提督「なあ北上ー」

北上「なにー？」

提督「今日だけでいいからさー」

提督「髪、おろしたまんまじゃダメ？」

北上「んー……」





北上「いいよー」

提督「よっしゃ！」

提督「油断していた」

提督「まさか髪をおろしただけで、ああも印象が変わるとは」

提督「正直、脳が揺すられた」

提督「ノーガードのところに強烈右ストレートだ」

提督「カメラはどこへやったかな」





大井「見ましたね」

提督「出ましたね」

提督「いつもどこから湧いてくるんだ」

大井「知るかバカ」

大井「そんなことより北上さんです」

大井「ついにあの隠された魅力を知ってしまいましたね」

提督「知ってしまいましたよ」

大井「知ってしまいましたか」





大井「死んでもらいます」

提督「待った」

大井「いいですか提督」

大井「私は北上さんの魅力が」

大井「私以外に知られることに我慢がなりません」

大井「私だけが知っていればいいんです」

大井「だから隠さずにいられないんです」

大井「お分かりですか」





提督「覆いっち」

大井「黙れ」

大井「そういえば」

大井「球磨姉さんと多摩姉さんが浴衣を着た時も」

大井「いやらしい目で見てましたね」

提督「いやらしいて」





大井「汚らしい目で見てましたね」

提督「そうじゃない」

大井「何ですか、ギャップとかそういうのがお好みですか？」

提督「むしろ嫌いな奴がいるのかと言いたい」

提督「よく知るはずの人が見せる意外な一面」

提督「実にヨイ」

大井「理屈は分かりますよ」





提督「北上」

大井「心で理解しました」

提督「分かったんならゲラウトヒア」

提督「今、心は北上様一直線」

提督「お前さんの相手してる暇はナッシングよ」



大井「…………。さいですか」

大井「言っときますけど写真だけですよ」

大井「それ以上は魚雷で海の藻屑です」

大井「河豚に喰わせます」

提督「正岡子規もドン引きだわい」


大井「ま、そこは信用してますよ」

大井「提督にそれ以上なんて無理でしょうから」





提督「ひとこと多いっち」

大井「黙れ」

大井「……ふんっ」

翌日





大井「死ぬがよい」

提督「命だけはお助け下され」

大井「昨夜北上さんが言っていました」

大井「提督に手ひどく辱められたと」

大井「無残にくたばる覚悟はよろしいですか？」


提督「ちゃうねん」

提督「北上には指一本触れてないねん」

提督「ただ駆逐艦に情報をリークして」

提督「輪形陣でワッショイしただけやねん」





大井「いよいよもって死ぬがよい」

提督「それなくね？」

提督「まあまあ大井さん、ちょいとこれを見とくれやす」

提督「その時に撮った写真だ、こいつをどう思う？」

大井「……これは……」


提督「これは駆逐艦に囲まれて戸惑う北上」

提督「こっちは褒め殺しの集中砲火で大破炎上する北上」

提督「これがヤケクソになって阿武隈を道連れにする北上」

提督「どれもなかなか結構イイ顔してるじゃないの」


提督「どうかお納めを、お代官様」

提督「山吹色の北上様でございます」





大井「むむむ……」

提督「何がむむむだ！」

大井「……確かに、私と二人きりの時の北上さんは」

大井「こんな表情を見せてくれません」


大井「仕方ないですね、この写真に免じて」

大井「今日のところは大目に見ましょう」

提督「許された！」





大井「またやったら『畝傍』にしますけど」

提督「執行猶予だった！」

提督「まあいいや。それはそうと」

提督「今日は大井さん、髪型が違うんだな」

提督「さては北上の真似と見たが」

大井「そんなところです」


大井「……変でしょうか？」

提督「いやいや、よく似合ってる」

大井「それはどうも」










大井「…………」

提督「？」










大井「ふんっ」ｹﾞｼｯ

提督「い゛っだ！！？」




おしまい。

舞鎮アンソロの髪ほどけ北上様にティンときて勢いで書いたら、いつの間にか大井っちSSになってました。
ついでに『おおいさん』とかいう怖い話まで見つかりました。どういうことなの……

読んでいただいてありがとうございました。