浜田「松本さんは昔幻影旅団と言う団体に所属していたそうですが」 (87)


浜田「当時の体験談などあれば教えてください」

松本「あーはい、ありましたね」

浜田「まず、その、幻影旅団って何なんですか?」

松本「周りからは”クモ”って呼ばれてましたね」

浜田「いや呼ばれ方とかどうでもええから。その、幻影旅団? って、具体的に何をする団体なんですか?」

松本「なんだかんだで色々手広くやってましたけどね」

松本「んーでもそやなぁ、しいて一つ挙げるとすれば……」

浜田「はい」

松本「殺人です」

浜田「えっ」

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浜田「さ、殺人ですか……?」

松本「メンバーは「わしら盗賊やでー」って言ってましたけど」

松本「僕からすれば、あれは完ッ全に殺人です。はい」

浜田「え? じゃあその幻影旅団ってのは……ヤーさんみたいな団体なわけ?」

松本「まぁそうなりますね」

松本「浜田さんと似たようなもんです」

浜田「んふっ」


浜田「えー、それは知らんかったなぁ」

松本「まぁもう辞めましたけどね」

浜田「いつやってたん? 俺知らんかってんけど」

松本「5年くらい前ですかね」

浜田「あっ結構最近やねんね」

松本「最近……でもないような気もするんですがw」

浜田「いやほら、俺らの芸歴と比べてやんかw」

松本「あーw」

浜田「で、なんで辞めたんよw」

松本「世界中のヤクザを敵に回しまして」

浜田「えっ」


松本「僕もちょっと、さすがにそれはどうなん? って思ったんですけど」

松本「団長命令なんでね。逆らえない部分あって」

浜田「団長えらい過激やなぁ!」

松本「一時、すごかったんですよ。うん十億って懸賞金かけられてて」

浜田「お前よう生き残れたな!?」

松本「ええ、まぁ、おかげさまで」

浜田「世界中のヤーさんを……何やらかしたんお前ら」

松本「何をやったってか……まぁ、単純な話なんですけど」

浜田「はい」

松本「カチコミですね」

浜田「 」


浜田「え、お前らから仕掛けたん?」

松本「ええ。完ッ全にこっちから喧嘩売りました」

浜田「それ……その、団長さんの方針で?」

松本「団長は『邪魔者だけやったらええで~』みたいな感じで言ってましたけどね」

松本「まぁ、最終的に全員やったりました」

浜田「やったりましたってお前オイ」

松本「不思議なもんでね。最初は嫌でも、段々やってる内にテンション上がってくるんですよ」

松本「僕も最後の方は、結構ノリノリでね」

浜田「まじぃ?」

松本「こう、ヤクザらに『お前ら、くたばるといいね!』って言ってやりまして」

浜田「なんでカタコトやねんw」

松本「w」


松本「んでまぁ全員……やったりましたw」

浜田「全員やったったんやw」

松本「ええw」

浜田「ナッハッハw アホやこいつw」

松本「w」

浜田「でも、そらお前ら悪いわ。そらやーさんらも怒るわ」

松本「ですよね」

浜田「やっぱこう、激しい銃撃戦やったんや? 昔の任侠映画みたいな」

松本「あっ僕らの戦い方はそんなんじゃないんです」

浜田「え」

松本「そういう、ヤクザ映画的な戦闘じゃないんです。よく言われるんですけど」

浜田「え……じゃあどうやって?」

松本「基本は掃除機ですね」

浜田「掃除機!?」


浜田「掃除機でヤクザにカチコミかけたんか!?」

松本「はい。デメちゃんって言うんですけど」

浜田「……んふっ。掃除機の名前はどうでもええから」

松本「あ、そうですかw」

浜田「掃除機を……掃除機で……ええ?」

松本「まぁ、僕は事実を言ってるだけですから」

浜田「……掃除機ブンブン振り回してやってったん?」

松本「ええ」

浜田「何て言いながら?」

松本「くたばるといいね! って」

浜田「w」



浜田「ちょっと想像つかんなぁ」

松本「あ、でももちろんただの掃除機じゃないですよ」

松本「特殊な掃除機なんですよ。とかくもうバキュームがすごくて」

松本「デメちゃんって言うんですけど」

浜田「いやそれはさっき聞いたから」

松本「w」

松本「いやでもすごいんですって。マジで」

浜田「何がいな」

松本「バキューム能力がすごいんです。マジで」

浜田「バキュームがすごいって言われてもなぁ」

松本「死体とか、全部吸い込みますからね」

浜田「え!?」



浜田「人をまるごと吸い込むんか!?」

松本「ええ。死体だけですけど」

浜田「どんなでかい掃除機やねん!?」

松本「あ、サイズ的には家庭用とそう変わらないですよ」

松本「ただ、とかく、バキュームがすごくって」

浜田「……どこの、掃除機なんよそれ」

松本「どこ製と言うか、メーカー製じゃないんですよ」

浜田「えっ」

松本「”念”ですね」

浜田「”念”……?」

ビール買ってくる


松本「簡単に言うと特殊能力みたいなもんです」

松本「それがあるからヤクザに喧嘩売れたみたいな部分あるんですけど」

浜田「特殊能力……ですか」

松本「はい。念能力って言うんですけど」

浜田「その念能力っちゅうのが、今の掃除機なんや」

松本「ええ、まぁ、はい」

浜田「えー……じゃあ、ちょっと見せてーや」

松本「あ、僕はできないですよ」

浜田「は!?」


浜田「掃除機振り回してやったった言うたやん!」

松本「それは別の奴です……若い女の子なんですけど」

浜田「女の子!?」

松本「そうですよ」

浜田「女の子がヤクザに喧嘩売るんか!?」

松本「僕も最初見た時びっくりしたんですけどね。団長がどっかからスカウトしてきたらしくて」

松本「その時も普通に参加してましたね。まぁ、それも団長命令なんですけど」

浜田「えらい無茶振りしよるなぁ……」

松本「いやでも、便利ですよ。死体吸えたら証拠隠滅とかできますし」

浜田「そらそうやけどやな……」

松本「しかもその掃除機、しゃべりますからね」

松本「ギョギョギョー! って」

浜田「さかなクンやん……」


松本「まぁ、僕らはその”念”に秀でてるから好き放題やれるみたいな所あってね」

浜田「じゃあみんなその、念持ってるん?」

松本「ええ」

浜田「その念って、掃除機の他にどんなのがあんのんな」

松本「んー、色々ありますね」

浜田「例えば?」

松本「携帯いじったりする能力とか」

浜田「誰でもできるやん!」

松本「違いますよw ちゃんとした能力です」

浜田「いや、携帯いじってて何ができるねん!?」

松本「実は、僕もそこら辺詳しくないんですけどね」

松本「念って、他人に知られたらダメみたいな部分ありますし」

浜田「なんやねんそれ」

松本「まぁ……その、携帯の奴は検索して調べ物とかしてるんじゃないですか」

松本「お宝の在り処とか」

浜田「そんなもん……今時指ササっとするだけでできるやん」

松本「あ、スマホじゃないですよ」

浜田「ガラケーかい!?」



松本「なんか、愛着ある物の方がいいんですって」

浜田「せやかて……今時ガラケーって……」

松本「まぁ、調べ物自体はガラケーでもできるじゃないですか」

浜田「そうやけどやな」

松本「あ、今思い出しました」

松本「僕が前にチラっと見た時は、なんかゲームやってましたね」

松本「インベーダー的な」

浜田「それが、そいつの念なんや」

松本「はい」

浜田「そいつ、いるか?」

松本「いりますよw 言っときますけどみんながみんな戦闘向けじゃないですからね」


浜田「役割分担があるねんな」

松本「はい。携帯の奴は情報処理係でした」

浜田「あーなるほど」

松本「言うてもそこそこ長くやってますからね。組織としての体制は意外としっかりしてるんです」

松本「まぁ僕は途中参加ですけど」

浜田「ふーん」

松本「念ってね、その人の個性が強く出るんですよ」

松本「携帯の奴も、掃除機の子も、それに愛着があるからその能力になるみたいなね」

浜田「思い入れがあるから念になるんやな」

松本「そう言う事ですね」



浜田「でも、携帯はまだわかるけど、掃除機は……」

松本「綺麗好きなんじゃないですか」

浜田「でも掃除機で人しばき回してるんやろ?」

松本「でも実際戦闘に応用できてますからね」

浜田「まぁ、リーチはあるかぁ」

松本「念の醍醐味は、自分の能力をどう使うのか。が鍵ですから」

松本「他にも糸を使う奴とかいますけど、うまい事やって団に貢献してますよ」

浜田「必殺仕事人みたいな感じかいな」

松本「ですね」

浜田「なるほどなぁ」

松本「ちなみに、団長は本を出す能力です」

浜田「本!?」


松本「マジですよ。何回か見せてもらいましたけど」

松本「表紙に手形がペターンってついてる本、出しよるんです」

浜田「それで……何するねん?」

松本「そんなの、決まってるじゃないですか」

松本「読書ですよ」

浜田「ガラケー以下やんけ」


浜田「団長、一番アカンやん」

松本「そんな事ないですよ。指示とかいつも的確ですし」

浜田「なんの本なんかな……」

松本「『長たる者の心構え』みたいな事が書かれてあるんじゃないですか。見た事ないですけど」

浜田「まぁ……そうか」

松本「ほら、団長は将棋で言う王将ですし」

松本「ウロチョロされると、逆に困るみたいな所あるじゃないですか」

浜田「じゃあ……本読んでじっとしてろって事?」

松本「……じゃないすかねw」

浜田「ナッハッハw アホやw」

松本・浜田「wwwwww」


浜田「……で、ところでさ」

浜田「あんたもその念、あんの?」

松本「ええ、ありますよ」

浜田「どんな能力よ」

松本「……」

浜田「お前、今考えてるやろ」

CM


松本「いや、はい、ありますよ」

浜田「お、思いついたんか」

松本「はい……いや、思いついたとかじゃなくてw」

浜田「w」

松本「僕の念はあれですね。あなたならよく知ってると思うんですけど」

浜田「はい」

松本「ダンスです」

浜田「ダンス!?」


松本「ええ。ほら、たまにやるじゃないですか」

松本「僕がボケる時の、こういう動き」ササッ

浜田「あーはいはい」

浜田「……え、それ念やったん!?」

松本「そうですよ」

浜田「知らんかったわ……」

松本「言ってなかったですからね」

浜田「昔からようやってるよなぁ」

松本「能力、バレるとアレなんでね」


浜田「でも能力がダンスって、しょぼいなオイ」

浜田「団長の事言われへん」

松本「あ、速まらないでください。これはただの前提条件です」

浜田「前提条件?」

松本「発動条件ですね。これをしないと能力が出ないですから」

松本「必ずやらなダメなんです。制約と誓約って言いまして」

浜田「……ほな、それやったらどうなんの?」

松本「木星が飛んできます」

浜田「木星!?」


浜田「それ、やばない!?」

松本「ええ、やばいですよ」

松本「だから、普段はなるべく使わないようにしてるんです」

松本「巻き込みますからね。客とか」

浜田「ほな、俺ごっつ危ないやん!」

松本「そうですね。何度かありましたよ、あなたに落しそうになった事」

松本「ギリギリの所で踏みとどまってますけどね。いつも」

浜田「え、ええ~」


松本「僕はほら、所謂戦闘班で」

松本「携帯とか掃除機の子なんかは、情報班で」

浜田「カチコミ要員かいや」

松本「ですね」

浜田「でも、それやと味方にあたらへんか?」

浜田「木星って、こんなごっついねんで?」

松本「だからいつも、あんまり参加させてもらってないんですよ」

松本「ヤクザと揉めた時も、僕だけ自宅待機でしたからね」

浜田「そらそーなるわw」

松本「でも、僕よりもっとタチの悪い奴がいるんですけど」

松本「そいつだけはやたら優遇されててね」

浜田「どういう事?」

松本「ちょっとだけ似てるんです。能力」

浜田「はい」


松本「僕の能力は味方が巻き添えの可能性があるんで、だから待機多いってのはわかるんですけど」

浜田「そらそうや」

松本「でも、そいつはガンガン前にでるんです」

松本「下手するとたまに団長の命令も無視しますからね。優先すべきはクモとか言って」

浜田「危なっかしい奴やなぁ」

松本「その辺の扱いの差が、ちょっと不満みたいな所は正直ありましね」

浜田「……で、そいつはどんな能力なん?」

松本「僕は、木星じゃないですか」

浜田「はい」

松本「そいつは太陽落とします」

浜田「太陽!?」


松本「僕の比じゃないですよ。巻き添え感が」

浜田「太陽っておまっ、ええ!?」

松本「味方すらも逃げ出しますからね。おいやべえぞ!って言って」

浜田「逃げ切れんのか……?」

松本「僕も入ったばかりの事はしらんくってね。こいつの能力見たろ思うた事あったんですけど」

松本「おかげでこんな日焼けしてもうて」

浜田「それは昔からやん!」

松本「w」


松本「なんか、結成当初のメンバーなんですって」

松本「そのせいか知りませんけど、なんかみんな、やけにそいつにだけ甘いんですよ」

浜田「へえー」

松本「いつまでたっても日本語おかしいですし」

浜田「外人か?」

松本「多分、そうやと思います」

松本「古参メンバーの癖に未だになまり取れてませんし」

浜田「なまってんねや」

松本「はい」

松本「なんかあったらいつも『くたばるといいね!』って……」

浜田「それ、そいつのセリフやったんやw」

松本「はいw」


松本「耳に残るんでね。無意識にマネしてしまうんですよ」

浜田「なんかわかるわ」

松本「まぁ、そんな感じでね。クモの一員として頑張ってたんですけど」

浜田「なんで、辞めたん」


松本「――――そこなんですよ! 浜田さん!」


浜田「もう……おつゆ飛んだ」


浜田「何があったんよ」

松本「こういう稼業ですからね……その、定期的に現れよるんですよ」

松本「仇討ち的なのが」

浜田「あー」

松本「まぁそれを返り討ちにするのが趣味みたいな部分もあるんですけど」

浜田「どんな趣味やねん」

松本「でもある日、一人だけおかしな奴が現れまして」

浜田「どんな奴よ」

松本「んー、あれはなんて言ったらいいのかなぁ」

浜田「めっちゃいかついとか?」

松本「そういう系ではないんですよ。どっちかと言うと細身ですし」

浜田「弱そうやん」

松本「でもかなりのド変態なんですよ」

浜田「ド変態!?」


松本「僕もいろんな性癖を持ってる後輩、いっぱい見てきましたけどね」

松本「その僕から見ても、まぁまず今後現れる事はないだろうってレベルの」

浜田「うわ、それめっちゃ気になるわ」

松本「強烈ですよ。マジで」

浜田「え~、どんな奴よそれ」

松本「まずもう念能力からして異彩を放ってますね」

松本「こんな能力見た事ないわってくらいの」

浜田「はぁー」

松本「念って、そいつの個性を表すってさっき言ったじゃないですか」

松本「携帯とか掃除機とか本とか、聞いた話やとゴリラ出すやつもいるとかで」

浜田「そいつはそいつでおもろいなw」

松本「まぁ、その事を前提に考えて頂きたいんですけど」

浜田「はい」

松本「そいつの能力がね」

浜田「はい」

松本「亀甲縛りなんです」

浜田「!?」


浜田「亀甲縛りって、あのSMの!?」

松本「マジですよ。僕もみましたもん」

松本「しかもめっちゃ速いんですよ。ほんま一瞬よそ見した瞬間、もう縛られてて」

浜田「一瞬よそ見しただけで……」

松本「幸い僕は免れましたけど」

松本「捕まった奴は、それはもう、ね」

浜田「捕まったん!?」


松本「僕じゃなくて当時のメンバーがね」

浜田「縛られて、拉致られたんか」

松本「ふっとみたらもう縛られてて」

松本「あれ?なにこれ?って思ってる間もなく『おああああ!』って」

浜田「え、ええ~……」

松本「もちろん後を追いましたよ。待てー!って」

浜田「そらそうや助けなあかん」

松本「でも、できんくってね」

浜田「……」

松本「とかくもう、ほんま一瞬でしたから。さすがの僕らも、後手に回りまして」

浜田「よっぽど、やり慣れてるんやな」

松本「でしょうねw」


松本「まぁ紆余曲折を経て、なんとか助ける事はできたんですけど」

浜田「よかったがな」

松本「あ、言い忘れましたけどその捕まった奴、メンバーの中でも漢の中の漢みたいな奴やったんですけど」

浜田「はい」

松本「その彼をして、『こんな辱め受けた事がない』と」

浜田「よっぽどドエライ事されたんやな……」

松本「あえて、詳しくは聞かなかったですけどね」


松本「んでまぁ、もうほんまブチギレで」

松本「帰らないといけなかったんですけど、『俺、仕返しするまで帰らへん!』言い出しまして」

浜田「そらそうや」

松本「で、彼だけ仕返ししに行ったんですけど」

浜田「はい」

松本「……それから、今に至るわけです」

浜田「ほったらかしか!?」


浜田「助けんでええのか!?」

松本「物理的に無理なんですよ。最初助けた時はなんとか特定できたんでいけたんですけど」

松本「今度は全くのてがかりゼロでね」

浜田「ほな……じゃあ……今も?」

松本「そうじゃないっすかね。多分今もどこかで縛られてますよ」

浜田「亀甲縛りで?」

松本「じゃないっすかねw」


浜田「それはいややな」

松本「でしょ? 絶対にイヤじゃないですか」

浜田「だから、辞めたんか」

松本「浜田さん、速まらないで下さい」


松本「――――それはただの前提条件です」


浜田「前提条件もうええから」


松本「実は同じ事が二回ありまして」

浜田「うっわー、完全にロックオンされてるやん」

松本「キッツイでしょ」

松本「まぁ、二回目もなんとか僕は免れたんですけど」

浜田「運ええな」

松本「でもその代わり、またメンバーが縛られまして」

浜田「例の変態に」

松本「はい」

浜田「……掃除機の女の子?」

松本「いや、その子じゃないです」

浜田「ほな誰よ」

松本「団長です」

浜田「団長が!?」


浜田「団長捕まったらアカンやん!」

松本「さすがの団長も異常性癖の前には無力でね」

浜田「そらそうやて! 団長本読んでるだけやもん!」

松本「別に本読んでるだけじゃないですけどw」

浜田「団長捕まらしたらアカンやろ……お前ら何しててん」

松本「まぁ確かに、ちょっと気い緩んでたみたいな所はありました」

浜田「はあ……」

松本「みんなでね、旅行しに行ってたんですよ」

浜田「旅行て」

松本「オークションとか参加したりしてね。楽しかったですよ」

浜田「ヤクザと揉めた後にオークション……」

松本「で、楽しかったなぁ言うて、みんなでホテルに帰ろうとしてまして」

松本「ホテル着いた……瞬間ですよ」

浜田「……出た?」

松本「……はいw」




松本「なんかおかしいなぁ思ってたんですよ。高級なホテルなのに、明らかにガラ悪いのがいたり」

松本「なんか、変なガキンチョにちょっかいかけられたりとかしてね」

浜田「ガキ……」

松本「今思うと、罠やったんでしょうね」

浜田「……で、肝心の変態はどこおったんよ」

松本「それがね、聞いて下さい。ビビりますよ?」

浜田「教えてぇや」

松本「結論から言うと、そいつもすでにホテルにおったんですよ」

浜田「先回りされてたんか」

松本「まずその時点で異常なんですけどね……どこおった思います?」

浜田「え……そらお前、物陰とか、どっかの裏とかやな」

松本「全然違います」

浜田「じゃあどこやねん」

松本「受付嬢に変装してたんです」

浜田「受付嬢!?」


浜田「え、例の変態って女なん!?」

松本「違うんですよ浜田さん」

松本「その変態……僕らは鎖野郎って呼んでたんですけど」

松本「”野郎”って付くくらいですからね、列記とした男性です」

松本「最初に捕まった奴が言うてました」

浜田「つまり……女装?」

松本「はい」キリ

浜田「……変態やん!」


松本「ね? 引くでしょ?」

浜田「おいおいおいおい、団長捕まってどうすんねん」

松本「あの時はやばかったですよ。クモ解散の危機まで話が行ってましたから」

浜田「よりにもよって団長やもんなぁ」

松本「変態に狙われて、縛られて、拉致られて、さっきの奴みたいに戻ってこないかもしれへん」

浜田「まぁパニクるわなぁ」


松本「そこで満を持して名乗りを挙げたのが――――」


浜田「おお」


松本「僕ですよ」


浜田「お前かい」

昼飯食ってくる


松本「混乱する団員をね、僕が持ち前のトークでまとめまして」

浜田「おお」

松本「その時に判明したんですけど」

松本「さっきちょっかいかけてきたガキがね、その変態の仲間でね」

浜田「おお!」

松本「とっ捕まえてやりましたよ。『コラお前!』言うて」

浜田「ナハハハハw」


松本「だからね、その変態にガキ返す代わりに団長返せ言うたったんです」

浜田「ええやん。活躍してるやん」

松本「あの時の僕は輝いてましたね……」ウンウン

浜田「で、どうなったん」

松本「その後その変態と人質交換の約束を取り付けまして」

浜田「おお!」

松本「僕が一人で来るなら、人質は無事返すと」

浜田「お前凄いな!」


松本「言うても芸人ですから、こっちは僕の得意分野ですよ」

浜田「ナハハハw」

松本「行きましたよ。指定の場所に」

松本「ちゃんと一人でね」

浜田「待ち合わせどこやったん?」

松本「空港です」

浜田「空港?」

松本「一旦空港まで来て、そこで飛行船に乗れと」

松本「で、飛行船の着く場所に俺おるからーって」

浜田「はぁはぁ、なるほど……」


浜田「変態は変態で賢いな」

松本「用心深いんですよ。変態ですから」

浜田「で、どうなった?」

松本「着いたのはどっか、人気のない岩場でしたね」

浜田「……おった?」

松本「はい、ちゃんといました」

浜田「おおw」


松本「そこからは、トントンですよ」

松本「せーので互いの人質歩かせて、それで終了です」

浜田「えらいアッサリ終わったな」

松本「正直一戦交える覚悟はしてたんですけどね」

浜田「……今の話聞いてたら、なんか辞める要素ないけどなぁ」

松本「そうですか?」

浜田「うまいことやってるやん。辞める必要なかったんちゃう?」

松本「何を言ってるんですか浜田さん」

松本「それが僕の団員生活最後の瞬間じゃないですか」

浜田「えっ?」


松本「その場で叩きつけてやりましたよ、辞表的なもんを」

浜田「なんで!?」

松本「キッカケは団長の態度ですよ」

浜田「態度……なんかあったんか?」

松本「こっちの人質は、言うてもガキですから」

松本「仲間の元に帰れたってなったらキャッキャしよるんです」

浜田「まぁ、せやわな」

松本「問題は団長ですよ。ほんともう、考ッえられませんよ!」

浜田「キムw」


松本「別にね、涙流して喜べ言うてるわけじゃないんですよ」

浜田「はい」

松本「でもね、言うても、誰の為にここまでやったったんやって話じゃないですか」

浜田「……はい」

松本「ガキの方はもう満面の笑顔ですよ。キャッキャキャッキャ言うとるんですよ」

浜田「……」

松本「そこまでやれとは言わんけど、お礼の一言くらいあってもよくないですか?」

浜田「なかったんや」


松本「紆余曲折を経た感動の再会じゃないですか。こっちもちょっと気持ち入るじゃないですか」

浜田「まぁな」

松本「僕、言うの恥ずかしいんですけど。僕もこう、団長ォ―!言うて駆け寄ったんです」

浜田「はいw」

松本「したら団長、何した思います?」

浜田「……わからん」


松本「――――団長ォ―!」

松本「…………(チラ見)」


松本「これで、終わりですよ」

浜田「wwwwww」


松本「考ッッッえられへんくないですか!?」

浜田「無視やwwww」

松本「キレましたね。さすがに」

浜田「ナハハハハwwww」

松本「ここまで貢献しといてこれかえ! 思て」

浜田「なるほどなぁ……w」

松本「辞表代わりの刺青、その場で剥がしてやりましたよ」

松本「こんなもんもういるかぁ! 言うて。皮膚ベリベリー! 言わせて」

浜田「痛い痛い痛いw」


松本「言い忘れましたけど、その刺青が蜘蛛やからクモって言われてるんですよ」

浜田「仲間の証なんや」

松本「それをもう、団長の目の前でベッリィー! って」

浜田「ナッハッハッハッハwww」

松本「だってむかつきません? そんな態度取られたら」

浜田「まぁ、せやわなぁ」

松本「その場を即離れましたよ。捨て台詞吐いて」

浜田「ナッハッハw」


松本「なんか僕がね、刺青剥がした段階になってようやっとしゃべり出したんですけど」

浜田「引き止められた?」

松本「それもなんか……そう言うんじゃなくて」

松本「なんかもう、は? って感じで」

浜田「何言われたん?」

松本「なんか……『律する小指の鎖刺された』とか言い出して」

浜田「www」

松本「第一声ですよ? こっちは礼言え言うてるんですよ?」

松本「完全に会話のキャッチボールできてないじゃないですか」

浜田「まぁ……団長さんは団長さんでテンパってたんちゃう?」

松本「それでも……ねえ? 親しき仲にも礼儀ありですよ」

浜田「ナッハッハw」


松本「そんなわけでまぁ、辞めましたね」

浜田「五年前に」

松本「はい」

浜田「んふっw」

浜田「今そいつらは、何してんの?」

松本「連絡は取ってないですけどね。でも風のうわさで聞きました」

松本「なんか今は、みんなしてゲームにハマってるらしいです」

浜田「www」

松本「ただの道楽集団ですよねw」


浜田「はぁーそうですかぁ……」

松本「ですね」

浜田「……一つだけ、気になるねんけど」

松本「なんですか」

浜田「あなたさっき、刺青を皮膚ごと剥がした言いましたけど」

浜田「そんな痕、あった? アンタの裸最近ようみるけど」

松本「あっそれはね」

松本「僕のんだけ、シールなんです」

浜田「えっ」


松本「ほんまに刺青入れたわけじゃなくて、シールなんですよ」

松本「ドッキリテクスチャーって言うんですけど」

浜田「それは、ルール的にええんか?」

松本「ダメですね」

浜田「アカンやん。団員ちゃうやん!」

松本「まぁでも、いいんじゃないですか? 最後までバレませんでしたし」

浜田「しばらく世話になっといて……お前……」

松本「……」ツーン


松本「こちとらTVタレントですからね。刺青とかは、ね」

浜田「タレントがヤクザに喧嘩売るなって話やけど」

松本「w」

浜田「まぁでも、ええやんか。もう辞めたんやから」

松本「そうですね。もう、旅団とは一切関係ないんでね」

松本「……あ、でも」

浜田「何?」

松本「代わりに今、別の所からスカウトかけられてて」

浜田「え~、どこよ」


松本「空きが出たんですって。二人ほど」

浜田「はぁ」

松本「今度はそういう、犯罪的な事はない組織なんですけど」

浜田「刺青もなし?」

松本「はい」

浜田「ええやん」

松本「ただ、常に動物の格好しとかなアカンらしくて」

浜田「なにそれ!?」

 
松本「今度は全身でね。シールじゃごまかされへん部分があって」

松本「ちょっと悩んでるんですけど」

浜田「ええ……なんて所?」

松本「えっと……確か……」


浜田「…………」


松本「十二支ん? って所です」

浜田「……帰るで!」



テッテッテテッテ テレレレレレ

テッテッテテッテ テレレレレレ

イブラセース イブラセース

デーデーデッ



【おわり】

完全に思い付きです
本当にありがとうございました

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