男「腹減った…」(21)

男「ねえ、何か作ってよ」

母「お腹がすいたんだったら私のおっぱいを飲むといいわ!」ピュッピュー

母「ほ乳瓶に入れてあげるから飲みなさい」

男「またかよ、しょうがないなあ」チュッ

母「欲しい時はいつでも出してあげるからね」

男「おかわり」

母「任せて!ハアッ」

母「出ないわね…ハアッ!」ギュー

男「出ないな」

母「もう10日間も出しっぱなしだから枯れ果ててしまったんだわ」

男「そうだよ。もう10日間も…」

男「どうしたんだよ、最近全然料理作ってくれないじゃん」

母「暑いからね」

男「扇風機付ければ?」

母「扇風機だって電気代がかかるのよ」

男「年中付けっぱなしの冷蔵庫に比べれば安いだろ」

母「それはそうだけど…」

男「じゃあ俺が料理作るよ」

母「火なんて使って大丈夫なの?」

男「何度か爆発が起きるかもしれないけど、きっと大丈夫」

男「冷蔵庫には何があるのかな」

母「開けるな!」バッ

男「え?」

母「この冷蔵庫を開けたら…夜中に包丁を持った女が現れ…」

母「あなたを人の千切りにしてしまうのよ!」

男「ええーっ!」

母「だからここは開けちゃダメよ」

男「それなら戸棚を…」

母「ダメ!」

母「この戸棚を開けると夜中に包丁を持った女が現れ、あなたを人の輪切りにする!」

男「おい。まさか…」

母「ギクッ!」

男「まさか!?」

ドンッ

母「キャ!」ドタンッ

男「あーっ!空っぽだ!」

母「出不精で 買い物行かず 食材が ついに無くなり 冷蔵庫カラ」

男「短歌詠んでる場合じゃないだろ」

母「だって暑くて出かける気がしないんだもーん!」

男「行けよさっさと。買い物」

母「あなたが行きなさい」

男「俺だって行くのメンドクサイよ!」

母「私は行きたいけど暑くて行けないからあなたに頼んでるのよ!ただのメンドクサがりと同じにすんな!」

男「ごめんなさい!俺、買い物行ってきます!」

商店街

男「適当に惣菜でも買って帰ろう」

肉屋「いらっしゃい!」

男「豚カツある?」

肉屋「ある、けど売らない」

男「何だ?ナメてんのか?」

肉屋「今日はメンチカツの特売日だからね」

肉屋「どうせ君んちの人間は特売品ばかり買い漁ってるんだろうからね」

男「俺が貧乏人だってのか?」

肉屋「今日は起こりっぽいぞ。どうしたんだ」

男「別に」

肉屋「1000円でお釣りは…えっと、ひふみ…」

男「いつもは暗算してんだろうが」イライラ

肉屋「600円のお返しです。まいどあり!」

男「ふざけんな糞肉屋が。死ね」

うおおおお!

男「?」

本屋「おめでとうございます!4等でございます!」

男「よっ。本屋兼商店会会長」

本屋「むむっ、お前は男じゃないか。一昨年俺の服装を笑った上に1等を当てやがった…」

男「俺も福引きやってもいいかな?」

本屋「フフフ…今回はハズレ玉を2倍に増やしてあるぞ」

男「面白い…」バキボキ

本屋「さあ来い!」

男「うおおおお!」ガラガラガラ

本屋「たのむ…外れてくれ…」

コトッ

男「金玉が出たぞ。ポロンってな」

本屋「何だって!?」

本屋「おおっ!金の玉だ!」

本屋「おめでとう!ほらよ、6等だ」

男「えっ…6等…」

本屋「ウプププクククククーッ」

男「何も当たらないよりはママシだ」

本屋「賞品はこれクッハハハハハ!もらっとけアーッハッハッハハガァッ入れ歯が!」

男「何が入ってるんだ?」

男「結構でかい割には軽いな」

男「タオルとかかな…」

妹「あっ、男!」

男「妹!」

妹「まだ親離れできてないの?」

男「それいつも第一に聞くよな。悪いが俺は実家を離れる気はない」

妹「そうでちゅか」

男「一体お前が商店街に何の用だよ」

妹「ただ近道だから歩いてただけ」

男「どこに行くために?」

妹「どこって…」

男「昼飯でも食べに行くのか?」

妹「いや、別に」

ピラッ

男「何か落ちたぞ」

男「うなぎのうな太郎半額券?」

妹「返して!」

男「まさかこれを一人で…」

男「俺も連れて行け!」

妹「誰が!」

男「これやるから」

妹「え?」

男「福引きの賞品はなんだけど、大した物じゃなさそうだからいいや」

妹「いいの?まだ開けてもいないのに」

男「……!いいんだ!あんな嫌味なジジイにもらった物なんか!」

男「それより早くうな太郎に行こう!」

うな太郎

妹「何頼む?」

男「俺は天丼でいいや」

妹「うなぎの店で、天丼!?」

男「天丼が食べたいんだからいいじゃねえか」

妹「あそう。じゃあ注文するね。すいませーん」

店員「はい」

妹「私はゴマ味噌鰻重で、この人が天丼です」

店員「チッ…」

男「あと、味噌汁を追加で」

店員「チッ…はい、かしこまりました」

妹「めっちゃ嫌そうだったね」

男「ったく、外に出れば嫌な奴だらけだぜ」

妹「誰のこと言ってんの?」

妹「じゃあ、また今度」

男「お前もたまにはうちに帰ってこいよ」

男「さて、これが悪くならないうちに俺も帰るか」

妹の家

妹「あー暑い暑い、エアコン」ピピー

妹「暑い暑い暑い」ガチャ

ファァー

妹「あー、暑いときの冷蔵庫ダイブは天国だ」

妹「……ところで…」

妹「男にもらったこれは何だろう」

妹「開け口てあるからここから開ければいいんだよね」ピリ

妹「…あれ…開かない」グッグッ

妹「そうだハサミで…」

カシャーン

妹「ハサミが持てない!」

妹「だったら踏んづけてやる!」ガン

ブスリ

妹「イッター!」

男「ただいまー」

母「おかえりー」

男「今日さ、商店街で妹に会ったんだ」

母「妹だと」

男「それで二人で昼飯食べて来たんだ」

母「それだけだろうな」

男「それだけだよ。どうかした?」

母「ふーん」サワサワ

男「ちょ、ちょっと」

母「ふーん」クンクン

男「やめろよ!母親のくせにキモいな!」

母「異常は無いみたいね」

男「母ちゃん最近おかしいよ。妹の話をしただけでそんな顔を…」

母「してないわよ」ニッコリ

男「言っておくが俺、妹にエロいことなんてしてないからな」

母「そんなこと気にしてないわ」ニコニコ

男「それにな、俺はいつも性欲に溺れてる訳じゃないんだぞ」

母「はい、もうその話はおしまい」

母「男、いいところに帰ってきたわね。これ、クリーニング屋に持って行ってくれる?」

男「母ちゃん行ってこいよ」

母「私はね、これから買い物行ってくる。だから男はクリーニング屋に」

男「字余りだな」

クリ屋「お母さんの様子がおかしい?」

男「そうなんだよ。どうも俺と妹が付き合ってると思ってるらしい」

クリ屋「それはその、嫉妬じゃろう」

男「嫉妬?」

クリ屋「そうじゃ。きっと鏡に映った自分の姿に絶望しているんじゃ」

男「そうなのかな」

クリ屋「このセクシー美女写真集を目につくところに置いておくといい」

クリ屋「これが破り捨てられていたら間違いなく嫉妬しているぞ」

男「クリさん、こんなの買ってたの?」

クリ屋「皆には内緒じゃぞー」

妹「あっ、いた!」

男「うわっ妹!?」

男「クリさん、これ返すよ!」ポイ

クリ!「わっ!み、見るなー!」カクス

妹「男、あの賞品のことなんだけどさ」

男「おう」

妹「どうしても箱が開かないんだよね」

妹「だから返す」

男「いらないって」

クリ屋(あの箱はもしや…)

妹「いいから」

クリ屋「おい」

クリ屋「その箱は見覚えがあるぞ」

クリ屋「確か肉屋に置いてあったな」

男「肉屋だと」

クリ屋「彼に聞けば何か分かるかもしれん」

男「そうか、ありがとう」

肉屋「知らない、そんな箱!」

男「お前が持ってたとクリ屋が言ってるんだ」

肉屋「あのじいさんの言うことはデタラメだ!」

肉屋「この間もトイレにタオルを流すと排水管が掃除できると聞いてやってみたら…」

肉屋「トイレが詰まって家が水浸しになったんだ!」

肉屋「だからあいつの言うことは信じたらダメだ!」

肉屋「それにその箱のことなら本屋のほうがよく知ってるはずだ!」

男「なぜそう思うんだ?」

肉屋「…」

男「本当のことを言ってくれ」

肉屋「実は…」

男「呪いの箱?」

肉屋「そうなんだ。あの箱を棚に飾り始めた途端、家族に次々と不運が訪れたんだ」

肉屋「母は交通事故で死に、父の会社は倒産し、兄は骨折し、俺も財布をすられた」

肉屋「それだけじゃない。その箱が本屋の手に渡ると、近くに別の本屋ができ、彼の店の売り上げはどんどん落ち込んでいったんだ」

男「そんな箱、捨てればよかったじゃないか」

肉屋「捨てたけど、しばらくするとまた棚に箱があったんだ」

男「でも、自分が持つのが嫌だからって本屋にあげるなんて酷い奴だな」

肉屋「しょうがないだろ」

男「ちなみにお前は誰からもらったんだよ」

肉屋「元々は母が持っていたんだ」

男「お母さんが?」

肉屋「ああ。神社でもらったお守りなんだってさ」
男「お守りだって?」

肉屋「そうみたいだ。実際、母が持っていた頃はいいことばかり起きていたんだぞ」

男「ふーん」

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