【トラック転生】キキィーーードカッ! 男「」【・・・?】 (393)


男「・・・あれ?」

男「俺はたしかトラックに轢かれて・・・?」

男「いや、いないな、白昼夢でも見たか?」

男「まあこれからは交差点は気をつけて渡る事にしよう」

男「さっさと帰ってアニメみよっと」

--そして男は家に帰り、ごく平和な人生を過ごしましたとさ

--めでたしめでたし



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--というわけにもいかなかった











キキィーーードカッ!

運ちゃん「あちゃー!!やっちまった!!」

運ちゃん「カアちゃん、娘、すまねえトーチャンは人殺しになっちまった」

運ちゃん「いや、ま、まだ死んだとは限らねぇ、とにかくまずは救急車を・・・・・・・あれ?」

運ちゃん「俺ぁ今、街の近くの国道を走ってたハズだよな?」

運ちゃん「なんだここは・・・こんな舗装もされてないド田舎に来た記憶はねーんだが・・・」

運ちゃん「俺昼間っからラリってたのか?いやそんなハズはねえ、酒もアンパンもガキが出来て俺はスッパリ辞めてんだ」

運ちゃん「と、とにかく何か轢いたのは確かだ、確認しねーと」

ガチャ

運ちゃん「なんかココすげー空気うめえな、絶対国道沿いじゃないわ」



運ちゃん「ってそんな事言ってる場合じゃねーや、フロントベッコリいってんな、やっぱ誰か轢いちまったのか」

運ちゃん「んー、でも車の下にも何も無いし、後ろかな・・・」キョロキョロ

騎士「おい!おぬし!!」

運ちゃん「う、馬!?なんでこんなトコに馬が!?」

運ちゃん「うわぁもしかして俺、馬轢いちまったのか?やべえやべえよ」

運ちゃん「競走馬なんか轢いてたら賠償金とかエラい額になんぞ」

運ちゃん「いやまて大丈夫だ会社の保険は対物無制限だったハズだ、落ち着け俺」

騎士「おい、何をブツブツ一人で喋っておる」

運ちゃん「あ、すんません、あの、馬の持ち主の方ですか?」




騎士「馬?ああこれは私の愛馬のロシナンテだが・・・」

運ちゃん「うわあやっぱりすんませんすんませんホントすんません」ドゲザッ

運ちゃん「すぐ保険屋に連絡して弁償の・・・いやその前に警察か!あ、ケータイトラックの中だ!」

騎士「突然なにを謝っておるのだ?ははあ、もしかして私の手柄を奪ったと気にしておるのか?」

騎士「ははは、むしろ礼を言うのは私の方だ、正直危ない所でな、お主が助けてくれなかったら今頃無事ではすまんかった」

運ちゃん「は?俺が助けた?」

騎士「お主があの鉄の箱であの魔物をふっ飛ばしてくれたのであろう?」

運ちゃん「マモノ?」




騎士「ほれ、あそこに転がっておる、ああ、すまぬが止めは私が刺させてもらったぞ」

運ちゃん「止めっておめぇ何言って・・・(チラ)ひえぇぇぇぇぇっ!!!何だあのバケモン!!」

騎士「お主が自分でふっ飛ばしておいて何だも何も無いもんだ」

騎士「まさか魔物を見るのが初めてというわけでもあるまい」

運ちゃん「いやいやいやいや、あんなの見たことねーから!」

騎士「なんと、この時代に魔物を見たことがないとは随分平和な」

騎士「いったいお主どこの国から来たのだ?」

運ちゃん「どこの国って日本に決まってんだろ、っていうかそういえばどこだよココ!?」

騎士「日本?ふーむ寡聞にして聞かんが・・・どうもお主様子がおかしいな、一体なぜここに来た?」

運ちゃん「何故って・・・・・実はそれがさっぱりわかんねぇんだよ」

騎士「む、どういう事だ、話してみるがよい」

~~
~~



騎士「ふーむ、これはまた摩訶不思議な・・・」

運ちゃん「とりあえず俺ぁ残りの荷物を届けないといけねーんだよ」

騎士「そうは言うがのう、お主が言うような街もモノも私は聞いたことが無い」

運ちゃん「マジかよ、今夜は娘の誕生日で早く帰るって言っちまったのに」

騎士「む、それはいかん、家族との約束は大事にするべきだ」

運ちゃん「ショボーン」

騎士「うーむそうだな、お主の言うような事が起きたとしたら、魔道の仕業に違いあるまい」

騎士「私は門外漢だが、街に詳しい者がおるから、案内してやろう」

運ちゃん「い、いいのかよ?」

騎士「どうせ私もあの魔物の討伐を終えたら街に帰るつもりだったのだから、もののついでだ」

騎士「しかし、あそこまでの大物とは思わなかったからな、危うく不覚をとる所であった」

運ちゃん「いや、あんなバカでかいのとタイマン張るってアンタ何考えてんだ」

騎士「騎士たるもの魔物と戦うは当たり前であろう」

運ちゃん「騎士とかヤベェ、マジかよ、とんでもねぇトコ来ちまった」

勢いだけで書き始めた
この先どうするか考えてくる



騎士「あ、しかしアレだな、あの魔物の首とお主を載せて、となると我が愛馬もさすがに辛いかもしれんな」

騎士「すまぬが街までは歩いてもらう事になるな」

騎士「ま、多少距離はあるが、日没までには着くであろう」

運ちゃん「あ、そんなら俺のトラックに乗ってったらどうだ?」

騎士「とらっく?」

運ちゃん「今半荷ぐらいしか積んでねーんだよ、あの魔物の死骸持って行きてーんだろ?」

運ちゃん「何しろ10tトラックだかんな、馬とあのデカブツ積んだって余裕だぜ?」

騎士「む、あの鉄の箱の事か」

運ちゃん「おめぇ本当に自動車見たことねーんだなあ、一体俺ドコに来ちまったんだ」

運ちゃん「まあいいや、街まで行ってその詳しい人ってのに聞けばすぐ分かんだろ?」

騎士「む、まあ、すぐに分かるとは限ら・・」

運ちゃん「おっしゃ、善は急げだ、さっさとあのデカぶつ積み込んじゃおうぜ!」




運ちゃん「いやコレ重いな」ズルズル

騎士「うむ、強い魔物はみな大きくて重いのだ」ズルズル

運ちゃん「フォークが欲しいぜ・・・」ヨッコイセ

騎士「うむ、ではあとはロシナンテだな」

運ちゃん「俺馬運んだ事ねーんだけど素のまま荷台に入れといて平気なモンかな」

騎士「大丈夫であろう、ロシナンテは賢いし強靭だ」

騎士「崩落する大岩を飛んで渡った事もあるほどだ、荷車に乗る程度で不都合はあるまいよ」

運ちゃん「ならいいんだけどよ」

騎士「うむ、ロシナンテ、この中でしばし大人しくしているが良い」ペシペシ

馬「ヒヒーン」

運ちゃん「じゃあ行こうぜ、お前さんは左側な」バタン

騎士「うむ、と、これはいかんな、名乗りが遅れた、我が名は"騎士"近隣の領主に仕えておる」

運ちゃん「お、よろしくな、俺は運ちゃんだ、特に取り柄はねーがこのトラックの事なら任しといてくれ」

騎士「よろしく頼む」

~~
~~



運ちゃん「この先まっすぐで良いのかい?」

騎士「うむ」

運ちゃん「道が細えから誰か出てきたらアブねーな、あんまりスピードは出せねえや」

騎士「なんと、これでスピードが出てないと言うのか、我が愛馬よりも速いというのに」

運ちゃん「そりゃあ馬とは比べ物になんねーや、こちとら自動車だぜ」

騎士「うーむ、恐るべき鉄の魔術・・・」

運ちゃん「お、森を抜けたぜ」

騎士「うむ、もうすぐ大きな街道と合流するはずだ」

騎士「と、そうじゃ、ちょっと止まれるか?」

運ちゃん「お?どした?」キキー




騎士「街の住民は誰もこんな鉄の箱を見たことが無いであろうからな」

騎士「このまま街に向かうと新手の魔物か何かとカン違いされかねん」

運ちゃん「なるほど、どうするよ?」

騎士「ロシナンテから私の馬覆いをとって来よう、あれにはこの国の紋章が大きく入っておるからな」

運ちゃん「でもそんなモンどこに付けたらいいんだ?」

騎士「うーむ、目立つ所であればどこでも良いのだが」

運ちゃん「後ろにつけたって意味ねーしな、前だよなあ・・・しゃーねえ、グリルの辺りにぶら下げとくか」

運ちゃん「さすがにこんぐらいでオーバーヒートはしねぇだろ」

騎士「うむ、こうして我が国の紋がつくと、なんというか親しみが沸いてくるのう」

運ちゃん「そういうモンかね・・・俺の国じゃ車に国旗くっつけて走る連中にはロクな奴がいなかったがなあ」


トラックの性能諸元(だいたい)

■車体寸法
全長:12m
全幅:2.5m
全高:3m

■荷台寸法
全長:9.5m
全幅:2.4m
全高:0.6m

■コンテナ寸法
全長:9.5m
全幅:2.4m
全高:2.8m

■その他
車両総重量:20t
最大積載量:10t
排気量:12000cc
最大出力:280PS/1700rpm



~ 街 ~

--門の前に現れた10tトラックに怯えた目を走らせる民衆

--窓から身を乗り出した騎士が大声で名乗りを上げる事でどうにかパニックを収める


騎士「うーむ、予想はしていたが大騒ぎだな」

運ちゃん「これが街か・・・なんかドイツ村みてえなトコだな」

騎士「お主の国の街は違う形しておるのか?」

運ちゃん「んー、まあ、そうだな、もっと味気ねえよ」

騎士「そうか、ここは魔法と鍛冶の街でな、この国の工房技術を一手に担っておる」

運ちゃん「へえ・・・日本の工業地帯とはえれえ違いだ」

騎士「その言葉はよくわからんが・・・それはそうとコレを城壁の中に入れるわけにもいかんな」

騎士「大通りが広いといっても、この大きさでは往来の邪魔になってしまう」

運ちゃん「その辺に停めといても盗られねーかな?」

騎士「大丈夫だ、そこに門衛の詰め所があるし、大体怖がって誰も近づきやせんよ」

運ちゃん「じゃあ邪魔になんねートコにつけちまうぜ」ピーッピーッピー

騎士「む、何の音だこれは」

運ちゃん「ああ、後ろに下がってる時はこういう音がするんだ」

騎士「うむ、なるほど、臆病者には騎士の栄誉は得られぬという警告か」

運ちゃん「全然ちげーけどな」



騎士「私だ、ただいま巡回より戻った、領主様に使いを走らせてくれ」

衛士「お帰りなさい隊長、ところで・・・あの箱は・・・・」

騎士「話すと長いが害は無いから安心しろ、箱を操るあの男は私の恩人だ、礼を失するなよ」

衛士「は、はい!」

騎士「あと、あの箱の中に倒した魔物を積んである、少々重いのでな、手伝ってくれ」

衛士「わかりました、おい!2~3人来い!」

兵士たち「うーす」

ヒヒーン

運ちゃん「おい、なんだなんだ、何もしねえよ」

騎士「どうした」

運ちゃん「近づこうとしたら急に吠え出してよ」

騎士「そりゃあお主が後ろから近づくからだ、馬は真後ろから近づかれるのを極端に嫌がる」

運ちゃん「マジか、ゴルゴみてえなヤツだな、じゃあ横からなら・・・・」ソォー

馬「ブルルル」

運ちゃん「お、いい子じゃねーか、さっきは悪かったな」

騎士「さて、兵士たち、ご苦労だがこれを運びだしてくれ」




「うわ、でけえ」「かなりの大物だな」「この辺りにもこんな大きなのが・・・」

騎士「その魔物は敵を知る貴重なサンプルだ、傷つけないように魔法研究所に運んでくれ」

衛士「分かりました、おい、荷車取ってこい!」

兵士「うーす」

騎士「さて、待たせたな、それじゃあ我々も魔法研究所に向かおう」

運ちゃん「お、そこに詳しい人、ってのが居るのか?」

騎士「うむ、ただ・・・お主のような例は私も聞いたことがない」

騎士「いくら博識な研究所の博士たちといっても、すぐに何かが分かるとは限らぬ」

運ちゃん「ああ、そのことか」

騎士「うむ、もしかしたらお主を娘のもとに返すのは、予想以上の難事かもしれんのだ」

運ちゃん「おう、俺もそうじゃねーかって思い始めてたわ」

騎士「なんと」



運ちゃん「さっきまで森に居た時はさ、あんまり実感無かったんだけどさ」

運ちゃん「いざ街まで来て人とかモノとか見たらさ、明らかに俺の居た所と違うんだよなあ」

運ちゃん「こりゃあいよいよヤベー事になってんだな、ってようやく分かってきた」

騎士「うむ・・・・し、しかし、望みを捨ててはいかんぞ」

運ちゃん「おうともよ、こちとら娘の誕生日が待ってんだ」

騎士「む、そ、それに間に合うかどうかは・・・」

運ちゃん「今年がダメだって来年があるだろ?来年がダメだって再来年がある」

運ちゃん「五体満足で元の世界に帰れさえすりゃあ、娘には会えるからよ」

騎士「お、お主・・・」

運ちゃん「もっとも、1年も2年も行方不明のダメ親父に会ってくれるか分からねえけどよ」

騎士「大丈夫だ、お主の娘ならきっと賢い良い子だ、絶対お主の帰りを待っているハズだ」

運ちゃん「だといいよな、まあまずはその研究所とかに行こうぜ、案外アッサリ解決しちまうかもしれねえ」

騎士「うむ、そうだな」



~ 研究所 ~

騎士「カクカクシカジカでな、博士の知恵を借りたい」

博士「なんと!異界からの召喚に成功した者が・・・・」

騎士「この手の話は博士の専門であろう、ここまで聞いた事で何か分からぬか」

博士「うむ、一つだけ確かな事があるぞよ」

運ちゃん「なんだ!?教えてくれ!!」

博士「誰かがワシに先駆けて異界召喚の研究を完成させよったという事じゃ!!!」

騎士「え」

博士「おのれー誰じゃ、召喚術の第一人者であるワシをさしおいて・・・まさか副所長のヤツが・・」

博士「いやいや、ヤツには無理じゃ、はっ、まさかこないだ辞めた助手がワシの研究を盗んで・・・・」

騎士「は、はかせ、はかせ」

博士「うぬぬ、誰であろうとただではおかん、悪魔を召喚して嬲り殺しにしてくれるわ・・・ブツブツ」

運ちゃん「お、おい、このジイサン大丈夫なのか!?」

騎士「あ、うむ、普段は温厚な賢者なのだが、研究の事となるとどうも理性のタガが外れる傾向がな・・・」

運ちゃん「おい!ジイサン!一人の世界に入ってないで俺を元の世界に戻してくれよ!」

博士「(ハッ)あ、いや、すまんかった、ちょっと熱くなってしまってな」



博士「ふーむ、お前さんが異界から現れたという男か・・・・」

博士「どれどれ?うーむ、別段ワシらと何か変わった所は無いようじゃのう」

運ちゃん「な、なんか落ち着かねーな、ジロジロ見られると」

博士「もう一度話してくれんか?その、この世界に現れた時の話を」

運ちゃん「いいけどさ、ホントに何も覚えてねーんだよ」

運ちゃん「その日は東北からの帰りでよ、埼玉で半荷おろして、残りは東京に運んでる最中だったんだよ」

運ちゃん「ケチな会社でよ、埼玉からもっかい高速乗せてくんねーからよ、しょうがねーから下道で帰ってたワケよ」

騎士「高速・・・?さいたま・・・?」ヒソヒソ

博士「とりあえず一旦口を挟まずに最後まで話を聞いた方がよかろう」ヒソヒソ



運ちゃん「んでよ、ここんとこ着発が何日も続いててずいぶん寝不足だったからよ、ついウトウトしちまったんだよ」

運ちゃん「で、ハッとした時にはさ、目の前に赤信号渡ろうとしたニーチャンが居てよ」

運ちゃん「うわぁ、コレもう絶対間に合わねぇ、とか思ったけど、とにかくブレーキ思っきし踏んでさ」

運ちゃん「でも、すぐにドンって車に衝撃があって、思わず目ぇつぶりながら"ああ、こりゃやっちまったな"って」

運ちゃん「んでさ、目ぇ開けたら全然見覚えの無い場所に居たってワケよ」

博士「なるほどのう・・・・」

運ちゃん「どうだい?何か分かったかい?」

博士「何もわからん、という事だけは分かったぞ」

運ちゃん「どうにも頼りねぇなオイ」



博士「ちなみに、それは何時ぐらいの事じゃったかの?」

騎士「私が討伐のために街を発ったのが朝の事でしたから、あの場所まで2刻ほど」

騎士「それから魔物を探すのに1刻ぐらいは経っていたと思いますから、昼ぐらいだったでしょうか」

運ちゃん「その時間ならよく覚えてんぜ、事故の直前にコイツから12時のアラーム鳴ってたからな」

博士「なんじゃそれは!?」

運ちゃん「ああ、こっちにゃ腕時計もねーのか・・・アレだよ、ちっこい時計、Gショックってんだ」

博士「なんと!?この小さな機構に時計の仕掛けが入っていると申すか」

博士「うーむ、恐ろしく高度な魔法じゃ」

運ちゃん「いやー、その、魔法とかじゃねーんだけどなあ」

博士「ちなみに、これは今は何時と書いてあるのじゃ?」

運ちゃん「おい読めねーのかよ。目ぇ悪いのかジイサン、今は13:30だな」

博士「ふーむ、お主の世界では数字はこう書くのか・・・」

運ちゃん「もしかして文字が違うのか・・・ってまあ当たり前っちゃ当たり前か、どう見ても日本じゃねーもんなココ」

運ちゃん「あれっ?でもそしたら何で俺はおめーらと話できてるんだ?」

博士「うむ、どうやらお主には通訳の魔法がかかってるようじゃな」



博士「これは召喚魔法としては珍しいパターンじゃの」

博士「普通の召喚では、召喚された者が術者以外と会話するのはトラブルの元なんじゃ」

博士「精霊などはイタズラ者での、他の者と会話をさせると要らぬ事を言って人心を惑わすんじゃよ」

運ちゃん「な、なるほど?よくわかんねぇけど」

博士「じゃが、お主の場合は違った、という事は、つまり最初から術者以外との会話を想定されているワケじゃ」

博士「例えば騎士よ、お主はずいぶん彼に親身になってやってるようじゃが」

騎士「そりゃあ、恩人であるし、彼が気のいい男なのは分かっておるからな」

博士「これが、もしあの場で言葉が通じなかったらどうじゃ?」

騎士「うーむ、確かに今のようには扱って居ないかもしれぬな」

博士「それどころか怪しいヤツとしてお縄にしてたっておかしくは無いじゃろう」

騎士「まあ、全く言葉が通じず、誤解に誤解が重なれば無いとは言い切れぬ話か」

運ちゃん「オイオイカンベンしてくれよ」




博士「つまり、そういう事じゃ、召喚した者はこういう事態を最初から想定に入れておるんじゃろう」

運ちゃん「という事は?」

博士「うむ、つまり、術者は召喚した者が自分の目の前に現れるとは限らない事を知っておった」

博士「そうすると、せっかく召喚したのに、その者が誰とも言葉が通じず野垂れ死にしてしまうかもしれん」

博士「だから、最初から召喚術に通訳の魔法を組み込んであったんじゃろう」

運ちゃん「なーるほど、まあ確かにアンタたちの言葉分からなかったらマジで困ったろうな」

博士「逆に言えば、どこに出るか分からないまま召喚を行った、という事は」

博士「術者の目的は、自分のために召喚した者を使役する事ではない」

騎士「しかし、それでは何のために?」

博士「うーむ、それはまだ分からんな、とりあえずあまり先走らん方が良いじゃろう」

騎士「そうですな」



博士「明日はその男が現れた現場を見に行く事にしようかの」

騎士「じゃあ私が案内しよう」

博士「うむ頼むぞ、さて、今日はまずその鉄の箱とかを検証せねば」

運ちゃん「おう、トラック、ってんだ、見に行くかい?」

博士「それはどのぐらいの大きさなんじゃ?」

運ちゃん「全長12m、全幅2.5mってトコかな」

博士「む、めーとる、というのは何じゃ」

運ちゃん「げ、単位も違うのかよ、えーとな、俺の背丈が大体1.8mだ」

博士「ふむなるほど、ちとその壁際に立ってくれい、どれどれ、なるほどなるほど基本単位が・・・」カキカキ

博士「うむ、その大きさなら研究所の裏手に入るじゃろう」

博士「ここには大型の実験器具などを運びこむために裏手はかなり広くしてあるでの」

博士「門からもすぐじゃし、その間だけ往来を止めれば問題あるまいよ」

騎士「そうだな、そちらの方が良かろう」

~~
~~



博士「ほほう、ほうほう、うーむ、これは・・・なんと精妙な、しかも巨大な・・・」

運ちゃん「おいおいもう30分もこの調子だぞ」

騎士「いや、これは凄い事なのだよ、我らの技術でこれほどの物を作ろうと思ったら」

騎士「そうだな、この研究所と、街中の鍛冶屋や工芸師の全てを結集しても一月はかかろう」

騎士「もちろん機構の方は別として、形を真似るだけで、だ」

運ちゃん「そんなにかよ!?まあ俺も愛車褒められて悪い気はしねぇけどよ」

騎士「例えば私の着ていたあの鎧、お主の"とらっく"の鏡のような表面に比べればデコボコこの上ない」

騎士「しかもあの大きさで、だ。それでもあの鎧を作るのに通常の庶民の半年分の稼ぎが必要だ」

運ちゃん「マジかよ!?とんでもねぇモン着てるんだなおめぇ」

騎士「あれは私が騎士隊長として、領主様から賜った物だからな」

騎士「もちろん防御力も高いが、儀礼用の正装としての意味合いもあるので、様々な装飾が施されているのだ」



ガサゴソ、グイッ、コンコン

博士「うーむ、興味はつきぬが、召喚の解明につながる形跡は出てこんのう」

運ちゃん「そうかあ、まあ簡単に行くとは思ってなかったけどよ・・・」

博士「まあ、召喚術の基本原則として、召喚した物が送還できない道理は無いハズじゃ」

博士「時間は少しかかるかもしれんが、望みは捨てるでないぞ」

運ちゃん「おう、わりぃがよろしく頼むぜ!」

騎士「うむ、ほかならぬ恩人のお主のためだ、私も出来る限り便宜は図る」

運ちゃん「恩人ってほど何かしたワケでもねーんだけどな・・・ありがとな」

博士「それはそうと、お前さん、寝る所はどうするんじゃ?」

運ちゃん「あ、そうか、全然考えて無かったわ・・・別にトラックで寝るのにゃ慣れてるからココで全然構わねえんだが」

博士「ふむ、しかしそれじゃ食事やら何やら困るじゃろう、良かったらこの研究所にしばらく泊まらんか?」

運ちゃん「マジか?いいのかよ?」

騎士「それはありがたいな、私もどうにかせねばと思って居た所だ」

博士「うむ、ワシは異界の知識に興味があってな、それを色々と教えて欲しいんじゃ」

運ちゃん「そんなんで良いんなら俺は全然構わねえけどよ」

博士「じゃあ決まりじゃな、この研究所は多くの者が泊まりこんでおってな、かくいうワシもそうじゃが」

博士「ほとんど家に帰らん者も多いゆえ、寝泊まりする場所には事欠かんのじゃ」

博士「早速案内しよう、こっちじゃ」

運ちゃん「お、おう」

騎士「では博士、よろしく頼んだ、私は領主様に報告を上げてくる」



~ 翌日 ~

博士「ふむ、ココがその現場というワケか」

騎士「うむ、ここで魔物と戦っていてな、大振りの一撃を食らい、私はあちらの木まで吹き飛ばされた」

騎士「さすがの私も衝撃で動けなくてな、あわや、という時に、突如彼のとらっくが現れて魔物を吹き飛ばしてくれたのだ」

博士「うーむ、確かによく見るとここから急に轍の跡がついておるのう」

博士「まずはちょっと細かく分析してみるかのう」

博士「ムニャムニャ・・・ハアッ」ボウン

運ちゃん「何やってんだジイサンいきなり指メガネして」

騎士「魔力を観るための魔法を使っておるのだ」

運ちゃん「ふーん、コレで何か見えんのか?」クイッキョロキョロ

騎士「ははは、魔道の修行をしてないお主がやっても何も見えはせんよ」

運ちゃん「なんだつまんねぇ」




博士「むっ!これは・・・・・」

運ちゃん「お、何か見つかったかい?」

博士「うーむ、もしかすると・・・・・」

運ちゃん「おい、もったいぶんねーで教えろって」ユサユサ

博士「ま、まてまて、ちと見慣れぬ魔力のパターンがあってな、どこかで見覚えがあった気がするんじゃ」

運ちゃん「頑張って思い出してくれよ!」

博士「多分研究所の書物のどれかで読んだんだと思うんじゃがなあ・・・」

運ちゃん「マジか、じゃあさっさと戻ろうぜ!」

騎士「まてまて、何度も行き来するのは大変だ、戻る前に調査を全て済ませた方がよかろう」

博士「いや、大丈夫じゃ、大体観るべき物は観た、一旦帰る事にしようかの」

運ちゃん「おう、じゃあふたりとも乗った乗った」キュルキュルブオォン



~ 研究所 ~

博士「やっぱりコレじゃ!!」

運ちゃん「お、わかったのかよ」

博士「うむ、やはりこれは魔族の物じゃな・・・・」

運ちゃん「魔族ってなんだよ?」

博士「ああ、魔物の中でも特に知能が高く、魔法を自在に使いこなす者を魔族と言うんじゃ」

運ちゃん「ていうかよ、魔物ってなんなんだよ、昨日見たけどあんなのがいっぱい居るのか?」

博士「そうか、お前さんは異界から来たんじゃったな、そちらの世界には魔物はおらんのか」

運ちゃん「おう、見たことねーぞあんなん」



博士「羨ましい話じゃのう・・・まあざっくりと説明するとじゃな」

博士「この世界には2つの生態系があってじゃな、それが各地でせめぎあっておるんじゃ」

運ちゃん「ふーん?よくわかんねぇけど、それが魔物?」

博士「うむ、ワシら人間や、動物たち、森の木々や澄んだ川などはワシらの世界じゃ」

博士「それに対して、全く別の禍々しい生態系があってな」

博士「瘴気を呼吸し、木々を枯らし、毒の沼地を広げ、ワシらの生態系を食い荒らすのが魔物じゃ」

運ちゃん「自然破壊って事か?」

博士「まあ、そういう呼び方もあるかもしれんが・・・・なんか違う」



博士「ただ、ヤツらは獰猛でな、ワシら人間にも襲いかかる上に」

博士「ヤツらの中で知能を持った者は積極的に人間の世界を攻めて来るのじゃ」

博士「そやつらを魔族と呼んでおるのじゃが、ワシらは歴史が始まって以来連中と戦いを続けておる」

運ちゃん「マジか、じゃあこの国も戦争中なのか?」

博士「そうじゃ、だからこそ、近隣に魔物の影があれば昨日の騎士のように警戒のため見回りに出る」

博士「もちろん前線はこの辺りから離れておるから、即座に戦火にさらされる事はないが・・・」

運ちゃん「雲行き良くねぇのか?」

博士「うむ、ここ数年ほど、ヤツらは急激に力をつけていてな」

博士「長い間一進一退だった戦いが、どうも人間側に不利な形勢になっておるんじゃ」

運ちゃん「マジかよ、ヤな時に来たな」



博士「もちろん我らとて手をこまねいているだけではない、新たな技術を開発しようとこの研究所もフル稼働しておる」

運ちゃん「だからみんなして泊まり込んでるってワケか」

博士「かくいうワシもな、役に立つ異界の知識を手に入れるために、召喚術を研究しておったのじゃ」

博士「そうしたらお前さんが現れたというワケでな」

運ちゃん「ああ、だから俺の世界の話を聞きてぇ、って」

博士「そうじゃ。ワシの魔法で召喚したわけでは無いのが残念じゃがな」

運ちゃん「まあ、俺なら何でも話すけどよ、どうせなら、もっとアタマの良いヤツが来てたら良かったな」

博士「そう謙遜することも無かろう、何が役に立つかなんて事はわからんものじゃ」

運ちゃん「そういうもんか?」

博士「うむ、そういうワケじゃから、お主の世界の事を聴かせてくれんか?」

運ちゃん「そりゃあいいけどよ、どこから話したらいいんだろうな」

博士「んー・・・ではまずあの鉄の箱の事から聴かせてくれんか?」


~~

運ちゃん「~~そしたら、こっちのピストンの中で爆発を起こすだろ?そうすっとこっちがこう押し出されて」カキカキ

運ちゃん「んで、今度は反対側にくっついてるピストンで爆発させるだろ?そうすると・・・」

博士「なるほど、回転運動になるわけじゃ」

運ちゃん「そうそう、そうやって動いてんだよ自動車ってのは」

博士「ほほう、原理だけ聞くと意外と単純なモノなんじゃな」

運ちゃん「ただな、それを毎分2000回とかやってるんだけどな」

博士「2000回!?そんな離れ業を魔法も使わずに!?」

運ちゃん「おうよ、まあ最近の車はみんなコンピューターって、一種の魔法みたいなモン使って制御してんだけど」

博士「ふむ?そのこんぴゅーた、というのはどういう仕掛けなんじゃ?」

運ちゃん「あー・・・すまね、そっちの方面は俺ぁ全然わかんねんだ」



博士「ふーむ、そうか、残念だのう・・・・」

博士「それにしても、なんとも高度な技術じゃ、残念ながらワシらではとても真似できんな」

運ちゃん「まあ、俺だって整備するから多少は知ってっけど、こんなモン自分じゃ作れねーしな」

博士「非常に興味深い、物理的なしくみだけでこれほどの事を成し遂げるとは」

博士「ワシらの技術とは全く思想が異なる・・・うーむ、なんとか役に立てられんものだろうか・・・」

博士「うむ、もっとお主の世界の話を聴かせてくれ!!」

運ちゃん「それは良いけどよ、俺が帰る方法もちゃんと探してくれよ?」

博士「もちろんじゃ、そちらはワシの研究の本筋じゃからな、任せておけい!」

~~
~~



~ 数日後 ~

運ちゃん「この世界はメシは悪くねーな、あんまり長いこといると醤油が恋しくなって来そうだけどよ」

運ちゃん「あれ?ハカセの研究室の前に誰かいんな、客か?」

運ちゃん「おう、ハカセに用かい?」

少女「あ、あの、どちらさまで?」

運ちゃん「俺ぁあのーアレだ、まあハカセんトコの居候みたいなモンでよ、運ちゃんってんだ、よろしくな」

少女「あ、はあ、私は少女ともうします」

運ちゃん「ハカセに用じゃないのかい?」

少女「そうなんですけど、留守のようでして・・・」

運ちゃん「留守?んなハズねぇよ、さっきまでココに居たんだぜ」

運ちゃん「きっとまた本か何かに夢中で聞こえてねーんだな、俺が呼んで来てやるよ」

運ちゃん「おーいハカセ!」ガチャ

運ちゃん「あれ?(キョロキョロ)居ないワケねーと思うんだけどな」



運ちゃん「あ、居た、そんな戸棚の陰でなにやってんだハカセ」

博士「(ば、バカ!シーッ)ヒソヒソ」

運ちゃん「(お?なんだよ、何かマズいのかよ?)ヒソヒソ」

運ちゃん「(あ、まさかあの娘ハカセのコレか?)」

博士「(バカ!そんなんじゃないわい!)」

少女「お じ い ち ゃ ん ?」ズズズズズ

博士「ひ、久しぶりじゃのう?」

少女「『久しぶりじゃのう』じゃありません!!!」

博士「ビクッ」



少女「明日には帰るって言ってから何日経ったと思ってるの!!」

少女「着替えも洗濯もしないでこんな所に閉じこもって何してるのよ!!」

少女「だいたいウチの魔法釜だって治してくれるって言ってからもう半年よ!」

博士「あうあうあーこれはその・・・」

少女「あ!もうまたおヒゲにご飯の残りカスついてる!!」

少女「アタシの唯一の親族なんだからね!もうちょっとしっかりしてよ!!」

博士「う、うむ、すまんかった」

運ちゃん「(うひょーおっかねー、ウチの女房思い出すな・・・)」

運ちゃん「なんだ、ハカセこんな大きな孫が居たのかよ」

博士「う、うむ」



少女「この方は?」

博士「あーそのなんじゃ、ちょっと研究でな」

少女「ちょっとじゃありません、ちゃんと説明して!」

少女「こないだだって『ちょっと研究で』っていきなりグレムリンを家に連れ帰って来て」

少女「あの大騒ぎの後片付け、誰がしたと思ってるの!!」

博士「うー、話すと長いんじゃが・・・・」

少女「全部聞くから話してちょうだい!アタシは時間はたっぷりありますから!」ドッカ

運ちゃん「(随分気のつえぇ孫だな)ヒソヒソ」

博士「(そうなんじゃよ・・・目下、ワシの一番の鬼門でな)ヒソヒソ」

少女「で、どういう事なの?」

博士「そ、それはじゃな、事のおこりは~~」



博士「~~というワケなんじゃ」

少女「なるほど、この人は大変な目に遭ってるのね」

運ちゃん「まあ大変っても、こっち来てからはせいぜいハカセの雑用してる程度でなあ」

運ちゃん「あとは食って寝るだけだし、むしろいい骨休めになってるぐらいだわ」

少女「つまり、おじいちゃんはお客に助手のマネゴトもさせてる、と?」ジロッ

博士「い、いやいやそういうワケじゃないんじゃ、単に彼が元の世界に帰るために・・・」

少女「それは分かったわ」

博士「う、む?」

少女「おじいちゃんの研究が今、この人のためにも大切なのは分かった」

博士「そう、そうなんじ 少女「ただし!」

少女「だからといって家に帰って来ないで良いという理由にはならないわよね」

博士「ぐ」



少女「今夜こそちゃんと帰ってきてもらいます、アタシは今から帰ってご飯の準備するから」

少女「おじいちゃんは必ず晩ごはんまでに帰ってきてちょうだい!」

運ちゃん「おう、それがいいやハカセ、俺も仕事でなかなか家に帰れなかったけどよ」

運ちゃん「帰れる時はちゃんと帰って家族の顔見なきゃダメだぜ?」

博士「う、うむ」

運ちゃん「大体ハカセここんとこ何だか難しい事ばっかしてロクに寝てねーじゃねぇか」

運ちゃん「ちゃんと家帰ってちょっとゆっくりして来なよ、俺は適当にトラックで寝てるからよ」

少女「何言ってるんですか、おじいちゃんのお客さんを一人こんな所に放ってはおけませんよ」

少女「客間の準備もしておきますから、あなたも一緒に来て下さい」

運ちゃん「い!?で、でもよ、俺は別に客っていうか、ただの居候みたいなモンで・・・」

少女「むしろ貴方にはおじいちゃんをしっかり連れ帰って来てくれるようお願いしたいくらいです」

少女「どうせまた私が帰ったらすっかり忘れちゃうんですから」



運ちゃん「だけどいいのかよ、久々の家族水入らずなんだろ?」

少女「別に構いません、食卓は賑やかな方が良いですから」

少女「なにしろおじいちゃんが帰ってこないもんで、普段のウチの食卓はアタシ一人なんですからね」ギロ

博士「ゴメンナサイ」

少女「じゃあ、先に帰って待ってますから、八時にはご飯にします」

クルッスタスタバタン

運ちゃん「・・・・だってよ、どうするハカセ」

博士「言い出したら聞かん子じゃ、今日の所はお前さんと帰る事にしようかの(嘆息)」

~~
~~

詰まったので今日はこの辺で
適当に感想とかもらえると泣いて喜びます



~ 博士の家 ~

カチャカチャ、モグモグ

運ちゃん「~~ってなワケでよ、いやホントびっくりしたぜ、いきなり見たこともねー場所に居てよ」

少女「それは大変でしたわね、元居た世界というのはどういう場所なんですか?」

運ちゃん「うーん、そうだなあ、ココとは全然違うけど、まあ悪いトコじゃねーぜ」

運ちゃん「こっちと違うのは、まあ魔物はいねーけど、あとはアレだな、街がバカでけぇ」

運ちゃん「俺の住んでる東京なんてよ、端っこがどこだかよくわからねぇぐらいどこまで行っても街なんだよ」

少女「想像つきませんわ、そんな大きな街・・・」

運ちゃん「代わりによ、子どもたちが遊べるような森とか川とか、どんどん無くなっちまってるんだけど」

少女「そちらの世界では子供が森や川で遊ぶんですか?」

運ちゃん「え、こっちじゃしねーのかい?」

少女「ええ、そんな所に行って魔物が出たら大変ですし・・・・」



少女「それに森まで一人で行けるような年齢ならば、子供は家の事をするなり、働きに出るなりするのが普通です」

運ちゃん「そういえば日本でも昔の子供はそうだったって聞いたことあるけど・・・厳しい時代なんだな」

博士「若い男が戦争で次々と失われてしまうでな、働き手は慢性的に不足しておるのじゃ」

カチャン

運ちゃん「?」

少女「アタシ・・・・食事の後片付けしてきますから・・・」ガチャガチャ・・・クルッ

スタスタ

運ちゃん「おいどうしたんだ、あの子なんか様子ヘンだったぞ」

博士「マズったのう、父親の事を思い出させてしまったようじゃ・・・」

運ちゃん「父親って、ハカセの子供ってことか?」



博士「うむ、あやつの父親はこの国の騎士だったんじゃが、三年前にな・・・」

運ちゃん「まさか死んだのか?」

博士「辺境の村が魔物の軍に襲われてな、その報せを最寄りの詰め所で聞いた息子は」

博士「村人たちを救出するために隊を率いて向かったんじゃ」

博士「奇跡的に村人に死者は出なかったんじゃが、村人を守りながら撤退戦を戦い抜いた騎士隊は数人を残し全滅した」

博士「それは激戦だったんじゃろう、隣の街にたどり着いた時には、生き残った騎士たちも村人に担がれ虫の息だったそうじゃ」

運ちゃん「言葉がねぇよ・・・」

博士「まあ、この国ではさほど珍しい話でもないがの」

博士「当時は塞ぎこんでおったあの娘も、最近では随分明るさを取り戻してきたので乗り越えたかと思ったがのう」

運ちゃん「そう簡単にゃ乗り越えらんねーよ」



運ちゃん「親が死んだってのは一大事だぜ?俺だってオフクロを亡くした時はこの世が終わるかと思ったくれぇだ」

運ちゃん「まだガキだった俺はグレちまってよ、随分と人様に迷惑かけたもんだった・・・」

運ちゃん「それに比べたら、あの娘はしっかりしてる、大したもんださすがハカセの孫だ」

博士「うむ、ワシも最近心配をかけすぎたかのう・・・」

運ちゃん「(そうか・・・ウチの家族も俺が死んだと思ってっかもしんねーんだよな・・・)」

運ちゃん「(なんとかして早くかえんねーと)」

ドンドンドン!!

運ちゃん「お?客だぜ?」

博士「なんじゃ、こんな時間に家に来るとは珍しい・・・どちら様かの?」ガチャ

兵士「は、博士!!こちらにいらしたんですね!!研究所に居ないから・・・」

博士「どうした、落ち着くんじゃ、何があった?」

ちなみに、世界とか国とかの名前は考えてません
SSでは名前はただの記号だと思いますので

トラック以外で決めてあるのは人物の年齢と性別と簡単な設定ぐらいです
あとは書きながら考えます


運ちゃん♂(38)トラックドライバー歴15年、妻(30過ぎ)と娘(小学生)アリ

騎士♂(27)まあまあの家柄出身、両親は病死、つよい、カタブツ、人望アリ

博士♂(62)召喚術の第一人者、研究バカ、好奇心旺盛、ズボラ、孫に頭が上がらない

少女♀(17)気が強い、よく働く、父親が死んだトラウマアリ



兵士「あ、あの、騎士様からこちらの書簡が飛行書で!!」

博士「飛行書?よほど切羽詰まったと見えるな・・・どれどれ」


『東方の村に魔物の襲撃あり、至急援軍を乞う

 現況急を要す故、我が巡察隊は先行して村の防衛にあたる

 敵数20~30、火炎を使う者居るとの報告アリ

 魔法研究所にて新型の対魔装備を受領して進発するべし』

 
博士「ば・・・馬鹿な事を!!30もの魔物を相手にたった一隊で・・・」




兵士「ともあれ、とにかく急いで増援に向かうしかありません!つきましては装備の方を!」

博士「そ、そうじゃった、研究所に行かねば!」

少女「おじいちゃん!?」

博士「少女!?」

少女「まさか・・・あの人が?」

博士「きっと大丈夫じゃ、すぐに増援が着く、お前はここで待っておいで」

少女「はい・・・」

運ちゃん「おいハカセ、急ぐんじゃねーのかよ!?」

博士「そ、そうじゃった、行こう!」




タッタッタ

運ちゃん「おいハカセ!騎士のヤツ、やべぇのか?」

博士「う・・・む・・・・魔物30体といえば、完全武装の兵士50人でようやくといったところ・・・」

博士「それをロクな装備も無い10人かそこらの巡察隊では・・・・・正直絶望的じゃ」

運ちゃん「で、でもよ、だからこれから援軍送るんだろ?」

博士「う、うむ・・・・」

運ちゃん「な、なんだよ、歯切れよくねぇな」

兵士「その、東方の村はここから一日旅程の距離なんです」



兵士「馬車隊を組んで急いだとしてもこの夜間では・・・どんなに早くても・・・・」

運ちゃん「間に合わねぇってのかよ!?」

兵士「村には防衛設備のような物もありませんし、巡察隊一隊だけでは半日も持ちますまい・・・・」

運ちゃん「バカヤロウ!!おめーの仲間なんだろ!?なんとかして助けるんだよ!!」

博士「そうは言うが・・・距離の壁はどうにもならん・・・せめて仇を討ってやれるよう・・・」

運ちゃん「ん、まてよ!その距離ってどんくらいなんだ?」

博士「およそ$%&・・・じゃない、お前さんの世界で言えば30kmぐらいじゃ」

運ちゃん「30km・・・・おい!だったらなんとかなるかもしんねぇぞ!」

>運ちゃん「おうともよ、こちとら娘の誕生日が待ってんだ」
>
>騎士「む、そ、それに間に合うかどうかは・・・」
>
>運ちゃん「今年がダメだって来年があるだろ?来年がダメだって再来年がある」


娘「8歳と9歳と10歳と、12歳と13歳の時も私はずっと待ってた!」



~ 城門前 ~

ワーワー

衛士「槍と弩は揃ったか!?」

兵士A「はっ、あちらに!」

衛士「対魔装備の方はまだか!?」

兵士B「今研究所に一人はしらせております!」

衛士「むう・・・各隊、揃ったら城門前に整列させておけ!」

衛士「装備が届き次第着用して出るぞ!」

兵士A「はっ!」

ブロロロロ

「うおっ」「なんか来やがった!?」

衛士「む、なんだ!?」

デコトラでは無いつもりです、普通の運送トラックですね
もしかしたら「最大積載量つめるだけ」ぐらいは書いてあるかもしれませんが
メーカーはいすゞ、ふそう、日野のどれかです

続き投下



キキー!

運ちゃん「おい!アンタが援軍のアタマか!?」

衛士「お、お前はあの時に隊長と一緒に居た」

運ちゃん「研究所から装備を運んできた!」

衛士「おお、そうか、かたじけない!」

運ちゃん「そんでな、いっこ提案があるんだけどよ!」

運ちゃん「おめーら全員を俺がこのトラックで運ぶ!だから急いで後ろに乗り込んでくれ!」

衛士「んなっ!?どういう事だ!?」

博士「この鉄の箱は見覚えがあるじゃろう、コレならば東方の村まで1時間で行けるそうじゃ!」

衛士「ば、馬鹿な、そんな魔法聞いたことも無いぞ!?」



運ちゃん「嘘じゃねぇ!本当なら30分って言いたいトコだけどよ、道も悪いし街灯もねえからな」

運ちゃん「とにかく、急がねぇとおめーらの隊長がおっ死んじまうだろ!ガタガタ言ってねぇでさっさ乗れや!」

衛士「し・・・しかし、本当なのか・・・!?」

運ちゃん「バカヤロウ!俺ぁ荷を待たせた事がねーのが自慢なんだよ!」

運ちゃん「俺が届けるって言ったらぜってー届けるからさっさと乗りやがれ!」

博士「この鉄の箱の性能はワシが保証する!今は一刻も早く騎士の救援に向かうべきじゃ!」

衛士「む・・・・・・・わかった!全隊集合!!」



運ちゃん「みんなわりぃな、荷台はカラにしておいたけど、50人も入るとさすがに寿司詰めになっちまう」

運ちゃん「座席とかねーからよ、床に座ってなるべくアタマとかぶつけねーようにしてくれ」

「おう」「こうか?」ガサゴソ

衛士「是非とも隊長を助けたい、よろしく頼むぞ」

運ちゃん「おう、任せとけ!じゃあ閉めるぞ」

衛士「あ、待て、コレを渡しておく」

運ちゃん「ん、なんだこりゃ」

衛士「隊の指揮に使う通信球だ、短い距離しかしか届かぬが、この荷台と御者台の間ぐらいなら問題ない」

運ちゃん「お、そうだな、後ろと会話できねーと不便だもんな!」

衛士「では、頼んだ」

運ちゃん「おう!ぜってー時間通りに届けてみせっからよ!!」バタン





運ちゃん「タイヤよし、液漏れなし、よっしゃ行くぜ」

ガチャ

博士「よし、出発準備は万端かの?」

運ちゃん「え、ハカセ!?なんで助手席に!?」

博士「いくら地図があってもこの暗さじゃろ?道案内が必要かと思ってな」

運ちゃん「おいおい、俺らこれから戦場行くんだぜ?ジイサンは危ないから家で待ってろって」

博士「お前さんこそ生きてる魔物も見たこと無いくせに偉そうな事を言うでない」

博士「これでもワシは若いころは魔法師として戦争に馳せ参じておってな、迫り来る魔物をちぎっては投げ・・・」

運ちゃん「あーわかったわかった、知らねーぞ、また孫にドヤされても」

博士「その時はお前さんに一緒に謝ってもらうから大丈夫じゃ」

運ちゃん「カンベンしろよ・・・その仕事は騎士のヤツにやらせようぜ」

博士「それは良い考えじゃな」

運ちゃん「おーし、出発だ!!」

感想や雑談は大歓迎ですが、ここでケンカは辞めて下さいね
では続き投下


ブオオオーン

運ちゃん「思ったより道は悪くねーな」

博士「この道は東の商都との主要街道じゃからな、人通りも多いし、水はけなども整備されておるのじゃ」

運ちゃん「この調子ならもうちょっと早く着けるかもしんねぇ」

博士「あ、そのカーブを曲がると森を抜けるぞい」

運ちゃん「そいつはありがてぇ、森はどうも視界が悪くていけねえ」

運ちゃん「ところでよ、ハカセの孫と騎士は知り合いなのか?」

博士「む?何の事じゃ?」



運ちゃん「トボケんなよ、さっき家で報せ受け取った時に『あの人が?』とか言ってたじゃねーか」

博士「聞いておったか、うむ、まあ隠すほどの事でもないのだが・・・騎士は息子の部下でな」

運ちゃん「なるほど、あの娘からしたら親父の後輩ってワケか」

博士「そうなんじゃ、息子をとても慕っておってな、息子もかなり目をかけてやっておった」

博士「そんなわけでな、3年前までは騎士は息子の隊におったんじゃ」

運ちゃん「3年前・・・って事は、もしかして例の・・・・」

博士「そう、村を守って壊滅した隊の生き残りなんじゃよ」



運ちゃん「んで?そんだけじゃねーんだろ?その複雑な顔は」

博士「うむ・・・当時父の死を知らされた孫は随分と取り乱してな」

博士「葬儀の席で騎士に『何故父を助けてくれなかったのか、何故貴方だけが生きているのか』と詰め寄ったのじゃ」

運ちゃん「うあ・・・・・そいつは・・・・なんつーか・・・・・・」

博士「もちろん本心からの言葉では無い、それは騎士も分かっておるのだが」

博士「娘自身がその事を後悔しておってな、それ以来なんとも言えぬわだかまりが残っておるのじゃよ」

博士「じゃから、ここで騎士を見殺しにするような事になれば、ワシは息子にも孫にも顔向けができん」



運ちゃん「だからってわざわざ出張って来る事もねーだろうに、年寄りの冷や水ってモンだぜ?」

博士「なにを!?バカにするでない、これでもまだワシの魔法の腕は国内でも指折りの・・・」

運ちゃん「おい!あれ!」

博士「こら人の話は最後まで・・・・む!」

運ちゃん「あっちの空が赤え!!」

博士「魔物ども、村に火をかけおったな」

博士「グズグズしておられん、急いでくれ!」

運ちゃん「おうよ」グッ

グォォォォン



~ 東方の村 ~

--炎に包まれる村の家屋

--その中をゆっくりと歩み迫る魔物たち

--迎え撃つように並ぶ騎士たち


騎士「ついに来てしまったか・・・村人の避難はまだか!」

従士A「まだです!足の悪い者などが今荷車で・・・」

騎士「くそっここで食い止めるしか無いか」

従士B「そうなりますなあ」

騎士「総員戦闘準備!!ここに陣を張る!!」



騎士「なるべく魔物どもをここに引きつけろ!」

騎士「横を抜けようとする魔物は弓兵が対応しろ!」

弓兵「はっ!」

騎士「突出はするな!防御に徹し、村人が避難する時間をかせぐ!」

騎士「村人が全員村を出たら村を放棄し、避難民に合流する!村人には手を出させるな!」

「「「ははっ!!!」」」

騎士「(奇しくもあの時と同じ状況か・・・)」

~~
~~



~ 街道 ~

運ちゃん「後ろは大丈夫かな、結構トバしてっけど」

運ちゃん「えーとこれでいいのか?(ポチッ)こちら運転席、聞こえるか?どうぞ」

衛士『聞こえてる、どうした?』

運ちゃん「後ろは大丈夫かい?あんまり乗り心地は良くねぇと思うんだが、どうぞ」

衛士『あまり快適とは言えんが怪我人などは出ておらぬ』

運ちゃん「なら良かった、もうすぐ村に着くんでもう少し辛抱してくれ、どうぞ」

衛士『分かった、本当に早いな、出番が来たら教えてくれ』

運ちゃん「了解」

博士「その『どうぞ』ってのは何じゃ?」

運ちゃん「ん?あ、コレ無線と違って話すのと聞くのと両方できんのか」

博士「???」

運ちゃん「まあ、無事帰れたら説明するよ、へへ」



~ 東方の村 ~

騎士「はぁっ」ズシュッ

グェェェェ・・・バキッ

騎士「くっ槍が・・・」スラリ

「ウワァアア」「グエェェエ」

騎士「弓兵!矢の残りは!?」

「あと10本!!」「7本です!」

騎士「くっ、やはり数の違いは大きいな」ズシャッ



従士A「ぐわぁぁあっ」

従士B「おいっ大丈夫か!」

騎士「何人やられた!?」

従士B「3人です!重傷一名!」

騎士「頃合いか・・・撤退する!負傷者を連れて村の出口へ!」

騎士「弓兵は残りの矢で撤退を援護しろ!」

従士C「隊長も早く!!」

騎士「私が殿を務める!(ガキッ)行けっ!!!はぁっ!!」ザシュッ

「おし!行くぞ」「いててて」「逃げるぞ!頑張れ!」


~~

従士C「もうすぐ村を抜ける!頑張れ!!」

負傷兵「おう・・・こんな・・トコで死ねるもんかよ」ダラダラ

ガキーン!ドシュッ!ゴォォォ

従士B「次から次へとキリがねぇです!な!」バシュッ

騎士「くっ、これ以上さがると村人に追いついてしまう」ガキッ

弓兵「思ったより敵がバラけませんね」バシュン

騎士「よく統率がとれておる、厄介だ」ザンッ

ヒューン ドシュッ

騎士「ぐっ」ガクッ



騎士「しまった、足をやられたか」

従士B「隊長!!」

弓兵「おのれよくも!」ビューン

騎士「私の事は良い!!魔物を・・・・」

魔物「コオオオオオオ・・・」

騎士「しまった火炎っ・・・避けろ!!!」

騎士「うっ足が・・・」ガクッ

騎士「(もはやこれまでか・・・・)」

~~
~~



運ちゃん「見えたっ!!」

博士「なんと、村が火の海じゃ・・・」

運ちゃん「アレ!!入り口んトコ!」

博士「間に合ったか!!まだ皆戦っておる!!」

運ちゃん「おい、やべぇぞアレ!!」

博士「足をやられておるぞ!」

魔物「コオオオオオオ・・・」

運ちゃん「させるかあああああ」グッ ゴオオオオオオ

博士「ちょ、な、なにを」

運ちゃん「突っ込む!!ハカセ後ろにアタマ押し付けとけよ!!」

運ちゃん「ふざけんなクソ、トラック野郎は時間厳守なんだよおおおおお!!」ブオオオオオ

博士「い、いかん、そうじゃ(ポチッ)後ろ聞こえとるか!このまま魔物に体当たりする!」

衛士『な、なんだtうぶぉっ』

ドゴォッ!!



ドゴォッ!!ギャァァァァァ・・・

騎士「な・・・なんだ・・・?」

運ちゃん「騎士!!無事か!!!」

騎士「ま、まさかお主、こんなところまで・・・」

博士「いかん!魔物の群れがこっちに来るぞ!!」

運ちゃん「いけねえ、よし!!後ろのみんな、待たせてすまんかったな!!今あける!!」

グイーン

運ちゃん「へっへっへ、自慢のサイドウィングだぜ!」

「なんだなんだ」「あっ!隊長!!」「おい火の海だぞ!」



衛士「おい貴様ら!!ようやく出番だ!!あの魔物ども一匹たりとも生かして帰すな!!」

「「「「はっ!!」」」」

ダダダッ

衛士「全く、ひどい乗り心地だったぞ!」

運ちゃん「いや、すまねえ、人は運び慣れてねーもんでよ」

衛士「ま、苦情は後だ、あの化物どもを片付けてくる、おい!俺の分残しとけ!!」ダッ

運ちゃん「なんつー頑丈な連中だ」



騎士「運ちゃん・・・・・・・」

運ちゃん「おいっおめぇひでえケガだぞ!!大丈夫かよ!!」

騎士「お主には一度ならず二度までも・・・なんと礼をして良いか・・・」

運ちゃん「なあに良いって事よ、俺ぁアイツら運んできただけだぜ」

騎士「いやいや、二度も命を救われて『良いって事』では済まされん」

騎士「私は領主様に、そして人々に剣を捧げた、お主のためなら何も惜しみはせぬ!」

運ちゃん「おいおい辞めてくれよ、なんだかむず痒くなってくらぁ」




博士「まあまあ、固い話はいいじゃろ、そんな事より負傷兵たちの手当をせんといかん」

騎士「そうであった!!すまぬ、私もロクに動けぬ・・・手伝ってくれんだろうか」

運ちゃん「え、あ、いいぜ・・・ただ・・・よ」

博士「何をモタモタしとるんじゃ、さっさとその箱から降りてこんかい」

運ちゃん「いやあ、実はよ」

博士「何じゃ、どうした?まさかケガでも・・・・」

運ちゃん「いや、そうじゃねえんだ、ただ、ちっとな・・・・・」

博士「?」

騎士「?」

運ちゃん「小便ちびっちまった」ヘヘ

~~
~~



~ 数日後 ~

運ちゃん「ふあぁあ、今日もいい朝だぜ」

少女「あ、おはようございます、朝ごはんもうちょっと待って下さいね」パタパタ

運ちゃん「おう、まだジイサンも寝てるし急ぐこたぁねーよ」

少女「おじいちゃんたら相変わらず夜遅くまで研究ばっかりしててもう・・・」

運ちゃん「すまねぇなあ、俺のせいでよ」

少女「運ちゃんのせいじゃないですよ、おじいちゃんはほっといたら何日でもあの調子なんですから」

運ちゃん「そりゃそうか」

ピイィィィ

少女「あっといけない、お湯かけっぱなしだったわ、それじゃあご飯できたら呼びますから!」

運ちゃん「おうよ」



運ちゃん「(あれ以来、なんかあの娘すっかり明るくなったな)」

運ちゃん「(騎士の見舞いに行って何か吹っ切れたんかな)」

運ちゃん「(それにしてもなあ・・・なんだか遠いトコに来ちまったなあ)」

運ちゃん「(トラック転がしてる頃も、ゾクで暴れてた頃も、死ぬ事なんて考えた事なかったよな)」

運ちゃん「(いや、事故で死ぬ可能性は考えたけど、誰かに"殺される"なんて考えもしなかった)」

運ちゃん「(今回は奇跡的に死人は出なかったけど、巡察隊の何人かはケガが治っても障害が残るらしいし)」

運ちゃん「(騎士だってマジで間一髪のトコだった・・・・・・)」

運ちゃん「(俺だけココでブラブラしてていいもんかな・・・・・)」



運ちゃん「(とはいってもなあ、いくら昔ケンカで鳴らしたからって、剣もってブン回すなんてできっこねーし)」

運ちゃん「(アイツらすげぇよな、自分の何倍もある魔物相手に剣とか槍だけで立ち向かうなんて)」

運ちゃん「(俺にはとても真似できねーが、俺にも何か出来る事はねーもんかな)」

運ちゃん「(俺に出来る事・・・・・)」

キィッ

博士「おや、起きておったのか、早いのう」

運ちゃん「いやハカセが遅いんだよ、もうとっくに日は昇ってんぜ?」

博士「おっと、どうやら昨日夜更かししすぎたようじゃの」



運ちゃん「おい、ハカセ、後でちっと相談があるんだけどよ」

博士「む、なんじゃ?ワシに出来る事ならなんでも相談にのるぞい」

運ちゃん「あのよ・・・・」

少女「ご飯できましたよー」

運ちゃん「ま、後でいいわ、研究所で話すよ」

博士「ふむ?わかった」

少女「あ、おじーちゃんまだ顔洗ってないでしょー!」



博士「う?む?その、朝食の後に洗おうかと・・・」

少女「まったくもう、絶対忘れて出かけるんだから!」

少女「運ちゃん、ちゃんとおじーちゃんに出る前に顔洗わせてね!」

運ちゃん「おう、まかしとけって」

博士「いやまて、いくらワシでも顔を洗うぐらい忘れんぞ」

少女「嘘ばっかり!何も言わなかったらいつも何か難しい事ブツブツ言いながらどっか行っちゃうんだから」

運ちゃん「ま、そりゃあ間違いねぇな」



~ 研究所 ~

ブロロロロ

運ちゃん「うーん、ちっとアイドリングが高えかな・・・?」

運ちゃん「ま、大丈夫か」キュルルゥン・・・

運ちゃん「しっかしまあ、フロントベコベコだな・・・・よくガラスが割れなかったもんだわ」

運ちゃん「おめーもいきなりワケわかんねーとこ連れて来られて、魔物は轢くわ人は乗せるわ、大変だなあ」ポンポン

運ちゃん「俺ぁ大型二種はねぇからなー、ホントは運んじゃいけねぇんだけどな」

運ちゃん「なーんてな、そいや俺免許の更新今年じゃなかったっけな」

ゴソゴソ

運ちゃん「サイフとかってドコやったんだっけな、座席の下にでもおっこったか?」



運ちゃん「あったあった・・・・・あれ?これ・・・俺のセカンドバッグじゃねーぞ」

運ちゃん「こんなモンいつ拾ったっけなあ・・・」

コンコン

博士「こっちにおったのか」

運ちゃん「お、ハカセか・・・(んー、まいっか、どっちみちサイフなんか要らねえし)」ポイッ

運ちゃん「ちっとコイツの整備をしててな、こっち来てから全然見てなかったからよ」

博士「ふむ、それで、朝いいかけておったのは何じゃ?」

運ちゃん「ああ、その事なんだけどよ、ハカセ、コイツの燃料って作れねーかな」



博士「燃料というと、なんじゃったかな、がそ・・・がそ・・・」

運ちゃん「そうそう、ガソリンよ、まあ本当はディーゼルなんだけどよ」

博士「うーむ、はるか西方の砂漠の国で燃える水が出るというのは聞いた事があるが」

博士「そう簡単にここまで運んで来れる物でも無いしのう・・・・」

博士「それに、その石油?のままではダメなんじゃろ?」

運ちゃん「んだな、精製純度とか、色々あるんだけどよ」

博士「となるとさすがにワシらの手には負えんかもしれんのう・・・」

運ちゃん「やっぱりそうかー・・・・」



運ちゃん「じゃあよ、なんか魔法で燃料なくても動くようにとかできねーかな」

博士「さすがにそれは・・・魔法とはいえ万能ではないからのう」

運ちゃん「ダメかあ・・・」ガックシ

博士「む、待てよ、そのとらっくには今もまだ燃料は残ってるんじゃったな?」

運ちゃん「まあタンク半分ぐれぇはまだあるけどよ」

博士「石油からそれを作る事はできずとも、現物があるならば複製は出来るかもしれんぞ」

運ちゃん「マジか!?そんな事できんのかよ!」

博士「ワシは不得手じゃが、錬金術の得意な者ならひょっとするかもしれん」



~ 錬金術研究室 ~

博士「~~というワケなんじゃが」

錬金術士「ふーん、それでその緑色の液体がその燃料ってヤツ?」

運ちゃん「おう、すげーよく燃えるから気をつけてな」

錬金術士「どれどれ、うっぷ、なかなか強烈な匂いがするね」

運ちゃん「あ、でもその匂いはわざとつけてあるんだわ」

錬金術士「へえ?なんでわざわざ着香を?」

運ちゃん「燃えやすいから、匂いがついてないと気づかないで近くで火とか使うかもしんねーからよ」

錬金術士「なるほどね、確かにそれは理にかなってる」


錬金術士「コレの原料は?」

運ちゃん「石油っていうんだけどよ、なんか、地面の奥の方になんかが溜まって、それが元でどうとか・・・」

錬金術士「うーん、あんまり要領を得ないけど、要は鉱物なのかな?」

運ちゃん「・・・・・かもしんねぇ?」

錬金術士「まあいいや、ちょっと火をつけてみようか」

運ちゃん「お、おい、アブねぇから・・・」

錬金術士「大丈夫大丈夫、ここではもっと危険なモノも沢山扱ってるんだから、ムニャムニャ・・・ボワッ」

錬金術士「ほー、へー、着火性が高いね、面白い」

錬金術士「うん、コレ、量産する事できたら色々と役にも立ちそうだね」

博士「確かにのう、獣油よりもはるかに燃焼効率が良さそうじゃ」



錬金術士「でも、獣油と精霊的な性質は似てるみたいだよ?ほらこのメガネかけてみなよ」

博士「む、どれどれ、確かにのう、しかし数は随分と違うようじゃの」

錬金術士「それが着火性の高さにつながってるのかもね」

運ちゃん「(学者が何言ってんのかサッパリわかんねーのはどこの世界でも一緒だな)」

錬金術士「うん、いいよ、面白そうだからちょっと取り組んでみる」

錬金術士「元々複製の術はいくつかパターンあるから、それの応用で行けるんじゃないかな」

運ちゃん「おお!ありがてぇ!すまねぇが頼んだぜネーチャン」

錬金術士「これがあれば照明とか武器とかに色々使えそうだからね」


~ 博士の研究室 ~

博士「それにしても、何故急に燃料を補給しようと思ったんじゃ?」

博士「いや、そりゃまあお前さんの愛用の"とらっく"じゃろうから、動かなくなったら困るのは分かるが」

運ちゃん「いやな、ちょっと色々考えたんだけどよ、この国、っていうか、世界中で戦争してるワケだろ?」

博士「う、うむ」

運ちゃん「しかも相手がバケモンとなりゃ手打ちってワケにもいかねぇ」

博士「うむ、和平や停戦の試みは昔何度かあったが、全て失敗に終わっておる」

運ちゃん「んで、国中のヤツらが必死こいて兵隊になったり、その兵隊を支えるために働いてるワケじゃん?」

運ちゃん「そんな中で、俺だけ何もしねーでブラブラしてるってのはやっぱ良くねぇと思ったんだよ」



博士「しかし、お前さんはこの世界の者じゃ・・・」

運ちゃん「そらそうよ、もちろんハカセが俺を元の世界に戻す方法を見つけてくれたら、一も二もなく俺は帰るよ」

運ちゃん「だけどよ、それまでの間、俺はこうして世話んなってんだから一宿一飯の恩義ってヤツがあるわけよ」

運ちゃん「だから、ハカセや孫や騎士のヤツに世話になりっぱなし、ってのはどうも具合が良くねえんだよ」

運ちゃん「んでな?じゃあ俺が何が出来るかって考えたんだけどよ」

運ちゃん「騎士や兵士たちみたいに、生身であんなバケモンと殴り合いはとてもじゃないけど無理だ」

運ちゃん「かといってハカセみたいに頭良くねぇから、オツムの方で役に立つってワケにもいかねぇ」

運ちゃん「となれば、やっぱ俺ぁトラック転がすのが一番向いてんじゃねーかと思ってな」

博士「なるほどのう・・・・・」



運ちゃん「こないだ、あの兵士たちを運んでわかったんだけどよ、戦いの準備って色んな物運ぶじゃん」

博士「うむ、武器防具にはじまり、水や食料、衣類、医薬品など必要な物資は枚挙に暇がないのう」

運ちゃん「だからよ、もし俺がトラックでそういう物運んでやれたら、少しは役に立てるかと思ってよ」

博士「そのために、まずは燃料というわけかの」

運ちゃん「そういう事よ、なんつってもガソリン無しじゃ車ってのは一ミリも動かねーからさ」

博士「ふーむ、まさかお前さんからそんな事を言い出すとはのう・・・(嘆息)」

運ちゃん「???」




博士「実はな、あの日のお前さんの働きは、多分お前さんが自分で思っている以上に評価されておる」

博士「何しろ一日かかる距離をたったの一時間で踏破してのけたワケじゃ」

博士「実際に乗って行った兵士たちからしてみれば天地がひっくり返ったような衝撃じゃ」

運ちゃん「そんなモンかねぇ」

博士「となれば、軍の中にも目端の効く者はおるからの、その輸送力に目を着ける者も当然出てくるワケじゃ」

博士「しかし、お前さんはワケも分からずこの世界に連れてこられただけの被害者じゃ」

博士「しかも、ワシに無償で知識を与えてくれるばかりか、騎士の命まで救ってくれた」

運ちゃん「い、いや、そんな大した事はしてねーんだけどよ・・・」



博士「そんな男に、これ以上の協力を求めるというのはスジが違うじゃろう、というわけでな」

博士「そういう話は何度か出てるんじゃが、ワシと騎士の所で止めておったのじゃよ」

運ちゃん「マジかよ、なんだよ水くせえなあ、やめてくれよ、そんなんじゃねぇんだからよ」

運ちゃん「あのな、ハカセ、やっぱさ、男としちゃ自分が役立たずだ、ってのが一番つれぇんだよ」

運ちゃん「しかも、目の前で騎士や兵士やハカセの気合入った姿見せられてよ」

運ちゃん「そんなの見せられたらよ、俺だって一丁何かやってやらにゃ、ってなるワケよ」

運ちゃん「だからよ、もし燃料が作れなかったら他の事でもいいからよ、何かさせて欲しいんだよ」

博士「お前さん、こんなに暑苦しい男じゃったかのう・・・・」

運ちゃん「う、うっせーよ」



博士「まあいいじゃろ、後で騎士にもその話はしておくわい」

博士「どのみち燃料のメドがつかない事には何も決められんしのう」

運ちゃん「そうだったな、あのネーチャンが上手いことやってくれるといいんだけどな」

博士「むう、まあこればかりは分からんが、彼女は国内でも指折りの、いや、ひょっとすると随一の錬金術士かもしれん」

博士「あやつの表情から察するに、もう大体の目星はついてるのかもしれんの」

運ちゃん「マジかよ、天才なのか?」

博士「うむ、こと薬学については右に出る者はおらん」

~~
~~



~ 三日後 ~

運ちゃん「~~でな、工場ってトコがあって、そこで部品とか作って組み立ててんのよ」

運ちゃん「だからよ、俺も自分で整備とかすっから、ある程度は知ってるけど、全部はわかんねぇんだ」

博士「ふーむ、使う者が機構を分からずとも使える、という事か」

運ちゃん「そういうモンじゃねーのか?」

博士「魔法はな、使い手がその仕組をよーく理解しておらんと制御できんのじゃ」

運ちゃん「でもよ、なんだっけ、あの荷台と会話した無線みたいなヤツ、あれ、俺理解してないでも使えたぜ?」

博士「うむ、ああいった単純なしくみの物は試行錯誤の挙句、簡単な操作で動作するように作れるようになったんじゃ」

博士「高度な制御が必要な物となると、そうはいかんのじゃ」

運ちゃん「そういうモンかあ」



博士「聞けば聞くほどに興味深い事じゃ、お前さんの世界は技術が使い手を選ばぬのだな」

博士「だからこそ、あそこまで高度に発展したという事か・・・しかし、ワシらの世界と何が違うんじゃろうな」

運ちゃん「うーん、なんだろうな?話聞いてると、昔は俺の世界もこんな感じだったみたいなんだけどな」

博士「そちらの方が時代が進んでるというのはあるんじゃろうが、なんというか根本的に技術の思想が違うように感じるのう」

博士「そこが解明できればお前さん達の技術をもっとワシらの世界に応用出来そうな気がするんじゃが」

運ちゃん「俺がもっとアタマ良かったら、上手に説明できるんだろうけどなー」

コンコン

博士「どなたじゃな?」

騎士「私だ」



運ちゃん「お、騎士よう、もうケガは良いのか?」

騎士「うむ、あれしきの怪我でいつまでも寝てはおれんからな」

運ちゃん「あれしきって・・・ひでー怪我だったぞ?あんなん普通全治一ヶ月はかかるぜ?」

騎士「治癒術師がおるからな、大体の怪我は一週間もあれば治るのだ」

運ちゃん「マジかよ、改めて魔法すげーな」

騎士「しかし、隊のうち二人は完治は出来ぬそうだ・・・歩けるようにはなるが、復帰は無理らしい」

運ちゃん「ああ、聞いたよ。だけどよ、命があっただけでも良かったじゃねーか」

運ちゃん「おめーらあそこで全員死んでたっておかしくなかったんだぜ?」

騎士「うむ、しかし・・・・これは隊長たる私の責任だ」ググッ

運ちゃん「いや待てよ、おめーらは充分よくやったじゃねーか、少ない人数であれだけ魔物を食い止めてよ」



騎士「確かに今になって思い返してもあれ以外の方法は無かっただろう」

騎士「少ない選択肢の中から最善の手を打ったという自負はある」

騎士「しかし、私がもっと強ければ、それ以外の選択肢もあり得たのだ」

騎士「理想を言えば、巡察隊にもっと多くの人数と装備が裂ければ、選択肢は更に増えるのだがな」

運ちゃん「そうもいかねーのか」

騎士「ああ、街の防衛や、他の地域への巡回などを考えるとこれ以上の増員は難しい」

騎士「となれば、私が強くなるしかない」

騎士「治療院のベッドで寝ながら考えてな、そう結論づけた」

博士「お前さん、何をやらかす気じゃ?

騎士「うむ、私は聖騎士の試しを受ける事にした」

博士「なんじゃと!?」



運ちゃん「なんだよその"セイキシノタメシ"ってのは?どうもロクなもんじゃなさそうだけどよ」

騎士「まあ、平たく言えば一種の昇格試験だ」

運ちゃん「バカヤロウ、ただの昇格試験でハカセがこんな血相変えるかっつーの」

博士「昇格試験ではある・・・ただし、恐ろしく過酷な試験じゃ」

博士「受験者は多くて年に一人か二人、そして半数は命を落とすとまで言われておる」

運ちゃん「なっ!?」

博士「代わりに、得られる地位も名誉もケタ違いじゃ、もちろん力も、じゃが」

騎士「危険があるのは確かだ、しかしな、今のまま魔物が勢力を強めていけば、やはりいつかは命を落とす」

騎士「となれば、まだこの街が戦火に晒されておらぬ今の内に力をつけるしかない」



博士「しかし、お前さんが一人で強くなったところで・・・」

騎士「もちろん大勢には影響はない。だが、少なくとも私の手でより多くの兵たちを守れる」

騎士「それに、どちらにせよいつかは受けてみたいと思っていたのだ、騎士の頂点だからな」

騎士「その機が熟した、という事だ」

博士「騎士・・・」

騎士「ただな、もし受かれば、その後半年から一年ほどの修練期間がある」

運ちゃん「結構なげぇんだな」

騎士「そうなのだ、だから、別れの挨拶に参った」

運ちゃん「へ?なんでそうなるよ」



騎士「半年から一年といえば決して短くはない、となればお主はその間に元の世界に帰ってしまうかも知れないではないか」

運ちゃん「あっ・・・・言われてみりゃそうだな」

騎士「僅かな期間ではあったが、お主には二度も命を救われた、恩も返せぬまま去るのは心苦しいが・・・」

運ちゃん「ば、バァカ、今更改まって何言ってやがんだ、やめてくれや」

運ちゃん「それよりおめぇ、やるんならビシっと、その聖騎士とかいうのになって来いや!」

騎士「うむ、誓おう」

運ちゃん「それにアレだ、一年やそこらで俺が帰れるとは限らねえしな」

博士「確かにのう」

運ちゃん「・・・・いや、ハカセにそう言われると俺、メチャクチャ不安になるんだけどな」

~~
~~

そろそろ先の展開考えながら書かないと収集つかなくなりそうなので
少し書き溜めしながら投下する事にします。
なので、少々ペースが落ちるかもしれませんが、歓談しながらお待ちいただければ・・・



~ 騎士出発前夜、城下町酒場 ~

ワイワイガヤガヤ

騎士「今日は無礼講だ、皆賑やかにやってくれ」

「うーす!」「いただきます!!」「いよっ隊長太っ腹!」

「「「「乾杯!!」」」」

兵士A「いやー、俺達の隊長が聖騎士になるとはなあ」

従士B「こりゃあ他の隊や街にも自慢できるぜ」

騎士「馬鹿者、まだ受かると決まったわけではない」

弓兵「いやいや、隊長なら受かりますって」

衛士「そうですよ、我々は隊長に憧れてこうして剣を取ったんですから」

騎士「まあ全力は尽くすがな・・・」

カランコロン



運ちゃん「お、やってんな」

騎士「遅いぞ、お主の自慢は時間厳守ではなかったのか?」

運ちゃん「バカそりゃあトラック転がしてる時だけだ」

騎士「ははは、まあ楽しくやってくれ、今日は全て私のおごりだ」

兵士B「お、来やがったな?俺のアタマにタンコブ作ってくれた野郎が」

運ちゃん「すまねぇな、俺の専門は荷運びでよ、人間は専門外なんだわ」

衛士「そうはいうがな、全く酷い乗り心地だったぞ、魔物との戦闘の方がよっぽどラクだった」

兵士C「ちげぇねえ、顔真っ青にしてあっちにゴロゴロこっちにゴロゴロ、衛士先輩の取り乱しっぷりといったら・・・」

衛士「バカ、それを言うな」



兵士D「にしてもアレ、すげえなあ、あんな遠くまであっという間だったぜ?」

運ちゃん「そりゃあ俺の愛車にかかりゃあんぐらいの距離ひとっ飛びよ」

衛士「そういえば、騎士どのに聞いたが、お主、軍の輸送をひき受けるというのは本当か?」

運ちゃん「ああ、そうそう、今日な、錬金術士のネーチャンが燃料が作れそうだって話してきてな」

兵士B「マジかよ、じゃあ来週の休み、俺田舎に帰るんだけどよ、ちっと乗せてってくんねーか?」

運ちゃん「おういいぜ?ただし荷台だけどな」

兵士B「それはもうカンベンだわ・・・・」

ドッ



衛士「それにしても、お主が協力してくれるというのは有り難い」

衛士「特に前線への輸送は量も多ければ危険も多いというので、今一番の負担になっているんだ」

兵士D「輸送部隊で駆り出されると10日は帰れませんしね」

兵士C「その間、街の警備は手を抜けねーから、残った連中も大変なんだよ」

運ちゃん「あーあ、違う世界まで来ても人手不足かよ、世の中世知辛いねえ」

兵士B「その点おめーが手伝ってくれるなら俺たちゃ大助かりだ」

兵士C「あの鉄の箱ならちょっとやそっとの魔物にもビクともしねーしな!」

兵士D「おい、運ちゃんの酒がねーぞ!誰か持ってきてやれ」

運ちゃん「あ、おい、俺は酒は辞めて・・・」

兵士B「おいおいシケた事言ってんじゃねーや、ここは酒場だぞ?」

兵士C「ほれ、乾杯と行こうや」ズイッ

運ちゃん「う・・・・しゃーねーな、今日だけだぞ!」グイッ

オォォォォ

もともと「なろう」でトラック転生ばっかりな風潮なので
たまにはトラックの方が転生したっていいじゃん、って思い付きだけで始めました
なので、いまのところ作中の全ての事は後付です

というわけでこの辺で

すでにその手の風潮を皮肉って、転生志望者に手を焼いてる運送会社の話とか色々出てるらしいです。
個人的には「なろう」よりも殆どをセリフで書くSSの文化の方が肌にあってます。

というわけで続き投下



ワーワーヤッチマエーガンバレー

騎士「何の騒ぎだ」

衛士「腕相撲ですよ、連中すっかり意気投合してます」

騎士「気のいい男だからな、私の居ない間、どうか便宜をはかってやってくれ」

衛士「できるかぎりの事はしますよ、隊長」

運ちゃん「ぐぬぬぬぬぬぬ」

兵士A「おりゃぁっ!」バタン

運ちゃん「うひゃーーー負けた!!」

運ちゃん「おめぇら強えな、俺だってヤワな方じゃねえって自信あったのによぉ」

兵士A「そうか?俺たちゃそこまで強い方じゃねーぞ?」




兵士B「そうそう、なんつってもウチで一番といやぁ隊長だ!」

兵士D「そらそうよ、重量級の魔物と力比べが出来るのなんて隊長ぐらいだぜ!」

兵士C「隊長!隊長もどうですか一戦!!」

騎士「む?いや、私は・・・・」

「「「隊長!隊長!隊長!隊長!」」」

騎士「仕方のないやつらだ、まあ確かに運ちゃんとは一度もやってないしな」

騎士「よし、友人の儀式だ、来い!」グッ

運ちゃん「まぁた大袈裟な事言いやがって、よし、本気出していくぞ!」グッ

兵士A「じゃあ俺が合図を・・・用意・・・はじめっ!!」

ガシッ



運ちゃん「ぬおおおおおおおおおおお」ググググ

運ちゃん「(げっ、ビクともしやがらねえ、どうなってんだコイツの筋肉・・・)」

騎士「ほう、一般人にしてはなかなか」

運ちゃん「(くっそおおおお、ダメだ鉄の棒みてぇだ、こりゃ力じゃ勝てねぇ)」

運ちゃん「ところで騎士よ」ググググ

騎士「なんだ?(平然)」

運ちゃん「旅立つ前に少女とは話したのか?」

騎士「えっ」

運ちゃん「今だっおりゃあああああああああ」グイイイイイ

騎士「おおっ!?」

ドカッ

兵士A「勝者、隊長!!」

オオオオオオオ



騎士「ふう、危ないところであった」

運ちゃん「ちぇー、ダメだったかよ」

騎士「まったく、いきなり何を言い出すかと思えば」

運ちゃん「ははは、正攻法じゃ勝てそうになかったもんでよ」

運ちゃん「とはいえよ、お前、ちゃんと話したのか?」

騎士「え、い、いや、博士には話をしたから当然伝わってるであろう」アタフタ

運ちゃん「そういう事じゃねーよバカ、お前、これから大一番なんだろ?」

運ちゃん「だったら好きな女に一目ぐらい会ってかねーとよ、いざって時に力がでねーぜ?」

騎士「す、すきっ!?いや、私は別にその、単に亡くなった隊長の娘さんだからであってな」シドロモドロ

運ちゃん「いやそーゆーのいいから」



騎士「・・・・・・・・・・・・もしかしてバレバレか?」

運ちゃん「おう、顔にハッキリ書いてあるわ」

騎士「博士にも・・・・・・?」

運ちゃん「当然」

騎士「誰にも知られてないと思ったのだがなあ」

運ちゃん「よく言うぜ、お前、ハカセの孫の話が出るたんびに顔真っ赤にしてんじゃねーか」

騎士「そ、そんなにか!?」

運ちゃん「おう、信号機みてーだった」



騎士「しかし・・・私は今は使命に命を捧げる身、色恋沙汰にうつつを抜かしてる場合では・・・」

運ちゃん「バーカ!おめぇの使命はなんだよ」

騎士「それは当然、この剣をもって人々の命と平和を守る事だ」

運ちゃん「じゃあ一番守りてぇヤツの顔ぐらい見ておけや」

運ちゃん「どんなに世界が違ったってな、男ってのはよ、好きな女を守るために頑張るんだよ」

運ちゃん「コイツが家で笑ってる、って思うからいざって時に力が出せるんだ」

騎士「そ、そういうものか」

運ちゃん「おうよ、俺だって家で女房と娘が待ってると思うから頑張れるワケよ」



運ちゃん「ましてや、おめーらは戦争中なんだろ?」

運ちゃん「次いつ会えるかわかんねーんだから、会える内に会っとけよ」

騎士「む、むうう」

運ちゃん「本当はついでにコクっとけ、って言いたいトコだけど・・・無理そうだしなあ」

騎士「こ、こく?」

運ちゃん「ああ、まあ気にすんな、とにかく行く前に少女とは会って来いよ!男の約束だ!」

騎士「・・・・・あ、ああ、分かった」

~~
~~



運ちゃん「あ~、酔っ払った、久しぶりの酒はきくなー」

運ちゃん「あ、いけね、間違えて研究所来ちまった」

運ちゃん「・・・・・ま、いいか、今日は久々にトラックで寝るのもアリだな」

ゴソゴソ

運ちゃん「懐かしいな、つい二週間前までは毎日のようにココで寝てたのにな」

運ちゃん「あー、帰って女房と娘の顔見てぇなあ・・・・」

ゴトン

運ちゃん「ん?何か落としたな」

運ちゃん「あ、スマホか、電波入らねぇモンだからすっかり忘れてたな」

運ちゃん「充電して娘の写真でも見っかなー」

キュルキュルブオォン



運ちゃん「やっぱウチの娘は世界一可愛いよなあ」デレデレ

運ちゃん「声聞きてぇ・・・電波入んねえかな・・・・入るワケねーか」

運ちゃん「あ、待てよ、そういえばこないだ娘からの留守電消さないでとっておいたんだった」

運ちゃん「えーと、確か何日か前の・・・」

運ちゃん「ん?コレなんだ?」

運ちゃん「○日12:02と12:04に二件・・・こっちの世界に来る直前じゃねーか」

運ちゃん「知らねぇ番号だな・・・・・・・・・」

運ちゃん「・・・・・・・・・・」

運ちゃん「・・・・・・・・」

運ちゃん「・・・・・・」

運ちゃん「・・・・」

運ちゃん「聞いてみっか」

今日はこの辺で。
毎日暑いですが皆さん体調には気をつけて下さいね。



~ 博士の家 ~

騎士「~~といった次第でな、私は聖騎士の試しを受けに参る///」

少女「・・・・・ご無事を・・・・お祈り申し上げます///」

騎士「ああ、必ず戻る」

少女「はい・・・・・あの、わ、私ゴハンの後片付けを・・・」クルッパタパタ

騎士「あ、ああ、忙しいところすまぬ」

騎士「・・・・・・・・・・・・博士」

シーン

騎士「博士!!」

ガチャ

博士「なんじゃ、バレておったか」




騎士「全く、趣味が悪いぞのぞき見とは」

博士「いやあ、お前さんのその真っ赤な顔が面白くてのう」

騎士「そ、そんなに私は分かりやすいか!?」

博士「ガラスを通して見るが如しじゃ」

騎士「く・・・不覚、こうも簡単に顔に出るとは・・・」

博士「いい事じゃよ、それだけお前さんが正直だという事じゃろう」

博士「それにな、あやつも多分まんざらでもないようじゃぞ?」

騎士「そ、そうか!」



博士「ま、これで一番大事な用件は済んだとして・・・」

博士「それだけのために来たわけでもあるまい?」

騎士「うむ、運ちゃんの事だ」

博士「お前さんが発った後の事か」

騎士「正直、軍としては彼の力を借りれるのは大いに有り難い」

騎士「だがな、いくら輜重隊といえど敵陣近くまで出る事もある、全くの安全というワケではない」

騎士「もしも私が街を離れている間に、彼にもしもの事があっては、彼の妻子に合わせる顔がない」

博士「そりゃあ、顔を合わせる事は無いじゃろうがな」



騎士「言葉のあやという物だ、要するにだな・・・」

博士「わかっておるよ、あやつの安全はワシも気にかけておる、心配するでない」

博士「それに、お前さんの隊の連中とも仲良くなったんじゃろ?」

騎士「そうなのだ、あれよあれよと意気投合してな、腕相撲などやっておった」

博士「お前さんの隊の連中と?そりゃあまた、コテンパンじゃったろ?」

騎士「当たり前だ、兵職の者達は加護による強化があるからな、一般人とでは身体の作りが違う」

騎士「とはいえ私も組んでみたが、なかなかの力だった、一般人にしておくのは惜しいくらいだ」

博士「元の世界では荷揚げ人足のような事もやったそうじゃ、元々鍛えられてはいるんじゃろう」




~ 研究所裏 ~

運ちゃん「気味わりぃけど・・・何か手がかりがあるかもしんねえ」

ポチッ

『運ちゃん、というそうだな?手短に言おう、このまま行くと大変な事になる

 この留守電に気づいたら今すぐ車を停めて、5分ほど待ってくれないか、また電話する』

運ちゃん「なん・・・・・だ・・・・・・コレ・・・・」

運ちゃん「どういう事だ?留守電はいってるって事は俺がこっちに来る前だよな?」

運ちゃん「おいおいなんで俺が大変な目に遭うってわかってんだよ」

運ちゃん「マジで意味わかんねーぞ、大体誰だよこの番号!」

運ちゃん「くっそ、電波さえあればすぐかけ直して誰なのか聞けるのによお!!」

運ちゃん「いやまて、留守電はもう一件あったな」

ポチッ




『電話に気づいてもらえないようなので、おそらく間に合わないと思い、この留守電を入れる

 もしもこれを聞いて何の事だか分からないようなら、気にしないで消去してくれ

 さて、君は今、多分見たこともない場所に居ると思う

 本当はもっと早く連絡したかったのだが、君の連絡先を調べるのに手間取ってしまった

 気を悪くしないで欲しいのだが、君がそこに居るのは完全にただの手違いだ

 詳しく説明したいが時間が無い、こちらの世界で西の魔族の砦を目指してくれないだろうか

 この結果は我々としても不本意なのだ、君は我々のブツッ--』



運ちゃん「・・・・・・・・・・・・はあ!?!?!?」

運ちゃん「手違いってオイ」

運ちゃん「誰だテメー!!!勝手に言いたいことだけ言って切れやがって!!!」

運ちゃん「くっそマジふざけんな!何なんだよいったい!!!!」

ドタンバタン

運ちゃん「ふうっふうっ・・・・・ちっくしょ、暴れてもしょうがねえよな・・・・・・」

運ちゃん「モノは考えようだ、これで帰れる希望が増えたと思うしかねえ」

運ちゃん「とにかく西の魔族の砦ってトコに行ってみるしかねえよな」

運ちゃん「まずはハカセに相談すっか・・・・・」

運ちゃん「その前に、一回娘の留守電聞いて癒やされてからにしよう」

ポチッ

『あーもしもし、父ちゃん?~~』

~~
~~

スマホのような複雑な構造+エレクトロニクスの塊を、剣と魔法の世界の住人が解析するのは難しいんじゃないでしょうか
Wikipediaでも見れれば話は違ってくるんでしょうが・・・

というわけで、無計画に伏線をはった所で今日はおしまい。



~ 博士の家 ~

博士「それにしても、運ちゃんのヤツ、遅いのう・・・」

騎士「まだ兵士どもと盛り上がってるのかもしれんな」

博士「まあ、色々と鬱憤も溜まっておったろうしのう、たまには気晴らしも必要じゃ」

ダダダダダ・・ガチャバタン!!

博士「噂をすれば陰じゃの、それにしても騒々しい、もう少し静かに帰ってこれんかのう」

運ちゃん「おいハカセ!!ハカセ!!!」

博士「ええい静かにせんか、少女が起きてしまうではないか」

運ちゃん「あ、すまねぇ・・・ってそれどころじゃねえんだよ!」

運ちゃん「ちょっとコレ聞いてくれコレ!」

博士「む?なんじゃその板は」

運ちゃん「これはスマホってんだ、それは良いからよ、とにかく聞けって!」



~~

博士「いったい・・・・・どういう事じゃ・・・・・・」

騎士「見当もつかぬな」

運ちゃん「そうか・・・アンタらなら何か分かるんじゃねーかと思ったんだがよ」

博士「まあ、西の砦を目指せ、というのは分かったが」

騎士「よりにもよって西の砦とはな」

運ちゃん「どこにあんだそれ?」

騎士「ここから隣国を越えた先にある、魔族領の本拠地の一つだ」

運ちゃん「じゃあよ、そこに殴りこみを・・・・・そう簡単にはかけらんねーか?」

騎士「うむ・・・・そこはヤツらの聖地らしくてな、その領土全体が非常に守りの堅い」

騎士「近隣諸国でも何度か攻略を試みてはいるが、なかなか上手くは行っておらん」

運ちゃん「マジかよ、せっかく希望が見えたと思ったのによぉ」



博士「こればっかりはのう・・・ワシらとてあの砦が無くなれば随分国が平和になるし、望むところなんじゃが」

博士「この街の騎士団の力ではどうにもならん規模の話じゃ」

運ちゃん「そうかぁ・・・そりゃあ・・・仕方ねえよなあ・・・・」ガックシ

騎士「・・・・・・・・・」

騎士「いや、希望を捨てるのは早い」

運ちゃん「?」

騎士「私がその砦を攻め落とす」

博士「なんじゃと!?いくらお前さんが強くなったとて、一人で出来る事ではないぞ!?」

騎士「無論だ」

運ちゃん「じゃあどうすんだよ?」



騎士「聖騎士の試しは苛酷な代わりに、得られた事による恩恵も絶大だ」

騎士「すなわち、聖騎士資格を持つ者は、将として国軍の作戦に参画する事が可能だ」

騎士「元々は私の武者修行のようなつもりだったのでな、それは返上してこの街に戻ってくるつもりだったが」

騎士「そのまま国軍の中枢に入れば、指揮できる兵力の規模が軍団規模に拡大できる」

騎士「そこで武勲の2つ3つもたてれば、私の作戦を上奏する事もできよう」

騎士「そこから先は時の運でしかないが、奴らとて神ではない、充分な兵力と戦術があれば陥とせぬ道理は無いハズだ」

運ちゃん「おい、ちょ、ちょっと待てよ、それっておめぇ」

運ちゃん「つまり出世して軍の幹部になろうって事かよ!?」

騎士「平たく言えばそうなるな」




運ちゃん「まてよ、お前俺のためにそんな事する気かよ?」

騎士「言ったハズだ、お主に恩をかえすためならば何も惜しまぬと」

運ちゃん「そ、そうは言うけどよ」

騎士「それに、お主のためだけというわけではないのだ」

騎士「そもそもあの西の魔族領は長年の近隣諸国の悩みのタネだ」

騎士「あれがあるから、そこを拠点に一帯の国々に魔物どもが跋扈しておるのだ」

騎士「あそこを攻め落としてしまえば他の魔族領ははるか遠く、この辺りはひとまず平穏になるだろう」

騎士「だから、西の砦を落とすのはこの国に住む全ての人々のためであり、そして・・・

騎士「少女のためでもあるのだ」



運ちゃん「で、でもよぉ・・・そりゃあえらい大仕事になるんじゃねえのか?」

騎士「正直、どれほどの期間がかかるか分からぬ、やもすれば10年以上という事もありえる」

騎士「その間に、お主は別の方法で元の世界に帰るかもしれんが、お主が帰ったとしても私はやり遂げる」

騎士「これは騎士としての私の生き方の問題だ、お主のためだけではない」

運ちゃん「おめぇ・・・だけどよ・・・・それで良いのか?」

運ちゃん「もし俺のためだってんなら本当にやめてくれよな、ダチに犠牲になられるのは真っ平ゴメンだ」

騎士「ああ、お主が来るよりずっと前から頭の片隅にはあった考えだ」

騎士「しかし、所詮無理な事と打ち捨てていたのだ・・・が」

騎士「これも良い機会だ、私も自らの力を試してみたい」

運ちゃん「そりゃ本心なんだろうな?」

騎士「我が剣に誓おう」



運ちゃん「・・・・・・そこまで言うんじゃあしょうがねぇや(嘆息)」

博士「なっ!?」

運ちゃん「ぶっちゃけ心配だけどよ、男が一度そうと決めたんならしょうがねーよな」

博士「バカな事を、そんな簡単な事じゃないぞ!?」

騎士「難事なのはわかっておる、志なかばで斃れる事もあり得よう」

博士「わかっておらん!おぬしは!魔族の恐ろしさを!!」

博士「悪いことはいわん、そのような大それた事はやめておけ!!」

運ちゃん「よしなってハカセ」

博士「し、しかし・・・・」

運ちゃん「いまさら周りがどうこう言うのは野暮ってモンだぜ」

運ちゃん「俺たちに出来るのは笑って送り出してやる事だけよ」



騎士「心配をかけてすまんな、そして運ちゃん、礼を言う」

運ちゃん「あん?なんでだよ」

騎士「お主のおかげで私は自分の本当の望みに気づく事が出来た」

騎士「私はお主をきっと元の世界に送り届けて見せる」

騎士「だからそれまで、博士と・・・少女を頼む」

運ちゃん「おう!留守は任せとけ!って言いたいけどよ、俺じゃ魔物から街は守れねぇぜ?」

騎士「ははは、それはわかっておる、そっちは隊の者達にしっかり気合を入れておく」

~~
~~



~ 翌朝 城門前 ~

騎士「皆のもの、見送りかたじけない」

運ちゃん「元気でな!!」

衛士「留守はお任せ下さい!」

博士「無理はするでないぞ」

従士A「たいちょー!都でヘンな女に引っかからないで下さいよー!」

従士B「ば、バカ!!」ポカッ

従士A「何すん・・・あ・・・・」

少女「・・・・・・」スタスタ

騎士「少女、どの・・・」

少女「必ず、無事に帰って来て下さい」

騎士「・・・・・・」

騎士「ああ、約束しよう」

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--騎士は旅だった

--彼の運命やいかに?

--そして西の砦にある謎とは?

--乞うご期待

とりあえず第一部完です。
無駄に伏線とか張っちゃったんで、この週末中にどうやって回収するか考えて続き書きます。

ちなみに私自身はトラックは4tまでしか運転した事ないし、長距離もやった事が無いので
本職の方から見たらおかしな事があるかもしれませんが、どうかご容赦下さい。


大体の流れが出来たので再開します。
また後で矛盾に苦しんだりしそうだけど、生暖かく応援していただけると嬉しいです。


-- 第二部 --




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『姫さま!!お早く!!ここももう間もなく崩れます!!』

『私たちを育んだこの大地も・・・父祖が築き上げたこの故郷の街も・・・』

『今日で私たちは失うのですね・・・永久に・・・・』

『故郷を失うとも、姫様がいれば国は失わずにすみまする!』

『そう・・・ですね・・・例え流浪の民となろうとも・・・

 いえ、流浪の民こそ、共に寄り添って生きていかねばならないのですね』

『皆で力を合わせれば新たな安住の地も築けましょう』

『・・・・・・分かりました、参りましょう』

『はっ!こちらへ!』

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X-2k



~ 街 城門前 ~

ブロロロキキーッ

運ちゃん「おう、戻ったぜ!」

衛士「早かったな、第四軍の前線はどうだった?」

運ちゃん「三日前にちょっと小競り合いがあったらしいな」

運ちゃん「詳しくはコイツに聞いてくれや、俺ぁ兵法の事はサッパリだからよ」

兵士A「四軍本部からの戦闘報告はこちらにまとめてあります」

弓兵「それからこちらが四軍からの修理依頼品の品目です」

衛士「ご苦労、後で騎士団本部に持っていく、詰め所に置いといてくれ」

運ちゃん「さてと、お待ちかねの王都での買い出し品だ、下ろすの手伝ってくれや」

兵士B「お、待ってたぜ!おーい!お前ら手伝ってくれ!」

「お、届いたのか!」「俺の酒はどこだ?」「バカ野郎まずは全部おろしてからだ」



運ちゃん「相変わらず王都はすげえ賑わいだな、店回るのも一苦労だったぜ?」

衛士「悪いな、わざわざ王都を経由してもらって」

運ちゃん「いいって事よ、それに騎士のヤツの様子も知りたかったしよ」

衛士「それで、隊長はどうしてるのだ」

運ちゃん「おいおい、もうお前が隊長だろ」

衛士「私はあくまで隊長が戻るまで代理を勤めてるにすぎん」

運ちゃん「ったく堅物だな、さすがあの騎士の一番弟子だわ」



衛士「で、どうなんだ」

運ちゃん「といってもよ、まだ修練期間だとかで顔も見れなかったんだけどよ」

運ちゃん「とりあえず落ちこぼれたり死んだりはしてねぇみたいだ」

衛士「当たり前だ、隊長はこの国でも指折りの剣士だぞ」

運ちゃん「お、荷降ろし終わったみてぇだな、さすがにみんなでやるとはえぇな」

兵士A「全くだ、王都じゃ俺と弓兵と運ちゃんの三人でこの量積んだもんだから腰がいてぇよ」

衛士「お前もご苦労だったな、今日はもう帰って休んでいいぞ」

兵士A「へい、お言葉に甘えて今日はこれで失礼します」

運ちゃん「んじゃ俺もハカセん家戻って今日は休むぜ」




衛士「あ、弓兵、お前はちと残ってくれ」

弓兵「はい、どうせ弓の手入れをしようと思ってましたので」

衛士「む、どうした、矢を射るような事があったのか?」

弓兵「ええ、といっても、前線付近で遠くをうろついてる魔物が居たので牽制に2~3本撃っただけですけどね」

衛士「なんだ、ならば良いんだが」

衛士「ところで、現場の様子はどうだった?いや、報告書は後で読むが、お前の目で見た感触が知りたい」




弓兵「そうですね、一言で言うなら、状況は良いとは言えないけど最悪ではない、といったところでしょうか」

衛士「つまり、昨年奪られた北部地方の奪還は無理そうだという事だな」

弓兵「ですかね、現場の士気を見るに"負けてはいない"というのが精一杯のようですね」

衛士「となると、今後も引き続き北の警戒は怠れんな」

弓兵「そうですね、あっちの方は街道沿いに結構避難民も多く見かけましたし、なかなか落ち着かないようです」

衛士「東方の村の再建もまだ終わらぬし、どっちを向いてもトラブルだらけだな」

衛士「それにしても、いよいよこうなってくるとあの男の存在は有り難いな」

弓兵「そうですね、従来の方法で輸送してたらとても手が足りないところでした」



~ 博士の家 ~

運ちゃん「ただいまー」

少女「あ、おかえりなさーい、今回は早かったね」

運ちゃん「北の前線だったからな、王都に一泊で帰ってこれたわ」

少女「お疲れ様、あ、何か食べる?」

運ちゃん「あーいや、今はいいわ、晩飯まで一寝入りするよ」

少女「わかったー・・・それはそうと」

運ちゃん「わーってるって、騎士の話だろ?」

少女「///」

運ちゃん「つってもな、会えたワケじゃねーし、生きてるって事しかわかんねーんだけどよ」

少女「でもご無事なのですね、ならよかったです」

運ちゃん「おーおー口調まで変わっちゃってもう、初々しいこと」

運ちゃん「んじゃ、俺は部屋に戻ってっからよ」



運ちゃん「あれから一年かあ、なんだかすっかりこの生活にも慣れちまったが」

運ちゃん「やっぱ帰りてぇよなあ・・・・」

運ちゃん「あ、そうだ、忘れない内に今回のルートの注意点書いておかねーと」

ガサゴソ

運ちゃん「えーと、ここらへんの土手が耐荷重注意、と、こっちは道幅注意」

運ちゃん「この河が厄介なんだよな、トラックで渡れるトコが一箇所しかねぇ」

運ちゃん「山越えもできねーしなあ・・・こうしてみると現代の道路ってすげーんだな」

運ちゃん「あっと、いてててて、腰いてぇ、明日治療院行かねーと」

運ちゃん「考えてみりゃ10tだもんな、満載じゃないったって人力で揚げおろしする量じゃねーよな」

運ちゃん「フォークとは言わないでも、何か良い手がないか後でハカセに相談してみっかな」

運ちゃん「ふあぁ~~、晩飯まで寝るか・・・zzz」

~~
~~

いきなり一年経ってみました。
風呂敷ちゃんと畳めるように祈ってて下さい・・・
では、今日はこの辺で。



~ 夜 ~

博士「ふむふむ、すると騎士の修練期間はまだ終わってないという事かの」

運ちゃん「みてーだな」

博士「ま、無事ならなによりじゃ」

運ちゃん「ところでよ、あのトラックの積載量を目一杯使うにはよ、ちっと荷物の上げ下ろしが大変なんだわ」

運ちゃん「人力でやると時間はかかるわ、腰は痛くなるわで困ってるんだけどよ、何かいい手はねぇかな」

博士「うーん、そうじゃのう、起重機ならば港町にはあるが・・・内陸ではそうもいかんし」

博士「あ、そうじゃ、ゴーレムを使ってはどうじゃ?」

運ちゃん「ごーれむ?」



博士「うむ、土や石で出来た、単純な命令をきく像でな、動きは鈍重じゃが力は人間とは比べ物にならん」

博士「荷物のあげおろしぐらいなら丁度良いかもしれん」

運ちゃん「ロボットみてえなモンかな」

博士「ろぼっと?また謎の単語が出たのう、まあええ、明日2体ほど作っておいてやろう」

運ちゃん「そんなに簡単にできんのか?」

博士「うむ、コアの石があれば、あとは適当な材料がある所で起動するだけじゃからな」

博士「お前さんの命令に従うようにしておくから、あとは普段は荷台にでも積んでおけばよかろう」

運ちゃん「ありがてぇ、そんじゃ明日はちょっとトラックの整備するつもりだからよ、そん時に受け取りに行くわ」

運ちゃん「んじゃ今日は寝るぜ、おやすみ!」



・・・
・・・・・
・・・・・・・

運ちゃん「~~でよぉ、アツシの奴危うく免停だったわけよ」

ドライバーA「あっぶねーな、若えのは無茶すっから」

ドライバーB「んでおめーは今日はどっちよ?」

運ちゃん「今日はこのまま荷物下ろしたら上がりだわ、娘の誕生日でよ」

ドライバーA「あーまた始まった、もうおめえの娘の写真は見飽きたぞ」

運ちゃん「んだよ、最高に可愛いだろ?っと、そろそろ行くわ、ごっそさん」カチャン

ドライバーB「おう、お疲れ」

ドンッ ドサッバラバラ

運ちゃん「あいてっ」

青年「うわっ!」



運ちゃん「あ、すまねぇな!ちっとヨソ見しててよ」パンパン

青年「」

運ちゃん「いやゴメンな!あ、これアンタの?ほい、んじゃ急ぐからよ」

ドライバーA「気をつけろよー」

運ちゃん「おうよ!」

タッタッタ・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・

運ちゃん「ハッ」

運ちゃん「夢か・・・・」

運ちゃん「あっちの記憶、こんなにハッキリ思い出したの久しぶりだな・・・」

~~
~~


~ 研究所 ~

ゴーレム「ギギギ」

運ちゃん「うへぇ・・・あんまり見てくれの良いモンじゃねえな」

博士「そりゃまあ岩の寄せ集めで出来とるからのう」

運ちゃん「でも確かに力はありそうだな」

博士「さてと、お前さんの声で命令をきくようにせんとな、ゴニョゴニョ」

博士「よし、何か命令してみい」

運ちゃん「う?んーとそんじゃ、ゴーレム、その箱を取ってこい」

ゴーレム「ギギギ」ドスドス ヒョイ ドスドスドス

運ちゃん「おお!これすげぇな!!」

博士「これなら荷運びもラクじゃろう」



運ちゃん「これでやっと腰痛から解放されるぜ」

コンコン

博士「お?誰か来たようじゃの」

博士「どなたかの?」ガチャ

錬金術士「ボクだよ、お邪魔かな?」

運ちゃん「おお、ネーチャン、どうした?」

錬金術士「例のオイルの複製が完成したんで知らせに来たんだよ」

運ちゃん「マジか!さすが天才錬金術士!!ありがてぇ!!」

錬金術士「燃料の時にやり方は解明できてたからね、手順が同じならラクなものさ」

博士「オイルとな?」

運ちゃん「おう、エンジンオイルよ、あれから随分たってるからそろそろ交換しねーといけないのよ」



博士「ふーむ、トラックは便利じゃが、それだけにやはり色々と手間がかかるのう」

錬金術士「あ、ゴーレム作ったの?」

運ちゃん「おうよ、何しろ荷運びが腰に来るもんでよ」

錬金術士「そのコアはボクの自信作だよ、大事にしてあげてね」

運ちゃん「これ、おめーが作ったのか?」

錬金術士「ゴーレム作りも錬金術の範疇だからね」

運ちゃん「世話になりっぱなしでわりぃな、ありがとうよ!」

錬金術士「いいんだよ、面白いし、じゃあボクは研究室に戻るから」

錬金術士「また何か必要な物があったら言ってね」ガチャ



運ちゃん「・・・変わったネーチャンだなあ」

博士「天才とナントカは紙一重と言うしのう」

運ちゃん「ちげぇねーや、んじゃ俺ぁ早速オイル交換してくるわ」

博士「手伝いは要らんかの?」

運ちゃん「あー大丈夫大丈夫、あ、でもこのゴーレムは連れてってもいいか?」

博士「もちろんじゃ」

運ちゃん「よし、じゃあ行くぜゴーレム」

ゴーレム「ギギギ」

~~
~~
I1

今日はここまで。
最初は運ちゃんにも誰か恋人役を作ろうかな、と思ってたんですけど
「異世界転生してカワイイ子にモテました」じゃあ、いくらなんでもテンプレ過ぎるのでやめました。



~ 王都 ~

ワイワイガヤガヤ

運ちゃん「ったー、ココの賑わいは相変わらずすげぇな」

運ちゃん「人数だけなら渋谷とかのがすげぇんだろうけど、なんか人の熱気みたいのが違え」

運ちゃん「そいや子供の頃行ったアメ横がちょっと雰囲気似てっかもな」

運ちゃん「にしてもおせぇな兵士のヤツ、どこで油売ってやがんだ」

兵士A「おーい運ちゃん!!」

運ちゃん「おう、おせーぞ何やってんだ!今日の日暮れまでに西の駐屯地まで行かなきゃいけねーんだぞ」

兵士A「おうわりぃわりぃ、実はちょっとそこでバッタリ人に会ったもんでよ」

運ちゃん「あれ、おめー王都に知り合いいんのか?」



兵士A「そりゃ居るだろ、お前忘れちまったのか?」

運ちゃん「は?俺の王都の知り合いなんて補給部門の受付の連中と、あとは・・・・ま、まさか!?」

騎士「やあ、運ちゃん、息災なようでなによりだ」

運ちゃん「騎士!!!!!!」

運ちゃん「おめぇ修行とかいうのは終わったのかよ?」

騎士「ああ、ちょうど先週すべて終えてな、ようやく外に出られるようになったところだ」

運ちゃん「じゃあ無事聖騎士とかいうのになれたんだな?」

騎士「ああ、これが『聖騎士の証』だ」キラン

運ちゃん「それにしてもおめぇ、なんだか前にも増して凄みが出てきたなあ」

運ちゃん「腕とか足とか太くなってんのはわかるけどよ、変わってないハズの背丈までデカく見えんぞ」

騎士「ふむ、私も少しは成長したという事かな」



騎士「ところでお主らは今仕事の最中ではないのか?」

運ちゃん「いけね、そうだった、日が暮れる前に西の駐屯地まで食料を届けないといけねーんだ」

騎士「西の?という事は、帰りはココに泊まりか?」

運ちゃん「おう、もしアレなら帰りにメシでもどうよ」

騎士「丁度よいな、では着いたら迎えに来る」

運ちゃん「え、でもケータイも無いのに分かるのか?」

騎士「お主らが夜闇の中をあの丘を越えて走ってくれば、街中どこに居ても分かるよ」

運ちゃん「そっか、この世界じゃヘッドライトは目立つもんな!」

運ちゃん「んじゃちょっくら行ってくっからよ、また夜に会おうぜ!」バタン

~~
~~



~ 王都 夜 ~

騎士「~~というような修行を主にな」

運ちゃん「うえー、聞くだけでビビるぜそんなの」

兵士A「いやでも本当に隊長が無事に聖騎士になれて何よりですぜ、隊の連中にも早速知らせてやります!」

騎士「隊の皆は元気か?」

兵士A「ええ、もちろんでさ、最近じゃ衛士さんも隊長代理がだいぶ板についてきましてね」

兵士A「それにこないだ補充が何人か入りましてね、少しラクになりましたよ」

騎士「それは良かった、すまんが私はまだしばらくは帰れない、お主らに街の守りを託す事になる」

兵士A「任せといてください!!それに、それも隊長が西の砦を攻め落とすまでの辛抱ですからね!」

兵士A「さて、俺ちっと補給部の方に受け取りを渡しにいかねーとなんねーんで」

運ちゃん「あ、忘れてたな、すまねぇ、頼んだぜ」

兵士A「おう、今日は俺が行ってやるよ、お前はそこでもうちっとゆっくりしてろ」



運ちゃん「んでよ、これからおめぇはどうすんだ?とりあえず出世目指すんだろ?」

騎士「うむ、この半年の間にある程度これからの道筋を考えた、聞いてもらえるか」

運ちゃん「おうよ」

騎士「まず、最終目的の西の砦だが、過去に3回ほど諸国連合軍で攻略を試みた事があるが、全て失敗している」

騎士「私の見るところ、原因は正面からの力押しをした事だ」

騎士「あの砦は正面からの攻撃では落とす事はできまい、やるならば少数精鋭による奇襲だ」

騎士「とはいえ相手は大軍だから、こちらも相応の兵力は必要になる」

運ちゃん「ま、まずケンカは数だからな」

騎士「そういう事だ、だから、まず砦の攻略にあたっては、この国の国軍をもってあたる」



騎士「諸国連合軍となると、国王同士の政治の話になってくるからな、さすがに私には手が出ない」

騎士「しかし、この一国の軍だけならば、国王の親戚である領主様の伝手を辿れば動かす事も不可能ではないと思う」

運ちゃん「しかしよ、聞いてりゃ随分腹芸の必要なハナシみてえだけどよ、おめぇそういうの向いてないんじゃねえか?」

騎士「うむ、私はすぐ顔に出るタチだからな、こういう事は不得手だ」

騎士「だから、まずこの都に居る間にそういった働きの出来る参謀を探す」

騎士「国軍の将となれば、あるていど幕僚は選べるからな、今の内に色々と手を尽くして人を探すつもりだ」

騎士「そして、肝心の指揮権だが、これは私は第三軍の指揮権を移譲してもらおうと思っている」

騎士「というのはな、第三軍は国軍の中でも神速の機動力が売りでな、私の考える作戦にはうってつけなのだ」

騎士「おまけに、指揮官の現在の三番将軍はもうお年でな、そろそろ引退がささやかれている」

騎士「上手く立ち回れば譲っていただく事も無理ではなかろう」



運ちゃん「ふーむ、なんだか難しいハナシになってきやがったなあ」

騎士「なあに、やる事は単純だ、国王に利を説いて、西の砦を攻め落とす、それだけの事よ」

騎士「まあ、全てが思い通りになるほど世の中甘くは無いが、やりようはいくらでもある」

騎士「要は私の意志が挫けぬ事だ、やると決めて手を尽くせば、不可能な事などそうあるまい」

運ちゃん「ま、そうだよな、何事も大切なのは気合だな」

騎士「というワケだ、だから、まだしばらくはかかるが、必ずや西の砦は攻め落としてみせる」

運ちゃん「おう、待ってるぜ!!!」



運ちゃん「それはそれとしてよ、おめぇ、あの娘に何か伝える事は無いのかよ」

騎士「む、そ、それは・・・・///」

運ちゃん「俺が都に行って帰るたんびに気がかりな顔してこっち見るんだぜ?」

騎士「その・・・・・・・・そうだな・・・・・・」

騎士「待ってて欲しい、とだけ、伝えてくれないか」

運ちゃん「かぁ~、もうちっと気の利いたセリフはねーのかよ!」

運ちゃん「ま、でもそこがおめぇらしいわ、分かった、必ず伝えるぜ」

~~
~~
I1

今日はこの辺で。
兵士と運ちゃんの口調が似てて読みづらかったりするでしょうか・・・?



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『姫さまはまだ見つからぬか!』

『はい、やはり不時着の折に行方が分からなくなっております』

『なんという事だ・・・ただでさえ混乱の極みだというのに・・・』

『付近の捜索はしておりますが・・・』

『いや、ここにはいらっしゃるまい、陛下のお加減はいかがだ』

『あまりよろしくはございません・・・』

『やはり毒か?』

『はい、降り立った際、陣頭指揮を取っていらっしゃいました故』

『まずいな・・・一刻も早く新たなお世継ぎを決めていただかねば・・・』

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I-2k



~ 研究所 ~

運ちゃん「うーん、こっちから回ってココの街道抜けてった方がはええかな」

運ちゃん「こっちの道はまだ走った事ねぇからな、この森んトコで横幅が足りなかったらお手上げだもんな」

運ちゃん「くっそーもっと詳しい地図がありゃルート設計もラクなんだけどなー」

博士「何を一人で騒いでおるんじゃ」

運ちゃん「あー、ハカセよう、もっと道とか詳しい地図ってねーのか?」

運ちゃん「この地図だとよ、途中に通れないトコがあるかどうかがわかんねーんだよな」

博士「うーむ、そこまでの詳しい地図は今まで必要無かったからのう」

運ちゃん「だよなぁ~~、最近なんか運送の依頼が多くてよ、ルートちゃんと考えとかねーと間に合わねーのよ」

博士「まあそうじゃろうなあ、お前さんの事は国中で有名になってるみたいじゃからのう」



運ちゃん「やっぱ虱潰しに走って通れないトコは自分で埋めてくしかねーのかなあ」

博士「そうじゃな、地道に調べていくほかは無いが、一つ良い方法があるぞい」

運ちゃん「なんだい?」

博士「軍などでは、大軍を動かす時に道の状況などについては地元の者に聞くんじゃよ」

運ちゃん「あー、なるほど!!」

博士「お前さんはあちこちの駐屯地や前線まで出かけるじゃろ?その時に地図を見せて話を聞いてみてはどうじゃ」

運ちゃん「確かにな!そいやアッチでもどこが走りやすいとか、どこに検問があるとか、仲間に聞いてたわ」

運ちゃん「いやー、トラック野郎の基本を忘れてたぜ、ありがとよハカセ!!」

~~
~~



~ 第四軍前線 ~

ウオオオオオ、ヤッタアアアアア、ヒャッホーーー

運ちゃん「お?なんだなんだ、お祭り騒ぎになってんな」

兵士A「戦闘中・・・って感じでもねぇな、どうしたんだ」

弓兵「んー、よく見えないけど、みんな浮かれてるように見えるね」

運ちゃん「まあいいか、とにかく届けるモン届けちまおう」

ブロロロキキー

運ちゃん「おーい!資材と補給物資運んできたぞー!」

補給係「うおおおおおお!!!やったあああああああ」

運ちゃん「おいおい、なんだってんだ、聞いてやしねぇ、おいっ!!」

補給係「おう!!やったな!!!・・・あ、アンタか」




運ちゃん「なんだよオイこの騒ぎはよ」

補給係「おう!まさに今ちょうどな!魔物の軍を撃退してヤツらの前線を押し返したのよ!!」

運ちゃん「マジか、そいつぁ良かったじゃねーか」

補給係「良かったどころじゃねーよ!この二年、ずっとこの辺占領されっぱなしだったんだぜ!?」

補給係「それがよ、2年ぶりに俺たちが戦線を押し返したって事は・・・」

兵士A「北部の奪還も夢じゃねーって事か!!!」

補給係「そういう事よ!いやーそれもこれもアンタのお陰だ、運ちゃん!」

運ちゃん「え?俺?」

補給係「そうよ!アンタが考えたんだろ?あの"がすりん弾"ってヤツ」

運ちゃん「もしかして・・・ガソリンの事か?」

補給係「そうそう、それだそれ!」

運ちゃん「いや俺が考えたワケじゃねーんだがな・・・」



補給係「投石器用のがすりん弾がよ、コイツが効果覿面でよ、敵陣に打ち込むとドカーン!ってよお」

運ちゃん「おいおいそれもしかして・・・・・でっけぇ火炎瓶って事じゃねーか?」

補給係「ん?なんだそれ、まあとにかくすげえ威力でよ、いやーアンタのお陰だわ」

運ちゃん「俺そんな事はいっこも考えた事ねーんだけどなあ・・・まいっか」

運ちゃん「それよりも今日はもう一件行かなきゃなんねーんだよ、さっさと荷物受け取ってくれや」

補給係「ああ、そうだったな、よし、おーい!!!荷物届いたぞー!!」

「おーう」「酒入ってっかな」「そうだな乾杯ぐらいしたいよな」

補給係「んじゃちっと待っててくれ、品目チェックして受け取り出すからよ」

運ちゃん「おう」



弓兵「いやー何はともあれめでたいですね」

運ちゃん「そんなすげー事なのか?」

弓兵「ええ、ココの奪還は北部方面の悲願でしたからね」

兵士A「奪還のために第四軍にはかなりの増員をかけてたハズだぜ」

弓兵「ですね、ここの増員が解けると、手薄になってる領内の警備が随分ラクになるんですが・・・」

運ちゃん「いやー、今までずっと負けがこんでたの、ココでやっと一発やり返したんだろ?」

運ちゃん「だったら、今までの負け分取り返すまではガンガン行くんじゃねーかなー」

兵士A「言われてみりゃそうかもな、なんだよお前ふだん戦の事はわかんねー、なんて言いながら意外と目が効くじゃねーか」

運ちゃん「まあな、パチンコと一緒だな、と思ってよ」

兵士A「ぱちんこ?」

運ちゃん「なんでもねぇよ、気にすんな」



補給係「おう待たせたな」タッタッタ

運ちゃん「遅かったじゃねーか」

補給係「いや、戦闘終わったばっかで色々ゴタゴタしててよ、わりいわりい」

補給係「ほい、これが受け取り、こっちが報告書、さっきの戦いのヤツはまだ出来てねぇからまた今度送るって伝えてくんねーか?」

運ちゃん「そりゃそうだろうな、この騒ぎじゃあよ」

補給係「あと、こっちが追加での依頼書だ」

運ちゃん「お、マジかよ、どれどれ・・・苗木?苗木なんて何にすんだよ」

補給係「ほら、占領されてる間にすっかり魔物どもの土地になっちまったろ?」

補給係「だからあっこから先の瘴気まみれの土地を一回全部焼いて、苗木植えて浄化すんのよ」

運ちゃん「なるほどなー、んだけどよ、ちっと予定が詰まっててすぐってワケにはいかねーぜ?」

補給係「おうよ、そんなに急ぎじゃねーから大丈夫みてーだ」

運ちゃん「そっか、まあなるべく早く届けるよ」

補給係「頼んだぜ~!」

~~
~~
I1

今日はここまで。
なんだか運ちゃんの配達日記みたいになってるけど、これで良いんだろうか・・・



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『陛下が!?』

『はい・・・もはやお言葉も失い、長いことはないかと』

『なんという事だ・・・お世継ぎも決まらぬまま・・・』

『お臥せりになって以来、禅譲されるお力も無くなっておいででした』

『姉妹殿下たちに継いでいただくというわけにも行かぬし・・・な』

『はい、王位を継げる力量をお持ちの方々は陛下に相次いで被毒されました故』

『こうなれば我らの希望は姫様だけだ!"船"の再建に全力を注げ!』

『承知致しました』

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I-1900



~ 博士の家 ~

運ちゃん「~~っと、こっちのルートから回ると多分2時間ぐらい早えな」

運ちゃん「えーと、この地点は・・・メモ3ってどれだ・・・コレか」

運ちゃん「しまった、兵士Aに書いてもらったから読めねぇぞ、えーとコレは数字だよな・・・」

ガチャ

少女「ただいまー」

運ちゃん「お、おかえり、あ、いいところに!ちとわりいんだけど、コレ読んでくれねーか?」

少女「ん、なになに?『3~4月は冠水の可能性アリ』だって」

運ちゃん「ありがてぇ!へえー、コレで冠水って読むのか?」

少女「うん、こっちが"上を歩く"で、こっちは"雨"って意味で、2つ合わせて冠水」

運ちゃん「そうかそうか、書いとこう」カキカキ



少女「でも不思議ね、こうして話をする分には何の不自由も無いのに、文字は読めないなんて」

運ちゃん「全くだよな、どこの誰だか知らねーが、通訳の魔法とかいうのかけるんなら字も読めるようにして欲しかったぜ」

少女「そうそう、そういえばさっきおじいちゃんから聞いたんだけど」

運ちゃん「お、どうした?」

少女「騎士様がこんどこの街にちょこっと帰ってくるんだって!」

運ちゃん「おおー、一年ぶりに会えるじゃねーか、良かったな少女!」

少女「う、うん///」



運ちゃん「んでも、アイツ今都でなんか色々してるんじゃなかったか?何しに来るんだろう」

少女「なんか領主様にお話があるんだって」

運ちゃん「ふーん、するってぇと前に言ってたアレかなー」

少女「アレって?」

運ちゃん「なんだかよくわからねーが、領主は国王の親戚だから、なんだかお願いしてもらうらしいぜ」

少女「それ、全然わかってないヤツじゃない?」

運ちゃん「う、うるせーな」



運ちゃん「でもよぉ、おめーも寂しいよな、好きな男に一年も会えねえなんてよ」

少女「う・・・ん・・・でも、みんなそうだから」

運ちゃん「え?」

少女「この国ではずっと戦いが続いてるから、みんな恋人や、旦那さんや、友だちや、父親・・・や、息子」

少女「誰かしら、大事な人と会えない期間があるのが普通なの」

運ちゃん「そう、か」

少女「でも、騎士様が西の砦を落としてくださったらきっとそんな日も終わるわ」

少女「すごい事じゃない?歴史始まって以来の戦いを、騎士様が終わらせるのよ?」

運ちゃん「ああ、アイツはすげぇヤツだ」



運ちゃん「それにしてもよ、歴史が始まって以来戦争続けてるってどういう事なんだろうな」

運ちゃん「俺のいたトコじゃさすがにそんな国は聞いた事がねーぞ」

少女「うーん、もう何百年も昔の事だからね、アタシも、っていうか誰も本当の所は知らないけど」

少女「神殿の教えでは、神々がこの世界を作ったのを妬んで、魔界から攻めてきたって事になってる」

運ちゃん「ふーん、ていうかよ、この世界の歴史って何年ぐらいあるんだ?」

少女「んとね、最初の人間を神様が作ったのが8000年前って事になってるわ」

運ちゃん「はっせんねん!?」

少女「ま、本当かどうかなんて誰もわかんないけど」ペロ

運ちゃん「だよな」



少女「一番古い記録は、砂漠の国で1200年前に栄えた都の記録が残ってるらしいよ」

少女「その時にはもう魔物との戦のことが書かれてたんだって」

運ちゃん「マジで1000年以上戦争してんだな」

少女「でも、いつでも戦いがあるってワケじゃないんだけどね」

運ちゃん「そうなのか?」

少女「うん、この6~7年ぐらいはあっちこっちでずっと戦ってるけど」

少女「その前は30年ぐらい睨み合ってるだけで、実際の戦いは起きなかったって時代があったみたい」



運ちゃん「なるほど、アレかな、冷戦みたいなモンかな」

少女「なにそれ?」

運ちゃん「あー、俺の世界でよ、デッカい国が2つあってすげー仲悪かったんだけど」

運ちゃん「デカすぎて本気でケンカすると世界が滅びちまうかも、ってんで、にらみ合いしてた頃があんのよ」

少女「人間の国同士で戦争するの!?」

運ちゃん「あ、そっちの方が驚きかあ」

少女「うん、だってそんな事してたらすぐ魔物に攻められてやられちゃうし」

運ちゃん「そっか・・・そう考えると良し悪しだな、人間同士で殺しあうのと、魔物と戦うのと・・・」

少女「どっちもヤだけどな、アタシは」

運ちゃん「だよな、俺もだ」

I1

今日は早めに帰れたので、今の内に投下しました。
というわけでポケモンGO持って飲み屋に繰り出して来ますw



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『ついに右将軍までも斃れたか』

『はい、本日未明に・・・つきましては、後継者のご相談を』

『もはや軍を束ねられる力を持つ者がおらぬ』

『はい・・・』

『これで残る閣僚級はワシだけか・・・とは言え軍の長まで空位というわけにもいくまい』

『いかが致しましょうか』

『形だけはワシが将位を継ぐ、実務については幹部級何人かで当たらせるしかあるまい』

『では人材の選定を・・・』

『お主に任せる』

『はっ』

『もはや我らは国の体を保つ事すらおぼつかぬのか・・・』

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I-1500



~ 街 近郊 ~

運ちゃん「やっと街が見えてきやがった、今回は長丁場だったなー」

弓兵「国の端から端まで3箇所も回りましたからね」

運ちゃん「なんか最近軍の連中人使い荒くねーか?」

兵士A「トラックが便利だってみんな知っちまったからなー」

兵士A「何しろこれ一台で荷馬車50台分の仕事できちまうからな」

運ちゃん「まあよ、頼ってもらえるのは嬉しいんだけどよ」

運ちゃん「そろそろアレだな、誰かにスケジュール調整してもらわねーと辛くなってきたな」

弓兵「なんならウチの隊の事務方貸しましょうか?」

運ちゃん「いいのかよ?」



弓兵「いいのかよも何も、このトラックはウチ所属の輸送隊って事になってますから」

運ちゃん「そうだったのか!?」

兵士A「知らなかったのかよ」

運ちゃん「だって誰もそんな事教えてくんなかったぜ?」

兵士A「あれ、俺言わなかったか?」

運ちゃん「言ってねーよバカ、そういう事は最初に・・・・・あ・・・・?」

兵士A「どした?」

運ちゃん「なんかちょっとハンドルにイヤな感触あんな・・・・」



運ちゃん「ちょっと待っててくれ」キキーバタン

運ちゃん「左に取られるって事はこっちかなー」グイッグイッ

運ちゃん「やっぱしか」

兵士A「なんかマズい感じか?」

運ちゃん「ああ、パンクだわ・・・・」

兵士A「パンク?」

運ちゃん「バーストじゃねーからとりあえず街までは走れっかな」キュキュキュ・・ブオォン

運ちゃん「あぶねーからちょっとゆっくり行くぜ」

兵士A「パンクって何だよおい」

運ちゃん「えーとな、馬が捻挫した・・・みたいなモンか?」



~ 研究所 ~

博士「ぱんく?」

運ちゃん「おう、あのな、トラックのこのタイヤな、空気が入った袋みてぇなモンなのよ」

博士「ふむふむ」

運ちゃん「それがな、多分どっかで何か踏んづけたんだろうな、穴が空いちまってよ」

博士「なるほど、それで萎んでしまってきてるワケじゃな?」

運ちゃん「そうなんだよ、タイヤ交換ってワケにもいかねーしよ、なんとかなんねーかな」

博士「それじゃったら多分そんなに深刻になる事はないぞい」

運ちゃん「え、タイヤも作れるのか!?」

博士「いや、これはさすがに複製は難しいじゃろうが、要は穴が塞がれば良いんじゃろ?」

運ちゃん「そりゃそうだけどよ、治せるのかよ?」



博士「うむ、鎧の穴を塞ぐのと同じ要領じゃろ、それなら治癒の魔法の応用ですぐじゃよ」

博士「ムニャムニャ・・・ホイッ」

ムクムクムク

運ちゃん「おおっ、すげえ、空気漏れ無くなったぜ!!!ありがとうよハカセ!!」

博士「うむ、お安い御用じゃ」

運ちゃん「あとはエアー入れればバッチリじゃん」

運ちゃん「・・・・・・・・・・・・・・エアー?」

博士「どうした?」

運ちゃん「エアーポンプなんて・・・あるわけねーよな」



博士「えあーぽんぷ?お前さんはトラックの話になるとどうも聞き慣れない言葉を出してくるのう」

運ちゃん「あのな、このタイヤの中によ、空気をパンパンに入れてぇんだよ」

博士「息で吹き込むんじゃダメかのう」

運ちゃん「バケモンみてぇな肺活量がありゃ出来るかも知れねえけどよ・・・」

博士「ふーむ・・・その空気を入れる場所はどこじゃ?」

運ちゃん「ココのちっこいネジんトコだ」

博士「これはまたちっちゃいのう・・・となるとアレじゃな、まずこれに合う口金を作らんといかんな」

博士「この車輪は外れないのかの?」

運ちゃん「外れない事もねーけど、どうすんだ?」

博士「そしたら車輪を外して、町外れの鍛冶屋に持って行くんじゃ」

運ちゃん「まあいいや、言うとおりにしてみるぜ・・・えーとジャッキは・・・」

~~
~~

昨日はポケモンGOに夢中で歩きすぎて全身筋肉痛になってました。
今日は家でゆっくりします、というわけで今日の分。



~ 鍛冶屋 ~

親方「んで?ワシにこれにあう口金を作れって言うワケか?」

博士「そうなんじゃ、お前さんの腕なら軽いじゃろ?」

親方「柄にもねえおべっか使うんじゃねーや、んー、こんだけ細けぇと普通の金属じゃ作れねーな」

親方「おいっ!!裏の倉庫からミスリル出してこい!」

弟子「へいっ!!」

博士「ミスリルとは随分奮発したもんじゃな」

親方「普通の金属じゃこんな細けえモン作れねーよ」

親方「いってぇコレ誰が作ったんだ、細かすぎんだろ」



親方「しかもこっちの金属はまた見慣れねぇ金属だな」

運ちゃん「ああ、コレぁアルミだ」

親方「あるみ?聞いたことねぇな、見た目の割にだいぶ軽そうじゃねーか」コンコン

運ちゃん「そっか、こっちにはアルミもねーのか」

博士「いや、アルミはあるぞい、錬金術士が作る珍しい金属じゃろ?」

運ちゃん「あのネーチャン、アルミも作れんのか」

博士「ただのう、強度が不足しておるからの、使いみちがそんなに無いんじゃよ」

運ちゃん「まあ・・・確かに鎧とかにするには向いてねーかもしんねーな」

博士「それに、軽くて頑丈という点ではミスリルの方が数倍上じゃからな」



運ちゃん「その、みすりる、ってなんだ?」

博士「む、そうかお前さんの世界には魔法が無いんじゃったなあ」

博士「まあ、平たく言えば魔力を帯びた銀じゃ、強靭かつ柔軟なんじゃ」

弟子「持ってきやした!」

親方「コイツだよ、ほれ、見てみろ」

運ちゃん「お、なんか薄く光ってんな」

親方「それが魔力の証ってワケよ、おっしゃ、作ってみっか」

トンテンカンテン

親方「こんなもんか?いやもうちょっとか?カンカン・・・どれどれ」カポッ

親方「一応出来たぞ、こんだけの精度になってくると、あとは使ってみねーとわからねえ」



博士「うむ、では早速使ってみるかの、すまんが親方そいつに"ふいご"を繋げてくれんか」

親方「あん?壊すんじゃねーぞ?おい、そいつにフイゴくっつけろ」

弟子「へ、へい」

博士「こっからはワシの見せ場じゃ、魔法陣を書いて・・・と、うむ、行くぞ」

博士『ムニャムニャムニャ・・・・ハァッ!風の精霊よ!!』

プクゥゥゥゥ

運ちゃん「うええなんだなんだ、この革袋膨れ上がったぞ」

博士『%$’■#”&###!!!』

ブシュゥゥゥゥ

運ちゃん「あ、縮んだ」



博士「・・・・・・・と、どうじゃ?上手く入ったかの?」

運ちゃん「そっか、空気入れるために来たんだった」グイグイ

運ちゃん「お、硬え!!入ったっぽいな!あとは実際に履かせてみねーとわかんねーけどよ」

博士「では早速やってみようかのう」

運ちゃん「それにしても今のどうやったんだ?」

博士「風の精をそのフイゴの中に召喚して、そっちに入れ!って命じただけじゃよ」

運ちゃん「へえー、改めて魔法って便利だなあ」

博士「万能ではないがの、さて親方、それじゃ帰るぞい、お騒がせしたな」

親方「おい、お代はドコに請求したら良いんだ?」

博士「ああ、研究所で構わぬよ、あとその口金はココで預かってもらえるかの?」

親方「またおめぇフイゴだけ借りに来る気だな?」

博士「バレたか」

運ちゃん「しかしパンク一つでこんだけ大騒ぎとなると、他んとこ故障したらアウトだなあ・・・」

~~
~~



~ 王都 少し前 ~

西の騎士「聞いたか四軍の参謀の事」

南の騎士「大勝利をしたにも関わらず更迭されてきたという話か?」

西の騎士「うむ、その話なんだが続きがある」

南の騎士「ほほう?」

西の騎士「なんでもあの作戦を上奏したのが自分だと言い張ったそうだ」

南の騎士「なんと、バカな事を、あれは名将である四番将様が立てた作戦である事ぐらい一兵卒でも知っておるぞ」

西の騎士「どうせ手柄のおこぼれに与ろうしたのだろう、卑しい心根だ」

南の騎士「そういえば彼奴は卑しい商人の生まれと聞いた事がある」

西の騎士「生まれで全てが決まるとは言わぬが、やはり卑しき生まれは卑しき心を育むのかもしれぬな」

騎士「・・・・・・」



騎士「(彼らはああ言うが・・・)」

騎士「(第四軍の配置は、元々あれ以上魔物に領土を荒らされないための守備陣という意味合いが強い)」

騎士「(だからこそ、独創性は無いが守勢に強く、堅実に事を進める四番将が指揮を執っていた)」

騎士「(しかし、あの作戦は新兵器の使い方といい、戦術といい、従来の将軍どのの策とはかけ離れていた)」

騎士「(戦術の冴えもさることながら、それを良策と認めさせ、実行まで移させた手腕は評価に値する)」

騎士「(もっとも、それが故に同輩の妬み、もしくは上司の不興を買って足元を掬われた・・・といったところか)」

騎士「(話を聞いてみる価値はあるな)」

~~
~~

一年もノーメンテで不整地転がしてたらもっとあっちこっち故障しそうだけど気にしないで下さい。
今日はここまで。



~ 王都 下町 ~

参謀「それで、下賤の生まれで嫌われ者の私のところにわざわざ何の御用で?」

騎士「北の大勝利、作戦を立てたのはお主と聞いたが本当か?」

参謀「そんな事を聞いてどうするんで?」

騎士「本当ならお主を我が幕僚に迎える」

参謀「ははは、何をおっしゃってるので?あれは四番将様が立案されたと、誰でもご存知でございましょう」

参謀「そんな事よりも、聖騎士様ほどのお方がこのような卑しい男を迎えた、などとあれば要らぬ噂もたちましょう」

参謀「生まれが違うとは、生きる世界が違うという事でございます、どうぞお気の迷いはお忘れになった方が」

騎士「四番将様は定石に従って軍を運用するのは得意だが、あのような型破りな作戦を思いつかれる方ではない」

騎士「誰か他に知恵を貸した者が居るのは確かだ・・・・が、お主ではないというなら他をあたろう」

参謀「・・・・・・・・何を企んでおいでで?」



騎士「お主こそそんな事を聞いてどうする?」

参謀「聞いてから考えます」

騎士「・・・・・・・・噂に違わず図々しい男だの、お主」

参謀「ふふ、何しろ卑しい商人の出なもので」

騎士「よかろう、単刀直入に言うぞ、私は西の砦を落としたい」

騎士「ついてはそれに必要な人材を探しておる、それだけだ」

参謀「・・・・・はあ?」

参謀「西の砦って、あのここらの諸国の一番の頭痛のタネのアレを?」

騎士「そうだ」

参謀「周辺諸国の万を数える連合軍が攻めてもビクともしなかった?」

騎士「うむ」



参謀「は、ははは、はははは、これは・・・・騎士様あなた、どこか戦場で頭でも打たれたのでは?」

騎士「そう思うか?」ジッ

参謀「・・・・・・・・・・・・・・・・・狂人の眼差しではございませんな」

参謀「しかし、貴方様が正気であろうが狂っていなさろうが、実際のところこれは狂気の沙汰ですぞ」

参謀「万の軍で落ちなかった砦を、いったいどうやって落とすおつもりで?」

騎士「策はある、私の読みが正しければ、この国の兵力で充分足りるはずだ」

騎士「だが、その策を使うべき場所までの道筋が私には作れない」

参謀「・・・・・・ははあなるほど、つまり地位・指揮権・兵力・その他もろもろ」

参謀「貴方の指揮で西の砦を攻めるにあたって、必要なお膳立てを私にせよとおっしゃる?」

騎士「察しが良いな」



参謀「はっきり申し上げますが、コイツは西の砦を落とすよりも厄介かもしれませんよ?」

騎士「お主にはできんと申すか?」

参謀「いいえ、おそらく出来るでしょう」

騎士「ならば・・・・」

参謀「しかし、その対価に騎士様は私めに何を下さいますか?」

参謀「ご存知の通り私は卑しい商人の出、使命と名誉だけでは動きませぬ」

騎士「"歴史上初めてあの砦を打ち破った将軍の参謀"」

騎士「お主であればこの名声を金に替えるも地位に替えるも自由自在であろう」

騎士「私にはそれ以上の物は用意できん」



参謀「はぁ・・・・・・・・・なんとも正直なお人だ」

参謀「確かに貴方様にとっては、砦を落とすよりも砦の前に立つ方が難しそうだ」

騎士「そのとおりだ」

参謀「分かりました、ただし、一つ確認しておきたい事がございます」

騎士「なんだ」

参謀「くどいようですが私は商人の出でございます、ですから、これも取引と考えます」

参謀「貴方様が大望を遂げた末にいただける名声、それを買うために私は私の能力をお支払いします」

騎士「うむ」

参謀「ですから、"無私の忠誠"とか"騎士道"といった物を私めにお求めになりませぬようお願いいたします」

騎士「それで良い、お主は己のために私を山の頂に押し上げろ、それ以外は求めぬ」



参謀「もう一点、私の信条は"命あっての物だね"でございます」

参謀「貴方様と共にあの世まで駆けるつもりは毛頭ございません」

参謀「貴方様の命運尽きた、と判断した時には私は降ろさせていただきます」

騎士「よかろう、ただし、私を売る時は、私の手足が動かなくなってからする事だ」

騎士「そうでなければ、何があろうとお主を地の果てまでも追い詰める」ギロッ

参謀「ふ・・ふふ、さすが聖騎士様ですな、眼光だけで冷や汗が止まりません」タラッ

騎士「ふん、お主がそんな大人しいタマか」

参謀「いえいえ、買いかぶりでございますよ。良いでしょう、妥当な条件かと存じます」

騎士「取引成立と受け取ってよいかの?」

参謀「はい、よろしくお願いいたします」ザッ

~~
~~
I1



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『新たな"船"はまだか?』

『はい、元々が理論すら不確かだったものでございますから』

『むしろ、脱出行の折にまともに動いたのが奇跡という事か』

『はい・・・それともう一つ、頭脳が不足しております』

『分かっておる、この800年で父祖の地より伝わる技術も数多く失われた』

『皆、生きのびるだけで精一杯でございました』

『もはや猶予ならんな、残る幹部層、知識層の全てをこの地に結集する』

『なっ!?そ、それでは内政や外征が・・・』

『それらは官僚層に一任する!我らの責務は未来に希望をつなぐ事だ!』

『・・・承知致しました』

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I-1000

今日はここまで。
運ちゃん出番ナシw



~ 第三軍 駐屯地 ~

運ちゃん「おう、食料持ってきたぞ!!」ブロロロ

補給係「ありがてぇ!!残りが心細くなってたトコなのよ」

運ちゃん「ほいよ、こいつが品目だ、おい、ゴーレム!!荷物降ろしちまえ!」

ゴーレム「ギギギ」ズシンズシン

補給係「おーい!お前らも運ぶの手伝ってくれ!!」

「おう」「待ってたぜ」「これで一息つけるな」

運ちゃん「なんだかみんな疲れてんな」

補給係「ここんとこヤツらの動きが活発で小競り合いが多いんだよ」

隊長「補給が届いたと聞いたが」

補給係「へい、たったいま!」



隊長「これが噂の、とらっく、というヤツか」

運ちゃん「おうよ、10tまででこの荷台に入るモンなら何でも届けるぜ?」

隊長「ふーむ、恐ろしい馬力だ・・・」

隊長「ときに、お主は兵職では無いのだったな?」

運ちゃん「おう、俺はまあ荷物届けんのが専門だからよ」

運ちゃん「とてもじゃねえがバケモンとケンカする度胸はねえや」

隊長「そうか・・・惜しいな・・・・」

運ちゃん「何がよ?」

隊長「いや、何でもない、忘れてくれ」



兵士A「おい、荷物は全部下ろしたぜ」

運ちゃん「おっし、受け取りもらってけーるか」

隊長「うむ、ご苦労だった、大変助かるぞ」

運ちゃん「おうよ、またヨロシクな!」バタン

ブロロロロ

隊長「なんと・・・アレは凄い・・・・」

副長「隊長、どうしました?」

隊長「うむ、アレがあれば、軍の機動力は倍になるな・・・と思ってな」

副長「へ?まーた難しい事言いだしちゃってこの人は・・・」

副長「頭は良いんだけど、俺らにゃさっぱりついて行けねぇ」

~~
~~



~ 領主の館 ~

領主「相わかった、ワシからも王に話をしておこう」

騎士「ありがたき幸せに存じます」

領主「ワシとしても領内の平穏は何事にも代えがたい、期待しておるぞ」

騎士「はっ、領主様の日頃の御恩に報いるべく粉骨砕身いたしまする」

領主「うむ、お主のような騎士を持ってワシは鼻が高いぞ」

騎士「もったいなきお言葉、ではご無礼仕る」サッ

領主「ご苦労であった、久々の故郷、今日はゆっくり休め」ヒラヒラ

バタン



騎士「・・・・・・・ふう」

参謀「いかがでした?」

騎士「お主の言った通りだ、事はすんなり運んだ」

参謀「あのお方は善君ではございますが功名心の高いお人ですからな」

参謀「そこをくすぐって差し上げるのが一番話が早いのです」

騎士「ふむ、私はバカ正直の類だからな、このような駆け引きはお主が頼りだ」

参謀「お任せ下さいませ」

~~
~~

ちょっと仕事が立て込んでるので今日は短めです。
謎のアレはそのうち繋がりますので気長にお待ち下さい。



~ 博士の家 ~

運ちゃん「~ってな感じでよ、どこも魔物が活発になってるみたいだわ」

博士「ふーむ、マズいのう、軍に余力が無くなって領土の防衛に精一杯になってしまうと」

博士「騎士の言う砦の攻略など、誰も賛同しなくなってしまうかもしれぬ」

運ちゃん「マジかよ、なんか新兵器とか作れねーのかよハカセ」

博士「お前さんこそ、ワシらに作れるような物で、そちらの世界の良い知恵は無いものかの?」

運ちゃん「うーん、複雑なモンは俺が作り方わかんねーから、戦車とか飛行機ってワケにもいかねえしなあ」

運ちゃん「大体、戦争なんて言ってもゾクの頃の抗争しか知らねーしなあ・・・」

運ちゃん「バイクが作れりゃなあ・・・・・あ、自転車とかどうだ?」



博士「じてんしゃ?」

運ちゃん「おう、近場に行くときとかに乗る乗り物なんだけどよ」

運ちゃん「こう、車輪が2つついててよ、ペダルがこうなって、チェーンでこっちの車輪回して進むんだ」

博士「なるほど、つまりトラックの仕組みを思い切り単純にした物という事かの」

運ちゃん「あー、まあ、そうっちゃそうかもな」

博士「して、それをどう使うんじゃろうか?」

運ちゃん「・・・・・・・よく考えたら戦争じゃ使いみちねーかもな」

運ちゃん「荒れ地とかだと走りにくいし、別に馬より早えってワケでもねーし」



博士「まあ、面白そうじゃから試しに一つ作ってみるのもアリじゃがのう」

運ちゃん「したらよ、これはどうだ?鉄砲っつって、飛び道具なんだけどよ」

運ちゃん「こう、金属の筒があってよ、こっちだけ開いてんだよ」

運ちゃん「んで、ココで火薬を爆発させて、こっから金属の弾を打ち出すわけよ」

博士「なるほどなるほど、爆発の力で弾を遠くに飛ばすというワケじゃな?」

運ちゃん「おう、俺らの世界じゃコレが今でも一番よく使われてる武器だぜ」

博士「ふーむ、しかし、弓ではいかんのか?」

運ちゃん「弓より強えぜ?それに、アレだ、多分弓より扱いが簡単なんだよ」



運ちゃん「この街にも兵士はたくさん居るけど、弓撃てるヤツぁそんなに多くねーべ?」

博士「うむ、弓兵というのは通常の兵とは違う訓練をうけてなるものじゃからな」

運ちゃん「だけど、コイツなら、誰でも引き金さえ引けば弾が出るからよ」

運ちゃん「下っ端の兵隊まで全員コレ持たせて、一斉に撃ったらすげーと思うぜ」

博士「そうじゃったな、お前さんたちの"かがく"というヤツは使い手を選ばぬのが特徴じゃった」

博士「確かに、それを全部の兵に行き渡らせれば、全員が弓兵の役をこなせるという事じゃからな」

博士「大きな戦力の増大になるじゃろう・・・が、それだけの数を量産するのが大変じゃな・・・・」

運ちゃん「そうか、鍛冶屋がいっこずつ手作りすんだもんな」



博士「とはいえ、その、爆発の力で弾を飛ばすというアイディアは何か使えそうな気もするのう」

博士「うむ、他の研究室とも協力して何か活かせる方法が無いか考えてみるかの」

運ちゃん「すまねぇなあ、あんまり役にたたなくてよ」

博士「何を言っておる、お前さんは充分役にたっておるじゃろうが」

博士「お前さんが毎日のように届けてくれる物資な、アレを荷馬車でやったら大変なんじゃぞ」

運ちゃん「お、おう?」

博士「あのトラックには荷馬車でおよそ5~6台分の荷物が乗るじゃろ」

博士「いわんや速度に至っては10倍じゃ、つまり、荷馬車50台分のはたらきをお前さんはしておるんじゃ」

運ちゃん「そ、そんなにか?」



博士「うむ、じゃからお前さんは自分の働きには自信を持って良いぞ」

運ちゃん「いやー、なんか改めてそう言われると悪い気はしねぇな」

トントン

博士「む?客か・・・どなたじゃな?」ガチャ

騎士「久しぶりだな、博士」

博士「騎士!!!」

運ちゃん「お、お前戻って来たのか!!!」

騎士「お主も元気そうだな」

~~
~~


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『其方が後を継いだか』

『はい、今日より御側衆として仕えさせていただきまする』

『うむ、ときに其方はここでの研究の事は知っておるか』

『なんでも太古の歴史を研究されているとか・・・』

『そうではない、我らが学究しておるのは"船"だ』

『船、でございますか』

『先代は何も教えなんだか』

『はい、私が後を継ぐ事が決まった時にはすでにお言葉を失っておりました故』

『そうか・・・・・良い、下がれ』

『はっ』

『官僚層すらこれほどまでに知識が失われたか・・・』

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I-600

今日もあまり書けませんでした。
週末にガーっと書き溜めできたら良いなあと思っています。



~ 博士の家 ~

騎士「ようやく私の幕僚も一通り揃ったが、今は指揮すべき軍が無いのでな、宙ぶらりんといったところだ」

運ちゃん「前におめぇ言ってた第三軍をもらう、って話はどうなったんだ?」

騎士「まさにその根回しのために今回は領主様に会いに戻ってきた」

運ちゃん「なるほどな、じゃあおめぇ、その腹芸の得意なヤツってのは・・・」

騎士「うむ、見つかった」

博士「まあ、お前さんにはキツネとタヌキの化かし合いは無理じゃろうからなあ」

運ちゃん「あ、ちなみに今少女は使いに出てて居ないぜ?」

騎士「あ、う、うむ・・・それはまあ・・・」



騎士「しかし・・・・やはりこの街は良いな、心が落ち着く」

運ちゃん「王都の水は合わねぇか?」

騎士「合わない、というワケではないが、やはり気を許せる者は多くない」

騎士「それも、私はいうなれば若輩者の身で大功を企む野心の徒だからな」

騎士「触れ合う相手も必然的にそういった者達が多くなってくる」

運ちゃん「そいつぁ似合わねぇな」

騎士「うむ、その似合わない服のおかげで肩が凝ってな」

運ちゃん「キャラの合わない奴らと居ると疲れっからな」



騎士「ところでお主らはどうしておったのだこの一年」

運ちゃん「俺ぁ相変わらずアッチコッチ荷物運んでばっかよ」

運ちゃん「そうそう、こないだはおめぇが欲しがってる三軍の補給に行ったぜ」

騎士「どんな様子だった?」

運ちゃん「うーん、なんか小競り合いが多いとかで疲れてたぜ」

騎士「うむ、最近どこに行っても魔物の動きが活発になっているらしくてな」

騎士「王都でも随分と対応に追われているようだ」

博士「うむ、ワシらとしても、何か戦局を有利にするような兵器が作れぬものかと頭を悩ませておるのじゃが」

騎士「ふむ・・・それでその黒板の図というわけか?」

博士「ああ、これは今ちょうど運ちゃんから聞いていた、銃という武器の仕組みじゃ」

騎士「ほう、興味がある、ちと聴かせてくれぬか」



博士「~~という原理じゃ」

騎士「なるほど・・・・・・・それはおもしろいかもしれんな」

騎士「博士、その武器、実用化に向けて研究してくれぬか」

博士「ええぞ、ちょうどそのつもりじゃった」

騎士「ただし、その成果は私が良いというまで、軍には秘密にしてもらいたい」

博士「む、何を企んでおる?」

騎士「西の砦を攻めるには、私がまずいくつか武功を立てて、軍本部への発言権を確保する必要がある」

騎士「その時のためにとっておきたいのだ」

博士「・・・・・・まあよかろう、他ならぬお前さんじゃ、国のためを思っての事じゃろうからな」

騎士「かたじけない」

コンコン



運ちゃん「お?また客か?今日は多いな、ああ、ハカセは座ってなよ俺が出るぜ」

運ちゃん「だれだい?」ガチャ

参謀「私は騎士様幕僚の参謀ともうします、騎士様はこちらにいらっしゃいますか?」

運ちゃん「いるぜ?おーい、騎士、おめぇの部下が追ってきたぞ」

騎士「誰かと思えば参謀か、何故ここが?」

参謀「この街の守備隊に貴方様の行き先を聞いたら教えてくれました」

騎士「なるほどな、それで、何かあったか?」

参謀「はい、つい今しがた入りました情報ですが・・・」

騎士「なんだ」

参謀「・・・・・・・」

参謀「北の第四軍が大敗を喫したそうです」




騎士「なんだと!?どういう事だ、詳しく話せ」

参謀「はい・・・・」チラッ

騎士「彼らなら大丈夫だ」

参謀「わかりました、では・・・といっても、まだ情報は多くないのですが」

参謀「先だって第四軍は二年ぶりとなる大勝をおさめ、勢いに乗って北部奪還を目指し攻勢に出ておりました」

参謀「そして、昨日の事ですが、一隊が突出した途端、それまで弱腰だった敵軍が突如反転して襲いかかってきたそうです」

参謀「更には、火炎を使う魔物が大量に現れ、新兵器の弾薬をつぎつぎと誘爆させ、その混乱で全軍瓦解に至ったとの事」

参謀「辛うじて元からあった絶対防衛線までは破られずにすんだものの、死者負傷者多数で現場は混乱の極みにあるとか」

騎士「なんという事だ・・・・」

参謀「そしてもう一つ、四番将どのも行方不明だそうです」



騎士「・・・・・・お主、報せを届けにきたというだけではないな」

参謀「はい」

騎士「味方の大敗を、将兵の死を利用せよと申すか」

参謀「はい」

騎士「貴様っ!!」

参謀「起きてしまった敗北は取り返しはつきません」

参謀「しかし、その敗北にどのような意味を加えるかはまだ選択の余地があります」

騎士「・・・・・・・・」



参謀「局地的勝利に浮かれた挙句、大量の将兵と領土を失った愚かな惨劇として終わらせるのか」

参謀「その危機を若き英雄が救い、この国に新たな名将が生まれる機会として生まれ変わらせるのか」

参謀「それは、貴方が選択する事です」

騎士「・・・・」ギリギリ

騎士「我が望み、血を流さずに果たせるような甘いものではないと言いたいのだな」

参謀「血を流さずに戦ができるかどうかは貴方様が一番よくご存知でしょう」

騎士「ぐっ」



参謀「貴方が軍という山の頂に登るなら、その足は血に染まるほかはありません」

参謀「できる事は、せいぜいそこに無辜の民衆の血が混じらぬよう気をつけるぐらいです」

騎士「・・・・・・・・・・・」

参謀「貴方にはとうに覚悟ができておいでかと思いましたが?」

騎士「・・・・・・よかろう」

騎士「心情としては納得できぬが、現地で命の危険に晒されている将兵の事を思えば瑣末な事だ」

騎士「お主の策を聞こう」

運ちゃん&博士「・・・・」



参謀「策と申しましても、大した話ではありません」

参謀「軍規によれば、戦場で部隊が指揮官を失った場合、最寄りの有資格者の指揮下に編入される事になっています」

参謀「そして、軍団単位の指揮権を持ち、北部戦線にもっとも早くたどり着ける将は貴方です」

参謀「ですから、ごく真っ当にその権限をもって第四軍をまとめあげ、敵を撃退する、これだけです」

騎士「それで?」

参謀「とはいえ若輩者が出すぎた真似を、と睨まれる可能性は高いですので、免罪符は用意した方が良いでしょう」

騎士「どうする?」



参謀「国内の諸侯には自領を守護する責務と権限がございます」

参謀「北部領は本来は北の伯爵様のものですが、現在は所領を奪われ王都に身を寄せてらっしゃいますから・・・」

騎士「隣領であるここの領主様の命令をいただけば良いという事だな」

参謀「厳密にはスジは通りませんが、領主様は国王の縁に連なる実力者、誰も文句は申しますまい」

騎士「わかった、すぐに領主様に訪いを入れる」

騎士「お主は道すがら領主様への話の持って行き方を助言しろ」

参謀「お任せ下さい」



騎士「それから・・・・運ちゃん、すまぬが頼まれてくれぬか」

運ちゃん「おめぇを第四軍まで届けりゃいいんだろ?」

騎士「うむ、巻き込んですまぬが・・・・・」

運ちゃん「バカヤロウ、俺が何のためにこんな事してるか忘れたのかよ?」

騎士「そうだったな、では、すまんが頼む!!」

運ちゃん「おうよ、運ぶのは俺の専門よ、任しときな!」

騎士「ありがたい、ではまずは領主様に会ってくる」

~~
~~
I1

週末中に多少先まで書き進められました。
一気に投下すると、後から矛盾が起きそうになった時に困るので、引き続き小出しで行きますがご容赦下さい。

ちなみに、運転席の便利グッズに関してはまだあまり考えてません。
何か面白いアイディアがあったら、とは思うんですが。



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『外はどうなっておる?』

『はっ、我らが領土は着実に拡大を続け、大陸全土を浄化するべく・・・』

『もうよい・・・・』

『はっ?』

『いや、順調ならば良いのだ、下がれ』

『ははっ!』

『もはや帝国の粋は失われ、ただ戦いに明け暮れる蛮族と成り下がったか・・・』

『いや、まだ希望は捨てぬ・・・いつの日か必ず安住の地を・・・』

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I-300


~ 道中 ~

ブロロロ

運ちゃん「んで、その領主様の命令は出たのかよ?」

騎士「うむ、上手く行けば領主様の名声にも繋がるからな、私が失敗しない限りは協力的だよ」

運ちゃん「ふーん、そういうモンか、大変だなあ政治ってヤツは」

騎士「私も不得手だが仕方あるまい、100や200ならともかく、千や万という数の民を守るには必要な事だ」

参謀「金と権力は道具でございますからな、使い方さえ間違えなければ力となりましょう」

騎士「甚だ扱いづらい道具だがな」

参謀「それは剣や魔法とて同じ事でございます、扱えない者が持てば己の身体を傷つける事もありましょう」

参謀「要はそれを扱う器量と技術があるかどうか、の問題でございます」

運ちゃん「ま、コイツだって運転間違えりゃ死ぬ事もあるからな」



運ちゃん「んで、あとは勝つだけって感じだけど、勝算はあるのかよ?」

騎士「うむ、報告からすれば第四軍は指揮官を失い、混乱に陥っているだけだ」

騎士「軍兵自体が継戦不能な状況ではなさそうだ、指揮権さえ掌握できれば問題あるまい」

運ちゃん「だ、だけどよ、いきなりおめぇが乗り込んでってみんな言うこと聞くモンか?」

騎士「その辺りは心配要らぬ、第四軍はこの参謀の古巣だからな、どこを抑えれば良いかは分かっておる」

参謀「はい、ただし、私はあそこでは嫌われ者でございますからな、表には出ぬ方が良いでしょう」

騎士「気楽な立場だな、策は出すが責は私一人に着せるというわけか」

参謀「代わりに功も全て貴方様に帰するのですから、条件は公正でございましょう」

騎士「わかっておる」

~~
~~



~ 第四軍 防衛線付近 ~

ワーワー
グオォォ
ギャー

運ちゃん「おいなんだなんだ、大騒ぎだぞ」

騎士「む、夜戦か!?」

参謀「ここからでは何も分かりませんな」

騎士「運ちゃん、止めてくれ!!上から状況を見る!」

運ちゃん「うええ、その鎧で屋根に上がる気かよ」キキーッ

騎士「すまんな、ちと急ぐのでな、参謀、ロシナンテを荷台から出しておけ!」ヒョイッガンガンガン

参謀「御意」

運ちゃん「うう、屋根の塗装が・・・」



騎士「魔物の数はさほど多くはない・・・遭遇戦か」

騎士「しかし軍の方は浮足立って混乱に陥っているな」

騎士「考えようによっては好機だ、軍を掌握する足がかりにしてくれよう」

騎士「運ちゃん!このまま私は出る!私に当たるようにライトを向けてもらえるか?」

運ちゃん「あいよ、お安い御用だ!おめぇこそ気をつけてな!」

騎士「うむ、ロシナンテ!!」

ロシナンテ「ヒヒーン」

ヒョイッ パカラッパカラッパカラッ

参謀「ご武運を!!」



モブ兵A「う、うわああだめだ」

魔物「ギャース」

モブ兵B「お、大型だあ・・・」

モブ兵C「にげろーーーー!」

魔物「ギャギャギャ」ドスドス

モブ兵A「ひぃっ」


ザンッ


魔物「ギエェェエェ・・・・」バタッ

モブ兵A「・・・え?」

騎士「何をうろたえておる馬鹿者ども!!!」

モブ兵s「「「ビクッ」」」



騎士「我は『青の聖騎士』!!隣国領主様の命を受け助太刀に参った!!」

「聖騎士!?」「マジかよ」「あの大型を一太刀・・・」ザワザワ

騎士「あの程度の数の魔物を相手にうろたえるでない!!一気に突き崩すぞ!!」

騎士「戦意ある者は我に続け!!行くぞっ!!!」

パカラッパカラッパカラッ

魔物「ギャース」

騎士「ふんっ」ザシュッ パカラッパカラッ

魔物「」コロン

モブ兵A「す、すげぇ・・・」

モブ兵B「お、俺達も続くぞ!!」

「「「おおおおおおお」」」

ドドドドド

今日の投下分終了。

筆記用具や発煙筒は、カンタンに軽油を複製するような錬金術士が居る世界ですから
現代と同等とまでは言わないでもそれなりに便利なモノが作られてそうな気がしますねえ。
本や雑誌は面白いかもしれません。
でも運ちゃんのキャラ的にミリヲタや三国志ヲタってするのも何か違うし・・・考えます。



運ちゃん「・・・・行っちまったな、大丈夫なのか?」

参謀「まあ、大丈夫でしょう、本来はここの兵はかなりベテランですから」

参謀「単に混乱して浮足立っていただけで、士気さえ上げてやればあの程度の相手、すぐ蹴散らして来ますよ」

運ちゃん「だけどよ、騎士のヤツ、先頭切って行っちまったけどよ・・・」

参謀「仮にも聖騎士ですよ?あの程度の連中にやられるようなら証を返上した方が良いですね」

運ちゃん「あの程度って・・・・だってあの魔物たち、俺の三倍はあるぜ?」

参謀「ああ、貴方は異界から来たんでしたね、ならばご存知ないのも無理はないですね」



参謀「聖騎士というのは、言わば化物です」

参謀「人間が相手なら、100人の兵士でも相手にならないでしょうね」

運ちゃん「100人って・・・・・・いくら強いったってメチャクチャだろ、どうやってそんな・・・」

参謀「"加護"のなせるわざですよ」

運ちゃん「加護って?」

参謀「ああ、そこからご存知無いのですね、まあ今度ゆっくり説明して差し上げます」

参謀「それか、博士に聞けばもっと詳しく教えてくれるでしょう」



運ちゃん「なんだよそれ、もうちっと教えてくr」

オオオオー!!

運ちゃん「う?なんだ?」

参謀「ああ、戦闘が終わったようですね、勝鬨が上がっています」


ウオオオオー!ヤッタゾー!


運ちゃん「お、勝ったのか」

参謀「ただの遭遇戦ですからね、当然でしょう」

運ちゃん「クールな野郎だなあ」



運ちゃん「お、騎士戻ってきた!おーい!!!」

騎士「しばしここで待て、その後司令部へ案内を頼む」

モブ兵「はいっ!!!」

騎士「待たせたな、とりあえずの混乱は収まったようだ」

運ちゃん「おう、お疲れ!無事で良かったじゃねーか」

騎士「あの程度、準備運動のようなものだ、これからが本番だからな」

参謀「それなのですが、師団長たちの説得についていくつか助言がございます」

騎士「うむ?」

参謀「ヒソヒソヒソ・・・」

~~
~~



~~ 第四軍 司令部 ~~

師団長A「われらの混乱を救っていただき、お礼の言葉もございません」

騎士「いや、大した事をしたわけではない、ただ目の前に魔物どもがおったのでな、つい手を出してしまった」

師団長B「いえ、騎士どのが来てくれなければ被害はもっと大きかったでしょう」

師団長C「左様、第四軍を代表して、我ら改めてお礼申し上げる」

騎士「(ふん、なるほど、あくまで第四軍を代表するのは彼ら、と言いたいワケだ)」

騎士「いやいや、騒がせてすまぬ、貴公らの反撃策の邪魔にならなければよかったのだが・・・」

師団長B「え?反撃?あ、ああ、いやいや、その、それは大丈夫かと存じまする、な?」

師団長A「あ、え、も、もちろん、じょ、状況が流動的ゆえ、何が起きても対応出来るように策を練っております」



騎士「ほうほう、参考までにその策、聞かせていただけぬかな?」

師団長A「あーいや、それはその、まだ策定中でありまして・・・」

師団長D「そ、それはそうと、聖騎士どのはこちらにどのような御用で・・・」

騎士「そうであった、最初にその話をするべきであったな」

騎士「四番将どの行方不明との報を受け、代理で指揮を執り、魔物どもを追い落とすよう命を受けて参った」

騎士「これが隣領主どのの命令書じゃ」ピラッ

師団長たち「「「「(うっ・・・・・・・・)」」」」



騎士「・・・・・と、いうのは表向きの話でな?」

騎士「私がここまで来たのは、四番将どのの事があるからだ」

師団長C「む・・・・」ハッ

師団長B「・・・・」

騎士「かのお方は、私も尊敬しているが、北方の要とも言うべき歴戦の将軍」

騎士「しかも、傍流とは言え元を辿れば王家に連なる名門のご出身でもある」

騎士「僅かでもご生存の可能性があるならば、是が非でもお救い申し上げねばならぬ」

本日投下分ここまで。
エロ本は・・・・確かにトラックの運転席には週刊誌とエロ本が付き物ですけどね。
運ちゃんの性処理に関しては何も考えてないです。
描写しても誰も幸せにならない気がするので、みなさんの想像にお任せしますw

追いついた!
続き気になる~

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http://imgur.com/KgMyCGu.jpg


~~~~

参謀『第四軍は、4つの師団で構成されています』

参謀『団長たちの人柄はそれぞれですが、共通して言えるのは、非常に将軍どのに対して忠誠が厚いです』

騎士『本国でも四番将どのは非常に人望が厚かったからな』

参謀『ええ、よくも悪くも非常に魅力的な人物ですから』

参謀『それだけに、戦地で苦楽を共にした彼らの忠誠は岩のごとく堅いと言えましょう』

騎士『すると、そこに新参の指揮官が入っていくというのは難しいか?』

参謀『そうですね、誰が後任についても、そう簡単に彼らの心をつかむ事は出来ないでしょう』

参謀『ただ、この戦一回に限定するならば、非常に良い手があります』

騎士『どんな手だ』

参謀『キモは、将軍閣下が"死亡"ではなく"行方不明"であるという点です』

~~~~



騎士「そして、万が一にもお亡くなりになっていたならば・・・・・」

師団長C「・・・・・・・・」

騎士「亡骸だけでも王都にお運びしたい」

師団長A「・・・・確かに」

師団長D「仰るとおりですな・・・・」

騎士「そのためにも、迅速な巻き返しが必要なのだ」

騎士「お主らに力添えをさせてもらえぬだろうか?」


師団長C「・・・・・・」

師団長C「騎士どの・・・いや、青の聖騎士どの!!」ザッ

師団長B「!?」

師団長C「正直に申す、我ら、軍を収拾するのに精一杯で、将軍閣下の行方にすら頭が回っておりませなんだ」

師団長C「騎士どのに言われるまでそのような大事な事にも気付かぬとは不覚の至り!」

騎士「それは貴公らがそれだけ兵たちの身を案じておったという事であろう」

師団長C「いえ!だからといって大恩ある将軍閣下の安否すら忘れるようでは、我らの器が知れるというものでございまする」

師団長B「お、おい・・・」


~~~~

参謀『師団長のうち、AとBは縄張り意識が比較的強いですので、説得にあたるならCかDです』

参謀『特に、Cは良くも悪くも人情に厚い武人タイプです、やり方によってはすぐ落ちるでしょう』

騎士『つい先日までの同僚を"落ちる"とは酷い言い草だな』

参謀『誹謗中傷をされて追い出された、程度の友情しかございませんからね』

騎士『辛辣だのう・・・』

参謀『あと、Dですが、師団長の中では年少で立場はあまり強くありませんが』

参謀『代わりに他の三人に比べて柔軟な思考を持っております』

参謀『理をもって説けば分かってくれるかもしれません』

騎士『なるほど、分かった』

~~~~



師団長C「将軍閣下の行方を案ずるのは我らも同じ、どうかこの第四軍にて存分に采配をお振るい下さいますよう」

師団長A「何を!?」

師団長C「聖騎士どのの実力はすでに見た通りだ」

師団長C「そして我らの急務は閣下の捜索、となれば聖騎士どのに指揮を取っていただくのが一番であろう?」

師団長B「そ、それはそうだが」

師団長D「・・・・・・・ま、そもそも隣領からの正式な命令書がある以上、本来それに従うは軍士の必然ですからね」

師団長D「別にわざわざ異を唱えるような事じゃありませんな」

師団長A,B「・・・・・・・・・」



騎士「ふむ、お主らもそれで構わぬのか?」

師団長A「確かに、考えてみればDの言うとおりでございます」

師団長B「我ら、あまりの事に冷静さを失っておりました・・・」

騎士「うむ、分かった、では短い間であろうがよろしく頼む」

「「「「はっ」」」」

騎士「とは言え、だ、私はこの軍の将兵について詳しい知識があるわけではない」

騎士「どの師団が何が得意で何が不得手か、そのような事を把握してるのは貴公らだ」

騎士「であるから、作戦だけは立てるが、実際の采配は貴公らに任せるぞ」

師団長たち「ははっ、お任せ下さい」

~~
~~

遅くなりました、続き投下です。
今週末からちょっと急な出張が入ってしまいまして、今その準備でてんやわんやです。
本格的な続きは週が明けてからになると思います。

>>360
いいですね、このシュール感!まさにこんな雰囲気だと思います、トラックは二連じゃないですが。
ちなみに、カルカソンヌといえば、道路系ボードゲームの名作を思い出しますね。



運ちゃん「う~~~~」カタカタカタ

参謀「落ち着きませんか」

運ちゃん「そりゃ落ち着かねーに決まってんだろ、これからダチが死線に向かうってのに」

参謀「まあ、戦場が常に死と隣合わせなのは確かですが、さほど心配は要らないでしょう」

運ちゃん「なんでだよ」

参謀「指揮官ですからね、全面敗北からの潰走とでもならない限り、危険はありませんよ」

運ちゃん「でもさっきは先頭切って突っ走ってったじゃねーか」

参謀「あのような紡錘陣形からの正面突破は、敵軍の突破や混乱を目的とした場合の戦術です」

運ちゃん「何言ってんだかサッパリだぞ」



参謀「要するにですね、平たく言えばスピードと突破力を活かした戦術なんです」

参謀「対するに、これからの作戦の目的は将軍の(事実上遺体の)捜索ですから」

参謀「じっくりと安全に捜すために、可能性の高い地域を全て我々の勢力圏に置かなければなりません」

参謀「ですから、面をじっくりと広げるような陣取り合戦になるわけです」

運ちゃん「ふうん・・・そんで?」

参謀「一点突破の場合は騎士様のような戦闘力の高い方が、止まる事なく魔物どもをかき分けねばなりません」

参謀「それに対して、じっくりと陣を切り取るような戦いでは、指揮官は戦場全体を把握する必要があります」

参謀「ですから、そういう時は後方の司令部に座して、軍全てに対して采配を振るうのが正しいのです」



運ちゃん「なるほどな、親分は後ろに構えてデーンとしてろって事か」

参謀「ま、まあそんなところですかね(本当に分かったんですかねこの人)」

運ちゃん「そんで、おめーは騎士のサポートじゃねえのかい?こんなトコで油売ってて良いのかよ」

参謀「ここは私の古巣でしてね、私はあまり好かれては居ないので、今は顔を出さない方が良いでしょう」

運ちゃん「あー、まあなんか分かるぜ、おめぇわざわざ周りに好かれようってタイプじゃねーもんな」

参謀「自覚はありますが正面切って言われると少し傷つきますね・・・・」



運ちゃん「あ、わりぃわりぃ、つい思った事が口から出ちまった」

参謀「それ、フォローになってませんけど」

運ちゃん「あ、あれ?そうか?」

参謀「ま、人に嫌われるのは慣れてますけどね」

運ちゃん「でもよ、お前もうちょっと取っつきにくいのかと思ったけど意外とイイヤツじゃねえか」

運ちゃん「わざわざ詳しく教えてくれてアリガトな」

参謀「え?ああ、うう、そのまあ、結果が出るまで暇ですからね・・・」

~~
~~

本日投下分です。
続きはもしかすると夏休み後になるかもしれません・・・
それまでご自由にご歓談ください。
支援、感想、要望などは大歓迎です。

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