マコ「それでも私!流子ちゃんのこと好きだもん!」 (146)

鮮血「なあ流子」

流子「なんだ鮮血?」

鮮血「二千十四年三月に放送終了したアニメのカップリング固定百合SSなんて、
   今更需要があるのかどうか……」

流子「? 一体お前は何言ってんだ鮮血」

鮮血「否、なんでもない……予防線張ってないで本編に移るとしよう」

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ハーレルヤッ!

マコ「みなさんこんにちは!私!満艦飾家長女!満艦飾マコ!」

マコ「制服が支配する本能寺学園に通って流子ちゃんに出会い!その後色々あって
   流子ちゃんと皐月様と私とその他の活躍で見事地球を覆わんとしていた生命戦維に打ち勝った!」

マコ「本能寺学園は閉校し、みんなそれぞれの進路を決め、
   私と流子ちゃんは神奈川県の輪廻堂高校に転校!」

マコ「もう誰も傷つかなくていい!もう誰も戦わなくていい!
   普通の女の子の、普通のかわいい生活をやっと手に入れた!」

マコ「はずなんだけど……」


パクパクモグモグガツガツムシャムシャ


薔薇蔵「相変わらず母ちゃんのなんだかよくわからないコロッケはうまいなーぁ!
    おうどうしたマコ、なんだかブツブツ言ってないで食え食え!」

好代「おかわりたーんまりありますからね」ドカッ

流子「なにしてんだマコ、いつもの詭弁の練習か?」

又郎「流子のねーちゃん今日は大変だったそーだな」ガツガツ

流子「おう、今日は私を狙う部活の奴らがいつもより多めにかかってきやがってな。
   疲れてるから今日はいつもより多めに食べるぜ。ほら、マコもいつもみたいに食えよ」

ガッツ「ガッツガッツ!」

マコ「う、うん……」

マコ(なんでちょっと前の暮らしに戻ってるのぉぉぉぉ??)



薔薇蔵「ぐぁー……」スピー

流子「zzzz」

マコ(なんで?いつの間に!?私達、確かに生命戦維の野望を食い止めて卒暁式もすませて、
   三人でデートまでしたはずなのに、全部なかったことにされてるの!?)

マコ(イヤ!いや!そんなの嫌!崩壊した本能寺学園も何故か元通りになってるし、
   これじゃ流子ちゃんたちがあんなに頑張って戦った意味ないよ!ないよ!ないよ!)

マコ(一体なんの因果でこんなことになってるのぉぉぉぉ!?)

鮮血「おい……聞こえるかマコ、満艦飾マコ」

マコ「うえっ!?ど、どこからともなく謎の声が!?いい、一体なんだってのぉぉぉ!?」

鮮血「落ち着け、私だ。纏流子の一張羅、神衣鮮血だ」

マコ「え……?ええええぇぇ!?鮮血って、あの鮮血ちゃん!?うっそー!ほんとに!?」

鮮血「あまり騒ぐな、みんなが起きるぞ」

マコ「うはー!ホントに喋るんだ鮮血ちゃん!いや流子ちゃんが話しかけてたから喋ることは知ってたけど、
   でも意外と渋い声なんだね!鮮血ちゃん!」

鮮血「時系列が狂った事に戸惑っているようだな、マコ」

マコ「ほんとだよ!これじゃなんにも変わらないよ!やっと普通の生活手に入れたのに!」

鮮血「憤る気持ちは分かる。だが今は私の話に耳を傾けてくれないか」

マコ「お?なーになーに?」

鮮血「本能寺学園閉校後にもかかわらずお前がこの時間へ飛ばされたのには理由がある」

鮮血「もっとも、お前はタイムトラベルしたのではない。ここはお前の記憶、
   流子がまだこの満艦飾家に居候していた時の記憶を具現化した存在であり、場所だ」

マコ「え!?じゃあここは、本当の世界じゃないってこと!?」

鮮血「それは何とも言えない。ここは精神世界的な、パラレルワールド的なアレだ」

マコ「ほうほう」

鮮血「鬼龍院羅暁撃破後にもかかわらずお前がこの時間軸にやってきたということは、
   お前は今、この状況に未練があるということだろう」

マコ「ほうほう?」

鮮血「満艦飾家に流子が居て、迫り来る人類の危機などまだ知る由もなく
   二つ星生徒に追い掛け回されているこの状況、状態……この場所に帰りたいとお前が心のどこかで願ったのだ」

マコ「ほーぉ?」

鮮血「それが何故なのかはお前にしかわからない……ただ、なにか一つ、この世界にお前はやり残したことがあるのだろう。
   心当たりはないか、マコ」

マコ「ぐおー、ぐおー」スピー

鮮血「寝るなッ!」

マコ「ふえっ!あ、話はちゃんと聞いてました!」

鮮血「本当か!?未練をはらさなければお前は元の世界に帰れないんだぞ」

マコ「なるほど!長ったらしい話で寝ちゃったけど大体分かりました!」

マコ「私がこの場所に未練タラタラの幽霊で出没しちゃって未練はらさないと成仏できないってことですね!」

鮮血「ん……まあそんなところか」

マコ「それなら私!頑張るよ!折角手に入れた普通の生活だもん!こんなところでおめおめしてらんない!
   さっさと未練はらして成仏する!」

鮮血「その粋だ、マコ」

マコ「というわけで今日はこの話おしまい!おやすみー」ガバッ

マコ「ぐーぐー」スピースカー

鮮血「あ、あいかわず寝るのが早いな……」

又郎(いよいよ姉ちゃんまで服に話しかけるようになるとか、もうこの家は末期だな)



マコ「おっはよーみんな……ってあ゛ぁー!?もうこんな時間!?遅刻遅刻ゥー!流子ちゃんも急いで!」ドタバタ

流子「うっし、今日も一日頑張るぞ鮮血」

マコ「あ!聞いて聞いて流子ちゃん!私も流子ちゃんみたいに鮮血ちゃんと話できるようになったんだよ!」

流子「なにっ?ほんとうかそれは」

マコ「ねー、鮮血ちゃん」

鮮血「……」

マコ「あ、あれ?鮮血ちゃーん?おーい??昨日みたいに喋んないの??」

鮮血「……」

流子「なんだいつも通りじゃないか。全然聞こえてないみたいだけど」

マコ「ええぇー!?だって私昨日の夜鮮血ちゃんとお話したんだよ!ほんとだよ!」

流子「マコのことだから、きっと夢か何か見てたんだろ。どうなんだ鮮血」

鮮血「……そのとおりだ。きっと夢だろう」

流子「ほら。鮮血もそう言ってる。聞こえなかったろ?」

マコ「あっれー??おっかしいなー?えー??」

流子「そんなこといいから、早くしないと遅刻するぞ?」

マコ「んー、あー、なんでーぇ??」



鮮血『未練をはらさなければお前は元の世界に帰れないんだぞ』


マコ「鮮血ちゃんあんなこと言ってたけど、ホントに夢だったのかなー?」

マコ「いいや!この満艦飾マコ!いくらなんでも夢か現実かの区別くらいつきます!健康です!」

マコ「とりあえず、昨日の鮮血ちゃんの言葉を信じて、平和な日常を取り戻すために未練をはらすしかない!」

マコ「でも……未練ってなに?」

マコ「みんなで仲良く暮らせる時間を一時放棄してまでこの時間でやりたかったこと……」

マコ「うーーーーん……??」

???「お前が満艦飾マコか?」

マコ「お?はい!二年甲組!満艦飾マコです!!」

???「一緒に来てもらおうか」

マコ「え?」

グルグルグルグル……

マコ「うわあああぁぁぁ!?!?なっ、なにいいぃ!?」


ドガーン!

人衣一体流子「お前か!しゃらくさい挑戦状ふっかけてきやがったのは!」

???「ふふ……きたな纏流子。貴様を倒すのはこの俺……」

二つ星生徒「本能寺学園縄跳び部の威厳にかけて!貴様を倒す!」ヒュンヒュンヒュン

マコ「うわーーぁぁ!流子ちゃーん!私、縛られてるよー!縄跳びで縛られてるよーー!!」

流子「ちっ……またこの手の人質作戦か。もういい加減飽きたぜ」

マコ「そうだねー、もうここまで来たら私の人質っぷりも板についてきたねー!」

鮮血「流子、早く片付けてしまおう」

流子「ああ!私とお前なら余裕だ!」

二つ星生徒「おっといいのかな?下手な手出しするとこっちの娘がどうなっても……」

流子「あ、マコの縄跳びならもう切っておいた」

マコ「あ、あれ?わー!ホントだ!私自由だー!」

二つ星生徒「な、なに!?馬鹿な!いつの間に!」

流子「お前がにぶすぎるんだよ」

二つ星生徒「くそがあ!こんなところで諦めてたまるか!
      縄跳び部部長の必殺千五百三十跳びの餌食になれええ!!」ギュンギュン

流子「いくぞ鮮血!」

流子「必殺!戦維喪失!!」バサァ

二つ星生徒「ぐあああぁぁぁぁ……」

バタッ

流子「ふー……いっちょあがりっと」

マコ「わーぁ!すごい流子ちゃんさっすがー!かっこいー!」

流子「ああ、ありがとうマコ。いつも巻き込んで悪いな」

マコ「いやー!そんなぜーんぜんっ!問題なーい!」

マコ「むしろかっこよく戦ってる流子ちゃん見れてラッキー!って感じだよ!」

流子「ん、ありがとう、じゃあいつもの場所で飯でも食うか!」

マコ「あ!母ちゃんのよくわからないコロッケ弁当だね!食べよう食べよう!」

マコ「かあちゃんのー♪あいじょうのーぉ♪コロッケがーいっ、ぱぁーいー♪」

流子「なんだマコ。いつにもまして元気だな。まあお前はいつも元気か」

マコ「ちょっと懐かしいなって思って!」

流子「懐かしい?何が?」

マコ「なーんでもっ!」

流子「……?変な奴」

マコ(いやー!過去に戻るって嫌なことばっかりじゃないね!懐かしくて、私の過去ツアーに参加してるって感じ!)

マコ(本能寺学園綺麗だなー……じきにあんな状態になっちゃうのに)

マコ(昔はよくこうやって流子ちゃんに助けてもらってたっけ……)

マコ(……)

流子「ん?どうしたマコ、おばさんのコロッケ美味しくないのか?」

マコ「えっ??ん!もちろんおいしーよ!いくらでも食べるよ!」

流子「? ならいいけど」

マコ「はい流子ちゃんアーン」

流子「あーんっ」モグ

マコ(私のやりのこしたことって……?)

マコ「せんぱーーーいっ!」キキーッ

蛇崩「あ゛ぁ?劣等生ごときがこんなところまでずかずか入り込んでんじゃないわよ」

マコ「あ!蛇崩先輩だー!蛇崩先輩、蟇郡先輩知りませんか?」

蛇崩「ガマ君?あいつなら今確か……」

蟇郡「俺の名を呼んだか、満艦飾」ズイ

蛇崩「うわァ、いつの間に!」

マコ「蟇郡先輩!お願い事があるんです!」

蟇郡「俺にか……?一体何だ」

蛇崩「ちょっとぉ。あんた風紀部でしょ、早く劣等生追い出しなさいよ」

蟇郡「風紀部だからこそ。俺を頼ってやってきた本能寺学園生徒を問答無用で追い返すわけにはいかない」

蛇崩「はっ。どこまでが本心なんだか」

蟇郡「それでお願い事とは何だ」

マコ「私と流子ちゃんのことなんですけど」

蟇郡「なに?」

マコ「ごにょごにょ……」

蟇郡「……」

蛇崩「?」

流子「おーい!マコー!どこいったー!?」

流子「おっかしいなー……ちょっとトイレに行くって言うから待ってたのに全然帰ってこねえじゃねえかよ」

流子「早くしないと授業遅れるってのに……おーい!」

鮮血「流子。マコのことだからきまぐれで動いたのかもしれない。きっと授業までには戻ってくるだろう」

流子「まあそうかもな……じゃあ先に教室行ってるかー」

???「まてーぇぇい!!纏流子!!!」

流子「あ?」キョロキョロ

???「俺は今から貴様に挑戦状を叩きつけーぇぇる!!!」

流子「なんだまた部活の連中か?悪いが今戦ってる暇は……」

蟇郡「」ドーン

流子「って四天王のやつぁあねえか!?なんでこんなところに!!」

マコ「おーい流子ちゃーん、ワタシマタツカマッタヨー」

流子「マコも!?何で!?」

蟇郡「お前の友達、満艦飾マコはこの俺が預かった。返して欲しければ俺を倒すことだ」

流子「はあ!?急に出てきて何言ってんだ!?」

流子「どういう風の吹き回しか知らねーが、私を倒したいなら正々堂々かかってくればいいじゃねえか!
   なんで三つ星の四天王がそんなねちっこい真似するんだ!?マコを巻き込むな!」

蟇郡「纏。お前を倒すのに人質をとってはいけないという規則はない。
   どういう戦い方だろうと俺の事は俺が決める。お前の指図は受けない」

マコ「リューコチャーン」

流子「ちっ……一体何がどうなってやがる」

鮮血「奇妙だ流子。生徒会四天王蟇郡苛、一体何を企んでいる」

流子「下手に手ェ出すと危険か!?」

鮮血「それはわからない。だがもうすぐ授業が始まってしまう」

流子「……しかし授業とマコ、どっちが大切かって言ったら……」

流子「行くぞ鮮血!」カチン

流子「人衣一体!神衣鮮血!!」

流子「うおおお!マコを返せええええ!!」ダッ

蟇郡「」サッ

流子「こしゃくな!!」ギュン

蟇郡「はははは。遅い。遅いぞ纏流子。お前の友達を思う心はその程度か」サッサッ

流子「舐めた口を!」

蟇郡「」サッ

流子「なんだ!てめえ、何で極制服を使わない!それで戦ってるつもりか!!」

蟇郡「お前の相手など、極制服を使わずとも事足りる」

流子「戯言を!その仏頂面に一発お見舞いしてやるよ!!」

流子「うおおおお!!」

ガッ!

流子「当たった!叩き込むぞ鮮血!」

鮮血「あまり焦るなよ流子」

流子「」ガガガガッ

ドーン!

流子「どうだ!」

シュウウウ……

蟇郡「……」

流子「くそ……あんなにぶち込んだのに顔色一つ変えてねえ……流石は四天王か」

鮮血「おかしい……さっきから流子ばかり動いている。奴、戦う気がないのか……?」

流子「おいガマ野郎!あんまり舐めたまねしてると……!!」

蟇郡「まいった」

流子「はっ??」

蟇郡「まいった。俺の負けだ纏流子。俺はもうこれ以上戦えない」

流子「え、あ、は??」

蟇郡「休み中不意に押しかけて悪かった。約束通り満艦飾は返そう。
   早くそのハレンチな格好を元に戻して授業に出席することだ」

流子「戦えないって……!!てめえまだピンピンしてやがるじゃねえか!」

蟇郡「いずれまた正々堂々と勝負する時が来るだろう。それまで覚悟しておけ」ザッ

流子「????」

流子「な、なんだ……??気持ちわりぃ、一体あいつ何がしたかったんだ……?」

マコ「りゅーうこちゃんっ!」

流子「あ、マコ!大丈夫か?」

マコ「おかげさまで!流子ちゃんのおかげだよ!」

流子「私のおかげっていうか……あいつの意図がわからないんだよな」

マコ「まあまあいいじゃん気にしなくても!おかげで疲れなかったでしょ?」

流子「そうだけど……腑に落ちないな」

マコ「うふふ」ニコニコ

流子「あーっ、じゃあだりいけど授業出るか。おいマコ、行くぞ」

マコ「」パシ

流子「?」

マコ「……」

流子「あ、うん。手ェ握って……助けてくれたお礼?いや、いつものことだしそんな気にしなくても……」

マコ「好き」

流子「え?」

マコ「流子ちゃん好きです!」

流子「あっ?」

マコ「満艦飾家長女満艦飾マコ!あなたのことが好きです!!」

流子「……」

流子「……え?ん、ん?」

流子「あ、ありがと。じゃあ授業に……」

マコ「ちっ、がーーう!ラブ!ラブの方で言ってます!!」

流子「ラブ?」

ハーレルヤッ!

マコ「私気づいた!私が本当にやり残したこと!それは流子ちゃんの事!」

マコ「初めて出会った時も!そのあとの時も!私がピンチの時流子ちゃん助けてくれた!」

マコ「流子ちゃんはいっつもかっこよくて強くて優しい!この感情は感謝!感激!そして恋!」

マコ「とおーってもストロングな蟇郡先輩相手に危険をかえりみず
   戦ってくれた流子ちゃん見て今!その気持ちに気づいた!」
   
マコ「だからラブ!フォーエバーラブ!満艦飾マコはあなたのことが好きです!好きです!大好きでーーーす!!」

マコ「」ギュウ

流子「……」

マコ「♪」スリスリ

流子「マ、マコ、ストップ。一回ストップ」

マコ「いや!私の愛は止まらない!もうこれはノンストップ!乙女の初恋ビッグバンだよ!!」

流子「いやそういうことじゃなくって。一旦落ち着こ?な?」

マコ「流子ちゃん愛してる!」

流子「な、なに?マコ、お前同性愛者だったのか?」

マコ「私が好きなのは女じゃないよ流子ちゃんだよ!」

流子「私?え?いやちょっと……」

流子「ん、んんん……」

鮮血「ずいぶんと混乱しているな流子」

流子「なんだ……?今日は立て続けにわけのわからないことばかり起こりやがる……狐につままれた気分だ」

流子「そういうお前は状況把握できてんのかよ」

鮮血「いや、私もかなり動揺している……」

流子「だったらそんなやけに落ち着いた声だすなよ……」

マコ「あーん、また鮮血ちゃんとお話しないで!こっち見て!」

流子「マコ。お前なにか変なものでも食ったんじゃないか?」

マコ「私今日母ちゃんの作ったものしか食べてないよ!流子ちゃん見てたでしょ?」

流子「どっかで拾い食いしたとか……」

マコ「ううん」

流子「知らない人から声かけられておやつもらったとか……」

マコ「もう!流子ちゃん私の決死の告白をなんだと思ってるのさ!」

流子「告白って。んー……??」

マコ「鮮血ちゃん!こういうことだったんだね!私、やり残したこと見つかった!」

マコ「私、流子ちゃんと幸せになる!それが今この時間で私がやること!やり遂げなければならないこと!」

流子「鮮血、お前マコになんか吹き込んだのか?」

鮮血「わっ、私は何も言ってないぞ!ただこの世界の説明を……ごにょごにょ」

マコ「というわけで流子ちゃん!お返事聞かせてください!」

流子「返事っ?あ、えーっと……」

流子「か、考える時間をください」

マコ「お?」

流子「わけわっかんないんだよー……蟇郡の謎行動といいお前の言い分といい、
   短時間でなんだかよくわからないことが立て続けに起こって、その……今ちょっと混乱してる」

マコ「ほうほう」

流子「だから、一人で考える時間をくれ。整理したいんだ」

マコ「流子ちゃんがそういうなら私待つよ!いつなんどきだって待つよ!
   わたしまーぁつぅーわ、いつまでもまー、つー、わ」

流子「と、とりあえず授業でないとな……」

蛇崩「見てたわよー、ガマ君」

蟇郡「……」

蛇崩「よかったのかしら、たかが劣等生の為にあんな汚れ役引き受けちゃって」

蟇郡「俺は満艦飾に頼まれた通りに行動しただけだ。汚れ役などではない」

蛇崩「気取っちゃってー。こっちになーんのメリットもないんだから断ればヨカッタじゃない」

蟇郡「……生徒の頼み、できることはする、本能寺学園風紀部委員長として……」

蛇崩「はっ、お気に入りの娘に頼られて嬉しくなっちゃっただけでしょー」

蟇郡「俺は委員長としての誇りにかけて動いただけだ!お気に入りとはなんだああああ!!」

蛇崩「声がでかいのよガマ!まあもっとも?
   考えなしに行動したせいであの劣等生はどこか遠くに行っちゃったみたいだけどお゛ぉ゛ぉ゛」

蟇郡「蛇崩乃音んんん!!この俺が下心で満艦飾の依頼を引き受けたとでもいいたいのかあああ!!
   笑止!!俺はこの一件で決してがっかりなどしておらあああああん!!」

蛇崩「がっかりしてるのぉ?ぷフッ」

蟇郡「だからがっかりなどしてはおらああああああん!!!」

美木杉「それでは教科書百二十六頁。前回の続きからー、えー……」

流子「……」ホオヅエ

鮮血「少しは整理がついたか流子」

流子「ダメだわからん……考えれば考えるほどわからん」

鮮血「奇遇だな。ちょうど私も今そんな状態だ」

流子「蟇郡の事はともかく……問題はその後の事だ」

鮮血「熱烈な告白を受けたな」

流子「んん……調子が乱れる……」

鮮血「どうするつもりだ流子」

流子「もうちっと考えてみないと……」

鮮血「……流子」

流子「なんだ?」

鮮血「マコが……」

流子「マコなら授業中は大抵寝てるだろ?」

鮮血「机に突っ伏してるからそう見えるだけだ。よく見てみろ」

マコ「」ジー

流子「?」チラ

マコ「」ニコッ

流子「……!」

流子「ばっ……お前がそんなこと言うから目ェあっちまったじゃねーか!」

鮮血「すさまじい視線だ……こっちが溶けてしまいそうだ」

マコ(もぉー、流子ちゃん恥ずかしがらなくてもいいのにー。
   授業中でも隣の流子ちゃんの顔見てれば目が覚めるよ!またボソボソ言ってるね、鮮血ちゃんと喋ってるのかな。
   流子ちゃーん、いいお返事まってるよーぉ)

マコ「」ジー

流子「視線だけで思いが直接脳内に伝わってくる……!」

鮮血「きっと気のせいだ流子。気を確かにもて」

流子「こんなに頭を使ったのは久しぶりだが……、どんな形であれ、なんとかしなきゃな」

マコ「りゅーぅうっっこちゃーーーんん!!」ギューン

流子「」ガシッ

流子「」グルグルグルグル

流子「」ストッ

マコ「いやー!今日も無事学校が終わったねー!私、午後の授業ずっと流子ちゃんのことばっかり考えてたよー!」

流子「そのことだけどな!マコ、お前に色々聞きたいことがある」

マコ「お?いいよいいよ!流子ちゃん、私に疑問をぶつけて!」

流子「えっと……まず、昼間の告白はびっくりしたけど……確認したいことがな」

マコ「なに?」

流子「マコ、性別は?」

マコ「女だよ!」

流子「じゃあ私は?」

マコ「女の子!」

流子「……マコ、お前はそれでいいのか」

マコ「なにが?」

流子「だってそうだろ?お前も女で、私も女。それで告白することに、なにも思わなかったのか?」

マコ「おとこおんな!オカマオナベ関係ないのです!この広大な愛は性別などと小さなくくりに収まらないのです!
   私の流子ちゃんへの思いは、そんな壁などたやすく乗り越えて爆発するのです!!!」

流子「そう……か、じゃあえっと、次だけど」

マコ「うんっ」

流子「その……なんで私なんだ」

マコ「え?」

流子「別に私じゃなくてもよかったろ。本能寺学園、変な奴ばっかだけどかっこいいのもっといるじゃんか」

マコ「かっこいいとか、そういうことではないのです!私が好きなのは流子ちゃんです!
   そして流子ちゃんはいつだって流子ちゃんなのです!そんな流子ちゃんが私は好きなのです!
   私が流子ちゃんを好きなのはそういうことです!!」

流子「……」

流子「……じゃあ次」

流子「私に何を求める」

マコ「なにって?」

流子「昼間の告白を通して、マコは私に何をして欲しいんだ」

マコ「……うーん」

流子「私はあんまり、人にな?好きとか……言われたことなかったから、よくわっかんないけど」

流子「なんだ、その……付き合ったり、してほしいのか」

マコ「私は流子ちゃんが好きです!私が流子ちゃんに求めるのは二人で幸せになることです!
   二人で一つ!一心同体!私は流子ちゃんと共に、一緒にいることで幸せだと言いたいのです!
   それを叶えるのが未練!私がこの場所にやり残したこと!
   私は流子ちゃんを見て、私は流子ちゃんに見られたいのです!」

流子「私か?マコ相手に真剣に一問一答しようとした私がダメなのか?」

鮮血「お、落ち着け流子……」

マコ「これは乙女の、花の女子高生の恋なのです!私の愛は宇宙を超えて月まで届くのです!」



薔薇蔵「ぐおーぉ……」スピー

流子「う、うーん……」

鮮血「なあマコ……流子、心なしかうなされてないか」

マコ「もお!ひどいよ鮮血ちゃん!あんなに呼びかけたのに無視するなんて!」

鮮血「無視などしていない。私とお前は都合上、朝から昼、夕方にかけては喋れないのだ」

マコ「へえ?なんで?」

鮮血「それはここが普通とは別次元で存在するアレで、そういう因果の元、
   このようなみんなが寝静まった時間帯にしか喋れなくなっているからだ」

マコ「なるほど!」

鮮血「で、本題に入るが……昼間のあれはなんだ」

マコ「私の愛の告白です!」

鮮血「そうか……まさかマコがここに来た原因がこんなことだったとはな」

マコ「あのあと流子ちゃんどうだった?」

鮮血「ああ、相当悩んでいたよ……流子の血、今まで味わったことのないようなおかしな味だった。
   あれは多分かなり頭をひねっている」

マコ「えへー、流子ちゃん、ずっと私のこと考えてくれたんだーぁ」

鮮血「マコ、本当に未練が、流子への事で間違いなんだな?」

マコ「間違いなんてないです!」

鮮血「わかった……とにかくお前は元の時間へ帰らなくてはならない。そのために必要なことであるならば、
   私はマコを、いや、マコと流子を応援しよう。同性相手は苦難が多そうだが決してへこたれるなよマコ」

マコ「あ、ありがとう鮮血ちゃん!よーぉし!私頑張る!明日から猛アタックだ!絶対流子ちゃん、振り向かせてみせる!」

鮮血「だから騒ぐな……もう少し静かに」

マコ(待っててね流子ちゃん!絶対にこの思い、届けるから!)

今更見始めて今更見終わって今更書いてます よろしくお願いします

早朝

マコ「」グーグー

マコ「」ガバッ

好代「マコ?どうしたの?マコがこんな朝早くに起きるなんて珍しいわね」

マコ「母ちゃん!お願いがあるのです!ごにょごにょ」

好代「お弁当?あらどうして?お母さんの作ったお弁当はもう飽きちゃったかしら」

マコ「ちがうよー!母ちゃんの作るお弁当は世界一だよ!でもね、私好きな人ができたの!」

好代「ほんとう?マコに?そうねえ、マコももうそんな歳かしら」

マコ「だからとっておきの愛妻弁当をつくってあげたいのです!」

好代「愛妻ってのはまだ早いかもだけど、そうね、マコがそういうのなら作り方、教えようかしらね」

好代「マコ。いい奥さんになるにはまず旦那さまの胃袋を掴むのよ!」

マコ「はい母ちゃん!よおし!張り切っていくよ!」

流子「うーっす、おばさんおはよざいあー……」ゴシゴシ

マコ「あ!流子ちゃんおはよ!」

流子「うわっ!マコが私より早く起きてる!?」

マコ「もーぉ、そんなにびっくりすることないでしょ流子ちゃん!たまには私だって早起きくらいするよ!」

流子「はは、最近のマコはアクティブだな……」

マコ「うん!昨日鮮血ちゃんにも応援してもらったしね!もう恐れ知らずの暴走特急だよ!」

流子「また鮮血の話か?」

マコ「そう、私みんなが寝たあとの夜なら喋れるみたいなの、昨日も話したよ!」

流子「なんだそりゃ。ほーんと、最近のマコはなんだかよくわからないな……」

流子「まあお前は元からなんだかよくわからないか」

マコ「よっしゃー!流子ちゃん早くしないと遅刻するよー!朝ごはん食べて!着替えて!出る!」

流子「朝のマコにそんなこと言われる日が来るとはな……」

マコ「ねえ流子ちゃん、学校まで手繋いでいこ!」

流子「マコ、昨日のことまだ引きずってるのか?」

マコ「引きずってるって何さ!私の流子ちゃんへの愛は永遠だよ!」

流子「マコのことだから、一晩寝れば忘れてたりしてー……なんて」

マコ「そんなことは断じてありません!流子ちゃん、私はここで手を繋ぎたい!グローブじゃない方ね!」

流子「手なんか繋いでどーすんだよ」

マコ「人肌を分かち合うのです!」

流子「うーむ……」

マコ「つまりこう!」ギュ

流子「お」

マコ「どう?私はこれで朝からハッピー!」

流子「どうっていわれても……マコの手熱いな、異常に体温高いよな……」

マコ「それは好きな人と手を繋げてドキドキしてるからにきまって……」

マコ「ってうわぁ~!!は、早くしないと登校用のケーブルカーに乗り遅れちゃうよー!
   流子ちゃん、早く早くーー!!」

流子「ちょ、マコ、そんな焦ることないって!」

マコ「そっかー、いつもギリギリに出てるから癖でついケーブルカーまで走っちゃったよー
   今日は私早く起きたもんね!」

流子「ホントにびっくりしたぜ?マコもあんな時間に起きれるんだな」

マコ「その胸の中に思う人あらば!早起きなんてたやす……」

マコ「ぐーぐー」スピー

流子「おーいマコ、突然ねるなー」

マコ「うへえっ!?ししまった!折角の流子ちゃんとの登校の時間を無駄にするところだった!」

流子「やっぱり無理がたたってるんじゃいか?何のためにそんなに早く起きたんだよ」

マコ「えへへー、秘密」

流子「?」

マコ「それはお昼までのお楽しみだよ流子ちゃんっ!」

流子「昼っつーことは……昼飯関係か?」

マコ「えええぇーーっ!?流子ちゃんなんでそこまでわかるのー!?」


流子「マコが昼に楽しみにしてる事っつったらやっぱりおふくろさんの弁当かなと……」

マコ「そっかー、流子ちゃんそこまで私のことわかりきってるんだね!」

流子「まあそう短い付き合いでもないしな」

マコ「走ってきたのに一回も繋いだまま手離さなかったところとか好きだよ流子ちゃん!」

流子「それは……マコの手の力が強かったからで」

マコ「ねえー流子ちゃん腕組もうよー、恋人さんっぽいでしょ?」

流子「ばっ、よせよ……学園に変な噂がたっちまうだろ?」

マコ「えー、いいじゃん噂も何も本当のことなんだからーぁ」イチャイチャ

流子「はは……マコ、昨日からホントどうしちまったんだよ」

マコ「私、流子ちゃんといると幸せなだけだよ!」

流子「まあ、そこまで言ってくれるのは嬉しいけどな」

流子「戦維喪失!!!」バサァ

二つ星生徒「やられたあああああぁぁぁ!!」バタッ

流子「うっし。まあこんなもんか?」

マコ「流子ちゃんさすがー!今日もキレッキレ!かっこよかったよー!」

流子「ありがとうマコ。でもあんまり近くにいると危ないからもっと遠くにいたほうが……」

マコ「あ、ごめんごめーん、ちょっと見とれてて」

流子「見とれるって。そんな要素別になかったろ?」

マコ「そんなことないよ!戦ってる流子ちゃんはいっつもかっこいい!
   最初はどうかと思ったその格好も今じゃすっかり板について輝いてるよ!」

流子「ほ、褒められてんだか」

マコ「流子ちゃん疲れてない?毎日鮮血ちゃんに血ぃ吸われて戦いっぱなしで」

流子「んー、まあいちいち疲れたなんて言ってられないよ。部活動の輩はいつだって私を狙ってるからな」

マコ「よぉーし、じゃあマコがマッサージしてあげるよー!流子ちゃんきっと凝ってるでしょー」

流子「マッサージ?そんなことできるのか?」

マコ「チャレンジ精神は大事!」

流子「おいおい」

マコ「肩マッサージするのってこんな感じでしょ?」

流子「お、なかなかうまいんじゃないか?」

マコ「えへへー褒められると嬉しい」

流子「いっ!……ったたた」

マコ「ほらーやっぱり凝ってるんだよ流子ちゃん、無理しすぎだよ!」

流子「あっれー……そんなはずは」

マコ「やっぱり日々の疲れがたまってるんだね……腰の方とかももっとしっかりほぐしてあげよう!」

流子「そんなに本格的にやるのか?」

マコ「私が流子ちゃん癒してあげる!ほら、横になって!」

流子「横に……こんなかんじか?」ゴロン

マコ「おぉー……絶景」

流子「え?」

マコ「流子ちゃんやっぱりスタイル抜群だね!モデルさん並だよ!」

流子「別に、そんなことないだろー……」

流子(胸の大きさに関してはマコの方が大きいし)

マコ「よぉーし、こんなかんじかな?筋肉をほぐすイメージ!」モミモミ

流子「んー、いまいち弱いな」

マコ「じゃあもっと強く!激しくいっちゃうよ!」モミモミ

流子「あ、いーなー……うん、気持ちいい!」

マコ「ここで指圧!」

流子「いたたっ」

マコ「どんどん上にあがってー……」サワサワ

流子「ぷっ、あははっ、くすぐってえよ」

マコ「お?ここかここかー??」コチョコチョ

流子「あはははっ、やめろって、ふふ」

マコ「流子ちゃんお肌すべすべー」サワサワ

流子「ま、マコ?なんか手つきがおかしいぞ」

マコ「締まるとこは締まって、出るとこは出て……これぞ女の子のからだ……」サワサワ

流子「もたれかかんなっ!ちょ、マコっ」

マコ「ああ……いいね、流子ちゃんの匂い……」クンクン

流子「マコそこ!そこダメ、さわるなっ……あっ」

マコ「……今の流子ちゃんの声?へー、流子ちゃんそんな声でるんだー……ダメって言ってたのは、ここ?」サワサワ

流子「だからマコダメだって!あっ、マコ、う……ん」

鮮血「大丈夫か流子、さっきからだいぶ心拍数が上がっている」

流子「あやうく貞操奪われるとこだったぞマコに……危ない」

鮮血「癒してもらうつもりだったのに余計疲れたな」

流子「マコって一度動くとなかなか止まらないからな……」

鮮血「そうだな、特に昨日からはやる気に満ち満ちているよ」

流子「そうだ、鮮血本当にマコと話したのか?昨日も話したって言ってたぞ」

鮮血「それは……マコのやつ私と話す夢をよく見るな」

流子「なんっか意見が食い違うなー……二人共……いや一人と一着」

鮮血(流子にマコと話せることをばらすと色々と面倒なことになる……)

マコ「りゅーぅうっこちゃんっ!」

流子「」バッ

マコ「あーん身構えないで流子ちゃん!さっきはちょっとやりすぎちゃったゴメンね!」

流子「う、うん、わかればいいんだ」

マコ「じゃあ仲直りでお弁当食べよ!今日実は――」

流子「ああ、マコがつくったんだっけか」

マコ「ええーーっっ!?な、なんでそのこと知ってるのーーー!?」

流子「いや朝の会話で大体察しついてたし、いつもみたいにおばさんからお弁当もらってないし」

マコ「わー、そこまでお見通し?サプライズのつもりだったのにマコがっかりー……」

流子「まあまあ大切なのは中身だろ?見せてみなって」

マコ「そうだよね!よいしょ!これが満艦飾マコお手製のスペシャルデラックスお弁当です!」ドカッ

流子「多っ!?」

マコ「なんか流子ちゃんに食べてもらえるって思ったら張り切っちゃって作りすぎちゃった!
   まあ流子ちゃんならこのくらい、食べられるよねっ」

流子「そ、それはどうかな……」

マコ「じゃあ二人で分けて食べよっか!私の分はもうとっくに早弁で食べちゃったしちょうどいいね!」

流子「ああ、そうしてくれ、とてもじゃないけどこの量は……」

マコ「じゃあこれ!母ちゃん直伝のわからなコロッケ!満艦飾家伝統の味を喰らえ!」

マコ「はい、アーン」

流子「……」

マコ「あれ?どしたの流子ちゃん」

流子「な、なんか照れるな」

マコ「えー?なんでいっつもやってることじゃん!あ、私の事意識しちゃってる?もー、流子ちゃんったらーぁ」

流子「いやっ、そんなことないぞ!あむ」

マコ「どう?」

流子「……うまい、思ったよりうまくつくれてるじゃんか!すごいよマコ」

マコ「~~~っっ」

流子「? どうした?」

マコ「すっ、好きな人に努力が認められるこの瞬間!思いの人の美味しいの一言!
   まさにこの時が幸せ!満艦飾マコ!感激で言葉も出ません!」

流子「ペラペラ喋ってるじゃねーか」

マコ「流子ちゃんもっと!もっと聞かせて!」

流子「えっと……美味しいよ、マコ」

マコ「あぁぁ~~……耳が幸せ~~~ぇ……」

流子「はは、大げさだなあマコは」

マコ「大げさじゃないよ流子ちゃんもっと食べてほらほらァ!」ヒョイヒョイ

流子「うぐ、うぐぐ、ちょ、マコ、食べきれない、うぐ……」

ゴックン

流子「う……っは、結局私が全部食べてる……」

マコ「うわあぁぁ!ごめんね流子ちゃん!私、嬉しくなっちゃって!
   頑張って作ったから多く食べてもらいたくなっちゃって!」

流子「だ……大丈夫……うぷ」

鮮血「流子、大変なことになってるぞ……はちきれてしまいそうだ」

流子「ま、まあマコが私のためにつくったものだし……う、うぅ……」

マコ「あわわ~~!!どうしよ、愛が重すぎた!?ごめ、ホントにごめん流子ちゃん!えっと、午後の授業休もうか!?」

流子「ぐ……平気だよマコ、すぐになんでもなくなるから……はは」

マコ「とてもそんな風に見えないよ!やっぱりなんとかしないと……」

???「残念ながら休む時間などないぞ纏流子……!!」

マコ「ふえっ??」

二つ星生徒「本能寺学園けん玉部部長!お前の命をいただくのは私だ……!!」

マコ「ええええぇぇぇ~~~!?このタイミングで!?」

二つ星生徒「お前に勝つためにずっとチャンスを伺っていたが……!
      ついに隙を晒したな纏流子ォ。体調を崩したのがお前の最期だ!!」

マコ「待ってください!流子ちゃんは今お腹の調子が良くないです!そんな相手に戦うのはフェアではありません!」

二つ星生徒「どけ無星の女!私の目的は勝つことだ……!たとえ相手の状態がどうであろうとなあ!!」

流子「部活動の野郎か……こんなときにっ……!」

鮮血「無理はよそう流子。ここは一旦逃げるんだ」

流子「冗談じゃねェ……売られた喧嘩は!買うのが信条っっ!!」

マコ「ダメだよ流子ちゃん!戦ったら食べたコロッケ全部出ちゃうよ!」

二つ星生徒「死ねえええええ!!」ビュウン

マコ「うひゃああぁっ!?」

流子「マコ!安全なところまでさがってろ!行くぞせんけ……」

鮮血「やめろ流子!無茶をするな!」

流子「うっせえ!人衣一体!!」カチン

二つ星生徒「ホァァアアアッッッタァァーー!!」ビュンビュン

流子「けん玉部部長はけん玉が武器!わかりやすくていいねえ!!」

二つ星生徒「はっは!!どうした纏ィ!!動きが鈍いぞおお!!」

流子「てめえにそんなこと言われてたまるかぁ……!!」バッ

二つ星生徒「」サッ

流子「! よけられた!?」

二つ星生徒「遅い遅い遅い遅いぞォ!!神衣がこの程度か!?」

鮮血「聞け流子!!今の攻撃、いつもの流子なら確実にあたっていた、やはりスピードが落ちてる!」

流子「っ……!だがなぁ!鬼龍院がよこした相手に背中はみせらんねんだよっ!」

鮮血「それに運が悪い……やつ、流子の体調抜きにしてもそこそこ強いぞ」

流子「なんだあの両手のごっついけん玉はよお……!」

二つ星生徒「狼狽えているな纏!!私の必勝法は奇襲だけではない……!見よ!
      皐月様からいただいたこの二つ星の力を!!」

二つ星生徒「右手に装着!『右ツ打撃拳玉』!!!」ドン

二つ星生徒「左手に装着!『左ス斬撃剣玉』!!!!」ドドーン

鮮血「右がけん玉の玉、左がけん玉のけんというわけか……」

二つ星生徒「拳玉の重み、火力ッ……剣玉の素早さ、リーチ……!!」

二つ星生徒「我がけん玉部特化型二つ星極制服のまえに沈めええええっっっ!!」

流子「拳玉か剣玉か知らねえがご大層な武器引っさげやがって……!」

二つ星生徒「見える……見えるぞ纏……お前の動きがァッッ!!!」

流子「何っ!?ぐはっ!!」ボコォ

鮮血「流子!」

二つ星生徒「はっはあああああ!!」

流子「くそっ……!腹が……腹が痛え……!!」

鮮血「怯むな来るぞ流子!!」

二つ星生徒「」ブゥン

流子「あっぶ!!!」サッ

鮮血「あいつ……剣から拳に攻撃を変えてきた!今あの玉をくらったら……!!」

流子「わかってるッ……!あんなの打ち込まれちゃマコのコロッケ全部戻しちまう……!」

マコ「あわわ~~~……すごい戦い……!いつもよりも長期戦だよ……!!」

マコ「ってあぁぁぁ!!流子ちゃんピンチ!私がコロッケ食べさせすぎたせいでちゃんと戦えなくなってるんだ!」

マコ「わぁぁ~~~っ、どうしよう流子ちゃん私のせいで!どうしよう……!」

マコ「って迷ってる場合じゃない!満艦飾マコ!出陣!!」

マコ「とおっ!」バッ

流子「マコ!?ダメだってこっちにきちゃ!!」

マコ「だって流子ちゃんのピンチだもんほおっておけないもーーん!!」ピュー

二つ星生徒「なんだ無星ィ!邪魔するな……」

マコ「マコマコジャンケンジャンケンポン!」グー

二つ星生徒「えっ???ぽ、ポン!」

マコ「アイコでポンっ!」グー

二つ星生徒「ぽ、ぽん」

マコ「アイコで……」

二つ星生徒「ま、待て卑怯だぞ貴様!私がグーとチョキしか出せないからってお前、ずっとグーだして……」

流子「何やってんだお前……」

二つ星生徒「!!! し、しまったつい!」

流子「隙を見せたな!!必殺!戦維喪失!!」バサァ

二つ星生徒「ぐああああぁぁぁぁ……」

二つ星生徒「」バタッ

流子「どんなに武器が強かろうが、使うやつが馬鹿じゃあ宝の持ち腐れだな」

流子「っ!……うぅ」

マコ「りゅ、りゅーこちゃーんっ!だだだいじょうぶ!?しっかりして!」

流子「だい……じょうぶ、勝てたしな、なんともないよ」

マコ「私ね!あの人出てきた時からじゃんけん出来なさそうだなって思ってたの」

流子「あのごっつい武器見てまず思うことがそれかよ……うぐ、腹が……」

マコ「ごっ、ごめんね流子ちゃん!流子ちゃんかなり調子悪かったよね、私がいっぱい食べさせすぎちゃったから」

流子「まあ確かに……いつもなら二つ星相手にあんなに苦戦しなかった……」

マコ「ほんっとにごめん!私流子ちゃんにいっぱい食べてもらいたくなっちゃったの!ごめんなさい!」ペコッ

流子「……」

マコ「流子ちゃんその……ひょっとして怒ってる?」

流子「いや、怒ってない、ただ……」

マコ「ただ?」

流子「あのさ……このさいマコにははっきり言っておこうと思う」

マコ「……?」

流子「昨日の告白とかさ……びっくりしたけど、嫌な気はしなかった。
   急すぎて戸惑っただけで、気持ち悪いとか、そういうことは思わなかったよ」

マコ「……それで?」

流子「私のこと好きだと思ってくれてることとか、私のためにお弁当作ってくれたこととかはすごく嬉しい。
   マコのコロッケ美味しかったし、食いすぎなければあいつにも早く勝てたのにとかは思わない」

流子「だけどさ、マコ」

マコ「……」

流子「……やっぱり何かの気の迷いじゃないか?」

マコ「……へ?」

流子「確かに私もマコの事好きだし、何回もマコの事助けたけど……ほらなんだ、そういうの、つり革効果っていうの?」

鮮血「吊り橋効果だ、流子」

流子「そう吊り橋効果。ちょっと一緒にいる時間が長かったから、勘違いって言うとアレだけど……」

流子「マコって純粋だし、それに相手にするんだったらもっとマコに似合ういい人の方がいいと思うな」

流子「それにほら……私達友達だろ?」

流子「友達として、私のそばにいてくれよ、な?」

マコ「……」

流子「それじゃだめ……かな」

マコ「……そういうことではないのですよ」

流子「えっと」

マコ「なに……これ、なんで流子ちゃんそんなこと言うの、私、もしかして振られて……」

流子「ふ、振られてっていうか」

マコ「勘違いなんかじゃないもん……違うもん!だって私ホントに流子ちゃんの事好きだもん!嘘なんかじゃない!!」

流子「で、でもさマコ……」

マコ「だってこんなに好きなのに嘘なんて事ない!私、今朝からずーっと流子ちゃんのことばっかり考えてるんだよ!?
   今日だけじゃないよ!昨日だってその前だってずーっと前から!私……それくらい流子ちゃんのことが……」

流子「お、落ち着けって!私はマコにいつもどおりに戻って欲しいだけなんだ、だってマコ……」

マコ「今のマコじゃダメなの?」

流子「……そういうわけじゃ……」

マコ「うっ……うぅ……」ボロボロ

流子「マコ……」

鮮血(相変わらず大粒の涙だな……)

マコ「流子ちゃんと一緒にいると、嬉しいし、楽しいし、幸せだし……
   だからずっと一緒にいたいんだって、私……」ボロボロ

流子「……」

マコ「流子ちゃんホントに、大好きで、なんて言ったらいいかわかんないけど、でも……」ボロボロ

流子「……ありがとうマコ」

マコ「うっ……」ボロボロ

流子「それでも、マコとは友達がいいっていうか……友達がいいんだ」

マコ「……!!」

マコ「もう知らない!流子ちゃんのばかぁ!!」ダッ

流子「あっ!マコ!」

マコ「」タッタッタッ

流子「ぁ……」

パクパクモグモグガツガツムシャムシャ

薔薇蔵「うめえー、今日も母ちゃんのなんだかよくわからないコロッケは世界一だあ」ガツガツ

又郎「どうしたんだ姉ちゃん。食べねえのか?」

マコ「……」

好代「何かあったのマコ?たくさんあるからたんとお食べ」

マコ「……」

流子「ま、マコ……」

マコ「……」

流子「ほら……食えよ」

マコ「……ありがとう、今日はもういらない」

ガラッバタン

流子「……」

又郎「なんだありゃ!あいつホントに姉ちゃんか?」

薔薇蔵「いつもバカみてえに明るいのに、あれじゃ満艦飾家長女の名がすたるぜぇ」

好代「りゅ、流子ちゃん、マコとどうかしたの?」

流子「ん……」

流子「ちょ……っと」

流子「いろいろ、あって」

好代「……」

流子「おばさんありがと、私もごちそうさま」

好代「……」



流子「zzzz」

マコ「……」

鮮血「マコ」

マコ「……」

鮮血「おい、マコ」

マコ「話しかけないでください……」

鮮血「昼間流子に言われたこと、相当ショックだったか」

マコ「……流子ちゃんには流子ちゃんの言い分があると思います」

鮮血「もしかして諦めてしまうのか?」

マコ「……わからない、私……」

流子「zzzz」

マコ「うっ……」ポロッ

鮮血「聞けマコ、落ち込む気持ちもわかる。だが仕方ないだろう。いきなり友達に告白されたら誰でもああはなる」

マコ「そんなこと……」

鮮血「むしろここからが本番だと思わないか?実際流子は今かなりお前に惹きつけられていると私は思うがな」

マコ「励ましてくれてありがとう鮮血ちゃん。でも……」

鮮血「納得がいかないか……ならば今、お前は自分自身を見つめ直す時なのかもしれないな」

マコ「……?」

鮮血「昼間流子が言ったこと、あれは流子が流子なりに精一杯考えて導き出した結論だ。確かに的を射た発言だったよ」

鮮血「事実、お前の流子への思いは具体性がない」

マコ「具体性……?」

鮮血「お前の流子への言い分は一緒に幸せになりたいとか、一緒にいると楽しいとか、そういう漠然としたものばかりだ。
   それだと……」

マコ「それだとなにがいけないのですか?人は理屈で人を好きになるのですか!?私はそうでないと思います!!」

鮮血「落ち着けマコ!私が言いたいのはそういうことじゃない。一度自分の心に問いかけてみるのだ」

鮮血「マコは流子のことをどう思っているのか、流子はマコのことどう思っているのか」

鮮血「二人は友達という垣根を越えて、何を望み、どこに向かうのか……とな」

マコ「……へえ?」

鮮血「難しいか。だがすぐにわかる。その答えを見つけたとき、
   お前は未練を晴らして無事元の世界に帰ることができるだろう」

今日はここまで



マコ「う、うーん……」

マコ「……?」

マコ「あれ?今、何時……?」

マコ「……うわ、もうこんな時間……」

マコ「流子ちゃん先行っちゃったのかな……」

マコ「……」

マコ「学校行かなきゃ……」

蟇郡「……」

蟇郡(時間だな)

ピシャッ

蟇郡「規定の登校時間が終了した。これより学園の門を閉じる。この時間までに来なかった生徒は
   全員遅刻者として処罰の対象だ、覚悟しておけ」

無星生徒「そ、そんなーっ!先輩、大目に見てくださいよ!俺、あと三秒あれば学園に入れたじゃないですかーーっ!」

蟇郡「黙れ愚か者!!学園の生徒は学園の決めた行動時間に合わせる、当然のことだ!!
   そんなこともできないでそれでも本能寺学園の生徒かあああ!!恥を知れえええぇぇぇっ!!」パチィン

無星生徒「うあっ」ドサッ

無星生徒「ひぃ……」

蟇郡「今日の遅刻者はこれで全員か……?最近規則を守れない腑抜けた生徒が増えてきている。
   ノー遅刻デーのトラップを強化する必要がありそうだな……」

蟇郡「……ん?」

マコ「」ポツン

蟇郡「きっ……!貴様!満艦飾!!」

マコ「……」

蟇郡「いつも見事なまでに時間ギリギリで滑り込んでくるお前が……!今日はどうかしたのか」

マコ「……」

蟇郡「ごほん!いや、どこの誰であろうと遅刻者は遅刻者!たとえこの俺と面識があろうと
   処罰を緩めることはありえない。きちんと対象になってもらうからな」

マコ「……」

蟇郡「……」

マコ「わかりました……いいです、それで」

蟇郡「……!? そ、そうか、わかればいい……」

マコ「……」

蟇郡「……??」

校庭

無星生徒「くっそー!あと校庭何周すれば許してもらえんだよー!もう限界だーーっ!」

ドタドタドタドタ…

マコ「はあっ……はあっ……」タッタッ


鮮血『一度自分の心に問いかけてみるのだ』

鮮血『マコは流子のことをどう思っているのか、流子はマコのことどう思っているのか』

鮮血『二人は友達という垣根を越えて、何を望み、どこに向かうのか……とな』

鮮血『難しいか。だがすぐにわかる。その答えを見つけたとき、
   お前は未練を晴らして無事元の世界に帰ることができるだろう』


マコ「はあっ……」タッタッ

マコ(流子ちゃん、私、どうすればいいのかな。この気持ち、一体どうすれば流子ちゃんに届くのかな)

マコ(私達は、流子ちゃんがこの学園に転校してきた時に……会って……それで、席も隣)

マコ(ボクシング部に人質にされた……けど、流子ちゃんがかっこよく助けてくれた)

マコ(流子ちゃんは私の友達、私は流子ちゃんの友達。もちろん、今まではそうだった)

マコ(私は今まで頭の中にしか友達がいなくて……流子ちゃんもたった一人でこの街に来たから、
   お互い唯一の友達)

マコ(鮮血ちゃん言ってた、もう一度私と流子ちゃんのこと考えてみろって)

マコ(ずっと友達のままでもよかった、それでも私、流子ちゃんと一緒にいれた)

マコ(その型枠を打ち破ってまで、私……流子ちゃんとどうなりたいんだろう)

マコ(流子ちゃんと、どういう関係になりたいんだろう……)

マコ「っ……はあ……」タッタッ

マコ(わかんないよ……私、どうしたらいいの……?)

流子「……」

鮮血「……どうした流子、機嫌が悪いか」

流子「……なんでわかんだよ」

鮮血「お前のことはわかる」

流子「……マコのやつ、教室にこないよな」

鮮血「そうだな……時間まで間に合わなかったのか、そもそも登校してないのか……」

流子「……」

鮮血「登校していたなら校庭を走らされているのかもしれない。行ってみたらどうだ、きっとマコも喜ぶ」

流子「いや、どうかな……」

鮮血「……」

流子「正直……あそこまで落ち込まれると思ってなかった」

流子「マコのことだから、きっと時間経ったり、言い聞かせたりすればケロッと元に戻るのかと思ってたよ」

鮮血「……」

流子「でも……違うのかな、マコ、なんで私なんかを……」

鮮血「相手のことはわからない。ただ、自分のことはどうだ」

流子「自分のこと?」

鮮血「お前はマコのなんなんだ、マコのこと、どう思ってる」

流子「……」

流子「友達……だよ、それ以上のことは考えたことない」

鮮血「本当か?」

流子「……」

鮮血「友達という収まりのいい形にとらわれているだけなんじゃないか?
   マコはその形を壊してまで、お前に手を差し伸べようとしてるんだぞ」

流子「……うっせ、お前に何が分かんだよ」

鮮血「流子」

流子「……」

鮮血「お前がマコと変わりたいと望むならお前もマコのことを考えるしかないぞ。
   少なくとも、マコは今お前のことを考えてる」

流子「……」

鮮血「お前がこっちに転校してきてから一番共にいた人間は間違いなくマコだ。
   今までのマコのことを思い出すんだ。答えはきっとそこにある」

流子「……答えは……そこに……」

流子「……」

鮮血「……」


流子「……おかしいな」

鮮血「どうした」

流子「なにか……欠けてる……重要な何かが……」

鮮血「……?」

流子「思い出せない……なんだ?私は何か忘れているのか?それとも……」

流子「マコ……」

鮮血「……」

流子(転校してきてから、マコは私の隣に当たり前のようにいる存在だった)

流子(友達という概念に逃げちゃいけない、わかってる、でもわからない……なんだかよくわからないだよ)

流子(私はマコのこと、どう思ってるんだ……?)

蟇郡「」ドスドスドスドス

蛇崩「ちょっとぉうるさいわねえ、その貧乏ゆすりやめてよガマ君」

蟇郡「解せない……今朝のあれはどういうことなんだ」

蛇崩「あら、お悩み事?あの厳格なガマ君が珍しいわね」

蟇郡「満艦飾……いつもならあそこで独自の理論を展開して口車に乗せてくるのに……
   あんなに素直なのは初めてみるぞ」

蛇崩「ってまた劣等生関連!?だっらしないわねぇーそれでもあんた委員長!?ほとほと愛想が尽きるわ!」

蟇郡「蛇崩は黙っていろ、俺が何を悩もうが勝手だ、俺の事は俺が決める」

蛇崩「建前だけはお達者でぇ。で、劣等生がどうかしたの」

蟇郡「実は……」

蛇崩「なにそれ、ただちょっと大人しかったって話じゃない。
   あの子もそんな時ぐらいあるでしょー、年頃の女子高校生なんだから」

蟇郡「だが満艦飾のあんな姿を見るのは初めてだ」

蛇崩「じゃああれかしらねえ、例の同性交際がうまくいかなかったのかしらねえ」

蟇郡「っ!!あっ、あの二人はまだ交際などしていないはずだ!どこからもそんな話は聞いていない!」

蛇崩「あんたが劣等生のなにを知ってんのよ。もうとっくに事済ませちゃってるかもよぉ」

蟇郡「っっっ!!!蛇崩ぇ!!」

蛇崩「っていうのは冗談。これは予想だけど、劣等生転校生に振られちゃったんじゃなぁい?」

蟇郡「うむ……なるほど、確かにそう考えるのが自然かもしれない」

蛇崩「だとすれば、これはちょっとチャンスかもしれないわね」

蟇郡「チャンス……?どういうことだ」

蛇崩「鈍いわねぇー!身近に失恋中の乙女がいんのよー?
   どう動くのがガマ君にとって最良の選択かしら、ちっとは考えたらどうなの??」

蟇郡「……!!い、いや、俺は……別に……そんな」

蛇崩「そうやって中途半端にもたもたしてるからいつまでたっても何も変わんないのよ!
   時には思い切って動くの!早くしないと劣等生転校生のところから帰ってこなくなっちゃうわよ!?」

蟇郡「っ……!!!じゃ、蛇崩、急用を思い出した、今すぐ行ってくる」

蛇崩「そ。せいぜい頑張んなさい」

蟇郡「」スタスタ

蛇崩「全く……あんなごつい体しといて中身はチキンなんだから」

マコ「はあっ……はあっ……」タッタッ

マコ「うっ……」クラッ

パシッ

蟇郡「大丈夫か満艦飾、危うく転ぶところだったぞ」

マコ「が……蟇郡先輩……」

蟇郡「聞けえええ!本能寺学園の愚かな遅刻者共!貴様らの処罰はこれにて完了とする!
   全員速やかに教室に戻り、授業を受けることだ!」

無星生徒「うっげぇ……やっとかよ……」ゼエゼエ

マコ「先輩……?終わるにはまだちょっと早いんじゃ」

蟇郡「気のせいだ。それより、だな」

マコ「?」

蟇郡「その……なんだ、満艦飾、なんだか元気がない。俺は満艦飾に何があったか知る由もないが……」

蟇郡「よかったら、だな、その、俺が励ます、というか、迷惑なら別にいいんだが……」

マコ「」

蟇郡「……? 満艦飾?」

マコ「」

蟇郡「!? まっ、満艦飾!?どうした!!しっかりしろ!満艦飾ぅぅぅぅぅぅ!!!」

本能寺学園・保賢室

マコ「うぅ、うーん……?」

マコ「こっ……ここは……?」

蟇郡「め、目覚めたか満艦飾」

マコ「蟇郡先輩……?あれ、私どうして……」

蟇郡「処罰とはいえ朝から走りっぱなしだったんだ。倒れるのも無理はないだろう……」

マコ「え……蟇郡先輩がここまで運んでくれたんですか?」

蟇郡「……そうだ、なにか問題があるか」

マコ「いえその……」

蟇郡「……」

マコ「……」

蟇郡「……満艦飾マコ」

マコ「?」

蟇郡「俺はな、今朝からずっとお前の様子がおかしいと思っている。
   それで、風紀部委員長として……いや、この蟇郡苛自身として、だな」

蟇郡「お前のそのようならしくない姿は見たくないんだ」

マコ「……先輩……」

蟇郡「俺は生まれつき不器用だから、大したことはできないかもしれないが……それでも力になりたい」

蟇郡「なにか俺にできることがあれば言ってくれ。これは風紀部委員長としてではなく、
   生徒会四天王としてでも、お前の先輩としてでもなく、ただお前の助けになりたいんだ」

蟇郡「そう……思ってる」

マコ「……」

蟇郡「もちろん余計なお世話ならいいんだ、そんな……」

マコ「いえ、先輩……」

蟇郡「……」

マコ「生まれつき不器用なのは私も一緒です……昔から友達いなかったですし」

蟇郡「……」

マコ「それで、流子ちゃんは唯一の友達で……」

マコ「でも、それにとどまるのが嫌なんです。なんで自分でもそう思うかわからないんですけど」

蟇郡「……」

マコ「流子ちゃんは私に友達でいようって言ってくれた。それでいい、それでいいはずなのに、
   なんでこんなに心が痛むんだろうって」ポロ…

マコ「私はこれ以上流子ちゃんに何を求めるんだろうって」ポロポロ

マコ「ずっと一緒にいたいだなんて、そんなのわかんないのに、なんとなく思うだけじゃ」ボロボロ

マコ「こんなの先輩に話すことじゃないかもしれませんけど、それでも……」

マコ「私、どうしたらいいかわからなくて……」

マコ「うう……」ボロボロ

蟇郡「……」

蟇郡「そう……か」

マコ「」ボロボロ

蟇郡「……」

マコ「」ボロボロ

蟇郡「満艦飾、俺は……」

マコ「……?」

蟇郡「お前のことが……」

マコ「……」

蟇郡「……」

マコ「……」

蟇郡「……とても、純粋だと思う。
   人の事を、自分ではない他人の事をそこまで思いやれるのは、多分誰にでもできることじゃない」

蟇郡「お前の涙は、濁っていない純粋な、綺麗な涙だ。だからそこまで落ち込むことはない」

マコ「……」

蟇郡「だから……お前はもっと自分らしくあったほうがいい。物事を深く考えることは大事だが、
   考えすぎるのもまた、良くないことだ。あれもダメ、これもダメで考え込んでばかりいると本当に何もできなくなる」

蟇郡「一つの場所にとどまって、何もできなくなることが一番良くないのだ。
   俺は蛇崩にそう教えられてお前のもとまでやってきた」

蟇郡「いや、蛇崩に言われたからではない。俺の事はいつだって俺が決める。お前だってそうだ」

蟇郡「いつものように、考えなしで動き回るお前になれ。落ち込んでてもなにも始まらない。
   なにも難しいことじゃない、いつもの、いつもどおりのお前の中に必ず答えがある」

蟇郡「そう、さしずめ目先の欲に目がくらんだ満艦飾のようにな」

マコ「……」

蟇郡「……どうだ。俺は精一杯激励したつもりだ」

マコ「先輩……私……」

マコ「……!!なにか、目が覚めたような……!!」

蟇郡「道が開けたか?それがお前の道だ。疑うことはない!」

マコ「先輩!私!こんなところでグズグズしてる場合じゃないのかも!!
   なんか!もっと動かなくちゃいけないような気がする!!」

蟇郡「そうだ!それでこそ満艦飾!お前は自分で自分の道を切り拓け!!」

マコ「はい!!うぉおおおぉおお!!こうしちゃいられない!!待っててね!流子ちゃん!!」バッ

マコ「」ピュー

蟇郡「……」

蟇郡「……満艦飾」

マコ「?」クルッ

蟇郡「……お前の助けになれたようで、良かった」

マコ「はい!ありがとうございました!!蟇郡先輩!!」

マコ「」ニコッ

蟇郡「……」

マコ「じゃ!私行きます!」

蟇郡「ああ、頑張れよ」

マコ「」タッタッ

蟇郡「……」

二つ星生徒「貴様を倒して昇格するのはこのアタイだあああああっっっ!!」バッ

流子「くっ!」カキン

鮮血「慌てるな流子!落ち着いて敵の動きをよく見るんだ、やつを倒すのはそう難しいことじゃない!!」

流子「わぁってるよちょっと黙ってろ!!今集中してる!!」

鮮血「……」

流子(敵の動き……必ず隙がある、必ず……!)

流子(……!!そこだっ!!)

流子「必殺!戦維喪失!!」

二つ星生徒「っ!?そっ、そんな!!」

二つ星生徒「きゃあああああっっ!!」バサァ

二つ星生徒「」ドサッ

流子「はあっ……はあ……」

流子「……倒したか」

鮮血「流子……だいぶ気性が荒くなってないか」

流子「ちっ……うっせえな、んなこたねえよ」

鮮血「昨日から色々あって、持て余す気持ちもわかるがヤケクソはよくないぞ」

流子「だから、ヤケクソなんかなってねえって言ってんだろ!」

鮮血「流子……」

流子「クソっ……どいつもこいつも……」

流子「……」

鮮血「……」

鮮血(この感じ……、もうすぐ、か)

流子「っあーぁ、なんだか疲れちまったよ、今日はもう戦いたくねーなあ」

鮮血「残念だがそれは叶わぬ願いのようだ」

流子「? どーいうこったよ」

鮮血「近づいてきているんだ。この世界の『終』が……」

流子「終わり?なんだそりゃ」

鮮血「感じないか?もうじきにやってくる……ここまでな」

流子「回りくどい方すんな!言いたいことがあるならもっとはっきり言え」

鮮血「これは……思ったよりも早い……?」

流子「せ、鮮血?」

鮮血「! 来るぞ!流子ッ!」

流子「なっ!?なんだ!?何が来るんだ!?」ビクッ

マコ「りゅーうこちゃんっ」

流子「って……なんだマコじゃねえか、びっくりさせんなよ」

流子「あっ、マコ……?お前、ちゃんと登校してたのか」

マコ「いやだなあ流子ちゃん!風邪ひいてるわけでもないのに学校休んだりしないよ!」

流子「そ、そうだな、いやあ朝から教室にいなかったからさ」

流子(よかった、いつものマコだ……昨日の事からちゃんと立ち直ったのかな)

鮮血「……」

流子「それはそうとマコ……なんか見慣れない服きてるな」

マコ「うんっ!流子ちゃんに会うからおしゃれしてきたんだよ!」

流子「へーえ、でも私に会うためだけにそこまでしなくても……ん?この服の感じ……」

マコ「いやーん、流子ちゃん乙女の体をそんなに凝視しちゃノンノン!」

流子(……気のせいか、それにしてもいつものマコに戻ってよかった)

流子「いやーそれにしてもびっくりしたよ、さっき鮮血がおかしなこと言うもんだから……」

鮮血「……流子」

流子「? なんだ鮮血」

鮮血「マコ……なにかあったのか?」

流子「え?なんだよ今度は何が言いたんだ?マコはマコだろうが」

マコ「流子ちゃん?また鮮血ちゃんとお話?」ズイッ

流子「うおっ、マコ、そんなに近づかなくても」

マコ「もうダメだよ流子ちゃん!『服なんか』と話してないでもっと私と話そうよ!ね!?」

流子「え……?お、おう」

マコ「じゃ!流子ちゃん、今日もお昼ご飯つくってきたから一緒に食べようか!」

流子「お昼ご飯……?」

流子(マコ私が家でるまで寝てたはずじゃ……)

マコ「」ズイッ

流子「おおっ、だから近いって」

マコ「どうしたの流子ちゃん考え込んじゃって!私の作ったお弁当食べるの嫌?嫌なの??」

流子「そんなことないって!食べるよ」

マコ「そうだよね!!流子ちゃんが私の作ったお弁当食べるの嫌だなんて言うはずないもんね!
   流子ちゃんは私の流子ちゃんだもんね!」

流子「は、はは……うん」

流子(いつもの……マコ……??)

スリ…

鮮血「!!!」

鮮血「りゅっ、流子!!」

流子「!? どうした鮮血!?」

鮮血「おかしい!マコの服……!あれは!」

流子「服?あの服か?」

マコ「りゅ う こ ちゃん!!」ズイッ

流子「近っ!さっきからそんなに近づく必要ないだろ!」

マコ「」ズイッズイッ

流子「だ、だから……」

マコ「流子ちゃんったらおかしいよ!独り言なの?それただのセーラー服でしょ??服が喋るわけないじゃん!
   もういい加減やめようよ!」

流子「マ、マコ……?」

マコ「ずっとずっとそうだよね流子ちゃん!いっつもいっつも私の知らないところで私の知らない誰かと話してるんだよね!
   私の事考えもしないでさ!だからあんなひどいこと言えるんだよね!私に向かって!」

流子「……!!」

マコ「ねえ流子ちゃんなんでそんな顔するの?違うって言いたいの違わないよね?
   だって私はこんなに流子ちゃんのこと思ってるんだよ?こんなに流子ちゃんのこと、考えてるんだよ?
   流子ちゃんの事以外何も考えられないほどずっとずっと考えてるんだよ??」

マコ「それなのに流子はどのくらい私の事考えてるの?どのくらい?考えてないよね?ないよね?
   ねえ私の事どう思ってるの?どうも思ってないの?友達なの?それで終わりなの?
   私って流子ちゃんにとってそれっぽっちの存在なの?私達ってどんな関係?私達って二人で何をしてるの?
   そういうこと考えてるの?私はこんなに考えてるんだよ?なんで考えてくれないの?
   ねえ、ねえ、ねえったら、なんで黙ってるの?私流子ちゃんの事好きなんだよ?大好きなんだよ?
   こんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなに」

鮮血「流子!危ない!!」

流子「うわああァァァァァッッ!!」

ドカーン!

流子「っ……!っ……!!な、なんなんだよ、おいこれ……」

鮮血「なんとか避けたか流子……だがこの力……!本当にマコのモノ……!?」

流子「おい……おいっ!なんだよその服!!極制服か!?それにマコ……!お前っ」

マコ「よーけーなーいーでーよー、流子ちゃん。折角私が愛の拳をプレゼントしたのに」

流子「おま、おまえ、どうしちゃったんだよ……!マコ?わからないのか?私、私だよ!」

マコ「わかるよ流子ちゃん、流子ちゃんは流子ちゃんだよ、流子ちゃんだから言ってるんだよ?」

流子「だったらなんで!!」

マコ「私はね、流子ちゃん、流子ちゃんと中途半端で『終』にしたくないの。『終』わるのを止めに来たんだよ?」

流子「何言ってるかわかんねえよ……!マコ!なんで私を」

マコ「だってこのままじゃ何もかも『終』わっちゃうもん!その前にね?流子ちゃんを私のものにするの。
   ずっとずっと二人で永遠にいつもでも一緒にいられるようにするためだよ?許してね?」

シュッ! ドーン!

流子「っ、はぁっ!マコ!おい正気に戻れ!!」

マコ「あはは、もぉー流子ちゃんったらーァ」

流子「なんだよそのありえない力はよ!そんな服脱げ!きっとその服に乗っ取られてるんだ!
   誰からもらった!?部活動の輩!?鬼龍院か!!?」

マコ「誰にもらったわけじゃないよーこの服は私の思いで生まれたの」

マコ「名前、教えてあげようか?」

マコ「神衣・『不』純血」

流子「!?」

流子「か……神衣……??そんな……なんで」

鮮血「まさかとは思った……!ありえない、まさか神衣だと……!!しかもそれを何故マコが……!」

マコ「似合う?ふふ」

流子「ま、まこ……、ほ、んとに、だめだって、 、な?そんなのきて、あばれちゃ……!!」

マコ「……」

流子「だって、そんなのおかしいだろ?わたしとおまえじゃないか、ぁ、な?」

ハーレルヤッ!

マコ「流子ちゃんに今更そんなこと言う資格ないよ」

マコ「全部流子ちゃんが悪いんだよ?流子ちゃんはいっつも不純。純粋じゃなくて、不純」

マコ「ずっと不純なまま、私の気持ちを裏切った」

マコ「このままじゃ、不純なまま全部『終』わっちゃう」

マコ「その前に!私が!流子ちゃんを!」

マコ「私のモノにするのです!!!」ダッ

流子「人衣!!一体!!」カチン

鮮血「流子!マコと戦う気か!?」

流子「戦いたくねえよ!でもこのままじゃ!!」

ドカーッ!

流子「うわあああっ!!」

鮮血「さっきの戦いでかなり消耗してるんだぞ!貧血をおこす前にマコを倒せるのか!?」

流子「貧血関係なしに倒せねえよ!だって相手は……!!」

ガシッ

流子「! っ!! ああっ!」

マコ「素早いねー……流子ちゃーん……鮮血ちゃん、いや、神衣鮮血。
   そんな小っ恥ずかしい服、流子ちゃんこそ脱いだら?」

流子「恥ずかしくねえっ!鮮血は私の友達だ!!いくらマコでも友達を馬鹿にするやつは許さねえええっ!!」

鮮血「……!!」

マコ「服と友達?面白いねえー流子ちゃん」

流子「うおおおおおっっっ!!」ガッ

マコ「っ……と」

流子「やるしかねえ!不純だかなんだかしらねえが敵はあの服だ!あのふざけた服ひっペがしてマコを取り戻す!
   行くぞ鮮血っ!!」

鮮血「今の流子の叫び、確かに響いたぞ……大丈夫だ、私とお前なら必ずマコを取り返せる」

マコ「邪魔なんだよねその服ゥ……いっつもいっつも!それで私から逃げてるんでしょ!!」

マコ「許さないっっ!!」ドカア

流子「っく!うあああ!!」カキン

マコ「」ドカドカドカ

流子「すごい勢いだ……!耐えられるか!?」

鮮血「ここは一旦距離をおこう流子」

流子「」バッ

マコ「また逃げるの??りゅー うー こー ちゃー ん」

鮮血「わかったぞ流子……あの神衣は違う、偽物だ!生命戦維百%の服などそう簡単にありはしない!!」

流子「だったら目の前のあれはどう説明すんだよ!!」

鮮血「この状態で理屈を考えても仕方ないぞ」

流子「ちっ!そうかよ!じゃあ不純なのはむしろあっちのほうってことだな!」

鮮血「そうだ!相手は完全じゃない、どこかに必ず突破口が……!!」

マコ「おしゃべりはおわりだよっ」

流子「! しまっ……」

流子「ぐっ!!……は、ぁ……」

鮮血「流子!!」

マコ「……これで完全に、終わりもなく、ずっと一緒にいられるね、さようなら、流子ちゃん」グググ

鮮血「流子!流子!!」

ドガァァァン!!

パラパラパラ…

流子「」

鮮血「流……子……」

流子「っ!はあっ!!」

鮮血「! 無事か!よかった!!」

流子「無事じゃねえよあああ!!っ、くそおおおおお!!」

マコ「まー……だなんだ……」ジリジリ

鮮血「流子!!来るぞ!!」

流子「だめだああああ体が動かねえええっっ!!」

流子「ぐっ……は……!」ブシャア

鮮血「もうだめだ血が持たない!人衣一体を解くぞ……!」

キラキラキラ…

流子「……」

マコ「流子ちゃん」

流子「マコ……」

マコ「私の思い、伝わったかな?」

流子「ああ伝わったよ……嫌という、ほどにな」

マコ「そっか……あのね、私流子ちゃんのこと好きなの、大好きなの」

流子「その大好きな人にする仕打ちかよ……」

マコ「大好きだからだよ。もうね?悩みっぱなしが嫌になったんだ」

流子「マコ……目を、覚まさないか?」

マコ「目を覚ますもなにも、私は私で、流子ちゃんは流子ちゃんだよ?」

流子「そうか……」

マコ「じゃあね、流子ちゃん」

流子「……」


流子「……… ……  …」










――――……
 
 ………――――…………


  ―――――――――…………



…―――――



だめ――………







流子「……?だ、誰だ……!?」












「だめええええええええええええええええええええっっっっ!!!!」ギューン

流子「!? マコ!? マコなのか!?」


ドカッ!

マコ?「っ!!」

マコ「流子ちゃん!私来たよ!!強くなって!復活して!!流子ちゃんのところに来たよ!
   満艦飾家長女満艦飾マコ!ここに!見参っ!!」

マコ「流子ちゃん!ずっとずっと会いたかった!私ね、もう大丈夫!流子ちゃんへの気持ち、見つけたよっ!」

マコ「もう迷わない!流子ちゃん!私……!!」

マコ「って、ええええ!?なにあれ!?私だ!流子ちゃん私がいるよぉ!」

マコ?「…………」

流子「マコ!マコなんだな!!」

マコ「そうだよ!私もう悩まない!流子ちゃんのことずっと愛してる!!」

流子「そういうことか……!やっぱりてめえ、偽物だったんだな!?」

マコ?「……」

マコ「ねえ流子ちゃん、私ってまさかの双子だったのかな?」

流子「いいや、あいつはマコじゃねえ、もっと不純だ」

マコ?「私が不純……?私だって満艦飾家長女、満艦飾マコ」

マコ?「偽物なんかじゃないよ」

マコ「ほうほう、それじゃあなたはお姉さんなの?妹さんなの?」

マコ?「ねえ、『私』……偽物なんかじゃないよね?だって私の流子ちゃんへの気持ち、きっと純粋」

マコ「お?それはどうでしょう!たとえ双子でも流子ちゃんを思う気持ちは絶対私がナンバーワンなのです!
   なのです!なのです!」

流子「だからマコ双子じゃないって」

マコ?「私は流子ちゃんが好き、ずっと、ずっと……」

マコ?「でも流子ちゃんは私の手の届かない場所にいる。私と流子ちゃんの距離は近い。
    だからこそ、もうずっと、いつもでも流子ちゃんに触れられないままな気がして」

マコ?「流子ちゃんは私の事きっと思ってくれない。そう思うでしょ?『私』も」

マコ「それは違います!!」


ハーレルヤッ!

マコ「流子ちゃんは私のこと、私が思ってるよりもずっと思ってくれています!
   流子ちゃんは私のこと、私が思ってるよりもずっと見てくれています!」

マコ「だってそう!私と流子ちゃんの間には、理屈じゃあらわせないもっと素敵なものがあるから!
   言葉なんかじゃ言い表せない、もっと大切なものがあるから!」

マコ「その答えはいつもの『私』の中にあるのです!常識なんかに縛られない、いつもの『私』に!」

マコ「なにかにとらわれて身動きできないでいるなんて!そんなの私じゃないよ!ないよ!ないよ!」

マコ「私は流子ちゃんが好き!誰よりも大好きなの!その気持ちだけで!私は動けるのおおおおお!!」

流子「マコ……お前……!!」

マコ「だってそうでしょ?わたしたちには、思い出があるもんね」ニコッ

流子「おもい……で……?」

マコ?「……」

マコ「だから双子さん!いくら姿形が一緒でも私達にはかないません!諦めてください!」

マコ?「そう……それで『終』なんだね……」

マコ「私と流子ちゃんに終わりはありません!」

マコ?「あのね……私の事、忘れないでね。私はきっと流子ちゃんへの気持ちで出来てるの。
    あなたが本物なら、私だってはぐれた本物。だから……」

グシャアアアア……

鮮血「! 離れろマコ!様子がおかしい!!」

マコ「うわああ!なに!?」

バクッ!

鮮血「あれは……!」

流子「服……!?」


不純血「キシャアアアアアア……!!」

マコ「うわあぁぁ……!塔首頂上決戦で流子ちゃんが暴走した時みたいになってる!!」

鮮血「完全に服に乗っ取られたか……!もはや原型がない」

不純血「キシャアアアアアアアア……!!!」ドカーン

マコ「わああ!暴れはじめたよ!」

流子「こっちだマコ!逃げるぞ!」

鮮血「流子!体は大丈夫なのか!?」

流子「大丈夫かどうかなんて甘ったれたこと言ってられねえ!だって今は……!!」

流子「守らなきゃいけねえ人がいるじゃねえか!!!」

マコ「……!」

マコ「りゅ、流子ちゃん……///」

流子「てっ、照れてる場合かよ!行くぞ!」

次で最後です

流子「はあっ……はあっ……ここまでくりゃ大丈夫か……?」

マコ「ひょえ~、あの服、所構わず大暴れ~!やばいよやばいよー!」

流子「今隠れてるここが崩壊するのも時間の問題か……こりゃ本能寺学園の連中もそうとうな騒ぎに……」

シーン…

流子「……なってない?な、なんだこりゃ、学園内に人っ子一人いねえじゃねえか!」

マコ「ほんとだ誰もいないよーあれかな、みんな危険だから避難したのかな」

流子「やつが暴れ始めたのついさっきだぞ、そんな短時間で全生徒が避難できるか……?」

マコ「じゃあ流子ちゃん、ふたりっきりだね!」

流子「こんな状態でふたりっきりでもなあ……にしてもなにがどうなってんだ」

鮮血「……聞こえるか、流子。それに、マコ」

流子「鮮血?」

マコ「ああっ!鮮血ちゃん!すごい!夜じゃないのに鮮血ちゃんの声が聞こえるよ!」

流子「マコも!?やっぱり喋れるってのは嘘じゃなかったのか!」

鮮血「流子、今まで隠して悪かった。私は夜、確かにマコと話していた。説明や助言をしていたのだ」

流子「悪いなんて思ってねえよ、それよりなんで教えてくれなかったんだ?」

鮮血「それは今この時のためだ。流子、マコ、今からお前たちにとても重要な話をしなければならない」

流子「重要な、話……?」

マコ「いよいよネタばらしってことかな!?鮮血ちゃん!」

鮮血「そうかもな……まず話すことは、マコは元の世界の人間だという話だ」

マコ「そう!流子ちゃん、今いるここは私の記憶のイメージ的なアレなんだって!
   だから学園のみんなも急に消えたり、私の双子さんが現れたりしたんじゃないかな!?」

流子「はっ?」

鮮血「そういうことだ。私はマコが元の世界に帰れるように手伝いをしていた」

マコ「未練を晴らせば元の時間に帰れるんだよっ!」

流子「ままままてまて!元の世界って……?どういうことだよ、じゃあこの世界はなんなんだよ」

鮮血「マコの未練によって生まれた世界だ。その未練を今、マコは晴らそうとしているのだ」

マコ「それが流子ちゃんと一緒に幸せになるということなのです!」

流子「……???」

鮮血「流子、混乱するのも無理はない。だが今は本当に時間がないんだ。なるべく理解してくれないか」

流子「そんなこと言われても!そんな話信じられるかよ!」

鮮血「少し前からわけのわからないこと続きだっただろう」

流子「たっ……確かに、不可解なことが多かった」

鮮血「つまりそういうことだ。この次元は元の時間とは別の場所にあるんだ。だからよくわからないことも起きる」

流子「この世界が、マコの世界……?」

鮮血「把握できたか」

流子「頭は追いつかねえけどよ……とりあえず理解したってことにして、でも疑問が」

鮮血「なんだ」

流子「じゃあ私はなんなんだ?私もこの世界の一部なのか?つまり、偽物……」

鮮血「……」

マコ「そんなことありません!流子ちゃんはいつだって流子ちゃんです!偽物も本物もありません!」

流子「どうなんだよ鮮血」

鮮血「今からその話をしようと思っていた。マコは未練のためにこの世界にやってきたと言ったな」

流子「おう」

鮮血「それは実は……流子、お前も同じなんだ」

流子「私……も?」

マコ「ええーーっっ!?流子ちゃんも同じ時間から来たの!?じゃあなんで教えてくれなかったのさ!!」

流子「い、いや、私はそんな……」

鮮血「この世界はマコの世界じゃない。マコと、流子の世界なんだ。未練を持ち合わせてるのは二人共だ」

マコ「え!?それって両想いってこと!?りゅ、流子ちゃん!流子ちゃん!!」

流子「落ち着けマコ、とりあえず鮮血の話を聞こう」

鮮血「二人の目的は未練を晴らすことだ。そうすればこの世界は『終』わる」

流子「世界が終わる……?」

鮮血「そうだ。目的が終われば、同時にこの世界も終わる。ここは流子とマコの世界だからな」

流子「それは……いいことなのか?」

鮮血「もちろん。終わらせることができればお前たちは元の世界へ帰れる」

流子「鮮血は!?鮮血はどうなんだよ!?」

鮮血「私はこの世界からは出られない。その理由もすぐに思い出す……」

流子「そんなっ!」

ドカーン!

流子「っ……」

鮮血「奴が近づいてきているな……!この世界の『終』も」

マコ「……鮮血ちゃん、やっぱり帰れないんだね」

鮮血「そうだな……ありがとうマコ。たとえパラレルワールドの中でも、もう一度流子と話すことができて楽しかった」

流子「え……?それどういうことだよ」

マコ「うっ……」ポロ

マコ「うわぁああぁ~~~ん!!鮮血ちゃぁぁ~~~ん!!うぅぅぅぅ」ボロボロ

流子「ちょっ、マコ。なんで私以上に悲しんでんだよ」

マコ「だってだって!流子ちゃんの大事な一張羅だもん!私のことも助けくれたもん!」

鮮血「グズグズしている時間はない!私の話も終盤だ。よく聞いてくれ、流子、マコ!」

鮮血「神衣不純血……あれは偽物の神衣だ。お前たち二人なら必ず倒すことができる」

マコ「うっ……私達二人?私と流子ちゃんで?」

鮮血「そう、あの偽物のマコ、及び不純血はマコの無意識から生まれた超えるべき壁だ」
   
鮮血「奴はこの世界が終わるのを止めようとしている。
   永遠に、お前たち二人をこの世界に縛り付けておくつもりなんだ」

マコ「それはダメです!私と流子ちゃんはもう次のステージへ行かないと!」

鮮血「そうだ。だからもう、この世界は終わらせないとな」

流子「でもあんな化物相手にどうすればいいんだ!?」

鮮血「その答えはお前達二人で見つけるんだ。いや、マコはもう知っているかもな……残るはお前だけだ」

流子「私?」

鮮血「……私の話はこれで終わった。あとはお前達二人次第だ」

流子「……」

マコ「なんだかものすごいことになっちゃったね!流子ちゃん!」

流子「マコ、お前……怖くないのか?」

マコ「うん怖くないよ!だって流子ちゃんと一緒だもん!近くにいるだけじゃなくて、心も一緒だもんね!」

流子「心も、一緒……」

マコ「うふふ」ニコニコ

流子「マ、マコ」

マコ「なーに?」

流子「私、さ……戸惑ってるのかな、なんか……思い出せないんだ」

マコ「?」

流子「さっきの鮮血の話聞いてる途中、何度も思い出しそうだったんだけど……どうしても、だめだ」

鮮血「……」

マコ「ど、どうしたの流子ちゃん?」


流子「マコ、お前言ったよな?私達には思い出があるって」

マコ「うんっ!」

流子「それが、どうしても引っかかる……思い出?私とマコの思い出……私、やっぱりなにか忘れて……」

流子「……私も悩んでた、マコの事考えてたよ。マコと私ってなんなんだろうって。
   もうこの枠からは収まらないんだろうって」

マコ「……流子ちゃん」

流子「マコは私の事好きって言ってくれた。でも私はマコの事どう思ってるんだ?
   二人、どういう関係であればいいんだろう……」

流子「って……」

マコ「……」

流子「それを考えるたびに……なにか大切なことを忘れてる気がして……答えがでないんだよ」

マコ「……」

流子「……マコ……」

マコ「……」

流子「……」

ギュ

流子「……」

マコ「……」

流子「はは……マコの手は相変わらずあったかいな」

マコ「なにか、思い出さない?」

流子「……」

マコ「あのね、私もそうやってわかんなかったんだ。ずっとずっと悩んで。ずっとずっと落ち込んでた。
   考えれば考えるほど抜け出せなくなって、でもね?」

マコ「答えはそんな理屈の中にはないって気がついたの。だってそうでしょ?
   私と流子ちゃんは、そんなちっさなくくりの中には収まらないじゃん!」

流子「……」

マコ「私は流子ちゃんが好き。それだけだよ、流子ちゃんは、どうかな」

流子「……」

マコ「……」

流子「それでもわからない……私」

マコ「……」

マコ「流子ちゃんっ」

流子「……」

マコ「こっち、むいて?」

流子「マコ……」

マコ「今からおまじないをかけます」

流子「おまじない?」

マコ「そ。流子ちゃん、元気になってほしいな、じゃないとあいつも倒せないよ!」

流子「……」

マコ「……いくよ?」

流子「……ぁ……」

マコ「……」


流子「………」



マコ「…………」










チュ…





流子「……」

マコ「……」

流子「ん……」

マコ「……」

流子「……」

マコ「……もっかいする?」

流子「マ、コ」

マコ「んっ」チュッ

流子「ん……」


――――……
 
 ………――――…………


  ―――――――――…………



…―――――





流子「……………」








『流子ちゃん、こっちこっちー!この席空いてるよー!』



『そういえばギター弾くの?弾くんだ弾いてよ!よし、私歌うよ!?よーぉにげぇーぇのうたーぁ』




『あっ、ツーリングだね?私もついていくよー、よーし、レッツゴー♪』




『ダメだよ流子ちゃん!こんなの!流子ちゃんらしくないよ!流子ちゃん言ってたじゃない!
 お父さんの仇を取るんじゃない、お父さんの事が知りたいんだって!』





『流子ちゃん!迎えに来たよ!こんなの幸せでもなんでもないよ!こんなの、流子ちゃんじゃないよ!
 バカバカバカ!!いいよ!殺しなさいよ!!
 どうしてもこんなとこで閉じこもってたいなら、私殺して!!流子ちゃんやめちゃえ!!!』









『この船は、流子ちゃんの魂のふるさとだ……私の頭の中だけじゃない、頭の外の流子ちゃんもきっとそう!
 だっていつもいつも、流子ちゃんは私を待っててくれた!だから!この船は―――!!』










『流子ちゃん!待っててね!今私!!追いつくからあああああぁぁぁぁ!!!』













流子「…………!!!」



マコ「……」

マコ「……おまじない、きいたかな?」

流子「……ああ……きいたよ………!!マコ……」

流子「マコっ……」ギュウ

マコ「んおっ……」

流子「」ダキシメ

マコ「え、えへへ……流子ちゃん、照れちゃうよー……///」

流子「全部……全部思い出した―――……!!マコ、私……!」

マコ「大丈夫そう?」

流子「……ああ!もう、大丈夫!」

流子「……行こうぜ、マコ」


グオォォォ……

不純血「フシュウゥゥ……」


流子「……」

鮮血「……流子」

流子「なんだ、鮮血」

鮮血「いよいよ最後の戦いのようだな」

流子「そうだな……まさかこんな形で終が来るとは思わなかった」

鮮血「本来の自分を取り戻したか流子。流子とマコ、二人の力で奴を倒すんだ」

流子「その前に……私はどうしてもお前に言わなきゃいけないことがあるみたいだな」

鮮血「……いいんだ流子、ここはマコとお前の二人の世界だ。ここでは私は案内役に過ぎなかった。
   気を配ってくれなくても……」

流子「今更そんな水臭いこと言うなって!」

流子「友達だろ!鮮血!」

鮮血「……流子……」

流子「……」

鮮血「……」

流子「……今までありがとう。それが、言いたかった」

流子「あの時はちゃんとお礼が言えてなかった。お前が空中で燃え尽きた、あの時――……」

鮮血「……」

鮮血「……二度目の別れだな。セーラー服は懐かしかったか?流子は今頃どんな服を着ているんだろうな」

流子「そんな、大した服じゃねえよ」

鮮血「こちらこそ、ありがとう流子。私は流子の心の中に、いるからな」

流子「……」

流子「……ああ!」

流子「」スウゥ

流子「行くぞ鮮血ッ!」

マコ「鮮血ちゃん!私のことも忘れないでね!」

鮮血「ああ!もう一度流子に会えたのもマコのおかげだ、ありがとうマコ!」


不純血「! キシャアアアァァァ……」


マコ「ううぇあ!あいつ、こっちに気がついたみたいだよ!どうしよどうしよーぉ!」

流子「マコ」

マコ「流子ちゃん!」

流子「鮮血の言葉を信じよう、私達二人なら必ず倒せる」

マコ「私達、二人……!!」

流子「手を、握って」

マコ「……!」ギュウ

流子「……、やっぱり人肌は、いいもんだな!」

マコ「ふふ、流子ちゃんの手もあったかいよ!」

ドガーン!

流子「!」

不純血「ゥウオオオオォォォォォッッ!!」

流子「一旦下がってろマコ!私が時間を稼ぐ!そのあいだにやつの弱点を探してくれ!」

マコ「弱点って、そんなのあるのかな!?」

流子「大丈夫だ!私達二人の力を信じろ!」

不純血「キシャアアアァァァァァ!!」ブゥン

流子「くっ!」カキン

流子「おおおおっっ!」

不純血「グシャァ!」

流子「うわっ!」

流子「くそ、やっぱり単純な力比べじゃ分が悪いか!」

流子(この間にマコがどう動いてくれるかにかかってる、なるべく時間を……)

不純血「キシャァァァァ!」

流子「っ!」

流子「ぐ、はっ!」

マコ「すごい戦い、私早く弱点見つけないと!」

マコ(流子ちゃんは私を信じて戦ってくれてるんだ!私も、流子ちゃんを信じる!)

マコ「がんばれーっ!流子ちゃん!負けないでー!!」

マコ(でも今のところできることが応援くらいしかないよ!)

マコ「フレーッ!フレーッ!!流子ちゃん!頑張れ頑張れ流子ちゃん!!」


流子「……」

流子(応援か……マコらしい)

流子(……そういえば塔首頂上決戦の時も、マコが座席から応援してくれてたっけ……)

不純血「フシュウゥゥ……」

流子「!」

流子「隙ありっ!!」

ガッ!

不純血「グオォォ…」ヨロッ

流子「入った!もう一発!!」

不純血「」サッ

流子「く……」

流子(でも一瞬やつの動きが鈍った……?この感じ……まさか)

流子「マコ!聞いてくれ!そのまま応援し続けるんだ!」

マコ「わ、わかったよ流子ちゃん!がんばれがんばれ流子ちゃんっ!!ファイトーッ!おーーっっ!!」

不純血「オオオオォォ」ブゥン

流子「……っ」サッ

流子(やっぱりだ、マコが応援するとやつの動きが遅くなってる……まさかマコの応援が苦手なのか?)

流子(いや……そうじゃない、これは……!!)

流子「うおおおおおっっ!!」

ザシュゥッ

不純血「ガアアアァッッ!!!」

マコ「すごい!攻撃がきいてる!いけーーっっ!!その調子流子ちゃんっ!!がんばれ!!がんばれーーっっ!!」

流子「いいぞ!これなら倒せる!」

マコ(私の思いが、応援にのって通じてる!)

流子(マコの思いが、こいつの不純な心を惑わす!!)

マコ「当たり前だよ!私の流子ちゃんを思う気持ちは世界一!!誰にも負けない!」

マコ「がんばれーーっっ!!りゅーこちゃーーんっ!!」

マコ(私の思い、流子ちゃんに……)

マコ「とどけえええええぇぇぇっっ!!」

不純血「オウアアアァァッッ!!」

流子(いける!奴、もう全く動けていない!!)

流子「これで、とどめだあぁぁっ!!」

流子「必殺!戦維喪し……」

不純血「オオオオオオオオォォォッッッ!!」

バシュッ!

流子「!? っ、なんだ!?」

ギュウウンッ!

マコ「え……えええええーーーっっ!?わ、私!?」

流子「マコ!!しまった!!マコーーーっ!!!」

マコ「わあああーーー!!」


マコ「……!!」

マコ「……? あれ?なんともな……」

マコ「ああッ!」ズキ

流子「マコ!大丈夫かマコ!!」

マコ「な、なに……??あ、頭が……!」

マコ「あたま、あたまいたい……う、ううぅぅ………」

流子「てめえ!マコに何をした!!」

不純血「グウウゥゥゥ……」

不純血「グシャアアアアアァァァッッ!!!」

流子「うわっ!」

流子(応援がなくなったから……!こいつ!!)

マコ「ううううぅぅ………ううぅぅうぅううぅ………」ズキズキ

流子「マコ!今助けに……!」

不純血「」ドガァン

流子「くそっ!」

マコ「う、うーん……うーーん……」



『……あなたが流子ちゃんの何を知ってるの…………?』



マコ「!? な、なに!?声が……!」


『流子ちゃんはきっとあなたのことなんて何とも思ってない……』


マコ「うひゃあっ!なにこれ!?な、なんなの……」


『きっとあなたは誰からも必要とされてない……』


マコ「こ、これは……私の、声?双子さんの……!!」

『だってそうでしょ?流子ちゃんはあなたの……『私』の思いに答えてくれなかった』

マコ「双子さん!双子さん!なんでこんなことするの!やめてよ!私流子ちゃん応援しなくちゃいけないんだよ!?」

『そんなこと無駄、叶いっこない、私の思いなんか、流子ちゃんわかりっこない』

マコ「そんなことないよ!やめて……今お喋りしてる暇なんてない!流子ちゃ……」

『苦しいでしょ?辛かったでしょ?あなたはね、純粋なの。純粋だから、流子ちゃんにたぶらかされているだけなの』

マコ「た、たぶらかされてって……そんなこと!」

『流子ちゃんもきっと迷惑に思ってるでしょう、『友達』なんだから。友達は友達らしくその枠に収まってれば
 よかったのに。それでも十分幸せになれたのに。余計な事するから……』

マコ「だってだって!それっきりはやだもん!もっともっと流子ちゃんと一緒になりたいんだもん!私は……!」

『叶わない。本当に、叶わない。流子ちゃんと私には壁がある。それを乗り越えるのは私には無理。無理。無理……』

マコ「あああぁ……りゅ、こ、ちゃ……」

マコ「うううぅぅ…………」

流子「あああああどけええええええ!!このクソ布ヤロオォォォオォッッ!!!」

不純血「グァアアァッッ!」

流子「マコーーー!!」

マコ「! 流子ちゃん!」

流子「しっかりしろ!私の顔が見えるか!?」

マコ「りゅうこ、ちゃ」

ズキッ!

マコ「うああああ……!」

流子「! マコ!マコ!」ユサユサ

『見て、流子ちゃんの顔。聞こえる?流子ちゃんの声。全部全部私のものにはならないの。
 永遠に流子ちゃんは流子ちゃん。私とは絶対に交わらない、交わらない。交わらない…………』

マコ「あああ……声、こえがぁ………」

流子「声……!?マコ!どうしたんだ!!」

マコ「流子ちゃん、私、やっぱりダメだったのかな……?こんなこと、最初から無理な話だったのかな……??」

流子「惑わされるな!その声はお前の声じゃない!もう、お前の声じゃないんだ!!」

マコ「もう、私の、声じゃ、ない……?」

流子「そうだ、だってそうだろ!!私もマコと同じように悩んでたんだ!ずっとずっとマコのこと思ってた!
   それにその声はもう過去の話だろ、だって………!」

流子「今ここに!!お前のことを好きな私がいるじゃないか!!!」

マコ「……!」

『ダメだよ、流子ちゃんはそんなこと思ってない』

マコ「違う……!」

『流子ちゃんはずっと別の方向を見てる。私のことは見てない』

マコ「そんなことない……!!」

『だって終わらせちゃいけない!なにもかも、ここで終わらせるなんて……!!』

マコ「りゅうこちゃん……」

マコ「流子ちゃーーーーーーーーーーーんっっ!!!」

バシュゥッ!

流子「!」

ドガーン!

不純血「ウガアアアアァァァァァッッッ!!!」

流子「跳ね返した!やったなマコ!!」

マコ「流子ちゃん!やっぱり私、流子ちゃんのこと好き!大好きだよ!!それだけで!私は私のままでいられる!!」

マコ「流子ちゃん!!ありがとう!!ずっとずっと!!流子ちゃんのこと大好きだよ!!!」

流子「ああ!私もだよマコ!!」

マコ「」ギュウ

流子「……ほんとにな」

マコ「っ……えへへ///」

不純血「オオ……オォオォオオオォォォ………」クラクラ

流子「マコ、片太刀バサミ、一緒に持って」

マコ「流子ちゃん……こう?」

流子「ああ!あの瀕死の布切れ野郎に最後の一発をぶち込んでやろうぜ!!」

マコ「これで最後だね!流子ちゃん!!」

流子「いく……ぞおおおおおっっ!!」

マコ「いっけぇぇぇぇぇぇーーー!!」


『やめて!やめて!!あなた達二人がなんだっていうの!?
 どんな関係かもわからないのに、どうしてそんな力が出せるの!!やめろおおおおおオオオオオオッッ!!』


流子「そうだわからない!私もずっとわからなくて悩んでた!でもそれでいいんだよっ!!」

流子「私にとってマコはなんだかよくわからない存在なんだ!理屈やくくりなんかじゃおさまらねえ!!
   もっともっと大事な関係なんだ!!」

流子「それがマコを思うということ!!マコも私を思ってくれる!!!」

流子「その思いが!その純粋さが!!お前の不純を打ち破る!!!」

流子「そういうことだな!マコっ!!!」

マコ「流子ちゃん!いこう!もうこの世界、終わらせちゃおう!!」

流子「ああ!!いくぞ!!」


流子・マコ「片太刀バサミ 相思相愛!!『武滾流猛怒』!!!」

流子・マコ「必殺!!」

流子・マコ「戦維『相』失!!!!!」


ザアアアァァァァン……




不純血「オガアアアアアァァァァァァァァァァ……………」







バラバラバラバラ……




流子「……」

マコ「……」

流子「……倒した、か」

マコ「ほ、ほんとに?」

流子「ああ、もうあの偽神衣、戦維一本ありゃしない」

マコ「す、すごい……ほんとに、倒したんだ……私達、二人の力で……」

流子「ああ、そうだな、マコ」

マコ「りゅ、りゅうこちゃん……」

流子「?」

マコ「う……うわああああああん……」ボロボロ

流子「お、おいおい、倒せてよかったってのに、なんで泣くんだよ」

マコ「う、ぐす、だって流子ちゃん、嬉しかったから!ぐす……私の思い、伝わってた、だからあいつも倒せた」

流子「そうだな……マコ、ほんとうに。こんなに私のこと思ってくれてありがとう。
   一瞬でもないがしろにしちゃって悪かった。もっとはやく気づくべきだったかな」

マコ「そんなこと今更いいよ!バカバカバカバカ!流子ちゃん!私本当に寂しかったんだよ!?」

流子「あはは、私も」

マコ「うう……流子ちゃん、私こんなに幸せで……幸せ死んじゃいそうだよぉ……」

流子「大丈夫。どんなに幸せでも死にやしないって。それに」

流子「」スッ

マコ「!」

流子「まだまだこれからだろ?私達。こんなところにいないで、はやく次に行こうぜ」

マコ「そっ!それって……!!」

流子「……だいぶ返事が遅れちまったな」

マコ「~~~~っっ///」

マコ「りゅ……りゅーーーこ、ちゃーーーーんっ!!」ギュウ

流子「うおっ、マコ、勢い良すぎだって、おっとっと」

流子「うあっ」ドテッ

流子「マコ、そんなに抱きしめなくても私は逃げないから」

マコ「うぅ~、流子ちゃん流子ちゃん……」スリスリ

流子「甘えん坊だなあ……」

マコ「うふふ」

流子「それじゃ!これからよろしく!マコ!」

マコ「うんっ!ずっとずっと一緒にいようね!約束だからね!」

流子「そうだな、ずっとずっと……な」

マコ「///」スリスリ

流子「……」ミアゲ

流子「それにしても……綺麗な空だなあ、この世界が本当の世界じゃないなんて未だに信じられない」

マコ「……ここは私の流子ちゃんの世界だから、ある意味本当の世界かも。少なくても偽物ではないと思うな」

流子「ま、どっちにしろ。ずっとここにとどまるわけにはいかないな。ほらマコ、立って」

マコ「うん……よいしょ、えへへ」

鮮血「……終わったな、マコ。流子」

流子「これでマコと一緒に本来の世界に帰れるのか?」

鮮血「ああ、見てみろ」


パアアァ…


マコ「お?……光?」

鮮血「出口だ。いよいよこの時が来たな」

マコ「未練をはらせたんだね!そうだよね!だって私こんなに幸せ!!」

流子「……」

鮮血「流子も、な」

流子「」ナデナデ

マコ「♪」ナデラレ

流子「マコ、なにかしわすれたことはないか?忘れ物とりにいくなら今のうちだぞ?」

マコ「今更そんなことないよ!大丈夫、……あ!」

マコ「そうだすっかり忘れてた!流子ちゃんのもとへ駆けつけるのが遅くなった理由なんだけどね!」

流子「?」

マコ「じゃーん見て!流子ちゃんに着てもらうためにお洋服買ってきたの!マコからのプレゼントだよ!」

流子「おお、これマコがわざわざ買ってきたのか?ありがとう、でも……
   こんないいワンピース、私にはちょっと似合わないかもな」

マコ「そんなことないよ似合う似合う!私が流子ちゃんのこと考えながら買ったから間違いなしだよ!!
   満艦飾マコお墨付きだよ!」

流子「うーん……服自体は素敵だけど」

鮮血「いいじゃないか流子。セーラー服からは卒業したんだろ?」

マコ「そう!一張羅の鮮血ちゃんにはかなわないかもだけど、二張羅目くらいにはしてほしいな!」

マコ「てことで!はい!」

流子「……そうだな」

流子「ありがとうマコ、これ、大切にするよ!」

マコ「あれだよ!デートの時に、着てきてねっ!」

流子「デートかあ……うっし、わかった!楽しみにしてろよ」

マコ「うふふ」



ヒョオォ…


蟇郡「……」

蛇崩「ちょっとガマァ!話が違うじゃないこれどういうこと!?」

蟇郡「どうもこうもない。満艦飾は、満艦飾の幸せを掴んだようだな」

蛇崩「なーに仏頂面で言ってんのよ!失恋のダメージに漬け込んで劣等生を振り向かせる作戦じゃなかったの!?
   なんで転校生と劣等生のヨリ戻しのお手伝いしちゃってんのよォ」

蟇郡「蛇崩乃音……俺がそんなやましい考えで動いていたと思っていたのか?
   俺はただ満艦飾の力になりたかっただけだ。そしてそれは叶った。なにも後悔することはない」

蛇崩「あんたのそういうことよそういうとこお!あともうひと押しだったかもしれないのに、
   もう本当に、あの二人はいい感じになっちゃってるじゃない……ねえちょっと聞いてるのガマ君」

蟇郡「この本能寺学園に恋愛禁止の規則はない。同性でも然りだ。
   生徒が運命の人を見つけたの言うのなら風紀部委員長として、その背中をただ静かに見送るのみ……」

蛇崩「あーもうあんたのそのチキンっぷり!ほとほと愛想が尽きるわァ!!」

流子「……じゃあ行こうか、マコ」

マコ「うん!私達、次のステージへ!レッツゴー!」

流子「手ェつなぐか?」

マコ「そうしよう!」

ギュ

流子「……」

マコ「……///」


パアァ…


――――――――――――――――――――


――――――――






流子「……マコ」

マコ「?」

流子「ちょっと、こういうの、慣れてなくて照れくさいけど……」

マコ「……?」

流子「……私も、な?マコのこと――」

マコ「!! わっ!私も!流子ちゃんのこと、流子ちゃんのことっ―――!」





――――――――



――――――――――――――――――――




――――……
 
 ………――――…………


  ―――――――――…………


マコ「ん……」


…―――――




マコ「んー……ん?……」

マコ「……?」

マコ「あれ、私の家……?お布団……」

マコ「引越し先……私の家……」

マコ「……」

マコ「……あ、そうか、戻ったんだ……元の時間に」

マコ「生命戦維倒してこっちに引っ越した元の時間に……」

マコ「……」

マコ「ていうか……あれ?」

マコ(なに……このあっけなさ。いきなり日常に放り出されて、まるでなにもなかったみたいに……)

マコ(それに……この感じ、目が覚めたようなこの感じ……)

マコ(もしかして……夢?)

マコ(全部私の、夢?)

マコ(……)

マコ「」キョロキョロ

マコ(流子ちゃん、どこ?りゅ、りゅうこちゃん……)

マコ(嘘だ……あんなに流子ちゃんと通じあえたのに、夢なんて)

マコ(……)

マコ(も、もしかして、ほんとに……)

好代「あらマコ、起きたの?」

マコ「!! か、母ちゃん!」

好代「もう心配してたのよ、いくら起こしても起きないんだから」

マコ「うえっ、そうだったの?ん……ごめんなさい、えっと」

好代「そういうことじゃなくて、今日流子ちゃんとデートだって前から何度も言ってたじゃない。
   流子ちゃん、きっと待ちくたびれてるわよ?」

マコ「!!! りゅっ、流子ちゃんと私が!?」

好代「? まあ起きたんなら早く支度して行ってあげて。もう、もう少しでなにか変な病気かと思って
   お父さんが手術するところだったのよ?」

マコ(りゅ、流子ちゃんに会える……!)

マコ「りゅ……りゅーーーこちゃーーーーんっ!!」

マコ「」ババババッ

好代「あらあらまあまあ。マコがこんなに早く支度するとこ初めて見たわ。
   マコったら流子ちゃんのことホントに好きなのね」

マコ「母ちゃん行ってきます!」ギューン

好代「はい、いってらっしゃい」

マコ(流子ちゃん、夢なんかじゃないよね!私、信じてる!)

マコ(だって私の思いは本物、だったらあの世界だって本物だもん!)

マコ(もし……本当に夢じゃなっから、流子ちゃんは……)

マコ(流子ちゃんは……!!)

流子「お?」

マコ「!!流子ちゃん!」

流子「マコ!なんだよかった。遅いからまた寝坊してるのかと思って家まで迎えにいくところだったぜ?」

マコ「りゅ……流子ちゃん……」

流子「?」

マコ「りゅーーーーこ、ちゃーーーーーーんっっ!」ダキツキ

流子「うおっ、わっ、コケる!」

マコ「流子ちゃん流子ちゃん……ありがとう!その服、着てきてくれたんだね!やっぱり、夢じゃなかった!!」

流子「……ああ!約束通り!……ま、まあ、似合ってるかどうかはともかくとして……」

マコ「似合ってるよ似合ってるめちゃめちゃ可愛い天使だよ流子ちゃん!最高!いえーい!!」

流子「はは、ありがとう、マコからもらった大切な服だからな」

マコ「いいなあ幸せだよマコー、これから流子ちゃんとデートなんて夢みたい」

流子「ほら、夢じゃなかったんだろ?行こうぜ」

マコ「うん!やっぱり流子ちゃん、大好き!」

流子「……」

マコ「そんじゃレッツゴー!」

流子「あ、あのなマコ」

マコ「? なーに?」

流子「私もな、マコみたいに……言いたいんだ、その……ずっとちゃんと言えてなかった気がしたから」

マコ「?」

流子「ほらその……す……とか、だいす……とか……ごにょごにょ」

マコ「お?もーぉ流子ちゃん照れちゃってーぇ、もちろん言わなくても通じてるから大丈夫だよっ!」

流子「……そうか……そうだよな、うん、だからわざわざ言わなくても……」

マコ「でも!直接言ってくれるんなら是非聞きたいな是非!」ズイッ

流子「ちょっ、一旦逃げ道つくっといてそりゃないだろ!」

マコ「だって聞きたいもーん!聞きたいたいもーん!」

流子「もうだめだ!今の話なし!行くぞ!」

マコ「えー……流子ちゃん……んー、ぶー」

流子「……」

マコ「」ジー

流子「……す……」

マコ「」ワクワク

流子「だいす……」

マコ「」ワクワク

流子「大好きだっ!マコっ!///」ギュウ

マコ「わあっ!えへへ///」

流子「う……やっぱ照れる……///」

マコ「わー流子ちゃんこんなに赤くなっちゃってータコさんみたいだよー」

流子「うっせ、あーあ、でもなんかすっきりしたかも、はは」

マコ「うふふ」

流子「じゃ、今度こそ行くか!レッツゴーマコ」

マコ「うんっ!」

マコ「もちろん私も!流子ちゃんのこと、大好きだよっ!!」






終わりです また見かけたらよろしくお願いします ありがとうございました

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