紗枝「舞台裏の事故」 まゆ「天国にいったスタッフさん」 (42)

アイドルマスター・シンデレラガールズのSSです

―注意―
わずかですが流血描写があります
紗枝ちゃんの方言を含めキャラが崩壊しているかもしれません

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―舞台裏廊下―



P「不慮の事故か…」

P「そりゃあ事故なんてどれも不慮のものだ」

紗枝「あの…プロデューサーはん」

P「どうした、紗枝」

紗枝「事の重大さは、うちも、まゆはんも…」

紗枝「重々理解しとるつもりどす」

まゆ「……」

紗枝「簡単に受け止められる重さやないと、自覚もしとりますゆえ」

P「そうか…」

ピピピ

P「っと電話…ちひろさんからか」

P「俺はちひろさんと話してから行く」

P「2人は先に医務室へ向かってくれ」

まゆ「…はい」

紗枝「ほな、まゆはん行こか」

P「…」

ちひろ「プロデューサーさん、様子はどうです?」

P「今、スタッフさんが運ばれた医務室に向かってます」

P「それから、簡単にあらましを聞きました」

P「まず、紗枝ですが」

P「どうも紗枝が駄目押ししちゃったみたいです」

ちひろ「駄目押し…悪く言えばとどめってことですか」

P「そうですね…」

P「それから、まゆも」

P「スタッフさんに、相当押し付けてたようです」

ちひろ「あの2人がそんな…」

ちひろ「まあ、事情はわかりました」

ちひろ「こんなことを言うのもなんですが…」

ちひろ「根回しは任せてください」

P「…助かります」

ちひろ「それからプロデューサーさん」

P「なんでしょう」

ちひろ「医務室に運ばれる被害者が自分だったら良かった」

ちひろ「そう、考えてませんか?」

P「………」

ちひろ「…私はあの2人が、どんな子か知ってるつもりです」

ちひろ「くれぐれも、あの2人の前では」

ちひろ「そんなことを口走らないようにしてくださいね?」

P「…気を付けておきます」

ピッ

P「…ふう…」

P「どうして…」

P「どうして…こんなことに…」

―数分前 舞台袖―



まゆ「もう少しでまゆ達の出番ですねぇ」

紗枝「そうやね…」

まゆ「お客さんの声、ここまで届いてきますねぇ」

紗枝「そ、そうやね…」

まゆ「…?」

まゆ「どうしたんです紗枝ちゃん…顔色が良くないみたい」

紗枝「………」

紗枝「まゆはん、実はうち…」

紗枝「………」

まゆ「…?」

まゆ(なんでしょう…こころなしかモジモジしてるような)

紗枝「実はさっきなあ、控え室居ったんやけど…」

紗枝「お水やらお菓子やら、ぎょうさん用意して貰とったやろ?」

まゆ「ええ…」

紗枝「せっかくやし、なんか摘もうとしてな」

紗枝「ちょこれいと、貰おうとしたんよ」

紗枝「そしたら、床に水が零れとったみたいでな」

紗枝「うち気付かんと、滑ってしもたんよ」

まゆ「そんな…大丈夫なんですか!?」

紗枝「まゆはんは優しおすなあ」

紗枝「大丈夫、尻餅は突いてもうたけど怪我はしとらんよ」

まゆ「良かったぁ…」

紗枝「でもなあ…」

紗枝「そん時な、ちょうどちょこれいとを包みから出したところやってな」

紗枝「それで、ちょうど…」

紗枝「ちょこれいとの上に尻餅突いてしもたんよ…」

まゆ「チョコの上に…あっ…」

紗枝「そう…」

紗枝「あんすこ…汚してしもたんよ」

まゆ「えっ…じゃあ今もしかして」

紗枝「うん…あんすこ履いとらんのよ」

紗枝「うちの担当、踊りはそれほど激しないけどな」

紗枝「それでもすかあとやから、捲れてまう危険もある」

紗枝「そんなとき、ちょこの染みたあんすこ見られてもうたら…」

紗枝「まるでうちが粗相してもうた風に見えてしまうやろ?」

まゆ「ですねぇ…」

紗枝「もしそないなったら、いくら言い訳したかてあかん」

紗枝「誰も信じてくれひんまま、みんなに泥塗ることになる」

紗枝「それやったら…」

紗枝「まだ、素の下着見られる方がましやから…」

まゆ「そんな…」

紗枝「元より捲れる心配はあんまないし」

紗枝「それに、遠目にはあんすこと下着の違いなんてわからんやろしな」

まゆ「それでも」

まゆ「それでも、もしパンツ見られちゃったら…」

紗枝「うん、いま、えろう恥ずかしい」

紗枝「まあ、プロデューサーはんが予備のを取りに行ってくれとるんやけどな」

紗枝「でも、会場広いし駐車場まで離れとるし」

紗枝「うちの出番までに間に合うか…」

まゆ「………」

まゆ「紗枝ちゃん」

紗枝「うん?」

まゆ「…!」

ヌギッ

紗枝「!?」

まゆ「…んっ…」

ヌギヌギ

紗枝「まゆはん!?」

まゆ「よいしょっと…んん…」

まゆ「…これでよしっと」

まゆ「紗枝ちゃん」

まゆ「まゆのアンスコ、履いてください」

紗枝「えっ!?」

紗枝「けど、それやったらまゆはんが…」

まゆ「まゆと紗枝ちゃんだと、サイズそう変わりませんし」

まゆ「まゆの出番の方が紗枝ちゃんより後ですから」

まゆ「プロデューサーさんは紗枝ちゃんの出番に間に合わないかもしれない」

まゆ「でもまゆの出番には間に合うかもしれない」

まゆ「だから、紗枝ちゃん」

まゆ「まゆのを渡しますから、履いてください」

紗枝「まゆはん…」

まゆ「まゆだって、女の子です」

まゆ「パンツ見られちゃう恥ずかしさはわかってるつもりですから」

まゆ「紗枝ちゃんに味わわせちゃうわけにはいきません」

紗枝「まゆはん…おおきに」

まゆ「それじゃあ、どうぞ」

ホカホカ

紗枝「…んっと…」

紗枝「よいせ…よいせ」

紗枝(あ、温い)

紗枝(まゆはんの温もりが伝おうてくる…)

紗枝(ほんま、ええ子やわあ…)

紗枝「んっ」

紗枝「うん…ちょうどええわあ」

まゆ「それは良かったです♪」

スタッフ「小早川さーん、準備お願いしまーす!」

紗枝「あっ、ちょうど出番やなあ」

まゆ「ギリギリセーフでしたねぇ」

紗枝「それじゃあ、うち行って来るわ」

まゆ「はい、頑張ってください」

まゆ「さて…と」

まゆ(…勢いで脱いじゃいましたが)

フリフリ

まゆ(こうも裾が広がっちゃってると)

まゆ(見えちゃわないか急に心細くなってきましたね…)

モジモジ

まゆ「………」

まゆ(この辺はスタッフさんも少ないですが)

まゆ(それでも視線を感じちゃいますねぇ…)

まゆ(紗枝ちゃんのステージも見ておきたいですが)

まゆ(一旦控え室に戻るとしますか)

まゆ(プロデューサーさんも、そっちに来るかもしれませんし)

―控え室―



まゆ(あら…?)

スタッフ「あっ、お疲れ様です!」

まゆ「お疲れ様です♪」

スタッフ「すみません、水が零れてるのに気付きませんで」

スタッフ「今拭いてますので狭くて申し訳ない」

まゆ「いえ、平気ですよぉ」

スタッフ「あ、もし着替えとかあるのでしたら出てますから」

まゆ「大丈夫です、ちょっと寄っただけですから」

まゆ(控え室に男のスタッフさんと2人きり…)

まゆ(まあ、もっと大勢の中に居るよりは…)

まゆ(…恥ずかしさで、ちょっと喉が渇きましたね)

まゆ(まゆも、お水いただこうかしら)

まゆ(スタッフさんの傍を通ることになっちゃうけど…)

まゆ「………」

まゆ(スタッフさん、四つん這いになって床を拭いてくれてますね)

まゆ(…中、見えちゃいませんよね…?)

まゆ(時間に余裕だってないですし)

まゆ(さっと行ってさっと飲んじゃいましょう)

まゆ(平静を装って…平静…平静)

まゆ「………」

スタスタスタ

スタッフ「あっ、その辺はまだ…」

まゆ「えっ?」

ツルン

まゆ「あっ…」

まゆ「きゃっ!」

スタッフ「危ないっ!」

ドンガラガッシャーン!

まゆ「あいたっ!」

ドスン ギュムッ

!?……!

まゆ「あいたたた…」

……!…!………!

まゆ「うぅ…」

……っ……!!

まゆ(うかつでした…早足で歩いたばっかりに)

………!

まゆ(滑って尻餅を突いちゃうなんて…)

………………

まゆ(…?)

…っ…

まゆ(何か聞こえますね)

………

まゆ(小さな声ですが、すぐ近く…まゆの下から)

……

まゆ(そういえば、思いっ切り尻餅を突いちゃったのに、痛くない…)

……

まゆ「………っ!」

まゆ「あ…あぁ…!」

まゆ(な、なんてことでしょう)

まゆ(ま、まゆの…まゆのお尻の下に)

まゆ(スタッフさんのお顔が!)

…んふっ…!

まゆ「んんっ!」

まゆ(スタッフさんの呼吸が、まゆの…まゆに!)

まゆ「や、やだっ!」

ギュゥゥゥゥ!

んーーーーっ!!

まゆ「だ、駄目…」

んーっ!……んっ…っふ…

まゆ「…息しちゃ駄目ぇ…」

………っ!

まゆ「そこは…プロデューサーさんの…ためのぉ…!」

……ん……ふぅ……

まゆ「やぁぁぁん………」

………

ギュムムム

………

………♪

―舞台袖―



紗枝「ふぅ…」

紗枝「お疲れ様です~」

紗枝(いや~、まゆはんのおかげで助かったわあ)

紗枝「…?」

紗枝(で、そのまゆはんが居らんようなっとる…)

紗枝(控え室に戻ったんかいな)

紗枝(喉乾いたし、うちも一旦戻ろか)

―控え室―



まゆ「……んう……」

紗枝「お、まゆはんここに居ったんやあ」

まゆ「さ、紗枝ちゃあん…」

紗枝「…どないしたん、そんな涙目でへたってしもうて」

紗枝「…ん?」

紗枝(まゆはんの下に…誰か居る!?)

まゆ「ま、まゆ…まゆは…」

まゆ「腰が…抜けちゃってぇ…」

紗枝(まゆはん、スタッフさんを尻に敷いてしもとる!?)

紗枝「わかった、手ぇ貸すさかい掴んどくれやす」

まゆ「はい…」

ギュウッ

まゆ「んっ…」

紗枝「行くよ、せーのっ」

紗枝「よいしょぉー!」

スタッ

紗枝「さて、立ち上がれたんはええけど…」

まゆ「………」

スタッフ「…ふぇ、えふぇへへ…」

まゆ「ご…ごめん…なさい」

まゆ「痛かった、ですかぁ…?」

まゆ「鼻血も…こんなに」

スタッフ「いゃぁ…だいりょーぶ、らいりょーう…ふぇふふへへぇ…」

紗枝「あかん…完全に正気やないわあ…」

紗枝「両目とも、はぁとまぁくになってしもとる…」

まゆ「うぅ…」

まゆ「まゆが…ずっとお尻に敷いちゃってましたから…」

紗枝(よりにもよって、スタッフさんの顔を)

紗枝(…よりにもよって、あんすこ履いてないときに)

スタッフ「うぇへ…うぇへへはぁぁ…」

紗枝(そらまあ、こうなってまうわなあ…)

まゆ「ごめんなさい…どうしましょう」

紗枝「どないもこないも…起こってしもた事はしゃあない」

まゆ「ですよねぇ…」

紗枝「とりあえず、うちの次の出番まだ先やから」

紗枝「まゆはんは準備に向こうてくれやす」

紗枝「ここは、うちが引き受けるさかい」

まゆ「紗枝ちゃん…ごめんなさい」

紗枝「ああ、そうや」

まゆ「うん?」

紗枝「借りとったあんすこ、返さなあかんな…」

紗枝「結局プロデューサーはんも間に合わんかったようやし」

まゆ「そうですね…」

紗枝「ほな、ちょう待ってや」

ヌギッ

紗枝「んっ…」

ヌギヌギ

紗枝(なんやら…脱ぎにくおますなあ…)

紗枝(舞台に上がっとったせいで、汗でも吸うたんやろか)

紗枝「よっと…あっ」

グラッ

まゆ「あっ!」

ドスン!

………!!

紗枝(し、しもた!)

紗枝(体制崩して倒れてしもうた!)

まゆ「さ、紗枝ちゃん!」

紗枝(またよりにもよって…)

紗枝(スタッフさんの、お顔の上に…!)

ズシッ

紗枝「す、すんません!」

紗枝「すぐ立ち上がりますさかい」

紗枝「んっ」

ギュウウウ

紗枝(あかん)

紗枝(脱ぎ掛けやったあんすこが引っ掛かって、足かせみたいになって)

紗枝(足がうまく動かへん…!)

紗枝「ん…っ」

ギュムッギュムッ

まゆ「紗枝ちゃん、まゆの手を!」

紗枝「まゆはん!」

ファイトーイッパーツ!

紗枝「あ、あの…大丈夫ですやろか…?」

スタッフ「………」

紗枝(ああ…今度こそ気ぃ失うてしもた)

紗枝(ぎょうさん鼻血に塗れたまんまで…)

P「…はぁ…はぁ…」

まゆ「プロデューサー、さん…」

P「すまん、遅くなった」

P「アンスコ持って来た…ぞ…?」

紗枝「ぷ、プロデューサーはん…堪忍やで…」

P「どうした、その人…一体何が…」

―数分後 舞台裏廊下―



P(出番の近かったまゆをステージへ急がせて)

P(紗枝から何が起こったか断片的ではあるが把握した)

P(まったく…)

P(不慮の事故にもほどがある…)

P(…愚痴っていても仕方ない)

P(俺も医務室に向かわなければ)

―医務室―

P「申し訳ありませんでした!」

2人「すみませんでした!」

スタッフ「いや、大丈夫ですから!」

スタッフ「こちらこそ、みっともない姿を見せちゃいました」

スタッフ「私ならもう平気です」

P(そうは言っても、無理をしているのはわかる)

P(脇のゴミ箱にあるティッシュの量が尋常じゃない)

P(鼻血はもう止まっているようではあるが)

P(かなりの量が出たのは間違いない)

P「後日改めて謝罪に伺います」

スタッフ「いえ、そこまでしなくて大丈夫ですから!」

P「しかし…」

スタッフ「私だって、こんな仕事してますから」

スタッフ「アイドルの方々や関係者に迷惑はかけられません」

スタッフ「もちろん、この事故のことだって公表しませんから安心してください」

P「…そう言っていただけると助かります」

スタッフ「とにかくです」

スタッフ「私ならもう元気ですから」

スタッフ「それに、何よりも…」

スタッフ「お2人とも、けがなくて良かったです!」

こうして、波乱の出来事は落ち着いた

流血沙汰でありながら、これは表には出てこなかった

ちひろさんが念のため雑誌社に手をまわしてくれていたのもあるが、

何より当事者のスタッフがどこにも公表しなかったからである

舞台裏の事故は、ひっそりと幕を下ろしたのだった



尚この後に、被害者が自分であれば良かったとプロデューサーが呟いてしまい、

それを聞きつけた2人に顔を潰されることになるのだが、

それはまた別のお話…

以上、完結です

こんな重圧に耐えられる人は居るのかと思いながらかきました

(尚自分は耐えられそうにありません)

ここまで読んでいただきありがとうございました

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