【ダンロン】ダンガンロンパ・クエスト【オリキャラ】 (889)

※注意

このスレは
【ダンガンロンパ】【安価】モノクマ「コロシアイ研修旅行だよ!」【オリキャラ】
【ダンガンロンパ】【安価】モノクマ「コロシアイ研修旅行だよ!」【オリキャラ】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1433163240/)
の主人公を変更した安価なしリメイクです。

・ダンガンロンパシリーズ、過去作のネタバレがあります

・舞台はジャバウォック島ですが、建物の配置やある施設などが変わります

・オリキャラ中心になりますのでご注意ください
・過去作
【ダンガンロンパ】こまる「それは違うよ!」【安価】
【ダンガンロンパ】こまる「それは違うよ!」【安価】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1384078808/)

【スーダン2】???「コロシアイ修学旅行……!?」【安価】【オリキャラ】
【スーダン2】???「コロシアイ修学旅行……!?」【安価】【オリキャラ】 - SSまとめ速報
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【ダンガンロンパ】【安価】絶対絶望のコロシアイ生活【オリキャラ】
【ダンガンロンパ】【安価】絶対絶望のコロシアイ生活【オリキャラ】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1423310760/)

注意は以上です。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1469192282







――俺はずっとヒーローになりたかった。






 

きっかけはそう、子供の頃見た特撮ヒーロー。

弱きを助け、悪を挫く……勧善懲悪の物語に俺は夢中になった。

そんな俺がヒーローそのものになりたいなんて願望を抱くのは当たり前で。

シーツをマントみたいにして、お手製の仮面まで着けてヒーローごっこに夢中になっていた。

いじめっ子や悪い大人を成敗して、皆が笑顔になってくれたのがたまらなく嬉しくて。

俺はますますヒーローという存在にのめり込んだ。

中学の時にいじめを完全になくした事は今でも少し自慢だ。

そんな俺に、3つの人生の転機が訪れる。

1つは高校に入ってすぐに届いた一通の手紙。


【赤穂 政城様
貴方を超高校級の〈ヒーロー〉として希望ヶ峰学園第76期生にスカウトします】


・赤穂 政城(アコウ マサキ)
【超高校級のヒーロー】


正直言うと、ドッキリだと思ってたんだ。

こんなただヒーローが大好きなだけの俺が、あの希望ヶ峰学園にスカウトされるなんて。

しかも1つ上の75期に数多くの犯罪組織を潰した人が既にいる【超高校級のヒーロー】だなんて。

だけどあれよあれよという間に準備は進められて……俺は希望ヶ峰学園に入学した。

意外に適応力があったのか俺は学園でクラスメート達と面白おかしい学園生活を送った。

そして俺は人生2つ目の転機を迎える事になる。

【人類史上最大最悪の絶望的事件】。

1度この世界はそんな冗談みたいなネーミングの事件によってズタボロにされた。

【超高校級の絶望】という存在は瞬く間に世界中に絶望をばらまいて……俺も何人かのクラスメートを殺された。

辛かった、悲しかった。

でも何より悔しかった。

ヒーローに憧れても、【超高校級のヒーロー】なんて言われても、俺は何も出来ずに友達を失って。

そんな俺は、ある組織にスカウトされる。

【未来機関】。

希望ヶ峰学園の教員や【超高校級】達が組織した対絶望のレジスタンス。

もちろん俺はすぐにその誘いに乗った。

絶望から世界を救うために、きっと出来る事があるって信じて。

そして俺の3つ目の転機は……ある任務がきっかけだった。

【超高校級の絶望】が計画した【コロシアイ学園生活】。

【超高校級】の才能を持つ生徒達を殺し合わせて、それをジャックした電波に乗せて世界に見せつけるなんて悪趣味にも程がある計画。

最も、結果的にはそのコロシアイ学園生活は1人の【超高校級の希望】を生み出して【超高校級の絶望】を打ち倒したわけだけど……

人質にするためか【超高校級の絶望】達はコロシアイ学園生活の参加者である生徒達の親族友人を誘拐していたらしい。

【要救助民】と呼ばれるその人達を保護する……その任務のメンバーに俺は選ばれた。

だけどただ捕まったままの人達を保護するだけのはずだったその任務は……【超高校級の絶望】に魅入られた子供によって最悪の惨劇に変貌する。

まだ幼い子供、それこそ俺がヒーローに憧れてその真似事をしていたのと同じような年齢の子供に操られたロボットによって次々に殺される大人達。

ある【要救助民】を救助しに行ったチームの中でも1人で切り抜けられるという理由でファミレスに待機していた俺にも、その爪は伸びてきた。

俺は戦った。

だけどただでさえ敵の数が多いのに、一般人を逃がしながらなんて当然限界は来て、俺は……いつの間にか気絶していた。

赤穂「ん……んんっ……」

「あっ!だ、大丈夫ですかっ!?」

目を覚ますと目の前には俺とそんなに歳は離れてなさそうなセーラー服の女の子が立っていた。

赤穂「だ、誰だキミは……?何をしている、さっさと逃げろ……!」

こんな所にいたらこの子まで殺されてしまう。

俺が守れたらいいんだけど、脚を傷つけられたのか上手く動けない……くそっ、本当に情けない……!

「あ、あの……あなたって未来機関の……人ですよね?」

赤穂「な、なんで……それを?」

「わ、わたし十神白夜って人に言われて……ここであなたと合流しろって……」

赤穂「もしかしてキミは……【要救助民】か?」

そうか、リーダーはこの子をここまで逃がしたんだな……

だったら俺がやるべき事は……!

赤穂「だ、だったら公園に行け。この裏口から出て真っ直ぐ道なりに進むんだ」

赤穂「そ、そこに……未来機関のヘリが停まっているはずだ。早く行くんだ……」

この女の子を逃がす。

それが今の俺に課せられた使命。

ついてはいけないけど、きっとヘリにさえ乗れれば……

「でも……あなたは?」

女の子は俺を置いていく事に躊躇いを感じているのか、動こうとしない。

そんな彼女に俺が何かを言う前に、ガラスが割れてファミレスに【ヤツ】が入ってくる。

「きゃああっ!?」

もう四の五の言ってる暇はない!

痛む左腕を押し当てて裏口への扉を開けると女の子に急いで逃げるよう促す。

「……ご、ごめんなさい!」

女の子は謝罪をすると扉を抜けて逃げていった。

……良かった、逃げてくれて。

「うぷぷぷぷ……」

忌々しい、白と黒の身体。

赤い左目を光らせて、爪を剥き出しにして歩いてくる【超高校級の絶望】の象徴……【モノクマ】を俺は睨み付ける。

赤穂「来い……俺が相手になってやる……!」

俺の最期の仕事。

それはあの子が逃げきるまでモノクマをこの扉の先に通さない事。

たとえそれで俺が死んでもだ。

だって俺の大好きなヒーローは……

赤穂「弱きを守り、悪を挫くんだからな……!」

赤穂「ゲホッ、ゲホッ……!」

終わった。

なんとかその場にいたモノクマ達を全てバラバラにしてやった。

その代わり、手持ちのハッキング銃はもう弾切れ。

さらにモノクマの爪でズタズタにされて身体中から血が流れてる俺も……ヤバイんだけど。

赤穂「あの、子は……無事に逃げたかな」

なんだか咄嗟にかっこつけた口調になったり、かっこつけた台詞言ったりしたけど……ヒーローっぽいから俺的にはありだな。

赤穂「はあ、はあ……」

馬鹿みたいな事を考えながらこの街と本土を繋ぐ橋までなんとかたどり着く。

だけど俺はそこで限界を迎えて……海に、落ちた。

※※※※※※

赤穂「……まさか生き残るなんてなぁ」

リンゴをかじりながら自分の生命力がここまで高かった事に呆れるやらなんやら。

あの後海に落ちた俺は未来機関が念のためと巡回させていた船に拾われて。

そこで未来機関直属の病院に緊急搬送されて、大手術の果てに一命を取り止めたらしい。

赤穂「まあ……代償はあったんだけどな」

右目に縦に走った傷。

身体中に刻まれた傷。

そして俺の左脚をボロボロにした傷。

赤穂「死んでもおかしくなかったから、生きてるだけでも儲け物か」

赤穂「これからどうするかな……もう体力仕事とかは厳しいし」

そういえば【要救助民】の救出に一役買ったって事で本部から辞令が届いてるんだっけか。

赤穂「何々……」

【第十四支部所属赤穂政城。
要救助民救出作戦における勇気ある行動を讃えてこの度新造される未来機関第二十支部への異動をここに命ずる】

赤穂「未来機関第二十支部……」

その辞令が、俺の人生4度目の転機。

そしてあの惨劇への引き金でもあった……







プロローグ【ようこそ未来機関第二十支部】






 

【未来機関連絡船】

辞令を受けてから約半年後。

俺は未来機関の船で新しい支部に向かっていた。

赤穂「んー……!」

空は快晴、いい天気だ。

波も穏やかで新しい門出には相応しいってやつだな。

赤穂「えっと、手袋にスーツ……」

身体中の傷はあまり人に見せられるような物じゃない。

だから最近の俺はどんなに暑くてもしっかりスーツを着るようになっていた。

赤穂「それと……こいつだな」

ベッドの脇に置いた銀色の杖を取ると二の腕と手首に固定用のバンドを取り付けて立ち上がる。

左脚がまともに機能しなくなってから、こいつが俺の左脚だ。

赤穂「よし、これで準備完了だ」

杖をついて廊下に出ると、船内のホールに向かう。

そこにいるんだ、未来機関第二十支部の初期メンバーとして選ばれた……

俺の新しい仲間達が。

【船内ホール】

「おっ、来た来た」

「これで予定の人数が揃ったようだな」

赤穂「あー……もしかして俺が最後だった?」

「気にしないでください。別に時間を決めていたわけでもないのですから」

赤穂「……!」

えっ、まさかあそこにいるのは……!

「とりあえず、自己紹介と参りましょうか?わたくし達はこれから同じ支部で働く同僚なんですから」

「賛成デース!」

どうやら自己紹介をする事になったみたいだけど……俺も賛成だ。

「……」

あそこにいる人が本当に【彼】なのか、確かめたい!

「では僕から自己紹介させていただきます」

短い金髪を揺らして彼は前に出る。

茶色いジャケットにボロボロの赤いマフラーはテレビでも見てきた彼のトレードマーク。

そうだ、やっぱり彼は……

如月「僕は如月怜輝。希望ヶ峰学園75期生【超高校級のヒーロー】と呼ばれていました」


・如月 怜輝(キサラギ レイキ)
【超高校級のヒーロー】


如月怜輝……世界中の犯罪組織を壊滅させて平和を取り戻した【超高校級のヒーロー】。

未来機関でもその力を発揮して、いくつもの事件を解決してきた英雄。

俺が憧れる……本物のヒーローだ。

如月「確かここにはもう1人【超高校級のヒーロー】がいましたね」

赤穂「あっ、お、俺です!76期生【超高校級のヒーロー】、赤穂政城です!」

如月「そうですか、あなたが……同じヒーロー同士よろしくお願いしますね」

赤穂「は、はい!」

同じヒーロー……いや、まさか如月さんにそう言われるなんて光栄だ!

「もしもーし、聞こえてますかー?」

生のヒーローと話せた喜びに浸っていると、ポンポンと肩を叩かれる。

振り向くと肩までの白めの髪を内巻きにしている女の子が立っていた。

白いブラウスに紺系統の犬耳パーカー、ピンクのスカート。

ピンクのウサギ型のリュックを背負っている彼女は、片手で器用に携帯ゲーム機を弄りながら俺の頬を指で突っつく。

「自己紹介やるのにボーッとするのはあんまりじゃないかな?」

赤穂「おっと、悪い。俺は……」

「赤穂くんでしょ?さっき如月くんと一緒に自己紹介してたからみんな知ってると思うよ?」

六山「あっ、わたしは六山百夏。デバッガーやってまーす」


・六山 百夏(ムヤマ モモカ)
【超高校級のデバッガー】


六山百夏……あらゆるプログラムのバグを見つけて対処する【超高校級のデバッガー】。

彼女がデバッグしたプログラムは絶対にバグ1つない芸術品らしい……俺はあまり詳しくないけど。

六山「赤穂くんはゲームとかやる?」

赤穂「人並みにはやってると思うけど」

六山「そっか。ゲームでバグがあったら言ってね、すぐデバッグするから」

赤穂「あはは、その時が来たらお願いするかな」

「はじめまして」

次に俺に声をかけてきたのは黒茶色の髪を被ったパーカーのフードから覗かせた男。

そのパーカーはあの【コロシアイ学園生活】で生まれた【超高校級の希望】が着ていた物と同じ種類みたいだ。

苗木「ボクの名前は苗木誠。ちなみに字はあのナエギマコトと同じだよ」


・苗木 誠(ナワキ セイ)
【超高校級の幸運】


赤穂「へぇ、あのナエギマコトと同じ字なんて凄い偶然だな」

苗木「あはは、それだけじゃないよ。ボクの才能は彼と同じ【超高校級の幸運】なんだ」

赤穂「才能まで一緒なのかよ」

苗木「まあ、ボクの運が良かった事と言えばなくした千円が偶然部屋から出てきた事くらいなんだけどね」

赤穂「それでもこの第二十支部の初期メンバーに選ばれたんだから苗木は優秀って事だろ?」

苗木「そう言ってもらえるとちょっとプレッシャーだなぁ……やれるだけ頑張ってはみるけどね」

「……なに」

みんな個別に自己紹介してるみたいだし俺もそうしようと、一番近くにいた2人の女の子の所に行く。

だけどその内の1人……腰まで伸びた銀色の髪を肩で2つにまとめた白いタキシードの女の子がもう1人を庇うようにして俺を睨み付けてくる。

赤穂「いや、自己紹介をしようとしただけだぞ」

「そんな事言ってさっきの変態みたいに奏に何かする気なんでしょ!その、ハハハハハグとか!」

……なんなんだこいつ。

「凪、そこまでにしなさい」

「で、でもぉ!」

俺が困惑してると庇われていた腰までの金髪に青い肩出しドレスを着た女の子が白いタキシードの女の子を嗜める。

「すみませんでしたわ。凪は少し思い込みが激しい娘で……自己紹介ですわね?」

四方院「わたくしは四方院奏!【超高校級のパーフェクト】ですわ!」


・四方院 奏(シホウイン カナデ)
【超高校級のフルート奏者】


四方院奏……フルートを奏でさせれば感動を作り出すって言われてる天才フルート奏者。

その容姿からファンクラブもあるとか……確かにそれも頷けるな。

四方院「ふふん、わたくしのパーフェクトな美貌に声も出ませんか」

……んっ?

「当たり前だよ!パーフェクトでキュートな奏の前にいて声を失わないわけないよ!」

四方院「ありがとう凪。そういう貴女もキュートですわ」

「奏に褒められたー♪」

訂正だ。

なんなんだこいつら。

四方院「凪も自己紹介しませんと。ほら、ご挨拶なさい」

静音「……静音凪。奏と付き合いたかったらぼくの許可を取る事だね!」

静音「許可しないけど!」


・静音 凪(シズネ ナギ)
【超高校級の指揮者】


どんな不協和音も統一させてしまうと言われる天才指揮者……そのわりには本人が不協和音ばらまいてないか?

四方院「もう凪ったら……」

赤穂「随分打ち解けてるんだな……もしかして知り合い?」

四方院「ええ、凪とわたくしは同じ楽団に所属していますの。いわゆる幼なじみという間柄ですわね」

静音「見てよ!このバッジとかこの髪飾りとか奏とお揃いなんだから!」

確かに2人の髪には音符の髪飾り、胸元には半円形のバッジがついてる。

本当に仲がいいんだな。

……羨ましくはないけど。

「自己紹介ね……」

薄井「薄井千里。【超高校級のインチキ野郎】だ」


・薄井 千里(ウスイ チサト)
【超高校級のサイキッカー】


黒いシャツにジーパン、黒い髪を後ろで結っていたそいつはそんな風に自己紹介してきた。

赤穂「なんだよ、インチキ野郎って?」

薄井「表向きは【超高校級のサイキッカー】なんて大層な名前つけられてるけどな……はっ、馬鹿馬鹿しいだろ?」

赤穂「サイキッカー……実際は違うって事か」

薄井「当たり前だろ、超能力なんてこの世にあるわけねえんだから」

薄井「まっ、そういう事だからせいぜいオレみたいなインチキ野郎には関わらないようにしな」

インチキ野郎ね……そんな奴が未来機関の新しい支部のメンバーに選ばれるのか?

「自己紹介ですか……はい、わかりました」

黒い髪を結い上げた、紺色のブレザーに赤黒のチェックのネクタイを着けた女の子が俺の前に立つ。

兵頭「兵頭千と言います。選挙に出られる際は是非ともご連絡を」


・兵頭 千(ヒョウトウ セン)
【超高校級の選挙管理委員】


兵頭千……グループのリーダー決めから国政選挙まで裏で管理している【超高校級の選挙管理委員】。

管理するようになった選挙は常に最上の結果を生むとかなんとか。

兵頭「ヒーローが2人……未来機関も大盤振る舞いをしたものですね」

赤穂「ヒーローって言っても、俺は如月さんみたいに犯罪組織を相手にしたわけじゃないぞ」

兵頭「それはあまり関係ないのでは?ヒーローとは犯罪組織を倒すだけではないのでしょう?」

赤穂「それは、まあ」

兵頭「ふふっ、とにかくよろしくお願いしますねヒーローさん」

「ふん……」

上下白の学生服を着た男が不機嫌そうに眼鏡を指で押し上げる。

胸元には八角形の真ん中に裁と書かれたバッジが着けていた。

佐場木「佐場木半次だ」


・佐場木 半次(サバキ ハンジ)
【超高校級の裁判官】


佐場木半次……高校生で裁判官の地位を獲得、幾多の犯罪者を裁いてきた【超高校級の裁判官】。

確かモットーは……【罪を憎んで犯罪者を地獄に】。

佐場木「【超高校級のヒーロー】か……ふん、奴と違って犯罪には手を染めていないようだな」

赤穂「奴って、まさか如月さんの事を言ってるのか?」

佐場木「他に誰がいる。私刑に走り、俺達の邪魔ばかりする」

佐場木「いずれ裁かれる存在……俺からすれば同じ犯罪者だ」

赤穂「そんな言い方ないだろ!?如月さんがいなかったらどれだけ苦しむ人がいたか……」

佐場木「……何も知らないとは哀れだな」

赤穂「は?」

佐場木はそれきり何も言わなかった。

何も知らないって、どういう意味だよ。

「はじめましてであります!」

亜麻色の髪を黄緑のリボンでツインテールにしている女の子がビシッと敬礼をしてくる。

迷彩服を着ているって事は軍人か何かなのか?

遠見「自分は遠見メメであります。所属部隊にて観測手をしているであります!」


・遠見メメ(トオミ ――)
【超高校級の観測手】


赤穂「観測手?」

遠見「はいであります!隊長指揮の下、狙撃手や部隊が危険な目に遭わないよう尽力しているのでありますよ!」

遠見「ちなみに隊長殿も希望ヶ峰学園の生徒だったであります!」

赤穂「そういえばクラスは違うけど、俺の同期に死亡人数0の傭兵部隊を率いてる【超高校級の傭兵】がいたな」

遠見「その人!その人こそ自分達を率いて導いた切原生人隊長であります!」

赤穂「そうだったのか」

でも今あのクラス在籍の15人って独断行動して謹慎処分食らってたような……

遠見「隊長殿、元気にしてくれてるといいのでありますが……」

……相当憧れてるみたいだし、余計な事は言わない方がいいか。

「くっ、くくく……」

黒いスーツに白と黒で分かれたマントを着けた仮面の男が笑っている。

白と黒で分けるってアイツを思い出すから嫌な気分になるな……

「我が魔名を今ここに宣言しよう……」

赤穂「……えっ?」

「だが我が魔名にはあらゆる生命を蝕む呪いがかかっている!傷纏う英雄よ、心して聞くがいい!」

グレゴリー「我が魔名はグレゴリー・アストラル三世!天界より遣わされし従者の囀りに応え、魔宮殿を石板に記す記録者にして世界へと謳う伝道者よ!」

グレゴリー「ふははははははははははっ!!」


・グレゴリー・アストラル三世
【超高校級の設計士】


グレゴリー・アストラル三世……前衛的な設計を次々とこなす【超高校級の設計士】。

入り口の扉から入ると絶対に迷う迷宮みたいな家とか、階段と見せかけてエレベーターになる部屋とか、押し入れが扉で扉が押し入れの部屋とか……

とにかく何かしらからくりを入れないと気が済まないらしい。

今は建て直しされている世界各地の遊園地の新しいアトラクションの設計をしてるとか。

グレゴリー「しかし新世界への方舟に集まりし勇者達はこれほどまでに異界の印を抱くか」

グレゴリー「だが絶望郷へと至りしこの現世……再臨を果たすにはそれもまた世界の答えか」

グレゴリー「ふはははははははっ!!」

赤穂「……」

何を言ってるか全くわからん。

「ワウン!ワウワウ、ワン!」

赤穂「は?」

白い半袖のジャケットに赤いスカート、暗い茶髪の左側に白いリボンを着けた女の子が無表情で俺に向かってなぜか吠えてきた。

いや、本当になんで吠えてきたんだ。

津浦「今のは犬の言葉で【津浦琴羽です。よろしくお願いします】という意味です」


・津浦 琴羽(ツウラ コトハ)
【超高校級の通訳】


津浦琴羽……あらゆる国の言語をマスターした人呼んで【歩く翻訳事典】。

津浦「申し訳ありませんMr.赤穂。ちょうど今【ワンワン語学辞典】を聴いていたので」

津浦が耳に着けていたイヤホンからは確かに犬の鳴き声が聞こえてくる。

赤穂「犬の鳴き声まで通訳する気なのか?」

津浦「世の中何が起きるかわかりませんから」

いや、いくらなんでもそれを使う機会はないだろ……

「俺の番か!」

黒線の入った白い半袖のジャージに黒い半ズボン、緑のメットを被った男が笑顔で俺に寄ってくる。

人懐っこそうなその笑顔は人に好かれそうだ。

道掛「俺は道掛走也だぜ!よろしくな!」


・道掛 走也(ミチカケ ソウヤ)
【超高校級のサイクリスト】


道掛走也……あらゆる自転車競技で優勝した伝説の自転車乗り。

一番有名なのは競技中に相手の妨害で前輪がパンクした時、ウィリーでそのまま優勝した話だな。

道掛「なあなあ、赤穂。ちょっと聞いていいか?」

赤穂「んっ、なんだ?」

道掛「お前、女子で気に入った子いる?」

赤穂「気に入った子?」

道掛「いや、周りの女子ってレベル高いからさ……それでどうよ」

赤穂「……いや、まだ自己紹介も終わってないからな」

道掛「だったら気に入った子いたら教えてくれよ!俺はその子以外にアタックするからさ!」

道掛はサムズアップして女子の所に走っていった。

気に入った子、ねぇ……こんな俺じゃ片思いに終わるのが関の山だから気にしなくていいのに。

「自己紹介ね!」

道掛と入れ替わるように来たのは、クリーム色の作業着に藍色の腰までの髪を首の辺りでゴムでまとめた女の子だ。

土橋「アタシは土橋美姫!建築作業ならお任せってね!」


・土橋 美姫(ツチハシ ミキ)
【超高校級の土木作業員】


土橋美姫……女子高生でありながら数多くの建築に関わってきた土木作業員とよくニュースで話題になってたな。

その細腕からは想像出来ないくらい力強い作業で、周りを引っ張ってるとか。

土橋「杖使ってるみたいだけど足怪我してるならいつでも頼っていいからね!力は有り余ってるからさ!」

赤穂「んっ、困ったら遠慮なく頼らせてもらうよ」

土橋「へへっ、まかせときなよ!」

どうやら彼女は面倒見がいいみたいだ……

「自己紹介ですねー?」

次に自己紹介する人を捜していたら上から声がした。

見てみたらオレンジとピンクのメッシュが入ったセミロングの金髪に、赤い水玉模様の上着と黄色いダボダボのズボンを着た女の子が天井の飾りにぶら下がっていた。

赤穂「うわっ!」

天井から降りてきたその子は器用に受け身を取ると会釈をする。

知らない間に俺は拍手を彼女にしていた。

ジェニー「ボクのネームは、ジェニー・クラヴィッツですね。よろしくお願いしまーす」


・ジェニー・クラヴィッツ
【超高校級の道化師】


ジェニー・クラヴィッツ……世界中のサーカス団を渡り歩く【超高校級の道化師】。

その公演は笑顔を振りまき、楽しませる物だって話だ。

ジェニー「よろしくお願いしますねマサキ!ボク達はこれからフレンドでーす!」

赤穂「あ、ああ、そうだな。これからよろしくジェニー」

ジェニー「はーい!」

「……」

壁際にいたその男はただ無表情でそこにいた。

黒いスーツに白いネクタイ、ボサボサの髪から見える金と銀の瞳は何も映してないようにさえ見える。

赤穂「自己紹介いいか?」

鞍馬「……鞍馬類です」

鞍馬 類(クラマ ルイ)
【超高校級の???】


鞍馬類?

少なくとも他の面々みたいに名前だけは聞いた事があるメンバーと違って、その名前は聞いた事すらない。

鞍馬「……」

いったい何者なんだ?

赤穂「後1人か」

確か初期メンバーは俺を入れて17人。

15人と紹介はしたから、どこかに……

赤穂「あっ」

「あっ」

その子は部屋の目立たない場所にいた。

長袖の白いセーラー服に赤いリボン、青いスカートから伸びる細い脚の上には黒いストッキング。

白いロングヘアーの右側に3つの赤いヘアピンを着けたその女の子を見て俺は……

赤穂「お前、今までどこにいたぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

出来る限りの全速力で近付いていった。

「げっ!やっぱりマサキ!?」

赤穂「牡丹、いつからお前は兄を呼び捨てにするようになったんだ!」

御影「もう親戚の御影の家に貰われたから兄も妹もないでしょ!」


・御影 牡丹(ミカゲ ボタン)
【超高校級の???】


御影牡丹……俺の3つ下の妹だ。

小学生の頃親戚の御影家に引き取られて、その後家出して行方不明になっていた。

赤穂「どれだけ心配したと思ってんだ!?家出して、世界があんな事になって……」

御影「わ、私だって色々あったんだよ……だいたいそっちこそその怪我なに!?どーせまたヒーロー気取りで馬鹿したんでしょ!?」

赤穂「ぐっ、お、俺も色々あったんだよ……だいたい話をだな……」

ああ、違う。

最初に言いたいのはこんなんじゃなくて……

赤穂「…………無事で良かった」

御影「……!」

赤穂「死んでるのも、覚悟してたんだ。だからこうしてまた会えて……俺は嬉しい」

御影「……」

赤穂「牡丹?」

御影「……だったら、良かったのにね」

赤穂「えっ」

御影「……」

牡丹……?

今更ながら一時休憩。
ずっとやってなかったから色々忘れてますが今度こそ最後までいきます。

色々と予定外の事は起きたけど自己紹介は終わった。

赤穂「牡丹、お前この髪どうしたんだよ。昔は黒かったのに」

御影「うるさいなぁ……色々あったんだってば」

道掛「感動的再会ってやつだな!」

如月「世界には絶望が蔓延して今も絶えませんが……このような希望があるからまだ救われますね」

佐場木「ふん……油断はしない事だな。最近は色々とキナ臭い事件も起きている」

苗木「そういえば【超高校級の狂人】が絶望病とかいう新型ウイルスを街にばらまいたって言ってたね……」

遠見「それだけではないであります。【絶望教】なる宗教団体も最近現れたとか」

ジェニー「いつになったら世界はまたスマイルが溢れるですか……」

四方院「それを実現するためにわたくし達はいるのですわ!」

静音「奏がいれば世界はあっという間に希望に満ち溢れるよ!」

土橋「すっごい自信だねぇ……こんな世界だとそれぐらいは思わないと駄目かもしんないけど」

グレゴリー「案ずる事はない!絶望郷に射す光は既にこの現世に産み落とされた!絶望の女神は既に地に墜ち、残されし災厄の担い手達ももはや風前の灯!」

薄井「何言ってんのかわかんねえよ……」

津浦「通訳しましょう。【心配はいりません!世界には超高校級の希望がいます!江ノ島盾子は倒れ、絶望の残党達も追い詰められています!】と、Mr.グレゴリーは仰っています」

グレゴリー「ほう、言の葉の魔術師よ。我が天界の言霊を理解するか」

津浦「ワタシは通訳ですから」

兵頭「なるほど、これからはグレゴリーさんの言葉は津浦さんに通訳してもらえば助かりますね」

六山「ゲームしてるとその手の言葉はよく聞くけど理解するとなると難しいもんね」

赤穂「……」

なんだか個性的なメンバーだよな……ついていけるか心配だ。

でもこれから一緒に働くんだ、仲良くやって……







「うぷぷぷぷ……呑気だねオマエラ」






空気が固まる。

それは絶対にあってはならないそんな声だったからだ。

赤穂「……!」

そしてその声の方、ホール奥のステージを見ればそこには【ヤツ】がいた。

モノクマ「皆々様お久しぶりでございます!」

モノクマ「ボクはモノクマ、これから始ま――」

グシャ!!

モノクマは最後まで言葉を話す事はなかった。

如月「……無粋な物が紛れていたようですね」

如月さんがその前にモノクマの頭を拳で貫いたからだ。

グレゴリー「絶望の化身だと!?なぜこの方舟に生誕している!」

津浦「それはわかりませんが……どうやら緊急事態のようです」

佐場木「ちっ、船長室に行って連絡をしてくる。絶望の残党が潜入している可能性があると本部に伝えねばならない」

遠見「1人では危険でありますよ佐場木殿!自分もついていくであります!」

佐場木と遠見がホールから出ていく。

赤穂「まさかまたモノクマが目の前に出てくるなんてな……つうっ」

土橋「ちょ、ちょっと大丈夫!?」

赤穂「古傷が痛んだだけだから大丈夫……それより絶望の残党がいるなら俺達も捜索を――」







鞍馬「この船、止まっていますよ」






赤穂「なんだと!?」

苗木「本当だ……全く動いてないよ!?」

六山「ちょっと、か、勘弁してほしいかな……」カチカチ

静音「か、奏ぇ、ぼく達どうなっちゃうの?」

四方院「これは……」

佐場木「おい!船長室どころか操舵室にも誰もいないぞ!」

道掛「はあ!?」

薄井「オイオイマジかよ……」

兵頭「それで本部と連絡は?」

遠見「ダメであります!全く繋がらなかったでありますよ……!」

ジェニー「あうう、どうなってるですか……」

御影「ねえ、この臭い……!」

赤穂「臭い?」

牡丹に言われた瞬間、鼻が微かな臭いを捉える。

そしてその瞬間……俺の意識は急速に沈んでいった。







プロローグ【ようこそ未来機関第二十支部】END

生き残りメンバー17人

To Be Continued...






・研修旅行名簿

男子

・赤穂政城(アコウ マサキ)
才能…【超高校級のヒーロー】
身長…177cm
料理の腕…60→25
掃除の腕…55→20

・如月怜輝(キサラギ レイキ)
才能…【超高校級のヒーロー】
身長…182cm
料理の腕…9
掃除の腕…15
赤穂への第一印象【同じヒーローとして仲良くしましょう】

・苗木 誠(ナワキ セイ)
才能…【超高校級の幸運】
身長…170cm
料理の腕…60
掃除の腕…60
赤穂への第一印象【ヒーローか、凄いんだね!】

・薄井千里(ウスイ チサト)
才能【超高校級のサイキッカー】
身長…163cm
料理の腕…75
掃除の腕…95
赤穂への第一印象【……兄妹は大切にしろよ】

・佐場木 半次(サバキ ハンジ)
才能【超高校級の裁判官】
身長…186cm
料理の腕…35
掃除の腕…56
赤穂への第一印象【ふん……あいつのようにはならない事だな】

・グレゴリー・アストラル三世
才能【超高校級の設計士】
身長…190cm
料理の腕…45
掃除の腕…61
赤穂への第一印象【その傷を誇るがいい!それは傷纏う英雄の英雄たる証!】

・道掛 走也(ミチカケ ソウヤ)
才能…【超高校級のサイクリスト】
身長…192cm
料理の腕…52
掃除の腕…32
赤穂への第一印象【ヒーローってモテるのか!?】

・鞍馬 類(クラマ ルイ)
才能…【超高校級の???】
身長…178cm
料理の腕…90
掃除の腕…90
赤穂への第一印象【特にありませんね】

・女子

・六山 百夏(ムヤマ モモカ)
才能…【超高校級のデバッガー】
身長…160cm
スリーサイズ…B88 W60 H90
料理の腕…2
掃除の腕…60
赤穂への第一印象【傷だらけのヒーローなんてゲームみたいだね】

・四方院 奏(シホウイン カナデ)
才能…【超高校級のフルート奏者】
身長…165cm
スリーサイズ…B84 W54 H79
料理の腕…95
掃除の腕…93
赤穂への第一印象【ふふふ、凪を許してあげてくださいね】

・静音 凪(シズネ ナギ)
才能【超高校級の指揮者】
身長…150cm
スリーサイズ…B73 W53 H76
料理の腕…20
掃除の腕…10
赤穂への第一印象【奏に近付くな!】

・兵頭 千(ヒョウトウ セン)
才能…【超高校級の選挙管理委員】
身長…169cm
スリーサイズ…B85 W58 H87
料理の腕…97
掃除の腕…59
赤穂への第一印象【如月さんに憧れているみたいですね】

・遠見 メメ(トオミ ――)
才能…【超高校級の観測手】
身長…167cm
スリーサイズ…B78 W58 H80
料理の腕…47
掃除の腕…13
赤穂への第一印象【隊長の同期生……どのような方でありましょう!】

・津浦 琴羽(ツウラ コトハ)
才能…【超高校級の通訳】
身長…171cm
スリーサイズ…B83 W56 H80
料理の腕…57
掃除の腕…38
赤穂への第一印象【習いますか?犬語】

・土橋 美姫(ツチハシ ミキ)
才能…【超高校級の土木作業員】
身長…174cm
スリーサイズ…B95 W57 H88
料理の腕…85
掃除の腕…80
赤穂への第一印象【何かあったら頼ってね!】

・ジェニー・クラヴィッツ
才能…【超高校級の道化師】
身長…146cm
スリーサイズ…B75 W52 H74
料理の腕…40
掃除の腕…30
赤穂への第一印象【ヒーロー!スマイルを守る人ですねー!】

・御影 牡丹(ミカゲ ボタン)
才能…【超高校級の???】
身長…158cm
スリーサイズ…B81 W56 H82
料理の腕…0
掃除の腕…0
赤穂への印象【……こんな形で、会いたくなかった】







ザー……ザー……

赤穂「……っ、く」

いったい何があったんだ……

赤穂「……」

青い空。

白い雲。

赤穂「まさかここは……」


目が覚めるとそこは南の島。

――ジャバウォック島だった。












CHAPT.1【正義という名の××】(非)日常編






【砂浜】

赤穂「……」

ジャバウォック島。

未来機関の資料にあった南の島。

どうやらあの後俺はここに流れ着いたみたいだ。

赤穂「みんなは……どうしたんだ?」

流れ着いたって事は船が沈没した可能性が高い。

だったらみんなは、牡丹はどうなったんだ!?

赤穂「杖はある……みんなを捜さないと……!」

「あっ!」

赤穂「えっ」

砂に足をとられながら立ち上がったのと同時、誰かがこっちにやって来るのが見えた。

あれは……

静音「奏ー!じゃない!?」

赤穂「静音、キミもここに流れ着いたの……かっ!?」

静音「奏はどこ!?」

赤穂「い、いや、俺も今目を覚ましたから……」

静音「もうなんなの!さっきから見つかるのは奏以外ばっかり……」

赤穂「他のみんなもいるのか!?」

静音「お前で15人目だよ!」

赤穂「俺で15人目?」

つまり四方院さん以外の全員はもう見つかってるのか……

静音「奏、どこに行ったの……ひっく、うぇぇぇぇぇぇぇぇんっ!」

赤穂「し、静音……」

よっぽど四方院さんが心配なんだな……

赤穂「……大丈夫だ、静音」

静音「……?」

赤穂「みんながいるなら四方院さんだってきっとここにいるって」

静音「ぐすっ……ほんとに?ほんとに奏いる?」

赤穂「もちろん、だから泣き止むんだ。四方院さんに心配かけちゃうぞ」

静音「ひっく、ひっく……」

赤穂「な?」

静音「…………うん、わかった」

赤穂「よし、それじゃあみんなの所に案内してくれないか?もしかしたら四方院さんも来てるかもしれないしな」

静音「確かにそうだ!それじゃあ急いで戻らなきゃ!」

赤穂「ちょ、ちょっと待ってくれ静音。走られると追いつけない……」

静音「むー、むー!早く早く!」

というか、待ってくれるんだな。

【中央の島・未来機関第二十支部】

四方院「凪!」

静音「奏ー!」

静音に急かされながらみんなが集まってる場所に行くと、四方院さんは本当にみんなと合流していた。

抱きついてワンワン泣いてる静音を見届けると、少し離れた場所にいた牡丹の頭に手を置く。

御影「……無事だったんだ」

赤穂「お互いにな」

如月「どうやら皆さん無事だったみたいですね」

兵頭「しかしこんな偶然があるんでしょうか?私達は何者かに襲われたはずで、それなのにこの島にたどり着くなんて」

佐場木「確かに普通ならばありえん。あの状況からこの未来機関第二十支部のある島に無傷のまま全員揃うなどという事はな」

苗木「だけど事実ボク達はこのジャバウォック島にいる……うーん、どういう事なんだろ」

佐場木「可能性は2つある。まず1つは俺達はあの後未来機関の部隊に救われ、この島まで運ばれた」

土橋「だとしたらちょーっと優しくないよね。アタシ道端に転がされてたんだけど」

道掛「俺なんてプールサイドにいたもんだから起きた時に落ちちまったぜ!」

薄井「だから濡れてんのかオマエ……」

佐場木「そう、俺達はこの島のあらゆる場所に配置されていた。これは未来機関に助けられたなら考えにくい」

グレゴリー「つまり定められし運命の針はもう1枚の葉に刻まれているのだな」

津浦「【つまりもう1つの可能性が有力なんですね】と仰っています」

佐場木「……ふん。あまりに考えたくもない可能性だがな」

六山「そうなの?」

佐場木「簡単に言うなら……」







モノクマ「このボクによって未来機関第二十支部は既に掌握されてるのです!」






赤穂「モノクマ……!」

ジェニー「また出たでーす……!」

モノクマ「いやはや、さっきは挨拶も途中で壊されちゃうとは思わなかったよ!」

如月「ならばまた破壊するまでです」

モノクマ「おやおや、いいのかな?さっきはともかく今はボクが掌握したこの島がフィールドなんだよ?」

如月「何が言いたいんですか」

モノクマ「オマエラも【コロシアイ学園生活】の放送は見たよね?ボクに手を出したらどうなるかも」

遠見「グングニルの槍でありますか……あの戦刃むくろすら殺害してみせた」

如月「なるほど……しかしアレは不意打ちだからこそ通用したもの。最初から警戒すれば回避は可能だったはずですよ」

モノクマ「そりゃあの【超高校級の軍人】やキミなら出来るかもね!だけど……他の人はどうかな?」

赤穂「まさかお前、如月さんが手を出したら他の誰かを……!」

モノクマ「そうです!如月クンのルール違反による責任は他の人に取っていただきます!」

如月「卑怯な真似を……!」

兵頭「ルール……あなたは私達に何をやらせるつもりですか」

モノクマ「もう、わかってるくせに!もちろん……お待ちかねのあのイベント!」







モノクマ「コロシアイ研修旅行をオマエラには行っていただきまーす!」






とりあえずここまでで。

また明日というか今日も更新します。

赤穂「コロシアイ研修旅行……」

モノクマ「うぷぷ、コロシアイの意味はあの放送を見てたオマエラには今さらだよね?まさか忘れちゃった?」

佐場木「あんなもの、忘れようにも忘れられるはずがない」

六山「わたし達はこれから無期限に共同生活を送らされる……」カチカチ

兵頭「そしてコロシアイが起きた場合は学級裁判、犯人……クロを突き止めるための議論を行い……」

苗木「成功すればクロが、失敗したらクロ以外の全員が処刑される……」

モノクマ「その通り!基本ルールはしっかり押さえてるね!」

モノクマ「オマエラはこの未来機関第二十支部を舞台に凄惨で残酷で絶望的なコロシアイを送るんだよ!」

グレゴリー「戯言を!この未来機関の聖地においてそのような絶望演舞が可能になると思わない事だ絶望の化身!」

津浦「Mr.グレゴリーの仰る通りです。未来機関の新支部があるこの島でコロシアイなど、本部が見逃すはずがありません」

モノクマ「……うぷぷ」

薄井「オイ、何がおかしいんだ」

モノクマ「オマエラはやっぱり呑気だな~と思ってさ」

モノクマ「まあいいや。お楽しみは後にでも取っておくとして……オマエラにはこの島を調べるにあたって便利なこれを渡しておきましょう!」

モノクマ「未来機関第二十支部支給品!未来電子手帳!」

六山「ネーミングセンス皆無だね」

モノクマ「そんな事ボクに言わないでよ!これは未来機関が用意した物なんだからさ!」

電子手帳……モノクマが配ったそれを俺達は黙って受け取る。

今の状況だと、未来機関が用意した物というそれ自体が1つの拠り所みたいな物だったからだ。

赤穂「……」

電子手帳を起動すると俺の名前が表示されて画面に地図やプロフィールといった項目が現れる。

赤穂「……んっ?」

その中に2つの???という項目がある……いったいなんなんだ?

モノクマ「それでは今日は解散しましょう!オマエラも船旅で疲れてるだろうし!」

モノクマ「ぐっすり眠って初日から殺されるなんてならないようにね!」

モノクマ「アーハッハッハッハッハッハ!!」

薄井「……厄介な事になったな」

モノクマが消えてからも俺達はその場から動けなかった。

新しい支部に配属される話が一転してコロシアイなんて事態になったんだ……無理もないよな。

四方院「……」

静音「奏?難しい顔してどうしたの?」

四方院「いえ、もしかしたらですが……1つの真実が見えた気がしましたの」

遠見「真実で、ありますか?」

四方院「元々疑問でしたの。わたくし達は船で眠らされてここに連れてこられたようですが……佐場木さん」

佐場木「なんだ」

四方院「船には船長以下船員の皆さんはいなかったそうですわね?」

佐場木「そうだ。まるで最初から誰も存在していないかのように……!」

佐場木「まさか……」

四方院「そう、そしてこの島にも施設建設や一般のスタッフ……既に配置されていたはずの人々がいません」

兵頭「それはモノクマがやはり……皆殺しにしたのでは?」

四方院「そのわりにはこの施設は無傷のように見えます」

確かに俺達の目の前にある第二十支部の建物はどこも破壊されてない。

だけどそれがいったい……

苗木「えっと、四方院さんは何が言いたいの?」

四方院「モノクマがスタッフや船員達を排除したにしては痕跡がなさすぎると思いませんか?」

遠見「……確かに言われると、あの塔和シティのようになっていてもおかしくないのでありますが」

土橋「アタシも断言するけどこの施設の外観には全く人為的な傷はないよ」

御影「……だけどさ、いないのは事実じゃん」

四方院「そう、ですからわたくしはこう推理しましたの」

四方院「この島には元々人がいなかったのだと」

道掛「は?」

四方院「そして船員の皆様は自ら姿を消したのではないでしょうか」

如月「……自ら?」

赤穂「それじゃあまるでこのコロシアイを仕組んだのが……」

四方院「ええ、わたくしはこの状況を作り上げたのは未来機関ではないかと考えていますわ」

未来機関がコロシアイを……!?

津浦「Ms.四方院……それはいささか飛躍した考えでは?」

佐場木「いや……否定は出来ん」

グレゴリー「憤怒の執行者……それはいかなる理を持っての言霊か?」

佐場木「……ここ最近未来機関は急進派と穏健派の間で色々と不穏な状況だ」

佐場木「何が起きるか誰にもわからん……四方院、お前は未来機関がこのコロシアイを演出したとしてその目的はなんだと考えている?」

四方院「モノクマがはっきり言っていたではないですか。これはコロシアイ研修旅行だと」

六山「研修って、事?」

四方院「そしてその研修だとするならば……ちょうどいい物が未来機関にはあります」

如月「……新世界プログラムですか」

ジェニー「プログラム?ここはリアルじゃないですか?」

四方院「わざわざ実際にコロシアイをさせるリスクを考えれば、その可能性は高いと思いますの」

赤穂「ここが、プログラム……?」

鞍馬「……」

静音「凄い!凄いよ奏!さすがパーフェクト!」

四方院「いいえ、この程度ではパーフェクトなど名乗れませんわ凪」

静音「えっ、なんで!?」

四方院「わたくしはこのコロシアイ研修旅行の本質を推理したに過ぎませんの」

兵頭「状況が変わったわけではないという事ですね」

道掛「だけどよー、プログラムだなんて俺達にはどうにも出来なくね?」

六山「わたしには期待しないでね。わたしプログラマーでもハッカーでもないから」

薄井「無理やり脱出出来ねえなら、このコロシアイ研修旅行自体が無駄だと思わせるとかならどうだ?」

津浦「そのためにはまずこのコロシアイ研修旅行の目的がわからなければなりませんね」

四方院「目的はおそらく、危険思想の人物などをあぶり出したいといったところでしょう」

佐場木「……ふん、妥当な所ではあるな」

赤穂「じゃあ危険思想なんて持ってないって示せばいいのか?」

だけどそんなのどうやって……

土橋「しばらくこのままみんなで過ごせばいいんじゃない?コロシアイなら何も起きなかったら諦めるでしょ」

遠見「期限がわからないのが難点でありますが……それが最善策でありましょう」

苗木「つまり最初の目的と変わらずに……僕達はここで生活してればいいのかな?」

御影「うわ、気の長い話……」

確かに牡丹の言う通りだし、正直未だにプログラムかどうかも疑わしい。

赤穂「だけど他に方法が浮かばないなら……そうするしかないよな」

ジェニー「それじゃあみんなフレンドで決まりでーす!」

グレゴリー「良かろう!この電子の箱庭を我が魔力の根源を高める修練場にしてくれようではないか!」

佐場木「ふん……出鼻をくじくようだが今日はもう夕方だ。休んで明日に備える事だな」

六山「それじゃあ、このマップにあるホテルに行こっか。コテージもあるみたいだしね」

確かに船で揺られていたからか、少し疲労感がある。

プログラムなら融通を利かせてもいいと思うけどな……

みんなも疲れていたのか、佐場木達の提案に反対する人間はおらず……俺達はホテルのある隣の島に向かった。

【赤穂のコテージ】

赤穂「ふう」

杖を外して備え付けられたベッドに腰かける。

歩きながらの話し合いで今日はもう休んで明日は各自島を回る事になった。

赤穂「……とんでもない事になったな」

コロシアイ研修旅行……四方院さんの推測が正しければ未来機関による危険人物の炙り出し。

赤穂「未来機関も色んな思想の奴が集まってるのは知ってるけどな……ここまでやるのか?」

いくらなんでも強引過ぎる。

とはいえ、元々未来機関の中には絶望に堕ちた人間の家族……その家族本人は絶望堕ちしていないのにも関わらず殺してしまえなんて過激派もいるから否定は出来ない。

赤穂「……この事は考えてもしかたないか」

個性的な未来機関の同僚、憧れのヒーロー、ずっと行方不明だった妹……

コロシアイを抜きにしても今日は色々とありすぎた。

赤穂「……」

ベッドに倒れ込んで大の字になる。

そして気付いた時には俺は眠りに落ちていた。

【2日目】

キーン、コーン、カーンコーン

赤穂「んうっ……?」

なんだ、チャイム……?

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

赤穂「……」

ああ、そういえば電子手帳に10時と7時にアナウンスするとか書いてあったな……

赤穂「くそっ、それにしても嫌な目覚ましだな」

二度寝したいところだけど朝にここの敷地にあるレストラン集まるとか言ってたから、そうするわけにもいかない。

赤穂「シャワーは……一応浴びていくか」

妹もいるのにだらしない格好するわけにもな……

【ホテルミライ】

コテージを出て、敷地の中心にあるプールの横を通ってホテルの中に入る。

六山「……」カチャカチャ

すると六山がロビーにあるゲームをプレイしていた。

六山「んー……?あっ、おはよう赤穂くん」

赤穂「おはよう六山。みんなはまだ来てないのか?」

六山「たしか半分は来てたかな。わたしはみんな集まるまでゲームしてよっかなーって」

赤穂「へー……面白いのか?」

六山「なかなかのなかなかだね。この筐体はこれ1つでRPG、アクション、パズル、落ち物、シミュレーション……とにかく色々なゲームが楽しめるんだ」

赤穂「それは……すごいんだな」

ゲーム機1台だけでそこまで出来るなんて、聞いた事がない。

六山「ただ、その分無理してるのかバグがたくさんあるんだよね」

赤穂「バグ?」

六山「モンスターと戦闘してたらいきなりブロック落ちてきたりとか、パズルしてたら一緒に帰るかの選択肢出てきたりとかもうぐちゃぐちゃ」

なんだよ、その新感覚ゲームは……

六山「こういうの、デバッガーとしては見逃せないんだよね」

六山「というわけで、わたしは今からデバッガーとしてお仕事に入るからご飯出来たら呼んでね」

そう言って六山はゲーム機を動かし始める。

いくら声をかけても全く反応はなく……しかたないので俺は一足先に2階のレストランに上がる事にした。

【ホテルミライ・レストラン】

赤穂「おはよう」

レストランに上がると六山が言っていた通り、何人かが席についていた。

道掛「よっ、赤穂!」

遠見「おはようであります!」

佐場木「……よく眠れたようだな」

鞍馬「……」

如月「おはようございます、赤穂さん」

赤穂「お、おはようございます!」

如月「……なんで2回言ったんですか?」

赤穂「す、すみません、つい」

憧れの人を目の前にするとどうも緊張するな……

赤穂「……あれ?」

道掛「どした?」

赤穂「いや、六山は半分は来てるって言ってたのに少ない気がして」

遠見「今四方院殿、兵頭殿、土橋殿は厨房にいるのであります!」

道掛「飯は自分達で作れって言われたしなー」

なるほどな、それなら確かに半分は来てる。

席について待つと後から残りのメンバーがレストランにやって来る。

薄井「早えな……もうこんな来てんのか」

苗木「おはよう、みんな」

ジェニー「おはようございますでーす!」

グレゴリー「ふはははははっ!魑魅魍魎達は闇へと隠れ、神々の地を焼く光が降り注ぐ!さあ、運命の交差せし世界にて新たなる盟約を果たそうではないか!」

津浦「おはようございます、皆様。Mr.グレゴリーは【おはようございます、いい天気ですね。今日もいい1日にしましょう!】と仰っています」

そしてそれとほとんど同時に厨房の方から料理を持った3人が出てきた。

四方院「おはようございますわ皆様。よく眠れまして?」

土橋「ご飯出来たから暇な人は運ぶの手伝ってー!」

兵頭「これほどの人数分は初めてですね……いい経験になりました」

3人の手伝いに何人か立ち上がるのに合わせて俺は六山を呼びに行く。

そして六山を連れてレストランに戻ると……まだ全員揃っていなかった。

佐場木「静音と御影はどうした」

土橋「確かにちょっと遅いね……奏と政城は何か知らないの?」

四方院「凪ならもうすぐ来ると思いますわ。あの子は早くは起きられるのですがしばらくボーッとしないとベッドからも出られませんの」

赤穂「牡丹は……朝に弱くはなかったはずだけどな」

何かあったのか……?

赤穂「ちょっと様子を見てくる。先に食べててくれていいからな」

レストランから牡丹のコテージに向かう。

その途中、なぜかウサギのぬいぐるみらしき物を抱えた静音があくびをしながらホテルに歩いてくるのが見えた。

赤穂「これで、後は牡丹だけか……」

【御影のコテージ前】

ピンポーン…

赤穂「牡丹、もう朝だ。みんな待ってるぞ」

……

赤穂「出てこないな……牡丹?」

ガチャッ

赤穂「開いてる……牡丹、入るぞ?」

扉を開けてコテージの中に足を踏み入れる。

牡丹はベッドに横になっていた。

御影「ゲホッ、ゴホッ!あ、ぐうっ……!」

酷く、苦しみながら。

赤穂「牡丹!?おい、どうした!?」

御影「あ……にい……」

赤穂「苦しいんだな?待ってろ、今誰か呼んで……!」

御影「つ、机のっ、上……」

赤穂「机の上!?」

御影「く、くすり……ゲホッ、うぷっ……!」

机の上を見ると毒々しい色をしたカプセルの入ったケースが目に入る。

急いでそれを取って渡すと、牡丹はカプセルを1つ取り出して噛み砕くように飲み込んだ。

御影「はぁー、はぁー……」

赤穂「大丈夫、か?」

御影「ん……もう、大丈夫」

本当に大丈夫みたいで牡丹はさっきまでの苦しみようが嘘のように落ち着いていた。

御影「……レストランに集まるんだっけ?準備するから、外で待ってて」

赤穂「おい!そんな事よりこの薬はなんなんだよ!?オマエ、まさか何か病気……」

御影「大丈夫だから!」

赤穂「っ……」

御影「本当に、大丈夫だから……何も聞かないで」

赤穂「……」

御影「……」

赤穂「いつか、話してもらうからな」

それだけ告げて牡丹のコテージから出る。

牡丹は……何を隠してるんだ。

御影「おはよ」

ジェニー「ボタン、来ました!」

赤穂「……」

苗木「どうかしたの?顔色悪いけど」

赤穂「いや……なんでもない」

さっきの事もあって朝食も進まず、牡丹を見てしまう。

御影「あっ、美味しいじゃんこれ」

四方院「当たり前ですわ!わたくしが作ったのですから!」

静音「そうだそうだ!奏のご飯は世界一なんだ!」

御影「でもこれには負けるね」

兵頭「ふふっ、ありがとうございます」

四方院「うぐっ、否定は出来ませんわ……!」

六山「まあまあ」

……こうして見るとさっきのがまるで幻覚みたいに感じる。

赤穂「……」

土橋「あーっと、政城美味しくなかった?」

赤穂「えっ」

土橋「手つけてないからさ……ごめんね、もし口に合わないなら残していいから」

赤穂「い、いやいや!ちょっと考え事してただけだ!土橋のご飯は美味しいから!」

土橋「なら、いいんだけど」

赤穂「……」

本当に、いったい何があったんだよ?

【赤穂のコテージ】

赤穂「さてと……」

今みんなは思い思いに島を見て回っている。

俺も何があるかを把握しておかないとな……

【ホテルミライ】

俺達が今いるコテージのあるホテルミライ。

プールもある元観光地らしいホテルだ。

赤穂「隣にあるこの建物はなんなんだ?」

ホテルの建物の隣にある木造の建物……扉を見てみると旧館と書いてある。

赤穂「旧館か……一応中を覗いておくか」

【旧館倉庫】

赤穂「うわ、ギシギシ言ってるぞ……」

一歩間違うと床が抜けそうで気が抜けない。

慎重に進んで両開きの扉を開けると、段ボールがいくつも積み重なっている。

遠見「これは場合によっては……」

佐場木「そうだな、記録しておこう。次はこちらの段ボールだ」

苗木「わかったよ。うわ、重いねこれ……!」

佐場木「落とすなよ。床が抜けたら面倒だ」

そしてその中では佐場木、遠見、苗木の3人が段ボールの中を1つ1つ開けて確かめていた。

赤穂「何してるんだ?」

苗木「あっ、赤穂クン。佐場木クンと遠見さんが危険物がないか調べてるからその手伝いをね」

遠見「その気になればパーティーグッズのスプレー缶で爆弾だって作れるでありますから」

佐場木「最もこの島ではインターネットは使えんだろう。元々の知識がなければ難しいな」

赤穂「なるほどな……それでこれどうするんだ?」

佐場木「この島にはマーケットがある。そこの鍵つきケースに保管する事になるだろう」

遠見「そのためにも、まずは全部把握するであります!」

苗木「あ、あはは……1日かかりそうだなぁ」

大変だな……

【第1の島・農園】

赤穂「……本当に手伝わなくてよかったのか?」

先に全ての施設を見回ってこいと旧館を追い出された俺は近くにある農園に来ていた。

赤穂「……んっ?」

静音「らんらんら~ん♪」

薄井「ふあーあ……ねみい」

静音「こらー!何サボってるんだ!」

薄井「そもそもオレは手伝うなんて言ってねえぞ……」

……何してるんだ?

静音「あっ」

赤穂「えっ」

静音「見たな!?」

赤穂「いや、見たなって何の話……」

静音「このぼくのサプライズお料理大作戦の準備を見たなって言ってるんだ!」

サプライズお料理大作戦……?

薄井「自分で言ってんじゃねえか……」

静音「しまった……!寝坊して奏に迷惑かけたから腕によりをかけて夕飯作って奏を喜ばせる完璧な計画だったのに!」

薄井「いや、だから全部自分で言ってんじゃねえか」

静音「うう~……こうなったらお前も手伝え!」

赤穂「手伝えって野菜を収穫すればいいのか?」

静音「それはもうやらせてある!」

如月「静音さん、これでいいですか?」

赤穂「!?」

静音「おお、ご苦労だったな!」

き、如月さんに野菜の収穫させてたのか……

薄井「全く、ヒーローの使い方じゃねえよな」

如月「いいんですよ、静音さん1人でこの作業は無理でしょうから。次は何をしましょうか?」

な、なんだかめまいがしてきた……

【第1の島・ロケットパンチマーケット】

赤穂「へぇ、色んな物が揃ってるんだな」

サーフボードに浮き輪や海水浴用の道具。
暗視スコープや鍵つきケースやダイヤル式金庫。
食料品も大量にある。

そしてサバイバルナイフやボウガン……凶器も完備してあるってわけか。

鞍馬「……」

六山「ゲームないなー……」

兵頭「野菜以外はやはりここで手に入れるしかなさそうですね」

四方院「そうですわね……補給がなされるか後でモノクマに確認しておきましょう」

ここにも調査……と言えるかはわからないけど何人かいるな。

赤穂「食材の買い出しか?」

四方院「あら、赤穂さん。昼食と夕食の時間になってから来たのでは手間ですから」

兵頭「メニューも考えなければいけませんからね」

赤穂「……」

静音が張り切ってる事は伝えない方がいいよな……サプライズらしいし。

赤穂「六山はゲーム探しか?」

六山「うん。ロビーの筐体だけじゃなくて携帯ゲームのソフトも欲しいんだ」カチカチ

赤穂「そういえば六山はほとんどの時間ゲームしてるよな……疲れないのか?」

六山「ゲーム疲れなら心地いい疲れだよ」

そういう問題、か?

鞍馬「……」

赤穂「鞍馬は何してるんだ?」

鞍馬「……少し探し物を」

探し物?

鞍馬「なければ作ればいいですが……一応もう1回りしましょうか」スタスタ

……何を探してるんだ?

【第1の島・砂浜】

赤穂「俺はここに倒れてたんだよな……」

そのわりには濡れてたりはしてなかったけど、プログラムならそれも不自然じゃなかったんだな……

グレゴリー「ふははははっ!!」

道掛「あっはっはっはっは!!」

赤穂「……」

なんなんだあれ。

津浦「Mr.赤穂。あなたも混ざりに来たんですか?」

赤穂「いや、そもそもあの2人は何をして……」

津浦「最初はMr.グレゴリーが【この広大な海を見ていると笑いたくなります】と高笑いを始められまして」

赤穂「そこからして俺には理解不能だぞ」

津浦「その後走り込みをしていたMr.道掛が楽しそうだから混ぜろと一緒に笑いだしたんです」

赤穂「……楽しいのか?」

津浦「それを確かめるために今からワタシも混ざろうかと。Mr.赤穂もどうですか?」

赤穂「い、いや、俺はいいから気にせず楽しんでこいよ」

津浦「そうですか……それでは失礼します」

津浦がグレゴリーと道掛の隣に並ぶのも見届けず俺は逃げた。

巻き込まれたらたまったもんじゃない……!

【第1の島・港】

電子手帳に第1の島と表記されたこの島のマップ。

そのマップにあった最後のポイントは倉庫やコンテナが並ぶ港だった。

土橋「どうー?」

赤穂「んっ?」

土橋が倉庫の上の方を見て叫んでる……何かと俺も同じ所に目をやると。

ジェニー「シップは何も見えないでーす!」

ジェニーが倉庫の屋根の上から手を振っていた。

ジェニー「あっ!マサキー!マサキも来たですかー?」

土橋「えっ?あっ、本当だ」

赤穂「ジェニーに高いところから見てもらってたのか?」

土橋「まあね。最初はアタシがやるつもりだったんだけどジェニーがボクの方が適任だからって」

赤穂「なるほどな……ジェニー!他に何か見える物はないかー!」

ジェニー「島が見えまーす!建物もあるみたいですけど人がいるかまではわかりませーん!」

土橋「確かジャバウォック諸島は5つの島に囲まれた島って感じだったから……他の島かな」

赤穂「建物があるならもしプログラムじゃないならそこに人がいるかもしれないな……」

なんとかして他の島に行けたらいいんだけどな……

【中央の島】

赤穂「……」

他の島に行く手段がないか中央の島を見て回る。

だけど中央の島は第1の島としか橋が繋がってないみたいで、遠くに微かに見えるだけでとても行けそうにはなかった。

赤穂「……」

ここがプログラムならコロシアイが進む度にいつの間にか橋がかかってるって展開なのか?

それこそ、あのコロシアイ学園生活のように。

赤穂「それとも……力を合わせて他の島に行けたら研修が終わるのかもしれない」

考える事は山積みで、かといって俺は元々頭がいいわけでもない。

赤穂「……戻るか」

杖をついて来た道を引き返す。

歩きながら俺は電子手帳に記載されたこのコロシアイ研修旅行のルールを確認した。

1…未来機関第二十支部のメンバーは支部のあるこの島で無期限の共同生活を送ってもらいます。

2…共同生活を快適に過ごすため道端や海などにポイ捨てをする事を禁じます。

3…夜10時と朝7時にアナウンスを鳴らし、この間の時間を夜時間とします。

4…第二十支部支部長モノクマへの暴力行為を禁じます。

5…支部メンバーの間で殺人が起きた場合は、その一定時間後に、全員参加が義務付けられる学級裁判が行われます。

6…学級裁判で正しいクロを指摘した場合は、クロだけが処刑されます。

7…学級裁判で正しいクロを指摘できなかった場合は、残りの支部メンバー全員が処刑されます。

8…生き残ったクロは、島からの帰還が許されます。

9…3人以上の人間が死体を最初に発見した際、それを知らせる〔死体発見アナウンス〕が流れます。

10…監視カメラやモニターをはじめ、島に設置された物を許可なく破壊する事を禁じます。

11…上記ルールに違反しない場合のこの島の調査に制限はありません。

12…如月怜輝クンがルールに違反した場合連帯責任として他のメンバーに処罰を与えます。

13…ルールは追加される可能性があります。

赤穂「……本当に、ふざけたルールだな」

研修なら悪趣味にも限度ってものがあるだろ……

【ホテルミライ・レストラン】

四方院「皆様、少しお話があります」

静音「奏が喋るんだからしっかり聞けー!」

昼食時、レストランで食事をしていた俺達を見渡して四方院さんがそう言った。

なんで静音まで偉そうなのかは……俺にはわからん。

四方院「皆様もおそらくはこの島に何があるかはだいたい把握してくださったと思います」

土橋「他にやる事もなかったしね」

四方院「改めてわたくし達は未来機関第二十支部としてこの研修旅行にのぞむわけですが……そこで1つ仮の支部長を決めたいと思いますの」

薄井「支部長?」

四方院「ルールにはモノクマが支部長などとふざけた事が書いてありますが、そんなものは皆様お認めになってはいないのでしょう?」

道掛「あったりまえだぜ!クマに従うなんてありえねえっての!」

四方院「そこで男女1人ずつ、この研修旅行でリーダーとして働く人を選出しようと思いまして」

兵頭「男女1人ずつ、ですか?」

四方院「同姓の方が話しやすい場合もあるでしょうから。それで、どうでしょうか?」

誰1人四方院さんに異を唱える奴はいない。

全員モノクマが支部長だなんて冗談じゃないと思ってるんだろう。

四方院「異論はなさそうですわね……それでは今度は誰がその役割になるかを……」

六山「女子は四方院さんでいいと思いまーす」カチカチ

四方院「もちろんそのつもりです!他に立候補する方がいるなら受けて立ちますわ!」

遠見「ここまで話を進めておいて今さら立候補する人がいるとは思えないであります……」

苗木「つまりこの話し合いの要は男子側のリーダーって事かな?」

四方院「それでは立候補者は手を」

苗木「あはは……ボクには荷が重いかな?」

グレゴリー「我は風。統率という名の鎖などで封印する事など出来ぬ!」

津浦「【リーダーなんて向いてません】と仰っています」

鞍馬「……お断りします」

薄井「やなこった」

如月「リーダーですか……不協和音を生みそうなので辞退しますね」

道掛「おっ、なら俺が……」

四方院「却下します」

道掛「なんで俺だけ却下!?」

佐場木「誰も手をあげないのか」

赤穂「そういう佐場木はどうなんだよ」

佐場木「やるのは構わんが、俺はなるべく中立の立場をとりたいところだな」

意外だな……リーダーに立候補すると思ってたんだけど。

四方院「まさか誰もいませんの!?」

道掛「いや、だから俺が……」

薄井「オマエ、オレ達まとめられんのか?」

道掛「無理だな!」

土橋「なんで立候補したの……?」

四方院「まいりましたわね……こうなったらくじ引きで」

御影「……推薦。兄貴でいいじゃん」

赤穂「は?」

御影「だって兄貴、希望ヶ峰の76期生でこの中だと数少ない卒業生でしょ」

四方院「そういえばわたくし達のほとんどは未来機関校第1期生……卒業生は如月さんと赤穂さんだけですわ」

赤穂「ま、待ってくれ!そうは言うけど俺にはリーダーなんて……」

兵頭「しかし他に適任はいないようですよ?」

赤穂「……」

確かに歳って意味なら俺は二番目の年長者だ。

とはいっても未来機関の所属年数なら違いはないはずなんだけど……

赤穂「……わかったよ」

正直、自信があるわけじゃない。

だけど他でもない牡丹が推薦だなんて言うなら……兄としては、なぁ。

四方院「これで決まりですわ!女子はわたくし四方院奏、男子は赤穂さん……改めてこの体制でこの研修旅行をクリアいたしましょう!」

……まあ、やれるだけやってみるか。

赤穂「暇だ」

リーダーになったといってもやる事は実のところあまりなかったりする。

なぜなら四方院さんや佐場木がだいたいの事はやっちゃうからだ。

だから俺はお飾り……肉体労働も今となっては出来ないからそれ以下かもしれない。

赤穂「はあ……」

とはいえ何もしないわけにはいかないからな……みんなの様子でも見に行くか。

【ロケットパンチマーケット】

グレゴリー「見るがいい朗笑の道化師よ!この聖殿は魔術具の宝庫ではないか!」

ジェニー「あ、あう……ロウショウ?セイデン?難しくてわからないです……」

赤穂「……」

ロケットパンチマーケットに寄ってみたらグレゴリーとジェニーが品物を見ながら話していた。

だけどジェニーには難しくてよくわからないみたいだな……

赤穂「グレゴリー」

グレゴリー「ほう、聖痕抱きし英雄か」

なんだか俺の名前らしきものが大げさになってないか!?

赤穂「あのさ、ジェニーはあんまり日本語得意じゃないみたいだから何を言われてるかわからないんじゃないか?」

グレゴリー「むっ?それは真実の果実か、朗笑の道化師」

ジェニー「えと、ロウショウ?の道化師ってボクの事です?道化師はピエロってわかるですけど……」

グレゴリー「ふうむ……すまん。言の葉の魔術師の存在を錯覚していたようだ」

えっと……これは津浦がいる時の感覚で話してたって事か?

ジェニー「でもでも!グレッグはたくさんの言葉知っててすごいです!ボクもっともっと勉強して話せるようにしますです!」

赤穂「……」

グレゴリー「……」

ジェニー「あ、あれ?2人共どうしたです、か?」

グレゴリー「ふっ、朗笑の道化師は天界からの使いかもしれんな」

これは俺にも意味がわかる。

ジェニーはいい子だってな。

遠見「ふーむ、なかなかどうして……」

赤穂「……何してるんだ?道端にしゃがみこんで」

遠見「赤穂殿。いやはや、自分なりにこの島を調べていたのでありますが……もしもここが本当にプログラムなら相当手が込んでいるのであります」

そう言って遠見が見せてきたのは……虫?

遠見「南の島にしか生息していない昆虫であります。このような細かな生物まで再現しているレベルは聞いた事がないのでありますよ」

赤穂「確かに……動物ならまあともかく、虫まで再現ってのは聞かないな」

遠見「正直ここがプログラムだというのは自分には納得出来ない話でありまして」

遠見「そしてプログラムでないならば……このコロシアイは本物の可能性が高くなるのであります」

赤穂「そうだな……」

本当にコロシアイが起きるリスクを考えると、現実でこんな馬鹿げた研修はしないはずだ。

遠見「四方院殿は不安を取り除く意図もあってこの説を持論としているのでありましょうが……」
遠見「自分は戦場で生きてきた身として……万が一を捨てられないのでありますよ」

赤穂「……その万が一がないように佐場木や遠見は疑うんだろ?」

遠見「……そうであります」

赤穂「だったらそんな申し訳なさそうな顔するなよ。俺は最悪の事態を防ぐために疑うのは悪い事じゃないと思うからさ」

遠見「赤穂殿……」

赤穂「なに、もしもプログラムだったらそれでよかったって笑えばいいんだ。最悪の可能性が正解なら……その時はきっとその疑って調べた事が役に立つ」

遠見「……」

赤穂「な?」

遠見「そうでありますね……ありがとうであります赤穂殿!」

赤穂「一応、リーダーだからな」

遠見「御影殿の推薦は正解だったかもしれないでありますね!」

そうなら、いいけどな……

薄井「だからそう言ってんだろ」

如月「そうですか……」

薄井と如月さんが話してるけど……あんまり和やかな雰囲気じゃないな。

薄井「んっ?ああ、ちょうどいい。赤穂、こいつ何とかしてくれよ」

赤穂「何とかってまず何があったんだよ」

薄井「こいつ、オレにしつこく付きまといやがるんだよ……」

如月「僕はただ薄井さんと仲良くしたいだけなんですが……」

薄井「インチキ野郎と関わろうなんてどんな物好きだオマエはよ」

赤穂「と、とりあえず落ち着けって」

俺からしたら正直羨ましいぐらいだってのに……

如月「ですが薄井さんも無視はしないでくれますから、きっと仲良くなれると信じてますよ」

薄井「オマエ……本当におめでたいやつだな」

如月「前向きなんですよ。こんな世界ではそれが重要な事ですから」

前向きか……そうでもないとヒーローなんて出来ないんだろうな。

……いや、俺も一応ヒーローなんだけど。

兵頭「はあ……」

赤穂「……んっ?」

四方院「あら?どうしましたの兵頭さん」

兵頭「いえ、ちょっと個人的に残念でして」

赤穂「残念?」

兵頭「リーダーを決めるのは投票だと思っていましたから……」

四方院「兵頭さんは投票がしたかったんですの?」

兵頭「当たり前じゃないですか。私は超高校級の選挙管理委員なんですよ」

兵頭「ただでさえこんな場所だと投票なんて限られた機会なのに……」

赤穂「なんというか、情熱を注いでるんだな」

兵頭「それはもう、人の人生がかかった投票なんて……たまりませんから」ジュル…

赤穂「……えっ」

四方院「……はい?」

兵頭「……ああ、すみません。今のは忘れてください」

今、恐ろしく緩んだ顔してなかったか……?

【ホテルミライ・レストラン】

そろそろ夕食の時間だとレストランに行ってみると……窓から火柱が吹き出していた。

赤穂「……はあ!?」

四方院「ちょっとなんですのあれは!」

慌ててレストランに飛び込むと、必死にバケツで水をかけている如月さんと薄井。

静音「うわあああああああんっ!」

そして大号泣してる静音の姿があった。

赤穂「……」

まさか夕食の準備しようとして、こんな事になったのか?

四方院「な、凪!大丈夫ですの!?」

静音「ひっ、ひぐっ……奏……ぼくっ、ぼくこんな事になるなんて……」ギュウッ

四方院「ああ、わかっていますわ。貴女がわざとこんな事をするわけないのは」ナデナデ

赤穂「……」

とりあえず2人を見ててもしょうがない、俺は消火を手伝おう!

――――

道掛「こりゃひでえ……」

結局あの後厨房は半焼……夕食前に急遽土橋中心で修理をする事になった。

土橋「誰か追加で木材持ってきてー!」

グレゴリー「ふはははははっ!!この天よりの導きこそ好機!恵みの世界を我が神殿へと再構築してくれよう!まずは厨房の扉を坂に改変……」

土橋「変な物を増やすな!」

佐場木「よくも全焼しなかったものだ」

薄井「わりとマジで焦ったっつうの……」

静音「……」

その原因を作った静音は四方院さんにしがみついて顔を見せようとしない。

四方院「そうですか……凪はわたくしのために」

赤穂「朝の事が申し訳なかったんだって言ってたよ。だから穏便に済ませてやってくれないか?」

四方院「そうですわね……凪もわざとではないのですから、わたくしは何も言うつもりはありません」

静音「奏……」

四方院「ですけれど!皆様にはきちんと謝るように」

静音「はーい……」

赤穂「まあ、怪我人も出てないし何事もなくて良かったよ」

モノクマも出てこないって事は、ルール違反にはならないみたいだしな……

【赤穂のコテージ】

赤穂「はああ……今日は疲れたな」

厨房の修理は9時頃までかかって……夕食が終わったのはついさっき、10時のアナウンスが鳴った頃だった。

赤穂「でもみんなこの一件でいっそう団結した気もするし……結果オーライか」

このまま何事もなく済ませて、さっさと日常生活に戻りたいもんだ。

赤穂「外は今頃どうなってるんだろうな……」

少しでも平和になってれば……

そんな事を考えながら、俺は眠りについた。

【3日目】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

赤穂「朝か……」

昨日の事もあるし、牡丹を迎えに行った方がいいよな……よし。

【御影のコテージ】

ピンポーン

赤穂「牡丹、迎えに来たぞー」

ガチャッ

御影「……おはよ」

赤穂「おはよう、よく眠れたか?」

御影「まあ一応。それで、迎えってなんで?私もう子供じゃないんだけど」

赤穂「昨日みたいな事があったら嫌だからな。こうしてコテージまで来れば少なくとも苦しんでるかはわかるだろ?」

御影「……」

赤穂「それに俺からしたらまだまだお前は子供なんだよ」ポンポン

御影「ちょっ、やめてよ……」

赤穂「ほら行こう。みんな待ってるだろうしな」

御影「はあ……相変わらず強引だね兄貴は」

赤穂「……なあ、なんで兄貴呼び?昔は確か」

御影「気分だよ気分。ほら行くんでしょ」

赤穂「気分ねぇ……」

【ホテルミライ・レストラン】

四方院「皆様、少しお話があるのですがよろしいでしょうか?」

苗木「また何か決める事が出来たの?」

四方院「いえ、今回は少し提案を」

六山「提案?」

四方院「この研修旅行も今日で3日。こちらも本格的に動くのも悪くないかと思いまして」

津浦「本格的に動くとは?」

四方院「もちろんこの研修旅行を終わらせる……つまりこのコロシアイを無駄だと未来機関に思わせる事」

グレゴリー「ほう、優雅なる笛吹きには何か策が?」

四方院「ふふふ」

赤穂「……」

このコロシアイ研修旅行を早く終わらせる方法か……

四方院「未来機関に見せつけるのです。コロシアイなど起きようもないわたくし達の姿を」

四方院「それを実現する方法……」







四方院「未来機関第二十支部懇親会の開催を宣言いたしますわ!」






道掛「懇親会?」

四方院「簡単に言えばパーティーですわね。お互いを知り、交流を深めるためのものです」

ジェニー「パーティー!みんなでパーティーするですか!」

四方院「もちろん全員参加です!交流しようというのに不参加など認めないのでそのおつもりで」

御影「私パス」

赤穂「却下だ。牡丹は少しみんなと仲良くしろ」

御影「横暴だ……妹には優しくしてもバチは当たらないよ」

赤穂「妹のために心を鬼にするのも優しさだ」

四方院「あちらは放置でいいでしょうから……他に何かあるなら聞きますわ」

遠見「開催場所はどこにするのでありますか?」

四方院「それはまだ決めてませんの。今日1日使って候補を絞ろうかと」

六山「今日やるんじゃないんだ?」

四方院「ふふふ、色々準備もあるでしょうから明後日を予定していますわ」

静音「楽しみにしてるんだな!奏が開くなら最高のパーティーになるんだから!」

だからなんで静音が偉そうなんだよ……

四方院さんのパーティー開催宣言の後、みんなはその日に向けてバラバラに散っていった。

赤穂「だけど意外だったな。佐場木や薄井は反対しそうだったのに」

佐場木「ふん、四方院なりのやり方だ。犯罪でもなければ俺は何も言うつもりはない」

薄井「反対出来る空気じゃねえだろアレは」

赤穂「まあ、確かにな。この場合牡丹がむしろマイペースなのか……」

佐場木「だが懇親会をやると言うなら危険物の管理を徹底しなければな……遠見とチェックリストの見直しが必要か」

薄井「真面目だな……少しは肩の力抜いてもいいんじゃねえか?」

佐場木「これは俺の軸だ。今さら変えられはしない」

赤穂「……佐場木は裁判官になる前からそうだったのか?」

この3日間で佐場木の真面目というか、一種頑固と言ってもいい性格は見てきた。

いったいどんな生き方をすればこんな……

佐場木「ふん、お前達も見た事があるだろう?この世界に絶望によって広がる悲しみを」

薄井「そりゃ、まあな」

佐場木「俺は幼い頃からそれを見てきた。それだけの話だ」

幼い頃から、今世界に広がってるような光景を……?

土橋「こんなんでいい?」

ジェニー「はい!ありがとうです!」

赤穂「何してるんだ?」

土橋「ジェニーがパーティーで芸をやるんだって」

ジェニー「ミキにそのためのアイテムを作ってもらいました!」

赤穂「へー、何をやるんだ?」

今ジェニーが持ってるのは木で出来た少し大きめの箱みたいだけど。

ジェニー「ダメでーす!パーティーまでの秘密です!」

土橋「アタシも自分で作っといてなんだけど、何に使うかわかんないんだよね」

赤穂「大丈夫なのかそれ」

土橋「安全性は保証するよ!地震が来ても壊れないレベル!」

赤穂「そんなのをこの短時間で作ったのか!?」

土橋「えっ?別に普通じゃない?アタシちっちゃい頃からよく木で小物は作ってたし」

赤穂「普通ではないと思うぞ……」

ジェニー「ミキはスゴいです!ボクなんて危ないからってハンマーとか持たせてくれませんです……」

土橋「アハハ、そんな褒めないでよ。照れちゃうって」

少し赤くなってる土橋を横目にジェニーの持つ箱を見る。

うーん、怪我がなくてもやっぱり俺には作れそうにない……

でも才能がある人間にとっては普通なのかもな。

津浦「Mr.赤穂。ちょうどいいところに」

赤穂「んっ?どうした?」

津浦「Mr.苗木を捜しているのですが、心当たりはありませんか?」

赤穂「苗木を?レストランを出てからは見てないな……」

津浦「そうですか……」

赤穂「苗木に用事なら俺から伝えようか?」

津浦「お願い出来ますか?」

赤穂「わかった。それで苗木に何の用事なんだ?」

津浦「なんでもMr.グレゴリーの言葉に理解できない物があるので教えてほしいと」

ああ……確かにグレゴリーの言葉はよくわからないもんな。

津浦「しかしそんなに難解でしょうか?ワタシにはよくわかりません」

赤穂「むしろ俺にはなんで津浦がわかるのかがわからないぞ」

津浦「同じ日本語なのですから、まだわかりやすいと思うのですが……」

津浦は本気で疑問らしい……さすが【超高校級の通訳】。

赤穂「苗木はどこに行ったんだ?」

頼まれた以上早い方がいいと俺は苗木を捜す事にした。

赤穂「……おっ、いた」

苗木「あっ、あっ、ちょっと待って!」

六山「一度始まったゲームにポーズはなしだよ」

苗木「ああ、また負けた……」

どうやらロビーの筐体で六山と対戦していたらしい。

赤穂「苗木」

苗木「あれ?赤穂クン、どうしたの?」

六山「増援かな?」

赤穂「違う違う。苗木、津浦が捜してたぞ」

苗木「あっ!そういえば津浦さんに頼み事してたんだった……」

六山「そうだったの?ごめんね、付き合わせちゃって」

苗木「あはは、ボクもゲームしたかったから六山さんは気にしないで」

赤穂「……対戦成績0勝8敗か。やっぱり六山強いんだな」

六山「場数が違うのだよ場数が」

苗木「赤穂クンもやってみたら?もしかしたら運良く勝てるかもしれないよ」

赤穂「運で苗木がこれならダメじゃないか」

苗木「あはは……ほら、ボクは幸運って言っても本当に平々凡々だから」

その後苗木と入れ替わりに六山と対戦した。

結果は……まあ、言わずもがなだ。

道掛「いやっほおおおおおおおうっ!!」

赤穂「あれは……」

道掛「おっ、赤穂じゃん!一緒にサイクリングしねえか!」

赤穂「いや、俺はこの足だから」

道掛「あっ、そういやそうだな……なんつうか自転車乗れねえって俺には耐えらんねえや」

赤穂「道掛は根っからの自転車バカって感じだしな」

道掛「自転車はバカじゃねえよ!」

赤穂「いや、そういう意味じゃない」

道掛「そうなのか?自転車バカにしたんじゃねえの?」

赤穂「言い方変えるなら、道掛は自転車が好きなんだなって事だよ」

道掛「おぉ、そういう意味か!俺は確かに自転車に青春かけてるからな!」

赤穂「それは見てればよくわかる」

道掛「やっぱ青春って大事だよな!友情!女の子!自転車!」

どういうラインナップだそれ……

でも道掛は本当に楽しそうに自転車に乗ってて、青春してるんだなっていうのは伝わってくる。

道掛「あっ、ところで赤穂」

赤穂「んっ?」

道掛「牡丹ちゃん紹介し――」

赤穂「却下だ」

道掛「とりつく島もねえ!」

静音「奏の凄さが皆に伝わってない!」

赤穂「……はあ」

牡丹を紹介しろとすがり付く道掛を振り切って島を歩いていたらいきなり静音に捕まって港に連れてこられた。

そして小さなコンテナによじ登ると開口一番そんな事を言ってくる。

静音「奏は優しくて綺麗で可愛くて頭も良くて料理も美味しくて優しくて綺麗で可愛いのに!」

いくつか2回言ってるぞ……

静音「はあ、ぼくが男の子だったら絶対奏のお婿さんになるのにな」

赤穂「……静音は四方院さんをそういう意味で好きなのか?」

静音「違う!男の子だったらって言ってるだろ!ぼくにとって奏はそれだけ大切なの!」

赤穂「うーん……なんでそこまで四方院さんを?」

静音の四方院さんに対するそれは崇拝にも近い……正直何が彼女をここまでしたのか興味が湧いてくる。

静音「奏がいなかったら……ぼくは指揮者になってなかったからな」

赤穂「そうなのか?」

静音「ぼくは今でこそ天才指揮者なんて言われてるけど、元々音楽なんて興味の欠片もなかったんだ」

静音「むしろ悪戯ばっかりしてて親にはよく叱られてたな」

静音「そんな日々の中で親に少しはおとなしくなるようにって演奏会に連れてかれたんだ」

静音「もちろん興味なんてないぼくは逃げ出してな……知らない間に演奏者の集まる楽屋に来ちゃったんだ」

静音「迷って泣きそうになって……そんな時にフルートの音色が聞こえてきた」

静音「その音色はスッとぼくの中に入ってきて、ぼくは導かれるようにその音の鳴る場所に行って……」

静音「奏と、出会ったんだ」

静音「その時奏と話して、もっと話してみたいと思うようになった」

静音「話すからには喜んでもらいたいから音楽を勉強してはみたんだけど、楽器は全く出来る気がしなくて」

静音「そんな時にオーケストラを見てたら、なんか棒振り回してるすごく楽そうなのがあったからそれをやる事にしたんだよ!」

そんな理由で【超高校級の指揮者】は生まれたのか……

静音「やってみたら難しくて、それ以上に楽しくなったんだけどな!」

静音「つまり奏は今のぼくを作った存在……」

静音「お母さんなんだ!」

……いや、それでいいのか?

赤穂「やっと解放された……」

静音に四方院さんの魅力を散々語られてたらもうこんな時間か……

御影「……あれ?どしたの、疲れてるけど」

赤穂「色々あってな……牡丹はこんな所でどうしたんだ?」

御影「ちょっとパーティーを中止させるために色々と……あ」

赤穂「ほー、俺の前でそれを言うか」ワシャワシャ

御影「ちょっ、だから頭なで回すのやめ!」

赤穂「全く。我が妹ながら何を考えてるんだ」

御影「だってさぁ……いきなり交流しようとか言われても困るって」

赤穂「まるで友達がいなかったみたいに言うんだな……」

御影「そりゃ、あんな生活してたら友達なんて……」

赤穂「は?あんな生活?」

御影「……あっ、私用事思い出した。じゃあね兄貴!」

赤穂「おいこら、ちょっと待て!牡丹!あんな生活ってなんだ!?」

くそっ、逃げられた……!

赤穂「牡丹の奴、ただの家出だと思ってたけどなんか雰囲気が違うぞ……」

白くなった髪……あの苦しみよう……薬……あんな生活……友達なんて……

赤穂「……」

いや、まさか……牡丹がそんな事するわけ……

鞍馬「……」

赤穂「うわっ!?い、いたのか鞍馬」

鞍馬「えぇ、先ほどから」

赤穂「もしかして俺達の話も聞いてた?」

鞍馬「僕がいたところにあなた達が来ましたからね」

赤穂「そ、そうか」

鞍馬「……」

なんというか、鞍馬って掴み所がないな……

鞍馬「彼女は別に依存性の薬物には手を出していませんよ」

赤穂「は?」

鞍馬「それを危惧していたのでは?」

赤穂「いや、それは……というかなんでわかるんだ?」

鞍馬「見ていれば区別はつきますよ」

赤穂「そんな、ものなのか」

よくはわからないけど……それなら、牡丹はいったい……

鞍馬「……」

キーンコーン、カーンコーン……

モノクマ「えー、オマエラ!今すぐ第二十支部に集まってください!」

モノクマ「全員だからね!来なかったらオシオキだよ!」

赤穂「……なんだ?」

モノクマが呼び出し……嫌な予感がするな。

赤穂「とにかく全員集合なら行かないとな……」


【未来機関第二十支部】

苗木「いったい、なんの呼び出しなんだろう?」

兵頭「諦めた、ならいいんですけどね」

四方院「どうなのでしょう……いくらなんでも早すぎる気もしますが」

佐場木「それは本人に聞けばいいだけだ……来るぞ」

モノクマ「来たみたいだねオマエラ!」

道掛「なんなんだよ!これから飯って時に呼び出しやがって!」

モノクマ「大丈夫大丈夫。すぐに終わるからさ」

赤穂「すぐに終わる……」

モノクマはいったい何を……

モノクマ「えー、ではこれより」







モノクマ「厨房の破壊を行ったルール違反者静音凪さんの処刑を執行します!!」






静音「…………えっ?」

四方院「な……何を仰っていますの!?」

モノクマ「あれ?ルールになかったっけ?島に設置された物をむやみやたらに壊すなって」

遠見「た、確かにルールには許可なく設置された物を壊すなとあるにはあるでありますが……」

土橋「ちょっと待ってよ!厨房はきちんと直したよ!?」

グレゴリー「それになぜこの機なのだ!?厨房が業火に包まれし時には沈黙を貫いたではないか!」

モノクマ「別にすぐにやっても良かったけど?お別れの時間くらいはあげようかなって思ったんだよ」

モノクマ「あと直したからって壊した事実がなくなる訳じゃないんだよ!あの火事がコロシアイのためならともかく今回の事はれっきとしたルール違反!」

赤穂「モノクマ、お前……!」

薄井「クソッタレ、よりによってオレ達全員集めてやりやがるか!」

モノクマ「これは見せしめも兼ねてるからね!それじゃあ早速……」

静音「ひっ……」

四方院「待ってください!凪はわたくしのためにあのような事をしたのです!処刑ならわたくしを……」

静音「だ、だめだよ奏!そんな……」

モノクマ「そうだよ?今回ルール違反したのは静音さん。だから死ぬのも静音さん」

モノクマ「オマエが入る余地なんてどこにもないんだよ!」

四方院「っ……!」

くそっ!まさか1日経ってからルール違反に言及するなんて!

とにかく、静音を守らないと……!







ガンッ!






赤穂「えっ」

気が付いた時、モノクマの頭には鉄パイプみたいな物が突き刺さっていた。

そしてそれを持っていたのは……

六山「はぁ、はぁ……」

ジェニー「モ、モモカ!?」

六山「……ボス撃破、だね」カチカチ

津浦「そんな時までゲームをするその胆力……凄まじいですね」

御影「……でもさ、これ当然スペアいるんじゃ」

モノクマ「もちろんいますとも!あーあー、もう嫌になるよ!」

六山「あ……」

モノクマ「どうしようかな……ボクとしては見せしめは1人に抑えたいし……」

鞍馬「……」

モノクマ「よし!事故と故意って事で……六山さんだけの処刑で許してあげましょう!というわけで出でよモノクマ戦車ー!」

キャタピラの音を響かせてモノクマの顔をマークにした戦車がやってくる。

そしてモノクマはそれに乗り込んで六山に、砲口を向けた。

六山「……!」

モノクマ「それではこれより六山百夏さんの処刑を開始します!」

四方院「っ……どうか考え直してください!」

モノクマ「イヤだよーだ!まあ、もしもボクをいっさい傷つけずに戦車を破壊したらその努力に免じて助けてあげてもいいよ?」

佐場木「貴様……!」

モノクマはそんな事が出来ないとわかってて言ってる……どこまでこっちを馬鹿にすれば……!

モノクマ「それではまいりましょう!」

六山「あ、あああ……!」

モノクマ「オシオキターイム!」







如月「なるほど、ならばその条件を達成させていただきましょうか」






赤穂「如月さん!?」

六山と戦車の間に割って入るように現れた影。

それが如月さんだと理解したのは、戦車から砲弾が発射されたのとほとんど同時だった。

如月「……はあっ!」

その砲弾を……如月さんは、明後日の方向に蹴り飛ばした。

グレゴリー「なんと!?」

薄井「……マジかよ」

モノクマ「いくらなんでも無茶苦茶すぎない!?」

如月「これぐらいでなければ、あなた達には対抗出来ませんから」

ジャンプした如月さんは戦車の上に着地、モノクマを中から引きずり出す。

モノクマ「うわわわわっ!?」

そしてモノクマを空に向かって投げ飛ばした如月さんは……

如月「一・撃・必・滅!でいいいいいいいやぁ!!」

戦車に拳を突き入れた。

四方院「はっ……皆様、伏せて!」

四方院さんの言葉に咄嗟に伏せた瞬間、戦車が爆発を起こして風が吹く。

その爆炎の中から……

如月「これでいいでしょうか?モノクマ」

モノクマ「……」

無傷のモノクマを抱えて、如月さんは現れた。

モノクマ「……いやいやいやいや」

モノクマ「普通本気でやる?あり得ないって……」

如月「可能性がある以上僕はやるだけですよ。これで問題ありませんよね?」

モノクマ「ぐっ、ぐぐぐ……今回だけは、見逃してあげるよ!」

モノクマが消えた後も、俺達は沈黙を崩せなかった。

如月「……六山さん、大丈夫ですか?」

六山「う、うん……」カチカチ

気を落ち着けるためか撃たれた後もずっとゲームをしていた六山もこれには動揺しているみたいだ。

赤穂「……」

これが……【超高校級のヒーロー】。

俺とは、全く違う。

次元の違う、存在だった。

本日はここまでです。

【赤穂のコテージ】

赤穂「……」

夜のアナウンスが流れてもう1時間くらい経つ。

だけど俺は未だに眠る事が出来ずにいた。

赤穂「……」

あの時、危うく誰かが殺されかけて。

それを如月さんは誰1人欠けさせる事なく終わらせてみせた。

【超高校級のヒーロー】……如月さんはこれからもその名に恥じない生き方をしていくんだろう。

赤穂「……」

なら俺は?

俺は【超高校級のヒーロー】として何が出来るんだ?

赤穂「……はあ」

少し外に行くか……風でも当たって気分を切り替えよう。

【ホテルミライ・プールサイド】

赤穂「星が凄いな……」

日本にいた頃は青空や星なんてまるで見る機会がなかった。

それはそれだけ余裕がなかったのもあり、絶望達の爪痕が空からそういったものを消してしまったからでもある。

赤穂「だけど……少し離れればまだこんな空は広がってる」

俺には【超高校級のヒーロー】なんて大それた肩書きだけど……少しであの赤茶けた空をこの空みたいに戻るように出来れば。

赤穂「……少し難しく考えすぎてたな」

戻ろう、そう思って俺は夜空を見上げていた顔を戻し――







赤穂「…………っ!?」






再び空を見上げる。

月や星は相変わらず輝いていて、何も変わってない。

赤穂「なんだ今の……」

だけど今強烈な違和感……そう、違和感を確かに覚えた。

まるで間違ったピースを無理やりはめて作ったパズルを見せられてるような……

赤穂「……」

だけどその違和感がまた芽を出す事はなく……

赤穂「気のせい、だったのか?」

俺は首をかしげながら、コテージに戻るしかなかった。

【4日目】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

赤穂「……」

結局あの違和感が気になってほとんど眠れなかったな……

だけどいくら考えても何がおかしいのかはわからなかった。

赤穂「ああ、ダメだダメだ!明日はパーティーなんだし頭を切り替えないと……」

きっと気のせいだったんだろうなと首を振る。

赤穂「よし、とにかく今は牡丹を迎えに行こう」


――――


御影「……おはよ」

赤穂「なんだ、外で待ってたのか」

御影「いちいちコテージに乗り込まれるのもアレだし」

赤穂「まっ、待っててくれたって事は嫌がられてる訳じゃないみたいで良かったよ」

御影「……別に。先に行って兄貴が待ちぼうけしてるのもかわいそうなだけだし」

赤穂「そうかそうか」

全く素直じゃないな……

赤穂「懇親会の準備は順調なのか?」

四方院「えぇ。会場もだいたい目星をつけました」

静音「どうだ!奏はパーフェクトだから2日あれば凄いパーティーが出来るんだぞ!」

四方院「ふふ、ありがとう凪」

静音「それにこのぼくと奏の特別演奏会があるんだから、他の何がなくても成功するに決まってるよ!」

赤穂「特別演奏会?」

四方院「懇親会の時わたくしと凪で演奏をしようと思いまして」

静音「奏ならぼくの指揮がなくてもパーフェクトな独奏出来るんだぞ!」

四方院「そんな事ありません。凪の指揮はわたくしにとって欠かせないものですわ」

静音「そうなの?」

四方院「えぇ、だから懇親会の時も素晴らしい指揮をお願いしますわ」

静音「えへへ、奏がそう言ってくれるならぼく頑張る!」

本当に仲がいいなこの2人は……

今日もみんなは明日のパーティーに向けての準備をしているらしい。

俺は見回りも兼ねて様子を見る事にした。

赤穂「あれは……遠見とグレゴリーか?」

グレゴリーが遠見に何か渡してるみたいだけど……

グレゴリー「祭宴に向けて我が天具を授けよう……さあ千里眼の担い手よ!封印から解き放つがいい!この雲裂き海を割る恵みの刃を!」

遠見「……ただの包丁に見えるのでありますが」

グレゴリー「甘い!甘いぞ千里眼の担い手よ!この恵みの刃は我が秘術によって時空間をも両断する魔剣なのだ!」

遠見「えー……つまりはよく切れる包丁でありますか?」

グレゴリー「然り!故に神からの恵みを儀式の器に捧げ振るった時……器さえも暗黒の彼方へと消し飛ばす!!」

遠見「それまな板も切れるって事でありますか!?」

グレゴリー「ふっ……千里眼の担い手も我が天界の言霊が視えるようになってきたようだな」

遠見「そんなの使えるわけないでありましょうが!」

グレゴリー「なん、だと……」

赤穂「……遠見、大丈夫か?」

遠見「赤穂殿!グレゴリー殿を何とかしてほしいのであります!」

グレゴリー「ええい、ならば時空転移を引き起こす冷気の宝物庫か灼熱の力を持ちし鍋はどうだ!」

赤穂「どれもこれも危険な匂いしかしない……!?」

遠見「却下に決まっているであります!」

グレゴリー「なんと……!」

グレゴリーが目に見えて落ち込んでるけど……まあ、しかたないよな。

あれからグレゴリーの天具……もとい危険物は佐場木と遠見によって回収された。

赤穂「なんなんだよ、冷蔵と冷凍が入れ替わる冷蔵庫とかバーナー内蔵型の鍋って……」

冷蔵庫の方なんてどこかの街に大型の物があるらしいし。

六山「むにゃむにゃ……」

まだ危険物がないか見ると佐場木と遠見に引きずられていったグレゴリーの事を思い返してると、砂浜のヤシの木にかかったハンモックで六山が寝ているのを見つけた。

六山「んー……むにゃ」

赤穂「……」

また随分と気持ちよさそうに寝てるな……

六山「んっ……大丈夫……もっとゲーム……ぐぅ」

夢の中でもゲームか……六山らしい、のか?

六山「……んう?」

赤穂「あっ、悪い。起こしたか?」

六山「あれ……あー…………そっか、夢か」

六山はキョロキョロと辺りを見回して今の状況を思い出したのか、露骨にガッカリしている。

赤穂「ゲームの夢でも見てたのか?」

六山「そうだよー。せっかく長年続編を待ち望んでたゲームの続編発売日だったのに……」

赤穂「あー、それは確かにガッカリするか」

六山「世の中ままならないよね。続編が欲しいゲームに限って出ないし、ハッピーエンドのゲームをわざわざバッドエンドの続き設定で続編出したり」

赤穂「……六山?」

なんか様子が……

六山「他にも露骨に裏側の意図が見えてるやつとか攻略できないキャラクターに限って魅力的なやつとか……」

もしかして、まだ寝ぼけてるのか!?

赤穂「お、おい六山……」

六山「だいたい―ー」

…………

六山「んっ……?そっか、わたし寝てたんだっけ……あれ?」

赤穂「……」

六山「赤穂くんどうしたの?顔色悪いよ」

赤穂「い、いや……ちょっと愚痴を聞いててな」

六山「そうなんだ?」

赤穂「あ、ああ」

……覚えてないのか。

あれだけの言葉の洪水を浴びせかけて……

なんか、脱力感が……

【港】

鞍馬「……」

赤穂「んっ?」

鞍馬の奴、あんなところで何してるんだ?

赤穂「鞍馬」

鞍馬「なんでしょうか?」チクチク

赤穂「いや、何をしてるんだ?」

鞍馬「ぬいぐるみの作成です」

赤穂「ぬいぐるみ……そのウサギみたいなやつか」

鞍馬「ウサミです。未来機関のマスコットになる予定だとか」

赤穂「マスコット……」

正直このウサミとやらを見てると、モノクマの影がちらつくんだが……

赤穂「もしかして、前にマーケットで探してたのってこいつを作るための材料とかか?」

鞍馬「そうです」チクチク

赤穂「……」

鞍馬「……」チクチク

会話が続かない……鞍馬は長い髪で表情がわかりにくいし、なんかなに考えてるかよくわからないからな……

鞍馬「……出来ました」

でも牡丹の事といい、悪い奴ではなさそうだ。

鞍馬「ノルマは後10体ですか」

……変わった奴ではあるけど。

【ロケットパンチマーケット】

鞍馬の作業を邪魔するわけにもいかずマーケットに行くと佐場木が不機嫌そうにケースを台車に乗せていた。

佐場木「グレゴリーめ……よくもあれだけの危険物を」

赤穂「回収は終わったのか?」

佐場木「赤穂か……奴のコテージにあった物は押収した。これからこのケースに入れて保管する」

赤穂「4つのケースってそんなにあったのか……」

佐場木「あの男は一度思い付くとそれがどんなものであれ、作らずにはいられないようだ」

赤穂「全部自作なのか!?」

佐場木「そのためだけにあらゆる分野のプロに弟子入りしていたようだな。全く呆れるほどの情熱というべきか」

赤穂「……」

情熱というなら佐場木も相当だけどな……

如月「おや、赤穂さんもいましたか」

赤穂「き、如月さん!?」

佐場木「……その言いぐさからして俺に用か」

如月「遠見さんから聞きました。佐場木さんが危険物を保管するケースを取りに行ったと」

佐場木「……余計な事を」

如月「お手伝いしますよ。僕達は仲間なんですからね」

如月さん、佐場木に敵意向けられてるのに……さすがヒーローだ。

佐場木「仲間?はっ、笑わせるなよ」

赤穂「お、おい佐場木」

佐場木「俺は貴様を仲間などと認めるつもりはない」

佐場木「いい機会だ、はっきり言ってやる如月怜輝……俺は必ず貴様を地獄に叩き落とす」

佐場木「法の裁きでな!」

佐場木は如月さんを睨み付けると、台車を押してマーケットから出ていってしまった。

如月「……まいりましたね。どうやら僕は嫌われてしまっているみたいだ」

赤穂「……如月さん」

如月「すみません、赤穂さんにも嫌なものを見せてしまいました」

赤穂「き、気にしないでください!俺にとっては如月さんは憧れのヒーローですから!」

如月「……ありがとうございます赤穂さん。そう言ってくれるだけで僕は救われますよ」

赤穂「そ、そんな救いだなんて……」

如月さんにそう言われるなんて……感激だ!

【赤穂のコテージ】

如月さんとしばらく話してから俺はコテージに戻っていた。

赤穂「はあ……」

どうして佐場木はあんなに如月さんを敵視するんだ?

俺には全くわからない。

「……!」

赤穂「んっ?」

誰か外で騒いでるのか?

【ホテルミライ】

道掛「だからさ、俺としては清く正しい恋愛ってマジ大事だと思うわけよ!」

苗木「青春だから?」

道掛「そういうこった!」

道掛と苗木か……2人はプールに足だけつけて雑談してるみたいだな。

道掛「だけどここの女の子って可愛い子ばっかだから、俺としても誰にアタックしようか迷うんだよなぁ」

苗木「あはは……それは大変だ」

道掛「苗木もそう思うか!?だよな、可愛い子に囲まれるのも困っちゃうよな!」

苗木「あはは……」

道掛「俺としてはなぁ……やっぱり牡丹ちゃんが気になるんだよなぁ」

は?

苗木「ああ、それはなんとなくわかるかも」

は?

道掛「あの儚げな雰囲気!それでも赤穂の前では気の強い妹でいようとするいじらしさ!何より可愛い!」

は?

道掛「よっしゃ、俺は決めた!牡丹ちゃんにアタックす……」

赤穂「牡丹になんだって?」

道掛「うおわっ!?」ザバァン!

苗木「み、道掛クン!」

全く、油断も隙もあったもんじゃない……!

【ホテルミライ・レストラン】

御影「あのさ……近いよ兄貴」

赤穂「気にするな。お前のためだ」

御影「いや、意味わかんないって」

赤穂「いいからいいから」

御影「よくないよくない」

いつ牡丹に毒牙がかかるかわかったもんじゃない……兄としては心配だ。

兵頭「……どうしたんですか?ずいぶん距離が近いですけど」

赤穂「ちょっとな」

御影「わけわかんないって……」

兵頭「ああ、なるほど。私にはわかるかもしれません」

御影「えっ、この兄貴の奇行が?」

兵頭「お2人は何年かぶりに再会したんでしょう?だから赤穂さんは御影さんに構いたくてしかたないんじゃないですか?」

赤穂「なっ……」

御影「えっ、マジで?」

赤穂「い、いや違うぞ兵頭!俺はただ悪い虫がつかないようにだな」

兵頭「なるほど、そういう理由でしたか」

はめられた!?

御影「悪い虫?」

赤穂「何でもない!牡丹は気にしなくていいからな!」

御影「いや、気にするって……」

兵頭「ふふっ、お兄さんは大変という事ですよ御影さん」

【ホテルミライ・ロビー】

土橋「えーと……」

津浦「そこはですね……」

土橋と津浦が耳にイヤホンを片方ずつつけながら何か話している。

時々2人が英語を口にしているのが聞こえるから、多分勉強か?

土橋「いやあ、難しいなぁ!もっと勉強しとけばよかったかも」

津浦「会話となると授業で習うものとは違うポイントが必要になる場合もありますから」

土橋「そうかぁ」

赤穂「勉強してるのか?」

津浦「Mr.赤穂。はい、ここが拠点となるなら海外の方々と話す機会も増えるだろうからと」

土橋「その時にいちいち琴羽に頼るわけにもいかないしね」

赤穂「ああ、それもそうだな……」

津浦「Mr.赤穂もよろしければ日常会話ならお教えしますよ?」

うーん……この先の事を考えたら確かに必要になるか。

赤穂「それじゃ、俺も教えてもらおうかな」

土橋「アタシも頑張らないとね!」

津浦「それではまずは……」

その後津浦に英会話を習った。

慣れない事したから頭が痛いな……

【赤穂のコテージ】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「夜10時になりました!」

モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」

モノクマ「うぷぷ、また明日……」

赤穂「いよいよ明日が懇親会か……」

色々あったけど、この4日間俺達は特に問題なく過ごせてると思う。

赤穂「懇親会がうまくいくように頑張らないとな……」

【5日目】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

赤穂「よし、行くか!」

【ホテルミライ・レストラン】

四方院「皆様おはようございますわ。いよいよ本日未来機関第二十支部懇親会を開催いたします!」

兵頭「会場はどうなさるんですか?」

四方院「港に1つちょうどいい倉庫がありましたの。あそこを使わせてもらいますわ」

薄井「倉庫って、オイオイ……」

静音「むっ!薄井、そんな風にしてて後からギャフンってなっても知らないからな!」

薄井「へいへい」

四方院「開始時間は7時頃を予定しています。それまでの間、料理や飾り付けをしたいと思いますので手伝ってくださる方は港に来てください」

道掛「よっしゃ!俺も最終調整といきますか!」

ジェニー「ボクもがんばりますです!」

みんな張り切ってるな……俺も出来る事はしないと――







キーン、コーン、カーンコーン…






苗木「えっ、こんな時間にチャイム?」

モノクマ「うぷぷぷ、オマエラ今すぐ中央の島にある第二十支部に集合してください!」

土橋「ちょっとちょっと……今度は何する気よ」

佐場木「コロシアイ学園生活を思い出せば想像はつくがな」

津浦「このタイミングで動機を……!?」

グレゴリー「ふむ、絶望の化身が行使する鍵としては妥当ではある」

六山「えっと、とにかく行こう。この前みたいな事言われたらたまらないよ」

静音「うっ、震えが……奏ぇ」

四方院「大丈夫です凪。もうあんな事にはさせませんわ」

遠見「それでは行くとするでありますか」

赤穂「そうだな」

動機……いったい何をしてくるつもりなんだ?

【未来機関第二十支部】

モノクマ「お待たせー!きちんと集まってるみたいだねオマエラ!」

道掛「こちとら忙しいってのに!何の用だクマ!」

モノクマ「クマじゃなくてモノクマ!間違えないでよね!」

如月「いいから早く話してください。どうせろくな事ではないんでしょうが」

モノクマ「せっかちだなぁ……わかったよ、さっさと本題に入るよ……」


モノクマ「オマエラの中に裏切者がいまーす!」


赤穂「……は?」

モノクマ「オマエラってほとんどが第八十期……未来機関第一期生なわけだけどさ」

モノクマ「実はなに食わぬ顔して紛れ込んでる大嘘つきがいるんだよ!」

兵頭「大嘘つき……」

モノクマ「うぷぷ、でも誰かはオマエラにはわかんないよね?オマエラはコロシアイ学園生活の教訓から各支部で指導されてきた……同期生と言っても今まで顔すら知らなかったんだから!」

御影「それは……」

モノクマ「あっ、それともう1つ」







モノクマ「このコロシアイ研修旅行は未来機関によるテストでも新世界プログラムでもありません!」






四方院「っ……!」

静音「な、何を言ってるんだ!奏が間違えたって言うのか!?」

モノクマ「うぷぷ、四方院さん自身本当にここが新世界プログラムだなんて思ってたのかな?」

静音「えっ……」

四方院「……」

佐場木「ちっ、今まで訂正しなかったのは懇親会というこの日を狙っていたな……」

道掛「ちょっと待ってくれよ!えっ、マジで……俺達コロシアイやらされてん、のか?」

鞍馬「そういう事ですね」

土橋「でもここは未来機関の支部だよ!?どうやって……」

モノクマ「未来機関は今それどころじゃないからねー!だって……おっとこれはオフレコだった!」

津浦「まさか、ワタシ達だけでは……ないんですか!?」

モノクマ「どうだろうね!コロシアイしたら教えてあげよっかなー!」

グレゴリー「絶望の化身、貴様……!」

モノクマ「それではオマエラ!改めてリアルとわかったコロシアイ研修旅行を楽しんでください!」

モノクマ「アーハッハッハッハッハ!!」

六山「このコロシアイがリアル……」

薄井「未来機関がそれどころじゃねえってどういう事だよ……!」

赤穂「くそっ……!」

モノクマの奴、よりによってこのタイミングで……!

佐場木「……四方院」

四方院「……わかってますわ。これでは、懇親会どころではありません」

苗木「中止って事……?」

遠見「仕方ないでありましょう……」

土橋「そうだね……色々落ち着いて考えたいし」

鞍馬「……」

俺達は改めて突きつけられた今の状況に混乱していた。

確かに、こんなんじゃ懇親会どころじゃ……







静音「……ぼくはやる」






四方院「凪……?」

静音「奏どうしちゃったの!?このコロシアイが本当なら、ぼく達はもっともっと仲良くならないといけないからパーティーやるっていつもの奏なら言ってるはずなのに!」

四方院「それは……しかしこの状況では」

静音「大丈夫だよ奏!奏の考えたパーティーやったらきっと誰もコロシアイなんて出来なくなるって!」

四方院「……」

静音「ぼく、準備あるから行くよ!奏、待ってるからね!」タタタッ

赤穂「静音……」

ジェニー「ナギ、すごいです」

兵頭「現状を重く受け止めてないとも言えますが……」

道掛「……だけど俺には響いたぜ!確かにこんな時に暗くなってなんていられねえよな!」

苗木「それじゃあ道掛クンも?」

道掛「おう!凪ちゃんと2人だけでもパーティーやるぜ!」

苗木「あはは、それは無理だよ。ボクを入れて最低でも3人だからね」

静音の言葉に同調する奴が出始める。

それは俺も例外じゃない。

こんな時だからこそ、懇親会をやるべきなのかもしれないって思ったからだ。

赤穂「……いいや、4」

御影「5人、だね」

赤穂「えっ?」

御影「私強制参加なんでしょ?それじゃ、行くしかないじゃん」

赤穂「牡丹……お前って奴は!」クシャッ

御影「髪がグシャグシャになるからやめてってば……」

如月「四方院さん」

四方院「……」

如月「僕は静音さんの気持ちを汲みたいと思います……あなたはどうしますか?」

四方院「……凪にあそこまで言われて、それを裏切るなんてわたくしには出来ません」

四方院「皆様申し訳ありません。わたくしはやはり懇親会を決行したいと思います」

四方院「皆様に無理強いはいたしません。ですがもしよろしければ……来ていただけると嬉しいですわ」

四方院さんは一礼すると静音を追いかけていく。

佐場木「……ふん、勝手な事を言う奴らだ」

赤穂「おい佐場木……」

佐場木「そのために危険物を管理するのは俺達だというのに……遠見、予定通りにやるぞ」

遠見「わ、わかったであります……」

兵頭「どうやら、佐場木さんも懇親会をお手伝いしてくださるみたいですね」

グレゴリー「絶望の化身よりまかれし絶望の種、しかしそれをまた打ち払う事も我らなら容易い……ならば真実への扉は1つのみ!」

ジェニー「パーティーやるです!ボクいっぱいいっぱい頑張ってスマイルを届けます!」

土橋「……この際何も考えられなくなるぐらい騒ぐのもありかな!」

六山「それじゃ予定通り、パーティーだね」

薄井「やるしか、ねえか」

津浦「皆さんは強いですね……ワタシは未だに混乱してます」

土橋「全員同じだって。だけどさ、悪い事ばかり考えてもしかたないでしょ?」

津浦「しかし……」

土橋「モノクマの思い通りになるのも癪だし、ね?」

津浦「……そうですね、そうかもしれません」

みんな懇親会をやる方向で固まったみたいだな……


鞍馬「…………」スタスタ……

【港・第三倉庫】

赤穂「ここが会場か……」

広さは確かにあるな……テーブルとか持ち込めば問題はなさそうだ。

だけど窓がないから暗いな……

静音「なんだ、来たのか」

奥にいたらしい静音が俺を見て寄ってくる。

四方院さんが先に来たはずだけど……いないのか?

赤穂「全員参加だよ。みんな静音に感化されたみたいだ」

静音「ふーん……ああ、それよりちょっとそこにあるスイッチ押して」

赤穂「これか」

入り口の横にあるスイッチを押すと倉庫が明るくなる。

とはいっても、やっぱり少し暗いな。

静音「うーん、奏の言った通り照明持ってきた方がいいかな」

赤穂「照明?」

静音「マーケットに電気スタンドあるだろ」

赤穂「……あったかそんなの?」

四方院「ありましたわ」

静音「奏!」

四方院「ありがとう凪。貴女のおかげでこの四方院奏はまた立ち上がりました」

静音「えへへ」

赤穂「それが照明か?」

四方院さんが持ってきた台車には大小3つぐらいの電気スタンドが並んでいた。

……だけどこのスタンドガラス製っぽいのになんか大きいな。

四方院「ブレーカーの関係でこれしか使えないみたいですの。電源はコンセントが奥にあるようですわね」

赤穂「どれどれ……」

一番小さな照明……それでも高さ2メートルはあるやつだ。

それについたコードを持って奥に行くとコンセントの穴が確かにあったから差し込む。

するとパッと倉庫が明るくなった。

静音「わあ、明るい!これが3つあるなら十分だね奏!」

四方院「ふふ、そうですわね」

苗木「……あれ?」

スタンドの電球が1つ切れかかっていたからマーケットに向かうと、苗木が首を傾げていた。

赤穂「どうした?」

苗木「あっ、赤穂クン。いや、なんかガラスの壺とか置物がなくなってるんだよね」

赤穂「そうなのか……誰かが倉庫に持っていったのか?」

苗木「ああ、倉庫だけあって殺風景だもんね……じゃあ問題ないか」

赤穂「なんだ、見張りでもしてたのか?」

苗木「あはは、ちょっとした自主休憩だよ」

赤穂「おいおい、サボりか?」

苗木「ごめん!見逃して!」

赤穂「はあ……ほどほどにしとけよ?」

苗木「もちろん!あと少しにしとくよ!」

いや、出来れば見つかった時点でやめてほしいんだけどな。

土橋「えーっと、後は……」

グレゴリー「土塊の錬成師よ!今すぐ思考の波をせき止めるのだ!そしてこの天界の囀りを……」

土橋「却下、というか邪魔」

グレゴリー「ぐ、ぐううう……冷気の障壁を張られたか!」

赤穂「何してるんだいったい……」

土橋「凪と奏が演奏やるからちょっと木材で簡単なステージをね」

グレゴリー「演舞の祭壇ならばやはり地より這い出す異世界のゲートを錬成するべきではないか!」

土橋「そんなもの作ってたら間に合わないって言ってんの!」

多分グレゴリーは舞台の奈落を作りたいんだな……まあ、あの対応だと無理っぽいけど。

結局土橋にグレゴリーの案は全部却下され、木で出来た長方形のステージが完成した。

コンセントの関係上奥に置かれたそのステージの両サイドに大きめの電気スタンドを置く。

小さな電気スタンドは中心に置いて、それを囲む形でテーブルを置いていく。

そうして準備に追われて……気がついたらもうすぐ開始時刻の夜7時だった。

赤穂「……で、これはなんなんだ?」

四方院「カスタネットですわね」

赤穂「まさか俺に鳴らせっていうのか?」

四方院「えぇ、凪の指揮を生かすにはやはりわたくし1人というのも味気ありませんし」

赤穂「いや、だからといって俺1人増えても……」

四方院「ご安心くださいな。苗木さんにトライアングルをまかせてますので」

いいのか、それで……

赤穂「……んっ?」

なんか揉めてるのか……?

佐場木「……テーブルにあるこのガラスの置物や壺は誰が持ち込んだ?」

道掛「俺だけどなんかまずかったか?」

佐場木「割れれば……いや、これそのものも凶器になるだろう」

兵頭「そこまでするんですか?」

佐場木「仮にも動機のような物を出された後。警戒はするべきだ」

薄井「あんなに身体検査までしといてそこまでする必要あんのか?」

遠見「佐場木殿、割れないように見張れば大丈夫でありますよ。自分がしっかりと見張るでありますから!」

佐場木「……ならいいがな」スタスタ

道掛「なーんかピリピリしてるよな佐場木」

如月「佐場木さんは責任感が強いんでしょうね。このコロシアイ研修旅行……誰も死なないように気が張ってるんでしょう」

道掛「なるほどねぇ」

赤穂「……」

うーん、あんなに警戒して佐場木は楽しめるのか……?

御影「もうすぐ7時だね」

赤穂「そうだな。だけど意外だったよ」

御影「何が?」

赤穂「お前が参加するって自分から言い出したのがだよ」

最初はあんなに嫌がってたのにな。

御影「別に……強制だからだし」

赤穂「はいはい、わかってるよ」

御影「ちぇ……あっ」

赤穂「どうした?」

鞍馬「……」

御影「あいつも来たんだ」

赤穂「ああ、鞍馬か。なんだかんだで全員での集まりには参加するんだよな」

御影「ふーん……」

赤穂「なんだ、鞍馬が気になるのか?」

御影「……ちょっとだけ、ね」

赤穂「えっ、嘘だろ!?」

御影「いや、兄貴は気になんないの?あいつの才能」

赤穂「……ああ、そういう話か」

鞍馬の才能か……確かにあいつは才能を話そうとはしないけど……

赤穂「別に気にはならないな」

御影「裏切者かもしんないのに?」

赤穂「だったら適当な才能騙るだろ」

才能を話そうとしないなんて怪しんでくださいって言ってるようなもの。

だから鞍馬は違うと思うんだよな……

赤穂「だいたいそれ言い出したらお前はどうなんだよ」

御影「それは……」

赤穂「というかそうだよ。お前いったい何の才能なんだ?」

少なくとも俺が知る牡丹は運動苦手だし勉強も普通だったよな……?

御影「……ペット」

赤穂「は?」

御影「【超高校級のペット】とか」

赤穂「……」

御影「いや、冗談だからひかないでよ」

赤穂「変な冗談言うなよ……」

冗談。

冗談か、そりゃそうだよな。

……本当に冗談なんだよな?

御影「……」

なあ、牡丹。

次回事件発生します。
絶望編でとうとう生徒会が出ましたがこっちの設定の生徒会はパラレルって事でよろしくお願いします。

そして7時……

四方院「皆様、お待たせいたしました」

四方院「これより未来機関第二十支部懇親会を始めたいと思いますわ!」

四方院「モノクマによるこの状況は決してよきものとは言えませんが……」

四方院「この懇親会で団結を深め、明日からより一層この状況の打開に努めましょう!」

四方院さんのそんな挨拶で懇親会は始まった。

赤穂「みんな楽しんでるみたいだな……」


道掛「うおおお!やっぱり飯がいつもよりグレード高いぜ!」

苗木「み、道掛クン落ち着いて食べないと危ないよ」

六山「うんうん、喉に詰まらせたら大変大変」カチカチ

苗木「六山さんもゲームしながらなんてやめなって!?」

グレゴリー「むうっ!?」

四方院「どうしましたの?」

グレゴリー「堕落をもたらす果実酒がなぜここに!?」

津浦「【これはもしかしてリンゴジュースですか!?】とのことです」

四方院「ああ、確かにそれはリンゴジュースですわね……お嫌いでしたの?」

グレゴリー「ぐうううっ……」

静音「なんだ、だったらこのオレンジジュースならどうだ?」

グレゴリー「その果実ならば問題はない……感謝するぞ鎮魂の指揮者」

静音「ぼくも玉ねぎ嫌いだから気持ちはわかるぞ!」

四方院「凪、それは自慢気に言う事ではありませんわ」


赤穂「……」

一部大変みたいだけどな。

佐場木「…………」

土橋「ねえ、懇親会なのに眉間に皺寄せて壁の花はどうなの?」

佐場木「浮かれているわけにもいかん。ここは敵地と変わらないんだ」

ジェニー「ハンジはスマイル見せてくれないですか?」

御影「やめときなって。ああいうタイプは笑ったら人殺せるほど酷いから」

赤穂「牡丹、さすがに言い過ぎだぞ。佐場木の笑顔が想像出来ないのは確かだけどさ」

佐場木「貴様ら、俺をなんだと思っている」

土橋「日頃から仏頂面だからそう思われるんだよ。ちょっとは笑ってみたら?」

ジェニー「ハンジのスマイル!ボク見てみたいです!」

佐場木「……改まって見せるようなものじゃない」

御影「あっ、やっぱり酷いんだ」

おいおい、牡丹のやつ煽りすぎだぞ……

佐場木「赤穂、貴様は妹にどんな教育をしている……!」

赤穂「い、いや、俺が教育したわけじゃ……ちょっと牡丹こっち来い!」

御影「うわっ、ちょっと兄貴」

佐場木「……」

ジェニー「ハンジ怒っちゃったです……」

土橋「さすがにやり過ぎたね……」

佐場木「笑顔など簡単に…………」

佐場木「ちいっ、笑い方を忘れたか……」

御影「後少しで笑わせられたのに」

赤穂「俺には爆発する予感しかしなかったぞ……んっ?」

薄井「……」

薄井のやつ、上の空みたいだな……あっ、如月さんが……

如月「薄井さん」

薄井「なんだよヒーロー」

如月「せっかくのパーティーなのに楽しまなくていいんですか?」

薄井「外がどうなってるかわかんねえのに楽しめるかよ……付き合いで来てんだからそれでいいだろ」

如月「じゃあ薄井さんはどうするんですか?今は団結してモノクマに立ち向かわなければいけないと僕は思いますが」

薄井「……」

如月「コロシアイに乗りますか?」

薄井「……はっ、アホか。オマエにそんな疑われてる時点で学級裁判なんか乗りきれるかよ」

如月「それは乗らないと捉えても?」

薄井「好きにしろよ……」

如月「それでは話し相手になってください。1人でいるよりは有意義ですよ」

薄井「強引だなオマエ……」

……薄井は如月さんに任せれば大丈夫そうだな。

御影「兄貴どうしたのさ」

赤穂「いや、なんでもない」

遠見「異常なしでありますね」

兵頭「遠見さん、飲み物どうぞ」

遠見「感謝であります兵頭殿」

赤穂「見張りなんて大変な役割をよく引き受けたな……交代するか?」

遠見「いえ、自分は慣れてるでありますから適任でありましょう」

御影「あー、慣れちゃうと楽な事ってよくあるしね」

遠見「肯定であります。それにこの会場の入り口で身体検査した時などもっと大変でありました……」

兵頭「ああ、あれですか」

遠見「鞍馬殿や薄井殿は何も語らず雰囲気がキツかったでありますし……」

遠見「道掛殿は自転車で入り、グレゴリー殿は仮面を外す気はないと大騒ぎ……」

遠見「かと思えばジェニー殿がいつの間にやら箱を持ち込んでいる始末」

遠見「本当に大変だったでありますよ」

赤穂「そんな事があったのか……」

遠見「しかしこれもまた何事もなく過ごすためと考えれば……隊長も同じ状況ならこの役割を選んだでありましょうから気合いも入るというもの」

さあ、もう一度見回りであります!と遠見は走っていった。

なんだか頭が下がるな……

鞍馬「…………」

赤穂「そんな隅っこで何してるんだ鞍馬」

鞍馬「特に何も」

御影「本当に無愛想なやつだね……私も人の事言えないけど」

鞍馬「…………」

御影「怒りもしないし」

赤穂「……鞍馬、1人でいようとしてると何かあった時孤立するぞ?」

鞍馬「ご心配なく。僕は孤立しようとやっていけますので」スタスタ

御影「……なにあれ」

赤穂「……」

一匹狼なのか、それとも何か理由があるのか……

いるだけでもまだマシなのか……?

ジェニー「レディースアンドジェントルメーン!」

赤穂「んっ?」

懇親会が始まってから30分……ステージに上がって会釈をしているジェニーにみんなの視線が集中する。

ジェニー「今からボクの芸を披露したいと思いますです!」

ジェニーの隣には土橋が作った木箱がある。

少し大きめの、それでもせいぜいジェニーでも腰まで入るのが関の山だろう大きさの箱。

ジェニー「今からこのボックスに入ってみせますです!」

ジェニーは笑顔でそう言うと、箱の蓋を開けてその中に入った。

さっき言ったように腰までしか入らない箱……だけど。

御影「どんどん箱に入ってるね……」

まるで飲み込まれていくみたいに、ジェニーの身体が箱の中に消えていく。

如月「どうやら身体を上手く曲げて箱の中に入っているようですね」

そしてとうとうジェニーの頭まで箱の中に収まった。

津浦「……大丈夫なんでしょうか?」

グレゴリー「ふむう」

箱からジェニーの腕が出てきてまるでお辞儀をするかのような動きの後、蓋を掴んで箱は完全に閉じられた。

次の瞬間。

道掛「うおっ、回った!」

薄井「ステージを転がってやがる……目回さねえのか?」

土橋「ジャンプまで……あの箱でよく出来るなぁ」

ステージを縦横無尽に動き回る箱に俺達は目が離せない。

しばらくして箱は段々と動きを遅くして、ステージの中央で止まった。

六山「あっ、止まったね」

御影「……」

動きを止めた箱の蓋が開いてジェニーが脚から飛び出してくる。

そして身体を捻りながら蓋を閉めたジェニーは……箱の上に座るように着地した。

ジェニー「イエイ!」

苗木「凄い!凄いよジェニーさん!」

兵頭「【超高校級の道化師】の名は伊達ではないという事ですね」

ジェニー「ありがとうです!」

佐場木や鞍馬も表情こそ変わらないけど、ジェニーに拍手を贈っていた。

だけど……俺この後にカスタネット叩くのか……

四方院「ジェニーさん、素晴らしかったですわ」

ジェニー「少しでもみんなをスマイルに出来たら嬉しいです!」

静音「奏、ぼく達も負けてられないよ!」

四方院「そうですわね。赤穂さん、苗木さん!こちらに来てくださいな」

赤穂「とうとうやらされるのか……」

御影「なに、兄貴もなんかするの?」

赤穂「ちょっとな……笑うなよ?」

静音と四方院さんの所に苗木と向かう。

赤穂「カスタネットか……叩くのいつ以来だっけかな」

苗木「トライアングルなんて小学校の時ぐらいしか鳴らした事ないなぁ……」

静音「大丈夫だ、ぼくの指揮通りにやればな!」

四方院「任せましたわ凪。それでは皆様行きましょう」

ステージに上がると早速牡丹が笑いをこらえているのが見える。

わかってるよ、カスタネット似合わないのは!

静音「えーっと……ああ、ここか」

静音がステージの中央に立つと俺達の方に向き直って指揮棒を構える。

その時の静音はいつも騒いでる姿とはまるで別人に見えた。

いざ演奏が始まるとさっきまで話し声も聞こえていた会場は静まり返っていた。

フルートに合わせてカスタネットとトライアングルの音が鳴る。

四方院さんのフルートは聞いているだけで心が落ち着いて、俺も苗木も聞き惚れて演奏を忘れそうで。

それをさせずに演奏を続けていられるのはひとえに静音の指揮があるからだ。

本当に別人みたいだよな……

静音「……」チラッ

赤穂「……?」

静音、何を見てるんだ?

その方向を俺も見ようとしたその時。

バチィッ!!

ブツンッ!

辺りが暗闇に包まれた。

赤穂「は!?」

「停電!?」

「漆黒の闇が世界を覆い尽くすか……ふははははっ!これもまた一興か!」

「なんで扉閉まってんだよ!?真っ暗じゃねえか!」

「遠見!どこにいる!」

「中央!今から倉庫の扉を開けに行くであります!」

「えっ、なんで?こんなの聞いてな……」

「と、とにかくみんなトライアングルでも聞いて落ち着いて!」

「うるさいからトライアングル連打はしないでよ!」

「六山さん、ゲーム機の明かりを使えませんか?」

「ごめん、ビックリして落としちゃった……」

「暗闇に目が慣れるには時間がかかります……ここはしばらく様子を――」







ガシャアアアアンッ!!






「な、何の音ですか今の……?」

「ガラスの割れる音……?」

「ね、ねえ、なんか飛んできたんだけど……これ、血の臭いがするよ!?」

「血……!?」

「これは、まさか……」

「遠見!まだか!」

「今開けるであります!」

ガラガラガラ……

遠見が扉を開けたらしい……外の光が差し込んで倉庫の中が見えるようになる。

赤穂「……!」

見えるようになったせいかはっきりと感じた。

血の臭い……

この数年でわかるようになってしまった死の気配を。







【その胴体はガラスの電気スタンドに押し潰されていた】

【胸元、腹部に突き刺さるガラスの破片】

【超高校級の指揮者静音凪……】

【その身体から流れる血はステージを真っ赤に染め上げていた】






ピンポンパンポーン…!







モノクマ「死体発見!死体発見!」

モノクマ「捜査タイムの後学級裁判を始めまーす!」












CHAPT.1【正義という名の××】(非)日常編 END

生き残りメンバー17→16人

NEXT→非日常編












CHAPT.1【正義という名の××】非日常編






なんだよこれは……

俺達はさっきまで懇親会をしていて、和やかな雰囲気だったはずなのに……

四方院「……な、ぎ?」

苗木「う、うわあああああっ!?」

なんで、静音は血まみれで倒れてるんだよ……!?

佐場木「下がれ!」

佐場木がステージに上がって静音の腕をとる。

そして舌打ちをした佐場木は……首をただ横に振った。

佐場木「死んでいる。最も、この傷で生きていたら奇跡だがな」

津浦「み、Mr.佐場木……何かの、冗談ですよね……?」

佐場木「確かめてみるか?俺は推奨しないがな」

静音が死んだ……その事実がようやく頭で理解出来たんだろう、みんなは半ばパニックになっていた。

土橋「な、なんで!?なんでこんな事になったのよ!?」

六山「落ち着け落ち着け落ち着け……」カチカチ

道掛「ありえねえって……さっきまであんなに楽しくやってたんだぜ!?」

モノクマ「それは本当に全員そうだったのかなー?」

薄井「出やがったな……!」

兵頭「今の言葉はどういう意味でしょうか?」

モノクマ「そのままの意味だよ。だって静音凪さんはオマエラの中の誰かに殺されたんだからね!」

赤穂「俺達の誰か……この状況を見て本気で言ってるのか!?」

静音の死は、どう見ても……

モノクマ「うぷぷ、事故だって言いたいのかな?」

苗木「そ、そうだよ!これは静音さんに電気スタンドが倒れた事故にしか見えないって!」

モノクマ「だとしたらその事故を引き起こした人間がクロって事になるね!」

モノクマ「とにもかくにも人が死んだ以上、オマエラにはやってもらうよ」

モノクマ「スリルと絶望溢れる学級裁判をね!」

鞍馬「学級裁判……」

モノクマ「たとえこれが事故だとしてもオマエラがやる事は変わりません!」

モノクマ「捜査タイムで静音さんを死に追いやったクロを見つけ出して処刑台に送る!」

モノクマ「オマエラはこの先未来機関で絶望を殺す事になるんだからデモンストレーションにはうってつけだよね!」

御影「何言って……」

モノクマ「それでは早速お約束のー……」

モノクマ「ザ・モノクマファイルー!」

モノクマ「それじゃ、ボクは準備があるんでバイバーイ!」

遠見「……どうするでありますか」

薄井「どうするも何も選択肢あるのかよ……」

グレゴリー「絶望演舞を乗りきらねば待つのは冥界への旅立ち……か」

如月「僕達は従うしかないんですか……!」

赤穂「……」

モノクマに逆らえば死ぬ、如月さんの場合は他の誰かが。

今の状況で俺達は……捜査をする以外になかった。

     【捜査開始】

佐場木「とにかくまずは見張りを2人つけるぞ」

道掛「じゃあ俺がやるぜ。頭使うの得意じゃねえしさ……」

遠見「ならばもう1人は自分が。道掛殿が相手でも何とか出来るでありますから」

ジェニー「どうしてこうなったですか……ぐすっ」

土橋「ジェニー……」

兵頭「それを突き止めるためにも、捜査をするしかありませんね」

四方院「……わたくしは凪を殺した人を許しません」

四方院「必ず、見つけて……」

その時の四方院さんに口を挟める人間は誰もいなかった。

……もし、もしもだ。

牡丹が殺されたら俺も、同じようになっただろう。

そう思えるほど四方院さんの瞳には……家族を殺されたような怒りが滲んでいた。

赤穂「……モノクマファイルか」

気分が悪いけど見るしかないんだよな。

【被害者は静音凪。
死体発見現場は港・第三倉庫。
死亡推定時刻は午後7時52分。
被害者はガラスで胸から腹部にかけてを損傷している。
その他の外傷はなし】

赤穂「やっぱりガラスで静音は……」

はっきり書いてある死亡推定時刻は電気スタンドが割れた時間って事か。

赤穂「……」

だけどなんだ?

何か違和感がある……

コトダマ【モノクマファイル1】を手に入れました。
〔被害者は静音凪。
死体発見現場は港・第三倉庫。
死亡推定時刻は午後7時52分。
被害者はガラスで胸から腹部にかけてを損傷している。
その他の外傷はなし〕

静音の身体には大量のガラス片が突き刺さっている。

上を向いたまま閉じられた眼はもう開かないんだ……

道掛「転んだところに電気スタンド倒れてきたって感じだよな」

だとしたらクロは電気スタンドを倒した人間って事になるな……

赤穂「……?」

ちょっと待てよ……

さっきは事故にしか見えなかったけど……

これ、おかしくないか?

コトダマ【静音の死体】を手に入れました。
〔静音は仰向けに倒れており、胸元から腹部にかけてガラス片が突き刺さっていた〕

赤穂「……んっ?」

何かステージに……静音の指揮棒か。

赤穂「ステージに真っ直ぐ刺さってるな……んっ?」

赤穂「……指揮棒が、真っ直ぐ?」

コトダマ【静音の指揮棒】を手に入れました。
〔静音が使っていた指揮棒。
静音の死体近くにあり、ステージに真っ直ぐ立った状態で刺さっていた〕

苗木「ねえ、赤穂クン。ちょっといいかな?」

赤穂「どうした?」

苗木「静音さん、停電の前になんか変じゃなかった?」

そういえば……

赤穂「どこか見ているみたいだったな」

確かあっちの方を……

鞍馬「……」

赤穂「鞍馬。そこに何かないか?」

鞍馬「ありますよ……こんな物がね」

鞍馬が黒い布を取り払うとそこには……

苗木「これ……スポットライト?しかもステージに向けられてるけど」

赤穂「なんでこんな物がここにあるんだ」

しかも静音はこれのある方を見ていた……何か関係があるのか?

コトダマ【スポットライト】を手に入れました。
〔ステージ横にあったスポットライト。
黒い布を被せられていた。
ステージに光が当たるように向けられている〕

ジェニー「これってどうしたです?」

土橋「うーん、もしかしたら……」

赤穂「何かあったのか?」

土橋「いや、ちょっとコンセントが変なんだよ」

赤穂「コンセントが?」

土橋とジェニーが見ていたコンセントは……なぜか周りが焦げたような跡があった。

赤穂「なんだこれ……」

土橋「……停電の原因これじゃない?」

赤穂「えっ?」

土橋「多分埃とか詰まってる所にコンセント差したんだよこれ。だからショートして停電した……下手したら火事になってたよ」

赤穂「ショート……」

ジェニー「でもでもスタンドはみんな点いてたですよ?」

土橋「つまり電気スタンド以外の何かって事だけど……ちょっとたどってみるね」

土橋がコードをたどって歩いていく。

あれ?あの方向にあるのは……

土橋「うわっ、何このライト!」

赤穂「……!」

あのスポットライトのコードがこのコンセントに……!?

コトダマ【焦げたコンセント】を手に入れました。
〔倉庫内のコンセントの1つが焦げていた。
土橋によるとこのコンセントのショートが停電の原因らしい〕

コトダマ【スポットライトのコード】を手に入れました。
〔スポットライトのコードは停電を起こしたコンセントに差してあった〕

赤穂「このスポットライト……いったいなんでこんな所にあるんだ?」

遠見と佐場木なら何か知ってるか……?


――――


佐場木「あれは静音が持ち込んだ物だ」

赤穂「静音が?なんのために」

佐場木「サプライズと言っていた。内容は言えないが危ない事にはならないと頼み込んできたから許可を出して運び込んだ」

佐場木「だが、こんな事なら許可するべきではなかったのかもしれん」

サプライズか……

コトダマ【静音のサプライズ】を手に入れました。
〔静音がパーティー中に行おうとしていたサプライズ。
スポットライトを使うものだったらしいが……〕

キラッ

赤穂「っ……?」

なんだ、今少し眩しく……

四方院「……」

赤穂「四方院さん?」

眩しさの原因は四方院さんの着ている服についた装飾が光ったからみたいだ。

そういえば気にしてなかったけど四方院さんの服……いつもと違うな。

赤穂「四方院さん、ちょっといいか?」

四方院「……なんでしょう」

赤穂「その服……いつもと違うけどどうしたんだ?」

四方院「これですか……凪が着てほしいと渡されましたの」

赤穂「静音が……」

四方院「わたくしは装飾が多すぎると思ったのですけれど、凪はどうしてもこれがいいと言って……」

四方院「……」

四方院「……すみませんけど、1人にしてくださいませんか」

赤穂「あっ、ごめんな……」

四方院「…………凪」

今静音の事を聞くのは無神経過ぎたか……

だけどなんとなく、静音のサプライズの内容が見えてきた気がするぞ……

コトダマ【四方院のドレス】を手に入れました。
〔静音にどうしても着てほしいとプレゼントされたらしい。
装飾がたくさんついており、光を反射するようだが……〕

明日から再開します。

グレゴリー「鎮魂の指揮者は不運なる檻に囚われたか……もしくは黄泉よりの使者によって煌めきの電光をその身に受けたか……」

津浦「事故か他殺かは確かに重要ですね……っ」ブルッ

グレゴリー「……言の葉の魔術師。恐怖に苛まれているならば苦行に身を任せずともよいのではないか」

津浦「い、いえ、大丈夫です」

赤穂「……本当に無理はしない方がいいぞ」

津浦の反応は普通の人間なら当たり前だ。

俺は外の世界……特にあの街で死を身近に感じすぎたから捜査なんてやれる。

だけどこれから未来機関で本格的に働こうとしていたみんなにはキツいはずだ。

津浦「Mr.赤穂……しかし、捜査はしなければ」

赤穂「別にここだけしか捜査する場所がないわけではないんじゃないか?」

津浦「そう、ですか?」

赤穂「静音のコテージとか、あのスタンドがあったマーケットとか……そういった所を捜査してみたらどうだ?」

津浦「……」

グレゴリー「言の葉の魔術師よ。我も聖痕抱きし英雄の言霊に同調する」

津浦「Mr.グレゴリー……」

グレゴリー「孤独に身を震わせるならば我も共に行こう。この惨劇の舞台では言の葉の魔術師の真価は発揮されん」

津浦「……わかりました。Mr.赤穂、Mr.グレゴリー……ありがとうございます」

赤穂「いや、気にしないでくれよ」

グレゴリー「ならば旅立つぞ言の葉の魔術師!鎮魂の指揮者の魂に報いるためにもな!」

津浦「は、はい」

行ったな……後で何か見つけたか聞いておくか。

遠見「……」

赤穂「遠見」

遠見「なんでこんな事になったのでありますか」

赤穂「……」

遠見「自分は何も防げなかった……隊長に顔向けが出来ないでありますよ……」

道掛「あー……」

佐場木「遠見、泣き言は全て終わってからにしろ。お前が泣こうが静音は生き返らないんだ」

遠見「っ」

道掛「ちょっ、キツくね?」

佐場木「事実を言ったまでだ。そもそも今回の事件、責があるなら俺だ」

赤穂「どういう意味だ?」

佐場木「ガラススタンドの許可、遠見を単独行動させてしまった事と間違った部分への見張りの指示」

佐場木「わざわざ映像の記録をしてまで身体検査をしたのにこれだ」

赤穂「記録?」

遠見「身体検査の時、念のためにカメラでその様子を撮影していたのであります」

佐場木「グレゴリーがビデオカメラを所持していたのでな。それを使った」

道掛「あれビデオカメラで記録されてたのかよ!」

佐場木「ふん、念のため確認しておくか……これがその記録だ」

佐場木はビデオカメラを取り出すと俺達に見せるようにして再生ボタンを押す。

そして身体検査の時の光景が流れ始めた。

静音『身体検査ってめんどくさいな……』

遠見『まあまあ、パーティーを円滑に進めるためでありますから』

佐場木『それよりこのスポットライトはなんだ?』

静音『ちょっと意見もあったからサプライズに使う!』

遠見『サプライズでありますか?内容は……』

静音『内緒内緒!ステージの横に置くだけだからいいだろ!』

佐場木『……ふん、まあいいだろう』

――――

道掛『いやっほう!』

遠見『なっ!?ストップストップであります道掛殿!』

道掛『おっ、どうした?』

佐場木『貴様……いきなり自転車で飛び込んできてなんの真似だ』

道掛『何ってパーティーで俺の華麗なテクニックを見せるんだよ!盛り上がる事間違いなしだぜ!』

佐場木『今すぐ降りろ……!』

道掛『えっ!?』

――――

兵頭『厳重警戒ですね』

遠見『時期が時期でありますから……我慢してほしいであります』

兵頭『ふふっ、別に異論はありませんよ。私も何事もなくすんでほしいので』

佐場木『……』

――

グレゴリー『その願いは聞き届けられん!』

佐場木『なんだと?』

遠見『グレゴリー殿、そう言わずに……ちょっとその仮面を外してほしいだけでありますから』

グレゴリー『この仮面は我が皮膚と同じ!外すなど残虐なる一手よ!』

佐場木『くだらん事を言ってないで外せ……!遠見、押さえつけろ!』

グレゴリー『うおっ!?やめろ、我が封印を解くな!ぬおおおおおっ!?』

――――

津浦『はい、どうぞ』

遠見『はぁ、はぁ……確かに』

佐場木『くそっ、手こずらせてくれる……!』

津浦『あの、何かあったんですか?』

遠見『あはは、ちょっとした大捕物を……』

――――

遠見『ステージ用の木材、確かに確認したであります。次は身体検査を』

土橋『えっと、身体検査はいいけど半次も一緒なの?』

佐場木『なにか問題があるのか』

土橋『いや、こういうのって服脱ぐんでしょ?さすがに男の子の前でそれは……』

佐場木『……そこまでしなくていい』

遠見『自分がしっかり服の上から改めるでありますから!』

土橋『あっ、それなら良かった』

薄井『……』

遠見『なんだか不機嫌でありますね……』

薄井『……』パチパチッ

佐場木『んっ?静電気か?』

遠見『というよりは、空気がピリピリしてるであります……』

――

苗木『ボク身体検査なんて初めてだよ』

遠見『そうなのでありますか?』

苗木『うん、ボクはごく普通の生活してきたからね』

佐場木『海外に出た事もないのか』

苗木『うーん飛行機ってちょっと怖くて』

遠見『気持ちはわかるであります……空爆は怖いでありますよ』

佐場木『おそらく意味が違うぞ』

――

六山『ゲームセットでーす』

遠見『リュックにゲーム以外がないであります』

佐場木『依存症だな』

六山『むっ、そんな事ないよ。ゲームは1日20時間って決めてるもん』

遠見『立派な依存症であります……!』

――

四方院『ご苦労様ですわお2人共』

遠見『いつものドレスとは違うのでありますね』

四方院『凪からの贈り物ですの。わたくしは派手な気がしたんですけれど』

佐場木『……あいつは張り切っているようだからな』

四方院『ふふふ、そうですわね。だからわたくしは応えてあげたいと思いますわ』

――――

如月『どうぞ』

佐場木『ふん、貴様は存在そのものが危険物だがな』

遠見『佐場木殿、そう身構えないで……』

佐場木『……ちっ、さっさと終わらせるぞ』

如月『はい』

――――

ジェニー『今日は頑張るです!』

遠見『ジェニー殿!?』

佐場木『いつの間に入った……!』

ジェニー『ハンジとレイキが忙しそうでしたから……ダメだったですか?』

遠見『と、とにかくジェニー殿ちょっとこちらへ!その木箱も一緒に!』

佐場木『……ちっ、そこまで冷静さを欠いていたか俺は』

――――

鞍馬『……』

遠見『……』

佐場木『何をしている』

遠見『隙が見当たらないであります……!』

鞍馬『……』

佐場木『普通に調べればいいだけだろう……おい鞍馬』

鞍馬『どうぞお好きに』

――――

赤穂『身体検査か……なあ、この杖も凶器になるのか?』

遠見『さすがにそこまでは……』

佐場木『したいところだがな』

御影『それしたら兄貴どうやって歩くのさ』

赤穂『……牡丹に支えてもらうか』

御影『無茶言わないでよ』

――――

赤穂「これが身体検査の記録か……」

道掛「この時はこんな事になるなんて思わなかったよな」

遠見「そうでありますね……」

佐場木「……」

コトダマ【身体検査の記録】を手に入れました。
〔パーティー前にビデオカメラで記録されていた身体検査の様子。
内容は>>161-163〕

本日はここまでで。

調子が取り戻せない……

如月「ふむ……」

赤穂「如月さん、何かわかりましたか?」

如月「僕も悪を探すために日常的に捜査はしていますが……停電の瞬間の静音さんを見ていないのは痛いですね」

赤穂「見てなかったんですか?」

如月「薄井さんと話している最中急に彼がトマトジュースを吐きまして……グラスを変えにテーブルにいく薄井さんを見ていたので」

赤穂「トマトジュースを吐いたってどうして?」

如月「多分僕が好きだと言ったからですね。友人としてという意味でしたが勘違いさせてしまったようで」

何をやってるんですか如月さん。

如月「ただ、その時のテーブル付近にいた人ならわかりますよ」

赤穂「立ち位置は重要かもしれないですね……誰ですか?」

如月「まず今言ったように薄井さん。それと見張りをしていた遠見さんに1人でいた佐場木さん」

如月「別のテーブルでは土橋さん、津浦さんに道掛さんが話しかけていました。後グレゴリーさんと六山さんが何やら話していました……ああ、御影さんも1人でしたね」

如月「僕が見落としたのでなければテーブル付近にいなかったのはジェニーさん、鞍馬さん、兵頭さんですね」

ステージには俺と苗木、静音と四方院さんがいた……

手がかりになればいいけどな……

コトダマ【如月の証言】を手に入れました。
〔如月はトマトジュースを吐いた薄井を目で追い、停電直前テーブルの方を見ていた。
ジェニー、鞍馬、兵頭以外はテーブル付近にいたようだ〕

赤穂「……んっ?」

薄井「ゲホッ!クソッ、あいつのせいでまだ喉がいてえ……」

赤穂「大丈夫……じゃなさそうだな」

薄井「当たり前だろ!」

咳き込む薄井のシャツは胸元から濡れている……確かトマトジュースだよな?

黒だからまだ目立たないけど白かったら大惨事だなこれ……

薄井「兵頭のヤツには実は血じゃありませんよね?とかふざけた事言われるしよ……あのヒーローのせいで踏んだり蹴ったりだ!」

赤穂「それはまた……ところで薄井は何か見てたりしてないのか?」

薄井「何かって言ってもこの有り様でそれどころじゃ……いや、待てよ」

薄井「そういや停電のちょっと前、ジェニーのヤツがステージ横で何かしてたみたいだぜ?」

赤穂「ジェニーが?」

薄井「アイツの性格ならすぐテーブルに来るだろうから気にはなってたんだよ。で、ちょっと見回したらいやがったんだ」

赤穂「……ステージ横に、か」

コトダマ【薄井の証言】を手に入れました。
〔ジェニーが停電直前にステージ横で何かをしていたらしい〕

兵頭「しかしわざわざ置物まで見張らせたというのにスタンドが凶器になってしまうとは思いもしませんでしたね」

赤穂「さすがに予想外だったな」

兵頭「テーブルに置かれた置物は6つありますが全て無事……遠見さんが見張らなければ誰かが凶器にしたんでしょうか」

赤穂「どうだろうな……持ち運ぶにしても使いにくいだろ」

兵頭「音もするでしょうしね……」

コトダマ【ガラスの置物】を手に入れました。
〔倉庫に持ち込まれたガラスの置物や壺。
6つあるが全て割れたりはしていない〕

赤穂「牡丹、大丈夫か?辛いなら外に……」

御影「いや、大丈夫……」

そういう牡丹の顔は蒼白で今にも倒れてしまいそうだ……

やせ我慢してるなこれは……

御影「ねえ兄貴」

赤穂「んっ?」

御影「私、これでも楽しんでたんだよ」

赤穂「……」

御影「なのにこんな事になって……なんか、なんて言えばいいのか……」

赤穂「……」ポンッ

御影「っ」

赤穂「辛いんだろ?静音がこんな事になって」ナデナデ

御影「……うん。もっと話しとけばよかった」

赤穂「そうか」ナデナデ

御影「……一応何かしようと思って、用意したんだけどな」

赤穂「なんだそれ?ストップウォッチ?」

御影「1分ピタリで止めるやつ。私結構得意なんだよ」

赤穂「いつの間にそんな特技を身に付けたんだ……」

御影「兄貴達の演奏中に練習がてらやってたんだけどあのガラス割れる音した時につい止めちゃったんだよね」

赤穂「ふーん……」

御影「そういえばそのままだったから初期化しとこ」

赤穂「……んっ?」

牡丹の持っているストップウォッチ。

そこに映った時間……なんとなく気になる。

赤穂「牡丹、ちょっと待て」

御影「えっ?」

赤穂「もしかしたら重要になるかもしれないからその表示そのままにしてくれないか?」

御影「まあ、いいけど」

コトダマ【ストップウォッチ】を手に入れました。
〔御影が使おうとしていたストップウォッチ。
タイマーは3分で止まった事を示している〕

六山「はあ……」カチカチ

赤穂「六山……こんな時までゲームはどうなんだ」

六山「わたしだってしなくてすむならしてないよ……だけど怖い」

赤穂「……」

六山「怖くてたまらないんだよ。今すぐ逃げ出したいし、捜査なんてできる気がしない」

赤穂「……だよな」

六山「でもこのままじゃダメな事はわかってる……だからせめて落ち着きたいんだよ」

六山がゲームを精神安定のために使ってるのは今まで見てきてる。

それを責めるのはさすがに冷たい、か。

六山「……そういえば赤穂くん」

赤穂「どうした?」

六山「停電した時ステージがボンヤリ光ってたけどあれなんだったの?」

赤穂「……ステージが、光ってた?」

六山「うん、本当にボンヤリだけど」

あの時そんな事になってたのか?

ステージ……もう一度調べる必要があるな。

コトダマ【六山の証言】を手に入れました。
〔停電の時ステージがボンヤリ光っていたらしい〕

赤穂「……」

六山の話だとステージが光ってたらしいけどどこにそんな……んっ?

赤穂「静音の靴になんか薄く緑色のものが……」

近くで見ようと近づいてみると影で暗くなった静音の靴底がボンヤリ光る。

これは……夜光塗料?

なんで静音の靴底に夜光塗料なんて……

赤穂「そういえば静音はステージに立つとき何かを目印にしてたよな……」

静音の脚の先……演奏の時静音が立っていた場所を見ると×の形にテープが貼ってあった。

そこに手をかざして暗くしてみると……ボンヤリと光りだす。

赤穂「このテープに薄く夜光塗料が塗ってあったのか……」

静音はこれを踏んでたから靴底に夜光塗料がついてたんだな……

赤穂「…………は?」

ちょっと待て。

静音は仰向けに倒れてる。

そして脚は入り口側に、頭はステージ奥……演奏中四方院さんがいた方向に向けられている。

赤穂「……おかしい」

この倒れかた……どう考えてもおかしい……!

コトダマ【夜光塗料】を手に入れました。
〔ステージについていた夜光塗料。
×の形に貼ったテープに塗られており、それを踏んだらしい静音の靴底にもついていた〕

コトダマ【静音の倒れかた】を手に入れました。
〔静音は脚を入り口に、頭を四方院のいる方に向けて倒れていた〕

赤穂「えっと……」

夜光塗料がいつ塗られてたか、これを調べればわかるはず……

赤穂「あった」

ジェニーがパフォーマンスに使った木箱……それに夜光塗料がついていた。

つまりあのテープは少なくともジェニーがパフォーマンスを始める前からついていたわけか。

赤穂「土橋に話を聞いてみるか」

――――

土橋「テープ?なにそれ」

赤穂「ステージに貼ってあった×の形のテープだよ。立ち位置をわかりやすくするために土橋が貼ったんじゃないのか?」

土橋「いや、アタシは知らないよ……そもそもアタシ演奏に関して素人なのに勝手にそんなの出来ないって」

土橋「ステージを完成させた時何人か強度の確認に上がってたし、その時に凪が貼ったんじゃないの?」

赤穂「うーん……ちなみに上がった中にジェニーはいたか?」

土橋「ジェニーは箱の方を確認してたからいなかったよ。というかなんでジェニー限定?」

赤穂「いや、ちょっとな」

コトダマ【夜光塗料】をアップデートしました。
〔ステージについていた夜光塗料。
×の形に貼ったテープに塗られており、静音の靴底やジェニーが使った木箱にもついていた〕

コトダマ【土橋の証言】を手に入れました。
〔ステージを完成させた後何人かが強度の確認に上がっていた。
その中にジェニーはいなかったようだ〕

キーンコーン、カーンコーン…

モノクマ「あー、そろそろやっちゃう?やっちゃいます?」

モノクマ「みんなお待ちかねの学級裁判をさ!」

モノクマ「オマエラ中央の島に集合してくださーい!」

ブツン!

赤穂「……」

学級裁判、か。

あの生放送みたいに疑いあって、糾弾しあう胸糞悪いものが始まるんだな……

赤穂「中央の島、行かないとな」

――――

グレゴリー「いよいよ絶望演舞が開幕するのだな」

赤穂「グレゴリー、津浦。何か手がかりは見つかったか?」

津浦「あまり芳しくは……マーケットは7つあったらしいガラスの置物などが全てなくなっていた事ぐらいしか……」

グレゴリー「大罪の煌めきは世界に散らばったようだな!」

津浦「ですがMs.静音のコテージにこんなメモが」

赤穂「……」

そうか、やっぱり静音が……

コトダマ【ガラスの置物】をアップデートしました。
〔倉庫に置かれていたガラスの置物や壺。
6つあるが全て割れたりはしていない。
マーケットには7つあったらしいが全てなくなっている〕

コトダマ【静音のメモ】を手に入れました。
〔静音のコテージにあったメモ。
内容は【ライト→ドレスがキラキラ→みんな奏に注目!→完璧!
これでもっともっとみんなが奏を好きになるよね!】〕

【中央の島・未来機関第20支部】

モノクマ「オマエラ集まったみたいだね!」

兵頭「この建物で学級裁判を?」

佐場木「未来機関の支部をいつの間にそんなものに改造していたとはな」

モノクマ「うぷぷ、そんな褒めないでよ!今からそんなだと中を見たら感激に打ち震える事になっちゃうよ?」

遠見「褒めてないであります……」

モノクマ「それではオマエラ中にお入りください!学級裁判のステージにご案内しましょう!」

四方院「……」

苗木「あっ、四方院さん!」

土橋「……行っちゃったね」

如月「無理もないでしょう。静音さんはそれだけ四方院さんにとって大事だったと考えれば、ね」

赤穂「……俺達も行こう。待たせたらモノクマが何をするかわからない」

四方院さんを追うように俺達は建物に入っていく。

その先には地下に伸びていくエスカレーターが待ち構えていた。

津浦「この先に……」

薄井「ちっ、まるで地獄行きの通路だな」

鞍馬「……クロにとっては実際にそうなるでしょうね」

ジェニー「あう……もしかしたらボク達帰れないですよね……」

六山「大丈夫……と思うしかないよ」カチカチ

口々に不安を漏らしながらエスカレーターに乗って俺達は降りていく。

……俺達の運命を決めるその場所に向けて。

そして長い、いや、もしかしたら短いかもしれない……そんな時間を経て。

俺達はそこにたどり着いた。

【学級裁判場】

モノクマ「来たねオマエラ!」

モノクマ「ようこそ学級裁判場へ!」

モノクマ「数多くの絶望を産み出してきたこのスペシャルな舞台!」

モノクマ「うぷぷ、それじゃあ始めますか!」

モノクマ「名前の書かれた席についてくださーい!」

赤穂「……」

学級裁判。

塔和シティとどちらがマシか考えて……すぐにその考えを打ち消す。

どちらもろくなものじゃないからだ。

【超高校級の指揮者】静音凪……

四方院さんを慕い動機が発表されても懇親会を真っ先に諦めなかった……

そんなあいつを殺した犯人は……

六山「緊張、してきたなぁ……」カチカチ

ジェニー「……ううっ」

道掛「やるしか、ねえんだよな……」

四方院「必ず、凪を死に追いやった犯人を……」

遠見「自分には責任があるであります……犯人を見つける責任が」

この中に、いるんだ。

佐場木「こんなもの、裁判でもなんでもない」

グレゴリー「絶望演舞、その果てに待つものは……」

津浦「ワタシはやれる事を……」

土橋「やらないといけないんだよね……たとえ事故でも……」

薄井「ちっ……」

御影「……」ギュッ

もしかしたら事故かもしれない……だけど俺達はやるしかない。

兵頭「これが学級裁判ですか」

苗木「彼みたいには出来ないかもしれないけど、頑張ってみるよ」

鞍馬「……」

如月「犯人は暴きます。そして……」

議論し、暴き、そして俺達かクロが死ぬ。

赤穂「……くそっ」

仮にもヒーローなのに。

この、学級裁判に対して。

俺は、あまりに無力だ。

次回より学級裁判に入ります。

・コトダマ一覧表

【モノクマファイル1】>>151

【静音の死体】>>152

【静音の指揮棒】>>153

【スポットライト】>>154

【焦げたコンセント】
【スポットライトのコード】>>155

【静音のサプライズ】>>156

【四方院のドレス】>>157

【身体検査の記録】>>163

【如月の証言】>>165

【薄井の証言】>>166

【ストップウォッチ】>>168

【六山の証言】>>169

【静音の倒れかた】>>170

【夜光塗料】アップデート版
【土橋の証言】>>171

【ガラスの置物】アップデート版
【静音のメモ】>>172

静音凪が死亡した。
一見すると事故にしか見えない状況。
しかし所々に散りばめられた違和感が赤穂に告げる。
静音は殺された。
そしてその犯人は……仲間の中にいるのだと。


     【学級裁判開廷!】

モノクマ「はいはい、それでは学級裁判の説明をしまーす!」

モノクマ「学級裁判ではオマエラに誰が犯人かを議論してもらいます!」

モノクマ「その結果は投票によって決定され、正しいクロを指摘できればクロがおしおき」

モノクマ「ただし間違えたら……クロ以外の全員がおしおきされ、クロは自由の身となるのです!」

四方院「凪の仇、必ず暴いてさしあげますわ……!」

苗木「えっとさ……四方院さんが張り切ってるところ悪いんだけど、これってそもそも殺人じゃないよね?」

兵頭「事故か他殺か……まずはそれをはっきりさせなければいけませんね」

赤穂「……」

事故か他殺か。

それによって流れは大きく変わるはずだ。

ひっかかる所はしっかり指摘しないとな……

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>176
【モノクマファイル1】
【静音の死体】
【夜光塗料】

苗木「静音さんは……」

苗木「【本当に殺された】のかな?」

グレゴリー「闇の中に潜む死神……」

グレゴリー「鎮魂の指揮者はその心を魅了してしまったわけか」

津浦「Ms.静音は停電になって焦ってしまったんでしょうか転んでしまった」

道掛「なるほどな!そこで【背中めがけて電気スタンドが倒れた】わけか!」

道掛「……って、その場合犯人は誰だよ!?」

今の言葉……現場の状況とは違うぞ。

【背中めがけて電気スタンドが倒れた】←【静音の死体】

赤穂「それは違ってるぞ!」


赤穂「道掛、静音の死体は仰向けだぞ」

道掛「……あっ、そういえばそうだな」

遠見「見張りをしていたのになぜ間違えるのでありますか!?」

道掛「いや、ほら……転んだって考えると前に倒れたイメージの方が強いだろ!」

土橋「確かに転んだって聞いちゃうとうつぶせになってる光景の方が浮かぶよね」

佐場木「だからといって見張りがそんな勘違いをするか」

道掛「うっ」

グレゴリー「音速の疾走者よ……絶望演舞で最も真実から遠いようだな」

道掛「そこまで言わなくてもいいじゃねえかよ!」

御影「話がずれてない……?」

如月「みなさん、少し落ち着きましょう」

薄井「そうだぜ。今話さなきゃいけねえのは道掛がアホかどうかじゃねえだろ」

ジェニー「あのあの、結局ナギはどうして?」

赤穂「その事なんだけどな……俺は今回の事事故の可能性は低いと思うぞ」

四方院「……凪は殺されたとおっしゃるんですか?」

赤穂「ああ」

六山「なんで?別に事故でも不思議はないはずだよね?」

完全な根拠とは言い難い……だけどこれで流れは変えられるはずだ。

【静音の指揮棒】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「現場には静音の指揮棒があった……だけど真っ直ぐステージに刺さってたんだよ」

御影「それが何か問題なわけ?」

赤穂「ちょっと想像してみてくれ。もし静音が転んで指揮棒を落としたなら……指揮棒は真っ直ぐ刺さると思うか?」

津浦「確かに……その場合指揮棒は刺さらずに落ちている方が自然ですね」

兵頭「真っ直ぐ刺さるという事は、静音さんが持っていた指揮棒を鉛直下向きに落としたと見た方がいいでしょうね」

佐場木「つまり静音が立っていた時に指揮棒を落とすような何かが起きた可能性が高いか」

道掛「やっべえよ苗木」

苗木「えっ?」

道掛「なに言ってんのか全くわかんねえ!」ドヤッ

苗木「なんでドヤ顔でそれ言ったの!?」

鞍馬「……はあ」

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>176
【スポットライトのコード】
【焦げたコンセント】
【スポットライト】


遠見「あの停電時静音殿に何かがあったのは明白でありますな……ううむ」

>漆黒の闇に紛れし死神……

停電した倉庫内で犯人は……<

御影「そもそもあの停電ってなんで起きたのさ?」

>鎮魂の指揮者を今宵の生け贄に定めた

Ms.静音を狙った<

六山「〔ブレーカーが落ちた〕とか?」

苗木「〔スタンドの電球が切れた〕のかも」

>つまり血塗られし死神の鎌を持ちし者は

つまりMs.静音を殺害した犯人は<

土橋「あれは〔コンセントがショート〕したんだよ」

兵頭「〔偶然止まったのでは〕?」

>闇を見通す力を持つ者よ!

夜目がきく人です!<

>少し黙っていろ……!

〔コンセントがショートした〕←【焦げたコンセント】

赤穂「それが正しいはずだ!」


赤穂「土橋の言ったように、あの停電はコンセントがショートしたから起きた事だ」

土橋「コンセントの1つが焦げてたんだよね。多分埃とか詰まってたんだと思うよ」

佐場木「コンセントか……埃が詰まっていたのは人為的かもしくは偶然か」

赤穂「停電を確実に起こしたかったならそこらへんの埃を押し込んだんだろうな……」


四方院「その音色は聞くにたえません!」反論!


赤穂「四方院さん……!?」

四方院「コンセントに埃が詰まっていてショートした?」

四方院「そのような事があるはずないですわ……!」

【反論ショーダウン開始!】

・コトノハ>>176
【スポットライト】
【静音の倒れかた】
【ガラスの置物】

四方院「コンセントがショートした……」

四方院「それならばあの懇親会が始まってすぐに停電は起きていたはずですわ!」

四方院「しかしそれは起きなかった……」

四方院「つまりあなたの推理は的外れです赤穂さん」

赤穂「確かに使われていたのがあの3つの電気スタンドだけならそれも通る」

赤穂「だけどあの3つ以外にもコンセントが使われたなら話は別だ!」

四方院「いったい何を使ったと言うのですか!?」

四方院「【あの倉庫にあった電気を使うものはわたくしが持ち込んだ3つの電気スタンドのみ】」

四方院「そんな状態でどうやってコンセントをショートさせると言うんですの!?」

【あの倉庫にあった電気を使うものはわたくしが持ち込んだ3つの電気スタンドのみ】←【スポットライト】

赤穂「その反論に正義はない!」


赤穂「あったんだよ四方院さん。電気スタンド以外にもな」

四方院「は?」

赤穂「ステージの横にスポットライトがあったんだ」

兵頭「スポットライトですか?」

佐場木「そうだ。持ち込まれたのは俺と遠見も把握していた」

遠見「こんな事になるとは、さすがに予測していなかったでありますが……」

グレゴリー「ほう、ならばその漆黒の闇を作りし灯火を持ち込んだ者こそ死神の鎌を持ちし者というわけか」

佐場木「……いや、それはない」

苗木「えっ、どういう事?あのスポットライトが原因ならそれを持ち込んだ人が……」

赤穂「スポットライトを持ち込んだのは……静音なんだ」

津浦「えっ……」

御影「スポットライトを持ち込んだのが……被害者って事?」

道掛「だ、だったらスポットライトは関係ねえんじゃねえの?」

赤穂「いいや、スポットライトは停電を起こした原因だ」

それはこれで簡単に証明できる。

【スポットライトのコード】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「スポットライトのコードはさっき言った焦げたコンセントに刺さってたんだ。それは土橋とジェニーが証人だ」

土橋「間違いないよ。たどったら確かにスポットライトのコードだった」

ジェニー「そうですです……」

四方院「……わたくしは、何も聞いてませんわ」

六山「四方院さん……」

四方院「なぜ、なぜ凪はスポットライトを持ち込んだりしたのですか?凪は今回の件に関与していたと言うんですの?」

四方院「わかりませんわ……凪の事なのに、わたくしは……」

薄井「オレもわかんねえな……なんで静音はスポットライトなんて持ってきたんだよ?」

静音がスポットライトを持ち込んだ動機か……

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>176
【静音のサプライズ】
【四方院のドレス】
【薄井の証言】

四方院「凪はなぜ……」

津浦「スポットライトなど使う用途は限られていますよね?」

如月「しかし【電気スタンドは十分あの倉庫を照らしていた】はずです」

御影「だったらなんで?」

六山「【予備に持ってきた】とかかなぁ……」

グレゴリー「もしやあの【漆黒の闇を作り出すのが目的】ではなかろうな……」

四方院「凪はそんな事をする子では……!」

【漆黒の闇を作り出すのが目的】←【静音のサプライズ】


赤穂「それは違ってるぞ!」


赤穂「静音は停電を起こしたかったわけじゃない!」

グレゴリー「ならばその真意はどこにあるというのだ!」

赤穂「静音がスポットライトを持ち込んだ理由……それはサプライズのためだったんだ」

津浦「サプライズ?」

赤穂「佐場木、遠見。身体検査の時に静音はスポットライトをサプライズに使うって言ってたんだよな?」

佐場木「そうだ。記録も録ってある」

如月「スポットライトでサプライズ……静音さんはいったい何をするつもりだったんですか?」

赤穂「……」

正直な話、気は進まない。

静音はこのサプライズを利用されて……殺されたんだろうから。

だけど明かさないと先に進めない、よな……

【ショットガンコネクト開始!】

静音のサプライズ……それは考えればわかるはずだ。

・コトダマ>>176
【静音のメモ】
【スポットライト】
【身体検査の記録】

・課題
【静音のサプライズの手がかりは?】
【静音を殺した犯人の手がかりは?】
【静音が狙われた理由の手がかりは?】

赤穂「……」

あのメモは静音のサプライズの計画書だったはずだ。

もう1つ繋げればその概要は見えてくる……!

【静音のメモ】―【静音のサプライズの手がかりは?】

・コトダマ>>176
【四方院のドレス】
【静音の指揮棒】
【夜光塗料】

赤穂「……」

静音のメモ……

静音から渡された四方院のドレス……

【静音のメモ】―【静音のサプライズの手がかりは?】―【四方院のドレス】

静音が考えていたサプライズは……!

・課題
【静音のサプライズは四方院にスポットライトを当てる事だった】
【静音のサプライズは自分にスポットライトを当てる事だった】
【静音のサプライズは倉庫をスポットライトで明るくする事だった】

赤穂「真相への道筋を繋いでみせる!」


赤穂「ここに静音のメモがある……見てくれ」

遠見「【ライト→ドレスがキラキラ→みんな奏に注目!→完璧!……」

兵頭「……これでもっともっとみんなが奏を好きになるよね!】ですか」

赤穂「四方院さん、そのドレス……静音からプレゼントされたんだよな?」

四方院「まさか、凪は……」

赤穂「静音は停電前にスポットライトの方を見てた」

苗木「そうか……あれは確認だったんだね」

赤穂「静音の計画は多分……あの後スポットライトがドレスの装飾に反射して、四方院さんが輝いてるように見せるつもりだったんだろう」

静音はみんなが四方院さんの凄さをわかってないって不満があった。

それもこの計画を後押ししたんだろうな。

土橋「奏が好きだった凪らしい、サプライズだね」

四方院「凪はわたくしのために……」

兵頭「しかしそれを何者かに利用された……そういう事ですね?」

佐場木「間違いないだろう。そうなると……怪しい存在が浮かび上がってくる」

道掛「えっ、誰だよ!?」

六山「誰というか……スポットライトを点けた事でショートしたなら点けた人がいるよね?」

御影「サプライズの協力者……そいつがサプライズを利用して静音を殺したって事なの?」

四方院「いったい誰が……!」

赤穂「……」

サプライズの協力者……今度の議論はそこが焦点になるな。

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>176
【如月の証言】
【六山の証言】
【土橋の証言】

グレゴリー「鎮魂の指揮者の計画にもたらされた妖精……」

津浦「それこそがMs.静音を殺害したクロなんでしょうか……」

苗木「演奏中なら当然【ボクと赤穂クン、四方院さんは除外】だよね」

遠見「〔遠隔操作をした〕なら話は別でありますが」

道掛「だったら今もスイッチ持ってんじゃねえか!?」

兵頭「それは考えにくいと思いますが……」

薄井「いつまでも持ってたら決定的証拠になるしな」

御影「〔誰か見てた人〕がいればいいんだけどね……」

〔誰か見てた人〕←【如月の証言】


赤穂「それが正しいはずだ!」


赤穂「牡丹、大丈夫だ」

御影「へっ?急に何さ兄貴」

赤穂「如月さんが停電前にテーブルの近くにいた人間を把握してるからな!そうですよね?」

如月「はい。トマトジュースを吐き出してグラスを変えにいった薄井さんを目で追っていましたから」

薄井「オイ……やっぱりアレそういう意味じゃねえだろうな!?」

遠見「アレでありますか?」

如月「僕が薄井さんを好きという話ですよ」

道掛「マジか!?」

如月「……友人としてですよ?」

佐場木「おい……そんな事よりさっさと知っている事を話せ」

如月「ああ、すみません……僕が停電前にテーブルの近くにいるのを見たのは鞍馬さん、兵頭さん、ジェニーさん以外の皆さんです」

鞍馬「……」

ジェニー「ボ、ボクです?」

兵頭「あら……」

六山「おお、一気に容疑者を絞り込めたね」

苗木「3人の中の誰かが……」

赤穂「……」

いや、もう1人に絞り込める。

静音のサプライズの協力者は……!







     【学級裁判中断!】






本日はここまで。

明日には学級裁判を終わらせたいと思います。







     【学級裁判再開!】






道掛「凪ちゃんのサプライズの協力者……」

苗木「如月クンの証言から考えて鞍馬クン、ジェニーさん、兵頭さんに絞られたね」

鞍馬「……」

ジェニー「あう……」

兵頭「これは困りましたね」

四方院「あなた方3人の中に凪を殺した犯人が……!」

佐場木「……ちっ、おい赤穂」

赤穂「なんだ?」

佐場木「お前、この先の流れをなんとかする自信はあるのか」

御影「えっ?」

赤穂「……ああ、そのつもりだ」

真相をつかめているわけじゃない。

ただ1つはっきりしている事を証明するために俺は……

佐場木「……ふん、いいだろう。犯人を引きずり出すのは後だ」

薄井「は?なんでだよ?」

佐場木「今誰かを名指ししたところでしらばっくれるのがオチだ……ならばまず外堀を埋める」

六山「外堀って?」

鞍馬「……あの暗闇の中どうやって静音凪に電気スタンドを当てる事が出来たか」

津浦「そういえば……停電中に電気スタンドは倒れたんでしたね」

土橋「じゃあそこのところを話し合ってみようか!」

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>176
【六山の証言】
【土橋の証言】
【静音の倒れかた】

佐場木「どうやって静音に電気スタンドを命中させたのか……」

佐場木「これを明らかにするぞ」

グレゴリー「犯人は〔漆黒の闇を見通す瞳〕を持っていたのだ!」

兵頭「〔暗視スコープ〕を使ったというのが現実的なのでしょうが……」

遠見「そんなものが持ち込まれればわかるでありますよ!」

道掛「〔運任せにやった〕んじゃねえか?」

六山「つまり犯人は幸運の持ち主って事だね……ジー」

苗木「そんな目で見るのはやめてよ!?」

ジェニー「……きっと〔目印があった〕です」

〔目印があった〕←【六山の証言】

赤穂「それが正しいはずだ!」


赤穂「目印か……」

ジェニー「……」ビクッ

赤穂「六山、確か停電中にステージがボンヤリ光ってたって言ったよな?」

六山「うん、言ったよ……あっ、もしかしてあれが?」

苗木「ステージが光ってたって……ボク気付かなかったよ?」

四方院「わたくしも、ですわ」

赤穂「俺も気付かなかった……正直六山がなんで気付いたのかわからない」

六山「それは簡単だよ。布団にくるまりながら暗闇の中で毎日ゲームをしているわたしは暗闇の光に敏感なんだ」

兵頭「一見誇らしげに語っていますがそれはダメ人間では?」

土橋「というか目悪くするんじゃないのそれ!?」

六山「デバッグ中は眼鏡つけてるよ?」

道掛「まさかの眼鏡っ子!」

佐場木「くだらない話をいつまでしているつもりだ……!」

津浦「それで、Ms.六山の見た光とはいったい?」

六山の見た光……それは間違いなくあれの光だ。

【夜光塗料】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「ステージを調べたら静音の靴とステージの中央に貼ってあったテープに塗料がついてたんだ」

遠見「塗料?」

赤穂「手をかざしてみたらボンヤリ光ってた……あれは多分夜光塗料だ」

グレゴリー「闇夜に輝く道しるべ……その軌跡に向け電灯を処刑具として崩壊させたのか」

佐場木「夜光塗料やテープを持ち込むのは決して難しい事ではなかっただろう……くそっ」

遠見「あらかた調べたとはいえ、口の中や下着の中まで調べたわけではないでありますからね……不覚で、あります」

苗木「犯人は静音さんの靴にあった夜光塗料を目印にして電気スタンドを倒したんだね……」

赤穂「静音は指揮をする時に夜光塗料のあったテープの上に立っていた……」

御影「もしかしたらそれも犯人に言われたのかもね……ステージに目印があるからって」

四方院「……もういいでしょう」

兵頭「四方院さん?」

四方院「凪を殺した方法はわかりました」

四方院「だったら後は犯人を明かすだけではないのですか!」

四方院「凪のサプライズを利用し、その命を奪った犯人は……いったい誰なんですの!?」

赤穂「……」

静音のサプライズを手伝った人間……それは1人しかいない。

それを指摘したら……俺はもうがむしゃらにやるしかないんだ。

さあ、ここからが正念場だ……!

【ジェニー・クラヴィッツ】


赤穂「それはキミだ」


赤穂「ジェニー……静音のサプライズの協力者はキミだな?」

ジェニー「……!」ビクッ

苗木「えっ……ジェニーさん?」

土橋「ちょっと待ってよ!ジェニーが凪を殺したっていうの!?」

ジェニー「ボ、ボクは……」

グレゴリー「朗笑の道化師……まさかその笑顔に狂気を潜ませていたというのか!?」

ジェニー「うっ、あっ……」

遠見「何かの間違いではないのでありますか……!?」

赤穂「……ジェニーが静音に協力していたのは明らかだ」

【薄井の証言】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「薄井が停電前、ステージ横にいたジェニーを目撃してる……そうだよな?」

薄井「お、おう……」

如月「ステージ横……なるほど、スポットライトの点灯ですか」

ジェニー「うっ、ううう……」

兵頭「あどけない顔をして……物語ではよく聞きますがまさか現実で使う事になるとは思いませんでした」

道掛「信じらんねえ……」

佐場木「……」

四方院「ふっ……ふふっ。あなたが、あなたが凪を殺したんですかジェニーさん」

ジェニー「カ、カナデ……ち、違っ」







赤穂「それは違う」






六山「違うって……何が?」

赤穂「ジェニーは間違いなく静音のサプライズの協力者だ」

赤穂「だけど俺は一言もジェニーがクロだなんて言った覚えはないぞ」

四方院「何を……言ってますの?」

ジェニー「マ、マサキ?」

赤穂「ごめんなジェニー。キミの無実を証明するには下地を作る必要があったんだ」

御影「兄貴、だよね……?」

俺は【超高校級のヒーロー】と呼ばれてきた。

その最大の要因は通っていた学校のいじめを完全に撲滅した事。

その中で培った1つが……下地を作るというものだ。

ある日学校でいじめの主犯格の財布がなくなるという事件が起きた。

俺はすぐに気付いた、それはいじめられている子の信頼を失墜させるための狂言だと。

だけど発言力のある主犯格、さらにそれに飲まれてるクラスメイトを相手にただ否定しても勝ち目はない。

だから俺は下地を作った。

盗んだ方法、機会、あらゆるものを証明して……最後の最後、それをいじめられている子には出来ない証拠を叩きつけた。

効果は抜群だった……下地を作られていた以上他の面からの否定は出来ず、主犯格は自爆して狂言だと暴かれたんだ。

俺は探偵じゃない、真実を論理的に明らかには出来ない。

俺はカリスマじゃない、ただ否定するだけの言葉に説得力を持たせられない。

だから俺はこのやり方を選んだ。

赤穂「ジェニーに犯行は無理だ」

赤穂「今それを証明する!」

このガタガタの穴だらけのやり方で……誰かを助けられると信じて。

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>176
【静音の倒れかた】
【モノクマファイル1】
【土橋の証言】


四方院「ジェニーさんが……犯人ではない?」

道掛「だけど凪ちゃんのサプライズの協力者が犯人じゃないのかよ!?」

六山「【スポットライトの点灯】はジェニーさんがやったんだよね?」

薄井「協力者なら【夜光塗料のテープを貼った】のもジェニーじゃねえのかよ?」

御影「ジェニーには【犯行は出来ない】……兄貴は何が見えてるのさ」

ジェニー「ボクは……」

【夜光塗料のテープを貼った】←【土橋の証言】

赤穂「その正義……否定させてもらうぞ!」


赤穂「ジェニーには犯人が目印に使った夜光塗料をステージに貼る事は出来ないんだ!」

薄井「隙を見りゃ、出来んだろ」

赤穂「いいや、無理だ。なぜならジェニーは夜光塗料が貼られた時ステージに上がってないんだからな!」

赤穂「土橋!キミは言ったよな?ジェニーはパフォーマンスに使う木箱を見ていてステージには上がってないって!」

土橋「えっ、あっ、う、うん!間違いないよ、ジェニーはステージには上がってない!」

佐場木「だがジェニーはステージでパフォーマンスを行っていた。その時に貼った可能性はないのか?」

赤穂「ジェニーは目立つようなパフォーマンスを繰り返してステージに注目を集めていた……そんな中でテープを貼れば間違いなく目立ったはずだ。それに」

如月「それに?」

赤穂「ジェニーがパフォーマンスに使った木箱にも夜光塗料がついていた……つまりジェニーのパフォーマンス中、既にステージにはテープが貼られていたんだ!」

遠見「ならばテープを貼る機会は……ジェニー殿にはないであります!」

赤穂「夜光塗料がついていたテープは犯人が使うためのものだったのは明白だ!」

赤穂「だけどそれを貼る事がジェニーには不可能だった以上……ジェニーは犯人じゃない!」

赤穂「……」

佐場木「ジェニーに夜光塗料を塗るタイミングはなかった……どうやら証明されたようだな」

兵頭「そもそも六山さんがボンヤリとわかる程度にまで夜光塗料が木箱についてしまっていたなら……犯行が出来なくなる可能性もありますか」

六山「そうなると不自然だよね。わざわざ目印をわかりにくくしてるんだから」

四方院「そんな……」

ジェニー「……カナデ、ごめんなさい、です」

四方院「……」

ジェニー「ボク、ナギに頼まれました。合図したらカナデに向けてスポットライトを当ててほしいって」

ジェニー「だけど、だけどナギがああなって……ボク、怖かったです……!」

ジェニー「ボクのせいでっ、ナギがああなったって思ったらっ、怖くてっ、何も言えなくてっ」

ジェニー「カナデ……ごめんなさいです!ボクはっ、ボクはぁ……」

四方院「ジェニー、さん」

ジェニー「うっ、ぐすっ、うああっ……」

四方院「……謝るのはこちらですわ。焦って、あなたを人殺し呼ばわりして……ごめんなさいジェニーさん」

……ジェニーの無実は、証明できたみたいだな。

苗木「あ、あのさ……ジェニーさんが犯人じゃないのはわかったけど」

苗木「サプライズの協力者が違うなら……結局静音さんを殺したのは誰なの?」

御影「兄貴は、そこまでわかってるの?」

赤穂「……いや、俺はジェニーの無実を証明する方を優先しちゃったからな」

ここからは完全に手探りだ……静音を殺したのは誰なのか……

鞍馬「……時間」

グレゴリー「むっ?」

鞍馬「演奏会が始まったのは何時でしたか」

四方院「キリがいいので7時50分からだったと思いますが……」

…………7時50分?

如月「……おかしいですね」

佐場木「……ちいっ!そういう事か!」

赤穂「……」

なんてこった……俺達はとんでもない勘違いをしてたのか……!

【ショットガンコネクト開始!】

演奏会の開始時刻……それから考えればわかるはずだ。

俺達を迷わせていた迷路の正体が……!

・コトダマ>>176
【モノクマファイル1】
【静音の倒れかた】
【身体検査の記録】

・課題
【静音の死因を示すのは?】
【静音の死亡推定時刻を示すのは?】
【静音の死亡場所を示すのは?】

赤穂「……」

演奏会の開始時刻は7時50分……

静音の死亡推定時刻は7時52分……

【モノクマファイル1】―【静音の死亡推定時刻を示すのは?】


・コトダマ>>176
【ストップウォッチ】
【ガラスの置物】
【身体検査の記録】

赤穂「……」

演奏会の開始時刻は7時50分……

静音の死亡推定時刻は7時52分……

そして牡丹のストップウォッチ……

これが示すのは……!

【モノクマファイル1】―【静音の死亡推定時刻を示すのは?】―【ストップウォッチ】


・課題
【静音を殺害した凶器は電気スタンドではない】
【静音の死亡推定時刻は7時52分ではない】
【静音は死んでいない】

【静音を殺害した凶器は電気スタンドではない】

赤穂「真実をこれで繋ぐ!」


赤穂「演奏会が始まったのは7時50分……四方院さん間違いないか?」

四方院「え、えぇ、間違いないですわ」

赤穂「モノクマファイルによると静音の死亡推定時刻は7時52分……モノクマが嘘をついてるとは考えにくい」

モノクマ「モノクマファイルはしっかり正確だよ!」

六山「何か問題があるの?」

赤穂「牡丹、演奏会からガラスが割れる音がするまでストップウォッチは使ってたんだよな?」

御影「何回か止めたけど、まあそうだね」

赤穂「その時間は何分だ?」

御影「さっき見たじゃん……ほら3分…………あれ?」

遠見「ちょっと待つであります!演奏会が始まって静音殿が亡くなるまでの時間は2分でありますよ!?」

土橋「だけどストップウォッチを見ると、演奏会から電気スタンド割れるまでの時間は3分以上……」

ジェニー「ど、どういう事です?」

佐場木「俺達はまんまと踊らされていた……静音はあの電気スタンドが倒れてきて死んだのだとな!」

如月「実際は電気スタンドが倒れる前に静音さんは殺害されていた」

兵頭「なるほど……あの現場を見れば静音さんは電気スタンドで死亡したとしか思えませんね」

薄井「……じゃあ凶器はなんだよ」

凶器……それはきっとあれだ!

【ガラスの置物】


赤穂「こいつだ!」


赤穂「ガラスの置物……あれが凶器なんじゃないか?」

兵頭「しかしあれは1つも欠けていませんよ?」

赤穂「倉庫にあったのはな……津浦、グレゴリー」

津浦「マーケットに元々あったはずの数は7つですが……調べたところ1つもありませんでした」

グレゴリー「惨劇の舞台にありし聖遺物は6……ならば残る欠片はいずこへと消えたか」

赤穂「多分あらかじめ割ってあったんだ……犯人はその欠片を凶器にして静音を殺害した」

四方院「電気スタンドを凪の胸に倒したのは……本来の凶器を隠すカモフラージュ」

道掛「だけどどうやって持ち込んだんだよ?佐場木やメメちゃんもさすがにガラス片は見逃さなくね?」

そうだ。

ガラス片が凶器なら、どうやってそれを倉庫に……

終わらせたかったのですが本日はここまで。

残り少しなので明日おしおき含めたラストまでいきたいところです。

【身体検査の記録】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「佐場木、身体検査の時に撮ったやつを見せてくれないか?」

如月「そういえば佐場木さん、記録を録っていたと言ってましたね」

佐場木「そうだ。念のためにこのビデオカメラで撮っていた」

グレゴリー「それは我が天具が1つ!」

土橋「撮られてたんだ……」

四方院「それを見れば、誰がガラス片を持ち込んだかわかるかもしれませんわね」

六山「だけど見にくいなぁ……あっ、そうだモノクマ」

モノクマ「なにかな?」

六山「その無駄に大きいモニター使わせてよ。どうせそれでゲーム出来ないんだし」

モノクマ「このモニターをなんだと思ってるのさ!?まあ、証拠は平等に見ないとね……佐場木クン、そのビデオカメラをお貸しくださーい!」

モノクマが佐場木からビデオカメラを受け取って消えていく。

そして数分後……モニターにビデオカメラの映像が映し出された。

静音『身体検査ってめんどくさいな……』

遠見『まあまあ、パーティーを円滑に進めるためでありますから』

佐場木『それよりこのスポットライトはなんだ?』

静音『ちょっと意見もあったからサプライズに使う!』

遠見『サプライズでありますか?内容は……』

静音『内緒内緒!ステージの横に置くだけだからいいだろ!』

佐場木『……ふん、まあいいだろう』

――――

道掛『いやっほう!』

遠見『なっ!?ストップストップであります道掛殿!』

道掛『おっ、どうした?』

佐場木『貴様……いきなり自転車で飛び込んできてなんの真似だ』

道掛『何ってパーティーで俺の華麗なテクニックを見せるんだよ!盛り上がる事間違いなしだぜ!』

佐場木『今すぐ降りろ……!』

道掛『えっ!?』

――――

兵頭『厳重警戒ですね』

遠見『時期が時期でありますから……我慢してほしいであります』

兵頭『ふふっ、別に異論はありませんよ。私も何事もなくすんでほしいので』

佐場木『……』

――

グレゴリー『その願いは聞き届けられん!』

佐場木『なんだと?』

遠見『グレゴリー殿、そう言わずに……ちょっとその仮面を外してほしいだけでありますから』

グレゴリー『この仮面は我が皮膚と同じ!外すなど残虐なる一手よ!』

佐場木『くだらん事を言ってないで外せ……!遠見、押さえつけろ!』

グレゴリー『うおっ!?やめろ、我が封印を解くな!ぬおおおおおっ!?』

――――

津浦『はい、どうぞ』

遠見『はぁ、はぁ……確かに』

佐場木『くそっ、手こずらせてくれる……!』

津浦『あの、何かあったんですか?』

遠見『あはは、ちょっとした大捕物を……』

――――

遠見『ステージ用の木材、確かに確認したであります。次は身体検査を』

土橋『えっと、身体検査はいいけど半次も一緒なの?』

佐場木『なにか問題があるのか』

土橋『いや、こういうのって服脱ぐんでしょ?さすがに男の子の前でそれは……』

佐場木『……そこまでしなくていい』

遠見『自分がしっかり服の上から改めるでありますから!』

土橋『あっ、それなら良かった』

薄井『……』

遠見『なんだか不機嫌でありますね……』

薄井『……』パチパチッ

佐場木『んっ?静電気か?』

遠見『というよりは、空気がピリピリしてるであります……』

――

苗木『ボク身体検査なんて初めてだよ』

遠見『そうなのでありますか?』

苗木『うん、ボクはごく普通の生活してきたからね』

佐場木『海外に出た事もないのか』

苗木『うーん飛行機ってちょっと怖くて』

遠見『気持ちはわかるであります……空爆は怖いでありますよ』

佐場木『おそらく意味が違うぞ』

――

六山『ゲームセットでーす』

遠見『リュックにゲーム以外がないであります』

佐場木『依存症だな』

六山『むっ、そんな事ないよ。ゲームは1日20時間って決めてるもん』

遠見『立派な依存症であります……!』

――

四方院『ご苦労様ですわお2人共』

遠見『いつものドレスとは違うのでありますね』

四方院『凪からの贈り物ですの。わたくしは派手な気がしたんですけれど』

佐場木『……あいつは張り切っているようだからな』

四方院『ふふふ、そうですわね。だからわたくしは応えてあげたいと思いますわ』

如月『どうぞ』

佐場木『ふん、貴様は存在そのものが危険物だがな』

遠見『佐場木殿、そう身構えないで……』

佐場木『……ちっ、さっさと終わらせるぞ』

如月『はい』

――――

ジェニー『今日は頑張るです!』

遠見『ジェニー殿!?』

佐場木『いつの間に入った……!』

ジェニー『ハンジとレイキが忙しそうでしたから……ダメだったですか?』

遠見『と、とにかくジェニー殿ちょっとこちらへ!その木箱も一緒に!』

佐場木『……ちっ、そこまで冷静さを欠いていたか俺は』

――――

鞍馬『……』

遠見『……』

佐場木『何をしている』

遠見『隙が見当たらないであります……!』

鞍馬『……』

佐場木『普通に調べればいいだけだろう……おい鞍馬』

鞍馬『どうぞお好きに』

――――

赤穂『身体検査か……なあ、この杖も凶器になるのか?』

遠見『さすがにそこまでは……』

佐場木『したいところだがな』

御影『それしたら兄貴どうやって歩くのさ』

赤穂『……牡丹に支えてもらうか』

御影『無茶言わないでよ』

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>176
【モノクマファイル1】

道掛「わっかんねえ!どうやってガラス片なんか持ち込んだんだ!?」

如月「皆さん服の上からは調べられていますね……」

兵頭「そうなると【服の下に隠した】んでしょうか?」

遠見「しかしガラス片など入っていれば服の上から叩いた時に気付くでありますよ……」

苗木「隠した方も怪我しそうだしね」

佐場木「……こうなった以上考えられる可能性は1つ」

佐場木「犯人は【俺達が調べなかった部分にガラス片を隠した】としか思えん」

六山「さっき調べなかったって言ってたのは下着や口の中だっけ?」

ジェニー「犯人はどちらかに隠したですか?」

薄井「オイオイ、そりゃねえよ」

薄井「【記録見ても口の中に隠してそうなヤツなんていねえ】」

薄井「ただ佐場木や遠見が見逃したんじゃねえのか?」

【記録見ても口の中に隠してそうなヤツなんていねえ】←【俺達が調べなかった部分にガラス片を隠した】

赤穂「その矛盾……捕まえたぞ!」


赤穂「……薄井、本当にそうか?」

薄井「なんだよ?」

赤穂「本当に口の中に隠してそうなヤツなんていないのか?」

薄井「んなもん、見りゃわかんじゃねえか」

佐場木「……おい!もう一度映像を見せろ!」

――――

遠見「これ、は」

如月「……」

赤穂「今の映像、みんなは喋りながら身体検査を受けている」

赤穂「だけど1人……身体検査の間全く喋ってない人間がいた」

赤穂「そいつになら出来たはずだ」

赤穂「口の中にガラス片を入れて身体検査を通る事が!」

そうだろう?

【薄井千里】

赤穂「犯人はお前だな……!」


赤穂「薄井」

薄井「……あ?」

赤穂「あの時お前は口の中に入れてたんじゃないか?」

赤穂「静音を殺した凶器のガラス片を!」

薄井「……」

津浦「Mr.薄井が、Ms.静音を……?」

如月「何かの、間違いではありませんか?」

赤穂「如月さん……そもそも薄井はさっき変な発言をしてるんですよ」

兵頭「変な発言?」

赤穂「口の中に隠してそうなヤツはいない」

赤穂「なあ、薄井」

赤穂「なんで佐場木と遠見は口の中と下着を調べてないって言ってたのに……お前は口の中だけに言及したんだ?」

薄井「……!」

鞍馬「……口の中に隠していた可能性を提示されて焦りましたね」

薄井「グッ……!」

四方院「薄井さん……あなたが凪を殺したんですの!?」

薄井「グッ、クッ……」

赤穂「どうなんだ、薄井!」







薄井「フザケンナァァァァァァァァッ!!」

パァン!

ガシャンッ!






土橋「きゃっ!?」

御影「なに……いきなりモニターや照明が割れた……」

モノクマ「ボクの血と汗と涙とオイルの結晶たる学級裁判場がーー!?」

赤穂「……」

これが、【超高校級のサイキッカー】の力なのか?

薄井「本当にヒーローにはろくなのがいやしねえなクソが!」

薄井「片方はオレにつきまといやがる!片方はオレに冤罪被せやがる!」

薄井「いくらオレがインチキ野郎でも我慢ならねえ!」

赤穂「……」

薄井「オレよりもっと怪しいヤツがいるだろうが……」

薄井「今それを教えてやるよ……クソヒーロー!」


薄井「テメエはオレ以上のインチキ野郎だ!」反論!

【反論ショーダウン開始!】

・コトノハ>>176
【静音のサプライズ】
【静音の倒れかた】
【静音の死体】


薄井「オレより怪しいヤツがいるだろうが!」

薄井「それを無視してオレを犯人扱いだと?」

薄井「ふざけんなよクソヒーロー!」

赤穂「だったら教えてくれ」

赤穂「キミの言う怪しい奴は誰なのか」

薄井「四方院だよ四方院!」

薄井「あの装飾にならガラス片だって隠せるだろうが!」

薄井「テープ見逃した連中なら見逃しても不思議じゃねえしな!」

薄井「【四方院が静音の胸を刺した】んだよ!」

薄井「オレは犯人じゃねえ……ゲホッ!」

【四方院が静音の胸を刺した】←【静音の倒れかた】

赤穂「その正義は黒く染まってるぞ!」

赤穂「薄井……四方院さんは犯人じゃない」

薄井「なんでわかんだよ……まさかテメエ、四方院と静音が親しいからとか言わねえだろうな?」

赤穂「そうだ」

薄井「テメエ、本当にふざけんなよ!?ゲホッ、チッ……」

赤穂「四方院さんと静音が親しいからこそ……あの静音の倒れかたはおかしいんだよ」

薄井「……は?」

四方院「どういう、意味ですの」

赤穂「静音は四方院さんを慕っていた。男だったらお婿さんになりたいなんて言うぐらいには」

赤穂「そんな静音が頭を四方院さんに向けて倒れていたんだ」

遠見「頭を向けて倒れていたという事は立っていた時は背中を向けていた……」

赤穂「あの静音凪が!あの停電の中で!四方院さんのところに行かないはずがない!」

佐場木「さらに静音が殺されてから電気スタンドを倒されるまで数分もない……」

グレゴリー「優雅なる笛吹きは鎮魂の指揮者の魂を刈り取り、あの漆黒の闇の中疾風のように骸の位置を変えた事になる」

津浦「難しい、でしょうね」

赤穂「薄井……まだ反論はあるか?」

薄井「……ゲホッ!ふざけんな、ふざけんなよ!」

薄井「オレは犯人じゃねえ……オレは!」

【パニックトークアクション開始!】

薄井「オレは犯人じゃねえ!」

薄井「静音を殺してなんかいねえ!」

薄井「ゲホッ!ゴホッ!」

薄井「テメエの推理には何も根拠がねえ……!」

薄井【オレはガラスなんか口に入れてねえんだよ!】



     の

口        中の

     傷

【口の中の傷】

赤穂「これで終わらせてやる!」


赤穂「薄井」

薄井「ゲホッ!」

赤穂「さっきから随分……咳してるな」

薄井「……!」

赤穂「もしかして開いたんじゃないか?」

赤穂「ガラスを口の中に入れた時に切った傷が!」

薄井「ちげえ……コレは……!」

赤穂「だったら見せてくれないか……口の中を」

薄井「ッ……!」

佐場木「傷があるならどこで切ったか聞かせてもらおうか」

遠見「薄井殿……よろしいでありますね?」

薄井「ゲホッ!」

ビチャッ…

土橋「あっ」

ジェニー「チサト……血が……」

兵頭「今度は……トマトジュースではなさそうですね」

薄井「……クソッ、タレ」

如月「…………」

【クライマックス推理開始!】

ACT.1
今回の事件は懇親会で静音がサプライズを企画してる事から始まった。
犯人は静音とジェニーが打ち合わせをしているのを聞いたんだろうな……これを利用して殺人を計画したんだ。

ACT.2
犯人はまずマーケットにあるガラスの置物を割り、凶器に使うガラス片を手に入れた。
そしてそれを口の中に入れて身体検査を通過したんだ……その時に口の中を切ったんだろう。

ACT.3
次に犯人は停電を起こすためにスポットライトのコンセントに埃を詰めた。
さらにステージ強度を確かめるみんなに紛れて夜光塗料を塗ったテープを貼る。
工作を終えたその後、犯人はガラス片を隠し持ちながらその時を待ったんだ。

ACT.4
演奏会が始まってから犯人はその場から離れてステージに近付いた。
そしてジェニーがスポットライトを点灯した事で倉庫は停電。
犯人は夜光塗料を目印に静音に近付いて……ガラス片で静音を刺殺した。

ACT.5
静音を殺した犯人は死体をステージに横たえると、また夜光塗料を目印に今度はガラスの電気スタンドを静音めがけて倒した。
結果静音の身体にはスタンドのガラス片が突き刺さって、本当の凶器は隠れてしまったんだ。

だけどビデオカメラで記録されていた事。
牡丹のストップウォッチで矛盾が生まれた事。

何よりお前の焦りがこの犯行計画を砕いたんだ!

赤穂「薄井千里!静音を殺したのはお前なんだ!」

薄井「……チクショウ」

モノクマ「議論の結論が出たみたいだね!」

モノクマ「それでは投票タイムとまいりましょうか!」

モノクマ「オマエラ、お手元のスイッチで投票をお願いします!」

モノクマ「オマエラの答えが正解?それとも不正解?」

モノクマ「運命はどっちだー!!」

         VOTE

      薄井 薄井 薄井

       チャッチャッチャー!


     【学級裁判閉廷!】

モノクマ「はいはい大正解でございます!」

モノクマ「今回静音凪さんを殺害したクロは……」

モノクマ「薄井千里クンでしたー!」

薄井「クッ……!」

土橋「なんで?なんで凪を殺したの!?」

薄井「……なんで?むしろオレが聞きてえよ」

薄井「なんでテメエラは普通でいられんだよ」

薄井「未来機関がどうにかなってるかもしれねえこの状況で、なんでのんきにパーティーなんか出来やがるんだ!」

佐場木「ふん……あの動機に影響されたわけか」

御影「だからって、静音を殺したのは……」

薄井「御影、いいよなテメエは。兄貴と一緒にいられてよ」

御影「えっ、私は……」

兵頭「あの、1ついいですか」

薄井「あ?」

兵頭「なんでこんな手間のかかる事をしたんですか?さっきの現象を見る限りあなたは本当にサイキッカー……ガラス片を持ち込まなくてもその力で電気スタンドを倒すなどで殺人は出来たのでは?」

薄井「……ハッ、やれるかよ」

薄井「オレはこのふざけた力は使わねえって決めたんだよ……アネキを解放するためにな」

赤穂「アネキ……」

モノクマ「あっ、気になる?気になっちゃう?」

モノクマ「いいでしょう!オマエラに教えてあげるよ!」

モノクマ「薄井クンが自分をインチキ野郎って言う理由をね!」

モノクマ「薄井クンのお姉さんの名前は薄井千影さん!」

モノクマ「希望ヶ峰学園第77期生【超高校級のオカルト研究家】で名前聞いた人もいるんじゃないかな?」

モノクマ「そのお姉さんがオカルト研究家になったのはそもそも薄井クンのためなんだよね!」

モノクマ「薄井クンには物心つく前からさっきみたいな超能力があった」

モノクマ「だけど周りはインチキだの詐欺師だのまだ幼い薄井クンをボッコボコ!一時期対人恐怖症になるぐらい薄井クンは追い詰められたんだよ!」

モノクマ「そんな彼を認めさせるためにお姉さんは幽霊とか怖いのにオカルト研究家の道を歩んだってわけ!」

モノクマ「ここまでならちょっと強い姉弟愛ですんだかもしれない……だけどそうはならなかった!」

モノクマ「事もあろうにそんなお姉さんの努力を無視して薄井クンは自分をインチキ野郎だと言い出したのです!」

モノクマ「理由はお姉さんを解放するため……自分の力を証明するために人生を捧げてるお姉さんが見てられなくなったから!」

薄井「アネキは……もっと自分の幸せのために生きるべきなんだよ」

薄井「オレのせいで周りから色々言われたのだって知ってんだ!」

薄井「だけどアネキは、オカルト研究をやめなかった」

薄井「オレを本物だって証明するために……色んなもんを捨てちまった」

薄井「イヤなんだよ!アネキがオレなんかのために幸せになれないのは!」

薄井「だからオレはアネキを解放するためにインチキ野郎じゃなきゃいけねえんだよ!」

モノクマ「ああ、なんて絶望的なんだろうね!」

モノクマ「姉は弟を救うために。弟は姉に幸せになってもらうために」

モノクマ「正反対の事をして足を引っ張りあってるんだから!」

モノクマ「最も薄井クンはわざとかもね……なんせお姉さんを解放するためにと言いつつ、うぷぷ」

モノクマ「誰よりも執着してるんだから!」

薄井「アネキは今未来機関にいる」

薄井「そのアネキに何かあったかもしれねえ……」

薄井「オレはどうしても外に行かなきゃならねえんだ!」

グレゴリー「だから鎮魂の指揮者……いや、我ら全てを抹殺せんとしたか」

苗木「だけどなんで静音さんを……」

薄井「……どうせ全員殺すんだ。やりやすいのを狙っただけだよ」

四方院「っ……そんな理由で凪を!わたくしの大切なあの子を奪ったと言うんですの!?」

道掛「お、落ち着けよ奏ちゃん!」

四方院「離してください!あなたは、あなたはわたくしが殺します!わたくしがっ……わたくしがぁ……!」

如月「薄井さん」

薄井「……んだよ。説教でもすんのかヒーロー」

如月「……」

赤穂「如月さん……」

辛いよな……薄井は如月さんにとって――







グシャ






赤穂「えっ」

薄井「うぐああああっ!?」

なんだ、今の。

如月「……」

如月さんが、薄井の手を握り潰した……?

薄井「グッ、オマエ、なんの……!?」

如月「悪を裁いてるだけですが?」

佐場木「っ、遠見!奴を止めろ!」

遠見「り、了解であります!」

如月「邪魔はしないでいただきたい。僕は悪以外を殺すつもりはないので」

佐場木「如月怜輝……貴様やはり【ジャスティスジャッジ】か!」

ジェニー「【ジャスティスジャッジ】……?」

津浦「世界各国の犯罪者を凄惨なやり方で殺害する……【キラーキラー】【ジェノサイダー翔】と並んで有名な殺人鬼です」

如月「僕は正義の裁きを与えているだけですよ。最も最後まで執行する前に大概は死んでしまいますが」

佐場木「何が正義の裁きだ……貴様はただの殺人鬼だ!」

如月「正義はそれぞれですよ。佐場木さん」

赤穂「……」

殺人鬼……?

如月さんは、ヒーローじゃないのか?

如月「さて薄井さん。まだ執行は済んでいませんよ」

薄井「ヒーロー……テメエ……」

如月「左手ですから……次は右手てすね。そのあとは脚、背、首……最後まで耐えたら裁きは完了……っ!」

鞍馬「……」

如月「鞍馬さんなんでしょうか?まさか邪魔に入るつもりではありませんよね?」

鞍馬「……あまり好き勝手されてルール違反になられても困るので」

如月「まいりましたね……」

御影「ちょっと兄貴っ……兄貴が憧れてたのはあんな危ない奴だったわけ!?」

赤穂「俺だって、あんな如月さん知らない……」

目の前では鞍馬が薄井に向かおうとする如月さんを食い止めている。

だけど俺にはわからない。

あの如月怜輝が、誰かを殺すためにそれを邪魔する人間を排除しようとしているなんて。

グレゴリー「くっ、なんという混沌の坩堝よ!」

苗木「み、みんな落ち着いてよ!」

六山「どうしよう……」カチカチ

薄井の呻き声と如月さんと鞍馬の戦う音だけが学級裁判場を支配する。

モノクマ「ええい、オマエラうるさーい!!」

それを止めたのはモノクマの一喝。

だけどそれは平穏を意味しなかった。

モノクマ「全くボクの仕事を奪うなんて許さないよ如月クン!」

土橋「モノクマの仕事……」

モノクマ「もちろんおしおきだよ!急がないと如月クンに薄井クンが殺されちゃうからね!」

兵頭「おしおき……」

薄井「グッ……オレはまだ死ぬわけにはいかねえ……!」

佐場木「この事件俺のミスが引き金だ……だがな薄井」

佐場木「静音だって同じように思っていただろうに勝手な事をほざくな!」

遠見「……佐場木殿」

モノクマ「うぷぷ、全くだね!まあ、どちらにしても薄井クンには何も出来ないよ」







モノクマ「絶賛コロシアイ共同生活中のお姉さんもこんな弟を持ってかわいそうだよね!」






薄井「なっ……」

佐場木「貴様今のはどういう意味だ!」

モノクマ「オマエラと同時期に未来機関第13支部の皆さんはただいま塔和シティにてコロシアイを始めているのです!」

モノクマ「そしてその中には……薄井千影さんもいまーす!」

薄井「アネキが、コロシアイ……」

モノクマ「うぷぷ、おとなしくなったみたいだね。それではメインイベントとまいりましょう!」

薄井「……ハッ、ハハハハッ」

モノクマ「今回は【超高校級のサイキッカー】である薄井千里クンにふさわしいスペシャルなおしおきを用意いたしました!」

薄井「……サイキッカー?」

モノクマ「それでははりきってまいりましょう!」

薄井「アネキの一大事に瞬間移動も出来ずに、人殺しを選んだオレなんざ……」

モノクマ「おしおきターイム!!」

薄井「ただの、インチキ野郎じゃねえか」







       GAME OVER

  ウスイクンがクロにきまりました。

    おしおきをかいしします。






乾いたように笑う薄井の首に首輪が巻き付けられて扉の向こうに消えていく。

そしてモニターに十字架に磔にされた薄井が映し出された。

【曲げよエスパーモノクマ!】

【超高校級のサイキッカー薄井千里処刑執行】

磔にされた薄井クンの前にモノクマが現れます。

モノクマはスプーンを1本取り出すと、スプーンに向かってパワーを送ります。

集中しているモノクマの後ろにいる薄井クンが呆れ果てたような目をしていると……十字架の左腕の部分がガタガタと揺れます。

そして……その左腕の部分は薄井クンの腕ごと変な音をたてて後ろに曲がりました。

薄井クンが叫びますがそれは大音量のBGMにかき消されて。

さらにモノクマがパワーをスプーンに送ると今度は十字架の右腕部分が後ろに曲がります。

しかしスプーンは全然曲がらず……モノクマは最大パワーをスプーンに送ります。

すると十字架の腰の部分がガタガタと揺れ出します。

そして……

モノクマはスプーンを力任せに曲げると床に叩きつけてその場を後にします。

そしてその場には後頭部と踵がつくほど曲がり……口から血を吐き出した薄井クンだけが残されました。

モノクマ「エクストリィィィィィィィィム!!」

モノクマ「いやはやシスコンを拗らせるとろくな事になりませんなぁ」

苗木「うわああああああっ!?」

津浦「こ、こんな……ひどいっ……」

グレゴリー「なんという絶望の体現か……」

六山「ちょっとこれは……落ち着くの無理かな……」カチカチ

道掛「ちくしょう……こんなのありかよ!?」

四方院「死んだ……凪に償わせられずに……わたくしは……」フラッ

土橋「奏!」

ジェニー「カナデ!しっかりしてくださいです!」

赤穂「……」

御影「兄貴……」

俺にしがみついて震える牡丹の手を俺は握り返してやれなかった。

それは俺も薄井に対する壮絶な処刑にのまれていたのか……それとも。

如月「やはりあなたは巨悪ですね……モノクマ」

あんなに親しくしようとしていた薄井が死んだのに平然としている如月さんを理解できないからなのか……

如月「別のコロシアイにも関わっているようですから……早急に裁かなければいけませんね」

モノクマ「うぷぷ!君に出来るかな殺人鬼ヒーローさん?」

如月「成し遂げますよ。僕はヒーローなんですから」

ヒーロー、ヒーローってなんなんだ?

如月さんのようにやるのがヒーローなのか?

俺には……わからない。







兵頭「あはあっ……!」






赤穂「えっ?」

なんだ、今の声……

兵頭「なんですか、なんなんですかこれ?」

遠見「兵頭殿、どうしたのでありますか?」

兵頭「投票は命さえ懸かる物なのは知ってるのに……」

佐場木「何を言っている……」

兵頭「生き死にを直結する投票が……こんなにも、快感だなんて……!」

兵頭「ひっ、へへっ……最っ高っですぅ……!」

土橋「人が死んだのに、なんでそんな笑ってられんの……!?」

鞍馬「……」

その場にへたりこんで息も荒く頬を染める兵頭……

その姿は今まさに人が死んだ瞬間を見た人間とは、思えなかった。

俺達は何も出来なかった。

殺人鬼としての顔を見せた如月さん。

異常な性癖を出した兵頭。

モニターに未だ映る薄井の死体。

その空気に完全にのまれていた。

だから俺を含めた誰も気付いてなかった。

この場において呟かれた……







「いい気味」

悪意に満ちたその言葉に。












CHAPT.1【正義という名の××】 END

生き残りメンバー16→15人

To be continued...












【パートナーからのタクト】を手に入れました!

【姉に渡せなかった髪留め】を手に入れました!






CHAPT.2は明日から開始します。

「大正解!」

モノクマ「今回の事件のクロは……赤穂政城クンでしたー!」

赤穂「ち、違う!俺はやってない!」

モノクマ「今回は【超高校級のヒーロー】にふさわしいスペシャルなおしおきを用意しました!」

赤穂「やめろ……俺は無実だ……」

モノクマ「おしおきターイム!!」

如月「赤穂さん」

赤穂「如月さ――」

如月「悪は死すべし……正義の裁きを受けなさい」

赤穂「あっ……」

グシャ







【赤穂のコテージ】

赤穂「っ……!!」

……ゆ、夢?

赤穂「……」グッ

夢なら……このコロシアイの何もかもがそうならよかったのにな。












CHAPT.2【糸絡まりて命絶つ】(非)日常編






【6日目】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」


赤穂「……」

朝……俺達は15人でこの新しい日を迎えた。

静音と薄井、2つの命を置き去りにして。

人の死に慣れてはいてもさすがにレストランに行く気にはなれなかった。

赤穂「……」

いや、もしかしたら俺が一番気にしてるのは2人の事より……

ピンポーン

赤穂「……?」

誰だ?

御影「兄貴、私。起きてる?」

赤穂「牡丹?」

御影「あっ、起きてる。待ってても来ないから、今日はこっちから来たよ」

赤穂「……」

迎えに来てくれたのか……妹に迎えに来させて閉じこもるわけには、いかないか。

御影「おはよ」

赤穂「ああ……おはよう牡丹。眠れたか?」

御影「無理やり寝たよ。目覚めたら夢だったってオチなら最高だったけど」

赤穂「そうだな……」

御影「私でもこれなら……四方院はもっとキツいかもね」

赤穂「……」

御影「ちなみにさ……兄貴は大丈夫なの?」

赤穂「俺?」

御影「あの人、憧れだったんでしょ?」

如月さんの事か……

赤穂「……」

如月怜輝は俺にとって目標みたいな存在だった。

あの人の行動はたくさんの苦しんだ人を救ってきたし、この混乱した世の中において赤いマフラーのヒーロー存在にどれだけみんなが勇気付けられたか……まさにヒーローの中のヒーローってやつで。

確かに薄井がした事は人殺し……家族の事を考えていたとはいえ、静音が殺されるいわれなんてない。

だけど、だからってあんな拷問みたいなやり方は……

御影「兄貴?」

赤穂「あっ、いや……大丈夫だよ」

とにかく、如月さんの事も含めて色々考えないとな……

【ホテルミライ・レストラン】

レストランにはほとんどのメンバーが既に来ていた。

最も雰囲気は暗い……あんな事があったんだから当たり前だけどな。

遠見「おはようであります!赤穂殿、御影殿!」

赤穂「おはよう遠見……んっ?」

遠見、目元が真っ赤だ……もしかして、泣いてたのか?

佐場木「起きたか。これでいないのは4人だけのようだな」

御影「……ねえ、その手どうしたの?」

佐場木「ただの自己満足だ。気にしなくていい」

佐場木の手には白い包帯が巻かれて血が滲んでいる。

きっと壁を殴るかなんかしたんだろう……

赤穂「4人って誰がいないんだ?」

佐場木「如月、兵頭、鞍馬、津浦だ」

御影「四方院、来てるの?」

遠見「自分も驚いたのでありますが……静音殿のためにも早くコロシアイを終わらさなければと考えているようでして」

赤穂「そうか……」

強いんだな、四方院さんは。

四方院「皆様、昨日は倒れてしまい申し訳ありませんでした」

土橋「ちょっと奏、頭上げなよ!奏が謝る事なんて何もないんだから!」

道掛「そうだぜ奏ちゃん!」

四方院「ありがとうございます……皆様、わたくしはもう二度とこんな事が起きてほしくありません」

四方院「お願いします……わたくしに協力をしてください」

苗木「それはきっとみんな同じ気持ちだよ四方院さん」

ジェニー「はい!あんなのもうダメです!」

グレゴリー「それは然り。だが翼をもがれた我らが何をなせるか……考えなければならん」

六山「その事だけど1つ提案があるんだけどいいかな?」

赤穂「提案?」

六山「コロシアイ学園生活だとさ、学級裁判が起きる度に行けるところが増えてたよね?」

遠見「確かにそうだったであります……もしやこのコロシアイでも」

六山「確認する価値はあると思うんだけど、どうかな」

新しい場所の開放か……

佐場木「そうだとするなら中央の島辺りから行けるようになっている可能性が高いな」

御影「じゃあ行ってみようよ。手がかりがあるかもしれないしさ」

四方院「そうですわね……えぇ、そうしましょう」

【中央の島】

赤穂「これは……!」

中央の島、そこは今までと様変わりしていた。

赤い橋が1つの島に向かって伸びていたんだ。

グレゴリー「これは……」

土橋「冗談でしょ、こんな橋どうやって……!?」

四方院「……どうやら海に沈んでいたようですわ。見てください」

四方院さんが指で擦っているのは……塩?

遠見「どうやら海水が蒸発して塩が残されたようであります」

佐場木「……足跡らしき物があるな」

苗木「もしかして誰かいるのかな?」

六山「というよりいなかった人がもう行ってるんじゃないかな」

いなかった人……如月さん達が先に調べに来ているって事か。

【第2の島・サマーアイランド】

赤穂「暑っ……!?」

なんだこれすごく暑い……

モノクマ「ようこそ、サマーアイランドへ!ただいまの気温は39℃でございます!」

佐場木「モノクマ……これは貴様の仕業か」

モノクマ「いやいや、そんな事はないよ!これはあくまでこの島の特色!」

御影「ちょっ、これキツいって……」

四方院「どういう事ですの?いくらなんでも中央の島とここまで気温差があるなんて……」

モノクマ「うぷぷ、そんな事はどうでもいいんじゃない?それよりオマエラは考えないといけない事がたくさんあるんだしさ」

モノクマ「それでは常夏の島を存分に楽しんでくださーい!」

遠見「これも絶望が起こした災害の影響なのでありましょうか……」

苗木「どうなんだろう……まあ、とにかくここを調べて早く戻った方がいいんじゃないかな」

六山「そうだね……あっ」

ジェニー「モモカどうしたです?」

六山「如月くん」

赤穂「……!」

六山が指さす方向から歩いてくる3つの影。

それは紛れもない如月さん、兵頭、鞍馬の3人だった。

如月「おや、皆さん」

佐場木「如月、貴様何をしている」

如月「そう身構えないでください。ただ調査に来ただけですから」

土橋「千や類も一緒だったんだ」

兵頭「ふふふ、1人では心細かったので」

鞍馬「……偶然ですよ」

如月「津浦さんは来ていないんですか?」

グレゴリー「言の葉の魔術師は今眠りについている。その硝子細工のような心を守らんとするためにな」

兵頭「ああ、それは大変ですね。私のようになれれば津浦さんも苦しまなくてすむでしょうに」

遠見「何か収穫はあったのでありますか?」

如月「残念ながら何も……最も僕達はまだ全て調べられたわけではないのですが」

六山「そうなの?」

兵頭「この暑さなので一度戻らないと熱中症になってしまいますから」

如月「それでは僕達はこれで失礼します。皆さん、また後で」

赤穂「……」

佐場木「……ちっ、俺達もさっさと調べた方がよさそうだな」

【ショッピングモール】

赤穂「大丈夫か牡丹」

御影「わりとキツいかも……暑いし日は射すし汗かくし、夏嫌い」

スポーツドリンクと熱冷ましを額に当てて牡丹はベンチに座り込んでいる。

これはなるべく早めにホテルに戻らせた方がいいな……

御影「兄貴は暑くないわけ……そんなキッチリスーツ着込んで手袋まで着けてさ」

赤穂「いや、俺はまあ大丈夫だ」

本当は暑いけど、俺はスーツも手袋もあまり脱ぎたくない。

この下は見ていて気持ちのいいとは言えない傷だらけだからな……

グレゴリー「ふははははっ!ここには素晴らしい天具達が揃っているぞ!」

土橋「はしゃぎすぎだって……あっ、政城に牡丹」

赤穂「どうだった?」

土橋「4階建てみたいだけど色々あったよ。食品、衣服、スポーツ用品に工具」

赤穂「だからグレゴリーはこんなに嬉しそうなのか」

土橋「後はショベルカーとか消防車もあったかな」

御影「なんなのさ、その組み合わせ……」

【図書館】

赤穂「すごい量の本だな……」

御影「日本語と英語はともかくいくつか表紙すら読めないんだけど」

佐場木「そこにあるのはフランス語の書籍だ」

赤穂「佐場木」

佐場木「中国スペインイタリアポルトガル……どうやらだいたいの国の書籍はここにあるようだ」

御影「そんな本なんて読めるの津浦ぐらいじゃないの?」

佐場木「どうだかな……それと奥にある黒いカーテンに囲まれた一角には近付くなよ」

赤穂「何かあったのか?」

佐場木「殺人に関する書籍だ。爆弾の作り方なども記載されていたのは確認してある」

そんなものが……!?

佐場木「ちっ……またマーケットに行かなければな」ジャラッ

図書館から出ていく佐場木の手には鍵束が握られている……あれはもしかしてケースの鍵か?

御影「なんか、鬼気迫るって感じ」

赤穂「それだけ責任を感じてるんだろうな……」

【水族館】

道掛「うおおっ、見ろよ苗木!マグロだぜマグロ!」

苗木「道掛クン、ちょっと落ち着いて……」

道掛「こうして魚見てると刺身食いてえよな!」

苗木「ボクはその言葉になんて返したらいいのかな……?」

赤穂「……」

御影「ちょっと。立ち止まって何してんの兄貴?」

道掛「おっ、赤穂に牡丹ちゃんじゃん!」

苗木「2人もここに来たんだ?」

赤穂「まあな。何かあったか?」

苗木「うーん、普通の水族館って感じかな?鮫とかもいるけど水槽から飛び出してくるって事はなさそうだし」

赤穂「そうか……んっ?」

道掛「なあなあ、牡丹ちゃんはどいつ食いたいよ」

御影「えっ、ここで聞くそれ」

赤穂「……」

苗木「赤穂クン?」

赤穂「……牡丹、そろそろ行くぞー」

御影「あっ、ちょっと待ってよ兄貴」

本当に油断も隙もないな……!

【射撃練習場】

赤穂「ここは……」

御影「射撃練習場ってそんなものまであるわけ……?」

赤穂「まあ、元々未来機関の施設だからな……練習する必要性もあったんだろう」

中に入ると先客の遠見が的に向かって射撃していた。

的にひたすら弾を当てているその姿は……どこかやりきれない思いをぶつけているかのようだ。

遠見「……ふぅ」

赤穂「遠見」

遠見「赤穂殿に御影殿でありますか」

赤穂「ここには銃があるんだな」

遠見「そうであります。拳銃からマシンガンまでよりどりみどりでありますよ」

御影「うわっ……そんなのあったらいつ襲われるかわかったもんじゃないじゃん」

遠見「それに関しては大丈夫でありますよ。ここの銃器は持ち出し禁止でありますから」

赤穂「持ち出し禁止?」

遠見「モノクマによるとこの射撃練習場の敷地から出した瞬間に警報が鳴り響くとか」

赤穂「なるほどな……それなら確かに持ち出される心配はないか」

遠見「そういう事であります……っと。そろそろ自分は射撃を再開するであります」

赤穂「まだやるのか?」

遠見「少々火薬の臭いの中で考えたいでありますから」

遠見はそのまま射撃をまた始めた。

……そっとしておいた方がいいか。

【ビーチハウス】

赤穂「ここは……ビーチハウス?」

御影「へー、こんなところもあるんだ」

ジェニー「すごいです!」

赤穂「んっ?この声はジェニー?」

御影「この部屋から聞こえてくる……」

牡丹の開けた扉の先にはシャワールームがあった。

そして明かり取り用の窓のそばにジェニーがぶら下がっている……何してるんだいったい。

ジェニー「マサキ、ボタン!2人もこっち来ますですか?」

赤穂「いや、俺は……そもそも何してるんだ?」

ジェニー「窓が開いてたから昇ってみたです!景色がビューティフルですです!」

御影「景色きれいはいいけど……降りられんの?」

ジェニー「大丈夫です!もっと高いところから降りた事もありますです!」

初対面の時も照明にぶら下がってたもんなジェニー……

【チャンドラービーチ】

赤穂「第1の島の砂浜に比べて広いな」

御影「ビーチハウスといい、遊ぶための砂浜って感じじゃない?私は日焼けするからごめんだけど」

赤穂「俺も付き合えそうにないな……んっ?」

四方院「……」

あそこにいるのは四方院さんか。

フルートを構えて立つその姿は憂いが強く感じられる。

四方院「……」

御影「……ねぇ、なんか様子おかしくない?」

赤穂「えっ?」

牡丹に言われてもう一度四方院さんを見る。

よく見ると……フルートを構えているのに指が全く動いてない。

それに音も全く聞こえてこなかった。

四方院「……」トサッ

赤穂「!?」

フルートを落とし……







四方院「ああああああああああああああああーーーーーーっ!!!」






赤穂「四方院さん!?」

四方院「なんで、なんでなんで……」

御影「ちょ、ちょっとどうしたのさ?」

四方院「吹け、ません」

赤穂「……吹けない?フルートがか?」

四方院「凪にレクイエムを贈りたいのに、フルートを口元に運ぶだけで、頭が真っ白になって……」

四方院「わた、くし、は……あの子に安らかな眠りを、願う事すら……」

四方院「……」

四方院「………」

四方院「…………」

赤穂「四方院さん?」

四方院「…………あら、赤穂さんに御影さん。どうしましたの?」

御影「……大丈夫なの?」

四方院「なにがです?」

赤穂「いや、さっきまで静音の事でさ……」

四方院「あら?」


四方院「赤穂さんは凪を知っていますの?」


赤穂「……は?」

四方院「しかし凪も運のいい子ですわね」

四方院「体調を崩したおかげでコロシアイなどに巻き込まれずにすんだのですから」

御影「……何、言って」

四方院「ですからこそ!わたくしは生きて帰らなければなりませんわね!」

四方院「あの子はきっと心配していますもの……あら?」

四方院「なぜわたくしのフルートが……凪からの贈り物を傷つけるわけにはいきませんのに」

赤穂「……四方院さん」

四方院「はい?」

赤穂「昨日何があったか覚えてるか?」

四方院「……学級裁判ですわ」

赤穂「誰が死んだかは」

四方院「静音さんと薄井さん……悲しい事件でした」

自分が何を言ってるのか、わかってないのか?

御影「いや、静音が死んだのになんで生きてるみたいに……」

四方院「???何をおっしゃっているのかわかりませんわ」

四方院「確かに名前は同じ静音凪ですが殺された静音さんは男性ではありませんか」

赤穂「……」

四方院「はっ!こんな事をしている場合ではありませんわ!早く脱出に向けて調査を進めなくては!」

四方院「それではまた後でお会いしましょう!」

俺達は何も言えなかった。

今の四方院さんに現実をまた理解させる事はきっと……

絶望しか、生まない。

【ホテルミライ・レストラン】

四方院「なるほど……どうやら連絡手段などは確保出来そうにないようですわ」

苗木「まあ、普通に考えたらそうに決まってるよね……」

道掛「そんな暗い顔すんなって!いざという時はイカダでも作ればいいんだしな!」

土橋「そうだね……イカダに使えそうな木材探しとくよ」

グレゴリー「未来への方舟を生誕させるのならば我に任せるがいい!光すら超える力を持ちし装備を授けようではないか!」

道掛「そりゃ凄そうだな!よっしゃ、まかせたぜ!」

遠見「光速を超えたら人間は死ぬでありますよ……」

道掛「マジか!?」

佐場木「道掛、貴様はしばらく口を開くな……!」

六山「異議なーし」カチカチ

ジェニー「ソウヤ……メッ!です!」

御影「……はあ」

赤穂「……」

話し合いは如月さん達がいない事を除いたら普通に進んでるように見える。

だけど俺と牡丹は知ってる……四方院さんが普通の精神状態じゃない事を。

赤穂「……」

四方院さんがいなくなったら……伝えておかないとな。

【港】

赤穂「……」

あの後四方院さんの事をみんなに伝えた。

みんなは驚き、落ち込んだけど今はそっとしておいた方がいいって事で一致した。

津浦に関してはグレゴリーが様子を見ていくらしい。

そして……

如月「……おや」

赤穂「如月さん」

兵頭と如月さん……2人には気をつけろと佐場木は言った。

だけど俺は……せめて話をしたかった。

この憧れのヒーローと。

赤穂「如月さんは……ジャスティスジャッジだったんですか」

ジャスティスジャッジ。

その殺人鬼の名前はこの世界が絶望に包まれる前から存在していた。

正義の名の下に殺してきた犯罪者の数は100人を超えるその殺人鬼の特徴は3つ。

1つは絶対に犯罪者以外は殺害しない事。

1つは現場に必ずその犯罪者の犯罪歴が克明に記された紙が貼られている事。

如月「えぇ、そうですよ」

1つはジャスティスジャッジの殺害した死体は必ず四肢と首の骨が砕かれ、心臓を貫かれている事。

だから警察は犯人が何らかの拷問器具を使って犯行を行っていると判断していた。

赤穂「なんでそんな事を……」

当たり前だろう……誰がその全てが素手で行われたなんて信じるんだ。

如月「僕はただ正義を執行しているだけですよ」

赤穂「あの拷問紛いの事が正義なんですか!?」

如月「……拷問ですか。それは違いますよ」

如月「あれは代償ですよ」

赤穂「代償……?」

如月「左手が潰された程度でなんですか。殺された人はもう誰の手も握り返せない」

如月「右手が潰された程度でなんですか。殺された人はもう誰にも触れられない」

如月「左足が潰された程度でなんですか。殺された人はもう立つ事さえ出来ない」

如月「右足が潰された程度でなんですか。殺された人はもう未来に歩む事が出来ない」

如月「首が折れてようやく人の人生を奪った痛みを理解し」

如月「最期の命という代償を払い、その悪は初めて許しを乞えるんですよ」

赤穂「……あなたが、すぐに殺せるのにそうしないのは」

如月「わからせるためですよ。自分の行いの取り返しのつかなさをね」

如月「最も……最後どころか途中までの代償すら支払えない悪がほとんどですが」

赤穂「……」

如月「ああ、もちろんこれは救いようのない悪に対する裁きですよ?」

如月「佐場木さんのような法の裁きも確かに必要ですし……心から悔いている人間にそこまでするのは僕としても本意ではないので」

赤穂「……あなたは、何を求めてそこまで」

如月「悪のない世界。悪を根絶やしにして平和に生きられる世界」

如月「それが僕の理想。僕の求める世界ですよ」

赤穂「……仮に悪を根絶やしにして、あなたはその世界でどうするんですか」

如月「その時は最後の悪を裁きますよ」

如月「殺人鬼ジャスティスジャッジを、ね」

赤穂「……!」

如月「わかりますよ。コロシアイという環境で僕の存在を受け入れ難い事は」

如月「だけど安心してください。僕はコロシアイに乗る気はありません」

如月「モノクマは必ず滅ぼしますが」

赤穂「……如月さん、1ついいですか」

如月「なんですか?」

赤穂「あなたにとって薄井千里は、救いようのない悪だったんですか」

如月「……」

赤穂「……」

如月「たとえどれだけ親しくても愛していても……僕は裁きますよ」

如月「それが僕の正義なんですから」

赤穂「……」

答えになっているのかいないのか曖昧な言葉を残して……如月さんは去っていった。

赤穂「……俺には、そんな正義は選べない」

それが正しいのか間違っているのかは別にして……それだけは俺の中ではっきりしていた。

【第2の島・サマーアイランド】

赤穂「……」

四方院さんの事、如月さんとの話……俺はどうにも気分が落ち込んでサマーアイランドに来た。

だけど……

赤穂「……暑い」

汗がダラダラと流れて地面に落ちる。

スーツをしっかり着込んで手袋までしてたらそりゃ暑いに決まってるよな……

だけどどうしてもこの傷だらけの地肌は見せたくない。

赤穂「右目のこれだけで、変な噂されたしな……」

とはいえ、少し視界もぶれてきた。

やっぱりコテージに戻るか、ショッピングモールに入ろう。

赤穂「……あ、れ」

歩き出そうとした瞬間、視界がさらに揺らいだ。

赤穂「マズ、熱中症か……」

杖を支えにしようとしても、力が入らなくて俺はその場に倒れてしまう。

赤穂「くそっ……誰か通りがかれば、いいけど……」

そしてそのまま俺の意識は遠のいていった。

――――

赤穂「んっ……」

「あっ、気がついた?」

赤穂「……?」

目覚めると後頭部に柔らかい感触……そして視界を遮る何か。

赤穂「……」

「大丈夫?倒れてたから慌ててショッピングモールまで引っ張ってきたんだけど」

この声は……

赤穂「……土橋?」

土橋「そうだよ。今気付いたの?」

もしかして俺……今膝枕されてるのか?

じゃあ目の前のこれは……

赤穂「っ、悪い!」

慌てて起き上がるとクラッと視界が揺れる。

土橋「ちょっとちょっと!いきなり起きたらダメだって、ほらスポーツドリンク!」

赤穂「……あ、ああ、ありがとな」

スポーツドリンクを飲み干すと、身体が軽くなった気がする。

まさに生き返った気分ってやつだな……

土橋「もう、こんな暑い中でそんな格好して水分も取らなかったら熱中症になるのわかりきってたでしょ!」

赤穂「そうなんだけどな……」

土橋「せめて上ぐらい脱ぎなよ。あれだけ汗かいてたんだから暑さに強いわけでもないんでしょ?」

赤穂「……」

土橋が俺を心配して言ってるのはわかってる。

それでも俺は……

赤穂「やめといた方がいいぞ」

土橋「何が?」

赤穂「俺の肌は色々あって傷だらけなんだ。見たらドン引きするような傷もある」

土橋「……」

赤穂「このスーツを脱いだだけでも結構わかるし……土橋だって気持ち悪いもの見たくないだろ?」

俺がこの傷を身体中に刻まれた直後、見舞いに来た何人かは露骨に俺の傷を気持ち悪がった。

中には俺は絶望で自分から傷をつけたんじゃないかとか言う奴さえいて。

あの日から俺は……傷を徹底的に隠してきた。

色々言い訳してても、結局はまたあんな事を言われるのが……怖いんだろうな。

土橋「……そっか、わかった」

赤穂「わかってくれたなら……って何してるんだ!?」

土橋は何を思ったか作業着の上を脱ぎ出していた。

土橋「アタシってさ、土木作業なんて生活してるから色々と男の人に囲まれて生きてきたんだよね」

赤穂「……」

土橋「で、胸とか結構ジロジロ視られたりもしてきたんだ」

赤穂「……それで?」

土橋「だから何て言うか……アタシ慣れてるし視線集めるしさ!アタシが近くにいれば政城がジロジロ見られるとか少なくなるでしょ!」

赤穂「……」

土橋「だから、さあ……暑いの我慢して着込まなくても大丈夫だって!」

赤穂「……」

上半身タンクトップのそれが恥ずかしいのか顔を赤くしている土橋の言葉の意味がようやく理解できた。

赤穂「……ははっ」

そして同時になんだか笑えてくる。

土橋「ちょっとなんで笑うの!?」

……うん、ここまでされると怖がってるのが馬鹿らしくなってきた。

赤穂「よっと」

土橋「あっ」

赤穂「それじゃあ、ちょっと中央の島まで一緒に頼めるか?暑いし」

土橋「……了解!アタシも早く着たいから早く行こう!」

赤穂「あっ、気持ち悪かったら視線そらしていいからな?」

土橋「政城が言うほどじゃないって!それにアタシ嫌いじゃないよ!」

赤穂「んっ?なんでだ?」

土橋「だってそれヒーローとして頑張って出来た傷でしょ?だったらむしろ勲章だって!」

赤穂「……」

土橋「あれ、どうしたの?」

赤穂「いや……」

面と向かってそんな事言われたのは……初めてだ。

勲章、か……

赤穂「……ありがとな」

この傷をそう言ってくれて。

本日はここまで。

【ホテルミライ・コテージ前】

土橋と第1の島まで一緒に戻った後、俺はマーケットに行くという彼女と別れてホテルに戻ってきていた。

赤穂「……あっ」

あそこにいるのは……

グレゴリー「言の葉の魔術師よ。ここに供物を捧げておくぞ」

赤穂「グレゴリー、津浦の様子はどうだ?」

グレゴリー「聖痕抱きし英雄か。夢魔の誘惑から解き放たれはしたが、心に巣くう闇の住人がまとまりついているようだ」

よくはわからないけど、今の津浦がコテージから出る気はないのはわかるな……

グレゴリー「元々容易なる事象ではない。時の檻は強固だが……いずれはまた覚醒の時が訪れるだろう」

赤穂「……グレゴリーは随分津浦を気にかけてるよな」

捜査の時も今も、どうしてグレゴリーはここまで津浦を……

グレゴリー「言の葉の魔術師は我が言霊を理解した原初の姫だからな」

赤穂「……」

自分の言葉を理解したのは津浦が初めてだから……って事か?

グレゴリー「言の葉の魔術師との語らいは我としても必要不可欠。覚醒の時の刻限が近くなると言うのならば、供物を捧げる事など苦ではない」

赤穂「……そうか」

グレゴリーは津浦に元気になってほしいんだな……

赤穂「早く元気になるといいよな」

グレゴリー「然り!そのためにも秘められし我が天具をこの世に生誕させねば!」

赤穂「あっ、待てよグレゴリー!」






ガチャッ

津浦「…………」

バタンッ

【ホテルミライ・レストラン】

グレゴリーと別れた後、俺は佐場木達とサマーアイランドにあった射撃練習場について話していた。

佐場木「……首尾は」

遠見「やはり補充されていたであります。射撃練習場の弾薬を尽きさせるのは難しいかと」

佐場木「そうか……ちっ、銃そのものの破壊も不可能となればあの近辺に人を近付けるのは危険か」

赤穂「持ち出せないのにか?」

佐場木「中から撃てば持ち出し違反にならず人を射殺可能だ」

赤穂「……ああ、そういう事か」

遠見「どの銃も反動が強いタイプなのは唯一の救いであります。あれを問題なく扱えるのはおそらく自分ぐらいでありますから」

赤穂「反動が強いって事は下手をしたら肩外れそうだな」

佐場木「とはいえ楽観視は出来ん。あの近辺には近付かないよう周知徹底……」

苗木「あの……ちょっといいかな?」

赤穂「んっ?どうしたんだ苗木」

苗木「ちょっと気になる事があってさ、伝えておいた方がいいかなって」

佐場木「気になる事?なんだ」

苗木「……あの映像ってまだ残ってる?」

遠見「あの映像……身体検査の時のあれでありますか?」

苗木「うん。あの映像」

身体検査の記録……あれがどうしたんだ?

その後佐場木が持ってきたビデオカメラの映像を再び再生する事になった。

生きてる静音と薄井……その姿を見ると胸が痛くなるけど、いったい苗木は何が気になったんだ?

苗木「あっ、ここだよ!」


佐場木『それよりこのスポットライトはなんだ?』

静音『ちょっと意見もあったからサプライズに使う!』

遠見『サプライズでありますか?内容は……』


遠見「これがどうしたのでありますか?」

苗木「いや、静音さんはあのサプライズを意見があったからやる気になったみたいだけど」

苗木「意見したの、誰なのかなって」

佐場木「……!」

赤穂「薄井じゃない、よな」

薄井は静音とジェニーの話を聞いて犯行を思いついたはずだ。

薄井もそれを否定しなかった……じゃあ誰が静音にそんな意見をしたんだ?

遠見「しかし、それはあくまでサプライズの意見をしただけでは……」

苗木「そうなんだけど……ジェニーさんのあの告白聞いても名乗りでなかったって、なんか悪意がある気がして……」

赤穂「……」

悪意?

それじゃあまさか誰かが事件を起こすのを期待して、静音に意見をした人間がいる?

だとしたら……そいつは生きてまだ俺達の中にいるのか?

【赤穂のコテージ】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「夜10時になりました!」

モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」

モノクマ「うぷぷ、また明日……」

赤穂「……」

苗木の言葉の事を考えてたらもうそんな時間か。

赤穂「悪意か」

苗木の言う通り静音にサプライズの意見をしたのが悪意を持っての事だとしたら……

赤穂「……四方院さんには聞かせられないな」

今四方院さんは静音の死を否定して心を守ってる。

だけどもし四方院さんが間接的に静音を死に追いやるような真似をした人間の存在を知ったら……

赤穂「くそっ……」

いったい誰なんだ。

もし悪意がなかったにしろ……突き止めないと。

【7日目】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

赤穂「朝か……」

とりあえず牡丹を迎えに行こう。

【ホテルミライ・レストラン】

今日は……津浦以外みんないるな。

まあ、如月さんや兵頭は離れて座ってるけど。

道掛「今日でこの島に来て1週間だよなー」

六山「そうだね。なんかあっという間な気がするよ」

土橋「そろそろ助けが来てもいいと思うんだけど……」

佐場木「現在コロシアイが起きたらしい第13支部はともかく他の支部は何をしている……」

兵頭「ふふふ、元々どの支部も忙しいですからね。絶望の残党がいなくても問題は山積みですし」

赤穂「……」

確かに第1支部から第14支部は絶望の残党の対処以外に復興関係の仕事も受け持ってるからな……

苗木「そういえば気になってたんだけど、第15支部から第19支部って何をしてるの?」

鞍馬「……未来機関全体の任務として絶望の捕獲や一般人の保護」

赤穂「第15支部は確か他国との交渉……支部長は元73期生【超高校級の旅人】だな」

佐場木「第16支部は資源の発掘、調査だ。支部長は元75期生【超高校級のトレジャーハンター】」

遠見「第17支部は絶望の被害者のカウンセリングや聞き取り調査であります。支部長は現在諸事情にて空席、代理として元76期生【超高校級の王子】が在任中でありますよ」

土橋「第18支部はスポーツの復興支援だよ。支部長は元75期生【超高校級のサッカー選手】」

六山「この前新造された第19支部はえっと……確か本とか美術品とか歴史的資料の回収、保存だったかな。支部長はまだ決まってないけど【超高校級の図書委員】辺りが有力候補らしいよ?」

道掛「よく覚えてんなー。俺なんて会長のじいちゃんの名前も知らねえや!」

御影「……自慢にならないね」

今日はここまで。

目標としてこの話はV3発売までに終わらせたい……

【ホテルミライ・プール】

朝食は結局未来機関講座になったな……

ジェニー「……」チャプチャプ

赤穂「……ジェニー?」

何してるんだ、あんなところで。

ジェニー「あっ、マサキ……」

赤穂「浮かない顔してどうした。悩みがあるなら聞くぞ?」

ジェニー「……ボク、ダメダメです」

赤穂「えっ?」

ジェニー「ボクはみんなをスマイルにするピエロです……なのに今ボクは何も出来なくて」

赤穂「それは……ジェニーのせいじゃないだろう」

ジェニー「でも……」

すっかり落ち込んでるな……そうだ。

赤穂「ジェニー、何も出来ないって事はないぞ。少なくとも1つジェニーじゃないと出来ない事がある」

ジェニー「ボクじゃないと?」

赤穂「静音とサプライズの打ち合わせをした時の事を聞かせてほしいんだ」

ジェニー「ナギとの?」

赤穂「ああ、頼むよ」

ジェニー「えと……ナギはカナデをもっと目立たせたい言てましたです……このままだとカナデのスゴさが伝わらない言われたて……」

赤穂「……!そこのところもう少し詳しく。静音は何を言われたって?」

ジェニー「えとえと……カナデはパーフェクトでもっと目立つべきだから……キラキラのドレス着るとかライトアップとかしたらキレイなんじゃないか言われたて……」

……これは、判断に困るな。

罪悪感から言えないのか、それとも悪意を持って黙ってるのか……これじゃあわからない。

ジェニー「あのマサキ?」

赤穂「あっ、ああ、ありがとうジェニー。助かった」

ジェニー「ボク役に立てたです?」

赤穂「ああ、もちろん」

ジェニー「なら……よかたです」

でもまあ、ジェニーが少しは元気になれたなら……結果オーライか。

赤穂「うーむ……」

兵頭「お悩みですか?」

赤穂「うわっ!?」

兵頭「ふふふ、ごめんなさい。まさかそこまで驚かれるなんて」

赤穂「兵頭……」

兵頭は学級裁判の投票に快感を抱いていた……俺には全く理解出来ない話だ。

だからこそ……兵頭は何をするかわからない。

赤穂「キミはこれから先どうする気なんだ」

兵頭「どうするとは?」

赤穂「学級裁判の投票がキミにとって快感なのははっきりしてる」

兵頭「……ああ、だから私が事件を起こすんじゃないかと思ってるんですか?」

赤穂「キミは頭がいい。疑われるのはわかってただろう」

兵頭「ふふふ……そうですね。少なくとも要注意人物ではあるでしょうね」

赤穂「……」

兵頭「ふふふ」

赤穂「何がおかしいんだ?」

兵頭「如月さんも似たような事を言ってましたから……やっぱりヒーローは似るんでしょうか?」

赤穂「……!」

兵頭「安心してください。私はコロシアイなんてしませんよ」

兵頭「最も信じるかは……ふふふ、赤穂さん次第ですよ」

赤穂「……」

俺と如月さんが同じ……

今となっては、複雑な気分だな……

【中央の島】

赤穂「……んっ?」

道掛「いいか鞍馬!ルールはこの島を1周!それだけだ!」

鞍馬「……はあ」

御影「あっ、兄貴」

赤穂「いったいなんなんだこの騒ぎは」

御影「道掛と鞍馬がマラソンで勝負するんだってさ」

赤穂「……いや、なんでそんな事になった」

御影「さあ?」

道掛「鞍馬ってよ、なーんか暗いんだよな!いつもいつも1人だしよ!」

鞍馬「……別に困っていませんから」

道掛「だから俺はお前とダチになる事にした!」

鞍馬「……」

御影「なんでそれでマラソン?」

道掛「熱い勝負をしたら男はその瞬間からダチになるんだぜ!」

鞍馬「……自転車ではないんですね」

道掛「勝負は公平にやってこそだからな!」

鞍馬「……はあ」

鞍馬か……そういえば如月さんといい勝負してたよな。

道掛「よっしゃあ!行くぞ鞍馬!牡丹ちゃん合図よろしく!」

御影「そのために私は呼び止められたわけか……はいはい、位置について」

道掛「……」

鞍馬「……」

御影「よーい、ドン」

赤穂「……行ったな」

御影「だね」

赤穂「道掛も考えてるのか考えてないのか……」

御影「でも道掛、兄貴じゃない方のヒーローにも声かけてたよ」

赤穂「如月さんにか?」

御影「うん。まあ、頭は悪いけどいいやつなんじゃない?」

赤穂「……そうだな」

道掛「うおおおっ!」

鞍馬「……」

御影「あっ、戻ってきた」

赤穂「鞍馬の方が勝ってるみたいだな」

鞍馬「……」

道掛「どわあああっ!」ズサァ

赤穂「お、おい大丈夫か?」

道掛「はぁ、はぁ……ちくしょう!負けたー!」

鞍馬「……」

道掛「鞍馬!お前すげえな!俺これでも足の速さにも自信あったのによ!」

鞍馬「……」

道掛「だけどこれで俺達はダチだ!さっ、握手しようぜ!」

鞍馬「……失礼します」スタスタ

道掛「ありゃ?」

御影「あらら……」

赤穂「あー……」

道掛「照れてんのか?」

ポジティブだな……

六山「……」ピコピコ

赤穂「……」

相変わらず六山はゲームばっかりしてるな……

四方院「あら、六山さん。またゲームですの?」

六山「まあねー」

赤穂「毎日それだけやってたらすぐクリアしちゃうんじゃないか?」

六山「ちっちっちっ、甘いね赤穂くんは。ゲームというのはやりこみ含めてクリアなんだよ」

六山「だから全部クリアするなら時間が足りないぐらい」

四方院「最近のゲームとはすごいんですのね……わたくしはやった事がありませんからよくわかりません」

六山「ゲームは世の中の最新技術をふんだんに盛り込んでるからね。やって損なしだよ」

赤穂「なるほどなぁ……」

六山「良かったら対戦用のスペア貸そうか?」

赤穂「そんなの持ってるのか」

六山「ゲームは人の輪を繋ぐからね。まあ、これは受け売りなんだけどわたしもそう思うからさ」

四方院「暇潰しにはいいかもしれませんね……それでは何か初心者にも優しいものをお願いしますわ」

六山「だったらねー」

リュックから大量のゲームソフトを出す六山。

うーん……俺はこれだけのゲーム一生かかっても終わる気がしないな……

ビービービー!

赤穂「……んっ?」

なんだ、この音。

モノクマ「警告警告!」

モノクマ「射撃練習場より銃が持ち出されました!」

モノクマ「戻さない場合には盗難者に罰を与えます!」

赤穂「なっ!?」

射撃練習場から銃が……いったい誰がそんな事を!?

赤穂「とにかく行かないと……!」

【射撃練習場】

遠見「落ち着いて!今すぐその銃を戻すであります!」

赤穂「遠見、佐場木!いったい誰が銃を……」

津浦「はぁー、はぁー……!」

津浦!?

津浦「来ないでください……来たら撃ちます……!」

苗木「ど、どうしたの津浦さん?いきなりこんな……」

津浦「どうしたのじゃありませんよ……この島にはシリアルキラーがいるんですよ!?」

六山「如月くんの事?でもコロシアイには乗らないって言ってたよ?」

津浦「人殺しのそんな言葉を信用しろと!?ただでさえ、コロシアイなんてさせられて……だからワタシは!ワタシはぁ!」

土橋「琴羽!」

佐場木「だったらどうする?この場の全員を殺すか?」

津浦「……!」

佐場木「人の命を奪うというのはあまりに重い十字架になる、たとえ間接的にもだ」

佐場木「津浦、貴様に14人殺す十字架を背負えるとは思えん、やめておけ」

津浦「ワタ、ワタシは、殺、いや、違っ」

如月「皆さん、大丈夫ですか!」

津浦「ぁ……」

モノクマ「後30秒以内に戻さないと違反者をおしおきしまーす!」

モノクマ「30!29!」

津浦「いやあああああああっ!!」

遠見「っ、全員下がるであります!」

津浦「死にたくないっ、ワタシは死にたくないっ……!」

赤穂「津浦!早く銃を戻せ!」

津浦「あああああああああっ!!」

「……!」







パァン!






御影「あっ……」

グレゴリー「ぐうっ……!」ピシッ

ジェニー「グレッグ!?」

赤穂「グレゴリー、何を……!」

津浦に真っ正面から向かっていくなんて……!

津浦「……!」

グレゴリー「っ!」ガシッ!

津浦「ひっ……!」

グレゴリー「ふんっ!」

ガシャンッ

モノクマ「銃が敷地内に戻されました!」

モノクマ「これに懲りて二度としないようにね!」

道掛「お、おいグレゴリー!大丈夫かよ!」

グレゴリー「案ずるな……我が仮面の守護は魔力を注ぎ込んだもの」ピシピシッ

パリンッ

グレゴリー「最も……言の葉の魔術師の魔弾もなかなかの魔力だったようだが」

仮面が銃弾を止めたのか……

津浦「ぁ……あっ」

グレゴリー「言の葉の魔術師」

津浦「ひっ!ごめんなさいごめんなさい!殺さないでくださいっ……」

グレゴリー「……」


ギュッ

津浦「……えっ」

グレゴリー「恐怖に蝕まれながらもよく耐えた。この場の誰も殺められずにいるのだ……死に怯える事はない」

津浦「……」

グレゴリー「言の葉の魔術師よ。恐怖に戦くならばこの我がその魂を守護しよう」

津浦「えっ……」

グレゴリー「言の葉の魔術師は我が言霊を余すところなく理解する存在。いなくなられては困るのだ」

津浦「Mr.グレゴリー……」

グレゴリー「憤怒の執行者、紅纏いし狂戦士。言の葉の魔術師に罰は不要」

如月「はい?」

佐場木「……」

グレゴリー「魔弾を受けた我が言うのだ。よもやそれを黙殺し己が義を貫くとは言うまいな?」

如月「……グレゴリーさんが許すと言うなら僕の出る幕はありませんね」

佐場木「ふん……被害者がそう言うなら今回は不起訴が妥当か」

グレゴリー「感謝する。言の葉の魔術師よ、もはやその身が恐怖に蝕まれる事はない」

グレゴリー「我がその恐怖を振り払ってみせよう」

津浦「……Mr.グレゴリー」ギュッ

四方院「一件落着のようですわね」

兵頭「全く人騒がせですね……ふふふ、私の言えた話ではないですが」

鞍馬「……」

赤穂「……ふうっ」

何事もなくてよかったな……

明日早いので本日はここまでで。

【ホテルミライ・レストラン】

津浦「皆さん、ご迷惑をおかけしました」

苗木「ま、まあ怪我がなくて何よりじゃないかな?」

遠見「反動で1日は手が痺れるように感じると思うでありますが、長引きはしないので安心してほしいであります」

津浦「はい」

グレゴリー「ならばこの天具その四十三、第三の腕を使うがいい!」

道掛「キモッ!?リアルすぎんだろそれ!」

四方院「本物の腕のようですのね……」

グレゴリー「使用法は心臓の上から装着し……」

御影「うわぁ……想像しただけでヤバいって」

赤穂「そ、それよりグレゴリーはまた仮面着けたんだな」

グレゴリー「ふっ、あれは我が皮膚と同じ。皮膚を剥がしたままの者などいようはずがない!」

六山「チラッとだけど結構整ってたよね。隠さなくてもいいのに」

グレゴリー「ふははっ!外しはせんが賛辞は快く受けようではないか電脳の駆逐者よ!」

津浦「っ……」

ジェニー「コトハどうしたです?」

津浦「い、いえ」

土橋「……あー」

【赤穂のコテージ】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「夜10時になりました!」

モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」

モノクマ「うぷぷ、また明日……」

赤穂「今日は疲れたな……」

何事もなかったとはいっても、精神的にはキツかったしな……

赤穂「もう寝よう」

この生活ももうすぐ10日……

津浦みたいに不安になる奴もいるだろうし、気を引き締めないとな。

【8日目】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

赤穂「よし、牡丹を迎えに行くか」

【ホテルミライ・レストラン】

赤穂「……あれ?」

御影「なんか今日の料理いつもと違わない?」

土橋「今日の朝ごはんは琴羽が作ったからね」

赤穂「津浦が?またどうして」

土橋「あれだよあれ」

あれ?

津浦「どうでしょうか?」

グレゴリー「ふむ、我も火水操りし恵みの儀は行うが……言の葉の魔術師の腕にはかなわぬようだ」

津浦「そ、そうですか」

赤穂「……あー、なるほどな」

土橋「そりゃ命懸けで自分を止めてさらに守るなんて言われたらねえ。元々琴羽はグレゴリーとよく話してたし」

御影「ふーん……私にはよくわかんないね」

【サマーアイランド・水族館】

ジェニー「ほわあ……」

佐場木「おい。危険だからあまり近寄るな」

ジェニー「はいです!」

赤穂「また珍しい組み合わせだな」

佐場木「赤穂か……別に一緒に来たわけじゃない。水族館の調査をしていたらクラヴィッツが来ただけだ」

ジェニー「お魚いっぱいです……イルカいないですか?」

佐場木「それなら向こうの水槽だ」

ジェニー「ありがとうですハンジ!」

赤穂「……意外に面倒見いいんだな」

佐場木「お前は俺を冷血人間と勘違いしているようだが、俺が冷徹に接するのは犯罪者相手だけだ」

赤穂「……犯罪者だけ、か」

佐場木「ふん、未だに如月にあんな態度の俺が気に食わないか?」

赤穂「いや……佐場木からしたら如月さんを受け入れられないのは、理解したつもりだ」

佐場木「それならいい」

ジェニー「ハンジー!マサキー!見てくださいすごいですー!」

赤穂「ああ、今行くよ!」

佐場木「……赤穂、お前が如月をどう思うかは勝手だがよく覚えておけ」

佐場木「津浦をあそこまでにしたのはコロシアイだけじゃない。紛れもない如月怜輝の存在も要因だ」

佐場木「奴が何をほざこうと……奴のしている事に恐怖を感じる人間がいてそこから狂気は加速する」

佐場木「それは今あそこで笑う人間さえ死体に変えかねないのだとな」

赤穂「……ああ」

恐怖から産まれる狂気……津浦を見たら、否定なんか出来ないよな。

【図書館】

遠見「……」

赤穂「うわっ!?」

図書館の中央で遠見が寝転がって……倒れてるのかと思ったぞ。

遠見「んっ……赤穂殿でありますか」

赤穂「何をしてるんだよ。ビックリしたぞ」

遠見「危険書物の選定をでありますよ。少し休憩をしていたのでありますが……」

赤穂「床で休憩してたら誤解されるぞ……」

遠見「野宿などが当たり前だったのでついそうしてしまうのであります……コテージでもベッドは慣れないでありますし」

赤穂「ああ……軍人だもんな遠見は。でもその年で軍人っていうのも珍しいよな」

遠見「うーむ、自分の知る限り少年兵は珍しい存在でもないでありますよ?隊長殿も自分の相棒もそうでありましたし」

赤穂「相棒?」

遠見「観測手である自分は狙撃手と組んで行動していたのでありますよ。元々隊長殿に助けられた者同士で、相性は良かったでありますから」

赤穂「助けられた……?」

遠見「色々ありましたので……」

色々か……ろくな事ではなさそうだな。

道掛「いいやっほうぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

赤穂「……」

また道掛が自転車を乗り回してるのか。

道掛「次はあっち行くぞ如月ー!」

赤穂「は!?」

よく見たら……道掛、如月さんと2人乗りしてるぞ!?

道掛「おっ、赤穂じゃん!」

赤穂「道掛、お前なんで如月さんと2人乗りなんて」

道掛「如月とはダチだからな!俺頭よくねえから考えてもわかんねえしよ!」

如月「僕も驚きましたが……そういうことらしいです」

赤穂「……」

鞍馬といい、如月さんといい……道掛は恐れる事なく踏み込んでいくな。

道掛「よっしゃ、今度はあっちだ!行こうぜ如月!」

如月「……安全運転でお願いします」

道掛「わかってるって!」

赤穂「……」

少し羨ましいな……

【サマーアイランド・ショッピングモール】

津浦「……」

赤穂「……津浦?」

津浦「Mr.赤穂、こんにちは」

赤穂「ああ。外に出るようにしたんだな」

津浦「Mr.グレゴリーの言葉にワタシも応えたいので。今はこの島を調べていました」

赤穂「そうか……図書館には行ったか?」

津浦「おそらく一番長い調査になるので最後にしようかと……相当数の言語の本があるのは聞いているので」

赤穂「津浦は文字の読み書きも出来るのか」

津浦「言葉ほどは得手ではありませんがだいたいは出来ますよ、両親の影響ですかね」

赤穂「両親?」

津浦「ワタシの両親は海外に行く事が多かったので、まともにコミュニケーションをとるには言語を勉強しなければいけなかったんです」

津浦「言葉が通じないのは少し怖かったので……何が相手を怒らせるか、何を言われているかというのを考えてしまうと余計に」

赤穂「それが【超高校級の通訳】の始まりか……」

津浦「両親も事故で亡くなって……1人で頑張らないといけませんでしたから」

津浦の怯えはそこも関係してたのかもな……

ここまで。

近々動機発表、事件発生です。

土橋「そういえば誠は【超高校級の幸運】だけど、今までで一番幸運だなって感じた事ってなんなの?」

苗木「そうだなぁ……」

赤穂「部屋でなくした1000円が見つかった事じゃなかったか?」

苗木「あはは……やっぱりそれになっちゃうかな。ボクって本当に平々凡々だから」

土橋「アタシ幸運って聞くとすごいラッキーってイメージだけどそんな事もないんだ」

苗木「先輩達はすごいからね……苗木先輩なんて【超高校級の希望】になっちゃうし」

赤穂「俺の同期もかなりすごい幸運だったな」

噂だと幼なじみと一緒に通うために幸運の座を引き寄せたなんて言われてるし……

土橋「もしかしたら誠もこれから幸運を発揮するのかもしれないし、平々凡々だなんて卑下しなくてもいいんじゃないの?」

苗木「あはは、そうだといいんだけどね……」

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「オマエラ!至急中央の島に集合!」

モノクマ「ボクからとっても素敵なお話がありまーす!」

赤穂「……!」

モノクマがわざわざ俺達を集めるって事は……

赤穂「新しい動機か……!」

くそっ、今度はいったい何をする気だ……

【中央の島・未来機関第二十支部】

苗木「いったい何の用なんだろう……」

六山「普通に考えたら動機かな……でも前に違う用件でも呼び出されたし」

兵頭「ルール違反者の処罰ですね。静音さんが厨房を……」

四方院「ルール違反?そんな事、ありましたか……?」

土橋「あっ、奏は覚えてないかもね!うん!」

道掛「俺もよく覚えてねえや!だから気にすんなよ奏ちゃん!」

四方院「……えぇ」

四方院さん……あの静音が殺されかけた時の事も、覚えてないのか。

モノクマ「お待たせー!オマエラみんな集まってるね!」

津浦「っ……!」

グレゴリー「案ずるな言の葉の魔術師」

津浦「は、はい」

佐場木「モノクマ、今度は何を仕掛けてくるつもりだ」

モノクマ「仕掛けるなんて心外だなぁ。ボクは今回オマエラに素敵なお話を持ってきたんだよ?」

如月「あなたにとっての素敵なお話とやらは僕達にとってはろくなものではありませんよね?」

モノクマ「うぷぷ、それはそっちが聞いて決めればいいよ」

遠見「くっ、話とはいったいなんなのでありますか!」

モノクマ「うぷぷ……よーく聞きなよ。ビックリドッキリなニュースだからね」

鞍馬「……」







モノクマ「オマエラの中に人殺しがいまーす!」






赤穂「……は?」

俺達の中に、人殺しがいる……

ジェニー「えと……みんな知ってるですよ?」

モノクマ「はぇ?」

如月「人殺しがいる、ですか。僕がいる時点でそれは明白では?」

遠見「自分も戦場では何人も敵を殺したであります……そんなもの動機にならないでありますよ」

俺達は戸惑いを隠せなかった。

人殺しがいる……それはジャスティスジャッジの如月さんや軍人の遠見がいる時点でわかりきっていた事だからだ。

モノクマ「あー、そうだね。確かに如月クンや遠見さんも人を殺してるよね、しかもその手で!」

赤穂「……!?」

今モノクマは何て言った!?

六山「あの……【も】って、何かな?」

モノクマ「おおっと!口が滑っちゃった!」

モノクマ「そうだなぁ、このまま事件が起きないようならさらに口が滑っちゃって名前も出しちゃうかも!」

まさかいるのか?

この中に如月さんや遠見以外にも人を殺してる人間が……!

御影「これが次の動機ってわけ……」

モノクマ「それじゃ、しっかり伝えたからね!」

モノクマ「さあさあ、どうなるかなー?ワックワクのドッキドキだよねー!」

本日はここまで。

次回事件発生です。

モノクマが消えてから俺達は互いに顔を見合わせてはそらすという行為を繰り返していた。

如月さんや遠見以外に人を殺した人間がこの中にいる。

津浦の恐怖から起きた事件があったばかりの俺達にとって、それは十分動機になりえるものだった。

如月「……なるほど。悪がこの中にいると」

苗木「ちょっ、ちょっと如月クン?まさか……」

如月「僕は悪を見逃すつもりはありません。誰かはっきりした時点で裁きを執行します」

赤穂「……!」

今回コロシアイに乗ると言ったも同然の如月さんの台詞に嫌な汗が流れる。

如月「……と言いたいところですが」

だけど如月さんは首を横に振ると困ったように肩を竦めた。

六山「言いたいところですが?」

如月「今の環境で裁きを執行してしまうと、僕はクロとなり自分と皆さんの命を天秤にかけなければならなくなります」

如月「僕はまだ死ぬわけにはいきませんし、皆さんの命を引き換えにする事は僕の正義に反します」

如月「残念ですが、悪に対する裁きの時間には猶予が与えられるようですね」

道掛「び、びっくりさせんなよ!殺す宣言に聞こえただろ!」

如月「ああ、すみません。少しまわりくどかったですね」

如月さんは、今まで通りコロシアイはしないって事か。

ヒヤヒヤしたな……

津浦「あの……モノクマの言う人殺しって誰の事なんですか?」

グレゴリー「言の葉の魔術師。それを追い求める事はパンドラの箱を開けると同義だ」

津浦「で、でもMr.グレゴリー……ワタシ、やっぱり怖いんです……」

土橋「気にしない方がいいよ琴羽。モノクマの事だからアタシ達って凪や千里も含めますとかやりそうだし」

御影「うわ、すっごくありそう……」

兵頭「ふふふ、それなら薄井さんがモノクマの言う人殺しという事になりますね」

鞍馬「……」

既に死んだ薄井も含めるか……確かにモノクマならやりかねない。

だとしたらこの動機は疑心暗鬼からコロシアイを起こさせるための……

津浦「……で、ですが、そうだとしたらおかしいところが」

御影「何が?」

津浦「モノクマがMr.如月やMs.遠見が人殺しと言った時に……しかもその手でと、言っていました」

グレゴリー「選ばれし者に霊魂たる者達が含まれるならば……ふむ、いささか惑いの言が過ぎるな」

四方院「確かに変な言い回しですわ。しかしそうなると……」

佐場木「つまり津浦。お前は間接的手段での死も含まれていると思っているわけか」

津浦「は、はい」

佐場木「ならば話は簡単だ。人殺しとやらは俺だ」

遠見「さ、佐場木殿!?」

佐場木「俺は何人もの犯罪者に死刑判決を下してきた」

佐場木「間接的という意味なら俺は人殺しという区分に分類されるだろう」

佐場木「つまり津浦、その不安はただの杞憂だ」

津浦「……」

グレゴリー「言の葉の魔術師、闇に飲まれるな。我がいるのだからな」

津浦「はい……」

これで、今回の動機は……なんとかなったのか?

【ショッピングモール】

六山「今回は乗りきれそうだね」カチカチ

赤穂「そうだな……モノクマの狙いがなんにしろ、コロシアイなんて起きないに越したことはないしな」

六山「あっ、ちょっと待っ」

赤穂「おっ、初めて六山に勝った」

六山「はあ……負けちゃった。【超高校級のゲーマー】じゃないからやっぱり負け知らずとはいかないなぁ」

赤穂「【超高校級のゲーマー】……そういえば77期生にいたな」

六山「七海千秋さんでしょ?ゲームソフトのバグ関連の依頼受けた時に名前聞いた事あるよ」

赤穂「やっぱり有名なのか」

六山「うん。ああいう楽しんでゲームしてくれる人がいたからわたしもデバッガーとして頑張れたんだ」

赤穂「……その言い方からして失踪したのも知ってるんだな」

六山「……うん。どこかでゲーム楽しんでくれてたらいいんだけどね」

【超高校級のゲーマー】の失踪……人類史上最大最悪の絶望的事件に巻き込まれたって噂だけど……

だとしたらここにもその爪痕が残ってるって事だよな……

【ホテルミライ・ロビー】

御影「……ねえ、ちょっと聞きたい事があるんだけど」

四方院「なんでしょう?」

御影「静音って、どんな子なの?」

赤穂「おい牡丹……!」

ホテルに入った瞬間聞こえてきた会話に思わず声を出してしまう。

牡丹のやつ、四方院さんに静音の事聞くなんて何考えて……!

四方院「凪の事をお知りになりたいんですの?ふふっ、構いませんわ。赤穂さんもよろしかったら」

赤穂「えっ、あ、ああ」

四方院「さて、そうですわね……凪を一言で表すなら、わたくしの人生の恩人です」

御影「人生の恩人……」

四方院「わたくしは今でこそ【超高校級のフルート奏者】と呼ばれていますが……実はフルートをやめようと思っていた時期があったんです」

四方院「あの頃のわたくしにとってフルートはただやっているだけのものでした」

四方院「大人達が難しい評価をして、年の離れた奏者が妬みを隠さないままお世辞を言う……同年代の子が友達と遊ぶなかでわたくしはひたすら大人に叱責されながら演奏の日々」

四方院「正直疲れはてていましたの。だからそれなりに大きな演奏会で初めて独奏を任された時、わたくしは決めたんです」

四方院「もうフルートを吹くのは最後にしよう……と」

四方院「そんな気持ちのまま控え室で演奏を練習していて……それが一段落した頃」

四方院「凪と、出会いましたの」

四方院「凪はわたくしの演奏を聞いていたようで、はっきりとこう言いましたわ。【すごい!】と」

四方院「それだけと思いますか?ですがわたくしにとってあの凪のたった一言は……大人達の理屈をこねた言葉や他の奏者達の負の感情をこめられた言葉よりも……」

四方院「はるかに尊く、嬉しい言葉だったんです」

四方院「出番が来るまで凪と話して……もっと話をしたい、わたくしのフルートを聞いてもらいたいと思うようになって」

四方院「その頃にはフルートをやめるなんて思っていた事は頭から消えていましたの」

四方院「凪と過ごす時間はわたくしの心を救ってくれました」

四方院「そしてあの子がわたくしの演奏会に指揮者として来て、これからはステージでも一緒だよと言ってくれて」

四方院「あの子がいなければわたくしはきっとフルートをやめていて……本当にあの子はわたくしの……あら?」

御影「涙……出てるよ」

四方院「ふふっ、わたくしもあの子がいないと落ち着かないという事でしょうか……」

四方院「ああ、早くあの子の所に行きたいですわ……」

赤穂「……」

静音は四方院さんをあんなに慕っていたけど……四方院さんの方も静音をこんなに想ってたんだな……

兵頭「鞍馬さんはどんな才能でここにいるんですか?」

鞍馬「……いきなりなんですか」

兵頭「ふふ、だって気になるじゃないですか。あなたと御影さんは才能不明なんですよ?」

鞍馬「……」

兵頭「最初は才能がないのかもしれないと予測しましたけど……そうだとしたらあなたが如月さんと渡り合える説明がつきません」

鞍馬「……」

兵頭「かといって才能があるのならよほどのものでもない限り名前ぐらいは聞くのにそれもありません」

鞍馬「……」

兵頭「全てが謎……あなたは何者なんですか?鞍馬類さん」

鞍馬「……答える義務はありませんね」

兵頭「そうですか。ふふ、答えてくれるとは思ってませんでしたが」

鞍馬「人を探る前に自分の身の振り方を考える方がいいのでは?」

兵頭「はい?」

鞍馬「このままでいるようならあなたは死にますよ」

兵頭「……ご忠告どうもありがとうございます」

赤穂「……何してるんだ」

言い争いと言うほどでもないけど、静かに火花が散ってるぞ……

兵頭「ふふ、なんでもありませんよ」

鞍馬「……」スタスタ

本当に……何を話してたんだ?

【図書館】

グレゴリー「……」

赤穂「グレゴリー?」

グレゴリー「聖痕抱きし英雄か」

赤穂「もう夜になるぞ。コテージに戻った方がいいんじゃないか?」

グレゴリー「もうそこまでの時が経っていたか……」

赤穂「なんだ、本に夢中になってたのか?」

グレゴリー「然り。己が力を高めるためにあらゆる知識を我が物とする事は時の代償が不可欠だ」

赤穂「あんまり根を詰めすぎるなよ?」

グレゴリー「案ずるな、今我が地に伏せば言の葉の魔術師の精神に傷を負わせかねん」

赤穂「……そうだな」

グレゴリー「さて、闇も迫り来ている……我は戻るとしよう」

赤穂「グレゴリー」

グレゴリー「むっ?」

赤穂「今は津浦の事はお前に頼るしかない……だから何かあったら頼るようにしてくれよ」

グレゴリー「ふっ、我も孤独ではないという事か……その言霊、我が血潮としよう」

グレゴリーは津浦の事といい結構無茶するからな……

【赤穂のコテージ】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「夜10時になりました!」

モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」

モノクマ「うぷぷ、また明日……」

赤穂「……」

前みたいに、動機が出されてすぐに何かする人間は出なかったな。

赤穂「このままモノクマの動機をはね除けていけば……」

俺もそのために出来る限りの事をしないとな……







【???】

「……」

「…………」スッ

カタン

「……」ニヤッ

スタスタ……






【9日目】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

赤穂「んっ……」

朝か……牡丹を迎えにいかないとな。

【ホテルミライ・ロビー】

御影「ふああ……」

赤穂「眠そうだな、遅かったのか?」

御影「んー、なんか誰かが夜中出歩いてたみたいでさ……」

赤穂「夜中に出歩いてた?誰がだよ」

御影「知るわけないじゃん。ただコテージ周りの木の床が鳴る音しただけだし」

赤穂「誰かが夜中に……」

……いや、まさか。

そんなはず、ないよな?

【ホテルミライ・レストラン】

苗木「おはよう2人共」

ジェニー「おはようです!」

道掛「おーっす」

赤穂「おはよう……ってあれ?みんなはどうしたんだ?」

苗木「それが……今日これだけしかまだ来てないんだよね」

御影「……えっ」

道掛「奏ちゃんも美姫ちゃんも来ないから俺達で飯作ってたんだけど、なんかおかしくね?」

ジェニー「いつもならハンジやメメも来てるです……」

赤穂「……」

なんだこれ……何かおかしいぞ。

赤穂「ちょっとみんなを起こしてくる!牡丹はここにいてくれ!」

御影「あっ、兄貴!」

【ホテルミライ・コテージ周辺】

佐場木「くそっ、何が起きている……!」

遠見「とにかく今は各人の安否確認であります!」

兵頭「私は本当に……」

如月「これはいったい……」

鞍馬「……」

赤穂「!?」

なんで外から5人が……いや、今はそれどころじゃない!

佐場木「赤穂か!おい、レストランには今何人いる!」

赤穂「俺を入れて5人……牡丹、苗木、ジェニー、道掛だ」

遠見「それだけで、ありますか……!?」

如月「こちらにいるのも5人……いないのは六山さん、グレゴリーさん、津浦さん、土橋さん、四方院さんですか……」

ガチャッ

六山「ふああああ……おはよー。みんな集まって何してるの?」

兵頭「これで4人、ですね」

赤穂「いったい何があったんだよ。なんで佐場木達は外から……」

ピンポンパンポーン…!







モノクマ「死体発見!死体発見!」

モノクマ「捜査タイムの後学級裁判を始めまーす!」






赤穂「!?」

佐場木「死体だと……ちいっ!急いで残りの4人を探すぞ!」

ホテルから出ていく佐場木達を俺も追いかける。

死体発見アナウンスは3人以上の人間が死体を見つけた時に鳴る。

つまり4人の中の誰かが殺されて……それを残りの3人が見つけたって事だ。

いったい誰が。

後ろから来た何人かに追い抜かされて、心臓をバクバクと鳴らしながら……

俺もそこにたどり着いた。







【建物の中は相変わらず暗く、幻想的な空間だった】

【そこにいたのは4人の人間】

【1人は泣き崩れていた】

【1人は呆然と見上げていた】

【1人は床に座り込んでいた】

【そして見上げていた1人の視線の先には……最後の1人がいた】












【超高校級のフルート奏者四方院奏は……】

【なぜか右腕がないまま】

【水族館の中で首を吊られていた】












CHAPT.2【糸絡まりて命絶つ】(非)日常編 END

生き残りメンバー15→14人

NEXT→非日常編






本日はここまでで。

四方院さん退場です。

次回捜査開始します。

それではおやすみなさい……

捜査は3日以内には始めたいと思います。

なお今回の席順は時計回りで

赤穂→ジェニー→四方院→道掛→グレゴリー→御影→遠見→苗木→兵頭→如月→鞍馬→土橋→佐場木→津浦→薄井→六山→静音→赤穂

です。







CHAPT.2【糸絡まりて命絶つ】非日常編






赤穂「……」

首を吊られている四方院さん……

結局彼女は、静音の死を受け入れられないまま……殺されてしまった。

佐場木「……くそっ!」

遠見「……」

御影「静音の所に帰るんじゃなかったの……なんで、こんな……」

赤穂「牡丹……」

モノクマ「ある意味ではよかったじゃない!望み通り静音さんに会いに逝けてさ!」

苗木「モノクマ……!」

道掛「出やがったな!」

モノクマ「さてさて、オマエラが呑気にしてる間にまたコロシアイが起きてしまったわけですが」

モノクマ「ここからはのんびりしてらんないよ!捜査タイムは有限なんだからね!」

モノクマ「というわけで!ザ・モノクマファイル2ー!」

モノクマ「うぷぷ!次はどんな本性が明るみになるのかな?」

モノクマ「アーハッハッハッハッハ!」

六山「本性……」

如月「下らない戯れ言ですね……」

赤穂「……」

本性……それを隠して四方院さんを殺した人間。

俺達は……暴き出さないといけないんだ。


     【捜査開始】

赤穂「モノクマファイル……今回は何が書いてあるんだ?」

【被害者は四方院奏。
死因は首を絞められた事による窒息死。
被害者は右腕を二の腕から鋭利な刃物で切断されている】

赤穂「……」

なんだこのモノクマファイル……

死亡推定時刻はともかく……死体発見現場まで書かれてない?

赤穂「水族館なのはわかりきってるのに……なんでだ?」

コトダマ【モノクマファイル2】を手に入れました。
〔被害者は四方院奏。
死因は首を絞められた事による窒息死。
被害者は右腕を二の腕から鋭利な刃物で切断されている〕

佐場木「遠見、今回も見張りは任せる」

遠見「了解であります」

道掛「じゃあ俺もまた見張りするぜ!」

佐場木「……今回は勘違いなどしないようにしっかり見張れよ」

道掛「おう、任せとけ!」

佐場木「……とにかくまずは死体を降ろす。苗木、手伝え」

苗木「えっ、あっ、うん!」

水槽の横にある梯子を登って佐場木が四方院さんを吊るすロープの側まで行く。

俺も手伝いたかったけど、この足だと上には行けそうにない……

佐場木「……この水槽は中に梯子があるタイプか。その梯子にロープは結ばれているようだな」

佐場木がロープをほどくと、四方院さんの身体がゆっくりと下に降りてくる。

苗木「っ……だ、大丈夫だよ佐場木クン」

佐場木「今戻る。誰も触らせるなよ」

佐場木は戻ってくると四方院さんの死体を調べ出した……俺も気になる所は調べないとな。

赤穂「やっぱり気になるのは……右腕だよな」

四方院さんのいつも着ているドレスの右腕部分には本来あるべき右腕がなく、血が袖に滲んでいた。

佐場木「鋭利な刃物……骨の切断面から見て鋸辺りを使ったようだな」

赤穂「だけどなんで右腕を切ったりしたんだ。それにその右腕はいったいどこに……」

佐場木「目的は不明だが、どこにあったかは兵頭が知っている」

赤穂「兵頭が?」

佐場木「ふん、それは兵頭に聞け……索条痕はロープと一致している以上凶器はこのロープと考えていいだろう」

遠見「佐場木殿、吉川線がないようでありますが?」

赤穂「吉川線……抵抗の跡だったよな」

佐場木「そうだ。必ずつくという物でもないが……気にはしておくべきだな」

抵抗の跡がない……か。

コトダマ【四方院の右腕】を手に入れました。
〔四方院の死体は右腕が切断されていた。
右腕は水族館内にはないようだが兵頭が何かを知っているらしい〕

コトダマ【四方院の死体】を手に入れました。
〔四方院の首にある索条痕は吊るすのに使用されたロープと一致していた。
抵抗の跡はないようだが……〕

佐場木「四方院の死体に関しては最低限の事はわかった。そろそろ話を聞かせてもらおうか」

佐場木の視線の先にはグレゴリー、津浦、土橋。

今回死体を発見した3人……そもそもこの3人はなんでこんなところにいるんだ?

グレゴリー「我は昨夜の丑三つ時、何者かに襲撃を受けた。目を覚ました時……優雅なる笛吹きが命絶たれていたのを見つけたのだ」

津浦「ワタシもMr.グレゴリーと同じ頃に……コテージを訪ねてきた誰かに襲われて……気がついた時にMs.四方院の……死体を発見して……」

土橋「アタシは、朝ご飯を作りに6時頃コテージを出たら襲われて……気付いたらここにいたんだ。奏の死体を見つけた時は泣き叫んじゃって……」

俺が死体を見つけた時、立ち尽くしていた津浦、泣いていた土橋、座り込んでいたグレゴリー……

襲われたっていうけど……本当ならなんで犯人はそんなことを?

コトダマ【死体を発見した3人】を手に入れました。
〔水族館で死体を発見したグレゴリー、津浦、土橋。
グレゴリーと津浦は午前2時頃、土橋は午前6時頃襲われたらしい〕

コトダマ【死体発見時の3人】を手に入れました。
〔赤穂が死体を見つけた時グレゴリーは座り込んでいた。
津浦は立ち尽くしていた。
土橋は泣いていた〕

本日はここまで。

佐場木「赤穂、話がある」

赤穂「んっ?」

佐場木「グレゴリー、津浦、土橋の3人はこのままここに留まらせる」

赤穂「いいのか?捜査に割く人数が足りないぞ」

佐場木「しかしあの3人をこのまま外に出すわけにはいかん」

赤穂「……容疑者だからか?」

佐場木「そうだ。そのためにお前にいくつかの場所の捜査を任せる」

赤穂「なんで俺なんだ?俺も容疑者には変わりないぞ」

佐場木「ふん、お前は水槽の上に行けない。四方院を吊るせない以上最もクロから遠い男だ」

赤穂「よくわかったな……お前には話してないのに」

佐場木「四方院を降ろす時にお前が前に出ようとして躊躇ったのを見たからな」

赤穂「……」

よく見てるんだな……

赤穂「だけどこの足だぞ?捜査しきれるかどうか……」

佐場木「それに関しては問題ない。足をつける」

足?

道掛「いよっしゃあ!乗れよ赤穂!全部調べ尽くしてやろうじゃねえか!」

赤穂「あ、ああ」

俺が肩に掴まったのを確認すると道掛は自転車のペダルを強くこぎ出した。

道掛「佐場木もよくわかってるよな!俺の足が捜査に必要だなんてよ!」

赤穂「……」

佐場木は道掛が見張りの役に立たないから一番役立つ役割を振ったって言ってたけどな……

道掛「それでどこ行くんだ!」

赤穂「ショッピングモールだ!四方院さんの腕を切り落とした道具があるはずだからな!」

道掛「ショッピングモールか!よし、1分で連れていくぜ!」

【ショッピングモール】

赤穂「……」

道掛「うおっ!?こりゃ……」

ショッピングモールの工具売り場に無造作にそれは置かれていた。

赤穂「血塗れの鋸にブルーシート……四方院さんを運んだらしい台車やハンマーもあるな」

道掛「わけわかんねえ、こんなもん使ってまでなんで奏ちゃんの腕切ったんだよ……!」

確かに四方院さんの腕を切った理由はわからないんだよな……

コトダマ【ショッピングモールの工具】を手に入れました。
〔ショッピングモールに置かれた鋸、ハンマー、ブルーシート、台車。
いずれも血が付着しており四方院の腕を切るのに使用したと思われる〕

コトダマ【腕を切った理由】を手に入れました。
〔犯人はわざわざ台車で四方院をショッピングモールから水族館まで運んだようだ。
そこまでして四方院の腕を切った理由は不明〕

赤穂「……」

ないな……

道掛「何探してんだ?」

赤穂「ロープだよ。四方院さんを吊るしてたロープもここにあるかと思ったんだけどな……そもそもここにはロープ自体がないみたいだ」

道掛「じゃああのロープはどこにあったんだよ」

赤穂「それはまだわからない。だけど外から持ち込めない以上、どこかにあるはずだ」

ロープの出所……いったいどこなんだ?

コトダマ【ロープ】を手に入れました。
〔四方院を吊るすのに使用されたロープ。
ショッピングモールにはない物〕

道掛「次はどこ行くんだ?」

赤穂「兵頭を探そう。佐場木が言うには図書館を調べてるみたいだな」

道掛「よっし!それじゃあ次は図書館だな!」

【図書館】

兵頭「……」

如月「ふむ、痕跡はありませんね」

赤穂「如月さんもいたのか……」

道掛「よーっす!」

如月「おや、お2人も来ましたか」

赤穂「兵頭、佐場木から聞いたんだけど四方院さんの切られた右腕について何か知ってるか?」

兵頭「……ありましたよ」

道掛「あったって奏ちゃんの腕がか!?どこだよ千ちゃん!」

如月「兵頭さんによると……この図書館のようです」

赤穂「は?」

図書館に……四方院さんの腕が?

兵頭「私は6時半ごろこの図書館に来ました。その時確かに見たんです」

兵頭「図書館のテーブル……ちょうど道掛さんが手をついてるそれの上に置かれた人の腕を」

道掛「ぬおわぁっ!?」

兵頭「さすがにそのままには出来ませんから……急いで如月さんのコテージに行ってその事を伝えました」

如月「話を聞いて僕が図書館に行こうとしたその時ですね。佐場木さんと遠見さん、鞍馬さんがコテージから出てきたのは」

だから朝にいなかったのか……

赤穂「それでその腕は今どこに?」

兵頭「……わかりません」

如月「なかったんですよ」

赤穂「なかった?」

兵頭「確かにあったはずなのに、図書館にあった腕は……」

兵頭「跡形もなく消えていたんです」

腕が消えた……!?

如月「調査はしましたが何もなく……7時頃にまずは安否確認をしようという話になってコテージに戻ってきたんですよ」

兵頭が図書館で見た腕……だけど人を連れて戻ったら消えていた……

これはいったい……

コトダマ【兵頭の目撃】を手に入れました。
〔兵頭は6時半ごろ図書館で人の腕を見た。
しかし人を連れて戻った時にはその腕は消えていた〕

コトダマ【図書館の捜索】を手に入れました。
〔兵頭の目撃後図書館は佐場木、如月、遠見、鞍馬、兵頭の5人で7時まで調査を行ったようだ〕

今日はここまで。

赤穂「腕の話は聞いたし、次はどこに……って」

道掛「あいててて……」

赤穂「何してるんだよ道掛……」

道掛「さっき千ちゃんに驚かされて本棚に突っ込んじまったんだよ」

兵頭「私のせいだなんて心外です」

如月「大丈夫ですか道掛さん」

道掛「サンキュー。あー、本が散らばっちまったな」

赤穂「モノクマに何言われるかわからないし戻しといた方がいいな」

――――

赤穂「……1冊足りないな」

道掛「マジかよ!どこ行っちまったんだ!」

如月「元々なかったのでは?散らばったとはいえ、そこまで遠くに行くとも思えません」

兵頭「ここは……色々な事件やスキャンダルを扱うゴシップ誌のあった棚ですね。いったい誰が持っていったのやら」

ゴシップ誌か……事件には関係なさそうだな。

コトダマ【消えたゴシップ誌】を手に入れました。
〔図書館にあったゴシップ誌が1冊消えていた〕

【ホテルミライ・コテージ近辺】

赤穂「グレゴリー達のコテージに何か手がかりがあればいいんだけどな……」

道掛「つっても俺達が起きた時には何もなかったぜ」

御影「あっ、兄貴」

鞍馬「……」

道掛「おっ、前に勝負した時の4人が揃ったな!」

赤穂「そういえばそうだな……牡丹は何か見つけたか?」

御影「それが被害者はともかく他のコテージは開けられないって言われちゃってさ」

道掛「んん?なんでだ?もしかしたら犯人が一発でわかる証拠あるかもしんねえのに」

鞍馬「……だからですよ」

御影「さっさと犯人がわかったらつまらないから、被害者以外のコテージ調べるのは出来ないんだってモノクマが」

赤穂「悪趣味だな……それじゃあ四方院さんのコテージは調べたんだな?」

御影「まあね。それでこんなのがあったよ」

赤穂「これは……手紙?」

【同封した本を持って水族館に来てほしい。
待ってるよ奏。
静音凪】

道掛「は!?」

赤穂「静音凪……なるほどな」

四方院さんを呼び出すのにこれほど効果的な名前はない……

鞍馬「何者かが静音凪の名前を使い四方院奏を呼び出した。そう見ていいでしょう」

つまりこの手紙の差出人が……犯人なのか?

コトダマ【呼び出しの手紙】を手に入れました。
〔四方院を水族館に呼び出したと見られる手紙。
定規を使用したのか筆跡は特定不可能。
内容は【同封した本を持って水族館に来てほしい。
待ってるよ奏。
静音凪】〕

【ホテルミライ・ロビー】

六山「んー……?」

道掛「あれ?百夏ちゃんもこっち来てんのか?」

赤穂「何か探してるみたいだな……六山」

六山「あー、ちょうどいいところに来た」

赤穂「ちょうどいいって何がだ?」

六山「2人にも確認してほしいんだけど。ロビーのここら辺にさ、グレゴリーくんの発明あったよね?」

道掛「あれ?そういやあの気持ち悪い腕がなくなってんな」

赤穂「……ああ、あの津浦に使わせようとしてた腕か」

六山「あの後グレゴリーくんが誰でも使えるようにってここに置いてたんだけど……」

赤穂「それがなくなってる、か」

グレゴリーのあの腕の発明が消えた……気になるな。

コトダマ【第3の腕】を手に入れました。
〔グレゴリーが設計したリアルな腕の形をしたもの。
ロビーに置いてあったがなくなっていた〕

明日から再開します

寝落ちしてしまいました……
今日は出来ないので明後日からの再開になります。
本当に申し訳ありません。

【水族館】

佐場木「戻ったか。捜査の結果を聞かせてもらおうか」

【佐場木に捜査結果を伝えました】

佐場木「なるほどな……こちらもあれからわかった事がある」

佐場木「凶器のロープだが……これはこの水族館に元々あるものだとわかった」

赤穂「元々?」

佐場木「水槽の近くにある緊急時の物品が入った箱が空だった。箱の内側にはロープの使用に関する注意が記されていた事、他の箱を調べた結果ロープが入っていた事から間違いないだろう」

赤穂「それじゃあ犯人はわざわざ呼び出しておきながらその場にある、しかも吊るすのに使えるような長いロープを凶器にしたのか?」

佐場木「凶器から特定されないためにその場の物を使うのは珍しい話ではない。しかし疑問もある」

赤穂「疑問?」

佐場木「その箱には同じく緊急時に使用すると思われるナイフが入っていた」

赤穂「ナイフ……」

佐場木「他の箱ではロープの下にあった物だ。もしかすると犯人は……ナイフに気付かずロープを使った可能性があるな」

犯人がナイフに気付かなかった……わざわざ手紙を使って水族館に呼び出したのにか?

コトダマ【ロープ】をアップデートしました。
〔四方院を吊るすのに使用されたロープ。
水族館に緊急時のために置かれていた物〕

コトダマ【凶器の選択】を手に入れました。
〔犯人はロープと同じ箱に入ったナイフを使わず、ロープを凶器に使用した。
犯人はナイフの存在に気付かなかった可能性がある?〕

ジェニー「ミキ……大丈夫です?」

土橋「うん……ありがとねジェニー」

赤穂「土橋、ちょっといいか」

土橋「あ、政城……」

赤穂「土橋は他の2人と違って6時頃襲われたんだよな?」

土橋「そうだよ。後ろからいきなり殴られて……気がついたら水族館にいたんだよ」

赤穂「目を覚ました時何かあったか?」

土橋「そうだね……あたしは悲鳴に起こされて……琴羽が立ち尽くしてて視線を追ったら……」

土橋「奏が吊るされてるのを、見つけて……アナウンスが鳴って……」

ジェニー「ミキ……」

赤穂「わかった。ごめんな、辛い事聞いて」

土橋「ううん、アタシは大丈夫だから……」

コトダマ【土橋の証言】を手に入れました。
〔6時頃襲われた土橋は津浦の悲鳴で目を覚ました。
目を覚ますと津浦が立ち尽くしており、そこで四方院の死体を発見、死体発見アナウンスが鳴ったようだ〕

グレゴリー「なぜ此度の死神は我らをこの舞台に召喚したのだ……」

津浦「……」

グレゴリーと津浦……土橋を含めたこの3人がなんで目撃者に選ばれたのかは確かに謎だよな……

赤穂「2人は2時頃襲われたんだよな」

グレゴリー「然り。首元に一撃を加えられ、意識を刈り取られた……その痕跡もある」

確かに首元に痕があるな……

津浦「ワタシも頭を……」

赤穂「……なんで2人はそんな時間にチャイムを鳴らした相手に反応したりしたんだ?」

グレゴリー「その刻に訪れると記された文が我が神殿に捧げられていたからな」

津浦「ワタシもです……Mr.グレゴリーからの手紙だったので、油断していました……」

グレゴリー「なに?言の葉の魔術師、我は文など送っていないぞ……!」

津浦「はい、今なら犯人からの偽物だとわかります……」

また手紙か……

赤穂「現物とか持ってないか?」

グレゴリー「我のは神殿に安置されているはずだ……」

津浦「ワタシもですね……」

赤穂「やっぱりそうか……」

コテージが調べられない以上、手紙を調べるのは不可能か……

コトダマ【グレゴリーと津浦の証言】を手に入れました。
〔グレゴリーと津浦は深夜にコテージを訪ねるという手紙をコテージに送られていた。
津浦の手紙はグレゴリーからのものに偽造してあったらしい。
グレゴリーは首元を殴られ、現在もその痕跡が残っている〕

赤穂「……んっ?」

道掛「おっ、どうかしたのか?」

赤穂「今水槽の中に何かあったような……」

道掛「水槽の中?よっしゃ、ここはこの俺が潜って見てきてやるぜ!」

佐場木「やめておけ。そこは鮫の水槽だ」

道掛「マジか!?」

佐場木「ふん、しかし何かあったというのは気になるな……」

ジェニー「ボクが行ってくるです!」

道掛「お、おいおい大丈夫かよ!」

ジェニー「大丈夫です!もうここのみんなとは仲良くなったです!」

赤穂「仲良くなったって……」

ジェニー「それじゃあ、ちょっと待っててくださいです!」

…………

ジェニー「行ってくるです!」

ジェニーが潜って水槽の底に向かっていく。

それを俺達は水槽の外から、何かあった時のために遠見と佐場木は上にある水槽の入口から見ていた。

赤穂「ジェニー……」

俺の心配をよそにジェニーは順調に進む。

時々近寄る鮫がいてもジェニーを襲ったりはせず、むしろなついているようにさえ見えた。

ジェニー「……」

赤穂「そろそろだな……」

ジェニー「……!」

道掛「なんだ?なんかジェニーちゃん慌ててね?」

佐場木「……」

遠見「戻ってきたであります!」

ジェニー「ぷはあっ!うっ、あっ……」

赤穂「どうしたジェニー!何があったんだ!」

ジェニー「ゆ、ゆ、指……」

ジェニー「指が、沈んでたです……」

道掛「指ぃ!?」

佐場木「遠見!」

遠見「わかってるであります!」

ジェニーと入れ替わりに飛び込んだ遠見がものすごいスピードで底に向かう。

そして戻ってきた遠見の手には小さく細いモノが握られていた。

遠見「人……それも女性の指で間違いないであります」

佐場木「四方院のものか」

遠見「おそらく。それとこの指……鮫が食い散らかした残りかと」

道掛「うげっ……!?」

ジェニー「ひうっ……」

赤穂「犯人は切った腕を鮫に処理させたのか……」

遠見「処理させた後痕跡をわかりにくくするためか、あらかじめ骨まで砕いてあったであります。事実底には白い骨らしき破片が散らばっていたでありますよ」

佐場木「この指が残っていたのは……奇跡と言う他ないな」

腕を切って、図書館に置いて、鮫の水槽に沈めた……

犯人は本当に何のためにこんな事をしたんだ……

コトダマ【水槽の指】を手に入れました。
〔鮫の水槽に沈められていた女性の指。
四方院のものと思われる。
指は鮫に食い散らかされた残りのようで、骨は砕かれていた〕

キーンコーン、カーンコーン…

モノクマ「さーてそろそろ始めようか?」

モノクマ「命懸けの学級裁判を!」

モノクマ「オマエラ中央の島に集合してくださーい!」

ブツン!

赤穂「……」

捜査は終わりか……だけどまだ犯人を絞り込む何かが足りない気がする……

赤穂「……」

何でもいい、何かないのか……!

ジェニー「あ、あのマサキ……」

赤穂「どうしたんだジェニー?」

ジェニー「指でパニックだったから言えなかったですけど……こんなのが指の近くにあったです」

ジェニーが見せてきたのはグシャグシャになった紙。

濡れて文字が滲んでしま、何が書いてあったかわからなくなっているその紙にはかろうじて読める文字はたった3つ。

赤穂「……【クープ】?」

この紙、もしかして……

赤穂「ジェニー。この紙の事、ちょっとみんなには黙っててくれないか?」

ジェニー「えっ?」

赤穂「もしかしたら犯人を見つけられるかもしれないんだ、頼む」

ジェニー「……わかったです!前にボクを助けてくれたマサキを信じるです!」

赤穂「ありがとうな」

……後は、学級裁判の議論で見つけるしかない。

真実を。

コトダマ【紙切れ】を手に入れました。
〔四方院の指の近くに沈んでいたのをジェニーが見つけた物。
滲んで文字はほとんど読めないが【クープ】という文字だけは読み取る事が可能。
この紙の存在は赤穂とジェニーしか知らない〕

【中央の島・未来機関第20支部】

モノクマ「おっそーい!」

赤穂「この足だから仕方ないだろ……みんなは?」

モノクマ「もう行ったよ!2人が来ないと始められないんだからさっさと行った行った!」

ジェニー「は、はいです!」タタタッ

モノクマ「ほら、赤穂クンも早く!」

赤穂「……わかってる」

モノクマも消えて1人残された俺は裁判場に続くエスカレーターに乗る。

赤穂「……」

【超高校級のフルート奏者】四方院奏。

俺達を引っ張っていた彼女は大切なパートナーである静音を殺された挙げ句、今度は自分自身が殺されてしまった。

どうして殺されたのが彼女だったのか?

どうして犯人は彼女の腕を切り落としたのか?

それはまだわからない。

ただ1つ言えるのは……

ガチャン

【学級裁判場】

モノクマ「やっと全員揃ったね!」

モノクマ「全く団体行動ぐらいきちんとしてくれないと困るよ!」

モノクマ「ボクの知り合いにもそんな……ってそんなのはどうでもいいんだよ!」

モノクマ「ほら遅刻者はさっさと席に行けー!」

モノクマに促されて自分の席に立つ。

周りを見渡せばみんなも思い思いの表情を浮かべていた。

六山「はぁ……また来ちゃったね」カチカチ

ジェニー「……カナデ」

道掛「絶対犯人は見つけてやるぜ……!」

遠見「……」

この中にいる。

佐場木「あの薄井を見て犯行に及ぶ……この事件は……」

グレゴリー「くっ……傷が痛むか」

津浦「怖い、ですね……」ガタガタ

土橋「なんでアタシだったの……」

御影「せめて向こうで再会しなよ……」

四方院さんを殺してその腕を切り落とした犯人が。

兵頭「ふふっ、またあの投票が……」

苗木「どうしてあんな事になったのかな……?」

鞍馬「……」

如月「……全ては正義の名の下に」

わからない事だらけの学級裁判。

だけど見つけなきゃ……

赤穂「……」グッ

俺達は死ぬしかないんだ。

明日学級裁判に入ります。
先月はまともな更新が不可能でしたがこれからは少しは安定して再開出来ると思います。

それでは。

・コトダマ一覧表

【モノクマファイル2】>>332

【四方院の右腕】
【四方院の死体】>>334

【死体を発見した3人】
【死体発見時の3人】>>335

【ショッピングモールの工具】
【腕を切った理由】>>339

【兵頭の目撃】
【図書館の捜索】>>341

【消えたゴシップ誌】>>343

【呼び出しの手紙】>>344

【第3の腕】>>345

【ロープ】アップデート版
【凶器の選択】>>348

【土橋の証言】>>349

【グレゴリーと津浦の証言】>>350

【水槽の指】>>352

【紙切れ】>>353

再びの惨劇は四方院奏の命を奪い去った。
切られた腕、目撃者の存在……数多くの不可解な行動は学級裁判を混迷の渦へと導いていく。
全ての糸をほどいた先にある真実とは……


     【学級裁判開廷!】

モノクマ「はいはい、それでは学級裁判の説明をしまーす!」

モノクマ「学級裁判ではオマエラに誰が犯人かを議論してもらいます!」

モノクマ「その結果は投票によって決定され、正しいクロを指摘できればクロがおしおき」

モノクマ「ただし間違えたら……クロ以外の全員がおしおきされ、クロは自由の身となるのです!」

佐場木「今回の事件は不可解な点が多い。1つずつ潰していくぞ」

津浦「お言葉ですがMr.佐場木……その必要はありません」

佐場木「どういう意味だ」

津浦「犯人は1人しかあり得ません!」

遠見「1人、でありますか?」

津浦「Mr.如月!あなたです!」

如月「……僕ですか?」

津浦「あんな惨い殺し方……あなた以外に出来るはずがありません!」

赤穂「……」

如月さんが四方院さんを殺した?

いや……それはないはずだ。

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>357
【図書館の捜索】
【兵頭の目撃】
【四方院の右腕】


津浦「犯人はあなたですMr.如月!」

>如月クンが四方院さんを……?

如月「僕は犯人ではありませんよ」

佐場木「そこまで言うからには根拠があるんだろうな?」

津浦「今回の動機は人を殺した人間がいる……」

津浦「そしてその人間を殺すとMr.如月は明言していました」

確かに……<

津浦「何よりあんな残酷な殺害方法を取るのは殺人鬼であるMr.如月以外にあり得ません」

津浦「【今回の事件は全てMr.如月が引き起こしたんです!】」

如月さんが四方院さんを殺した……

だけど少なくとも如月さんには出来ない事があるはず。

それを津浦に示すんだ!

【図書館の捜索】

赤穂「それは違ってるぞ!」


赤穂「いや、如月さんに今回の犯行は不可能だ!」

津浦「なんでですか!」
赤穂「今回の事件、如月さんには出来ない事があるんだよ」

道掛「出来ない事?わかったぜ、実は如月は虫も殺せねえんだな!?」

苗木「そ、それはないんじゃないかな……?」

赤穂「如月さんは四方院さんの死体が見つかる少し前まで兵頭に呼ばれて佐場木達と図書館を調べてたんだ」

六山「図書館?四方院さんが見つかる前に何かあったの?」

兵頭「腕です」

御影「は?腕?」

兵頭「図書館に腕があったんです」

土橋「な、なにそれ……」

グレゴリー「……それはやはり優雅なる笛吹きのものか?」

兵頭「わかりません。私はそれを見つけてすぐ図書館から出ていって……戻った時には腕は消えていたので」

如月「兵頭さんは僕に知らせにコテージまで来てくれました」

遠見「自分や佐場木殿もそれに合流して図書館を調べたでありますよ」

赤穂「腕が消えていたなら犯人は兵頭が図書館から消えた後に腕を片付けたって事になる」

赤穂「だけど如月さんは兵頭が戻った時には既にコテージにいた」

赤穂「如月さんが犯行を行うのは時間的に無理があるんだ!」

津浦「……」

如月「津浦さん。確かに僕は犯罪者とはいえ人を殺しています、そこを否定はしません」

如月「しかし四方院さんは犯罪者ではない。そして僕は犯罪者以外を裁くような真似はしません」

如月「理解していただけると、ありがたいのですが」

津浦「ひっ……ご、ごめんなさいっ……」

如月「……まいりましたね」

佐場木「これが貴様の行動の結果だ。とにかくこの殺人鬼が犯人ではないと仮定して議論を進めるぞ」

六山「あっ、それじゃあ気になる事があるんだけどいいかな?」

苗木「気になる事?」

佐場木「いいだろう、話してみろ六山」

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>357
【呼び出しの手紙】
【グレゴリーと津浦の証言】
【土橋の証言】

六山「あのね、四方院さんはリーダーもやってたしこの中だと頭がいい方だと思うんだ」

六山「静音さんが殺された後も脱出のための調べものとかはしてたし」

御影「まあ……静音が死んだのは認められなかったみたいだけどね」

六山「そんな四方院さんを犯人はどうやって水族館に呼び出したのかな?」

六山「普通なら警戒すると思うんだけど……」

土橋「アタシ達みたいに〔襲われた〕んじゃないの?」

兵頭「〔コテージで殺害された〕可能性もあるのでは?」

グレゴリー「己が意思に基づいて水の都に向かったのではないか?」

御影「……〔呼び出しにどうしても応じるしかなかった〕んだよ」

〔呼び出しにどうしても応じるしかなかった〕←【呼び出しの手紙】

赤穂「それが正しいはずだ!」


赤穂「牡丹の言う通り、四方院さんはその呼び出しに応じる以外の選択肢はなかったはずだ」

六山「どういう事かな?」

赤穂「四方院さんのコテージには呼び出しの手紙があったんだよ」

苗木「だけど呼び出しだけならやっぱり警戒するんじゃ……」

赤穂「その差出人が、静音凪じゃなかったら四方院さんも警戒しただろうな」

土橋「ちょ、ちょっとそれ……どういう事なの?」

御影「そのまんまの意味、四方院を呼び出した手紙は静音からのものだったんだよ」

グレゴリー「馬鹿な!鎮魂の指揮者は魂の状態から優雅なる笛吹きと接触したと言うのか!」

赤穂「当然犯人が静音の名前を騙ったんだろう……だけど四方院さんからしたらいてもたってもいられなかったはずだ」

遠見「四方院殿の静音殿への感情を考えたら、当然でありましょうな……」

犯人もそれをわかっていながら静音の名前を使った。

いったいどんな考え方をすればそんな事が出来るんだ……?

佐場木「犯人は静音の名を使い四方院を水族館に呼び出した」

兵頭「そこで四方院さんを殺害した犯人は右腕を切り落として図書館に……」

土橋「確か水族館にはナイフがあったし、それで切ったのかな?」

赤穂「いや、それは違うぞ」

四方院さんの腕を切ったのは水族館のナイフじゃなくて……

【ショッピングモールの工具】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「四方院さんの腕を切ったのに使ったのは水族館のナイフじゃなくてショッピングモールの工具だ」

道掛「ショッピングモールには血のついたハンマーとか鋸とかあったのを見たぞ……」

ジェニー「何でそこまでしてカナデの腕を……?」

遠見「それはわからないでありますが……何らかの意図があったのは間違いないであります」

津浦「図書館に置いておいたのですから……誰かに見せつけるのが目的だったのでは?」

兵頭「それを私が発見したと……」

グレゴリー「しかしそのためにわざわざ水の都で殺めた優雅なる笛吹きを転移させたというのか?」

赤穂「……」

四方院さんの腕を切った理由、今の俺にはなんとなくわかってる。

だけど……

鞍馬「……やめておく事ですね」

赤穂「えっ?」

鞍馬「……」

鞍馬……?

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>357
【腕を切った理由】
【ロープ】
【四方院の死体】

御影「犯人は四方院の腕をショッピングモールで切り落とした……」

兵頭「なんのためにそんな事をしたのかは不明ですか」

如月「しかし犯人にとっては必要な事だったのは確かですね……」

六山「うーん……今回の犯人はよくわからないよね」

苗木「わかってるのは【ショッピングモールで凶器や切り落とす道具を用意した】事と……」

津浦「【手紙でMs.四方院を呼び出して】いるのですから計画性があったというところでしょうか?」

【ショッピングモールで凶器や切り落とす道具を用意した】←【ロープ】

赤穂「それは違ってるぞ!」


赤穂「いや、凶器のロープはショッピングモールにあったものじゃない」

苗木「えっ、そうなの?」

佐場木「あのロープは元々水族館にあった。緊急時に使う物としてな」

土橋「そうそう、ナイフがあった箱にセットで入ってたはずだよ」

グレゴリー「ほう、そうであったなら優雅なる笛吹きを殺めた死神はその手段に刃ではなく縄を選んだというのか」

津浦「そういう事になりますね……」

それに関しては佐場木が推理してたよな……

【凶器の選択】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「犯人はもしかするとナイフの存在に気付かなかったのかもしれない」

道掛「気付かなかったってそんなのありえんのか?」

佐場木「ロープの下にナイフは入っていた。あり得ない話ではない」

佐場木「最も、何らかの意図があった可能性も否めないがな」

遠見「うーむ……意図があるように見えて行き当たりばったりにも見える……」

遠見「六山殿の言う通り、今回の犯人は雲を掴むようにわからない存在でありますな」

御影「でもさ、今まで出た事とあった事を照らし合わせたら案外犯人は絞れそうじゃない?」

赤穂「そうだな……一度まとめてみるか」

苗木「えっと、まず犯人は四方院さんを手紙で水族館に呼び出したんだよね?」

如月「えぇ、そして四方院さんを水族館にあったロープを使い絞殺した」

遠見「その後犯人はショッピングモールの道具を用いて、四方院殿の腕を切り落としたのでありますね」

グレゴリー「その前後、我と言の葉の魔術師は惨劇の園へ導かれたわけか」

土橋「それで朝にアタシも襲われて連れてかれたんだよね……」

兵頭「さらに犯人は図書館に切り落とした腕を置いて私に目撃させたわけですが」

津浦「そして犯人はMs.兵頭が図書館からいなくなった後に腕を持って……その腕をどうしたんでしょうか?」

ジェニー「あっ……」

道掛「それはだな……」

御影「なに、あんたら知ってんの?」

四方院さんの腕がどうなったか、か……

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>357
【水槽の指】
【四方院の右腕】
【四方院の死体】

兵頭「消えた四方院さんの腕……」

兵頭「道掛さんとジェニーさんはそのありかを知っているようですね?」

道掛「いや、知ってるっちゃ、知ってるような……」

津浦「歯切れが悪いですね……」

ジェニー「えとえと……」

土橋「もしかして〔誰かのコテージにあった〕とか!?」

遠見「そうではないのでありますが……」

苗木「兵頭さんが見つけたみたいに〔どこかに置かれてた〕んじゃないのかな」

佐場木「……とにかく一旦落ち着け。話したくても話せん」

御影「まっ、〔魚の餌にされてた〕ってわけでもないなら話せるでしょ」

〔魚の餌にされてた〕←【水槽の指】

赤穂「それに賛成するぞ!」


赤穂「正解だ牡丹」

御影「は?何が?」

赤穂「俺もその場にいたから知ってるんだけどな……四方院さんの指が水族館の水槽から出てきたんだよ」

苗木「す、水槽から?」

道掛「そうなんだよ……メメちゃんが言うには鮫に食い散らかされた残りだろうってよ」

土橋「それって、もしかしてなんか水槽に飛び込んでたあれ!?」

ジェニー「そうですです……」

兵頭「つまり、犯人は図書館から腕を水族館にまで持ち帰った後鮫の水槽に放り込んだわけですか……」

津浦「なぜそんな事を……海など、いくらでも途中に捨てる場所はあったのでは?」

赤穂「いや、それは無理だよ津浦」

海に捨てるって方法は確かに普通なら有効かもしれない。

だけどこのコロシアイではそれは不可能なんだ!

【閃きアナグラム開始!】

ポ○捨○○止○ルー○

明日早いのでここで切ります。
全然進まなくて申し訳ありません……

水曜日にまた更新します。

数日中には更新できたらと思います。
本当に進めなくて申し訳ありません……

【ポイ捨て禁止のルール】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「この島にはポイ捨て禁止のルールがある。だからクロは腕を水族館に持ち帰らざるを得なかったんだ」

道掛「うーむ、だけど変じゃね?」

グレゴリー「何に楔を覚える、音速の疾走者よ」

道掛「なんで犯人は腕をわざわざ図書館まで持っていったんだ?そんなめんどい事をする意味がねえじゃん」

苗木「そうだね……津浦さんは見せつけるためって推理してたけど、そもそもなんで見せつける必要があったのかな」

赤穂「……」

そうだ、腕を切る理由は多分だけどわかる。

でもクロがそれを図書館まで持っていった理由。

それが全然わからない。

なんでクロはそんな……

御影「……ねぇ、もしかしてなんだけど。そもそも、図書館にあった腕って本当に四方院の腕だったの?」

ジェニー「ど、どういう事です?」

土橋「まさか、他に腕切られた人がいるの!?」

御影「いやいや、そうじゃなくて。そういえば、その気になれば偽装できる物がホテルにあったなって」

遠見「ホテルにで、ありますか?」

腕を偽装できる物……もしかして牡丹はアレの事を言ってるのか?

【第3の腕】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「牡丹はグレゴリーの作ったあの腕の事を言ってるのか?」

グレゴリー「なんだと!?我が発明が利用されたと言うのか!?」

御影「そうそう、アレならパッと見は本物と区別つかないし」

如月「ですがあの腕はホテルにあるんでしたよね?犯人に図書館からホテルに戻す余裕はないのでは」

六山「あー、それなんだけど……今はホテルにないんだよね」

道掛「そういやなくなってたよな。じゃあ千ちゃんが見た腕ってグレゴリーのキモい腕だったのかよ!?」

兵頭「まさか、あれが作り物……?」

佐場木「だが、作り物であるにせよなぜ図書館まで運んだかの疑問は解消されていない」

そうだ、兵頭の見た腕が作り物だとしても……それがいったいどういう意味を持つんだ?

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>357
【兵頭の目撃】
【グレゴリーと津浦の証言】
【腕を切った理由】


津浦「【Ms.兵頭の目撃した腕はMr.グレゴリーの発明だった】……」

遠見「だからといって、なぜ犯人がそんな行動を取ったのかは不明なままであります……」

苗木「やっぱり〔猟奇的な意味合いがあった〕とかかな……」

如月「〔人を集めて目をそらさせる〕ためも考えられますね」

道掛「そうか!犯人は〔図書館から人を追い払いたかった〕んじゃねえか!」

鞍馬「……〔発見の事実が必要だった〕」

御影「結局何が【犯人の目的】なわけ?」

【犯人の目的】→〔発見の事実が必要だった〕

赤穂「それが正しいはずだ!」


赤穂「そうか……犯人は兵頭が腕を発見した事実が必要だったんだ」

土橋「発見した事実が必要って……」

佐場木「……なるほどな。だからずれていたのか」

ジェニー「ボクにはよくわからないです……」

道掛「俺なんか全然わかんねえよ!何が言いたいんだ赤穂!」

発見した事実……これこそクロにとって重要なピースだとしたら。

あの疑問の意味も解ける!

【ショットガンコネクト開始!】

四方院さんの腕を見た事実……

それが示すのは……!

・コトダマ>>357
【グレゴリーと津浦の証言】
【モノクマファイル2】
【四方院の死体】

・課題
【犯人が行った不自然な行動は?】
【犯人が腕を図書館に置いた理由は?】
【犯人が四方院を殺した動機は?】

【グレゴリーと津浦の証言】―【犯人が行った不自然な行動は?】

赤穂「……」

クロはなぜかグレゴリーと津浦を四方院さんのいた水族館に拉致した……

そこにもう一つ繋げれば……

・コトダマ>>357
【四方院の右腕】
【第3の腕】
【土橋の証言】

赤穂「……」

そこからさらにクロは土橋を拉致した……

その目的は……!

【グレゴリーと津浦の証言】―【犯人が行った不自然な行動は?】―【土橋の証言】

・結論
【クロは死体発見アナウンスを鳴らしたかった】
【クロは死体を見せつけたかった】
【クロは時間を稼ぎたかった】

【クロは死体発見アナウンスを鳴らしたかった】

赤穂「真相への道筋を繋いでみせる!」


赤穂「クロは死体発見アナウンスを鳴らしたかったんだ」

遠見「死体発見アナウンスをでありますか?」

赤穂「そうだ。そのためにクロは津浦とグレゴリーを拉致した」

津浦「もしかして死体発見アナウンスに必要な人数を満たすため……」

グレゴリー「我らは選ばれし発見者にされたと言うのか!」

土橋「だ、だけどそれならなんでアタシまで……千、琴羽、グレゴリーの3人でアナウンスの条件は満たしてるじゃない」

佐場木「それをはっきりさせるためにも聞いておかなければならない事がある……モノクマ」

モノクマ「はい?」

佐場木「死体発見アナウンスの3人に犯人は含まれるのか」

苗木「えっ、それって……」

モノクマ「うーん、正直死体発見アナウンスは推理に使ってほしくないんだけどなぁ……フレキシブルに対応してるって事で!」

佐場木「わざわざ濁す以上、今回は含まれてないと考えるべきだな」

モノクマ「ちょっとやめてよそういうの!」

六山「きっと今みたいに犯人も言われたんだね?だから後から土橋さんを拉致した……犯人が含まれてない場合おかしな事になるから」

道掛「よ、よくわかんねえけど……つまり犯人は死体見つけた中にいんのか?」

御影「そういう事……まあ、明白な気もするけど」

如月「……」

犯人は死体発見アナウンスを鳴らしたかった。

そうすれば容疑から逃れられると思ったのかもしれない。

だとしたらクロは……

【兵頭千】

赤穂「君がクロなのか……?」


赤穂「兵頭……君なのか?」

兵頭「……私ですか?」

苗木「確かに兵頭さんしか、図書館の腕って見つけてないんだよね」

遠見「グレゴリー殿の腕を利用して死体を見つけた一人になったわけでありますか……」

六山「そもそも腕なんて本当に見つけたの?後からなくなったって言ったからそんな時間がない兵頭さんは犯人から外れてたけど」

兵頭「ちょっと待ってください……皆さん、私が犯人だと思っているんですか」

御影「本当は見つけてないなら、兵頭は土橋を襲った後タイミングを見計らって如月のコテージに行けばいいわけか」

ジェニー「センがカナデを……?」

赤穂「……」

兵頭が四方院さんを殺した……

確かに腕を見つけたって言ってるのは兵頭だけ。

そもそもそれが嘘なら兵頭には如月さん達が図書館に行くまでに腕が消えた事実もなくなって、兵頭も容疑者の一人になる。

そしてクロが死体発見アナウンスを使って工作したと考えれば……







如月「それは違いますよ……」






今回はここまで。

次回学級裁判を完結させます。

それではまた今夜に。

赤穂「如月さん……?」

グレゴリー「何が否だと言うのだ?」

如月「兵頭さんが僕を訪ねてきたのは腕の存在を示して消えた腕の処分が不可能な事、さらに死体発見の一人になる事によって容疑から外れるため……皆さんはそう言いたいようですが」

如月「僕にはコテージに来た時の兵頭さんがそんな計算をしていたとは思えないんですよ」

苗木「でも……それって如月クンの主観だよね?」

如月「確かにそうです。しかし僕は、投票が終わるまで兵頭さんを信じたいと思います」

兵頭「如月さん……」

佐場木「俺も賛成だ。兵頭は確かに疑惑の渦中にいる。だが犯人だとするなら議論を重ねるべきだろう」

赤穂「……そうだな。言い出しっぺは俺だけど決めつけるのはまだ早いと思う」

赤穂「議論をしよう!真実を見つけるためにも……!」

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>357
【消えたゴシップ誌】
【水槽の指】
【第3の腕】

六山「議論はいいけど、何を議論するの?」

佐場木「兵頭が犯人だとした場合【不自然な行動】がないかだ」

佐場木「それによって兵頭が犯人かもはっきりするだろう」

道掛「不自然つってもよぉ……俺はそもそも【腕を切った】事が府に落ちねえんだよな」

ジェニー「【目撃者にグレッグ達を選んだ】理由も謎です……」

土橋「【グレゴリー達からアタシを襲うまでのタイムラグ】も気になるんだけど……」

津浦「ですがそれは誰が犯人でも言えるのでは?」

遠見「ふむ……グレゴリー殿の【第3の腕を利用しいすごかへと持ち去った】」

遠見「ロビーにあった以上これも誰でも可能だったでありますか」

【第3の腕を利用しいすごかへと持ち去った】←【不自然な行動】

赤穂「それは違ってるぞ!」


赤穂「そうだ……不自然じゃないか」

御影「何がさ兄貴」

赤穂「そもそも兵頭が疑われる理由の一番大きな理由は、図書館で腕を見つけたって事が嘘だって可能性があるからだ」

六山「そうだよ。それなら兵頭さんは腕を犯人が持ち去った時間のアリバイって前提が消えて容疑者になるからね」

赤穂「だったらなんでホテルから腕を持ち去ったんだ?」

苗木「どういう事?」

赤穂「腕がないから兵頭はそれを利用した、もしくはそもそも腕を見てなんかいないって疑惑を持たれた」

赤穂「もし腕を見つけたって話が嘘ならホテルから腕を持ち出す理由がないんだよ」

赤穂「そのまま置いておけば事件には無関係で押し通す事だって出来たんだからな」

ジェニー「じゃあ……」

赤穂「兵頭は腕を見たんだ。それが本物にしろ偽物にしろな……」

赤穂「そして仮に兵頭が犯人で偽物の腕を回収したとしても、やっぱりホテルに戻せばいい」

赤穂「兵頭が犯人だとしたら第3の腕……あれがホテルから消えたままなのはおかしいんだ」

兵頭「なるほど……私が犯人なら自分に疑いが向くような行動をするはずがありませんね」

如月「やはり兵頭さんは図書館で腕を見つけ、僕に助けを求めたようですね」

道掛「じゃあ犯人って誰なんだよ!他に誰かいんのか!?」

赤穂「死体発見アナウンスを利用したトリックは、多分間違ってないはずだ」

佐場木「そうなると、犯人はやはり死体の発見を行った中にいる事になる」

遠見「つまり兵頭殿を除外した……グレゴリー殿、津浦殿、土橋殿の中に犯人がいると」

グレゴリー「なっ!?」

津浦「そ、そんな……」

土橋「アタシは殺してなんか……!」

鞍馬「……ならばもう犯人ははっきりしていますね」

御影「はっ?あんたわかってんの?」

鞍馬「死体発見アナウンスに犯人が含まれていないとするなら……簡単な話ですよ」

赤穂「……っ!?」

待てよ。

死体発見アナウンスに犯人が含まれていない。

死体発見アナウンスを使ったトリック。

兵頭が見た腕。

そして証言を合わせたら……

まさか四方院さんを殺したクロは……!

【グレゴリー・アストラル三世】

赤穂「犯人は……!」


赤穂「グレゴリー……お前なんじゃないか?」

グレゴリー「……!」

津浦「……はっ?」

赤穂「兵頭が見た腕……死体発見アナウンスのトリックを使うなら、多分本物だったはずだ」

赤穂「そうなると、最初の死体発見者は兵頭……その後が問題になる」

赤穂「土橋はこう証言していた……」

――――

赤穂「目を覚ました時何かあったか?」

土橋「そうだね……あたしは悲鳴に起こされて……琴羽が立ち尽くしてて視線を追ったら……」

土橋「奏が吊るされてるのを、見つけて……アナウンスが鳴って……」

ジェニー「ミキ……」

――――

赤穂「この証言から津浦が発見した時に死体発見アナウンスが鳴らなかった事がわかる」

佐場木「津浦は2人目の発見者というわけか」

赤穂「そしてその後土橋が発見してアナウンスが鳴った……つまり土橋が3人目の発見者」

赤穂「アナウンスの人数に犯人が含まれていないなら、水族館にいた中で残る容疑者はお前だけなんだグレゴリー!」

グレゴリー「くっ……!」

道掛「おいおい、マジでグレゴリーがやったのかよ……!」

土橋「ど、どうなのよグレゴリー!」

グレゴリー「…………」ギリィ

津浦「シャラップ!」反論!


赤穂「っ!?」

津浦「笑わせないでくださいよMr.赤穂……Mr.グレゴリーが犯人ですって?」

津浦「よくもそんなデタラメを!!そんな推理、ワタシは認めません!」

やっぱり津浦は反論してきたか……!

【反論ショーダウン開始!】

・コトノハ>>357
【死体発見時の3人】
【腕を切った理由】
【死体を発見した3人】

津浦「Mr.グレゴリーは犯人じゃありません!」

津浦「あなたの推理は間違っていますMr.赤穂!」

赤穂「兵頭、津浦、土橋が死体の発見者だった!」

赤穂「それなら残るのはグレゴリーただ1人だ!」

津浦「そもそもそれが嘘なんですよ!」

津浦「【Ms.土橋より前にワタシの悲鳴で目を覚ましたMr.グレゴリーが死体を発見した】」

津浦「それなら犯人はMr.グレゴリーではありません!」

【Ms.土橋より前にワタシの悲鳴で目を覚ましたMr.グレゴリーが死体を発見した】←【死体発見時の3人】

赤穂「その反論に正義はない!」


赤穂「土橋より先にグレゴリーが死体を発見した……」

津浦「そうです!」

赤穂「だったらなんでグレゴリーは俺達が駆けつけてくるまでの間……ずっと座ったままだったんだ?」

津浦「何を……!」

赤穂「グレゴリーは津浦を気に掛けていた。そんなグレゴリーが悲鳴をあげた津浦をほったらかしにしていたのは、不自然じゃないか?」

グレゴリー「…………」

佐場木「初めて死体を発見したならその可能性もあるが……」

遠見「グレゴリー殿は前回の事件時も津浦殿を気に掛けていたでありますな」

津浦「Mr.グレゴリーだって人間です!そんな事で犯人扱いだなんて……!」

赤穂「……」

津浦は納得しない……当たり前か。

これはほとんど言いがかりみたいなものだからな……

だったら次だ……

これでグレゴリーに……!

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>357
【紙切れ】

御影「犯人はグレゴリーなわけ?」

津浦「そんなの何かの間違いです!」

道掛「だけど【アナウンスの3人は千ちゃん、琴羽ちゃん、美姫ちゃん】なんだろ?」

津浦「【Ms.土橋が嘘をついている】のかもしれません!」

苗木「そもそもグレゴリークンの体格なら、襲われたっていうのも難しいよね……」

津浦「【Mr.グレゴリーの首筋には襲われた痕跡があります】!」

津浦「そもそもMr.グレゴリーには【動機がない】じゃないですか!」

津浦「Mr.グレゴリーは無実、冤罪なんですよ!」

鞍馬「……動機がない、ですか」

【動機がない】←【紙切れ】

赤穂「その矛盾……捕まえたぞ!」


赤穂「動機は、多分これだ」

グレゴリー「っ!!」

津浦「なんですか、その紙切れは……」

赤穂「四方院さんの指と一緒に沈んでいた紙切れだよ」

佐場木「なんだと?そんな報告は受けていないぞ」

ジェニー「あっ、それはボクが……」

赤穂「ジェニーには俺が口止めしたんだ。犯人をはっきりさせるために」

兵頭「その紙切れはいったいなんなんですか?」

この紙切れ……これはきっと。

【消えたゴシップ誌】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「図書館から消えていたゴシップ誌……あれのページのはずだ」

道掛「おぉ、そういや1冊なくなってたな!」

如月「あれですか……赤穂さん、その紙切れがグレゴリーさんの犯行を証明するんですか?」

赤穂「はい、内容を聞いてもらえればわかります」

ジェニー「えっ……」

土橋「どうしたのジェニー?」

ジェニー「な、なんでもないです」

佐場木「……」

赤穂「じゃあ、読むぞ」

苗木「いったい何が……」

これが最後のチャンスだ。

物的証拠はほとんどない。

もう1つの可能性はあるけど……これはグレゴリーが喋ってくれないと証明出来ない。

だからこれでグレゴリーが動かないと……どうしようもない。

赤穂「スクープ……」







グレゴリー「やめろっ!!」






津浦「ど、どうしたんですかMr.グレゴリー?」

グレゴリー「それ以上の言霊は無用だ、聖痕抱きし英雄よ」

赤穂「……」

グレゴリー「……その封印の書に記されているのは確かに我だ」

六山「……認めるの?」

グレゴリー「……ああ」

土橋「じゃあ、奏を殺したのは……」

グレゴリー「…………」

如月「あなたなんですね?グレゴリーさん」

グレゴリー「……そ」







津浦「嘘ですっ!!」






グレゴリー「言の葉の、魔術師……!」

津浦「嘘ですっ、そんなの嘘ですよっ……」

津浦「だってMr.グレゴリーは!ワタシを守るって言ってくれた!だけどこれじゃあ!」

津浦「嫌だ、認めないっ、こんなっ、こんな……!」

赤穂「津浦……」

津浦「あっ……は、ははっ!そうだ、そうですよ!」

津浦「やっぱりMr.グレゴリーは犯人じゃありません!」

御影「……なんで?」

津浦「だってMr.グレゴリーは襲われているんですよ!実際首にはその痕跡が残っているんです!」

津浦「これこそ、彼が無実って証拠じゃないですか!」

津浦「そうです、あなた方の推理は決定的に間違っていたんですよ!あはっ、あはははははっ!」

ジェニー「コトハ……」

赤穂「……」

グレゴリーの襲われた痕跡。

それはきっと、これを使ったんだ。

【第3の腕】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「……グレゴリー、1つ聞かせてほしい」

グレゴリー「……なんだ」

赤穂「第3の腕、あれは心臓の上から着けて使うんだよな?」

グレゴリー「然り」

赤穂「それは……背中からも出来るんじゃないか?」

グレゴリー「……見事だ聖痕抱きし英雄。そこまで真理を掴んでいたか」

津浦「な、何を言ってるんですか……!」

赤穂「グレゴリーは背中につけた第3の腕を使って自分に襲われた痕跡を残したんだ」

佐場木「諦めろ津浦……それ以上はお前自身を傷つけるだけだ」

津浦「……っ、でも!そんなの、Mr.赤穂の推測……」

土橋「琴羽、もうやめよう……」

津浦「認めないっ、やだ、いやぁ……!」

赤穂「……」

津浦はもう認めるわけにはいかないんだな……

だったらせめて、俺がその目を覚まさせるしかない……!

【パニックトークアクション開始!】

津浦「…………」

津浦「こんなの……」

津浦「嘘です……」

津浦「ワタシは、認めないっ……」

津浦【物的証拠なんて、どこにもないんです……】




     マント

背中        隠された

     に

【マントに隠された背中】

赤穂「これで終わらせる……」


赤穂「今回の犯人は慎重だった」

津浦「嫌だ……」

赤穂「死体発見アナウンスの人数に足りるかわからないから目撃者を増やした」

津浦「やめてください……」

赤穂「俺がどこまで知ってるかわからないからこの紙切れを読むのを止めた」

津浦「お願い、ですから……」

赤穂「だからきっと、どこを調べられるかわからないから……まだ第3の腕を持ってるはずなんだ」

津浦「ぁ……」

赤穂「それが出来る人間は、背中を隠せるマントを着けたグレゴリーだけなんだよ、津浦」

グレゴリー「……」

グレゴリーがマントを外す。

その下には、背中に貼り付くように……グレゴリーの発明、第3の腕があった。

津浦「あっ、あっ、ああああああああああああああっ……!」

グレゴリー「……すまん、言の葉の魔術師よ」

【クライマックス推理開始!】

ACT.1
今回のクロがなんで四方院さんを狙ったのかはわからない。
だけどクロは四方院さんに静音の名前を使って手紙を出したのは間違いないはずだ。

ACT.2
四方院さんを呼び出したクロは水族館にあったロープで彼女の首を絞めて殺害した。
そしてロープを結んでその身体を吊るしたんだ。

ACT.3
だけど誤算があった。
四方院さんがクロにとって都合の悪いゴシップ誌を握ったままだったんだ。
それを外せなかったんだろう、クロは大胆な手に出た。

ACT.4
四方院さんの腕をショッピングモールの工具で切り落としたんだよ。
そしてクロはその腕を使って自分の容疑を外す工作を開始したんだ。

ACT.5
クロは津浦と土橋を襲って目撃者役として水族館に連れていった。
そして自分も襲われたように装うために自分の作った第3の腕で首に痕跡を残したんだよ。

ACT.6
クロは四方院さんの腕を持っていくと、兵頭を見かけたのか図書館にそれを置いた。
そして兵頭が人を呼ぶ間にその腕を水族館に戻すと、鮫の水槽に投げ込んで証拠の隠滅を図ったんだ。

だけど指や記事が残った事や慎重過ぎた事が不自然な点を生み出して、こうして犯行を暴かれたんだ。

赤穂「四方院さんを殺したのはお前なんだな、グレゴリー・アストラル三世!」

グレゴリー「……ああ、その通りだ」

津浦「ああああああああっ……!」

COMPLETE!

モノクマ「議論の結論が出たみたいだね!」

モノクマ「それでは投票タイムとまいりましょうか!」

モノクマ「オマエラ、お手元のスイッチで投票をお願いします!」

モノクマ「オマエラの答えが正解?それとも不正解?」

モノクマ「運命はどっちだー!!」


         VOTE

 グレゴリー グレゴリー グレゴリー

       チャッチャッチャー!


     【学級裁判閉廷!】

本日はここまで。

今回のクロはグレゴリー・アストラル三世でした。

次回おしおきと2章ラストまでいきます。

それでは……

モノクマ「大正解!」

モノクマ「今回四方院奏さんを殺害したクロはー……」

モノクマ「グレゴリー・アストラル三世クンでしたー!」

グレゴリー「…………」

津浦「なんで……なんで、ですか……なんで……」

赤穂「……」

グレゴリーが四方院さんを殺した。

その事実は……津浦にとってあまりに残酷だった。

それは自分を守ると言った男が人を殺したからだけじゃない。

モノクマ「うぷぷ、それにしても傑作だよね!守るとか言っといて学級裁判でしっかり逃げようとするなんてさ!」

モノクマ「グレゴリークンは津浦さんが死のうがどうでもよかったって事だもんね!」

そうだ、このコロシアイは1人だけ殺して終わるようなものじゃない。

学級裁判で他の生き残り全員を殺す……グレゴリーは内心はどうあれ、津浦に行動で突きつけてしまったんだ。

【お前を殺しても生き残る】という事を。

苗木「本当に、どうしてこんな事したの……今回の動機はグレゴリークンには何も関係な……」

モノクマ「いやいや、何言ってるの!しっかり関係してますとも!」

モノクマ「だってグレゴリークンは……この中にいる人殺しの1人だからね!」

如月「グレゴリーさんがですか……しかし彼ほどの目立つ人間が犯罪を犯したなら、僕か佐場木さんが気付いているはずですよ?」

佐場木「ふん……つまり目立つ前だったんだろう」

兵頭「それが記述されていたのが、赤穂さんの持つゴシップ誌だったというわけですか」

モノクマ「その通り!それでは発表します!」

モノクマ「なんとグレゴリークンは5年前に世間を騒がせた、あの【ガス爆発連続死亡事故】のガスストーブを設計した張本人なのです!」





津浦「…………えっ?」

遠見「【ガス爆発連続死亡事故】……でありますか?」

六山「そういえば、そんなニュースが昔毎日やってたよね」

土橋「アタシ、その事故なら被害者の家を建て直しした事あるからよく知ってるよ」

土橋「ある企業が新しく売り出した多機能型のガスストーブが次々に爆発したんだよね……死傷者は確か100を超えたはずだよ」

土橋「確かそのストーブを設計したのが未成年だって話を聞いた事はあったけど……」

道掛「それがグレゴリーだったのかよ!?」

モノクマ「そうそう、マスコミも当時かなり騒いでたよね。設計にミスがあったんじゃないかとか……」

グレゴリー「否!我が記述に一切の深淵は存在していない!あれは目先の欲に囚われた愚か者共が我が声を無視したがために……!」

モノクマ「うんうん、実際はそうなんだよね」

ジェニー「グレッグは、悪くないですか?」

モノクマ「グレゴリークンの設計通りだとコストがかかるからって、勝手に設計とは違う材料を使ったから起きた事故なんだよねあれ」

赤穂「だったらなんで……」

モノクマ「だけど世間はそう見てくれなかったの。そして散々責められたグレゴリークンは苦肉の策として自分自身を消す事にしたんだよ!」

モノクマ「謎多き設計士【グレゴリー・アストラル三世】としてね!」

佐場木「なるほどな、お前は過去を捨て仮面をつけて再出発をしたというわけか」

グレゴリー「……そうだ。我の真名はもはや、憎悪と失望に堕した忌み名と化していた」

グレゴリー「故に我はこの名と姿を得たのだ」

鞍馬「その格好や口調の方に気をとられ、5年前の設計士と繋げる人間はいなかった……それだけの話です」

如月「……グレゴリーさんがこうなった理由はわかりました。ですがそれは……四方院さんを殺してまで守らなければならない秘密だったんですか?」

道掛「そうだぜ!話聞く限りだとグレゴリーは悪くねえじゃねえか!」

グレゴリー「…………」

モノクマ「オマエラのほとんどはそうかもしれないね!」

モノクマ「だけど……」







モノクマ「その事故で両親を殺された津浦さんはどうだったのかなー?」

津浦「…………」






赤穂「っ!?」

御影「なっ……なにそれ……」

津浦の両親が死亡した事故の原因が、グレゴリーの設計したストーブだった!?

モノクマ「キミは知ってたんだよね?津浦さんがあの事故の遺族だって」

モノクマ「あんなに津浦さんに優しくしてたのは罪滅ぼしでもしているつもりだったのかな?」

モノクマ「それともバレた時に津浦さんが情から殺せないようにするための布石だったとか?いやあ、グレゴリークンもなかなかやり手だねぇ!」

グレゴリー「黙れ!我は、我はただ……」

津浦「…………Mr.グレゴリー」

グレゴリー「っ……」

津浦「ワタシはあなたにとって、罪悪感を吐き出すための道具だったんですか……?」

グレゴリー「違うっ!!確かに、そのような邪念が存在しなかったと言えばそれは虚構だ……!」

グレゴリー「だが我は、ただ……ただ、純粋にその身を案じて……」

グレゴリー「…………ぐっ、くっ!」

グレゴリー「なぜだ、なぜこうなった?」

グレゴリー「あのような手紙さえなければ!水の都に優雅なる吹き手がいなければ!」

グレゴリー「我は……!」

佐場木「……なに?」

モノクマ「うぷぷ、それじゃあそろそろいきましょうか!」

赤穂「……!」

苗木「いくって、おしおきだよね……」

モノクマ「急がないとまた如月クンに痛めつけられちゃうからね!」

如月「……」

モノクマ「それでは今回は、【超高校級の設計士】であるグレゴリー・アストラル三世クンにふさわしいスペシャルなおしおきを用意いたしました!」

グレゴリー「言の葉の魔術師、我は…………」

津浦「……」

モノクマ「それでは張り切って参りましょう!」

グレゴリー「…………ああ、そうか」

津浦「……?」

グレゴリー「もうこんな風に自分を偽る必要も……ないんだ」

津浦「っ!?」

グレゴリー「ごめん、だけど……」

「君を助けたかったのも守りたかったのも、嘘じゃないから」

津浦「……ぁ」

「最期に、これだけは知ってほしい……」

「僕の名前はね――」

モノクマ「おしおきターイム!!」







       GAME OVER

 グレゴリークンがクロにきまりました。

    おしおきをかいしします。






グレゴリーが何かを言うより先に、首輪が伸びてその身体を引きずり込む。

そしてグレゴリーが連れてこられたのは【処刑器具】とだけ書かれている大きな紙が置かれた作業台のある部屋だった。

【最期の世紀の大発明!】

【超高校級の設計士グレゴリー・アストラル三世処刑執行】

グレゴリークンは覚悟を決めたかのようにペンを取り出すと、紙に図を書き込み始めました。

グレゴリークンが線を引くと、後ろにいたモノクマがその通りに機材を組み立て。

グレゴリークンが円を描くと、後ろにいたモノクマがその通りに機材を積み上げます。

どんどん出来上がるグレゴリークンのための処刑器具。

そしてグレゴリークンが最後の線を引き終えると同時に……

後ろの処刑器具が倒れて、グレゴリークンの身体を潰します。

衝撃で吹き飛ぶ仮面……それはモノクマが出したストーブの上に落ちて、熱でどろどろに溶けてしまいました……

モノクマ「あー!せっかくとびっきりのおしおき装置を作ったのに!」

モノクマ「……まあ、おしおきは出来たからいっか!」

兵頭「ぁっ……っ、はぁ……」ガクッ

道掛「うおっ、千ちゃん!?」

鞍馬「……快感のあまり腰砕けになりましたか」

六山「理解出来ないや……」カチカチ

津浦「……」

土橋「琴羽!」

津浦「なんで……なんで最期に、あんな」

呆然とする津浦、また快感を受け止めている兵頭……

佐場木「……遠見、話がある、来い」

遠見「佐場木殿!?ま、待ってほしいであります!」

その中で、佐場木はいつもより顔を険しくして上に戻っていった。

如月「……あのような手紙さえなければ、ですか」

そしてそれは、如月さんも同じで。

佐場木と遠見を追いかけるようにエスカレーターに乗り込んだ如月さんの背中を見つめながら……

赤穂「……」

俺は、なぜか、今さら、一つの事実が気になっていた。

赤穂「静音を騙ったあの手紙には本が一緒だった……」

それは当然あのゴシップ誌のはずだ。

そんな手紙を、なんでグレゴリーが送るんだ。

じゃああの手紙は……

だけど……それ以上に……

赤穂「四方院さんは、抵抗しなかった……」

なんでだ、なんで今こんな事が気になる?

混乱する俺の頭の中で、ある会話がリピートされる。

――――

御影「涙……出てるよ」

四方院「ふふっ、わたくしもあの子がいないと落ち着かないという事でしょうか……」

四方院「ああ、早くあの子の所に行きたいですわ……」

―――――

なあ、四方院さん……

――――

四方院「ふふっ、わたくしもあの子がいないと落ち着かないという事でしょうか……」

四方院「ああ、早くあの子の所に行きたいですわ……」

――――

本当は、わかってたんじゃないのか?

――――

四方院「ああ、早くあの子の所に行きたいですわ……」

――――

静音がもう死んでるって。

――――

四方院「ああ、早くあの子の所にいきたいですわ……」

――――

だっておかしいじゃないか。
なんで行きたいなんだ、なんで帰りたいじゃなかったんだ?

――――







四方院「早くあの子の所に逝きたい」

四方院さん、君は本当にただの被害者だったのか?


――俺のそんな疑問に、もう永遠に答えは出ない。






【赤穂のコテージ】

赤穂「……」

ダメだ、なんだか変な事ばかり考える……

赤穂「少し外に出るか……」

杖をついて外に出るといつものように満天の星が空に散りばめられていた。

赤穂「……」

【サマーアイランド・射撃練習場】

赤穂「……あれ、なんでここに」

ああ、そうか……ここは津浦とグレゴリーの。

土橋「あれ、政城……」

赤穂「土橋?なんでここに」

土橋「なんとなく……ね。ここはほら、琴羽とグレゴリーの……」

俺と同じって事か……

赤穂「津浦は?」

土橋「まだ混乱してるみたいだよ……無理もないけどさ」

赤穂「そうか……」

津浦は大丈夫なのか?

グレゴリーを支えにしてた分、それをこんな形で……

カチャリ

赤穂「……んっ?」

変な音がした気がして、射撃練習場の方を見る。

赤穂「……っ!?」

入り口から見えていたのは銃を握った腕。

その銃は、土橋を狙っている。

赤穂「っ、危ないっ!」

土橋「えっ、きゃあっ!?」

不恰好な状態で土橋を突き飛ばす。

次の瞬間。

パァン!

破裂音が聞こえて、やけつくような痛みが身体を貫いた。

土橋「政城っ!?ねぇ、どうしたの政城っ、政城ってば!」

赤穂「……」

俺を呼ぶ土橋の後ろを誰かが、駆けていく。

誰、だ……

目を凝らして、その姿を捉えようとしても逆に目は霞んで……







俺の意識は、真っ暗闇の中に消えた。












CHAPT.2【糸絡まりて命絶つ】END

生き残りメンバー14→???人

To be continued...












【絶望フルート】を手に入れました!

【偽りのマスク】を手に入れました!






本日はここまで。

CHAPT.2が酷く長い期間になってしまい申し訳ありませんでした。

次回からCHAPT.3に入ります。

それでは……

「……」

「ねえ」

「……」

「ねえってば!」

「っ、あ、あれ?」

「どうしたの?ボーッとしちゃって」

「いや……なんかもう、本当にどうしようもないんだなって」

「……仕方ないじゃん。私達は子供なんだから、借金で2人は育てられないんだって言われたら……」

「お前にそう言わせる自分が情けないんだよ……俺が御影の家に行ったり、せめてもう少し歳が離れてれば家出て2人でやってく事だって……」

「……」

「だいたい、いくら向こうが娘が欲しいって言ったからって牡丹はまだ……!」

御影「……それだけで十分だよ兄さん」

赤穂「……」

御影「私を想ってくれてる人がいる。それだけで私は頑張れるから」

赤穂「……牡丹」

御影「だから笑ってよ。兄さんは私のヒーローなんだから、そんな顔なんて似合わないよ」

赤穂「……ああ、そうだな」

御影「じゃあ、さよならの前に1つ約束」

赤穂「約束?」

御影「うん、私が御影の家に行っても、もう二度と会えなくても……」

御影「赤穂牡丹は兄さんの妹だって、ずっと覚えてて」

赤穂「……」

御影「……」

赤穂「……そんなの当たり前だろ」ポンッ

御影「あっ」

赤穂「お前は何があっても俺の大切な妹だよ……牡丹」ナデナデ

御影「……うん」

【御影のコテージ】

御影「っ……!」

なんで、あの時の夢なんて……

兄貴、兄さんと別れたあの日の夢……

御影「……約束、か」

昔はなんであんな約束したんだろう、なんて思ったけど今ならよくわかるよ。

私はきっとわかってたんだ。

長い間、私は兄さんと会えなくなるんだって……


「誰か!起きてるなら手伝って!!」

御影「……?」

何かあったの……?

「政城が、政城が死んじゃう!!」

御影「っ!!」







CHAPT.3【悪意のアンノウンは高らかに唄う】(非)日常編






【赤穂のコテージ】

赤穂「…………」

遠見「ふう……これで、もう命に別状はないであります」

土橋「良かった……!」

あれから慌てて飛び出したら、土橋が血だらけの兄さんを抱えてて。

なんでか遠見と佐場木も同じコテージから出てきたから協力して兄さんのコテージに運んで……遠見が治療をしてくれた。

御影「……」

治療されて眠る兄さんの身体には、古い傷痕がたくさんある。

こんなにたくさん傷作って……

佐場木「それで何があった。赤穂の身体にあるのは明らかに弾痕だぞ」

弾痕……

御影「……なにそれ、兄貴は撃たれたって言うの!?」

土橋「アタシにもよくわからないんだ……いきなり政城に突き飛ばされたと思ったら、政城の身体から血が……」

佐場木「このタイミングでコロシアイを起こすか……確かに学級裁判直後なら混乱している人間も多いが……!」

遠見「どうするでありますか、佐場木殿。先ほどの話と合わせると事態は……」

佐場木「……ちっ、如月を呼ぶぞ」

土橋「怜輝を?」

佐場木「腹立たしいがあの殺人鬼は誰よりも容疑者になり得ない男だ。赤穂の警護には適任だろう」

御影「……」

警護って……まさか兄さんが狙われるって事……?

御影「そんなの……!」

遠見「あっ、御影殿!?」

御影「……」

兄さんが狙われる、兄さんが殺される……!

そんなの……そんなの嫌だ。

私は……!

御影「……!」

鞍馬「……」

御影「鞍馬……」

鞍馬「どこに行くんですか?まだ夜中ですよ」

御影「……あんたには関係ないでしょ」

鞍馬「……」

なんなのこいつ、いつもそう。

気がついたらいて……

御影「私急ぐから」

とにかく今は鞍馬に構ってる余裕なんてない。

私は鞍馬の横を通ると……

鞍馬「あなたは何も出来ませんよ」

御影「……!」

鞍馬「その身体で犯人探しでもしますか?無駄ですよ、返り討ちにあうのが関の山だ」

御影「あんた、何を」







鞍馬「そうでしょう。未来機関第一支部秘匿才能【超高校級の被験体】御影牡丹さん」






御影「……!」

なんっ、知って……!

鞍馬「その身体にどれだけの病気を抱えても死なない、死ねない特異体質」

鞍馬「現在は確か不治の病とされているものが3つ、治療困難な病気が4つ……」

鞍馬「その体質に目をつけたとあるマッドサイエンティストに拉致され、ウイルスの人体実験に使われていた」

鞍馬「人類史上最大最悪の絶望的事件の余波で脱出に成功したものの未来機関に遭遇」

鞍馬「【超高校級の薬剤師】の作る痛み止め、未来機関による病気の治療、【超高校級】の認定と引き換えに未来機関第一支部に籍を置く」

鞍馬「……でしたか」

御影「……」

鞍馬「今は痛み止めで日常生活は出来ているようですが、いつ爆発するかわからない爆弾を抱えたあなたが誰かと事を交えようなど無茶ですよ」

御影「……なによ、いつもと違ってペチャクチャと喋ってさ」

鞍馬「……」

御影「私の身体の事なんてあんたには関係ない、ほっといてよ……」

鞍馬「あなたはいくつもの病の治療法の発見に貢献しているんですよ。あなたのような存在が死ねば世界の損失に……」

御影「うるさい!私は……こんな、こんな身体、欲しくなかったのに!好き勝手言わないでよ!」ダッ

もう鞍馬なんかと話していたくなかった。

だから私はホテルから出て、どこに行くかも決めないまま走り出していた……

鞍馬「…………」







「…………」ニヤァ






本日はここまで。

1週間以内にまた更新したいと思います。

【中央の島】

御影「はぁ、はぁ……」

飛び出しちゃったけど……これからどうしよう。

兄さんを狙う誰かを何とかしたい、だけど鞍馬の言う通り私に荒事なんて出来るわけがない。

御影「……」

だったら、せめて調べるしかない。

私はこの身体以外は普通にも満たないけど……

それでも……!

ガコン!

御影「えっ?」

なに、この音。

音のする方に向かって歩いていくと……今まで何もなかった場所に新しい通路があった。

御影「これ……」

兵頭「ふふっ、きっと今回の学級裁判を生き延びた成果……といったところですね」

御影「っ!?」

兵頭「あら、驚かせてしまいましたか?」

いつの間にか私の後ろにいた兵頭は、相変わらず人を食ったような笑顔。

御影「あんた、こんなとこで何してんの」

もしかして兵頭が兄さんを……

兵頭「私はこの先にある島を開放と同時に調べようと思いまして」

兵頭「ふふっ、学級裁判の捉え方の違いから皆さんは私を好ましく思っていないようですから」

御影「……そりゃそうでしょ」

人が死んでそれに快感覚えるなんてまともな人間じゃない。

……私みたいな身体の人間がまともな人間云々なんて語れる立場じゃないけどさ。

兵頭「御影さんこそこんな時間に何を?」

御影「……ちょっと色々あって」

兵頭「色々ですか?ふふっ、お兄さんと喧嘩でもしましたか?」

御影「はっ?なんでそうなるわけ?」

兵頭は……兄さんが怪我したのを知らない?

だけどこれが演技かも……

兵頭「だって御影さん服のボタンはかけ違えてますし、髪がボサボサですよ?そこまで心乱れてるとするならやはり赤穂さん関連かと」

……そういえば、寝て起きたところに兄さんの事があったから着の身着のままで飛び出したんだ。

御影「……」

兵頭「ふふっ、沈黙は肯定として受け取りますね」

喧嘩云々は外れだけど……兄さんの事で心乱れてるのは正解か。

兵頭「あっ、もう朝になりますね。朝日が出てきましたよ」

言われてみると、確かに周りが明るくなってきてる。

もうそんな時間なんだ……

兵頭「さて、御影さんはどうします?よかったら一緒に調べますか?」

御影「……」

兵頭と一緒にか……

正直変態だし、どこまで信用していいのかわからないけど……

御影「……わかった、一緒に行く」

兵頭が兄さんを襲った犯人なら、もしかしたら私でもなんとかなるかもしれないし……

危ない橋を渡らないと、わからない事だってあるはず。

兵頭「ふふっ、そうですか。それじゃあよろしくお願いしますね」

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

ゴゴゴゴゴ

橋を塞いでいた扉が下がっていく。

次の島が、開放されたってわけか。

兵頭「さて、行きましょうか御影さん」

御影「……」

そうして私は思いもがけず、新しい島に足を踏み入れる事になった。

短いですがここまで。

これからは基本土曜日更新でいきたいと思います。

なお御影さんの才能は如月ロンパの頃からこれでした。

【第3の島・オータムアイランド】

兵頭「……」

御影「なにこれ……」

新しい島に着いた私達の目の前で紅葉がヒラヒラと揺れている。

ヒュウッ

御影「っ……」

肌寒い……これじゃあまるで秋みたいじゃない。

兵頭「ジャバウォック諸島は常夏だったはずなんですけどね。これはどういう事なんでしょうか」

御影「……わかんない」

本当になんなのこの島……

兵頭「とりあえず調べるとしましょうか……考えるのは後でも出来ますから」

兵頭は切り換えるように呟くと島の道を歩いていく。

あまりに違う島は少し不気味だったけど、今さら引き返すなんて出来なくて私もその背中を追いかけた。

【モノクマフラワー】


兵頭「……これはまた」

御影「なによ、この巨大な花……」

なんかグネグネ動いてるし、気持ち悪い……

モノクマ「危なーい!」

御影「きゃっ!」

兵頭「気色は悪いですけど危ないんですか、この花は」

モノクマ「そうだよ。なんせこのモノクマフラワーはあらゆる物を食べられる花だからね」

御影「……あらゆる物?」

モノクマ「ゴミや機械、人間までね……うぷぷ」

モノクマの言葉に寒気が走る。

人間まで食べる花……その言葉に嫌な予感が頭をよぎったから。

兵頭「つまりこの花に死体を食べさせてしまえば、死体は見つからず学級裁判は行われないと」

モノクマ「ちょっと!そんな事されたらボクの楽しみが減っちゃうじゃない!」

兵頭「私は可能性を提示したまでです」

モノクマ「そんな事したら許さないからね!やるなよ!絶対にやるなよ!」ピョーン!

兵頭「……これはフリというやつなんでしょうか?御影さんはどう思いますか?」

御影「……」ガタガタ

兵頭「どうしました?寒いんですか?」

御影「あ、あんただって気付いてるんでしょ……この島に人がいないって疑問の答えがもしかしたら」

兵頭「……この花に処理させた。それも血痕や争いがなかった様子から生きたまま眠らせて」

御影「……」

兵頭「それはこの花から連想した推測に過ぎませんよ。四方院さんの推測通り自ら姿を消したのかもしれません」

御影「……」

兵頭「……とにかく行きましょう。私も食べられるのは嫌ですから」

兵頭が差し出す手を思わず握る。

疑ってたのに頼らないといけないなんて……

兄さんの妹なのに、情けなすぎだよ私……

【電気街】

兵頭「ここは電気街ですね」

御影「……」

兵頭に手を引かれるままに連れてこられたのはピカピカ光る商店街みたいな場所。

パソコンとか携帯電話……カメラとかもある。

パソコン、携帯電話?

御影「ちょっと……もしかしたらこれで助け呼べるんじゃないの?」

兵頭「調べてみましょうか」カタカタ

御影「……どう?」

兵頭「動くには動きますけど、ネットやメールの類いは使用できないようですね」

御影「やっぱりそう上手くはいかないか……」

兵頭「ああ、でもデータファイルがありますね」カタカタ

御影「何か書いてあるわけ?」

兵頭「……暗号化されてますね。私にはサッパリです」

御影「それじゃあどうすんの」

兵頭「六山さんに見せてみましょうか。お願い出来ますか、御影さん」

御影「えっ?」

兵頭「私より御影さんの方が受け入れやすいですから」

結局パソコンを兵頭に押し付けられた……

まあ、いいけどさ。

【モーテル】

御影「……っ」

さすがに、夏の格好で秋風は冷たい……

兵頭「大丈夫ですか?とりあえずこのモーテルで一休みしましょう」

御影「……ごめん」

兵頭「いいですよ。ちょっと中に暖める何かがないか見てきますね」

モーテルの1つに入っていく兵頭……本当に、あいつがよくわかんない。

御影「ご飯作ったり、こうして気遣ってくる兵頭と学級裁判の投票であんなになる兵頭……」

どっちも同じ兵頭なのに私の中ではまるで繋がらない。

兵頭「カイロがありましたよ。少しは暖かくなると思います」

御影「……ねぇ、兵頭は未来機関に戻ったらどうすんの」

兵頭「また突然ですね……」

御影「いいから答えてよ」

兵頭「戻れませんよ」

御影「えっ?」

兵頭「私はあの味を知ってしまった。この島から出たとして日常に帰れるとは思えませんから」

御影「……」

兵頭「ふふっ、思い出すだけで身体が疼いてしまうんです。もう私は未来なんて作れません」

兵頭「出たら皆さんとはお別れでしょうね」

御影「……そう」

もしこんなコロシアイに巻き込まれなかったら……兵頭は日常に帰れたの?

そんな言葉を、私は口には出せなかった。

【発電所】

御影「デカッ……」

兵頭「火力、水力、風力……あらゆる方法で電気を作り出しているようですね」

兵頭が見ているパネルみたいなのを横から見る。

兵頭「どうやらこの発電所でジャバウォック諸島全ての電力を賄っているようですね」

御影「そりゃ、ここまで大きくなるわけだ」

兵頭「中には入れないようですが……おや?」

御影「どうしたの」

兵頭「金網につけられた扉にパスワード入力装置がありますね……ふむ」

御影「パスワード……わかるわけ?」

兵頭「残念ながら。モノクマだってそうそうバレるようにはしていませんでしょうし」

御影「止められでもしたら大惨事だしね……」

兵頭「一応後で調べてみましょう。もしかしたらヒントがあるかもしれませんから」

【病院】

御影「……!」

病院……だったら傷薬とかあるはず!

薬の臭いは好きじゃないけどそんな事言ってらんない!

兵頭「御影さん、走ると危ないですよ!」

【病院内】

御影「傷薬、傷薬……」

兵頭「傷薬……誰か怪我したんですか?」

御影「……」

兵頭「なるほど、ようやく御影さんがあんなに心乱れてた理由がわかりましたよ」

御影「あった!」

兵頭「ふふっ、そうなると早く帰った方がいいですね。お兄さんのためにも」

御影「っ……ちょっとそういう事……」







ガッ!

兵頭「っ!」ドサッ

御影「……えっ」






兵頭「うっ……」

えっ、なに、なんで兵頭倒れてんの?

なんで兵頭、頭から血流して……

御影「ちょっと兵頭!」

兵頭「御影さん、逃げ……」

御影「逃げるってなに……」

兵頭に気をとられて私は気付かなかった。

廊下にいた兵頭の近くに今まさに何かを振り上げる誰かがいたなんて……

ガッ!

御影「うっ!?」ドサッ

っ、誰かに、殴られ……

いったい、誰が……

「……」

御影「誰、っ……あん、た……」

「……」ブンッ!

ガッ!

御影「兄、さん……」ガクッ

「…………」

今回はここまでで。

【赤穂のコテージ】

赤穂「うっ……」

如月「目が覚めましたか」

赤穂「如月、さん?なんでここに……」

如月「その説明の前に何があったか覚えていますか?」

赤穂「何って……」

俺は確か夜中に外に出て、射撃練習場で土橋に会って……

それで…………

赤穂「そうだ、俺は……っ!?」

如月「無茶はしない方がいいですよ。あなたは撃たれたんです、遠見さんが治療したとはいえ安静にしていないと」

赤穂「つ、土橋は……!あいつは無事なんですか!?」

如月「……えぇ、彼女は無事です。本当はあなたが目覚めるまでいるつもりだったようですが、精神的疲労もあるからとコテージに戻ってもらいました」

赤穂「そうですか……」

土橋は無事なのか……よかった……

如月「……ところで赤穂さん、あなたを撃ったのは誰かわかりますか?」

赤穂「いえ、俺が見たのは腕だけで……それも暗かったから誰のかまでは」

如月「ふむ……わかりました。佐場木さん達が犯人を探すつもりのようですからあなたは安静に……」







モノクマ「そんな呑気な事言ってていいのかなー?」






赤穂「モノクマ……!?」

如月「何か用ですかモノクマ」

モノクマ「ちょっとボクとしても困る事が起きてね。二人に伝えに来たんだよ」

赤穂「困る事だって……」

モノクマが困るのは歓迎したいぐらいだけど、わざわざ俺と如月さんに伝えに来たってどういう事だ?

モノクマ「赤穂クン、妹さんは可愛い?」

赤穂「はっ?」

モノクマ「うぷぷ……もし可愛いなら大変だね」


モノクマ「御影さん、このままだと殺されるよ?」


赤穂「なっ!?」

如月「……!」

赤穂「どういう事だ!詳しく話せ……つうっ!」

如月「御影さんが殺されそうだと……しかしそれをあなたが伝えに来る目的はなんですか?」

モノクマ「困る事って言ったでしょ?このまま御影さん達が死んだらお楽しみがお預けになっちゃうんだよね!」

如月「お楽しみ……いえ、それより御影さん【達】ということは危ないのは彼女だけではないんですね?」

モノクマ「うぷぷ、とにかく伝えたからね。止められるなら止めといてよ、せっかくのコロシアイなんだからさ!」

赤穂「っ……牡丹!」

早く助けに行かないと……!

如月「赤穂さん、気持ちはわかりますが落ち着いてください。あなただって怪我をしているんですよ」

赤穂「でも……!」

如月「ここは僕が行ってきます。必ず御影さんは助けますから」

赤穂「……」

如月「いいですか、絶対にコテージにいてください」

バタンッ

赤穂「……」

コテージにいろ、か。

赤穂「そんなの、はいそうですかなんて聞けるわけないだろ……!」

牡丹は俺の妹なんだ。

妹が危ないのに、コテージに籠ってなんていられるか……!

【中央の島】

赤穂「モノクマのお楽しみは、きっと学級裁判の事だ……」

つまり牡丹は今殺されそうで、なおかつ学級裁判が起きない状態にある……!

赤穂「それはきっと、死体が見つからないって事だ」

死体が3人以上に見つからないと捜査が、ひいては学級裁判が始まらない。

犯人はそれを狙ってるはず……

赤穂「どうすればそんな事が出来るんだ……」

可能性としては、生きたまま海に流されてるか……

いや、だけど海に流されたならいくら如月さんでも助けるのは不可能だ。

赤穂「じゃあ他に方法があるのか……だけど今まで見た中でそんな事が出来る施設なんて……んっ?」

新しい島が……まさかここか!

赤穂「違ってたらもう間に合わない……だけど可能性が一番高いのはここだ……!」

牡丹、ここにいてくれよ……!

【第3の島・オータムアイランド】

「はあああっ!」

赤穂「っ、これは如月さんの声……!」

間違いない、牡丹はここにいる……!

【モノクマフラワー】

赤穂「牡丹!」

如月さんの声を頼りに進むと、あのコロシアイ学園生活でも見たモノクマフラワーがグネグネと動いていた。

その根元には、倒れてる牡丹と兵頭。

そして2人に向かって伸びる触手を蹴散らす如月さんがいた。

如月「さすがに2人守りながらの離脱は難しいですか……!」

赤穂「っ!」

如月さんは触手の相手で精一杯か……だったら俺がやるしかない!

ヒュッ!

赤穂「なっ!?」

モノクマフラワーに向かって歩き出した瞬間、俺の杖が触手に弾き飛ばされて、支えをなくした俺はその場に倒れてしまう。

赤穂「くっ……!」

腹から何かが流れた感覚。

傷口から、また血が……だけど構ってられるか!

赤穂「くそっ……」

腕と片足の力で這うように進む。

だけどそんな俺を嘲笑うかのように、牡丹が触手に捕まって、持ち上げられた。

如月「しまった!くっ……そんなに餌を奪われたくありませんか!」

勢いづいたのか兵頭にも群がる触手を如月さんが相手する間に、牡丹はどんどん口の部分に連れていかれて。

赤穂「くそっ!くそっ!動け、こんな時ぐらい動けよ!」

妹が目の前で喰われそうになってるのに、なんで俺は倒れて這ってるんだ!?

如月さんみたいに戦えとは言わないから、せめて普通に立てよ赤穂政城!

ヒーローなんだろ、だったら火事場の馬鹿力でもなんでも出して立ち上がれよ!

立って牡丹を助けろよ、兄貴だろ俺は……!

赤穂「やめろっ……牡丹を返せよっ……!」

赤穂「やめろぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

俺の叫びもむなしく、牡丹の身体は花の中に運ばれ…………







道掛「牡丹ちゃんを離せよ!このデカブツ!」






その瞬間、何かが俺の上を飛んで触手の上に乗った。

そのまま触手を器用に昇ると、牡丹の身体を奪って降りてくる。

ようやく認識できたそれは自転車。

道掛が自転車で触手を走って、牡丹を助けたんだ。

道掛「如月、牡丹ちゃんは助けたぜ!お前も早く千ちゃんを!」

如月「わかりました!」

道掛が自転車で走っていくのを追いかけるように、如月さんも兵頭を抱えてモノクマフラワーから離れていく。

どうやら2人は俺に気付いてなかったみたいだ。

あれだけ叫んでも、俺はその声すら届かなかった。

赤穂「……」

俺は妹を助けるどころか。

赤穂「はっ、ははっ……」

目の前で死にそうな妹をただ見ていることしか出来なかった。

赤穂「……」

飛んだ杖を拾って、立ち上がる。

腹から滲んだ血が地面を赤く濡らしてるのに、何も感じない。

モノクマフラワーも興味をなくしたみたいに、俺に襲いかかったりはしてこなかった。

赤穂「……」

何がヒーローだよ。

赤穂「俺は……」

妹を守れない、ヒーロー、そして兄失格の大馬鹿野郎だ。

例えようもない虚脱感を胸に、俺はその場を後にした。

本日はここまでで。

今日は無理なので明日にずらします。

【病院】

赤穂「……」

あれから俺はマップを頼りに病院にやってきた。

殺されかけたなら、コテージに連れていくよりここに来るはずだから。

如月「……赤穂さん、コテージにいてくださいとお願いしたはずですが」

病院のロビーにいた如月さんにそんな事を言われたけど、正直今の俺はその言葉に何かを返す余裕もない。

如月「その血……傷口が開いていますね。今包帯を」

赤穂「牡丹は」

如月「……」

赤穂「牡丹は無事なんですか」

如月「頭を殴られたようですが、命に別状はないようです。今は病室で寝ていますよ」

赤穂「……」

如月「……何かありましたか?どうも、コテージで別れた時とは様子が違いますが」

赤穂「……ちょっと」

言えない、妹を助けようとして何も出来なかったなんて。

その事で牡丹に謝りたいだなんて、言えるわけなかった。

道掛「おっ、赤穂も来たのか!ってどうしたんだよその血!?」

赤穂「道掛……」

如月「赤穂さん?」

俺は道掛に近寄るとその肩を掴む。

道掛には絶対に言わなきゃいけない事があるんだ。

道掛「待っ、赤穂なんか怖えって!?誤解だ、俺は牡丹ちゃんに何もしてな……」

赤穂「ありがとう道掛……」

道掛「はっ?」

赤穂「牡丹を助けてくれてありがとう……」

道掛「あー……如月、話したのかよ。別に話さなくていいって言ったのに」

如月「……」

道掛「如月?」

如月「そうですか。あなたは……」

赤穂「ありがとう、ありがとう……!」

道掛「……?」

道掛にお礼を言っている内に、他のみんなも駆けつけてきた。

俺は遠見と土橋に大目玉を喰らって、治療と説教を同時に受ける事になる。

そして……牡丹と兵頭が目を覚ましたのはそんな説教が終わった頃だった。

【御影と兵頭の病室】

佐場木「早速で悪いが話を聞かせてもらうぞ。何があった?」

兵頭「私達はこの島を調査していて、最後にこの病院に来ました」

兵頭「そこで御影さんが傷薬を探し始めまして、私はそれを見ていたんです」

兵頭「そして御影さんが傷薬を見つけた直後に……私は衝撃を受けて倒れたんです」

御影「……私がそれを見て兵頭に駆け寄ったら、物陰から誰かにいきなり殴られたんだよ」

佐場木「そしてモノクマフラワーの側に運ばれたわけか」

遠見「佐場木殿、これはおそらく」

佐場木「間違いないだろうな」

赤穂「……」

なんだ、佐場木と遠見が何か目配せしてるぞ……

六山「2人は何か知ってるの?」

佐場木「それについては後だ。とにかく今回の件についてだ」

遠見「犯人は御影殿と兵頭殿をモノクマフラワーに補食させ死体を消すつもりだったようでありますな」

土橋「それだけじゃないよ!2人を襲ったのって、政城を撃ったのと同じ奴でしょ!?」

赤穂「……多分な」

苗木「じゃあ犯人はこの短い間に3人も殺すつもりだったって事!?」

如月「いえ、それ以上だと思います。モノクマフラワーに補食させた場合、死体が見つからない事から学級裁判は行われないようなので」

道掛「はあっ!?そんなのアリかよ!?」

佐場木「学級裁判を行わずして俺達を消す。どうやらよほど俺達に死んでほしい存在がいるようだ」

ジェニー「えとえと、シリアルキラーて事です?」

道掛「そんなの相手にどうしたらいいんだよ……このまま黙って皆殺しなんて冗談じゃ……!」

モノクマ「そうだね!そんなのつまんないよね!」

道掛「うおわあっ!?」

鞍馬「出ましたね」

モノクマ「いやいや、本当に今回は困ったね」

モノクマ「危うく学級裁判のセットとかおしおきの装置とかが無駄になっちゃう所だったよ!」

如月「……そんな戯れ言を言いに来たんですか」

モノクマ「もちろんそれだけじゃないよ!本題はここから!」

モノクマ「今回の件を受けて、ボクは新しいルールをここに追加します!」

ピピッ!

【同一のクロが殺せるのは2人までとします】


佐場木「皆殺し防止のルールか」

モノクマ「そういう事!2人までは良しとするけどそれ以上殺したらおしおきしちゃうよ!」

モノクマ「うぷぷ、これで健全にコロシアイが出来るね!」

遠見「コロシアイに健全も何もないであります……」

六山「まあ、皆殺しがなくなっただけよしとするしかないよ……あっ、レベル上がった」

皆殺しか……

モノクマがわざわざ新しいルールを追加したなら黒幕以外にそれを企んでる人間がいるって事なんだよな……

佐場木「……おい、ところで津浦は来ていないのか」

土橋「あっ、そういえば……」

見回してみると、確かに津浦の姿が見えない。

グレゴリーの事もある、また引きこもってても不思議じゃないけど……

遠見「コテージにいるのでありましょうか……見てくるであります」

苗木「津浦さん、大丈夫なのかな」

兵頭「支えになっていたグレゴリーさんがクロになったんです。何があってもおかしくありませんね」

ジェニー「何かて……」

六山「後追い、とか?」

道掛「じ、自殺って事かよ!?」

御影「……!」

佐場木「落ち着け、まだそうと決まったわけじゃない」

赤穂「それはそうだけどな……」

佐場木「とにかく遠見を待て。それより赤穂、貴様そんな傷で何をしている」

赤穂「えっ?」

土橋「そうだ、そうだよ!政城も怪我してるんだから安静にしてなきゃ!」

如月「ここは病院ですから、しばらくここでゆっくりしてもらうのはどうでしょう」

土橋「そうだね!それじゃあ空いてる病室に行こう政城!」

赤穂「ま、待て、押さないで……!」

結局俺は土橋に背中を押されて、病室を後にした。

まだ牡丹に謝ってないのに……

【赤穂の病室】

赤穂「お、おい土橋!俺は大丈夫だからそんな大袈裟な……」

病室に連れてこられた俺はベッドに半ば無理やり寝かされていた。

土橋は何を言っても無視して、色々してるけど……

赤穂「なあ、本当に俺は大丈夫だって。だからそこまでしなくても……」

土橋「……」

赤穂「土橋?」

土橋「だって、アタシのせいだから」

赤穂「はっ?」

土橋「政城はアタシを庇って怪我したんだよ。だからアタシは……」

赤穂「……」

土橋「出来る事は何でもしてあげたいの。政城を傷つけたお詫びと……」

振り返った土橋の目には涙が浮かんでいて、その表情は色んな感情が混ざった顔で。

土橋「政城に助けられた感謝の気持ちをこめて、さ」

赤穂「……」

その時俺は改めて実感した。

俺は誰かを助けられたんだと。

牡丹を助けられなかったこんな俺でも、土橋を助ける事は出来たんだと。

赤穂「土橋……」

土橋「あっ、そうだ、ねぇ、政城……」

赤穂「ありがとうな」

土橋「えっ?それ、アタシの台詞……」

牡丹を助けられなかった事は、俺にとってやっぱり強い凝りを残している。

だけど何も出来なかったわけじゃない。

それを気付かせてくれて……本当にありがとう。

短いですが今日はここまで。

明日更新したいと思います。

申し訳ありません、リアルで諸々あって更新が出来る状態にありませんでした。
8月からまた再開します。

そして以前に5作目まで考えていると話しましたが、今回、そして5作目が終わったら番外1つ色々一新しての話4つを行いたいと考えています(才能と名前は既に用意済)

その全てが終わるのはいつになるかはわかりませんが、言った以上はやりとげたいと思います。

そのためにまずこのクエストを頑張って終わらせます。

遅い更新ですがお付き合いいただければ幸いです。

それではまた。

ドタバタ

土橋「あれ、なんか騒がしくない?」

赤穂「まさかまた何かあったのか……!」

「なんだと!それで――」

「それが――」

土橋「ちょっと何があったのか聞いてくる。政城は安静にしてて!」

赤穂「あ、ああ」

土橋が廊下に出て、佐場木や遠見と話してるのが微かに聞こえてくる。

遠見が戻ってきたって事は……津浦に関する事だよな?

くそっ、せめて動けたら……!

ガチャッ

土橋「……」

赤穂「土橋、佐場木と遠見はなんて……」

土橋「こ、琴羽が……」

土橋「いなくなったって……」

赤穂「……!?」

佐場木が津浦について話したいと男子全員を俺の病室に集めた。

女子には遠見から話をするらしい……

道掛「琴羽ちゃんがいなくなったってマジかよ佐場木!」

佐場木「事実だ。遠見からの報告によればな」

苗木「でもコテージにいないだけなら、他の島に行ってるとかじゃないの?」

佐場木「コテージに血痕があったそうだ」

赤穂「なっ、血痕……?」

如月「なるほど……それはただ事ではありませんね」

佐場木「何があったにしろ今現在津浦は負傷している可能性が高い。この後数人津浦の捜索に付き合ってもらうぞ」

道掛「おっしゃ、まかせとけ!」

苗木「うん……心配だな津浦さん……」

鞍馬「……」

佐場木「どこに行く鞍馬」

鞍馬「話す必要性を感じませんね」

バタンッ

赤穂「鞍馬……」

佐場木「ちっ、仕方がない……道掛と苗木は俺と来い」

如月「僕も参加しなくていいんでしょうか?」

佐場木「貴様は当初の予定通り赤穂の警護をしておけ。問題は津浦の行方だけじゃないんだからな」

赤穂「……」

牡丹と兵頭を襲った犯人の事か……

如月「……そうですね、わかりました」

佐場木「行くぞ」

佐場木が道掛、苗木と病室を出ていく。

津浦、お前は今何をしてるんだ……

赤穂「……」

如月「……さて、2人ですから聞いておきましょう」

如月「赤穂さん、あなたは兵頭さんと御影さんがユートピアフラワーに襲われていたあの場にいましたね?」

赤穂「……」

如月「道掛さんが御影さんを助けた事を知る理由は他にありません。そうなんでしょう?」

赤穂「……はい」

如月「やっぱりですか……あなたも無茶をしますね」

赤穂「無茶をして……結局助けられませんでした」

如月「……結果的には助かったんです、思い詰めるのはオススメしません」

赤穂「だけど」

如月「それに、赤穂さんが御影さんが心配で動いてしまった気持ちは僕にもわかります。僕にも妹がいましたからね」

赤穂「……如月さんにも?」

如月「えぇ、もし同じ状況だったら……いえ、もしじゃなく実際同じ事をしました」

赤穂「……」

同じ事を、実際した?

如月「最も、僕は間に合いませんでしたが」

赤穂「それって……」







ブツンッ






赤穂「っ!?」

如月「これは……停電ですか?」

停電……それはあの時の事を思い出させる。

この島に来て最初の殺人、静音が殺されたあの時の事を……

「きゃあああああっ!」

「落ち着いて、これはきっと一時的な物でありますから!」

赤穂「っ……!」

誰かの悲鳴とそれをなだめる遠見の声が聞こえてくる。

やっぱり暗闇には思うところがあるって事か……

如月「しかしなぜ急に……佐場木さん達はどうしているんでしょうか」

赤穂「とにかく、カーテンを開けて日を入れましょう!今はまだ昼だから外は……」

閉じられたカーテンを急いで開ける。

すると日光が暗い部屋を……

日光が……

日光……

…………なんでだ?

なんでカーテンを開けても、暗いままなんだよ!?

佐場木「おい、全員無事か!」

道掛「なんだよこれ、何がどうなってんだ!」

赤穂「佐場木!道掛!外が暗いけどどうなってるんだ!?」

苗木「そ、外も急に暗くなったんだよ!月明かりもないし、本当に真っ暗で何がなんだか……」

佐場木「さらにもう1つ異常事態が発生した」

如月「異常事態?」

道掛「中央の島に繋がる橋が、なくなってんだよ!」

赤穂「な、なんだって……」

佐場木「どうやら俺達は……閉じ込められたらしいぞ」

佐場木「この、明かりのない島にな」

モノクマ「そのとーり!」

赤穂「モノクマ!これはなんなんだ!」

モノクマ「うぷぷ……どうもこのままだと早々にまた事件が起きそうだから後押しをね」

モノクマ「今回の動機はこの暗闇の島!」

モノクマ「暗闇は怖いからね、人によっては発狂しちゃうかもしれないし……」

モノクマ「オマエラみたいな虚弱にはキツいよね……」

モノクマ「それならコロシアイだよ!コロシアイをすればまた光がオマエラを照らしてくれるよ!」

モノクマ「ああ、もしくはボクが飽きるまで耐えたらやめてあげてもいいかもね!」

モノクマ「それじゃあ頑張ってね!暗い暗いこの島で……あーはっはっはっは!」

赤穂「……」

まだ、昨日学級裁判があったばかりで……みんなもかなりキツい。

そんな中で、俺達は耐えないといけないのか……?

この、不安を掻き立てる暗闇を……!

続きはまた今夜に。

パッ

赤穂「っ!」

これは明かり……

遠見「皆さん、大丈夫でありますか?」

佐場木「遠見か。その懐中電灯はどうした」

遠見「調査のために用意していた物であります。しかしまさかこんな事になるとは」

道掛「これからどうすんだ?これじゃあ琴羽ちゃん探すどころか歩くのも一苦労だぞ」

苗木「そもそも津浦さんが他の島にいたらどうしようもないよ……」

赤穂「……いや、津浦はこの島にいるんじゃないか?」

佐場木「なぜそう思う」

赤穂「モノクマのやり方を考えると、今津浦だけが安全圏にいるっていうのはないんじゃないか?」

如月「ふむ……津浦さんが他の島にいて亡くなっていた場合、それは事故、自殺以外の結論が出ません」

如月「あのモノクマがそんな学級裁判を望むとは思えませんね」

遠見「結論として、津浦殿はこの島にいる可能性が高いわけでありますか……」

佐場木「それならば見つける手間もあまりかからないか……遠見、予定を変更して俺とお前で捜索するぞ」

遠見「了解であります!」

佐場木「道掛と苗木はここに待機だ。何が起こるかわからない以上、気を抜くなよ」

ガチャッ

バタンッ

苗木「……本当、大変な事になっちゃったね」

道掛「とりあえず女子が大丈夫か確かめにいこうぜ!怖がってるかもしれないしな!」

赤穂「そうだな……俺は動けないから、牡丹の様子を見てきてくれるか?」

道掛「……お、おう。わかった、行ってくる」

苗木「あっ、ボクも行くよ」

バタンッ

なんだ?なんか変な空気になってなかったか……

如月「不思議なんですよ。赤穂さんから道掛さんに御影さんの事を頼むというのが」

赤穂「……そういう事ですか」

確かに、前までなら絶対邪魔してただろうな……

赤穂「……」

もう、そんな事言ってられなくなったからな……

今回はここまで。

※※※※

御影「……」

いきなり暗くなった島……モノクマはこれが次の動機だって言ってたね。

兵頭「まいりましたね。まさかこんな事になるとは」

ジェニー「ぐすっ、暗いのやです……」

土橋「大丈夫、大丈夫だよジェニー。こんなのいつまでも続くわけないんだから……」

六山「うーん……充電は出来るから本当に明かりだけなくしたんだね」

六山が持ってたゲーム機の明かりが辺りを照らす。

これがなかったら、私達は真っ暗な中にいてもっとパニックになってただろうね……

御影「……」ブルッ

正直私も暗いのは苦手……あの薄暗い研究施設を思い出すから。

布団を被って、何とか誤魔化してるけど、さっきから震えが止まらない。

そもそも病院ってだけだってキツいのに……

御影「……」カタカタ

こんな時兄さんがいてくれたら……

道掛「おーい、大丈夫かー?」

ジェニー「ソウヤ?」

苗木「ボクもいるよジェニーさん」

六山「どうしたの?津浦さんを探しに行くって言ってなかった?」

道掛「佐場木がメメちゃんと行くからって留守番。で、様子を見に来たってわけ」

兵頭「それでは今隣は如月さんと鞍馬さんと赤穂さんというわけですか。話している姿が想像出来ませんね」

苗木「いや、鞍馬クンはどこか行っちゃって……」

土橋「そうなの!?いくらなんでも自由過ぎじゃない……」

御影「……」

兄さんはやっぱり来れないか……仕方ないよね。

道掛「あー、そういや牡丹ちゃん大丈夫か?」

ジェニー「ボタンですか?」

道掛「赤穂が牡丹ちゃんの様子を見てきてくれって言ってたんだよ」

御影「……!」

兵頭「あらあら、やはり兄妹という事でしょうか?御影さん」

御影「……何が言いたいのさ」

兵頭「いえいえ、何でもありませんよ」

苗木「あはは、大丈夫そうだね。赤穂クン、本当に心配してたからよかったよ」

御影「……」

これだけで震えが止まるって……私、どれだけ単純なんだか。

※※※※

赤穂「……」

如月「……」

会話がない……さっきの如月さんの話の途中で停電が起きたからか?

なんか重い話だったみたいだし、今さら俺から聞くわけにもな……

如月「そういえば、話の途中でしたね」

赤穂「……いいんですか。あまり楽しい話じゃなかったみたいですけど」

如月「いえ、これも何かの縁でしょうからあなたには聞いてほしいですね赤穂さん」

赤穂「……わかりました」

如月「僕に妹がいた話はしましたね、僕は間に合わなかったという事も」

如月「僕と妹は両親に捨てられ、教会の孤児院で育ちました」

如月「院長先生は寡黙な方でしたが、僕達をとても可愛がってくれて」

如月「院長先生の養子になっていたのは妹と同い年だった女の子だけでしたが、それを不満に思う事もありませんでした」

如月「あの頃は本当に幸せでしたね」

如月「その歯車が狂いだしたのはいつ頃だったか……ああ、やはり妹の体質がわかったあの日ですね」

赤穂「体質?」

如月「……妹は病気でした。それも生きているのが不思議なほど重い病」

如月「ですが妹は普通に過ごしていたんですよ。まるで病気なんてないかのように」

赤穂「そんな事が……」

如月「それがわかった時、妹は奇跡の少女だと言われていました。ですが……」

如月「その後を考えれば、あんなもの奇跡どころか呪いでしたよ」

如月「あの日、妹を引き取りたいという男が教会を訪ねてきました」

如月「院長先生とその男が話し合って、妹は引き取られる事になりました」

如月「院長先生はその男は医者だから、病気を治してくれるだろうと言っていましたけど……僕はその男が妹を見るその目がどうしても気になってしまいました」

如月「まるで動物を見るようなあの目が」

如月「だから、僕は院長先生の部屋からあの男の名刺を持ち出して、その男が住む家……いえ、研究施設に着いて、見てしまったんです」

如月「……あまり愉快な話ではないので結論だけ言います」

如月「妹は生きたまま解剖されてました」

如月「あの男はただ妹の体質を調べるためだけに」

如月「あの子が泣き叫ぶのも聞き入れず、バラバラにしたんですよ」

如月「僕は飛び込みました。妹を助けるために、もう妹は動いてなかったのに」

如月「……大人と子供の差か、僕はあっさりと負けました。そして妹の代わりになるかもしれないと実験台にされかけました」

如月「僕は、偶然近くにいたよく教会に来ていた男の子の父親に助けられました」

如月「あの男が逃げて、妹の亡骸を前に泣くしか出来ない僕を連れてその人は教会に戻って」

如月「院長先生と話をしてくると言ってその人は教会に入っていきました」

如月「……今でも思い出せますよ。院長先生とあの人、当麻さんが話していたあの光景はね」

【如月回想】

「神乃木、聞きたい事がある」

「いきなり来たかと思えばなんだ、当麻」

「お前はあの男がマッドサイエンティストだと知っていながらあの子を引き渡したのか?」

「……」

「知っていたんだな……子供達を幸せにする、それが自分の償いであり懺悔だと俺に言ったあれは嘘だったのか!」

「嘘ではない。私は子供達の幸せを願っているさ」

「なら……」

「だからこそ、尊い犠牲は必要ではないか?」

「……なに?」

「あの子があの男に研究され、その果てに多数の命が救われる……それがどれだけ素晴らしいか、いずれあの子も理解するだろう」

「……」

「ならばきっとあの子は幸せだ。優しい子だったからな……人助けになるとわかれば死をも幸せに変えられるだろう」

「……それが、お前の本音か」

「本音も何も、私は何一つ嘘を語った覚えはないが?」

「神乃木……お前は俺の友人だ」

「ああ、私もそう思っているとも」

「だからこそ、俺はお前のその間違いを看過するわけにはいかん!」

「……間違い?」

「お前の思う幸せについてはとやかく言わない。しかし子供に押しつけるならそれは間違いだ!俺はあの子の涙を、幸せに必要な犠牲などとは認めない!」

「……」

「俺が今言えるのはそれだけだ……後で俺の家に来い。話し合う事は山ほどあるからな」

「……ああ」

如月「…………」

如月「……その後でした。当麻さんが殺されたのは」

赤穂「……!」

如月「犯人は一人しかいなかった。だけど僕は何もできませんでした」

如月「法で裁こうにも証拠はなく、僕自身にはあまりにも力がなかったんです」

如月「僕は孤児院から逃げました。それからの数年はただ生きるために時間を費やしましたね」

如月「そんな日々が続いて、僕はある日、ある人物と出会いました」

如月「その人は脳神経に関してまさに天才と呼ぶにふさわしい人で……僕はその人にお願いしたんです」

如月「人間には力を使いすぎて壊れないよう、脳にリミッターがかかっています」

如月「そのリミッターを外せないかと」

如月「彼は笑って引き受けてくれました。そして手に入れたのが今の僕のこの力です」

如月「その足で僕は孤児院に向かいました、今ならあの院長にだって勝てるはずだと」

如月「ですが、僕は復讐できませんでした」

如月「院長は……病気で亡くなっていたんです」

如月「僕は目的を失いました。しかし院長はある物を残していたんです」

如月「世間の悪人に関するデータ。妹と同じような犠牲を産み、のうのうと生きている悪……僕はそれを見て、決意したんです」

如月「この力で悪を全て裁こうと。たとえこの身が血にまみれようとも正義を執行しようと」

如月「そうして僕は、ジャスティスジャッジになったんです」

短いですがここまでで。

赤穂「……」
 
如月さんの話に俺は何を言ったらいいかわからなかった。
 
憧れだった如月さんのルーツ、それは妹さんの死で。
 
もし牡丹が同じような目に遭わされていたとしたら……俺はきっとこの人と同じ道を進んでいただろう。
 
如月「無論僕のしている事は人殺しです。認められない人がいる事だってわかっているし、だからこそ僕も【超高校級のヒーロー】という仮面を被っているんですから」
 
赤穂「……如月さん」
 
如月「赤穂さん、そんな僕だからこそあなたにこう言えると思います」
 
如月「あなたは殺す事が芯にまで染み付いた僕とは違う道、【本当のヒーロー】の道を行ける」
 
如月「だから僕に憧れるのも僕と比較して無力だと嘆くのもよしなさい」
 
如月「赤穂政城の目指すヒーローは、僕という存在とはかけ離れているんですから」
 
赤穂「……」
 
如月「……さて、そろそろ一度眠った方がいいですよ。色々あって疲れたでしょうから」
 
赤穂「……わかりました」
 
如月さんの言葉に促されるまま、俺は目を閉じる。
 
如月さんとは違う【本当のヒーロー】、か……

 
 
 
 
 
 
如月「あなたと僕は決定的に違う」

 
如月「だってあなたは失っていない」
 
如月「……」
 
如月「嫉妬なんて感情、僕には無縁と思っていたんですがね」

 
 
 
 
 
 

【11日目】
 
赤穂「……ん」
 
今、何時だ……
 
道掛「おっ、起きたか」
 
赤穂「道掛?如月さんは……」
 
道掛「如月なら今、仮眠とってるぜ。結局1日眠らずに番してたみたいだからな」
 
赤穂「……1日?」

道掛「おう、今日はえーっと、この島来てから11日目だな。さっき百夏ちゃんのゲーム機に映ってた時間は9時だったぜ」
 
赤穂「放送はなかったのか?」
 
道掛「いや、あったぞ。赤穂、よっぽど疲れてたんじゃねえの?」
 
赤穂「そうか……眠ってた間に何かあったか?」
 
道掛「牡丹ちゃんと千ちゃんが一応歩けるようになったのと……琴羽ちゃんが見つかった事だな」
 
赤穂「津浦が!?それで、津浦は今……」
 
道掛「いや、それがな……」
 
バンッ!

 
 
 
 
 
 
「フハハハハッ!目覚めたか聖痕抱きし英雄よ!!」

 
 
 
 
 
 

赤穂「っ!?」
 
俺はその言葉に耳を疑った。
 
「ふむ、さらに聖痕が刻まれたようだな……しかしそれもまた英雄たる証!誇るがいい!」
 
それは四方院さんを殺して処刑されたはずのグレゴリーのような口調。
 
「漆黒の闇とは絶望の化身も考えたものよ……だがしかし!希望の種たる我ら、このような闇払ってみせようではないか!」
 
だけど声は紛れもなく、津浦のもので。
 
……俺はこの時ほど、暗闇に目が慣れた事が嫌になった事はない。
 
津浦「フハハハハッ!!」
 
そうじゃなければ、仮面とマントを着けてその仮面の下から血を流す津浦を、はっきり認識せずに済んだんだから。

遠見「……津浦殿!何をしているのでありますか!」
 
津浦「Ms.遠見?あっ、痛っ……目が、目が痛いです……」
 
遠見「さあ、病室に戻るでありますよ……津浦殿は怪我をしているのでありますから」
 
津浦「何を言う!言の葉の魔術師はもうこの現世のどこにもいないではないか!」
 
津浦「はい、Ms.遠見……ご迷惑をおかけします……」
 
バタンッ
 
赤穂「……何が、どうなってるんだ」
 
道掛「……琴羽ちゃん、ショックでグレゴリーみたいになっちまってるんだよ」
 
道掛「なんか、琴羽ちゃんはルール違反して処刑されたんだってよ……」
 
赤穂「だけど今津浦として遠見に返答してなかったか?」
 
道掛「ああ、なんか時々琴羽ちゃんに戻るんだよ……その時の琴羽ちゃんにグレゴリーの話題は禁句だぞ」
 
赤穂「……なんでだ?」
 
道掛「裏切り者の話なんかしたくもない……ってさ」
 
赤穂「……」
 
道掛「今琴羽ちゃんはグレゴリーに対する……えーっと、なんだったけか」
 
苗木「グレゴリークンへの思慕と憎悪がせめぎあってる状態……だよ、道掛クン」
 
道掛「おお、苗木」
 
苗木「グレゴリークンは自分を助けてくれた。だけどグレゴリークンは学級裁判で自分を切り捨てようとした」
 
苗木「そんなグレゴリークンの相反する行動で、心がどうしたらいいのかわからない……そんな状態なんだって」
 
赤穂「……そう、か」
 
苗木「なんか、もう……本当にどうなるんだろうねボク達」
 
暗闇、津浦、牡丹達を襲った存在……
 
あまりにも俺達には抱える問題が、多すぎた。

今回はここまで。
それではまた……

コンコン

赤穂「んっ、どうぞ」

ガチャッ

御影「兄さん……」

赤穂「牡丹っ!?大丈夫なのか……痛っ!」

御影「ちょ、ちょっと!兄さんの方が傷深いんだから!」

赤穂「そうは言ってもな……いたた」

御影「もう……本当に無茶する所は変わらないんだから」

赤穂「……」

なんだ、なんか牡丹の雰囲気が柔らかくなったな……

赤穂「というか、兄さんって」

御影「んっ……まあ、こんな事になった以上変に意地張るのもね」

赤穂「意地か……なあ、牡丹。意地張るのやめたなら教えてくれよ、お前に何があったんだ?」

御影「……」

赤穂「この数年、何か良くない事があったのはわかるんだよ。だけどあの薬といい、その髪といい……」

御影「……知りたい?」

赤穂「……ああ」

御影「……わかった、話すよ。先に言っとくけど、現実的な話じゃないから」

そして牡丹は語りだした……

だけどその話は……

御影「私の才能は【超高校級の被験体】……モルモット、ペットみたいなものなんだ」

昨日如月さんから聞いた話とほとんど同じだった。

赤穂「……」

牡丹を拉致したマッドサイエンティスト、病気を抱えて死なない身体……あまりにも似てる。

御影「あの薬は痛み止め、髪は色々弄くられた結果……死なないなら痛みも何とかしてほしいぐらいだよね」

牡丹は、如月さんの妹と同じ……体質、なのか。

御影「兄さん?」

赤穂「……あ、ああ。よく話してくれたな」

御影「信じるの?」

赤穂「ああ、信じるよ。こんな嘘ついても意味ないしな……ところで、その男は今?」

御影「わかんない。無我夢中で逃げたからさ……」

赤穂「……そうか」

もし生きてるなら、絶対捕まえて牡丹を傷つけた罪を償わせてやる。

野放しにして、被害者が出てもいけないからな……

赤穂「……なあ、牡丹」

御影「なに?」

赤穂「俺も話したい……謝りたい事があるんだ」

モノクマフラワーに食われようとしていたお前を助けられなかった。

それはやっぱり、どうしても……

御影「いいよ、別に。私助かったんだし」

赤穂「は……」

御影「如月から聞いた。兄さんがあの場にいて自分責めてるって」

御影「でもほら、それってさ……兄さんが誰かを助けた結果でしょ?」

赤穂「……」

御影「それなら自分責めるなんてやめてよ」

御影「わたしにとってもヒーローだった兄さんにそんな、誰かを助けた事を後悔してるような真似してほしくないから」

赤穂「……牡丹」

御影「とにかく改めてさ……また兄妹としてよろしく」

赤穂「……俺はずっと兄妹のつもりだったけどな」

赤穂「……」

牡丹と和解……いや、別に喧嘩していたわけでもないからその言い方は変か。

とにかくまた兄妹に戻れてよかった……けど問題は未だに山積みだ。

赤穂「まずは歩けるぐらいには怪我を治さないとな……」

コンコン

赤穂「どうぞ」

佐場木「調子はどうだ」

遠見「見回りも兼ねてお見舞いに来たでありますよ」

赤穂「動くと痛むけどそれ以外は特に問題ないな……まあ、昔はもっと酷い怪我したし」

遠見「赤穂殿は無茶しすぎでありますよ!下手をすれば失血死してもおかしくなかったであります!」

赤穂「うっ……」

遠見、相当怒ってるな……

佐場木「だが、お前の行動で色々とわかってきたのも事実だ」

赤穂「わかってきたって、何がだ?」

佐場木「前に苗木が言っていた静音にアドバイスした者の話は覚えているか」

赤穂「ああ、そんな話もあったな」

佐場木「恐らく今回お前を撃ち、御影と兵頭を襲ったのと同一犯だ」

赤穂「なんだって!?」

遠見「さらに前回の事件でグレゴリー殿と四方院殿を水族館に呼び出したのも、このアンノウンだと自分達は睨んでいるでありますよ」

赤穂「……やっぱりそうなのか」

グレゴリーには四方院さんにゴシップ誌を送りつける理由はないと思ってはいたけど……

佐場木「前回の事件、学級裁判でグレゴリーはこう言っていた」

【グレゴリー「…………ぐっ、くっ!」

グレゴリー「なぜだ、なぜこうなった?」

グレゴリー「あのような手紙さえなければ!水の都に優雅なる吹き手がいなければ!」

グレゴリー「我は……!」】

赤穂「グレゴリーも手紙で呼び出されていたって事だよな」

遠見「そこで自分に関しての記事の載った雑誌を持つ四方院殿と会ったのでありますね……」

佐場木「そこで何があったかはもうわからん。だがこれではっきりした」

佐場木「このコロシアイ、こそこそと動き回る奴がいる事がな……」

赤穂「……」

アンノウン……そいつが今までの事件の……!

赤穂「ところで……誰がそのアンノウンなのか目星はついてるのか?」

佐場木「俺と遠見、そしてお前と如月、襲われた土橋、御影、兵頭は容疑者から外れる」

遠見「苗木殿も違うのでは?彼が静音殿へのアドバイスについて話したからこそ、我々は警戒したのでありますし」

赤穂「じゃあ後は鞍馬、道掛、津浦、六山、ジェニー……」

遠見「そのメンバーで怪しいのはやはり、鞍馬殿でありますか」

佐場木「一人だけ才能が不明、単独行動の多さ、如月と渡り合える戦闘能力……推理小説ならあからさますぎてミスリードのための存在だろう」

赤穂「だけどこれは」

佐場木「小説じゃないか……鞍馬には気をつけておく必要があるな」

鞍馬……お前がアンノウンなのか?

俺には、悪い奴には見えなかったんだけどな……

佐場木「どのみち鞍馬は才能以外に何かを隠している……警戒対象である事に変わりはない」

遠見「くっ、軍人だというのに危険人物を拘束も出来ないとは、自分が情けないであります……!」

赤穂「遠見……」

佐場木「ならその分他で役に立て。発電所に行くぞ遠見」

赤穂「あっ、おい佐場木」

佐場木はもう少し言葉を選んでもいいだろうに……

遠見「……」

赤穂「どうした?」

遠見「佐場木殿は優しいでありますなぁ……」

赤穂「……優しいか?いや、真面目ではあるだろうけど」

遠見「あれは他で役に立てる事があるから気にするなと言っているのでありますよ!隊長もそうでありましたからよくわかるであります!」

赤穂「そう、なのか?」

遠見「間違いないでありますよ!」

俺にはよくわからない……

遠見「その命令、了解したでありますよ!」

まあ、遠見が嬉しいなら……いいのか?

コンコン
赤穂「どうぞ」
……
赤穂「……?どうぞ」
カチャ
ジェニー「……」ヒョコ
赤穂「……ジェニー?」
ジェニー「うう……」
どうしたんだいったい……
土橋「ほらほら、何してるの」
ジェニー「わわっ、ミキ……」
赤穂「土橋、ジェニーはどうしたんだ?」
土橋「どうもこの子暗いとこ苦手になっちゃったみたいで……移動するのも相当苦労してるんだよ」
ジェニー「怖いのやです……」
薄井が静音を殺すための暗闇……あれを実際に作らされたのはジェニーだ。
その事が暗闇への苦手意識を生んでるんだろうな……
土橋「それでも政城のお見舞い行きたかったんでしょう?だったらほら、顔見せてあげなって」
ジェニー「は、はいです……」
不安そうな顔をして近付いてくるジェニーに昔の牡丹の顔が重なる。
赤穂「なあ、ジェニー」ナデ
ジェニー「マサキ?」
赤穂「確かに色んな事があって、不安になるのもわかる……暗闇が苦手になるのもな」
赤穂「それでもジェニーはこうして来てくれた。だからきっとジェニーなら大丈夫だよ」
赤穂「まあ、それでも不安ならこんなだけど俺を頼ってくれてもいいからな?出来る限りの事はするよ」
ジェニー「……」
土橋「いい事言うね政城!ジェニー、アタシにも不安ならいつでも甘えてきなよ!」
ジェニー「マサキ、ミキ……はいです!」
少しは、不安を取り除いてやれたか……?
それなら何よりなんだけどな。

コンコン
 
赤穂「どうぞ」
 
……
 
赤穂「……?どうぞ」
 
カチャ
 
ジェニー「……」ヒョコ
 
赤穂「……ジェニー?」
 
ジェニー「うう……」
 
どうしたんだいったい……
 
土橋「ほらほら、何してるの」
 
ジェニー「わわっ、ミキ……」
 
赤穂「土橋、ジェニーはどうしたんだ?」
 
土橋「どうもこの子暗いとこ苦手になっちゃったみたいで……移動するのも相当苦労してるんだよ」
 
ジェニー「怖いのやです……」
 
薄井が静音を殺すための暗闇……あれを実際に作らされたのはジェニーだ。
その事が暗闇への苦手意識を生んでるんだろうな……
 
土橋「それでも政城のお見舞い行きたかったんでしょう?だったらほら、顔見せてあげなって」
 
ジェニー「は、はいです……」
 
不安そうな顔をして近付いてくるジェニーに昔の牡丹の顔が重なる。
 
赤穂「なあ、ジェニー」ナデ
 
ジェニー「マサキ?」
 
赤穂「確かに色んな事があって、不安になるのもわかる……暗闇が苦手になるのもな」
 
赤穂「それでもジェニーはこうして来てくれた。だからきっとジェニーなら大丈夫だよ」
 
赤穂「まあ、それでも不安ならこんなだけど俺を頼ってくれてもいいからな?出来る限りの事はするよ」
 
ジェニー「……」
 
土橋「いい事言うね政城!ジェニー、アタシにも不安ならいつでも甘えてきなよ!」
 
ジェニー「マサキ、ミキ……はいです!」
 
少しは、不安を取り除いてやれたか……?
それなら何よりなんだけどな。

コンコン
 
赤穂「どうぞ」
 
ガチャッ
 
六山「やっ、元気かな赤穂くん」
 
赤穂「六山か。まあ、今すぐどうこうはならない程度には……みんなはどうしてる?」
 
六山「暗いと何あるかわからないから佐場木くんと遠見さん以外は基本的に待機してるよ。時々外の空気を吸いに行く人はいるけど」
 
赤穂「そうか……」
 
六山「ところで赤穂くんさ……ずっとベッドにいて暇だよね?」
 
赤穂「んっ?みんなが来てくれるからあんまり……」
 
六山「暇だよね?」ズイッ
 
赤穂「た、多少は」
 
六山「そんな赤穂くんのためにゲームを用意したよ。ほら、暇潰せるようなのいっぱい持ってきたから早速やってみて」
 
赤穂「あ、ああ」
 
ゲームか……確かにこうして動けない以上手持ちぶさたな時間はあるけどな……
 
六山「ほら、こんな暗いと気も滅入るし気分転換だと思ってさ」
 
赤穂「そうだな……ありがとう六山」
 
六山「どういたしまして」
 
その後六山に操作方法を聞きながらゲームをした。
 
途中から操作してる俺より六山の方が熱くなってたけどな……

道掛「おーっす赤穂!」
 
赤穂「道掛……それに」
 
鞍馬「……」
 
赤穂「鞍馬も来てくれたのか」
 
道掛「なんか廊下にいたら一緒にな」
 
鞍馬「……勝手に連れてきてよく言いますね」
 
ああ、そういう事か。
 
まあ鞍馬はお見舞いするタイプには見えないしな。
 
道掛「そう言うなって!俺のダチなんだから赤穂と鞍馬だってダチみたいなもんだろ?」
 
鞍馬「……」
 
鞍馬の目が細められる……いつあなたと友達になりましたと言わんばかりだ。
 
鞍馬「いつあなたと友達になりました」
 
そのまま言った……歯に衣着せぬというか、なんというか。
 
道掛「何言ってんだ?熱い勝負をした瞬間からダチだって前に言ったじゃねえか!」
 
赤穂「全く気にしない道掛もすごいな……」
 
鞍馬はかなりはっきり拒絶してるんだろうに。
 
道掛「何がだ?まあすごいって言うなら褒められたんだな俺!」
 
鞍馬「……もういいです」
 
鞍馬が諦めた……
 
赤穂「……」
 
やっぱりこんな鞍馬がアンノウンとは思えないよな……?

苗木「赤穂クンは自分が無力だって思う事ないかな?」
 
赤穂「……無力?」
 
病室に来た苗木からいきなりされたその質問、俺はその意図が見えなかった。
 
苗木「ほら、みんなは頑張ってこの状況を何とかしようとしてる。けどボクは何の役にも立ててないからちょっとね……」
 
赤穂「何言ってるんだ。苗木は佐場木の手伝いとかよくしてるじゃないか」
 
苗木「でもそれってはっきり言っちゃえばボクである必要ないよね?」
 
赤穂「それは……」
 
苗木「御影さんだって赤穂クンのために傷薬探してたんだよね?鞍馬クンだってなんだかんだでやる事はしてるし……」
 
赤穂「……」
 
苗木「……って、あはは、こんな事話されても困るよね?忘れてくれていいよ」
 
赤穂「ある」
 
苗木「えっ?」
 
赤穂「無力だって思う事だろ?たくさんある」
 
この島に来てからもそう考えてしまうような事ばっかりだ。
 
赤穂「正直この場で一番の役立たずは俺なんじゃないかって思う時もな」
 
苗木「そ、そんな事ないよ!赤穂クンは出来る事を立派にやろうと……」
 
赤穂「それは苗木だって同じじゃないか」
 
苗木「……」
 
赤穂「俺にそう言ってくれるなら、苗木もそんなに悲観しないでいいんじゃないかって俺は思うぞ?」
 
苗木「……」
 
赤穂「そう簡単には割りきれないだろうけど、な」
 
苗木「…………うん、ありがとう」

赤穂「……」
 
兵頭「失礼します」
 
赤穂「兵頭?」
 
兵頭「お元気そうで何よりです。赤穂さんに何かあったら御影さんが泣いてしまいますから」
 
赤穂「お、おいおい……わざわざそんな事言いに来たのか?」
 
兵頭「いえいえ、今のはちょっとしたジョークですよ。本題はこれからです」
 
赤穂「笑えないジョークはやめてくれ……」
 
兵頭「ふふっ、すみません。それでですね、本題というのは津浦さんの事なんです」
 
赤穂「津浦……また何かあったのか?」
 
兵頭「赤穂さんも彼女が今グレゴリーさんを演じているのは知っているでしょうが、このままだと津浦さんの心は取り返しがつかなくなると思います」
 
赤穂「……確かにな」
 
兵頭「そこで赤穂さんにも何か考えていただこうかと思いまして」
 
赤穂「俺にか?」
 
兵頭「四方院さんがいなくなった以上、赤穂さんは女子のリーダーでもありますからね」
 
いつの間に……
 
赤穂「でもそうだな……津浦を何とかしないといけないのは事実だし、考えてみる」
 
兵頭「ふふっ、ありがとうございます」
 
赤穂「だけどなんで兵頭がそんな事を気にするんだ?津浦と特別親しかったわけでもないだろう」
 
兵頭「さあ、なんででしょうね?」
 
赤穂「……?」
 
意味深な笑みのまま兵頭は病室から出ていった。
兵頭の思惑はともかく……津浦をそのままにはしておけないよな。

如月「津浦さんの事ですか」
 
赤穂「はい」
 
あれから考えてみたけど、頭いいわけでもない俺に名案がパッと出てくるわけもない。
 
早々に行き詰まった俺は如月さんに相談してみる事にした。
 
如月「そうですね……やはり津浦さんの心の強さに賭けるしかないと思いますが」
 
赤穂「……」
 
だけど津浦はどちらかと言えば脆い方だよな……
 
通訳になった理由も怖いから、だった。
 
むしろ津浦の反応が普通なのかもしれないけど。
 
赤穂「時間薬に頼るしかないんですか?」
 
如月「ショック療法は津浦さんには逆効果でしょうからね……【超高校級のカウンセラー】でもいればよかったんですが」
 
カウンセラーか……

キーン、コーン、カーンコーン
 
モノクマ「夜10時になりました!」
 
モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」
 
モノクマ「うぷぷ、また明日……」
 
赤穂「もう夜なのか……」
 
明かりが六山のゲーム機しかないから時間の感覚がおかしくなってるな……
 
赤穂「この暗闇、アンノウン、津浦の事……問題は山積みだ」
 
せめて何か1つでも打開出来れば……
 
グルグルと思考が回る。
 
その内に俺の意識は遠のいていった。

【12日目】
 
キーン、コーン、カーンコーン
 
モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」
 
モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」
 
赤穂「朝……今日で12日目だったか」
 
これだけ経てば未来機関が救出に動いてもおかしくないはずなんだ……だけどまるでその気配がない。
 
赤穂「優秀な人間があれだけいる未来機関がそうそうどうにかなるとは思えないけど……」
 
救出は、期待しない方がいいのかもしれないな……

御影「兄さん、ご飯だよ」
 
赤穂「ああ、悪いな牡丹。お前だって怪我人なのに」
 
御影「別に気にしないでよ。発作の痛みに比べたら全然だし」
 
赤穂「……反応に困るぞ」
 
御影「……うん、なんかごめん」
 
如月「おや……」
 
赤穂「あっ、如月さん」
 
如月「……」
 
御影「……な、何。ジッと見て」
 
如月「いえ、なんでもありませんよ」
 
赤穂「……」
 
多分牡丹に妹さんを重ねてるんだ……
 
体質の事までは如月さんも知らないだろうけど……それを知ったら、どんな気持ちになるんだろうな……
 
如月「廊下にいます。何かあれば呼んでください」
 
御影「……なんなの?」
 
赤穂「如月さんにも色々あるんだよ」
 
御影「色々、ねぇ」

赤穂「……」
 
ジェニー「……」
 
ジェニーが来たのはいいけど全く喋らない……何かあったのか?
 
赤穂「えっと、ジェニー?」
 
ジェニー「……マサキ」
 
赤穂「んっ?」
 
ジェニー「どうしたらセイを元気にできますか?」
 
赤穂「苗木?」
 
ジェニー「セイ、すごく落ち込んでたです……自分が何も出来ないって」
 
苗木、やっぱり割りきれてなかったのか……
 
ジェニー「ボク、セイには笑っててほしいです……どうしたらいいです?」
 
とは言うものの、苗木の無力感は自分の心の問題だしな……
 
ジェニー「ボクはピエロですから人を笑わせないといけないのに……」
 
赤穂「……んっ?なあ、ジェニーちょっといいか?」
 
ジェニー「はいです?」
 
赤穂「いや、違ったら謝るけど……ジェニーはピエロは誰かを笑わせないといけないから苗木を笑わせたいのか?」
 
ジェニー「……?」
 
赤穂「いや、ジェニーはただ苗木を笑わせたいから悩んでるのかと思ってたからさ……」
 
ジェニー「違う、です?」
 
赤穂「いわゆる最終目標がどこかだよな。ジェニーは苗木を笑わせてピエロの仕事を果たしたいのか?それとも苗木に笑ってほしいのか?」
 
ジェニー「ボクは……アレ?ボクは、どうしたいです?」
 
赤穂「……ちょっと落ち着いて考えてみるか?その様子だと答えはわからないみたい、だしな」
 
ジェニー「は、はい……」
 
混乱した表情のままジェニーは病室から出ていく。
我ながら意地悪な質問だったかもしれない……だけどジェニーはいい子だし、ここで変な方向には行ってほしくないんだよな……

佐場木「なかなか上手くはいかないな」
 
佐場木が椅子に腰かけて書類らしきものを見ている。
なんでわざわざここで見てるんだ……?
 
赤穂「何を見てるんだ?」
 
佐場木「発電所の見取り図だ。最も手描きだがな」
 
佐場木が渡してきた紙を照らしてみれば、確かにそれは建物の外観みたいな物が描かれていた。
 
赤穂「発電所か……俺はこの島を自分の目で調べられてないけど入れそうなのか?」
 
佐場木「難しいと言わざるを得ない。この発電所は金網で囲まれ唯一の扉にもパスワードでロックがかかっている」
 
赤穂「パスワード」
 
佐場木「何桁なのかもわからん以上総当たりも困難な作業だ。遠見は徹夜でやると言っていたが」
 
遠見らしいな……
 
佐場木「しかしそんな事をやらせるわけにもいかない。いざというときには奴の力が必要になるからな」
 
赤穂「……信頼してるんだな」
 
佐場木「この島に来てから常に行動を共にしていればそれなりの関係は構築できる」
 
……信頼してるって事でいいんだよな?

土橋「なんかジェニーが悩んでるみたいなんだよね」
 
土橋に身体を拭かれながらされた話、それは俺にも心当たりがある話だった。
 
……一応言い訳すると俺は自分で拭けるって断ったんだぞ。
 
赤穂「ああ、苗木の元気がないから笑わせたい……らしいぞ?」
 
土橋「あー、あー、なるほど。だからあんなに唸りながらお手玉してたんだ」
 
……多分俺の言った事も影響してるだろうけどそれは黙っておこう。
 
土橋「半次やメメも忙しくしてるし、この暗さもあるし問題は山積みだよね」
 
赤穂「そうだな……本当に参った」
 
土橋「よし、身体拭くの終わったよ!」
 
赤穂「ああ、ありがとうな」
 
土橋「こんなのアタシのしてもらった事に比べたらお安いご用だし」
 
赤穂「なあ……よく考えたらそれは俺をコテージに連れていってくれた事でチャラになるんじゃないか?」
 
土橋「えっ」
 
赤穂「いや、だから助けられたのはお互い様だしそこまで……」
 
土橋「政城!」
 
赤穂「な、なんだ!?」
 
土橋「……なんでもない」
 
赤穂「???」
 
なんだか土橋の機嫌が悪くなってないか……?

赤穂「……というわけなんだが」
 
道掛「かー!そりゃダメだっての赤穂!」
 
遠見「同感であります」
 
あの後結局土橋の機嫌は元に戻らず、やって来た道掛と遠見に相談して返ってきた答えがそれだった。
 
赤穂「いや、実際そうだろう?土橋がコテージに連れていってくれなかったら、俺は治療も出来ずにどうなっていたかわからなかったんだぞ?」
 
道掛「そうかもしんねえけどでもこの場合は不正解なんだよ!」
 
赤穂「……よくわからないな。遠見も道掛と同意見みたいだけど」
 
遠見「そうでありますね……自分は軍人でありますから、命のやり取りは日常茶飯事でありましたが」
 
遠見「そんな自分でも隊長に救われた時の恩義は未だに返せていないと思っているでありますよ」
 
遠見「軍人である自分がそうなのだから、そうでない土橋殿の赤穂殿への恩義はさらに強いものであるのでは?」
 
赤穂「つまり土橋にとってはチャラに出来るような事じゃないから怒ったのか?」
 
遠見「きっとそうであります。自分も隊長に同じように言われたら反発するでありますよ」
 
そうか……そこまで思ってくれてるんだな。
 
道掛「いやいやいやいや!全然ちげえよ!」
 
遠見「違うのでありますか!?」
 
赤穂「どういう事だよ道掛?」
 
道掛「だから美姫ちゃんはだな……」
 
道掛「…………やっぱやめるわ」
 
赤穂「は?」
 
道掛「多分向こうもわかってないだろうし、わざわざこっちで言う事じゃねえし」
 
赤穂「おい道掛?」
 
道掛「いいからせいぜい悩んどけ!青春らしくな!」
 
遠見「どういう意味でありますか……」
 
俺にもわからない……

六山「んー……」カタカタ

また暇潰しにとゲームを持ってきた六山が説明もそこそこに椅子に座ってパソコンを弄り始める。

ゲーム以外を操作してるなんて珍しいな……

赤穂「何してるんだ?」

六山「御影さんからもらったんだ。電気街を調べてる時にデータファイルの入ったパソコン見つけたらしくて」カタカタ

赤穂「データファイル?」

六山「うん、中は暗号化されててわかんないんだけど。だからデバッガーのわたしに頼んだんだろうね」カタカタ

赤穂「どうにかできそうか?」

六山「まあ、そんなに時間はかからないと思うよ?明日には出来るんじゃないかな」カタカタ

赤穂「そうか……何か手がかりが出てくればいいけど」

六山「何が出るかお楽しみってやつだね。これをランダムの宝箱だと思ってわたし頑張るよ」

宝箱か……六山らしい考え方だな。

津浦「聖痕抱きし英雄よ!そのマナは枯渇していないか!」

赤穂「……」

津浦は昨日と変わらずグレゴリーを演じている。

自分を救い、裏切った……そう感じているはずの男を、津浦は何を思って演じているのか。

津浦「どうした?沈黙の術式でもかけられているのか?」

だけどこのままでいいわけもない。

とにかくまずは津浦と話せるようにしたいけど……どうすれば。

ガチャッ

鞍馬「……」

赤穂「鞍馬?」

津浦「むっ…………」

赤穂「……?」

どうしたんだ?津浦が鞍馬を見た途端に……

鞍馬「グレゴリー・アストラル三世が僕を何と呼んでいたかわからないんでしょう?」

津浦「っ!?」

鞍馬「お粗末なものだ。どれだけ演じようと津浦琴羽はグレゴリー・アストラル三世ではない。あなた自身が把握していない彼の行動はトレース出来ませんよ」

津浦「っ、Mr.鞍馬……」

鞍馬「それで?あなたはいつまで壊れたフリをしているつもりですか?」

津浦「っ!!」タタタッ

赤穂「あっ、おい津浦!?鞍馬、壊れたフリってどういう意味だ!」

鞍馬「そのままですよ。彼女は壊れてなどいません」

津浦が壊れてない……つまり津浦は冷静にグレゴリーを演じていたっていうのか?

なんでそんな……

鞍馬「……」

兵頭「なるほど、やっぱりですか」

赤穂「やっぱりって、気付いていたのか?」

兵頭「少なくとも完全な狂人のフリであるとはわかっていました。破滅して狂った人はたくさん見てきましたから」

兵頭「最も狂人を演じる事自体も問題ですから、遠からず本当の狂人に成り果てるのは目に見えていますけどね」

赤穂「なんでそれを黙ってたんだ?」

兵頭「確証があったわけでもありませんでしたから。下手に地雷を踏みたくはないでしょう?」

赤穂「……」

兵頭「とにかく津浦さんが逃げたという事は彼女は比較的冷静のようですね……」

赤穂「そこがわからないんだ。津浦が冷静ならなんであんな事をしてるんだ?」

兵頭「本当にわかりませんか?答えは結構シンプルですよ」

赤穂「シンプル……」

津浦がグレゴリーを演じている理由って、そんなに単純なのか……?

赤穂「……」

津浦がグレゴリーを演じている理由か……

赤穂「複雑な思いがあるのは間違いないだろうけどな……んっ?」

窓から何か……あれは明かりか。

時間的にはもうすぐ夜なのに誰が外に出てるんだ?

赤穂「……」

気になるな……とはいえ、俺は安静にしているべきだろうし……

だけどもしあれが例のアンノウンだったら……

赤穂「確認ぐらいは、しておくか」

幸い杖は近くにあるし、暗闇に眼は慣れてる……行ってみよう。

【発電所】

これが……佐場木達が話してた発電所か。

赤穂「明かりはこっちの方に消えたけど……」

「誰かいるの?」

赤穂「うっ!?」

辺りを見回してると、いきなり明かりを向けられて思わず目を閉じる。

今の声は……

赤穂「苗木?」

苗木「赤穂クン!?なんでこんな所に」

赤穂「病室から明かりが見えたから追いかけてきたんだ」

苗木「そっか……心配かけちゃったかな」

赤穂「苗木はどうしてここに?」

苗木「発電所の扉にパスワードがあるって聞いたから……試しに来たんだ」

赤穂「試しにって、手がかりでもあるのか?」

苗木「ううん、ないよ。だけどボクなら出来るかもしれない」

赤穂「まさか運任せでやるつもりなのか?」

苗木「だってボクは幸運なんだ。こんな事ぐらいでしか役に立てない」

赤穂「苗木……」

苗木「もう嫌なんだ!みんなが傷つくのも、無力なままでいるのも!」

苗木「だから止められてもボクはやるよ」

苗木「希望のために、ボクは……!」

赤穂「……わかった、なら俺も付き合う」

苗木「えっ?」

赤穂「言っただろ?無力さを痛感してるのは俺もだって」

赤穂「だから付き合わせてくれよ」

苗木「……ありがとう」

赤穂「気にしなくていいさ」

そして俺と苗木は、発電所のパスワードに挑戦する事になった……

【13日目】

赤穂「……」

苗木「……ダメ、だったね」

あれから俺達はいくつものパスワードを入力した。

だけどどれも扉はエラーを返してきて。

時刻は朝の6時……そろそろ戻らないと大騒ぎになるだろう。

苗木「結局……ボクはなんの役にも立てないんだね」

赤穂「苗木……」

苗木「あはは、ちょっと散歩して帰るよ。少し1人になりたいしさ……」

赤穂「……」

俺も、戻ろう。

赤穂「……」

御影「兄さん?」

赤穂「……あっ、どうした?」

御影「どうしたじゃないよ。さっきからボーッとしちゃってさ」

赤穂「ちょっとな……ふあっ」

御影「なに、寝てないの?」

赤穂「ああ、まあ……」

御影「はぁ……怪我人なんだからおとなしく寝てないと駄目だよ」

赤穂「面目ない。牡丹も大変なのにな」

御影「私は別に慣れてるし……」

赤穂「そういうのは慣れるもんじゃないだろ」

御影「……なんかあったの?」

赤穂「んっ……苗木がなんか落ち込んでるみたいでさ」

御影「ああ、なんか道掛達も気にしてるみたいだね。さっき声かけてたよ」

赤穂「本当、どうしたらいいんだろうな……」

津浦の事だってあるって言うのに……

御影「……1人で抱え込まないでよ?兄さんはそういうとこあるんだから」

赤穂「ああ、困ったら牡丹に慰めてもらうよ」

御影「あのねぇ」

六山「パソコンの暗号、解読出来たよ」

その六山の言葉に佐場木は情報の共有のためと俺の病室に全員を集めた。

とは言うものの……津浦は病室に閉じこもって出てこないらしい。

佐場木「どうやら津浦が冷静だという話は本当のようだな」

土橋「でも怪我は本当だし、琴羽は大丈夫なの?」

遠見「その経過を見るためにも開けてもらいたいのでありますが……」

苗木「…………」

道掛「苗木、お前も大丈夫なのかよ?顔色悪いぞ」

苗木「うん……ボクは大丈夫だよ」

ジェニー「……セイ」

兵頭「とりあえず今はこちらを優先しましょう。六山さん、データファイルの内容は?」

六山「3つあったんだけど、1つは発電所の扉のパスワードだね」

六山が見せた画面には5桁の数字が並んでいる。

これが発電所の……

苗木「……」

御影「3つって言ってたけど後2つは?」

六山「1つは、コロシアイ共同生活だっけ?それの経過みたい」

六山が開いたデータには16人の名前が記されている。

そしてその内数人の名前には赤い線と黒い線がひかれていた。

如月「どうやら……向こうでもコロシアイは進行しているようですね」

如月さんが指さしたのは学級裁判記録と名前がついた2つのファイル。

向こうも俺達と同じように事件が2つ起きてるって事なのか……!

佐場木「その記録は後で改める。六山、最後のデータの詳細はなんだ」

六山「えっと……これなんだけど」

六山が見せてきたのは【絶望教について】というテキストだった。

遠見「絶望教……このコロシアイが始まる少し前に突如現れた新興宗教でありますね」

土橋「それって絶望の残党みたいなやつなの?」

如月「いえ、彼らは自分達自身の絶望には関心がないようです」

道掛「どういうこった?」

六山「このテキストによると、絶望教は誰かを絶望させる事に目的を見出だしてる宗教みたいなんだよね」

御影「誰かを絶望させる……」

兵頭「世界の希望絶望の総量は決まっていて、誰かを絶望させれば自分達に希望が訪れる……そのために絶望を与えるのが目的という事みたいです」

佐場木「なんのことはない、ふざけたカルト集団だ」

誰かを絶望させれば希望が訪れるか……仮に正しいとしても、こんな絶望だらけの時代なのにその分の希望が少なすぎるけどな。

あの後、佐場木は発電所の中を調査すると遠見を連れて出ていった。

それに合わせるように1人、また1人と部屋からいなくなって。

そして最終的に部屋には俺と……

鞍馬「……」

鞍馬が残された。

赤穂「……」

鞍馬「……」

というより、珍しいな。

鞍馬がこうして何も言わずにただ俺の病室にいるなんて。

鞍馬「絶望教」

赤穂「はっ?」

鞍馬「あなたはどう考えていますか」

赤穂「どうって……おかしな宗教だなとしか言えないだろ」

赤穂「話を聞いた時も思ったけど、だったら今の世の中はどうなんだって話だし」

鞍馬「確かに今は絶望と希望のバランスが取れているとは言えません」

鞍馬「しかしこうは思えませんか」

鞍馬「今こうして絶望に苛まれている事こそ」

鞍馬「いずれ来る希望に溢れる世界への布石なのだと」

赤穂「……」

なんだ?鞍馬の奴、いつにも増して饒舌だぞ……

鞍馬「いえ、既に世界を変えるピースは揃っています」

鞍馬「後はたった1つのきっかけさえあれば……」

赤穂「おい、鞍馬?」

鞍馬「……少々話しすぎましたか」

鞍馬「言いたい事は1つです」

鞍馬「彼女を死なせないでください」

赤穂「彼女……っ!?」

鞍馬「彼女の存在は世界の変革には不可欠なのだから」

赤穂「鞍馬!まさかお前牡丹の身体の事……!」

バタンッ

赤穂「……」

鞍馬は知ってるんだな……牡丹の身体の事を。

鞍馬類……お前は一体何者なんだ?

道掛「鞍馬の事?」

赤穂「ああ、道掛は鞍馬と話してるみたいだけどどんな感じだ?」

鞍馬の言動は妙に気にかかる……俺はよく絡みに行ってる道掛に鞍馬について聞いてみる事にした。

道掛「つうてもな、鞍馬って無口無表情で自己主張しないからなぁ」

道掛「時々話してるの俺だけな気さえしてくんだよ」

赤穂「鞍馬は何も話さないのか?」

道掛「ぬいぐるみ作ってるのに集中してたりして聞いてすらいない時もあるな!」

それでもめげないのか。

道掛「あー、でも牡丹ちゃんの話題には結構反応すんなあいつ」

赤穂「牡丹の?」

道掛「おう、相変わらず口数は少ねえけど牡丹ちゃんの事を話す時は返事返ってくるんだよ」

赤穂「……そうなのか」

鞍馬は牡丹に対して何か思うところがあるって事なのか?

鞍馬については……兄としても、警戒する必要がありそうだな。

佐場木と遠見が発電所の調査から戻ってきたらしい……俺の病室に来た2人にどうだったか聞いてみると。

佐場木「制御室に鍵がかかっていた。あれをどうにかしない限り発電所の機能を動かすことは不可能だ」

遠見「内部は10階建てだったのでありますが、入ってすぐのエレベーターホールぐらいしか入れなかったでありますよ……」

赤穂「つまり、無駄骨だったって事か?」

佐場木「さらに調査を進めれば変わるかもしれんが現状ではそうなる」

遠見「突破口になると、思ったのでありますが……」

わざわざパスワードを暗号化していたぐらいだし、発電所は何かの手がかりになると思ったんだけどな……

遠見「とにかく再調査をするべきであります!きっと見落としている所が……」

佐場木「遠見、再調査に貴様を連れていくつもりはない」

遠見「えっ……」

佐場木「ここ数日の見張りに調査……いささか負担がかかりすぎている。しばらく休息を取れ」

遠見「佐場木殿!自分はまだ……!」

佐場木「軍人だからといって自分を過信しない事だな。何を言おうと再調査の同行は認めん!」

遠見「っ……」

赤穂「……」

言い方はキツいけど佐場木は心配して言ってるんだろう事は俺にもわかる。

遠見も同じだったんだろう、不承不承ながらもその言葉に頷いていた。

苗木「はぁ……」

リハビリがてらロビーに顔を出すと、ソファーに座ってため息をつく苗木がそこにいた。

赤穂「ため息をつくと幸せが逃げるぞ」

苗木「あはは、こんな事に巻き込まれて幸せも何もないんじゃない?」

……これはまだパスワードの事引きずってるな。

苗木「六山さんはすごいよね。彼女のゲームがあったから少しは明るいし、暗号だって解読しちゃうし……」

赤穂「……」

まあ、昨日の夜の事は結構堪えただろうから仕方ないのか?

苗木「なんて、六山さんはデバッガーでそっち方面明るいんだからボクと違って当たり前なんだけどね……」

赤穂「……」

苗木「大丈夫、そんなにしない内に元に戻るようにするから」

赤穂「あんまり抱え込むなよ?苗木を心配してる人だっているんだから」

苗木「あはは、そうだったら嬉しいよ」

本当なんだけどな……

赤穂「……」

バンッ

赤穂「うわっ!?」

ジェニー「マサキ!ボクわかたです!」

赤穂「ジェ、ジェニー?」

ジェニー「ボクはセイに元気になてほしいです!それはピエロとか関係ないボクの気持ちです!」

赤穂「……」

ジェニー「暗いのも怖くないです!みんなの事悲しいですけど……だからもうこんなの嫌です!」

赤穂「……っ、あはは!」

ジェニー「マ、マサキ?なんで笑うです?」

赤穂「ジェニーの答えが嬉しいから、だよ」

ジェニー「よくわかんないですけど……マサキがスマイルならボクもハッピーです!」

赤穂「ああ、ありがとうな」

今は本当に暗い事ばかりだけど……こうしてジェニーの明るさに触れてると救われる気がするな。

赤穂「……」

俺も出来る事をしないとな……

赤穂「……んっ?」

何か聞こえてくるぞ……

津浦「~~♪」

津浦が、歌ってる?

赤穂「……津浦」

津浦「っ!?」

赤穂「待ってくれ!少しでいい、話をしないか?」

俺の言葉に逃げようとした津浦が足を止める。

そして振り返った津浦は……紛れもなく、理性を持った瞳をしていた。

津浦「なんで、しょうか?Mr.赤穂……」

赤穂「昨日……津浦が冷静にグレゴリーを演じていると鞍馬に聞いて、どうしてか考えた」

赤穂「兵頭は単純だって言ってたけど……今の津浦を見て答えがわかった気がしたんだよ」

赤穂「津浦、そこまでして……グレゴリーを理解したかったのか?」

津浦「……なぜその答えに?」

赤穂「今の歌、外国語だけど未来機関で聞いた事があるんだ」

赤穂「鎮魂の歌……俺はそう教えられた」

赤穂「津浦、キミがその歌を歌っていたのは、グレゴリーのためなんじゃないか?」

津浦「……そう、です」

赤穂「……」

津浦「Mr.グレゴリーはワタシの両親の死の関係者でした」

津浦「Mr.グレゴリーはワタシを救って、守るとも言ってくれました」

津浦「……Mr.グレゴリーはワタシをトリックに利用して、殺そうとしました」

津浦「わからないんです。言葉の意味はわかるのにあの人の心が全然わからない」

津浦「コテージにあった仮面を被って、演じていても」

津浦「どんなに考え続けても」

津浦「あの人の事が、わからないんです……」

赤穂「……津浦、演じていた理由はもう1つあるんじゃないか?」

津浦「……はい」

津浦「ワタシは、早まらないでほしかった」

津浦「だってワタシはもっと話したかったんです、もっとあの人を理解したかったんですよ」

津浦「たとえ同情でも!たとえ罪悪感でも!側にいてほしかった!」

津浦「……ワタシは」

津浦「Mr.グレゴリーに生きていて、ほしかったんです……!」

これが津浦の行動の答え。

津浦はただ、グレゴリーの死を認めたくなかったんだ。

だから演じた、自分が死んだ事にしてでも……

津浦「……」

赤穂「津浦、さっきの歌は言ったように鎮魂歌だ」

赤穂「それをグレゴリーに向けて歌ったのは……認めたって事でいいのか?」

津浦「……はい。亡くなった人の気持ちはわかりません」

津浦「どんなに演じようとしていてもそれは事実で、ワタシはあの人が最期に伝えようとした事も聞けなかった」

津浦「だから、もうやめです」

津浦「今は、このコロシアイを生き抜く事。それを最優先にします」

津浦「そして外に出たら……」

津浦「あの人の事を調べようと思います」

津浦「それがきっと……ワタシのやるべき事ですから」

赤穂「……そうか」

涙を流しながら決意を話す津浦は、今までみたいに怯えているだけの子ではなくなっていた。

グレゴリー……津浦は、もう大丈夫そうだ。

お前が四方院さんを殺した事は絶対許されないけど……でも。

それだけは、こうして伝えておくよ。

如月「兵頭さん、具合はいかがですか」

兵頭「ふふ、時々痛みますが大丈夫ですよ。如月さんこそ無理はしていませんか?」

如月「これでも人より頑丈ですから」

赤穂「……」

なんかあの2人、最近よく話してるな……

六山「おーおー、フラグがビンビンだね」

赤穂「うわっ、いつの間に」

六山「ちょっと大きな声を出しちゃダメだよ」

赤穂「わ、悪い……というかフラグってなんだよ」

六山「文字通りだよ?如月くんは兵頭さんを何回も助けてるし、兵頭さんも如月くんを信用してるみたいだからね」

赤穂「言われてみると……」

如月さんと兵頭って前回の島の調査も一緒にしてたし、学級裁判の時も兵頭に疑いがかかった時如月さんが庇ってたな……

赤穂「だけどいつの間にあんなに仲良くなってたんだ?」

六山「うーん、よくわかんないね。赤穂くんのフラグだっていつ立ったかわからないし」

赤穂「は?なんだそれ?」

六山「あっ、これは内緒だった……」

フラグって、俺にか?

いや、いつの間にそんなの出来たんだよ……

ガチャッ

赤穂「んっ?」

土橋「あっ、政城」

赤穂「土橋か」

そういえば昨日は結局不機嫌にさせたままで終わったんだよな……

どうも俺が悪いみたいだし、謝らないと。

土橋「昨日はごめん!」

赤穂「えっ」

土橋「なんというか、昨日のアタシ変だったでしょ?」

赤穂「変と言うより、不機嫌になったような気はしてた」

土橋「あー、うん。やっぱりそう見えたよね」

赤穂「俺に何か至らない点があったんだろう?ごめんな」

土橋「いやいや!別に政城は悪くないよ!」

土橋「ただ政城にチャラじゃないかって言われてなんだかよくわかんないけど、心がザワザワしちゃっただけだから」

土橋「だから謝るのはアタシの方!本当にごめんね!」

赤穂「土橋こそそんなに謝らなくていいんだぞ?俺は気にしてないからさ」

土橋「そう言ってくれると嬉しいよ。ありがとね」

どうやら些細な行き違いってやつだったみたいだ……まあ、怒らせたとかじゃなくてよかったよ。

キーン、コーン、カーンコーン
 
モノクマ「夜10時になりました!」
 
モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」
 
モノクマ「うぷぷ、また明日……」

赤穂「10時か……」

この暗闇の打開策はまだ見つからないし鞍馬の事とか悩みは増えたけど、津浦の事とかは何とかなりそうだ。

だけど絶望教……それがわざわざ暗号化されてたっていうのは気になるな。

明日六山に頼んでもう少しじっくりパソコンにあった資料を見せてもらうか……

赤穂「…………んっ」

なんか寒いな……この島が秋の気候だからか?

時間は……壁の時計を見る限りまだ3時になるところか。

もう一眠りするか……





赤穂「…………は?」

とてつもない違和感に眠気も飛んで跳ね起きる。
なんで今壁の時計で時間がわかった?

この暗闇で最近は六山のゲーム機で時間を確認してたのに。

この、暗闇……?

赤穂「なんで、だ」

なんで、部屋の照明が点いてるんだ!?

赤穂「まさか……まさか!」

ベッドから転がり落ちるように降りると杖を取って廊下に飛び出す。

そして俺は急いである場所に向かった。

【御影と兵頭の病室】

赤穂「牡丹!」

御影「んっ、すうっ……」

赤穂「はぁ、はぁ……」

よかった、牡丹は無事だった……

兵頭「んんっ……なんですか、騒がしい……」

赤穂「兵頭も無事だったんだな」

兵頭「無事?っ、なんですかこれ、眩しい……」

赤穂「照明が点いてるんだ」

兵頭「照明が……待ってください、確か照明が再び点く条件は」

赤穂「モノクマが飽きるか……コロシアイが起きるかだ」

兵頭「では、まさか」

赤穂「それを確かめるためにここに来たんだ。他のメンバーはどこにいるかわかるか?」

兵頭「病院は宿泊施設ではないとモノクマに言われたので、私達と津浦さん以外はモーテルにいるはずですが」

赤穂「モーテルか……」

手帳のマップによると発電所の先にあるな……行ってみよう!

赤穂「兵頭、牡丹の事任せていいか?俺は津浦の無事を確認したらモーテルに行く」

兵頭「……わかりました。ですが無理だけはしないようにしてください」

赤穂「もちろんだ」

【病院・廊下】

赤穂「津浦の病室は……」

津浦「Mr.赤穂……!」

赤穂「津浦!キミも無事だったか!」

津浦「は、はい、急に明るくなったので様子を見に来たのですが……」

赤穂「俺もそうだ。牡丹と兵頭も無事なのは確認したから津浦も2人の病室に行ってくれ」

津浦「Mr.赤穂はどうするんですか」

赤穂「俺はみんなの様子を見にモーテルに行く」

津浦「1人でですか?」

赤穂「ああ、何があるかわからないからな」

津浦「……」

赤穂「絶対に3人で動かないでくれ、頼んだぞ!」

俺は病院を出てモーテルに向かう。

モノクマの新しいルールで3人殺される心配はないから牡丹達はこれで安全なはずだ。

後は、俺次第だな……

【オータムアイランド・道】

赤穂「モーテルはこっちだな」

数日ぶりの月明かりの中をモーテルに向かって歩く。

そして発電所を通り過ぎようとして……俺は思わず足を止めた。

赤穂「扉が……開いてる?」

調査のために開けっ放しにしていたのか?

それとも……

赤穂「……」

俺は発電所の方に足を進める。

確認だけはしておいた方がいいと思ったからだ。

そして、それは。


最悪の結果として俺の目の前に現れた。







【金網を抜けて、発電所の建物の扉を開けると広いエントランスに出た】

【右側に受付のような場所】

【左側に並んだソファー】

【奥にあるエレベーター】

【そして、エレベーターの手前に】

【1人、倒れていた】












【だけど、信じられない】

【だって頭から血を流して地に伏せていたのは】

【未だ超高校級の才能が不明な男】

【鞍馬類にしか、見えなかったから】






赤穂「……鞍、馬?」

嘘だろ?

鞍馬が殺された?

如月さんとも渡り合ってたあの鞍馬が?

赤穂「……」

もしかするとまだ生きているかもしれない……そう思って鞍馬に近付く。

だけど目から完全に光が消えたその顔に生気はまるでない。

鞍馬は間違いなく、死んでいた。

赤穂「……」

とにかく、モーテルに行かないといけない。

無事の確認と……鞍馬が殺された事を伝えないと。

発電所から出た俺はモーテルに向かって……道の先に誰かがいるのが見えた。

赤穂「……あれ、は」

そして俺は知るんだ。

まだこの悪夢は続くんだと。







【月明かりが照らすのはヒラヒラと散る紅葉】

【そして紅葉の落ちた先にはその葉に負けない赤が散っていた】

【それは血の赤】

【鞍馬以上に流されてるとしか思えない血の中心には】












【超高校級の道化師】

【ジェニー・クラヴィッツが横たわっていた】






赤穂「っ、な、ジェニー!」

ジェニーの傍に膝をつくとその身体を抱き起こす。

赤穂「かすかだけど、まだ息はある……!」

見ると腹部にナイフが突き刺さっていて、今もなお血が流れ出していた。

赤穂「っ、待ってろ!」

スーツを脱いで血に染まるお腹を押さえる。

少しでも血を止めないと、ジェニーは……!

「おーい!誰かいんのか!?」

赤穂「この声は……道掛!」

道掛「あっ、赤穂……ジェニーちゃん!?おい、何があったんだよ!」

赤穂「ジェニーが刺されたんだ!モーテルに行って遠見を呼んできてくれ!」

道掛「わ、わかった!」

道掛が自転車で慌てて来た道を戻っていく。

早く、早く……!

ジェニー「……マサ、キ?」

赤穂「ジェニー!」

ジェニー「ボク……ボク……」

赤穂「いい、喋るな!今遠見が……」

ジェニー「……ごめん、な、さい」

赤穂「えっ?」

ジェニー「ごめ、な、さい……」

赤穂「おい、ジェニー?」

ジェニー「マサキ……ミキ……生きて、くだ、さ……」

赤穂「……ジェニー?」

ジェニー「……」

赤穂「ジェニー!おいジェニー!」

道掛「メメちゃん連れてきたぞ!」

遠見「ジェニー殿は!?」

赤穂「…………」

ピンポンパンポーン!!







モノクマ「死体発見!死体発見!」

モノクマ「捜査タイムの後学級裁判を始めまーす!」






道掛「……嘘、だろ」

遠見「くっ……!」

赤穂「……遠見」

遠見「なんでありますか」

赤穂「ちょっと、ついてきてくれ。道掛は、モーテルで他のみんなを」

道掛「お、おう」

遠見「赤穂殿、なぜ自分1人を?」

赤穂「……道掛には、ショックな光景になるからな」

遠見「それは……」

【発電所】

赤穂「……ここだ」

遠見「……あれ、は、鞍馬殿!?」

ピンポンパンポーン!!













モノクマ「死体発見!死体発見!」

モノクマ「捜査タイムの後学級裁判を始めまーす!」












CHAPT.3【悪意のアンノウンは高らかに唄う】(非)日常編 END

生き残りメンバー13→11人

NEXT→非日常編






今回はここまで。

 
 
 
 
 
 
CHAPT.3【悪意のアンノウンは高らかに唄う】非日常編

 
 
 
 
 
 

【発電所】
 
赤穂「……」
 
鞍馬が、そしてジェニーが殺された。
 
いったいどうしてこんな事になったんだ……
 
遠見「佐場木殿を、呼んでくるであります」
 
遠見が発電所を出ていく……それと同時に、奴は来た。
 
モノクマ「大変な事になったね!まさか謎多き男だった鞍馬クンが殺されるなんてさ!」
 
赤穂「わざわざそんな事を言いに来たのか……!?」
 
モノクマ「いやいや、ボクもそこまで暇じゃないよ。ここに来たのはこれと……これを渡しに来たんだよ!」
 
モノクマが取り出したのはモノクマファイル……と、違うファイル?
 
モノクマ「うぷぷ、今回の事件についてはボクも少し思うところがあってね。そのファイルをプレゼントするよ!」
 
赤穂「協力するっていうのか?」
 
モノクマ「それじゃ不公平じゃない!あくまでそれはオマエラが知ってたはずの情報だよ!」
 
赤穂「知ってたはずの情報……?」
 
とにかくモノクマが渡してきたんだ……何か意味があるはずだろうな。
 
   【捜査を開始します】

赤穂「モノクマファイル……」
 
【被害者は鞍馬類とジェニー・クラヴィッツ。
死体発見現場は鞍馬類が発電所、ジェニー・クラヴィッツはオータムアイランドの歩道。
死亡推定時刻は午前3時前後。
死因は両者共に鋭利な刃物で刺された事による失血死。
鞍馬類は即死である模様】
 
鞍馬は即死なのか……
 
コトダマ【モノクマファイル3】を手に入れました。
〔被害者は鞍馬類とジェニー・クラヴィッツ。
死体発見現場は鞍馬類が発電所、ジェニー・クラヴィッツはオータムアイランドの歩道。
死亡推定時刻は午前3時前後。
死因は両者共に鋭利な刃物で刺された事による失血死。
鞍馬類は即死である模様〕

赤穂「……」
 
このもう1つのファイル……モノクマは俺達が知っていたはずの情報だって言ってたな。
 
赤穂「いったい何が……」
 
ファイルを開いて中身を見てみる。
 
そこに書かれていたのは……
 
赤穂「どういう、事だ」
 
このファイルに書いてあるのは本当の事なのか!?
 
【名前……鞍馬類。
所属支部……第1支部。
才能……なし。
備考……希望に対する思い入れが強く未来機関内でも職務に忠実だがその資質は超高校級の才能には程遠い】
 
鞍馬に才能がない?
 
そんな馬鹿な、鞍馬は如月さんと戦えるほどに強かったんだぞ……そんな鞍馬に才能がないなんて。
 
赤穂「……鞍馬、お前は本当に何者なんだ?」
 
コトダマ【鞍馬の才能】を手に入れました。
〔モノクマに渡されたファイルによると、鞍馬には才能がなかったらしい。
鞍馬は如月と同等に戦っていた事もあるが……〕

バタバタッ
 
どうやら遠見が佐場木達を呼んできたみたいだな……
 
佐場木「ファイルにはあったが……まさか本当に鞍馬が殺されているとはな」
 
遠見「自分も未だに信じられないであります……」
 
如月「……」
 
三人だけ?
 
赤穂「他のみんなはどうしたんだ?」
 
遠見「それが……土橋殿が、ジェニー殿の遺体を発見して半狂乱の状態なのであります」
 
赤穂「土橋が……」
 
土橋は、ジェニーと仲が良かったもんな……
 
如月「苗木さん、道掛さん、六山さんが今土橋さんを落ち着かせています」
 
赤穂「そう、ですか……」
 
佐場木「病院にいた3人にも話だけはしてある。少ししたらこちらに合流するだろう」
 
遠見「佐場木殿、今回見張りは……」
 
佐場木「そちらに割く人員が惜しい。今回は見張りは置かずに捜査を進める」
 
遠見「了解であります」

佐場木「まずはこちらを調べる。遠見手伝え」

遠見「イエッサー!」

鞍馬の遺体を調べに向かう佐場木と遠見の後に俺もついていく。

そういえば一つ疑問があるんだよな……

赤穂「なあ、モノクマファイルには刺殺ってあったけど……俺には頭から血が出てるように見えるぞ?」

佐場木「それはそうだろう。鞍馬は頭部を刺されたようだからな」

遠見「頭頂部……いわゆる脳天を一撃であります。相当鮮やかな手口でありますよ」

脳天を一撃……ますますわからない。

赤穂「どうすれば鞍馬をそんな風に殺せるんだ?」

佐場木「鞍馬の身長は178cm……立った状態で脳天を刺す事が出来る存在は限られるな」

コトダマ【鞍馬の遺体】を手に入れました。
〔鞍馬は頭頂部を刺されて殺害されたようだ。
鞍馬の身長から考えて立った状態でそれが可能な人間は限られるが……〕

赤穂「そもそも鞍馬はこの発電所に何をしに来たんだ?」

佐場木「自分の意思で来たか、呼び出されたか……遠見、持ち物はどうだ」

遠見「電子手帳とハンカチ、それに裁縫セットでありますね」

裁縫セット……ああ、ウサミのヌイグルミをよく縫ってたよな鞍馬は。

遠見「むむっ?」

佐場木「どうした」

遠見「この裁縫セット、中にピルケースが入っていたであります」

赤穂「ピルケース?鞍馬が薬を飲んでるところなんて見た事ないぞ」

佐場木「裁縫セットに隠されていたピルケースか……これは鞍馬のコテージを調査する必要がありそうだな」

コトダマ【鞍馬の裁縫セット】を手に入れました。
〔鞍馬が持ち歩いていた裁縫セット。
中にピルケースが隠されていた〕

赤穂「あれ、そういえば……」

如月さんはどうしたんだ?

入り口の方を見てみると如月さんは来た時から全く動いてない。

何してるんだ?

赤穂「如月さん?」

如月「……」

如月さんに声をかけてみても返事がない。

なぜか彼は発電所に並んだソファーを凝視していた。

赤穂「ソファーに何かあるんですか?」

如月「……」

赤穂「あっ、如月さん!?」

そのままソファーに向かった如月さんは、ソファーの下に手を突っ込むと何かを引きずり出す。

……バッジ?

如月「この傷……やはり、だけどなぜ」

如月「なぜこれがここにあるんですか」

赤穂「如月さん、そのバッジは……」

如月「……僕の妹の物です」

如月さんの妹って、確か頭のいかれた奴に殺された……

如月「……」

だけどその子の物がなんでここに?

コトダマ【ヒーローのバッジ】を手に入れました。
〔発電所のソファー下に落ちていた昔のヒーロー番組のバッジ。
如月の妹が持っていた物らしいが……〕

赤穂「何かわかったか?」

遠見「うーむ、鞍馬殿に抵抗の様子が全くないであります……」

如月「鞍馬さんが抵抗出来ず……犯人はどのような手段を用いたのでしょうか」

佐場木「それに関するかはまだわからんが、これが鞍馬の身体の下にあった」

赤穂「んっ?なんだこれ?」

赤と白の何かの欠片……か?

遠見「その欠片なら鞍馬殿の指にもついていたでありますよ」

鞍馬の指と身体の下にあった欠片……

コトダマ【謎の欠片】を手に入れました。
〔鞍馬の指と身体の下にあった欠片。
赤いものと白いものがある〕

赤穂「……」

ジェニーの方にも、行かないとな……

※※※※

土橋「ジェニー!目を覚ましてよジェニー!」

道掛「美姫ちゃん、駄目だって!」

苗木「土橋さん、落ち着いて……!」

ジェニーが殺された現場では土橋が泣きながら暴れていた。

それを道掛と苗木が必死に抑えている……見ていて、思わず目をそらしたくなる光景。

御影「あっ、兄さん……」

赤穂「土橋は、ずっと?」

御影「うん……苗木が頑張って抑えてるから大きな事にはなってないけど、道掛とか何回も振り払われてたよ」

赤穂「そう、か」

見渡せば津浦もいてどこか気まずそうだ……これはまともに捜査出来てないな。

赤穂「兵頭と六山は?」

御影「別の場所調べてくるって……ジェニーについてはまともに調べられないから」

遠見、佐場木、如月さんはまだ鞍馬のところだ……呼んでくるべきか?

……いや、ここは俺が何とかするべきだ。

きっとそれはジェニーの最期を見た……俺の義務なんだから。

赤穂「……」

苗木「赤穂クン……!」

道掛「赤穂!お前も美姫ちゃん止め……うわっ!」

道掛が振り払われて、苗木が顔を真っ赤にして止めて……力ずくだったらきっと俺も振り払われるだけ。

赤穂「土橋、もうやめろ」

だったら俺は、言葉で……止めるしかない。

土橋「だって!だって政城、ジェニーが!」

赤穂「……ジェニーの最期を看取ったのは俺だ」

土橋「っ!」

赤穂「あの子が、キミに向けた最期の言葉がある……生きてください、だそうだ」

土橋「……!?」

赤穂「……」

土橋「そん、なの……アタシだって、ジェニーに生きて、ほしかったのに……!」

土橋がその場に座り込む……もう止める必要はなさそうだな。

赤穂「苗木、道掛、ありがとう。多分もう大丈夫だ」

苗木「気にしないで。ボクだってジェニーさんがこんな……」

道掛「わりぃ、もう大丈夫なら俺向こう行く」

道掛は発電所の方に走って行ってしまう……鞍馬の事が気にかかるんだろうな。

土橋「ジェニー、ジェニー……」

土橋はジェニーの名前を呼びながら泣いている……まだしばらく、時間が必要だろう。

赤穂「牡丹、津浦、土橋のそばにいてあげてくれないか」

御影「わかった」

津浦「……はい」

赤穂「苗木はどうする?」

苗木「ボクも調べてみるよ……どこまで出来るかは、わからないけど」

赤穂「ジェニー……」

ジェニーは俺が見つけた時と変わらず血だまりの中に横たわっている。

赤穂「……」

目の前で死んでいった事実に思うところはあるけど、それを振り払って俺は調べ始める。

ジェニーの遺言、生きてくださいを守るために。

赤穂「凶器は、やっぱりこのナイフか……」

傷口を見てみるとジェニーは一回刺されてさらにナイフで抉られたみたいだ……だから刺さったままなのに血が止まらなかったのか。

赤穂「だけどこのナイフ、いったいどこから出てきたんだ」

この島にあるのは病院、発電所、モーテル、電気街、あの花……ナイフはこの中のどれかから……?

コトダマ【ジェニーの遺体】を手に入れました。
〔ジェニーは一回刺された後にナイフで抉られたため出血が止まらなかった〕

コトダマ【ナイフ】を手に入れました。
〔ジェニーの腹部に刺さったままの凶器で出所は不明〕

赤穂「他には……んっ?」

ジェニーの唇に血がついてるな……刺された時に胃に血が溜まったのを吐き出したのか?

赤穂「……あれ?」

口の中、歯には血があるけど奥の方には血がついてないし傷もない。

顔も唇以外には血は……じゃあこの血はどうしてついたんだ?

コトダマ【口の血】を手に入れました。
〔ジェニーの唇と歯に血がついていた。
しかしジェニーの口の中には傷もなく、顔も血がついているのはその部分だけだった〕

土橋「……政城」

赤穂「土橋、もう大丈夫なのか?」

土橋「大丈夫じゃないけど……ジェニーが生きるのを望んでるなら、いつまでも泣いてなんかいられないよ」

赤穂「……」

土橋「アタシに出来るかは、わかんないけど……アタシはジェニーを殺した犯人を突き止めたい」

赤穂「……俺もだ」

苗木「よかったよ……」

土橋「誠もごめん。いっぱい怪我させて」

よく見ると苗木の身体には擦り傷がたくさんついている。

苗木「あはは……道掛クンに比べたらこれぐらいはね」

道掛は泥汚れとかも凄かったからな……

赤穂「とりあえず聞いておきたいんだけど、土橋や苗木はモーテルにいたんだよな?」

土橋「うん……アナウンスが鳴って飛び起きて、明かりがついてて眩しさとかで混乱してたら走也が来て……」

苗木「ボクや同じタイミングで出てきた六山さんも同じ感じかな……佐場木クンや如月クンは一足先に向かってたみたいだよ」

コトダマ【モーテルのメンバー】を手に入れました。
〔病院にいた赤穂、御影、兵頭、津浦以外のメンバーはモーテルにいた。
事件当夜は道掛に呼ばれて現場に向かったらしい〕

赤穂「牡丹、津浦、見ててくれてありがとうな」

津浦「いえ」

御影「兄さん、土橋はどう?」

赤穂「無理はしてるだろうけど、捜査する気力は取り戻したみたいだ」

御影「そっか……」

赤穂「そうだ、牡丹は何か気付いた事はあるか?」

御影「私は寝てたから……兵頭に起こされるまで何もわからなかったよ」

赤穂「だよな……津浦はどうだ?」

津浦「……Mr.赤穂、電気がついたタイミングはいつなんでしょうか」

赤穂「電気がついたタイミング?」

津浦「ワタシ、その時間に起きていたのでもしかしたら手がかりになるのではないかと」

赤穂「そうか……もしかしたら鞍馬の殺された時間がはっきりするかもしれない、モノクマ!」

モノクマ「はいはーい!なんでしょうか赤穂クン!」

赤穂「電気がついたタイミングはいつなんだ?」

モノクマ「……」

赤穂「モノクマ?」

モノクマ「それはちょっと教えられないかなぁ。だってシロ側に有利になっちゃうし!」

赤穂「なっ」

モノクマ「うぷぷ、用がそれだけなら失礼するよ!」

御影「行っちゃったよ……」

赤穂「津浦、とりあえず時間だけ教えてくれ」

津浦「わかりました」

コトダマ【電気がついたタイミング】を手に入れました。
〔モノクマによる動機の暗闇が解消されたタイミング。
津浦によると2時52分の事だったようだ〕

赤穂「他にも調べないとな……」

まずはモーテルだな。

鞍馬とジェニーのモーテルなら何かあるかもしれない。

【モーテル・鞍馬の部屋】

兵頭「あら」

赤穂「兵頭、こちらの捜査に?」

兵頭「被害者のいた場所ですからね。特に今回は被害者にはならなさそうな鞍馬さんですから」

赤穂「確かに未だに信じられないからな……それにしても、いくら捜査とはいってももう少しなんとかならなかったのか?」

鞍馬のいた部屋は机の上の物や棚の中にあったらしい物が放り出され、ベッドはぐちゃぐちゃと酷い有り様だった。

兵頭「これは私がしたわけではありませんよ。最初からこうだったんです」

赤穂「最初から?」

兵頭「鞍馬さんはああ見えて整理整頓が苦手だったのかもしれませんね」

赤穂「鞍馬がね……んっ?」

ベッドの下に何か落ちて……これは!?

赤穂「赤白の錠剤……」

もしかしてこれは……

コトダマ【鞍馬のモーテル】を手に入れました。
〔鞍馬が使っていたモーテルの一室。
中は荒れていた〕

コトダマ【赤白の錠剤】を手に入れました。
〔鞍馬のモーテルのベッド下に落ちていた錠剤〕

赤穂「これだけ荒れてると、捜査も一苦労だな」

兵頭「そうですね……しかしこんなものは見つかりましたよ」

赤穂「それは?」

兵頭「脅迫状です」

赤穂「なんだって!?」

【鞍馬類、お前の秘密は握った。
例の物を返してほしければ深夜の2時半頃に発電所に来い】

兵頭「鞍馬さんの秘密とはなんだったんでしょうね……今となってはもうわかりませんが」

赤穂「……」

コトダマ【脅迫状】を手に入れました。
〔鞍馬を発電所に呼び出すための脅迫状。
内容は【鞍馬類、お前の秘密は握った。
例の物を返してほしければ深夜の2時半頃に発電所に来い】〕

【モーテル・ジェニーの部屋】

赤穂「……」

ジェニーの部屋には手作りらしいたくさんの道具が置いてあった。

笑顔にしたくて頑張ってたんだろうな……

赤穂「こちらには特に手がかりはないか……?」

机の上にある箱を持ち上げてみる。

するとそこに貼り付いていた紙がパサリと落ちてきた。

赤穂「これは……」

【同封したものはこの暗闇を何とかする鍵です】

赤穂「暗闇を何とかする鍵……」

いったい何を……もしかしてジェニーが深夜に外にいた理由って。

コトダマ【手紙】を手に入れました。
〔ジェニーの部屋にあった手紙。
内容は【同封したものはこの暗闇を何とかする鍵です】〕

【オータムアイランド・歩道】

土橋「あっ、政城」

赤穂「ジェニーは?」

土橋「今半次とメメが調べてる。モーテルには何かあった?」

赤穂「……あったと言えばあったな」

あの手紙に同封されていたものはモーテルにはなかった……

もしかしたらまだジェニーが持っているのかもしれないと思って来てみたけど。

赤穂「土橋、ジェニーから何かあったとか聞いてないか?」

土橋「えっ?そうだね……やっぱり暗闇が怖いってぐらいかな。後はみんなを笑顔にしたいって」

赤穂「そうか……」

手紙についてジェニーは黙っていたみたいだな……

佐場木「……」

赤穂「佐場木、遠見」

遠見「赤穂殿、捜査の進展は?」

赤穂「色々調べてはいる。ところでジェニーは何か持ってなかったか?」

佐場木「何か?具体的にはなんだ」

赤穂「実はジェニーのモーテルにこんなものがあったんだよ」

佐場木「……遠見」

遠見「おそらくはあれの事ではないかと」

赤穂「あれ?」

佐場木「こんなものが発電所の金網に引っかけるようにしてあるのが見つかった」

佐場木が見せたのはビニール袋に入った設計図らしきものと鍵、それに懐中電灯だった。

遠見「発電所の内部地図と制御室の鍵であります」

赤穂「そんなものが!?」

佐場木「クラヴィッツはおそらくこれを受け取ったんだろう」

赤穂「……」

そうか、疑問だったあれは……

コトダマ【地図と鍵】を手に入れました。
〔発電所の金網に引っかけるようにしてあった内部地図と制御室の鍵〕

コトダマ【鞍馬の発見者】を手に入れました。
〔鞍馬は赤穂と遠見が見つけた段階で死体発見アナウンスが鳴った〕

【発電所】

道掛「鞍馬……」

如月「……」

鞍馬の遺体を前に道掛は膝をついて肩を落としている……あんなに仲良くしようとしていたんだもんな。

道掛「はああ、結局鞍馬と仲良くなれなかったな……」

如月「道掛さんの思いはきっと通じていたと思いますよ」

道掛「んっ、サンキュー」

赤穂「道掛、ちょっといいか?」

道掛「おう、赤穂。どうした?」

赤穂「道掛は俺がジェニーを見つけた時こっちに自転車で来ただろう。それはどうしてなんだ?」

道掛「ああ、それか。俺今日なんか寝付けなくて起きてたんだよ。そしたら急に電気がついてさ」

道掛「その後目を光に慣らして……2、3分ぐらいか?誰かが飛び出していったみたいでよ。俺も外に出たけど誰もいなかったから慌てて自転車で追っかけたんだ」

赤穂「誰かが飛び出していった?」

道掛「おう、ドアの音がしたからな。今思えばあれがジェニーちゃんだったのかね……」

赤穂「……」

コトダマ【道掛の証言】を手に入れました。
〔電気が復旧した2、3分後にドアの音がしたため、誰かが飛び出していったと思い自転車で後を追いかけた〕

赤穂「……」

如月「何か考え事ですか?」

赤穂「如月さん」

今頭の中に浮かんでいるこれを確かめるためには如月さんの協力が不可欠だ。

だったら、やってもらうしかないか。

赤穂「如月さん、少しいいですか?」

如月「はい、なんですか?」

赤穂「ちょっと協力してほしい事が……」

※※※※

如月「では行ってきます」

赤穂「お願いします」

如月さんが走って消えていく。

一方の俺は現状何もする事がなく牡丹から借りたストップウォッチを持って立っていた。

赤穂「…………」

如月「今戻りました」

赤穂「はい」

如月「どうでしたか」

ストップウォッチの指し示す時間は4分……つまり片道2分。

赤穂「ありがとうございました。ちなみに……これ、他の人間にも出来ると思います?」

如月「無理でしょうね。それなりに速度は出しましたから……鞍馬さんなら可能でしょうが」

赤穂「……」

コトダマ【赤穂の実験】を手に入れました。
〔発電所からモーテルに向かうまでの時間を調べたもの。
片道2分だったがそれは如月か鞍馬にしか不可能なようだ〕

【鞍馬のコテージ】

六山「あっ」

赤穂「六山、いないと思ったらここにいたのか」

六山「現場周辺はみんなが調べてるからね。赤穂くんも捜査に?」

赤穂「ああ、まあな」

整理整頓が出来ていると言うよりまるで生活感がないコテージか……

六山「そういえばこれが机の上にあったよ」

赤穂「……」

【身体強化薬(試作)
元超高校級の薬剤師忌村静子の調合した薬品。
一粒飲めば24時間効果が持続する。
複数飲めば効果は増すが、その分効果時間は減少する】

コトダマ【鞍馬のコテージ】を手に入れました。
〔鞍馬のコテージ。
綺麗ではあるが整理整頓を通り越して生活感がない〕

コトダマ【身体強化薬(試作)】を手に入れました。
〔鞍馬のコテージにあった薬品。
【元超高校級の薬剤師忌村静子の調合した薬品。
一粒飲めば24時間効果が持続する。
複数飲めば効果は増すが、その分効果時間は減少する】という説明書きがある〕

キーンコーン、カーンコーン…

モノクマ「うぷぷ、タイムアップー!」

モノクマ「ここからは楽しい楽しい学級裁判の時間だよ!」

モノクマ「オマエラ、中央の島にお集まりくださーい!」

鞍馬のコテージを出た瞬間、捜査終了のアナウンスが鳴り響く。

赤穂「時間か……」

後は、学級裁判で話し合うしかないな……

【中央の島】

佐場木「来たか」

遠見「これで全員揃ったでありますね……」

遠見の言葉に応えるように建物の鍵が開く音が鳴る。

如月「行きましょうか」

如月さんの後に続くように全員が建物の中に入っていく。

そして俺が入るのと同時に、扉は閉まった。

エスカレーターを降りながら俺は思う。

今回の犯人……それは例のアンノウンなのか?

アンノウン、静音や四方院さん……いいや、薄井やグレゴリーの死にさえ関わっていた存在。

いったいなんでこんな事をしたんだ。

いったいなんのために、ここまでしたんだ。

それがわかる事はないまま……俺達はそこにたどり着く。

【学級裁判場】

モノクマ「うぷぷ、ようこそオマエラ!」

モノクマ「久々の明かりをこの学級裁判場で堪能してね!」

モノクマ「これから絶望という闇がオマエラを待っているんだからさ!」

モノクマに促される前に自分の席に向かう。

鞍馬類。

結局打ち解ける事も、才能を明かす事もなく死んでいった。

あのまま過ごしていけば打ち解ける未来もあったのか?

それはもう永遠にわからない。

六山「……」カチカチ

道掛「鞍馬!これはお前の弔い合戦だ!」

遠見「アンノウン、今回こそ正体を……」

ジェニー・クラヴィッツ。

明るい彼女はみんなを笑顔にしたいという願いを持っていた。

それが叶っても彼女はもうそれを見る事は出来ない。

佐場木「もう逃がさんぞ犯罪者が……!」

津浦「ワタシは死ぬわけにはいきません!」

土橋「ジェニーの仇……必ず……!」

御影「2人も殺すなんてどうして……」

2人は殺された。

兵頭「今回の犯人は……」

苗木「何とかして、頑張らないと……」

如月「……僕にはまだやるべき事があります」

その犯人を探し出す学級裁判。

もう3分の1も人が死んだ……

赤穂「アンノウン……」

だけどまだ終わらない。

この絶望の舞台は。

訂正

【身体強化薬(試作)】
〔鞍馬のコテージにあった薬品。
【元超高校級の薬剤師忌村静子の調合した薬品。
一粒飲めば24時間効果が持続する。
複数飲めば効果は増すが、その分効果時間は減少する】という説明書きがある〕



【身体強化薬(試作)】
〔鞍馬のコテージにあった赤白の錠剤型の薬品。
【元超高校級の薬剤師忌村静子の調合した薬品。
一粒飲めば24時間効果が持続する。
複数飲めば効果は増すが、その分効果時間は減少する】という説明書きがある〕

・コトダマ一覧表

【モノクマファイル3】>>547

【鞍馬の才能】>>548

【鞍馬の遺体】>>550

【鞍馬の裁縫セット】>>551

【ヒーローのバッジ】>>552

【謎の欠片】>>553

【ジェニーの遺体】
【ナイフ】>>556

【口の血】>>557

【モーテルのメンバー】>>558

【電気がついたタイミング】>>559

【鞍馬のモーテル】
【赤白の錠剤】>>560

【脅迫状】>>561

【手紙】>>562

【地図と鍵】
【鞍馬の発見者】>>564

【道掛の証言】>>565

【赤穂の実験】>>566

【鞍馬のコテージ】>>567

【身体強化薬(試作)】訂正版>>570

3度起こった惨劇の被害者鞍馬とジェニー。
殺害不可能と思われた鞍馬の死は学級裁判に何をもたらすのか。
果たしてクロはアンノウンなのか……闇深き学級裁判が始まる。


     【学級裁判開廷!】

モノクマ「はいはい、それでは学級裁判の説明をしまーす!」

モノクマ「学級裁判ではオマエラに誰が犯人かを議論してもらいます!」

モノクマ「その結果は投票によって決定され、正しいクロを指摘できればクロがおしおき」

モノクマ「ただし間違えたら……クロ以外の全員がおしおきされ、クロは自由の身となるのです!」

兵頭「今回の事件は被害者が2人ですか……どこから話を進めましょう」

佐場木「最初は同一犯かどうかを議論するぞ」

津浦「犯人が1人か2人かでは大きな違いですからね……」

赤穂「よし、まずはそこからいこう」

今回の犯人……間違いなく同一犯のはずだ。

それは状況が証明している!

【議論開始!】

コトダマ>>671
【鞍馬の遺体】
【鞍馬の発見者】
【モノクマファイル3】

六山「同一犯か話し合うって言っても……」

道掛「どうすりゃわかるんだそんなの?」

苗木「〔鞍馬クンとジェニーさんを殺した凶器が同じ〕とか?」

御影「もしくは〔同一犯を示す証拠があった〕んじゃないの」

遠見「〔状況的に同一犯しかない〕でありますよ!」

そもそもなんでジェニーが殺されたか……

それを突き詰めれば同一犯かはわかる!

〔状況的に同一犯しかない〕←【鞍馬の発見者】

赤穂「それに賛成するぞ!」


赤穂「ああ、状況的に今回は同一犯のはずだ」

兵頭「状況的に……それはなぜでしょう」

赤穂「俺が鞍馬とジェニーを見つけた後、道掛にはみんなを呼びにモーテルに、遠見には発電所に来てもらったんだ」

遠見「そこで自分が鞍馬殿を発見、死体発見アナウンスが鳴ったのであります!」

佐場木「なるほど、発見人数か」

津浦「前回Mr.グレゴリーがトリックに使ったアレですね」

土橋「琴羽……」

津浦「大丈夫です。彼の罪は……受け止めていますから」

道掛「えっと、ジェニーちゃんを見つけたのが俺と赤穂とメメちゃんで……」

御影「鞍馬を見つけたのが兄さんと遠見、そしてジェニーってわけだね」

赤穂「ああ、ジェニーはおそらく鞍馬殺しの現場を目撃してしまったんだ」

土橋「ジェニーは口封じで殺されたって事!?」

赤穂「ああ、だからこの事件は……」


兵頭「その推理は無効票です」反論!


兵頭「おっと赤穂さん、可能性は他にもありますよ」

赤穂「可能性?」

兵頭「ふふっ、もちろん……」

兵頭「鞍馬さん殺しのクロがジェニーさんという可能性ですよ!」

【反論ショーダウン開始!】

コトノハ>>571
【鞍馬の遺体】
【ジェニーの遺体】
【ヒーローのバッジ】

兵頭「今回の事件は4パターンの可能性があります」

兵頭「鞍馬さんとジェニーさんを同一人物が殺した」

兵頭「鞍馬さんとジェニーさんを別々の人物が殺した」

兵頭「鞍馬さんがジェニーさんを殺した後に殺された」

兵頭「ジェニーさんが鞍馬さんを殺した後に殺された」

赤穂「確かに可能性ならある……」

赤穂「だけど今回は同一犯なんだ!」

兵頭「それは赤穂さんがジェニーさんが人を殺すはずがないと信じたいだけでは?」

兵頭「ジェニーさんなら鞍馬さんも油断したかもしれませんし……」

兵頭「【鞍馬さんを殺害し、モーテルに戻る前に殺害された】」

兵頭「この可能性は否定出来ません!」

【鞍馬さんを殺害し、モーテルに戻る前に殺害された】←【鞍馬の遺体】

赤穂「その反論に正義はない!」


赤穂「いいや、ジェニーに鞍馬を殺すのは不可能だ!」

兵頭「言い切りますね……」

赤穂「ああ、なぜなら鞍馬は頭頂部を刺されて殺されてるからな!」

苗木「そっか、頭頂部を刺されたなら身長差からジェニーさんに鞍馬クンを殺すのは難しいよね」

六山「というか、出来る人いるのかな?」

兵頭「待ってください。ジェニーさんになら逆に可能なのでは?」

土橋「どういう意味!?」

兵頭「自己紹介の時を思い出してください」

※※※※

「自己紹介ですねー?」

次に自己紹介する人を捜していたら上から声がした。

見てみたらオレンジとピンクのメッシュが入ったセミロングの金髪に、赤い水玉模様の上着と黄色いダボダボのズボンを着た女の子が【天井の飾りにぶら下がっていた】。

赤穂「うわっ!」

天井から降りてきたその子は器用に受け身を取ると会釈をする。

※※※※

兵頭「ジェニーさんの身体能力、【超高校級の道化師】としての才能……」

兵頭「それを活用すれば鞍馬さんの殺害は可能です」

一時中断します。

佐場木「つまり兵頭、貴様はクラヴィッツが天井に潜み鞍馬を襲撃したと考えているわけか」

兵頭「えぇ」

土橋「そんな!ジェニーがそんな事……!」

赤穂「……確かに、ジェニーにならやろうと思えば出来たかもしれない」

御影「兄さん!?」

赤穂「だけど兵頭、1つ忘れている事があるぞ!」

兵頭「忘れている事ですか?」

赤穂「ああ」

確かに普段のジェニーなら出来たかもしれない……

だけどあの時は普段とは違っていたんだ!

【事件時普段と違っていた事とは?】

・ジェニーは怪我をしていた
・現場は真っ暗だった
・鞍馬は死んでいた

・現場は真っ暗だった

赤穂「こいつだ!」


赤穂「鞍馬が殺された時現場は真っ暗だった……その状態で天井から飛び降りて鞍馬の頭頂部を刺すなんて出来るのか?」

如月「懐中電灯を使えば……確実に気付かれるはずです」

遠見「抵抗の跡もないため一撃で鞍馬殿を殺害したはずでありますよ」

土橋「そもそもジェニーは暗闇を怖がってたんだよ!」

六山「あれは演技には見えなかったよね」

苗木「うーん、ジェニーさんにはやっぱり難しいんじゃないかな……」

兵頭「そのようですね」

道掛「軽っ!?」

兵頭「私は可能性を潰しておきたかっただけなので」

御影「ちょっと兵頭、あんまり悪者になろうとしないでよ」

兵頭「ふふっ、何の事でしょう」

赤穂「とにかく今回の事件は同一犯という線で話を進めよう」

佐場木「ふん、ならば次の議論に移るぞ」

津浦「あの……1つよろしいでしょうか?」

赤穂「どうした津浦」

津浦「Ms.ジェニーが暗闇を怖がっていたのなら……彼女はなぜ外にいたのでしょう?」

ジェニーが外にいた理由か……

【議論開始!】

コトダマ>>571
【手紙】
【地図と鍵】
【ナイフ】

津浦「Ms.ジェニーは……」

津浦「なぜ外にいたのでしょう?」

土橋「確かに変なんだよね……【ジェニーは暗闇を怖がってたし】」

苗木「目撃された口封じなら【犯人が呼び出したわけじゃない】よね」

道掛「【散歩】にしては暗いよな……」

六山「うーん……【病院に行こうとしてた】とかかな?」

御影「もしくは【他の施設に用があった】か……」

兵頭「謎ですね……ゆえに疑った面もあるのですが」

ジェニーが外にいた理由……それはきっと。

【犯人が呼び出したわけじゃない】←【手紙】

赤穂「それは違ってるぞ!」


赤穂「ジェニーは犯人に発電所に行くよう、行動を誘導されていた可能性が高い」

苗木「えっ?でもジェニーさんは口封じって話じゃ……」

赤穂「確かに殺害現場を発見された口封じだったのも事実だろう」

赤穂「だけどこんな手紙があった以上、それだけとは限らないはずだ!」

兵頭「手紙……」

道掛「だけどグレゴリーと奏ちゃんの事があったばっかなんだぜ!手紙なんかで発電所来んのか?」

赤穂「この手紙、発電所に来いとは書いてないんだ」

御影「どういう事?」

赤穂「この手紙には【同封したものはこの暗闇を何とかする鍵です】とだけ書かれていたんだよ」

如月「暗闇を何とかする鍵……それはいったい」

俺はもうその答えを知っているはずだ……!

【地図と鍵】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「佐場木と遠見が発電所で地図と鍵を見つけたらしいんだ」

佐場木「金網に引っかけるようにしてな」

遠見「おそらく引っかける事でポイ捨てと判断されるのを阻止したのでありましょう」

道掛「地図と鍵っていったいどこのだよ?」

兵頭「ジェニーさんが発電所に行ったのであれば当然そこの地図と鍵では?」

赤穂「ああ、発電所の内部地図と制御室の鍵……」

六山「犯人はそんなものまで持ってたんだね……」

苗木「つまりジェニーさんは……暗闇を何とかするために発電所に行って、殺されちゃったんだね」

如月「行動を誘導したならおそらく手紙を渡したタイミングは事件が起きる少し前……犯人はジェニーさんを狙っていたという事になりそうですね」

土橋「なんで!?なんでジェニーが狙われないといけないの!?」

遠見「ジェニー殿は小柄……それが影響したのかもしれないであります」

道掛「マジかよ……!」

ジェニーも命を狙われていた……その事実が重く俺達にのし掛かる。

そんな事を考えていた犯人がこの中にいるんだからな……

【議論開始!】

コトダマ>>571
【脅迫状】
【ジェニーの遺体】
【謎の欠片】

道掛「……あれ?ちょっと待てよ」

苗木「どうしたの道掛クン?」

道掛「【ジェニーちゃんが狙われてた】ってのはわかったけどよ……」

道掛「じゃあ鞍馬はどうなんだ?」

遠見「もちろん、鞍馬殿も狙われていたのでありましょう」

御影「でもあの鞍馬だよ?」

如月「【犯行を阻止される】可能性の方が高いですね」

佐場木「そもそも【複数殺すメリットがない】」

道掛「じゃあもしかしてよ……」

道掛「【鞍馬の方が予定外】だったんじゃねえのか!?」

津浦「Mr.鞍馬は犯人にとってイレギュラーだったと……」

鞍馬がイレギュラー……いや、それはない!

【鞍馬の方が予定外】←【脅迫状】

赤穂「それは違ってるぞ!」


赤穂「いいや、犯人は鞍馬も殺すつもりだったんだ」

赤穂「だって鞍馬の方も呼び出されてたんだからな!」

道掛「だ、だけどあの鞍馬が呼び出しに応じるか?」

兵頭「応じざるを得なかったんですよ……なぜなら鞍馬さんのもらったものはジェニーさんとはまるで違うもの」

兵頭「脅迫状だったんですから」

御影「脅迫状!?」

赤穂「兵頭が鞍馬のモーテルで見つけたんだ……この脅迫状をな」

【鞍馬類、お前の秘密は握った。
例の物を返してほしければ深夜の2時半頃に発電所に来い】

佐場木「この脅迫に応じて鞍馬は発電所に向かったのか」

津浦「しかし例の物とはなんなんでしょう?Mr.鞍馬にそこまで執着していた物があるとは……」

赤穂「……」

鞍馬が奪われていた物……それはおそらく現場にあったあれだ。

【謎の欠片】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「鞍馬の遺体の下と指に変な欠片があったんだ」

兵頭「欠片?」

遠見「赤と白の細かい欠片だったでありますが……」

六山「……赤と白?」

苗木「何の欠片なんだろう……」

赤穂「……」

この欠片の意味……今の俺ならわかるはずだ。

【ショットガンコネクト開始!】

現場にあった赤白の欠片……あれは。

コトダマ>>571
【鞍馬のモーテル】
【赤白の錠剤】
【ヒーローのバッジ】

・課題
【鞍馬類に関わる物は?】
【鞍馬類の知らない物は?】
【鞍馬類が奪った物は?】

鞍馬のモーテルにあった赤白の錠剤……

そしてもう1つ組み合わせれば……答えは見える。

【赤白の錠剤】―【鞍馬類に関わる物は?】

コトダマ>>571
【身体強化薬(試作)】
【鞍馬のコテージ】
【脅迫状】

赤穂「……」

鞍馬のコテージにあった赤白の錠剤……

身体強化薬……これが示す答えは!

【赤白の錠剤】―【鞍馬類に関わる物は?】―【身体強化薬(試作)】


・結論
【鞍馬は身体強化薬を奪われていた】
【鞍馬は身体強化薬を服用していた】
【鞍馬は超高校級の薬剤師だった】

【鞍馬は身体強化薬を奪われていた】

赤穂「真実をこれで繋ぐ……!」


赤穂「鞍馬のモーテルには赤白の錠剤があった」

赤穂「そしてコテージにも同じ赤白の錠剤があった」

赤穂「その錠剤は身体強化薬……」

赤穂「鞍馬が奪われていた例の物はこれだったんだよ!」

道掛「し、身体強化薬!?」

如月「鞍馬さんがそんなものを……」

御影「ちょ、ちょっと待ってよ兄さん!身体強化薬なんてなくても鞍馬はあんなに……」

赤穂「いいや、違うんだよ牡丹」

兵頭「まさか」

佐場木「……そういう事か」

苗木「えっ、えっ?どうしたの?」

六山「逆転の発想ってやつだよ」

土橋「逆転?」

津浦「【Mr.鞍馬に身体強化薬なんて必要ないはず】……ではなく」

遠見「【身体強化薬がなぜ鞍馬殿に必要なのか】……」

赤穂「それを示す答えは1つしかない」







赤穂「鞍馬の力は、薬によって後付けされたものだったんだ!」






道掛「あ、後付けぇ!?」

如月「なるほど……脳のリミッターを外している僕と渡り合えた理由はそれですか」

土橋「えっ、さりげなくとんでもない事言ってない?」

佐場木「ますますキナ臭くなってきたな……」

遠見「あの力が後付けならば、鞍馬殿の才能はそれに関わるものだったのでありますか?」

兵頭「本人が亡くなっている以上、答えは謎ですね……」

赤穂「……」

鞍馬の才能……俺は知っているはずだ。

他でもない……アイツからの情報でな!

【鞍馬の才能】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「……みんな、このファイルを見てみてくれ」

佐場木「なんだそれは」

赤穂「モノクマからの情報だ。俺達が知っていたはずの情報らしい」

兵頭「私達が知っていたはずの情報ですか」

みんなにファイルが回されていく。

そして読んだ人間は例外なく驚きの反応を示した。

道掛「く、鞍馬に才能がない……?」

御影「嘘……」

佐場木「語らないのではなく、そもそもなかったというわけか」

六山「でもモノクマからの情報でしょ?信用出来るのかな」

モノクマ「ボクは嘘はついてませーん!」

兵頭「もしかして最初の事件前に言っていたのは……」

※※※※

モノクマ「オマエラの中に裏切者がいまーす!」

赤穂「……は?」

モノクマ「オマエラってほとんどが第八十期……未来機関第一期生なわけだけどさ」

モノクマ「実はなに食わぬ顔して紛れ込んでる大嘘つきがいるんだよ!」

※※※※

モノクマ「その通り!才能なしの凡人なのに謎多き男のふりをしていた厨二病患者!」

モノクマ「それこそ鞍馬類クンの正体だったのでーす!」

赤穂「鞍馬に才能がないのは事実でも、そこまで言われるいわれはないだろう!」

モノクマ「うひゃあ、怖い怖い!」

赤穂「……とにかく、鞍馬が呼び出された理由はこれで」



道掛「パンクしてんぞその推理!」反論!

【反論ショーダウン開始!】

コトダマ>>571
【鞍馬の裁縫セット】
【鞍馬のモーテル】
【鞍馬のコテージ】


道掛「やっぱ信じらんねえよ!」

道掛「あの鞍馬が薬で作られたなんて!」

道掛「あいつはそんな、ドーピングとかするやつじゃねえって!」

赤穂「鞍馬が身体強化薬を持っていたのは事実だ」

赤穂「それで脅迫に応じたのもな」

道掛「いや、だからといって飲んでたとは限らねえって!」

道掛「鞍馬はただ持ってただけかもしんねえじゃんか!」

道掛「【鞍馬が薬飲んでた証明なんて出来ねえだろ!?】」

【鞍馬が薬飲んでた証明なんて出来ねえだろ!?】←【鞍馬の裁縫セット】

赤穂「その反論に正義はない!」


赤穂「鞍馬はいつも裁縫セットを持ってたよな?」

道掛「それがなんだよ!」

赤穂「裁縫セットの中には……ピルケースがあったんだ」

御影「ピルケース……何か薬は飲んでたってわけだね」

道掛「か、風邪薬……」

赤穂「わざわざ裁縫セットにピルケースを作ってまでか?」

苗木「風邪薬なら堂々と飲めばいいもんね」

道掛「うっ、くっ……!」

如月「道掛さん、残念ながら……鞍馬さんが薬を服用していたのは間違いないかと」

道掛「……なんでだよ!なんでドーピングなんて!」

兵頭「道掛さんにはわからないのでは?運動系の超高校級の才能を持つあなたにはね」

道掛「っ!」

兵頭にキツい一撃を受けた道掛はそのまま項垂れてしまった。

友達だって言ってた鞍馬の事をわかってなかった……その事実に打ちのめされたんだろう。

佐場木「……鞍馬が身体強化薬を服用していたのはわかった」

佐場木「しかしあえて言おう……それがなんだ?」

佐場木「鞍馬に才能がなくともあの身体能力は脅威だ」

遠見「犯人の特定には至らないでありますね……」

六山「うーん、そもそもさ」

六山「本当に鞍馬くんにとってその薬って大事だったのかな?」

【議論開始!】

コトダマ>>571
【鞍馬のモーテル】
【鞍馬のコテージ】
【身体強化薬(詩作)】


六山「【鞍馬くんにとって大切なものだ】ーって前提になってるけど……」

六山「この薬コテージには机にポンッて置かれてたんだよ?」

如月「……それは脅迫状に応じるほど大切なら不自然ですね」

御影「だったら【鞍馬にとって薬はどうでもよかった】?」

苗木「前提が変わっちゃうね……」

土橋「うーん、でも他に何かある?」

津浦「【Mr.鞍馬にとって大切な他の何か】……思い付きませんね」

鞍馬を脅迫したタネはあの薬で間違いない……!

【鞍馬にとって薬はどうでもよかった】←【鞍馬のモーテル】

赤穂「それは違ってるぞ!」


赤穂「いや、鞍馬にとってあの薬は大切なものだったはずだ」

赤穂「それは鞍馬のいたモーテルが証明になる!」

六山「モーテルが?」

兵頭「そういえばあのモーテル……相当荒れていましたね」

遠見「荒れていたとはどれぐらいでありますか?」

赤穂「ベッドはぐちゃぐちゃ、棚の中や机の上の物は床に投げ出されてたな」

土橋「確かにそれは酷いね……」

道掛「鞍馬が普段からだらしなかったんじゃねえのか」

赤穂「いや、それはないんだ」

【鞍馬のコテージ】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「鞍馬のコテージはきちんと整理整頓されてたんだ。生活感がないレベルでな」

道掛「そっかよ……」

土橋「とにかく類にとってそれが大切なものだっていうのは間違いないみたいだね」

苗木「でもやっぱり犯人には繋がらないよね……」

遠見「せめて凶器のナイフの出所さえ掴めれば……!」

佐場木「マーケットや水族館のものとも違うあのナイフか……クラヴィッツを刺した物と同一だろうが」

道掛「……ナイフ?」

兵頭「どうしました?何か心当たりでも?」

道掛「……い、いや、ねえよ!」

六山「それ嘘だね?わたしにもわかるよ」

道掛「うっ!」

御影「道掛、何か知ってるの?」

道掛「うぐっ……!」

佐場木「答えろ道掛。あのナイフの出所を知っているならな」

道掛「…………」

苗木「道掛クン……?」

道掛「……が」

津浦「えっ?」







道掛「ナイフなら、鞍馬が、持ってたぜ……」






赤穂「鞍馬が!?」

如月「間違いないんですか?」

道掛「間違いねえよ!前に話してた時、あいつがナイフ持ってたの俺見たんだ!」

道掛「でも鞍馬が何かするわけねえって……俺信じてたんだよ!」

道掛「だけど今思い出したんだ!ジェニーちゃんに刺さってたナイフ、鞍馬が持ってたやつだって!」

道掛「それで、ジェニーちゃん殺したの鞍馬なんじゃねえかって思ったら……!」

道掛「なあ、違うよな?鞍馬はクロなんかじゃねえよな!?」

道掛「もう、俺にはわかんねえんだよ……」

赤穂「道掛……」

鞍馬がジェニーを殺したクロかどうか……どうにかしてはっきりさせられないか?

道掛「ちくしょう、ちくしょう……!」

それが今苦しんでる道掛のためにもなるはずだ……!

【議論開始!】

コトダマ>>571
【電気がついたタイミング】
【モノクマファイル3】
【赤穂の実験】


兵頭「鞍馬さんがジェニーさんを殺した可能性ですか……」

苗木「さっき兵頭さんがあげた可能性の1つだったよね」

佐場木「何にせよはっきりさせるべき事柄ではあった」

遠見「ふむ、しかし【凶器は鞍馬殿の物】でありますよね……」

六山「閉じ込められてから薬は減ってただろうし……それが【動機になりそう】」

御影「【モーテルが荒れてた】のってそういう理由だったんだ……」

如月「せめて〔鞍馬さんが殺害された時間〕がはっきりすれば……」

……!

そうか、これならもしかして……!

〔鞍馬さんが殺害された時間〕←【電気がついたタイミング】

赤穂「それに賛成するぞ!」


赤穂「もしかしたら証明出来るかもしれない……鞍馬の無実を!」

道掛「っ!?」

御影「えっ、いったいどうやって?」

赤穂「電気がついたタイミングだよ。津浦、確かあれは」

津浦「2時52分ですね……」

土橋「2時52分……」

赤穂「モノクマは教えなかったけど、これは事件の起きたタイミングのはずだ」

遠見「鞍馬殿が殺された、もしくはそれをモノクマが確認したタイミングでありましょうな」

兵頭「それがどうやって無実の立証に?」

佐場木「考えてみろ。鞍馬がクロならば奴はクラヴィッツを刺した後に殺害された」

佐場木「つまりクラヴィッツは先に刺されたわけだ」

如月「……なるほど、二重の矛盾ですね」

苗木「どういう事かよくわかんないんだけど……」

簡単な事だったんだ……

鞍馬がクロではあり得ない証拠は2つある!

【ジェニーの遺体】
【ナイフ】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「まずジェニーの遺体……ジェニーは刺された後にナイフでお腹を抉られてるんだ」

土橋「っ……」

御影「エグいね……」

赤穂「だからジェニーは血が止まらない状態だったんだ」

佐場木「鞍馬が殺害された時間が2時52分として、クラヴィッツは刺されてから数分しかもたなかっただろう」

遠見「先に刺されてから、鞍馬殿が殺害された場合……赤穂殿が遺言を聞けるはずがないのであります」

赤穂「それにそもそも鞍馬が後に殺害されたなら……ジェニーのお腹にナイフが刺さってたのはおかしいんだ!」

六山「あっ、それはそうだね……またジェニーさんのお腹にナイフ刺した事になっちゃうよ」

道掛「じゃあ……」

赤穂「ああ、鞍馬はクロじゃない!」

道掛「……そうか、そうか!」

道掛の目に光が戻る。

はっきりと鞍馬の無実は証明されたからな……

遠見「……しかし、これはマズイ事になったでありますよ」

津浦「マズイ事、ですか?」

佐場木「鞍馬がナイフを持っていた以上クロは鞍馬からナイフを奪い殺害した事になる」

六山「……えっ、出来るの?」

御影「モーテルに、薬はあったんだよね?」

赤穂「ああ、だから鞍馬は……身体強化された状態だったはずだ」

土橋「じゃあやっぱり類を殺すなんて無理なんじゃ……」

苗木「いや……1人だけ、いるよね」

道掛「えっ、誰だよ!」

兵頭「そんな、まさか……」

赤穂「……」

確かに、1人だけいる。

鞍馬を殺せる人間……

だけど、それは……!

【如月怜輝】

赤穂「そんな嘘だろ……!」


赤穂「如月さん」

如月「……」

赤穂「あなたなら、鞍馬を殺せますよね?」

如月「……」

土橋「答えてよ怜輝!今回の事件を起こしたのは、ジェニーを殺したのは怜輝なの!?」

如月「……」

如月さんは答えない……だけど状況を考えたら……!

【ショットガンコネクト開始!】

赤穂「……」

ジェニーを殺した後犯人は……

コトダマ>>571
【道掛の証言】
【ヒーローのバッジ】
【モノクマファイル3】

・課題
【犯人の行動を示すのは?】
【被害者の行動を示すのは?】
【黒幕の行動を示すのは?】

赤穂「……」

道掛の言っていた事、あれは……

もしかしたら……

【道掛の証言】―【犯人の行動を示すのは?】

コトダマ>>571
【モーテルのメンバー】
【赤穂の実験】
【口の血】

赤穂「……」

道掛の言っていた事、そしてモーテルにいたメンバー……

そうか、犯人は……

【道掛の証言】―【犯人の行動を示すのは?】―【モーテルのメンバー】


・結論
【犯人は病院に逃げた】
【犯人はモーテルの部屋に戻った】
【犯人は発電所に隠れた】

【犯人はモーテルの部屋に戻った】

赤穂「これが、真実なのか……!」


赤穂「道掛、確か電気がついた後にドアの音がしたんだよな?」

道掛「お、おう。だから誰か出たんだと思って自転車で追っかけたんだよ」

赤穂「だけど俺がジェニーを見つけた時、道掛以外には誰も会ってない」

兵頭「私達病院組は赤穂さんに会ってから一緒でした」

苗木「じゃあ道掛クンが聞いた音って……」

赤穂「出た音じゃない、戻る音だったんだよ」

御影「じゃあ……」

赤穂「犯人は犯行を行った後にモーテルの自分の部屋に」




如月「それは違いますよ……」反論!

【反論ショーダウン開始!】

コトノハ>>571
【赤穂の実験】


如月「なるほど、モーテルに戻ったというのはあり得る話でしょう」

如月「しかし僕は犯人ではありません」

如月「僕が殺人をしないのは宣言してあったはずですよ」

赤穂「誰が殺すかなんて何も言えません」

赤穂「薄井やグレゴリーだって、人を殺す人間ではなかったはずなんですから」

如月「それを言われると痛いですね……」

如月「しかし否定するしか僕にはないんです」

如月「【鞍馬さんを殺せるというだけならば僕を犯人とする根拠には程遠い】」

【鞍馬さんを殺せるというだけならば僕を犯人とする根拠には程遠い】←【赤穂の実験】

赤穂「……!」


赤穂「それだけじゃないでしょう」

如月「……」

赤穂「鞍馬とジェニーを殺してからモーテルに戻る……そのための時間は道掛がドアの音を聞くまでの2、3分」

赤穂「実験をした時如月さんは確かに言った!」

赤穂「2分でモーテルに戻るのは自分か鞍馬にしか出来ないって!」

如月「……」

道掛「んな馬鹿な……」

遠見「確かに、状況では如月殿こそクロとしか」

苗木「そ、そんな」

六山「まさかの展開だね……」

土橋「っ、答えてよ……!」

兵頭「如月さん、嘘ですよね?まさかあなたがそんな……」

津浦「Mr.如月が……」

御影「兄さん……」

如月「……」

赤穂「どうなんですか如月さん!」

如月「……あくまで状況でしかない」

如月「認めるつもりはありませんよ」

【マシンガントークバトル開始!】

如月「僕は犯人ではありません」

如月「赤穂さんの主張は状況証拠以外ない」

如月「僕は悪しか裁きません」

如月「正義の名の下に潔白を主張します」

如月「……」

如月「僕は、違います」

如月【物的証拠はないんですから】

【物的証拠はないんですから】←【ヒーローのバッジ】

赤穂「……」


赤穂「じゃあ……教えてください」

如月「なんでしょう?」

赤穂「如月さんの妹さんのバッジがなんで発電所にあったんですか」

如月「……!」

御影「妹の、バッジ?」

赤穂「ここに妹さんがいるって言うんですか?もしかしてあのバッジは……あなたが持っていたんじゃないですか?」

如月「…………」

赤穂「他に理由があるなら、言ってみてください」

赤穂「如月さん!!」

如月「…………どうやら」

赤穂「……!」



如月「ここまで、みたいですね」

それは聞きたくなかった言葉。

憧れのヒーローの……敗北宣言だった。

【クライマックス推理開始!】

ACT.1
今回の犯人は2人の人間を殺そうとしていた。
被害者である鞍馬とジェニーだ。
そのために犯人は……人を殺さないという宣言を翻したんだよ。

ACT.2
まず犯人は鞍馬のモーテルから彼が使っていた身体強化薬を盗み出した。
鞍馬にとってそれはとても大切な物だったからな……
次にジェニーと鞍馬に手紙を送り……2人が発電所に来るよう誘導した。

ACT.3
そして犯人は計画を実行に移す。
まず鞍馬からナイフを奪い取ると……それを頭に突き刺して殺害。
犯人は身体強化された鞍馬と渡り合えていたから、問題ない作業だったはずだ。

ACT.4
そして誘導されるがままやって来たジェニー……彼女は鞍馬が殺害される瞬間を見たのか、そのまま逃げ出した。
しかし犯人からは逃げ切れず……腹部を刺されて口封じされてしまったんだ。

ACT.5
2人を殺した犯人は全速力でモーテルに戻った。
その時の音を聞いていた道掛は出たんだと思って追いかけたけど……実際はモーテルに入った音だったんだよ。
そしてその後アナウンスが鳴るのに合わせて外に出た……あたかもモーテルにいたと思わせるために。

鞍馬を殺し、なおかつモーテルに戻れた人間……

赤穂「両方の条件はあなたにしか満たせない……如月怜輝!」

如月「…………」

COMPLETE!

赤穂「どうして!どうしてなんですか如月さん!」

如月「……」

モノクマ「おっとその前にやるべき事を済ませましょう!」

モノクマ「議論の結論が出たみたいだね!」

モノクマ「それでは投票タイムとまいりましょうか!」

モノクマ「オマエラ、お手元のスイッチで投票をお願いします!」

モノクマ「オマエラの答えが正解?それとも不正解?」

モノクマ「運命はどっちだー!!」

         VOTE

      

       


     【学級裁判閉……】







佐場木「その判決を棄却する!」反論!






赤穂「!?」

佐場木「ふざけるなよ殺人鬼……何がここまでだ」

佐場木「その諦めが憎むべき犯罪者を逃がし!無実の者達の死を招く!」

佐場木「正義だなんだとほざいておきながら結局はただの戯れ言か!」

佐場木「答えてみろ如月怜輝!」

如月「佐場木、さん」

佐場木「貴様も貴様だ赤穂!」

赤穂「な、何を」

佐場木「確かに薄井やグレゴリーを追い詰めたのは貴様だ。その手腕は評価に値する」

佐場木「だがしかし!この学級裁判は俺達全員の命を懸けたやり取りだ!」

佐場木「貴様だけで勝手に進めるのはやめてもらおうか!」

赤穂「だけど!他に結論はないだろう!」

赤穂「犯行が可能なのは如月さんしか……」

佐場木「それが正しいかは全て終わった後にわかることだ」

モノクマ「あのー……」

佐場木「審理は続行だ!!貴様は黙っていろ!!」

佐場木「遠見!苗木!道掛!土橋!御影!兵頭!六山!津浦!」

佐場木「貴様らもそれでいいな!」

佐場木の言葉に否定する人間はいない。

それだけのものが、今の佐場木にはあった。

佐場木「さあ、議論の再開だ……絶対に逃がさんぞ、犯罪者!!」


     【学級裁判中断!】

今回はここまで。
次回三章終了です。







     【学級裁判再開!】






遠見「佐場木殿……議論の再開とは言うものの何を語ればいいのでありますか?」

佐場木「今回如月がクロとなっている理由は主に2つだ」

佐場木「1つ、身体強化された鞍馬を殺せるから」

佐場木「2つ、殺害後モーテルに戻る事が出来るから」

佐場木「そうだな?」

土橋「ま、まあそうだけど……」

佐場木「ならば他にこの条件を満たす手段はなかったか……それを議論すればいい」

苗木「手段って……本当にそんなのあるの?」

六山「それを話し合えって事じゃないかな」

赤穂「……」

鞍馬を殺す条件を満たす手段……本当に如月さんがクロだって事以外にあるのか?

【議論開始!】

コトダマ>>571
【鞍馬の裁縫セット】
【赤白の錠剤】
【脅迫状】

道掛「他の可能性つったってよ……」

津浦「〔鞍馬さんと渡り合えるのを隠していた〕人物がいたのでしょうか」

兵頭「もしくは〔鞍馬さんがそれほどではなかった〕……」

御影「いや、それほどではあったでしょ……」

六山「あっ、もしかして……」

六山「〔クロも身体強化されてた〕とか」

苗木「薬が2つあったって事!?」

土橋「それはいくらなんでも……」

六山「むー……」

赤穂「……」

もしかして……そういう事なのか?

〔クロも身体強化されてた〕←【脅迫状】

赤穂「それに賛成するぞ!」


赤穂「そうか……クロも身体強化されてたんだよ!」

六山「えっ、もしかして当たり?」

遠見「同じような薬がもう1つあったとは考えにくいのでは?」

赤穂「いや、薬が2つあったわけじゃない」

赤穂「この鞍馬を呼び出した脅迫状をもう一度見てくれ」

【鞍馬類、お前の秘密は握った。
例の物を返してほしければ深夜の2時半頃に発電所に来い】

御影「……そっか!クロは鞍馬から薬を盗んで持ってたんだ!」

佐場木「現場に残された欠片のせいで混乱を招いたが……鞍馬を相手にするなら飲んでおかない方が不自然」

道掛「強化されてたってなら、鞍馬を殺すのもモーテルに戻るのも出来たって事だな!」

如月「……もしかしたら」

兵頭「如月さん?」

如月「コテージの机の上に置きっぱなしだったのも……クロが盗んでいたからでは?」

津浦「確かに鞍馬さんがそれを出しっぱなしにするのも不自然な話でしたね」

土橋「じゃあ犯人は、暗くなる前から類を殺すつもりだったんだ……」

苗木「そう、なるね」

遠見「……わかったであります!」

赤穂「わかったって……何がだ?」

遠見「鞍馬殿の頭頂部を刺した方法でありますよ!」

佐場木「ほう、言ってみろ遠見」

遠見「頭頂部を一撃で殺害したのは犯人もまた身体強化されていたから……しかしどうやって頭頂部を刺したのかは不明でありました」

御影「そういえば……」

遠見「しかし犯人がもしもコテージからも鞍馬殿の薬を盗んでいたのならば……こう考えられるのでは?」

遠見「犯人は鞍馬殿の目の前で、薬をばらまいたのであります!」

道掛「薬をばらまいたぁ!?」

赤穂「そうか……鞍馬が薬を拾おうとしてかがんだ所に……ナイフを突き刺したのか!」

津浦「犯人は薬と一緒にナイフも盗んでいたんでしょうね」

六山「きっと薬とナイフを盗まれて動揺したからモーテルを荒らしたんだよ」

土橋「薬を拾おうとしてたなら例えば懐中電灯を向けられてても気は逸れるよね……」

苗木「それなら鞍馬クンを殺すのは容易……むしろ失敗する方が難しいかもしれない」

1つの綻びがほどければ、次々に可能性が見えてくる。

今俺達は確実に真相に近付いてるんだ……!

赤穂「……如月さん」

如月「謝罪は不要ですよ赤穂さん」

赤穂「……!」

如月「僕達は真犯人を追い詰めている……それでいいじゃないですか」

赤穂「ありがとう、ございます」

如月さんには、かなわないな……

【議論開始!】

コトダマ>>571
【口の血】
【ジェニーの遺体】
【ナイフ】

兵頭「手口はわかりましたが……肝心の犯人はまだ不明ですね」

佐場木「【鞍馬のコテージやモーテルから薬とナイフを盗み】……」

土橋「【ジェニーに発電所関係の物を送りつけた】んだよね?」

道掛「【薬を飲んで強化してやがったんだよな】!」

遠見「【残った薬をばらまき鞍馬殿の隙を作り出して殺害】したのでありますな」

御影「そして【鉢合わせたジェニーも追いかけて殺した】」

苗木「だけど【もう手がかりがない】よ……」

津浦「ここまでわかっているのに……!」

赤穂「……」

そういえば……まだ謎だった事があるはずだ。

【もう手がかりがない】←【口の血】

赤穂「それは違ってるぞ!」


赤穂「いや、まだ手がかりはある!」

苗木「えっ、手がかりって何なの?」

赤穂「ジェニーの口についていた血だ」

兵頭「あれは刺された時に吐いたものでは?」

赤穂「俺も最初はそう思った。だけどジェニーの口の中は歯にしか血がなかったんだよ」

遠見「刺された場合の吐血なら口の中は血だらけになっているはず……」

佐場木「外部から付着した血痕の可能性が高いな」

道掛「すげえ血だったし、飛んだのがついたんじゃねえ?」

御影「でもジェニーの顔、血ついてなかったよね?」

六山「ねぇ……それってもしかしたら噛んだんじゃない?」

津浦「噛んだ?何をですか?」

六山「疑問だったんだよね。ジェニーさんが刺されたのが鞍馬くんが殺された後ならなんでジェニーさん、助けを呼ばなかったのかなって」

土橋「確かに、走也とか琴羽は起きてたみたいだし……それでなくても助けを呼ぶよね」

如月「口を塞がれて刺された……六山さんはそう言いたいのですか?」

六山「可能性はあるんじゃないかな?」

赤穂「口を塞がれて刺されたジェニーは……その時クロの手を噛んだ?」

苗木「でも怪我してる人はいっぱいいるし……」

佐場木「……いいや、これはクラヴィッツの遺した重要な証拠だ」

遠見「佐場木殿、では!」

佐場木「怪我をしている人間は当該箇所を言ってみろ」

赤穂「俺は、腹部の銃創だな」

御影「私は頭の怪我ぐらいだけど」

兵頭「私も御影さんと同じです」

津浦「ワタシも頭部を負傷しています」

道掛「美姫ちゃん止めてた時に振り払われて全身擦り傷だらけってぐらいか?」

苗木「うん、ボクも道掛クンと同じだよ」

如月「……以上の方々が怪我をしている人物ですか」

六山「うーん、噛まれた傷はないね……」

土橋「正直に言うはずもないだろうけど……」

赤穂「……」

あれ?

ちょっと、待てよ?

あいつ……おかしくないか?

……まさか。

お前なのか?

お前が、クロなのか!?

【苗木誠】

赤穂「お前が、犯人なのか?」


赤穂「……苗木」

苗木「どうしたの赤穂クン……そんな怖い顔して」

赤穂「お前、その擦り傷どこでつけた」

苗木「どこでって……もちろん土橋さんを止めた時に」

赤穂「本当か?」

苗木「ど、どうしちゃったの?ボクは本当に……」

赤穂「俺がジェニーの所に来た時……」

※※※※

赤穂「土橋は、ずっと?」

御影「うん……苗木が頑張って抑えてるから大きな事にはなってないけど、道掛とか何回も振り払われてたよ」

赤穂「そう、か」

※※※※

赤穂「牡丹からそう聞いた……そうだよな牡丹」

御影「えっ、あっ、うん。苗木はずっと土橋を抑えて……あれ?」

津浦「ワタシもその場にいましたが、確かにMr.苗木はMr.道掛のように振り払われては……えっ?」

道掛「お、おい苗木……なんでお前、俺みたいな傷あんだよ?お前が美姫ちゃん抑えてて、すげえって俺思ってたの覚えてるぞ!?」

土橋「ア、アタシもずっと誰かが抑えてたのは覚えてるよ……」

苗木「…………」

佐場木「苗木、これはどういう事だ」

遠見「苗木殿、まさか苗木殿が……アンノウンなのでありますか!?」

苗木「……は、ははっ、酷いなぁみんな」

苗木「ボクだって必死だったんだよ?土橋さんを止めなきゃってそればっかり頭にあってさ……」

苗木「まさかそれで疑われるなんて、思わなかったよ……」

六山「それはいいからさ、いつその傷がついたか答えてよ」

苗木「覚えてないよ」

兵頭「覚えてない?」

苗木「言ったでしょ?必死だったって」

苗木「その状態でいつついた傷かなんて覚えてるわけないじゃないか」

苗木「道掛クンと同じような傷だから自分のもそうだって勘違いしちゃったのかな?」

赤穂「そんな言い訳……!」

苗木「事実なんだからしょうがないよ……それとも赤穂クンはボクが犯人だって言うつもり?」

苗木「さっきまで如月クンしか犯人いないって主張だったのに随分簡単に主張変えるんだね」

赤穂「っ……!」

なんだ、なんなんだ?

目の前にいるのは本当にあの苗木なのか?

まるで違う、今までのあいつとは雰囲気が……!

※※※※

御影「……」

兄さん、黙っちゃった……

苗木「全く酷い言いがかりだよ……これが噛まれた傷じゃないなんて見ればわかるのに」

手を振りながら苗木は兄さんを睨み付けている……

その視線ははっきり言ってすごく怖い。

だけど、だけど……!

御影「苗木、犯人はあんただよ!」

私は、兄さんを信じる……

だってたった2人の兄妹だから!

私だけは、赤穂政城の味方でいるんだ……!

苗木「何か言った?」

御影「っ」

苗木の視線がこちらに向けられる……その無機質と狂気の間の目はあの私を滅茶苦茶にしたあいつを思い出して……

御影「あんたが……犯人だって、言ったの」

だけど負けない。

負けて、たまるもんか……!

【議論開始!】

コトダマ>>571
【モノクマファイル3】

苗木「はぁ……」

苗木「赤穂クンが黙ったと思ったら今度は御影さんか」

苗木「【兄妹】揃って酷い人だね」

御影「そんなの関係ない!あんたが怪しいのは事実でしょ!」

兵頭「【怪しい点がある】のは確かにそうです」

苗木「勘弁してよ……ボクが何をしたっていうんだ」

佐場木「なら申し開きはあるのか」

苗木「申し開きも何も勝手な言いがかりにどうしろっていうのさ」

苗木「御影さんは【色々病気抱えて】大変かもしれないけど」

苗木「それに付き合うほどボクはお人好しじゃないよ」

赤穂「牡丹……」

【色々病気抱えて】←【怪しい点がある】

御影「それは違ってるよ!」


御影「……なんで」

苗木「何?」

御影「なんで知ってるの?私の才能」

苗木「……!」

道掛「は?どういう事だ、牡丹ちゃんの才能……?」

土橋「それに病気って」

御影「……私の才能は【超高校級の被験体】」

御影「今、私の身体には普通なら死ぬ病気がたくさん巣を張ってるんだ」

御影「だけど私は死なない、死ねない……そんな体質なの」

如月「っ!?」

兵頭「御影さんがそんな……」

御影「今は私の才能はどうでもいいよ。重要なのは」

御影「兄さんと鞍馬しか知らない事をなんであんたが知ってるかだよ苗木!」

苗木「っ!」

御影「鞍馬とその事で話したすぐ後に私と兵頭は襲われた!兄さんと話した時には私は聞かれないようにしてた!」

御影「あんたなんでしょ苗木!兄さんを撃ったのも、私や兵頭を襲ったのも……鞍馬やジェニーを殺したのも!」

苗木「……どこまでも」

苗木「言いがかりをつけてくるねキミ達は!」

【パニックトークアクション開始!】

苗木「ボクは犯人じゃないんだよ」

苗木「さっきからそっちが言ってるのは状況証拠ばかりだ」

苗木「ボクに罪を着せたいのかな?」

苗木「本当に兄妹揃って……」

苗木【ボクを犯人にしたいなら決定的証拠を見せなよ!】



     土橋

なぜ        抑えられた?

     を

【なぜ土橋を抑えられた?】


御影「これで終わりだよ!」


御影「じゃあ聞くけど……なんで土橋を抑えられたの」

苗木「は……?」

御影「運動系の才能の道掛は何度も振り払われて、あんたが振り払われてないのはどうして?」

苗木「それ、は……」

御影「それは身体強化してたから……じゃないの」

苗木「そんな事……!」

如月「……」

遠見「如月殿!?」

赤穂「っ!?」

それは一瞬の出来事だった。

如月が苗木に向かって放った拳は……

苗木「……やって、くれたね」

苗木に、受け止められていた。

如月「もはやこれしかなかったので」

苗木「……ああ、本当に」

苗木「最悪の気分だよ」

苗木は笑いながら、如月の腕を振り払う。

それは……苗木の身体強化を示す決定的証拠だった。

【クライマックス推理開始!】

ACT.1
大部分は兄さんの推理だと同じだと思う……今回の犯人は2人の人間を殺そうとしていたとかそれが鞍馬とジェニーだって事も。
だけど1つ違うのは……この犯人はかなり前から人を殺そうとしていたって事だよ。

ACT.2
犯人はあらかじめ鞍馬のコテージからあいつが使っていた身体強化薬を盗んでいた。
さらにモーテルから残りの薬とナイフも盗んで……閉じ込められて取りに行けなかった鞍馬にとっては気が気じゃなかったと思う。
そして犯人はジェニーと鞍馬に手紙を送って……2人が発電所に来るよう誘導したんだよ。

ACT.3
犯人は発電所で鞍馬に会うと持っていた薬をばらまいた。
それを拾うためにかがんだ鞍馬の頭に、盗んでおいたナイフを突き刺したんだよ。
薬をばらまかれた事に加えて犯人も薬を飲んで身体強化されてたから、鞍馬に抵抗なんて無理だったろうね。

ACT.4
そして次はジェニー……鞍馬が殺害される瞬間を見て逃げたジェニーを犯人は追いかけて。
道で捕まったジェニーは口を塞がれてお腹を刺された。
でもこの時ジェニーが犯人の手を噛んだ事が……犯人を追い詰める鍵になったんだ。

ACT.5
2人を殺した犯人は強化された身体を使って全速力でモーテルに戻った。
その後アナウンスが鳴るのに合わせて外に出た時に……噛まれた部分に新しく擦り傷を作ったんじゃないかな。
そして土橋を止める事で擦り傷を作っても不自然じゃないようにしたんだ。

ここ最近の一連の事件、その犯人は……

御影「あんただよ、苗木誠……!」

苗木「……あーあ」

COMPLETE!

モノクマ「うぷぷ、今度こそ終わりかな?」

苗木「……」

苗木はもう反論しない……どうやら、ここまでみたいだな。

赤穂「ああ、終わりだ」

モノクマ「それでは投票タイムとまいりましょうか!」

モノクマ「オマエラ、お手元のスイッチで投票をお願いします!」

モノクマ「オマエラの答えが正解?それとも不正解?」

モノクマ「運命はどっちだー!!」

         VOTE

      苗木 苗木 苗木

       チャッチャッチャー!


     【学級裁判閉廷!】

モノクマ「大正解ー!」

モノクマ「今回鞍馬類クンとジェニー・クラヴィッツさんを殺したクロは……」

モノクマ「苗木誠クンでしたー!」

道掛「な、なんでだよ!?なんで苗木が鞍馬とジェニーちゃんを……」

佐場木「この男がした事はそれだけではない」

遠見「赤穂殿を撃ち、死体を出さない方法で御影殿と兵頭殿を殺そうとしたアンノウン……」

兵頭「それが、苗木さんだとは……さすがに予想外でしたね」

如月「……混乱を防ぐために詳細は伏せますが、彼には他にも余罪があります」

苗木「……」

薄井とグレコリーの件だな……

津浦「Mr.苗木……何がアナタをそこまで」

土橋「誠がジェニーを殺したなんて、追い求めてた答えなのに信じられない……」

六山「ゲーム好きに悪い人はいないと思いたかったんだけどな……」

確かに苗木がここまでやるなんて、普段の姿を見ていたら想像出来ない。

赤穂「苗木……いったい何があったんだ?」

苗木「……」

御影「何か言いなよ。まさかこのまま黙りで……」

苗木「……………………」







苗木「あはっ……!」






苗木「あははははははははははははははははははははははっ!!」

苗木「ああ、もう駄目だ、我慢出来ない……!」

佐場木「貴様、何がおかしい」

苗木「だ、だって笑えるでしょ?」

苗木「こんなにあっさりと死んでいくんだよ……本当にボクの思うがままに殺しあってさ!」

苗木「所詮才能を持つ者もその程度の存在って事だ!これがおかしくなくて何を笑えばいいのさ!」

道掛「な、苗木!お前何を……!」

苗木「あれ、わからない?ボクがやったからだよ」

苗木「静音さんにサプライズの提案してそれを薄井クンが聞くように仕向けたのも」

苗木「四方院さんに静音さんの名前で手紙と雑誌送ってグレゴリークンを水族館に呼び出したのも」

津浦「なっ……!」

苗木「土橋さんを撃って赤穂クンに怪我させたのも、兵頭さんと御影さんを襲ったのも、鞍馬クンから薬とナイフを盗んで脅迫状を送りつけたのも」

苗木「今回鞍馬クンとジェニーさんを殺したのも!」

苗木「そして!」







苗木「今回このコロシアイを計画したのも!」

苗木「全部ボクの仕業なんだ」






赤穂「なっ……」

苗木が、黒幕?

このコロシアイを計画したのがこいつなのか!?

苗木「あはは、驚いた?まさか黒幕直々に殺人だなんて思いもしなかったでしょ?」

兵頭「……いくらなんでも予想外過ぎでは?」

苗木「まあ、我慢出来なかったんだ。ボクとしてはここにいる全員早く皆殺しにしたかったしさ」

津浦「な、なぜそんな……」

苗木による黒幕宣言。

それは少なからず俺達に混乱と衝撃を与えていた。

如月「……なぜ、こんなコロシアイを?」

それはおそらく、如月さんも例外じゃなかっただろう……

その証拠に、手は震えて、顔も少し青ざめていた。

あの【超高校級のヒーロー】であり【ジャスティスジャッジ】の如月さんがだ。

苗木「簡単に言えば希望のためかな?」

だけどそれとは対照的に苗木は事も無げに語る。

苗木「ねぇ、君たちは未来の希望だなんて言われて持ち上げられてるけどさ……」

まるで罪悪感など微塵も感じていないと言わんばかりに。

苗木は、語る。







苗木「自分達の存在がどれだけ周りを絶望させてるか、考えた事ある?」

このコロシアイがなぜ行われたのかを。






遠見「何を、言っているのでありますか……?」

苗木「……ああ、ごめん。やっぱり難しかったか」

苗木「君達みたいな自分1人で偉くなったつもりの屑にわかるわけないもんね」

佐場木「ここまで歪みきっていたのか……!」

苗木「選ばれた才能を持つ【超高校級】の生徒達。世間に希望だなんだと崇められてさぞかし気分がいいだろうね」

苗木「だけど君達の存在によってどれだけ本来評価されてしかるべき人が比較され、貶められ、絶望していってるか」

苗木「おかしいよね?少しだけの差なら切磋琢磨するライバルにだってなれる、次はって希望を持てる」

苗木「だけど【超高校級】というラベルはそれを全てぶち壊す」

苗木「希望ヶ峰学園が設立していた予備学科ってあるでしょ。確かにあそこは【超高校級】のラベルが欲しいだけの人間もいたよ」

苗木「だけど一番多かったのは……No.2として見向きもされなかった凡人なんだよ」

苗木「ああ、この世界は素晴らしいね!本当に狂ってるとしか思えない!」

苗木「そしてその象徴が君達なんだよ!」

苗木「そのくせ君達ときたらまるで自分1人で今の地位になれたって勘違いしてる」

苗木「芸能関係はファン、スポーツ関係はチームメイトやマネージャー、芸術関係は評価する人……」

苗木「そして何より敗者がいてこそ君達は輝ける!」

苗木「例えばやってるのがたった1人しかいない競技でトップに立ってもそんなの【超高校級】とは言えないもんね?」

苗木「君達が【超高校級】でいられるのは大多数の凡人達がいてくれるからなんだ」

苗木「なのに君達はそれを理解しようともしない」

苗木「挙げ句のはてに世界を滅茶苦茶にしたのも、その世界を管理者気取りで牛耳ってるのもどいつもこいつも才能のある奴らばかり!」

苗木「【超高校級】なんているから絶望が広まる……君達は異物なんだ、凡人達の希望を食らって世界に巣食う寄生虫なんだよ」

苗木「だからさ……」

苗木「早く死んでよ」

苗木「この世界を本当に支える大多数の凡人達が、希望を持って生きるために!」

苗木「さっさと絶滅しろよこの寄生虫!」

苗木「お前達は明確に害する絶望なんかよりはるかにたちが悪いんだからさぁ!」

苗木の言葉はどんどん熱を帯びていく。

その狂った考え方は……俺にはどうしても理解出来ない。

如月「……とんだ食わせものだったわけですか」

苗木「君と似たようなものだよ如月クン。君が犯罪者を殺して平和な世界を作りたいように、ボクは寄生虫を殺して平和な世界を作りたいんだ」

赤穂「……」

こいつは、狂ってる。

こんな狂った考えでみんなは殺されたっていうのか。

モノクマ「うぷぷ……いいねぇ!ボクが言うのもなんだけど実にイカれてるよ苗木クン!」

苗木「酷いなモノクマ。こんなに寄生虫達を消せたんだから褒めてくれたっていいのに」

御影「狂ってる……狂ってるよあんた……!」

苗木「んっ?」

御影「みんなが、いったい何したって……」

苗木「あはは、死ぬ病気大量に抱えて生きてる化け物に狂ってるとか言われたくないよ」

御影「っ……!」

赤穂「お前っ!!」

道掛「苗木、てめえ!!」

牡丹に対する暴言、俺はそれを許せなくて苗木に掴みかかろうとする。

だけどその前に。

土橋「うああああああっ!」

土橋が苗木の胸ぐらを掴んで地面に叩きつけた。

苗木「いてて……どうしたの土橋さん」

土橋「許さないっ!」

赤穂「っ、土橋!」

津浦「ひっ!」

苗木の頬に土橋の拳が入る。

その衝撃で飛んできた歯が、床に転がった。

佐場木「おい、やめろ!」

遠見「土橋殿!」

佐場木や遠見が止めに入るけど、土橋はさっきの比じゃないぐらいに暴れている。

まずい!このままだと土橋は苗木を……!

土橋「アンタはっ……」

道掛「お、おい美姫ちゃん!?」

兵頭「土橋さん、それ以上は!」

土橋「殺してやる、アンタなんか殺してやる……ナワキィィィィィィィィィィッ!!!!」

御影「っ!」

土橋の咆哮が響き渡る。

それは憎悪という言葉でも生温い感情の爆発で。

情けない事に、俺はそれに当てられて脚が震えてしまう。

だけど、これほどの言葉や拳を受けても……


苗木「いいよ?」


苗木は涼しげに、笑っていた。

土橋「……は?」

苗木「いやだから殺していいよ土橋さん」

笑う。

笑う。

笑っている。

苗木「ボクを殺せばキミは処刑される!あはっ!つまり寄生虫がさらに1人減るって事だ!」

自分自身の命さえ、こいつには俺達を殺すための道具でしかない。

苗木「ほらどうしたの殺しなよ!殺してみなよ!ジェニーさんの仇だよ?ほらほら!」

土橋「うっ、あっ」

土橋の手を掴んで、自分の首に持っていく苗木。

力を込めればきっと首が絞まって苗木は死ぬ。

苗木「出来ないの?」

土橋「あっ、あっ……」


苗木「じゃあボクがやるよ」


赤穂「っ、土橋!離れろ!」

苗木の笑みに寒気を覚えた俺の言葉もむなしく。

土橋「あっ」

苗木は土橋の腕を掴むと……息をするように、骨を折った。

土橋「ーーーーーーっ!!?」

腹に響くような嫌な音の後、声にならない悲鳴をあげて土橋が床を転げ回る。

遠見「土橋殿!っ、今治療を!」

苗木「あはは、ボクが薬飲んでたの忘れるなんて頭悪いなぁ」

止まらない、止められない。

この悪意に満ちた男はどうしたら止められるんだ。

そんな絶望にも似た心は……

モノクマ「じゃあそろそろ始めようか!」

よりによって、こいつに救い上げられた。

苗木「あっ、もう?」

モノクマ「このまま任せてたらただの虐殺映像になっちゃうからね!キミも満足したでしょ?」

苗木「仕方ないな……まあ、こんな世界にも嫌気が差してたしそろそろ退場しようかな」

津浦「み、Mr.苗木……?アナタも処刑されるんですか?」

苗木「えっ?当たり前だよ。ボクは裁判で負けたからね」

佐場木「貴様……」

苗木「あはは、それじゃあモノクマ!寄生虫の顔も見飽きたし始めてよ!」

モノクマ「それでは今回は、黒幕である苗木誠クンにふさわしいスペシャルなおしおきを用意いたしました!」

苗木「じゃあね寄生虫!せいぜい早く死ぬ事を願ってるよ!」

モノクマ「それでは張り切って参りましょう!」

苗木「あははははははははははははははははっ!!」

モノクマ「おしおきターイム!!」

苗木「あっ、そうだ」







苗木「君達の中に黒幕もう1人いるから」












     CONGRATULATION!!

  ナワキクンがクロにきまりました。

    おしおきをかいしします。






最後の最後にとんでもない爆弾を残して……苗木は処刑部屋へと消えていった。

※※※※

苗木クンがいるのはベルトコンベアーで流れる机の上。

それはかの希望と絶望へのおしおきを思い起こさせるようなそんな光景。

【既習】

【コロシアイ研修旅行黒幕苗木誠処刑執行】

モノクマの授業を聞きながら苗木クンは退屈そうにあくびをします。

その後ろでは彼を潰さんとプレスが大きな音をたてていて。

ゆっくりと迫り来る死の気配……しかし苗木クンはどうでもいいのか眉1つ動かそうとしません。

そしていよいよ苗木クンの座る机がプレスの下に……入ると同時に穴が開き、苗木クンは穴の中に落ちていきます。

それはあの希望の再現なのか……モノクマが穴を覗くと大きな音をたてて下から何かが上がってきます。

そして。

槍だらけの鉄板に串刺しにされた苗木クンが。

そのまま止まっていたプレスと上がる鉄板に押し潰されました。

モノクマ「エクストリィィィィィィィムッ!!」

モノクマ「苗木クンもお疲れ様だったね!これからはボクが改めてコロシアイを盛り上げていくよ!」

如月「モノクマ……苗木さんの言葉は本当なんですか」

モノクマ「うぷぷ、黒幕がもう1人って話ならボクがその証明でしょ?」

兵頭「それでは本当に……」

津浦「黒幕が、ワタシ達の中に……?」

モノクマ「うぷぷ、まあそこのところはノーコメントって事で!」

土橋「……」

遠見「っ、土橋殿を治療したいのでありますが」

モノクマ「うん、もう戻っていいよ!うぷぷ、これからもっともっとコロシアイは絶望的になるから楽しみにしててね!」

モノクマが消えて、土橋を連れた遠見もいなくなって……

佐場木「もう1人、か」

如月「……まだ終わらないんですね」

道掛「もうわけわかんねえよ……」

六山「……ゲームする相手、いなくなっちゃった」

そしてどんどん人が減って……

赤穂「……」

御影「……」

俺と牡丹だけが、残された。

御影「……兄さん」

赤穂「……ありがとうな牡丹。代わりに苗木を、追い詰めてくれて」

御影「……兄さんは二回もあんな事してたんだね」

赤穂「……ああ」

御影「重い、ね。投票もだけど……直接追い詰めるのはもっと」

赤穂「……」

御影「ごめん、やらないといけなかったのはわかってるんだけどっ……」

牡丹はもう言葉にならないのか涙を流す。

それは緊張から解き放たれた安堵か、人を1人処刑へと誘った後悔か……

赤穂「……」

御影「あっ」

赤穂「俺の前で泣くのを我慢しなくていい」

だけど俺のやる事は変わりはしない。

御影「うっ、うううっ」

赤穂「……」

妹の涙を受け止めるのは……兄としての役目だからな。


そして絶望的な夜は明ける。




だけど俺はまだ理解してなかった。

絶望はまだこれからだという事に。







CHAPT.3【悪意のアンノウンは高らかに唄う】 END

生き残りメンバー11→10人

To be continued...












【作りかけのウサミ人形】を手に入れました!

【スマイルクラウン(未完成)】を手に入れました!

【幸運の千円】を手に入れました!






CHAPT.3終了です。

色々あって筆を折っていましたが、ようやく再開する気力が戻りました。

なお今回のクロに関しては如月時代からの設定です。

希望厨絶望厨がいるならいわゆる凡人厨がいてもいいのではないかと思って産まれたキャラでした。

それではまた。

【????】

「そうか、苗木が死んだか」

「……」

「あいつの作る世界には興味もあったんだけどな。真に凡人のみで構成された世界……」

「……」

「こっちの様子?ああ、薄井が動いた。弟がもう既に処刑されてたなんて知らずにな」

「……」

「もし地獄があるなら今頃再会してるんじゃないか?」

「……」

「で?お前はこれからどうするんだ」

「……」

「ふーん、コロシアイは続行……まあ好きにすればいいさ。協力といっても俺達がしてるのは情報交換ぐらいだからな」

「……」

「そろそろ戻る?ああ、わかったよ」







佐木原「――じゃあな」

佐木原「お前の作るものが俺にとって興味深いものである事を祈ってるよ」












CHAPT.4【そして希望は捨てられた】(非)日常編






【赤穂のコテージ】

赤穂「……」

久々に戻ってきたコテージ。

そのベッドに座りながら俺は苗木に思いを巡らせていた。

このコロシアイの黒幕であり、何よりも才能を憎み滅ぼそうとしていた狂人。

赤穂「あいつが最期に言っていた事……」

黒幕がもう1人、俺達の中にいる。

モノクマはノーコメントと言ってはいたけど、それは肯定してるようなものだ。

赤穂「いったい誰が……」

考えても答えは出ない。

ここまで過ごしてきた相手だ、信じたい気持ちだって当然ある。

だけど苗木がああだった以上、もう誰が裏の顔を持つかなんてわからない。

そうしてグルグルと答えの出ない思考を繰り返す。

そんな無駄な時間を今俺は過ごしていた。

コンコン

「兄さん、私だけど」

赤穂「牡丹?」

ガチャッ

赤穂「どうしたんだ牡丹」

御影「新しい島に行けるようになったって」

赤穂「そうか……みんなも調査に?」

御影「うん、病院にいる土橋と遠見以外は行くみたい」

赤穂「……」

土橋……苗木に撃たれかけたり骨折られたならあいつは黒幕じゃないよな。

でもそう思わせる演技の可能性も……

御影「それと佐場木ともう1人のヒーローから伝言」

赤穂「伝言?」

御影「疑うのはこっちの仕事、だってさ」

赤穂「!」

御影「兄さん、どうせ苗木の言葉気にしてるんでしょ?」

赤穂「そりゃ、まあな」

御影「でも私も兄さんにはそういうの似合わないと思う」

赤穂「似合わないって」

御影「というか、ここには疑う専門が多いから……信じる専門がいてもいいんじゃない?」

赤穂「……」

信じる専門か……

赤穂「確かに、こうしてても何も好転しないしな……わかったよ」

御影「じゃあ早速新しい島に行こうよ。苗木がいなくなったとはいっても私1人はあんまり……」

赤穂「わかったわかった。俺も牡丹を単独行動はさせたくない」

御影「危ないから?」

赤穂「大切な妹だからだよ」

こうして俺と牡丹は新しい島に向かう事になった……

【第4の島・ウインターアイランド】

ビュオオ……

赤穂「……」

御影「……」

わかってはいた。

第2の島は夏、第3の島は秋……ならこの第4の島は冬だろうとは。

赤穂「……」

だけどいくらなんでも寒すぎるだろう!

なんだよ、この吹雪は!

モノクマ「」カチーン

御影「に、兄さん、凍ったモノクマの幻覚が見えるよ……」

赤穂「あれは現実だ牡丹……」

凍ったモノクマの持っている温度計はマイナス20度を下回っている……気温の差が激しすぎてコロシアイなくても死ぬぞこれ。

御影「くしゅん!」

赤穂「風邪引くぞ牡丹。とりあえず俺の上着着とけ」

御影「兄さんは?」

赤穂「まあ、なんとかなるだろ……」

いきなり出鼻をくじかれた気はするけど、俺達は改めてこの第4の島の調査に入る事にした……

【スケート場】

赤穂「ここはスケート場か……」

スケートなんてやる機会もなかったんだよな……今となってはこの足でさらに難しいだろうし。

赤穂「牡丹は滑れるのか?」

御影「やった事ない……」

赤穂「……」

まあ、牡丹も普通の青春とは無縁だったろうしな……

道掛「どわあああああっ!?」

御影「あっ、道掛だ」

見事に滑ってるな……身体全体で。

道掛「くっそ!なかなか難しいなこれ!」

赤穂「道掛」

道掛「おっ、赤穂と牡丹ちゃんか!スケートってなかなか手強いな!」

御影「よくチャレンジする気になるよ……」

道掛「あはは、まあ身体動かしてりゃ色々考えずに済むしな」

赤穂「……」

道掛「考えたってろくな事思い浮かばねえし、苗木の事も鞍馬の事もわけわかんねえけど……」

御影「道掛……」

道掛「俺はやっぱり身体動かして何も考えねえ方が似合うんだよな!だからもっとスケートに挑戦するぜ!」

そう言って道掛はまた滑っていってしまった……

御影「相当まいってるねあれ……」

赤穂「道掛、苗木や鞍馬とよく話してたからな……」

その果てがあれで、道掛にとってはショックな事だったはずだ。

赤穂「今は、そっとしておこう」

御影「うん」

【巨大冷凍庫】

赤穂「これ、建物丸々冷凍庫になってるのか」

御影「防寒用の服あるし、入ってみる?」

赤穂「そうだな……」

中は確かに寒かった……でも外が酷いからむしろ助かった感がある。

津浦「……」

赤穂「津浦?」

津浦「ああ、Mr.赤穂にMs.御影……」

どうしたんだ、何だか様子がおかしいけど……

津浦「ここを見てください」

御影「設計……あっ」

壁に彫られた設計士の名前、それは【グレゴリー・アストラル三世】。

赤穂「この冷凍庫は、グレゴリーが設計したのか……」

津浦「こんな形で、またあの人の名前を見るなんて」

壁の名前をなぞる津浦の横顔は複雑な表情で。

前を見る決意はしてても、ふとした事でまた立ち止まる……このコロシアイのつける傷をはっきり見せられたような気がした。

【温泉施設】

赤穂「ここは温泉か」

御影「寒いからありがたいね……」

兵頭「あら、お2人もこちらに?」

六山「あー」

赤穂「……六山は何をしてるんだ?」

六山「マッサージチェアだよ。結構肩とかこるんだよね」

御影「……まあ、そうかもね」

兵頭「こうしたマッサージ器具にサウナ……だいたいの物は置いてあるようですね」

赤穂「近くに温泉あるからかここにいるだけでなんだか暖かいな」

六山「あっ、そうだ。わたしと兵頭さんはこれから温泉入るけど2人も一緒に入る?」

赤穂「男1人は気まずいし遠慮しとく」

御影「えっと、私は……」

チラリと牡丹がこちらを見てくる。

ははあ、これは……

赤穂「牡丹、寒かったろうし入ってきたらどうだ?」

御影「えっ、でも」

赤穂「調査する場所は残り1つみたいだし、そっちは俺がしとく。それに」

赤穂「牡丹には友人付き合いを大事にしてほしいしな」ポンポン

御影「うっ……わ、わかった。ごめんね、私が連れ出したのに」

赤穂「いいっていいって。2人共、牡丹をよろしくな」

兵頭「わかりました」

六山「はいはーい」

さて、俺は調査続行といくか……

【モノクマ量産工場】

赤穂「うわっ!?」

なんだここ……モノクマが大量に!?

如月「……見るに堪えませんね」

佐場木「今回ばかりは貴様に同意だ」

赤穂「……」

珍しい組み合わせだな……

佐場木「どうやらこのモニターに奴の残りが表示されるようだな」

如月「……現時点で82体ですか」

赤穂「少ないのか多いのか判断に困りますね」

如月「一体一体は壊そうと思えば脅威ではありませんが」

佐場木「貴様に関しては他の誰かが処罰される……ふん、82人の命を引き換えにする計算か」

如月「そんな事出来ませんよ。たとえ1人でもそんな形で亡くしたら……僕は僕を許せません」

赤穂「……」

如月さん……

赤穂「……」

新しい島の調査は終わったけど……

赤穂「ああ、そういえば」

俺第3の島をしっかり調べた事なかったな……

赤穂「ほとんど病院にいたし、暗かったしな」

病院には今、土橋もいるはずだ。

様子見がてら、行ってくるか……

【病院】

遠見「赤穂殿?」

赤穂「遠見、土橋の様子は?」

遠見「固定はしたであります。後は自然治癒に任せるしか……本当は手術した方がいいのでありましょうが」

土橋「大袈裟だよメメ」

赤穂「土橋」

病室から出てきた土橋はギプスで固定した腕を吊っている……あれを人の手でやったんだよな。

土橋「土木作業してると結構骨折とかに関わるのも多いし、そんなに深刻でもないってなんとなくわかるから」

遠見「……何かあれば言ってほしいでありますよ」

土橋「うん、ありがとう。政城も来てくれてありがとうね」

赤穂「いや、そんな……それで、心はどうなんだ?」

土橋「……辛いし、憎いよ。誠を理解なんて出来ないし、したくもない」

赤穂「……」

土橋「でももう誠はいない。ジェニーの遺言もある……だからアタシは、生きるために頑張っていくよ」

赤穂「そう、か」

遠見「無理はしないように、お願いするであります」

土橋「うん」

【ホテルミライ・レストラン】

ここに集まるのも久しぶりだな……

佐場木「相変わらず手がかりはなしか」

如月「黒幕である苗木さんがいなくなったとはいえ、犠牲を考えると全く喜べませんね」

津浦「しかし、Mr.苗木が今までの全ての事件の引き金を引いていたのなら……これからはそういった事はなくなるのでは?」

兵頭「そうも言っていられないでしょう。私達の中にもう1人の黒幕がいるのならば」

苗木とモノクマが告げたもう1人の黒幕……

それは間違いなく疑心暗鬼の種を俺達に植え込んでいた。

遠見「それなのでありますが……今は考えない方がいいであります」

道掛「な、なんでだ?」

赤穂「単純に手がかりがない。この状態で疑いあってもただ険悪になるだけだ」

六山「ヒントなしでしらみ潰しにしてもこういうのはクリア出来ないもんね」

御影「それに……多分今までみたいには動けないんじゃない?」

土橋「もう1人が誠みたいにしたら今度こそ黒幕いなくなるもんね」

黒幕の存在は不安材料だ……でもそれで本末転倒の事態になるのは避けたい。

だから俺達はこんな逃げのような選択をするしかなかった……

【ホテルミライ・レストラン】

赤穂「……はあ」

話し合いでも特に実りはなく、俺達は解散する事になった。

佐場木は道掛を連れて新しい島の調査。

遠見は動きにくい土橋の手伝い。

牡丹は兵頭や津浦と頭の包帯を変えに行って。

如月さんはいつの間にかいなくなっていた。

そういうわけで……

六山「……」カチカチ

俺はなぜか六山と2人でレストランにいた。

赤穂「……」

だけど会話がない……六山がゲームしてるのはいつもの事だけど、いつにも増して空気が重い気がする。

六山「苗木くん」

赤穂「えっ?」

六山「わたしにも死んでほしかったのかな」

赤穂「……」

苗木は俺達全員を殺したくて直接鞍馬とジェニーを殺した。

それは、六山も例外じゃないだろう。

六山「結構仲良くしてたつもりだったんだけど、むしろ嫌われてたのかなぁ」

赤穂「……」

六山「苗木くんはわたし達を異物だって言ってた……彼からしたらわたし達はバグだったんだね」

赤穂「六山……」

六山「今まで色んなバグに対処してきたけど……まさか自分がバグ扱いされるなんてなぁ……」

ゲームをしていて下を向いている六山の表情はわからない。

だけど、その悲しげな声に俺はなんて言ったらいいのか、わからなかった……

気まずい空気から逃げるように外に出ると、牡丹と兵頭が歩道を歩いていた。

病院から帰ってきたみたいだな。

御影「あっ、兄さん」

赤穂「津浦は一緒じゃないのか?」

御影「また冷凍庫行くって別れたんだ」

赤穂「そうか……ああ、巻いてないみたいだけどもう包帯はいいのか?」

兵頭「私達は元々気絶させるための怪我だったので……苗木さんもそこは考えていたようです」

御影「私達がその場で殺されなかったのは、万が一見つかって学級裁判が起きるのを避けたかったんじゃないか……って兵頭が」

なるほど……あの時はまだ2人までのルールはなかった。

苗木はリスクを避けつつ全滅させるつもりだったはずだからな……

兵頭「しかし……苗木さんは黒幕だというのに、モノクマはなぜあんなルールを追加したんでしょう」

御影「どういう事?」

赤穂「苗木とモノクマは黒幕として繋がっていたはず……それなのにモノクマはむしろ苗木を邪魔するようなルールを作った」

御影「あっ、そうか」

兵頭「案外、モノクマは苗木さんとは違う目的で動いているのかもしれませんね」

違う目的……苗木が俺達の全滅なら、モノクマの目的ってなんなんだ?

【モノクマ量産工場】

佐場木「……」

赤穂「佐場木?」

モノクマの数が表示されるモニターを睨んで何をしてるんだ?

道掛「おっ、赤穂も来たのか」

赤穂「佐場木は何をしてるんだ、あれ」

道掛「ああ、今日でここに来てから2週間だろ?モノクマがどれだけの間隔で増えてんのか調べてんだと」

赤穂「そうだったのか……」

佐場木「……ふん、なるほどな」

道掛「おっ、終わったのか?」

佐場木「モノクマは4時間に一度、1日6体量産されるようだ」

赤穂「4時間に一回……また多いのか少ないのか微妙な数字だな」

道掛「つうかこれ止めるスイッチとかねえの?これとか」

道掛が壁にある見るからに怪しい赤いスイッチを押そうとする。

……それ押して大丈夫なやつなのか?

赤穂「ちょっと待……」

モノクマ「こらー!」

道掛「うおっ!?」

モノクマ「何してんの道掛クン!この工場の自爆スイッチ押そうとするとかさ!」

道掛「これ自爆スイッチなのかよ!?」

佐場木「なんでそんな物がこんな所にある」

モノクマ「うぷぷ、自爆スイッチはやっぱりロマンかなって思ったんだよね」

赤穂「ロマンって……」

モノクマ「だけど押すのは許さないよ!もし押したらおしおきだからね!」

道掛「危ねえ……押すところだった」

赤穂「少し考えた方がいいぞ……」

調査を再開した佐場木達と別れた俺は津浦の様子を見に冷凍庫に向かう。

津浦「……」ハァ-

白い息を吐きながら津浦は冷凍庫の中心に立って目を瞑っていた。

赤穂「津浦」

津浦「Mr.赤穂」

赤穂「あっ、もしかして邪魔しちゃったか?」

津浦「いえ、大丈夫ですよ」

津浦は冷凍庫を見渡しながら目を細める。

津浦「Mr.グレゴリーは……なぜ設計を続けたのでしょう」

赤穂「えっ?」

津浦「ワタシの両親の事故のように、いくら彼自身が素晴らしい設計をしてもそれを歪められて責任を押し付けられて」

津浦「あの人は、絶望しなかったんでしょうか」

赤穂「……」

グレゴリーがどうして設計を続けたのか、か。

赤穂「きっと、好きだったからじゃないか?」

津浦「好きだったから?」

赤穂「やっぱり絶望は、したと思うんだ。苦しくて辛くて悲しくて……でも好きな設計をそんな形で終わらせたくはなかった」

赤穂「答えはわからないけど……そんな気持ちだったんじゃないかって俺は思う」

津浦「好きだから……」ハァ-

息を吐く津浦が納得したかはわからない。

でもグレゴリーの設計に対する姿勢の根本はそこなんじゃないか……俺はそう思いたかった。

一度コテージに戻るという津浦を見送って、俺は島を回る。

遠見「……」

すると道を歩く遠見を見かけた。

赤穂「遠見!」

遠見「赤穂殿でありますか」

赤穂「土橋は一緒じゃないのか?」

遠見「さすがに怪我をした土橋殿を連れて調査をするわけにもいかないので……」

赤穂「ああ、確かにな……」

遠見「しかしこの島はまた気候が急激に変化するでありますね」

赤穂「そのわりにはなんだか動じてないな」

遠見「極寒の戦場もあったでありますから。妹と身を寄せあい、暖をとりながら進軍したでありますよ」

赤穂「へぇ、遠見妹がいるのか」

遠見「まあ、血は繋がってないのでありますが」

赤穂「そうなのか?」

遠見「そもそも自分は隊長殿が名前をくださるまで名前もなかったのであります」

赤穂「えっ?」

遠見「自分はその、戦災孤児だったのであります。妹とは奴隷市場で一緒にいた子でありますよ」

赤穂「……悪い。踏み込んじゃまずい話だったか」

遠見「いえいえ!今の自分は幸せでありますから!」

そう言って笑う遠見……いったいどれだけの苦労をしてきたんだろうな……

土橋「ううん……」

赤穂「土橋?」

マーケットに行ってみると段ボールの前で土橋が何やら困った顔をしていた。

赤穂「土橋、どうかしたのか?」

土橋「あっ、政城。ちょっと暇潰しに何か作ろうかなって道具を集めてたんだけどさ……」

土橋は吊られた腕を見て苦笑いすると、頭を掻く。

土橋「あはは、この腕じゃ運べないって今さら気付いたんだよね」

赤穂「それはまた……」

手伝えたらいいんだけど、俺も杖で基本的に片腕塞がってるしな……

赤穂「あっ、そうだ。確か台車があったはずだからそれに乗せて運ぼう」

土橋「それしかないか……なんか政城の苦労が少しわかった気がする」

赤穂「ははは……」

それから荷物をコテージに運ぶ土橋を手伝った。

だけど何か作るって片腕で出来るのか……?

如月「……」

ホテルの前で如月さんが佇んでいる。

その手には昨日の事件で見つけたバッジがあった。

赤穂「如月さん……」

如月「ああ、赤穂さん」

赤穂「そのバッジ妹さんの、なんですよね」

如月「えぇ、間違いなく……だから本当に不思議なんですよ」

如月「なぜ、これがここにあるのか」

赤穂「……」

如月「妹は死んで、その遺体が着けたままだったはずのバッジ」

如月「もし、もしも可能性があるとすれば……」

如月「あの男の関係者が、ここにいる可能性です」

赤穂「あの男って、まさか……」

如月「僕の妹を殺し、あなたの妹さんを傷つけた男」

如月「あのマッドサイエンティストの関係者が……」

赤穂「……」

ただでさえ色々あるのに、そんな奴までいるっていうのか……?

【赤穂のコテージ】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「夜10時になりました!」

モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」

モノクマ「うぷぷ、また明日……」

赤穂「……」

長い1日だった気がする……

それもそうか、学級裁判の後すぐ調査したりしてたんだから。

赤穂「……」

苗木の影に隠れる黒幕。

だけど苗木がいなくなった以上、これからはそいつが中心で動くはずだ。

赤穂「……頑張らないと、な」

もうこれ以上誰かを失ってたまるか。

それを心に刻みながら俺は眠りについた。

【15日目】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

赤穂「よし、牡丹を迎えに行くか」

【ホテルミライ・レストラン】

赤穂「おはよう」

御影「おはよ」

どうやら全員来てるみたいだな……俺達が最後か。

兵頭「土橋さん、どうぞ」

土橋「ありがと千。片手だとやっぱり不便だからね」

2週間経ってこうして集まって食事するのにも慣れた感がある。

道掛「千ちゃんの飯は相変わらず美味いな!」

遠見「佐場木殿、今日は……」

佐場木「予定としては……」

だけど7人もいなくなったという事実が、どこか空気を歪にしていて。

津浦「ふぅ……」

如月「……」

六山「うーん……」カチカチ

所々にある空席……それをつい意識してしまうのは、何でなんだろうな。

御影「どうかした兄さん?」

赤穂「いや、何でもない」

【倉庫】

赤穂「……」

静音が薄井に殺された倉庫。

ここからコロシアイは始まったんだよな……

如月「おや、赤穂さん」

兵頭「こちらで何を?」

赤穂「ああ、ちょっとな。2人はどうして?」

如月「少し思うところがありまして」

兵頭「ここは最初の殺人が起きた現場ですから」

2人も俺と同じか……

如月「僕は薄井さんを悪と断じました。彼が静音さんを殺した動機は……言ってしまえば【誰でもよかった】でしたから」

赤穂「……」

確かに薄井はお姉さんの事を心配してここから脱出しようとした。

だけどコロシアイの標的に静音を選んだ理由は……

兵頭「本当にそうなんでしょうか?」

赤穂「えっ?」

兵頭「私は静音さんが殺された理由は別にあると思いますよ」

如月「それは、苗木さんが誘導したからですか?」

兵頭「いえ、もっとはっきりした理由です」

赤穂「それっていったい」

兵頭「静音さんが、あの時誰よりも前向きだったからですよ」

如月「前向きだったから?」

兵頭「彼女は中止になりそうだった懇親会を行いたがっていましたが……それはなぜなんでしょう」

赤穂「それはきっと四方院さんの……」

兵頭「そう、静音さんは家族と慕う四方院さんのために頑張っていました」

赤穂「……ああ」

そういう事、か。

薄井の殺人の動機は……

如月「……嫉妬」

兵頭「姉の努力を否定するしか出来ない自分、一方ただひたすらに四方院さんのために動ける静音さん」

兵頭「きっと、薄井さんには眩しかったんでしょうね」

赤穂「……」

如月「……だとしても、それは」

兵頭「はい、身勝手な動機です。しかしそう考えると如月さんにも、彼の気持ちがわかるのでは?」

如月「……!」

赤穂「えっ?」

如月さんが、薄井の気持ちをわかる?

如月「……ああ、なるほど。これが、薄井さんの抱えていた」

如月さんも、誰かに嫉妬してるのか?

【水族館】

何となく聞く空気にもならなくて、俺は2人と別れた。

そして着いたのは……第2の事件が起きた水族館。

津浦「……」

道掛「……えーっと」

津浦がいるのはともかく道掛がいたのは予想外だったな。

赤穂「道掛、何してるんだ?」

道掛「お、おう、赤穂。琴羽ちゃんが水族館行きたいって言うから送ってきたんだよ」

赤穂「津浦が?」

津浦にとってここは辛い記憶しかないはずの場所。

そこに自分から来た……

津浦「……ありがとうございましたMr.道掛」

道掛「あっ、もういいのか?」

津浦「はい……Mr.赤穂?いつの間にここに?」

赤穂「ああ、いや。今来たところだよ」

津浦「そうでしたか……それに気付かないほど考えこんでいたのですねワタシは」

道掛「よくわかんねえけど……まだどっか行く?」

津浦「そうですね……次は射撃練習場にお願い出来ますか?」

道掛「うっし、わかった!」

津浦「それではMr.赤穂。ワタシはこれで」

赤穂「……大丈夫なのか?」

津浦「そうでありたいとは、思っています」

そう言って少し身体を震わせると……津浦は水族館から出ていった。

グレゴリーの死を受け入れて、次は思い出のある場所を巡って……

あれが津浦なりの、前の進み方なんだろうな。

【発電所】

鞍馬が殺された発電所……あいつは殺される瞬間までいったい何を考えてたんだろうな。

御影「兄さん」

六山「やっ、赤穂くん」

今日は事件現場でよく人に会うな……

御影「鞍馬はここで死んでたんだよね。私結局鞍馬の死体見てないから……なんか未だに信じられない」

六山「鞍馬くんは死にそうな雰囲気なかったもんね」

赤穂「それがそもそも間違った認識だったんだな」

鞍馬が殺されるなんてあり得ない……そんな認識だったあいつをそれこそ動くなんてあり得ないと思える黒幕の苗木が殺した。

あの事件はそれこそあり得ない事だらけだったんだ。

御影「鞍馬……私の才能知ってたんだよね」

六山「御影さんのって秘匿才能なのによく知ってたよね」

赤穂「……」

鞍馬は牡丹を死なせるなって言ってたけど……当たり前だそんなもの。

俺は絶対牡丹を死なせない。

あんな気分になるのは……もうごめんだ。

佐場木「……」

発電所を出て歩いていると、佐場木が考え込むように立っていた。

そこはちょうど、ジェニーが殺された辺り。

赤穂「佐場木」

佐場木「赤穂か」

赤穂「ジェニーの事、考えてたのか」

佐場木「クラヴィッツだけではない。ここで死んだ全員について考えていた」

赤穂「……」

佐場木「静音、四方院、鞍馬、クラヴィッツ……それに薄井やグレゴリーも死んだ裏にはあの男が関わっていた」

赤穂「苗木、だな」

佐場木「そして奴の悪意を見極められず、こちらの作業に参加させ情報を話していた……俺にはもう裁く資格などないのかもしれん。いや、それは事件の発生を許した時点でか」

赤穂「そこまで言わなくても……佐場木は事件が起きないように動き回ってるじゃないか」

佐場木「……なら聞くがな赤穂、もし御影が殺された時にお前はそれで納得するのか?事件を防ごうとしておきながら、結局妹を死なせた俺に思うところがないと言えるのか?」

赤穂「それは……」

佐場木「それが答えだ。頑張ったなど、殺された命の前には言い訳にもならない」

赤穂「……」

佐場木が自他共に厳しいのは知ってたけど、ここまで思い詰めてたのか……

佐場木「……変な話をしたな、忘れてくれ」

そう言って佐場木は行ってしまった……きっとまた見回りやチェックをするんだろう。

無理をして、倒れたりしなきゃいいんだけどな……

【温泉施設】

赤穂「気が滅入ってくるな……少し温泉にでも入って、リラックスするか」

※※※※

赤穂「はあっ……」

誰もいない1人きりの温泉……その暖かさに疲れやら何やらが溶けていく感覚。

赤穂「こんな状況じゃなければ、もっとよかったんだけどな……」

カラカラ

赤穂「んっ?」

隣に誰か来たのか……

「ごめんねメメ、付き合わせちゃって」

「自分が好きでしているので気にしないでほしいであります。1人では大変でありましょうし」

土橋と遠見か……

土橋「でもメメ、半次と色々やってたのに最近出来てないでしょ?」

遠見「佐場木殿は、お1人でも大丈夫でありますよ」

土橋「……心配そうな顔してるけど」

遠見「うっ」

土橋「やっぱり本当は一緒にいたいんだ」

遠見「……佐場木殿はきっと自分自身を強く責めているであります。あの人は真面目故に、妥協が出来ない」

土橋「ああ……確かに半次は頑固なとこあるね」

遠見「自分はそんなあの人に共に動くよう、頼まれて……しかし何が出来たのでありましょうか」

遠見「苗木殿への警戒を真っ先に外したのは自分で、それがなければもっと早く止められたかもしれないのに……!」

土橋「メメ……」

遠見「もしかしたら、自分がこうして土橋殿を介助するのは、ジェニー殿の事があるからで……」

土橋「メメ!」

遠見「……」

土橋「メメは悪くないよ。そもそもこんな事させる黒幕が全部悪い!そうでしょ?」

遠見「しかし」

土橋「半次もメメも自分達だけで抱えすぎなんだよ。まあ、アタシじゃ頼りないかもしれないけど……こうして話を聞くぐらいならするから」

遠見「土橋殿……」

土橋「美姫でいいよ!」

遠見「……美姫、殿」

土橋「はは、なんか湿っぽくなっちゃったね。もっと明るい話しようか!」

赤穂「……」

これ以上は、聞くべきじゃないな……

俺は気付かれないよう、そっとその場を後にした。

【赤穂のコテージ】

赤穂「ふー……」

お腹の傷も少しはマシになってきたな。

病院から持ち帰ってある傷薬を塗って、新しい包帯を巻く。

大怪我をしてから自分1人でこの手の事をするのにも慣れた。

赤穂「よし」

そういえば包帯と傷薬だいぶ減ってきたな……

赤穂「今度病院に行ったら確保しておくか」

服を着て、杖を持つとコテージの外に出る。

もうすぐ夜時間だからか、人の気配はない。

赤穂「……」

コツコツと杖が木を鳴らす音だけが響く。

特に行き先があるわけじゃない、ただ何かせずにはいられなかった。

【図書館】

赤穂「何か参考になりそうな本は……」

とはいっても日本語とせいぜい英語の本ぐらいしか俺は読めない。

だから本を選ぶのにほとんど時間はかからなかった。

赤穂「……」

日本語の本を片っ端から読んではみるものの、そこに手がかりになりそうな物はない。

佐場木や遠見、津浦が調べてる後だろうから当たり前なんだけどな……

赤穂「ふう」

流し読みしていた5冊目を机の上に放り投げる。

それがよくなかったのか、本は机の端に乗って、そのまま床に落ちた。

赤穂「あっ、しまったな」

カバーの外れた本を拾って……俺はそのカバーに封筒が貼り付いているのを見つけた。

赤穂「なんだこの封筒……」

試しに他の本も調べてみても何もない……どうやらこの本にだけ封筒が貼り付いているみたいだな。

赤穂「……」

何かある、そう直感して俺は封筒を外して中を見る。

折り畳まれた紙が1枚入ってる……それを取り出して広げて。

赤穂「……は?」

俺は固まった。

そこに書かれていたのはたった数文。

【六山百夏。
内通者として数日以内に殺人を起こせ。
さもなければ命はない】

だけど、衝撃を与えるには充分過ぎる内容だった。

赤穂「六山が、内通者!?」

どういう事だ、意味がわからない。

だって六山は静音を庇ってモノクマに反抗して見せしめに殺されかけたじゃないか。

如月さんが助けなかったら、あいつは……

赤穂「……だからか!」

この手紙、命はないって書いてある……一度殺されかけた六山は死に対する恐怖心がかなり強いはずだ。

だから従うしかなかった……死ぬのが怖いから。

赤穂「……どうする?」

この手紙を六山がまだ読んでないなら、数日中にあいつは殺される。

もし読んだ後なら数日中にあいつは誰かを殺す。

赤穂「どちらにしても六山は死ぬ……!」

どうにかしないといけない。

だけどどうすれば六山を助けられる?

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「夜10時になりました!」

モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」

モノクマ「うぷぷ、また明日……」

赤穂「っ、とにかくこの手紙はこっちで持っておこう」

俺は封筒ごとポケットに手紙を突っ込むと、図書館を後にする。

猶予はほとんどない……それでも何とかしないと!

【16日目】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

赤穂「くそっ!」

一睡も出来なかった……しかも特にいいアイデアも浮かばない。

このままだと次の事件が……

モノクマ「ああ、それとオマエラ!中央の島に集合してくださーい!」

赤穂「……!」

まさか、動機か!?

この状況でさらに動機だなんて……!

赤穂「とにかく、行くしかない」

【中央の島・未来機関第二十支部】

中央の島に行くともう全員集まっていた。

赤穂「……?」

だけど、様子がおかしい。

誰も喋らない、いや、それどころか互いの顔色を窺うような素振りを見せている。

いったい何が……

モノクマ「いやっほーう!全員集まってるみたいだね感心感心!」

佐場木「ちょうどいい……こちらも話がある」

モノクマ「話?」

佐場木「この指示書はどういう意味だ?内通者に殺人を行えと指示を出しているようだが」

赤穂「……!」

佐場木も六山への指示を見たのか!?

赤穂「佐場木、それは」


佐場木「俺は貴様の内通者になった覚えはない」


……えっ?

道掛「はっ!?ちょっと待てよ、内通者ってメメちゃんじゃなかったのか!?」

遠見「何の事でありますか!?自分は、兵頭殿が内通者だと……」

兵頭「あら、私は津浦さんに宛てた指示書を見ましたよ?」

なんだこれ……どうなってるんだ!?

みんながみんな、内通者に対する指示書を持ってる……ただ1つ、内通者の名前だけが違う指示書を。

モノクマ「うぷぷ、それこそがボクがオマエラを呼び出した理由!」

モノクマ「今回の動機!チキチキ内通者当てゲームだよ!」

六山「内通者当てゲーム?」

モノクマ「その通り!オマエラ全員に渡したのは内通者に対する指示書!」

モノクマ「つまりこのままだと内通者は数日中にコロシアイを発生させる事になるね!」

土橋「そんな……」

モノクマ「うぷぷ、さてさて誰が内通者なのかな?もしかしたら親しくしてる人かもしれないよ?」

御影「あんた……!」

今回の動機は、シンプルに疑心暗鬼を引き起こすものだってことか……!

モノクマ「内通者に殺されるか、内通者を殺すか、はたまた勘違いして内通者じゃない人を殺すか!」

モノクマ「うぷぷ、せいぜい面白い展開を見せてくださーい!」

内通者当て……しかも疑いは全員にある。

誰が内通者かわからない状況で、誰かに殺されるかもしれないリスクに囚われる。

赤穂「っ……」

直前に人当たりのいい苗木が豹変したのも拍車をかけて……最悪としか言いようがない動機だった。

モノクマが消えた後、俺達は互いに顔を見合わせていた。

ただでさえ黒幕がいるのにさらに内通者の存在を知らされて……冷静になれという方が難しい。

佐場木「……ちっ、如月」

如月「なんでしょう佐場木さん」

佐場木「貴様は歪みきった殺人鬼だが、内通者とも黒幕とも遠い……ある意味一番安全な存在だ」

赤穂「……」

確かに如月さんは命惜しさに内通者になるのも、黒幕としてコロシアイを引き起こすのもありえないだろう。

皮肉にも殺人鬼としての彼がそれを否定しているんだ。

佐場木「だから貴様に一任する。この状況をどうするかをな」

如月「どうするか、ですか……」

黒幕、もしくは内通者として疑われる人間が何を言っても悪戯に疑心暗鬼になるだけ。

だから佐場木は絶対に違う如月さんに託したんだろう……裁判官としてのプライド諸々を切り捨てて。

如月「そうですね……では提案なのですが、皆さん全員で動くと言うのはどうでしょうか」

道掛「全員?」

如月「内通者が誰であれ、ルールからは逃げられません。殺せるのは2人まで……全体で動けば一気に手出しがしにくくなる」

六山「……まあ、最初から人数も減って見張りやすくも、なってるしね」

如月「基本的に1つの場所にいて、動く場合は僕も一緒にいれば……一気に事件の発生確率は減少するかと思います」

【旧館】

固まるのに一番都合がいいだろうという事で俺達は旧館に向かった。

病院やマーケットから色々荷物を持ち込んで……一番広い広間に集まる。

如月「怪我をしている方は、特に赤穂さんと土橋さんは気をつけてくださいね」

土橋「うん、ありがとう」

赤穂「はい」

これから少なくとも内通者がはっきりするまでは俺達はここで寝泊まりする事になる。

消極的かもしれないけど、これが今は最善だと反対する人間はいなかった。

御影「兄さん……大変な事になったね」

赤穂「……ああ」

黒幕、そして内通者……抱える問題が多すぎる。

こうして不安を抱えたまま、俺達の籠城は始まった。

御影「はぁ……まさかこんな事になるなんて」

赤穂「黒幕の存在がほのめかされてた以上、いつこうなっても不思議じゃなかったけどな」

俺個人は牡丹がどちらでもないというのは確信してるけど、この状況じゃそれが通用しない事もよくわかる。

御影「兄さん?」

赤穂「んっ?ああ、どうした牡丹」

御影「どうしたじゃないよ、なんだかボーッとしちゃってさ」

赤穂「まあ、信じる専門とはいえ考えないといけない事は多いしな……」

御影「……」

赤穂「まあ、1つだけ言えるのは」クシャ

御影「んっ」

赤穂「何があってもお前を信じるのは間違いないって事だけだな」

御影「……シスコン」

赤穂「妹思いと言ってくれ……んっ?」

なんか視線を感じたような……

御影「兄さん?今度はどうしたの」

赤穂「いや……」

気のせい、か?

倉庫を覗いてみると、六山が箱に座ってゲームをしていた。

六山「ああ、赤穂くん。調子はどう?ゲームする?」

赤穂「遠慮しておく。というか、本当に六山はゲームを手放さないな」

俺の知る限り六山は食事時もみんなで集まる時も、それこそ学級裁判や処刑の時、自分が殺されそうになった時すらゲームする手を止めた事がない。

それが精神の安定に繋がるならと思ってたけど、さすがにこれはどうなんだ……?

六山「まあ、わたしはゲームなかったらろくな人生じゃなかったろうしね」

赤穂「えっ?」

六山「わたし、引きこもりだったんだよね。昔通ってた学校でいじめられてさ」

六山「家で親とかがとやかく言うのから逃げるためにずーっとゲームしてた。それこそ寝食忘れてね」

赤穂「それ、大丈夫だったのか」

六山「大丈夫ではなかったね。入院するはめになったし」

赤穂「入院!?」

六山「だから今は少しゲームの時間減らすようにしてるよ」

これで、減らしてるのか……

遠見「佐場木殿、自分自身を責めないでほしいでありますよ」

佐場木「……」

あれは、佐場木と遠見か?

遠見「自分も苗木殿の策略にかかったのは同じ。佐場木殿だけの責任ではないであります」

佐場木「……」

遠見「佐場木殿が犯罪を憎んでいる事は自分でも理解出来るであります。しかしそれで足を止めるのはそれこそ本末転倒というものでは?」

佐場木「……」

おいおい、あんなに言って大丈夫なのか?

万が一、何かあったりしたら……

佐場木「……お前にはかなわないな」

赤穂「……!」

佐場木があんな声出すの初めて見たぞ……

遠見「なんだかんだ、佐場木殿とは共に任務を行ってきた仲でありますから」

佐場木「たかだか2週間だろう」

遠見「戦場では1日共にいられないなど当たり前でありますから」

佐場木「……そうか」

遠見「そうでありますよ!」

赤穂「……」

佐場木が抱え込んでてどうしたものかと思ってたけど……

遠見がいるなら、大丈夫そうだな。

津浦「ふぅ……」

兵頭「お手伝いしますよ津浦さん」

津浦「あ、ありがとうございます」

赤穂「何してるんだ?」

津浦が持ち込んできたのは大量の本。

図書館で見た事あるやつばかりだ。

津浦「この辺りの言語の本はワタシしか読めないないので……もしかしたら何かヒントがあるのではないかと」

赤穂「そうか、わからない言語に紛らせておくなんていかにもモノクマがやりそうな事だな」

兵頭「もしそうなら津浦さんが今もここにいて助かりましたね」

津浦「……そうですね。確かにその通りです」

今もここにいる……兵頭の言外の意図を察したのか答える津浦の表情は明るくない。

津浦「時々思うんです、ワタシがこうして生きていられるのは奇跡のようなものだって」

赤穂「それは……」

兵頭「銃の持ち出しの件もありましたからね。あの時はグレゴリーさんが何とかしてくれましたが」

津浦「そう、ワタシの命はあの人に救われたものです……だから、出来る事をしたい」

赤穂「津浦……」

津浦「そして生きて、ここから帰って、あの人に……」

津浦「だから、頑張ります。ワタシにしか出来ない事を」

津浦はイヤホンを外して深呼吸を1つすると、本を取ってページをめくり始める。

赤穂「兵頭」

兵頭「はい、わかってます」

邪魔しない方がよさそうだからな。

本に目を通す津浦を残して、俺達はこっそり部屋を出た。

道掛「212……213……214……!」

声が聞こえてくるからどうしたのかと道掛がスクワットをしていた。

こもっていると自転車も出来ないもんな……

如月「303、304、305」

だけどなんで如月さんも一緒にしてるんだ?

道掛「っ、はぁ!ちくしょう、限界だ!」

如月「大丈夫ですか道掛さん?」

赤穂「どれだけやってたんだよ……」

道掛「おぉ、赤穂。いや、如月とちょっと勝負をな」

如月「500回を3セット……今は4セット目でしたね」

そんなに。

道掛「如月のやつ、涼しい顔してやりやがるからよ!なんか負けてられっかって気分になんだろ?」

如月「だからといって無茶はやめてください。道掛さんは脚を大切にする必要があるでしょう」

道掛「……へへ、サンキューな」

道掛は嬉しそうに如月さんが差し出した手を取る。

鞍馬の事、苗木の事……色々あった道掛にとって純粋に心配してくれる如月さんの気遣いが嬉しいんだろうな。

道掛「よっしゃあ、次は廊下ダッシュだ如月!」

如月「だから無茶は……」

赤穂「……」

いや、俺の考えすぎか……?

ちなみに道掛はその後佐場木に説教されてるのが見つかった。

赤穂「はぁ」

まだ裁判があって2日しか経ってない……それなのに起き続ける出来事に正直疲労がかなり溜まっていた。

赤穂「少し、寝るか……」

壁に寄りかかるようにして目を閉じる。

思った以上の疲労があったのか抗えない睡魔に俺はゆっくりと委ねるように沈んでいった。

「……」

※※※※

赤穂「んっ……」

「あっ、目が覚めた?」

赤穂「……?」

目覚めると後頭部に柔らかい感触……そして視界を遮る何か。

赤穂「……」

前にもこんな事があったな……

赤穂「……土橋?今回は熱中症にはなってないぞ」

土橋「なんか寝苦しそうだったから膝枕してみたんだけど……迷惑だった?」

赤穂「いや、驚いただけだよ。ありがとうな、骨折してるから大変だったろ」

土橋「まあ、ちょっと苦労はしたけど……」

土橋はモゴモゴと口を動かしながらも、言葉は出てこない。

まあ、言いにくいなら無理に聞かなくてもいいか……

赤穂「今何時だ?」

土橋「えっと、8時半だね」

赤穂「2時間くらい寝てたのか……んっ?土橋、いつから膝枕してたんだ?」

土橋「えーと、1時間くらいかな?」

赤穂「そんなにしてたのか!?」

長時間膝枕させてた事での足への負担を考えて思わず飛び起きる。

あっ、と声が聞こえた気もしたけどはっきりとはしなかった。

赤穂「悪かった。重かっただろ」

土橋「いや、そんな事は……」

赤穂「本当か?痺れたりしてないか?」

土橋「大丈夫だって!政城は心配しょ……わわっ!?」

立ち上がった土橋がバランスを崩して倒れそうになる。

咄嗟に手を出して支えたものの、俺も踏ん張りが聞かず結果2人で倒れるように床に転がった。

赤穂「いつ……大丈夫か土橋!」

土橋「う、うん、大丈夫」

どうやらうまい具合に骨折した腕を打つのは避けられたらしい。

赤穂「やっぱり痺れてたんじゃないか……怪我人なんだからあんまり無茶するなよ」

土橋「……だって」

赤穂「だって?」

土橋「したかったんだよ……政城に膝枕」

赤穂「……?」

俺に膝枕したかった?

なんで?

赤穂「俺そんなに寝苦しそうだったのか?」

土橋「……はあ?」

いや、なんでそんな冷たい目を……

土橋「この、鈍感政城!」

赤穂「ど、鈍感?」

土橋「アタシがなんで牡丹が側にいるって言うのを代わってもらってまで膝枕したと思ってるの!?」

赤穂「いや、今の初耳……」

土橋「好きだからに決まってるでしょ!?」

赤穂「は!?」

好き?

赤穂「誰が?」

土橋「アタシが!」

赤穂「誰を?」

土橋「政城を!」

赤穂「なんで?」

土橋「元々気になってたけど、はっきりしたのはジェニーの事があってから!」

赤穂「……」

土橋「…………あっ」

ようやく自分の言った事に気付いたのか土橋の顔が真っ赤になったり真っ青になったりする。

土橋「ア、アタシ何を……ご、ごめん!」

そして逃げるように土橋は部屋を飛び出していった。

赤穂「……」

土橋が、俺を、好き?

赤穂「……」

御影「兄さん、起きた……ってなんで床に寝てるの」

赤穂「牡丹」

御影「な、なにどうしたの?」

赤穂「悩みが増えた……」

御影「???」

【旧館】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「夜10時になりました!」

モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」

モノクマ「うぷぷ、また明日……」

赤穂「……」

道掛「なあなあ、赤穂の奴どうしちまったんだ?」

佐場木「土橋の話によると深刻なものではないようだが」

如月「……」

土橋「あああああ……アタシなんであんな」

遠見「美姫殿、何かあったのでありましょうか」

兵頭「……ああ、そういう」

津浦「……なるほど、理解しました」

御影「えっ、何を」

六山「あー、あー、フラグ成立しちゃったかなこれは」

内通者の警戒のために集まった俺達。

しかしその初日はそんな空気とはまるで無縁な様子で更けていった。

【17日目】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

赤穂「…………」

眠れなかった。

まさかこんな形で悩む事になるなんて……

兵頭「土橋さん、口を開けてください」

土橋「あ、あーん……」

赤穂「……」

道掛「なーに、美姫ちゃんと見つめあってんだよ!」

赤穂「痛っ!?み、見つめあってなんかいない!」

道掛「そうだったのか?悪い悪い!」

赤穂「……はあ」

本当、どうしたらいいんだ。

御影「へー、ほー、ふーん」

恥を忍んで牡丹に事情を話したら、返ってきたのはそんな言葉になってない返事だった。

なんでそんな冷めた目で見るんだよ……

御影「よかったじゃん、土橋って結構可愛いし、胸もおっきいし」

赤穂「茶化すなよ、本気で悩んでるんだぞ」

御影「なに、土橋嫌いなの?」

赤穂「いや、そういう話じゃなくてだな……多分土橋の好意はつり橋効果だと思うんだよ」

御影「つり橋効果ってあの危ない時のドキドキを勘違いしちゃうってやつ?」

赤穂「そうそう、だから……」

御影「兄さん、まさかそれ土橋に直接言った?」

赤穂「いや、まだだけど」

御影「ほっ……いい?絶対本人にそれ言わないでよ」

赤穂「えっ?」

御影「あのね、兄さん。勢いとはいえ告白した女の子にお前の感情は勘違いなんだなんて言ったらどれだけ傷つくと思う?」

赤穂「うっ……」

御影「土橋の気持ちに応える応えないは兄さんの自由だけど、少なくともその気持ちを否定するのは違うと思う」

赤穂「……」

どんな事があっても、やっぱり牡丹も女の子なんだな……

御影「いい、わかった?」

赤穂「お、おう……わかった」

だけどなぁ……

道掛「おー、とうとう美姫ちゃんが告ったのか」

六山「やっぱりフラグ成立してたんだね」

赤穂「道掛と六山は気付いてたのか?」

そういえばこの2人は病院にいた時、色々変な事を言ってたな……

道掛「当たり前だ!美姫ちゃんが赤穂に惚れてんのはしっかりわかってたぜ!」

六山「恋愛ゲームをしてればなんとなくね」

そんなもの、なのか。

道掛「……なあ百夏ちゃん。ちなみに俺のフラグは」

六山「あはは、道掛くんは友人ポジションでしょ?」

道掛「よくわかんねえけどバッサリ切られたのはわかるな!?」

道掛と六山の漫才を眺めながら俺は考える。

そんなにわかりやすかったのに俺、全然気付かなかったのか……

これでも、鋭い方だと思ってたんだけどな。

道掛「で、どうすんだ?まさか無視するわけにもいかねえだろ」

六山「バッドエンド一直線だね」

赤穂「だけどな、今はそれどころじゃ」

道掛「バッカヤロウ!こんな時だからこそだろうが!」

六山「うーん、生きる気力にはなるんじゃないかな?」

赤穂「……」

生きる気力、か……

佐場木「なるほど、そういう事か」

津浦「Ms.土橋らしいと言えばらしいですね」

佐場木と津浦にも話してみたらそんな反応が返ってくる。

なんだ、俺が思ってるよりこういう状況って受け入れられてるのか?

津浦「ワタシには気持ちがわかりますから」

佐場木「それが抑止になるなら俺は何も言わん」

赤穂「……」

理由は違えど、肯定には変わりないか……

佐場木「なんだ、否定材料がほしいのか?」

赤穂「えっ」

津浦「Mr.赤穂、そうなんですか?」

赤穂「いや、それは……」

佐場木「断りたいならただ断ればいいだけだろう。状況、その他の要因をいちいち言い訳に使う必要がどこにある」

赤穂「……」

津浦「Mr.赤穂……向き合ってあげてくれませんか?ワタシには、もうかなわない話ですから」

赤穂「……」

向き合う……だけど俺は……

遠見「なるほど……美姫殿から話は聞いていたでありますが」

赤穂「土橋、遠見に相談してたのか」

遠見「一昨日の事でありますが、肯定であります」

一昨日って事は、あの温泉で相談してたのかもな……

如月「赤穂さんはどうしたいんですか?」

赤穂「正直、わかりません」

覚悟もなく、いきなりの事だったからな。

遠見「赤穂殿、美姫殿は本気であります。それは自分が証明するでありますよ」

赤穂「……」

ここまで来ると俺もそんな気がしてきた……だけど俺の方がどう考えてるか自分で自分の気持ちがわからない。

如月「今は色々と大変な状況、赤穂さんが混乱するのも無理ありませんね」

遠見「おそらく美姫殿も、それは理解しているはずでありますよ」

赤穂「だろうな」

あれは本当に勢いだった、多分本人に言うつもりはなかったはずだ。

赤穂「……」

だけど俺は知った、知ってしまった。

赤穂「……」

もうわからなかった頃には戻れない以上、考えないとな……しっかりと。

兵頭「それで土橋さんを避けていると」

赤穂「言わないでくれ」

そう、考えるとはなったものの簡単に結論が出るわけがない。

そして結論が出ない内に土橋に会うのが躊躇われた結果……俺は彼女を避けるように動いてしまっていた。

兵頭「ヒーローもこういう事には形無しですね」

赤穂「仕方ないだろ……こんな事初めてなんだよ」

兵頭「あら、そうなんですか?ヒーローというぐらいですから、モテモテなのかと」

赤穂「むしろ腫れ物だったよ」

俺はいじめをなくしたりしてた関係上、関わるとろくな事にならないって扱いだったからな。

兵頭「なるほど……それならこうなってしまうのも仕方ないのかもしれませんね」

赤穂「……」

やれやれと言った感じの視線を向けられるのもそれはそれで腹が立つな……

いや、俺がしている事の結果と言えば、それまでなんだけどな。

兵頭「まあ、悩むのは特権と言いますから。頑張って悩んでくださいヒーローさん」

赤穂「なんか馬鹿にしてないか……」

兵頭「いえいえ、純粋な応援ですよ」

赤穂「あっ」

土橋「あっ」

ここは旧館……そこで避けるのなんてどうしても限界が来る。

だからこうしてばったりと出くわしてしまうのも、必然と言えた。

土橋「ま、政城……」

赤穂「ど、どうした?」

土橋「ちょっと、話があるんだけど」

赤穂「あ、ああ」

【事務室】

赤穂「……」

土橋「……」

……気まずい。

かなり露骨に避けてたしな……

土橋「あの、さ……昨日の事なんだけど」

赤穂「……!」

来たか……!

土橋「忘れて、ほしいんだ」

赤穂「……えっ」

忘れるって、昨日の告白をだよな……?

土橋「こんな状況なのに、アタシあんな事言って政城を困らせて……ジェニーが殺されたのだって、ついこないだの事なのに」

赤穂「土橋……」

土橋「本当に言う気なんてなかった!言えば政城が困るのわかってたから!なのに、我慢出来なかった……」

土橋の瞳からはボロボロと涙が溢れて、旧館の床に雫を落としていく。

土橋「ごめん、ごめんね……アタシ本当に馬鹿だ。みんな、黒幕とか内通者とかに対処しようとしてるのにアタシ……」

……俺、何やってたんだ。

こんな言葉を吐かせるのがヒーローのやる事か?

こんな辛い涙を流させるのがヒーローなのか?

土橋「……じゃあ、それだけ、だから」



違うだろう!

赤穂「土橋!」

土橋「っ!」

土橋の腕を掴んでこちらに振り向かせる。

その顔は耐えきれない苦痛を味わったかのようなそんな顔で。

こんな、辛そうな顔してるのをほっとくなんてそれこそ、ヒーロー失格だ!

赤穂「俺は土橋の告白に困ってたわけじゃない。ただ、戸惑ってたんだ」

赤穂「女の子にああ言われるなんて初めて、だったからな」

土橋「そう、なの?」

赤穂「ああ、だから正直……どう答えたらいいかもわからないんだよ」

俺のするべき事は考えるとか結論を出すとかの前に……

彼女と、話す事だったんだ。

赤穂「だから悪い。あの告白に答えはまだ返せない」

土橋「……うん」

赤穂「だけどな!忘れるなんて事もしない!」

土橋「……!」

まだ何もわかってやしない、結局結論は応えられないかもしれない。

赤穂「だから、待っててくれ」

だけど牡丹に言われたように、否定しない。

俺は土橋の気持ちを、受け止めて答えを返す。

そう、決めたんだ。

赤穂「必ず答えを返すから……ちょっとだけ、俺に時間をくれ」

土橋「……」

土橋は涙を拭うと、頷く。

土橋「待ってる、アタシ……政城の答え待ってるから」

その顔はとてもいい笑顔で。

俺は、なんとなくその笑顔をもっと見ていたいなと、そう思った。

【旧館】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「夜10時になりました!」

モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」

モノクマ「うぷぷ、また明日……」

赤穂「……」

まだまだ考えないといけない事や悩み事は多いけど、昨日よりは清々しい気分だ。

赤穂「……」

身体の芯から沸き上がるものを感じる。

それは黒幕に負けてたまるかという気持ち。

赤穂「絶対、生きて帰ってやるからな……!」

そう決意して、俺は眠りについた。

【18日目】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

赤穂「んっ……」

もう朝か。

「きゃあっ!?」

赤穂「!?」

この声は土橋!?

【旧館・倉庫】

赤穂「土橋!」

土橋「あ、あいたたた……」

声がした倉庫に来てみると土橋が、床に倒れて段ボールの下敷きになっていた。

遠見「美姫殿!?何をしているのでありますか!」

土橋「いやー、ちょっと落ち着かなくて倉庫漁ってたら段ボールが崩れちゃって」

道掛「うおっ、美姫ちゃん頭にコブが出来ててんぞ」

土橋「頭打っちゃって……」

津浦「Ms.土橋!少し頭を切ってますよ!」

土橋「うわっ、本当だ!?」

佐場木「全く、人騒がせな」

如月「何事もなかったならよかったじゃありませんか。とりあえず怪我を治療しましょう」

御影「じゃあちょっと傷薬取ってくるよ」

兵頭「私は朝食の準備を」

六山「ふああ……おはよー」

赤穂「今起きてきたのか……」

遠見「これでよし、であります」

あの後遠見が牡丹の持ってきた傷薬を塗って土橋を治療した。

たいした怪我ではなかったみたいで、ガーゼだけで済むぐらいのもので正直安堵する。

土橋「悪いね、メメ。みんなも心配かけてごめん」

六山「まさか寝てる間にそんな事があったなんて」

御影「むしろよく寝てられたね」

兵頭「本当結構悲鳴大きかったのに……はい、土橋さん」

土橋「あむっ」

佐場木「……警戒が足りないんじゃないか」

道掛「でもこうしてこもってからは何もねえからな」

如月「現状怪しい動きをしている人もいません」

津浦「何かあったと言えばMr.赤穂とMs.土橋の件ぐらいでしょうか?」

赤穂「おい津浦!?」

いくらなんでもそこを持ち出す必要はないだろう!

佐場木「とにかく倉庫を片付けるぞ」

道掛「俺もやるぞ!」

そうして今日も1日が始まった。

あれから何人かは倉庫に行ったり、各々動いたり……今この場には俺と土橋だけが残された。

土橋「うー、頭痛い」

赤穂「大丈夫なのか?」

土橋「結構思いっきり打っちゃったからね……」

赤穂「だいたいなんで今は片腕しか使えないのに無茶したんだ」

土橋「……だって本当に落ち着かなくて」

赤穂「……もしかして昨日の事か」

土橋「……」コクッ

赤穂「……」

ま、まあ……そういう事なら落ち着かないのは無理ないか。

土橋「あー、もう2人きりだから余計落ち着かないよ。ちょっとトイレ行ってくる!」

赤穂「あ、ああ」

土橋が立ち上がって大広間のドアに向かう。

そしてドアノブを掴んで外に――







土橋「うぷっ……!」






赤穂「土橋?」

土橋「おええっ!」

土橋がいきなり嘔吐する。

そして、床に、倒れた。

赤穂「土橋!?」

土橋「ううっ、げほっ、頭、痛っ、ぐっ!」

なんだ、なんでこんな吐いて……

赤穂「誰か来てくれ!!土橋が!!」

俺の叫びにみんなが集まってくる。

そして土橋を見て、息を呑んだ。

遠見「美姫殿!何が起きたのでありますか!」

赤穂「わからない!ただ急に吐き出して……」

道掛「吐いた……あっ、おい赤穂!美姫ちゃん頭痛するとか言ってなかったか!?」

赤穂「そ、そういえば頭痛いって」

道掛「やべえ、やべえやべえやべえ!!俺大会で頭打った後に頭痛い吐き気するってぶっ倒れた奴見た事あんぞ!」

佐場木「そうか、頭を打った際に脳が傷付いたのか……!」

赤穂「は……?」

御影「そ、それでどうなったの!」

道掛「し、死んじまった……」

津浦「そんな!」

兵頭「どうにかならないんですか!?」

六山「とりあえず病院に……」

如月「しかしこれは医者がいなければ……!」

なんだよそれ。

さっきまで普通に話してたんだぞ?

それがこんな、こんな……!

土橋「政、城……」

赤穂「土橋!しっかりしろ!今病院に」

土橋「アタシ、死ぬの……?」

赤穂「そんな事言うな!ジェニーの遺言通り生きるんだろう!?」

土橋「アタシ、まだやりたい事あるのに……」

土橋「アタシ、まだ答えを聞いてないのに……」

土橋「アタシ、アタシ……」

赤穂「お、おい……」







土橋「政城っ……アタシ、まだ、死にたくないよぉ……」

そう、泣きながら、呟いた土橋の俺に伸ばした腕は……

届く事なく、床に落ちた。






ピンポンパンポーン…!







モノクマ「死体発見!死体発見!」

モノクマ「捜査タイムの後学級裁判を始めまーす!」






赤穂「……」

何も、聞こえない。

何も、わからない。

ただ土橋の最期の言葉と顔が俺の心を抉る。

赤穂「……」

そしてわかった。

俺は。

※※※※

土橋「だってそれヒーローとして頑張って出来た傷でしょ?だったらむしろ勲章だって!」

※※※※

あの言葉をもらってから、俺は。

赤穂「土、橋……」

きっと。

赤穂「うわああああああああああああっ!!」

彼女に、惹かれていたんだ。

それが俺のあまりにも、遅い。

残酷な結論だった。







CHAPT.4【そして希望は捨てられた】(非)日常編 END

生き残りメンバー10→9人

NEXT→非日常編






一旦ここまで。

土橋さん退場です。

捜査はまた夜に。

それではまた。







CHAPT.4【そして希望は捨てられた】非日常編






【旧館・大広間】

モノクマ「うぷぷ、せっかく固まったのに何の意味もなくコロシアイが起きたみたいだね!」

如月「モノクマ……」

佐場木「ちっ、腹立たしい奴だ……!」

赤穂「……」

モノクマ「あれれ?赤穂クンボーッとしちゃってどうしたのかな?」

御影「ちょっとやめなよ!」

赤穂「……」

モノクマ「うぷぷ、もしかして絶望しちゃった?ねぇねぇ、どうなの?」

道掛「やめろよてめえ!今赤穂は……」

ダンッ!

津浦「っ!?」

兵頭「赤穂さん?」

赤穂「大丈夫、だ」

立ち上がって土橋の死体を見下ろす。

俺は結局、あんな無念な最期を迎えさせてしまった。

赤穂「学級裁判があるんだろう……やってやる」

遠見「赤穂殿……」

六山「本当に大丈夫なの?」

赤穂「ああ、土橋の無念は……必ず晴らす!」

それが俺のやるべき事のはずなんだ……!

    【捜査開始】

赤穂「まずはモノクマファイルからだ……」

【被害者は土橋美姫。
死体発見現場は旧館・大広間。
死亡推定時刻は8時2分。
被害者の頭部には瘤と切り傷がある】

赤穂「……」

このモノクマファイル……

コトダマ【モノクマファイル4】を手に入れました。
〔被害者は土橋美姫。
死体発見現場は旧館・大広間。
死亡推定時刻は8時2分。
被害者の頭部には瘤と切り傷がある〕

佐場木「土橋はお前の目の前で苦しみだしたのか?」

赤穂「ああ……いきなり吐き出して、倒れて、頭が痛いって」

佐場木「典型的な症状ではあるが、気になる事もあるな……」

赤穂「気になる事?」

佐場木「見てみろ、土橋の腕を」

赤穂「……これは、引っ掻いたような傷か?」

佐場木「朝にはこんなものはなかったはずだ」

赤穂「確かに……俺も見てない」

この傷、事件に関係あるのか?

コトダマ【土橋の死亡時の状況】を手に入れました。
〔土橋は赤穂と普通に話していたところいきなり吐き出して倒れた〕

コトダマ【腕の傷】を手に入れました。
〔土橋の腕に残されていた引っ掻いたような傷〕

遠見「美姫殿……」

土橋のそばに膝をついて口元を拭う遠見……ここ数日で仲良くなっていたみたいだから辛いんだろうな……

赤穂「遠見、大丈夫なのか?」

遠見「自分は、大丈夫であります。亡くなった人間はたくさん見てきたでありますから」

赤穂「……」

遠見「美姫殿の無念、自分も晴らしたいであります。だから赤穂殿、絶対に真相を突き止めるでありますよ」

赤穂「ああ、もちろんだ……それで、土橋に変わったところはあるか?」

遠見「1つ。美姫殿の吐瀉物に血が混じっていたであります」

赤穂「血が?」

だけど土橋の嘔吐は、脳にダメージがあった事が原因だよな?

それなのに血を吐いた?

これはいったい……

コトダマ【土橋の吐瀉物】を手に入れました。
〔土橋が吐いた物の中に血が混じっていた〕

【旧館・倉庫】

道掛「……」

赤穂「道掛?何してるんだこんなとこで」

道掛「赤穂か。いや、美姫ちゃんが死んだ原因朝の怪我だろ?もしかしたらそこに何かあるんじゃねえかって思ってよ」

赤穂「あの事故が、そもそも仕組まれてたって事か?」

道掛「それを調べに来たんだよ。だけどどうすりゃそんな事出来んのかさっぱりわかんねえ……」

赤穂「そうだな……道掛は佐場木と片付けしてたよな?そこで何か気になる事なかったか?」

道掛「うーん……あっ、そういやなんかパイプみてえなのがたくさん転がってたな!」

赤穂「パイプ?」

道掛「これだよこれ!」

道掛が持ってきたのは金属の棒……ちょうど俺の杖に似たような形の。

道掛「そういやこれ、昨日結構高いとこにあったんだよな」

赤穂「……!」

まさか、土橋は……

コトダマ【金属の棒】を手に入れました。
〔倉庫にあった赤穂の杖に似た形状の金属の棒〕

コトダマ【道掛の証言】を手に入れました。
〔事件前日、金属の棒は高い所にあった〕

【旧館・厨房】

兵頭「まさかこんな事になるとは……」

赤穂「朝食の時は土橋の様子に変わった所はなかったか?」

兵頭「そうですね、いつも通りでしたよ。ああ、ただ……」

赤穂「ただ?」

兵頭「機嫌がよかったのかなぜか私や御影さんも食べさせられまして……土橋さんの分だったのに本人は気付いてませんでしたが」

赤穂「ああ、なんか騒いでたのはそれか」

兵頭「だからこそ、今でも少し信じられない気持ちです」

赤穂「……」

コトダマ【兵頭の証言】を手に入れました。
〔土橋は朝食の時機嫌がよく、兵頭や御影にも自分の分のご飯を食べさせていた〕

【図書館】

津浦「……」ペラペラ

赤穂「津浦、捜査はどうだ?」

津浦「Mr.赤穂。今少し調べているところです」

赤穂「この本は?」

外国の本なのかタイトルからして俺にはなんて書いてあるか読めないな……

津浦「これは毒に関する本です」

赤穂「毒?」

津浦「Ms.土橋の腕にあったあの引っ掻き傷のような痕……それを調査していたこの毒に関する本で見た覚えがあるんです」

赤穂「なんだって!?」

津浦「……ありました。これです、【モノポイズン】」

赤穂「読んでみてくれないか?」

津浦「はい。【この毒は体内に侵入して1時間経った頃に強烈な頭痛と嘔吐感を引き起こす。特徴として少量の吐血、腕に引っ掻き傷のような痕が出来る事が確認されている】」

赤穂「それって、間違いなく……」

津浦「一致、しますね。さらに言えばこの毒、市販されているような物で作る事が可能ですよ」

まさか土橋はこの毒で……?

コトダマ【毒の本】を手に入れました。
〔図書館にあった外国語で書かれた毒に関する本。
赤穂はタイトルを読む事も出来なかった〕

コトダマ【モノポイズン】を手に入れました。
〔図書館の本に書かれた毒。
市販の材料で作る事が可能。
その効果は土橋に起きたものと一致する〕

御影「……兄さん」

赤穂「牡丹か、捜査はどうだ?」

御影「一応、色々調べてるけど……兄さん、本当に大丈夫なの」

赤穂「……」

御影「ねぇ、家族の前でぐらい弱音吐いてよ。なんか、今の兄さんすごく危なっかしいよ」

赤穂「……牡丹は、よく見てるな」

御影「家族だもん。当たり前でしょ?」

赤穂「……正直泣き叫びたい。後悔だらけで、膝をつきたくなる」

御影「……」

赤穂「でも負けるわけにはいかないんだ。泣き叫ぶのも後悔も、終わってからする」

御影「兄さん……」

赤穂「だから終わったら、ちょっと泣かせてくれるか?」

御影「うん、もちろん。兄さんがそうしたいなら」

赤穂「ありがとうな。お前は本当にもったいないぐらいの妹だよ」

御影「そ、そんな事ないって……あっ、それと捜査の事なんだけど」

赤穂「ああ、そうだった。何かわかったか?」

御影「土橋なんだけど、こもってからは一度も外には行ってないみたい。物とかも如月に頼んでたって」

赤穂「一度も外に出てないのか……」

そうなると、色々狭まってくるよな……

コトダマ【こもってからの土橋】を手に入れました。
〔土橋はこもってからは一度も外に行かず、欲しい物などは如月に頼んでいたらしい〕

六山「どういう事なのかな……」

赤穂「六山?どうかしたのか」

六山「あっ、赤穂くん。ほら、この金属の棒なんだけど」

赤穂「それは……」

道掛が昨日上にあったっていう……

六山「ほら一昨日赤穂くんとここで話したでしょ?あの時この棒、わたしの座ってた箱に入ってたんだよ」

赤穂「……それ本当なのか?」

六山「うん。一応中身確かめてから座ったし」

じゃあ、一昨日箱に入ってた棒が……昨日上に移動していたって事か?

それってつまり……

コトダマ【六山の証言】を手に入れました。
〔金属の棒は一昨日箱に入っていた〕

赤穂「……」

大広間のテーブルの上に朝土橋の治療に使った道具が残っている。

包帯、ガーゼ、傷薬……これを使った時はまだ土橋も元気だったっていうのに。

赤穂「……んっ?」

この傷薬、土橋だけに使ったにしては減ってるな……

赤穂「牡丹、ちょっといいか?」

御影「どうしたの」

赤穂「なあ、この傷薬どこから持ってきたんだ?」

御影「えっ?兄さんの荷物だけど」

赤穂「ああ、そうか。だったら減ってて当たり前か」

こもる前に病院から新しいの持ってきて使ってたしな……

御影「もしかして駄目だった?」

赤穂「いや、全然問題ない」

問題ないんだけど……何か引っ掛かるな。

コトダマ【傷薬】を手に入れました。
〔土橋の治療に使った傷薬。
赤穂の荷物から御影が取ってきた物で量が半分ほど減っている〕

【厨房】

赤穂「う、ん……」

なんだこれ……なんだか、ちぐはぐな気分だ……

赤穂「くそっ、考えがまとまらない」

水でも飲んで落ち着くか……

赤穂「……んっ?」

流しに、何か透明な物が……

赤穂「この匂い……傷薬?」

なんで傷薬が流しにあるんだ?

赤穂「あっ、これ……」

ゴミ箱に粉々の瓶……これもしかして傷薬の瓶か?

赤穂「……」

コトダマ【流しの傷薬】を手に入れました。
〔厨房の流しについていた傷薬〕

コトダマ【傷薬の瓶】を手に入れました。
〔厨房のゴミ箱に捨てられていた傷薬の瓶〕

如月「赤穂さん、捜査は順調ですか?」

赤穂「如月さん……えぇ、なんとか」

如月「土橋さんの事……本当に残念でした」

赤穂「いえ……あっ、あの1つ聞きたいんですけど」

如月「なんでしょう?」

赤穂「如月さんって、土橋に何か物を頼まれたりしました?」

如月「ああ、それなら確かに外出の際いくつかマーケットから持ってきてほしいと頼まれましたよ」

赤穂「それって具体的には」

如月「薬や洗剤がいくつかと、後バンドのような物を頼まれましたね。最も洗剤はなかったんですが」

赤穂「なかった?」

如月「はい、どうやら誰かが持っていってしまっていたようで」

赤穂「……もう1つ、旧館にこもってから外に出たのは誰ですか」

如月「赤穂さん、土橋さん、御影さん、六山さん以外の方は最低一度は外に出ていますね」

赤穂「……わかりました」

コトダマ【土橋の頼み事】を手に入れました。
〔土橋は如月に薬品や洗剤、バンドなどを頼んでいたらしい〕

コトダマ【なかった物品】を手に入れました。
〔マーケットから洗剤がなくなっていた。
誰かが全て持っていってしまっていたようだが……〕

コトダマ【旧館からの外出】を手に入れました。
〔旧館にこもってから外出したのは赤穂、土橋、御影、六山以外の6人〕

赤穂「……」

一応、あそこを見ておくか。

※※※※

赤穂「……あった」

大量の洗剤……マーケットからなくなっていたのはあれだ。

赤穂「中に入れないから、手に取れないけど……確認出来れば充分だ」

コトダマ【大量の洗剤】を手に入れました。
〔苗木のコテージの中にあった大量の洗剤。
マーケットからなくなっていた物と思われる〕

キーンコーン、カーンコーン…

モノクマ「うぷぷ、うぷぷぷぷぷ……」

モノクマ「いよいよお楽しみの時間がやってきたよ!」

モノクマ「そう、絶望渦巻く学級裁判の時間が!」

モノクマ「うぷぷ、オマエラ急いで中央の島に集合してくださーい!」

ブツン!

赤穂「……」

学級裁判……そう聞いても心は穏やかだ。

もう慣れてしまったからか、それとも……

赤穂「行く、か」

【中央の島・未来機関第20支部】

御影「これで4度目か……」

兵頭「今回は目の前で亡くなった分、気が重いですね」

道掛「だなぁ……」

津浦「しかしワタシ達のするべき事に変わりはありません」

遠見「その通りであります……それが美姫殿の無念を晴らす事になるでありますよ」

佐場木「……」

六山「まずは生き残る事を考えよう……うん」

如月「旧館にこもる案は僕が提案した事……必ず真実は明らかにします」

赤穂「…………」

モノクマ「うぷぷ、全員集まったみたいだね!それじゃあ学級裁判場に出発ー!」

モノクマに促されて、俺達はエスカレーターを降りていく。

一番最後に乗った俺の視線の先には8人の背中。

もう、半分しかいないんだな……

そう考える内に、学級裁判場にたどり着いた。

【学級裁判場】

モノクマ「ひよっこだったオマエラもなかなかいい顔をするようになったねぇ」

モノクマ「うぷぷ、そうして絶望に歪む顔は本当に最高だよ!」

モノクマ「さあ席についてくださーい!」

モノクマの戯れ言を聞き流して自分の席につく。

【超高校級の土木作業員】土橋美姫……

傷を見られたくなかった俺を慰めてくれた女の子。

ジェニーが殺されて悲しみと憎悪を見せた女の子。

……俺なんかを、好きになってくれた女の子。

だけど俺はもう彼女の好意に何も返せない。

六山「内通者、なのかなぁ……」カチカチ

道掛「くそっ、こんなに減ったなんて寒気がしてきやがる……!」

遠見「美姫殿……自分達は必ず、真相を……!」

彼女は、死んだ。

俺達の目の前で、死にたくないと泣きながら、死んでいった。

佐場木「今回の事件、どうなる……」

津浦「あれが使われたなら、いつ、どうやって……?」

御影「兄さん……」

今俺はヒーローらしくない感情を抱いてる。

だけどそれに逆らおうとは思えない。

もし土橋が殺されたって言うなら、必ず犯人は引きずり出す。

兵頭「こんなはずではなかったんですが……」

如月「……責任は果たします」

ズキズキと痛む胸を掴む。

忘れるな、この痛みを。

忘れるな、今渦巻くこの感情を。

赤穂「……絶対に」

今回のクロは、たとえ裁判を逃げ切っても殺してやる。

そう心の内に刃を隠しながら俺は挑む。

この、学級裁判を。

・コトダマ一覧表

【モノクマファイル4】>>722

【土橋の死亡時の状況】
【腕の傷】>>723

【土橋の吐瀉物】>>724

【金属の棒】
【道掛の証言】>>725

【兵頭の証言】>>726

【毒の本】
【モノポイズン】>>727

【こもってからの土橋】>>728

【六山の証言】>>729

【傷薬】>>730

【流しの傷薬】
【傷薬の瓶】>>731

【土橋の頼み事】
【なかった物品】
【旧館からの外出】>>732

【大量の洗剤】>>733

目の前で土橋が死んだ事は赤穂の心に深い傷を刻んだ。
その傷を抱いて向かう学級裁判。
憎悪に染まった赤穂の迎える結末は……


     【学級裁判開廷!】

モノクマ「はいはい、それでは学級裁判の説明をしまーす!」

モノクマ「学級裁判ではオマエラに誰が犯人かを議論してもらいます!」

モノクマ「その結果は投票によって決定され、正しいクロを指摘できればクロがおしおき」

モノクマ「ただし間違えたら……クロ以外の全員がおしおきされ、クロは自由の身となるのです!」

道掛「何から話すよ?」

佐場木「まずは初回の事件と同じように事故か他殺かを話し合うぞ」

六山「最初の事件……あの頃から人も随分減ったよね」

兵頭「感傷は後にしましょう。今は佐場木さんの仰るように議論をしなくては」

赤穂「……」

事故か他殺か……そんなの決まってる!

これは他殺だ……!

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>736
【モノクマファイル4】
【道掛の証言】
【金属の棒】

佐場木「事故か他殺か……」

佐場木「思う方に意見を出してみろ」

道掛「色々調べたんだけどよ……」

道掛「【事件の証拠はどこにもなかった】んだよな」

御影「じゃあ事故って事?」

津浦「しかし、【事件ではない】となると……」

遠見「自分は事件だと思うであります」

如月「ふむ、このままでは平行線ですね……」

これは事故なんかじゃない……

間違いなく誰かの悪意が働いてたんだ!

【事件の証拠はどこにもなかった】←【金属の棒】

赤穂「それは違ってるぞ!」


赤穂「違うだろ道掛、事件と示す証拠はあったはずだ」

道掛「えっ、そんなのあったか……?」

赤穂「あの金属の棒だよ」

六山「金属の棒って倉庫にあったあれだよね」

遠見「リストにもあるであります……赤穂殿、これの何が証拠となるのでありますか?」

赤穂「この金属の棒……これに隠された悪意が土橋は殺されたって証拠になる」

佐場木「悪意だと?」

そうだ、隠された悪意……それを俺は証明出来るはずだ。

【ショットガンコネクト開始!】

金属の棒にあった悪意……

それを示すのは……!

・コトダマ>>736
【道掛の証言】
【モノクマファイル4】
【兵頭の証言】

・課題
【金属の棒の使用者を示すのは?】
【金属の棒の状態を示すのは?】
【金属の棒の場所を示すのは?】

【道掛の証言】―【金属の棒の場所を示すのは?】

赤穂「……」

道掛によれば金属の棒は上にあった……

だけどそれはおかしいんだ……!

・コトダマ>>736
【大量の洗剤】
【毒の本】
【六山の証言】

赤穂「……」

なぜなら金属の棒が箱に入っていたのを六山が見ている……!

つまり、この金属の棒は……

【道掛の証言】―【金属の棒の場所を示すのは?】―【六山の証言】


・結論
【金属の棒を適当に片付けた】
【何者かが金属の棒を上に移動させた】
【金属の棒は二ヶ所にあった】

【何者かが金属の棒を上に移動させた】

赤穂「真相の道筋を繋いでみせる!」


赤穂「道掛、確かあの金属の棒は高いところに置いてあったんだよな?」

道掛「おう、そうだぜ!具体的には積み重なった段ボールの上にはみ出して置いてあったぞ」

赤穂「六山、金属の棒は一昨日箱に入っていたんだよな?」

六山「間違いないよ」

遠見「金属の棒の場所が移動している……?」

赤穂「俺はこう考えてる」

赤穂「誰かが金属の棒を箱から出して上に仕掛けたんだってな」

佐場木「……確かにあの散らばっていた金属の棒は気になってはいた」

御影「つまり誰かが金属の棒で罠を作っていたって事なの?」

赤穂「ああ、そうだ。そして土橋はそれを取ろうとして……」


遠見「その推理、捉えたであります!」反論!

【反論ショーダウン開始!】

・コトノハ>>736
【土橋の頼み事】
【なかった物品】
【旧館からの外出】


遠見「赤穂殿、それは偶然に頼りすぎであります!」

遠見「罠を仕掛けたとしても狙った時に動くとは限らず……」

遠見「そもそも美姫殿が金属の棒を取ろうとしなければ成立しないでありますよ!」

赤穂「そうだ、土橋は金属の棒を取ろうとした!」

赤穂「そして罠にかかったんだ……!」

遠見「【美姫殿が金属の棒を取ろうとする理由がない】であります!」

遠見「確かに結果的には金属の棒は落ちたのでありましょうが……」

遠見「それが罠だと断言は出来ないでありますよ!」

【美姫殿が金属の棒を取ろうとする理由がない】←【土橋の頼み事】


赤穂「その反論に正義はない!」


赤穂「いいや、土橋にはあったんだ……金属の棒を取ろうとする理由が」

遠見「それはいったい……」

赤穂「如月さん、土橋はバンドを持ってきてほしいって頼んでたんですよね?」

如月「えぇ、腕に着けるタイプの物を……まさか」

赤穂「……正直、信じたくない結論だ」

御影「もしかして、兄さん……」

赤穂「だけど他に浮かばないんだ……土橋があの金属の棒を取ろうとする理由」

道掛「どういう事だよ!?美姫ちゃんは何しようとしてたんだ!」

赤穂「土橋は……」







赤穂「俺の新しい杖を、作ろうとしてたんだ」






津浦「Mr.赤穂の……」

兵頭「新しい、杖」

赤穂「ああ……だから土橋は金属の棒を取ろうとした。俺の杖に似たあの棒を」

佐場木「それを見越して罠を仕掛けたのかもしれないな」

御影「そんな……」

赤穂「……」

遠見「これ見よがしに上に置かれた杖に相応しい棒……美姫殿はそれを見つけてしまった」

六山「土橋さんは腕を骨折してた。高いところにある棒を取るにも一苦労だったはずだよね」

如月「その結果……段ボールと共に崩れてきた金属の下敷きとなった」

道掛「なんてこった……」

土橋がなんで俺の新しい杖を作ろうとしていたのかはわからない。

だけどこの結論に、間違いはないはずだ。

赤穂「だからこの一件は事件」

赤穂「土橋は殺されたんだ……!」

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>736
【モノクマファイル4】
【土橋の死亡時の状況】
【土橋の吐瀉物】


佐場木「土橋が殺されたのはわかった。その前提で議論を進めるぞ」

津浦「犯人はやはり【内通者】なんでしょうか」

兵頭「今回の動機を考えても間違いないとは思いますが……」

御影「わざわざ罠まで作った以上【】突発的でもなさそう】だしね」

六山「でもそのわりにはお粗末だよね」

六山「【偶然脳が傷付いたから土橋さんは亡くなった】けど」

六山「わたしだったら一緒に厨房の刃物でも仕掛けとくよ」

道掛「百夏ちゃん怖えよ!?」

如月「しかし六山さんの言葉にも一理あります」

如月「この罠は片腕が使えず受け身も取りにくかったであろう土橋さんを殺すには【殺傷能力が低すぎる】」

遠見「表面上はたいした怪我ではなかったでありますからな」

土橋が殺されたのは間違いない……

だけどまだ疑問点はある。

【偶然脳が傷付いたから土橋さんは亡くなった】←【モノクマファイル4】


赤穂「それは違ってるぞ!」


赤穂「待ってくれ、そもそも土橋は本当に脳にダメージを受けて死んだのか?」

六山「……それって大前提じゃないの?」

道掛「そうだぜ、他にねえだろ!」

赤穂「だけどこのモノクマファイルを見てくれ」

佐場木「死因が書かれていない……赤穂が言いたいのはそういう事か」

赤穂「ああ、今までもモノクマファイルに書かれてなかった事は重要だった……」

赤穂「だから今回もそれは例外じゃないはずだ」

遠見「しかしあの美姫殿の死因が罠によるものでないのならば、いったい何が……」

兵頭「とにかく話し合いましょう。土橋さんはどうして亡くなったのかを、ね」

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>736
【こもってからの土橋】
【毒の本】
【腕の傷】

道掛「美姫ちゃんが【別の方法で殺された】ってマジなのかよ……」

六山「とりあえず色々あげてみよっか」

遠見「[撲殺]……ではなさそうでありますな」

兵頭「あの傷では[刺殺]にはなりそうにありませんね」

津浦「……[毒殺]では、ないでしょうか」

御影「[病殺]っていうのは?」

佐場木「勝手に手口を作るな……」

如月「さて、死因はいったい……」

土橋の死因はきっとあれだ……

[毒殺]←【腕の傷】

赤穂「それに賛成するぞ!」


赤穂「津浦の言う通り、土橋は毒殺の可能性が高い」

道掛「ど、毒!?んなもんどっから……」

兵頭「そう断定するからにはもちろん根拠がおありなんですよね?」

赤穂「ああ、土橋の腕にあった引っ掻いたような跡だ」

佐場木「あれか……」

六山「あれは苦しんだ土橋さんがつけたものじゃないの?」

赤穂「あれは一見引っ掻いた傷に見えるけど実際は違ったんだよ」

御影「ど、どういう事?」

あの跡は……ある毒が使われた証拠になるんだ!

【モノポイズン】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「モノポイズン……」

如月「モノポイズン?」

津浦「こちらの本に書いてある毒物です」

道掛「なんだそれ!宇宙語か!?」

佐場木「そんなわけないだろう」

兵頭「とりあえず、どんな毒物か教えていただけませんか?」

津浦「モノポイズンは体内に入って一時間前後で効果を発揮する猛毒です」

津浦「その際、腕には引っ掻いたような跡が残るのが特徴と書いてありますね」

六山「引っ掻いたような跡……土橋さんの腕にあるのそのままだね」

遠見「それでは美姫殿はその毒を用いて殺害されたのでありますか……」

赤穂「そういう事になる」

津浦「この毒は市販されている材料を使いますので、作るのは困難ではなかったでしょう」

如月「そんなに身近な物でそんな毒が……」

モノクマ「うぷぷ、そんなに驚く事はないよ!」

モノクマ「モノポイズンはボクが産み出した毒だからね!」

モノとついてる時点でそんな気はしてたけど、やっぱりそうなのか……!

兵頭「色々わかってきましたね」

御影「土橋は罠を仕掛けられていた……」

六山「そして毒殺されたんだね」

道掛「うーん、だけど本当にそんな毒簡単に作れんのか?」

津浦「材料は本当に簡単に手に入りますので。例えば……」

津浦がいくつかの材料をあげていく……それは俺達が日常で見るような物ばかりだ。

如月「……ちょっと待ってください」

遠見「どうしたのでありますか?」

如月「津浦さん、モノポイズンは本当にその材料を使うのですか?」

津浦「そうですが……」

如月「まさか、いやしかし……」

佐場木「なんだ、何かあるなら言え」

如月「……そのモノポイズンの材料ですが、僕は外出の際に旧館に持ってくるよう頼まれています」

道掛「だ、誰にだよ!」


如月「……土橋さんですよ」

赤穂「……!」

道掛「んっ?はっ?ちょっと待てよ、美姫ちゃんが……毒の材料を頼んだ?」

如月「津浦さん、これから僕があげるものにモノポイズンの材料となる物がどれだけあるか教えてください」

今度は如月さんが物の名前を告げていく。

そしてそれを確認していた津浦は……青ざめた顔で本を閉じた。

津浦「今、Mr.如月があげた物品は……バンド以外、全てモノポイズンの材料です」

御影「ちょっと待ちなよ!?土橋は被害者なんだよ!?」

六山「だけど土橋さんがモノポイズンの材料を頼んでたのは事実、だよね」

佐場木「……問題なのはその目的だ」

道掛「そ、そりゃ、毒を作る理由なんて1つしかなくね?」

赤穂「土橋が誰かを殺そうとしていたっていうのか!?」

兵頭「……1ついいですか?もしかしたら」







兵頭「土橋さんが、内通者だったのでは?」






赤穂「は……?」

土橋が、内通者?

兵頭「内通者は事件を起こさなければ命がないと脅されていました」

道掛「そ、それなら毒を作ってもおかしくは、ねえよな……」

待て。

六山「土橋さんが内通者だったなんて……」

津浦「そうなると、この事件に新しい展開が見えるのでは?」

待てよ。

佐場木「自殺か」

御影「じ、自殺はおかしくない?だって土橋は命がないって脅されて毒を作ろうとしてたんでしょ?」

なんだよこれ。

如月「躊躇った末に絶望したか……もしくは、赤穂さんをどうしても犠牲に出来なかったか」

なんなんだよ、これは!

赤穂「待て、待てよ!!なんで土橋が内通者だなんて話になってる!!あいつは被害者だ、あいつは死にたくないって泣きながら殺されたんだぞ!?」

おかしいだろ、なんでみんな被害者のあの子を責めるような雰囲気なんだ!!

兵頭「しかしだったらどう説明をつけますか?彼女がモノポイズンの材料を求めていた理由を」

赤穂「知るかそんなもの!!」

御影「に、兄さん……?」

ふざけるな、ふざけるなよこいつら……!

だったら証明してやるよ、土橋にはモノポイズンを作れないってな……!

【毒の本】

赤穂「お前らに正義はない……!」


赤穂「津浦!!今すぐその本を貸せ!!」

津浦「ひっ!」

差し出された本を奪い取ると全員に向けて適当なページを見せる。

赤穂「なあ、誰かこれ読めるか?」

道掛「い、いや……」

佐場木「どこの国の言語かぐらいしかわからんな」

兵頭「残念ながらわかりませんね……」

赤穂「そう、誰にも読めない、わからないんだよ!頭のいいだろう兵頭や佐場木にも!」

赤穂「だったら土橋にも読めなかったと考えるのが普通だろう!!」

御影「あっ……」

六山「じゃあどうして土橋さんは……」

赤穂「さあな!だけどこれで1つ結論が出た……」

モノポイズンを作る方法、そのための材料……そのどちらもこの本を読めないとわからない。

だったら毒を作れるのは……!

【津浦琴羽】

赤穂「お前しかいない……!」


赤穂「津浦、お前だろう?」

津浦「えっ?へっ?」

赤穂「そもそもこの本読めるのはお前だけだ。だったら毒を作れるのはお前しかいないんじゃないのか?」

津浦「ま、待ってください!なんでワタシが……」

赤穂「そんなの、お前が内通者だからじゃないか?」

津浦「は!?」

赤穂「お前は死ぬ事に随分怯えてたもんな?少なくとも銃を持ち出すぐらいには」

津浦「そ、それは……」

道掛「ちょっと待てよ赤穂!それは乱暴……」

赤穂「お前らも今土橋に同じ事をしただろう!!」

御影「……!」

赤穂「もう死んで反論出来ない土橋によってたかって内通者の罪を押しつけて……!」

佐場木「……」

赤穂「そもそも毒の材料は津浦にしかわからない!だったら嘘をついてる可能性もある……!」

如月「赤穂さん……」

赤穂「これでわかっただろう!お前らに正義なんて――」







パァン!!






喚く俺の言葉を遮るように響いたのは……一発の銃声。

その音の発生源は……上に向けて銃を構える。

遠見「全員、静粛にであります」

遠見、だった。

遠見「赤穂殿、はっきり言うであります……」


遠見「さっきから見苦しい、少し黙れ」


赤穂「っ……」

遠見の発するその気迫に俺は言葉を失う。

それだけ遠見からは……剣呑な雰囲気が漂っていた。

遠見「赤穂殿は美姫殿を信用していなかったのでありますか?」

赤穂「は?何言って」

遠見「それならあの感情のままに喚き散らすあれはなんでありますか?」

遠見「もし同じ立場に立っていたのが御影殿なら……赤穂殿は冷静に、それこそジェニー殿の疑いを晴らした時のように立ち回っていたはずでは?」

その言葉に、俺は冷や水をぶっかけられたような気がした。

そして思い返す……さっき自分の醜態を。

赤穂「なんだ、あれ……俺、なんであんな……」

遠見「頭に血が上った、それはわかるでありますよ」

遠見「しかしそれで津浦殿に罪を押しつけるのは違うでありましょう?」

遠見「冷静に考えれば……そもそも津浦殿が内通者ならモノポイズンの事など明かさなければいいのでありますから」

赤穂「……」

そうだ……俺、そんな事すら……

遠見「続いて……美姫殿が内通者だという話には少々無理があるかと」

兵頭「それはなぜですか?」

遠見「ちぐはぐだからでありますよ」

御影「ちぐはぐ?」

遠見「如月殿、美姫殿が材料を頼んだのは一度にでありますか?」

如月「そうですね……」

遠見「あの腕を見れば津浦殿は同じように調べるでありましょう。そうなれば一巻の終わりであります」

六山「だったら津浦さんを殺せば……」

遠見「それなんでありますが……今回の事件、自分は2つ確信してる事があるのであります」

佐場木「確信してる事だと?それはなんだ?」

遠見「……赤穂殿」

赤穂「なん、だ?」







遠見「おそらくあの罠もモノポイズンも、標的は赤穂殿であります」

遠見「そして」

遠見「内通者なんか、はじめからいないであります」












    【学級裁判中断!!】






今回はここまで。
次回学級裁判完結です。







     【学級裁判再開!】






赤穂「狙われてたのが、俺……」

いったい、どういう事なんだ?

遠見「1つ考えてほしいのであります、もしあの罠を赤穂殿が受けていたとしたらどうなっていたか」

御影「それは……」

佐場木「腕が不自由だった土橋と違い、赤穂は脚だ。おそらく逃げきれず押し潰されていただろうな」

六山「だけどそれにはそもそも、赤穂くんが棒を取りに行かないと」

遠見「……赤穂殿、その杖をよく見てほしいであります」

赤穂「杖を……?」

遠見に言われるがまま杖をよく見てみる。

赤穂「……!なんだこれ!?」

それは、微かな、だけどはっきりとした異常。

杖の下の方が……削れていた。

もしこのまま使っていたら、いずれ折れてバランスを崩していただろう。

遠見「これでも眼は自信がありましたので……それは明らかに人為的なものであります」

赤穂「……」

確かに杖が使えなくなったら、俺は代わりを取りに行ったはずだ。

そしてあの金属の棒を取ろうとする。

そうしたらどうなっていたか……考えなくてもわかった。

兵頭「あの罠が赤穂さんが狙っていたのはともかく……それでなぜ内通者がいないという話に?」

道掛「そうだぜ!メメちゃんはなんか確信があるみてえだけど……」

遠見「そもそも、自分は内通者がいるという話には正直最初から懐疑的だったのであります」

津浦「それはなぜ……」

遠見「もし内通者がいるなら黒幕である苗木殿が動きすぎなのであります」

御影「動きすぎ?」

佐場木「確かにそうだな……今までの事件、内通者の役割がまるでない」

六山「あっ、そっか。例えば静音さんに提案したり四方院さんに手紙送るのは内通者にさせればいいもんね」

六山「そうすれば自分のした事が事件を起こしたってさらにがんじがらめに出来るし」

道掛「だから百夏ちゃん怖えよ!?」

赤穂「言われてみればそうだ……それに、もし黒幕以外に内通者もいたならあの苗木が最期にそれを暴露しないのは不自然だ」

実際そこでガタガタになってた部分はあったしな……

如月「……ふむ、ならば聞いてみましょうか」

如月「モノクマ、内通者はいるんですか?」

如月さんの質問を受けて微動だにしないモノクマ……

長い時間が経ったかのような感覚……そして。

モノクマ「内通者?そんなのいないよ」

それが、モノクマの解答だった。

道掛「な、なんだよそれ!?いねえもんを当てろとか言ってたのか!?」

モノクマ「えっ?だからいないが正解だよ?」

御影「あんたそんなの!」

モノクマ「ボクは内通者がいるなんて言った覚えはないよ!」

モノクマ「もし内通者がいたらコロシアイを引き起こすっていうのをちょっとはしょっただけじゃん!」

佐場木「とんでもない暴論だな」

モノクマ「何さ何さ!内通者なんかいないって思えないオマエラの信頼関係とかがボロボロだってだけの話じゃない!」

赤穂「ぐっ……!」

さっきまでその事で雰囲気を悪くした俺はそれに何も言い返せない……

如月「内通者はいない……なるほど、ならば毒を作ろうとしたのはもう1人の黒幕ですか」

モノクマ「は!?」

佐場木「ふん、内通者がいない以上苗木のような裏で動く黒幕もしくは誰かが殺人を起こそうとして毒を作った事になる」

兵頭「後者の場合作れるのは本が読める津浦さんのみとなってしまいますね」

津浦「疑いは晴れたのではなかったんですか……」

赤穂「……待てよ、冷静に考えたらたとえ本が読めても、モノポイズンは作れないんじゃないか」

御影「えっ、なんで?」

そうだ、そもそもモノポイズンは作れない……

どうやっても不可能なんだ!

【なかった物品】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「……如月さん、土橋が頼んだ品物の中になかった物があったんですよね?」

如月「はい。洗剤がなくなっていましたよ」

津浦「えっ?洗剤がなければモノポイズンは作れませんよ」

六山「材料がないなら物理的に無理だもんね」

御影「じゃあモノポイズンはそもそも使われてないって事なの?」

兵頭「ですが先ほど津浦さんがおっしゃった内容とモノポイズンの症状は一致するんでしたよね?」

津浦「は、はい」

道掛「じゃあいったいどうなってんだよ!」

遠見「……」

佐場木「とにかく話し合うぞ……内通者はいないとわかった以上確実に進んでいるんだ」

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>736
【土橋の死亡時の状況】
【こもってからの土橋】
【旧館からの外出】


兵頭「モノポイズンの材料が手に入らなかった……」

御影「【モノポイズンは使えなかった】って事になっちゃうんだけど……」

遠見「ふむ……」

津浦「しかし【症状は一致しています】……」

道掛「わかったぜ!【美姫ちゃんは直前に別の毒飲まされた】んだ!」

【美姫ちゃんは直前に別の毒飲まされた】←【土橋の死亡時の状況】

赤穂「それは違ってるぞ!」


赤穂「いいや、それはない。土橋は直前まで俺と普通に話してたんだ」

赤穂「特に何も口にしてなかったしな……直前に毒を受けた可能性はまずないはずだ」

道掛「じゃあなんなんだよ!モノポイズンとかいうのは作れねえ!他の可能性もねえ!」

道掛「もうわけわかんねえ!いっそ苗木が化けて出たって言われても信じるぞ俺は!」

津浦「み、Mr.道掛、落ち着いてください」

赤穂「……」

苗木が化けて出た……

赤穂「そうかも、しれないな」

御影「えっ!?」

兵頭「とうとう気が……」

赤穂「もちろんあいつが幽霊になって土橋を殺したなんて言うつもりはない」

赤穂「だけど今回の事件にも、あいつの関与はあったはずだ」

六山「もう死んじゃった苗木くんが、どうやって関与するの?」

苗木の関与している証拠……

【大量の洗剤】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「念のため苗木のコテージを見てきたんだ……そうしたら中に大量の洗剤があった」

如月「洗剤……それはやはりマーケットからなくなっていた?」

赤穂「はい」

遠見「つまり苗木殿はモノポイズンを作成していた可能性が高いでありますな……」

佐場木「先ほどモノクマはモノポイズンを自分の作った物だと明言した。つまり黒幕である苗木はモノポイズンの作り方を知っていたわけだ」

兵頭「洗剤という物的証拠があるなら津浦さんが作ったというよりは説得力がありますね」

津浦「ほっ……」

御影「じゃあどうやって作ったかは問題じゃないって事だ。だって苗木が作ってたんだから」

赤穂「そう……そしてその事からはっきりわかる事がある」

赤穂「今回の犯人はもう1人の黒幕だ!」

モノクマ「はい!?どうしてそうなるのさ!」

赤穂「モノポイズンは黒幕である苗木が作っていた……そして苗木はもういない」

赤穂「つまりモノポイズンを使えるのは苗木と共犯だったもう1人の黒幕以外あり得ないじゃないか!」

モノクマ「そんなの、こっそり持ち出せば済む事でしょうが!」

赤穂「それはない!だって……」

【被害者以外のコテージには入れない】
【クロ以外のコテージには入れない】
【誰のコテージにも入れない】

【被害者以外のコテージには入れない】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「捜査中は被害者のコテージにしか入れない……そうだったよな牡丹」

御影「うん、モノクマははっきりそう言ってたよ」

赤穂「そしてそれ以外のタイミングはコテージの鍵がなくなった以上どうしようもない」

赤穂「ただ1人……このコロシアイを運営する黒幕以外はな!」

モノクマ「うぐぐ……」

遠見「おそらく美姫殿がモノポイズンの材料を如月殿に頼んだのは誰かに頼まれたからでありましょう」

佐場木「そうして毒の入手経路をあやふやにしようとしたわけか」

兵頭「……如月さんが洗剤がなかったと証言すればさらに混乱を招きますからね、道掛さんのように」

道掛「褒められたのか!?」

津浦「違います」

六山「苗木くんのコテージを調べた赤穂くんのファインプレーだね。でもどうして調べようと思ったの?」

赤穂「あいつは悪意に満ちた奴だったからな……なんとなく気になったんだ」

如月「彼ほどの悪は確かにいません……疑うのも無理はありませんね」

事実、あいつは関わっていた……苗木は死んだ後も俺達に牙をむいていたんだ。

兵頭「さて……入手経路はわかったところで次の議論にいきましょうか」

佐場木「土橋がどうやって毒を盛られたかか」

如月「津浦さん、それについて何か手がかりは?」

津浦「いえ、このモノポイズンはあらゆる使い方が出来るらしく……せいぜい発症まで1時間前後という事ぐらいしか」

御影「1時間……ちょうど朝起きたくらいの時間だね」

道掛「よしわかった!美姫ちゃんは朝飯に毒を仕込まれたんだ!つまり犯人は」

兵頭「何か?」

道掛「千ちゃん笑顔なのに怖っ!?」

御影「それは多分ないよ」

そう、朝食に毒はなかったはずだ……

【兵頭の証言】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「土橋は自分の分の朝食を兵頭や牡丹にも食べさせてたらしいんだ」

御影「そうそう、鼻歌なんて歌ってたし……うん、本当に幸せそうだったのに」

兵頭「御影さん、涙は後に回しましょう」

御影「ん、わかってるよ」

遠見「それなら自分も見たでありますよ」

津浦「つまり朝食にモノポイズンが入っていたら……」

佐場木「今頃この学級裁判は7人で行っていたわけだ」

六山「怖い話だね……」

道掛「朝飯が違うのはわかったけどよ、じゃあ他に何かあんのか?他に美姫ちゃんが口に入れたのとかなくね?」

如月「毒の侵入経路……重要でしょうから慎重に議論しましょう」

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>736
【傷薬】
【流しの傷薬】
【傷薬の瓶】


佐場木「モノポイズンをどうやって摂取したか……」

道掛「そうか!」

兵頭「黙っていてください道掛さん」

道掛「なんでだよ!?」

津浦「〔気体を吸引した〕可能性はないでしょうか」

如月「それならもっと被害が出ていたはずです」

御影「〔飲み物〕なら私達も手つけてないしあるんじゃない」

六山「あっ、わたしが間違って飲んだ……」

遠見「……〔塗った〕と、自分は考えるでありますよ」

毒の経路……それはきっとあれだ。

〔塗った〕←【傷薬】

赤穂「それに賛成するぞ!」


赤穂「そうだ……土橋は毒を塗られたんだ!」

道掛「俺もそれ言おうとしてたんだよ!」

津浦「塗ったとは……あの傷薬ですか」

兵頭「他に土橋さんが塗られた物は浮かびませんね」

赤穂「そう、土橋がした頭の切り傷……あれを治療するための傷薬にモノポイズンは仕込まれていたんだ」


御影「それは違ってるよ!」反論!


御影「ちょっと待って兄さん!それはないよ!」

赤穂「牡丹?」

御影「少なくともあの傷薬に毒はなかった……」

御影「私は断言するよ!」

【反論ショーダウン開始!】

・コトノハ>>736
【こもってからの土橋】
【傷薬の瓶】
【モノポイズン】


御影「あの傷薬に毒があったなんて絶対おかしい!」

御影「兄さんだってそれはわかるはずでしょ!」

赤穂「他に経路は考えられないんだ牡丹」

赤穂「モノポイズンは傷薬にあったとしか思えないんだよ」

御影「あの【傷薬は兄さんだって使ってた】じゃない!」

御影「だけど兄さんはこうして生きてる」

御影「それが傷薬に毒なんてなかったって証拠だよ!」

【傷薬は兄さんだって使ってた】←【傷薬の瓶】

赤穂「その反論に正義はない!」


赤穂「違うんだ牡丹、あの傷薬は……俺が使ってた物じゃない」

御影「えっ」

道掛「どういうこった?」

赤穂「厨房に傷薬の瓶が捨てられてたんだ」

兵頭「傷薬の瓶、ですか?」

赤穂「そうだ。犯人はモノポイズンの入った傷薬と俺が使っていた傷薬を入れ換えたんだよ!」

津浦「な、なぜそんな事を……」

赤穂「遠見の推測が正しいなら、俺を殺すためだろうな」

遠見「……」

如月「赤穂さんは腹部の負傷に傷薬を使っていましたからね……もし何も起こらずにそのまま使っていたら」

津浦「Mr.赤穂が、被害者になっていた……」

赤穂「……」

土橋は……俺を殺そうとした罠にかかって殺された。

くそっ、気分が悪い!

もし俺が早起きして塗っていたらそれだけで土橋は……………………



赤穂「……は?」

ちょっと、待てよ。

赤穂「モノ、クマ」

聞かないといけない。

モノクマ「何さ赤穂クン!また言いがかりつけたらただじゃおかないよ!」

赤穂「1つ、聞きたいんだ」







赤穂「俺が傷薬塗って死んでたら、クロは誰になる?」












モノクマ「そんなの赤穂クンに決まってるじゃない!毒を用意しただけでクロになるわけないでしょ!」






赤穂「…………」

最悪だ。

御影「兄さん?」

道掛「おいおい、顔が真っ白だぞ!?」

俺は今まで、毒を用意した奴がクロだと思っていた。

六山「えっと、どうしたの」

津浦「今の質問の意図はいったい……」

兵頭「……まさか」

だから議論をしてきたんだ。

佐場木「…………」

如月「……やはり、そうなりますか」

だけど、これは……

モノクマの言葉が、正しいならこの事件の、クロは……!







「――やっと、わかってくれたでありますか」






弾かれたように声の方を向く。

俺が見た彼女の顔は、落ち着いていた。

まるで、最初からこうなるのをわかっていたかのように。

赤穂「なんで、そんな穏やかなんだよ」

まさかわかってたのか?

それなのに毒を【塗った】なんて言ったのか?

赤穂「わかってるのか?今のモノクマの言葉を考えたら、今回のクロは……」

「もちろん、理解しているでありますよ……最初から」







遠見「美姫殿を殺したのは、自分であります」






道掛「は?はあ!?」

兵頭「遠見さん、あなたは……」

遠見「いや、さすがでありますな!自分もあえて黙って全員の成長に一役買ったかいがあるであります!」

御影「何、言ってるの……?」

遠見「モノポイズンが仕掛けられていたのは傷薬。赤穂殿が塗っていたなら薬を塗った赤穂殿がクロとなる」

遠見「つまり、今回は美姫殿に薬を塗った自分がクロとなる……それだけでありますよ」

津浦「Ms.遠見……最初からという事は、あなたはそれをわかった上で混乱を静めたんですか!?」

遠見「もちろんであります。だって自分は、ここにいる誰も犠牲になんてするつもりはないでありますから」

六山「怖く、なかったの……?」

遠見「軍人でありますから!」

如月「……残念です遠見さん」

遠見「……ありがとうであります」

赤穂「遠、見」

遠見「さあそろそろ投票タイムといくでありますよ。もう議論は――」







佐場木「黙れ……!」






遠見「佐場木殿……?」

佐場木「自分が犯人?下らん話をするならその口を閉じていろ」

赤穂「佐場木、だけど」

佐場木「前にも言ったはずだ赤穂」

佐場木「貴様だけで勝手に進めるのはやめろとな……!」

佐場木「遠見をクロとするなら俺が提示する疑問全てに答えを出してみろ!」

佐場木「それが出来ない限り、判決など下させるものか」

佐場木「絶対に、下させるものか!!」


佐場木「その推理を棄却する!」反論!

【反論ショーダウン開始!】

・コトノハ>>736
【こもってからの土橋】
【流しの傷薬】
【土橋の吐瀉物】


佐場木「まずは傷薬の件だ」

佐場木「貴様は傷薬にモノポイズンが仕掛けられ、自分の物と入れ換えられていたと言ったな?」

赤穂「ああ、そうだ」

赤穂「モノポイズンを用意した……多分黒幕は傷薬にそれを入れて交換したんだ」


佐場木「語るに落ちたな赤穂!」

佐場木「あの傷薬は大量に消費されていた!」

佐場木「つまり【他にもあの傷薬を使用した人間がいる】という事!」

佐場木「ならばなぜ土橋だけが死んだ?」

佐場木「それはあの傷薬にモノポイズンなど入っていなかったからだ!」

【他にもあの傷薬を使用した人間がいる】←【流しの傷薬】

赤穂「その反論に……!」


赤穂「傷薬は瓶だけじゃない、中身も捨てられていたんだ」

赤穂「流しにその痕跡がしっかり残っていたんだよ佐場木!」

佐場木「……ちいっ!」

赤穂「これで、もう」

佐場木「まだだ、まだ疑問はある!」


佐場木「その判決を不服とし、控訴する!」反論!

【反論ショーダウン開始!】

・コトノハ>>736
【土橋の吐瀉物】
【こもってからの土橋】


佐場木「そもそもモノポイズンは本当に使われていたのか?」

佐場木「腕の痕が傷である可能性は完全に否定されていない!」

佐場木「他の死因、他の毒、まだ議論の余地はある!」

赤穂「今さらそれを言うのか!?」

赤穂「モノポイズンの特徴と土橋の状況は完全に一致する!」

赤穂「もう認めてくれ佐場木!」

佐場木「認めるのは貴様だ赤穂!」

佐場木「【腕の痕のみが特徴】なら……」

佐場木「いくらでも説明はつけられる!」

【腕の痕のみを特徴】←【土橋の吐瀉物】

赤穂「……!」


赤穂「土橋の吐いた物の中に血が混ざっていた!」

赤穂「この少しの血もモノポイズンの特徴なんだ!」

赤穂「モノポイズンが土橋を殺した毒という事に議論の余地はない!」

佐場木「ぐうっ!?」

赤穂「頼む、もうやめてくれ佐場木!」

赤穂「お前だってもうわかっているはずだ……」

赤穂「この事件の真実に!」

佐場木「…………まだだ」

赤穂「佐場木……!」

佐場木「まだ俺の反論は終わっていないぞ赤穂政城!」

佐場木「上告だ!これで最後にしてやる……赤穂!!」

【パニックトークアクション開始!】

佐場木「赤穂が塗った場合赤穂は犯人となるた!」

佐場木「しかしそれが今回も適用されるとは限らん!」

佐場木「いいや!モノクマがわざわざ言及したからには違うと疑うべきだ!」

佐場木「今回の事件のクロはモノポイズンの作成者……!」

佐場木【苗木誠以外にいはしない!】



     禁止の

複数の        殺害

     ルール

【複数の殺害禁止のルール】

赤穂「もう、終わらせよう……!」


赤穂「苗木が犯人なら、苗木は2人以上の殺害禁止のルールを破った事になる」

赤穂「モノクマ、その場合はどうなるんだ?」

モノクマ「もちろん違反として知らせるよ!学級裁判も開きません!」

赤穂「……これが答えなんだ佐場木」

佐場木「こんな判決、こんな判決など……!」

佐場木「ぐうっ!うああああああっ!!」ダンッ!!

遠見「……佐場木、殿」

赤穂「…………」

【クライマックス推理開始!】

ACT.1
今回の事件は……あまりにも残酷なものだった。
被害者もクロも……本来とは違ったんだからな。

ACT.2
今回裏で動いていた黒幕は、何を狙っていたか俺を殺そうとしていた。
そのためにいもしない内通者関連の動機を出し、俺達を一ヶ所に固めさせたんだ。

ACT.3
黒幕は俺の杖と薬に細工すると、何事もなかったかのように過ごした。
罠とモノポイズン……どちらにかかって俺が死んでもいいようにな。
だけど……そううまくはいかなかった。

ACT.4
多分俺の杖の異変に気付いた土橋が罠のある倉庫に行ってしまったんだよ。
そして土橋は罠にかかり、怪我をした……この時の切り傷が土橋の運命を決めてしまったんだ。

ACT.5
そして土橋の治療のために今回犯人となってしまった人物は傷薬を使った。
モノポイズンの入った、傷薬を……何も知らずに。

赤穂「黒幕の企みは失敗した、俺は今も生きてる」

赤穂「土橋と遠見……2人を犠牲にして……」

遠見「……」

COMPLETE!

モノクマ「議論の結論が出たみたいだね!」

モノクマ「それでは投票タイムとまいりましょうか!」

モノクマ「オマエラ、お手元のスイッチで投票をお願いします!」

モノクマ「オマエラの答えが正解?それとも不正解?」

モノクマ「運命はどっちだー!!」

         VOTE

      遠見 遠見 遠見

       チャッチャッチャー!


     【学級裁判閉廷!】

今回はここまで。

次回おしおきと四章完結です。

それでは、また……

モノクマ「だいせーいかーい!」

モノクマ「今回土橋美姫さんを殺したクロは……」

モノクマ「遠見メメさんでしたー!」

遠見「……よかった、ちゃんと正解でありますね」

赤穂「……ぐっ、くっ」

なんだよこれは……!

俺はこんな、こんな結末を望んでたんじゃない……!

俺は、ただ……!

モノクマ「だけど全員正解ではなかったね!」

津浦「えっ?」

モノクマ「佐場木クン、ダメじゃない!裁判官のキミが間違えるなんて!」

佐場木「……」

道掛「さ、佐場木……」

佐場木は、最後まで認めなかったのか……

佐場木「……だ」

モノクマ「はい?なんか言った?」

佐場木「この判決は不当だ!今すぐ裁判のやり直しを要求する!」

モノクマ「えー?なんでそうなるの?」

佐場木「なんでだと!?この事件、遠見に土橋を殺す意思はなかった!毒を作った苗木、もしくはそれを仕掛けた貴様こそこの事件のクロとして裁かれるべき存在だ!」

如月「……」

佐場木「こんな判決、認めてたまるか!こんなふざけた……!」

佐場木の言葉は、ある意味俺達の言葉でもあった。

だけどそれを口に出せるはずもない。

佐場木と違って俺達は……遠見を差し出してしまったんだから。

遠見「佐場木殿!もういいでありますよ!」

佐場木「お前はこんな結果でいいのか!?お前は土橋を殺したかったわけでも毒の存在を知っていたわけでもない!それなのに……」

遠見「自分は軍人……戦場で死ぬ覚悟は常に出来ているであります」

佐場木「ここは戦場ではない!」

遠見「戦場でありますよ。これはモノクマと自分達の……戦争であります」

遠見は笑っている。

なんでだ、いくら軍人だからって……

御影「なんで……そこまで言えるの?」

遠見「……そうでありますね。モノクマ、少し昔話をしてもいいでありますか?」

モノクマ「お好きにどうぞ!うぷぷ、今は遠見さんが喋るだけで他の皆にダメージいきそうだし!」

遠見「……理由はともかく、許可は出たでありますか」

遠見は俺達の顔を見渡して、微笑むと口を開いた。

何人かには話したのでありますが、自分は戦災孤児でありました。

実のところ、自分は日本人ではないのであります……遠い血には混じっているみたいでありますが。

そんな自分は元々奴隷としていつか売られる運命の子供でありました。

名前は1番という番号、最年長だった事から同じように売られ、捨てられ、連れ去られた子供達のまとめ役をしていたのであります。

地獄でありました……病気や虐待で次々と死んでいく子供達。

それを見ながら、今日も生き延びられたと安堵し、そんな自分を嫌悪し……本当に最低最悪でありましたよ。

そしてとうとう自分ともう1人しかいないという状況で……自分は希望を、見たのであります。

「生きてるか」

「……あなた、誰」

「……」ガタガタ

「自分は」



切原「切原生人。傭兵だ」

隊長殿に救われた自分達は安全な場所まで共に過ごす事になったであります。

部隊の皆はとても優しくて、自分達を人間として扱ってくれて……

切原「名前はないのか」

「……はい」

「……」コクッ

切原「……なら自分が名前を贈ろう。そのままでも不便だろう」

「……!」

切原「……遠見、遠見メメ。それがお前の名前だ」

遠見「遠見……メメ……」

切原「お前はいい瞳をしている。これからはその目で遠く広い世界を見渡していけ」

遠見「……」

「……」クイクイッ

切原「ああ、お前にも贈らなくてはな……」

隊長殿はきっと、たいしたことをしたとは思っていないであります。

しかし、自分達にとって……この名前という贈り物がどれだけ希望となったか。

そして決めたのであります……隊長殿のように、自分も誰かに何かを贈れる存在でありたいと。

元々死んでいたはずの命、今という奇跡のような時間。

だから自分は、いつ死んでもそれを悲観も絶望もしないであります。

だって。

どんな時でも遠見メメの人生は幸福であったと、胸を張って言えるのでありますから。

遠見「だからそんな顔をしないでほしいでありますよ」

津浦「Ms.遠見……」

遠見「ここに来てからは、役に立てていなかったでありますが……それでもこんな自分を信頼してくださった人もいたであります!」

佐場木「……」

遠見「そして今回他の方がクロにならずに済んだ、それだけは救いであります」

道掛「ち、ちくしょう、メメちゃん……!」

遠見「……佐場木殿」

遠見が自分の髪を結う2本のリボンを佐場木に渡す。

遠見「1本は妹に、渡してほしいであります」

佐場木「……もう1本は」

遠見「あなたに、持っていてほしいであります上官殿」

佐場木「……はっ、こんな役立たずの上官にか」

遠見「自分を信頼してくださっただけで充分でありますよ!」

佐場木「……お前だけは、絶対に黒幕側ではないとわかっていたからな」

遠見「ずっと気になっていたのでありますが……なぜそこまで自分を信頼してくださったのでありますか?」

佐場木「覚えてないか……お前は昔、俺の命を救ってるんだよ」

遠見「えっ…………マジでありますか?」

佐場木「…………マジだ」

遠見「ぷっ、あははは!まさかそんな巡り合わせがあったとは!本当に世の中は不思議でありますなぁ!」

遠見は笑う、これで心残りはなくなったと言わんばかりに。

そんな彼女に、何も言ってやれない……そんな自分に腹が立った。

モノクマ「そろそろいいかな?なんか遠見さん、覚悟決まりすぎてつまんないし!」

遠見「全く、泣き叫ぶなど自分がするわけないでありましょうに」

遠見はモノクマに対峙するように歩いていく。

如月「……遠見さん、1つお願いが」

遠見「……わかったであります。自分もそうするつもりでありましたから」

なんだ?

今、如月さんと遠見が何か……

モノクマ「さてさて、それではおしおきといきましょう!」

遠見「……」

モノクマ「今回は【超高校級の観測手】である遠見メメさんに!スペシャルなおしおきを用意しました!」

遠見「……ふー」

モノクマ「それでは張り切ってまいりましょう!」

遠見「最後に1つ」

モノクマ「おしおきターイム!」







       GAME OVER

  トオミさんがクロにきまりました。

    おしおきをかい―――――












パァン!!






赤穂「は?」

銃声、そして機械が落ちる音。

兵頭「遠見さん!?」

遠見「……ふむ、強度はたいしたことないでありますね」

銃を手の中で回しながら、遠見が呟く。

佐場木「お前、何を」

道掛「そ、そうだぜ!モノクマを撃ったりなんかしたら!」

そう、遠見はスイッチを押そうとしたモノクマを撃って、破壊したんだ。

そんな普通ならあり得ない事を。

遠見「どちらにしても処刑されるなら変わらないでありましょう?」

六山「だ、だからって……」

遠見は、やってのけた。

モノクマ「ちょっと遠見さん!どういうつもりさ!スペアがあるからいいけど!」

遠見「最後に1つと言ったでありましょう」

御影「遠見、いったい何をするつもりなの……」

遠見「では改めてモノクマ」

モノクマ「……」

遠見「あんまり自分を舐めるな、この×××野郎」

そう吐き捨てて遠見は……学級裁判場を飛び出した。

【緊急事態発生】

【緊急事態発生】

学級裁判場を飛び出した遠見さんはモニターに映る警告をよそに走り出します。

向かう先は……モノクマ量産工場。

あっという間にそこにたどり着いた遠見さんは……笑って自爆スイッチに腕を叩きつけました。

【#/.\+%[<】

【超高。`級の観$ー手,'見メ@|刑執<+】

量産工場が爆発すると同時に量産されていたモノクマ達がぞろぞろと現れます。

その内の1体を銃で撃ち抜くと……遠見さんは再び走り出しました。


射撃練習場に飛び込んだ遠見さんがマシンガンや手榴弾を装備して、再び出てきます。

そこからモノクマと遠見さんの……戦争が始まりました。

※※※※

【学級裁判場】

モノクマ「ちょっ、ちょっ!?」

モニターの向こうでは今までの処刑とはまるで違う光景が繰り広げられていた。

遠見が群がるモノクマを次々に蹴散らしていっている。

爪や爆発で所々傷が増えてもまるで気にせずに、むしろ力強さが増していくように。

例えるなら、1つの芸術みたいに遠見は鮮やかにモノクマを確実に破壊していた。

赤穂「遠見……」

それをただ見ている事しか出来ない俺達……くそっ、何か出来る事はないのか!?

御影「あっ!?」

道掛「メメちゃん!」

モニターの向こうで遠見が髪を掴まれて動きを抑えられる。

痛みに顔を歪める遠見に向けられるモノクマの爪……終わり、なのか。







佐場木「諦めるな!!」






津浦「Mr.佐場木……!?」

まるで佐場木の声が聞こえたみたいに遠見がナイフで自分の髪を切り落とす。

そして髪を散らしながら、遠見は再びモノクマの大群に向かっていった。

赤穂「佐場木……」

佐場木「死ぬな!お前にはまだまだ俺の手伝いをしてもらわなければならん!」

御影「っ、そうだよ遠見!モノクマなんかに負けないでよ!」

道掛「頑張れメメちゃん!!負けんなぁ!!」

六山「遠見さん、ゲームオーバーにはまだ早いよ……!」

兵頭「こんな投票、私も認めたくない……遠見さん!」

如月「…………」グッ

赤穂「……遠見!死なないでくれ、生きてくれ!!」

俺達の声が遠見に届いてるかはわからない。

だけど俺達は声をあげずにはいられなかった。


※※※※

銃弾を、爪を、地雷を、爆撃を、遠見さんは最小限の傷に抑えながらモノクマに立ち向かっていきます。

戦車の下に滑り込み爆弾で爆破し、戦闘用ヘリを奪うとわざと墜落させモノクマを巻き込み、群がるモノクマ達をマシンガンで次々に破壊して……

そして銃撃の音が止んだ時……そこにいたのは満身創痍の遠見さんとモノクマ達の残骸。

遠見さんが大きく息を吐いてカメラを見ます。

向こうにいる仲間達に笑いかけた彼女が表情を変えて少し動くのと同時に……


遠見さんの脇腹が撃ち抜かれました。


血を撒き散らしながら転がる遠見さんが見る方向にはスナイパーライフルを構えたモノクマ。

遠見さんは流れ出す血とモノクマを交互に見て……意を決したように再び走ります。

そして……

最後のモノクマをバラバラにした遠見さんが血を流しながら歩いています。

そして木に寄りかかった遠見さんは笑みを浮かべるとゆっくりと目を閉じて……


そのまま、動かなくなりました。

赤穂「遠見……!」

遠見はもう動かない……彼女の命はここで燃え尽きてしまったんだ。

だけど遠見はただでは死ななかった。

モノクマ「嘘でしょ!?まさかスペア全部破壊されるなんて……!」

そう、モノクマが大量に用意していたスペア。

それを道連れに、遠見は死んでいった。

モノクマ「うぎぎ、遠見さんも酷い悪足掻きしてくれたよ!だけど――」


如月「終わりですね」


それはまるで最初の船で見た出来事の再現だった。

如月さんの拳がモノクマを貫いたんだ。

道掛「お、おい如月!そんな事したら……!」

だけどそれが意味するのは、悪夢。

如月さんがルール違反したら、本人以外の誰かが処罰される。

でもいくら待っても……その時は来なかった。

津浦「な、何も起きません、ね」

兵頭「ああ……だから遠見さんは」

御影「どういう事?」

佐場木「……モノクマのスペアと工場は遠見が破壊した」

六山「そっか、つまり今のが最後のモノクマ……もうルール違反してもそれを咎める存在がいない!」

赤穂「じゃあ、遠見はもしかしてそのために!?」

ふと思い出す……さっき如月さんと遠見が話していた事を。

如月『遠見さん、1つお願いが……』

遠見『……わかったであります。自分もそうするつもりでありましたから』

あれはこの時のための……

如月「遠見さんにはモノクマのスペアと工場を破壊してほしいと頼みました」

赤穂「如月さん……」

如月「そして僕が最後の詰めを行う。このコロシアイを終わらせるために」

如月さんは拳を握りしめる。

そこにあったのは、後悔の色。

如月「僕が手助けに入れれば……遠見さんは死なずに済んだ。万が一を考えてそれを行えなかった事だけが、無念です」

佐場木「遠見も納得しての作戦だろう。そしてあいつは……それを果たした」

佐場木は遠見に託されたリボンを見つめると、それを手首に結ぶ。

今佐場木が何を考えているかは俺にはわからないけど……その顔に絶望の色なんてない。

佐場木「黒幕もモノクマなしではコロシアイをまともに運営出来んだろう。後は脱出に向けての戦い……お前達にも手伝ってもらうぞ」

道掛「当たり前だろ!」

津浦「はい……!」

兵頭「ふふっ、今までと変わりません」

六山「クリアまで後少しだね……」

御影「もうこれ以上コロシアイは起きないんだ……」

如月「……全力を尽くします」

赤穂「ああ、もう誰1人死なずに脱出しよう!」

決意を新たにした、俺達。

もう俺達は負けたりなんか――







ゾクッ!






赤穂「っ!?」

な、なんだ、この寒気……

思わず辺りを見回す俺は……はっきりと見た。

牡丹の足下の床が、微妙に動くのを。

赤穂「……!」

ま、まさか!まさかまさかまさかまさか!!

逃げろって叫ぶ……駄目だ間に合わない!

如月さんに……これも駄目だ、間に合わない!

このままじゃ牡丹は……

赤穂「っ」

牡丹が死ぬ、血の海に沈む牡丹のイメージが脳裏に浮かぶ。

そんなの、させて、たまるか!

赤穂「あああああああっ!!」

叫んで牡丹に向かって腕を伸ばす。

普通なら無理だろうけど、俺には……これがある!

御影「痛っ!?」

伸ばした杖に突かれる形で牡丹がその場から押し出される。

そして、俺は。

俺は――

※※※※

御影「痛っ!?」

いきなり突き飛ばされて尻餅をつく。

お腹痛い……というか、これ手とかじゃない……兄さんの杖じゃない!?

御影「ちょっと兄さん、何する――」

いくら兄さんでもこれは許せない、そう思って文句を言おうとした私が顔を上げると。







赤穂「は、はは……」

身体中を、槍に貫かれた、兄さんが、いた。






赤穂「ごぼっ……!?」

津浦「ひっ!?」

道掛「あ、赤穂……?」

御影「え……?」

赤穂「っ、あ、が……」

血を吐いた兄さんがそのまま血だまりに崩れ落ちる。

えっ、なにこれ……なんで、兄さん、えっ?

如月「こ、これはいったい……っ、まさか!?」

如月が私の後ろを見て目を見開く。

つられて後ろを振り返ると……あいつが、いた。



モノクマ「アーハッハッハッハッハ!!」

いちゃ、いけないはずのモノクマが……笑って、いた。

兵頭「モノクマ、なぜ……スペアも工場も遠見さんが確かに!」

モノクマ「うん、確かに壊されちゃったよ。正直焦ったね!」

道掛「だったらてめえがなんでいるんだよ!?」

モノクマ「うぷぷ、あのさぁ……こういう時工場が1つしかないなんて誰が決めたの?」

六山「工場にも、スペアがあったの……?」

モノクマ「そのとーり!つまり、オマエラが頑張って応援してた遠見さんのしてた事は……最初っからなんの意味もありませんでしたー!」

佐場木「そんな馬鹿な……!」

モノクマ「そして如月クン!さっきキミ、ボクを壊したよね?」

如月「……!」

モノクマ「その連帯責任として、御影さんをおしおきするつもりだったんだけど……さすがお兄さん!赤穂クンが庇ってくれたよ!」

赤穂「っ……最初っ、から……そのつもりで……げほっ!」

私を、庇って……

私の、せいで……?

御影「兄さん、兄さん!」

倒れた兄さんの側に膝をつくと身体からどんどん溢れる血で、私の脚が濡れていく。

それを見て素人の私にもわかる、わかっちゃう。

もう、どうしようも、ない……

兄さんは、助からない。

御影「兄さん!兄さん!」

嫌だ、やだやだやだ!

何か、何かあるはず、兄さんの助かる方法、ああ、まず血を止めなきゃ、どこから止めればいいの、ああ傷薬、持ってない、違うまずは病院――

赤穂「……牡、丹。怪我はない、か?」

御影「私は無事!それより兄さんが……!」

赤穂「そう、か……ごめんな、杖で突き飛ばして、さ」

御影「そんな事どうでもいいよ!早く、早く治療……」

赤穂「牡丹」

兄さんの手が私の頬を撫でる。

ああ、なんで?

なんであんな暖かった兄さんの手がこんなに冷たいの……

赤穂「――守れて、よかった。お前は、生きて、くれ……そして、幸せになって…………」

その言葉を最期に残して……私の頬を撫でた兄さんの腕が、血だまりに落ちた。

御影「あっ、ああ……」

兄さんが動かない、兄さんが目を開けない、兄さんが喋らない、兄さん兄さん兄さん兄さん……



兄さんが、死んじゃった。

御影「いや、いやあああああっ!!」

道掛「う、嘘だろ……なあ、嘘だろ赤穂!!」

佐場木「こんな馬鹿なっ……!」

津浦「あっ、やっ、こんなの……」

兵頭「っ……最初から、私達は手のひらの上で……!」

六山「あんまりだよ、酷すぎるよ……」

如月「…………」

モノクマ「うぷぷ、いいねぇ!希望から一転絶望に叩き落とされた瞬間はやっぱり最高だよ!」

佐場木「黙れ!!」

モノクマ「嫌でーす!まだ本番はこれからだよ……ねぇ、如月クン」

如月「……!」

モノクマ「ちょっとね、1つ聞きたいんだけど……」







モノクマ「キミ赤穂クン助けられたのに、どうして助けなかったの?」






如月「……は?」

モノクマ「まさか出来ないとは言わないよねぇ?戦車相手にできた癖にあの槍には反応出来ませんでしたは通らないよ!」

兵頭「何を、言って」

モノクマ「うぷぷ、当ててあげようか?キミが赤穂クン助けなかった理由」

如月「何を、ふざけた」


モノクマ「キミ、妹が生きてる赤穂クンを殺したいほどに嫉妬してたでしょ?」


津浦「し、嫉妬?」

道掛「どういう事だよ!!」

モノクマ「如月クン、キミ御影さんと同じ才能の妹さんがいたよね?」

佐場木「同じだと……」

モノクマ「だけどその妹さんはもういない!死んでしまってる!」

モノクマ「だからさ……妹が生きてていつも仲睦まじい赤穂クンが羨ましくて羨ましくて羨ましくて羨ましくて羨ましくて羨ましくて羨ましくて」

モノクマ「死ねばいいって思ったんでしょ?」

如月「…………」

御影「……そう、なの?」

如月「……ぁ」

如月「……あああああアアアアアアアアアアアッ!!?」

佐場木「如月!?」

如月「ち、違います、僕は正、正義を……」

モノクマ「正義ぃ?赤穂クンを殺すのがキミの正義なわけ?」

如月「違う!!僕は!」

モノクマ「本当さぁ、何が正義の執行だよ!何がヒーローだよ!結局キミは嫉妬でキミに憧れてた赤穂クンを見殺しにするようなただの人殺しでしかないんだよ!!」

如月「違、僕は、僕は……」

モノクマ「キミが何を言おうがね、事実は1つだけなの」

モノクマ「赤穂政城クンを殺したのはキミだよ殺人鬼如月怜輝!」

如月「違っ、違う、僕は、僕は……あっ、あああっ、うわあああああっ!!」

※※※※

佐場木「如月!」

兵頭「如月さん!」

走って逃げていく如月怜輝……そこにはもう、ヒーローとしての彼はいない。

御影「兄、さん……」

道掛「牡丹ちゃん!」

六山「ど、どうするのこれ……」

津浦「もう、どうしようも……」

耐えきれなくなって兄の血に向かって倒れた御影牡丹の心にもう希望の灯はない。

先ほどまでの希望なんてもう消えてしまった。

絶望をひっくり返したはずのこの裁判を終えた面々に叩きつけられたのは……最大級の絶望。

ああ。

本当に。

最高の結末だ。







CHAPT.4【そして希望は捨てられた】END

生き残りメンバー9→7人

To be continued...












【渡せなかった贈り物】を手に入れました!

【撃ち尽くした銃】を手に入れました!

【壊れかけの杖】を手に入れました!






CHAPT.4終了です。

CHAPT.5は新しくスレを立てて始めたいと思います。

それではまた……

新スレを立てる前に色々書いていきたいと思います。
まずは被害者達のおしおきから。

【絶望交響曲~指揮静音凪~】

【超高校級の指揮者静音凪処刑執行】

縛られた静音さんの前にやってきたモノクマ。

ステージにクラシックがかかり、モノクマは演奏を始めますが……それはあまりにヘタクソなもの。

不協和音に涙すら浮かべる静音さん……しかしその演奏は長く続きません。

あまりの扱いに怒った楽器達がモノクマを吹き飛ばし、指揮者である静音さんに襲いかかったのです。

弦楽器達が弦で静音さんの首を絞めて、打楽器達が棒を持って静音さんの頭や身体を滅多うちにして、管楽器達が大音量で静音さんの鼓膜を破壊して。

そして最後は静音さんの手から落ちたタクトが浮かび上がり……

静音さんの首を貫きました。

静まり返るステージに響く静音さんの喉からこぼれる空気の音。

それも次第に弱まり……最期には何も聴こえなくなりました。

【罪人来たりて笛を吹く】

【超高校級のフルート奏者四方院奏処刑執行】

動きを固定された四方院さんの口にフルートがあてがわれます。

そして彼女の意思とは関係なしにフルートの演奏会が始まりました。

素晴らしい音を奏でていく四方院さん……その演奏はまさに息つく暇もありません。

そう、文字通り四方院さんは一切呼吸せず、演奏させられているのです。

口にどんどん押し付けられていくフルート、鼻も塞いでしまう腕、どんどん青く赤くなっていく四方院さんの顔。

そして完全に呼吸出来なくなった四方院さんはもがく事すら出来ず、動きが鈍くなっていき……最後に気の抜けたような小さな音を出して、ぐったりと力尽きます。

モノクマ達は窒息死した四方院さんを工場に運んでいくと機械に投げ入れました。

そして出来上がったのは1本のフルート。

真っ赤な真っ赤な大きなフルートでした。

【無能の驕り】

【鞍馬類処刑執行】

鞍馬クンが薬の瓶を持って処刑場に現れます。

そして次々に出てくる処刑マシンを一瞥すると、薬を口に放り込みました。

身体能力を強化した鞍馬クンは、処刑マシンの攻撃を避けると逆に蹴りで機械を破壊します。

機械を操作するモノクマも慌てながら次々と攻撃を仕掛けますが、鞍馬クンには全く通用せず。

数分も経つ頃には処刑場は機械の残骸だらけとなり、中心には無傷の鞍馬クンが立っています。

怒ったモノクマは新しく機械を投入しますが、何回やっても結果は同じ。

鞍馬クンは一定時間が経つ毎に薬を飲み、機械を破壊し、薬を飲み、機械を破壊し……

しかしとうとう終わりが訪れます。

鞍馬クンの薬が、尽きてしまったのです。

その時初めて焦りを顔に浮かべた鞍馬クンの前にモノクマが現れます。

機械が尽きたのはモノクマも同じ……正真正銘最後の決戦。

モノクマ相手ならまだなんとかなると判断した鞍馬クンが構えると同時に。

モノクマが撃った銃弾が鞍馬クンの心臓を貫きました。

薬がなきゃ何も出来ない癖に何を勘違いしてたのかな、うぷぷ。

【道化の笑みは歪んで消える】

【超高校級の道化師ジェニー・クラヴィッツ処刑執行】

腕を縛られたジェニーさんが高い崖に連れていかれます。

崖には長いロープがかかっており、モノクマがこの綱を渡れと指示してきました。

ジェニーさんはしばらく戸惑っていましたが、意を決したように綱に向かって1歩足を踏み出します。

腕を縛られたままとはいえ、超高校級の道化師の名に恥じない彼女のバランス感覚。

綱の上とは思えないほど軽やかに進み、とうとう綱の真ん中までやってきたジェニーさんが気に入らないのかモノクマが綱を持ってガンガン揺らし始めました。

さすがにこれはキツかったのか、ジェニーさんがバランスを崩してしまいます。

そして綱が首に引っ掛かったジェニーさん。

モノクマはそれに構わずさらに綱を揺らし、ジェニーさんの首にどんどん負荷がかかっていきます。

苦しそうなジェニーさんですが落ちないためには首で綱にしがみつくしかなく……そして。

首吊り状態だったジェニーさんがとうとう力尽きて綱から落ちていきます。

崖の底に落ちていったジェニーさんの姿が見えなくなると同時に何かが潰れるような音がして。

誰もいなくなったその場で綱だけが風で寂しそうに揺れていました。

【解体工事】

【超高校級の土木作業員土橋美姫処刑執行】

土橋さんが大きな穴に横たわっています。

そこに現れたモノクマが持ってきたのは大きなコンクリートミキサー車。

土橋さんはそれを見てこれから何が起きるのか察し、穴から逃げ出そうとします。

そんな土橋さんを笑いながら、モノクマはコンクリートを流し込み始めました。

どんどん穴を満たすコンクリート、土橋さんは泣き叫んで逃げようとしますがあっという間に脚が沈み、逃げられなくなってしまいます。

コンクリートで固められていく土橋さんの身体……そして涙を流す土橋さんの頭をコンクリートが飲み込んでいきました。

固まったコンクリートを見て満足そうなモノクマがポロリとダイナマイトを落とします。

火がついていたダイナマイトはコンクリートの上を転がり、爆発してコンクリートを粉々に砕きました。

コンクリートに混じって降り注ぐ赤いなにかを傘で弾きながらモノクマは立ち去っていきました。

赤穂は本編終わってからやります。
続いてはシティモードは結局頓挫したので新芽のエンゲージリング集を……

【エンゲージリングを渡したら……吹石編】

新芽「……」

正直あたしは未だに自分で自分が信じられない。

吹石「おい新芽、いい加減俺の女になる気になったかよ?」

だってこいつよ?

この今でも人の神経を逆撫でしてくるこのゲスよ?

新芽「……」

吹石「あん?いつもみてえに抵抗しねえのか?」

新芽「……」

そんな奴に、あたしは今……

新芽「これあげる」

指輪を渡そうとしてる。

吹石「ああ?んだこれ指輪?」

新芽「エンゲージリングよ。ゲームコーナーにあったの見たでしょ」

吹石「ああ、アレか……あ?エンゲージリング?」

新芽「……」

吹石「なんだお前、俺に惚れたのか?」

新芽「っ、あたしだって信じられないわよ!だけどしょうがないじゃない!好きに、なっちゃったんだから……」

吹石「ほーん、男見る目ねえなお前」

新芽「それ自分で言うわけ……?」

吹石「けっ、自分の事は自分がよくわかってんだよ」

新芽「それで、どうなのよ」

吹石「めんどくせえなぁ……」

新芽「っ!」

わかってた、こいつはこういう奴だって。

こんな男を好きになった自分がとても馬鹿に思えて……あたしはそれでも涙を流すつもりはない。

こんな男にフラれて泣いてなんかやらない……!

新芽「悪かったわね……今の忘れて」

吹石「ああ?何言ってやがるさっさと指輪よこせや」

新芽「は?」

吹石「特定の女なんざめんどくせえけど、まあお前なら構わねえよ」

新芽「……なんでよ」

吹石「――コンプレックス、刺激されねえからな」

新芽「は?」

吹石「なんでもねえよ!ほら、さっさと指輪渡せ!」

新芽「あっ、ちょっと……」

指輪取られた……あたしの気持ち、通じたのよね?

吹石「じゃあ新芽は今から俺の女だ。早速部屋に行こうぜ」

新芽「いきなりそれ!?」

やっぱり自分がわからない!

なんでこんな男好きになっちゃったのよ、あたしは!!

【エンゲージリングを渡したら……錦編】

錦「ありがとうございました!」

新芽「はぁ、はぁ……」

錦のテニスに、付き合うの、本当にしんどい……

錦「新芽さん、大丈夫ですか!楽しくて少し全力を出してしまいました!」

新芽「だから、後半なんか走馬灯が見えたのね……まあ、楽しんでくれたなら何よりだけど」

錦「本当にごめんなさい!好きな人とのテニスだから受かれてしまいました!」

新芽「はい?」

今、なんて?

錦「新芽さん!」

新芽「えっ、あの、なんで手握って」

錦「好きです!」

新芽「ちょっ!?」

なんでこんないきなり!?ああ、でもなんか錦らしいというか、いやそうじゃなくて!

ポロッ

新芽「あっ!」

錦「これは、指輪ですか?」

新芽「いや、違うの!一緒にいたらなんか渡すチャンスあるかなとかそういう風に思って、は少しはいたけど!」

錦「……」

新芽「あの、錦……?」

錦「わかりました!立花さん!結婚しましょう!」

新芽「だからなんでそういきなりなのよ!?」

心の準備も何もあったもんじゃないじゃないの!

錦「立花さんはぼくを好きで!ぼくは立花さんが好き!だから問題ありません!」

新芽「いや、あの、だから……」

錦「全力で幸せにします!だから、全力でぼくと幸せになってください!」

新芽「……」

ああ、もう……本当に常に全力で。

そんな錦だから、あたしは好きになったのよね。

新芽「じゃあ錦……ううん、修二、1つお願いしていい?」

錦「全力で応えます!」

新芽「指輪、薬指にはめてくれる?」

全力で幸せか……うん、あたしもその全力に頑張って応えなきゃね!

【エンゲージリングを渡したら……真白編】

新芽「……どうしよう」

真白「……」

新芽「いや、これはさすがに……うーん、でも」

真白「幸運、さっきから何をブツブツ言ってるんだ」

新芽「真白君……」

真白「な、なんだ?幸運なんか変だぞ……」

新芽「真白君は、好きな子とかいる?」

真白「好きな子?まあ、ここのみんなは嫌いじゃないぞ」

新芽「そうじゃなくて、ガールフレンドとか」

真白「な、なんだいきなり!そんなのいるわけないだろう!ボクは暇じゃないんだ!」

新芽「そう、いないのね……だったら、予約していい?」

真白「よ、予約?」

新芽「そう、予約。このエンゲージリングあげるから、将来的にあたしと……」

真白「ま、待て待て待て!ボクはまだ10歳だぞ!?」

新芽「いつも子供扱いするなって言ってるじゃない」

真白「いや、それはその、だけど」

新芽「大丈夫、もちろん待つわ……真白君が18歳になるまで」

真白「こ、幸運、お前、そういう趣味が……」

新芽「それは違うわよ真白君!あたしは10歳だから真白君が好きになったんじゃない!好きになった真白君がたまたま10歳だったのよ!」

真白「ま、待って、待ってよ立花お姉さん!ボクそんな事言われても本当に恋なんてわからないよ!」

新芽「あたしも色々テンパってわけわからないからおあいこよ!」

真白「絶対違う!」

それからなんとか落ち着いたあたしは、真白君に改めて告白した。

恋がわかる時まで待ってほしいって言われて保留だけど……断られなかっただけ全然マシよね!

これから覚悟してなさい真白君……絶対にあたしを好きにさせてみせるから!

【エンゲージリングを渡したら……泉編】

泉「毎度すまんな新芽よ、我が輩の手伝いなどさせてしまって」

新芽「いいのよ、気にしないで!生原稿見られるだけでファンとしては感涙物なんだから!」

泉「むうっ、そんなものか」

新芽「でもあれよね、こうして一緒にいて色々話して……たくさん泉の事を知れた気がするわ」

泉「我が輩も新芽と話して学ぶ事が多かったであるな。参考になる意見も多々……やはりファンの目線は大事という事か!」

新芽「……ファンと言うより、恋してるから、じゃないかしら」

泉「ほう?確かに恋する少女の気持ちについては特に参考になったが……しかしいかんな」

新芽「えっ?」

泉「新芽は恋をしているのだろう。それも察するにこの生活の中の誰か……ならば我が輩が拘束してしまうのは問題である!」

新芽「い、いやいや、それに関しては大丈夫!問題なし!むしろ困る!」

泉「……新芽よぉ」

新芽「な、なに」

泉「我が輩は少女漫画家であるからして、そういう事には理解が早いと自負しているが……今の反応はそう判断してもよいのであるか?」

新芽「うっ……」

泉「よいのであるな……むうっ、まさか新芽が……」

新芽「一応、本気よ?こんなのまで用意してるし……」

泉「エンゲージリング!これはまた」

新芽「……重いかしら」

泉「ふんっ!我が輩は鍛えておるからな!それくらいの重さなら障害にもならん!」

新芽「泉……」

泉「……うーむ、しかしいかんなこれはいかん」

新芽「こ、今度はなに?」

泉「少女漫画家でありながら気の利いた言葉がまるで浮かばん!」

泉「故に新芽、情けないがこの言葉で許してほしい」

泉「これからも我が輩と共に生きてくれるか?」

新芽「気の利いた言葉なんかじゃなくても、それだけで充分過ぎるわよ……」

【エンゲージリングを渡したら……赤内編本編の場合】

赤内「さてと、スカウトとして再出発だ……新芽さんには色々とお世話になったね」

新芽「……」

赤内「どうかした?僕の顔ジッと見ちゃって」

新芽「赤内……これ受け取ってくれない?」

赤内「プレゼント?新芽さんは本当に人によくプレゼント…………」

新芽「……」

赤内「あのさ、新芽さん?これエンゲージリングだよね?」

新芽「そうよ」

赤内「意味、わかって渡してるんだよね?」

新芽「当たり前じゃない」

赤内「そっか……」

新芽「……」

赤内「…………ごめん」

新芽「っ!」

赤内「僕はもう、奈美以外はそういう目じゃ見られないと思う」

新芽「……」

赤内「もういないのは理解してる。だけど、それでも……」

新芽「……うん、わかってる」

赤内「新芽さん」

新芽「いや、わかるわよ!あんなに奈美さんについて話す時楽しそうだし!赤内が奈美さん好きな事くらい!」

赤内「……」

新芽「だから、ありがとう。しっかりフッてくれて……これで、諦めつく」

赤内「……」

新芽「じゃあ、またね!今のはなかった事にしていいから!」

赤内「……」

赤内「泣いてたな、新芽さん」

赤内「彼女が好きなのは心沢くんか佐木原くんだと思ってたんだけど……」

赤内「奈美、怒るかなぁ……」

【エンゲージリングを渡したら……赤内編】

赤内「はぁ」

新芽「人を見るなりため息なんて失礼ね。まあどうせあたしはキラキラしてないけど」

赤内「そう言わないでよ、僕も色々あって当時の事少しは反省してる」

新芽「人がキラキラしてないからってぶつけてきたあの態度と言葉が少しの反省で何とかなるとでも?」

赤内「新芽さん、怖いよ……」

新芽「あたしはもっと怖かったわよ」

赤内「うっ」

新芽「……はぁ」

赤内「あの、今の新芽さんにこれ言ったら殴られそうなんだけどさ」

新芽「なに」

赤内「……好きです」

新芽「は?」

赤内「いや、あの、僕はほらキラキラしてない人に酷い態度だったでしょ?」

新芽「そうね、泣いた事もあるわ」

赤内「そ、それでも新芽さんは諦めず話しかけたりとかしてくれたよね?」

新芽「まあね」

赤内「言い合いしたりしてる内になんというか、それが心地よくなってたというか」

新芽「……」

赤内「あ、あはは……」

新芽「えいっ」

赤内「痛っ!?」

新芽「それが答えよ」

赤内「暴力反対……えっ」

新芽「……」

赤内「あの、これエンゲージリング……」

新芽「だからそれが答えよ!」

赤内「ちょっ、それにしては態度キツくない!?」

新芽「今までのあれこれ考えてみなさいよ!?あんな口論ばっかりだったのに両想い!?意味わかんないわよ!」

赤内「だからといってそんなキツくなくてもいいじゃないか!だから新芽さんはキラキラしてないんだよ!」

新芽「またキラキラ言ったわね!?」

赤内「なんだよ!事実だろ!」

新芽「なによ!自分こそキラキラなんかないって泣いてたくせに!」

赤内「酷い捏造だ!」

この後しばらく口論してたあたし達は……我に返ってからしばらく顔を合わせられなかった。

いや、本当に予想外だったのよ……

【エンゲージリングを渡したら……佐木原編】

佐木原「んー……」

新芽「佐木原?」

佐木原「おぉ、新芽か。何か用か?」

新芽「いや、まあちょっと……それより何してたの?」

佐木原「んー?この生活も終わりが見えてきたからな。なんか新しい事したいなと」

新芽「新しい事ね……佐木原は帰ったら何するの?」

佐木原「逃げる。俺はこれでもお尋ね者だからな」

新芽「またそんな事……じゃあ逃げるでもいいけど、あたしもついてっていい?」

佐木原「はあ?なんでまた」

新芽「言葉じゃ、ちょっと恥ずかしいから……これで察して」

佐木原「ほー、これはマーケットのエンゲージリングか」

新芽「そういう事なんだけど、ついていったら駄目?」

佐木原「……」

新芽「……」

佐木原「【俺でもまともな幸せってやつを得られるのか?】」

新芽「えっ?」

佐木原「興味が湧いてきたな……まあ、新芽なら話してもいいか」

新芽「佐木原……?」

佐木原「あのな新芽」

それから佐木原があたしに話したのは……到底理解が追い付かない真実の数々。

新芽「……」

佐木原「そういうわけだ。撤回するなら今の内だぞ?」

新芽「……佐木原は、興味を持った事を知りたがるのよね?」

佐木原「まあな」

新芽「今興味があるの、さっき言ってた事よね」

佐木原「そうだな」

新芽「いいわ、だったらそういう事ばかりに興味を向けさせるだけよ」

佐木原「へぇ?」

新芽「あたしがずっとそばにいて、変な事に興味を持たないようにするわ!それなら佐木原も危険人物じゃなくなるでしょ?」

佐木原「……」

新芽「……」

佐木原「くっ、あははははっ!マジか、そんな事言う奴はお前が初めてだぞ!」

新芽「きゃっ!?」

佐木原「新芽、お前って人間に興味が湧いてきたよ……もう何しても俺から離れられないぞ御愁傷様」

新芽「……望むところよ。あなたこそせいぜい考えたら?」

佐木原「何を?」

新芽「【どうすればあたし達2人が幸せになれるか】、をよ」

【エンゲージリングを渡したら……安原編】

新芽「安原!」

安原「……新芽か」

新芽「またここにいたのね、おかげで探す手間は省けたけど」

安原「俺を探していたのか?」

新芽「えぇ、話がしたくてね」

安原「話か……その様子だと大切な話のようだな」

新芽「それも探偵の推理?」

安原「そんな大袈裟なものじゃない……それで話とは?」

新芽「……色々考えたんだけどね、あたしはやっぱり一般人だから普通にいくわ」


新芽「安原、あたしあなたの事が好き」


新芽「色々見守ってくれて、気にかけてくれて、たくさん話もして……いつの間にかあなたを好きになってた」

安原「……」

新芽「これエンゲージリング……気が早いかもしれないけど、あたしの素直な気持ち」

安原「……新芽。俺は探偵だ」

新芽「うん」

安原「それも国家犯専門……潜入も多い。何より命の危機にさらされる」

新芽「……」

安原「悪い事は言わない、考え直せ。お前を幸せに出来るような人間ではない」

新芽「……安原の気持ちは?」

安原「何?」

新芽「あたしが危ないとか、あたしが幸せになれないとかそういう理屈じゃなくて、安原はあたしの事どう思ってるの?」

安原「……」

新芽「……」

安原「好意は、抱いている」

新芽「だったら問題ないじゃない!危ないなんてこんな世界なら今さら!それにあたし、安原関係なく誘拐されて殺されかけたしね!」

安原「……しかし」

新芽「それに幸せになれるかどうかなんてあたしが決める事……安原といられれば、あたしはそれだけで幸せになれるわ」

安原「現実は、そう甘くない」

新芽「そうかもね。だけどわざわざ悲観する事もない……違う?」

安原「……何を言っても聞かないか」

新芽「恋するとそんなものよ女の子は」

安原「わかった……俺の全てを懸けて誓おう」

安原「――お前を、世界で2番目に幸せにしてみせる」

新芽「2番目?」

安原「俺の1番は、揺らがないだろうからな」

新芽「……」

安原「柄ではないのは、理解している」

新芽「ううん、嬉しい!安原があたしをそれだけ思ってくれるって、わかるから」

安原「……立花」

あたしの名前を呼んで、安原は黙っちゃったけど……その想いはしっかりと伝わってくるような気がした……

【エンゲージリングを渡したら……安原編本編の場合】

※本編仕様なので表記は佐木原です。

佐木原「……」

新芽「……あの、佐木原ちょっといい?」

佐木原「なんだ?」

新芽「ここじゃ、ちょっとあれだから……」

【モノクマ大橋】

佐木原「わざわざここまで来るという事は……あまり聞かれたくない話か」

新芽「うん、まあ……人にはあまり聞かれたくないかも」

佐木原「奇妙なものだな」

新芽「えっ?」

佐木原「新芽は今狂人、そして記憶もない俺を相手に何か重要な話をしようとしている」

佐木原「俺自身が1番自分を信用出来ないというのに」

新芽「……」

佐木原は狂人、それも記憶がない……本当はどんな人かもわからない。

だけど。

新芽「あたしにとって佐木原は狂人なんかじゃない」

佐木原「なに?」

新芽「ほら、この生活が始まったばかりの頃辛くないかって声かけてくれたじゃない?」

佐木原「そんな事も、あったな」

新芽「あたしね、すごく嬉しかったの。ああ、こんな状況でもあたしを気にかけてくれる人がいるんだなって」

佐木原「……」

新芽「だからあたしにとって佐木原は、口数は少ないけど優しくて、頼りになって、その……」







新芽「――ずっと一緒にいたいって、思える人なの」






佐木原「……!」

新芽「佐木原、あたしね!佐木原の事」

佐木原「駄目だ」

新芽「えっ……」

佐木原「それは駄目だ新芽、狂人の俺にそんな気持ちを抱いても破滅しか待っていない」

新芽「あたしはあなたを狂人だなんて思ってないって言ったはずよ!だいたい今までの佐木原のどこに狂人なんて言える部分があったわけ!?」

佐木原「それは記憶がないからだ……本性はわからない」

新芽「つまりまっさらな佐木原は狂人なんかじゃないって事よ!」

佐木原「っ」

新芽「佐木原は前にあたしが辛くないか聞いた時、結局答えなかった……改めて聞くわ、辛くない?」

佐木原「……わからない」

新芽「……」

佐木原「何もかもがわからない。俺の才能、今、過去……全てがちぐはぐに思えるほどに」

新芽「……」

佐木原「だが、1つだけ」

佐木原「お前に、側にいてほしいという気持ちだけは、はっきりしている」

新芽「佐木原……!」

佐木原「……狂人の俺には過ぎた願いだと、思っていたんだがな」

新芽「そんな事ない!」

佐木原「……お前はそう思ってくれるのか」

新芽「こんな物、用意しちゃうくらいにはね」

佐木原「エンゲージリング……全く、ここまで覚悟を持って挑んでいたのか」

新芽「しかたないじゃない、それだけ好きになってたんだから」

佐木原「……貸してくれ」

新芽「あっ」

佐木原があたしの左手薬指に指輪をはめる。

そして慈しむようにあたしの手を握ると、彼はあたしをとても優しい瞳で見つめてきて。

佐木原「新芽、いや、立花と呼ばせてくれ」

新芽「は、はい!」

佐木原「俺の本性がどれだけ狂っていても」

ああ、思った通りだ。

佐木原「これからどれだけ記憶を失っても」

やっぱり佐木原は、彰は狂人なんかじゃない。

佐木原「これだけは狂わない、失わない」

だってそうでしょ?


佐木原「――立花、俺は……お前を愛している」

こんな優しい声と瞳の人が狂ってるなんて、つまらない冗談だもの。

【エンゲージリングを渡したら……錦&鈴木編】

錦「ふっ!」

鈴木「修二さん、お茶を用意しましたからそろそろ休憩しませんか?」

錦「華さん!ありがとうございます!」

鈴木「私が好きでしてる事ですから……はいどうぞ」

錦「いただきます!熱っ!?」

鈴木「ああ!?もう落ち着いてください修二さん」

錦「ごめんなさい!」

鈴木「……でも、少し嬉しかったりもします」

錦「なぜですか!」

鈴木「だってこうしてるとなんか、夫婦みたいだなって」

錦「……」

鈴木「はっ!?な、何を言ってるんでしょう、私!いくらなんでも気が早すぎ、いや、修二さんが相手なのが嫌という訳じゃなくて!」

錦「華さん!」

鈴木「ひゃ、ひゃい!?」

錦「これを受け取ってください!」

鈴木「な、なんですかこれ」

錦「エ、エ……指輪です!」

鈴木「エンゲージリングですか!?修二さんどうして……」

錦「華さんが大好きだからです!」

錦「ぼくは病気になってから、全力で生きていこうって決めて生きてきました!」

錦「だから気持ちも全力で伝えます!」

錦「華さんが夫婦みたいだって言ってくれて嬉しかったです!だってぼくも華さんとそうなれたらって思いますから!」

鈴木「しゅ、修二さん……」

錦「華さん!ぼくと結婚して錦華になってください!」

鈴木「……うっ、ぐすっ」

錦「は、華さん!?ぼく、何か嫌な事を……」

鈴木「ち、違います!これは嬉し涙です……本当に、嬉しい……」

錦「華さん……」

鈴木「私、ドジだけど、全力で修二さんのお嫁さんとして頑張りますね……」

錦「はい!ぼくも華さんを……全力で、誰にも負けないぐらい幸せにしてみせます!」

鈴木「もう、誰にも負けないぐらい幸せですよ……修二さん」

【エンゲージリングを渡したら……吹石&早坂編】

吹石「……」

早坂「隣、いい?」

吹石「……」

早坂「無言は肯定って事で……」

吹石「……」

早坂「もうすぐこの生活も終わりか。じょ……吹石は、少しはみんなと仲良くなれた?」

吹石「……」

早坂「わたしはさ、結構周りと仲良くなれた気がするというか、その」

吹石「……よく話しかけられんな」

早坂「……」

吹石「馬鹿じゃねえのか。俺とお前がどんな形で別れたか忘れたのかよ」

早坂「……」

吹石「俺はボクサー、お前はランナー、もう生きる世界も違えんだ。関わる意味も必要性もねえだろ」

早坂「……」

吹石「わかったら二度と話しかけてくんな、お前見てると惨めになるんだよ!」

早坂「……別れてない」

吹石「あ?」

早坂「別れようとも、嫌いだとも言われてない。だからわたしは……今だって丈を」スッ

吹石「!!」バッ

早坂「あっ!?」

吹石「こんな写真を今でも後生大事に持ってやがんのか!!俺への当て付けか!?お前を忘れたくて色んな女に手出してきた俺への嫌みかよ!!」

早坂「返して!」

吹石「うるせえ!こんな写真……!」

早坂「やめっ!」

吹石「……ちっ」ポイッ

早坂「っ!」

吹石「なんなんだよ、さっさと忘れてくれよ俺の事なんかよ!!」

早坂「……」

吹石「しかたねえだろ!?忍は才能があって、俺には才能がなかった!!一緒にいてもただ俺が惨めになるだけじゃねえか!!」

早坂「……」

吹石「なのにお前はまた、つまらなそうに走りやがって……じゃあ俺はどうすりゃよかったんだ?あのままだったら俺はきっと取り返しのつかねえ事を忍に……」

早坂「……誇れば、よかったんだよ」

吹石「あん?」

早坂「丈、わたしね……公式戦でもそれ以外でも絶対に負けないって決めてるの」

吹石「はっ、そりゃ御大層な目標なこった。【超高校級のランナー】様は言う事が……」



早坂「わたしに勝ったのは、丈だけでいいから」

吹石「……は?」

早坂「わたしは、丈が告白してきた時のあの勝負以外には絶対負けない」

早坂「だから誇ってよ……丈は、【超高校級のランナー】を唯一負かした男なんだから」

吹石「お前……そんな……」

早坂「忘れられない、忘れられるわけがない。だって陸上の楽しさをわたしに教えてくれたの、丈なんだよ?」

吹石「……」

早坂「……丈」


早坂「わたし達、もう一度やり直せない、かな?」


吹石「……」

早坂「……」

吹石「はっ、ははっ……馬鹿だろ……こんな、こんな糞野郎いつまでも追いかけて、きてよ」

早坂「全然追い付けなかったけどね……わたしを置いてこんなに走っちゃってさ」

吹石「……やり直せんのかな?」

早坂「丈次第だよ。わたしは……信じてるけど」

吹石「……ちょっと待ってろ」

早坂「えっ」

※※※※

吹石「……これ、やるよ」

早坂「指輪……」

吹石「今度こそ、俺はあの夢守れんのか?」

早坂「……死んでも、一緒?」

吹石「覚えてたのかよ……あーあ、色々清算しねえとなぁ……」

早坂「付き合うよ。わたし達、ずっと一緒なんだから、さ」

吹石「……悪かった、忍。ずっと、遠回りして」ギュッ

早坂「……やっと、追いついたよ丈」ギュッ

【エンゲージリングを渡したら……赤内&ミーナ&奈美編】

赤内「……」

ミーナ「やっ、赤内クン」

赤内「ああ、ミーナさん。悪いね、呼び出しちゃって」

ミーナ「それはいいんだけど……でもどうしたの、今まではこんな風に……」

赤内「ごめん、正確には話があるのはミーナさんじゃないんだ」

ミーナ「……どういう意味かな?」

赤内「月石奈美……知ってるよね?」

ミーナ「……!」

赤内「いや、もっとはっきり言うなら……ミーナさん、君、奈美でもあるよね?」

ミーナ「……どうしてそう思ったの」

赤内「きっかけは新芽さんだよ。ミーナさんがセーターに眼鏡の格好してたって言われてさ」

赤内「変装用にって奈美に僕が教えた格好をね」

「……」

赤内「それから注意して見るようにしたら出るわ出るわ奈美としか思えない言動の数々」

赤内「最初はミーナさんが奈美の身内なんじゃないかって考えもあったんだけど……それにしては君の顔には奈美に似てる要素がなかった」

「……」

赤内「荒唐無稽なのはわかってるよ。だけどこう思うしかないんだ」

赤内「奈美は、君の中で生きているって」

「…………ふふっ」

赤内「……!」

奈美「晶くんは相変わらずだね。鋭いのか鈍いのかよくわからない変な人」

赤内「な、奈美……?本当に生きて……」

奈美「ううん、私は死んだよ。車に轢かれて、殺された」

赤内「……」

奈美「今もよくわからないんだ。なんで私はまだ意識があるんだろう、それもこの子の中に」

赤内「そんな事どうでもいいよ!奈美とこうして話せる、それだけで僕は……」

奈美「……そうだね。私も晶くんには言いたい事があったし」

赤内「何でも聞くよ!だって僕達はずっと」

奈美「【キラキラしてない人間に価値はない】……私の事もそんな風に思ってたんだ?」

赤内「えっ……あっ、ち、違う!僕は奈美にそんな!」

奈美「今までの晶くんの言葉はずっと聞いてた。残念だよ……私がああいう人嫌いなの知ってるはずの晶くんがそうなってるなんて」

赤内「な、奈美……だけどそれは」

奈美「私が死んだからなんて言い訳しないでね?」

赤内「っ!」

奈美「それだけだから。もう晶くんとは話す事なんて――」

ミーナ「ちょっと待った!」

奈美「み、美伊奈ちゃん?」

ミーナ「奈美!なんでそんな思ってない事言うの!?本当は赤内クンに謝りたいくせに!」

赤内「えっ……」

ミーナ「赤内クン。奈美は本当は赤内クンがああなったのは自分のせいだってずっと泣いてたの」

奈美「やめてください美伊奈ちゃん!」

ミーナ「ううん、やめない!だってこんなの悲しすぎるよ!」

赤内「奈美……」

奈美「……わかってた。晶くんを変えてしまったのは私だって」

奈美「見てられなかった、周りを傷つけて、嫌われて、自分自身も傷つける晶くん」

奈美「私がそうさせてるなら、もう振り切ってほしかった」

奈美「晶くんが、引きずる価値のない酷い女なんだって……」

ミーナ「だからってあれは駄目だよ!お互いに傷つくだけじゃない!」

奈美「……」

赤内「……奈美、君の言う通りだ。僕は君を言い訳にして不和ばかり生んでた」

赤内「こんな僕を奈美が見たらどう思うかなんてわかってたのに……こんなものまで用意して、本当に馬鹿だよ僕は」

ミーナ「赤内クン、それ……!」

赤内「ここにあった指輪……奈美が生きてるってわかったら勢いで買っちゃったんだ」

奈美「……!」

赤内「だけどその身体はミーナさんのだ。そもそも渡すのも不可能なのに本当に僕は……」

ミーナ「…………はあ、本当に世話が焼けるよ。奈美、アタシしばらく引っ込んでるから」

奈美「えっ、ちょっと美伊奈ちゃん!?」

赤内「……」

奈美「……晶くん」

赤内「スカウト失格だよ。アイドルに恋い焦がれるなんてさ」

奈美「それなら私だって……アイドル目指してたのにいつの間にか、晶くんが中心になっちゃってた」

赤内「……いいのかな?」

奈美「わからないけど……でも、今だけは」

※※※※

ミーナ「上手くいったかな?」

ミーナ「……アタシはね奈美。ずっと感謝してるんだよ」

ミーナ「二度と目覚めなかったはずのアタシが、こうしてアイドルとして生きていける」

ミーナ「それは全部奈美がいてくれたから」

ミーナ「だからこれぐらいのご褒美は受け取っていいんだよ?」

ミーナ「アイドルとしての諸々はアタシが。女の子としての幸せは奈美が」

ミーナ「だってアタシ達は……2人で【ミーナ・ルナストーン】なんだから」

【エンゲージリングを渡したら……佐木原IF編】

新芽「……」

佐木原「よぉ、新芽」

新芽「あっ……佐木原」

佐木原「わざわざ呼び出してどうしたよ?面白そうな話なら大歓迎……」

新芽「……ねぇ、あたし達って会った事ない?」

佐木原「……へぇ?」

新芽「なんか佐木原との会話の感じが、前にもした事ある気がして……」

佐木原「……」

新芽「変な話だとは思うのよ?でもモノクマは記憶を奪ったって言うし……」

佐木原「……はぁ、念入りに消しといたはずなんだけどな」

新芽「……!」

佐木原「そうだよ新芽。俺達は出会ってた……というか今回の一件の直前まで一緒にいた」

新芽「……なんで記憶を、ううん、そもそもなんでこんな事したの」

佐木原「興味が湧いたからさ。最初はコロシアイさせるつもりだったんだぞ?だけど二番煎じじゃ萎えるし、だから計画を変更したわけだ」

新芽「……」

佐木原「お前の記憶を消したのは興味が湧いたからだ。【新芽立花はまだ引き返せるのか】がな」

新芽「引き返せるか……」

佐木原「なんせ死体見ても慣れたとか言い出す女になっちまってたしなお前」

新芽「あ、あたしが?」

佐木原「そう、そして【超高校級の狂人】である俺と一緒にいるからか、お前は【超高校級の狂信者】って呼ばれるようになってた」

新芽「……」

佐木原「それで?真実を知ったわけだが、新芽はどう思った?」

新芽「…………」

新芽「納得した」

佐木原「納得」

新芽「みんなと仲良くなれたのは間違いないんだけど、あたしどこか違和感があったのよね」

佐木原「……」

新芽「そりゃそうよ。あたしを助けた恩人で、あたしが散々付き合ってきた奴が隣にいないんだから」

佐木原「……んー?」

新芽「まさかあなたが直前で計画変更するとは思って……あっ、そうだ」ゲシッ!

佐木原「いてっ」

新芽「あたしにスタンガン当てた罰よ。というかね、あんな強化したやつぶつけて死んだらどうするのよ!?」

佐木原「……おいおい、なんか記憶戻ってないか」

新芽「話してたら思い出してきたのよ。誰かさんに散々苦労かけられた思い出をね」

佐木原「んなアホな……記憶を消したんだぞ?会った気がするレベルでも信じられないってのに」

新芽「一応あたし【超高校級の幸運】になりかけてたからじゃない?理由は適当につけといてよ」

佐木原「……くっ、あははっ!全く本当に面白い女だな立花!」

新芽「あたしは面白くないわよ!」

佐木原「そう言うなって……しかしあれだな。【新芽立花はまだ引き返せるのか】って疑問は【引き返せない】って答えになったか」

新芽「そんなのわかってた事でしょ。よほどの事がない限りあたしが引き返すなんて無理よ」

佐木原「そんなものかね」

新芽「むしろ変わったのはあなたじゃないの」

佐木原「俺が?」

新芽「だってあなたが疑問に持つようなのって基本的に周りからすれば危険な事ばっかりでしょ」

新芽「それが仲良くなれるかを疑問に持つ時点であなたは変わった……違う?」

佐木原「……やれやれ、本当に擦れちまったな」

新芽「あなたのおかげでね……で?まだこの生活は続けるんでしょ?」

佐木原「まあな。まだ期間もある」

新芽「じゃあとりあえず……あたしの目的を果たしておこうかしら」

佐木原「目的?」

新芽「あなたにこれを渡したかったのよ」

佐木原「エンゲージリング?おいおい、正気か?」

新芽「言わなかった?あたしも狂ってきてるって」

佐木原「……」

新芽「【世間を騒がせた狂人とその付き添いははたして幸せになれるのか?】……この生活が終わった後の疑問としてはうってつけじゃない?」

佐木原「……本当にどこまでも調子狂わせてくれる女だな」

新芽「狂人の調子が狂ったら普通になるんじゃない?」

佐木原「それはないな」

新芽「……あっ、そう。それで答えは?」

佐木原「いい疑問だ。実に興味をそそられるよ、立花」

新芽「……ふふっ」

佐木原「……?」

新芽「あたし思ってたのよ。あたしはきっと普通に生きて普通に死んでくって」

新芽「だけど彰と出会って世の中がこんな事になって……もう世の中の普通なんて縁遠くなっちゃった」

佐木原「……嫌か?」

新芽「……ううん」

新芽「きっとこれがあたしの【普通】なのよ、彰」

次スレを貼っていなかったので
【ダンロン】ダンガンロンパ・クエスト【オリキャラ】後編
【ダンロン】ダンガンロンパ・クエスト【オリキャラ】後編 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1565729618/)

【未来機関第二十支部】

赤穂「なんだか騒がしいな……今日何かあったか?」

静音「なんだ知らないのか?だったらぼくが教えてやろう!」

赤穂「静音」

静音「今日は天才の日!この世に産まれたパーフェクトな天才……そう、奏を讃える日だ!」

赤穂「えっ、四方院さん今日が誕生日なのか」

静音「いや、違うけど」

赤穂「……」

静音「まあ、冗談はここまでにして……あっ、奏が天才なのは本当だぞ!」

赤穂「わかったわかった。それで、今日は何があるんだ?」

静音「それはもちろん……ハロウィンだ!」

赤穂「……ああ、そういえばそうだったな」

静音「反応が薄い!」







EXTRACHAPT【第二十支部におけるハロウィンの過ごし方】






赤穂「悪い悪い。どうもハロウィンとは縁が薄くてな」

静音「全く……このぼくがわざわざ仮装までしてるのに!」

赤穂「仮装……あっ、そういえばいつもと格好が違うな」

静音「ふふん、吸血鬼だ!最も美食家のぼくが飲む血は……」

赤穂「四方院さんだけなんだろ?」

静音「……!」

赤穂「なんだよその顔は」

静音「な、なんでわかった!もしかしてエスパーなの!?」

赤穂「……いや、普段の静音を見てればわかるからな」

静音「そうなのか……」

赤穂「それで?わざわざ仮装見せに来ただけじゃないんだろ?」

静音「あっ、そうだった……トリックオアトリート!」

赤穂「お菓子か……確か貰い物のカステラがあったな……」

静音「カステラ!?」

赤穂「あったあった。ほら静音」

静音「わーい、ありがとう!早速奏と食べてくる!」タタタッ

赤穂「転ぶなよー」

赤穂「……」

赤穂「なんか眩しかったな……俺も年取ったって事か?」

薄井「おっさんみたいな事言ってんなよ」

赤穂「薄井、いつの間に」

薄井「静音と入れ違いにな。しっかしハロウィンね……」

赤穂「なんか気に入らないって感じだな?」

薄井「へっ、ハロウィンなんざ嫌いだね」

赤穂「嫌いってそこまで言うか……何か嫌な思い出でもあるのか?」

薄井「昔、姉貴がジャックオーランタンだったか?そいつを捕まえんのを手伝ってほしいって依頼されてよ……」

赤穂「また変わった依頼だな……」

薄井「お前の同期生だって聞いてんぞ」

赤穂「そんな奴いたか……?」

薄井「まあ、んな訳で姉貴はその日1日いなかったんだよ」

赤穂「へぇ……んっ?」

薄井「なんだよ」

赤穂「薄井がハロウィンを嫌いな理由って……お姉さんがその日いなかったからか?」

薄井「そう言ってんだろ」

赤穂「……」

薄井「……何か言えよ」

赤穂「シスコンだな、お前」

薄井「お前にだけは言われたくねえよ!!」

【中央の島・歩道】

赤穂「薄井は少し姉離れした方がいいんじゃないか……?」

道掛「赤穂に言われちゃおしまいじゃね?」

赤穂「道掛……それじゃあまるで俺がシスコンみたいじゃないか」

道掛「自覚ねえのかよ!?」

赤穂「俺はただ妹思いなだけだ!」

道掛「……お、おう」

赤穂「ごほん、それで道掛もハロウィンか?」

道掛「まあな!ゾンビライダーってやつだ!」

赤穂「その格好のまま自転車で爆走するわけか……子供は泣くな」

道掛「実際さっき凪ちゃん泣かせちまったよ……ってやべえ忘れてた!?」

赤穂「何をだ?」

道掛「いや、奏ちゃんもいたんだけどな……凪ちゃん泣かせたから相当怒って」

四方院「見つけましたわよ道掛さん!」

道掛「やべっ!?赤穂助」

赤穂「あー……諦めろ」

道掛「切り捨てんの早えよ!?」

四方院「凪を泣かせるなんて言語道断ですわ……」

赤穂「まあ、反省してるようだし許してやってくれ」

四方院「はぁ……凪からも言われてますし、ここまでにしておきます」

赤穂「あはは……」

四方院「あっ、赤穂さん。カステラありがとうございました」

赤穂「ああ、ハロウィンだしな……そのわりには四方院さんは変わってないように見えるけど」

四方院「ふふっ、そう見えます?実際は仮装をしているんですよ?」

赤穂「んー……あれ?四方院さんそんなに肌白かったか?」

四方院「わかりました?一応幽霊、なんです」

赤穂「静音の発案だろう?なんか下手なメイクとかさせなさそうだしな」

四方院「そうなんですの……わたくしはどのようなメイクでも受けて立つ覚悟だったんですが」

赤穂「そうなのか?」

四方院「どんな怪物だろうとパーフェクトに演じてみせますもの!」

赤穂「……」

ああ、そういえば四方院さんってこんな性格だったな……

四方院「ふふっ、それはそうと赤穂さん。トリックオアトリート」

赤穂「ああ、マーケットで用意してきた。えーっと、これでいいか?」

四方院「ありがとうございます。あら、少々多いような」

赤穂「静音の分だよ。泣いてたらしいからさ」

四方院「……」

赤穂「ど、どうしたんだそんな見てきて」

四方院「いえ、土橋さんの気持ちが少しわかりましたわ」

なんでそこで美姫の名前が出るんだ……?

グレゴリー「ふははははっ!!我が力は今宵の収穫祭に向け、高まり、渦巻いている!」

津浦「よく似合っていますよ、Mr.グレゴリー」

グレゴリー「ふっ、言の葉の魔術師も魔導の衣を纏いしその姿……美麗であるぞ」

津浦「あ、ありがとうございます」

赤穂「……」

これは話しかけない方がいいのか?

グレゴリー「むっ、聖痕抱きし英雄か」

津浦「あっ……どうもMr.赤穂」

ほら、なんか津浦ガッカリした感じ出してるじゃないか。

赤穂「グレゴリーと津浦もハロウィンに参加してるんだな」

グレゴリー「然り!我にとって此度の収穫祭はまさに天界より誘われた運命の刻!心ゆくまで舞い踊らねばなるまい!」

津浦「……」

赤穂「そ、そうか……」

グレゴリー、テンション上がって津浦の様子に気付いてないのか!?

というか、その血塗れの仮面とかマントは本格的過ぎて逆に不気味だぞ!?

グレゴリー「さて、聖痕抱きし英雄よ……我は問う。甘き供物を捧げるか、妖精の戯れか!選ぶがいい!ふははははっ!」

赤穂「じゃあこれお菓子。津浦の分もな」

津浦「ありがとうございます……」

グレゴリー「ふははははっ!感謝するぞ聖痕抱きし英雄よ!この甘き供物は天界に確かに届けよう!」

赤穂「じゃあ、俺はこれで……ごめんな」

グレゴリー「むっ?」

津浦「……いえ」

津浦も苦労するな……

赤穂「グレゴリーは少し女心を理解するべきだな……あの津浦の視線はわりとキツいんだぞ」

佐場木「何をブツブツ言っている」

遠見「お疲れ様であります赤穂殿!」

赤穂「お疲れ。佐場木と遠見は見回りか?」

佐場木「ハロウィンだからと気が抜けているようだからな」

遠見「自分達は何事もないようにする役割でありますよ」

赤穂「相変わらずだな……2人だって楽しんでもいいだろうに」

佐場木「全員が遊び呆けるわけにはいかないだろう」

遠見「それにこうして話をするだけで楽しんでいるようなものでありますから!」

赤穂「そうか……じゃあ差し入れっていうのもなんだけどこれ」

遠見「チョコレートでありますか!佐場木殿、後で分けるでありますよ!」

佐場木「……ああ」

遠見「それでは赤穂殿!自分達は見回りがありますので!」

赤穂「無理はしないようにな」

佐場木と遠見らしいな……

六山「ふああ」カチカチ

鞍馬「……」チクチク

赤穂「……」

佐場木と遠見以上にいつも通りだなこの2人は……

六山「あー、赤穂くん。ゲームする?」

赤穂「ハロウィンとか関係ないな六山は……」

六山「1日は1日だからね。わたしはわたしらしく過ごすのだよ」

鞍馬「今さら輪に入れないだけでしょう」

六山「むっ……」

鞍馬「ゲームばかりでまともなコミュニケーションを取らなかった報いですね」

六山「それ、鞍馬くんには言われたくないなぁ」

鞍馬「僕はそもそも混ざる気がないので」

赤穂「……」

この2人仲悪いのか?

鞍馬もなんだかいつもより棘がある気がするぞ……

六山「むうっ……」カチカチ

鞍馬「……」

今度から気をつけて見てみるか……

赤穂「……」

あいつの様子も見に行くか……

【第二十支部・地下】

赤穂「苗木」

苗木「……何さ寄生虫、ボクを笑いにでも来たの?」

赤穂「……」

苗木「全くお笑い草だよね。寄生虫を殺すために来たのにまさか捕まるなんて」

赤穂「まだ話す気はないのか?」

苗木「話す事なんてないよ」

赤穂「……そうか」

苗木が危険思想の持ち主だったってわかった時は本当に驚いたけど……

この様子だとやっぱり元々持ち合わせてたものだったみたいだな。

苗木「誰か死んだとかないの?それならボクも歓迎するよ」

赤穂「全員元気だよ」

苗木「あっそ……」

処刑を望んでる未来機関の強硬派はなんとか抑えてるけど……それもいつまで続くかわからない。

赤穂「また来る」

苗木「次はいいニュースを持ってきてよ」

それでも最後まで諦めてたまるか。

それが俺達全員の一致した気持ちなんだから。

如月「苗木さんに会いに行っていたんですか?」

赤穂「まあ、一応俺が支部長なんで」

地下から戻ったら如月さんと出くわした。

如月さんも結構苗木を気にしてるみたいだから、なるべく様子は伝えるようにしている。

如月「彼も早く考え直してくれればいいんですが」

赤穂「相当難しいでしょうね。苗木のあれは根深いみたいですから」

如月「そうですね……長年染み付いたものは拭うのが本当に難しい」

赤穂「……」

それは如月さんもですか?とは聞かない。

如月さんは何かとんでもないものを抱えていて……だけど誰にもそれを見せていない。

如月「とにかく苗木さんについては慎重にいきましょう」

赤穂「はい」

慎重に……誰にも悟られないようにしないとな。

それが年長者として俺に出来る事だ。

ジェニー「マサキ!マサキ!」

赤穂「そんなに跳び跳ねると危ないぞジェニー」

ハロウィンの巡回を再開した俺に跳び跳ねながらジェニーが近付いてくる。

いつものピエロの格好じゃなくて、羽の生えた……これは妖精か?

ジェニー「トリックオアトリートですマサキ!」

赤穂「おっと、ちょっと待ってな……よし、これだ」

ジェニー「サンキューですマサキ!あのあの、ところでこのフェアリーどうです?」

赤穂「よく似合ってる、可愛いぞ」

ジェニー「えへへ」

赤穂「でも1人なんて珍しいな。美姫はどうしたんだ?」

ジェニー「ミキは恥ずかしいて逃げちゃいました!」

赤穂「恥ずかしい?」

恥ずかしいって何がだ?

ハロウィンのコスプレは美姫もしてるだろうし、その衣装か?

兵頭「赤穂さん、お疲れ様です」

赤穂「…………」

兵頭「あの、何か?」

赤穂「いや、ちょっと驚いてた……兵頭だよな?」

兵頭「そうですが……そんなにビックリしますか?」

赤穂「いきなりのっぺらぼうが声かけてきたら誰だってビックリするだろ……」

兵頭「道掛さんはすれ違っただけで驚いていましたね」

道掛も災難だな……

兵頭「それでは赤穂さん、トリックオアトリート」

赤穂「どこから声出してるんだそれ……これでいいか」

兵頭「はい、確かに。ところで如月さんを見てませんか?」

赤穂「如月さん?如月さんなら支部の近くにいるぞ」

兵頭「ありがとうございます。それでは」

兵頭はどこか急いだ様子で支部に向かっていく。

……あれ、どうやって前見えてるんだ?

赤穂「おっ、あそこにいるのは……牡丹!」

御影「うっ、兄さん……」

赤穂「なんだその見つかっちゃったって顔」

御影「だって、恥ずかしいんだよ……」

赤穂「恥ずかしいってその猫耳と尻尾か?いいじゃないか、可愛いし」

御影「身内に見られるのは恥ずかしいの!兄さんもコスプレ私に見られたら嫌でしょ!」

赤穂「……いや、別に。昔はヒーローの格好してんのちょくちょく見せてたしな」

御影「……そ、そうだった。兄さんは慣れてるんだったよ……」

赤穂「だから牡丹も気にするなって。毎日してればその内慣れるから」

御影「今日だけだよこんな格好するのは!」

赤穂「なんだ、もったいない。そうやって周りと打ち解けていけば……いや、悪い虫もよってくるか?」

御影「私に悪い虫なんか来ないよ……」

赤穂「いいや、自覚するべきだ。牡丹は俺と違ってモテると思うぞ」

御影「自覚ないのはどっちなの……」

赤穂「何か言ったか?」

御影「なんでもない」

【未来機関第二十支部・支部長室】

赤穂「みんな楽しそうだったな」

まだまだ問題は色々あるけど今日ぐらいは楽しんでほしいもんだ。

赤穂「だけど結局美姫には会えなかったな」

まあ、ジェニー曰く恥ずかしくて逃げてるらしいし……会えなくても仕方ないか。

赤穂「んー……!島中歩き回ってたら少し疲れたな」

少し寝るか……コテージには、行かなくていいな。

赤穂「……Zzz」

「……」

※※

赤穂「んっ……」

目覚めると後頭部に柔らかい感触……そして視界を遮る何か。

赤穂「……」

正直期待してたけど本当にそうなったか……まあ、いつもの事だもんな。

赤穂「恥ずかしいから逃げてるって聞いたぞ美姫」

土橋「し、仕方ないでしょ……こんな格好なんだから」

膝枕されたまま美姫を見てみると、包帯を巻いてるのが見える。

だけどその包帯は身体の一部にしか巻かれてないし、挙げ句その下には何も着けていなかった。

土橋「そんなにジロジロ見ないでっ!」

赤穂「嫌ならやめておけばよかっただろう……俺は眼福だけどさ」

土橋「だ、だって」

赤穂「だって?」

土橋「衣装、胸がキツくて入らなかったんだよ……」

そういう事言われると、なんだか妙に意識してこっちが恥ずかしくなってくるぞ……

土橋「も、もう!政城トリックオアトリート!恥ずかしいから早く!」

赤穂「わ、わかった。そこの鞄の中にあるぞ」

土橋「鞄、これだね…………えっと」

赤穂「どうした?」

土橋「何もないんだけど……」

赤穂「……あっ」

そういえば牡丹に渡した後補充してなかった……
赤穂「悪い。ちょうど切らし……うわっ!?」

起き上がろうとしたところを美姫に押し戻される。

美姫は何か上の空になっていて……あれ、ちょっと何する気だ?

土橋「悪戯、悪戯、お菓子ないんだから仕方ないよね……」

赤穂「待て美姫、顔が近い!お菓子なら用意するから落ち着い――」

その後の俺の言葉は、口に出る事はなかった。

どうしてかは……まあ、察してほしい。

END

赤穂「今日はクリスマスか……」

御影「もう年末だなんて時間が経つのは早いよね」

赤穂「牡丹は今日予定とかあるのか?」

御影「まあ、一応……兄さんは?」

赤穂「俺は特には……牡丹に予定とかないなら家族水入らずで過ごそうかと」

御影「……」ジー

赤穂「な、なんだよ」

御影「兄さんはもう少し女の子の気持ちとか考えた方がいいよ」

赤穂「意味がわからないぞ……」

御影「土橋、きっと待ってるよ」

赤穂「美姫が?いや、だけど牡丹と過ごすっていうのは美姫からの提案」

御影「いいからさっさと行く!」

赤穂「えっ、おい牡丹!?」

バタンッ

御影「全くもう……あっ、私もそろそろ行こうかな」







EXTRACHAPT【聖夜の光を追い求めて】






御影「まだ時間には早いかな……」

薄井「いいから放せ!」

静音「いやだ!ぼくは絶対薄井を連れていく!」

御影「……何してんの?」

薄井「御影!ちょうどいい、こいつを何とかしろ!」

静音「御影!このわからず屋にはっきり言ってやって!」

御影「いや、そんな事言われても……何があったの」

薄井「静音の奴がオレをパーティーに連れてくってきかねえんだよ!」

静音「1人で寂しそうだったから!こんな日にそんなのもったいないよ!」

薄井「ほっとけ!」

静音「やだ!」

御影「……」

なるほど。

御影「犬も食わないっていうからね。まあ、程々にしときなよ」

静音「犬?」

薄井「ちょっと待て!?お前何かとんでもない勘違いを……」

静音「薄井、犬ってなんなの?」

薄井「いや、それは……おいこら御影待て!責任持って説明もしやがれ!」

薄井の叫びを聞き流して待ち合わせ場所に急ぐ。

四方院「……」

御影「……」ビクッ

途中物陰からすごい目で静音と薄井を見てる四方院を見つけたけど……声はかけないでおいた。

グレゴリー「今宵は聖誕祭!今こそ我が天具その十二、雪原の園を使うとき!」

津浦「小型の人工雪発生装置ですか……Mr.グレゴリーは本当に様々な物をお作りになるのですね」

グレゴリー「フッ、これもまた天界からの囀りによるもの……言の葉の魔術師」

津浦「はい、なんでしょうか」

グレゴリー「今宵は我と共に刻の流れに身を任せぬか?」

津浦「えっ」

グレゴリー「無論、言の葉の魔術師が異なる術式をその身に宿すというなら、我も影となるが」

津浦「……いいえ、他の約束なんてありません」

津浦「Mr.グレゴリー。ワタシとクリスマスを過ごしてくださいますか?」

グレゴリー「……契約を持ちかけたのは我。その言霊を祓うなどありえん!」

津浦「ふふっ」


御影「……」

なんだか2人だけの世界って感じだね……ほっといてあげようかな。

グレゴリー「ならば早速この雪原の園を起動する!吹き荒れる結晶の欠片がこの世界を埋め尽くすであろう!」

津浦「さすがに吹雪はまずいのでは……」


御影「あっ、佐場木?グレゴリーが吹雪起こそうとしてるよ」

佐場木「本当にろくな事をしない……これで没収は何度目になると思っている」

御影「あはは……」

佐場木「御影、連絡に感謝する」

御影「あっ、佐場木は今日どうするの?まさか仕事なんて事は」

佐場木「そのまさかだが」

御影「いやいや、今日ぐらい休みなよ」

佐場木「全員が浮かれているわけにもいかない。こういった日は特にな」

御影「ほ、ほら、遠見と過ごすとか」

佐場木「あいつはここにいない。家族と過ごすように前々から言ってある」

御影「て、徹底してる……」

佐場木「……俺はな、御影。普段の日常を平和に過ごせるだけで十分なんだよ」

佐場木「犯罪者共の相手ばかりしていたからな。そういった日々は何よりも貴重だと理解しているつもりだ」

御影「……」

佐場木「だから特別な日は俺がこの空気を守る……それだけの話だ」

御影「佐場木……」

佐場木「赤穂に明日は休みを取ると伝えておいてくれ」

御影「うん、わかった。明日はしっかり休みなよ」

佐場木「遠見と同じ事を言うな……」

あっ、やっぱり遠見にも言われてるんだ。

ジェニー「はーいボタン!」

御影「あれ、ジェニー1人なの?」

ジェニー「ミキはマサキと一緒ですから2人にしたです!」

御影「あっ、そうか……ジェニーはこれからどうするの?」

ジェニー「……」

御影「まさか苗木の所に行くつもりじゃないよね?」

ジェニー「……」ビクッ

御影「やっぱり……ジェニー、あいつに散々酷い事言われたでしょ」

私だって面と向かって化け物呼ばわりされてる……あいつと私達はきっとわかりあう事なんて出来ないのに。

ジェニー「でもボクは、諦めたくないです……」

御影「……」

とはいえ、ジェニーの気持ちをバッサリ切り捨てるのも……

御影「わかった。じゃあ私も」

鞍馬「僕が一緒に行きましょう」

御影「うわっ!?」

ジェニー「ルイ」

鞍馬「苗木誠が不審な行動をしないように見張ればいいのでしょう。それに彼の悪意は1人で受けるにはいささか苛烈です」

御影「……」

鞍馬が一緒に来るなら心強いけど……

御影「どういう風の吹き回し?普段あんなに関わりませんって態度なのに」

鞍馬「……気紛れですよ。ただのね」

気紛れ、ね……

ジェニー「じゃあボタン!ボクはルイとセイに会てきますです!」

御影「えっ、私も一緒に行っても」

ジェニー「ボタン約束あるですよね?ボクは大丈夫だからそちに行てください!」

御影「……ジェニーがそう言うなら」

まあ、私はあいつに相当敵視されてるし……刺激しない方が無難かな。

鞍馬「……」

御影「ジェニー大丈夫かな」

鞍馬がいるならそうそう変な事にはならないだろうけど。

六山「おはよー」

御影「おはよう……って、百夏今起きたの!?」

六山「いやぁ、ダンジョンの攻略が思いの外白熱しちゃって」

御影「クリスマスでも百夏は平常運転だね……」

でもゲームに夢中で呼んでもコテージから出てこない日もあるから今日はマシなのかな……

六山「あはは、褒めないでよ」

御影「今私褒めたっけ……」

六山「まあ大丈夫だよ。わたしはこういうの慣れてるからね」

御影「あんまり慣れる事じゃないと思う……」

※※※※

六山「ふぅ……ごめんね牡丹ちゃん」

六山「でもさ、わたしとしては牡丹ちゃんには穏やかに生きてほしいんだ」

六山「せっかくお兄ちゃんと再会出来たんだからね」

六山「苗木くん以外にもいる絶望の残党、殺人鬼……」

六山「それはわたしが、何とかするからさ」

御影「百夏のあれは何とかしないといけないよね……」

兵頭「牡丹さん?」

御影「あっ、千……と如月も」

如月「こんにちは御影さん」

兵頭「お悩みだったようですが……何かあったんですか?」

御影「いや、百夏のゲーム中毒」

兵頭「……ああ」

御影「昨日もずっとゲームしててさっき起きてきたみたいで……どうしたものかなと」

兵頭「六山さんのあれはもう筋金入りですからね……」

如月「……」

御影「今度コテージに無理やり乗り込んじゃおうかな……」

如月「それは……」

御影「えっ?」

兵頭「如月さん?」

如月「いえ、強硬な手段に出ると逆効果ではないかと」

御影「そうかぁ……うーん」

兵頭「長期戦になりそうですね……私も手伝いますから頑張りましょう牡丹さん」

御影「うん、ありがとう千」

如月「…………」

如月(六山さんが夜に支部を抜け出している事はまだ知られていないようですが……)

如月(一度彼女と話した方がいいかもしれませんね)

御影「余裕持ってたはずなのに話してたらもうこんな時間だよ……!」

急がないと……あれ?

土橋「政城~♪」

赤穂「落ち着け美姫!ちょっと頬擦りは駄目だって……!」

御影「……」

赤穂「誰だ、美姫に酒を飲ませたのは……!」

土橋「アタシお酒なんか飲んでなーい!ちょっと葡萄ジュースは飲んだけど!」

赤穂「それはワインだ……!ちょっ、力強いな!倒れる倒れる!」

土橋「……アタシが女の子らしくないって事?」ウルウル

赤穂「えっ、いや、違っ」

土橋「うええーんっ!まさきがひどいこというー!」

赤穂「そ、そんな事ないぞ!美姫は立派な女の子だって!」

土橋「ほんと?」

赤穂「本当だ」

土橋「じゃあー……ちゅーして?」

赤穂「うっ……わ、わかった。誰も見てないよな……」

御影「……」

私にもこんな時に隠れるだけの情けはあった。

兄さん……まあ、見なかった事にしておくよ。

御影「間に合った……」

道掛「おっ、牡丹ちゃん!」

御影「ま、待たせてごめん」

道掛「気にしなくていいぜ!好きな女の子待つのも青春だからな!」

御影「そ、そう」

道掛「おっと、忘れる前に……メリークリスマス牡丹ちゃん!これは俺からのクリスマスプレゼントだぜ!」

御影「手袋?」

道掛「牡丹ちゃん、よく手寒そうにしてるからさ。鞍馬に習って作ってみた!」

御影「あ、ありがとう……あれ?」

道掛「どうした牡丹ちゃん?」

御影「この手袋、片方は合うけど……もう片方はサイズ大きい」

道掛「えっ、うわっ、マジか!?や、やっちまった……」

御影「……道掛、ちょっとこれ着けてみてよ」

道掛「……おぉ、ピッタリだ」

御影「それで……こう」

道掛「牡丹ちゃん!?」

御影「着けてない方の手を繋いだら、寒くないでしょ?」

道掛「ぼ、牡丹ちゃん……今年は最高のクリスマスだぜ!」

御影「早いって……まだ始まったばかりなんだから」

道掛「よっしゃ、クリスマスデートの始まりだ!」

御影「あっ、私もプレゼント」

道掛「お楽しみは後にとっておくよ!行こうぜ牡丹ちゃん!」

御影「あっ、ちょっと……もう」

私にこんなクリスマスが来るなんて思わなかったけど……うん。

御影「青春だよね、こういうのも」

END

2月14日、バレンタイン。

こんな世の中になっても、いや、こんな世の中だからか?

こういう時は俺達第二十支部の面々は楽しむようにしている。

時々他の支部から小言をもらう事もあるけど、まあそれくらいは支部長らしく俺が引き受けるさ。

普段は世界をまた復興させるためにみんな頑張ってるんだからな。

御影「兄さん、これチョコレート」

赤穂「おっ、ありがとうな牡丹」

御影「市販品に大げさだって」

赤穂「こういうのはもらう相手が重要なんだよ」

特に生き別れてた妹からだしな……感激もひとしおだ。

御影「……そんなものなの?」

赤穂「ああ」

御影「そっか……」

赤穂「んっ……?」

なんだ、牡丹の様子がおかしいぞ?

というか、その手にある綺麗にラッピングされたチョコレートはなんだ?

御影「ありがとう兄さん、私頑張ってくるよ」

赤穂「えっ?ああ、頑張……って待て牡丹!頑張るってなんだ!?」

不穏な妹の言葉を聞き逃せるわけもなく、俺は杖を取って牡丹の後を追いかけた。







EXTRACHAPT【バレンタインの喜悲劇】






赤穂「くっ、見失った……!」

牡丹、いつの間にそんなチョコレートを渡すような相手が出来たんだ!

クリスマスか、俺が酔った美姫の相手を一日中してたクリスマスのあの時か!?

静音「チョコレートー♪チョコレートー♪」

赤穂「あっ、静音!牡丹見なかったか!?」

静音「御影?御影ならさっき図書館に行くって言ってたけど」

図書館?そこに牡丹に手を出した不届きものがいるのか!

静音「あっ、そうだ。せっかく会ったんだしこれをやろう!」

赤穂「……チョコレート?」

静音「義理チョコ!一応支部長だしな!」

赤穂「お、おう、ありがとう……静音は誰かに渡す予定とかあるのか?」

静音「奏とジェニーになら渡した!友チョコってやつ!」

赤穂「ああ、それは想像ついてた……んっ?じゃあそのチョコレートはもらったやつなのか?」

静音の手にはやけに気合い入ったチョコレートが……二つある。

てっきりあれが四方院さんに渡すやつだと思ってたんだけどな。

静音「これは奏と薄井からもらった!」

赤穂「…………薄井?」

えっ?

四方院「ふふっ、凪からのチョコレートは相変わらず可愛らしいですわ」

薄井「……おい四方院」

四方院「なんです」

薄井「なんでさっきから人についてきやがる」

四方院「あら、心外ですわ。偶然一緒の方向に行っているだけですのに」

薄井「……」

四方院「ああ、それにしても凪のチョコレート……」

薄井「わざとか!おい、わざとだよなオイ!?」

四方院「何の事です?せっかく気合いを入れて手作りまでしたのに凪からは貰えなかった人に自慢だなんて……完璧たるわたくしがするとでも?」

薄井「やっぱりわざとじゃねえか!この依存女!」

四方院「なっ!?わたくしはあなたのような粗暴な人は、凪のお相手には相応しくないとわざわざ教えてさしあげてるだけですわ!」

薄井「へっ、自分が相手いねえからって僻むなよ!」

四方院「誰が僻んでると言うのですか!?」


赤穂「……」

まさかこんな事になってるとは思わなかった……

中心の静音は何も知らずか……


静音「あっ、おーい!」

四方院「あら、凪。どうしましたの?」

薄井「……」

静音「薄井薄井、はいこれ!」

薄井「はっ?」

静音「さっき渡すの忘れてたから!」

四方院「なっ……!?」


静音……わざとじゃないんだろうなぁ、あれ。

津浦「……」ソワソワ

グレゴリー「ふむ、言の葉の魔術師よ」

津浦「は、はい、なんでしょうか」

グレゴリー「先ほどから妖精達の悪戯を受けているようだが……自惚れでなければそれはこの時間軸の影響か?」

津浦「え、ええ、今日はバレンタインデーですので、そのMr.グレゴリーにチョコレートを、用意したのですが……」

グレゴリー「フッ、その誘惑をはね除ける術はない。歓喜を持ってその贈り物を受け取ろうではないか」

津浦「で、ではこれを」

グレゴリー「確かに託された、言の葉の魔術師よ」

津浦「あ、あの……Mr.グレゴリー。もし良ければどこかで落ち着いて話をしませんか」

グレゴリー「ふむ、言の葉の魔術師の誘いならば。して約束の地はいずこか?」

津浦「では……」


赤穂「……」

見つかる前に退散しよう……

【図書館】

赤穂「牡丹はいないか……」

遠見「おや、赤穂殿」

赤穂「遠見、牡丹見なかったか?」

遠見「御影殿でありますか?自分達はここにいたでありますが、誰も来ていないでありますよ」

赤穂「そ、そうか……」

さては牡丹、これを見越して静音に図書館に行くって言ったな……!

赤穂「悪い、邪魔したな……」

遠見「いえいえ、大丈夫でありますよ」

となると、牡丹はどこに……



遠見「御影殿も大変でありますなぁ」

佐場木「誰か来たのか」

遠見「いえ、なんでもないでありますよ佐場木殿」コトッ

佐場木「チョコレート?」

遠見「バレンタインでありますから。佐場木殿、甘い物は苦手でありましたか?」

佐場木「いや……ありがたくいただこう」

遠見「はいであります」

六山「……むうっ」

ジェニー「モモカ?どしました?」

六山「あっ、ジェニーさん。チョコレート、マーケットでつい買っちゃったんだよね」

ジェニー「チョコレート!モモカ、誰かに渡すですか?」

六山「いや、渡す予定は、ないんだけどね……はあっ、なんで買っちゃったんだろ」

ジェニー「モモカ、あーんです!」

六山「えっ、んむっ」

ジェニー「美味しいです?」

六山「美味しいけど……」

ジェニー「バレンタインデーに暗い顔はダメですですよ!」

六山「ジェニーさん……」

ジェニー「スマイルスマイル、です!」

六山「うん、そうだね。あっ、よかったら他にも人呼んでみんなで食べよっか?」

ジェニー「パーティーですか!」

六山「あはは……そこまでのものじゃないけどね」


【六山のコテージ】

鞍馬「……」

コトンッ

鞍馬「……」スタスタ

如月「バレンタイン、ですか?」

兵頭「はい。如月さんはチョコレートをいただいたりは……」

如月「僕は基本的に世界各国を飛び回っていましたから、いただく機会はありませんでしたね」

兵頭「そう、ですか」

如月「兵頭さんは?」

兵頭「はい?」

如月「今まで誰かに渡したりは」

兵頭「義理を配る事はありましたが……」

如月「……」

兵頭「……」

如月「ふうっ」

兵頭「なんでしょう、ぎこちなくなってしまいますね……」

如月「そうですね……僕はこういった事に不得手ですから、柄にもなく緊張しているのかもしれません」

兵頭「如月さんも緊張するんですね」

如月「……本命をいただくのは、初めての出来事ですからね」

兵頭「……私も本命を誰かに渡すのは初めてです」

如月「……」

兵頭「……」

如月「兵頭さん」

兵頭「はい」

如月「……これからも、よろしくお願いします」

兵頭「……はい、こちらこそ」

御影「はい、これ」

道掛「ぼ、牡丹ちゃん……これはまさか……」

御影「チョコレート。マーケットのやつだけど」

道掛「う、うおおおお……!ありがてえ、ありがてえよ牡丹ちゃん!」

御影「ちょ、ちょっと、泣くほど?さっきも言ったけどこれマーケットの」

道掛「関係ねえ!牡丹ちゃんからチョコレートもらえたって事実が大事なんだよ!」

御影「……兄さんの言った通りだった」

道掛「赤穂?」

御影「こういうのは、もらう相手が重要だって」

道掛「おぉ、赤穂もいいこと言うな!さすが牡丹ちゃんの兄貴だ!」

御影「……でも私としては、手作りを渡したいんだよね」

道掛「へっ?」

御影「……好きな人にあげるものだし」

道掛「ぼ、牡丹ちゃん……!」

御影「だから、またいつかを楽しみにしててよ」

道掛「おう、おう!一生だって待つぜ!」

御影「……うん」

土橋「で?結局牡丹見つからなかったから拗ねてるの?」

赤穂「別に拗ねてるわけじゃ……だけど牡丹はまだ」

土橋「子供だーって言うなら同い年のアタシに手出してる政城はどうなの?」

赤穂「うっ」

土橋「ほらほら、チョコレートあげるから機嫌直しなよ。はい、あーん」

赤穂「んむっ……美味い」

土橋「ありがと」

赤穂「……わかってはいるんだよ。牡丹がそういう相手見つけるのはいい事で、あいつも子供じゃないのは」

赤穂「だけど、俺にとって牡丹は……離れたあの頃のままだったからさ」

土橋「牡丹が養子に行ったのが小学生の頃だっけ?最近止まった時間が動いたから追い付いていかないって感じかな」

赤穂「そう、だな……後はやっぱり寂しいのかもな」

土橋「寂しいか……だったらさ」ギュッ

赤穂「美姫?」

土橋「アタシがその分一緒にいるよ。いや、牡丹の代わりなんて無理なのは知ってるけど……せめて寂しくないって思えるぐらいに」

赤穂「……」

土橋「アタシは、その、政城の恋人なんだし」

赤穂「……こう言ってもらえるなんて俺は幸せ者だな」

牡丹もいつか大事な人を見つけて離れていく。

必ず来るだろうその時に美姫がこうして隣にいてくれたらいいなと、俺は思った。

END

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