SDK「そこの魔女殺しても良いかな?」右代宮戦人「ダメだ。全然ダメだ」 (40)

はじめに
・うみねこのなく頃に×SIRENのクロス
・両作品の独自解釈アリ。また独自の展開も
・スタートは、うみねこのエピソード1終盤から

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須田「……」

ゴゴゴゴゴゴゴ…

青く燃え盛る異界の建物と、得体の知れない生き物を、鋭い眼で見つめる

須田「さて、そろそろ次の異界に…」

青い炎が纏った刀を縦に、ブンッと音をたて振り下ろすと、空間に切れ目が生じる

須田「ん?」

須田「何だろう…あの時空の先、いつもと気配が違うな」

~~~~

1986年10月5日
須田恭也 2日目/23:30:00

須田「……ここは洋館?」キョロキョロ

須田「なんか、いかにも危なそうな場所だな」

ガチャッ!

須田「室内で宇理炎を使うのもアレだし…ライフルでいこう」

背中にクロスさせる様に背負った二つのライフルのうち1丁を、手に取り構える

「母さん!母さん開けて!」

須田「っ!?声が…」

須田(誰かが襲われてるんだ。助けに行かないと)ダダッ

須田「ん、誰かいる…?」

夏妃「右代宮家代表、右代宮夏妃です。姿を見せなさい!黄金の魔女、ベアトリーチェ!」

須田(黄金の魔女、ベアトリーチェ…たしかオカルト雑誌を読み漁ってた頃に見聞きしたような…)

須田「まあいいや。とにかく悪い奴を早く駆逐しないと」

夏妃「っ!!そこに誰かいるのですか!!」

貴婦人のような女性が殺気を込めながら銃をコチラに向ける

須田「あ、えと、すいません。おじゃまします。俺、別に怪しい者じゃ…」

夏妃「その完全武装の身なりでよくそんな事が言えますね!!」

「母さん!そこに誰かいるの!?開けて!危ないよ!」ドンドン

須田「あ、この武器はその、何ていうか…えと…」

夏妃「誤魔化さないで!アナタが犯人なのですね!!」

須田「いや、俺ついさっきここに来たばかりで」

夏妃「よく私の夫を…そしてお父様を!!!」

バァァン!!

完全に油断していた
得体の知れぬ物ばかり相手をして来たハズの須田恭也は、狼狽した女性が放つ銃の弾丸により、無常にも額を貫かれる

須田「ぐぅぅ…!!」ガクッ

夏妃「はぁはぁ…仇は取らせて貰いましたよ!」

「おいおい、イレギュラーが出てくるとは聞いておらんぞ…」

夏妃「っ!?今度はだれ!!」

ベアト「ククク、我こそが黄金の魔女よ」

夏妃「え…」

バァァン!!

ベアト「さて、こやつはいったい…」

須田「……」

~???~

恭也、今日もお疲れ様

うん、ありがとう

ずっと私との約束守ってくれてありがとう

美耶子の為なら何でもするよ

ありがとう。でもあまり無茶しないでね

うん。昨日は…ちょっと油断したんだ

気をつけてね

ああ。気をつけるよ

須田恭也 ?日目/??:??:??

須田「……ん。いつもの夢か」パチッ

須田は目を覚ますと、そこは洋館の一室を思わせる丸く真っ白な空間だった

ベアト「―――」

戦人「―――!!!」

二人の人間が話し合っている
赤い髪をした男が、ドレスを着た白人の女性に何かを訴えているようだ

ベアト「これはソナタが妾に屈服し、魔女の存在を認めるまで永遠に続く拷問よぉ」

戦人「違うぜ、これはお前への拷問なのさ。お前がいつ俺に屈し、諦めるか!それまで繰り返される拷問だ!!」

ベアト「面白い。では始めようではないか…互いを苛む拷問を、右代宮戦人!!!」

須田「うーん…ここは…」ムクッ

ベアト「お、やっと起きたか。気絶ついでに呑気に熟睡しおって」

須田「……」

須田「誰?」

ベアト「ソナタこそ何者だ。額を撃たれたというのに…何故生きている」

ベアト「いやそれ以前に、なぜ『あの世界』に侵入できたのだ?」

須田「何でって言われても…そこに異界があったから?現実世界みたいな異界だったけど」

須田「あと俺、ちょっと訳合って不死身なんだ」

戦人「不死身…だと?」

戦人「あー…ストップストップ!せっかく俺とコイツの決戦が始まろうとしてる時に、俺を置いてきぼりにしないでくれ!」

須田「キミは?」

戦人「おれは右代宮戦人だ。そこにいる自称魔女と名乗る女の存在を否定する為に、闘いに挑むところだ!」

須田「……自称魔女?存在否定の為の闘い?」

ベアト「自称ではない。本物の魔女だ!」

須田(話がまるで読めないな…)

須田「……」

須田「ん?右代宮戦人…ってまさか」

須田「キミ、もしかして六軒島の魔女連続殺人事件の関係者の!」

戦人「え、俺の事知ってるのか!?」

須田「うん。1986年にあった六軒島殺人事件は有名だからね。オカルト雑誌でも見たことある」

須田「えっと、とりあえず握手いい?」

戦人「握手!?まあ俺で良ければ」ギュッ

須田「わーすげぇぇ、本物の戦人だ」ギュッ

戦人「はは、変な奴だなお前」

須田「あ、因みに俺の誕生日は1986年の7月26日。つまり例の事件が起きる年に生まれたんだ」

戦人「へーっ…てえええ!?なんじゃそりゃ!?お前は未来人か何かか!?」

須田「うーん…なんだろ。俺は色んな異界に彷徨ってるから過去にも未来にも行けると言うか…」

戦人「なんだよ異界に彷徨うって…しかもさっき不死身とかいってたけどよ…にわかに信じがたいな」

ベアト「だがこの男にあった額のキズが綺麗サッパリ無くなっておるぞ」

戦人「それを言われると…まあ確かに認めざる得ないな」

ベアト「おいおい戦人よ。妾の時と違って随分とあっさりその存在を認めるのだな」

戦人「ふん!人畜無害の不老不死の存在は認めてやっても良い。だがお前のような人畜有害な魔女の存在なんぞ絶対ぇ認めねぇからな!!」

須田「人畜有害?この女の人が?」

戦人「ああそうだ。この女はな、まさに人畜有害の悪だ!」

戦人「俺の大切な人達を皆殺しにした悪なんだ…!!」

須田「……そうか。アイツは悪なのか」ギロッ

さきほどまで柔和に接していた須田の表情が一変する
鋭い表情でベアトリーチェの方へ向き、刀と宇理炎を手に戦闘態勢に入る

戦人「おい…どうしたんだよ、いきなり」

須田「なあ戦人」

須田「そこの魔女殺しても良いかな?」

ベアト「!?」

須田「魔女め、覚悟しろ!!」

戦人「ダメだ。全然ダメだ」

須田「え」

戦人「さっきの会話を聞いてたよな?そいつを殺すのはお前じゃない。この俺だ!」

須田「そっか。ならライフル貸そうか?」

戦人「そういう意味じゃねぇ!」

戦人「俺とコイツで、このチェス版の謎を解き…そして魔女の犯行を徹底的に否定しきる。それがこのゲームのルールだ」

須田「……」

戦人「なんだ、納得いかないのか?」

須田「なんか回りくどいな。さっさとぶっ殺せばいいじゃないか」

戦人「おまえ、割と好戦的なんだな…見た目からしてテロリストだけどよ」

ベアト「さっきから黙って聞いていれば…妾を簡単にぶっ殺すとは…不届きな」

ベアト「何ゆえ不死身なのかは分からぬが、これ以上の妾を侮辱すればタダじゃ済まぬぞ。愚か者め」

ベアト「この妾に敵う相手がいるとすれば、妾と同等の力を持つ魔女…あるいは異端審問官ドラノールくらいだろうな。ウヒャヒャヒャヒャ!」

須田「……」

ベアト「……そういえばまだ名前を聞いてなかったな。名を名乗れ」

須田「俺は、須田恭也」

ベアト「須田…恭也…?」

須田「ああ」

ベアト「……」

ベアト「まさか!?」

ベアト(背中には二本のライフルを背負い、両手に刀と土偶。ヘッドフォンからは野蛮な音楽が流れ…そして不死身)

ベアト「やはりあの姿は…」

戦人「おい、どうしたんだよ?顔面真っ青だぞお前…」

ベアト「まさかソナタは、異界ジェノサイダーか!?」

須田「……巷ではそう呼ばれてるみたいだね」

戦人「イ、イカサイダー??」

ベアト「異界ジェノサイダーだ。まさか本当に実在したとは」

ベアト「噂では色んな異界に飛び回っては、悪と見なした存在に対し、殺戮の限り尽くして来たと言われている伝説の怪物よ」

戦人「で、伝説の怪物!?」

須田「あの、おれ一応人間なんだけど。その噂、誇張が含まれてるよ」

ベアト「フ、フフフ。ヒャーッハハハハ!!良いだろう、妾を殺せるものなら殺してみよ!返り討ちにしてくれる」

戦人「おい」

須田「望むところだ。魔女め」

須田「覚悟しろ!!!」ダダッ

刀を構え、ベアトリーチャに向かって走る
そして一気にその刀を振り下ろす

戦人「待て!!」

須田「む」ピタッ

だが振り下ろされた刀は途中で止まる
なぜならベアトリーチェの前に戦人が立ち、彼女の身を守っていたからだ

須田「退いてくれ戦人。そいつを殺せない」

戦人「……もう一度言うぜ」

戦人「良いか恭也!こいつを殺すのはお前じゃない。この俺だ!!」

戦人「お前は元々イレギュラーだったんだろ?だったら部外者らしく、立ち去ったらどうだ!!」

須田「部外者なんかじゃない。俺は異界の悪しき存在を根絶やしにしなければならないんだ」

須田「全ては約束の為だ」

戦人「知るか!俺とこいつの決闘に水をさすんじゃねぇ!!」

須田「……」スッ

須田は静かに刀を鞘に収め、宇理炎をポケットに仕舞う

戦人「やっと分かってくれたか」

須田「……とりあえず、様子を見る」

戦人「え?」

須田「君達のゲームを静観させてもらうよ」

須田「魔女を始末するかどうかは…そのあと決める」

ベアト「フ、フフ。ヒャハハハハ!異界ジェノサイダーめ!妾を本気で殺せるとでも思ってるのか!?逆に返り討ちにしてくれるわ!!」

須田「んじゃ、いま決着つけるかい?」ガタッ

戦人「おい恭也!」

須田「……ごめん」スッ

ベアト「フフフ。血の気が濃い男が二人もいると楽しみも二倍に増えるという物だ」

ベアト「おかげで退屈しない」

ベアト「果たして二人は妾を殺せるか…見物よ」

須田「……」

ベアト「所で異界ジェノサイダー、ソナタには聞いておきたい事がある」

須田「え?」

ベアト「それは…あ、やっぱり後ででも良いか。楽しみは後で取っておくものよ」

須田「なんだよ…気になるじゃないか」

戦人「はいはい!そろそろ再開するぞ!」

ベアト「フフフ、ではゲームを再開しようぞ!」

ここまで

ストーリー構想はまだ途中までしか浮かんで無いけど、エピソード6~8(アニメで放映されてない話)まではがんばりたい

【引き続きepisode2にて】

須田「……」

白い空間の窓ガラスから映画の様に、物語の映像が流れている
須田は腕を組みながら、その映像を鋭い眼でジッと眺める

須田「……む」

戦人「どうした恭也」

須田「ああ言うのは…ちょっと、見ていてキツイな」

戦人「……ああ。わかるぜ」

須田「ちょっと止めに行ってくる」

戦人「は!?」

ベアト「!?」

~下位世界~

バシバシッ!

バラ庭園にて怒り狂う母親と、その母親から往復ビンタをされる少女がいる

楼座「魔女の話はするなっていったでしょ!!まして親族の前で…気持ち悪い!!」

真里亞「うー!うー!」

ガシッ

少女の訴えも虚しく、母親に髪を強く引っ張られる

楼座「アンタいくつだと思ってるの!?9歳よ9歳!!電車であんなに騒ぐから、キャンディー買ってやったというのに!!」

楼座「どこまで私の顔を潰せば気が済むのよ!!」

真里亞「ママ痛い!痛いよ!!」

須田「その辺にしときなよ」パシッ

楼座「!?」

真里亞の髪を掴む楼座の背後から、肩をポンッと叩く
楼座は驚いて手の力が緩み、後ろを振り向く

楼座「だ、誰!?」

須田「誰だっていいじゃん」

楼座「客人ではなさそうね。ここから出て行きなさい!」

須田「言われなくても出てくよ」

須田「でも、その子があまりに不憫だったから止めにきたんだ」

楼座「人の家庭に口出ししないでくれるかしら!?」

須田「そうだね。俺もまだ16のガキだし、人の家庭に口出す権利なんて本当は無い」

楼座「分かってるならサッサと!」

須田「だからこそ、偉そうに他人の家庭に口を挟む事にしたんだ」

須田「俺、そんなに人間出来てないし。立派でも無いしさ」

楼座「な、何ですって!!!」

怒り狂う楼座を無視するように、その目線は隣にいる真里亞へと移し変える

須田「キミ、真里亞だっけ?」

真里亞「え、うん。わたしは真里亞」

須田「そっか。俺は恭也。素敵なキャンディーだね」

真里亞「うー!ママに買ってもらったの!」

須田「そうなんだ。所でさっき魔女の話してたよね?俺も魔女の存在は信じるよ」

真里亞「本当!?」

須田「うん。魔女は必ずいる。それに俺もそういう話は好きだし」

真里亞「うー!恭也は話が分かる良い人!」

楼座「ちょっとアナタいい加減に!!」

須田「ああ、分かってるよ。もう帰るよ」

須田「でも次からは気をつけなよ?アンタの行い、下手すれば虐待の域だよ」

楼座「アナタに何がわかるの!!16のガキに!!」

須田「何も分からないよ。親の立場になったことも無いガキだし」

須田「たださ、アンタも16のガキに舐めた発言されない様な、もっと良い母親になるべきなんじゃない?」

楼座「ぐっ…」

須田「じゃ、真里亞。元気でね。ママを困らせてゴメン」

そういうと恭也は刀をブンッと振り下ろすと、空間に切れ目が生じる

楼座「」

須田「バイバイ」

真里亞「わー!!恭也すごい!!きっとベアトリーチェの友達なんだ!」

~~~~

須田「ただいま」

戦人「うおぉ!?戻ってきた!」

ベアト「」

戦人「おまえ…優しいんだな」

須田「どうだろ。俺の行動だって褒められたもんじゃないし」

須田「ただ、抑えきれなかったんだ」

戦人「なかなか出来ないぜ、ああいうの」

須田「……」

ベアト「なぜそなたがあっちの世界に干渉ができるのかは分からぬが」

ベアト「あまり勝手なことはしないでくれぬか?戦人との勝負に支障をきたす」

須田「……ああ」

戦人「所で意外だったな」

須田「え、なにが」

戦人「お前は魔女の存在を否定しなかった。しかも真里亞に、ベアトリーチェが悪い存在だという事も伝えなかった」

須田「真里亞はまだ子供だろ?頭ごなしに夢を否定するのは可哀想だ」

須田「それに俺自身も、魔女の存在は否定する気ないし」

ベアト「ほう。どうやら敵ながら妾の事を敬っているようだな」

須田「違う。魔女がいるか、いないかが問題じゃない。お前の存在が邪悪なのかどうかが問題だ」

須田「敬う気持ちなんてある訳無い。俺はいつでもお前を殺すつもりでいる事を忘れるな」

ベアト「ふむ、お前も戦人とは違う意味でクセ者だな」

~~~~

戦人「ん?教会に親族達が集まっている」

須田「子供達はゲストハウスに行っちゃったね」

ベアト「くくく、ここからは前回の話とはまるで異なってくるぞ」

須田「魔女が人間の前に直々と姿を現してる…」

映像に映し出されているのは子供達を除く、右代宮家の親族達とベアトリーチェ
真夜中の教会にて対面したベアトリーチェ、その魔女の存在を認めているようだ

そこで視点が切り替わり、次の日の朝へと変わる
そして惨劇が発覚する

~~~~~
戦人「またこんなふざけた殺し方をしやがったのかよ…」

戦人「死体の腹の中にキャンディーやらクッキーを詰め込むなんて…!!悪趣味にも程があるじゃねぇか!!」

須田「……」ガタッ

ベアト「前回のゲームで最初に殺された6人は、顔の判別が出来ないほどグチャグチャだった。しかし逆に本当は誰かが生きてるかも知れないという推測もできた」

ベアト「今回はちゃんと顔がわかる。つまり容疑者を絞る事ができる」

須田「……」コツコツ

戦人「ふざけんな!!残酷な魔女め!!ぶっ殺してやる!!」

ベアト「お前は事件が魔女の仕業ではないと照明したいのだろう?さらに身内には犯人がいるとも認めたくも無いのだろ?」

ベアト「さあ戦人、この事件をどう説明する?ヒャハハハハハハ!!」

ザシュッ

ベアト「ぐあああぁ…!?」

戦人「!?」

笑い声が呻き声へと変わる
突如、ベアトリーチェの腹部から剣先が飛びだし、ポタポタと血を流しながら苦痛に苛む

須田「やっぱりコイツは今すぐ殺すべきだ」

ベアトリーチェの背後から須田の低い声が響く

戦人「お、おい!なにやってんだ恭也!」

須田「さっき戦人は言ってたよな?ぶっ殺してやるって」

須田「オレが引き受けるよ」

戦人「あ、あれは言葉の綾でだな…!」

須田「この極悪非道の魔女はおれは討つ」

ジュゥゥゥ

ベアト「ぐぅぅ…!!」

蒼く燃える炎の剣が、ベアトの腹部を焦がす

須田「でもさすが力のある魔女だ。この程度じゃ消し去る事は出来ないようだね」

そういって剣を引き抜き、高々と振り上げる

須田「死ぬまで攻め続けてやる!!」

ベアト「図に乗るなよ小僧がぁぁ!!」

ガキィィ!!

ベアトリーチェも西洋風の光をまとった剣を練成し、須田からの攻撃を受け止める

須田「うおぉぉ!!」

ガキッ!キィィン!

激しい剣の攻防が起きる

ベアト「ククク、この程度のキズ。黄金の魔女の妾ならば」パァァ

ベアトリーチェは腹部を軽く擦ると、光の蝶が現れると同時に、その傷口が塞がる

ベアト「いとも簡単に癒す事が可能だ」

須田「消すなら首を刎ねる位の事をしないとダメか」

須田「……あるいは宇理炎を使うか」

ベアト「隙あり!」

ザシュッ

須田「ぐっ…」

今度はベアトの剣が、須田の腹部を斜めに切り裂く

ベアト「ひゃははははは!腸がはみ出ておるぞ!?」

須田「……言ったはずだ、おれは」ススッ

須田の腹部からキズとはみ出た腸は、テレビ映像で逆再生するように、体が元の形に戻っていく

須田「不死身だ」

ベアト「ならば二度と闘えなくなる位のトラウマを、その体に刻み込むまでだ!!」

須田「やれる物ならやってみろ!!」

ベアト「いでよ!双肩の塔!!」

須田「ならこっちは宇理炎で…!!」

戦人「ストップ!お前らストップだ!!」

ベアトリーチェと須田の間を挟むように、戦人は二人の闘いを止めに入る

戦人「言ったはずだぜ恭也!この闘いは俺とコイツの問題だ!」

戦人「ベアトリーチェも本気で殺しあってんじゃねえよ!」

須田「ぜぇぜぇ…」

ベアト「おっとすまぬ。つい熱くなってしまってな」

戦人「まったく…こういうケンカの仲裁役は、譲治の兄貴の役目であって、俺の役目じゃねぇんだよ…」

戦人「熱くなって止められるのは俺の役目なのによ…かんべんしてくれ恭也」

須田「……」

戦人「」ビクッ

顔面は返り血で真っ赤に塗れ、目の下に隈が出来ている須田の、鋭い眼光に思わず身震いする戦人

須田「悪い。これは元々君達の闘いなんだよな」

須田「ここからは我慢する」

戦人「ああ、そうしてくれ。身内が酷い目に合わされても我慢してんのは俺も一緒だ」

須田「……もしも戦人が諦めた時、俺が変わりにケリをつける」

戦人「そうならないように頑張るぜ」

ベアト「くくく、果たしてそう上手くいくかぁ?」

~~~~~

戦人「朱志香があぶねぇ!!」

須田「使用人のカノンは闘えるのか…凄いな」

須田「よし、俺も加勢に行く。山羊と駒のベアトリーチェを抹殺してくる」

戦人「え?」

須田は剣を引き抜いて、高々と振り上げる
すると目の前にベアトリーチェが凄い勢いで走ってくる

ベアト「待たぬか愚か者め!」

ザシュッ…ボト

戦人「!!?」

血しぶきが舞い、何かが落ちる
光を纏った剣で、須田の首を切り落とす

戦人「ベアトリーチェ!!お前…なんてことを!!!」

ベアト「忘れたか?その男は不死身だ」

戦人「なっ…」

須田「」

ベアトリーチェの言葉に反応し、目線を須田に向けると、少しずつだが須田の頭部が再生されていた

須田「……っ」

戦人「おお…元に戻った」

ベアト「全く、我慢するとか言いながら早速、感情移入しおって」

須田「……忠告しておくけど、次に駒のお前がふざけた殺人を犯したら、お前の首を躊躇無く切り落とすからな」

ベアト「だったらいまやってみるか?ヒャヒャヒャヒャ!!」

須田「言ったな?」ガタッ

戦人「お前らは瞬間湯沸かし器か!!いい加減にしろ!!」

その後、新しいルールとして赤き真実の説明もされ、物語は進む
そして物語は終盤へ

~下位世界・2日目の夜~

金蔵「お前の微笑がもう一度見られるのなら、この命惜しくない…」

金蔵「お前が愛しい…ベアトリーチェ!!せめてお前に一言、謝らせてくれ…」

金蔵「お前を愛している…」ボロボロ

~~~~~

須田「金蔵は、お前の事が大好きなんだな」

ベアト「ククク、そうみたいだな」

須田「……あの爺さんもおかしな人だけど、事件で亡くなった一人なのか」

須田「せめてこの世界ではちゃんと会って話しを聞いてあげなよ。前みたいに燃やさないでさ」

ベアト「心配するな。まあ見ておれ」

須田(そうか。この世界では一応、会うつもりなんだな)

ベアト「……やけに金蔵にも感情移入しているな」

須田「だってさ、好きでたまらない人に会えないのって辛いじゃないか」

ベアト「クク、ヒャハハハハ!!」

須田「何がおかしいんだ」

ベアト「大方、お前にも恋しくてたまらない女がいるのだろ?」

須田「……」

戦人「へー!異界をさまよう旅人のお前にも恋人とかいるのか?」

須田「恋人っていうか…その、とにかく大切な人なんだ」

須田は顔を赤くしながらそっぽを向く

戦人「顔赤くなってるぜ?」

須田「……戦人の方こそ、生前に彼女とかいなかったの?結構イケメンじゃん」

戦人「俺?まあたしか彼女は欲しかったけど…なんつーかあの時の俺は、恋よりも友情を優先してたからな」

戦人「家庭で色々あったせいかさ、その反動みたいなのでな」

須田「……家庭か。俺はもう家族の顔も記憶があいまいだな」

戦人「そんなに長い年月を異界で過ごしたのか?」

須田「うん。時間の感覚的に言うと数百年分は経ってると思う」

須田「異界に行く前から、ちゃんと顔を覚えてるのは今はもう1人だけだ」

~episode2終了後~

戦人「楼座おばさんが粘ってくれたおかげで、再び闘う気力を取り戻したのは良いが」

キィィンッ!カキィッ!!

剣がぶつかり合う激しい音が響く

須田「おらぁぁ!!」

ベアト「フハハハハ!!」

戦人が白い部屋に戻るなり溜め息をつく
鬼の形相で襲い掛かる須田と、その様子をあざ笑うように交戦するベアトリーチェがいた

戦人「お前らまた喧嘩してるのか」

須田「……戦人は悔しくないのか?あんな裸にされて、四つん這いで歩かされて、山羊に食べられて」

須田「やっぱりこいつは殺さないとダメだ」

戦人「そのリベンジは次のゲームで果たす。だからお前が癇癪を起こす必要ない」

須田「……」

須田は攻撃を止めて、剣を鞘に収める

ベアト「クククク、まあいい運動になった」

ベアト「……しかしこうもゲームの邪魔をされると、戦人と妾の決闘に支障をきたす」

ベアト「そこで妾から提案がある」

戦人「提案?」

ベアト「第3のゲーム以降、下位世界での干渉、および異界ジェノサイダーは妾に対し直接攻撃を完全に禁ずる」

須田「そのルールを破ったら?」

ベアト「もしもルールを破るなら…」

ベアト「ゲーム終了後までに、戦人が魔女の存在を否定し切れなかった場合。妾と戦人の闘いは一旦中止だ」

戦人「第四のゲームはお預けか。それで?変わりに何を始める」

ベアト「異界ジェノサイダー…いや、須田恭也が魔女を討伐する資格があるか、否か、その議論をしようと思う」

戦人「議論?そんな事してどうする」

ベアト「異界ジェノサイダー、妾たちはお前の過去を知らぬ」

ベアト「ただの16才のガキがなぜ、伝説の殺戮マシーンへと変貌したのか」

そう言って、ベアトリーチェは須田の頭部にそっと手を置く

須田「何をする気だ」

ベアト「そなたが異界ジェノサイダーになるまでの経緯、その記憶を妾の脳内にコピーさせてもらうぞ」

須田「……」ススッ

須田は黙って睨みつけながら、ベアトリーチェの腹部に宇理炎を突きつける

須田「もしもお前が攻撃をし掛けてきたら、煉獄の炎で焼き殺すからな」

ベアト「おお、怖い怖い」ニヤニヤ

ベアト「では覗かせてもらうぞ」

~~~

ベアト「!?!?」ビクッ

突如、ベアトリーチェは全身を痙攣させ膝をつく

戦人「おい、どうした!」

須田「?」

戦人「恭也!お前こいつに何を」

ベアト「ぜぇぜぇ…異界ジェノサイダーは何もしておらぬ」

ベアト「ただこやつの記憶があまりに強烈かつ膨大であった為、すこし脳に負荷が掛かっただけだ」

ベアト「なるほど…ふむふむ。そなたもまた数奇な運命を辿ってきたのだな」

須田「……」

戦人(なんか気になるな…)

ベアト「さて、それでは第3のゲームを開始しようぞ」

ベアト「さきほど説明したルールをもし破るなら、異界ジェノサイダー。ゲーム終了後に貴様を裁く別のゲームをはじめる」

ベアト「良いな?」

須田「好きにしてくれ」

戦人「所で記憶をコピーしたっていうけどよ、俺達に恭也の過去を説明してくれるのか?」

ベアト「無論だ。映画の様にこの部屋で上映するつもりだ」

須田「映像付きかよ」

戦人「やることはあまり変わらないな…いや、恭也が裁かれるという事は、今度は俺が傍観者になるのか?」

ベアト「違う。妾はただの記憶の上映役だ」

ベアト「議論をするのは戦人と須田恭也だ」

戦人「っ!?なぜ俺が」

ベアト「魔女の存在を否定し妾を殺すのはそなたの最終目標」

ベアト「一方、過激派の異界ジェノサイダーは問答無用で妾の命を狙う」

ベアト「言わばこれは、妾との決闘権利を得るための、闘いになるのだ」

戦人「……なるほど。俺は俺のやり方でベアトを否定し殺す。だが恭也がそれを邪魔し、強引な手で命を狙う」

戦人「そこで俺は恭也の目的を否定する為に、議論すると言う事だな」

須田「俺の場合は魔女の命を狙うのに正当な理由を、突き通すことが出来れば勝ちって訳だね」

ベアト「そうだ。もちろん色つきの文字をつかってな」

須田「……戦人とは良い友達になれそうだけど、そのやり方は生ぬるいし、回りくどくて好きになれなかった」

戦人「俺としてお前とは良い友達になれると思う。だが思考が過激すぎる。単純で粗暴でなんの捻りも無い」

須田「……もしも第3のゲームで我慢できなかったら、俺は戦人と議論…いや決闘をする」

戦人「望むところだ。俺はお前の過去を知り、お前が魔女を討伐する権利がないと否定してみせる!」

ベアト「ククク、盛り上がってきたようだな」

ベアト「だがこれは第3のゲーム以降にて、異界ジェノサイダーがルールを破ったらの話だ。それを忘れぬようにな」

須田「……」

戦人(たぶん、恭也は我慢できないだろうな。これまでの行動を見てて分かる)

戦人(その前に俺が魔女を否定しきっちまったら、全部終わっちまうが…その時はその時か)

戦人「とにかく、次のゲームを始めようぜ」

ベアト「ククク、それでは第3のゲームを始めよう」

今日はここまで

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