武部沙織「ゆかりんの誕生日プレゼントは喋る戦車でどう?」 (88)

大洗女子学園 教室

沙織「重大発表があります」

みほ「え? 急にどうしたの?」

華「お見合いでもするのですか?」

沙織「夏休みも終わって、無事に大洗に戻ってこれて、なんだかんだありつつも、先日みんなで麻子の誕生日を祝ったわけだけど」

みほ「うん。少しだけ遅れちゃったけど」

華「丁度、冷泉さんの生誕祝いの日はわたくしたちも色々ありましたから」

沙織「で、祝われた麻子がこういったのよ」

麻子『そういえば、秋山さんのこと誰か、祝ったのか?』

沙織「って」

みほ「あ……」

華「優花里さんの誕生日は……。すみません、聞いたことがありませんでした……」

みほ「6月6日」

華「流石、みほさん」

みほ「戦車道の全国大会中だった所為もあって、優花里さんの誕生日は何もできてない……」

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沙織「そこで、もう四ヶ月ぐらい遅れちゃってるけど、みんなでゆかりんの誕生日パーティーをしようと思います」

華「喜んで。いえ、むしろ参加させてほしいぐらいです」

みほ「私も」

沙織「うんうん。そういうと思ってたよ。やっぱり、持つべきものは友達だよね。彼氏も持ちたいけど」

華「では、今日にでも開催しましょうか?」

みほ「あ、それならエルヴィンさんたちも誘わない? 優花里さん、エルヴィンさんやカエサルさんとも仲がいいし」

華「でしたら、一年生のみなさんも誘ってみてはいかがでしょう。きっと楽しくなると思います」

みほ「いいね。そうしよっか」

華「いっそのこと、戦車道受講者の皆さんをお誘いするのも――」

沙織「全車停止!!」

みほ「は、はい!」

沙織「参加者を決めるのもいいけど、一番考えなきゃいけないものがあるでしょ?」

みほ「それって、プレゼント?」

沙織「そう! 誕生日会において、それは外せないじゃない?」

みほ「でも、優花里さんへのプレゼントなら戦車グッズしかないんじゃ……」

沙織「確かに。ゆかりんが喜ぶものっていえば、戦車系に限るんだけど、そんなの誰だって予想できるし、ゆかりんだってなんとなくわかっちゃうはずだよ」

華「けれど、本人が最も喜ぶモノにしないと……」

みほ「期待を悪い意味で裏切るのもどうかな……」

沙織「私も戦車好きのゆかりんにボコのぬいぐるみとか、エンゲージリングとか、花束とか、そういうのをあげてもビミョーな顔をするのはわかってる」

みほ「ボコは良いと思うけどな」

華「花束も悪くないと思いますよ。エンゲージリングは最も困るでしょうけど」

沙織「だからっ!! ゆかりんにプレゼントするのは戦車系で決まり!!」

みほ「う、うん」

華「それでは放課後、せんしゃ倶楽部に行きましょう」

みほ「そうだね」

沙織「だからって、戦車の模型とか、履帯とかをプレゼントするのはサプライズ感に欠けちゃうと思わない?」

みほ「えっと、それじゃあ、どうすれば……」

沙織「ゆかりんの誕生日プレゼントは喋る戦車でどう?」

みほ「喋る戦車!?」

華「語尾にせんしゃーってつけるのでしょうか?」

沙織「それならゆかりんもびっくりするし、すっごい喜ぶと思うんだー」

みほ「えっと、玩具にそういうのあるのかな?」

沙織「ちがうわよぉ。玩具じゃなくて本物の戦車を喋らせるの」

みほ「そ、そんなのことできるの!?」

沙織「できるかどうかは今からやってみればいいじゃん」

みほ「そ、そうかもしれないけど……」

華「戦車は一輌でいくらぐらいするのでしょうか?」

みほ「戦車にもよるけど流石に個人で買うには高価だよね」

沙織「だったら、あそこの戦車を使えばよくない?」

みほ「あそこって、大洗の!?」

沙織「本当にプレゼントできるってわけじゃないけど、ゆかりんはきっと喜んでくれるよ」

みほ「それは喜ぶだろうけど」

華「どのようにしゃべらせるつもりなのですか?」

沙織「ふっふっふっふ。それじゃ、今から倉庫にいってみよっか」

みほ「え?」

戦車倉庫

沙織「まこー、準備はいいー?」

麻子「本当にやるのか?」

沙織「まぁまぁ、いいじゃない」

みほ「何をするんだろう……」

華「さぁ……」

沙織「あーあー。んんっ」

Ⅳ号戦車『こんにちはっ! 私、Ⅳ号戦車H型! よろしくね、優花里さん!」

みほ「……」

沙織「どう? これで、ゆかりんもいつかみたいに最高だぜーって言ってくれるでしょ!」

麻子「どう思う?」

華「残念でなりませんわ」

麻子「準備した私がいうのもなんだが、五十鈴さんと同じ気持ちだ」

沙織「なにがよぉ」

麻子「戦車にスピーカーをつけて沙織が喋るだけで、秋山さんが喜ぶと思うのか」

沙織「ダメなの?」

麻子「相手は秋山さんだ。こんなことをすれば気を遣わせてしまうだけだと思うが」

沙織「そうかなぁ」

みほ「普通でいいんじゃないかな?」

沙織「でもでもぉ。モテる女はサプライズも上手だって本に書いてあるもん」

華「それが本音なのですね」

沙織「ゆかりんを祝ってあげたいって気持ちもホントだもん!!」

麻子「とにかく沙織としてはどうしても驚かせたいわけだな」

沙織「うんっ」

麻子「では、知恵を借りるか」

沙織「麻子以上に知恵を持ってる人っているの?」

麻子「私の感性ではどうにも人を喜ばせる方法を思いつけない。だから知恵を借りる」

みほ「誰に借りるの?」

華「会長?」

麻子「戦車のことなら自動車部だ」

ナカジマ「喋る戦車か……。発想は面白いですね。それに秋山さんも喜ぶと思いますよ」

沙織「ほらぁ!! 私の言った通りじゃない!!」

ナカジマ「勿論、ちゃんと形にできればの話ですけどね」

みほ「一応、スピーカーを取り付けてはみたんですけど」

ホシノ「けど、これだとスピーカーから声がしているのはモロバレだ」

ツチヤ「あの秋山さんがこれに気づかないわけもないしな」

沙織「そんなぁ……」

華「やはり喋る戦車は難しいんですね」

スズキ「でも、スピーカーを見えないように設置することはできると思うよ」

華「本当ですか?」

スズキ「戦車の中を少し弄ればね」

沙織「是非、やってもらえませんか!?」

ナカジマ「けど、そういう改造をしちゃうとⅣ号戦車が試合にでれなくなっちゃう可能性もあるよな?」

ホシノ「通信傍受機を積むのはいいとしても、スピーカーを埋め込むとなればレギュレーション違反かも」

沙織「うぅ……そっかぁ……」

杏「喋る戦車、いいねぇ」

みほ「あ、会長。どうしたんです?」

杏「やぁやぁ、なんか倉庫に残ってる生徒がいるって聞いたから様子を見に来たんだ。そしたら、なんだか楽しそうな話が聞こえてね」

ナカジマ「見回り、ご苦労様です」

杏「これも仕事だからなぁ」

みほ(園さんや河嶋さんがやってるものだと思ってたけど……)

沙織「会長もこういう仕事してるんですね」

みほ「ちょっと」

杏「まぁね。んで、喋る戦車、作るのー?」

ナカジマ「いやぁ、できるとは思うんですけど、試合に出ることができなくなるんで」

杏「一日だけっていう条件ならどう? 今のところ練習試合の申し込みもないし」

みほ「いいんですか?」

杏「いいんじゃない?」

沙織「そんなテキトーな。でも、会長がいいっていうなら、いいよね!」

杏「責任はわたしがもつよー。だから、やっちゃえば?」

沙織「ありがとうございます!!」

杏「私も喋る戦車が気になるしね」

ナカジマ「とりあえず喋る戦車は作る方向でいきますけど、どう喋らせますか?」

沙織「どうって、一つしかないんじゃないですか?」

ナカジマ「一言に喋ると言っても色々あると思いますよ。戦車が生きているかのように外や乗組員に向けて喋るというのは一つの表現ですからね」

麻子「他にどのようなものがある」

ナカジマ「例えば、戦車の妖精がいて、喋りかけてくるとか」

ホシノ「どういう意味?」

ナカジマ「言うなれば特定の人にしか声が聞こえないっていうほうが、驚きは増すし、信じてしまう人もいるかもしれない」

華「そのようなことができるのですか?」

ナカジマ「LRADっていうがあるんですけど、それって特定の範囲に音声を届けることができるんです。所謂、指向性音響装置ですね」

ツチヤ「パラメトリック・スピーカーってやつだ」

ナカジマ「そうそう。それを使えば秋山さんだけに聞こえる戦車の声っていうのも再現できるわけです」

みほ「あ、あぁ……」

麻子「秋山さんにだけ、か。それなら秋山さんでもスピーカーからの声とは思わないかもしれないな」

みほ「でも、それも結構高価だったはずじゃあ」

ナカジマ「確かに安くはないですけど、使ってみたかったんですよねぇ」

みほ「何に使うんですか? 自動車とは関係なさそうですけど」

ホシノ「ダカール・ラリーをしていて遭難したときに使える」

ツチヤ「あとはF1レースのときに誰にも気づかれずに指示を出せるんじゃない?」

スズキ「普通に違反だね」

杏「それはそうと、そのスピーカーは手元にあるのぉ?」

ナカジマ「それがないんですよね」

沙織「だったら、できないじゃん……」

麻子「ふりだしに戻ったな」

ナカジマ「でも、サンダース大付属が所持してるっていうのは知ってますよ。だから、私たちもそのスピーカーのことを知っていましたし」

華「なるほど」

みほ「ええと、だったら……」

杏「よーし、かりちゃおー!!」

みほ「そうなりますよね、会長だったら……」

サンダース大学付属高校

アリサ「車輌の整備を終わらせた班から上がってよし」

「「イエース」」

アリサ「しっかりやりなさいよ」

ケイ「アーリサっ」

アリサ「なんですか、隊長?」

ケイ「さっき大洗からコールがあってね。あるイベントのために貸してほしいものがあるみたいなのよ」

アリサ「何を借りたいと言っているのですか」

ケイ「ほら、前にアリサが趣味で買ったスピーカーあるじゃない? それをどうしても借りたいんだって」

アリサ「あれを……。ダメです。あれはかなり高くて、お小遣いを貯めてようやく買えたのですから」

ケイ「えー? どうしてもダメなわけ?」

アリサ「貸して、もし壊れたらどうするんですか」

ケイ「そのときは私が新しいの買ってあげるわ」

アリサ「な、何を言っているんですか!! あれは高いんですよ!? それを隊長のポケットマネーでなんて……!!」

ケイ「どんなに高くても壊れたら私が責任を持つわ。だから大洗に貸してあげてよ」

アリサ「いや、しかし……。そもそも何故、そこまで隊長がするのですか」

ケイ「オッドボール三等軍曹の誕生日会で使いたいってアンジーがいうのよ。そんなの断れないじゃない?」

ケイ「フレンドのバースデーをセリブレイトよ。全面協力してあげるべきだわ」

アリサ「むしろ、大洗には貸しがあるぐらいなのですが」

ケイ「そんなこと言わない! アリサだって大洗の子たちのこと、嫌いじゃないでしょ」

アリサ「……」

ケイ「お願い!」

アリサ「わ、分かりました。ただし、壊れた場合は……」

ケイ「オッケイ、オッケイ。ちゃんと弁償するわ」

アリサ「はぁ……」

ケイ「そこまで心配なら、良いアイディアがあるわよ」

アリサ「はい?」

ケイ「アリサの心配をイレイズできる上にイベントをより盛り上げることもできるわ」

アリサ「どうするつもりなんですか」

ケイ「決まってるじゃない!! 私たちも大洗にいくのよ!! ハリアーップ!!」

大洗女子学園

杏「今からケイが来るってさ」

みほ「わざわざ来てくれるんですか? しかも今からって……」

杏「それもスピーカーの設置にアリサちゃんまで協力してくれることになったから」

みほ「アリサさんまで……」

華「アリサさんは通信機器に詳しいですから、頼もしいですね」

沙織「私も詳しいもん」

麻子「そういえばアリサさんもアマチュア無線が日課だと言っていたな」

ナカジマ「それはよかったです。正直、私たちの得意分野ってわけじゃなかったですからね」

杏「んじゃ、秋山ちゃんの誕生日会は明日だね」

みほ「明日ですか!?」

沙織「急過ぎないですか!?」

杏「あんまり時間をかけると秋山ちゃんに感づかれるかもしれないしな。料理とかはこっちで用意すっから、安心して」

華「配膳はわたくしもお手伝いさせてください」

麻子「会長もケイさんもフットワークが軽いな」

秋山宅

優花里「ここでアヒルさんチームが右折をして……」

優花里「西住殿はきっとウサギさんチームを動かすはず……すると……」

優花里「西住殿! 敵車輌を発見しました!!」

優花里「優花里さん、偵察に出てくれますか?」

優花里「了解です!!」

ゴゴゴゴゴ……

優花里「ん? なんでしょうか……? 外が騒がしいような」

ゴォォォ!!!

優花里「あれは……!! サンダースのC-5Mスーパージャラクシー!!」

優花里「どうしてまた大洗に来たのでしょうか……?」

優花里「それにあの方向は、学園……」

優花里「何か、事件があったのかもしれませんね」

優花里「おかーさーん!! ちょっと出かけてくるー!!」テテテッ

好子「こんな時間にどこ行くの?」

大洗女子学園

ゴォォォォ!!!!

みほ「わぁ……」

杏「ありゃ、あれできちゃったかぁ」

華「とてもアグレッシブです」

沙織「ゆかりんにバレないかなぁ……」

麻子「祈るしかないな」

ケイ「ヤッホー!! 文字通り、飛んできたわよー!!」

アリサ「持ってきたわよ」

ナカジマ「このスピーカーを輸送するにはちょっと大きい乗り物ですね」

ケイ「そう? 確かにスピーカーは小さいけど、私たちのハートは戦車よりも大きいし、重いわよ!!」

アリサ「私は止めたわよ」

みほ「あはは……」

ケイ「それじゃ、早速始めましょ!」

杏「そうだな。早めに終わらせないとな」

倉庫

アリサ「ふぅん。装填手だけに聞こえるよう、スピーカーを設置すればいいのね」

ナカジマ「うん。協力できることがあればいってね」

ホシノ「私たちもできることはあるはずだから」

アリサ「そうね。まずは工具を……」

杏「いやぁ、悪いねぇ。無理言っちゃって」

ケイ「ノンノン。こういうことならいくらでも手を貸すわ。いつでも言ってね!」

みほ「……」

杏「どうかした、西住ちゃん?」

みほ「あ、いえ……。優花里さんが気が付いてないか、心配で」

ケイ「今やってることはシークレットで、今日決まったことなんでしょ? なんで気が付くの?」

沙織「それはケイさんが飛行機で来ちゃったから……」

ケイ「ダメだった?」

みほ「えっと、どうしても輸送機のエンジン音が学園艦上空で響くので……」

ケイ「ウップス」

アリサ「ここを剥がして埋め込めば、どうにかなるわね」

ナカジマ「へぇ、そこに」

スズキ「その発想はなかったなぁ」

ケイ「アーリーサー!!」

アリサ「なんですか?」

ケイ「オッドボール三等軍曹に私たちがここに来ちゃったことバレてるかもしれないわー!!」

アリサ「だから言ったんです。ギャラクシーでいくのはやめましょうって」

ケイ「でも、ギャラクシーで来たほうがかっこよくなーい!?」

アリサ「そういう問題ではありません」

ケイ「あとどれぐらいかかりそー!?」

アリサ「30分は欲しいです」

ケイ「20分でおねがーい!」

アリサ「イエス、マム」

ナカジマ「了解しちゃうんだ」

アリサ「15分でもできるけど、トラブルを見越して時間は多めに申告するものよ」

ケイ「作業中にオッドボール軍曹が来ちゃうとベリーバッドだから、私が見張りをするわね」

みほ「あ、それなら私も一緒に行きます。ケイさんだけだと怪しまれるでしょうから」

沙織「既にすっごく怪しんでると思うな……ゆかりん……」

ケイ「んー、まぁ、私が立ってるだけでもアレだもんねー」

杏「何してるか聞かれたら、どうする?」

ケイ「みほを鍛えていたっていう誤魔化し方は?」

華「では、戦車に乗っていたほうがいいのでは?」

麻子「Ⅳ号は動かせない」

沙織「みぽりんがケイさんに女らしさとかモテる秘訣を学んでたっていうのはどうかな!? 信憑性あると思わない!?」

麻子「思わない」

ケイ「みほは十分プリティだし、別に私から学ぶこともないんじゃない?」

みほ「ええと、そういう話じゃなくて……」

杏「西住ちゃんは何か良い案ない?」

みほ「わ、私ですか……。沙織さんが言ったように信憑性を持たせるのは大事なことです。今回の喋る戦車に関連させる理由が良いかもしれません」

沙織「どう言い訳するつもりなの?」

大洗女子学園

優花里「やはりスーパーギャラクシーが着陸しています……。一体、何が……」

ケイ「オーライ、オーライ」

ルノー『……』ゴゴゴゴッ

優花里「ケイ殿とルノー……?」

ケイ「そのまま真っ直ぐインしちゃってー」

優花里「ルノーをどこかに輸送するのでしょうか?」

ケイ「ジャンジャンもってきてー」

八九式『……』ゴゴゴゴゴッ

三突『……』ゴゴゴゴッ

M3『……』ゴゴゴゴゴッ

優花里「な……!? 大洗の車輌全てを……!?

ケイ「いいわよー、そのままそのままー、オーライ」

優花里「ケイ殿!! これはどういうことでしょうか!?」

ケイ「やっぱり来たわね」キリッ

優花里「私たちの戦車をどこに持っていくのでしょうか!?」

ケイ「オッドボール……あの……実は……」

優花里「は、はい?」

ケイ「大洗の戦車に異常が見つかったそうなの。それを調べるために然るべき施設に輸送しなきゃいけなくてね」

優花里「異常……? 異常とは一体……?」

ケイ「貴女から説明したほうがいいんじゃない」

杏「そうだな」

優花里「会長!! 戦車たちに重大な欠陥でも見つかったのでしょうか!? あ、いえ、そんなことありませんよね!? だって、戦車はいつも私たちが整備していますし、自動車部のみなさんだって……!!」

杏「よく聞いて、秋山ちゃん。戦車は一度、大洗を離れることになる」

優花里「何故ですか!?」

杏「異常が見つかったからだ。それも私たちや自動車部では到底直せない、重篤な異常だ」

優花里「その、異常とは……?」

杏「秋山ちゃんはきっと知っているはずだ。戦車道の戦車には、特殊コーティングされた際にあるものが宿る」

優花里「宿る?」

杏「魂だよ」

優花里「たましい……?」

ケイ「知らないの? 戦車道の戦車は、私たちのチームメイトでもあるのよ?」

杏「戦車はみんな生きていると言ってもいいんだ」

優花里「よくわかりません。お二人は何をいっているのですか?」

ケイ「声を聞いたことは?」

優花里「声? 誰の声ですか」

ケイ「勿論、戦車に決まってるじゃない」

優花里「な、なにを仰って……」

杏「私たちの戦車はかなり古いし、長年放置されていた。だから、戦車たちの魂は摩耗していたんだ」

杏「けど、戦車たちは激戦に次ぐ激戦を潜り抜けた。みんなは燃え尽きちゃったんだな」

優花里「もー、冗談はやめてくださいよぉ。確かに戦車は可愛いですが、流石に魂なんて聞いたこと……」

ケイ「……」

杏「……」

優花里「ほ、本当のことなのですか……」

杏「みんな、魂が消えちゃったんだ。だから、もう一度魂を入れてもらわなくちゃいけない。そうしないと、特殊コーティングもその性能を発揮できず、搭乗者は危険にさらされてしまう」

優花里「そのような話、信じられません!!」

ケイ「大洗は誰も戦車の声を聞いたことないみたいだし、信じられなくて当然かもね」

優花里「Ⅳ号は!? Ⅳ号も持っていかれてしまうのですか!?」

杏「多分ね」

優花里「……戦車たちはいつ戻ってきますか」

杏「明日にでも戻ってくる」

優花里「よ、よかったぁ。それなら――」

ケイ「けど、魂は違う。もう貴方達と戦った戦車はいなくなるわ」

優花里「魂なんて存在しません。ですから……」

ケイ「一緒に戦った仲間がいなくなるのよ? 次に来るのは形が一緒なだけの別人なのよ」

優花里「あはは。そんな……そんなこと……あるわけ……」

ケイ「後悔してもしらないから」

杏「秋山ちゃんなら、最後の言葉ぐらいは聞こえるかもしれないな。誰よりも戦車のことを愛していたんだからさ」

優花里「……」

杏「きっと、Ⅳ号も喜ぶと思うから、いってきてよ」

倉庫

ナカジマ「オッケーみたいだ」

ホシノ「よし、降りよう」

アリサ「はぁ……疲れた……」

優花里「……」

アリサ「あら、良いところに来たわね」

優花里「アリサ殿……ナカジマ殿……あの……」

アリサ「お別れしに来たんでしょ」

優花里「あの!! 本当なのですか!? 戦車に魂があって!! それで……それで……声が聞こえるなんて……」

アリサ「私は聞いたことないけど、戦車乗りの間では有名な話よ」

優花里「ケイ殿は聞いたことがあるような感じでしたが……」

アリサ「各校の隊長は皆、聞いたことがあるんじゃないかしら」

優花里「この子も必死に戦ってくれました。私たちと共に。私たちに言いたいことはあったのでしょうか」

アリサ「それは分からないわね。とりあえず、乗ってみたら? けど、Ⅳ号の魂も尽きかけてるみたいだし、時間はあまりないようだけど」

優花里「どこで尽きかけているというのがわかるのですか?」

アリサ「あ……えーと……」

ナカジマ「総走行距離とかですよ。あと製造年数」

優花里「ああ……なるほど……」

ホシノ「魂が変わると、すごく違和感を覚えるんだって」

ツチヤ「レオポンがレオポンじゃなくなるのか。なんか嫌だな」

スズキ「けど、みんな頑張ってくれたよ。命がけだったと思う」

ナカジマ「見つけたときはみんな錆だらけだったもんね」

ホシノ「三突なんて池の底にあったし」

ツチヤ「レオポンはバラバラだった」

スズキ「そこから無理矢理戦わせたんだ。そろそろ休ませてあげないと」

優花里「Ⅳ号……」

アリサ「今度から乗れば全然違う感覚になるわ。今の内に慣れ親しんだ車内を味わったらどう?」

優花里「他の皆さんも呼ばないと……。私だけがお別れなんて……」

ナカジマ「もう呼んでいます。そのうち、来ると思いますよ」

優花里「そうですか……では……一足お先に……」

Ⅳ号戦車内

優花里「Ⅳ号……。本当に……魂が宿っているのですか……」

優花里「やはり、声なんて聞こえるわけが――」

『優花里さん……』

優花里「え……?」

『優花里さん……』

優花里「声が……!? あ、あの!! 君は!?」

『よかった。私の声が届いた』

優花里「Ⅳ号!? 本当にⅣ号なのですか!?」

『はい。そうです』

優花里「おぉぉ……!! えっと!! その……あの……なにを話したらいいのか……」

『どうしても優花里さんに言いたかったことがあります』

優花里「な、なんでしょうか!!」

『お誕生日、おめでとう。遅れてしまったけど、どうしてもこれが言いたかったんです』

優花里「よ、Ⅳ号……」ウルウル

『優花里さんにはいつも感謝していました。誰よりも遅くまで私の体を気遣ってくれて、いつもきれいにしてくれていたから』

優花里「うぐっ……そんな……だって、いつもⅣ号には無茶なこと……を……させてしまって……うぅ……」

梓「秋山先輩!」

優花里「澤殿……!?」

梓「倉庫に来るようにって言われたんですけど、誰もいなく……て……」

あゆみ「先輩、どうかしたんですか?」

優季「泣いてるんですかぁ?」

優花里「ご、ごめんね。今、Ⅳ号の声が聞こえて」

桂利奈「声ですか?」

『ウサギさんチームのみなさんですね』

優花里「ほら、今、聞こえたでしょ?』

あや「なんか聞こえた?」

優季「ううん。きこえないけどぉ」

梓「紗希は?」

紗希「……」フルフル

『どうやら私の声は聞こえていないみたいですね』

優花里「そ、そんな!! 私にしか聞こえないなんて……!!」

梓「だ、大丈夫ですか?」

優花里「あ、うん!! 大丈夫!! おかしなこと言って、ごめんね!! ええと、M3は外のギャラクシーに積み込まれたみたいだから、そっちに行ってあげて」

あゆみ「どこかに行っちゃうんですか?」

優花里「そうみたいだね」

桂利奈「えー!?」

あや「どうしてー!?」

優花里「1日で戻ってはくるみたいだけど……」

優季「なぁんだ。それならよかったぁ」

優花里「よくない!!」

あや「ひっ!?」

優花里「あ、ゴメン……大声出して……。けど、戦車のところに行ってきてほしい。きっと、M3もみんなことを待ってると思うから」

梓「分かりました。みんな、いこっ」

紗希「……」コクッ

優花里「M3はまだ喋れそうでしたか?」

『きっと最後のお別れはできるはずです』

優花里「そうですか……」

『優花里さんは優しいですね』

優花里「そんなこと……。ねえ、Ⅳ号」

『なんでしょうか』

優花里「やっぱり、辛かった? 勝つためとはいえ、色々と無茶なことをさせてきちゃったし」

『私は長い時間、人に乗ってもらえず、魂まで錆びついてしまっていました』

優花里「え……」

『ずっとずっと、暗く、日の当たらない場所にいました。もう自分は必要ないんだろうなと思っていました』

『けど、角谷さんが私を見つけてくれました。みほさんが触れてくれました。そして沙織さんが、華さんが、麻子さんが、優花里さんが、綺麗にしてくれました』

『本当に、本当に嬉しかった。また外に出ることができる。走ることができる。戦車たちは皆、感謝していました』

『大洗のみなさんに最後の命を燃やそうって、決めました』

優花里「ぐっ……うぅ……」ウルウル

『辛いなどと思ったことはありません。皆さんと接する一分一秒が楽しかった。貴方達と最後に戦えたことは私たちの誇りです』

『最初の練習試合。優花里さんはかっこよかった。初めての砲手。きっと緊張していたはずです。それでも立派に役目を果たしてくれました』

優花里「いえ……私はただ……必死に……」

『その後は装填手として乗ってくれました。とても力強い装填に私も圧倒されてしまいました』

優花里「ありが、とう……」

『みんなの勇気、そして諦めない心。それは私にも伝わりました。この人たちだけは守りたいって、私も必死でした』

優花里「そうなんだ……」

『優花里さんこそ、私に対して何か不満はありませんでしたか? そこまで強い戦車とは言えませんから』

優花里「そんなことない!! Ⅳ号は!! Ⅳ号は最高の戦車で……私たちにとって……最高の仲間で……」

『優花里さん……』

優花里「西住殿だって……きっと……感謝……してる……はず……たけ、べどの……も……いすず……どの……も……れ、いぜ……どのだって……」

『嬉しいです』

優花里「うわぁぁぁん!! よんごぉぉ!! 本当にいなくなっちゃうの!? きえちゃうの!?」

『私は優花里さんの誕生日を祝いたかった。何もプレゼントはできないけど、言葉にしたかった。消えてしまう前に……』

優花里「よんごぉ……いかないでぇ……い、かないでぇ……ちゃんと、せいび、する……もっと、きれいに、せんしゃ、する……だから……だ、から……うぅぅ……」

『……』

グラウンド

優花里『うわぁぁぁぁん!!!』

柚子「……」

桃「柚子、やりすぎたんじゃないか」

柚子「ど、どうしようか、桃ちゃん……秋山さん、号泣してる……』

桃「私に振るな!! 会長!!」

杏「うーん……」

桃「会長……?」

杏「よし、謝ろう」

柚子「取り返しがつかないってことですね……」

沙織「どうするの!? みぽりん!? 私、こんなこと望んでなかったのに!!! ただ、ちょっとびっくりさせたかっただけなのに!!!」

麻子「みほさんの考えた設定が重すぎたな」

みほ「で、でも、魂が宿ってるってことは、一緒に戦った思い出とか語り合うのが……いいのかなぁって……」

華「ええ。それはわたくしもそう思います」

ケイ「結構な大事になってるわね」

アリサ「そもそもバースデーパーティーは明日だったはずなのに、先走るからこうなるのよ」

みほ「だ、だって、優花里さんがもう感づいて……学校に来ちゃったから……」

ケイ「そっか……。なるほどね」

杏「なに一人で納得してるの?」

ケイ「私がギャラクシーで飛んできちゃったのが原因ね!」

杏「そうだな」

ケイ「……どうしよう」

アリサ「隊長、落ち込んでいる場合ではありません!!」

ケイ「わたしのせいで……オッドボール……いえ、ユカリが泣いてる……」

みほ「ケイさんだけの所為じゃありませんから!!」

麻子「秋山さんにドッキリのプレートを見せる役は誰にするんだ?」

華「そのような血も涙もないことを誰が……」

ケイ「私が行くわ。責任、取らなきゃ」

みほ「ま、待ってください! まだ、まだ何かあると思います!!」

ケイ「私がユカリのハートをケアしてこなきゃいけないの!!」

>>37
麻子「秋山さんにドッキリのプレートを見せる役は誰にするんだ?」

麻子「秋山さんにドッキリのプラカードを見せる役は誰にするんだ?」

優花里『あの……Ⅳ号……』

桃「柚子、秋山が何かを言っている」

柚子「あ、ええと……。なんですか、優花里さん?」

優花里『最後に……最後に……Ⅳ号を動かしたい……。それぐらいの時間はある?』

柚子「ありますよ。大丈夫です」

優花里『ありがとう……』

麻子「秋山さんが動かすのか」

杏「しばらくは秋山ちゃんの好きにさせようか」

桃「それがいいかと」

ケイ「これを持ってユカリの前に行けばいいのね!!」

沙織「ホントにいいの!? ケイさんが恨まれちゃうかも……」

ケイ「恨まれたって構わないわ。それでユカリの心が癒えるならね」

アリサ「隊長……」

優花里『Ⅳ号……。このまま逃げようか』

みほ「え!?」

柚子「に、逃げるって?」

優花里『やっぱり、私は君を失いたくない。だから……!!!』

柚子「ちょっと待ってくださ――」

優花里『イヤッホォォ!!! サイコーだぜぇぇ!!!!』

桃「おい!! 秋山を止めろ!!」

柚子「秋山さ……優花里さーん、こんなことやめましょー」

優花里『心配しないで!! 冷泉殿に操縦方法を習ってるから!! ここから逃げ出すことぐらいはできるはず!!』

みほ「優花里さん、本気だ……」

杏「西住ちゃん、ヘッツァーと三突を動かす?」

みほ「はい。その二輌と……」

あや「せんぱーい、きいてくださーい」テテテッ

みほ「ウサギさんチーム、M3に搭乗してください!!」

梓「え? 何かあったんですか?」

Ⅳ号戦車『……』ゴゴゴゴゴゴッ!!!!!

あゆみ「わっ。Ⅳ号がどっかに行っちゃう」

アリサ「ああ、もう!! 乗り込むわよ!!」

みほ「手伝ってくれるんですか?」

アリサ「ここで静観できるほど、出来た女じゃないのよ」

みほ「分かりました。アリサさんは三突に搭乗してください」

アリサ「イエス、マム」

みほ「華さん、麻子さん、沙織さん、同じく三突へ」

華「はい」

麻子「わかった」

沙織「ゆかりん、大丈夫だよね……」

みほ「大丈夫。私がなんとかするから」

沙織「みぽりん……」

ケイ「ユカリー!!! これをみなさーい!!! ドッキリよー!! ジョークなのー!!! ソーリー!!!」ブンブンッ

Ⅳ号戦車『……』ゴゴゴゴゴゴッ!!!!

杏「ケイ、危ないからあとにしよっか」

みほ「ヘッツァーは私と会長、それからケイさんで行きましょう!!」

桃「我々はどうしたらいい?」

みほ「お二人はこのまま優花里さんが落ち着くまで喋りかけてください」

柚子「分かったわ」

梓「西住先輩、用意できましたー」

アリサ「こっちもいいわよ」

みほ「Ⅳ号を止めます。パンツァー・フォー!!」

三突『……』ゴゴゴゴッ!!!!

M3『……』ゴゴゴゴッ!!!!

ヘッツァー『……』ゴゴゴゴッ!!!!

柚子「ゆかりさーん。とまってくださーい。他の戦車もかなしんでますからー」

優花里『でも、どうしても、君だけは守りたいんだ!!』

柚子「秋山さん……そこまでⅣ号のことを……」

桃「街へ出てしまう前に何とかしなければ、本当に大事になってしまうぞ」

柚子「そ、そうだね」

桃「柚子、呼びかけ続けろ。私たちでもできることをするんだ」

柚子「ゆかりさーん、お願いだからとまってくださーい」

優花里『絶対にⅣ号のことは守るよ!!』

柚子「とりあえず深呼吸しましょう」

優花里『ヘッツァー……!! Ⅳ号を止めにきたのですね!! 君だって、満身創痍のはずなのに……!!』

桃「ええい、代われ、柚子!!」

柚子「あ、桃ちゃん」

桃「秋山!!! すべてはお前を驚かせるためのイベントだったんだ!! きちんと謝罪する!! だから止まってくれ!!」

優花里『M3と三突まで……!! でも、Ⅳ号だけは守ります!!!』

桃「秋山!! 聞こえないのか!!」

柚子「あ……。も、桃ちゃん」

桃「なんだ?」

柚子「指向性音響装置だから……多分、もう聞こえてないんじゃないかな……」

桃「どういうことだ?」

柚子「装填手にしか聞こえないようにしたんじゃなかったっけ? で、今、秋山さんは操縦してるから……」

桃「……西住、すまない。私たちでは何もできないようだ」

ヘッツァー 車内

杏「ケイ、ちゃんと運転お願いね」

ケイ「オッケーイ……」

杏「まだ気にしてるの?」

ケイ「ユカリにはホント、酷いことをしちゃったわ」

みほ「あとでみんなで謝りましょう。こうなることは少し考えればわかったはずなのに」

杏「ま、どういう反応をするのか気になったしね」

ケイ「ユカリ、今助けるからね」

Ⅳ号戦車『……』ゴゴゴゴゴッ

みほ「三突、M3、それぞれⅣ号の側面を狙ってください!」

梓『了解です!』

アリサ『タイミングはそっちに合わせるわよ』

みほ「わかりました。会長、お願いします」

杏「装填は?」

みほ「完了しています」

グラウンド

M3『……』ゴゴゴッ

優花里『囲まれた……!! けど……!!』

三突『……』ゴゴゴッ

優花里『Ⅳ号だけは!! 守ってみせます!!!』

Ⅳ号戦車『……』ガガガガガッ

杏『強引に方向転換したよ!』

みほ『三突!!』

アリサ『うてー!!』

華『はいっ』カチッ

三突『……』ドォォォォン!!!!

優花里『当たりはしません!!』

華『申し訳ありません。Ⅳ号とはやはり違うので……』

あゆみ『あや、せーのでやるよ! せーのっ』

あや『発射!!!』ドォォォォン!!!

Ⅳ号戦車内

ドォォォン!!!

優花里「くっ……。どうして、みんなだって本当は消えたくないはずなのに……!!」

優花里「みんなだって!! もっともっと一緒に居たいはずなのに!!」

優花里「私はただ、みんなと一緒にいたいだけなのに!!」

ヘッツァー『……』ゴゴゴッ

優花里「また正面ですか!? なら、ヘッツァーの脇を駆け抜ければ……!」

三突『……』ゴゴゴッ

優花里「ヘッツァーの後方に……!?」

ドォォォォン!!!

優花里「うわっ!?」

優花里「う……うぅ……」

優花里「守れなかった……Ⅳ号を……大事な……私の大事な……友達を……」

コンコン

『優花里さん、出てきてくれますか?』

グラウンド

優花里「西住殿……」

みほ「優花里さん……あのね……」

ケイ「ユカリ、みて!! これ!! これよ!! ルック!! ルック!!」ブンブンッ

優花里「そのプラカードは……ドッキリ……大成功……?」

ケイ「い、イエース!!」

沙織「ど、ドッキリでしたー! はい、だいせいこー!!」

優花里「……」

アリサ「指向性音響装置で貴女だけに聞こえる音をだしていたのよ」

左衛門佐「やはりサンダースの輸送機が着陸しているでござるよ」

カエサル「すごい音がしたが西住隊長が言ってたグデーリアン生誕祭の準備か? サンダースまで呼んでいるとは意外だ」

おりょう「戦車で祝うぜよ?」

エルヴィン「戦車好きのグデーリアンは喜ぶだろうな」

優花里「……」

エルヴィン「ん? どうした、グデーリアン? それに西住隊長たちまで……」

みほ「あの、ね……」

優花里「……」

みほ「ごめんなさい」

沙織「ゆかりんの誕生日会をしようと思って!! でね、ちょっとサプライズ的な感じでおめでとーってしようと思ったんだけど!! なんだが、予定が色々とくるって……!!」

沙織「とにかく、ごめんなさい!!」

華「申し訳ありません。優花里さんのお気持ちを考えれば、こんな風に祝うのは間違っていますよね」

麻子「すまない」

優花里「……」

ナカジマ「秋山さん。すみませんでした。私たちにも責任があります」

ケイ「待って。全ての原因はギャラクシーでここまで来ちゃった私の軽率な行動にあるわ。責めるなら私にしてくれない?」

みほ「そんな、ケイさん」

ケイ「みほたちは心からユカリを楽しませようとしただけ。バーズデーを祝いたかっただけなの」

優花里「……」

みどり子「ちょっと、何の騒ぎ? ご近所から色々と……いわれ……て……」

ねこにゃー「な、なにがあったの……?」

優花里「では、戦車の魂が消えてしまうというお話は……」

柚子「嘘なの」

優花里「戦車たちがどこかの施設に移動してしまう話は……」

桃「冗談だ」

優花里「では、あの声は……」

杏「小山が演じてた」

優花里「そうですか……」

ケイ「ユカリ? あの……」

優花里「……」

アリサ「ちょっと、な、何か言いなさいよ」

優花里「……」ウルウル

みほ「優花里さん!?」

優花里「うわぁぁん……」ポロポロ

沙織「ゆかりーん!! ごめんってばー!!」

ケイ「ハンバーガーよ!! こんなときはハンバーガーを食べればスマイルを取り戻せるわー!! バーガーショップにゴーアヘーッド!!」オロオロ

優花里「えぐっ……うぐっ……」

みほ「ごめんなさい。まさか、優花里さんがここまで信じてしまうなんてその、予想外で……」

華「優花里さんにとって戦車とはある意味、わたくしたち以上に大切な存在ですものね」

麻子「悪趣味ないたずらになってしまったな」

沙織「ごめんてばぁ……」

優花里「よかったです……」

みほ「え?」

優花里「よかった……です……消えてしまう……戦車はいないんですね……これ、からも……みんなはずっと……わたしたちと……いっ、しょに……せんしゃ……どう……できる、んですね……」

みほ「うん、できるよ」

優花里「よかった……ほんとうに……きえるって……きいて……すごくこわくて……」

アリサ「こんなに戦車のこと好きな子っているんですね」

ケイ「嬉しくなっちゃうわね。後輩にユカリみたいな子がいるのは」

あや「話しかけにくいね」

あゆみ「うん」

優季「秋山先輩、また泣いてるぅ」

優花里「そうですか。私のために……」

みほ「うん……」

優花里「ありがとうございます。そんな手の込んだことまでしていただいたというのに、こんな結果にしてしまって……」

みほ「ううん!! こっちこそ!! ごめんなさい!!」

沙織「ゆかりん……あの……」

優花里「なんですか、武部殿?」

沙織「これ……本当のプレゼントなんだけどぉ……」

優花里「私にですか!?」

沙織「うんうん」

優花里「わぁ……!! これは!! リトル・ウィリーの模型じゃないですか!! どこでこれを!?」

沙織「ネットで見つけて……」

優花里「ありがとうございます!! こんなレア戦車の模型を頂けるなんて感激です!! 大切にしますね!!」

沙織「組み立てたら見せてよね」

優花里「いえ!! これは永久保存用にします!! また自分で手に入れたときに組み立てようと思います!!」

沙織「そ、そうなんだ。……今日は、ごめんね。ゆかりん」

杏「とりあえず、今日のところは解散にしよっか。秋山ちゃんの誕生日会は明日するから」

優花里「え? でも、これだけのことがあったので……」

桃「本番は明日だったんだ。それを……」

ケイ「ごめんなさい」

アリサ「申し訳ありませんでした」

杏「まぁまぁ、企画しちゃったのは私たちだしね」

ケイ「この埋め合わせは必ずするわ。帰るわよ、アリサ」

アリサ「え? も、もうですか」

ケイ「グズグズしてられないもの!! それじゃあね!!」

みほ「あ、はい」

優花里「はい。また会える日を楽しみにしています」

ケイ「バーイ!」

ゴォォォォォォ!!!!

華「嵐のようでしたね……」

麻子「何をするつもりなんだ」

おりょう「今日のこれは準備と言うわけではなかったぜよ」

みどり子「だったらなんのためにサンダースは輸送機できたわけ」

柚子「色々あって」

杏「みんなー!! 明日は秋山ちゃんの誕生日会だからねー」

「「はーい」」

優花里「い、いいのですか? 今日のでも十分なのですが……」

華「いえ、そんなことはありませんよ」

沙織「盛大にやろうよ!! 遅れちゃってる分、取り戻さないとね!!」

麻子「アイス多めにしよう」

沙織「それは麻子が食べたいだけでしょ」

みほ「優花里さん。やっぱり、普通でよかったんだよね。きっと」

優花里「……私、実はいうと友達に誕生日を祝ってもらったことがなくて」

みほ「へ?」

優花里「これが普通なのかなって、思ってしまっていましたけど、やっぱり普通ではなかったんですね」

沙織「よ、よし!! なら、明日は普通にパーティーしよう!! うん!! ゆかりんのために!!」

翌朝 通学路

優花里(今日は私の誕生日会をするとのことですが……。一体、どうなるのでしょうか……)

優花里(普通ということは、お母さんとお父さんにいつもやってもらっていた感じで……ケーキに立てた蝋燭を吹き消して……)

ゴォォォォォ!!!!

優花里「あれはギャラクシー!?」

ゴォォォォォ!!!

優花里「次はヘイスティングス!? 大洗に輸送機が二機も……!?」

ゴォォォォ!!!

優花里「An-8まで!? な、なにが起ころうとしているのですか!?」

ゴォォォォォ!!!

優花里「次はギガント……!? これは……大洗で大事件ですか……!?」

優花里「早く学園のほうへ行かないと!!!」

ゴゴゴゴッ

優花里「カルロベローチェ!? 何故、大洗に!?」

アンチョビ「今、登校か? では、乗っていけ。特別に学園まで乗せて行ってやろう」

ペパロニ「お客さん、どこまで?」

優花里「えっと、大洗女子学園の校門まで」

ペパロニ「あいよぉ!」

アンチョビ「お前の誕生日らしいな」

優花里「三か月ほど経過はしていますが」

アンチョビ「関係ない。いや、関係ないことはない。だが、お前が生まれた日を誰も祝えなかったのなら、今日祝っても問題はない」

優花里「は、はぁ」

アンチョビ「期待していろ。秋山優花里生誕祭にぴったりな料理を用意させてもらった」

カルパッチョ「そういえば先ほど、大きな輸送機が飛んでいましたね」

アンチョビ「黒森峰、聖グロリアーナ、プラウダ、そしてサンダースだな。お金のあるところは空路を使えるからなぁ」

ペパロニ「うちらも輸送機買いましょうよ。コンビニ船にお邪魔するのもなんかかっこ悪いっす」

アンチョビ「勘違いするな。お金さえあれば買えるんだ。決して買う気がないわけじゃないぞ」

カルパッチョ「学園が見えてきました」

優花里「なんだか、人であふれかえっているような……」

アンチョビ「当然だ。秋山優花里生誕祭には大洗を含む7校が参加しているのだからな」

絹代「全員、敬礼!!」

福田「秋山殿!! お誕生日、おめでとうございます!!」

「「おめでとうございます!!!」」

優花里「えぇぇ!?」

絹代「我々、知波単学園も秋山殿の生誕を祝うため、馳せ参じた次第です!!!」

優花里「あ、あの……」

エリカ「隊長、来ました」

まほ「ようやく来たか」

優花里「ま、まほさんまで!?」

まほ「まずは誕生日おめでとう」

優花里「あ、ああ、ありがとうございますぅ」

まほ「このまま進んでくれ」

ペパロニ「主役が通るぞー、道をあけろー」

優花里「な、なんですか……こ、これが普通なのですか……」

アンチョビ「これぐらいは普通だ。堂々としているがいい」

カチューシャ「随分と遅いのね。主役は遅れてくるものなんでしょうけど、このカチューシャを待たせるなんていい度胸だわ」

優花里「す、すみません……」

ノンナ「おめでとうございます」

クラーラ「Поздравляю тебя с днём рождения」

オレンジペコ「秋山様、お誕生日おめでとうございます」

アッサム「祝福いたします」

ローズヒップ「おめでとうございますですわー」

優花里「おぉぉ……」

ダージリン「ふふ。緊張されているようね」

優花里「あの、ダージリン殿……この騒ぎは……」

ダージリン「あら? 今日は優花里さんのバースデーパーティーをするから各校は全面協力するようにと通達があったのよ? 聞いていなかったかしら」

優花里「それは西住殿が……?」

ダージリン「いいえ、サンダース大付属、ケイさんからよ」

優花里「ケイ殿……」

ダージリン「まぁ、そのあと杏さんとみほさんからも連絡はあったけれど」

校内

桂利奈「なんだかすごいことになってるよ」

梓「うわぁ……なにこれ……お祭りみたい……」

優季「みたいじゃなくてお祭りだよぉ」

あゆみ「すごいねぇ」

あや「秋山先輩、うらやましい」

沙織「これは……」

華「盛大ですね」

麻子「壮大だな」

みほ「全然、普通じゃないよぉ……」

杏「各校の隊長だけでよかったのに、ケイが学校丸ごと誘ったみたいだねぇ」

桃「6校が集結しているようです」

柚子「継続高校ミカさんからは祝辞が届いていますけど」

桃「継続はホント、こういうイベントには参加したがらないな」

杏「祝辞を出してくれるだけでもありがたいよ。さー、いそがしくなるぞー! 今日は授業を中止にして、秋山ちゃんの誕生日会だー!!」

グラウンド

典子「旗をたてろー!! バレー部の力をみせるときだー!!」

妙子・あけび・忍「「そーれそれそれ!!!」」グググッ

典子「秋山さん!! お誕生日、おめでとうございます!!」

妙子・あけび・忍「「おめでとうございます!!!」」

優花里「きょ、恐縮です」

ケイ「ヘイ、ゆかりー!!!」

優花里「ケイ殿!!」

ケイ「どう! 楽しんでる!?」

優花里「あの、えっと、あの、これが誕生日会というものなのですか?」

ケイ「まぁ、一般的なパーティーよりはすこし賑やかだけど、昨日のこともあるからね」

ナオミ「少しか?」

アリサ「これだけの規模は見たことがありません」

ケイ「いいじゃない。みんながユカリのこと祝いたいって言ってくれたんだから」

優花里「……」

みほ「あの、優花里さん」

優花里「西住殿!! 私なんかのために、こんなに……あぁ……どうしていたらいいのか……」

みほ「とにかく、そこに座ってて」

優花里「これはあれでしょうか!? スピーチとかあるのでしょうか!?」

ダージリン「優花里さん」

優花里「は、はい」

ダージリン「紅茶のプレゼントをしようかと思いましたが、優花里さんは戦車がお好きということだったので、戦車の模型を用意しました」

優花里「ありがとうございます!」

ダージリン「けれど、それではやはりサプライズ感がありませんので、裏をかいて紅茶セットにしました。どうぞ」スッ

優花里「あ、はい」

オレンジペコ「(裏をかく意味、あったのでしょうか?)」

アッサム「(さぁ……)」

ダージリン「そして、この言葉を贈りますわ。嫌いな人の庭園の中で自由に生きるよりも、好きな人のそばで束縛されて生きるほうがマシである」

優花里「……」

ローズヒップ「おめでとうございます、秋山様!! わたくしからはクルセイダーの模型を御贈りしますわ!!」

優花里「おぉ!! うれしいですぅ!!」

ローズヒップ「おーっほっほっほ!! 喜んでいただけてなによりですわー!!」

ダージリン「普通のほうがよかったのかしら」

オレンジペコ「それはそうだと思います」

カチューシャ「優花里! はい、これ!」

優花里「こ、これは……」

カチューシャ「な、なにがいいのかわからなかったから、テキトーなのを持ってきたの。別にいいでしょ」

優花里「おぉー……。これは……カチューシャ殿の像ですか……」

ノンナ「サイズは16分の1です」

カチューシャ「たまたま近くにあったからあげるわ。そんな小さいのいらないし」

優花里「そ、そうなのですか」

クラーラ「特注です」

優花里「え?」

ノンナ「一晩で職人に作らせたものです。大切に、大切に、してください」

優花里「は、はい……もちろんです……」

まほ「秋山」

優花里「は、はいぃ!?」

まほ「声が裏返っているぞ。体調不良か」

優花里「そ、そういうわけでは」

みほ「(不意にお姉ちゃんから話しかけられると驚くよね)」

エリカ「(未だに驚いてしまうわ)」

まほ「戦車が好きと聞いた。それで余らせているⅡ号戦車を――」

優花里「えぇぇぇ!?」

まほ「持ってこようと思ったのだが、エリカに反対されてな」

優花里「あぅ……」

エリカ「当然でしょ!?」

まほ「そこで、こういうものを用意させてもらった」

優花里「わぁ……Ⅱ号戦車の……時計ですか……?」

みほ「あ、私も欲しい」

まほ「そうだったのか……。すまない。これは一つしか買っていなくて……」

みほ「い、いいの、いいの!!」

沙織「みぽりんって、こういうのも好きなの?」

みほ「えっと、Ⅱ号戦車は色々と思い出があって」

優花里「こういったグッズまでは知りませんでしたぁ」

まほ「目覚まし時計になっている。使ってくれるとこちらとしても嬉しい」

優花里「へぇ……。ありがとうございます。毎日、使わせていただきますね」

まほ「そうか。よかった」

麻子「ん? この時計、良い物だな」

優花里「冷泉殿、時計の良し悪しがわかるのですか?」

沙織「麻子はね、目覚まし時計にはうるさいよぉ」

麻子「吟味しなければ、ならないからな」

華「お辛いですね」

みほ「麻子さん、この時計の良さって?」

麻子「それは――」

アンチョビ「秋山優花里ー!! どこだー!! 特製トマトアンチョビピザができあがったぞー!! さぁ!! このピザの上にあるロウソクを一思いに吹き消してもらおうかー!!」

優花里(たくさんプレゼントをもらってしまいましたぁ……。戦車グッズばかりでうれしいです……)

桃「――それでは一通り、秋山優花里へのプレゼントを贈り終えたようなので、ここで本人から一言もらおうと思う」

優花里「や、やっぱりですか……」

杏「いやなら、いいけど」

優花里「いえ、言いたいこともありますので」

杏「そう? んじゃ、たのむよぉ」

優花里「は、はい!!」

桃「秋山優花里、壇上へ」

優花里「あー……えー……今日は、その、私なんかのためにここまでしていただき、感謝しています!!」

優花里「各校の隊長殿にまで祝っていただけるとは思いもよりませんでした」

優花里「私は、その、戦車道を始めるまで、友人と呼べる人はいなくて……。誕生日だって、両親や祖父母以外から祝ってもらうことも初めてで……」

優花里「昨日のことだって、びっくりはしましたけど、本当に、本当に嬉しかったです」

優花里「西住殿や武部殿、五十鈴殿、冷泉殿、ケイ殿、アリサ殿……みなさんの優しさが詰まっていたように思えます」

優花里「だから、昨日のことも含めて、お礼を言いたいです。みなさん、ありがとうございます!! 今日と言う日は一生忘れません!!」

「「おめでとー!!」」 「「ハッピーバースデー!!」」 「「ゆかりー!!」」

大洗女子学園 校門

ミカ「盛況だね」

アキ「ここまで来たんだから入ればいいのに」

ミカ「私たちが参加する意味があるとは思えない」

アキ「だったら、どうしてここまで来たの?」

ミカ「万が一、があるかもしれない」

アキ「それって、集まらない可能性ってこと?」

ミカ「けど、その心配はなかった。秋山優花里という人物は、とても好かれている」

ミカ「私からは小さな言葉だけで十分なのさ」

ミカ「おめでとう」ポロロン

アキ「美味しそうな料理とかいっぱいあるのになぁ」

ミカ「ミッコ」

ミッコ「はい。とってきた」

アキ「え!? そのタッパー……もしかして……」

ミカ「ふっ。帰ろうか」ポロロン

グラウンド

麻子「これがこうなっている」

沙織「おぉー、なるほどねー」

華「では、わたくしたちで……」

みほ「勝手にしていいのかな」

沙織「サプライズ道だから」

みほ「えぇ……?」

優花里「あー、緊張しましたぁ」

沙織「いいスピーチだったよ、ゆかりん!」

華「はい。優花里さんの優しさに溢れる言葉でした」

優花里「そ、そうですかぁ?」

沙織「はい、ゆかりん。目覚まし時計」

優花里「え? なんでしょうか?」

沙織「喋る戦車をプレゼントしたいって考えたけど、失敗だったよね」

優花里「先ほども述べましたが、私は本当に嬉しかったです。気にしないでください」

沙織「多分、こういうのでよかったんだよね」

優花里「あの、今回のパーティーは本当に嬉しいのですが、やはり規模が大きすぎるような」

みほ「私たちもここまでになるとは思わなくて」

ケイ「ユカリー!!」

優花里「は、はい!!」

ケイ「さぁ、こっちにケーキを用意してるよ。たくさん食べてね!!」

優花里「はい! よろこんで!!」

ダージリン「オムライスもありますのよ。こちらにきていただけます?」

優花里「え?」

アンチョビ「まて。まずはアンツィオ名物鉄板ナポリタンを味わってからだ」

優花里「えぇ!?」

カチューシャ「プラウダが誇るボルシチが先よ。そうでしょ、優花里?」

絹代「赤飯をご用意しております!! 秋山殿!! やはり祝いの席では赤飯は欠かせません!! どうぞ召し上がってください!!」

まほ「黒森峰の戦術講座を聞いてはいかないか?」

優花里「いいのですかぁ!?」

数時間後

優花里「もう……食べられません……」

華「残りはわたくしがいただきますね」

麻子「秋山さん、朝から食べっぱなしだな」

沙織「華もね」

みほ「あはは……」

杏「そろそろ、終わりかな」

ケイ「そうねー。みんなも疲れが見え始めてるし」

アンチョビ「立食パーティーだからな」

ノンナ「カチューシャもお昼寝に入りました」

エリカ「ホント、子どもなんだから」

絹代「福田も寝てしまいました」

まほ「撤収の準備を始めるか」

ケイ「そうね」

優花里「みなさん、最後によろしいでしょうか?」

ダージリン「礼の言葉なら、もう結構よ?」

優花里「そ、そうですか。では、ええと、次のバースデーパーティーには絶対に呼んでください。お願いいたします!!」

ダージリン「オレンジペコの誕生日もアッサムの誕生日も祝ってくれるのかしら?」

優花里「もちろんでぇす!!」

ローズヒップ「わたくしは?」

優花里「ローズヒップ殿もですよぉ」

ローズヒップ「やりましたわー!! 絶対ですからね、秋山様!!」

優花里「はい!!」

ノンナ「カチューシャの誕生日は大変ですよ?」

優花里「覚悟の上です!!」

ノンナ「そうですか」

まほ「みほのときは、よろしく頼む」

優花里「まほさんの誕生日もお願いします」

まほ「考えておく」

優花里「ありがとうございます!! あぅ。しまった、つい、ありがとうございますって言ってしまいました……」

ケイ「その日はユカリのセンスを期待するわ」

優花里「期待されると、困りますけど」

アリサ「自分で言ったんだから、責任を持ちなさい」

ナオミ「サンダースのノリについてこれるといいけど」

優花里「尽力します」

アンチョビ「楽しみだな!」

ペパロニ「あたしはやっぱり、マントがほしいな!」

優花里「覚えておきますね」

ペパロニ「ありがとよ!!」

アンチョビ「誕生日にマントなんて嬉しいか?」

杏「んじゃ、てっしゅー」

桃「ええと、サンダースの人間が最も多いようだな」

ケイ「いいよぉ。どんどん雑用で使って。私もやるわ」

桃「では、サンダースはテーブルを。他の物は椅子や食器を片付けてくれ」

「「はーい」」

夕刻

桃「疲れた……」

柚子「撤収にこれだけ時間がかかるなんてね……」

ケイ「またねー!!」

杏「バイバーイ」

優花里「さよーならー!!」

みほ「今日はありがとうございましたー!!!」

ケイ「たのしかったわー!!!」

ゴォォォォ!!!!

桃「これで本日のイベントは終了です」

ももがー「色んなものが食べれてたのしかったなり」

ぴよたん「あたらしいオンゲー仲間もみつかったっちゃ」

ねこにゃー「ボクたちにとっても収穫があったね。アンツィオの人と仲良くなれたし」

杏「秋山ちゃん、よかったね」

優花里「はいっ。今、人生で一番幸せです!」

秋山宅前

優花里「わざわざすみません」

みほ「ううん。これだけのプレゼント、一人じゃ持って帰れないよね」

麻子「疲れたな」

沙織「麻子は何も持ってないじゃない!!」

華「ここでよろしいですか?」

優花里「はい。助かりました」

沙織「ふぅー。それじゃ! ゆかりん、また明日ね」

華「さようなら」

麻子「おー」

みほ「おやすみなさい」

優花里「また明日、よろしくお願いします!!」

沙織「あ、ゆかりーん!!」

優花里「なんでしょうかー?」

沙織「目覚まし時計、絶対に今日から使ってね。まほさんも喜ぶはずだから!」

優花里の部屋

優花里「なんだか、プレゼントを並べるだけで自然と笑っちゃう」

優花里「そういえば、武部殿が絶対に使って欲しいと……」

優花里「よくできたⅡ号戦車の目覚まし時計ですね。ええと、どんな音が……」カチッ

『パ、パンツァー・フォー!』

優花里「西住殿……」

『あさだよーゆかりーん』

『今日も良い一日になりそうですよ』

『遅刻するぞー』

『それ麻子のことじゃん』

『こ、これでいいのかな? え? もうひとこと? ゆ、優花里さーん、おきてー』

優花里「……」

優花里「とても素晴らしい喋る戦車を頂いてしまいましたね……。まほさん、ありがとうございます。そして西住殿、武部殿、五十鈴殿、冷泉殿……感謝します……」

優花里「最高の誕生日です!!」


おわり。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2018年03月06日 (火) 22:13:17   ID: UMGFNHIs

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