幼馴染「私たちの卒業旅行」 (31)

ガララ

男「おっす」

幼馴染「あ、男くん。こんにちは」

男「邪魔するぞー」

幼馴染「どうぞどうぞ。……あの、どうかしましたか?」

男「それがさ」

幼馴染「はい」

男「友のやつが、卒業旅行に行くんだって」

幼馴染「……はい?」

男「羨ましいなぁと思って」

幼馴染「……はぁ。卒業旅行……ですか」

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男「でけーホテルに泊まって、二泊三日で遊園地だとさ。クラスの仲よかった連中と一緒に……」

幼馴染「……失礼なことを聞きますけれど。誘われなかったのですか?」

男「俺は……その日用事があってさ」

幼馴染「ああ……それはお気の毒に」

男「うん、別に、卒業旅行に行くのはいいんだ。前々から行くって言ってたし。ただ、話聞いてると、なんたらっていう……結構良いとこに行くみたいで」

幼馴染「あぁ、あの。有名ですよね」

男「うん。一回行ってみたいよ」

幼馴染「あそこの料理は美味しいって聞きますもの!」

男「ん? ああ……うん、それもあるかも」

男「お前は? どっか行く予定はないのか?」

幼馴染「今のところは。お母さんが、海外に行こうって言っていましたけど、断ってしまいました」

男「海外かよ。スケールが違いすぎる」

幼馴染「小さい頃に一度行ったので、もういいかなと」

男「いやいや……さすがお金持ちは考えることが違うな」

幼馴染「私はお金持ちではないですよ? これでもアルバイトでお小遣いを稼いでいるんですから」

男「親に隠れてだろ?」

幼馴染「……バレたらどうなるか」

男「その関係が既に平民とは違うんだよなぁ」

幼馴染「でも、知っていますよ。男くんだって結構なお金持ちのはずです」

男「俺が? うちはしがないサラリーマンの親父しかいないぜ」

幼馴染「おうちのことではなくて……アルバイトのお金、使ってないって聞きました」

男「誰から?」

幼馴染「友さん。男が付き合い悪いー、って」

男「付き合い悪いのは性格なんだよ……勝手なことを言いやがって」

幼馴染「では他のところに使っているんですか?」

男「……そういう訳でもないけど」

幼馴染「ほら、やっぱり」

男「お金持ちって言葉に当てはめるのは、やっぱり違うと思う」

男「いや、俺のお金の話はどうだっていいんだ! なあ、ちょっと真面目な話なんだけど」

幼馴染「あ、はい。なんでしょう」

男「その……」

幼馴染「はい」

男「……どっか行かないか?」

幼馴染「今からですか?」

男「そうじゃなくて……」

男「卒業旅行。……一緒に、どこかに行こう」

男「……お前の都合さえよければ、だけど」

幼馴染「……男くんと」

男「ああ」

幼馴染「……ふ、二人で?」

男「え、あ、それは。嫌だったら他の奴ら呼んでもいいけど」

幼馴染「い、いえっ。嫌じゃないです! 一緒に、行きましょう」

幼馴染「その……二人で。はい」

男「……嘘じゃない?」

幼馴染「嘘じゃないですよ! こんな時に!」

男「あ、ごめん……それもそうだな、うん」

幼馴染「……はい」

男「……」

幼馴染「……それで、行きたいところはあるんですか?」

男「……温泉かな」

幼馴染「……いいんです?」クスッ

男「なんだよ、笑うなよ。そりゃ、友は羨ましいけども……お前と二人で行くような場所じゃない気がする」

幼馴染「えー。それはどう言う意味でしょう」

男「遊園地ってキャラじゃないだろ」

幼馴染「私ですか?」

男「うん」

幼馴染「それは、……ちょっとお手洗い行ってきます」

男「あ、うん」

幼馴染「お待たせしました」

男「おかえり。なあ、お前が行きたいなら……」

幼馴染「私は、男くんが行きたいところに、行ってみたいです」

男「……そうなの?」

幼馴染「はい。それに」

男「それに」

幼馴染「遊園地は、やっぱり私には合わないかと」

男「……そうだな」

幼馴染「男くんがつまらないかもしれませんから」

男「俺?」

幼馴染「はい。それはまあ、おいといて。いつ頃行きましょうか?」

男「ああ、そうだな――」

*旅行当日*

男「よ。おはよう」

幼馴染「おはようございます」

男「きょろきょろしてたから、すぐ分かったぜ」

幼馴染「あ、はい……普段、こんな人の多いところには来ませんから」

男「……お付きの人はいないのか?」

幼馴染「そんなのいませんよっ」

男「冗談だよ。新幹線の乗り場、こっちだったな」

幼馴染「はい。まだ時間ありますけど……」

男「余裕を持って動こうぜ。なんせ二人旅だ。何があるか分からんし」

幼馴染「……そうですね!」

男「はぐれるなよ?」

幼馴染「大丈夫ですよっ!」

男「チケットちゃんとあるか?」

幼馴染「もう。心配しすぎです」

男「過保護なくらいが丁度いいんだって」

幼馴染「男さんこそ、用意は大丈夫なんですか? 着替えとか、お金とか……」

男「当たり前だろ」

幼馴染「どうだか……」

男「寝坊しかけたくらい」

幼馴染「ほらぁ!」

男「あーあー、うるさいうるさい。黙って付いてきなさい」

男「ついた。もう乗っちゃうか」

幼馴染「……」

男「……またきょろきょろして。そんな珍しいもんでもないだろ?」

幼馴染「新幹線は初めて乗ります」

男「そうだったの」

幼馴染「飛行機なら、何度も乗っているのですが」

男「そーいや昔は海外ばっか行ってたよな」

幼馴染「最近はさっぱり。もう当分行かないと思います」

男「ふぅん。まぁ、家族旅行って歳でも無いよな」

幼馴染「男くんは……」

男「あ、乗り場あっちだな。あとで聞くよ」

幼馴染「あ、はいっ」

男「ふーっ。これで目的地まで一足だ」

幼馴染「楽しみですねぇ」

男「まずは旅館のチェックインだな……」

男「んで、さっきはどうした?」

幼馴染「え? ああ……なんでもないんです。男くんは昔から色んな所に行きたがってたなぁって」

男「そういうこと。小さい頃は、ロンドンに行きたい! ってずっと言ってたな」

幼馴染「どうしてでしたっけ?」

男「おしゃれなイメージがあったんだ」

幼馴染「おしゃれ。分からなくもないです」

男「そんなもんだよ。海外と言えばロンドン。そんなイメージがなんかあったんだよな」

男「まぁ、この歳になっても海外はおろか……こうした小旅行に行くので精一杯さ」

幼馴染「まだ成人もしていないんですから、仕方ないですよ」

男「そうだなー。大人になったら今度こそ海外に行きたい」

幼馴染「ロンドンに?」

男「ロンドンかどうかは分からないけど」

男「どっか遠い国に行ってみたいかな」

幼馴染「……」

幼馴染(その時は、私も一緒に行きたいです)

幼馴染「なんて……」

男「え?」

幼馴染「あぁ、いえ……なんでもありません」

男「そう? ……まっ、今は今さ。旅行を楽しもうぜ」

幼馴染「はい。そうですね」

**

男「……」

幼馴染「……ぐっすりですね」

幼馴染(昨日は眠れなかったのかな)

幼馴染(遅くまで計画を立ててたとか)

幼馴染「……ありそう」

幼馴染「……」ナデナデ

幼馴染「ふふ……んっ、ん!」ゴホン

幼馴染(持ってきた本、読んどこっと)

男「……」スヤァ

男「ふぁ、あ。もうついたのか」

幼馴染「おはようございます。もうお昼ですよ?」

男「あー……ずっと寝ちゃってたな。酔ってない?」

幼馴染「この通りです。さ」

男「あい。地図出しておかないとな」

幼馴染「頼りにしてますから」

男「……ん。箱入りのお嬢様をつれて、出発だ」

**

幼馴染「わ……すごい、活気ですね」

男「お祭りの最中だったな」

幼馴染「はい、それは聞いていましたが……ここまでとは」

男「んー。賑やかなのはいいが迷子が出そうだな」

幼馴染「迷子。ひょろひょろした男の人とか?」

男「のんびりした髪の長い女の子とかな」

幼馴染「失礼ですね。のんびり?」

男「誰も幼馴染さんだとは言ってないぜ」

幼馴染「私だって男くんだなんて言ってませんよ」

男「知ってるさ。俺は実は脱いだら凄いんだ」

幼馴染「もしかしてまだ寝惚けてます?」

男「……振っといてそりゃ無いよ」

幼馴染「でも、お祭り、いいですね。夜になるともっと賑やかになるって」

男「繰り出してみるのもいいかもしれないなぁ」

幼馴染「ぜひ、ぜひ。楽しみです」

男「んー。大体この辺りに何があるか、調べてはきたけど……」

幼馴染「何か計画が?」

男「まぁ、考えたんだけど。俺だけで行くとこ決めるのは変だなと思ってさ」

幼馴染「……気にしなくてもいいんですよ?」

男「そう言われてもな。幼馴染はどっか行ってみたいとこあるか?」

幼馴染「むむ……うーん……海の方に、行ってみたいかも」

男「海かぁ。そうだな。夜になる前に行こうか」

幼馴染「いいんですか?」

男「なんでさ。色んなとこ行ってみようぜ」

幼馴染「……はい。嬉しいなぁ」ニコッ

男「……は、はぐれるなよな」

幼馴染「ふふ、それはさっき聞きましたよ!」テクテク

男「この道をまっすぐ。あ、見えてきた」

幼馴染「あちらですか」

男「ああ。……でかい。旅館の名前は、間違いないな」

男「……うーむ。高校生二人で来るところではない」

幼馴染「まあまあ。高校は卒業したじゃないですか」

男「それは確かに」

幼馴染「きっと良いところですよ」

男「そりゃあな……」

男(旅費の半分以上を幼馴染の家に出してもらっている以上、なんとも言えない)

男(文句のつけようがない旅館なのは、確かだろう……)

男(少々気圧され気味の俺と違って、幼馴染は至って普通)

男(平民と金持ちの違いをこんなところでも見せつけられてしまう)

幼馴染「男くん。どうしました? 疲れちゃいました?」

男「あ、すまん。少し気圧されてた」

幼馴染「そう……でしょうか?」

男「首を傾げられてもねぇ……」

幼馴染「……すみません。バッグ、私が持ちます」

男「いや何言ってんだ。お前はお前の荷物があるだろ」

幼馴染「いいから、いいから」

男「大丈夫だって。もうすぐそこなんだしさ」

幼馴染「でも~……」

男「ほらっ、行くぞ!」

*旅館にて*

幼馴染「ええと、515号室……」

男(……予約名が幼馴染の苗字だったのは仕方ないとは言え、部屋の鍵すら幼馴染に持ってもらうのは、男としてどうなんだろう……)

幼馴染「ありました」ガチャ

男「やっと着いたなぁ」

幼馴染「ご苦労さまです。さ、お先にどうぞ」

男「なんだよそれ、入るけど」

幼馴染「ふふふ……」

男「……ちょっと楽しそうだな」

幼馴染「え? あ、そうかもしれません」

男「うん。良かったよ」

幼馴染「……」

男「……どした?」

幼馴染「……なんでもありません! 先入りますから!」

男「えぇ。なんなんだよもう」

幼馴染「……わぁ、きれい!」

男「なんだなんだ……おー。きれいな町並みだなぁ」

幼馴染「あの道を通ってきたんですね……あっちは何かしら。あの広場は……?」キョロキョロ

男「幼馴染さんや。まずは荷物おろそうよ」

幼馴染「うう、男くん、男くん!」

男「なんぞや」

幼馴染「私ですね……ワクワクしてきちゃいましたよ!」

男「お、おう。そりゃよかった。ほらリュック貸して」

幼馴染「あ、はい」

男「こっちに纏めて置いとくからな」

幼馴染「はーい。ありがとうございます」

男「ちょっと地図確認しておくから、気が済んだら呼んで」

幼馴染「え? えっと……私も見た方が良いですよね?」

男「外眺めてていいよ?」

幼馴染「うーん……いえ。私にも見せてください」

男「ん。それでいいなら」

地図を広げて

男「えーと。祭りはこの辺でやってるみたいだ」

幼馴染「旅館のすぐ近くですね」

男「うん。で、こっちの通りの博物館が有名だってさ」

幼馴染「聞いたことありますね。誰かが行ったって話を前にしたような……」

男「ほぉ、ちなみにパンフレットがこれ」

幼馴染「男くん、用意周到ですね」

男「まぁお金出してもらってるんだし、このくらいは」

幼馴染「気にしないでください。うちの両親が強引に話を進めたのですし。お父さんったら、なんであんなにはしゃいでいたのかしら」

男「さぁ……あー、入場料結構するな」

幼馴染「……ちょっと厳しいでしょうか?」

男「……出せなくはないって感じ?」

幼馴染「保留にしておきましょうか」

男「そうしよう」

男「幼馴染さんがご所望の海はこっち」

幼馴染「……お祭りの真反対側ですね!」

男「そっすね。……あ、ここのお店のご飯が美味しいらしいって、父さんが言ってた」

幼馴染「そうなんですね。お父様が?」

男「その呼び方どうにかならない……? うん、少し前に出張でさ」

幼馴染「へぇ~……偶然ですねぇ」

男「そう言えば昼飯まだだったな」

幼馴染「……行ってみましょうか?」

男「うん、いいんじゃない? 海を見に行くついでに」

幼馴染「はいっ!」ニッコリ

おとこ じゅんじょうしょうねん たかさ 1.6m おもさ 48.0kg
おさななじみの となりのいえにすむ。
いえはびんぼう だけどこころはまっすぐ。

おさななじみ せいそけいおじょうさま たかさ 1.5m おもさ ひみつ
おとこの となりのいえにすむ。
ぼーっとしてるようで じつはけっこうあたまがきれる。
おまんじゅうが すき。

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