被虐娘「仕返ししたい……」 (152)

~朝~

~下駄箱~


被虐娘「……」

被虐娘「……ハァ」

被虐娘「また下駄箱にゴミが入ってる……」

被虐娘「……」

被虐娘「掃除しないと……」ゴソゴソ

黒髪「あら、どうしたんですか?」

被虐娘「……」

黒髪「同級生が話しかけてるんですから、返事くらいしたらどうです?」

被虐娘「……お、おはよう」

黒髪「うわあ、ゴミが日本語喋れたんですね」

被虐娘「……」

黒髪「あれ?私さっき返事くらいしたらどうですかって言いましたよね?」

被虐娘「……」

黒髪「おい」

被虐娘「あ、は、ははは、そりゃ喋れるよ……」

黒髪「ふふふ、ゴミって事は否定しないんですね?」

被虐娘「……うん」

黒髪「じゃあ、今日からあなた事をゴミって呼びますから」

黒髪「早く下駄箱の中のごみを掃除して下さいね、ゴミさん」クスクス

被虐娘「……」


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~教室~


被虐娘「……」

被虐娘「早く、席に着かないと……なるべく目立たないように……」コソコソ

地味子「あ……」

被虐娘「あ……」

地味子「……」

被虐娘「え、えっと……お、おはよう」

地味子「……」プイッ

被虐娘「……」

ポニテ「あれえ?何か変な声しなかった?」

被虐娘「……!」ビクッ

ポニテ「なんかさー、こっちの方から聞こえたんだよねえ、変な声」

被虐娘「あ、あの……」

ポニテ「あー!」ゲシッ

被虐娘「ひっ!」

ポニテ「ムシじゃん」

ポニテ「何でムシがこんな所で声出してんの」

ポニテ「私前に言ったよね?ムシの声は耳障りだから喋んなって」ゲシッ

被虐娘「う、うう……」

ポニテ「うっわ、また声出してる……気持ち悪い……」

ポニテ「ねえ、本当は私、ムシと同じ教室にいるのすら嫌なんだよ?」

ポニテ「けど、追い出すのはかわいそうだから我慢してあげてるの」

ポニテ「だからせめて声だけでも出さないでくれない?」

被虐娘「……」

ポニテ「おーい、聞こえてんの?」ガッ

被虐娘「わ、わかったよ、判ったから蹴らないで……」

ポニテ「あー、こいつ何も判ってないわ」

被虐娘「え……」

ポニテ「私は!」ガッ

被虐娘「……!」

ポニテ「喋るなって!」ゲシッ

ポニテ「言ったんだけど!」グリッ

被虐娘「や、やあぁぁぁぁ!」

ポニテ「ねえ!」パキッ

被虐娘「い、いたい……いたよう……」ガクガク

ポニテ「はあ、はあ、こいつ本当にイラつくわ……」

眼鏡「……ちょっと」

ポニテ「何よ」

眼鏡「……やり過ぎ」

ポニテ「は?ムシを相手にやり過ぎも何もないでしょ?」

眼鏡「……大丈夫?」

被虐娘「手が……指が……」ガクガク

眼鏡「……ああ、凄く腫れてる」

眼鏡「……保健室で治療しないとね、立てる?」

被虐娘「……」コクコク

ポニテ「はぁー……もうすぐ授業はじまるんだから放っておきなよ」

眼鏡「……私、保健委員だから、この子連れて行く」

被虐娘「……」グスン

~保健室~


眼鏡「……先生は不在みたい」

被虐娘「いたい……いたい……」ガクガク

眼鏡「……ほら、そこ座って」

被虐娘「……いたい……いたいよぉ……ぐすん……」ペタン

眼鏡「……応急処置だけでもしてあげるから、手、見せて」

被虐娘「け、けど」ガクガク

眼鏡「……大丈夫、酷い事しないから」

被虐娘「……」

眼鏡「……」

被虐娘「……う、うん」スッ

眼鏡「……ん」


テキパキ


眼鏡「……はい、これで完了」

眼鏡「……腫れてた所も明日にはマシになってると思う」

被虐娘「あ、ありがとう……」

眼鏡「……いいのよ」

被虐娘「あ、あの、私そろそろ教室へ……」

眼鏡「……待って」

被虐娘「な、なに?」

眼鏡「……前から言ってるけど、貴方はクラスの中でも可愛い方だと思うの」

被虐娘「そ、そんな……」

眼鏡「……本当の事よ」

被虐娘「……」

眼鏡「……その事を妬んだ子が色々としてくるかもしれないけど」

眼鏡「……なるべく怪我とかしないようにしてほしいの」

被虐娘「……」

眼鏡「……判った?」

被虐娘「う、うん」

眼鏡「……ならいいわ」

被虐娘「あ、あの」

眼鏡「……なに?」

被虐娘「あ、ありがとう、心配してくれて」

眼鏡「……心配するのなんて当然よ」

眼鏡「……だって貴方は大切なエサだし」

被虐娘「え……さ……?」

眼鏡「……そう、エサ」

眼鏡「……ネットの出会い系掲示板に貴方の顔写真を張っておくだけでどんどん獲物が釣れるもの」

眼鏡「……先週も、引っかかった奴を撮影して脅迫して一杯お金稼げたしね」

被虐娘「……」

眼鏡「……ところで貴方、今日の夜予定あいてるわよね?」

眼鏡「……また手伝ってほしいんだけど」

被虐娘「あ、あれはあの時1回だけだって言って……」

眼鏡「……嫌なの?」

被虐娘「だ、だって、知らない男の人とあんな所に行くの怖いし」

眼鏡「……大丈夫、本番に突入する前にまた助けに入ってあげるから」

被虐娘「け、けど……」

眼鏡「……嫌なんだ」

眼鏡「……クラス中から苛められてた貴方を何度も助けてあげてる私のお願いが聞けないんだ」

被虐娘「あ、あれは感謝してるけど……」

眼鏡「……私が口出しするのを止めたら、貴方、また前みたいに酷いいじめを受けるわよ」

眼鏡「……左耳、もう聞こえないんでしょ?」

被虐娘「……や、やだ」

眼鏡「……今度は、右耳も聞こえなくなるかもしれないわね?」

被虐娘「やだやだやだやだやだやだ!」ガクガク

眼鏡「……じゃあ、頑張ろう?」

眼鏡「……大丈夫、危険は全然ないから」

眼鏡「……ね?」

被虐娘「……」ガクガク

~夜~


黒髪「それで、ゴミは了解したんですの?」

眼鏡「……ええ、今頃、客と一緒にホテルに行ってるんじゃないかしら」

ポニテ「ふーん、馬鹿だねえムシは……で、何時に助けに行くんだっけ?」

眼鏡「……今回は助けに行かないわよ」

ポニテ「へ?けど、それだとムシと客が本番突入しちゃわない?」

眼鏡「……今日の客は金払いが良かったし、身元の確認も取れてる」

眼鏡「……つまり、今後リピーターになる可能性が高いのよ」

眼鏡「……その手の客にはキチンとエサを与えておかないとね」

ポニテ「あらら、今頃ムシはビビってるんだろうなあ」

黒髪「まあ、ゴミが誰と交尾しようがどうでもいいじゃありませんか」

ポニテ「黒髪ちゃんも交尾なんて言葉使うんだ~?」

黒髪「からかわないでくださいな」

ポニテ「ま、ムシの話は置いといて……こないだの儲け何につかおっか?」

黒髪「あの程度のお金なんて、すぐ無くなってしまうでしょう」

ポニテ「そりゃ2人は家が金持ちだからそうなんだろうけどさ、庶民の私にとっては割と大金何だよねぇ」

眼鏡「……こっちの取り分減らしてもいいけど?」

ポニテ「マジ!?眼鏡ちゃん大好き♪」

被虐娘「……」

被虐娘「……」

被虐娘「……」

被虐娘「……」

被虐娘「……」





被虐娘「だれも、たすけにきてくれなかった」

被虐娘「……あれ」

被虐娘「……私、いつの間に部屋に帰ってきたんだろ」

被虐娘「……えっと、確か今日は……」


ズキン


被虐娘「……頭が痛い」

被虐娘「頭が痛いから……何も考えたくないな……」

被虐娘「そう、そうだよ……何も考えない方が楽だもん……」

被虐娘「……」

被虐娘「……そうだ、日課のアレをしよう」

被虐娘「そうすれば、また何時もみたいに落ち着けるよね……」

被虐娘「ありゃ……机の上、随分ちらかってるなあ……」

被虐娘「誰が散らかしたんだっけ……えっと、確か今日帰ってきた時に……」


ズキン


被虐娘「……ああ、駄目駄目駄目駄目考えちゃだめ……」

被虐娘「頭が頭が頭が痛くなる……」

被虐娘「駄目だ駄目だ駄目だ、アレを探さないと……」

被虐娘「何処行ったんだろ……」ゴソゴソ

被虐娘「……あった」



DEATH NOTE



被虐娘「……ふ、ふふふ」

被虐娘「さあ、書こう、今日もいっぱい書こう……」

被虐娘「けど、そろそろ書くスペースが無くなっちゃってるんだよね……」

被虐娘「まあいいか、重ねて書いちゃおう……」

被虐娘「ふ、ふふふふ……」



『黒髪 狭い密室に閉じ込められて次々と塵を投入されて圧死』

『ポニテ 体中の穴と言う穴に蟲を詰め込まれて狂死』

『眼鏡 体中切られて鮫のいる海に放り込まれて四肢食い尽くされて出血死』



被虐娘「ふふふ、ざまあみろ……」

被虐娘「けど、他にもいるよね、他にも……」

被虐娘「前までは友達だったのに」

被虐娘「苛められてる所を助けてあげたのに」

被虐娘「今度は私が苛められるようになって」

被虐娘「助けを求めたのに、無視をして……」

被虐娘「あいつも許さない、絶対許さない……」


『地味子 落とし穴に落とされて誰にも気づかれる事なく餓死』


被虐娘「あははははは、こ、これで明日には全員死ぬ」

被虐娘「いなくなる!」

被虐娘「ここに書かれてる通り!」

被虐娘「しぬんだ!しぬの!そう絶対!」

被虐娘「しんで!おねがい!明日には!明日にはしんでて!」

被虐娘「昨日も!その前も!その前も!その前も!ずっと!ずっと書いてる!」

被虐娘「だから!だから明日こそは!」

被虐娘「お、おねがい……しんで……しんでいてよ……」

被虐娘「おねがいします……」

被虐娘「おねがい……しま……す……」

~翌朝~


被虐娘「……」

被虐娘「……」

被虐娘「……がっこう、いかないと」

被虐娘「でないと、あいつら……私の家にまで来るから……」

被虐娘「……」ズルズル

被虐娘「……あれ、どうして私の制服、破れてるのかな……」

被虐娘「どうして……」


ズキン


被虐娘「……ああ、やだなあ」

被虐娘「頭が痛い、昨日からずっと……頭が……」

被虐娘「……うう」ズルズル

被虐娘「あ、昨日のノート……出しっぱなしだったっけ……」

被虐娘「いけない……ちゃんと隠しておかないと……」

被虐娘「もし何かの間違いであいつらに見られたら……」

被虐娘「自分の部屋でも……油断なんてできない……」


ペラッ


被虐娘「……」

被虐娘「なにこれ……こんな内容、ノートに書いたっけ……」


契約書
 

下記の条件の元

貴方の要望にあった道具を作成いたします


「形状」
貴方が望む道具の形状をご記入ください

「能力1」
貴方が望む能力を1つご記入ください

「能力2」
貴方が望む能力を1つご記入ください

「デメリット」
道具作成にあたって貴方が支払う代価をご記入ください
能力とデメリットが釣り合っていない場合、道具の性能に制限が発生する可能性があります


 

被虐娘「……なん、だろ、これ」

被虐娘「何でこんなものが私のノートに書かれてるの……」

被虐娘「私が書いたの?無意識のうちに?けど……」


ズキン


被虐娘「……あたまが、いたい」

被虐娘「……そ、そうだ、昨日の日課が……」

被虐娘「足りなかったんだ……だから……」

被虐娘「だからこんなに頭が痛く……」

被虐娘「ああ、考えたくない……思い出したくない……」

被虐娘「そう、そうよ、きっと……」

被虐娘「きっとこれは、昨日私が書いたのよ……」

被虐娘「あ、新しい日課を……考えたのよ……」

被虐娘「ふ、ふふふ、だって復讐の手段を考えている間だけは、頭痛を感じなくなるもん……」

被虐娘「復讐の為の道具、そう、それを考えるの……」

被虐娘「そうすれば、こんな頭痛なんて……」

被虐娘「道具の形状、それに能力が2つ、デメリット……」

被虐娘「仮に形状を杖にして、能力を対象の消去にするとする……」

被虐娘「それであいつらを消しちゃったとして……」

被虐娘「私は満足できるのかな……」

被虐娘「……」

被虐娘「駄目、全然ダメ……」

被虐娘「そんなのじゃ、全然満足できない……」

被虐娘「全然実感がわかない……」

被虐娘「もっと、もっと復讐を実感できる道具を……」

被虐娘「そう、形状はナイフ……」

被虐娘「これなら手応えがあるから満足できると思う……」

被虐娘「けど……」

被虐娘「けど駄目ね、近づいて刺すのでは反撃を受ける可能性がある……」

被虐娘「刺す手応えは欲しいけど安全な距離から出来るようにしたいわ……」

被虐娘「例えば拳銃みたいな……」

被虐娘「そう、それがいいわ、拳銃を構えて、怯えてるあいつらを撃つ」

被虐娘「そうすれば、凄く満足できそう……ふふふ……」ブツブツ

被虐娘「あとは能力……性能……」

被虐娘「例えば爆発とかで相手を吹き飛ばしても実感はわかないと思う……」

被虐娘「相手の惨めな死体が残るような性能がいいわ……」

被虐娘「そして、出来れば私がやったって証拠が残らないように……」

被虐娘「そうしないと、復讐の途中で警察に捕まっちゃう事になる……」

被虐娘「あいつら、絶対一人も逃がさない……」

被虐娘「全員殺すまで終わらないんだから……」

被虐娘「だから……能力1は……」



能力1「痕跡が残らないようにする」



被虐娘「もうひとつの能力は、奴等を苦しめる為に使おうかな……」

被虐娘「ふ、ふふふ……」

被虐娘「心臓を撃たれても、即死はしないらしいのよね」

被虐娘「血が廻らなくなって少しずつ、けど確実に死んでしまうの」

被虐娘「きっと、きっと苦しいだろうなあ……」

被虐娘「……よし」



能力2「確実に心臓を射抜く」

被虐娘「最後にデメリット……」

被虐娘「何にしようかな……やっぱりお金?」

被虐娘「……いや、だめよ、私の恨みがお金程度の代償で果されるはずが……」

被虐娘「うら、みが……」


ズキン


ズキン



被虐娘「……頭が、痛い」

被虐娘「ど、どうして、こんなに頭が……」

被虐娘「ちゃんと日課はこなしてるのに……な、なんで……」

被虐娘「き、昨日からだよね、昨日から……」


ズキン


被虐娘「……昨日から」

被虐娘「……」



ズキンズキンズキン



被虐娘「……ああ、おもい」

被虐娘「だした……きのう」

被虐娘「わたしはホテルで」

被虐娘「だれもだれも……」

被虐娘「たすけにきてくれ」

被虐娘「なかったから私は」


ズキンズキンズキン


被虐娘「ああ、もういらない」

被虐娘「もうこんなじんせいいらない」

被虐娘「あいつらを」

被虐娘「あいつらをころすじかんだけ」

被虐娘「のこっていればいいわ」

 


デメリット「残り寿命の9割消費」



 

~学校~

~トイレ~


地味子「はぁ……」

地味子「あの子、どうして学校休んでるんだろ……」

地味子「何かあったのかなあ……」

黒髪「あら」

地味子「あ……」

黒髪「えーと、貴方の名前忘れましたね……確かゴミの友達の」

地味子「こ、ごみ?」

黒髪「ほら、あの子ですよ」

地味子「ご、ごめんなさい、判りません……」

黒髪「貴方が苛められてるのを助けてせいで逆に苛められるようになったあの子の事ですよ」

地味子「……あ、あの子はゴミって名前じゃ……」

黒髪「そうですか?判りました、じゃあゴミと呼ぶのはやめておきます」

黒髪「その代わり」

地味子「そ、そのかわり?」

黒髪「今日からあなたの事をゴミって呼んでよろしいでしょうか?」

地味子「……!」ビクッ

黒髪「駄目ですか?」

地味子「い、いやです……」

黒髪「どうしてです?友達であるあの子の為に貴方がゴミと言う呼称を引き受ける……」

黒髪「これってとても美しい話ですよ?」

黒髪「どうして嫌なんです?」

地味子「だ、だって、ごみって呼ばれると酷い目に……」

黒髪「友達なら、それを引き受けてもいいんじゃありませんか?」

地味子「……」

黒髪「違いますか?」

地味子「……ち、違います」

黒髪「へえ、違うんですか」

地味子「い、いえ、あの……違うって言うのは……」ガクガク

地味子「私とあの子が友達っていう部分でして……」ガクガク

黒髪「あら、そうでしたか?私はてっきり友達同士なのだとばかり」

地味子「ち、違います……私とあの子は……」

黒髪「はっきり言ってくださいますか?私に聞こえるように」

地味子「……」

黒髪「はやく」

地味子「……私とあの子は、友達じゃありません」

黒髪「……」

黒髪「ああ、良かった!じゃあこれからも貴方とは人間同士の付き合いができますよね!」

地味子「は、はい……」

黒髪「今後もその調子でお願いしますね?」

地味子「……はい」

黒髪「それじゃ、私はこれで」スタスタ

地味子「……」

地味子「……」

地味子「……」

地味子「……はぁ」

地味子「駄目だ……私本当に最低だよ……」

地味子「あの子を犠牲にして身の安全を優先するなんて……」

地味子「ああ、もう……」

地味子「……」

地味子「……」

地味子「……今日もあの子が学校に来ててくれれば、こんな思いしなくて済んだのになあ……」



ジャアーーーーー



地味子(あれ、個室から水の流れる音が……)

地味子(やば、誰にいるのかな……)

地味子(私の独り言、聞かれちゃったかな……)

地味子「あ、あの……」

地味子「だ、誰かいますか?」



キイィィィィィィ



地味子「……」ドキドキ

被虐娘「おはよ、地味子」

地味子「あ……」

被虐娘「どうしたのよ、鳩が豆鉄砲食らったような顔しちゃって」

地味子「……が、学校来てたんだ」

被虐娘「そりゃ来るよ、私も一応この学校の生徒だもん」

地味子「……い、今の話、聞いてた?」

被虐娘「ああ、私が学校に来てたらこんな思いしなくて済んだってヤツ?うん、聞いてた聞いてた」

地味子「……ご、ごめんなさい」

被虐娘「謝らなくってもいいよ、知ってたから」

地味子「え?」

被虐娘「だって、地味子、私が話しかけても完全にスルーしてたしね」

被虐娘「めちゃくちゃ迷惑そうな顔もしてたし」

被虐娘「いくらどん臭い私でも気付くって」

地味子「え、えっとね、違うの」

被虐娘「いいのいいの、大丈夫だから」

地味子「ひっちゃん……」

被虐娘「私はね、寧ろ嬉しいんだ、地味子が平穏な生活送れてるのが」

地味子「ひっちゃん、わ、私……」ウルッ

被虐娘「あー、もー、泣かないでよ」ナデナデ

地味子「う、うう、ごめんね、ひっちゃんごめんね」

被虐娘「謝らなくてもいいってば」ナデナデ

被虐娘「それよりさ、ちょっと地味子に聞いてほしい事があるの」

地味子「聞いてほしい事?」グスン

被虐娘「そ、教室ではまずいけど、トイレの個室でなら話してても連中に見つからないでしょ?」

被虐娘「だから、ちょっと聞いてほしいのよ」

地味子「い、いいよ、ひっちゃんのお願いなら聞く」グスン

被虐娘「うんうん、ありがとね、やっぱり地味子は根は善良な子だよね」

地味子「うう、そ、そんな事ないよ、私弱虫だし、ひっちゃんみたいに強くなれないよ……」

~個室~


地味子「そ、それで聞いてほしい事って何かな?」

被虐娘「うん、聞いてほしいって言うか、見てほしい物なんだけどね」ゴソゴソ

地味子「見てほしい物?」

被虐娘「ジャーン!」

地味子「こ……これ……」

地味子「拳銃?モデルガン?」

被虐娘「モデルガンじゃないよ、本物の拳銃!」

地味子「え……」

被虐娘「えっとね、昨日ね」

昨日ね私ね眼鏡達に騙されて変な男におかされちゃったの助けに来るって言っておいて

助けに来なかったの私凄く怖くてやめてって言ったのにあの男はやめてくれなかったの

逆に興奮されてすごく嫌な事されたのそのうち私は抵抗するのをやめたのよそしたらね

そしたらすぐに終わったの私ねそういうの得意なのどんな嫌なことも目と耳をふさいで

蹲っておけば過ぎ去ってくれるのよどうしても我慢できないストレス受けた時は日課を

こなすのそうしておけば嫌な事をリセットできて次の日学校に行けるようになるけどね

昨日は日課をこなしてもリセットできなかったの上手く出来なかったのよどうしてかな

頭がね割れるように痛くなって朝学校行くの無理かなって思ったのそうしたらね日課の

為に用意していたノートに変な文字が浮かんでたの私が望んだ道具を作ってくれるって

私ね頭が痛かったから必死になってノートに書き込んだの道具の仕様を頑張って書いた

するとねノートの中から出てきたのよこの拳銃がきっとこれ私が望んだ通りの性能なの

けどね実際に撃ってみないと判らないじゃないだからね地味子ちょっと貴方で試させて

地味子「え……?」

被虐娘「大丈夫、きっとめちゃくちゃ痛いだろうけど、痕跡は残らないから」

地味子「ひっちゃん?な、なんで私に拳銃を……」

被虐娘「それまで一杯苦しんでね?」




ズドンッ



 

地味子「う……あ……?」ヨロッ

被虐娘「うわあ、本当に痕跡残らないのね、命中はしてるはずだけど」

地味子「あ……あ……」ヨロヨロ

被虐娘「地味子?大丈夫?ちゃんと苦しんでる?」

地味子「……あ」

被虐娘「あれ?うーん、もっと苦しんでほしいなあ」

被虐娘「泣き叫んで?痛いって言って?」

地味子「……」

被虐娘「おーい、地味子~?」

地味子「……」ガクッ

被虐娘「地味子?」

地味子「……」

被虐娘「……」

地味子「……」

被虐娘「え?これで終わり?」

被虐娘「……ふ、ふざけないでよ」

地味子「……」

被虐娘「これで……これで終わり?こんなにあっさり終わりなの?」

被虐娘「こんなんじゃ、私の苦しみは全然張らせない」

被虐娘「全然実感湧かない!」

被虐娘「おい、起きろ!起きろってば!地味子!」ゲシッ

地味子「……」

被虐娘「な、なんで……」

地味子「……」

被虐娘「こ、こんな事なら……」

被虐娘「……殺すんじゃ、なかった」

地味子「……」

被虐娘「恨み辛みを全部ぶつけて、こいつが後悔するくらい罵倒して、夜も寝られないほど悩ませた方が、まだマシだった……」ガクッ

被虐娘「ああ、けどもう後戻りはできない」

被虐娘「殺してしまった命は戻らない」

被虐娘「この死体を隠しても……何時かは見つかっちゃう」

被虐娘「その騒ぎが起こる前に……」

被虐娘「あの三人だけは……」

被虐娘「あの三人だけは、始末しないと……」

被虐娘「あいつらは絶対反省しない」

被虐娘「私の事で思い悩む事もない」

被虐娘「だから、だから、楽に死ぬ事が判っていても、始末しないと……」

被虐娘「ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょう」

被虐娘「苦しめたかったのに泣き叫ばせたかったのに……」

ポニテ「あー、何であのムシ学校休んでんだろ、イラつくわあ……」

黒髪「貴方、ゴミの顔見たくないって言ってたじゃありませんか」

ポニテ「ムシを1日1回は蹴り飛ばさないとストレス解消できないじゃん」

眼鏡「……昨日の事もあるし、心配ね」

黒髪「あら、眼鏡さんは優しいのですね」

眼鏡「……警察にでも駆け込まれてたら面倒」

ポニテ「え、けどあんたらの親に頼めば大抵の事はもみ消してもらえるんでしょ?」

眼鏡「……あんまり家に借りを作りたくないの」

黒髪「私もですわね」

ポニテ「何か面倒くさいねえ……」



トゥルルル



眼鏡「……あの子からメールね」

ポニテ「えー、ムシにアドレス教えてるの?」

眼鏡「……連絡手段が無いとエサの管理ができないじゃない」

黒髪「それで、ゴミは何と?」


『昨日の事でお話があります』

『屋上まで来て下さい』


ポニテ「へー、呼び出しとは良い根性してるじゃん」

黒髪「ちょっと勘違いしてらっしゃるんでしょうね」

眼鏡「……」

ポニテ「けど馬鹿なんじゃない?せめて人が多い場所に呼び出せば殴られずに済むのにさ」

黒髪「眼鏡さん?いかないのですか?」

眼鏡「……そうね、行こうか」

~屋上~


ポニテ「居ないじゃん」

黒髪「いませんね」

眼鏡「……」

ポニテ「……これ、あれじゃない?私達がノコノコやってきたのを遠くから見て笑ってる系じゃない?」

黒髪「この学校の屋上を視認できる建物なんて周囲にはありませんけどね」

眼鏡「……」

ポニテ「あー、なんかイライラしてきた……」

ポニテ「どうする?夜にでもムシの家に乗り込む?」

ポニテ「というか、今からでも乗り込もうか、ちょっと私辛抱できそうにないわ」

黒髪「落ち着いてくださいな……」

ポニテ「けどさあ……」



ズドンッ



ポニテ「あ?」

黒髪「な、なんですの今の音は!?」

ポニテ「あ……あれ……」ヨロッ

眼鏡「……ポニテ?」

ポニテ「わ、わたし……胸が……」ヨロヨロッ

黒髪「ど、どうしたんですの?」

ポニテ「……」ガク

黒髪「ちょっと!」

ポニテ「……」バタン

黒髪「な、なんですか!?一体何が……」

眼鏡「……高架水槽の影」

黒髪「え……」



「ああ、もう、嫌になるくらいあっさり死んじゃったね」


 

被虐娘「……本当はね、こんなつもりじゃなかったの」

黒髪「ゴ、ゴミ……そんな所に隠れて……!」

眼鏡「黒髪、こっち」グイッ

黒髪「ひゃっ」ヨロッ


ズドンッ


黒髪「な、なんですの!?」

眼鏡「あいつ、銃もってる」

黒髪「は、はあ!?」

被虐娘「本当はね、1人が苦しんでる間に、残った2人に命乞いさせるつもりだったの」

被虐娘「その他貴方達を苦しめる為のいろいろな計画を考えてたんだけど……」

被虐娘「思ったよりこの拳銃の性能が良くてね……どうやっても即死しちゃうみたい」

被虐娘「寿命の9割とか投入したから、過負荷がかかってるのかなあ……」ハァ

黒髪「何をわけのわからない事を……!」

眼鏡「……」

被虐娘「それで、どっちを先にしてほしい?」

黒髪「はあ!?」

被虐娘「どっちが先に撃たれたいかって話」

被虐娘

黒髪「はっ!どちらが先でも同じでしょうに!」

黒髪「ポニテは出血をしてない、つまりその銃に殺傷性は殆どないはず!」

黒髪「恐らくは麻酔銃かスタン銃!」

黒髪「形状的に連射はできないはずですわ!」

被虐娘「ふーん、そうなんだ、良く知ってるね」

被虐娘「流石、ヤクザの娘だけあるわ」

黒髪「……」

黒髪「……私はヤクザの娘って言われるのが一番イラつくんです」

黒髪「骨の一本や二本折る覚悟はできてんだろうな!」ダッ



ズドンズドンズドンッ


黒髪「ぎゃうんっ!」

被虐娘「けど、この銃は私の為だけに作られたものだから」

被虐娘「貴方が知ってる知識はあてはまらないのよ」

被虐娘「眼鏡さん、1人になっちゃったね」

眼鏡「……」

被虐娘「倒れた二人の脈を診てもらっても構わないよ、確実に死んでるから」

眼鏡「……」

被虐娘「それでね、お願いなんだけど」

眼鏡「……」

被虐娘「命乞いしてくれないかな?」

眼鏡「……」

被虐娘「三人のリーダー格である貴方に命乞いをしてもらったら、私凄く満足できそうな気がする」

眼鏡「……」

被虐娘「ね?お願い」

眼鏡「……」ボソボソ

被虐娘「え?なに?聞こえない」

眼鏡「……」ボソボソ

被虐娘「聞こえないってば」トテトテ

眼鏡「……」

被虐娘「もう一回言って?」

眼鏡「……命乞いは貴女がして」


バチバチッ


被虐娘「痛っ……!」

眼鏡「……臆病な貴方が屋上に私達を呼ぶなんて、おかしいと思ってたの」

眼鏡「……だからスタンガンを用意しておいたわ」

被虐娘「う……うう……」ガクッ

眼鏡「……流石に銃を持ってるなんて予想の斜め上だったけどね」

被虐娘「うう……」

眼鏡「……この状況でも銃を離さないのは立派だけど、持ち上げる力は残ってないでしょ」

眼鏡「……もう諦め」



ズドンッ



眼鏡「……え」

被虐娘「こ、この銃はね、撃てば絶対に……相手の心臓に当たるの……」

被虐娘「狙っても狙わなくても……効果は……一緒……」

眼鏡「……」ガクッ

被虐娘「……は、はははは、もう、聞こえないか……」

被虐娘「……せっかく復讐が終わったのに……なんだか……冴えない……終わり方……だなあ……」

被虐娘「ああ……身体がしびれて……意識が……」

被虐娘「目が覚めたら……あいつらかせいない世界に……なって……」

被虐娘「……」

~自宅~


被虐娘「……あれ」

被虐娘「……ここ、私の家?」

被虐娘「おかしいな、私は確か、学校の屋上で……」

被虐娘「……」

被虐娘「そ、そうよ、学校の屋上であいつらを!」

被虐娘「あ、あれ?じゃあ私はどうして自分の部屋で寝てたんだろ」

被虐娘「……」

被虐娘「え、夢?もしかして……夢だったの!?」ガバッ


カチャッ


被虐娘「い、いや、違う、拳銃も布団の中に入ってる……」

被虐娘「夢じゃ、なかった……」

被虐娘「無意識のうちに戻ってきちゃったのかな……」

被虐娘「……」

被虐娘「今は夜の20時か……」

被虐娘「……死体が見つかってるならきっと騒ぎになってるはず」

被虐娘「ちょっと、見に行ってみようかな……」

~学校~


被虐娘「……静かだ」

被虐娘「パトカーとか止まってるかと思ったけど……」

被虐娘「もしかして、まだ発見されてない?」

被虐娘「……」

被虐娘「確か、地味子はトイレのロッカーに詰め込んでおいたよね」

被虐娘「あっちから確認しようか……」

被虐娘「えっと、こっちのフェンスは登れそうね……」

被虐娘「よいしょっと……」ヨジヨジ


ツルッ


被虐娘「うわっ!」



ドスンッ



被虐娘「い、いたたた……お尻打った……」

被虐娘「ああ、もう、こんなだからどんくさいとか言われるんだろうな……」



クスッ



被虐娘「……!」ビクッ

被虐娘「だ、誰?誰かいるの?」

 


シーーーーン


被虐娘「……」

被虐娘「誰もいない……よね……」

被虐娘「はぁ……私もしかしたら、頭おかしくなってるのかも……」

被虐娘「一日に四人も殺したんだから、当然なのかもしれないけど……」

被虐娘「……」

被虐娘「とりあえず、トイレ行こう……」

~トイレ~


被虐娘「……」

被虐娘「ど、どういう事?」

被虐娘「地味子の死体が無くなってる……」

被虐娘「ここに、ここにちゃんといれたのに……」

被虐娘「な、なんで?誰かが発見した?じゃあどうして警察が来てないの!?」

被虐娘「……」

被虐娘「ま、まさか、本当にあれは全部夢だった……とか……」

被虐娘「う、うそよ、うそうそうそうそ、私はちゃんとした、ちゃんと復讐した!」

被虐娘「そう、そうよ!デスノートみたいなお遊びじゃなくて!ちゃんと自分で!」

被虐娘「自分で復讐して!明日から!明日からあいつらが居ない生活を送れるの!」

被虐娘「そう、そうよ、絶対そうよ、そうにきまってる……」

被虐娘「……屋上、屋上を見れば判るわ」

被虐娘「あれが全部現実だって!判るわ!」タッ

~屋上~


被虐娘「……」

被虐娘「……」

被虐娘「……」

被虐娘「……ない」

被虐娘「死体が、3人の死体が何処にもない」

被虐娘「な、なんで無いの、私は確かに……」

被虐娘「あいつらを、撃ち殺したのに……」

被虐娘「なん……で……」ヘタリ

~自宅~

被虐娘(あれから学校の各所を確認したけど、死体は見つからなかった)

被虐娘(あれは本当に全部夢だったのかな)

被虐娘(じゃあ)

被虐娘(じゅあ明日から私はまた)

被虐娘(……あいつらに、苛められるんだ)

被虐娘(あいつらに……ずっと……ずっと……)ガクガク

被虐娘(そう、そうよね、現実では復讐があんなに上手く行くはずがない)ガクガク

被虐娘(どんくさい私に復讐なんて出来るはずがない)ガクガク

被虐娘(この銃だって、きっと何処かの玩具屋で買ってきた偽物なんだ……)ガクガク

被虐娘(私には、私には復讐なんて、出来ないんだ……)ガクガク

被虐娘「だ、だれか……」ブルブル

被虐娘「だれか、たすけてよ……」ガクガク

被虐娘「だれかぁ……」グスン



ガタンッ



被虐娘「ひっ!」

被虐娘「な、なに今の音……窓から……」


ガタンガタン


被虐娘「だ、誰か、いるの?」


ガタンガタン


被虐娘「……だ、だれ」


ガタンガタン


被虐娘「……」

被虐娘(ああ、そうか、もしアレが夢だったのなら)

被虐娘(私は今日、学校を休んだという事だ)

被虐娘(なら)

被虐娘(なら、あいつらが)

被虐娘(あいつらが私の家に来ても)

被虐娘(不思議じゃない)

被虐娘(怖い、怖い、怖い、どうしようどうしようどうしよう)

被虐娘(ま、窓のカギ、かけてたかな)

被虐娘(そ、そうだ、それだけでも確認しないと)

被虐娘(あいつらが、あいつらが部屋に入ってきたら、私はもう終わりだ)

被虐娘(ま、まどのカギを……)ソーッ

被虐娘(しめないと……)ソーッ


ゴロゴロゴロ


被虐娘「……かみなり?」


ピカッ


被虐娘「……!」

その時、私は見た



雷光に照らされた庭に



4人の人影があるのを



その全員が



虚ろな目を



私の部屋に向けていた

被虐娘「な、な、なんで……」ガクガク

被虐娘「なんで、あの四人が……」ガクガク

被虐娘「三人までならわかる、けど、どうして」ガクガク

被虐娘「どうして、あの子まであそこにいるの……」ガクガク

被虐娘「ま、まさか……」ガクガク




被虐娘「あれは、夢じゃなかったのかも」

被虐娘「私は本当に四人を殺してしまっていて」

被虐娘「庭にいるのは」

被虐娘「庭にいるのは……」



ガタンガタン



被虐娘「ひぃっ!」

被虐娘(この音はきっと、あいつらが私の家に入ろうとしている音だ)

被虐娘(か、隠れないと……)

被虐娘(もし、もし捕まったら……わ、わたしは、わたしは……)

ガタンバキン


バキンバキン


被虐娘(ああ、家に、家に入ってきた)

被虐娘(入ってきた……)

被虐娘(どうか、どうか見つかりませんように)

被虐娘(お願いします、おねがいします……)



バキバキバキ


パリンパリン


シネ


シネシネ


シネシネシネシネシネシネシネシネシネシネ



被虐娘(怨嗟の声が聞こえる……)

被虐娘(あれは、黒髪の声だっただろうか、それとも地味子の……)

被虐娘(怖い、怖いよ……)

被虐娘(ごめんなさい)

被虐娘(ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい)ブツブツ



シネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネ



被虐娘(ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい)ブツブツ

…………

………

……


被虐娘(……物音が、止んだ)

被虐娘(もしかして、朝になったのかな)

被虐娘(それで連中も消えてしまったのかな)

被虐娘(そうだと、いいな)

被虐娘(そうだと……)



「……ひっちゃん」



被虐娘「ひっ……」

「ひっちゃん、ここにいるんでしょ」

「この部屋にいるんでしょ」

「ねえ出てきてよ」

「ひっちゃん」



被虐娘(こ、この声……地味子の……)



「ねえ、ひっちゃん、もう大丈夫だから」

「出てきて、その顔を見せてよ、ひっちゃん」



被虐娘(だ、だめ、応えちゃだめ……)

被虐娘(だって、だって、地味子はもう……)


「ひっちゃん、懐かしいね、良くこうやってかくれんぼしたよね」

「ひっちゃんは隠れるのが上手だったし、私見つけられるかなあ」

「ちょっと不安だけど、大丈夫、絶対見つけてあげるから」

「絶対、絶対だよ」

「待っててね、ひっちゃん」


被虐娘「……」ガクガク

被虐娘(に、逃げないと、ここにいたら見つかっちゃう……)ガクガク

被虐娘(け、けど何処に逃げれば……)ガクガク



カチャッ



被虐娘「あ……」

 




「ひっちゃん、みいつけたぁ」




 

~居間~


被虐娘「……」

地味子「ひっちゃん、紅茶好きだったよね?飲むでしょ?」

被虐娘「……」

地味子「ちょっと台所借りるね?」

被虐娘「……」

地味子「あー、けどカップ全部割れちゃってるなあ……」

被虐娘「……あの」

地味子「ごめんね、ひっちゃん、私が買って来てた缶紅茶でもいい?」

被虐娘「……生きてる……の?」

地味子「え、うん、生きてるけど」

被虐娘「な、なんで!?私確かに銃で!」

地味子「……うん、あの時、私はひっちゃんに撃たれた」

地味子「その瞬間ね、凄く後悔した」

被虐娘「後悔?」

地味子「うん、だって幼馴染だった私を殺しちゃうくらいひっちゃんが悩んでたってことだからね」

地味子「それで自分の行動を振り返ってみて……自分自身を殺したくなった」

被虐娘「……」

地味子「客観的にみると、私最低の事してたから」

地味子「だから、まあ、ひっちゃんに殺されるのも仕方ないと思ったんだけど……」

被虐娘「けど?」

地味子「けど、何か死んでなかったの」

被虐娘「な、なんで……」

被虐娘「確実に死ぬはずよ!だって私がそういうふうにあの銃を作ったんだから!」

地味子「理由は判んないよ……」

地味子「目が覚めるとトイレのロッカーに押し込まれてたの」

地味子「それで、ひっちゃんを探してるうちに銃声が聞こえてきて」

地味子「それを辿って屋上に行ったら、ひっちゃんとあの三人が倒れてたの」

地味子「それでびっくりして……急いでひっちゃんを家まで運んだんだ」

被虐娘「……あの三人も、生きてたの?」

地味子「……」

被虐娘「生きてたの!?」

地味子「……生きてたら困るよね、ひっちゃんは」

被虐娘「え?」

地味子「だって、酷いイジメを受けてたし、あんな人たち生きてたら困るよね?」

被虐娘「そ、そりゃそうだけど……」

地味子「うん、私もそう思ったの」

地味子「だからね、ひっちゃんを家に運んだあと、あいつらにトドメを刺しに逝ったの」

被虐娘「え?」

地味子「私が屋上で発見した時は連中の生き死にまで確認してなかったし、もし生きてたら困るよね?」

地味子「もし生きてたらまたひっちゃんを苛めに来るだろうし、ちゃんとトドメは刺さないとだし」

地味子「けどね、私がもう一度屋上に行った時、あいつら……いなかったの」

地味子「ひっちゃんは、あいつらと戦ったんだよね」

地味子「凄く、凄く勇敢な事だと思うし、カッコいいよひっちゃん」

地味子「けど、けど殺しきれなかった」

地味子「ひっちゃんは優しいから最終的に手加減しちゃったんだと思う」

地味子「そんな時でも優しさを失わないのは素敵な事だよね」

地味子「ひっちゃんは本当に天使みたいに優しい人だよ」

地味子「けどあいつらは、あいつらはそれを理解してない」

地味子「ひっちゃんの良さを理解してない」

地味子「あいつら性根が腐ってるから絶対に仕返しに来る」

地味子「天使であるひっちゃんをきっと殺そうとするよ」

地味子「そんなの、そんなの絶対に許されないよね」

地味子「だからね、私はずっと庭で見張ってたの」

地味子「あいつらが来ると予想して見張ってたの、そうしたら案の定」

地味子「あの三人はノコノコとやってきたの本当に最低だよね」

地味子「正直、私1人であの三人を何とかできるか微妙だったけど」

地味子「けどね、あいつらは最低最悪の連中だから突然仲間割れを始めたの」

地味子「あいつら、あいつら、お互いに死ね死ね言いながら争ってた、何なんだろうね、私たちみたいに仲良くできないのかな」

地味子「仲間割れの隙をついて何とか迎撃するつもりだったんだけど、あいつら家の中まで押し行ってきちゃって」

地味子「ごめんね、私も薬品とか使って何とかしようとしたんだけど……」

地味子「あ、ひっちゃん知ってると思うけど、私化学部に所属してるのだから学校の屋上確認した帰りに色々薬品を調達しておいたの」

地味子「私、自分が苛められてる時は薬品をこんなふうに使うなんて思いもしなかったけどひっちゃんが襲われるとなったら話は別だよ」

地味子「兎に角ね、私も頑張ってあいつらを殺そうとしたんだけど殺しきれなくて」

地味子「けどね、何とか追い出すことには成功したんだよ、ひっちゃんを守る為に一杯頑張ったの」

被虐娘「……な、なに言ってんの」

地味子「え?」

被虐娘「何言ってるのよ、意味が判らない……どうして、どうして今さら!?」

被虐娘「私を守るために!?はあ!?今まで私の事を無視してたくせに!?」

地味子「ひっちゃん……」

被虐娘「私が!私がどんな目に会ったと思ってるの!?」

被虐娘「ど、どれだけ苦しい思いをしたか!」

地味子「……」

被虐娘「きもちわるい……」

地味子「……」

被虐娘「気持ち悪い、貴方、殺されかけて改心したつもり?そんなもんで許されると思ってるの?」

地味子「……」

被虐娘「……出て行って」

地味子「……」ハァハァ

被虐娘「出ていけって言ってんの!勝手に家に入ってくんな!」

地味子「……」ハァハァ

被虐娘「な、なに?」

地味子「ひっちゃんが、ひっちゃんが私に、私に……」ウルッ

被虐娘「泣いたって私が受けた傷は……」

地味子「ひっちゃんが私に、思いをぶつけてくれてる……」

被虐娘「は?」

地味子「私が無視した事を、ひっちゃんが悲しんでくれてる……」

地味子「辛かったって、言ってくれてる……」

地味子「それだけ、私の事が大きかったんだよね……」

地味子「そんなに怒るほど、私の事を好きでいてくれたんだよね……」

地味子「私の存在がそんなに大きかったんだよね……」

地味子「ひっちゃんの心を占めていたんだよね……」

被虐娘「……」

地味子「私、それが嬉しくて……同時に、ひっちゃんの気持ちに応えられてなかった私自信を殺してしまいたくて……」

地味子「大丈夫だよ、私はもうひっちゃんの物だから……」

地味子「もしひっちゃんが死ねって言うなら、私はちゃんと死ぬから……」

被虐娘「……」

被虐娘(何か、おかしい)

被虐娘(地味子はここまで思いこみが激しい子じゃなかったはず)

被虐娘(というか、そもそも私に対してそこまで思い入れがあったように思えないんだけど)

被虐娘(私を無視していた事に対する罪悪感とかでは説明できない気がする……)

被虐娘(どうしてこんな事に……)

被虐娘「地味子……」

地味子「なに、ひっちゃん」

自虐娘「貴方が私をどう思おうが関係ないの」

自虐娘「助けてくれた事には感謝はするけど、それでも私は貴女を許せない」

自虐娘「正直、声を聞くのも嫌」

自虐娘「だから、さっさと家から出て行って」

地味子「……」

自虐娘「私の言う事聞けない?さっきの言葉はやっぱり嘘だった?」

地味子「……」プルプルプル

自虐娘「じゃあ、言う事聞いてくれるよね?」

地味子「……」コクコク

自虐娘「……」ホッ

~自室~


自虐娘「はぁ……やっと帰った……」グッタリ

自虐娘「疲れたし、全然意味が判んないし……」

自虐娘「なんであいつ、突然味方面して近づいてきてるの……」

自虐娘「結局あの三人も生きてるみたいだし……」

自虐娘「……」

自虐娘「あの三人、また来るよね……」

自虐娘「仕返しに来るよね……」

自虐娘「どうしよう、このままじゃ……」

自虐娘「また酷い事される、また……」


ズギン


自虐娘「うう、うあ……い、いやだ、いやだいやだいやだいやだ……」

自虐娘「この銃も役に立たなかったし……こ、これのせいで……」

自虐娘「くそお……くそお……」ブルブル

~朝~


被虐娘「……」

被虐娘「頭痛くて全然寝られなかった……」

被虐娘「学校、どうしよう……」

被虐娘「……」

被虐娘「家にいると、やばいよね……私1人だし……狙われた時に逃げられない……」

被虐娘「それなら、逆に学校に行って、空き教室にでも隠れてた方がましかも……」

被虐娘「そうだ、そうしよう……」フラフラ

被虐娘「登校して……あいつらに見つからないように隠れて……」フラフラ

被虐娘「隠れてそれから……」フラフラ

被虐娘「……」

被虐娘「どうしよう」

被虐娘「は、はは……どうしようもないよね……」

被虐娘「あの銃じゃ、殺せないみたいだし……」

被虐娘「他の手段じゃあいつらに絶対勝てないし……」

被虐娘「先生も、警察も全然当てにならないし……」

被虐娘「もう、どうしようも……」




「大丈夫だよ、私はもうひっちゃんの物だから……」



被虐娘「……」

被虐娘「……そう、ね、あの女を利用すれば」

被虐娘「昨日の様子からすると、頭のネジが外れかけてるみたいだし……」

被虐娘「あいつらの気を引くくらいは出来るかも……」

被虐娘「上手く使えば、まだあの三人に復讐する機会が出来るかも……」

被虐娘「ふ、ふふふ……そうね、そうよ、黙ってやられるくらいなら……」

被虐娘「やられるのを覚悟の上で行動した方が……」

被虐娘「ふふふふふ……」

>>63>>64
修正 自虐娘→被虐娘

~学校~


被虐娘「流石にこんな早朝だと誰もいないか……」

被虐娘「あの三人は何時も1限目サボるし、あと少しは安全かな……」

被虐娘「その間に地味子に呼び出しメールを送らないと……」ピッピッ

被虐娘「えーと、今すぐ学校の北校舎空き教室まで来てください……と」ピッピッ

被虐娘「あ……けど、あいつ、私のメールを拒否する設定にしてたっけ……」

被虐娘「じゃあ送っても無駄か、んー、他に連絡する手段は……」ピッ

被虐娘「あ、間違えて送っちゃった」


キモチワルイキモチワルイ


被虐娘「……!」ビクッ

被虐娘「だ、だれかいるの!?」

地味子「……」ソーッ

被虐娘「じ、地味子……?」

地味子「……」

被虐娘「ど、どうしてこんな所に……と言うか、さっきの声って、もしかして……」

地味子「……」ピッピッピッ


プルルー


被虐娘「メ、メール?」チラッ

被虐娘「……え、地味子から?」



『うん、さっきの声はひっちゃんの声を録音した物だよ』

『着信音にしてるの』

『素敵だよね、ひっちゃんの声』

『昨日、ひっちゃんとの会話を録音しておいてよかった』



被虐娘「……」ゾッ

被虐娘(何だこいつ何だこいつ)

被虐娘(私との会話を全部録音してた?何のために?)

被虐娘(しかもそれを着信音に使うって、意味が判らない)

被虐娘(というか、こいつなんで全然しゃべらないの?)

被虐娘(なんで目の前にいる相手にメール送ってきてるの?)

被虐娘(こいつの行動原理、何一つとしてわからない……)


プルルルー


被虐娘「また……?」



『何度もメールしてごめんね、ひっちゃん』

『ひっちゃんは昨日私の声聞きたくないって言ったでしょ?』

『だからね、昨日のうちに声出せないようにしたの』


被虐娘「……は?」

『喉が焼けるような薬品をね、沢山飲んだの』

『凄く、凄く痛かったなあ』

『苦しくて嘔吐しちゃったんだけど、いっぱい血が混ざってた』

『けどね、ひっちゃんが受けた痛みに比べれば全然大した事ないと思うの』

『だって私の喉は治療すればちゃんと治るから』

『だから全然平気』


プルルー


『あ、ひっちゃん心配そうな顔してくれてる』

『ありがとう』

『優しいねひっちゃん、素敵だよ』

『大丈夫、私がちゃんと守ってあげるからね』


プルルルー


『昨日ひっちゃんが言ってくれたように、家には入ってないから安心して』

『ちゃんと庭で待機してたから』

『私って地味でしょ?だから目立たないように行動するのって得意なの』

『ひっちゃんも私の事、気づいてなかったみたいだから』

『えへへ、だからちょっと脅かそうかなと思って黙って追尾してたの』

『びっくりした?』

被虐娘「びっくりした?」ニコ

被虐娘「……じゃない!」

被虐娘「気持ち悪い気持ち悪い!地味子ほんうに気持ち悪い!」

地味子「///」モジモジ

被虐娘「照れるな!」


プルルルー


被虐娘「メール送ってくるな!」

地味子「……」ハァハァ

被虐娘「興奮するな!」

地味子「……」ショボン

被虐娘「はぁ……はぁ……」

被虐娘(何なのコイツ)

被虐娘(喉を潰したって、本気?)

被虐娘(私が昨日、声聞きたくないって言ったからって、普通そんなことする?)

被虐娘(異常だこいつ……)

被虐娘(……)

被虐娘(けど、こいつが本当に私の言う事を最優先に考えてるなら)

被虐娘(役に立つ、私の復讐に使える……)

被虐娘「地味子」

地味子「……?」

被虐娘「私はまだあなたを許してない」

地味子「……」コクン

被虐娘「けど、貴方が私に協力するって言うなら……」

被虐娘「貴方に復讐するのは……後回しにしてあげてもいいわ」

地味子「……」


プルルー


『ひっちゃんの言う事、何でも聞くよ』

『私はひっちゃんに酷い事をしたんだから、ひっちゃんは私に酷い事をしてもいいの』

『何をしても許されるの』

『だから、そんな辛そうな顔しないで?』


被虐娘「辛そうな顔なんてしてない」

地味子「……」ニコニコ

被虐娘「そういう貴方は、楽しそうな顔してるわね」

地味子「……」コクコク

被虐娘「……まあ、どうでもいいけど」

地味子「……」ニコニコ

被虐娘「……」

被虐娘(ああ、けど、誰かに笑いかけてもらえたのなんて)

被虐娘(本当に久しぶりだな)

被虐娘(昔はもっと……地味子とも、いっぱい笑いあってたのに……)

被虐娘(どうして、こんな風になっちゃったんだろ……)

被虐娘(どうして……)



「あー、ムシじゃん」

被虐娘「……!」ビクッ



「こんなトコにいたんだ~」



被虐娘「この……声、は……」


「昨日、ムシの家に行ったんだけどさあ、何か邪魔が入ってね?」

「あんま騒ぎになると警察とか来るから仕方なく帰ったんだけどさぁ」

「イラついて寝られなかったんだよね」

「だから早めに学校来たんだけど……コレは正解だったようだねぇ?」


被虐娘「……ポニテ」

被虐娘(やばい、やばい、やばい、ポニテはやばい)

被虐娘(三人の中で一番頭悪いけど、一番強い)

被虐娘(実家が道場やってて子供の頃から鍛えてるから物理的に強い)

被虐娘(前にこいつに蹴り倒されて、鼓膜が破れた事ある)

被虐娘(だから昨日は気付かれる前に銃で撃ったんだけど……)


ポニテ「ムシさあ、昨日の事でちょっと話があるんだけど」

ポニテ「顔、かしてよ?」


被虐娘「う……」ビクッ


ポニテ「いいよねぇ?」


被虐娘「い、い……」ガクガク

被虐娘(だ、駄目だ、昨日は不意打ちだったから何とかなったけど)

被虐娘(正面からやりあったら勝てるはずない……)

被虐娘(ど、どうしよう……)

被虐娘(ま、また前みたいに頭蹴られて……)

被虐娘(今度は鼓膜程度で済むはずがない……)

被虐娘(や、やだ、怖い、やっぱこいつ怖いよ……)


プルルー


被虐娘(メール……?)


『ひっちゃん逃げて』

地味子「……」

ポニテ「あれえ?何かどっかで見たような顔があるなあ」

地味子「……」

ポニテ「地味な顔だからよく覚えてないけどさ」

地味子「……」

ポニテ「昨日の夜、ムシの家の周りをチョロチョロしてなかった?」

地味子「……」

ポニテ「で、私の邪魔してなかった?」

地味子「……」

ポニテ「え?シカト?ん?ひょっとして私」

地味子「……」

ポニテ「なめられてる?」

地味子「……」

ポニテ「んー、あらかじめ言っとくよ、私って頭悪いからさ」

 




ポニテ「加減間違えて殺しちゃったらごめんね?」



 

被虐娘(う、わ……ポニテ走ってきた、速い……)

被虐娘(そうだ、逃げないと、地味子に足止めさせてる間に……)

被虐娘「……」

被虐娘(けど、けど地味子は昨日、あいつらを撃退したって言ってた……)

被虐娘(もしかして……もしかして勝てるのかも)

被虐娘(そうだよ、どんな格闘家だって薬品ぶっかけられる想定はしてないだろうし)

被虐娘(何か煙幕みたいな物で視界を潰せばもしかしたら……)

地味子「……」スッ

被虐娘(地味子が何か投げる!?薬品!?)

被虐娘(と、とにかく巻き添え食らわないように下がらないと……!)タッ

ポニテ「おっ……」スッ

被虐娘(え、よけられた)

ポニテ「……っっっっそい!」バキッ

地味子「ぷぺっ!」カクン

被虐娘「……」


パリンッ


ポニテ「うわ、なんか臭い……」

ポニテ「変なピン投げてきたから取りあえず避けといたけど……」

ポニテ「なんかの薬品だったのかな?」

ポニテ「んー、私、化学の成績良くないし判んないや」

ポニテ「さて、邪魔ものは居なくなったし、ムシとのお話タイムに……って」

ポニテ「いないや」

被虐娘「地味子弱っ!弱っっっ!」タッタッタッ

被虐娘「私を守るとか言っといて数秒も持たないって何それ!」タッタッタッ

被虐娘「何の役にも立たないじゃない!」タッタッタッ

被虐娘「はぁ、はぁ……」タッタッタッ

被虐娘「ポニテが何かブツブツ言ってる間に逃げてきたけど……」タッタッタッ

被虐娘「ここまでくれば……」チラッ


ポニテ「ムシさあ、昨日私に何かしたよね?」テクテク


被虐娘「ひっ……」ダッ

被虐娘「何で走ってる私に歩いてるポニテが追いついて来れるの……」タッタッタッ

~化学室~


バタンッ

カチャカチャッ


被虐娘「はぁ……はぁ……」

被虐娘「ここまでくれば……大丈夫でしょ……」ハァハァ

被虐娘「もし、まだ追って来てるとしても」ハァハァ

被虐娘「化学室の頑丈な扉までは突破できないはず……」ハァハァ

被虐娘「な、なんとか他の生徒が登校してくるまで時間を……」ハァハァ


コンコンッ


被虐娘「ぴぃっ!」

「おーい、ムシー」

「いるんでしょ?」

「ちょっと扉開けてよー」

「おーい」


被虐娘(だ、だめ、返事しちゃだめ)

被虐娘(私がここにいるのはバレてない、多分、カマをかけてるだけ)

被虐娘(黙ってればそのうち諦めて……)


「黒髪がさー、ムシの事を殺すって言ってんのよ、大変でしょ?」

「ちょっと洒落にならないからさ、ちょっと一度話し合おうよ」

「聞いてる~?」


被虐娘「あ、貴女だって私を殺す気で……!」

被虐娘(……あ、しまった)


「やっぱり中にいるじゃん……」

「んー、まあ5発位で行けるかなあ……」


被虐娘(5発……?)

「せーの……」


ズドンッ

ピキピキ


被虐娘「……!」ビクッ


「せーの……」


ズドドンッ

ピキピキ


被虐娘「5発って……蹴り5発で扉ぶち破るって事……!?」


ズドドドドンッ

ピキピキ


被虐娘「ひっ……」

被虐娘(ポニテならやりかねない……)

被虐娘(ど、どうしよう……)

被虐娘(そ、そうだ、バリケードを……)

被虐娘(椅子とか机でバリケード作れば……)ガタゴトガタゴト

被虐娘「この机を扉の前に……」ガタゴトガタ


ズドドドドドドドンッ

バキッ


被虐娘「え……」


ドカンッ


被虐娘「ぶふっ……」


バタンッ


ポニテ「ありゃ、4発で破れたか」

ポニテ「予想外れたねえ……さーて、化学室の中は、と」

ポニテ「……あれ、ムシ居ないじゃん」

ポニテ「何で何で何で、声聞こえたのに」

ポニテ「……あれ、蹴り倒した扉の下に」


被虐娘「……」ピクピク


ポニテ「あははは、下敷きになってるや」

ポニテ「けど黒髪に見つかる前に捕まえられて、ほんと良かったよ」

ポニテ「あいつ、マジでいかれてるからなあ」

被虐娘「……ん」

被虐娘「あれ……私、どうして寝てるんだろ……」

被虐娘「確か、確か私は……早朝に学校に来て……」

被虐娘「それで、地味子に会って……会って……」

被虐娘「……」

被虐娘「ポニテに、追いかけられて……そ、それで、それで……」


ポニテ「ああ、目覚ました?」


被虐娘「……」

被虐娘(つ、捕まっちゃったのか……)

被虐娘(どうしよう、起き上がれない……)

被虐娘(縛られてる……手も、足も……)

ポニテ「いやあ、ムシ頑張ったよねぇ、あそこまで逃げるとは思ってなかったよ」

ポニテ「頑張ったご褒美に何かあげよっか?」

被虐娘「……」ガクガク

ポニテ「……」

被虐娘「……」ガクガク

ポニテ「……」

被虐娘(な、なんで黙ってるんだろ)ガクガク

ポニテ「……」

被虐娘(い、何時もなら無視するなとか言って蹴ってくるのに)ガクガク

ポニテ「……」

被虐娘(な、なにか返事しないと……怖いけど、なにか……)ガクガク

ポニテ「……」

被虐娘「ご、ご褒美に、この縄を切ってもらえると……うれしいです……」ガクガク

ポニテ「……」

被虐娘(だ、だめだ、願望をそのまま言っちゃった……)ガクガク

被虐娘(……また、また蹴られる、殺される、今度こそ……)ガクガク

ポニテ「……ふーん、そんなんでいいんだ」

被虐娘「……へ」

ポニテ「ま、いいけどさ」ザクザク

被虐娘「……」

ポニテ「ほい、ロープ切れたよ」

被虐娘「……あ、ありがとう」

ポニテ「あー、けど逃げようとか考えるのは無しね?速攻で捕まえるから」

被虐娘「う、うん……」

ポニテ「……」

被虐娘(何こいつ……)

被虐娘(こんなあっさり拘束解くなんて……)

被虐娘(捕まえる自信があるから?)

被虐娘(けど……)

ポニテ「ムシ」

被虐娘「は、はい……」ビクッ

ポニテ「さっきも聞いたけどさ、昨日、私に何かしたよね?」

被虐娘「……」ギクリ

ポニテ「昨日さあ、何か屋上で突然意識無くなったんだよね」

ポニテ「で、意識失う直前、一瞬だけムシの姿が見えた気がしたんだけど」

ポニテ「あの時、ムシは屋上にいた?」

被虐娘「……」

被虐娘(私が昨日撃った事、気づかれて、ない?)

被虐娘(どうして?)

被虐娘(奇襲したからポニテが状況理解してないのは仕方ないけど)

被虐娘(黒髪と眼鏡から話を聞いてないのは不自然じゃない?)

ポニテ「おーい、聞いてる?」

被虐娘「……」

ポニテ「ま、いいや……」

ポニテ「屋上で目が覚めた時さ、黒髪と眼鏡が馬鹿みたいな顔で倒れてたんだよね」

ポニテ「笑えるでしょ?」

ポニテ「けど、そん時からさ、なーんか胸がむかむかすると言うか、モヤモヤすんの」

ポニテ「何だろうなーと思ってたら黒髪が突然目を覚まして、こう言ったの」



『ゴミの家に行きます、今すぐに』



ポニテ「目を覚ました眼鏡も、何か付いて行くとか言い出して……」

ポニテ「その時、なんかモヤモヤの理由が判ったんだよ」

ポニテ「多分、モヤモヤの原因は……ムシだ」

ポニテ「だから問い詰めないと、と思って私も付いて行ったわけ」

ポニテ「で、ムシの家に到着するなり、黒髪がムシを殺すとか言い出して」

ポニテ「流石にそれは無いっしょーって話したんだけとけね」

ポニテ「黒髪、止まる気配無かったから何かイラついてさ」

ポニテ「眼鏡も変な事言いだしたから、そこで三人で大喧嘩」

ポニテ「あいつら、ちょっと頭おかしいよね」

被虐娘(……え、なにこれ)

被虐娘(私、何聞かされてるの)

被虐娘(というか、これ、私に話しかけてるの?)

被虐娘(独り言とかじゃなくて?)

被虐娘(何でこんな、仲の良い友達相手にしてるみたいな口調で話してるのこいつ)

被虐娘(意味わからない……)

被虐娘(……)

被虐娘(意味は判らないけど、何か、デジャブが……)


ポニテ「んー、これ私1人で喋ってる感じになってない?」

ポニテ「ムシも何か言ってよ」

被虐娘「な、なにかって……」

ポニテ「なんでもいいけど?昨日何してたとか、一昨日何してたとか」

被虐娘「一昨日……」

ポニテ「うんうん」

被虐娘「……覚えてないの?」

ポニテ「え?」

被虐娘「一昨日何したのか、覚えてないの?」

被虐娘「私に何したか覚えてないの?」

被虐娘「私、私、あの男に……」

ポニテ「あー……」

被虐娘「何されたか、聞きたいの?具体的に?そういう趣旨?」

ポニテ「……」

被虐娘「あんたやっぱりクズだわ」

被虐娘「こうやって油断させて、笑い物にしようって事でしょ?」

被虐娘「黒髪と眼鏡はどっかで隠れて見てるの?」

被虐娘「楽しい?そうよね、楽しいよね」

被虐娘「自分には関係ない事だし私がどんな目に会っても平気な顔してられるよね」

被虐娘「だからあんな事が出来たんだよね」

被虐娘「次は何するの?また蹴るの?」

被虐娘「いいよ、こんな回りくどい事されるくらいならそうして貰った方が気が楽だから」

被虐娘「さっさとしなさいよ、得意なんでしょ、蹴り技」

ポニテ「……うん」

被虐娘(ああ、言っちゃった)

被虐娘(怒りに任せて言っちゃった)

被虐娘(もうこれでおしまい)

被虐娘(けど、悪い気分じゃないかも)

被虐娘(殺されるかもしれないけど)

ポニテ「……ムシさあ、こっちの耳、もう聞こえないんだっけ?」サワッ

被虐娘「……!」ビクッ

ポニテ「人の身体って不思議なもんだよね、こうやって触ってる限りでは普通なのに、機能はダメになってる」

被虐娘「……さ、さわらないで」

ポニテ「他に、何処かダメになった所、あったっけ?」

被虐娘「……白々しい事を」

ポニテ「いや、本当にわかんないのよ」

ポニテ「だって、ムシの身体で蹴ってない部分とか無いと思うし」

被虐娘「……」

ポニテ「こないだは腕だったっけ?」グイッ

ポニテ「あー、まだ包帯巻いてあるんだ」

被虐娘「さわんないでってば!」ペシッ

ポニテ「……その前は腹だっけ?」グイッ

被虐娘「や、やめ……ひっぱらないで!」

ポニテ「……こっちはもう大丈夫かな」

被虐娘「な、何なの!?何のつもり!?」

ポニテ「いや、気になるじゃん、私がやった事だし」

被虐娘「今まで気にした事なんてなかったでしょ!?」

ポニテ「まあねえ……」

ポニテ「んー……ムシさあ、ちょっと提案なんだけど」

被虐娘「な、なに」

ポニテ「……」

被虐娘「……」

ポニテ「……無かった事にならない?」

被虐娘「は?」

被虐娘「なにが?」

ポニテ「だから、その傷とか、耳の事とか」

ポニテ「あと、一昨日の事とか」


被虐娘「……」

被虐娘「……」

被虐娘「……」

被虐娘「アハハハ」


ポニテ「どうかな?」


被虐娘「アハハハハハハ」


ポニテ「もう、笑ってないで応えてって、冗談で言ってる訳じゃないんだしさ」

被虐娘「アハハハハハハハハハ、ごめんごめん、ちょっと待って、笑え過ぎてお腹が痛い」

ポニテ「そう?そんなにウケた?」

被虐娘「うんうん、超ウケた」

ポニテ「あははは、そっか、まあ笑うって大切なことだよね?」

被虐娘「えっと、それでね」

ポニテ「うん」

被虐娘「話を纏めると、毎日毎日私を蹴りまくって何度も病院送りにしてくれた件と」

被虐娘「その結果、私の左耳がもう聞こえなくなっちゃった件と」

被虐娘「一昨日に私をだまして援助交際みたいなマネさせて助けに来なかった件と」

被虐娘「その結果、私がとても大切にしていた物を失った件を」

被虐娘「無かった事にしたいって、そういう事だっけ?」

ポニテ「そうそう、そんな感じ!」

被虐娘「くるしみぬいてしね」

ポニテ「あー、やっぱり駄目かあ……」ガクッ


被虐娘「なんでそんな気軽な様子で落ち込んでるの」

被虐娘「万に一つにも許してもらえると思ってたの」

被虐娘「常識考えてよ脳味噌まで筋肉になってるの」

被虐娘「何でそんなことを思いついたのありえない」

被虐娘「あり得なさ過ぎて笑えて来るアハハハハハハハハハハハ」


ポニテ「何でって……そりゃ、ムシと話してて楽しくなってきたからだよ」


被虐娘「ハハハハ、ハハ、ハ……」


ポニテ「こうやってさ、2人で話してると、何か凄く気分が良くなってくるの」

ポニテ「ムシがちゃんと返事してくれるのが凄くうれしいの」

ポニテ「凄くドキドキするの」

ポニテ「何だろうね、これ、はじめての経験なんだけど、悪くない」

ポニテ「けどさ、ムシの言葉にトゲがあるのだけがちょっと不満なんだよね」

ポニテ「だから、それだけ何とかしたいんだよね」

ポニテ「何とかならないかな~?」

被虐娘(何とかなるはずないでしょ立場考えろ……)

被虐娘(……と言ってしまいたいけど)

被虐娘(ちょっと冷静になろう……)

被虐娘(明らかにポニテの言動はおかしい)

被虐娘(何でものすごい勢いで好意向けてきてるの)

被虐娘(演技?いやポニテは馬鹿だからそこまでの演技ができるはずない)

被虐娘(というか、さっきも感じてたけど、何かこの状況にデジャブを……)

被虐娘「……」

被虐娘「そうか、地味子だ」

ポニテ「は?何で地味子の話が出てくるの?」

ポニテ「というか、何でさっきは地味子と一緒にいたの」

ポニテ「2人ってどんな関係だっけ?」

ポニテ「いや、どんな関係も何もないか、あいつはムシを裏切ってたんだし」

ポニテ「知ってる?地味子ってムシの情報を私達に売って……」

被虐娘「ちょっとうるさい」

ポニテ「……はい」

被虐娘(地味子も昨日から態度がおかしかった)

被虐娘(ポニテもさっきからおかしい)

被虐娘(具体的には、私に対する感情が……異常に高ぶってる)

被虐娘(何で?)

被虐娘(何で二人は豹変してるの?)

被虐娘(何か共通点は……)

被虐娘「……」

被虐娘「……」

被虐娘「……あの銃か」

被虐娘(地味子もポニテも昨日あの銃で撃ってる)

被虐娘(共通点はそれくらいしかない)

被虐娘(けど、なんで?何であの銃で撃たれてそんな事になるの?)

被虐娘(私は確かに、あいつらを殺せる銃を作ったはずなのに)

被虐娘(そう、確か銃の能力は……)


能力1「痕跡が残らないようにする」

能力2「確実に心臓を射抜く」


被虐娘(殺人だとばれないように最初の能力を作って)

被虐娘(相手が苦しむように二つ目の能力を……)

被虐娘「……」

被虐娘「……」

被虐娘「……あれ」

被虐娘「これ……逆じゃない?」

被虐娘「確実に心臓を射抜いて、その痕跡が残らないようにする」

被虐娘「その文体じゃないと……駄目なんじゃない?」



能力1「痕跡が残らないようにする」

能力2「確実に心臓を射抜く」



被虐娘「この順番だと……」

被虐娘「相手を傷つけずに心臓を射抜くって意味に……」

被虐娘「傷つけない事を優先させると、物理的に心臓を射抜けない……」

被虐娘「けど……けど……」

被虐娘「……」

被虐娘「ああ、もしかして……これって……」

被虐娘「……相手の心臓(ハート)を射抜くって意味に……解釈されたんじゃ……」

被虐娘「キューピッドの矢みたいに、相手を物理的には傷つけずに、ハートだけ射抜くみたいな……」

被虐娘「い、いや、まさか……そんなはずないよね、だって私、この道具作る為に……」ブツブツ

ポニテ「~♪」

被虐娘(うっわ、めっちゃ機嫌よさそうにこっち見てる)

被虐娘(何で私の顔を凝視してニコニコしてるの)

被虐娘(違うよね、私の予想、当たってないよね)

被虐娘(あの三人を殺す為に作った道具がレズハーレム作成装置だったなんてありえないよね)

被虐娘(そ、そうよ、確かポニテは黒髪が私を殺そうとしてるとか言ってたし)

被虐娘「あ、あの、聞きたい事があるんだけど」

ポニテ「あ、喋ってもオッケー?まあ黙ってムシの顔見てるのも楽しかったけど、やっぱりトークしないとつまんないよね」

被虐娘「……さっき黒髪が私を殺そうとしてるって言ってたよね」

被虐娘「あれって、何で殺そうとしてるか知ってる?」

ポニテ「……いや、知らないけど」

被虐娘「そ、そう……」

ポニテ「と言うかさ、何で地味子とか黒髪の話題になるの?」

被虐娘「え?」

ポニテ「私の話題でいいじゃん」

被虐娘「……」

ポニテ「もしくはムシ自身の話題でもいいしさ」

ポニテ「兎に角、何かトークしようとトーク」

被虐娘「……」

ポニテ「ムシってどんな食べ物が好きなんだっけ?」

ポニテ「甘い物とか好き?」

ポニテ「私はさ、割と何でも食べられるから今度一緒に……」

被虐娘「……嫌」

ポニテ「……え?」

被虐娘「嫌って言ったの」

ポニテ「うーん、だから私、そういうトゲトゲしい態度されるの、嫌なんだけどさ……」

被虐娘「私は貴方と仲良くするのが嫌なの」

被虐娘「だから刺々しい態度取るのは当然でしょ」

ポニテ「……」

被虐娘「さっきも言ったよね、私は貴女がした事を絶対に許さないって」

ポニテ「……絶対?」

被虐娘「絶対」

ポニテ「……」

被虐娘「ああ、それとこれも追加で言っとくけど」

ポニテ「な、なに」

被虐娘「当たり前だけど、私は貴女の事大嫌いだから」

ポニテ「……!」

被虐娘(ああ、ポニテが凄い顔してる)

被虐娘(物凄く傷ついた顔してる)

被虐娘(私の言葉に傷ついてる)

被虐娘(私の態度に傷ついてる)

被虐娘(ふ、ふふふふ……)

被虐娘(あ、あの顔……)クスッ

被虐娘(涙目になって……)クスクスッ

被虐娘(そうだ、私に恋をしたって言うなら、こいつも操れる)

被虐娘(地味子みたいに、手駒にして……)

被虐娘(眼鏡と黒髪を殺させて……)

被虐娘(最後はムシみたいに踏みつぶして……)

被虐娘(殺してやる、そう、そうだ)

被虐娘(そうすればこいつも絶望するだろう)

被虐娘(私みたいに)

被虐娘(あの時の私みたいに!)

ポニテ「……」グスッ

ポニテ「そ、そうだよね、仕方ないよね、あんな事しちゃったんだから嫌われても仕方ない」

ポニテ「だって、もし私があんな事されたら絶対相手を許せないから」

ポニテ「私、取り返しにつかない事しちゃってたんだ……」

ポニテ「もう、もう駄目なんだ……」

被虐娘「……ポニテ」

ポニテ「……」グスッ

被虐娘「貴方がもし私に協力してくれるなら……」

ポニテ「そう、もう駄目なんだよ」

被虐娘「ポニテ?」

ポニテ「私はムシに嫌われてる、それはもう覆らない」

被虐娘「聞いてる?」

ポニテ「……だったら、だったら」

被虐娘「ちょ、ちょっと?」

 

ドンッ


被虐娘「え……」ヨロッ


グイッ


被虐娘「ひゃっ……!」バタンッ

ポニテ「……」

被虐娘「あ、あれ、私、押し倒され……て……?」

被虐娘「……何で……私の上にポニテが」

ポニテ「どうせ嫌われてるんだし、何したってこれ以上嫌われる事はないよね」

被虐娘「……え?」

ポニテ「私ね、どう考えても諦められないと思うんだ」

ポニテ「例え嫌われてても諦められないんだ」

ポニテ「一緒にいて、声を聞いて、身体に触れて、髪の匂いを嗅ぎたいの」

被虐娘「……は?」



ポニテ「だからね、無理やりにでもそうして貰う事にしたの」

被虐娘「ちょ、ちょっと待って、落ち着いて」

ポニテ「落ち着かない」グイッ

被虐娘「くっ、か、顔押し付けてくんなっ」

ポニテ「暴れないでよ、なるべく傷つけたくないんだし」

被虐娘「や、やめっ……」

ポニテ「はぁ、はぁ、良い匂い、どうして今まで気づかなかったんだろ」

被虐娘「こいつ……!」ジタバタ

ポニテ「もう、無駄だってば、力で私に勝てるはずないでしょ?」

ポニテ「ほら、こうやってしまえばもう手も動かせないよ?」

ポニテ「ふ、ふふふ、やば、凄く興奮してきた……」

被虐娘(クズクズクズクズクズ!)

被虐娘(こいつ本物のクズだ!)

被虐娘(好きとか嫌いとか恋とか愛とかを超越したクズだ!)

被虐娘(どうしよう、どうしよう、やばい、抜け出さないと)

被虐娘(けど、けど、どうやって、力じゃこいつには勝てないし)

被虐娘(手抑えられてるし、このままじゃホントに……)

ポニテ「ああ、可愛いなあ、そんな不安そうな顔で……」

ポニテ「ねえ、キスしていい?」

ポニテ「ああ、応えなくてもいいよ、嫌だとしても無理やりするからさ」


チュッ


被虐娘「んっ、んんんっ!」ブンブンッ

ポニテ「ふ、ふふ、柔らかかった……」ペロ

ポニテ「……」

ポニテ「けど、残念だなぁ……」

ポニテ「私が初めてじゃないんだよね?」

被虐娘「……!」

ポニテ「ほんと、悔しいよ、何でもっと早くにムシの素敵さに気付かなかったんだろ」

ポニテ「気づいてたら、あの時、ちゃんと助けに行ってたのに」

ポニテ「訳のわからない男になんて好きにさせなかったのに」

ポニテ「ああ、イライラしてきた、そうだ、後であの男探そう」

ポニテ「そんでボコボコにしてあげるね?」

被虐娘「……」

ポニテ「大丈夫だって、私はさ、ちゃんと気持ち良くしてあげるから」

ポニテ「いっぱいいっぱい気持ち良くしてあげるから」

ポニテ「そうすればさ、きっと忘れられるよ、あの男にされた事なんて」

被虐娘「……そう、ね」

ポニテ「あ、判ってくれた?」

被虐娘「……ねえ、もう一度キスしてほしいんだけど」

ポニテ「あ……」

ポニテ「う、うんうん!するする!いっぱいする!」

ポニテ「えへへ、いっただっきまーす♪」


チュー


ガリッ


ポニテ「……!?」

ポニテ「い、痛っ……」バッ

被虐娘「……」

ポニテ「う、うう、唇から血が出た……な、なんで噛むのさ」ゴシゴシ

被虐娘「……貴方が下手くそだからよ」

ポニテ「……え」

被虐娘「あんた何かにされても全然気持ち良くない」

被虐娘「下手くそ」

ポニテ「そ、そんな事言わないでよ……これでも頑張って……」

被虐娘「これならまだあの時の方がマシだったわ」

ポニテ「……は?」

被虐娘「聞こえなかった?ならもう一度言うね?」

ポニテ「……い、いや、言わなくていいよ」

被虐娘「私はね」

ポニテ「言わなくていいってば……」

被虐娘「まだあの時の男の方がマシだって……」

ポニテ「い、言うなってば!」バチンッ

ポニテ「……あ、ご、ごめん」

被虐娘「……殴るんだ、やっぱり」

ポニテ「ち、違うの、殴ろうと思ってた訳じゃなくて……」オロオロ

被虐娘「殴ったよね」

ポニテ「だ、だって、酷い事言われたから……」

被虐娘「ふ、ふふふ、一緒だね、前までと一緒、何も変わってない」

被虐娘「貴女が私を思う気持ちなんて、その程度の物なのよ」

ポニテ「ち、違うって!」

ポニテ「私もうムシを殴るつもりとかなかったもん!」

ポニテ「そ、そりゃ押し倒したけど、ムシにも気持ち良くなってほしかっただけだし!」

ポニテ「ほ、ほんとだよ!信じてよ!」

被虐娘「ああ、叫ばないで……怖い怖い……」

被虐娘「ごめんなさいごめんなさい、土下座しますからもう殴らないで……」

ポニテ「違うって……言ってる、じゃん……」グスッ

ポニテ「わ、わたしは、本気で、本気で……」

被虐娘「……」

被虐娘「今よ」

ポニテ「え?」

プスッ


ポニテ「痛っ!な、なに……が……」クラッ

ポニテ「……あ、あれ、何か」クラッ

ポニテ「眠く……」フラッ

ポニテ「……」バタン

被虐娘「……ぐえっ」

被虐娘「……も、もう、重い」

被虐娘「ちょっと、どかすの手伝ってよ」

被虐娘「地味子」

地味子「うん!」

被虐娘「はぁ……助かったわ」

地味子「ご、ごめんね、ひっちゃん、危なかったよね」

被虐娘「貴女の方こそ、ポニテに思いっきり蹴られてたけど、平気だったの?」

地味子「ひっちゃんが逃げてくれたから、そっちに気を取られて蹴りの威力下がってたみたい」

地味子「それでも、私、ちょっと意識失っちゃってたけど……」

被虐娘「そう……」

地味子「それでね、目が覚めたあと、ひっちゃんが見当たらなくて……」

地味子「私、凄く怖くなって、校舎中探してたら、空き教室からポニテが叫んでる声が聞こえてきたの」

地味子「あいつ、ひっちゃんに馬乗りになってた……」

地味子「それで、カッとして注射器で……」

被虐娘「……ポニテに打った薬品って、毒?」

地味子「私が殺しちゃったらひっちゃんの気が済まないでしょ?」

地味子「だから麻酔にしておいたよ」

寝ぼけてたね

修正↓

>>119後半

被虐娘「ちょっと、どかすの手伝ってよ」

被虐娘「地味子」

地味子「……」コクコク



>>120
被虐娘「はぁ……助かったわ」


プルルー

「ごめんね、ひっちゃん、危なかったよね」


被虐娘「貴女の方こそ、ポニテに思いっきり蹴られてたけど、平気だったの?」


プルルー

「ひっちゃんが逃げてくれたから、そっちに気を取られて蹴りの威力下がってたみたい」ピッ

「それでも、私、ちょっと意識失っちゃってたけど……」 ピッ


被虐娘「そう……」


プルルー

「それでね、目が覚めたあと、ひっちゃんが見当たらなくて……」

「私、凄く怖くなって、校舎中探してたら、空き教室からポニテが叫んでる声が聞こえてきたの」

「あいつ、ひっちゃんに馬乗りになってた……」

「それで、カッとして注射器で」


被虐娘「……ポニテに打った薬品って、毒?」


トゥルルー

「私が殺しちゃったらひっちゃんの気が済まないでしょ?」

「だから麻酔にしておいたよ」

ポニテ「……」zzz

被虐娘「そっか……生きてるんだ……」


プルルー

「ひっちゃん、どうする?」

「こいつ、生かしてると危ないよ」

「また酷い事されるよ」

「だったら」


被虐娘「……判ってる」

被虐娘「ポニテは話が通じるようなヤツじゃない」

被虐娘「だから、だからちゃんと始末しないと……」

被虐娘「……」

地味子「……」

被虐娘「……地味子、ロープとガムテ持ってきて」

~旧校舎~


被虐娘「はぁ……はぁ……」ズルズル

ポニテ「……」zzz

被虐娘「ポニテ、背が高いから運びにくい……」

地味子「……」コクコク

被虐娘「というか、私達二人ともちょっと体力なさすぎなのかも……」ハァ

被虐娘「けど、けど何とか到着……と」フー


プルルー

「他の生徒達が登校してくる前に到着できてよかったね、ひっちゃん」

「紅茶飲む?缶のだけど」


被虐娘「……いや、先にこっちを終わらせましょ」

被虐娘「生徒がほとんど近づかない旧校舎……」

被虐娘「その端にある、使われてない古井戸」

被虐娘「ここなら、ポニテが泣いても叫んでも誰にも聞こえないはず」


プルルー

「ひっちゃん凄い!よくこんな所知ってたね!」


被虐娘(まあ、本当は地味子を突き落とそうと思ってた場所なんだけどね)

ポニテ「……ん、んぅ」

被虐娘「やば、起きそう」

被虐娘「地味子は、ポニテの口にガムテ貼って、ロープが緩んでないか確かめて」

地味子「……」コクコク

被虐娘「私は井戸の蓋を……」グググッ

被虐娘「んーーー……」グググッ

被虐娘「はぁ、はぁ、こんくらい隙間が開けば落とせるか……」

ポニテ「……んぐぅ」ピクッ

被虐娘「幸せそうな顔で寝ちゃって」

地味子「……」

被虐娘「……ここに落とせば、ポニテは絶望してくれるかな」

被虐娘「目が覚めたら真っ暗な水の中で、狭い壁に囲まれて、もう二度と外に出られないって理解できたとき」

被虐娘「ポニテはちゃんと絶望してくれるかな」

地味子「……」

被虐娘「……まあ、絶望してもしなくても」

被虐娘「私にはその様子を見れないんだけどね」

被虐娘「落としたら蓋をして、もう二度と覗きに来ないつもりだし」

被虐娘「……」

被虐娘「……さ、地味子手伝って」

地味子「……」コクコク

被虐娘「よいしょっと……」グイッ


ヒューーーーーー


ドボンッ

バシャバシャッ

バシャバシャバシャッ


被虐娘「流石に目を覚ましたかな」

被虐娘「……」

被虐娘「ばいばい、ポニテ」

被虐娘「……もう蓋閉めるね」

被虐娘「……」


ズズッ


ズズズズズッ


カチンッ

地味子「……」ニコニコ

被虐娘「……ハァ」


プルルー

「ひっちゃん、おめでとう!」


被虐娘「……ありがと」

地味子「///」コクコク

被虐娘「……」

被虐娘(何だか、後味悪い)

被虐娘(ポニテにあんな態度、とられたからかな)

被虐娘(銃の力とはいえ、私に対して好意向けてくれてたし……)

被虐娘(あれが前のままのポニテなら、もっと気分良かっただろうに……)ハァ

地味子「……?」

被虐娘「何でもないよ……他の生徒がそろそろ来てるだろうし、校舎にもどろっか」

地味子「……」コクコク

~教室~


ガヤガヤ

被虐娘「他の生徒達はもう登校してるみたいだけど……」

被虐娘「黒髪と眼鏡は……来てないか」


プルルー

「ひっちゃん、これからどうするの?」

「何処かに隠れる?」


被虐娘「いや、このまま教室にいた方がいいでしょ」

被虐娘「黒髪と眼鏡はポニテと違って頭がいい方だし、人気がある場所で無茶な事はしない」

被虐娘「逆に人気が無い所に隠れるほうが危険かも……」

地味子「……」コクコク

被虐娘「だから私達が行動を起こすとしたら昼休みか放課後に……」


ガヤガヤガヤ

ワイワイワイワイワイワイ

ザワザワザワザワザワザワ

被虐娘「随分騒がしいわね」

被虐娘「廊下から……?」

地味子「……」コクコク

被虐娘(一体何が……)ソーッ


ザワザワザワ

ワイワイワイワイワイ

ホンモノカナ

オモチャジャネ


被虐娘「……人混みが出来てて見えない」

被虐娘「けど、人混みの向こうに誰か……?」


プルルー

「ひっちゃん」

「下がって」


被虐娘「ちょ、地味子押さない……で?」

黒髪「あら、ゴミさん、おはようございます」

被虐娘「黒髪……」

黒髪「おや、挨拶の返事はなしですか」

黒髪「相変わらずですね、ゴミは」

被虐娘「……な、何持ってるの?」

黒髪「これですか?」

黒髪「見ての通り、拳銃と……」

黒髪「日本刀です」

黒髪「実家から持ってきた物なのですが……少し目立ってしまいましたね」

黒髪「さっきから見物者が周りから離れてくれません」

被虐娘「な、なんでそんなものを……」

黒髪「それは当然……ゴミを殺す為です」

被虐娘「……!」

ザワザワザワザワ

ガヤガヤガヤ

エイガノサツエイカナ

ケド、アノ子


被虐娘(こ、こいつ、こんなに沢山人が居る場所で……こんな目立つ武器持って、見境なしか)

被虐娘(馬鹿なの?実はポニテより馬鹿なの?)

被虐娘(それに、私の銃の効果も黒髪には効いてないようだし……)

被虐娘(という事は、ハートを射抜くって効果も疑わしくなってきたわね……)

被虐娘(……どちらにしろ、これは想定してなかった)

被虐娘(一番の武闘派のポニテを始末したから、後は裏でやり合う事になると予想してたのに……)

被虐娘(まさかこんなド正面から……)

地味子「……」

被虐娘(地味子が私の前に立っててくれてるから、銃ですぐに狙い撃ちにされる事はないだろうけど……)

被虐娘(このままじゃ……)

黒髪「大丈夫ですよ、痛いのは一瞬ですから」

黒髪「だから大人しく……」カチャッ

被虐娘(銃口が……)

地味子「……」

黒髪「死んでくださいね?」スッ

被虐娘(地味子に……!)

ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ


黒髪「これは……」ピクッ

黒髪「火災ベル?」


火事だ!火事だぞ!北校舎が火事だ!


黒髪「火事?そんな馬鹿な……」キョロ


カジ?

ヤバクネ

ニゲナイト

ヒナン……

ザワザワザワ

ニゲナイト!

ニゲロ!

ザワザワザワザワザワ


黒髪「ちょ、邪魔です貴方達!」グイッ


キャーキャーキャー!


黒髪「押し寄せて来るんじゃねえ!」グイッ

黒髪「ゴミ達は……クッ、何時の間にあんな所まで……!」

黒髪「ああ、邪魔だって言ってんだろ!」グイグイッ

バキンッ

カラカラカラッ


黒髪「だ、誰だ殴りやがったのは……!」


キャーキャー

ニゲロ


黒髪「ちっ……誰かは判りませんが、銃を叩き落とされました」

黒髪「この人混みでは探してられませんし……そんな時間もありませんか」

黒髪「速く、速くゴミ達を追いかけないと……」イライラ

黒髪「追いかけて殺さないと……」イライラ

被虐娘「はぁ……はぁ……今日は、何だか走ってばかりで……もうそろそろ限界かも……」

地味子「……」ハァハァ

被虐娘(火災ベルの騒ぎにまぎれて地味子と一緒に1階まで逃げてきたけど……)ハァハァ

被虐娘(一体誰がベルを鳴らしたの……)

被虐娘(黒髪が武器持ってるのを見咎めた生徒がボタン押したのかな……)

被虐娘(と、兎に角、あんなやり方されたら太刀打ちできない)

被虐娘(ここは……)

被虐娘「地味子、生徒達に紛れて距離を取って」

被虐娘「隙を見て黒髪の行動を妨害してくれる?」

地味子「……」コクコク

被虐娘(黒髪は私を優先して追ってくるはず……)

被虐娘(上手く逃げながら誘導すれば、挟撃する形になる)

被虐娘(何とか黒髪から武器を取り上げて……あとは地味子の薬品で……)


パリンッ


被虐娘「……うそ」

黒髪「あら、また会いましたね、ゴミさん」スタッ

被虐娘「黒髪、な、なんで……何で窓から……」

黒髪「いえね、2階の階段がえらく混んでた物ですから、窓を割って降りてきたんです」

黒髪「このほうが速いですよね?」

被虐娘(2階の窓から降りてきたって……普通の女子高生にそんなことできるはずないでしょうが)

被虐娘(何でこいつら総じてスペック高いの……)

黒髪「実は、さっきの騒ぎで銃を落としてしまいまして……」

黒髪「けど、安心して下さい?ポン刀は残ってますから」

黒髪「ちゃんと殺してあげられますからね」ニコ

被虐娘「……」ゾッ

被虐娘(ポニテや地味子とは違うけど、こいつも何かおかしくなってる)

被虐娘(こんな笑い方、私に向けた事なんて一度も……)

被虐娘「だ、誰が殺されて何かあげるもんですか!」

黒髪「もう、私は別に苦しめたいわけじゃないんですよ?ですから素直になってください」

被虐娘「素直……に?」

黒髪「素直に首を出してくださったら、一撃で終わりますから」

被虐娘「……どうして、どうしてそんなに私を殺したいの」

被虐娘「私が昨日、銃で黒髪を撃ったから?」

被虐娘「それとも、他に何か理由があるの?」

黒髪「……」フー

黒髪「殺したい理由は、簡単です、ゴミさんが死にたがっているからです」

被虐娘「……は?」

黒髪「だって、そうでしょう?」

黒髪「ゴミさんは私達にあんなひどい事をされたんですから」

黒髪「私がもしゴミさんと同じ立場なら絶対に自害しています」

黒髪「私は、私達は、それくらい取り返しのつかない事をしてしまったんです」

黒髪「もう戻せない」

黒髪「無かった事になんてできない」

黒髪「絶対に許してはもらえない」

黒髪「絶対に嫌われている」

黒髪「……その事に気付いたのが、昨日、屋上で目覚めた時なのです」

黒髪「私は自分自身を殺したくなりました」

黒髪「あんな、あんな恥知らずな事をして……」

黒髪「死ぬべきです、私は、私達は」

黒髪「しねしねしねしねしねしねしねしねしね」

黒髪「けど、私は死ねないんです、このまま死んでしまうのはあまりにも無責任」

黒髪「せめて、死にたいと思っているゴミさんの介錯を行ってからでないと……」

黒髪「ああ、ごめんなさい長々と話してしまって……結論から言うと」

黒髪「ゴミさんを殺して私も死ぬ」

黒髪「判っていただけましたか?

黒髪「……あれ、いないですね」

黒髪「逃げられました?」

黒髪「もう、本当にゴミさんは……」クスッ

黒髪「前から私の言う事をちゃんと聞いてくれませんでしたよね」

黒髪「まあ、そういう所もかわいらしいとは思いますが……」

黒髪「さて、追いかけっこを続けましょうか」

黒髪「ポニテや眼鏡に見つかると少し厄介ですからね」

被虐娘「ゲホッゲホッ……うう、黒髪が話に熱中してる間に逃げてきたけど……」

被虐娘「流石にもう走れない……」

被虐娘「校舎から離れちゃったけど……地味子、ちゃんと準備してるかな……」

被虐娘「準備終わるまでは何とか……時間を稼がないと……」フラフラ

被虐娘(あれ……けど、ここは……)

被虐娘「まずい、かも……だって……」


「だって何ですか」


被虐娘「え……」


ザクッ


被虐娘「う……あっ……」

黒髪「ああ、すみません……」

黒髪「首を一刺しするつもりだったのですが……」

被虐娘「あ……ああ、か、肩に……刀が……」

黒髪「今、抜いてあげますね、ゆっくりしますから……」グイッ

被虐娘「んんんっ!」ビクッ

黒髪「痛いですか、痛いですよね、肩に刀が刺さってたんですから、痛くて当然です……」

被虐娘「うぅ……」フラッ


ガクッ


黒髪「ああ、なんて事でしょう、私はまた傷つけてしまった……」

黒髪「本当に私は罪深い、死にたい、速く死んでしまいたい……」

黒髪「ゴミさんも、死んでしまいたいですよね?」

黒髪「こんな苦しい目にあって、生きていたいはずがありません」

黒髪「だから、ですから」

黒髪「死にましょう、一緒に」

黒髪「ゴミさんを殺した刀で」

黒髪「ゴミさんの血がついた刀で」

黒髪「私も自害します」

黒髪「そうすれば、きっと……」

黒髪「ふ、ふふ、ずっと、一緒に……」クスクス


被虐娘「……私は、死にたくなんかないわ」

黒髪「強がらなくてもいいです」

黒髪「私には全て判ってますから」

黒髪「だから、私に身をゆだねて……ね?」

被虐娘「死にたく、ない……まだ……」

被虐娘「全員に復讐するまで……私は……死ねない……死ぬわけには……」

被虐娘「だから……」

黒髪「傷、痛みますよね……」

黒髪「すぐ、終わらせてあげますから……じっとしていて……」

被虐娘「……」

被虐娘「……」

被虐娘「だから……」


「だから、おねがいします、だれかたすけて」

「オッケー、まかせてよ~」


バキイッ



黒髪「きゃっ!?」ヨロッ

被虐娘「……」

黒髪「あ、貴女は……邪魔するつもりですか?」

被虐娘「……あ」

黒髪「というか、貴女水浸しじゃないですか、不潔な」

被虐娘「な、なんで……」


「何でって……助けてって言ったでしょ?」


被虐娘「何でココに居るの……ポニテ……」

ポニテ「むっふっふー、何処にいようとムシが呼べば駆けつけちゃうよ私は」

ポニテ「井戸から出るのに苦労して、ちょーっと生爪とか剥がれたけど、まあ、私の場合は足さえ無事なら役に立つしさ?」

被虐娘「……」ポカン

ポニテ「というかさ、ムシ、肩に怪我してんじゃん、結構深い」

ポニテ「これやったの、黒髪ちゃん?」

黒髪「ええ、私ですけど」

ポニテ「そっか、黒髪ちゃんってやっぱり頭おかしいんだ」

ポニテ「私達の中で一番美人だけど……一番凶暴だよね、実際」

ポニテ「流石ヤクザの娘」

黒髪「……」ブチッ

黒髪「判りました、貴女は死なない程度に痛めつけてあげます」

黒髪「けど、決して殺しはしません」

黒髪「貴女の血がついた刀でゴミを殺すのは非常に不愉快ですので」

ポニテ「不愉快なのはこっちもだよ、黒髪ちゃ~ん」

ポニテ「なに、私のムシに怪我させてくれてんの、傷とか残ったらどうするの」

ポニテ「やくざと違って傷が勲章とかにはならないんだよ知らないのかもしんないけどさ」

黒髪「ああ?」

ポニテ「はぁ?」

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