梨沙「こういう格好のがいいんじゃない?」晴「!?」 (38)

モバP「俺がいなくても大丈夫だよな」晴「!?」
モバP「俺がいなくても大丈夫だよな」晴「!?」 - SSまとめ速報
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から引き続いてます。2年後、晴が14歳で寮暮らししてる設定です

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1467990493



晴『――ど、どうしたんだよ、こんな物陰に連れてきてさ』

P『晴……』

晴『っ!? ちょ、近い! 急に顔近づけるなって!』

P『俺、もう我慢できないんだ』

晴『我慢って何のこと――うわわっ!?』

晴(だ、抱きつかれて……つーか体が動かねえ! どうしちまったんだよオレの体!)

P『もう晴のことしか考えられない。……いいよな?』

晴(何がいいよな? なんだよ、って声も出なくな、っ――)

晴『――――――――』

晴「うわぁ!?」ガバッ

晴「…………あれ、なんだ、夢か……」

晴「……なんだってまたあんな、ん?」

晴「漫画……読んでる間に寝ちまったのか。そういやさっきの夢みたいなシーンがどっかにあったような」

晴(デートの参考になるからって梨沙から無理やり渡されたけど、間違いだったか? そもそもあいつこんな少女漫画持ってたっけ? それにPがあんなことするわけ……)

晴(…………)

晴「はっ、何想像してんだオレ!? こういうときに限って夢の内容はっきり思い出せるのなんなんだよ!」

晴「とりあえず着替えて飯食べて……学校いくか。何かしてないとまた思い出しそうだな……」

P「おはようございます!」

ちひろ「おはようございます♪ あら、何か良いことでもあったんですか?」

P「わかります? いやーいい席が取れましてね」

ちひろ「席? 何かのチケットでも?」

P「そんなとこです」

ちひろ「へ?……もしかして、誰かとのデート用に?」

P「うっ、そんなとこです!」

ちひろ「ふふっ、楽しんできてください。きっとお相手も満足してくれますよ♪」

P「そうだといいのですが、やっぱり緊張しますね。デートとして出掛けるなんて経験がほとんどないもので」

ちひろ「デートともなれば相手をどれだけ思いやれるかが肝心です。それだけ悩んでるプロデューサーさんの気持ち、きっと伝わりますって」

P「ありがとうございます、そうですよね。俺がリードしないといけないんだから、しっかりしないと!」

ちひろ「その調子で今日のお仕事もしっかりお願いしますね!」

P「任せて下さい! オフに邪魔が入らないよう片っ端から片付けますとも!」

晴(んー……学校着いたってのに思い出しちまうな。デートってあんなことするのが前提、なわけないよなあ?)

晴(でもオレそういうのよく知らねーし、……ちょっと周りの女子に聞いてみっか)

晴「なー、今いいか? お前ってさ、デートしたことある? デートってどういうことするんだ? ……え? いや、なんとなく」

晴「遊びに行く? ショッピング? へー、やっぱそんなもんなんだ」

晴「そうだよな……別にデートだからって特別なことしないよな。なに、特別な人とするからデート? ……何をするかじゃなくて誰とするか、ってことか?」

晴「ふーん、そういうことか。何となくデートってのがどういうのかわかったぜ。ありがとな」

晴「……ん? いや、別にこいつをデートに誘ってるわけじゃ……ズルいって何だよ!? ってかお前らどっから出て来やがった!?」

晴「落ち着け! 何でオレがお前らとデートすることになるんだよ、そもそもオレもお前らも女だろうが! おいって!」

晴(……聞いちゃいねえ。オレとデートしたいってどういうことなんだよ……デートって、なんなんだ……)

P「??」カタカタ

ちひろ「ところで、晴ちゃんとどちらに行かれるんですか?」

P「え? そりゃあ色々考えましたけども、何分初めてのことですし晴が気楽に楽しめるようにサッカー観戦でも、あれ?」

ちひろ「そうですかー、私は良いと思いますよ。そのプラン」

P「……俺、誰と行くなんて言ってませんよね」

ちひろ「ふふっ、ごめんなさい♪ てっきり晴ちゃんを誘うものだと思ってましたので」

P「……まあ、先日はあれだけお世話になりましたからね。一応聞きますけど、まさか止めようなんて考えてたりは」

ちひろ「しませんよ、とは立場上申し上げにくいですが、ひとまずはプロデューサーさんを信用してますから」

P「すみません。いえ、ここはありがとうございますの方がいいのでしょうか」

ちひろ「どちらでもいいですよ。それで、晴ちゃんに初デートの行き先は伝えてあるんですか?」

P「まだです。良い席が取れなかった時のことを考えて、まずは取れてからにしようかなと」

ちひろ「ほほう。用意周到ってことですね」

P「仕事の時のようにゴール裏とはいきませんから、どの辺が都合いいのか調べはしました」

ちひろ「それなら大丈夫そうですね。私が言うまでもないでしょうが、スキャンダルだけはくれぐれも」

P「わかってますって。……最悪の場合、晴ですし次の仕事の下見ということにでも」

ちひろ「それだと晴ちゃんにとっては周りに気付かれた方がいいかもしれませんね。下見であれば近々サッカー関連のお仕事をさせてあげなきゃ、ファンの方々にも疑われてしまいますから」

P「うっ、たしかに。俺としても取ってきてあげたいんですがなかなか難しいんだよなあ……とにかく、晴には内緒ですよ? さあ仕事仕事!」

晴(事務所……入りにくいな。顔合わせたらまたイヤでも思い出しちまいそうだ、こそこそすんのもどうかと思うけど仕方ねぇ。Pに気付かれないようレッスンしにいこう)

梨沙「なーに突っ立ってんのよそんなとこで」

晴「うわあっ!?」

梨沙「ちょ、そんなに驚かなくてもよくない? どうしたのよ?」

晴「な、なんでもねーよ……それより大きい声出すな。気付かれるだろ?」

梨沙「気付かれるって、誰に?」

晴「あ、いや……」

梨沙「ははーん、またアイツと何かあったんでしょ。相変わらずねアンタ達って」

晴「何もねーって! ったく、誰のせいだと思ってんだ」

梨沙「え、アタシ? 身に覚えないんだけど、何かしたかしら……」

晴「お前のせいっていうか、お前が持ってきた物のせいっていうかだな」

梨沙「んー? あぁ、アレ読んだの。どうだった? 晴には刺激が強するかなって控え目なやつ選んでもらったつもりなのよ?」

晴「アレで控え目なのか……。普段どんなの読んでんだよ女子って」

梨沙「さぁ、アタシも借りてきただけだからよくわからないわ」

晴「あれ梨沙が持ってるやつじゃねーの?」

梨沙「いまいち面白さがわからないのよねぇ。父親とのロマンス物だったら読んでみてもいいんだけど」

晴「お前こそ相変わらずだな……」

梨沙「アタシのことはいいの、晴は何でこんなとこで突っ立ってたのよ。いい加減教えなさい!」

晴「梨沙に言うのはなぁ」

梨沙「はぁ!? 今さらアタシに隠し事するつもり!?」

晴「そうじゃねーよ。からかわれるだろうから言いたいくねーだけ」

梨沙「あっそう。ふぅん? そっかぁ♪」

晴「うわっ、悪い顔してんなぁ。……わかった、言うよ! だから余計なことすんなよな!」

梨沙「アタシまだ何にも言ってないわよ。それで? どうしたのよ」

晴「あー、なんつーか……夢に出たっつーか」

梨沙「?」

晴「漫画だよ。読んでる間に寝ちまったんだ。そのせいか、中身そっくりなのが夢ん中で再現されたんだよ」

梨沙「あー、たまにあるわよねそういうの。それと何か関係あるの?」

晴「それだけならなんてことねー話で済んだんだけどな、相手の……男役がな?」

梨沙「あぁ、そういうことね。漫画の世界を自分達のことに当てはめた夢だなんて、晴も可愛いとこあるじゃない♪」

晴「それだよそれ! だから梨沙に言いたくなかったんだっつの!」

梨沙「からかってないわ、褒めたつもりよ? いいじゃない。最近の晴、乙女って感じするわ。Pもそんな晴をますます放っておけなくなるって」

晴「……そういうものなのか? じゃなくて、そういうわけだから、顔合わせにくいんだよ」

梨沙「でもそれ、晴だけの問題よね? そうやって避けたりしたらアイツもまた変に勘違いするんじゃない?」

晴「! そう、だな……関係のないことでこそこそされだしたら不安になるよな。オレだってイヤだ……」

梨沙「アタシも一緒にいるんだからなんとかなるでしょ。はいはいいつも通りいつも通り、さっ行くわよ!」

ちひろ「あら、梨沙ちゃんと晴ちゃん」

晴「うっす」

梨沙「……あそこで一心不乱に仕事してるの、なに?」

ちひろ「プロデューサーさん? ふふっ、仕事を早く終わらせたいんですって」

晴「ふ、ふぅん。なら邪魔しないようにしないとな」

梨沙「助かった、とか思ってないでしょうね」ヒソヒソ

晴「……悪いかよ」ヒソヒソ

ちひろ「? どうかしたんですか?」

梨沙「なんでもなーい! あんなにやる気出してるところ見たことなかったから、つい気持ち悪いって思っただけよ」

P「聞こえてるぞー、梨沙ー」

晴「っ!?」

P「2人とも、着替える時間なくなっちまうんじゃないか? レッスン、もうすぐだろ?」

梨沙「わかってるって! それじゃね」

晴「あ、待てって。……じゃあな!」



ちひろ「お仕事、終わってからですか? 晴ちゃんをお誘いするの」

P「ええ、まあ。万全な状態で誘いたいですから。チケットは取れましたが誘っておいてやっぱり駄目そう、ってなったりでもしてガッカリさせるのは避けたいですし」

ちひろ「それだけ気を回せるなら当日もきっと何とかなりますよ♪」



梨沙(仕事を早く終わらせたい理由なんて、やっぱりあれよね。晴は気付いてるのかしら?) チラッ

晴「よし、今の不自然じゃなかったよな、な?」

梨沙(だめだこりゃ)

梨沙「服を買いに行きましょう」

晴「は? どうした突然、またショッピング付き合えって話か?」

梨沙「どちらかというと晴の服を見に行こうかなって」

晴「ますますワケわかんねーよ。オレ新しい服なんて別に今は欲しくないぞ」

梨沙「アンタねぇ……。Pがあれだけ仕事を片付けようとしてた理由、ピンと来ない?」

晴「ただの気まぐれなんじゃねーの? それか仕事が溜まってたとか」

梨沙「違うわね。あれは時間を作るために、今のうちにやっておける分を終わらせてるのよ。誰かさんのために」

晴「んー……?」

梨沙「アンタよアンタ! デートするって約束したんでしょ?」

晴「!? オレか!? え、でも……するとは約束したけどいつするなんて話はまだ……」

梨沙「これから誘うつもりなんでしょうね。だから、アンタもそのつもりで身構えておきなさい」

晴「それで、オレの服を買いに?」

梨沙「そういうこと。初デートならなおさら着ていく服に気合入れなきゃ」

晴「あの漫画の主人公もやたら迷ってたっけな……普段の格好じゃだめなのか?」

梨沙「Pに愛想尽かれてもいいならそれでもいいんじゃない?」

晴「アイツはそんなことでオレのこと嫌いになったりしねーよ!」

梨沙「そうだけど、晴がどんな格好してきてくれるか、期待してるだろうなぁ。俺とのデートなんて大したことでもないんだろうな、とかひっそり思われてもいいの?」

晴「うぐっ、それは……ありそうだ。……服かぁ」

梨沙「だから、レッスン終わったら帰りに寄っていきましょうよ。アタシがついてるんだからバッチリ決めてあげるわ!」

晴「梨沙のセンスでいくとオレには合わないような……まぁ、オレ一人で考えるよりはマシ、か」

晴(梨沙のことだから、どうせ露出多めにしてアピールしてこいってなるんだろうなー)

晴(衣装ならともかくPとのプライベートでそれは、上手く言えねーけど恥ずかしいっつーか……アイツもオレがそんな格好してきたら変に思うだろ絶対)

晴(なんか不安になってきたぞ。梨沙とは違ったセンスの人もいれば、間を取ったりできて決めやすそうなもんだが……うん?)

飛鳥「やぁ、遅かったね」

梨沙「ちょっとねー。飛鳥の方はいつも早いじゃない、自主練とかも最近よくやってるみたいだし?」

飛鳥「アイドルに集中していたいんだ。それだけさ」

晴「うっ……なら、だめか」

飛鳥「? 何がだめなんだい、晴?」

晴「あぁ、レッスン終わったらオレ、梨沙と服を買いに行くことになっててさ。飛鳥もいてくれたら心強かったんだが」

梨沙「なによ、アタシだけじゃ頼りないって言うの!?」

晴「お前に任せたら絶対セクシー路線にされるだろ……。飛鳥なら前からカッコイイ服よく着てるし、2人を参考にすればバランスいいかなって思ったんだけど」

梨沙「飛鳥は……聞いたでしょ、アタシらに付き合ってる暇なんてないんだから諦めなさい」

飛鳥「ふむ、たまにはいいな。……ボク、でよければ、いいよ」

晴「ほんとか! 言ってみるもんだな、レッスン終わったら頼むぜ!」

梨沙「アタシには遠慮しないくせに。ま、アタシが服見に行こうって言い出したんだけどね。飛鳥はいいの?」

飛鳥「これぐらいの誘いに乗れる程度には、余裕があってもいい。そう思っただけ、かな」

梨沙「……そう、ならいいわ、アタシからもお願いするわね!」

P「終わった……」

ちひろ「それはどちらの意味でなのでしょう」

P「え? ああ、そのままの意味ですよ。やっておけるだけの仕事が片付く目処が立ちそうです。企画も何本かストックできました」

ちひろ「つまり?」

P「晴をデートに誘います!」

ちひろ「いよいよですね、そろそろレッスンも終わって戻って来る頃じゃないですか?」

P「……あの、ちひろさん?」

ちひろ「はい?」

P「チケットって誘う時に渡す物なんでしょうか。それともどうせ一緒に入るんだから俺が持っているべきなんですかね?」

ちひろ「うーん……どちらでもいいかとは思います。晴ちゃん次第、でしょうか。誘う時に取ったチケットを見せるだけでも、自分のために用意してくれたんだなーってことは伝わりますよ」

P「なるほど」

ちひろ「あと、今回の行き先とお二人の間柄であれば関係のない話になりますが、チケットというのはそれだけで高価なものですよね」

P「? そう、ですね」

ちひろ「お誘いの時に使う場合は、チケットを用意した労力を相手に感じさせないことが大事なお気遣いになりますので、覚えておくとお誘いに快く乗ってもらいやすくなるかもしれませんよ?」

P「……先行投資が無駄にならないよう絶対に来てほしい、みたいな重さを匂わすのはいけないってことですよね。だからよく貰い物ってことにして軽い感じに誘うのか……今後の参考にします」

梨沙(――みたいなレクチャーしてくれてるといいんだけどね。アイツ仕事抜きだと女の子の扱いをよく知らなそうだもの)

晴「なにボケッとしてるんだよ。寮の門限もあるんだし、早く着替えて服見に行こうぜ?」

梨沙「わかってるわ。それより、なんだかんだノリ気じゃない?」

晴「うっせ!」

飛鳥「しかしキミ達にしては珍しいね。晴が付き合うんじゃなく、晴に付き合うショッピングなんてさ」

晴「ま、まーな。たまにはオレも……な?」

梨沙「こっち振らないでよ、って言いたいとこだけど言い出しっぺはアタシなのよねぇ」

飛鳥「……? 気になっていたんだが、梨沙が晴のために提案した、ということでいいのかい?」

晴「そういうことになるな。こんな時ばっかオレの世話焼きたがるんだよなー梨沙って」

飛鳥「こんな時、ね」

梨沙「! だって……そう、一緒に歩くアタシが恥ずかしくない格好してもらわないと困るの!」

晴「おい、そんなにひどい格好してるつもりねーぞ!?」

梨沙「どうだか。たまにアタシが男の子と一緒に歩いてたーなんて噂が流れる時って、大抵アンタと出掛けた直後なのよね」

晴「む……そりゃあ、悪かったな」

梨沙「悪いと思ってるなら今日はスカート買うわよ! いいわね♪」

晴「それとこれとは話が違うだろ!」

飛鳥「ふふっ、変わらないねキミ達は。なんだか安心するな」

晴「そうかあ?」

梨沙「……準備できたわよ。いきましょ?」

飛鳥「あぁ、そうだね」

晴「あれっ、お前らいつの間に……! さ、先行ってろすぐ行くから!」


 ガチャッ

ちひろ「あ、帰ってきたみたいですね」

P「……緊張するなあ。よっ、お疲れさん」

梨沙「あら? もう仕事の方はいいの?」

P「まあな、何とかなりそうでさ。飛鳥もお疲れ」

飛鳥「……お疲れ様」

P「えっと、晴は? まだ着替えてるのか?」

梨沙「そろそろ来るんじゃない? ……あ、来た」

晴「うっし、間に合った。何してんだ?」

P「よう。お疲れさま」

晴「おうっ!?」

晴(いけねっ、せっかく忘れてたのに油断してた……! 焦るなオレ、自然にしてないと余計な誤解をされるから……)

晴「オ、オレらこの後用事があるんだ。急がねーと、またなプロデューサー! ちひろさんも!」

P「晴? おい、話が、晴ーーっ!?」

梨沙「……はぁ、まったく。そもそもアタシら置いてったら意味ないでしょうに。ってなワケだから、アタシ達もう帰るわね」

飛鳥「先に失礼するよ。また明日、P。ちひろさん」

ちひろ「気を付けて帰ってくださいねー」

P「……またな、2人とも。何の用か知らないけど遅くなる前に帰るんだぞ」



P「ろくに話す隙も与えてくれないとは……」

ちひろ「こういう時もありますよ。焦らずじっくりいきましょう」

P「そうですね。携帯に掛けて誘う手もありますが、最終手段にしたいなあ」



梨沙「はーるー? さっきの態度はないんじゃなーい?」

晴「いや、つい、その、すまん」

飛鳥「……」

とりあえずここまで

来たる晴の誕生日に完結できたらいいですね……

飛鳥「ここなんかどうだい?」

晴「おお、雰囲気からして期待できそうだぜ!」

梨沙「ふーん、飛鳥が好きそうな店ね。でも晴にはちょっとキザったらしくならない?」

飛鳥「大事なのは本人が気に入るかどうかさ。そうだろう?」

晴「うん、まー梨沙の言いたいことも何となくわかるけどな。あんまり服に気をつけたことねーし、急にこういうの着出したら何か言われそうだ」

飛鳥「ファッションは自己を表現する最たる手段だ、晴も表現したい自己があるなら自分自身を着飾ってやるといい。それが誰にどう思われようと、決して恥ずべきことではないよ」

梨沙「それについてはアタシも同意見だわ。というかアイドルなんだから、普段着にも気を遣いなさいって。誰がどこで見てるかわからないのよ?」

晴「あのさ、そんなにオレの普段着ってダメなのか?」

梨沙「ダメっていうか、無難? 地味?」

飛鳥「服に着られるということは無いが、ただ着ているだけでは味気ないね」

晴「お前らと違って動きやすさ重視だからなぁオレ……」

梨沙「別にそれはそれでいいのよ。その上で、どんな風にコーディネートするかが重要なんだから」

晴「コーディネートつっても、要するにどうしろっていうんだ?」

梨沙「まずはお金を掛けなさい!」

飛鳥「身の丈に合ったものを着ているつもりなのだろうが、晴はまだ自身を過小評価しているきらいがあるんじゃないかな」

晴「うーん……サッカーしてるし小遣いはそっちになるべく回したかったから、他のことは二の次だったんだよな」

梨沙「晴のパパなら娘が可愛くなるなら喜んで服とか買ってくれそうだけどね」

晴「兄貴たちもいるしオレにばかり金掛けるわけにもいかねーって」

飛鳥「アイドルの仕事で得た給料はどうしてるんだい?」

晴「親父に任せてるよ。今どのくらいあるのかは知らねーけど」

梨沙「アンタのお金なんだから、そろそろ好きに使ってもいいか聞いてみたら?」

晴「んなこと聞いたらやっと色気づいたかーなんて言ってきそうだからいいや、めんどくせー。でもまあ、たまには服に金掛けてみてもいいか……」

梨沙「見てほしい相手がいるならなおさらね!」

晴「いちいちうるせーぞ! なぁ飛鳥、オレに合いそうなの見てくれるか?」

飛鳥「お安い御用さ。ただし自分で選んでみないことには審美眼を養えないから、まずは晴が一人で選んでくるように。いいかい? 自分が服に着られないよう気をつけることだ」

晴「おう! じゃあ良さそうなの探してくるぜ!」

梨沙「飛鳥、なんかお姉さんっぽくなったわね。面倒見がよくなったっていうか」

飛鳥「キミ達より年上という意味では、年上ぶりたくなるものさ」

梨沙「前はそんな風じゃなかったでしょ。どっちかっていうとアタシらを年下扱いしてたっていうかさ?」

飛鳥「……もう中学2年生だったね、キミ達は」

梨沙「そういう飛鳥は高1だっけ。高校生になると少しは大人になった気になるのかしら?」

飛鳥「中学に上がった時に梨沙は何も思わなかったのかな」

梨沙「それと同じってこと?」

飛鳥「そういうものさ。……ボクがアイドルになったのも中2の時だから、今の晴と梨沙を見ていると感慨深いものがあるよ」

梨沙「へぇ、どんな風に?」

飛鳥「変わらないな、とだけ」

梨沙「? それのどこが感慨深くなるのよ」

飛鳥「キミ達はいま思春期真っ盛りで、自我の確立なんかに勤しむ時期にあるだろう? それでもボクの中のキミ達と変わらずそこにいるというのが、なんだか眩しく見えてね」

梨沙「飛鳥だってあんまり変わらないじゃない、そういうよくわかんないセリフとか」

飛鳥「……ボクはこれでも揺れ動いているんだけどな、自分ってヤツに」

梨沙「あ、もしかしてお姉さんっぽくなったのも高1になったからとかだったりする?」

飛鳥「年齢を重ねたことの影響はあるだろうね。……ボクの場合は、アイドルになった時期も影響してるというか」

梨沙「……晴が服選んでくるまでなら、付き合うわよ?」

飛鳥「ふふっ、そういうところも変わらないな、梨沙は」

梨沙「そうかも、ね。で、どうしちゃったのよ、飛鳥お姉さん?」

飛鳥「自分で言うのも何だが、……ボクは中2らしい痛いヤツとしての偶像、アイドルをしてきた。今なら梨沙もわかるかい、中2という感覚がさ」

梨沙「飛鳥みたいな子っていうか、そういうことよね?」

飛鳥「身も蓋もないが、そうなるかな。しかし今はもう高校生だ。14歳だった頃の感覚でい続けられているかとなれば、少し難しくなってきている」

梨沙「年を取れば仕方ないんじゃない? それとも何かあったの?」

飛鳥「不変なものなんて無い、だが……高校に上がっても周りからは変人扱いさ。それだけなら中学の時と大差ない」

梨沙「……それで?」

飛鳥「……。『学校にいる間もキャラを作ってないといけないんだね』と、誰かに言われたよ。……ボクが『ボク』と呼ぶところとか、ね」

梨沙「……えっと、芸能人ならよくあることじゃないそんなの。そいつらが普段の飛鳥のことを知らないからでしょうに」

飛鳥「中2の、痛い偶像の……ボクを知っていたその誰かは、高校生となった……ボクには不釣り合いだとでも思ったのだろう」

梨沙「えっと、1ついい?」

飛鳥「?」

梨沙「アンタ、自分のことボクって呼ぶ時、一瞬だけ間が空かない? なーんか違和感あったんだけどやっとわかったわ。どうしたのよ?」

飛鳥「……痛さを自覚して、受け入れていたつもりだったんだけどね。ただコドモであることを言い訳にしていたに過ぎなかったんだ。オトナになるってことは、痛みを知った上で許容し耐えられることを指すのかもしれない」

梨沙「??」

飛鳥「あぁ、すまない。……ボクは以前から痛いヤツだったということは梨沙にもわかるだろう?」

梨沙「んー、昔はよくわかんなかったけどねそういうの」

飛鳥「とにかく……ボクは痛いヤツだった。でもそれは年相応だから仕方ない、そう言い訳していたんじゃないかと思うんだ」

梨沙「子供だったから許されてた、ってこと?」

飛鳥「現にありのままでいても仮初めの姿だと判断された。……もはや存在の否定だ。普段からそんなに痛いヤツなんていやしない、と暗に言われたようなものさ。その上でありのままいようとすれば、どんな目で見られることになるだろう。痛いヤツでいることに……いつしかためらいが生まれてしまった」

梨沙「ためらい、ねぇ」

飛鳥「痛みを感じることを恐れるようになった、とでも言うのかな。今の……ボクは、痛いヤツだと思われることへの痛みに耐えて許容出来るほど、オトナにはなりきれないみたいだ」

梨沙「別にまだ高校1年生なんだから大人じゃなくたっていいんじゃないの。大人になりたくないとか言ってなかった?」

飛鳥「残念ながら時間の流れには逆らえないからね。コドモでいることを選んでも、そうすることの痛みに耐えられなくなるだろうさ」

梨沙「まぁ、いい年してなんてよく言うものね」

飛鳥「梨沙はどうだい? 昔は出来たことが今は出来ない、なんてことは」

梨沙「アタシ? そう言われると……思い知らされることはあるかしら」

飛鳥「ほぅ、たとえば?」

梨沙「パパと結婚するためにトップアイドルになって名声を得て、そのまま総理大臣になって法律変えてやる~なんて息巻いてたわね、昔のアタシ。それが難しいってことがだんだん見えてきちゃったっていうか」

飛鳥「……それも1つの成長ではあるんだろう。想像とは裏腹に世界は得てしてつまらない結果が待っているものだから」

梨沙「あ、でも完全に諦めたわけじゃないのよ? パパと結婚したいぐらい好きなのは変わらないもの。……諦めると言えば、飛鳥はどうなの」

飛鳥「どう、とは?」

梨沙「気付いてるんでしょ、どうしてアタシが晴をショッピングに誘ったのか。自分の回ものに付き合わせるんじゃなくって、わざわざ晴のためにね」

飛鳥「……梨沙は気が利くからな。気付けたとすれば、それは梨沙が晴をたしなめたところで、かな」

梨沙「それって、飛鳥はアタシ達に付き合ってる暇はないから諦めなさい、って晴に言ったとこ? じゃあアンタ、その時点でわかってて晴に付き合ってるってこと?」

飛鳥「そうなる、ね」

梨沙「……なんでよ。それこそ、飛鳥はつらくないの? 痛みを感じないの? アンタだって昔からアイツのこと――」

飛鳥「ずっと見ていたからわかるんだ。……ボクが出しゃばったところで、傷付くだけだってことにさ。承知の上で行動しても、その傷の痛みに耐えられる自信もまだ……持てない。少しだけ年上振ることくらいが精一杯なのかもね」

梨沙「……」

飛鳥「笑うかい? 道化のような、いや、道化そのもので傷付くことを恐れるばかりの……ボクを」

梨沙「笑わないわよ。……笑えないわよ、こんなの」

飛鳥「そうか。てっきり発破を掛けられるものと思っていたよ」

梨沙「どうにも出来ないでいる飛鳥を、余計に傷付けることになるかもしれないことなんか言いたくないわ。……アタシだってそうだから」

飛鳥「梨沙が、ってことは……父親のこと、だよね」

梨沙「アタシはいくらでも好きって伝えられるし愛してもらえもするけど、家族としてが限界だもの。アタシが一番欲しいものは今のところ、どうしたって手に入れられない。そんな状態で背中を押されたくないもの。……アタシ達、どっちがマシなのかしらね?」

飛鳥「難しい質問だ。どちらにせよあまり望ましい立場ではないな」

梨沙「くすっ、そうね。だからアタシは……飛鳥には悪いけど、晴には上手くいって欲しいのよ。だいたいじれったいのよね、2年よ2年? そろそろ自分の気持ちに気付かないものなのかしら?」

飛鳥「たとえ気付いたとしても、それを伝える術もまた持ってはいないんだろう。……ひと思いに諦めさせてくれないものかな」

梨沙「それなんだけど、飛鳥にも諦めて欲しくない、なんて思っちゃってるあたりアタシもやっぱりまだ子供よね。あーあ、世の中って上手く回らないものねぇ」

飛鳥「誰もが望みを叶えられる世界なんてありはしないからね。だからこそ優しい嘘は……いらない。かえって傷付くだけだから。そうだろう?」

晴(んー、たしかにカッコイイ服多いし着てみたくなったのもいくつかあるけど、なんだろう。何か違うんだよな)

晴(アイドルの仕事は昔からカッコイイ方がいいし、衣装だってそうだ。でも今はPとのデートに着ていく服を選んでる)

晴(……オレはPの前でもカッコつけたいのか?)

晴(クラスの連中、誰と行くかが重要みたいなこと言ってたよな、一応。オレとデートしたいってのは意味がわからねーけど)

晴(だったらアイツは、よっぽど変な格好でもなきゃオレが何を着て行ったって気にしないはずだ。カッコイイ路線のオレもカワイイ路線のオレも散々プロデュースしてきたんだから、着飾ったオレなんて見慣れてるだろ)

晴(見た目の良し悪しよりも、Pが気にするとしたら……オレがその服を選んだ意味、じゃないか?)

晴(デート……だもんな。友達としてのオレじゃなくて、女としてのオレを誘ったわけで……そういう誘いでも悪くないかなとか思ってるオレがいて)

晴(それならアイドルしていくうちに掴めてきた女らしさってのを、Pに見せる良い機会だよな。デートって)

晴(アイツの前では少しくらいは女っぽくしてみようかとか、あの日以来……思わなくもねーし)

晴(あの日、か。少女漫画をとやかく言えねーことしてるよなオレ。配役が逆だけどさ)

晴(女っぽくってなら、自分のことオレっていうのはまずいかな? でもなー、前に試しに言わされた時は鳥肌ものだったような)

晴(あ、あ……たし? アタシ……私、あとどんなんあったっけ……ウチ、とかか)

晴(……ああああぁぁ!! 今すっげー恥ずかしいこと考えてた気がする! なしなし、今のなし!)

晴(えっとー、つまりー……。このもやもやした頭ん中を着て行く服にぶつける! デートってそういうことだよな!?)

晴(……なんでいっつもこういう時にうまく言葉が浮かんでこないんだろう。アイツのこととなるとこんなだよな、オレ)

晴(やっぱオレって、アイツのこと――)

梨沙「あ、戻ってきた。結構見てたわね、いいのあった?」

晴「お、おう。着てみたいのはこれ、かな。オレに似合ってたとして、着て行くかどうかはわかんねーけど」

梨沙「何しにきたのよアンタ……あ、それともアタシのコーディネートにも期待してくれてる? なーんだ、素直に言いなさいよ♪」

晴「……そうだな、参考にするよ。だからお前もちゃんと選んでくれよな」

飛鳥「とりあえず試着してきたらどうだい。一度着てみないことには始まらないからさ」

晴「ああ。待たせてばっかで悪いけど、急いで着てみるから近くで待っててくれ」


梨沙「アタシが選ぶ服を参考にする、なんて初めて言われたわ」

飛鳥「へぇ、晴も迷っているのかな。何を着るべきか、着て行く服が何を意味するか」

梨沙「いつもなら嫌がるくせにさー。……ねぇ飛鳥、アタシ達は変わらないって言ったわよね。アタシはともかく、晴は結構変わったわ」

飛鳥「あぁ、そのようだね」

梨沙「変わったけど、変わらないとこもある。結城晴って女の子の……芯? 軸? みたいなものかしらね」

飛鳥「……」

梨沙「飛鳥にもそういうの、あるでしょ? 飛鳥も飛鳥らしくいなさいよ。アタシの知ってる飛鳥は小難しいこと言いながら誰の目も気にしないで好きなようにやってたわ」

飛鳥「……そうだったかな」

梨沙「うちの事務所のアイドル、そんなのばっかじゃない? 永遠の17歳とかいってまだ女子高生やってることにしてるのとか。大学生はだめなの?」

飛鳥「あれは、いや、知らない方がいいこともある、か」

梨沙「まぁ、その、アタシらの前でくらい、遠慮しないで。飛鳥が今の飛鳥から変わりたいと思ってるならそれでいい。でもそうじゃないなら、ね? アンタの息苦しそうにしてる顔、見ていられないのよ」

飛鳥「梨沙……ふふっ、どうやら梨沙も変わったみたいだね。前はもっと、容赦なかったように思うな」

梨沙「言いたいこと言ってただけよ、今もそうといえばそうだけど。……余計なお世話だった?」

飛鳥「そんなことはないさ――フッ、キミに諭されているようではどちらが年上なのか理解らないな」

梨沙「あっ、ちょっと戻ってきた」

飛鳥「他人の目を気にしたり、傷付くことを恐れたり、そんなのはボクじゃない。……少しだけ、自分のことを思い出せたよ」

梨沙「……無理はしてないわよね?」

飛鳥「いや、窮屈になった籠から抜け出して久し振りに羽を伸ばせた気分さ。時間に流されていることも忘れて羽ばたいてきたボクには、そろそろ止まり木が必要だったのかもしれない」

梨沙「休んだら、どうしたい? 飛鳥としては。何もしないままで……後悔しないの?」

飛鳥「どうだろう。格好つけたところで出来ることなら傷付きたくはない……が、避けていては前に進めないのであれば……。ボクもキミ達のように、変わらないと――変えていかないといけないみたいだ」



晴(2人とも、何の話してるんだ? なんか出にくい雰囲気だし、着替えで待たせてるはずのオレが2人を待ってるとかわけわかんねーことになってるぞ)

P「明日、かなぁ」

ちひろ「何がですか?」

P「明日また面と向かって晴を誘えなかったら、電話越しに伝えることになるかなと」

ちひろ「早い方がいいのは確かですね。女の子にはいろいろ準備に時間が掛かるものですから」

P「……晴も、そうなんですかね」

ちひろ「そうだと思いますよ。晴ちゃんだって女の子です」

P「それはわかってるんですが、あまり想像つかなくて。なまじ気兼ねなく遊んだりサッカーしてきたのもあって」

ちひろ「どうします? いつもよりばっちり決まった晴ちゃん、もしくは普段はかないスカートをはいて女の子らしい格好の晴ちゃんが待ち合わせ場所に現れたら」

P「……。晴も、大きくなったんだなあ」

ちひろ「想像の中の晴ちゃんに何言い出すんですか!?」

P「え、ああすみません。俺としては気負いしないでくれていいんですけどね、そのために選んだデート先ですし」

ちひろ「では、ゆくゆくは可愛いないし決まってる晴ちゃんを見たいってことですね?」

P「……そろそろ帰りますか。お疲れ様でした」

ちひろ「まぁまぁ、スタドリどうぞ♪」

P(あっ、これタチが悪い流れになるやつだ)

ちひろ「ところでデートの予定日はいつなんですか?」

P「明後日ですよ。オフが重なる日なので、それを目安にしてました。晴も薄々気付いてるかなーって思ってたんですが、ちゃんと言っておくべきでしたかね」

ちひろ「……明後日、ですか」

P「ええ」

ちひろ「悪いことは言いません。今日中に……なるべく早めに、出来ることなら今すぐ晴ちゃんに連絡してあげてください。この際電話でも何でもいいので」

P「ええ。……えっ?」

ちひろ「えっ? じゃないですよ! 準備の時間が必要なんですってば! もう早く帰ってください!」

P「ええー……わかりました、お疲れ様です……?」

晴「……さーって、どうすっかなー」

晴(飛鳥にお墨付きもらったやつと、別な店で梨沙のアドバイスを踏まえて選んでみたやつ、どっちも買ってゆっくり決めようと思ったけど、なかなか難しいな)

晴(つーか梨沙のヤツ、なにが「こういう格好のがいいんじゃない?」だよ。まんま梨沙が着てるようなの選びやがって……あんなの急に着てこられたらPだって困るだろ、たぶん)

晴(……困る、よな? まぁいっか。まだ誘われてもねーわけだし、なんならまた服見に行ったって――ん? 電話だ、Pからか)

晴「もしもし。どうしたんだ?」

P『ちょっとな、もう寮には帰ったのか?』

晴「おう、部屋に一人でいるよ。だから大丈夫だぜ」

P『そうか。えっと、あの件の話なんだが……』

晴「あの件? あ、あー……。あれか?」

P『デートしようって話だよ。次のオフが重なる日って決めてたんだが、いいかな?』

晴「約束……したからな、いいぜ。そのオフが次に重なるのっていつになるんだ?」

P『え、明後日』

晴「」

P『いやー、いつも遊んだりする時はなんだかんだ前の日とかその前の日に約束してたじゃないか。だからその感覚でいたんだが』

晴「ばっ、お前……お前なぁ!」

P『やっぱり急だったか? すまん……俺も当日を万全の状態にしたくて予約を調べたりとか、仕事片付けたりとかしててつい……』

晴「……うー、Pなりに準備してたってことだろ? いつもより、念入りにっていうか」

P『そりゃあサッカーだとか家に呼んで遊ぶとかとは違うしなあ』

晴「なら、いいよ。今度から気を付けてくれよ?」

P『……今度って、明後日のことじゃなくてもまたデートに誘ってもいいってことか?』

晴「!? いや、あの、そ、そういう気遣いをちゃんとしろってことだ! 深い意味はねーよ!」

P『反省します……』

晴「……ところで、待ち合わせはどうすんだ? 何時までにどこ行けばいい?」

P『ああ、それなら――』




晴「――だな? わかった、じゃあもう切るぞ」

P『え、ちょっ』

晴「やっておかないといけないことがあるんだ、時間が惜しい。またな」

晴「…………ふぅ」

晴「明後日……? 明後日だと……?」

晴「明後日までに何着て行くか決めろっていうのか……?」

晴(急すぎるだろ!! もし梨沙が変な気を回してなかったら終わってたじゃねーか! 逆に悩まなくて済んだけど!)

晴(くそー、どうすりゃいいんだ? やっぱいつも着てる服で……でもそれだとPがオレの格好に期待してたらまずいし……)

晴(オレらしくカッコイイ路線でいくか、女っぽくカワイイ路線でいくか――カワイイっつーか梨沙ほどでは全然ないにしろセクシー路線? ま、まぁいつものオレよりは女っぽい格好ってとこか)

晴(うーん……アイツはオレにどんなの着て来て欲しいとかあるのか? でもアイツに合わせて決めてたらアイドルの仕事と変わんなくなっちまう)

晴(自分で選ぶことに意味があるんだよな。アイツの隣をオレはどんな格好で歩きたいんだろう)

晴(…………あれ? そういえば行き先は? TOPだかTPOだかを考慮しねーと、どんなに気合入った格好だって浮くよな。一緒にいるPにだって迷惑かけることになるし)

晴(やっておかないといけないことがある、だなんて言っときながらカッコつかねーなぁ……。待てよ、ここで行き先聞いたらオレがデートのことめちゃくちゃ気になってるみたいにならないか?)

晴(たしかに気にはしてるけどそう思われるのも……って、んなこと言い出したら服だってそうじゃね? どうしよう、オレだけ気合入れてきたーみたいになったら、なんか悔しいな)

晴(…………。くっそ、何着て行ったらいいんだよおおおぉぉ!!)




P(――早く着すぎてしまった。待たせるよりは待っていたいしな、うん)

P(晴、デートの行き先とか気にならなかったのかな? 俺さえいればどこだっていい、みたいに思ってくれてたら嬉しいな)

P(……デートなんてそんなに興味ないけど約束は果たしてやるか、ぐらいにしか思ってなかったら悲しいな)

P(本人に聞いてみりゃいいことか。さてと、まだまだ時間あるな、晴はいつ頃来るかな?)



P「……おっ?」

晴「…………よう」

P「ど、どうした、生気が抜けたような顔してるぞ!? 体調悪いのか?」

晴「あー……決まんなくって…………無難にいつもの格好してきちまった……いいよな……?」 ボフッ

P「お、おい! こんなとこで身体を預けられても……俺は構わないけど、目立つって。というか大丈夫なのか?」

晴「……すまん、寝そうだ……。今日、車か……?」

P「ああ、車だよ。寝たいなら存分に寝ていいから、もう少し我慢してくれ、なっ?」

晴「…………」

P「わー、寝るなー!! こんな往来でお前を抱きかかえて運んだりしたら、いろいろやばいんだって!」

晴「zzz…」

P「ったく、かわいい寝顔しやがって……。唯一の喋れる相手が寝てるってのに赤信号が苦にならないぞ」

P(……そういや格好がどうの言ってたっけ。今日着てくる服で悩んだりしてくれてたのか?)

P(ちひろさんの言う通り晴も女の子なんだな。俺とのデートのために女の子らしくしてくれてたとしたら……。寝てるし、今のうちニヤけておこう)

P(それなら俺も、男として晴の手を引いてやるくらい出来るようにならなきゃな。実際にするとなると晴がアイドルをしている間は難しいけど)

P(いつかしがらみがなくなった時に、堂々とそういうことが出来たらいいな)

P(といっても、その日がくるとしたら晴はもうアイドルじゃなくなってるわけで……)

P(俺はいつまで晴と一緒にいられるんだろう?)

晴「んん……zzz…」

P(ずっと側で、この寝顔を見ていたいな)

P(ああ、そうだ。俺はきっと晴のことが――)

P「ついたぞー、起きろー」

晴「……んー、……あー、ん?」

P「おはよう。昨日は眠れなかったみたいだな」

晴「…………そっか、なんとか待ち合わせ場所に着いて……寝てたのか、オレ。せっかくのデートだってのに悪いな……ふわあぁぁ」

P「まあまだ試合始まるまでに時間あるし、それまでに目を覚ましてくれればいいさ。晴なら始まった瞬間飛び起きそうだけど」

晴「試合? ……そういやどこでデートするのか聞かずにきちまったんだった。ここどこだ?」

P「スタジアム、かな。今日はサッカー観戦しにきたんだよ。これが席のチケット、たしか晴がひいきにしてるチームだろ?」

晴「サッカー……? ああ、そう……そういうのもデートになるのか……」

P「あれ、思ったより反応悪いな。もしかして他のことの方がよかった?」

晴「そんなことねーよ……めっちゃ嬉しいし、わくわくしてきた。でもそうと知ってたら……この格好で迷うことなかったじゃねーか……!」

P「そんなに今日何を着てくるか悩んだのか?」

晴「ぐっ……ああ、悩んだよ。悪いかよ!」

P「良いに決まってるだろ! 何言ってんだ!」

晴「何でお前がキレるんだよ!?」

P「……それについては、あれだ。今度の楽しみってことにしておくよ。今度はもっと早くいつ行くかとかどこ行くかとか決めてさ。……いいだろ?」

晴「今度って……今度、か。気が早いんじゃねーの?」

P「いやか?」

晴「……いやじゃねーよ。でもまずは、今日のサッカー観戦……楽しもうぜ! 今度の話は、それからな!」

P「……よかった。それじゃあ、行くぞ!」

晴「おう!」





デート以来、晴の部屋には漫画よりファッション誌が少しずつ置かれるようになったとかならないとか


おしまい


晴ちん誕生日おめでとう!

晴ちんメインではありますが、飛鳥には飛鳥なりの決着をつけさせたいですね。不憫な役回りですまぬ……


告白シーンまで続くのかどうかわかりませんが、また書きたくなったらふらっと書こうかと思います

それではここまでお読みくださりありがとうございました

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