菜々「時をかけるウサギ」 (48)

注意事項

地文あり
キャラ崩壊

以上よろしくお願いします

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私、安部菜々!ピチピチの17歳!ウサミン星からやってきたアイドルです!

今日もお仕事を終えて、事務所に戻って来ました。私はいつものように元気に、若々しく事務所のドアを開けます

菜々「お疲れ様です!菜々、戻りました!」

モバP(以下P)「お、おかえり。どうだった?」

菜々「今回もお仕事バッチしでしたよ!ばっちグーです!」

デビューから数ヶ月経ち、お仕事にも慣れてきました。確かに地下アイドル時代も大変でしたが、今は更に大変です。

けど、やはりTVに映れるというのは嬉しいし、見てくれるファンの数が格段と違うからやりがいを感じます。

やっぱりアイドル目指すのやめなくてよかったなぁ...

P「ばっちグーって、古いぞウサミン」

菜々「へ!?今時の子はいいませんか?」

P「言わんと思う」

そう言ってプロデューサーさんは煙草の吸殻を灰皿に落とす、健康診断で引っかかったとか行ってたのにまだ続けるんですね...

菜々「そ、そんなことよりプロデューサーさん後で食べに行きませんか?お仕事もうちょっとで終わりますよね?」

P「いいぞ、すぐ終わらせるから待ってろ」

そう言ってプロデューサーさんは早めのタイピングをする。何やってるのだろうかと後ろから見ようとしたけど、「企業秘密だ」と遮られてしまう、残念

待ってる間暇なのでプロデューサーさんの散らかっているデスクを整理する、こういうのは任せてくれる辺り信頼されてるのかなぁ?と少し嬉しくなる。

ふと、書類の間になにか硬いものがあることに私は気付いた。チェーンに繋がれた...懐中時計?

ウサギのロゴが描かれた可愛らしい時計で、開くと19時ぐらいを指していた

あ、それにこの懐中時計日付もある。懐中時計は時間だけだと思ってたけど、日付あるタイプもあるんだ。

P「ん?あぁそれか、たまたま露店で見つけたものなんだ」

菜々「へー、菜々もこういう時計欲しいなぁ。どこで売ってたんですか?」

P「どこだっけなぁ?出張中に見つけたからわからん」

ウサギの柄が私の好みで欲しかったんだけどな、でもこの前整理した時にはこの懐中時計なかった気がする

P「あぁ先週買ったんだよ、なんか白衣着た怪しい子だったけど可愛かったからスカウトはした」

菜々「見境ないですね、プロデューサーさん...」

P「ま、断られたけどな。」

傍から見ればプロデューサーさんの方が不審者ですからね...

でも、出張なんていつの間に行ってたのだろうか?

私が出掛ける時と帰ってくる時は必ず事務所にいたはずなんですが...

時々プロデューサーさんは妖怪なんではないか?と疑いたくなる瞬間は多くある

P「そんなに欲しいならやるよ、つか菜々に似合うと思ってきて買ってきたんだから」

菜々「本当ですか!?ありがとうございますプロデューサーさん!」

あげる予定だったのに散らばった書類の中に置いておくのはどうなのか、と思いはしたけど

菜々「腰の辺りにつけて...、これどうです?アリスのウサギさんっぽいですか?」

P「人間とウサギは全然違うだろ...、まぁ似合ってんぞ」

菜々「えへへ...」

プロデューサーさんからのプレゼントということで私は嬉しくて、そんな考えは吹き飛んでいきました

菜々「んー、ん?プロデューサーさん、今日何曜日でしたっけ?」

P「月曜日だぞ。どうした、なんか予定でも入ってたか?」

菜々「いえ、この時計の曜日が違ったので」

時計をみると、水曜日と表示されていた。

携帯をカチャっと開いてカレンダーを確認すると一月の曜日になっていることに気がつきました

別に曜日は気にしなくてもいいかな、とは思ったけどどうせなら合わせておきましょう

P「つかまだスマホにしてないのか、支給しただろ?」

菜々「なんかこっちの方が落ち着くんですよ。あ、これ曜日2ヶ月ズレてますね」

P「あ、マジか。間違えたのかなあの子」

とりあえず上のピンを引っ張り、くるくる回す。そうするとカチカチと針が回り、どんどん時間を巻き戻す。

ふと、この時計の時間のように時間が戻ればなー、と思ってしまったが、どこかの青い狸さんはいないわけで。

P「すまんが戻しておいてくれ、俺はさっさと仕事終わらせてくるから」

菜々「はーい」

プロデューサーさんの方を見ず、私はくるくると時計の時間を巻き戻す

なんだか時計の針を見てると酔ってきますね...

とりあえずさっさと戻してプロデューサーさんにお茶でも出そうと思い、必死に針を逆回転させます

火曜日、月曜日、日曜日、土曜日、金曜日、木曜日、水曜日、火曜日...

回しているとなんだか眠くなってきた、でもこのあとプロデューサーさんと食べに行く為必死に眠気と戦いながら回します

9時、8時、7時、6時、5時、4時、3時、2時...

1時を回ると瞬間、周りの時間が遅くなったような感覚が襲ってきました

最近仕事が多かったせいか、疲れてるのかもしれない。歳では絶対ない。

そんな遅くなった感覚で、必死に時計を巻き戻す

10分、9分、8分、7分、6分、5分、4分、3分、2分、1分...

そして、時計の秒針がどんどん12時に戻すため巻き戻る

5秒、4秒、3秒、2秒、1秒...


そして秒針が12時を指した時

わたしの意識は途切れた

気がつくと私は公園のベンチで寝ていました

先程までいた事務所ではなく、公園

「え、えっと、プロデューサーさん?あれ?」

キョロキョロ見渡すが、プロデューサーさんの姿は全くなく、あるのは砂場、ジャングルジム、滑り台などの遊具のみ

それに太陽の日差しは傾いており、公園の時計をみると、5時を刺そうとしています

あ、あれー?さっきのは夢?

私疲れすぎてどこかの公園で寝てた?

とりあえず移動しようと立ち上がると、じゃり...と音が鳴り、ウサギ柄の銀時計が私の服から垂れ下がる

夢じゃ...ないよね

確かにこの銀時計を貰ったのだ、ならもしかして...ドッキリ?

それにしては雑すぎるような...

ふと、公園前に掲示板があるのを見つける。私は何気なくその掲示板の前に立ち、貼られている紙の内容を見ます。

それは不審者注意の貼り紙で、最近この付近に出没している不審者の似顔絵が書かれていました

その似顔絵を見て私は20年前の少女誘拐事件を思い出しました。その時の人の顔とそっくりである、お母さんに「あんたは危なっかしいから注意しな」と口酸っぱく言われたものです。

...というより、本人ではないでしょうか?私の記憶で見た掲示板に写っていた顔と瓜二つ。

そして日付を見る

一瞬、何が書かれているか理解できませんでした

"発行日 19XX年 X月X日"

見間違いかと思い、他の貼り紙も見る

"発行日 19XX年 X月X日"

"発行日 19XX年 X月XY日"

"発行日 19XX年 X月XZ日"

どれもこれも、私の過ごした時期の20年前

つまり

菜々「タイムトラベル...しちゃいました...?」

アニメのような体験は、実際にすると困惑しかない

そう学んだ瞬間でした

タイムトラベルした理由はわかっています

いや、きっかけはどう考えても

菜々「この懐中時計ですよね...」

日にちが合わせようとしていた日にちが表示されている辺り、元に戻せば戻れる...はずです

ですよね?流石に戻れないとなると色々マズイのですが...

一応戻った先が実家の近くだった為、実家に行く、という方法もありますが、タイムトラベルなんて誰が信じるでしょうか...

うぅ、あの時過去に戻りたいと考えなければ...。フラグだったのかなぁ...

菜々「い、いや、こんな事考えてないで、戻してみましょう!話はそれからです!」

一旦公園のベンチに戻り、懐中時計を合わせよう。そう思った時、私の目に映った

何が?誰が?





そう、そこには

20年前の

私がいた

17才の菜々さんの20年前……(困惑)

>>10
申し訳ない、10年前です
>>8
どれもこれも、私の過ごした時期の20年前
→どれもこれも、私の過ごした時期の10年前
ですね

そこには無邪気に砂遊びをしている私がいました

周りを見ても特に遊んでいる子はおらず、1人で遊んでいるよう

そういえばこの時の私、1人で遊ぶことが多かった。あまり友達との時間が合わず、ほとんど1人だった記憶があります

昔のペチペチと山を作っており、なかなかの大きさがある

そんな時、ふと

ある欲望が渦巻く

ここで

私にアイドルを目指すのを辞めるようにいえば

どうなるのだろうか

もちろん子供だからあまり大人、それも知らない人の言葉なんて聞かないだろう

でも、もし聞いてくれてアイドルを目指さなければ

あんな辛い日々は過ごさない

毎日が辛くて、時間が過ぎる度に自問自答を繰り返し

いつ終わるかもわからないあの日々を

そう思うと口の中がどんどん渇く

普通の女の子に

戻れるかもしれない

そう思うと足は震え、手も感覚がなくなっていく

「アイドルなんて目指さない方がいい」

その一言を、幼き私に言えば

人生が、変わる

私の、人生

???「1人で何やってるんだ?」

その声でハッとする、見ると誰かが幼い私に声をかけていた。

その声には聞き覚えがあります、声が少し違いますが間違えるはずありません

幼菜々「砂遊びしてるの、でっかいお山作る」

歳は違えど、あれは紛れも無く

幼P「ほー、兄ちゃんも手伝っていいか?」

私のプロデューサーさんだった

プロデューサーさんと幼い時の会ってたのか、と驚きとともに

か、かわいい!!

幼い時のプロデューサーさんは今の厳つい顔ではなく、誰にでも優しそうな可愛い男の子でした

でも面影はあり、一目見た瞬間プロデューサーさんだとわかりました

ふたりはペタペタと山に土を積み重ね、どんどん大きくしていく

幼P「いつもひとりで遊んでるのか?」

幼菜々「うん、皆とはあんまり会えないから寂しい。でも菜々、お兄ちゃん来てくれたから今日は1人じゃないよ!」

幼P「ん、そうだな。今日は兄ちゃんと遊ぼうな」

幼菜々「うん!」

そう言ってペタペタ土を山の側から掬い、山に積み重ねる

山も積み重なり、幼い私の膝位まで高さが出来た

そうすると幼い私はポケットから何かを取り出して、山に差し込む

幼菜々「お城!」

幼P「山じゃなかったんかい!?」

それはお子様ランチでついてきた旗らしく、大きく日の丸が映されているタイプのものが綺麗にお城(山)のてっぺんで刺さっていました


幼菜々「ここにはシンデレラが住んでます!」

幼P「なんか始まったぞ」

幼菜々「そしてそのシンデレラはあいどるもやっててかわいいお姫様!」

幼P「大変だなお姫様」

幼菜々「そのお姫様は、毎日楽しくて、皆が毎日お話ししてくれたり、遊んでくれます」

幼P「羨ましいな」

幼菜々「...菜々も、そんなお姫様になりたいなぁ」

幼い私はそう言って暗い顔をします、そういえばこの時期の私は皆が構ってくれなくて悩んでたなぁ

ちょうどこの時期は皆忙しかっただけだったのだが、皆に嫌われたのかなと考えるほど悩んでた気がする

幼P「なれるさ、いい子にしてればな」

幼P「それか実際にアイドルになるかだな」

幼菜々「!」

幼菜々「それ!」

幼P「へ?」

幼菜々「菜々、あいどるになる!」

そう言っている私を見て、体が固まる

これは、止めるべきなのではないか

ここでやめた方がいいと言えば

私の人生は...

幼P「アイドルか、菜々ちゃんは可愛いしいけるだろ」

幼菜々「ほんと!?ならお兄ちゃんも手伝ってね!」

幼P「え!?」

幼菜々「約束!」

そう言ってもう一人の私は小指をピッ、と立てる

幼P「...、そうだな。アイドルを手伝う仕事か、楽しそうだ」

それに答えるように小指を出して女の子の指に絡ませる

幼P「菜々ちゃん。名前、ちゃんと聞いていい?」

幼菜々「私、安部菜々!お兄ちゃんよろしくね!絶対約束だよ!」

幼P「安部菜々ちゃん、ね。絶対、忘れない。よろしく」

そう言って指切りをする2人を

私は止められなかった

あの2人が帰った後、私は公園のベンチに座って空を眺めていた

周りはいつの間にか暗くなっていて、11時を過ぎようとしていた

でも、私は先程の会話を止めるべきだったのだろうか、という疑問でぐるぐる悩んでいた

プロデューサーさんと幼い頃あっていたのは覚えていなかったけど、アイドルを目指すのを初めたのは多分その頃です

その後アニメにハマり、アイドル声優を目指すので、本当に目指すのをやめさせるのであればあそこで止めるべきだった

でも

菜々「止められなかったなぁ...」

浮かんだのは、皆とプロデューサーさんの顔

よくわからないけど、皆と一緒会えなくなってしまうようなそんな気がしてしまった

そう思ってしまった瞬間、手が、足が、体が動かなくなってしまった

本当に、菜々は勇気のないですね

???「おねぇさん何やってんの?」

そう言われ、顔を上げる。警察の方だと厄介なので逃げることも検討しな...

幼P「大丈夫ですか?体調悪そうなら病院行きますか?」

そう声を掛けて来たのは、幼いプロデューサーさんだった

一応学生っぽいけどこの時間出掛けてても大丈夫なんでしょうか?

菜々「いえ、大丈夫です!ちょっと落ち込むことがあっただけなんで...」

そういうと、彼は少し顎に手を当てる。よく知ってる未来のプロデューサーさんの癖だ、この時からやってたんですね

幼P「さっきの菜々ちゃんとのお話聞いてですか?」

菜々「へ!?」

幼P「夕方こっち見てましたよね?」

み、見られていたんですか...、あのときの私は色々酷い顔をしていたのであまり見られたくなかったですね...

菜々「ちょっと、ね。」

幼P「ちょっとですか...、よっと」

彼はベンチの後ろに傘を引っ掛け、私の隣に座る。この時間に出てきたのは忘れた傘を取りに来たようですね

幼P「で、そのちょっととは?」

菜々「?」

幼P「悩みなら俺、聞きますよ?ほら、知らない人なら気を使わず話せると思いますし」

多分逆に気を使うと思うんだけど...、とは思ったけど未来のプロデューサーさんと同じくお節介なのは変わらないようです

>>11
(よく考えてたらあってた件)
ウサミンは永遠の17歳だけど20年前であってるやん...
修正何度もすみません

菜々「...そうです、ね。私アイドルやってるんですよ、この服も仕事服なんですよ?」

幼P「え?その服趣味じゃなくて仕事服なんですか?」

幼いプロデューサーさんは衝撃を受けているみたいですね、まぁこの時代のアイドルはこのような服はほとんど着てなかったきがします

幼P「う、うーん。売れてます?」

菜々「結構辛辣っ!い、一応最近売れ始めたんですよっ!!」

幼P「そうなんですか?今度ちゃんと本屋見回るか...」

菜々「ただ...その、売れるまでの時間が長くて...」

幼P「...そうなんですか。」

菜々「...え、っと。プ...、貴方は過去を変えたいと思ったことありますか?」

そういうと彼の頭に?マークが浮かぶ、普通はそうですよね

菜々「私は、アイドルになるまですごく時間が掛かったんです。毎日レッスンして、オーディションに行って、時々地下ライブ場借りてライブしたり...」

幼P「凄くって...、おねぇさん今何歳?」

菜々「わ、わ、私は永遠の17歳ですよ!?」

凄く疑い目をされました。ほ、本当ですよ!?

菜々「そ、それはとにかく。時間が掛かったんです」

菜々「確かに結果的にはアイドルに慣れました。でも本当にこの道で、アイドルになって良かったのかなぁ。って思うんですよ。」

菜々「本当は違う道があって、そっちの方が良かったんじゃないかと悩んでいたんです」

菜々「さっきの女の子を見てたのは、アイドルを目指すのは大変だよ。と」

菜々「...私みたいにならない方がいいって、言おうか迷ってたんです」

そう伝えると、プロデューサーさん...彼は手を顎に当てる。やっぱり真剣に考えてくれるところも昔から変わってないみたい

幼P「んー」

幼P「俺は、さっきまで将来なんて考えてなかったです」

菜々「えっ?」

幼P「俺、それで今年受験生なんですよ。高校受験」

受験生なのに砂遊びしてるのは相当迷っていたんだなぁ、と思ってしまう

それか自暴自棄か

幼P「俺、夢とか特になかったし、寝て仕事して遊んで寝れればいいかな?ぐらいしか考えてなかったかな」

幼P「でも、さっきの女の子。安部菜々ちゃん」

自分の名前を言われドキリとする、彼の言っている安部菜々とは違うのだが、ドキドキしてしまう

幼P「あの女の子、絶対アイドルになりますよ」

そう言われ、口がポカンとする。何を根拠に彼は言っているのだろうか?

確かに彼の言う通り、彼女の未来である私はアイドルにはなれた

菜々「なんで...」

幼P「へ?」

しかし、実際にデビューするのは12年の時を必要とした、してしまった

菜々「なんで、そう思うんですか?」

そんな女の子を何故自信に溢れた態度で言えるのだろうか?

幼P「え、えっと、...勘?」

菜々「ふざけないでください!」

菜々「アイドルは、アイドルはそんな甘くない、甘くないんです...!」

菜々「挫折する子もいた!才能がないってわかってしまって、デビューできないと知って、夢を諦めてしまった女の子もいました!」

その子は私より可愛くて、歌も上手かった

でもダメだった

菜々「遊びだって、本気になるのは馬鹿らしいとやめた人もいました!」

その子はダンスも上手くて、いつも男性の中心でした

でも、ダメだった

菜々「誰からも好かれて、でも怪我で諦めるしかなくなった子もいましたッ!!」

お節介で、いつでも頼れるお姉さんだった。

でも度重なる無理をしてしまった結果、踊れなくなってしまった

そこまでやっても

ダメだった

菜々「なのにッ!なんで、そう...言いきれる...ですかっ...」

私はいつの間にか目から涙がこぼれ落ちていた

私より可愛い女の子がいた

私より相応しい実力の子がいた

私より愛される子がいた

私だって、デビュー出来たのは奇跡だ

嘘で塗り固めた、もう若くもない。

そんな苦しみを味わうのは

私だけでいい

一旦中断
次更新は今日の18~19時ぐらい

おつありです、それでは再開します

怒鳴った為、彼は黙る。

勿論だ、こんなの未来を知らない彼に八つ当たりしてるだけなのだから

謝らなきゃ...と頭が冷えてきた頃に、彼は口を開く

幼P「...そっか、だからさっき過去を変えたいって言ってたんですね」

幼P「...おねぇさん、アイドルになって後悔してる?」

菜々「...して、ないというのは嘘です。」

幼P「そっか」

幼P「今もつらいことある?」

菜々「...はい」

幼P「そっか」

幼P「じゃあ、アイドルになれてよかったことは?」

菜々「...え?」

幼P「苦しかった、悲しかった、辛かった」

幼P「それはわかりました」

幼P「でも、その反対に嬉しかったことありますよね?」

そう言われて、戸惑います

嬉しかったこと...

一杯あります、皆で練習して、笑って、喧嘩して

でも最初に思ったのは

菜々「プロデューサーさん...、プロデューサーさんによかったって...」

菜々「可愛かった、これでナンバーワンアイドルの1歩を踏めたな、って言われたこと」

幼P「その思い出、大切ですか?」

菜々「はい、絶対に忘れたくない思い出です」

幼P「なら、いいんじゃないですか?」

菜々「へ?」

幼P「色々あって、大変な事はわかりました」

幼P「でも逆に、楽しいことや嬉しかったこと、忘れたくない思い出があるんですよね?」

幼P「過去を変えるのは、つまりその記憶も無かったことになるんじゃないですか?」

菜々「!!」

幼P「過去を変えたらどうなるかはわかりませんが、大切な記憶はなくなってしまう気がするんです」

幼P「今俺がこの公園に来ないって過去を変えてしまったら、今日会った菜々ちゃんや、おねぇさんに会えなくなります」

幼P「だから俺は過去を変えたくないかなぁ」

過去を変える、それは過去を断つということ

そんな簡単な事を私は気が付かなかった

あの時の苦しみから逃げたくて、違う未来があるんじゃないかって考えてしまっていた

弱いなぁ...私

幼P「それと、今日夢もらいましたから尚更変えたくないですね」

菜々「夢...?」

幼P「俺、菜々ちゃんがアイドルになれるように支える人になるんです。まだどういう仕事で支えられるのかは調べてないんですけどね...」

菜々を支える人になる

そう聞いた時、なんだか胸が熱くなる

多分未来のプロデューサーさんは忘れているだろうけど、子供の時に交わした約束がちゃんと実現されている

それが嬉しくてたまらなかった

菜々「それじゃあ、プロデューサーさんですね!アイドルを心身共に支えるならプロデューサーさんしかありえません!」

幼P「プロデューサー...。俺、プロデューサーになれるように頑張ります!」

時計をみると11時55分、引き止めすぎたかなぁと反省。

流石に帰らせてあげないと怒られそうですね

菜々「今日はありがとうございました、心がすっきりして明日からも頑張れそうです!」

幼P「おねぇさんの役に立てたなら、よかった」

菜々「時間も時間ですし、切り上げましょう。」

幼P「時間...ってうわぁ!?やべぇ母さんにどなされる!」

そういうと彼は来た道を引き返す。過去は変えられなかったけど、小さいプロデューサーさん見れただけ満足です

と、彼は何か気付いたらしく私の前に戻って来る

幼P「あの!」

彼は息を整えず、続けて言う

幼P「もし今度アイドルをやめたいと思ったら」

幼P「俺のアイドルになってください!」

幼P「絶対に辞めたいって、後悔させません!」

私の中で、何かが始まる鐘が鳴る

何の鐘が鳴ったのかはわからない

幼P「今更ですけど、名前聞いても、いいですか?」

時計の針が12時を刺す、シンデレラは12時で魔法は解けてしまうけど

菜々「私は、菜々は、安部菜々ですよ♪」

私は魔法を掛かってしまったようだ

彼と分かれてから数分

先程と同じく空を見上げていた

しかし前とは違い、心に一つの感情が宿る

菜々「あー、プロデューサーさん可愛かったなぁ」

会いたい

菜々「それに、昔からの付き合いだったなんてびっくりです」

会いたい

菜々「そして、菜々の為にプロデューサーさんになってくれたんですね...」

会いたい!

私はウサギ柄の懐中時計を取り出し、ピンを回して時を未来に進める

火曜日、水曜日、木曜日、金曜日、土曜日、日曜日、月曜日、火曜日...

眠気に襲われる、でも必死に耐えて回す

彼に、プロデューサーさんに会うために

4時、5時、6時、7時、8時、9時、10時、11時...

11時を回ると瞬間、周りの時間が早くなったような感覚に陥る

そんな早くなった感覚で、必死に時計を進める

50分、51分、52分、53分、54分、55分、56分、57分、58分、59分...

時計の秒針がどんどん12時に進むため回転する

過去は辛かった、

でもその分いい事があった

いろんな、いろんな出会いがあった

そして何より、プロデューサーさんに、出会えた

55秒、56秒、57秒、58秒、59秒...

私は、願う



プロデューサーさんに

会いたいっ!



そして秒針が12時を指した時

わたしの意識は途切れた

???「...、菜...、おい菜々?」

菜々「ふぇ...?」

P「やっと起きたか。寝すぎだ馬鹿野郎」

菜々「...プロデューサーさん?」

目が覚めると、目の前にプロデューサーさんの顔

幼くない、私のプロデューサー

P「全く、気持ちよく寝てやがるから起こさないでおいたら12時過ぎまで寝るか普通?」

菜々「プロデューサーさんっ!」

過去から帰れた嬉しさより、プロデューサーさんと会えた嬉しさで抱きしめてしまう

P「って、うわっ!?な、何しやがるこの!」

菜々「えへへー、プロデューサーさんですよね。ちゃんとちっちゃいプロデューサーさんじゃなくて、元のプロデューサーさんですよね!」

P「ちっちゃいってなんだ!?と、とりあえず離れろ痛い重い暑苦しい!!」

菜々「嫌ですー、菜々今の気分はプロデューサーさんに抱き着いていたい気分なんですー!」

普段なら恥ずかしくて出来ないけど、今はそんな恥ずかしさより、くっついていたい
一緒にいたい

そんな、気分

P「あぁもう飯どうすんだ!今から行くと明日辛いぞ、特に俺が!」

菜々「私はオフなんで関係ありません!明日は特にありませんから」

P「こっちは仕事だ!」

菜々「今日はたくさん飲みますよー!」

P「おい永遠の17歳」

菜々「今日はちょっぴり大人な菜々なので問題ありません、ちょっぴりです」

P「はいはい、いつもの菜々ちゃんねー」

菜々「いつものってなんですか!ほらプロデューサーさん行きますよー!」

P「引っ張るな!あぁもうジャケットは着させてくれ!」

エピローグ

-帰り道-

菜々「スピー...zzz」

P「スピーって寝るヤツ初めて見たぞ」

今日は珍しく菜々はハイペースで飲んでいたからか、飲み始めて一時間ぐらいで酔い潰れてしまった

居酒屋で酔いつぶれて困るのは、連れだとわかっているのだろうかこいつは

菜々「ふへへぇ...」

P「...ったく」

でもこんな幸せそうな寝顔のやつを起こして怒れない辺り、俺はまだまだあまっちょろいらしい

P「あ、傘忘れた」

こいつを担ぐので手一杯で傘の存在わすれてた、明日取りに行くかぁ

あ、傘忘れで思い出した

そういや、あの女の人は今どうしてるのだろうか

ちょうどこんな夜の公園だっけ、こいつと初めて出会った後にあった"アイドル"

当時はテレビや雑誌でも見た事ない人だったが、俺に"プロデューサー"という夢の方向を教えてくれた人

あの時は公園に傘忘れて、母さんに傘見つけるまで帰ってくんな!って怒られて公園いったんだよなぁ

まぁそのおかげであの人にも会えたのだが

菜々「スヤァ…」

そして今のこいつとよく似ている

あの人も辛いこと一杯あったって言ってたっけな

本当はこいつにはそういう思いはして欲しくなかったが、俺の努力が足らなかった上に見つけるのに苦労して、その上半分菜々がアイドル目指してないと探すのを諦めかけてしまったせいで苦労させてしまった

全く、夢を叶えるってのは一筋縄ではない

でも、ちゃんとあの時の約束を守れてよかった

菜々「ズピー...zzz」

多分こいつは忘れてるだろうけどな!

全く、夢を与えた人間が忘れてるなんてたちの悪いことだ。

...いやまぁ、俺が勝手に目指しただけど言われたらそれまでなんだが

菜々「スヤァ...zzz」

つかどんどんこいつ、菜々さん、あれは偽名だろうけど、あのときのおねぇさんによく似てきている

そりゃもう、ドッペルゲンガーかと思うぐらいに

あの人今どこにいるんだろうなぁ…、あの時20前後ぐらいだと思うから40前後か

う、うーん。想像出来ん

でもいつかはお礼に行きたい。見つかるかはわからないけど、ちゃんとプロデューサーになってると報告はしたい

菜々「はふぅ...zzz」

しかし本当にこいつ、菜々さん、初恋の人によく似てて接し方に困ることがある

あーくそ、本当に名前聞けばよかった

そうすればこいつに男として惹かれることもなかったのに

あ...、こいつどうしよ

俺、菜々の部屋に行ったら襲う自信ある

なら俺の部屋...はむしろアウトだから事務所か

あーもう、あん時の菜々ぐらいならこういう感情もなかったのにな!

可愛くなりやがって、ちくしょう

本当に男の前だというのにこんなに無防備になりやがって

菜々「...菜々の」

寝言だろうか、菜々が何かを言おうとしてる

言葉の感じから弱気な言葉だろうな、と察した。菜々はへこたれないように見えて結構弱い部分あるからなぁ

菜々「プロデューサーさんは...菜々の本当の...」

菜々「菜々の本当の姿を知っても...好きでいてくれますか...」

なんだ、そんなことか

起きてたら照れて答えに迷ってしまうけど

P「当たり前だ、俺は菜々の事が好きなんだから」

寝てれば関係ない、こんな恥ずかしい言葉を言っても聞かれなきゃ問題ない

ま、答えは帰ってこな...

...待て、こいつ背中でモゾモゾしてねぇか?

菜々「こ、告白されちゃいました...」

P「うわぁぁぁぁああああ!!?!?!?」

ギャアアアアアアア!起きてたァ!!

P「な、な、な!?」

菜々「もしかして優しい言葉もらえるかなー、なんて思ってたらまさか愛の告白されるとは...」

P「え、えと!これはだな!?」

菜々「だ、ダメです!撤回なしです!!」

菜々はぴょんと降りて、尻餅つきながらも立ち上がり、ボイスレコーダーを右手に持ちながらこちらと対面する

いつの間にボイスレコーダーなんかつけやがったこいつ!

菜々「ふ、ふふふ!このボイスレコーダーは渡しませんよ!これは証拠として大切に保存させてもらいます!」

P「待ておい!?す、好きとは言ったがこの、そう、アイドル!アイドルとして好きだと言ったんだ!」

菜々「知りません、わかりません、理解する気がありません!」

P「なんで!?」

今思いつきで言ったけど自然な流れだろ!

菜々「この内容では告白されたようにしか聞こえませんし、これでこちらからこくは...、ではなく婚期は逃さなくて済みますから!」

P「そんなに心配する歳でもねぇだろ永遠の17歳!」

菜々「そうですけど!プロデューサーさん、プロデューサーさんが取られたら意味無いんですよ!」

P「なぁ!?」

俺は急な返しに変な声が出る

え、あ、つまり菜々は!?

菜々「でも、私はアイドルだからまだ返事できません!」

菜々「だからっ!」

菜々「菜々がトップアイドルになるまで返事は待ってください!」

P「トップアイドルになったらアイドルやめんのかお前?」

菜々「そんな茶化しは聞いてません!どうなんですかもぅ!!」

...あぁもう

初恋の人に似てるから惹かれた、なんて言えないじゃないか

それに、今ので初恋の人"安部菜々"さんを重ねた菜々ではなく

目の前の安部菜々が好きだとわかっちまったじゃねぇかちくしょう

顔真っ赤にして今にも泣きそうな顔の菜々は返事を待つ

全く、これが本当に勘違いだったらどうするんだ

まぁ、

P「今度は、ちゃんと告白するから覚悟しとけよ」

そんな菜々が好きな事は変わらんが

菜々「は、はい、約束ですよ...?」

P「おう、絶対にトップアイドルになるまで付き合ってもらうからな」

菜々「はい!...絶対に離さないで下さいね」

菜々「私の魔法使いさん♪」

ということで菜々スレでした

今回初めて地文でやってみましたが、結構難しいですね。キャラ崩壊は免れない()

本当はNG組、というより卯月をメインとした物語書く予定だったのですが、
「卯月...動いてくれよ卯月!」
というぐらい筆が走らない走らない

そんな中腕時計みてたら2日ぐらい日付がずれてたので回してたら、今回の物語を思いついた感じです
めっちゃスルスル書けたのでちょっと笑ってしまいました

今回の主役のうさみんは私の中で結構好きですね。みくにゃんに続いてオールマイティにキャラが出来ることと、挫けない心
本当に可愛い

(よく考えたら今までのスレ全員キュート組じゃん...)
楓さんのSS書きたいけどいまいちギャグが思いつかないので当分ないです

という感じで今度こそ卯月のスレで会いましょう

ボクカワイイ!

(時計のズレの伏線回収忘れてたとか今更言えない)

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