シックス・イヤーズ・レイター【名探偵コナン】 (22)




名探偵コナンの未来SS

都合よく設定を改変しています。パラレルだと思って下さい

主人公は晴れて私立探偵となった新一です





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登場人物紹介 1

工藤新一
米花町の私立探偵

阿笠博士
米花町の発明家

灰原哀
帝丹中学に通う少女

米原桜子
家政婦。苗子の幼馴染

三池苗子
本庁刑事部の警部補。桜子の幼馴染

榎本梓
喫茶店ポアロの従業員

安室透
喫茶店ポアロの従業員。小五郎の助手






カウンター・キッチンでは、赤いケトルが笛を吹いていた。灰原は、熟れた手つきで三人分のコーヒーを作り、向かい側に腰掛けた新一と阿笠に差し出した。それから、自分はキッチンに立ったままカップに口をつけた。

「サンキュ灰原」、「すまんのぉ、哀くん」、口々に礼をいう彼らに、彼女はなんでもないと首を振った。

「別に、いつものことだから。ここを喫茶店か何かと勘違いしている探偵さんには、特にね」

灰原のジトっとした目つきには、さすがの新一も苦笑した。元の身体を取り戻してから、かれこれ六年、とりわけ米花町に探偵事務所を開いてからの数ヶ月は、ほぼ毎日博士の家に入り浸っていた。そしてそこでは、毎度のように灰原がバリスタ役だった。






「しょーがねーだろ……自分で淹れるよりずっとうめーんだからよ」

「あら、なにか言った?」

灰原のにやっとした顔をみて、コイツ、聞こえてたな、と新一は思った。コーヒーはいつもと同じ、彼好みの濃いものだった。

「ところで新一」博士が読みかけのスポーツ紙から顔を上げた。「今日も依頼は入っとらんのか?」

「ああ、ここんとこしばらくなぁ」

新一は退屈の漂う息を吐いた。そしてズルズルと背もたれに身を預け、天を仰いだ。博士の家の高い天井がよけい広く感じられた。






「ま、あなたに名声があったのも、遥か六年も前の話だしね」と灰原が言った。「今じゃ世間から死んだものと思われているんじゃないかしら」

「これでも身体を取り戻したあとに何度か新聞に載ったんだけどな……」

「仕方ないじゃろう。今やこの辺りで探偵といったら、あの毛利くんなんじゃから」

新一は苦い顔をした。たしかに、博士の言うように、毛利小五郎の名は人口に膾炙して久しかった。彼の姿は、いまでもニュースや新聞で目にすることが多くある。あの、オールバックになでつけた髪も、嫌味なちょび髭も、脳天気な間抜け面も、忘れようにも忘れることの出来ないものだった。






「けど皮肉なものね」と灰原が言った。「眠りの小五郎といえば、かつて江戸川コナンだった頃のあなたが作り上げた、謂わば操り人形のような存在だったのに、あなたの糸を失った今でも、立派に活躍しているんだから」

「ああ」新一は、しかし、それが当然というような顔をした。「あのおっちゃん、どうも前からオレが工藤新一だってことに勘づいていたみたいだしなぁ」

「まさか、考え過ぎじゃろう?」

阿笠は驚いた。それは当然の反応といえた。もしも新一のいうことが事実なら、阿笠のよく知る"眠りの小五郎"の意味合いがまったく違ったものになる。

新一はそ知らぬ顔だった。

「さぁな。今更蒸し返すようなことでもねーし、真相は闇の中だけど」彼はひとつあくびをして、「実際、今じゃ名実共に本物の名探偵になっちまったからなぁ」






「あら。平成のシャーロック・ホームズさんもお手上げってわけ?」

中学生になった灰原は、見た目こそ大人っぽくなったものの、中身は相変わらずだった。ウェーブっけの落ち着いたミディアムヘアの奥には、新一をからかっているときが一番幸せというような笑みがある。

組織との闘いが終結し、彼女は宮野志保から灰原哀になった。新一は驚かなかった。彼女には、帰りを待つ家族もないのだ。

―――ずっとここに居ればいい。哀くんはもう、わしの家族じゃ。

そうして再び、灰原は博士の家で暮らし始めた。彼女はそこから人生を取り返すことにしたのである。今度はひとりきりじゃなく、博士や、歩美や、光彦や、元太達も一緒に。コナンには、自分が新一に戻ることで、彼らを見捨てていくような後ろ暗さがあったから、それが嬉しかった。

「別に、んなんじゃねーよ」






しばらく優雅にティータイムを過ごしていると、新一の携帯が鳴った。画面を確認すると、ここからほど近い自分の事務所の番号が表示されていて、ひと目で転送電話とわかった。留守の間も飯の種を逃さないようにという工夫である。

「はい、工藤新一です。あれ、苗子さん?」

電話をかけてきたのは、知人の三池苗子警部補だった。知り合ったころ新一はコナンで、彼女は交通部の婦警だったが、現在の彼女は本庁刑事部の捜査一課に配属されていた。

「はい、わかりました。そういうことなら一度お会いして話しましょう、詳細はその時に。今日これからですか? いえ、特に予定もないので大丈夫ですよ、はい。では米花町五丁目のポアロで待ち合わせましょう。着く頃にまた連絡しますから。それじゃあ」






「仕事の依頼か、新一?」

「ああ、内容はまだわかんねーが、そうらしい」

「よかったじゃない。せいぜいぼったくることね」

「知り合いの刑事さんの頼みだぜ、んなことできかっよ」

時針が十の目盛を通り過ぎようとしている。新一はカウンターの椅子から立ち上がった。コーヒーはからになっていた。

「じゃあオレはそろそろ戻るよ。博士も仕事しろよな」

「余計なお世話じゃよ。土日くらい休んでもバチは当たらんわい」

「何言ってるの。博士は今日家中の掃除よ」

「そ、そうじゃったのぉ……」

「それから工藤くん、夕食までには戻ってね。遅れるならちゃんと連絡すること」

「わーってるよ。じゃあなおめーら」

新一はビートルの隣に駐めてあった車に乗り込んだ。






米花町五丁目の小ざっぱりとした雑居ビルをドアガラス越しに見上げると、二階の窓に、毛利小五郎探偵事務所の文字が入っているのが見えた。そしてそこには小五郎の後ろ姿があった。きっと競馬のラジオ中継でも聞いているんだろうと新一は思った。

彼は近くの月極駐車場に車を駐め、車道をまたぎ、喫茶ポアロに入った。ウェイトレスの綺麗な女性が近寄ってきて、驚いたように目を丸くした。

「あら、工藤くんじゃない。久しぶりねぇ」

「梓さん、お久しぶりです」






「ははーん、さてはうちのコーヒーの味が恋しくなったのね」梓はにやりとした。

「安室さんのサンドウィッチもね」

「ふふふ。彼いま奥で仕事しているから、伝えておくわね。じゃあこちらへどうぞ」

店内にまだ苗子さんの姿もないようなので、新一は案内された奥の四人掛けの席についた。それからブラック・コーヒーを注文した。

運ばれてきたコーヒーに口をつけ、少し懐かしい苦味を愉しんでいると、若いウェイターがニコニコしながら近づいてきた。二階の事務所の助手もしている安室透だった。






「やあ工藤くん。久しぶり」

「ああ、安室さん。お久しぶりです」

「まったく、ダメじゃないか君は。一ヶ月も姿を見せないで。一体どこの店に浮気をしていたんだい?」

「仕方ないでしょう、僕の事務所は三丁目なんですから」

新一は苦笑した。

「そうだったね。はい、これは僕からのサービス」

安室は白い皿に並べられたサンドウィッチをテーブルに置いた。






「そんな、払いますよ」

新一は慌てて手を振ったが、結局は安室に押し切られてしまった。

「いいんだよ、僕も君が来てくれると嬉しいからね」

「そうよ。また大学の頃みたいに毎日うちに通いなさい。うちは何時間いてくれたって構わないんだから」いつの間にか梓さんがやって来て、ステンレスのコーヒー・ポットを新一に見せた。「コーヒーのおかわりはどう?」

「いただきます」

新一はコーヒーを飲んでサンドウィッチを食べた。



投下終わりです

なんか投下1回きりの立て逃げみたいになっててごめんね
ちゃんと続きかくのでもすこしまってください

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