魔法少女ダークストーカー 2スレ目 (223)

魔法少女ダークストーカー
魔法少女ダークストーカー - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414330789/)
前スレが落ちてしまったので、2スレ目です

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1466265732

大変長い間お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。

PCが壊れたり、PCを買うために職探しして、またその職場に慣れるまでの間に色々あったりと…時間を作る事ができませんでしたが
生活環境も仕事の方も大分落ち着いて来たので、更新を再開させて頂きたいと思います。

前回の更新からかなりの期間が経ってしまいましたが、引き続き本作にお付き合い頂ければ幸いです。

●もりびと

俺「えっと、とりあえず……その虚獣ってのは、一体何なんだ?」


神風「スピリット同様に、この世界の仕組みとして存在する…世界の免疫機能のような物です」

俺「ザックリとした判り易い説明だが、何だってまたそんな奴が……いや、待てよ?まさか……」


虚獣…その余りにも唐突な出現と、神風による説明により明かされるその存在理由。俺はまず、何故そんな物が現れたのかを考え…

言葉の途中で、その理由…と言うよりも今までの出来事を思い出して、ある可能性に行き着く。


ハル「私も……まさかとは思いますけど。でも…」

ディーティー「やれやれ…またこのパターンか」

俺「いや、お前が言うな!!」


ハル「それで…実際の所はどうなんですか?」

神風「虚獣も、スピリット同様に世界とリンクしているため…正確な情報は掌握出来ません。ですが…可能性の有無で言うのであれば…無いと断言も出来ません」

俺「ってー事は………」


カライモン「今回の当面の敵は、虚獣…そして、虚獣を背後から操っているのは……もう、言うまでも無さそうだね」


ここまでの会話で皆が理解を示し、カライモンの言葉に頷いて答える。

そして、皆の認識が纏まった所で……まるで見計らったかのように、周囲を暗闇が包み込み……

俺達は、その原因を確かめるべく窓の外へと目を向けた。


すると、そこには…


俺「なぁ…キョジュウのキョって…巨大の巨じゃなくて、虚構の虚だよな?」

神風「はい、その通りです。それと、大変言い難い事なのですが…あれはまだ、尖兵にあたる…その、虚獣の中でもまだ小型な分類の者です」

俺「………マジかよ」


都市まるごと一つを覆い、影を落す程の…巨大な白い鳥のような物。虚獣と呼ばれる存在が浮かんで居た。

●おおぞら

ユズ「一応聞いて置きたいんッスけど……たまたま散歩に来ただけとか…そう言うんじゃ無いんッスよね?」

俺を含め…各々が変身を行う等して、臨戦態勢に入る中…神風に対して、僅かな期待を込めて疑問を投げかけるユズ。

だが、その結果は……


神風「現時点で…既に、我々に対しての攻撃態勢に入って居ます。戦闘は避けられない…と、考えた方が良いでしょう」

ユズ「やっぱり…無理ッスか」

案の定、淡い期待を打ち砕く内容だった。


カライモン「では…戦闘に入る前に、可能な限りスペックを把握しておきたいのだが…何か特筆するような能力を持っているのかね?」

神風「まず、スピリットと同等の未来予測と…次に、耐性能力が大きな特徴でしょう」


カライモン「ふむ…未来予測は良いとして…耐性能力とは、具体的にどのような能力なのだね?」

神風「自らが受けた攻撃に対して耐性を作り出し…以降、その攻撃を無効化出来るようになると言う能力です」

カライモン「定番と言えば定番だが…それはまた厄介な能力だな」


神風「また、能力とは異なりますが…対峙する上で最も大きな問題となるのは、やはり…その質量でしょう」

カライモン「見ての通りの、あれだけの巨体を削り切るだけの戦力もさる事ながら…耐性を上回るだけの手段を用いる必要がある…と言う事だね」

神風「その通りです」


カライモン「しかも、あれだけの大きさでまだ小型……裏を返せば、あれよりも大型の物が後に控えている事が確定している…と来た物だ」

ディーティー「圧倒的な戦力差による消耗戦が待ち構えている…そう考えておくのが妥当だろうね」


俺「ってーか今更だが…そんな無茶苦茶な免疫が居ながら、何で今までの世界の危機に現れなかったんだ?」

ハル「それは多分…私達が居たからじゃ無いですか?」

俺「そりゃ結果論……いや、スピリットと同じように未来予測が出来る以上は、それも順当な判断だった…って事か。釈然としねぇなぁオイ」


と言った流れで、俺達の会話は締め括りに向かい…虚獣への距離が縮まる最中。


カライモン「………」

俺「どうした?まだ何か気になる事でもあんのか?」

何故か無言で考え込むカライモンに、俺は話しかけた。


カライモン「いや、本当にそれだけだったのだろうか…と思ってね。まぁ…今はまだ確証の無い憶測に過ぎないので、気にしないでくれ給え」

俺「だから、そう言う言い方だと余計に気になるんだが…って言っても、詳しく聞いてる時間はもう無さそうか」

カライモンが何を考えているのか、正直気にはなるのだが……俺も言った通り、それを問い質すだけの時間的余裕は無いらしい。


そう、当然と言えば当然なのだが…俺達の到着を、虚獣が大人しく待ってくれる筈も無く……

腹部の蓮の種のように窪んだ穴から、白い球体が射出され…それが俺達に向けて飛来して来ていた。

●へきれき

俺「作戦は…どうする?」


カライモン「まず未来予測を相殺するためにも、可能な限り神風君との契約による連携を展開。それと…」

俺「耐性能力にはどう対応するんだ?俺達の攻撃手段って、そんなに多くは無いよなぁ?」

カライモン「それに関しては、幾つか確認をしてからで無ければ結論を出す事は出来ない。まずは目の前の相手で確かめてみよう」


飛来する球体が流線型に変形し、速度を増しながら落下する中…俺達は神風との契約を行い、意識を共有する事で連携を取る。


カライモン『まずはユズ君…君の炎で奴等の戦力を削いでくれ給え』

ユズ『はいッス!』

軌道を変え…螺旋を描きながら収束して俺達の頭上へと迫り来る、虚獣から射出された流線型の物体。

それにを…カライモンの指揮の下、ユズが火炎の魔法で迎え撃つ。


次々と敵を飲み込み焼き尽くす、ユズの火炎。


その火力は、傍からは相手を全滅させるのに充分な物に見えたのだが…

群の奥に進むその最中、ある瞬間を境に…焼き尽くすどころか、焦げ目一つ残す事すら出来なくなってしまっていた。


俺『マジかよ……これって、リアルタイムで例の耐性が反映されてるって事だよな』

カライモン『…そのようだね。なるべく大量に引き付けておいて、一網打尽…と言う訳には行かないか』

ユズ『じゃぁ、残りはどうするッスか?炎じゃなくて光の魔法で自分が……』

カライモン『いや、恐らくそれはまだ早い。分の悪い賭けになってしまうが…彼のディメンションスレイヤーで残存兵力を片付けよう』


レミ『…って、むしろそっちの方が早すぎるんじゃないの!?切り札をいきなり使っちゃって大丈夫なの?』

カライモン『だから、分の悪い賭けと言っただろう?それに―――』

●うらわざ

俺『成程な……確かにそれなら何とかなるかも知れないが…実際に上手く行くかも、そもそも俺がそれを出来るかも判らないぞ?』

カライモン『…何度も言わせないでくれ給え。それを踏まえた上での分の悪さでも賭けるしか無いのだよ』

俺『プレッシャーかけてくれやがるなぁ、おい。くそっ…失敗しても恨むなよ』


残った戦力に向けて跳躍しながら、ディメンションスレイヤーを形成。

おあつらえ向きな事に、標的の方から飛び込んで来てくれているため…討ち漏らす事無く難無く残機を迎撃。

更にその勢いのまま虚獣本体へと切迫し、翼にディメンションスレイヤーを突き立てる。


先の…ユズの火炎への耐性が付くまでの間隔を考えても、ディメンションスレイヤーへの耐性を付けられた様子は無し。

………カライモンの目論見通り、ディメンションスレイヤーの投入が功を奏したようだ。


ユズ『えっと…これってつまり、どう言う事ッスか?』

レミ『身も蓋も無い言い方だけど…ディメンションスレイヤーって、何でもありの反則技じゃない?』

ユズ『そうッスね』

レミ『だから…攻撃の際に耐性を作られないように、ディメンションスレイヤーがディメンションスレイヤーである事を隠して、偽装しながら攻撃…って事が出来れば』

ユズ『耐性を付けられる事無く、攻撃する事も出来る…って事ッスね!』


俺『とまぁ、そう言う訳で…実際に試してみたんだが……』

レミ『何?言い淀んじゃって、どうかしたの?』

俺『今確認してるんだが…その偽装に対しても、耐性を付けられた形跡が無い。多分…ディメンションスレイヤーその物への耐性が付けられないみたいだ』

カライモン『それは朗報だね。ならこのまま…次の段階に進んでくれ給え』


そう………ここまでは順調だった。最初の懸念も無駄に終わり、予想以上の成果を得て……何もかもが順調に進んでいるように見えたのだが……

●つながり

俺『………くそっ…ダメだ!!』

万事が万事、思い通りに進む…と言う訳には行かなかった。


カライモン『そうか…では、駄目だった原因を報告してくれ給え。ディメンションスレイヤーの限界かね?それとも、君の技術面での限界かね?』


俺『ディメンションスレイヤーで干渉する所までは持って行けたんだが…肝心の免疫機構を書き換える事が出来ない!いや、やろうと思えば出来なくも無いんだが…』

本来の予定ならば…ディメンションスレイヤーで虚獣の免疫機構を書き換え、最大の難関である耐性の構築を無効かする筈だった。

だが…いざそれを実行しようとした所で、思いもよらない問題が俺を待ち受けて居た。


カライモン『実行出来ない理由は何なのだね?』

俺『この免疫機構…そっくりそのまま、世界の物理法則に直結してやがる。下手に…いや、どんだけ上手くやったとしても…』

カライモン『干渉が世界に与える影響は計り知れない…か。さすがにそうなってしまっては、元も子も無いね』


俺『って訳で、一応これで確認の方は終わったと思うんだが…肝心の作戦はどうなるんだ?ってか、どうにかなりそうなのか?』

カライモン『そうだね…ディメンションスレイヤーを中心として、各自最小限の魔法使用に抑えて立ち回れば…としか、言えないね』

俺『中心にって、簡単に言ってくれるが…いや、んでもまぁ、打つ手が無いって言われるよりは幾分かマシか……』


ここに至るまで…たった一太刀浴びせたこの時点での消耗でさえ、決して少なくは無い。

ガス欠の心配がある以上、ここは短期決戦に持ち込みたい所なんだが………


俺『しっかし……こいつを倒すためには、全身を削り切る必要があるんだよなぁ…』


そう……さっきディメンションスレイヤーで干渉した際に判った事なんだが…虚獣には弱点が無い。

巨大な身体を持っていたり、再生能力を持っていたり、と言うお決まりの強敵にはありがちな…ここだけ何とかすれば倒せる!と言った弱点が存在しない。

この巨体に真正面からぶつかって、絶望的なまでのこの質量を削り切らなければ勝利する事が出来ない…と言う訳だ。


レミ『毎度毎度の事ながら…ジリ貧の戦いになりそうね』

あえて言葉にしないでくれ…まだ戦いも序盤だと言うのに、心が折れそうになる。

ハル『そう言えば…耐性の方は、どの程度の範囲に適用されているんですか?ユズちゃんの炎で、私達の光の魔法全般が無効化されるとかは…』


俺『あぁ、その点は問題無い。あの時点で付いた耐性は、熱耐性だけで…それも、あの炎の温度までだ』

カライモン『ならば、それ以上の温度…収束させた光で焼き切るのも、削り切るのもまだ有効…と言う事だね』

俺『そう言う事だ』


カライモン『適応では無く、耐性でありながら…この結果とは。律儀と言うか何と言うか…』

俺『まぁ、言いたい事は判らないでも無いんだが…さすがにこれ以上の雑談をしてる暇も無さそうだ…ぜっ!』


神風を介して、意識を直結させた状態での意思の疎通。

通常の会話と比較にならない程の、ほんの数秒の間に済ませたやりとりであっても…戦いの最中では、決して短くない時間を費やしている。

そして…虚獣に至っても、その時間を無為に過ごす筈が無く……


俺「やれやれ…今度は人型かよ。まぁ、こっちとしちゃぁ丁度良いサイズだから願ったり叶ったりなんだがな!!」

先の球体のように…今度は背中に空いた無数の穴から、人型の小さな虚獣を大量に生み出していた。


カライモン『生み出した質量に対して、減少した本体の質量が多い。決して見た目で油断せず、気を引き締めて迎え撃ち給え』

俺『その点だけは安心しな。こう言うのも何だが…油断なんざしてる余裕はこれっぽっちも無ぇよ!』


その手に剣を形成し…俺に向けて一斉に斬りかかって来る、人型の虚獣達。

足の運びに、刃の軌跡…切り返しから回避に至るまで……姿形こそ人のそれでありながらも、動きに関しては全くの別物。

まるで人型の水風船がうねるような奇妙な攻撃を、俺は紙一重の所で躱しながら…一瞬の隙を突いて、反撃する。


俺「だぁぁぁぁぁりゃぁぁぁぁ!!!」

掛け声と共に人型虚獣の胴体を切り裂き…間髪入れずに、後ろに跳んで一気に間合いを離す。

そして1テンポ置いた後、切り裂かれた虚獣の断面から眩い光が溢れ………


周囲に爆音が響き渡った。

●ばくはつ

ユズ「な……何事ッスか!?」

ハル「……爆発…?まさか、虚獣の攻撃で彼が…!?」


俺『あぁ、いや…驚かせちまって悪ぃな。今のは俺の攻撃だ』

レミ『攻撃って…一体何したの?!アンタの攻撃レパートリーに、あんなの無かったわよね?!』

俺『今まで使った事ぁ無かったけど、試してみたかったのがあったんだよ。とは言っても…思ったような効果は出せなかったけどな』


カライモン『効果が出なかった理由は……虚獣の組織構成が原因かね?』

俺『……何に失敗したかをすっ飛ばして、何で失敗したかを聞くんだな』

カライモン『そんな物、君の趣向と結果を照らし合わせれば推測も難しく無い。大方、あの人型虚獣を反転して本体もろとも爆破しようとしたのだろう?』


俺『…………』


カライモン『図星のようだね。それで、失敗の原因は何だったのだね?』

俺『……さっき言われた通り、虚獣の組織構成だ』

カライモン『反転に対する耐性を、予め持たれていた…あるいは…まさか、虚獣その物が反物質で構成されて居たと言うのかね?』


俺『いや、そうじゃ無くてだな…虚獣はそもそも、普通の物質構成と違うんだ。そこに存在してるけど、存在するための条件をすっ飛ばしてるって言うか…』

カライモン『無理に説明しようとしなくても良いので、結論だけ言い給え』

俺『まぁ、つまり…反転させようにも元が無いから、無理矢理変換しようとしたんだが…そしたら何故か表面だけ変換出来て、あぁなっちまったんだよ』

カライモン『表面にしか干渉出来なかった。いや…逆を言えば、表面には干渉出来たと言うべき…なのか?』


ユズ「…カライモンさんが二人居るみたいで、チンプンカンプン…ッス。先輩達は言ってる事判るッスか?」

レミ「原因はともかく、何をしようとしてどうなったか…って所までならね」

ハル「私も…レミちゃんと同じくらいの理解度かな」


カライモン「と……雑談に入っている所を悪いが、そろそろ戦闘準備に準備に入ってくれ給え。彼一人では危なくなって来たようだ」

ハル「………え?」

●せつじつ

俺「やれやれ…参ったな。俺的には切り札として格好良く切ったつもりだったんだが…こうも裏目に出ちまうか」

皆との、会話を行うその最中にも続く…人型の虚獣との切り結び。

切り札がほぼ不発に終わってしまった、その痛手もさる事ながら…追い打ちとなるのは、そのしっぺ返し。


小規模ながらも、下手に反物質によるダメージを与えてしまったため…当然のように、衝撃に対する耐性を付けられ………

いよいよもって、ディメンションスレイヤー以外でのダメージが見込めない…と言う危機的状況に陥ってしまっている。

だが…そんな追い打ちさえも、まだ本当の危機では無いらしく……それを知らしめるかのように、俺の背後から破滅の足音が近付いて来た。


俺「っ―――!?」

肉体か精神か…はたまたその両方の疲労か……

僅かに鈍った反射神経の隙を突かれ、人型虚獣の刃が俺の二の腕を掠める。


ダメージだけならば、それ程の物では無い。

痛みも殆ど無く、文字通りのかすり傷。

虚獣との戦闘が始まってから、初めて…たった一度だけ受けた攻撃。

そう…たったの一撃掠っただけ………にも関わらず、俺の背筋を正体不明の寒気が走り抜けた。


俺「何だ…何だってんだ?何で俺はこんな攻撃にビビってる?まだほんの一撃…たったの一撃くらっただけで………いや、そうじゃ無い?」

不安を紛らわそうと、改めて口にしたその言葉。だが…逆にその行為が、目を背けて居た事実を目の前に突き付け………

俺「そうだ…俺はまだ一撃も虚獣の攻撃を食らって無かった。どんな攻撃なのか、何が起きるのかも知らないまま……それを受けちまった?」


…………気付いた時には、もう遅かった。


俺「確か………俺は…腕を斬り付けられて………え?な………何だよこれ!?」

思い出したように、腕の具合を確かめようとした時………


そこある筈の、ディメンションスレイヤーを掴んでいた俺の腕は…既に存在していなかった。

俺「何だ……一体何が起きた?!」

まるで…全身の毛穴と言う毛穴が開き、その内側から電気を流されたような嫌な刺激が体表を駆け巡る。


腕を失った事自体は大した問題では無い。

いや、大した問題ではあるがんだが…この不可解な現象の前では、それすらも些細な問題になってしまっているだけだ。

そう…問題は腕を失った理由。それを突き止める必要がある訳だが…それよりもまず先にやるべき事がある。

それは何か……そうだ、腕の再生だ。


考えるよりもまず先に行うべきそれを、何故か俺は失念していて……思い出した所で、慌てながらもその手順に入る。

だが………


俺「何でだ…何で再生出来ないんだ!?」

人型虚獣の刃を、後ろに跳んで避けながら…俺は、困惑と共に驚愕の叫び声を上げた。


腕を再生させるだけの質量が足りて居ないのか?

いや…質量はまだまだ余裕がある。例え尽きても、そこから更に限界を超えた質量を生成する事だって出来る。

再生能力の問題で無いのなら…虚獣の攻撃の影響か?

考えたくは無いが、その確率が一番高い…と言うよりも、それ以外の原因は考えられない。


俺は、自分の身体に起きた未知の現象に怯えながら……失われた腕の確認を行う。

痛みは…無い。感覚も無い。当然ながら再生も出来ない。となれば…まず最初に思い付くのは…

俺「再生阻害系の能力…って事か。だったら……あんまりやりたかぁ無いんだが、これしか無ぇか…よぉっ!!」


俺は、失った腕の根元…肩を掴んで、自らの手でそれを勢い良く引き千切り…それを放り投げた後、間髪入れずに再生を開始。

能力を受けたと思われる切断面を排除した上で、改めて根元からの再生を試みたのだが………


俺「嘘…だろ………?何で、どうして再生しねぇんだよ!?」

その再生は、腕を引き千切る前まで残って居た部位……二の腕付近で止まり、その先を再生する事は無かった。

●けつらく

俺「……物理的な干渉じゃ無いのか?まさか、ディメンジョンスレイヤーと同じ直接介入か!?」

その言葉を口にした後…何故か、まず最初に思い出したのは……根幹を食らう竜の力。

失った物の記憶その物は消えていない事や、そこに至るまでのプロセス等…相違点は幾つもあるにも関わらず、俺は何故か奇妙な既視感を覚えた。


攻撃を受けて、その部位が消失した…


一体どんな原理で、どんな作用を起こしてこんな結果になったのは判らない。だが……この攻撃が俺にとって致命的な物だと言う事だけは判る。

失ったのが、末端…腕だったから良かった物の、もしこれを頭に受けて居たら………

俺と言う存在…俺と言う人格を司る頭脳を失ってしまったら………


その仮定の末にある物に、思考が辿り着いた瞬間。久しく忘れてしまっていた……死…と言う物の恐怖が俺に襲い掛かって来た。

そして………


俺「――――!?」

そこに生まれてしまった恐怖が、俺を判断を遅らせる枷となり…

足元から現れた刃に気付く事が出来ず、そのままその刃に両足を貫かれてしまった。


二の腕を斬られた時のように、殆ど痛みは無し。

だが、その痛みが薄れ行くと共に…貫かれた両足に向ける意識や、両足の感覚や存在その物が薄れ………


俺「……………」

再び気が付いた時には…俺は、片腕に続き両足を失い……虚獣の背中の上で、うつぶせに倒れて居た。


俺「…ヤバい。今度こそ本気でヤバいだろこれ………!!」

文字通り、手も足も出せない絶体絶命の状態の中……残った全身から嫌な汗が噴き出すのを感じながら、俺は声を絞り出した。

何か手がある筈…そう信じてやまない自分が居るにも関わらず、手も足も出す事が出来ない。

どこからとも無く溢れ出す違和感…そして、その奥底から溢れ出す恐怖。


脚をもがれたバッタの如く、抵抗すら出来ない俺に…次なる魔の手が迫っている事くらい、深く考えなくても判る。

目視する事は適わないが…頭上では、人型の虚獣が刃を構えて……俺に止めを刺すべく、狙いを定めている筈。


―――やられる

そう確信した瞬間………


ハル「大丈夫、させません。貴方は…私が絶対に守ります」

ハルの声が響くと共に…周囲を光の柱が包み込んだ。

●てんしん

眼前に広がるのは、虚獣の身体に空いた風穴。

巨体から体積を削り取った証の、その向こう側で………ハルが両手を広げていた。


俺「色んな意味で、無茶してくれるなぁ……んでも、助かったぜ」

ハル「ちょっと手荒な方法になってしまいましたけど…あの場を何とかするためには、仕方が無かったので」

落下する俺の身体を、ハルが抱き留め…そのまま二人で、頭上の虚獣を見上げる。


虚獣は欠損した部位を残った質量で補い…空いた穴が塞がった後の全長は、最初の半分程まで減少。

成果だけを見れば、残りは単純計算で8分の1。かなりの体積を消耗させたと言えなくも無いのだが……

ディメンションスレイヤーで削り取る事が出来た量は、余り多くは無く。実質上は、ユズとハルによる功績が殆ど。

しかも…本来は温存しておくべきだった筈の、ハルの閃光魔法を使ってしまった上でのこの状態。


残り少ない攻撃手段を費やし、止めを刺さなければいけないこの場面にありながらも…

俺は、ディメンションスレイヤーを振るう事が出来ない。


どうしようもない無力感に苛まれる中……俺とハルの隣に、カライモンが現れ…

カライモン「そう考える気持ちも判らないでは無いが…落ち着いて自分の身体を見てみ給え」

その口から、これまた不可解な言葉が飛び出した。


俺「いや…今更こんな惨状を見てどうしろって言うんだよ!こんな状態で、俺にどうしろって………ん?」

カライモンの言葉に苛立ちながら、振り払うように手を伸ばす俺。

だが…その行動を起こした事で、ある事に気付いた。


俺「あれ…?俺、今……手が…」

カライモン「やっと気付いたかね?キミの身体はもう元通りだ。これで何も問題はあるまい?」


そう………どんな手を使ったのかは判らないんだが…虚獣の攻撃により失われた筈の腕と両足は、元に戻っていた。

●おうたい

カライモン「しかし驚いたよ。ディメンションスレイヤーであれば、耐性を持たれないと思って居たが…まさか、こんな方法で対応して来るとはね」

俺「…どう言う事だ?何をしたんだ?ってそもそも、俺は何をされたんだ!?」

カライモン「焦る気持ちは判らないでも無いが…説明は一つずつにしてくれ給え。まずは君が何をされたかについてだが……これは比較的単純だ」

俺「いや………何がどう単純なのかを教えてくれよ」


カライモン「虚獣は、ディメンションスレイヤーに対して耐性を付ける事は出来ない。これは判っている事だろう?」

俺「あぁ、そうだ…実際にやって見せた通りな」

カライモン「だから…ディメンションスレイヤーを無効化するために、まず君に適応して対策を打ったらしい」


俺「………は?対策だって?どうやってだ!?」

カライモン「まず…ディメンションスレイヤーの行使は、君の認識を前提に成り立っている。これは判るね?」

俺「あぁ…判ってる」


カライモン「ならば、逆に…君がディメンションスレイヤーを使えない状況だと、自らを誤認したならば……」

俺「はっ………」

カライモン「さぁ、後は言わずとも判るだろう?」

俺「そうか……腕を失ったと思い込まされた事で、ディメンションスレイヤーを封じられて居たって事か!!」


カライモン「その通り。正確に言えば、ディメンションスレイヤーだけでは無く…加速空間に停滞空間………」

俺「………」

カライモン「果ては、再生以外の手段…代替部位の生成に至るまで。思考が回らないよう、干渉されていたようだね」


俺「そうか…そうだよな。言われてみりゃぁ、幾らでも方法はあったんじゃ無ぇかよ!!あ…でも待てよ?」

カライモン「ん?どうしたのだね?」


俺「話は戻るんだが…そんな状態から、俺はどうやって戻る事が出来たんだ?」

●いたりて

ユズ「あ、それなら自分にも判るッスよ」

俺「…マジか」


ユズ「神風さんと繋がってたから、助かったんッスよね」

カライモン「その通り。私達は虚獣の干渉を受けていない視点を持ちつつ、キミの認識を把握する事が出来た…後は判るだろう?」

俺「そうか…虚獣に歪められた俺の認識を、正常な認識で上書きしたんだな」

カライモン「そう言う事だよ」


俺「んでも…よくこの方法には対応されなかったな?タネさえ明かしちまえば、結構単純な事だろ?」

カライモン「その疑問に対する答えも、比較的単純明快だ。思い出してみ給え…虚獣の能力に関しては、神風くんでも知らなかった。ならば逆に………」

俺「神風と…あぁ、そうか。神風が虚獣の能力の詳細を知る事が出来ないのと同様に、虚獣もまた神風の能力の詳細を知る事が出来なかった…って事だな」


カライモン「そう…だからこうして窮地を脱する事が出来た訳だ。もし個別に戦っていたのならば、互いの異変に気付く事も出来ず…確実に敗北して居ただろうね」

俺「よし……仕組みさえ判っちまえば、こっちの物だ。残りの質量も全部削り切ってやるぜ!」

と…対抗手段があると判った途端に、調子を取り戻す俺。


カライモン「とは言え…虚獣の攻撃に対しては、充分に気を付け給えよ?先に君も心配した通り。頭にあれを受けるのはさすがに不味い」

俺「大丈夫だ。さすがにそれは判ってる」

勝利までの道筋を見出し、後はそこを駆け抜けるだけ……だった筈なんだが………


レミ「本当…アンタって現金―――…えっ?」

そんな俺達の会話の隙を突き…虚獣が、身体の真下に杭のような物を形成。更にはそれを物凄い勢いで射出して、俺とハルのすぐ近くを横切り…


今の今まで蚊帳の外だった、レミへと向けて突き進んでいた。


俺「――――っ!!」

………正に一瞬だった。


レミへと向かう杭の存在に気付いた俺は、瞬時に加速空間を形成。そのままレミの頭上に立ちはだかり、振り向きざまに杭を切り払おうと試みた。

だが…予想以上に加速が付いていた杭は、俺の刃が届くよりも早く………


俺の眉間を刺し貫いた。

●うしない

レミ「なっ―――――」

ハル「―――っ!!」

カライモン「しまっ………」

ユズ「嘘…ッスよね………?」


維持しきれなくなった加速空間がかき消え、皆が驚愕の表情を浮かべる。


しくじった……ついさっき注意されたばかりだと言うのに、頭に虚獣の攻撃を受けてしまった。

杭自体は辛うじて脳を逸れてくれたが…俺と言う存在が消えてしまうのは時間の問題だろう。


失う部位が手足ならば、まだ認識の上書きで取り戻す事が出来る。だが……頭を失ってしまったら、そうはいかない。

俺自身…脳が俺を認識する事が出来なくなってしまったら、上書き以前に俺が俺と言う人格を確立出来なくなる。


つまりは………絶対的な死だ。


手足に攻撃を受けた時の事を顧みれば…完全に認識出来なるまでに、僅かな時間はあるが……

それまでの時間で、虚獣を倒せる見込みは無し。例え倒せたとしても、そこで攻撃の効果が消える保証も無し。

刻一刻と、存在の消滅が迫る中…同時に、俺が考え付く筈だった手段も認識から消されて居る筈。


万策尽きたとは、正にこの事だ。


何の手も打てないまま…打つ事すら許されないまま、俺と言う存在が消滅へと向かう最中………

『―――――』

『―――――――――』

声が…聞こえた気がした。


そして俺は、その声に促されるまま……一万と一つ目の策、ディメンションスレイヤーを形成して…


自分の頭に突き刺した。

●こうちく

レミ「えっ………ちょっ…な、何やってんの!?」


ハル「成程…その手がありましたか」

ユズ「その手って何なんッスか!?」

カライモン「毎度の事ながら……よくもまぁ、こんな荒業を実行に移す気になる物だね…」


俺「仕方無ぇだろ…これ以外の方法が無かったんだからよぉ」

辛うじて…本当にギリギリの所で踏み止まり、俺は自身の存在を保つ事が出来た。


ユズ「だから、一体何をどうして助かったんッスか!?」

カライモン「ディメンションスレイヤーで書き換えたのだよ。自分自身の頭を…攻撃を食らっていない状態にね」

レミ「それって……え?つまり…自分で自分を…………あ、ゴメン。今の無し!!」


俺「あー…その辺りは自分でも判っててやった事だから気にすんな。ってーかむしろ問題なのは…これで大分消耗しちまった事の方なんだが…」

カライモン「その消耗を見越した上での攻撃…だったのかも知れないね。どちらにせよ、これ以上ディメンションスレイヤーを用いる事は出来なそうだ」

俺「面目無ぇ…」


ハル「だったら、後は私が。ライトブリンガーの火力なら、残りも倒し切れると思います」

カライモン「そうだね、それも一つの方法ではあるが…止めを刺し切れず、耐性だけ付けられた時の事を考えると…」

ハル「まだ温存しておくべき…ですか?でも、現状をどうにかしなければその先もありませんよ」


カライモン「まぁ、目の前の虚獣に関しては…奥の手が無い訳でも無い」

俺「って…だったら俺一人に戦わせてないで、勿体ぶらずにそれを使ってくれよ!」

カライモン「そうだな。キミがこんなにも早く戦闘不能になるとは思って居なかった…君一人で何とか出来ると思った私の判断ミスだ」


俺「ぐっ………」

●おくのて

カライモン「…と言う訳で、奥の手を使ってさっさと決着をつけてしまいたい所なのだが……少々問題がある」

ユズ「問題って、どんな事ッスか?」

カライモン「これ…奥の手を発動させるためには準備が必要で。あと3分ほど時間を稼ぐ必要がある訳なんだが…」

レミ「あ………何か読めて来たかも」


カライモン「その間、私は無防備になってしまうため…虚獣からの攻撃を凌いで貰いたい」

俺「あぁ…やっぱそう言う展開か。って…攻撃を凌ぐために魔法を使うんなら、結局耐性を付けられちまうんじゃないか?」

ハル「そうですよね。だったら最初から私が……」


カライモン「まぁ、そう急いて事を仕損じる事も無い。彼なら出来る筈だ」

ハル「彼って………え、もしかして…」


カライモン「そう、全て彼にやって貰う。ディメンションスレイヤー無しで…ね」

俺「無茶言ってくれるなぁぁぁ!?」


カライモン「攻撃ならともかく、防御だけならばどうにかなるだろう?……と言って居る間にも、早速第一波が来たようだ。後は任せたよ?」

俺「って、そんな一方的に………あぁ、くそ!良いじゃねぇか!やってやるよ!どうなっても知らねぇかなら!?」


………と、勢いで引き受けてはしまった物の…俺の余力では、足止めする事さえ至難の業。

しかも、その手段は限られ…下手な事をすれば耐性を付けられてしまう縛りプレイ状態。

無理をすればディメンションスレイヤーを形成出来るのでは無いか、と試してみるも…やはり無理。


残された力で出来る事と言えば、ダークチェイサーの形成……だが、大した成果も望めないような状態では耐性の付けられ損。

しかし…俺はダークチェイサーの形成とディメンションスレイヤー以外の攻撃手段は持ち合わせて居ない。


そうして悩んでいる間に、虚獣から伸びた鞭のような刃が襲い掛かり……目前まで迫った所で………


俺「そうか…そう言う事かよ!」

攻撃ならともかく、防御だけならば―――……その言葉の意味を理解して、俺は行動に移した。

●あしどめ

レミ「そっか!何も迎撃しなくたって、攻撃を防げさえすれば良いのよね」

すぐ目の前…停滞空間により極端に減速した、その刃を見据えながら……レミが声を上げる。


カライモン「うむ、そう言う事だ。ディメンションスレイヤーを展開する事は出来なくても、停滞空間を形成するだけの力は残っていた筈だからね」

魔法陣を展開するカライモンに対し、虚獣がもう一本鞭を形成して攻撃を行う……が、それも停滞空間により阻止。

攻め続ける事も引き抜く事も出来ないまま…鞭がアンカーとなって、虚獣の身体をその場に縛り付ける。


ユズ「でも…停滞空間に耐性を持たれたりとかは…しないんッスか?」

カライモン「100%無いとは言い切れないが…その可能性は極めて低いね」

ユズ「どうしてッスか?」


カライモン「停滞空間は、特定範囲内の時間…運動速度に干渉する空間だ。もしこれに耐性を持つと言うのならば、単純に今よりも加速する必要がある訳だが…」

俺「そんな事まで出来るってんなら、もっと前の段階で俺達の攻撃速度や防御に耐性を付けて加速してる筈…って事だ」

ユズ「成程…そう言う事だったんッスね」


カライモン「…と、おしゃべりをしている間に準備は完了だ。さぁ…そろそろこの戦いに決着をつけようでは無いか!」

ユズぶ一連の解説をした所で…ついに発動する、カライモンの奥の手。

皆が見守る中、黒い立体魔法陣が虚獣の身体を包み込み…それが中央に向けて収縮を行い―――


俺「って!オイッ!!地球上で何無茶苦茶な物を発生してくれちまってんだよ!?」

中央に発生した真っ黒な球体……光さえ飲み込む絶対的な重力の塊が、虚獣の身体を飲み込み始めた。


カライモン「いや…下手したら地球丸ごと滅ぼしかねない量の爆発物を精製しようとした君が、どの口でそれを言うのかね」

俺「ぐっ………」

カライモン「それに…君とは違って、その辺りの対策も込みでの発動だから心配は無用だよ。むしろ、そのために3分近い時間を要したのだからね」


俺「あぁ、そうか…ピンポイントで虚獣だけを吸い込めてんのは、そう言う事か」

カライモン「そう言う事だよ。まぁそのせいか威力も制限され、未だに吸い込みきれては居ないが……それでも尚、耐性は間に合うまい」

真っ黒な球体にその大半を飲み込まれ、今正にその全身を消失しようとしている……虚獣。

もがき苦しみ、暴れながら脱出を試みるが…それも無駄な足掻きに終わり、後は僅かな頭部を残すのみ。


………やっとの事で戦いが終わる。

攻撃方法を使い捨てにされるという、理不尽な条件の上でのギリギリの消耗戦。

そこに終止符が打たれる事になり…皆が皆、安堵する中……ほんの一瞬、瞬きしている間に…


僅かに残った虚獣の頭部は真っ黒な球体に飲み込まれて居た。


いや………違う。


俺「なっ――――!?」

瞬きしたほんの一瞬の間に、俺達の頭上へと現れた………虚獣の頭部。

俺達全員を包み込む程に大きく広げた嘴が、勢い良く左右から迫る。


俺『どうやってあの状態から脱出を……そうか!神風と同じ瞬間移動か!?』

ユズ『でも、瞬間移動が出来るなら何で今まで使って来なかったんッスか!?』

カライモン『結果論だが…至って単純な質量の問題だったのだろう。恐らく…だがね』

ユズ『えっ……』


カライモン『これも憶測だが、質量が多いほど時間がかかると言った所だろう。それも、一部分を切り離しての転送は出来無い…と言った所なのだろうが……」

俺『皮肉にも…あの真っ黒な球体のせいでその条件を満たしてしまったって事なんだろうな』

ハル『それは判りましたが…この状況は………』


俺『かなり不味い…な。加速空間にしろ停滞空間にしろ、残ってる力じゃ展開出来ない。ハルの方は………』

ハル『停滞空間を展開するにしてもライトブリンガーにならなければ…今のままでは全体を捉えるのは無理です。嘴の先を一瞬止める程度が関の山です』

俺『………だよなぁ…』


………万事休す。


先に話した通り…せめてもの足掻きとしてハルが停滞空間を形成し、嘴を止めるも大きな成果は無し。

再び動き出した頭部が、俺達をその嘴で噛み砕こうと迫り……俺の腕に食い込んだ瞬間―――――

●ぶんかつ

俺の腕を噛み砕く筈だった嘴が、バラバラに砕け散った。いや、砕け散ったと言うよりは………

レミ「ふぅ………ギリギリセーフ」

微塵切りに切り刻まれた、虚獣の頭部………そして、その向こう側から覗く、黒い線。


俺「………マジで危ない所だった。よくあんな一瞬であれを展開出来たな」

レミ「んー…まぁ、準備だけは一応しといたからね。ハルが作ってくれた一瞬で何とかなったわ」

俺「そっか…本当、お前はそう言う所はちゃっかりしてるよな。ってか…手があるんなら言ってくれよ。寿命が縮んだぞ?」


レミ「ゴメンゴメン。発動に集中して伝える余裕も無かったのよ」

カライモン「そう言う事ならば仕方が無いだろう。すまないね…私の詰めが甘かったばかりに迷惑をかけた」

レミ「謝らないで良いわよ。仲間なんだから、フォローし合ってこそでしょ?」


カライモン「あぁ、その通りだな。では、今度は私からのフォローでこの借りを返させて貰おう」

俺「で…またフォローされる側に回るフラグだよな、それは」

カライモン「フォローされる事に慣れた人間の経験則だね。肝に銘じておこう」

俺「いや、慣れるほどされて無ぇよ!どっちかって言うと、してる方が多いよな!?」


ハル「………えっ」

ユズ「えっ」

レミ「えー……っ」

俺「って、何だその反応!?俺、思いあがってた!?俺の思い込み!?」


カライモン「…と言う訳で、何とか一体目の虚獣を倒す事は出来た訳だが…」

俺「いや、サラっと流すなよ!?………って…あぁ、そうだよな…そう言やぁ言ってたよな、あれでまだ小さい虚獣だって」

ユズ「あ、そうなんッスよね。そもそも攻撃方法を限定してたのも次に備えてた訳なんッスから……」


神風「はい。既に次の虚獣が顕現を開始しています」


俺「開始している…か。んじゃぁ、今回みたいに顕現しきる前に…先手を打ったりとか出来ないか?」

神風「準備…と言う意味でなら可能ですが、顕現し切るまで虚獣本体への干渉は出来ません」

レミ「えっと…どうして出来ないの?ディメンションスレイヤーとかで無理に干渉しようとしたらどうなるの?」


神風「顕現し切るまでは世界と繋がった状態なので…最悪、世界その物が崩壊します」

レミ「んげ……さすがにそれは不味いわね」

カライモン「では、迎え撃つための準備だけは行うとして…次の虚獣が顕現する時間と場所、それと…規模は判るのかね?」


神風「まず…顕現までの猶予は、3日間」

ハル「3日間…ですか。時間の余裕はありそうですが……問題は、その先ですよね?場所と規模は…」

神風「場所は………ミラの方向に約326億km進んだ宙域で、規模は………全長…15000km程になると推測します」


俺「………………えっ?」

●げんじつ

ユズ「ミラって何ッスか?」

カライモン「この場合…くじら座のミラの事だろうね。人類が最初に発見した変光星で―――」


俺「って、いやいやいやいや!!聞く所そこか!?もっと突っ込み所はあるよなぁ!?」

レミ「そうよね…文字通り天文学的な距離を、どうやって移動するのか…まずはその手段よね」

カライモン「それならば、エディーの扉を使えば問題は無いだろう。一旦あちらの世界を経由して、転送座標をずらしてこちらの世界に戻って来れば良い」


ハル「…あと、宇宙空間での戦闘や……生命維持の手段も用意しなければいけませんよね」

カライモン「その点も…私に考えがあるので任せて欲しい。2日もあれば問題無く準備出来るだろう」


とある一つの事を除けば…不自然なまでにトントン拍子で進む、次なる虚獣への対策会議。


だが……

ディーティー「いや………着々と準備を進めている所を悪いんだけど、一つ良いかい?」

その腰を折るように、ディーティーが会話に割って入る。


カライモン「何だね?」

ディーティー「誰も突っ込まずにスルーしてるみたいだから、あえて言うけど…」

レミ「だから何なの?」


ディーティー「敵の規模の事…幾ら何でも無茶が過ぎるんじゃ無いかい?地球よりも大きな虚獣を、どうやって相手にするのさ?」

正確には、俺はその点も含めてさっき突っ込んだがんだが……ディーティーは、改めてそこをピンポイントで言及した。


避けては通れない…だが、まかり通る事も適わない大きな壁。


先ほどまでの弾んだ会話はどこかに消え去り…皆、揃って沈黙する。

だが、そんな中…ハルが口を開き……


ハル「どうにもならなかったら…それで諦めるの?」

ディーティー「……………」

その小さな口から飛び出した、正し過ぎる程の正論を前に…今度はディーティーが言葉を失った。

そして再び…その場に居た全員が沈黙に呑まれる中…今度は俺が口を開く。


俺「そうだよな……本当は皆も判ってるんだよな。勝ち目があるような戦いじゃぁ…無いって事を」

ユズ「………………」

皆、見て見ぬ振りをしていた訳じゃ無い…


俺「何だよ惑星サイズの敵って…パワーインフレにも程があるじゃねぇか、無茶苦茶な相手じゃねぇかよ」

レミ「………………」

絶望的な状況だからこそ、そこに希望を見出すべく前に進もうとしていた。


俺「どう考えたって勝ち目なんか無ぇ………力も手段も尽きて、負けるのが目に見えてるような戦いだよなぁ?」

カライモン「…………………」

だが、多分……それも限界だったんだろう。ギリギリまで張り詰めた虚勢が、現実と言う名の重圧を受けて押し潰されてしまった。


ディーティーの言葉は…原因では無く、ただの切っ掛けに過ぎなかったんだろう。

だが…俺もまた、ディーティーと同じ事を言おうとしていた。

一歩間違えば、俺がその切っ掛けになってしまっていたかも知れない。


俺「んでも…………」

ハル「…………」

だからこそ……俺は、こう言わなければいけない。

「「「「「「「「「「それがどうした!!」」」」」」」」」」」


俺は声を張り上げ、声高らかに叫んだ。

だが…紡がれたその言葉は俺一人の声では無く………


俺「んだよ…ここは俺がキメる所だろ?」


レミ「そうは問屋が卸さないってね。一人だけ格好付けようったってそうは行かないわよ」

カライモン「第一、前置きがあからさま過ぎるのだよ。あんなテレフォンパンチでは、カウンターを打ってくれと言うような物だろう?」

俺「ぐぬっ……ってーかディーティー!何お前までちゃっかり入ってんだよ!?お前はついさっきまで否定派だったろーが!!」

ディーティー「それはそれ、これはこれさ。それに…僕だけで無くハルだって、ちゃっかり一緒になって叫んでたよね。他の皆に至っても…ねぇ?」


ハル「私は…えっと。元々貴方と同じ意見ですし、それに……貴方と一緒に言いたかったので」

俺「ぬ………ならよし!で、他の皆はどうだってんだ!?」


ユズ「うわっ、エコヒイキがパないッスよ!?自分は…その、何か皆が言いそうな雰囲気だったみたいなんで………」

DT「ユズに同じく、だね」

エディー「わたくしめも、この度は空気を読ませて頂きまして…はい」


神風「私は…ここは皆で声を合わせて団結するのが最善かと思ったので」

アラク「よくわ…ヨクワカラナイガ アワセテミタ」


俺「お前ら………途中から何となくな理由ばっかじゃねぇかよ。本当ならこっから続けるセリフもあったっての台無しじゃねぇかよ!!」


カライモン「良いでは無いか。男は細かい事を気にするものでは無いぞ?」

俺「細かくねぇよ!ったく…………んでも、まぁ………」

ハル「何ですか?」


俺「俺一人で叫ぶより…大きな声にはなったよな」

レミ「…………何よそれ。他に言いようがあるんじゃないの?」

俺「るせぇ。良い感じに格好良い言葉が出て来なかったんだよ!」


皆の声で、固く強く紡がれた言葉。その言葉に…俺は、皆の強い絆と……その絆が生み出す可能性を見た気がした。

○わんでい

マイ「―――と言う訳で…今回の件に関しては、引き続き我々の管轄…と言う事になるのだね?」

朱桜「そう言う事なの」


マイ「では、そうならそうで…色々と情報を開示して欲しい所なのだが………」

朱桜「……………」

マイ「朱桜ちゃんの方からそれを行わなかった時点で、お察し…と言う所か」

朱桜「その通りなの」


マイ「では一つだけ…最終ラインの確認をさせて貰いたいのだが…」

朱桜「この世界の崩壊…それが最終ラインなの」


マイ「それはまた、随分とギリギリな所だね。崩壊よりも前に手を貸して貰う事は出来ないのかね?」

朱桜「私達が強制介入する事も、出来ない訳では無いけれど………」

マイ「けれど?」


朱桜「私達が介入して終わらせた場合…貴方達にとっては、最悪の結末になる事が確定しているの」

マイ「最悪の結末…ねぇ………しかし、その内容を聞いた所で教えてはくれないのだろう?」


朱桜「その通りなの」

マイ「…だろうね」


マイ「しかし………世界を滅ぼす存在…終焉を齎す者が誕生する日…それ故の、災厄の日(バースデー)…か」

●ひとつめ

――――――夢を見た。


俺の知らない場所………

俺の知らない時間………

俺の知らない人物………


床下に地球が広がる、宇宙船のような建造物の中で……これまた判りやすい休眠カプセルの中で眠る女性が一人。

長い金髪を後ろで括り、白い衣服を纏った色白の…白い鳥のような翼を背中から生やした女性。

その女性が目覚めると共に、新たに別の女性がその部屋へと現れた。


新たに現れた女性は、足元まで黒髪を真っすぐに下ろした褐色肌の…蝙蝠のような黒い翼を生やした女性。

金髪の女性は重たそうに瞼を上げた後、そのエメラルド色の瞳で黒髪の女性を見据えた。


金髪の女性「毎度の事ながら、あまり実感は無いのだが…800日ぶり…と、言っておくべきか?」

黒髪の女性「いえ……今回は381日ぶりです」

金髪の女性「381日か。予定よりも大分早いようだが…まさか、解決策が見つかったのか?」


黒髪の女性「そうでは…ありません。むしろ………」

金髪の女性「真逆………ウロボロスの浸食がまた拡がった……と言う事か」


黒髪の女性「……はい。貴方が眠っている間…ウロボロスは、生物のみならず、ありとあらゆる有機体に感染し…遂には無機物にさえその猛威を振るい始めました」

金髪の女性「だが、それは地上の話であろう?事態は未だ想定内にある筈。いや…まさか」

黒髪の女性「はい……ウロボロスは、既にセントラルに達し…最早、ここに至るのも時間の問題とでしょう」


絶句する金髪の女性…黒髪の女性からも、それ以上続く言葉は無し。

沈黙のみが漂う中……不意に壁面の一部が変色し、またも新たな人物の姿がそこに映し出された。


壁面に映し出されたのは、銀髪を首の後ろで縛った黄色人種系の肌の女性。

そして…他の二人の様子から見ても、銀髪の女性が顔見知りであろう事は伺えた。


黒髪の女性「その髪……そんな…まさか貴方まで…」

銀髪の女性「そのまさか、さ。いやぁ…完全に油断していたよ。宇宙空間を超えて感染するとは、さすがに予想出来なかったね」

金髪の女性「笑い事では無いであろう!そのままでは汝も…!」


銀髪の女性「皆まで言わなくても判ってるさ。ここまで追い込まれた以上、残された時間でどうにかしなければいけない事も…ね」

金髪の女性「くっ………では、可能な限りの情報を送ってくれ。ウロボロスを駆逐…いや、せめて抑制だけでも……っ」

黒髪の女性「私も…何か出来る事はありませんか?」


銀髪の女性「残念ながら…ここまで来てしまったら、キミの分野ではどうにもならないだろうね。キミは今まで通り、残りの生物の生存を最優先で進めておくれよ」

黒髪の女性「…………判りました」

銀髪の女性「そんなに落ち込まないでおくれよ。ボクはボクなりに手を打ってあるから…ね」


と…最後に、銀髪の女性が笑顔で告げた所で………俺の視界は暗転した。

●ふたつめ

全てを事細かく伝えていると、時間が幾らあっても足りない…ので、途中をザックリと省略させて貰う。


あれから…具体的な状況は判らないが、銀髪の女性はウロボロスにより死亡。

コンピューターみたいな物に、予め人格をコピーしていたらしく…二次元の存在になりながらも、他の二人と共に研究を進めている。

しかし、3人とも肝心の成果は上がらないまま………次なる悲劇に見舞われる事になった。


黒髪の女性「……………」

金髪の女性「……………」

銀髪の女性「まさか…キミまでもがウロボロスに感染してしまうとはね」


黒髪の女性……その髪の根元が銀色に変色。ウロボロスの初期症状が現れてしまった。


金髪の女性「っ……セントラルの住人達はどうなっている!?」

銀髪の女性「上層の住人にも、感染者が数人…中層では既に7割が発症して………」

銀髪の女性は、その先を告げる事無く言い淀み…


金髪の女性「…………………」

金髪の女性もまた、その先を察したのか…押し黙る。


銀髪の女性「それともう一つ、悪い知らせなのだけど……ボクも、もうそろそろ限界が近いらしい」

金髪の女性「なん………だと…っ!?」

銀髪の女性「今のボクを形成している、このハードその物が…ウロボロスに感染してしまったらしいんだ」


黒髪の女性「でしたら、他のハードを………はっ…まさか………」

銀髪の女性「そう…既に他のハードもウロボロスに感染している。代用品はもう無いんだ」


金髪の女性「おのれ、ウロボロスめ!!くっ……所詮は我々の足掻きなど無駄でしか無いのか!何をしても無駄だと言うのか!?殺せ!いっそ一思いに殺せ!!」

絶望と怒りに打ち震える、金髪の女性。

机の上の機材を薙ぎ払い、壁を殴り付け……それでもまだ抑えきれない感情に、息を荒げ……


その瞳が、黒髪の女性に向いた所で、一旦動きが止まった。

黒髪の女性「駄目です…諦めてはいけません。私達は、セントラルの住人のためにも…いえ、例え最後の一人になったとしても…ウロボロスに屈してはいけないのです」

金髪の女性「判っている……頭では判っているのだ!!だが………一体どうすれば良い?!どうすればウロボロスを止められると言うのだ!?」

黒髪の女性「判りません。でも、だからこそ…挫けそうな時だからこそ、諦めてはいけません。こんな時こそ、あの魔法の言葉を思い出しましょう?」


金髪の女性「魔法の………あぁ、そうだな…そう言えば久しく口にして居なかったな」

黒髪の女性「では…今一度、皆で言ってみましょうか?」

銀髪の女性「そうだね。じゃぁ………」


「「「―――――――」」」


黒髪の女性「…………さて、それでは心機一転して打開策を編み出しましょうか」

金髪の女性「うむ…しかし、結局はそこに行き付いてしまう訳だな」


銀髪の女性「そうだね…幾ら前向きに考えても、具体策を練らない限りはどうしようも………いや、待てよ?」

金髪の女性「どうした?何か閃いたか?」


銀髪の女性「うん……ウロボロスを止める……その前提こそが間違って居たのかも」

黒髪の女性「………え?」


銀髪の女性「そうだ…そうだよ!!これなら…これなら、もしかしたらどうにかなるかも知れない!!」


そして………銀髪の女性がそう叫んだ所で、俺は夢から覚め………


俺「……………」

目覚めと共に、大きなため息を零した。


●さくせん

カライモン「さて………それでは全員揃った所で、今回の作戦を説明させて貰う」

カライモンの地下秘密基地に集まり…対虚獣戦の、作戦説明に耳を傾ける俺達一同。


敵の規模もさる事ながら、その舞台においても俺達が経験した事の無い未知の領域。

ほんの僅かなミスが全滅に繋がりかねない以上、僅かな情報も聞き漏らす事は出来ず…皆が皆、真剣に聞き入っている。


アラク「…………クー…スピー………」

……ただし、アラクを除く。


カライモン「まず…私やハルくん、並びにその契約者達に至っては…防壁を展開する事により、宇宙空間での活動が可能な事が判っている」

ハル「私とカライモンさんの二人で…この二日間で検証しました」


ユズ「あ…防壁は張れるとしても、空気はどうするんッスか!?息が出来なかったら死んでしまうッスよ!?」

カライモン「それに関しても問題は無い。ゲートを開いたままにしておいて、そこから空気を供給すれば良いだけの話なのでな」

レミ「ぁー…そんな使い方も出来るのね。でも、アタシ達はどうすれば良いの?防壁なんて作れないわよ?」


カライモン「レミ君や彼に至っては、問題…と言う以前に、必要無いと言っておこう」

ユズ「え?どう言う事ッスか!?」

俺「露出している頭部さえダークチェイサーで覆ってしまえば、宇宙服替わりに出来る…って所か?んでも、実験も無しにそんな事…」


カライモン「出来る…と断言出来るだけの実績を残して居るだろう?逆に聞くが、出来ないと思うような要素があるのかね?」

俺「ぁー…うん、確かにやろうと思えば出来るだろうなぁ………」

レミ「酸素にしたって…この子達の中で合成出来るって言ってるから、問題は無さそうね」


俺「んでも…どっちの方法にしろ、ただ宇宙空間に居るだけじゃなくて、惑星サイズの敵との戦闘しながらなんだよなぁ?力が尽きた瞬間、文字通り力尽きちまうぞ?」

カライモン「なぁに、その点に関しても問題は無い。今回の戦闘では、魔力の供給手段もちゃぁんと確保してあるのだよ」

俺「供給って言っても…半端な量じゃ雀の涙だよなぁ。どんな手段なんだ?」


カライモン「実はだね…宇宙空間その物を魔力に変換する術式を作り出す事に成功したのだよ。この術式を皆に付与する事で、魔力不足を解決出来るだろう」


俺「…………はぁっ?!」

ユズ「え?宇宙空間って何にも無いんッスよね?どう言う事ッスか??」

レミ「えっと…まず、宇宙空間って何も無いみたいだけど…実は知覚や解明されて無い未知の物質が存在してるのよ」

俺「んでまぁ…中には、実質上の質量を持たない粒子なんかもあったりするんだが…」


カライモン「当然、その双方に対応している」

俺「だよなー………」


ユズ「………え?え?え?」

俺「まぁ何だ…あれだよ、みかんゼリーのゼリーの部分。あの透明な部分を食べるみたいに、宇宙を取り込む物と思ってくれりゃぁ良い」

ユズ「あー…それなら何となく判るような感じがするッスね。と言うか、そんな物を作ってしまうなんて、やっぱりカライモンさんは凄いッス!!」

カライモン「ふふふ…もっと褒めてくれ給え」


俺「…とまぁ、子芝居はここまでとして…だ。供給元は無尽蔵でも、供給速度が間に合わなくなる場合もあるだろ?その時はどうする?」

ハル「そうですよね……魔力が尽きたら、宇宙空間で生身と同じになる訳ですが……」


カライモン「その場合は…魔力が一定値以下になると同時に、ゲートが展開して強制離脱するようになっている。なぁに、ぬかりは無いよ」

俺「成程…な。んで、改めて回復してからすぐ戦線に復帰すれば良い…って訳か」

カライモン「いや、それは難しい。一度離脱したら、すぐには戻って来れないと考えてくれ給え」

俺「………は?」


カライモン「まず単純に…魔力が空っぽの状態で、再びゲートを開く事は出来ない。ゲート分の魔力が回復しても、戻った所で満身創痍では意味が無いだろう?」

俺「お、おう……」

カライモン「それに…強制離脱の場合、座標の把握と計算を省いて力技で置き換え転送をするのでね。戻るための再計算にも時間がかかってしまうのだよ」

俺「あぁ……そう言う事か」


カライモン「…と言う訳で、説明は以上だ。他に何か質問はあるかね?」

俺「あー…っと、作戦とか…具体的な戦闘方法とかは無いのか?」

カライモン「臨機応変だ」


レミ「行き当たりばったりの、出たとこ勝負…って事ね」

カライモン「敵の情報が少ない以上、そうとしか言いようが無いだろう?」

俺「まぁ…そりゃぁそうか………」


カライモン「さて…では、準備が出来た所で出発だ。逃げ帰るならば今の内だぞ?」

俺「はっ………冗談ぬかせ!」

カライモン「宜しい、では行こう」


カライモンの号令と共に、俺達の足元に現れる魔法陣。

その魔法陣がエディの扉…ゲートと同様に、俺達を虚獣の下へと転送した。


ただし…ユズとDTは除く。

●おきざり

ユズ『………って、何で自分だけ置いてきぼりになってるんッスか!?カライモンさん、転送忘れてるッスよ!?』

DT『まぁ、正確には僕も置いてかれてる訳だけど…この状況を見る限りでは、作為的な物を感じざるを得ないね』


カライモン『……すまない。言い難い事なので、事前に伝えなかったが…君達は戦力外なのだよ』

ユズ『………………え?』

カライモン『無尽蔵の供給源があろうとも…魔力の最大値には限界が存在する。それは判るね?』

ユズ『…………はいッス』


カライモン『正直な所…ユズ君のそれでは、今回の虚獣の攻撃に耐えられるとは到底思えない。故に今回は残って貰ったのだよ』

ユズ『……………』

カライモン『厳しい言い方だが…それが現実だ。納得してくれとは言わないが、堪えて欲しい』


ユズ『………ははっ…大丈夫ッス。自分、そう言うのは慣れてるッスから』

カライモン『……………』

ユズ『って言うか、自分が勝手に勘違いしちゃっただけなんッスよね。センパイ達と肩を並べて、一緒に最前線で戦える………って』


カライモン『………』

ユズ『それに…よくよく考えてみたら、本拠地をノーガードにするって言うのもマズいッスからね!ここは自分に任せて、心置きなく頑張って来て欲しいッス!』

カライモン『…………すまない。感謝する』


カライモンとユズの会話の中………俺達は何も語らず…一言も口を挟まないまま、その終わりを待ち……

二人の会話が締め括られた後、改めて現状の確認に入る事となった。

俺『術式は…転送の時に付与されてるみたいだな。皆、防壁は展開出来てるか?』


ハル『はい、問題ありません』

カライモン『当然ながら、私の方も既に展開済だ』

ハルとカライモン、そして二人の契約者であるディーティーとエディーは、既に各々が展開した防壁の中。


レミ『アタシの方も何とか…ちょっと慣れないから変な感じがするけど、大丈夫』

レミは…目を覆うように展開したヘッドギアと、口元や髪を覆う透明な被膜により頭部を密閉。


俺に至っては…頭蓋を除く全身をダークチャイサー化する事で、宇宙空間という非常識な環境に適応していた。


俺『んでもって………あれが、これから俺達が戦う敵…次の虚獣って訳だよな』

俺達が視線を向けた先……と言うよりも、少し視線をずらせば否が応でも視界に入る、巨大な物体。

まだうっすらと透明みを帯びている、惑星サイズの………白い鯨のような虚獣。


改めて目の当たりにする、規格外の敵を前に…俺達は皆、固唾を呑んだ。


神風『はい…間違いありません』

アラク「…………………………」

存在その物が超常故か…防壁を展開する事も無く普段通りにそこに存在する、神風とアラク。

ただ、アラクの発した言葉は音にはならず……傍から見ている限りでは、口をパクパクと動かしているようにしか見えなかった。


俺『えっと…アラクも一緒に契約の輪の中に入れてやれないのか?このままだと色々不便じゃないか?』

神風『そうしたいのは、山々なのですが…何分、彼女は狭間に巣食う蜘蛛なので。同調すると情報処理に支障が出てしうまう恐れがあるのです』

俺『あー………そーいう事か』


カライモン『それに…意思の疎通に関しては、特に問題は無い』

俺『何でだ?』

カライモン『私が読唇術と声帯の振動で内容を把握し、それを皆に伝達すれば済む事だからだ。そして何より…』


俺『何より?』

カライモン『アラクは…「自分の出番があるまで、狭間で待っている」…と言って居るからだ』

俺『あぁ…………うん、そう言う事な』


………と言った感じで、決戦前の確認は完了。


そこから更に、俺が中二病モード末期フォームに変身してディメンションスレイヤーを形成したり…

ハルがライトブリンガー化したりと言った感じで、準備も整った所で…………


虚獣「―――――――――――!!!!」

体の芯まで響くような雄叫びと共に、虚獣が顕現を完了し………決戦が始まった。

●ぶつかり

レミ『………って、え?何で宇宙空間なのに聞こえるの!?』

俺『しかも……鼓膜じゃなくて、骨伝導で直接響いてるな。ハル達にも聞こえてるのか?』

ハル『はい、私達にも聞こえています』


カライモン『これは恐らく…我々が魔力供給のため周囲の空間を取り込む際に、その内部に蓄積した振動を知覚しているのだろう』

俺『んな事、虚獣とどんだけ距離が………いや、やっぱ良い』

カライモン『…同意だ、下手な事を考えれば心が折れる。今後も極力スルーして戦う方が、気が楽になるだろうな』


神風『と…お話の途中ですみませんが………来ます。虚獣の攻撃です、避けて下さい!!』


目隠しながらも前向きに…辛うじて後ろ向きになる事だけは避けながらの前進。

交わしたやりとりで、脇道にそれてしまった俺達の意識を……神風の言葉が引き戻す。


俺『避ける…って言っても…………んなぁっ!?』


神風が叫んでから…実際には、1秒にも満たない間の事。

目視した限りでは、虚獣からの攻撃の素振りは確認出来ず…俺は、半ば疑念を持ちながらも神風の指示通りに回避行動を行った。

そして、その結果が…これ。俺のすぐ真横を、いや…ここに居る全員のすぐ真横を、光の束が突き抜けて行ったのだ。


俺『嘘だろ……今のって、ハルのと同じ光の魔法じゃ無いか!?』

ハル『結果的に同じ現象を引き起こしていますが…今のは魔法ではありません。あれは多分……』

カライモン『この虚獣が元より備え持っている、機構……それも、予備動作無しで発射可能な反則性能のようだな』


俺『マジかよ…冗談キツいぜ』


カライモン『…こればかりは嘆いていても仕方ない。加速空間や停滞空間はいざと言う時のために温存して……可能な限り神風君の空間掌握に頼ろう』

俺『……って訳だ。神風にばっか負担かけちまって悪ぃな』

神風『いえ、問題ありません。元より…この命、この世界を…皆さんを守るために使うつもりです』


俺『おいおい…縁起でも無い事言うんじゃ無ぇよ。それじゃぁ俺達が困るだろ?』

神風『…え?』

俺『神風…お前の命はお前のために使え。皆を守るのも良いが…何より、皆を守った後一緒に帰るために…な?』


神風『………………はい、そうですね。そうします』

神風は、満面の…屈託の無い笑顔で、力強く答えた。

カライモン『さて……また新しい女の子を、ハーレムに引き込もうとしている所を悪いが…』

俺『いや、ちげーよ!!どこをどう見たらそうなるんだ!?』

ハル『………え?』

レミ『えー………?』


俺『………えっ?』


カライモン『はいはい、漫才はそこまでだ。とにかく…今回の作戦を伝えさせて貰うが構わないか?』

俺『お、おう………今回も俺が中心になる流れになりそうな感じか?』

カライモン『私も最初はそう考えていたのだが…そこまで悠長な事をしている余裕は無いかも知れない』


ハル『だったら…どうするんですか?』

カライモン『こんな事、作戦と呼べるかどうかは判らないのだが……各々が尽力し、全力で攻撃して畳みかける。それが…最善と言わざるを得ない』

俺『…何だ何だ、お前らしくもない直線的な作戦だな。んでもまぁ……』

レミ『そう言うの、嫌いじゃ無いのよね』


光の束の第二射を回避しながら…カライモンの指示の下、各々の判断で虚獣との距離を縮める俺達。

続く第三射、四射を掻い潜りながら…まずは俺が虚獣に接近して………


俺『うおぉぉぉぉぉぉ!!!』

ディメンションスレイヤーを200メートル近くにまで巨大化させ、それを振り下ろす。


相手のサイズがサイズなだけに、与えたダメージはさほど大きくは無く…全体から見れば、かすり傷程度。

だが……そんな事は想定内の大前提。

斬撃を見舞った後、俺はすぐさまその場を離れ……入れ替わりで、今度はハルが杖を構える。

そして………


ハル『………行きます!!』

俺が作った切り口に向けて、光の魔法を全力で叩き込む。


僅かに傷口からはみ出した光が、放物線を描きながら虚獣の体表を滑る中…反対に、傷口に叩き込まれた光が…着実に内側から虚獣を抉る。

虚獣は身体をのけ反らせて…のたうちながらも、全方位に向けて光の束を乱射。

出鱈目に飛び交う光の中を、神風か示すままに掻い潜り………


カライモン『では………少々早いが切り札を使わせて貰おう!!』

そう宣言するか否か、カライモンが後方にゲートを展開。

そして、そのゲートからは………


何と表現するのが適切なのか判らないが…巨大な建造物のような物が姿を現した。

●ぜんれい

カライモン『こう言う物は本来、男性のロマンなのだろうが…今回は私が見せ場を掻っ攫わせて貰う』

俺『………は?』


言葉を交わすか否か…カライモンを取り込むように中心部が展開し、変形して行く建造物。

途中で光の束による邪魔が入ったが、建造物はそれを難無く弾き飛ばし………

カライモン『さぁ…侵略の始まりだ!!』


俺『なっ………変形!?いや、合体した!?』

カライモンをその中心に格納して、戦艦のような形状へと変化した。


レミ『うっわー…………』

虚獣から放たれた光の束を物ともせず、虚獣本体へと迫るカライモン…と、その戦艦。

双方が肉薄する距離まで近付くと、互いの攻撃は激化し……


虚獣は光を幾重にも収束して、戦艦に向けて発射。

装甲を大きく破損しながらも、戦艦は後方から黒いワイヤーのような物を展開。

物の数秒の間に、虚獣をワイヤーで縛り上げ………


カライモン『圧縮術式展開…!!』

ワイヤーが接した部分を中心に、虚獣が石化を開始。そこから耐性を付けられ、石化が止まった頃には……既に体表の9割が既に石化済み。

だが、カライモンの猛攻は休む事を知らず………


カライモン『魔導式爆導索解放!!』

ワイヤーを中心にして、今度は石化した部分が爆発。

一連の攻撃だけで、虚獣の体積の実に2割近くを削ぎ落とす事に成功した。


が……虚獣は虚獣で、一方的にサンドバッグにされたまま終わる筈も無く……

突如、大口を広げ……レミ………いや、レミの背後に控える地球の方角へと狙いを定め…口内に光を貯め込み始めた。

カライモン『不味いな………これは悠長に攻撃などしている場合では無いか』

そんな中…何を思ったか、カライモンは戦艦から自身を射出。

更に俺そこから、俺の方へと向き直り………


カライモン『さて…このままではあれを止める事は不可能だ。あれを使ってくれて構わないので、君が止めてくれ給え』

俺『………は?いや、何で俺なんだ?ってか、まだまだ武装積んでそうな質量だよなぁ?』

カライモン『あぁ、積んでいるとも。だが…一つ一つ使っていては間に合わない。そのまま使うよりも効果的な方法が……君にはあるだろう?』


俺『あぁ………成程。そういう……』

カライモン『因みに…例の重力球を遠慮無しに発生させるだけの質量を積載している。君自身も気を付け給えよ?』

俺『…………』

カライモン『どうしたのだね?』


俺『いや……何でも無ぇ。ただ………』

カライモン『ただ?』


俺『突っ込むのに疲れただけ…………だっ!!!!』


俺は、再度ディメンションスレイヤーを形成して……これまた、それを巨大化。

そして、大きく振りかぶり………

俺『皆…ゲートで一旦離脱してくれ!!』

と…一言を伝えてから振り下ろす。


ハルとディーティー…レミ…カライモンとエディー…そして最後に神風が、この宙域から離脱したのを確認した後…虚獣もろとも、俺はカライモンの戦艦を一刀両断。

更にその際に…戦艦に積載されていた物を、反転して爆発させ………


それと同時に、俺もゲートでその場を離脱した。

●くだけて

俺『さて………これだけやっても、まだ最初の3割近くが残ってやがるのか…』

事態が事態なだけに、事の顛末を見届ける事は出来なかったが…


レミ『しかもご丁寧に…まだ鯨の形状を保ってるのね』

ハル『先の虚獣戦でもそうだったけど…虚獣は、それぞれの大本の形があるみたいですね』

幸いな事に、俺の試みは見事に成功していたらしく…


カライモン『まぁ、何にせよ………攻撃手段の大半を失ったのは痛いが、ここまで削る事が出来たならば…後はゴリ押しで何とかなるだろう』

虚獣の攻撃を退ける事が出来たようで、地球も無事存在していた。


そして、虚獣に与えたダメージ自体も尋常では無く…

あとは、残った虚獣を削り切るのみとなった筈だっただが………


俺『となると、また俺のディメンションスレイヤーの出番に……………ん?』

ハル『…………どうしたんですか?』

俺『いや…具体的にどうって訳じゃ無いんだが……何か、嫌な予感が…』


レミ『ちょっと、止めてよね……この期に及んで…』

神風『いえ、残念ですが…その予感は当たっているようです』

ハル『………どう言う事ですか?』


神風『虚獣の残りの質量は……顕現時と比較して、9割………今までの攻撃で消失したのは1割で、しかも………』

レミ『ちょっと……ジョーダンきついわよ…』

カライモン『で…しかも………何だと言うのだね?』


神風『虚獣が………変質します』

神風が宣言するか否か……虚獣に異変が起きた。

その体表に切れ目が入った…かと思えば、今度はその切れ目から体表が薄く剥離を始め……

それが何度も、何度も…まるで紐解かれるように、円を描きながら捲れ上がっていく。


そして、その動きが一旦収まると……


ハル『………綺麗ですね。お花みたいです』

レミ『でも、そんな可愛い物じゃ無いのよね……絶対』


鯨のような形の蕾が花開き…虚獣はその身を一輪の花へと変えて居た。


俺『ってか問題は……この変質が意味する事なんだが…』

中心の花弁が開き……その奥から覗く、白い球体。


その球体は、みるみる内に収縮を始め……気が付けば、1メートル程にまで縮まり……

周囲に展開していた花弁が、球体に向けて集まり…衣のような物を形成。

更にそのまま、今度は球体の形状が変化して行き………


その結果………俺達の目の前に現れたのは………


虚獣「―――――――――」

人型…………いや


少女の形をした虚獣……だった

●さいたん

俺『っ―――危ねぇ!!!』


まさに一瞬…一瞬の出来事だった。

虚獣が、一番近くに居たレミに手をかざし…その掌の先から、光の束を形成。

神風のおかげでいち早くそれに気付いた俺は、レミの手を引き……間一髪の所で、それを避ける事が出来た。


虚獣「な……ぜ……………じゃ…ま……を…す……る?」

俺「何故も何も…そもそもどの事を言ってるのかも判んねぇが、世界を滅ぼされるってのに邪魔しない訳無いだろうがよぉ!!」

虚獣「こ…れは……世界……を…護るため………必要な……事」


ここに来て虚獣が言葉を発し…俺は、意思の疎通を試みる………が、結果は見ての通り。

操られた虚獣から飛び出した言葉は、その行動とは真逆……

明らかに作為的な改変を行われた跡を、その言葉から見受ける事が出来た。


虚獣「あくまで…邪魔を…するのなら………それは…排除対象……」

俺「へっ…やれる物なら、やってみろってんだ!やれる物ならなぁ!!」


皆の全身全霊を叩き込んだにも関わらず、殆どダメージを与えられる事が出来なかった……それは確かにかなり手痛い。

だが…虚獣があの巨体を失い、人間サイズに凝縮した…と言うのならば話は別だ。

虚獣が惑星サイズだったが故に、使う事が出来なかった手段………停滞空間を展開する。


そして、次の手は…ディメンションスレイヤーの形成。

俺は、停滞空間に束縛された虚獣に向けて…ディメンションスレイヤーを振り下ろす。


だが………

俺「嘘……だろ……」

停滞空間の何に居るにも関わらず、虚獣は俺の放った攻撃を難無く回避し……背後に回り込んだ上で、反撃を繰り出して来た。


俺「っ……ぐぁっ…!!」

俺は反射的に加速空間を展開して、限界まで威力を殺した……にも関わらず、なす術も無く身体は四散。

身体を瞬時に再生して、体制を整えようとする…が、その間にも虚獣は迫り………


これまた半ば反射的に、俺は虚獣との間に再度停滞空間を展開した。

しかし…迫り来る虚獣は、僅かな減速を見せたのみで……その手は、再び俺の身体を大きく抉り取っていった。


俺『……って、おい!!虚獣は停滞空間や加速空間に耐性を付けられないんじゃ無かったのか!?』

カライモン『耐性を付けたのでは無く…ディメンションスレイヤーの時と同様に、対策を打って来たのだろうな』

俺『だとしても…それも出来ないって話だったよなぁ?!』


カライモン『恐らくは…出来ないでは無く、やらなかった…と言うのが正しかったのかも知れない』

俺『はぁっ!?』

カライモン『前回の戦闘は、大気圏内…空気が密集した場所で、対して今回の戦闘はほぼ真空状態……つまり、気兼ね無く全速力を出せる場所と言う事だろう』


俺『…………くっそ…納得出来るけどしたく無ぇ真相だなぁオイ!!』

…などと会話している間にも、容赦無く繰り出される…虚獣の猛攻。


俺は既に、攻撃を正面から受け止める事は諦め…神風のサポートの下で、回避に専念する事にしたのだが……

俺『ちくしょう!!幾らなんでも早過ぎんだよ!!』

その圧倒的なスピードの前では、回避行動さえもマトモに取る事が出来ず……致命傷寸前の攻撃を受け続ける事となった。


いや………それだけならまだ良い。それだけならまだ、いくらでもやりようがあったんだが……

ハル『―――――――っ!!』

レミ『ダメ……早過ぎて当たんない!!』

カライモン『補足すら出来ないのでは……対応のしようが無いぞ!』


…………と……ご覧の有様だよ。


ちなみに……唯一、虚獣の速度に対応する手段…瞬間移動を持つ神風に至っても、その結果は大差無し。

全力を集中させた手刀を繰り出し、それを叩き込む事までは適うも…有効と言える程のダメージを与える事が出来なかった。


神風『申し訳ありません…私では力不足です。無駄に耐性を付けさせてしまいました』

俺『いや…神風が悪い訳じゃ無ぇよ。ってか…俺を含め、誰一人攻撃を当てる事すら出来て無いんだよな。こんなの…一体どうすりゃ良いんだよ』


絶望に絶望を塗り重ねて、更に絶望をトッピングしたような状態。にも関わらず……虚獣はその手を緩めるどころか……


神風『―――っ!?』

俺『どうした!!何があった?!』

神風『………地球に……虚獣が顕現しました。前回と同様の虚獣が……その数……10体…っ……』


俺『なっ――――!?』

絞め殺すつもりで、全力を篭めて来たようだ。

●しんじて

俺『くそ…っ!!地球に戻るぞ!!』


カライモン『いや…それは駄目だ!』

俺『何でだよ!!?』

カライモン『今、我々がこの宙域を離れてしまえば…変身直前のアレをやられるだろう。そうなれば…もう、我々に打つ手は無い』


俺『いや、でもよ…今の俺なら、地球の虚獣をすぐに倒せるだろうし…アレが地球に到達する前に迎撃すれば良い話だろ?』

カライモン『……迎撃を絶対に間に合わせるという、保証はあるのかね?』

俺『保証は…無いが……』


カライモン『…だったら止めておくべきだ。目の前の戦闘に集中し給え!!』

俺『だったら…地球はどうするんだよ!!』

カライモン『幸いな事に……前回の虚獣であれば、例え10体居ようとも瞬時に地球が消滅するような事態には陥らない。ならば……』


俺『先に目の前の虚獣を片付けて…超特急で地球に戻って駆除しろ…って事かよ。逆に…俺達が戻るまでに、地球が無事で居られるって保証はあんのか?』

カライモン『………無い。彼女達を…信じる他はあるまい』


俺『…………』

カライモン『………………』


俺『……ったく……その言い方は反則だろ。そんな言い方されたら………信じるしか無くなっちまうだろぉがよぉ!!!』


正直な所…ユズ達がどこまで持ち堪えてくれるかは判らない。

だが…少しでも地球を守れる可能性を増やすためには、目の前の虚獣をより早く倒す他は無い。


俺は気力を振り絞って……再び、目の前の虚獣と対峙した。


しかし…………

幾ら気合を入れたとしても…どうしようも無いような、力の差を埋められると言えば…そう言う訳でも無く…………

むしろ…今まで気力だけで限界を超えられて来た事の方が、奇跡のような物だったのだ。


加速空間に加速空間を重ね…この時点で俺単体での限界を超えて、更に停滞空間を展開して虚獣を捕獲。

そこから更に停滞空間を形成して、完全にその動きを封じようとしたのだが………


虚獣の速度は、更にそれを上回った。

レミ「不味っ――――」

事前から備えていたのが幸いしたのか…虚獣の攻撃を真正面から受けながらも、辛うじて強制離脱が間に合い離脱するレミ。


カライモン「くっ…さすがにこの速度は―――」

続いてカライモンまでもが、防壁を突き破られ、強制離脱。


この宙域に残されたのは…俺と神風、そして……ハルとディーティーのみ。


虚獣は当然にように俺に狙いを定め、俺はそれに対抗するべく装甲を強化して…

正面から一直線に突撃して来る虚獣を、迎え撃つが―――


虚獣は俺の直前でその軌道を変え、ハルへ向けてその拳を突き出した。


更に付け加えるなら…気が付いた時には、俺の前に…ハルの作り出したであろう障壁が発生していて……

同時に、これを発生させた事によりハルが無防備になっているであろう事も容易に想像出来る。


そんな状態で虚獣の一撃を受ければ、一体どうなるか……

当然、レミやカライモンのように強制離脱すら出来ない可能性だってある。

つまり………導き出される結論は、筆舌に尽くし難い物だって事だ。

俺は、その結果を回避するため……いや、どうしようも無い結末をただただ先送りにするため………


残りの力を振り絞って、回避不能な範囲…この宙域全体に停滞空間を発生させて、俺達諸共虚獣の動きを停滞させた。


停滞した空間………この中でマトモに動く事が出来るのは、神風のみ。


神風自身もその事は承知の上で…虚獣を足止めすべく、ハルとの間に立ち塞がる。

だが、案の定…神風から繰り出される一撃一撃は、耐性を付けた虚獣にダメージを与えるどころか、怯ませる事すら適わず…

すぐさま、虚獣を止める事よりもハルを退避させる方向に転化した。


ハルを後方に押し出しながら…その背に虚獣の拳を受ける神風。

その衝撃で根元から翼が抉り取られ、全身を突き抜けるような衝撃に襲われ……そこまでの傷を負ったにも関わらず、稼ぐ事が出来たのは、ほんの一時。

虚獣は神風を襲った後で、改めてハルに狙いを定め…その拳が、再びハルの目前まで迫った瞬間――――


虚獣「――――――!?」


虚獣は、何故かその手を止め…地球の方角へと、視線を向けた。

○おもひで

男子A「教育実習生ってのはさ、教師になるための課題で来てるだけなんだよ」


もう何年も前の……担任の先生から、教育実習生の先生が来ると聞かされた日の事。

女子A「仲良くしようとするのも、結局上っ面だけ…絶対に騙されちゃだめよ」

クラスメイトの否定的な意見が飛び交う中…


その人は現れたッス。


実習生「ぁー……ご存じの通り、自分は教員免許を取るために来ただけッス。面倒な馴れ合いはするつもり無いんで適当に接してくれれば良いッス」

ついさっきまで皆が話していた内容を、絹を被せる事無く言い放つ実習生。

男子A「げ……聞いてたのか………」

それに対して、クラスの男子は愚痴るように…実習生に聞こえないような小声で呟いたのだけど……


実習生「別に、内緒話を聞いてた訳じゃ無いんッスけど…そう言う事にしておくのもアリッスね」

そんな男子の声さえも聴き取った事で、実習生は地獄耳キャラという立ち位置を手に入れたッス。


けれど………自分はその時、気付いて居たッス。

実習生は、地獄耳なんかじゃ無くて…もっと別の何かを持っているって事に。



実習生「で……こんな所に呼び出して、一体何の用ッスか?」

自分「それ…嘘ですよね?」

実習生「何がッスか?」

自分「呼び出した理由も…そこから話す内容も、全部判った上でわざと聞いてる……そんな風に聞こえるんですよ」


放課後の屋上…誰からも見られず、誰にも話を聞かれない場所に…実習生を呼び出して話をしたッス。


実習生「じゃぁ、答えだけ言うッスけど…ユズちゃんがなりたい自分になれば良いんッスよ」

自分「………途中をすっ飛ばし過ぎです。と言うか、そんな所までお見通しなんですね」

実習生「あ、ちゃんとユズちゃんの口から言ってからじゃ無いと落ち着かないなら、それでも良いッスよ?」


自分「……じゃぁ、一応言っておきます。どうしたら、先生みたいになれるんですか?自分に正直になれるんですか?」

実習生「自分の場合…余り認めたくは無いけど、知り合いの影響ッスね。と言うか…自分みたいになりたいってのは、あんまり意味無いッスね」

自分「どう言う事ですか?」


実習生「ユズちゃんが自分みたいになる必要は無いッスよ。自分みたいに…じゃなくて、ユズちゃんがなりたいユズちゃんになれば良いんッスよ」

自分「先生みたいな私になりたい……そう言うのはだめですか?」

実習生「別にそんな事は無いッスよ?本当になりたい物の姿がそれなら、それも一つの選択ッスから。それに………」


自分「それに?」

実習生「別の選択肢が見つかったなら、その時は改めてその選択肢に変わっちゃっても良いんッスから」

自分「そんな時が…来るんですか?」

実習生「そんな事は判らないッスよ」


自分「先生でも…判らない事はあるんですね」

実習生「残念ながら…自分はそこまで万能じゃ無いッスからね」

○ひしがれ

自分「何だか…懐かしい夢を見た気がするッス。ほんの数か月の事の筈なのに…変な話ッスよね」

身体は…痛く所が無いくらい満遍無く痛くて、指一本動かす事が出来なくて……


自分「えっと……今、どんな状況だったッスか………」

口の中は、鉄の味でいっぱい。視界は左半分が霞んで、耳の中では耳鳴りが止む事無く鳴り響いてる。


自分「あぁ…そうッス。確か自分は…虚獣を倒そうと立ち向かって………」

あらぬ方向に指が曲がった右手に、視線を落として…自分は、今の自分の有様を思い知ってるって所ッス。


自分「自分は………誰かを助けるため…誰かを救うために、誰かを救える何か変わろうとしてた筈なのに……」

全力を出して…出し尽くして立ち向かっても……一体を倒すどころか、傷一付ける事が出来なかった。


自分「色んな物に…それまでの自分とは違う自分になろうとして…なって来た筈なのに……」

虚獣は今は力を溜めて…沢山の卵を地上に生み落とそうとしている。

もし今、虚獣に襲われたら…この街は壊滅する。街どころか…世界その物が…全てが…皆が滅ぼされてしまう。


自分「魔法少女でも…大事な人を、誰も救えない………」

どうしようもない無力さと、どうしようもない矮小さを思い知って…押し潰されてしまいそうな中………


「ならば…それを超える存在へと成れば良い。求めよ…力を。求めよ…我を。求めよ…平穏を」


聞いた事の無い男の人の声が聞こえて………


自分「なりたいッス………大事な人を救える…皆を救える自分になりたいッス!!」


自分は…その声の主を求めたッス。


●ふたたび

俺『何だ?…一体何が………いや、それよりもハル――――』

カライモン『心配には及ばないよ。ハル君なら既に入れ替わりで退避して貰った』

俺『そっか、それなら良いんだが……一体何が起こったんだ?虚獣は…そうだ!地球はどうなったんだ!?』


虚獣に生まれた僅かな隙の合間…意識のみで言葉を交わす、俺とカライモン。

だが、その途中で思い出すのは……本来ならばすぐにでも解決しなければいけない筈だった、地球の安否。


苦し紛れの停滞空間を形成してしまったがために、その外…地球では決して少なくない時間が経過している筈。

そして、そこに来てのあの虚獣の反応。下手をすれば、既に………そんな予感が俺を押し潰しにかかるが……


カライモン『あぁ、その件ならば…そうだね、神風君に確認してみてはどうだね?』

俺『……え?』

カライモンの様子は、俺の予想を裏付ける物とは程遠く…それどころか、仮面の間から覗く口元には不敵な笑みを浮かべている程だった。


神風『地球に顕現した虚獣の……残数は四。いえ…たった今一体倒され、残数三です』

俺『………は?』

カライモン『さて…どうやら彼女達は上手くやってくれているようだが…問題はこの後か』


俺『いや…だからどうなってるんだ!?一体誰が地球を……』

カライモン『誰…と聞かれても、返答に困ってしまうね。彼女達は、彼女達だ。だが、あえて例を挙げるとするのならば――――』

○おとめの

フミ「さて、これで二体目。どうやら、同時に存在している虚獣同士で耐性を共有する事までは出来ないようですね」

チヅ「だだだ…だったらこのまま…同じ方法で…たたた…倒して行けば……ふふふふふ……」

ヤエ「いんやぁ、その事なんだけども……」


フミ「どうしました?何か問題でも?」

ヤエ「どんやら今のは二体目じゃぁなぐで、三体目だったみたいだぁねぇ」

フミ「それはつまり…私達以外にも、虚獣に対抗する戦力が居る…と言う事ですか?」

ヤエ「だぁねぇ。んまぁ何にしでもぉ、人手が増えでくれるのは良い事だぁよ」


キヨ「はぁっ!?何が良い事なもんか!アタイらの獲物が減っちまうって事なんだぞ!?」

チヅ「そ…そそそ、そう。私達の…て…手柄にならない」

キヨ「いや、手柄なんてどうでも良いんだよ!アタイはとにかく暴れ足りねぇんだ!もっともっともっともっと!!暴れてぇんだよ!」


フミ「……二人とも…やはりまだ、復帰して貰うには早かったかも知れませんね」

ヤエ「んでもまぁ…これも舞さんの決めだ事だぁ。ちゃぁんと考えての事なんだろうさねぇ」


マヤ「あらあらあらあら…孫が頼りにされているのは、祖母としては嬉しいけれど…過大評価されるのも考え物よねぇ」


キヨ「手前ぇ…白虎の!!一体何しに来やがった!!」

チヅ「ま…ま、まさか…他の虚獣を倒してたのは……」


マヤ「だったら良かったんだけどねぇ……そっちはそっちで別口みたいなんですよぉ。で、私はただのお手伝いですからぁ」

キヨ「ハン…だったら足だけは引っ張るんじゃぁ無ぇぞ!!邪魔になるようなら切り捨ててやらぁ!」

マヤ「そうならないよう、気を付けるわねぇ」


チヅ「で…でも…マヤじゃ……無いなら…一体…だだだ…誰が……」

●えんぐん

俺『………はぁっ!?それって…あれか?根幹を食らう竜の中に居た…元蒼龍隊の子達の事か!?』

カライモン『うむ、その通りだ』


俺『相変わらず出鱈目な…いや、突っ込むだけ無駄なのか?ってか待てよ?さっきの口ぶりだと……元蒼龍隊の子達以外にも居るって事だよなぁ?』

カライモン『当然だ』


俺『んじゃぁ、残りのメンバーは…一体誰が戦ってるって言うんだ?』

カライモン『他は……まぁ、さすがに全員参加とはいかないが…十二大祭の際に競い合った他の魔法少女達。それと………』


俺『それと………誰だってんだ?』

○ゆめおい

「なるほど…特性は掴めました」

「念のために、ディメンションスレイヤーだけで攻撃してもらったが…最初っから出し惜しみせずに、ダークチェイサーで攻撃しても良かったかもな」

「それはあくまで結果論です。温存して、いざと言う時のための奥の手にしておいた方が良いじゃないですか」


「いや…確かにそれはそうなんだが……こう、男としてだな…女の子にばっかり戦わせるってのもアレなんだよ」

「もしかして…コンプレックス感じてますか?」


「………そうだよ、悪ぃかよ」

「いえ、貴方らしくて良いと思います」

「そんな俺らしさはいらねぇなぁぁぁ!?」

「駄目ですよ、否定したら」


「くそっ………にしても、良いのか?本当はあっちの加勢にも行きたいんじゃ無いのか?」

「良いんですよ。私には私の…こちらの私にはこちらの私の領分がありますから。それに……」

「それに…何だ?」


「今の私には…貴方が居ますから」


「―――――っ!!!あぁくそっ!いきなりそんな事言うのは反則だろ!!」

「私も一応、元悪役ですから。ルール無用の残虐ファイトはお手の物です」

「っ…開き直られたら反論出来無ぇ。あぁくそっ!次行くぞ!次!」


「……はいっ、どこまでもご一緒します」

●もどりて

カライモン『………いや、言うまい』

俺『いやいやいやいや、何だよそれ!?言えよ!?勿体付けといてそりゃ無ぇだろ!?』

カライモン『…と言うか、話している余裕はもう無さそうだ。虚獣を見てみ給え』


釈然としないながらも…俺は、カライモンに促されるままに虚獣の方を見た。

すると、その先では………


俺『嘘だろ…まさか、仲間の虚獣ごと地球をあれで消し去るつもりか!?』


虚獣が、左手を地球の方角に向け……その手の平に、とんでもない量の光を凝縮していた。


神風『方角…質量……そのどちらを見ても間違い無いでしょう』

俺『だったら、何とかして止め――――』

止めなければいけない……そう叫びかけた次の瞬間…


ユズ『――――――――!!!!』

俺『―――なっ!?」


虚獣の腕を囲むように現れる、光の輪。

そして………光の輪の出現と同時に、ユズがその姿を現した。


ユズが現れた事…それ自体がかなりの驚きだが…その驚きを塗り潰して有り余るだけの問題が、一つ残っている。

虚獣には、光の魔法その物に耐性を持たれていて……ユズの魔力がそれを超えられない事は、先の戦いで実証済み。

現に…カライモンにおいても、それを理由に今回の戦いからあえてユズを外していた。


例え虚獣の虚を突いて奇襲を成功させたとしても、通用する筈が無い。そう思っていたのだが………


虚獣「―――――!?」


俺は幻でも見ているのだろうか?

ユズが発生させたであろう、光の輪が収縮して…俺の予想を大きく裏切り、虚獣の腕を切り落とした。

俺『なっ…一体どうやって………って、ユズ、その手は!?』


にわかには信じられない光景。

初めて虚獣に有効なダメージを与える事が出来たのもそうだが……信じられないと言った理由はもう一つ。


ユズ『ちょっと裏技みたいな方法を使って…自分も戦えるようになったッス!!』

ユズの右手が………ライトブリンガーへと変化していたのだ。


カライモン『成程…ライトブリンガー化した状態で、更にあの形式の魔法ならば…ユズ君の魔力でも……いや、だがそもそも…』

俺『そう…だよな。そもそも、どうやってユズがライトブリンガーに……』

カライモン『………まさか…リミッターを破壊したと言うのか!?』

俺『リミッター?えっと…どう言う事だ?』


ユズ『カライモンさんの言う通り…リミッターを外す事で本来の自分の限界を超えて、ライトブリンガー化出来るようになったんッスよ!…部分的にッスけどね』

カライモン『しかし、そんな事をすれば…どれだけの副作用が……いや、まずどうやってその方法を………そうか、ケイエルか!?』

ユズ『…大丈夫ッス。カライモンさんが心配してるように騙された訳じゃ無くて、全部承知の上で自分で選んだ事ッスから』


カライモン『だが…いや………すまない。これ以上の言及は野暮な事この上無いな』

ユズ『ありがとうッス。あと、話の腰を折って悪いんッスけど……あれ、不味く無いッスか?』


驚愕まみれのやりとりの中…ユズが促す先は、他でも無い虚獣の様子。

ここまでは先程と同じ流れに見える、が……相手が相手なだけに、そう甘くは無い。


俺『やろうとしてるの事自体は、さっきと同じなんだろうが……』

今度は、手の平に光を貯め込むのでは無く…腹部を口のように開いて、その中心に凝縮。

単純にその破壊力を予想するだけでも、規格外の物を予想する事が出来るが……問題はそれだけでは無い。

虚獣の背中から生えた花弁のような翼が、眩い光を放ち……次の瞬間には、地球へと舵を取って…急加速を始めた。

カライモン『――っ…不味い!!我々を振り切った上で、あれを放つつもりだ!!』

俺『加速空間は…くそっ!力が足りねぇ!!ゲートを使って先回りとか出来ないか!?』

カライモン『ゲートでは、転移座標を演算している間に防衛可能なラインを突破されてしまう。それに……』


ユズ『じゃぁ、自分がここに来た時みたいに――』

カライモン『ダメだ。例え間に合ったとしても、止める手段が無い!先の魔法では、あの大出力との相性が悪いだろうし…』

俺『頼みの綱のディメンションスレイヤーは…加速空間すら展開出来ない時点でお察しだ』


カライモン『私にしても、今から間に合う手段であれを止めるだけの物は…持ち合わせて居ない』

俺『ハルもレミも……対抗するどころか、こっちに戻って来るだけの魔力すら溜まって無いだろうし…』


カライモン『万事休す……だ』


万策を打ち尽くし…絶望に打ちひしがれる俺達。

だが………そんな絶望を打ち払うように……


神風『私が…行きます』

神風が名乗りを上げた。


カライモン『確かに…君の瞬間移動ならば、距離も速度も関係無く追い付く事が出来るだろう。だが…肝心の、止める手立てはあるのかね?』

神風『……………』

何も語らず…ただ、ニコリと微笑む神風。そして、その直後…神風の姿は俺達の前から消え去り……虚獣の進行先へと立ちはだかっていた。


神風「ハナ…貴女の言う通り、私もまた大切な物が出来ました」

俺『なぁ……俺達が知らない奥の手を隠し持ってるんだよなぁ?』


神風「私は、彼の言う通り…私のために命を使おうと思います」

俺『おい、待てよ!戻って来い!!俺達が、何とか…何とかしてみせるからよぉ!!?』

カライモン『………』


虚獣「―――――!!」

神風「私の名前は、神風………白虎隊筆頭、奇跡の一陣…神風!!」


虚獣「――――――――――」

神風「大切な物…護るべき物のため………」

神風に向けて直進する虚獣……虚獣に向けて手刀を構える神風。


神風「――――この命…燃やします!!」


神風と虚獣……二つの超常の存在が交差した瞬間………

俺達が居る宙域を、光が飲み込んだ。

●とむらい

光が収まり…周囲に再び宙の闇が訪れた頃……

俺達の瞳に映ったのは……

神風の一撃により、腹部を大きく抉り取られた虚獣の姿……


そう……それだけだった。


俺「嘘…だろ………?」

カライモン「目を逸らすな…現実だ」

俺の呟きに対して、言葉を返すカライモン。


だが…その声は、神風と言う媒体を介した意思の声では無く……

ハル「………体に直接…術式から音を響かせているようですね」

その仕組みを…正にこの瞬間、戦線に復帰したばかりの…ハルが読み解いてみせた。


ハル「私が…もっと早く戻って来れていれば………」

一見すると、ハルは淡々とした様子で語り続けているように見える……が、その実は真逆。

虚獣に…そして自分自身に対しての、怒りに燃える炎をその内に宿していた。


俺「ハルのせいじゃぁ無ぇよ…そんな事言ったら、その場に居ながら何も出来なかった…俺なんてどうなるんだよ!!」

カライモン「私も同じく…だが、その責を負ったとしても仕方が無い。今の私達に出来るのは…神風君の弔い合戦。いや………」

ユズ「意思を継いで………地球を守る事ッス!!」


俺「俺も…全く同意見だ。だが、どう言う手段で戦う?神風の未来予測が無くなって…相殺出来なくなった分、状況はさっきより悪くなってるよな?」


神風との衝突によりダメージを受け…今は静止している虚獣。だが…その風貌とは裏腹に、俺達に対する隙は微塵も無く……

下手に手を出せば、確実に返り討ちに逢う…それを確信するだけの威圧感を放っていた。


ユズ「それについては…アラクちゃんに頼むッス」

俺「アラクに…か?」

ユズ「地球の方で手一杯で、こっちに手を出す余裕は無かったみたいッスけど…それももう片付いたッスから」


俺「って、言っても……いや、そうか」

カライモン「世界の狭間での事…思い出したようだね。実際、ユズくんもそうして先の不意打ちを成功させた訳だ」

俺「狭間の世界…スピリットや虚獣が演算し切れる範囲から外れれば、予測は成り立たない…って事だよな」

カライモン「その通り。後は……いや、この問題は実際に直面するべきか」


辛うじて見出した打開策。だが…そこに落ちる、一筋の影。


カライモンは、言葉を紡ぎ切るなりその場から消え……次の瞬間には、虚獣の後ろに現れた。

完全に虚を突き、マイクロミサイルの束を打ち込んだ…かのように見えたのだが………


俺「―――っ……何でだ!何であれを避けられんだ!?完全に不意打ちだっただろ!??」

カライモン「あぁ、不意打ちだった…だが、その上で反応して避けた…対応されてしまった。他の攻撃に対しても同様だろう」

俺「そんな……だったらどうするんだ?!」


一歩前進したかと思えば、二歩後退。再び八方塞がりに陥りかけた、その時…


レミ「えっと、その事だけど……もしかしたらなんだけど、何とか出来るかも知れない」

未だ前線に戻る事が出来ないレミから、僅かな光明を届けられた。

●まぎれて

俺「んでも…一体どう言う作戦なんだ?」

レミ「それは…って、今言っちゃったら虚獣にバレちゃうのよね?じゃぁ…カライモンに、狭間まで来て貰える?」


思考を始めた辺りで、既に場所を移していたのだろう。

話を聞く限りでは、レミは今狭間に居て……カライモンも呼ばれてそこに向かった所らしい。


カライモン「ふむ…可能性は低いが、無い訳では無いな。となると後は、実行に移すまでの時間稼ぎと……決め手な訳だが…」

俺「あぁ………そこから先はわざわざ言わなくても判る。判ってる…俺が時間を稼げば良いんだろ?」

カライモン「そう言う事になる…が、心配はするな。今回ばかりは、私もその役を担うとしよう」


…と言って、カライモンが再び俺達の目の前に現れた。


俺「……って、こっちに戻って来ちまって良いのかよ!作戦がバレちまうんじゃ無ぇのか!?」

カライモン「なぁに心配は要らないよ。必要最低限の情報以外は消去して来てある」

俺「お、おう……そ、そうか」


突っ込まない、突っ込まない……無茶で出鱈目な事はいつもの事。

そう自分に言い聞かせながら…俺は、虚獣の足止めに入る。


俺「……つっても…さすがにこれはキっついな…」


勢い良く啖呵を切っては見た物の……障害となったのは、俺自身の余力。

宇宙空間その物を吸収して…辛うじてながら、ディメンションスレイヤーを要所要所で形成するだけの力は供給出来ている。

が…さすがに常時それを維持だけの力は無く…攻防が長引くにつれて、その間隔も短くなって行く。


カライモンに至っても、何やら魔法陣を展開し始め…それを維持しながらの戦闘は、極めて危うく………

ハルやユズも、魔力に関しては俺と同じ。

吸収量を消費量が圧倒的に上回り、保有していた魔力量が目に見えて減少して行くのが目に見えて判る。


いつ崩れるかも知れない防波堤…それを背にしながら戦うような、瀬戸際での交戦の最中……

俺「くそっ………またあれかよ!!」


虚獣は、残された方の腕に光を集め……再びそれを地球の方角へと向けた。


地球に向けて放たれる閃光……恐らくは、ゆうに地球を消し去る事が出来るであろう一撃。

しかし、こんなタイミングに限ってディメンションスレイヤーを形成する事が出来ず………止められない。

神風が命を賭して切り抜けた危機…それを俺達がないがしろにする事など出来る筈が無い。


俺は持てる意識を振り絞り、打開策を絞り出そうとしたのだが………

カライモン「先程の物は、あくまで不意打ちだったからこそ防げなかっただけの物。残念ながら…来ると判って居れば、どうにでもなるのだよ!」

俺が行動を起こすよりも先に、カライモンが先回りして……根幹を食らう竜の咢で、閃光を食らい尽していた。


カライモン「成程……ここまで織り込み済みで、あの魔法を準備していた…と言う事か。さぁ……この長い闘いにそろそろ終止符を打とうか!!」

そして、カライモンが雄叫びを上げるのとほぼ同時に……


レミが、その姿を現した。

●あんこく

レミの出現…それに伴って、一瞬にしてその場から飛び去る虚獣。

更にそこから不規則に軌道を変え、背後からレミに迫った所で………

振り向きざにレミが放った黒い線が、虚獣の残った腕を切り落とした。


レミ「っ………バラバラにするつもりで行ったのに、腕だけ!?でも……まだ終わりじゃ無いのよね」

不敵な笑みを浮かべるレミ。そして…そんなレミを見て、後ずさる虚獣。


カライモン「成程……そう言う事か」

そこから更に……何かを理解したのであろうカライモンまでもが、レミ同様に口元に笑みを浮かべ……


カライモン「さぁ…後は任せ給え!!」

つい先ほどまで展開していた魔法陣に、最後の一手を加えて…術式を完成させた。

そして、その術式の発動により……


虚獣の背後に、巨大なブラックホールが出現した。


ブラックホールに半身を飲み込まれ……そこから抜け出そうと足掻きもがく虚獣。

だが…それが文字通り無駄な足掻きとなる事を、俺は知っていた。


地球に現れた虚獣と、同じ末路。

唯一の懸念は、質量が減少しきった際の瞬間移動だったのだが…それが可能になった時点の質量では、今の俺達を倒す事など出来ない。

虚獣が飲み込まれるまでの僅かな時間……その時間の中で、俺は…これまでの戦いを思い返す。


が…………そこで終わりでは無かった。


カライモン「くっ…ダメだ!思ったよりも早く対応された!!このままでは振り切られてしまう!」

俺「なっ…!?」

レミ「だったら…もうちょっと範囲を拡大出来ない?今抑えてる分を開放すれば……っ」


カライモン「駄目だ、それは出来ない!このまま虚獣を飲み込む範囲まで拡大すれば、レミ君が…っ」

レミ「私の事は良いから、やって!!神風の死を無駄にしちゃダメよ!」


レミは全速力で虚獣との距離を取る…が、それを追うように、虚獣もまた僅かながらその身をブラックホールから引きずり出す。

このままでは、作戦の失敗は時間の問題……全てが水泡に帰す。そして、そうならないためにレミは覚悟を決めた……


…………だが

俺「いや………そうじゃねぇだろ!!」

俺はそれを否定する。


レミ「…えっ?」

俺「神風は…絶対そんな事望んでねぇ!今ここに居たら…例え自分の死が無駄になったとしても、レミを助ける方を選ぶに決まってんじゃねぇか!!」

レミ「だったら…だったらどうすんのよ!!他に虚獣を倒す方法があるの!?」


そう…最大の問題はそこだ。


唯一にして最大の切り札、ディメンションスレイヤーを形成するには力が足りず…

俺に出来るのは、数回の加速空間や停滞空間の展開が精々。

他に出来る事と言えば………


俺「………あぁ、そうだ…あれがあるじゃないか…」

ユズ…ハル……そして最後にディーティーに視線を向けた後、俺は呟いた。

ハル「あれって…何ですか?」


俺はまず、ブラックホールに足止めされた虚獣を停滞空間で捕縛し……ハルも追随するかのように停滞空間を展開して、それに重ねる。

俺「アラクは…まだ、能力を使える程回復してないんだよな?」


アラク「アトスウフン…マテバ、イッカイツカエル」

何も無い空間に空いた穴から、ひょっこりと顔を出し…答えるアラク。


俺「数分か……さすがにそれを待ってたら、色々間に合わないわなぁ…」

アラクの能力でレミを退避させる事が出来たなら、事は大分楽に運ぶのだが…さすがにそこまで上手くは行かないらしい。

俺は、加速空間を展開しながら……レミと入れ替わるように、虚獣に近付いて行った。


ユズ「え?センパイ、何してるんッスか!?」

ハル「戻って下さい!危険です!!」


俺の行動に慌てる、ユズとハル。そして……二人とは反対に、落ち着いた眼差しで俺を見送ったのは……ディーティーだった。

ディーティー「いつかやるとは思って居たけど…ついにやるんだね」

俺「あぁ…ついに焼きが回ったぜ。まぁ、今までだって…やれなかった訳じゃなくて、出来るけどやらなかった…ってだけだしなぁ」

ディーティー「でも…あの時とは大分違うよ?その辺りはちゃんと判ってるんだろうね?」


俺「そうだな……最悪元通りにゃぁならないかも知れねぇが………それでも、今出来るのはこのくらいの物だからな」


レミが無事に離脱したのを確認した後…改めて虚獣に手を伸ばす俺。

そして、その手の平を虚獣の額に当て………

ダークチェイサーへと変化させた。


カライモン「…一体何を考えている?ダークチェイサーの攻撃力では、虚獣に対して有効なダメージを与える事は出来ないぞ?」

俺「あぁ……それは判ってる」

俺は、手から胴体…胴体からもう片方の手や両足……頭までダークチェイサーに変化させ…カライモンの言葉に答えた。


レミ「………って、ちょっと!アンタまさか!?」

さて……ここまで来れば、後は最後のひと押しだけだ。

幸いながら、俺の行動を止める人間は近くに居ない。


俺は………最後に残った脳を、ダークチェイサー化した。

●ひつぜん

俺「ぐ………ぁ…あァァぁアアああアぁぁぁ!!!」


意識の深層まで澄み渡るような快感と、全てを掻き混ぜて微塵切りにしてまた掻き混ぜたような不快感。

脳細胞の一片に至るまで、余す事無くダークチェイサー化した俺が最初に感じたのは…そんな感覚だった。


俺「こ…レが………ガガガガガガガガガ………」


舌が回らない…と言うよりは、思考に対して発声器官が追い付かなイ。

加速空間の中で思考スピードを上げるのとはまた違イ、思考の構造その物ニ改革が起キてイル。


こレナラ――――


カライモン「…何を考えている?幾らリミッターを解除したとしても、虚獣を倒し切るだけの質量は……いや、まさか―――」

ソウ……そノマサかだ。

ディーティー「リミッター解除もさる事ながら…本当に無茶なのはこれからだね」


人の身…ニンゲンの枠ノ中では、演算が追イ付かナイ。

だが………ダークチェイサーのソレならば、スベテを掌握出来ル。

いや…それも違うか………


ただのダークチェイサーでは無い…・…光と闇…両方の力を兼ね添えたダークチェイサーだからこそ可能な……・・

不完全ながらも…・・…相手の存在その物に干渉する力。


その力で俺は…・・・……・・


――――虚獣を浸食した。

●ほんとの

金髪の女性「今……何と言った?」


夢の中…いや、何時か見た夢の続きの中に俺は居た。


俺の知らない場所………

俺の知らない時間………

俺の知らない人物………いや、人物は知っているか。


銀髪の女性「だから…今までのキミたちの対応その物が間違って居たって言ったんだ」


黒髪の女性「そう言い切るからには…相応の根拠と対策があるのですね?」

銀髪の女性「勿論さ」

金髪の女性「よかろう…では話せ」


銀髪の女性「まず、ウロボロスに対する見解だけど…今までボクたちは、これを絶対的な敵性存在だと思い込んでいた」

金髪の女性「当然だろう!事実、ウロボロスによりどれだけの命が失われたと思って居るのだ!!」

銀髪の女性「でも…それは別に、ウロボロスに限った事じゃぁ無い。成長の裏に苦難があるのは、生物の常だろう?」


金髪の女性「………確かに。空気を始め…雨や火を制し、人は今の文明を築き上げては来た。だが……」

黒髪の女性「言いたい事は判りますが……貴女は、ウロボロスが恵みに転じる試練だと断言出来るのですか?」


銀髪の女性「直接…では無いけれども、その可能性はあると思って居る」

金髪の女性「……何?」

銀髪の女性「僕は思うんだ…今僕たちがウロボロスに追い詰められているこの状態は、危機じゃなくて好機なんじゃ無いか…ってね」

金髪の女性「…何を血迷った事を言っている!今まさに皆の命が失われようとしているこれが、どんな好機だと………いや、まさか…」


銀髪の女性「…そう。人と言う種として…いや、生物としての枠を超える……絶好の好機だとは思わないかい?」

黒髪の女性「私達にも…貴女と同じになれと言うのですね。良いでしょう…ですが、ウロボロスはいずれその媒体をも食らい尽しますよ?」


銀髪の女性「判ってる…だからそうじゃない。もっと上の存在…純粋な意識体へと昇華するんだ」


金髪の女性「馬鹿な……そんな事が…」

銀髪の女性「出来る…もう準備も整っているよ。と言っても…すぐ受け入れるのも、無理な話だと言う事だと判ってる」

金髪の女性「……………………」


銀髪の女性「と言うか…意識体になったとしても、永遠に肉体を失うと言う訳じゃ無いんだよ?」

黒髪の女性「…どう言う事ですか?ウロボロスにより、全ての物質が消失するのも時間の問題では?」


銀髪の女性「意識体に昇華する際…波動その物を媒体にして、ボクたち自身が波動として存在するようになる…それは判るね?」

黒髪の女性「………はい」

銀髪の女性「それにより、ボクたちは次元の枠を超え……世界と世界の壁さえも超えられるようになるのさ」


金髪の女性「並列世界への移動……ウロボロスの存在しない世界へ航行する事が出来ると言うのか!?」

銀髪の女性「その通り!更に言うなら…波動に別の情報を付随する事で、その情報を保持したまま移送する事が出来るから…」

金髪の女性「我が研究………これまで保管した生命全ての情報を…いや、それだけでは無い」


黒髪の女性「そこに私の研究を上乗せする事で…物質として再現する事も可能…と言う事ですね?」


銀髪の女性「そう…そして更に付け加えるなら……再び人類を作り出し、その中に入る事で肉体を保有する事も可能になる…と言う訳さ」


金髪の女性「成程…よく判った。だが……本当にその方法は正しいのだろうか?」

銀髪の女性「ん?何か疑う余地でもあったかい?」


金髪の女性「人でなくなる事、その物が…だ。我等は…神になろうとしているのでは無いか?」

銀髪の女性「それは違う。神なんて物はただの象徴や役職であって、人格に付随する物じゃぁ無い」

黒髪の女性「…………」


銀髪の女性「ボクたちはあくまでボクたち…ボクたちのまま、存在の係数が変化するだけの話さ」


黒髪の女性「………判りました。貴方の考えに乗りましょう」

金髪の女性「なっ………!?」


黒髪の女性「現に、他の手立ても無く…このままでは、指を咥えて滅びを待つだけしか無いのもまた事実です。それに……」

銀髪の女性「それに?」


黒髪の女性「例え私達が反対したとして…たった一人でも、貴女はそれを実行してしまうのでしょう?」

銀髪の女性「あぁ…勿論ね」

黒髪の女性「だったら…貴女一人で行かせてしまうくらいなら。私も…ご一緒しましょう」


銀髪の女性「………ありがとう」


金髪の女性「まったく……二人揃って意志は固まってしまったようだな。こうなってしまっては、梃子でも動かんのは判って居る事だ。なら……」

黒髪の女性「…………」

銀髪の女性「…………」


金髪の女性「………我も共に行こう。何事においても、汝等だけでは心許なかろう」


そして………夢は終わった。

●しんそう

俺「………で、こうして無事に目覚めたって事は…何とかなったって事で良いんだよな?」

どれだけの間眠って居たのだろうか…長い眠りから目覚めた俺の、第一声はそれだった。


ハル「最初に言っておきますが…皆、凄く怒っていました」

レミ「そうよ。で…アンタが中々目覚めないもんだから、怒りを通り越して心配に変わって…」

カライモン「こうして目覚めた事により、また怒りに戻った所だ」


俺「いや、結局怒ってるんじゃねぇかそれ!」

ハル「当たり前です」


カライモン「判って居たとは思うが…キミの中のダークチェイサーは、ディーティー君を元に戻した時のようには行かなかった」

ディティー「ハルとレミの力を借りて、辛うじて元のキミを再現する事には成功したけれども……」

俺「判ってる…元の、ただの人間の身体には戻れないんだろ?」


ハル「………はい」


俺「んじゃまぁ、それは良いとして…」

レミ「って、軽っ!?いや…アンタが良いんなら別に良いんだけど……で、何なの?」


俺「現状は…どうなってる?あれから虚獣は?この先出現する可能性は?」

カライモン「今の所、あれ以降の虚獣の出現は無い。だが…これから先の事は………」

俺「あぁ…そっか。神風が居ないから………」


カライモン「…………」


俺「多分……何となくなんだが、虚獣はまだ現れる。多分、一週間後の0時丁度。んで、ソイツが最後で…最強の虚獣だ」

レミ「多分とか言う割に、随分と具体的じゃない」

俺「何となくそれが判るけど、確証を持てない…って感じだからな」


ハル「だったら…その最後の虚獣に備えて、また色々しておかなければいけませんね」

カライモン「にしても……前回のあれを超える虚獣との闘いか。そろそろ私の奥の手用引き出しも厳しくなって来たな」

レミ「ちょっと、不安になる事言わないでよ。土壇場で奇策に博打を打つような戦いは、もうこりごりなんだから」


俺「いや………そればっかりは、俺達のスタイルみたいな物なんだからどうしようも無いだろ」


また一つ……世界の存亡を賭けた戦いを乗り切った俺達。

またいつものように、仮初の日常に戻り…また皆で次の戦いに備える。そんな、いつも通りの展開になる。

………そう思っていた…そう願っていたんだが………


何故だろうか…レミを見る度に、違和感を覚え………

俺の中の何かが、警笛を鳴らし続けているような気がした。

○はじまり

アイツの無事を確認して…家に帰る道の途中。

アタシは……今までの事を思い出していた。


これまでの戦い…虚獣との闘い……そして…アイツの言葉。

仮定に可能性を掛け合わせて…希望的観測を排除した上で、あえて自分の望まない仮定を当て嵌める。


アタシ「もしも…全部逆だったんなら……信じてた物が間違いだったなら…」


これはあくまでアタシの想像…何の根拠も無い、ただの妄想。

なのに……何故か、導き出したその答えがしっくりと来てしまった。


アタシ「あぁ………やっぱり…そうなんだ」



   魔法少女でも大事な人を誰も救えない ―完―

今回は長い間休載してしまった挙句、スレ落ちまでしてしまい申し訳ありません。
残す所最終章のみとなりました本作に、今回もお付き合い頂きありがとうございました。

また、上記の理由によりスレを跨いでの総レス返しを失礼します。

前スレ

>680 >690 その辺りはまた最終章で!
>682 699-702 お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。ちなみに…どちらかと言うと、なろうの方が加筆とか面倒になって放置気味だったりします。
>683 無茶を!!…相変わらずどこからもオファーは来ません(´・ω・`)
>684 >699  保守ありです!
>685 1つのレスで終わりそうだったのに、この体たらくですよ!
>689 >694 乙ありです!
>696 ぐぐって来ました。最近のスパロボはやってないので詳細は判りませんが、近い物はあるかもです。
>697 この作品……一番胸が大きいキャラでもCカップしか無いんだぜ?
>698 パッドを幾ら入れても、その根源は変わらないと言うのに…何という虚しい事を。

今スレ

>7 ご心配おかけしました。改めてここから頑張って行こうと思います。
>23 乙ありです!そしてただいまです!
>39 昔表紙だけ見た覚えがあったので、ぐぐってみたら…ファフナーみたいなキャラデザみたいになっててふきました
>47 活躍の場はありましたが、無双までは……だってユズですし(ボソッ)

仕事の関係で、また少し進行が遅れてしまうかも知れませんが…

次章、最終話「だってどうしても大好きだから」をお楽しみに!

○じぶんの

自分でこんな事を言うのも何ですけど…

私は…内向的で、他人との距離を置きたがり…そのくせ、自分と他人の違いや評価を気にしてばかり居た……

いわゆる、友達を作れないタイプの子供でした。


そう、彼女……レミちゃんに出会うまでは。

≪だって どうしても 大好きだから≫


○はじまり

始まりは多分…風邪をひいて、病院へ行った時。

当時はインフルエンザが流行していて…血液検査をする事になりました。

私は注射が苦手で…涙ぐみながら我慢していた事は、今でも覚えています。


その時の検査結果は、ただの風邪でした。

ですが…この話は、そこで終わりではありませんでした。


父「ふざけるな!娘はまだ小学生なんだぞ!!」

誰か「それは重々承知の上です!ですが…」

母「…帰って下さい、これ以上話す事はありません。それと…娘にもこの事は話さないで下さい」

誰か「………判りました。ですが…どうか、ご一考下さい」


ある日…風邪も治って通学を再開した日の、学校から帰って来た時の事です。


玄関の前まで来て、家に入る直前…私の耳に飛び込んで来た、父の怒号…

普段の温和な父からは想像も付かないようなその声と…聞いた事の無い誰かの声。

入る事を戸惑い…立ちすくんでいた私を余所に、少し経ってから玄関が開き……声の主であろう人物が姿を現しました。


誰か「貴女は………そうですか、貴方が…」

私「あの…私に何かご用でしょうか?」

誰か「あ、いえ……何でもありません。お元気で」

私「え?あ…はい、ありがとうございます」


声の主…髭の生えた白髪の男性は、それの言葉だけを残して立ち去りました。


私「あの…お父さん、お母さん。さっきの人って…」

母「大丈夫、ハルには関係無い人だから」

父「ちょっと大人の話をしてただけから気にするな。それより晩飯にしよう」


私「………うん」

両親が会話を打ち切り…私はそれ以上の追及をしませんでしたが…

この話は、まだまだ続きます。

○てんらく

父「茅野が失踪!?まさか……4千万!?そんな馬鹿な話が………」

母「あなた…茅野さんって―――」

真夜中…ふと目を覚ました私は、両親の会話を耳にしました。

両親の話し相手らしき人物の声は聞こえず…電話をしているようでした。


そして、次の日の朝……父の友人が失踪して、その連帯保証人になっていた父が…返済を迫られている事を知らされました。


母「あなた……やっぱり不渡りになっていたわ」

父「どうして…どうしてこんな時に限って、こんな事ばっかりが続くんだ!!」


連日のように、真夜中に怒鳴り声を上げる父…それを必死になだめる母。

最初の連帯保証人の件以降、両親からその辺りの事情を話される事はありませんでしたが…

余り良く無い事が起こっている事だけは、幼い私にも判りました。


母「弁護士さんの方は…どうでした?」

父「減額は出来るみたいだが…それでも。この家を売ったとしても……やはり、自己破産しか残って居ないのか」

母「あなた…」


いつものように…両親が真夜中に帰って来てからの会話。

けれど、この日はいつもと違いました。

家の中にインターホンが鳴り響き…暫くしてから、覚えのある声が聞こえました。


誰か「この度は…ご友人の件、真に残念です」

父「いえ、これも身から出た錆でしょう。私の考えが浅かったのが原因です」

母「それより…本日はどう言ったご用件でしょうか?娘の件でしたら、先日お断りした筈ですが?」


誰か「いえ、本日は…少しでもお力になれれば…と」

父「これは……そんな…受け取る事など出来ません!!」

誰か「いいえ、受け取って下さい。貴方達のためにも…お嬢さんのためにも」


父「娘の……いや、そうか…そうだな、そうなんだな!?」

誰か「……どうなさいました?」


父「アンタか…アンタなんだな!?全部アンタが仕組んだ事なんだな!?全部…全部…!!娘目当てにこんな事をしたのか!?」

誰か「な…何を?!」

母「あたな!!」


父「茅野の失踪も…取引先の倒産が相次いだのも…全部あんたが、やったんだろ!?なぁ!?」

母「止めて…止めて下さい!あなた!!」


誰か「………こんな状況では、違うと言っても信じては貰えないのでしょうね」

父「当たり前だ!どう考えたっておかしいだろう!!信じられる訳あるか!!」

誰か「では…あえてその前提の上で話をしましょう」


母「え……?」

誰か「私は…娘のためならば、何だってします。それこそ、必要とあれば今回のような事もするでしょう」

父「っ………開き直るのか!!」


誰か「私が幾ら卑劣と罵られようと構いません。ですが…娘は別です!どうか…どうか、お願いします!!」

父「――――っ!!帰れ!帰ってくれ!!」


父の怒号の後…少ししてから、誰かが玄関から出て行く音が聞こえ……その日の出来事は終わりました。

父「私でも…お前でも駄目なのか………」

母「あの子でさえ…あの子でさえ無いのなら。私だったら、幾らでも……」


父「どうする……どうすれば良いんだ!!」

母「然るべき手段を取る…しか無いでしょう。申請はまた明日にでも…」

父「だが…それでは……家も失って、財産も残らずに……あの子にも、苦しい生活をさせる事に…いや、下手すれば…」

母「それだけは…それだけは絶対に避けますから!!」


父「どうやってだ!?どうすれば………どうするのが一番良いんだ!」

母「だったら…あの子に聞いてみましょうよ」

父「あぁ……そうだな…それが一番だな。あの子自身が決めるのが一番だな」


その日…いつもと違ったのは、両親の会話だけでは終わらなかった事です。

ドアをノックする音の後…両親は、私の部屋へと入って来ました。


父「こんな時間にすまないな…起きているかい」

私「………うん」

母「ごめんなさいね…毎晩毎晩、うるさかったでしょう?」


私「ううん、そんな事無いよ」

母「そう…ありがとう」


父「その…何だ…もしかしたら知ってるかも知れないんだが…今、父さんと母さんは凄く困ってるんだ」

私「知ってる…友達の借金とか、会社の事だよね?」

父「あぁ、そうだ。それで……な。ある人が、父さん達に融資をしてくれるって言ってくれてるんだ」


私「……あのお髭の人?私…何をすれば良いの?」

母「――――ッ……」


父「移植手術…って知ってるかい?あぁ、いや……それは今言う事じゃ無いか」

私「…………」


父「なぁ、ハル……お前は、父さんや母さんと離れ離れになるのは嫌か?」

虚ろな……今にも壊れてしまいそうな震えた瞳で、父は私に聞きました。


○けつだん

ハル「お父さんとも、お母さんとも………離れるのは嫌。だから私―――」

父「そうか…なら決まったな」

私は父の問いに答え……その言葉の終わりを待つ事無く、父は語り始めました。


母「あなた…」

父「あぁ……融資の話…正式に断ろうと思ってる」

ハル「…え?」


父「あの話を受けてしまったら……ハルを売り渡すような事をしてしまったら…きっと、俺達は一緒では居られない」

母「…………」

父「例え同じ家に住んでいたとしても、心がバラバラになってしまう…そう思うんだ」


そう……父は決断したのです。

例え苦しい生活になろうとも…それでも、家族がバラバラにならない道を。


だから…私も決断しました。

私「ありがとう…お父さん。でも…私、お髭の人に会って話してみようと思う」

父「………え?何を言っているんだ?もうハルが移植をする必要は無いんだぞ?」


私「うん、判ってる。でも…お金の事は関係無くなっても、解決してないと思うから」

母「…………」

私「そもそも私…私の事なのに、何も教えて貰えなかった。だから…ちゃんと、話を聞いてから決めようと思う」


母「……判ったわ。それじゃ、私から先方には連絡しておくわね」

父「まだまだ子供だと思ってたのに…知らない内に大人になってたんだな。ハル…お前は父さんと母さんの誇りだよ」

私は…何だか気恥ずかしくなってしまってしまいました。


そしてここからが…レミちゃんとの出会いの始まりです。

○てきごう

物語に出て来るような…絵に書いたような豪邸…髭のおじさんの家ににお呼ばれされました。

いえ…正しくは、呼んで頂くようお願いした結果なのですが…そこは割愛です。


私「本日はお招き頂きありがとうございます」

髭のおじさん「いやいや、こちらこそ…本日はお越し頂きありがとうございます」


父「…先日は大変失礼しました。厚かましいとは思いますが…本日は、大人の事情は一切抜きにして、子供達の意思を尊重して頂きたく存じます」

髭のおじさん「無礼だったのは私も同じ事…お気に病まれませんよう。勿論…私としても、口を挟むつもりは御座いません」


お父さんと髭のおじさんの挨拶の後……私は、お医者さんの立ち合いの下で説明を受けました。


髭のおじさんの子供は、骨髄移植と言う手術が必要で…その手術のためには、移植をさせてくれるドナーが必要だと言う事…

その子は凄く珍しいタイプで…両親や親戚でも適合できず、ドナーになれる人が居なくて………

私が適合したのは奇跡のような確率で……他のドナーが見付かる確率は、無いに等しいと言う事を聞きました。


他にも……ドナー登録の手続きや、登録をしても手術を強要される訳では無い事等の説明……

あと何故か、血液検査の許可を今になって求められたりもしました。


一通りの話を聞いて判ったのは……


私がドナーにならなければ、その子は3か月以内に死んでしまうと言う事。その子のドナーになれるのは、私だけ…と言う事。

その事実を改めて口にされた時……私は、心臓が早鐘を打っていたのを覚えています。


そして、その時点で………私はドナーになる事を決意して…髭のおじさんの娘さん……レミちゃんに合わせて貰えるようお願いしました。

○かべごし

移植手術までの2週間…私は、病院でレミちゃんと一緒に過ごしました。


レミちゃんが居た部屋…無菌室と言う部屋らしいのですが……

ずっとあの部屋に居なければいけないと言う訳では無く、多少であれば外出も出来るようでした。

ただし、手術の一週間前からはまた無菌室に戻って…私も同じくらいから準備に入る事になっていました。


なので…実質上、一緒に居られる時間は一週間。

その一週間の間……私は、レミちゃんと沢山お喋りをしました。


私「それで…先生は何て言ったと思います?」

レミ「………判らない。教えて」

学校の事…クラスメートの事……両親の事…


私「それから…お父さんとお母さんには内緒で―――」

レミちゃんが知らない、私の事………


私「元気になったら…何をしたいですか?」

レミ「沢山あるけど…まず、ハンバーガーが食べたい」


私「今は駄目なんですか?」

レミ「うん…味が薄い物しか食べちゃいけないから」

病院の事…お医者さんたちの事…レミちゃんのお父さんやお母さんの事…


レミ「ねぇ……ペットって飼った事ある?」

私「飼ってた…って言って良いのか判りませんけど、少しの間だけ、子猫の世話をしていた事はあります」

レミ「そっか………ねぇ、生き物を飼うってどんな感じだった?大変じゃなかった?」


私「そうですね。大変ではありましたけど……自分で責任を持って飼うと決めていたので。嫌ではありませんでしたよ」

レミ「………そっか」

私「どうしたんですか?」


レミ「元気になった後の事…ペットを飼ってみたいとも思ってたから」


私が知らない、レミちゃんの事………

最初の頃二人の間にあった見えない壁も、自然と崩れて…


かれこれ一週間が経つ頃には、お互いが仲良くなれた………そう思って居ました。

そう…少なくとも、私はそう思っていて……


レミちゃんに言いました。


私「レミさん……一つお願いしても良いですか?」

レミ「…何?」

私「私がドナーになる代わりに…一つ、お願いを聞いて欲しいんです」

レミ「…………うん、アタシに出来る事なら」


私「じゃぁ…お願いです。ドナーになる替わりに………私の友達になって下さい」


私には友達が居なかった事…レミちゃんとの関係に、特別な繋がりを感じて居た事………

私の心が望んだままの言葉を、レミちゃんに届けました。

……………でも


レミ「私……要らない」

私「…………え?」

レミ「それが条件なら…私、移植手術なんて欲しく無い!!」


レミちゃんから返された言葉は……深い拒絶の言葉でした。

○ごうまん

全力で……私から逃げるように走り去る、レミちゃん。

レミちゃんを追って、病院の廊下を走る私。


階段を上り…上の階へと進む間……私は、ずっと考えていました。

何故…どうしてレミちゃんは、私と友達になる事を拒んだのか…私を拒絶したのか。


レミちゃんは、私の骨髄が無ければ死んでしまう……にも関わらず、それを断るだけの理由。

私から逃げ出す………その理由。


そして…気付きました。

今まで私が考えもしなかった…いえ、もしかしたら…考えても気付かない振りをしていただけかも知れない…その理由に。


私「私………最低です」


私は全力で走り……レミちゃんに追い付きました。

階段の踊り場で…手すりにもたれかかって、荒い呼吸を吐き出していたレミちゃん。

私はその真横に立って、まず……頭を下げました。


私「ごめんなさい…私、思いあがってました!」


私「私がいなければレミさんは生きられない……私がレミさんの命を握ってるんだって…きっと、考えてたんです。でも…違いました」

私の勝手な思い込み…


私「レミさんは…今、生きてます!私なんかが居ても居なくても…レミさんは自分の意思を持って今を必死に生きてます!!」

レミちゃんを…死にかけのペットか何かのように思って居た私の醜さ。


私「それなのに…私………私は、あんな卑怯な方法で、レミさんと友達になろうと………」

その全てを吐き出し……許しを請うように叫んだのですが………


レミ「違う…そうじゃ無いの!」

私「…え?」


そんな私の言葉を、レミちゃんは否定しました。

レミ「アタシの命を握ってる…移植無しじゃ長く生きられない…それは間違って無い、それは良いの!でも………」

レミ「友達になる理由が…移植の条件じゃ嫌だったの!もっとちゃんと……ちゃんと友達になりたかったから!」

私「それって………え…?」


レミ「あんな形で…約束に縛られて友達になっても、アタシは友達でいられない。きっと…もやもやした物が残っちゃう。だから……」

レミ「本当の友達になれないなら…死んだ方がマシ。そう思ったの」


私「―――――――」


ボロボロと涙を零しながら語るレミちゃんを見て……私は悔やみました。

レミちゃんは…私が考えて居たような事さえ気にしていなかった。私の考えよりも…遥かに純粋な思いを持っていた。

そんなレミちゃんを前にして、私は…自分の愚かさと醜さに苛まれながらも……それ以上に強い思いが沸き上がって来ました。


私「……ごめんなさい。そして……改めて言わせて下さい。私の………」

レミ「……何………―――――っ!?」


沸き上がる思いのまま…その思いを伝えるべく言葉を紡いだその時。

レミちゃんの身体が、ぐらりと傾き………倒れて行くのが見えました。

倒れ込む先は、下りの階段。このまま倒れてしまえば、転がり落ちる事になり…大けがは免れない。


私は反射的に、レミちゃんを支えようと…抱き留めようとしたのですが………


私「………――――」

私と言う存在は、僅かに落下までの時間を稼いだだけ。転落の勢いを受け止め切る事はできませんでした。

となれば後は…せめてクッション代わりにでもなれれば良い………そんな風に思いながら、きつく瞼を閉じたのですが………


何故か…私の身体は階段に落ちる事無く、何かに支えられていました。

○ともだち

男の人「っとっと………怪我ぁ無ぇか?」


私「……え?」

男の人「そっちの子も…何なら誰か呼ぶか?」

レミ「あ………ゴメン。大丈夫…ちょっと足がもつれただけだから」


気が付けば…私とレミちゃんは、男の人の腕の中に居ました。


男の人「そっか。まぁ…友達とはしゃぐにしても、ほどほどにな?病院で怪我なんてしたら、冗談もいいとこだぞ」

私「え?あ………はい」

男の人「……って、ヤベぇ!また講義に遅れちまう!!」


そしてその男の人は、瞬く間に…それこそ電光石火の勢いで走り去って行きました。


レミ「人にはあぁ言っといて…あの人が真っ先に怪我しそう」

私「うん、本当………あ、ですね」


レミ「………ねぇ」

私「…何ですか?」


レミ「アタシが倒れそうになる前…何て言おうとしてたの?」

私「………何でもありません。何て言いますか…その、必要無かったみたいです」

レミ「じゃぁさ……アタシからも一つ良い?」

私「…何ですか?」


レミ「喋り方…よそよそしくて他人行儀な喋り方だけはもう止めない?」

私「それは……」

レミ「だって…そういう物でしょ?………友達って」


私「……はい!あ、いえ…………うん!」

●だそくに

ハル「………と言うのが、私とレミちゃんの出会いのお話です」

俺「……………」


ハル「あ、ちなみに…父の借金は、レミちゃんのお父さんが借金の事を知った時点で肩代わりしてくれていたそうです」

俺「…そっか」

ハル「それから何だかんだあって、レミちゃんのお父さんにもそのお金を返し終えて…今ではお互いの両親も仲良くやっています」


俺「んで………その、何だ。その………いつから気付いてた?」

ハル「安心して下さい。私も気付いたのはごくごく最近です」

俺「………………」


ハル「怪我……しませんでしたか?」

俺「…………良いんだよ。病院の中だったから、すぐ手当出来たしな」

ハル「……………」


ハルは………慈愛に満ちた笑顔を浮かべていた。

俺「…で、ハルはこの後どうするんだ?」


ハル「貴方と一緒に…と言いたい所なのですが。まだやるべき事が残っているので、ギリギリまでそちらに尽力しようかと思います」

俺「………そっか」


ハル「貴方はどうするんですか?」


俺「そーだな…俺は俺で確かめたい事があっから、そっちが終わり次第…って感じか」

ハル「では…お互いやる事が終わってから、また会いましょう。終わらなくても、また虚獣との戦いで」

俺「あぁ………そうだな」


虚獣を迎え撃つその時までの、しばしの別れ………その前に………

俺は、ハルを強く抱きしめた。


ハル「わっ……あの…どうしたんですか?」

俺「いや、何となくこうしたくなってな」

ハル「じゃぁ、仕方ありませんね」


そして、ハルからもお返しとばかりに腕を回され…俺達は抱き締め合った。

ハルの存在を感じ……俺の存在をハルに伝え………

まるで永遠にその時間が続くかのような錯覚さえ感じる中で……


俺「んじゃ…そろそろ行くか」

ハル「……はい。そうですね」


俺とハルは…手を放し、それぞれの道へと歩き出した。

●たいかは

俺「身体の方はどうだ?ちゃんと安静にしてるか?」

ユズ「あ、センパイ。お見舞いに来てくれたんッスね、ありがとうッス!」


まず訪れたのは…ユズの病室。


俺がユズに声をかけ、ユズがそれに応え………

その様子を、普段着と思われる服装のカライモンが見守っている。


俺「……普通の服も持ってたんだな」

カライモン「さすがにあの格好のまま病室まで行き来していては、目立って仕方が無いのでね」

俺「いや…服装だけ普通になっても、そのヘッドギア付けてたらどの道目立つよなぁ!?」


ユズ「あ、その事なら。仮面はここに来てから―――」

カライモン「それよりも、ここに来た以上は要件があるのではないかね?」


俺「普通に見舞いに来たって可能性は無いのかよ。まぁ…その通りなんだがな」

カライモン「で…その要件とは何だね?」


俺「その話はまた後で、二人だけの時に話させて貰うとするわ。んで…ユズの容態はどうなんだ?」

ユズ「あ、それなんッスけど…」

カライモン「幸運であり不幸…と言った所だな。ユズくんは、もう魔法を使う事は出来ない」


ユズの右手を見た限りでは…ライトブリンガーから、元に戻っては居る。

だが…過ぎた無茶をした代償は、決して安くは無かったらしい。


ユズ「最後の最後の戦いに参加出来ないのは悔しいッスけど…後悔はして無いッス」

カライモン「あぁ…あの時ユズ君が来てくれなかったら、今頃地球は宇宙の藻屑になってたろうしね」

俺「って事で…前回頑張った分、今回は俺に任せて休んどけ」


カライモン「おいおい。そこは。俺にでは無く俺達にだろう?」

俺「っと、そうだった…俺達に任せとけ。って事で、ちょっくらカライモンに話があるから借りてくぜ?」

ユズ「はいッス。お持ち帰りしないでちゃんと返して下さいッス」


そして…俺とカライモンは、ユズの病室を後にした。


…………ユズの…嗚咽と悔し涙を見ない振りをして………

●かくにん

カライモン「それで…私への要件と言うのは一体何なのだね?」


人目を避け…訪れた場所は、屋上。

ごうごうと鳴り響く風の中で、備え付けのベンチに座りながら…カライモンが本題を切り出して来た。


俺「なぁ…いつから気付いてたんだ?」

カライモン「いい加減…主語を付け給えよ、主語を。それでは、誰の事を言っているのか判らないでは無いかね」

俺「付けなくても判ってんだろ?ってか誰とか言ってる時点で、とぼけ切れてねぇよ」


カライモン「…良いから言い給えよ。私の想定の方が深かった場合、余分な事を喋る事になってしまうだろう」

俺「お前なぁ……まぁ良いわ。終焉を齎す者の干渉を受けた全部の事だ」

カライモン「カマ掛け…と言う訳では無く、確信を持っての質問のようだね」


俺「そー言う事だから、いい加減腹を探るような事は止めて本題に入ってくれ。で、いつからだ?」

カライモン「一番最初…と言う意味では、ライトブリンガー…ハル君との戦闘からだね」

俺「………ってそれ、お前が参戦してすぐじゃ無ぇかよ!何でその時点で気付いた事になってんだよ」

カライモン「前にも言ったが…信仰やそれに伴う勢力図が歪だったためだよ。見えない何かが存在している事は、容易に想定する事が出来た」


俺「…………」

カライモン「……それに」

俺「それに?」


カライモン「覚えているかね?あの時エディーも言っていただろう。私も特殊な資質を持っている…と」

俺「あぁ…そーいやぁそんな事言ってたなぁ」

カライモン「あれはどうやら…3つ目の核に属する魔力の事らしい。そして、更に付け加えるなら…」


俺「……まだあんのかよ」

カライモン「根幹を食らう竜の力に至っても…ディメンションスレイヤー同様の、二つの核の複合能力らしい」

俺「マジかよ。あぁでも、言われてみれば確かにそうだよなぁ…そう考えりゃぁしっくり来るわ」


カライモン「光と、例の三つめの核の複合………今更だが、イデアイーターとでも名付けておくか」

俺「それまた随分アレなネーミング…って、関係してるって自覚ある割にゃぁ余裕だなぁオイ」

カライモン「…と言う訳で、もし私が敵に回った際には遠慮無く全力でぶつかってくれ給え」


俺「いや、縁起でも無ぇ言葉を期待してる訳でもねぇよ。ってか、話を戻すが…確信したのはどの辺りだ?」

カライモン「狭間に巣食う蜘蛛……アラクの糸に関わる一連。後は…先の虚獣との闘いだろう。そう言う君はどの時点で気付いたのだね?」


俺「俺は……虚獣の戦いの後だな。そっから色々あって…色々あって、黒幕の尻尾を垣間見たんだと思う」

カライモン「…光と闇の核が復活したのかね?」

俺「っ……あ、いや…復活した…って訳じゃぁ無いと思う」


カライモン「では…次は私から質問させて貰おう。君はどうするのだね?真相に踏み込んで、それに抗うだけの覚悟があると?」

俺「正直な所…まだ判らねぇ。ってか多分、踏み込んでみて…そこからなるようになる…いや、するんだと思う」

カライモン「ふむ………まぁ、それならそれで良いだろう」


俺「で…そう言うお前はどうなんだ?気付いた上で、この後どうすんだ?」

カライモン「私の方は、既に行動に移っている。ちなみに…この件に関してはアラク君にも協力して貰っている」

俺「さすがと言うか何と言うか……んじゃまぁ、確認も出来たし俺はそろそろ帰るとすっか」


カライモン「では…最後に私から1つ言わせて貰おう」

俺「ん?何だ?」

カライモン「最悪の結末は、まだ確定している訳では無い。最悪よりも少しはマシな未来も残っている…らしい」


俺「それは…あれか。いや…可能性がある以上足掻いてみるか」

返答…と言うよりは、独り言のように呟き、俺はその場を立ち去った。

そして、屋上から院内へと続く階段へと向かう途中……

       
―――ノイズが走った

●えんぜつ

エディー「我々は、大いなる決断を迫られています。そして…その決断次第で我々の…世界の未来は大きく変わるのです!!」

部屋の外…遥か遠方から聞こえる、エディーの声。


俺「あー…っと、今一体どんな状況だ?」


現状を把握すべく、部屋の中を見渡すと……羽根の生えた猫型マスコット…獣人が二体と、薄紫色の髪の女の子が一人。

猫型マスコットの片方は…ハルの契約者、ディーティー。額に01と書かれたもう片方は…ユズの契約者、DT。


薄紫色の髪の女の子の名前は、アラク。先の会話にでも出てきた、狭間に巣食う蜘蛛で……

世界線で、現実の世界と虚構の世界を移動したりさせたりする能力を持っている。


見た限り……今俺が居るのは、虚構の世界…Ifの世界と言う訳では無く、もう一つの世界。元の世界とはコインの裏表のような存在のAndの世界らしい。

一旦Ifの世界を経由して…元の世界からこの世界のこの場所に、糸で連れて来られたらしいのだが……その意図自体は、未だに掴めない。

俺はとりあえず、その場に居る全員に聞いてみる事にした。


DT「とりあえず…エディーに関しては、エリアディレイクターの職務を全う中なので欠席を許しておくれ?」

俺「とりあえず、状況を説明してくれるならな?」

ディーティー「聞く前にまず自分のその頭で考えてみたらどうだい?」


相変わらずの態度を取るディーティーの、その頭を掴み…俺は改めてDTの方を向く。


DT「ボク達は今……決戦に向けて準備をしているのさ。それで、光と闇の核の声を皆が聞けば士気向上になると思ったんだけど……」

俺「悪ぃが、そっちの方は期待しねぇでくれ。相変わらずこいつらは寝たまんまだ」

DT「………そのようだね」


俺「ってか、何でアラクまでこっちの世界に居るんだ?カライモンを手伝ってる筈じゃ無かったのか?」

アラク「コレガ、ソノナイヨウ。チナミニ、ショウサイハアカセナイ」

俺「お前もか…まぁ良いけどな」


ディーティー「と言うか……決戦の日までキミは何をするつもりなんだい?そんな事すら決められない優柔不断なのかい?」

俺は返事代わりに、ディーティーの頭を掴む手に力を籠めた。


DT「いや、茶化すつもりも焚き付けるつもりも無いんだけど…一応は皆の動向を把握しておこうと思ってね。実際どうなんだい?」

俺「んー……今ん所詳しくは言えねぇが、俺は俺で行動してる最中だ。一応、その辺りが落ち着いたら全部話すわ」

ディーティー「信用ならな………いぎぃっ」

また更に、さっきよりも強くディーティーの頭を握った。


俺「って事で…そろそろ元の世界に戻してくれっか?」

DT「こちらの世界の時間の経過は、あちらの世界の10分の1。まだそんなに時間も経っていないのに、そんなに急ぐ事なのかい?」

俺「あぁ……なるべく早くに片付けておきたい事なんでな」


DT「なら仕方ない。また会うのは暫く先になるだろうけど…それまで元気で居ておくれよ」

俺「あぁ…お前等も達者でな」

アラク「オタッシャデー」


そして俺は、ノイズと共に元の世界………俺の住んでいるアパートの自室に戻された。

●たびだち

実は……俺は嘘を吐いていた。

その嘘で、皆の思いを裏切ったが………後悔はしていない。


俺「さて………諸々のインチキでショートカットしても、ばれねぇようコッソリ行くにゃぁ最低で5日はかかっちまう…か」

俺はベランダに出て……全身をダークチェイサー化した。

俺「大分待たせちまうが、許してくれよな?」


目指す先は………宇宙の彼方。

扉の魔法…ゲートを開いて、俺はその先を見据えた。


ちなみに、俺が吐いた嘘は何かと言うと………

俺「虚獣の顕現まで、あと5日……二日後、皆が追い付くまでにケリを付けなきゃならねぇよな」


以上だ。


そして俺はゲートを潜り……虚獣が顕現する、その座標へと向けて旅立った。

●いつかめ

俺「予想はしてたが……こりゃまたとんでもねぇなぁ………」

出発から五日目。俺は…目的地である、宇宙の最果てへと辿り着いた。

そして、そこで見た光景は………


俺「……………」


目の前を丸ごと埋め尽くす……恐らくは、今居る宇宙と同等の質量を持った…冗談みたいなデカさの虚獣だった。

しかし……その異様な光景を、目に焼き付けている暇すら無く……無慈悲にも、虚獣は顕現。

更にはそれと同時に、円形の口を開き……その中央に真っ黒な塊を形成。


俺「おいおい…嘘だろ?」


黒い塊自体は、以前カライモンが使ったブラックホールに似ている。だが…問題は、そこに付与されている魔法のような物だ。

形式から逆算して、恐らくは……扉…ゲートに類似した物。

狙う場所がどこかまでは定かでは無いが…そのいずれを狙ったとしても、齎される被害が尋常では無い事は判り切っている。


俺はそれを食い止めるべく、ディメンションスレイヤーを形成し…斬りかかろうとしたその瞬間………


周囲に、黒い線が駆け巡った。

●ほしくず

輝く数多の星々と…有機物とも無機物とも取れない幾つもの白い塊……それが、解体された虚獣の欠片である事はすぐに判った。

そして…レミは、その中央に居た。


レミ「この子達…ね。銀河系ごと消滅させようとしてたから、仕方無く…こうするしか無かったの」


近い物は、手の届きそうな距離…遠い物は、恐らく何光年も離れた先まで……四散した虚獣の欠片を眺めながら、この状況に至った理由をレミの口から聞いた。

俺「あぁ…判ってる」


レミ「………ゴメンね」

俺「おいおい、謝んなよ。ってーか…この後どうするんだ?この虚獣は最後の抑止力だったんだろ?」

レミ「そうね…アタシとしても、この世界が無くなるのは嫌」

俺「………だよな、俺だって嫌だ。何だかんだで、俺はこの世界が好きだしな」


レミ「だから…終わらせよ?それが…アタシの最後の………」

俺「………」

レミ「………………」


俺「…そっか」

●あらがい

俺「しっかし…あれだよな。スピリットの能力がなまじ便利過ぎたもんだから、俺達…完全に依存しちまってたよな」


レミ「……うん」

俺「んで、その結果がこれだ。多分…神風自身も、操られてた事に気付いてなかったんだろうな」

レミ「…そうね。虚獣は…本来の役目通り、世界を救おうとしてただけって…判った筈だしね」


レミ「……ゴメン。本当なら…アタシがもっと早く気付いてれば、こんな事になって無かったのよね」

身に纏ったダークチェイサー……ロストを変化させ、装甲及び武装を強化するレミ。


俺「そうでも無ぇさ…多分、知っててもここまでは足掻いてただろうしな。それに……自分の意思じゃ止められねぇんだろ?」

中二病フォーム末期モード…最初から全力全開で、迎え撃つ俺。


レミ「うん……嫌なのに…抑え切れないの。この世界を…終わらせたくて仕方無い。だから…終わらせて」

ロストの爪が根元から鞭のようにしなり、俺に襲い掛かる。

俺はその攻撃を避け、光の刃で爪を切り落としにかかるが……


俺「―――っ」

黒い線が放たれ、それを阻害。

俺は、辛うじて黒い線を避け……更に距離を取った。


俺「ってか…いつ頃からだったんだろうな?」

レミ「確実なのは、アンタがこの子…ロストに襲われた時だけど。多分…神風が闇の核の一部を奪った時には、もう始まってたんだと思う」

俺「闇の核の一部に隠れて…ずっとストーキングしながら周りを騙して来たんだろうな。ある意味、本当のダークストーカーじゃねぇか」


俺は悪態をつきながら、ダークチェイサーの鉤爪を形成。


俺「で………コイツは一体どんなルールで動いてんだ?」

レミ「…アタシも全部は判んない。とりあえず…アンタがアタシを殺さなきゃ、アタシがこの世界が終わらせちゃうのは確か」


レミは、背中から8本の尻尾を生やし…元からあった尻尾と合わせて、9本の尻尾で攻撃を繰り出して来た。

旋回しながら尻尾を避け…その一本に向けて鉤爪を振り下ろす俺。


だが、その切っ先が尻尾を掠めた……その瞬間。


銀髪の女性『何故…何故なんだ!!君達とならば、更なる次元の高みに上る事が出来るんだよ!?何故それを拒むのさ!!』

夢の中でも無いって言うのに……例の、銀髪の女性の声が聞こえた。


銀髪の女性『そうか…まだ、この次元に未練があるんだね?』

切り結び…ぶつかり合う度に聞こえてくるその声は、どうやら俺だけに聞こえている訳では無いらしく…

レミもまた…その声を耳にして、表情に影を落としていた。


銀髪の女性『この世界は有限で…終焉は必ず訪れる。それはキミ達も判って居る事だろう?』


俺「なぁレミ…お前もあの3人の夢を見たのか?」

レミ「……うん。やっぱりアンタも見てたのね」


銀髪の女性『忘れてしまったのなら、ボクが思い出させてあげるよ』


最早、疑う余地も無い事なんだが……レミの言葉を聞いて、俺は確信した。


銀髪の女性『思い出すまで……何度でも…何度でも何度でも何度でも。ボクが…終焉を齎す者となってねぇ!!』


あぁ……やっぱりか。


そう…ここからが本当の………本当の、最後の戦いだ。

レミ……いや…………


……………三つめの核との…な。

●もくてき

俺「にしても…もうちょっとくらい手加減出来ねぇのか?」

レミ「しようと……しるんだけど…これが限界…っ……」


終焉を齎す者…三つめの核との戦いにおける目的は一つ。

俺もレミも、この目的を果たす事を前提として立ち回り……着実に歩みを進めて行く。


俺「あと、一応…聞いとくが、怖かぁ無ぇのか?」

レミ「怖く無い…なんて言えないけど……仕方ないからね」

俺「………そっか」


レミ「ワガママ言うと……なるべく痛くしないで欲しいってくらいかな」

俺「そりゃぁ…お前が抵抗しなけりゃ、だな。暴れりゃ暴れる程、痛い思いをする事になっちまうだろうな?」


俺は…右手と左手に、ディメンションスレイヤーを形成。


レミ「あのさ…」

俺「………何だ?」


レミ「何か…アタシ達の会話って、無理矢理ヤらしい事されてるみたいよね」

俺「………お前なぁ。ちったぁ緊張感持てよな?!今から何するか判ってんだろ?」


レミ「判ってる。ちゃんと……してよね?」


お互いの意思を確認した上で、俺はディメンションスレイヤーを構え…

レミへと斬りかかった。


だが…………


俺「な………にぃ…?」

ディメンションスレイヤーの刃は、レミに届く事無く……


それを構えていた俺の腕ごと、黒い線に八つ裂きにされてしまった。

●うんめい

操られているレミが、それに抗いきれずに黒い線で攻撃して来る事…そこまでは当然、想定内だった。

そして…その迎撃により、俺の腕が切り落とされてしまう…と言う事態も、遺憾ながら想定内。


だが………


俺「こりゃあ…一体どう言う事だ?!」

目の前の現実は、俺の予想の遥か彼方を突き抜けて行った。


迎撃のために放たれる黒い線………

それを切り払った上で、レミをディメンションスレイヤーで斬る…その筈だった。そうなる筈だった。

だが、実際には…光の闇の究極形態とも言えるディメンションスレイヤーを、黒い線が切り裂いてしまった。


あまりにも不可解な出来事を前に、目の前が真っ白になりかけたその瞬間…俺は、不意にカライモンとのやりとりを思い出した。


俺「そうか…そう言う事かよ…っ」

狭間での出来事や虚獣との戦闘が、カライモンにとって確信を得るに足る物だった事…

根幹を食らう竜の力は、ディメンションスレイヤー同様の複合能力である事……


思い返せば…虚獣に耐性を付けられる事無く、何度と無く繰り返し致命傷を与え……

狭間においては…数多の世界線を、ことも無げに切り裂いていた。

つまり…………


俺「世界を切り裂く………終焉を齎す者の力。黒い線が、まさにそれだった…って事かよ」


愚痴るように呟く俺。

そんな俺に対して、レミは作り笑いを浮かべてながら言葉を続け…

レミ「うん、そう。だから……切り離すのは多分無理。ちゃんと…アタシの事殺して」


そして再び…今度はレミの言葉で、俺の頭の中は真っ白に染め上げられた。

俺「………は?」


レミの言葉を聞き…俺は思い違いに気付いた。

俺は…終焉を齎す者とレミを切り離し、その上で終焉を齎す者だけを倒そうとしていた。

だが、レミは………最初から、終焉を齎す者諸共…自分も心中するつもりだった。


レミ「正直言っちゃうと…もしかしたらって期待して無かったって訳じゃ無いんだけど……やっぱり無理だったわね」

俺「やっぱり…って、気付いてたのか?」

レミ「…うん。力関係って言うか相性って言うか…出来ないだろうなって事は、何となく………ね」


………俺は思い知った

自分の浅はかさ……何とかなるだろうと楽観していた甘さ……そして、覚悟の無さ。


思い返してみれば、ハルが光の恩恵派に連れ去られた時もそうだった。

目の前の現実から逃げ出して…希望にすがって、覚悟の一つも決められなかった。

そしてその結果………俺は、一度ハルを失った。


そう…だから……もう迷ってはいけない。レミの想いに答えるのが、今の俺の義務だ。

自分の不甲斐無さを悔やみながら、覚悟を決めたその上で…………


俺「そっか…悪ぃな。んじゃぁ、今度こそ確実にいくぜ」

レミ「うん、お願い。これ以上長引いちゃうと…アタシ、マズいかもしれないから」


俺「あぁ、安心しろ……ほんの一瞬だ。そんでもって…」

レミ「……何?」

………俺は持てる全ての力を使い、数多の球状のダークチェイサーを形成。


俺「終わったら…何もかも元通りにしようぜ!!」


レミ「…………」

レミは…微笑みながら俺を見据え……


そんなレミに向けて…俺は、ダークチェイサーによる一撃を放った。


●おもわく

レミの放った黒い線により、真っ二つに分断されるダークチェイサー達。

だが……それらは分断されて尚、再び新たな形…球体となりレミに迫る。


分断されては再形成を行い…時に自ら分裂しながら、レミとの距離を縮めるダークチェイサー。

そして、ついにはレミの眼前にまで迫り……その形態を、球状から針状へと変化。

逃げ場の無い全方向からレミを取り囲み………


後は、中心…レミに向けてそれを収縮させるだけ。

それで決着がつく……

その筈だったのだが………


正体不明の違和感に襲われ、俺は最後の一手を打てずに居た。


レミ「…何?どうしたの?早くしてよ!!」

俺「いや、待ってくれ……何か…何か変なんだ。何て言うか、こう………間違ってるような……」

戸惑い…迷いながら足踏みする俺。

そして、その違和感の正体は……思いも寄らない相手から明かされる事となった。


光の核『汝の願いは…適わぬ』

俺「………はっ?…って、久しぶりに出てきたと思ったら……いきなり何言ってんだ!?」

………いや、これは嘘だ


闇の核『貴方自身…気付いて居る筈です。いえ…確信を持たないまでも、片鱗を掴んでいる筈です』

そう…俺は気付きかけている……あと一歩で気付く所まで来て居る。

だが………その一歩を踏み込む事を、戸惑っているだけだ。


目を逸らしている…知る事から逃げている…その事を思い知った上で………

光の核『あの者を…アーカイブから蘇らせる事は出来ぬ』


現実を突き付けられた

俺「何だよそれ…訳判んねぇよ!だってよぉ…アーカイブはあの後修復したって言ったじゃねぇか!!」


往生際悪く…俺は食い下がる。

判ってる……こんな風に逃げてばかり居るから、俺はダメ人間なんだ。


闇の核『そう…今のアーカイブに現存しているのは、修復よりも後の情報のみです。つまり……』

そう…判ってる。判ってるけれども認めたく無いだけだ。

けれど…幾ら駄々をこねても、状況は悪化の一途を辿るだけ…改善の兆しなど一筋も無い。


俺「レミだけ……終焉を齎す者の干渉を受ける前の、レミだけをアーカイブから引き出す事は不可能……って事か」

俺は………それ以上の抵抗を諦め、現実を口にした


レミ「あーぁ…もうちょっとだったのに。そこも気付かれちゃったのね」

俺「………」


レミ「だから最初から言ってるじゃない、アタシを殺してって…ね」

俺「レミ……お前………」


レミ「こうなる事が判ってて…虚獣との闘いで、そっちの二人は隠れてたんでしょ?」

光の核『………』

レミ「アンタじゃ頼りない…とまでは行かないけど。アンタの手でアタシを殺すくらいなら、虚獣にやられる方がマシだとか思ってたんじゃない?」


闇の核『全て…判って居たのですね』

レミ「そりゃぁ……ねぇ?」


生き返る事が出来るのを前提とした、一時的な死…

そんな甘い物では無く、二度と戻る事の出来ない本当の死……自らの消滅。


レミは全てを見据え…その上で覚悟を決めていた。

対して俺は、この期に及んでもまだ活路を見出そうと…決断から逃げて足掻いて居た。

だが、それはもう許されない。


残された僅かな時間の中…俺は、覚悟も決められないまま……ただただ、必然と言う言葉を言い訳にして…


逃避の先、レミの言葉に甘え……


妥協ですら無い、ただの諦めの末に………最後の一歩に踏み込んだ。

●げんいん

全ての…終焉を齎す者との戦いに終止符を打つべく、解き放たれたダークチェイサー達。

逃げる事も迎撃する事も適わない全方位からの攻撃が、余す事無くレミに襲い掛かり……後は、その結末を見届けるのみ。

そう…その筈だったんだが………


レミ『待って!!』


レミの言葉…いや、思考の伝達により…俺の放ったダークチェイサー達は、その動きを止めた。

何故レミがそんな行動に出たのか…その結果とそれに至るまでの理由は、深く考えなくても判る。


俺「くそっ……遅かったか!俺が悩み過ぎたせいで…完全に……」

終焉を齎す者に、完全に乗っ取られてしまった。

その結論に行き付いた所で、ダークチェイサーの第二波を形成するのだが…


レミ「うぅん…そうじゃ無い、そうじゃ無いの。でも………」

俺「……え?」

レミ「でもアタシ……やっぱり、この世界を終わらせる。こんな世界…続いちゃいけないから!」


大粒の涙を流しながら…レミが叫び声を上げた。


俺「…はっ!?何言ってんだよ!?いきなりどうしたってんだ!?」

レミの流した涙が、雫となって宙に舞い…そのまま沸騰してかき消える。

しかし俺達には、そんな光景をのんびりと眺める暇すら無く…また新たな窮地が訪れる。


レミ「ゴメン…ゴメン、ゴメン!ゴメン!!でも…ダメなの!!」

おかしい…いや、死を前にした人間としてはむしろ正しい反応なのかも知れないが……レミのこの行動は理解できない。

先程までとは真逆の行動…真逆の意思。一体何がレミを変えたのか………いや、何かなんてのは判り切っている…犯人は一人しか居ない。


俺「終焉を齎す者に…何かを吹き込まれたのか!?」


レミ「…………っ!!」

………レミの沈黙が肯定である事は、すぐに判った。


となると…問題は、何を吹き込まれたのかと…言う事。

この豹変を引き起こすだけの物は、一体何なのか…憶測を組み立て始めた所で…

闇の核『恐らくは…終焉を齎す仕組みその物。避けようの無い宿命に、触れさせられてしまったのでしょう』


その答えを、アッサリと告げられた。


俺「一体どう言う事だ!仕組みって一体何だよ!!


闇の核『彼女…無の核の干渉に関しては、貴方も既にご存知の事かとは思いますが…』

俺「お、おう……」

無の核…その名前自体は初耳なんだが…余計にな茶々を入れて話の腰を折ってもいけないので、とりあえずは肯定しておくのだが…


光の核『スピリットや、あの者のように…無の核に接触干渉を行った者は、同時に無の核からの干渉を受けておる。そして、それとも異なり……』

俺「いや待て。ロストの正体が三つめの…無の核だってんなら、俺もモロに干渉受けてる筈だよな?」

追い付けないどころか置き去りになりつつある会話の中、俺は思わず突っ込んだ。


闇の核『そう……本来であれば、光と闇…そして無の核の干渉を色濃く受けた貴方が、真っ先に終焉を齎す者となる筈でした』

俺「………は?じゃぁ、何で俺は無事なんだ?」

闇の核『まず…私の空間の中でそれを察知した際、仮初の…一時的な封印を貴方方に施したのです』

光の核『その際…暴走した我が眷属の襲撃に逢い、汝等の命その物を脅かしてしまったが…な』


俺「って…あの熱病って、適応の副作用じゃ無かったのかよ!?」

光の核『そしてその後…終焉を齎す者として覚醒するよりも早く、前以って我らが汝と同化し…無の核の支配を免れるに至った…と言う話だ』

俺「スルーしやがった……って待てよ?だったら…現に今レミがあんな事になってんのは……」


好奇心で…ましてや勢いなんかで知ろうとしてはいけない事が、この世には存在する。

そして…今の俺の言葉が正にそれだった。


闇の核『………そう。終焉を齎す者として…貴方の代わりに覚醒したのです』

俺「―――――――――ッッ!!?」


俺は……突き付けられた真実に絶句した。

俺「ッ……何で…何で俺なんだ!!何で…レミなんだよ!!せめて…せめて逆なら…ッ」


闇の核『それは―――』

レミ「………良いの。アタシは…これで良かったと思ってる。多分…どっちでも同じ結果になってたと思うから」

俺「何だよそれ…判んねぇ……ワッケ判んねぇンだよ!!!」


レミ「…だから良いの…もう良いの。考えないで!!何も考えないで、このまま終わって!!」

俺「そんな事…出来る訳―――――ッ!?」


レミ言葉により、ダークチェイサー…ひいては俺自身の動きが止まり……

身動きが取れない間に、レミは両手を天に掲げた。


何が起こるかは判らない…が、何をしようとしているかは嫌と言う程判る。

世界の終焉………それだけは止めなければならない。

にも拘わらず、俺は指一つ動かす事が出来ない。


レミの力を打ち払うべく、全力で抵抗する…が、改善の兆しは一向に無し。

俺は、するべき事…出来る事を考え抜き………


俺「あぁくそっ………こうなったらアレを使うしか無ぇか…!!」

奥の手を使う事を決意した、その瞬間――――


レミの後方から迫る光の束が、その無防備な背面へと襲い掛かった。


ついでに言うと…俺は、その光の束に見覚えがあった。

そう、つまり………今の出来事が示しているのは…


俺「なっ…まさか、ハルか!?」

ハル「はい。お待たせしました」


そう…ハルが駆け付けてくれたという事だった。

俺「………って、何でここに居るんだ!?到着は二日後の筈じゃ……」


しかし…腑に落ちない事が一つある。俺は皆に嘘を吐き、本来の予定よりも二日前に到着している。

にも拘わらず、ハルは今この瞬間にこの場に居る。

俺は、その事を問い質そうと試みるが……


ハル「……………」

無言の笑顔により、それは遮られた。


俺「えっと………ハル?何か……」

無言の笑顔…この重圧を向けられる理由に、心当たりはある。

先にも言った通り、ハル達を騙して出し抜いた事か、あるいは…ハルが何かを………


俺「………まさか!また俺の事監視してたのか!?」

何かを隠している時なんだが………

ハル「様子がおかしかったので…ちょっと保険で。あと、それもありますけど……私、少し怒っていますから」


………どうやら、その両方だったらしい。


レミ「お願い……二人とも。邪魔しないで…このまま……終わらさせて」

悲痛な嗚咽と共に、俺達の会話に割って入るレミ。

その声色…その表情からもレミの感情を読み取る事が出来る…が、だからと言って同意する事も出来るかと言えば、話は別だ。


ハル「レミちゃんが何を知って…何を考えてるのか判らない。でも……私は、それが正しい事とは思えない。だから…私はレミちゃんを止める」

レミ「何で……何で……ッッ」

判ってくれないのか…とは、レミは言わない。それ故に…レミが何に対して理不尽を感じて居るのかは判らない。


結局の所…レミも語らず、光と闇の核もそれ以上は語らずで…一番大事な部分が不明瞭なまま、強引に事態が進み……


レミは…残った8本の尻尾を、蛇の頭のような物に変質させて再構築。

ハルは…ライトブリンガー形態に移行。

俺は…ディメンションスレイヤーで自らに干渉を行い、身体を構成するダークチェイサーからレミの干渉を切り離し……


不本意ながらも、双方の臨戦態勢は整った。

●たいざい

俺「そんで、この後は………いや、確認するまでも無ぇか」

ハル「…はい。レミちゃんの武装をとにかく削って削って…無効化させてから、力づくで本心を聞き出します」

俺「って、改めて聞くとかなり物騒な内容だが…やり過ぎんなよ?」


ハル「大丈夫です。実は拳で語り合うのは慣れっこなので」

俺「…マジかよ」

ハル「冗談です」

俺「おま………」


ハル「でも…レミちゃんとの喧嘩は、一回や二回じゃありませんから。安心して下さい」

俺「そうだな、その点だけは心配してない。そんじゃまぁ…二人で…」


ハル「止めましょう…レミちゃんを!」


まず俺が、ディメンションスレイヤーを解除して…右手を蛇腹剣状に変化。

更にそれを使って、レミの周囲を取り囲み………レミに向けて収束。

駆け巡る刃がレミに迫り…レミの放った黒い線がそれを切り裂き、俺の刃は跡形も無く消え去る。


だが………


俺「おいおい、俺にばっかり構ってて良いのか?」

レミ「――――ッ!!」


ハルの放った閃光が、黒い線を貫き…蛇の頭の一つを吹き飛ばした。


俺「さすがに二対一は分が悪ぃだろ?降参した方が良いんじゃ無ぇか?」

レミ「っ……冗談!!」


単純な頭数もさる事ながら…火力においても、完全に俺達が有利。俺とハルは、この流れまま一気に押し切ろうと試みるが…

残った7つの蛇の頭が肥大化し…それに伴い竜の頭に変化。

更には、続いて形成された胸部にレミが包み込まれた後…翼と四肢が形成され……


最後に形成された尻尾により、俺とハルの身体は遥か彼方まで弾き飛ばされた。

俺「虚獣…程じゃぁ無ぇが、中々のデカブツになったじゃねぇか」

弾き飛ばされながら…周囲に舞う虚獣の肉片を視界に捉えながら……俺は、絞り出すように呟いた。


今のレミ…及びダークチェイサー達の全長は、残存する虚獣のどの肉片よりも巨大で重厚で……その出で立ちだけで、俺達を圧倒していた。

俺は、虚勢をはりつつも…その変貌に畏怖すら覚えていた。


だが…


ハル「でも…それは、レミちゃんの心がそれだけ追い詰められているって事。ただの…上辺だけだから」

中央の頭から背中にかけて…ハルの携えた光の刃が、それを両断。レミ本体には傷一つ付けないまま、大打撃を与えた。


俺「凄ぇってか、怖ぇってか……何かもう、俺…いらなくね?」

ハル「いえ…まだこれからです。反撃が来ます!」


ハルが叫ぶか否か…俺とハルに狙いを定め、迫り来る竜の頭達。

俺とハルはその牙を寸での所で躱し、間合いを取る…と、竜の頭は再び咢を開き……

俺「…って、嘘だろオイ。ここ…宇宙空間だぞ!?」


その口から炎を吐き出した。


ハル「大丈夫ですか!?怪我は!?」

俺「何とか命だけは…って感じだが、結構なダメージを受けちまった」


不意打ちな事もあってか…炎による被害は甚大。

身体の大半が消し炭に変わり、使い物にならなくなってしまった……とまぁここまでは、該当部位を再生すれば良いだけの事なんだが…

俺「再生も追い付かない程…一気に焼き尽くされちまったらさすがに不味いな」


……と言っている間に、攻撃の第二波が到着。

付け加えて言うと…今回は、既に口の中に炎を貯め込んだ状態で頭を突き出し…着実にオレを燃やし尽くしに来ている。


が、しかし……俺も、そう簡単にやられてやる気は無い。


虚獣の肉片を盾にする事で、次々に襲い来る炎をやり過ごし……

ハル「レミちゃん…がら空きだよ!!」

その隙を突いて、またも背後からハルが光の刃を一閃。


先に斬撃を与えた首は、完全に千切れ飛び…残った首にも、大きな傷を残した。

●とびはね

7つ…いや、残った6つの首はその形状を維持する事が出来ず…またも変貌。

首の一本一本が翼となり…レミは6枚の漆黒の翼を形成。そして、その羽を周囲に舞わせ……


俺「何だ何だ…今度は中二病フォームの真似事か?」

レミ「…………」

にじみ出る嫌な予感を拭い去るよう、茶化す俺。だが、それに対して…レミが返すのは無言。


そして……これはもう慣れたと言うか、最早予定調和になりつつある事なんだが…嫌な予感はやっぱり的中した。


羽の羽毛の一本一本が、鋭い針のような物に変質して……それが更に放射線状に展開。

とくれば後は……


俺「オイオイオイオイ…3Dで弾幕シューティングとか冗談キツ過ぎんぞ」

さながら花火のように……全方位から…更に全方位に向けて、拡散し…ありとあらゆる物に対して無差別に襲い掛かった。


先の炎のように、虚獣の肉片の陰に隠れてやり過ごす事は不可能……かと言って、これを正面から受けるのはこの上無い程に無謀。

ハルに至っては、光の障壁で咄嗟に身を包んで居る物の…この攻撃を防ぎ切れるかどうかと言えば、怪しい所。

となれば後は………


俺「受けられねぇ以上…避けるしか無ぇよなぁ」


回避……そのために俺は、自分とハルの周囲に加速空間を展開した。


放たれる弾幕と弾幕の僅かな隙間を縫いながら…レミとの距離を詰めて行く、俺とハル。

対するレミもそれを察し、翼で己が身を護りに入るが…俺達からしてみれば、その行動はかえって好都合。

俺とハル…二人で形成した光の刃を携え………


レミを本人を傷付ける事無く、翼のみを切り裂いた。

レミ「抗わないでよ……アタシの邪魔をしないでよ!!」

俺「だーからよぉ…自分の思い通りにしたいってんなら、理由くらい話してみろって言ってんだよ!!」


レミ「それが出来ないから困ってるんじゃない!!」

ハル「そっか…レミちゃん、やっぱり困ってるんだね。不本意だけどこんな事してるんだね」

レミ「―――――ッ」


強引に会話を打ち切り……千切れた翼を黒い線で繋ぎ集めるレミ。

翼の残骸は、レミを中心に円を描いて車輪のような物を作り出し……そこから今度は、5本の脚のような物が形成された。


超高速で回転する車輪と、そこから繰り出される蹴撃。

レミも俺達もヒットアンドアウェイを繰り返し、互いの間合いを測るが…単純なリーチで言えば、俺達が不利。

レミの攻撃は、畳んだ脚を伸ばしただけとは到底思えない程のリーチを持ち……俺達に、一方的にダメージを蓄積させて行く。


俺「中々に厄介だが…こんな時は、やっぱアレだよなぁ」

ハル「そう………ですね」


だが…起死回生の手段は、俺達の手の中にある。

俺とハルは、互いにそれを確認した上で……


まずは俺が、レミを取り囲むように停滞空間を形成。

続いてハルが、俺の発生した停滞空間に停滞空間を重ね……レミの動きを阻害した所で、車輪ごと5つの脚を破壊。


こうして、レミを無力化する事が出来た……かのように見えたのだが…


レミ「…まだよ。まだ終わって無いんだからっ!!」

レミは、背面から巨大な4本の腕を形成し………


その全てに黒い線を纏わせた。

●そうこく

黒い線………それはディメンションスレイヤーさえも切り裂く力を持った、超常の何か。

未だに不可解な部分が多く、正直な所相手にしたくない存在なのだが………


俺「…………」

ハル「………」

ネガティブなイメージばかりの、その半面で一つだけ…今までの経緯を顧みた中に、僅かな光明があった。


俺とハルは、互いの視線でそれを確認した後…光の刃を形成。

これまでの戦いに加え…つい先程の切り結びでも確認したばかりの、その結果に基づき……


黒い線の弱点…光の力をもって、巨大な腕へと斬りかかった。


俺とハルの光の刃が、レミの纏った黒い線と交わり…兼ねてからの予想通り、それを分断。

そこから更に、返しの刃で4本の腕を切り落としにかかった所で……


ハル「…えっ?」

分断され弾け飛んだ筈の黒い線が、今度は逆に光の刃を霧散させ…俺達へと襲い来た。


予想外の展開…本来訪れるべき状況を覆すそれを前に、俺達はまたも不意を突かれ…

迫り来るのは、もう数えるのも面倒な程に繰り返して来た危機。

だが、突如…そんな俺達と黒い線のの割って入るように、カライモンが出現し……

根幹を食らう竜のアギト…自称イデアイーターでそれを迎え撃った。


俺「ハル……は、まぁ判らないでも無いんだが。何でお前まで…」

カライモン「最初から信用して居なかったのでね、予め盗聴と追跡をさせて貰っていた。それだけだよ」

俺「おま………」


カライモン「それと…これはあまり良く無い知らせなのだが」

俺「これはじゃ無くて、これもだと思うんだが…まぁ良い、一体何だ?」

カライモン「先のディメンションスレイヤーとの対峙から見て、属性相性としてはイデアイーターに分があると想定していたのだが…」


と…語る途中で途切れる、カライモンの言葉。

そして、そこから先は言葉では無く結果で……上半身と下半身に真っ二つに分断された、その姿により示された。

強制離脱した所を見ると、一命こそ取り止めて居るようだが…損傷の具合から考えても、カライモンの即時復帰は見込めない。

いや、それ以前に…例え戻って来れたとしても、根幹を食らう竜の力が通じないのであれば戦力として数えるのも怪しい所。

そしてそれは、同時に………光…闇…光と闇の複合に、光と無の複合…それらの攻撃手段が、全て封じられたと言う事で………


ハル「でしたら……また停滞空間を重ねてレミちゃんの動きを封じましょう」

俺「あぁ、そうだな…隙が無いなら作るしか無ぇよな」

その道筋は必然的に狭まり…正面突破を避けての、脇道からの曲技へと移らざるを得なくなる。


俺とハルは、再びレミに向けて停滞空間を形成し…その動きを阻害。

先の攻撃でも成功を収めた、黄金パターンで…今度は黒い線を避けつつ、再び4本の腕に斬りかかり…その一本を屠るに至った訳だが……


俺「嘘………だろ?」

レミ「悪いけど…停滞空間は、次からは効かないわよ。もう…諦めて」

腕の一本を奪った代償は……損傷によるハルの強制離脱と、俺の身体の微塵切りだった。


以前の…完全にダークチェイサー化していない俺だったならば、今の攻撃で確実に死んでいた。

と言うか…今の状態であっても、受けたダーメージは決して小さくは無く……

更に言うならば、レミの言葉はハッタリでは無く…間違い無く本気。


何度となく繰り返した平行線の会話の末に、業を煮やしたレミが…本気で俺達を排除しにかかって来ている。


それを思い知り、固唾を呑む中で……

レミは、残った三本の腕を束ねて背中から足元に回し…それぞれの手が、再び頭と…4本の足を形成。


3つの頭を持った…犬のような物に姿を変えた。

●ばんけん

俺「悪ぃけどな…何度聞かれても俺の答えは変わらねぇぜ?お前の方こそ、いい加減諦めたらどうだ?」

レミ「悪いけど…アタシも答えは変わらない。諦らめる訳にはいかないの」


俺「まぁ…お前が何の理由も無しにそこまで意地を張るとは思えねぇし、何かがあるのは判る。でもな……」

レミ「………何よ」

俺「その理由を、お前が俺達に話さないのは訳が判らねぇ」


レミ「………判らなくて良い事なのよ」

俺「何でだ?もしかしたらお前の考えに同意して、世界を終わらせる側に回る事だってあるかも知れねぇだろ?ってか、その可能性の方が…」

レミ「そうじゃ無いの…それは無いの。アタシがしようとしてる事に、アンタ達は絶対賛成なんてしないから!!」


俺「っ……だったら、何でそんな事しようとしてんだよ!お前をそこまで突き動かしてんのは何なんだよ!!」

レミ「それを言えたら、こんな苦労はしてないわよ!!」

俺「だったら、しなくても良いような苦労なんかしてんじゃ無ぇよ!俺達はそんなに頼りないか?お前を助けてやれないと思われてんのか?」


レミ「違うわよ!!アンタ達だから言えないの!アンタ達には知られちゃいけない事だから――――」

その言葉を紡ぎかけた所で…レミは慌てて口を抑えた。


俺「………は?俺達に知られて困る事……いや、まさか…そのために……俺達に知られないために、世界を終わらせようとしてんのか!?」

レミ「―――――――ーッッ!!」


目は口ほどに物を言う…とは言うが、今のレミが正にそれだろう。

俺の言葉にレミは明らかに狼狽して、視線は忙しなく宙を泳ぎ……俺の言葉が事実である事を物語っていた。

となれば後は…問題は、肝心のその内容だが………


レミ「……………」

狼狽を乗り越え…再び固い決意を瞳に宿したレミから、それを聞き出す事は至難の業。

再び拳と言葉を交えながら、レミの心に隙を作り出す……それしか無さそうだ。


そして、そのためにも…今一度レミの力を削ぐべく、レミを覆うように停滞空間を発生させたのだが……

俺「………え?」


先の攻撃…4本の腕の内の一本を屠った時と同様、俺の身体は微塵切りにされていた。

しかし……その代償を支払った上での成果さえも、先のそれとは異なり……


レミ「だから言ったでしょ…停滞空間はもう効かない…って」

レミに関しては一切の無傷。いや、それ以前に……

俺「何で…どうして停滞空間から……」


レミは停滞空間に捕らわれる事無く…俺の正面に佇んでいた。


レミ「すぐバレるだろうから言っちゃうけど…停滞空間に捕縛された瞬間にアタシも加速空間を使ったのよ」

俺「なっ………」

レミ「それに…例え停滞空間を重ねられたとしても、アタシにはその状態から反撃する手段があるの」


俺「黒い線…だな」

レミ「そ、今のあれの速度は…多分、停滞空間を幾ら重ねても止められないもの」

俺「そっか…成程な。んでもな…そんだけ絶望的な事を言われても、俺は諦めねぇからな?」


レミ「………残念。じゃぁこれで……」


打つ手無し…いや、それどころか…先回りされて、俺が打つべき手を潰す手を打たれている。

今…再び黒い線を受ければ、俺は間違い無く死ぬ……そんな確信めいた予感を味わわされた瞬間……


レミ「ッ―――――!?」

突如、背後に現れた何か―――……ブラックホールがレミを飲み込んだ。


そう………

こんなタイミング…いや、そもそもこんな芸当が出来る奴を、俺は一人しか知らない。


俺「ったく…復帰したならしたって言ってくれよ。また寿命が縮んだぜ」

カライモン「何を言ってくれる。予め君に教えていたら、奇襲が失敗に終わったかも知れないだろう」


俺「……どこまで信用無ぇんだよ」

カライモン「どこまでも果てしなく…だろうね」


カライモンの帰還…それにより僅かながら生まれた余裕の中で、俺達は軽口を交わした。

だが、それが長く続く事は無く………


ブラックホールが真っ二つに裂け…その奥から、レミが再び姿を現した。

●とうかく

レミの……3つあった犬の頭の内の、1つはかき消えているものの……逆に、それ以外の部位に関しては殆ど無傷。

更にそこから、残った2つの頭が再び形を変えて左右の髪留めと重なり……巨大な角を作り出した。


カライモン「ふむ…正直驚いたよ。まさかレミくん単体であれだけの力を持っているとはね」

俺「いや、話は聞いてたと思うんだが…あれは…」

カライモン「無の核の力…と言いたいのだろうが、その点はむしろ君の勘違いだ。今の彼女は、無の核の力を用いる事無く戦っている」


俺「………は?いや待て。でもレミは無の力を―――ー」

カライモン「君だって…光と闇の力を借りずとも、ある程度は自力でディメンションスレイヤーを形成出来ていただろう?」

俺「あぁ……そーいやぁそうけど…何ってーか、今までのレミとは余りにも……」


カライモン「今までの戦いでは、相手が相手なだけに無意識に手を緩めてしまっていたが…今では、その余裕も無いと言った所だろう」

カライモンの言葉を聞き…俺は、今までの戦いを思い出した。


ディーティーみたいな、気兼ね無くぶちのめせる相手は別として……

思い返せば…俺達が戦った敵のほとんどは、被害者…あるいは罪の無い超自然の摂理の存在のような者たちばかり。

いわば…本来ならば、レミが守るべきと思って居るような存在ばかりだった。


そう言った意味では、カライモンの言う通り…今回は本気のレミを相手にしていると言う事になるのだろうが…それはつまり……


俺「それって…レミが乗っ取られたら……無の核の力が加わったら、完全に手に負えねぇって事だよな?」

カライモン「その通り。なので、そうなる前に決着を付けてくれ給え」

俺「……って、毎度毎度簡単に言ってくれるなっての!!?」


カライモン「簡単…と言う訳でも無いが、今回はそう難しい事でも無いだろう」

俺「……は?」

カライモン「考えてもみ給え。今回の鍵になっている3つの核…それぞれには属性の相性があると考えて良いだろう?」

俺「まぁ…それは俺も考えたさ。3すくみ…要はジャンケンみたいな物だろ?そう思って、ディメンションスレイヤーを試してはみたんだが…」

カライモン「知っている。同じくイデアイーターに至っても敗北を喫する結果となった。だが…全ての攻撃が全く効果が無かった訳では無いだろう?」


俺「あぁ…光の刃でなら黒い線を断ち切れた。んでも、それも途中から出来なくなって……いや、待てよ?その前は……」

カライモン「そう…どうやら尻尾を掴みかけているようだね。そもそも…目の前のあれはレミ君であって、虚獣では無いのだよ?」


今までの経緯と結果が俺の中で積み重なり…その中を糸が貫いて行くような感覚。

あと少し……あと少しで全てが繋がり、糸を引き延ばした瞬間にそれを形作る筈……


だが………最後の一つが足りない。


俺「駄目だ……足りない。これをやるにはディメンションスレイヤーが必要だってのに…その前の所でディメンションスレイヤーが無いと…」

矛盾……理屈が通っても、現実がそれに伴わないためのジレンマ。

無い物強請りの上でしか到達出来ない、机上の空論を展開し…俺は、解決不可能な壁にぶちあたった訳だが………


ハル「だったら…もう一本あれば良いんですよね?」

そんな俺の前に現れたのは、戦線に復帰したハルだった。


…………いや


俺「………え?ハル…なのか?」

瞳に六芒星の光沢を宿した、Ifの世界の……


ハル「はい、私です。ちなみに、Ifの世界の私ではありませんからね?」

いや…それもどうやら違ったらしい。

目の前のハルはハルで、俺の良く知っているハルだった。だが、俺の知っている…知っていたハルとは少し違ったようで……


俺「だったら、その目………え?って事は…え?まさか…やるべき事って…」

ハル「はい、これの事です。一緒の時間を作るために、予定より早めに完成させたんですけど…それでもギリギリなるとは、思いませんでした」

俺「その………すまん」


ハル「では…その分は後日、ちゃんと埋め合わせをして下さいね?」

いつか見たハルAのように……ハルは光と闇の力を織り交ぜ、ディメンションスレイヤーを形成して見せた。


●かたほう

俺「そんじゃ悪ぃが二人とも…俺が合図したら、同時に仕掛けてくれ!」


ハル「はい、判りました」

カライモン「任せ給え」

レミの左後方にハル…右後方にカライモンが位置し、正面には俺が立ちはだかる。


俺達の出方をレミが伺う中……二本の角の間に何かを形成し、それを構え始めた時……

俺「今だ!!!」

俺のかけ声と共に、ハルとカライモンがレミに向けて突撃。


ディメンションスレイヤーと、イデアイーター…二つの超常の力に、レミは一瞬意識を向けるが……

程なくして再び…その意識は、俺の…手元へと注がれた。


形成するのは…今までのディメンションスレイヤーとは異なる、別の形のディメンションスレイヤー。


まず柄の部分が曲がり…片手で握り込む形状のグリップを形成。

刀身からは直線的な刃を廃し……幾重にも重なる、螺旋状に捻じれた刃を形成。

こうして新たに作り上げたディメンションスレイヤーの、その切っ先から……針のように細く鋭い弾丸を発射した。


俺の放った弾丸と、レミの形成していた何か…恐らくは黒い線の塊と思われる物が直撃して―――


レミ「―――――――ッ!?」


視界に映るのは……流れるように宙に舞うレミの髪と、髪留めと一体化していた角の…いや、角だった物の破片。

角の間から放たれた筈の、黒い塊は跡形も無くかき消え…レミの瞳は、俺の手に握られたディメンションスレイヤーを睨み付けていた。


カライモン「カラドボルグ…螺旋剣型のディメンションスレイヤーか。成程ね…」


レミ「アンタ…今の……まさかアンタも……」

俺「いや…黒い線は愚か、無の核の力も使って無ぇよ」

レミ「だったら…だったら何で!!何をしたのよ!!」


俺「なぁに、難しい事じゃぁ無ぇ……同じ事をしただけだぜ。ただ…ちょいとばかし、ズルはしたけどな」

レミ「………………」

俺「黒い線…あれって、見た目が同じでも4種類…いや、下手したら10種類あったんじゃねぇのか?」

レミ「………今更隠しても仕方ないわね。そうよ、アタシは4種類…闇の線と無の線…闇と無の線に、無と闇の線を使えるわ」

俺「んで、1度に出せるのは1種類…いや、2本の線を一組だけ……だろ?」


レミ「…よく気付いたわね」

俺「さっき、光の刃で黒い線を切れた時に…な。さて…ここまで説明すりゃぁ、後は判んだろ」

レミ「そうね…でも、一応答え合わせだけはしてあげるわ」


俺「ディメンションスレイヤーの時は…こっちの闇にそっちの闇をぶつけて相殺して…こっちの光に、そっちの無をぶつけて押し切った。だろ?」

レミ「…正解」


俺「そんで、根幹を食らう竜の力…イデアイーターの時も同じように…無に闇、光に無をぶつけて…今度は両方を断ち切った」

レミ「そう……その通りよ」

俺「んで、蛇腹剣の時は…闇の力に闇で対抗した結果、ハルの光の力で消し飛んだ。これが今回のヒントになった訳だが…」


レミ「でも…だったら。闇と無の線を誘発させるだけなら、ハルかカライモンのどっちかだけで充分じゃない?」

俺「いや……どっちかの場合、闇の線のみか無の線のみでアイコにされる可能性があったからな」


レミ「両方に対抗するために、アタシが闇と無の線で対抗せざるを得ない状況にするために二人を使って…まんまとそれに乗せられたって訳ね」

俺「そーいうこった。んで、後はさっきも言った通り……」

レミ「アタシの真似して…ディメンションスレイヤーで、アタシの闇と無にアンタの光と闇をぶつけて来た…って事よね」


俺「あぁ、そうだ。んでもまぁ…大分作り替えちまったもんだから、前みたいな細かい干渉が出来なくなっちまったがな」

レミ「じゃぁ逆に、細かくない干渉…今できる事って一体何?」

俺「そうだな、例えば……お前ん中の無の核を無理矢理引き摺り出すとか………そんくれーだな!」


レミ「えっ――――!?」


俺がそう宣言すると同時に、レミの背中から銀色の球体が弾き出され……

その球体は瞬く間に……夢の中に出てきた、銀髪の女性へと姿を変えた。

●むのかく

銀髪の女性『フフッ………フハハハハハ!中々やるじゃないか!感心したよ!』


どこかで聞いた事のあるような…笑い声を上げる銀髪の女性。

物理的な振動では無く思念に直接響いてくるようなその声に、僅かな不快感を感じながらも…俺は言葉を返す。


俺「へっ…生憎そう言う強がりは聞き飽きてるんでな。もうお終いだ、悪足掻きは止めて観念しやがれ」

銀髪の女性『フフッ……フフフ…何だい?もしかして、これで勝った気になっているのかい?』

俺「気になってるも何も、事実これで終わりだってーの。レミさえ盾にされてなけりゃぁ―――」


銀髪の女性『残念。それがそもそもの間違いだ』

俺「……はっ?」


銀髪の女性『ボクを彼女から引き離して、ボクだけ倒せばそれで終わり。世界の終焉を回避してハッピーエンド……そんな風に考えてるんだろう?』

俺「それのどこが違うってんだよ!お前さえ倒しちまえば、レミはもう―――」

銀髪の女性『だから………それが大間違いって言っているのさ。ねぇ?』


レミ「……………」

俺「何だよ……何で否定しないんだ?一体どう言う事だよ!!」


銀髪の女性『まず前提として…まかり間違って、奇跡的にここでボクを退けたとしても……世界の終焉は訪れる』

俺「……………は?」


カライモン「永遠に続く物など無く、万物はいずれ滅びる…そう言った意味での終焉の事を言っているのかね?」

銀髪の女性『そう、当然それもある。でも…実際はもっと近く、具体的に言うならば―――』

恐らく…銀髪の女性が口にしようとしているのは、今回のレミの行動の根幹にある物。

俺達は、固唾を呑みながらそれに聞き入るが……


レミ「止めて!!」

当のレミがそれを遮った。

銀髪の女性『おやおや、ここからが良い所なのに…』


レミ「………アンタはこの世界を終わらせたい。アタシはアンタの思惑に乗って、世界を終わらせる…それで良い筈でしょ!!」

俺「いや、待てよ!だから何でお前がそっち側で話を進めてんだよ!!今の状況が判んねぇのか?この状態でソイツを倒せば――」

銀髪の女性『どうなるか判って居ないのはキミの方だよ?』

俺「………は?」


疑問符を浮かべる俺を余所に、再び銀色の球体に戻ってレミの中へと沈み込んで行く、銀髪の女性。

そして、レミに至ってもそれを拒む様子は無く……再び二人は引き離す前の状態に……いや………


俺「…………」

前の状態よりも、更に悪化していた。


無の核『どうしたんだい?ボクを倒すんじゃぁ無かったのかい?』

レミから感じ取れる力は、先程までのそれの比では無く………

今まで身を潜めていた、無の核の力が加わった事を…文字通り痛い程に肌で感じる事となった。


無の核『さぁ、頑張ろう。頑張ってボクを倒そうよ。そしたら次は………』

レミ「止めて!!もうそれ以上は――――」

悲痛な叫び声を上げるレミを余所に、レミ…いや、レミの身体を操る無の核が指さしたのは……


ハル「…………え?」

ハル…………いや………


レミ「―――――ッッ………」


厳密には……ハルの下腹部だった。

●ひめごと

レミ「どう…して………っ!!」


無の核『勘違いしているようだから、思い知らせてあげただけだよ?まず……キミとボクは対等なんかじゃぁ無い』

レミ「ッ………!!」

無の核『キミはボクの駒に過ぎない、黙ってボクに従うしか無いんだ。さぁ…これでもう逃げ道は無くなった。全てに終焉を齎そうじゃないか』

レミ「―――――――ッ……」


俺「は?何だよ…どういう事だ?」


ハル「………そう言う…事だったんだね。レミちゃん」

俺の理解が追い付くよりも早く、展開は更に先へ先へと進んで行く。


俺「何で…何でアイツを倒した後に、ハルが…いや、ハルに何があるって言うんだ!?」


無の核『鈍い…って言うよりも、わざと気付かないフリをしているのかな?一応確認しとくけど…キミが最有力候補だったって事は判ってるんだろう?』

俺「終焉を齎す者としての候補の事か?だとしても、ハルはその条件には当て嵌まんねぇ筈だろ!!」


無の核『そう……彼女本人は……ね?』


俺「本人って………は?…え?………それって………え?…まさか………」


言っておくが…気付いて居ない振りをしていた訳じゃぁ無い。

しかし…その可能性に関して、全く考えて居なかったと言えば嘘になる。


だが………それをまさか……よりにもよって、この場で…こんな形で知る事になるとは思っても居なかった。


ハル「ここでレミちゃんごと終焉を退けても…今度はこの子の番になるだけ……」

レミ「………」


ハル「だからレミちゃんは、そんな事にならないように……そんな事にならないように、この世界を終わらせようとしてたんだね」

レミ「………………」

無の核『悠久に続く命の中で…愛する者の命と世界を天秤にかけて、それを奪い続ける。実に滑稽だろう?生き地獄だろう?』

俺「………黙れよ」


無の核『先送りにすればするだけ地獄が続く…だったら、今終わらせてしまえば苦しみも少なくて済む。いや………』

俺「黙れつってんだろうがよぉ!!!」


無の核『いっそ何も知らない内に終わってしまった方が、苦しまずに済んだ訳だ。もっとも…今となってはそれも叶わないけどねぇ!』


レミ「………―――ッ」

カライモン「暴露した本人が、何を白々しい……」


悲痛に染まる皆の顔。ただ…その中で一人だけ、無の核だけは笑みを浮かべているのが…手に取るように判る。

そんな………そんな無の核に、俺は……


俺「だったら……だったら尚更!そうならねぇように手前ぇを駆除しちまわねぇとなぁ!!」

ディメンションスレイヤーの銃口を向けた。


今の俺の中に渦巻いている感情を、どう表現すれば良いだろうか…

怒り…憎しみ…悲しみ…悔しさ、憤り……反吐が出る程に下衆な無の核に対し、ありとあらゆるドス黒い感情が止めど無く溢れ出る中……

俺は…レミと無の核を再び分断すべく、弾丸を解き放ったのだが――――


無の核『だから……その前提の時点で破綻しているんだって』

俺「な………に……?」


その弾丸は、レミと無の核を引き剥がすには至らず……

レミの眼前で、ガラスのように砕け散ったしまった。

俺「馬鹿な……何でだ!?さっきは確かに………」


無の核『さっきのアレ…キミとしては、ボクを引き摺り出したつもりなんだろうけど…それは大きな間違いだ』

俺「…は?」

無の核『あの時は……引き摺り出されたんじゃなくて…ボクが姿を見せてあげただけなんだよ?』


俺「……っ…んなのは強がりだ!!第一、引き摺り出された時は現に――――」

無の核『驚いてた…かい?あれは、その発想と干渉に至った事に驚いた…それだけさ』

俺「なっ…………」


無の核『良いね…良いねぇその絶望に満ちた表情。あぁ、そうそう。それと、言い忘れてたんだけどもう一つ』


俺「何だよ………何なんだってんだよ!!」

無の核『さっきまでの属性云々のやりとりだけど…あれはもう考える必要無いからね?』

俺「そりゃぁ、一体どう言う…………」


無の核『今のボクは…光も闇も…当然無も、全ての力を使う事が出来る………そう言ってるのさ』


無の核の宣言に………俺のみならず、その場に居た全員が凍り付いた。

それまでの経緯から、予想する事は出来たとは言え…それを現実として突き付けられた時の衝撃は計り知れない。

レミ一人を相手取るだけでも手一杯だったにも関わらず、更にそこに無の核が加わり……


深く考えるまでも無く導き出された結論は……俺の奥の手はアッサリと封じられて、手詰まり。

ブチ破るべき壁は途方も無く厚く、更にはその先にもそれ以上の壁が待ち構えている。

心を折るには十分過ぎるだけの現実を、目の前に突き付けられ………俺の心が、絶望に飲み込まれようとする中で………


ハル「それが…一体何だって言うんですか」


ハルは……ハルだけは、その現実に立ち向かおうとしていた。

●ふくつの

無の核『おや…意外だね。キミはもう少し利口だと思って居たんだけど………勝ち目が無いって事が判らないのかい?』

ハル「判って居ます…でも、そんな事は些細な事です」

無の核『………勝ち目が無いって事は、大事な物を守れないって事だよ?』


ハル「………それも判っています」


無の核『………………』

ハル「………………」


無の核『あー………じゃぁ聞くけど、キミにとって重要な事って一体何なんだい?』

ハル「そんな事…決まっています。彼と居る事…レミちゃんと居る事……それを諦めない事です!!」


無の核『あぁ…あーあーあー…そう言う…そう言う事か。恐れ入ったよ……まさか君がそんな考えを持って居たとはね』


ハル「…………」

無の核『それって裏を返せば…例え皆を助けられなくても、自分がその信念だけ貫いて居たならそれで良い…他はどうなろうと構わない…って事だろう?』

ハル「……………」

無の核『でもさぁ……それって結局、何の解決にもなって居ないよねぇ?想いだけで何とかなるとか思っているのかい?』


無言のまま言い返さないハルに、したり顔で問い詰めて行く闇の核。

だが……そこで、堪え切れなくなった俺が口を挟む。


俺「何とかならねぇだろうなぁ………でもな」

無の核『おや、そこでキミ答えるのかい?まぁ良いや…でも………何だって言うんだい?』


俺「少なくとも、なぁ…諦めちまったら、可能性がある事も出来なくなっちまうだろぉがよぉ!!」


正直な所…策と呼べるような策は何も無く、勝ちの目なんて物は一切見えて来ない。

しかし、それを理由に諦める事など出来ず…俺は、抵抗を続けた。

無の核『………癇に障るなぁ…その考え方』

俺「そりゃぁ結構なこった」


無の核『何も考えて居ないくせに、ただただ無責任に可能性なんて言葉に縋るだけの愚かな行為…僕が一番嫌いな物だよ』

俺「そりゃぁそうだろぉなぁ…お前はただ困難から逃げて、それに二人を巻き込んだだけだもんなぁぁ!!」


無の核『………超越と逃避の区別も付かない愚鈍がっっ!!」

俺「手前ぇがそう思い込んでるだけで、実際は同じ物じゃ無ぇか!!」


無の核「この………いや、もう良いか。話すだけ無駄だ、もういい加減終わりにしよう』


レミの身体を操り…右手を高く掲げる、無の核。

その掌の先には、知覚も形容もし難い何かが蠢き……

それが、終焉その物である事を本能的に理解すると同時に………


    ノイズが走った。

●ほうかい

終焉が…一瞬にして世界を包み込み………

黒い雨が世界を塗り潰して行く。


見渡す限り一面は黒に染まり…残された存在は、俺とレミの二人だけ。

ハルも…カライモンも……虚獣の肉片までも、全てが飲み込まれて消えてしまった。

だが…その結果を悲しむ暇も悔やむ暇も与えられる事無く、俺も黒い雨に曝され………


世界の全てが終焉を迎え……最後に、俺と言う存在が消え去り行くその刹那に……


また、ノイズが走った。


無の核『やれやれ………君達は本当に諦めが悪いねぇ。ここまで来て、そんな足掻き方をするとはね』

カライモン「足掻きとは心外だね。これでも一応、前もって準備していた策略だよ?」

無の核『だとしても…結局は無駄な足掻きに終わったね。この結果も予想通りなのかい?』

カライモン「正直な所…想定の範囲内ではあったが、期待通りでは無かったと言う所かな」


終焉に飲み込まれ…消えたと思って居たカライモンと、無の核が交わす言葉。

俺は、余りにも唐突で急激な展開を追いかけるが…事態はそれを上回って走り過ぎて行く。


無の核『あんな物…幾ら切った所で、終焉の達成とはみなされない。それは先の戦いでも判って居た事だろう?』

カライモン「終焉を齎す者としての覚醒前と後で、その定義が変化しないとも限らないだろう?それに…」

無の核『時間稼ぎくらいにはなる……とでも、考えて居るのかい?』


二人の会話から推測した限りだが……


どうやら先の終焉は、カライモンの手引きで移動させられたIfの世界での出来事だったらしく……

何か俺の知らないルールの上で、搦め手を使ったようなのだが…それが不発に終わったであろう事も伺えた。


そして…その未知のルールの部分に、遅れて俺が推測の手を伸ばした所で……


またもノイズが走り、俺は別の世界へと引き寄せられた。


どこかの世界…どこかの星の地表で、繰り返されるその行為。

高く掲げられたレミの右手に、何かが蠢き…それを見て俺は、先の世界の終焉を思い出した。


終焉を齎す者の力が、世界の全てを飲み込み…また一つの世界が終わる。

そう…この世界も、先の世界と同じように終わる。そんな予感のまま、成り行きを見守って居たのだが……


無の核『…………』

何故か…その行為が繰り返される事は無く、世界は未だに健在だった。


無の核『……小賢しい事この上無いね。こんな手に僕が引っかかると思ったのかい?』

カライモン「いいや?途中で気付いて止めると思って居たよ。そう…止めて貰えて良かった。Ifの世界と同じように終わってしまわなくて本当に良かったよ」

無の核『くっ……食えない奴だねキミは』

カライモン「お褒めに預かり光栄だよ」


何が起きたのか…いや、何故起きなかったのか。

カライモンと無の核のやり取りから、俺は再び推測の手を伸ばし……やっとの事で、掴むべき物の表面に触れ……


俺「………って、終焉の達成って…あぁ、そう言う事か!!」


自分の居る場所を、改めて認識した所で初めて……綻びの向こうから毀れ出した、微かな光明を見た気がした。


カライモン「そう………Ifの世界ならばいざ知らず…実在の世界では、終焉を齎す力を一度しか使えない…と言う事だ!…なぁ、そうだろう?」

無の核『…………………』

●うらがわ

俺「一度しかって、そんな事……あぁでも待てよ?そもそも、世界の終焉なんて何度も起こす物じゃぁ無い訳だし……」

カライモン「原因…または理由がどれなのかまでの解明には至って居ないが、恐らくは……」


無の核『個体が世界に干渉出来る限界…それと、世界の終焉が次の世界線でのプロセスに組み込まれている…その他諸々、全てがその理由だよ』

カライモン「おや……やけに素直に認めてくれるでは無いか。観念して白状モードにでも入ったかね?」


無の核『いいや…その逆さ。それが知られた所でどうと言う事は無い……そう言って居るのさ!!』


突如として、無の核…レミの身体から溢れ出る力の奔流。

光…闇…無……俺の知りうる限りの核の力がうねり、一つになって……レミに、新たな外殻を作り出した。


無の核『忘れて居るかも知れないけど…ボクはこの三つの力を全て使えるんだよ?』


つい先ほどまでの力が、ほんのお遊びに見える程の…絶対的な力を見せつける無の核。

当然その力は脅威であり、俺達を絶望のどん底に叩き落すには十分なのだが……それとは別にもう一つ。

何故か…何かが、俺の中で警鐘を鳴らし続けている。

しかし、その原因を追う暇も無く…レミの右手から繰り出された一撃が、ハルとカライモンをいとも容易く薙ぎ払い……


無の核『キミ達が何を考え…何を画策していようとも……それを実行する前に片付けて、その後で世界を終わらせれば良い…それだけじゃないか』


痛感する寒気を咀嚼している暇すら無いままに、再びノイズと共に俺は別の世界に引き押せられ……

目の前の脅威から、距離を置く事が出来た………かのように思えたのだが――――


無の核『おいおい、忘れたのかい?並列世界間を移動出来るのは、キミ達だけじゃぁ無いんだよ?』

再び目の前に…レミの顔でうすら笑いを浮かべた、無の核が現れた。


俺「あぁ、そうだったな…そうやって、世界を跨いでストーキングを続けて来たんだったよなぁ!!」

無の核『で……それとは逆に、キミ達の並列世界間移動は頻度が落ちて来ているんじゃ無いかい?狭間に巣食う蜘蛛の限界かな?』


俺「………っ…」

この上無く悔しい事だが……無の核の言っている事は、恐らく当たっている。


厳密に、あと何回…と言った憶測を立てる事は出来ないが、乱発出来ない事は確実。

可能な限り、その範囲内で決着をつけたい所ではあるのだが……


どうやって、無の核を倒すのか…いや、それ以前に………

どうやれば、今この瞬間を生き残る事が出来るのか…まず乗り越えるべきその問題が丸々残っている。

●おさらい

さて………現状をまとめてみよう。

あまり認めたくは無い事だが……正面から戦って、俺達に勝ち目は無い。


無の核『ほらほら、どうしたんだい?早く逃げないと肉片一つ残らないよ?』

少しでも間合いを取ろうと後退した所で…その先に回り込まれては、四体を切り刻まれ……


無の核『おや、やっと回復したようだね?さぁ、早く逃げなよ』

アラクの力により…ノイズと共に並列世界に飛んだ先でも、追い付かれて頭を鷲掴みにされ……

更には、並列世界の連続強制移動に付き合わされて……細胞…いや、分子レベルでボロボロにされる始末。


遅れて追い付いたカライモンにしても、成す術無く一瞬にして消し炭にされてしまい……


そんな風に見せ付けられた圧倒的な力の差でさえ……無の核にしてみれば、本気どころか朝飯前…いや、多分もっと容易い事で…

それを実感した時、俺の目の前は真っ暗闇に染まってしまった。


そう…今までの攻撃は全て、わざわざ俺達に判り易い方法で力を見せつけてくれただけで…

本気を出せば…俺達なんかでは及びも付かない方法で、知覚すら出来ないまま一方的に全てを終わらせる事が出来たであろう事が嫌でも判る。


勝てない…勝つ手段を持たないとか言う以前に、勝つ方法その物を導き出す事すら出来ない。

そんな現実を前にして、心が完全に折れてしまいかけたのだが…………


ありのままの…自分自身のこの状態を受け入れた時、何故かそこに違和感を覚えた。



もう一度…おさらいをしてみよう。


何が起きるのか…どんな手で追い詰められ、何が起ころうとしているのか。

向かう先は暗雲に包まれ…俺達の行く手は、果てしなく厚い壁に阻まれていて…… 


一つだけ言えるのは………無の核はまだ、本気を出して居ないと言う事だけ。

もしも…三つの核の力を用いて俺達を消し去ろうとしていたのならば、俺達はなす術も無く消滅して居る筈。


だが何故………

何故今まで、それを実行に移さなかったのか?


満身創痍ながらも、俺達はまだこうして生きている…この世に存在している。


と言うか、それ以前に……もっと前の段階での違和感がある。

無の核自身も、並列世界間の移動が出来る…

にも関わらず何故、俺達が居ない間に元居た世界に終焉を齎さなかったのか………


いや……そんな事は判り切っているいるじゃないか。


これがもし、戯れや気まぐれだったって言うなら話は別だが……

やりたくても出来ない……それ以外の理由がある筈が無い。


無の核からすれば…手の内を暴かれ、一刻も早く決着をつけて全てを終わらせたい筈。

それでも出来ないと言う事は、何か出来ない理由がある筈だ。


今までの経緯の中に、何か手掛かりは無いか……俺は記憶の糸を手繰り寄せ……


俺「まさか……いや、ありえるか……?」

●あやまち

銀髪の女性『何故…何故なんだ!!君達とならば、更なる次元の高みに上る事が出来るんだよ!?何故それを拒むのさ!!』

銀髪の女性『そうか…まだ、この次元に未練があるんだね?』

銀髪の女性『この世界は有限で…終焉は必ず訪れる。それはキミ達も判って居る事だろう?』

銀髪の女性『忘れてしまったのなら、ボクが思い出させてあげるよ』

銀髪の女性『思い出すまで……何度でも…何度でも何度でも何度でも。ボクが…終焉を齎す者となってねぇ!!』


銀髪の女性…無の核の言葉を思い出し………

その可能性に辿り着いた。


俺「やたらと執着してるとは思ったが…まさか、ここまで徹底してるたぁなぁ……」

無の核『…何の事を言っているのかな?』


俺「それが終焉の条件なのか、お前の拘りなのかまでは判らねぇが…こいつ等の目の前で世界を終わらせるのが、お前の目的だろ?」

無の核『………それが判った所でどうするんだい?』

俺「否定は無し……か。ばれた所で支障が無い…って所だよなぁ」

無の核『当然だとも。片鱗を掴んだくらいでそれを止められる筈が無いだろう?』


辿り着いた答えにより、一矢報いる事は出来た。

だが……一本の矢で与える事が出来る程度の傷では、足止めは叶わない。

一歩…また一歩。確実に迫り来る終焉の足音を聞く中……


また、ノイズが走り――――


目の前には、無数の巨大な白い肉片が散らばっていた…………―――

俺「…ってオイ!!ここって―――」


凡ミスなのか、能力の限界なのか…そもそも、それを責める事が筋違いなのは重々承知の上なのだが…

無の核『おやぁ?うん……この残り香…間違い無いようだね』

マズい……こここだけは………この世界だけはマズい。


無の核『さぁ…終わらせようか。キミ達が生まれ育った、この世界をねぇ!!』

逃げるどころか…自分から火に飛び込んで、その身を焼き尽くすような…

いや、加えてそこに殺虫スプレーを構えられている状態とでも言うべきか……


俺「………って、そんな事考えてる場合じゃ―――」

言葉も思考も…紡ぎ終える暇さえ与えられないまま…


無の核は、その右手に終焉の力を篭め始めた。

●らんしん

阻害出来る見込みなど無い…が、だからと言って手をこまねいて見ている訳にも行かない。

俺は、ディメンションスレイヤーの銃口を無の核の右手に向け…その引き金を引き絞る……、


が………そんな抵抗すらも許されない。


力を篭めた筈の指は、引き金を引き切る寸での所で止まり…当然のように、他のどの部位も動かす事は敵わず…

苦し紛れに展開した停滞空間に至っても、ほんの僅かな時間稼ぎにしかならず…

辛うじて形成していたイタチごっこさえも、知覚不能な超常の力により捻じ伏せられ…

今正に、終焉が解き放たれようとしたした瞬間………


宇宙空間に走る白い亀裂と共に、ハルが現れた。


ハルもまた、登場と同時に停滞空間を展開し…無の核がそれに応戦。

俺の時と同じように、僅かな時間のイタチごっこに持ち込むかのように思われたのだが……


ハル「…………」

俺「………え?」


何故か…ハルは一瞬だけ俺の方に視線を向け、手に持ったステッキを回転。

ステッキを逆手に持ち、両手で握り締めたまま光の刃を形成し…


俺「………はっ?」

レミ「……―――え?」

無の核『な……っ?!』


光の刃を…自らの下腹部に突き立て……そのまま、身体を刺し貫いた。

●あつれき

皆の思考が停止し、時間が止まってしまったかのように硬直する中……


―――一番最初に動き出したのは俺だった。


ハルが何を思い…何を意図して…何のためにあんな行動に出たのか…その答えに、俺が最も早く辿り着き…

俺に続くようにレミが動き出し……無の核を拒絶。

レミの身体から弾き出された無の核を、ディメンションスレイヤーの弾丸が撃ち抜いた。


レミ「ゴメン……ゴメン!ハル!!アタシの…アタシのせいでっ!!!」

ハル「うぅん…良いの、レミちゃん。これも…私が決めた事だから」


無の核『馬鹿な…馬鹿な馬鹿な馬鹿な!!イカレてる!狂ってる!!そんな…そんな道を選ぶなんて!!』

俺「驚きぁしたが…俺は、ハルがイカレてるとは思わねぇよ」


半身を失い…所々が掠れた声で叫ぶ無の核。


レミ「アタシ…ずっと思い違いしてた!傲慢だった!!ハルのためって決め込んで…肝心のハルの気持ち、全然判ってなかった!!」

ハル「それじゃ…今度からは、ちゃんと話そ?皆で話して…それで決めよ?」


無の核『判ってるのか!?ハルが取った行動は…これから先もずっと――――――』

俺「あぁ…判ってる。判ってなけりゃぁ、ここまで怒りが込み上げて来ねぇよ!でもなぁ!!」


ハル「そう……例え拭えない罪と悲しみを背負っても…」

レミ「苦しみ続ける事に…なったって」


俺「これから先もずっと、手前ぇと戦い続ける…皆、そう決めたって事なんだよ!」


無の核『―――…っ……馬鹿げてる。第一、戦い続けた所でボクに勝つ事なんて出来ない!その位は判ってる筈だ!』

俺「あぁ…確かにな。んでも…俺達が足掻き続ける事で、手前ぇの目的を邪魔し続ける事が出来る。そうだろ?」

無の核『っ……どれだけ腐った性根なんだ。第一、それが無意味な悪足掻きだと何故判らない!』


俺「性根の悪さはお互い様だ。んで…悪足掻きなのは認めるが…あながち無意味ってぇ訳じゃ無ぇよ。現に………」

無の核『……………』


俺「ハルの行動で…今も依り代も、その先に依り代にする筈だった存在も失って、お前はもう、世界に終焉を齎せない!そうだろ!!」

●ておくれ

俺達…ハルの行動により一気に形勢を逆転された無の核。

無の核『………フフッ……ハハハ…ハハハハハ!』

しかし…そんな状況下にありながらも、無の核は高笑いを上げ始めた。


俺「ハン、そう言うのはもう良いってんだよ。高笑いが逆転フラグだと思ったら大間違いだ!」


無の核『フフ…フハハハハ…ハハ……いや、失敬。そうじゃ無い…そうじゃ無いんだ』

俺「だったら何だってんだ。ついに諦めて観念したか?」

無の核『まさか?そんな筈が無いだろぅ?ボクが言いたいのは、そんな事じゃぁ無いんだ』


俺「………だったら何だってんだ。勿体ぶらずに言ってみやがれ!」

無の核『せっかちだなぁ…じゃぁ、お望み通り教えてあげるよ。僕が言いたいのは……』


俺「………」

ハル「………」

レミ「………」


勿体を付ける無の核と…それに聞き入る俺達。

そんな中、不意に……俺達と無の核の間に、一筋の黒い線が走り……


無の核『もうとっくに、勝負はついている……そう言っているのさ!』


――――世界に


―――――黒い雨が降り注いだ

●おしまい

星々の光が、一つ…また一つ。黒い雨に飲み込まれて消え去り……

真っ黒に染まり切った景色の…その向こう側から、無の核の声が響く。


無の核『残念だったねぇ?あとほんの一瞬だけ早ければ止められたかも知れないって言うのに』

レミ『………っ……』

無の核『さぁ…今度こそ本当の終焉の始まりだ!』


雨に触れた物は、その存在その物を丸ごと削り取られ…無に飲み込まれて行く。

今はまだ、俺達の下に降り注ぐ雨は少ないが…それも時間の問題だろう。


無の核『……とは言え、こんな様で勝利を語る程にボクは恥知らずでは無いからねぇ。痛み分けと言う事にしておこうじゃぁ無いか!』

わざとらしく…笑いを堪えながら言い放つ、無の核。


無の核『残された僅かな時間で、この世界の終焉を見届て…それからキミ達も後を追うと良いさ!!』

そして、その言葉を最後に無の核の声は途絶え…この世界には、俺達だけが取り残された。


俺「あの口ぶりからして…俺達を消し去るのは最後の最後…って所か」

レミ「……ゴメン。アタシが……アタシが、もっと……」

俺「いや、だからそれはもう良いっての。今更そんな事言っても仕方無ぇだろ?」

レミ「…でも………」


ハル「レミちゃんは、私達の事を思ってしてくれたんだから…例えそれが間違いだったとしても、私は嬉しかったよ」

レミ「ハル……」


ハル「第一…謝らなければいけない事だったら私だって彼に…」

俺「え?」


ハル「ずっと黙ってて……それなのに、あんな土壇場であんな事……」

俺「あぁ…でもまぁ、ハルだって迷って…悩み抜いて決めた事なんだろ?だったら、俺はそれを責める気にゃぁならねぇよ」

ハル「………ありがとうございます、その言葉で救われました。それに…」

俺「…それに?」


黒い雨が世界を塗り潰し…俺達の頭上から降り注ぐ。


ハル「それに…最後に……最後の時にこの三人で一緒に居られるなら……」

俺「ハル………」

レミ「ハル……ハルぅ………」


俺は二人を抱き寄せ…最後に……迫り来る終焉への、抵抗の意思を示すよう…ディメンションスレイヤーを突き立て………


―――――黒い雨に飲み込まれた、世界は……終焉を迎えた。

〇しなおし

―――さて。

途中で幾つかの誤算はあった物の、ボクの目的は無事に達成された。


さっきまで居た世界…彼女達が固執していた世界の終焉は成った。

後は…物質媒体を失った彼女達の痕跡を辿って、再び説得を試みる。それが叶わないのであれば、判って貰えるまで続けるだけ―――


カライモン「………なんて事を考えて居るのだろうね」

ボク『―――っ!?………あぁ、そうか…キミはあの世界に戻っていなかったねぇ。いや…あえて戻らず、故郷の世界との心中を避けたと言うべきかな?』

カライモン「そうだね…世界との心中を避けるため、あえて戻らなかった」

ボク『やはりねぇ…その割り切りの良さと言い、才能と言い…認めよう、君は切り捨てるには惜しい逸材だ。どうだい?何ならボクの……』


カライモン「だが……君は大きな勘違いをしている」

ボク『………何?』


カライモン「よぉく確かめてみ給え。いつものように…世界を終わらせる度にしていたように、彼女達…核の存在やその痕跡を辿ってみると良い」

ボク『そんな事、言われるまでも無く………ん?』


カライモン「……ふふふ…気付いたようだね」

ボク『そんな…馬鹿な!!こんな事………っ!!』

カライモン「ある筈が無い…だろう?だが…ところがどっこい、これが現実だ!」


ボク『何故だ…ボクは彼女達の居た世界を終わらせた…終わらせた筈なのに……何で、何で別の世界に彼女達の痕跡が残ってるんだ!!』


カライモン「策士策に溺れるとは言うが…見事に溺れてくれたね。いやぁ、見て居て爽快だったね」

ボク『な…に……?』


カライモン「なまじ目が良すぎる物だから、逆に見えない物を見ようとしない…そんな事だから、引きずり込まれて溺れて居ても気付かないのだよ」

ボク『………能書きは良いから、早く種明かしをすれば良いじゃないか。そのためにキミはここに来たんだろう?』

カライモン「やれやれ、せっかちだね……良いだろう、教えてあげよう。どうやって君を出し抜いたのかを…ね」


口元に笑みを浮かべ…カライモンは語り始めた。

カライモン「まず初めに…判って居るとは思うが、ついさっき君が終わらせた世界は……私達の生まれ育った世界では無い」

ボク『そう言う事なんだろうね、でも納得が行かない。あの世界には彼女達の痕跡が確かにあった…あれはどう言う事だい?』

カライモン「そこはやはりと言うべきか…残留した痕跡で判別をして居たのだね。ヤマが当たって良かったよ」


ボク『いや…例え判って居たとしても、一昼一夜で用意出来る濃度では無かった。いや、そもそも偽装なんて出来る筈が無いんだ』

カライモン「だろうね。だから下手に偽物を用意しても無駄だと思い、本物を使わせて貰った」

ボク『本物………まさか?』


カライモン「そう……隣合ったもう一つの世界。より濃く痕跡の残った、あの世界に君を誘き寄せたのさ」


ボク『ボクを欺くため…そのために世界を丸ごと囮にしたって言うのかい?いや、だとしてもおかしいじゃないか。そもそも―――』

カライモン「絡み合った二つの世界線は、同時に断ち切られる筈だった…だろう?だから………あらかじめ二つの世界を分断しておいた」


ボク『なっ…………』

カライモン「それと誤解の無いように言っておくが…あの世界の住人は、全員Ifの世界に避難済み。つまり犠牲者は皆無だ」

ボク『………………』

カライモン「これに関しては、さすがのアラク君にも重労働でね。肝心の君との戦闘においてはご存知の通り…本当にギリギリの余力になってしまったよ」


ボク『成程…成程ね。完敗だ、完全に出し抜かれてしまったよ………今回は…ね』

カライモン「………今回は?」

ボク『一度空撃ちしたら、それで終わりかと思ったかい?少し時間はかかるけれども、もう一度プロセスを一巡させれば良い…それだけだよ』


カライモン「………そうか…それが君の思惑か」

ボク『さすがにそこまでは考えが及ばなかったかい?残念だったねぇ!一度勝っただけで良い気にならないでくれるかい?最後に笑うのはこのボクさ!!』

カライモン「いや、そう言う意味では無い。と言うか…痕跡を探った時点で気付いている物とばかり思っていたのが…」


ボク『は?一体何の事を……ん?………な…に……?そんな…これは、まさか……!?』


カライモン「そう…私がこうして長々と種明かしをしていたのは、あくまで時間稼ぎのためだ。そして………」

ボク『馬鹿な…馬鹿な馬鹿な馬鹿な!!何故だ…何故……世界の終焉に飲み込まれた筈なのに!!』


カライモン「次回なんて物は存在しない。今回が君の最終回…終焉だ」


ボクの目の前に、あの男と二人の女…世界と共に終焉を迎えた筈の三人が、姿を現した。

●からくり

降りしきる…終焉の黒い雨の中。俺とハルとレミは身を寄せ合っていた。


辺り一面の景色を塗り潰し…最後の締め括りとばかりに、俺達の頭上から降り注ぐ黒い雨。

俺は、それに向けてディメンションスレイヤーを突き立て…親指でハンマーを押し込んだ。


先端から根元にかけて、螺旋状に光が走り……ひび割れから刀身全体に、亀裂が走る。

そして、刀身の奥から現れた光が六角形を形成し………


ハル「え……?これって、もしかして……」

レミ「あ、そっか…これ、例の……」

俺「あぁ…そうだ。ついでに言うなら…特大サイズだから、三人で相々傘だって出来ちまうぜ」


その傘で、終焉の黒い雨を弾き飛ばした。


俺「さて、諦めモードに入ってた所を悪いんだが…このままじゃぁ、どうにも収まりがつかねぇ。俺は、無の核を追いかけようと思うんだが…」

レミ「ま、当然よね」

ハル「ですよね」


俺「追いかけて…例え無の核を倒せたとしても。世界を元に戻せる訳じゃぁ無いし、そもそも倒せるかどうかも判らない」

レミ「そう…ね。依り代を無くして、使える力が限られてるとしても……そもそも、存在その物が生物を超越しちゃってるものね」

ハル「でも……だからと言って、それを理由に諦めるのも何ですから………」


レミ「じゃぁ…あれ、いっとく?」

ハル「そう…だね」

俺「あぁ…そうだな」


レミ「世界は…もう終焉を迎えてる……」

ハル「無の核は、存在自体が別次元で…勝てる見込みも無い……」

俺「どうしようもないような絶望的な状況…やる事なす事全部無駄に終わるかもしれねぇ。んでも……」


「「「それがどうした!!」」」

●かくしん

俺「……って、こりゃぁ一体どーいう状況だ?」


無の核を追いかけ、再び世界の壁を超えて来た俺とハルとレミ。

当然ながら…俺達三人は圧倒的な劣勢を覚悟した上で、無の核との決戦に臨んだ訳なんだが…


カライモン「やれやれ、遅かったではないかね」


待ち受けていたのは……無の核と対峙する、カライモン。

いや…カライモンの唐突な登場はいつもの事なので、驚く程の事では無いのだが……この場合の問題は、無の核の方だ。


無の核『…………』

俺達の生存が不測の事態だったのは判る。が…この余裕の無さに関しては、不可解な事極まり無い。


俺「…なぁ、俺達が居ない間に何があったんだ?何となく、無の核が気圧されてる感じがするんだが?」

カライモン「時間稼ぎ以外は別に何もしていないよ?君達が戻るまでの時間稼ぎと足止めだけして…あぁ、後は君達が無の核を倒すと宣言したくらいか」

俺「は?…おま…そんな無茶な宣言を……」


カライモン「出来ないのかね?」

俺「あー……いや…やるさ、例え出来なくてもやってやるっての。どうせそのために戻って来たんだしな」

カライモン「ならば別に良いだろう?ほら、有言実行し給え、私を嘘吐きにするつもりかね?」


いけしゃぁしゃぁと、いとも容易く無理難題を押し付けて来るカライモン。

それに対して言いたい事は山程あるが、今はじっと堪え…俺は、無の核に向き直る。

が…それらの一連のやりとりの間に余裕を取り戻したのか…無の核は口元に笑みを浮かべていた。

無の核『ははっ…ははははは!!何だい何だい、驚かせてくれちゃって!結局、無策のまま戻って来ただけなんじゃないか!!』

俺「っ………」


悔しいが…無の核の言う通りだ。

勢いだけで戻っては来た良い物の…具体的にどんな手段があるのかと聞かれれば、それに即答など出来よう筈も無い。

いや…例え時間があって充分に考え抜いたとしても…打開策が浮かんでくるとは到底思えない。


あの手もダメ、この手もダメ…付け焼刃は剥がれて、切り札は切り返されて、奥の手は絡め取られ…最後に手痛い反撃をくらったばかり。

後、残っている物と言えば―――


カライモン「………いい加減、出し給えよ」

俺「…はっ?」

カライモン「まだアレが残っているだろう?それを見越した上で、私は勝利宣言を行ったつもりなのだが?」

俺「いや、んでもあれは…今までの結果を見ても、相性が……って、何でその事を知ってんだ!?」


カライモン「私から言えば、むしろ何故今まで隠し通せていると思っていたのかが不思議だね。アレが無ければ、時間も場所も判らなかっただろうに」

俺「それは確かにそうなんだが……いや、んでもな?お前だって見て来ただろ?アレは無の核との相性が―――」


そう…確かに一つだけ残っている隠し玉はある。しかし…今までの結果で実証された通り、その有用性は見込めない。

だが、何故だろうか……余裕を取り戻した筈の無の核の顔が、俺達の会話を聞いてまたみるみる内に青ざめていくように見えた。


カライモン「それは間違いだ。まず前提からして間違っている。相性が悪かったのは無の核では無い。無の核と………」

俺「無の核と?………あぁ…あぁぁぁ!!そうか、そう言う事か!!」

正直な所…俺一人の考えでは、その結論に辿り着く事は出来なかった。

だが、カライモンの確信じみた言動と無の核の様相により…俺は、その答えに辿り着くための道筋を見付ける事が出来た。


カライモン「やっと気付いたようだね?ではもう判った筈だ。無の核単品が相手なのであれば…」

無の核『……っ…何を思い付いたのは知らないが、それが勘違いだとしたらどうするんだい?一歩間違えば…それが原因で―――』

俺「世界を滅ぼす事になるかもしれない……か。成程…やっぱり予想はドンピシャだったみたいだな」

無の核『―――っ!!』


追い詰められ…必要以上に饒舌になった無の核。

滑稽なその姿に哀れみさえ覚える……が、だからと言って手心を加える気も無い。


今度こそ……今度こそ。無の核と…それに関わる因縁を断ち切るため……

正真正銘最後の手…隠し玉を突き付ける。


俺「出てこい……………ケート!!」

●はんてん

全身からカサブタを引き剥がされるような痛みと違和感と共に…それは姿を現した。


カライモン「…………」

やれやれやっとか、と言わんばかりの呆れた顔でそれを見るカライモン。


レミ「えっ……何で……?」

事態を飲み込めず、困惑するレミ。


ハル「え?…あ……これって……つまり」

遅れながらも、理解するハル。


そして…………


無の核『……………』

険しい表情を浮かべた無の核が


目の前に現れた、人型の…少女の形をした虚獣を睨み付けた。


俺「さて……これでもう、無の核との決着がつく訳だが……お前たちもそれもで良いんだよな?」


光の核『………』

闇の核『………』


元は二人の友人だったとは言え…その行き過ぎた友情…いや、愛情や愛憎により悪質なストーカーと成り果ててしまった無の核。

その余りにも横暴が過ぎる振舞い故に…二人の中では、答えが出てしまっていた。

そして…その答えは、無言の肯定となって示され……俺は、その肯定の下に行動を起こす。



無の核『ぁ…がっ…………』


――――決着は正に一瞬だった。


無の核が、黒い線…いや、ディメンションスレイヤーの力さえ含んだ黒い線で、ケートに襲い掛かるが……

その行動を読んでいたケートは、難無くそれを回避。

更にそこから、無の核の眼前に転移した後……


呆気無い程簡単に、無の核の大半を削り取った。

●おしえて

無の核『こん……な…事………ボクは…認め……無い…っ』


自身の大半を消失し…存在自体が希釈され、その維持すらもままならなくなった無の核。

長くは持たない…このままの状態で放置したとしても、形勢が覆る事は無い。それは誰の目から見ても明らかだった。


俺「いい加減認めろよ。お前はやり過ぎた…んで、そのツケが回って来たんだよ」

無の核『認められる…か!納得できる物か!!何で…何でキミが虚獣を……』

俺「コイツを浸食した時、そのまま俺ん中に取り込んだ」


無の核『じゃぁ…そもそも……何で…虚獣が…ボクに対する…決定打になると……判った』

俺「判ったってーか…思い出したんだよな。俺達の…最初の最初、全部の出来事が始まるきっかけをな」


レミ「きっかけって言うと…えっと、ロストがアンタを襲った所よね?」

俺「いや、もっと前だ。俺が巻き込まれる以前に、神風が……」

レミ「闇の核の一部を奪って、その中に無の核の一部が潜んでて…その際に神風が無の核の干渉を受けて……あ!そっか!!」

俺「そうだ…神風が闇の核にしたのと同じ事を、今度は虚獣が無の核にすれば良い…って訳だが」


カライモン「ちなみに、補足しておくならば…同じ力を持った、根幹を食らう竜でも同じ事が出来た訳だが…さぁ、続け給え」


ハル「その手段と可能性を…隠蔽されていたんですよね。虚獣やスピリット自身…そして、私達を利用する事で」

無の核『…………』

俺「まず第一に、それぞれの核の力…ディメンションスレイヤーで虚獣を書き換える事は、世界の崩壊に繋がるって仕組み」

ハル「これにより私達は…虚獣に対しての内部干渉は出来ない、してはいけない…されてはいけないという前提が出来ました」


俺「んで次に、大本命。虚獣からの直接干渉だが…こいつは、神風を操るって言う反則技でそれを回避した訳だ」

レミ「そっか…虚獣が今みたいな行動を取れなかったのって、神風が居たから…予測されて邪魔されるから、実行できなかったって事ね」

ハル「そう…だから、質量による消耗戦に持ち込まざるを得なくなった訳」


俺「でもって最後に…虚獣ケートス戦で、神風が身体を張って地球を守った事で、この前提が崩れた訳だが……」

無の核『…………』

俺「最後の虚獣は、既に顕現を開始しちまっていて…折角の千載一遇のチャンス、神風の不在に付け入る事が出来なかった…と」


レミ「で……後は私達も知っての通り。コイツがアタシ達を出し抜こうとして、嘘を吐いて一人で虚獣の所に向かって…」

俺「焦った無の核が、レミを連れて先回り。奥の手の黒い線を使って、行動を起こされる直前に先手を打った」

ハル「これらの要因のせいで、私たちは…虚獣の力を誤認…いえ、誤解させられて居たんです」


俺「ってのが真相な訳だが……カライモンは、この辺りの事も全部分かってたんだよなぁ?」

カライモン「勿論…無の核の力は既に分析済みだ。まぁ、私にしてみれば造作も無い事だったがね!」

俺「いや、それ悪役のセリフ。ってか、モロにやられフラグ立つから止めようぜ!?」


無の核『ははっ……はっ…なんだよ……だったら…何で……何でこのタイミングなんだ!!』


カライモン「ふむ…少し考えれば判る事なのだが。君がそれを聞くとは、余程余裕が無いようだね」

当然と言えば当然の疑問。ついでに言えば俺も気になっていたその部分を…

半ば呆れ顔になりながらも、カライモンは語り始めた。


カライモン「至極単純な話…一番の問題は、レミ君の安否だよ」

レミ「え?アタシ?」

カライモン「虚獣の力とは言え…レミ君と一体化している状態で、無の核のみを削り取る事が出来るかどうかは未知数だ。となれば…」


レミ「アタシが無の核から解放されるのを待ってたって事!?そんな…アタシなんかと世界を―――」

カライモン「そう言うのは止め給え」

レミ「えっ…あ………ゴメン」


カライモン「では二番目の問題だが…これは、その時点では不確定だった、終焉を齎す方法その物だ」

俺「まぁ、そうだよなぁ…どんなのか判らねぇ以上、下手な事は出来ねぇよな」

カライモン「とは言え、これも想定内…虚獣を巻き込む事も無く、且つ世界の終焉を避けつつ空撃ちさせる事に成功した…と言う訳だ」

●かくへん

無の核『こんな……こんな事………嫌だ…認め…たくない!……消えたく………』


消滅を目前に控え、足掻き続ける無の核。

散々やりたい放題やらかして来た末の当然の結果ながらも、その姿には哀れみを禁じ得ない。

が…だからと言って、今更こいつの行いを許す訳にもいかない。


俺「ったく…往生際が悪いにも程があんだろ。お前はもう、完全に俺達に……ん?」

念には念を…相手が無力化されていると判っては居ても、何をしでかすかは判らない。

そう思って、無の核を注視する最中………


―――それは起きた。


俺「んなっ!?」

レミ「な…何これ!?」


無の核から銀色の 何か が溢れ出した。


無の核『そんな…馬鹿な……ボクを…見限った…のか…?ボクは…選ばれ………選ばれ……え?…あ……?』

狼狽する無の核を余所に…形容し難い形状と躍動によりその存在を誇示する、銀色の何か。

一体何が起きているのか…目の前の物は一体何なのか…皆が皆困惑と警戒の表情を浮かべる中……


闇の核『そんな……あれは…』

光の核『あり得ん!奴は…っ』

光と闇の核だけが、確信を持った眼差しでそれを見据え


ケート『………ウロボロス』


……虚獣ケートが、その名前を呟いた。

俺「……はぁっ!?」

ウロボロス……それは、光と闇…そして無の核の3人の世界を滅ぼした存在。

世界が食い潰されるその瞬間まで、何人たりとも抗う事は出来ず…3人が今の状態となるに至った元凶。

改めてそれを目の当たりにした俺は、思わず声を上げ……


当たり前のように、いや…僅かな期待に突き動かされ、カライモンへと視線を向けた。


カライモン「……無茶を言わんでくれ給えっ!あんな規格外な物、事前情報も無しに…っっっ――そうか…本来の管轄と言うのはそう言う事か!!」

俺「管轄?」

カライモン「いや、こちらの話だ。それよりもまず、ありったけの情報を寄越し給え!可能な限りの対抗策を練るしかあるまい!」


俺「情報っても…俺が見せられた記憶じゃぁ有効な手段は無さげだったんだが…おい、お前達は何か知らねぇのか!?」

光の核『奴は…ありとあらゆる法則を超え、世界その物を存在ごと食らい尽すモノ…』

闇の核『ウロボロスに対し…私達は肉体を捨てて、こうして精神のみの存在となって逃げる事しか出来ませんでした』


光と闇の核から伝えられる情報は、俺も知っての通りの内容。

至って簡素で…現状を打破するには至らない物。

何か…ほんの少しでも、何かのきっかけになる物が無いかと模索する中……


無の核『いや……精神体でさえ…ウロボロスから……逃れる事は…出来なかった』

いらん横槍を、無の核が―――――ん?


光の核『その髪……瞳…』

闇の核『貴女…やはり……』


視線を向けた先に居たのは、紛れも無い無の核だった。

だが…その髪や瞳は、先程までの銀色とは異なり………透き通るような空色をしていた。

無の核『ウロボロスは…そもそも、物質的な病原菌でも無く…ましてや世界の仕組みでも無いんだ。あれは………っ…!』


俺「あー……ちくしょう!!様式美として突っ込みたい事や聞きたい事が山ほどあるが、今は省略してやる!!早く続けろ!!」

レミ「えっ!?そこ省略しちゃうの?」

ハル「今は一刻を争う時だと思うから…ね?」


無の核『世界の枠を超え…より上位の存在から干渉する、恐らくは………淘汰と言う現象その物なんだ』


俺「んで…その上位の存在をどうにかするには、一体どうすりゃぁ良いんだ?」

カライモン「いや、簡単に言ってくれるが…上位存在への干渉など、そう簡単には行えんだろう。それこそ、幾つもの条件が…いや、そうか」

無の核『そう……これが偶然なのか…必然なのかは、判らないけど………不可能では無いんだ』


俺「…って、だったら勿体ぶってねぇで早くその方法を教えろよ!!」

無の核『勿論教えるさ…でも、その前に一つ……キミに確認しておきたい事があるんだ』

俺「だったらそれも早くしろ!何でも答えてやんよ!」


無の核『じゃぁ聞くけど………』

と…散々勿体を付けた所で、俺を見据える無の核。

そしてその口元が、再び僅かに動き………俺に問いかけて来た。


無の核『キミは………絶望に染まる覚悟があるかい?』

●かいせき

俺「…………はっ?」


無の核が発した言葉…その言葉の意味を理解する事が出来ず、俺は聞き返した。

俺「そりゃ一体どういう意味だ?絶望って…完全に真逆の事だよなぁ?いや、えっと…あれか?可能性はあっても、絶望的に低いとかそう言うやつか?」

無の核『それは……』


俺「だったら確かめるだけ無駄だ。危険も失敗も承知の上でここまで来てんだぜ?今更そんな事を理由に引き下がったりする訳無いだろ」

無の核『そうじゃ…無いんだ』


俺「いや、だったら何なんだよ!?」

無の核『絶望って言うのは…悲劇的な結末を迎える事じゃ無い。世界を守る事は出来る…でも絶望する事になるんだよ』


俺「何だよそれ…思いっきり矛盾してんじゃねぇかよ……」

無の核『いや…矛盾はしていないんだ。それより…早く決断しなければ、もう時間が……無い…』

俺「っ………いいじゃねぇか!絶望でも何でもしてやろうじゃねぇか!!さぁ、とっとと教えやがれ!!」


無の核『……思慮の浅いキミなら、そう言うと思ったよ。それじゃぁまず…虚獣をキミの中に戻して、ボクを取り込むんだ』

俺「…お前……ウロボロスから解放されて、元に戻ってる筈なんだよなぁ?そう言う減らず口を叩かれると、いまいち信用出来なくなるぞ」


毎度毎度の事ながら…言われたままに行動するのは癪だが、他に手が無い以上それに従う他は無し。

俺は……無の核の言葉に促されるまま、手順を進めて行く。


無の核『と、口では何だかんだ言いながらも…結局ボクを信用してるんじゃないか』

俺「うるせぇ。さっさと次を教えろ」


無の核『判ったよ、素直じゃないねぇ。さぁ…次は光と闇…あの二人の力を内に残したまま、意識だけを外に開放してあげて』

俺「また土壇場で無茶振りを…ってーか、それで良いのか?」

無の核『あぁ…こんな事になってしまったのはボクの責任だからね。今更だけど…二人を巻き込む訳にはいかないさ』


俺「いや、そうじゃ無ぇよ」

無の核『え?』

俺「お前じゃなくて二人に聞いてんだ。コイツ一人だけ格好付けさせて、自分は高みの見物出来るようなタマかってな」


闇の核『そのような事……』

光の核『出来る筈がなかろう!!』


俺「だってよ」

無の核『っ………ぅ………』


俺「そら、感傷に浸ってる暇なんか無ぇんだろ。次だ次」

無の核『………うん!!』

●ついおく

俺「で……3つの核の力をまとめたら、次はどうする!」


無の核『この状態でウロボロスを取り込んで…封じ込める。そして、その上で無効化する方法を探し出すんだ』

俺「ってオイ。それって……」

無の核『そう……以前僕が試みた時は、逆に取り込まれてしまった。でも………』


闇の核『今なら…』

光の核『我等の力…それに』

俺「あー……小っ恥ずかしくなるからそれ以上言うな、要はアレだろ?」


ケート『皆の力を合わせれば、不可能だろうと乗り越えられる』

俺「って、そこお前が持ってくのかよ!!ってか、普通に喋れんのかよ!!」


ケート『どやぁ』

俺「いや、そこは逆に声に出す物じゃ無ぇよ!」

ケート『………注文が多い』


俺「注文じゃなくて突っ込みだよ!ってか、突っ込み所多いのはお前のせいだよなぁ!?」


無の核『いや…気持ちは判らないでも無いんだけど、早く…出来ない…かな?そろそろ……』

俺「ってうおっ!?めっさ消えかけてる!!」

無の核『うん…だから……ね?』


と言う訳で……改めて仕切り直し、ウロボロスへと向き直る俺達。


そして俺は、蠢くウロボロスの中心に向けて右手を伸ばし……その指先がウロボロスに触れた瞬間………

俺「っあ……!?」

ウロボロスが俺の中に入り込み…まるで激流のような勢いで身体の中を駆け巡って行く。


まずそれは……体表に現れた黒い入れ墨のような物になって、触れた右腕から全身に広がり……

それに伴うように、ウロボロスが今まで見て来た物……記憶の断片が俺の中で何度も何度も通り過ぎる。


一つの記憶…一つの世界…その世界に存在するありとあらゆる物の記憶。

たった一つのそれを、咀嚼する訳でも無くただ飲み込むだけで頭が壊れておかしくなってしまいそうになる。

にも拘わらず、それが何度も何度も…それこそ無限に続くかのような錯覚に苛まれた後………


気が付けば………

体表の模様が全て左手の手の平に向けて収縮して行き……


その手の中に、赤い立方体を作り出していた。


俺「何だ……これ?」


無の核『ウロボロスにより集積された、知識の結晶体…とでも言えば良いのかな』

俺「あぁ…そう言う系な物な訳な。んでこれをどすうれば良いんだ?」

無の核『その立方体…箱を開けるんだ。そうすれば、さっき言った通りの手順に進む事になる』


俺「成程…な」


無の核からの説明を受け、俺はその立方体に手を伸ばす。

そして、いざその立方体…箱を開けようとした瞬間…………


カライモン「………待ち給え!!」

カライモンから、制止の声が上がった。


俺「どうした?あんまり長くは持ち堪えらんれねぇんだが…」


カライモン「どうしたもこうしたもあるか!君は…それが何か判っているのか?!それを開けてしまえば、君に待っているのは…」

いつに無く…切羽詰まった声色で、必死に俺を止めようとするカライモン。


俺「絶望…だろ?にしても、締め括りが開けちゃぁいけねぇ箱で…開ければ絶望とか…話が出来過ぎてるよなぁ」

カライモン「ならば…そう思うのであれば、止めれば良い事では無いかね!!」

俺「つっても……ここまでやっちまった以上、後戻りは出来ねぇからな。ま、上手く行くように祈っててくれ」


だが…俺はそんなカライモンの制止を振り切りって、箱を開け………



―――絶望の


――――――本当の意味を理解する事になった。

●いりぐち

俺は……ウロボロスに集積された情報の掌握へと乗り出す。

つい先程の、箱が形成される前に見た物とは比べ物にならない程…膨大な量の情報。


今いる世界の…他の世界の……

始まりから終わりへと向かう全てを、ウロボロスに食い尽くされたありとあらゆる並列世界の数だけ……


人の身であればその片鱗に触れただけでも自我が崩壊してしまうような情報量を……

三つの核の力を借りる事により、辛うじて自己を保ちながら飲み込んで行く。


俺「これが…ウロボロスに集積された記録。ウロボロスに食い尽くされた世界の記録か」


三つの核達が元居た世界………

魔法と言う概念すら存在しない、化学の発達した世界………

文明の水準が低い世界に、高い世界。


異世界との交流が盛んな世界に、閉鎖された世界………

時には、有機生命体すら存在しない世界さえもその毒牙にかかり………


ウロボロスに記録された全ての結末を覗いた末に……ある結論に行き付いた。


俺「ウロボロスに滅ぼされなかった世界は……ゼロ。誰も…ウロボロスに抗う事は出来なかった………」

その結果から導き出される答え…可能性を反芻する度に、全身から血の気が引いていくような感覚に襲われる。


そこにあった……いや、ある筈だった希望は失われ…残された深淵に飲み込まれかけ―――


無の核『落ち着くんだ、結論を焦るんじゃない!』

無の核の声に、意識を引き戻された。

●えんざん

無の核『今見た物は…あくまでウロボロスの記録だ。よく考えて…記録がある物が全てとは限らない』

俺「あぁ…そうか……ウロボロスに関わってない世界もあるよなぁ。ってか、逆に……」

無の核『そう…完全に駆除され…記録を取る事すら出来なかった世界が存在した可能性さえあるんだよ』


俺「あぁ…くそっ。何でこんな基本的な事にさえ頭が回んなかったんだ」

光の核『情報の量が量故に…我等が補助しているとは言え、思考ロジックの展開にも負荷がかかっているのであろう』

無の核『それに加えて…ウロボロスの記録その物に意識や思考が引きずり込まれている可能性もある。充分に注意してくれ』


俺「あぁ、それは判った。んでも…どっちにしろ今のままじゃ、ウロボロスへの対抗策を探しようは無いよなぁ?こっからどうすんだ?」

無の核『なぁに、これも想定の範囲内さ。ここから…ウロボロスの記録を使って、僕達の存在その物をより上位に押し上げるんだ』


俺「……マジか?そんな事が……あ、いや…元々お前はそれを目的に研究してたんだったな」

無の核『そう…それが歪んで君達に迷惑をかけてしまったけれどね』


闇の核『私達も…その歪みを見出してしまったが故に、一つになる事を拒みました』

光の核『だが……今であれば一切の懸念も無い。共に征こう!』


無の核『二人とも………ありがとう』



俺「で……水を差して悪いんだが。どうやって上位の次元に上りゃぁ良いんだ?俺も、その…意識だけの存在になるのか?」


無の核『その点は心配無いよ。キミと言う存在には、あの世界で実際にウロボロスに対処するための媒体として残って貰う事になる』

俺「あぁ…そっか、なら大丈夫か。んじゃ、ここからどうするんだ?」


無の核『現状では…僕達三つの核が基盤になって、ウロボロスの記録を閲覧している訳だけど…それじゃぁ足りなかった。となれば……』

俺「足りない部分を補完……ケートの…虚獣の力を使って演算すれば、それが出来る…って事になるのか?」

無の核『そう、ご名答。補足すると…その段階に入れば、後は同じ要領で幾らでも更に上の階層に上り続ける事が出来る』


俺「成程…な。んじゃぁ、さっさと行くか!」


詰まる所…今までの手順は、あくまで準備段階だったと言う事。

ここから先に控える、本番に向け……俺は踏み込んで行った。

●けんさん

俺「まだか…まだこの階層にも無いって言うのか…!」


螺旋階段を登るように…

一歩…また一歩……少しずつ…少しずつ上の階層へと足を進めて行く。

だが………まだ先は見えない。ウロボロスに抗う術は見つからない。


俺「くそっ…こんなまどろっこしいやり方じゃぁ駄目だ!!」

俺は階段から跳躍し…更に上の階層へと一気に飛翔する。


今までとは比べ物にならない量の情報が、理性や意識を削ぎ落とす中…

俺はひたすらに…ひたすらに、上に上にと飛び続け………


遂に見つけ出した。


俺「これが、ウロボロスに対抗しうる手段…さしずめ、ウロボロスの統括って所か」

銀髪の…左半身を入れ墨ような模様に覆われた、一人の男。

その左目の虹彩には、円を描いた蛇のような模様があり…ウロボロスゆかり者である事はすぐに理解出来た。


俺「ってオイ…これって下の階の………あぁ、そうか…そういう事だったのか」

見つけてしまえば、何て事は無い。

探していた物は意外と近くにあって…全てを知ってしまえば、すんなりと納得出来てしまうような内容だった。


俺「俺達の世界のウロボロスは…本来のウロボロスから派生してしまった、いわばバグのような物だった…か。んで…」

後は………


俺「念のため、ウロボロスを退けた後の経過も確認しなけりゃなぁ」

事の顛末を確認してから、それを実行に移す…それで終わり。


俺は……この長きに渡る因縁に終止符を打つため、その先を見渡した。



――――そう


―――――そこには全てがあった。

●すべての

―――――

『これからもずっと……私と、いえ、私達と一緒に居て下さいね』


―――――

『じ…自分ッスか!?本当に…自分で良いんなら――――』


―――――

『全くもう…春からは父親になって、夏には二児の父なんだから。しっかりしてよね?』


―――――

『で……こんな俺もついに正社員か…』


―――――

『それで君は…うちの娘とレミちゃん…どちらが本命なのかね?』


―――――

『いや待ってくれ、俺が社長って…はぁ!?』


―――――

『にしても…コイツ等と分離して真人間に戻ったは良いが、逆に違和感あんだよなぁ……』


―――――

『本当に…これが貴方の望んだ結末か?』


―――――

『そうで御座いますね…貴方様のお力を持ってすれば、時間の問題かと』


―――――

『よりにもよって…何でボクを選ぶかなぁ』


―――――

『%■◎#▽※』


―――――

『――――――――――』


―――――――――――――


大きく分けて、971741130562083245688888888通り………

その全ての結末を観測した。

●ぜつぼう

――――――――――――


俺「……………え?」


俺「おい…嘘だろ?これで全部か?これっぽっちか?」


全てを知って…全てを理解して………無の核の言葉の意味を理解した。

全てを知ってしまうと言う事は、ありとあらゆる可能性を掌握してしまうと言う事で…

全てを掌握してしまえば、必然的に…そこには一切の不測が存在しなくなる。


俺「他にもまだ…まだ何か……別の未来が………」


そう、それはつまり…一切の未知を失ってしまうと言う事。

全てがロジックに基づいて始まって終わり、予定調和のまま全てが終わる。


そこに………希望なんて物は存在しない。



最後に知覚したのは、無価値と化した達成感と…埋めようの無い喪失感だけ。


未来の可能性は無限大だとか、そんな言葉は滑稽な詭弁に過ぎない。

始まりがあれば終わりがあるという言葉のように…世界は有限で、そこから生まれる可能性にも限界値が存在する。


運命に反逆したつもりで、幾ら自分の意思で未来をねじ曲げようとも…所詮それも予定調和。

自分の意思で掴み取った未来さえも、結局は予め想定されていた断片の一つに過ぎない。


自分が知覚しうる全ての可能性を網羅し、新たな可能性を求めてより上位の階層に上ろうとも…


   結果は同じ。


希望を求め…希望を消費し尽し……残されたのは、絶望だけ。



この選択に…この行動に一体何の意味があるのだろうか?

こんな無駄な事に意味は無い…いくらハッピーエンドを迎えても、それはただの決められた結末の一つに過ぎない。


全てが無駄な足掻き…

その結論に辿り着いた時………俺は一つの間違いに気付いた。


俺「そうか……より上に上にって登ってたつもりだったんだが…本当は……上に向かって落ちてたんだな」


不可逆の上位存在化……


希望は手に入らないからこそ希望であり、手に入れてしまえば希望では無くなってしまう。

そして…一度手に入れてしまえば、それを希望に戻す事は出来ない。


戻ろうとしても戻る事は出来ず…そもそも、戻る事に意味を求める事さえも出来なくなった。

俺は…そのまま、絶望の深淵へと墜ちて――――

突然、右の頬に鈍い痛みが走った。


俺「っ…………は?え?なっ…?」

銀髪の男「目ぇ…覚めたか?」


見ると…そこには、握り拳を構えた男…つい先刻その姿を確認した、ウロボロスの統括が立っていた。


俺「え?アンタ…ウロボロスの……一体何で…いや、何をしに……」

銀髪の男「そうだな、一から話すと長くなっちまうんだが……まぁ簡単に言うと」

俺「………」


銀髪の男「神様になっちまった大馬鹿野郎を、ぶん殴って正気に戻しに来てやった…って所か」

俺「………は?」

銀髪の男「ったく…爪の先が白くなって、虚獣化が始まっちまってんじゃねーか…」

俺「……いや………」


銀髪の男「んで、どうだ?最初の目的は思い出したか?」

俺「え?……あ……そうだ…俺は………でも………」

銀髪の男「んでも、どーした?」


俺「思い出した…でもそれが…本当に正しいのか判らないんだ」

銀髪の男「ぁー………」


俺「俺の行動に意味があるのか…俺が何をしても、その先には決まってる未来しか無いんだよ!!」

銀髪の男「ったく……またこのパターンかよ」


俺「え?」

●よびごえ

銀髪の男「あー…っとな。こんな話があってだな?ある所に、希望が入っているけど絶対に開けちゃぁいけねぇ箱が―――」

俺「いや、そのくだりはもうやった」


銀髪の男「………」

俺「………………」


銀髪の男「箱の中に猫を入れて―――」

俺「それ、本質はさっきと同じだよな?」


銀髪の男「………………」

俺「………………………」


銀髪の男「あー……っと、んじゃあれだ。こいつは俺の知り合いの持論なんだが…」

俺「…まさかの身内ネタ!?」


銀髪の男「いいから聞いてろ」

俺「………はい」


銀髪の男「俺の知り合いの持論なんだが…光と闇の、属性の定義ってのがあってだな」

俺「光と闇の力ならこっちにも…ってか、無の力も全部持ってる状態なんだが……」


銀髪の男「い い か ら 聞 け 」

俺「は…はい」


銀髪の男「光ってーのは、輝き照らし出す力…つまりは、知る力って事らしくてだな…」

俺「……」


光と闇…と言えば、俺達にしてみれば光と闇の核や、それに伴う力の事だが…

この男が語るそれは、俺達の認識とはまた違う定義による物らしい。

男の発言に対して、俺も思う所はあったが……これ以上は話の腰を折ってしまいそうなので、ひとまず反論を控える事にした。

銀髪の男「んで逆にだ。闇の力ってのは、闇に包まれた物……つまりは、未知である事が闇の定義その物らしい」

俺「その定義だと…ありとあらゆる物を知ってしまった俺達は、闇とは無縁な存在だよな?」


銀髪の男「………ってー思うだろ?」

俺「違うのか?」


銀髪の男「……判らねぇか?」

俺「そりゃぁ勿論…あ………」

銀髪の男「そら。そこん所で闇……未知が存在してた…だろ?」


俺「そうか…スピリットと虚獣みたいに、演算が拮抗して…いや、んでも…」

銀髪の男「何だ?」


俺「これは……俺とアンタが、同じこの最上階層に居るから発生してる事だよな?だったら、どっちかが居なくなったら……」

銀髪の男「無くならねぇよ」


俺「…は?何でそんな事が断言出来るんだ?!」


銀髪の男「手前ぇが求める限り、その闇が存在してる可能性が残り続けるだろぉがよ」

俺「そんな…神が人を作ったのか、人が神を作ったのかみたいな理論が……」

銀髪の男「もっと判り易く、卵が先か鶏が先かでも良いぜ」


俺「…………」


銀髪の男「んでまぁ、ここまで言えば判ると思うんだが…俺が何を言いたいかってーと…」

俺「使い古された屁理屈。自分の未来は自分で切り開け…自分で未来を作れ……って事だろ?」


そう……この手の話の行き付く先は、結局それだ。

丸投げにしながらも、綺麗に話をまとめて…なし崩しに良い話で終わらせる常套句。

だが…今の俺はそんな言葉に大人しく収まれる程、矮小にはなれない。

俺は…男の言葉を論破するべく、次なる言葉を連ねようとして………


銀髪の男「いんや?そうじゃぁ無ぇ」

俺「……えっ?」


その言葉を紡ぐより先に、真向から否定をされた。

●そこには

銀髪の男「例え自分が全部知っちまって…壮大なネタバレをくらって、何もかもがつまらなくなっちまっても…」

俺「………いや、物凄く身も蓋も無い表現してくれんなぁ…」


銀色の男「まぁ聞け。でだな…結局の所…」

俺「お、おう…」


銀髪の男「諦めて挫折しちまったら、可能性があっても本当にそこで終わっちまう。それに……だ」

俺「それに……?」


銀髪の男「自分以外でも…それをぶっ壊してくれる奴がいりゃぁ良い。そいつに期待してみるのも…良いんじゃねぇか?」

そう言って、足元を指さす男。

そして、その先に視線を向けると―――――


俺「うぉわっ!?」

足元…いや、正確には足元にあたる空間から…


回転するドリル………いや、半開きの傘が突き出した。


そして傘が完全に開かれた後、空間に空けられた穴の中から―――


俺「………って、ハル!?それにレミも!?」

勢いよく飛び出した後、広げた傘で滑空…いや、上昇?…して来る二人の姿があった。


レミ「話は聞かせて貰ったわよ!全く…アンタらしく無いわね。何こんな事で絶望してんのよ!」

俺「いやいやいや、色々突っ込みたい事はあるが………まずあれだ、何でここに居るんだ!?」

ハル「私達もあの赤い箱を使って、追いかけて来てしまいました」


俺「いや、そんなサラリと……ってか、俺は三つの核と虚獣の力を借りたから何とか来れたってのに…どんだけ無茶をしてんだよ」

レミ「んー?無茶も無理もお手の物じゃない?第一……」

俺「第一?」


ハル「愛があれば………どんな奇跡だって起こせますから」


俺「……………」

一切の淀みも無く……キッパリと言い切るハル。

俺は…そんなハルに対し、反論の言葉を紡ぎ出す事が出来なかった。

銀髪の男「どんな無茶でも乗り越えて…可能性を追いかけて突き止めて掴み取る…って、言葉にすると改めてすげぇよなぁ」

俺「……まぁうん。俺もそう思う」


銀髪の男「差し詰め、可能性って名前の闇を追いかけるストーカー…」

俺「いや、ダークストーカーって言いたいだろそれ!?前置き長ぇよ!!」


銀髪の男「判ってんじゃねぇか」

俺「おま………」


銀髪の男「ってー訳で……そこの可愛いストーカーの前じゃぁ、どんな予測も無意味だって思い知っただろ?」

俺「まぁ…うん。あぁ…そうだな………」


銀髪の男「んじゃ…手前ぇはとっとと、元の場所…居るべき場所に戻りやがれ」

俺「いや…そうしたいのはやまやまなんだが……」


無の核『上位存在への移行は不可逆……その原則の事だね?』

俺「あぁ、そうだ。全部を知っちまった以上は―――――」

俺達が元居た、あの階層へと戻る事は出来ない…そう言いかけた瞬間………


銀髪の男「よ………っと」

俺「………えっ?」


男が……俺の中から、例の赤い箱を取り出した。



俺「……は?え?え?はぁぁぁぁ!?」

銀髪の男「よし、これで大丈夫だろ。もう戻れっぞ」


俺「いや、待ってくれ!どうやった!?ってか今俺どんな状態だ!?この階層に存在してて大丈夫なのか!?」

男が断言した以上…その通りの状態にはなっている筈…しかしそれを把握する事が出来ない俺は、ただただ慌てふためくのだが……


銀髪の男「あ、ちなみに…ついでと言っちゃぁ何だが、この箱ん中にも一欠片だが希望を戻しといたぜ」

俺「………は?」


ハル「でしたら安心ですね。もしうっかり箱を手に入れてしまっても、また開けなければ大丈夫ですから」

俺「え…いや……」


レミ「じゃ、これで一段落ね」

俺「…………」


有無を言わせぬ畳みかけにより…それ以降の反論を紡ぐ事さえ許されないまま、話をまとめられてしまった。

レミ「あ、でも…このまま戻っちゃって良いの?ウロボロスって結局どうなったの?」


銀髪の男「ぁー…それな?本来なら、そこのソイツが自力で絶望を乗り越えた後、自分の存在と引き換えに世界を救う…って流れだったんだが…」

俺「えっ…そんな流れだったのか?」


銀髪の男「まぁ、俺の方で後始末しとくから心配すんな」

ハル「お任せしてしまって良いんですか?」

レミ「って言うか…元を辿れば、アタシ達が自分で解決する必要があったからこんな事になってるのよね?」


俺「そう言やそうだ!アンタが何とかしてくれるんだったら最初っから―――」

銀髪の男「最初っから俺が出て来てれば…ってのはお門違いだぜ?」

俺「えっ?」


銀髪の男「当初の予定通りだったら…ここまで細かく踏み込まねぇで、サクっと全部まとめて終わらせてたからな」

レミ「だったら何で……」

銀髪の男「他でも無ぇ、手前ぇらだ」

レミ「え?」


銀髪の男「手前ぇらがここまで踏み込んで、足掻きに足掻いたからこそ…俺も引っ張り出されて、こういう結果になったんだ」

ハル「つまり………」


銀髪の男「手前ぇらの行動が、結果的にこの現状…ハッピーエンドを掴み取った…って言っても良いんじゃねぇか?」

俺「それこそ詭弁じゃ……」

銀髪の男「それに……手前ぇらだけに任せっ放しにしてたら、夕方の大安売りまでに離れられなくなっちまうしなぁ」

俺「……………」


あ、今物凄くツッコミたい。


レミ「そっか、それなら良いわ」

俺「って、鮮やかにスルーした!?」

●ふりむき

俺「で……戻るにしたって、どう戻れば良いんだ?」


銀髪の男「どうもこうも…今までの手前ぇらしくしてりゃぁ良いんじゃねぇか」

俺「いや、そうじゃなくて方法の事だよ!あの箱持が無くなったせいか、その辺りの見当も付かないんだからな!?」

銀髪の男「あぁ…それか。んじゃぁ……」


と言うなり…男は体の模様を剥離し、ハルとレミが開けた穴の周囲に突き立てる。

そして、突き刺された部分が変色を始め……やがてそこは、大きな渦へと変化していった。


俺「なるほど…この穴を通れば元の階層に戻れるって訳か」

銀髪の男「そー言うこった。あ…んでも気を付けろよ、途中で各階層の壁がある筈だからな」

俺「って、それは残ってんのかよ!!」


銀髪の男「しゃーねぇだろ…こればっかりゃぁ、俺じゃなくて手前ぇ等の問題だ。自分達の手でぶち破って来い!」


俺「あぁ……そー言う事な」

銀髪の男「あぁ、そー言うこった」


俺「ったく…前途多難だぜ」

銀髪の男「ま、何とかなるんじゃねぇか?」


俺「他人事だと思って、気軽に言ってくれんなぁ…」

銀髪の男「実際他人事だしな」


俺「おま……いや、そうだよな。俺の…俺達の手でぶち破って来るとするわ」

銀髪の男「あぁ、何とかして来い」

俺「んじゃ、皆…準備は良いか?」


ハル「はい、万全です」

レミ「全然オッケー!」


ケート『問題無い』

闇の核『こちらも問題はありません』

光の核『我も同じく』

無の核『うん………大丈夫。さぁ、それじゃぁ行こう…いや、戻ろうか』


俺「あぁ、そうだな…戻ろうぜ、俺達の本当の居場所に!!」


こうして俺達は準備を終え……覚悟を決めて、虚空の渦へと足を進める。


銀髪の男「元ん所に戻ったら…しっかりやれよ?」

改めて、ディメンションスレイヤーで…三人で入れるだけの大きさの、パラシュート替わりの傘を作り……


俺「そりゃあ約束出来ないな。俺は、根が駄目男だからなぁ」

銀髪の男「その点に関しちゃぁ、俺も人の事ぁ言えねぇが…まぁ、手前ぇの場合は駄目なりに駄目で良いと思うぜ」

俺「ははっ、何だよそりゃ」


穴の中心へと向けて、大きく踏み込み…………


カライモン「自分なりに生きれば、それで良い…と言う事なのでは無いかね」

俺「あぁ………―――って、お前!何で!?いや、いつの間にそこに―――――」


カライモン「細かい事を気にする物では無いよ。さて…私は私でこの先に進んでみるので、君達は戻っていてくれ給え」


俺とハルとレミ……三人は、虚空の渦の中へと落ちて行った。

●もどろう

底の知れない奈落へと落ちて行くような…

いや……昇っているのか落ちているのかさえ定かでは無い、不思議な感覚の中……

時折、階層の壁と思われる物にさしかかり…僅かな抵抗と共に、それを突き抜けて……の繰り返し。


もう…どのくらい落ちたのだろうか。

元々、時間という概念その物が曖昧ではあったが…

この穴を落ちていると、感覚その物がおかしくなってしまいそうになる。


俺「結局…俺らしい駄目男らしさって、何なんだろうな」

レミ「何?唐突に」

俺「いや…さっきの会話で、ちょっと気になって…な」


ハル「そうですね……例えば……」

レミ「最後の最後…ギリギリに追い詰められたその時まで決断出来ない事とか?」

俺「ぐっ…………」

レミ「もう少し早く決めておけば良かった事とか…迷うだけ無駄な時間を消費しまくったりとか、しょっちゅうよね」


ハル「あとは……何だかんだ自分に自信が持てない所でしょうか?」

俺「ぐぬ………」

レミ「謙虚って言えば聞こえは良いかも知れないけど…どっちかって言うと、自虐と紙一重なのよね。アンタの場合」


ハル「あとやっぱり…一番の特徴と言えば。楽な方に…楽な方に進みたがる事で―――」


無の核『って…無駄話している余裕は無さそうだよ。あれが最後の壁みたいだけど……』

俺「何だ…ありゃ……」

ハル「壁…と言うよりも……」


レミ「まるで…光の……海…?」

そう……眼下に広がるのは、果てしなく広がる光の海だった。

そしてその海は、今まで突き破って来た壁とは桁違いに、厚く……まるで俺達の帰還を拒むかのように、行く手を阻んでいた。


俺「っ………くっ……ヤベ…ぇ………意識が…削り取られ…ちまう」

レミ「何…これっ……」


無の核『この抵抗は恐らく…君自身の、疑心……だろうね』

俺「はぁっ!?疑心って何だよ、どう言う事だ!!」

無の核『さっきの彼の言葉…そう、言葉では判って居ても…まだ心のどこかでそれを納得出来ていない…つまりは踏ん切りがついて居ないって事』


俺「踏ん切りって、そんな事……いや………」

そんな事が無い…とは断言出来ない。確かに…恐れや不安が残っている自分が居る。

全ての可能性を見てしまった自分はもう居ないのに…この先には、進むべき希望のある未来があると判っているのに……


その未来が予定調和では無いのか……予め結末の決められていた物…運命では無いのかと疑ってしまっている自分が居る。


無の核『それに対して…ボクから言える事は、そう多くは無い。ただ……』

俺「って…おい!お前、さっきよりも薄くなって……」

無の核『あぁ…うん。そろそろ限界…みたいだね。でも……思ったよりは長くもった……かな。じゃぁ…これは、僕からの最後の言葉だ』

俺「お前………」


無の核『深く…考える必要は無いんだ……肩の力を抜いて…キミがキミに戻る…それで良いんだよ………』


そして、その言葉を最後に………無の核は霧散し、光の海の中へと消えて行った。


俺「っ……馬鹿野郎。最後の最後にそんな事言われて……肩の力なんて抜けるかよっ……」

ハル「だったら…少し、お話しましょうか?」

俺「………えっ?」


レミ「さっきの話の続き……アンタらしい駄目男らしさの話…ね?」

●みんなの

俺「駄目男らしさってーと……楽な方に進みたがる…って話だっけか?」


レミ「うん、そう。でも…それって多分、アンタが自分で思ってるのと違うのよね」

俺「………は?」


レミ「楽な方に…って言うと、何って言うか…逃げ?いけない事みたいに聞こえるじゃない?」

俺「まぁ、実際そうだよな」

レミ「でも、見方を変えると…あ、こっから先はハルお願い」


と言うと、レミはハルに視線を向け…それに応えるように、ハルが続きを語り出す。


ハル「その、楽な方にって言うのが…自分にとって、一番気が楽な事だと思うんです」

俺「…………」

ハル「だから……例え目先だけでも、自分が望む事のために選択出来る所が……」


レミ「アンタらしさ」

ハル「貴方らしさだと思います」


そう言ってハルは、強張った俺の頬に手を伸ばして……震える俺の唇に唇を重ね………

今度は…ハルが離れると共に、レミも俺の唇に唇を重ねて………


惚れ直してしまうくらいの物凄く良い笑顔を、二人揃って向けて来た。

俺「………」

ハル「………」


俺「………………」

レミ「………………」


俺「…………………………」


正直な所…納得しようにも、素直に納得なんてする事は出来ない。

だが……否定しようにも、否定に足るだけの言葉が浮かんで来ない。


肩の力を抜くどころか、全身全霊で悩みに悩み…

その結果…俺は………


俺「あーーーーー!!ったく、わかったよ!!!」


レミ「ね?肩の力抜けた?」

俺「抜けねえよ!むしろガチガチに固まっちまったよ!」

レミ「ぇー……」


俺「だから…なぁ」

レミ「ん?何?」

ハル「何ですか?」


俺「二人供……帰ったら、解れるまでトコトン付き合ってもらうからな!覚悟しとけよ!?」


レミ「うん!」

ハル「はい!」

●せかいが

光の海の中………

一度踏ん切りが付いた事で、確信を持った事が一つある。


俺「あぁ、そっか……この壁が疑心で…俺の手でぶち破れってのは、そういう事か」

レミ「え?どういう事?」


俺「この壁は……並列世界と因果律…可能性の壁だ」

ハル「と言う事は……」


俺は、傘状にしていたディメンションスレイヤーを畳み…

俺「まぁ確かに…俺一人だったら、どう足掻いたって乗り越える事なんか出来なかったんだと思う。何てったって未来の可能性その物が相手だからな」


銃剣形態に戻して、その銃口を遥か下方…壁の中心部へと向ける。

俺「でもな…」


そして…引き金に指をかけ…

俺「それが…どぉぉしたぁぁぁ!!こっちにゃぁ、ダークストーカーが二人もついてんだ!!」


レミ「アタシ達が…どんな時でも、傍に居て…っ」

ハル「ずっと一緒に……未来を追い続ける!」


俺「だから………どんな困難だろうが絶望だろうが!俺達を邪魔する事なんて出来ねぇんだよぉ!!!」

俺の叫びと共に…放たれた弾丸が光の海を貫く。


光の海は光の粒へと変わり……

あれだけ精神を苛んでいた抵抗も、まるで何事も無かったかのように消え去っって行く。

そして、霧散する光の向こう側には……


レミ「……やっと終わったのよね」

ハル「戻って…来れたんですよね」


俺「あぁ……」


俺達が住んでいた世界……


いや………俺達の未来が広がっていた。




          魔法少女ダークストーカー

                        ―Fin―

●おもわせ

―――と言った感じで…綺麗に終わったと思っていたんだが…


カライモン「残念ながら、元の階層に戻るのはもう少し待ち給え」

俺「………は?」


カライモン「まだやるべき事が残っているのでね。さぁ、元の世界に戻りたければそちらを先に終わらせて貰おう」

俺「マジ…デスカ?」


元の世界を目前にして、俺達を引き留めたのは…カライモンの無慈悲な言葉だった。


―――どうやら、もう少しだけエンディングが続くらしい。

●そうせい

俺「それで…一体何を始めるんだ?」


空間に空いた次元の穴ごしに覗く、地球を背に…向かい合う俺達。

俺…カライモン…ハル…レミ………あと…何をどうやったのか、今居る階層にまで上って来たアラク。

皆が皆お互いの顔を見合わせ、その安否を確認した所で…


カライモン「今から、皆で世界を一つ作って貰おうと思う」

カライモンが本題を切り出――――


俺「………え?今、何て?」

カライモン「だから、世界を一つ作ると言っているのだよ。何度も言わせないでくれ給え」


俺「いやいやいやいや、ちょっと待てぇ!?世界?天地創造!?何がどうなって、そんな大それた話になってんだ!?」

カライモン「どうもこうも…先の一件で、獣人達の住んでいた世界を失ってしまっただろう?」

俺「いや。失ったって言うよりもお前の作戦で―――」


カライモン「さすがにいつまでもIfの世界に居て貰う訳にもいけないのでね…早い内に取り掛かっておこうと思った次第だよ」

俺「…無視ですか」


カライモン「一応準備は整っているのだが…さすがに一人でやっていては、時間が幾らあっても足りないのでね。皆にも協力して欲しい」

レミ「…って言っても、具体的にどんな事をすれば良いの?」

俺「そうだよな。あの箱持ってる時ならまだしも、今の状態じゃ世界の作り方なんて判んねぇぞ」


カライモン「手順は私がレクチャーするので、その点は心配無用。では早速出発しようではないか」


と言ってカライモンはゲートを開き……俺達は、半ば強制的に連行される羽目になった。


―――わけなんだが………

俺「………何だここ?ってか一体何処だ?」

連れて来られた先は、真っ白な……何も無い空間だった。


カライモン「ここは世界を配置する予定の空間…まぁ、そのままここに世界を作って貰う」

俺「あぁ、なる程ね……んで、俺達はまず何をすれば良いんだ?ビックバンか?原初のゆらぎか?」

カライモン「いや、まずはこの空間を闇で満たしてくれ」


俺「…………今、何て?」


カライモン「この空間を闇で満たせと言ったのだよ。至って単純な作業だろう?」

俺「いやいや、世界丸々満たす程の闇って!そんな無茶な――――」


毎度毎度の事ながら…さらりと飛び出すこの無茶振り。

だが今回ばかりは、さすがに度が過ぎる。

と言う訳で、俺が必然とも言える反論の声を上げようとした所で…


レミ「あ、そっか」

何を納得したのか…柏手を一つ打った後、レミが俺の手を握ってきた。


俺「いや…一体何を…………って、あぁ…そうか」

レミ「そ。久しぶりだから感覚忘れてる?」


最初は何をしていたのか判らなかったが…レミ手の感触に浸る事で、俺はそれを思い出し…実行に移す。


ハル「なるほど、闇の生成ですね。と言う事は……」

カライモン「そう…お察しの通り、次は光の生成だ」


そして今度はハルがもう片方の手を取り、生み出した闇…原初の混沌に、光…法則と言う秩序を与えて行く。


こうして、みるみる内に何もなかった空間が物質と法則で満たされ…世界の根源とも言える物が形成され―――

るように見えたのだが………


カライモン「フンフフ~ン♪」

俺「………おい、一体何やってんだ?」

カライモン「なぁに、ちょっとした細工をね」


新世界の創造でさえ……穏便に終わらせてはくれないようだった。

俺「だぁぁぁぁ!!ストップ!ストップだ!今度は何を企んでやがる!!」


カライモン「企んでいるとは人聞きが悪いね……ただ単に、四肢生物と六肢生物が共生可能な環境の下準備をしているだけだよ」

ハル「それは…どういった方法で?」

カライモン「具体的には…魔力を、意識による干渉を受けやすくして…生命の進化を促すようにする」


レミ「んん?それって必要な事なの?」

カライモン「私達の世界のように傾いた環境になってしまったら、共生可能な生態系の形成に支障が出てしまうからね」


ハル「共生…と言う事は……今の獣人達とは別の、新しい生態系や文明社会も作る予定なんですか?」

俺「ん?あぁ、そうだよな…移住する事が前提なら、予め生態系を丸ごと作る必要は無い…ってか、むしろ邪魔になるんじゃないのか?」


カライモン「それについてはだね―――」

ディーティー「ボクから説明しよう」


俺「って、どこから湧いて出て来やがった。ってか、今更何しに来やがった」

ディーティー「決戦に参戦出来なかった件なら、仕方ないだろう?獣人や住民の扇動で忙しかったんだから」

エディー「因みに…私共が此処に居られるのは、アラク殿のお陰に御座います」


俺「…………あぁうん、まぁ良い。んじゃぁ、どーいう事なのか説明しやがれ」


ディーティー「相変わらず…何かボクに対してだけ、あからさに態度悪くないかい?」

俺「その無い胸に手ぇ当てて考えやがれ!!こっちは、お前が居ない間も同じような………いや、何でも無い」

ディーティー「いやいや、そこまで言ったんならむしろ言い切ってくれないかなぁ!?」


俺「だーから…何でも無いって言ってんだろ。とにかく説明しろってんだ」

ディーティー「釈然としないなぁ……まぁ良いか。新しく作る世界における生態系の話だっけ?」

俺「あぁ、そうだ」


ディーティー「それに関しては…会議で決まった事なんだ。今避難してる住民達のね」

俺「……は?」


ディーティー「自分達の移住が前提の世界とは言え…そのために、生まれうる生命の可能性を摘み取っても良いのかどうか…って議題でね」

エディー「尚…この結論に関しましては、光と闇双方の派閥においても一致の物となっております」

俺「あー……いや、お前達がそれで良いって言うなら良いんだが…そりゃまた、難儀な道を歩もうとしてるよなぁ」


ディーティー「例え楽でも、排他的な道を進むようであればその先に未来は無い…それを、キミ達との一件で皆が学んだのさ」

エディー「…と言う顛末に御座います」


俺「なるほど…な。んで………そこのカライモン。今度は何をしてやがる?」

カライモン「時間経過の速度倍率設定及び、光と闇の核の機構…その他諸々の移植と、先の細工に用いるシステム構築の準備だよ」

レミ「えっと…聞いときたいんだけど、その他諸々の部分って例えば何?」

カライモン「本体が消失したせいで、大きな力は残って無いが…まず無の力。後はスピリット…彼が隠し持っている、卵形態の神風君とかだね」


俺「………ばれてたのか」


カライモン「ばれるも何も…スピリットが物理攻撃で消滅しない事くらい、判りきっていた事だろう」

レミ「あ…そう言えばそうよね」

カライモン「大方、後で驚かせようとでもしていたのだろう。再生のために卵状態に戻った神風君を確保していた事くらい想定内だ」


俺「…ってお前、その手に持ってる青い卵………あぁ、そう言う事かよ!そりゃ、判って当然だよなぁ!!」

カライモン「一緒にしないでくれ給え。此方は此方で、この状態にまで復元するだけでも大分手間がかかったのだからね」


俺「ったく……まぁ…二人に関しちゃぁ、新しい世界に居た方が早く回復するとして…」

ハル「後は…光と闇の核のお二人は………」


光の核『我らは……』


俺「とりあえず…俺ん中に居て、経過観察ってぇ事で良いんじゃないか?」

闇の核『それは………』


俺「やるべき事をやり終えて、この世に未練が無くなったから成仏……なんてのは、あんまり関心しねぇぜ?」

光の核『………』

闇の核『………』


俺「って訳で…もう少しくらい俺達に付き合っても罰は当たらないだろ」

光の核『すまぬ…感謝する』

闇の核『私からも…ありがとうございます』


俺「良いって事よ」

ディーティー「それにしても………生命の尊厳って、一体何だろうね」

レミ「え?アンタが今更それ言っちゃう?」


ディーティー「そりゃぁ言いたくもなるさ。コロコロ死んでホイホイ生き返って…一体どこまで命が軽くなるのやら…」

俺「いや、身も蓋も無ぇ事言っちまうが…俺なんて命に限らず、尊厳踏み潰されまくってとっくにボロボロのコナゴナだぞ?」

カライモン「キミに限っては、それが芸風なのだから仕方が無いだろう」

俺「いや!芸じゃねぇよ!?」


ハル「えっと、話は逸れてしまいましたけど…ディーティーの疑問には、答えられますよ」

俺「マジか」

ハル「はい」


ディーティー「じゃぁ…聞かせて貰えるかい?」


ハル「尊厳よりも、もっと大切で尊い想いがあるから…尊厳を軽く飛び越えて、それが出来る。そしてそれこそが…何よりも一番大事な事だから」


ディーティー「この上無い程に詭弁だね」

ハル「それでも…間違いでは無いと信じてる」


ディーティー「はぁ……まぁ納得出来ないって言った所で、ボクには止める権利も力も無い訳なんだけど…良いさ、今回は折れておくよ」

俺「また偉そうに……」


レミ「…もう一回りして、あれはあれでディーティーらしいって諦め入ってるアタシが居るわ」

俺「あぁ…うん。その気持ちは俺も何となく判る」

カライモン「では、話がまとまった所で改めて……後の創世は彼に任せて、我々は一足先に元の世界に帰るとしようか」


俺「…………はい?」


カライモン「聞こえなかったかね?話がまとまった所で…」

俺「いや、聞こえなくて聞き直した訳じゃ無ぇよ!一人でって、お前じゃなくて俺がかよ!?ってか、皆で世界を作るって話どこ行った?!」

カライモン「だから、我々がやるべき下準備はこうして終えただろう。後は君がそれを実行するだけなのだよ」


俺「………勘弁して下さい」

カライモン「勘弁出来ません」


俺「……………ってかうん。マジメな話、何で俺?」

カライモン「虚獣を身に宿し、その力を使えるのは君だけだからだよ」


俺「え?これって虚獣の領分なのか?」

カライモン「うむ。なので諦め給え」


俺「……………」


レミ「えっと、その……頑張って?」

ハル「私にも何か出来れば良いんですけど…」

カライモン「下手に横から手を出すと邪魔になりかねないからね」


俺「………あぁくそっ…判ったよ!やりゃぁ良いんだろ、やりゃぁよぉ!!」


こうして俺は、一人この場に残り……新たな世界の創造に勤しむ事になった。

●ここから

俺「にしても……どっからどこまで、お前達の掌の上だったんだ?」

ケート「…………」


俺「まるで、この結末を迎えるために用意されたような舞台装置…二つの世界。俺達の世界に居て、もう片方の世界に居ない…虚獣」

ケート「…………」

俺「で…極め付けは今やってる作業…となればもうピースが全部揃って、最低限のおつむでも全容が見えて来ちまうんだよな」


ケート「…………」

俺「とは言っても、別に恨んでるとかそう言う訳じゃぁ無ぇし…何だかんだで、正解だとも思ってる」


ケート「………その認識には、多少の誤解がある」


俺「ん?どう言う事だ?」

ケート「掌は…誰かを乗せる物では無い」

俺「そこかよ!!」


ケート「掌は…重ね合わせて、繋がるための物」

俺「いや、それ答えに…あぁ、んでも……それがお前達なりの認識…答えでもあるんだよな」

ケート「…正解は、否定か肯定のどちらかに限られる物では無い。それを理解して貰えるのならば、幸い」


俺「ってか、そう言やぁ…理解どうこう言うなら、その口調…ってかキャラはどうにかならないのか?」

ケート「…そうは言うが」

俺「言うが?」


ケート「正直な所、虚獣の状態から今の状態に変質する上で自我を取り戻し、虚獣になる以前の生前と同様の思考や自我を取り戻した事により当時の口調で喋る事は可能じゃ。しかしのぅ…今の今までボソボソ喋りのクール系キャラで通して来た妾が突然流暢に喋り出して、イメチェンを通り越したキャラ崩壊まがいの変貌を遂げると言うのも少々違和感があるのでは無いか?口調以外の話の内容に至ってもそうじゃ。クールだけどちょっと不思議ちゃん入ってる?くらいの方がサラっと流して素直に納得出来るのに対し、事細かにマシンガントークでまくし立てつつ言葉の勢いで無理矢理に押し通すような展開では、飲み込もうにも素直に飲み込めないと言う物では無かろうか?そして当然それらの変化はこの時一瞬の過ちと言う事で流される事は出来ず、今後の発言一言一句においても尾を引いて気まずい雰囲気を作ってしまうに違いない。あれ?この子こんな喋り方してるけど、本当はもっと違うよね?何?キャラ作っちゃってるの?と、毎回疑問符を浮かべられながら言葉を咀嚼される羽目になってしまうのじゃよ。故に、口調を無理矢理に捻じ曲げるような行為は非推奨なのじゃ。と言うか話は戻るが、妾について知りたい事があるのであれば神風の時と同様にリンクを繋げて確認すれば良い…と言いたい所じゃが、また下手に可能性を覗いて絶望されても困る故、強行出来ぬのがまた歯痒い所。あぁまた話は変わるが、お主が虚獣化する可能性に関しては心配せずとも良い。虚獣の器たる力を手にした所で、その器を満たすだけの信仰も知名度もお主は満たしておらぬ故、お主の意識が虚獣として昇華し現世での意識を喪失するという事態にはまずなりえぬ。と……色々御託を並べて、より鮮明な意思の疎通を試みてみた訳じゃが…結局、それらの言葉のみで確信を得るには至らない筈。最終的にはやはり妾の言葉からその真意を汲み取って貰う他は無い、と言う結論に至ってしまう―――」

俺「………………」


ケート「……と言う事。理解を求める」

俺「ハイ、スイマセンデシタ」


ケート「……では、創造に戻ろう」

俺「…………お、おう」

●あらたに

―――そして、一週間後。


俺「終わった……やっとの事で終わった。本当に…本当に長かった」


加速空間を限界まで活用し、新しく創った世界の状態も安定してきた事で…やっとこさ創造主の任を解かれた俺。

これで一旦、戦いの物語は終わり…この長かった騒動の幕を下ろす事が出来た。


後は、元居たアパートに戻り…今まで通り、いつも通りの日常を謳歌する事が出来る…そう信じて止まなかったんだが……

そう…事件ってものは、いつだって唐突に起こりうる物なのに…俺は、それをすっかり忘れてしまっていた。


俺「今戻ったぞーー!!」

レミ「おかえりっ!」

ハル「おかえりなさい」


世界を創り終え…ヘトヘトになりながら帰宅した俺を迎える、ハルとレミ。


俺「待たせたな二人とも。今まで頑張った分、今夜はとことん―――」

レミ「あ、それなんだけど…」

ハル「えっと…その……」


しかし二人の様子はどこかおかしく…何故か、バツが悪そうな表情を浮かべていた。


二人に一体何があったのか…

俺の中に一瞬浮かんだその疑問は、ふと視線を巡らせた先で明らかになった。


ハルの父「はじめまして…だね。いや、その……若さだね」

ハルの母「この調子なら、きっと二人目もすぐでしょうねえ」


俺「あ、いえ…その、これは………って、え?」

ハル「えっと…お腹の中の子の事なんですけど……何だかんだで、無事だったので…」

俺「マジか!?良かった…って、いや、それもなんだが!これは一体どういう―――」


レミの父「いやいや、二人目と言うのであれば娘の方も…それに、正式に籍を入れるとなれば……」

そして更に、部屋の奥から聞こえる別の声。


ハル「あ、えっと…紹介が遅れましたが、うちの両親です」

レミ「それと、うちのパパ」

俺「……………」

ハルの父「どうも、うちの娘がお世話になっています」

俺「あ、いえこちらこそ!俺…自分の方こそハルにはお世話になっています!」


ハルの母「突然押しかけてしまってすみませんね。迷惑だったでしょう?」

俺「そんな事ありません、ええもう、全然大丈夫です!」


レミの父「はじめまして、レミの父です。君がレミの…そして、あの件の……」

俺「と…は、初めまして。えっと、あの件て?」

レミの父「レミの件で…あの事がきっかけで君は大学を追われたと聞いて居る。君の人生を狂わせてしまい、大変申し訳無いと思って居る」


俺「あぁ……いや、あれに関しちゃぁ悪いのは教授だし、気にしてないですよ」

レミの父「だが…」

俺「それに…今の人生だって何だかんだで気に入ってるんで。ほら、おかげでこうしてハルやレミとも一緒に居られてますからね」

レミの父「そうか…そう言って貰えると私も助かる。だが…それはそれとしても、責任を取らねば気が済まない」


俺「いや、だから…」

レミの父「と言う訳で…どうだろう?うちのレミを嫁に貰ってはくれないだろうか?」


俺「………は?」


レミの父「手前味噌で何だが、あの子は母親に似て容姿は端麗だ。加えて言うなら、私の跡を継いで貰えれば将来的にも………」

ハルの父「おいおい、抜け駆けは無しにしようじゃないか。第一、本命がうちのハルと言う事は納得した筈だろう?」

俺「えっと…その………え?」


ハル「もう説明は不要かも知れませんが…」

レミ「うちのパパもハルのパパも、こういう事になっちゃって一歩も退かなくて……」


俺「いやいやいや、流れは判らないでも無いんだが…幾ら何でも、話が飛びすぎじゃないか!?」

レミ「ぁー……」

俺「普通、最初はまず俺の人柄とか学歴とか収入とか確かめてからだよなぁ!?」


ハル「そこはまぁ…」

レミ「ねぇ……?」

俺「何だよ」


ハル「一週間かけて説得しましたので」

レミ「左に同じ!」


俺「説得と書いて洗脳と読みそうだなぁそれ!?」

ハルの父「と言う訳で…当の本人である君の、正直な所を聞かせてくれないかい?」

レミの父「妻に先立たれ、父一人娘一人で生きて来た身…ここにきて娘が身を固めてくれるのなら、もう思い残す事は何も無いのだよ」


俺「…………」

余りにも唐突な展開に、言葉を失ってしまう俺。

かつてない危機の前に立ち尽くし、その間にも刻一刻と追い詰められて行く。


一歩また一歩後ずさり、開けっ放しになった玄関の先へと追いやられ……

俺「………っと?」

黒髪の男「うおっと…」


そこを通りがかった…どこか見覚えのある男にぶつかった。


俺「あ、悪ぃ。大丈……って、アンタは…」

黒髪の男「よっ、何だかもめてるみてぇだな」

髪の色こそ銀色では無く黒髪だが…それ以外は全く相違無い。例の…ウロボロスの元締めの男。

そして、その男を見た瞬間…俺は閃いた。


俺「頼む、ちょっとだけあの赤い箱を貸してくれ!この状況を乗り越える未来を―――」

だが…そんな俺の言葉を遮るように、男は俺の肩に手を乗せ……


黒髪の男「あんな物に頼らず…自分の未来は自分で切り開け、ダークストーカー」

親指を立て…物凄く良い笑顔で言ってくれやがった。



黒髪の男「おい黄色ぉぉぉ!!手前ぇ、またやらかしやがっただろ!!」

男が去り…二つ隣の部屋から聞こえて来る声。

そして一人取り残された俺には、容赦なく追撃の手が忍び寄る。


ハルの母「さて…お話は終わりましたか?」


俺「その………えっと、ハル?」

ハル「すみません…申し訳ないとは思うんですけど、私も改めて聞きたいので…」


俺「………レミ?」

レミ「アタシもハルに同意見かな。あ、大丈夫大丈夫。アタシは別に二号でも構わないから…ね?」


俺「………………」


まぁ実際の所…

俺の心は、とうの昔に決まっている。


ただ、それを改めて口にするのがこっぱずかしく……

ついでに言うと、物凄くアレな内容な事も相まって…それを言葉にする事を憚られているだけだ。

口にするにしろ、口にしないにしろ……どちらにしても、ダメ男な事には変わり無い。


更に付け加えるならば…そんな状況で、俺の意地なんかが耐えきれる筈も無く……


俺「――――――――――」


後はもう……声を高らかに上げ、その言葉を放つだけだった。

●さいごに

あ、そうそう。

ちなみにこの後…


ユズ「えっと…それで自分は何をしたら良いんッスか?」

グリモワール「我らが詩片を集め…」

グラマトン「あるべき姿…そして秩序を取り戻すのだ…」

グリモワールとグラマトンって魔導書のいざこざに、ユズが巻き込まれたり……


カライモン「成程……やはり君達が一枚噛んでいたのだね」

マーニ「今…ヤルダバオトの楔を砕けば、この瞬間に在る万物は崩壊する」

セート「故に、このまま黙って見過ごす事は出来ぬ」

グノーシスって連中やらオピオゲネイスって恐竜人間やらと、カライモンが一悶着起こしたり……


アラク「ウナギパイ、コソ…至高……」

ミクトラン「こっここそ…究極…だ」

おやつ論争を引き金に、アラクとその生みの親?がインタ-ネットを崩壊させて文明をリセットしかけたり……


誠司「空を飛んだり、銃弾を止めたり…一体、何なんですかあれは!!?」

王「あれは…組織に所属する超能力者達だ。奴らの野望を阻止しなければ、この国…いや、この世界に未来は無い」

後輩の誠司が王と名乗る男に出会い、超能力集団との闘いに巻き込まれたり……


ミア「え?え?えぇぇぇっ!?な…何で私の方が変身してるんですかぁ!!??」

ディーティー「契約するし、助けるとも言った…でも、キミがサポート側での契約とは一言も言って居ない!」

イクシオ「いやぁ、さすがディーティー君。ぶれない鬼畜っぷりだにゃぁ」

性懲りも無く…またディーティーが魔法少女の騒動に首を突っ込んだり……


赤の使途「それはまさか…失われし闇の魔法か!?」

「へぇ…これって、闇の魔法って言うのか。面白いなぁ、って事はもっと…あぁ、やっぱり、こんな事も出来るんだ!」

時を同じくして、また新たな戦いの火種が生まれたり……


と言った感じで色々と騒動は絶えない訳なんだが…それはまた、別の話。


と言うか…ここまで引っ張っておいて何だが、多分この辺りは語られる事も無いだろう。




          魔法少女ダークストーカー

                        ―今度こそ本当に Fin―

★あとがき

大変長らくお付き合い頂きありがとうございました、これにて魔法少女ダークストーカー完結となります。
諸事情により更新頻度が物凄い勢いで落ちてしまい、皆様にはご迷惑をおかけしました。

マオウシステムに続き、二作目となった今作。
読み返してみるとまだまだ文章が拙く、顔から火が吹き出しそうになる所も多々ありましたが、次回からは出来る限り改善を心がけようと思います。

それでは前回から大分間が空いてしまいましたが、恒例の一斉レス返しをさせて頂きます。

>69 >97 乙ありです! 3人目は無の核でした
>70 途中まで言いかけて止めないで!?
>71 (*´ヮ`*)
>73 おっおっ?(^ω^)
>84 ロリコンじゃないですよ!『ロリもいける』が正しい
>111 STG…誰か作ってくれる人が居れば…(複数方向にチラッチラッ)
>118 愛の力は偉大ですからね(遠い目)
>119 退場しませんよ!?むしろ、ある意味これからが本番ですからね!?
>127 正統派ではつまらないですし…!
>130-131 打ち切りにはなってません!無事大団円で完結しました!
>135 この時点ではあくまでIfの世界ばかりなので…まぁ結局、壊した世界も創り直しましたけどね!
>139 大変お待たせしましたorz
>143 当然ながら、より上位の存在に遮られればあっさりと挫かれます。ただ…その上位の存在も踏まえた上でこの現状があるとも言えます。
>144 世界の終焉にまで行き付いたのは、ウロボロスによる暴走が原因です…が、本人の意志も無かった訳では無いのもまた事実。
   その責任が誰にどれだけあって、結末に納得出来るか否かは……読者の方々の解釈にお任せしたいと思います。
>145 当然、最後の最後まで押し返す逆転展開です!
>152 >154-156 すみません、読み返して貰ってもこの時点で名前は出てません! 因みに鯨型虚獣の名前はケートスで、ケートは少女型虚獣時の名前です。
        ネーミングが安直過ぎるのは主人公のせいの筈…はず…
>158 冷徹になりきれない駄目男な主人公デスカラ!
>164 この軟弱もの!(パシーン)
>168 大丈夫ですよ!世界も人類も皆救えるルートですから!
>173 シュタゲは観測しても記憶してないのが多いみたいですし、具体数出てないと比較しようが…
>174 キリの良い数字になってる気がしますよね!
>175 幾ら膨大でも、有限な以上は無限たりえない量ですからっ!そしてそれが逆に…
>180 バグ?いいえ、システム(仕様)です!
>183 常識や限界を軽く超えるくらい強いです
>189 締り?世界規模の駄目男に無理難問を…
>193-195 乙ありです!…と言いつつも、もうちょっとだけ続きました。温泉と水着は文字だけだと味気ないので、何かしらの形で進展があれば…!
>197-198 もうちょっとだけ続くんじゃよ…
>202 乙ありです!そしてむしろメインキャラ全員チートです(ユズを除く)
>203-204 脱衣料理漫画の四天王で、カライモン アマイモン ニガイモン スッパイモン ショッパイモン。こうですか判りません!
>209 すみません、銀魂読んで無いです!

あ、あと物凄く今更ですが、一部キャラ(神風・アラク・ケート)を追加してイラスト上げ直しました。
https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=63242363

次回作の構想…と言うかSSのネタは結構な勢いで湧き出て来るのですが、それ故にどれを書くべきか迷う今日この頃。
とりあえず短編集と言う形で色々アップして行きたいと思いますので、こちらも宜しくお願いします。
↓↓↓
チラシの裏の裏(TPk5R1h7Ng短編集)【パート1】
チラシの裏の裏(TPk5R1h7Ng短編集)【パート1】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1496680133/)

>215 ありがとうございます!電波の勢いのままに書き連ねたSSですが、読者の皆様に少しでも楽しんで頂けたのであれば光栄です。
>216 すみません「四天王なのに五人かよ!」ってツッコミが欲しかっただけで、深い意味や設定はありませんっ!

そして最後に、三核達の出会ったばかりの頃の姿を少々…
https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=63336832

カライモン「さて、これでやっと……これでやっと全て片付いた」

カライモン「これでやっと………」








         カライモン「私自身の手で…復讐を始める事が出来る」




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