QB「一度や二度、殺されたくらいじゃ死なないよ」 (512)

―― カチリ ――。


― それじゃあ、いくわよ、みんな!

― ピュエラ・マギ・ホーリークインテット!


―― カチリ ――


― 暁美さん?


― ええ、よかった。暁美さんで。

― 髪。解いたのね。雰囲気が変わっていたからびっくりしちゃった!


― ううん。とっても魅力的よ。見違えたわ。


―― カチリ ――


― 事情がわかるまで話を聞いていたかったけれど……。

― これ以上ベベが虐められるのを黙ってみているわけにもいかないわ。


― ちょっと暁美さん? 一体どうしちゃったの?


― 追いかけようだなんて思わないで。

― さもないと、私と戦う羽目になるわよ。

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―― カチリ ――。


― 絶好調の■■さん相手に真っ向からケンカ売るなんてさあ。

― あんたも自信家なんだか、バカなんだか。


― また自分だけの時間に逃げ込むつもり?

― あんたの悪い癖よね。その■■に頼りすぎるところ。


―― カチリ ――


― 始末するの? ただ■■だからって理由で?


― ねえ。

― これってそんなに悪いことなの?

― 誰とも争わず、みんなで力を合わせて生きていく。

― それを祈った心は―――。

― 裁かれなきゃいけないほど、罪深いものなの―――?

―― カチリ ――。


― 話って何さ。


― あっはは。何言ってんのさあんた? 大丈夫?


― ちょっ。ちょっとちょっとっ。何あんた。

― ひょっとして、ケンカ売ってるわけ?


― ねーよ。べつだん用事もないしね。


― は? 何しに?


― なんかわけわかんねーんだけどさ。

― アタシをからかってる……様子でもねえよな。


―― カチリ ――


― アタシの記憶……。

― 確かに色々と食い違ってるのかもしれない。


― 妙なんだよ。

― こんな強気な暁美ほむらは初めて見るはずなのに……。

― 全然意外って感じがしねえ。

― ……むしろ。しっくりくるくらいだ。

―― カチッ ――。


― ほむらちゃんが転校してきてから、もう一ヶ月かあ。


― てひひ。今夜はナイトメアもでないまま、みんな幸せに眠れるといいな。

― なんだか不思議。

― こんな風にね。

― ほむらちゃんとゆっくりおはなしがしたいなって。

― ずっと思ってた気がするの。


―― カチッ ――


― ほむらちゃん。

― ひとりぼっちになったらダメだよ。

― わたしなんかでも、はなしを聞くことくらいなら……。なんにも役にたてないかもしれないけれど。

― それでも、一人で悩んでいるよりはずっといいと思うの。

― ほむらちゃんが悩んでいるときに、何もできないなんて……。

― わたしだってつらいよ―――。

―― カチッ!


ほむら(夢を見る。私であって、私でない誰かの)

ほむら(此処(ここ)でなく、此時(いま)でなく、そして……)

ほむら(おそらく、だけど。今世(ここ)でなく、きっと。今生(いま)ではない)

ほむら(妄想じみた記憶の断片だけが、まるで切り絵のように私の脳裏をかすめ去る)

ほむら(目覚めの気分は最悪だ。繰り返し見せられる覚えのない光景に、ほとほと嫌気がさす)

ザザーン ヒュォォォ……


船頭「お侍さん、どうしやした? 船酔いでもしましたかい?」

ほむら「……そう見える?」

船頭「へえ。なんだかずっと難しい顔されてますもんで。梅干しでよけりゃ、ありやすぜ」

ほむら「いえ、結構よ」

ほむら「少しだけ夢見が悪かっただけだから、気にしなくていいわ」

船頭「左様で」


ほむら(少し、驚いた。私って、わりかし無表情な方だと思ってたんだけど)

ほむら(だっていうのに。こんな縁もゆかりもないような相手に内心を暴かれてしまうなんて)

ほむら(どうにも、大分参っているみたい)

船頭「いやあ、最近の変わりようにはおったまげますわ」

ほむら「何の話?」

船頭「今向かってる先のことでさ」

船頭「黒船が来てからってもの、般若党なんて訳のわからねえ連中がうろつくようになりゃあしたし」

船頭「それを町の役人が追いかけ回して、やれ開国だの攘夷だのと、毎日のように血なまぐさい騒ぎがおきてまさあ」

船頭「大砲どっかんどっかんなんて日もありゃあして、こちとら夜も眠れねえ有り様でさあ」

ほむら「……そう。大変なのね」

船頭「お侍さんも巻き込まれちまうかもしれやせんし、気を付けてくださいよ」

ほむら「心配には及ばないわ。私って、強いもの」

……


クロフネデーン


船頭「あれが黒船ってやつでさ。ご覧になるのは初めてでしょう?」

ほむら「……そう、そうね。確かにあんな大きな船を見るのは初めてだわ」

ほむら(そもそも船自体、あんまり馴染みはないのだけれど)


……


―― 港 船着き場


船頭「さ、着きやしたぜ」

船頭「ご武運、祈ってやすよ」

ほむら「ええ、ありがとう」

ほむら(船頭に別れを告げ、一歩踏み出す。ふと気になったことだが、この阿弥浜という地、人の気配に乏しいよう思える)

ほむら(船着き場というのはもっと活気に満ちた場所ではないのだろうか)

ほむら(海に縁がある生まれではないので、イマイチ確信にかける違和感ではあるけれど)


ザワザワ ザワザワ


ほむら(なんて疑念はすぐさま晴らされた)

ほむら(路地を抜けた先。広場のような場所に、どういうわけか大規模な人だかりができていたからだ)

ほむら(すわ事件かケンカか、あるいは見世物か。気になった私は野次馬根性丸出しで、人混みに紛れ込む)

野次馬A「今日はやけに役人が多いな……」

野次馬B「あの黒船の中で大事な会議が開かれてるらしいぜ」

野次馬C「なんでも、御大老様のお姫様が乗り込んでるんだとよ」


ほむら(御大老の姫君に、大事な会議。それも黒船でと来た)

ほむら(なるほど確かに、これは一大事件だ)

―― 「やれ開国だの攘夷だのと毎日のように血なまぐさい騒ぎがおきてまさあ」

ほむら(そういえば、あの船頭はそんなことを言っていた)

ほむら(なんだか嫌な予感がしてきた。妙なことにならなければいいけど……)

―― 黒船 甲板


ポニテ「」コウチャグイーッ

ロン毛「日英合弁の製糸工場……?」

おかっぱ「この阿弥浜にお建てになるんですの?」


―― 英国公使 クリームヒルト・グレートヒェン


クリームヒルト「はい!」ニコッ

クリームヒルト「日本は世界でも有数の、良質な絹の産出国ですし、そこに英国の技術が加われば、世界に通用する絹製品ができると思うんです!」


―― 鬼怒川三姉妹


ロン毛→万由「それは素敵なお話ですわね……」

万由「きっとお父様もお喜びになりますわ」

ポニテ→千佳「攘夷派の連中が騒ぎ出しそうなはなしだけどねえ」ニヤニヤ

三姉妹「くっふふふwwwwwww」

―― 英国副使 オクタヴィア・ゼッケンドルフ 伯爵


オクタヴィア「……」イライラ

クリームヒルト「わたしは日本の人たちが豊かになってくれて、その幸せに少しでも貢献できたらな、って―――」チラッ

三姉妹「「?」」チラッ

赤髪ポニテ「スピー」Zzz

三姉妹「「」」


クリームヒルト「―――思ってますっ!」


三姉妹(マジ女神)キュンッ


おかっぱ→百合「ちょっと佐倉さんっ、不謹慎ですことよ!」

赤髪ポニテ「ZZZzzzzzz」

赤髪ポニテ「ZZzzzz」

赤髪ポニテ「Zzz」

赤髪ポニテ「Z……。んあ」パチクリ


―― 運上所頭取 佐倉杏子


キョロキョロ


赤髪ポニテ→杏子「……いやーははあ。実に建設的で興味深い話でした」ヘラヘラ

杏子「未来志向というやつですなあ」ヘラヘラ

杏子「運上所頭取、佐倉杏子。感服つかまつった!」ヘラヘラ

オクタヴィア「何よコイツ……っ。ヘラヘラとして……!」イライライライライライラ

……


ザワザワ ザワザワ


――阿弥浜代官 巴マミ


マミ「いいことっ、あなた達!」

マミ「攘夷志士達が何やら不穏な動きを見せているわっ」

マミ「けれどもう大丈夫。般若党が何を企んでも、巴マミある限り、この阿弥浜では好き勝手にさせないわ!!」

同心A(今日は一段と張り切っているなあ、お代官)

同心B(暑苦しい)

同心C(おっぱい)


―― 英国海兵隊隊長 シャルロット


シャルロット「じょーおーへーかの名にかけて、悪い人たちは船に近づけないのですっ」ムフー

海兵隊A(かわいい)

海兵隊B(隊長ちゅっちゅ)

海兵隊C(ちっぱいprpr)

ヒュ――― ドォーーン!


ヒェエエ ザワザワ


マミ「ッ!?」

シャルロット「なんですっ? なんなのです!?」


般若党員達「「」」ニヤニヤ ゾロゾロ


白髪サイドポニー「……」スタッ


マミ「出たわねっ、美国織莉子!!」

マミ「御政道に逆らう大罪人……っ。今日こそあなたを成敗するわッ!!」


織莉子「……ふぅ」

織莉子「きゃんきゃんと。よく吠える番犬ですこと」

織莉子「その暑苦しい口―――」


織莉子「―――閉ざして差し上げましょうか……?」ギロッ


―― 般若党党首 美国織莉子

同心A「」シャラリ

同心B「」シャラリ

同心C「」シャラリ

マミ「待ちなさい! 迂闊に飛び込んでは―――」


――般若党副将 呉キリカ


キリカ「向けたね?」

キリカ「織莉子に刀を」

キリカ「お前ら……もう―――」シャラリ


キリカ「―――許されないよ」ビキビキ


ザシュ ザシュ バシュ


同心ABC「「ギャアアーーッ!!」」ドサドサ

マミ「くっ……!」

シャルロット「ヒドいのです……」

マミ「……ッ」グッ

マミ「……怯んでなんていられないわ!」シャラリ

マミ「あなた達ッ、続きなさい!!」

同心達「「ワアアーーッ!!」」シャラシャラシャラシャラ


織莉子「キリカ」

キリカ「任せて織莉子!」

キリカ「お前達ッ、続けぇーーッ!!」

般若党員達「「ワアアーーッ!!」」シャラシャラシャラシャラ


シャルロット「でっ、できるだけ町の人たちにめーわくをかけないように戦うのです!!」ジャキ

海兵隊達「「ワアアーーッ!!」」ジャキジャキジャキジャキ

ウオォーーッ!! オンドリャァーーッ!!

ドオォーーンッ!!


腹黒そうなおかっぱ「お侍さんっ」

腹黒そうなおかっぱ「そんなところで突っ立ってないでっ、早くなんとかしてくださいよぅ!」


ほむら「」ハッ

ほむら(あんまりにも目まぐるしく状況が動くものだから、暫し意識がとんでいた)

ほむら(気がつけば、周囲は全くの修羅場)

ほむら(かかる声に振り向けば、どことなく腹黒そうな少女が、すがるような、それでいてあるいはもっと別の感情を孕んだような。そんな瞳を私へ向けていた)

般若党A「」タタタッ


ほむら(なぜ私はこんなことに巻き込まれているのだろう)

ほむら(何とかしろとか気軽にいってくれるけど、私が帯刀してるだけのなんちゃって武士だったらどうするつもりよ。まあ、私は強いからその辺の心配はないけども。有り得ないけども。けれど正直、面倒ごとはゴメンなのよね。関わり合いになりたくないわ、ホントに)

ほむら(思ったままを懇切丁寧に伝えたところで、けれど、目の前の男は私を見逃してはくれないだろう。なにせ刀まで抜いて、やる気は満々なんだもの。勘弁してほしい)

ほむら(ああ、もう。面倒くさい)

ほむら「……はあ」

ほむら「来なさい、全員まとめて。相手してあげるわ」シャラリ


ワラワラ ワラワラ


般若党B「」タタタッ

般若党C「」タタタッ

般若党D「」タタタッ

般若党E「」タタタッ


ほむら「かかって来なさいッ、雑魚共!!」クワッ

般若党B「黙れッ! 我らは攘夷志士ぞッ!!」ダーッ、コラー!

般若党D「オイ! 挑発だッ、落ち着け!!」

般若党B「オオオーーッ!!」

ブンッ! キンッ!


ズバッ


般若党B「ア”ア”ア”ア”ア”ーーーッ!!」ドサリ

ほむら(マヌケ面をした男が放つ、気勢を込めた一撃は、攘夷だなんだと大層なことを抜かしているわりには、ずいぶんとまあ、情けのないもの)

ほむら(軽く受け流して、胴に一太刀くれてやれば、あっさりとお亡くなりになってしまった)

般若党A「び、Bがあんな簡単に……っ」

般若党E「あり得ん……」

般若党D「なんたる剣の冴え。事によっては呉さんに並び得るかもしれんぞ……」

般若党員達「「!!?」」

般若党C「どっ、どうする……?」

般若党D「退くわけにもいくまい」

般若党E「いっそのこと、勧誘してみるというのはどうか?」

般若党A「どこの馬の骨ともしれんぞ」

般若党D「だが、腕は確かだ」

般若党員達「「……」」

般若党D「貴殿。まこと身勝手な言い分ではあるが、拙者の頼みを聞いてはくださらんか?」

ほむら「……聞くだけならば」

般若党D「かたじけない」

般若党D「我らは般若党と申す者。先ほど、貴殿に斬りかかった男が申した通り、攘夷志士にござる」

般若党D「恥ずかしながら、我らは大層なことをこそ謳っているが、その実、戦力不足も甚だしい。腕の立つ者は一人でも多く抱え込みたい、というのが現状」

般若党D「……例えそれが、素性の知れぬ者であったとしても」

ほむら「なるほど。……それで?」

般若党D「単刀直入に申す。我らへと手を貸し願いたい」


ほむら(そう言って、こうべを垂れた彼の頼みを聞くことは、実のところやぶさかではなかった)

ほむら(第一印象は最悪だけど、話してみた感じ、そう悪い人たちでも無さそうだし。何より、私文無しだし)


ほむら「……報酬次第ね」

般若党D「無論、出来得る限りの手は打ちましょう」

般若党D「即断せよとは申しませぬ。しかしもし、その気になったなら、神社へとお越しになられよ。話を通しておきますゆえ」

―― 神社 洞窟最奥部 般若党のねぐら


織莉子「あなたが、彼らの言っていた――」

織莉子「私は美国織莉子。般若党を指揮しているわ」

織莉子「そっちの子は呉キリカ。同郷の幼馴染で竹馬の友」

キリカ「……よろしく」

織莉子「ちょっと人見知りをしてしまうところはあるけれど、剣の腕は確かな子よ」

ほむら「暁美ほむらよ。よろしく」

原作では99.8%くらいのプレイヤーが英国に付いていた展開だけれど果たして?
てかどっちを見てもほむらの怨敵だらけだwwwwww

織莉子「ところで、日本が未曾有の危機に晒されているということは知っている?」

ほむら「さほど詳しくは」

織莉子「今、幕府は西欧列強に屈し、開国しようとしているのよ」

ほむら「わからないわね。それに何か問題があるの?」

織莉子「もちろん、大問題よ。一度開国してしまったのなら、隣国、清のように植民地にされてしまうのは明らかだもの」

ほむら「随分と自信たっぷりに言い切るけど。何か、根拠でもあるの?」

織莉子「ええ。西欧列強は他国を侵略することで栄えてきたからよ。その富や資源を奪うことによって、ね」

織莉子「このまま英国の介入を許してしまえば、日本には西欧の文物が流れ込み、夷人の思想がはびこり、日本は―――」


ほむら(織莉子はそこで一旦、言葉を切った。態度にも声色にもまるで現れてはいなかったけれど、理想に燃えるその瞳が、何よりも雄弁に彼女が抱く万感たる想いを物語っていた)

ほむら(美国織莉子という人物には、もっと冷然とした印象を抱いていたけど、存外、熱血な一面もあるらしい)


織莉子「―――日本でなくなってしまう。……日本人の心や魂がケガされるのを私はただ黙って見ているだけだなんて、絶対に出来ない」

織莉子「ここにいる者達は皆、熱い魂―――、大和魂を持った者達。すなわち、攘夷志士」

織莉子「夷敵を追い払い、売国奴を殲滅し、この国を守る―――」


織莉子「―――そう、私達の手で!」グッ


般若党員達「「おうッ!!」」コクリ

織莉子「ついてきて」

ほむら「どこへ行くの?」

織莉子「私達の行きつけの店よ」





>>28

一応三勢力を経由して大団円までいくつもりです

―― 町 居酒屋九兵衛


腹黒そうなおかっぱ「いらっしゃいませえ」

腹黒そうなおかっぱ「って言っても、まだ準備中ですけどねぇ」

織莉子「構わないわ。今日は新顔を紹介するために来たの」

腹黒そうなおかっぱ「そうなんですかぁ~」チラッ

腹黒そうなおかっぱ「ああーーっ」ビックリ

ほむら「……その節はどうも」

織莉子「あら、お知り合いだったの?」

ほむら「今朝港でね。暁美ほむらよ。よろしく」

腹黒そうなおかっぱ「これはご丁寧にどうもー。私は優木沙々。美人過ぎる居酒屋女将ですよぅ」

キリカ「自分で言ってちゃ世話ないね」ボソッ

沙々「キリカさんうるさーい」

キリカ「地獄耳だっ。さささささは地獄耳だ……」

沙々「もうっ。何度言ったらわかるんですかぁー。沙々ですよさ・さっ。さは二つでいいんですぅー!」


ほむら「賑やかね」

織莉子「そうね。沙々さんには色々と手伝ってもらったりもしているの」

ほむら「仲間ということね」

織莉子「ええ」

沙々「ほむらさんが織莉子さん達の仲間になるなら、大歓迎ですよー」

織莉子「夕刻になれば、店も開く。ほむらさん、また寄ってみてはどう?」

キリカ「そうだよそれがいいっ。なんたってこの店の茶漬けは絶品だからねっ!」

ほむら「そうね。……そうさせてもらうわ」

今日はここまで



魔法少女まどか☆マギカと侍道4のクロスです

中途半端に侍道のキャラクターが出てきたりしますがどうかよろしければ最後までお付き合いください


また明日更新します

再開します

――町 道場


ほむら(とはいえ、沙々の店が開くまでにはまだ時間がある)

ほむら(さて、どう時間をつぶしたものかと町を徘徊していたところ、古ぼけてこそいたけれど、中々に立派な道場が目についた)

ほむら(私とて武士の端くれ。こういう場所に興味がないわけではない)


ほむら(そういうわけで、中へと踏み込んだけれど、そこはまさしくがらんどう)

ほむら(ぽつねんと立ち尽くす老人が嫌に印象的だった)

ほむら「……立派な道場ね」

ぢぢい「んんん~?」

ぢぢい「……」

ぢぢい「お前さん、誰じゃ?」

ほむら「申し遅れたわ。私は暁美ほむr―――」

ぢぢい「もしかして、この道場を継いでくれるのかの?」

ほむら「えっ」

ぢぢい「継いでくれるんじゃろ?」

ほむら「いや、何で私がそんな……」

ぢぢい「んあ? よく聞こえんかったゾ。耳が遠くてなあ」

ぢぢい「それで道場。継いでくれるんじゃろう?」

ほむら「だから、そんないきなり言われても―――」

ぢぢい「お前さんならそう言ってくれると思っておったゾイ!」

ほむら「は? 言ってない―――」イラッ

ぢぢい「今日からお前さんがこの道場の師範じゃ!」

ぢぢい「そうと決まったら、早速弟子を集めてくるのじゃ」

ほむら「話を―――」

ぢぢい「その辺の奴と勝負して勝ったら、弟子になりたがる奴もでてくるじゃろう」

ぢぢい「もちろん殺しちゃダメじゃゾ!」

ぢぢい「あ。あとついでにワシの剣技も伝授するゾ」ヒトハダヌゴウ

ぢぢい「道場を大きくすればおいおい教えてやるから頑張るのじゃ!!」


ほむら「えぇー……」

―― 夕刻 町 居酒屋九兵衛 前


ほむら(あの老人と押し問答を繰り広げていたら、随分と遅い時間になった)

ほむら(道場の件も結局押し切られてしまうし。ささくれだった心は命の水で潤す他あるまい。元の目的だった時間つぶしにはなったわけだし、そこは感謝しておこう)


ガララララ ピシャ!


変態海兵A「ミスダイナマイッ」

変態A「俺達と飲み比べしようぜ!」

変態B「負けた方がストリップするってのはどうだい?」ニヤニヤ

変態C「ヒャッハーッ、いいゾ~飲め飲め~!」

変態共「「ソーレソーレソーレソーレ」」ギューンギューン

沙々「もうっ。やめてくださいよぅ」

ほむら(えっ。なにこれなにこのありさまなにこの状況)

ほむら(えっ。こんな世紀末な光景が許されていいの?)

ほむら(沙々もやめてとか言いつつ満更でもなさそうだし……)

ほむら(っていうか、みすだいなまいって何よ。全然ダイナマイトじゃないでしょうに。沙々はこちら側の人間でしょ。というか、絶え間ないソーレソーレコールうるさい。すっごい鬱陶しい)

ほむら(なんなの。もう、なんなの……)

ほむら(とりあえず一応、助けるべきよね。なんだか釈然としないけど)


ほむら「あなた達。それくらいでもう、やめておきなさい」

変態A「ヘイユー!」

変態B「俺達とやり合おうってのかい?」ニヤニヤ

変態B「面白い」

……


変態C「どうした? カタナを抜けよ!」

変態B「ニッポンのサムライはカタナが得意なんだろ?」ニヤニヤ

ほむら(うざい)シャラリ

変態A「どのくらい強いのか試してやる!」

変態共「「ソレーッ!」」シャラシャラシャラ

ほむら(気炎をあげて斬りかかってくる変態達だけど、足並みがまるで揃ってない)

ほむら(一応は軍属だろうに、これではまるっきり素人だ。……それはまあ、酔っ払いだから、というのもあるだろうけれど)


変態A「キエエーーッ!!」ブンッ


ほむら(挑発でもして、甘い一撃を引き出そうかとも思っていたけれど、どうやらそれも必要無さそう。足元が全く持っておぼつかない)

ほむら(大上段から振り下ろされた、どうやら渾身の一撃らしきものを軽くいなして、呆けたマヌケの鼻っ面へと刀の柄をしたたかに打ち付ける)


変態A「ばな”が! お”での”ばな”がぁ”!」ブバァ

変態C「」ガッデーム

変態B「こうなったら、コイツで決着をつけてやる!」ジャキ


ほむら(鉄砲……ッ)

ほむら(これはマズい状況だ。剣道三倍段、なんて言葉があるけれど、鉄砲と刀では格差というのも馬鹿らしくなるくらいに差異がある。まともに対峙しては、まず勝ち目はない)

ほむら(せめて刀の間合いなら、どうとでもなったけれど、変態と私のあいだにはいまだ開きがある。もう少し引き付けておくべきだった)

ほむら(けど。やってやれないことはないハズ。刀を構え直して、相手の出方を窺う)

変態C「ヘーイ、メーン」ガチャ


ほむら(やっぱり予備動作が大きい。あれなら、どうにか照準を読むこともできそうね)


パンッ


ほむら「……ッ」サッ


ほむら(今ッ!)クワッ


変態C「よっ、避けられ―――」


タタタッ グシャア


変態C「ギェーーッ!! 子供ができなくなっちゃうゥーーッ!!」ドサッ

ほむら(へんたい B はおどろいている)

ほむら(ここは畳み掛けるべきよね。昔の人も疾きことは何とやら、とか言ってたらしいし)

ほむら(すかさず駆け出し、跳躍。勢いのままに―――ッ!!)

ほむら(やれッ、ほむら! とびひざげりだ!!)


メキキィ


変態B「ゴフゥ」ドサッ


ほむら(こうか は ばつぐんだ!)

シャルロット「やめてくださいっ!」

シャルロット「これはいったい、なんのさわぎなのですっ?!」

沙々「この人達がぁ、わたしにヤらしいことをしようとしてきたんですぅ」

沙々「ほむらさんがそれを止めようとして戦いに……」

シャルロット「なんですって!?」

シャルロット「町の人にめーわくをかけるなんて……」フルフル

シャルロット「それでもあなた達はじょーおーへーかの兵なのですかっ!!」プンプン

シャルロット「当分のあいだは船の甲板をおそうじしながらはんせーするのですっ!」プンプン

変態共「「」」シュン

シャルロット「このたびは、ぶかがごめーわくをおかけして、ごめんなさい……」ペコリ

シャルロット「もうこんなことをしないように、帰ったらたくさんしかるので、どうか許してほしいのです……」シュン

ほむら「私は別に構わないわ(特に何もされてないし)。気にしてない。……沙々、あなたは?」

沙々「私も、もういいですよぅ。ほむらさんがやっつけてくれましたしぃー、スカッとしましたぁ」


―― 物陰


織莉子「ふふっ。私の出る幕はなかったわね」

―― 夜 神社 洞窟最奥部 般若党のねぐら


織莉子「あら、これはいいところに」

ほむら「こんばんわ。何か取り込み中だったかしら」

織莉子「こんばんわ。私達の戦力を増強する作戦を練っていたところなの」

ほむら「何かあてが?」

織莉子「ええ。これから代官所に忍び込み、武器弾薬をごっそりといただくわ」

織莉子「できたら、ほむらさんにも参加してほしいわ」

ほむら「……報酬は?」

織莉子「歩合でどうかしら。運び出した武器の数だけ、報酬を支払うわ」

ほむら「(悪い話じゃなさそうね)……いいわ。参加させてもらう」

一旦休憩

7時頃に再開します

―― 代官所


キリカ「シッ!」

同心「!!?」


ザシュッ


織莉子「今よ!」


ほむら(織莉子の声を皮切りに、皆が駆け出す)

ほむら(夜陰に乗じ、何かを盗み出したりだなんて、初めての経験だったけれど)

ほむら(案外、上手く出来るものね)

ほむら(……というかむしろ、どういう訳か、このコソ泥じみた行いが、慣れ親しんだ事柄ででもあるかのように、ごく自然と身体は動く)

ほむら(鼻先を通り抜けてやってもまるで気付かない、マヌケな警備の同心を尻目に、一つ、また一つと目的の木箱を運び出していく)

ほむら(自賛するようだけど、私ってかなり手際がいい)

ほむら(まるでネズミ小僧や石川五衛門みたい。盗み出したものは民草でなく、攘夷志士に渡ってしまう訳だけども)


織莉子「ご苦労様。引き上げましょう」

―― 神社 洞窟最奥部 般若党のねぐら


織莉子「今日の働きは見事だったわ! おかげで私達の戦力は増強された」

織莉子「特にほむらさん、あなたの働きには目覚ましいものがあったわ」

織莉子「これは約束の報酬よ」

ほむら「確かに受け取ったわ」

織莉子「またお願いね」

―― 二日目 町 鍛冶屋


ほむら(刀は武士の魂。こまめな手入れは欠かせない)

ほむら(道場の隣には良さそうな鍛冶屋があったし、一度顔を出してみるのもいいかもしれない)

ほむら(そう思い立った矢先に――)


鍛冶屋「ところで、お侍さんに大事なお知らせがある」

鍛冶屋「実は、近いうちに店をたたむことにしたんだよ」セツメイシヨウ

鍛冶屋「あと少しのあいだだけど、よろしくねぇ」

ほむら(えっ、マジで)


ほむら「待って待って、この店がなくなってしまうのは困るわ」

鍛冶屋「すまんのぅ」

鍛冶屋「だがもう決めたことだ。諦めてくれ」


ほむら(なんてカタクナな。思わず、腐れ鍛冶屋、二度と来るか! なんて、乙女にあるまじき発言が飛び出しそうになったけれど、なんとか寸でこらえる)

ほむら(彼にも事情と言うものがあるだろうし、無理強いをするのはよくない。……けれど、鍛冶屋が無くなってしまうのは困る)

ほむら「店をやめてしまうのはなぜなの?」

鍛冶屋「出来ることなら死ぬまで続けたい」

鍛冶屋「だが身体が追い付かない」トシニハカテンナァ

鍛冶屋「こう見えても、いい歳だからのぉ」ホッホォー

ほむら「それなら跡継ぎを探すとか。誰か心当たりはないの?」

鍛冶屋「この店を継ぐ者?」

鍛冶屋「うーん。一人だけなら、心当たりがあるけどねぇ」

ほむら「……訳ありなの?」

鍛冶屋「……」

鍛冶屋「……」

鍛冶屋「……お前さん、一つ頼まれてはくれんかね」

ほむら「それは構わないけれど」

鍛冶屋「ありがとねぇ」ペコリ

鍛冶屋「堂島軍二という男を探し出して、説得してほしい」

鍛冶屋「そいつは以前、わしのところで鍛冶の修行をしていたのだが―――」

鍛冶屋「ある日出て行ったきり、帰ってこんのだ」

鍛冶屋「そいつならこの店を継げるかもしれない」オチャノコサイサイジャァ

鍛冶屋「頼んだよ」ペコリ

―― 墓地


ほむら(……やっと見つけた)

ほむら(よくよく考えてみたら、名前以外に手掛かりなんてなかったのに、この短時間でよく見つけたものだわ、私)

ほむら(東の美少女侍探偵とか名乗っちゃっても、許されるんじゃないかしらね、もう)


堂島「……」

ほむら「あなたが先に名乗りなさい」

堂島「ちょっと待てっ、お前は何様だ!」

ほむら「明美ほむら様よ。……それはあなたのお墓?」

堂島「俺を怒らせたいのか?」ケンカウッテンノカ


ほむら(いけない。つい八つ当たりを……)フルフル」

ほむら「儲け話があるのだけど」

堂島「興味がない」アバヨ

ほむら「住みづらい世の中よね……」

堂島「ふん。かもな」

ほむら「」イラッ

ほむら「どうやら、気が合うみたいね、私達」

堂島「どこがだ」

ほむら「もう友達ね。よろしく」

堂島「どうしてそうなるっ!」マテコラッ

ほむら(今が好機ね)


ほむら「鍛冶の修行はやめてしまったの?」

堂島「……さてはお前、親方の回し者だな?」


ほむら(バレた)


堂島「ふざけやがってっ。二度と来るな!」

ほむら「親方が引退してしまうのよ」

堂島「それがどうした」

ほむら「」イラァ

ほむら「……この刀を直してくれない?」

堂島「嫌だ、帰れ」


ほむら(とりつく島もない)

ほむら(師弟そろって、なんて頑固な人達なのかしら)

ほむら(仕方ない。ここは一度、鍛冶屋に戻ろう)

―― 町 鍛冶屋


鍛冶屋「おお! 軍二を見つけたのか!」

ほむら「ええ。けれど彼、何か思い詰めているみたい」

ほむら「鍛冶屋を継ぐ気は無いらしいわ」

鍛冶屋「ふんむぅ。やはりか……」

ほむら「……何か、知っているの?」

鍛冶屋「……」

鍛冶屋「かつてわしには二人の弟子がいた」セツメイシヨウ

鍛冶屋「一人は軍二で、もう一人は息子の半平。二人とも熱心に修行に励んでいたよ」

鍛冶屋「特に軍二には天性の才能があった」

鍛冶屋「わしもついつい軍二ばかりをヒイキしすぎてな……」フゥー

鍛冶屋「半平は家を出てしまった」ナサケナイ

鍛冶屋「そして半平は鍛冶の道を捨て、般若党に入った」


ほむら(般若党に……? じゃあ)バックンバックン

ほむら(もしかして、あの墓は……)バックンバックン

鍛冶屋「それから間もなく般若党は騒ぎを起こし、半平はその犠牲になった」ムゴイノウ

ほむら「……ッ」ズキズキ

鍛冶屋「どうしたんだい?」

ほむら「……いいえ、気にしなくていいわ。続けて」

鍛冶屋「そうかい? 軍二が出ていったのはそのすぐ後だよ」


ほむら(私は何で、罪悪感を覚えているんだろう……)ズキズキ

ほむら(ほむら私には関係のないこと、そのはずなのに)ズキズキ

ほむら(ダメだ、嫌な気分を振り払えない)ズキズキ

ほむら(大分早いけど、九兵衛に行こう)ズキズキ

―― 昼 町 居酒屋九兵衛


沙々「いらっしゃいませぇ」


ほむら(なんだか不穏な雰囲気ね)


般若党A「おいっ、本当か」

般若党B「ああ。どうやら噂は本当らしい」

般若党C「放っておくと、士気が乱れるな……」

織莉子「沙々さん」

織莉子「代官所の近くで見たというのは、本当に私達の仲間に違いないの?」

沙々「はいっ。間違いありませんよぅ」

沙々「お役人様となにやらコソコソとしているのをこの目で、バッチリ見ちゃいましたからねぇ」

織莉子「……ふむぅ」

般若党B「それに関してですが」

般若党B「剣崎という役人が新入り達に目をつけ、たぶらかしているという噂があります」

織莉子「……キリカ」

キリカ「任せてよ!」

織莉子「」コクリ

織莉子「ほむらさん。たった今、あなたに依頼したいことが出来たわ」

織莉子「依頼とは―――」


織莉子「天誅よ」


ほむら「……っ」


ほむら(天誅ときた。正直、気持ちが乗らないので、断りたいところだけれど―――)

ほむら(でも、気分転換になるかもしれないし)


ほむら「……引き受けるわ」

織莉子「ありがとう」

織莉子「では、キリカと共に行ってきて」

織莉子「剣崎は腕の立つ男よ。ほむらさんとキリカなら問題はないと思うけれど」

織莉子「くれぐれも、油断はしないでね」

―― 代官所


剣崎「」トコトコ

般若党新入りA「」トコトコ

新入りB「」トコトコ


ほむら「……」

ほむら「……ここは任せてもらうわ」

キリカ「そうかい。ま、ヤバくなったら呼んでよ」

ほむら「……」タッ


タタタッ


剣崎「なんだ貴様は!?」

ほむら「……」グッ

ほむら「天誅よ」

ほむら(出来る限り強く、出来る限りに深く。状況がまるで飲み込みきれていない男へ向かい踏み込む)


新入りB「え―――」

ほむら「なんたるマヌケ面だろう。瞬く間に肉薄し、呆けきった男のみぞおちへ、抜刀しがてら柄の部分を突き込み、間髪入れずに旋回しながら胴を一閃。そうすれば、なんともアッサリとしたご臨終」


新入りA「びッ、Bィイイイーーーッ!!!」

剣崎「とっ、取り乱すなっ。それこそ敵の―――」

ほむら「思うつぼ、よね」


ほむら(そう、そこはすでにもう私の間合い)


新入りA「うわああああーーッ!!」スッ


ほむら(いまさら刀に手をのばしたところで、全ては後の祭り)

ほむら(腹に刀を突き入れ、存分に臓腑を掻き回してやったところで、死にかけのそいつを剣崎に向かって蹴りだしてやる)


剣崎「な、んなのだ……」

剣崎「なんなのだ貴様はァ―――ッ!!」

ブンブン ブゥン!


ほむら(さながら、刀を水車のように振り回す、見ようによってはだだっ子のようでもある剣法をいなす)

ほむら(さすが、般若党党首、美国織莉子をして腕が立つと言わしめるだけのことはある。一撃一撃の重さが、凡百の剣客の比ではない)

ほむら(一見すると、いっそ無法ですらある彼の剣も、けれど存外に隙がない)

ほむら(内心の焦りを顔に出さないように気を付ける。出来るだけ、余裕ぶらないと)

ほむら(今冷静さを見失ってるのは剣崎だ。それを上手く利用しなくては)

ほむら「ふっ」ファサァ

ほむら「通りすがりの―――」

ほむら「―――侍よ」ドヤァ


ビキッ


剣崎「たわごとをッ! おのれがァ―――ッ!!」


ほむら(かかったっ)

ほむら(深く踏み込んでの大味な唐竹割りを捌いて―――)


剣崎「なッ!」


ほむら(逆胴を―――ッ)


ほむら「斬り抜けるッ!!」


ズバァッ


剣崎「に……ィッ」ドサッ

ほむら「……」―チン

キリカ「すごいすごいっ、すごいよ暁美!」

キリカ「これなら織莉子も大喜びだよっ。戻ろう、さあ戻ろう織莉子のところへ!」


―― 町 居酒屋九兵衛


織莉子「お疲れさま。キリカ、ほむらさん」

キリカ「たっだいまぁ~っ」


ガバッ


織莉子「きゃっ」

キリカ「ん~」スリスリ

織莉子「もうっ。キリカったら……」ハァ

織莉子「ほむらさん、報酬よ」

ほむら「……ええ。確かに」


ほむら(思い切り動いたら、少しだけ気が紛れた)

ほむら(労働も案外、悪くないわね)

ほむら(般若党以外にも、雇ってくれそうなところを探してみようかしら)

―― 夕刻 町 賭場


女将「あら、お客さん?」

女将「賭場は夜だけなんですよ。ごめんなすってぇ」

ほむら「雇ってほしいのだけれど」


女将「……あァ?」

女将「なんだい文無しの胸無し侍がうろちょろしやがって」

ほむら「」イラッ

女将「女のアタシにお願いすればなんとかなるとでも思ったかい?」

女将「どこの馬の骨だか知らないけどねェ」

女将「ナメるのもいい加減にしなァッ!!」トットトキエナ

ほむら「別に、そんなつもりで話しかけた訳じゃないわ」

女将「どんなつもりだろうと関係ないねぇ」

ほむら「あなた」

女将「出直しn……あ?」

ほむら「あなたがそこに棒立ちしている禿頭よりも偉そうだから、話しかけたの」

禿「」イラッ

女将「へェ。……で?」

ほむら「そこの禿、相当な手練れよね? 私ほどじゃないけど」

ほむら「そんな手練れの禿が……そう、気を遣っている。そう見えたから、あなたに声をかけたのよ」

女将「ふぅん。なかなか鋭いじゃないか。面白い」

女将「小鳩! コイツに仕事をやりなッ!!」

禿→小鳩「ヘイ、女将!」ココロエタ

女将「アタシは賭場の女将」

女将「賭場の客へ酒を振る舞うのは表の顔。お役人に刺客を振る舞うのが裏の顔さ」

女将「あんたはいい切り札になりそうだねぇ」

女将「ま、せいぜい期待しておくよ」ヨロシクネェ

小鳩「俺は極道者の小鳩だ」ヨロシクナァ

小鳩「ウチで働けることを女将に感謝しろ」

小鳩「だが覚えておけ」イイカ

小鳩「俺はてめえを認めちゃいねえ」ゴメンダ

小鳩「ふざけたマネしやがったらこの手でぶっ[ピーーー]」コッパガ

ほむら「」イラッ

ほむら「そうまで気にかけてもらえるなんて、光栄だわ。禿」

小鳩「禿じゃねぇッ!! 剃ってんだよッ!!!!」

ほむら「あら。そうだったの、気付かなくてゴメンナサイ」

小鳩「チッ、気に食わねえ女だ。……まあいい、早速だが仕事にかかってもらうぞ」

―― 仕事「鬼畜同心」


小鳩「ある同心がナメたマネをしてくれた」

小鳩「ウチの若い舎弟をゆすって、金を巻き上げやがったんだ」

小鳩「どうやら一度きりじゃないらしい」

小鳩「同じ目にあった舎弟が何人もいやがる」

ほむら「……腐りきってるわね」

小鳩「ああそうだ。だからそのド腐れ野郎を始末してこい」

小鳩「大通りにいるはずだ」

小鳩「殺り方はてめえに任せる」

ほむら「引き受けたわ」

小鳩「くれぐれも手を抜くんじゃねえぞ。女将の期待を裏切るなよ」イイカ

―― 大通り


ほむら(……ん?)


サッ(物陰)


鬼畜同心「おい娘」

鬼畜同心「お前の親父は、去年も年貢が足りなかったそうだな?」

鬼畜同心「悪い親父だねぇ」ネットリ

娘「そのことについては、お代官様からお許しをいただいております」


ほむら(代官……。昨日見かけた、あの暑苦しそうな女のことか)

ほむら(彼女を語る娘の口ぶりから察するに、随分と人望が厚いらしい)

ほむら(私としてはどうにも、苦手そうな人物なのだけども)


鬼畜同心「代官が許しても、この俺が許さないんだよ」

鬼畜同心「足りない分を出してもらおうか」

娘「何をおっしゃいますっ」

娘「そんなの無茶苦茶ですっ!」

鬼畜同心「なぁに。俺も鬼じゃない」

鬼畜同心「無いものを出せとは言わねえよ」

鬼畜同心「お前……。俺に抱かれろ」

娘「はぁあ?」

鬼畜同心「さあ、旅籠にいくぞ」

鬼畜同心「さっさとしろ!」

娘「嫌です!」

娘「ふざけないでください!」

鬼畜同心「俺は本気だ!」

鬼畜同心「お前がほしい」

ほむら(そろそろ聞くにたえない)


ほむら「ちょっといいかしら。あなたに話があるの」

鬼畜同心「なんだと?」

鬼畜同心「何の話だ!」

ほむら「簡単なことよ」

ほむら「死んでくれる?」

鬼畜同心「死ね、だと?」

鬼畜同心「www面白いゴミだなwwwww」

鬼畜同心「ほ~れほ~れwwwwwやれるもんならwwwwwww―――」

ほむら「そ。じゃあ―――」

ほむら「―――遠慮なく」シャラッ


ズバシュゥ!!


鬼畜同心「や……てみ……」ヨロヨロ


ドサッ


ほむら(性根が腐りきってる上に、武士としても腐っているなんて……)ハァ

ほむら(救いがたいわね)―チン

ほむら(賭場に戻ろう)


娘「あのっ」

娘「ありがとうございます!」ペコリ

娘「本当に助かりました!」

ほむら「こちらが勝手にやったことよ。気にする必要はないわ」

娘「それでもっ、助かりました!」

ほむら「そう。それなら、素直に礼は受け取っておくわね」

ほむら「じゃ。私は行くわ」

娘「あっ! 待って―――」


ザッザッザ


娘「お侍……さま」ポー

今日はここまで

ところで、大分長くなりそうなんですけど、酉をつけた方がいいんですかね?

てすと

>>1です
トリップをつけました

再開します

―― 町 賭場


小鳩「手並みは見せてもらった」

小鳩「女将もてめえの働きには満足してる。よろこべ」フッフッフ

小鳩「てめえを鳥葬会の一員と認める。どうだ、嬉しいだろ? あ?」

ほむら「遠慮しておくわ」

小鳩「口答えするんじゃねえよ」タコ、コラァ

小鳩「てめえに拒む権利はねえんだよ」イイカ

ほむら「」イラッ

ほむら「ところで、鳥葬会って何?」

小鳩「鳥葬会は南関東の賭場を牛耳る極道だ」

小鳩「阿弥浜の裏を仕切る女将はその上層部の幹部」

小鳩「俺は賭場と女将を陰で支える役目に過ぎない」

小鳩「で、てめえは今日から俺の舎弟だ!」

小鳩「鳥葬会の一員として、恥ずかしくない極道になれ!」イイカ


ほむら(えー……)

―― 仕事「楽な仕事」


小鳩「それじゃ、次の仕事だ」

小鳩「北関東の極道「菩殺会」がこの阿弥浜に進出しようと画策しているらしい」

小鳩「奴らの手先が偵察に、街道まで来ていやがる」

小鳩「目障りだから追っ払ってこい」

小鳩「何人か死体にして送り返せば、少しはビビっておとなしくなるだろう」

ほむら「承ったわ」

小鳩「行ってこい」ヨロシクナ

小鳩「女将の期待を裏切るなよ」イイカ

―― 街道


菩殺会A「いずれこの阿弥浜は菩殺会のものとなる」

菩殺会A「菩殺会こそが日本一の極道だ」

菩殺会D「魅六様可愛いよ魅六様」

菩殺会B「菩殺会の親分である魅六様は北関東の極道達を束ねる大親分」

菩殺会B「魅六様こそ関東全域を支配するに相応しいお方だ」

菩殺会D「魅六様とちゅっちゅするにはどうしたらいいですか?」

菩殺会D「魅六様prpr」

菩殺会C「現在、南関東に寄生している鳥葬会など、恐れるに足りん」

菩殺会C「菩殺会の力を持ってすれば、駆除するなど容易い」

菩殺会D「魅六様可愛すぎ結婚したい」

菩殺会D「魅六様は俺の嫁」

菩殺会E「鳥葬会には四人組とかいう連中がいるそうだが、笑わせる」

菩殺会E「我が菩殺会には、五人男と言う関東最強の男達がいるのだ」

菩殺会D「魅六様の可愛さで、俺の股間の妖刀が、約3里しちゃう」

ほむら(なんか熱く語り合ってる……)

ほむら(……相手は五人。先手必勝ね)


ほむら「こんにちは」

菩殺会A「ん? 誰だ、お前は?」

ほむら「名乗るほどの者じゃないわ。気にしないで」

ほむら「そんなことよりも、ねえ」

ほむら「死んでくれない?」シャラリ


ザンッ


菩殺会D「……え?」ブシャア

菩殺会D「俺……まだ、魅六様と……。口づけも交わしてないのに……」フラッ…

菩殺会D「こんなの……あんまり、だ」ドサッ

菩殺会C「やっ、やりやがった!!」

菩殺会E「ちっくしょうっ! やるぞ、てめえら!!」シャラリ

菩殺会B「え……? は……?」


ほむら(ぼさつかいB は こんらんしている)

ほむら(その隙は見逃さない……っ)タタタッ


ズバァ!


菩殺会B「」ドサッ

菩殺会A「ひっ……ひィイ……」ガクガク

菩殺会E「何してんだA! 早く刀を―――」


ザシュゥ


菩殺会E「ぬ……け……」ドサッ

菩殺会C「Eィイイイイーーッ!!! 貴様よくもォ―――ッ!!!」


ズアッ


ほむら(怒りの上乗せされた剣は、確かに強い。我を失うほどに怒っているのなら、なおのこと)

ほむら(けれど)


ほむら「単調で読みやすいわ」サッ


ズバッ


菩殺会C「」ドサッ

ほむら「さようなら」

菩殺会A「ゼッ……ハッ……ゼッ……」

ほむら「……」ザッザッザ

菩殺会A「ひっ、ひ。来るな……。来るなくるなクルナァアアアアア―――ッ!!!」

―― 町 賭場


小鳩「首尾は?」

ほむら「四人斬って、残りをしこたま脅かしてから送り返したわ」

小鳩「上出来だな。それだけやっときゃ、奴らがとんでもねえ馬鹿ででもねえ限りはこっちへ迂闊に手を出そうだなんて考えもしねえだろう」

小鳩「さて」

―― 仕事「侍四天王」


小鳩「次の仕事だ」


ほむら(人使いがちょっと荒杉内)


小鳩「身の程を知らねえ四人の侍が墓場に現れた」

ほむら「……ッ」ズキッ

小鳩「自らを四天王とか称する幼稚な連中だ」

小鳩「雑魚のくせに何かと賭場にケチをつけてきやがる」

小鳩「迷惑だから始末してこい」

小鳩「殺り方はてめえに任せる」

ほむら「……引き受けるわ」

小鳩「手を抜くんじゃねえぞ」ヨロシクナ

小鳩「女将の期待を裏切るなよ」イイカ

―― 墓場


ほむら(彼は……?)キョロキョロ

ほむら(……いない)ホッ


ほむら(あの人達ね)


ほむら「こんにちわ」

赤侍「こんにちは。我らに何か用であるか?」

ほむら「……っ」

ほむら「……用という程のことでもないけれど」

ほむら「あなた達って何者なの?」

赤侍「よくぞ聞いてくれた!」

赤侍「我らは阿弥浜の正義と平和を守るため、覚悟を決めた四人の侍!」

緑侍「神速の剣戟疾風のごとく! 元御庭番(嘘)の実力者、緑侍!!」バァーン


黄侍「怪力無双! 縁の下の力持ち、黄侍!!」バァーン


青侍「くーるでにひる! 神算鬼謀の参謀役ッ! 青侍!!」バァーン


赤侍「頼れる男! 燃える血潮は悪逆非道を許さないッ! 赤侍!!」バァーン







侍四天王「「我ら四人そろってッ! 侍四天王!!!」」ドン!





ほむら(えー……)

ほむら(わけがわからないわ)


ほむら「……侍四天王?」

赤侍「そう、かつて阿弥浜には四人の伝説の侍がいた……」


ほむら(なんか語りだした……)


赤侍「それが侍四天王なのだ!」

赤侍「黒船が来航するより以前、彼らはくらしの安全を守る自警団として人々から愛されていた」

赤侍「だが、突如として現れた悪の組織。鳥葬会の前に、彼らは敗れ去った」

赤侍「彼らが阿弥浜に残した伝説は、今なお人々の胸を打ってやまない」

赤侍「彼らに敬意を表し、新たな侍四天王を結成した!」

赤侍「それが我らだ!!」

―― カチッ ――。


― いきなり秘密がバレちゃったね……。

― クラスのみんなには、ナイショだよっ。


ほむら「つぅっ」ズキッ


ほむら(頭が……っ。それに。今のは……?)


赤侍「おっ、おい、大丈夫か?」

ほむら「―――」


ほむら「お願いがあるの……」

赤侍「何だいきなり。まあいい、言ってみろ」


ほむら「……死んで?」

――キンッ


赤侍「……え?」ズルッ

赤侍「」ドサッ

黄侍「あっ、赤侍ィイイイイーーッ!!!」

青侍「バカな、一体何が起きたと―――」


ザンッ


青侍「」ブシャア


ザバッ


緑侍「」ドサッ

黄侍「貴様……ッ。貴様ァ―――ッ!!!」ブォン


ガィンッ


黄侍「!!?」


ドスッ


黄侍「」ドサッ

ほむら「……」

ほむら「」ハッ


ほむら「……っ」ギリィ

ほむら「」ペコリ

―― 町 賭場


小鳩「本物の侍四天王を知っているかだと?」


ほむら(そう、あの時だ。あの益体のない話を聞いていた時、覚えのない記憶が突然込み上げてきて、私は冷静さを見失った)

ほむら(あの身を焦がすような痛みと、寂しさ。そしてどうしようもないくらいの愛おしさ)

ほむら(ただの妄想と切り捨てるには、あまりにも鮮烈な感情の奔流)

ほむら(もしかして私は侍四天王と面識がある? なら、それらに会ったなら、覚えのない記憶について何かわかるかもしれない。一抹の希望を抱く)


ほむら「ええ。何か知らない?」

小鳩「ああ、聞いたことはある」

ほむら「本当にっ!?」

小鳩「以前、「極道四人組」に惨敗した負け犬だ」

小鳩「この阿弥浜でも、知ってる奴ぁ、もうほとんどいねえだろう」ハッハッハ

ほむら「教えて。四天王は今どこにいるの」

小鳩「負け犬のことよりも、四人組の話を聞きなぁ」

ほむら「」イラッ


小鳩「鳥葬会の親分のもとで、組織をまとめる最高幹部にして、最強の布陣」イイカ

小鳩「南関東を掌握するにあたり、活躍した伝説の極道だ」

小鳩「てめえには四人組の爪の垢を煎じて飲ませてやりてえよ」ヘッ

一旦休憩します

―― 夜 神社 洞窟最奥部 般若党のねぐら


織莉子「ようこそ、ほむらさん。今夜はもう仕事はないけれど、よかったらお酒でも飲んでいく?」

ほむら「ええ。そうさせてもらうわ」


………


織莉子「ほむらさん。何かあった?」

ほむら「……なぜ?」

織莉子「辛そうな顔をしているもの。私達、出会ってから日は浅いけれど、それでも仲間よ」

織莉子「何があったかはわからないけれど、出来ることなら、話してほしいわね」

ほむら「……」

織莉子「……」ジィー

キリカ「なんだいなんだい暁美! せっかく織莉子が君のことを思って言ってくれているというのにさ!」

ほむら「……っ」タジッ…

織莉子「……」ジィー

キリカ「……」ジトーッ

ほむら「……」

織莉子「……」ジィー

キリカ「……」ジトーッ

ほむら「……」ハァ

ほむら「……あなた達は」

おりキリ「!」

ほむら「半平という男を知っている?」

キリカ「いきなりなんだい?」

キリカ「ああそうか。君の懸想している相手のことだね。私はもちろん織莉子のことを愛しているし、織莉子も私のことを愛している相思相愛の関係だから、そういう相談事なら任せて―――」

ほむら「いいから答えて」

キリカ「人の話を遮るなんてヒドいじゃないかっ。そもそも暁美はね―――」

織莉子「……知っているわ。町の―――」

キリカ「織莉子までっ。もうっ、もうっ」

織莉子「ごめんねキリカ。……それで。鍛冶屋のご子息よね? 道場の隣の」

織莉子「彼がどうかしたの?」

ほむら「……」

ほむら「……実は―――」カクカクシカジカ

………


織莉子「そう……。そんなことが……」

ほむら「ええ。自分でもよくわからないけれど、なぜだか気になってしまうのよ」

織莉子「……きっと、あなたは、あなた自身を堂島さんに重ね合わせてしまっているのね……」

ほむら「そんなっ」

ほむら「そんな経験、私には……っ」グッ

織莉子「誰かを大切に思う気持ち。そんな誰かを失ってしまう記憶」

織莉子「例えば今、あなたに見に覚えがなかったとしても、それはきっと自覚が出来ていないだけで、確かにほむらさん自身が経験し、育んできたものなのでしょう」

織莉子「そうね。もしかしたなら―――。「いまではない何時か」。「ここではない何処か」で」

織莉子「なんて、妄想が過ぎるかしらね……」

―― カチンッ ――


― どうして……。

― 死んじゃうってわかってたのに。私なんかを助けるよりも……あなたに、生きててほしかったのに……。


ズキンッ


ほむら「っぅ」ズキズキ


ほむら(また、覚えのない記憶……。寝ている時はともかく、起きている時に見ることなんて、今までは無かったのに……)

ほむら(あのニセ侍四天王と会ってからというもの、なんだかおかしいわ……)

織莉子「実はね、ほむらさん」

ほむら「っ」ハッ

キリカ「どうしたんだい、暁美? 顔色が悪いよ? 飲み過ぎた?」

ほむら「……いえ、気にしないで。それよりも織莉子、何を言いかけたの?」

織莉子「……」

織莉子「半平さんのことよ」

ほむら「え。何か知ってるの?」

織莉子「ええ。彼には、キリカも私も助けられたから」

キリカ「そうっ。彼は織莉子と私の恩人だよっ!」

ほむら「あなたさっきは知らない感じだったじゃないの」

キリカ「アハハ、ごめんよ」

キリカ「今はもう無いけど、港にはかじの、とかいう英国のおっきな賭博施設があったんだ」

織莉子「……そこでは御禁制の阿片の取引までされていて、私達は是が非にもソコを打ち壊そうと躍起になった」

織莉子「けれどかじのは、彼らにとっても大規模な収益を得るべき場所であったから、当然のように守りは固く、戦いは熾烈を極めたわ」

キリカ「そんな時さ。半平は私達に提案したんだ。守りの強固な、かじのを攻め落とす作戦をね」

キリカ「作戦は単純だったよ。先遣隊が派手に暴れて敵の目をヒき、後詰めが裏から回り込んで建物に火をつけ、勢いに乗って挟み撃ちってね」

織莉子「正直、賭けにも近い作戦だと思ったわ」

織莉子「戦力はこちらが劣っていたし、装備もまた然りよ」

キリカ「でも、だからこそ上手くいくと恩人は言ったよ。事実、その通りになった」

織莉子「彼には感謝しきれないわ……。けれど―――」

ほむら「……まさか」

織莉子「そう。彼は先遣隊の所属だったわ。剣もろくに扱えないのに、一番槍は譲らないって言って聞かなかったの」

織莉子「かじのを破壊したあと、彼を探したわ。……っ」

ほむら「織莉子……」

キリカ「背中からバッサリだったよ。ただ、即死ではなかったから、今際の言葉を聞いてあげられた」

キリカ「一言だけ。俺は恨んでいない。そう伝えてくれって」

ほむら「……それは、堂島軍二にあてて?」

キリカ「おそらくはね。遺言を届けに町へ行ったけど、彼はいなかったよ。だから、親方に伝えた」

織莉子「半平さんはよく言っていたわ。「幼馴染の打った刀でいつか、この国を守れるようになりたい。それが夢だ」って」

ほむら「……夢」

―― カチッ ――。


― ほむらちゃん、わたしね。あなたと友達になれて嬉しかった。

― あなたが■■に襲われていたとき間に合って。今でもそれが自慢なの。

― だから。■■■■になってよかったって、そう思うんだ。


ほむら「くっ……ぅぅっ」ズキズキ

織莉子「ほむらさん。あなた、本当に顔色が悪いわ。今日はもう休んだ方がいいんじゃないかしら」

ほむら「……そう、そうね。今日はもう、おいとますることとするわ」

織莉子「いいえ。泊まっていった方が良いと思うわ。何かあったら大変だもの」

キリカ「そうだよっ! 途中で倒れたり、変態に襲われたりするかもなんだよっ!?」

ほむら「お気遣いありがとう。……でも、遠慮しておくわ。一人が長いから、人が近くにいると眠れないの」

織莉子「そう……。でも、旅籠までは送らせて。そこは妥協しないわ」キッパリ

ほむら「織莉子って過保護なのね……」

キリカ「そこがまた可愛いでしょっ!!」

ほむら「そうだねー」キキナガシー

今日はここまで

修正箇所

× オクタヴィア「何よコイツ……っ。ヘラヘラとして……!」イライライライライライラ

○ オクタヴィア(何よコイツ……っ。ヘラヘラとして……!)イライライライライライラ


× ほむら「なんたるマヌケ面だろう。瞬く間に肉薄し、呆けきった男のみぞおちへ、抜刀しがてら柄の部分を突き込み、間髪入れずに旋回しながら胴を一閃。そうすれば、なんともアッサリとしたご臨終」

○ ほむら(なんたるマヌケ面だろう。瞬く間に肉薄し、呆けきった男のみぞおちへ、抜刀しがてら柄の部分を突き込み、間髪入れずに旋回しながら胴を一閃。そうすれば、なんともアッサリとしたご臨終)

再開します

―― 三日目 昼 大通り


ほむら(どうにか不調もいったん収まって、宴会明けの中年よろしく、ふらふらと立ち寄った大通りはいつになく人でごった返していた)

ほむら(これはどう考えてもただ事じゃあない)

ほむら(すかさずほむらはくーるに人混みへ紛れ込む)


ザワザワ ザワザワ


ほむら(人混みの中心には、あの暑苦しそうな代官に、無気力そうな赤髪女。あとは生意気そうな顔立ちの、おそらくは三姉妹が見える)

ほむら(どうやら、何かを迎えようとしているみたい)


野次馬A「大変だ! 御大老様がお出ましになるそうだ!」

野次馬B「御大老様といやぁ、将軍様の片腕だぜ」

野次馬C「そのお偉い方が、江戸を自ら打って出られるとはどういうこった?」

野次馬A「残酷姫君三姉妹の父親だそうだが、親の顔が見てみたいもんだな」

野次馬C「シーッ。壁に耳あり障子に目ありだぞ」

………


同心「したにーっ。したぁ~にぃ~」

同心「御大老様のーっ、おなぁ~りぃ~」

御大老「……」フンゾリー


野次馬D「」ミアゲ

野次馬E「パカッ、見るんじゃねぇ。無礼打ちだぞ!」

野次馬D「アワワ」


ほむら「」チラッ

ほむら「!!?」キョウガク


ほむら(何よアイツっ!)

ほむら(デコの後退した壮年のじじいにエラク長い耳毛のついたケモノミミが生えてるじゃないのっ!)

ほむら(キモいわ。激しくキモい)

ほむら(何アレ変態なの? 変態が将軍様の片腕なの? 幕府の人達はアレに命令されちゃうの?)

ほむら(うわぁ……)

―― 大老 鬼怒川怨仙


QB川「……」ノッソリ

四つん這い同心「アフン」フミツケー


三姉妹「「ご苦労様です」」ペコリ

QB川「うむ」

マミ「お待ち申し上げておりました」

マミ「阿弥浜代官、巴マミにございます」

QB川「マミ君」

QB川「今後、この町の治安回復には、私とここにいる魔鱗組があたります」


マミ「……え」

QB川「この国は今、非常時にあるのですよ。一刻の猶予もなりません」ネットリ

QB川「それがわからぬ愚か者に、容赦はできないのですよ」ネットリ

マミ「……っ」ギリッ


マミ「……おっしゃる通りです」

三姉妹「「wwwww」」ゲラゲラ

QB川「」ニヤリ

QB川「私は治安回復に来たと言いましたが、血を流すためだけに来たわけではありません」

QB川「皆に素晴らしい贈り物も用意しているのです」

QB川「明日、この広場で剣術大会を開こうと思っています」


ザワザワ ザワザワ


QB川「腕に自信がある者は、是非とも参加してください。身分は問いません」ネットリ

QB川「勝った者は魔鱗組に取り立てます」






QB川「剣術大会に参加して、魔鱗組になってよ!」キュップイ





ザワザワ ザワザワ


野次馬D「聞いたか?」

野次馬E「俺達も侍になれるぞ!」

野次馬F「御大老様の家来になれるなんて……!」


スゲェナ

ザワザワ ザワザワ


キリカ「どう思う、織莉子?」

織莉子「わからないわ。何を考えているのか……」


オクタヴィア「アイツ……。イマイチ信用できなそうだわ」

オクタヴィア「自分以外の全部、見下したような目付きしてるし」

オクタヴィア「クリームヒルトに注意しとかなきゃっ」タッ


ほむら(大変なことになったわね……)

ほむら(とりあえず、神社へ行こう)

―― 神社 洞窟最奥部 般若党のねぐら


キリカ「織莉子、アイツは危険だよ。早いうちに始末しとかないと―――」

織莉子「ええ、わかっているわ。そのつもりよ」


ほむら(口を挟まない方がいいかしら)

ほむら(静かにしていよう)


ダダダッ


般若党A「織莉子さんっ、大変です!!」

織莉子「……何かあったの?」

般若党B「魔鱗組と巴マミが志士狩りを始めましたっ!」

織莉子「……っ」ギリ…


織莉子「……先手を打たれてしまったわね」

般若党C「すでに多くの仲間が、問答無用で斬り殺されております!!」

織莉子「戦いは望むところ」

織莉子「御大老に教えてあげなくてはね」

織莉子「……すぅーっ」シンコキュウ


織莉子「こん日ただ今から、阿弥浜の地は戦場となるわ!!」


織莉子「ほむらさんも。共に来てほしい」

ほむら「言われるまでもなく、そのつもりよ」

織莉子「ありがとう。頼もしいわ」


織莉子「血に餓えた幕府の狗共こそ成敗されなくてはならないっ!!」

織莉子「行きましょうッ!!」

―― 町 路地


タッタッタ


般若党員達「」シシルイルイ

織莉子「――ッ」

織莉子「あなた達の死は、決して無駄にしない……」


マミ「待っていたわ、美国織莉子!!」

織莉子「それはこちらのセリフよ。血は血でアガナわせてもらう……っ!」

マミ「目を覚ましなさい、美国織莉子!」

マミ「あなた達がしていることは、日本のためになることなんかじゃ、決してないわッ!!」

マミ「無意味なことだとわからないの!?」


織莉子「……意味の有る無しはあなたが決めることじゃない」

織莉子「時代が、決めることよ」

織莉子「私達は信じる道を行く」シャラリ

キリカ「……」シャラリ


ほむら(大老の娘達に代官。魔鱗組とやらもぞろぞろと)

ほむら(形勢はこちらが圧倒的に不利ね)シャラリ


般若党員達「「……」」シャラシャラシャラシャラ

織莉子「美しき日本を護るため……」

織莉子「この身を捧げる」


マミ「何を言ってもダメ、か」

マミ「なら、あとは刀で語るまで」シャラリ

マミ「行くわよッ!!」

―― キリカ VS 千佳


キリカ「ほらほらほらほらッ! 避けなよ防ぎなよ反撃しなよッ!!」ブンブン


カキンッ キンキンキン カキンッ


キリカ「でないと死ぬよ? 死んじゃうよっ!!」ブンブン


カキンカキンカキンカキンッ


キリカ「あはっ。あははははッ。アッハハハハハハハハハハハハッ!!」ブンブン


カキキキキキキキキキンッ


千佳「なんだいコイツッ。頭がおかしいのかッ」

キリカ「どうしたの? 反撃してこないの? 大老の姫君は謹み深いのかな? それとも私に気を遣ってる?」ブンブン


ギィン ガギギギギギギギギギッ


キリカ「やさしいね、やさしいね! 鬼怒川千佳はやさしいね! アッハハハハハハ!!!」ブン、ドガァッ


ドガガガガガガガガガッ


千佳(クソッ。なんなんだい、コイツはっ。メチャクチャに斬りかかって来るくせに、まるで隙が見当たりゃしない!)カィンカィン

千佳(だけど、コイツの相手をしてるのが、二刀使いのアタシだってのは不幸中の幸いか。他の二人だったらば、あっという間に殺られてたに違いないね。何せ手数が段違いだ)カィンカィン


キリカ「次行くよ」ブンッ

千佳「ッ」カィンッ

キリカ「次だよ」ブンッ!


千佳(このままじゃジリ貧だ……)カキンッ


キリカ「次。次々次次次ッ!」ブンブン


千佳(カチ上げ、唐竹、突き、突き―――)カキンッ、キンッ

千佳(何とかついてけてはいるし、それなら、このまま目を慣らして反撃すれば―――ッ)


キリカ「あしもと」

千佳「え―――」


ガッ


千佳(しまった―――ッ、足払い―――ッ!)


ブンッ

………


織莉子 VS マミ


マミ「照彩(てぃろ)・吹汝(ふぃなーれ)―――ッ!!」


ブォン!


織莉子「通らないわ」ガキィンッ


織莉子(……っぅ。なんて一撃。何とか防ぐことができたけれど、次も……なんて、希望的観測が過ぎるかしらね)


マミ「アレを受け止めるなんて、さすがね。美国織莉子」

マミ「敵ながら天晴れだわ」

織莉子「あの巴マミから称賛を賜るなんて。私の剣の腕も、まだまだ捨てたものではないということ」

織莉子「光栄だわ」


織莉子(マズいわね……。巴マミ相手に、私一人じゃ明らかに分が悪い。……キリカかほむらさんと協力したいところだけれど―――)チラッ


カキンッ カキンッ カキンッ カキンッ

織莉子(……ここは時間を稼ぐのが最善かしらね)


織莉子「それほどの腕を持つあなたと、敵対するしかないというのは非常に、残念なことだわ」

マミ「あら、意外なお言葉ね。お世辞とわかっていても、嬉しいわ」

織莉子「本当のことよ。今からでも遅くはないわ。般若党へ来る気はない?」

マミ「無理よ。あなた達に譲れないものがあるように、私にも譲れないものがあるもの」

織莉子「……愚問だったわね。忘れてちょうだい」

マミ「ええ。そうさせてもらうわ」


織莉子(……思ったよりも時間を稼げたみたいね。キリカは次女を押しているし、ほむらさんも多勢に無勢の状況にありながら、善戦している)チラッ

織莉子(このままいけば、何とかなりそうね)


織莉子「……」チャキ

マミ「……」チャキ


織莉子「はあっ!」ブンッ

マミ「突華(とっか)!」カキンッ

短いけど今日はここまで

再開します

………


ほむら VS 万由 & 百合


ほむら(乱戦にもつれ込んだわね……)


万由「あなたのお相手は、わたくし達ですわ。お侍様?」

万由「二人がかりですけれど、お強いお侍様ならば、まさか卑怯だなんて。おっしゃりませんわよね?」


ほむら(長髪の方は刀。教科書通りのお利口剣法とみた)


ほむら「……もちろん。あなた達程度が相手なら、あと百人は余裕よ」

百合「なんですってぇーっ! そうやって人のこと馬鹿にするのはいけないことですのよーっ!」


ほむら(おかっぱの方はナギナタ。まだまだ武器に振り回されているような印象を見受ける)

ほむら(とはいえ、見てとれるのは表面のみ。詳しいことは実際に刀を交えてみなければわからない)

ほむら「四の五の言わず、さっさと来なさいよ」

百合「きぃーっ! 憎たらしいですのっ! やっつけてあげますわーっ!」ブンッ


ガキン


ほむら(引っ掛かった。長髪の方はとにかく、おかっぱの方は割と短気な性格みたいね)

ほむら(大仰な仕草で払われたナギナタを刀で受け止めてみるけれど、力もそんなに強くはない)


万由「隙あり、ですわ」ブンッ

ほむら「っ」サッ

百合「今ですのーっ!」ブゥンッ

ほむら「効かないわ」ガィン


ほむら(評価を修正。長髪女はお行儀の良い道場剣術を使うのだろうと、体捌きや足運びから勝手に思っていたけれど)

ほむら「へたっぴね、あなた達」

万由「あらあら。お下品なお口ですこと」ヒュッ

ほむら「気に障った? ごめんなさいね、浪人生活が長かったものだから」サッ


ほむら(とんだ間違いだったわ。平手打ちはしてくるし、足払いはしてくるし。挙げ句、股間にまで手をのばしてくる。とんでもないお嬢様だわ)


万由「いえいえ、気にしていませんわ。どうせ―――」


ほむら(……ッ。意識が逸れた……?)






万由「あなた」





万由「死んでしまいますもの」テヲフリオロシ





魔鱗組A「キェェェェーーッイッ!!」

ほむら「ッ」ハッ


ほむら(背後から一人。そういえばそうだった)

ほむら(すっかり失念していたけれど、敵は長髪女とおかっぱ女だけではなかったのだった)


ほむら(不意を突かれる形にはなったけれど、どうにか反応は間に合いそう。距離があって助かった)

ほむら(どうせなら斬りつけられるよりも前に、斬り捨ててやろうかとも思ったけれど、さすがの私も、そこまで無謀にはなりきれない)


ほむら(ここは いのちをだいじに でいこう)

魔鱗組A「ほあーーッ!!!」シュッ


ほむら(……中段からの突き。剣先をそのまま突き出すように繰り出される一撃は、予備動作が少ない。その上、私の喉笛を食い破らんと最短距離で突き進んでくる)

ほむら(ゆえに読みやすい)

ほむら(半歩引き、半身になって避けてみせる)サッ


魔鱗組B「隙ありィーーッ!!」ブンッ

ほむら「っっ」


ガキンッ!


ほむら(しかしそれは予測の上、とばかりにもう一人登場。気勢を上げながら、一拍遅れに仕掛けられた大味極まりない一撃はさすがに肝を冷やしたけど、どうにか受け流す)

ほむら(危ないところだったけど、けれど私は生きている)

ほむら(待たせたな!)

ほむら(お待ちかねの反撃時間(りべんじたいむ)だぜ!)


ほむら(距離を開けようと、後退りをする奴ばらへと向かって猛然と踏み込み、胴を一閃。断末魔を上げてくずおれる魔鱗組その一を横目に見送りながら、その二へとさらに踏み込む)


ほむら(ガンガンいこうぜ!)


ほむら(おそらくは、驚愕によってか握りの甘くなった刀を軽く弾き飛ばしてやり、すかさずにみぞおちへと柄頭を突き入れる)


魔鱗組B「ゲブゥ」


ほむら(痛みに怯んだところに、足払いをかけて引き倒す。間髪入れず、逃げられないようにその背中へと足をかけて―――)


ザシュゥッ


ほむら(―――その首筋へと刀を振り下ろす)


ほむら(正直なところ、魔鱗組の彼らに踏み込むのは、大分勇気のいる行動だったけれど、どうにかなった)フゥ

ほむら(長髪女とおかっぱ女に背を向けていた、その隙を突かれていたらと思うと、背筋に冷たいものが走るけれど)

ほむら「高みの見物とは、良いご身分ね」


万由「ふふっ。でしょう? なんと言っても、お姫様ですもの」ファサァ

百合「お姉様っ、あんな人早くやっつけて、アレで遊びたいですのっ!」ウズウズ


ほむら(アレ……? 遊ぶ……?)


万由「意識が逸れていますわよ?」ブンッ

ほむら「くッ……」カキンッ

百合「たぁあーーっ!!」ブゥンッ

ほむら「……ッ」キィン


ほむら(それにしても、息の合った連携だわ……)

ほむら(一人一人は大したことないけど。……厄介ね)


ほむら(まあでも。どうとでもなりはするかしら)


ほむら「―――」タッ


百合「あら、逃げますのっ?」

ほむら「冗談はよし子さんよ」

ほむら「これはただの仕切り直し。お楽しみはこれからよ」チャキ

百合「つまらないハッタリですのっ」


ほむら「……ハッタリかどうかは―――ッ」ダンッ

万由「!」ハッ

ほむら「―――受けて確かめるのねッ!!」シュビッ

万由「百合!!」

ガキィンッ!


ほむら「!」

百合「ちっ、千佳お姉様……」

千佳「危なかったじゃないか、百合?」

百合「助かりましたのっ、千佳お姉様!」


ほむら「……なぜあなたがこちらにいるのかしら?」

千佳「さぁね」


ほむら(キリカに限って、こんな輩にオクれをとるとは思えないけれど……)チラッ


千佳「おっと! よそ見は厳禁だよ!!」ブンッ

ほむら「……くッ」キィンッ

万由「黒い奴に噴射奔流攻撃を仕掛けますわ」ブンッ

百合「消えろですの例外!」ブゥンッ

ほむら「当たらなければ、どうということはないわ」サッ


ほむら(……マズいわね。二人までならともかく、三人とも勢揃いされたのでは、さすがにこちらが不利だわ)

ほむら(一番練度の低いおかっぱを率先して叩くべきなのでしょうけれど)

ほむら(問題は彼女達の連携だわ。一応、囲まれないように動いてはいるけれど、下手を打てば死ねるわね)

ほむら(つくづく、厄介な相手だわ)ハァ

万由「ほらほら。最初の勢いはどうしましたの?」ヒュッ

ほむら「どうもしてないわ。むしろそっちこそ、追い詰められ過ぎて、状況を見失ってるんじゃない?」サッ

百合「」イラッ

百合「きぃーっ! なんて口が減らない人ですのっ!? 品性下劣ですの!!」

ほむら「あなたには及ばないわ。大したものよ、あなたの下劣ぶり。誇ってもいいわ」

百合「」ビキッ

千佳「百合っ、挑発だ! 乗せられるんじゃないよ!」

百合「わかっていますの……っ。お姉様……!」ビキビキ

ほむら「よくもそんなキノコみたいな頭で出歩けたものね。私には到底真似ができそうにないわ。そんな変な頭、誰かに見られてしまったら恥ずかしくて切腹してしまうもの」

万由「お黙りなさいな!」ブンッ

ほむら「その点、あなたはすごいわ。まるで羞恥心を持ち合わせていないみたい。尊敬してしまうわ。……あくまでも、見習おうとは思わないけれど」キィン

百合「……キノコじゃないですの」ビキキィ

ほむら「それはあなたが自覚していないだけよ。あなたは立派なキノコだわ」


百合「」プッツーン

百合「キノコじゃないって言ってますの!!」

百合「こんな侮辱初めてですの! 屈辱すぎますのッ!!」ダッ

千佳「百合っ、ダメだ!」

万由「百合!!」


ほむら(計 画 通 り)ニヤリ


百合「天誅ですのーっ!!」ブォン

ほむら「甘いわね」カキンッ

百合「!!」


ザシュッ


百合「あうぅっ」パタリ


ほむら(……浅い)

ほむら(追撃を―――ッ)チャキ


百合「あさごはん」

ほむら「え?」ピタッ

百合「食べ過ぎてキレが悪いですのーっ」ダッ

ほむら「ちょっ」

万由「わたくし達も引き上げましょうか」ヤレヤレ

千佳「覚えてな! この借りは必ず返してやるよ!」ダッ


ほむら(えー……)

………


織莉子 VS マミ


ズガァン! ズガァン! ズガァン!


マミ「でやぁああーーッ!!」ブォンッ

織莉子「ぐぅう……っ」ガキィンッ


織莉子(なんて膂力……っ。しかも、あんな勢いで攻撃を繰り返しているというのに、疲労する気配は一切ない)

織莉子(攻撃を受け流し、隙を突こうにも、腕力が違いすぎてそもそも受けきれない)

織莉子(何てこと。相性が悪すぎるわ……っ)


マミ「照彩(てぃろ)・吠霊(ぼれー)!!」ブンブン

織莉子「くぅっ」キィンカキンッ

マミ「照彩・吹汝(ふぃなーれ)―――ッ!!」ブォンッ

織莉子「つぅっ!」ガギギィンッ


織莉子(刀が……っ)

マミ「どうやら、勝負あったみたいね。美国織莉子」

マミ「潔く降伏なさい。今ならまだ、助かる命もあるでしょう」


織莉子「そうね」

織莉子「それも一つの正しき道なのかもしれない。今ならば、戦火へ身を投ずる多くの若者を。その命を」

織莉子「無駄に散らせず済むのかもしれない」

織莉子「……ッ」グッ






織莉子「けれど。断るわ」





織莉子「……正しいからじゃない。善のためでもない」

マミ「ッ」

織莉子「悪逆無道、悪鬼羅刹と謗られようと、決して譲れないものがある……」

織莉子「例え、護るとうそぶいたこの身が、日本を戦火へ陥れることになろうとも―――」

織莉子「この国をッ。絶対に夷国の手から護り抜いてみせる!!」

織莉子「他でもなく……。日本を―――ッ、愛しているがゆえにッ!!」

マミ「それが無意味なことだと、なぜわからないのッ!!」

織莉子「わからないわ。理解する必要もない。私達はもう―――」


織莉子「―――覚悟を決めているのよ」

マミ「……くッ」ブンッ

ギィンッ


マミ「!」


キリカ「やあ。待たせたね、織莉子」

織莉子「キリカ……っ。鬼怒川千佳はどうなったの?」

キリカ「あっはは。トドメをさそうとしてたんだけどね。織莉子の危機が見えたから、つい」

織莉子「放ってきたの?」

キリカ「なんと言いますかその……。はい」モジモジ


織莉子「……」カタナヒロイ

織莉子「急いで巴マミを倒しましょう!!」

キリカ「うん、任せて!!」

………


キリカ「ふっ」ブンッ

マミ「甘いわね」カキンッ

織莉子「はぁっ!」ブゥン

マミ「通じないわ」


キリカ「スゴいね! スゴいよ巴マミは! 私達の攻撃をここまでしのぐなんてさぁ!!」ブンブン

キリカ「こんなに死なない奴は初めてだよッ! 新記録だおめでとう!」ブンブン

マミ「あらそう? それは光栄だわ」カィンカィン

マミ「帰って仲間に自慢しなくてはね。良い茶飲み話になりそうだもの」ガィンッ

マミ「ちょっと足止め、させてもらうわよ!!」ブォン!

キリカ「ぐぅっ!」ガキィン!


マミ「照彩・吹汝ッ!!」ブォンッ

織莉子「っ!!」ガギィーーン


織莉子「ぅあっ」トサッ

キリカ「織莉子ッ!」


織莉子(二人がかりでも決定打足り得ないどころか、押し返されてしまうなんて……。巴マミ、恐ろしく強い)

織莉子(マズいわ。一刻でも早く、ほむらさんの援護に向かいたいというのに、彼女は難敵過ぎる)

織莉子(何か……。何か打開策を―――)ググ…ヘタリ


キリカ「許されない……ッ。許されないよ、お前ェ!!!!」


ズアッ


マミ「突華(とっか)!」

織莉子「!」ハッ

織莉子「いけないっ、キリカ!」

キリカ「死ねッ、巴マミィ―――ッ!!」ブゥンッ


ガキィン


マミ「見切ったわ!」ブンッ

キリカ「なッ」ガキィン


マミ「本原堕免斗(ぼんばるだめんと)ッ!!!」ブォォォンッ!

キリカ「!」サッ


ズッガァアアアン!!!

キリカ「」


キリカ(なにあれやばい)ダラダラ

キリカ(なんかイヤな予感がしてとっさに避けたけど、マトモに受けてたら死んでたかも)ダラダラ


マミ「照彩・吹汝ッ!」ブォンッ

キリカ「……ッ」サッ


ズガァン!


マミ「照彩・吠霊ッ!」ブンブン

キリカ「ちぃッ」カキンッ

織莉子「キリカっ、逃げてぇ!」


マミ「照彩ッ、ふぃな―――れッ!!」ブォンッ

キリカ「くぅッ、間に合わない―――ッ」ガギィンッ


織莉子(キリカの刀が……っ)グググ


マミ「これで―――ッ」チャキ

織莉子「……っ」ダッ

マミ「トドメよッ!!」ブンッ

キリカ「くッ。ここまでか……」


ザシュッ

マミ「!」

キリカ「……え?」


織莉子「くぅ……ぐっ」ポタッ…ポタッ…

キリカ「おり、こ……? 庇ったの、私を……?」

キリカ「なんで……。なんてなんで。なんでっ」ポロポロ

織莉子「大丈夫よ、キリカ……。傷は深くない」

キリカ「でもっ」ポロポロ


織莉子「キリカッ!!!」クワッ

キリカ「ッ!?」ビクゥッ

織莉子「まだ戦いが終わったわけじゃないのよ。しっかりしなさい」

マミ「いいえ。残念だけどここまでね」

マミ「般若党党首を召し捕るまたとない機会だったけれど、御大老様の姫君達が敗走なされたのでは戦いは続けられないわ。……命拾いしたわね、あなた達」トテトテ

織莉子「……。見逃されたのね……」

キリカ「おりこぉ……」

織莉子「ごめんなさい、キリカ。心配をかけてしまったわね……」ナデナデ


………


ほむら「ふぅ。どうにかなったわね……」

キリカ「暁美っ。よかった、無事だったんだね」タタタッ

ほむら「当然よ。……それよりも、そっちの方こそどうなの?」

織莉子「私が少し。かすり傷みたいなものだけどね」


織莉子「さ。神社へ戻りましょう」

ほむら「そうね、わかったわ」


織莉子「……」チラッ

般若党員達「「」」シシルイルイ


織莉子(私は―――ッ)ギリッ

織莉子(どれだけの血を流せば済むのだろう)メヲツムリ


キリカ「織莉子、どうかしたの?」

織莉子「……ううん。何でもないわ」

―― 神社 洞窟最奥部 般若党のねぐら


グスグス

チクショウ……


織莉子「……っ」グッ


織莉子「泣くことは……。許されないわ」

般若党A「織莉子さん……」

織莉子「戦いはこれからも続く」

織莉子「それなのに、生き残った私達がこの有り様では、散っていった者達が浮かばれないし、私達を信じてくれている者達に対しても、不安を与えることになる」

織莉子「泣くな、だなんて言えないわ。けれど、見せてはいけない」

般若党B「……織莉子さんの言う通りだ。戦いは続く……。涙は酒に流すしかない……」

般若党C「明日は我が身。……好きなあの子に告白しよう」


織莉子「ほむらさん、ありがとう」

織莉子「あなたがいなければ、もっと被害は拡大していた」

ほむら「乗り掛かった船よ。貰うものも貰っているのだし、……別に。礼を言われる筋合いは無いわ」ツンッ

織莉子「照れ屋なのね」

ほむら「照れてないから」

キリカ「暁美! 織莉子といちゃつくなんて……」

キリカ「ズルいぞ!!」

ほむら「ズルいってなによ……」アキレ

織莉子「そうだわ。夕刻、沙々さんのお店に行くけれど、あなたも来る?」

ほむら「残念だけど、遠慮しておくわ」

キリカ「なんだいなんだい暁美。せっかく織莉子が誘っているというのにさ」

織莉子「キリカ、ほむらさんにも事情があるのよ。無理強いはよくないわ」

キリカ「おりこぉ……」

ほむら「そう、そうね。……今回ばかりは外せないわ」


ほむら「とても大切な用事だから」

なんか織莉子さんが主人公みたいになっとる…… 何故だ

ちょっと中断します

済まぬ

乙おりマギ以外からは出すの?

>>154
出ないキャラクターも多いですが一応、すずマギからも出そうと思っています

再開します

―― 夕刻 町 鍛冶屋


ほむら(いい加減に……。決着をつけるべきよね、この気持ちに)

ほむら(彼に同情した。……それだけで、こんなにも感情が掻き乱されるのなら、いっそのこと)


鍛冶屋「よく来たねぇ。今日はどうしたんだい?」

ほむら「親方……。あなたに聞きたいことがあるの―――」

―― 墓場


堂島「またお前か……」

ほむら「こんにちは」

堂島「鍛冶屋になら戻らんぞ」


ほむら(相も変わらず、とりつく島のない……)


ほむら「聞いたわ。半平さんのこと」

堂島「―――おいお前」マテ

堂島「俺の過去に踏み込むんじゃねえ!」

堂島「殺されたいのかッ!!」クワッ

ほむら「……」フゥ

ほむら「残念だけれど、半平には素質が無かったのよ」

堂島「何も知らないくせに、知った風な口を利くなッ!!!」

堂島「―――アイツが」

堂島「アイツが死んだのは……ッ」ギリィ!


堂島「半平が死んだのは俺のせいなんだよッ!!」


ほむら「……」

ほむら「どうしてそう思うの?」

堂島「いいだろう。話してやる」


堂島「半平と俺は幼馴染で、子供の頃からの付き合いだ」アノナ

堂島「俺は不器用で、何をやっても上手く出来ないダメな奴でな」

―― カチンッ ――


― かっこよくなんて……。無理だよ……私、なんにも出来ない―――。

― 人に迷惑ばっかりかけて、恥かいて。……どうしてなの?

― 私、これからもずっと、このままなの?


ほむら「……っ」ズキッ

堂島「そんな俺をいつも助けてくれたのが、半平だった」

―― カチッ ――


― え~? そんなことないよ。なんかさ、燃え上がれ~って感じで、かっこいいと思うな。

― そんなのもったいないよぉ。せっかく素敵な名前なんだから、ほむらちゃんもカッコよくなっちゃえばいいんだよっ!

ほむら「……」ズキズキ

ほむら「……まどか」


ほむら「……っ?」ハッ


堂島「そして俺は鍛冶屋になりたくて、半平と一緒に親方へ弟子入りした」

堂島「だが俺は相変わらず不器用で、いくら修行しても鍛冶の腕は上達しなかった」

堂島「半平はそんな俺を見かねて、俺の出来損ないの刀に手を加えた」

堂島「その結果、俺は親方に認められたが、半平は逆に見放されてしまった……」ギリリッ

ほむら「……つまり、親方を騙したと。そういうこと?」

堂島「ああそうだ」

堂島「こんな俺に、鍛冶屋を継ぐ資格があると思うか?」ドウダ

堂島「そもそも俺に刀鍛冶の素質なんてない」

堂島「俺が鍛冶屋を諦めていれば、半平はまだ生きていたはずだ」


堂島「だから……」

堂島「俺のせいだ……」

堂島「半平を般若党に追いやって、死なせたのは俺のせいだッ!!!」ハッハッハ

堂島「恨まれて当然だッ!!」マトモジャネェナ


ほむら「……俺は。恨んでいない」

堂島「あ?」

ほむら「あなたは、勘違いをしているわ。とんでもない勘違いよ」

堂島「……どういうことだ」

ほむら「言葉通りの意味よ」

ほむら「あなたに鍛冶の才が無いわけでもなければ、半平さんの死にあなたが絡んでいるわけでもない。そもそも、彼はあなたを恨んでなんかいなかった」

堂島「だが、俺の刀に手を加えたせいで半平は―――」

ほむら「そこがもう間違っている」

堂島「……え?」

ほむら「親方は言っていたわ。知っていたって」

ほむら「その上で、あなたに才能があるのだと認めていたのよ」


堂島「―――なんだよ……。それは……」

ほむら「さ。早くこの刀を直して―――」

堂島「よせッ!!!!」

堂島「今さらどのツラ下げて行けばいいッ!!?」

堂島「何て言えば良いんだ!!!?」


堂島「それに―――」

堂島「俺の手は、すっかり汚れちまった……」


堂島「もう―――」

堂島「戻れない―――」


堂島「戻れないんだよッ!!!!」


ほむら「……はぁ」

ほむら「めんどくさいわ。あなたも」


ほむら「……私も」ボソッ


ほむら「―――刀を抜きなさい」

ほむら「戻れるかどうか。それは刀で決めましょう」シャラリ

堂島「……なんなんだよ」ボソッ


堂島「なんなんだよお前はッ!!!」


堂島「ちくしょうッ、かかってこい!!」シャラリ

………


堂島「でぇええりゃぁーーッ!!!」ブォン

ほむら「……ぐっ」ガィン


ほむら(凄まじい力だわ。……野生の獣じみた、型も何もないような剣技と相まって、恐ろしく厄介な手合いとなっている)

ほむら(……あの巴マミとかいう代官も、相当な使い手と見たけれど。ことによっては彼、アレに匹敵しかねないのではないかしら)


ほむら「ふふっ」

堂島「何を笑っていやがるッ!」ブンブン

ほむら「なんでもないわ。気にしないで」カキンッキィンッ


ほむら(知らぬは本人ばかり……か)フフッ

堂島「ぬぅぁああああッ!!」ダッ

ほむら「ッ」サッ


ほむら(体当たり……。この筋肉ダルマ、本当に人間なのかしら。斬り合いの最中に無防備に突進とか、正気を疑うわ……)

ほむら(けれど、凄まじい気迫だった。まともに当てられていたとしたら、危なかったかも……)


堂島「ぉおりゃぁあーーッ!!!!」ドロップキック

ほむら「……」サッ


ほむら(今ッ)

ほむら(大仰な飛び蹴りの反動で、地に伏す彼に向かい刀を振り下ろす。無論、峰打ちで)


バシッ


堂島「ぐぅッ。てめぇ……!」


ほむら(あんまし効いてない……。これだから峰打ちというのは苦手だ。……単純に、彼が頑丈であるというのも、関連してるかもしれないけれど)

堂島「らぁあああーーーッ!!!」ダダダッ

ほむら「!?」


ほむら(刀を地に寝かせ、獣の如く向かってくる。あんな勢いよくぶつかられては、膂力にしてもそうだし、そもそも体格差の問題で受けきれそうもない)

ほむら(ここは距離をとって、動きを見極めた上で紙一重の一太刀を叩き込もう)サッ


堂島「くぅらえぇぇえええーーッ!!!!」ダダダッ

ほむら「残念だけど、お断りだわ」サッ


バシッ


ほむら(すれ違いざまに胴へと一太刀)

ほむら(続けざまに、もう一太刀―――ッ)


ガッ

ほむら「え―――」


ブゥンブゥン……ブゥンッ!


ほむら「うぁっ」トサッ


ほむら(何……っ? 何が起きたの? 投げられた?)


堂島「うおぉぉおおおーーッ!!!」


ズアッ


ほむら「ぐぅッ」ガギィンッ

堂島「だぁッ!」


ガッ

ブゥンブゥン


ほむら(これ……っ。振り回されて……投げられる―――ッ)


ブゥンッ!


ほむら「っう」ウケミ

ほむら(なんて人。……いつもなら、挑発の一つでもして活路を見出だすけれど)

ほむら(彼に関しては無意味そう。……すでにもう、火のようになっているし)


ほむら「!」

堂島「ヅアッ!」ブンッ

ほむら「……通らない」カィン


バシッ


堂島「ぐッ」

堂島「ぬぉおあああああッ!!!!」ブゥンッ

ほむら「くっ」キィンッ


ほむら(本当に厄介だわ……。ただでさえ手強いというのに、頑丈で、その上痛みに怯むことなく向かってくる)

ほむら(……けれど、全く持って手段がないという訳でもない。……ただ。私に、彼を殺さず済ませるという自信が無いというだけで)

ほむら(でも―――)チラッ


堂島「」フー! フー!

ほむら「……はぁ。四の五の言い訳して、出し惜しみなんか―――」スッ

ほむら「―――していられなそうだわ」―チン


ほむら(実は、居合で峰打ちなんか初めてのことだから、上手くいくかはわからないけれど)


ほむら「―――もう。これしかないわよね―――」メヲツムリ

堂島「おぉおりゃぁ―――ッ!!!」ダダダッ

ほむら(向かってくる。向かってくる―――)

ほむら(手に取るようにわかる。彼の動きが、息遣いが、次に取らんとする手が)

ほむら(彼は三度、私を投げ飛ばさんとするだろう。けれど、それこそが最大の隙となる)

ほむら(刀を前面へ押し出し、獣もかくやといわんばかりに猛進する彼を、最小限の動きでやり過ごす)サッ


堂島「ぬんッ!!」ズアッ


ほむら(来た。大振りな動きで繰り出される平手打ち。アレにつかまってしまったのなら、私はまた、投げ飛ばされる)


ほむら「―――けれど」


ほむら(よく見える)ギンッ


ダンッ


ほむら(よく見えるのだから、当たることはない。……そう、つかまることなどあり得はしないのだ)


堂島「!!?」

ほむら「こうしてあなたの下へ辿り着いたとしても。決して―――」


バシィッ


ほむら(彼が反応するよりも速く、その胴へと刀を払うように打ち込み、手のひらで一回転。愛刀を逆手に持ちかえる)

ほむら(抱え込むように、掻き抱くように。あとは刀を振り下ろすだけ。一太刀めと合わせ、×字を描くように)


バシィッ!!

………


堂島「……見ろよ。この無様な俺を」

堂島「何をやってもダメなんだよ……」ソウダ

堂島「……死んだ方がマシだ」


堂島「殺せよ」サイゴダ


ほむら「……はぁ」

ほむら「……よく聞いて。私には夢がある」

堂島「……お前の、夢?」

ほむら「ええ。悲願と言い換えてもいいわ」

堂島「……」ゴクリ

ほむら「それはね―――」






ほむら「まどかと夜這うことよッッッッッ!!!!!!!!!!」クワァッ!





堂島「……は?」


堂島「……」

ほむら「……」


堂島「……お前」

堂島「この怖いもの知らずめ」マトモジャネェナ

ほむら「冗談はさておき、半平さんには夢があったそうよ」

堂島「……半平の、夢……?」

ほむら「そう、あなたの打った刀でこの国を護ること」

堂島「え……?」

ほむら「そのために、刀を振るう場所として般若党を選んだ。口癖のように言っていたそうよ。夢なんだって」

堂島「……」ポロポロ

堂島「……半、平」ポロポロ

ほむら「半平さんは最期まであなたを案じていた。……この後は―――。言わなくてもわかるでしょ」

堂島「半平……。すまん……」ポロポロ

堂島「俺が……。馬鹿だった」グシグシ


堂島「―――さて」

堂島「何をやってもダメな俺だ」

堂島「親方に鍛え直してもらうか」フッ

ほむら「!」

堂島「行くさ。鍛冶屋だろ?」

堂島「あーあ。お節介な侍に捕まっちまったなあ」ミテンジャネェ

ほむら(そう言って、彼は町へと向かって行った。憎まれ口とは裏腹の、どこか軽やかでさえある足取りを見て、彼はもう大丈夫だ、迷うことは無さそうだと安堵した。これで鍛冶屋も店を畳むことは無いだろう)

ほむら(けれど一方で、新たな疑問が鎌首をもたげていた)

ほむら(まどか。覚えの無い名前。……おそらくは、名前。こんな曖昧な認識しか抱けてはいないというのに、けれど愛おしい。懐かしい、寂しい、悲しい恋しい切ない)

ほむら(様々な感情が私の内を去来する)

ほむら(まどか。呟いただけで、こんなにも心を安んじてくれる。きっと私にとって、大切な誰かであることは疑いようもないはず)

ほむら(なのに。私は生まれてこの方、まどか、だなんて人物と会ったことはない)

ほむら(ならば。まどかとは―――)

ほむら(いったい誰なの―――?)

今日はここまで

おまけ


美国織莉子




天女菫


流派

御羅来霊(おらくるれい)流剣術



剛体法・極
あらゆる技の威力を75%減ずる

練気吸法・中
あらゆる技の活力消費を50%減ずる

流し抜き→旋凪ぎ(つむじなぎ)
斬り抜きを見舞い、返す刀で回転斬りをするコンボ

鬼冠(おにかん)→茶道の如く
柄頭を相手の腹へと打ち込み、ひざまずいたところに刀を突き立て、さながら茶を点てるように掻き乱すコンボ

粛転(しゅくてん)
相手の攻撃を受け流し、すかさず渾身の抜き胴を食らわせる技

雷門
独特の動作で気を高める技

雷門→波動の法
気弾

雷門→眠り猛虎
切り上げと同時に倒れこむ

雷門→車海老
海老のように反り返り、その反動で強烈な突きを放つ

雷門→摩周湖
脇へとそれながら、引きの突きを繰り出す

鍔付け→刺突
柄頭で殴り付けてから、すかさず突きを放つコンボ

野麦越え→柳越え→天上越え
斬り上げ四連コンボ


般若党党首。本来はとても穏やかで気の小さい少女。しかし、党首としての責任感と日本を憂う心が彼女を冷徹足らしめている。
意味深な発言をすることがたまにあるが、深い意味は特にない。廚二病だと思って聞き流すのが正解。
頭がよく、前に出るタイプと言うよりかは後方で指揮を執るタイプ。
防御を得意としており、高い洞察力に裏打ちされたカウンター戦法は厄介。
決して弱くはないが、他のボスキャラ系侍達に比べると一歩劣ってしまう

再開します

………


―― 夜 神社


「――っ。――」

ほむら「――っ」ハッ


ほむら(何者かの、話し合う声で目を覚ます)

ほむら(どうやら、考え事をしているうちに寝入っていたようで、辺りはすっかり真っ暗だ)


ほむら(私を起こした声はいまだ聞こえ続けている。もっとも、ボソボソとした話し声は小さく、聞き取りづらいことこの上ないけれど。……なんだろう、人妻が人目を忍んで逢瀬でもしているのだろうか)


「――。――」


ほむら(けれど、はて。それにしても、どこかで聞いたような声だ。どうにも気になるし。下世話なことだけれど、盗み聞きをしてみよう)


ほむら(そうと決めたら、早速墓石に紛れ込んで―――)サッ

沙々「―――美国達にはご計画通り、魔鱗組には攘夷志士といえど受け入れると話しておきました」

沙々「これで奴らは罠とも知らず、剣術大会へ参加するでしょう」


ほむら(……アレは、優木沙々?)

ほむら(なぜ彼女がこんなに時間に、しかもこんな場所へ……?)

ほむら(というか……計画? 罠? ……なんの話よ)


沙々「それともう一つ」

沙々「今夜、佐倉が武器を取引すると美国達へ言っておきました」

沙々「美国達は港へ行きます。佐倉を斬ってくれるでしょう」

千佳「ふふ。やるじゃないか」

万由「あなたの働きぶりには、いつもながら感心しますわ」

千佳「その調子で引き続き頼むよ」


トテトテ(立ち去り)


ほむら(……話していたアレ、大老の娘達ね)

ほむら(どうも、偶然出会って、道を聞かれて―――。とか、そんな雰囲気じゃなかった)


ほむら「……」

ザッ


沙々「ッ!?」フリムキ

沙々「ほ、ほむらさんでしたかぁー。こんな場所で会うなんて、奇遇ですねぇー」

ほむら「……話は全て、聞かせてもらったわ」

沙々「!」


沙々「……あっはは。盗み聞きするなんて、ほむらさんはイケナイ人ですねぇ」

沙々「そんな人は―――」


バサッ


沙々「ここで死ね」

ほむら(……っ。忍び装束……!)

ほむら(軽いカマかけのつもりだったけれど、もはや、疑いようもないわね)


ほむら「……」フゥ


ほむら(港へと急ぐ必要がある……。それも、一刻も早く)


沙々「ふッ」シュッ


キンッ


ほむら(速いわね……。忍びと斬り合いとか、初体験だけど、中々に鬱陶しいわ)

ほむら(……仕掛けてみたとして、ああもチョコマカとされては、捉えきれない)

ほむら「……」

沙々「あっれぇ~っ! ほむらさんったらビビってますぅ~? 謝っちゃってもいいんですよぉ~?」

沙々「ま、許しませんけどねぇー」ブァッ


ほむら(……回し蹴り)サッ

ほむら(どうやら、優木沙々は刀を使った戦いよりも、体術の方が得意そう)

ほむら(挑発をかけつつ、相手の意識の外から決めにいく。イヤらしい戦法だわ)


沙々「てぇ~い」シュシュシュッ


ほむら(手裏剣とか。忍者のつもり?)キィンカキンッ


カァン


ほむら(……忍者だったわね)

ほむら(手数が多くて速いけれど、でもそんなに強くはない)

ほむら(……こんな夜更けに相手をしたい手合いでは、決してないけれど)

沙々「覚悟ッ」ダッ

ほむら「……!」カキンッ

ほむら「返すわッ」ブンッ


ザンッ


沙々「ぐぅぅ……っ」ヘタ…


ほむら(捉えた……。けれど、まだ浅い)

ほむら(追撃を)チャキ


ドスッ


沙々「―――カハッ」

沙々「……あなたの、勝ちよ……」

沙々「でも、もう遅い……」

沙々「今頃港では……。美国達が、佐倉を……」

沙々「斬ってくれているハズ……」

沙々「ふ。くふふ、ふふふ」ドサッ


ズルッ


ほむら(港へ急ごう)


ザッザッザ

―― 港 堤防


杏子「ちょっ、待ちなって!」

織莉子「往生際が悪いわ。佐倉杏子」

織莉子「あなたが武器の闇取引をしているということはわかっているの」

織莉子「おとなしく斬られなさい」

杏子「はあ?」


杏子「……ああ、そういうこと」

杏子「誰にか知らないけどさ、騙されてるよ。あんた達」

杏子「そもそも、あたしを斬ったところで、あんた達の望む結果になんかなりゃしないってのに」ヤレヤレ

キリカ「問答無用ッ!」ブンッ

杏子「あぶなっ」サッ

杏子「お前ら……っ、何でも刀かっ!」


ほむら(もう始まってる……)

ほむら(……)

ほむら「双方ッ! 戦いを止めなさいッ!!」


織莉子「……ほむらさん?」

キリカ「なんだいなんだい暁美、臆病風にでも吹かれたのかい?」

ほむら「いいえ、違うわ。粉バナナ……もとい、罠よこれは」

織莉子「どういうこと?」

ほむら「優木沙々は幕府の密偵よ。墓場で大老の娘とやり取りしてるのを見たわ」

キリカ「なんだって!?」

織莉子「詳しく聞かせて」


カクカクシカジカ

………


般若党員達「「魔鱗組だ!」」


キリカ「どうやら、暁美の言うことは本当みたいだね、織莉子」

織莉子「ええ。一杯食わされたという訳ね……」

織莉子「―――ッ」ギリィッ

ほむら「……今は迎撃に専念すべきよ」

織莉子「―――わかっているわ」


杏子「おっと、あたしは逃げさせてもらうよ」

杏子「やれやれ、現実は醜いねぇ」


タッタッタ


………

織莉子「甘いわ」スッ


ズバシュッ


魔鱗組A「」ドサッ


キリカ「はッ!」ブンッ


ドシュゥッ


魔鱗組B「」ドサリ


ほむら(騙し討ちにする腹積もりであったからか、襲い来る敵の数は思いの外少ない)

ほむら(その上、織莉子とキリカの二人が、恨み晴らさでおくべきかとばかり、続々と彼らを斬り捨てていくため、みるみる内に魔鱗組は数を減らしていく)

ほむら(これじゃ、私の出る幕はなさそうだわ……)

魔鱗組C「その首もらったァーーッ!!」


ほむら(―――と、思った矢先に)

ほむら(バカ正直に、首筋を狙って払われた一太刀を、けれど―――)


ほむら「あなたじゃ―――」タンッ―


ほむら(刃が届くより早くも速く踏み込み、その胸元へと刀を突き立てる)


ドスッ!


ほむら「―――無理よ」


ほむら(なんとまあ、与しやすい相手だ。でも、だからって凡百の手合いというわけでもない。中途半端な輩)

ほむら(魔鱗組は精鋭の集いと聞いていたけれど、正直、期待外れも甚だしい)


………

キリカ「終わった……」

キリカ「でも、スゴく虚しいよ……。多分、佐倉杏子を取り逃がしたからじゃなくて」シュン

織莉子「……っ」ギュッ

織莉子「……ほむらさん、ありがとう」

織莉子「あなたのおかげで窮地を脱することができた」

ほむら「……礼には及ばないわ」

織莉子「明日、神社に来てくれる? あなたに折り入って、話があるの」

―― 四日目 町 賭場


小鳩「中々手際が良くなってきたぞ」ハッハッハ

小鳩「女将もお前をほめている」

小鳩「その調子でいけ」

ほむら「気が向いたらね」

小鳩「気が向かなくてもやるんだよ!」


小鳩「さあ仕事しろ」


―― 仕事「面倒な仕事」


小鳩「北関東の極道「菩殺会」が、前回の仕返しに腕の立つ奴を送り込んで来やがった」

小鳩「街道に来てるから出迎えに行け」

小鳩「この阿弥浜に土足で踏み入るとどうなるか、思い知らせてやれ」

小鳩「……もう言わなくてもわかるな?」

ほむら「……ええ」

小鳩「頼むぞ」

小鳩「女将の期待を裏切るなよ」イイカ

―― 街道


………


腕利き菩殺会A「……我々の仲間を殺ったのは貴様だな?」


ほむら(……また五人)

ほむら(……)


ほむら「正直に言うわ……」

ほむら「なんのこと?」


腕利き達「「……」」

腕利き達「「嘘つきだーーっ!!」」


ダッ


ほむら(先手必勝。近場の菩殺会へ向かい、駆け出す)シャラリ


腕利きC「くッ」シャラリ


ほむら(なるほど反応は悪くない。禿が言っていた通り、腕が立つというのは本当のことのようだ)

ほむら(けれど―――ッ)

ごめんなさい
寝落ちしました
何でもしますから許してください!

再開します

ブンッ


腕利きC「くぅッ」カキンッ

腕利きD「かかったな!」ブゥン


ほむら(やっぱり大したことはない)

ほむら(目前の男の襟首をひっ掴み、相手の重さを利用して、背後から迫り来るもう一人へと投げ飛ばす)


腕利きC「ぐあっ」トサッ

腕利きD「がっ」ゴロゴロ

腕利きA「おのれ!」

ほむら「遅いわね」


ザンッ


腕利きA「」ドサッ

腕利きB「このぉ!」ブンッ


カィンッ


ほむら(上段からの唐竹割りを受け流し、まずは逆袈裟に一太刀め)


ザシュッ


腕利きB「ぎ……ィ」


ズバシュッ


ほむら(トドメに抜き胴)


腕利きB「」ドサリ


ほむら(ノシ)

ほむら「ふッ」ブンッ


ザバッ


腕利きE「」ドサッ

腕利きC「バカな……。こんな馬鹿なことが……」

腕利きD「何をしているC! 呆けている暇は―――」


ドシュッ


腕利きD「な……あ」ドサッ

腕利きC「あっ……ああっ……」

ほむら「……」チャキ


ズバッ


腕利きC「」ドサッ


ほむら「……」―チン

―― 町 賭場


小鳩「てめえも極道が板についてきたな」

小鳩「兄貴分の俺も嬉しく思うぜ」フフフノフ~


ほむら(え。マジで)


小鳩「何か問題はあるか?」ドウダ?ン?


ほむら(極道に染まってきたこと! ……とはさすがに)


ほむら「……」

ほむら「禿は女将に惚れてるの?」

小鳩「お前っ! 禿じゃねえってっ……んん?」

小鳩「……すまん、聞き違えたらしい。もう一度頼む」

ほむら「だから、あなたは女将に惚れているの?」

小鳩「ほっ。ほほほほほほほっ、ほれっ、ほれっ! ……惚れてないし」プルプル

ほむら「でも、その割には献身的よね? いつも女将の期待がどうとか鬱陶しいくらい念押ししてくるし。惚れてるの?」

小鳩「おかっ女将はあくまでも尊敬すべき上司で、そ。そそそっそんな、おそそそそ。おおおおそれ多い情を抱く訳ねえーだろ!」プルプル

ほむら「へえ。で、惚れてるの?」

小鳩「……そそっ、そうだ、ようじゅがあった!」プルプル

小鳩「またな!」スタコラサッサ


ほむら(……からかい過ぎたかしら)

―― 昼 神社 洞窟最奥部 般若党のねぐら


般若党A「阿弥浜は剣術大会で大騒ぎだ」

般若党B「勝った者は魔翌鱗組に取り立てるそうだが―――」

般若党B「美国さん! 放っておいて良いのですか!」

般若党B「ぶっ潰すべきです!!」


織莉子「……」メヲツムリ

織莉子「みんな、落ち着いて」

織莉子「このお触れをよく見てみて」

織莉子「剣術大会への参加は、身分前歴を問わずとある。……つまり」

ほむら「攘夷志士でも参加できる、という訳ね」スタスタ

織莉子「ええ。その通りよ」

ほむら「と、いうことは―――」

キリカ「大老を仕留める絶好の機会でもある、ということだね」スクッ

ちょっと中断

般若党C「呉さん! 剣術大会に参加なさるのですか?」スクッ

般若党A「では自分も行きます!」スクッ

般若党D「それがしも」スクッ

般若党B「俺もだ」スクッ


織莉子「待って」

織莉子「そんな大勢で押しかけていっても、怪しまれるだけよ」

織莉子「参加者は私が指名するわ」


織莉子「まずはキリカ」

キリカ「ん」コクリ


織莉子「それから……」

織莉子「細川さん」

細川「こ、心得た」コクリ

織莉子「残る一人は……」


織莉子「ほむらさん」

織莉子「お願いできる?」

ほむら「ええ。引き受けたわ」

織莉子「頼もしい人」

―― 大通り


受付「参加を希望する者か?」ヤロウッテノカイ

ほむら「ええ。参加するわ」

受付「控え室はこの奥だ。控えておれ」


………


ザワザワ ザワザワ


QB川「壮観ですね」ネットリ

万由「熱気むんむんですわ、お父様」

千佳「控え室も命知らずで溢れんばかりだよっ」

百合「なにやらぞくぞくしてまいりましたのっ!」


マミ「みんな立身出世を夢見て浮き立っているわね……」

マミ「これで不平不満が解消されて、少しは町も静かになるでしょう」

マミ「御大老様の深慮遠謀には、この巴マミ、心底感服いたしました」ペコリ


ニヤリ

QB川「くっく。確かにね。町の浄化には、つながるだろうね」ネットリ


クリームヒルト「剣術大会だなんて」

クリームヒルト「わたし、見ていられるのかな……。自信がないよ……」

オクタヴィア「そうだね。クリームヒルトにはちょっと、刺激が強いかも」

オクタヴィア「無理なんかしなくたっていいよ。どうする? 領事館にもどる?」

クリームヒルト「ううん。せっかくご招待いただいたんだもん。最後まで頑張る」


マミ「これより剣術大会を始める」

マミ「参加者はクジで選んだ相手と戦い、先に一本取った者の勝ちとする」

マミ「得物は問わない―――」


マミ「真剣勝負よッ!!」クワッ

―― 第一試合


マミ「これより第一試合を始める」

マミ「両者入場せよ!」


汚いおっさん「」テクテク


ほむら「」テクテク


―― 貧乏浪人 嘉門夫作


子供達「「ちゃーん! がんばってー!」」

嘉門「お前達ー! 今日は米を目いっぱい、食わせてやるからなーーっ!」


嘉門「生活のかかった剣は、怖いぜ」シャラリ

ほむら「……」シャラリ


ほむら(後味の悪い戦いになりそうね……)


マミ「恨みは残さないように」

マミ「始め!!」

嘉門「そぉりゃぁッ!!」ブゥン!

ほむら「……」カキンッ


ほむら(開幕早々全霊の一撃を仕掛けてくるなんて、中々できることじゃないよ)

ほむら(カチ上げるように繰り出された逆風の太刀を受け流す)


嘉門「南無三!」ブンブン


ほむら(こんな催しに参加するだけあって、彼の剣は相当なものだ。一刀一刀には気迫が乗り、鍛え上げられた剣閃は鋭くもあり、また重くもある)

ほむら(……けれど)


ほむら「申し訳ないけれど」キィンカキンッ

ほむら「お遊びに、長々と付き合う趣味はないの」チャキ


ほむら(あくまでも凡庸な剣だ。これでは、私にはおろか、あのおかっぱ頭の姫君にさえ、彼の刀は届くまい)


ほむら「終わらせましょう」タンッ


ほむら(言うが早いか、男に向かい踏み込んだ)


ズアッ


嘉門「!?」


ほむら(今さら防御の姿勢をとっても同じこと)


ズバシャァ!


嘉門「そん、な……」


ドサッ


嘉門「おまえ、たち」

嘉門「武士にだけは……。なるなよ……」


マミ「一本! それまで!」

ほむら「……」―チン


ウアーン ウワーン

チャーン!


子供「ちゃんを返せーっ!」ポロポロ

ほむら「……」チラッ


ザッザッザ(立ち去り)

―― 第二試合


マミ「これより第二試合を始める」

マミ「両者入場せよ!」


ほむら「」テクテク


紳士風の男「」テクテク


―― 英国紳士 チャールズ


チャールズ「紳士の国からやってきまシタ、チャールズでス」

チャールズ「フェアプレイの精神で、正々堂々と戦いまショウ」ペコリ

ほむら「……そうね。そう願うわ」エシャク


ジャキン


チャールズ「ヤバンなサムライ! ハチの巣にしてやル!!」

マミ「なっ! 飛び道具ですって!?」

マミ「こんな人に負けてはいけないわ! 侍の意地を見せてやりなさい!!」


ほむら(……暑苦しい)シャラリ

チャールズ「カモン!」パンッ

ほむら「……ッ」サッ


ほむら(……なんとかカワすことができた。本人の技量もそうだけど、この間の変態達よりも、格段に照準が読みにくい)

ほむら(でも、避けられた。……ならば、この好機、逃しはすまい)タタタッ


ブンッ

チャールズ「かかったナ!」バックテン


ガチャリ


ほむら(罠……!?)


パンッ


ほむら「くぅッ」コロガリ


ほむら(なんて鬱陶しい奴なの)

ほむら(……寄ってもすばしっこく逃げられるし、鉄砲で遠くから攻撃してくる)

ほむら(地味に鉄砲の腕が立つのも腹立たしいわ……)イライラ

ほむら(とにかく、なんとかしてアイツの隙を作り出さなくては……)

ほむら「……」スッ

チャールズ「どうしまシタ? 突然カタナを下げテ。もしかしテ、降参でスカ?」


ほむら「……ふぅ」

ほむら「冗談は顔だけにしてほしいわね。全く持って笑えないから」

ほむら「あなた程度、目を瞑っていたって余裕だわ。四の五の言わず、かかってきなさいよ」

チャールズ「ギギギ……」イライラ

チャールズ「死ネッ、ヤバン人!!」


パンッ


ほむら「当たらないわ」サッ

ほむら「どうしたの? 私のことを蜂の巣にしてくれるのではなかったのかしら?」ジリジリ

ほむら「それとも、英国紳士とやらは軒並み、口先だけの腑抜け野郎なのかしらね」ジリジリ

チャールズ「默レッ! 極東の黄色い猿メッ!!」


パンッ

ほむら「無駄なことよ。あなたの腕じゃ、私を捉えられない」サッ


ほむら(思った通り。ほんのちょっぴり煽ったくらいで、大分鉄砲の精度が落ちた)ジリジリ

ほむら(自尊心の高い輩は、狩るのが容易でありがたいわ)ジリジリ


チャールズ「死ネッ死ネッ死ネェッ!」ガチャッ


パンッ


ほむら「無駄よ。無駄無駄。諦めて降参してしまった方が、恥は少なくて済むんじゃないかしら」サッ


ほむら(あと少し。もうちょっとで―――)ジリジリ


チャールズ「默レ! 默レ默レ默レ默レ默レッ」ガチャガチャ


ほむら(―――私の間合い)ジリッ


ほむら「あなたがね」


ドスッ


チャールズ「ガァアアア……」ヨロヨロ

チャールズ「ヤバン人に……。負けル、とハ……」ドサッ


マミ「西洋文明に勝つなんて……」

マミ「お見事ね」


ほむら「……ふぅ」―チン


ザッザッザ(立ち去り)

―― 夕刻 控え室


参加者A「いよいよ最後の戦いだな……」

参加者B「残ったのはツワモノばかり。……気を引き締めねば」


―― 第三試合


マミ「これより第三試合を始める」

マミ「勝った者は晴れて魔鱗組の一員よ」

マミ「両者入場せよ!」


重装甲な女「」テクテク


ほむら「」テクテク


―― パツキン隊所属 メリンダ・デカメロン


メリンダ「当たりそうな気がしていたよ」

ほむら「はあ。そうなの」


メリンダ「西洋の剣が、日本刀よりも優れているところを見せてやる!」シャラリ

ほむら「……頑張って(暑苦しい)」シャラリ

メリンダ「正々堂々と勝負しよう」ブゥン!

ほむら「今さっき、似たようなことを口走る夷人と戦ったわ」キィン

メリンダ「ほう。どうだった?」ブンッ

ほむら「大したことなかった」カキンッ

メリンダ「そうか」

メリンダ「しかし私は強いぞ。ソイツと同じに思わないことだ」ブォン

ほむら「……へー」サッ


ほむら(……随分と大きなツルギね。よくもまあ、あんな華奢な体で振り回せたものよ)

ほむら(けれどやっぱりというか、むしろというか、得物に振り回されているとも言い換えられる)

ほむら(重装甲に大得物。これでは動きも鈍くなるというのも必定)

ほむら「ふッ」ブンッ

メリンダ「む」カキンッ


ほむら(突くべき弱みは、やっぱりそこかしら)


メリンダ「ふふ。やるじゃないか」ブォンッ


ほむら(飛びかかりざまに振るわれた大剣を、逸らすように受け流し、一歩踏み込む)


ガシッ


メリンダ「!」


ほむら(伸びきった片腕をすかさずひっ掴み、倒れ転がるようにして投げ倒す)


メリンダ「ぐあっ」トサッ


ほむら(私も一緒に倒れこんでしまうけど、私と彼女とでは身軽さが段違い)

ほむら(素早く起き上がり、いまだ倒れたままの彼女の鎧の隙間。鎖骨に程近い場所へと狙いをすまし、刀を突き立てる)


ドスッ!


メリンダ「―――っぎぁ! ……こふっ」ビシャア


メリンダ「ここ、まで……。私を熱くした男は、いない……」コヒュー コヒュー

ほむら「ちょっと。女よ。私女なんだけど」

メリンダ「命尽きるとも……。本、望……だ……」


ほむら「……」ハァ

ほむら「……その鎧は」―チン


マミ「一本! それまでっ!!」


ほむら「あなたの命を―――。救うものじゃなかったわね……」ザッザッザ

―― 表彰式


マミ「これにてすべての試合が終了した」

マミ「これより表彰式を行う」

マミ「見事に三つ勝ち抜いた者は、速やかに表彰台へ上がるように」


優勝者達「「」」ゾロゾロ


優勝者A「なにやら嫌な予感がするが―――」

優勝者A「まあいいか」スタスタ


ほむら「……」ザッ

マミ「待ってっ、どこへ行くの!」

マミ「これから表彰なのよ!」

ほむら「……辞退させてもらうわ」

マミ「なっ、本気!?」

マミ「ここまできて、栄誉を捨てるなんて!!?」

ほむら「悪いわね。興味がないから」

マミ「まったく……。変な人ね……」

QB川「まずは諸君、勝ち抜きおめでとう」ネットリ

QB川「私は感動しました」ネットリ

QB川「君達こそ武士の中の武士」ネットリ

QB川「真の侍です」ネットリ


QB川「約束通り、魔鱗組に取り立てますが―――」ネットリ

QB川「ただ今この場で、私自ら褒美を授けたい!」


優勝者B「ウオーォ! 聞いたか! 褒美だぞ! 金が出るぞ!!」ガヤガヤ

優勝者C「国のおっかさんが聞いたら、泣いて喜ぶだろうな!」ガヤガヤ

優勝者D「おう! ところで、なんか妙に熱くねえか?」ガヤガヤ

優勝者A「ああ、戦いの熱気が残っているんだろ……」ガヤガヤ


アアソッカ ハハハハハ

QB川「」コクリ


BEFORE 表彰台

    ↓

AFTER  大釜


デーン


マミ「!?」


オクタヴィア「は……?」

クリームヒルト「なに……あれ……?」


QB川「……」キュップイ

ガタンッ


優勝者達「「うわ―――」」ヒュー ポチャン


ウワーー! アツイーー!!


マミ(こんな……。これは、あまりに……っ)ギリギリ


アツイアツイアツイ ナンダコレハァァァァ


QB川「」ニヤニヤ

QB川「欲に目の眩んだ愚か者よ」

QB川「罠とも知らず、わざわざ殺されにやって来るとは」ニヤニヤ

QB川「ふ。ふふは、はは。ふはははははッ、ファーッハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」ゲラゲラ


三姉妹「「wwwww」」ゲラゲラ


クリームヒルト「」フラッ…

オクタヴィア「……サムライは」ダキトメ

オクタヴィア「上も下も野蛮人ばかり、だ……ッ」タチサリ


ゴタイロウサマハヒトニアラズ ヒトノカワヲカブッタオニダ!!

キカレタラオマエモカマユデダゾ!!


………

―― ???


オオカマグツグツ


QB川「」サケグイー

万由「お父様、ご苦労様でした」サケヲソソグ

QB川「やはり日本人は鍋ですね」ネットリ

QB川「鍋をつつきながら飲む酒こそ、贅沢の極み」ネットリ


QB川「あーっ、旨い」


鬼怒川一家「「wwwww」」ゲラゲラ


(残響する笑い声)

今日はここまで


おまけ


呉キリカ




紅薔薇惨道


流派

捨品愚流剣術(すてっぴんぐ)

片手

剛体法・中
あらゆる技の威力を50%減ずる

練気吸法・極
あらゆる技の活力消費を80%減ずる

丸飲み
一息に飲み干す

捨品愚の型
抜刀・納刀の型が変化する

血霧
刀を突き立て、抉り回す攻撃

卑狼壊覆(ひろうかいふく)
足払いを仕掛け、体勢を崩した相手を気が済むまで滅多斬りにする

凌柳閃掃→凌柳悼掃→凌柳冥掃
大振りの斬撃四連コンボ

酒肴→紅大吟醸
相手を滅多斬りにしたあと、トドメに腹を抉り回す攻撃

烈風貫→烈風腿
強烈な突きと蹴りのコンボ

真仙昇剣→練仙追剣→降仙終剣
右逆袈裟、左逆袈裟、袈裟懸けのコンボ


般若党の副将。織莉子への愛を公言してはばからない。
守りを度外視した攻撃一辺倒な剣術。奇抜な動きと、見境のない連続攻撃は凶悪。
しかし、逆に言えば、トリッキーな動きにさえ慣れてしまえば、カウンターは容易い。

おまけ2




センチュリオン


流派

ウィンザー流剣術




パツキン隊に所属する隊員。
本来侍道4では、海兵隊の隊長を勤めあげるキャラクターだが、このssでは超絶かわいい百江なぎさちゃんに人気で敗北し、パツキン隊の一員にすぎないキャラクターとなった。

家宝である、輝く金色の鎧は、彼女の先祖の命を七度救ったという。

侍道4では唯一イベント外で殺害が可能なメインキャラクター。
そのためか、ストーリー上では影が薄い上、代理のキャラクターまでいる。何かと不憫なキャラクター。

なんか大して強くなさそうなイメージが付きまとうが、実際に戦ってみると、結構な強キャラ。
高い耐久力に、広いリーチ。しかもガードが崩されなくなる不動心持ち。飛び道具に高威力の技の数々。
驚きの高性能だが、いかんせん動きが鈍い。
いちいち大振りなので、かわすなり捌くなりして斬りつければ割りと容易く倒せてしまうので

やっぱ雑魚キャラ

>>220

メリンダ・デカメロン

再開します

―― 五日目 神社 洞窟最奥部 般若党のねぐら


般若党A「美国さん、すみません」

般若党A「俺達は、今日限りで党を抜けさせてもらいます……」


織莉子「……」メヲツムリ

織莉子「……どういうことかしら?」

般若党B「俺達はあの鬼怒川が恐ろしいのです!」

般若党A「人間相手なら戦いますが、鬼怒川は人間じゃないっ!」

般若党B「あの化け物には正義も道理も通じません!!」

織莉子「そう。臆病風に吹かれたというわけね……」

織莉子「……好きにしなさい」

般若党A「」トテトテ

般若党B「」トテトテ


ほむら「」チラッ

ほむら「……よかったの? あのまま行かせて」

ほむら「士気にも影響してきそうだけど」

織莉子「……どの道、同じよ」

織莉子「あの釜茹でで皆、怖じ気づいてしまっているもの」


織莉子「他の者も」セヲムケ

織莉子「立ち去るのならば、今のうちよ」

タッタッタ(逃げ去り)


ほむら(大部分逃げ出したわね。まあ、無理もないけど)

ほむら(残っているのなんか、ほんの数名の般若党員と織莉子にキリカ)

ほむら(こんな有り様じゃ、とてもじゃないけれど、攘夷なんて達成しようもないわね……)


織莉子「……」フゥ


織莉子「……代官所に、襲撃をかけるわ」

織莉子「そして、囚われている仲間達を救出する」

ほむら「まだ仲間がいるの?」

織莉子「ええ。処刑を待っている仲間が大勢、ね」

般若党C「しかし、いくらなんでも、それは……」

般若党D「無謀過ぎやしませんか……」


織莉子「……キリカ、どう思う?」

キリカ「命が十個くらいあればね……」

織莉子「あなたがそう思うほどなら、向こうだって想像だにしてはいないはず」

キリカ「…………なるほど、油断を突くわけか。それなら、いけそうだね」

キリカ「まぁ、もっとも。私は君が行けって言うのなら、火の中水の中、どんな所にだって行くけどね」

織莉子「……ありがとう、キリカ」ニコ


織莉子「ほむらさん、あなたにも参加してほしい」

ほむら「……」コクリ

織莉子「残った者は皆精鋭だけれど、あなたが加わってくれるのなら、これほど心強いことはないわ」


般若党C「やれそうな気がしてきたぞ!」

般若党D「幕府の狗共を皆殺しだ!」


織莉子「皆の命を―――」

織莉子「―――私に預けてほしい」


一同「「」」コクリ


織莉子「行きましょう」

―― 代官所


タッタッタ


同心A「!」

キリカ「ふッ」


ザンッ


同心A「」ドサッ

織莉子「仲間達は役所奥の牢へ閉じ込められているわ」

織莉子「時間はかけられないわ。時が経つほどに、こちらが不利になる」

織莉子「強行突破し、可及的速やかに仲間達を救出するわ!」


一同「「おうッ!」」


タッタッタ

―― 代官所 玄関


織莉子「気を付けて」

織莉子「どこから襲ってくるか、わからないわ」


魔鱗組A「曲者ッ、覚悟!!」ブンッ


ほむら(織莉子の警告通り、ふすまを斬り破って、数人の魔鱗組が姿を現す)

ほむら(織莉子はまるで、敵が斬りかかることをあらかじめ知っていたかのように、優雅かつ的確、最小限の動きで回避すると、打って変わって、目にも止まらぬ見事な足捌きで持って魔鱗組その一の脇を、すり抜けるように斬りつける)


魔鱗組A「」ドサッ


ほむら(織莉子には、どこかどんくさいような印象を持っていたけれど、全くの見当違いだったようね)

ほむら(中々どうして、機敏に動き回るものよ)

魔鱗組B「うわぁあっ、なんだこいt」


ザシュッ


魔鱗組B「」ドサッ

魔鱗組C「ひっ、ひるむn」


ドスッ

グジュグジュ


キリカ「あっはは。アッハハハハハハッ。足りない足りない、こんな程度じゃまだまだ私を殺せやしないよ?」グリグリ

キリカ「もっともっと。もっともっともっとッ!」ゲシィッ

魔鱗組C「」ゴロゴロ


ほむら(キリカは……。まあ、なんていうか、自主規制よね)

ほむら(残虐というか、ある意味無邪気というか。かなり目に毒な光景だわ、キリカの周囲の惨状は)

魔鱗組D「ナメるなッ、小娘ぇーーッ!!」フリアゲ


ほむら(あんな大立ち回りを演じているキリカに斬りかかろうという気概は、素直に尊敬するけれど、ことこの場に至っては、蛮勇以外の何物でもない)

ほむら(振り上げた刀が振り下ろされるよりも速く、キリカはその男へと詰め寄って、疾風の如き軽捷さで足払いを放つ)


魔鱗組D「う、わ―――」グラッ―


ザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュ


ほむら(惨憺たる有り様だわ、本当に)

二刀使い魔鱗組「貴様らッ、何が目的だ!!」ブンッ

ほむら「さぁね。……でも、あなたにとってはどうでもいいことよ。間違いなくね」ギィン

二刀使い「何だとッ! どういうことだ!!」ブンブン

ほむら「そんなの決まってるでしょ。お決まり極まりないことよ」カキンッキンッ

ほむら「―――ここで死にゆくあなたには、関わりがないってこと」チャキ


ほむら(刀を二本も使うのだから、それなりに使える手合いかと思ったけれど)

ほむら(結局、いつもの強くもなく弱くもない、中途半端な輩に過ぎないわね……)

ほむら(攻めの意思を見せた私に対し、即座に守りに入った判断力は、一角のものだと思うけど)タンッ


ズバァッ


二刀使い「ぎ……ィイ……ッ」


ほむら(瞬く間に懐へと入り込み、胴を一閃。斬り抜けてみるけれど、どうにも浅い)

ほむら(すかさず、刀を脇へと納めるようにして、背後へと振り向くことなく突き込む)


ドスッ


二刀使い「」ズルッ


ドサッ

ほむら(攻めはともかくとしても、受けに関しては、中々に巧みな手合いだったわね)

ほむら(もしかすると、隊長格の人物だったのかもしれない)

ほむら(牢に閉じ込められているというからには、当然鍵もかかっているのでしょうし。その鍵を、もしかしたら彼が持っているかもしれない)

ほむら(と、いうわけで。悪く思わないでね)ナムナム


ゴソゴソ ゴソゴソ

魔鱗組E「いたぞ! 般若党を討ち取れ!」


ワラワラ ワラワラ


織莉子「新手……っ」

ほむら「織莉子」


ヒュッ

パシッ


織莉子「……ほむらさん、これは?」

ほむら「どこかしらの鍵よ」

ほむら「アレの相手は引き受けるから、あなた達は囚われている仲間を助け出してきて」

織莉子「そんなっ、無茶よ!」

織莉子「ほむらさん、せめて他にも仲間を―――」

ほむら「言ったでしょ、私って一人が長いの」

ほむら「他に仲間がいたって、邪魔にしかならないわ」

ほむら「……それに。今まで捕まっていたのなら、その人達は丸腰でしょ」

ほむら「こちらに割く戦力がもったいないわ」

ほむら「だから、早く行きなさい」


織莉子「……わかったわ。確かに、ほむらさんの言うことに理がある」クルリ

織莉子「けれど、ほむらさん。……くれぐれも、くれぐれも、気を付けてね」タッタッタ

ほむら(……とまあ、格好つけてはみたけれど)

ほむら(さすがに、多勢に無勢かしらね)チラッ


魔鱗組E「」

魔鱗組F「」

魔鱗組G「」

同心B「」

同心C「」


ゾロゾロ ゾロゾロ


ほむら(目的は敵の全滅でなく、時間稼ぎ)

ほむら(……だとしても、この戦力差はいかんともし難いわね……)


同心D「死ねぇッ!!」タッ


ほむら(背後からだ。刀を突きだし、こちらへ駆けてくる)


ほむら「お断りよ」


ガツンッ


同心D「ごッ―――」


ザンッ


ほむら(顎へと、突き上げるように柄頭を叩き込み、側面を向きざま、喉笛を掻き斬る)


同心D「」ドサッ

同心B「かあああああッ!!」ブンッ

魔鱗組E「であああーーッ!!」シュッ


ほむら(前から一人、右からもう一人)

ほむら(前方の同心は大振りな唐竹割り、右の魔鱗組は大雑把な突き)


ザシュッ


同心B「いぎッ」ガクッ


ほむら(即座に転がり避け、ついでに同心の腱を斬りつけておく)

ほむら(反転。近くの魔鱗組をすり抜け、その背後でこちらの隙を窺っていたもう一人の魔鱗組へと詰め寄る)


魔鱗組G「!」スッ


ほむら(身を守ろうと刀を掲げたところで、もう遅い)


ドスッ!


ほむら(魔鱗組の腹へ刀を突き込み、足をかける)


ゲシィッ


魔鱗組G「」ゴロゴロ


ブンッ


ほむら「ぐっ」カキンッ


ザバッ


魔鱗組F「」ドサッ

魔鱗組E「相手は一人だ! 恐れるな、囲み込め!」

魔鱗組H「そうだ! 数はこちらが勝っているのだ! 体力が尽きるのを待ち、一気呵成に攻め立てるぞ!」

同心E「」チャキ

同心F「」チャキ


ほむら(捨て駒にされるとわかってなお、斬り込まずにはいられない。宮仕えの哀しさよ)

ほむら(まあ、同情はしないけど)


同心F「アアアーーッ!!!」ダッ


ほむら(刀を抱え込み、がむしゃらに駆ける。怖れの見え隠れする太刀筋)


ズシュゥ


ほむら(そんな情けのない攻撃を、軽く身をそらしてカワし、すれ違いざまに胴を一閃する)


同心F「」ドサリ

同心E「ガァアーーーッ!!」ブンブン

ほむら「……」サッ

魔鱗組E「隙ありィーーッ!!」シュッ


ほむら(今が好機、とばかりに斬り込んできた、魔鱗組の突きをいなして、すかさずその腕を掴み取る)


ボグゥッ


魔鱗組E「ぐびぇ……」ブバァッ


ほむら(引き寄せた鼻面を、鍔の部分で打ち据えてやり、乱心しきったように刀を滅多に振り回す同心へと向かい、投げ飛ばす)


同心E「ギャッ」トサッ

魔鱗組E「ぎッ」ゴロゴロ

ほむら(織莉子達はまだかしら。自分で提案しておいてなんだけど。コレ、かなりキツいわ)


同心G「うわぁああああーッ!!」シュッ


ガィンッ

ズバシュゥッ


同心G「」ドサッ


ワラワラ ワラワラ


ほむら(また新手……っ)チャキ


タッタッタ


織莉子「ほむらさん! よくやってくれたわっ、脱出しましょう!」


ほむら(……噂をすればなんとやら、ね。別に噂してないけど)


ほむら「了解よ」


………


織莉子「怪我人を助けて急いで!」


タッタッタ(立ち去り)

―― 神社 洞窟最奥部 般若党のねぐら


トテトテ


般若党員達「「」」シシルイルイ


QB川「」ニヤニヤ


ゾロゾロ(役人達)


織莉子「っ!」

キリカ「アレは……!?」

ほむら「……どうやら、留守を突かれたみたいね」

般若党A「きっ、鬼怒川……っ」ビクビク

織莉子「……っ」ギュッ


織莉子「ここを捨て、他へ移るわ」

ほむら「……いいの?」

織莉子「ええ。どの道、ここを見つけられてしまったのでは、もう戻れない」

織莉子「行きましょう」


テクテク


織莉子「」チラッ

織莉子「……ッ」ギリリィ

キリカ「……織莉子?」

織莉子ううん、なんでもないの。今行くわ」


テクテク(立ち去り)

―― 神社 洞窟最奥部 般若党のねぐら


トテトテ


般若党員達「「」」シシルイルイ


QB川「」ニヤニヤ


ゾロゾロ(役人達)


織莉子「っ!」

キリカ「アレは……!?」

ほむら「……どうやら、留守を突かれたみたいね」

般若党A「きっ、鬼怒川……っ」ビクビク

織莉子「……っ」ギュッ


織莉子「ここを捨て、他へ移るわ」

ほむら「……いいの?」

織莉子「ええ。どの道、ここを見つけられてしまったのでは、もう戻れない」

織莉子「行きましょう」


テクテク


織莉子「」チラッ

織莉子「……ッ」ギリリィ

キリカ「……織莉子?」

織莉子「ううん、なんでもないの。今行くわ」


テクテク(立ち去り)

―― 大通り 旅籠


織莉子「……」ギュゥゥ…

キリカ「織莉子、今日はここにお泊まりするの?」

織莉子「……」

織莉子「そうゆっくりもしていられない」

織莉子「役人達にここを嗅ぎ付けられてしまうのも、時間の問題だもの」

キリカ「じゃあ、ここで迎え撃つのかい?」

織莉子「いいえ」メヲツムリ

織莉子「鬼怒川を許してはおけないけれど、忘れてはいけないわ。私達の敵は、あくまでも夷国よ」

織莉子「……ゆえに。これから英国領事館へ、斬り込みをかける」

織莉子「そうすれば、国際問題となるのは必定。国をあげて夷敵と戦わざるを得なくなる。……つまり―――」

ほむら「幕府と英国の戦争になるわけね」

織莉子「」コクリ

織莉子「ひとたび夷敵と戦わば、いやが応にも攘夷の炎は燃え広がることになるでしょう」

般若党A「おおっ、さすがは美国さん!」

般若党B「英国人もまさか、追われているはずの我らが襲ってくるとは夢にも思っていまい」


織莉子「……ほむらさん」

織莉子「あなたはどうなの? 私達と運命を共にする覚悟はある?」


ほむら「……何度も言うようだけれど」

ほむら「乗りかかった船よ。今さら日和るつもりはないわ」


織莉子「……ありがとう」

………


織莉子「出陣の前に、血盟の盃を」


一同「「」」グイーッ


般若党A「攘夷が成るか成らぬか。起死回生の戦いだな!」

般若党B「武者震いがしてきたぞ!」

―― 居留地


海兵隊A「」テクテク


ウジャウジャ ウジャウジャ


海兵隊B「……?」


ザシュッ


海兵隊B「」ドサッ


織莉子「」トテトテ

キリカ「」トテトテ

ほむら「」トテトテ

般若党員達「「」」トテトテ


海兵隊C「ジョ、ジョーイだ!」ユビサシ

海兵隊D「ジョーイの襲撃だ!!」


タタタッ


パツキン隊A「」シャラリ

パツキン隊B「」シャラリ

パツキン隊C「」シャラリ


ジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキ

ほむら「凄まじい数ね……」

キリカ「なんだい暁美、怖じ気づいたのかい?」

ほむら「まさか。言ったでしょ。ここまで来て―――ッ」タッ


ザンッ


パツキン隊B「」ドサッ

ほむら「―――日和るつもりはないって」

キリカ「ふふん。そうだったね―――っと」サッ


パツキン隊A「チィッ」ケンヲフリキッタシセイ

キリカ「危ないなあ、もうっ」ブンッ


ザシュッ


パツキン隊A「」ドサッ

タタタッ

バシュッ


海兵隊A「」ドサリ

織莉子「……ッ」ブンッ


ザグッ


パツキン隊C「」ドサッ


パツキン隊D「ミクニオリコッ、カクゴ!」ブゥン

織莉子「ぐぅうっ」ガキンッ

海兵隊D「シット!」ガチャ


織莉子「しまっ―――」

ドスッ!


海兵隊D「ゲァッ」


グジュグジュ


キリカ「おまえ」グリグリ

海兵隊D「ギッ、ギィ、……ィ」グジュグジュ

キリカ「その銃口……。誰に向けたかわかってる?」グリグリ

海兵隊D「ィ……ィ」グジュグジュ

キリカ「ちょっと。何で織莉子に鉄砲向けたのって、聞いてるんだけど?」グリグリ

海兵隊D「」ヒクッ…ヒクッ…

キリカ「……いいやもうおまえ。死んどけ」ゲシィッ

海兵隊D「」ゴロゴロ


ドシュッ


パツキン隊D「」ドサッ

ほむら「……気持ちはまあ、わからないでもないけれど。気負いすぎよ、織莉子」

織莉子「……ほむらさん」

キリカ「そうだよそうだよ! もし万が一にもまかり間違って君の珠のようなお肌に傷がついたらと思うと私は―――」ガクブル

キリカ「うわああああーーーッ!!!!!」


ザシュザシュザシュ


海兵隊C「」ドサッ

海兵隊E「」ドサッ

海兵隊F「」ドサッ

ほむら「……愛されているわね」

織莉子「……キリカァ」ヒタイニテヲアテル


織莉子「ほむらさん、キリカ。ごめんなさい」

織莉子「少しばかり、我を失っていたみたい」

キリカ「もう大丈夫そうだね、織莉子」

織莉子「ええ」

ほむら「横やりは全て私達が弾くわ。……だから―――」

キリカ「うんっ。言ってよ、織莉子!」

織莉子「……二人とも」

織莉子「」コクリ

織莉子「……すぅーっ」シンコキュウ


織莉子「多くの仲間達が散ったわ!!」

織莉子「国を憂いた者、家族や恋人、友人を守るべく立ち上がった者!」

織莉子「多くの仲間が集い、そして散っていった! 誰も彼もが、勇猛果敢な勇者だった!!」

織莉子「ここでの戦いを私達が征したとしても、待ち受けているのは大英帝国との果てしない戦い―――」

織莉子「これからも。きっとこれからも、たくさんの仲間達が、容赦なく散ってゆくわ!!」


織莉子「けれど、私達は立ち止まるわけにはいかない、もう、立ち止まれない!!」

織莉子「皆の剣を取る理由は様々であったけれど、胸に抱いた理想(おもい)は一つであったはず!!」

織莉子「ならば! 恐れるものなど、何もない! 恐れる必要なんてどこにもありはしない!!」


織莉子「私は、日本を護りたい」

織莉子「誰にも理解されなくたっていい! 悪であると謗られてもいい!」

織莉子「この美しき国を愛しているから!!」

織莉子「だから―――ッ」






織莉子「みんな!! どうか私に力を貸してほしい!!」




般若党員達「「おうッ!!」」


ザシュッ バシュッ


海兵隊二人「「」」ドサドサ

ほむら「まあ。今さら、口に出すまでもないわよね」


キリカ「もっちろんっ、私は織莉子のためになることは、何でもする主義だからね!」ブンブン


ザシュ ザシュゥッ


海兵隊二人「「」」ドサドサ


織莉子「行きましょう! 目的の達成は目前よ!!」


一同「「おうッ!!」」


タッタッタ

―― 居留地 領事館


タッタッタ


織莉子「―――公使はっ!?」キョロキョロ


オクタヴィア「残念だけど、みんな逃げたよ」

ほむら「あなたは……っ」

オクタヴィア「ああ、あたし? クリームヒルトには悪いんだけど、どうしてもあんた達を許しておけなくてね」

オクタヴィア「正義の味方のオクタヴィアちゃんとしてはさ」

織莉子「あら。その口振りだと、私達が悪者になってしまうわ」

オクタヴィア「あっれー。わかりづらかったかな、そう言ったんだけど」

ほむら「」イラッ

オクタヴィア「ところで、わかってるわけ?」

オクタヴィア「あんた達のやってるコレ、英国への宣戦布告になっちゃうよ?」

織莉子「……無論、わかっているわ」

オクタヴィア「勝てると思ってるの?」

オクタヴィア「ロクな船も大砲も持たない、侍風情が大英帝国を相手に、さ」

織莉子「……」メヲツムリ

織莉子「装備の優劣なんて、問題じゃないわ」

織莉子「私達には、大和魂がある」

織莉子「日本には日本の伝統があり、文化がある」

織莉子「誰にもケガされず、永遠に護り抜く。その心映えがある限り、夷敵には負けないわ」

オクタヴィア「なるほど」

オクタヴィア「あんた達には、あんた達なりの正義ってのがあるわけだ」


オクタヴィア「でも」

オクタヴィア「やっぱ愚かだわ、あんた達」

オクタヴィア「……あたしも人のこと言えた身なんかじゃ、ないけどさ」ボソッ


ほむら「……」

ほむら「……二人とも。手出しは無用よ」

織莉子「……ほむらさん?」

ほむら「何故かしらね」

ほむら「あのおくたびあって女、どうにも気にくわないわ」

ほむら「だから、私がやる」


織莉子「わかったわ。……気を付けて」


オクタヴィア「なになに、あんた一人でやろうっての?」

オクタヴィア「これはもしかして―――ッ」シャラシャラッ

タタッ

ブブンッ


ほむら(……二刀使い)ガキキィンッ


オクタヴィア「オクタヴィアちゃんってば、ナメられちゃってるのかね?」ガギギギギギ


ほむら(鍔迫り合いに持ち込まれた……っ)ガギギギギギ


ほむら「そうね。そりゃあもう、盛大に」

ほむら「なんと言っても、あなた程度の輩に―――」クルッ


ガッキィンッ


ほむら(身を翻し、力づくでおくたびあを弾き飛ばす)


ほむら「―――三人がかりだなんて、侍の恥だもの」

オクタヴィア「へえ。案外気にしいなんだね、侍ってやつも」

ほむら(堪えてない……。挑発にしても、先の殺り取りにしても)

ほむら(軽薄な言動をとる女だけれど、油断はならない)タンッ

ほむら(勢いをつけて、跳躍)


ブゥンッ


オクタヴィア「!」ガギィンッ!


ほむら(渾身の兜割を繰り出してみるけれど、通らない)

ほむら(……見かけによらず、随分と力が強い)


オクタヴィア「やるねっ。じゃ―――ッ」ダッ

ほむら「ッ」

オクタヴィア「―――次はあたしの番ッ!!」ブブブブブンッ

ほむら「くぅッ」ガィンガィンガィンッ


ほむら(いなす、カワす、いなすいなすカワす)ガィンガィンガィンッ


オクタヴィア「でりゃぁああああーーッ!!」ブブブブブンッ


ほむら(なんて連撃。まるで台風のようだわ)ガィンガィンガィンッ

ほむら(けれど、ああもツルギを振り回していては、必ずどこかに隙ができるはず)ガィンガィンガィンッ

ほむら(今は機を待つべきね)

オクタヴィア「やるもんだね、あんた」ブンッ、ドガァッ

ほむら「あなたもね」キンッカキンッ

ほむら「よもや、こうまで剣を使う夷人が存在しうるだなんて、想像だにしなかったわ」

オクタヴィア「それはお互い様」


オクタヴィア「……なんだか、あんた達の美学(やまとだましい)ってやつ、気になってきちゃったかも」

ほむら「……出会いが悪かったわね」

オクタヴィア「出会い方が変わっても、あんたとは仲良くなれそうもない気がするなぁ」

オクタヴィア「なんとなく」

ほむら「それこそ―――」タンッ


ブンッ


オクタヴィア「ぉおっと」カキンッ

ほむら「お互い様ってものよ」


ほむら(やはり通らない。……追撃をかける?)

ほむら(おくたびあを見やる。手先で細身のツルギを弄ぶ姿は、一見すると隙だらけなように見えるけれど、なんともいえないような不安感がある)

ほむら(もしかして、誘われている? ならば、これ以上の深追いは危険かもしれない)


オクタヴィア「へえ、良い勘してるね」

オクタヴィア「でも―――ッ」ニヤッ

ほむら「……っ」

オクタヴィア「―――あまいよッ!!」ビュンッ

ほむら(剣を投げてきた!?)

ほむら(距離を取ろうと後ずさる私に向けて、追い縋るよう差し向けられた一筋の追手)

ほむら(まさか……ッ、正気なの? 剣士がツルギを手放すなんてっ)カァンッ


タタタッ


ほむら「!」

オクタヴィア「はあぁあーーッ!!」ブゥンッ


ガキンッ

ザンッ


オクタヴィア「ぐっ……ぅ」ポタッ…ポタッ…

オクタヴィア「あたしも……。ここまで、かぁ……」ドサッ

オクタヴィア「あんた」

ほむら「……なに?」

オクタヴィア「最期、に……。聞か、せてよ……」

オクタヴィア「な、まえ」


ほむら「……」

ほむら「……暁美ほむらよ」

オクタヴィア「そ、っか……」

オクタヴィア「ありがと、ね……。ひさび、さに、あつ、くなれる……」

オクタヴィア「たたか、い……を、……した、きがする、よ……」


オクタヴィア「」


ほむら「……」―チン


………

今日はここまで

再開します

ゾロゾロ ゾロゾロ


マミ「まったく、なんてことを仕出かしてくれたの……」

マミ「英国領事館を襲撃するなんて」

マミ「これでは日本と英国が戦争になってしまうでしょうっ!」


織莉子「戦争……?」

織莉子「大いに結構なこと」

マミ「正気なの……?」

織莉子「夷人達の圧力で開国させられてしまうのを、座して見ているわけにはいかないわ」


織莉子「英国との戦争になれば、いやがうえにも夷敵憎し―――」

織莉子「日本中に、攘夷の炎が燃え上がるでしょう」

マミ「あまいわ……」

マミ「戦争に負けてしまえば、清国のように、植民地にされてしまうのよ」

織莉子「清国に志士はいなかったわ」

織莉子「けれど―――」


ワラワラ


般若党員達「「」」タタタッ

織莉子「日本には、私達がいる」

マミ「……」アタマフリフリ


マミ「話にならないわ」

万由「代官殿、話す必要など無いのではなくて?」

千佳「あたい達、さっきからうずうずしてるんだけど……」


織莉子「それは奇遇ね」

織莉子「私達の刀も―――」シャラリ

キリカ「……」シャラリ

ほむら「……」シャラリ

般若党員達「「」」シャラシャラシャラシャラ


織莉子「売国奴の血に飢えているわ」


マミ「話せば分かる世は―――」シャラリ

三姉妹「「」」シャラシャラシャラ

魔鱗組達「「」」シャラシャラシャラシャラ


マミ「まだまだ来そうにないわね……」


………

―― キリカ VS 万由 & 百合


カキンッキキキンッ

ドガァッ


百合「あうっ」トサッ

万由「百合っ!」

キリカ「あっはは、弱い弱いっ」

キリカ「弱いぞ鬼怒川、弱すぎるぞ鬼怒川百合!」シュッ


ガキンッ


万由「百合は、殺らせませんわっ」ギギギ


ニタリ


百合「!」

百合「お姉様、ダメですの!! 逃げてぇ!!」


キリカ「もう遅いよ」クルッ


ガッキィンッ


万由「―――え」カタナハジカレ

ドスゥッ


万由「ぃぎ……っ、ぁああ」グジュグジュ

キリカ「アハハッ、どうしたの? 痛い? 痛いの?」グリグリ

万由「っいぁ……。……っ」グジュグジュ


グリグリ


キリカ「妹は殺らせない」キリッ


キリカ「とか言ってたけどさぁ」

キリカ「その妹よりも先に、君が死んじゃったねっ!」ゲシィッ

万由「」ゴロゴロ

キリカ「こりゃあ傑作だよ! アッハハハハハハッ!!」


百合「そんな……っ」

百合「お姉さまぁあああああああっ!!!!!」

キリカ「さぁさぁ、次は君の番だよ」トテトテ

百合「……ッ」ギロッ


百合「頼むから―――ッ」フリアゲ

百合「―――死ぬですのッ!!!」ブォン

キリカ「やだよ」サッ

キリカ「私が死んだら―――」アシバライ


ガッ


百合「あぁっ」トサッ

キリカ「―――誰が織莉子に尽くすのさ」ブンブン


ザシュザシュザシュザシュ


キリカ「愛は有限に無限だ」ブンブン


ザシュザシュザシュザシュ


キリカ「だからこそ、できる限りに引き伸ばしておかなくちゃね、有限をさ」ブンブン


ザシュザシュザシュザシュ


キリカ「わかるだろう?」

百合「」

キリカ「……もう、聞こえてないかな?」

―― 織莉子 VS 千佳


織莉子「はあっ!」


タタッ

ガィンッ


千佳「くっ……。ご党首様自ら斬り込んでくるなんて、随分と勇敢なことじゃないか」

織莉子「あら。それはお互い様だと思うわ。お姫様?」

千佳「はんっ。口の減らない女だねッ!」シュッ


織莉子(こちらの素っ首落とさんと突き出された二刀)

織莉子(奇妙な唸りをあげ、迫り来るソレを、身を屈め、やり過ごす)サッ

織莉子(けれど、それは計算の内なのだと嘲笑うように、即座に落とし込むような突きが、再び迫る)

織莉子(鬼怒川千佳を見やる。イヤらしい笑みだ。きっと勝利を確信したのだろう)

織莉子(……けれど―――)ガィンッ


ズバシュッ


千佳「ぎっ、あ」

織莉子「それは傲慢というもの。油断に他ならないわ」セヲムケ

千佳「ま、だまだ、こんなんじゃ死なないわよ……っ」ヨロッ…


ゴフッ


千佳「さあ、かかっておい、で……」ドサッ


織莉子「早計だったわね、鬼怒川千佳」

ほむら「どうにも、あなたは腕が立つそうね」

ほむら「そんな輩を、二人とぶつけるわけにはいかないわ」

ほむら「あなたにはここで、私の相手をしてもらう」


マミ「……そう」

マミ「……あなた達が方法はどうあれ、この国を憂うように、私や御大老様も日本をより良くしよう、護ろう。そう考えているのよ」

ほむら「見解の相違、ね」

マミ「だから、私は、私なりのやり方で―――ッ」ダンッ


マミ「推し通るッ!!!」ブォンッ

>>266

ほむら VS マミ

ほむら(裂帛の気合いと共に繰り出された突き込みは、突きとは到底思えないような、凶悪な唸り声をあげ、迫り来る)

ほむら(なんたる膂力。見ただけでもわかる。アレはまともに受けるべきでないものだ)


チリッ

ズガァンッ!


ほむら(身をそらし、回避を試みるけれど、思ったよりも剣閃が鋭い。ちょっとだけカスった)

ほむら(けれど、それより問題なのは的をはずし、あらぬ方向へと突き込まれた切っ先の方)

ほむら(領事館の壁を深々と抉り砕いたその威力を目の当たりにして、ますます持って受けたくなくなったわ)

ほむら(それにしても……。強いわね、この代官。……これは、こちらも―――)スチャ


ほむら「……出し惜しみはしないわ」タンッ


ギィンッ


マミ「……っ、居合ね。随分と速いわ」

ほむら「……難なく防いでおいて、よくも言えたものね」

ほむら(闇雲に斬りかかっても防がれる)

ほむら(ならば、ここは待ちの一手。いかに鋭い剣であっても、あれほどの大振りだもの。こちらの剣が、アレに届く方が速いハズ)

ほむら(あの大振りが再び来るのを待ち、後の先を狙うべきね)


マミ「……」メヲツムリ


カッ!


マミ「照彩(てぃろ)・吠霊(ぼれー)!!」ブンブン

ほむら「……っ、速い……ッ」カキンッキンッ

マミ「私だって、大振りな攻撃ばかり繰り返すわけじゃ、ないのよ?」ブンブン

ほむら「……まあ、道理よね」キィンキンッ


ほむら(……待ちの、一手)


マミ「受けに向かない居合で―――ッ」ブンッ

ほむら「ッ」カィインッ

マミ「こうも私の攻撃を凌ぐなんて、天晴れよ、あなた」

ほむら「……その賛辞、素直に受けとっておく」

マミ「でも、それももう終わり」

マミ「決めにかかるわ―――ッ」チャキ


ほむら(来る―――ッ)

ズアッ


マミ「照彩(てぃろ)・吹汝(ふぃなーれ)ーーッ!!!」ブォンッ


ほむら「それを―――ッ」タンッ

マミ「なっ……!?」


バシュゥッ


ほむら「―――待ってたわ」―チン

マミ「ぐっ……」ポタッ…ポタッ…


マミ「命は……軽く」ヨロヨロ

マミ「名は、重い……」ガクッ

マミ「忠臣……。巴、マミ……ッ」


マミ「阿弥浜、に……。し、す……」ドサッ


………

般若党A「ついに、勝ったぞーーッ!!!」

般若党B「多くの同志の死に、報いることができた……」

般若党C「流された血は、無駄ではなかったのだ……!!」


織莉子「喜ぶには、まだ早いわ」

織莉子「まだまだ戦いは続く。大英帝国は、必ずや攻め寄せてくるでしょう」

織莉子「それまでに攘夷の旗を翻し、日本中の心を一つにまとめ、夷敵にあたらなくては……」


………


―― 居留地 領事館前


パァンッ

織莉子「ぐっ、う」ガクッ

キリカ「織莉子っ!!」タタッ


鉄砲隊「「」」ワラワラ


ほむら「早く領事館の中にっ」

キリカ「うっ、うんっ」ハッ


タタタッ


ほむら(……アレは……っ)チラッ


QB川「愚か者め」イライラ

QB川「あなた達のやったことが日本を滅ぼすと、わからないのですか」イライラ


QB川「幕府の名において、厳罰に処します」イライラ

織莉子「……私はもう、助からない」

織莉子「私に構わず……。みんなは逃げて……」

般若党A「逃げるなら、とっくに逃げています!」

キリカ「死ぬも生きるも、一緒だよ」

織莉子「……みんな」


織莉子「……ならば」

織莉子「ほむらさん、あなたに託すしかない……」

織莉子「私達は、幕軍に向かい、特攻をかけるわ」

織莉子「あなたは、その隙に脱出して」


―― カチンッ ――


― さっきのは、ウソ。


― わたしには出来なくて―――。ほむらちゃんに出来ること、お願いしたいから―――。


ほむら「っ」ズキッ


ほむら(私へと一心に注がれる、決意の瞳。織莉子もキリカも、他のみんなも。そんな瞳の色、今まで見たことがないハズなのに)

ほむら(どうして。既視感があった。きっと彼女達から託された訳じゃない。でも。覚えのない、あやふやな光景と、今まさに眼前にある風景が、どうしようもないくらいに折り重なる)

ほむら(知らず、流れ落ちた涙が頬を濡らす)


織莉子「残酷なことを言っているのは、わかっているの。でも、もうあなた以外に託せない」

織莉子「だから」

織莉子「決して振り返らない……。約束、してくれる?」

ほむら(決して、長いとはいえなかった、彼女達との思い出が、まるで走馬灯のように想い起こされる)

ほむら(戦いばかりではあったけれど、それでも彼女達は私を仲間と呼んでくれた)

ほむら(辛い……。辛い、けれど―――)


ほむら「……」コクリ

ほむら「約束、よ……ッ」

織莉子「ほむらさん」


織莉子「……あなたに出会えて、本当に良かった」ニコ…


QB川「死に場所を用意してあげているのです」イライラ

QB川「早く出てきなさい」イライラ


般若党員達「「」」シャラ―


織莉子「志士の最期……。見せてあげるわ……っ」グググ

織莉子「皆、あの世で会いましょう」


タタタッ


織莉子「突撃ぃッ!!」ダッ

般若党員達「「うおおおおおおおおーーッ!!!」」ダッ


パンッ パパンッ

ドサッ ドサドサッ


鉄砲隊「「」」パンパンパンッ

般若党A「があっ」ドサッ

般若党B「ぐああっ」ドサッ

般若党員達「「」」ドサドサドサッ

ほむら(皆が、仲間達が、幕軍の鉄砲で次々に死んでいく)

ほむら(決して勝ち目のない戦い。それでも、彼らは足を止めることはない。仲間の屍を跨ぎ越え、前へ、ひたすらに前へと)

ほむら(そんな姿を嘲笑う人もいるだろう。何を無駄な足掻きを、と)

ほむら(でも、私はそうは思わない。どこまでも愚直に過ぎる、その姿には。見る者の胸を熱くさせる、そんな何かが、確かにあったのだから)


織莉子「今よ! 行って!!」

鉄砲隊「「」」パンパンパンッ

般若党C「」ドサッ

般若党D「」ドサッ

般若党E「」ドサッ


タタタッ

ほむら「……っ」ギリィッ

織莉子「立ち止まらないで!! 走ってッ!!!」


ほむら(織莉子達が目指したモノは、その志は―――)

ほむら(私がきっと、やり遂げてやる―――ッ!)タタタッ


織莉子「」コクリ

織莉子「お願い……。ほむらさん……攘夷を……」


タタタッ


鉄砲隊「「」」パンパンパンッ


ビスビスビスッ


般若党員達「「」」ドサドサドサッ

織莉子「……ぐぅ、ぅ」ヨロ…

織莉子「ひるんでは、ダメ……。進みなさい……っ」


鉄砲隊「「」」パンパンパンッ

般若党員達「「」」ドサドサドサッ


キリカ「織莉子!」ワッテハイル


カィンカィンカィンッ


鉄砲隊「「」」パンパンパンッ


ビスビスビスッ


キリカ「う、ぐぅ……」ヨロ…

鉄砲隊「「」」パンパンパンッ


ビスビスビスッ


キリカ「……ぅ」ドサッ

織莉子「キリカ!!」タッ

キリカ「……おり、こ」ニコッ


キリカ「」


織莉子「くっ、ぅぅ……」ヨロヨロ

織莉子「うあああああああああああ―――ッ!!!!!」


パンッ

ドサッ

………


QB川「」ノソノソ

QB川「美国織莉子……。愚かな奴」カチャ


キリカ「ッ」


ガシッ


QB川「……貴様、まだ生きておったか」


パンッ


キリカ「」

QB川「」フリムキ

織莉子「」カタナフリアゲ

QB川「貴様もか!!」


パンッ ザシュッ


QB川「ぐぉあっ」アトズサリ

QB川「まったく、なんというしぶとい奴らだ……っ」タチサリ


キリカ「」

般若党員達「「」」シシルイルイ


織莉子(みんな……。ごめんなさい)

織莉子(キリカ、最期まで付き合ってくれて、ありがとう)

織莉子(……ほむらさん。あなたには、とんでもないものを背負わせてしまった)

織莉子(ごめんなさい。そして、引き受けてくれてありがとう)

織莉子(あなたと出会えて、本当に。本当に、良かった)


織莉子(……もし、叶うのなら―――)

織莉子(次は、普通の……)スゥ…


織莉子「」

―― 一ヶ月後 代官所


タタタッ


新代官「御大老様、一大事です!!」

新代官「英国艦隊が押し寄せてきました!!」

新代官「見渡す限り、阿弥浜の海は黒船で埋め尽くされております!!」

新代官「大艦隊です……」ガクブル


QB川「」イライライライライライライライラ

―― 街道


ほむら(ついにこの日が来た……)


攘夷志士A「夷敵め。来るなら来てみろ、皆殺しだ」

攘夷志士B「この国には、一歩たりとも立ち入らせぬ」


『攘夷』


攘夷志士C「ほむらさん、死んでも悔いはありません」

攘夷志士C「どうか、突撃を命じてください!」


ほむら(みんな……)メヲツムリ

ほむら(あなた達の遺志、必ず果たす)


クルリ


ほむら「……行きましょう」シャラリ


攘夷志士達「「」」シャラシャラシャラシャラ


攘夷志士達「「ウオオーーーッ!!!」」


ほむら(今、往くわ―――)ダッ


攘夷志士達「「ワアアーーッ!!」」タタタッ

――


阿弥浜での戦いが、さらなる英国の報復を招いた


幕府は崩壊への道を辿り


攘夷の炎は、日本国中に、燎原の火の如く広がった


――


その攘夷運動の先頭に立つ


この者を知るや





この女こそ、まさに


般若党党首 美国の遺志を継いだ


女だったのである


――


夷敵を恐れず


果敢に立ち向かった、この女の半生は


後々までも語り継がれ


人々の心を熱くさせた














アーアーアーアー

チキンチキンチキンッ





「半端者」






今日はここまで

再開します







カ シ ャ ン ッ !





ズ キ ッ !


ほむら「うあっ」ズキズキ


ほむら(流れ込む、流れ込む。膨大な記憶の濁流が、私の内へと流れ込む)

ほむら(般若党の一人として歩んだ道筋。攘夷志士としての半生)

ほむら(……これは、これから起こること? それともすでに起きたこと? ……あるいは私の妄想、単なる白昼夢に過ぎないのかもしれない)


ほむら(実感の伴わない記憶)

ほむら(まるで、他人の人生をどこか遠くから俯瞰しているような。……そんな他人事(ひとごと)めいたモノ)

ほむら(これはなんなの?)

ほむら(わからない。わからない。わからない)

沙々「お侍さん!」

沙々「そんなところで突っ立ってないでっ、早くなんとかしてくださいよぅ!」

般若党A「」タタタッ

ほむら「ッ」


ほむら(声を投げてきた少女。確か彼女は優木沙々。公儀の隠密だったか)

ほむら(駆け寄ってきたのは般若党の構成員)

ほむら(出会う人、状況。何もかもが初見であるはずなのに、どこか覚えがある)

ほむら(既視感なんて、なま易しいモノじゃなかった)

ほむら(なのに、けれど、実感はない。ならば、記憶ではなく、知識と言い換えた方が適当かもしれない)

ほむら(私を取り巻く全てが、私を惑わせる)

ほむら(私は一体、どうしてしまったというの……?)

>>288

×ほむら(……これは、これから起こること? それともすでに起きたこと? ……あるいは私の妄想、単なる白昼夢に過ぎないのかもしれない)

○ほむら(……これは、これから起こること? それともすでに起きたこと? ……あるいは私の妄想、単なる白昼夢に過ぎない?)

ブンッ


ほむら「……くっ」サッ


ワラワラ ワラワラ


ほむら(……っ。のんきに考えごとなんかしてるあいだに、すっかり囲まれてしまった)

ほむら(やめてくれ、とか、私は敵じゃない、とか訴えかけてみたとして、果たして彼らは、私を見逃すだろうか)

ほむら(……答えは否。だって私は彼らの味方じゃない)

ほむら(ならば、どうにかして彼らを退け、この状況を脱する必要がある)

ほむら(……訳もわからないまま死にゆくなんて、冗談じゃない)スッ


ザシュ ザシュ ザシュッ


般若党A「がッ」ドサッ

般若党B「ギィッ」ドサッ

般若党C「グビャッ」ドサッ


マミ「危なかったわね……」

ほむら「!」

マミ「でも、もう大丈夫」

ほむら「……あなたは―――」

マミ「そうそう。自己紹介しないとね。……でも、その前に―――」

般若党D「ウオオーーッ!!」ブンッ

般若党E「ヌゥウーーッ!!」ブンッ


ガキィイン―――ッ


マミ「ちょっと一仕事、片付けちゃいましょう」ガギギギギギギ


ほむら(大の男二人を、片腕だけで押し止めている―――)

ほむら(私でない私の記憶で、とてつもない膂力の持ち主であることは知っていたけれど。実際に目にして見ると改めて驚くわ。こうまで途方もないなんて)


マミ「手を貸してくれる? あいつらは悪いやつよ」ガギギギギギギ


ほむら(……私の内の、自分でもよくわからない何かが、ざわついた)

ほむら(けれど―――)グッ

ほむら(この記憶は、私のモノではない。私のモノではないのだ。降って湧いて、たまたま私が拾って。そういう類いの代物なのだ)


ほむら(だから―――)

ほむら(記憶に……。惑わされてはいけない。今の般若党は敵で、代官は―――)

ほむら(おそらくは味方だ。ならば、何を迷う必要があるだろう)

ほむら「……助太刀、させてもらうわ」シャラリ

マミ「ありがとう。……じゃあ―――」グッ


ガキィイイインッ


般若党D「ごふぅっ」トサッ

般若党E「ぐへぁっ」ゴロゴロ


マミ「―――始めましょう」


般若党F「ほあっ、ほあーーッ!!」


ほむら(虚勢だ。こちらに向いた刀の、小刻みに上下する切っ先を見やれば、彼が恐怖におののいていることくらいは、よくわかる)

ほむら(けれど、私も大概だ。普段であれば即座に斬りかかり、さっさとムクロにしているはずのマヌケ面がいまだ健在なのには。実感なき仲間意識が私を阻むからだ。偽物の友情が、剣先を鈍らせる)

マミ「照彩(てぃろ)・吹汝(ふぃなーれ)ーーッ!!」ブォンッ


ゴシャアッ


般若党員達「「」」ドサドサッ


般若党F「ハッ…ハッ…ハッ…」ガクブル


ほむら(……いい加減に、覚悟を決めなくては)タンッ


般若党F「ヒッ!」


ほむら(一足飛びに詰め寄り、男の無防備な下顎へと掌底を叩き込む。そして、すかさず片腕をひっ掴み―――)


般若党G「ひるむな、ひるむn―――」


ブアッ


般若党G「ギャアッ」ゴロゴロ

般若党F「イギィッ」トサッ


ほむら(―――投げつける)

般若党H「貴様ぁあああーーッ!!」ブンッ


ほむら(勢いのままに斬り込んでくるけれど、でも―――)


カキンッ

ガスゥッ


ほむら(それを受け流し、前につんのめった拍子に突き出された後頭部を柄で殴り付けて昏倒させる)


般若党H「」ドサリ


般若党I「くッ……。退け! 退けぇーッ!!」ソソクサ

般若党員達「「」」タッタッタ


………

マミ「お見事ね。あなた、いい腕をしているわ」ワクワク

マミ「良かったら、私達に協力してほしいの」ワクワク

マミ「あなたのような武士を求めていたのよ」ワクワク

ほむら「……」メヲツムリ

マミ「代官所の門はいつでも開けておくから、気が向いたら訪ねてきて」

―― 代官所


マミ「来てくれたのねっ!」ガタッ


うろちょろ うろちょろ


ほむら「え、ええ……」


ほむら(ものすごい勢いで立ち上がった代官は、その勢いのままに私の周りへまとわりついてくる。……なんかすごいチヤホヤしてくるんだけど、この人)

ほむら(その表情は、まるで餌を与えられた犬のようだ。……少しだけ、苦手意識が和らいだ)

ほむら(それにしても、私一人が参加すると言うだけで、この喜びよう。役所も案外、人手不足だったりするのかしら)

万由「」オホンッ


うろちょろ うろちょろ


杏子「あー」ポリポリ


杏子「そこでウロチョロしてんのが阿弥浜代官、巴マミで―――」チラッ

杏子「そっちの御三方が、御大老様の姫君にあらせられる」


ほむら「……暁美ほむらにございます」ザレイ

万由「あらあら。そんなにかしこまらなくてもよろしくてよ」

ほむら「……」ペコリ

百合「ところであなた」

百合「今回の戦には参加なさったの?」

ほむら「……というと?」

千佳「あたいらはもうちょっと、というところで乗り遅れちまったんだよ」

千佳「まったく、悔しいったらありゃしないっ」

杏子「……はは」ニガワライ

杏子「ま、見ての通りのお転婆ぶりさ」


杏子「で、あたしは運上所頭取の佐倉杏子。……紹介はこんなところかな」


マミ「ところで」

マミ「攘夷志士のこと、どう思う?」

ほむら「……?」

マミ「ひどい連中よ」

ほむら「……ひどい?」

マミ「ええ。過激な人達なの」

杏子「そ。外国人と見れば、見境なく襲いかかるような奴らさ」ヤレヤレ


ほむら(そう言って、話を引き継いだ杏子は、先程までの気だるげな様相を一変させて、理想に燃ゆる殉教者のような。それでいて、決死の覚悟を秘めた剣各のような、そんな雰囲気をまとっていた)


杏子「外国人や外国の文明はすべて悪と断じ、この国には一歩も入れないと息巻いてる。……その目的のためには手段を選びやがらねえ」

杏子「時代遅れの困った連中さ」


マミ「ところであなた、鍛えているわね……」

マミ「よしっ。一緒に戦いましょう!」


………

今日はここまで

すまない。短くてすまない


明日更新します

再開します

―― 夕刻 大通り


マミ「いいところに来たわね」

マミ「これから、洞窟探検に行こうと思っているの」

ほむら「洞窟?」

マミ「ええ」

マミ「実はこれまでに何人も、私の部下を送り込んだのだけれど、誰一人として生きて戻った者はいないの」


マミ「いわくつきの、謎の洞窟よ!」クワッ

マミ「どう!? 聞いただけで侍の血が騒ぐでしょ!!」ズズイッ

マミ「ねえっ、行きましょうよ!! 侍でしょっ!!」ガシィッ


ほむら(あ、暑苦しい……)

ほむら(……というか、そういう探求心の是非に関して、侍であるかどうかって、何か因果関係のあることなのかしら……)

ほむら(正直、興味なんて欠片ほどもないけれど。けど、洞窟、と聞いて何かの引っ掛かりを覚えたのも確か)


ほむら「……付き合うことにするわ」

マミ「そう言ってくれると思ってたわっ!」

マミ「さあ、出発しましょう!」

―― 神社 洞窟入り口


ほむら「……っ!」


マミ「ここよ……」

マミ「気を付けて。何が起きるかわからないわ……」


トテトテ トテトテ


………

マミ「待って!」

一同「「!」」ピタッ

マミ「なにやら怪しい物音がするわ……」

ほむら「……行ってみましょう」

マミ「そうね」

マミ「やっぱり、探検はそうでなくっちゃ」


トテトテ トテトテ


………

―― 神社 洞窟最奥部 般若党のねぐら


ほむら(やっぱり。ここ、見覚えがある)

ほむら(とは言っても。私自身の記憶でない以上、あくまでも知識として、だけれど)メヲツムリ


マミ「!」

マミ「アレを見て」ユビサシ


般若党員達「「」」ワイワイ ガヤガヤ


マミ「なるほど、ついに突き止めたわ」

マミ「洞窟の主は般若党だったのよ!」ドンッ!

マミ「彼らが油断しているうちに、片をつけてしまいましょう」タタッ


タッタッタ

般若党A「だっ、代官だ!!」ガタッ

般若党B「クソッ」

般若党B「せっかくの酒盛りを台無しにしやがって!」シャラリ


マミ「般若党退治よ! 行きましょう、暁美さん!!」シャラリ

岡っ引き達「「」」シャラシャラシャラ


ほむら「……そうね」タッ

般若党A「っ!?」

ゴスゥッ


ほむら(まずは先制。無防備に立ち尽くす男のみぞおちへと鞘尻を突き込み―――)


シャラッ

ドスッ


般若党A「ギ……ッ」ガクッ


ほむら(心臓へと刃を突き立てる―――はずだったけれど)

ほむら(……少しだけ、狙いがそれた。……こんなこと、そうあるものじゃない)

ほむら(やっぱり、記憶に引きずられている? この期に及んで、私は迷っているというの?)


般若党E「うぉああああーーッ!!」ブンッ

ほむら「っ!? しまっ―――」

ガィンッ


マミ「油断は禁物よ、暁美さん」ガギギ

ほむら「……ありがと。助かったわ」タッ


ズバァッ


般若党E「」ドサッ


………


マミ「みんなよくやったわ!」

マミ「私達は般若党の本拠を制圧、世を騒がす不逞の輩を一掃したのよ!!」オッー!


ほむら「……」ギュッ…

ほむら「……ちょっと待って」

マミ「暁美さん?」

ほむら「美国織莉子と、呉キリカの姿が見えないわ。まだ、終わったとは言い難いんじゃない?」

マミ「……確かに。言われてみれば、そうだわ」

マミ「くッ……。あの二人、どこへ行ったの……っ」

マミ「まだまだ、私達の挑戦は、終わりそうにないわね……!」

―― 大通り


マミ「今日は頑張ったわね」

マミ「これは報酬よ。受け取ってちょうだい」チャリン

ほむら「……確かに」

マミ「また探検に行きましょう!」

―― 夜 港


マミ「あら、いいところに来てくれたわね……」

マミ「実は今夜、ここで阿片の取引が行われるわ」

マミ「あなたには、密売人達をお縄にする手伝いをお願いしたいの」


ほむら(やり取りされていた、かじのが打ち壊されてなお、阿片は出回るのね……)

ほむら(……あくまでも、妄想じみた記憶による根拠に過ぎないから、的外れな言い分かもだけど)

ほむら(何にせよ。放ってはおけないわ)


ほむら「引き受けるわ」

マミ「ありがとう」


マミ「阿片は恐ろしい麻薬よ」

マミ「一度手を出したが最後、廃人になってしまう」

マミ「お隣、清国の例を引くまでもないわ。一国を滅ぼしかねない麻薬の侵入を、何としてでも食い止めなくてはならない」


マミ「……もうすぐ密売人達がここへ来るわ」

マミ「私が合図をしたら、いっせいに飛びかかるのよ」


………

密売人B「ゲイシャ」

密売人A「フジヤマ」


密売人B「旦那から金子を預かってきたぜぇ」コソコソ

密売人A「……例のブツだ」コソコソ

密売人B「確かに受け取った」コソコソ


マミ「今よ!」タッ


タッタッタ


密売人達「「!!?」」ビックリ


マミ「阿弥浜代官、巴マミよ!!」ドンッ!

マミ「見たわ、御禁制の阿片取引!」

マミ「神妙にお縄につきなさいっ!!」ドドンッ!


密売人A「HAHAHA」

密売人A「このクニはチガイホウケンにドウイしてマース」ニヤニヤ

密売人A「ワタシ、タイホできまセーン」ドヤァ

密売人B「へっへっへェ……。残念だったなァ~」ニヤニヤ


マミ「くぅう……っ」イライラ

ほむら「……マミ」

ほむら「こんなクズ共、生かしておく必要はないわ」

ほむら「即刻、斬るべきよ」

マミ「過激なことを言ってはいけないわ」

マミ「……でも。それが出来たら、どんなに心が晴れるだろう……」ボソッ


ほむら「そう。わかったわ」

ほむら「なら、あなた達はそこで見ていて。私が斬るから」

マミ「暁美さん!?」

マミ「あなた、自分が何を言っているのかわかっているの!?」


ほむら「ええ、この上なく」

ほむら「心配しなくていいわ。私がしたくてすることだもの。これはごく個人的な天誅。……手討ちみたいなものよ」

ほむら「だから、後で責は負う」シャラリ

密売人A「クレイジー!」ビックリ

密売人B「そんなバカな!」ビックリ

ほむら(まずは夷人……異人から)タッ

ほむら(駆け出す。刀に手をのばさんとする彼を、その胸へ―――ッ)


ドスッ


密売人A「ガフッ」ゴプッ

密売人A「チガイ……ホウケン……」

密売人A「シラ……ないのカ……」


ゲシィッ

ゴロゴロ ドサッ


ほむら「……」チャキ

密売人B「ひィ」クルッ


タタタッ

ザンッ


ほむら(もう一人。チンピラのほう)

ほむら(逃げ出そうと向けた背中に追い縋り、袈裟懸けに斬り捨てる)


密売人B「阿片は……」

密売人B「危険だ……」


ほむら「ソレ」

ほむら「あなたに言えたことじゃないでしょ」


………

ほむら「……」―チン

マミ「私は……」メヲツムリ

マミ「何も見なかったわ」

マミ「あなた達も、何も見なかった」

マミ「ね?」

岡っ引き達「「へい!」」コクリ

ほむら「マミ、あなた―――」

マミ「また会いましょう」


………

今日はここまで

大変長らくお待たせしてすみません

再開します

―― 二日目 町


ほむら(私が般若党であったという記憶)

ほむら(……実感が伴わない。そう表したけれど、あの時、あの瞬間。異人たちと相対した私は、確かに引き摺られていた。知識に)

ほむら(マミが見逃してくれたから良かったようなものの、危うくお縄になるところだった……。それも、一時の激情に身を任せた結果として)フルフル

ほむら(次も無事に済むとは限らないし、同じことを繰り返すことがないよう、気を付けなくては……)


ほむら(ところで、時おり去来する、妄想じみた光景―――。眠っている時に見る、夢のようなもののことだけれど、なんと言ったものか)

ほむら(……荒唐無稽な表現になるけれど、般若党の私は、ソレを内包した記憶は、そう。もし仮に、前世というものがあれば、の話だけれど、そういった類いのモノと思える。何故こうも私が置かれている状況と似通った境遇にあるかは、まるでわからないけれど)

ほむら(どちらかといえば、前世というよりは、前回って言った方がしっくりとくるけれど。仮に、この記憶は『前世』と呼ぶとして)

ほむら(もう片方がわからない。見覚えのない光景。それも、ところどころ霧がかかったようにあいまいな。いくらか、登場人物があるように思えるけれど、そのどれもが全く持って判然としない。……なんというか、ほぼ忘れてしまった『夢』を無理やりにでも思い出そうとした時、そこにもやがかかるように。)

ほむら(そういえば、『前世』の私も『夢』を見ていたわね。それも、起きている時に)

ほむら(……)ゴクリ


ほむら「……まどか」ボソッ

ほむら「……っ」キュンッ


ほむら(『前世』のこと)

ほむら(よくわからない。よくわからないけれど、少しだけ実感が芽生えた)

ほむら(だって今のものすごくすごかった。すごいすごかった(小学生並みの感想))

―― 昼 代官所


万由「あらぁ。これはちょうど良いところにお越しくださいました」

百合「あなたに、折り入って頼みたいことがございますの……」

千佳「引き受けてくれるかい……?」ネットリ


ほむら(正直、嫌な予感しかしないけれど)

ほむら(でも、彼女たちが大老の娘であり、私が武士である以上、いくら私が浪人に過ぎないとは言えども、拒否権なんてないようなもの)

ほむら(それがわかっているからこそ、頼みがあるなんてウソブきながらも、姫君たちはその内容を口にしないのだろう)

ほむら(もっともそれは、こんな人目につくような場所で口にするには、いささか、ハバカられるようなことを依頼してくるつもりだからかもしれないけれど)

ほむら(なんにせよ、私は引き受けるしかない。それは揺るぎのないことだ)

ほむら(彼女たちの思惑通りに事が進むのは、どうにも気に入らないけれど、すでに代官所の禄を食んでしまった以上は仕方がない)

ほむら「……御意のままに」

百合「良いお返事ですの!」

万由「ここでは話もなんですから、奥座敷へ参りましょう」


―― 代官所 奥座敷


万由「近々、領事館の近くに英国人の手による病院が開業するのですが―――」

万由「その病院には、少々問題があります」

百合「病に苦しむ日本人を救うための、慈善事業だからとか言って―――」プンスコ

百合「英国は幕府に、多額の資金援助を要求していますの!」プンスコ

万由「そこで、あなたへの頼みというのは、病院の開業を邪魔していただきたいのです」ネットリ

千佳「病院が開業されなければ、あたいらも資金援助をする必要がなくなるってわけさ」ニヤニヤ

万由「方法はあなたに任せます」

万由「……それと、わかっているとは思いますが、わたくしたちから指示を受けたということは、他言無用ですよ」シーッ

ほむら「……御意」ペコリ


………

ほむら(―――とのことで)

ほむら(私には、とんと縁のないことことではあるけれど、マツリゴトのなんと世知辛いことか)


ほむら(……ところで)

ほむら(私のようなぽっと出の女にこんな汚れ仕事をさせるなんて、あの姫君たちも随分と大胆な気性でいらっしゃる。私が言い触らして回るとは考えないのかしらね。……しないけど。でも、彼女たちからすれば、可能性としてあり得ないことではないはず)

ほむら(……)

ほむら(まさかとは思うけど、口封じとか言って、後で襲われたりしないわよね……)

―― 居留地 病院前


ほむら(……あれね)テケテケ


反対派A「病院開業、はんたーいっ!」ガヤガヤ


ハンターイ! ハンターイ!

ガヤガヤ ガヤガヤ


反対派B「西洋の医者は、生きた人間を切り刻むらしいぞ……」ガクブル

反対派C「恐ろしや……」ガクブル

反対派D「西洋の病院が開業したら、わしら漢方医も商売あがったりだ」ケホッケホッ

海兵隊A「ヘイユー!」

海兵隊A「ソコをどきなさイ!」

海兵隊B「ゴーアウェイ!」

海兵隊C「どかないとウチコロスゾ!」ガチャ


ほむら(病院の開業を邪魔しろなんて言われても、イマイチぴんと来ないけど)

ほむら(……とりあえず、アレを斬ればいいのかしらね)


反対派B「お侍さん! お助けください!」

反対派A「どうかあっしらに、力をお貸しくだせえ!」

ほむら「もとよりそのつもりよ」

ほむら「……あなたたちは下がってなさい」シャラリ

反対派C「お気をつけなすって!」


タタタッ(反対派離れる)

海兵隊A「さてはコイツらの仲間カ!」

海兵隊B「キルユー!」ガチャリ


ほむら(鉄砲を持ってるやつが三人)タタッ

ほむら(下手に足を止めては狙い撃ちにされかねない。……かといって、焦れば隙が生じ、なぶり殺しにあう)

ほむら(速攻かつ確実に、仕留めていかなくては)


海兵隊A「トマリなさイ!」ガチャ

ほむら「お断りよ」タタタッ

海兵隊B「シット!」


ほむら(まずは一人)タッ!


海兵隊C「!?」


ザシュッ


ほむら(駆け寄り、すり抜けざまに胴を斬りつけ、即座に一転)コロガリ

パァンッ


海兵隊B「ガッデム!」チッ


ほむら(一拍遅れの発砲音が耳に届き、イササかばかり肝を冷やす)

ほむら(危ないところだったわね……)


ほむら(けれど、安堵に浸り続ける猶予はない)

ほむら(すぐさま反転。一息に奴ばらへと詰め寄り―――)


ズバッ


海兵隊B「」ドサッ


ほむら(―――斬り捨てる)

ほむら「……残るはあなただけ。別段、あなたに興味なんかミジンもないし、尻尾を巻いて逃げ帰るのなら、追うつもりはないわ」

ほむら「―――で。どうするの?」ギロッ

海兵隊A「ヒッ……」アトズサリ


タタタッ(逃げ去り)


反対派B「すげえぞお侍さん!」ヤイノヤイノ

反対派「今だ! 病院を占拠しちまおうぜ!」ヤイノヤイノ


オウ!

タタタッ

―― 居留地 病院


医者「ヒィイ!!」

ナース「ヘルプ ミー!」


シャルロット「待ちなさい!」

シャルロット「これはなんの騒ぎなのですか!」プンスコ

反対派C「そ、そんな風に凄んだって無駄だぞ……。怖くなんてないからな……」ビクビク


ほむら(そんなこと言いながら、思いっきり腰が引けてるじゃないの……。幼女を相手に)アキレ


反対派A「お、お侍さん……」

ほむら「……あなたに恨みはないけれど、こちらも仕事でね。この病院は潰させてもらうわ」

シャルロット「なっ!? なんてことを言うのですか!」

シャルロット「病院はあなたたちのためのものなのですよ!?」

ほむら「知らないわね。興味もない」

シャルロット「公使さまは……。公使さまは、ただ、みんなが幸せでいられたらって、そう思ってるだけなのに……っ。どうしてあなたたちはそうやって……!」

ほむら「知らないと言ったわ」

ほむら「……けれど、私にだって良心はある。子供を斬るような趣味もない。……消えなさい。命が惜しいのであればね」

シャルロット「そういうわけにはいかないのです!」ジャキ

ほむら(短筒(たんづつ)……ね。初めて見たわ)シャラリ

ほむら(なんでも、既存の鉄砲とは一線を画すほどの代物らしいけれど)


シャルロット「そっちこそ刀を捨てるのです!」


ほむら(どこまでを信じるにせよ、正面切って戦うのはゴメンよね)


ほむら「……」スッ

シャルロット「わかってくれたのですか……」パアア


ほむら(おもむろに、刀を下げて見せれば、あからさまに安堵の表情を浮かべる幼女)

ほむら(持ち得る武器こそ立派なものだけど。もしかしたら、彼女はあまり人を撃ったことがないのかもしれない)

ほむら(……なんにせよ、騙されてくれるのであれば、こちらにとって好都合であることに変わりはないけれど)

ほむら「さて、どうかしら―――ね!」タッ

シャルロット「!?」


ブンッ


シャルロット「あっ―――」

ほむら「油断は大敵よ」チャキ


ほむら(刀を喉元に突きつける)

ほむら(……それにしても、こんな手に引っ掛かるなんてね。彼女が度を越したお人好しであるがゆえか、それとも単なる間抜けに過ぎないか)

ほむら(彼女の言い分をカンガみるに、どうにも前者であるように思えるけど。幼女の主たる公使も含めて)

ほむら(いずれにせよ、幼女はともかく、公使については『前世』において、ついぞ関わりあいになることはなかったようなので、会ったこともない人間がいかな人物であるかなど、計りようがないのだけど)


ほむら「勝負は着いているわ。……大人しく領事館へ帰りなさい」

シャルロット「イヤなのです! シャルロットは逃げないのです! 逃げたくなんてないのです!」


ほむら(まあ、そうよね)


ほむら「そう。じゃあ―――」


ゴスッ


シャルロット「あうっ……」ドサリ

ほむら「……」―チン

医者「アワワワワ」シリモチ

ナース「ヘルプ ミー!」


タタタッ(逃げ去り)


反対派B「ざまあみろ!」

反対派C「お侍さん! ありがとうございやす!」

反対派D「医者がいなかったら病院も開業できん」ケホッケホッ

反対派D「わしらの勝ちだ!」

反対派達「「ばんざーい! ばんざーい!」」ヤンヤヤンヤ

反対派A「と、ところでお侍さん……。その娘は殺さねえんですかい?」オドオドハァハァ

ほむら「……」ジロッ

反対派A「うっ……」タジッ…

ほむら「子供を斬る趣味はないって言ったはずだけど」

反対派A「……」ビクビク

ほむら「……ハァ」タメイキ

ほむら「あとはあなたたちの好きにするといいわ」クルリ

反対派C「お侍さんはどちらへ?」

ほむら「別に、返しに行くだけよ」ダキアゲ

ほむら「……この子をね」テケテケ

反対派B「へ?」

―― 代官所 奥座敷


万由「ご苦労様」ニコニコ

万由「病院の開業は当面、先送りになったと、先ほど佐倉が報告に来ました」ニコニコ

千佳「ふふ。やるじゃないか。えらいよ、あんた」ニコニコ

百合「ところで、あなたへのお礼ですが……」

百合「報酬が良いですの? それとも……」

百合「お遊びをなさいます……?」ウッフン

ほむら「……幕府より禄を受ける身なれば。礼など不要にございます」ペコリ

百合「無欲なですのね」フマンゲ


ほむら(あなたたちから何かを受け取りたくないだけよ)


万由「また何かあれば、その時はお願いしますわ」ニコニコ

千佳「そういや、佐倉があんたに頼みたいことがあるって言ってたよ。夕刻、町に行ってみたらどうだい?」


………

ほむほむが悪役みたいになっとる……ド、ドウナッテル…

今日はここまで

マッポーの世に善悪などない

まあ言うて人斬りやからね 仕方ないね

>>338
アイエエエエ!ニンジャ!?ニンジャナンデ!?

>>339
違うねん…
ほむらさんにはもっとこう、なんていうか、ほむほむとリボほむを足してメガほむで割ったような
外側冷たく振る舞っててもどこか甘さを捨てきれなくて、それに苦悩するような感じにしたかったねん…


というかお菓子の魔女ってシャルロッテじゃん
今更ながら気付きました ナンテコトヲ!


再開します

―― 夕刻 町 語学所前


杏子「うす」テヲアゲ

ほむら「こんにちは」ペコリ

杏子「実は今日さ、英国から講師が来ることになってんだけど……」

杏子「あんた、いま暇かい?」

ほむら「ええまあ。特にこれといった用事はないけれど」

杏子「そっかそっか!」ウンウン

杏子「なら一つ、頼まれちゃくれないか?」

ほむら(彼女のこと)

ほむら(そんなに多く知ってるわけじゃないけれど)

ほむら(なんだか、いつになく張り切っているように見える)


ほむら「……構わないわ」コクリ

杏子「そいつは大助かりだね」


杏子「頼みごとってのは、ここで教える英国人講師の護衛だ」

杏子「ここは幕府主催の語学所でな」

杏子「あたしが交渉に交渉を重ねて、ようやく開設にまでこぎ着けたんだ」エッヘン

ほむら「イマイチぴんと来ないわ」

ほむら「語学所ってどういうものなの?」

杏子「そんなの語学を教えるところに決まってるじゃないか」

杏子「西洋の優れた文化や技術を学ばなきゃ、これからの日本は立ち行かない」

杏子「だから、そのためにはまず、語学を学ぶのさ」

ほむら「なるほど、ね……」ウツムキ

杏子「あたしは何としても成功させたい」

ほむら「……張り切っているのね」

杏子「そりゃそうさ」

杏子「あたしだってやる時はやる」エッヘン

杏子「なんたって、日本が百年の遅れを取り戻せるかどうかは、この語学所にかかってるんだ」


杏子「これから港に、その大切な講師を迎えに行く」

杏子「一緒に着いてきてくれ」

―― 港 灯台付近の船着き場


英国人講師「サクラさんデスカ。コンニチハ」テヲアゲ

杏子「長旅ご苦労にござる」ペコリ

杏子「……あんたの任務は、この方を護衛することだ」ボソボソ

杏子「語学所まで死ぬ気で護り抜いてくれよ」ボソボソ

ほむら「……任されたわ」コクリ

タタタッ


ほむら(……ッ)メヲミヒラク


織莉子「待ちなさい、売国奴」

織莉子「日本人に夷人の教えは無用よ」

杏子「来やがったな、時代遅れの朴念仁め!」

マミ「美国織莉子、覚悟しなさいっ!」シャラリ

海兵隊達「「」」ジャキジャキジャキジャキ

杏子「早く! 今のうちに講師を町まで送り届けるんだ!」

ほむら(まさかこの私が、異人を護衛することになるとはね……。なんだか複雑な気分だわ)

ほむら(けれど、引き受けてしまった以上はやり遂げる必要がある)


ほむら(……そもそも、今『ここ』にいる暁美ほむらは、決して攘夷志士などではなく、幕府の食客であるわけなのだから)

ほむら(何を迷うことがあろうか。何を、気後れすることがあろうか)

ほむら(なんにもない)

ほむら(ならば)チラッ


キィンッ カキンッキンッ

パァンッパンッ パァンッ


ほむら(鉄火場極まりない)

ほむら(講師へ彼らの目が向くより先に、さっさと駆け抜けてしまうべきかしらね)

ほむら(とはいえ)

ほむら(馬鹿正直に正面を行っては、戦いに巻き込まれかねない。私だけならどうとでもなるけれど、講師の場合、そうもいかない)

ほむら(彼に武の心得があるわけでもないでしょうし、自殺行為よね)

タッタッタ


般若党A「シャアアーーッ!!」ブン

英国人講師「ヒイッ」ビクッ


ガキンッ


ほむら「……下がって」ギギギギ

英国人講師「ホワイ?」ビクビク

ほむら「後ろに下がれと言ったのよっ! 死にたいの!?」クワッ

英国人講師「ヒイイイイ!」タタタ


ほむら(講師が背後に回ったのを確認し、意識を戻す)

ほむら(幸いなことに、美国織莉子をはじめ、大多数の攘夷志士たちは護衛の海兵や同心と斬り結び、こちらを気にする余裕はなさそう)

ほむら(同時にそれは、マミや杏子たちからの助けに期待ができない、ということでもあるけれど。その辺は、まあ。なんとでもなるかしらね)

般若党B「はああああッ」シュッ

ほむら「……ッ」カタナハジキ


サッ


ほむら(……危なかったわね)

ほむら(鍔ぜり合う隙に、突き殺されるところだった。般若党にも、中々どうしてめざとい輩がいるものよ)


ほむら「……」チラッ


般若党A「」

般若党B「」


ほむら(他にこちらへ意識を向けている輩は……)チラチラ

般若党C「」コッソリ


ほむら(……灯台の影に一人、ね)

ほむら(……先ほど決めに来なかったということは、もしかして)

ほむら(狙いは英国人講師なのかもしれないわね……)

ほむら(ううん。そもそも、その為にこの争いごとは起きたのだった)


ほむら(……考えてみれば、何かを護るために刀をとるのなんて初めてのこと)

ほむら(こんなにも気を揉むことだったのね、護るということは)

般若党B「チェエエエエイッ!!」ブオン


ほむら(大きく振りかぶって、ただ愚直に前へ。そんな一の太刀)

ほむら(単調極まりなく、大振りが過ぎる一太刀だけど、当たったら痛そうだわ)

ほむら(まあ、あくまでも、当たったらの話だけれど)


ほむら「……無駄よ」ガキンッ

般若党A「……ッ。何故だ!?」

ほむら「!」

般若党A「何故それほどまでの力を持ちながら、売国奴などに加担する!?」

般若党A「日本を憂う気持ちはないのか!?」

ほむら「……」


ほむら(血を吐くような訴え)

ほむら(正直なところ、彼らの言い分に共感を覚える気持ちと、下らぬと一蹴する気持ちが私の内にはあった)

ほむら(……でも)


ほむら(日本を憂う気持ち……か)

キリが悪いけど、今日はここまで
明日更新します

再開します

ほむら「重いわね」タッ

般若党B「!?」


ザンッ


般若党A「Bーーッ!!!」

ほむら「重苦しいだけだわ、そんなモノ」

ほむら「一介の浪人が負うには過ぎたモノよ、ソレ」

般若党A「おのれ、匹婦めが……!」

ほむら「そもそも」

ほむら「日本がどうとか、外国がどうとか、私からしてみればどうでもいいことなのよね。実際」

般若党A「……所詮は卑賤の徒。わからぬか」

般若党A「で、あるならば、せめて拙者が討ち取ろう」

般若党A「野良犬には過ぎた栄誉であろうが」スッ

ほむら(……遅い)チャキ


般若党C「でやぁああ!!」ブンッ

ほむら「ッ!?」


カィン

ズバッ


般若党C「」ドサッ

般若党「し、C!?」

ほむら「……」チャキ

般若党A「何故出てきたのだ、C……。我らの目的を忘れたか……」ガックリ

般若党A「大義のためなのだぞ……。拙者のことなぞ、捨て置けばよかったのだ……」

ほむら「……悪いけれど」

ブンッ

ザシュッ


般若党A「」ドサッ

ほむら「……」ミオロシ


ほむら「」アタマフルフル

ほむら「……行くわ。着いてきて」チラッ

英国人講師「ヨ、ヨロシクオネガイシマス!」ペコリ


………


英国人講師「どうやら、ニゲキッタみたいデスネー……」ゼェゼェ

―― 町 語学所前


英国人講師「アリガトウゴザイマス!」

英国人講師「アナタこそ、サムライジャパンデス!」ヒューヒュー

杏子「お疲れさん」

杏子「これでようやく、語学所を始められる」

杏子「これはほんの礼の気持ちさ」チャリン

杏子「これからもよろしく頼むよ」

ほむら「……ん」

杏子「頼んでばっかで悪いんだけどさ、あんたに引き受けてもらいたい仕事があるんだ」

杏子「夜に旅籠の前で待ってるよ」


………

―― 夜 大通り 旅籠前


杏子「おっ、来たね」テヲアゲ

杏子「今夜、この異人さんを接待しなきゃならないんだけど」

杏子「何せこの物騒なご時世だろ?」

杏子「攘夷の連中がいつ襲ってくるかと思うと、落ち着いて酒も飲めやしない」

ほむら「……つまり」チラッ

異人「」ソワソワ

ほむら「そこの外国人を護衛しろと。そういうこと?」

杏子「察しがよくて助かる」

杏子「で、頼まれてくれるかい?」

ほむら「……そうね」メヲツムリ

ほむら「いいわ。引き受ける」

杏子「そっかそっか!」

杏子「やー、助かったよ」

杏子「何を隠そう、こちらの御仁は、国じゃ御大臣様と呼ばれるほどの要人だ」

杏子「まかり間違って傷でもつこうってもんなら、こっちの首がやばいからな」

―― 大通り 旅籠


芸者「おひとついかが?」ハンナリ


サケトクトク


大臣「サンキューデース」ニヤニヤ

大臣「ゲイシャガール、ワンダフルデース」ニヤニヤ


HAHAHA


杏子「そいつは、なによりで……」ドンビキ

ほむら「……」サカズキヲナガメル


ほむら(こうして近くで眺めて見るに、異人も案外何てことはない)

ほむら(大義とか、思想とか、そんなご大層なものを持ち出してまで、排除しなきゃならないような存在にはもう、見えなくなっていた)

ほむら(むしろ逆)

ほむら(御大臣といったか。それがどれほどの地位であるかは知らないけれど、今この時、私の目にうつる彼は、単なる助平親父以外の何者でもない)


ほむら「……」チラッ


HAHAHAHAHA!


ほむら(こんな輩の相手を真面目にしようだなんて、なんだか馬鹿らしく思えてくる)

ほむら(……けれど、でも。今この時の彼は、あくまでも一側面に過ぎないのよね……)


ほむら(知るほどに、考えるほどに見失う)

ほむら(何が正しいのか。どうするのが正しいか)

ほむら(『前世』の記憶と、眼前に置かれた光景が起こす摩擦が、私を惑わせる)サカズキグイーッ

ドガァッ


般若党A「天誅だ!!」

般若党B「成敗いたす!」

大臣「ジョ、ジョーイダ!」ビックリ

芸者「あーれー(棒読み)」ソソクサ


ほむら「……ふぅ」タチアガリ

杏子「頼んだよ、ほむら」

タタッ

シャラッ ザンッ


般若党A「」ドサッ

般若党B「おのれ、手向かうか!」

般若党C「そこな売国奴どもと共に、斬って捨ててくれる!!」

ほむら「それは勘弁願いたいわね」

般若党C「抜かせ!」ブンッ


ほむら(水平に薙ぎ払うような一太刀。首筋めがけて放たれたそれを、身を屈めてやり過ごし―――)サッ


ガッ


般若党C「う、わ―――」スッテンコロリン


ほむら(即座に足払い。倒れこんだ男の腹へと―――)チャキ


ドスゥッ


ほむら(刀を突き立てる)

般若党D「はぁああーーッ!!」シュッ


ほむら(下段狙いの突きを受け流し―――)カィン


ズバァッ


ほむら(勢い余ってつんのめった背中を斬りつける)


般若党D「」ドサリ

般若党B「クォラッ!」ブンッ


ほむら「……無駄よ」サッ


ほむら(隙ありとばかり、勢いづいて放たれた逆袈裟を、身をそらしてカワす)

ほむら(間髪入れず、鍔を鼻面へと叩き付け、そのまま一歩踏み込む)


般若党B「ギィッ」ブバッ


ほむら(刀を抱え込むようにして、ひと突き。刃を返して、斬り上げる)


般若党B「」ドサッ


般若党E「はっ……。はっ……。はっ……」ハー ハー

ほむら「……出会いの不幸を呪うのね」ブンッ


ザグシュッ


………

杏子「お疲れ。どうやら片付いたみたいだな」

ほむら「……そうね」


大臣「イ、イマのもショータイムデスカ?」ガクブル

杏子「ん?」


杏子「ああ……。ま、そんなようなものです」


ほむら(無理があるでしょ)


大臣「なんてリアルな……」ガクブル

ほむら「……えぇー」


―― 大通り 旅籠前


杏子「いやぁー。あんたがいてくれて助かったわ」

杏子「ありがとね」

杏子「これはほんの気持ちさ」チャリン

杏子「んじゃ、またね」


………

今日はここまで

おつおつ
苦悩してても悪人に見えるのは…本編でもこのスレでも「やるときは[ピーーー]」タイプだから、客観的に見ればその、ね?
内面も覗けばそうでもないのは理解るから大丈夫だ

シャルロットとシャルロッテは同じ名前の仏語読みと独語読みだから
英語なら大丈夫なんじゃねえの?と思って調べたら英語ではシャーロットだった これもうわかんねぇな

>>365
そう言っていただけると、励みになります

再開します

―― 三日目 昼 大通り


ザワザワ ザワザワ


野次馬A「大変だ! 御大老様がお出ましになるそうだ!」

野次馬B「御大老様といやぁ、将軍様の片腕だぜ」

野次馬C「そのお偉い方が、江戸を自ら打って出られるとはどういうこった?」

野次馬A「残酷姫君三姉妹の父親だそうだが、親の顔が見てみたいもんだな」

野次馬C「シーッ。壁に耳あり障子に目ありだぞ」


………


同心「したにーっ。したぁ~にぃ~」


―――

ほむら(……これは)バックンバックン

ほむら(この、光景は……)バックンバックン


ほむら「……」チラッ


QB川「―――。―――」


ほむら(見覚えがある。それも、今までにないくらいにひとしく)

ほむら(……考えないようにしていたけれど、やっぱりコレっておかしいわ)

ほむら(見たことがないはずの場所。会ったことがないはずの人。知りようのない出来事)

ほむら(何で私はソレらを知っているの?)


ほむら(これじゃあまるで、『今この時を何度も繰り返している』ようじゃない)


ほむら「……」アタマフルフル


ほむら(……さすがに。考え過ぎ、思い過ごしだわ)

ほむら(過去をやり直すだなんてそんなこと、人ができることじゃないし。第一、そもそもそんなこと、望んだ覚えもない)

QB川「剣術大会に参加して、魔鱗組になってよ!」キュップイ


ザワザワ ザワザワ


ほむら「……」クルッ


ほむら(……代官所へ行こう)


テケテケ

―― 代官所


岡っ引きA「これからどうするよ?」ブツクサ

岡っ引きB「あーあ」

岡っ引きB「やってらんね」ブツクサ

岡っ引きB「魔鱗組がなんだってんだ」ブツクサ

岡っ引きC「俺たちだってやるときゃやるんだよ!」ブツクサ

岡っ引き達「―――」ブツクサ ブツクサ


ほむら(不満げな岡っ引き逹)

ほむら(やりきれなそうに愚痴を言い合う彼らが目につく)


ほむら(……随分な大荷物。何かあったのかしら)


ほむら「どうしたの? そんな大荷物を背負って」

岡っ引きA「どうもこうもねえ!」プンスカ

岡っ引きB「御大老様の連れてきた魔鱗組は、皆腕のたつツワモノぞろい……」

岡っ引きB「俺たちはお払い箱だとさ」ナンテヒダ!

岡っ引きC「つまり首ってことだ」What a day!


トテトテ(立ち去り)

ほむら(岡っ引きを……?)

ほむら(ソレはちょっと思い切り過ぎてやしないかしら)ウーン

ほむら(剣の腕はともかくとしても、諜報活動や町の治安維持とか)

ほむら(とてもじゃないけど、魔鱗組だけでどうにかなるものじゃなさそうだし)


ほむら(もしかすると……)

ほむら(優木沙々のような密偵が他にもいるということなのかしらね)

トテトテ


杏子「……ハァー」ノソノソ

ほむら「……おはよう」ペコリ

杏子「ん?」フリムキ

杏子「ああ、ほむらか。うす」テヲアゲ

ほむら「……疲れてそうね」

杏子「……はは、わかる?」ニガワライ

杏子「どうやらあたしも御大老様に嫌われちまったみたいでさ」

杏子「こりゃ、首になるのも時間の問題かな」

ほむら「……っ」メヲミヒラク

杏子「いや、首ならまだしも、下手すりゃこの腹を斬れ、なーんて言われるかもしれないし」タメイキ

杏子「どっかに身を隠した方が無難かもな」

杏子「ま、あんたも気を付けた方がいいかもよ?」

杏子「じゃあね」ヒラヒラ


トテトテ(立ち去り)

ほむら(彼女にしては珍しく、余裕のない様子だった)

ほむら(一方的に愚痴を言って去り行くその背は、どこか哀愁じみて見える)


ほむら(それにしても)

ほむら(岡っ引きにしてもそうだけど、御大老は有用な人材を自ら捨ていくよう思える)

ほむら(特に杏子なんて、今の阿弥浜における、もっとも異人に近しい人物といえるのに)

ほむら(確かに普段の様子を見るに、あんまり真面目に職務へ取り組むような人には思えないけど。でも、語学所の件といい、実績は残しているはずよね……)

ほむら(『前世』の知識を信じるならば、剣術大会は罠であったし、魔鱗組の戦力の増強へはつながらない)

ほむら(……そういえば。姫君たちからは病院の開業を邪魔しろと依頼されたわね)

ほむら「……」ウーン


ほむら(もしかして、御大老は英国人を排斥しようとしている? それで、まずは邪魔になりそうな杏子を排除にかかった?)

ほむら(でも、それなら岡っ引きを間引く必要はないし……)


ほむら「……はぁ」アタマフルフル


ほむら(ダメだ。どんなに考えてもわかりそうにない)

ほむら(……もう、なるようにしかならないわね)


………

今日はここまで

続きはまた明日

再開します

魔翌鱗組逹「「」」ズラッ


マミ「みんな、準備はいい!?」ハリキリ

マミ「これより市中巡察に出るわ!」ハリキリ

マミ「怪しい人を見かけたら、問答無用で引っ捕らえるのよ!!」ハリキリ

マミ「もしも抵抗するようであれば、斬り捨て御免も止む無しよ!」ハリキリ


マミ「……と、御大老様はおっしゃっているわ」

トテトテ


QB川「やあ、君か……」

QB川「よく来ましたね」ネットリ

ほむら「……」ペコリ

マミ「暁美さんっ」ワクワク

マミ「加勢に来てくれたのね!」ワクワク

ほむら「……」メヲツムリ


ほむら「……そうね」

ほむら「手伝わせてもらう」コクリ

マミ「よくぞ言ってくれたわ!!」ハリキリ

マミ「市中巡察には御大老様の姫君逹も参加なさるし、腕の見せ所よ!」ミワタシ


万由「うふふ」ネットリ

万由「よろしく―――。お願いしますわね」ネットリ

千佳「あたい、強い男が好みなんだよねぇ」ネットリ

百合「もぉーうっ、血が騒ぎ過ぎちゃって!!」ワクワク


QB川「攘夷志士は、一匹残らず始末してください」


………

―― 町 路地


トテトテ


魔翌鱗組A「攘夷志士の臭いがする」ヒクヒク スンスン


ほむら(どんな臭いよ)ドンビキ


般若党員逹「「」」ペチャクチャ


百合「しかも群れでおりますのwww」シャラリ

百合「大漁間違いなしですのwww」タタタッ

千佳「やったね」シャラシャラッ

千佳「獲物はあたいが頂いたよ!」タタタッ


般若党A「なっ、なんだ!?」ビックリ


般若党員逹「「」」シャラシャラシャラシャラ


マミ「遅れないで! 突撃よ!!!」シャラリ


タタタッ


ほむら(たかだか五人程度の攘夷志士を相手に、代官に三姉妹、多数の魔翌鱗組。さすがにコレは過剰戦力が過ぎるんじゃないかしらね)


ほむら(……心地のよい気分ではないけれど)シャラリ


ほむら「……」タッ

………


般若党A「」ドサッ


千佳「なんだい」フマンゲ

千佳「もう終わりかい?」ミクダシ


弱った般若党「……が。ぁ、あぁっ」ピクピク


百合「!」


タタタッ


百合「お姉様! この人、まだ息があるみたいですの!」

百合「代官所に連れて帰って、拷問してもよろしいですの……?」

万由「それは良いお考えですわね」

ほむら(ソレを痛めつけたところで、何か有用な情報を吐くとは思えないけれど)

ほむら(……そういえば、でも。この時はいまだ精鋭ばかりとはいえなかったのだったか、般若党も)

ほむら(ならば苦痛に耐えかねて、美国織莉子のことや呉キリカについて、口を割る者も幾らかはいるのかもしれない)

ほむら(……そう思うだけで、私の心中は穏やかではいられない)


ほむら(……もし仮に『前世』なり『前回』なりで関わりがあったとして、今ここにある私と彼女たちとの関係は敵同士でしかないというのに。何を私は敵の心配などしているのか)

ほむら(いくらなんでも、執着が過ぎるわね……)アタマフルフル

タタタッ


般若党員逹「「」」シシルイルイ


織莉子「……ッ」ギリリィッ


マミ「現れたわね、美国織莉子!」

織莉子「志半ばに倒れた仲間たちの無念……」

織莉子「―――晴らさずにはおかないわ」


マミ「違う。違うわ」アタマフルフル

マミ「その人たちを殺したのは―――」

マミ「―――他ならぬ、あなた自身よ」

ほむら「……っ」メヲミヒラク

マミ「間違った信念を振りかざして、たくさんの人を惑わせて」

マミ「その結果が今、この状況よ。……美国織莉子、あなたの罪は重いわ」

織莉子「……この国を夷敵から護るためよ」

マミ「そのためなら、人が死んでもいいと言うの!? 攘夷のための犠牲は容認するの!?」

織莉子「ならば。あなたは美しきこの国が、夷人に汚されてもよいと?」

マミ「やり方が間違っていると言っているのよ!!」

織莉子「……」アタマフルフル

織莉子「……彼らを決して、この国には入れないわ……!」シャラリ


ほむら(美国織莉子をはじめ、呉キリカ、他の攘夷志士たちも刀を抜き放つ。一触即発の空気)

ほむら(……戦力はこちらが上。けれど私は、彼女たちの執念じみた強さを知っている)

ほむら(……油断は、できない)シャラリ

ちょっと休憩します

再開します

ほむら VS 織莉子


織莉子「剣先に迷いが見えるわ」

ほむら「……ッ」

織莉子「そんなありさまで、あなたは戦うことができるの?」

ほむら「……知れたこと、よ!」ブンッ

織莉子「そう―――」サッ

織莉子「ならば、僥倖」

織莉子「幕府の狗とはいえ、無抵抗の相手を斬ったとあっては末代までの恥」

織莉子「それなら、こちらも存分に刀を振るえるというものよ」チャキ

ほむら「……」チャキ


ほむら(ことここに至ってなお、この切っ先は鈍る)

ほむら(知識がもたらす偽物の友情と、彼女がうそぶく思想へのわずかばかりの共感。ソレらがこぞって私の邪魔する)

ほむら(割りきれなければ、死ぬ。当然だ。私が、私たちが生きる時代は情や想いでどうにかなってくれるほど、慈悲深いモノじゃないのだから)

ほむら(そうわかっているというのに、私はこうも無様をさらし続けている)

ほむら(情けない、情けない、情けない)

ほむら「……ッ!!」


パシィンッ


織莉子「!?」

ほむら「っぅ……」ホッペヒリヒリ


ほむら(自分の頬を思いっきりにひっ叩く。思ったよりも凄く痛かったけど、その痛みが私を冷静にしてくれた)

ほむら(葛藤はなくならないし、迷いだって消えない。全然割りきれないけど、けれど―――)

ほむら(―――ここで戦わねば、死ぬのはこちらだ)

ほむら(私と彼女たちとは、敵同士なのだ。少なくとも彼女たちはそう認識しているだろうし、マミや三姉妹、他の誰もがそう認識しあって、だからこそ今、ここで戦いは起きている)

ほむら(私だけだ。ズレているのは)

ほむら(……でも、だからといって、そんな訳のわからない記憶に引きずられたまま死にゆくなんてゴメンだ)


ほむら(ならば―――)

織莉子「気でも違ったかしら?」

ほむら「……かもしれないわね。けれど、案外気分は悪くないものよ」

織莉子「……」

ほむら「?」

織莉子「……」アタマフルフル

織莉子「……さぁ、続けましょうか」

ほむら「―――ッ」タッ


ブンッ

ガキンッ

マミ VS キリカ


マミ「照彩(てぃろ)・吹汝(ふぃなーれ)ーーッ!!!」ブォンッ

キリカ「アハハッ」サッ

キリカ「鈍い! 鈍いぞ巴マミ! アッハハハハハ!」


キリカ「私はさ、早いとこ君を刻んで、すぐにでも織莉子の元へ駆けつけなきゃならないんだ」

キリカ「わかるかな、急いでるんだよ」

キリカ「だからさぁ―――」


キリカ「―――さっさと散ね」ブンッ

マミ「そういうわけにもいかないわ」


ガキンッ


キリカ「死ね、死ねっ、死ね!」ギギギギ

マミ「……確かにあなたは『迅い』わ」ギギ…


ガキィィンッ


マミ「―――でも」コブシカマエ

キリカ「くぅぅっ」カタナハジカレ

マミ「それだけじゃあ、阿弥浜の海豚と呼ばれたこの巴マミを相手どるには、とても足りないわッ!!!」ハラパンッッッ


ドッゴォッ


キリカ「ごふぅっ!」ゴロゴロ

マミ「……最期よ。覚悟することね」チャキ


キリカ「……ハハッ。最期、か……」

キリカ「随分とナメられたものだね、私も」ムクリ

マミ「!」


ガキンッ


マミ「ぐうっ」ギギギギ


キリカ「―――少しばかり優勢に立ったからって、いい気になるなよ、おまえ」ビキビキ


………

ほむら VS 織莉子


キィン カキンッ


織莉子「ぅくう……っ」キキィンッ


ほむら(突き、払い、袈裟懸け。繰り出す技のことごとくを美国織莉子は防いでみせる)

ほむら(もっとも、余裕を持ってとか、そんな風でなく、こちらの剣に合わせるだけでも精一杯のようだけど)

ほむら(だっていうのに、いまだ美国織莉子が健在なのには、彼女自身の類まれなる洞察力あってのことか)

ガキィンッ


織莉子「……容赦ないのね」

織莉子「先ほどまでの情けない剣が、見違えるようだわ」

ほむら「……誰だって、刀を突きつけられれば必死になるものよ」

織莉子「あら。あなたは死を恐れると?」

ほむら「―――まさか」フッ

ほむら「武士として生を受けた以上、いつだって死する覚悟はできてるつもりよ」

織莉子「矛盾だわ、ソレ」

ほむら「そうね」

ほむら「でもここ、死に場所とするには、いささかばかり野暮ったいもの」


織莉子「……残念だわ」

織莉子「もっと別の出会い方があったなら」

織莉子「あなたはきっと、これ以上ないくらいに信の置ける同志となったでしょうに」チャキ

ほむら「―――っ」メヲミヒラク


ほむら「……」ギュッ…

ほむら「……今さらの話だわ」

織莉子「そう……ね」


織莉子「ならば」

織莉子「決着をつけましょう」ビュンッ


ほむら(言うが早いか、振り払った刀が空を裂く甲高い音を皮切りにして、美国織莉子は刀を腰だめに構え、駆けてくる)

ほむら(機敏な動きとは言いがたいけれど、緩慢な動きと言うわけでもない)

ほむら(迎え撃つのは可能。むしろ容易ですらある)


ほむら(……けれど、美国織莉子ほどの手合いがそういうことを承知しないまま、勝負に出たりなどするだろうか)

ほむら(……きな臭い。罠かもしれないわね)

ガキンッ


織莉子「……ふふっ。やるものね」チラッ


ほむら(意識が逸れた……!)


織莉子「今よ! かかりなさい!」


般若党B「ぅうおおおおおおおッッ!!」カタナフリアゲ


ほむら(背後からの奇襲)

ほむら(周囲は乱戦の様相を呈しているし、そこから抜け出して斬りかかってきている……わけないわよね)

ほむら(なら、おそらくは美国織莉子が、あらかじめこういう状況を想定して、仕込んでいたと考えるべきかしら)

ほむら(……警戒しておいて正解だったわね。もしかしたら危なかったかもしれないし)


ドゲシッ


織莉子「あうぅっ」ケリトバサレ

ほむら「……ッ」タッ

般若党B「何ィッ」ビックリ


ほむら(大きく振りかぶった刀を、今にも振り下ろさんとしていた男へと踏み込み、間合いを潰す)

ほむら(すかさず柄頭をみぞおちへ突き込み、男がのけ反った拍子に胴を斬り抜ける)

般若党C「ハアアーーッ!!!」カタナフリアゲ

般若党D「トゥエエーーイッ!!!」カタナフリアゲ


ほむら(またも背後から、二人。しかも先ほどよりも距離が近い)

ほむら(まるでこちらの動きを読んだような差配。イヤな手合いを相手にしたものよ)


ほむら(交差するような剣を転がり避け、即座に近場の男へ飛びかかる)


般若党D「!?」


ほむら(逆手に持ち替えた刀を喉元へ押し付け―――)


ブシュッシャァ


ほむら(力任せに掻き斬る)


般若党D「」ダクダク ドサリ

般若党C「悪鬼め!」ブンッ


ガキンッ


ほむら「……不逞の輩に言われたくはないわね」ガキィンッ


ザシュッ


般若党C「」ドサッ


織莉子「……これ以上続けても、こちらが不利になるだけ……か」

織莉子「……ッ」ギュゥッ…


織莉子「皆! ひとまず退却よ!」


タタタッ(立ち去り)


………

マミ「これであの人たちも、しばらくは大人しくなるでしょう」―チン

ほむら「……そう願いたいものだけどね」―チン

マミ「何か心配事があるの?」

ほむら「……」メヲツムリ

ほむら「……いいえ。何でもないわ」

マミ「それならいいけれど。でも、何かあったらちゃんと相談するのよ」

ほむら「……あなた、過保護って言われない?」

マミ「ふふっ、よく言われるわ」トクイゲ


マミ「それじゃ、帰りましょうか」


―― 代官所


マミ「お疲れさま」

マミ「おかげで般若党に大打撃を与えられたわ」

マミ「これは報酬よ」チャリン

マミ「そういえば、夕刻に代官所へ来てほしいって御大老様がおっしゃっていたわ」

マミ「何かお話があるそうよ」


………

今日はここまで

明日更新します

乙です
侍道は知らないけど
ここまで見てるとイギリス勢は
どっちのルートでもほとんど絡んで来ないんだな

>>402
すまない。このssだと外国関係のイベントを削っているので、なおのこと影が薄くなってしまいすまない
確かに言われてみたらそうですね。でも終盤からは出番も多くなってくるので、お許しください オナシャス!


再開します

―― 夕刻 代官所


マミ「来てくれたのね」テヲフリフリ

マミ「御大老様はあなたのことをすごく気に入られたみたい」

マミ「話がしたいとおっしゃっているわ」

ほむら「……御大老様が、私に……?」


ほむら(何か気に入られるようなことをした覚えはないけれど……)


マミ「やったわね!」

マミ「これは名誉なことよっ!」

ほむら「……誉れであることには違いないでしょうけどね」


ほむら(でもあの御大老、剣術大会の参加者を罠にかけて、ゆで殺すような人だし。何か胡乱なものを感じてしまうわ)

ほむら(……いずれにせよ、私に拒否権はないわけだけども)


ほむら「案内を頼むわ」

マミ「くれぐれも、礼節は忘れないようにねっ」メッ

ほむら「……言われるまでもないことよ」

―― 代官所 奥座敷


QB川「面を上げなさい」ネットリ

ほむら「……」ムクッ

QB川「……いい眼をしていますねぇ」ネットリ

QB川「葛藤にまみれながらも、決して失われぬ研ぎ澄まされた冷酷さと、激情に彩られた瞳……」

QB川「まさしく、生まれながらにして、人斬りの眼です」ネットリ

ほむら(……人の踏み込まれたくない場所を無遠慮に、随分とまあずけずけと踏み荒らしてくれるわね)

ほむら(思わず苦々しげな表情を浮かべてしまったけれど、御大老に気にした様子はない)

ほむら(むしろ、愉快げに笑みなどこぼすありさまだ)


QB川「君の噂は色々と聞いていますよ」フクク

QB川「君も時代に咲いた仇花」ネットリ

QB川「どんな色へと花開くのか、愉しみです」ニヤニヤ


ほむら(悪辣な笑みだ。まるで、暴力を振るうことに思いを馳せ、それを愉しむような―――)


QB川「それはそうと、君に見せたいモノがあります」

ほむら「……というと?」

QB川「見てのお楽しみですよ」フクク

QB川「ついて来てください」ノッソリ

―― 代官所 拷問塔


ほむら「……ッ!?」メヲミヒラク


ほむら(これは……っ)

ほむら(水車と……。そこに磔にされた―――多分、攘夷志士)


QB川「ここは私の美学の粋を集めた、美の殿堂ともいうべき場所です―――」コウコツ

QB川「御覧なさい、この美しい光景を!」リョウテヲヒロゲ

カラカラカラカラ


攘夷志士「ごぶふっ……」ブクブク


カラカラカラカラ


攘夷志士「ぶふっ」プハァ

攘夷志士「ひっ、ひっ、もうやめてくれ!」

攘夷志士「いっそ殺してくれぇ!」コンガン


万由「あらあら。もうおしまいですこと?」

万由「攘夷志士も案外だらしないのねぇ」ニヤニヤ

百合「諦めるのがお早いですの!」プリプリ

千佳「そら! もっと喚くんだよ!!」

攘夷志士「うわ―――」


カラカラカラカラ


攘夷志士「ゴボボッ……」ブクブク

三姉妹「「wwwwwww」」ゲラゲラ

ほむら「……っ」ギュッ…

QB川「皆、最初はあのようにもがき苦しむのですが」ニヤニヤ


ウワ! ゴボッゴボボッ


QB川「次第に拷問の苦痛が、快感に変わってくるのです」ニヤニヤ


ゴボボボボッ ユルシテクレェ……


QB川「かつて幕府の転覆を謀った男も、ほら……」チラッ


ドン! ドン! ドン!


赤ふんどし「ハァ……ハァ……ハァ……」

赤ふん「頼むぅ……」ハー ハー

赤ふん「もっとぶってくださいぃ……」ハー ハー

赤ふん「縛ってくださいぃぃ」ハー ハー


QB川「今ではあのありさま……」ニヤニヤ

QB川「快楽の虜になっているのです」ニヤニヤ






QB川「人間豚ですよ」ニヤニヤ





ほむら「……ああなってしまっては、もう、脱け殻も同然―――」

ほむら「だとするならば。武士道すらも、今の彼には残ってはいないのでしょうね……」ニガニガシゲ

QB川「ふふふ、全くですね」

QB川「まあもっとも。あれはもう武士なんてものからは程遠く、獣にまで身を堕とした輩です。もとより武士なんて持ち合わせようがないでしょうよ」

ほむら「……ッ」プイッ


ほむら(そうさせたのはあなたたちでしょうに。まるで他人事みたいに……っ)ギリッ

QB川「私の究極の理想―――」コウコツ

QB川「それは、恐怖と快楽ですべての人間を支配することです」コウコツ

QB川「この拷問塔はまさに、私の理想の真髄ともいうべきモノ」

ほむら「……」ウツムキ

QB川「……どうです?」

QB川「私の美の殿堂。気に入って頂けましたかな?」


ほむら(悪趣味極まりない)


ほむら「……剣のみに生きてきたそこつ者がゆえ、このようなことはイマイチわかりかねます」

QB川「そうですか」

QB川「ならば、君には特別にここを見学する許可を与えましょう」

QB川「この機会に、心行くまで美を探求し、学びなさい」セヲムケ

ほむら「……御意」ペコリ


ノソノソ(立ち去り)

万由「あら。あなたも手伝ってくださるの?」イカガデショウ?

千佳「罪人に鞭打つのは最高の気分さ」サァイコォウダヨォ

百合「私たちが拷問の手ほどきをして差し上げますの」ニヒヒヒヒ

ほむら「……いえ。私は見ているだけで結構ですので」


ほむら(正直、見ているだけでもいっぱいいっぱいだもの)


千佳「なんだい、ノリが悪いねぇ」

万由「まあまあ。暁美さんも初めてのことで戸惑っているのでしょう」

万由「徐々に慣れていってもらいましょ?」

百合「ですの!」


………

ちょっと休憩します


相変わらずの世紀末

>>415
幕末と世紀末ってなんか似てるよね…
日本にもモヒカンが闊歩してた時代があった可能性が微レ存?


再開します

――― 夜 大通り


ほむら(……もう二度とアソコには行きたくないわね。惨憺たる気分だわ)

ほむら(まあ。私以上に、拷問にかけられている彼らの方が、よほどに散々なありさまではある訳だけど)


カンッ カンッ カンカンカンカカカンッ


ほむら(剣術大会の舞台を作ってるみたいね)チラッ

ほむら(マミなんか大工に交じって槌を振るっているけれど、男顔負けの働きぶりだわ)

マミ「みんな急いで! 夜明けまでには完成させるわよ!!」


杏子「ハァー」タメイキ

杏子「剣術大会だか何だか知らんけど、御大老様の気まぐれに付き合わされるのはたまらんよなあ」ブツクサ

ほむら「そんなこと言ってると、せっかくつながった首が、いよいよどこか飛んでいってしまうわよ?」

杏子「ん?」

杏子「ああ、ほむらか」テヲアゲ

杏子「そりゃあ困るが、なんせあたしは正直者だしな」

杏子「思ったことはついつい口をついて出ちまうのさ」

ほむら「難儀な性分ね」フッ

杏子「まったくさ」フフッ

マミ「佐倉さん! そんなところでサボってないで、手伝ってちょうだい!」

杏子「やれやれ」ハァー

杏子「宮仕えはつらいね」


大工「お代官様、足場を組むための鉄のネジが足りません」

マミ「???」

マミ「て、鉄のネジ??」ハテ?

大工「西洋の便利な道具でさあ」

大工「ぼるととか、なっととかいう」

杏子「あんなもん一つとっても、西洋の文明はすごいねぇ」ウンウン

杏子「……あ」

杏子「そういや、今夜港にそのぼるととかいう奴を取りに来いって言われてたんだっけ」

杏子「あーあ、めんどくせえ」ノソリ

ほむら「待って」

杏子「ん?」

ほむら「夜道は物騒だし、私もついていくわ」

杏子「おお、気さくだねぇ」

杏子「このご時世、あんたみたいな奴を見るとホッとするよ」

杏子「んじゃ、行こっか」


テクテク

―― 港 灯台付近


計算高そうな商人「遅かったネ。待ちくたびれたヨー」

杏子「わるいわるい」

計算高そうな商人「まあいいネ」

計算高そうな商人「これが約束のブツネ」

計算高そうな商人「さっさと持ってッテ」

杏子「愛想のない商人だなあ……」

杏子「まあいいや……って」

ほむら「……」カタナニテヲカケ

杏子「どうしたんだよ、そんなに警戒して」

ほむら「……いえ。杞憂で済めばいいけれど」

ほむら「!」

織莉子「あなたたち、それでも日本人なの?」

織莉子「夷敵から買ったその武器で、同じ日本人が殺されるのよ!」

計算高そうな商人「オー! ノー! コレ武器じゃない!!」

計算高そうな商人「ワタシ武器商人じゃないヨ!」ビクビク

キリカ「アッハハ、言い訳しちゃってさ! 面白バカみたい!」

キリカ「―――夷敵の言うことなんか、信じるわけないだろう?」

計算高そうな商人「ジョーイ嫌いデス!」


タタタッ(逃げ去り)


杏子「……どうやら、杞憂じゃなくなったみたいだな?」

ほむら「そうね」シャラリ

杏子「ハァー。ホントにメンドくさいことになっちまったなぁ……」


………

般若党A「ほああーっ!」ブンッ


ガィンッ


般若党A「!?」


ザンッ


般若党A「」ドサッ


ほむら(……予定では、杏子一人に夜襲をかけるつもりであったからか、遅い来る般若党の数は思いの外少ない)

ほむら(美国織莉子に呉キリカ。その他が幾人か。まあ、それでも多勢に無勢であることには変わりがないけれど)


般若党B「意識を逸らしたな!」ブンッ


カィンッ


ほむら(薙ぎ払うような一太刀を逸らすように受け流し、すかさずに突きを返す)シュッ


ドスゥッ


般若党B「ギィ……ア」

般若党C「うおぉおあああッッ!!」シュッ


ほむら(刀を抱え込み、駆けてくる)

ザグシュッ


ほむら(刀を刺したまま、男を突きだし盾とする)


般若党B「」ズルッ


ドサッ


ほむら「……」チラッ


ほむら(見やれば、男その三は刀を振り切った姿勢のままだ)

ほむら(臆したのか、驚いたのか、それとも何か他の理由なのかはわからないけれど、好機だ)


ほむら(駆け出す)タッ


般若党C「ひっ、ひぃっ」


ほむら(男は守りの姿勢に入るけれど、そんなに腰が引けていては―――ッ)


ザシュゥッ


般若党C「」ドサリ


ほむら「……」ビュッ

キリカ「死ね、売国奴!!」ブンブン

杏子「イヤだね! 誰が死んでなんかやるかっての!」サッ


ほむら(呉キリカは杏子が抑えてくれている)チラッ

ほむら(……呉キリカのあのメチャクチャな連撃をうまく掻い潜ってはいるけれど、無手のままどうにかできるほど彼女は甘い相手ではない)

ほむら(早いところ、勝負を決めなくては……)

織莉子「はああッ!!」ブンッ


ガィンッ


ほむら「返すわ」ブンッ

織莉子「くぅっ」ガキンッ

ほむら「……一応言っておくけど、アレ」ギギギギ

ほむら「ただの建築素材よ。あなたたちが勘違いしてるように、物騒な代物なんかじゃないから」ギギギギ

織莉子「……信じると思って?」ギギギギ

ほむら「信じないでしょうね。あなたたちからすれば敵の言うことだし、道理だわ」ギギギ…


ほむら「―――でも」


ギィンッ


ほむら「そんな直線的だと……っ」タッ

織莉子「―――ッ!」

ほむら「―――今に、痛い目を見るハメになるわよ」チャキ


織莉子「……本当に」

織莉子「味方でないのが惜しまれるわね……」


織莉子「ッ!」ブンッ

ほむら「くっ」カキンッ

織莉子「死に場所はここじゃない……」

織莉子「もっと相応しい死に場所がある……!」


織莉子「みんな! いったん退くわ!」


タタタッ(逃げ去り)


………

杏子「なんとかなったな……」

杏子「あんたがいてくれて助かったよ」

ほむら「……偶然居合わせただけよ。感謝されるいわれはないわ」プイッ

杏子「ははっ、そうかい」

杏子「でもま、助かったのはホントのことだ」

杏子「ありがとね」

ほむら「……」ウツムキ

ほむら「……あなたは」

杏子「ん?」


ほむら(あんな目にあってなお、なぜ外交にこだわるの?)

ほむら「……っ」

ほむら「……こういうことって結構あるの?」

杏子「あー、うん。まあ、割りと結構な頻度であることだね」

杏子「メンドくさいことに」ハァー ヤレヤレ

ほむら「……とんだ災難ね」

杏子「まったくさ」


杏子「―――でもさ」

杏子「……前にもちらっと言ったけど、こうして西洋と交流を深めることによってこそ、日本は発展できるってあたしは思うんだ」

杏子「……それに」

杏子「目指したモノだったんだ、親父のさ」メヲツムリ

ほむら「お父上が?」

杏子「ああ。親父は……キリシタンだったんだ」

ほむら「!」

杏子「おかしいだろ? 幕臣なのに……ってさ」

杏子「あたしもそうだった。攘夷志士を笑えない、そういう女だったんだ」

ほむら「でも、今は違うでしょう」

杏子「まあ、ね。親父が死んで、遅まきながらに気付いたんだ。親父の言ってたことは、何も間違っちゃいなかったんだって」

ほむら「……そう、だったの」

杏子「……柄にもなく語っちまったな」アタマフルフル


杏子「さて、明日は剣術大会だ」

杏子「朝までに舞台を完成させなきゃ切腹もんだ」

杏子「やれやれ、命がいくつあっても足りんわ……」ハァー

ほむら「大変なのね……」

杏子「まったくさ」

杏子「そういや、マミのやつが明日代官所に寄ってくれって言ってたよ」

杏子「一応伝えたからね」


………

今日はここまで

度々お待たせしてすみません

再開します

てすと

よかったもどった

再開します

―― 4日目 昼 代官所


マミ「もうすぐ剣術大会が始まるわ」

マミ「ところで暁美さん、会場は見た?」ソワソワ

ほむら「……いいえ。まだ見てないわ」


ほむら(この目で直接は、だけど)


マミ「そうなの」

マミ「なら期待してもいいわ。自分で言うのもなんだけど、中々良い出来に仕上がっているのよ」ニコニコ

マミ「あれを一晩で完成させられるのなんて、私の他には墨俣城を築いた豊臣秀吉公くらいなものよ」ドヤッ

ほむら(彼女には珍しく、随分と口の大きなことよ)

ほむら(まあ、確かにあれほどのものはそうお目にかかれるものじゃないし、あながち大言壮語というわけでもないけれど)


マミ「そうそう」

マミ「暁美さん。あなたも参加するんでしょう?」

ほむら「……剣術大会のこと?」

マミ「ええ」コクリ

マミ「まだ決めかねているのなら、是非とも参加してほしいわ」

マミ「御大老様からも、あなたを参加させるようにと直々のご指名を受け賜っているの」

ほむら「そう……」メヲツムリ

ほむら(あの拷問塔とやらのこと)

ほむら(少しばかり顔に出過ぎてしまったかしらね)

ほむら(……正直なところ、勘弁願いたいものだけど)


アタマフルフル


ほむら「光栄だわ」

ほむら「……身に余るほどに、ね」

マミ「まさしくその一言を待っていたのよ!」ワクワク

マミ「あなたなら優勝だって夢じゃないと思うわ!!」ワクワク

ほむら(無邪気なものよ)

ほむら(……まぁ、私も、『前世』の知識がなければ心の底から本当に「光栄だ!」とか言ってたかもしれないけど)


―― 大通り


受付「参加を希望する者か?」ヤロウッテノカイ

ほむら「……そうね。参加するわ」

受付「控え室はこの奥だ。控えておれ」


………

―― 第一試合


マミ「これより第一試合を始める」

マミ「両者入場せよ!」


寝不足そうな大男「」テクテク


ほむら「」テクテク


―― 般若党選抜 細川


細川「はて。どこかで見た顔だな」

ほむら「……それは新手の口説き文句かしら」ファサ

ほむら「私にはあなたの顔なんて、まるっきり覚えがないけれど」

細川「にべもないな」

細川「まあいい。勝負に私情は禁物だ」シャラリ


ほむら(……耳が痛いわね)


ほむら「同感ね。全く持って」

マミ「始め!」


細川「ほっ」ブン

ほむら「……」サッ


ほむら(身の丈ほどもある得物をよくもまあ、片手で扱うものよ)

ほむら(力だけの輩かと思えば、その実中々どうして身軽なもの)

ほむら(厄介な手合いを相手取ったものね)


細川「キエエ来いよォォ!!」ブンッ


ガキンッ


ほむら「ぐぅぅっ」ジリッ


ほむら(……とはいえど)

ほむら(手練れではあれ、そう手こずるような相手でもない男に、こうも良いようにされるのは―――)

ほむら(我がことながら、未練がましいことこの上ない)

細川「チェイッ!」ブォッ


サッ


ほむら「女性を足蹴にしようだなんて」

ほむら「随分と足癖が悪いのね」

細川「それはあいすまなんだ」

細川「しかしここはいくさ場。ひとたび立ったのならば、男も女もありはすまいよ」ブンッ


ガインッ


細川「っ!?」カタナハジカレ

ほむら「道理だわ」タタッ


ほむら(一足飛びに懐へと入り込む)


ドスゥッ


細川「ごぅっ……」


ほむら(だいだらぼっちがごとき巨体は、みぞおちを強打されてくの字に折り曲がる)

ほむら(身長差的に丁度、不健康そうな顔が私の眼前へと来る形だ)

ほむら(―――ならば)


ゴガッ


細川「ピッ……」ブバッ


ドサリ


ほむら(……結局。手心を加えてしまうなんてね)アタマフルフル

ほむら(情けのないものよ)


マミ「一本! それまで!」

ほむら「……」―チン


ザッザッザッ(立ち去り)

今日はここまで


向こうにも前世の記憶があるのか、それとも単に般若党と戦った時に顔を覚えられただけなのか

>>447
なんか意味深なこと言ってますけど、彼は特にこの後活躍するとかはないです

再開します

―― 第二試合


マミ「これより第二試合を始める」

マミ「両者入場せよ!」


ほむら「」テクテク


目隠しじいさん「」テクテク


―― 老剣士 巣鴨


巣鴨「見える」

ほむら「……?」

巣鴨「小娘よ」

巣鴨「お主には死相が出ておる」

巣鴨「悪いことは言わん。この勝負、降りた方が賢明じゃぞ」


ほむら(……そういうこと)

ほむら(心理作戦というやつ。汚い手を使う輩もいたものね)


ほむら「御忠告、痛み入るわ」メヲツムリ

ほむら「けれどそれは余計なお世話というものよ」

ほむら「―――私とて武士の端くれ。畳の上で往生するよりかはこうして剣を打ち合わせ、ムクロを野ざらしにする方が性に合うわ」


巣鴨「フン。そうかの」

巣鴨「なれば、どれ。ちょいと揉んでやろうかのう」

巣鴨「練達の秘剣を受けてみよ」スッ


マミ「では始め!」

―― キィン


巣鴨「―――な、ぁ」ガクリ


ほむら(……居合いを使うほどの相手じゃなかったわね)


巣鴨「罰、当たりめが……」

巣鴨「地獄で待って……おる……ぞ……」テヲノバシ

巣鴨「」


マミ「一本! それまで!」


ほむら(……勘弁願いたいものね)―チン


ザッザッザッ(立ち去り)

―― 第三試合


マミ「これより第三試合を始める」

マミ「勝った者は晴れて魔鱗組の一員よ」

マミ「両者入場せよ!」


沙々(忍装束)「」テクテク


ほむら「」テクテク


―― 暗闇脳天 まだら


沙々「……悪いが命をもらう」


ほむら(公儀の隠密が相手とはね……)

ほむら(御大老ともあらば、対戦の組み合わせも思うがままでしょうし、これは仕組まれたものと考えるべきかしらね)

ほむら(口封じか余興か、果たして。まあ、あの御大老のことだし、きっと後者でしょうけども)


ほむら「……」シャラリ


マミ「始め!」

沙々「逃すものか」タッ

ほむら「ッ」


ガキンッ


ほむら「……随分と剣の達者な忍びもいたものね」ギギッ…


ギィンッ


沙々「隠れ潜むだけが忍びの任ではないということだ」コシヲオトス


グァッ


ほむら(上段蹴り……っ)トッサニカガム


沙々「どうした侍。下賎な忍びごとき、こうも剣で遅れをとって」

沙々「降伏するか?」

沙々「命乞いならば、丁寧に、かつみっともなくせねばな」

沙々「そうすれば少しくらいは考えてやる」

ほむら「」イラッ


ほむら(……挑発だ。明らかな挑発)

ほむら(悔しいことに、このままジリジリと続けたところで、不利なのはこちらだ)

ほむら(それは優木沙々とて承知していることでしょうし、けれどその上でこうして挑発をかけてくるということは、彼女も案外余裕がないのかもしれない。……罠の可能性もあるけども)

ほむら(……どちらにせよ、不利に違いがないのなら、あえて乗ってみるのも一興よね)

ほむら「……自信過剰も甚だしいわね」

ほむら「―――けれど、いいわ。その挑発に乗ってあげる」タッ


ブンッ


ほむら(瞬く間に肉迫し、胴へと目掛け太刀を横薙ぎに振るう)


沙々「―――死ね」


ほむら(けれどそれは、こちらの剣に合わせ飛び上がった優木沙々にカワされる)

ほむら(中空で身を捻り、私へと狙いを定めた彼女は今にも斬りかからんとする)


ビュオンッ!


ほむら(太刀が空を割く甲高い音が耳を突く)

ほむら(刀を振り切った姿勢から、無理に転がり避けたせいで体の節々がとんでもなく痛む)

ほむら(けれど、それどころじゃない。好機だ)

ほむら(大技の後で隙の出来た優木沙々へ駆け寄り―――)


ザグシュッ


沙々「……ぅぐ」ドシャッ


マミ「一本! それまで!」


ほむら「……」―チン

沙々「……やっぱり……」

沙々「外道には……こういう、最期しか……っ」


沙々「」


ほむら(……知識の中の優木沙々よりも、随分と腕の立つ感じだったわね、彼女)

ほむら(もしかすると、『前世』の暁美ほむらが出会った優木沙々にも、何か思うところはあったのかもしれない)

ほむら(……だとするならば、結局迎えたあの結末よりも、もっと別の道もあり得たかもしれない)


ほむら「……」アタマフルフル


ほむら(……なんて)

ほむら(感傷よね)


ほむら「……」チラッ


沙々「」


ザッザッザッ(立ち去り)

―― 表彰式


マミ「これにて全ての試合が終了した」

マミ「これより表彰式を行う」

マミ「見事に三つ勝ち抜いた者は、速やかに表彰台へ上がるように」


優勝者達「「」」ゾロゾロ


優勝者A「なにやら嫌な予感がするが―――」

優勝者A「まあいいか」スタスタ


ほむら「……」ザッ

マミ「暁美さん!?」

マミ「待って、どこへ行くつもり!?」

マミ「これから表彰なのよ!」

ほむら「……辞退するわ」

ほむら「御大老様からの下知は果たしたでしょ」

マミ「でっ、でも! 名誉なことなのよ!」

マミ「それを捨てるなんて!!?」

ほむら「……今のままで十分よ。間に合ってるわ」


テクテク(立ち去り)


マミ「暁美さんって、変わってるのね……」


………

今日はここまで

お待たせしました

再開します

―― 五日目 昼 代官所


万由「いいところにお出で下さいました」ネットリ

百合「お父様がお待ちかねですの」ネットリ

千佳「どうぞこちらへ……」ネットリ

ほむら「……」メヲツムリ

ほむら「―――御意」ペコリ


―― 代官所 奥座敷


マミ「剣術大会以来、町中が恐怖で凍り付いております」

マミ「いかに危険分子を一掃するためとはいえ、あのやり方は逆効果ではありませんか?」グッ

QB川「マミ君」

マミ「はっ」

QB川「もはや一刻の猶予もならぬと、私は言ったはずですが?」

マミ「しっ、しかしアレでは―――」タジッ…

QB川「為政者とは時に非常にならねばならぬもの」

QB川「手段を選べば反乱分子を増長させ、結果としてより多くの人死にが出ます」

マミ「……ッ」ギリッ…

QB川「私とて、好き好んであのように非道な手段をとったわけではないのですよ」

QB川「それに」

QB川「これ以上の攘夷を許せば、外国に日本侵略への口実を与えてしまいます」

杏子「……」

QB川「幕府を、ひいては日本を守るため、私一人が悪人になればよいのだと、心を鬼にしたのです」


ほむら(……もっともらしいことを言うものね)


QB川「嗚呼」シラジラ

QB川「為政者とは孤独なものですねぇ」ハァー

ガタッ


杏子「……」ペコリ

マミ「待って、どこへ行くの佐倉さん!」


テクテク(立ち去り)


QB川「捨て置きなさい」ピシャリ

QB川「覚悟あってのことでしょう」

マミ「……っっ」ギュゥゥ…

マミ「申し訳、ございません……」


ほむら(杏子の気持ちはよくわかる)

ほむら(御大老は聞こえの良いことを口にするけれど、結局。彼自身の性質を隠しきれていないのだ)

ほむら(私は暴力が好きです。ナブり、犯し、いたぶり、殺す。それらを好ましく思ってます)

ほむら(あるいはそもそも、隠すつもりすらないのかもしれないけれど)

ほむら(……まともな神経を持っていたなら、とても付き従おうだなんて思えない、そういう類いの輩なのに)

ほむら(―――けれど、それでも。そうわかっているというのに、私は―――)グッ

ほむら「……どうぞ、お続けください」

QB川「うむ」コクリ


QB川「マミ君」

QB川「攘夷志士どもは動揺し、怖じ気づいています」

QB川「今こそ根絶やしにする絶好の機会ですよ」

マミ「では早速、残党狩りの手配を」

QB川「」アタマフルフル

QB川「そのやり方ではもう駄目だということがわからないのですか」

QB川「退治しても退治してもきりがない」


ニタリ


QB川「これ以上幕府に逆らうとどうなるか、我らの圧倒的な力を知らしめるのです」

マミ「圧倒的な、力……」ゴクリ

QB川「英国の大砲……」

QB川「アレは中々魅力的ではないですか」ニタニタ

マミ「大砲……」

QB川「アレで残党どもを一人残さず、吹き飛ばしてやるのです」ニタニタ

QB川「その威力を目の当たりにしては、もはや逆らおうなどと企む輩はいなくなるでしょう」

万由「お父様のおっしゃる通りですわ」ニヤニヤ

QB川「では早速、領事館へ行って交渉しましょう」


ほむら(……私が行くと面倒なことになりそうね)


ほむら「……すでにお聞き及びのことかと思いますが」

ほむら「以前、英国の者たちとひと悶着ありまして。私が同道しては、好ましからざる事態となりえます」

QB川「ああ、そのことなら確かに、娘たちから聞いていますよ」


QB川「構いませんから付いてきなさい。言い訳など、どうにでもなります」

ほむら「……御意」ペコリ


………

―― 居留地 領事館


ほむら(御大老はあんなことを言ってはいたけれど、果たして)

ほむら(どんな大層な御託を並び立てたところで、あの強情な幼女を納得させられるとは思えない―――)

ほむら(と。そう思っていたけれど、領事館にて私たちを出迎えた英国人たちからは、意外にも咎める声はあがらなかった)

ほむら(よもや、つい先日にあったことを忘れたわけではあるまい。突き刺さる敵意の視線も、それを裏付ける)

ほむら(ならば何故―――。少しばかり考え、思い当たる)

ほむら(剣術大会へ私を参加させたのはこのためか、と。……まあ、御大老の余興によるところも大きいのでしょうけど)

ほむら(何にせよ、周到なことよね)

………


ほむら(異人たちから送られる、ムシロのような視線をくぐり抜け、辿り着いた場所)

ほむら(『前世』ではあの、オクタヴィアとかいう女と斬り合ったところだ)

ほむら(なるほどここが公使の―――。おのぼりさんよろしく、きゅろきょろと周囲を見回す私へ、不意に―――)

―― ジジッ ――。


― ■■―――に騙―――助けて―――。

― や―――そく―――するわ―――。


―― ジジッ、ジッ ――。


ほむら「―――ッ」ズキッ


ほむら(知識としても、記憶としても曖昧な)

ほむら(『前世』とはまるで違う感覚)

ほむら(直感じみた確信はあった。アレは『夢』だと)

ほむら(そして原因は―――)

QB川「黒船に備えられた大砲―――」


センリョウバコデデーン!


QB川「これでお売り頂けますかな?」

クリームヒルト「そ、そんなこと……。急に言われても……」オドオド

QB川「なるほど」

QB川「これではまだ足りないとおっしゃる」

クリームヒルト「ち、違います! お金の問題なんかじゃなくて!」アタマフルフル

クリームヒルト「大砲は一度にたくさんの人を不幸にしてしまう、恐ろしいものです……。譲れと言われて簡単にお渡しするわけには―――」

QB川「血に飢えた、攘夷志士たちの蛮行を止めるのに必要なのです」ネットリ

QB川「英国最新の大砲があれば、我らの犠牲も最小限にとどめられ、これ以上の無駄な血を流さずに済みます」ネットリ

クリームヒルト「で、でも……っ」フルフル

QB川「攘夷志士さえいなくなれば、この地にも平和が訪れ―――」

QB川「皆が安心して暮らせる町になるのです!」リョウテヲヒロゲ

QB川「英国と日本の友好のためにも、どうかお力をお貸しください」シラジラ

クリームヒルト「……っっ」カタクメヲツムリ

QB川「さあ」

QB川「ご決断を……」ネットリ

QB川「我々には時間がありません」

クリームヒルト「……わかりました」ギュ…

クリームヒルト「大砲をお譲りします」

QB川「賢明なご判断です」

QB川「では交渉は成立と―――」

クリームヒルト「いいえ、お金はいりません」キゼン

クリームヒルト「ですから、もう争いごとが起きないようになさってください」

クリームヒルト「お願いします」ペコリ

QB川「勿論ですとも」

QB川「公使様のご厚意には、必ずや報いてみせますよ」ニタリ

QB川「HAHAHA」

クリームヒルト「……」フアンゲ

―― 港


砲兵達「「」」ズルズル


オクタヴィア「……これじゃ、黒船が丸裸になっちゃうね」ジロッ

QB川「心配ご無用」

QB川「攘夷志士を一掃してしまえば、何も恐れることはありません」ネットリ

オクタヴィア「……そ」ギワクノマナザシ


………

マミ「」キョロキョロ

マミ「どうやら準備は整ったみたいね」ウンウン


万由「ではお父様」

万由「ドカンドカンとぶっ放して参りますわ」ニッコリ

QB川「うむ」コクリ

QB川「私が行きたいぐらいですがね」ニヤニヤ


ほむら「―――」ポー

マミ「暁美さん?」

ほむら「―――」ポー

マミ「暁美さんったら」


ユサユサ


ほむら「!」ハッ

マミ「心ここにあらずって様子だったけれど、どうしたの? あなたらしくもない」

ほむら「……」ウツムキ

ほむら「いえ」アタマフルフル

ほむら「別に、大したことではないの。少しばかり考えごとに夢中になっていただけよ」

マミ「……もしかして、佐倉さんのこと?」

ほむら「」アタマフルフル

ほむら「違うわ。もっと別のこと」

マミ「?」

マミ「別のって―――」

ほむら「それに」

マミ「!」

ほむら「彼女なら、私たちが心配するまでもないでしょう」

ほむら「強いもの」

マミ「そう、そうよね……。確かにその通りだわ」

………


マミ「準備はいい? 暁美さん」

ほむら「ええ。いつでも」

マミ「いい返事だわ。それじゃあ―――」


マミ「いざ! 出陣よ!!」


――― 夕刻 神社


マミ「これより般若党の本拠に突入するわ!」

マミ「こちらには英国最新の大砲がある」

マミ「これで思い知らせてやりましょう!!」オー!


タタタッ


般若党A「敵襲だ!!」

般若党A「出合え出合えーッ!!」シャラリ


マミ「」シャラリ

三姉妹「」シャラリ

魔鱗組達「「」」シャラシャラシャラシャラ


ほむら「」シャラリ


ほむら(……いよいよ持って、覚悟を決めなくては、ね)


………

きりがわるいけど今日はここまで

また明日更新します

再開します

ドオーーン!!


般若党B「うわああああっ!」フキトビ

般若党C「ぐわああああ―――ッ!!」フキトビ


万由「うふふ、ふふ」クスクス

万由「さすがは英国最新の大砲」ウットリ

千佳「さながら、人がゴミのようだね。面白いくらいに吹き飛んでいくよ」ニヤニヤ

百合「もっともっと撃ちまくりますの!」


ドオーーン!!

グアアアア―――ッ!!

ドオーーン!!

ウワアアアア!


ほむら「……ッッ」ウツムキ

般若党D「ひるむな! 大砲何するものぞ!」

般若党D「懐に入ってしまえばこちらのものだ!!」タタタッ

般若党E「ここから先へは決して行かせるものか!!」タタタッ


ヒュ――― ドオーーン!!


般若党D「がぁあああ!」フキトビ

般若党E「うあああああ!」フキトビ

万由「ふふふ、うふふふふ」クスクス

万由「無様に足掻く虫ケラどもを踏み潰してゆく」ウットリ

万由「念入りに、執拗に、完膚なきまでに」ウットリ


万由「―――ああ!」トウスイ

万由「こんな素敵なことって他にあるかしら!」ウットリ

万由「こんなに愉快なことが!」ウットリ

万由「そうは思わない?」ウットリ


万由「―――ね?」チラッ

万由「巴さん」

マミ「……それは―――」クチゴモル

マミ「……っ」

マミ「お言葉ですが―――」

ほむら「姫君」

ほむら「どうやら道が開けたようです」

ほむら「どうか、ご指示を」

万由「あらそう」シラー

万由「じゃあ、行きましょうか」テクテク

ほむら「……」

マミ「……助けてくれたのね、暁美さん」

マミ「ありがとう」ペコリ

ほむら「……何のことかしら」プイッ

マミ「ふふっ」クスクス

マミ「なんだか暁美さんにお礼が言いたい気分なのよ」ニコニコ

マミ「ありがとう」

ほむら「……しつこい女は嫌われるわよ、マミ」ジトメ

マミ「それは大変。じゃあこの話はここまでにしましょうか」

マミ「暁美さんに嫌われたくなんてないものね」ニッコリ


ほむら(やり辛い)タジッ…

ほむら(だいぶ慣れてきたように思っていたけれど)

ほむら(やっぱりマミは苦手だわ)

―― 神社 洞窟最奥部 般若党のねぐら


マミ「ついに般若党の本拠に辿り着いたわね……」ゴクリ


織莉子「ようこそいらっしゃいました」ペコリ

キリカ「まさかここまで来るとはね」

キリカ「軟弱な幕府の狗にしては上出来だよ」


千佳「強がっていられるのも今のうちだよ!」テヲアゲ


キュルキュル キュルキュル

タイホウドドーン!


百合「これが見えませんのー?」


キリカ「はんっ」

キリカ「そんなこけおどしに誰がひるむかっての!」

万由「こけおどしかどうか」

万由「すぐにわかりますわぁ」ニタリ


織莉子「夷敵の武器に頼るなんて―――」

織莉子「恥を知りなさい」ギロッ


シャラシャラシャラシャラ


マミ「ってーっ!」


ヒュ――― ドオーーン!!

ヒュ――― ドオーーン!!

織莉子「ひるまないで!」

織莉子「武器にすがる者たちへ、大和魂を見せるのよ!」


………

般若党党員達「「」」シシルイルイ


ヒュ――― ドオーーン!!


織莉子「……ぅあ」ドサリ

キリカ「ぐぅ……ぅ」ドサリ


ほむら(……杏子が躍起になるわけだわ、これは)メヲツムリ

ほむら(武器がどうとか、大和魂がどうとか、もはやそういう問題じゃない)

ほむら(頭のどこかでは刀の方が強い、武士足らば大砲が相手でも、と。そんなオゴりを抱いていたわけだけど)

ほむら(武士の時代、刀の時代の終焉。……正直に言って、こうも痛烈に思い知らされる羽目になるとは思わなかった)

ほむら(……さながら、長篠で騎馬隊を鉄砲にやられた武田勝頼はこんな気分だったのかしらね)

マミ「ついに……」

マミ「ついに倒したのね……」

マミ「攘夷殲滅のこの日が来るなんて……」シミジミ

マミ「思い起こせば幾星霜」

マミ「私たちは攘夷志士と数々の攻防を繰り広げてきた……」シミジミ

マミ「傷つき倒れた者は数知れず……」

マミ「……けれど」

マミ「その戦いにもついに終止符が打たれたのよね……!」カンキワマリ


マミ「私たちの勝利を、一刻も早く御大老様にご報告しなくては!」

マミ「急いで戻りましょう!!」

―― 居留地 領事館


QB川「―――おかげで攘夷勢力を駆逐することができました」ネットリ

クリームヒルト「じゃ、じゃあ、もう不要な争いごとは起こらないんですね!」

QB川「……」


QB川「あなた方も、今後は攘夷志士の襲撃に怯えることはありません」ネットリ

クリームヒルト「よかったです……」ホッ

クリームヒルト「あの。ありがとうございます」ペコリ

QB川「いえいえ、お気になさらず」

QB川「ところで」

QB川「ひとつお願いがあるのですが……」ネットリ

クリームヒルト「おねがい……ですか?」

QB川「ええ」コクリ

QB川「この度の戦いで、我々はあなた方の進んだ技術の素晴らしさを改めて感じました」ネットリ

QB川「先進技術はどんどん取り入れていこうと思います」

QB川「そこで研究のため、あなた方の黒船をしばらく貸して頂きたいのです」ネットリ

クリームヒルト「え……?」

オクタヴィア「……」


オクタヴィア「……いくらなんでも、それってちょっと厚かましいんじゃない?」

QB川「もちろん、タダでとは申しませんよ」ネットリ

QB川「日本と英国の、友好の証として―――」

QB川「製糸工場の建設をお約束いたしましょう」

クリームヒルト「ほっ、本当ですか!」パアア

オクタヴィア「ちょっ、クリームヒルトっ」アセッ

QB川「」ニタ…

QB川「日本はこれから、産業の発展に力を入れたいのです」ネットリ


クリームヒルト「わかりました」コクリ

クリームヒルト「日本のために、黒船をお貸しいたします」

オクタヴィア「……ハァー」タメイキ

オクタヴィア「お人好しが過ぎるよ、クリームヒルト」

クリームヒルト「ごめんね、オクタヴィアちゃん……」

クリームヒルト「でも―――」

オクタヴィア「いいよ。お人好しな公使さまのフォローも、副使の仕事のうちだしね」


QB川「話はまとまりましたな」

QB川「では、そういうことで……」ノソノソ

―― 居留地 領事館前


マミ「―――というわけで」

マミ「黒船はしばらくの間、私たちが借り受けることになったわ」

ほむら「―――」ポー

マミ「暁美さん?」

ほむら「―――」ポー

マミ「もうっ。またなの?」

マミ「暁美さんっ」


ユサユサ


ほむら「っ」ハッ

マミ「気が付いたかしら?」ジトッ

ほむら「……ごめんなさい」

マミ「ん、よろしい」

マミ「……もしかして」

マミ「何か悩みがあるの?」

ほむら「……いえ」アタマフルフル

ほむら「少しばかり疲れがたまっているだけよ。気にしないで」

マミ「そう……」

マミ「あなたがそう言うのなら、深くは聞かないわ」

マミ「でも」

マミ「いい? くれぐれも無理はしちゃダメよ」メッ

ほむら「……ふふ」ニコ…

ほむら「ええ、わかっているわ」

ほむら「それよりも、何の話だったかしら」

マミ「黒船のことよ」

マミ「暁美さんには今晩、黒船の警備をお願いしたいの」

ほむら「そういうこと」

ほむら「承ったわ」コクリ

マミ「ありがとう。お願いね」

―― 夜 黒船 船長室


ほむら「……」カタナニテヲカケ

ほむら「……出てきたら?」


杏子「あちゃあ。やっぱバレたか」テヲヒラヒラ

ほむら「よくも言うものね。隠れるつもりなんかなかったくせに」ジトッ

杏子「……」


杏子「……黒船の番を頼まれたのか」

ほむら「今晩だけ、だけどね」

杏子「……なあ、ほむら」

杏子「あんたは、鬼怒川が本心から産業の発展や英国との友好を願っていると信じてるのかい?」

ほむら「……」

杏子「あの男は怪物だ」

杏子「必ずや日本の進む道をアヤマつぞ」

杏子「それがわからねえあんたじゃないだろうが!」

ほむら「……ッッ」ギリリィッ


ほむら「……」メヲツムリ

ほむら「……ええ、そうね」

ほむら「あなたの言う通りだわ」

ほむら「あの男をイタダたまま。思う様にさせていては、きっと」

ほむら「日本は逼塞する」

杏子「それがわかっているなら―――」

ほむら「……」アタマフルフル

ほむら「あなたは正しい」

ほむら「少なくとも、私はそう確信しているし、断言だってする」


ほむら「―――けれど」シャラリ

杏子「!」

ほむら「一度奉じた剣を、旗色が悪くなったからと翻してしまえるほど」

ほむら「私は器用に出来てはいないのよ」

杏子「……頭の固い奴め」シャラリ

杏子「マミといい、あんたといい」

杏子「侍って奴はどうしてこう、揃いも揃ってバカばっかりなのかね」ハァー ヤレヤレ

ほむら「……そうね。同感だわ」


………

杏子「らぁあああッ!!」ブォンッ

ほむら「ッ」サッ

杏子「ぜぇあああッ!!」シュシュシュッ

ほむら「くぅ……ッ」カィンキンカキンッ


ほむら(……槍を使う輩と剣を打ち合わせるのは、初めてのことではないけれど)

ほむら(遠い。刀の間合いまでが、どうしようもなく)


杏子「らぁッ」ブンブン

ほむら「ぐぅう……」ガンガィンッ

杏子「せああッ!!」ブォンッ


ガキィーーンッ


ほむら「ぅぐっ」ウケミ

ほむら(……マズいわね)

ほむら(ただでさえも厄介な手合いだというのに、その上槍使いとあっては……)

ほむら(……生半なやり方では、寄り斬る前に突き殺されてしまう)


ほむら「……」チャキ


ほむら(駆け出す)

ほむら(何の備えもないまま、無防備に駆け出した私は、杏子の目には破れかぶれになったように映ることだろう)

ほむら(そしてそれは、概ねのところ、正しい)


杏子「あんたほどの剣士が、窮したか!」シュッ

ほむら「それは―――ッ」


ほむら(こうして捨て身になっているのは、少なからず佐倉杏子の動揺を期待してのこと)

ほむら(けれど、どうにもそれは無駄な足掻きに過ぎなかったようで、繰り出されたひと突きは、逸れることなく私の心臓目掛け、向かってくる)


ガギィィッ……

ほむら(とっさに刀をひと薙ぎ。擦りあわせるような、不快な金属音をあげて殺意の矛先は逸らされる)

ほむら(けれどそんなもの、あくまでも時間稼ぎに過ぎない。杏子が槍を引き戻して再び突き出してくるまでの、ほんの僅かな時間)

ほむら(押し戻されてしまいそうな身体に鞭打って、さらに一歩踏み込む)


ほむら(そうしたら、ほら)

ほむら(ソコはもう、私の間合いだ)


ほむら「―――どうかしらねッ!」


ガツンッ

………


杏子「はッ……。やっぱダメか」ヒザヲツキ

ほむら「……」カタナヲツキツケ


ほむら「武士の情けよ」

ほむら「腹を切りなさい、佐倉杏子」

杏子「……断る、って言ったら?」

ほむら「……」


ほむら「もう一度言うわ」

ほむら「切腹しなさい、佐倉杏子」

ほむら「さもなくば、あなたは―――」

杏子「黒船に忍びこんだコソ泥として、不名誉な死を遂げることになる……か?」

ほむら「わかっているのなら―――」

杏子「はんッ」

杏子「知らないね」

杏子「あんたに譲れない武士道(モノ)があるように、あたしにだって譲れない侍道(モノ)がある」

ほむら「……ッ」

杏子「だいたい、今更なんだよ」

杏子「死に方なんか選ぼうと思ってたら、ワザワザこんなとこまで来るかよ」


杏子「……お前こそ」

杏子「今からでも遅くない。鬼怒川を斬れ」

ほむら「……それは出来ないわ」

杏子「ま、そうだろうな」メヲツムリ


ほむら「……やっぱり、あなたは正しいわ」カタナヲフリアゲ


ザシュッ

ドサッ


ほむら「侍なんて……」

ほむら「どうしようもない馬鹿ばっかりだもの」

―― 数日後


クリームヒルト「製糸工場の件、どうなってますか?」


QB川「―――ああ」

QB川「アレならば、やめてしまいましたよ」ネットリ

クリームヒルト「……え」メヲミヒラク


QB川「代わりに」ニタァ…

QB川「兵器工場を作ることにしました」ネットリ

クリームヒルト「そんな……!」

クリームヒルト「約束が違います!」

QB川「まあまあ。そう、いきり立たず」

QB川「我が国のような弱小国が列強諸国と肩を並べるには―――」

QB川「植民地を獲得し、資源を獲得するのが早道。仕方のないことなのです」

QB川「これはあなたたち列強諸国に学んだことなんですけどねぇ」ニタニタ

クリームヒルト「……それなら」

クリームヒルト「それならっ、黒船を返してください!」

QB川「いえ」ニタニタ

QB川「あれは我々が貰っておくことにしました」

オクタヴィア「ま、そんなことだろうとは思ってたけどね……」ギロッ

クリームヒルト「……騙してたんですね」ギュッ…

QB川「さ、話はここまでです」パンパン


魔鱗組逹「「」」ゾロゾロ


QB川「客人がお帰りですよ」

QB川「領事館までお送りしてください」

魔鱗組A「はっ」

QB川「当分の間、領事館の外へ出ることも、本国との連絡も禁じます」


ニタリ

―― そして……


軍服に身を包んだ武士逹「「」」ゾロゾロ


QB川「諸君」

QB川「我々はついに黒船の建造に成功し、列強と肩を並べるところにまで来ました」ネットリ

QB川「もはや東洋の二流国ではない」

QB川「我らは列強諸国に追いつき追い越し、世界に冠たる最強国家を目指すのです」


QB川「これからは植民地獲得を賭けた戦の時代となるでしょう」

QB川「北へ南へ。東へ西へ」

QB川「我らが領土を拡げ、世界一強く、世界一豊かな国を築くのです!」


ウオオオオオオオ!!

オオオオオオオ!!


QB川「行け」

QB川「勇敢なる兵士たちよ」






QB川「世界は―――」










QB川「―――私のものだ」ニタァ…





――


勝利に酔い

領土拡張に歓喜する人々


――


思想は統制され

武士道も、この国に育った心も文化も

押し潰されてしまった


――


この国の行く末を憂う者などいない


――


鬼怒川独裁の下

日本は軍国主義をひた走る


まさか滅亡に向かってひた走っていようとは

誰一人気が付かなかったのである











アーアーアーアー

チキンチキンチキン





「優れた侍」




今日はここまで

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