学生1「最近アイドルにハマっててさ」学生2「マジかよ」みく「!」 (31)



ガタンゴトン……ガタンゴトン……



学生1「いや、それ……偶然PV見……らさ」

学生2「偶然て。んなわけ……かよ」

学生1「すんご……わいい子がいてさ~、もう……め惚れしちゃって」

学生2「なに、誰よ」



みく(……前川みくです。電車に乗っていたら、近くに立った高校生たちが、アイドルの話を始めました)

みく(ついつい、聞き耳を立てちゃうのにゃ……)



学生1「じゃあヒントな」

学生2「ヒントとか……から、普通に教え……」

学生1「ものっすご……かわいい」

学生2「おい」


みく(なんのヒントにもなってないにゃぁあああ)

みく(だいたいアイドルはみんなかわいいにゃ!)

みく(……あ、でも一応、クールやパッションでなく、キュート系ってことかな)




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学生1「あと、すっげーネコ……い子だよ」

学生2「アイド……の中でネコっぽい……がいるのは」


みく(!!)

みく(きたにゃ!)

みく(ねこっぽい! ねこっぽいって!!)

みく(ねこっぽいアイドルと言えば!)


みく(そう)



みく(みくにゃ)




学生2「けど……の子……魚食えないんだぜ」

学生1「おま……のが詳しいじゃねーか!」


みく(……う、うぐぅ)

みく(やっぱりおさかな嫌いなのは、知れ渡ってしまっているようにゃ……)



学生2「いや、だっ……み……ちゃん、かわいいから仕方ないだろ」

学生1「だよな。み……ちゃんかわいいからな」


みく(うにゃーー!!)

みく(照れるにゃ!)

みく(こんな近くにいるのに、気づかず褒められてるこのシチュ!)

みく(嬉しいけどめっちゃ恥ずかしい!)


みく(ば、バレてないよね? みくがここにいるって! ドッキリとかじゃないよね!?)

みく(今は猫耳してないけど、眼鏡かけてるけど、もっとちゃんと変装しといた方がよかった!? バレて騒ぎになったら大変だよね!? サインくださいとか一緒に写真とってくださいとか殺到したら!)




学生1「あの気まぐれそ……な雰囲気がさ」

学生2「でもプロ意識は……いんだよな」


みく(うにゃにゃにゃにゃ……!)

みく(こ、これは、これはもう)プシュー




学生1「いやーほんとかわいいよな」




学生1・2「「美希ちゃん!!」」






みく「…………へ?」




学生1「どこでもすぐ寝ちゃうんだろ?」

学生2「そうそう。あのあくびが、またかわいいんだ」

学生1「生っすかでも、生放送なのに寝るとか自由すぎて。ネコか! って」

学生2「めっちゃ見てんじゃねぇかお前、なにが偶然だよ」

学生1「いやもう美希ちゃんは仕方ないだろ!」

学生2「まぁな……ちょっと別格だよな。オーラが違うっていうか、かわいさの次元が違うっていうか」

学生1「あれで生魚嫌いなんだもんな」

学生2「おにぎり波でこっちをめっちゃ磯臭くしてくるのにな」

学生1「おにぎりで餌付けしてぇー」

学生2「ははは! なぁ今度のライブさ」

学生1「お、いいぜ! 一緒に」


ははは! あはははは!






みく(……)


みく(………………)





みく(な ん で にゃ!!!!!!)






……


みく「たのもぉーー!!!」バァン!


響「うわっなんだ!?」

小鳥「ピヨッ!?」


みく「というわけで、みくは今、765プロさんの事務所に乗り込んだところにゃ」

響「いやごめん、なにがというわけなのか知らないけど、いきなり突入してこないでくれるか?」

小鳥「えっと、猫系アイドルとして売り出し中の、前川みくさん……よね? うちの事務所に、なにか用かしら?」

みく「よそよそしい態度はやめるにゃ!!」


みく「みくは、みくは戦わなくてはならないのにゃ。どちらがより猫チャンらしいアイドルなのかを決めるために!!」

響「えぇ……」

小鳥「うぅん……」




響「ねこ吉は飼ってるけど、別に自分、猫系アイドルってわけじゃないぞ」

みく「響チャンじゃなくて!!!」

小鳥「響ちゃんは動物全般だものね。野生児系っていうか……」

響「その言い方はちょっと」

みく「んじゃなくて!! みくが戦うのは、そこで! そこでぐーすか寝てる!!」



美希「……zzZ」


みく「美希チャンなの!!」

美希「……むにゃ…………なの?」




響「美希ー、美希にお客さんだって」ユサユサ

美希「うぅん……あと五時間……zzZ」

響「だってさ。あと五時間待ってもらえるか?」

みく「長い!!!!!」


みく「待たせすぎでしょ! 普通そこは五分とかだにゃ!!」

美希「うう……うるさいの…………ふぁああ……あふぅ」

みく「起きたにゃ! さぁ美希チャン! 勝ぶぇっ」ベチン



みく「ぺっ、ぺっ、なにか、投げつけられたにゃ……」ヒョイ

ハム蔵「ヂュイ」

みく「ねずみ!!!!」

響「ハムスターな」




響「美希はハム蔵を投げないで」

美希「ごめんなさいなの……谷間に入ってたからつい」

響「ハム蔵は美希の谷間に入らないで」

ハム蔵「ヂュイ?」

みく「ね、ねずみを狩って見せつけてくる……なんという猫チャンっぷり」

響「ハムスターだからな」



みく「うぐぐ、これは負けてられんにゃ……美希チャン! 今すぐみくと勝負するにゃ!」

美希「あふぅ……しょうぶ?」

小鳥「どっちがより猫ちゃんっぽいか、競いたいんですって」

響「そもそも別に、美希はそんなに猫系アイドルって枠でもないと思うんだけど」

みく「関係ないにゃ!! ねこっぽいアイドルの話題を美希チャンに奪われて、みくのプライドはいたく傷ついたの……だから、みくは戦うよ。猫系アイドルの誇りを取り戻すために!!」

美希「……ふぅん」




響「なぁ、無理に相手しなくていいぞ。自分たちがうまくあしらっておくから」

みく「あしらうって!!」

小鳥「美希ちゃんはライブだけじゃなくてドラマに舞台に映画に、って、最近大忙しだものね。ゆっくり寝てていいわよ」

みく「うぐぐぅ……みくはバラエティばっかりなのに」

美希「……いいよ」

響「ほら美希もこう言ってるし帰った帰っ……えっ?」

小鳥「み、美希ちゃん? 今、なんて」

美希「いいよ、って言ったの。……その勝負、よく分かんないけど、受けてあげる」

響「ほんとにいいのか? なんだかとっても面倒臭そうだぞ」

美希「ミキの安眠をボーガイしてくれちゃったのって、そこの人でしょ」

みく「そ、そこの人……そうだけど」

美希「じゃあ、教えてあげないとね」



美希「ミキの眠りを妨げる者が…………どんな末路を迎えるのか」ユラァ

響「こわいぞ」

みく「ふ、ふふ……そう来なくっちゃ……!!」




小鳥「でも、勝負の形式はどうするの?」

響「そうだよ。猫っぽさって言っても、それをどう計るんだ」

みく「それはこの! アキえもん特製『猫チャンちから測定装置』で公平にジャッジするにゃ! はい」

小鳥「あ、私が持つのね」

響「猫ちゃんちからってなんだ」

みく「それじゃいくよ!」

響「なぁ猫ちゃんちからって」


みく「猫チャンファイト、れでぃー…………」


みく・美希「「ごーーー!!!」」




みく「さ、美希チャンもこれをつけるのにゃ」

美希「これ、ネコミミ? いいの?」

みく「勝負はフェアじゃないと意味がないのにゃ!」

美希「わかったの。敵に塩おにぎりを贈る、ってことだね」スポッ

みく「そういうことにゃ!」

小鳥(ネコミミ美希ちゃん可愛いわぁ)パシャパシャ





みく「先行はもらったにゃ! みくのターン!!」


みく「にゃんっ♪ にゃんっ♪」フリフリ

響「こ、これはっ」

小鳥「知っているの響ちゃん!?」

響「古来中国に端を発する、ねこダンス!! 元々はある部族の使う、猫の動きを取り入れた武術だったが、長い年月を経て今では可愛らしい踊りとしてごく一部に残る!!」

響「猫のしなやかさを極限まで取り入れているため常人には使いこなせない拳法だが、前川みくの異常な体のしなやかさが、その不可能を可能としているッ!!!」

小鳥「確かに体やらかいわねー」

みく「にゃんっ♪(なんかおかしな解説つけられてるにゃ……)」




美希「それじゃー、ミキもいくね?」


美希「あざとく♪ くるっと回って、にゃん♪」クルンッ

みく「にゃにゃっ!?」

みく(か、かわいいにゃ……あざとすぎてはなぢ出るかと思ったにゃ)タラー

小鳥「出たわ!! 猫ちゃんちから測定!!!」ピピピピピ


ピヨッ

小鳥「前川みく2220……! 星井美希…………」

小鳥「こ、これはっ」

響「どれどれ…………3800……!?」


みく「う、うそ……みくが、負けてる!?」

美希「あはっ☆ これは、トーゼンの結果なの」

みく「ぐぎぎぃ……くやしいにゃぁあ」




みく「次は歌で勝負にゃ!!!」

響「まだやるのか?」

みく「当たり前にゃ! そう簡単に決着なんてつけさせない……みくは負けないよ!!」

美希「結果は見えてるって思うなー。……あふぅ」



みく「しっぽしっぽーしっぽよー♪ あーなたーのーしっぽよ♪」

小鳥「こ、ここであえての……『しっぽのきもち』!!!」

響「どうして持ち歌じゃなく、カバー曲を……!」

小鳥「猫系アイドルとして売り出した以上、持ち歌が猫っぽいのは当然……自らの持ち歌以外の猫っぽい曲を持ち出すことで、持ち歌以外の猫っぽい曲も知っているということを……つまり、いかに根っからの猫ちゃん好きかをアピールする狙いね!」

みく「スキというかわりに しっぽがゆれるの♪」




みく(勝った! 第三部完ッ!! 美希チャンに猫曲のカバーはない!! これは間違いなく勝ったにゃ!!)



美希「恋しーくて 愛しくて 止まらない せめてこの心はー 君のもとへー」

みく「!?」

小鳥「これはまさかっ」

響「……suger sweet nightmare。……化物語、つばさキャットのオープニング曲だ!!」

みく「にゃ、にゃんだってぇーーー!!」

響「つばさキャットのヒロイン羽川翼は、ある日、車に轢かれた猫の死骸を埋めてあげたことから、猫の怪異に憑かれている……」

小鳥「美希ちゃんは猫を追って車に轢かれかけたことがあるわね」


美希「君には一瞬だとしても……私には永遠だった瞬間……」

みく(う、うにゃぁあ! すごい、せつなさが……胸をしめつけるような気持ちが伝わってくるにゃ……なんて表現力っ)


美希「云いたくて 云えなくて 恋しくて 愛しくてー…………今もあの日のまま」




響「出た! それぞれの猫ちゃんちからは……」

ピピピピピ


ピヨッ

小鳥「前川みく『しっぽのきもち』…………5628!!!」

響「対して美希の『suger sweet nightmare』は………………4071!!」

みく「っしゃ!!」

美希「むー」

小鳥「やっぱり、みくちゃんの方が直接的な猫要素が強かったからかしら」

響「だと思うぞ」

みく「……けど、総合点ではまだ美希チャンのが上……」




みく「こうなったら最後の勝負はっ」

貴音「るぅる無用のあいどるですまっち」

みく「んなことしないにゃ!! 猫チャンっぽい味覚対決!!!」

響「誰だ今の」

小鳥「面妖ね」




美希「……zzZ」

みく「って寝てるし!!!!!」




美希「あふぅ……なんかもう、ミキ、飽きてきちゃったの。……そこの人の勝ちでいーよ」

みく「うにゃぁあ……結局名前すら覚えられてないにゃ……」

響「気まぐれだなぁ」


小鳥「こ、これは……美希ちゃんの猫ちゃんちから……6000……8000……なっ!? 一万!!! まだまだ上がるわ!!!」


ピピピピピ



ボンッ

小鳥「きゃあ!」

響「あーあぴよ子壊したー」

小鳥「えぇえええ!? わ、私のせいぃ!?」




みく「納得いかないにゃぁあ!! みくは、みくは……猫系アイドルとして、いつまでたってもデビューさせてもらえないからって、ここから移ったのに……なんで美希チャンは猫っぽいアイドルとしてデビューできたんだにゃ!!!」

響「961に来た頃の美希みたいなこと言ってるぞ」

小鳥「美希ちゃんも、いつまで経ってもデビューさせてもらえないって、この事務所を飛び出したこと、あったわね」

みく「え…………美希チャンも……?」

響「最初、961でデビューしたでしょ? 自分や貴音と一緒に。あれ、実は765から家出したのが原因なんだってさ」

みく「家出……って」

小鳥「今はこうして、二人を引き連れてうちに戻ってきたけれど、いろいろあったわね」

響「ほーんと、プロデューサーは大変そうだったぞ。美希のワガママに振り回されて」

小鳥「あら? 響ちゃんだって初めはプロデューサーさんのこと、ヘンタイプロデューサーとかってさんざんに」

響「うぎゃああ!! その話はなし! あの頃のことは忘れてよ!!」

小鳥「文字通りの黒歴史ね」

みく「…………そっか。美希チャンも、大変だったんだ」

美希「……zzZ……はにぃ……」




みく「はぁ……しょーがない。今日のところは、みくの負けにしといてやるにゃ」

響「帰るのか?」

小鳥「みくちゃんも、いつでも戻ってきていいのよ?」

みく「ううん。……みくには、今のPチャンがいるから」

小鳥「……そう。元気そうで良かったわ。またいつでも遊びに来てね」

みく「次こそは負けないからにゃ!!」


美希「……zzZ」

響「聞いてないみたいだけど」

みく「なんでにゃ!!!!」


美希「…………にゃの……」












ガタンゴトン ガタンゴトン……



春香(天海春香です。ラッシュ中にブログチェックしてます)カチカチ


学生1「また、すごいかわ……イドルがさ」

学生2「お、今度は……」


春香(アイドルの話題……いったい誰の)


学生1「あの、リボ……の」

学生2「あぁ、あ……ボンの」


春香(リボン!? リボンって言いました!?)

春香(こ、これは間違いなく、間違いなくっ)

春香(今はリボン隠してるけど、眼鏡かけて帽子かぶってるけど……バレたら大変だよね。もっと変装しといたほうが良かったかな……)

春香(おーい! 春香さんはここにいますよー! みんな大好き可愛い春香さんが実は近くにいますよー!!)



学生1「かわ……さとのギャップがさ」

学生2「わかる。あのこわさ……みつきに」


春香(も、もしかして……いわゆるその…………閣下状態のこと……?)

春香(……なんか、それが人気なのは、ちょっと複雑なものが)



学生1「いやーでもほんと可愛いよな!」

学生2「あぁ、正統派だもんな! そりゃ可愛いわ」






学生1・2「「佐久間まゆ!!!!」」

春香「」






春香「な ん で !!!!!」バンッ


学生1「……」

学生2「……」


春香「あっ……」



春香ちゃんだー! わー!

サインくださーい!

写真いいですか!?


春香「わ、わ、わぁああああーーーー!?!??」






おわり。



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