紅莉栖「――勘違いすんなぁーっ!!」 (42)

[どこかの世界線のラボ]


岡部「比屋定? 誰だそれは」

紅莉栖「私の先輩よ。脳科研の」

岡部(ヴィクコンか……)

岡部「その比屋定某とやらが、狂気のマッドサイエンティストに心酔したため帰国できなくなった助手を迎えにくる、と?」

紅莉栖「誰も貴様に心酔などしとらんわ」

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紅莉栖「先輩、飛行機の関係で、到着はお昼前になるって」

紅莉栖「怒られるでしょうね……。本来やるべき研究をほっぽって、こんなお遊びサークルに入り浸ってるんですもの」

岡部「とか言いながら、嬉々として新たなガジェット制作を始めたツンデレ少女はどこのどいつだ」

紅莉栖「ツンデレ違う! ……確かにここでの生活は、どういうわけか居心地いいけど」ボソッ

紅莉栖「まあでも先輩って、一度決めたら引かないタイプだから、間違いなく私は強制送還される」ハァ

岡部「ククク、この鳳凰院凶真に挑もうとは、いい度胸だ」

紅莉栖「岡部が先輩に勝てるとは思えないけど」

紅莉栖(あの人、舌戦だけは強いのよね)

岡部(まさか、超絶スーパーなムキムキタフガイだったりするのか……?)アセッ


岡部「その先輩とやらは、どんな人物なのだ?」

紅莉栖「えっ? そうねぇ……一途な人、かな」

岡部(い、一途……?)ドクン

紅莉栖「何事にも真摯に向き合って、少しでも疑問があれば、自分で納得するまで諦めない人、って感じかしら」

岡部「ほ、ほう。なるほど、研究熱心ということか」ホッ

紅莉栖「ま、その性格のせいで何度も迫られたわ。衝突したり、喧嘩になったこともあった」

岡部(せまっ!?)ドキドキ

紅莉栖「けど、実験が成功した時は、お互いどちらの研究っていうこともなく、我が事のように喜びあったりした」

紅莉栖「仲直りのコーヒーは、特別な味がしたわ」フフッ

岡部(これは、まさか……いや、やはり……)


岡部「……ずいぶんと仲がよろしいのだな」

紅莉栖「アメリカの研究所で二人っきりの日本人同士だったし、歳も近いから仲良くもなるわよ」

岡部「それは仕方ないな。うむ、仕方のないことだ」

紅莉栖「実験を朝までやって、そのまま二人で寝落ちしちゃうなんてしょっちゅう」

岡部「う、うむ……」

紅莉栖「つかの間の休みの日には一緒に映画を見に行ったり、西海岸のビーチに遊びに行ったこともあったわ」

岡部「デートだと!?」ガタッ

紅莉栖「デート? まあ、デートよね、うん」

岡部「ま、まま、まさか、おうちにお泊りなどということも……!?」プルプル

紅莉栖「ママと先輩は仲が良いわよ」フフッ


岡部「な……な……」

紅莉栖「岡部? どうしたの、そんな地球が滅亡しそうな顔をして」

岡部「……俺だ」スッ

紅莉栖(また例の報告……)ハァ

岡部「ああ、どうやら助手は機関によって偽造記憶を移植されてしまったらしい」

岡部「ボッチにつけこまれたか……なんと卑劣な攻撃なのだ……」

紅莉栖「聞こえてるぞコラ」


紅莉栖「つまり、この私に、仲の良い先輩が居て、正直ビックリしてるんですねわかります」ニヤニヤ

岡部「その『先輩』とは、あなたの想像上の存在に過ぎないのではないでしょうか?」

紅莉栖「違うと言っとるだろーが! あと3時間もしたらここに来るわよ、私をさらいに」

岡部「う、うむ……」

岡部(まるで映画『卒業』のワンシーン……いやいや、なにを考えているのだ俺は……)

紅莉栖「もしかして岡部、妬いてるの?」

岡部「だっ! ……誰がクリスティーナなんぞにヤキモチなど焼くか」プイッ

紅莉栖「安心しなさい。先輩はあんたの思ってるような人じゃないから」フフッ

岡部(この余裕……いったい、なんだと言うのだ!?)

[大檜山ビル前]


岡部「おい、ダル! 応答しろ、ダル!」

ダル『なんだよも~。今せっかくメイクイーンでフェイリスたんとのニャンニャンタイムを満喫してるとこなのに~』

岡部「……紅莉栖に男がいた」

ダル『いや、普通いるっしょ。17歳でサイエンス誌に載った天才で、しかもあの見た目っしょ?』

ダル『研究室とかいう閉鎖的な男社会に居て、アメリカの男が放っておくわけがなくね?』

岡部「な……!?」ドクン


岡部「だ、だが、やつはヴァージンなのだぞ!?」

ダル『処女厨大歓喜ィ! つかそれ、オカリン確認したん?』

岡部「いや、我が魔眼で観測したわけではないが……」

ダル『どうせ別の世界線の話なんっしょ? この世界線では違うとかあり得るんとちゃうん?』

ダル『それこそオカリンの勘違いだったりして』

岡部「そんな……バカな……っ」ガクッ

ダル『もしもし? オカリン? オカリーン?』

[芳林公園]


岡部「…………」

紅莉栖「こんなところに居たか。突然ラボを飛び出して行って、先輩にビビったんですねわかります」

岡部「……俺は鳳凰院凶真。我が野望のためには、多くの人の想いさえも犠牲にする男だ」

紅莉栖「はいはい厨二病乙」

岡部「世界の支配構造を覆すためには、因果律に反逆することさえ躊躇わない……!」

紅莉栖「お、岡部?」

岡部「Dメールを送る。助手、手伝ってくれ」

紅莉栖「えっ?」

[ラボ]


紅莉栖「送り先は中2の頃の岡部。内容は【ヴィクコンの 脳科研に入る ために勉強!】……」

岡部「さすれば、今の俺は脳科学研究所所属の人間になるだろう」

紅莉栖「まあどうせ? 岡部が必死こいて勉強したところで簡単に入れる大学じゃないですけど」

紅莉栖「……でも、本当にいいの? このメールを送ったら、少なくとも今のあんたが否定されることになる」

紅莉栖「どの程度かはわからないけれど……なかったことになっちゃうのよ?」

岡部「構わない。というか、今よりもっと勉強していれば、より精度の高い電話レンジ(仮)を開発することも可能だろう」

紅莉栖「……もしかして、私のためだったりする?」

紅莉栖(父に嫌われて世界から否定された、あの頃の私の側に居てくれるってこと……?)



岡部「勘違いするな、クリスティーナ」


岡部「すべては俺の独善だ。俺の目的は、世界を混沌に陥れること」

紅莉栖「ああもう……それでいいわよ」

紅莉栖(なんだかんだで、こいつなりの照れ隠しなのかな……)

紅莉栖(なによ、ちょっと嬉しいじゃない……)

紅莉栖「それじゃ、送るわよ」

岡部「ああ、頼む」

紅莉栖「…………」ピッ



岡部「――――ぐっ!? この目眩はっ!?」グラッ


――――――――――
―――――



岡部「……リーディングシュタイナーが発動したのか」

岡部(ここはどこだ? 屋外のようだが……)キョロキョロ

岡部(夜空に星が瞬いている……。さっきまで朝だったというのに)

岡部(Dメールでは時間移動はできない。ということは、ここは……)


紅莉栖「ちょ、ちょっと岡部? どうしたの急に?」

岡部「紅莉栖……? ここはヴィクコンか?」

紅莉栖「寄宿舎の前だけど……大丈夫?」

岡部「つ、つまり、俺は未来からのメールを受け取り、一生懸命勉強し、飛び級でヴィクコンに入学したのだな!?」

紅莉栖「そんなわけあるか」

岡部「っ、なに?」

[ヴィクコン居住区]


紅莉栖「この寄宿舎の一部屋に岡部が一泊できるのは、私の上司である教授のおかげじゃない」

紅莉栖「あんたはヴィクコンの学生じゃなくて、東京電機大学の1年生でしょーが」

岡部「うぇいうぇい! ならば、どうして俺がアメリカに居るのだ!?」

紅莉栖「それはあんたが、いつか入学することになる大学を見学したいー、とか言うから、仕方なく付き合ってあげてるわけだが」

紅莉栖「……あっ、この場合の付き合ってるっていうのは交際してるって意味じゃないからな! 勘違いすんなっ!」

岡部「……テンプレ乙、とだけ言っておこう」

紅莉栖「くっ……」カァァ

岡部「だが、ということは、世界はそんなに変わってはいないのか……」


??「まったく、うるさいわね。今何時だと思ってるのかしら」


紅莉栖「あ、先輩!」

岡部「な、なに!? 紅莉栖の彼氏か!?」クルッ


真帆「か、彼氏? 勘違いも甚だしいわね……」キョトン

岡部「しょ、少女……?」

紅莉栖「先輩はれっきとした成人女性よ」

真帆「今まで中学生に間違われることはあっても、男に間違われたことは無かったのに……」ガックリ

真帆「侮辱罪で訴えてあげるわ」ムスッ

紅莉栖「岡部はホント人に喧嘩を売るのが上手よね。紹介するわ。こちら、比屋定真帆先輩」

岡部「比屋定……"真帆先輩"ッ!?」


真帆「こんな失礼な男とどうして紅莉栖が……」ブツブツ

岡部(ま、まさか、ルカ子の時と同じように、Dメール送信によるバタフライ効果によって、性別を改変してしまったのか!?)ドクン

真帆「初めまして、岡部さん。日本で紅莉栖が世話になってるようで」スッ

岡部「……っ」

真帆「握手もできないの?」ムスッ

岡部「か、勘違いするな。我が右腕に宿りし、あああ悪霊がぁっ……!」プルプル

紅莉栖「ホントにすいません、先輩……」


岡部「き、貴様がその、クリスティーナと仲が良いとかいう先輩とやらか」

真帆「"クリスティーナ"?」

紅莉栖「だぁー! 先輩の前でその呼び方はしないって約束しただろーがぁ!」ウワァン

真帆「……ふぅん。恋人同士のあだ名、ってこと」

紅莉栖「ちょ、先輩!? それは誤解です、弁明させてくださいっ!」

岡部(この比屋定さんに対して、紅莉栖が必死に恋愛関係を否定しようとしている……?)

岡部(まさか、この世界線の紅莉栖は、そっちのケがあるのかぁ!?)

岡部(確かに紅莉栖はコミマでBL本を買いあさっていたこともあったが、まさか百合属性まで持つことになるとは……)

岡部(たとえ比屋定さんの性別が変わったとしても、恋愛感情は変わらなかったということか……!?)


岡部(……冷静になってみれば、俺は紅莉栖にひどいことをしてしまった)

岡部(私欲のために、紅莉栖から比屋定先輩という存在を、遠ざけようとしてしまったんだ)

岡部(認めよう。これは俺の嫉妬であり、自惚れだ)

岡部(世界中の誰よりも、紅莉栖のことを理解しているのだという自惚れ……)

岡部(つまらない意地からくる、勘違いに過ぎなかったのだ)

岡部(紅莉栖は、そんなことを望んでいないというのに……)


岡部「……二人とも、ずいぶん仲が良いのだな」

真帆「それはまあ、色々あったけれど、一緒に乗り越えてきたもの」

紅莉栖「日本人、しかも若い女性……それだけのことで、どれだけ私たちがこの場所で苦労してきたか」

真帆「それに、紅莉栖は私の超えるべき目標でもある」

紅莉栖「先輩?」

真帆「正直に言って、科学者としての素質の面で私は紅莉栖に及ばない」

真帆「だけどね、ううん、だからこそ、私は紅莉栖を尊敬してるし、同時に勝ちたいと思ってる」

紅莉栖「わ、私だってそうです。私がここに来るずっと前から、孤立無援で奮闘してた先輩のこと、尊敬してます」

紅莉栖「先輩が居てくれたことで、どれだけ救われたか……」

真帆「紅莉栖……」


岡部「……ダル。俺だ。ああ、そうだ。至急Dメール送信の準備を」

紅莉栖「ちょっと岡部? 人が話してる時にケータイは――」

岡部「わかっている。残念ながら俺は慎重じゃなかった」

岡部「自分の愚かさが分かっていたなら、未来をこんな形にしてしまうなんてこともなかった」

岡部「それでも、可能性があるならば……試さずにはいられない」

岡部「それがサイエンティストというものだろう?」

真帆「どうしたの、この人?」

紅莉栖「……も、もしかして、Dメールをっ!?」

岡部「紅莉栖、すまなかった」

紅莉栖「ふぇ?」

岡部「また会おうな……」ピッ



【ヴィクコンは 機関の罠だ。 仲間を信じろ】


――――――――――
―――――
[ラボ]


岡部「……リーディグシュタイナー。どうやら、無事ラボに帰還したようだな」

紅莉栖「ど、どうしたの岡部。……また変な電波でも受信したか」

岡部(これですべてのバタフライ効果は取り消せたはず……)


ガチャッ


真帆「ホントにここであってるのかしら……あら、紅莉栖?」

紅莉栖「あ、先輩。遠いところ、お疲れ様です」

岡部「来たか、比屋定……あ、あれ? 少女だ……」

紅莉栖「まあ、岡部が戸惑うのも無理ないか。これでも先輩、成人してるのよ?」

真帆「まあ、それに関しては言われ慣れているから別にいいのだけれど」

岡部(――比屋定真帆は、もとから女だった!?)ガーン


岡部「俺はなんという勘違いを……」ガクッ

真帆「そ、そこまで落ち込まなくていいわよ。どうせ紅莉栖が説明しなかっただけなんでしょうから」

紅莉栖「確かに先輩の容姿については、あんまり言及することができませんでしたけど」

紅莉栖(だって、先輩の容姿の話は禁句だものね……)

岡部「それで、比屋定真帆とやら。紅莉栖を取り返しにきたのだろう?」

紅莉栖「ちょっ、先輩の前に限って名前で呼ぶなぁ……っ」カァァ

真帆「取り返しにってほどじゃないわよ。ただ、紅莉栖がそこまで入れ込んだ場所と人に興味があっただけ」

真帆「もちろん、これから紅莉栖に納得できるような解を出してもらうつもりだけど」チラッ

紅莉栖「うっ……」


紅莉栖「い、一応、このラボの所長の許可をもらおうと思います」

岡部「む?」

真帆「ええ、どうぞ」

紅莉栖「ねえ、岡部……。さっきの話の続きなんだけど」

岡部「さっき、とは?」

紅莉栖「おまっ! ……あんたがさ、私のこと、信じるって言ってくれたこと」

岡部(そんなことを言ったのか、俺……。だが、それは間違いではない)

岡部「ああ、そうだ。俺はお前の意見を尊重する」

岡部「お前がアメリカに帰るべきと判断したなら、そうすればいい。もちろん、その場合でも、お前の居場所は無くならない」

岡部「ラボにはいつでも来たい時に来ればいい。お前は、世界のどこにいようと、ラボメンナンバー004なのだからな」

紅莉栖「うん……」


真帆「なかなか理解のある所長さんじゃない」

真帆「あなたのこと、勘違いしてたわ。人は見かけによらないものね……」

岡部「フッ、見くびってもらっては困るな」

紅莉栖「そうやってすぐ調子に乗らない」

真帆(やっぱり、この二人……)


紅莉栖「こんなの、全然合理的じゃない。それでも、私は……」

紅莉栖「――決めた」

紅莉栖「先輩、ごめんなさい。私、もう少しだけ、ここに残ります」

岡部「な、なにっ!?」

真帆「…………」


紅莉栖「私が研究所に居ないことで発生する損失に対して、責任を持ちます。社会的制裁があるなら、甘んじて受けます」

紅莉栖「なので……あと数日だけでも、ここに居させてください」

真帆「……どうして?」

紅莉栖「私が、居たいからです」

岡部「それでは説明になってないぞ!? いつもの論破厨紅莉栖はどうした!?」

紅莉栖「ろ、論破厨って言うなぁっ!」

真帆「……そう。なるほど、そういうこと……」


真帆「あの紅莉栖に、こんな感情的な結論を出させるなんて。"You are something."」

岡部「ゆ、ゆー……?」

紅莉栖「褒められてるわよ、岡部」

岡部「お、おう?」

真帆「まあ、元々紅莉栖が日本へ来ることは、研究所でずっと缶詰だった時期のストレスを発散するのに良いと思ってたし、そこは問題ないわ」

紅莉栖「あ、ありがとうございますっ!」ペコリ

真帆「でも、帰ってきたら覚悟しておきなさい? 論文の講演会やら人工知能研究やらで、とっても忙しくなるわよ?」

紅莉栖「……は、はいっ」

真帆「岡部さん。紅莉栖を頼んだわよ」

岡部「……ああ、任せろ」


・・・

岡部「それで、比屋定さんは『私が居たらお邪魔よね』などと言い捨てて早々に帰ってしまったわけだが……」

紅莉栖「先輩、絶対勘違いしてる……うぅ……」モジモジ

岡部「なあ、紅莉栖――」

紅莉栖「そ、それ以上言うなぁっ!」ジタバタ

岡部「まだ何も言ってないわけだが……」

紅莉栖「べ、別に私は、あんたがどーしても一緒に居て欲しいって言うから、しかたなーく残ってあげただけなんだからなっ!?」

岡部「……テンプレ乙」

紅莉栖「ぐっ……」カァァ


岡部「ホントに良かったのか? あの比屋定さんだって、お前にとっては大切な人だろう?」

紅莉栖「そりゃ……当然よ。仕事仲間としても、人生の先輩としても大切な人なのは間違いない」

紅莉栖「だけど、別にこれは、アメリカと日本を、脳科研とラボを、先輩と岡部を選択するっていう話じゃない」

紅莉栖「どちらかひとつを選ぶことかできないなんて、そんなの、残酷すぎる」

岡部「……そうだな」

紅莉栖「あんただってきっとそんなことになったら、どっちも選ぶっていう選択をするんでしょ?」

紅莉栖「それがシュタインズ・ゲートの選択だぁー! ふぅーはははぁ! とかなんとか言っちゃってさ」ドヤッ

紅莉栖「…………」カァァ

岡部「……言ってから照れるな。こっちまで恥ずかしくなる」


岡部「比屋定さんに頼まれたからには、ラボの所長として、しっかり助手の面倒を見てやらんとなぁ」ククク

紅莉栖「どっちかというと逆でしょーが。ってゆーか、助手って言うな」

紅莉栖「まあ、これで作りかけだったガジェット制作も継続できるわね。やっぱり完成させておかないと、なんだか心残りになっちゃうもの」

岡部「そう言えば、紅莉栖はどんな未来ガジェットを作っているのだ? 見た目はヘッドギアだが……」

紅莉栖「名前をつけるとしたら、【勘違いチェッカー】ってところかしら」

紅莉栖「人間の会話を認識するAIを搭載して、伝達情報の送信側と受信側の思考アルゴリズムに80%以上の齟齬が発生した場合にアラームが鳴る、っていうもの」

岡部「ほう、これは金になりそうだな!  フゥーハハハ! さっそく試してみようではないかっ!」スチャ

紅莉栖「ラボの運営費のために開発したわけじゃないが……岡部が楽しそうならいっか」フフッ


紅莉栖「まっ、常に論理的な会話をしてる私に情報伝達の齟齬が発生するなんて有り得ないんだけどね」スチャ


ガチャッ


まゆり「トゥットゥルー! クリスちゃんクリスちゃん、ダルくんに聞いたんだけど、アメリカに帰っちゃうって本当!?」ヒシッ

紅莉栖「ハロー、まゆり。それについては延期させてもらったわ。どこかの誰かさんが寂しがっちゃうからね」

岡部「む? まゆりのことか?」


ビー!ビー!


岡部「なんだ? アラームが?」

紅莉栖「……ってことは、本当に誰かわかってなかったのか」ハァ


まゆり「まゆしぃはとってもさみしいよー。でも、延期してくれたってことは、ちゃんとお別れ会ができるねっ!」

紅莉栖「お別れ会って、幼稚園じゃないんだから……でも、サンクス」フフッ

岡部「紅莉栖は消えてなくなるわけではない。時差はあるだろうが、この情報化社会ではすぐ連絡が取れるぞ」

紅莉栖「それに、アメリカに帰ってからも、日本にはちょくちょく戻ってくるつもりだから」

まゆり「ホント!? よかったー、それならさみしくないね」ニコニコ

紅莉栖「べ、別に岡部に会いたいから日本に来るわけじゃないからな!」


ビー!ビー!


まゆり「えっと……?」

岡部「誰も俺の話などしてなかろう、助手よ……」

紅莉栖「なぁっ……」カァァ


紅莉栖「い、いや、わかってるわよ!? 岡部と離れ離れになっても、全然さみしくないものね!」

ビー!ビー!

紅莉栖「あと数日で岡部のもとを離れなきゃいけないからって、さみしかったりなんかしない!」

ビー!ビー!

紅莉栖「ずっと岡部のそばに居られたらなんて、全くこれっぽっちも思ってないっ!」

ビー!ビー!

紅莉栖「岡部が居なくたって、ぜんっぜんさみしくなんかないからぁーっ!」

ビー!ビー!


まゆり「……ねえ、オカリン。これってウソ発見器さん? もしかしてオラオラ?」

岡部「いや、助手は墓穴を地球の裏側まで掘ろうとしているだけだ」

天王寺「こら岡部ぇ! うるさくしてると家賃上げるぞ!!」

岡部「ミスターブラウン!? おい、紅莉栖! お前の気持ちは充分わかったから、静かにしてくれぇっ!」



紅莉栖「――勘違いすんなぁーっ!!」

ビー!ビー!








おわり

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