【俺ガイル】八幡「由比ヶ浜、お前トイレ我慢してるだろ」 (51)

結衣「……してない」

八幡「嘘つけ。遠慮なんかすんなっていつも言ってんだろ」

結衣「うん…ごめんねヒッキー」

八幡「謝るようなことされてねーよ」

高校卒業後の春休み由比ヶ浜は交通事故に遭った。
いや、本当は俺が遭うはずだった。
由比ヶ浜の犬が交差点に飛び出した所を俺が追いかけた時に由比ヶ浜は俺を庇って車に撥ねられた。
その後遺症で由比ヶ浜は下半身不随になり車椅子生活を強いられ今に至る。

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結衣「ヒッキー…ごめんね」

八幡「だから謝るなって」

結衣「うん…ごめんね」

八幡「だから…」

結衣「あ!ごめ…」

八幡「また」

結衣「……。ありがとねヒッキー」

八幡「どういたしまして」

俺と由比ヶ浜は県内の同じ大学に進学して付き合っている。更には同棲している。
卒業式の日に俺は由比ヶ浜に告白されたが、俺はその時の返事を保留にした。
後ろの陰から雪ノ下が見ていたのに気付いていたからだ。
俺は朴念仁ではない、それどころか勘は良い方だ。
雪ノ下の気持ちに気付いていた俺は由比ヶ浜の告白を保留した。雪ノ下の口から雪ノ下の気持ちを聞いてから両方とも断るつもりだった。

1年前 奉仕部 部室

八幡「ここに来るのも今日で最後だな」

雪乃「そうね。何故来たの?クラスの人達で集まりがあるんでしょ?」

八幡「は?行くわけねーだろ。俺はボッチだぞ?卒業アルバムの最後のページは小中と全部真っ白だった。もちろん今回も真っ白だ」

雪乃「さっき由比ヶ浜さんから告白されたでしょう?」

八幡「あぁ」

雪乃「何で返事を後回しにしたの?貴方が女の子から告白されることなんてもう未来永劫無いというのに」

八幡「お前からも聞かなきゃならないと思ったからだ。由比ヶ浜もそれを察したはずだ」

雪乃「どういう意味かしら?私が貴方に好意を抱いているとでも思ったの?自惚れないで」

八幡「……!」

雪乃「まったくの勘違いよ。見ていて恥ずかしいわ」

雪乃「消えて……もう貴方なんか見たくもないわ」

八幡「わかった……それが、お前の選んだ答えなら俺はどうこう言うつもりは無い」

八幡「でも、お前がもし困って助けが必要になったら……いつでも俺たちを頼れ。待ってる」





雪乃「ばか…ぼけなす……はちまん…」

結衣「ゆきのんから…連絡来ないね」

八幡「あぁ…そうだな」

結衣「元気かな…」

八幡「わからん…としか」

「待たない。待っても来ないならこっちから行く」
高校の時そう言っていた由比ヶ浜が今そう言えないのは自分が雪ノ下に自分の姿を見せることで雪ノ下に負い目を感じさせると思っているからだ。

結衣「私…ずるい子だった。ゆきのんの気持ち知ってたのに抜け駆けするみたいにヒッキーに告白しちゃったから…」

八幡「別に悪いことじゃねーだろ。二人で同時に『好きです付き合ってください』とか言われる方がシュール過ぎてビビるわ」

結衣「でも、あの場面を見ちゃったからゆきのんは…」

八幡「あの時雪ノ下も同じ事考えてたんだよ。だからあの場所に来た」

八幡「お前が一足早かっただけだし、その後お前は雪ノ下をそのままにしなかっただろう」

八幡「『話し合ってくる!』って話し合いどころか掴み合い殴り合いのケンカまでして鼻血出して」

結衣「あ、あれはゆきのんが嘘ついたからだし!」


由比ヶ浜と雪ノ下のキャットファイトのかいあって俺たちは和解した。
ちなみに絵に描いたようなクロスカウンターで由比ヶ浜が勝利した。
その数日後だった。俺と由比ヶ浜が事故に遭ったのと雪ノ下から連絡が来なくなったのは…

八幡「嘘ならお前もついただろーが」

結衣「うっ…それは…」


事故後に半身不随を宣告された時の由比ヶ浜の顔は今でもよく覚えている。否、忘れられるわけがない。
由比ヶ浜は泣いた、由比ヶ浜の両親も泣いた。
そして…俺も泣いた。
当然だ、あまりにも重い現実を唐突に突き付けられて平気でいられるヤツなんか居ない。
その後由比ヶ浜は俺を拒絶した。偽善者と言われヒキニートと罵倒された(そこは違うとしっかり反論した)。病室で見舞いの品を投げ付けられる事もあった。平手打ちを喰らい、もう2度と来るなとも言われた。

でも俺は由比ヶ浜に会いに行き続けた。何度拒絶されても何度殴られても俺は見舞いをやめなかった。
由比ヶ浜が俺から負い目と自分という枷を外そうとしていることを確信していたからだ。
もし立場が逆だったとしても俺は同じ事を由比ヶ浜にしただろう。由比ヶ浜も俺と同じ事をしただろう。
そして心の中では「見捨てないで欲しい」と願うだろう。
そんな彼女を見捨てるという選択肢は当然無い。

八幡「思いやりから来る嘘もあるんだろうよ。人を思いやった事が無いんでよくわらんけどな」

結衣「思いやり過ぎて私の前で手首切った人が居るくらいだもんね」

八幡「手首でも切らねーと次は果物ナイフとか鈍器のような物でも投げられそうだったんでな。戦略的思考だ」

結衣「そんなの投げないし!」

八幡「仮に投げられても見舞いはやめない。幽霊になってでも見舞いに来るまである」

結衣「怖っ!」

結衣「ゆきのんは…来てくれなかったね…」

八幡「そうだな…」

俺は事故の日に雪ノ下にも知らせようと電話をした。メールも送った。
だが雪ノ下から返事は来なかった。
その件で雪ノ下を責めるつもりはない、あいつが由比ヶ浜を見捨てたとも思っていない。
ただ来れなかったのだ。
おそらく俺と同じくらい雪ノ下は由比ヶ浜の身を案じていただろう。来れないことが俺以上に雪ノ下を苦しめていたに違いない

結衣「私…こんなになっちゃったけど…ゆきのんに会いたいや…」

八幡「………」

言葉が出なかった。
「このままでいいわけがない」そんなことはわかっている。
雪ノ下の立場を考えると…いや、俺は怖がっているんだ。3人で会うことを…

結衣「ヒッキーにお願いがあるの!」

八幡「なんだ?」

結衣「ゆきのんに会って来て」

由比ヶ浜は真っ直ぐ俺の目を見てそう言った。
普段俺に頼る時に遠慮がちになる由比ヶ浜が強く願った。

結衣「私いつもお願いするばっかりで…自分ができないからってヒッキーに頼るのは卑怯かもしれないけど…このままじゃいけないと思う!」

八幡「由比ヶ浜…もういい」

結衣「………」

由比ヶ浜にここまで言わせたのは今まで逃げていた俺の落ち度でしかない。
涙を浮かべながら訴える由比ヶ浜を見た俺が選ぶ選択肢は一つだけだ。

八幡「任せろ!なんなら雪ノ下を連れて来るまである!」

結衣「ありがとうヒッキー!」

由比ヶ浜は泣きながら笑顔を浮かべた。今の俺は人生で一番胸を張れる気がする

比企谷家

小町「お兄ちゃんおっかえり~♪」

八幡「おう」

小町「結衣さんは?」

八幡「由比ヶ浜も実家に帰ってる」

小町「なーんだ。久しぶりに結衣さんに会いたかったな~」

八幡「お前ら結構連絡取ってるだろ」

小町「バレてた!」

八幡「由比ヶ浜なら心配しなくても…

小町「お兄ちゃんが心配なんじゃん」

八幡「俺?」

小町「だからさ、何か困ったことがあったらいつでも頼ってよね!…あ!今の小町的にポイント高い?」

八幡「それ聞くのも久々だな…」

八幡「明日雪ノ下に会いに行く」

小町「そう…なんだ」

小町は戸惑っていた。小町も事情を知っているだけに当然の反応だろう。

八幡「そうだ」

小町「結衣さんはその事知ってるの?」

八幡「知ってる。というか由比ヶ浜に頼まれたことだ」

八幡「それに俺自身このままじゃダメだと思った。会わずに疎遠になることは逃げでしか無いと雪ノ下に言わなきゃならない」

小町「そっか…お兄ちゃん!頑張って!」

八幡「おう!」

小町「後東京行くんだったらお土産よろしく!」

八幡「お、おう」

その夜

プルルルル…

陽乃『もしもし陽乃だよ~♪』

八幡「もしもし、比企谷です」

陽乃『ひゃっはろ~♪比企谷くん久しぶりだねぇ~♪元気してたぁ?』

八幡「まぁ、それなりに…」

陽乃『ガハマちゃんも元気かな?』

八幡「……っ!」

八幡「えぇ…まぁ…」

陽乃『ふ~んそっかぁ~♪うん!で、お姉さんに何の用かなぁ?』

八幡「ここ1年雪ノ下と連絡が取れないので雪ノ下さんに取り次いで貰おうとお願いを…」

陽乃『なぁんだ♪てっきりお姉さんをデートに誘ってくれるのかと思ったよぉ~♪』

八幡「ええ、期待させて申し訳ないんですが違います」

陽乃『うーん、雪乃ちゃんに何の用だろうねぇ~。今更』

八幡「会って話さなきゃならんことがあるんで」

陽乃『何を話すっていうのかな?比企谷くんはガハマちゃんと付き合ってるのにねぇ』

陽乃『もしかして~!雪乃のちゃんにも手を出そうとしてるの!?ガハマちゃんと付き合ってるのに比企谷くん最低だねぇ~♪ちゃんと面倒見てあげなきゃダメだよぉ~』

ブチ切れて携帯を叩きつけそうになったのを俺は耐えた。
よく耐えたと自分でも褒めてやりたい気分だ。

陽乃『でも、他でもない比企谷くんの頼みだからねぇ~♪いいよ!雪乃ちゃんには私から言っといてあげる!』

陽乃『雪乃ちゃんの部屋の住所はメールで送っとくから!じゃあ頑張ってねぇ~♪』ガチャッ


八幡「…………」

雪ノ下に会うためとはいえあの人と話すのは嫌だった。
俺が今まで逃げていた原因の一つでもある、絶対にこういうことを言われると思ったから。
案の定さっきの会話には虫唾が走った。
考えれば考えるほど腹が立つ…
寝よう明日のために。

翌朝

小町「お兄ちゃん1人で大丈夫?」

八幡「ん?」

小町「小町がついて行ったげよっか?」

八幡「雪ノ下とは一対一で話し合わなきゃならん。気持ちだけ貰っとくわ」

小町「わかった!がんばって!」

八幡「ありがとな。小町」

小町「いってらっしゃい!」

八幡「おう、行って来る」

家を出たら何と葉山が待っていた。
いけすかないヤツがいけすかない高級車と一緒に待っていた。

葉山「久しぶりだな比企谷」

八幡「何で俺ん家の前にお前が居るんだよ」

葉山「雪乃ちゃんに会いに行くんだろ?乗れよ」

八幡「何でそのこと…いや、聞かなくても誰から聞いたかわかるわ」

こいつの車に乗るのは癪だったが東京まで行くのに足になってくれるというのだから無碍にもできん。
俺は慎んで足代を節約させてもらうことにした。

葉山「結衣の事は聞いてるよ」

八幡「そうか…雪ノ下の姉ちゃんから聞いたのか?」

葉山「それもあるけどね。前にも言っただろ?俺の父は陽乃さんの家の顧問弁護士だって」

八幡「あぁ、そうだったかな」(陽乃さんの…ね)

葉山「君達が遭った事故にも関わったみたいで話が俺の耳にも入ってくるんだ」

八幡「なるほどな」

葉山「結衣と付き合ってるんだってな」

八幡「まぁな」

葉山「君は凄いな…」

八幡「…………」

葉山「俺には誰かのために生きるなんてできないから…」

八幡「信号…青だぞ」

葉山「!」

八幡「話するのはいいけど運転には集中しろよ。事故とかマジで笑えねぇから」

葉山「すまない…」

八幡「一つ言っとくが俺は由比ヶ浜の為に生きてるわけじゃない。ましてや同情なんかで由比ヶ浜と付き合ったりしていない」

葉山「君ならそう言うと思ったよ」

八幡「自分はどうなんだ?こんな高級車乗り回して、勝ち組街道はさぞ心地いいだろうな」

葉山「他の人にはそういう風に見えるか」

八幡「そういう風にしか見えん。すまんな価値観が矮小なもんでね」

葉山「……………」

八幡「三浦は…どうしてる?」

葉山「優美子とは卒業式の日以来会ってないんだ」

八幡「そうか」

葉山「優美子と会ったのか?」

八幡「俺も由比ヶ浜が入院してた時以来会ってねぇ」

八幡「三浦も由比ヶ浜に拒絶されても引かなかった口でな…」

葉山「…………」

八幡「病室前の廊下で三浦が泣いててよ。手から血が出てたんだ」

八幡「おおよそ由比ヶ浜に物を投げ付けられたんだろうな。その時少し話した」

葉山「どんな話を?」

八幡「まぁ由比ヶ浜関連の話だわな」

「結衣のこと。頼んだし!絶対!絶対に見捨てんなよ!」
胸倉を掴まれ、そう言われたのは鮮明に覚えている。
主に印象に残っているのは化粧の崩れた顔なんだが…

葉山「優美子は俺なんかよりずっと友達思いだからな…」

八幡「あぁ、素直に友達になりたいと思ったよ」


葉山「着いたぞ。このマンションだ」

八幡「おぅ、送ってもらってすまんな」

葉山「比企谷」

八幡「なんだよ」

葉山「雪乃ちゃんは心を閉ざしてる。助けられるのはお前しか居ない」

八幡「どうだかな」

葉山「俺はお前が嫌いだ」

八幡「あぁそーかよ。俺もお前が嫌いだ」

葉山「でも…」

八幡「?」

葉山「誰よりもお前を信頼している。頼んだぞ比企谷」

八幡「チッ…うるせぇよ」


俺は葉山の言葉に面食らった。
俺自身雪ノ下と上手く話せるのか自分でも不安だったが葉山は俺にはそれができると言わんばかりの顔をした。
葉山隼人は俺の中でますます気に入らないヤツになったが、おかげで自信が持てた。



雪乃『はい、雪ノ下です。』

意を決して呼び鈴を押すと高校の時と変わらない雪ノ下の声が聞こえた。

八幡「俺だ」

雪乃『折田さん?知り合いにそんな人は居ないのだけれど。新聞の勧誘かしら?間に合ってます。』

八幡「相変わらずだな…。カメラ付いてんだろ」

雪乃『その腐った目は比企谷君ね。間に合ってるわ』

八幡「おい」

雪乃『はぁ……。姉さんから聞いてるわ、入って』

そう言って雪ノ下は玄関の鍵を開けた。

八幡「悪いな。いきなり押しかけて」

雪乃「いいえ、大して用事も無かったし構わないわ」

雪乃「紅茶でいい?」

八幡「あぁ……お構いなく」



雪乃「どうぞ」

八幡「ありがとう」

雪乃「!」

八幡「あ?」

雪乃「あの比企谷君が素直にお礼を言うなんて……何か良くない物でも食べたの?」

八幡「お前は変わってないと思ったが失礼さだけはパワーアップしてるな。普通に傷付いたわ」

雪乃「それで…何の話があって来たのかしら?」

八幡「……そんなもん言うまでもないだろ」

雪乃「…………」

雪ノ下はティーカップに口を着けたまま硬直した。
そして少し間を空けて言った。

雪乃「わからないわ……言ってもらわなければ…わからない」

違う。
言わなければわからないんじゃない、言って欲しくないだけだ。
雪ノ下が俺に口撃してるのは無意識に本題から逃げているからだ。

八幡「由比ヶ浜の…俺達のことだ」

雪乃「…………」

雪ノ下は固まって返事をしない。

八幡「単刀直入に言う、由比ヶ浜に会いに来てくれ。」

雪乃「…………よ。…」

八幡「?」

雪乃「…………無理よ」

震える声が聞こえた。

雪乃「会えるわけ…ないじゃない…」

雪乃「由比ヶ浜さんを撥ねた車には……私が乗っていたのだから…」

そう思うのは当然だ、普通ならどの面提げて会えるだろうか。
雪ノ下の言っていることとその気持ちは理解できる。
だが、はいそうですか と退くわけにはいかない。

八幡「そんなことはわかってる。」

雪乃「なら、なおさら会えるわけないわ…」

八幡「それでもだ。会わなきゃならないんだよ」

雪乃「………随分と…勝手なことを言うのね。」

雪乃「貴方にとって…由比ヶ浜さんが1番大切な人で…由比ヶ浜さんにとって…貴方が1番大切な人で…2人は付き合っているのに…由比ヶ浜さんの身体の自由を奪った私に会えだなんて……勝手よ……」

雪乃「勝手で……残酷だわ……私の気持ちを知ってるくせに」

「私の気持ちを知ってるくせに」この言葉が俺の胸に突き刺さった。
雪ノ下の中ではあの事故も俺と由比ヶ浜の事も1年前から止まったままだったのだ。
恋人関係である俺と由比ヶ浜を見るだけで雪ノ下は深く傷付くことだった。それにまして奪ったと言うにはあまりに間接的であるものの半身不随となった由比ヶ浜の姿は雪ノ下に自責の念を植え付ける。

それでも…

八幡「それでも…」

雪乃「?」

八幡「それでも俺は奉仕部だったあの頃が…」

八幡「お前と由比ヶ浜と居る時間が…」

八幡「好きだ」

雪乃「…………」

八幡「取り巻く環境が変わってしまっても…手放しで喜べなくても…」

八幡「それでも俺は…俺と由比ヶ浜は…3人で居る時間を取り戻したい…そのためなら…なんだってする!」

雪乃「…………」

雪ノ下は言葉を発さない。
喋ることができないのかもしれない。
下を向いているが涙が零れているのがわかる。
かく言う俺も涙腺ガバガバだ。

しばらく俺と雪ノ下は涙を流しながら無言で過ごした…

八幡「今日は帰る…」

雪乃「そう……」

八幡「雪ノ下…」

雪乃「……なに?」

八幡「いきなり3人で仲良くしようなんて言わない」

八幡「でも…由比ヶ浜には会ってやって欲しい」

八幡「あいつは…由比ヶ浜はこの1年間ずっとお前に会いたかった…でも会いたいと言えなかった。それはお前の気持ちを由比ヶ浜はわかっていたから…」

八幡「でも由比ヶ浜は勇気を出して俺に言った…いつも俺に頼るのを遠慮がちな由比ヶ浜が一歩踏み出した」

雪ノ下「………」

雪ノ下は下唇を噛み締めて涙を耐えている。それでも涙は流れていた

八幡「お前の気持ちを知っててこんな事を頼むのはお前の言う通り勝手で残酷なことだ…」

八幡「それを承知で俺は我儘を言う」

八幡「由比ヶ浜の勇気に応えてやってくれ」

そう言い残して俺はその場を後にした。

マンションを出ると葉山がまだ待っていた。正直泣いてて腫れた目をこいつに見られたくなかったが乗せてもらうことにした。

八幡「結構長い時間居たと思うが、ずっと待ってたのか?」

葉山「俺は朝まででも待ってるつもりだったよ」

八幡「そうか、悪いな」

葉山「いいや、俺にできることはこれくらいしか無かった」

ここまでの足代もバカにならないんでかなり助かるんですが。
と言いたい所だが葉山だから言わないことにした。

葉山「なぁ、比企谷」

八幡「ん?」

葉山「腹減らないか?朝から何も食べてないから俺かなり腹ペコなんだ」

八幡「たしかに…」

葉山「飯食いに行かないか?」

葉山と一緒に飯を食うなんてごめん被る。
が、奢ると言われたので手の平を返した。
この後食事の時も車内でも葉山は雪ノ下の事について聞いてこなかった。でもどこか安心しているような顔をしていた気がする。
家に帰った俺は疲れてそのまま寝てしまった。

八幡「…………んん」

八幡「今何時だ……」

八幡「もう昼の1時かよ…」

雪ノ下と話して、あれで良かったのだろうか…
とにかく由比ヶ浜に報告しなければ。

八幡「あ、由比ヶ浜からLINE来てる…」

「ヒッキーありがとう!」というメッセージと写真が1枚添付されていた。
そこには笑顔の由比ヶ浜と雪ノ下が写っていた。
昨日の影を背負ったような雪ノ下からは想像できないような柔らかい笑顔の雪ノ下がそこには居た。

八幡「そんな顔もできるんじゃねぇか……」

完全に…とは言えないが、失ったものを取り戻せた気がした。
由比ヶ浜の勇気に雪ノ下は応えたのだ、2人の歩み寄りが少しづつだが今を変えたんだ。
俺も頑張ろうと決意した瞬間に思い出した。


小町のお土産買うの忘れてた。


おわり

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