幸子「夢戦士ウサミンロボ」【モバマス】 (32)


 天才アイドル池袋晶葉によって作られたウサちゃんロボは、団子を作って配るだけでなく、アイドルのバックダンサーまでこなす優れロボである。

 だが、ウサちゃんロボは異星の超科学ウサミン科学によってさらなるパワーアップ改修を果たしたのだ!!

 その名は、ウサミンロボ!


【注意】
 アニメ「夢戦士ウィングマン」ED「WINGLOVE」を知らない人には、ラストが全く意味不明です。

 まあ、なんとかなるかもしれない




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「最近はプロデューサーさん忙しいみたいですね」

 休憩室には幸子と菜々しかいません。

「新しく雇った新人さんに仕事を教えているみたいですよ」

「スタッフにも新人が雇えるなんて……フフフ、カワイイボクのおかげですね」

「幸子ちゃんの可愛さはウサミン星でも大評判ですよ」

「さすがボク、ですね!」

 ふと、菜々の持っている妙な柄のノートに幸子は目を留めました。

「変わった柄のノートですね。サイズも標準のBやAでもないみたいですし」

 菜々がノートを開いてみせると、中身は見事に真っ白です。

「これは、ウサミンノートって言うんですよ」


「ウサミンノート? なんですか、それは」

「なんと、ウサミン科学を応用した凄いノートなんですよ」

「うーん。普通のノートにしか見えませんけれど」

「違うんですよ」

「何が違うんですか?」

「このノートに書かれたことは、ある程度、現実になります」

「……」

「幸子ちゃん、信じてませんね?」

「いえ、“ある程度”というのが妙にリアルですし、今までもウサミン科学には驚かされてばかりでしたから」

「そう言えば、ウサミンジェットスクランダーの人体実験は幸子ちゃんでしたね」


「今、実験って言いましたよね」

「ウサミンマリンスペイザーの実験は愛海ちゃんでしたよ?」

「問題はそこじゃないです」

「美味しいから大丈夫だよ」

 突然現れる第三の声は三村かな子です。

「突然なんですか、かな子さん」

「今朝ね、ノートに“美味しいおやつ”って書いたら、本当に出てきたんだよ」

「本当ですか? それ本当なら、すごいことじゃないですか」

「幸子ちゃんも一度、書いてみればいいよ」

「確かにその通りですね。それじゃあ菜々さん、ノートを貸してください。……えーと、美味しいおやつ三人分、と」


「幸子ちゃん、きれいな字だね」

「ノートの清書が趣味ですから」

 きゅらきゅらきゅら

 特徴的なキャタピラ駆動音と共にやってきたのはウサミンロボ率いるウサちゃんロボ小隊、通称ウサトゥーンです。

「あれ、ウサミンロボたちが来ましたよ?」

 うさ、うさ、うさ

「踊り始めましたよ?」

「モンキーダンスだね」

「待ってください、ロボたちのモンキーダンスって」

「銘菓ウサミン団子製造プロセスだよ」


“ウサミンロボはわずか五分で銘菓ウサミン団子を製造する”
“では、そのプロセスをもう一度見てみよう”

「誰ですか今の」

「お団子ができましたよー」

「美味しいねー」

「美味しいですけど、これは現実化でいいんでしょうか」

「現実にお団子が出てきたよ?」

「それはそうなんですけれど」

「幸子ちゃん的には何か不満が?」

「このノートってもしかして、ウサミンロボに命令しているだけなのでは」


「……」

「菜々さん?」

「そ、そんなことないですよ?」

「だったら……そうだ! 変身させてください」

「いいですよ、それじゃあきちんと書いてくださいね」

「きちんと?」

「変身後の姿とか、ですよ」

「わかりました、じゃあ助っ人を呼びますよ」



 ■ ■ ■ ■ ■ ■ 


 


「すけっと参上、すけっと解決! 人呼んでさすらいのヒーロー!」

「光ちゃんを呼んでみました。事情は説明済みです」

「変身できるって聞いたんだけど」

「これがさっき説明したウサミンノートですよ」

「よし、任せてくれ」

 ノートに書き込み始める光。
 デザインだけでなく、設定も書き込んでいます。

「……できた!」

「じゃ変身してください」

「行きます。見てください、変身!」

 うさ、うさ、うさ


 当然のようにウサミンロボがどこからともなく集まってきます。

「やっぱりウサミンロボが……いや、様子がおかしい、これは……」
「ウサミンバックダンサーズ!」

「違いますよ」

 菜々の指摘と同時に幸子は気づきました。
 このウサミンロボたちはそれぞれ楽器を手にしているではありませんか。

 ベースギター、リードギター、ドラム、サックス、キーボード、テルミン、ノコギリ。

「待って、横山ホットブラザーズ混じってますよね!」

 そして、いつの間にか光の周囲を十数機のウサミンロボが囲んでいます。
 中ではお着換えの真っ最中でしょうか。

「この子たちはただのウサミンロボじゃありません! いつもロボを可愛がって、日清キャノーラ油をくれる某農業系アイドルに楽器演奏を習ったんですよ!」

「な、なんですってーッ」

「お礼に島や海岸の開拓を手伝いました」

「なんですか、その裏話」

「あと、コミックバンドのベテランにも習いました」

「やっぱり横山師匠入ってる!?」

 そうこうしている内に南条光の変身はCOMPLETEしています。
 ちなみにウサミンロボバックバンド隊はBGMとして“仮面ライダーAGITOインストルメンタルヴァージョン”を演奏しています。

「……」

 右手首を振りながら、光はウサミンロボ簡易更衣室から姿を見せます。

 さらにマントを翻しながら、

「俺、参上!」

 色々混ざりすぎている、とウサミンロボは思いました。

「ほら、変身しましたよ」

「いやこれ、ウサミンロボ協力のコスプレ早着替えとしか……」

「幸子ちゃんは疑い深いですね」

「だって、さっきから毎回ウサミンロボが出てきてますよ」

「……」

「なんでそこで“どうして気づいたんだろう”って顔なんでしょうか?」

「目ざといですね、幸子ちゃん」

「気づかないほうがおかしいですよね」

「ウサミン星人ともあろうものが、地球人を少し侮っていたようです」

「ウサミン星人から見た地球人って、どんだけ評価低いんですか!」

「仕方ないです。幸子ちゃんには特別に真実を教えてあげます」

「そう言われても……」

「かわいい子には特別サービスです」

「ボクはカワイイですからね!」

「そんなチョロい幸子ちゃんにスペシャルウサミンサービスターイム」

「今、チョロいって言いましたよね?」

「実はこのウサミンノートは、ウサミンロボに可能な願いだけをかなえてくれるんです」

「ウサミンロボにもできないことは?」

「適当に解釈します」

「世界征服とかでも?」

「ウサミンロボで征服はできても統治はできませんよ」

「ああ、なるほど」

「それに、地球の支配者よりアイドルのほうが楽しいですよ」

「それもそうですね」

「でも、アパートのお家賃に困ったら考えるかもしれませんね、世界征服」

「動機しょぼっ! ……というか、その気になったらできるんですね」

「できますよ? 765さんさえいなければ」


「765プロには勝てませんか」

「ウサミン科学も万能じゃないんです。あの御方を本気で敵に回したらウサミン星が崩壊します。政治的社会的に。そして菜々は全宇宙規模のパブリックエネミーになってしまいます」

「何者なんですか」

「ウサミン星人にも上位存在(オーバーロード)がいるんです」

「プロデューサーとちひろさんみたいなものですか」

「そんな感じですね」



 ■ ■ ■ ■ ■ ■

 さて、実はこの会話を盗み聞いている人がいました。
 彼の名は北倉(仮名)。物語の最初に出てきた新人です。
 
 北倉は変態でした。事務所に来た当日に、各所に盗聴器を仕掛けていたのです。
 盗聴器はすぐに発見されました。
 発見したのは特に名を秘しますが、蒼い人です。
 盗聴器を発見した彼女は思いました。

(ふーん。まゆったらこんなわかりやすい所に盗聴器なんて、まだまだだね。やっぱりプロデューサーにふさわしいのは私だね)

 そして、相手を油断させるために盗聴器をあえて放置することにしました。

 また、別の場所でも盗聴器は発見されました。
 発見したのは特に名を秘しますが、赤いリボンの似合う美少女です。
 盗聴器を発見した彼女は思いました。

(うふふ、凛ちゃんったらこんなわかりやすい所に盗聴器なんて、まだまだですね。やっぱりプロデューサーさんにふさわしいのは私……)

 そして、相手を油断させるために盗聴器をあえて放置することにしました。

 北倉、盗聴し放題です。

 というわけで、幸子と菜々の会話も北倉には筒抜けだったのです。

 早速北倉は行動を開始することにしました。

「あ、モバPさん」

「おう、北倉君、休憩はそろそろ終わりだぞ」

「すいません、腹の調子が……あと十分だけ」

「しょうがないな、じゃあ休憩十分追加な。頼むよ」

「いやあ、まじスンマセン」

 北倉は休憩室へ向かいます。
 
「ライラさんも~」

 いつの間にかいたライラさんにアイスを渡しておとなしくさせると、置き去りにします。

 休憩室に入ると、菜々と幸子が椅子に座って黙々と銘菓ウサミン団子を食べていました。

「あれ、えーと広野さんでしたっけ」

「違いますよ菜々さん、小川さんです」

「北倉です」

「あ、ごめんなさい」

「いえ、いいんですよ、まだまだド新人ですから」

「何かありましたか?」

「ちょっと探し物を」

「落とし物ですか?」


「はい、申し訳ありませんが、お二人の足元、椅子の下をちょっと確認させていただければ幸いです」

「いいですよ」

「どうぞどうぞ」

 二人は立ち上がりました。その瞬間、北倉は無造作に置かれていたノートを奪います。

「貰ったあああ!」

 そしてノートを開き、速攻で書き込みます。
 こんなこともあろうかと、日頃から速記を鍛えていたのです!

「書く!!」

“ウサミンロボ全機、北倉配下となる”

 うさ、うさ、うさ

「何するんですか!」

「はははははははははっ!! ウサミンロボはただいまこの瞬間より、この北倉様の忠実なるしもべ!」

「バカなことはやめてください」

“ウサミンロボは、北倉を守る”

 菜々と幸子が北倉に詰め寄ろうとすると、ウサミンロボが二人を妨害するように立ちふさがります。

「ロボさん、どいてください!」

 うさ~
 うさ~

 ロボたちは泣きそうな声を出していますが、ノートの命令に逆らうことは出来ません。

「くっ、卑怯ですよ!」

「ふはははは、それがどうした。このウサミンロボたちさえいれば、世界征服はまあ別として、多少の無茶はどうとでもなるからな」

「何をするつもりですか!」

 菜々は珍しく本気で怒っています。ウサミンロボを悪事に荷担させるのは、あまりにもロボが可哀想です。
 ロボは悲しみます。つまり、菜々も悲しみます。

「知れた事よっ! ロボを働かせて俺は遊んで暮らす!」

「そんなことが許されるのは杏さんだけです!!」

 あんまり許してないよ、とウサミンロボは思いました。

「待てぃ!」

 そのとき、聞き覚えのある声が休憩室入り口から聞こえます。

「己の醜い欲望で他人を操ろうとする者。だが、操られた者たちはお前にいずれ牙を剥くだろう。人、それを復讐という」

「何者だっ!」

 知っている声なのですが、北倉は一応聞いてみることにしました。お約束というものです。

「貴様に名乗る名前はないっ!」

 モバPです。モバPにも当然本名はあるのですが、名乗る名前はないそうなのでモバPと呼び続けます。

「はっ、たかが人間ごときが調子に乗るな!」

“ウサミンロボは北倉を護る”

「行けっ! ウサミンロボ」

ま゛

「ふっ」

 モバPは笑いました。


「まさかこの俺が……この、ウサミン星人をアイドルとしてスカウトした俺が、何故ウサミン科学に負けると思ったのかな?」

「なに?」

 ウサミンロボがパンチを放ちます。ウサミンロボの本気パンチは、厚さ数十センチの鋼板を突き破る威力です。
 しかし、モバPはそのパンチを受け止めました。

「ウサミンロボは、我がプロダクション最後の護りではない。むしろ、最初の護り。この意味、わかるな?」

「な……な……」

 北倉は退こうとして尻餅をついてしまいます。

「いいか、北倉、覚えておけ」

 モバPは一歩ずつ、北倉へと近づいていきます。
 止めようとしたウサミンロボは次々と弾き飛ばされています。

「常人に、ここのプロデューサーは勤まらんのだ」

「……嘘でしょ」

 幸子の呟きに菜々が頷きました。

「まあ、こういうことですから」

 北倉が取り落としたノートを拾った菜々は、その一ページ目を冊子に見せます。

“モバPはウサミンロボより強い”

「あれ」

「ロボちゃん、プロデューサー相手には絶対負けるような出力しか出せません」

「イカサマじゃないですか」

「バレてないからいいんですよ?」

 二人の前には、モバP相手に土下座している北倉の姿。

「じゃあ北倉さんの書いた字、消しちゃいましょう」

「はーい、消しゴム有りますよ」

 うさうさ

 ウサミンロボは、無事自由を取り戻しました。

 そのころ、自棄になった北倉はモバPに襲いかかっていました。
 北倉相手だとガチ勝負なのでモバP絶賛フルボッコ中です。

「弱いですね……プロデューサー」

「北倉さんと殴り合ってるだけですからね。私たちが危なくなったら、プロデューサーは強くなりますよ」


「……そうなんですか?」

「男の人って、そういうものなんです。特に地球人は」

「ふーん」

「でも今は、ウサミンロボで助けましょう」

 うさっ、うさっ

 瞬く間に北倉は、ウサミンロボに鎮圧されました。

 雁字搦めに縛られた北倉が、ウサミンロボたちによってどこかに連れて行かれます。

「あの人はどこに連れて行かれるんでしょうか」

「ウサミンシークレットです」

 うさうさ


「やっぱりウサミンロボは平和利用が一番です」

ウサミンロボもそう思います。

ウサミンロボがアイドルたちと一緒に楽しく遊べる世の中が、平和で一番素晴らしい時なのです。
それが何よりのみんなの幸せなのです。
悪の足音が遠くに去ったら、その時アイドルたちはウサミンロボを取り囲み、平和の歌声を聞かせてくれます。

「それじゃあ、平和利用しましょう!」

「え?」

「菜々さん、ノート貸してください」

「あ、はい」

“菜々さんの新曲ができる”

「幸子ちゃん?」


「これでどうですか、ウサミンロボに作詞作曲はできませんか?」

うさうさうさ

再びウサミンロボバックバンド隊の登場です。

ベースギター、リードギター、ドラム、サックス、キーボード、オタマトーン。

「今度は明和電機混ざってますよぉっ!」

 オタマトーンを背負ったウサミンロボが一枚の紙を菜々に手渡します。

「これは、歌詞カード……」

「本当に新曲作っちゃったんですか……凄いですね、ウサミンロボ」

「よーし、ミュージックスタート!」


 ♪
 100%のアイドルなんて いるわけないわとわかってるけど

 アナタといると張り切りすぎて ドキドキハートがメルヘンキュート

 ウサミンラブ 飛べない空も

 ウサミンラブ あきらめないの

 ウサミンラブ まぶしい翼

 アナタが心にくれたから

 アワナテイキュートゥーザスカイハーイ ほとんど夢でも
 アワナテイキュートゥーザスカイハーイ いつかはなりたい アナタだけのアイドル




 出来た歌をモバPに披露したら「替え歌じゃねえか」と怒られました。


                             終われ


 以上お粗末様でした


 ……いろいろあってね、しばらくウサミンロボSSは書かないだろうなと思っていたら……
 あなた、「プラスチックキット“ウサちゃんロボ”発売決定」ですよ

 申し込み開始は7/7ですよ(ダイマ) 複数買いですよ

 だから急いで一本書きましたよ、はい

 後悔はしていない

 

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