ジャン「お前が俺で」サシャ「私が貴方ですか?」 (119)

エレン「ようジャン、今日もやるのか」ゴゴゴゴ……

ジャン「当たり前だろ」ゴゴゴゴゴ……

モブ「お、おいまたはじまるぞ」

モブ「今日もかよ!」

ザワザワ……


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1370875315

アルミン「いいかい二人とも、不正はなしだよ」

エレン・ジャン『おう』

アルミン「よーい……スタートッ!」

(アルミンがスタートを切ると、二人は目の前に置かれた食事を
 すごい勢いで食べ始めた)

(途端に訓練兵たちがワッと沸く)

訓練兵「ジャンwwwすげぇ顔だww」ザワザワ

訓練兵「ああ、どっかで見たことあるんだよなあの必死な顔ww」ザワザワ

訓練兵「おい、あまり声出しすぎるなよ……!」

おォ?

ジャン「ふんもっほー!!!」ガタッ

(俺が勝者だ、と言わんばかりにジャンが立ち上がった。
 途端にエレンが口からパンを落とす)

エレン「あっクソッ!」ダンッ

アルミン「勝者、ジャン!」

エレン「なんだよ、またかよ……!」

ジャン「フフフン、エレンはまだまだ甘いですね!」

エレン「くっそ……て、なんだよその口調」

ジャン「へっ、あ、いや! ははは、まあ今回は俺の勝ちだ。
    水汲みは頼んだぜ、エレン」

エレン「クッ」

ミカサ「エレン、約束は約束」

アルミン「負けた方は僕とミカサ、そして勝者の水汲みかぁ。   
     なんだか僕たちまでいいのかな」

ジャン「そりゃリスクがあった方が燃えるしな」

エレン「クッソ……次回は絶対に勝つ」

ジャン「ヒヒハハw」

エレン「クッソー!」ダァン!

ミーナ「最近、エレンとジャンいい感じだね。
    前みたいにぴりぴりしてないっていうか」

アニ「そうかい? いっつもああして争ってるのは、相変わらずのように思うけど」

ミーナ「そうだよ、だって前はもっと険悪だったっていうか、一触即発っていうか。
    なんていうか、私正直ジャンってちょっと苦手だったっていうか」

アニ「あんた、アレにだいぶ感化されてきてたもんね」

ミーナ「あはは、しょうがないよ。エレンのまっすぐさには、どうしてか引っ張られちゃうからね。
    だからってわけじゃないんだけど、自分の事ばっかの人は……ね」

ミーナ「サシャもそう思うよね?」

サシャ「……」ウルウルウル

ミーナ「アレ?! 大丈夫サシャ! なんで泣きそうなの?」

サシャ「ナンデモナイス……ナンデモナイス……」ウルウルウル

アニ「ほっときなよ、それこそコイツもなんかおかしいんだからさ」

ミーナ「え、ええ……サシャ。おなか痛いのかな……」

サシャ「ナンデモナイス……」ウルウルウル

サシャ?「(なんでこんな事になっちまったんだよ……!
      女子に心を抉られて思春期の心は崩壊寸前だ!)」

(一週間程前から、唐突にジャン・キルシュタインとサシャ・ブラウスの両名の様子が
 おかしくなった)

(訓練兵達も最初は不思議に思ったものの、"違和感"も慣れてしまえば"日常"になってしまった)

(そもそもどうしてこうなったか……)

(それは、一週間前の夕飯後の事……)

目の前で悪口言われてるのか…

—— 一週間前


ジャン「だからよ、アンカー出すタイミングだって。 
    後は風よめ、そこに乗っちまえばこっちのもんだ」

訓練兵「うーん、そこが難しいんだよな」

訓練兵「ジャンみたいにはなかなかいかないよな」

ジャン「ま、そりゃ俺のようにやろうっていうのは間違いだな」

マルコ「はは、自分なりにやるのが一番だと思うよ」

(夕飯が終わり、大浴場へと向かうジャンとその取り巻き達。
 相変わらずジャンが自慢話を話していると、通り掛かったエレンがじろりと睨んでいった)

ジャン「よぉ、なんだよエレン。
    なんか用かよォ」

エレン「別に。ただ、相変わらずだなって思っただけだよ」

アルミン「エレン」

ジャン「お前らも相変わらず男同士べったりな事で」

エレン「なんだと!」

ライナー「ほら、お前らやめとけ。後がつっかえてんだからよ」ドンッ

ジャン「チッ」

エレン「クッ」

アルミン「ほら、行こうよエレン」

エレン「……ああ」ザッザッザ……


ジャン「フン、ったくこれだから死に急ぎ野郎は気に食わねぇな」

マルコ「ジャンも少し噛み付きすぎなんじゃないかな、とは思うけど」

ジャン「そうか?」

訓練兵「無自覚なんだ……」

ライナー「ほら、お前ら行け行け」

ベルトルト「時間が過ぎたら、汗まみれのまま寝る事になってしまうよ」

マルコ「ごめんごめん、じゃあ行こうか」

ジャン「チッ」

(大浴場から出て、ジャンは一人で歩いていた……)

ジャン「ったく、気分悪い。少し外の空気吸ってから帰るか」トタトタ

タッタッタッタ

サシャ「いやー、今日はいい感じですよ!
    食堂のおばちゃんの目を盗むのもなかなかうまくなってきたじゃないですかー!」

サシャ「フヒヒヒヒwww 今日はこの芋を食べて……」タッタッタッタ

サシャ「おっ?」

ジャン「あ?」

ドンッ

サシャ「ぎゃっ!!」

ジャン「ぐあっ!」

ジャン「おい!! 何してくれんだよ!」バッ

サシャ「うひあ!! ってジャンじゃないですか!」

サシャ「全く、驚かせないでくださいよ」フヒー

ジャン「それはこっちの台詞だってんだよ……」

ジャン「って、お前また!」

サシャ「ギクッ! い、いやこれはその、ちょっとした出来心でフヒヒヒww」

ジャン「フヒヒじゃねぇよ……お前よく独房行きになってねぇよな……」

サシャ「いやぁ、それはうまい事」

キース「! 誰かいるのか」

(角の向こうを覗いてみると、こちらに気付いた教官が歩いてくるのが見えた)

サシャ「!!!」

ジャン「あーあ」

サシャ「ままままままずいですよこれは大変ままままずい」アワワワワ

ジャン「また死ぬまで走れよ、がんばれな」スッ

サシャ「無理ッスゥゥゥ!! あの日はまだあの後寝られたからいいもののォォ!!」ガシィッ

ジャン「ってぇぇ離せよ! 俺まで共犯だと思われるだろうが!」

サシャ「」ハッ

サシャ「ジャン、あそこ!」バッ

ジャン「は?!」

(目を見開きジャンが指差した方向に顔を向けた途端、
 半分に割った芋を口に押し込むサシャ)

ジャン「モガ?!」

サシャ「フフフ……私達運命共同体でふよ」モグモグモグ

ジャン「(っざけんなよこの芋女……!)」モグモグモグ

ジャン「(しかもこういう時ばっか人の方に多くいれやがって!)」モグモグモグモグモグ

キース「貴様ら!」

ゴックン

サシャ「は、ハヒィ!!」ビシッ

ジャン「は、はっ!」ビシッ

キース「……貴様ら、何をしている」

ジャン「は、はっ! 本日の訓練について、技術向上の為にブラウス訓練兵と話し合っていました!」

サシャ「ハッ、そ、そうであります!」ビシッ

キース「ほう」

キース「……」ジー

サシャ「ヒヒッw ハヒヒww」

ジャン「(変顔してんじゃねぇよ……!)」

キース「……もうそろそろ消灯時間になる。
    早く宿舎に戻れ」

ジャン「は、はっ!」ビッ

サシャ「ハヒィ!」ビッ

ザッザッザッザ……

サシャ「……」

ジャン「……」

サシャ「フッヒィィィ、焦りましたよ……」ダラダラダラ

ジャン「サシャー、明日対人格闘術訓練クモウゼー」ガシッ

サシャ「ちょっ、それ絶対他意ありまくりですよね?!
    い、いやですよ勘弁してくださいよ!」バッ

ジャン「勘弁してくれはこっちなんだよこの芋女!
    こちとら憲兵団目指してんだ、芋一つでそれ逃したらテメェ壁の向こうに落とすからな!」

サシャ「あっははは、そりゃないない、ないですよー」ヘラヘラ

ジャン「(いつかシメてやるこの女)」


サシャ「それにしても、やっぱりおいしかったですねぇ」ペロリ

ジャン「ああ? 味なんて感じてる暇なかったよ……」

サシャ「いや、あれですね、食料庫から手に入れたんですよ……」

ジャン「それをわざわざ蒸かしてきたって、お前その技術別の何かに活かせよ」

サシャ「フヒヒヒwwテレマスwww」

ジャン「ほめてねーから」


サシャ「なんか変わった芋だったんですよねー、半分ずつ色が違って」

ジャン「な……ま、まて、おい、あれ普通の芋じゃなかったのかよ」

サシャ「え? ああ、なんか変わってるから面白そうでおいしそうと思いまして」

ジャン「ていうか! 色が変わってるってそれ腐ってたんじゃねぇのか?!」

サシャ「いや! それは狩人の勘を舐めないで下さいよ!」

ジャン「狩人がよくもまあ芋の事わかるな!」

ジャン「くっそ……妙な事の共犯にされた上に、腐ってやがったとか……
    なんなんだよ今日は!」

サシャ「まあまあ、おいしかったから大丈夫ですって!
    それじゃあそろそろ私は帰りますよ」

ジャン「ホンッキで明日覚えてろよ。お前ぶちのめす」

サシャ「女の子に対してなんて殺気を放ってるんですか! 怖い人ですね!」

ジャン「お前を女なんて思ってる男はいねぇよ!」

サシャ「ヒドイ!」ヒン!

(そうして二人は別れたのだが……)

翌朝 

ジャン「……朝か」

ジャン「ったく、昨日は散々な目にあったぜ」グルルルルルル〜

ジャン「……?!」

ジャン「(な、なんだこの空腹感……! 今までに味わった事のない、
     とんでもない……空きっ腹状態……!)」

ジャン「(そして同時に大量に溢れてくる涎!)」ダラダラダラダラ

ジャン「ちょ、ちょうしょ、く、し、しぬ、しぬ……!!」


???「……また騒いでいる」

???「もー、相変わらずだなぁ」

???「朝はいっつもこうだよね」フフッ

???「おーい、水汲みの準備しろよー」

(カーテンで区切られたベッド。そのカーテン越しに聞こえるのは……)

ジャン「(お、おんなのこえ?!)」

半分こしたから入れ替わったのか
[たぬき]の秘密道具にありそうだな

ジャン「(な、なんだ?! 俺、昨日確かに男子宿舎に行った筈!)」

ジャン「(なんだ、何がどうしてこんな事になった、誰かの陰謀か?!)」

ジャン「(まずい、女子宿舎に忍び込んだ事なんてばれたら、独房行きだぞ、オイ!)」

???「ほら、ちゃんと起きて! 身支度終わらせてから朝食だよ!」

ジャン「わ、ちょちょちょ、まてっ!」


シャッ

ジャン「ち、ちちち違うんだ! こ、これは何か、陰謀か、何かでっ!」

クリスタ「陰謀?」

ミーナ「あはは、何それ。また変な夢見てたの?」

ジャン「い、いや夢っていうか……また?」

ジャン「(お、俺あんまミーナと話したことないんだが……
     いや、女どもとは全般的に……)」

ミカサ「変な事言ってないで、早く着替えて」

ジャン「み、ミカシャ!!」カアァァァッ

ジャンサシャとか俺得

ミカサ「? どうしたの」

ジャン「フヒッw いや、その! いや、あれ?」

ミカサ「まだ寝ぼけてる?」

ユミル「いや、こいつの場合今の状態のがいつもらしいだろw」

ミカサ「それもそうかもしれない」

アニ「ひどい言われようだね、アンタ」

ジャン「いや……」


ミカサ「とにかく、早く行こう。サシャ」

ジャン「え」

ジャン「えっ」



エエエェェェェェェ?!!!!

ジャン(サシャ)「い、いやですからぁ! 私サシャなんですってぇ!」

マルコ「え、えっと、あの、どうしよう」

訓練兵「い、いやどうしようって言われても」


(食堂に行くと、青ざめた顔のサシャ、ではなく、ジャンが必死にマルコにすがりつき
 涙目になっていた。
 その顔は毎日見ているはずの自分の顔で、サシャ——ジャンはがっくりとうなだれた)

(※以降、中の人物の名前。容姿はジャン→表記サシャ、サシャ→ジャン)

サシャ「ででで、ですからぁ!」

ジャン「おい」

サシャ「ヒィ!! わわわ、私?!」

ジャン「事情は全くわかってないが、とりあえず騒ぐのやめろ。
    朝食が終わったら後で来い」ヒソヒソ

サシャ「も、ももももしかして、中身は……」ヒソヒソ

ジャン「……ああそうだよ胸糞悪い事にな。
    とにかく、後でだ。馬鹿なりに頭使って俺演じろ!」ヒソヒソ

サシャ「は、ハヒィ……」ウルウルウル

ジャン「その見た目で目をうるませるな!」

ほう…

朝食後

サシャ「つまり、私達は中身だけ入れ替わっちゃったって事、ですか?」

ジャン「みたいだな。俺もよくはわかんねーよ。だがわかってる事は一つ」

サシャ「な、なんですか?!」

ジャン「どう考えても……お前が食わせた芋が原因だよ!!」カッ

サシャ「あ、やっぱりですかぁ?」ヘラヘラ

ジャン「あー、なぐりてぇ、だが俺の顔だ我慢しろ俺……」

サシャ「元から歪んでるから大丈夫っちゃあ、大丈夫ですよねぇ」ヘラヘラ

ジャン「なんなの? 殴られたいのお前?」

サシャ「でもほら、芋が原因ってことは、芋が消化されたらこの不思議状態も治るんじゃないですかねぇ」

ジャン「は? そんな単純なもんか?」

サシャ「そうですよぉ、きっとだぁいじょうぶですってぇ」ヘラヘラヘラ

ジャン「(この笑顔、殴りたい)」

ジャン「お前のその自信はどこから来るんだよ」

サシャ「狩人の勘です」キリッ

ジャン「その勘でこの事態をどうにか回避できなかったのかお前は」

ジャン「とにかく、期待はしてないがお前な、俺の評判落とすような事だけは」

サシャ「ハッ」

ジャン「……なんだ」

サシャ「い、いやその……トイレに行きたくなりまして……」

ジャン「真剣な顔して何言ってんの? じゃあさっさと行ってこいよ」

サシャ「や、だって、その……仕方とか……」

ジャン「は?」

サシャ「お、女の子には、オティンティーンは……ついてなかったですので……」

ジャン「」

トイレ——

サシャ「ウヒアアアアアアア!!!! グロ!!! グロ!!!
    ヒッヘェェェwwwww」

ジャン「気持ち悪いテンションやめろ!!
    だからこうやって」

サシャ「ヒヒヒヒヒwww やめてwww 私の手でさわんないでくださいよォwww    
    ウヒヒヒヒヒwwww」

ジャン「ねえなんでお前笑ってんの?! なあ?! それ絶対女の反応じゃないよな?!」

サシャ「ねえねえ、これって小さいんですか? 大きいんですか?」

ジャン「それについては答えかねる」

サシャ「はあ、奥が深いんすねwww ヒヒヒwww」

ジャン「モウヤダ」シクシクシク


ベルトルト「……!」ブルブルブル

ベルトルト「(みなかったことに、しよう……)」ブルブルブル

トイレ——ジャンver


(扉の前にはサシャが立っている)

サシャ「ですからー、もういっきにずりおろしてー、後はもうこうー」

ジャン「いいよ! わかったよ! わかったから早く出てけよ!
    万が一ばれたら今後の俺の生活に関わってるんだぞ!」

サシャ「チェー、ジャンは私の時に入ってきたのに……  
    じゃー頑張ってくださいねー」スタスタスタ

ジャン「ったく……」

ジャン「(ていうかアイツは見られる事に関して何も言わないのか……?)」

ジャン「い、いかんいかん、俺は、初めてはミカサと決めているんだ。
    目を瞑って」ドキドキドキ

ジャン「うふぁ」

ジャン「なんかへん」

ジャン「なんかへんこれ」

ジャン「ふっは」

ジャン「ちょ、まってこれどうすりゃいいのこれ」

ジャン「拭く際に触れちゃうじゃないですかヤダー」

ジャン「ちょ」

ジャン「ま」

ジャン「フハ」

いいよいいよー

サシャ「あ、どでしたー?」

ジャン「//////」

サシャ「(え、なんで顔真っ赤なんやコイツ)」

サシャ「いやあの、変な事してないですよね?」

ジャン「シテナイ」フルフルフル

ジャン「ソレジャ」スタスタスタスタ

サシャ「いや、ちょ、まってくださいよ! ちょっとぉぉぉぉ!!」

大浴場——サシャver


サシャ「あ、やっぱそうかー」ジッ

ライナー「何だ俺の息子を見て」ニッ

サシャ「いやー、比べてみようかなって」

コニー「何自殺行為やってんだよ、比べる対象が間違ってるだろ」

マルコ「ライナーはね……」

ライナー「いやしかし、上はいるもんだからな」チラッ

ベルトルト「?」

サシャ「フッハwwww」

ベルトルト「え、な、なに」

サシャ「デケェwwww」

ベルトルト「え、え?!」カアァァァ


サシャ「超大型巨根」キリッ

コニー「ちょwwww」ブッフォ

マルコ「や、ちょ……」ブッ

ベルトルト「」ダラダラダラダラ

ライナー「お、おい、お前そこは平然としていろ! いろんな意味で!」

サシャ「あ、じゃあどうせだから何m級か比べていきま、いこうぜ!」

コニー「ねえよwwwwmねえよwww」

アルミン「(なにやってんだろこの人たち)」シラー

エレン「アルミンはさりげに大型巨根だよな……」ジッ

アルミン「え?」

エレン「い、いやなんでもねえ」

これはいい

大浴場——ジャンver


ハンナ「それでね、フランツったら」

ミーナ「やだ! ハンナえっちな話してる!」

アニ「好きだね、アンタたち」

ミーナ「ええ、私は好きじゃないもん!」

ハンナ「え、ミーナよく聞いてこようとするじゃない」

ミーナ「クリスタも結構、さりげなぁく聞いてるよねぇ」

クリスタ「え、えっ」カァァァ

クリスタ「ち、ちがうよ、た、ただ耳に入ってくるだけだもん!」

ユミル「へえ、それにしてもお嬢さん、ずいぶん着替えに時間がかかるな?」

クリスタ「ちちちち、ちがっだ、だって今日はそのっ」

クリスタ「ゆ、ユミルのばかっ」

ユミル「グッヘッヘッヘ、可愛いなクリスタはよぉ」

ミーナ「またユミルが女子からぬ顔をしてるー」

アニ「この女は女であって女じゃないのさ」

ユミル「なんとでもいいな、女でありながらクリスタ萌えである私は
    どの連中よりも勝ち組だと思うね」

ユミル「女故に乳をモンでもケツ揉みしだいても罪にならないしよ」キリッ

ミーナ「何言ってんのこの人……」

アニ「クリスタ、そろそろアンタ危ないよ」

クリスタ「危ないって、何が?」

ジャン「……」タラァ

ミカサ「何してるのサシャ。後がつかえてる」

ジャン「ヒヘッ?! あ、いやその、ハハ、シャーセンwww」

ジャン「(く、クソ、俺は変態じゃない変態じゃない変態じゃないんだ!
     ミカサの裸をこんな形で見るのはよくない!)」

ジャン「(だけどだめっ目がみちゃうよぉ////)」ドキドキ

ミカサ「さあ行こう」ムキムキムキムキムキムキムッキー

ジャン「(見事に割れた腹筋……整った美乳……
     それはさながら彫刻のようで……)」

ジャン「(美しさを感じる……だがエロさはない……
     ひたすら俺は、感動してしまった……)」ツー……

ミーナ「鼻血だしたり泣いたり大変だね、サシャ……
    いつも変だけど今日は特に変だよ……」

アニ「つまりさほどの変化ではないさ。行くよ」

ミーナ「う、うん……」

翌日。


ジャン「(本当に治るのかよこれ……日、跨いじまったぞ。
     このまま戻らないなんてことになったら……)」ゾオオオ

ジャン「(しかし芋女が好き勝手やりすぎててもう戻んなくてイイヤーレベルになりそうで
     俺は怖い)」

ジャン「(いや、決して外見が芋女だからといっていろいろ役得とか
     全く考えてない、考えてないぞ)」

食堂

サシャ「さてごっはん、ごっはん!」

サシャ「よっこらせ」ドスッ

エレン「いやよっこらせじゃねぇって」

エレン「なんで俺達の机にいんのお前」

サシャ「へ? だっていつもの事……ハッ」

サシャ「シマッター!」アセアセ




ジャン「(何やってんだアイツ! よりにもよってあいつのとこに!)」

訓練兵「今日はこっちで食べようよ、サシャ」

ジャン「へあっ、う、はい!」

エレン「いや、だからなんで」

アルミン「まあまあ、いいじゃないエレン。
     たまにはさ」

サシャ「はは、そうですそうです、たまにはたまには」

アルミン「そうです?」

サシャ「い、いやっ、そうだぞ〜エレーン! たまには一緒にパァン!を食べようぜ〜」ツンツン

エレン「気持ち悪いなお前……」

アルミン「エレン、そういう事言っちゃだめだって……」

ミカサ「……エレン、喧嘩はよくない。熱くならないで」

エレン「あーもう、わかってるよ! なんなんだよ、もう」

サシャ「(アワワワ……ど、どうしたらええんか…… 
     ジャンとエレンいうたら、喧嘩……)」

サシャ「そ、そうだエレン、勝負しようぜ!」

エレン「え?」

サシャ「どっちがパァン!を先に食べられるかの競争だよ!」

エレン「何言ってんのお前。しねぇよそんな事」

サシャ「アッルェ〜? もしかして自信がないんですかァ〜?」ニヤニヤ

エレン「クッ、べ、別にそういうんじゃねぇ!」

サシャ「じゃ〜あできますよね〜?」ニヤニヤ

エレン「す、する」

ミカサ「エレン」

エレン「別にいいだろ、早食いぐらい」

ミカサ「でも、その後が」


アルミン「じゃあこうしたらどうだろう、どっちか負けた方が相手の水汲みをするって事で」

ミカサ「アルミンまで」

アルミン「いや、なんだかよくわからないんだけど、今日のジャンはなんだか
     いつもの彼と違うような気がしてさ」

アルミン「ここは、一発勝負をして爽やかに終わるのが一番だって思ったんだ」

サシャ「アルミンが言うなら間違いない! よなです!」

ミカサ「それはそうだけど」

ミカサ「……」

ミカサ「それじゃあ、今日だけ」

サシャ「シャア!! いつもは水汲みをする側のわた、俺が勝利勝ち取っちゃいます、ぜぇ!」

アルミン「あはは、ジャンどういうキャラなの?」

エレン「それじゃあ一発勝負だぜ」

サシャ「ウッス!」

アルミン「それじゃあ僕が合図するよ。それじゃ構えて」

アルミン「スタートッ!」

サシャ「ムグフアアウアアアアアアア!!!!」モグァァァァァァ

アルミン「なっ?!」

ミカサ「すごい勢い」

エレン「なにっん、んぐもぐ!!」モグモグ

サシャ「パンウメェェェェ!!!!」モッグゥゥゥゥゥゥ

アルミン「この勢い……あのサシャをも追い詰めるほどの……いや同等レベル?!」カッ

ミカサ「にんじんを食べる馬を髣髴とさせる、ちょっと可愛い」

アルミン「いやちょっとそれはわからない」


サシャ「モグファアアアアアアア!!!!」バッ!!

エレン「ングァッ! あークソッ負けた!」ダンッ

サシャ「ングング、へへ、エレンの負けです、だー!」ヘラヘラ

サシャ「まだまだです、だぜ〜!」

エレン「んだよ、次は負けねぇからな!」

サシャ「やれるもんならやってみてくださ、ろ〜!」

アルミン「あははは、だから何その話し方!」


ジャン「(アレー?)」

ジャン「(なんかほのぼのしてやがる……?)」

訓練兵「なんだか今日はジャンとエレン仲良いね」

ジャン「んなっ、そ、そんなわけ、ねーじゃねーですか?!」

訓練兵「え? でも今日はいつもほどジャンが感じ悪くないっていうか」

ジャン「え」

訓練兵「うん、そうそう、なんか明るいよね」

訓練兵「いつも誰かを馬鹿にした感じだもんね、アイツ〜」

訓練兵「そうそう、いっつもわざとらしく絡んじゃって」

ジャン「」


ジャン「そ、そんな事……ないですジャン?」

訓練兵「いやいや、あるある!」

訓練兵「それにさ、いっつも自慢話してるし?」

訓練兵「きっついよね〜」

ジャン「」


(それから数日)

(ジャンとサシャの体はやはり元に戻らず、とうとう一週間が経った)

サシャ「腹減ったなぁ、いや前の身体よりは全然減らないけど」

ミカサ「前の身体?」

サシャ「いや、こっちの話だけどさ。
    それよりエレン、さっきの話だけど」

エレン「ああ、切り込みがどうしても浅くなるんだよな」

サシャ「それはきっと、体勢がです、だな……」

アルミン「あ、それ教科書に載っていた事の応用だよね」

サシャ「え、そうなのか? 俺、寝てたから気付かなかったです、ぜ」

アルミン「相変わらずだなぁ、感覚で生きているというか」

ミカサ「野生の勘とか、そういうものなの」

サシャ「そうそう、それそれ」

エレン「馬だけにか」

サシャ「そう、ヒヒーン、てちがwww エレン、やめwww」ヒヒヒw

ジャン「(すごくいい感じじゃねぇか)」

ジャン「(もはや俺とあの死に急ぎ野郎が犬猿の仲であったことすら忘れ去られているぐらいに……)」

ジャン「(俺もミカサとあんないい雰囲気で話したい……)」

ジャン「ハッ」

(その時ジャンは気づいた)

(自分の周りに人がいない事を……)

ジャン「アレ?!」


クリスタ「サシャ!」

ジャン「! クリスタ」

クリスタ「一人でご飯食べててもつまらないでしょ。こっちにおいで」キラキラキラ

ジャン「クリスタ……(女神……)」

クリスタ「最近、サシャ一人の事多いよね? 何があったの?」

ジャン「いや、お……私もよくわからないんですよね……」

ジャン「なんか気付くと一人というか……」

ユミル「え、何お前気付いてないかよ」

ジャン「へ?」

クリスタ「ユミル、何か知ってるの?」

ユミル「いやさー、こいつの今のあだ名。サシャ・キルシュタインなんだぜ」

ジャン「?!」

ジャン「え、どういう事なんですかね……」

ユミル「どーもこーも、ヒヒッw
    お前、最近感じ悪ぃじゃんwww」

ジャン「(ビクッ)そ、そうですかね?! で、でもそれでどうしてキルシュタインにつながるです?!」

ユミル「そりゃあの馬面と似てるからだろ」

ジャン「え」

ユミル「他の女どもが言ってたぞ。
    自慢ばっかりでうざいってよww」

ジャン「じ、自慢? したか、そんなの……」

クリスタ「だ、大丈夫だよサシャ、ちょっと自慢したくなっちゃうこともあるよね。 
     サシャ、成績いいし」

ジャン「エッ?!」ビクッ

クリスタ「私はサシャのここがすごいんだぞー、ってとこ、いくらでも聞くよ!」キラキラキラ

ユミル「やめとけやめとけェ、聞いてる内にいやになってくんだからさ」ヒヒッw

ジャン「……?! ?! ?」キョロキョロ

ユミル「……本当にわかってないのかお前」

ジャン「……」コクコクコク

回想——

ジャン「だから、——の場合、体が傾きすぎてるんだ、ですよ」

女子兵「え、そ、そうかなぁ、気付かなかった」

ジャン「そういう時は、もうちょっと捻りをきかせて」

女子兵「どういうふうに?」

ジャン「だから、まあ、ここから先は天性のものになっちゃうから、
    私ぐらいにならないと大変だとは思う、ますけど、まあ貴方たちレベルでも
    似たような事はできますし」

女子兵「貴方達レベル、って……」

ジャン「まあ、才能はないとしてもだ、ですよ?
    それはそれなりにやり方ってもんがあるじゃないですかー」

女子兵「……」ガタッ   スタスタスタスタ

ジャン「ですから、貴方だったら」

ジャン「?」

ジャン「(便所か? 女子は恥かしがっていわねぇもんなんだな。めんどくせぇなぁ)」


ジャン「あれか……」

ユミル「自覚なく言ってるってすげぇな。どこぞのジャンさんかよ。
    本当にサシャ・キルシュタインだな」

ジャン「い、いや、だって、ただそれは正直に思った事を言っただけで」

ユミル「お、それは私も同意見だね。ただ、自覚はねぇとなぁ。
    私の場合、そこな、自覚あるからさ」ドヤァ

クリスタ「ある方がよっぽどだめだよ! もう!」

ジャン「(いや、俺だって自覚が全くなかったわけじゃない。    
     ただあれは……)」

クリスタ「でもサシャ、確かに言い方とかあるよ。
     いくら素直な気持ちでも、人を傷つけてしまう事があるから」

クリスタ「ちゃんと言葉は考えて言わないとね」ニコッ

ジャン「で、でも私は……」

ユミル「なんだぁ? テメェ、私のクリスタの言う事が聞けねぇってのか、下僕の存在で」ギロギロ

ジャン「シャーセェェン……」ガタガタガタ

クリスタ「コラッユミル!」

ジャン「(なんだ、何故かこの身体だとこのクソソバカスに反抗できねぇ……!)」ガタガタガタ

ジョン…

(サシャの日課である三人分の水汲みをしながら、ジャンは呆然としていた)

(確かに自分は"正直者"と自称し、思った事を口にしてきた)

(例えばエレンに対する悪意だとか、そういうものも含めて……)

ジャン「(それに比べてサシャの入った俺の人気者っぷり……
     いや、あの女はそもそも、女でなかったから、男の方がモテるのかもしれん……)」

ジャン「(何が「評判落とすなよ」だ。もしかしたら、俺って男は、思っていたより、その)」

ジャン「(嫌われてた……のか?)」

マルコ「サシャ」

ジャン「ま、マルコ?!」ビクッ

マルコ「今日も水汲み大変だね。手伝おうか?」

ジャン「い、いや別のその」バッ

ジャン「(だ、だめだ、今はコイツの顔が見れん。
     コイツも腹の内じゃ、俺の事……)」

マルコ「最近、どう?」

ジャン「へ、な、何が」

マルコ「何か悩んでないかなって思って」

マルコ「ジャンがエレンたちの所に行ってから君、いつも一人だから」

ジャン「……イロイロアッテネー」

マルコ「なんだったら、今度は僕たちのところにきなよ。
    僕らとしたら、会話の中心のジャンがいなくなっちゃって寂しかったところだからさ」

ジャン「……」

僕らからしたら、ですね。間違いでした

ジャン「そ、そうですかねー、ほら、ジャンっていっつも自慢ばかりしてるじゃ、
    ないですかー」

ジャン「内心、いなくなってよかったとか思ってるんじゃナイスカー」ヘラヘラ

マルコ「え?」

マルコ「あ、ああ、はは、まあそういう人たちもいるよね。
    でもうん、それはさ。横から聞いてるとそう聞こえてしまうかな」

マルコ「ジャンはさ、確かに口が悪いし、思った事すぐに口に出してしまうし」

マルコ「でも、僕としてはその方が気楽なんだ」

ジャン「うざく、ないんですか」

マルコ「うん、まあほらさ、サシャだったらわかるかもしれないけど、
    成績上位だと……いろいろあるだろ」

ジャン「……まあ」

ジャン「(妙に攻撃的な奴は時々いる。表っ面良くして近づいてきて、
     訓練中に怪我させようとする馬鹿もいないことはない)」

マルコ「だから、悪い事も良い事も全部ひっくるめてなんでも素直に言ってくれる
    ジャンといるのは、すごく気が楽なんだ。
    まあ、彼と僕が同じぐらいのレベルだからってのもあるけどさ」

ジャン「……」

マルコ「それに、僕やジャンの周りにいる奴はちゃんと知ってるからね。
    ああして口が悪いし自慢も言うけど、最後にはアドバイスもしてくれるし」

マルコ「彼らは、本当にジャンを慕っているんだ」

マルコ「まあ、その、僕もね」

ジャン「(本当かよ……)」

ジャン「(今じゃどうも、信じきれねぇな)」

ジャン「(だが、本当に俺の事がいやだったら、無理していねぇだろうなって思う。
     それほど、自分が思っていた以上に俺は口も性格も悪いんだろうし)」

ジャン「(それでもアイツらは俺の周りにいて……素直にすげーっていってくれてたのか……)」

ジャン「ウッ」

ジャン「ウウウウウウウ……」ウルウルウル

マルコ「さ、サシャ?!」

マルコ「わ、わわ、どうしよう、ほら、ハンカチ……」

ジャン「ヒグッ、おま、オマエラっ、すげ、スゲーイイヤツらだったんだなぁ……ッ!!」

マルコ「え、ええ?」

ジャン「そ、それに、クラッべて、お、おれっヒィィィン……」グスグス

マルコ「ちょ、サシャ、は、はは、参ったなこれどうしよう……」

翌日——


対人格闘訓練

サシャ「エレン! 俺と組みましょう、ぜ!」

エレン「よし、負けないからな!」

ミカサ「ジャン、次は私と。貴方の動きは読み辛くて面白い」

アルミン「ああ、確かに……僕は体格的にも敵う気がしないや」

エレン「何言ってんだよ、次は俺とだからな」

アルミン「う、ウエェェ? そ、そっかぁ、勝てるかなぁ……」

ミカサ「その次は私」

アルミン「」

涙腺もサシャ仕様か

ジャークモウゼー

ヨッシャー



ジャン「」ポツーン

ジャン「マルコーマルコー」キョロキョロ

コニー「マルコならもう組んでるぜ」

ジャン「なん……だと……」

ジャン「(いや……まあ俺対人格闘とか真面目にやってなかったし、
     元々テキトウに暇そうにしてる奴捕まえてたんだっけ……)」

コニー「しっかたねぇなぁ、俺が組んでやるよ」

コニー「ホウアー!」ビシッ

コニー「ハウチャー!」ビッ

コニー「ホオオオオオオオオ!!」バッ

ジャン「……」

コニー「なんだよ、ノリ悪ィな」

ジャン「(なにこれこいつらこんなこといつもやってんの)」ホゲー

コニー「何お前、ハブられてんだっけ。それで元気ないとかお前らしくもない」

ジャン「知ってたんですか」

コニー「まあ、ていうか予想つくし。何回かやられてるだろお前」

ジャン「(そうなのか)」

ジャン「(意外だったな、あの芋女が……まあ、腹減ってばかりいるから
     すぐに忘れるのかもしれ ハラヘッター)」グルルルルルル

コニー「いいじゃねぇか、気にするなよ。言いたい奴には言わせておけばいいしよ。
    俺なんてしょっちゅうあの馬面ヤローに馬鹿馬鹿いわれてても我慢してやってるだろ」

ジャン「オイコラだれが馬面だって馬鹿」

コニー「は?」

ジャン「や、いや、まあでも、そうですね。気にしないのが一番です、よね」

コニー「……」

コニー「なあ、お前どうしたんだよ。最近おかしいよな」

ジャン「ソ、ソデスカ?!」ビクッ

コニー「なんか、お前の目がものすごくどっかの馬面に似てる。目の奥で俺を馬鹿にしてる気がする」ジトー

ジャン「は、ハア?! し、してね、してないですよ!」

ジャン「(クッソ、馬鹿の癖にこういう時いい勘してやがる!)」ドキドキ

コニー「ま、気のせいか。あーあ、次は座学かー、めんどくせぇよなー」

ジャン「で、デスヨネー(やっぱり馬鹿だ)」フゥー

コニー「……」ギロッ

ジャン「ピーヒョロー」

——数日後

サシャ「ヒャッフー!!!ごはんですよー!食事ですよー!フヒヒヒヒwww」

エレン「落ち着けよお前、恥かしいぞ!」

ミカサ「ジャンだから仕方ない」

アルミン「あはは、ジャンって面白いよね」



ジャン「(もはや……俺が敬語を使ってる事に疑問を持つ者もいなくなった……)」

ジャン「(元々女だからこそあの暴食っぷりやアホっぷりが際立っていたわけで、
     男だとただのお調子者にしか見えない)」

ジャン「(……もう、戻らないほうがいいのか)」ズウウン……

(すでに諦めの境地に入ったジャン、いやサシャは井戸の前に立っていた。
 今日もユミル・クリスタの分の水汲みを行う)

ジャン「あの芋女、すっかり楽しみやがってもう俺の所に来ないし、   
    戻る気ねぇだろ……」

ジャン「いや、もうその方がいいのかもしれん。
    生まれ変わったと思って、サシャ・ブラウスとしての人生を歩んでいけばいい」

ジャン「(そう、嫌われ者のジャン・キルシュタインは死んだ……
     今日から俺、いや私はサシャ・ブラウスになるんだ……!)」

エレン「お、サシャ」

ジャン「?!」ビクッ

ジャン「(な、なんで死に急ぎ野郎がここに!)」

エレン「またアイツらの分も水汲んでるのかよ」

ジャン「ま、まあ、日課? ですから」

エレン「ふぅん」

エレン「お前ももうはっきり言ってやれよ。自分の分くらい自分でやれよって」

ジャン「そうは言ってもあのソバカスの言う事は体が勝手にいう事聞いちゃうんですよ……クソが」

エレン「そういうのわかんねぇな。俺だったら誰かの言う事に従うのは絶対いやだけど」

ジャン「あー、お前はそうだろうなー」

エレン「は?」

ジャン「あ、いやいや」

エレン「じゃあ頑張れよ」

ジャン「いやいや」

エレン「?」

ジャン「? じゃね、じゃないですよ、ここってあれ、手伝ってやるとかそういうとこじゃなくて?」

エレン「?? なんで俺が手伝ってやらなきゃならないんだよ」

ジャン「女の子がひいひい言ってるんですよ」

エレン「自業自得だろ」

ジャン「(相変わらずだなコイツ……いやまあ、相手が芋女だったら俺もこうなるか、
     クリスタだったらともかく)」

ジャン「あーもうわかりましたよ! じゃあさっさとどっかにいきやがってくださいよ!」

エレン「はあ? なんかハラタツな、じゃあ手伝う」ガッ

ジャン「ちょ、今更やめろって、おいもういいよ私が悪かったですよ! あっち行けって!」

エレン「なんだよその言い草! 絶対手伝う!」バッ

ジャン「うわっ!!」ドサッ

(エレンが手を振り払うと、ジャンは地面にしりもちをついてしまう)

ジャン「って……」

エレン「あ、と、あの」

ジャン「何すんですか」

エレン「……」

エレン「悪かったよ」ボソッ

ジャン「は?」

エレン「怪我とかしてない、よな?」

ジャン「さあな、痛みはねぇ、ですけど」



エレン「ほら、見せてみろよ」スッ

ジャン「え」

(その時……)

(エレンの顔が覗き込んだ瞬間、突如心臓が高鳴り始める。
 それは、以前自分がミカサと出会った時に感じたものと同じだった)

ジャン「え、えええ、ええ」ドキドキドキドキドキドキ

ジャン「いやいやいやいやまてまてまてまて」カァァァァ

エレン「? 一応みとかないとだろ」ズイッ

ジャン「い、いやそうじゃなくて、アルェェェェェ?!」カァァァァ

エレン「ほら見せろ」バッ

(そういうと、エレンは全く気にする様子無くスカートを捲り上げた)

ジャン「?!?!?!?!?!?」

ジャン「ぎゃわああああああ!!!!」ドカッ

エレン「いだっ!!」


エレン「おい! 何するんだよ!」

ジャン「それはこっちの台詞だばかやろおぉぉぉぉ!!!」ダダダダダダダッ


ジャン「(な、なんだこの気持ちは……!)」タッタッタッタッタ

ジャン「(いや違う、俺は決して、ていうか脈絡なさすぎだろ!
     別にアイツ色男ってわけでもねぇ!)」タッタッタッタッタ

ジャン「(だとすると……)」ピタッ

ジャン「もしかして……条件反射、てやつか?」

——宿舎裏



サシャ「や、どうもどうも、久々ですね〜ジャン!」

ジャン「その名で呼ばれるのが懐かしいぜ」

サシャ「それで、どうしたんですか? 戻る方法でも見つかったんですか?!」

ジャン「お前が言ってた芋ってのは他にもなかったのか?」

サシャ「へ? あー、あれはそうですね、一個しかなかったんですよ……
    確かに、同じものがあったら戻れそうですけどねぇ」

ジャン「芋はとっくに消化しちまっただろうしな」

サシャ「ですよね〜、いやこれもしかしたら元に戻れないカモ……」ヘラヘラ

ジャン「かもしれないな、だって」


ジャン「お前は今のままの方が都合がいいもんな」

サシャ「へ、へ? 何いってんですか?」ソワソワ

ジャン「今までだって近くにいたけどよォ、今だったら隣にいたってミカサは何も言わないし」

サシャ「い、いや、なんの事やら」

ジャン「これは予測だが……戻れないのは、どちらかが戻りたくねぇって思ってるから
    なんじゃないかと俺は思う」

サシャ「そ、そんなまさかぁ、ハハ、私だって元に戻りたいですよ!」

ジャン「エレンだろ」

サシャ「へっ」ドキッ

ジャン「あんな死に急ぎ野郎視界に入れてるだけでもハラタツから知らないし、
    何があったかはわからないけどお前、あの野郎の事が」

サシャ「ウワワワワワワ!!!!」ババババッ

サシャ「ち、ちがっ、違うんですよ、ちがうんです! そんなわけないじゃないですかッ!」カアァァァッ

ジャン「しっかし飯の事にしか興味ないと思ったら、意外だな」ニヤニヤ

サシャ「違うんですよぉぉぉ!」

サシャ「それはあの、なんというか、エレンは他の兵士の皆さんとはちょっと違いますし!
    あ、憧れっ?! みたいの、は違いますけど! わー、なんか違うなーっていう」

ジャン「あこがれぇぇぇ? あんなのにぃぃ?」

サシャ「い、いや別に私は調査兵団に入ろう、とは思いませんよ? 今だって憲兵団目指してますし……
    で、でも女というものは、ああいうちょっとオレハチガウンダゼみたいな人に弱いというか……」

ジャン「ああ、ダメ男に弱いんだな」

サシャ「ギックー! でも、それなりにファンはいるんですよぉぉ……」

ジャン「(そうだったのか……まあミーナも言ってたしな)」

サシャ「でも私はエレンと恋人になりたいとか、そういうんじゃないんですよ……
    た、ただその、なんだかひっぱっていってくれそうな感じに、ついつい
    ついていってしまいそうになるというか」

サシャ「私はその、自分の意見をズバーッと言えるような人じゃないですし……
    ああやって率先して前に立てる人には、憧れるというか……」

ジャン「そういうもんかよ」

サシャ「そういうもん、みたいですね、ハハ。
    でも、本当に戦場に立つとしたらほら、マルコみたいなしっかりした人についていきたいですけど」

ジャン「だろうな。俺だってアイツの隊に入りたいぜ。
    まかり間違っても死に急ぎ野郎の隊になんかはいらねぇ」

サシャ「あはは、それは同感です」

ジャン「……ま、もういいぜ」

サシャ「へ?」

ジャン「お前には戻らない方が都合のいい事がいろいろあるんだろ。
    だったら別に今のままでもいいぜっていうのを言いに来た」

サシャ「ジャン?」

ジャン「俺はこの身体に入ってから、自分の置かれてる状況ってモンを見ちまった。
    今までは見えてなかったモンが見えちまったからな」

ジャン「俺はどの身体にはいっても俺だけどよ、お前は今の方がいいだろ。
    男共ともよくやってるみたいだし。それにお前、今の方が素出してんだろ」

サシャ「うっ」ビクッ

ジャン「元々変な奴だが、元々のお前はもっと変なんだろ」

サシャ「い、いやぁ、はは、そんな事ないッスよぉ〜!」ダラダラ

ジャン「いいじゃねぇか、そのまま楽でいられるんだったら」

サシャ「で、でもジャン、それはその、違うとは自分でも思います」

ジャン「違う?」

サシャ「だって、私は今ジャンの姿を借りてるじゃないですか。  
    その、詳しいことはちょっと恥かしいんでいえないですけど、確かに私
    隠してる事がありますですし、その事を指摘された事があります」

ジャン「隠してる事、まだあんのかよ……」

サシャ「乙女にはいろいろあるんですよ!」ドヤァ

サシャ「でも、いつかはその、本当に、本当にいつかはその素を出しても平気でいられる
    自分になれたらとは思うわけですね」

サシャ「でも、食事の時間や訓練の時に、本音を出したばっかりに一人ぼっちになってる
    "私"の姿を見たら怖くなってしまいまして、ハハ」

ジャン「……」

サシャ「ジャンが悪いんじゃないですよ、きっといつも本音を言わず自分を出さない私には、
    本音を出したってだけで離れてしまうような人しか周りにいなかった。
    自分でも、気付いてたのかもしれません」

ジャン「(なんだこれ……本当にサシャか? 顔が俺なだけに、余計に信じられん)」

サシャ「フヒッw あ、でも別に暗くなったりしてませんよー? いつかは乗り越えなきゃとは!」

ジャンがかっこいい・・・?

サシャ「でもそれは、自分で、サシャ・ブラウスが乗り越えなきゃならない事なんですよ。
    ジャンの力を借りてする事じゃないですし」

ジャン「……お前」

サシャ「ハハハ、まあ、エレンの事もそうですけど、皆が軽い気持ちで出してる本音ですら
    出せてない弱虫なんですよ、私は……」ウルッ

サシャ「その弱虫が、なんでもかんでもズバズバいえてしまう自称正直者の身体を借りたら、
    調子に乗っちゃったって、それだけなんです」ウルウル

ジャン「お、おい」

サシャ「う、ですから、そういうの、ジャンが気を遣う必要はなくてぇ……」ボロボロ

ジャン「ちょ、おいどうして泣いてるんだよ!
    は?! なんだってんだよ!」

サシャ「ゴメンナサイィィィ!!! 今が、今が楽しくて逃げちゃってぇぇぇ!
    ジャンに気をつかわせてしまってぇぇぇ!!」ダバァァァ

ジャン「ど、どうでもいいから俺の顔で泣くんじゃねぇよ! コラ!」アセアセ

ジャン「(しかもきたねぇ! 男の顔だからってのもあるが泣き方が酷い!)」

ジャン「(ああ、間違いなくサシャだ。芋女だ。間違いねぇ……)」ハア

ジャン「オイ、サシャ!」

サシャ「ふぐ、ふぐぅぅぅ、楽しかった、楽しかったんですよぅぅぅ……
    自分を精一杯だせて……うわぁぁぁ……」

ジャン「いつものあれで素が出てなかったとか凄まじいよなお前……」

ジャン「(俺が俺の姿をこうして客観的に見て落ち込んでいたのと同じで、
     コイツはコイツで、改めて自分を見て思うところがあったんだろう。
     それで俺から逃げ回っていた……そんな自分にも)」

ジャン「ったく、めんどくせぇ……」フゥ

サシャ「ウヒィィィ……フヒィィィ……ジュルジュルジュル」グスグスグス

ジャン「おい、サシャ」ポンポン

(泣き止まないサシャの頭を軽く撫でてやると、少しだけ大人しくなった)

サシャ「ジャン……」

ジャン「お前が思ってるほどいつもと違いはなかったぞ。
    コニーはお前じゃないサシャを見て寂しがってたしな」

サシャ「コニーが……?」

ジャン「俺を避ける奴らもいたけど、変わらず話しかけてくる奴もいたし、
    どんなお前でも受け入れてくれる奴もいるんだからよ」

ジャン「胸張って、サシャ・ブラウスとして乗り越えてみろよ、自分って奴を」

サシャ「ジャン、私……できるでしょうか」

ジャン「さあな。それが一生できない奴だっているみてぇだしな。
    ……ま、俺も乗り越えてやるよ」

サシャ「……私、頑張ります。乗り越えます」

ジャン「俺はジャン・キルシュタインとして」

サシャ「私は、サシャ・ブラウスとして」

ジャン「ハー」

サシャ「フヒヒヒw」

カッ

(その時、視界が真っ白に染まった気がした……)

翌朝——食堂


アルミン「いや、エレン。怪我してるかもしれないとしても、流石に女の子のスカート急にまくるのは……」

エレン「は? だって見なきゃわからないだろ」

ミカサ「エレン、サシャに謝った方がいい。後そういう事は二度としない事」

エレン「なんだよ……」ブスッ

エレン「つー事で悪かったな、サシャ。悪気はなかった」

サシャ「(そんな事されてたんか……ヒクワー)」

サシャ「い、いやいや気にしな」ハッ

ジャン「……」ジー

(マルコたちのいるいつもの席に座るジャンがこちらを睨みつけている)

サシャ「ウワー」ダラダラダラ

アルミン「サシャ?」

サシャ「あ、いやえっと」


サシャ「……そ、その」

エレン「ん?」モグモグ

サシャ「け、怪我の心配はありがたいですけど! 女子のスカートを捲るなんてけしからん、ですよ!エレン!」キッ

エレン「えっ」

エレン「え、あ、おう。うん、だからもうやらねぇって」

サシャ「頼みますよ!」キッ

エレン「お、おう」

アルミン「珍しい事もあるものだなぁ、サシャってあまり怒るようなイメージないのに」

ミカサ「かなり無理はしているようだけど……いい事だと思う」

アルミン「(はっきり言えないからって結構嫌がらせとか受けてたって聞くからな。
      ミカサも心配してたんだろう)」

ミカサ「そう言えば、今日はジャンがいない」

エレン「来なくていいよ、あんな奴」ムッスー

サシャ「へ? なんかあったんですか?」

アルミン「はは……朝から早速喧嘩してたからね。もう二度とお前の隣なんか座るか、って言ってた」

サシャ「アチャー」

エレン「ったく、調子よかったり態度悪かったり、なんなんだアイツ。わけがわからねぇ」

サシャ「でも、いつも通りって感じはしますよ」

アルミン「そうだね、あのジャンも楽しかったけど、少し違和感は感じていたし」

ミカサ「またエレンが喧嘩する……」ハァー

エレン「フンッ」

(ジャンとサシャの入れ替わりが治り……ようやく日常がかえってきた。
 サシャは相変わらず言いたくても言えない事が多いようだったが、それでも少しずつ
 変わってきたようにみえた)

(ジャンも、以前よりは感じの悪さがなくなった、と自分では思っているのだが、
 周りの評価はさほど変わらなかった)

ジャン「クッ……どうしてだ、俺いつ自慢なんか言ってんだよ。   
    連中が出来ない事が俺にはできるって言ってるだけだろ……」

サシャ「そこですよ、そこ。根本的なところに気付けてないじゃないですか!」


(あの事をキッカケに、サシャとジャンは時々こうして隠れて会うようになったのである。
 会話の大半はジャンの容赦ないダメ出しだったが、サシャもしっかりと言い返すようになった)

ジャン「でもお前あれだな、こんなとこエレンに見つかったら大惨事だな」

サシャ「エレン?」キョトン

ジャン「いや、何キョトンとしてるんだよ……好きなんだろ? 一応。馬鹿なりに」

サシャ「へっ、いや、ちょ違う!! だから違うって言ったじゃないですか!
    モー! だからー、あれは自分にないものへの憧れみたいな感じでー!」アセアセ

ジャン「へー」ヘラヘラ

サシャ「グウウウ、ジャンだってミカサにばれたらまずいでしょうに」ジトー

ジャン「ヘグッ」ドキッ

ジャン「ちょ、おま……ちが……なんでミカサが出てくる」

サシャ「やー、ジャンが私の身体で体験したという事は、私も体験したのでね……」ニヤニヤ

ジャン「フグウ……」ギギギ

サシャ「まあ、お互い様ってことで、手打ちですかね?」スッ

ジャン「……おう」パチンッ

サシャ「そうだジャン。今度の休日、それらの事含めてまた遊びに行きませんか?」

ジャン「あ? まあいいけどよ」

サシャ「フヒヒヒww何奢ってもらいましょうかねぇ……」ダラダラ

ジャン「何で奢ること前提なんだよ芋女……」

サシャ「だから芋女ってやめてくださいよ! いつの事いってんですかもー!」

ジャン「なあ、お前こんな事してる間にエレン達の所にいりゃ何かしら進展する事もあるんじゃないのかよ」

サシャ「へ?」

ジャン「俺が言うのもなんだが、俺といて楽しいか? 口悪ぃし」

サシャ「んー……それはですね」

サシャ「私がその……ジャンみたいになんでも言える勇気がでた時に言います!」ニッ

ジャン「?」

(楽しそうに話す二人の5m先……全く存在に気付いてもらえていないベルトルトは、
 体育座りのまま、思うのだった)

ベルトルト「(もうお前ら付き合っちゃえよ……)」




おわり

てなわけで終わりですー サシャかわいいよサシャ
照れたり泣いたり、暴飲暴食ヒロイン。最後まで読んで下さった方、ありがとうございましたー


ベルベルトさん……

おつおつー
サシャのキルシュタイン式ドヤ顔想像したら興奮した


ジャンは親近感沸くキャラだけど主人公って感じじゃないんだよなー
だからジャンメインは嬉しい、
カップリングとしては違和感あるがサシャも可愛くてよかった


エレンにドキドキするサシャ(中身馬面)に不覚にもときめいてしまった

入れ替わり系はよくある話だけど、それぞれの苦悩に向き合う機会として処理したのが良いね!
好きなSSでした。


面白かった

こうしてみるとサシャっていいやつだよな

ジャンの敬語ワロワロホスピタルww

原作9巻のサシャは本当に惚れ惚れした

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