勇者「ハーレム言うなよマジで」戦士「5だぞっ!」 (524)





~あらすじ~


タイトル詐欺になりました







-幕間-


【敵バラモスを想起せよ】




騎士団長「事態は深刻です」




――ランシール・中央神殿――


 -世界首脳会議・会場-



「何か事態に悪化するような事態が?」

騎士団長「いえ、特にそういうわけではありません」

騎士団長「ただ、無さ過ぎるのです……進展があまりに無い」


騎士団長「賢者ガルナの末裔が魔族にかどわかされてからもうじき一年経ちます」


騎士団長「しかし彼女の行方どころか、オーブの一つも発見されておりません」


騎士団長「聖地アリアハンの王の失権は未だ続いておりますし、国連勇者の行方不明者も出ています」


騎士団長「このままでは我々人類が魔族に大きな遅れをとってしまうのでは、と思いまして」



-国連の勇者席-


ポルトガ勇者(……よく言うぜ)

イシス勇者「……」

エジンベア勇者「ふぁーあ……」

ムオル勇者「……」

ジパング勇者「……それでー?どうしたんじゃよそれが」


騎士団長「ですから、こちらも……失礼、“サマンオサ”も色々と積極的に体制を変えて取り組まなければならないと考えております」

騎士団長「……エジンベア大臣」

エジンベア大臣「はっ」

ガタッ

エジンベア大臣「えー、では少々お時間を頂きまして……支援物資の計画案を」


……。…。


ポルトガ勇者(……まるであいつがサマンオサの……いや)

ポルトガ勇者(サマンオサが軍備拡大で現状世界一の強大国家になった今、まるであいつが国連の仕切り役だ)

ポルトガ勇者(着実にまずい方向へむかってやがるぜ……)


エジンベア大臣「……――と、そこでポルトガ領の国連港を経由します」

騎士団長「では、その際は物資補給の支援を。ポルトガ王。お願い申し上げます」

ポルトガ王「……わかり申した」

イシス勇者(……毎回毎回、あれじゃポルトガが本当に奴隷だ)


スッ


ロマリア王「……少しよろしい感じ?」


騎士団長「?はい、どうされました?」

ロマリア王「エジンベアの物資の流通資料を見せていただいてもよろしい感じ?」

騎士団長「……」

エジンベア大臣「……」

ロマリア王「いやー、ちょっと失念しちゃった系の出来事あった系でー」

ロマリア王「このままじゃうちの大臣が四足歩行の生き物になってしまう……」

ロマリア大臣「なんねえよお前ほんとあのこういう場でやめて」

ロマリア大臣「……しかし、私からもお願いします」

ロマリア大臣「サマンオサへの麦の輸出と、春種の事で少々考えたいことが」

騎士団長「……」

ニコ

騎士団長「どうぞどうぞ。エジンベア大臣」

エジンベア大臣「……は」

すっ

ロマリア王「テンキューテンキュー……キスする……?ミラクルキッス欲しい……?」

エジンベア大臣「や、やめて下されロマリア王様やめて下され」

パラッ

ロマリア王「そんじゃ大臣全部覚えておくんじゃ」

ロマリア大臣「全投げっすかアンタ本当最低だな!!」

ロマリア王「だってぇー、お前記憶力いいしー。頭いいシー」

騎士団長「はぁ……」

騎士団長(どうにも苦手ですね……ロマリアの人間は)

エジンベア大臣「ですのでポルトガ大臣様、そちらの財務大臣に……」

……。…。

ロマリア大臣「あーもう、恥かきましたよ」

ロマリア王「全部覚えたら色々あげちゃうぞ☆爪とか☆」

ロマリア大臣「きめえよ」

パラッ

ロマリア大臣「……ちょっと静かにしててください」

ロマリア王「全部覚えろ」ボソ

ロマリア大臣「……はい」ボソ

ロマリア王「特に……鉄の欄」ボソ

ロマリア大臣「…………仰せのままに」ボソ

エジンベア大臣「それと……皆さん御存知かと思われますが、近頃海賊の被害が相次いでおります」

エジンベア大臣「なので、物資を奪われぬように警備を固めるようにお願いします」

騎士団長「そうですね、先月だけでも国連の船七隻が被害に遭いました」

騎士団長「各国の貿易船は十分お気をつけて下さい」

騎士団長「では、何か他に論のある方おられますか?」

ランシール神官「……では、私も少々時間を頂こう」

騎士団長「どうぞどうぞ」

ランシール神官「有難く」

スクッ…

ランシール神官「……先ほど騎士団長殿が仰ったとおり、今は窮地。我々は何か手をうたねばなりません」

ランシール神官「そこで……」チラッ


ジパング勇者「……」


ランシール神官「……」


騎士団長「……」


ランシール神官「……――人類の切り札を一つ、出さねばばるまいと考えております」



ザワッ

「……人類の……」

「切り札……?」



ランシール神官「皆さんは我らが敵。バラモスをご存知だと思われる」


ランシール神官「そう。魔王だ。……我々が倒さねばならない相手」


ランシール神官「今は奴に対抗する術は無い。情報も少なすぎる……そう」


ランシール神官「我々はバラモスについてもっと色んな事を知るべきである」


ランシール神官「……イシス女王様」


イシス女王「は、はいっ!!?」ビクッ


ランシール神官「貴女様にお願いしたい事があります」


イシス女王「……お願いしたい、事?」

イシス側近「それは一体」


ランシール神官「……バラモスについて、我々人類は何も知らない」


ランシール神官「しかし、ただ一人……ただ一人だけ」






ランシール神官「バラモスと対峙し、生きて帰った男が居る」







第七章



――どこかの海域・船上――



ざぁーん… ざぁーん…


ミャー ミャー




戦士「……」グデー


魔法使い「……」グデー



「「……」」


戦士「なあ魔法使い……なんか見えたか」

魔法使い「なんにもみえないよぉ」

戦士「そっか……」

魔法使い「ねーねー戦士。なにかつれた?」

戦士「……アタシの竿、引いてるように見えるか?」

魔法使い「……釣れないねえ」

戦士「釣れないな……」


「「暇だねぇ……」」


ポルトガ姫「……今日も二人は相変わらずっすね」

武道家「私もあいつらの事言えないんだけどね……」

僧侶「ポルトガ姫ちゃん、航路は順調ですか?」

ポルトガ姫「まあ、風があまりないんで停滞気味っす」

武道家「……舵とってないしね」

盗賊「……」

ポルトガ姫「……盗賊ちゃん」

盗賊「……」

ポルトガ姫「盗賊ちゃん」

盗賊「……はっ、な、何?……」

ポルトガ姫「本が逆さですよ」

盗賊「……あ……」


ポルトガ姫(ポルトガを出発してそろそろ一年すぎるんすけど)


ポルトガ姫(みんな本調子には戻らないみたいっす)


魔法使い「……しりとりする?」


戦士「……りんご」


武道家「いい天気ね……」


僧侶「……お祈りしていようかな……」


盗賊「……」




ポルトガ姫「……」

ポルトガ姫(この人らにとって、仲間が欠けるってのは相当な致命傷みたいっすね……)


魔法使い「ごはん」


戦士「しりとり終了じゃん……」



ポルトガ姫(しかし覇気無さすぎっす)



ヒョイッ


遊び人「呼んだ?」


ポルトガ姫「あ、遊び人ちゃん」


魔法使い「よんでないよ?」

遊び人「でも今ごはんって」

戦士「ああ、しりとりだよ」

遊び人「あ、そうなの。てっきり催促かと思った」

遊び人「でもお昼ご飯できたからみんな食べよ?」

戦士「食べる!!」

魔法使い「やったぁ」

ポルトガ姫(ごはん好きすぎっすねこの人ら)

ポルトガ姫「でも私も好きっす!!!ごはん!!!!」

遊び人「いきなりの告白された」

遊び人「それじゃ、ちょっと待っててね。すぐに」






ドオオオン!!!!!





「「「「!!!!?」」」」


ガタッ!!

武道家「何の音!?」

戦士「魔物か!?」


タッタッタ


女勇者「皆!!なんだい今の音は!?」


盗賊「……女勇者!それが私達にも……」

僧侶「……!あ!あれ見てください!!」

女勇者「あれ……?」

ポルトガ姫「…………!!!」

魔法使い「……な」

戦士「なんだ……?あの」



バタバタ…

オォォオォォォ……



戦士「ドクロの旗を掲げた……でかい船は……」


ポルトガ姫(あれは……!!!)




――――――――――



「おかしらぁ!目標の手前に着弾しました!!」


「狙い通りです!!」



?「よくやった。すぐに船を寄せな」



「見たところ、数人は武装してるみたいです」


「抵抗する場合はどうしますか?」



?「せっかちだね……まずは話をしてからだ」


?「……まあ」



しゅらっ

ジャキィッ



?「話の内容次第なら、アタイが切り伏せるさ」



今日はおしまいです

武道家「……いっぱい人が乗ってるみたい」

魔法使い「ねえ、ポルトガ姫……あれって」

ポルトガ姫「……あれは、多分“海賊”っす」

盗賊「……海賊……!!」

ポルトガ姫「しかも相当大きな船っす。鉢合わせちゃうなんて……!!」


ザザ…


僧侶「!!こっちに来ます!」

ポルトガ姫「に、逃げましょう!!流石に分が悪すぎます!!」

遊び人「でも、逃げられるの!?」

女勇者「あんなでかい船なら、すぐに追いついて来るんじゃないかい?」

ポルトガ姫「それは……っ」

戦士「ポルトガ姫」

ザッ

戦士「下がってろ」

武道家「ここは私達の専売特許よ」

女勇者「迎え撃つ覚悟はある」

ポルトガ姫「はいっ!?」

魔法使い「まかせといてっ!あぶないから船内にいてねっ」

盗賊「……遊び人、お願いね……」

ポルトガ姫「ちょっ、いやいや無謀っすよ!!」

ポルトガ姫「あれは多分最近話題の大海賊っす!みんなみたいな女の子が――……」

ガシッ

遊び人「ポルトガ姫は私と船内!行こ!」

ポルトガ姫「ちょっと!遊び人ちゃん!」

遊び人「安心して。みんな本当に強いんだから」

スタスタ

女勇者「……さて」


ザザァ……


女勇者「皆、気を引き締めて」



ガタァン


「渡り橋かかりました!!」

「おかしら!準備OKです!!」


「よし!乗り込みな!!」


「「「「応っ!!!!!」」」」



ザカザカザカザカザカザカ!!!!!


ズザァッ!!!!


海賊手下達「「「「……」」」」



武道家「……」


戦士「……」


魔法使い「……」


盗賊「……」


僧侶「……」


女勇者「……」

女勇者(囲まれた……か)

女勇者「さて……何の用だい?」


海賊手下「大人しくしろ」

海賊手下2「動いたり大声出さなけりゃ何もしねえ」 

女勇者「君らは私達が大人しくないように見えるのかい?」


海賊手下「……」

海賊手下(ただの小娘達じゃねえな、肝が据わりすぎてる)


女勇者「私の問いに答えてもらえるかい?何の用か聞いているんだ」

女勇者「君らの頭を出してもらおうか」



「……偉く肝の据わったヤツだね」



海賊手下「おかしら!」


戦士「え?……は?」

武道家「えっ」


スタスタ…

「あたいらにここまでびびらなかった奴は初めてだ」


魔法使い「お、おかしら?」

僧侶「って」

盗賊(……この人が……?)


ズザッ



女海賊「あたいがこいつらの頭領さ。ちょいとお邪魔するよ」



――船内扉の陰――


遊び人「女の人ぉ……!?」

ポルトガ姫「みたいっすね……」

女勇者「……なんの用かな」

女海賊「はっ!本当に肝が御行儀の良い事だよ!」

女海賊「端的に言うけど、アンタらこれ、なんの船だい?」

女勇者「……」

女海賊「……答えたくないのかい」

女勇者「……ただの旅船だけど?」

女海賊「……」

女勇者「……」

女海賊「…………嘘だね」

女海賊「嘘をついてる目だ、それは」


戦士(なんだこいつ……)

武道家(何が目的なの……?)


女海賊「でも質問が悪かったね、じゃあもう率直に聞くよ」



女海賊「アンタら、国連の関係者?」


戦士「っ!?」

武道家「……」

魔法使い(なんでかいぞくがそんなことを……)

僧侶(どうしましょう……関係、ないというか)

盗賊(……間接的には関係してるというか……)


女勇者「……」

女海賊「……」

女勇者「……関係、無いとは言い切れない。けど」


ギッ


女勇者「国連は、私達の敵だよ」


女海賊「……!」


ポルトガ姫「……っ」ドキドキ

遊び人「……」


ジャキッ

女海賊「そうかい。邪魔して悪かったね」


ポルトガ姫「へっ?」


女海賊「アンタら!!引き揚げだよ!!」

「「「応っ!!!!」」」


ポルトガ姫「えっ、えぇぇえ!!?そんなあっさり……!!?」



ザカザカ!!


女海賊「早く乗り込みな!すぐに出るよ!」

戦士「おいおい」

女海賊「ん?なにさ」

戦士「お前ら、本当に何が目的だったんだよ」

武道家「やけにあっさり引き揚げるわね」

女勇者「……略奪目的じゃなかったのかい?」

女海賊「はっ、あたいらにはあたいらで事情があるのさ」


「おかしら!!全員乗り込みました!」


女海賊「それじゃ、あたいも行くよ。悪かったね」

スタ…

女勇者「……本当に変な人だね」


ピタ


盗賊手下達「「「あ」」」


女海賊「……」

クルッ

女海賊「……変?」

スタスタ

ザッ


女海賊「……」


女勇者「……」


女海賊「アンタ、あたいが変って言った?」

女海賊「アンタもあれか?」

女海賊「……女のあたいが、海賊やってるのが変だと思うタチかい」

女海賊「女のあたいが海賊のお頭だなんて、おかしいかい?」


「あっちゃあ……」

「おかしらのスイッチ入っちゃったよ」


ポルトガ姫(な、なんか女勇者ちゃんがあの海賊女の逆鱗に触れちゃったみたいっすね……)ビクビク

ポルトガ姫(女勇者ちゃん、なんとか上手いこと取り繕ってくだ)




女勇者「ああ、変さ。とてもね」




ポルトガ姫「ブフンッ」



女海賊「……」


「「「「「(おかしらを刺激しやがった――!!!!!)」」」」」


女勇者「それが何か?」

女海賊「……そうかい」

女勇者「というか、ちょっと違うな」

女海賊「え?」


女勇者「女だからとかそういうんじゃない」


女勇者「海賊やってる事が、変なんだよ」


女海賊「……」


女勇者「女だからって、何をやっても関係ないさ。私達も女だけどいろんなことが出来る」

女勇者「でも、海賊をやってる貴女を、私はまともだとは絶対に思わない」


女海賊「……」


女勇者「……」


「「「「……」」」」


遊び人「わー……女勇者らしい回答ですこと」

ポルトガ姫「言ってる場合っすかぁ!!!せっかく海賊たちが大人しく引き揚げようとしてたのに逆に怒らせ――……」


女海賊「……ぷっ」


ポルトガ姫「えっ?」



女海賊「あっはっはっはっはっは!!!」


女海賊「あ、アンタっ、面白い奴だね!あっはっはっはっは!!!」



ポルトガ姫「えぇ……?めっちゃ笑ってるんすけど……」

女海賊「ずいぶんはっきりと言ってくれるじゃないの。ぷふっ、あはははっ!」


ポルトガ姫「めっちゃニコニコしてるんすけど……なんすかアレ――……」

ゴトン

ポルトガ姫「ん?」

遊び人「今……何か揺れた?」


―――――――――


戦士「お?」

魔法使い「なんか、いま」

僧侶「変な揺れが」

武道家「……下」

僧侶「え?」

武道家「…………――下に、何か居る」


―――――――――


海賊手下「ん……?」

海賊手下2「おい、見ろ」


ズズ…


海賊手下2「船の下……影が」

海賊手下「……――っ!!!?」

ダッ!!

海賊手下「おかしらぁッ!!!」

海賊手下「特大の魔物だ!!!この影……」


女海賊「でも気に入ったわ。アンタ」



ざぱぁぁあぁあああん!!!!!!!!!!




クラーケン「ゴアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」




海賊手下「“クラーケン”だッ!!!!!!!!」



女海賊「……――名前は?」



ヒュンッ!!!

ヒュンッ!!!!




クラーケン「ゴアッ  ギュッ 」



ザザンッッッ!!!!!!!!






女勇者「……私は、女勇者」




女海賊「……アタイは女海賊」






ドパアアアアアアアアアアアアアン!!!!!



戦士「うびゃあああああああ!!!!!」

武道家「ちょっ、つめたああああっ!!!!」

魔法使い「わわわっ」

僧侶「きゃ――っ!!!」



ポルトガ姫「ぎにゃぁ――っ!!!!揺れッ、ゆれぁ――!!」

遊び人「もっ、ほんとっ、女勇者容赦無さすぎ――っ!!!」



海賊手下「うわああぁぁぁぁっ!!!?」

海賊手下2「す、すごすぎるぜ見たかオイ!!!!」

海賊手下3「あのクラーケンが人間二人に……!!!!」

海賊手下4「お頭以外に、あんなに強い人間いたのか……!!」


ザッ

ザァァァン……!!

ザァン…





女勇者「……」


女海賊「……参ったね」

女海賊「こんなに強い奴、男でも見た事ないよ」

女海賊「気に入った……」


スタスタ

ガシッ!!


女海賊「気に入ったわ!!アンタ!!」

女海賊「アンタあたいと海賊やらないかい!!!?」

女勇者「……さっきまでの私の話聞いてた?」

パシッ

女勇者「私は海賊にはならない。他を当たってくれないか」

女海賊「あら……つれないねぇ」

女海賊「んー、まあいいさ」

クルッ

スタスタ

女海賊「女勇者……名前は覚えたからね!」

女海賊「あたいの名前も覚えてくれたろ?」

女海賊「もしまた会う事があって、その時困ったことがあったら私を頼りな!」


スタッ


女海賊「全力で力になったげる!!!」


女勇者「頼る事はないさ!」


女海賊「へへっ♪ますます気にいった!……さあ」


女海賊「野郎共!!!!錨を上げろ!!!出発だよっ!!!」


「「「「応ッッ!!!!」」」」



…………
……




……
…………



ザザァン……

ミャー ミャー


僧侶「……見えなくなっちゃいました」

魔法使い「……いっちゃったねえ」

ポルトガ姫「な、なんか……白昼夢を見てるようだったっす……」



女勇者「……」


武道家「女勇ー者」

女勇者「え?」

コツン

女勇者「あてっ、デコピンはやめてよ!」

武道家「あほう!あのイカはもっとまともな倒し方あったでしょうが!!」

戦士「お前にしては珍しく荒っぽい倒し方だったな?」

女勇者「いや、それは……」

遊び人「ムキになってるのまるわかりだったよ、女勇者」

女勇者「あ、遊び人ちゃん」

遊び人「まだまだよのう?女勇者さーん?」

ぐにー

女勇者「あいははは、ひょっほ!ほっへはふはははいへ!」

パッ

女勇者「いたた……悪かったよ」

女勇者「どうもああいう手前を見ると感情的になっちゃって……まだまだだね私も」

戦士「でもさ……なんか」

魔法使い「どしたの戦士?」

戦士「いや…………なーんか、あいつどっかで見た事ある気がするんだよな」

女勇者「え?今の人とかい?」

武道家「気のせいじゃない?流石に縁はないでしょ」

僧侶「あの―……」

女勇者「ん?なんだい僧侶ちゃん。何か心当たりが?」

僧侶「ううん、そうじゃないんですけど……」チラッ


盗賊「…………」ズーン…


僧侶「あの、『海賊をやってるのが変』ってくだりから盗賊ちゃんが……」


女勇者「わ――――っっ!!!!!ちがうちがうよ盗賊ちゃん!!!!」

盗賊「……あ、ううん……大丈夫だよ……ちゃんとわかってる、から……」

女勇者「あれは盗賊ちゃんの事とは全然違くてっ、本当にごめんよ!!!!」

盗賊「……大丈夫だよ……女勇者は優しい子だね……」

女勇者「うわぁぁぁそんな哀しい目をしないでおくれよぉぉ!!!!」

盗賊「……でも、私も戦士と同じ……」

女勇者「え?」ピタッ

戦士「ん?何が?」

盗賊「……私も、あの人どこかで見た事ある気がする……」

戦士「盗賊もか!?」

武道家「えー?盗賊まで?」

魔法使い「ふたりともみたことあるっていうなら、どこかであってるのかなあ」

盗賊「……うん。たぶん、ずっと昔だと思うんだけど……」

戦士「え?最近じゃないか?」

盗賊「……え?……」

戦士「え?」


戦士・盗賊「「……」」


武道家「……気のせいね。多分」

遊び人「まあ、気のせいでも気のせいじゃなくても、気にしないのが一番よ」

スタスタ

遊び人「みんな、ご飯にしましょ!さっきの揺れから鍋守るの大変だったんだから!」

戦士「それもそうだな!めし!」

魔法使い「そういえばごはんわすれてたよぉ」

武道家「あんな事があれば、そりゃあねぇ」

僧侶「もうおなかペコペコですー」

盗賊「……女勇者、ちゃんと手を洗わなきゃだめだよ?……」

女勇者「ああ。分かってる。大丈夫さ」

ポルトガ姫「あ、なんかイカ臭いなと思ってたら女勇者ちゃんすか」

遊び人「その言い方やめてっ」

女勇者「ちょっと洗ってくるから、先に食べておいてよ遊び人ちゃん」

遊び人「うん。早く来てね」

――――――――――――

――甲板隅・水樽傍――

パシャッ


女勇者「……」スンスン

女勇者「よし……と」

女勇者「さて。行くかな」

スタスタ

女勇者「……」

女勇者(なんだか嵐のような出来事だった)

女勇者(しかし……なんで)



女海賊『質問が悪かったね、じゃあもう率直に聞くよ』

女海賊『アンタら、国連の関係者?』



女勇者(なんであの海賊は国連の船を狙っていたんだろう?)

女勇者(そしてなんで国連の関係者じゃない事を知って引き揚げたのか)

女勇者「……」

ピタッ

女勇者「……」



ザァァン… サパァン…

ミャー ミャー


女勇者「……」

女勇者(……国連、か)

女勇者「……」

女勇者「……」

女勇者「……」

女勇者「……」


女勇者(……――お義兄ちゃん)


女勇者(今は、どこで、何をしているんだろう……)


…………
……

今日はおしまいです



……
…………


――ムオル地方・街道――


ザッザッザッ



ムオル勇者「……」



ザッザッザッ

ムオル勇者「……」

ザッザッザッ

ムオル勇者「……」

ザッザッザッ

ムオル勇者「……」


ザッザッザッ

ザッ……






ヒョコッ


イシス僧侶「……まだまだ歩いてるみたい」

ポルトガ勇者「おい、イシス勇者。ダーマを発ってからどのくらい経った?」

イシス勇者「もう四日目だね……ムオルってこんなに遠かったんだ……」

イシス魔法使い「ムオル勇者様、ずっと歩きっぱなしよね」

イシス戦士「イシス勇者様、大丈夫ですか?おぶりましょうか?」

イシス勇者「イシス戦士はいつまでも僕を子供扱いして……」

ポルトガ勇者「でもまあ、時々休憩してやがるしこっちも休めて助かるぜ」

イシス勇者「だね……」

ポルトガ勇者「とにかく途中で魔物に絡まれて騒いじまったら気付かれるかもしんねぇ。聖水は切らさないように頼むぜ」

イシス勇者「ああ。分かってる」


スタスタ


イシス僧侶「でもさあ、本当にムオル勇者様を尾行して勇者くんの居所掴めるのかなぁ」

イシス魔法使い「うーん、勇者くんをどこかに連れて行ったのはあの人だし……手がかりくらいはあるんじゃないかしら」

イシス僧侶「でもでも、何を聞いても教えてくれなかったじゃないさー」

イシス僧侶「『お前たちに教える事では無い』つってー」

ポルトガ勇者「だから跡をつけるしかねえんだ。ちょっとばかし耐えてくんねえかイシス僧侶」 

イシス僧侶「や、まあいいんだけどさ……ただそんな簡単にあのムオル勇者様が隙を見せるかなぁって思って」

イシス勇者「今の所はまだ気付かれてないみたいだから、この調子でいけば大丈夫そうだよ」

ポルトガ勇者「行き着いた先に居ればいいんだけどな。勇者」

イシス魔法使い「そうね……」


スタスタ


ムオル勇者「……」



イシス勇者「……」

イシス勇者(勇者くんがムオル勇者さんに連れられて僕らの前から姿を消したのがおよそ一年前)

イシス勇者(それから何の音沙汰も無いままだったから、流石に痺れを切らしてしまった)

イシス勇者(あの一年前の事件からすぐ、色んな事があった)

イシス勇者(まず、国連の勢力図の変遷)

イシス勇者(サマンオサの重役でもあり、現状アリアハンの実権を握っている騎士団長の持つ力が余りにも膨れ上がってしまった)

イシス勇者(つまり、サマンオサが国連の指揮を執る機会が増えてしまったという事)

イシス勇者(おそらくナジミ様の仰る“魔物”の一人であるのが彼であれば、人間側は大きいハンデを負った)

イシス勇者(次に、国連勇者の席が二人分空いてしまった)

イシス勇者(まず一人がランシール勇者さん)

イシス勇者(あの事件で勇者くんを見逃そうとした彼女は特別騎士……“勇者”の称号、資格を剥奪)

イシス勇者(今はランシールに戻り監視の下で暮らしているらしい)

イシス勇者(そしてもう一人がスー勇者ちゃん)

イシス勇者(彼女はあの事件の直後、すぐに行方不明になってしまった)

イシス勇者(捜索隊も多く組まれたけれど、なんの手がかりもないまま半年が経ち、規定により除名)

イシス勇者(そしてまた半年が経って今に至る)

イシス勇者(一向に……――手がかりは無い)

イシス勇者「……」

イシス僧侶「ん?どったのイシス勇者様」


――――――――――


スー勇者『イシスさん!イシスさん!』


――――――――――


イシス勇者「スー勇者ちゃん……無事だといいなぁ……」グスッ

イシス僧侶「泣きなさんなよ」

イシス魔法使い「でも確かに、スー勇者様も心配ねぇ」

イシス僧侶「あの子はみんなのアイドルだったし余計にね」

ポルトガ勇者「あいつがいねえと国連の集まりがギスギスしてたまらねえんだよな……」

ポルトガ勇者「軽口叩くランシール勇者もいねえし……やりにくいったら無いぜ」

イシス戦士「!!皆っ」

イシス僧侶「え?何――……あっ!」



――最果ての村・ムオル――



イシス僧侶「村が見えてきた!!」



―――――――――――



イシス僧侶「……――と喜んだのも束の間」


――ムオルの村近くの運河――


スタスタ


ムオル勇者「……」



イシス僧侶「村には入らんのかいっ!!!」

イシス魔法使い「あれからまたずいぶん歩いたわね……」

イシス戦士「目的は村ではなかったのか……?」

イシス勇者「とりあえず、もうちょっと跡をつけてみよう」

イシス僧侶「今日、朝暗いうちから歩き始めたよね……もう太陽が天辺にあるんですけどぉ……」

イシス戦士「弱音を吐くな」

イシス僧侶「ふぁい……」



ポルトガ勇者「!おい、あれ見ろ」



ギィ……


ムオル勇者「……」



イシス戦士「小船が数隻……」

イシス魔法使い「って事は、ムオル勇者様この運河を渡るつもりなのかしら」

イシス僧侶「しっ!船を出そうとしてる!」



ギッ

ザザ……


ムオル勇者「……」


ザプッ

ザプッ…


ポルトガ勇者「……行ったな」

イシス勇者「渡った……って事は、向こうに何かあるんだ」

イシス僧侶「ねえイシス魔法使い。地図で向こうって何か載ってる?」

イシス魔法使い「えっと……」

パラッ

イシス魔法使い「……ダメね。ろくな情報は書いていないわ」

ポルトガ勇者「多分向こうはろくに人が出入りしたことのないエリアだったはずだ」

イシス戦士「しかし、何故こんなに広いのにあまり調査が入っていないんだ?」

ポルトガ勇者「えっと、なんだったかな……昔あの大陸は聖地だったんじゃなかったっけか」

ポルトガ勇者「それが魔族に攻めいれられてからは、魔族が住み着くようになって誰も入らなかったとかなんとか」

イシス僧侶「……ちょっと待って。私達今からそんな所に行こうとしてるの?」

イシス魔法使い「というか、そんな所に行って勇者くんは大丈夫なのかしら……」

イシス戦士「…………回復する術がほぼ無いに等しいあいつが、そんな所に行ったのなら」


「「「…………」」」


イシス勇者「っ!は、はやくムオル勇者さんを追いかけよう!」

ポルトガ勇者「まあ待て。船だとあいつから見つかりやすい。あいつが運河を渡ってからだ」

イシス勇者「そ、そうだね……くそっ」

イシス勇者(勇者くん……大丈夫だといいんだけど……)



――茂みの陰――


ガサ…


「…………」



……
…………



――ムオル地方北西・謎の大陸――


チリチリ……

ギャー ギャー


ザッザッザッ…



イシス勇者「……」


イシス僧侶「……」


イシス魔法使い「……」


イシス戦士「……」


ポルトガ勇者「……」



ザッザッザッ…

ポルトガ勇者「……なあイシス僧侶」

イシス僧侶「なんですか……」

ポルトガ勇者「聖水はまだ残ってるか」

イシス僧侶「……あと瓶1本分ですね」

ポルトガ勇者「……そうか」

イシス僧侶「そうです……」

イシス戦士「……イシス魔法使い」

イシス魔法使い「何……?」

イシス戦士「この大陸に足を踏み入れてから、どのくらい経った……?」

イシス魔法使い「……えっと……三日だったかしら……」

イシス戦士「……そうか」


ザッザッザッ


イシス勇者「……ポルトガ勇者君」

ポルトガ勇者「なんだ」

イシス勇者「……これ、あれだよね」

ポルトガ勇者「……ああ」


ザッ




「「「「迷ったね」」」」



イシス僧侶「わぁーもうどうすんのさこれ!!ちょっと限界近いんですけど!!」

イシス魔法使い「確かに、流石にお風呂に入りたいわ……綺麗な水場はおおいから、水浴びはできるけど……」

イシス戦士「ムオル勇者様も見失ったし……手がかりも無し、か」

ポルトガ勇者「すまねぇな、俺があの時船を出すのを止めなかったら」

イシス勇者「いやいや、ポルトガ勇者くんのせいじゃないよ」

ザッ

イシス勇者「……しかし」


ギャァ ギャァ


イシス勇者「……本当に妙な森だ……」


ポルトガ勇者「お前もそう思うか?」

イシス勇者「ああ。なんというか……こう、常に見られている気がするというか」

イシス勇者「でも嫌な感じでもなく……野生の動物達の気配でもないし」

ポルトガ勇者「だな……。こりゃ昔聖地だった時の名残なのか、それとも……」

イシス僧侶「ちょっと二人共怖いこと言わないで下さいよ!!!」

イシス魔法使い「嫌な感じはしないにしろ、あまり長居はしたくないわね」


……


ピタッ


イシス戦士「……」


イシス勇者「……イシス戦士」

イシス戦士「はい……聞こえました」

ポルトガ勇者「……結構遠くだが、確かに聞こえた」

イシス僧侶「えっ?なになに、何が?」

イシス魔法使い「三人とも何が聞こえたの?」


イシス戦士「剣が触れ合う音だ」


イシス勇者「あんな音、こんな森の中で自然に鳴るものではないよ」


ポルトガ勇者「……近くに、居やがる」


ザッ

イシス勇者「多分こっちからだった!みんな!急ごう!」

ポルトガ勇者「おうっ!」

イシス魔法使い「さすが戦闘職ね。進行方向は任せたわ!」

イシス僧侶「あっ、待って待ってー」


…………
……



……
…………

ザッザッザッ!!

――ムオル地方北西・謎の大陸・北方――


ザッザッザッ!!

ザッ

イシス勇者「はぁっ、はぁっ……」

ポルトガ勇者「くそっ、何にもいやしねえ!」

イシス戦士「恐らくあの音は移動している……同じような音がいろんな方向から聞こえた」

イシス僧侶「ちょっと、少しだけ、休ませて……」

イシス魔法使い「私も限界が近いわ……お願い」

イシス勇者「そうだね……もう日が沈みかけてる」

ドサッ

ポルトガ勇者「今日はこの辺りで野宿するか……」

イシス戦士「では私は水場を探してくる」

ポルトガ勇者「ああ、頼んだ。まあすぐに見つかるだろ」

スタスタ…

ポルトガ勇者「イシス勇者。そんじゃ火を熾そうぜ」

イシス魔法使い「それなら私がやるわ。ポルトガ勇者様は寝床の準備をお願い」

ポルトガ勇者「はいよ任せた。んじゃ、今日はイシス勇者は俺と一緒で良いか?」

イシス勇者「いっ、いいいい良いわけないだろう!!!!」

ポルトガ勇者「お前こんな時くらい愛人離れしろよ……女達だって女達だけで寝てえだろ、なあ?」

イシス僧侶「いやいやいや!!!大丈夫!!大丈夫ですから!!」

イシス魔法使い「きょ、今日もポルトガ勇者様は一人で眠ってもらえるかしらっ!?ねっ!お願いっ」

ポルトガ勇者「いや、いいけどよ……俺だって寂しいんだけど……」

イシス組「「「ごめんなさい……」」」

ポルトガ勇者「いやいいってば。ま、お前そういや男苦手って言ってたしな。しゃあねえよ」


タッタッタ!!

イシス戦士「皆!!」


ポルトガ勇者「お、戻って来た」

イシス魔法使い「良い水場あった?」

ザッ!!

イシス戦士「それどころではない!!……あれを見ろ!!」

イシス勇者「あれ?……」

イシス魔法使い「あれって?何……が……」

イシス僧侶「……ちょっと待って」

ポルトガ勇者「おいおいおい」


モクモク


ポルトガ勇者「煙……!!」

ダッ!!

タッタッタ!!

イシス勇者「人の気配がやっと……!!」

ポルトガ勇者「イシス戦士!!もうあの煙の下には行ったか!?」

イシス戦士「まだだ!しかしそう遠くはない!」

イシス僧侶「やっと……!やっとの手がかりだよぉぉ!!」

イシス魔法使い「急ぎましょう!日が沈まないうちに!」

イシス勇者(勇者くん……!!)





「こんにちはっ」





ズザァァッ!!!!!


イシス勇者「……」

イシス僧侶「……」

イシス魔法使い「……」

イシス戦士「……」

ポルトガ勇者「……おい、誰だ?今の声」

イシス僧侶「……私じゃないよ」

イシス魔法使い「私でも……というか」

イシス戦士「聞き覚えの、無い……」


ジャキッ!!!


イシス勇者「……皆」


ポルトガ勇者「ああ、分かってる」


イシス魔法使い「敵じゃないといいんだけど……」


イシス戦士「もし敵なら切り伏せるまでだ」


イシス僧侶「……だね」




「こんにちはっ」



イシス戦士「っ!!!そっちだっ!!!」


バッ!!!

イシス僧侶「……」

イシス魔法使い「……」

イシス戦士「……」

ポルトガ勇者「……」

イシス勇者「………………――え?」









スライム「……」








イシス僧侶「……」


イシス魔法使い「……」


イシス戦士「……」


ポルトガ勇者「……」


イシス勇者「……」




スライム「……」


スライム「こんにちはっ」




「「「「えっ」」」」



イシス勇者「え、えっと、あ」

イシス戦士「こ、こんにちは……?」



スライム「んふふーっ」ニコー



イシス僧侶「……」


イシス魔法使い「……」


イシス戦士「……」


ポルトガ勇者「……」


イシス勇者「……」





「「「「えぇ……」」」」



イシス勇者「ス、スライムが喋った……?」

イシス魔法使い「こんな……事ってあるの……?」

ポルトガ勇者「言葉を喋る魔物は数多く見てきたが……喋るスライムってのは初めてだ」

イシス僧侶「……しかも、挨拶って」

イシス戦士「…………かわいい……」

イシス僧侶「えっ」


スライム「みんなっ、はじめましてだっ」

ピョンピョンッ


イシス勇者「こ、こっちに来た!」

ポルトガ勇者「っ!」ジャキッ!

イシス勇者「やる気か……!?」ジャキッ!!

ガバッ!

イシス戦士「……お、お待ちになってください」

イシス勇者「え!?どうして」

イシス戦士「いや、あの、このスライムが何かを知っているかも、と、思いまして」


ピョコッ


スライム「ねぇねぇっ」

イシス勇者(普通に話しかけてきた……)

イシス勇者「な、なんだい?」

スライム「みんなおじちゃんにあいにきたの?」

イシス勇者「……おじちゃん?」

スライム「なら、こっちだよっ」


ピョンピョン


スライム「ついてきてー」


イシス勇者「あっ、ちょっ……」

ポルトガ勇者「……付いて行っていいのかこれ」

イシス僧侶「でも他に何も手がかり無いし……行きません?」

イシス魔法使い「そうね。煙を熾した主があの子の言う『おじちゃんなら』人の可能性が高いし」

イシス戦士「……」フラフラ

イシス勇者「ってイシス戦士は普通に追っかけてるし」

ポルトガ勇者「あいつ可愛いもの好きだったのか……」

ザッ

ポルトガ勇者「まあなんにせよ、行くか」



ぴょん

ぴょん

スライム「♪」



――森深く・謎の祠――



ザッ


イシス勇者「……!!祠だ……」

ポルトガ勇者「でっけえ祠だな……遺跡みてえだ」

イシス魔法使い「煙もここからあがってるわね。人の気配がする」

イシス戦士「あ、スライムが入り口に……」


ぴょんっ

スライム「ただいまーっ」

スライム「おきゃくさんきたよー」

スライム「きたよー」


ポルトガ勇者「……さて」

イシス勇者「誰が出てくるか」

イシス僧侶「『おじちゃん』がムオル勇者様だといいけど……」

イシス魔法使い「勇者くんの手がかりになるかどうか……」

イシス戦士「!!」


スタスタ


イシス戦士「誰か出てくるぞ!」



ザッ



イシス勇者「……!!」


ポルトガ勇者「……!!」


イシス戦士「……!!」


イシス僧侶「……!!」


イシス魔法使い「……!!」



ひょいっ





スー勇者「スラさん!おかえりなさいです!」






イシス勇者「 」


イシス僧侶「 」


イシス魔法使い「 」


イシス戦士「 」


ポルトガ勇者「 」




スライム「スーちゃんっ!」


ぴょんっ

スー勇者「わわっ」

ダキッ

スライム「ただいまっ!」

ギューッ

スー勇者「ふふっ♪すりすりですっ」

スライム「わーっ♪」



イシス勇者「 」


イシス僧侶「 」


イシス魔法使い「 」


イシス戦士「 」


ポルトガ勇者「 ……ス」






「「「「スー勇者(ちゃん)!!!!!?」」」」



スー勇者「え?……わぁっ!!!?」


タッタッタ


スー勇者「みなさんっ!おひさしぶりです!」


イシス勇者「えっ、ちょ、ま、なんで」

ポルトガ勇者「なんでお前がこんなトコに居るんだよ!!?ってか無事だったのか!!?」


スー勇者「??はいっ、無事だったでした!」

スライム「んー?スーちゃんのともだち?」

スー勇者「そうですっ」

スライム「じゃーぼくもともだちー」

スー勇者・スライム「「にへー」」ペカー

イシス戦士「んふっ……!」

イシス魔法使い「ちょっと待って……理解が追いつかないんだけど……」


ザッ



「おや、お客さんかい?」



「「「「!!」」」」


スタスタ


「……おやおや」


スー勇者「おじいちゃん!」

スライム「おじちゃんっ」


ポルトガ勇者「おじいちゃん、って」

イシス勇者「……!」


イシス勇者(ホビット族……!)




ホビット「よくこんな辺境に来たね。疲れたろう」



ポルトガ勇者「ノルド以外のホビット族……って、まさか……!」

イシス僧侶「え?ポルトガ勇者様何か知ってるの?」

ポルトガ勇者「ああ、多分――……」



スー勇者「あっ!」



ポルトガ勇者「え?」

イシス勇者「へっ?」


ダッ

タッタッタ!


スー勇者「おかえりなさいですっ!」


タッタッタ!!


イシス勇者「どこにっ……」

クルッ


イシス勇者「……」


イシス僧侶「……」


イシス魔法使い「……」


イシス戦士「……」


ポルトガ勇者「……」


イシス勇者「……」



ホビット「おや、帰って来たようだね」



イシス勇者「…………――ゆ」



タッタッタッ!!


ガバッ!!



「わわっ!?」



スー勇者「えへへっ♪」ギューッ



「っとと……もう、危ないってばスーちゃん」



スー勇者「お帰りなさいですっ!ご主人様っ!」










勇者「ん。ただいま。スー勇者ちゃん」









イシス勇者「勇者く――……!!!!………………――――ご主人様?」









(((((   ご   主   人   様   ? ? ? )))))





今日はおしまいです

勇者「え――……?あっ!!!?」

スタ…スタ…

勇者「みんなっ!!?どうしてここに!!!?」


ポルトガ勇者「いや……うん」

イシス僧侶「えっと、なんていうか」

イシス魔法使い「心配だった、から、というか」

イシス戦士「その」

イシス勇者「………………」

ザッ!

勇者「……っと……うわー……!なんか、凄い久々だね!」

イシス勇者「……勇者くん」

勇者「イシス勇者くん!久しぶり!元気だった!?」

ガシッ!

勇者「ん?」

イシス勇者「ひ、ひさしぶり……会えて嬉しいよ……?」

イシス勇者「嬉しいんだけど、嬉しいんだけど……きみ、今のは?」

勇者「えっ?今の?」

ポルトガ勇者「今、スーの字がお前の事」

勇者「ポルトガ勇者も!本当に久しぶ――……え?スーちゃん?」


スタスタ

スー勇者「どうしたですか?ご主人様」


「「「「「…………」」」」」


勇者「……あっ」

勇者「あー…………えっと……………………これは…………違うんだよ皆」

イシス勇者「何が違うんだい?」

勇者「え、ちょっと目怖いよイシス勇者くん」

勇者「これはちょっとワケがあってさ……ね?スーちゃん」

ぎゅっ

スー勇者「?」

勇者「あ、抱きついちゃダメだってちょっとスーちゃ――……」


がぶぅっ


勇者「あいたたたちょっとちょっと」

スライム「むーっ」

勇者「少し痛いからやめてってばスラお!」


スラお「うるさいっ!スーちゃんからはなれてっ!」


スー勇者「スラさん!だめです!」

スラお「うー……でもー」

勇者「本当にスラおったらもう……」

スー勇者「んもう!……大丈夫です?ご主人様」

勇者「うん。あま噛みだったし」

スラお「ほんきだもんっ!」

勇者「スラおは本当に僕の事嫌いだな」

スラお「きらいっ!スーちゃんすき!」

スー勇者「わたしもですっ!」ニコー

スラお「えへー」ニコー

勇者「ぐぬぬ」

スー勇者「ふふっ、でも私、ご主人様も大好きです!」

勇者「えっ!あはは!やー嬉しいなあ」


勇者「はっ」


「「「「…………」」」」


ポルトガ勇者「……」

イシス勇者「……」

イシス僧侶「……」

イシス魔法使い「……」

イシス戦士「……」


勇者「あーっ違う違う違う!!本当に違うんだよこれは!!」

イシス僧侶「ロリコン」

勇者「はぁぁ!?ち、違うよぉ!!」

イシス戦士「年端もいかない少女にそんな呼び方を強制させて……」

勇者「強制じゃないし!!」

イシス魔法使い「なんだか、スキンシップも多いように見えるのだけれど……」

勇者「違う違いますよ!?スーちゃん!ちょっと一回離れて!!」

パッ

スー勇者「でも、あっ!!」

フラッ


勇者「はれっ……?」

ドサッ!

イシス勇者「勇者くん!?」

ポルトガ勇者「お、おい!大丈夫かお前!」

勇者「あてて、ごめんちょっと……」

スー勇者「もうっ!だから言ったです!」

サッ

スー勇者「……今日は、怪我したの少ないですけど、無理するはダメですっ」

勇者「うぁ、ご、ごめん……」

イシス勇者「どうしたんだい……!?よくみたら体中に怪我が」



「…………ここで何をしている。お前たち」



イシス勇者「!!」

ポルトガ勇者「……ム、ムオル勇者」


スタスタ

ムオル勇者「何故お前達がここに居る」


勇者「ムオル勇者さん」

スー勇者「お帰りなさいです!」

スライム「ムーくん!」


イシス勇者「えっと、これはその」

ポルトガ勇者「……悪い、勝手に後を追わせてもらった」

イシス僧侶「申し訳ありません!」

イシス魔法使い「勝手は謝罪します!ですから――……」

ムオル勇者「……いつからだ」

イシス勇者「…………この間の国連首脳会議の直後です」

イシス戦士「ムオル勇者様がダーマ神官様を護送されてから、そのまま……」

ムオル勇者「…………」


スタスタ

ホビット「まあまあ、いいじゃないかムオル勇者」

ムオル勇者「ホビット殿……」


ガバッ

勇者「……先生!今日の夕の鍛錬終了しました!」


ホビット「うん。お疲れさま」


イシス勇者「先生……?」

ポルトガ勇者「じゃあやっぱりお前、ここで修行を」


ホビット「この子達も勇者の事が心配だったんだろう。仕方が無いさ」

ムオル勇者「しかし……」

ホビット「ムオル勇者」

ムオル勇者「……」

ホビット「……――いいのさ」

ムオル勇者「…………了解」

ザッ

ホビット「さ。お客人も来たし……勇者もお腹が減ったろう?」

ホビット「中に入ってご飯にしよう。スー勇者ちゃんが作ってくれたご飯が冷めるから」



――ホビットのほこら・大広間――


オォォオォ…


イシス勇者「……本当に広い、不思議な所だね……」

勇者「でもいいところだよ」

ポルトガ勇者「ああ。なんか落ち着くな」

ボボ…

ホビット「勇者、そっちの蝋燭にも火を灯してくれるかい?」スッ

勇者「はい」パシッ

ボッ…

ホビット「さて、これで少しは明るくなったろう」

ホビット「しかしすまないね。客人をもてなすような立派な席は無いんだけど」

イシス魔法使い「いえ!私達こそ急にお邪魔してしまい……」

イシス僧侶「本当に申し訳――……」


ギュルルル


イシス戦士「……本当に申し訳ない」

イシス僧侶「アンタか」

ホビット「ふふ。いや結構な事さ。少し待ってもらえるかな?今スー勇者ちゃんが――……」

スタスタ

スー勇者「準備できたです!」

ホビット「おお、来たようだ」

イシス魔法使い「運ぶの私達も手伝います!」



~~スー勇者の☆愛情いっぱい晩ごはんメニュー~~


・銀魚の塩焼きにムオルアッリオの根を散らしたもの

・トウモロコシとムオルビーンズと小麦粉をペーストしたものに何かの肉の細切れを混ぜ込んで一旦醗酵させ、その後ソースで香ばしく焼いたもの

・何かの臓物


イシス勇者(なんか一個インパクト凄いものあるな)

ポルトガ勇者(なんだあれ)

ホビット「それではいただこうか」


「「「「いただきます」」」」


イシス魔法使い「でもその……本当にいいのですか?私達まで」

ホビット「いいのさ。スー勇者ちゃんもいいと言ってくれているしね」

スー勇者「みんなで食べるはたのしいですっ!」ニコー

イシス戦士「んうっ!?」

イシス僧侶「っ!これおいしいっ!」


ざふっ

ほくっ……

イシス勇者「ほふっ……!これっ、なんだろう……パン?じゃないし、でも」


パリッ

しゃほっ じゅわっ

ポルトガ勇者「んっ。……はー、この魚もすげーうめえな。やたら肉が甘い」

ポルトガ勇者「この上に散ってる根っこみてえなの何だ?香り強えけど癖になるな」


勇者「おいしいでしょ。スーちゃんの故郷の食べ物なんだってさ」

スー勇者「えへへ……少し作りやすくした所もあるですが、わたしの好きの料理です」

イシス勇者「スー勇者ちゃんは凄いね……うん?」

ポルトガ勇者「お?」

勇者「ん?どうしたの二人共――……」


スッ


勇者「……」


スー勇者「はいっ!ご主人様っ!あーん!」


勇者「……スーちゃん。一人で食べるって」

スー勇者「でも体ふらふらしてるです!食べさせてあげるです!」

勇者「うん。ありがたいんだけどさ、いつも言ってるけどそれって」


何かの臓物「……」


勇者「あーんされても一口じゃ無理かな……」

スー勇者「あーん!あーん!です!あーんっ!」

勇者「もご」

ざむっ

じゃもっ じゃもっ

勇者「んぷっ……もっ、っくこ」

ゴクン

勇者「んぷ、ぱふっ!だはぁっ!!!」

スー勇者「まだあるです!」

勇者「うんっ!!待ってね!!」

イシス勇者「ねえスー勇者ちゃん、なんだいそれ?」

スー勇者「鹿の内臓を胃袋に詰めて煮たのです!」

イシス勇者「うわあ想像以上にワイルドだ」

スー勇者「栄養がいっぱいだからいいものです!」

スー勇者「わたしの村の戦士たちは、これを食べて強くなるです!」

勇者「ぷぉぽっ、おぽぴゅぉっ……」ザムザム

ポルトガ勇者「お、おい勇者が血で溺れかけてんぞ」


…………


カラン

ポルトガ勇者「……さて、そろそろ聞かせてもらってもいいか?」

勇者「ん?何を?」

ポルトガ勇者「まず一つは、なんでスー勇者がここに居るのかって事」

イシス勇者「次に何故スー勇者ちゃんは君をご主人様って呼んでるのかって事」

ポルトガ勇者「被せてくるなよ……そして、最後に」チラッ


ホビット「ん?」


ポルトガ勇者「……このホビットが、何者かって事」

スラお「おじちゃんはおじちゃんだよっ!」

ポルトガ勇者「……あとこの喋るスライムがなんなのかも」

ホビット「ははは、沢山疑問があるね」

勇者「……」

ホビット「いいさ勇者。話してあげなさい」

勇者「……はい」


カラン


勇者「――じゃあ、話すよ」






……
…………




――およそ一年前――




――ホビットの祠――


ザッ


ムオル勇者『……ここだ』

勇者『やっ……と……』

ドサァッ

勇者『着いた……はぁっ……』

ムオル勇者『立て。情け無い』

勇者『す、すみませんっ……』

勇者(でも……なんなんだろうここ……?)

勇者(具体的な事は何も聞いてないけど……本当にここが僕に縁のある――……)


『ムオル勇者』


ムオル勇者『!』

勇者『え?』


スタスタ


ホビット『やあ、久しいね』


勇者『!』

勇者(ホビット……ノルドさん以外にも居たんだ)

ムオル勇者『……お久しぶりです』

ペコッ

ムオル勇者『突然申し訳ない。ポルトガ王を介してノルド殿に伝言を頼ませて頂いた』

ホビット『いいさ。元気そうで何よりだよ』


ザッ


ホビット『……』


勇者『……は、はじめまして』


ホビット『……君が、勇者かい』

勇者『え?は、はい!僕は――……』

ナデ

勇者『え?』

ホビット『……』

ナデナデ


ホビット『…………大きくなったね』


勇者『……』

ホビット『……さ。今日からここが君の修行場だ。案内しよう』

勇者『……?はいっ』


…………


――ホビットの祠・小部屋――


勇者『こんな部屋まであるんだ……』

勇者(祠って言うよりちょっとした神殿みたいだな)

ホビット『ここが君の部屋だよ。……さて、一通り説明したね』

ホビット『ここまでで何か質問はあるかい?』

勇者『……あの』

ホビット『ん?』

勇者『……さっき、大きくなったねって仰ってましたが……』

勇者『僕に、以前どこかで……?』

ホビット『……』

ホビット『……ん。最初に説明しないとね』

ホビット『勇者』



ホビット『君を拾ったのはわしだ』



勇者『……』

勇者『……』

勇者『……え』


勇者『……えええええええええええええ!!!?』


ホビット『あはは。驚いたかい?』

勇者『え!?でもっ、僕を拾ったのは父――……オルテガが』

ホビット『ああ。オルテガに任せたのさ』

ホビット『あの時、わしらの中で一番適任だったからね』

勇者『……はい、え』

勇者『と……いう事は』

ホビット『そうだね』

ホビット『オルテガの旅のお供、サイモン、カンダタ――……』

ホビット『そしてわしさ』

勇者『……父さんの……旅の……!!』

ホビット『……おいで。もう一回外に出よう』

勇者『えっ?は、はい』



サァァァァ…


ホビット『ん……今日は風が気持ちいいね』

勇者『……』

ホビット『……さて』

スッ

ホビット『ここだよ』

勇者『……ここ?』

勇者『普通の地面に見えるんですが、ここが何か』

ホビット『君を見つけた場所』

勇者『……』

勇者『……』

勇者『……』

勇者『……』

勇者『……』

勇者『……』

勇者『……』

勇者『……え』


ホビット『君は生まれたばかりの時に、ここで捨てられたんだ』


ホビット『ここが君のはじまりの場所なんだよ』


今日はおしまいです

勇者『…………ここで僕が』

勇者『……』

スタスタ

スッ…

勇者『……』

勇者『……』

勇者『……』

勇者『…………あのっ』

ホビット『すまないが、今話せるのはここまでだよ』

勇者『!!?なんでですかっ!?』

ホビット『……何が起因となるか、分からないからね』

トントン

ホビット『君のその、“中”のモノは』

勇者『っ……!!!』

ホビット『まあそんなに焦らないでおくれ勇者。急くと良い事は無いよ』

ホビット『わしも協力するから、“それ”を制する為に一緒に強くなろう。その為に君はここに来たんだ』

勇者『……』

勇者『っ』

スクッ

勇者『よろしくおねがいします!!!』

ホビット『ふふ……さて』

クルッ

ホビット『……まだ紹介しなくてはいけない子も居たね』

勇者『え?』

ホビット『スラお。さっきから陰に隠れてどうしたんだい?出ておいで』

『……』

ぴょん

勇者『!!!』


スラお『……うー』

ジャキィッ!!!

勇者『魔物っ』

スラお『ぴっ!!!?』ビクゥッ!!!

ザッ!!

勇者『なんでこんな所に――……』

スッ

ホビット『待ちなさい勇者』

勇者『えっ!?』ピタッ

ホビット『この子は違う。わしの友人さ。剣を収めなさい』

ぴょんっ

スラお『おじちゃん!こいつこわいっ!』

勇者『って、ええっ!!!?えっ、喋った!!!?』

ホビット『……勇者。剣を収めておくれ』

勇者『でもなんで魔物が』

ホビット『……この子は魔物じゃない』

勇者『え?でも』

スラお『おじちゃんっ!ぼくこいつきらいっ!』

ブルブル

ホビット『……よしよし』ナデナデ

勇者『……』

ジャカッ

勇者『……す、すみませんでした』

ホビット『いいよ。スラおも気にして無いさ』

スラお『するもん!こわいもんっ!』

ホビット『では改めて紹介するよ。わしの友人のスラおだ』

スラお『ぐるるー!』

勇者『は、はぁ……』

勇者(喋るスライム……そんなに知能の高いスライム種が居たんだ……)

勇者『でも、その、見た感じスライムですよね……?魔物なんじゃ』

ホビット『さっきも言ったが、魔物じゃないさ』

ホビット『意思疎通もできるし、魔族が精神の根本に持つ残虐性も加虐心も持っていない』

ホビット『確かに種族はスライムだが、優しくて良い子なんだ。よろしくね』

勇者『……』

スッ

勇者『えっと……スラお、だよね』

勇者『ごめんね、いきなり……これからよろし』

がぶっ

勇者『あたたたた、あっなにこれ微妙な痛さいたいいたい』

スラお『ぐもー』

勇者『ちょっとやめてスラおやめてってば』

ホビット『ふふふ、仲良くするんだよ』

ザッザッ

ムオル勇者『……もう一人紹介しておく』

勇者『ムオル勇者さん。どこへ行ってらしたんですk――……』


ヒョコッ


スー勇者『……』


勇者『!』

ホビット『お?』

ムオル勇者『少し、こいつを捕まえに行っていた』

ムオル勇者『何か妙な気配がすると思っていたら……どうやら俺達がこの大陸に入った時から後をつけて来ていたようだ』

スー勇者『す、すみませんっ!』

勇者『君は、あの時の』

スー勇者『……』

スタスタ


ザッ


勇者『!!!!?』


スー勇者『……』


ホビット『おやおや。いきなり勇者にひれ伏すとは』

勇者『えっ、ちょっと君!?いきなりどうしたの!?』

スー勇者『……ご主人様』

勇者『へっ』


スー勇者『貴方様、わたしの、ご主人様です』

スー勇者『わたし、スー勇者いいます……ご主人様』

スー勇者『なんでも、命令する、ください』


勇者『』

勇者『』

勇者『はんっ?』

ムオル勇者『……俺にも分からんが、お前に仕えると言って聞かんのだ』

スー勇者『…………私の、お師匠様の、命令です』

スー勇者『それしか、話す、できないです……でも』

バッ

スー勇者『なんでも、お手伝いするです!』

スー勇者『お傍に、置く、ください!』

勇者『え、えぇ……?』

ホビット『あっはっはっは!これまた賑やかになりそうだ』


ホビット『いい事だね。それじゃあ、しばらくはこの面々で頑張ろうじゃないか』

…………
……




勇者「……というわけで、今に至るんだ」


「「「どういうワケだ」」」


勇者「ですよね……?」

ポルトガ勇者「まあ、大抵謎のままだったが」チラッ


ホビット「?」


ポルトガ勇者「……この人が、オルテガさんの仲間の、凄い人だって事は分かった」

イシス勇者「まさか、お会いできるなんて……」

ホビット「ふふ、凄くは無いさ。……君はポルトガ勇者だね?大きくなったなぁ」

ポルトガ勇者「えっ!?俺を知ってるんすか!?」

ホビット「そうだね。君とは昔一度だけ会った事があるんだ」

ホビット「……私はオルテガ達と旅をしていた時は他の人間達からは隠れるように過ごしていたから、知人は少ないんだけど」

ホビット「君の父親とは友人なのさ。ポルトガ王が一度君を抱いてオルテガの船に乗って来た事があってね……その時に、一度」

ポルトガ勇者「そ……そうなんすか……」

ホビット「みんなの子が無事に大きくなっているようで、安心だ」

イシス勇者「でも、結局スー勇者ちゃんはどうしてここに?そのお師匠様の命令って」

スー勇者「……」

イシス僧侶「……スー勇者ちゃん?どったの?」

スー勇者「……すみません、言えないです」

スー勇者「でも、悪い事は企んで無いです!本当です!」

ポン

ナデナデ

スー勇者「う?」

勇者「…………最初は、どうしようかとも思ったんだけどさ」

勇者「今では、この子に本当に助けてもらってるんだ」

勇者「まだ詳細は聞いていないんだけど、スー勇者ちゃんが居てくれて良かったって思ってるよ」

スー勇者「……えへへ」

スー勇者「えへへへー♪」ポワワ

イシス戦士「かわいい」ボソッ

スー勇者「ご主人様……♪」スリスリ

勇者「あっ、ちょっとタンマ今ダメだって、本当」

イシス勇者「……」

ポルトガ勇者「イシス勇者目がこわいけど」



カチャッ

スー勇者「それじゃ、片付けるです!」

イシス魔法使い「スー勇者様、私も手伝うわ」

スー勇者「いーえ、休んでいてくださいです!」

イシス戦士「そうはいかん」


<……!…!


イシス勇者「……思ったんだけどさ」

勇者「ん?どしたの?」

イシス勇者「スー勇者ちゃん、共通語上手くなったね?」

ポルトガ勇者「ああ、俺も思った。最後に会った時はもっとカタコトだっただろアイツ」

勇者「あー、本当に上手くなったよね」

ホビット「ははは、勇者が教えてあげているからね。共通語を」

ポルトガ勇者「え?お前が教えてんのか?」

勇者「うん。色々お世話になってるから、何か返せないかと思って」

勇者「スーちゃんに何かないかって聞いたら、『じゃあ共通語を教えて欲しい』って言われてさ」

勇者「教えたら本当に要領良くって驚いたよ。このまま半年もすればペラペラになってるんじゃないかな」

イシス勇者「本当にあの子は凄い子だね……12歳……いや、今は13歳か。そんな年齢とは思えないよ」

勇者「だね。でもそっか、スーちゃん13歳なのか……すごいなあ」

ホビット「んー……少し違うかな」

イシス勇者「え?」

勇者「えっ、と、いいますと」

ホビット「この世界は齢の数え方が独特な国というのが数あってね。スーやジパングが有名かな」

ホビット「君たちとは年齢の感覚が少し違うんだよ」

ポルトガ勇者「えっ……って事はアイツ俺らの感覚で何歳なんすか?」

ホビット「ええと、確かスー族は、生まれた時に一歳で……その次の儀礼でまた……だから」


ホビット「国連規定齢算でいうと、あの子は今11歳だね」


勇者・イシス勇者・ポルトガ勇者「「えっ」」


イシス勇者「えっ、ちょっと待ってください。確かに見た目が幼いなあと思ってましたが」

ポルトガ勇者「って事は、あいつ9歳くらいでもう上級魔法使えて勇者資格取ってたって事か!!?」

ホビット「ああ。そうなるね」

スタスタ

スー勇者「呼んだです?」

勇者「…………本当に凄い子なんだなあ」

ナデナデ

スー勇者「??、?、えへへ?」ポワワ

…………


ぴょんぴょん

スラお「おさらのかたづけ、おわったよぉ」

ホビット「みんなでやると早いね」

クルッ

ホビット「さて、それじゃ勇者。お風呂に入っておいで」

勇者「あ、はい!」

イシス魔法使い「お風呂っ!?」ガタッ

イシス僧侶「うわビックリしたっ」

イシス戦士「驚いたな。ここは風呂もあるのか?」

イシス僧侶「ちょっと失礼だぜイシス戦士ちゃんよぉ」

ホビット「外に作ってあるんだ。お風呂はとても大事なものだからね」

ホビット「体に纏わりついた病の兆候を洗い流せる上に、体もほぐせる」

ホビット「体温が上がって睡眠の助けにもなるし、気持ちがいい。良い事しかないんだ」

イシス魔法使い「その通りですねっ!」

ポルトガ勇者「イシス魔法使いの姉ちゃんテンションがおかしいな」

イシス僧侶「この人お風呂大好き人間だからね……」

勇者「水は昼の間に運んで水釜の中に入れおいたので、後は火を焚いて水を温めて、風呂の木桶に」

スタスタ

スー勇者「もう準備できたです!」

勇者「スーちゃん」

イシス僧侶(良妻かよ)

スー勇者「それじゃ、ご主人様」

勇者「ん?」

スー勇者「バンザイするです!」

勇者「えっ」

スー勇者「脱ぐの、お手伝いするです!」

「「「えっ」」」

ガシッ

スー勇者「それじゃ脱がせるですー」

勇者「わー!!!ちょっとタンマタンマって!!!」

スー勇者「え?あ、すみません!皆さんの前だったでした!」

勇者「いやそれもだけど、自分一人でやるって!!!」

スー勇者「だめです!だってまだ訓練のお疲れで、ふらふらしてるです!!」

イシス僧侶「やはり幼な妻……そしてロリコン……」

勇者「何を言ってやがる!!やめて下さい言いがかりです!!」

イシス勇者「ス、スー勇者ちゃん。勇者くんは男なんだからあまりそういうのは」



スー勇者「でも、まだ一回しか、一緒に入った事ないです」

スー勇者「また一緒にお風呂したいです」



一同「「「  」」」

勇者「ン―――――――スーちゃんン―――――――――ッッ」

ポルトガ勇者「勇者……お前」

勇者「違うの……あの時は、本当に、体動かなくて……意識も朦朧としてて……」

イシス勇者「勇者くん」

勇者「はい」

イシス勇者「何やってんだきみ」

勇者「怖ぇ」

ポルトガ勇者(なんでこいつ怒ってんだ)

スー勇者「でもでも、本当にご主人様ふらふらです!」

スー勇者「誰かが入れてあげないといけないです!」

勇者「だったら明日の朝入るってばぁ!本当に大丈夫だよ!」

イシス魔法使い「あら……だったら」

スル…


イシス魔法使い「私が、ご一緒する……?」


勇者「ザオッ!!?」

イシス勇者「な、何言ってんだ――――!!!!!!!」

イシス魔法使い「だって、確かに勇者くんかわいそうだもの」

イシス魔法使い「私もお風呂お借りしたいし……ついでに……」

スッ…


イシス魔法使い「……――ねっ……?」フゥッ

勇者「ほ、はおぉぉっ……!!!!!」


イシス僧侶(うわあ、イシス魔法使い、イシス勇者様をからかう気マンマンだぁ)

イシス僧侶(私も乗ろう)

スッ

イシス僧侶「でもぉ……勇者くんがいいなら、私も背中」

サワッ…

イシス僧侶「ながして……あげよっか……?」

勇者「な、ナオォォッ……!!!?」ドクンドクンドクン

イシス僧侶(あ、かわいいな勇者くん)

イシス戦士「っき、貴様らっ!!不潔っ!不潔だ!!!」

イシス勇者「そそそそそそそそそそうだよ!!!何を言ってるんだ!!!」

イシス僧侶「イシス戦士も勇者くんの体、洗ってあげようよー」

イシス僧侶「……――すみずみまで……ね……?」

勇者「ンブゥッ!!!!」ブチャァッ

ポルトガ勇者(鼻血が)

イシス戦士「~~っ……!!!!」

イシス戦士「…………っ」

スッ

イシス戦士「…………お前には、か、借りが、あるしな……」

イシス戦士「あまり……見ないで、くれるなら」

勇者「ンブブグゥ!!!!!」ブチャチャァ!!!

ポルトガ勇者(コイツよくちょっと前まで女所帯の中で旅できてたな)

イシス勇者「だ……っ」


イシス勇者「だめ―――――っ!!!」


ドンッ!

イシス魔法使い「きゃっ!?」

イシス僧侶「ぐえっ!?」

ギュッ!!

イシス勇者「ゆ、勇者くんは」

イシス勇者「勇者くんは僕と一緒に入るんだ!!!!!」


イシス魔法使い・イシス僧侶「「何言ってんだ―――――――――!!!!」」


イシス僧侶「だめに決まってるっしょ!!混乱しすぎだって!」

イシス魔法使い「ちょっと、からかったのは謝るから、落ち着いて、ねっ?」

ポルトガ勇者「いやアンタらが一緒に入るより男のイシス勇者が入ったほうが普通な気がするんだけど」

ポルトガ勇者「……」

勇者(くっ、クソっ……!!!イシス勇者くん相変わらずいい匂いがする……!!!)ギリッ

イシス勇者「っ!」ギュー

ポルトガ勇者(なんで勇者の野郎イシス勇者に抱きつかれながらしかめっ面で鼻の下伸ばしてやがんだホモかこいつマジで)


スー勇者「わたしがお供するです!」


イシス勇者「僕が一緒に入る!!」


イシス戦士「いやここは私がっ!」


イシス僧侶・イシス魔法使い「「なんでアンタが張り合ってんだ!!」」

ワーワー!!

ホビット「あははは、勇者はなかなかモテるね。オルテガの昔を見ているようだよ」

ポルトガ勇者「一人男混じってるんすけどね」

ホビット「ん?ああ……うん。そうだね。しかし賑やかで良い事だ」

ポルトガ勇者「……」

<ギャーギャー

ポルトガ勇者「……はあ」

スタスタ

ガシッ

勇者「ふぇっ?」


ポルトガ勇者「おらっ、勇者。俺と一緒に風呂入んぞ」


「「「えっ」」」


ポルトガ勇者「俺は男だし一緒に入るのが手っ取り早えだろ?ほら、掴まれ」

勇者「…………うん!!!!!」

ガシィッ!!!!

勇者「よろしくっ!!!!!」

ポルトガ勇者(なんでこんな返事が力強ぇんだよホモじゃねえよなコイツマジで)

ポルトガ勇者「っつう事で、男は男で入ってくるぜ」

イシス魔法使い「まあ、普通そうよね。お願いするわ」

イシス戦士「……そ、そうだな」

イシス僧侶「なんでテンション低くなったんイシス戦士」

ポルトガ勇者「つうワケだが、イシス勇者」

イシス勇者「えっ?」


ポルトガ勇者「お前も来いよ」


イシス勇者「…………ンッ」

ポルトガ勇者「勇者と一緒に風呂入りたかったんだろ?男同士たまには付き合え」

勇者「そうだね!イシス勇者くんももしよかったら」

イシス勇者「えっ!?いや、あのその」

イシス勇者(しまった、勢いであんな事言ってしまったけど)

イシス僧侶「あ、あのっ!やっぱりイシス勇者様は私達が一緒に入らないと」

ポルトガ勇者「ああ?何言ってやがんだよ。男嫌いつっても風呂くらいは一緒に入れんだろが」

イシス魔法使い(あ……ちょっとまずいわねコレ)

イシス戦士(どうする……!?)

イシス勇者「いや、えっと……僕は」

ポンッ

イシス勇者「え?」


ホビット「ちょっと、イシス勇者君には頼みごとがあるんだ」

ホビット「君たちだけで入っていなさい」


勇者「先生」

ポルトガ勇者「頼みごと?」

ホビット「ああ。ちょっとイシスの事で聞きたい事があってね」

ホビット「ちょっと、来てくれるかい?イシス勇者くん」

イシス勇者「は、はい!」

スタスタ

ポルトガ勇者「ま、いいか。よし行くぞ勇者」

勇者「うん……あいててててて!!」

スー勇者「ご主人様、お気をつけてです……」


イシス僧侶(た、助かった……)

イシス魔法使い(変にからかうものじゃないわね……)

イシス戦士(風呂くらいなら、その……良かったのだがな……)


――ホビットの祠の外・森――


スタスタ

イシス勇者「あの、お話というのは……?こんな森の中でする必要が」

ザッ

ホビット「……ま、ここらでいいかな。連れ出してごめんよ」

イシス勇者「い、いえ」

イシス勇者(逆に凄く助かりました)

ホビット「あのままいくと君が女の子だとバレてしまうからね」

イシス勇者「あはは……はい」





イシス勇者「――――――――え」





ホビット「ん?」

イシス勇者「なっ、なにを仰って」

ホビット「ああ、わしには隠さなくて大丈夫だよ」

ホビット「……どれ、顔をよく見せてくれるかい?」

スタスタ

スッ


イシス勇者「……」


ホビット「……ああ」

ホビット「目が、君の父さんに……――サイモンに、そっくりだ」


イシス勇者「…………御存知、だったんですか」


スッ

ホビット「……一目見た瞬間に分かったよ」

ホビット「オルテガがサイモンの娘をイシス王に預けたと言っていたしね」

イシス勇者「……」

ホビット「……無事で良かった。本当に」

ホビット「イシス王には……イシスの人々には、感謝しなくてはいけないね」

イシス勇者「…………――はい」

ホビット「と、まあそれは一旦置くとしよう」

イシス勇者「え?」

ホビット「言ったろう?イシスの事で聞きたい事があると」

イシス勇者「あ、はいっ、なんでもお聞きください!」

ホビット「では……ええと、ね」

ホビット「イシスに、ある人物が住んで居ると思うんだ」

イシス勇者「え?」

イシス勇者(ある人物……?)

――――――――――――――



――イシス・とある広場――



ガヤガヤ…


「……」


女の子「……ねーねー」

「なんですかな?お嬢さん」

女の子「なにをしてるの?」

「夜を待っているんだよお嬢さん」

女の子「よるを?でもまだあさだよ?」


「そうですな。だからこそ夜が待ち遠しい」

「このような朝など消えてしまって、夜が来ないかなぁ……と思案に耽っているのだよ」


女の子「……?」



ザッザッザッ


「……」


女の子「あー、へいたいさんだ」


「お嬢さん。おじさんはこの兵隊さんとお話があるんだ」

「さようなら」


女の子「うん!さよならっ」

タッタッタ


「……さて、何の用です?」



――――――――――――――



ホビット「特別騎士――……勇者が国連で制定された際の、最初の四人」


ホビット「この四人は、伝説の勇者としても語り継がれているから知っているだろう?」




ホビット「“明星”夜明けのオルテガ」




ホビット「“月光卿”瞬きのサイモン」




ホビット「“東方の魔女”屠リベのヒミコ」




ホビット「……――そして」





ザッ



騎士団長「……初にお目にかかります」


騎士団長「私は国連の者です」


騎士団長「貴方様に、お願いがあって参りました」






――――――――――――――







ホビット「……――“皇帝”糾えるソクラス」







――――――――――――――





ソクラス「……ああ、良かった」


スクッ



ソクラス「やっと、退屈な“朝”が終わりそうだ」

今日はおしまいです


――――――――――――――


イシス勇者「ソクラス様……ですか?はい、確かにイシスに住いを持っておられますが」

ホビット「……ムオル勇者から聞いたんだけれど、国連は彼を頼る事にしたらしいね?」

イシス勇者「ええ。この間の国連首脳会議で決まりました」

ホビット「……」

イシス勇者「……あの、ソクラス様が何か?」

ホビット「……ソクラスがイシスに居る間、彼は何か目立つ行動をしたかい?」

イシス勇者「え?いえ……ソクラス様はずっと隠居なされていました」

イシス勇者「もとより、ソクラス様が勇者を引退されてイシスに隠居されたのは大病を患っての事でしたし、ほぼお会いする事もありませんでした」

イシス勇者「今回の協力を仰いだのも魔王バラモスの情報を得る為、そして国連の士気を高める為に知識と名前を拝借するという事なので――……」

ホビット「ふふっ……」

イシス勇者「?」

ホビット「あのソクラスが、大病……ね」

ホビット「でもそうか。ソクラスが君やイシス女王ちゃんに何かをしたという事もないのだね」

イシス勇者「え?そ、それは勿論」

ホビット「……なら、いいんだ」

イシス勇者「ちょっと……待ってください、ホビット様」

イシス勇者「その言葉から察するにソクラス様が僕や姉に何かする可能性があったのですか?」

ホビット「いや、そういうワケではないさ。ただ少し不安だったんだ……それだけだよ」

ホビット「ただ、隠居をやめて国連に身を戻した彼には気をつけなさい」

イシス勇者「な、なぜなのですか……?もしや、あの方も魔族か何か――……」

ホビット「ううん。彼は正真正銘の人間だ……ただ」

ホビット「“危険”なんだ。まだ魔物の方がやりやすいかもしれない」

イシス勇者「……どういう……?」

ホビット「……彼は、欲しいものを見つけたら、それに向かって感情に率直に動く」

ホビット「そして、躊躇なく壊す。人間も、魔物も」

イシス勇者「……」

ホビット「……とにかく、気を付けておくれ」

ホビット「君も、イシス女王ちゃんも」



……


――ホビットの祠・外・風呂――


ザパ…



勇者・ポルトガ勇者「「ふは――――っ」」ザパァン


勇者「あー…………しあわせ」

ポルトガ勇者「なんだこれ……天国かオイ……」

勇者「僕も最初使わせてもらった時……昇天しそうになったよ……」

ポルトガ勇者「風呂桶も広いし、外に置いてるのに綺麗だな」

勇者「あっ、そっち火を焚いてる水甕と近いから気を――」ザパ

フラッ

勇者「はれっ……」

ガシッ

ポルトガ勇者「っとと……オイいきなり立ちあがんなよ。ろくに立てもしねえんだから」

勇者「ごめん……」

ポルトガ勇者「……」

勇者「ん……?どしたの」

ポルトガ勇者「いや」

ポルトガ勇者「お前それ立てたら一人で立てるんじゃねえの」

勇者「え?それ?って何が」

ポルトガ勇者「……なんでもない」

勇者「?」


ザパ…


勇者「ふぅ……」

ポルトガ勇者「……しっかしよお」

ポルトガ勇者「お前、生傷多過ぎだろ。フラフラしてやがるし」

ポルトガ勇者「特訓ってなにやってるんだよ。無茶なことしてんじゃねえのか?」

勇者「いや……そんな事は」

ポルトガ勇者「無茶してんだろ」

勇者「……」

ポルトガ勇者「……」

勇者「……ちょっとでも、無茶しないと……強くなれない体だから」

勇者「無茶で強くなるなら、僕は死ぬギリギリまで無茶してみたいんだよ」

ポルトガ勇者「バカヤロウお前」

ぴし

勇者「あいた」

ポルトガ勇者「お前はそれでいいかもしんねえが、お前のツレの女達の事も少しは考えてやれや」

勇者「っ」

ポルトガ勇者「……あの後も何回か会ったが、驚くほどに覇気が無くなってやがったぞ」

ポルトガ勇者「体は大切にしてろよ、ホント」

勇者「……ん」

ポルトガ勇者「お前が魔物でもなんでも、死んだら悲しむ奴は居るんだぜ」

ポルトガ勇者「無茶は美学でもなんでもねえぞ」

勇者「……」

ポルトガ勇者「ま、言ってもするんだろうけどな」

勇者「…………やりすぎないようには、するから」

ポルトガ勇者「……ああ」

ザパ

ポルトガ勇者「ところでお前」

勇者「ん?」


ポルトガ勇者「あの女達の中で、どいつがお前の女なんだ?」


勇者「えっ」

ポルトガ勇者「まさかとは思うが全員とかじゃねえだろうなお前」

勇者「えっ、えぇっ!?いやいや、違うって」

勇者「女って……みんなただの幼馴染だよ」

ポルトガ勇者「え?マジで?」

勇者「マジもオオマジ。そんな関係じゃないって」

ポルトガ勇者「えーそうなのか……いや、やけに仲良さそうだったしお前の事気にかけてる奴多かったからつい」

ポルトガ勇者「それにお前に初めて会って嘘ふっかけた時お前もやたらキレてたからさ」

勇者「いやいや。みんな昔から一緒だからさ。勿論皆大切だけど、あいつらは僕の事なんて出来の悪い弟くらいにしか思って無いよ」

勇者「年下の……女勇者にも……遊び人にも……多分……そう、思われてる……弟って……」

ポルトガ勇者「自分で言ってて落ち込んでんじゃねえよ」

勇者「そ、そーいうポルトガ勇者はどうなのさ!」

勇者「好きな人とか彼女とかいちゃうんじゃないの――!?」

ポルトガ勇者「居るけど」

勇者「アッ、すいません」

ポルトガ勇者「結婚の約束もしてるけど」

勇者「調子乗ってすみませんでした」

――――――――――――――



ぷにぷに

イシス魔法使い「イシス勇者様……どうしたのかしら」

ぷにぷに

イシス僧侶「まあまあ、気長に待とうよ。ホビット様と大事な話があるんでしょ」

ぷにぷに

イシス戦士「……」

スタスタ

スー勇者「みなさん!お茶淹れたです――……あら?」


スラお「スーちゃん」


イシス魔法使い「あらスー勇者様」プニプニ

イシス僧侶「そんなおかまいなく」プニプニ

イシス戦士「スラおかわいい……」プニプニ

スラお「みんながつついてくるよ?」プニプニ

スー勇者「スラさんは気持ちいいですので、仕方ないのです!」

スラお「そうなの?」プニプニ


……

カチャ

イシス魔法使い「はー……おいしい」

イシス僧侶「さっきまでの大陸徘徊が嘘のようですなあ」

スー勇者「お疲れ様でした」

イシス僧侶「正直さっきのさっきまで勇者くん探し出せるか自信なかったからね」

イシス魔法使い「でも見つかってよかったわ」

スラお「みんなはゆーしゃをさがしにきたの?」

イシス戦士「んー?そうだぞー」プニプニ

スラお「へんなのっ!」

イシス魔法使い「あらあら、スラおくんあんまりね?」

イシス僧侶「そういえばスラおくんってなんだか勇者くんのこと嫌ってたよね」

イシス戦士「勇者の事、嫌いなのか?」

スラお「きらいっ」

イシス僧侶「えーどうしてさ。いい子だよ?」

スラお「……」

イシス僧侶「ん?お姉さんにどうしてか言ってごらん?」

イシス僧侶「ようし!もし勇者くんが何か悪さをしたならお姉さんが叱ってあげ――……」

スラお「ふたり、いるの」

イシス僧侶「……――え?」



スラお「あいつ、ふたりいる」


スラお「おなかのなかで、ぼくをころそうとしてるやつがいる」


スラお「ぼくだけじゃなくて……スーちゃんも、おじちゃんもムーくんも」


スラお「みんなも、ころそうとずっと、ずっとみてる」


スラお「あいつのなかを、ぐるぐるしてる、おおきいやつ」


スラお「……だから、きらい」

イシス戦士「……っ……」

イシス僧侶「それ……って」

イシス魔法使い「…………まさか」


スー勇者「……スラさん、だめです」


ギュッ

スー勇者「…………ご主人様自身は、いいひとですよ」

スー勇者「お日様の匂い、するです」

スラお「スーちゃん……でも、ゆーしゃも、やっ」

スラお「あいつ、ぼくのこときらいだもん」

イシス魔法使い「え?そんな事はないんじゃない?」

スラお「んーん。あいつ、ぼくのことこわがってるし、いやがってる」

スー勇者「……」

スラお「……なかよくなんか、なれないもん」

イシス僧侶「……そんな、事」

イシス戦士「……」


スタスタ


ポルトガ勇者「おいーっす。戻ったぜ」

勇者「お風呂あきましたよー」


ぴょんっ


勇者「え?」

ガブゥッ

勇者「あいたたたたこのなにあの微妙な痛さいたたたたたスラおやめて」

スラお「うるひゃいもんっ!ゆーしゃきらいっ!」グムム

勇者「なにさいきなり!!?」


<ギャーギャー!


イシス魔法使い「……仲、良くない?」

イシス僧侶「いいよね」

イシス戦士「かわいい……」

……………
……






―ホビットの祠・大広間―


ホビット「それじゃ、イシス勇者君とイシスのお嬢さん方の寝床はここでいいかい?」

イシス勇者「はい。色々と申し訳ありません」

テコテコ

スー勇者「お布団、持ってきたです!」

イシス魔法使い「ちょっとそこ空けてもらえるかしら、イシス勇者様」

イシス勇者「ああ、ごめんよ。スー勇者ちゃんもありがとう」

スー勇者「いいえー」ニコー

イシス僧侶「スー勇者様ちゃんもお姉ちゃん達と一緒に寝るかーい?」

スー勇者「あ、いえ、私は」

勇者「あー、いいじゃない。今日は一緒に寝るといいんじゃないかな」

スー勇者「ご主人様」

勇者「お姉さん達もいるし、仲良く寝るといいよ。うん。いいと思う」

イシス魔法使い「……勇者くん?」

勇者「はい?」

イシス魔法使い「気のせいかしら……なんだか焦ってない?」

勇者「いいえっ?」

イシス勇者「……勇者くん、僕の目を見てくれるかい」

勇者「なんだいっ」

イシス戦士「……スー勇者」

スー勇者「はい?」

イシス戦士「スー勇者はいつもどこで寝ているのだ」


スー勇者「はい!ご主人様と一緒に寝てます!」


勇者「違うんです!!!」

イシス勇者「何が違うんだいこのっ!!!!」ギリギリギリ

勇者「いたいたいたいたたたた!!!!ちがうのです!!!」

スー勇者「違いませんです?」

勇者「スーちゃんやめて!」

ポルトガ勇者「お前、ちょっとスー勇者にべったりすぎやしねえか?」

スー勇者「でもっ!ご主人様のせいじゃないです!」

スー勇者「いろいろと、わけがあるので……その」

ホビット「ははは、まあ皆おちついておくれ」

イシス勇者「ホビット様」

ホビット「二人に一緒の場で寝るよう言ったのはわしなんだよ。勇者をはなしてあげてくれるかい?」

ポルトガ勇者「えぇっ!?なんでまたそんな事を」

ホビット「色々あるのさ」

勇者「……色々あるんです」

イシス勇者「……やましい気持ちは無いんだね」

勇者「無いです」

イシス戦士「…………スー勇者、こいつになにかいやらしい事されなかったか」

勇者「無いです!!」

スー勇者「えっ……」

勇者「無いで……えっ?」

スー勇者「あっ、その……ちがうです、あれは」

スー勇者「……その。事故です、から」

勇者「えっ、ちょっと待って何それ初耳なんだけど」

イシス勇者「成敗しなきゃだよね」ギリギリギリギリ

勇者「スーちゃんちょっと僕が一体何したのスーちゃキエァァアアアアアアアアア」ギググググッ

今日はおしまいです



……
…………


ホー ホー


――ホビットの祠・勇者の部屋――


勇者「さて、もう灯り消していい?ポルトガ勇者」

ポルトガ勇者「あー、ちょっと待ってくれ」カリカリ

勇者「さっきから何を書いてるの?」

ポルトガ勇者「日記だよ。ホレ」

勇者「ん……おー、細かくつけてるんだね」

ポルトガ勇者「ああ。できるだけその日あった事を細かくつけてる」

ポルトガ勇者「で、この本一冊が埋まったらポルトガに帰るようにしてんだよ」

ポルトガ勇者「……何があるかわかんねえ旅だからな」

勇者「……」

ポルトガ勇者「…………そろそろ乾いたかな」

パタン

ポルトガ勇者「っし。待たせたな。寝ようぜ」

勇者「うん。じゃあ消すね」


フッ


勇者「おやすみ」


ポルトガ勇者「おう」


ホー ホー

勇者「……」

ポルトガ勇者「……」

勇者「ポルトガ勇者」

ポルトガ勇者「ん?」

勇者「……もし、僕に異変があったらすぐスーちゃんの所に逃げて」

ポルトガ勇者「えっ……お前」

勇者「……」

ポルトガ勇者「……――わかった」

勇者「……ごめんね」

勇者「まあ、スーちゃんは何かあったらすぐ起きて駆けつけてくれるから心配は無いと思う」

ポルトガ勇者「ああ」

勇者「……怖がらないの?」

ポルトガ勇者「俺はお前自体は悪い奴じゃねえって知ってるからな」

ポルトガ勇者「じゃなきゃこんな所までお前の様子を見に来ねえって」

勇者「…………ん」

勇者「ありがとう……おやすみ」

ポルトガ勇者「……ああ」



チリリリリ… チリリリリ…



勇者「……」

ポルトガ勇者「……」

ポルトガ勇者(……寝たかな?)チラッ

勇者「……」

ポルトガ勇者(寝たみてえだな)

ポルトガ勇者「……」


『俺にも息子が居るんだ』

『お前の何歳か年下なんだがな、こいつがまた泣き虫で』


ポルトガ勇者「……」


『……旅をしたいってきかないんだ。俺が何を言っても』

『なあ、ポルトガ勇者。もし、もし俺の息子が旅に出てお前と出会ったら』

『できれば旅をするのをやめさせてくれないか』

『あいつは、戦ってはいけないんだ。戦う為に生まれたんじゃない』

ポルトガ勇者『……やめさせればいいのか?へんなのー』

『ははは、確かにそう思うかもしれんがな』

『――もし、お前とあいつが出会った時、あいつが腑抜けた顔していたら』

ニカッ

『遠慮はいらん。ぶん殴ってやってくれ』



ポルトガ勇者「……」


勇者「……」


ポルトガ勇者「……」

ポルトガ勇者(悪ぃ、オルテガさん……あの約束は守れそうにもねえや)

ポルトガ勇者(多分あんたがあんな事言ったのはこいつの正体に気付いてたからなんだろうな)

ポルトガ勇者(……どうやら、あんたの心配は形になっちまったみてえだ)

ポルトガ勇者(……――ただ)

ポルトガ勇者(ぶん殴るのは、必要ないぜ)

ゴロン

ポルトガ勇者(あ……やべ、瞼が)

ポルトガ勇者(ずっと歩き通しだったから、疲れが、圧し掛かって)

ポルトガ勇者(くる……)

ポルトガ勇者「……」

…………
……




ムクッ…


勇者「……」


ポルトガ勇者「かー……くかー……」zzz


勇者「……」

バサ…

スタ… スタ…


カチャカチャ


スタ… スタ…



――ホビットの祠・外――


スタスタ

勇者「……」


ムオル勇者「……来たか」


勇者「はい」

ムオル勇者「ポルトガ勇者は」

勇者「眠っています。昨日疲れたのかぐっすり快眠していました」


タッタッタ

スー勇者「……おはよう、ございます」


勇者「おはよう、スーちゃん」

スー勇者「おはようございますっ、ご主人様」

ムオル勇者「……行くぞ。日が昇るまではまだ時間がある」

勇者「……はい」



――――――――――――


ホー ホー


イシス勇者「……ん」

ムク…

イシス勇者「……」

イシス勇者(……まだ薄暗い……肌寒いし、日の出は少し遠そうだ)

ブルッ

イシス勇者(寒い……皆大丈夫かな)チラッ

イシス勇者(……あれ?)


イシス魔法使い「すー……すー……」zzz

イシス僧侶「んこー……くこー……」zzz

イシス戦士「むにゃ……」zzz


イシス勇者(あれれ、スー勇者ちゃんは?)キョロキョロ

イシス勇者「……トイレ、かな」


―――――――――


スタスタ…

イシス勇者「……薄暗い」

イシス勇者(でも灯りをいちいち用意する程でもないな)


オォォォオォ…


イシス勇者(……本当に広い建物だ)

イシス勇者(なんの為に作られたんだろう……結構古そうだけど)

スタ…

イシス勇者「!」

イシス勇者(あ、ここ、勇者くんの部屋かな?)

イシス勇者「……」


イシス勇者(あれ、なんだろう、やな予感がする)


ザッ

イシス勇者「……」


ポルトガ勇者「くかー……」zzz


イシス勇者「……勇者くん?」

キョロキョロ

イシス勇者「……」

イシス勇者「……っ」



ユサユサ


ポルトガ勇者「ふがふっ、んあ?」

イシス勇者「ポルトガ勇者君、起きて」

ポルトガ勇者「んあ……?んだよ、イシス勇者……」

イシス勇者「勇者くんは?」

ポルトガ勇者「え?そこに居んだろ……」

ポルトガ勇者「……あれ?」

ムクッ

ポルトガ勇者「……――あいつ、どこ行った?」

イシス勇者「スー勇者ちゃんも居ないんだ」

ポルトガ勇者「……探してみるか」

イシス勇者「うん」


…………


スタスタ…

イシス勇者「やっぱり祠の中には居ないね」

ポルトガ勇者「ああ、荷物はあるからどっかに行ったってワケじゃなさそうなんだが」



――ホビットのほこら・外――


ザッ

イシス勇者「……外に居るのかな」

ポルトガ勇者「まだ薄暗いのにか?こんな森の中に何しに行くっつうんだよ」

クルッ

ポルトガ勇者「もう戻って寝ようぜ。攫われたんなら俺らが気付かねえはずねえし、大丈夫だろ」

イシス勇者「……うん」

スタ







ポルトガ勇者「……イシス勇者」


イシス勇者「……うん。聞こえた」


ザッ

ポルトガ勇者「……あっちか」

イシス勇者「だね。昨日も聞いた音だ」

イシス勇者(剣と剣が、触れ合う音)

ポルトガ勇者「……――行ってみる、か?」

イシス勇者「……う、うん」




「行って、どうするんだい?」


イシス勇者・ポルトガ勇者「「!!!」」

ズザァッ!

イシス勇者「ホ、ホビット様……」


ホビット「やあ、おはよう」


イシス勇者「お、おはようございます」

ホビット「行ってどうするんだい?面白いものではないよ?」

ポルトガ勇者「……あいつ、何やってるんすか」

ホビット「頑張ってるんだよ」

イシス勇者「……」

ポルトガ勇者「……」

ホビット「……ふふ」

ホビット「勇者もどうやら、心配性な友人を持ったみたいだね」


スタスタ


ホビット「……邪魔しないと誓えるなら、ついておいで」

ホビット「ただ、“絶対に何もしてはダメだ”」


スタスタ…


イシス勇者「……」

ポルトガ勇者「……」

イシス勇者「……行こう」

ポルトガ勇者「……ああ」


スタ…


スタスタ…



―――――――――――――


――森の中――


ザッザッ…


イシス勇者「……」

ポルトガ勇者「……」

イシス勇者(背の高い木が生い茂って、祠の辺りより薄暗い)

ポルトガ勇者(霧も濃い……マジで何をやってるっつうんだアイツ)



ザッザッザッ……


ホビット「……君達は」

イシス勇者「え?」

ホビット「君達は、強いかい?」

イシス勇者「……ん、はい?」

ポルトガ勇者「えっと……まあ、はい。腕には自身あるっすよ」

ホビット「では……どうやって君達は強くなった?」

ポルトガ勇者「……どうやって、すか?」

ポルトガ勇者「それは……まあ、鍛錬したり、魔物を倒したりして」

ホビット「……うん。そうだろうね」

イシス勇者「……?」

ホビット「お」

ザッ

ホビット「丁度いい。人間くらいの大きさの岩だ……ポルトガ勇者」

ポルトガ勇者「はい?」

ホビット「この岩を破壊してみてくれるかな」

ポルトガ勇者「……え」

ホビット「身構える必要もない。とんちでも謎かけでもないよ」

ポルトガ勇者「えっと……了解っす」

スッ


ポルトガ勇者「ほっ」


ドゴォン

パラパラ…


ポルトガ勇者「えっと、これでいいっすか?」

ホビット「ああ、ありがとう」

ポルトガ勇者「あの……これ何の意味あったんすかね」

スタスタ

スッ…

ホビット「……君はこれを素手で砕いたね」

ポルトガ勇者「?は、はい」

ホビット「これは、誰にでもできると思うかい」



ポルトガ勇者「やあ、まあ……こんくらいなら少し鍛えりゃ誰でもできるんじゃないすかね」

イシス勇者「それほど大きい岩でもないですし」

ホビット「……ふふ、そうだね。ただわしは思うんだ」


ホビット「これを当たり前だと思っているわしたちがおかしいのでは、とね」


イシス勇者「……え?」

ホビット「少し、歩きながら聖書の話をしよう」

スタスタ

ホビット「わしらがどうして生まれたか知っているね?ルビス様が作られたからだ」

ホビット「大精霊の一人であったルビス様が、精霊戦争の後にこの大地と……わしらと、動物を作った」

ホビット「その証拠として、わしらには加護がある。傷を負っても癒す術がある」

イシス勇者「はい。それは分かります」

ホビット「……ただ、それらはわしらの力ではない」

ホビット「それは“ルビス様の加護”だ。わしら人間の能力ではない」

ポルトガ勇者「……何が言いたいんすか」

ホビット「例えば手のひらに斬り傷を負う。これを直す際は、たいてい治癒魔術を使うが……使わない場合はどうなるね」

イシス勇者「それは、傷の完治に時間がかかりますが」

ホビット「そう。時間がかかる。それさ」


ホビット「わしらの限界は、恐らくそれなんだよ」


ホビット「わしらの限界は、傷の完治に、これっぽちの傷だけで相当な時間がかかる、“そこ”だ」


ホビット「わしら生き物は、実はそんなに強くないんじゃないか?」


ホビット「わしら生き物は、ルビス様の加護を、人間の当たり前の力として認識しているんじゃあないかな?」


イシス勇者「……」

ポルトガ勇者「……」


ホビット「……だったら、このわしらの。先ほどのポルトガ勇者のような力は、どうだ」

ホビット「なぜ、火贈りの儀式の前と後で、身体能力が均一に育たない?」

ホビット「……なぜ」



ホビット「なぜ、魔物を殺せば殺すほど。目に見える様に強くなる?」



ポルトガ勇者「……そ、そんなの」

ホビット「そうさ。誰にも分からない。ただの仮説さ。わしが勝手に考えた、ね」

ホビット「でも不思議でならなかったんだ。昔から」

ホビット「何故、魔族を殺すと力が異様な程に得られるか……強くなれるのか」


ザッザッザッ


ホビット「……そしてわしは、一つ思った」


ホビット「魔族は、原初の精霊達の怨念から生まれた、と聖書に書いてある」


ホビット「そしてそこに人間の怨念がそそぎこまれ、今の魔族になった……とも」


ホビット「……魔族は怨念の塊だ。もしそれが、本当ならば」


ピタ

クルッ




ホビット「“怨念”を。殺して、殺して。殺して」


ホビット「ルビス様の加護で、それを力に変換して、繰り返して」



ホビット「……わしらは、怨念を纏って、怨念と戦っているのではないかね」


ホビット「“それ”を、強さと誤認して」



イシス勇者「……」

ポルトガ勇者「……」


ホビット「……わしらが、強くなっているのは」

ホビット「ルビス様の加護で変換された、怨念の芥の力によるものなのではないかね」


ホー ホー


イシス勇者「……そ」

ポルトガ勇者「な、なにを言ってるんすか」

ホビット「……ちょっと、意地が悪い話だったね」

ホビット「老人の戯言さ。わらっておくれ」

クルッ

スタスタ…

ホビット「……勇者は、ルビス様の加護がない」

ホビット「つまり、さっきの説が本当と仮定するならば、怨念を力にする術がない」


イシス勇者「……」

イシス勇者「……」

イシス勇者「……あ」


――――――――――――――


イシス勇者『(今日一日、勇者君の動きを見てたけど…………)』

イシス勇者『(あれは、なんて言えばいいんだろう)』

イシス勇者『(なんらかの……妙な違和感を感じる)』

イシス勇者『(なんて言うのか…………)』

イシス勇者『…………』

イシス勇者『……“まるで最初から強くなる事を許されていない”様な……』


――――――――――――――


ホビット「合点がいかないかい?」

ホビット「あの子が、皆に劣るのは……あの子が弱いからじゃない」


ホビット「あの子は人間だ」


ホビット「あれが、人間本来の姿なんだ」


イシス勇者「……」

ポルトガ勇者「……」

ホビット「……そう、思うのさ」

ホビット「ただ、それで納得していては。あの子は進めない」

ホビット「だったらあの子の気が済むまで、人間本来の限界を目指さなければならない」

ホビット「だからあの子は頑張らなければならないんだ」

ポルトガ勇者「……頑張るって……」

イシス勇者「どうすれば、人間本来の、限界なんて……」

ホビット「……本当なら、相当時間がかかる話だろうね」

ホビット「わしらルビスの加護持ちの人間と同じような無茶をさせれば、あの子は容易く死ぬ」


ホビット「だが……スー勇者ちゃんが居る」


イシス勇者「え?」







ばちゃあっ





勇者「いぎぃぃいいいぁああぁああああっ!!!!!!!!!」






どちゃあっ!!!!



勇者「おご、うぶっ」



バチャバチャバチャ



ジャキン



ムオル勇者「……何故今のを避けなかった」


勇者「おえっ、うびゅっ」


バチャバチャバチャ


ムオル勇者「今、俺が敵ならお前の首は地面に転がっている」


ムオル勇者「俺の一閃を何故避けなかった」


ムオル勇者「何故避けなかったと聞いている」


勇者「きひぃっ、きひぃっ」



ギリッ

ググ


勇者「あーっ、はーっ……っっっっあ”ッ」



ムオル勇者「立つならすぐに立て。脳に刻み込め」


ムオル勇者「今の一閃を避けなければ、今のお前のようになる」



ぼとぼとっ ぼとぼとばちゃばちゃぁっ



勇者「いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」




ムオル勇者「……臓物をしまえ。馬鹿者が」




イシス勇者「っ……っ……」


ポルトガ勇者「おい……おいおいおいおい」


ホビット「……言ったね?二人共」

ホビット「絶対、何もするんじゃない」

ホビット「水を差したら、ただじゃおかないよ」





勇者「があっ、がああああ!!!!!!!!!!!」


タッタッタ!!


スー勇者「ご主人様!!!!」

ザッ

スー勇者「“ベホイミ”!!!」


パァァァァァァァァ……


勇者「がふっ、が、くぁっ……!!!!」


スー勇者「っ……!!」



ムオル勇者「……今のは、避けられた筈の攻撃だ」

ムオル勇者「もし俺が敵ならば、スー勇者が居なければ、お前はこの世には居ない」


スゥゥゥ…


スー勇者「……できました」

勇者「はぁっ……!!はぁっ……!!」

ポン

勇者「ごめん……スーちゃん……」

勇者「ごめん……」

スー勇者「……」ギュッ


ギリッ


ザッ


勇者「もう、一度ッッ……お願いします!!!!!」


ムオル勇者「ならば早く立て愚図が」

イシス勇者「……勇者くん……っ」

ホビット「……スー勇者ちゃんは、なぜかは教えてくれないが勇者を治癒させる事ができる……その力を利用させて貰っているんだ」

ホビット「勇者は今までも相当鍛錬をしてきたらしいけれど、本当に“死ぬまで”やった事は無かった」

ホビット「だから、ああやって本当の危険を体に覚えこませる」

ホビット「“死”を体に何度も覚えさせる……それが、必要だ」

ポルトガ勇者「でもよっ……!!!!……さすがにあれはやりすぎじゃっ」

ホビット「わしら、ルビス様の加護のある人間がいつもやってる方法だよ」

ポルトガ勇者「……」

ホビット「わしらは、魔族相手に挑んで殺されても……体の一部分があれば蘇生できる」

ホビット「だからこそ、魔族に何度でも牙を向ける事ができる」
            ゲーム  
ホビット「……まるで。“遊戯”みたいに、ね」

ホビット「それを否定できるかい?」

ポルトガ勇者「……」

イシス勇者「……」

ホビット「…………さあ、帰ろう」

ホビット「あの子も君達に、こんな所を見られたくない筈だよ」




…………―――――――



ザッザッザッ


イシス勇者「……」

ポルトガ勇者「……」

ホビット「……」

ポルトガ勇者「……ホビットさん」

ホビット「ん?」

ポルトガ勇者「ホビットさんは……あいつがなんなのか知ってるんすか」

ホビット「……」

ポルトガ勇者「……」

ホビット「……少しなら知ってるが、言えない。……ごめんよ」

ポルトガ勇者「……そうすか」

ザッザッザッ

ホビット「……ただ……いい子だ。あの子は」

ホビット「二人共。あの子が例え何であれ……仲良くしてやってくれ」

イシス勇者「……――勿論です」

ポルトガ勇者「あたぼうっすよ」

ホビット「……ん」

ホビット「あの子は、いい友人を持ったね」


…………
……


今日はおしまいです



……
…………



―ホビットの祠・大広間―


スタスタ…


勇者「ふぁ……おはようございます……」


イシス僧侶「おー、勇者くんおっはよー」

イシス戦士「もう昼だぞ?だらしない」

イシス魔法使い「スー勇者ちゃんもまだ寝ているみたいね」


スー勇者「くー……くー……」zzz

スラお「むにゃ……」zzz


イシス魔法使い「ふふ。仲がよろしいみたいね」

イシス僧侶「しかしよく寝るねー」

勇者「ああ、ちょっと朝に軽い鍛錬をするようにしてるんだけど、それに付き合ってもらってるんだ」

イシス僧侶「そうなん?って事は一回起きてたんだ」

勇者「そうそう。だからいつも夜に少し寝て、また朝の鍛錬が終わったら寝る生活してるんだよ」

スー勇者「くー……くー……」zzz

勇者「……僕に付きあわせてばかりで……」

ナデ…

スー勇者「ん…………」

勇者「本当に、この子には申し訳無い事ばっかりだ……」

イシス勇者「……」

ポルトガ勇者「……勇者、おはようさん」

勇者「ん。おはよう皆」


スタスタ

ホビット「おお、勇者も起きたかい。丁度いい。ご飯の準備ができたよ」


勇者「先生」

イシス魔法使い「ああ、もう、何から何まですみません」

イシス僧侶「お手伝いできる事ありませんか?」

ホビット「いやいやいいんだよ。わしも料理は好きだしね」

ムクリ

スー勇者「む……ふぁ……」

イシス戦士「ん。スー勇者も起きたみたいだな。おはようスー勇者」

スー勇者「んー……」

ギュッ

イシス戦士「!?」


スー勇者「ご主人様……おあようございます…………ふふ」ギュゥゥ


イシス戦士「なっ!?ちょ、わ、私は勇者ではないぞ?」

スー勇者「んえ?」


「「「…………」」」


スー勇者「……あっ」


勇者「…………スーちゃん、おはよう」

ババッ

スー勇者「すすす、すみません!つい、いつもの癖で」

イシス勇者「ん?」

勇者「ヒッ」

イシス勇者「勇者くん、いつもあんな風に抱きつかれてるのかい?」

勇者「いや、その」

イシス勇者「何焦ってるんだい?」

イシス僧侶「ロリコン」

イシス戦士「ペド野郎」

勇者「ちげえし!!!!!ちげえし!!!!!」

スラお「ゆーしゃうるさいっ!」がぶー

勇者「ごめんなさいやめてください!!!!」

ギャーギャー

ホビット「ふふ、賑やかな食事もいいね」

ポルトガ勇者「おいお前ら飯が冷めるから早くこっち来いって!」


…………


勇者「では」


「「「いただきまーす」」」


パクッ

イシス勇者「っ!これもおいしい!!」

イシス魔法使い「これ何のお肉なんですか?」

ホビット「それは鹿だよ。勇者が捕ってきたんだ」

イシス僧侶「え?勇者くん狩りできるの?」

勇者「こっちに来てから、一応教えてもらったんだよ」

ホビット「はは、腕の方はまだまだだけどね」

勇者「うぐ」


スタスタ

ムオル勇者「……狩りだけではなく、こいつは様々な事が未熟だ」


勇者「うぐぅっ」

イシス勇者「ムオル勇者さん」

イシス僧侶「様々なこと?」

ムオル勇者「こいつがここに来てしばらく経つが、最初はあまりの愚図さ加減に頭を抱える事が多かった」

ムオル勇者「方位磁石を忘れ道に迷う、狩りの罠の場所を忘れて自分で踏む、剣を忘れて魔物に半殺しにされる」

ムオル勇者「毒草を狙ったように採取してくる、料理を作らせれば器具を駄目にする」

勇者「……本当に、すみません……」

ムオル勇者「枚挙に暇が無いが……これでもマシになった方だ」

イシス僧侶「確かに、勇者くんはあの状況で旅してたからねえ。昔からあの子達に世話を焼かれていたんでしょ?」

イシス魔法使い「あはは……だったらちょっと疎くなっちゃうのも仕方ない気もするわね」

ムオル勇者「だが仕方ないで済みはしない」

勇者「仰るとおりです……」

ポルトガ勇者「でも今はだいぶマシになったんだろ?」

ホビット「ん。まだまだだけど、最初に比べたらだいぶ良くなったね」

勇者「まあ料理はスーちゃんや先生に頼りっきりなんだけどさ」

スラお「ゆーしゃのごはんおいしくない!ばか!うんこ!」

勇者「うんこはなくない?いいすぎじゃない?なあスラお」


…………

カラン


ホビット「ところで、聞いてもいいかね?」

イシス勇者「はい、なんでしょうか」

ホビット「君達は何をしにここへ来たんだい?」

ポルトガ勇者「…………今さらな感もあるっすね」

イシス僧侶「何を……って、それは勇者くんが心配だったからですけど」

イシス魔法使い「しばらく音沙汰が無かったので、イシス勇者様が心配してだいぶ滅入ってしまって」

勇者「すみません心配かけて……」

イシス勇者「いいんだよ。こうして無事だったんだしさ」

ポルトガ勇者「俺もイシス勇者と同じ理由だぜ」

ホビット「ふふ、そうかそうか……じゃあもう一つ質問させてもらうね」

ホビット「人間達の動きはどうだい?ラーミアを復活させるつもりらしいが……進展は」

イシス勇者「……実は、全くと言っていいほど何も進展していないんです。おはずかしながら」

勇者「ん、そうだったんだ」

イシス戦士「お前はムオル勇者殿から何も伝えられていないのか?」

ホビット「彼は無口な男だからね。外の情報で勇者の気を散らすのを良しとしなかったんだろう」

ムオル勇者「……」

ポルトガ勇者「だんまりかよ……お前が何か一言あれば俺らも無理に後をつけたりしなかったっての」

ムオル勇者「下手にお前達に伝えればボロが出る可能性があるだろう」

ポルトガ勇者「……否定しきれねえのが哀しい」

ホビット「しかし、進展が無しか……オーブを集めるのは至難なのだろうね。やはり」

イシス勇者「とりあえず今はあらゆる場所へ歩兵団や船団が向けられているのですが……中々に手こずっています」


イシス勇者「特に……“賢者の扉”には、苦戦を強いられていて……」


勇者「……“賢者の扉”?」

スー勇者「って、何の事ですか?」

イシス勇者「え?勇者くん?」

ポルトガ勇者「何でてめえが知らねえんだよ?」

勇者「え?え?だって、覚えが」

ポルトガ勇者「“魔法の鍵”」

勇者「……――あ」

イシス勇者「あれを見つけ出してロマリア大陸の境界を暴いたのは、君たちだったじゃないか」

勇者「そっか……あれが賢者の扉だったんだ」

勇者「でもそれなら、魔法の鍵は女勇者が持ってる筈だからあいつに」

ホビット「いや、恐らく、だけれど……それでは無理だろうね」

勇者「えっ?どうしてですか?」

ホビット「それらの扉の鍵の構造がね、普通の扉と違うというのは君もわかるだろう?勇者」

勇者「それは、まあ、はい」

ホビット「あれは魔力で編み込んでいる錠型なんだけれど、それには3種類あるというのが今の所確認されている」

ホビット「それらは全て賢者が作り出したらしいんだが……高位の賢者が作る錠型ほど複雑なものになっているんだ」

ホビット「一番目の扉は、腕のある盗賊ならば暴ける。二番目の扉は、高度魔法を生業にした、名のある魔法使いならば暴ける」

ホビット「しかし、三番目の扉は……賢者しか暴けない。そう、賢者の作った鍵無しでは、ね」

勇者「……」

イシス勇者「そして、どうも何かありそうな“聖域”などにはそれらが多いんだ」

イシス僧侶「賢者様が“何か”を守るために閉じ込めてるんだもの。大事な物があるって考えるっしょ?」

勇者「確かに……」

ポルトガ勇者「ただ、これに関しては少し情報も掴んであんだよ」

勇者「情報?」


ホビット「……海の祠、の伝説だね?」


ポルトガ勇者「……よく御存知で」

勇者「海の祠?海に祠があるんですか」

ホビット「ああ。昔、四賢者の一人が作った祠が今も海の中に沈んでいる、という伝説だ」

イシス勇者「そこに、僕達が求める鍵があるって言い伝えがあって、今はその捜査に尽力している」

ホビット「だが、場所は分かったのかい?」

イシス勇者「いえいえ、流石にそこまでは……怪しい場所を虱潰しに探している途中です」

ホビット「場所が場所だからね……仕方ないものだよ」

イシス魔法使い「国連には未だ見つかっていないので急いで見つけ出したいんですけど、その伝説が本当かどうかも怪しいんですよね」

ホビット「しかしわしらが旅をしていた時から小耳に挟んでいた伝説だよ。火の無い所に煙は立たないと言うし」

ポルトガ勇者「あー……いっそ海の水が干上がっちまえば探しやすいんだろうけどよ」

イシス勇者「現実逃避もいい所だねそれは……気持ちは分かるけれど」

勇者「……鍵、かぁ」


「それ、できるかもです」


勇者「えっ?」

イシス勇者「……何、?が?」

ポルトガ勇者「それって、なんだよ?スーの字」


スー勇者「……――海の水、干上がらせるの……できるかもです」


イシス勇者「…………えっ」

イシス僧侶「ス、スー勇者ちゃん、それはいくらなんでも無理じゃないかぁい?」

スー勇者「勿論、全部干上がらせるは無理です」

スー勇者「けれど、浅いところなら……干上がらせるの。できると思うです」

ポルトガ勇者「……何か、あるのか?」

ホビット「確かに、あの伝説では海の祠は岩礁に囲まれているという話だね……恐らく浅い所にあるのだろう」

ホビット「もしスー勇者ちゃんの言う方法が可能なら。見つかる可能性は高くなる」

勇者「……スーちゃん、その案聞かせてもらってもいい?」

スー勇者「はい、ご主人様……あの」

スー勇者「私の村……スーには、秘宝があったです」

イシス戦士「秘宝?」

スー勇者「はい。スーは、周りを川で囲まれた村です……いつもは、平和で暖かい、いい所です」

スー勇者「でも、時にその川は暴れ川になって、私達の先祖様を脅かしたです……」

スー勇者「でも遠い昔、村のその代の巫女が、力を使って……壷を作ったです」

勇者「壷?」

スー勇者「はい……――『渇きの壷』。こっちの言葉だと、そういう意味になるます」

イシス勇者「渇きの、壷かぁ……初めて聞く名前だ」

イシス魔法使い「それがあれば水を干上がらせる事ができるのね?」

スー勇者「はい。ある程度の水なら、その壷が飲み込んでくれるです」

ポルトガ勇者「すげえ話だな……!それ、スーに行けば貸して貰えるか?」

スー勇者「……」

ポルトガ勇者「おい、スーの字?」

スー勇者「……ないです」

勇者「え?」

スー勇者「もう、スーには……渇きの壷はないです」

ポルトガ勇者「……そりゃどういうこった?」


スー勇者「……――今は、エジンベアにあります」


「「「……!!!」」」

ホビット「……ああ、そういう事なのか……」

勇者「え?え?どういう事?」

ポルトガ勇者「勇者お前マジでいってんの?」

勇者「えっ、ごめん」

ホビット「昼過ぎの座学でもっと厳しく色んな事を詰め込むべきだったね……」

勇者「ひいい」

イシス戦士「座学もホビット殿に師事しているのか」

勇者「う、うん……いや、今はそれより」


スー勇者「私の村は、昔、エジンベアに戦争で負けました」


勇者「――……」

スー勇者「その時に、私達は……いろんな物資と、捕虜と……秘宝を差し出しました」

イシス勇者「……『同士大戦』の時だね」

スー勇者「……」コク

勇者「………………そうなんだ……」

スー勇者「で、でもっ、命は皆平気でしたしっ、今もスーは残ってるですっ!」

イシス僧侶「そうは言っても、暴れ川は?渇きの壷が無ければ……」

スー勇者「……それも、先祖様たちは、別の方法で乗り越えたです」

スー勇者「もう、スーの皆も、誰も恨んでないです!へいきですっ!」

イシス勇者「……ん、ありがとう。話してくれて」




ポルトガ勇者「さあて、じゃあ……――どうやってその秘宝をぶん取り返すかね」


スー勇者「ンッ!!?」

イシス勇者「ああ、なんかこういう事言い出す気がしてたよ……」

イシス僧侶「結構ポルトガ勇者様も後先考えない人だよね」

ポルトガ勇者「いやさ、俺ァそういうのいっちばん嫌いなんだよなあ」

イシス魔法使い「好き嫌いの問題じゃないでしょ!国際的な問題が絡んでるのよ?」

ポルトガ勇者「だが、どうするよ?せっかく掴んだ糸口だ。引き寄せない手はないぜ?」

イシス勇者「……それは、そうなんだけどさ」

ポルトガ勇者「ま、だからといって俺も懸念は無いとはいえねえ」

ポルトガ勇者「もしおおっぴらにエジンベアに壷返せって言ったとしたら、国連の中のキナ臭え連中に感づかれる」

イシス戦士「確かに……例えそれで鍵を手に入れてもそれを国連で共有するという建前で持っていかれるかもしれんな」



勇者「じゃあ殺して取り返せばいいよ」



ポルトガ勇者「……」

イシス僧侶「……」

イシス魔法使い「……」

イシス戦士「……」

イシス勇者「……は、え?」


勇者「?だから、エジンベアの奴らから取り返せば良いんだよ」

イシス僧侶「ちょ、ちょっと勇者くん?」

勇者「んっ?え、なになに皆一斉にぼくを見て」

イシス魔法使い「いえ……勇者くんにしては、黒い冗談だなって」

勇者「冗談?なにがですか?」

イシス魔法使い「……え」



勇者「元々盗んだのはそいつらなんでしょ?そいつらに構う事なんてないだろ」



勇者「スーの人たちの物はスーの人たちの所に返さなきゃいけない」



勇者「もっと報復してもいいくらいだ」



勇者「……――――全員、殺してもいいくらいに」




ポルトガ勇者「……」


イシス僧侶「……」


イシス魔法使い「……」


イシス戦士「……」


イシス勇者「……勇者、くん……?」




勇者「何?」




イシス勇者「っ」ゾッ…

ポルトガ勇者「お前、どうし――……」


スー勇者「てやーっ!」


バコオン


勇者「マウンッ!!!」


イシス勇者「うおぉっ!!?スー勇者ちゃん!?!」

スー勇者「ご主人様!うとうとしたらだめです!」

ポルトガ勇者「は!?お前何言って」


勇者「あてて……ごめん、少し眠ってた」


ポルトガ勇者「る……んだ……」

イシス勇者「……」


勇者「スーちゃん、いっつもうたた寝だけにはなんでこんなに厳しいのさ……!コブできてる……」


スー勇者「……眠るの、よくないです」


イシス魔法使い「……これ」

イシス僧侶(意識が、とんでる……?)

イシス戦士(ではさっきの圧迫感は)

ホビット「……ふむ、なるほどね」

スクッ

ホビット「勇者」

勇者「ふぁう、アッはい、何ですか先生。座学の準備は――……」

ホビット「しばらく授業は無しだ」

勇者「……え」



ホビット「勇者、君はしばらくここを離れてその渇きの壷を手に入れて来なさい」


ホビット「特別授業期間、という事にしよう」




――――――――――――――――



――ホビットの祠・入り口前――


サァァァ…


イシス勇者「……」

イシス魔法使い「……」

イシス僧侶「……」

イシス戦士「……」

ポルトガ勇者「……風、気持ちいいな」

イシス勇者「うん……本当いい所だね」

イシス僧侶「ですね……」


「「「……」」」


ザッ

ホビット「……すまないね、皆来てくれたばかりだというのに」

イシス勇者「ホビット様」

イシス魔法使い「とんでもない、急に押しかけたのは私達ですのに……」

ホビット「もっとゆっくりしてもらいたかったんだがね……そうもいかなくなった」

ポルトガ勇者「?」

ホビット「まあ、気にしないでおくれ」

ホビット「何はともあれ、勇者を少し見守っててくれると助かるよ」

イシス勇者「それはもう……そういえば、勇者君はまだ準備中ですか?」

ホビット「ああ。スー勇者ちゃんとごたごたしているよ」


――――――――――――


勇者「スーちゃん!鍋は持ってかなくていいでしょ!めっ」

スー勇者「でもっ、これっ、おこげが付かなくて!」

勇者「めっ」


――――――――――――


ホビット「しばらくは荷造りだろうね……だから」


ホビット「今のうちに、君らの質問に答えておこう」


イシス勇者「……」

ポルトガ勇者「……質問、っすか」

ホビット「何か、わしに聞いておきたい事はあるかい?」

イシス僧侶「……ホビット様」

ホビット「なんだい?イシス僧侶さん」

イシス僧侶「御優しいのか、残酷なのか……わかりませんね」

ホビット「ははは……どちらでもありたいものだね」

イシス戦士「ム、ムオル勇者殿は?一緒にエジンベアまで行かれるのですか?」

ホビット「いや、彼はまた国連の任務で今日から別行動だよ」

イシス魔法使い「という事は、私達で勇者くんたちを守らなきゃですね」

ホビット「意気込み有難いが、そうヤワに鍛えてもいない。あまり気負わずに軽く考えておくれ」

ホビット「……他に何か。ないかい」

イシス勇者「……えっと……」

ポルトガ勇者「……ホビットさん」

ホビット「なんだい?」


ポルトガ勇者「俺に、質問させたいんすよね?」


ホビット「……君が、聞きたくないなら質問はせずにしておきなさい」

ホビット「これによって、君らがあの子をどうするかも決まってくるかもしれないしね」

ポルトガ勇者「……人が悪いぜ」

ホビット「ホビットだからね。以前は人間と争った身さ」

スクッ

ポルトガ勇者「んっ……と!」バキボキ

ポルトガ勇者「ふぅ…………じゃあ聞くが、ホビットさん……昨日も同じような問いかけたけど、ちょっと変えるぜ。はいかいいえで答えられるヤツにする」


ポルトガ勇者「あいつは、魔王の手下なんすか?」


ホビット「……」

ポルトガ勇者「あいつは、いや。あいつの中のアレは……魔王バラモスによるものなんすか」

ポルトガ勇者「それとも――……」


ホビット「いや……あれは違うよ」


ポルトガ勇者「――……」

ホビット「あの子自身には裏切りや騙りも無いし、あれは魔王バラモスの手下でもない」

ホビット「……詳しくはないが、それは言える」

ポルトガ勇者「……そっすか」

イシス勇者「……良かっ……た」

ホビット「ただ、今の所それくらいしか言えないんだ。何のきっかけであれが暴走するかも分からないしね」

イシス勇者「でもそれだけ知れれば十分」

ポルトガ勇者「まだだ」

イシス勇者「え?」

ポルトガ勇者「まだ質問がある……というか、ホビットさんが聞いて欲しいのはこっちなんだろ?」

ホビット「……――質問をどうぞ」

ポルトガ勇者「えっと……昨日、あいつと一緒に風呂に入ったんだけど」

イシス僧侶「えっ、いきなり何の話しだすのポルトガ勇者様」

イシス勇者「自慢したいのかい?」ギリッ

イシス魔法使い「その会話の流れ第三者からすると怖いわよイシス勇者様」


ポルトガ勇者「いや、びっくりしたのがあいつのチンコの大きさなんだけどよ」


イシス勢「「「本当に何の話だ!!!!」」」


イシス勇者「チッ、チチチチチチ」

イシス戦士「イッ、イシス勇者様っ、お気をっお気をたしかかっ、かにっ」

ポルトガ勇者「いやだって……普通の状態で、えっと……こんくらいだぜ?」

イシス僧侶「えぇっ……本当それ……うそぉっ……?」

イシス魔法使い「あらやだ、やだやだやだ、もう、ちょっと……うそぉ……?」

イシス戦士「お前らはっ!!何の話をしているっ!!!!」

イシス勇者「こ、このくらいひぃっ……!!!!?」

イシス戦士「お気をたしかn、えぇっ……うそぉっ……」

ホビット「ははは……ポルトガ勇者」


ホビット「……――君は、勇者の下半身を見たよね」


ポルトガ勇者「……ああ」

ホビット「……その上で、聞きたい事は?」

ポルトガ勇者「……――本当に酷い人だな、アンタ」

ホビット「人ではないからね」

ポルトガ勇者「じゃあ……単刀直入に聞くっすよ」





ポルトガ勇者「あいつの、下半身の左側を覆ってる……黒い痣、あれ。なんすか」




イシス勇者「……――え」

イシス僧侶「……!!!?」


ホビット「……」


ポルトガ勇者「……それと、あいつ昨日。寝る時に言ってました」

ポルトガ勇者「『自分に何かあったらスー勇者の場所へ逃げろ』って」

ポルトガ勇者「…………ホビットさん」


ポルトガ勇者「あいつ、ここで魔物になった事、あるんすね?」

ポルトガ勇者「そしてあの痣……無関係じゃないんでしょ?」


ホビット「……」

イシス僧侶「ホ、ホビット様!本当なんですか!?」

ホビット「……勇者が来て、二ヶ月目の頃だったかな」

ホビット「少し寝苦しい夜でね……多分、そのせいで。あの子も嫌な夢を見たんだろう」

ホビット「急に勇者とスー勇者ちゃんの部屋から轟音がして飛び起きたわしは、急いで二人の部屋に駆けつけた」

ホビット「そこで――……」


――――――――――――――




ホビット『これ……は……』



ごりゅ、ぐちゅっ、ばちゅっ




勇者『あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!』




ギュゥッ…



スー勇者『……ご主人様』




勇者『あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!ああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!』

スー勇者『……怖い夢、……見た、ですね』

勇者『あああああああああああああああああ!!!!!!!!!!ああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!』

スー勇者『ほら……もう、だいじょうぶ、だいじょうぶです……』

ナデ…

勇者『あああああああああああっ!!!!!!あああああああああああああ!!!!!!!』

スー勇者『…………もう、大丈夫』ボソッ



勇者『あああああああああああああああああああああああああ!!!!!!』



スー勇者『……ね?』ギュゥッ


勇者『ああああああああああああああああああ』


ごりゅ


勇者『あああああああああああっ、あああああ』


ぐぎゅ…


勇者『ああああっ、あああああ』


ぐりゅ…


ホビット『……』

ホビット『(勇者の体が、元通りになっていく……)』



スー勇者『……』



勇者『……ス……ちゃん……』


スー勇者『……大丈夫、です……』

スー勇者『ここに……居る、ですよ……』


勇者『……ん……』


ホビット『……』



―――――――――――――



……
…………


ホビット「……そして、目覚めた時には……あの子の体にはあの痣が浮かんでいたよ」


イシス勇者「…………!!」


イシス戦士「し、しかしそれによる後遺症などは無いのでしょう?」

ホビット「ああ、無いね」

イシス戦士「でしたら、何も問題は」

ホビット「ただ、後遺症がないだけさ」

イシス戦士「……え」

イシス僧侶「…………勇者くんの所の僧侶ちゃんとの話のくだり、覚えてる?イシス戦士」

イシス戦士「……」

ホビット「…………そうだね、これは今の所、勇者のその後の魔族への変貌を総括しての話だから推測ではあるけれど」


















ホビット「あと3回魔族になると、あの子は死ぬ」














今日はおしまいです



イシス勇者「……――は……?」


イシス僧侶「……本当、なんですね」

ホビット「恐らくだがね」

イシス勇者「いやいやいや!ちょっと待ってください、そんなっ」

イシス魔法使い「イシス勇者様。……落ち着いて聞きましょう」

イシス僧侶「あと3回……ですか……」

ホビット「うん。色んな文献であの症状を見かけた事があるが、恐らくそれらから推測するに3回だよ」

イシス戦士「ホ、ホビット殿!!なぜそんな落ち着いて話す事ができるのですか!勇者は――」

ホビット「わしが落ち着いて無感動に話していると。そう見えるかい?」

イシス戦士「……あ……」

イシス僧侶「イシス戦士。ダメだよそれは」

ホビット「いや、そう見られても仕方ないかもしれないね。これはわしの悪い癖でもあるし」

ポルトガ勇者「…………あいつの魔物に変化する時の条件ってあるんすか」

ホビット「ああ……これもまたわしの推測でしかないけれど」

ホビット「あの変化は、勇者の精神状態によって引き起こされると思っているんだ」

イシス僧侶「精神状態、というと」

イシス勇者「……仰っていた、怨念……――憎悪によってのもの、という事ですか」

ホビット「理解が早くて助かるよ」

ホビット「君らもさっき見ただろう?あの子が会話の途中に妙になったのを」

イシス魔法使い「あの時の勇者くんも魔物に変化しつつあったのですか?」

ホビット「極々軽微、ではあるけれどね……何かがあの子の中で琴線に触れてしまったんだろう」

ホビット「ああなるとスー勇者ちゃんの力を借りなければ引き戻す事ができなくなるんだ」

イシス戦士「でも、何故今まで生きてきて平気だったのですか……怨念に苛まれる事など、勇者ならば数多く」

ホビット「それはホラ、君らも間近で見たんじゃないかな」

イシス戦士「え?……――あ」

ホビット「“賢者達が魔力を込めた刃”……それが体内に入っていたからね」

ホビット「アリアハンで育ったからか、それまでは不要だったものを……あの子はテドンで、強いられてしまった。緊急的にね」

ホビット「それがどういう事か理解できなくはないだろう?」

イシス勇者「……――あの時、落日の七日間の初日に……勇者くんは強い憎しみに苛まれて」

ポルトガ勇者「それが決壊して、その賢者達が緊急で対応しなけりゃならなくなった……っつう事か」

ホビット「ん……そうだね」

ホビット「だから、本来ならばこういった隔離された場所でのびのびさせてやるのが一番良いと思うんだ」

イシス勇者「では何故今回勇者くんに特別授業なんて」

ホビット「……それも、ちょっとわけアリでね」

ホビット「ただ傍にスー勇者ちゃんが居る限りあの子が痣を作ってしまう程完全に魔物への変身を遂げてしまうことはないと思うのさ」

ポルトガ勇者「ちょっと聞いてもいいっすか」

ホビット「ん?」

ポルトガ勇者「そうなるとあいつは、スー勇者はマジで何者なんすか」

イシス魔法使い「お話を聞く限りは……それこそ、遊び人ちゃんのような、そう……賢者様のような」

ホビット「んー……それはちょっとわしでも分からない」

イシス僧侶「そうなんですか?」

ホビット「ああ。あの子から直接話してくれるのを待っているんだが、なかなかだね」

ポルトガ勇者「……そっすか」

ホビット「はは、複雑な顔をしているよポルトガ勇者」


ホビット「スー勇者ちゃんまで殺さなければならない事態になるのが、やはり怖いかい」


ポルトガ勇者「!!!」


イシス勇者「――え」

イシス僧侶「ちょっとちょっと、どういう事ですか」

イシス魔法使い「今何か聞き捨てなら無い事が」

ホビット「……最初から、そのつもりで見定めに来たんだろう?」

ポルトガ勇者「あー……別に隠すつもりは無かったんだがよ」

イシス勇者「ど」

ガシッ!!

イシス勇者「どういう事だ!!!ポルトガ勇者君っ!!!!」

イシス戦士「イシス勇者様!!落ち着きなさってください!!」

イシス勇者「落ち着いていられるもんか!!だって、ポルトガ勇者君は――」


ポルトガ勇者「もし勇者が、魔族の血に身を染められているなら。殺すつもりだったよ」


イシス勇者「っ……――!!!!」

ギリッ…!!

イシス勇者「……君はっ……!!何を言っているのか分かって……!!!!」

ポルトガ勇者「わかってるさ」

イシス勇者「でも勇者くんは!!純粋に君の事を信じて――……」


「知ってたよ」


イシス勇者「!!」

イシス僧侶「……勇者くん」


スタスタ

勇者「知ってたよ。……なんとなく、ポルトガ勇者が何をしに来たのか」

ポルトガ勇者「おう。荷造り終わったか」

勇者「うん。皆おまたせ!」

イシス勇者「ゆ、勇者くんっ!何をそんな悠長な」

勇者「イシス勇者くん、ありがとう」

イシス勇者「え?」

勇者「僕の事心配して、ここまで来てくれて……本当に感謝してる」

勇者「そして、ポルトガ勇者も」

ポルトガ勇者「おう」

勇者「……“僕の事”、心配してくれてありがとう」

ポルトガ勇者「……勇者」

勇者「ん?」

ポルトガ勇者「まあ、帰りがてら言うつもりだったんだが、今言うぜ」

勇者「うん」


ポルトガ勇者「お前が完全に魔物になりかけてたら、俺が殺してやるつもりだった」


勇者「うん。知ってた」


ポルトガ勇者「まあ今は大丈夫そうで安心したけど――もしこの先、そうなったら俺がちゃんと被害が出る前に殺してやる」


ポルトガ勇者「俺ができなそうだったら、無理せずに数呼んで、みんなで殺してやる」


ポルトガ勇者「だから安心しろ。……ただ、絶対呑み込まれねえようにしとけ」


勇者「……ポルトガ勇者」


ポルトガ勇者「んだよ」


勇者「ありがとう」


ポルトガ勇者「……ん」


勇者「でも、僕の幼馴染達も同じ約束をしてくれたんだ」


ポルトガ勇者「……――ははっ、じゃあ心強いな」


勇者「ああ」


ポルトガ勇者「………………殺させんなよ。あいつらには」


勇者「頑張るよ。ありがとう」

勇者「ただ、スーちゃんは本当に関係ないんだ。手を出したら本気でブチ切れる」

ポルトガ勇者「ああ。わかったよ……俺もスーの字がかわいくないワケじゃないしな」


スタスタ

スー勇者「お、おまたせしましたです」


勇者「スーちゃん。準備できた?」

スー勇者「は、ははい、おっけーです」

勇者「……?どしたのスーちゃん」

スー勇者「なななな何も隠してないです!本当です!」


モコッ

スラお「くるしいっ!」


勇者「……」

スー勇者「ああっ!?だめですスラさん!」

スラお「だってくるしいもん!」

勇者「元の位置に捨ててきなさい」

スー勇者「ひどいです!!」

スラお「ゆーしゃうんこ!ひどい!」

勇者「なにさ、付いてくるつもりなの!!?スラお!ダメ!!絶対ダメ!!」

スラお「なんで!」

勇者「だって街中を歩くんだよ!?スラおが例え害のないスライムだからって目立たないワケ」

スラお「うるひゃいつれてけうんこゆーしゃ!」ガブー

勇者「あだだだだだやっぱりお前害あるわ!!!擁護しきれんわ!!!!」


ぎゃーぎゃー


ポルトガ勇者「……一瞬で毒気が抜かれちまったな」

イシス勇者「ポルトガ勇者君」

ポルトガ勇者「ん?」

イシス勇者「さっきは、掴みかかってごめん」

ポルトガ勇者「いや、当然の反応だろあれは」

イシス勇者「……覚悟が足りないのは、僕だったよ」

ポルトガ勇者「……」

イシス勇者「……――ただ」


イシス勇者「僕は、絶対に彼を殺させはしない」


ポルトガ勇者「……」

イシス勇者「そうなる前に、絶対。勇者くんを救う方法を探してみせる」

ポルトガ勇者「……ああ。頼むぜ」

イシス勇者「はは……期待してなさそうだね」

ポルトガ勇者「期待は、したいさ」

…………

イシス勇者「泊めていただいて、本当にありがとうございました」

イシス僧侶「なにもお返しできないのが心苦しい限りなんですが……」

ホビット「いやいや。楽しかったよ」

イシス魔法使い「でも、いずれ何かでお返しさせて頂くのを約束させて下さい」

イシス戦士「今度は私にも稽古をつけていただけると」

ポルトガ勇者「ちゃっかり何頼んでんのお前」

ホビット「ははは。いや、是非是非」


ザッ!!


勇者「それでは先生!行って参ります!!」


スー勇者「お体、気をつけてくださいです!すぐに戻るです!」


スラお「おじちゃん!またね!」


ホビット「ああ。皆気をつけて行くんだよ……無事にね」

ホビット「いってらっしゃい」


勇者「はい!!」




……
…………
…………
……



サァァァァ……


ホビット「……」

テトテト

猫「……にゃーあ」

ホビット「ん?……ああ、君か」

猫「なーご……」

ホビット「皆行ってしまったよ。また以前のように静かになるね」


猫「……大丈夫なんですか?」


ホビット「なにがだい?」

猫「わかっているのでしょう?……何が来るのか」

ホビット「あはは……まあ、病人としては遠慮させてもらいたい事だよね」

ホビット「しかしいいのかい?スー勇者ちゃんを行かせてしまったわしを怒らないのかい?」

猫「かわいい子には旅をさせろ、といいますもの。それに勇者様が付いていますし」

ホビット「ふふ。そうか、そうか」

クルッ

ホビット「さて……それじゃ、中に入ろうか」


ホビット「もうすぐ、一雨来るようだから」

今日はおしまいです

――――――――――――

…………



ゥゥゥウウウウ


ストッ…


イシス魔法使い「っと……こんな感じね」

スー勇者「わああ……!すごいです!綺麗に着地できたです!」

イシス勇者「イシス魔法使い、お疲れ様。ありがとう」

スー勇者「イシスさん!イシス魔法使いさんのルーラ、すごいです!」

イシス僧侶「そうだろうそうだろう」

イシス魔法使い「なんであなたが得意気なのよ……でも、着いたわね」

勇者「……――はい」


……


勇者「……って、あれ?エジンベアは?」

ポルトガ勇者「もうちょい先だ。ここは只の魔力場だよ」


――エジンベアのちょっと手前――


ガヤガヤ…


スタスタ

勇者「でも布を纏っといて良かったよ。人がだいぶ多いんだね」

イシス戦士「気付かれないようにしていろ……お前はエジンベアに来るのは初めてか?」

勇者「うん。ちょっとドキドキしてる」

イシス僧侶「いつもはもうちょっと人は少ないんだよ?なんか今日多い気がする」

イシス魔法使い「やけに船が多いわね……あら?」

勇者「どうしたんですか?」

イシス魔法使い「ううん。ちょっとね。どれもこれも商船だなあって……契約している商船なら専用の港があるのに」

イシス戦士「売り込みに来た個人商船か、それとも専用港の空き待ちか。何にせよやたらと出入りが激しい様だな」

イシス勇者「とりあえずエジンベアまで歩こう。ほら。ここからでももう見えてきた」


ザッ

勇者「……おおー」




――城塞都市・エジンベア――




勇者「す、すげー……」




オオォォォォ……



勇者「え、あれって全部お城?」

イシス勇者「うん。凄いよね。国一つを城で囲んでしまっているんだ」

イシス僧侶「この大陸自体はすっごく小さいからねー。歴史も長い国だしこうやって守りを堅めるのも必然だったんじゃないかな」

勇者「この間先生に座学で習ってはいたけど……うおー、凄い……でっかい」

イシス僧侶「でもよく考えたら先生も……ホビット様も連れてくればよかったんじゃない?」

勇者「え?」

イシス僧侶「ずっとあそこに住んでたんでしょ?だったら旅行がてら一緒にさ」

勇者「あー……ん。それはちょっと無理なんだ」

イシス僧侶「無理?」

勇者「うん。先生は理由があってあそこから離れられなくてね」

イシス僧侶「そうなんだ……どんな理由?」

勇者「体調面での理由」

イシス僧侶「えっ!?ホビット様、病気患ってるの?」

スー勇者「はい……だから安静にしてないと、だめです」

勇者「だから先生には何かお土産を持ってく事にするよ」

ポルトガ勇者「ああ、そうしろそうしろ。美味いもんいっぱい紹介してやるよ」

勇者「ありがとう助かる……って、ちょっと話変わるけどさ」

ポルトガ勇者「ん?」

勇者「どうして皆も布被ってるの?」


「「「?」」」


勇者「軽く僕ら変な集団になっちゃってるんだけど」

イシス勇者「だって、僕らは国連関係者だよ?もし門を通る時顔を認められたら上にすぐ連絡がいく筈だよ」

勇者「あっ、それもそっか」

ポルトガ勇者「お前はお尋ね者だしスーの字は捜索令が布かれてる。とにかく皆コソコソやるしかねえのさ」

勇者「でもさっきの……えっと、門って言ったっけ?それって厳重なのかな」


イシス勇者「……」

ポルトガ勇者「……」

イシス僧侶「……」

イシス魔法使い「……」

イシス戦士「……」


勇者「えっ?どしたの皆いきなり苦虫噛み潰したような顔になって」

ポルトガ勇者「いや……冷静に考えたら今回はあの門を一般人として潜らなけりゃならねえと思うとちょっとな……」

勇者「?」

イシス勇者「まあ行けば分かるよ。ホラ。もう門が見えてきた」




――エジンベア・城門(兼関所)――




門番「名前と居住区、そして国外に出た時の申請の有無。述べよ」

男「申請はしてきた。名は○○、居住区はリヴァプルフの235通りの35棟だ」

門番「割り銅は」

男「ここに」

門番「……――よし、通れ」


スタスタ…


勇者「おー、ああやって通るんだ」

ポルトガ勇者「こうやって見る分には普通の門番なんだがなぁ……」

勇者「ん?普通じゃない時もあるの?」

ポルトガ勇者「……気になるか?じゃあ行こうぜ」

勇者「?うん」

スタスタ

勇者「でもいいのかな、さっき見た感じだと銅?みたいなの差し出してなかった?僕ら何も持ってないけど」

イシス勇者「んー、いや。どの道僕らはエジンベアの人間じゃないから関係ないんじゃないかな……」

勇者「そうなの?」

イシス僧侶「ままま、行けば分かるよ」


門番「止まれ!」


ザッ

門番「名前と居住区、そして国外に出た時の申請の有無。述べよ」

勇者「えっと……僕らエジンベアの人間じゃなくて……」

門番「何?」

勇者「少し入国させて頂きたいんですけれど」


門番「ハンッ!!」


勇者「えっ」

門番「……紹介状・国連の許可証・エジンベア国からの来国要請書などは」

勇者「あ、いえ。それも持っていなくて」

門番「…………」スゥゥゥゥゥゥゥ

勇者「ん?」



門番「ッッブハッッハ――――――――ン!!!!!!」


勇者「……」

門番「という事はなんだ貴様、馬の骨か!!田舎者の!!」

勇者「馬の骨て」

門番「うっす汚い格好して、どうりで田舎者の匂いがプンプンすると思ったわ!!!!」

勇者「……え。……え?」

門番「帰れ帰れ!!貴様のような田舎者が来る所ではない!!」

勇者「いやそんな、横暴な」

勇者「お願いします。なんとか通りたいんですが」

門番「じゃあ聞くが、貴様どこ出身だ」

勇者「僕?僕は……アリアハンですけど」

門番「うわっ、クソ田舎じゃん」

勇者「なっ!?」

門番「あれだろ?便所ってそこらで立ってやるんだろアリアハン」

勇者「しないよ!!」

門番「ルビス祭終わったらみんな急に裸族になるんだろアリアハン」

勇者「ならないよ!!」

門番「家は獣の糞尿で固めて作ってるんだろアリアハン」

勇者「木材だよ!!」

門番「駅馬車も半日に一回とかしか来ないんだろアリアハン」

勇者「えっ、き、馬車っ?」

門番「……え?」

勇者「……」

門番「…………まさか、駅馬車も無いの?」

勇者「……あ、あるし」

門番「……ほんと?」

勇者「……………………………嘘です」


門番「田舎者けって――――――ッッへへへェ――――――イ!!!!」


勇者「ち、ちくしょう!とおしてっ」

門番「ラメェー――――ここは田舎者は通さないシティでェーす」

勇者「くそぉっ……!!田舎が、アリアハンが何したっていうんだよ!!!」

勇者「いい所なんだよ!!!ちくしょう!空気美味しいんだよっ!ちくしょうっ」

門番「空気おいしいからって田舎には変わりありませぇーん」

門番「これだから田舎者は……教育受ける環境も整ってないんじゃないの?」

勇者「整ってるし!!!」


クルッ

勇者「はぁ……もういいです……出直します」

スタスタ

勇者(どうしよう……もうこの国嫌いになりそうだ)スタスタ


門番「……」

ダッ

門番「……」タッタッタ


勇者(でもここから入れないならどうしよう……何か皆策あるのかな)

勇者(というか皆なんで離れたところで見守ってるのさ!!……いやまあ門番があれならしかたないか)



門番「シティ浣腸」


ブソン!!!


勇者「ア――――――オ!!!!!!」



勇者「なんてことしやがる!!!!!」

門番「ホホホッ!!」シュタタタ

勇者「ちょっ、こら!!逃げるな!!!!お前ェッ!!!」ダッ

ザッ

門番「はいもうだめでーすここ国境で――――す!!!リアル国境で――――す!!!国境バーリア!!!」

勇者「なっ、ちょっと卑怯だろそれ!!!」

門番「入れるもんなら入ってみーろ!一緒に豚箱に入ることになるけどヌェ――――」

勇者「くっ……あっ、ぎ」プルプル

門番「ねえねえ田舎者」

勇者「なんすか!!!」

門番「ヴェロヴェロ」

門番「……」

勇者「……」

門番「……」

勇者「……」


門番「……ヴゥェア―――!!!!」


勇者「ぶん殴りてえ!!!!」

スタスタ

ザッ

勇者「……」

「「「「おかえり」」」」

勇者「おかえりじゃないよ!!!なんで皆来なかったのさ!!!!」

ポルトガ勇者「いやすまん、ちょっとマジで苦手なんだこの国の門番」

イシス僧侶「でもやっぱりダメそうだったねー。なんか尻にイタズラされてたし」

勇者「その言い方やめてもらえるかな」

イシス勇者「とりあえず、分かっただろう?この国の人たちって少し……その、他の国を見下す傾向にあるんだよ」

勇者「そういう問題以前のものもある気がするけど……よくわかったよ」

イシス魔法使い「でも、どうしようかしらね。こうなると門からはやっぱり無理そうよね」

勇者「紹介状・国連の許可証・エジンベア国からの来国要請書が要るって言ってたよ」

イシス戦士「むう……どれも簡単には用意はできんか」

イシス僧侶「イシス女王ちゃんに頼めば用意くらいは簡単にできるんだけどそれじゃ私らの身分バレちゃうしなあ」

イシス戦士「……そうだ。良い事を思いついた」

イシス魔法使い「っていうと?」

イシス戦士「エジンベアには契約した商船を迎え入れる専用の港があるだろう。そこから入るというのはどうだ」

イシス戦士「ここにはポルトガ勇者殿も居るし、なんとかポルトガから乗り込めば」

ポルトガ勇者「あー、わり。そりゃ無理だ」

イシス戦士「む……すまないな。少し我侭が過ぎた」

ポルトガ勇者「いやそういうワケじゃねえんだ。いい案だとは思うよ。だがよ……ポルトガは今危険だ」

勇者「ポルトガが?どうして?」

ポルトガ勇者「ホラ、この前のポルトガ領の港を譲渡した時から世界全てのポルトガ領港には国連の監査が常に港に張り付いてやがんだ」

勇者「!」

ポルトガ勇者「今じゃどの船も隅から隅まで調べられる。全員を見つからずにここまで運ぶのは無理だ」

イシス戦士「そうか……」

イシス勇者「でもそうなると…………裏口的なものを探すしかなくなる、かな?」

イシス僧侶「そりゃちょっとリスキーすぎじゃない?侵入が成功したら万々歳だけど、見つかったら全員暴かれるよ?」

イシス魔法使い「割符的な物を誰かから一時的に借りる、なんてどうかしら」

ポルトガ勇者「それもちょっと怖いぜ。一般人から金で借りても洩れる可能性が高いし、裏のそういう商売してる奴のツテもねえ」


「「「…………」」」


ポルトガ勇者「……八方塞がりか」

イシス勇者「でもまだ考えれば何か穴がありそうだよ」

イシス僧侶「とにかく皆でもっと意見を出し合おうか」

スー勇者「はいっ」

勇者「ん?どしたのスーちゃん」

スー勇者「あの、あそこ……あの道通る事、できればいいです?」

勇者「あの道って、さっきの門番の?うん。そうなんだよ。でもね」

スー勇者「だったらできるです」

勇者「……――え?」


スー勇者「あの道、通る事。多分できるです」

ポルトガ勇者「……ちなみにあの門番殺すってのはなしだぞスーの字」

スー勇者「んもー!違うです!ポルトガさんはもう!私をすぐからかうです!」プンスコ

ポルトガ勇者「わりいわりい、でもどうやるんだよ?あんなの簡単に」

ゴソッ

ポルトガ勇者「抜けられ――……」


カサ…

スー勇者「これを使えば、多分あそこを通れるです」


イシス戦士「……?」

イシス僧侶「……ねえスー勇者ちゃん」

ポルトガ勇者「なんだ?その葉っぱ」

勇者「ただの葉っぱに見えるけど……」

スー勇者「えっと……もう試した方が、早いと思うですので」

スッ

スー勇者「あむ」

イシス僧侶「え?食べるの?」


フッ……


イシス戦士「……」

イシス僧侶「……」

イシス魔法使い「……」

イシス勇者「……」

ポルトガ勇者「……」

勇者「……――えっ」



「「「消えた!!!?」」」



勇者「スーちゃん!?スーちゃん!!ス、スーちゃあん!!?」ワタワタワタワタ

イシス僧侶「ちょっと勇者くん取り乱しすぎ!!」

イシス勇者「スー勇者ちゃん!?どこへ――……」




「大丈夫です、ここにいるですよ」



「「「!!!」」」

ポルトガ勇者「……マジ?マジかこれ」

イシス勇者「噂には聞いた事あったけど……じゃあ、さっきスー勇者ちゃんが食べたのって」


「はい。“きえさり草”です」


イシス魔法使い「初めて見るけど、こんな綺麗に消えちゃうものなのね……」

勇者「えっと、この、この辺りから声が」

サワッ

「ひぁぅっ……ん」

勇者「ンッ」

「ご、ご主人様……だ、だめです、こんな……」

勇者「アッ、エッ……すみませんでした。すみませんでした……土下座はこっちの方向で合ってる?」

イシス勇者「もっと命乞いするみたいにしなきゃだよね」

勇者「ハイ」

「きえさり草は、私の村の近くでたくさんとれるです……ただ、食べると頭痛がするので、おすすめはできないです」

ポルトガ勇者「いやいや、んなもん何のそのだって。食えばいいのか?」

「はい。噛んで噛んで、そのお汁を飲めば3瞬くらいで、消えるです」

「草の新鮮さにもよるですが、私のカバンの中のきえさり草は、半々刻くらい姿を消せるです」

イシス僧侶「それで全然十分よ!スー勇者ちゃんやりおりますな!」

「私のカバンに、あと10枚くらい入ってると思うです。みなさんどうぞ食べてくださいです」

イシス魔法使い「善は急げね!……それじゃちょっとカバン失礼するわね」

イシス戦士「これは衣服も消えるのか?」

「はい。身に着けてるものは生き物でないかぎり、消えるです」

「ぼくもたべたよ!」

勇者「スラおもいつの間に……よし、それじゃ食べようか皆!」


ぱくり



……フッ……


……。


……。


……。




「「「まずぅっ……」」」



「好き嫌いは、めっ、です」




……
…………



門番「……」

門番「ふぁあ……あふ」

門番「……」

門番「……」


ズムンッ!!


門番「ア――――――オ!!!!!!」

ドサァッ!

門番「け、ケツが……!!くっ!!?……ッ、!!!?」キョロキョロ


シーン…


門番「……!?……!?」



……………
……





スタスタ


勇者「アリアハンを馬鹿にした報いだ……痔になれ」

ポルトガ勇者「気持ちはわかるがちょっと落ち着け」

イシス僧侶「ってか、これ皆ちゃんと居る?」

イシス魔法使い「私はイシス勇者様とイシス戦士と手を繋いでいるけど……」

イシス戦士「私はスー勇者と手を繋いでいる」

スー勇者「はい!」

イシス勇者「僕もちゃんと居るから……うん。大丈夫みたいだね」

勇者「ん、皆離れないように歩こう」

ポルトガ勇者「……お、ようやく門を抜けるぜ」


ザッ


――エジンベア・内部――


勇者「おおおおお……!」


ガヤガヤ


勇者「すごい……!煌びやかで綺麗な街が……」

イシス僧侶「華やかだよねー。イシスも負けちゃいないけど」



ガヤガヤ


勇者「うおお、人多いね?凄く賑やか」

ポルトガ勇者「ああ。はぐれんなよ?スーの字」

スー勇者「もう!子供じゃないです!」

イシス僧侶「きえさり草食べてからどのくらい時間たってるっけ?」

イシス魔法使い「まだ半々刻はいかないと思うけど……少し不安ね」

イシス戦士「それまでこの手繋ぎ状態を確保できていればいいが」

イシス勇者「じゃあ、もし離れ離れになった時の目印の場所でも決めておこうか?」

勇者「そうだね、じゃあ――……」


ザワッ


勇者「ん?」


「なんだなんだ?」

「おい、道あけろ」

「行列が通るぞ、おい、どけって」


ゾロゾロゾロ


勇者「えっ、あっ、ちょっ……あっ!!?」


ドンッ


「ん?今誰か当たったか?」


勇者「やばっ――……!!」


パッ


ポルトガ勇者「ッ!!おい!勇者!」


イシス勇者「勇者くん!!みんなっ!!」



ゾロゾロゾロゾロ


勇者「うわっ、ちょっと!!」

勇者(なんでこんなに急に人が……!!流されっ)


ガシッ


スー勇者「ご主人様!」


勇者「ッ!スーちゃん!」


ガヤガヤ…

「なんだこの人だかり」

「なんでも、エジンベア勇者様が直々に……」

「マジかよそりゃ!」

「どっかの軍の行列も通るし、やってられんな……この国に土足で上がりこみおって」

「最近急に兵隊を多く見るようになったわね」

「……世界のどこで何が起きようとしてんだか、考えたくもないな」


…………
……



――路地裏――


ザワザワ…


スー勇者「はーっ、はーっ……」

勇者「スーちゃん……良かった、はぐれないで」

スー勇者「でも、他の皆さん、はぐれてしまったです」

勇者「うん……」

ヒョコッ

ザワザワ…

勇者「……結局、なんで急にこんな大勢の人が流れて来たんだろ……うっ……!?」



サマンオサ兵「……」ガシャンガシャンッ



シュバッ!!

勇者「~~~~っ……!!!」

スー勇者「…………サマンオサ兵……!!!!」

勇者「なんでエジンベアにこんな大勢……ッ!」

スゥッ…

スー勇者「あっ、効力が」

勇者「ん?あ……本当だ、消えた」

スラお「ばかゆーしゃがいきなりでてきた!」

勇者「るっさい」

スー勇者「……ご主人様」

ギュッ

スー勇者「離れないように、お願いしますです」

勇者「はは、うん。ありがと」

勇者「…………みんな、無事かな……」

スー勇者「皆は、見つかってもどうにかなると思うです。でもご主人様は」

勇者「……だね」

スクッ

勇者「とりあえず、ここをちょっと移動しよう……サマンオサの兵が多くなってきた」

スー勇者「はい……」

勇者「まずは、じゃあ……大通りの反対側……この道のあっちの方、行こう」

スー勇者「はいっ」



…………



ゾロゾロ

ピタッ


「……」


エジンベア兵「?どうかされましたか?」

「いえ、ちょっと……気になる事が」

エジンベア兵「気になる事?」

「この先は一体何が?」

エジンベア兵「この先は細い裏通りです。居住区ですので、ちょっと入り組んでいますね」

「ん……そうですか」

ダッ

タッタッタ

「少し離れます!申し訳ありません!」

エジンベア兵「え?あっ!?あの」

「そちらには後で参ります!上の方々にはそうお伝え下さい!」

エジンベア兵「と、申されましても……ぐむ……了解、しました」

「ありがとうございますっ!」


タッタッタ…


エジンベア兵「……まったく」

エジンベア兵2「……行かせていいのか?アレ」

エジンベア兵「ああ、ちょっとくらいならば平気だろう。予定も終わった後だし」

エジンベア兵2「しっかし、なんでこんな所に」

エジンベア兵「……ダーマの神官でもあるんだ。何かルビス様が御導きになったんじゃないのか」

エジンベア兵2「ははっ……本当にダーマ勇者様もルビス様も呑気なもんだ」



――――――――


タッタッタ


ダーマ勇者(うーん……気のせいかな)


ダーマ勇者(こっちから、魔物の気配がする)

今日はおしまいです

―――――――――――


スタスタ…


勇者「……結構歩いたね」

スー勇者「はい。もう大通りから、離れたです」

勇者「人の気配も少なくなってきたし……でも」



――貧困街――


ビュォオォオ……


乞食「……」


娼婦「……」


子供「……」



勇者「……表とは、えらい違いだ」

娼婦「ねえ、そこのアンタ!どう?アタシを買わない?」

勇者「いえ、すみません。大丈夫です……スーちゃん、行こう」

スー勇者「はい」

スタスタ…

勇者「んー……見た感じ警備兵も居ないし店も無さそうだ。少し物騒な輩もいる」

勇者(何人か僕らの後を付けようとしてるのも居るな……)

スー勇者「です。早くどこかに抜けましょうです」

勇者「だね」

ピタ

スー勇者「あれ?」

勇者「どしたの?」

スー勇者「いえ……こっちの空気の流れが、速くて」

スタスタ

スー勇者「多分、開けた場所があるです」

勇者「ほんと?じゃあそっちに行こう」

スタスタ

スラお「んー」モゾッ

スー勇者「あっ、だめですスラさん出てきちゃ」

スラお「……ゆーしゃのばか」

勇者「いきなり何さ」

スラお「だって……あれ?」

勇者「え?どしたの」

スラお「んーん……ちがった」

勇者「??」

ピタッ!

勇者「……!スーちゃん!隠れて!」ヒソッ

スー勇者「え?わわっ」

ザッ

スー勇者「どうしたです?」

勇者「あれ。ほら、人がたくさん居る」

スー勇者「……――!!」


――貧困街・広場――


勇者「しかも兵士が何人か混じってる……くそ、こっちもダメか」

スー勇者「でもなんだか様子がおかしいです」


兵士達「「「……」」」

ローブを身に纏った集団「「「……」」」


スー勇者「やけに静かで……」

勇者「ん?――あれ、何だろう。中央にでかい荷物がやたらと積まれてる」


ガラガラガラ

「はやくしろっ!ここに置け!」


勇者「!」


ガラン

「よし、次はあと一台……」

勇者「……あれは」


ギシ…


勇者(……――鉄、だよな。熱加工される前の)


ガラガラガラガラ

勇者「お、もう一台……ンッ!!」

スー勇者「ひうっ!」

スラお「ぐゆっ!」


プーン


勇者(くっっっさ!!!臭いくさい!!何運んでるんだよ!!!)


「ぐっ……早く布で覆え!」

バサァッ

「よし。これで全部だな」


勇者(なんなんだこの集団)

スー勇者「……――――エジンベアの、大臣さん」

勇者「え?」

スー勇者「あの人、エジンベアの大臣さんです」

勇者「!!?」


エジンベア大臣「揃ったか?では運べ!」


ガラガラ


勇者「エジンベアの大臣がこんな所で何を運んでるんだ……?」

勇者(ヤバイ取引現場とかじゃないよね、命狙われたりなんか)キョロキョロ


…………――――。


勇者「ん?」

勇者「あれ?……スーちゃん、何か言った?」

スー勇者「いえ、私は何も……でも」

勇者「でも?」

スー勇者「……――なんでも、ないです」

勇者「?」

ザッ

勇者「とりあえずあの集団ももう見えなくなるし、そうしたら動こうか」

スー勇者「はい、ご主人様」


「あの」


勇者・スー勇者「「ハオッ!!!?」」


ザザァッ!!

勇者「いえいえいえいえ僕は何も見てませんよぉ!!?」

「え?何をですか?」

勇者「え?」

「私はちょっとあなた達に用があって」

勇者「な、なんです?」

スー勇者「……――っ!!ダ……」ハッ

「えっと……おほんっ」


ダーマ勇者「私は国連認定勇者資格保有者の一人ダーマ勇者です。少し聴きたい事があります」


スー勇者「ダーマさん……!!」

勇者「  」

勇者「    こ、くれん」

勇者(詰んだ)

勇者「ど、どうされました?」

スッ…

勇者(顔見知りの可能性もあるしスーちゃんを隠さないと……)

スー勇者(ご主人様……)

ダーマ勇者「いえ」


ダーマ勇者「……魔物の気配がするのです。貴方達の方から」


勇者(ダイレクトに詰んだよ)だうー

ダーマ勇者「私の家系は代々ダーマに深く繋がっていて、私も魔族の気配に敏感な特異体質を持って生まれました」

ダーマ勇者「その私の血が騒いでいるんです。魔物の気配に」

勇者「それは、えっと」

ジャキン

勇者「!?」

ダーマ勇者「私も手荒な真似はしたくありません。もし貴方が魔物の手先ならば優しく浄化するように手助けします」

勇者(それってどの道滅ぼすんですよね)

ダーマ勇者「なぜ、魔族の気配がするか……教えてくれますか?」

勇者(ど、どうする!?逃げるにも袋小路に迷い込んだらそれこそアウトだ)

勇者(僕が魔族だって事を悟らせない何か上手い言い訳は……!)


もぞっ

スラお「こんにちは!」


ダーマ勇者「えっ」

勇者「!!!」

スラお「こんにちは!おねーさん!」

ダーマ勇者「えっ?えっ」

勇者(ナイスだスラおおおおおおおおおおおおお)

ザッ

勇者「こ、この子は違うんです!!見逃してやってください!」

スー勇者「くださいっ!」

スラお「んー?」

スー勇者「お話、あわせてくださいスラさんっ!」ヒソヒソ

ダーマ勇者「えっ、スライム……喋って、えぇっ?」

勇者「こ、この子は、ええと、その……亡き父が僕らが子供の頃に拾ってきた孤児のスライムで!」

スラお「そうだそうだ」

勇者「僕らは子供の頃から兄弟のように、家族として接し続けてきたんです……!心が通じ合って言葉も覚えてくれた!」

スー勇者「そうですそうです」

勇者「お願いです、勇者様!こいつは……こいつは見逃してください……!!」

スラお・スー勇者「「そうですだそうですだ」」

勇者(合いの手適当すぎりゅう)

ダーマ勇者「……」

勇者(……ダメか?)


ブワッ

ダーマ勇者「っ……!なんて、ステキなっ……!」


勇者(大丈夫そうだ)

ダーマ勇者「すいませっ……そうとは知らず、剣なんて抜いてっ……」

勇者「いえいえいえ!勇者の方ですし当然の対応をされたまでです!悪いのは街の中にこいつを入れた僕らですし!」

スラお「みたかったんだもん!」

ダーマ勇者「お願いを叶える為にっ……!」ぶわっ

勇者(この人大丈夫か……いい人すぎないか)

勇者「というわけで、もう二度と立ち入りませんのでこの場は見逃してください!」

ダーマ勇者「どうぞどうぞ、引き止めてしまって申し訳ありませんでした……!」

勇者「ありがとうございます!二人共!行こう!」

スー勇者「はいっ!」

スラお「めーれーするな!」

ガシッ

勇者「それでは失礼しますッ!!」


ドヒュンッ!!


タッタッタ……

ダーマ勇者「はー……なんてステキな話だったのかしら」

クルッ

ダーマ勇者「さて」

スタスタ

ダーマ勇者(早く戻らなきゃ。エジンベア王にまだお話を伺っていないし……)

ピタ

ダーマ勇者「……」

ダーマ勇者(でも、変ね)

クルッ


シーン……


ダーマ勇者(…………スライムが、あんな大きな禍々しい気配を出せるのかしら)




…………
……



……
…………


勇者「死んだかと思ったわ」


――倉庫棟――


スタスタ

勇者「本当、本当寿命縮んだ」

スー勇者「すみません、ダーマさんに気付かないでした……」

勇者「スーちゃんが謝る事ないじゃないさ。ってかやっぱり顔見知りだったんだね」

スー勇者「はい。凄く良い人です」

勇者「知ってる」


スタスタ


勇者「しっかしもう随分歩いたね。皆とはぐれてから結構経っちゃったけれど」

スー勇者「ここは……なんでしょう」

勇者「倉庫が並んでるね。そういやスーちゃんはエジンベアの道知らないの?」

スー勇者「……ごめんなさい」

勇者「……あっ」

勇者「いや、本当謝らないで。こっちこそ……無神経だった。ごめん」

スー勇者「い、いえ!」

勇者「とにかく……ん?」

ザワザワ…

スー勇者「急に人気が多くなってきたですね」

スラお「なんかへんなにおいするっ」

勇者「…………――港だ」


――契約商船専用港――


ザァン……

ザワザワ


勇者「ほー」

勇者(壁が一部分だけ取っ払われていて、露出した海面に足場がいくつも飛び出してる)

勇者(そこに商船が錨をそれぞれ下ろして……なんだか、外国に来たって感じられる風景だなあ)

勇者「って、あれっ」

スー勇者「え?」

勇者「ほら、港の奥の方」

スー勇者「……あ!」


――エジンベア城・本城――


勇者「あれ本城だよね!?おおー、もうそんな所まで来ちゃったんだ」

スー勇者「たくさん歩いたですからね……わあ、大きいです」

勇者「だねえ……豪奢な造りというか、なんというか。でも城に囲まれてる街の中にまた城があるって変な感じだね」

スラお「ねえねえ!ちかくいこうちかく!」

勇者「っし――――!!!!静かにスラお!!結構今人多いんだってば!!」ヒソヒソ!!

スラお「むー」

スー勇者「スラさん、良い子しましょう?」

スラお「はい」ヒソヒソ

勇者「さて……じゃあ、お城の方に行きますかね」


…………


ガヤガヤ…

勇者「……んー」

スー勇者「どうしたです?」

勇者「ううん。正直お城入るのってきえさり草が必要になるかな、って思ったんだけど」

スー勇者「まだ余ってるですよ?」

勇者「や……その必要は。ホラ。なさそうだよ」

ガヤガヤ

スー勇者「です。人がいっぱい行き来してるです」

勇者「門兵も居ないみたいだし……僥倖ってところかなあ」



――エジンベア城・内部――


キラキラキラ……


勇者・スー勇者「「ほわーっ……!」」


勇者「なんだこの、豪奢さは……すげー」

スー勇者「全部がキラキラしてるです……!」

「なんだ、あいつら」

「みすぼらしい格好して、キョロキョロ辺りを見回して……」

勇者「う……進もうかスーちゃん」

スー勇者「はいです」

スタスタ

勇者「んー、でもどうしようか。簡単に城に入れたのはいいけれど何も手がかりが無い状態だし」

スー勇者「そうですね……」

勇者「まずは誰かに聴いてみたいところでもあるけれど」チラッ


「……」ジロジロ

「……」ジロジロ

「……」ジロジロ


勇者「……ちょっと、無理そうかな」

スー勇者「きえさり草、使うです?」

勇者「最終的に頼る事になっちゃいそうかなあ」




コロコロ


勇者「……――ん?」

ゴロ…

勇者「なんだこれ、リンゴ?」

ヒョイ

勇者「なんでいきなり」


「あら、ごめんあそばせ」


勇者「え?」

「それあたしのものなの」

勇者「あ、そうですか。すみません」

スッ

勇者「どうぞ」

勇者(なんでリンゴなんかこんな高貴そうな人が……)

「……」


ガシッ


勇者「へっ」

「……やっぱりあなた」

勇者「えっ?えっ」

勇者(え、なんだ?密入国がバレた!?それとも僕が魔族だって――……)


「田舎者ね!」


勇者「……――はい?」


「そこの貴女もそうだわ!田舎者よね貴方達!」

勇者「え、まあ……」

勇者(いきなり何なんだこの人……)

クイクイ

勇者「ん?どしたのスーちゃん」

スー勇者「ま、まわりが……」

勇者「え?……!?」


「「「……」」」


勇者(な、なんだなんだ?皆が僕らを睨みつけてる)

勇者(さっきの視線とは違う、なんていうか……)

勇者「っ、あの!すみません、手を」

「え?ああ、ごめんなさいあたしったら」

パッ

勇者「じゃあ、僕らはこれで失礼します」

スー勇者「……」ペコッ

「え?ちょっと、待って――……」


ダッ


「――むう、逃げられちゃった」


スタスタ

エジンベア兵「姫様!!」

「あら、どうしたの?」

エジンベア兵「どうもこうもございません!あのような下賤の輩に触れて……ご自愛を」

「んもう、おおげさね」

エジンベア兵「エジンベア勇者様から私どもが叱られてしまいます」

エジンベア兵「何卒好奇心はお抑えになられてください……――マーゴッド姫様」


マーゴッド「……エジンベア勇者は関係無いじゃない。あたしを怒らせたいのかしら?」


エジンベア兵「……」ペコ

マーゴッド「ふん、まあいいわ」

スタスタ

エジンベア兵「どうか下階を歩き回らずにお願い致します」

マーゴッド「わかっているわ」


スタスタ


マーゴッド「……――ふふ」


マーゴッド「さっきのあの二人、なーんか面白そうよね……♪」

今日はおしまいです

…………


スタスタ

ザッ


――望庭の広場――


勇者「ん、開けたトコにでちゃったね」

スー勇者「手がかり、ありませんですね……」

勇者「だなあ。歩けそうな所は一通り見回ったしね」

スタスタ

勇者「よいしょ。スーちゃんも腰掛けなよ。だいぶ歩き回ったから疲れたでしょ」

スー勇者「はいです」

ポスン

勇者「んー、どうしよっか……一旦街に戻って情報収集でもするかな」

スー勇者「それがいいかもです。このお城の中の人達、少し怖いです」

勇者「それじゃ、少しここで休憩したら戻ろうか」

スー勇者「あれ?」

勇者「ん?どしたの?」

スー勇者「いえ、あれ……」

勇者「あれ?……あっ」


マーゴッド「……」


勇者「さっきの人……うわあ、めっちゃ見てる」

スー勇者「もしかして、ずっと追ってきてたです……?」

勇者「かもしれない」

スクッ

勇者「スーちゃん、やっぱりもう街に」


マーゴッド「あら、お城を出てしまうの?」


勇者「ってわあ!!!音も無く近づいて来ないで下さいよ!!」

マーゴッド「ふふっ、ごめんあそばせ」

勇者「……何か用ですか?」

マーゴッド「それはこちらの台詞ではなくて?」

スー勇者「えっ」

マーゴッド「あなた方御二人は何をお探しなの?」

勇者「……」

マーゴッド「さすがに傍から見ても何かを探しているのは丸分かりよ?」

勇者「……」

勇者(……一応、見学しに来たって体で聴けば、大丈夫、かな)

勇者「あの、渇きの壷って御存知ないですか?」

マーゴッド「!」

勇者「えっと……噂に聞いて、一度拝んでみたくて。展示とかされてません?」

マーゴッド「……ふふー?」

勇者・スー勇者「「?」」

ザッ

マーゴッド「よろしい。あたしについていらっしゃい」

スタスタ

勇者「え……」

スー勇者「ご、ご主人様……どうするです?」

勇者「んー、一応付いてってみようか」

勇者(もしこの人が嘘を付いていて、怪しい僕達を兵に突き出すつもりでもきえさり草でなんとかなると思うし)


…………


――エジンベア城・通路――


ババッ

マーゴッド「……」

シュバ

マーゴッド「……よし、誰も居ないわね。行くわよ」

スタスタ

マーゴッド「渇きの壷はこの城の地下に保管されてるの。知らない人も多いけれどね」

勇者「……なんで隠れながら歩いてるんですか?」

マーゴッド「兵に見つかりでもしたら渇きの壷の場所まで辿り着けないからよ……よし、こっちも大丈夫だわ」

勇者「あの……まずい場所にあるんですかね」

マーゴッド「まずいワケじゃないけれど、見つかったら貴方達の首がとぶじゃない」

スー勇者「ひっ!」

勇者「怖い事いわないでくださいよ……それに貴女も」

ピタ

勇者「……」

マーゴッド「……どうしたの?」

勇者「……やたら、高貴そうな人だなとは思いましたけど」

勇者「貴女、もしかして」

マーゴッド「私が何かなんて、どうでも良い事ではなくて?」

スタスタ

マーゴッド「さ、ここから足元が暗くなるわ。お気をつけて」

勇者「……」

スー勇者「……」

――エジンベア城・地下――


スタスタ…


マーゴッド「~♪」

スー勇者「……」

勇者「……」チラッ

ヒュゥゥゥ…

勇者(……一応、逃げられるように警戒はしておこう。スーちゃんの手も握ってるし、いざとなったら)

コロン

コロコロ…

勇者「ん?」

マーゴッド「あら、いけない……また落としちゃった」

ヒョイ

勇者「……またリンゴ……はい。どうぞ」

マーゴッド「ありがとう」パシ

勇者「お好きなんですか?リンゴ」

マーゴッド「んー?……そうね」

ヒュッ

パシッ

ヒュッ

パシッ

マーゴッド「……これを見てね、思いついた事があるの。……それからずっとリンゴは持ち歩いているわ」

勇者「思いついたこと?」

マーゴッド「そう。この世界の成り立ちの事」

スー勇者「……世界の成り立ち?」

スタスタ

マーゴッド「あたし、結構な教育を受けてて……聖書なんてそれこそ穴が空くほど読み返したわ」

マーゴッド「でもそこでずっと疑問に思った事があったの」

勇者「聖書に疑問ですか」

マーゴッド「そ。“精霊神ルビスの世界創造”の項」

マーゴッド「昔はルビス様も一人の精霊だった頃があったっていうじゃない……この世界を作ったのはだいぶ最近だって」

マーゴッド「創造神ミトラ様、大地の神ガイア様、太陽の神ラー様、そしてそこにルビス様が加わった、ルビス様は神々の序列の新人だって」

勇者「らしい、ですね」

勇者(いきなり聖書の内容を話しはじめた……)

マーゴッド「でも、この大地を創ったのはルビス様でしょ?じゃあそれまでどこで暮らしていたのかしら?」

勇者「それは……精霊界じゃないんですか?精霊戦争が起きて、そこが滅んでしまって」

マーゴッド「じゃあ他の神様方は今はどこに行ったの?おかしいじゃない。もし神々がルビス様のように健在だったらこの大地を創ったのはミトラ様でもよくってよ?」

勇者「でもそれを言ったらルビス様だってどこにいるか分からなくないですか?」

マーゴッド「でも、加護は活きて、私達は生かされてる」

勇者「……」

マーゴッド「……ねえ、その後の項で記述されてる話があるじゃない」

スー勇者「…………“世界のはざ間の戦い”、です?」

マーゴッド「そう!それ」

マーゴッド「あの戦いでは、あらゆる世界を脅かした“災厄の王”と、あらゆる世界の神々が戦った。ルビス様もラーミアに乗ってそれぞれの世界を行き来して参戦したらしいわね」

マーゴッド「有翼の“星々の民”、空の上に住み人間の夢を司る“夢の民”、竜の一族……皆で力を合わせて無事に“災厄の王”は討ち倒された」

勇者「それが、聖書に書いてある筋書きですね」

マーゴッド「そしてその後にそれぞれの世界の復興を手伝って、ルビス様はそれぞれの世界でも神様になった……その辺りは別にいいわね」

マーゴッド「で、その“あらゆる世界をラーミアで移動して”って所でひっかかってね」

勇者「何がです?」


マーゴッド「……この世界って、ルビス様が作ったんじゃなくて、適当な世界に私達を作ったんじゃないかしら?」


勇者「……えっ」

マーゴッド「ではちょっと聞くわね」

スッ

ポロッ


コロコロ…


マーゴッド「……今のリンゴは、“なんで落ちたの?”」

勇者「え?なんで、って……言われても、落としたから、としか」

マーゴッド「なんでモノは落ちるのかしら?」

勇者「……そういう、モノだから……?」

勇者「一応、詳しく言うと、四元素の物質は回帰する力があるから……リンゴが地面に帰った、って事じゃ」

マーゴッド「ふふふっ……そうね。模範解答よそれが」

マーゴッド「じゃあもう一つ。この世界を船でどれだけ泳ぎ回っても果てに行く事はできません。何故?」

勇者「それは、船が落ちないようにルビス様が守ってるからって」

マーゴッド「それが通説ね、でもこんな説はどうかしら」


スー勇者「……大地が、丸いからです」


勇者「え?スー勇者ちゃん、なんて?」

スー勇者「この大地が、丸いからです……私達の村で、そう言われてるです」

マーゴッド「~~~~~っ」

ぎゅうぅぅっ!

スー勇者「ふあ!?」

マーゴッド「これだから田舎者は大好きなのよぉ~~~っ!!!」ギュゥゥゥ

勇者「え?この大地が丸い?」

マーゴッド「そう。この大地はまんまるなのよきっと」

勇者「そん、な……?ええぇ……?」

スー勇者「お空の星が、毎晩同じ方角を走るのも、関係があると言われてるです」

マーゴッド「それも理解してくれるの!!?あーんもう貴女すき!」ギュゥゥ

スー勇者「うー……」

勇者「え?星とこの大地がどう関係あるの?」

マーゴッド「多分、この大地が回ってるのよ」

勇者「ん……?ん?何?」

マーゴッド「つまり、ほら、このリンゴを見てごらんなさい?」

クルクル

マーゴッド「私のこの左手の握った手が太陽だとしたら、こうやって回ってるんだと思うの」

マーゴッド「だから星が、月が、太陽が回っているわけじゃなくて。私達がその周りを回っているのよ」

勇者「……?…………?」

マーゴッド「なによその間抜けな顔」

勇者「ごめんなさいいまいち納得しきれなくて」

マーゴッド「ま、こんな事大抵の人間は笑って流す説よね。……ルビス様を妄信してる人間達は。ね」

勇者「貴女は違うんですか?」

マーゴッド「少なくとも、何もかもをルビス様の手柄にしてルビス様のせいにするつもりはないわ」

マーゴッド「ルビス様の力が働いているのは、ルビス様が作った生き物と植物と建物だけ」

マーゴッド「原初のこの世界には、ルビス様の力は働いていなかった……そう思うの」

勇者「で、でももしさっき言ったのが本当なら僕らがここに立ってるのもおかしい気が」

マーゴッド「だから、さっきのリンゴの話になるわけ」

マーゴッド「大地がくるくる回っても私達が地面に居座れるのは……ルビス様の力じゃなくて。なにかの力の均衡の賜物じゃないかしら」

マーゴッド「この大地の底には、あらゆるものを引っ張る力がある。それは加護じゃなく、何かと何かの力の均衡、そしてこの大地の性質」

マーゴッド「……引力。それが働いてる」

勇者「……」

マーゴッド「っというのが私の考え。内緒よ?」

勇者「誰にも話さないですよ……」

スタスタ

マーゴッド「いままで何人かにこの話をしたけど相手にされなかったわ。只一人を除いてね」

勇者「信じる人が居たんですか?」

マーゴッド「そう。パp……エジンベアの王に謁見しに来た風格のあるおじいさんなのだけれど」

マーゴッド「王はその人を『田舎者』だと呼んで相手にしていなかったわね」

勇者「ひでえ話だよ」

マーゴッド「でもその“田舎者”はあたしの考えを肯定してくれたの」

マーゴッド「『それは一つの真理だ。辿り着いているのはほんの一握りである』ってね」

勇者(ほんの一握りって……本当に他にも居るのかな)

――――――――――――

――女勇者一行の船の中――


遊び人「くしゅんっ」

武道家「やだ、風邪?大丈夫?」

遊び人「ん、大丈夫よ。ごめんね」

――――――――――――

マーゴッド「だから、あたしは田舎者が面白くてだーいすきなの」

ぎゅぅぅ

マーゴッド「このコみたいなね……♪」

スー勇者「ご主人様ぁ……」

勇者「あの、離したげてくださいな」

マーゴッド「あなたはつまらなくてそんなに好きじゃないわ」

勇者「そうすか……」


――地下の宝物庫――


勇者「……ここに渇きの壷が」

スー勇者「っ……」ゴクリ

マーゴッド「でも、ここ……ただの宝物庫じゃなくってね」

勇者・スー勇者「「え?」」

マーゴッド「簡単に物を持ち出せないように仕掛けがあるのよ。すっっっっごく難しい仕掛け」

マーゴッド「……でも、もしそれを解けたら、渇きの壷を手に入れられる」

勇者「……!」

マーゴッド「さっき言った田舎者のおじいさんも、実は“渇きの壷”を求めていたの」

マーゴッド「その時は田舎者のおじいさんにここを案内できなかったのだけれど……今回は案内できたわ」

勇者(……その仕掛けを解くしかないか)チラッ

スー勇者「……」コクッ

勇者「……入ってもいいですか?」

マーゴッド「どうぞ?」

勇者「…………失礼します」

ギッ

勇者(僕は……正直仕掛けを解いたりってのは苦手だ)

勇者(でも、そんな弱音はいちゃいられない!)


ギィィィ…!


勇者(進んでやる……渇きの壷を、手に入れてみせるんだ!)



ギィッ!!!


バターン!!!!



シーン…………



勇者「……」

スー勇者「……」

スラお「……」


ガラーン…


勇者「……何もなくない?」



マーゴッド「ま」


ビシィッ!!!




マーゴッド「あたしものすごく頭いいからあたしが仕掛けをこないだ解いちゃったんだけどね!!!!!!」ドヤァァァォォォン!!!!




勇者「おうふざけんな時間返せや」

今日はおしまいです

…………

コンコン

給仕「エジンベア勇者様」



ガチャ


エジンベア勇者「……なんだい?おや、君は」


給仕「あ、エジンベア勇者様。お客様がお見えになられたとの事でしたので伺いました。お茶はおいくつ――……」

エジンベア勇者「ああ、いいのさぁ。気にしなくて。お茶はいらないよ……それより」

ナデ…

エジンベア勇者「君はいつになったら給仕としてではなく、女性としてこの部屋をノックしてくれるのかな……?」

給仕「い、いやですわっ、もうっ、からかわないでくださいまし……失礼しますっ」

タッ

エジンベア勇者「ふふ……時間の問題、かな?」


イシス僧侶「うわー、見ました?今の」


ポルトガ勇者「ああ、歯が浮くったらありゃしねえ」


イシス勇者「感心しないね」


イシス魔法使い「ちょっと強引過ぎるのも考えものね」


イシス戦士「心底どうでもいい」


エジンベア勇者「君ら自分達の立場わかってるのかよお!!!?」


――エジンベア城・エジンベア勇者の執務室――


スタスタ ドカッ


エジンベア勇者「まったく!外で仕事してた僕が偶然君らを見つけたからいいものの!」

エジンベア勇者「もし見つかったのが他の国連の勇者だったらどうするつもりだったのさあ!?」

ポルトガ勇者「それに関しちゃマジで感謝してるよ。ありがとな」

イシス勇者「まさか他の勇者の人たちも来てるとは思わなくて」

エジンベア勇者「はあ……ま、いいんだけどさ」

イシス僧侶「エジンベア勇者様は何のお仕事だったんですか?」

エジンベア勇者「んー?……まあ色々だよ。港の方でね」

イシス勇者「港?」

エジンベア勇者「積荷やらの確認さ。最近新しくできた港町に行く船の積荷」

ポルトガ勇者「なんでまたそんな役目……お前まさか苛められてるの?」

エジンベア勇者「むかつくんですけど」

ボリボリ

エジンベア勇者「色々とさ、大きな取引があるんだよお。僕も船に同乗しなきゃいけないんだ」

イシス勇者「……大きな取引って?」

エジンベア勇者「あのさ」

ギシッ


エジンベア勇者「質問したいのは、本来ならこちらの方なんだよねえ」


エジンベア勇者「君らはなんでここに居たんだい?」


エジンベア勇者「どうやって入国した?何の目的で?何故隠れてこそこそ動いていた?」


一同「「「……!!」」」


ポルトガ勇者(……やっぱり話題は逸らせねえか。だよな)

イシス勇者(どうしよう、勇者くんも一緒だっていうのは話せないし……渇きの壷を手に入れるためっていうのも言えないし)

イシス勇者(何かうまい言い訳は――)

エジンベア勇者「と、いっても……見当はつくけどね」

イシス勇者「へっ?」


エジンベア勇者「……――今の、エジンベアの裏の動きについて……嗅ぎつけてたんだろ?」


ポルトガ勇者「?」

イシス勇者「?」

イシス僧侶「?」

イシス魔法使い「?」

イシス戦士「?」


「「「「「????」」」」」


エジンベア勇者「……えっ、ちがうの」


イシス勇者「裏の、動き?」

ポルトガ勇者「おいおい、ちょっと待てなんだそりゃ」

エジンベア勇者「あー……いや、いいんだ。違うならそれで」

ポルトガ勇者「いいわきゃねえだろ。今のは聞き捨てならねえ言葉だったぞ」

エジンベア勇者「忘れてくれないかい?」

イシス勇者「そんなの無理に決まってるじゃないか!」

エジンベア勇者「……はあ……墓穴ほっちゃったなあ」

スクッ

エジンベア勇者「少しね、エジンベア大臣が妙な動きをしてるんだ。それが気になっててね」

イシス僧侶「エジンベア大臣様が?エジンベア王様じゃなくてですか?」

エジンベア勇者「王は企みごとなんてできないよ。馬鹿だし」

イシス戦士「ひどい」

エジンベア勇者「ともかく、それだけさ。別に僕もその動きをどうこうしようってつもりは無いしね」

イシス勇者「えっ」

ポルトガ勇者「……なあ、エジンベア勇者よお」

エジンベア勇者「なんだい?」

ポルトガ勇者「もしかして、今回の大きな取引ってのも……もしかしてその大臣絡みじゃねえのか」

エジンベア勇者「……」

ポルトガ勇者「お前、それを知ってて、知らん顔で協力してんのかよ?」

エジンベア勇者「……それが何かいけないのかい?」

ポルトガ勇者「お前勇者だろうが!妙な事見かけたんなら――!」

エジンベア勇者「そう。僕は勇者だよお?」

エジンベア勇者「“国連の犬”。それが勇者だ」

エジンベア勇者「何で君が『自分は違う』って顔で憤ってんだい?」

ポルトガ勇者「……!!」

イシス勇者「でも、もしかしたらその妙な動きがいずれ色んな人に影響を与えるかもしれないじゃないか」

エジンベア勇者「……あのさあ、皆が皆、君らと同じ思考してるって思わないでくれるかなあ?」


エジンベア勇者「上に言われた事こなして。魔物と戦って雑務をして。給料貰って綺麗なお姉さん方を抱く」


エジンベア勇者「それが僕にとっての『勇者』なんだよねえ」


イシス勇者「……」

ポルトガ勇者「……ああ、そうかい」

ガタッ

エジンベア勇者「どこに行くんだい?」

ポルトガ勇者「帰るんだよ。少しだけでも匿ってくれてありがとよ」

エジンベア勇者「はあ……余計な事する、って顔に書いてあるよ?」

ポルトガ勇者「へえ。他の文字は読み取れねえか?」

エジンベア勇者「僕の事を理解できない、って。そう書いてある」

ポルトガ勇者「解読ありがとよ」

ガチャ…

ポルトガ勇者「イシス勇者、お姉さん方。行こうぜ」

イシス勇者「うん」スクッ

エジンベア勇者「ったく……」

スッ 


チリンチリン


イシス勇者「……?」

ポルトガ勇者「おい、なんだその鈴」

エジンベア勇者「何って、合図だけど?」



ガチャッ!!

ゾロゾロ


イシス勇者「!!?」

ポルトガ勇者「うわ!!?」

イシス僧侶「なっ……!!」

イシス魔法使い「えっ、なになに……?」

イシス戦士「……」ジャキッ


黒服の男達「「「……」」」


エジンベア勇者「……早いねえ」

黒服の男「隣の部屋で待機してたからな。何の用だよ?」

エジンベア勇者「この人らをこの城に暫く軟禁してもらえるかい?」

ポルトガ勇者「なっ……!!?」

イシス勇者「ちょっと!エジンベア勇者君!」

エジンベア勇者「言ったろ?君ら自分の立場をわかっちゃいないんだよ」

エジンベア勇者「客室もあてがうからさ。しばらく大人しくしていなよ」

ポルトガ勇者「そんなもん俺らが――」

ジャキッ

黒服の男「……おう、動くなよ」

ポルトガ勇者「あ?やんのかコラ」

イシス僧侶「ポルトガ勇者様!落ち着いて!」

イシス魔法使い「ここで騒ぎを起こしても状況が悪化するだけだわ」

エジンベア勇者「さーすがイシスの美女達は話がわかるねえ」

エジンベア勇者「ちなみに、逃げようとしてみ?この男達が全力で阻止するよ」

ポルトガ勇者「俺らが負けるとでも思ってんのかよ」

エジンベア勇者「いーや?勝つだろうね……でも」

エジンベア勇者「こいつらは、死ぬまで君らを阻止するよ?君らが手加減して戦えるなんて事はないだろうね」

エジンベア勇者「……君らがここから逃げる時は。この黒服達を殺した時だ」

ポルトガ勇者「……!」

エジンベア勇者「自分の目的の為に、普通の人間である彼らを殺すかい?……“勇者”のおふたりさん?」

イシス勇者「……っ」

ポルトガ勇者「……いい趣味してやがるぜ、本当に」

エジンベア勇者「ありがとう。自身はあるんだ」ファサッ



バタン


ツカツカ…

エジンベア勇者「さて、と……」ポキポキ

エジンベア勇者(あとは黒服に任せていれば大丈夫かな。僕は船出の準備でもするかねえ)

タッタッタ

エジンベア兵「エジンベア勇者様!」

エジンベア勇者「ん?どうしたんだい?」

ザッ

エジンベア兵「失礼します、実は――……」

ボソボソ

エジンベア勇者「……」

エジンベア兵「……如何しましょう」

エジンベア勇者「はあ……いや、いいよ。僕が行く」

エジンベア兵「はっ。ありがとうございます」

エジンベア勇者「君は持ち場に戻っていいよお」

エジンベア兵「畏まりました」

スタスタ

エジンベア勇者「全く……どうしようもないね」

エジンベア勇者(ついでに伝えなきゃいけない事もあったしねえ)


…………
―――――――――――


スタスタ


マーゴッド「だーかーらー。ごめんなさいって言ってるじゃない」

勇者「言われましても僕ら急いでるんですよおおお?」

マーゴッド「お詫びに渇きの壷は貴方達にあげるってば。さっきも言ったけど」

勇者「う、うーん……でもいいんですか?そんな簡単に。ありがたいですけど」

マーゴッド「もともと誰も使ってないモノだったし。無くなったってばれないんじゃないかしら」

マーゴッド「それに!……あたしはこのコの事気に入っちゃったしね♪」ギュウ

スー勇者「うー……くるしいです」

マーゴッド「ねえ、貴女私の専属のメイドにならない?お洋服いっぱいあげる」

スー勇者「お、お洋服……!?」ピクッ

勇者「スーちゃんを攫おうとしないでくれますう?」

マーゴッド「貴方は本当につまらないわね」

勇者「よろしくどうぞ」

マーゴッド「でもあんな壷、何に使うの?」

勇者「えっと……まあ、いろいろと」

マーゴッド「いろいろって何よ。やましい事?」

勇者「やましい事ってワケじゃないんですけれどね」

マーゴッド「はっきりなさいな」

勇者「んー……説明が難しいな」


マーゴッド「お尋ね者の貴方がしようとする事だもの。そんな面白そうな事ちゃんと聴かなきゃいけないわ」


勇者「ブフンッ」

スー勇者「えっ、あっ、え?」ワタワタ

勇者「ちょ、ちょっと違いますよ?何を言って」

マーゴッド「貴方が噂になってる魔族の男でしょ?勇者って名前だっけ」

勇者「ちちちちちちち違うです」ギュウウウ

スー勇者「ご主人様!手がいたいです!力強いです!」

勇者「ご、ごめんスーちゃん!」

マーゴッド「で、そっちが行方不明になったっていう国連のスー勇者ね?」

スー勇者「ちちちちちちちちちがうれす」ギュゥゥゥゥ

勇者「スーちゃん!手が痛い!爪食い込んでる!」

マーゴッド「仲いいわねあなた達。っていうかまだ手繋いでたの」

マーゴッド「でも安心なさいな。別に兵に突き出すつもりなんてなくてよ」

勇者「えっ……」

マーゴッド「あら、ご不満?」

スー勇者「いえ、でもなんで」

マーゴッド「さっきも言ったでしょ?貴女が気にいっちゃったのあたし」

マーゴッド「それに……貴方が本当に悪い魔族なら私にいちいちかわきの壷の場所なんて聞かないで皆殺しにして奪えば良い事だもの」

勇者「……でも、なんで僕がそのお尋ね者だってわかったんですか?」

マーゴッド「一応私の知り合いから“ガルナの塔の変”での事情は聞いたの。貴方の特徴もね」

マーゴッド「ふわっとした毛に、青い目、珍しい髪の色、女々しい顔……特徴通りね。うん」

勇者「女々しい顔は不本意だなぁ」

マーゴッド「腰には銅の剣も下げているし、えっと……貴方布被っただけで変装したつもりなのそれ」

勇者「うわあすげえ不安になってきた今さら」

マーゴッド「そっちの貴女は公用語が不安定、黒髪、珍しい肌着のような格好、羽根の髪飾り」

マーゴッド「そして国連のスー勇者はガルナの塔の変後にいきなり姿を消した……ってトコロから推測したの」

勇者「……さすが、お姫様は頭がいいですね」

マーゴッド「あら、貴方も察しがいいじゃない」

勇者「さすがにもう分かりますよ。その教養に城の関係者しか入れない所も近道も把握してるってところを考えれば」

マーゴッド「なのに畏まらないのね。ふふっ!いいわ、貴方も面白くなってきた!私に仕えてもよくてよ?」

勇者「殺されますって、国連の人らに」

マーゴッド「そうね」

勇者「それに……さっき仰った知り合いって、えっと……」



ザッザッザッ


勇者・スー勇者「「!!!」」

勇者(結構な人数の足音が……!しかも甲冑の揺れる音も)

マーゴッド「……二人共、隠れてなさい。その花瓶の後ろ辺りに」

勇者「すみませんっ……!恩に着ます!」


ザッザッザッ

ザッ


エジンベア勇者「……ああ、姫。こっちにいらっしゃいましたか」


スー勇者(エジンベアさん……!)

勇者(うわー、ジャストタイミング……エジンベアの勇者の人だ)

マーゴッド「何の用?」

エジンベア勇者「兵から姫が怪しい者と行動していると聞きまして」

マーゴッド「怪しい者……?ああ!さっきの果実商達ね!もう街に帰ったわよ?」

エジンベア勇者「果実商?」

マーゴッド「ええ。リンゴについて聞きたい事があったから詳しい者達を呼んだの。いけなかった?」

エジンベア勇者「いえ、とんでもございません」


スー勇者「……?」

勇者「どしたのスーちゃん」ヒソヒソ

スー勇者「なんだか……エジンベアさん、話し方が前と違うです」ヒソヒソ

勇者「そうなの?」ヒソヒソ

スー勇者「えっと……前は、もっと、こう……女の人には、えっちな話し方でした」ヒソヒソ

勇者「えっちな話し方てなによ……でも仕える姫様の前だもん。それはしょうがないんじゃないかな」


マーゴッド「そう。じゃあもういいでしょ?あたしは調べる事が沢山あるの」

エジンベア勇者「はい。失礼しました……あともう一つ」

マーゴッド「何かしら?」



エジンベア勇者「姫の部屋に置かれていた“渇きの壷”は、返していただきました」


エジンベア勇者「今日その為に部屋へ給仕が立ち入ったので報告させて頂きます」


マーゴッド「…………――は?」



勇者「!!!?」


マーゴッド「ちょっと、何のつもりかしら」

エジンベア勇者「随分前から買い手を探していたのですが、その買い手が見つかったのです」

エジンベア勇者「王から宝物庫の壷を持って来いという命令を頂いた直後、給仕が貴女様の部屋でそれを見かけたというので」

マーゴッド「勝手に持って行ったって事?」

エジンベア勇者「……本来あれは城の宝です。現在誰も使っていないとしても、あれは貴女様のモノではございません」

マーゴッド「その理論で言えば城のモノでもないわね?エジンベアの宝物庫は泥棒博物館と言われているのくらい知っているわ」

エジンベア勇者「あまり私を困らせないで頂きたい」

マーゴッド「さっき道理で宝物庫に何も無いと思ったのよ。宝、全部売ったのね?お父様……いえ、大臣かしら?」

エジンベア勇者「姫、宝物庫には何用で?」

マーゴッド「……」

エジンベア勇者「……何を企んでいるのかは存じ上げませんが、大人しくなさってください」

エジンベア勇者「壷はもう契約港の船に積まれました。もう取りやめもできませ」


パアン!!


エジンベア勇者「っ……」

マーゴッド「…………久々に話したと思ったら、随分つまらない話だったわ」

エジンベア勇者「……君達。姫を部屋に」

兵達「「「はっ!」」」

ザッ

エジンベア兵「さあ、姫様」

エジンベア兵2「こちらです」


マーゴッド「……」


スタスタ……


エジンベア勇者「……はあ」

エジンベア勇者「…………変わんないねえ、マーゴッドも……」ボソッ

エジンベア兵3「はい?何か仰いましたか?」

エジンベア勇者「いや?それじゃ僕は買い手と会って来るよ。姫や城は任せたよ」

兵達「「「畏まりました!!」」」


…………
……

――――――――――――――



――エジンベア城・マーゴッドの部屋――


給仕「それでは姫様、失礼します」

エジンベア兵達「「「失礼します」」」


バタン


マーゴッド「……」

スタスタ

マーゴッド「……本当に無くなってる」

マーゴッド「あーもう!」

ボフッ

マーゴッド「…………」

ゴロン


マーゴッド「……エジンベア勇者の、馬鹿」



「……お姫様」


マーゴッド「!!?」ガバッ!!


シーン…


マーゴッド「……え?」

マーゴッド「誰……?今の声は」

「いきなりすみません、さっきの二人です」

マーゴッド「え!?どこどこ!?」

「今はちょっと姿を消してます。すみません忍び込んじゃって」

マーゴッド「……っ!あなた達、いよいよをもってステキだわ……!」キラキラ

「なんすかそれは……」

「ご主人様はステキです!」

「スーちゃんありがとう、でもちょっと話の腰折らんといてね。勿論スーちゃんもステキなので」

マーゴッド「で?どうしたの姿を消して」

「実は姫様にお願いがありまして……」

マーゴッド「お願い?」

「はい。実はここには五人の友人達と一緒に来たんですけど途中で逸れちゃって」

マーゴッド「五人の友人ね?それがどうしたの?」

「もしその五人の友人に会う事がありましたら、僕とスーちゃんは無事だと伝えてくれませんか?」

マーゴッド「いいけれど……あたしがわかるかしら?五人の友人なんて」

「実は、イシスの勇者とポルトガの勇者が一緒で」

マーゴッド「!!!」

「……もしかしたら、この城に来るかもしれないんで、その時は秘密裏に伝えていただけませんか」

マーゴッド「ふふっ……!魔族の男に国連の勇者が三人も関わってるなんて……面白いわね……!!」

「ご主人様は魔族じゃないです!」

「スーちゃん、いいって。ありがとう」

マーゴッド「ちょっといじわるで言っただけよ。謝るわ……そして。そのお願い聞き入れたわ」

「あ、ありがとうございます!」

マーゴッド「で、あなた達はその壷を追うのかしら?」

「はい。なんで今すぐ行かないと」

マーゴッド「急げば間に合うと思うわ。契約港のエジンベアの国印が掘られた大きな帆船よ」

マーゴッド「……――さ。聞き入れたから早く行きなさいな」

「本当に色々とありがとうございました」

マーゴッド「いいのよ。あたしも楽しませてもらったわ。ありがとう」

「何かいずれお返しはさせて頂きます!」

マーゴッド「ん?んー……そうね、だったら」


マーゴッド「いつか丸一日スー勇者のお洋服を着せ替えて遊びたいわ」


スー勇者「お洋服っ!?……あ、え、でもっ……」ソワッ

勇者「勿論いいっすけど僕も同席していいんすよね」クワッ

スー勇者「ご主人様っ!?」

マーゴッド「着替え中はダメよ」

勇者「それは勿論です」

マーゴッド「だったらいいわ」

勇者「恩に着ます」


ガシィッ!!!


スー勇者「お姫様、ご主人様の事見えてないですよね!!?凄く綺麗に手を握り合った音がしたです!!!」




――エジンベア港――


ガヤガヤ…


ダーマ勇者「ふあ……大きい船」

エジンベア兵「我が国一の輸送船です。立派なものでしょう」

ダーマ勇者「はい!でも私も何か搬入を手伝わなくてもいいんですか?」

エジンベア兵「それは下々の仕事です。ダーマ勇者様は船旅に備えて休んでいらしてください」

ダーマ勇者「下々なんて……人の仕事にそんなもの」

スタスタ

エジンベア勇者「おやぁ、もう準備できてるのかい?ダーマ勇者」

ダーマ勇者「エジンベア勇者様。お疲れ様です」

エジンベア勇者「お疲れ様。これから船旅だね」

エジンベア勇者「嬉しいね……君みたいな綺麗な女性と船旅なんて、まるでバカンス」

ダーマ勇者「お仕事です!ちゃんとなさって下さい!」

エジンベア勇者「はは、厳しいね。君はいつも」

ダーマ勇者「あれ?」

エジンベア勇者「どうしたんだい?」


ガヤガヤ


ダーマ勇者「なんだかやたら大きな荷物……あれは皆さん何を運んでいらっしゃるんですか?」

エジンベア勇者「さあ……なんだか色々運んでるみたいだよ?」

エジンベア勇者「これから行く港町は新しくできた町でさあ、国連が世界各所のポルトガ領港経由で物資を運ぶ時の中継地点になってるんだ」

ダーマ勇者「んもう、それくらいなら存じています!」

エジンベア勇者「で、その街はここからなら五日間くらいの場所にある……五日間は女性にはきついかもしれないが、大丈夫かい?」

ダーマ勇者「ご心配ありがとうございます。ですが私なら大丈夫ですよ」

エジンベア勇者「ならいいんだ」


「搬入、全て完了致しました!」


エジンベア勇者「お、完了したみたいだ。それじゃ乗り込もう」

ダーマ勇者「……」

エジンベア勇者「……どうしたんだい?」

ダーマ勇者「……いえ」

ダーマ勇者(この船から、なんだか……魔物の気配が)

ダーマ勇者(なんでかな……)


…………
……



……
…………


――船倉――


シーン…


ガ

ガコッ……


勇者「……」


キョロキョロ

勇者「……船倉の中には誰もいないみたいだ」

ヒョコッ

スー勇者「本当です?」

ヒョコッ

スラお「みんないないね」


<……。……。


勇者「でも船倉の扉の前に見張りがいるみたいだから隠れてよう」

スー勇者「はい」

勇者「それじゃ、上蓋閉めるよ」

ガコ


――大貨物の箱の中――


勇者「ふー……ごめんね、スーちゃん。狭くて」

スー勇者「大丈夫です!」

スラお「スーちゃんをこんなめにあわせるな!ばかゆーしゃ!」

勇者「スラおちょっと声は静かに」

スラお「ばかゆーしゃ!」ヒソッ!

勇者「言い直すなや」

勇者「しかし……こんな無理やり忍び込むことになるとは」


―――――――――――――


――エジンベア港――


タッタッタ!!

勇者『間に合ったか!?』

スー勇者『ご主人様!もうきえさり草の効果が!』

勇者『えっ!?じゃあ追加で』

スー勇者『もうないです!』

勇者『マジすか!!!』

勇者『と、とりあえず今のうちに忍び込まなくちゃ!』

スー勇者『だめですっ!船の場所まで、持ちそうに』

勇者『っ!』


『おーい、それも運び入れてくれ』

『うーっす』


勇者『!!!スーちゃん!!』グイッ

スー勇者『わわっ!?』

…………
……



―――――――――――――


勇者「……本当に間一髪だった」

スー勇者「すみません……きえさり草が、もう無くなって」

勇者「あー、ごめんそういうつもりじゃなくってさ」

スラお「でもここいーにおい!」

勇者「ん。幸いなのが」


ゴロッ


勇者「忍び込んだのがリンゴを入れた箱だった事かな」

スラお「ごはんにこまらない!」

スー勇者「うー……でも泥棒みたいです」

勇者「忍び込んだ時点でもう泥棒なのよ……ここは腹をくくろう。モヤっとするけれどね」

勇者「でもどのくらいの船旅なんだろう?それによっても色々と問題が出てくるな」

スー勇者「頑張るですけど……もし一月の航海でしたら」

勇者「ううん……まずいかもね……この箱の中だけじゃ」

スー勇者「そんなに一緒にいたら、その……私、臭いです」

勇者「あっ、そこ?そんなところの心配してるのスーちゃん?」

スー勇者「そんなことじゃないです!ご主人様に臭い匂い、嗅がせられないですっ!」

勇者「だ、大丈夫だって!スーちゃんの匂いならなんでも気にならないよ!寧ろなんでもいい匂い!」

スー勇者「えっ」

勇者「……冷静に考えると今の発言はやべえな僕」

スラお「へんたい!」

勇者「ちがうって!と、とにかく!そんな事気にしないから!ね?」

スー勇者「は、はい……えへへ」

勇者「なんで嬉しそうなのさ」

勇者「……あー、それとさ。スーちゃん」

スー勇者「はい?」

勇者「危なくなったら僕に口裏を合わせてね。スーちゃんを攫ったって体で演技しよう」

スー勇者「!!!そ、そんなっ!だめですっ」

勇者「いいから。スーちゃん」

スー勇者「でも」

勇者「こればっかりは僕のいう事を聞いてもらう」

スー勇者「……!」

勇者「……」

ナデ

勇者「大丈夫だって!きっと船もすぐに着くよ」

スー勇者「……はい」

勇者「あと今になって思ったけど」

スー勇者「はい?」

勇者「トイレどうしようね……」

スー勇者「あっ……」


…………
……

――――――――――――――


~~~~~
~~~~~


勇者「って事があったんだよ」

スー勇者「ふふっ!ふふふっ!」

勇者「でも僕はそこで思っちゃったんだけど――……」


~~~~~
~~~~~


スタスタ…


勇者「……行ったみたいだね」

スー勇者「見回りの人、いつ来るかわからないです」

勇者「だね。用心しておこう」


~~~~~
~~~~~


勇者「しりとり」

スー勇者「りんご」

スラお「ごめす」

勇者「誰だよ」


~~~~~
~~~~~


スー勇者「っ、ぐすっ……!!」

勇者「スーちゃん!おならなんて全然気にしないって!泣かないで!」

スラお「くちゃい!」

勇者「お前ぶっ殺すぞ!!?」


~~~~~
~~~~~


勇者「ぐー……ぐー……」zzz

スラお「ぐむー……ぐむー……」zzz

スー勇者「っ、あっ……だ、だめですっ、ご主人様」グイッ

勇者「んむ……むにゃ」ゴソッ

スー勇者「ゃっ……ぁ」ピクンッ


~~~~~
~~~~~

~~~~~
~~~~~


ガコッ

勇者「おっけー!今なら見張りもいなかった!」

スー勇者「すっ、すみませんですっ!」ダッ

勇者「気をつけてね!……ふー、僕も漏れそうだった」

スラお「にんげんってたいへん。ゆーしゃきらい」

勇者「それ語尾か何かなの?」


~~~~~
~~~~~


勇者「そうそう。発音はそんな感じ」

スー勇者「ありがとうございますです!」

勇者「スーちゃんは飲み込み早いね。えらい」ナデナデ

スー勇者「えへー」


~~~~~
~~~~~





……
…………



――甲板・先端付近――


ダーマ勇者「……」

スタスタ

エジンベア勇者「どうしたんだぁい?眠れないのかい?」

ダーマ勇者「あ、エジンベア勇者様……いえ」

ダーマ勇者「ちょっと、この船から妙な気配を感じていまして」

エジンベア勇者「妙な気配?ってーと魔物の?」

ダーマ勇者「はい」

エジンベア勇者「んー……ま、大きな船の造りの隙間に弱い魔物が住んでるなんてよくある事だしね。気にしない方がいいさ」

ダーマ勇者「ですかね……」

エジンベア勇者「そ。でもそれでも怖いなら……どうだい?今夜は僕の船室で、できればベッドの中で朝まで……」

ダーマ勇者「お断りします」

エジンベア勇者「即答だねぇ……」

ダーマ勇者「夜が明ければもう目的地に着いて仕事が始まります。夜通しお喋りなんてしていたら支障をきたします」

エジンベア勇者「ンッ?あっ、うん……?そうだね」

ダーマ勇者「……まして、明日は」

エジンベア勇者「……緊張するかい?」

ダーマ勇者「それはもう……ムオル勇者さんを超える、生ける伝説ですから」




エジンベア勇者「“皇帝”……――糾えるソクラス」



ダーマ勇者「……どんな方なのでしょうね……」




ザァン… ザァン……


…………
……





ガロガロガロ



ゴォォン……



勇者「……今の音」

スー勇者「多分、錨をおろす音でした」

勇者「……スーちゃん、スラお。リンゴを掻き分けて、できるだけ深く潜ろう」

スー勇者「はい」

勇者「そして……今から会話は無しで」

スー勇者「っ」コク

スラお「わかった!ゆーしゃくたばれ!」

勇者「聞いてねえな?」


バタン!!


勇者・スー勇者「「!!」」


スタスタスタ!


「入り口付近の小さいヤツから運べ!」


「それはいい!例のヤツは船の中に置いたままでいい!」


「せーのっ!」


ガコンッ!!


勇者「!」

勇者(箱が動き出した……できればこのままどこかに放置されるか、市場に持っていかれますように……!)

勇者(もし国連兵が多い場所で開けられたら終わりだ。どうか……!!)


「これは何の箱です?」


「それはリンゴだ!果物類は一度倉庫へ運べ!」


「大聖堂横にある倉庫だ!運び終えたらまた戻って来い!」



…………
……




……
…………


シーン…


ガコッ


勇者「……」



――どこかの倉庫――



キョロキョロ

勇者(僕らがここに置かれてしばらく経った)

勇者(物の出入りももう長い事ないみたいだし……)

勇者「よし……今なら大丈夫みたいだ!スーちゃん!出よう!」

スー勇者「はいっ!」


スタッ


勇者「とりあえずここを抜けよう」

スタスタ

勇者「しっかし……でかい倉庫だな……」

スー勇者「天井が高いです……」

スラお「ほあー……」

勇者「あ、ここから出れそうだ」


ザッ…

ヒョコッ


勇者「……うん。外にも誰も居ない。行こう」

スー勇者「はいです……わああ」

勇者「ん?どったの?……ってうおお」



――大きな建物――



勇者「なんだこれ……すごくおおきいな」

「そこは大聖堂だ」

勇者「大聖堂?全然そう見えないですね」

「ああ。まだ建設途中だからな。着工からまだ二ヶ月ってところか」

勇者「でも二ヶ月でこんなに進んだんだ……すげー……」

「国連の協力もあるみてえだしな。不本意ながら」

勇者「ところで」

「なんだ?」

勇者「…………どなたでしょうか?」

「俺か?」

バキッ ボキッ


あらくれ「……倉庫番だよ。コソ泥野郎共」


スー勇者「ひぅぅ!?」

勇者(やばいっ!逃げ――……)

グイッ!!

スー勇者「きゃあっ!!!」

勇者「!!」


あらくれ「ああん?なんだ?布被ってたから分かんなかったが女じゃねえか」


スー勇者「いたいっです……!はなして……!」


勇者「スーちゃん!!!!」

あらくれ「おっと動くなよ?大人しくしていれば」

あらくれ「痛い目には」



ぞく



あらくれ「……」



勇者「手を離せ」



ズズズ ズ   ズ  ズズ


あらくれ「……あ、う……?」



勇者「スーちゃんから手を離せって言ってるんだよ」


勇者「殺すぞ?お前」




あらくれ(なっ、んだ、こいつ)

パッ



スー勇者「てやーっ!!!」


バコオンッ!!!!


勇者「キパイッ!!!!」メシャァ!!



あらくれ「えぇーっ!!!?」

スー勇者「ご主人様!だめです!あぶないです!」

勇者「えっ、あう……?ス、スーちゃん?あれ?」

あらくれ(な、なんなんだ?こいつら……)

あらくれ(……まあいい)

ザッ

スー勇者「!!」

勇者「あう……?」


あらくれ「……大人しくしとけ、よっ!」



バキィッ!!!




…………
……




……
…………


スタスタ


勇者「……つ」

スー勇者「大丈夫ですかっ!?ご主人様っ」

勇者「大丈夫だよ、スーちゃん」

グイッ

勇者「うっ」

スー勇者「わわっ」

あらくれ「おら、チャキチャキ歩け。手の縄をもっときつくしてやろうか?」

勇者(……クソ、まずい事になったな……)

勇者「あの、本当に僕らは泥棒じゃないんです」

スー勇者「何もとってないです!」

あらくれ「てめえら倉庫の中から出てきただろうがよ。んな言い訳が通用するか」

勇者(ダメか……考えろ。国連の奴らに突き出されたらおしまいだ)

あらくれ「!止まれ!」

勇者「え?」ザッ


<……!……。


あらくれ「チッ、国連のヤツらだ……別の道行くか」

勇者「え?え?」

あらくれ「んだよ。こっち行くぜ」

勇者「僕らを国連の兵に突き出すんじゃないんですか?」

あらくれ「へっ!なんで自分達の街の事をあいつらに管理されなきゃなんねえんだよ!」

勇者「!」

あらくれ「とにかくてめえらは町長の所に連れてく。てめえらをどうするかは町長が決める。行くぞ」

スタスタ

勇者(……少し、光明が見えたかも)

勇者(もしその村長を説得できたらなんとかこの街を……)


スタスタ


勇者「……ん。ねえスーちゃん」

スー勇者「はい?」

勇者「ここってどこかな……?見覚えある?」

スー勇者「いえ……見覚えはないです」

あらくれ「お前ら連行されてるっつうのに暢気すぎやしねえか?」

勇者「あの、ここってどこなんですか?」

あらくれ「ああん?……ここはな、ガルナバーグだ」

勇者「ガルナバーグ?知ってる?」

スー勇者「いえ、はじめて聞いたです……」


あらくれ「ああ、できて一年も経ってねえ町だからな」


勇者・スー勇者「「ええ!!!?」」


勇者「で、でも町並みすっごく綺麗なんですけど!?」

スー勇者「人もいっぱいいます……!建物も高いです!」

あらくれ「あっはっは!!驚いたろ!いい町だろ!?」

勇者「え、嘘でしょ?じゃないとこんな」

あらくれ「ところが嘘じゃないんだなこれが。まあ不本意ながら国連の援助もあったみてえだが」

あらくれ「なにより町長がすげえのよ。凄腕で頭のキレるお人でな」

あらくれ「ここに町を作りたかった副町長と旅の途中の町長が一年前に出会ってこの町を創りあげたワケさ」

勇者「はー……すっごいなあ」


ガヤガヤ


勇者「うお、市場凄いですね?」

あらくれ「だろ?この町はあの市場から始まったようなもんよ」

あらくれ「町長が制度を全て取り決めてなあ。それがまた画期的で」

勇者「町長さんは凄い人なんですね」

あらくれ「おうとも!!自慢の町長さ!」

勇者(凄く嬉しそうに話すなあ)


スタスタ……


あらくれ「……ただ、最近少し不安でな」

勇者「不安?」

あらくれ「ちょっとその町長の評判がよろしくねえのさ」

あらくれ「俺はこの町には結構最初の方から居るが、新し住人が増えだして不満もいろいろ増えてなあ」

スー勇者「不満です?」

あらくれ「いろいろあるのよ、お嬢ちゃん……ま、最初は気のいい大工と行商人が殆どだったしな」

あらくれ「それがいつしかぞろぞろと……住人も俺が来た時は10人だったのが今や500人だぜ」

勇者(あ、住人自体は凄く多いわけでもないんだな)

あらくれ「町長は町を大きくしようと頑張ってるんだが……そうも思わない奴らもいてよ」

あらくれ「変な噂が沢山湧いてんだ……」

勇者「どんな噂なんですか?」

あらくれ「根も葉もないもんさ。この町の金使って宝石買い漁ってるだの、うまいもん食ってるだの」



あらくれ「町の金使ってくだらねえ骨董品買っただの」



勇者・スー勇者((わお))


あらくれ「ん?どうした?」

勇者「いえいえいえ、なんでもないです」

スー勇者「なんでも!なんでもです!」

あらくれ「?」

勇者(え、まさか……渇きの壷の買い手って)

あらくれ「って、気付けばくだらねえ事喋っちまった……忘れてくれ」


ザッ


――立派な建物――


あらくれ「さ、着いたぜ」

勇者「おお……立派だ」

あらくれ「へへ!だろ!大工の連中が……ってもうこのくだりはいいんだよ」

スタスタ

ガチャッ

あらくれ「オラ、入れ」

勇者「は、はい……行こう。スーちゃん」

スー勇者「はい」


スタスタ


勇者「あの、ここは?」

あらくれ「ここがこの町の役場だ」

勇者「役場……立派だけど人が居ないですね」

あらくれ「ここで働いてんのは5人くらいだからな。お。ここだ」


ガチャッ


あらくれ「うっす!失礼します!」


勇者(ここに町長が……!)



「……何、あった」



勇者「!」

スー勇者「っ……!!!!」



あらくれ「コソ泥を捕まえたぜ!」






老人「おお、偉い。お前、ご苦労」





勇者(この人が町長……!?あまり見かけない人種だ)

勇者(って、え……?この訛り方って)



スー勇者【〝大爺様!!!?〟】


勇者「えっ!?」

あらくれ「あん?」


大爺「ん……?……っ!!!!?」

ガタァッ!!

大爺【〝スー勇者!!!?スー勇者ではないか!無事であったか!!!〟】

ダッ

ガシッ!

スー勇者【〝お久しぶりです大爺様!お元気でしたか!?〟】

大爺【〝おお、おお……私は元気だったよ。良かった、お前が無事で……!〟】

スー勇者【〝心配かけて本当にごめんね……でも、私は大丈夫!〟】


<……!……!


勇者「やっぱり、スー人だったんだ……」

あらくれ「えっ……?副町長、その嬢ちゃんお知り合いかい……?」

大爺「そう。私の村、大事な子」

勇者(あれ、副町長?町長じゃないんだ?)

あらくれ「すっ、すまねえ!!!俺とした事が乱暴に……今すぐ解くぜ!!」

シュルシュル

大爺【〝この男も悪い者じゃないんだ。許してやっておくれ〟】

スー勇者【〝平気だよ!それにいい人だっていうのも分かっていますよ〟】

勇者(うーん、なんかスーちゃんが地元語で喋っているとさみしい……)

あらくれ「よし!解けたぜ!すまなかったな嬢ちゃん!」

スー勇者「いえ!」

勇者「……あの……」

あらくれ「あん?」

勇者「僕はまだ解いてもらってないんですけれど……」

あらくれ「なんでてめえのまで解かなきゃなんねえんだよ」

勇者「あ、やっぱり?」

スー勇者「こ、この人もいい人です!」

あらくれ「あんたは副町長の知り合いみたいだったが、こいつは違うしなぁ」

あらくれ「それに……」

勇者「?」

あらくれ「……いや、なんでもねえ」

あらくれ(さっきのあれは、尋常じゃねえ殺気だった)

あらくれ(こいつは危険な気がする)

勇者「あの……?」

あらくれ「っ、とにかく。てめえの処分は町長が決める。さっきも言ったがなあ」

グイッ

あらくれ「おら。付いて来い」

勇者「あうっ……わかってますってば」

スー勇者「わ、私もいくです!」

大爺「私も、行く」

あらくれ「いえ副町長はここで嬢ちゃんと喋ってても」

大爺「……この子、その男、心配、してる」

スー勇者「うー……」

あらくれ「……はあ、勝手にしてくれ」

スタスタ

あらくれ「町長はこっちの奥の扉で仕事してる」

大爺「多分、仕事、落ち着いた、思う」

あらくれ「もうそろそろ国連の連中と会わなきゃいけねえみてえっすしね」

あらくれ「本当、体こわさねえか心配だぜ、ったく」

勇者「……本当に慕ってるんですね」

あらくれ「何回も言わせんな恥ずかしい」



ザッ

あらくれ「さ、ここだ」

勇者「っ」ゴクリ


勇者(さて、こっからが正念場だ)


コンコン

あらくれ「町長!入らせてもらうぜ!」


勇者(まず何も取って無いって証明……いやそういえばリンゴ食べちゃったな)

勇者(その分の支払いはするって事と、国連から隠れてできる仕事ならなんでもするって事を伝えておきたい……)

勇者(もし国連とあまり良い関係じゃないのなら多分そのあたりは)




「はい。どうぞ」




勇者「――――…………」


勇者(……あ、れ?)


スー勇者「?……ご主人様?」


ガチャッ


あらくれ「っし。ほら。とっとと入れ」



スタスタ


勇者「………………」


あらくれ「よっす!おはようございます町長!」


大爺「おはよう、良い朝、来た」


スー勇者「お、お邪魔しますです……」



カリカリ



「ちょっとまって下さいね。今一段落つきますから」


あらくれ「あんまり根詰めすぎるなよ?体壊すぜ?」


「お気遣いありがたいですね。でも今が頑張り時ですから。で、どうしたんです?」


あらくれ「いやよ、実は倉庫でコソ泥みてえなのを捕まえてよ」


スー勇者「ですから!泥棒違うです!」



勇者「………………………………」



カリカリ… パタン


「はい、失礼しました」


スッ


「で、どちらが泥棒の――――…………」




「………………………………………………えっ……………………?」













勇者「何やってんの…………商人……?」






商人「勇、くん…………?」










今日はおしまいです

http://i.imgur.com/bPGd9m5.png


…………


ザザァン…


戦士「しっかしさあー」


――エジンベア・国境前――


スタスタ

戦士「なんであんなに商船が多かったんだ?」

僧侶「んー、もしかして祭りかなにかあるんでしょうか」

魔法使い「とにかく、いまはエジンベアにぶじにはいることをかんがえないとねえ」

武道家「それだったら大丈夫よ。ポルトガ王から令状貰ってるから安心なさい」

ポルトガ姫「そうっす。一応私も一緒っすから、皆さん護衛って体でお願いしますね」

ガシャッ ガシャッ

遊び人「うー……甲冑の中鉄臭いよう」

盗賊「……ちょっと我慢しててね……」

戦士「遊び人は顔バレるとまずいからさ」

ガシャッ ガシャッ

女勇者「御付の人間が女ばかりだと色々と怪しまれるかもしれないからね」

武道家「……なんでアンタまで甲冑を?」

女勇者「…………いや、えっと……ほら。1人だけってのもあれじゃないか」

ポルトガ姫「まあとにかく、これまでも何度かこうやって訪れてるんで安心してくださいっす」

魔法使い「けっこうきたことあるの?」

ポルトガ姫「はい!この国の人間はムカツク奴多いんすけど、お姫さんとだけは仲いいんすよ!」

僧侶「ムカツクって」

ポルトガ姫「まーそれは入れば分かる事っす……とにかく急ぐっすよ。あの城の宝物庫、別名泥棒博物館なら何か手がかりが――……」

戦士「……」

ポルトガ姫「って戦士ちゃんどうしたっすか。港のほうじっと見て」

戦士「んー?ああ、ちょっとな」

戦士「商船、か」

戦士「商人…………ちゃんと無事かな」

女勇者「……」

遊び人「……ん。当たり前よ。あの商人だよ?」

武道家「今は目先の事を考えましょ」

戦士「……うん」

…………
……






――ガルナバーグ・町長室――




スー勇者「えっ、えっ」

大爺「なに……?」

あらくれ「……あれ?」



勇者「……」


商人「……」



あらくれ「…………お知り合い、だった?」


勇者「え、だって……え?皆と旅してたんじゃ」

商人「……」

勇者「それに、町長って、えっ……えぇ?」

商人「……」

勇者「えっと、えっと」

ゴホン

勇者「と、とりあえず。久しぶり。商人」

商人「……」

勇者「…………商人?」


ギリッ…


商人「……なんで、このタイミングでっ……」ボソッ



勇者「え?」

あらくれ「おいおい、町長!お知り合いだったのかよ!俺とんだ失礼を」

商人「あらくれさん」

あらくれ「ん?何だ?」

あらくれ「あっ!縄か!?すまねえ!今解いて」

商人「縄はそのままで構いません」

勇者「エッ」

あらくれ「え?」




商人「その男を牢にぶち込んでおいてください」




勇者「あれれ?」



今日はおしまいです
週末に纏めて投下します

あらくれ「えっ!?でも町長」

商人「いいですから。ぶち込んでおいてください」

勇者「ちょっ、ちょっと待って商人!?なんで」

ガタッ

商人「さて、仕事も一段落着きましたし。私は国連の方々に挨拶しに行かないといけません」

商人「副町長。ではここはお願いします」

大爺「あ、ああ」

スー勇者「ちょっと待ってくださいです!」

商人「なんです?」

スー勇者「ご主人様は何も悪い事、してないです!許してください!」

商人「…………ご主人様?」

スー勇者「はい!」

商人「ご主人様って誰の事です?」

勇者「…………僕です」

商人「…………」

スタスタ

商人「あらくれさん。そのクソペド犯罪者を牢に。いいですね?」

あらくれ「お、おう」

勇者「ちょっと待ってえ!!!?クソペドって、誤解――……」


バタン!!


勇者「商人!商人ってば!!」

グイッ!

勇者「あぐっ!?」

あらくれ「……悪いが、牢にぶち込ませてもらうぜ」

スー勇者「そ、そんなっ」

あらくれ「安心しな。嬢ちゃんを牢にぶち込む命令はされてねえからな」

スー勇者「でもご主人様が!」

勇者「……いや、いいんだ。スーちゃん」

スー勇者「ご主人様!?」

勇者「ここは一旦従おう。あらくれさん、お願いします」

あらくれ「なんだ?素直じゃねえか」

勇者「一応、あいつの事は信用してるんで……ああなったら梃子でも意思を曲げませんし」

勇者「……逆らったら、怖いですし」

あらくれ「せ、せやな」

グイッ

あらくれ「よし、それじゃこっちだ。付いて来な」

スー勇者「待ってください!」

勇者「スーちゃん。大丈夫」

スー勇者「っ……!」

勇者「すぐ戻るよ。待ってて」


…………
……





……
…………


――ガルナバーグ・裏通り――

スタスタ

勇者「……しっかし、ほんとにできたばかりの町とは思えませんね」

あらくれ「立派なもんだろ?大工も腕のいいのばっかだからな」

勇者「はい……でも」


ヒュゥゥゥ……


勇者(……なんだか、裏通りは……あまり良い感じの雰囲気じゃ)

ザッ


――牢場――


あらくれ「ここが牢場だ。ほら。入れ」

…………



ガショォオン


ガチョッ


あらくれ「これでよしっと……んじゃ、大人しくしとけよ。俺は倉庫番に戻るからな」

勇者「あの、ちょっといいですか?」

あらくれ「あん?」

勇者「商人と……いや、町長と国連の話し合いやらってどのくらいで一段落つきそうですかね?」

あらくれ「さあなあ……。噂じゃ港の宿でお偉いさんが数日泊まるって話だしなあ」

勇者「そうですか……」

あらくれ「……なあ、お前町長のなんなんだ?」

勇者「え?」

あらくれ「あんな町長始めて見たぜ。まるで年相応のガキんちょみたいにむくれ顔して……」

勇者「……」

あらくれ「……?なんか言えよ」

勇者「僕は」

あらくれ「お?」

勇者「…………あいつの、足枷みたいなもんです」

あらくれ「…………はあ?」

勇者「まあ、昔からの知り合いですよ。それだけ」

あらくれ「……まあいいけどよ」

スタスタ

あらくれ「とにかく大人しくしてろよ。そんじゃ見張り番。ちゃんと見張ってろよ」

見張り番「まっかせろい」

スタスタ…

勇者「……」

ゴツン

勇者「……ふぅ……」

勇者(まだ頭ん中ごちゃごちゃしてる……いろいろありすぎだよ)

勇者(とりあえず国連の人たちからは逃げ続けないといけないし、ここに居たら少しは安全かな)


…………
……


―――――――――――



スタスタ


商人「……」


秘書「……町長」

商人「なんです?」

秘書「大丈夫ですか?」

商人「なにがです」

秘書「いや……なんだか苛々してるように見えたので」

商人「それより秘書さん、国連の方々は?」

秘書「先ほど搬入は終了したそうです。搬入船に同乗していた勇者の方々も大聖堂に移動したとの事です」

商人「そうですか。では急ぎましょうか」

秘書「しかし、予定では会合は昼の筈でしたが……何故到着がこんなに早く」

商人「それは、恐らく最後のお客人がいらっしゃるのが昼になるからだと思います」

秘書「……あの方ですか」

商人「とにかくまずは大聖堂へ行って現在いらっしゃってる方々に挨拶をしましょう」

商人「それとエジンベアからの搬入物も確認しなければなりません」

秘書「はい」


…………


――大聖堂――



ダーマ勇者「それにしても……大きな大聖堂ですね……」

エジンベア勇者「もうおおかた建設も終わってそうだけど……まだ手を加える所があるのかねえ」

ダーマ勇者「まだルビス様の聖像もありませんし、クロスが掲げられているだけですが……それでも凄いです」

エジンベア勇者「さて、それじゃ町長さんが来る前にちょっとだだけ今後の事話そうか?」

ダーマ勇者「今後の事ですね?」

エジンベア勇者「ああ。君とボクの今後の関係を――……」

ダーマ勇者「エジンベア勇者様!!ふざけないでください!!」

エジンベア勇者「おおう怖い怖い。悪かったよぉ」

ダーマ勇者「もう……」

ゴホン

エジンベア勇者「とりあえず、全員揃って国連の方針を明日の朝に話し合う」

エジンベア勇者「そこで国連関係の物資の運搬交渉も町長さんに説明して納得してもらう」

ダーマ勇者「納得されなかった場合は?」

エジンベア勇者「納得してもらうのさ」

ダーマ勇者「……」

エジンベア勇者「そしてその後、5日後にポルトガへこの船を向かわせる」

エジンベア勇者「その際は君が代表としてこの船を率いておくれ」

ダーマ勇者「え?私1人ですか?」

エジンベア勇者「ああ」

ダーマ勇者「なぜです?エジンベア勇者様は」

エジンベア勇者「僕やあの方は2日後に別の任務さ。勇者は君1人になる」

ダーマ勇者「でも……今回は私の部下は1人も居ませんし、務まるでしょうか」

エジンベア勇者「大丈夫さあ、なんたって乗り合うのは全員サマンオサ兵。ストイックで従順な奴らばかりだよ」

ダーマ勇者「……そう、ですね」

エジンベア勇者「不安そうだね?」

ダーマ勇者「い、いえ!大丈夫です!」

エジンベア勇者「とにかく、任せたよ」

エジンベア勇者「まあ、ポルトガに運ぶ予定のスー方面で調達できる物資が整うのが4日ほどかかるらしいからねえ」

エジンベア勇者「それまではゆっくりしてなよぉ。普段から君は肩の力張りすぎなんだし。さ」


ガロォン…


ダーマ勇者「!」

エジンベア勇者「おっと、いらっしゃったね」


スタスタ


商人「遠い船旅、ご苦労様でした。御二方」


ダーマ勇者「お疲れ様です。はじめまして、ダーマ勇者と申します。以後お見知りおきを」

商人「町長の商人です。お会いできて光栄です」

商人「……それと」

スタスタ

エジンベア勇者「こんにちはぁ、お久しぶり……といっても買取の話し合い以来だからそうでもないかな?」

エジンベア勇者「とりあえず今日も美しいですね町長さん……」

商人「こんにちは。どうも」

エジンベア勇者「いやあ、慣れない町に来て少し不安でして……どうでしょう、もしよろしければ私にこの町を案内していただけませんか?……二人きりで」

商人「ああ、それは構いませんよ」

エジンベア勇者「本当ですかあ!?」

商人「工事休憩の屈強な男共が暇を持て余してるんで、その人たちの中の誰かに」

エジンベア勇者「あ――でも考えたら視察を兼ねて自分で練り歩いた方がいい気がしますね?」

商人「それが一番かもですね」ニコー

……………………


――牢場――


ピチョン……  ピチョン……


勇者「……はあ」

勇者(なんか慨視感感じるなこの状況……あの時より全然待遇はいいけど)

勇者(しばらくは我慢だ。商人がここに戻ってくるまでは)

ぐぅぅぅ……

勇者「……」

勇者(お腹へった……そういやスーちゃんは何してるだろう……ちゃんとご飯食べたかな)


見張り番「おう坊や」


勇者「え?あい、はい?」

スッ

見張り番「暇だし、トランプで札遊びしようぜ」

勇者「……いいんすか見張りのお仕事は」

見張り番「一日牢に張り付いて退屈してんだよお。バチはあたらねえだろ?」

勇者「じゃあ、お言葉に甘えようかな」

勇者(丁度色々聞きたい事もあったし)

見張り番「流石にお前さんの手縄は解けねえし、牢越しだから、プリミエラ以外の遊びでもすっか」

勇者「何します?まあどの遊びでも大抵強くないですけど僕……」

見張り番「んじゃ“神と豚”だ!ルールは分かるな?」

勇者「まあ、一応は」


パサッ パサッ


見張り番「いやー、この仕事ぁ暇で暇でしょうがねえんだ。お前さんが来てくれてありがてぇよ」

勇者「そんなに暇なんです?」

見張り番「まあな。めったに罪人なんてこねえしな。お前さん何やらかしたんだ?」

勇者「……一応、無賃乗車……?と、窃盗……かな」

見張り番「あはははは!二つもやらかしたのかよ!欲張りだなあ!」

勇者「やりたくてやったわけじゃないもの!」


…………


バシッ!


見張り番「っしゃ!トイトイのテッペンだ!」

勇者「うぐっ……!」

見張り番「ははははは!お前さん本当に弱ぇなあ!?」

勇者「だから言ったじゃないですか……昔から弱いんですよ札遊びは」

勇者「それこそあの商人……この町の町長にはボロクソに負かされてるんですよ。今までに」

見張り番「なに?じゃあお前さん町長の知り合いなのかよ?」

勇者「一応、幼馴染です」

見張り番「……なんで幼馴染が町長やってる町で犯罪やっちまったんだ?」

勇者「成り行きです……」

見張り番「しかしそうかぁ、町長の知り合いねえ」

勇者「……あの」

見張り番「あん?」

勇者「ちょっとお聞きしてもよろしいでしょうか」

勇者「その……町長の事」

見張り番「お聞きするも何も、幼馴染ならてめえの方が詳しいだろうよ」

勇者「いえ、あいつが町長になってからの事です」

勇者「ちょっと小耳に挟んだんです。……悪評の事とか」

見張り番「……」

勇者「……あれって本当なんですか?」

見張り番「……んー……さあな。どうかしらん」

パサッ

見張り番「ホラ。次お前が裏返す番だ」

勇者「あ、はい」

ペラッ

見張り番「……ブタだな」

勇者「ぐぅ」

見張り番「……お前、窃盗と無賃乗車だったっけか?」

勇者「?あ、はい?はい」

見張り番「俺は殺し」

勇者「……え?」


見張り番「俺は、殺し。人間を1人殺したんだよ。前になあ」

勇者「……!?」

見張り番「まあ、殺しっつっても好きでやったんじゃねえ」

見張り番「ちょっと酒場で酒飲んで、喧嘩売られて……取っ組み合いをしてたら、割れたビンがそいつの喉にグサ。だ」

見張り番「小せえ村だから教会も遠い、再生呪文使いもいない。少し経ってそいつは死んだ」

見張り番「すぐにその村を統治している国のお上さん方にに突き出されて、豚箱に入った」

見張り番「出所しても居場所もクソもねえ。惨めだったよ。人を殺した事があるヤツなんてどこも居さしちゃくれねえ」

勇者「……」

見張り番「でもな、町長はそれでも拾ってくれたんだよ」

見張り番「こんなもうお先真っ暗の俺でもあの人はかまわねえって拾ってくれたんだ」

見張り番「だから俺ぁあの人に恩がある。あの人の悪評なんざ聞きたくもねえ」

勇者「それじゃ……」


見張り番「でもな」


見張り番「“殺人の前科持ちを軽く雇う人間”だからこそ……その悪評も、脳みそん中に居座ってる」


見張り番「『俺みてえなのを雇ったのはそういう悪事を働く時に切りやすいから』とか、なんじゃねえかってな」


勇者「……!」

見張り番「……なあ。逆に聞かせてくれよ」

見張り番「町長は、そんな事する人じゃあねえよな?」

見張り番「あの悪評は馬鹿な奴らのホラでいいんだよな……?」

勇者「……」

見張り番「……」

勇者「……この一年、あいつから離れていたので……状況は分かりませんが」


勇者「あいつは悪い事なんて絶対しない。それは確実です」


見張り番「……本当か?」

勇者「はい。まあ、悪い事の基準は人それぞれでもあるんですが……」

見張り番「……へへ」

見張り番「そうか。良かったぜ。それ聞いて安心した」

勇者「安心してください。悪評の内容と真実がどうあれ、あいつが皆さんを陥れる事なんてないですよ……っと!」


パサッ


勇者・見張り番「……」


……。


見張り番「…………出すのが難しいくらいの、ブタだな」


――――――――――――――



バタアァン!!!!



「町長!!!!町長!!!!大変です!!!!!!」



――大聖堂――



ダーマ勇者「!!?」

エジンベア勇者「なんだなんだ?」

商人「どうしたんです!?一体何が――……」


「港……!港に!!」




――ガルナバーグ・港――



ザワザワ……!!!


ズザッ!!


ダーマ勇者「……っ!?これは……!!」




バシャバシャバシャバシャ!!!!!



水中魔族「「「「「「ギャア!!!!!ギャア!!!!」」」」」」



エジンベア勇者「うへぇっ……!?なんだこの数の魔物達は……!!!?」


ビョンッ!!!

水中魔族「グギャアアア!!!!」


エジンベア勇者「ってうわあぉっ!!?」チャキッ!!


ズバァァン!!


水中魔族「グエエッ!!!!」


水中の魔物を倒した!


ビチャビチャッ!!


エジンベア勇者「っ!磯臭っ!!ちょっとちょっと、こいつら港に飛び乗ろうとしてるよ!!?」

秘書「なんですか……!?この事態は」

商人「こんな事いままで一回も……!!!!」

ダーマ勇者「……」

ダーマ勇者(……なんだろう)


バシャバシャバシャ!!!!!


ダーマ勇者(みんな、何かから逃げようとしているような……)


ジワ…


ダーマ勇者「…………え」



「うわああ!!!?」


「赤潮!?じゃない!これ血だっ!!!!」


「海が真っ赤だ!!」




オォォォオォォォオォォォォ……




商人「……嘘、でしょう……!?」


商人(こんな大量の血……一体……)

商人(ここに集まってる水中の魔族はほとんど二次魔族みたいですし、二次魔族は血はこんな色じゃない)

商人(このあたりに住む水中の一次魔族は……クラーケンくらいしか)


「おい!あれ見ろ!!」


「人だ!!!」




「沖の方に、小舟に乗った人間がいる!!!!」




商人「えっ!!?」


ダーマ勇者・エジンベア勇者「「!!?」」




ゴゴゴゴゴゴゴゴ



ダーマ勇者「んぇ?」

エジンベア勇者「?何の音だい?これ」


商人「……!!!皆さん!!!港から離れて下さい!!」


エジンベア勇者「えっ!?何々!?何がおきたんです!?」

商人「大きい波が来ます!!」


ゾゾゾゾ


商人「おそらく、あの沖のほうから……ッ!!」



ズザザザザザザザ



商人「クラーケンが…………こっちに!!!!!」



ザパアアアアアアン!!!





クラーケン「ゴガアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!」





ダーマ勇者・エジンベア勇者「「嘘オオオオオオ!!!!?」」


「みんな!!坂の上に逃げろ!!」


「このままじゃでけえ波が来るぞォ!!!」


「でも沖の方に小舟がっ」


エジンベア勇者「くそぉっ!!なんだってこんな所までクラーケンがっ!!!」

ダーマ勇者「……」

エジンベア勇者「ちょっとダーマ勇者!!!早く港から」

ダーマ勇者「……あの人、剣を」

エジンベア勇者「え?」







クラーケン「ゴギャアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」






「…………一つ」






キィィィィィン





「二つ」





キィィィィィィィィン





「さらばよ、さらば」







クラーケン「ゴギュッ」







ゾンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



ゾンッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!






ドパアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!









ザザァッアアアアン!!!!!



バシャアァァッ!!! ザパァァァン!!!!!





商人「……」



ダーマ勇者「……」



エジンベア勇者「……」



「……え……あ?」


「今、何が……?」


「お、おい見ろ」



ザザァン…  ザザァン…




「さっき居た魔物達が、全部くたばってる」


「真っ二つだ……全部。いつの間にか」



エジンベア勇者「…………あのイカも」


エジンベア勇者「この、水中魔族たちも……逃げてたんだ」


エジンベア勇者「……あの人から……」



ダーマ勇者(剣一振りで、二刃の破壊の風を呼ぶ)


ダーマ勇者「…………噂どおり、です」





商人「………………あの人が」








ジャキィン!!!!




「この海域の主と聞いてわざわざ海路を選びはしたが……」



「なんとも、つまらない事でありますなあ」



「まあよろしい」



――――――――――――





商人「……“皇帝”――糾えるソクラス」





――――――――――――





ソクラス「幕はこれから上がるのだから」





今日はちょっと一旦おしまいです



……
…………


ギィ…

ゴトン

ソクラス「さて、舟はここいらによせればよいかな」

スタスタ

ソクラス「む?」


商人「ご足労頂きありがとうございました」


エジンベア勇者「御初にお目にかかります」


ダーマ勇者「船旅、お疲れ様ですソクラス様」


ペコッ


ソクラス「おやおや、なんとまあ。皆さん礼をご丁寧に」

スタッ

ソクラス「うむ。地面が恋しかった」

ザッ!


ソクラス「……ソクラスと申します。以後お見知りおきを」



…………


スタスタ

ソクラス「なんとまあ、綺麗な街である事か!これでまだ一年も経っていないとは驚きだ」

商人「有難いお言葉です」

ソクラス「いやはや、私も世界中を旅してきたが、これほど立派な港町は見かけた事は少ない」

商人「ソクラス様ともなれば、様々な港町をご覧になってこられた事と思いますが」

ソクラス「ええ。それはもう。その私が保証しましょう」

商人「ふふ、ありがとうございます」


<……。……。


ダーマ勇者(この方が……生ける伝説の1人、ソクラス様)


エジンベア勇者(魔王バラモスと対峙して、生きて帰ったただ1人の人間)

商人「ここまであの小舟で?」

ソクラス「ああ、そうなんです。どうも海路に海の主が立ち塞がる事件を聞きまして」

ソクラス「陸に飽きてきた頃だったのでね。小舟旅ついでに退治をと」

商人(……長い海路を1人で漕いで来たって事ですか)

ダーマ勇者「先ほどは御見事でした。あんな数の魔物を一斉に倒してしまうなんて」

ソクラス「いやいや、御恥ずかしい所を見られてしまった」

エジンベア勇者「しかし、そのお強さでしたら……未だ最前線で戦われても」

ソクラス「それがそうもいかなくてね」

スッ


商人・ダーマ勇者・エジンベア勇者「「「!!!」」」



フルフル…


ソクラス「……もうこの体では、あの戦いのみの負担さえも支えきれない」


ダーマ勇者「だ、大丈夫ですか!?」

ソクラス「お気になさらず。安静にすれば明日にはまた震えも治まる」

ソクラス「あの日……バラモスとの戦いの後遺症は未だこの齢になっても体を蝕んでいるのだよ」

ソクラス「最早戦線に出ても碌に戦えはしない……情け無い事にね」

ダーマ勇者「……!」

エジンベア勇者「……申し訳ありません。出すぎた事を」

ソクラス「ははは、やめませやめませこんな話は」

商人「一先ず、宿にご案内します。そこでどうか一旦休まれて下さい」

ソクラス「ああ。どうかお願いいたします」

商人「もし落ち着かれたら大聖堂に席を用意しておりますので」


ソクラス「ええ。そこで……色々とお話を伺いものですな」


商人「…………ええ、よろしくお願いいたします」

…………


見張り番「んっ……~~っと!札遊びも少し休憩すっか」

勇者「すんません弱くて……」

見張り番「ちっと休んだら運も上がってくるかもしんねえぜ?へへっ」


ギシッ


勇者「ふう……」

勇者(疲れた……目がしぱしぱする)

勇者「……」チラッ


<……


勇者(……窓から入ってた陽がもう見えない)

勇者(昼過ぎちゃったか……スーちゃんなにしてるかな)

勇者(…………それに、商人……国連の勇者達と何を話すんだろう)

勇者(あの壷の話なのかな……骨董品を買ったのが商人ならあるいは……でも商人はなんの為に)


スタスタ


勇者「ん?」

見張り番「お?」


スー勇者「ご主人様!」

大爺「……」


勇者「スーちゃん!と、副町長さん?」

見張り番「どうしたんすか副町長?」

大爺「もう、この男、出す」

見張り番「え?こいつを?」

勇者「え!?」

大爺「この檻、あける、しなさい」

見張り番「へ、でも……」

大爺「はやく」

見張り番「わ、わかりやした」


ガチャッ


見張り番「ほれ。出な」

勇者「え……い、いいんですかね」

見張り番「まあ副町長がこう言ってるし……」


ダッ ダキッ!


勇者「わわっ!?ス、スーちゃん!?」

スー勇者「ご主人様っ!よかったです!」ギューッ

勇者「う、うんありがとう。でも一回離れよ?」

大爺「……」

勇者「あ、副町長さん……ありがとうございます。でもなんで」

クルッ

スタスタ

大爺「ついてくる、いい」

勇者「……?」


――――――――――――


――ガルナバーク・牢場の表――


あらくれ「お?出てきたか」

勇者「出てきました……。ちょっとなんでか分かんないんですけど」

勇者「もしかして商人が出してくれたんですか?」

あらくれ「いーや、副町長の独断だ」

大爺「……」

勇者「あれ、そうだったんですか……副町長さん。何で僕を」

大爺「……お願い、ある」

勇者「お願い……ですか?」

クルッ

大爺「ちょっと、ついてくる」

勇者「えっ?あ、はい……」



………………


――ガルナバーク・裏通り――


スタスタ…


大爺「……」

スー勇者「……」

あらくれ「……」

勇者「……」

勇者「……」チラッ


オォォォォ…

「……んだ、副町長……が……」ボソボソ

「……ソ者…………何を……」ヒソヒソ


勇者(……なんていうか、怖い連中も多いな)



―――――――――


見張り番『“殺人の前科持ちを軽く雇う人間”だからこそ……その悪評も、脳みそん中に居座ってる』


見張り番『「俺みてえなのを雇ったのはそういう悪事を働く時に切りやすいから」とか、なんじゃねえかってな』


―――――――――


勇者「……」

大爺「どう、思う。この街」

勇者「えっ!?、あっ、えっと」

あらくれ「まあ、この辺りには暗ぇ奴らがたむろしてやがるからな。良い印象もクソもねえか」

勇者「あの、僕を一体どこに」


ザッ


勇者「ん?」

大爺「……ここ」


――立派な建物――

勇者「なんです?ここ」

大爺「……入って、みる、いい」

勇者「入るんですか?」

スー勇者「なんかでっかい所です……キラキラ、してるです」

勇者「ちょっと行ってみようか」

スー勇者「はい!」

スタスタ…

あらくれ「……副町長、いいんすか?」

大爺「……」


―――――――


勇者「ん、なんか暗いなここ……」

スー勇者「壁に黒い幕が張ってるです」


~♪


勇者「……なんか音楽が聞こえるね」

スタスタ

蝶ネクタイ男「いらっしゃいませ」

勇者「えっ?あ、どうも」

蝶ネクタイ男「たった今開店したところです。御早い来店で」

蝶ネクタイ男「さあ、こちらでございます」

グイグイ

勇者「えっ、ちょっとちょっと……」

スー勇者「わわ」

ザッ

勇者「あれ?なんだか開けた場所に出たね」

スー勇者「……」

勇者「ん?どったのスーちゃん……ん?」


~~♪



勇者(なんだ?ちっさいけどステージみたいなのが……)

勇者(……ちょっと待ってあの鼓笛隊の横で踊ってるのって)


―――――――


ダダダダダダダダダダダダ!!!!!


蝶ネクタイ男「おや?もうお帰りで?」

勇者「はーっ!はーっ!!」

蝶ネクタイ男「どうでした?うちの踊り子は」



勇者「ス ト リ ッ プ 劇 場 じ ゃ ね ー か !!!!!!」



蝶ネクタイ男「そうですけど?」

勇者「か、帰りますすみません!!スーちゃん!いこ!」

スー勇者「くねくねって……お股を……手で、あんな……」プシュゥゥゥゥ

勇者「スーちゃんしっかりして!!忘れて!忘れようっ!」

ザッ

蝶ネクタイ男「それでは……ガルナバークの住民票は?」

勇者「えっ?住民票?」

蝶ネクタイ男「あら、お持ちで無い?でしたら……」

ニコッ



蝶ネクタイ男「しめて50000ゴールド。はらっていただけますね?



勇者「    」



蝶ネクタイ男「おや?どうされました?」

勇者「ちょ、ちょっと待って、待ってください」

勇者「あの、聞き間違いですかね?今50000ゴールドって」

蝶ネクタイ男「言いましたけど?」

勇者「はいいいぃぃ!?」

勇者(いやいやいや!いくらストリップだからって桁がおかしい!!)

勇者「あの、ちょっとした間違いで入っちゃったというか」

蝶ネクタイ男「……払えないんですか?」

勇者「待ってください。とにかく話を聞いて下さい」

蝶ネクタイ男「聞きましょう。ではまず出身国と現在の所持ゴールドを」

スー勇者「っ……ご主人様……!」

勇者(……やばい、ここ)


蝶ネクタイ男「……教えていただけますね?」


勇者(ぼったくりのアカンところだ)


スタスタ


大爺「……その男、ちがう」


勇者・スー勇者「「!!」」

蝶ネクタイ男「……副町長?」

大爺「わたし、この男、入れ、言った。金、いらない」

蝶ネクタイ男「はあ……そうですか。副町長のお知り合いで」

勇者「副町長さん!!?何でこんなとこ入らせたんですか!!!スーちゃんいるんですよ!!!過激すぎます!!!!」

大爺「……出る。ついてくる」

スタスタ

蝶ネクタイ男「はあ……副町長。ちょっといいですか?」

ピタ

大爺「……」

蝶ネクタイ男「何を企んでるか知らないんですけどねぇ……これは町長の命令なんですよ」

勇者「……え?」

勇者(商人の、命令……?)

蝶ネクタイ男「反感持ってるのかなんなのか知らないですけどね」

蝶ネクタイ男「余計な事しないでもらえますか……?はっきり言って邪魔です」

大爺「……出る」

勇者「え?は、はい」

スタスタ……

蝶ネクタイ男「……」


――劇場の外――


ザッ

大爺「……」

勇者「……あの、副町長さん」

勇者「今あの人が言ってたのって」

大爺「……まだ、見せる、場所、ある」


スタスタ


勇者「……」

スー勇者「……ご主人様……」

勇者「……行こうか、スーちゃん」

………………………………



………………………………



………………………………


ガヤガヤ


スタスタ…


大爺「……一通り、裏の道、見せる、した」


勇者「……」

スー勇者「……」

あらくれ「……どうだったよ」

勇者「えっと……なんていうか」

あらくれ「あんまり、褒められたもんじゃねえだろ?」

あらくれ「表通りの、他の国の客がうろついてねえ所は、まあ……ジメジメしたもんさ」

勇者「……はい……」

大爺【“……町長は、この町造りが進むごとに変になっていった”】

勇者「え?あ、えっと、スーの言葉かな」

スー勇者「はい……私、訳すです」


【“私は一年前、ここに街を作りたくてスーの村を出て1人ここに居を構えていた”】

【“ある日船で仲間と一緒にやって来た町長に会い、街づくりの助けを願い、町長としてこの街を任せた”】

【“最初は普通の街づくりだった。だが町長は変わっていった”】

【“住民を優先させるために住民票を発行し、それをさきほどの様な店で利用させたり”】

【“あらゆる犯罪者を優先して受け入れたり、街の金で骨董品を買ったり”】


勇者「……」


【“おかげで、表向きは華やか、裏は灰暗い街になってしまった”】

【“それにこの頃、エジンベアの大臣とよからぬ取り引きをしている気がある”】


勇者「……?よからぬ、取り引き……?」


大爺【“……ついてきて欲しい”】


スタスタ…

勇者「……」

あらくれ「……ほら、なにぼさっとしてんだ」

勇者「……はい。行こう。スーちゃん」

スーちゃん「はい……」

………………………………



スタスタ



ガヤガヤ…


勇者「……本当に、表通りは賑やかですね……」

あらくれ「ああ。宿も店も多いしな。住人も表にはほとんど住んでねえ」

あらくれ「店を出してるのは大抵船で来て宿に短期滞在してる奴らだ。エジンベアのな」

あらくれ「ショバ代だけもらって短期間契約ってのが多いんだよ」

勇者「……」

あらくれ「……さっきのは」ボソ

勇者「え?」

あらくれ「さっきのは、多分、根も葉もねえ噂話さ。骨董品がどうとか」ボソボソ

あらくれ「副町長もボケがきてるだけさ。気にすんな」ボソボソ

大爺【“……あまり表通りに出ないでくれ。国連の奴らに見つからないように道を選んでいるのだ”】

大爺【“今は港の方に集中しているから、隠れながらこの道を行けば見つからないだろう”】

勇者「……あの、どこに行くんですか」

大爺「……ここ」

勇者「え?」


ザッ


――大聖堂横・大倉庫――


勇者「ここ、ですか?ここって」

あらくれ「お前らが不法侵入してた場所だ。そして俺の職場」

勇者「あれは違いますって……!!!あれ?違わないか……?違わないですね……」

大爺「……入る」

スタスタ

あらくれ「今は国連のやつらもいねえ。急げ」

勇者「は、はい」

スタスタ…


スー勇者「……」


ゴソッ


スラお「……スーちゃん?どしたの?」ボソボソ

スー勇者「……あっち」

スラお「あっち?」ボソ

スー勇者「港の方……何か」


あらくれ「おい嬢ちゃん?どうした?」


スー勇者「あっ、な、なんでもないです」


スタスタ…




ガコォン……



スタスタ

勇者「しかし……改めて見ると本当に大きな倉庫ですね……天井が高い」

スー勇者「こんなに、なんの荷物があるです?」

あらくれ「輸入した商品やら……でも大半はスーの特産品やらだな」

勇者「スーの特産品?」

あらくれ「ああ。スーが近いから、そこいらで取れる果物やら野草やら、肉やらを輸出しようって考えてるんだよ。町長は」

あらくれ「で、やっと取り引き先が見つかってな、これが一番最初のスー特産物の普及になるぜぇ」

勇者「それ、肉って日持ちとか大丈夫ですか?」

あらくれ「安心しろ。干し肉が大半だ」

スー勇者「スーは、干し肉料理多いです。ご主人様にも食べさせたです」

勇者「あー、あれか。あれ凄く美味しかったよ」

大爺「……」

勇者「で……ここに一体何が」


プゥン…


勇者「……うぇ……?」

勇者(なんだこれ、さっきここに来た時こんな匂いしてたっけ?)

勇者(ってかこの匂い、どっかで嗅いだ気が……)


大爺【“……お前さん方が乗って来た船とは違う船の積荷だ”】

大爺【“輸入品ではない……ここを中継地点として、他の国の商船に積ませる予定の積荷だ”】


スタスタ……

ザッ

大爺【“……それが、この一角だ”】

勇者「この辺り、ですか?」

大爺【“この木箱を開けてみるといい”】

勇者「……?」

あらくれ「おいおいおい、勝手に開けていいのかよ?いくら副町長さんでもちょっと度が過ぎてんじゃねえか?」

大爺【“……開けてみるといい”】

勇者「…………分かりました」

ゴトッ

勇者「よい、しょっと……んぐぇっ!!?なんだこの匂っ……」

勇者「……」

勇者「……」

スー勇者「?どうしましたです?」

大爺【“お前さん……町長と馴染みのある人間なのだろう?”】

大爺【“なんとかお前さんから、町長の本心を聞きだしてくれないだろうか”】

大爺【“そして、町長を……正してやってくれないだろうか”】

勇者「…………」

勇者「なんだ……これ」





「鉄と土ですよ」




大爺・スー勇者・あらくれ「「「!!!?」」」


勇者「……っ、商人……!」


スタスタ


商人「…………国連の連中の会合の合間に急いで牢に行ったら、もぬけの殻でちょっと焦りましたよ」


商人「ま、副町長が出したって見張り番さんも仰ってたんで、行き先の検討はつきましたけどね」


勇者「……これは、一体なんなのさ」

商人「さあ?知りませんよ。ただ輸送の中継地点として荷物を預かってるだけですし」

勇者「だとしても、これは……鉄は、いいとして、土、この木箱」

勇者「これは、おかしくないか」

勇者「だって、この土」




勇者「人の、骨が……死体が、混じってる」




スー勇者「!!!?」

あらくれ「……は?」

勇者「糞尿と一緒に、屍が混じってるよ」

勇者「これおかしいと思わないのかよ……?」


商人「……」


スタスタ


商人「……ねえ勇くん」

商人「勇くんに、何の関係があるんです?」


勇者「…………商人……?」


商人「ここは。私が作った街です。私の街なんですよ」


商人「なんでお前なんかに口出されなきゃならないんです?」


勇者「……」


商人「……お前」



ニコッ…



商人「もう、私と……何の関係もないでしょう?」


今日はおしまいです

勇者「……商人、何、言ってんのさ」

商人「言葉もろくにわからなくなりました?本当に愚図ですね」

スタスタ

ザッ

ガシッ!

勇者「!」

商人「……もう私に関わるなって言ってるんですよ。迷惑です」

あらくれ「お、おいおい町長!」

商人「あらくれさん、ちょっとだけ待っていただけますか?こいつと話をしなきゃいけないんですよ」

勇者「お前、冗談でもキツいってそれは」

商人「はあ?どこがです?」

商人「というか冗談でもなんでもないんですよ?お前が居るだけでこっちは迷惑なんです」

商人「自己満足の為か何なのか知りませんが、仲間達を皆放って勝手に単独行動になるぅ~とか馬鹿みたいな事言い出しますし」

商人「国連に追われてる身なのに国連の人間が大勢居るこの街にのこのこ現れるし」

商人「腐れ縁の恩情で国連から見つからないように牢に隔離しておけば副町長に誘われてのこのこと抜け出すし……」

勇者「……」

商人「あげくの果てには、やーっとこさ軌道にのったこの街の動かし方にまで口挟むんですか?」

商人「いい加減、本当にうざいんですよね……」


商人「いつまで幼馴染の仲良しごっこ続けるつもりなんです?」


勇者「……ッ!!!!」


ガシィッ!!

商人「……なんです?肩、痛いんですけど」

勇者「今のは、マジでやめろ」

勇者「僕の事は、確かにその通りだからいくらでも言っていい、けどさ」

勇者「“幼馴染の、仲良しごっこ”とか……そういう事言うのやめろよっ……!!」

勇者「あいつらまで、あいつらの事までお前がっ」

バシッ

商人「だーかーらー」

商人「いちいち偉そうに私に口をきくなって言ってるのがわからないんですかねえッ」

勇者「……っ」

商人「とにかく。これはちゃーんとしたビジネスです。部外者は黙っていてください」

あらくれ「で、でも町長さんよ。その木箱、土の中に人の骨入ってんだぜ!?」

あらくれ「いくらなんでもちょっと穏やかじゃねえよ……!なんの目的があってそんなもの」

商人「まあ、各国からこういった糞尿と屍混じりの土を仕入れてますが……私が知った事ではありませんよ」

商人「貿易の橋渡しをするだけで色んな恩も売れますし、船の出入りが多くなって街の資金も巡ります。良い事です」

商人「この土の木箱の隣に区分けされてる鉄の山も、同じくエジンベアの大臣様が取り仕切って動かしている品です」

商人「あの方とサマンオサの方々は良いお得意様ですからね……なんとか機嫌を損ねないようにしないと」

スー勇者「っ……」

商人「……なんです?その目」

スー勇者「あなた、嫌いですっ……」

商人「おやおや、嫌われちゃいましたね」

スー勇者「そんな、怪しい取り引き、して……あんな、お店も作って……!」

商人「あんな店?……あー、ストリップ劇場の事ですか?あれのどこに問題が?」

大爺「問題、ある!風紀が、乱れ、取る金も、おかしい!」

商人「……はぁ……では、ああいった店を全部無くした方が良いと、風紀が乱れないと。本当に思うんですか?」

あらくれ「……どういう……?」

商人「この街に定住している人間の多くが大工の人間です。優先的に誘致しましたし、だからこそ一年でここまで街の見栄えが整いました」

商人「そういった方々は、例外なく屈強な男性達です。体力を持て余した、血の気の多い、ね」

あらくれ「……」

商人「その方々が黙々と町を造り続けて不満が出ないワケないでしょう?何か欲求を満たすものが必要になります」

商人「幸い食品には恵まれていますから食欲は大丈夫として……では性欲は?」

商人「開拓地などによくあるお話では、労働夫達がその性衝動に任せて女を攫ってきて監禁、仕事場で隠し飼いにして犯し続けたり」

商人「あるいは見境もなしに来国した女性を強姦したり……とにかく明るいお話は聞きませんね」

商人「その事態を避ける捌け口として、ああいった店は必要なんですよ。近々売春宿を設置する事も考えています」

商人「そういう目的ですから、この街の住民でない方々にはお金を余分に頂いているだけですよ」

大爺「なっ……!あ、あの男達、貴女の事、尊敬、している!そんな犯罪、彼ら、しない!」

大爺「彼らの事、信じる、大事――……」

商人「そーれーだーかーら副町長。あなたを町の経営の第一線から降ろしたんですよ前にも言ったでしょうが」

商人「人を信じるだけで万事上手くいったら世話はいらないんですよ馬鹿馬鹿しい。言葉の美しさだけで生きていられりゃそりゃいいですがね」

商人「そんな事で生きていけるのは頭のイってしまった詩人くらいなもんなんですよ」

商人「人を疑う事の方が色んな計算ができて視野が広がるんです。そしてそれが私達の仕事です」

大爺「っ」

商人「ここは、私の街です。口出ししないで下さい」

あらくれ「……町長……」

大爺「……それでも」

大爺「街の金で……骨董品、買う……宝石、買う……」

大爺「それは、違いない……貴女、悪い」

商人「…………へえ、知ってたんですか?」

大爺「取り引きの、現場、見た者、居た!」

商人「バレてたんですね……まあ想定はしてましたけど。ですがそれの何が悪いんです?」

商人「私のお給料で私の買い物をしてなーにが悪いんです?ねえ」

あらくれ「町長……?あんた、まさか」

商人「全く、質素に暮らしていれば聖人になれますか?本当になんなんですかアンタらは」

商人「私の勝手でしょう?そんなの」


商人「私の街で、私が好きにやるのは当たり前の事じゃないですか」


商人「……いいですか?もう一度言います」


商人「ここは、私の街です。何も考えずに口出ししないで下さいね」



勇者「………………」


スー勇者「……」

あらくれ「……」

大爺「っ……間違って、いた」

大爺「あの時、貴女に、全て任せた、間違っていた……!!」

商人「それはどうも」ニコッ

スタスタ

商人「さて。申し訳ありませんが勇くん。そろそろ消えてくれませんかね?動くなら今しか無いですよ?」

商人「国連の方々は現在宿で荷解きをしているんです。待機している兵達も船と港に集中しています」

商人「まあなんだかんだで知らない仲ではないですし。国連に突き出すのは勘弁してあげますよ」

勇者「……商人」

商人「なんです?」

勇者「…………いや」

スタスタ

勇者「なんでもない……行こう、スーちゃん」

スー勇者「ご、ご主人様っ……」

クルッ

スー勇者「……っ!べーっ!」

商人「ホントに嫌われちゃいましたね」

商人「ああ、そうです。ちょっと待ってもらえます?」

勇者「え?」ピタ

スタスタ

商人「忘れちゃうところでした……。どうせここから何処へ行くかも考えてないんでしょう?」

商人「でしたら……そこのお嬢さん、スーの方ですよね?」

スー勇者「……そうです、けど」

商人「なら丁度良い。中央広場の東口の方に私と取り引きしてる方がいらっしゃるんですけど、その方に会ってくれます?」

スー勇者「なんでですかっ……」

商人「その方、スーの方なんですよ」

スー勇者「!」

商人「恐らくそのまま彼はスーに戻ると思いますので、それに同行でもさせてもらえばいいんじゃないですか?……よっと」

ドサッ

スー勇者「……この、大きな袋は……?」

商人「秋種と本です。その彼に頼まれてたんです。彼に渡してくださいな」

商人「さあさあ、国連の方々が動き始める前にとっとと消えてください?ちょっとこれから私は儲け話をしてこにゃならんので」

勇者「……商人」

商人「ん?なんです?私の寛大な処置にお礼でも言ってくれます?」


勇者「ありがとう」


商人「……はい?」

勇者「いや……それじゃ、また来るよ」

スタスタ

勇者「行こう、スーちゃん」

スー勇者「は、はいっ」タッ

大爺「……町長、また、あとで、話す」スタスタ


スタスタ


あらくれ「……町長」

商人「……」

あらくれ「嘘だよな……?さっき言ってた事」

あらくれ「なあ……?じゃなきゃ……俺らみたいな、『下層』の奴らをアンタは!」

商人「……あなたに話す事はありません」

あらくれ「……!!」

あらくれ「…………そう、かよ」

スタスタ

商人「……」


シーン……


商人「……」

…………
……

――ガルナバーク・裏通り――


スタスタ


勇者「とりあえず、そのスーの人に会ってスーまで同行させてもらおうか」

スー勇者「ご、ご主人様」

勇者「どしたのスーちゃん?」

スー勇者「いえ……その……」

大爺「やはり……もう町長は、昔のような、人、なくなった……」

あらくれ「……あの噂も、本当だったのかよ……」

ギリッ…

あらくれ「…………ああ、くそ……」

勇者「いや、どうでしょうね」

あらくれ「は?」

大爺「……何?」

勇者「多分ですけど、あいつはそこまで変わって無い気がするんですよ」

あらくれ「な、なんでわかるんだ?」

勇者「えっと……幼馴染の感。ですかね」

あらくれ「……けっ、そうかよ。聞いた俺が馬鹿だったよ」

勇者「まあ何にせよ、今僕がここにいるとまずいってのは本当なので早いところ移動しよう。スーちゃん」

スー勇者「…………ご主人様」

勇者「ん?」


ギュッ


勇者「ふぇっ」

あらくれ「おおっ?」


スー勇者「……寂しそうな顔……してるです……」ギュゥ


勇者「……スーちゃん……」

ドゴォッ

勇者「ティムン!!!!」

大爺・あらくれ「「!!!?」」

あらくれ「今嬢ちゃんのバッグが勝手に動かなかったか!!!?」

スー勇者「き、気のせいです!!!」

勇者「お、お気になさらず!あはははは」

勇者(スラおォ……後で覚えとけよぉ……)


…………
……



――港付近・高級宿――


スタスタ

コンコン

ダーマ勇者「ソクラス様、よろしいでしょうか」


シーン…

ダーマ勇者「……?ソクラス様?」

ガチャッ


……


ダーマ勇者「…………いない……?」


――――――――――――


――中央広場――


ザワザワ…


ヒョコッ

勇者「……国連の、兵は……居ないみたいだ」

スタ

勇者「ここが中央広場……ふあー、本当に立派だ」

スー勇者「……綺麗なところ、です」

勇者「じゃあとりあえず……よいしょ、と」

ドサッ

勇者「この、商人に頼まれた荷物をそのスーの人に渡さないとね」

勇者「その後にスーに一緒に行きたいところなんだけれど……都合はどうなのかな」

スー勇者「でも、いいです?」

勇者「ん?何が?」

スー勇者「スーに来てもらって……本当にいいです?」

勇者「いやいや、逆に僕がお邪魔していいかな?って話だよ?」

スー勇者「それは勿論、大歓迎です……でも」



「スー勇者!!?」



勇者「え?」

スー勇者「……!!スー戦士さん!」


スタスタ

スー戦士【“スー勇者!!無事だったか!!”】


スー勇者【“心配かけて本当にごめんなさい!でもちゃんと大丈夫でした!”】

勇者(うおお……屈強そうなスー人の男の人が来た……この人が商人の言ってた人か)

スー勇者「ご主人様!この方、スー戦士いいます!村で一番、腕のたつ戦士でした!」

スー戦士【“……スー勇者?こちらは?”】

スー勇者【“えっと……話せば長くなるんですけども……”】

勇者(なんか挨拶した方がいいかな……言葉はどのくらい通じるんだろ)

勇者「え、えっと……こ、こんにちは、えっと……は、ハジメ。マシテ」

スー戦士「どうもこんにちは。はじめまして。俺はスー戦士って言うんだ。よろしくな」

勇者「ペラペラですね!!?」

スー勇者「スー戦士さんは、村で一番、共通語が上手いです!」

スー戦士「そういうスー勇者も共通語がだいぶ上達したじゃないか!偉い偉い!」

スー勇者「えへへ……ご主人様が、教えてくれるです!」

スー戦士「ご主人様?女王様かい?」

勇者(女王様?)

スー戦士「いいえ!お師匠様ではなくて、この方です!」

スー戦士「君……が?えっと、うちのスー勇者が世話になってるね」

勇者「いえいえいえいえ、本当にこっちが世話になりっぱなしで」

ガシッ…

スー戦士「でも……その……こんな子供にご主人様呼びを強制させるのは正直……」

勇者「ちげーんですけど!!!?強制じゃないんですけど!?……まあ、とにかく。勇者です。よろしく」

スー戦士「ああ。よろしくな」

勇者「あ、スー戦士さん。早速ですがこれ……頼まれた荷物です」

スー戦士「ん?頼まれたって誰に……おおお!町長さんからか!ありがとう!!」

勇者「秋種と本だそうです。間違いないですか?」

スー戦士「ああ。間違いないよ。全く仕事が早くて助かるね」

スー勇者「でも、スー戦士さんが、取り引きです?本と、種を?」

スー戦士「ん?あー、そうか。この街ができてからはお前はスーに帰ってなかったからな」

スー戦士「今俺はな。商売をしているんだよ」

スー勇者「えっ!?スー戦士さんが!?」

スー戦士「はは。意外か?でも本当だよ。だから本を読んだり異国の植物について勉強するために町長にこれを頼んだのさ」

スー戦士「正直俺は昔から思ってたんだ。スーはもうちょっと暮らしを豊かにできるんじゃないか、ってね」

スー戦士「で、ここに街ができたんでこれはチャンスだ!と思ってな。いろいろなアプローチをしているんだ」

勇者「ああ、だから大倉庫にもあんなにスーの特産品が……」

スー戦士「見たのか?ああ。あれも俺の計画だよ」

スー戦士「ここの町長さんに頼んで色んなところと取り引きの契約を結んで貰ってるんだ」

勇者「……」

スー勇者「……」

スー戦士「?どうした?」

スー勇者「いえ……その」

勇者「なんでもないですよ。それで、なんですが……ちょっとこの後スーに少しお邪魔させて貰おうかな、と思ってて」

スー戦士「おお!そうなのか!是非来てもらえるかい?喜んで歓迎するよ!」

勇者「そう言っていただけると嬉しいです」

スー戦士「じゃあ村まで案内するよ。と、その前に……ちょっと俺の仕事が終わるまで待っていてもらえるかな?半陽刻くらいで終わるから」

スー勇者「お仕事です?」

スー戦士「ああ。この町の店にも商品を卸しているからな。その話し合いやらさ」

勇者「でしたら、お待ちしてますね。この広場に居るんでもし終わったら声をかけてもらえれば」

スー戦士「了解だ。ちょっと待っててくれよな」

スー勇者「お仕事、頑張ってください!」

スー戦士「ありがとう!行ってくる」

スタスタ

勇者「いい人だね。しっかし共通語が本当にペラペラだなあ」

スー勇者「……はい」

勇者「さて、と……半陽刻か。少し暇になったね」

スー勇者「です」


グゥゥゥゥ


勇者・スー勇者「「……」」

勇者「スーちゃんお腹すいたよね、ごめんね」

スー勇者「い、今の私違うです!違うですー!」

もそっ

スラお「おなかすいた!」ボソッ!

勇者「ああ、スラおか。まあなんにせよお腹すいたね……えっちょっと待ってスライムってお腹鳴るんだ」

スー勇者「はい……本当はぺこぺこです」

勇者「ちょっとお店入ろうか。まだ時間もある事だし」

スー勇者「はい!」


スタスタ


勇者「と、なると……どこがいいだろうね。結構広場に面した食堂もあるみたいだ」

スー勇者「ご主人様のお好きなところへ!」

勇者「スーちゃんが好きなところでいいのよ?んー……適当にあそこにしよっか」

スー勇者「はい!行きますです!」

グイグイ

勇者「おうおうスーちゃんちょっと引っ張っちゃダメだって」

スー勇者「ふふっ」

勇者「ん?どうしたの?」

スー勇者「いえ……」

ニコッ!

スー勇者「ご主人様と、こうやって街歩くの、嬉しいです!」

勇者「あああああああああスーちゃんああああああああああ!!!!!!!!」ナデナデナデナデナデナデ

スー勇者「いああああ髪がぐしゃぐしゃになるですー!!!」


バタン


「……どうする?」

「店に入ったか……まあいい。出てきたら話を聞こう」

「だな」

…………
……

―――――――――――


――パブ――


カランカラン


店主「いらっしゃい」

勇者「ども。えっと……」


ガヤガヤ


勇者「結構混んでるなあ……」

スー勇者「あ!あそこあいてるです!」


ガヤ…  ピタ


スー勇者「あそこ行きましょうです!」

勇者「そうだね」

スタスタ

ガタッ

勇者「ふぅ……とりあえずどうしようかな」

スー勇者「もうお腹くっつきそうです。えへへ」

勇者「僕もだよ。えっと」


「んだよ。へらへら笑いやがって」


勇者「……ん?」チラッ


「「「…………」」」


勇者(……?……なんで皆こっち見てるんだ)

スタスタ

ザッ

店主「……ちょっといいかい」

勇者「え?ああ、えっと注文は」

店主「そっちの嬢ちゃん」

勇者「え?」

スー勇者「わたし、ですか?」

店主「あんた、その髪飾り……スー人か何かだろ」

スー勇者「え……?そ、そう。です」


「なんで当然のようにテーブルに座ってんだよ……」


スー勇者「……え」


「また最近調子に乗り始めてるよな、スーの奴ら……」

「見ろよ。状況が分かってないんだあのスーの子供」

「まあ子供だからわからないんでしょ……許してあげましょうよ」


スー勇者「…………あ……」


店主「……帰ってもらえるかい。まだ幼いお前さんにゃ分からないかも知らんがね」

店主「そこに座るのはダメなんだよ。あんた」


スー勇者「……」

勇者「……?は?何で?」

店主「なんでって……ねえお客さん」


店主「お客さんも奴隷を扱う時の作法くらい覚えておいてよ」


勇者「…………」


店主「お客さんだけならいいんだけどさ……嬢ちゃんはちょっと外で待ってもらうとかしてくれる?」

スー勇者「す、すみません、でしたっ」

ガタッ

スー勇者「……っ」

ニコッ

スー勇者「ご主人さま!私!外でお待ちしてますです!」



勇者「スーちゃっ」


タッタッタ

バタン


勇者「……」


「うるさいな……ドアの開閉もろくにできんのか」

「無理ねえって。まだ子供だったろ」

「あんなかわいい奴隷だったら俺も1人くらいほしいな、ははっ!」


店主「悪いね。だけど作法ってもんがある。わきまえてくれよな」

勇者「……」

店主「で?何を頼む?」

ガタッ

勇者「……あー」

店主「んお?どうした?」

ガリガリ

勇者「あー。あー」

ガリガリガリガリ

勇者「クソ、あー、もう」

店主「……なんだ?帰るのか?冷やかし」



ぞっ



店主「うくぁっ?」

勇者「お前ら、今度あんな事言ったら殺してやるからな」


勇者「もう、今殺してえけど、くそ、殺してえなあ」


ガリガリガリガリ


勇者「糞どもが、クソ、殺し、今、今殺すか?」


勇者「あー、今、殺し。ああ、クソが」


キィィィィ……ン


「うっ……?おぶっ」

「おえっ!?おえぇぇぇぇぇ」

バチャバチャバチャ

「ひっ?な、なんだっ。なんだっ」


店主「っ。っ」パクパク


スタスタ

勇者「殺し、くそ、どうやって、殺……ああああ、クソどもが、あー……どうやって……」

ブツブツ


バタン


シーン


店主「……!!!?な、なんだったんだ……!!!?」

――広場・パブの前――


スー勇者「……」

モゾッ

スラお「スーちゃん……」

スー勇者「スラさん……」

ペロペロ

スラお「かなしいかおしてるよ」

スー勇者「ん……ふふ、んーん。ありがとうです」

スー勇者「でも、大丈夫です。たまにあることですからっ――」


ぞっ


スー勇者「っ」

カランカラン

スー勇者「ご」クルッ


勇者「……殺……て」ブツブツ


スー勇者「ご主人様!」ダッ

ザッ ガシッ

スー勇者「ご主人様!しっかりしてください!だめです!しっかりです!」

ペシペシ

勇者「……――ん、え?スーちゃん……?」

スー勇者「……ほっ……良かったです」

勇者「あれ……?僕、出て……?」

勇者「……ごめん、ちょっとあまりにも頭に来たもんだから、血が頭に上りすぎちゃって…………ぼーっとしてた」

スー勇者「……ご飯、食べてこなかったです?」

勇者「え?なんでさ!スーちゃんと食べられないなら意味ないでしょ」

スー勇者「でも、わたし、その……スー人なので」

スー勇者「多分、エジンベアの方が多い、この町は、どこも同じだと思うです……だから」

勇者「スーちゃんを除け者にするような所でご飯食べるくらいなら飢え死にした方がマシだって」

スー勇者「……」

ナデ

勇者「ごめんね、なんか、嫌な思いさせちゃって」

スー勇者「っ……!!」

ギュゥゥゥ

勇者「うおおスーちゃん!?どしたのっ」

スー勇者「ご主人様だいすき……っ!」ギゥゥゥゥゥゥ

勇者「スーちゃんくるしいしやわらかいしちょっと離れてまずいです!!!!」

スラお「ぼくはゆーしゃきらい。ほんときらい」

勇者「お前それしか言えないの?僕が傷付かないとでも思ってんの?」

スラお「せいりてきにむり」

勇者「なんで追い討ちかけた?畜生かお前?畜生だったな?」

スー勇者「喧嘩だめです!」



……
…………


――広場のベンチ――


スタスタ

勇者「お待たせスーちゃん」

スー勇者「おかえりなさいです!」

ドサッ

勇者「何か見た事の無い果物が多かったからすぐ食べられるものを見繕ってもらったよ」

スー勇者「わぁ!ありがとうございますです!」


ペリペリ


勇者「こういう剥き方でいいのかな」

スー勇者「それはこうやって剥くです」ペリリ

勇者「おお、なるほど……あむ。ん!おいしい!」

スー勇者「んふぁー……ほっぺが落ちそうです……♪」

スラお「まむまむ」

勇者「もうちょっと隠れて食べてスラお」

スラお「もっとよこせ」

勇者「自分で剥けないのを良い事に……ムカツクゥ」

ペリペリ

勇者「……さっきみたいなのって、結構あるの?」

スー勇者「……たまに、です」

スー勇者「エジンベアの人たちは、まだ心の中に、奴隷制度が残ってるです」

スー勇者「だから、たまに、ああいう事あるです」

勇者「……そっか」

スー勇者「でも、差別しない人もたまにいるですから、へいきです!」ニコ

勇者「……ん。そっか」

勇者(……以前の、エジンベア城に居たときの目線……あれ、スーちゃんの髪飾りを見た奴らがさっきみたいな事思って向けてたんだろうな……)


ザッ


勇者「んぁ?」


細目の男「ちょっと、よろしいですかね?」


勇者「へ?僕ですか?」

勇者(なんだこの人たち……)

細目の男「はい。ちょっと話があるんです」

太った男「お前さん、さっき町長と話してたよな?」

ノッポの男「町長とはどんな関係だ?」


勇者・スー勇者「「!!!!」」


勇者(……つけられてたのか?)

勇者「いえ、特に……?なんでですか?」

細目の男「しらばっくれてないですよね?本当はどんな関係で?」

勇者「ただの昔の知り合いだから挨拶しただけですよ。本当に」

細目の男「ふうん……昔の知り合い、ねえ」

勇者(……まずいな)

ノッポの男「なあ、正直に話したほうがいいぜ」

太った男「なんかの取り引きの話だったんだろ?」

勇者「違いますけど……それを僕に聞いてどうするつもりなんです?」

細目の男「……」

勇者「本当に挨拶した程度なんですけど、もし僕が変な取り引きしてたら一体何を」


細目の男「リコール」


勇者・スー勇者「「!!!」」


細目の男「今の町長の行いはちょっと看過できない事が多すぎましてね……」

細目の男「ですから、新しい町長を選びなおす。その機会がほしいのです。この私達は」

細目の男「ただ、上手いこと手を回すものですから証拠、というか決定打にかけていまして」

ザッ

細目の男「……悩んでいたところ、なにやら貴方達が怪しい動きをしていたのでね」


勇者「……」

スー勇者「……っ」


細目の男「どうです?何かお話していただけませんか?」

勇者「まず本当に何も知らないです。協力はできません。と言ったら?」

細目の男「そうですね……ちょうど、国連の方々がいらっしゃってる事です」


細目の男「あなた方御二人を国連の方々に突き出して、調査をご協力願うしかなくなりますね」


勇者「……」


細目の男「……知ってること、教えていただけますね?」


勇者「……」


ポロッ


勇者「……ああ」


スッ…


勇者「果物が落ちちゃったじゃないですか――……」




ドカッ!!




勇者・スー勇者・細目の男「「「へ?」」」



「んー……青い空。快晴と言うヤツですなあ」

「おやおや、お隣にいきなり申し訳ないね。丁度いいベンチがなかったもので」


ニコッ


ソクラス「少しだけ話し相手になってもらえるかね?」

勇者(…………なんだこのおじさん……)

細目の男「ちょっ……いきなりなんです?」


ソクラス「まあまあ、ちょっとだけ話し相手になってもらえんかね?」

ソクラス「どうだね、そこの少年」

勇者「……僕、ですか?」

ソクラス「ああ。君は今のような快晴は好きかね?」

勇者「快晴、ですか?晴れ?」

ソクラス「うむ。そうだね」

勇者「や、まあ……好きですけど」

ソクラス「そうかそうか。そこのお嬢さんは?」

スー勇者「えっ!?えっと、好きです!」

ソクラス「そうかそうか。そちらは?」

細目の男「え?まあ、好き、ですが」

ソクラス「そうかねそうかね!結構な事でありますなあ!」


(((……なんだこの人)))


太った男(なんかめんどくせえヤツにからまれちまったな)

ノッポの男(酔っ払いかなんかか?くそ、なんだってこんなタイミングで)

ソクラス「では、雨は?どうかね?少年」

勇者「雨、ですか?……うーん、雨もいい所あったりしますけど、晴れのほうが好きかなあ」

ソクラス「ほうほう」

勇者「えっと、これなんの質問なんですかね」

ソクラス「君は実に、結構な事だね」

勇者「え?ん?」

ソクラス「君はどうやら貪欲ではないようだ。そんな顔をしている」

ソクラス「君は貪欲ではない。貪欲では決して無い」

勇者「え……はい、えっと?」



ソクラス「君は実に、つまらない」



勇者「……ンッ!?」

スー勇者「なっ……!」かちーん

太った男(いきなりのdis)

ノッポの男(ちょっと気の毒だな)

ガタッ

スー勇者「ご主人様に何を言うですかぁっ!!!!!」

勇者「ス、スーちゃん落ち着いてっ?」


ペリッ


勇者「……え?」

ソクラス「つまらない、つまらない」


ペリッ ペリッ


勇者「……」

勇者(いつの間に……僕が持ってた果実を)


ソクラス「ああ、そっくりであるなあ」


ムシャッ…



ソクラス「あの男に……実にね」



勇者「……あの、男?」

スー勇者「あっ!ご主人様!」

勇者「え?」


スタ…スタ…


スー戦士「……」


勇者「スー戦士さん。もう終わったんだ」

ソクラス「おや?もう行かれるのかな?」

勇者「は、はい。僕はこれで」

チャリッ

勇者「……」

勇者(……僕のポケットから貨幣の音が)



ソクラス「この果実の代金。それで、足りると思うのだがね」



勇者「っ」ゾッ

ソクラス「話し相手になってくれて感謝しよう少年。さ、お行きなさい」

勇者「スーちゃん。行こう」

スー勇者「あっ、は、はい!」

タッ

細目の男「あっ、ちょっとま……」ダッ

ザッ

ソクラス「君たちはもう少し私の話し相手になってもらえるかね?」

細目の男「ちょっ……!!あっ」

タッタッタ

太った男「……いっちまった」

ノッポの男「何をしやがる!」

細目の男「邪魔をしないでください!」

ソクラス「ふふん、少しは感謝してもらいたいものですなあ」

太った男「あぁ!?何言って」


ソクラス「私があそこで割り入らなければ、君たちの足の腱はスッパリやられて、地べたを這いずり回っていたでしょうな」


細目の男「……は?」

ソクラス「これを見たまえよ」

ザッ

ソクラス「ベンチの下のこの跡……彼はベンチに座った瞬間からこの場所に剣を抜きやすいように設置していたのだよ」

ソクラス「彼がしゃがんだのを君たちも見ただろう?」


「「「……」」」


ソクラス「彼は恐らく逃げるつもりだったんでしょうなあ。それなら相手が追手にならぬように足の腱を切るのが一番容易い」

ソクラス「迷いはなさそうに見えたね、私には」

細目の男「だ、だったら……!!やっぱりあの男、やましい事が!」

太った男「なおさら追わねえと!!」

ソクラス「まあまあ待ちたまえよ」

細目の男「何ですか!!一体――……」


ソクラス「……君たちには君たちで。お話があるのだよ」



………………


スー戦士「……」

タッタッタ

勇者「スー戦士さん!」

スー戦士「ん?ああっ、ふたりとも」

スー勇者「もうお仕事終わったです?」

スー戦士「……」

勇者・スー勇者「「?」」

スー勇者「どうされたです?」

スー戦士「いや……少し、手違いがあったみたいなんだ」

スー戦士「取り引きの事でちょっとね……妙な事が、あって」

勇者「妙な事……?」

スー戦士「いや、きっと大丈夫、だとは思うんだ。ただ予定が大幅に狂った」

スー戦士「悪いが二人は先にスーに行ってもらえるか?俺は少し遅くなりそうなんだ」

勇者「そうだったんですか……お仕事忙しそうですね」

スー勇者「でしたら、先に帰ってるです!」

スー戦士「ああ……村長やエドによろしく言っておいてくれ」

スー勇者「はい!」

勇者「ではまたスーでお会いしましょう。失礼しますね」

スー戦士「ああ。気をつけてな」

スタスタ…


……


スー戦士「……」

クルッ

スー戦士「……っ……嘘であってくれよ」

スー戦士(町長さん……貴女は俺達スー人を騙すような事なんて……してないよな……?)

スタスタ…


――――――――――――――


ムシャ…

モグモグ

ソクラス「うん……見事な快晴である事よ」

スクッ…

ソクラス「…………じつにつまらない」

ポイッ

ゴロッ… コロン コロン


ブチャァッ


ソクラス「飽きた」


タッタッタ

ソクラス「おや?」


ダーマ勇者「ソクラス様――!!!」


ソクラス「おやおや、ダーマの」

ズザァッ

ダーマ勇者「よかった……はぁっ、ここに、いらっしゃったんですね」

ダーマ勇者「宿でお姿がみえなかったので……いったいどうされたんですか?兵もつけずに」

ソクラス「それはですね……」

ソクラス(……)


ガクッ


ソクラス「うっ……」


ダーマ勇者「!!!?」

ダッ

ダーマ勇者「ソクラス様!!?お気を確かに!!……どうされたんですか!!?」


ソクラス「……すま、ないね……実は……――」


…………
……



……
…………



――ガルナバーク・町の外――



スタスタ


勇者「んー……風がきもちいいー」

スー勇者「ですー……大地って、いいものです」

勇者「ずっと船の上だったからね……」

勇者「さてと。こっからスーってどのくらいかかるの?」

スー勇者「えっと、普通の道を行くと一日くらいです」

勇者「あー、やっぱりかかっちゃうか」

スー勇者「でも、近道もあるです。岩山の道、スー人しか知らない道あります」

スー勇者「そこだと、半々日で行けるです」

勇者「おお?凄く近道になるね」

スー勇者「……一応ルーラもあるです」

勇者「あ、そっか!そういえばスーちゃんルーラが……」

勇者「使え…………」


―――――――――――――



ヒュウウウウウ!!!!

スー勇者『やああああ――――!!!!』


武道家『えぇぇ!!!!?何!?女の子が落ちてきてる!!?』

勇者『うわああああ危ない危ないいいいいい!!!!!オーライオーライ!!!!!』アワアワ

武道家『え!?ちょ、勇者受け止める気!!?だったら私が』


ゴッシャァ!!!!


勇者『ブエナッ!!』ビスタッ


―――――――――――――


勇者「…………使え、る?」

スー勇者「……落下するの、ご主人様を、巻き込むわけには……」

勇者「や、僕は大丈夫だけど……一応その岩山ルートで行こうか?」

スー勇者「すみません……」

勇者「なんで謝るのさ。散歩にもなるしいいもんだよ。のんびり行こう」

スー勇者「はい!」

スタスタ


勇者「一応道も踏み固められてるんだね……できたばかりの町なのにほんと凄いな」

スー勇者「この道の両脇、見てください」

勇者「うん?」


サァァァァ


勇者「でかい林、ってか森があるけど……どうしたの?」

スー勇者「ほんとは、この道の場所も森だったです。一塊になってたです」

勇者「あ、そうなんだ!じゃあここを切り開いてその木材使ってたのか」

スー勇者「すごく丈夫な木です。たぶんそうです」

勇者「なるほどねえ、開拓と木材調達を同時にって感じだったのか」

スー勇者「とりあえず、あそこに見える丘まで行っていいです?」

勇者「ん?あそこ?わかった」


……

スタスタ


勇者「……おお」



――ガルナバーク・南西の丘――


サァァァァァ……


勇者「うおおお……ここすごく、なんか、いい……!」

スー勇者「えへへ、ここ、私のお気に入りの場所です」

スラお「おはないっぱい!」

スー勇者「お花も綺麗ですし。それに、夕焼けと朝焼けがすごく綺麗です」

勇者「おお、いいね。まだ夕焼けにはちょっと早いなあ」

スー勇者「ですので、また朝焼けを、一緒に見に来てくれますです?」

勇者「来よう来よう!是非見たいよ!やー……綺麗だなあ」


サァァァァ…


勇者「……ガルナバークも一望できるし、町を出てからここまでの道も見える――……」

勇者「…………ん?」

スー勇者「?どうしたです?ご主人様」

スラお「うんこ?」

勇者「ちげえよなんでお前いつもうんこ方面なんだよ……スーちゃん、あれ見える?」

スー勇者「え?…………えう?」



……ドドド……



スー勇者「……何かが、全速力で」


勇者「こっちに、走ってきてる、よね」


ドドドドドドドド


勇者「っていうか」

スー勇者「もう、そこまで、来て……」


ドドドドドドドドドドド!!!!


ズザァ――――――!!!!


勇者「 」

スー勇者「 」

スラお「あっ!」


「はぁっ、はぁっ……見つけましたよ……!!」


勇者「……あ、貴女は」

スー勇者「ダ……」

スラお「おねいさん!」


ジャキィッ!!!


ダーマ勇者「よくも私を騙してくれましたね!!!!」

ダーマ勇者「ルビス様に代わって……!!!」

ザッ!!



ダーマ勇者「お仕置きです!!!!!!」



スー勇者「ダーマさん……!!」


――――――――――――


スタスタ

ソクラス(さてさて……少年はどうやって彼女をいなしますかな)


ソクラス(あの程度の障害で潰れるならそこで潰れておしまいなさい)


ソクラス(それとも、保身の為に、彼女を力尽くで)


ソクラス(…………殺してでも、乗り越えるか)


ソクラス「クハハっ」


ソクラス(少しだけ、楽しみですなあ)




ソクラス(どうかね?忌み子の勇者君)



今日はおしまいです


――――――――――――


勇者「だ、騙した?何を……」

ダーマ勇者「しらばっくれないで下さい!!」

ダーマ勇者「先ほど話を聞きました……!その髪の色!癖っ毛!青い目!銅の剣!!」

ダーマ勇者「あなたがあのガルナの塔の変で賢者様を攫った容疑者勇者なんですね!!」

勇者(あー、今度は騙せそうにないっぽいな)

勇者(同じ船に乗ってここまで一緒に来てたのか……まずったな……。しかしなんで僕の素性にいきなり気付いたんだこの人)

勇者「……」

勇者(もしかして……さっきのおじさんか?)


ヒュンッ


勇者「!?」


スー勇者「っ!ご主人sっ――……」


ダーマ勇者「隙ありっ!!!!」



ガキィィン!!


ダーマ勇者「……!」


勇者「……っ」

勇者(いきなり斬りかかってくるとは思ってなかった。意外と好戦的なのか)

ダーマ勇者(受け流された?今の剣が?)

ギリッ ザッ!

ダーマ勇者(次はそういかせません!……このダーマ聖騎士団の剣術で)


ヒュンッ


勇者「!!」


ダーマ勇者「成敗してくれますッ!!!!」


ガキィン!!


ダーマ勇者「!?」


勇者「……」

勇者(でも、この人剣術が型に嵌りすぎてる)

勇者(ムオル勇者さんが前に言ってた聖騎士がよく使う剣筋だ)



ガキィン! ガキィン!!


ダーマ勇者「っ!? っ!!」ヒュンッ ヒュンッ


勇者「っ、っく、ふっ」


勇者(やっぱりだ。この人相当な優等生だったんだろうな。出てくる動きが全部本当に型通りだ)

勇者(だとしたら……なんとか、往なせる)


ヒュンッ!!


ダーマ勇者「ぅぁ!?」

ダーマ勇者(す、素手で剣をいなされたっ!!?)


勇者(ただ、こういう聖騎士達は剣術を手放さなければならない時)


ダーマ勇者(それならっ……!!!!)

ダーマ勇者「その……風に……せよ!!」


ゴォォッ


勇者(詠唱が極端に短い神風魔法を連撃の一つとして放ってくる、から!!!)

勇者(横に思い切り逸れてやり過ごす!!!)

ダッ


ダーマ勇者「バギ!!!……ふぇ!!?」


ゴォオオオオッ!!!!


パラパラ……


勇者(うおおお、あっぶな……!!)

ダーマ勇者「なっ、よ、避けないで下さい!!!」

勇者「無茶を言いなさる」


勇者(でも単なるバギで凄い速度だった。やっぱり国連の勇者なだけあって強い)


ダーマ勇者(攻撃が全部読まれてるみたいに悉くかわされた……)


スー勇者(……ふ、二人の動きが速すぎて何をやってるか全然わからなかった……)

スー勇者(でもそうだよね……。ご主人様はもっと速いムオルさんといつも一緒に戦ってたんだもん)

勇者(このままじゃまずいし……仕方ない)


ダーマ勇者(やっぱり、相手はあの落日の七日間を引き起こした最悪の魔族……簡単に折れてはくれませんか)

ダーマ勇者(じゃあもう一体の方を先に退治――……)


ガシッ


ダーマ勇者「……しひ?」



勇者「動くなよ……こいつの首」


ジャキッ


勇者「…………刎ねるぞ」



スー勇者「っ……!!……なんで仲間割れを……って、ええ!!!!?」



ダーマ勇者「スッ……スー勇者様!!!!?」



勇者(……スーちゃん、今は合わせて)ボソボソ

スー勇者(でもっ……)ボソボソ

勇者(……でもじゃない。言う事を聞くんだ)ボソボソ

スー勇者(……!!)


ダーマ勇者「スー勇者様!!!貴女は行方不明になっていた筈……!!ご無事だったんですね!!!」

ジャキッ!!

ダーマ勇者「!!」


勇者「だから騒ぐなよ。今は無事だけど、お前が騒いだら無事じゃなくしてやるぞ?」


スー勇者「っ……」


ダーマ勇者「っ……の……!!!卑怯なっ……!!!!」


勇者「お前ら用の人質としてこの女の子を攫っておいてよかったよ」

勇者「脅せば僕の言う事をなんでもきいてくれるからコマにもしやすかったし……これからもいい人質になりそうだ」


スー勇者「ダーマさん……!た、たすけて……」


ダーマ勇者「……っ、っ」

ギリィッ……!!

ダーマ勇者「この……!!!!外道っッ……!!!」

勇者「外道で結構だよ。僕には最高の褒め言葉だよそれ」

勇者「ま、とにかく僕にあと一歩でも近づいてみなよ?この子殺すから」

ダーマ勇者「……ッッ!!!!」

勇者「それでもこっちに来れる?……来れないよねぇ~?心優しい勇者だもんね?貴女様は」

勇者(スーちゃんごめん、合図したらルーラでスーまで飛んで)ボソッ

スー勇者「っ……」キュッ

ジリ…ジリ…

勇者「とにかく。この大陸に僕の欲しい情報は無かったからもう僕はお暇させてもらうね」

ダーマ勇者「なっ!!ま、待ちなさ――……」

勇者「殺すって。言ったろ?」

ダーマ勇者「あ、くっ……!!」

勇者「……いいね?」

ダーマ勇者「……」

勇者「……」

ダーマ勇者「……」

勇者(……よし、行けるか)

勇者「それじゃ……」


ダーマ勇者「恥をっ……恥を知りなさいっ!!!!」


勇者「……」


ダーマ勇者「あなたは、最低です……!!!最低の、最悪な、ゲスです!!!」

ダーマ勇者「アリアハンの優しい住民達を騙してっ……!!!オルテガ様を殺害する手助けをしてっ」


勇者「……」


ダーマ勇者「挙句の果てには!!アープ様も、ガルナ様も!シャンパーニ様も……殺して!!」


ダーマ勇者「テドンの人たちを、罪の無い人たちを皆殺しにした!!!!」




勇者「……」




ダーマ勇者「あなたには、心がないんですか……!!!!」


ダーマ勇者「そうやって、人間と同じように喋ることができるのに!!」


ダーマ勇者「あなた、心が!!!!痛まないんですかっ!!!!!!!」






勇者「……――無かったら、本当に、良かったのに」





ダーマ勇者「……え?」


勇者「…………スーちゃん。行こう」

スー勇者「っ!!」


ゴオオォォッ


ダーマ勇者「きゃっ!!?ちょっ、待っ……」




バシュゥゥゥゥゥゥゥゥンン!!!!!!!




ゴォォォォォ……


オォォォ…


オォ…








パラパラ…


ダーマ勇者「……」

ダーマ勇者「……」

ダーマ勇者(……何、あの)


―――――――――――――



勇者『……』



―――――――――――――



ダーマ勇者「……哀しそうな、目…………」


―――――――――――――



バシュゥゥゥゥゥゥ


スー勇者「っ……!!」

スー勇者(良かった、今回はなんだか成功しそうっ……あ!)

スラお「なんかみえたよ!」

スー勇者(スーの村!よしっ!あそこまでいけば……!!)



バフォッ



スー勇者「あっ?」


スラお「お?」



ヒュゥゥゥゥゥ……!!!



スラお「わわわっ!!?おちるよ!!?」


スー勇者【“高度がっ、下げ、あ、勢いが足りなっ……!!だめだめだめっ!!落ちるっ”】


スー勇者・スラお「「いやあああ―――――!!!!」」



ドゴォッ!!!!


ズザァ――――ッ


ゴロゴロゴロゴロッ

ゴロ…




パラパラ…


スー勇者「ん……?」

スー勇者(あれ?なんともない……?……――って)


勇者「……大丈夫だった?スーちゃん」


スー勇者「ご主人様!!!」

ガバッ

スー勇者「ご、ごめんなさいです!!庇ってもらっ……――!!!!」

スー勇者(私を抱きしめたまま着地して転がったから、体中が傷だらけに!!)

スー勇者「ごめんなさいっ!ごめんなさいっ……!!今、治すですっ!!」


ポワッ……


勇者「……ごめんね」

スー勇者「なんで謝るですかっ……!私が、だめなのに」

スラお「スーちゃんはわるくないもんっ!ゆーしゃがわるいもん!」

スー勇者「スラさん!!!やめてください!!!私、いいかげんに怒るでs」


ギュッ


スー勇者「……ふぇ?」

勇者「……………………ごめん」

スー勇者「まわわ!!!?ごご、ご、ご主人さま!!!?」

スー勇者(そんな、起きてるご主人様からぎゅってされるなんて――……)


グッ……


スー勇者「…………」


勇者「……ごめん」


スー勇者「…………ご主人様……?」



ギュゥゥ……



勇者「ごめんね……ごめん」



ぎゅぅぅぅ



勇者「……っ、ごめん……っ……」


スー勇者「……」

ギュッ

スー勇者「…………わたしは、わかってるです」

スー勇者「ご主人様のお傍、いるです……」

スー勇者「………………安心、してください」


…………
……



……
…………


スタスタ



勇者「……あとどのくらいで着きそう?」

スー勇者「このあたりからなら、すぐに着くです!」

勇者「そっか。もう陽も沈んできたし、夜が来る前になんとか到着したいね」

スー勇者「でも、あとほんの少しです!歌を一曲、歌うのが終わるころ、もう着くです!」

勇者「本当?じゃあなんか歌ってよスーちゃん」

スー勇者「はずかしいです……」

勇者「あはは」

スー勇者(……もう大丈夫そう、かな)

スー勇者(仕方ないよね……あんな事言われたんだから……)


スタスタ


勇者「でもいきなり行って大丈夫かな?」

スー勇者「大丈夫です!みんな優しい人ばかりです!!歓迎するです!」

スー勇者「えへへっ!ご主人様に会わせたい人、いっぱいいるです!」

勇者「そんなに居るの?はは、楽しみだなあ」

スー勇者「とくに、エドさんに会わせたいです!」

勇者「えどさん?」

スー勇者「はい!私のだいすきなエドさんです!」

勇者「ご家族の方?」

スー勇者「いいえ!でも家族も同然です!」

スー勇者「えっとですね……えへへ。実は、エドさんとご主人様、なんだか似てるです」

勇者「え?僕に似てるの?」

スー勇者「はいっ!」

勇者「そっかあ、それは余計に会ってみたいなあ」

スー勇者「是非です!ふふ……エドさんはよくペロペロしてくれるです。久しぶりにしてほしいです」

勇者「ん?ペロペロ?」

スー勇者「はい」

勇者「ペロペロって、何?え?ベロで?」

スー勇者「はい!」

勇者「…………」

勇者「……ん、あ?そっか。エドさんって女性?」

スー勇者「いいえ?」

勇者「………………そう、ああ、へーぇ」

勇者(え?それっていいのか?それ絵面的にやばいんじゃないのか)

勇者(あ、でもよく考えたらそれがスーでの交流方法だったりするのかな)


スー勇者「それにエドさんは私の事、なんでも知ってるです!」

スー勇者「多分、私の事で、エドさんが知らない事はないです!」


勇者(んー?なんかだんだんやばくなっていくんですけど?)

勇者(大丈夫なんですかエドさん信じて良いんですかエドさん)


スー勇者「私が村に帰るときも、なぜかすぐに気付いてお迎えしてくれるです!」


勇者(ちょっとまてそれスーちゃんのストーk……)

スー勇者「前に帰ってきた時も、あの木陰に――……あっ!!」

勇者「ん?」

スラお「なんかいる」


スー勇者「エドさん!!!」


勇者「!!?」

勇者(さ、早速の御対面!?まだちゃんと心の準備が)


パカラッ パカラッ…


勇者「………………――――うん?」





白い馬「ヒヒーン」パカラッ パカラッ





勇者「……ねえスーちゃん」

スー勇者「はい?」

勇者「なんだか綺麗な白い馬がこっちに駆けてくるんだけど……エドさんは」

スー勇者「はい!エドさんです!!」

勇者「えっ」


スー勇者「あれがエドさんです!!」


勇者「エドさん」


パカラッ パカラッ

白い馬「……」


勇者「……エドさん。ん。んん」

勇者(僕……馬に似てるかい……?スーちゃんさん……?)


スー勇者「エドさーん!!!!たーだーいーまー!!!」











エド「おかえり――――――――――――!!!!!スー勇者――――――――――!!!!!」






勇者「キェアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア喋ったアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」










今日はおしまいです

パカラッパカラッ 


ズザァ!!


スー勇者「エドさん!お元気そうです!」

エド「おかえり!スー勇者!一年弱ぶりだね」

ペロペロ

スー勇者「わわっ♪」

エド「約束通り共通語も上手くなって……!馬うれしい!馬うれしい」ペロペロ

スー勇者「あふふっ!えへへへ!」

勇者「ファ!!ファイヤーバードだ!!そうなんだろ!!!?」

エド「え?」ピタッ

スー勇者「ファイヤーバード?」

勇者「白い塗料とかでごまかしてるんだろ!!だ、だまされないよ僕は!!神父様はどこにいるのさ!!!見てるんでしょ!!!!」

勇者「それかあれでしょ!!ファイヤーバードの親戚かなにかでしょう!!!」

エド「……スー勇者。この方が」

スー勇者「はい……。ご主人様です」

エド「…………そっか」

パカ パカ… ザッ

エド「……――ご主人様」

勇者「えっ!?な、なにっ、ななっ、またラリアットするの!?」

スー勇者「ご主人様がだいぶ混乱してるです」


ペコリ


勇者「……え」


エド「…………ずっと、お待ちしておりました」

エド「よくぞ、ご無事で」


勇者「…………へっ」



………………………………


パカ パカ


勇者「……」

スー勇者「ふふっ!エドさんの背中久しぶりです!」

スラお「たかい!らくちん!」

エド「ははは、あまりはしゃぐと落ちちゃうよ」

勇者(喋る馬……ってのは、もうこの際置いておこう……それはそれとして)

勇者(『ずっとお待ちしておりました』……っていうのは、どういう事なんだろう)

勇者(もしかして、スーちゃんが偶に言うお師匠様繋がりで僕の事知ってたのかな)

勇者(そもそも、そのお師匠様は何者なんだ……?なんでスーちゃんを僕の所なんかに)

エド「でも、本当に良いんですか?ご主人様」

スー勇者「エドさんの背中、らくちんですよ?」

勇者「ぇあっ?あー、大丈夫です。そんなに乗ったらエドさん大変でしょ」

勇者「それに僕は疲れて無いしさ。スーちゃんもずっと会いたがってたじゃん。独り占めしちゃいなよ」

スラお「ぼくもたんのうしてるもんっ!」

勇者「あー、うん。二人占めしちゃいなよ」

スー勇者「えへへっ」

エド「……」

勇者「……ん?ど、どうかしました?」

エド「……ふふ。いえ。安心しただけです」

エド「スー勇者が仕える方が傍若無人な方だったら……と考えたら恐ろしくてニンジンも喉を通らなかったので」

スー勇者「それは大変です!」

エド「かわりにカブを食べていました」

スー勇者「なら安心です!」

勇者「安心だね……」

エド「とにかく、もうじき村に着きます。つもる話はそこで」

勇者「は、はい。是非」

スー勇者「エドさんに話す事、いっぱいできたですー♪」

エド「全部共通語で話しきる事ができるかなー?」

スー勇者「むー!できるです!きっと!」

勇者「あはは……」


……………………


――スーの村近く・川沿いの平野――



【“おい!あれ、スー勇者が帰って来たんじゃないか?”】

【“ああ。エドが迎えに行くって行ってたものな”】

【“おーい!!スー勇者――!!おーかーえーりー!!”】ブンブン


スー勇者【“みんなー!只今もどりましたー!お元気そうで何よりでーす!!!”】ブンブン

スタスタ

スー勇者「みんな、元気そうです!……でも、ここは?」

勇者「みんな畑仕事してるね……しかし」


サァァァ…


勇者「大きくて立派な畑だなあ」

スー勇者「いつのまにかこんな風になってるです……」

エド「ああそうか。スー勇者は知らなかったんだったね。この辺りは大きく開墾しちゃったんだよ」

スー勇者「そうだったですか?どうしてです?」

エド「スー戦士が近くの町で商売をやり始めたのは知ってる?」

スー勇者「はい!会ってきたです!」

エド「そっかもう会ってきたか。そのスー戦士の計画なんだ。スーの特産を継続的に輸出してもらうツテをあそこの町長さんに作ってもらったらしいから」

エド「安定した量を効率的に栽培収穫するためにはこのくらい大きなとこじゃなきゃね」

勇者「でも凄いな……あれは?見たこと無い葉の形だ」

エド「あれはガマライムです。私の好物です」

勇者「そ、そうですか……あれは?」

エド「あれはタバコですよ」

勇者「タバコ?タバコって……あの?」

エド「はい。恐らく想像していらっしゃるタバコで間違いありませんよ」

エド「そもそもタバコは元はスーの文化だったのです。それが同士戦争の際にエジンベアに流れてそのまま世界に広がったのです」

勇者「そうだったんですね……本当に村の特産って感じですね」

勇者「あれ?あの一角は?何も生えて無いですけど」

エド「消え去り草です。収穫して乾燥させています」

勇者「普通に栽培可能なんだ!!!!?神秘的なものでもないんだ!!!!?」



…………


エド「さ」



――スーの村――


エド「つきましたよ」

スー勇者「ご主人様!スラさん!スーの村に、いらっしゃいませです!!」

スラお「はわー」

勇者「おお、ここが……」



ザワザワ


【“なんだなんだ?スー勇者が帰って来たのか?”】

【“男を連れてるぞ?おいおいどうしたスー勇者”】

【“あなた背伸びたわねー!”】


スー勇者【“みなさん!ただいま戻りました!!”】


<……。……。


勇者「うおー、スーちゃん凄い人気ですね……」

エド「はい。村のアイドルです。私の好物です」

勇者「お?なんだその発言」

エド「だってかわいいじゃないですか!!!!!!!!!!!」

勇者「びっくりしたぁいきなりテンションあげないでくださいよ!いやかわいいですけど」


スタスタ…


【“スー勇者”】


スー勇者「!!」

勇者「?」

エド「村長」



村長【“……よく無事に戻ったね”】



スー勇者【“村長様!”】ダッ

ギュッ!

スー勇者【“心配かけてごめんなさい!でも、無事に戻りました!”】

村長【“心配などしていなかったさ。エドが何も言わなかったのが無事の証さ”】


勇者「あの方は……」

エド「村長様です。スー勇者の親代わりのようなものです」

勇者「…………え?」


村長【“……あちらに居るのは?”】

スー勇者【“あの方が、女王様の命で私が仕えているご主人様です”】

村長【“そうか。あの方が……”】


スタスタ


勇者「え、えっと。はじめまして。勇者といいます……共通語は通じないかな」

スー勇者「私が訳すです!」

村長【“どうも。スー勇者がお世話になっております”】

スッ

勇者「いえ。本当にこっちがお世話になってばかりです」スッ


ガシッ


勇者(……!)

村長【“とりあえずお疲れでしょう。一席設けますので、もしよければ”】

勇者「は、はい!お言葉に甘えて」


……………………


――スーの村・大テント(集会所)――


ザワザワ


勇者「すごい……住まいがこういうテント形式なんだ……」

スー勇者「はい。これがスーのおうちです」

エド「暴れ川が近くにある以上、固定住は危険だったのでこうなったのです」

勇者「エドさん普通に参加するんですね……いや、いいんですけど」


村長【“では、主要の人間は全員集まったな”】

村長【“これよりスー勇者の無事の帰還と勇者殿の歓迎を祝し、偉大なる魂に感謝をしよう”】

村長【“皆よく呑み、よく謡え”】


【【【““偉大なる魂に、感謝を!””】】】


村長【“それでは、料理を運んでくれ”】


……………………


ガヤガヤ…


【“本当に平気だったのか?魔物にやられたりしなかったか?”】

スー勇者【“平気だったよー。ご主人様たちが守ってくれたの!”】

【“立派になっちゃって……おばちゃん嬉しいよ”】

スー勇者【“んもう、全然まだまだだよう”】

<……!…!

勇者「んー。やっぱりスーちゃんは人気だなあ」

【“あらお兄さん。ご飯ちゃんと食べてるの?”】

【“やだちょっと。もっと食べなさいよ”】

【“もっとがっしりしなきゃ!”】

勇者「おふっ!?」

勇者(お、お姉さんがたに絡まれたっ)


サワッ

勇者「あふんっ!!!?」

【“あ、でも触ってみたら意外とガッシリしてるわ”】

【“やだあ、お兄さん女の子みたいに睫毛長いわね!”】

【“肌しろーい!やっぱり大陸外の人間って体毛薄いし肌も白いわぁ”】

勇者「あの、ちょっと、そのっ……」

勇者(ボディタッチ多いぃぃ)


スッ


勇者「……」


【“もっと男らしくなる為にはこれ食べなきゃ!”】

【“そうそう!はい!あーんしなさい?”】

【“この村の戦士たちはこれ食べて強くなるんだから”】



大鹿の内臓を胃袋に詰めて煮た物「オォォオォォォォォオォォォォ…」



勇者「……また会ったね……」

ギュムッ

勇者「まぽっ」

【“ほーら一気に食べなさい?もっと豪快に!”】

【“そうそういい感じ!良い感じ!”】

【“これでもっと強くなれるわね!”】

勇者「ばびょぶぱっm、ぺもっ」ザムザム

エド【“あの、お姉さん方。ご主人様が溺れかけてるよ”】

スー勇者「わあっ!ご主人様!いい食べっぷりですっ!」ニコー

エド「馬でもわかるよ。あれ嫌がってるよ」


スラお「これおいしい!」

【“なんだぁ!?このスライムいい食べっぷりじゃねえか!”】

【“どこで消化するんだろうな”】



…………………………………………


勇者「おふっ……おふ、……ぱふ」


村長【“申し訳ない、うちの村の女達は世話やきでして”】

勇者「い、いえ……おいしかったです、うぷ」

エド「よく全部召し上がってましたね……」

【“しかし、その男はスー勇者のなんなんだ?”】

スー勇者「えっ?」

【“お前まだ聞いてなかったのか?スー勇者はこの人に使えるよう女王様に命じられたんだってよ”】

【“へえ、女王様がなあ”】

【“じゃあやっぱり凄い人なのかね。この人”】


勇者「なんだか視線がこっちに集まってる気がするんですけど……気のせいですかね」

エド「ははは。珍しいのですよ。スー勇者がお客を連れてくるのは初めてですからね」


【“しかしだいぶ親しげだな”】

【“手を出されたりしてないよな?なんて――……”】



スー勇者「……」



【【【““…………えっ?””】】】


勇者(ん?なんか空気が凍りついたぞ?)


スー勇者【“……えっと、ですね”】

スー勇者【“実は、この一年、ほとんど一緒に寝ていたんですけれど……”】


エド「ムァ!!!!」

勇者「ムァ!!?」ビクゥッ


スー勇者【“その、けっこう……ご主人様って寝相、悪くて”】


【“(えぇっ、まさか)”】

【“(その寝ぼけたノリで……)”】


スー勇者【“…………その”】



スー勇者【“………………――いっぱい、ぎゅーってされちゃって……”】



スー勇者【“だから、その、赤ちゃんができてしまうかもしれないの”】



【【【““そっかぁ~~~~~それは大変だねえ~~~~””】】】

【“それは仕方ないねー。子供できたらお祝いしないとだね”】

【“んもースー勇者はーんもー”】

【“でもちょっと安心しt”】




スー勇者【“寝ぼけると体中にちゅーしてくるし……”】




【【【““   は   ? ””】】】

スー勇者【“耳をね、はむはむされたり、首にちゅってされたり……”】

スー勇者【“その……胸とか、へそとか、下の方(足)も……”】


【【【“““  (下の方)  ”””】】】


勇者「あ、この飲み物すごくおいしい……え?なんで皆こっち見てるの?」


スー勇者【“えっと、事故ってわかってるんだけどね。でも、このままじゃ口にちゅーされちゃうし”】

スー勇者【“そうなったら子供は確実になっちゃうし、えっと、もしそうなったら……――っ!”】




スー勇者【“わたし!この方のお嫁さんになりますので!”】




【【【“““ ………………… ”””】】】


勇者「スーちゃんに今度スー語習おうかな」


【【【“““ ………………… ”””】】】


勇者「え?ん?みんな、どうしたんですか?こっち見て」


【“最低だなクソペド野郎”】


【“責任取れよクソペド野郎”】


【“幸せにしろよクソペド野郎”】


【“調子乗るなよクソペド野郎”】


【“どうしようもないクソペド野郎”】


【“クソペド野郎クソペド野郎”】


スー勇者【“皆いきなりどうしたの!!!!?”】

勇者「えっと、エドさん。皆さんなんて?」

エド「歓迎の言葉ですよ」


「死ね!!!!」


勇者「今共通語で普通に死ねって言われた気がするんですけど」


エド「どうなんでしょうね。【“このクソペド野郎”】」


勇者「なんでいきなりスー語に戻ったんですか」


ザッ


バサッ…


村長【“む……?”】

スー勇者【“え?……あっ!”】



スー戦士「……」



スー勇者【“スー戦士さん!お帰りなさいです!”】

勇者「スー戦士さん、お先にお邪魔させてもらってます」ペコ

【“スー戦士!戻ったか”】

【“聞いてくれよ、今さー”】


スー戦士【“……ない”】



【【【““え?””】】】


スー戦士【“すまない……!!みんな……!!”】ギリッ…


スー勇者「どっ、どうされました!?」

【“おいおい、どうしたんだよ”】

【“何があったの?”】



スー戦士【“……騙された”】


スー戦士【“あの人に、騙されてしまった……”】



勇者「……?」



スー戦士【“あの畑も、全部……無駄になってしまった”】



スー戦士【“もう…………取り引きはできない”】


今日はおしまいです


>>343

× スー勇者「っ……!!……なんで仲間割れを……って、ええ!!!!?」

○ ダーマ勇者「っ……!!……なんで仲間割れを……って、ええ!!!!?」

――――――――――――


――ガルナバーク・宿の大部屋――


ダーマ勇者「……――と、今言った配置で街回りの警備強化をそれぞれの小隊にお願いします!」

ダーマ勇者「各員に通達後、すぐに持ち場についてください!」


サマンオサ兵達「「「はっ」」」


ザカザカ…


ダーマ勇者「……こんな時に聖騎士団が同行していないなんて……くっ」

エジンベア勇者「まぁまぁ、君のせいじゃないさ。気楽にいこうよ」

ダーマ勇者「何を仰っているんですか!あの落日の手引きをした魔物があらわれたんですよ!?一大事です!」

ソクラス「すまないね……私が海の魔物達に力を使い果たさなければなんとか捕らえられたものを……」

ダーマ勇者「と、とんでもない事です!!私の責任ですソクラス様!私が取り逃がしたから……」

商人「とにかく、その男はこの大陸にもう用は無い、というような事を言っていたんですよね?」

ダーマ勇者「はい。間違いありません。ですがヤツの嘘とも限りませんし……街周りの強化はこちらで担います」

商人「恐れ入ります。助かります」

コンコン

エジンベア勇者「ん?」

ダーマ勇者「お客様でしょうか」

商人「はい、どなたです?」

ガチャッ

商人「…………おやおや、これはこれは」


エジンベア大臣「しばらくぶりですな、町長」


商人「大臣様ではないですか」

スタスタ

エジンベア大臣「話は伺いました。あの魔族がここへ来たとか」

ダーマ勇者「そうなのです……今警備を強化したところです」

エジンベア大臣「それは結構。まあ今回この街に連れたのはあのサマンオサの兵達です。心配はないでしょう」

エジンベア大臣「それはそれとして。町長?あの壷の方はどうです?気に入られましたか?」

商人「ええ。朝に早速受け取ってすぐに町長室に飾らせてもらいましたよ」

エジンベア大臣「ふふっ。それは何よりだ。……――そして、あちらの方は順調ですかな?」

商人「はい。輸送も滞りなく進んでいますよ」

エジンベア大臣「結構結構……破格の心遣いで貴女の要望に応えた甲斐がありました」

ダーマ勇者「……?あちら?」

エジンベア大臣「いえこちらの話です。エジンベア勇者?この後はわかっているな?」

エジンベア勇者「はいはい。明日の朝、話し合いの後夕方に輸送船で来た魔導士と合流。その後エジンベアへ移動ですよね」

エジンベア大臣「よろしい。ソクラス様をお連れするのもお忘れなく。失礼のないように」

ソクラス「御手数をおかけしますなあ」

エジンベア大臣「しかし……聞きましたよ?町長」

商人「何をでしょう?」

エジンベア大臣「先ほど、スー人と揉めたらしいではないですか」

エジンベア大臣「なぜあのような者達と……」

商人「……ああ、あれですか」

商人「いいのですよ……もう、終わったことです」




……
…………



ダンッ!!


スー戦士『契約はここまで!!!?』


商人『はい。これまでの利益分の報酬はまた追ってお渡しします』

スー戦士『ちょ、ちょっと待ってくれ町長。俺は継続的な取り引きを望んだんだ』

スー戦士『開墾も、技術伝達も、仕事の振り分けも終わったんだ!これからって時に――……』

商人『ですが私はどの期間まで、なんて制限も設けていません。始終は利益で判断しますよ?』

スー戦士『だがっ、だが、結構な注文も貰っただろう!?なあ、このまま続ければ……』

商人『……はっきり言わないと分かりませんかね』

ダンッ!!!

商人『私は!もうスー族と取り引きするつもりは毛頭ありません!!』

商人『それよりも儲かる方法があなた達の商品を外に紹介する際に築けた繋がりで編み出せそうなんです!!』

スー戦士『なっ』

商人『はぁ……もう邪魔なんですよねぇ。あなた達スー族は。この街にとって』

スー戦士『町長……?町長、なぜ……』

商人『そういえば、知り合いにあなたに渡すように荷物を預けたんですが……まだ彼らが持っているんです?』

商人『まあいいですが。あの袋の木箱の中の秋種。あれは湿地むけの種で、おいしい果実ができるんです』

商人『スーの傍で育てていただいて、実ったらまた取り引きさせてもらっても構いませんよ?』

スー戦士『……秋まで、あの木箱を開けるまで……どのくらいの期間があると思って……』

商人『だいぶ期間は空きますが、そんなのこっちは知った事ではありません』


商人『私は、商売人です。話がしたかったら儲け話を添えてくださいね』

ニコッ


商人『それでは、さようなら』

―――――――――――――



――スーの村・集会所――



「「「…………」」」


勇者「……」


スー勇者「……ご主人様……」

勇者「……エドさん。通訳ありがとう」

エド「いえ……しかし、これは」


【“だま、された?”】

【“最初っから、うちと商売するつもりなんてなくて……”】

【“うちの商品のもの珍しさで釣れた他の商売人たちと取り引きする為の、踏み台か?俺達が!!”】

スクッ!!

【“馬鹿にしやがって!!!”】

【“畜生が!!こっちは真面目に……!!!”】

【“スー人ばかり苦しめやがってぇ!!!”】


スー勇者【“み、皆!おちついて!”】

エド【“そうだ!!ここで憤っても仕方がない!!”】


【“お前らは黙っていろ!!!”】

【“おい!!直談判だ!!町長の所に行くぞ!!”】


スー勇者【“みんな!!”】

村長【“お前達!”】



【“黙りなさい。子供たち”】



【【【“!!!!!”】】】

勇者「!」

スー勇者【“長老様!”】

スタ…スタ…



長老【“お客人もいるのだ……座りなさい”】



【“で、でも長老!”】

長老【“座りなさい”】

【“……っ、申し訳ない”】

勇者「……あの方は?」

エド「長老様です。大爺様のお姉様で、今は代表を村長に引き継いでいますが、この村の実質的な長ですね」

村長【“長。かたじけない”】

長老【“よい。……スー勇者”】

スー勇者【“は、はいお婆様!!”】

長老【“村の若い衆は怒りに身を焦がしておる。客人には見せられまい”】

エド【“そうですね。長旅も終えた後のようですし”】

長老【“今日の所はお休みしてもらおう。その方もお前の寝床でよかったかい?”】

スー勇者【“はい!私のテントでもてなします!”】

長老【“よろしい。ではおやすみ”】

スー勇者【“はい!おやすみなさい!”】

グイッ

スー勇者「ご主人様!今日はおやすみするです!」

勇者「えっ?ス、スーちゃん、ひっぱらないで」

スー戦士「……勇者」

勇者「は、はい」

スー戦士「…………いや、なんでもない。……おやすみ」

【【【“““…………”””】】】

勇者「……」

勇者「……」

勇者「……おやすみなさい」


…………
……





……
…………



チリリリリリ…


ホー ホー


――スー勇者の家(テント)――



勇者「……」

勇者「……」

勇者「……」

勇者「……」

勇者「……」



『もう、私と……何の関係もないでしょう?』



勇者「……」

ゴロッ

勇者「……どうしちゃったんだよ……商人……」

勇者(正直、あれが商人の本心とは思えない……何か裏が……でも)

勇者(今の所全然アイツの考えがわからない……)

勇者(……)

勇者(……)

勇者(……)


ガバッ!!


勇者「っあー――!頭クラクラするっ」

勇者(とりあえず考えるのはやめやめ!国連があの街を離れたらもう一回ちゃんと話を聞きに行こう)

勇者(……)


シーン…


勇者(…………スーちゃん、水浴び長いな……)



――スー村・川辺――


ザパッ…


スー勇者「……ふーっ……」


エド「長い事入るね」

スー勇者「船旅の間、ちゃんと体洗えなかったですから」

エド「ずっと入らなかったの?」

スー勇者「雨が降る時、浴びてたです」

エド「なるほどね」


ザパァ…


エド「どうなるんだろうね、これから」

スー勇者「……」

エド「まさか畑が無駄になるなんてね……」

スー勇者「……町長さんに、今度お話しに行くです」

エド「意味あるかなあ」

スー勇者「それでも……行くです」

エド「ところで、女王様のご様子はどうだった?」

スー勇者「……」

エド「……スー勇者?」

スー勇者【“……もう、永くないって。仰ってたよ”】

エド「……!」

スー勇者【“最後にお会いしたのは一年前くらいだけれど……だいぶ弱ってた”】

エド【“……やっぱり、あの時の怪我かな”】

スー勇者【“ううん。あの時はほぼ無傷で魔族を撃退できたらしいの……”】

スー勇者【“そうじゃなくて……もう寿命が来るみたい”】

エド【“そっか……じゃあ前から仰ってたとおりだね”】

スー勇者【“うん……でも、いざこの時になると、哀しい”】

エド【“…………”】

スー勇者【“…………”】

エド【“……王子の様子は?”】

スー勇者【“……うん。王子はすごく元気”】

スー勇者【“今はお城のみんなが見守ってるけれど、殻の中でどんどん力をつけてるみたい”】

エド【“よかった。ちょっと心配だったんだ。それは嬉しい報せだよ”】

エド【“で、だ。スー勇者。ご主人様は、大丈夫そう?”】

スー勇者【“……うん。ずっと見てたけれど、大丈夫そうだよ”】

エド【“食い破られてないよね?”】

スー勇者【“なんとか私が抑えてる。女王様に教えてもらった魔力の使い方で”】

エド【“うーん……なんだか不安だね。……本当に”】


バシャッ…


エド【“あんなもの……体に捻じ込まれて、本当に気の毒だ”】

エド【“死なないのが不思議なくらいだよ”】


スー勇者【“でしょ?ご主人様は強いの”】

スー勇者【だって…】


ニコッ


スー勇者「…………お日様の匂い、するですよ」

今日はおしまいです

http://i.imgur.com/9hivw6G.png

………………………………


ホー ホー


勇者「……」

勇者(スーちゃんまだ戻って来ない……僕も水浴びは明日にして先に休ませてもらおうかな)

勇者「……ねえ、スラお」


スラお「……」ジッ…


勇者「……ねえってば」

スラお「……」

勇者「鞄に隠れてこっち見てないでよ……いい加減にこっち来てよ」

勇者(……僕と二人きりになると、いつもこうだ)

勇者(僕に怯えているというかなんというか、全く喋らずにこっちを睨んでる)

勇者(そんなに僕が嫌いなのかな……)

勇者「ねえ、いい加減に僕にも慣れてよスラお。ずっとこんなんじゃ疲れちゃうよ」

スラお「……」

勇者「……そんなに僕が嫌いなの?」

スラお「……きらい」

勇者「ぐむ……そうですか」


スラお「ゆーしゃの、なかのそいつ、だいきらい」


勇者「……!」

スラお「……」

勇者「……ぼ、僕の中のこれは……仕方ないじゃんか」

勇者「僕だってなんで魔物なのか分からないけどさっ、僕自身には」

スラお「ゆーしゃも、きらいだもんっ」

勇者「なんでさ!」



スラお「ゆーしゃも、ぼくのこと、ころそうとしてるめをしてる」


勇者「……」

スラお「……」

勇者「……違う、よ。そんな」

スラお「してるもん……」

勇者「……」

勇者「……」

――――――――――――


ガチュッ!!!ガチュッ!!!!


『ごろ"しでや"るっ』

『ごろ"しでや"るっ!!!!』

『ごろ"しでや"るっ!!!!!!!!!』


――――――――――――


勇者「……」

スラお「……」

勇者「……ごめん」

ゴロッ

勇者「寝るから……スーちゃんが来たら、ごめんって伝えておいて」

スラお「……」

勇者「……」

勇者「……でも、スラお」

スラお「……?」

勇者「僕が……お前と仲良くしたいっていうのは」

勇者「その…………本当の事だから」

勇者「……おやすみ」

スラお「……」


…………
……

―――――――――――



チリリリリ… チリリリリ…


勇者「……ん」

勇者「んん……?」パチ


スー勇者「すぅ……すぅ……」zzz


勇者「んをっ、スーちゃん……」

ビリッ

勇者(あぐ、スーちゃんに腕枕してる状態だから手が痺れてるっ……)

勇者(っていうかスーちゃんまた僕の腕の中に……)

スー勇者「すぅ……すぅ……」zzz

勇者「……」

ナデナデ

スー勇者「むにゃ」

勇者(はは……女勇者の小さい頃を思い出すなあ)

スッ

勇者「ちょっとごめんね……っと」

スタスタ


バサッ


――スーの村・早朝――


サァァァァ……


勇者「……まだ陽は登ってないな」

勇者(今のうちに体を洗ってこよ)


エド「お目覚めですねご主人様」


勇者「トゥワォ!!!!?」ビクゥッ!!!

エド「お静かに。スー勇者が目を覚ましてしまいます」

勇者「あっ!?あぁっ、エドさんか……びっくりしたぁ……」

勇者(そういえば喋る馬さんが居るんだった……)

…………

スタスタ

パカラ パカラ


勇者「すみませんね、川まで案内してもらっちゃって」

エド「いえいえ。もうすぐそこですし」

勇者「……しかし、いい村ですね」

エド「でしょう」

勇者「はい。長閑で綺麗で……」

エド「自慢の村です。気に入っていただけて嬉しいですよ」

勇者「……エドさんってこの村の生まれなんですか?」

エド「……いえ、この村生まれではありません」

勇者「というかそれ以前に……なんでエドさんは喋る事ができるんですか?」

エド「……」

勇者「あっ、いや…………すみません。失礼しました。無理に答えなくても」

エド「……私の生まれた場所の動物は、皆こうでした」

勇者「えっ!?そんな所あるんですか!?」

エド「はい。とある女王様が治めている余りにも小さな国なのですが」

エド「そこでは皆が意思を言葉で通わせる事ができる平和なところでした」

エド「スー勇者は、その女王様に生贄として捧げられた巫女なのですよ」

エド「なので私は、スー勇者のお目付け役として彼女が小さい頃からこの村へ派遣され、そして見守ってきたのです」

勇者「なるほど……………………」


ピタ


勇者「なんかすっげえ重大な事話された気がするんですけど……」


エド「……さあ、川に着きましたよ」


――川辺――


ジャリッ ジャリッ

勇者「ちょ、ちょっと待ってください、生贄って」

エド「まあそんなに構えないで下さい。生贄と言っても彼女が犠牲になるわけではありません」

勇者「えっ、あ。そうなんです?」

エド「スー勇者にこの村のお話は聞きましたか?“同士戦争”での乾きの壷の事」

勇者「……はい」

エド「では話が早いですね」

ヌギヌギ

勇者「あの同士戦争や乾きの壷の話と何か関係が?」

エド「はい。あの壷は、古来にスーの巫女が我が国の女王様に頼んで創ってもらったものなのです」

勇者「へぁぁ……って、女王様っておいくつなんです?」

エド「ふふ内緒です……でっけえ!!!!!!!????」

勇者「えぇっ!!?な、っ、なんですかいきなり!!!?」

エド「い、いえすみませんなんでもないです」

エド「話を戻しますが、その壷を同士戦争により失った我が村の人間達が女王様へ助けを乞うたのです」

エド「すると、女王様は『暴れ川の治水の魔法を巫女に託す。数年間巫女を私の元へ置きなさい』と皆に言い渡しました」

勇者「……なるほど」

エド「それからこの村の巫女達は代々、先代の巫女が川の底に込めた魔力が消え去る前に女王様の下へ修行に行っているのです」

エド「その今代の巫女が……彼女。スー勇者なのですよ」


ザプッ


勇者「……そっか……」

勇者(スーちゃん……そんな役目を……)


―――――――――――


スー勇者『ご主人様!』


―――――――――――


勇者(今度うんざりするほど甘やかしてやろう)

勇者「……あと、知りたい事があるんです」

エド「なんでしょう?」

勇者「スーちゃんに聞いても、話してくれなかったんですが」


勇者「スーちゃんを僕なんかに任せたその“女王様”、スーちゃんの言う“お師匠様”」


勇者「……一体何者なんですか?」

勇者「なんで僕なんかにスーちゃんを仕えさせたんですか?」

エド「…………残念ながら、女王様の正体は言えません」

勇者「えぇっ……理由を聞いてもいいですか?」

エド「本来なら先ほど言った我が国の事も秘匿事項なのです。あなただから話した」

エド「ですが、その女王様の全貌の話が漏れれば必ずあの方の身は危うくなります」

エド「ご主人様にも、あの方の事はお話できません。……ですが」


エド「近々、必ずあの方と貴方様は相見える事になります」


エド「その際には……女王様は長い間病魔に侵されている身」


ペコッ


エド「何卒、ご配慮を」


勇者「……っ」


「お?勇者じゃないか!」


勇者「え?」クルッ

ゾロゾロ

スー戦士「水浴びか?おはよう!」

勇者「スー戦士さん……と」

【“あ、おはようペド野郎”】

【“スー勇者を取りやがった野郎だ。おはよう”】

【“こんな時間から水浴びか?”】

勇者「若い衆の皆さん?おはようございます」

スー戦士「エドも居たのか。おはよう!」

エド「おはよう。皆は鍛錬かい?」

スー戦士「ああ。ちょっくら行って来るよ」

勇者「鍛錬ですか?」

スー戦士「ん?そうだが……一緒に来るか?なんて」

勇者「行きます行きます!見学させてください!ちょっと今服着るんでお待ち下さい!」

スー戦士「えっ、行くのか?いいけど物好きだな」

ザパッ


【【【【“ でけえ!!!!!!???? ”】】】】


【“あいつ女々しい顔してやべえぞ!!”】

【“こわい”】

【“スー勇者にちゃんと入るのかアレ”】


勇者「っとと、エドさん。スー戦士さんにちょっと鍛錬見せてもらってきますね」フキフキ

エド「いってらっしゃいちんちん」

勇者「ちんちん!!!?」



……………………



――村のはずれの岩場――



ガキィン!!! ガキィッ!!



スー戦士【“せい!!!!”】


ガキィッ!!


【“なんのぉっ!!!!”】


ガゴッ!! ドゴォッ!!



勇者「……うぉぉぉっ……」




スタスタ


スー戦士「ふぅ……どうだ?スーの戦士達の鍛錬は」

勇者「いやぁ……なんというか……感服しました」

勇者(この人ら、全員身体能力がハンパ無い……全員漏れなく手だれってレベルじゃないよこれ)

スー戦士「はは、生半可なものじゃないだろう?小さい頃から厳しく鍛錬しているからな」

勇者「はい……でも」

スー戦士「ん?なんだ?」

勇者「あー……いえ、なんでもないです」

スー戦士「?……まあいい。陽もだいぶ登ってしまった事だし」

スー戦士【“皆!引き揚げて飯にしよう!”】

勇者「……」

勇者(これだけの猛者が大勢居て……なんで戦争に負けたんだろう……)


…………


――スー勇者の家――


グツグツ…


スー勇者【“……ん。おいし”】

エド「すっかり料理もうまくなっちゃって……馬うれしい」ペロペロ

スー勇者「あっ!ふふっ!やめてくださいエドさんっ!」

スラお「ぼくもうれしいもんっ!スラうれしい」ペロペロ

スー勇者「きゃー♪」


スタスタ


勇者「スーちゃん。おはよ」

スー勇者「あ!ご主人様!おかえりなさいです!」


――――――


モグモグ

スラお「おいしい!」

勇者「ん!すっごくおいしい」

スー勇者「えへへっ」

エド「本当に上達したね。偉い偉い」

勇者(ふと思ったけどこの食卓すごい光景だな)

エド「それで、ご主人様はこれからどうされるんです?」

勇者「え?……んー……」

カチャ

勇者「あの街から国連が去るのを待ちたいんで……あと五日くらいはここにお邪魔させてもらおうかな、って」

スー勇者「五日ですかっ?」

勇者「うん、ごめんね図々しくて」

スー勇者「いーえっ!!!もっと居てくださいです!!」

勇者「あはは、流石にそれは申し訳ないからさ」

スクッ

勇者「さて、と……片付けたら行きますかね」

エド「どこかに行かれるんですか?」

勇者「うん。ちょっとスーの村を見て回りたくてさ」

スー勇者「あっ!でしたら、私、案内するです!」

勇者「お願いしていいかな?用事とか大丈夫?」

スー勇者「はい!へーきです!」

スー勇者「皆にご主人様の事、紹介したいです!」

勇者「ん。じゃあ一緒にいこ」

エド「じゃあ私も一緒に行きます……乗ります?」

勇者「えっと、いえ、大丈夫です」


…………


――スーの村・住い集合地――


【“おお!帰ってたんだってな!スー勇者!”】

【“おかえりなさい!背も伸びたわね?”】


スー勇者【“みんな!ただいま!”】


ワイワイ

勇者「本当に人気者だなあ」

エド「何度も言うようですが、かわいいですからね」

勇者「本当に何度も言ってますねそれ」


スー勇者【“あの方が私が仕えてるご主人様で――……”】


<……!…!


勇者「…………質問いいですか?エドさん」

エド「どうぞ?」

勇者「……見た感じ、子供居なくないですか?」

エド「……」

勇者「赤ん坊を抱いてる人はいますけど……スーちゃんくらいの子は他に全然……」

【“ちょっと、アンタがスー勇者のご主人様?”】

【“いやあよお、ほっそいったらありゃしないじゃない!!”】

勇者「えっ!?」ビクッ

エド【“ちょっとおばちゃん達、ご主人さまに絡まないの”】

【“いいじゃない減るもんじゃなし”】

【“ちょっとアンタ、力仕事手伝っておくれよ”】

グイッ

勇者「えっ?えっ?あの、エドさん。この方はなんて?」

エド「力仕事をちょっと手伝ってくれと……“ちょっとちょっとおばちゃん!”】

【“けちけちしないでよ!男達は飯食ったら狩りに行ったから男手がほしいのよ”】

【“な?いいだろ?”】

エド「すみません、ご主人様。すぐにやめさせ」

勇者「いえ。自分にできる事ならやりますよ」

エド「えぇっ!?」

スタスタ

勇者「こっちですか?」

【“あらぁ!手伝ってくれるの?優しいじゃない!”】

エド「ご、ご主人様ぁ!いいのですか……?」

勇者「えへへ……実は結構雑用とか好きなんですよ。動かしてる方が気が紛れたりしますし」

勇者「スーちゃんにはよろしく言っててください」

エド「りょ、了解しました……」


スタスタ


エド「……」

エド(なんていうか……ご主人様は庶民派な人だな……)

エド「って、通訳ないと喋れないでしょ!私も行きますよ!」



パカラッ パカラッ


スー勇者「エドさん!ご主人様!どちらへ!?」

勇者「あ!スーちゃん!ちょっとこの方達の手伝いをしてくるよ!」

エド「ちょっとおばちゃんたちがご主人様を拉致ってるからついていくよ!皆と話してて!」

スー勇者「えっ!ちょっと待ってください!私も――……」


スタスタ


村長【“スー勇者”】


スー勇者【“村長様!おはようございます!”】

村長【“ああ、おはよう……ちょっといいか?”】

スー勇者【“へ?はい”】

村長【“国連ではお前が行方不明になったという事だっただろう?”】

スー勇者【“はい……えっ!?まさか国連の方がこの村に”】

村長【“うむ。まあ国連の人間というよりは、お前に用事があった人間からの遣いというか”】

スー勇者【“???……どういう事です?”】



村長【“ランシール勇者、という人間は知っているか?”】


村長【“その方の使者を名乗る者から、お前宛に荷物を預かっている”】


今日はおしまいです

……………………


カァー カァー


ドサァッ


勇者「はぁっ……これで全部か」


【“ありがとうねえ!結局一日中手伝わせちゃって!”】

【“助かったわよ!ちょっと非力だったけどね”】

エド【“おばちゃんらはご主人様をこき使いすぎなんだよ!”】

パカラ パカラ

エド「ご主人様、大丈夫ですか?本当にうちのおばちゃんたちがすみません……」

勇者「エドさん。大丈夫ですよ。なんだかんだ楽しかったです」

エド「ご主人様が羊に埋もれた時はどうしようかと思いました」

勇者「羊に殺されかけるとは思いませんでしたよ僕も」

ゾロゾロ

【“坊ちゃん!さっきはありがとねえ、これ。持っていきなよ”】

勇者「え?」

ドサッ

勇者「えっ……これは?」

エド「野菜と干し肉です。お礼ですって」

【“うちからはこれ!食べて食べて!”】

【“私からはこれ……さっきはありがとう”】

勇者「えぇっちょっと待ってください!受け取れませんよ!僕はそんなつもりじゃ」

勇者「ちょっ、みなさっ……うああああ」


ワラワラ


エド(……ご主人様、見た感じ女々しいから太らせる気なんだ。この熟女達は……)ゴクリ



―――――――


スタスタ


勇者「結局いっぱい貰っちゃったなぁ」

エド「帰ったらスー勇者に料理してもらいましょう」

勇者「お願いしようかな……」

スタスタ…

ピタ…

勇者「……」

クルッ


勇者「…………」

エド「……ん?ご主人様?どうかされましたか?」

勇者「…………や、なんでもないです。行きましょうか」

スタスタ


勇者(雑用と、長閑な風景)


勇者(夕陽と夕餉の匂い)


勇者(これじゃまるで)


勇者(まるで)


スタスタ…


勇者「……あぁ」


勇者(はらわたが捻じ切れそうだなあ)


勇者「ほんと……幸せな」


勇者「幸せな……」


――――――――――――


――スー勇者の家――


スー勇者「……」ジーッ

スラお「どしたのスーちゃん?」


スタスタ

勇者「スーちゃん。ただいまー」

エド「ただいまー」

スー勇者「あ!二人とも!おかえりなさいです……すごい荷物です?」

勇者「ちょっと村の人たちに貰ってね。……あれ?スーちゃんの目の前のその荷物は?」

スー勇者「これは、ランシールさんから届いた、私の、昔のにもつです!」

勇者「ランシール勇者さんから?昔の?」

スー勇者「むかし、私が勇者になったばっかりのころに、ランシール勇者さんと一緒に旅した事があって」

勇者「えぇっ、そうなの?じゃあその時にランシール勇者さんに預けた荷物が送られてきたんだ?」

スー勇者「そう、なんですけど……ちょっとへんな事が」

勇者「変?」

スッ

スー勇者「いくつか、身に覚えのない荷物があって……一緒にこの紙が」

勇者「この紙……?真っ白だね?」

スー勇者「はい……」

スラお「このくまのぬいぐるみ!かわいい!」

エド「おやおや、スー勇者はかわいらしい趣味してるね」

スー勇者「そっ!それも身に覚えのない荷物です!」

勇者「んー……間違えて紛れちゃったのかな」

スー勇者「かもです……今度返しに行くです」

勇者「ん。それがいいかもね」

エド「そうだスー勇者。この食材を使って何か美味しいものを作ってよ」

勇者「ああそうだった。お願いできるかな?スーちゃん」

スー勇者「お安い御用です!あ、でも今日は村長様の家族も一緒に食べるです!」

勇者「村長様達と?いいのかな、僕が居て」

スー勇者「居てくださいです!」

エド「ご主人様はもう家族のようなものです。ね?スー勇者」

スー勇者「はいっ!」ニコー

勇者「……ふふっ、うん。ありがと」

エド(そして行く末はスー勇者を……ねっ?ねっ?)パチッ パチッ

勇者(なんかめっちゃエドさんウィンクしてくる……)


―――――――――――


――村長の家――


「「「「いただきまーす!」」」」


勇者「んんっ!んまいっ!」

スー勇者「えへへ、いい食材がいっぱいだったので、豪華にしたです」

村長【“はっはっは、これは豪勢だな”】

村長妻【“スー勇者の腕が上達していて私も嬉しいわ。少し見ないうちに大人になっちゃうんだから”】

スー勇者【“やめて下さいお母様ー!私はもう一人前のレディなんですっ”】

勇者「……ねぇねぇエドさん」

エド「ん?なんです?」

勇者「前に言ってましたよね?この方々がスーちゃんの親代わりって」

エド「はい。……あぁ、それも言っていませんでしたね」


「スー勇者には、スー人の血は流れていないんだよ」


勇者「えぇっ!!!!!!?!?????って、あれっスー戦士さん」


スー戦士「よっ。ただいま。やってるな」


スー勇者「おかえりなさいです!」

村長【“狩りはもう終わったのか”】

スー戦士【“ああ。さっきな”】

エド「スー戦士は村長の息子なのですよ」

勇者「あっ、そうなん……っていうかいやいや、さっきのって本当なんです?」

スー勇者「はいっ!本当です!」

スー戦士「この子は別の小さい島からやって来た貰い子なんだ」

エド「もうこの村の子と変わりないんですけれどね」

勇者「確かに少し肌の色とか違うなぁって思ってましたけど……そうだったんだ……」

スー勇者「はい!でも私はこの村の人間です」

スー勇者「両親が亡くなって、この村に預けられた私を、みなさんすっごく優しくしてくれましたです」

スー勇者「わたしっ、この村がだいすきです!」ニコー


村長・村長妻・スー戦士【【“ぁぁぁぁぁぁぁスー勇者ぁぁぁぁぁぁ!!!!!”】】


ナデナデナデナデナデナデナデ


スー勇者「いあ――――!!!!髪がくちゃくちゃになるです――――!!!!!」


勇者「うぁぁぁぁぁスーちゃんうぁぁぁああああああ」ナデナデナデナデナデ


スー勇者「なんでご主人様まで!!!!!?」

スラお「ぼくなでなでできないからぺろぺろでいい?」

スー勇者「お気持ちだけで大丈夫ですよ」

エド「ぺろぺろ」

スー勇者「エドさんは容赦ないぺろぺろです」



…………



パチ… パチ…


スー戦士「ふぅー……食った食った」

村長【“……スー戦士。若い衆はどうだ?”】

スー戦士【“んん?……ああ。ちょっくら大変だったがなんとか宥めたさ”】

村長【“すまないな”】

スー戦士【“いや。俺の仕事でもあるからな……だが、オヤジ”】

スー戦士【“俺は、どちらかというと若い衆と同じ気持ちだ”】

スー戦士【“今すぐにでも町長の所に行って、やり返してやりたい”】

村長【“……”】

スー戦士【“……これじゃ、いつまでも俺らは奴隷のような扱いのままだ”】

村長【“…………堪えねばならん事もある”】

村長【“以前、人間達は似たことを繰り返して、怨念を怨念で覆い尽くした”】

村長【“もう一度言う。堪えねば、成らぬ事もある。のだ”】

スー戦士【“……偉大なる魂の為、か”】

村長【“損な役割を押し付けてすまない”】

スー戦士【“いいさ。もう慣れた”】

勇者「……エドさん。なんか少し張り詰めた空気なんですけど……もしかして」ボソ

エド「いやまあ……あの街での話を、ちょっと」

勇者「……やっぱりですか……あの。村長夫妻への通訳をお願いできます?」

エド「え?」

勇者「あっ、あの。皆さん」

村長【“ん?”】

スー戦士「どうした?勇者」

勇者「うちの知り合いが皆さんにご迷惑をおかけして……本当にすみません」

スー戦士「はは。よせよせ。お前が気にする事じゃないよ」

村長【“そうです。お気になさらず”】

村長妻【“頭を上げてくださいな”】

勇者「すみません……ですがこれだけは言えます」

スー戦士「ん?」


勇者「あいつは、悪人ではありません」


勇者「今回の事も何かが絶対あります」


スー戦士「……根拠は?」

勇者「幼馴染としての勘」

スー戦士「お、おいおい」

勇者「……――と、それと」

スー戦士「ん?」

勇者「……いえ、なんでもないです」

勇者「とにかく、数日後に直接会いに言ってきます。それまでどうか抑えていただけませんか」

スー戦士「そう気にしないでくれ。俺らももう無理に抗議に行ったりはしないからさ」

スー戦士「それに、今は街には恐ろしい人間がいる。……国連が居る限り妙な事はできんさ」

勇者「?恐ろしい人間?」

スー戦士「お?知らないか?」

勇者「国連のダーマの勇者が居るのは知っていますが……」

スー戦士「それよかもっとヤバい人さ」


スー戦士「原初の勇者。“皇帝”糾えるソクラス」


勇者「っ……!!?」

スー戦士「お前も名前は知っているだろう?」

勇者「そ、そりゃあもう……えっ?あの街に今居るんですか?」

スー戦士「ああ。実感できないよな」

勇者「……マジか……」

勇者(父さんと同じ、伝説の勇者の1人)

スー勇者「?……あざ、なえる?こうてい?」

スー戦士「お?どうしたスー勇者」

スー勇者「その……名前の前の、なんです?」

スー戦士「名前の前?ああ、皇帝の事か」

スー戦士「あのな?原初の勇者の四人、オルテガ、サイモン、ヒミコ、そしてソクラス」

スー戦士「この四人はそれぞれ二つ名があるんだ」

スー戦士「オルテガは“明星”。サイモンは“月光卿”。ヒミコは“東方の魔女”」

スー戦士「そして、ソクラスは“皇帝”」

スー勇者「王様なんです?」

スー戦士「あはは。まさか。ただの呼び名だよ」

エド「しかし、どうして“皇帝”糾えるって言葉が使われてるんだい?」

勇者「確かに、あまり考えた事なかったけど……」

スー戦士「……んー……まあ、本当の事は分からないんだがね」


スー戦士「ソクラスは、一国を1人で滅ぼしたらしい」


勇者・スー勇者・エド「「「……へっ?」」」

スー戦士「いや、そう噂されてるだけで実際はちょっと違うらしくて」

スー戦士「どこだったか、小さい国が滅んだ際に、生き残りはソクラスだけだったとか」

勇者「……亡国の、たった一人の生き残り……それで皇帝って事、か」

スー戦士「で、糾えるって方だが……」

スー戦士「なんというか、凄く独特な人物らしくてな。感情が読めないらしいんだ」

スー戦士「糾った縄の一本一本の様に、ねじくれているらしい」

勇者「…………つまり、ひねくれもの、と」

スー戦士「ま、そういうことだよ」

グビッ

スー戦士「っ、ぷは……ただ、これだけは言える」


スー戦士「あの男、尋常じゃない」


スー戦士「ちらっと姿を見ただけだったが……震えたよ」


スー戦士「あの男にだけは、目をつけられちゃいけない」


スー戦士「人類の中では、恐らくあの男より強い人間は居ない」


スー戦士「案外………………国を滅ぼしたってのは、本当かもしれないな」

今日はおしまいです

勇者「……」ゴクリ

スー勇者「ま……まさかそんな……」

スー戦士「いや、冗談は言っちゃいないよ。恐らく、軍神の二人よりも強いんじゃないか」

スー勇者「軍神?」

スー戦士「同士大戦を終わらせたっていう二人の剣士の話さ。“青い鬼”と“赤い鬼”」

スー戦士「あの二人のように、何十年後かにもソクラスやオルテガは神話として語られるんじゃないかな」

勇者「……」

スー戦士「ま、そんな事より、お前達の話を聞かせてくれよ。この一年の事」

スー勇者「あ!いっぱい話すことあるです!えっとですね――……」


…………


――スー勇者の家――


ホー ホー


スラお「ぐぅ……ぐぅ……」


勇者「……」


スー勇者「……」


ゴロ

スー勇者「……起きてるです?ご主人様」

勇者「ん?ああ。ちょっとね。眠れなくて」

スー勇者「なんだか、さっきから様子がおかしいです」

勇者「え?そう?」

スー勇者「はい……考え事、です?」

勇者「んー……」

ゴロッ

勇者「……商人の事とか、色々考えてたんだ」

勇者「なんでソクラス様みたいな凄い人があの町に来ているんだろう、とか」

スー勇者「あの街、有名な、船の中継地点みたいです。その方も移動するために、来たんじゃです?」

勇者「うーん……でもそれだったら移動魔法使える人を雇えばいい話だし……単に輸送の監督役なのかな」

サス…

スー勇者「……足の痣、痛むです?」

勇者「ん?ああっ、い、いや。そんな事ないよ」パッ

スー勇者「…………」

ギュッ

スー勇者「ご主人様、もう寝るのが、いいです。また悪い夢見るですよ」

勇者「そ、そうだね」

スー勇者「………………あと、3回です」

勇者「……」

スー勇者「3回、魔力に魅入られる、ご主人様……死んじゃうです」

スー勇者「もう絶対……飲み込まれないで、くださいです」

勇者「……うん」

勇者「心配かけてごめんね。僕は大丈夫だから……おやすみ。スーちゃん」

―――――――――


ガサッ


「はぁっ、はぁっ……やっと着いた……!!」

「ここが……スーの村か……」


…………
……





――朝――


チュンチュン


バシャッ!


勇者「っぷはっ……冷たい」

エド「ブルフンッ……顔を洗うのは本当に気持ちがいいですね。拭いて下さいお願いします」

勇者「拭かせるんかい」フキフキ

スタスタ

スー勇者「ご主人様。歯磨き用の茎、持って来たです」

勇者「おー、ありがと」

クキクキ

勇者「んー……ひもひろいいあはら(気持ちの良い朝だ)」グシグシ

スー勇者「ほうれふね」グシグシ

スラお「ぼくもそれやりたい」

勇者「スラお歯がないれひょ」

エド「さて、今日はどうされるんですか?ご主人様」

勇者「今日はスー戦士さん達に魚獲りに誘われてるんですよ。それに参加しようかなって」

エド「おや、いいですね」

スー勇者「私はちょっとお母様と一緒にお裁縫するです」

エド「それまた良い事だ。完成したら呼んでね」

勇者「とりあえずのんびりと過ごさせて貰おうかなって思ってまs――……」


【“おーい!!村の前に何かいるぞ!!”】

【“街の人間だ!!何しにきやがったんだ!!”】


スー勇者・エド「「「!!?」」」


【“とりあえず行って見るぞ”】

【“くそっ!!痛い目にあわされてえのか!!?”】

タッタッタ…


勇者「?なんだかみんな騒いでるけど」

エド「スー勇者。行こう」

スー勇者「はい!ご主人様!行くです!」

グイッ

勇者「えっ?ちょっ、えええ!?」

…………


【“何の用だ!!帰れ帰れ!!”】

【“入り口に居座りやがって……!!”】

スー戦士「……なんのつもりだ」

スー戦士「そんな所にあぐらをかいて居座って……何をしに来たんだ」


「俺は丸腰だ!武器も何も持ってねえ!」


タッタッタ

ザッ

スー勇者「はぁっ、はぁっ」

勇者「スーちゃんっ、どうしたのこの騒ぎ――……え?」



あらくれ「だからお願いだ!!少し話を聞いてくれ!!」



勇者・スー勇者「「あらくれさん!?」」

【“おい、こいつは何て言ってやがるんだスー戦士”】

【“もういいから追い返してしまえ!”】

スー戦士【“……皆は少し静かにしていてくれ”】

スー戦士【“俺が通訳をする。しばらくは黙れ”】

【“何を……”】

スー戦士「わかった。何の話だ?言ってみろ」

スー戦士「悪いが、お前らの町長のせいで、村の若い奴らは殺気立っている。つまらん事は言うなよ」

あらくれ「……その町長の事だ」


ザリッッ


【【【【【“!!!”】】】】】


勇者(土下座!!!?)


あらくれ「…………うちの町長が、あんたらに不快な想いをさせて……悪かった」

あらくれ「代わりに、あんたらの怒りは俺が受け入れる……!煮るなり焼くなり好きにしろ!」

あらくれ「だから……!なんとか、町長の事は許してやってくれ!!」


【“はぁ!!!?何を言ってやがる!!!”】

【“何を今さら!!”】

スー戦士「……町長の命令で来たのか?」

あらくれ「いや……俺の、俺個人の意思だ」

スー戦士「なぜこんな事を?謝りに来るという事は町長の非を認めているという事だろう?」

スー戦士「だったら町長の為にここまで来てスーの怒りを受け止めるなど……」

あらくれ「…………町長は、俺の……いや」


あらくれ「町長は、俺達の。あの街の住人達の恩人なんだ……!」


勇者「……!」

スー戦士「どういう事だ……?」

あらくれ「これを見てくれ!」

スッ


スー戦士「……!!!」

【“それは……”】

【“み、見た事がある”】



あらくれ「……足首の、刺青」


あらくれ「そうだ……奴隷だ。奴隷の烙印だ」




勇者「っ……!!!!!!」




あらくれ「……あの町の人間はな、町長に連れてこられたんだ」


あらくれ「エジンベアの、クソみてえな下層街から、連れてこられた人間達なんだよ!!」



スー勇者「下層街って……!!」

スー勇者(この前、私達が行った……)

スー戦士「……街の、住人達。全員か?」

あらくれ「……ああ、今の所、そうだ」

あらくれ「町長に連れてこられなけりゃ、今頃まだずっとあの下層街でくせえ飯を食ってた」

あらくれ「でも、今はあの人のおかげで……みんなやっていけてる。職だってまともに見つけられてる!」


ガッ!!


あらくれ「頼む……!!今回の事も、何か事情があったにちげえねえ!!」

あらくれ「他のやつらは知らねえんだ……俺は知ってる……あんたらは強い」

あらくれ「昔、戦争に行ったヤツから聞いた事がある……スー人が本気を出したら、誰もまともにたちうちできねえって」

あらくれ「スー人は敵に回すなって……!!」

スー戦士「……俺達の、町長への報復を恐れて……この村まで来たのか?」

あらくれ「…………お願いだ、後生だ」


あらくれ「あの人を……憎まないでやってくれ」


あらくれ「許してやってくれ……!怒りを治めてくれ……!!」



【【【【【“…………”】】】】】



【“……けっ”】

ゾロゾロ

【“自分らも奴隷だったくせに、俺らに威張り腐ってやがったってのかよ”】

【“もういい……視界に入れるのも、考えるのも嫌だ”】

【“何が事情があったから、だ……クソが”】

スタスタ…


スー戦士「……俺達には、そんな事関係ない」

スー戦士「約束を反故にされ、馬鹿にされたんだ。許せる筈もない」

あらくれ「……っ」

スー戦士「だが……お前に言われなくとも、報復などはしない」

あらくれ「!ほ、本当か!?」

スー戦士「勘違いはするな。お前達の事は許せない」

スー戦士「だが、偉大なる魂の導きの為に、憎しみを生む事などはしない」

スー戦士「……それだけだ」

あらくれ「……おっ」

ギリッ…

あらくれ「恩にきるっ……!すまねぇ……すまねぇ……!!」

………………



――スーの村・川の上流――


カァ カァ


バシャッ


スー戦士「ふぅ……陽も暮れはじめたな」

あらくれ「…………あの」

スー戦士「ん?なんだ」

あらくれ「いや…………おれは、いつまでこの魚籠を持ってりゃいいんだ……?」

【“あぁ!!?ガタガタ言ってるんじゃねぇぞ!!?”どうぞ】

【“煮るなり焼くなり好きにしろって言ったのはてめえだろうが!魚籠持ちくらいしろやぁ!!”どうぞ】

あらくれ「そりゃ、言ったけどよ……半日もずっと川の中で、魚籠持ちっつうのは、辛い……どうぞ」

スー戦士「お前らどうぞどうぞ言って俺に翻訳託すのやめろ。マジでしんどいんだこれ」

スー戦士「ったく……辛いなら勇者の傍に行っていろ。あいつは銛突きでなく釣りをしているから」

あらくれ「すまねぇ……」



――――――



勇者「……」ボーッ…


クイクイ


勇者「……」ボー…


クイクイ


あらくれ「……おい、ひいてんぞ」


勇者「えっ?あっ!?」グッ!!

スカッ

勇者「……逃げられた」

あらくれ「何ぼーっとしてんだ……隣座るぜ」

勇者「ちょっと考え事してて……あ、どうぞどうぞ」

ドカッ

あらくれ「っふー……」

勇者「そういえば倉庫番はいいんですか?」

あらくれ「あぁ、一週間交代だからな。しばらく非番だ」

あらくれ「まああの街からここに来るのに一日使っちまったんだけどな」

勇者(あ、そっか。近道あるのはスーの人以外知らないんだ)

あらくれ「考え事ってなんだよ?町長の事か?」

勇者「え?あー……まあ、そうです」

あらくれ「……さっきも言ったが……町長は、俺らの恩人だ」

あらくれ「だから、あまり悪く思わねぇでやってくれ……幼馴染なんだろ、お前」

勇者「……あの」

あらくれ「ん?なんだ」

勇者「ここ最近、あいつの事で気がかりだった事とか、ありませんか?」

あらくれ「……いきなりだよ」

あらくれ「ほんの少し前までは、それこそスーの人らからも、誰からも好かれるような人だった」

あらくれ「それがちょっと前から、人が変わったように妙な取り引きやらをするようになっちまって……」

勇者「……」

あらくれ「…………気付いたら、町人達からも、信用されてねえような人になっちまった……」

あらくれ「人が変わっちまったみてぇによ……未だに、信じらんねえよ……あんな、いい人が……」

勇者「……」

あらくれ「……?おい?」

勇者(何かが、何かがひっかかってる)

勇者(何だろう、バラバラになってる何かが……組み合わさりそうな……)


―――――――――――


――村長の家――



スー勇者【“お母様!この角のところ、こんな感じで大丈夫かなっ?”】

村長妻【“ええ、上手いわ。ふふ。本当に立派な女の子になってるわね、スー勇者”】

スー勇者【“えへへー”】

ピタッ

スー勇者【“あ……お母様、ここの刺繍はどの糸を使いましょうか?”】

村長妻【“ああ、それならここの箱にあったかしら……”】

ゴソッ… パカッ

村長妻【“あら違う箱を……あららら、これ。懐かしいわね”】


ヒラッ


スー勇者【“……?それって”】

村長妻【“あなたが作った、あぶり出しを使った絵を描いた紙よ”】

スー勇者【“……”】

村長妻【“冬に、女王様の元から帰って来たあなたが柑橘類をお土産に持って帰って来てねぇ……”】

村長妻【“私が、余った皮でこれをやってみせたら貴女すごくよろこんで……”】


ガバッ ダッ!!!


村長妻【“あら?どこへ行くの?”】


―――――


タッタッタ


スー勇者「……っ」

スー勇者(もしかして……!)

………………………………



『なんでっ……!!いちいち構うんですか!!!!』


『1人だけ悪者になるだけで、全部上手くいくならっ』


『それですむならっ……それでいいじゃないですかぁっ……!!!』



………………………………






勇者「…………………………………………あれ」






あらくれ「ん?どうした?」


勇者「……」


勇者「……」


勇者「……」


あらくれ「……おい、お前本当にどうした?」

ザパザパッ

スー戦士「はー、もう駄目そうだ。日が暮れて魚が見えなくなってきた」

【“腹減ったし獲った魚持って帰って女房に飯作ってもらうか”】

【“おい魚籠係!ちゃんと見張ってただろうな!?”】

スタスタ

スー戦士「ん?どうした?勇者……さては釣れなかったな?」

勇者「…………スー戦士さん」

スー戦士「ん?」


勇者「あいつ……最後に何て言ってました?」


勇者「最後に、スー戦士さんに何て言いましたか?」


スー戦士「おいおい、勘弁してくれよ。なるべく思い出したく」


勇者「何て言いましたか!!!」


スー戦士「っ……!!?……え、えっと」

スー戦士「もうスーの村と取り引きする気は無いって」

勇者「他には!?」

あらくれ「お、オイお前どうした?」

【“勇者?目が怖いぞお前”】

スー戦士「他……?ああ」




スー戦士「『お前に売った木箱の中の秋種を実らせたら、取り引きしてやる』的な事を言われたな」



勇者「……」


あらくれ「あ、秋種を?」

スー戦士「ああ。今から秋までどのくらいあると思ってるんだって話さ」

勇者「スー戦士さん、あいつから買った秋種と本とかが入った袋……今何処に」

スー戦士「ん?俺の家だが……正直、使う時が来るかどうかあやし――……」


ダッ!!!!


スー戦士「っておい!?」

あらくれ「勇者!!?」


………………


タッタッタ!!!


勇者「はぁっ!!はぁっ!!」


――――――――――――


『根も葉もないもんさ。この町の金使って宝石買い漁ってるだの、うまいもん食ってるだの』


『町の金使ってくだらねえ骨董品買っただの』


――――――――――――


タッタッタ!!!


勇者「はぁっ!!はぁっ!!」


――――――――――――


『今の町長の行いはちょっと看過できない事が多すぎましてね……』


『ですから、新しい町長を選びなおす。その機会がほしいのです。この私達は』


――――――――――――


タッタッタ!!!


勇者「はぁっ!!はぁっ!!」


――――――――――――




『ここはな、ガルナバークだ』




――――――――――――




タッタッタ!!!


勇者「はぁっ!!はぁっ!!」



――――――――――――



ギリッ…


商人『……なんで、このタイミングでっ……』ボソッ



――――――――――――



タッタッタ!!!


勇者「はぁっ!!はぁっ!!」


勇者「はぁっ!!はぁっ!!」


勇者「はぁっ!!はぁっ!!」



――――――――――――




『まちをつくるのが、ゆめなんですっ』



『みんながわらってくらせる、みんながびょーどーなまちを!』



ニコッ




『そして、そこにみんなですむんです!』



……………………



パカラッ パカラッ


エド「おなかすいたね」

スラお「んー……すいたね」


――村長の家――


バサッ

スラお「スーちゃん!おなかすいた!」

エド「スー勇者……あれ?なにをしてるんだい?」

村長妻【“あら、エド、スラおさん。お帰りなさい”】

スー勇者【“あ、エドさん、スラさん”】


スッ…


スー勇者【“これ”】


エド「?なんだいその笛」



スー勇者【“わからないの……ほら、前にランシール勇者さんのお仲間が荷物を届けてくれたでしょ?”】

スー勇者【“あれに同封されてた白紙の紙、魔力を使ったあぶりだしだったの”】

エド【“魔力を使ったあぶりだし?”】

スー勇者【“そう。前にあぶりだしの話をランシール勇者さんにした事があって……それを覚えてたのか、魔力で作ったみたいで”】

スッ

スー勇者【“これが、書かれてて”】

エド【“どれどれ?”】


[ ぬいぐるみの中を見て ]


エド【“……”】

スー勇者【“だから、ぬいぐるみの中を開けたんだけど……この笛が入ってて”】

エド【“なんだろ……ただのお土産とか?”】

スー勇者【“どうなんだろ”】

エド【“それって吹けるの?”】

スー勇者【“えっとね……”】


スッ…

















フィィィィン……















   フィィィィン……












エド【“……綺麗な音……だけど”】

スラお「なんか、ひびいたよ?」

スー勇者【“そう……なんだか、〝こだまする〟の”】


ガサッ


村長妻【“あら?ぬいぐるみの綿の底、まだメモがあるわ”】

スー勇者【“えっ!?なんて書いてあります?”】

村長妻【“えっとね……”】



村長妻【“……――やまびこの、笛?”】



スー勇者【“…………やまびこの笛……?”】



タッタッタ!!!

ガバァッ!!!


スー勇者・エド・スラお「「「っっ!!!?」」」ビクゥッ!!!



勇者「はぁっ!!はぁっ!!」



スー勇者「ご主人様!?びっくりしたでs」

勇者「スーちゃん!!」

スー勇者「は、はい?」

勇者「スー戦士さんが商人から買った秋種は!!?」

スー勇者「えっ……!?えっと」

ゴソゴソ

スー勇者「うんしょ……こ、この袋です……」

勇者「貸してっ!!」ガシッ!!


バリバリッ!!!


村長妻「!!?」

エド「ご主人様!!?」

勇者「……っ!この、木箱かっ」

スー勇者「ご主人様!何をしてるですかっ、さすがに」


バコッ


スー勇者「いけな…………い……?」






勇者は乾きの壷を手に入れた!!





スー勇者・村長妻・エド「「「!!!!?」」」



勇者「はーっ……!!はーっ……!!!」



村長妻【“それは、渇きの壷……!?”】

エド「は、話に聞いてる渇きの壷と形が全く一緒……!?」

スー勇者「ほ、本物ですっ!?ご主人様っ」


ゴソッ


勇者「っ……!!!」


スー勇者「……ご主人様?」


勇者(僕の、嫌な予感が、当たっているなら)


――――――――――――


『根も葉もないもんさ。この町の金使って宝石買い漁ってるだの、うまいもん食ってるだの』


――――――――――――


『街の金で……骨董品、買う……宝石、買う……』


――――――――――――




商人『さあさあ、国連の方々が動き始める前にとっとと消えてください?』




――――――――――――



勇者「はぁっ……!!!!はぁっ!!!!」












カランッ……








村長妻「……?」


スラお「なに……なになに?」


エド「……そ、それ、は?」




スー勇者「…………それって」




勇者「…………………………」














勇者はイエローオーブを手に入れた!












勇者「…………商人が、危ない」









今日はおしまいです

――――――――――――


――エジンベア城・客間――


ガチャッ


マーゴッド「ポルトガ姫!!」


ポルトガ姫「マーゴっちゃん!!」


ガシッ

マーゴッド「やだあ!久しぶりじゃない!どうしたのいきなり!」

ポルトガ姫「ご無沙汰っすねえ!ちょっと顔見たくなったんすよ!」

マーゴッド「何にせよ嬉しいわ!……ちょっと」

従者「はっ」

マーゴッド「あなた達はお外しなさいな」

従者「しかし……」

マーゴッド「私とポルトガ姫の久々の再会に首を突っ込む気?その首刎ねても構わないことよ?」

従者「りょ、了解しました」

ゾロゾロ…

バタン

マーゴッド「……さて」

ポルトガ姫「……いいんすか?」


女勇者「……」

遊び人「……」


ポルトガ姫「こちらの従者を払わなくて」

マーゴッド「…………ふふ」

スタスタ

ギシッ

マーゴッド「貴女がわざわざ連れてくるんですもの。そのお連れが何か今回のお話に関係あるんでしょ?」

ポルトガ姫「えへへ、さすがマーゴっちゃんっすね」

女勇者「無理を言って申し訳ありません姫様」

遊び人「少しお聞きしたい事があって参りました」

マーゴッド「あら、その甲冑の下は女性だったのね?道理で小柄だと思ったわ」

ポルトガ姫「そうなんすよ。それで、聞きたい事っていうのが……」

マーゴッド「もしかして、伝説のオーブの事かしら?」

ポルトガ姫「っとぅほお……流石察しがいいっすね」

マーゴッド「今は国連の間で話題になってるし、いきなりそんなワケありそうな従者を連れてくるんですもの」

マーゴッド「ま、大方宝物庫に手がかりを探しに来たんでしょ?でも今は何にもないわよ」

女勇者「えっ……」

マーゴッド「ちょっと色々あったの。残念ね」

遊び人「そ、そうですかぁ……」

ポルトガ姫「ん……んー……やっぱ難しいっすねえ」

マーゴッド「……ねえ、へんな事聞いていい?」

ポルトガ姫「なんすか?」


マーゴッド「あなた方、あの“ガルナの変”の勇者のお知り合い?お仲間?」


三人「「「!!!!?」」」


マーゴッド「あ!その顔図星なのね?あははっ」

ポルトガ姫「ちょ、ちょっと待ってくださいマーゴっちゃん、その」

マーゴッド「いいのいいの。ふふっ」

女勇者「ちょ、ちょっとちょっとポルトガ姫ちゃんっ」

遊び人「これまずいんじゃないのっ」

ポルトガ姫「……マーゴっちゃんはね……昔から本当に頭と察しが良いんすよ……でも、今回は流石に良すぎっす」

マーゴッド「勇者も国連に追われる身ながら貴方の兄と同行してたんだし、なんとなくね」

マーゴッド「ここに来た後からそんなに日にちも経ってないし、目的も宝物庫だったし」

ポルトガ姫「えっ?ちょっと待ってください?」

女勇者「……今何て仰いました?」

マーゴッド「ん?」

ガシッ!

マーゴッド「ふぇっ」

遊び人「ゆ、勇者ちゃん、ここに来たんですか?会ったんですか!?」

女勇者「無事でしたか!?元気でしたか!!?」

マーゴッド「ちょっと、この人ら怖いわよポルトガ姫」

ポルトガ姫「マーゴっちゃん、あの人知ってるって事は、えっ?この国に来たんですか?」

マーゴッド「ええそうよ。安心なさい。元気だったわ。あ、勇者の正体の事も私以外にはバレてないからそこも安心なさい」

女勇者「……そ」

遊び人「そう……ですか……よかった……」

マーゴッド「ふふ……やっぱり、国連はお目目節穴バカと傀儡ばかりみたいね」

女勇者「でも、お義兄ちゃ……勇者は何故この国に?」

ポルトガ姫「ってか、さっき勇者くんが『貴方の兄と同行してた』って……もしかして」

マーゴッド「ん?それはね」

ピタ

マーゴッド「…………そうね、丁度いいわ。決行しましょうか」

ポルトガ姫「え?決行って?」

…………


黒服「……で」


マーゴッド「そういうワケで」



――エジンベア城・奥の空き部屋(エジンベア勇者の私室)――


マーゴッド「そこをどいてドアを開けなさい」

黒服「どういうワケだよ」

マーゴッド「ねえいいじゃない!ずっとどいてくれないし、私もううんざりよ」

黒服「ったく、帰れ帰れ。エジンベア勇者の言いつけ破ったら俺らが殺される」

マーゴッド「んもー、姫の命令よ?きけないの?」

黒服「それでも聞くなって言われてんだ。俺等は別にこの国に仕えてねえしな。ってかここに何の用だよ」

マーゴッド「だってぇ……そこにお客さんが数人居るでしょ?」

黒服「……」チラッ

遊び人「?」

黒服「……フンッ」

マーゴッド「で、それって恐らくだけど。ポで始まる国の勇者とイで始まる国の勇者様だったりするんじゃないかしら」

ポルトガ姫「えっ!?兄貴がここにいるんすか!?」

マーゴッド「そのお客さんがね?ちょっとこの子らの関係者と知り合いらしいの」

マーゴッド「だからちょっとお話を聞きたくて」

黒服「……帰れ」

マーゴッド「……」

黒服「とにかく。今日の夕方にエジンベア勇者はあの貿易の街からここに帰ってくる。それまで大人しく」


マーゴッド「貴方達がコソコソしてる事。全部、お父様に話すわよ」


黒服「……ぐ」

マーゴッド「あら、本気よ?」

黒服「……っ……卑怯にも程があんだろ……!!」

マーゴッド「分かったら早く――……」

タッタッタ

黒服2「はぁっ!はぁっ!おい!戻ったぞ!!」

ズザッ

黒服2「って、あれっ?姫様?なんでこの部屋の前に?」

マーゴッド「あら……貴方、エジンベア勇者に同行していた黒服じゃない。エジンベア勇者は?別の任務の前に戻ってくる予定でしょ?」

黒服2「え?あの、えっとですね」

黒服「……タイミング最悪だ……」

マーゴッド「……」

ニコォ

マーゴッド「この部屋の中で、続きを聞かせてもらいましょうか♪」

――――――――――――

……………………


――ガルナバーグ・牢――



ピチョン…


商人「……」



スタスタ

ザッ

「おやおや、一晩でまた惨めになられましたね」


商人「……」

ガチャッ キィ…

スタスタ

ザッ…


エジンベア大臣「さて、気は変わりましたかね?」


商人「……」

エジンベア大臣「……話す気は、無いと?」

エジンベア大臣「いいでしょう……おい。アレを」

サマンオサ兵「……」スッ

パシッ

エジンベア大臣「さて、昨日さんざんやりましたが、もう一発ほど御見舞いしておきましょうか」

ヒュンッ!!

バシィッ!!!

商人「っ……!!」

エジンベア大臣「おや、血が出てしまいましたね……で?」


エジンベア大臣「話す気になりましたか?オーブの在り処を」


商人「……」

エジンベア大臣「……往生際の悪い」

エジンベア大臣「分かっているのだよ。宝石商達から聞いた話で、オーブらしきものを貴女が手に入れたという噂をね」

エジンベア大臣「早く何処に隠したかを言え……言うのだ」

商人「……ふふっ」

エジンベア大臣「お?」

商人「……アンタが裏でせこせこと怪しい動きをしてるのは知っていましたが……ここまで魔族にどっぷり半身埋めているとは思いませんでした」

エジンベア大臣「……貴女のその小賢しい思考のせいで、計画が狂った部分もありますからね」

エジンベア大臣「しかし、勘違いはしないで頂きたい。魔族の方々と関係を持っているのは利害の一致というやつです」

エジンベア大臣「私なりの賢い考え方に基づいた結果、この状況が私にとってベストだと考えたのです」

エジンベア大臣「とにかく観念する事です。もうこの街にオーブがある事は分かっているんです」

エジンベア大臣「幸い、勇者とかいう魔族が現れたおかげでタイミング良く街の出入りの検問を強化する事ができましたしね」

商人「……知りませんねぇ」

エジンベア大臣「……はぁ、何を言っても無駄そうですね」

クルッ スタスタ

エジンベア大臣「いいでしょう。でしたらこちらにも考えがある」

商人「……?」


エジンベア大臣「……街の人間達に、危害が加わる事が無いとでも思ったかね?」


商人「なっ……?……ははっ、いい加減な脅し使わないで下さい」

商人「そんな事すれば街に居る国連の勇者や目撃者達が上に黙っているワケが」

エジンベア大臣「まあそれはそうですな……だが」

ガチャッ キィ…

エジンベア大臣「……“災害”の仕業だったら、誰が文句を言いましょうか」

商人「はっ……?」

エジンベア大臣「それでは私はこれで――…」


「大臣様」


エジンベア大臣「ひぁっ!!?……な、なんだね君達か」


ノッポの男「……」

太った男「……」


細目の男「…………“前”町長とお話をさせていただきたいのですが」


エジンベア大臣「えぇえぇいいですとも……――“現”町長」

エジンベア大臣「私は席を外しますので、お好きに話されてください」

細目の男「ありがとうございます」


ガチャァン…


…………

スタスタ…

エジンベア大臣「さて。と」

エジンベア大臣(そろそろ実行に移るか)

スタスタ


ソクラス「おや、大臣どの」


エジンベア大臣「おや?ソクラス様。どうも」

ソクラス「どうですかな?町長の様子は」

エジンベア大臣「依然口を割りませんな……しかし」

ニタァ

エジンベア大臣「それも時間の問題でしょう」

エジンベア大臣「それでは失礼します。やる事が山積みでしてね」

スタスタ…

ソクラス「……」



……
…………


細目の男「さて……どんな気分です?元町長」

商人「……」

細目の男「いやあ、色々ありましたがなんとか町長の座、貰い受けましたよ」

商人「……貴方は」

細目の男「ん?」

商人「貴方は、何故そんなに町長になりたかったんです……?」

細目の男「はい?……ふふ、不思議なことを聞くものですね」

細目の男「応えますが、そんなもの決まっています」

細目の男「町が手に入るから。です……シンプルにね」

商人「……」

細目の男「町が手に入れば交易のルート等を自分で選択できます」

細目の男「私はね、ここに来る前までは様々な場所で交易を学ぶ人間だったのですよ」

細目の男「そしてあらゆる事を纏めた結果。この地に港町を作ろうとした……そうしたらどうです、先を越された」

スタスタ

バシッ!!

商人「ッ……」

細目の男「ポッと出のインディアンと小娘に、邪魔をされたんです……!」

細目の男「この私の計画がね!……ですがもう心配ないです。ちゃんと椅子は譲り受けました」

細目の男「まずはあの能無しアパッチの副町長の老いぼれを村に追い返してやりますよ」

商人「……」

細目の男「そもそも奴隷区分のスーのアパッチが偉そうにしているのも堪えられなかった!あー思い出しても反吐が出る!」

細目の男「就任したら早々にスーの人間の立ち入りは制限させてもらいますからね!」

太った男「この方はな、エジンベアのとある名家の1人息子だからよ……そういうのは許せねえんだ」

商人「……」

太った男「へっ!なんて目をしてるんだよ!そんな睨んで――……」

ノッポの男「おい、二人共」

細目の男「ん?」

ノッポの男「あれ見ろよ、股間のシミ……」

「「「……」」」

太った男「っくっ、くくっ……!ずっと両手を鎖で縛られてる状態だっただろうからなぁ」

ノッポの男「仕方ねえよな!」

細目の男「……脱がしてやりましょうか」

ノッポの男「そりゃいい!親切親切!」



ガシッ


商人「っ……!やめ、てっ下さい……!」グイッ!

太った男「いいじゃねえの。着替えさせてやるよ。そのままじゃ気持ち悪いだろ?」

シュルッ

ノッポの男「よし!腰紐解けた……ぜっ!」


ズルッ!!


商人「っ……!!」


ノッポの男「……っはっ!ションベンの匂いがすげぇっ!」

太った男「おいおい、性格の生意気さと違って下着は顔相応に可愛らしいじゃねぇ……の……」




商人「……」




「「「…………」」」


ノッポの男「…………町長、まさか」

太った男「……その、脚の刺青」


細目の男「……っく」


細目の男「くはははははははははは!!!!!!」

細目の男「こりゃケッサクだ!!!!」



細目の男「“奴隷”だ!!!!」


細目の男「“奴隷の烙印”が掘られてる!!!!!元奴隷だコイツ!!!!!!あははははははははははは!!!!」



太った男「けへへ!!なんだぁ?やけに下層街から奴隷身分の奴らを移住させると思ったら、そういう事かよ!」

細目の男「はーっ!はーっ!ひーっ……あーおかしい」

商人「……」

太った男「どうしようもねぇなあオイ……ん?おいどうしたよ」

ノッポの男「なぁ…………えっとさ」

太った男「ん?……ってお前っ、ぶはっ!!何イチモツ勃たせてんだよ!!」

ノッポの男「だって、こいつ、さ、顔可愛いし……匂い嗅いだら、なんかよぉ」

太った男「お前相当だな!!がははははっ」


細目の男「……いい機会ですね」


太った男「え?」

カチャカチャ

太った男「って、え?何してるんすか?」

細目の男「はぁっ……んふっ」

バサッ

細目の男「いいじゃないですか。奴隷の立場を理解させてやりましょう」

太った男「あんたもギンギンじゃないっすか!!」

ノッポの男「ねぇ、いいっすか?これ、好きにしていいっすかね?」

細目の男「ええ。ちょっと遊んでやりましょう」

太った男「けへっ、マジかよ。まあいいけどよ」


商人「……」


スタスタ


グイッ


細目の男「それじゃあ、町長……少し遊びましょうか」


ノッポの男「はぁっ……はぁっ……!!」


太った男「悪く思うなよ……」



商人「……」


商人(……………………ああ)



商人(…………………………………………勇くん)


――――――――――――――



――スー地方・岩山――



エド「ヒヒィィ――――ン!!!!」

スラお「ゆれる――――っ」

ダカダッ!! ダカダッ!!


勇者「エドさん!あとどのくらいで着きそうですか!!?」

エド「あともう少しかかります!!ご主人様!スー勇者!しっかり掴まっていてください!!」

勇者「スーちゃん!大丈夫!?僕に強くしがみ付いてて!!」

スー勇者「……ご主人様」

勇者「ん!?何!?」

スー勇者「ごめんなさい、です」

スー勇者「……スーの村の人たち、誰も付いて来てくれなくて」

勇者「……ううん。いいんだよスーちゃん」

勇者(あの街や商人に対する不満や偏見もあったんだろう。来てくれるなんて思わなかったし)

勇者「とにかく、エドさんが送ってくれるだけでもありがたいよ!」

エド「しかし!ご主人様、よくあれがわかりましたね!」

エド「それに町長さんが危険な目に遭ってるなんて、何故思ったんです!?」

勇者「……あいつ、昔っからああなんです」

勇者「ああいう回りくどいやりかたして……最終的に自分を蔑ろにするような奴なんですよ」

勇者「だから、分かるんですっ……」

スー勇者「……」

ギュッ

スー勇者(……ご主人様みたい)


勇者「とにかくっ、なるべく速くあの街にお願いします!!」


エド「任せて下さい!それでは飛ばしますよ!!!」


ダカダッ!! ダカダッ!!


スラお「ゆれぅぁ―――――っ」

勇者「っ……」

勇者(商人……マジで無事で、無事でいてくれよ……!!)

今日はおしまいです


――――――――

――ガルナバーグ・牢場・外――


ザワザワ


蝶ネクタイ男「お願いだ!!町長と話だけでもさせてくれ!!」

ダーマ勇者「ですから!できませんと何度も言っているでしょう!」

「お願いだよ!少しだけでいいから話をさせてくれよ!!」

「そうだ!きっとなんかの間違いだ!」

「お願いします!私達からも弁解させて下さい!」

ダーマ勇者「鎮まってください!!」

「「「……っ」」」

ダーマ勇者「……容疑者は、この街のお金の横領だけではなく、国連の取り引きで賄賂受け取りや収入の無断差し引き」

ダーマ勇者「それに収まらず、貨物の横領、そして犯罪に関わった人間を口封じのため殺害しています」

「んなわけあるかぁ!!!」

「濡れ衣だ!!あの人がそんな事するわけねえだろうが!!」

ダーマ勇者(ダメ……キリが無い)

ダーマ勇者(この街に居る国連の勇者は私だけだし負担がすごい……なんでこんな時一人なのぉぉ……)


スタスタ


エジンベア大臣「おやおや、皆さん。随分あの容疑者を庇いますね」


「「「!!」」」

「エジンベアの大臣だ……」

エジンベア大臣「おお、私を御存知で?有難いですね」

エジンベア大臣「しかし……わかりますね?あの容疑者のカタを持つ人間は……」

「「「……っ」」」

ダーマ勇者「……み、皆さん。御引取り願います」

「くそっ……」

「絶対なんかあるぜ……お前言ってやれよ」

「や、やだよ……職失いたくねえ」

ゾロゾロ…

ダーマ勇者「ふう……ありがとうございました。エジンベア大臣様」

エジンベア大臣「いえいえ。ダーマ勇者様もお疲れ様です」

ダーマ勇者「もうよろしいのですか?容疑者は」

エジンベア大臣「ええ。サマンオサ行きになるでしょうな」

ダーマ勇者「サマンオサに……あれ?ソクラス様や他の方々は?まだ中に?」

エジンベア大臣「…………ああ」

エジンベア大臣「ソクラス様はもうじき出てこられるでしょう。ただ他の方々はしばらくかかるかもしれませんな」

ニタァ


エジンベア大臣「前町長に熱ぅ……い“お別れ”をしているやも、しれませんから」

―――――――――――


――牢場――








ボトッ








ノッポの男「…………は?」






太った男「……あ……?」


細目の男「……えっ……?」


商人「…………」



ビチャァッ……プシャァァ……



ノッポの男「ふっ」

ガクッ

ノッポの男「ふぅぅっ……ふぅぅぅぅぅぅ~~~ッ!!!!」



「いやはや、この剣とは長い長い付き合いになりますが」


ジャキン!!


ピッ!!





ソクラス「イチモツを斬ったのは初めてであるなあ」




細目の男「なっ、なにをぉぉお!!!!?」

太った男「ソクラス様っ、あ、アンタッ……なんて事しやがるっ!!!!」


ソクラス「~♪」スタスタ


ノッポの男「ふぅっふぅう”うぅぅ”」


ピタッ

ソクラス「そうだ。お嬢さん」

商人「……えっ……!!?」


ソクラス「君は目を瞑っていたまえよ」



ヒュヒュンッ!!!!



【ソクラスのこうげき!!】


ノッポの男「ぅぅぅぅばふぉっ」


バチャァァッ!!!!


【ノッポの男は内臓をぶち撒けて飛び散った!】


商人「…………!!!!!」


太った男「う」

ダッ!!

太った男「うわぁぁあああああ!!!!」タッタッタ


【太った男は逃げ出した!】


ソクラス「逃げても無駄ァン。私のはやぶさの剣は、一振りで二度。破壊の風を起こす……」

ヒュヒュンッ!!!!

ソクラス「無様!!」


【ソクラスのこうげき!】


太った男「いやだあああ!!!!たすけ」

ブチャァッ

太った男「……てっ……ふ」


ぼどぼどぼどぼど


太った男「……お」

太った男「おれのぉ~ッ……!!!床にっ、床にぃぃ……い?」


グラッ……ポロッ

ドチャァッ


【太った男は睾丸と首を刎ねられ息絶えた!】

商人「っ……!!!!!」



細目の男「うわぁぁっ、うわあああああ!!!!!」


ソクラス「つまらんつまらんつまらん事よ。ああ反吐の匂いだ」

ソクラス「おや?自称“現町長”腰を抜かしておるようだ?」

細目の男「なんでっ、なんでですかぁっ!!!!なんでですかぁっ!!!!!」

ソクラス「ん?なんだね?」

細目の男「なんで殺したっ!!!!殺したんですっ」

ソクラス「それは簡単な事である事である事よぉ」


ソクラス「君らが、強姦などとくだらん事をしようとしていた為に他ならん」


細目の男「はぁっ、はぁっ、っく、あはぁっ?」


ソクラス「私はね。あらゆる物を壊すのがスキダァ……好きなん。だッ」

ソクラス「ただね……それ以外は大抵嫌いなのだがね?ただひとつ。ただ、ひと――――……ぉつ」

ソクラス「見ていて不快なものは、特に嫌いでね」

ソクラス「君らは実に不快であったねぇ……不快の太陽だ。もはや不快の神々であったというその実だ」


細目の男「はぁっ、はぁっ?はぁっ?はぁっ?」

細目の男「こっ……くほっ、はぁっ、ころっ……ころすことはっ、なかった、なかったはずです」


ソクラス「だぁれが決めたね?」


細目の男「ルビス様だあああああああ!!!!!!神が!!!!!!ルビス様が決めたああああああ!!!!」

細目の男「罪、罪だ!!!!!それは罪だぁぁああ!!!正義でもっ!!!正義でもなんでもっ  かふっ」

ガヒュッ

細目の男「こひゅーっっこひゅーっっ」


ソクラス「おやおや、興奮しすぎで息を崩してしまった。落ち着き給えよ」

スタスタ

ソクラス「……君の家の事は、エジンベア大臣から聞いているよ」

細目の男「こひゅーっ」

ソクラス「随分な名家で、王からの信頼も厚いと。結構な地位の家だと」

細目の男「それをっ、しってて、あの時!!わたしに!コイツを町長の座からひきずり降ろすっ、こひゅっ、話を、アンタは持ちかけたァ!!」

ソクラス「そうとも。知っていたとも」

ソクラス「貴族の学友を数人連れ立って、下層街の乞食をリンチしたり」

細目の男「こひゅっ……」

ソクラス「下層街の、昔に奴隷身分の集まりだった集落を狙ってその中の女達を犯していったり」

ソクラス「最年少は5歳の少女、でしたな?いやはやたいしたものだ」

細目の男「だっ……誰から、それを」

ソクラス「昔下層街の人間と話したときに、君の家名の人間から娘を犯されたという話を聞きましてな」

ソクラス「娘は随分な乱暴をおまけされて半身が動かずに寝たきりになった、という事であったなあ」

細目の男「こひゅっ……ふくっ」

ソクラス「おお?何か言いたそうな顔をしているね?さあ述べたまえよ。述べなくてはならんよ」

細目の男「それの……!!なにが、わるいっ」

ソクラス「ほー?続けて?」

細目の男「奴隷をっ!!下層の人間をどういう風に扱おうがいいじゃないかぁ!!!こいつだって!!この女だってそうだ!!!!」

ソクラス「ほふん?ほっふーん?」

細目の男「そういう風にっ!!こふっ!教えられた!!そういう制度だった!!!」

細目の男「ボクはっ、そいつらを!!!!殺していないっ!!!アンタは他人の事を言う資格はないァァアアア!!!!!!」

ソクラス「……ふふっ。みたまえよお嬢さん。彼の様を」

商人「……」


ソクラス「自分を正当化するものが無いため、恐怖の対象である私に大声で威嚇するしか能がなくなってしまった!」


ソクラス「無様!!!!!」


ソクラス「すばらしく、無様!!!!!」


細目の男「はくぁっ……はぁっ……!!はぁっ……!!」

細目の男「あんたはっ、あんたが無様だぁっ!!!」

細目の男「正義の味方ぶってっっ、全然違うっ!ただの人殺しだ!!!!」

細目の男「アンタは!!!!ルビス様に背くことをしたぁっ!!!!一緒にするなァ!!!お前が下だ!!!」

ソクラス「うむ。もうよいかな」

スタスタ

細目の男「く、くるなっ、やめろ!くるなああああ!!!!」

ヨジッ ヨジッ

細目の男「誰かァ!!!!ああっ誰か来てくれ!!!!人殺しだ!!!!人殺しだああああああ!!!!!」


ソクラス「黙りたまえよ」


ヒュンッ!!!!


ザンッ!!!!


【ソクラスは細目の男の手を剣で地面に突き刺した!】


細目の男「うああああああああ!!!!!!!!!!!誰か!!!!誰か来てくれええええええええ!!!!!!」


スッ

ソクラス「さて……じゃあ先ほどの君の言葉に幾つか返させてもらおう」

ソクラス「まず……君が犯した娘は死んだよ」


ソクラス「去年、もう一度あの街に行ったら、一家全員死んでいた」


ソクラス「あの街で体の不自由な娘を養うのは難しかったのだろうね」


ソクラス「全員心中したそうな」

細目の男「いだいっ!!!!いだいっ!!!!」


ソクラス「そして、次に……」


ザクァッ


【ソクラスは剣を引き抜いた!】


細目の男「あぎゅぁぁっ!!!!……っ抜いっ」


ザンッ!!!


細目の男「!!!!?」


ザンッ!!!ザンッ!!!!ザンッ!!!!!


【その剣をまた振り下ろし細目の男の左手をめった刺しにした!!!】



ソクラス「なぜ私が“正義”の為に生きねばならん?」



ソクラス「なぜ、私がそんなクソのような他意識に行動を枠どられなければいけないのだね?ん?ん?」



ザンッ!!!!ザンッ!!!!!ザンッ!!!!!!!



細目の男「嫌だアアアアアああアアアアア!!!!!!嫌、嫌ああああああああ」



ザンッ……ピタ…



ソクラス「なーぜ私が」


ヒュンッ!!!


ザザンッ!!!!


【ソクラスのこうげき!細目の男の左肘から先はミンチになった!】




ソクラス「ルビスなどという糞カスに認められなければならないんだね?」




ぶじゅっ

細目の男「ぶじゅっ、ぶじゅうぅぅぅぅぅっ」



ソクラス「なあ君よ。私が何のために生き、何を道徳としているか、分からないかね?」


ソクラス「私は!!!私が不快に感じるものを排除し!!!!私が好むものを手にし!!!!そして私の好きにする!!!!!!」


ソクラス「そこに神の意思などない!!!法の!!!他人が決めたルールの意思など無いのだよ!!!!!」



細目の男「ぶじゅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!!」



ソクラス「私が間違っている?結構である事だ。結構な事である!!!!」


ソクラス「私を“正そう”とする者があれば、私は全力で抗おう!!!ルビスでも一国の法でもかかってくるといい!!!!」


ソクラス「しかし私を正せた者などないから私はこうして生きている!!!!!私は誰よりも強いのだ!!!!」


ソクラス「私が間違っているならァ!!!!!!君が正しいというのならァァ!!!!!!今ここで私を滅ぼしたまえよ」


ソクラス「ルビス様が守ってくれるのだろォ!!!?今ここで“正しい”君は!!!!“間違っている”私に滅ぼされはしないのだろう!!!!?」



細目の男「いやだぁっぁあああああああああいやあだもおおおああああああ」



ソクラス「 ほ・ろ・ぼ・し・た・ま・え・よッッ!!!!!!!!! 」



細目の男「たすけてくれえええええええええ」


細目の男「だれかっ、たす、ぅああっあああああああああああああ」



ソクラス「……もういい」

ジャキッ


ソクラス「美学の無い屑は死んでしまえ」



ヒュヒュンッ!!!!


【ソクラスのこうげき!】


細目の男「あああああああああああチュアッ」




ズドォオオン!!!!!!



【細目の男は床と壁と共に消し飛んだ!!!】



ソクラス「無様!!!!」


今日はおしまいです

パラパラ…


商人「っ……!」


ソクラス「さて。平気かな?お嬢さん」

商人「……なんで、私を助けたんです」

ソクラス「…………ほう。強い目をしておられる」

ソクラス「女性にはいささか刺激が強すぎる寸劇であったと思うが……全く怯んでいる色の見えぬ目だ」

ソクラス「もしやこういった事には慣れているのだろうかね?」

商人「……」

ソクラス「まあよろしい。先ほどの問い。それは検討が違いすぎますなあ」

ソクラス「先述の通り。私は気に喰わない事が死ぬほど嫌いなだけ。私がお嬢さんの敵である事はなんら変わり無い」


「ソクラス」


スタスタ


ソクラス「……何の用だね?」


ザッ

猿顔の男「血の匂いがする……己に喰わせろ」


ソクラス「勝手にするがいい。そこらに肉は飛び散っているだろう」

商人(……?ソクラスの、仲間?)

ぐちゅ

商人「!!!?」


ばりゅっ ぱりゅ

きゅちょっ きゅちょっ


猿顔「あきゃきゃきゃきゃ」


商人(肉を、死体を喰ってる……!?)

ソクラス「全く悪食極まりない」

猿顔「貴様にはわかるまいよ。この肉の旨さは」

ジロ

猿顔「……この女はもう使わないだろう?もう喰っていいだろう?」

商人「っ!?」

ソクラス「……私が許可したのはその屑共の死体だけだ」

ソクラス「女性を殺して喰らうなぞ胸糞悪い事してみたまえよ」


ガオン!!!!


【ソクラスは猿顔の男に攻撃をしかけた!】


パラパラ…


ソクラス「その瞬間に……殺してやろう」

猿顔「……ギヒッ」


【猿顔の男はそれを爪で防いだ!】


商人(あの一閃を……爪で防いだ……)

商人(この男も、尋常じゃない)


ジャキン!!


ソクラス「兎に角大人しくしていたまえ。バラモスに小言を言われたくなければ」

猿顔「くはははっ!難儀よ、難儀よな」


商人「……やっぱり、魔族側にがっつり寝返ってるんですね」


ソクラス「む?」

商人「ははっ、あの勇者ソクラスが、魔王バラモスの配下だったとは、お笑い種です」

商人「いつからそうやって人間達を欺いていたんですか……このクソ外道が」

ソクラス「ほほう……本当に君は強い女性だ。あの光景を見て私にそう啖呵がきれるとは」


スタスタ


商人「……!はは、殺しますか?」

バサッ!


商人「…………え?」


ソクラス「手錠は外せないが、女性が裸でいるものではない。そのマントは差し上げよう」

商人「…………!?……っ、本当に、本当になんなんです……!?アンタの事が全くわかりません……!!」

ソクラス「なあに簡単な事さ。私は君を気に入っているのだァハハ」

ソクラス「一人で街を作り上げ、国連相手に弱い民を守り」


ソクラス「そしてオーブを仲間に手渡すために、こうして自分を一人悪人にする事で、全てを丸く治めようとしている」


ソクラス「敬意を払わずしていられようか?いや」


ビシィィッ!!!!!


ソクラス「いられない」


商人「……」

ソクラス「しかし一つ勘違いされておられるようだが……私はバラモスの配下になったことなどありはせん」

商人「え?」

ソクラス「以前、私がバラモスと最初に対峙した時の事。奴は私をすぐに排除しようとせずある提案を持ちかけたのだ」



ソクラス「“貴様の様な人間が来る事を私は待っていた。私と手を組め。”」


ソクラス「“もし私と手を組めば世界の半分を貴様にやろう”」


商人「……」



ソクラス「……私は手を組んだのだよ。バラモスとね」


ソクラス「今現在。世界の半分は私のモノであるのだ」


ソクラス「まあそれもじきに……全て私のモノになる」

商人「なっ……」

ソクラス「おや、少し喋り過ぎてしまったね」

クルッ スタスタ

ソクラス「君はそこでしばらく大人しくしていたまえ。おい。行くぞ」

猿顔「キヒヒッ……」

商人「まっ……!待って下さい!アンタッ……!さっきのって……」

商人「最低です……!人間を裏切ってまでっ!世界征服なんて……!」

ピタリ

ソクラス「……最後にお嬢さん。今の言葉を訂正させてもらうよ」


ソクラス「私の目的は、世界を手に入れる事などではない」

ソクラス「私は、力が欲しいだけなのだよ」


キィィ…


ソクラス「…………この世を、一瞬で滅ぼせる。そんな力が」


ガシャァァァン……

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年06月23日 (木) 02:08:00   ID: n1mOOHc6

待ってました‼︎

2 :  SS好きの774さん   2016年06月23日 (木) 12:07:59   ID: vL9jkRxA

キターーー!!

3 :  SS好きの774さん   2016年07月28日 (木) 20:02:12   ID: -5KwX2Od

期待してます!

4 :  SS好きの774さん   2016年10月21日 (金) 20:35:57   ID: aCHl1o5w

続けてくれてホント嬉しい。期待しています。

5 :  SS好きの774さん   2017年01月02日 (月) 23:15:03   ID: KUVLi5c0

あけおめー

6 :  SS好きの774さん   2017年01月05日 (木) 16:59:15   ID: gJt8tkKD

期待してます‼

7 :  SS好きの774さん   2017年02月07日 (火) 00:17:02   ID: O4W5sPJr

早く続きがよみたい!

8 :  SS好きの774さん   2017年02月21日 (火) 13:06:23   ID: yJ_9g_8f

期待

9 :  SS好きの774さん   2017年04月17日 (月) 10:24:17   ID: BytwgZoo

応援してます!!

10 :  SS好きの774さん   2017年09月14日 (木) 21:36:20   ID: P-nBW7ey

待ってます

11 :  SS好きの774さん   2017年10月04日 (水) 13:25:55   ID: E70bQX6H

この先がきになるー

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