モバP「冗談はよしてくれ」周子「……」 (67)




第四回総選挙、見事シンデレラガールに選ばれたのは……






塩見周子さんで――す!おめでとうございま――す!




ワァァァァァァァァァ!








モバP「は、ハハァ……あいつ、やりやがった。……やべ、ちょっと涙出てきた」

モバP「肝心の周子は……なんだ、いつも通りじゃないか。ちょっとは感動の涙くらい流せっての」グスッ

モバP「プロデューサー始めて、家出してたあいつを丁度よくスカウトして……まさか本当に、ステージの上でこんな風に祝福されるあいつの姿を見る時が来るとは……」

モバP「思えば、色々あったなぁ。ここまでくるのにも一筋縄ではいかなかったものだ」



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モバP「最初の頃とか……」









モバP『ええと、君の担当になったモバPだ。よろしく』

周子『あ、よろしく~。あたしシューコね……って、このやり取り必要ある?いたいけな家出少女のあたしを拾ったのPさんじゃん』

モバP『まぁ、正式にってことで……えと、大丈夫か?』

周子『え?』

モバP『いやぁ、流れでこんなことになっちゃったけど……さ。不安な事とか、あるんじゃないかって思って』

周子『う~ん、アイドルになるとは思わなかったけど、実家から追い出されたらからさ、仕方ないよねー。成り行きってヤツで。大丈夫、お仕事はちゃんとやるからさ』

モバP『……セリフの節々から器の大きさを感じる』

周子『あれ、どしたん?』

モバP『い、いや!何でもない!塩見、よろしくな!』

周子『は~い』










モバP「……あ、あれ?そんなに苦労してなかった気がする」



モバP「い、いや!そんなことはなかった!コミュニケーション取るのも苦労したはずだ!初めてだし?初めて担当したアイドルだし?」











モバP『……』カタカタカタカタ

周子『……Pさん?』

モバP『え、どうした?』

周子『八つ橋食う? ウチの実家のだけど』

モバP『おお、ありがとう……そういえば実家は和菓子屋だったな』

周子『そうそう、もう食べ飽きちゃったから食べていいよ』

モバP『……うん、おいしい!ありがとう、塩見』

周子『周子でいいよ。シューコ』

モバP『え?』



周子『Pさんはそんなに考えてないと思うけどさ、あたし、結構Pさんに感謝してるんだよね。路頭に迷ってる時に拾ってくれたし?』

モバP『いやぁそんなこと……』

周子『だからシューコちゃんの名前呼ぶのトクベツに……いいよ』

モバP『こらこら、いかがわしい言い方をするな。まぁ、塩……周子がそれでいいなら』

周子『やったーん♪ところでさ、八つ橋、食べたよね?』

モバP『あ、ああ』

周子『それでシューコのトクベツももらったわけだ』

モバP『いかがわしい言い方するなって……で?』

周子『だから、Pさんからお返しがあってもいいよね?』

モバP『?』

周子『あはは、レッスンの始まる時間間違えちゃってさ……』

モバP『え……あ゛っ!この時間もうレッスン終わってんじゃん!』

周子『あのトレーナーさん厳しいらしいじゃん?だからちょっと、シューコちゃんついてきてほしいな~なんて』

モバP『こんな雑談してる場合じゃない!今すぐ行くぞ周子!あの人の小言は長いんだ!』








モバP「……あんまりコミュニケーション面でも苦労してなくね?あれぇ、色々あった気がしたんだけど」




モバP「仕事面においては周子はこれまで殆どそつなくこなしてくれたし……」

モバP「……っていうかさ、今思ったんだけどさ」



周子『はむっ……んー、つめたー……はい、Pさんにも』

モバP『あれ、いいの?一袋に2つ入ってるやつだろ?てっきり両方食べるもんかと』

周子『いーのいーの。オフ付き合ってくれたしさ』

モバP『じゃ、遠慮なく……ちべてっ』

周子『……なんか、いいもんだね』

モバP『何が?』

周子『実家では休みって店を手伝う日だったんだよねー……だから、男の人と二人で買い物する休日なんてわたし初めてかも……どう、ドキッとした?』

モバP『そのセリフがなきゃな……でも、俺も楽しかったよ』

周子『え?』

モバP『俺も二人で女の人と買い物するなんて初めてだよ、しかもこんなとびっきり可愛い女の子だ』

周子『……』

モバP『周子……』

周子『……』




モバP『どう?ドッキリした?いやぁさっきのお返しだよ!顔赤くしちゃって、案外初心なところもあるんだな?』

周子『……Pさん』

モバP『勿論冗談だし、俺はアイドルに手を出す気はないから安心していいからな!ハッハッハ!』

周子『この……アホォ!』

モバP『い、痛ってぇ!』





モバP(俺と……)



周子『お腹すいたーん♪』

モバP『はいはい、お小遣い上げるから何か買ってきなさい。俺は今忙しい』カタカタ

周子『え~』

モバP『えーじゃないの。多分時間かかるから』カタカタ

周子『大丈夫、シューコちゃん待ってあげるよ』

モバP『アイドルなんだから、早めに帰って寝なさい』

周子『あたし、夜型なんだよね』

モバP『あ、それは……ちょっとわかるかもしれないな』

周子『でしょ?』

モバP『肌も白いし、低血圧なイメージあるな。逆に朝が強いイメージがないっていうか』

周子『えぇ?そんなことないって!ホラ、シューコちゃんあったかいでしょ?』ギュッ

モバP『お、おい!手を握ってくるんじゃない!』

周子『……あ、Pさんって結構、手、大きんだね』ギュッギュ

モバP『―――っ!わかった、わかったよ!仕事終わったらご飯連れて行くから!離せって!』

周子『やったーん♪』

モバP『ったく……お前なぁ』

周子『あ、折角だしダーツバー行こう?』

モバP『だ、ダーツバー?』

周子『そ。あたしももうすぐ大人だし夜遊びとかしないとね……あー、今なんかやらしー事考えなかった?』

モバP『う、うるさい!わかったって!どこでも連れていくから!だからちょっとだけ放っておいてくれぇ!』





モバP(周子って……)


周子『夏の暑い日に、プールで冷たいドリンク。くーっ、贅沢だよねー』

モバP『あのさぁ……なんだと思って来たら、ビニールプールなんて持ち込みやがって』

周子『あぁー、いいわー。場所が事務所の屋上だなんて忘れちゃうわー』

モバP『俺的にはそこは忘れてほしくなかったかな……』

周子『Pさん、細かいこと気にしないほうが幸せだよー』

モバP『そうは言ったってなぁ』

周子『ほら、そんなところで立ってないでこっち来たら?』

モバP『拒否する』

周子『……あっ、ふーん。Pさんの視線で納得』

モバP『ぐっ……多少は仕方ないだろ。見るところ殆ど肌出てるんだから』

周子『べっつに~?あたしはPさんなら見られたって大丈夫だよ?こっち来たら気持ちいいよー♪』

モバP『いや、俺仕事あるし……』

周子『自分に正直になっちゃいなよー♪Pさんもさー、気持ちいいの好きでしょー?』

モバP『ぬぬぬ……』

周子『水着のシューコちゃん見て視線も泳ぐってやつー♪あたしの水着について、はい一言!』

モバP『……綺麗だよ』

周子『え?』

モバP『ああもう!可愛いって言ってんの!だけど、わざわざ事務所に色々と持ち込まなくていいから!この後仕事、あるんだろう?』

周子『今日はオフだよ~』

モバP『は?』

周子『今日はあたしお休みなの。最近忙しかったし多少はね~』

モバP『だったらプールでも行けって……なんでわざわざここに来る必要があるんだ』

周子『……Pさんって大概鈍感だよね』

モバP『え、なんで?』

周子『なんでもありまへん。折角屋上があるから焼いていこうと思っただけどす~』

モバP『なんで拗ねてんだよ……』





モバP(なんだかんだ……)


周子『Pさん、ほら、見てみて~』

モバP『なんだ?』

周子『これ、昔のあたし。かわいかったなー』

モバP『おー……今とは違う素直な目をしていてとってもよろしい』

周子『えぇ?いまのシューコちゃんはそんなことないってこと?』

モバP『冗談だ冗談』

周子『ん~、ま、いっか。……ねぇ、この頃のあたしの夢、なんだと思う?』

モバP『うーん……実家でぬくぬくすること、とか?』

周子『違うって!全く……ウチの和菓子屋の看板娘、だったんだ』

モバP『看板娘、ねぇ』

周子『そうそう。笑顔で和菓子売って、近所で評判になって。みたいなね?』

モバP『まぁ、わからなくもない』

周子『それがいまや看板娘どころかアイドル…人生わかんないモンだよねー!Pさんはどう思う?』

モバP『……どっちがよかった?』

周子『ん?』


モバP『今のアイドルと、看板娘。周子的にはどっちの方がよかったのかな~って』

周子『そんなの、決まってんじゃん。今の方が楽しいよ』

モバP『ん、そっか。そう言ってくれてよかった。……で、さ』

周子『ん~?』

モバP『なんで親御さんいないんだ?一応家庭訪問みたいな感じで、こっちに伺うことはお話してた筈なんだけど』

周子『あ~、それね。なんか、二人とも気を遣ってくれたみたい』

モバP『……は?』

周子『せっかくの休み、若人二人で過ごせるようにってね~』

モバP『え、えぇ……それじゃ俺が来た意味もないんですけど……』

周子『ま、いいんじゃない?つまり、うちの親もPさんの信頼してるってことでしょ?』

モバP『ま、まぁ……』

周子『ほら、好きに寝転がっていーよ。あたしもそーする。……ひょっとして、腕枕とかされたかったり?』

モバP『そんなわけあるかい。……じゃ、仕方ない。折角だから親御さん来るまでゆっくりさせてもらおうかな』

周子『そうそう、それでいいんだよ。ほら、いい子いい子』

モバP『頭をなでるんじゃない!』





モバP(バレたらスキャンダル扱いされて騒がれる程度には……)


周子『夜桜もいいもんだね、うん』

モバP『まぁ、な。それにしても……』

周子『どしたん?』

モバP『これを見るために撮影速攻で終わらせるとは……道理で今日はクソ真面目にやってたわけだ』

周子『まぁま、いいじゃん。スタッフの人にも褒められたし、ね?』

モバP『まぁ、そうだな』



周子『うわ~本当に綺麗だね。あ、そうだ。地元にも夜桜の名所あるんだー。Pさん、今度行こうよ?』

モバP『いつか、な。いつになるかはわからないけど』

周子『Pさん、はい』

モバP『あ……団子か』

周子『花見と言えば? って感じでしょ?ふふっ』


モバP『……』

周子『あれ、どしたん?物憂げなあたしに見とれてた?』

モバP『どこに物憂げな要素があったんだよ。……そうじゃなくてさ、顔』

周子『かお?』

モバP『そ。撮影の時とは違ってなんだか表情豊かだな、って』

周子『そらそうよ。おすまし顔はお仕事用! だってPさんは笑顔のあたしの方が好きでしょ? あたしも笑顔のほうが好きだしー♪』

モバP『……』

周子『あ、今のはドキッとしたでしょ?シューコちゃん一本取った?』

モバP『……ああ、一本取られたよ。はぁ……団子もう一本くれ。取られた一本は取り返さないとな……って、なんでそう言ってから食いだすんだ周子!ちょ、ちょっと残しといてくれ!』





モバP(勘違いされるようなやり取りをしているのでは……?)




『第4回総選挙第1位』あのプロダクションのエースがスキャンダル発覚!?』

モバP『やばいと思ったが性欲を抑えきれずに周子とイチャイチャした』

モバP『当時は若く、女性が必要でした。たった一度の過ちで2度と同じ過ちは致しません』




社長『クビだクビだクビだ!』

モバP『』






――――じゃあまず、年齢を教えてくれるかな?

モバP『24歳です』

――――じゃあ働いてるの?

モバP『無職です』

――――あっ、ふーん……


モバP「ああああああもうやだああああああああああああ!!」バンバンバンバン

モバP「ダイナモ感覚!ダイナモ感覚!YO!YO!YO!YO!」

モバP「幻か~い?」

モバP「ノノンノンノンノンノンノン本物ぉ~イェ~エー!」バンバンバンバン








「おい見ろ、周子ちゃんのところのプロデューサーおかしくなっちゃったぞ」ヒソヒソ

「きっと嬉しすぎて混乱してるんだろ。そっとしておいて差し上げよう」ヒソヒソ

「何やってんだあいつ……」ヒソヒソ





「ちょ、誰か止めろ!頭から血が出てるぞ!」







ワー ワー






――――――――――――
―――――――――
―――――――


京都ー。京都でございます。



プシュウウウウ

モバP「やっとついた。こっちあっつぅ……」

周子「そりゃ、京都はそういう土地だしね~。夏暑いのはしかたないよ」

モバP「今日は親御さんいるんだよな?」

周子「まあね~。さすがに前と状況も違うし、シンデレラガールの娘を一目見たいって熱烈な電話もくれたし♪」

モバP「ならいいんだけど……」

周子「どうせここ数日だけでしょ?お休みあるの。愛梨ちゃんとか蘭子ちゃんとか凛ちゃんが忙しかったの見てるし」

モバP「まぁそうなるだろうな。しばらくは寝る暇も惜しんで仕事してもらうと思うから、ゆっくり休んでほしい。……ところで、だ?」

周子「ん~?」



モバP「気になっていたんだけど、どうして俺も一緒に来る必要があったんだ?折角の家族水入らずでオフ捻出してやったのに、俺を呼ぶ必要あったのか?」

周子「まあね~。今回は両親ともに、Pさんとは会いたがってるよ」

モバP「な、何故?」

周子「教えな~い。ま、ヒントをあげるとしたら、電話した時に決まったことなんだよね~。わたしがPさんのこと話したら、『一度会わせてくれ』って」

モバP「……し、仕事関係で何か言われるのかしら、俺」

周子「いや?別に仕事は関係ないし、とりあえず一度話がしたいみたいだよ?ほら、行こっ?」

モバP「お、おい!手を引っ張るなって!」


モバP「……」ゲッソリ

周子「お疲れ様。ジュース飲む?」

モバP「あ、ああ。頂くよ。んぐっ…………ぷはぁ」

周子「お~、いい飲みっぷり」

モバP「なぁ周子。なんでお前の親御さん、お前との挨拶おざなりにして俺に質問攻めを浴びせてきたんだ?」

モバP(しかも質問が『周子のどこがいいんだ』とか『周子をこれからも大切にしてくれるか』とかそういう方向性のばっかり……)

周子「さぁね♪」

モバP「あ、お前その顔は何か知ってんだろ?……まぁ、いいけどさ。怒られたわけじゃないし」

周子「そうそう。にしても、久しぶりに帰ってきたからって店番させられちゃあねぇ」

モバP「お前、俺の手を引っ張って走りやがって。おかげで共犯だ」

周子「大丈夫だって!いまのあたしは和菓子屋の娘じゃなくて、凱旋を果たしたアイドル、Pさんの周子ちゃんだからさ♪」

モバP「……!あのな、周子。外でそういう言い方は……」






「あ―――っ!しゅ――こちゃんだ!」








モバP「!?」ビクゥッ


「テレビで見たことあるもん!しゅーこちゃんでしょ?」


周子「そうだよ~。テレビ見ててくれてるん?うれしいなぁ」


「うん!学校のみんなも見てるって言ってるよ!かわいいって!」


周子「ありがとうね。……そだ、サインあげる。何か書いても大丈夫なのある?」


「えっと……じゃあ、これ!」


周子「ん、わかった。…………ほら」サラサラ


「わー!ありがとー!」


周子「こちらこそ、いつも応援してくれてありがとうねー」


「そっちのお兄ちゃんは~?有名な人~?」


モバP「いや、俺は……」


「違うの~?じゃあ、誰~?しゅーこちゃんの恋人~?」


モバP「ぶっ!」

周子「…………ん~」


ギュッ

周子「まあ、そんな感じかな~」

モバP「しゅ、周子!」


「わー!らぶらぶなんだー」


周子「そそ。だから、今日はここでお別れやな~。じゃあね!」フリフリ


「うん、じゃあね!テレビで応援してるからー!」タタタタッ






周子「ふふっ、子供は純粋でかわええなぁ……あれ、Pさん?どうしたん?」

モバP「……いや、なんでもない。なんでもないぞ」

周子「ねぇ、このまま腕組んでここら辺散策しようか?折角だし」

モバP「ダメだって。離せ」

周子「ちぇー」パッ




モバP「……」







モバP(周子との今までの付き合いだって週刊誌なんかにバレたらグレーゾーンだった……)

モバP(それに加えて今の周子の態度!そういうものに対しての警戒心なんて微塵も感じられない……)

モバP(まずい……これは非常にまずい。だからといって言って聞かせても彼女には暖簾に腕押しだろう)

モバP(ならばどうするか……?非常に難しいが、やるしかない)



モバP(周子に気付かれないように徐々に距離を取るしかない……!それがプロデューサーとしての最善の策のはずだ!)




―――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――



モバP「……」カタカタカタカタ

ヒョコッ

周子「Pさん」

モバP「……」カタカタカタカタ

周子「お腹すいたーん」

モバP「……」カタカタカタカタ

周子「Pさん、お腹すいたって」



モバP「……ん?ああ、周子か」

周子「その資料見た感じ、もうちょっとで一区切りでしょ?終わったらご飯食べに行こうよ!」

モバP「……えと、お金やるからどこかで食べてきていいぞ、ホラ」

周子「え、なんで?」


モバP「いや、これが終わってもまだやることがあるんだ。それでちょっと出かけなくちゃいけないから」

周子「そっか。じゃあしょうがないね」

モバP「てことでホラ。多めに渡すから、折角だから他の子にもお土産でも買っていってやってくれ」

周子「ん……やっぱいいや」

モバP「そうか?」

周子「うん。Pさんと食事に行くわけでもないのにお金貰うのはおかしいしね。フレちゃんでも誘ってどこか行くことにするよ」

モバP「わかった。じゃ、また今度な」

周子「うん、じゃね~」ヒラヒラ




モバP「……こんな感じだろうか」


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――――――――――――――――――


周子「Pさん、ねぇ見てみて」

モバP「おー、良く似合ってる。でも服を見せるのは撮影終わってからにしてくれ。ほら、カメラマンさん待ってるだろ」

周子「……なんか、つまんない反応」

モバP「なぬ?」

周子「だって水着だよ?前のPさんだったらチラチラ見たりして顔赤くしてたのに」

モバP「こらこら、他のスタッフさんもいるんだから滅多なことを言うんじゃない」

周子「ほら、その反応!前だったらもっと慌ててたし!」

モバP(慌てたら怪しい雰囲気に見られそうだから必死に我慢してんだろ!)


モバP「はは、何を言っているんだまったく」

周子「……まぁいっか。撮影終わるまで待ってくれるでしょ?」

モバP「……あ、えと。これからちょっと行かなくちゃいけないところがあってな」

周子「え~」

モバP「すまんすまん、あとで何か……買って行ってやるから」

周子「そうじゃないんだけどな~」

モバP「じゃ、じゃあそういうことだから!ごめんな!」


タッタッタッタ





周子「……」

――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――



ガチャ

モバP「お疲れ様です、って、誰もいないんだけどな」

周子「収録長かったしね~」

モバP「まあ、忙しいのはいいことだけどなぁ。流石にあそこまで長引いちゃうとしんどいな」

周子「そだねぇ。……あっ、そうだ。ねぇ、Pさん。明日オフだよね?」

モバP「ん?ああ、お前は久しぶりのお休みになってるな」

周子「えーとそうじゃなくて、Pさんも休みになってるよね?」

モバP「まぁ、一応はな」

周子「折角休みが合ったんだから出かけようよ!」

モバP「……なんで?」

周子「なんでって……偶の休みだしいいかと思って。それにほら、Pさん最近付き合い悪いじゃん?」

モバP「いや、どこがだよ」

周子「だって最近あんまり食事連れて行ってくれないし?前より仕事ついて来てくれることも減ってるしね」ジトッ

モバP「ぬ……」

モバP(気付いてたのか……いや、我慢我慢。スキャンダルになるよりはまだマシだ)


モバP「そんなことないって。最近はお前のおかげで忙しいからな。単に予定が合わないだけ」

周子「そう?」

モバP「そうだよ」

周子「そうかなぁ……ま、いっか。話戻すね。予定が合わないからこそ、オフの日くらい一緒に過ごさない?ってわけ」

モバP「う~ん……」

周子「ね?いいでしょ?」ジッ

モバP「!」

モバP(ぐっ……あれは周子が結構な頼みごとの時にしか使わない『上目遣い+不安そうな顔』……あいつ、俺の趣味をわかってやがる。だがしかし……屈してはいけない!)









モバP「……だ、ダメだ」

周子「……え?」

モバP「ただでさえ少ない休みなんだから、俺なんかと遊んでないでしっかり休んでくれ」

周子「や、でも」

モバP「でももヘチマもない。それに、俺も明日は予定あるんだ」

周子「……」

モバP「というわけで、明日は無理ってことで。ホラ、送ってくから。……周子?」

周子「……ん、わかった」

モバP「ちょっと待ってろ、車用意するから」タッタッタ











周子「……アホ」










モバP「……ん~」カタカタカタカタ

モバP(最近、周子と距離を取ってみたけど……)

モバP(こんな感じでいいんだろうか?心なしか最近あいつ元気ないって話も聞いてるけど……)

モバP(……いやいや、何を考えてるんだ俺は!このくらいが適切な距離だって業界では一番言われてるから)





ピロロロ ピロロロ

モバP「……ん?メールか。差出人は……周子?なんだ、あいつ。わざわざメールなんて使って」



『待ってるから』




モバP「しかも本文これだけかよ……なんだっちゅうねん」


ガチャ


ちひろ「あ、プロデューサーさん。お疲れ様です。えと、聞きました?」

モバP「お疲れ様です。聞きましたって……何のことでしょう?菜々さんが居酒屋でビール飲んで写真撮られたことですか?」

ちひろ「ち、違いますよ!それはどうにかもみ消したじゃないですか!そうじゃなくて、周子ちゃんの事です」

モバP「周子の?」

ちひろ「ええ。今日、お休みするらしいですよ。体調を崩してしまったみたいです」

モバP「え、初耳なんですけど」

ちひろ「やっぱりですか……わざわざ事務所の番号にかけてきたからどうしたのかなって思って。もしかして喧嘩でも?」

モバP「いや、そんなはずは……」

ちひろ「まあ、周子ちゃんとプロデューサーさんの仲についてはそこまで心配してませんけど」

モバP「な、何のことでしょう?」


ちひろ「とぼけちゃってぇ……社内では有名ですよ?周子ちゃんとプロデューサーさんは特別仲がいい、って」



モバP「ファッ!?」

ちひろ「まぁ、くれぐれも週刊誌に載っちゃうようなことはないようにお願いしますね。それさえ守ってくれれば、仲良きことは美しきかな、ということで!」

モバP「は、ハハァ……」

モバP(思ったよりも状況悪かった……早急に対策を練らねば)

―――――――――――――――



モバP「……この部屋、だよな」

モバP「よく考えたら周子の部屋に入るのは初めてだな。やべ、ちょっと緊張してきた……よし」ポチッ



ピンポーン


モバP「……」



ガチャ



周子「…………Pさん」

モバP「お、周子。体調は平気か?」

周子「……」

モバP「……?周子?」

周子「……ん。ちょっと、ダメ、かも。とりあえず入ってよ」

モバP「ん、ああ。じゃ、お邪魔します」



モバP「……結構綺麗にしてるんだな」

周子「さあね。どうだろ」

モバP「さあねって、お前……まぁ、いいや。ほら、食べやすいもの買ってきたんだ。リンゴとか、ウイダーとか。何か食うか?」

周子「いや、大丈夫」

モバP「そっか……」

周子「……」

モバP「……その、さ。風邪、そんなに大したことなさそうでよかったよ。お大事にな。俺、行くから」





ギュッ



周子「待って」

モバP「周子?ちょ、手を握るのは……」

周子「冷たいよね」

モバP「え?」

周子「なんだかさ、思うんだ。仕事でも、普段でも。最近、Pさんあたしの事避けてるよね?」


モバP「……そのことについてなんだけどさ、俺も話があるんだ」

周子「……」

モバP「避けてる、って言ったよな?答えで言えば、イエスってことになると思う」

周子「っ」

モバP「でも、誓って言えるよ。別に、周子に不満があるとか、まして嫌ってるとか、そういう話じゃないんだよ」

周子「……」

モバP「人気、出てきたよな。特に最近。俺は、万が一にもその人気とか、今の勢いをなくしてしまうようなことはしたくないと思ってるんだ」

周子「それ……って」

モバP「プロダクションでも言われたんだ。『仲がいい』って。きっと、それはいいことなんだと思う。でも、それが変な形で世間に伝わるようなことがあった時に、きっと俺たちは後悔することになると思うんだ」


モバP「きっとさ、今までが近すぎたんだよ。担当のアイドルとの距離感を見誤ったのは俺の責任だ」

周子「……なに、それ」

モバP「周子が、えと……友達……みたいなさ、気安い感じで接してくれてるから。多分、俺が舞い上がっちゃったんだ」

周子「……」

モバP「俺は、担当アイドルが仲良くしてくれるだけでちょっといい気になっちゃうような単純な男なんだよ。もし最近、俺の事で悩むことがあったんなら、それは俺が悪いんだ。ごめん」

周子「……」

モバP「適切な距離を取るようにしよう、周子。もう、俺が勘違いしちゃうような……冗談は、よしてくれ」




周子「……」

モバP「……周子、手を、放してくれないか」

周子「……Pさんはさ、勘違いしてるよ」

モバP「勘違い……?」

周子「そう。Pさんは大馬鹿だよ。それを今から、教えてあげる」

モバP「は?一体、何を……」


グイッ

モバP「っ!?」

周子「んっ……」

モバP(ち、か……近い。今、なに……を……)

モバP「ん、んんっ!」



ドンッ




周子「……ふふっ、トップアイドルとのキスの味はどう?Pさん」

モバP「はぁ、はぁ……お、お前!なんてこと、を……」

周子「思ったんだ。Pさんアホやから。こうしてくれないと気が付かないって」

モバP「え、それは……」

周子「……好き、だよ」


モバP「」



周子「あれ、フリーズしちゃった?ま、いいや。これで全部説明つくよね?」

モバP「……で、でも!そうなる理由が」

周子「理由なんて関係ないよ。大切なのは、あたしがPさんのことを好きで、Pさんに避けられてシューコちゃんが傷ついたってこと」

周子「Pさん、あたしは、本気でPさんのことが好きだよ。Pさんは、私の事嫌い?」

モバP「……嫌いじゃ、ないよ。でも、さっきも言ったようにお前はアイドルで」

周子「アイドルも大切だよ?毎日楽しいし。でも、人を好きになるのはそれとは別だよね?」

モバP「それは、別、だけどさ」

周子「あたしはさ、Pさんに本当に感謝してるんだ。前も言ったと思うんだけど、家追い出されて、もう少しで路頭に迷うところだった私を拾ってくれて、アイドルにしてくれてさ。本当に、感謝してる……」

モバP「周子……」


周子「それで、ね?そん、な……男の人……きっと……私の人生に、ふたり、は……いないと思うから……」グスッ

モバP「……」

周子「P、さん……それでも、好きになるっ、て……ダメっ……か、な……?」ポロポロ

モバP「……俺は…………」





ギュッ


周子「!」



モバP「ごめんな。女の子にここまで言わせて、俺は男として失格だよな」

周子「……」

モバP「で、今からプロデューサーとしても失格になる。顔、あげてくれ」

周子「え?……あ」




チュッ

モバP「……なあ、周子。お前の泣いたところ、初めて見たよ。やっぱり、周子は笑ってる方が似合う」

周子「……」

モバP「俺もきっと、お前の事が好きだったんだよ。だから、俺なんかでアイドル活動に支障が出てほしくなかったんだ。……と言えば、許してくれるか?」

周子「……ダメ。足りない」ギュウウ

モバP「アイドルを全力でやって、それで、終わったら結婚しよう。そのころには俺は魅力のないオッサンになってるかもしれないけど、それでも、その時周子がいいって言ってくれたら」

周子「……ホンマに?」

モバP「ああ。男に二言はない」

周子「ホントのホント?」

モバP「ああ」



周子「……」

モバP「……周子?」





周子「やったーん♪」






モバP「ファッ!?」





周子「いやぁ、ドキドキしたよ。シューコちゃんの告白、断られちゃったらどうしようって」

モバP「え、おま……さっきまで泣い……ええ?」

周子「Pさん、お腹すいたーん♪ねね、ご飯食べに行こ?」

モバP「は?でも、お前体調が」

周子「あれ?まぁ病は気からってやつ?Pさんの言葉を聞いて治っちゃったかな!」

モバP「……一種の仮病、だったのか。しかもお前、メールまで出して」

周子「最近のPさんじゃお見舞いに来てくれるかもわからなかったしね~」

モバP「は、ハハァ……」

周子「ねぇ、さっきもPさんが言ってくれたから言うけどさ、あたし、引退するまでは全力でアイドル頑張るよ。なんだかんだ、今の仕事も楽しいしさ!」

モバP「おう」

周子「だから、これからのあたしも、Pさんに一番そばで支えてほしいんだ。だから、ご飯行こう?」

モバP「何が『だから』なんだよ……」

周子「Pさんに避けられて、シューコちゃん傷ついちゃったな~」

モバP「ぐっ……わかったよ。どうやら、俺はお前には敵わないようだ。ホラ、さっさと準備してくれ」

周子「は~い♪」




モバP(……これでよかったのか、と言われれば素直にそうとは言えないかもしれないが)

モバP(きっと、これも一つの道なんだろう。そう思うことにしよう……)

モバP(周子のためにもうまく、やろう。……とりあえずちひろさんに相談しよう……)


周子「ねぇね、Pさん!」

モバP「なんだ?もう準備が……」







チュッ



モバP「……っ!お前……」

周子「ふふっ、二人は幸せなキスをして終了ってね!ねぇ、Pさん」





周子「こんなかわいいアイドル捕まえたんだから、絶対離しちゃだめだよ!いつまでも、ずっと一緒にいようね♪」







終わり








最近周子が可愛いので初投稿です。
無課金でSSRが出るわけないだろ!いい加減にしろ!
読んでいただいてありがとうございました。

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