幸子「カワイイボクと!」友紀「野球!」こずえ「こずえー…」 (68)


モバマスSSです。アニメの設定に準拠してますが、一部独自の解釈や設定があります。

登場人物:幸子、友紀、こずえ、モバP(Pと表記します)、周子、紗枝



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1469358343


――事務所内・会議室――

輿水幸子「紗枝さんが風邪?」

姫川友紀「そうなんだよー。お腹出したまま寝ちゃっててさ」

友紀「これがホントのHARAMARUDASHIだね、って言ったらスネられちゃった」

幸子「ホントの、の意味がわかりませんが」


幸子「にしても、紗枝さんがそんな失敗をするなんて珍しいですね」

友紀「あはは、まあちょっと燃え上がっちゃったっていうか、もう余韻に浸ってそのままっていうか」

幸子「……なぜその場にいたかのように?」

友紀「あ、はしたないからって口止めされてたんだった」テヘペロ!!

幸子「なんてカワイクないテヘペロですか」


友紀「ほら昨日、久々にレッスンだけだったじゃない?」

幸子「そうでしたね」

友紀「で、みんなで早めに晩ご飯食べたじゃない?」

幸子「そうでしたね」

友紀「んで、一緒にキャッツの試合をテレビ観戦しないかって誘ったじゃない?」

幸子「そうでしたね」

友紀「幸子ちゃん、断ったじゃん」

幸子「そうでしたね」

友紀「でも、紗枝ちゃんはたまには付き合うって言ってくれて」

幸子「あ、そうだったんですか」

友紀「そして、朝」

幸子「要所が飛んでますけど!?」

友紀「ああ――」

友紀「キャッツは勝った」ドヤッ

幸子「そこ一番の要所でしたね友紀さんはね!」


友紀「もー、なにそんな食って掛かってくんのさ。え、なに? どーゆー話が聞きたいのっかなー?」

幸子「わざとでしたか……」

友紀「まー、そんときはめでたくって、盛り上がったまんま寝落ちしちゃったんだよね」

友紀「それで、夜中にふと目を覚ましたら――」

友紀「隣で紗枝ちゃんが、キャミソール一枚で寝てたんだよね!」

幸子(盛り上がったってどういう意味なんですか……!)パクパク

友紀「それもほとんどまくれ上がっててさー」

幸子「…………」ドキドキ

友紀「可愛いやつめ、ってほっぺたつついてやったよね!」

幸子「お腹隠してあげてくださいよ!」

友紀「あ、もちろん一番カワイイのは幸子ちゃんだよ」

幸子「雑なフォローありがとうございます!」


友紀「――いや、まだ酔いが覚めてなかったから、そこまで気が回らなかったんだよね」

幸子「ダメな大人ですね」

友紀「そうだね……反省してるよ」

幸子「そうですよ! いくら気分良く酔っていたからといって、紗枝さんとそんな、ふ、ふしだらな……」

友紀「フシダラ?」

幸子「わざとらしく片言にならないでくださいよ!」


友紀「――つまり幸子ちゃんは、あたしが酔いに任せて『キャッツのダブルヘッダー、二戦目が今プレイボール!』とばかりに紗枝ちゃんをひん剥いた、って言いたいんだ?」

幸子「う……ま、まあそうです」

友紀「ネコのくせにひん剥く側なんて、ってツッコミたいんだ?」

幸子「意味がわかりませんよ!」

友紀「はあ~、そんな想像しちゃうなんて、お姉さん悲しいよ」

幸子「いやいや、そういうふうにしか聞こえませんでしたよ! じゃあ実際はどうだと言うんですか?」

友紀「紗枝ちゃんが酔っ払って、自分で脱いじゃったんだよね」

幸子「あ、もうおしまいですねこれ」


幸子「もうダメです大人が未成年に酒を飲ませて前後不覚にした上に同衾だなんて隠し通せるわけがありませんゴシップ誌に嗅ぎつけられてお二人は解雇――」

友紀「幸子ちゃーん?」

幸子「くっ……ですがボクはお二人のことを決して忘れません! 『KBYD輿水』と名を変えて活動を続ける覚悟です!」

友紀「そんな、相方のいなくなったお笑いみたいな」

幸子「――そのたとえ、妙に的確な気がしていやですね」

友紀「あ、戻ってきた」


友紀「あのね、一点を追う展開が続いたもんだから、紗枝ちゃんと肩組んでテレビにかじりつきだったの」

幸子(囚われの紗枝さん)

友紀「そしたらビールどんどん飲んでくわけじゃん」

幸子「はあ」

友紀「気づいた時にはもう部屋中アルコール臭くってさ! 途中紗枝ちゃんが換気してって言ってた気もするんだけど、それどころじゃなくって――」

友紀「で、試合終わってヒーローインタビューの頃かな? なーんか紗枝ちゃんがあったかーくなって、ふにゃっとしてるなあって気づいて」

幸子「…………」

友紀「多分、部屋の空気とあたしの息で酔っちゃったんだと思うなあ」

幸子「どれだけ飲んだんですか……」


友紀「いやまさか、匂いだけで酔うほど弱いと思わなくって!」

友紀「っていうか、そんときはあたしも気分良くってわかんなかったの!」

友紀「なんか紗枝ちゃんが暑い暑いって言いながら服を脱いでるのも、白熱した試合に興奮しちゃったんだな、わかるよって思ってたから――」

友紀「あたしもつられて脱いじゃってたね!」タハー!

幸子「もう……なんかもう……」

友紀「いやほんとごめん! やっぱ二人で観戦すると全然違うんだよ盛り上がりが!」

幸子「そういうものですか」

友紀「ほら、あのー、小梅ちゃん? ゾンビの子! たまに映画鑑賞に誘われるんでしょ? いやーあの子の気持ち、あたしはよく分かるよ!」

幸子「い、いや小梅さんは、もっぱら怖がるボクを鑑賞したがってますからね……」


友紀「でも、幸子ちゃんが心配するような不祥事を起こしてないってことは、わかってくれたよね!」

幸子「起きたも同然な気がしますが」

友紀「えー? だって、お酒は飲ませてないんだよ? 法は犯してないし、紗枝ちゃんのことも――」

幸子「わ、わかりましたもういいです!」

友紀「……犯してないし!」

幸子「止めてるのに言い切らないでくださいよ!」

友紀「いやあ、あたしの心の三塁コーチが回れ回れってさ」

幸子「完全にアウトのタイミングでしたよ!」

友紀「お、今度一緒に野球観戦行く?」

幸子「ボクの野球知識に興味を持たないでください!」


コンコン

幸子「は、はい」

ガチャ

P「まったく君たちは、小早川がいないと騒がしいな」

友紀「プロデューサー」

P「廊下に声が響いてたぞ」

幸子「う……すみません、ボクとしたことがカワイクないことを」

友紀「紗枝ちゃんと連絡とれた?」

P「ああ、やっぱり風邪だとさ。声ががらがらだったよ」

友紀「あ、あたしのこと怒ってた?」

P「いいや、むしろ責めないでほしいと釘を差された」

友紀「ぐあー、紗枝ちゃん女神だったか!」

幸子「勝利の女神だったんですね……」

友紀「お見舞い持ってかなきゃ。いいやつ」

幸子「付き合いますよ」


P「とりあえず、大事を取って仕事は2、3日休ませるから」

友紀「あーい」

幸子「歌番組の予定がなかったのは不幸中の幸いでしたね」

友紀「今日は打ち合わせだけだからいいとして――」

幸子「明日は撮影が入ってますね」

P「グラビアとバラエティのロケだな」

P「グラビア撮影は日を改めてもらうよう話をつけておいたが、ロケはそうもいかない。小早川抜きで頑張ってもらう」

幸子「わかりました」

友紀「紗枝ちゃんにがっかりされないよう、しっかりこなすよ!」


P「しかし二人ではややバランスが悪かろうと思って、応援を手配した」

P「今日のうちに顔合わせもしておこうと思って、連れてきてある」

友紀「仕事早いね。で、その子って?」

P「ドアの外に――さあ、おいで」

ヒョコ

幸子「な、なんですかこの子は!?」

幸子「ドール!? ドールですね!? プロデューサーさん、こんなカワイイ趣味をお持ちでしたか!?」

P「ええい落ち着け輿水。さあ、ご挨拶してごらん」

遊佐こずえ「こずえはー…こずえだよー…。ゆさ…こずえー…」

幸子「しゃべったああっ!?」

幸子「な、なんですかこの、ホイップクリームの中からメープルシロップが出てきたような甘カワイさは!?」

幸子「カワイサーカウンターが上限近くまで振れてますよ!!」

P「聞いたことない表現で感動するな」

友紀「カワイサーカウンターっていうのは、カワイさを測る幸子ちゃんの脳内システムだよ」

P「聞いたことないのは俺だけだったか」

友紀「ちなみに幸子ちゃん自身が基準にして最大値」

P「なるほど、わかる」


友紀「それよりプロデューサー、あたしがやっと冤罪を晴らしたところなのに、そっちでやらかしちゃったら台無しだよ」

P「自分がそういう目に遭ったのなら、人にも優しくなりなさい」

友紀「わ、わかってるよ。ちょっとからかっただけだって」

P「この子は遊佐こずえといって、うちに所属するキッズモデルだ」

幸子「モデルさんでしたか。道理で」

友紀「え、プロデューサー、つまりこの……こずえちゃんが、紗枝ちゃんの代打ってこと?」

P「ああ、おっとりした感じとか、似てるだろうと思ってな」

幸子「…………」

友紀「KBYDの顔合わせの時も思ったけど、プロデューサーってドラフトのセンスが独特だよね」

P「そうか?」

幸子「確かに、ボク達も未だに雑誌やテレビで『KBYD、人気の謎』とか『KBYD、謎の人気』とか言われてるみたいですからね」

幸子「全ては『ボクのカワイさゆえ』で説明がつくというのに!」フフーン!

友紀「ま、結果的にはいいチームになったと思うけど、言われるのもわかるよねー」


…………

幸子「こずえちゃん。ボクは輿水幸子といいます。幸子お姉さんと呼んでいいんですよ!」

こずえ「さちこー…」

幸子「……はい!」

友紀「お姉ちゃんは、友紀っていうんだよ」

こずえ「ゆきー…」

友紀「はーい。一緒に頑張ろうね」

こずえ「がんばるー…」

幸子「あ、あれ? 友紀さんがすごくお姉さんっぽいですね?」

友紀「こずえちゃんはいくつなのかな?」

こずえ「じゅういっさいー…」

幸子「なんででしょう、しっかりした友紀さんを見るとむず痒いのは」

P「君たちはそれぞれ場数を踏んでからユニット組んだからなあ。手がかからなかったんだよ」

幸子「むう、まったく友紀さんは。もっとカワイイボクを愛でてくれても良いのに」

友紀「え、ちゃんとかわいがってるじゃん」

幸子「ボクを愛でるのに十分ということはないんですよ!」


P「――で、明日のロケの内容だが、報道バラエティの特集コーナーで、今話題のスイーツをいくつか取り上げるんだが」

P「君たちにはそのうちのひとつのお店に実際に赴き、レポートしてもらう」

幸子「…………」

友紀「…………」

P「続きを警戒するな。レポーターやるだけだよ」

幸子「本当ですか?」

P「仕掛けがないと面白くできないわけじゃないだろう?」

幸子「もちろんです!」

幸子「いや、面白くっていうのは、あくまで視聴者の皆さんに興味を持ってもらえるように、という意味で、ですよ」

P「何の言い訳だ」


――翌日 番組収録――

ゴビョウマエー……

友紀「こんにちはー!」

テロップ『輿水幸子』『姫川友紀』『遊佐こずえ』

幸子「はいっ、ボク達は今話題のスイーツを求めて、ここ京都へやってまいりました!」

こずえ「だいふくー…」

幸子(あ、先に言っちゃダメですよ)

友紀「そう、私達が探しているのは、とある和菓子屋さんに売られている大福なんですよねー!」

友紀「おっと、ご紹介するのは私、姫川友紀と!」

幸子「カワイイボクこと輿水幸子と!」

こずえ「ゆさこずえー…」

友紀「三人合わせて……」タチイチチョウセイ

幸子「カワイイボクと!」

友紀「野球!」

こずえ「こずえー…」

ポーズ

テロップ『KBYK?』


…………

友紀「実は今日、このロケに参加するはずだった小早川紗枝ちゃんがお休みしてまして」

友紀「ピンチヒッターとしてモデルの遊佐こずえちゃんに来てもらいました!」

カンペ『こずえちゃん、手をふって』

こずえ「ふるよぉー…」ヒラヒラ

友紀「こずえちゃんは甘いもの好きかな?」

こずえ「すきー…」

友紀「おおっ、これはいいピッチングが期待できそうだね!」

幸子「ハードル上げないでくださいよ」

テロップ『謎の競技。』


…………

友紀「おっ、あれが噂の和菓子屋さんですかね?」

幸子「え、あの建物ですか? え?」

こずえ「ふわぁ…しかくいねー…」

テロップ『プレハブ。』

幸子「ゆ、友紀さん、間違ってませんか?」

友紀「いや、でもスタッフさんがうなずいてるし」

友紀「ほら、のぼりも出てる」

のぼり『ウワサの和菓子屋はココ!→』

テロップ『自称・ウワサの和菓子屋。』


こずえ「ここなのぉ…?」

幸子「どうなんでしょう、あからさまにこのロケのために建てたっぽいですけども」

友紀「あ、カンペ出てるよ」

友紀「えっと、お店側で直接の取材はNGだということで、建物と売り子さんは番組で用意しました、だって!」

幸子「おかしくないですか!?」

こずえ「おかし…ないのぉー…?」

友紀「大丈夫だよ。ウワサの和菓子はちゃんとあるのでご心配なく、って書いてあるし」

テロップ『カンペ全読み上げ。』

こずえ「えへー…よかったー…」

幸子「ここまでするくらいならスタジオに直接届けたほうがずっと簡単だったと思いますけど……」

友紀「いいじゃん、こずえちゃんが喜んでるから」

幸子「それは、まあ」

友紀「ってことで、早速お店におじゃましてみましょう!」

こずえ「おー…」

テロップ『初めてのお客様。』


…………

テロップ『ウワサの和菓子屋さん(仮)に突入。』

友紀「ごめんくださーい!」

こずえ「くださーい…」

塩見周子「はーい、いらっしゃいませー」

幸子「あ、あれ?」

友紀「おっ、プロジェクトクローネのシローネちゃんだ!」

幸子「うちの事務所のプロジェクトクローネの一員で、京都出身アイドルの塩見周子さんじゃないですか!」

テロップ『視聴者に優しい幸子ちゃん。』

周子「店員さんがいないっていうからお手伝いに来たよー」

テロップ『塩見周子』

幸子「やっぱりこれって変ですよ、友紀さん」ヒソヒソ

テロップ『何かを警戒する幸子ちゃん。』

友紀「そうだね、でも今更マウンドを降りる訳にはいかないよ」

幸子「せめてこずえちゃんだけは守りましょう」

友紀「おーらいっ」


友紀「そんじゃあ、気を取り直して周子ちゃん、おいしい和菓子をよろしく!」

こずえ「だしてー…」

周子「はいはーい。これが、うちの実家で売ってる餡入りの生八ツ橋だよー」

幸子「大福は!?」

友紀「周子ちゃんの実家がウワサの和菓子屋さんだったんだ」

周子「違うよん」

幸子「何なんですか」


こずえ「やつはし…なぁにー…?」

周子「おいしいよー、食べる?」

こずえ「たべるー…あむ…んー…あむ…ちょこだー…えへー…」

「…………」

テロップ『一同、ほっこり。』

周子「こずえちゃんが食べてるのにはチョコ味の餡が入ってて、お子様向けにニッキ控えめなんだよー」

周子「詳しいお求め方法はコーナーの最後で!」

テロップ『宣伝。』

幸子「そういう契約でしたか」


…………

こずえ「もにゅもにゅ…」

テロップ『こずえちゃん、二個目。』

幸子「満腹になる前に本題をおねがいしますよ」

友紀「そうだね」

周子「はいなー、じゃーん」ジャーン

友紀「おおー、なんとウワサの和菓子とは大福だったんですかー?」ビックリ

幸子「散々言ってたじゃないですか」

テロップ『お約束。』

友紀「三色一組なの?」

周子「そう、こちらの大福は赤黄緑の3つでワンセットなんですねー」

周子「その名もなんと、『ロシアン大福』!」

友紀「!?」

幸子「!?」

テロップ『察した二人。』


周子「こちらはですね、ランダムでどれか一つだけ激辛になってるんですよー」

幸子「うわぁ」

周子「緑ならわさび、黄色なら和辛子、赤なら唐辛子が練りこんであるんだって!」

周子「ということで、『カワイイボクと野球こずえ』の誰が激辛大福を引くのかなー?」

テロップ『ウキウキの店員さん(仮)。』

友紀(やばいなあ、とにかくこずえちゃんに激辛を回避させなきゃ……でもどうやって?)

幸子(こずえちゃんはこのまま八ツ橋係にして、いっそ周子さんを巻き込んだほうが……)

幸子(でも、周子さんはどれが辛いか知ってるかも――おや?)

Pカンペ『こずえちゃんには赤は辛くないと教えてあるのでよろしく』


友紀(――ああ、こずえちゃんは知ってるんだ!)

友紀(ってことは、多分周子ちゃんだってわかってるんだよね)

友紀(よく見たら、赤い大福がこずえちゃんの手前側になるように置いてあるし)

友紀(じゃあ、せーので取ればいいか)


幸子(――なんだ、こずえちゃんは知っているんですね!)

幸子(ということは、多分周子さんもわかっているんですね)

幸子(よく見れば、赤い大福がこずえちゃんの手前側になるように置いてありますし)

幸子(でしたら、カワイイボクの出番ですね!)


友紀「どうする? せーので取ろっか――」

幸子「こずえちゃん!」

こずえ「なぁにー…?」

幸子「ボク達はお姉さんですからね! こずえちゃんが先に選んでいいですよ!」フフーン!

友紀(えー? ……ああ、そっかー!)

友紀(自分のアピールをしつつ、こずえちゃんにスポットを当てたんだ! やるなあ……)

こずえ「いいのー…? んーとねー…あかぁ…?」

「…………」

テロップ『注目の選択。』

こずえ「あかはにんじんー…? きいろはおいもー…?」

友紀「――店員さん、これ、ハズレ以外でも味の違いはあるの?」

周子「ごめん、分かんない」

テロップ『初出勤。』


幸子(こ、こずえちゃん、バラエティをわかってますね?)

幸子(すんなり正解を取ると台本通りに見えてしまうから、わざと焦らしてるんですよね?)

幸子(さあ、もう撮れ高十分ですよ! 赤を取ってください!)

こずえ「こずえー…にんじんいらないー…」

幸子「! ――こ、こずえちゃんっ、赤いのはとってもおいしそうですよ! ボクはそれをおすすめしますね!」

友紀(あ、幸子ちゃんそれダメじゃない?)

こずえ「じゃあそれぇ…」

幸子(よしっ!)

こずえ「さちこにあげるー…」ヒョイ

幸子「えっ」

友紀(やっぱりー!)

テロップ『こずえちゃん、黄色をチョイス。』

周子(やば……)

友紀(プロデューサー、これまずいんじゃない?)チラッ

P「…………」

友紀(祈っちゃってるよ!)


幸子「こ、こずえちゃん、黄色より赤のほうが……ええと……」

幸子(ど、どうしたらこずえちゃんの機嫌を損ねずかつ自然な流れで交換できるのか……!)

こずえ「あむ…」

幸子(あ、間に合いませんでしたよ)

「…………」

テロップ『一同、緊迫。』


こずえ「んー…もちもちー…あんこー…」

幸子「!」

友紀「こ、こずえちゃん、おいしい?」

こずえ「んー…」コクリ

友紀「――ッセーフッ!!」

幸子「よ、良かったぁ……」

周子「いやあ、さすがのしゅーこちゃんもドキドキしたよー」

テロップ『一同、安堵。』


…………

周子「さあさあ残るは赤、そして緑!」

周子「友紀さん幸子ちゃん、激辛大福を引くのはどっちかな!?」

幸子「急にテンション上がり過ぎじゃないですか!?」

幸子(しかし……こずえちゃんの無事は喜ばしいですが、この展開はどうしたものでしょう)

友紀(これで緑が激辛だってことが、あたし達の中で決まっちゃったからなあ)

幸子(視聴者の皆さんにそれを悟らせないように立ち回らなければ)

周子「次に選ぶのは、年齢順なら幸子ちゃんだねー」

幸子「!?」

幸子(周子さん、それはいけませんよ!)

幸子(自分たちだけハズレがわかっている状況で自らどちらかを選ぶなんて……)

幸子(芸人殺しですよ!!)

幸子(もとい!!)


友紀「幸子ちゃんは赤じゃないの?」

幸子「はっ、な、何を!?」

友紀「ほら、さっきこずえちゃんからあげるーって言われたじゃん」

幸子「それは、そうですけど」

幸子(そうしたら友紀さん、あなたが緑を……激辛わさび大福を食べるハメになるんですよ?)

幸子(ボクはいっそ、ジャンケンで勝った方が緑、負けた方が赤を食べる――とか提案しようかと考えていたのに)

幸子(こんなときばかりお姉さんぶって……あなたは、あなたって人は!)

幸子(友紀さん、いまあなたへのカワイサーカウンターがこずえちゃんレベルまで振れましたよ!)


幸子「わ、わかりました。では、ボクは……」

幸子(――って、いやいや待ってください! この輿水幸子が、それでいいんですか!?)

幸子(友紀さんに言われるまま、こずえちゃんに勧められたのを大義名分にして)

幸子(それはカワイクありませんよ!)

幸子(友紀さんの厚意はありがたいですが、やはりもう一波乱起こすべきです!)


友紀(――おっかしいなあ、なんでそこで躊躇しちゃうの?)

友紀(多分こずえちゃんのことで責任感じてると思ったから、せめて甘いので癒やされてもらおうと思ったのに)

友紀(あー、でも幸子ちゃんはそこでなかなか甘えないところあるかあ)

友紀(プライド高いし……逆に自分が緑を引いて責任とろうとかって考えてるかもしんないなあ)

友紀(うーん……)


幸子(――ここで急にボクが緑を取る、と言い出すのは不自然ですよね)

幸子(結果わさび大福に当たったら、テレビの向こうには完全に台本通りに見えてしまいます)

幸子(勧めたこずえちゃんも気を悪くするといけません)

幸子(やはりここは、あらためてジャンケンを提案すべき!)

幸子「あの友紀さん、提案が――」

友紀「ボーク!」ビシィ

幸子「え?」

友紀「幸子ちゃん、ストップモーションはボークだよ!」

幸子「え、え?」

友紀「振りかぶってからの牽制球は反則ってこと!」

友紀「じゃ、選択権はあたしってことで」

友紀「選ぶのはもちろん、ストライクの緑!」ガシィ

幸子(友紀さん!? 友紀さん!!)


周子「おおー、友紀さんは緑でいいの? じゃあ、幸子ちゃんは赤いの取ってー」

幸子「…………」ヒョイ

周子「それじゃあ、いっせーのーで同時に食べてね」

「いっせーのー!」

パクッ

幸子(…………)

幸子(――!)

幸子(ん、んまあぁ~いっ!!)

幸子(このお餅、弾力があるうえにとろけるように柔らかい!)

幸子(餡はどうです! しっかりと甘いのにくどくない……いえ、これは餅と溶け合うことでバランスが保たれているのですか!)

幸子(ああっ、苺! ほんのり苺の風味を感じます! これが餡の甘味を際立たせながらも後味を軽くし、次の一口へと食欲を導く!!)

幸子(くううっ、いけません! 危うく我を忘れて二口目に行くところでした!)

幸子(ここでボクががっついてしまっては、肝心の友紀さんのリアクションにかぶってしまいます!)

幸子(さあ友紀さん、そろそろ辛さを認識する頃なんじゃないですかっ!?)チラッ

友紀「うまっ」

幸子「!?」


友紀「ん~、おいひい! ん、抹茶味! もくもく……あー、もうなくなっちゃった!」

周子「え、えっと」

幸子「…………」

友紀(――あ、やばっ)

幸子(やばっ、みたいな顔やめてくださいよ!)

幸子(えええっ、今のどう見ても、激辛わさび大福のリアクションじゃないですよね!?)

幸子(完全に激うま大福に我を忘れてがっついちゃった人じゃないですか!)

幸子(まずいですね、ここでボクも普通にうまいって言ってしまえば、ロシアン大福の意味がない……)

幸子(やるしかないでしょうか……唐辛子が入っているていで、辛いリアクションを!)

幸子(ボクの演技力が問われますよ……!)


Pカンペ『こし → しょうじきに!』

幸子(! プロデューサーさん……いいんですか? いえ、信じますよ!)

幸子「はむっ」

周子「お、おおっと幸子ちゃん二口目! 辛さはどうなの?」

幸子「…………」モニュモニュゴクン

幸子「――いえ、全然?」

幸子「というか、とてもおいしいですよこの大福!」

幸子「少し時間も経ったはずなのに柔らかいお餅! なめらかで口どけのいいあんこ!」

幸子「友紀さんのは抹茶と言ってましたが、こちらは苺風味です! ほのかな酸味があって、飽きの来ない後味!」

幸子「これは絶品ですよ!」

友紀「……ってことは、結局激辛はどこにいったの?」

周子「だ、だいせーこー!」

友紀「!?」

幸子「!?」

周子「実は激辛大福なんて最初から入ってなかったの……」

周子「このロケ自体がドッキリやったんよ!」クワッ


幸子「え? ということは、え?」

周子「いやあ、二人が激辛の影に怯えているさまは、なかなか見どころがあったねー」チラッ

周子「実は赤だけは辛くないって二人が知ってたのも、もう視聴者にはバレバレだからね」

幸子「えええっ!?」

周子「こずえちゃんが黄色を引いて、その後の葛藤ね! 幸子ちゃん、いい顔してたよー」

幸子「うぐぐ……」

こずえ「さちこ…いいこいいこー…」ナデナデ

幸子「ありがとうございます……」

友紀「ホント幸子ちゃんてば、赤いの勧めたらめっちゃ戸惑ってたもんね!」

周子「いやいや、友紀さんも覚悟決めた女の目をしてたよー」

友紀「うわー、やめてよそういうこと言うの! あん時口の中カラッカラだったんだからー!」


友紀「あー、それにしてもまさかの二段構えとは、してやられたね」

幸子「『ロシアン大福』の時点ですでにドッキリみたいなものでしたから、更に仕込まれていたとは思いませんでした」

周子「まあ、化かすのは狐の十八番ってね」ドヤッ

周子「ちなみにこの『ロシアン大福』はちゃんとした商品だけど、今回だけ激辛を抜いてもらったんだって」

周子「詳しいお求め方法はコーナーの最後で!」


Pカンペ『ひめ・こし → 〆て!』

友紀「いや、ホントこの大福おいしかったから、激辛を引くリスクを考えても食べてみる価値あるよね!」

幸子「そうですね、ボク達も事務所の皆さんへのおみやげを買っていきましょう!」

友紀「待ってろキャンディアイランド!」

幸子「名指しはやめてあげましょうよ」

周子「バラエティって怖いわー」


友紀「こずえちゃんはどうだった?」

こずえ「やつはしもだいふくもおいしかったー…みんなもたべてー…たべろー…」

周子「めっちゃええ子やん!」

友紀「あ、それじゃあ最後に記念撮影? はーい、せーの!」

「ドッキリ大成功!!」

「…………」

ハイカットー オツカレサマデシター

「お疲れ様でしたー!」

友紀「――周子ちゃんもクローネの分、もらっていきなよ」

周子「ああ、あたし除けば九人だからちょうどいいねー」

幸子「役得過ぎませんか!?」


――後日 事務所内・会議室――

『ビデオ1』

周子「――とまあ、以上でVTRは終わりみたいだけども……感想とか、言い合う?」

こずえ「ふわぁ…」

友紀「…………」チラッ

幸子「…………」チラッ

小早川紗枝「うん、なかなか面白うなってたんとちゃいます?」

友紀「そう? だよね? うん、面白かった、ね?」

幸子「そうですね、ボクのカワイさがより広く知れ渡るいいVでしたよ!」

周子「お蔵入りにさえなってなかったら、ね」

幸子「…………」

こずえ「おくら…ねばねばー…?」

周子「そうだねえ、neverだよ」

こずえ「こずえー…おくらいらないー…」

紗枝「こずえちゃんはわかってはるわあ。お蔵入りは嫌どすなあ」

友紀「うん、ほんと、ごめんね」


紗枝「――とどのつまり、どないな顛末だったんどす?」

友紀「そもそもの、『情報バラエティ内のスイーツ紹介のコーナー』は実在したんだ」

友紀「で、あたし達のロケも、ちゃんとそこで放送されるはずだった」

友紀「本来なら、ロシアン大福を食べて、誰かが悲鳴を上げて、でもおいしいよって言って成立」

周子「あたしもそう聞いてた」

友紀「けど、なんかの手違いで激辛大福が入ってなかった、と」

周子「プロデューサーさんがとっさにカンペで指示くれたから、『辛いのが入っていると言っておいて辛くないっていうドッキリ』のていで乗り切ったけど」

幸子「結局誰も辛いリアクションを取らなかったので、本命の『ロシアン大福の醍醐味』が全然表現できませんでした」

友紀「趣旨がおかしくなっちゃったから、あえなく故障者リスト入りってわけ」

幸子「そのたとえ、合ってます?」


紗枝「せやけど、ぐだぐだになってたら現場の雰囲気も良うなかったやろし――」

紗枝「かめら止めずにやりきったのは立派やと思います」

友紀「あんがと……紗枝ちゃんにそう言ってもらえただけで救われるよ」

紗枝「せやからすたっふさんも、お蔵入りになるんわかっててわざわざ編集してくれはったんやろなあ」

周子「まあ、途中までだけどね」

友紀「テロップなくなってたからね」

幸子「それでもちゃんとボク達のところへ送ってくださったんですから、ありがたい話ですよ」


紗枝「こずえちゃんも、うちの代わりによう頑張ってくれはりました。ありがとうなぁ」

こずえ「いいよぉー…」

紗枝「とってもかいらしゅうて、おいしそうに食べてはったさかい、みぃんな喜んでくれたやろなぁ」

幸子「それはもちろんです!」

こずえ「おいしかったー…」

周子「そういえばだけど、あたし収録の後すぐ東京帰るからってロケバス乗らんかったやん?」

友紀「うん」

周子「で、タクシー待ちで外にいた時、ディレクターさんとそっちのプロデューサーさんが喋ってるの聞いちゃったんだけど」

周子「和菓子屋さんに問い合わせたら、普通に激辛が入ってるはずだって言われたーって」

幸子「えー?」


周子「ディレクターさん、言ってたよ。赤はこずえちゃんが持つと画的に一番映えるから食べさせるようにして――」

周子「緑か黄色に辛いのを入れるよう頼んだって」

周子「でも、どっちかまでは指定しなかったからわからないって」

周子「プロデューサーさんも最初からそのつもりだったみたい」

紗枝「友紀はん、ほんまに緑は辛うなかったんどすか?」

友紀「めっちゃおいしかった」

幸子「と、いうことは?」

こずえ「ふわぁ…」


コンコン

紗枝「はぁい」

ガチャ

P「よし、みんな揃ってるな。こずえちゃんも塩見くんも、わざわざありがとう」

こずえ「いいよぉー…」

周子「いえいえ、あたしもこのV観たかったし」

友紀「プロデューサー、あたし達を集めたのってこれを観せるためだけじゃないんでしょ?」

P「ほう、じゃあ他に何があると思う?」

友紀「打ち上げだね! ビールかけしたい!」

紗枝「友紀はん……?」

幸子「無言の土下座!」

周子「男前やね……」


P「姫川、おもてを上げなさい。せっかくのめでたい報せなんだから」

友紀「め、めでたい? 何が?」

P「ああ、みんな聞いて喜べ」

P「なんと、そのお蔵入りになってしまったロケの様子が、再編集されて放送されることになった!」

幸子「ホントですか!?」

友紀「やった! 逆転ホームランじゃない!?」

紗枝「おやまあ、やっぱりみんなが頑張ってくれた甲斐があったいうことやなあ」

こずえ「おめでとー…?」

周子「ふふ、こずえちゃんもおめでとう、だよ」

こずえ「ありがとー…」


幸子「それで、いつ放送されるんですか?」

P「ああ、ちょっと先になるんだが――」

P「今年の下半期の『NG大賞』だ」

友紀「え」

P「そこに、『無念のお蔵入り映像特集』という内容のコーナーがあるから」

P「裏側をわかるようにして、君たちの内面の右往左往を包み隠さず披露する――という具合に編集し直して、放送されることになる」

幸子「そんな! ネタバレされたらみっともないですよ!?」

紗枝「でも、幸子はんはみっともないところもカワイイんとちゃいます?」

幸子「だったら仕方ありませんね!」

友紀「まあ、恥ずかしいのは確かだけど、『珍プレー・好プレー集』に出たようなもんだと思えば、むしろ誇らしいかな!」

周子「『待ってろキャンディアイランド!』」キリッ

紗枝「ぶふっ」

友紀「せっかく前向きに締めたのにー!」

こずえ「おにあいー…」



おしまい


以上です。

多分とっくの昔にネタかぶりしてると思ったけど知らんぷりして書きました。
意味がわからなかったらごめんなさい。

>友紀「いやあ、あたしの心の三塁コーチが回れ回れってさ」

>幸子「完全にアウトのタイミングでしたよ!」

ここが一番面白かった。乙

投下中にレスしてくれた人たち、ありがとうございました。
とても励みになりました。
もちろん投下後のレスにも感謝感謝です。

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