ミカ「やあ、お帰り」 まほ「…何故ここにいる」 (37)

ミカ「まあ遠慮しないでくつろぐといいよ」

まほ「聞かれたことに答えろ!ていうか遠慮もなにもここは私の家だ!」

ミカ「風に呼ばれてやってきたのさ」

まほ「そうくると思った…、菊代さん!どういうことなんですか!」

菊代「あの…、奥様が…」

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しほ「まほ、落ち着きなさい」

まほ「お母さま!どういうことか説明してください!」

しほ「今日は用事があって外出したのですが、その帰りに拾ってきました」

まほ「拾ってきたって…、犬猫や50円玉じゃないだから…」

しほ「だって、この炎天下に公園でテント張って噴水で水浴びしてたの見たらかわいそうになって…」

まほ「だからって家に連れてこなくても…」

ミカ「風に身を任せていたらお母さまに拾われたのさ」

まほ「ヤバい薬でもキメてるかお前」

しほ「とにかくしばらくの間はここにおいてあげようと思ってますからそのつもりで」

まほ「ええっ!?」

しほ「まほ、困っている人を見捨てるなんてそんな薄情な子に育てた憶えはありませんよ」

まほ「いやいやいや、コイツ好き好んで放浪生活を楽しんでるんであって、別に困ってませんから」

ミカ「というわけでしばらく厄介になるよ」

まほ「なにが『というわけで』だ!お母さま!継続高校に連絡しときますから
仲間が迎えに来るまでの間だけですよ!」

しほ「仕方ないわねえ、菊代さん、空いた部屋にお布団敷いておいてあげて」

菊代「かしこまりました、晩御飯どうしましょう?」

ミカ「食べ物に高級も低級もない、食べられるだけで尊いのさ。というわけで今夜はすき焼きがいいです」

まほ「調子に乗るなぁぁぁ!」

まほ「まったく、お母さまは一体どういうつもりなんだ。あいつときたらいきなり丼飯を3杯食うわ、
一番風呂には入るわやりたい放題じゃないか…、ん?菊代さん、冷蔵庫に入れておいたプリンを知りませんか?」

菊代「あの…、プリンでしたら先程ミカさんが…」

ミカ「プリンがね、語りかけてきたんだ、『私をどうぞ』ってね…」

まほ「貴様ぁぁぁぁ!」 

まほ「カップに『まほ』って名前が書いてあっただろうがぁぁぁ!」

ミカ「カップには書いてあったけど中身には書いてなかったからね…」

まほ「普通は器に名前が書いてあったら中身もそいつのもんだろうがぁぁぁ!」

しほ「まほ、何を大騒ぎしてるんですか、たかがプリン一個で」

まほ「たかがって…、風呂上がりに食べようとずっと楽しみにしてたのに…、うわぁぁぁん!
早く出ていけええええ!みんな嫌いだぁぁぁ!」

しほ「まほったらまだまだ子どもなんだから…」

菊代「まほお嬢さまが怒るのも無理ないと思いますけど…」

翌朝…

まほ「うーん、昨夜はいくらなんでも怒り過ぎだったかなあ、我ながら大人げなかったというか…、ん?書置き?」

『どうやら此処は私の居場所ではなかったようだね、また風に身を任せるとするよ。ミカ』

まほ「あいつ…」

菊代「たっ…、大変です!お米がごっそりなくなってます!あと野菜と缶詰も!」

まほ「ええっ!?」

菊代「現金や貴金属や通帳と印鑑なんかは無事なんですが倉庫に入れておいた燃料と戦車の部品も…」

まほ「やられた…、あいつの仲間に連絡したのは間違いだった…」



ミッコ「やったね!大漁大漁♪」

アキ「本当にいい人たちだったね」

ミカ「ああ、これで当分はいろんなことに困らないね、ほとぼりが冷めたらぜひまたお邪魔しよう」

菊代「さすがに今度ばかりは奥様も考え込んでますね…」

まほ「自分が連れ込んだのがこんなことしでかしちゃったからなあ」

しほ「まほ、菊代さん、ちょっと話があります」

まほ「なんなんですかその格好は!?」

しほ「彼女の自由奔放な生き様を見て私は気づきました。自分が今までいかに虚飾に満ちた堅苦しい毎日を送っていたかを。
自分自身を見つめ直すためにしばらくの間は家元の仕事を離れて旅に出ようと思います」

まほ「確かに人間息抜きは必要だと思います!だからってその格好はないでしょう!金田一耕助みたいな帽子に
いい齢こいてミニスカートって!それにそのジャージ、私が中学生の時のやつじゃないですか!サイズが全然あってない
じゃないですか!」

菊代「あの…、その大正琴はなんですか?」

しほ「近所の楽器屋にカンテレが売ってなかったのでこれで代用しました」

まほ「…ということがあって、お母さまが行方不明になってしまったんだが、そっちに顔だしてないか?」

みほ「こっちにはまだ…」

沙織「ちょっと…なにあれ…」

みほ「ごめんお姉ちゃん、後でかけ直すから!」

桂利奈「なにあれ…」

あや「変な格好のおばさんが教本読みながら大正琴つま弾いてるんだけど…」

優季「変質者?ていうか変態?」

あゆみ「あれ西住流の家元じゃないの?」

梓「そうだよ、あれ西住隊長のお母さんだよ、前に見たことあるし」

みほ「ぎゃああああ!」

しほ「意外と難しいわねこれ…」

みほ「お母さん…、そんな恥ずかしい格好してそこでなにを…」

しほ「やあ、風と一緒に流れて来たのさ」

しほ「君も一緒に…げふっ」

優花里「にっ…、西住殿!いきなりお母さまをバールでしばいて昏倒させるなんて!」

みほ「お母さま?誰のこと?私にはこんな成人向け写真投稿雑誌に載ってるアレな趣味の人みたいな格好の身内なんていないから」

みほ「今のうちに縛って木箱に詰め込んでっと…、あ、もしもしお姉ちゃん?確保したからすぐ回収しに来て。
早朝で目撃したのが一年生と私たちだけだったのは不幸中の幸いだったわ、優花里さん、悪いけどそこの自販機
で紅茶買ってきて。あとウサギさんチームは全員集合!」

梓「あ…、あの、なんでしょうか、もしかして隊長のお母さんのことですか?」

みほ「お母さん?誰のことです?みなさんは何も見てませんよね?」

梓「いや、でも…」

みほ「徹甲弾が貫通した戦車の中がどうなるか知ってる?成形炸薬弾や粘着榴弾と違って中で破片が
飛び散ってひどい有り様になるんだって。ミンチになった戦友の肉片にまみれて、死にきれない者の
悲鳴がいつまでも…。特殊カーボンも万能じゃないから昔は稀にそういう事故が起きたんだって」

優花里「西住殿、買ってきました」

みほ「ありがとう優花里さん。では(紙コップ紅茶片手に)こんな格言ご存知かしら?『一発だけなら
誤射かもしれない』」

優花里「福島みずほですね」

梓「私なにも見てませんから!」

優季「何も知りません!」

あや「えいっ!(パリン)ちょうどメガネが割れてて何も見えませんでした!」

桂利奈「何も見てないです!」

あゆみ「紗希も何も見てないって言ってます!」

みほ「そう、それでいいんです」

まほ「みほ、すまない、世話をかけたな」

みほ「あ、お姉ちゃん、早かったね」

まほ「エリカもすまなかったな、こんなことに付き合わせてしまって…」

エリカ「いえ、私も門下生ですから…」

つづく

しほ「うう…、一体何が…」

常夫「気がついたようだね、まほたちから話は聞いたよ」

しほ「あなた!?どうしてここに!?」

常夫「連絡を受けてから急いで戻ってきたんだ、君がここまで追い詰められていたなんて…」

しほ「あなた…」

常夫「なあ、休暇を取ってきたんだ、初めて出会ったあの頃みたいに二人で旅に出ないか?」

しほ「…いいんですか?」

常夫「ああ、若かったあの頃を思い出すなあ」

しほ「ええ、まるでケダモノのようにお互いを求めあってましたね…」

常夫「我慢できなくて真昼間から始めて公然わいせつで警察に捕まったこともあったなあ」

しほ「いい思い出でしたね…」

まほ「あ…あの、私もいるんですが娘の前でそんな生々しい話題はどうでしょう…、
ていうかどこがいい思い出だこの変態夫婦」

しほ「というわけでダーリンと二人でしばらくの間旅に出ます、後を頼みます」

まほ「警察沙汰だけは勘弁してくださいね…」

ミカ「やあ、お帰り」

愛里寿「あの…、お母さま、この人誰ですか?」

千代「ああ、愛里寿、帰りに拾ってきたの。しばらくの間おいてあげるから」

ミカ「というわけでお世話になるよ♪」


                   終

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年08月23日 (火) 23:45:39   ID: rNBNjvD7

みほ「バカは死ななきゃ治らない」

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