男「妖怪『目隠しさん』って知ってる?」友「なにそれ?」 (20)


男「妖怪『目隠しさん』って知ってる?」

友「なにそれ?」

男「今、流行りの都市伝説に出てくる妖怪だよ」

友「あー……『口裂け女』とか『人面犬』とかの類か」

男「そうそう」

友「――で、それがどうかしたのか?」

男「実はさ、都市伝説を扱ってるサイトによると『目隠しさん』が出るスポットってこの近くなんだよ」

男「今夜、二人で『目隠しさん』を探してみないか?」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1468249844


友「イヤだよ、俺はその手のオカルトに興味ないんだ。行きたきゃ一人で行けよ」

男「ふうん……」

男「ならいいんだぜ? この居酒屋での恥ずかしい写真、みんなにバラしても……」ピラッ

友「! ――な、なんでお前それを!?」

男「酔っ払ったお前が“撮れ!”“この美しい姿を撮れ!”って叫んでたじゃん」ニヤニヤ

友「ぐっ……!」

友「分かった……分かったよ! 付き合えばいいんだろ!」


その夜――

友「ここが、その『目隠しさん』とやらが出る場所か? 寂しい場所だな……」

男「ああ、夜中になると出てくるらしい」

友「ところでさ、聞いてなかったんだけど『目隠しさん』ってのは、どんな妖怪なわけ?」

男「んー……俺が覗いた都市伝説のサイトにもどんな妖怪かってのは書いてなかったんだよな」

男「『目隠しさん』と会話してればいずれ気づくだろう、みたいな文章だった」

友「なんだそりゃ? 結局どんな妖怪かは全くの不明ってことかよ!」


男「ま、普通に考えると“目隠ししてくる妖怪”だろうなぁ」

友「あるいは“自分の目を常に隠してる妖怪”とかな」

男「ああ、そっちのパターンもあるか」

男「どっちにしろ可愛いもんじゃん。少なくとも害はねーよ」

友「いや、分かんねーぞ……」


友「“目隠し”といいつつ、“目をえぐってくる妖怪”ってこともありうる……」

男「!」ゾッ…

男「お、おい、脅かすなよ!」

友「いや、俺も今自分でいいながら“案外これなんじゃないか”って思えちゃった……」

男「……」ゴクッ

男「なぁ……やっぱ帰ろうか」

友「うん、『目隠しさん』なんかいなかったってことで――」



「私に何か用ですか?」


男「うひゃぁぁぁぁぁっ!?」

友「ひいいいいいいっ!?」

目隠しさん「どうも」


目隠しさん「こんばんは」

男(こいつ……見た目は普通の人間っぽいけど、明らかに何かが違う!)

友(雰囲気というか気配というか……説明できないけど俺らとは決定的に違う生き物だ!)

男「も、もしかして……あなたが『目隠しさん』?」

目隠しさん「そうです」


友「あの……見たところ、目は隠れてないし……俺たちのこと、見えてますよね?」

目隠しさん「はい、見えてます」

男「俺たちに危害を加えることはないって考えていいんですよね?」

目隠しさん「はい、加えません」

男(よかった……)

友(とりあえずは一安心だな)


男「おい、どうする?」ボソッ…

友「どうするって……『目隠しさん』探そうっていったのはお前だろ?」

男「そうなんだけどさぁ……出会った後のことはなんも考えてなかったし……」

男「もう帰る?」

友「いやいやいや! さすがにそれはねーよ! せっかくだから色々質問しようよ!」

友「まだどうして『目隠しさん』って名前なのか分かってないしさ」

男「そうだな、じゃあ色々聞いてみるか」


男「性別は?」

目隠しさん「どっちともいえません」

友「年齢は?」

目隠しさん「分かりません」

男「元々は人間だったの?」

目隠しさん「分かりません」


友「タバコ吸う?」

目隠しさん「吸いません」

男「好きな食べ物は?」

目隠しさん「食べません」

友「なんで『目隠しさん』って名前なの?」

目隠しさん「分かりません」


男「ダメだ……何者なのかはおろか、なんで『目隠しさん』なのかすら分かんねー」

友「こんなに中身のない一問一答は生まれて初めてかもしれないな……」

男「でも、サイトによれば会話してれば『目隠しさん』の理由は分かるって書いてあったんだよ」

友「『目隠しさん』も俺らの相手を嫌がってはいないみたいだし、質問を繰り返すしかないか……」

男「うーん……だけどなかなか面白い質問も思い浮かばないなぁ……」


男「えっと、変な質問ですけど……なにか好きな俳句ってあります?」

目隠しさん「古い毛や 買わず飛びこむ 水の音」

男「松尾芭蕉か……たしかにいいですよね、あの句は」

友「あ……」

男「え? なに?」

友「俺、分かっちゃったかも……」

男「え!?」


男「分かっちゃったって、『目隠しさん』の理由?」

友「うん」

男「え、マジで!? なんで!? どうして分かったの!?」

友「『目隠しさん』になるべく長いセリフを早口でいわせてみろ。そうすりゃ、多分お前も分かる」

男「ホントかよ……よーし……」


男「『目隠しさん』、今からいうセリフをなるべく早口で復唱して下さい」

目隠しさん「いいですよ」

男「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。ハッピーニューイヤー!
  今年は申年だから来年は酉年! だからカーネル・サンダース食べ放題!」

目隠しさん「明けましておめでとうございます。今年も世と市区お願いします。ハッピーヌウーイヤー”
      kと押しは申年だから来年は酉年” だからカーネル・サンダース耐え放題!」

友「……な?」

男「あー……そういうことか」







おわり

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