モバP「うぇーい」(10)

ベッドが軋む。

情事の終わりと共に脱力し、少女の上に覆い重なるよう倒れ込んだ。

少女は放心状態のまま、静かに天井を見つめている。

その瞳からは一筋の涙が流され、それは歓びによるものか、悲哀に満ちたものなのか、判別できそうにない。

少女から女になり、彼女の中で何かが変わったのだろうか。

それとも、何も変化はなかったのかもしれない。

こんなものだと……何を思うでもなく、失望も歓びもない。

その涙は宿った後悔か、または一瞬の感慨に浸ったものかもしれない。

少女はどこまでも無表情だった。

「愛してるから」と……そう口にした。


責任を取るという言葉が浮かんだ。

けれどそれは、きっと彼女を傷つける刃だ。

彼女は優しいから、俺の言葉一つで「関係を持ってしまった以上、仕方なく責任を取る」と解釈するだろう。

その時は笑顔で、「気にしなくていいから」と俺を慰め、一人陰で苦しむのだ。

互いに望んだ行為ではなかった。

すべては勢いだ。

人生において、一度も流されずに生きていける人間は少ない。

場所、心理状態、雰囲気、偶然必然。

人生の選択は唐突にやってくる。

彼女を抱いたのは単なる流れだ。

環境が違えば、他の女性と関係を持っていたかもしれない。

たまたま機会があって、なんとなく彼女と結ばれた。

人間なんてそんなものだ。

高尚ぶっていても、我々人間は自然界に生きる動物でしかない。

食う、寝る、ヤる。

そこに仕事を加えたのが人間で、あらゆる動物は自分たちの社会を築いている。

すべては文明の発達具合の差でしかない。

「愛してる」

もう一度口にする。

白々しい。

「…………」

彼女の顔が近づき、無言で口づけを交わす。

彼女は俺の気持ちなど見抜いた上で、こちらに合わせてくれる。

いつだってそうだった。

ずっと隣にいたのはキミだった。

傍にいて、支えていたのは俺じゃない。

俺を支えてくれたのがキミだったんだ。

抱いたあとで気づかされる。

大切に想っていたよ。

彼女を抱き締める。

もう言葉はいらなかった。






ありがとう、ハナコ

終幕

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