おそ松「あとは勇気だけだ」 (41)

0.はじめに

①キャラ崩壊

②インチキSF&オカルト設定

③推し松は村松ジョー


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1.

???「……覚マセ……目ヲ覚マセ……目ヲ覚マスンダ!」
おそ松「はぁ~、うるさいなあ。何時だと思ってんの? まだ朝の十時だよ?」

2.

ある朝、松野おそ松がなにか気がかりな夢から目をさますと、自分が寝床の中で《島村ジョー》に変わっているのを発見した。

ジョー(おそ松)「うわっ、ハーフ顔のイケメンになってる!」
トド松「もう、なにぃ~? うるさいよ、おそ松にい……ふぁっ!?」
ジョー「何だよ、トド松。おんなじ顔見てそんなに驚くことないだろー。あっ、もうおんなじ顔じゃないんだった」
トド松「にい、さん、にいさん、カラ松兄さん! ちょっと起きて!」
カラ松「んん~、どうしたんだ、トドま、つ……うわあっ!?」
一松「ねえ、うるさい。まだ十時なんだから静かに……えっ」
十四松「カッ!(目を見開く) おは、よん、ろく、さんのォー……ぉおっ?」
チョロ松「う~ん、あれぇ、みんなもう起き……うおっ!? 誰!?」
ジョー「おそ松」
チョロ松「うそ吐けぇ!! こんな似ても似つかない六つ子の長男があるかぁ!!」
ジョー「いやー、俺もよくわかんないんだけどさ。タダでハーフ顔のイケメンになれてラッキー!」
チョロ松「いやいやいや、落ち着き過ぎでしょ!? 何その強靭メンタル!?」
トド松「そうだよ、あり得ないでしょ、常識的に考えて!!」
カラ松「この俺でさえ、ちょっと嫉妬を禁じ得ないビューティフル・フェイスになるとは、さすがおそ松。長男だけのことはある」
一松「いや、同世代カースト圧倒的最底辺かつ暗黒大魔界クソ闇地獄カーストの住人筆頭の分際でこんな恵まれた顔になれるわけないでしょ」
ジョー「おっ、一松。今日は朝からいっぱい喋るな~」
十四松「やった~! 《島村ジョー》ダァーッ!! 家宝にすっぺ~!!」

3.

ここはデカパン博士の研究所。よくわからない機械がたくさん置いてある。

十四松「というわけで、おそ松兄さんを元の姿に戻してくんない?」
デカパン「ホエ~、それは難儀ダスなぁ。とりあえず色々な検査機にかけてみるダス」
トド松「早く治してね。おそ松兄さんなんかにルックス担当の座を奪われるなんて耐えられない」
チョロ松「さすがドライモンスター・トッティー。それが本音か」
カラ松「気持ちは分かるぜ、トッティー。何しろ、このカラ松が、ちょっと嫉妬するくらい……」
一松「誰が誰でも同じ顔なのにルックス担当もクソもないから。同じ顔じゃないのがいるけど」
ジョー「それよりさー、なんか、ってひどくない? お兄ちゃん、傷つく……って、痛い痛い痛い、何してんの!?」
デカパン「ホエ~、DNA検査でも異常はないダスか。じゃあ、あっちの機械の中に入るダス」
ジョー「え~、ちゃんと安全性とか配慮してんの~? 俺、痛いの苦手だかんね」
デカパン「まあまあ、いいから。入るダス」

ホエホエホエホエ……チーン、プシューッ

デカパン「ホエホエ、検査結果が出たダス」
チョロ松「はやっ、どんなメカニズム!?」
トド松「それで、どんなことがわかったの?」
デカパン「おそ松の周りにエクトプラズムがいるダス」
六つ子「えくとぷらずむ?」
デカパン「心霊主義の専門用語で、要するに幽霊とか残留思念とかのエネルギーのことダス」

4.

デカパン、検査機から出たX線写真のような画像を前に説明する。

デカパン「そのエネルギーが皮膜のようにおそ松を覆って、その、何といったか……」
十四松「《島村ジョー》だよ」
デカパン「そう、その《島村ジョー》の姿を形成しているんダス」
ジョー「え~っ、じゃあ本当にハーフ顔のイケメンになれたわけじゃないの~? がっかりぃ」
十四松「おそ松兄さん、ドンマイ! ドント・マインド!!」
トド松「(ホッ)」
デカパン「エクトプラズムが霊能力や超能力無しに可視状態を維持するには、相当のエネルギーが必要ダス」
デカパン「つまり、おそ松にはものすごい思念が憑依していることになるダス」
ジョー「ふ~ん、じゃあ俺は《島村ジョー》の幽霊に祟られてるわけ? こわっ」
チョロ松「あんまり怖くなさそうに見えるけど」
カラ松「それは何か、人体に影響を及ぼしたりするのか?」
デカパン「無いとは言い切れないダスが、今のところ悪さはしてないダス。でも……」
一松「あのさ、こっちのやつは何? おそ松兄さんの後ろに写ってるやつ」
デカパン「ホエ~、それがわからないんダス。おそ松に近づいたり離れたり、挙動不審な小さい幽霊がいるんダスが……」
デカパン「ま、この幽霊の正体をつき止めるのは明日にして、今日はもう帰るダス。ワスも暇じゃないダス」
十四松「ありがとー、デカパン博士。さようなら」
デカパン「はい、さようならダス」

5.

帰り道。

チョロ松「なーんか、よくわからなかったなぁ……」
カラ松「ああ、さっぱりだ!」
トド松「とにかく、デカパン博士が何とかしてくれるらしいから任せるけど……」
十四松「早く治るといいねー、おそ松兄さん」
一松「……なぁ、十四松」
十四松「なに? 一松兄さん」
一松「お前……。ん、いや、何でもない」
カラ松「…………?」
トド松「あれっ、おそ松兄さんは!?」
チョロ松「あっ、どこに消えたあのバカ兄! これ以上世話焼かせな……」
カラ松「あそこだ! あれを見ろ!」

サチコ「ねえアイダ、あの人カッコ良くない?」
アイダ「F1レーサーみたいだよ、サッチー!」
サチコ「声掛けてきなよー?」
アイダ「無理ー! カッコ良すぎて死んじゃうー!」
サチコ「じゃあ私が行っちゃおうかなー?」
ジョー「なーんか、チラチラと視線を感じるなぁ」

6.

ティッシュ配りの女の子「あ、あのっ、よろしくお願いしまーす!」
ビラ配りの女の子「こ、こっちも、よかったらもらってくだひゃい! 噛んじゃったぁ……」
ジョー「えっ、こんなにもらってもいいの!? ありがとね!!」
ティッシュ配りの女の子「い、いいえ! なんでしたら箱ごと、ごそっと持ってってください!」
ビラ配りの女の子「こ、こっちのお店も、どうぞよろしくお願いしまひゅ! 噛んじゃったぁ……」
おそ松「ホントに!? ラッキー!! サービス精神旺盛だなぁ、見習いたいわー!!」
おそ松「お店は、メイド喫茶? 行く行く、絶対行く。こういうの好きそうな奴、知ってるしさ」
おそ松「いやー、二人ともありがとー!! なんか、今日はついてるなぁ~!!」
逆ナンのお姉さん「ねえ、そこのぼうや。今夜ヒマ? お姉さんのところで遊んでいかない?」
ジョー「え? ああ、俺、家に帰らなきゃいけないんだよね。ティッシュ、箱ごともらったし」
逆ナンのお姉さん「あら、残念ね。じゃ、これお姉さんの携帯の番号だから、ヒマな時かけてね」
ジョー「あれっ、もしかして、これって逆ナン? マジで!? 生まれて初めてされたわ!」

チョロ松「何アレ」
トド松「何アレって……何アレ」
カラ松「ジーザス!」
一松「やっぱり人間、顔が十割だった。死のう」
十四松「あっ、帰って来たよ」
ジョー「見てよこれ。なんか俺モテモテなんだけど! すごくない!? しかも、トド松ちょっと」
トド松「あっ、また勝手に僕のスマホ……」

トド松のスマホ『なあに? もうヒマになったの、ぼうや?』

ジョー「本物の番号だよ、ほらぁ! あっ、ごめんなさい。掛け間違えちゃった。じゃーねー」
一松「なん……だと……」

7.

一松「おそ松兄さんの童貞圧が消えた……!?」
カラ松「お、お前、本当におそ松か……?」
トド松「女の人をソデにするとか、何様!? 童貞がやることじゃないよ!?」
ジョー「しょーがないじゃん。ティッシュ、箱でもらっちゃったんだし」
チョロ松「何気にティッシュでモテ自慢するの止めろ! 腹立たしい!」
ジョー「俺、このまんまでもいいかもなー。マジでカリスマレジェンド人間国宝になれそう」
ジョー「っていうか、元に戻るメリットなくない? 無職童貞ニートでも、顔さえ良ければ……」

チョロ松「ダメに決まってんだろォ! 父さん母さんになんて説明する気だよ!」

チョロ松「二人ともたまたま法事で出掛けてたから今朝は何事もなかったけど、来週からはそうはいかないんだぞ!?」

チョロ松「ちょっとは頭使えよ、ダメ兄! どんなに外見が良くても中身が伴わなきゃ、意味ないんだよ! バカ!!」

ジョー「……行っちゃったよ、チョロ松のやつ。なんだ~? 嫉妬か~?」
カラ松「少しは我が身を振り返ったらどうだ、おそ松。……おーい、チョロ松。ウェーイト……」
トド松「そうだよ、いくらなんでもひどいよ、元に戻らなくてもいいなんて! このバカ松!」
一松「……帰ろ、十四松」
十四松「うん。……おそ松兄さんも」
ジョー「な、何だよ。俺、何にも悪くないじゃん。何で怒られてる感じなわけ?」
ジョー「っていうか、外見が《島村ジョー》でも中身が俺のままなら良くない? いつも通りじゃん」

???「……覚マセ……目ヲ覚マセ……目ヲ覚マスンダ!」

8.

翌日、松野チョロ松がなにか気がかりな夢から目をさますと、自分が寝床の中で《島村ジョー》に変わっているのを発見した。

C・ジョー(チョロ松)「ホワアアアアアアア!? なぜええええええええ!?」
O・ジョー(おそ松)「おっ、チョロ松。お前もカリスマレジェンドの仲間入りか~」
トド松「イヤアアアアア!! なにこれ、なにこの現象!? 意味わかんない!!」
カラ松「落ち着け、トド松! クール・ダウン!」
一松「松野家の顔面偏差値が底上げされていく……。最低。死ぬしかない」
十四松「あぁーっははぁーっ! 《島村ジョー》二体目ダァーッ! 国宝にすっぺ~!!」

9.

ここはデカパン研究所。わけのわからない機械が部屋の中央にそびえたっている。

十四松「というわけで、助けて。デカパン博士」
デカパン「ホエホエ、それはまたえらいことになったダスな。ところで、話題の二人の姿が見えないダスが……」
カラ松「二人はまだ見ぬ、ええと、なんだっけな」
十四松「《島村ジョー》だよ」
カラ松「そう、まだ見ぬJOE-girlとの出会いを果たしに行った」
トド松「有体にいえばナンパに行ったの! 昨日、中身がどうとか散々言ってた本人が!」
トド松「僕を差し置いて、あの見た目で、勝ち戦のナンパ、うっ、うっ、うぅーっ」
一松「トッティー、悔しさのあまり顔がトッティーになってる。気をつけて」
トド松「だって、六つ子の中で一番童貞卒業の見込みがあるのは僕のはずだったのに」
トド松「いつの間にかバカ松とシコ松に先越されたんだよ!? 悔しくないわけないじゃんっ」
デカパン「ホエ~、精神的な消耗が激しいダスな。しかし、解決方法はまだ見つかってないんダス」
トド松「はぁっ!? 何、じゃ、昨日は何してたの!? あのでっかい機械は見かけ倒しなの!?」
デカパン「あれは、エクトプラズムとの対話装置ダス」
四人「えくとぷらずむとのたいわそうち?」
一松「また不気味なものを作ったな……」
デカパン「まあ、聞くダス。O・ジョーことおそ松の周りに漂っていた小さい幽霊が、昨日からこの研究所に居着いてるんダス」
デカパン「あれが《島村ジョー》のエクトプラズムと関係の深いエクトプラズムであれば」
デカパン「あの小さい幽霊と交信することで、解決の糸口が見つかるかもと望みをかけたんダス」
デカパン「完成にはまだ時間がかかるダス、今日のところは帰るダス」
トド松「ほんとにそんなので、おそ松兄さんたちを元に戻せるのかな……」
カラ松「案ずるより産むがやすしだ、トッティー」
一松「よく間違えずに言えたな、クソ松。褒美に死をやろう」
カラ松「何にも褒美じゃないけどォ!? ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!? 鼻に練りからしやめてぇ!!」
十四松「ありがとー、デカパン博士。さようなら」
デカパン「はい、さようならダス」

10.

松野家の居間。

O・ジョー「やっぱり男は、中身でも無けりゃ金でもないっ!」
C・ジョー「顔がものを言うんですなぁ~、おそ松兄さんっ!」
O・ジョー「おいおい、もうおそ松って言うのやめろよ。ジョーくん」
C・ジョー「そうだね、僕たちもうすっかり生まれ変わったわけだし。ジョー兄さん」
二人「あっはっはっはっはー!!」

トド松「ただいまー」
カラ松「フッ、アイム・ホーム」
十四松「Here's Johnny!」
一松「それ、ジャック・ニコルソン?」
十四松「ううん、ジョニー・カーソン」

O・ジョー「おっ、あいつら帰って来たぞ。……よう、お帰り。つぶれあんまんまっシラケな諸君!」
C・ジョー「カリスマレジェンドと、このビューティージーニアスが直々に出迎えてあげましょう!」
カラ松「は?」
一松「あ?」
十四松「え?」
トド松「えっ、ちょ、キャラ変わりすぎじゃない?」
C・ジョー「えぇ? そうかなぁ。むしろ、本来の姿に生まれ変わっただけって言うか……」
C・ジョー「前よりも素直に自分を出せるようになった気がするんだよね、実際」
O・ジョー「そうそう。顔が変わって自信が湧いたっていうか、リア充しても違和感ないというか」
O・ジョー「やっぱ、元に戻るメリットが全然見つかんないわ。《島村ジョー》さいこー!」
カラ松「まるで別人だな……」
トド松「別人すぎるよ、危機感ないの!? どこまでバカ!? ほんとむかつく!!」

一松「同感」

一松「降って湧いた幸運にあぐらかいて、同じ穴のムジナだった俺たち見て、悦に浸ってるとか」

一松「一昨日まで同じ顔してた人間とは思えない。気持ち悪い。……俺、もう寝るから。じゃ」

11.

カラ松「あっ、おい、一松! ……我が身を振り返れって言ったろ、おそ松!」
O・ジョー「おそ松じゃないよ、ジョーだよ。《島村ジョー》」
カラ松「前から疑問だったが、その《島村ジョー》っていうのは何なんだ! フー・イズ・ヒー!」
O・ジョー「俺に聞かないでよ、最初に言い出したのは十四松じゃん。な、十四松」
十四松「う、うん……」
C・ジョー「どうする、ジョー兄さん? 二階に行くと一松と顔合わせちゃうけど」
O・ジョー「寝なきゃいいんだよ、寝なきゃ。お前らもどう? 今日のナンパの戦績とか、酒入れながら色々話し……」
カラ松「いらない。十四松、トド松、二階に行くぞ」
トド松「あっ、わ、わかった……」
十四松「あ、あいあいさー……」

O・ジョー「……なーんだよ、カラ松のやつ。明日の合コン、誘ってやろーと思ったのに」
C・ジョー「ひがみ、ひがみ。そのうち慣れてくれるって。それにこの流れなら、ひょっとして」
C・ジョー「カラ松兄さんたちも《島村ジョー》とかいうハーフ顔のイケメンになって」
C・ジョー「六つ子全員、就職活動も出世も結婚も何もかも思いのままって展開になるかもよ」
O・ジョー「おおっ!? 何その神がかり的なアイデア!! そっか、そういう展開ね~!!」

12.

松野家の物干し台。

カラ松「十四松。《島村ジョー》とは一体何なんだ。答えてもらうぞ」
十四松「え、えへへ、うう~ん、それがっすね~、あはは……」
カラ松「あのハーフ顔のイケメンを《島村ジョー》と名づけたのは、お前だったな。いや」
カラ松「あの顔が《島村ジョー》であるという確信を持って言った、というべきか。どうなんだ」
トド松「ちょ、ちょっと。そんな風に詰め寄るのやめようよ。どうせまた聖沢庄之助みたいなものなんでしょ、十四松兄さん?」
十四松「そうじゃないよ」

十四松「《島村ジョー》は悪の組織に改造されたサイボーグ戦士で、仲間と共に組織を裏切り逃亡」
十四松「その後は悪の組織、地底人、未来人、宇宙人、超能力者、その他の脅威と戦い続ける」
十四松「悲しい運命を背負った、正義の味方……らしい」

トド松「らしい?」
十四松「それがね、僕もよくわかんない。頭の中に勝手に浮かんでくる」
カラ松「ど、どういうことだ。やっぱり《島村ジョー》は架空の登場人物なのか?」
十四松「そうじゃない、気がする。なーんか知ってる感じがするんだ、《島村ジョー》。何でかな」
トド松「……十四松兄さんまで《島村ジョー》になられたら、僕、正気でいられないかも」
トド松「得体が知れなさ過ぎて怖くなってきたもん、《島村ジョー》」
十四松「で、でも、全然悪い感じはしないんだよ。なんたって正義の味方だし……」
トド松「それは十四松兄さんの頭の中での話でしょ!!」
十四松「ご、ごめん……」
トド松「あっ……。僕こそ、ごめん。怒鳴ったりして……」
カラ松「一体、何なんだ。《島村ジョー》とは……」

???「……覚マセ……目ヲ覚マセ……目ヲ覚マスンダ!」

13.

翌日、松野一松がなにか気がかりな夢から目をさますと、自分が寝床の中で《島村ジョー》に変わっているのを発見した。

I・ジョー(一松)「(絶句)」
C・ジョー「一松もとうとう入門してきましたね、我らが《島村ジョー》の世界へ」
O・ジョー「いいぞ~、一松ぅ。やっぱりお前はわかってるね~。空気読めてるね~!」
I・ジョー「(放心)」
カラ松「い、一松まで……」
トド松「もうヤダ……」
十四松「わぁあーっははぁーっ! 《島村ジョー》三体目ダァーッ! 三種の神器にすっぺ~!!」

14.

O・ジョー「じゃー、今日の合コンメンバーは、一松ことI・ジョーで定員ね!」
トド松「はっ? 合コン?」
カラ松「フッ、俺も呼ばれておくとするか」
C・ジョー「ダメ」
O・ジョー「この前の逆ナンのお姉さんが一席設けてくれたんだよん」
I・ジョー「マジっすか」
C・ジョー「私にもぜひ同席してほしいと頼まれましてね」
トド松「ってか、昨日から何だよその喋り方、腹立つ! シコ松! ライジングシコスキー!!」
C・ジョー「もう、ライジングシコスキー程度では動じませんよ。窓の外を御覧なさい」

トド松がカーテンをひくと、二つの黄金の自意識が、朝日の代わりに燦然と輝いていた。

トド松「なんじゃあれは!?」
カラ松「いかしてる!」
十四松「空飛ぶ○玉だぁああーーーっ!!」
C・ジョー「あのように、我々《島村ジョー》はもはや上空で輝いてることが当然なレベル」
C・ジョー「だから、どれほどライジングしていようが何ら違和感を持たれることがない」
C・ジョー「つまり、同世代カースト圧倒的最底辺からのパラダイムシフトに成功しているのです」
トド松「調子のりすぎじゃない!? おそ松兄さんの、ゴミみたいな自意識の面影なくない!?」
O・ジョー「いいの、いいの。あんなの、《島村ジョー》には似合わないでしょ」
O・ジョー「お前も、もう燃えるゴミとかうんこ製造機とか思わなくていいんだぞぉ、一松」
I・ジョー「……あざーっす」

西からもう一つの金○太陽が昇って来た。

15.

デカパン研究所。わけのわからない機械の中で、小さな光が明滅している。

十四松「というわけで、なんかもう、色々限界みたい。デカパン博士」
デカパン「ホエホエ、それならいいところに来たダス。ところで、例の三人はどこダスか?」
トド松「あいつら、《島村ジョー》になった三人で合コンに参加するんだって……」
十四松「一松兄さん、すっごくウキウキしてたよね~。意外に」
カラ松「う~ん、《島村ジョー》には卑屈や劣等感を取り除く効果でもあるのだろうか?」
十四松「おもしろいね~、それ。温泉みたい」
トド松「っていうか、怖くないわけ? あの三人。幽霊に憑依されてるようなものなんでしょ?」
デカパン「それは今から説明するダス。実は昨日、エクトプラズムとの対話装置が完成したダス」
デカパン「しかも、すでにあの小さい幽霊とのコンタクトにも成功したダス」
トド松「ほんと!? じゃ、あの三人を元の無職童貞クソニートに戻せるの!?」
デカパン「その方法をあの中で光ってる幽霊くんに聞くといいダス。ちょっと待つダスよ……」

デカパンがエクトプラズムとの対話装置の電源を入れる。中の小さな光が輝きを増す。

???「ヤア、でかぱん博士。例ノ二人ニ関シテ進展ハアッタカイ?」
デカパン「ホエ~、それがもう一人増えて三人になったダス」
???「ソレハ、マズイコトニナッタネ。更ニ宇宙ノ混濁ガ強マル可能性ガ……」

16.

トド松「あ、あのう、博士。誰と話してるの?」
十四松「あの中の小さい光じゃない?」
カラ松「どうやって喋ってるんだ……?」
デカパン「彼はイワン・ウイスキーという超能力者で、かなり強力なテレパシーで話してるダス」
イワン「ナニシロ、並行世界ドコロカ、宇宙ヲ飛ビ越エテ話シテルワケダカラネ。疲レチャウヨ」
イワン「君タチガ、六ツ子ノ兄弟ダネ? 本当ニ、ぷわ・わーく人ミタイニ、ソックリダ」
イワン「君タチニハ、僕ラノ仲間《島村ジョー》ヲ取リ戻スタメニ、協力シテ欲シインダ」
イワン「ソレハ、君タチノ兄弟ヲ取リ戻スコトニモ直結スル。協力シテクレルカイ?」

カラ松、十四松、トド松が了解すると、イワン・ウイスキーは事件の全容を語り始めた。

イワン「簡単ニ説明スルト、『黒い幽霊団(ブラックゴースト)』トイウ悪ノ組織ガ」
イワン「『歴史改変びーむ』トイウ時空ヲモ歪メル悪魔ノ発明ヲシタ」
イワン「僕ノ予知能力デ危険ヲ察知シタ仲間タチハ、『歴史改変びーむ』照射装置ノ撃破ニ成功」
イワン「シカシ、照射装置ニ最モ接近シテイタ009、島村じょーハ、装置ノ副次的作用ニヨリ」
イワン「意識ノミヲ別ノ宇宙ヘト、飛躍サセラレテシマッタ。ソノセイデ」
イワン「僕ラノ住ム仮称『石ノ森宇宙』ト、君ラノ住ム仮称『赤塚宇宙』ガ混濁シタ状態ニ陥ッタ」
イワン「『石ノ森宇宙』ハ、欠損シタ《島村ジョー》ノ意識ヲ補ワネバナラズ」
イワン「一方、『赤塚宇宙』ハ、余計ナ三ツノ意識ヲ抱エ込ミ、ばらんすヲ危ウクシテイル」
イワン「コノママデハ、二ツノ異ナル宇宙ガブツカリ合イ、大変ナコトガ起キル」
イワン「僕ハ、ソレヲ阻止スルタメ、じょーノ目ヲ覚マサセルタメ、ココニ来タ!」

16.5

用語解説
『宇宙』…………いわゆる宇宙空間とは違う。それぞれの漫画世界を区別する語。
『並行世界』……パラレルワールド。同じ漫画の違う設定(昭和版とか平成版とか)を区別する語。

17.

トド松「スケールでかすぎぃ!! マジでそんなことになってるの!? 信じられない!!」
十四松「カラ松兄さん、今のわかった?」
カラ松「フッ、もちろん。さっぱりだ!」
デカパン「要約すると、何もかもブラックゴーストってやつの仕業なんダス」
十四松「なんだって!? それはほんとうかい!?」
トド松「ふざけてる場合かっ!! 地球どころか宇宙が滅びるかどうかって時にぃ!!」
トド松「っていうか、なんで兄さんたちなわけ? なんでわざわざ無職童貞ニートなわけ!?」
イワン「恐ラク、じょーガコノ宇宙ヘト飛躍サセラレテ来テ……」
イワン「初メテ出会ッタ知的生命体ガ、偶然ニモ君ノ兄弟ダッタ……」
イワン「ソレダケノコトダッタト思ウヨ」
トド松「誰でもいいなら、僕でもよかったじゃああああん!!!」
デカパン「ホエホエ~、悔しさがにじみ出てるダスな~」
カラ松「博士、さっき言っていた大変なことというのは、具体的に何だ?」
デカパン「具体的には何が起こるかわからないダス」
イワン「大変ナコトノ顕著ナ例トシテ、『赤塚宇宙』デハ、君ラノ兄弟トじょーノ意識ノ癒着」
イワン「僕ラノ『石ノ森宇宙』デハ、三ツノ並行世界ノ《島村ジョー》ガ、昏睡状態ニアル」
イワン「モットモット悪イコトダッテ、起コッテモ不思議ジャナイダロウ?」
カラ松「そうだ、いいことを思いついた。君の超能力でババーンと良い感じに解決すればいい」
トド松「そうだよ! イワン、さん? イワンさんの超能力で何とかできないの?」

18.

十四松「それはできないんじゃない? 解決できたら、僕らに頼る意味ないもん」
イワン「彼ノ言ウ通リ。残念ダケド、僕ノ超能力モ、現在ノ交信ニ使ウダケデ精一杯ナンダ」
イワン「えくとぷらずむノ状態デハ、じょート対話スルコトスラ、不可能ダッタ」
十四松「それに、イワンはまだ赤ちゃんだし、負担をかけ過ぎるのは良くないと思うよ」
イワン「エッ……!?」
トド松「赤ちゃん!? えっ、宇宙をまたいでテレパシーできる人が、赤ちゃんなの!?」
カラ松「スーパーベイビーだな!!」
イワン「……ウン、ソウダヨ。トニカク、君ラノ協力無シニ事態ノ収束ハ望メナイ」
トド松「そんなぁ……。僕とイタイと十四松程度の人間が、宇宙の滅亡を止められるわけ……」
イワン「方法ハアル。君ラノ兄弟ト、じょーノ癒着シテイル『意識』ヲ分離サセ」
イワン「僕ラノ世界ニ送リ返セバイイ。後ハ、ドウヤッテソレヲ実現スルカガ問題ナンダ」
トド松「無茶苦茶だよ! 第一、おそ松兄さんたちが《島村ジョー》を手放すとは思えない」
トド松「何なら僕だって、ちょっとは《島村ジョー》のうま味を味わいたいところなのに(小声)」
トド松「それに『意識』を分離させるって、一体、どうすれば……」

その瞬間、《島村ジョー》ハブられ松三人衆の脳裏に閃くものがあった。
カラ松は青い水晶玉、トド松はピンクのミラーボール、十四松は天井を透かしてはるか上空を見た。

19.

トド松「あれっ。アレ、なんとかできそうじゃない? カラ松兄さん」
カラ松「確かに。十四松、飛び上がったものを撃ち落とすのは得意か?」
十四松「うんうん。ぶっ飛ばすのは得意だよ。三つあれば、どれかにゃ当たる!!」
イワン「チョット待ッテ。君タチハ、モウ何カ作戦ヲ思イツイタトイウノカイ?」
十四松「そうだよ!!」
トド松「多分、すっごく常識はずれなやり方だけど。こっちでは効果てきめんっていうか」
カラ松「フッ、おそらく『石ノ森宇宙』とやらではお目にかかれない方法だぜ。ブランデー」
イワン「ぶらんでー? ……ういすきー。いわん・ういすきー」
イワン「ゴホン。……デハ、君タチノ作戦ヲ聞カセテ欲シイ……」

20.

一方、その頃。

O・ジョー「ついに! 童貞史上初、普通の合コンにこぎつけたぞ!」
I・ジョー「面倒くさくなくていいよな、誰を選んでもレベル高いし」
C・ジョー「バッカじゃないの~? 当たり前だろ、全員《島村ジョー》だよ?」
逆ナンのお姉さん「ふふふ、感じ悪いわね~!! でも、顔は最高よぉ!!」
ロリババア「ハーフ顔のイケメンと飲めるって聞いたけど、まさか全員そうだとはね~!!」
一軍の人「君たち、そっくりね~。三つ子なのォ?」
O・ジョー「三つ子っていうか、何というか、この前までは六つ子だったんだけど~」
I・ジョー「三つ子と三つ子に分かれたっていうか」
C・ジョー「でも、これからまた四つ子、五つ子、六つ子って感じで、六つ子に戻る予定です」
一軍の人「……?」
ロリババア「頭の方はダメだったか……」
逆ナンのお姉さん「ま、まあまあ。細かいことは抜きにして、さぁ、飲も飲も!!」
一同「かんぱーい!!」

ドォンッ!!
爆発音が響くと同時に、《島村ジョー》のイケメンなハーフ顔が黒コゲになった。

女性陣「ええええええええええええええええ!?」
O・ジョー「ゲホッ、ゲホッ、さては、あいつらか!? 許せん!! 行くぞ、ジョー……って」
O・ジョー「えーっと、どっちも《島村ジョー》だしなぁ。……まあ、いいや。行くぞ、お前ら!」
C・ジョー「ゲホゲホ、ま、待ってよ、おそ、じゃないっ、ジョー兄さん!」
I・ジョー「えっ、まだ全然リア充してないのに……」

21.

屋外。カラ松、十四松、トド松が重火器を片手に、煙を上げる三連の金○太陽を見ている。
そして隣には、中に小さい光が瞬くカプセルと、エクトプラズムの計測器を抱えたデカパンがいる。

イワン「マサカ、本当ニ出来ルナンテ」
イワン「『意識』トハ実体ヲ持タナイえねるぎー、ソレニ物理的ニ干渉スル方法ガアルナンテ!」
デカパン「ギャグにルールは無用ダス。恐るべき科学力がなくとも、勝手に物理法則を覆す」
デカパン「何が起きても『これでいいのだ』で済んでしまう。それが『赤塚宇宙』のいいとこダス」
イワン「デモ、アノ方法ダト、実際ノ体ニマデ、トテツモナイだめーじガ」
カラ松「心配無用だ、ウォッカ」
イワン「ういすきーダッテバ!」
カラ松「俺のブラザーたちは一回二回死んだくらいで死ぬほど、ヤワじゃない」
トド松「セリフだけ聞くといかれてるけど、実際そうなんだよね」
十四松「よぉーし、僕が兄さんたちの呪いを解くぞぉー!!」

O・ジョー「おいっ!! 何やってんだ、つぶれあんまん三人衆!!」
C・ジョー「おかげで合コンが台無しになりましたよ!!」
I・ジョー「十四松!! 何だ、そのバズーカは!?」
十四松「これ!? これで一松兄さんたちの呪いを解くんだぁ~!!」
トド松「そうそう、これでおそ松兄さんたちの勝ち抜け人生も終わりだからね! へへーんだ!」
カラ松「世界一腕の立つこのカラ松が、そのキレイな顔をフッ飛ばしてやる。バーン☆」

22.

O・ジョー「やべぇ、フッ飛ばされる。精神年齢13歳(サーティーン)なんかにやられちまう」
C・ジョー「お前の精神年齢はそれ以下……って、ツッコんでる場合じゃない。何か対策は!?」
I・ジョー「話し合いましょう! 話し合いましょう!」
トド松「最初っから話し合おうともしなかったのは、そっちでしょ! 抜け駆け松三人衆!」
カラ松「確かに。聞く耳持たん!」
十四松「あははーっ! 一番かっ飛ばすのは僕!!」

ドォンッ!!

O・ジョー「ブベェッ!! ダメだ、奴ら日本語が通じねえ!!」
I・ジョー「俺、まだ何もしてないのにぃ……まだ全然モテてないのにぃ……」
O・ジョー「しくしく泣くな、一松! まだ手はあるだろ、ビューティージーニアス・チョロ松!」
C・ジョー「ゴホゴホッ、そうだ、あいつらにもちゃんとメリットがあることを教れば!」
C・ジョー「き、君たち、落ち着いて聞きたまえ! 君たちにも《島村ジョー》になれる可能性が」
カラ松「そんなことを言ってる場合じゃないぜ、ブラザー。宇宙の存亡がかかってるんだぜ」
十四松「なんか、兄さんたちが《島村ジョー》を手放してくれないと宇宙が滅亡するんだって」
トド松「で、兄さんたちが言うこと聞くわけないから、こうして強硬手段に訴えてるの。わかる?」
O・ジョー「何ワケわかんねーこと言ってんだ! 誰がみすみす《島村ジョー》を手放すかよ!」
C・ジョー「そうですよ! 今更、無職童貞ニートのつぶれあんまんなんかに戻れますか!」
I・ジョー「終わった……」
トド松「外道松兄さんたちの分からず屋!! こうなったら、力ずくで顔ひっぺがすから!!」

23.

イワン「……オカシイ」
デカパン「そりゃ、六つ子は子どものころからチヤホヤされたせいで、すこし頭のネジが……」
イワン「ソウジャナイ! じょーハ、二度マデモ僕ノ救援ヲ無視シタ!! 何故!?」
イワン「六ツ子ハトモカク、《島村ジョー》ガ宇宙ノ危機ト聞イテ、黙ッテイラレルハズガナイ」
イワン「ソレニ、アレホドノ物理干渉ヲ受ケテイルニモ関ワラズ」
イワン「未ダニ意識ノ分離ガ見ラレナイノハ」
イワン「『彼らが《島村ジョー》の意識を手放さないから』デハナク」
イワン「『《島村ジョー》自身が彼らの体を離れるまいとしているから』デハナイカ!?」
デカパン「ホエ!? つ、つまり」
デカパン「《島村ジョー》が、自分の意思で、おそ松たちの体にくっついて離れないんダスか!?」
イワン「じょー、君ハ、マサカ君ハ、僕ラノ世界を見捨テ、コノ世界ニ留マルツモリナノカ!?」

24.

カラ松「なぁ、十四松、トド松。おかしくないか」
十四松「あはは、落ちないねー……」
トド松「中身は見えてるのに、黄金の部分が全然落ちないよ……?」
デカパン「計測器でも、全然、《島村ジョー》が退散した気配は見られないダス」

三連の金○太陽は崩れかかっているが、黄金の部分がしぶとくこびりついている。

トド松「ってか、このやり方で合ってたの!? なんか無駄に兄さんたち痛めつけちゃったけど!?」
カラ松「大丈夫だ、いつものことだ」
十四松「どーすんのー!?」
トド松「兄さんたちー? 生きてるー?」
O・ジョー「あ、あ、諦めないぞ……!」
C・ジョー「戦いのない世界……平和な世界……」
I・ジョー「死ですら、この世界の平和を乱すことはない……」
島村ジョー「そんな世界を望んでいたんだ……。ここは、悲しみの無い世界だ!」
島村ジョー「戦争も、死の商人も、サイボーグも、この世界では、すべてギャグになる!」
島村ジョー「人間から疎外される悲しみ、人間の愚かさを嘆く悲しみ、そんなものは存在しない!」
島村ジョー「ここにいれば、胸を抉るような悲しみを、もう味わわずに済むんだ!!」

いつの間にか、おそ松、チョロ松、一松の口調が揃い、一つの人格を代弁しているようになる。

イワン「アレハ、じょーダ! 《島村ジョー》本人ダ!!」
イワン「アマリニモ意識ノ癒着ガ長引イタノデ、六ツ子ノ意識ヲ浸食シ始メタノダ!!」
カラ松・トド松・デカパン「な、なんだってー!?」

25.

トド松「元に戻らなくてもいいなんて言うからぁー!!」
デカパン「こんなこともあろうかと、強制的に自意識を分離する機械は作っていたダスが……」
イワン「……マダ、完成ノ段階ニハ、程遠イ」
カラ松「エイト・シャット・アウツ!!」
イワン「何カ、何カ、手ヲ打タナイト、君ラノ兄弟ハ……! じょーハ……! 宇宙ハ……!」
トド松「無理だよ……」
トド松「重火器で直接ぶん殴っても効かない、こっちの言い分なんか聞くわけない兄さんたちに」
トド松「これ以上、どんな手なら通用するっていうの!?」

???「手はある」

26.

十四松?「六つ子はともかく、《島村ジョー》ならば、俺の声を聞く耳を持っている」

トド松「……えっ。誰?」
カラ松「お、お前、十四松じゃないな!? フー・アー・ユー!?」
デカパン「計測器が、《島村ジョー》とも、イワンとも違うエクトプラズムを指しているダス!」
イワン「君ハ、マサカ……《君》ナノカ!?」
十四松?「そうだ。でも、お前が知っている《俺》とは違うかもな」
イワン「ソウカ。全テ、分カッタゾ。十四松君ガ、ドウシテ僕ノ正体ヲ知ッテイタノカ」
イワン「《君》ガ、ドウシテ、今、ココニイルノカ」
十四松?「任せてくれよ。あいつを連れ戻すのは、いつだって俺の役目さ」
トド松「十四松兄さんまで……。十四松兄さんまで、おかしくなっちゃった……?」
カラ松「俺たちと同じ顔なのに、まるで別人……。かと言って、《島村ジョー》とは違う……」
カラ松「何が起こっているんだ! 説明してくれ、テキーラ!」
イワン「恐ラク、並行世界ノ僕ガ送リ込ンダ、新タナ救援ダ。《彼》ナラ、信頼デキル」
イワン「《彼》ナラ、《島村ジョー》ヲ取リ戻セル」

27.

十四松のように見える謎の人物は、三人の島村ジョーのもとへ歩み寄った。

島村ジョー「何だ、君は。僕をこの世界から追い払おうなんて、そんなことは絶対にさせないぞ」
十四松?「見損なったぜ、ジョー。仲間の声が分からねえっていうのかよ」
島村ジョー「あっ、き、君は……! どうして、《君》がこんなところに!」
十四松?「決まっているじゃないか。おまえを連れ戻すのは、いつだって俺の役目だ」
十四松?「平和な夢に溺れて、すっかり腑抜けちまいやがって。俺たちの使命を忘れたのか」
島村ジョー「使命なんて、勝手に押しつけられたんじゃないか」
島村ジョー「勝手に改造されて、勝手に人間ではないものにされて、そのせめてもの慰みに」
島村ジョー「使命という、大義名分を押しつけられたに過ぎないじゃないか!!」
島村ジョー「見てくれよ、《ジェット》。僕の『この体』、機械じゃないんだ。加速装置もない」
島村ジョー「面白いんだ、同じ顔の兄弟が五人もいて。それに、両親がいて、好きな子もいて……」
島村ジョー「好きな子も……」

その時、島村ジョーの目の奥に、ある女性の姿がちらついた。

ジェット「ジョー。夢を見るのは、もうおしまいだ。みんな待ってる。フランソワーズも」
島村ジョー「フランソワーズ……」
ジェット「ここは、悲しみの無い世界だと言ったな。でも、ここは俺たちの世界とは違う」
ジェット「どれほど悲しみに苛まれても、俺たちは与えられたものに向きあっていくしかない」
ジェット「そして、この世界でお前に与えられたものは一つもないんだ。『その体』も」

28.

島村ジョー「ああ、そうだ……。元の世界では手に入らなかったものが、ここにはある」
島村ジョー「でも、それは全部、僕の物じゃない。おそ松くんたちの物だ」
島村ジョー「初めて、この世界に来て……こんな世界があることを知って……羨ましかった」
島村ジョー「怖くなった。元の世界へ戻ることが。また戦いの日常を繰り返すことが」
島村ジョー「でも、あの世界には……僕には、仲間がいて、恋人がいて、助けを求める人々がいた」
島村ジョー「けれど、それらは全部、ここには無いものだ……」
カラ松「そうだな!」
トド松「言えてる!」
ジェット「ジョー。加速装置は無くても、お前にはまだ切り札があるだろ? 今がそれの使いどころさ」
島村ジョー「そうだ、僕には最後の切り札がある。加速装置だけじゃない。あとは……」

29.

それから、数日後。
三人の《島村ジョー》は、生身の体を乗っ取ることをやめ、おそ松たちは自我を取り戻した。
だが、意識の癒着期間が長かったため、顔はまだハーフ顔のイケメンのままだった。

十四松「たのもー! たーのもー!」
デカパン「ホエホエ、ちょっと待つダスよ。はい、こんにちはダス」
十四松「こんにちはー! 『自意識分離機』が完成したと聞いて、やって来ました!」
デカパン「ホエ、待ってたダス。今日はちゃんと例の三人、いるダスな」
おそ松「あーあ。とうとう、この顔ともオサラバかー」
トド松「残念だったねー、ハーフ顔のイケメンが三日天下で終わっちゃって」
おそ松「いやー、未練あるけどさ。十四松の演説聞いたら、返さないわけにいかないでしょ。《島村ジョー》」
十四松「んんーっ? 僕、なんか言ったっけ?」
チョロ松「この顔でも、合コンご破算になっちゃったし、やっぱり男は中身を磨かないと」
一松「ケッ、磨けるだけの中身があるとでも?」
カラ松「安心しろ、一松。このカラ松のブラザーなんだ、心はさながらサンシャイン……」
トド松「この通り、三人も、十四松兄さんも、いつもの感じに戻ったよ」
トド松「あとは、無職童貞ニートのつぶれあんまんに戻すだけ!」
おそ松「お前、自分で言ってて悲しくならない?」

六つ子は、『自意識分離機』の前まで案内された。
分離機のそばには、エクトプラズムとの対話装置があり、イワンが小さな光を瞬かせていた。

30.

デカパン「三人とも、頭にこれを装着するダス。これはイワンの助言を得て開発した装置ダス」
デカパン「例の『歴史改変ビーム』を応用して《島村ジョー》を元の世界へ送り返すダス」
おそ松「え~? ちゃんと安全性とか配慮してんの~? 俺、痛いの苦手だからね」
デカパン「まあまあ。最悪、《島村ジョー》に意識が引っ張られて、向こうの世界へ行くとか」
デカパン「そのくらいダスな」
チョロ松「ちょっと待てェ!! そのくらいで済ませられる話じゃなかったけどォ!?」
イワン「僕ガじょーノ意識ヲ引率シテ行クカラ、安心シテ」
デカパン「怖かったら、ぬいぐるみでも抱っこするダス」
一松「……ねこ」
十四松「はい、ねこ」
一松「持ってきたの、ねこ」
十四松「こんなことも! あろうかと!」
一松「さすがぁ」
デカパン「おそ松、チョロ松も、他に必要なものがあったら言うダスよ」
おそ松「いらないよ。俺たちに必要なのは」

おそ松「あとは勇気だけだ」



お粗末。

31.おまけ

ある日曜日の朝、松野家の六つ子がなにか気がかりな夢から目をさますと、自分たちの父親が《島村ジョー》に変わっているのを発見した。

六つ子「松造おおおおおおおおおおおおおおおお!!」
松代「目が覚めたら、すでにハーフ顔のイケメンになっていたのよぉおおお!!」
M・ジョー(松造)「いやぁー、父さんもこの年で《島村ジョー》になるとは夢にも思わなんだ」
十四松「やった~! 《島村ジョー》ダァーッ!! 家長にすっぺ~!!」
チョロ松「何やってんの、あっちの世界!? またしてもブラックゴーストにしてやられてるじゃねーか!!」
一松「ねえ、これ、また宇宙がピンチになっちゃうんじゃないの?」
カラ松「こっちから、ヒーローとか出動させておいた方がいいんじゃないか?」
おそ松「じゃあ、また童貞自警団やる?」
チョロ松「クソの役にも立たないよ、あんなの!!」
トド松「っていうか、兄さんも父さんもずるいよ! 僕だってハーフ顔のイケメンになりたい!」
松代「そうよ! 父さんばっかり、ずるいわ! 母さんだって美少女になってやる!」
六つ子「えっ」

32.おまけ2

松代「テクマクマヤコン、テクマクマヤコン、《フランソワーズ・アルヌール》になれ~!」

魔法の鏡の力で、日本人の中年主婦が、フランス人の金髪美少女に変身した。

六つ子「松代おおおおおおおおおおおおおおおお!?」
フランソマーツ(松代)「これで、父さんと顔面偏差値が釣り合ったわ」
M・ジョー「そうだな、母さん。顔が若返ったせいか、なんだか気分が盛り上がって来たぞ」
フランソマーツ「ニートどもは放っておいて、久しぶりにデートしましょ。父さん」
M・ジョー「それはいいな。おい、お前たち。朝飯と昼飯は自分たちで何とかするんだぞ」

《島村ジョー》になった松造と、《フランソワーズ・アルヌール》になった松代は、出掛けて行った。
しかし、今の六つ子にとって重要なのは、松代が鏡台の上に残していったコンパクトだった。

おそ松「俺が最初に!!」
カラ松「いいや、俺だ!!」
チョロ松「もう一度、ライジング!!」
一松「合コン呼ばれたい!!」
十四松「加速装置!!」
トド松「今度こそハーフ顔に!!」

その後、コンパクトをめぐる熾烈な争いが繰り広げられたが、
その最中、コンパクトが割れていたことを六つ子が知るのは、一時間後のことだった。



お粗末。

33.おまけ3

ある朝、島村ジョーがなにか気がかりな夢から目をさますと、自分が《松野おそ松》に変わっているのを発見した。

フランソワーズ「きゃー! 私というものがありながら、幾人もの女性を魅了し続けた、ジョーの」
フランソワーズ「自慢のイケメンなハーフ顔が、つぶれあんまんになってしまったわー!!」
丈松(ジョー)「具体的な嫌味をありがとう、フランソワーズ」
丈松「でも、体はサイボーグのままだから加速装置もあるし、何か事件が起こっても平気さ」
フランソワーズ「ええ、そうね……」
丈松「不服そうだね、フランソワーズ。僕がこんな顔になったから、嫌いになったのかい?」
フランソワーズ「えっ!? そ、そんなことない、そんなことないわよ……」
フランソワーズ「中身はあなたのままなのだから、もちろん好きに決まっているわ」

フランソワーズは、その後、丈松が島村ジョーに戻るまで、『目』の透視機能をオンにしたまま生活した。



お粗末。

34.あとがき

来たる7月19日は『009の日』。
去年は赤塚生誕80周年だったが、二年後の2018年には石ノ森生誕80周年を迎える。

専門的なことはともかく、みんながおそ松も009も好きになってくれたら嬉しいんDA
ギルモア博士、お許しください

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