉぉおおっ!!!」

ソフィア「ひっ!!(ゴキャッ)」

ソフィアの即頭部に命中した上条の拳が、その体を横方向に吹っ飛ばした。

上条「大丈夫か御坂!」

御坂「どうってこと…ないわ、それより…もう時間が!なんとか動きを…」

ソフィア「…!!」

飛ばされても転倒しなかったソフィアは、向き直り、両腕をまっすぐに突き出す。

その腕を交差させた直後、どこからとも無く現れた光が彼女の中心に集中していく。

御坂「なに?」

上条「やべえ!!」

ソフィア「サウザンドエッジ!!」

その名からどんな攻撃が来るかは予想できた。遠距離系のゲージ技だ。

ソフィアの位置と方向から、白井と御坂が二人とも巻き込まれるのは確実だった。

技が発動する直前、上条はその間に割って入った。

ソフィア「はあぁぁぁあっ!」

その名の通り、無数の三日月状の刃がその指先から放たれる。上条の右手がそれを迎え撃つ。

上条「ぐ…くそっ!!」

広範囲に広がる刃は、右手一本では消しきれてない。上条の全身に細かい切創が次々と浮かんでいく。

御坂「ちょ…あんた!!」

上条「下がってろ!!」

上条「ここは俺が…食い止める!!」

上条の足が、わずかに進む。左足が右足を追い越し、また右足が追い越す。

じりじりと、技を放つ相手との距離を詰める。

上条「ぐお…おぉぉぉっ!!」

傷を増やしながら上条は進む。御坂はその背中をただ息を飲んで見守る。

初春『あと十秒です!五秒からカウントダウン行きます!』

白井「お姉さま!あと十秒ですわ!」

御坂「十秒って!この状況で…!!」

上条「聞こえた…ぜえぇえ!!」

上条「そんだけあれば十分だ!!」

奥歯を食いしばり、痛みに耐えて上条は進む。やがてソフィアとの距離はゼロとなる。

上条「確か投げ技は…決まりやすい…ん…だよな!?」

今だ技を放ち続けるソフィアの腕を右手で掴み、そのまま強引に投げ飛ばす。

上条「うおぉぉおっ!!」

上条「御坂!!頼む!!」

御坂「…任せて!!」

ソフィア「…!!」

初春『カウントダウン入ります!5!』

技の硬直の為か、抵抗出来なかったソフィアは豪快に宙を舞う。

ソフィア「はっ!」

だが、冷静に対処した彼女は、転倒を避け、地面に手を付いて脚から着地する。

初春『4!』

起き上がるタイムラグを回避したソフィアは、すぐさま反撃に転じようとする。が…。

御坂「逃がすかあぁ!!」

着地した瞬間、御坂はソフィアに掴みかかって羽交い絞めにする。

初春『3!』

御坂「はああああぁぁぁああっ!!」

御坂は、ありったけの電流を相手に向かって流し込んだ。

初春『2!』

ソフィア「…!!」

普通の人間なら一瞬で消し炭になる電力を受け、流石のゲームキャラも動きが止まる

初春『1!』

初春『今です!!』

閉じていた白井の目がカッと開く。

白井「お姉さま!」

御坂「…黒子!!」

白井の声を受けて御坂はソフィアから体を離す。

白井「…はっ!!」

白井が身を乗り出し、伸ばした手がソフィアに触れる…と…。

ソフィア「…!!!(シュン)」

その姿は静かに掻き消えた。

(とある研究室 回想)

木山「質問…?」

詠矢「ええ、さっきの対策の話で、ちょっと思いついたことがありまして…」

木山「…ここまで話をした上で、もはや拒否する理由もないだろう」

木山「答えられるかどうかは別として…、話してみたまえ」

詠矢「ありがとうございます。では…」

詠矢「AIM拡散力場って…有効範囲ってあるんでしょうか?」

木山「有効範囲か…。それは、密度が高く存在する範囲、という意味でいいかね?」

詠矢「ええ、そういう意味です」

木山「…そもそも、能力者から発せられる力場である以上」

木山「能力者が多く存在するこの学園都市がその範囲と言えるな」

詠矢「なるほど…じゃあ、ここから離れれば離れるほど…」

木山「その影響は小さくなり、やがてはゼロとなるだろう…」

詠矢「…やっぱりそうですか」

詠矢「なら、対処のしようはありますね…」

木山「なるほどな…。もし、君の言うように、AIM拡散力場に干渉できるとしても」

木山「その対象を効果圏外に出してしまえば…」

詠矢「大事になるのは防げそうですね…」

木山「使える状況は限られるだろうが…」

木山「何も対策がないよりは、ずっといいだろうな」

詠矢「そういうことです」

詠矢「あとは私なりに、現実的な手段を考えてみるとします」

木山「うむ…」

詠矢「追加の質問は以上です。ありがとうございました!」

詠矢「では、これで…」

木山「詠矢君」

詠矢「はい、なんでしょう?」

木山「君は実に変わった人物だが、面白い人物でもあるな…」

木山「またわからない事があれば、いつでも聞きにくるといい」

詠矢「…え…それはー」

詠矢「重ね重ねありがとうございます。では、また何かあれば遠慮なく…」

木山「歓迎するよ。君の論旨はいい刺激になった」

詠矢「先生のお役に立てたなら嬉しいですね…」

詠矢「では、失礼します…(ガチャ)」

木山「ふむ…」

木山「今のところ、彼の考えが妄想で終わることを…」

木山「祈るべき…だろうな…」

(とある地下鉄 車内)

転移されたソフィアは、突然の慣性を受けて転倒した。

彼女が伏した床は移動している。

すぐさま立ち上がった場所そのは、電車の中だった。

ソフィア「…!?」

あたりを見回す。扉と窓、つり革と座席。何の変哲も無い電車の車両である。

窓の向こうに延々と流れていく黒い壁が、この電車が地下鉄であることを現していた。

ソフィア「…?」

彼女には、自分が置かれている状況が理解できていなかった。

そもそも、格闘ゲームのキャラクターが持つ希薄な知識では、無理もないだろう。

ソフィア「…」

黙って周囲を見回し続けるソフィア。ただ電車は敷かれたレールの上をかなりの速度で進んでいた。

なにもわからないまま、次の行動を起こせずにいる彼女に、突然異変が襲った。

ソフィア「…!!」

自分の指先が、徐々に白い紙粘土に変わっていく。

いや、変わっていくのではなく、戻ってくのだ。

ソフィア「…っ!!」

突然、足が力を失い膝が落ちる。その姿の変質は足にも及んでいた。

体の末端から力が抜けていく。もはや立ち上がることもままならない。

それは、電車が進むほどに顕著になっていく。

ソフィア「…!!!」

生まれて初めて焦りという感情を覚えた彼女。だが、それをあざ笑うように力は失われていく。

電車は進み、体の殆どの像が失われた後、ようやく停止した。

ソフィア「…」

既に言葉を発することも出来ない。限りなく紙粘土の人形に近づいたまま横たわるソフィア。

突然、外部から非常開閉装置をつかって扉が開かれた。

土御門「よっと!」

高低差をよじ登り、乗車してきたのは土御門だった。肩に新品の金属バットを担いでいる。

土御門「なるほど…これが真々田の傀儡か…」

土御門「壊すのが惜しい造形だぜい」

殺虫剤を食らった虫のように、ただ手足をばたつかせるだけの人形を眺めながら、土御門はつぶやいた

土御門「…学園内から、外部にある引込み線に向かって回送電車を走らせろとか…」

土御門「ヨメやんもまた無茶な依頼をするもんだ…」

土御門「ま、アレイスターに直接頼んだから何とかなったがな…」

土御門「転移能力者なら、地下鉄に直接対象を送り込める」

土御門「そのまま学園外に運び出してしまえば…このザマだ…」

土御門「既に学園の外壁から数キロは離れている」

土御門「AIM拡散力場の影響は、ほとんど無くなってるにゃあ…」

再び人形を見下す土御門。その片方の口角がつり上がる。

土御門「所詮は人形…、力の流入さえ無くなれば…物理的に破壊することは…たやすい!!」

土御門は力の限りバットを振り下ろす。人形の胴体に当たる部品に大きな亀裂が入った。

ソフィア「…!!(ゴキャッ)」

悲鳴に似たうめきが人形から響くが、もはや抵抗するすべもない。

土御門は容赦なく、バットを振るう。

何度も何度も、その先端を叩き付ける。

ソフィア「…」

身動き一つしなくなった彼女。土御門はその首筋を掴み上げる。

土御門「さあて、仕上げだぜい」

自分が開けた扉から、既にただの人形となった物を車外にほうり出す。

土御門「よっと…」

自らも車外に降り、土御門は近くに置いてあったホームセンターのレジ袋をまさぐる。

土御門「さあて…最後はその姿に敬意を表して…」

取り出したのはキャンプ用の着火剤。土御門はその内容物を人形に振り掛ける。

土御門「焼却…じゃなくて…火葬だぜい!」

ジッポーラーイターを着火させると、そのまま対象に向かって投げる。

何の抵抗も無く火の手が上がる。着火剤のしみ込んだ紙粘土は、あっという間に炎に包まれた。

もはや、それが人の形をしていたかどうかも定かではない。

一人の天才が生み出した最高の芸術は、ただ朽ちて崩れていった。

以上となります。
すいません、間違えて上げてしまいました。

次回で完結の予定です。それではまた。

こんばんわ。遅くなってしまいましたが続きを投下します。

(とある街角)

詠矢「よ…っと…」

十分な休息をとった詠矢はゆっくりと立ち上がり、腕を回し、首を回し、屈伸し体調を確かめる。

詠矢「骨折なし、大出血なし…意識は明確…いっ…て!!」

腕を伸ばそうとしたとき、激痛が走った。

両腕が赤く、鈍い痛みを放っている。

詠矢「つー…、ガードし続けた代償か…こりゃ腫れるぞ…」

詠矢「ま、しょうがねえか。こないだ死にかけたときよりはずっとマシかね」

詠矢「さて、どうすっかな…お…(ブブブ)土御門サンか…」

詠矢「あい、詠矢だぜ…どんな感じだい?」

土御門『ヨメやんかい?こっちは上手くいったぜい』

土御門『傀儡は完全に破壊した。いま地上に上がってきたとこだ』

詠矢「そっか、ご苦労さん。さすが土御門サンだ。抜かりないねえ」

土御門『何言ってんの、俺は最後のシメに回って楽なもんだ』

土御門『ヨメやんの作戦あってこそだぜい』

詠矢「ってもなあ…土御門サンと理事長サンのコネがあってのことだし」

詠矢「白井サンの正確な転移とか、初春さんの情報処理能力とか」

詠矢「誰ひとり欠けても出来なかった作戦だ」

詠矢「俺一人褒められる話じゃねえよ…」

土御門『ま、そういうなよヨメやん。俺は普通にすごいと思うぜ?』

詠矢「そっか…な?。そう言ってくれるなら素直に受けとくわ」

土御門『そういうことだ。んじゃ、俺は事後処理があるんで、また後でな』

土御門『舞夏のお茶でもご馳走するぜい』

詠矢「うい、ご苦労さん。楽しみにしてるぜー(ピ)」

詠矢「ふう…なんとか上手くいったみたいだな…」

詠矢「初春サンと白井サンにもメール打っとくか…(ポチポチ)」

真々田「…」

詠矢「…?」

突然の気配に詠矢は振り返る。

そこには、憔悴しきった表情の真々田が脇腹を押さえながら立っていた。

詠矢「真々田…サン…無事だったんですか?」

真々田「…ソフィアは…僕のソフィアは…?」

詠矢「…そうですね…たぶん、塵か灰になってますよ…」

真々田「破壊したというのか?どうやって力の流入を防いだんだ?」

詠矢「まあ、いろいろと盛大な小細工をしまして、学園の外に連れ出しました」

真々田「なるほど…確かに学園外に出せば…。極めて現実的な対処法だね…」

真々田「…でも…どうしてこんなことに…。僕はただ…新しいソフィアに会いたかっただけなのに…」

詠矢「…んーと…」

詠矢「さっきまでちょっとヒマだったんで、俺なりに考えてたんですけど」

詠矢「問題は2つあったと思います」

真々田「問題…?」

詠矢「ええ、まず一つは…」

詠矢「多くの人がソフィアってキャラを正確に理解してなかったってことです」

詠矢「いろんな誤ったイメージが、あの好戦的な性格を生み出してしまったんで」

詠矢「アレがなければ、一人で勝手に暴走するようなことは無かったと思います」

詠矢「まあ、みんながみんな、ソファアを真々田サンみたいに愛してたわけじゃなかった…ってとこですかね?」

真々田「…」

詠矢「それともう一つ…」

詠矢「ソフィアサンが反目したタイミングが」

詠矢「真々田サンが彼女を『自分のもの』にしようとした時、だったっしょ?」

詠矢「あんまり俺も詳しい訳じゃないんですけど」

詠矢「ソフィアって、誰かの言うことをただ聞くようなキャラじゃなかったと思います」

真々田「…」

詠矢「彼女を自分だけのものにしようとした時点で」

詠矢「真々田サンの『愛』ってヤツは、ちょっと歪んじまったじゃないかなあ…って」

真々田「…」

真々田「…そうか」

真々田「僕が望んだ、僕だけのソフィアとは…、最初から手に入らない存在だったんだね…」

詠矢「そういうこと…なんですかね?細かいことはよくわかりませんけど…」

真々田「…」

真々田「…どうやら、僕の中に大きな驕りがあったようだ…」

真々田「自分の呪術と技術には絶対の自信があった。だが、いつしかその自意識に呑まれていたのか…」

真々田「…僕はいったい…どうすれば…」

真々田「そうですねえ…まあ、僭越ですけど」

詠矢「ちょっと落ち着いて、頭でも冷やしてみたらどうですか?」

真々田「…?」

詠矢「もうすぐ、アンチスキルが来ると思います」

詠矢「真々田サンがどう扱われるかはわかりませんけど…」

詠矢「ここは素直に出頭して、公的に裁きを受けてみるってのはどうですか?」

真々田「僕が?…」

詠矢「まあ、その方がいろいろスッキリすると思いますよ?」

真々田「は…ははっ…そうだな…」

真々田「自分を見つめなおすにはいい機会かもしれないね…」

詠矢「ですか…」

詠矢「んじゃまあ、俺はやることも終わったんで…」

詠矢「引き上げさせてもらいますよ」

真々田「…そうか…迷惑をかけたね…」

詠矢「ま、なんとかなりましたからいいですけどね…」

詠矢「んじゃ…」

真々田「ああ…」

背中を向ける詠矢に対し、真々田は力なく右手を上げて見送った。

お互いに、再会を望む言葉は無かった。

詠矢「さて…かえって腕冷やさないとな…いてて…」

詠矢「あ、そうだ、上条サンにも連絡しとくかな?」

詠矢「…いや…今のタイミングは…無粋かな…」

詠矢「上手いこと収まってりゃいいけど…ねえ…」

(とある空き地)

上条「いてててて…」

御坂「ちょっと、大丈夫なの?」

上条「流石の上条さんでも、今回は結構ハードでしたよ」

御坂「もう…、無茶するから…」

御坂は上条に肩を貸し、二人はほぼ密着する状態で立っていた。

上条「あ、御坂、服に血が付いちまうぞ?」

御坂「いいわよ…制服なんてまた買えばいいんだから…」

上条「はー、さすが常盤台のお嬢様は言うことが違うねえ…」

御坂「なに言ってんのよこの状況で!!」

御坂「まったく…人の気も知らないで…」

上条「…いや…俺にも…ちょっと…わかったかな?」

御坂「へ?…何よ…」

上条「誰かのことを強く思う気持ちって…いうのが…」

御坂「…」

上条「あんとき…御坂がソフィアから攻撃を受けたとき…」

上条「俺の中に、今まで感じたことのねえ熱い感情がこみ上げてきて…」

上条「ぜったいコイツを守らねえと…って…すっげえ力がでたんだ」

上条「他の誰かを守る時には、絶対出ない力だった」

御坂「…」

上条「力出るだけならまだいいんだけど…」

上条「これって…辛い…な?」

御坂「え?…辛い?」

上条「ああ、今回は大丈夫だったけど」

上条「もしお前に何か会ったらって思うと…」

上条「…胸の辺りがこう…な…」

御坂「…」

御坂「へ…へえ…」

御坂「少しは理解できたかしら?」

上条「なんか、身にしみたっつーか…今までこんな思いさせてたなんてさ」

上条「上条さんは心の底から反省してるわけですよ」

御坂「…ま…まあ」

御坂「わかってくれれば…いい…けど…」

上条「で…さ」

御坂「…なに?」

上条「今更これ言うのは卑怯だってわかってるんだけど…」

上条「でも言わせてくれ…」

御坂「だから何よ…回りくどいわね…」

上条「…」

上条「…御坂…」

上条「俺の『特別』になってくんねえか?」

御坂「…!!!」

上条「…」

上条「…どう…かな?」

御坂「…」

御坂「……」

御坂「こっ…断るわけないでしょ!!」

上条「そっか…ありがとな」

御坂「…」

上条「…御坂?」

上条「こっち向いてくれよ…」

御坂「…いや…」

御坂「今の顔は見せられない」

御坂「どうせ変だとか言うに決まってる!」

上条「意外と拘るんだなあ…」

御坂「…」

御坂「…美琴よ…」

上条「へ?」

御坂「…特別だって言うんなら…、呼び方も特別がいい…かな」

上条「…そだな…じゃあ…えっと…」

上条「…美琴」

御坂「…!」

上条「…名前で呼んだだけだってのに、なんかものすごい照れるんですけど…」

御坂「…慣れてよね」

上条「お…おう…」

振り向きざま、御坂は上条の背中に手を回して、胸に顔をうずめる。

御坂「…ありがと…すっごい…うれしい…」

御坂「当麻…」

上条「…!!」

思わず頬を染めた上条。彼女の頭をそっと抱きしめる。

御坂「…」

上条「…」

御坂「…」

上条「あ…のー、美琴さん?」

上条「いつまでもこうしていたいのは山々なんですが…」

上条「上条さんはケガ人でして…そろそろ手当てしないと…」

御坂「…あっ…そ、そうね…」

御坂「…あれ?」

御坂「そういえば黒子は…?」

御坂「…あ(ブブブ)…メール…黒子からだわ」

上条「…大丈夫なのか?」

御坂「えっと…『詠矢さんから連絡がありました。傀儡の破壊には成功したようです』」

御坂「『わたくしは支部に戻らなくてはいけませんのでお先に失礼します』」

御坂「『お二人は一刻も早く病院へ。手当てを受けてくださいまし』…」

上条「…そっか…まあ、無事なら…よかった」

御坂「…黒子…ありがと…ね」

上条「ん?白井がどうかしたのか?」

御坂「いーの、どうせ当麻には説明してもわからないだろうし!」

上条「なんだよそれ…ひでえな」

御坂「そんなことより、早く手当てしないと…あのお医者さんのところでいいのよね?」

上条「ああ、じゃあ行こうか…」

そんな二人の姿を、柱の影から見ている人物がいた。

もはや説明の必要もないだろう。白井黒子である。

白井「(これはもう…わたくしが入り込む隙間はございませんわね…)」

白井「(ですが…お姉さまの幸せが第一です)」

白井「(あの殿方なら…きっとお姉さまを守ってくださるでしょう)」

白井「(少し…寂しいですが…仕方ありませんわね)」

柱に背を預け、目を閉じ、白井は一人小さく息を吐く。

白井「さて…わたくしも戻りませんと…」

白井「…」

その姿は空間に溶けるように掻き消えた。

誰も居なくなったその場所に、雨粒のような雫が宙を舞って落ちていった。

(とあるジェラート屋)

店員「では、ご注文の商品はこちらで…」

店員「お持ち帰りはのお時間はどれくらいでしょうか?」

詠矢「えっと…ちょいと読めないんで…1時間ぐらいで見てもらえます?」

店員「はい、では…」

店員は袋に多めのドライアイスを入れてくれた。

詠矢「んじゃ、これで…」

店員「ありがとうございました!」

詠矢「ふう…さてと…」

右手に袋を下げた詠矢。何処かへと歩き出す。

詠矢「…まだ時間あるかな?」

詠矢「まあ…適当にぶらつきながら歩けばいい時間になるだろ…」

詠矢「おりょ?」

街角を進む詠矢の視界に、見知った人物が写った。

御坂「…あ」

詠矢「お、御坂サン。こないだはご苦労さん!」

御坂「…あんたも大変だったわね」

御坂「また、派手に包帯してるわね…大丈夫なの?」

詠矢「いやいや、両腕がシップまみれなんでねえ…」

詠矢「見た目悪いから上から巻いてるだけさ。たいしたことねえよ…」

御坂「そう…ならいいけど…」

詠矢「ま、そういうわけでそのうちまたなー」

すれ違い、歩き去ろうとする詠矢だが。

御坂「…あ…そうだ…」

詠矢「ん、どしたね?」

御坂「まだ…話してなかった…かな?」

詠矢「なんだい?」

御坂「えっと…その…なんていうか…」

詠矢「…?」

御坂「上手くいった…ていうか…その…」

詠矢「…ああー、上条サンのことか…」

詠矢「ナルホド、ちゃんと告白とかしてくれたかい?」

御坂「うん…一応…かな…」

詠矢「おうおう、そいつはおめでとさん!」

御坂「ありがと…」

御坂「…あんたには…世話になったし…」

御坂「…一応…お礼ぐらい言わないとって…」

詠矢「ああ、そいつはいい心がけだねえ…」

御坂「…え、えっと…とにかく…ありがとう」

詠矢「まあまあ、どういたしまして…」

詠矢「…」

詠矢「あ、そうだ」

御坂「…なに?」

詠矢「お礼ついでにさ、一つお願い聞いてくれねえ?」

御坂「…え?…いい、わよ?…変なのじゃなきゃ…」

詠矢「別に変じゃねえよ…簡単なことさ」

詠矢「俺の呼ばれ方…なんだけどさ?」

御坂「へ?」

詠矢「いつまでも『あんた』じゃ問題なくね?一般常識的に」

御坂「あ…」

詠矢「今までは『得体の知れないやつ』だったかもしれないけど」

詠矢「これからは、『彼氏の友達』だぜ?」

詠矢「いろいろと問題なくねえかなあって…ね?」

御坂「たしかに…そうよね…」

御坂「でも…なんて呼べば…?」

詠矢「白井サンも佐天サンも初春サンも、普通にさん付けだけどね」

詠矢「同じでいいんじゃねえの?」

御坂「…じゃあ、詠矢さん…で?」

詠矢「あー、うんうん。御坂サンの口から聞くといい響きだねえ」

御坂「どういう意味よそれ…」

詠矢「いやいや、新鮮だって言うこったよ」

詠矢「でもまあ…しばらく上条サンとの会話のネタには困ることねえだろうなあ…」

御坂「え…って…なに聞くつもりよ(カァ)」

詠矢「別に変なことは聞かねえよ…。ノロケ話でも十分に堪能するさね…」

御坂「…(カァァ)」

御坂「う、うるさいわね!それってプライバシーの侵害よ!!」

御坂「とにかく、お礼は言ったからね!」

詠矢「ははっ…確かに承りましたよー」

詠矢「んじゃ、また。ちょいと行くことがあるんでね」

御坂「…じゃ」

詠矢「うい…まったなー」

手の甲を振りながら、詠矢は立ち去っていった。

(とある研究室)

詠矢「(コンコン)どうも、詠矢です」

木山「来たか…入りたまえ…」

詠矢「失礼します…(ガチャ)」

木山「しばらくぶりだね。また何か質問でもあるのかな?」

詠矢「いえ、今日はお礼です」

詠矢「ちょいと面倒な事件があったんですけど…」

詠矢「先生のおかげで解決できました」

木山「事件…か…」

木山「しかし、私には特に何か貢献した覚えはないが…?」

詠矢「いえいえ、先生が私の妄想レベルの考えを裏づけてくれましたので…」

詠矢「実際に行動に移す自信が出来ました」

詠矢「ありがとうござます。これ、どぞ…」

詠矢は持ってきた紙袋を差し出す。

木山「ほう…これは?」

詠矢「ジェラートです。美味しいらしいですよ?」

詠矢「なんせ、常盤台のお嬢様御用達なんで、間違いないかと…」

木山「先ほども言ったが、土産をもらうほどのことはしていないのだが…」

木山「せっかくだから頂こうか…君も一つどうだね?」

詠矢「えー、じゃあ、頂きます…。実はまだ食べたことないもんで…」

木山「味の感想が伝聞であった時点でわかっていたよ…好きなのをとりたまえ」

詠矢「では遠慮なく…」

木山「適当に腰を下ろしてくれ…立って食べるわけにもいかないだろう」

詠矢「はい、失礼します」

詠矢は紙袋の中からバニラと書かれたカップとスプーンをとると、近くのソファに腰を下ろした

木山「さて…また興味深い言葉が出たな…。事件とは、少々穏やかではないようだね」

詠矢「ええ…やっぱり、ちゃんと報告しておいたほうがいいですよね…」

詠矢「事件としての詳細は話せないんですけど…」

詠矢「想定された、魔術によるAIM拡散力場への干渉が…実現してしまいました」

木山「…なるほど…君の想像通りになったわけか」

詠矢「実現して欲しくはなかったんですけどね…」

詠矢「まあ、今回はいろいろ事情がありまして…、大事にはならなかったんですけど」

詠矢「この学園に対して敵意を持つ者に対して」

詠矢「格好の攻撃手段を明示してしまったことになるでしょうね」

木山「…ふむ…。そうなるな…」

木山「学園自体が攻撃対象となるとなると…もっと大規模な対策が必要となる…」

木山「私も、もう少し本格的に検証してみるしよう」

木山「もっとも、魔術に関しては何もわからないのでな…限界はあるだろうが…」

詠矢「よろしくお願いします」

詠矢「私の妄想ではたかが知れてますので」

木山「まあ、そう卑下するものではない…」

木山「君のような常識にとらわれない着眼点も時には必要なものだぞ?」

詠矢「ならいいんですけどね…」

木山「論理や法則といったものは、妄想に近い想定から一つ一つ議論を積み上げて完成させるものだ」

木山「考えることをやめない限り…答えは必ず出るものだよ…」

詠矢「…なるほど…。そりゃいいですね…」

詠矢「考えることが、必ず答えにたどり着けるなら」

詠矢「…俺の『論証』にも限界は無いってことですからね…」

以上となります。
この話はこれで完結となります。長い間ありがとうございました。

申し訳ありません、重大な間違いが発覚しました。
>>632
真々田「そうですねえ…まあ、僭越ですけど」は詠矢の台詞です。
訂正させて頂きます。


四期はあるのか

>>653
今のところ長編はネタ切れです。
ただ短編のネタはあるので、しばらくはそちらを投下したいと思います。

正直詠矢が戦ってるよりも日常パートの方がよかったりするからちょっと期待しちゃう

>>655
恐らく短編は日常がメインとなると思います。

あと、リクエストというか、見たい展開とか頂ければ参考にさせて頂きます。

>>643の「問題なくね?」ってなんかおかしくね

>>658
そうですね、意味が逆になっちゃってますね。
詠矢「いろいろと問題じゃねえかなあって…ね?」
に訂正させて下さい。

おはようございます。1です。
三期も完結しましたので、キャラ設定とかを上げてみたいのですがよろしいでしょうか?

ここの1的には三次創作はありなのだろうか

こんばんわ。設定が上がりましたので投下します。
とり合えず詠矢の分だけです。

名前:詠矢 空希(ヨメヤ ソラキ)性別:男 身長170� 体重65kg

学年:高校一年生

家族:父親は元警察官で既に故人、母親は健在。兄弟は無し。

来歴:ごく普通の高校に通っていたごく普通の高校生。
子供のころから理屈っぽく、不用意に正論を吐くため周囲から煙たがられ孤独な少年時代を過ごす。
とある能力者と口論になったことにより偶然自分の能力に気づき、学園都市にやってくる。能力開発を受けないまま能力を発揮している『原石』に分類される。

性格:飄々としていて常に冷静沈着。あまり感情の動きが少なく、誰に対してもほぼ同じ態度で接する。
独特の正義感を持ち、反社会的な対象には強い憤りを表す一方、物事に対する割り切りや諦めも早い。
長年孤独であったせいか、他人との距離の取り方が下手な部分があるが、学園都市でさまざまな人と関わるうち、改善されつつある。

容姿:特徴的なのは、太めの眉毛と黒縁眼鏡。だが、それ以外はこれと言って特徴の無いいわゆる『モブ顔』。
容姿としては悪く良くも無い。ただし、『論証』を行う際はすさまじいドヤ顔になる。

技能:父親の影響で子供のころから柔道を習い、その後も部活等で長年格闘技をたしなむ。だがそれほど思い入れがあるわけでもなく、あくまで身を守る手段として割り切っている。
いろいろなジャンルに浅く広い知識を持つが、全ては雑学のレベルであり深く知る知識は少ない。また、勉学に関してはそれほどでもなく、成績は中の上、もしくは上の下程度である。

能力:絶対反論(マジレス)
相手の能力に対し、論証を立てることによってその効果を変質させることができる。
論証の方向性は科学的、物理的、倫理的と多岐に渡り論旨が正確でなくただのハッタリだとしても、相手がそれを一定の範囲で認め、精神や感情に揺さぶりをかける事ができれば効果が発動する。
変質の方向には「抑制」と「増幅」あり、前者は否定や矛盾の提示、後者は肯定や拡大解釈等を軸に論証を展開すことで、それぞれの方向性で能力の変質が可能となる。
また、論証の方向性が特殊になるものの、魔術にも効果を発揮することが確認されてい。
現在、増幅の論証は、学園都市統括理事長より「不確定で不安定な能力」として、むやみな使用は禁じられている。
明確に能力が発揮されているにも関わらず、学園都市にて受けた正式なスキャンでは数値は検出されず、レベル0のままである。
能力の弱点としては、相手が能力に対して絶対の自信を持っており、論証によって揺さぶりをかける事が出来ないとき、効果が発動しないこと。
また、能力の発揮方法が言葉であるため、対象が話を聞いていない、もしくは物理的に音を遮断された場合は全く効果を発揮しない。

※ビジュアル的なイメージですが、外見的に一番近いのは漫画「銀の匙」の主人公の八軒勇吾です。
 外見に上記特徴を加えて、髪を黒にするとほぼ同じイメージになります。

以上です。設定等、もしご質問があればこちらでお答えします。
>>669
ありです。>>335の通り、設定を利用して書いてくださる方が居るなら大歓迎です。

追記です。
この設定はあくまで本編とこのスレにおける設定であり、他の詠矢作品の設定を制限するものでないことを申し上げておきます。

派生で生まれた龍崎透や双葉咲、織田真里菜がこの本編に絡んでくることも微レ存ですか?

>>675
残念ですが、自分で創造したキャラクターで無いと扱えないので、このスレの話で登場することはありません。

再放送についてどう思う?

>>679
最初のころは直視できませんでしたが、最近では見ないと寂しいですね。

他の絶許スレについて一言

>>682
すいません、詳細を知らないのでコメントのしようがありません。

こんばんわ。
短編が書きあがりましたので投下します。
今回は前後編となりますので、まずは前編となります。
それでは早速、始めます。

(とある学生寮 上条の部屋)

御坂「…」

御坂「…ヒマねー…」

上条当麻の背中にもたれかかりながら、御坂はつぶやいた。

上条「一人暮らしの男の部屋を見てみたいって言ったのは、どちらさんでしたっけ?」

床に胡坐をかいて座っている上条は、コントローラーを手にテレビの画面を見つめていた。

御坂「だってさあ…もっとすごい散らかってて」

御坂「片付けがいがあるのかなあって…思ってたのに」

御坂「意外と綺麗なんだもの…おもしろくなーい」

上条「上条さんの経済状態では…」

上条「そもそも、散らかるほどの物が買えないのですよ!」

軽口を叩きながらも、目線は外さず、指はコントローラーの上をせわしなく動いていた。

御坂「なによう…」

御坂「彼女ほっといてゲームしてる人が、偉そうに言わないでよ!」

上条「キリのいいとこまでやっときたいんだよ…もうすぐ終わるから待ってろって…」

御坂「んー…」

背中にもたれかかったまま、御坂は体を反転してテレビを覗き込む。

御坂「…なにこれ…シュミレーションゲーム?」

上条「ああ…もうすぐでボスが倒せるんだ…こいつは…こっちに配置して…(ポチポチ)」

上条「よしっ…これでいい。これで攻撃すれば…」

御坂「…あ…」

上条「…あ…」

御坂「なんか死んじゃったけど?」

上条「何でここでクリティカルが出るんだよ!!」

上条「…また最初からやり直しじゃねえか…不幸だ…」

御坂「こういう確率の絡むゲームは当麻には向いてないわねえ…」

上条「そんなこと言ったら殆どのゲームが出来ねえじゃねえか!!」

御坂「まあ…さ、人には向き不向きってのがあるじゃない?」

上条「美琴…慰めになってねえよ…」

御坂「…ふーんだ…」

御坂「出来たばっかりの彼女をほっとくから、バチでもあたったんじゃないの?」

上条「へいへい…で、どうお相手すればいいのかな?」

首だけで振り返る上条。背中にのしかかっている御坂と目が合う。

距離が近い、極端に。

御坂「…!!」

上条「…!!」

二人は固まる。しばらく動けない。三すくみならぬ二すくみ状態である。

(ピンポーン)

呼び鈴に硬直が解かれた。上条ははっと扉を見る。

上条「あれ、誰だろ…なんか予定あったかな…」

上条「美琴、ちょっと待ってな?」

御坂「んー…」

入り口まで移動し、扉を開けると、その向こうには詠矢が立っていた。

詠矢「まいどー、上条サン配達だよー」

詠矢はコンビニ袋に入った荷物を上条に手渡す。

上条「お、わざわざ悪いな詠矢」

詠矢「いやなに、部屋に帰るついでだよ…。上条サンの取り分だよ」

詠矢「ん…と…」

詠矢は玄関に有る靴に目をやる。

詠矢「お取り込み中みたいだね…んじゃ、とっとと退散するわ」

上条「お、おう…んじゃまたな…」

上条は詠矢が去ったのを確認すると、扉を閉め部屋の中に戻ってきた。

御坂「誰だったの?」

上条「詠矢だよ。コイツを届けてくれたんだ」

御坂「…何よそれ」

上条「バイト先のコンビニの廃棄弁当だよ」

御坂「え…そんなもの食べてるの?」

上条「食べてるっていうか…いま上条さんの主食ですよ」

御坂「ちょっと!そんなものばっかり食べてると体壊しちゃうわよ!」

上条「っても…これが一番安く付くしなあ…」

御坂「ダメよダメよ!今までは仕方なかったかもしれないけど…」

御坂「今は私がいるんだから、ちゃんとしたもの作ってあげるわ!」

御坂「…まだ夕飯までには時間あるわね…」

御坂「買出し言ってくるから待ってて!」

上条「…あ…ありがと…」

飛び出していく御坂の背中を、上条は目で追うことしか出来なかった。

(とある学生寮 詠矢の自室)

詠矢「…やることねえなあ…」

ベットにもたれかかり、詠矢は空しく天井を眺める。

詠矢「バイトが早く終わったのはいいんだけど…」

詠矢「ヒマになっちまうのはどうもね…」

詠矢「メシどうすっかな…」

詠矢「コンビに弁当もいい加減飽きたしなあ…」

詠矢「食うたびに体が蝕まれていく感じがどうにも…」

詠矢「誰か誘ってメシでもいくかな…?」

詠矢「っても…上条サンはお取り込み中だし」

詠矢「土御門サンも今日は妹サンがどうとかで無理だったような」

詠矢「…」

詠矢「こっち来て友達が沢山出来たと思ってたのですが…」

詠矢「気のせいだったのでしょうか…」

詠矢「…」

詠矢「やめよう…考えると悲しくなる…」

詠矢「まあいいか、今月は余裕あるし」

詠矢「どっかでなんか食ってくるかな?」

詠矢「よっと…」

詠矢はゆっくり立ち上がると、ふらりと部屋を出て行った。

(とある学生寮 上条の自室)

御坂「ただいま!」

上条「おかえりー、また大荷物だな…」

御坂「基本的なもの揃えるとね…」

御坂「じゃあ、やるわよ!当麻も手伝って!」

上条「あ、ああ…っても何すれば…」

御坂「お米研いでくれる?それくらいなら出来るでしょ?」

上条「そりゃまあ…いつもやってるからな…」

御坂「よろしくね…」

御坂「よっ…と」

御坂は鍋に水を張り、中に昆布を浮かべる。

上条「…なんだそれ」

御坂「出汁昆布よ。見たこと無い?」

上条「いや、そりゃ知ってるけど…使ったことねえし…」

御坂「ふふん…まあ見てなさいって…」

てきぱきと動く御坂を、上条は米の入ったボールを抱えたまま呆然と見ていた。

御坂「お米研げたら炊飯器をセットしてね。後は私がやるから」

言われたとおり炊飯器をセットする上条。そしてふと思う。

上条「(なんでしょうかこれは…)」

上条「(まるで新婚家庭ではありませんか…)」

御坂「ん?どうしたの?」

上条「え?いやいや…何も…」

御坂「終わったら休んでていいわよ…ゆっくりしてて?」

上条「あ…はーい」

大人しく移動し、居間でテレビを見る上条。

上条「…」

しばらくすると、御坂がお盆を抱ええて来る。

御坂「はーい、テーブル出して!」

上条「お、おう」

テーブルの上には、次々と料理が並べられる。

ブリの煮付け、ほうれん草のおひたし、大根の味噌汁、人参とじゃがいものきんぴら…。

どちらかというとありきたりな、純和食の献立だったが、上条にはそれら全てが輝いて見えた。

上条「はー…」

御坂「どうしたの?あ…嫌いなものでもあった?」

上条「いやいや、なんかこう…神々しくて…」

御坂「…ちょっと、いくらなんでも大げさじゃないの?…普段何食べてるのよ…」

上条「いや、内容というよりむしろこの状況がですね…」

上条「並んでるのが全部彼女の手料理なわけだよ!」

上条「上条さんは一品ずつ神棚に供えて拝みたい気分ですよ!!」

御坂「なっ…(カァ)」

御坂「もうっ…バカなこと言ってないで…さめないうちに食べましょ!!」

上条「おう、いただきまーす!」

上条は最初に味噌汁をすすり、一品一品と口に運んでいく。

上条「…」

御坂「…どう?」

上条「…美味い…幸せが口の中にひろがりますよ」

御坂「そう…良かった…」

偽りの無い上条の笑顔を見て、御坂もほっと表情を緩める。

上条「…しっかしすげえなあ…(モグ)料理とかどこで練習してんだ?(モグ)」

御坂「これくらい授業でやるでしょ?」

上条「え?授業って家庭科か?」

御坂「うん」

上条「はー、常盤台の家庭科って」

上条「料亭に修行でも行くのか?」

御坂「は?何言ってんのよ。そんなわけないでしょ…」

御坂「基本さえ押さえれば、これぐらいすぐ作れるわよ」

上条「いやいや、誰にもできるって訳じゃねえだろ。美琴って家事スキルも高いんだな」

上条「いいお嫁さんになるんじゃねーの?」

御坂「へっ!?…(カアッ)」

上条「へ…あっ…!いや…その…だな…」

御坂「…」

御坂「…お嫁さんって…」

上条「…」

上条「そりゃ…俺の…だろ…」

御坂「…!!(カァァッ)」

上条「…」

上条「…えーっと」

上条「そりゃまあ、今すぐは無理だけどさ…」

上条「予約って…ことで…」

御坂「…!!!(カァァァッ)」

御坂「……」

御坂「キャンセル…出来ないわよ…」

上条「お、おう…望むところだ…」

御坂「ありがと…」

部屋全体に桃色の空間を展開しながら、食事はつつがなく進んでいった。

(とある街角)

店員「ありがとうございましたー」

清算を済ませた詠矢は、ファミレスを出た。

詠矢「うー食った食った…」

詠矢「やっぱサラダバーはいいねえ。力の限り野菜を食ってやったぜ」

詠矢「さあて…ゲーセンでも行くかねえ…」

詠矢「…ソフィアサンの顔はあんまり見たくねえけどな」

詠矢「…あれ?」

詠矢「…御坂サンじゃねえの?」

詠矢「なんでこんなとこに…上条サンと一緒じゃねえのか?」

詠矢「おーい、御坂サン」

??「…?」

詠矢「…なんだよ、反応薄いな?俺だよ、詠矢だよ」

??「詠矢さん…?どちら様でしょうとミサカは率直に問いかけます」

詠矢「へ?…俺を知らんって…何の冗談だよ…」

??「なるほど、お姉さまのお知り合いですかとミサカは推測を立ててみます

詠矢「お姉さまって…御坂サンって妹いたのか?」

??「いえ、私は実の妹ではありません。絶対能力進化実験のために生み出された2万体のクローンのうちの一人…」

10032号「ミサカ10032号です、とミサカは懇切丁寧に説明します」

詠矢「…」

詠矢「…ちょ…ちょっとまって…」

詠矢「…あまりにも驚愕の情報で飲み込むのに時間がかかる」

10032号「…?」

詠矢「(クローン…って…それもまた2万人って…地方都市の人口レベルじゃねえの)」

詠矢「(それだけの人間を作り出すのって、どれだけの設備と資金が必要になるんだ)」

詠矢「(維持費も莫大になるだろう。それこそ国家規模のプロジェクトになるな)」

詠矢「(いくら規模がでかいとはいえ、学園都市が単独でそれを成し遂げたのか?)」

詠矢「(いや、さすがにありえんだろう…なんか俺が想像も付かないような力が働いてるのか?)」

詠矢「(…とか、俺が口に出して言うとこの娘たちは消えてなくなるんだろうか…)」

10032号「…?あの…とミサカは控えめに問いかけます」

詠矢「…あ、ゴメンゴメン、大丈夫。話は飲み込めた」

詠矢「(ま、流石にそれはねえか…。既に終わった事実を覆すほどの力は絶対反論にはねえわな)

10032号「人違いという認識でよろしいのでしょうか、とミサカは改めて質問します」

詠矢「ああ、確かにまあうなんだけどね…ナルホド…クローンねえ…」

詠矢「ってことは…御坂サン…じゃなくて、妹さんも電撃使いなのかい?」

10032号「詳細に関して、初対面であるあなたに話す義務はありませんとミサカは冷徹に言い放ちます」

詠矢「まあまあ、そう言うなよ。これでも『お姉さま』の友達なんだぜ?」

詠矢「もうちょっとお話しねえ?」

10032号「…時間的には余裕がありますが…と、ミサカは譲歩の姿勢を見せます」

詠矢「おうおう、妹サン話せるねえ…ちょっと興味がわいてきたぜ」

詠矢「んで、話を戻すが…能力に関してはどうなんだい?」

10032号「…電気操作系の能力を有しますが、お姉さまに比べればゴミクズ程度の能力です」

10032号「それゆえ、私たちの能力は欠陥電気(レディオノイズ)と呼ばれます、とミサカは自嘲気味に説明します」

詠矢「…へえ…そうなんだ…」

詠矢「でも、クローンてことは、遺伝子情報は同じわけだろ?それで能力にそんな差が出るのか…」

10032号「詳細は、作られた存在である私には知る由もありません、とミサカは言い放ちます」

詠矢「…」

詠矢「まあ確かに、そりゃわからんかもなあ…」

詠矢「だけどさ、遺伝子が同じってことは、基本同じ人間ってことだ」

詠矢「まあ、人間の成長は周囲の環境に大きく影響を受けるからさ」

詠矢「同じ遺伝子だからって全く同じ人間になるわけじゃないけど…」

詠矢「それでも、同じ遺伝子という事実は大きい」

詠矢「実際に、妹サンも電気操作の能力が使えるみたいだし」

詠矢「後はそのレベルが高いか低いか、の話っしょ?」

10032号「…」

10032号「…変わった人ですね。なぜミサカにそのような話をするのでしょうと、ミサカは疑問を投げかけます」

詠矢「ん?いや…こういう話しちまうのは性分かねえ…」

詠矢「ま、とにかくだ…遺伝子という素養があるなら」

詠矢「まだまだ上のレベルを目指せる可能性もあると俺は思うぜ?」

10032号「…」

詠矢「能力の基本はパーソナルリアリティだよな?」

詠矢「そいつは、個人の意識や自我、感情なんかに大きく影響を受けるみたいだ」

詠矢「見るところ、妹サンはそのうちの自我が弱いように見えるなあ…」

詠矢「そういうクールビューティなキャラもなかなかいいと思うけどさ」

詠矢「もし、自分の能力が低いことがコンプレックスになってるんだったら」

詠矢「それを解消するために、考え方とか気の持ちようとか変えてみてもいいんじゃないかな?」

10032号「…」

10032号「…考え方…気の…と、ミサカは一人…つぶやき…ます」

詠矢「うんうん」

10032号「やはり…おかしな方ですねと、ミサカは目の前の人物を評価します」

詠矢「変わってるってのは自覚してるけどねえ…」

上条「…お?」

御坂「…あら」

詠矢たちの傍を、かなり密着した状態のカップルが通りかかる。

上条「…詠矢…か?」

詠矢「お、上条サンじゃねえの。こいつは偶然…」

詠矢「御坂サンモ一緒で、何してんのかね?」

上条「何って…そろそろ門限らしくてさ…美琴を送ってるとこだけど…」

詠矢「おうおう、いいね…いい感じじゃねえの」

詠矢「そうそう御坂サン、ちょうど妹サンとお話してたとこさ」

御坂「妹?…あら…久しぶりね?」

御坂は妹の姿を確認すると軽く微笑みかける。

一方、声をかけられた妹は、なぜか激しく動揺していた。

10032号「…!!」

10032号「…お…お姉さま…その男性との密着した状態は…ど…どういう、とミサカは驚愕のあまり…」

御坂「え?どうゆうって…あ、まだ話してなかったわね…」

御坂「…まあ、その…いろいろあって…付き合ってる…の…よ」

御坂は耳まで真っ赤にしながら、少し目線を上げて上条に同意を求める。

上条「ん?…まあ、そういうこと…だな…」

詠矢「おーおー、初々しいねえ…」

10032号「…」

10032号「…そんな…お姉さま…抜けがけです…ずっこいです…とミサカは明確に非難します」

御坂「え?なにそれ…どういうこと?」

10032号「ツンデレのお姉さまなら、急激な進展は無いだろうと思ってました…、とミサカは自分の読みの甘さを悔やみま
す」

御坂「…あんた…まさか…」

上条「…?」

詠矢「…(あー、これは…妹サンも上条サンのフラグ被害者だったのか?)」

10032号「…いやです…受け入れられません…」

10032号「ミサカは…ミサカは…(バチッ)」

言葉と共に彼女の全身が強く帯電していく。

10032号「オリジナルに…反旗を…ひるがえします!!」

その右手を振り下ろすと、雷が一本の槍となって飛翔する。

雷の槍は、そのまま高速で密着する二人の傍をすり抜けていく。

御坂「…!!」

御坂「…どうして…あのこが…こんなに強い電撃を…!!」

詠矢「…あ…(これって…もしかして?…やっべ…)」

以上となります。
次回はかなり先になると思われます。
それではまた。

おはようございます。
なんとか書きあがりました。投下します。

(とある街角)

詠矢「というわけで、とり合えず逃げてきたわけだが…」

御坂「何がというわけなのよ」

詠矢「まあまあ、あのままだと被害が広がる可能性があるからさ」

御坂「なんか無理やりまとめようとしない?」

詠矢「いや…まあ…そんなことは…」

上条「詠矢…さあ…さっきのあのこの様子って…」

上条「もしかして…お前の…」

詠矢「…」

御坂「…見た感じ、あの電撃はレベル4相当だったわね」

御坂「確か…あんた…っ…よ、詠矢さん…増幅がどうとか…言ってなかったっけ?」

御坂「レベル6実験に巻き込まれたのもそのせいよね?」

詠矢「…」

詠矢「…だってさあ」

詠矢「ああゆう自己評価の低いこってさあ…フォローしてあげたくならないか!?」

上条「まあ、気持ちはわからんこともないが…」

御坂「(ジロッ)」

上条「…(ビクッ)」

詠矢「…まあ、なんていうかさ…」

詠矢「絶対反論(マジレス)って集中とか必要無いせいでさ」

詠矢「流れで能力が発動しちゃうことがあるんだよねえ…」

御坂「じゃあ何?あのこと話してる間に、成り行きで能力を増幅させたっていうわけ?」

詠矢「まあ…そうなるかな…」

上条「はー…はた迷惑な話だな…」

詠矢「ん、まあ、原因は…多分それだけじゃないと思うけど…ね…」

上条「他に何か理由があるってのか?」

詠矢「…あんな簡単な論証では、あそこまでの能力の増幅は起こらないだろう」

詠矢「問題は、俺が論証に使った『自我』って言葉…」

詠矢「それが膨れ上がる事態がタイミングよく起こったこと…恐らくはそいつがもう一つの原因だ」

御坂「…あ、やっぱりアレなんだ…」

詠矢「アレですな…多分」

御坂「わかってたことだけどさ…問題よねえ…」

詠矢「問題ですなあ…。まあ、御坂サンはこれから苦労することになるかもしれんね」

上条「…なに二人で納得してるんだよ。説明してくれよ!」

詠矢「…説明ってもなあ…。上条サンがフラグ放置したのが問題です」

上条「…??フラグ?」

詠矢「…やっぱり説明しても無駄か…(ブブブ)お…電話?」

詠矢「…番号非通知…」

詠矢「ものすごい嫌な予感がするが…ま、出るか(ピ)」

詠矢「はい、詠矢ですが…」

理事長『やあ…久しぶりだね詠矢君』

詠矢「…!!!」

詠矢「…!!!!」

詠矢「…(す、すげえ!冷や汗の流れる音が聞こえる!!)」

詠矢「は…はいー、なんのご用でしょうかー…」

理事長『君はもう少し聡明な人間だと思っていたのだが…』

理事長『私との約束をもう忘れてしまったのかね?』

理事長『今の状況は、君が提示した使用許可の条件とは合致しないと思うが…』

詠矢「…あっ…いやあ…あの」

詠矢「…不可抗力…でして…」

理事長『故意ではない、で済むほどあの約束は軽くはないよ』

詠矢「は…はい…素直に謝ります…ごめんなさい」

理事長『…まあ、いいだろう。悪意は無いようだし、今回は大目に見るとしよう…』

理事長『ただし、今の事態を収めることをその条件とする…というのでいいかね?』

詠矢「えー、はい…なんとかやってみます…」

理事長『では頑張ってくれたまえ…(ブツッ)』

詠矢「…」

上条「…どうした詠矢…真っ青だぞ?」

詠矢「上条サン、御坂サン…」

詠矢「俺が居なくなっても探さないでね?」

御坂「は?何の話よ…」

詠矢「…えらい人から怒られた…」

上条「…だから何の話だっての…」

詠矢「…いや…まあ…いろいろあってだな…」

御坂「…っ!」

その接近に真っ先に気づいたのは御坂だった。

三人が隠れていた場所の周囲に、ありえない角度からの落雷が襲う。

上条「うおっ!…なん…だ?」

詠矢「…おいでなすったか」

10032号「電磁波出しまくりのお姉さまを追跡することなど造作もありません、とミサカは説明しつつ登場します」

詠矢「増幅の状態は維持したまま…みたいだな…」

10032号「なぜかわかりませんがいま私には力がみなぎっています、とミサカは誇らしげに主張します」

御坂「なによ…やるっていうの?」

御坂「いくら強くなってるからって、私にかなうとでも思ってんの!?」

10032号「いえ…」

御坂「へ?」

0032「お姉さまに手出しをするつもりはありません、とミサカは殊勝に答えます」

御坂「…じゃあ…何しに…あ、まさか…」

御坂「当麻に手出しするって言うなら…それこそ…!」

10032号「いえ、上条さんにも同様です、とお姉さまの言葉を遮って答えます」

上条「…じゃあ…、何しにここまで来たんだ?」

10032号「お姉さま、ひとつお聞きしたいことがあります、とミサカは端的に提示します」

御坂「…何よ…」

10032号「…なぜ、お二人は急接近されたのでしょう」

10032号「姉さまと上条さんの相性では、その距離が縮まることは永遠になかったはずです」

10032号「と、ミサカは失礼を承知で問いかけます」

御坂「…え?…って…それは…」

上条「まあ…なあ…」

仲良く同じスピードで振り返った二人は、ほぼ同時に詠矢の顔に目線を送る。

詠矢「…はい?…って俺かよ!」

御坂「…だって…そうじゃない…」

上条「…詠矢が居なかったら…こうはなってない…よな」

10032号「…なるほど…どんな方法を使ったかは知りませんが…」

10032号「お二人を結び付けるとは相当な手腕ですね、とミサカは一定の評価を与えます」

10032号「と同時に、私のわずかな希望を撃ち砕いた人物として…」

10032号「このやり場の無い感情を打ち付ける対象になってもらいます、とミサカは一方的に通告します」

詠矢「…いやいやいやいや、ちょっと待ってくれよ」

詠矢「ムチャクチャだな、俺なんぞ痛めつけたところで何の解決にもならんだろ?」

10032号「解決など必要ありません。ただ、このままでは私の気が済みません、とミサカは理不尽な感情を吐露します」

詠矢「理不尽とわかっててあえて…か…」

上条「なんだよそれ…全然わかんねえよ!!」

上条「詠矢は何も悪くねえだろ!何だよ気が済むとか済まねえとか!」

御坂「そうね…いくらなんでも酷い言い分ね…」

御坂「やっぱり…私が相手してあげようかしら…(バチッ)」

詠矢「…」

詠矢「…いや、お二人さん…俺がやろう」

上条「…え?なんでだよ」

詠矢「彼女がああなった直接的な原因は俺にある」

詠矢「その点では責任持って対処する必要があるだろ…」

詠矢「それに、自分がかけた効果をどう収束させるか…試してみるのも悪くない」

御坂「…またそんなこと言って…そのうち好奇心に殺されるわよ?」

詠矢「ま、それは大丈夫だろ。流石に殺意までは感じねえし…」

御坂「でも…何かの間違いでも食らったら…やばいレベルの電撃よ?」

詠矢「ま、その辺は何とかなると思う。逃げるのは得意だしね…」

上条「おい、本気なのか詠矢…」

詠矢「まあね。それに今回の話は、上条サンが絡むと余計ややこしくなるぜ?」

10032号「どうやら…お相手していただけるようですね…」

10032号「では早速…、とミサカは戦いの火蓋を勝手に…切ります」

言い終わらないうちに、彼女は詠矢の鼻先に雷槍を打ち込んだ。

詠矢「おっ…ととっ!!」

詠矢は思わずのけぞる。

詠矢「妹サン気が早いねえ!!」

詠矢「んっと…ここじゃ回りに迷惑がかかる。とりあえず逃げるかねえ!(ダッ)」

そう言うと、詠矢は突如走り出す。

10032号「逃がしません…、とミサカは即座に追跡を開始します(ダッ)」

上条「お、おい…お前ら!」

御坂「どこ行くのよ!!」

二人の呼びかけには答えず、走りながら詠矢は考えた。

詠矢「(どこって、そりゃ…決闘って言ったら…アレだろ)」

(とある河原)

詠矢「夕闇迫る河原ってはいい雰囲気だねえ…」

詠矢は、沈みかけてる太陽を見ると、軽口をたたく。

10032号「ずいぶんと余裕ですね、とミサカは半ばあきれつつ問いかけます」

数メートル離れて立つ彼女は、あきれると言いつついつもの無表情で言葉を返す。

詠矢「まあ、命までとられる訳じゃないしね」

詠矢「(上条サンたちははぐれちまったか…)」

詠矢「(いざとなったら頼るって手が使えなくなるが…)」

詠矢「(まあいいや、とりあえあずお二人さんは居ない方がやりやすいし)」

詠矢「(ヤバくなったらまた連絡して助けてもらうか…)」

詠矢「さあて、妹サンのみなぎる力ってのを、存分に見せてもらいましょうか?」

10032号「その余裕が焦りに変わる姿を見れば、きっと私の気も晴れるでしょう、とミサカは嗜虐的な台詞を吐きます」

詠矢「そうか…ならまあいいさ。どっちにしろ事態は解決できるわけだからな」

10032号「…やはり、その態度、気に入りませんと…ミサカは戦闘態勢に入ります」

先ほどと同じく、右手を水平に引いて構える。

詠矢「あー、ダメだよそれ。ダメダメ」

10032号「…?」

詠矢「空気は絶縁体だ。ここまでは届かない」

10032号「…」

10032号「…そんなことは小学生でも知っていますが、とミサカは淡々と答えます」

詠矢「…え?」

躊躇無く振り下ろされた右手から、雷が放たれる。

詠矢「うおっ!!…とっとと!!」

一瞬早く、詠矢は横っ飛びで逃れる。

詠矢「(あっぶね…。一瞬早く動いて助かった…)」

詠矢「(落雷なんぞ見てから避けるのは無理だっての)」

10032号「よく避けましたね、とミサカはあなたの身体能力に驚愕します」

詠矢「って、俺の言ったこと聞いてなかったのか?」

10032号「聞こえていたから答えました…バカにしてますか?、と怒気を含んだ声で答えます」

詠矢「(聞いてたって…どういうことだ?効果がねえ…)」

10032号「無駄話をしている暇がありますか?とミサカは苛立ちを覚えます」

詠矢「いや、ちょっと待って…」

10032号「まだ音を上げるには早いですよ、とミサカは躊躇無く追撃を…加えます」

詠矢「っとっとっとと…おぉ!!」

続けざまに襲う落雷を、詠矢は走り回って避ける。

詠矢「なあ妹サン…、腹へってねえか?」

10032号「…??」

詠矢「妹サンが発電を行っているとして、電気を発生させているのは体細胞だ」

詠矢「だとすれば、発電のために大量のエネルギーが必要になる。細胞活動のエネルギーは糖。血中の糖だ…。」

10032号「…だからどうしたと言うのでしょう」

詠矢「…はい?」

10032号「私は電気を発生させてるのであって、体細胞で発電しているわけではありません、とミサカは攻撃の手を止めて説明します」

詠矢「…なんだその妙に説得力のある矛盾した説明は」

詠矢「でもそれだと、エネルギー保存の法則に反して…」

10032号「パーソナルリアリティは物理法則を書き換えます」

10032号「説明はそれで十分でしょう、とミサカは諭すように答えて…」

10032号「攻撃を再開します」

水平と垂直方向から続けざまに落雷が襲う。

詠矢「どぉうわっ!!…っとと!!」

やはり走り回って逃げるしかない詠矢。そして同時に考える。

詠矢「(これって…まさか…)」

詠矢「(感情の動きが少ないってのは…居直ってるのと同じ…ってことか!?)」

詠矢「(冗談じゃねえ…勝ち目ねえぞこれ!)」

次々に焦がされていく下草を踏みしめつつ詠矢は逃げる。

10032号「余裕を見せていた割りには逃げるしか出来ないのですね、とミサカは攻撃の手を緩めません」

詠矢「ぐおぅわっ!!…って容赦ねえな!!」

詠矢「(どうする?まともな論証は通用しそうにねえ…。何か別の切り口を…)」

詠矢「(でも切り口っても…、感情が動かないんじゃ…どうしようも…)」

詠矢「(感情?…そういやあ…『増幅』が起こったきっかけって…)」

詠矢「…」

詠矢「…よし」

詠矢「なあ妹サン!!」

10032号「なんですか?まだ無駄口を叩く余裕がありますか、とミサカは律儀に返答します」

詠矢「俺も上条サンと知り合ってしばらく経つんだが…」

詠矢「その間、妹サンに会ったこと無かったよな?」

10032号「それがどうかしましたか?と、ミサカは口数が増えて動きの鈍った瞬間を狙います…」

詠矢「うおっ!!」

言葉通り狙い済ました雷槍が詠矢の袖先を掠める。

どうにか体を反らして避けたものの、上着の一部が一瞬で炭化したていた。

詠矢「うおっ、焦げた焦げた!」

詠矢「…で、めげずに話を続けるぜえ!」

詠矢「要するに、妹サンは上条サンと会おうとはしていなかった…」

詠矢「積極的にアプローチはしてなかった…そうなるよな?」

10032号「…」

10032号「…何が、言いたいのでしょう…とミサカは、端的に聞きます」

詠矢「俺も、まるっきり朴念仁って訳でもないんでね」

詠矢「妹サンの態度を見てれば、上条サンをどう思っていたかはわかるさ…」

相手の反応を見つつ、詠矢は足を止め、正面に向き直る。

10032号「観念…しましたか?…とミサカはあなたの覚悟の程を問います」

詠矢「いや、そういうわけじゃねえが…逃げるのはヤメだ」

詠矢「ちゃんと話せそうな雰囲気になってきたからね…」

10032号「甘いですね…と…」

彼女は静かに右手を振り上げる。

詠矢「…」

黙って動かない詠矢。

10032号「ミサカは…ミサカ…は…!」

放たれる雷槍。それは、詠矢の頬から少し離れた位置を通過し、飛び去っていった。

10032号「なぜ…逃げないのです…と…ミサカは…」

詠矢「最初から殺意は感じなかったからね…」

詠矢「今までだって本気で当てに来てたわけじゃねえっしょ?」

10032号「…あなたは…いったい…とミサカは…問います…」

詠矢「俺のことなんかどうでもいいさ」

詠矢「なあ妹サン…」

詠矢「あんたが怒ってるのは誰にだい?」

詠矢「御坂サンでも上条サンでもねえよな?」

詠矢「じゃあ、二人仲を取り持った俺かな?」

詠矢「多分違うと思うんだよな…」

詠矢「妹サンが許せないのは…」

詠矢「自分から何も動こうとしなかった自分自身に…じゃないかな?」

10032号「…(ビクッ)」

10032号「…それは…そんなこと…私に出来るわけ…、とミサカは…言葉が…出ません…」

詠矢「御坂サンの思い人に手を出すわけにも行かない」

詠矢「だから自分は身を引いて、進展しない二人の関係に安住していた…」

詠矢「だろ?」

10032号「…」

詠矢「なら、もう結論は出てるわけだよ」

詠矢「御坂サンは勇気を持って自分の殻を破り、思いを伝えた」

詠矢「それが上条サンに届いて、二人はああなったんだと…思う」

詠矢「もう既に、妹サンはわかってるはずだ…」

詠矢「今自分に出来ることは一つだけ…」

詠矢「あの二人を祝福してやること…じゃないかな?」

10032号「…」

10032号「…わかっています…」

10032号「…そんなことは…わかっています…」

10032号「でも、いくら理解しようとしても…この体の奥底の感情が…消えないのです…」

10032号「と、ミサカは…ただ…迷います…」

詠矢「うん、それでいんじゃね?」

詠矢「人間、そう簡単に割り切れるもんじゃねえしな」

静かに歩みを進めると、詠矢は相手の目の前に立つ。

詠矢「つうわけで、話を戻そう」

10032号「…?」

詠矢「妹サンが暴れてたのは、やり場の無い感情のぶつけ先が必要だったからだろ?」

詠矢「じゃあさ…」

詠矢「物理的な事でいいなら、それで少しでも妹サン気が晴れるんならさ」

詠矢「俺にぶつけてもらっていいぜ?」

詠矢は相手の手を取り、自分の肩の上に置いた。

詠矢「俺が二人の背中を押したのは事実だ」

詠矢「正当かどうかは別にしてだな…、一応妹サンに恨まれる根拠はあるわけだ」

10032号「…」

詠矢の肩に置かれた彼女の手に、わずかに力が入る。

詠矢「ま、適当にやってくれ」

詠矢「ただし、死なない程度に頼むぜ?。ああ、大怪我もカンベンかな?」

軽口を叩いて笑う詠矢だが、その表情に余裕は無い。

詠矢「(自我の暴走が能力の上昇を引き起こしてるのは間違いない)」

詠矢「(なら、それを解消してやれば絶対反論の影響は限りなく小さくなるはずだ)」

詠矢「(俺なりに説き伏せたつもりだが…さあ、どう出る!?)」

10032号「…」

10032号「…わかりません」

10032号「…私は…」

10032号「…どうしたらいいか…」

10032号「…私は…っ…」

その手が詠矢の肩を強く掴む。

詠矢「…!」

同時に放たれる電流。それは詠矢の体を通って地面に流れた。

詠矢「ぐ…がっ…!!!…っ…」

詠矢「…つっ…」

詠矢「…」

詠矢「…んっと…?」

詠矢「どう…かな?」

10032号「…」

10032号「…ありがとうございます」

10032号「少し楽になりました、と…ミサカは素直にお礼を申し上げます」

詠矢「そっか…そいつはよかった…」

詠矢「俺もこの程度で済んで助かったぜ」

詠矢「まあ、メチャメチャ痛かったけどな…」

詠矢「ぐっ…」

詠矢はたまらず膝をつく。

10032号「…!大丈夫…ですか?とミサカは心配…します」

詠矢「走り回ってちょいと疲れたかな…」

詠矢「妹サンの力の方はどうだい?」

10032号「まだ…力を感じます…ですが…」

10032号「先ほどよりは、ずいぶんと弱くなりました…とミサカは冷静に分析して答えます」

詠矢「…そっか…」

詠矢「(まだ完全に効果は消えてないか…)」

詠矢「(ってもこれ以上手がねえ…どうすりゃいいんだ…)」

上条「…詠矢ー!!」

河原に続く土手を駆け下りる姿が、詠矢の目に映った。

詠矢「お、上条サンか…」

詠矢「よくここがわかったなあ…」

御坂「そりゃそうよ」

詠矢「お、御坂サンもいっしょか」

御坂「だいぶ派手に電撃を撃ってたみたいね…」

御坂「場所を特定するのは簡単だったわ」

詠矢「ああ、そっか。妹サンに出来て御坂サンに出来ねえわけねえもんな」

上条「…で?どうなった?」

上条「見たところ、だいぶ収まってるみたいだが…」

詠矢「まあ、なんとか、危なくない程度にはね」

御坂「…」

10032号「…お姉さま…」

御坂と対峙し、彼女は低くうなだれる。

そんな姿を、御坂はじっと見つめる。

御坂「…」

10032号「…」

御坂「ゴメンね?」

10032号「……え…」

御坂「あなたの気持ちには気づいてあげられなかった…それは謝るわ…」

御坂「でも…それを知っていたとしても、私は何も変わらなかったし、ためらわなかったと思う」

御坂「だって…当麻は一人しかいないんだから」

10032号「…」

御坂「でも…あなたにも辛い思いはして欲しくなかった」

御坂「だから、ちゃんと気づいて、ちゃんと話をするべきだったと…思う…」

御坂「それは…ほんとに…ゴメン…」

10032号「…いえ…」

10032号「…いいんです…」

10032号「…その言葉だけで…ミサカは…十分です…と…」

御坂「ほら、当麻!!」

上条「はいっ!なんでしょう…?」

御坂「こっちきて、アンタも謝るのよ!」

上条「へ?なんで…俺が…」

御坂「いいのよ!アンタにも原因はあるんだから!」

御坂「わかんなくてもなんでもいいから!…何か言ってあげて」

上条「…わかった」

上条は歩いて近づき、御坂の隣に立つ。

上条「…なんか、俺がしなきゃいけなかったことがあるみたい…だな?」

上条「まだ、ちょっとわからないとこもあるんだけどさ…」

上条「ゴメンな?」

うなだれる彼女の頭に、上条はそっと右手を置いた。

(キュイーン)

10032号「…!?」

詠矢「…え!!」

上条「…なんだ…今の…」

詠矢「上条サンの右手が何かに反応した?」

上条「って…何にだよ!」

詠矢「…あ…絶対反論(マジレス)だ!」

詠矢「妹サンにかかってた増幅の効果が、解除されたんだ!」

御坂「…それって…もしかして…」

上条「最初からそうしてれば…」

詠矢「大騒ぎする必要は…」

御坂「…」

上条「…」

詠矢「…」

10032号「…?」

10032号「…先ほどからなんでしょう…増幅とか…、とミサカは説明を求めます」

詠矢「…いいやもう…」

10032号「…?」

詠矢「今日は解散!!」

詠矢「おのおの帰るべき所に帰る!以上!!」

10032号「あの…私の質問は…と…」

詠矢「それは答えられません!!」

詠矢「世の中、知らない方がいいこともあるんだよ!!」

御坂「そうしときなさい…」

上条「だな…」

10032号「…は…はあ…、とミサカは力ない言葉を返します」

詠矢「うい…んじゃ、またな!!」

きびすを返して詠矢は歩き出す。

詠矢「(ったく…なにやって俺は…走り回ってバカみてえじゃねえか…)」

詠矢「(まあ、理事長サンにアピールは出来たかもしれないけどさ…)」

詠矢「(俺も肝心なところで頭が回らねえなあ…)…(ブツブツ)」

10032号「…あの…」

詠矢「ん?」

呼び止められ、詠矢は一瞬足を止める。

10032号「最後に、もう一度お礼を言わせてください…」

10032号「ありがとうございました…とミサカは深々と頭を下げます」

説明通り頭を下げる彼女の姿を見ると、詠矢の表情も少し緩む。

詠矢「ほいほい、ごくろーさん!」

詠矢「(妹サンの気持ちを少しは救えたのかねえ…)」

詠矢「(ま、いろいろと無駄になってないんなら…いいけどね…)」

歩きながら詠矢は、一人そんな事を考えていた。

(数日後 ジャッジメント177支部)

詠矢「(ガチャ)こんちわー。お久しぶりー」

初春「あ、詠矢さんこんにちわ」

詠矢「お、初春サン一人かい?白井サンは?」

初春「今パトロールに出かけてます」

初春「詠矢サンこそ何のご用ですか?」

詠矢「いやなに、ちと遊びに来ただけなんだけどさ…」

初春「…そうですか…」

詠矢「ん?どした、元気ねえな?」

初春「あー、いや…ちょっと…」

詠矢「なんかお悩み事なら相談に乗るぜ?」

初春「んー、えーっとですね…私の友達から…」

初春「相談を受けてまして…それに上手く答えられないんですよ」

詠矢「ほうほう…相談の内容って、差し支えなければ聞かせてもらえるかい?」

初春「なんか…好きな人がいるらしくて…」

詠矢「あー、恋愛相談か…」

初春「そうなんですよ」

初春「なんでも、上手く思いを伝えられないらしくて…」

初春「どうすればいい?とか聞かれるんですけど…」

初春「私そういう経験がなくて…どう答えていいものか…」

詠矢「なるほどねえ…まあ、状況を聞かないと答えようがねえけど…」

初春「あ…そうだ詠矢さん」

詠矢「なんだい?」

初春「詠矢さん、なんかいいアドバイス考えてくれませんか?」

詠矢「俺に?」

初春「だって、ほら…御坂さんって…あれだったでしょ?」

詠矢「まあ、関わってたのは事実だけどね」

初春「同じように、上手く気持ちを引き出せてあげたらなあ…って」

詠矢「んー、まあ、俺で役に立てるんなら…いいけどね…」

詠矢「…あ」

初春「…なんでしょう?」

詠矢「…その娘ってさあ…」

詠矢「クローンの妹とか…いねえよな?」

初春「………はい?」

以上となります。
この話はこれで完結です。
ありがとうございました。

こんばんわ。
短編が一つ書きあがりましたので投下します。

(とある学生寮 佐天涙子の自室)

佐天「よし…これで、最後!!」

今日は週末の朝、洗濯物を干し終えた佐天は、ふうと息をついてベットに腰掛ける。

佐天「さて…用事は済んだし、今日はどうしよっかなー…」

一日家にいることが殆ど無い彼女だが、今日は珍しく予定も無い。

佐天「…さあて、暇そうなのはだれか…な」

鼻歌交じりに携帯のアドレス帳をチェックする。

佐天「…あ…」

その指が『や』の行で止まる。

佐天「(詠矢さん…そういえばアドレス交換してたんだっけ…)」

佐天「(そういえば…ジェラート食べにいく約束してたなあ)」

佐天「(でも『また今度』っていつなんだろ。詠矢さん連絡くれないしなあ…)」

佐天「(そういえば…あれから会ってないような…)」

佐天「…」

佐天「(…電話しちゃおうかな?)」

佐天「(でもなあ…いきなり連絡したら迷惑かな?)」

佐天「(どうかなあ…悩むなあ…)」

佐天「…」

佐天「よし…例えば、で考えてみよう」

佐天「もし私が連絡したとしても」

佐天「もし用事があったり都合が悪かったら」

佐天「詠矢さんなら普通に断ってくるよね?」

佐天「じゃあ、連絡するだけなら迷惑にならない…かも?」

佐天「…」

佐天「それって…よっぽどヒマじゃないと会えないってことじゃない…」

佐天「そもそも…詠矢さんが私のために時間を割いてくれるかな…?」

佐天「(…あれ?…なんで私こんなに考えてるんだろ)」

佐天「(初春や他の友達なんかだと、相手の都合なんか考えずに連絡しちゃうのに)」

佐天「(…詠矢さんの考え方がうつっちゃったかなあ…)」

佐天「(考え方…)」

佐天「(でも…よく考えたら私、詠矢さんのこと何も知らないんじゃない?)」

佐天「(印象に残ることは多いけど、そんなに回数会ってないし)」

佐天「(それに詠矢さんって、私といるときあんまり楽しそうじゃないよね…)」

佐天「(なんか、気を使われてるっていうか…扱いに困られてるような…)」

佐天「…」

佐天「じゃあ、何でそんな人のこと考えてるんだろ?」

佐天「…もしかして…アレ…かな?」

佐天「…」

佐天「まっさか…ねー…」

佐天「…うーん…」

佐天「で…どうしよう…」

じっと携帯の画面を睨み付ける佐天。

佐天「…」

佐天「…よし!」

何かを決意したのか小さく叫ぶと、その指をキーの上に滑らせた。

(とある学生寮 詠矢の自室)

詠矢「あー…」

ベットにもたれかかりつつ、詠矢は一人天井を仰いでいた。

詠矢「ヒマだな…」

詠矢「相方のいる友人の方々はなかなか誘いにくいしねえ…」

詠矢「特にまあホヤホヤの上条サンは特になあ…」

詠矢「バイト先でもノロケ話が増えたし」

詠矢「この期に及んで独り身の寒さを実感するわ」

詠矢「んと…」

詠矢「どうせ予定もねえし…こないだ木山先生に借りてきた本でも目を通しとくか…」

詠矢「まあ、読んでも殆ど意味なんぞわからないんだが…」

詠矢「なんか論証のヒントでも見つかればね…よっと…」

机の上に積んであった本を一冊とると、適当にページを開く。

(ピンポーン)

詠矢「あれ?誰だろ…」

詠矢「また勧誘かな?…いまどき新聞なんぞ読まねえってのに…」

誰が来たのかはわからない。対応しないわけにもいかず、詠矢は玄関まで移動して扉を開ける。

詠矢「はいはい、新聞ならいらん…」

佐天「こんにちわー!」

そこには、見知った少女が立っていた。

その姿に、詠矢の思考は数秒間停止する。

詠矢「…こんちわ」

佐天「あれ…どうしました?」

詠矢「いや…ちょっと驚いて硬直してた」

佐天「あ…もしかしてご迷惑でした?」

詠矢「いやいや…そういうわけじゃないんだけど…」

詠矢「あれ?そういえば…俺の部屋よくわかったね?」

佐天「えっと…御坂さんから聞きました。彼氏さんと同じ寮だって…」

詠矢「…あー、そうなんだ…うん…」

詠矢「えっと…で、なんのご用でしょうか?」

佐天「それがですねえ…これです!!じゃーん!」

佐天は持っていた紙袋を差し出す。それは、詠矢にも見覚えがあった。

詠矢「あ、それ、あのジェラートか…」

佐天「そうです。ほら、こないだ食べ損なったんで…約束してたじゃないですか?」

詠矢「あー、うん…そうだったね…」

佐天「詠矢さんお忙しいみたいなんで…買ってきちゃいました!」

詠矢「…おお…って、わざわざ持って来てくれたのかい?」

詠矢「そいつはご苦労さんだねえ」

佐天「いえいえ、どうしたしまして!」

佐天「で、ですね…一緒に食べません?」

詠矢「…」

詠矢「(…これは…アレか…)」

詠矢「(他に選択肢は…ねえな)」

詠矢「…ん、いいぜ…上がるかい?」

佐天「はーい。おじゃまします…」

何か薄ら寒いものを感じつつも、詠矢は彼女を部屋へ招き入れた。

佐天「わあ…綺麗に片付いてるんですねえ…」

詠矢「どうせほっといたら散らかるんで」

詠矢「最初から物を増やさないようにしてるだけさ」

佐天「そうなんですか…たしかに、ちょっと殺風景かもですね」

詠矢「そうかねえ…なんかその手の感性が無くてねえ…なに並べていいもんだか」

詠矢「ああ、そうだ。溶けないうちに食べないとな…えと、スプーン…はい」

佐天「ありがとうございます。じゃ、これ…」

佐天は袋に入ったカップを一つ手渡す。

詠矢「ありがと…お、バニラか」

佐天「ええ、お好きなのがわからないので、シンプルなのにしてみましたけど…?」

詠矢「ん、いいよ。バニラが一番好きだし…」

詠矢「また美味いんだよなあ…ここのが…」

佐天「あれ…詠矢さん食べたことあるんですか?」

詠矢「うん…あるよ…?」

佐天「一人で食べにいったんですか?」

詠矢「いんや…一人じゃないよ。厳密に言うと食べに行ったわけじゃないんだけどね…」

佐天「…そう…ですか…」

詠矢「…」

若干、空気が重く感じられる。理由は詠矢にもわからない。

詠矢「…いや…ちょっとお世話になった人のお土産にね…」

詠矢は必要の無い説明を始めた。なぜ説明を始めたかは詠矢にもわからない。

佐天「あ、そうだったんですね…」

詠矢「美味しいのは間違いないんで、喜んでもらえたけどねえ」

佐天「よかったじゃないですか」

佐天「じゃあ、頂いちゃおうかな…」

佐天「私は食べるの初めてなんですよねー」

詠矢「…」

詠矢「(いやいやいや、何だこの微妙な罪悪感は)」

詠矢「(ちょっと待て、まずは冷静にだな…落ち着いて状況を分析しよう)」

詠矢「(確かに、あらためて食べに行こうと約束はしてた)」

詠矢「(まあ、なんとなく誘いにくくて連絡はしてなかったが)」

詠矢「(お互いにそれまでは食べないでおこうと確約したわけじゃない)」

詠矢「(つまり、俺が気負う要素は何も無いわけだ)」

詠矢「(よし、それを前提として話を進めよう)」

詠矢「うん、俺も味とか詳しい訳じゃねえんだけどさ」

詠矢「かなり美味いと思うぜ、ここのは」

佐天「…あ、ほんとだ。おいしいですねえ(パク)」

詠矢「うんうん、だろ?(パク)」

佐天「…(パクパク)」

詠矢「…(パク)」

佐天「…」

詠矢「…」

佐天「…(パク)」

詠矢「…な、なあ…佐天サン」

佐天「はい、なんでしょう?」

詠矢「ジェラートの件はわかったんだけどさ」

詠矢「用件って…そんだけ…かい?」

佐天「え…用事無いと居ちゃダメですか?」

佐天「それとも…お忙しいですか?」

詠矢「いやいや、そういうわけじゃないんだけどね…」

佐天「なるほど、詠矢さん的には何か理由があったほうがいいんですね…」

佐天「じゃあ、何かお話しません?」

詠矢「ん…お話…かあ…」

佐天「難しい話じゃなくてですね…、何でもいいんですよ?」

詠矢「んー…逆にそういわれると難しいなあ…」

佐天「いつも難しいことばっかり考えてるからですよ…」

佐天「じゃあ、私から…いいですか?」

佐天「詠矢さんのこと、ちょっと聞いてみたくて…ですね…」

詠矢「俺のことかい?…まあ、いいぜ。答えられることなら」

佐天「いいですか?じゃあ…お休みの日とか、なにしてるんですか?」

詠矢「休みは、なあ…殆どバイト入れちゃってるかな?長時間入れるしね」

詠矢「バイトが無いときは…図書館行ったりネット見たりとかで、調べ物かな」

佐天「へえ…やっぱりいつも勉強されてるんですねえ…」

佐天「お友達とか遊びに行ったりしてるんですか?」

詠矢「行くよ。上条サンとかバイト帰りに飯くいに行ったり。部屋にも良く行くなあ」

詠矢「最近は、ほら、アレだろ?ちょっと行きにくくなってるかな…はは」

佐天「ふふっ…ラブラブみたいですもんね…」

佐天「やっぱり自分からは誘いにくいですよねえ?」

詠矢「そりゃまあ…ねえ…」

佐天「…うーん…」

詠矢「どしたね…?」

佐天「えと…ですね…。詠矢さんって」

佐天「距離を、感じるんですよね…」

詠矢「」

詠矢「…え?」

佐天「ほら…どんなに親しい人でもさん付けですし…」

佐天「誰にでもほとんど同じ態度じゃないですか?」

佐天「…なんかそこに、縮まらない距離を…感じるんですよねえ…」

詠矢「…」

詠矢「…ぐは」

佐天「あっ!…ごめんなさい、勝手なこと言って!!」

詠矢「いやいや…、自覚はあったし…今のままでいいって思ってるわけでもないし…」

詠矢「すごく真っ当な指摘だよ…」

佐天「…そう…なんですか?」

佐天「じゃあですね…気にされてるんなら…」

佐天「ちょっと…距離を縮めてみませんか?」

詠矢「…距離…って?」

佐天「まず、目の前に居る私と…」

にっこりと、他意無く笑う少女。その姿に詠矢の思考は再び停止する。

詠矢「…まあ…佐天サンとなら…願っても無い…けどね」

佐天「わあ…よかったです!。じゃあじゃあ、もっと聞いちゃいますね?」

佐天「詠矢さんて…好きな人とか…いるんですか?」

詠矢「…」

詠矢「(これって、フラグ…だよな…?)」

詠矢「(思い人が居るかどうか聞くってのは)」

詠矢「(相手に精神的な『空き』があるかどうか確認する為だ)」

詠矢「(それを確認するのは、自分がその位置に入りたいという意思がある人だけ・・・)」

詠矢「(話の流れから言って確定的な台詞だ)」

詠矢「(…)」

詠矢「(…いやいやいや、ちょっと待て、調子に乗るな)」

詠矢「(ここはクールダウンだ、落ち着け詠矢)」

詠矢「(こないだまでぼっちだった俺が)」

詠矢「(いきなり女の子とフラグ立てられる訳ないだろ。常識的に考えて)」

詠矢「(興味本位で聞いてるという可能性も十分にある)」

詠矢「(有る意味俺をからかうつもりで、いたずら半分の言葉である可能性も高い)」

詠矢「(とりあえず、ここは無難に返しておこう。突っ込むと火傷する…うん)」

佐天「…えと…詠矢…さん?」

詠矢「ん?あ、いやゴメンゴメン…」

詠矢「いやあ…そういう人は…いねえなあ…」

佐天「わ、そうなんですか?…じゃあ、好きなタイプとか…どんな人ですか?」

詠矢「…まあ、自分から選べる立場でもないんでさ…あんまり考えたことないんだけど」

詠矢「俺のこと好きでいてくれれば…」

詠矢「ついでに理想を言えば…家庭的な子ならなおよし…かな…」

佐天「…なるほどなるほど…」

佐天「ええっと…でもその条件なら…」

佐天「私でもいいわけ…なんですよね?」

詠矢「…」

詠矢「……」

詠矢「いやいやいやいや、ちょっと待ってくれよ。なんだその論理の飛躍は」

詠矢「今の話の流れじゃ、その結論には至らんでしょう…いやホント」

佐天「…え…」

佐天「詠矢さん、私のこと…嫌い…ですか?」

詠矢「そりゃあ…嫌いなわけねえけど…?」

佐天「じゃあいいじゃないですか、好きで!!」

詠矢「うわっ…なんでそこで二択かな」」

詠矢「普通どっちでもないっていう選択肢があるっしょ!?」

佐天「…」

佐天「…むう…」

佐天「…強情ですねえ…」

詠矢「強情とか…そういう問題なのか?」

佐天「ダメですよ、これじゃあ!!」

佐天「距離が全然縮まってません!!」

詠矢「え…あ…すいません…」

詠矢「っても…急に神速で接近されても…ねえ…?」

佐天「…仕方ありませんね…」

佐天「物理的に…縮めます」

佐天は立ち上がらず、座ったままじりじりと詠矢との距離を詰める。

詠矢「お…おい…ちょっと…」

佐天「逃げないで下さいね?」

詠矢が躊躇している間に、あっという間まにその距離はほぼゼロとなる。

詠矢「ちょ、ちょっとマズイよこの距離は!!」

佐天「わたしは平気です」

佐天「まだまだいきますよ!!」

ぎゅっと、佐天は詠矢の腕にしがみつく。

詠矢「ちょ…」

彼女の体の正面が、詠矢の腕に密着する。

詠矢「ちょ…ちょちょちょちょっと待ってって!!」

佐天「…」

佐天は、にやりと笑う。それは実に女性らしい、小悪魔的な笑顔だった。

佐天「…おもしろーい、詠矢さんが慌てるの初めて見ました…」

詠矢「いや、面白がってる場合じゃなくてですね、この体勢はマズイ…」

佐天「えい(ムギュ)」

更に強く密着する感触。詠矢の心拍数が一気に跳ね上がる。

詠矢「うおっ!!っとっと…ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!っての!!」

佐天「…ダメですか?」

詠矢「そりゃダメっしょ?今二人っきりなんだし…」

佐天「うりゃ(ムギュ)」

詠矢「だから、ダメだっての!!ヤバイヤバイヤバイ!!!いろいろと限界だから!!」

佐天「…詠矢さん」

佐天「…私じゃ嫌ですか?」

詠矢「い…嫌とか…そういうことじゃなくて…さ…」

詠矢「俺も…男だし、なんか…間違いでもあったらだなあ!!」

佐天「…いいじゃないですか、間違いましょうよ」

詠矢「……へ…?」

その言葉の威力は絶大だった、詠矢の全身は弛緩する。

預けられた重心を支えきれず、二人は重なり合うように倒れた。

佐天「間違いでも気の迷いでも、いいですよ…」

佐天「だってそうじゃないと…詠矢さん…なにも始まらないでしょ?」

詠矢「佐天…サン…」

パチンと音を立て、詠矢の中の何かがちぎれた。

詠矢の両腕が反応する…それは立ち上がり、すぐ上にある佐天の背中に手を…

回そうとした刹那

詠矢は目覚めた。

詠矢「…!!!」

全身の筋肉が躍動し、ベットの上で跳ね起きる。

詠矢「…」

詠矢「……」

詠矢「…おい」

詠矢「…夢オチ…って…反則…だろ…」

考えのまとまらないままの頭を振って、周囲を確認する。

詠矢「…そっか…遅くまで調べ物してて…いつ寝たっけかな…」

夜更かしした記憶は定かではない。ただはっきりと記憶に残るのは、さっきまで見ていた甘美な夢。

腕に当たっていた感触まで、まざまざと思い出される。

詠矢「(夢の中で起こったことは、全て俺の記憶の中から構成されている)」

詠矢「(あの佐天サンの言葉は、俺が自分に対して問いかけたもの)」

詠矢「(そして、彼女の行動は…、俺の妄想と欲望の産物…)」

詠矢「…」

詠矢「(だとすれば…そいつは…かなり…痛い…)」

詠矢「(最低…だな…)」

詠矢「…?」

ベットから離れて置かれたスマートフォンに、なんとなく目が行く。

詠矢「…メール…2件…、着信履歴も…あるな…」

詠矢「…佐天サン…から…って…」

詠矢「おい…何でこのタイミングで…」

詠矢「…(ポチ)…『おはようございます、佐天です。えっと、お約束してたジェラート、もしよろしければ今日食べに行き
ませんか?』」

詠矢「…」

詠矢「二件目…(ポチ)…『えっと、お忙しかったですか?ご都合が悪ければご返事頂ければ幸いです』」

詠矢「んで…着信履歴か…」

詠矢「待たせちまってる…な」

詠矢「…」

詠矢「……」

詠矢「いや…今の精神状態で…会えん…な…」

詠矢「…とりあえず…別に用事があることに…するか」

詠矢「佐天サン…ゴメンな…」

詠矢「…(ポチポチ)」

(とある学生寮 佐天の自室)

佐天「(返事無い…なあ…)」

佐天「(気づいてないのかな…)」

佐天「(それともまだ寝てるのかな?)」

佐天「…あ…」

佐天「メール来た!」

佐天「…」

佐天「…『ゴメン、今日は体調が悪いので寝てます。また今度連絡するのでそんときに…』」

佐天「…」

佐天「…ダメ…か…」

佐天「病気なら…しょうがない…よね…?」

佐天「…なんか…寂しいなー…」

佐天は携帯の画面を眺めたまま小さく息を吐き、少しだけ何かを考える。

佐天「ま、いっか…連絡してくれるの待とう…」

佐天「えい…(ポチポチ)」

佐天「…」

佐天「…あ、初春?ねえねえ、今からジェラート食べにいかない?」

以上となります。この話はこれで終わりです。
ありがとうございました。

現在、完全にネタ切れです。次回の投下は未定です。
それではまた。

こんばんわ。
短編が書きあがりました。
今回は前後編になります。
まずは前編を投下します。

(ジャッジメント177支部)

詠矢「…(ポチポチ)」

白井「…(カリカリ)」

初春「…(カタカタ)」

詠矢「…(ポチポチ)」

白井「…(カリカリ)」

初春「…(カタカタ)」

白井「…初春、出来ました。入力をお願いしますわ」

初春「あ、はい…わかりました…」

白井は書きあがった書類を初春に手渡す。

詠矢「…忙しそうだ…ねえ…」

スマートフォンの上に指を走らせながら、詠矢はポツリと言った。

白井「そう、ではなくて実際に忙しいのです!」

白井「…詠矢さんも…お忙しそうで…」

当然ながら、その口調には皮肉が込められていた。

詠矢「んー、まあ、調べ物とかね…忙しくはねえけど…」

詠矢「…あ、なんか手伝おうか?」

白井「結構です!!ここには部外者に頼める仕事などありません!!」

詠矢「そっか、そりゃ失礼しました…」

軽く答える詠矢を白井はじとっと睨む。今更ながら、この人物に支部への出入りを許したことを少し後悔していた。

初春「…えっと…、今の書類で今日の分は終わりですから…」

初春「白井さんも少し休憩したらどうですか?」

白井「…そうですわね…では、お言葉に甘えてひと息入れさせていただきますわ…」

初春の助け舟に促され、白井は手を休め、ふうと小さく息を吐いた。

詠矢「…ん、と…食うかい?(ポチポチ)」

指を休めないまま、詠矢は紙袋を差し出す。

白井「…なんですの?」

詠矢「差し入れだよ…シュークリーム…美味しいと思うよ…」

白井「あら…ありがとうございます…。頂きますわ…」

詠矢「初春サンも手が空いたら食べなー」

初春「あ、はい!いつもありがとうございます…」

白井「では早速…(ガサ)…(パク)…」

白井「…(モグ)…美味しいですわね…」

詠矢「そらよかった…(ポチポチ)」

白井「…」

詠矢「…」

白井「…(モグ)」

詠矢「…(ポチポチ)」

白井「…」

白井「…はあ…」

思わず大きなため息を付く白井。

詠矢「どした…幸せが逃げるぜー」

白井「…逃げるほどの幸せもござませんわ」

詠矢「そりゃまたお疲れだねえ…」

詠矢「その雰囲気は…仕事疲れ…ってだけでもなさそうだね…」

白井「…その無遠慮な洞察力…相変わらずですわね…」

詠矢「ん、まあ、いろいろと想像は付くからね…」

詠矢「確か…御坂サンと同室なんだっけか…まあ、そりゃ疲れるわな…」

白井「お姉さまが毎日幸せそうなのはよろしいのですが…」

白井「毎度毎度…お二人の話を聞かされるのは…少々…」

詠矢「うわあ…結構すごそうだなあ…それ」

白井「さすがに最近はお姉さまも気を使っていただいて…」

白井「あまりお話はされないのですが…」

白井「全身から発せられるオーラというか…雰囲気がどうも…食傷気味でして…」

詠矢「そりゃ大変だねえ…。俺だと聞かされるのはバイト中ぐらいだからなあ」

詠矢「同じ部屋だと逃げる場所もねえもんな…」

白井「かといって部屋を変わるつもりは毛頭ございませんし…。慣れるしかないのでしょうが…」

詠矢「ま、そのうち二人とも安定してくるだろ。しばらくのガマンさ…」

白井「だとよろしいのですが…」

詠矢「…(ポチポチ)」

白井「…(モグ)」

初春「…(カタカタ)」

初春「…!!」

初春「白井さん!!事件みたいです!!」

白井「…!!どこですの!初春、詳細を!!」

白井は椅子から勢い良く立ち上がると、初春の後ろに回りパソコンのモニターを覗き込む。

初春「えっと…別支部で起こった強盗事件みたいです…犯人は取り逃がしたみたいで…」

初春「逃走中みたいです。応援要請が来てますね…」

白井「こっちに向かって逃げてくる犯人を、先回りして抑えればいいのですわね?」

初春「それがですね…(カタカタ)。相手は監視カメラの死角を選んで移動しています」

初春「かなり地の利があるようですね…」

白井「やっかいですわね…。ですが…逆に…」

白井「移動経路を予測できるかもしれませんわ…初春、お願いできますの?」

初春「はい!やってみます…。えと…犯人は風貌からしてスキルアウトらしいので…」

初春「予想できる目標の場所と…監視カメラの抜け道の情報を組み合わせて…(カタカタ)」

初春「…んでもって…ちょっと加工を…(カタカタカタ)」

初春「出ました!!」

白井「流石ですわね初春…。あら…これは…道が2本…ですの?」

初春「はい…条件を設定して絞り込んでみたんですけど…どうしてもこの2系統が残ります…」

白井「まずいですわね…固法先輩は今別の事件の対応中ですし…」

白井「初春にはここに残ってもらわないといけませんし…」

初春「先回りするにしても…二分の一になっちゃいます…ね…」

詠矢「…」

スマートフォンから目線を外し、詠矢は二人の方に向き直る。

詠矢「手伝おう…か?」

白井「へっ?」

白井「いえ…お気持ちはありがたいですが…お断りします…」

白井「一般人を事件に巻き込むわけにはまいりません!」

詠矢「巻き込まれるのは今に始まったことじゃねえけどな…」

白井「これは既にジャッジメントで対応している事件です。あくまでこちらで対応します!」

詠矢「まあ…正論…だけどね…大丈夫かい?」

白井「お気になさらず…なんとかしてみますわ」

初春「…」

初春『白井さん白井さん…』

白井『なんですの!』

初春『せっかくだからお願いしちゃいましょうよ!』

白井『何をバカな事を!この程度の事件、部外者の力を借りなくても…』

初春『でも今の状況じゃ完全に賭けになっちゃいますよ?』

白井『う…それは…』

詠矢「…(なんか揉めてるねえ)」

白井『ですが、状況的にはかなり危険です。もし何かあったら…』

初春『その辺は、ほら、大丈夫じゃないですか?』

初春『なんだかんだいって、詠矢さん、お強いですし…』

白井『それとこれとは…話が別です!』

初春『うーん…じゃあ、ですね…』

初春『危なくない範囲で、協力してもらえれば…いいんじゃないでしょうか…』

白井『…』

白井「そうですわね…」

白井「詠矢さん…では、ご協力いただけますか?」

詠矢「ういよ…喜んで!」

詠矢は立ち上がると、やる気をアピールするかのように首を回し腕を回す。

詠矢「んで、何やればいい?」

白井「見張り、ですわ」

白井「逃走経路の一方に待機していただき、犯人が通過するかどうかを確認してください」

白井「わたくしは別の経路を確認します」

詠矢「…んで、見つけたらどうすりゃいい?」

白井「こちらに連絡頂ければ結構です」

白井「更に先回りして、犯人を確保します」

詠矢「なるほど…白井サンなら、追いつくのは簡単だもんな」

白井「間違っても、ご自分で犯人と対峙しないように…」

詠矢「わかってる…その辺はわきまえてるさ…」

白井「約束ですわよ?」

白井「では、参ります!」

白井が詠矢の腕を掴むと同時に、二人の姿は掻き消えた。

(とある路地 廃屋)

二人は、朽ちた室内に現れる。

白井「…ここですわ」

詠矢「っと…なるほど…張り込みのポイントか…」

白井「この前の路地が、予想される逃走経路の一つです」

白井「詠矢さんは、ここを対象が通過するか確認してください」

詠矢「わかった…んで、見かけたら白井サンに連絡すればいいわけだね?」

白井「ええ、その通りです」

白井「対象の風体に関しては、初春から詠矢さんの携帯にデータが送られて来ます」

白井「そちらで確認してくださいまし」

詠矢「うい。で、いつまで張ってりゃいいのかな?」


白井「撤収するタイミングはこちらで指示します。それまではよろしくお願いします」

詠矢「了解。逆にこっちが発見されるとマズイだろうから…」

詠矢「隠れながら監視できるポイントでも探しとくか…」

白井「あと、しつこいようですが…」

詠矢「わかってるっての…出過ぎたマネはしねえよ…」

白井「なら結構ですわ…」

白井「わたくしも移動します」

詠矢「おう、んじゃ頑張って…」

白井「…では(シュン)」

詠矢「ってと…」

詠矢は辺りを見回しつつ張り込むポイントを探す。

詠矢「(おあつらえ向きに壁のトタンは穴だらけだな)」

詠矢「(覗き込むには苦労しねえが、相手から発見される可能性も高いな)」

詠矢「(ま…進行方向は向こうみたいだから…この辺…かね)」

適当な場所を見つけると、詠矢は静かに腰を下ろした。

詠矢「(ブブブ)…(お、メール来た…添付写真をっと…)」

詠矢「(…下品なツラしてやがんなあ…なんでこの手の奴って)」

詠矢「(判で押したような悪人面なのかね…)」

詠矢「(ま、確認しやすくていいがね…)」

詠矢「(…さて…)」

詠矢「(…暇なもんだな…)」

詠矢「(当たり前か…)」

詠矢「…」

詠矢「…お?」

五分とかからず変化が起こった。

足音と思われる、地面を蹴り上げるような音が近づいてくる。

強盗犯「ハアッ…ハアッ…」

息を切らせ、男が走ってくる。先ほどの悪人面の主である。

詠矢「…(来たか…こっちが当たりとはね…)」

詠矢「…(さて…集中しますか…)」

足音はあっという間に大きくなる。そして、それが最大音量となったとき。

詠矢のいる廃屋の前を通過した…。

強盗犯「ハアッ…ハア…」

詠矢「…!」

詠矢は息を潜め、走り抜ける男の顔を確認する。

詠矢「…(間違いねえ…コイツだ…!)」

送られてきた写真と対象を再度確認すると、すばやく詠矢はスマートフォンを操作する。

詠矢「(対象が目の前を通過。容貌から犯人であることを確認)…(約一分前に通過…っと)」

必要最小限の情報を入力すると、詠矢はすぐさまメールを送信した。

詠矢「…」

詠矢「…(こんで、仕事終わりかな?)」

詠矢「…(ブブブ)…(お、返信か…)」

詠矢「…『ご苦労様です。後はこちらで対処します。撤収願います』…か…」

詠矢「本格的に終わりだね…さて…」

詠矢「もう行っちまった…よな?」

路地に人の気配が無いことを確認すると、詠矢は人の通れる場所を探して外に出た。

詠矢「もう、白井サンが先回りしてるんだよな…」

詠矢「んじゃ、大人しく帰りますかね…」

詠矢「…」

詠矢は、犯人が走り抜けていった路地の先をなんとなく見る。

詠矢「なんか…やな予感するなあ…」

詠矢「…どうするか…ねえ」

(とある路地 空き地)

強盗犯「ハアッ…ハアッ…ここまで…逃げれば…」

かなりの距離を走り続けた男は、周囲の静かさに安心したのか、その足を緩めた。

強盗犯「ハアッ…さすがに…ハア…追ってこねえ…だろ…」

膝の上に手を置き、息を整えようとした直後。

(キイン タスタスタス)

強盗犯「…!!何だ!!」

突然、男の足元に金属の矢が突き立った。

白井「そこまでですわ!!」

強盗犯「…テメエ…」

白井「ジャッジメントですの!」

白井は腕章を見せ、自分の立場を誇示した。

白井「ずいぶんとお疲れのようですわね?そろそろ終わりにしてはいかがでしょう?」

白井「鉄格子の向こうで、ゆっくり休んで頂けますわ」

強盗犯「野郎…ナメやがって…」

白井「あなたのような小物に、時間をかけるわけに参りません」

白井「とっとと終わらせていただきます(シュン)」

白井は消えた、得意の転移ドロップキックだ。

強盗犯「ぐわっ!!」

突如、後頭部を襲う攻撃など避けられるわけもなく、男は簡単に地に伏した。

白井「終わりです!」

拘束するための鉄矢を手に取った瞬間、白井は勝利を確信していた。

だが、男は突然身を翻す。

強盗犯「けっ!!これでも食らえ!!」

男は台詞の直後に目を閉じる、そして。

白井「…!!!」

白井の目の前に突然強い閃光が発生する。

その視界が真っ白に塗りつぶされた。

白井「し…まっ…!!」

強盗犯「うるあぁ!!」

上体を起こしながら、男は白井の胴体に拳を放った。

白井「ぐはっ!!!」

たまらず膝が落ちる白井。

強盗犯「まだまだあぁ!!」

男は完全に立ち上がると、前のめりになった白井の腹部を力任せに蹴り上げた。

浮き上がった白井の体は宙を舞い、落下し地面に叩きつけられた。

白井「ゲフッ…ん…ぐ…」

白井「…あなた…能力…者…」

強盗犯「ヘっ…爆裂閃光(フラッシュボム)ってな…空間に光を発生させるだけの」

強盗犯「チンケな能力だがなあ…」

強盗犯「使い方によっちゃあ…刺さるだろ!?」

言葉と同時に男は白井の背中を踏みつける。

白井「…ぐ…ぎっ!!」

強盗犯「さあて…どうしてやろうかねえ…」

強盗犯「アジトに連れ込んで…イジメ倒してやろうか…?ええ!!」

白井「…こ…の…!!」

強盗犯「まあ、どっちにしろ、もう少し弱らせてから…だなあ!」

(ザッ)

再び男が背中を踏みつけようとした瞬間。誰かが走りこんできた。

詠矢「ハアッ…ハア…」

強盗犯「なんだ…テメエは…!?」

詠矢「なんか、ヤバそうだったんで…急いで追っかけてきてみたんだが…」

詠矢「間に合った…いや、合わなかったのかな?」

強盗犯「仲間…か?」

詠矢「仲間ってのは間違いないが…通りすがりの一般人だよ…」

白井「…!(この声は…詠矢さん!)」

白井「詠矢さん、逃げてください!!。あたなたが関わることではありません!!」

詠矢「お小言なら後で聞くよ」

詠矢「そんな状態の白井サンを置いて、逃げれるわけねえっしょ…」

白井「…っ!!」

強盗犯「テメエもナメた野郎だなあ…。コイツは、使いたくなかったが…」

男は腰のベルトからバタフライナイフを取り出した。

詠矢「おーおー…定番だねえ…」

詠矢「そういうもの出せばビビると思ってんのならお生憎様」

詠矢「こちとら結構見慣れててね…」

強盗犯「なんだ…やるってのか…?」

詠矢「逃がすつもりなら追って来ねえいっての…」

白井「詠矢さん!コイツは光を使います!!気つけてください!」

詠矢「ああ…こっちに向かってるときに…なんか光が見えたんだが…能力者だったのか…」

強盗犯「…このアマ…」

強盗犯「余計なこと口走ってんじゃねえ!!」

男は力の限り白井の背中を踏みつける。

白井「が…っ…は…!!」

詠矢「…!」

いつもゆるいの詠矢の表情が、一気に鋭くなる。

ぎりっと奥歯を噛み締めると、静かに相手の距離を詰める。

詠矢「来い…相手してやるよ…」

強盗犯「…ナニ余裕かましてんだテメエェェ!!死んどけやあぁあ!!」

男は躊躇無く顔面を突いてくる。

詠矢「…!」

上体を反らし、詠矢はそれをギリギリでかわす。頬に浅い切創が浮かび、血がにじむ。

詠矢「…!!」

すぐさま詠矢は男の手首を取り、ひねり上げようとするが…。

強盗犯「(今だ!!)」

詠矢「…っ!!」

詠矢の目の前に強い閃光が発生する。と同時に、しばし両者の動きが止まる。

強盗犯「ケッ…チョロイもんだ…」

勝ち誇った男は目を開ける。だが、その視界に移ったのは…

正面から自分の顔面に向かってくる、相手の拳だった。

強盗犯「なっ…!!ガフッ!!」

詠矢の拳は、男の鼻筋に正確に命中した。

だが、腕をとられたまま倒れることも出来ない。

詠矢「ナントカに刃物って奴だな…。とりあえず大人しくしてもらおうか?」

詠矢は取った腕をひねり上げると、相手の体をうつぶせに倒し、そのままのしかかって肩と肘を極める。

強盗犯「い…いでででで!!…てめえ…目は…」

詠矢「あ?アホかてめえは?」

詠矢「まぶしいのはお前も同じなんだろ?能力を使う前に目を閉じないと、自爆するわけだ」

詠矢「同じタイミングでこっちも目を閉じれば、影響なんぞ受けるわけねえだろ…」

詠矢「初見ならともかく…わかってて引っかかるような能力じゃねえな」

強盗犯「…く…っそ…て…めえ!!」

詠矢「はいはい、暴れると余計痛いよ…」

極めた腕を詠矢は更に締め上げる。

強盗犯「いぎぎぎぎぎぎぎいい!!」

詠矢「白井サン!無事かい!!」

詠矢「動けるんなら!コイツの拘束を頼む!」

白井「…はい…なんと…か…」

よろよろと立ち上がる白井。視界はどうにか回復したようだ。

白井「…んっ!!」

鉄矢が転移され、男の上着の数箇所を地面に縫い付けた。

強盗犯「なっ!!」

詠矢「これで動けんな…」

強盗犯「…く…っそ…おぉぉぉお!!」

詠矢「ま、観念しな…」

強盗犯「…おい、テメエ!」

詠矢「何だよ…」

強盗犯「いつまでのしかかかってんだよ!もういいだろうがよ!」

詠矢「…まあ…そうだな」

強盗犯「ならとっととどけよ!!」

詠矢「…」

詠矢「…あ、手が滑った…(ゴキャッ)」

強盗犯「へっ?…ガ…ギィャアアアアァァァァアアア!!!」

強盗犯「…(ガクッ)」

肩関節を外された痛みで、男は気を失った。

詠矢「やれやれ…静かになったな…」

詠矢「白井サン!大丈夫か!!」

まだおぼつかない足取りの白井の傍に詠矢は駆け寄る

白井「はい…この程度…なんてこと…(ゴホッ)」

詠矢「無理すんなって…ほら…」

詠矢は白井の腕を抱えて体を支える。

白井「詠矢さんこそ…血が…」

詠矢「まあ、この程度カスリ傷さ…白井サンに比べればね…」

詠矢「とにかく、容疑者は確保した。応援を呼んで、早いこと医者行こう!」

白井「ええ…その方が…よろしいですわ…ね…」

(常盤台中学女子寮 御坂と白井の自室)

白井「ということがありまして…」

御坂「アンタも大変ねえ…こんなに生傷増やして…」

胸に巻いた包帯を取り替えつつ、御坂は後輩の体の傷を確認しながら呟いた。

白井「職務上仕方ありませんわ…覚悟の上です…」

御坂「そんなこと言って…アンタも女の子でしょ?…まったく…」

御坂「はい、これでいい?」

白井「ありがとうございます…お姉さま」

御坂「なに水臭いこと言ってんのよ。これぐらいお安い御用よ」

包帯と、湿布の交換を終え、御坂はねぎらうように白井の肩をぽんぽんと叩いた。

白井「しかし…今回ばかりは詠矢さんに助けられました」

白井「あの方が居なかったらどうなっていたことか…」

御坂「まあ…意外と頼りになるもんね…あの人…」

御坂「…」

御坂「黒子…さあ…」

白井「なんでしょう?」

御坂「最近…詠矢さんの話…多いわよね?」

白井「へっ…?」

白井「それは…まあ…三日と開けずに支部に来ていれば…」

白井「自然と話題も多くなりますわ」

御坂「…へえ…そう…なんだ…」

白井「…なんですの…その妙な勘ぐりは…」

白井「絶賛恋愛脳のお姉さまの基準で判断されては困りますわよ!?」

御坂「ああ…ゴメン…そういう意味じゃないんだけど…さ」

御坂「黒子から、そんな風に誰かを評価する話って」

御坂「あんまり聞いたことが無かったから…さ」

白井「…まあ…確かに…」

白井「一部高い能力をお持ちであることは…認めざるを得ませんが…」

御坂「普通の高校生のレベルは、逸脱しちゃってるわね…」

白井「…おねえさま…ずいぶんとあの方に肩入れしますのね…」

御坂「え?…あれ?…いや、そうかな?」

白井「お姉さまは上条さんのこともあって、印象は良いのかもしれませんけど…」

白井「わたくしからすれば、詠矢さんはお二人を結びつけた憎き人物なのです!」

白井「そうです、忘れていましたわ…最初からお姉さまに攻撃をしかけたり…」

白井「やはり、あの方相容れる人物ではございませんわ!」

御坂「…」

御坂「…でもさあ…。そこまで悪く言うことも無いと思わない?」

御坂「詠矢さんなりに、いろいろ頑張ってるみたいだし…

白井「…」

白井「まあ…それは…」

白井「(確かに…傀儡の事件も、あの方が居なければ解決出来たかどうか…)」

白井「(以前にも、わたくしとの約束を命がけで守ろうとしてくださいましたし…)」

白井「…」

御坂「…どしたの?黒子?」

白井「え?…いえ…なんでもありません…わ…」

御坂「うーん…じゃあさあ」

御坂「こういうのはどう?」

(ジャッジメント177支部)

詠矢「うい、こんちわー」

詠矢はいつもの調子で支部の扉をくぐる。

頬には傷を覆うテーピングがまだ残っていた。

初春「あ、こんにちわー」

白井「…こんにちわ」

詠矢「お、白井サンもう出てきてもいいのかい?」

白井「あの程度のケガでいつまでも休んでられませんわ」

詠矢「まあ、元気そうで何よりだけど…無茶せんようになー」

白井「わかっておりますわ…」

白井「それはそうと詠矢さん…お話がありますの…」

詠矢「え?俺に?…」

詠矢「(あー、こないだは出しゃばり過ぎたしなあ…約束も守らなかったし…)」

詠矢「(さすがにお小言かな?)」

詠矢「ん…と…なんだい?」

白井「詠矢さん…」

白井「ジャッジメント…やりません…こと?」

以上となります。
次回で完結となる予定です。
それではまた。

こんばんわ。
後編が書きあがりましたので投下します。

(ジャッジメント177支部)

詠矢「俺が…ジャッジメント?」

白井「そうですの」

詠矢「はあ…って…俺に…勤まるのかね?」

白井「…あくまでわたくしの判断ですが」

白井「詠矢さんの格闘術、捕縛術に関しては…」

白井「あらためて訓練が必要のないレベルですし」

白井「判断力や倫理観も十分にお持ちです」

白井「加えて、あなたの絶対反論(マジレス)…は」

白井「能力者の犯罪に対して、切り札となる可能性もあります」

詠矢「…ずいぶんと評価してもらってるのはうれしいけど…」

詠矢「俺が…ねえ…」

詠矢「っても、急に志願してもなれるもんなのかい?」

白井「もちろん、訓練と試験は必要となりますが…」

白井「詠矢さんなら問題なくクリアできると思います」

白井「いかがでしょう、我々は慢性的に人手不足です」

白井「あなたのような方に加わって頂ければ…」

白井「なんというか…その…」

詠矢「…ん?」

白井「たっ…頼もしい…かと…思いまして…」

初春「…」

初春「…(うわぁ、白井さん無理してるなあ…)」

詠矢「…」

詠矢「…そう…なんか…な?」

初春「えっと…ですね」

初春「…私もそう思います…よ?」

詠矢「…」

詠矢「…んー…」

珍しく声に出して悩むと、詠矢は後頭部を数回掻き毟る。

詠矢「…ちょっと時間くれないかな?」

詠矢「いろいろ考えること多くてさ…」

白井「わかりました。確かに急に決められるものではありませんね」

白井「決心が付くまで…しばらく待たせていただきますわ」

詠矢「ん…ゴメンな…」

白井「…いえ、それはかまいません」

白井「よいご返事を…期待していますわ」

詠矢「…んと…じゃあ…これ…」

どこからとも無く紙袋を取り出す。

詠矢「ロールケーキなんだけどさ…」

白井「いつもありがとうございます」

白井「お茶でも入れましょうか?」

(とあるコンビニ)

詠矢「…」

上条「…20円のお返しになりまーす…」

詠矢「…」

上条「ありがとうございましたー…」

詠矢「…」

詠矢「…あっ…ありがとうございました…」

上条「…」

上条「詠矢…品出し終わったのか?」

詠矢「ん…と…これで終わり…だ…」

詠矢は倉庫から持ってきた商品を並べ整頓する。

上条「…どした、詠矢?」

詠矢「いや、別にどうもしねえけど…?」

上条「なんか考え事か?」

詠矢「まあ…考えてるのは…いつものことだけどさ…」

上条「なんか…違うな…」

詠矢「何がだよ…」

上条「だってさあ、お前って考え事してるときって」

上条「どっか楽しそうなんだよな…」

上条「…でもさっきまでは違った。本気で悩んでる感じだったぜ?」

詠矢「…そっか…そうだったか…」

詠矢「上条サンなかなか鋭いねえ…」

上条「なんかあったのか?俺でよかったら相談に乗るぜ?」

上条「まあ…詠矢が考えてわからない事が」

上条「俺に答えられるとは思わねえけどさ…」

あくまで軽く、上条は自嘲気味に笑った。

詠矢「いやいや…そういう言葉は一番ありがたいさ」

詠矢「やっぱ、持つべきものは友達だねえ…」

詠矢「そこまで言ってもらったんじゃあ…黙ってるわけにもいかんね」

上条「…やっぱ、なにかあるんだな?」

詠矢「心配してもらうようなことじゃないんだけどさ…」

詠矢「ジャッジメントやってみないかって…誘われたんだよ」

上条「へえ…。誘われたって言うと…やっぱ白井か?」

詠矢「あ、うん」

上条「で、やってみるかどうか悩んでるってわけか…」

詠矢「まあ、そういうわけだな」

上条「ジャッジメント…か…」

上条「じゃあ、俺が思ったこと、ストレートに言ってみていいか?」

詠矢「お、貴重なご意見賜れますか?」

上条「んじゃ…俺は詠矢なら、やれると思う」

詠矢「…そうか…な?」

上条「お前とは会ってからあんまり経ってねえけどさ」

上条「今まで一緒にやってきたことを考えれば…素直にそう思えるぜ?」

詠矢「…」

詠矢「そっか…。そいつは褒めてもらってるてことで、いいのかな?」

上条「おいおい、そんなモン疑う余地無く褒めてるんだろうが」

上条「少なくとも、お前は自分の力がどうやったら人の役に立てるかって」

上条「いつも考えてるだろ…それくらいは俺にだってわかる」

上条「だからさ、そういうとこだけ考えてみても…」

上条「向いてるんじゃないか?ジャッジメント…」

詠矢「…そうか…ねえ…」

上条「あくまでこれは俺の意見…だけどな」

詠矢「そりゃま、決めるのは俺…だわな」

詠矢「わかってんだけどなあ…」

上条「…」

詠矢「お、お客さんだぜ。無駄話は終わりだ…」

上条「あ、いらっしゃいませー!!」

??「あ、いたいた、ここだったのねえ!」

詠矢「…!!」

上条「えっと…何か…?」

詠矢「母さん!!」

上条「…えっ!!」

??「寮の近くのコンビニで働いてるって聞いてたけど…」

??「結構数があるのよねえ、探しちゃったわよ、もう!」

上条「え…と…もしかして…詠矢…くん…のお母さんです…か?」

??「あらあら…こちら…もしかして上条さん?」

沙希「空希の母の、詠矢沙希(ヨメヤ サキ)と申します。いつも息子がお世話になって」

母と名乗った女性は、上条に向かって深々と頭を下げる。

上条「え…と…いや…こちらこそ…」

つられた上条も同じように頭を下げる。

詠矢「母さん!来るなら来るで先に連絡ぐらいしてくれよ!!」

沙希「なに言ってんのよ、こういうのはいきなり来るから面白いんじゃない!」

詠矢「って…もう…」

沙希「ねえ、この方、電話で何度かお聞きした上条さん?」

詠矢「まあ…そうだけど…」

沙希「まあまあ、始めましてぇ…」

上条「あ、どうも…です…」

沙希「空希の友達になってくださったそうで、ありがとうございます!」

沙希「もー、この子昔から小うるさい子でねえ、友達なんて出来たこと無かったんですけど」

詠矢「…母さん…やめてくれって…マジで…」

詠矢はたまらずレジの上に突っ伏す。

沙希「あらそうなの?」

上条「えっと…俺も…詠矢…くん…にはお世話になってまして…」

日本の母親がもつ独特の迫力に気圧される上条は、たどたどしく答える。

沙希「これはこれは、ご丁寧にどうも」

詠矢「…いいからさ…もう…」

詠矢「俺、もう少しでバイト終わりだからさ…どっかで待っててくれよ…」

詠矢「そう…今日はお仕事終わりなのね…じゃあ丁度いいわ」

沙希「…ねえ、空希。今日が何の日か覚えてる?」

詠矢「…」

詠矢「…忘れるわけ…ねえっしょ…」

沙希「じゃあ、行きましょうか」

詠矢「行くってどこにだよ…」

沙希「そりゃ決まってるじゃない」

沙希「お墓参りよ!」

(とある墓地)

詠矢「まったく…母さんは強引だねえ…」

沙希「何よもう、まさか嫌だったって言うの?」

詠矢「いや、そんなことはねえけどさ…」

詠矢「今年は帰らないつもりだったから…」

学園都市から電車を乗り継ぎ数時間、詠矢の実家に程近い場所に、その小さな墓地はあった。

沙希「あら、まさかお金の心配とかしてたの?」

詠矢「え?…そりゃまあ…新幹線とか結構かかるし…母さんだって楽じゃないだろうから…」

沙希「もう…相変わらず心配性ねえ」

沙希「大丈夫よ!学費だってそんなに高くないし。空希が出て行って逆に楽になってるぐらいよ?」

詠矢「なら…いいんだけど…さ」

沙希「はいはい、いいから。お墓洗ってあげて?」

詠矢「んー…」

たわしと雑巾を受け取ると、詠矢はバケツに張った水を墓石にかける。

それからしばらく、親子二人は言葉も少なく淡々と作業を進める。

墓石を洗い、花を供え、火を付けた線香を立てる。

独特な香りと共に、静かに煙が立ち上がる。

詠矢「…」

沙希「…」

二人はほぼ同じタイミングで手を合わせ、目を閉じた。

詠矢「…」

沙希「…」

拝み終わった後も、詠矢は静かに墓石を見つめている。

沙希「空希…?」

息子の横顔に何かを感じ取った母は、静かに語りかけた。

詠矢「…ん?」

沙希「お父さんのこと…まだ…割り切れてない?」

詠矢「そりゃ…ね…」

詠矢「警察官が殉職なんて…あることなんだろうけどさ」

詠矢「あの…死に方は…な…」

沙希「そうね…。私にとっても、父さん…流(ナガル)さんはとても大切な人だった…」

沙希「それを急に…あんな形で…だもんね…」

詠矢「悲しいとか辛いとか言うのはもうねえけどさ…」

詠矢「まだ、ちょっとね…」

沙希「…そう」

沙希「…」

沙希「ま、仕方ないわよね」

沙希「でもきっと空希なら、考えて考えて、その向こうに必ず答えを見つけてくれるわ!」

詠矢「こういうのって…考えてどうにかなるもんなのかね…」

沙希「あなたはずっとそうやってきたでしょ?だから大丈夫よ!」

詠矢「なーんか、信用されてんだか放任されてんだか…ねえ」

詠矢「でも…ここに来て…悩んでることの答えが一つ出たよ…」

沙希「あらそうなの?ならよかったじゃない」

詠矢「んじゃあ…早速帰って話しないとな」

沙希「…今日はもう遅いでしょ?泊まっていきなさい」

沙希「久しぶりに帰ってきたんだから…ゆっくりしていきなさいよ」

詠矢「そっか…そだな…そんなに慌てて帰ることもないか…」

沙希「そーそ、たまには母さんの言うことも聞いて頂戴!」

沙希「どうせロクなもの食べてないんでしょ?ついでだから…」

沙希「何か美味しいもの食べに行きましょ!!」

(学園都市 とある駅)

詠矢「さあて…戻ってきた…か」

実家で一晩過ごした詠矢は、翌日の午後に学園都市に戻っていた。

詠矢「んじゃ、早速連絡しねえとな…(ポチポチ)」

詠矢「……あ、白井サンかい?いきなり電話して悪いね」

詠矢「いやいや…うん…ちょっと話したいことあってさ…」

詠矢「今から会えないかな?…うん…あ、そうなんか…」

詠矢「んじゃ、そっちまで移動するよ…うん…」

詠矢「じゃあ後で…(ピ)」

詠矢「よっと…」

目的地が決定した詠矢は、淡々と歩き出した。

(とあるショッピングモール)

詠矢「いやいや、どーもこんちわ…」

白井「こんにちわ…何のご用ですの?」

詠矢「ちょっと話したいことがあってねえ…」

詠矢「しかし、外出中だったのか…もしかして仕事中かな?」

白井「いえ、今日は非番ですので…ちょっとショッピングですわ」

詠矢「へえ、一人でかい?」

白井「ええ、あいにく皆さんお忙しいようで…」

白井「お姉さまは言わずもがな…ですわね…」

詠矢「なるほどねえ…じゃあ、用事が済んでからでいいよ」

詠矢「せっかくの休み、邪魔しちゃ悪いしね」

白井「よろしいのですか?」

詠矢「ん、まあ別にそこまで急ぐ話でもねえし…」

詠矢「出来れば早く話してえなと思ってただけだからな」

詠矢「んじゃ、ごゆっくり…時間があれば後で電話してくれ…」

白井「…」

立ち去ろうとする詠矢の背中を、白井が見つめる。

白井「…」

白井「…!(あ)」

突然、白井の中に何かが閃いた。なにやら含みの有る笑顔が自然と浮かぶ。

白井「ちょっとお待ちください詠矢さん!」

詠矢「…ん?どしたね?」

白井「どうせお暇なのでしたら…」

白井「荷物持ちをお願いできませんこと?」

詠矢「そりゃーアレかい?買物に付き合えってこと…かい?」

白井「まあ、そういうことですわね」

詠矢「そりゃまあ…楽しそうだけどねえ…」

白井「詠矢さん、いろいろなことにご興味があるようですが」

白井「女の過酷な買物に付き合ってみるのも、よい経験になりましてよ?」

白井はふふんと鼻を鳴らすと、挑発するような笑顔を浮かべて見せた。

詠矢「…(あ、なんか悪い顔してる)」

詠矢「まあ…いいぜ…お役に立てるんなら…」

白井「では、決まりですわね、参りましょう」

詠矢「うい…」

白井「(フフフ、わたくしが今日どこに行こうとしてたか…)」

白井「(想像も出来ないでしょうね…)」

白井「(ちょっと最近やられっぱなしで面白くありませんでしたの)」

白井「(今日は、少々困らせてやりますわ…)」

白井「…ンフフフフ…」

詠矢「…」

詠矢「…(なんだかねえ)」

白井の背中から立ち上る黒いオーラに不安を感じつつも、その後を黙って付いていった。

(とあるランジェリーショップ)

詠矢「(うわ…なんだこの店)」

ショッピングモールのはずれに有るとある店は、妖艶な店構えのランジェリーショップだった。

白井「(驚いてますわね…しめしめ…)」

白井「さ、入りますわよ…」

詠矢「お…おう…」

詠矢「(おーう…店構えもすごいが売ってるモンもすげえなあ…)」

詠矢「(おわっ!これとか…こんなデザインでどこ隠そうっていうんだよ…)」

詠矢「白井サン…いつもこんな店来てるのか?」

白井「ええ、普通のお店では、わたくしの趣味に合う品があまり手に入りませんでしたが…」

白井「最近ここを見つけまして…重宝しておりますのよ?」

詠矢「あ…重宝って…そうなんか!?」

答える詠矢の声が思わず裏返る。

白井「そうですわよ?…ほらほら…詠矢さん、こういうのいかがでしょう?」

詠矢「って…それ殆ど紐じゃ…」

ただひたすら動揺する詠矢。その姿を白井は満足げに見る。

白井「(フフフ…やはりこの手のことには免疫が無いご様子…)」

白井「(もう少しからかって差し上げましょうか…)」

白井「こっちなかなかいいですわねえ…」

白井「いかがですか詠矢さん?」

詠矢「いや、そう聞かれてもだな…えっと…」

詠矢「…ん…?」

白井「どうしましたの?」

詠矢「…白井サン、こういうの着るんだよな…?」

白井「ええ…もちろんですわよ?」

詠矢「…」

詠矢「…ダメだな…」

白井「はい?」

詠矢「似合わねえよ…」

白井「…え?」

詠矢「白井サン、体細いんだからさ、こんな露出度の高いもの着ると」

詠矢「下着だけ浮いちまうぞ」

白井「…な…」

白井「なんですの!人の趣味にケチつけないで頂けますの!?」

詠矢「いや、好き嫌いとは別にだな、似合う似合わないっていう判断基準は明確に有る」

白井「…え?あ、いや…でも動きやすさと掃き心地重視ですから…」

詠矢「あー、違うぞそれ。布地が少ないほど動きやすいと思ってるのは完全な誤解だ」

詠矢「最近の下着は機能性が高くてなあ」

詠矢「体型をサポートして、動きを補助してくれるものが沢山ある」

詠矢「特に白井サンは職務上動き回ることが多いし」

詠矢「こんなネタ重視のもの身に付けてちゃダメだ」

詠矢「…んー」

白井「…」

白井「あの…詠矢さん?」

一人考え込む詠矢。白井はおずおずと声をかけた。

詠矢「確か、その手の店がこのモールにあったはずだ…」

白井「…あの…聞いてます?」

詠矢「よし、見に行ってみよう、確か(ガシッ)こっちだ!」

白井「え?…って…あわわわぁ!」

詠矢は白井の手首を掴むと、そのまま腕を引いて移動を始める。

白井は転移で逃げることも忘れ、引きずられるように連れて行かれてしまった。

(とある学生寮 上条の自室)

上条「それじゃあ、詠矢をジャッジメントに勧めたっての、美琴だったのか?」

御坂「そそ、黒子に言ってみたの」

テーブルの上に並べられた惣菜に箸を伸ばしつつ、上条は言った。

上条「はー…、美琴からそんな話を出してたなんてなあ」

御坂「そう?私は向いてると思うけどなあ…」

上条「そりゃ俺だってそう思うけどな、ちょっと意外だったぜ?」

御坂「んー…ちょっと…心配なことがあってね…」

上条「…心配って、何だよ」

御坂「黒子のことよ…」

御坂「あの子、ずっとジャッジメントの仕事と、私のことばっかりだったから…」

御坂「私が当麻と付き合いだしてから、ちょっと元気なかったのよね…」

上条「そりゃ、申し訳ないつーかなんていうか…」

御坂「だから、喧嘩友達でも出来ればなあ…ってね?」

上条「喧嘩友達かぁ?…まあ、確かにあんまり仲良さそうじゃないけどな。あの二人」

御坂「ううん、それは多分違う…」

御坂「言い争えるってことは、相手のことを認めてるってことだもん」

上条「そんなもんなんか…ねえ」

御坂「ま、当麻にはいくら説明してもわからないだろうけどー」

上条「なんだよ、その手の話になるといつもその結論ですな」

御坂「だってそうじゃない…まあいいけどさ」

御坂「とにかくあのコ、しっかりしてるようで危なっかしいトコもあるから」

御坂「詠矢さんみたいな人が支えてくれればいいかなって」

上条「確かに、アイツなら力にはなってくれるだろうな…」

上条「ってもよ、危なっかしいって言えば美琴も同じだぜ?」

御坂「…いーのよ。私には当麻がいてくれるから」

上条「お、そっちに落としますか御坂センセー」

御坂「ふふっ…」

微笑を交わす二人。食事は静かに進んでいった。

(とあるショッピングモール フードコート)

詠矢「…まことに申し訳ございません…」

小さなテーブルを挟んで差し向かいに座る二人。

詠矢はそのテーブルに手をつき、膝を擦り付ける勢いで頭を下げていた。

白井「まったく…詠矢さん思ったより強引ですのね…」

白井は膝元に置いた紙の手さげ袋に目を落としつつ言った。

詠矢「女の子に下着を勧めて買わせるとか、我に返ってみるとなんと大それたことを…」

白井「もういいですわ…詠矢さん…。最後はちゃんと納得して決めましたし」

白井「店員の方の説明を聞くうちに、わたくしも少し興味がわきましたわ」

詠矢「いやほんとゴメン。論証に入るとつい熱くなっちまって…」

白井「あら、これも論証ですの?」

詠矢「問題に対して思考し、対策を考えて結論を出す。同じことだよ」

許しを得たと解釈したのか、詠矢は静かに頭を上げた。

詠矢「とにかく、気に入らなかったら弁償するからさ」

白井「お気になさらず…下着の一つや二つ着こなしてみますわ」

詠矢「ん…、そういってくれると気が楽だね」

白井「…」

詠矢「…」

会話が終わった後に、なんとも言いがたい間が発生する。

詠矢「…えっとな?」

口火を切ったのは詠矢の方だった。

白井「なんでしょう?」

詠矢「用事も終わったみたいだし、話…いいかな?」

白井「ええ、よろしいですわ…」

詠矢「こないだの、ジャッジメットやってみないかって話だけどさ」

詠矢「申し訳ないけど、お断りさせてもらうわ…」

白井「…」

白井「そう…ですの…」

白井「残念ですわ…。引き受けていただけるものだと、思っておりました…」

詠矢「ゴメンな?」

詠矢「理由…説明しといたほうが、いいかな?」

白井「…差し支えなければ、お聞きしたいですわ」

詠矢「俺の父さんがさ、警察官だったんだ」

白井「だった…過去形ですの?」

詠矢「ん、まあ、殉職してるんだよ」

白井「…!!、そう…でしたの…」

詠矢「白井サンさあ、何年か前に、麻薬中毒の暴力団員が、銃を持って民家に立てこもった事件って覚えてるかな?」

白井「ええ…たしかあの時、対応した警官が…え!?…まさか?」

詠矢「そう、そのとき撃たれて死んだのが俺の父さんなんだ」

白井「…」

詠矢「父さんは厳格で正義感の強い人だった」

詠矢「最後の最後まで、警察官としての正しさを貫いて」

詠矢「ヤク中のヤクザを安全に確保しようとして…殺された」

詠矢「結構それから大変でさ、心無い奴からいろいろ言われたよ」

詠矢「臆病者とか、腰抜けだとか…なんで先に撃たなかったんだとかさ」

詠矢「それでちょっと荒れてた時期もあったんだけどね…」

白井「…」

詠矢「まあいいや、そんな話は」

詠矢「でも俺は父さんのやったことは間違っていないと今でも思う」

詠矢「現行の法規の中で、最大限正しい判断だったと思う」

詠矢「でも…もし、相手の安全を省みなかったら、『正しい』判断をしなかったら」

詠矢「父さんは死なずに済んだんじゃないかと思うと…ね」

白井「…」

詠矢「俺の悪い癖で、いろいろ考えすぎちまってさ」

詠矢「そういうことに整理が付いてない人間が、ジャッジメントみなたいな公的な機関で」

詠矢「働いちゃいけないと思うんだよな…」

詠矢「…ってまあ、そういうわけなんだ」

白井「…」

白井「わかりました」

白井「そのようなご事情がおありなら…仕方ありませんわね…」

白井「わたくしこそ、詠矢さんの心情も考えず」

白井「勝手なことを言いまして…申し訳ありませんでした…」

詠矢「いやいや、謝らないでくれよ!そんなことわかるわけないんだからさ!」

白井「いえ…でも…」

詠矢「こっちこそご期待に添えなくて申し訳ない!」

白井「…」

白井「…詠矢さん」

詠矢「…ん?」

白井「詠矢さんのお父様の判断、わたくしも正しかったと思います」

白井「ですが、わたくしも同じような状況になった場合、どのような判断が出来るかわかりません」

白井「同じく法を守るものとして、この話は深く心に刻み付けておきたいと思います」

詠矢「そっか…なんかありがとな?」

詠矢「父さんを認めてくれる人が増えて、ちょっとうれしいよ」

白井「恐縮…ですわね…」

詠矢「んじゃあ…話は終わりだね」

詠矢「俺は失礼するよ」

詠矢は静かに席を立つ。

詠矢「んじゃ、またなー」

白井「ええ…また…」

遠のいていく詠矢の背中を、白井は静かに見つめていた。

(常盤台中学学生寮 御坂と白井の自室)

白井「…ふむ」

自室に一人の白井は、買って来たばかりの下着をなんとなく身に着けてみた。

白井「試着のときにも思いましたが…確かに動きやすいですわね」

白井「肌と衣服が衣服が触れ合うことも少ないですし…着心地も悪くありませんわ…」

四肢を軽く動かし、白井は着心地を確かめる。

御坂「ただいまー」

突然扉が開かれる。

白井「お、お姉さま…おかえりなさいまし…」

枕を引っつかんで慌てて体を隠す白井。

御坂「あら…どうしたのその下着」

白井「えっ…いえ…ちょっと…着心地を…」

御坂「ちょっと見せてよ!」

枕を剥ぎ取る御坂。白井にはもう隠す手段はない。

白井「…」

御坂「いいじゃない、ちょっと地味だけど落ち着いた感じで」

御坂「似合ってるわよ?」

白井「あ、ありがとうございます…」

御坂「でもどうしたの?いつものと全然違うじゃない?」

白井「えと…いえ…たまにはちょっと…変化球をと…」

御坂「アンタはいつも着てるのがデッドボール並の変化球でしょうが…」

御坂「たまにはそういうストレートなものも着なさいって…」

白井「お…お姉さまには言われたくありませんわ!!」

白井「お先にお風呂失礼します!」

御坂を押しのけ、白井は逃げるように脱衣場に入ってしまった。

御坂「…なに慌ててるんだか」

御坂「ま、いっか。なんか元気出たみたいだし…」

愛すべき後輩の様子に、御坂は素直に微笑む。

それぞれの思いを包み込みながら、学園都市の夜は静かに更けていった。

以上となります。
この話はこれで完結です。
ありがとうございました。

こんばんわ、1です。
遅くなってしまいましたが、短編が書きあがりました。
今回も前後編となります。まずは後編を投下します。
それでは始めます。

(学園都市 とある場所)

??「…ふむ」

??「『鳴子』が切れてるねえ」

夕闇迫る学園都市の路地裏。人通りのほぼ無いこの場所に一人の人物が立っていた。

傍らには、女性を一人伴っている。

??「…」

その人物は虚空に指を泳がせ、何かを確認する。

??「そう時間は経ってない…か…」

??「今から追えば間に合うかもしれないな」

??「恐らく、今この事態に気づいてるのは僕だけだろう」

??「対処する必要があるね」

??「じゃあ、行こうか」

促されると、傍に立つ女性は小さくうなづく。

二人は、何処かへと立ち去った。

(ジャッジメント177支部)

詠矢「じゃあ、やっぱり魔術に対して防御策をとるってのは無理か」

白井「その点は、我々の力ではどうしようもありませんわ」

詠矢「やっぱりそうなるか…」

初春「どう対処すべきか、見当もつきませんし…」

詠矢「んー…、わかってたこととはいえ、無力感あるなあ」

佐天「…」

支部の中には4人。そのうち3人はテーブルを囲み、過去の資料を見ながら議論を続けていた。

一人離れて座る佐天は、黙ってその様子を横目で眺めている。

白井「確かにおっしゃるとおりですが…」

詠矢「なんともならんのも事実だわな」

詠矢「このことに関しては、これ以上考えても無駄か…」

初春「ちょっと悔しい…ですけどね」

佐天「…」

佐天は、持ち込んだペットボトルの紅茶を少し喉に通した。

詠矢「…ん」

詠矢「あ、そうだ、今日はワッフルにしてみたんだけどさ…」

詠矢はどっからともなく紙袋を取り出す。

初春「わあ!ありがとうございます!」

白井「いつも申し訳ありません…。頂きますわ」

詠矢「佐天サンもどうだい?」

佐天「あ、頂きまーす!」

腰を上げ、テーブルに並べられたワッフルを手に取る佐天。

早速口に運ぶ。

佐天「わ、おいしいですね!」

詠矢「おう、そうかい。そいつはよかった」

初春「いただきまーす!(モグ)」

初春「詠矢さんのお菓子っていつも美味しいですけど…」

初春「どこで買ってるんですか?」

詠矢「ん?いや、ネットで調べて買いに行ってるよ」

詠矢「俺、食べ物の味とかあんまりわからんし…」

佐天「へー、そうなんですか」

支部の雰囲気が和み始めたころ、突如扉が開いた。

固法「ただいま…」

初春「あ、おかえりなさい!」

白井「パトロールご苦労様です。固法先輩」

固法「ふう、今日は特に何も無かったわね…」

詠矢「ご苦労さんっす、固法サン」

固法「あら、詠矢君、こんにちわ」

詠矢「地味に久しぶり…かな?」

固法「そうね…偶然だけど、行き違いが多いわね…」

固法「あ、そういえば…詠矢君、やっぱりジャッジメントはやらないの?」

詠矢「あー、いや、それは正式にお断りしました」

佐天「…(ジャッジメント…?詠矢さんが?)」

詠矢「お誘い頂いたのはありがたいんだけどねえ」

固法「そう…それは残念だわ」

固法「仲間が増えると思って期待してたのよ?」

詠矢「へ?仲間って…この支部に配属になるんかい?」

詠矢は回答を促すように白井の方を見る。

白井「ご覧の通りこの支部には殿方の力が足りませんので…」

白井「詠矢さんを推薦するときに、この部署への配属を嘆願するつもりでしたわ」

詠矢「へー…そうなんだ…」

詠矢「だったら…考え直してみても…いいかねえ」

白井「…ちょっと詠矢さん!どういうことですのそれは!」

詠矢「あ、いやいや、冗談だよ冗談。うん、男に二言は無いって」

固法「あらあら、気が変わったらいつでもどうぞ。歓迎するわよ?」

佐天「…」

詠矢「あーそうだそうだ、思い出した」

詠矢「ちょっと相談したことがあったんだよ。固法さんも戻ってきたし丁度いいや」

白井「ごまかしてませんこと?」

詠矢「違う違う、マジの話だって」

白井「…なんですの?」

詠矢「こないだ捕まえた奴もそうだけどさ」

詠矢「スキルアウトっても、無能力者ばっかりじゃないんだよな?」

固法「そうね。能力者の中にも、この学園のあり方に反感を持つ人はいるわ」

白井「中には、ただ暴れたいだけの不心得ものもおりますが…」

詠矢「んー、やっぱそうか…」

詠矢「ちょっと考えたんだけどさ、そういう奴らのリストアップって出来ないのかな?」

白井「確かに…過去の犯罪履歴を見れば、有る程度は絞り込めるかもしれませんね」

初春「それを、バンクの情報と照合すれば…」

初春「時間はかかるかもしれませんけど、出来るかもしれませんね」

詠矢「事前に相手の能力がわかってればさ」

詠矢「あんな低レベルの能力者に、白井サンが遅れを取ることもないわけっしょ?」

詠矢「だったらさ、リスト作って、有る程度頭に入れとけばいいんじゃねえかって…ね」

白井「なるほど…」

白井「本来は、バンクのデータは膨大すぎてとても整理しきれるものではありませんが…」

初春「私が、なんとかしてみせます!」

佐天「…」

佐天は再びテーブルを離れ、一人離れた椅子に腰を下ろす。

詠矢「お、いい返事だねえ…」

詠矢「まあ、通常業務の合間に、コツコツやればいいんじゃないのかな?」

その後しばらく、テーブルを中心に議論は続く。

流れてくる会話が、佐天の右耳から左耳に流れていく。

佐天「…」

佐天は、ペットボトルを勢い良くあおると、残った紅茶を流し込んだ。

佐天「よしっ」

空になったボトルを鞄にしまうと、佐天はおもむろに立ち上がった。

佐天「えっと、お先に失礼しますね?」

初春「あ、帰っちゃうんですか?」

佐天「うん、また来るよ」

白井「ええ、ではまた…」

固法「またね?」

詠矢「うーいっす」

佐天「それじゃまたー!」

最後にいつもの調子で声を上げると、佐天は部屋を後にした。

初春「どうしたんだろ、なにか予定でもあったのかな…」

詠矢「…」

詠矢「…んー」

詠矢は、一人じっと、彼女が出て行った扉を見つめる。

白井「どうかなさいましたか?」

詠矢「ん?いや…ねえ…」

(とある公園)

佐天「(やだなあ、なんか逃げてきたみたいじゃない)」

いつもの公園、いつものブランコ。佐天は一人揺られていた。

佐天「(でも、なんか居づらかったのは事実かな)」

佐天「(ああゆう話になると、入り込めないもんね)」

佐天「(まあ、しょうがないか。ジャッジメントじゃないんだし)」

佐天「…」

佐天「(それだったら、詠矢さんもそうだよね)」

佐天「…んー」

特に力を入れたわけでもなく、ブランコが軽く前後に揺れる。

佐天「(なーんか、らしくないなあ)」

佐天「(なに考え込んじゃってるんだろ)」

佐天「…」

視線は、自然と地面に向かう。

詠矢「よう」

佐天「えっ!」

突然、聞き覚えの有る声をかけられ、佐天は勢いよく顔を上げた。

詠矢「どしたね?」

佐天「詠矢さん…」

詠矢「なにか考え事かい?」

佐天「えっ!?…まあ、そうですね…」

佐天「詠矢さん程じゃ、ないですけど…はは」

佐天「でも、どうしてここに?」

詠矢「ん?前に会ったのもここだったから」

詠矢「また立ち寄るんじゃないかと思ってさ」

佐天「それは、バッチリ読まれちゃってますね」

詠矢「大当たりだねえ。まあ、探し回らずに済んでよかったぜ」

佐天「え?じゃあ、私を探して…」

詠矢「実はさ、重大なことを思い出して」

佐天「重大…ですか?」

詠矢「うん、ほら、ジェラート、約束してたっしょ?」

詠矢「時間あるなら、いまからどうだい?」

詠矢「忘れてたお詫びに、ご馳走させてもらうぜ」

佐天「…あっ」

佐天「…そうでした…そうですよ!」

佐天「詠矢さん、あれから全然連絡くれないじゃないですか!」

詠矢「いやいやー、これがまた元ぼっちとしてだね」

詠矢「女の子をお誘いするってのには、勇気がいるわけなんですよ」

佐天「なんですかそれは…むー」

詠矢「まあまあ、過去の件は水に流してもらってだな、どうだい?」

佐天「行きます!とーぜんですよ!」

佐天はブランコから飛び降りる。

佐天「今日は力の限り食べたい気分ですから、覚悟しといてください!」

詠矢「さっきワッフル食ったばっかりなのにいいのかい?」

佐天「いいんです。ジェラートは別腹です!」

詠矢「なんだよそれ、お菓子のジャンルごとに腹が分かれてんのかい」

詠矢「(ま、元気出たみたいで良かった)」

苦笑しつつも、詠矢は先行する佐天の後を付いていった。

(とある店)

詠矢「それほんとに食うのかい?」

佐天「もちろんですよ!これぐらい軽いです!」

佐天の目の前には、積み上げられたジェラートの山が鎮座していた。

詠矢「まあ、食えるんならいいけどさ…太るぜー」

佐天「う…。え、でも、いつもこんなに食べてるわけじゃないですし」

佐天「ほら、育ち盛りですし…大丈夫ですよ!!」

詠矢「そっか?」

詠矢「(そういやあ、まだ中一なんだよなー)」

なんとなく、詠矢の目線が佐天の顔に注がれる。

佐天「…?どうかしましたか?」

詠矢「いや…別に…」

詠矢「さて、溶けないうちに食おうぜ」

佐天「はーい!」

元気な声とともに、佐天はジェラートを景気良く口に運んでいく。

詠矢も、カップの中身にスプーンをつきたて、口に含んだ。

佐天「…(ムグムグ)」

詠矢「…(ムグ)」

佐天「んー、やっぱり美味しいですねえ…」

詠矢「相変わらず美味いな」

佐天「…(ムグムグ)」

詠矢「…(ムグ)」

佐天「そうだ、詠矢さん」

詠矢「ん?なんだい?」

佐天「さっき聞いたんですけど、ジャッジメントやるつもりだったんですか?」

詠矢「いや、やってみないかって誘われてたんだよ。白井サンに」

佐天「へっ、詠矢さんの方が誘われてたんですか?」

詠矢「まあ、そうだね」

佐天「えー、じゃあ…どうして断っちゃったんですか?」

佐天「詠矢さんがジャッジメットって…バッチリじゃないですか!?」

詠矢「なんか上条サンにもおんなじこと言われたなあ」

詠矢「まあ、なんちゅうかさ」

詠矢「…」

佐天「…?」

詠矢「今のバイト時間削ると、生活できねえからなあ」

佐天「あ、そうですね。ジャッジメントに入ると、使える時間が減っちゃっいますもんね…」

詠矢「生活費がバイト頼みだしね。まあしょうがないよ」

佐天「なるほどなるほど…。あれ?でも生活費って…仕送りとかはもらってないんですか…?」

詠矢「ん、ないよ。さすがに学費は払ってもらってるけどね」

詠矢「実家もそんなに楽じゃなくてさ。あんまり甘えられなくてねえ」

佐天「…それは…大変…ですね」

詠矢「まあ、その分気楽だけどね…」

佐天「そうなんですか…」

佐天「んー…(ムグ)」

佐天「(ムグムグ)」

なにやら考え始めると、佐天は食事を再開する。

佐天「(やっぱり、私って詠矢さんのこと何も知らないんだよなあ…)」

詠矢「(ムグ)」

佐天「…(ムグムグ」

佐天「…(よしっ!)」

佐天「詠矢さん!」

詠矢「ん?なんでい」

佐天「これから、時間ありますか?」

詠矢「まあ、今日はバイトもねえし…ヒマだぜ?」

佐天「じゃあ…ですね」

佐天「これからどっか、遊びに行きませんか?」

詠矢「…」

詠矢「…はい?」

詠矢「遊びにって、俺と?」

佐天「他に誰がいるんですか…」

詠矢「…」

詠矢「あー、うん、ゴメン、そうだよな」

詠矢「いやもうそりゃ、行こう。断る理由なんぞ微塵も無いし」

佐天「ふふっ、ありがとうございます!」

詠矢「いやいや、お礼言われる話じゃ…」

佐天「じゃあ、早くこれ食べちゃいましょうか」

佐天はあらためて、ジェラートにスプーンをつき立てた。

(ジャッジメント177支部)

初春「…(カタカタ)」

白井「…」

固法「…」

監視カメラの画像チェック、報告書の作成、資料のチェック。

3人はそれぞれの業務についていた。

初春「…(カタカタ)」

初春「…(カタカタ)…?」

初春「…あれ?」

白井「どうかしましたの、初春?」

初春「この通り…人が居ませんね…」

白井「通りに人が居ないことなど普通ではありませんの?」

初春「この道はそんなに広くはないんですけど」

初春「いつもは結構人通りがあるんです…」

固法「…今の時間だと、まだ下校する人がいるはずだから…」

固法「誰も居ないっていうのは少しおかしいわね」

白井「なるほど…そういことですの。よく気づきましたわね?」

初春「へへ…、最近カメラの監視することが多くて、ちょっと覚えちゃいました…」

白井「ですが…確かめるほどのことでしょうか…」

固法「気にはなるわね…」

固法「調べるだけなら、行っておいた方がいいんじゃないかしら?」

白井「確かに、嫌な予感はしますわね」

白井の脳裏にはなぜか、先ほどまで話していた『魔術』の二文字が浮かんでいた。

白井「では、わたくしが参ります」

初春「じゃあ、地図出しますね(カタカタ)」

白井「…把握できましたわ…では早速(シュン)」

その姿は即座に掻き消える。

(とあるゲームセンター)

佐天「やっぱりここが定番ですね」

詠矢「うん。異論はねえな」

突然遊びに行くとになったわけだが、あてのない二人は、無難な場所の前に立っていた。

詠矢「佐天サンは良く来るのかい?」

佐天「ええ。御坂さんとかと一緒に。コインを補給するとかなんとかで」

詠矢「あー、それ窃盗だぜ?」

詠矢「だいたいさあ、レールガンの弾にするんだったらコインみたいな薄っぺらいものより」

詠矢「パチンコ玉みたいな球形のもののほうが弾道が安定するはずなんだんだけどなあ」

佐天「…詠矢さん、どーしても考えるほうに行っちゃうんですね」

詠矢「…あ」

詠矢「ゴメンゴメン。じゃあ入るかね」

特に憤慨した様子もなく、くすくす笑いながら佐天は詠矢の後を付いていく。

詠矢「ああ、そういえばここ、前にも来たなあ」

佐天「あれ?そうなんですか?」

詠矢「通りすがりに入ったっけかな…そんとき偶然初春サンと会ってねえ…」

佐天「そういえば、そんな話を初春がしてたような」

詠矢「まあ、他にもいろいろとあったんだけどね…」

佐天「いろいろですか」

詠矢「うん、いろいろね」

言葉を濁す詠矢を横目で見つつ、佐天は周囲に並ぶクレーンゲームの景品のチェックを始めた。

佐天「えーっと…」

詠矢「へえ…そういうのチェックしてるんだ」

佐天「ええ。入れ替わりが激しいですし、意外とかわいいものがあったり、侮れないんですよ」

詠矢「そうなんか。…なるほど」

詠矢「昔はぬいぐるみばっかりだったけど、最近はいろいろ釣れるんだねえ」

周囲の筐体を見回しつつ、詠矢は一人つぶやいた。

佐天「あ、これいい、かわいい!!」

詠矢「おう?」

佐天の声に反射的に振り返る詠矢。

詠矢「んーっと、これ、髪留め…バレッタってやつか」

筐体の中、アクリルの壁の向こうに、彼女の視線が注がれている景品はすぐにわかった。

リボンの形を模した樹脂製の髪留め。鮮やかな青色だ。

佐天「ねえねえ詠矢さん、いいと思いません!?」

詠矢「そうさなあ、デザインはセンスがねえもんでよくわかんねえけど」

詠矢「色はいいな。綺麗な青だね。ターコイズブルーってやつか…」

佐天「では、早速チャレンジ…」

サイフから百円玉を取り出そうとする佐天。

詠矢は、じっと筐体を見つめ少し考えると、佐天を制した。

詠矢「…ダメだな」

佐天「えっ…」

詠矢「取れないぜ、多分」

佐天「そ…そうなんですか?」

詠矢「アームの先端が合ってない。スプリングが抜いてあるんじゃないかな」

詠矢「先端の爪も水平になってない。恐らく引っ掛けても滑り落ちる」

詠矢「それに、小物を掴むにしてはそもそもアームがでかすぎる」

佐天「…」

佐天「詠矢さん…何でそんなことまで知ってるんですか」

詠矢「ん?いや、しばらく凝ってた時期があってね」

佐天「あったんですか…」

詠矢「あったんだよ」

詠矢「そうさなあ…。アレなんかどうだ?」

詠矢は壁際においてある別の台を指差した。

佐天「あれって…引っ掛けて取るやつですね」

詠矢「そうそう。ぶら下がってる紐を爪で引き摺り下ろすタイプだ」

詠矢「アレなら目押しが利くから頑張れば取れるぜ」

佐天「あ、丁度同じのがありますね」

詠矢「よし、んじゃ久しぶりに頑張ってみるか!」

詠矢はおもむろにコインを投じる。

佐天「頑張ってください!」

詠矢「よ…、と…」

久しぶりのせいもあってか、操作には少々精彩を欠き何度が的を外すものの、800円ほど使ったところで

見事目的の髪留めを落とすことに成功した。

佐天「わ!やりました!」

詠矢「こりゃ買ったほうが安いレベルだねえ」

詠矢は台から戦利品を取り出すと、そのまま佐天に手渡した。

詠矢「ほい」

佐天「ありがとうございます!…って…あ、お金…」

詠矢「ん?あ、いいんだよ。俺は取るのが好きで景品は要らない人なんだ」

佐天「そうなんですか?…じゃあ…頂いちゃいます」

詠矢「うい」

佐天「えっと…じゃあ、付けてみていいですか?」

詠矢「まあ、俺に了解取るまでも無く…いんじゃね?」

佐天「…ではでは」

佐天は両手でで髪を束ね、まとめて髪留めをはさもうとする。

が、上手くいかない。

佐天「んしょ…やっぱり鏡が無いと…あっ」

詠矢「っと!?」

髪留めを落としかける佐天。詠矢は思わず手が伸びるが、それをすぐに引っ込める。

詠矢「おっと…っと」

佐天「あれ?…どうしました?」

詠矢「いや、思わず手が出そうになってね…」

佐天「…?それが何か、いけない…ですか?」

詠矢「女の子の髪に、不用意に触るもんじゃないっしょ」

佐天「…」

佐天「大丈夫ですよお。それぐらい気にしなくても…」

詠矢「そうなんかな?」

佐天「じゃあ逆に、手伝ってもらえますか?」

佐天「髪をまとめたところを、留めてもらえます?」

詠矢「お、おう…」

佐天は背中を向け、自らの髪を束ねる。

詠矢はおずおずと手を伸ばし、髪留めをはさんだ。

詠矢「これでいいかな?」

佐天「はい!」

佐天は髪をなびかせながら振り返る。

佐天「どうですか?」

詠矢「…」

詠矢「…うん、似合うよ…すごく」

佐天「ほんとですか?うれしいです!」

詠矢「うん…いいよ…うん」

しばし、佐天の姿をぼおっと眺める詠矢。

佐天「…詠矢さん…どうかしました?」

詠矢「ん?あ、いや、なんでも…」

佐天「じゃあ、次は…アレやりましょうか!」

詠矢「え、ちょっと…アレは…」

歩き出した佐天の後を、苦笑しながら詠矢はついていく。

彼女が向かったのは、『神拳』の対戦台だった。

(とある学生寮)

佐天「今日はありがとうございました。楽しかったです!」

佐天「また送ってもらっちゃって…」

詠矢「いやいや、そんな礼言われることじゃねえしさ」

詠矢「さすがにここへの道も覚えたしねえ」

佐天「ふふっ、確かに、今日は間違わないで来れましたねえ」

詠矢「ん、まあ、道も覚えたことだし。またな」

佐天「はあい。じゃあ、またどこか行きましょうね?」

詠矢「うい。んじゃな」

微笑みつつ見送ってくれる佐天に別れを告げると詠矢は歩き出す。

詠矢「…」

背中を丸め、いつものごとくなにやら考えながら詠矢は歩く。

詠矢「んー…」

詠矢「(女の子の首筋ってのは、キレイなもんだねえ)」

詠矢「(なんか、目に焼き付いちまってるな)」

詠矢「(俺って、フェチの気でもあったのかね?)」

詠矢「…」

詠矢「(参ったねどーも…どうしたもんかね)」

詠矢「…」

詠矢「…あれ?」

詠矢「…どこだここ?」

詠矢「考えごとしながら歩いてたから迷ったか?」

詠矢「…いや…違う…そんなレベルじゃねえ」

詠矢「いくらなんでもこんな見たことも無い場所に…」

詠矢「くそっ、誰も居ねえ。この通りには俺一人だ」

詠矢「明らかにおかしい。何が起こってるんだ?」

詠矢「ぐっ、頭が…考えがまとまらねえ」

頭が重い、思考が乱れる。詠矢は額に手を当てて奥歯をかみ締める。

??「…」

どこから現れたのか、詠矢の視界に全身をコートとフードで覆った人物が現れた。

詠矢「どちらさんで?」

??「名乗る必用は無い」

詠矢「すごい聞きたいんですけどね」

詠矢「この状況を作り出してるのはそちらさんですかい?」

??「知る必要はない」

??「同行して頂こう」

詠矢「そういうのは一般的に誘拐って言いませんか?」

??「これ以上の会話は必要ない」

??「…」

その人物は、コートの隙間から両手を出すと、なにやらつぶやき始める。

詠矢「(なんだありゃ、詠唱ってヤツか…)」

詠矢「(ってことは、魔術師!!)」

重い頭を振りきり、詠矢は走り出す。

詠矢「(魔術師相手なら、絶対反論の効果は期待できねえ)」

詠矢「(ここは、先手必勝だ!)」

詠唱を続ける魔術師に向けて、詠矢は一気に距離を詰めて拳を振るおうとする。

詠矢「…!!!」

突進していた詠矢の体が、突然後ろに引っ張られる。

詠矢「ぐがっ!!(なんんだこれは!)」

詠矢の首には、ロープのようなものが巻きついていた。

突如として詠矢の背後に現れた人物が、それを操っていた。

魔術師A「油断したな」

正面に対峙していた人物がフードの奥で笑う。

魔術師B「一人で行動してると思ったか?」

詠矢「…!!(くっそ、伏兵かよ!)」

詠矢「あんたら…いったい、何の…んっ!!」

巻きついたロープはじわじわと詠矢の首を締め上げてくる。

魔術師A「[ピーーー]なよ」

魔術師B「ああ、わかっている」

詠矢「(コイツら、何の目的で…っ)」

詠矢「(やべえ!意識が…)」

首を締め上げられ、詠矢は意識を手放そうとしていた、刹那。

??「鳳雷鷹!!」

どこかで誰かが叫んだ。

突然、巨大な手裏剣のような飛来物が、詠矢の首にかかっていたロープを切断し、地面に突き立った。

魔術師B「なにっ!」

詠矢「が…ゲホッ!!」

呼吸が戻ってくる。詠矢は激しく咳き込んだ。

女性「…」

赤いスーツを着た女性が詠矢の傍に降り立った。

その人物は無言のまま、地面に突き立っていた飛来物を引き抜いて、静かに構える。

魔術師A「なんだ貴様は!」

??「その子は『鳳雷鷹』って言うんだ、よろしくね」

名前の解説は別方向から来た。それは、詠矢にとって聞き覚えの有る声だった。

思わず詠矢は振り返る。

詠矢「あ、あんたは…真々田サン!!」

真々田「やあやあ、久しぶりだね」

真々田「魔術の痕跡を追ってきんだが、まさか君に合えるとはねえ」

魔術師A「貴様…何故ここに来れた!」

真々田「はっ、あんな雑な結界を解除することなんて造作も無い」

真々田「まさに朝飯前といったところだ!」

魔術師A「な、なんだと!!」

詠矢「真々田サン…(ゲホッ)」

真々田「詳しい説明は後にしよう」

真々田「なにやら危機的な状況にあるようだね」

真々田「君には恩が有る、全力で助力させてもらうよ」

真々田「『味方になったら弱体化』の法則は僕には通用しない」

真々田「安心して任せてくれたまえ」

長いコートを翻すと、真々田は敵となる魔術師に対峙した。

以上となります。
それではまた。

すいません、禁止ワードに引っかかってるのに今気づきました。
>>932
の魔術師Aの台詞は「殺すなよ」です。

申し訳ありませんでした。

こんばんわ、1です
書きあがりましたが、長くなりそうなので中篇とさせてください。
レス節約のため、長文で投下します。
では、始めさせて頂きます。

(とある路地)

真々田「さあて、どうするかい?」

魔術師A「知れたことを!」

魔術師はなにやらつぶやき始める。

向かい合わせに置いた手の間に、光が集中し始める。

真々田「詠唱と魔方陣によって術式を形成する西洋魔術か…」

真々田「まずは、お手並み拝見かな」

静観する真々田と対照的に魔術師は動く。詠唱の終了と共に、その周囲に大量の火球が現れた。

詠矢「(ん?…あの魔術は…確か!)」

詠矢「真々田サン、炎が!」

真々田「わかっているさ。まあ、見ていたまえ」

余裕を見せる真々田に、軽く舌打ちをする魔術師。

魔術師A「舐められたものだ…だが、これで死ねっ!!」

声と共に火球は一斉に真々田に襲い掛かった。

真々田「…ふっ!!」

真々田がコートを翻すと、その裾が大量の呪符に変化する。

宙に待った呪符は、周囲に展開し球状の空間を形成した。

次々と襲い掛かる火球。だがそれは全て展開された結界に阻まれる。

魔術師A「なにっ!!」

真々田「なるほど、機能特化しているだけあって、なかなかの炎だ」

真々田「だが、この程度では汎用の防御結界すら破ることは出来ないよ」

魔術師A「…貴様…何者だ!」

真々田「何者?…僕はフィギュアの原型師さ」

魔術師A「…なんだと?」

真々田「まあ、僕を表す言葉はいろいろあるけどね」

真々田「もっと端的に言えば『天才』といったところかな」

詠矢「(すげえな真々田サン…余裕じゃねえか)」

魔術師B「…!!」

再びロープが伸び、詠矢と傍にいた女性の胴体に巻き付いた。

詠矢「しまっ!…た」

鳳雷鷹「…!!」

魔術師B「また油断したな?…この紐は簡単に解けんぞ」

詠矢「なっ…この…」

その言葉通り、巻き付いたロープは力を強め、いくらあがいても解ける気配を見せない。

魔術師B「このまま同行してもらおうか」

詠矢「…」

詠矢は目を伏せ、息を整え、思考を始めた。

詠矢「…なあ魔術師サンよう」

魔術師B「…何だ」

詠矢「このロープも魔術で動かしてるんだよな?」

詠矢「普通の投擲じゃあ、さっきみたいな軌道で飛んでくるわけねえし」

詠矢「勝手に締まるわけねえもんな?」

魔術師B「…?」

詠矢「でもさあ…それって単なる念動だよな?」

詠矢「この学園なら使える奴がゴロゴロいそうだねえ」

詠矢「魔術と能力って相容れない力らしいけどさあ」

詠矢「やること同じなら普通に能力開発した方が」

詠矢「詠唱とかなんとか面倒も無くていいんじゃねえの?」

詠矢「魔術ってご大層に言うんなら、もうちょとオリジナリティが欲しいよねえ…」

魔術師B「な…なんだと!魔術を愚弄するか!!」

魔術師A「そいつの言葉に耳を貸すな!!」

詠矢「…(しめた!少し緩んだ!)」

対象の動揺を誘い、絶対反論(マジレス)が発動した。

そして、その変化に気づく者がもう一人。

鳳雷鷹「…!!」

緩んだロープの隙間を縫うように、女性の背中から翼が展開する。

それは細かい変形を繰り返し、大きく広がりながら自らを縛るロープを切断した。

魔術師B「なにっ!」

地を蹴り、翼を振るうとその姿は空に舞い上がる。

鳳雷鷹「ふうっ!!」

女性は手裏剣を抱え上げると、全身を使って空中から地面へと投擲する。

魔術師B「ぐあっ!」

手裏剣の切っ先が魔術師の上腕を捕らえる。

魔術師B「くっ…この…」

うっすらと血がにじむ腕を押さえ魔術師は後ずさる。

魔術師A「…!(くそっ!こいつら…手ごわい!)」

魔術師A「(こうなれば…一気に焼き払って)」

再び詠唱に入ろうとする相手を、真々田見逃さない。。

真々田「おっと、何かしようとしてるね?」

真々田「残念だが、僕のほうが早い」

真々田は懐から呪符を取り出すと、それを地面に貼り付けた。

真々田「出でよ、クライング・ウルフ…」

言葉の後、わずかに念を込めると、呪符を中心に地面が隆起する。

引き剥がされたアスファルトが、四足の獣のような姿を造形していく。

現れた獣形の式神は、天に向かって咆哮すると、魔術師に向かって一気に襲い掛かった。

魔術師A「ぐおっ!!このっ!!」

獣は相手の腕にその牙を突き立てる。慌てて振り払おうとする魔術師は激しく抵抗する。

魔術師A「はっ…離れろ!!」

近接距離で火球を発生させると、それを式神へと見舞う。

どうにか弾き飛ばすことが出来たが、同時にその頭にかかっていたフードが外れる。

詠矢「…あんたは、あんときの!」

完全に緩んだロープを振りほどきながら、詠矢は振り返った。

フードの下にあった顔は、詠矢が知る人物だった。

真々田「おや、お知り合いかい?」

詠矢「以前襲ってきたヤツです。あの時は上条サンと一緒に撃退したんですけど」

詠矢「まさか逃げおおせてたとは…」

魔術師A「くっ…!」

真々田「なるほどねえ…じゃあこれは、そのときの復讐ってことなのかな?」

真々田「まあ、いずれにせよ、この騒ぎが一般に露見すると問題だろう」

真々田「人払いを解いてからずいぶん経つ。そろそろ人が集まってくるころじゃないかな?」

魔術師A「…!!」

魔術師B「…!!」

二人は同時に周囲を見回す。

まだかろうじて人の影は無いが、声と気配は既に集まりつつある。

真々田「もちろんここで君たちを仕留めても構わないんだが」

真々田「僕もあまり派手なことは出来ない立場でね」

真々田「さて、どうする?」

魔術師A「…」

魔術師B「…」

二人は申し合わせたように詠唱を始めると、突如背後に現れた闇の中に消えていった。

詠矢「逃げたか…」

真々田「まあ順当な展開だね」

詠矢「いや、助かりました真々田サン」

真々田「なになに、お安いご用さ」

真々田「『天才』陰陽師としては造作も無い」

二人の会話を遮るように、空間から人影が現れた。

白井「ここですわね。ようやくたどり着けましたわ…」

詠矢「白井サン!どうしてここに?」

白井「あら詠矢さん、あなたこそどうして…あっ!」

白井は、詠矢の隣に居る人物に気づき、思わず声を上げた。

白井「あなたは、真々田創!なぜここに!」

白井「まさか…またよからぬことを!(チャキ)」

白井は反射的に鉄矢を構える。

詠矢「ちょっと待ってくれ白井サン!」

詠矢「真々田サンは俺を助けてくれた。少なくとも敵じゃない!」

白井「え…?どういうことですの?」

真々田「説明が必要なようだね」

真々田「ここでは何だ。お二人とも僕の店に招待しよう」

真々田「詳しい話はそこでね」

詠矢「わかりました」

詠矢「ほら、白井サンも行こう。聞いといたほうがいいと思うぜ?」

白井「…まあ、そうおっしゃるなら…」

真々田「じゃあ行こうか…」

真々田「鳳雷鷹!帰るよ!」

小さくうなづいた女性は、地上に降りたち、展開したのとは逆の手順で羽を背中に収納する。

白井「…!!」

白井「あ、あの詠矢さん?この方飛んでいませんでしたこと?」

詠矢「うん、目の前で起こったことだから事実だね」

詠矢「とりあえず丸呑みしとこう。まとめて説明してくれるさ」

白井「は…はあ…」

全く釈然としない白井を連れ、一同はその場を後にした。

(とある店)

真々田「さあ、ここだ。入ってくれたまえ」

降りていたシャッターを上げると、真々田は二人を店内に招きいれた。

詠矢「模型店…形屋?」

詠矢は看板を見上げつつその書かれた文面を読む。

真々田「ああ、僕の店さ」

客人二人と鳳雷鷹をつれ、商品のぎっしり詰まった店内を抜け、真々田は奥の応接室に向かった。

??「おかえりなさいませ」

真々田「ああ、ただいま」

部屋の扉を開ける真々田に、エプロンドレスに身を包んだ女性が微笑んだ。

真々田「お茶を入れてくれるかな、エンジェラン」

エンジェラン「かしこまりました」

丁寧に頭を下げたその女性は、台所と思しき場所に消えていく。

真々田「鳳雷鷹、君はもういい。休んでくれ」

鳳雷鷹「…(コク)」

小さくうなづくと、赤いスーツの女性もいずこかえへと移動した。

詠矢「…」

白井「…」

状況がまるで理解できない二人を尻目に、真々田はソファに腰を下ろした。

真々田「まあ、ゆっくりしてくれたまえ」

促されるまま、真々田の対面に腰を下ろす二人。

真々田「そういえば、お互いちゃんと自己紹介していなかったね」

真々田「僕は真々田創(ママダ ツクル)。職業はフリーの原型師だ」

詠矢「詠矢空希ってもんです。よろしくです」

白井「ジャッジメントの白井黒子、ですわ」

真々田「詠矢君に白井さんね…ふむふむ」

真々田「さて、どこから話したものかな」

詠矢「じゃあ、ですね。まずあれからどうなったか…を」

真々田「そうだね。じゃあ、最初からいこうか」

真々田「君の提案通り、僕はあれからアンチスキルに投降した」

真々田「それからいろいろ取り調べがあって、まあ、一定の罪状も確定したんだけどね」

真々田「そこで、学園側から一つの提案があった」

白井「提案…ですの?」

真々田「ああ、司法取引みたいなものかな?」

真々田「今回の刑を猶予する変わりに、学園側に協力すること…」

詠矢「協力って…魔術師であるあなたにですか?」

真々田「そうみたいだね。具体的には…」

真々田「住居をここに移し、あの時に開発した式の技術を漏洩しないこと」

白井「なるほど…」

白井「確かに、AIM拡散力場への魔術による干渉は」

白井「学園としては極めて危険な技術ですわ」

真々田「今回は僕が確信犯だったからよかったものの」

詠矢「あー、それって正しい意味での確信犯ですよね?」

真々田「…マジレスしないでくれるかね」

詠矢「あ、スンマセン…」

白井「あの、脱線しないで頂けます?」

詠矢「…えっと、まあ…だね」

詠矢「確かに、学園都市に敵対する勢力がその技術を得たら…」

白井「考えたくも無いですわね」

真々田「恐らく、僕自身を取り込むことで、その危険を未然に防げると思ったんだろう」

真々田「まあ、僕としては断る理由は無いしね」

真々田「ここに店を構えて、落ち着くことにしたのさ」

詠矢「…かなり納得できました」

白井「ですがまだお聞きしたいことが…」

真々田「どうぞどうぞ」

白井「なぜ、先ほどはあの場所に?」

真々田「魔術の痕跡を追っていたら、偶然あの場所にね」

詠矢「痕跡…ですか?」

真々田「…しばらくこの都市に住んでみてわかったんだが」

真々田「魔術と敵対している場所にしては、その対抗策が脆弱すぎる」

真々田「僕から言わせれば無防備といっていい。全くお話にならないレベルだ!」

詠矢「あー、まあ、確かに。俺ですら2回も魔術師に会ってますし」

真々田「だから、個人的に『鳴子』を張らせもらったんだ」

白井「それは、『警報装置』という意味ですの?」

真々田「うん、そうだね」

真々田「魔術の発動を感知すると、その存在を僕に知らせる一種の結界を敷いておいた」

真々田「流石の僕でも、この学園都市全体を見張ることは出来ないが」

真々田「無いよりはマシだろうと思ってね。要所に設置しておいたんだ」

詠矢「じゃあ、そこに引っかかった痕跡を追ってあそこに」

真々田「そういうことだね」

エンジェラン「お待たせしました」

再び女性が現れ、三人分のコーヒーを机の上に並べる。

真々田「ああ、ありがとう」

白井「ありがとうございます」

詠矢「どもっす」

静かに頭を下げると、女性は退出した。
詠矢「えーっと…あの人って…もしかして」

真々田「ああ、彼女たちは僕の作品だよ」

真々田「『鳳雷鷹』は近接戦闘用、『エンジェラン』は家事その他用だね」

詠矢「じゃああの、狼みたいなのもですか?」

真々田「ああ、『クライング・ウルフ』は式神さ」

真々田「周囲の物質を合成して、狼の姿と戦闘能力を得るように調整してある」

白井「我々の知識では全く理解の及ばない技術ですわね」

真々田「そうでもないさ。ちゃんと調整された式神なら、念を込めるだけで誰でも使える」

真々田「ちなみに、『女性にまつわるメカの名前』で統一してみたんだが、いかがかね?」

詠矢「…スンマセン、ちょっと難易度高いです」

真々田「そうか。それは残念」

真々田「ま、お話は以上かな」

白井「経緯に関しては理解できましたわ」

白井「現在のあなたの扱いについては、こちらからアンチスキルに問い合わせてみます」

真々田「ご自由に。僕ももう逃げ隠れする必用は無いからね」

詠矢「えっと…もし今回みたいな、魔術側の攻撃が起こった場合」

詠矢「協力はお願いしていいんでしょうか?」

真々田「もちろん。ただ、僕も執行猶予中の身なのでね」

真々田「あまり派手なことは出来ないが、出来る限りの協力をさせてもらうよ」

詠矢「ありがとうございます。心強いです」

白井「何かありましたら、よろしくお願いしますわね?」

白井「では、わたくしは一旦支部へ戻ります」

詠矢「んじゃあ、俺も帰るかね」

真々田「…詠矢君」

詠矢「なんですか?」

真々田「僕からも忠告が一つ」

詠矢「…なんでしょう」

真々田「あの路地に仕掛けられていた結界は」

真々田「人払いであると同時に、特定の人物を招き入れるものだった」

真々田「つまり、君を目標として仕掛けられた魔術だ」

詠矢「…やっぱ…そうですか」

真々田「状況から理解は出来るだろうけど、君が直接狙われているという自覚を持ったほうがいいね」

白井「なんですって?詠矢さんが魔術師に?」

詠矢「まあ、心当たりはあるんだけどね」

真々田「こちらでも、何か情報を掴んだら連絡するよ」

詠矢「よろしくお願いします」

詠矢「んじゃ、失礼します」

白井「詠矢さん…」

白井「では、わたくしも…」

二人はそろって店を後にした。

とある街角)

帰り道、二人はただ黙って歩く。

白井「…」

詠矢「…」

白井「…」

詠矢「…」

白井「…詠矢さん」

詠矢「うん?」

先に口を開いたのは白井だった。

白井「また説明不足ですわよ」

白井「心当たりというのを、教えて頂けませんこと?」

詠矢「あ、ゴメン。隠すつもりはなかったんだけどさ…また言い忘れたな」

詠矢「学園都市に来てすぐのことなんだけど」

詠矢「上条サンを狙ってきた魔術師と戦ったことがあってさ」

詠矢「二人で何とか撃退したんだけど」

詠矢「そんときに、絶対反論(マジレス)が魔術に通用するのを知ったんだ」

白井「つまり、そのことが同時に魔術側に知れたと…」

詠矢「そういうこったな」

詠矢「俺を狙ってくるのも、自然に理解出来る」

白井「…詠矢さん」

詠矢「まあ、こうなっちまったもんはしょうがねえ」

詠矢「用心するしかねえっしょ?」

詠矢「魔術に対して明確に対処する方法もねえわけだし」

詠矢「真々田サンっていう協力者もいるわけだし、なんとかなるんじゃね?」

白井「…」

白井「残念ですが、魔術師が相手であれば、ジャッジメントの対応にも限界があります」

白井「ただ、この状況を放置するわけにも参りません」

白井「最大限のご協力はさせて頂きます」

詠矢「ん…ありがとさん」

詠矢「少なくとも、自分一人で抱え込むようなことはしねえさ」

白井「遠慮は不要ですわよ?」

詠矢「うい、了解…だよ」

白井「では…わたくしは支部に戻ります」

詠矢「ん、お疲れさん」

白井の姿は掻き消えた。

詠矢「…」

詠矢「さあってと…」

詠矢はスマートフォンを取り出す。

詠矢「(確かに、遠慮してる状況じゃねえ)」

詠矢「(上条サンや御坂サンには協力を頼むとして)」

詠矢「(真っ先に連絡しとかないといけないのは…)」

アドレス帳を検索する詠矢。

詠矢「(やっぱ、ここだよな)

その指が止まったのは、佐天涙子の番号だった。

以上となります。
それではまた。

こんばんわ、1です。
後編を投下します。

(とある学生寮 佐天涙子の自室)

佐天「…ふふっ」

既に部屋着に着替え、リラックスしてた佐天は、手の中に置いた青い髪留めを見ていた。

自然と笑みがこぼれた。

佐天「(そういえば、男の人から何かもらうって始めてかもなあ)」

佐天「(そりゃプレゼントって訳じゃないけどさ…なんか、ちょっとうれしいな)」

佐天「…あれ」

自分の世界に入っていた佐天を、呼び出し音が現実に引き戻す。

佐天「はいはい…え?詠矢さん?…なんだろ(ピ)」

佐天「はい、佐天です…」

詠矢『あ、こんばんわ。詠矢だ。さっきはどうもね』

佐天「いえ、はい。こちらこそありがとうございます」

詠矢『いやいや、いきなり電話して悪いね』

詠矢『…ちょっと、佐天さんに伝えたいことが…あってさ』

佐天「えっ!…な、なんでしょう」

佐天は自分の鼓動がわずかに上がったことに気づかなかった。

詠矢『これから俺が言うことは、厨二病の妄想みたいに聞こえるかもしれないけど』

詠矢『全て事実なんだ。最後まで聞いて欲しい』

佐天「…」

佐天「…わかりました。詠矢さんがそう言うなら、ちゃんと聞きます」

詠矢『ありがとう』

詠矢『どうも俺は、誰かに狙われてるらしい』

詠矢『さっきひと悶着あってね…誘拐されそうになった』

佐天「…!」

佐天「誘拐って…それって普通に犯罪じゃないですか!」

詠矢『そうだな。でも、相手はその辺躊躇する奴らじゃないみたいだ』

佐天「…」

佐天「…どうして…なんですか」

佐天「どうして…詠矢さんが…」

詠矢『ま、それなりに心当たりもあってね』

詠矢『多分、相手は俺の能力に興味があるんだと思う』

詠矢『単に気に入らないだけなら抹殺しようとするはずだしな』

佐天「…えっ!!」

佐天「抹殺…って…それって」

詠矢『あ、そこまでは言いすぎかな』

詠矢『まあどっちにしろ、俺が危険な状態に置かれてるのは事実だ』

詠矢『で、さ。こっからはお願いなんだ』

佐天「…はい」

詠矢『さっき約束したばっかりなんだけどさ』

詠矢『しばらく…この事態が片付くまでは、二人で合うのはやめたほうがいいと思うんだ』

佐天「…」

詠矢『まあ、そんなに時間はかからないと思うからさ』

詠矢『事が済んだら、また行こうぜ』

佐天「…はい…」

佐天「…」

詠矢『まあ、大丈夫さ』

詠矢『ジャッジメントには知らせてるし、上条サンや御坂サンにも協力してもらう』

詠矢『すぐに片付くと思うぜ』

佐天「…そう…ですか」

佐天「…」

佐天「…あの」

詠矢『ん?』

佐天「ごめんなさい…私…何も出来なくて…」

詠矢『えっ!いや…』

詠矢『コイツは、俺自身が何とかしなきゃいけないことだからさ』

詠矢『その…なんだ、佐天サンが気にすることじゃないよ』

佐天「…はい」

佐天「わかりました…」

詠矢『うん…じゃあ話は以上かな』

詠矢『んじゃ、またな?』

佐天「…詠矢さん…気をつけて…」

詠矢『うい、りょーかい。んじゃ(ピ)』

佐天「…」

佐天「しょうがないよね」

佐天「私じゃ、詠矢さんの足手まといにしかならないし…」

佐天「…」

佐天は、抱えた膝の上に自分の頭を乗せた。

佐天「(システムスキャンの数値も、頭打ちになっちゃったし)」

佐天「(結局レベル0のままだもんね)」

佐天「(詠矢さんとは違うもんなあ…)」

佐天「…ふう」

佐天「(私も、何か役に立てればなあ…)」

佐天「(次いつ会えるんだろ…)」

携帯の着信履歴を眺めたまま、佐天はしばしたたずんでいた。

(ジャッジメント177支部)

詠矢「よっと…」

詠矢「んじゃあ、これはロッカーの上でいいのかな?」

初春「はい、そこでいいです」

初春「すいません、書類整理なんか手伝ってもらって」

詠矢「いやなに、どうせヒマだしね」

詠矢「日中はここにいたほうが安全だし…よっと」

詠矢は抱えたダンボール箱を指定されたロッカーの上に乗せた。

初春「詠矢さん…」

詠矢「ん?」

初春「えと…なんて言っていいかわかりませんけど…」

詠矢「ん?まあ、いつかこんなことになるんじゃねかなって思ってたしね」

詠矢「上条サンも何度か同じようなことあったみたいだしねえ」

詠矢「おかげさんで頼りになる仲間もいるしさ」

初春「…強いですね。詠矢さん」

詠矢「ま、悩んだって仕方ないしね。考えることは必要だけどさ」

白井「(ガチャ)ただいま戻りました」

普通に扉を開け、白井が入ってきた。

初春「あ、おかえりなさい」

詠矢「うい、おかえり。お疲れさん」

白井「ダメですわ…敵の足取りは掴めませんでした」

詠矢「そっか…やっぱり難しいよなあ」

白井「申し訳ありません…」

詠矢「おいおい、白井サンまでか?」

詠矢「みんなそろいもそろって謝るなあ…」

詠矢「俺はお願いしてる方なんだからさ、事実の報告だけでいいってさ」

白井「ですが…」

詠矢「こうやって、日中の安全な場所も確保されてるわけだし」

詠矢「十二分に助かってるよ」

白井「詠矢さん…」

詠矢「それにさ、魔術に対抗する論証の方向性も見えてきた」

初春「え?そうなんですか?」

詠矢「対峙する機会が増えたんでねえ。こないだもちゃんと効いたぜ?」

白井「魔術を論証する切り口…ですか」

詠矢「そう、魔術ってのは、俺たちが知ってる物理法則とは違う原理で動いてる」

詠矢「物理や化学を根拠にした論証では効果が出ない」

詠矢「だから逆に、論理的じゃない話の方が効くみたいだな」

白井「それは、まさか…」

白井「言いがかりや屁理の方が効果があると?」

詠矢「流石白井サン、鋭いねえ」

詠矢「実際効果があったのは、奴らの思想信条や魔術の効果に対して行った論証だ」

詠矢「多分、そっち方向の話の方が効果あるんだろうな」

詠矢「ただ、心が揺るがなければ効果が無いのは同じ」

詠矢「自分の考えに何の疑問を持たない狂信者には通じないだろうな」

白井「今更ながらですが…変わった能力ですわね」

詠矢「否定はしねえよ」

初春「(ピピ)あ、電話だ…」

初春は携帯を手に取る。

初春「あ、佐天さんから…っと(ピ)はい、もしもし初春です」

初春「ええ、支部ですけど。え?詠矢さんですか?」

初春「いらっしゃいますけど、代わりましょうか?」

初春「あ、そうなんですか?じゃあ、また…(ピ)」

初春「佐天さん、今日は来ないそうです」

詠矢「今俺が居るかどうか確認してなかった?」

初春「はい、詠矢さんが支部にいるかどうか聞かれました」

詠矢「そりゃー、誤解してるかな?」

白井「何の話ですの?」

詠矢「いや、俺がこんな状態だからさ」

詠矢「しばらく二人で会うのはやめようって話したんだよ」

初春「…えっ!!」

白井「…!!」

詠矢「二人っきりになるのはマズイけど、ここで会う分には問題ねえのになあ」

詠矢「言い方まずかったかな…」

白井「…あ、あら」

白井「お二人はそういうご関係でしたの?」

詠矢「いやいや、違うって」

初春「え、でもいま二人でって…」

詠矢「そりゃまあ遊びにくらい行くっしょ。普通に」

初春「そうなん…ですか?」

詠矢「そうだよ?なんか変かな?」

白井「…」

詠矢「どしたね、白井サン」

白井「いえ…何も」

詠矢「そっか」

初春「…」

初春「…(あれ?なんか空気が変に…)」

詠矢「あ、そうだ」

何かを思い出したのか、スマートフォンを覗き込む詠矢。

詠矢「そろそろ時間だな。お先に失礼するわ」

初春「え、出歩いちゃって大丈夫ですか?」

詠矢「ちょっと真々田サンのとこに行く約束しててね」

白井「あら、何かありましたの?」

詠矢「いや、特にどうってわけでもないんだけど」

詠矢「現状を改めて報告して、何かアドバイスもらえたらなって」

初春「そうなんですか、じゃあ、お気をつけて…」

詠矢「まあ、大した距離もないし、人通りの多い場所を選んで歩くよ」

白井「何かあればすぐに連絡してくださいまし」

詠矢「うい、よろしくな」

詠矢はあっさりと部屋を出て行った。

初春「…」

初春「あの…白井さん」

白井「初春!」

初春「は、はいっ!」

白井「引き続き監視をお願いしますわ」

白井「詠矢さんに危害が及ぶことなど、絶対に許されません」

初春「わかりました!」

(とある街角)

佐天「…」

うつむき加減で、佐天はあてどなく町を歩いていた。

佐天「(今日はどこ行こうかなあ)」

佐天「(…どうせ一人だし、どこでもいっか)」

佐天「(こういう日に限ってアケミたちもつかまらないんだよなあ)」

佐天「…」

佐天「またジェラートかな」

佐天「でも一人で食べてもつまんないし…」

いつの間にか独り言が口から言葉として出ている。

佐天「…」

佐天「ああもう、何うじうじ考えちゃってるのよ!」

佐天「心配なら連絡しちゃえばいいなじゃい!」

佐天「電話ぐらいどうってことないよね?」

佐天は携帯を取り出し、アドレスを検索する。

が、同時に、強い違和感を感じた。

佐天「あれ?」

佐天「ここ、どこだっけ…」

佐天「私、どこをどう歩いてここに」

佐天「んっ…」

頭が重い、考えがまとまらない。

佐天は手のひらで額を押さえる。

佐天「…あ…れ?」

佐天「誰…ですか?」

混乱する佐天の視界の隅に、人影が映った。

(模型店 形屋)

詠矢「こんちわー」

真々田「やあ、こんにちわ」

真々田「どうだね、状況は」

詠矢「特に変わりないですねえ」

真々田「そうか。こちらも特に変化はない」

真々田「もしかすると、諦めたのかもしれないね」

詠矢「まあ、それだったらありがたいんですけど」

詠矢「なんとなく、まだ引き下がってくれる雰囲気じゃないんですよねえ…」

真々田「そうなのかい?ま、用心するに越したことは無いがね」

真々田「残念ながら僕の鳴子も完全ではない」

真々田「奴らが潜り抜けている可能性もあるしね」

詠矢「なるほど…ただ、魔術に対抗する方法が無くて」

詠矢「特に俺みたいな個人は、どうしようも…」

真々田「ふうむ…そうだな、その点は考えてみようか」

詠矢「よろしくおねがい…(ピピ)あれ?メール?」

詠矢は端末を取り出す。メールの送り主は佐天だった。

詠矢「ん?…なんだろ…(ポチ)」

詠矢「…なっ!!」

真々田「どうしたね?」

詠矢「…!」

詠矢は、そこにつづられていた文面に言葉を失った。


『この女は預かった。無事に帰して欲しくば昨日の場所に一人で来い』


詠矢「…くっ…そ!!」

詠矢は思わず感情が声になる。

真々田「何かあったのかい?」

詠矢「…」

真々田の質問には答えず、詠矢は目を閉じ、思考を始めた。

(とある路地)

詠矢「…」

詠矢は既に、その場所に立っていた。

昨日来た時と同じように、特に考えず、ただ歩くだけでこの場所にたどり着いていた。

魔術師A「一人で来たな?」

詠矢「あんたらの指示だろう。言いつけは守ったぜ?」

立ち位置も昨日とほぼ同だ。前方に炎を操る魔術師、後方にロープを使う魔術師、詠矢は既にはさまれていた。

そして、正面の魔術師に抱えられてる女性が一人。後ろ手に縛られ、気を失った佐天涙子がそこにいた。

詠矢「人質とはねえ…。あんたらの神様はそんなこと推奨してるのかい?」

魔術師A「なんとでも言え。我々は目的の為なら手段を選ばん」

詠矢「ってもなあ…」

魔術師A「おっと、それ以上しゃべると…この女の安全は保障しない」

短刀が佐天の首筋に突きつけられる。

詠矢「…」

詠矢「わかってますよ。余計なことは言わねえって」

詠矢「ただ、事務的な話は必要だろ?」

詠矢「俺はどうすればいいんだい?」

魔術師A「我々と同行してもらおう」

詠矢「…理由は聞いていいのかな?」
魔術師A「貴様の能力は危険だ。その真偽を確かめる必要がある」

魔術師A「理由はそれで十分だ」

詠矢「なるほどね。結構、そんまんまですな」

詠矢はしばし考え、大きく息を吐く。

詠矢「自分の立場は理解出来てるつもりなんでね」

詠矢「一人でここに来た時点で、覚悟は出来てるさ…。好きにして下さい」

詠矢「但し!…その人の安全を確保するのが先だ」

詠矢「開放してやってくれ」

魔術師A「お前を確保するのが先だな」

詠矢「…まあ、そうなりますか」

詠矢「よしなに」

ポケットに手を突っ込んだまま、詠矢は無防備に立つ。

魔術師A「…やれ」

目配せをすると、背後からロープが飛び、詠矢の上半身を縛り上げる。

魔術師A「大人しくしてもらおう」

顔を伏せたまま、詠矢は微動だにしない。

魔術師B「…ん?」

魔術師A「どうした?」

魔術師B「おかしい…締め上げ…られない?」

魔術師A「なに?」

詠矢「…ケッ」

魔術師A「貴様…まさか何か!」

詠矢「力に頼るヤツってのは、どうしてこう雑なんかね」

詠矢「お前らのやってることは穴だらけだ」

魔術師A「なんだと!!」

詠矢「一人で来いとはあったが、誰にも話すなとは書いて無かったよな?」

向き直った詠矢の顔には、不適な笑みが浮かんでいた。

その顔に呼応したように、彼の着ていた上着が、細かくはがれ始めた。

魔術師B「なっ!!」

その上着は一瞬にして大量の呪符に変化する。

詠矢「やっぱ、真々田サンは天才だな。ほんとに俺でも使えるぜ…」

魔術師A「まさか…あの陰陽師か!」

呪符は、詠矢を縛るロープを押し広げながら展開し、後方の魔術師に襲い掛かる。

魔術師B「!!」

呪符は対象の体に張り付き、口と四肢を締め上げていく。

詠矢「どうだ、理不尽に拘束される気分は!」

詠矢「あんたもちょっとは味わってみな!」

言うや否や、詠矢は走っていた。

動揺し、反応が遅れたこの一瞬。正面の魔術師を倒し、人質を救出するチャンスは今しかない。

詠矢「どおっせい!!」

走りこんだ勢いのまま、躊躇無く振るわれた詠矢の上段正拳が、目標の頭部に命中した。

魔術師A「がっ!」

その一撃に魔術師は崩れ落ちる。取り落とした佐天の体を抱えると、詠矢は少し離れた場所に移動する。

詠矢「佐天サン!!佐天サン!!大丈夫か!」

詠矢「くそっ…かってえ…な、これ!!」

詠矢は佐天を縛っていたロープを解き、猿ぐつわを外す。

そして、覚醒を促す為頬を軽く叩く。

詠矢「佐天サン!佐天サン!!」

佐天「ん…っ…」

詠矢「わかるかい?俺だ、詠矢だ。もう大丈夫だぜ?」

佐天「えっ…詠矢…さ…」

静かに目を開ける佐天。その瞳に移った詠矢の姿に安堵したのか、目じりには大粒の涙がたまっていく。

佐天「あっ…あ…あたし!…あの…うえっ…ご、ごめんなさ…い!」

佐天「えっ…あうっ…あたし…よめやさんに…めいわ…く…」

徐々に聞き取れなくなる佐天の言葉。そんな彼女の頭を詠矢は軽く叩く。

詠矢「どうにも、今日は謝られる日みたいだな」

詠矢「佐天サンは何も悪くねえだろ?悪いのは全部あいつらさ」

佐天「ひぐっ…え…う…」

詠矢「ま、とにかくここを離れよう。歩けるかい?」

佐天の腕を抱え、立ち上がろうとする詠矢。

だがその瞬間、火球が彼の肩口に命中した。

詠矢「ぐあっ!!…っつ!」

炎はシャツを燃やし、皮膚を焼く。詠矢の右肩は即座に赤くただれる。

詠矢「いっ…つ…つ…!」

佐天「…え…あ…!!」

佐天「詠矢さん!!詠矢さん!!」

魔術師A「…ようやく当たったな」

二人の視界に、いつの間にか魔術師が現れていた。

詠矢「(くそっ!動けるのかよ!浅かったか!)」

詠矢「(どうする…考えろ詠矢!)」

魔術師A「もう面倒だ…全て焼き払ってくれる!」

詠唱が始まる。魔術師の手に力が集まっているのが誰の目から見てもわかる。

詠矢「(あの分だと多分でかい炎だ。今から突っ込んで間に合うか?)」

詠矢「(だがそれだと佐天サンを守りきれない!この肩じゃ腕もまともに振れるかどうか…)」

詠矢「(今から逃げて逃げ切れるか?…どうする…どうする詠矢!)」

佐天「あ…あぁ…」

佐天「…いゃ…あぁ…あぁぁあああ!!」

佐天は絶叫と共に、魔術師に向かって飛び掛った。

詠矢「さ、佐天サン!」

佐天「な…なんで、なんでこんなこと!詠矢さんが何したって言うんですか!」

佐天は魔術師の襟元に掴みかかる。

佐天「やめて…こんなこと…やめてください!!」

半狂乱で叫ぶ佐天。だが、魔術師の表情には余裕があった。

魔術師A「(今更この程度…詠唱の妨害にはならん)」

魔術師A「(二人まとめて焼き払ってくれる!)」

詠矢「佐天サン!離れろ!」

佐天を引き剥がそうとする詠矢。

詠矢「…?」

何かを感じた詠矢は、立ち止まる。

詠矢「…(風音?)」

詠矢の姿を見て、魔術師は悪辣な笑みを浮かべた。

魔術師A「(ついに観念したか。もう詠唱は完了する!)」

魔術師A「(すべて塵にしてくれ…)」

魔術師A「(…!?)」

魔術師A「(…はっ?声…が?)」

いくら喉を動かしても、口から声が出ない。詠唱が完成しない。

魔術師A「(なにっ!術式が維持出来ない!)」

魔術師の手に集まっていた力が急激に散逸していく。

詠矢「(何だ…何が起こっている?…何だ?)」

詠矢「(さっきの音…確か…どこかで…)」

詠矢は必死で記録を掘り起こす。この状況、人物、音。思考を総動員して当てはまる状況を検索する。

詠矢「…」

詠矢「あっ!!」

詠矢の中で、一つの映像が再生された。


詠矢『声が届かなきゃどうしようもない、俺としちゃお手上げになるね』
佐天『あー、確かにそうなりますねえ』

詠矢「(これは…佐天サンの力だ!)」

詠矢「(空気を制御し、音の伝達を防いで詠唱を妨害したんだ!)」

詠矢「よっしゃぁぁああ!!」

詠矢の全身に力が戻ってくる。一気に敵との距離を詰める。

詠矢「佐天サン!伏せろ!」

佐天「え…?…はいっ!!」

詠矢の叫びどおり佐天は頭を下げる。

詠矢「どおっせぇぇえい!!」

踏み込んだ勢いに腰の回転を乗せ、詠矢渾身の上段蹴りが魔術師の側頭部に命中した。

魔術師A「ガフッ!!…が…あぁ…あ!」

首をもぎ取らんばかりに突き刺さった詠矢の蹴りは、敵の意識を一瞬にして刈り取った。

魔術師は力なく崩れ落ちる。

詠矢「はあっ…はあっ…ぐっ!」

詠矢に火傷の痛みが戻ってくる。思わず膝を着く。

佐天「詠矢さん!大丈夫ですか!」

詠矢「なになに、まあ、大丈夫さ」

詠矢「…やったな、佐天サン」

佐天「…え?」

詠矢「俺たちの勝利だ」

佐天「…へ?…俺…たち?」

佐天「は…はは…やりました…やっちゃいましたよ!」

佐天「二人で…勝ちました!勝っちゃいましたよーーー!」

喜ぶ佐天の傍で、倒れた魔術師の体が移動する。

詠矢「…ん?」

どこからとも無く伸びたロープが、その体を掴んで引きずっていた。

詠矢「ようやく呪符から逃れたか…」

佐天「…」

二人の視界の隅に、もう一人の魔術師がいた。

しばしにらみ合うが、相手は倒れた仲間を回収し終えると、すぐに闇に消えた。

詠矢「逃げたか…」

佐天「どこ行ったんでしょうか…」

詠矢「さあて…ね…」

詠矢「俺たちも、引き上げねえとな…」

佐天「はい…あ!詠矢さんすぐ病院に!」

詠矢「ん…そだな…頼めるかな?」

(模型店 形屋)

詠矢「ちわーっす」

真々田「やあ、こんにちわ」

詠矢「スンマセン、報告が遅れまして」

真々田「いやいや、別に構わんさ」

詠矢「ちょいと時間かかりまして。あ、こちらお礼です」

詠矢はいつもの紙袋を取り出した。

詠矢「ジェラートです。美味いっすよ」

真々田「おお、ありがとう。しかし、高校生とは思えない気の使い方だね。君は」

詠矢「あ、いや、性分なもんで…」

真々田「そうなのかね?まあ、これは後で頂くとしよう」

真々田「エンジェラン、冷凍庫にお願いできるかな?」

エンジェラン「かしこまりました」

真々田から紙袋を手渡されると、女性は台所へ消えていった。

詠矢「あらためて、ありがとうございます。あの上着、すっげえ役に立ちました」

真々田「そうか、それはよかった」

真々田「厳重な隠蔽を施しておいたからね。機能が発動するまでは、呪符だとは気づかれなかったろう?」

詠矢「いやそれはもう。完全に相手の意表を突くことが出来ました」

真々田「ま、相手があの雑魚魔術師なら、少々調べたところで発見は出来なかったろうね」

真々田「まさしく、格の違いとうやつだよ」

詠矢「いやもう感服してますよ。ほんとに」

詠矢「今回は思いっきりブチのめしておきましたんで」

詠矢「多分逃げ帰ってると思います。確証はないですけどね」

真々田「危機が去ったのならいいがね…」

佐天「…あれ?…もしかして…?」

ぎっしりと商品の並んだ棚。その向こう側から先客の顔がのぞいた。

詠矢「ありゃま、佐天サン。偶然だねえ…」

佐天「やっぱり詠矢さんだ!怪我の方はいいんですか?」

詠矢「うん。優秀なお医者さんとお知り合いでねえ」

詠矢「二晩ほど泊まって、さっきジャッジメントで事情聴取を受けてきたとこさ」

詠矢「佐天サンこそ大丈夫かい?」

佐天「おかげさまで、怪我はしてませんから大丈夫です」

詠矢「そうか、そいつはよかった。無事で何より」

詠矢「あれ?でも佐天サンがどうしてここに?」

佐天「えっと…有名なフィギュア作家の人が学園都市に来ている噂がありまして」

佐天「その真偽を確かめに来ました!」

真々田「どうやら彼女は僕のファンのようでね」

詠矢「へー、佐天サンてそういうの集めてるんだ?」

佐天「いえ、そんな本格的にじゃないですけど…」

佐天「ほら、ゲーセンとかでよく見かけるじゃないですか?えっと…『形屋 創一(カタヤ ソウイチ)』さんでしたっけ?」

真々田「ああ、それは僕のハンドルネームだね」

佐天「というわけで、今噂の真相を確認できたところです!」

詠矢「なるほどねえ…そいつはまた…あれ?」

詠矢「真々田サンのハンドルって『御形屋』じゃなかったでしたっけ?」

真々田「改名したのさ。『御』の字に驕りを感じてね。自戒のためさ」

詠矢「はー、そいつはまた殊勝な心がけで…」

真々田「反省を形に残しておかないとね」

佐天「そういえば…お二人はお知り合いなんですか?」

詠矢「まあ…いろいろあってね」

真々田「いろいろだね」

佐天「…いろいろですか」

佐天「…」

納得しかねる佐天。だが、これ以上追求することも出来ない。

佐天「あ…そうだ。詠矢さん」

佐天「ちょっと、お話したいことがあるんですけど…」

詠矢「ん?今から、かい?」

佐天「はい。お忙しいですか?」

詠矢「えと、忙しいってわけじゃないけど…」

真々田「僕のほうはいいさ。細かい話はまた後で聞こう」

佐天「あ、すいません」

詠矢「ありがとうございます。んじゃ、また来ますんで」

真々田「うむ。またね」

詠矢「じゃいこうか、佐天サン」

佐天「はい!」

二人は店を後にした。

真々田「…ふむ」

真々田「ここは、リア充爆発しろ、とでも言うところかな?」

そう呟いた直後、エンジェランが台所から戻ってくる。

真々田「…」

真々田はその姿をじっと見る。

エンジェラン「…なんでしょう?」

真々田「いいさ、僕には君たちこそがリアルだ」

エンジェラン「ありがとうございます」

人形は優しく微笑んだ。

(とある公園)

詠矢「んで、またこの公園ですか」

佐天「あはっ、なんか定番になっちゃってますねえ」

詠矢「んで、話ってのはなんだい?」

佐天「えと、ですね」

佐天「あれから、またシステムスキャンに行ってきたんですよ」

詠矢「ほうほう。そんで、結果はどうだい?」

佐天「…能力が正式に認定されました」

佐天「レベル1の空力使い(エアロハンド)だそうです」

詠矢「おお!そいつはよかったなあ!」

佐天「手の周りの空気を制御するだけの能力ですけど…」

詠矢「いやいや、立派なもんだぜ」

詠矢「今回はそのおかげで助かったんだしなあ!」

佐天「なんかそうみたいですね。あんまり実感ないんですけど…」

佐天「私はただ、必死だっただけで…」

詠矢「それがよかったんじゃねえの?」

詠矢「俺はあのとき、迷ってた」

詠矢「何も考えずに突っ込めば、十分対処出来たろうにねえ」

佐天「あ、それって、私が何も考えてないってことですか?」

詠矢「え?…いやゴメン、そういうわけじゃ…」

佐天「ふふっ、わかってますよ」

にっこりと微笑むと、佐天は向き直り詠矢の顔をじっと見る。

詠矢「…なにかな?」

佐天「私も能力者になれました…詠矢さんのおかげです」

佐天「なんてお礼を言っていいか…」